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特開2024-137788セルフリー通信システムの処理装置、当該処理装置が実行する方法及びプログラム
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  • 特開-セルフリー通信システムの処理装置、当該処理装置が実行する方法及びプログラム 図1
  • 特開-セルフリー通信システムの処理装置、当該処理装置が実行する方法及びプログラム 図2
  • 特開-セルフリー通信システムの処理装置、当該処理装置が実行する方法及びプログラム 図3
  • 特開-セルフリー通信システムの処理装置、当該処理装置が実行する方法及びプログラム 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137788
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】セルフリー通信システムの処理装置、当該処理装置が実行する方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04W 28/16 20090101AFI20240927BHJP
   H04W 52/02 20090101ALI20240927BHJP
【FI】
H04W28/16
H04W52/02
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024037392
(22)【出願日】2024-03-11
(31)【優先権主張番号】18/124,808
(32)【優先日】2023-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】599108264
【氏名又は名称】株式会社KDDI総合研究所
(71)【出願人】
【識別番号】507325736
【氏名又は名称】ユニバーシティ・オブ・サザン・カリフォルニア
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF SOUTHERN CALIFORNIA
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 雅秋
(72)【発明者】
【氏名】菅野 一生
(72)【発明者】
【氏名】天野 良晃
(72)【発明者】
【氏名】モリッシュ, アンドレアス
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA43
5K067EE02
5K067EE10
5K067EE16
5K067EE24
(57)【要約】
【課題】セルフリー通信システムの消費電力を抑える。
【解決手段】処理装置が実行する方法は、無線デバイスに関連付けられたAPの集合であるクラスタの変更により、クラスタAPから非クラスタAPに変更された1つ以上の第1APが生じると、1つ以上の第1APと、所定条件を満たす非クラスタAPである第2APと、を1つ以上の処理対象APとして第1処理を実行することで、1つ以上の処理対象APの動作モードを、無線信号の受信を行わない下り専用モードと、無線信号の送信を行わない上り専用モードと、無線信号の送受信を行わないスリープモードと、の内のいずれかに決定することを含み、第1処理は、処理対象APから1つの第1処理対象APを選択し、その動作モードを下り専用モードに決定することと、他の第2処理対象APの動作モードを、上り専用モード、又は、スリープモードに決定することと、を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアクセスポイント(AP)を備えたセルフリー通信システムの処理装置が実行する方法であって、
無線デバイスに関連付けられたAPの集合であるクラスタの変更により、前記クラスタに含まれるクラスタAPから前記クラスタに含まれない非クラスタAPに変更された1つ以上の第1APが生じると、前記1つ以上の第1APと、前記1つ以上の第1APに対して所定条件を満たす前記非クラスタAPである第2APと、を1つ以上の処理対象APとして第1処理を実行することで、前記1つ以上の処理対象APの動作モードを、無線信号の受信を行わない下り専用モードと、無線信号の送信を行わない上り専用モードと、無線信号の送受信を行わないスリープモードと、の内のいずれかに決定することと、
前記第1処理で決定した前記動作モードで前記1つ以上の処理対象APが動作する様に制御することと、
を含み、
前記第1処理は、
前記1つ以上の処理対象APから1つの第1処理対象APを選択し、前記1つの第1処理対象APの動作モードを前記下り専用モードに決定することと、
前記1つ以上の処理対象APの内の前記第1処理対象APとは異なる第2処理対象APの動作モードを、前記上り専用モード、又は、前記スリープモードに決定することと、
を含む、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記1つ以上の処理対象APが3つ以上ある場合、
前記1つの第1処理対象APは、前記1つ以上の処理対象APの内の他の処理対象APとの距離の分散が最も小さい処理対象APである、方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、
前記1つ以上の処理対象APが2つ以上ある場合、
前記第1処理において前記上り専用モードに決定される前記第2処理対象APの数は、前記スリープモードに決定される前記第2処理対象APの数と同じか1だけ多い、方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、
所定周期で第2処理を実行することで前記複数のAPの内の前記非クラスタAPとして動作している1つ以上の第3APの前記動作モードを決定することと、
前記第2処理で決定した前記動作モードで前記1つ以上の第3APが動作する様に制御することと、
をさらに含み、
前記第2処理は、
グループ数を決定することと、
前記1つ以上の第3APを、前記1つ以上の第3APの配置位置に基づき、前記決定したグループ数のグループにグループ化することと、
前記グループに含まれる1つ以上の第4APを前記1つ以上の処理対象APとして前記第1処理を実行することと、
を含む、方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法であって、
前記グループ数は、前記セルフリー通信システムの前記クラスタの数の関数である、方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって、
前記グループ数は、前記クラスタの前記数が大きい程、小さくなる、方法。
【請求項7】
請求項4に記載の方法であって、
前記第2処理を行ってから所定回数の前記第1処理を行った後に前記1つ以上の第1APが生じると、
前記第1処理の代わりに前記第2処理を実行することと、
前記第2処理で決定した前記動作モードで前記1つ以上の第3APが動作する様に制御することと、
を含む、方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法であって、
前記非クラスタAPから前記クラスタAPに変更された1つ以上の第5APが生じると、前記1つ以上の第5APの前記動作モードを、無線信号の送受信を行うノーマルモードに決定することと、
前記1つ以上の第5APが前記ノーマルモードで動作する様に制御することと、
を含む、方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法であって、
前記所定条件は、前記1つ以上の第1APとの距離が閾値以内、又は、前記1つ以上の第1APとのパス損失が所定値以内であると満たされる、方法。
【請求項10】
1つ以上のプロセッサと、
プログラムを格納するメモリデバイスと、
を備えたセルフリー通信システムの処理装置であって、
前記プログラムは、前記1つ以上のプロセッサによって実行されると、前記処理装置に、請求項1から9のいずれか1項に記載の方法を実行させる、処理装置。
【請求項11】
セルフリー通信システムの処理装置の1つ以上のプロセッサによって実行されると、前記処理装置に、請求項1から9のいずれか1項に記載の方法を実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、セルフリー通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
セルラ通信システムは、サービス提供エリアを複数のセルに分割し、各セルに基地局を配置することでサービス提供を行う。セルラ通信システムにおいて、ユーザ装置(UE)とも呼ばれる無線デバイス(WD)は、当該WDが在圏するセルの基地局と通信する。セルラ通信システムでは、基地局からの電波の電力減衰や近隣セルからの干渉によって、セルの境界領域における通信品質が劣化し易くなる。
【0003】
このため、非特許文献1は、セルフリー通信システムを開示している。セルフリー通信システムでも、セルラ通信システムと同様に、複数のアクセスポイント(AP)が様々な地理的位置に配置される。複数のAPは、伝送路を介して中央処理装置(CPU)に接続される。セルフリー通信システムにおいて、例えば、CPUは、WDが無線で通信する1つ以上のAPを複数のAPから選択する。WDは、CPUが選択した1つ以上のAPと無線信号の送受信を行うことで、当該1つ以上のAPを介してCPUと通信する。
【0004】
セルフリー通信システムにおいては、従来の"セル"の概念はなく、WDと通信する1つ以上のAPは、CPUによってWD毎に動的に制御される。この、WDと通信する1つ以上のAPの集合は、当該WDの"クラスタ"又は当該WDに関連付けられた"クラスタ"とも呼ばれる。
【0005】
非特許文献2は、WDがセルフリー通信システムに初期アクセスした際に行われる、当該WDのクラスタを形成するためのクラスタ形成処理を開示している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】H.Q.Ngo,A.Ashikhmin,H.Yang,E.G.Larsson and T.L.Marzetta,"Cell-free massive MIMO versus small cells",in IEEE Trans.Wireless Commun.,vol.16,no.3,pp.1834-1850,March 2017
【非特許文献2】E.Bjоrnson and L.Sanguinetti,"Scalable cell-free massive MIMO systems",in IEEE Trans.Commun.,vol.68,no.7,pp.4247-4261,July 2020
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
セルフリー通信システムにおいても、その消費電力を抑えることが望まれている。
【0008】
本開示は、セルフリー通信システムの消費電力を抑える技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様によると、複数のアクセスポイント(AP)を備えたセルフリー通信システムの処理装置が実行する方法は、無線デバイスに関連付けられたAPの集合であるクラスタの変更により、前記クラスタに含まれるクラスタAPから前記クラスタに含まれない非クラスタAPに変更された1つ以上の第1APが生じると、前記1つ以上の第1APと、前記1つ以上の第1APに対して所定条件を満たす前記非クラスタAPである第2APと、を1つ以上の処理対象APとして第1処理を実行することで、前記1つ以上の処理対象APの動作モードを、無線信号の受信を行わない下り専用モードと、無線信号の送信を行わない上り専用モードと、無線信号の送受信を行わないスリープモードと、の内のいずれかに決定することと、前記第1処理で決定した前記動作モードで前記1つ以上の処理対象APが動作する様に制御することと、を含み、前記第1処理は、前記1つ以上の処理対象APから1つの第1処理対象APを選択し、前記1つの第1処理対象APの動作モードを前記下り専用モードに決定することと、前記1つ以上の処理対象APの内の前記第1処理対象APとは異なる第2処理対象APの動作モードを、前記上り専用モード、又は、前記スリープモードに決定することと、を含む。
【発明の効果】
【0010】
本開示によると、セルフリー通信システムの消費電力を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態の説明に使用するセルフリー通信システムの構成図。
図2】実施形態による動作モードの決定処理のフローチャート。
図3】実施形態による処理装置のハードウェア構成図。
図4】実施形態による処理装置の機能ブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0013】
図1は、実施形態の説明に使用するセルフリー通信システムの構成図である。図1において、セルフリー通信システムは、複数のAP1-1~1-10を有する。以下の説明において、AP1-1~AP1-10を区別する必要がない場合にはAP1と表記する。図1では、AP1の数を10としているが例示であり、セルフリー通信システム内のAP1の数は10に限定されない。各AP1は、CPU3と、有線及び/又は無線の通信リンクにより接続される。さらに、CPU3は、図示しないコアネットワークに接続される。なお、図1では、図の簡略化のため、各AP1と、CPU3とを接続する通信リンクについては省略している。
【0014】
また、図1には、2つのWD2-1及びWD2-2が示されている。以下の説明において、WD2-1及びWD2-2を区別する必要がない場合にはWD2と表記する。図1の実線の円内のAP1-1~1-3及び1-5は、WD2-1のクラスタ4-1である。また、図1の点線の円内のAP1-5、1-7及び1-10は、WD2-2のクラスタ4-2である。したがって、WD2-1は、クラスタ4-1に含まれるAP1-1~1-3及び1-5と無線で通信することで、AP1-1~1-3及び1-5を介してCPU3と通信する。同様に、WD2-2は、クラスタ4-2に含まれるAP1-5、1-7及び1-10と無線で通信することで、AP1-5、1-7及び1-10を介してCPU3と通信する。
【0015】
なお、以下の説明において、WD2のいずれかのクラスタに含まれるAP1をクラスタAPと表記し、いずれのクラスタにも含まれないAP1を非クラスタAPと表記する。図1において、AP1-1、AP1-2、AP1-3、AP1-5、AP1-7及びAP1-10は、クラスタAPである。一方、図1において、AP1-4、AP1-6、AP1-8及びAP1-9は、非クラスタAPである。
【0016】
CPU3は、各WD2のクラスタを動的に制御する。したがって、図1において、AP1-2は、クラスタAPであるが、WD2-1の移動により、AP1-2は、クラスタ4-1から外され、非クラスタAPになり得る。逆に、図1において、AP1-9は、非クラスタAPであるが、WD2-2の移動によりクラスタ4-2に含められてクラスタAPになり得る。
【0017】
本実施形態において、AP1は、4つの動作モードのいずれかで動作する様に構成される。第1動作モードは、無線信号の送受信の両方を行うノーマルモードである。第2動作モードは、無線信号の送信を行うが、無線信号の受信を行わない下り専用モードである。下り専用モードは、AP1の存在をWD2に通知するためのモードであり、下り専用モードに設定されたAP1は、同期信号やシステム情報等のブロードキャストを行う。下り専用モードで動作しているAP1の無線信号の受信回路は、ノーマルモードで動作しているAP1の無線信号の受信回路より消費電力が少ない状態に設定される。
【0018】
第3動作モードは、WD2からの信号を受信してCPU3に送信するが、無線信号の送信を行わない上り専用モードである。上り専用モードで動作しているAP1の無線信号の送信回路は、ノーマルモードで動作しているAP1の無線信号の送信回路より消費電力が少ない状態に設定される。第4動作モードは、無線信号の送受信を行わないスリープモードである。スリープモードで動作しているAP1の無線信号の送信回路及び受信回路は、共に、ノーマルモードで動作しているAP1より消費電力が少ない状態に設定される。
【0019】
AP1の消費電力は、ノーマルモードが最も大きく、下り専用モードが2番目に大きく、上り専用モードが3番目に大きく、スリープモードが最も小さくなる。
【0020】
本実施形態において、CPU3は、AP1の動作モードを決定する。まず、CPU3は、クラスタAPの動作モードについては、ノーマルモードに決定する。一方、CPU3は、非クラスタAPの動作モードを図2に示す処理により決定する。以下、図2のフローチャートについて説明する。
【0021】
S10で、CPU3は、カウンタ値Cを0に初期化する。S11において、CPU3は、クラスタの変更に伴い当該クラスタから外されたことにより、非クラスタAPとなった1つ以上のAP1が存在するかを判定する。なお、フローチャートに示していないが、クラスタの変更により非クラスタAPからクラスタAPとなった1つ以上のAP1がある場合、CPU3は、この1つ以上のAP1に制御信号を送信してこのAP1をノーマルモードに設定する。クラスタAPから非クラスタAPとなった1つ以上のAP1が存在する場合、CPU3は、S13でカウンタ値Cが正の所定値であるかを判定する。カウンタ値Cが正の所定値ではない場合、CPU3は、S16で、後述する第1処理を行い、S17で、カウンタ値を1だけ増加させる。その後、CPU3は、S11から処理を繰り返す。
【0022】
一方、S11において、クラスタAPから非クラスタAPとなった1つ以上のAP1が存在しない場合、CPU3は、S12で処理タイミングが到来したかを判定する。処理タイミングは、周期的なタイミングである。なお、処理タイミングの周期は、クラスタが変更される平均的な期間よりも長く設定する。処理タイミングが到来していない場合、CPU3は、S11から処理を繰り返す。一方、処理タイミングが到来している場合、CPU3は、S14で、後述する第2処理を行い、S15でカウンタ値Cを0に初期化して、S11から処理を繰り返す。なお、S13において、カウンタ値Cが正の所定値である場合も、CPU3は、S14で第2処理を行う。
【0023】
図2のフローチャートを要約すると、CPU3は、クラスタの変更により、当該クラスタのクラスタAPから非クラスタAPとなった1つ以上のAP1が生じると、基本的には、第1処理を行う。なお、複数のクラスタの変更が略同時に行われ、それぞれのクラスタについて、クラスタAPから非クラスタAPとなったAP1がある場合、CPU3は、クラスタ毎に個別に第1処理を行う。また、CPU3は、所定周期で第2処理を行う。ただし、第2処理を行ってから次の第2処理を行うタイミングまでの間に、第1処理を所定回数だけ行うと、CPU3は、第2処理を行う。
【0024】
まず、第1処理について説明する。CPU3は、クラスタの変更により非クラスタAPとなった1つ以上のAP1のいずれかとの距離が閾値以内の非クラスタAPを判定する。以下では、クラスタAPから非クラスタAPとなった1つ以上のAP1と、当該1つ以上のAP1のいずれかとの距離が閾値以内の非クラスタAPと、を処理対象APと表記する。CPU3は、処理対象APの数が3つ以上の場合、処理対象APの任意のペア間の距離を判定し、他の処理対象APとの距離の分散が最も小さい処理対象APの動作モードを下り専用モードに決定する。これは、処理対象APが配置された領域の中心に近い処理対象APを下り専用モードに設定することに対応する。なお、処理対象APの数が1つの場合、CPU3は、この処理対象APの動作モードを下り専用モードに決定する。また、処理対象APの数が2つの場合、CPU3は、1つの処理対象APを任意の方法で決定し、決定した処理対象APの動作モードを下り専用モードに決定する。
【0025】
CPU3は、処理対象APの数が2つ以上の場合、残りの処理対象APについては、その半分程度を上り専用モードに設定し、残りの半分程度をスリープモードに設定する。例えば、CPU3は、上り専用モードに設定する処理対象APの数を、スリープモードに設定する処理対象APの数と同じか1だけ多い様に決定する。なお、上り専用モードに設定する処理対象APが地理的に集中しない様に、CPU3は、残りの処理対象APの動作モードを決定する。処理対象APの動作モードを決定すると、CPU3は、処理対象APに制御信号を送信して、処理対象APを決定した動作モードで動作する様に制御する。
【0026】
続いて、第2処理について説明する。第2処理では、少なくともCPU3が管理するAP1の内の総ての非クラスタAPを処理対象とする。まず、CPU3は、例えば、K-means法により、総ての非クラスタAPをその配置位置に基づきグループ化する。なお、グループ数は、クラスタ数の関数とし、下限値から上限値までの範囲内においてクラスタ数が多い程、小さくする。CPU3は、各グループについて、グループに含まれる非クラスタAPを処理対象APとして第1処理を行うことで、各グループに含まれる非クラスタAPの動作モードを決定する。
【0027】
セルフリー通信システムの消費電力は、例えば、非クラスタAPの総てをスリープモードにすることで最小となる。しかしながら、アイドルモードのWD2の周囲にスリープモードのAP1しかない場合、アイドルモードのWD2は、AP1の存在を認識することができない。したがって、下り専用モードで動作させるAP1を地理的に分散させて設ける必要がある。また、アイドルモードのWD2が、セルフリー通信システムにアクセスする際に送信するランダムアクセス信号等を受信してCPU3に送信する、上り専用モードのAP1も地理的に分散させて設ける必要がある。
【0028】
本実施形態では、非クラスタAPが生じる度に、当該非クラスタAPを基準とする所定領域内の非クラスタAPの動作モードを決定する。このとき、所定領域の中心付近の非クラスタAPを下り専用モードで動作させることにより、WD2がAP1からの信号を受信できない様な状態になることを抑える。さらに、所定領域内の残りの非クラスタAPの半分程度を上り専用モードで動作させることで、WD2が送信する無線信号をCPU3に伝えることができないといった状態になることを抑えることができる。
【0029】
この様に、アイドルモードのWD2のために必要な範囲で下り専用モードで動作させる非クラスタAPと、上り専用モードで動作させる非クラスタAPを設け、残りをスリープモードで動作させることで、セルフリー通信システムの消費電力を抑えることができる。
【0030】
なお、第1処理は、非クラスタAPとなったAP1の配置位置を基準とする所定領域内の非クラスタAPの動作モードを決定する局所的な処理である。このため、第1処理のみを繰り返すと、例えば、非クラスタAPの動作モードの地理的な偏りが生じ得る。このため、本実施形態では、第1処理を所定回数行った場合や、所定期間が経過する度に第2処理を行う。
【0031】
第2処理では、少なくともCPU3が管理する総ての非クラスタAPの配置位置に基づき非クラスタAPをグループ化し、それぞれのグループにおいて下り専用モードで動作させる1つの非クラスタAPを決定する。そして、グループの残りのAP1を上り専用モード又はスリープモードで動作させる。この構成により、下り専用モードや上り専用モードで動作させる非クラスタAPが地理的に偏るといったことを抑えることができる。
【0032】
図3は、本実施形態による処理装置5の構成図である。処理装置5は、例えば、CPU3に実装され得る。処理装置5は、1つ以上のプロセッサ50と、コンピュータプログラムを格納する1つ以上のメモリデバイス51と、を有する。1つ以上のメモリデバイス51は、非一時的なコンピュータ可読記憶媒体である。コンピュータプログラムは、1つ以上のプロセッサ50で実行されると、1つ以上のプロセッサ50に図2で述べたCPU3における処理を実行させる命令を含む。
【0033】
また、処理装置5は、データベース部52を備えている。データベース部52は、セルフリー通信システムの各AP1の配置位置を示すデータベースである。なお、処理装置5がデータベース部52を有する構成に本開示は限定されない。例えば、データベース部52は、処理装置5がネットワークを介してアクセス可能な外部装置に設けられ得る。
【0034】
図4は、1つ以上のプロセッサ50が、1つ以上のメモリデバイス51に格納されたコンピュータプログラムを実行することで処理装置5に実現される機能ブロックを示している。図4に示す様に、1つ以上のプロセッサ50は、動作モード決定部55及び動作モード制御部56として機能する。
【0035】
動作モード決定部55は、図2に示す処理を実行して各AP1の動作モードを決定する。動作モード制御部56は、動作モード決定部55が決定した動作モードに従い各AP1が動作する様に、各AP1を制御する。
【0036】
なお、上記実施形態では、第1処理において、CPU3は、クラスタAPから非クラスタAPとなった1つ以上のAP1と、当該1つ以上のAP1のいずれかとの距離が閾値以内の非クラスタAPと、を処理対象としていた。しかしながら、本開示は、処理対象APを、クラスタAPから非クラスタAPとなった1つ以上のAP1との距離に基づき判定する形態に限定されない。例えば、クラスタAPから非クラスタAPとなった1つ以上のAP1と、当該1つ以上のAP1のいずれかとのパス損失の値が所定値以内の非クラスタAPと、を処理対象とすることができる。
【0037】
さらに、本開示によると1つ以上のプロセッサで実行可能なプログラムが提供される。当該プログラムは、装置の1つ以上のプロセッサで実行されると、当該装置を、例えば、処理装置5として機能させる命令を含む。さらに、本開示によると、上記プログラムを格納した、非一時的なコンピュータ可読記憶媒体が提供される。さらに、本開示によると、図2で説明した内容に従い、処理装置5で実行される方法が提供される。さらに、本開示によると、当該方法を1つ以上のプロセッサを有する装置に実行させるためのプログラムや、当該プログラムを格納した、非一時的なコンピュータ可読記憶媒体が提供される。
【0038】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【0039】
以上の構成により、セルフリー通信システムの消費電力を抑えることができる。したがって、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「レジリエントなインフラを整備し、持続可能な産業化を推進するとともに、イノベーションの拡大を図る」に貢献することが可能となる。
【符号の説明】
【0040】
55:動作モード決定部、56:動作モード制御部
図1
図2
図3
図4