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特開2024-137792二酸化炭素回収方法、二酸化炭素回収装置、および、二酸化炭素吸収剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137792
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】二酸化炭素回収方法、二酸化炭素回収装置、および、二酸化炭素吸収剤
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/14 20060101AFI20240927BHJP
   B01D 53/62 20060101ALI20240927BHJP
   B01J 20/22 20060101ALI20240927BHJP
   B01D 53/82 20060101ALI20240927BHJP
   B01D 53/96 20060101ALI20240927BHJP
   B01J 20/34 20060101ALI20240927BHJP
   B01D 53/26 20060101ALI20240927BHJP
   C01B 32/50 20170101ALI20240927BHJP
【FI】
B01D53/14 100
B01D53/62 ZAB
B01J20/22 A
B01D53/82
B01D53/96
B01J20/34 E
B01D53/26 230
C01B32/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024037705
(22)【出願日】2024-03-12
(31)【優先権主張番号】P 2023046438
(32)【優先日】2023-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】507307374
【氏名又は名称】学校法人神戸学院
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】道幸 立樹
(72)【発明者】
【氏名】影山 洸
(72)【発明者】
【氏名】今成 岳人
(72)【発明者】
【氏名】村上 遼
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 冬彦
(72)【発明者】
【氏名】末房 千果
【テーマコード(参考)】
4D002
4D020
4D052
4G066
4G146
【Fターム(参考)】
4D002AA09
4D002BA03
4D002BA04
4D002CA07
4D002DA06
4D002DA14
4D002DA31
4D002DA45
4D002EA07
4D002FA01
4D002GA01
4D002GB20
4D002HA03
4D020AA03
4D020BA16
4D020BA19
4D020BB01
4D020BC10
4D020CA05
4D020CC15
4D020CC30
4D020DA03
4D020DB20
4D052AA00
4D052CE00
4D052HA03
4D052HA08
4G066AB05B
4G066AB10B
4G066AB12B
4G066AB13B
4G066CA04
4G066CA35
4G066CA43
4G066DA02
4G066DA03
4G066DA05
4G066GA18
4G066GA31
4G146JA02
4G146JC10
4G146JC17
4G146JC28
(57)【要約】
【課題】二酸化炭素の回収に要するエネルギーを削減する。
【解決手段】二酸化炭素回収方法は、二酸化炭素を吸収した二酸化炭素吸収剤を、可視光を含む光が照射される環境下に曝して、二酸化炭素吸収剤から二酸化炭素を放出させる放出工程S120を含み、二酸化炭素吸収剤は、アミノ基含有インディゴ誘導体を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素を吸収した二酸化炭素吸収剤を、可視光を含む光が照射される環境下に曝して、前記二酸化炭素吸収剤から前記二酸化炭素を放出させる放出工程を含み、
前記二酸化炭素吸収剤は、アミノ基含有インディゴ誘導体を含む、二酸化炭素回収方法。
【請求項2】
前記放出工程よりも前に、前記二酸化炭素吸収剤に、少なくとも前記二酸化炭素を含む被処理ガスを接触させて、前記二酸化炭素吸収剤に前記二酸化炭素を吸収させる吸収工程を含む、請求項1に記載の二酸化炭素回収方法。
【請求項3】
前記アミノ基含有インディゴ誘導体は、
式(1)で表される化合物、式(2)で表される化合物、式(3)で表される化合物、および、式(4)で表される化合物からなる群から選択された1つまたは複数を含む、請求項1または2に記載の二酸化炭素回収方法。
【化12】
/
前記式(1)、前記式(2)、前記式(3)、および、前記式(4)において、R1は、アミノメチル基を有するアリール基、および、アミノメチル基を有するアラルキル基のうちのいずれか一方または両方であり、
前記式(3)、および、前記式(4)において、R2は、電子供与基、および、電子吸引基のうちのいずれか一方または両方である。
【請求項4】
前記電子供与基は、メトキシ基である、請求項3に記載の二酸化炭素回収方法。
【請求項5】
前記電子吸引基は、ニトロ基である、請求項3に記載の二酸化炭素回収方法。
【請求項6】
前記アミノ基含有インディゴ誘導体は、
式(1)で表される化合物、式(2)で表される化合物、式(3)で表される化合物、および、式(4)で表される化合物からなる群から選択された複数を含む、請求項1または2に記載の二酸化炭素回収方法。
【化13】
/
前記式(1)、前記式(2)、前記式(3)、および、前記式(4)において、R1は、アミノメチル基を有するアリール基、および、アミノメチル基を有するアラルキル基のうち一方または両方であり、
前記式(3)、および、前記式(4)において、R2は、電子供与基、および、電子吸引基のうち一方または両方である。
【請求項7】
前記電子供与基は、メトキシ基である、請求項6に記載の二酸化炭素回収方法。
【請求項8】
前記電子吸引基は、ニトロ基である、請求項6に記載の二酸化炭素回収方法。
【請求項9】
前記二酸化炭素吸収剤は、乾燥剤をさらに含む、請求項1または2に記載の二酸化炭素回収方法。
【請求項10】
前記可視光を含む光は、400nm以上、750nm以下の波長領域の可視光を含む、請求項1または2に記載の二酸化炭素回収方法。
【請求項11】
前記可視光を含む光は、太陽光である、請求項1または2に記載の二酸化炭素回収方法。
【請求項12】
二酸化炭素を吸収した二酸化炭素吸収剤を、可視光を含む光が照射される環境下に曝して、前記二酸化炭素吸収剤から前記二酸化炭素を放出させる放出処理を実行する放出処理部を備え、
前記二酸化炭素吸収剤は、アミノ基含有インディゴ誘導体を含む、二酸化炭素回収装置。
【請求項13】
前記二酸化炭素吸収剤に、少なくとも前記二酸化炭素を含む被処理ガスを接触させて、前記二酸化炭素吸収剤に前記二酸化炭素を吸収させる吸収処理を実行する吸収処理部をさらに備える、請求項12に記載の二酸化炭素回収装置。
【請求項14】
前記アミノ基含有インディゴ誘導体は、
式(1)で表される化合物、式(2)で表される化合物、式(3)で表される化合物、および、式(4)で表される化合物からなる群から選択された1つまたは複数を含む、請求項12または13に記載の二酸化炭素回収装置。
【化14】
/
前記式(1)、前記式(2)、前記式(3)、および、前記式(4)において、R1は、アミノメチル基を有するアリール基、および、アミノメチル基を有するアラルキル基のうちのいずれか一方または両方であり、
前記式(3)、および、前記式(4)において、R2は、電子供与基、および、電子吸引基のうちのいずれか一方または両方である。
【請求項15】
前記電子供与基は、メトキシ基である、請求項14に記載の二酸化炭素回収装置。
【請求項16】
前記電子吸引基は、ニトロ基である、請求項14に記載の二酸化炭素回収装置。
【請求項17】
前記アミノ基含有インディゴ誘導体は、
式(1)で表される化合物、式(2)で表される化合物、式(3)で表される化合物、および、式(4)で表される化合物からなる群から選択された複数を含む、請求項12または13に記載の二酸化炭素回収装置。
【化15】
/
前記式(1)、前記式(2)、前記式(3)、および、前記式(4)において、R1は、アミノメチル基を有するアリール基、および、アミノメチル基を有するアラルキル基のうち一方または両方であり、
前記式(3)、および、前記式(4)において、R2は、電子供与基、および、電子吸引基のうち一方または両方である。
【請求項18】
前記電子供与基は、メトキシ基である、請求項17に記載の二酸化炭素回収装置。
【請求項19】
前記電子吸引基は、ニトロ基である、請求項17に記載の二酸化炭素回収装置。
【請求項20】
前記二酸化炭素吸収剤は、乾燥剤をさらに含む、請求項12または13に記載の二酸化炭素回収装置。
【請求項21】
前記可視光を含む光は、400nm以上、750nm以下の波長領域の可視光を含む、請求項12または13に記載の二酸化炭素回収装置。
【請求項22】
前記可視光を含む光は、太陽光である、請求項12または13に記載の二酸化炭素回収装置。
【請求項23】
アミノ基含有インディゴ誘導体を含む、二酸化炭素吸収剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素回収方法、二酸化炭素回収装置、および、二酸化炭素吸収剤に関する。
【背景技術】
【0002】
脱炭素社会の実現に向けて、排気ガスや大気中の二酸化炭素(CO)を効率的に回収する技術が求められている。二酸化炭素を含むガスから二酸化炭素を回収する技術として、従来、温度スイング法、圧力スイング法、電気スイング法が知られている。
【0003】
温度スイング法は、化学吸収剤に二酸化炭素を吸収させた後、二酸化炭素が吸収された化学吸収剤を加熱することで、二酸化炭素を放出させる技術である。圧力スイング法は、化学吸収剤に二酸化炭素を吸収させた後、二酸化炭素が吸収された化学吸収剤の圧力を変化させることで、二酸化炭素を放出させる技術である。電気スイング法は、充電する際に二酸化炭素を吸収し、放電する際に二酸化炭素を放出するセルを用いた技術である(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2021/0387139号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記の温度スイング法、圧力スイング法、および、電気スイング法は、いずれも二酸化炭素の放出に莫大なエネルギーが消費されてしまうという問題がある。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑み、二酸化炭素の回収に要するエネルギーを削減することが可能な二酸化炭素回収方法、二酸化炭素回収装置、および、二酸化炭素吸収剤を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の二酸化炭素回収方法は、二酸化炭素を吸収した二酸化炭素吸収剤を、可視光を含む光が照射される環境下に曝して、二酸化炭素吸収剤から二酸化炭素を放出させる放出工程を含み、二酸化炭素吸収剤は、アミノ基含有インディゴ誘導体を含む。
【0008】
また、放出工程よりも前に、二酸化炭素吸収剤に、少なくとも二酸化炭素を含む被処理ガスを接触させて、二酸化炭素吸収剤に二酸化炭素を吸収させる吸収工程を含んでもよい。
【0009】
また、アミノ基含有インディゴ誘導体は、式(1)で表される化合物、式(2)で表される化合物、式(3)で表される化合物、および、式(4)で表される化合物からなる群から選択された1つまたは複数を含んでもよい。
【化1】
/
式(1)、式(2)、式(3)、および、式(4)において、R1は、アミノメチル基を有するアリール基、および、アミノメチル基を有するアラルキル基のうちのいずれか一方または両方であり、式(3)、および、式(4)において、R2は、電子供与基、および、電子吸引基のうちのいずれか一方または両方であってもよい。
【0010】
また、電子供与基は、メトキシ基であってもよい。
【0011】
また、電子吸引基は、ニトロ基であってもよい。
【0012】
また、アミノ基含有インディゴ誘導体は、式(1)で表される化合物、式(2)で表される化合物、式(3)で表される化合物、および、式(4)で表される化合物からなる群から選択された複数を含んでもよい。
【化2】
/
式(1)、式(2)、式(3)、および、式(4)において、R1は、アミノメチル基を有するアリール基、および、アミノメチル基を有するアラルキル基のうち一方または両方であり、式(3)、および、式(4)において、R2は、電子供与基、および、電子吸引基のうち一方または両方であってもよい。
【0013】
また、電子供与基は、メトキシ基であってもよい。
【0014】
また、電子吸引基は、ニトロ基であってもよい。
【0015】
また、二酸化炭素吸収剤は、乾燥剤をさらに含んでもよい。
【0016】
また、可視光を含む光は、400nm以上、750nm以下の波長領域の可視光を含んでもよい。
【0017】
また、可視光を含む光は、太陽光であってもよい。
【0018】
上記課題を解決するために、本発明の二酸化炭素回収装置は、二酸化炭素を吸収した二酸化炭素吸収剤を、可視光を含む光が照射される環境下に曝して、二酸化炭素吸収剤から二酸化炭素を放出させる放出処理を実行する放出処理部を備え、二酸化炭素吸収剤は、アミノ基含有インディゴ誘導体を含む。
【0019】
また、二酸化炭素吸収剤に、少なくとも二酸化炭素を含む被処理ガスを接触させて、二酸化炭素吸収剤に二酸化炭素を吸収させる吸収処理を実行する吸収処理部をさらに備えてもよい。
【0020】
また、アミノ基含有インディゴ誘導体は、式(1)で表される化合物、式(2)で表される化合物、式(3)で表される化合物、および、式(4)で表される化合物からなる群から選択された1つまたは複数を含んでもよい。
【化3】
/
式(1)、式(2)、式(3)、および、式(4)において、R1は、アミノメチル基を有するアリール基、および、アミノメチル基を有するアラルキル基のうちのいずれか一方または両方であり、式(3)、および、式(4)において、R2は、電子供与基、および、電子吸引基のうちのいずれか一方または両方であってもよい。
【0021】
また、電子供与基は、メトキシ基であってもよい。
【0022】
また、電子吸引基は、ニトロ基であってもよい。
【0023】
また、アミノ基含有インディゴ誘導体は、式(1)で表される化合物、式(2)で表される化合物、式(3)で表される化合物、および、式(4)で表される化合物からなる群から選択された複数を含んでもよい。
【化4】
/
式(1)、式(2)、式(3)、および、式(4)において、R1は、アミノメチル基を有するアリール基、および、アミノメチル基を有するアラルキル基のうち一方または両方であり、式(3)、および、式(4)において、R2は、電子供与基、および、電子吸引基のうち一方または両方であってもよい。
【0024】
また、電子供与基は、メトキシ基であってもよい。
【0025】
また、電子吸引基は、ニトロ基であってもよい。
【0026】
また、二酸化炭素吸収剤は、乾燥剤をさらに含んでもよい。
【0027】
また、可視光を含む光は、400nm以上、750nm以下の波長領域の可視光を含んでもよい。
【0028】
また、可視光を含む光は、太陽光であってもよい。
【0029】
上記課題を解決するために、本発明の二酸化炭素吸収剤は、アミノ基含有インディゴ誘導体を含む。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、二酸化炭素の回収に要するエネルギーを削減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の一実施形態に係る二酸化炭素回収装置を説明する図である。
図2】本発明の一実施形態に係る二酸化炭素回収方法の処理の流れを示すフローチャートである。
図3】本発明の一実施形態に係る吸収工程を説明する工程図である。
図4】本発明の一実施形態に係る放出工程を説明する工程図である。
図5】アミノ基含有アリールボロン酸の合成を説明する図である。
図6】ボロン酸5とインディゴとのチャン・ラム・エヴァンス カップリング反応を説明する図である。
図7】合成した、式(5)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体の写真である。
図8】測定結果を示す図である。
図9】二酸化炭素放出実験で用いた装置の模式図を説明する図である。
図10】二酸化炭素放出実験で用いた装置の写真を示す図である。
図11】二酸化炭素放出実験の測定結果を示すグラフである。
図12】アミノ基含有アリールボロン酸エステル4の合成を説明する図である。
図13】ボリル化体4とインディゴとのチャン・ラム・エヴァンス カップリング反応を説明する図である。
図14】インディゴ誘導体の合成を説明する図である。
図15】1-(アジドメチル)-X-(クロロメチル)ベンゼンの合成を説明する図である。
図16】式(11)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体の合成を説明する図である。
図17】式(15)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体の合成、および、式(16)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体の合成を説明する図である。
図18】式(17)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体の合成を説明する図である。
図19】式(8)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体および式(14)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体測定結果を示す図である。
図20】式(11)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体および式(15)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体測定結果を示す図である。
図21】式(16)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体および式(17)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体測定結果を示す図である。
図22】二酸化炭素放出実験の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0033】
[二酸化炭素回収装置100]
図1は、本発明の一実施形態に係る二酸化炭素回収装置100を説明する図である。図1に示すように、二酸化炭素回収装置100は、収容容器110と、吸収処理部120と、放出処理部130と、排気機構140とを含む。
【0034】
収容容器110は、容器本体112と、透過板114とを含む。
【0035】
容器本体112は、二酸化炭素吸収剤200を収容する。二酸化炭素吸収剤200は、アミノ基含有インディゴ誘導体を含む。本願発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、二酸化炭素ガスを吸収、固定化するとともに、固体化後に、可視光を含む光に曝されると、二酸化炭素ガスを放出する、新規のアミノ基含有インディゴ誘導体を開発した。以下、二酸化炭素ガスを「二酸化炭素」という場合がある。可視光を含む光は、例えば、400nm以上、750nm以下の波長領域の光を含む。可視光を含む光は、太陽光SLであってもよい。アミノ基含有インディゴ誘導体の詳細は、後述する。
【0036】
二酸化炭素吸収剤200は、アミノ基含有インディゴ誘導体に加えて、乾燥剤をさらに含んでいてもよい。乾燥剤は、水分および溶媒のうちのいずれか一方または両方を除去する。乾燥剤は、例えば、硫酸マグネシウム、モレキュラーシーブス等である。
【0037】
容器本体112は、遮光性を有する。遮光性とは、例えば、可視光透過度が20%以下である。
【0038】
容器本体112の側面には、入口112a、および、出口112bが形成される。入口112aには、後述する吸収処理部120の供給管124が接続される。出口112bには、後述する排気機構140の排気管142、146が接続される。
【0039】
また、容器本体112の上部は、開放されている。容器本体112の上部は、透過板114によって封止される。つまり、容器本体112の上面は、透過板114で構成される。
【0040】
透過板114は、可視光を含む光を透過可能な材料で構成される。可視光を含む光を透過可能な材料は、例えば、可視光透過度が70%以上の材料である。可視光を透過可能な材料は、例えば、ガラス、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリプロピレン(PP)、または、ポリ塩化ビニルである。
【0041】
本実施形態において、収容容器110は、例えば、太陽光SLの下に曝される。収容容器110内の温度は、例えば、常温である。常温は、例えば、25℃である。収容容器110内の圧力は、例えば、常圧である。常圧は、例えば、大気圧(101.325kPa)である。
【0042】
吸収処理部120は、二酸化炭素吸収剤200に被処理ガスを接触させて、二酸化炭素吸収剤200に二酸化炭素を吸収させる吸収処理を実行する。本実施形態において、吸収処理部120は、例えば、被処理ガスを収容容器110に供給する。吸収処理部120は、例えば、ブロワ122と、供給管124と、供給バルブ126とを含む。
【0043】
ブロワ122は、被処理ガスの供給源(図示せず。)から収容容器110へ被処理ガスを送出する。ブロワ122の吸入側は、被処理ガスの供給源に接続される。ブロワ122の吐出側には供給管124が接続される。供給管124は、ブロワ122の吐出側と、収容容器110の入口112aとを接続する。供給バルブ126は、供給管124に設けられる。供給バルブ126は、供給管124に形成される流路を開閉する。
【0044】
被処理ガスは、少なくとも二酸化炭素を含むガスである。被処理ガスは、例えば、大気、排気ガス、改質ガス、または、バイオガスであってよい。排気ガスは、例えば、化石燃料等の炭化水素を燃焼させることで生じる燃焼排ガスである。改質ガスは、例えば、化石燃料等の炭化水素を水蒸気改質することで得られるガスである。バイオガスは、生物の排泄物、有機肥料、生分解性物質、汚泥、汚水、有機廃棄物、植物等を発酵したり、嫌気性消化したりすることで得られるガスである。
【0045】
放出処理部130は、二酸化炭素を吸収した二酸化炭素吸収剤200を、可視光を含む光が照射される環境下に曝して、二酸化炭素を吸収した二酸化炭素吸収剤200から二酸化炭素を放出させる放出処理を実行する。本実施形態において、放出処理部130は、例えば、ルーバー132と、アクチュエータ134とを含む。
【0046】
ルーバー132は、透過板114上に設けられる。ルーバー132は、遮光性を有する。アクチュエータ134は、ルーバー132を開閉する。ルーバー132が開かれている場合、太陽光SLは、透過板114および収容容器110を透過し、二酸化炭素吸収剤200に照射される。ルーバー132が閉じられている場合、太陽光SLは、ルーバー132に照射され、二酸化炭素吸収剤200には照射されない。
【0047】
排気機構140は、収容容器110からガスを排気する。排気機構140は、排気管142と、第1排気バルブ144と、排気管146と、第2排気バルブ148と、二酸化炭素貯留部150とを含む。
【0048】
排気管142の一端は、収容容器110の出口112bに接続される。排気管142の他端は、大気開放される。第1排気バルブ144は、排気管142に設けられる。第1排気バルブ144は、排気管142に形成される流路を開閉する。
【0049】
排気管146は、収容容器110の出口112bと、二酸化炭素貯留部150とを接続する。第2排気バルブ148は、排気管146に設けられる。第2排気バルブ148は、排気管146に形成される流路を開閉する。
【0050】
二酸化炭素貯留部150は、収容容器110から排気された二酸化炭素を貯留する。
【0051】
[二酸化炭素回収方法]
続いて、上記二酸化炭素回収装置100を用いて、被処理ガスから二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収方法について説明する。
【0052】
図2は、本発明の一実施形態に係る二酸化炭素回収方法の処理の流れを示すフローチャートである。図2に示すように、本実施形態に係る二酸化炭素回収方法は、吸収工程S110と、放出工程S120とを含む。以下、各工程について説明する。
【0053】
[吸収工程S110]
吸収工程S110は、二酸化炭素吸収剤200に、被処理ガスを接触させて、二酸化炭素吸収剤200に二酸化炭素を吸収させる工程である。図3は、本発明の一実施形態に係る吸収工程S110を説明する工程図である。図3において、実線の矢印は、ガスの流れを示す。
【0054】
図3に示すように、吸収工程S110では、ルーバー132は閉じられる。そして、供給バルブ126が開かれ、ブロワ122が動作される。また、第1排気バルブ144は開かれ、第2排気バルブ148は閉じられる。
【0055】
これにより、被処理ガスが収容容器110内に供給される。そうすると、被処理ガスが二酸化炭素吸収剤200に接触し、被処理ガスに含まれる二酸化炭素が、二酸化炭素吸収剤200に吸収される。こうして、二酸化炭素吸収剤200に二酸化炭素が吸収されることによって、二酸化炭素が取り除かれた被処理ガス(処理後ガス)が生成される。処理後ガスは、出口112b、排気管142を通じで、収容容器110の外部に排気される。
【0056】
[放出工程S120]
放出工程S120は、吸収工程S110の後に行われる。放出工程S120は、吸収工程S110において生成された、二酸化炭素を吸収した二酸化炭素吸収剤200を、可視光を含む光が照射される環境下に曝して、二酸化炭素を吸収した二酸化炭素吸収剤200から二酸化炭素を放出させる工程である。図4は、本発明の一実施形態に係る放出工程S120を説明する工程図である。図4において、実線の矢印は、ガスの流れを示す。図4において、破線の矢印は、太陽光SLを示す。
【0057】
図4に示すように、放出工程S120では、ルーバー132は開かれる。そして、ブロワ122の動作が停止され、供給バルブ126が閉じられる。また、第1排気バルブ144は閉じられ、第2排気バルブ148は開かれる。
【0058】
そうすると、太陽光SLが、透過板114を通過して、二酸化炭素吸収剤200に照射される。これにより、二酸化炭素吸収剤200から二酸化炭素が放出(脱着)される。放出された二酸化炭素は、出口112b、排気管146を通じで、二酸化炭素貯留部150に供給される。
【0059】
[アミノ基含有インディゴ誘導体]
続いて、本実施形態に係るアミノ基含有インディゴ誘導体について説明する。本実施形態に係るアミノ基含有インディゴ誘導体は、式(1)で表される化合物、式(2)で表される化合物、式(3)で表される化合物、および、式(4)で表される化合物からなる群から選択された1つまたは複数を含む。なお、本実施形態に係るアミノ基含有インディゴ誘導体は、式(1)で表される化合物、式(2)で表される化合物、式(3)で表される化合物、および、式(4)で表される化合物以外に、製造原料に由来する不純物や製造時に発生する副産物など、不可避的不純物を含む場合がある。
【0060】
【化5】
/
式(1)、式(2)、式(3)、および、式(4)において、R1は、アミノメチル基を有するアリール基、および、アミノメチル基を有するアラルキル基のうちのいずれか一方または両方である。また、式(3)、および、式(4)において、R2は、電子供与基、および、電子吸引基のうちのいずれか一方または両方である。
【0061】
電子供与基は、例えば、メトキシ基、ジメチルアミノ基、および、アルキル基からなる群から選択された1つまたは複数である。電子供与基は、メトキシ基であることが好ましい。
【0062】
電子吸引基は、例えば、ニトロ基、および、カルボニル基のうちの一方または両方である。電子吸引基は、ニトロ基であることが好ましい。
【0063】
上記の式(1)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体、上記の式(2)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体、上記の式(3)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体、および、上記の式(4)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体らなる群から選択された1つまたは複数のアミノ基含有インディゴ誘導体であって、R1がアミノメチル基を有するアリール基であるアミノ基含有インディゴ誘導体を、以下、「アリール基が導入されたアミノ基含有インディゴ誘導体」という場合がある。また、上記の式(1)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体、上記の式(2)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体、上記の式(3)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体、および、上記の式(4)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体らなる群から選択された1つまたは複数のアミノ基含有インディゴ誘導体であって、R1がアミノメチル基を有するアラルキル基であるアミノ基含有インディゴ誘導体を、以下、「アラルキル基が導入されたアミノ基含有インディゴ誘導体」という場合がある。
【0064】
上記の式(3)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体、および、上記の式(4)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体のうちのいずれか一方または両方のアミノ基含有インディゴ誘導体であって、R2が電子供与基であるアミノ基含有インディゴ誘導体を、以下、「電子供与基が導入されたアミノ基含有インディゴ誘導体」という場合がある。また、上記の式(3)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体、および、上記の式(4)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体のうちのいずれか一方または両方のアミノ基含有インディゴ誘導体であって、R2が電子吸引基であるアミノ基含有インディゴ誘導体を、以下、「電子吸引基が導入されたアミノ基含有インディゴ誘導体」という場合がある。
【0065】
式(1)で表される化合物、および、式(2)で表される化合物は、例えば、下記式(5)~式(13)で表される化合物である。
【0066】
【化6】
/
【0067】
【化7】
/
【0068】
【化8】
/
【0069】
式(3)で表される化合物、および、式(4)で表される化合物は、例えば、下記式(14)~式(17)で表される化合物である。
【化9】
/
【化10】
/
【0070】
アミノ基含有インディゴ誘導体は、二酸化炭素を吸収すると、アラルキルカルバミン酸含有インディゴ誘導体、アラルキルカルバミン酸塩含有インディゴ誘導体、アラルキルカルバミン酸重炭酸塩含有インディゴ誘導体、アラルキルカルバミン酸含有インディゴ誘導体の水和物、アラルキルカルバミン酸塩含有インディゴ誘導体の水和物、および、アラルキルカルバミン酸重炭酸塩含有インディゴ誘導体の水和物のうちのいずれか1または複数の化合物となる。
【0071】
例えば、式(5)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体は、二酸化炭素を吸収すると、下記式(18)で表されるアラルキルカルバミン酸含有インディゴ誘導体、下記式(19)で表されるアラルキルカルバミン酸塩含有インディゴ誘導体、下記式(20)で表されるアラルキルカルバミン酸重炭酸塩含有インディゴ誘導体、式(18)の水和物、式(19)の水和物、および、式(20)の水和物のうちのいずれか1または複数の化合物となる。
【0072】
【化11】
/
【0073】
以上説明したように、本実施形態に係る二酸化炭素回収装置100およびこれを用いた二酸化炭素回収方法は、アミノ基含有インディゴ誘導体を含む二酸化炭素吸収剤200を備える。したがって、本実施形態に係る二酸化炭素回収装置100および二酸化炭素回収方法は、二酸化炭素吸収剤200に被処理ガスを接触させるだけといった簡易な構成で、被処理ガスから二酸化炭素を取り除くことができる。
【0074】
また、本実施形態に係る二酸化炭素回収装置100および二酸化炭素回収方法は、二酸化炭素を吸収した二酸化炭素吸収剤200を、可視光を含む光が照射される環境下に曝すだけで、二酸化炭素吸収剤200から二酸化炭素を放出させることができる。したがって、本実施形態に係る二酸化炭素回収装置100および二酸化炭素回収方法は、従来の温度スイング法、圧力スイング法、および、電気スイング法と比較して、二酸化炭素の回収に要するエネルギーを削減することが可能となる。
【0075】
また、本実施形態に係る二酸化炭素吸収剤200は、常温、常圧下で、二酸化炭素を吸収されることができる。したがって、本実施形態に係る二酸化炭素回収装置100および二酸化炭素回収方法は、二酸化炭素の吸収に要するエネルギーをさらに削減することが可能となる。
【0076】
また、本実施形態に係る二酸化炭素吸収剤200は、常温、常圧下で、二酸化炭素を放出させることができる。したがって、本実施形態に係る二酸化炭素回収装置100および二酸化炭素回収方法は、二酸化炭素の回収に要するエネルギーをさらに削減することが可能となる。
【0077】
また、本実施形態に係る二酸化炭素吸収剤200は、上記の式(1)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体、および、上記の式(2)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体のうちの一方または両方を含むことにより、可視光を含む光が照射される環境下に曝されるだけで、吸収した二酸化炭素を75%以上放出することができる。
【0078】
また、本実施形態に係る二酸化炭素吸収剤200は、電子供与基が導入されたアミノ基含有インディゴ誘導体を含むことにより、可視光を含む光が照射される環境下に曝されるだけで、吸収した二酸化炭素を72%以上放出することができる。
【0079】
また、本実施形態に係る二酸化炭素吸収剤200は、電子吸引基が導入されたアミノ基含有インディゴ誘導体を含むことにより、可視光を含む光が照射される環境下に曝されるだけで、吸収した二酸化炭素を81%以上放出することができる。
【0080】
また、上記のように、本実施形態に係る放出処理部130は、400nm以上、750nm以下の波長領域の光が照射される環境下に、二酸化炭素を吸収した二酸化炭素吸収剤200を曝す。アミノ基含有インディゴ誘導体は、シス体からトランス体への光異性化反応、または、トランス体からシス体への光異性化反応によって二酸化炭素を脱着する。
【0081】
上記の式(1)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体、および、上記の式(2)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体のうちのいずれか一方または両方のアミノ基含有インディゴ誘導体が、シス体からトランス体へと異性化する際、420nm以上、480nm以下の波長領域の光が必要となる。電子供与基が導入されたアミノ基含有インディゴ誘導体が、シス体からトランス体へと異性化する際、450nm以上、550nm以下の波長領域の光が必要となる。電子吸引基が導入されたアミノ基含有インディゴ誘導体が、シス体からトランス体へと異性化する際、400nm以上、450nm以下の波長領域の光が必要となる。
【0082】
また、上記の式(1)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体、および、上記の式(2)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体のうちのいずれか一方または両方のアミノ基含有インディゴ誘導体が、トランス体からシス体へと異性化する際、480nm以上、650nm以下の波長領域の光が必要となる。電子供与基が導入されたアミノ基含有インディゴ誘導体が、トランス体からシス体へと異性化する際、550nm以上、700nm以下の波長領域の光が必要となる。電子吸引基が導入されたアミノ基含有インディゴ誘導体が、トランス体からシス体へと異性化する際、450nm以上、640nm以下の波長領域の光が必要となる。
【0083】
このため、放出処理部130が、400nm以上、750nm以下の波長領域の光が照射される環境下に、二酸化炭素を吸収した二酸化炭素吸収剤200を曝すことにより、二酸化炭素吸収剤200から二酸化炭素を効率よく脱着させることが可能となる。
【0084】
また、電子供与基が導入されたアミノ基含有インディゴ誘導体の吸収波長は、上記の式(1)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体、および、上記の式(2)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体の吸収波長よりも長い。つまり、上記の式(1)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体、または、上記の式(2)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体に電子供与基を導入することにより、吸収波長を長波長側にシフトさせることができる。
【0085】
したがって、二酸化炭素吸収剤200が、電子供与基が導入されたアミノ基含有インディゴ誘導体を含むことにより、二酸化炭素吸収剤200から二酸化炭素を脱着させるための光の波長領域を長波長側にシフトさせることができる。このため、二酸化炭素吸収剤200が、電子供与基が導入されたアミノ基含有インディゴ誘導体を含むことにより、上記の式(1)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体、または、上記の式(2)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体と比較して、二酸化炭素吸収剤200から二酸化炭素を脱着させるための光のエネルギーを低減させることが可能となる。
【0086】
また、電子吸引基が導入されたアミノ基含有インディゴ誘導体の吸収波長は、上記の式(1)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体、および、上記の式(2)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体の吸収波長よりも短い。つまり、上記の式(1)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体、または、上記の式(2)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体に電子吸引基を導入することにより、吸収波長を短波長側にシフトさせることができる。
【0087】
したがって、二酸化炭素吸収剤200が、電子吸引基が導入されたアミノ基含有インディゴ誘導体を含むことにより、二酸化炭素吸収剤200から二酸化炭素を脱着させるための光の波長領域を短波長側にシフトさせることができる。
【0088】
また、二酸化炭素吸収剤200が、上記の式(1)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体、上記の式(2)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体、電子供与基が導入されたアミノ基含有インディゴ誘導体、および、電子吸引基が導入されたアミノ基含有インディゴ誘導体からなる群から選択された複数を含むことにより、二酸化炭素吸収剤200から二酸化炭素を脱着させるための光の波長領域を広範囲に広げることができる。したがって、二酸化炭素吸収剤200は、効率よく二酸化炭素を脱着させることが可能となる。
【0089】
また、アラルキル基が導入されたアミノ基含有インディゴ誘導体を合成する際の工程数は、アリール基が導入されたアミノ基含有インディゴ誘導体を合成する際の工程数よりも少ない。このため、二酸化炭素吸収剤200が、アラルキル基が導入されたアミノ基含有インディゴ誘導体を含むことにより、アリール基が導入されたアミノ基含有インディゴ誘導体を含む場合と比較して、低コストで二酸化炭素吸収剤200を製造することができる。
【0090】
また、アラルキル基が導入されたアミノ基含有インディゴ誘導体は、遷移金属を用いずとも合成することができる。このため、二酸化炭素吸収剤200が、アラルキル基が導入されたアミノ基含有インディゴ誘導体を含むことにより、さらに低コストで二酸化炭素吸収剤200を製造することが可能となる。
【0091】
また、本実施形態に係る放出処理部130は、紫外線を含まない光が照射される環境下に、二酸化炭素を吸収した二酸化炭素吸収剤200を曝す。これにより、本実施形態に係る放出処理部130は、二酸化炭素吸収剤200からの二酸化炭素の脱着を低エネルギーで行うことができる。
【0092】
また、上記のように、本実施形態に係る放出処理部130は、太陽光が照射される環境下に、二酸化炭素を吸収した二酸化炭素吸収剤200を曝す。これにより、本実施形態に係る放出処理部130は、二酸化炭素吸収剤200から二酸化炭素を低コストで脱着させることが可能となる。
【0093】
また、上記のように、本実施形態に係る二酸化炭素吸収剤200は、アミノ基含有インディゴ誘導体に加えて、乾燥剤を含む。これにより、本実施形態に係る二酸化炭素吸収剤200は、被処理ガスから、水または溶媒を取り除くことができる。したがって、上記放出工程S120において、乾燥された二酸化炭素を選択的に回収することが可能となる。また、被処理ガスから、水または溶媒を取り除くことができるため、アミノ基含有インディゴ誘導体に水または溶媒が接触する確率を低下させることができ、アミノ基含有インディゴ誘導体に二酸化炭素が接触する確率を高めることが可能となる。このため、本実施形態に係る二酸化炭素吸収剤200は、被処理ガスから効率よく二酸化炭素を取り除くことができる。
【実施例0094】
次に、本発明の実施例について説明する。ただし、以下に説明する実施例は、上述した本実施形態に係る二酸化炭素回収装置100、二酸化炭素回収方法、および、二酸化炭素吸収剤200の構成や効果等を説明するために例示される具体例であり、本発明が、以下の実施例に限定されるものではない。
【0095】
[第1実施例]
[アリール基が導入されたアミノ基含有インディゴ誘導体の合成]
図5は、アミノ基含有アリールボロン酸の合成を説明する図である。図5に示すように、まず、臭化ベンジル誘導体1に対して、アジ化ナトリウム(1.2等量)をジメチルホルムアミド(以下、「DMF」という。)溶媒中、室温条件下にて作用させた。6時間後に原料が全て消費され、対応するアジド化体2が生成していることを薄層クロマトグラフィー(以下、「TLC」という。)にて確認後、トリフェニルホスフィン(1.2等量)と水(10等量)を添加した。6時間後にアジド化体が消失し、1級アミンに還元されていることをTLCにて確認後、BocO(1.1等量)と触媒量の4-ジメチルアミノピリジン(以下、「DMAP」という。)を10mol%添加し、室温条件にて2時間攪拌した。その後、酢酸エチルにて抽出後、粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、対応するBoc保護体3を得た。次にBoc保護体3をパラジウム触媒による宮浦ボリル化の条件に伏すことで、対応するボリル化体4を高収率で得た。続いて、ピナコール部位をアセトン溶媒中、過ヨウ素酸ナトリウムと酢酸アンモニウムを添加し、24時間攪拌することで、対応するボロン酸5を高収率で得ることができた。さらに、ここまでの合成過程においては、合成スケールを100mmolまで上げたとしても、収率の低下が見られず、再現性の高い合成ルートであるといえる。
【0096】
次にボロン酸5とインディゴをチャン・ラム・エヴァンス カップリング反応への適用を試みた。図6は、ボロン酸5とインディゴとのチャン・ラム・エヴァンス カップリング反応を説明する図である。図6に示すように、種々反応条件を検討した結果、触媒量の酢酸銅(II)(20mol%)、塩基としてピリジン(4等量)、ボロン酸5c(4等量)をアセトニトリル溶媒中、60℃、48時間、酸素雰囲気下にて加熱攪拌することで、対応する(Z)-カップリング体6を収率36%で得ることに成功した。当初は、E体を合成する予定であったが、加熱攪拌を行ったためか熱力学的支配のE体ではなく、速度論的支配のZ体が選択的に得られた。この結果から、(Z)-カップリング体6において、E体からZ体への異性化反応は、60℃条件下にて容易に起こることが予想される一方で、Z体からE体への異性化は、立体障害が大きいため進行せず、Z体のみ得られたと考えている。
【0097】
最後に(Z)-カップリング体6のBoc基を塩化メチレン溶媒中、TFAを添加することで容易に脱保護が進行し、水酸化ナトリウム水溶液で処理することで、上記の式(5)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体を合成した。図7は、合成した、上記の式(5)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体の写真である。
【0098】
[波長特性の評価]
合成した、上記の式(5)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体の波長特性を評価した。波長特性の評価は、日本分光株式会社製紫外可視近赤外分光光度計V-750を用いて行った。上記の式(5)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体(1.0×10-5mol/L)の塩化メチレン溶液を調整し、セル幅1cmの石英容器に供給して測定を実施した。
【0099】
図8は、測定結果を示す図である。図8において、縦軸は、吸光度を示し、横軸は、波長[nm]を示す。図8に示すように、426nmに極大吸収波長が観測され、そのモル吸光係数(ε)は、およそ7,890L/mol・cmとなった。これは、Z体のインディゴ誘導体のC=C結合に見られるπ→π遷移の波長領域と良い一致を示している。
【0100】
[二酸化炭素吸収/放出試験]
合成した、上記の式(5)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体(0.5mmol、236mg)をバイアル瓶(容量5mL)に入れ、二酸化炭素ガスを充填させた風船をバイアル瓶に接続し、封入後、5時間静置した。その後、風船を取り外し、開封後にバイアル瓶の重量を精密天秤にて測定し、二酸化炭素吸収前後の重量差から二酸化炭素吸収量を算出した。精密天秤は、ザルトリウス社製の分析天びんである。収率は、下記式(A)、式(B)を用いて算出した。
二酸化炭素回収量[mmol] = (二酸化炭素封入後の重量[mg] - アミノ基含有インディゴ誘導体の使用量[mg]) ÷ 二酸化炭素の質量[mg/mmol] …式(A)
収率[%] = 二酸化炭素回収量[mmol] ÷ アミノ基含有インディゴ誘導体の使用量[mmol] × 100 …式(B)
【0101】
その結果、上記の式(5)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体の重量は、二酸化炭素吸収前後で28mg増加していることが分かり、その重量差から二酸化炭素吸収量が0.64mmolであることが分かった。
【0102】
以上の結果から、上記の式(5)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体は、ほぼ定量的に二酸化炭素を吸収していることが明らかとなった。
【0103】
次に、二酸化炭素を吸収した、上記の式(5)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体の二酸化炭素放出実験を行った。
【0104】
図9は、二酸化炭素放出実験で用いた装置の模式図を説明する図である。図10は、二酸化炭素放出実験で用いた装置の写真を示す図である。
【0105】
図9図10に示すように、まず、二酸化炭素を吸収した、上記の式(5)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体が入っているバイアル瓶をガラス容器に入れ、青色LEDの上に設置した。そこにマスフローコントローラーで流速を250mL/minに設定し、窒素ガスを流入しながらLED照射(λ=440nm)を行い、出口側の二酸化炭素検出部にて二酸化炭素濃度を経時的に測定した。二酸化炭素検出部は、東横化学株式会社製のCO吸脱着装置を用いた。
【0106】
図11は、二酸化炭素放出実験の測定結果を示すグラフである。図11において、縦軸は、二酸化炭素濃度[ppm]を示し、横軸は時間[分]を示す。図11に示すように、LED照射直後から二酸化炭素が放出され、7分程度で放出の最大値を記録し、約52ppmとなった。その後、時間経過と共に二酸化炭素放出量が減少し、約1時間後には平衡状態となった。測定終了後の重量差は、-17mgとなり、二酸化炭素放出収率は、およそ77%となった。
【0107】
また、二酸化炭素放出実験後のサンプルを核磁気共鳴装置(以下、「NMR」という。)にて測定した結果、上記の式(5)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体(Z体)と、上記の式(8)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体(E体)と思われるピークが混在した複雑なスペクトルが得られたことから、当初想定していた可視光照射によるインディゴの光異性化を駆動力とした二酸化炭素放出機構であることが示唆される。なお、核磁気共鳴装置として、Bruker社製の核磁気共鳴装置400MHzを用いた。
【0108】
以上の結果から、二酸化炭素吸収後の、上記の式(5)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体は、可視光照射によって二酸化炭素を放出することが明らかとなった。
【0109】
[第2実施例]
[アリール基が導入されたアミノ基含有インディゴ誘導体の合成]
図12は、アミノ基含有アリールボロン酸エステル4の合成を説明する図である。図12に示すように、まず、臭化ベンジル誘導体1に対して、アジ化ナトリウム(1.2等量)をDMF溶媒中、室温条件下にて作用させた。6時間後に原料が全て消費され、対応するアジド化体2が生成していることをTLCにて確認後、トリフェニルホスフィン(1.2等量)と水(20mL)を添加した。6時間後にアジド化体が消失し、1級アミンに還元されていることをTLCにて確認後、BocO(1.2等量)と触媒量の4-ジメチルアミノピリジン(以下、「DMAP」という)を5mol%添加し、室温条件にて2時間攪拌した。その後、酢酸エチルにて抽出後、粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、対応するBoc保護体3を得た。次にBoc保護体3をパラジウム触媒による宮浦ボリル化の条件に伏すことで、対応するボリル化体4を高収率で得た。ここまでの合成過程においては、合成スケールを100mmolまで上げたとしても、収率の低下が見られず、再現性の高い合成ルートであるといえる。
【0110】
次にボリル化体4とインディゴをチャン・ラム・エヴァンス カップリング反応への適用を試みた。図13は、ボリル化体4とインディゴとのチャン・ラム・エヴァンス カップリング反応を説明する図である。図13に示すように、種々反応条件を検討した結果、触媒量の酢酸銅(II)(4等量)、塩基としてピリジン(4等量)、炭酸セシウム(4等量)、ホウ酸(4等量)、および、ボリル化体4(4等量)をDMF溶媒中、50℃、24時間、酸素雰囲気下にて加熱攪拌することで、対応する(E)-カップリング体7を得ることに成功した。なお、R2を有さない(E)-カップリング体7の収率は34%であった。また、R2がメトキシ基である(E)-カップリング体7の収率は29%であった。
【0111】
最後に(E)-カップリング体7のBoc基を塩化メチレン溶媒中、TFAを添加することで容易に脱保護が進行し、水酸化ナトリウム水溶液で処理することで、上記の式(8)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体、および、上記の式(14)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体を合成した。
【0112】
[アラルキル基が導入されたアミノ基含有インディゴ誘導体の合成]
図14は、インディゴ誘導体の合成を説明する図である。図14に示すように、まずインドール誘導体(20mmol)に対して、モリブデンヘキサカルボニル(0.05等量)、酢酸(0.5等量)、クメンペルオキシド(2.2等量)を添加し、tert-ブチルアルコール溶媒中(40mL)、86℃で24時間加熱攪拌を行なった。反応混合物を冷却したメタノールで洗浄したのち、得られた固体を真空乾燥することで、対応するインディゴ誘導体を中程度の収率で得た。
【0113】
図15は、1-(アジドメチル)-X-(クロロメチル)ベンゼンの合成を説明する図である。図15に示すように、まずビス(クロロメチル)ベンゼン(50mmol)に対して、アジ化ナトリウム(1等量)をDMF溶媒中、室温条件下にて作用させた。6時間後に対応するアジド化体が得られていることをTLCで確認したのち、水と酢酸エチルを添加し、有機層を抽出した。硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を濃縮した。その反応混合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製する事で対応するアジド化体を得た。
【0114】
図16は、式(11)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体の合成を説明する図である。図16に示すように、インディゴ(1mmol)に対して、炭酸セシウム(4等量)と、1-(アジドメチル)-(3)-(クロロメチル)ベンゼンを添加し、DMF溶媒中、室温で36時間攪拌した。反応混合物に対して、水と酢酸エチルを添加し、有機層を抽出した後、硫酸ナトリウムにて乾燥した。溶媒を濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、対応するアジド基含有インディゴ誘導体を72%の収率で得た。次にアジド基含有インディゴ誘導体(0.72mmol)に対して、トリフェニルホスフィン(2.1等量)を添加し、テトラヒドロフラン(以下、THFという。)と水の混合溶媒条件下、40℃で6時間加熱撹拌した。反応混合物に対して、1M塩酸を加えて酸性化し、水層を抽出した後、1M水酸化ナトリウム水溶液を加えて塩基性条件下にした。その水層に対して塩化メチレンを加えて有機層を抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥させた後、溶媒を濃縮することで対応するアミノ基含有インディゴ誘導体を得た。
【0115】
図17は、式(15)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体の合成、および、式(16)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体の合成を説明する図である。図17に示すように、メトキシ基を有するインディゴ誘導体に対して、炭酸セシウム(4等量)と1-(アジドメチル)-(X)-(クロロメチル)ベンゼンを添加し、DMF溶媒中、室温で36時間攪拌した。反応混合物に対して、水と酢酸エチルを添加し、有機層を抽出した後、硫酸ナトリウムにて乾燥した。溶媒を濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、対応するアジド基含有インディゴ誘導体を72%の収率で得た。次にアジド基含有インディゴ誘導体(0.72mmol)に対して、トリフェニルホスフィン(2.1等量)を添加し、THFと水の混合溶媒条件下、80℃で8時間加熱撹拌した。反応混合物に対して、1M塩酸を加えて酸性化し、水層を抽出した後、1M水酸化ナトリウム水溶液を加えて塩基性条件下にした。その水層に対して塩化メチレンを加えて有機層を抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥させた後、溶媒を濃縮することで対応するアミノ基含有インディゴ誘導体を得た。
【0116】
図18は、式(17)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体の合成を説明する図である。図18に示すように、ニトロ基を有するインディゴ誘導体に対して、炭酸セシウム(4等量)と1-(アジドメチル)-(X)-(クロロメチル)ベンゼンを添加し、DMF溶媒中、室温で36時間攪拌した。反応混合物に対して、水と酢酸エチルを添加し、有機層を抽出した後、硫酸ナトリウムにて乾燥した。溶媒を濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、対応するアジド基含有インディゴ誘導体を72%の収率で得た。次にアジド基含有インディゴ誘導体(0.72mmol)に対して、トリフェニルホスフィン(2.1等量)を添加し、THFと水の混合溶媒条件下、80℃で8時間加熱撹拌した。反応混合物に対して、1M塩酸を加えて酸性化し、水層を抽出した後、1M水酸化ナトリウム水溶液を加えて塩基性条件下にした。その水層に対して塩化メチレンを加えて有機層を抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥させた後、溶媒を濃縮することで対応するアミノ基含有インディゴ誘導体を得た。
【0117】
[波長特性の評価]
合成した、上記の式(8)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体、上記の式(11)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体、上記の式(14)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体、上記の式(15)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体、上記の式(16)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体、および、上記の式(17)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体の波長特性を評価した。波長特性の評価は、日本分光株式会社製紫外可視近赤外分光光度計V-750を用いて行った。各アミノ基含有インディゴ誘導体(1.0×10-5mol/L)の塩化メチレン溶液をそれぞれ調整し、セル幅1cmの石英容器に供給して測定を実施した。
【0118】
図19は、上記の式(8)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体および上記の式(14)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体測定結果を示す図である。図20は、上記の式(11)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体および上記の式(15)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体測定結果を示す図である。図21は、上記の式(16)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体および上記の式(17)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体測定結果を示す図である。図19図21において、縦軸は、吸光度[a.u.]を示し、横軸は、波長[nm]を示す。
【0119】
図19の破線で示すように、上記の式(8)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体の極大吸収波長は、611nmであった。一方、図19の実線で示すように、上記の式(14)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体の極大吸収波長は、655nmであった。以上の結果から、電子供与基としてのメトキシ基が導入されることにより、アミノ基含有インディゴ誘導体の吸収波長は、長波長側にシフトすることが確認された。
【0120】
図20の破線で示すように、上記の式(11)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体の極大吸収波長は、629nmであった。一方、図20の実線で示すように、上記の式(15)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体の極大吸収波長は、633nmであった。以上の結果から、電子供与基としてのメトキシ基が導入されることにより、アミノ基含有インディゴ誘導体の吸収波長は、長波長側にシフトすることが確認された。
【0121】
図21の破線で示すように、上記の式(16)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体の極大吸収波長は、604nmであった。一方、図21の実線で示すように、上記の式(17)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体の極大吸収波長は、551nmであった。以上の結果から、電子吸引基としてのニトロ基が導入されることにより、電子供与基としてのメトキシ基が導入される場合よりも、アミノ基含有インディゴ誘導体の吸収波長は、短波長側にシフトすることが確認された。また、電子吸引基としてのニトロ基が導入されることにより、アミノ基含有インディゴ誘導体の吸収波長は、短波長側にシフトすることが確認された。
【0122】
[二酸化炭素吸収/放出試験]
合成した、上記の式(8)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体、上記の式(11)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体、上記の式(14)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体、上記の式(15)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体、上記の式(16)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体、および、上記の式(17)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体の二酸化炭素吸収試験および二酸化炭素放出試験を行った。各アミノ基含有インディゴ誘導体をバイアル瓶(容量5mL)に入れ、二酸化炭素ガスを充填させた風船をバイアル瓶に接続し、封入後、5時間静置した。その後、風船を取り外し、開封後にバイアル瓶の重量を精密天秤にて測定し、二酸化炭素吸収前後の重量差から二酸化炭素吸収量を算出した。精密天秤は、ザルトリウス社製の分析天びんである。収率は、上記の式(A)、式(B)を用いて算出した。
【0123】
なお、バイアル瓶内の各アミノ基含有インディゴ誘導体の収容量は、下記表1に示される。
【0124】
【表1】
【0125】
その結果、上記の式(8)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体の重量は、二酸化炭素吸収前後で8.8mg増加していることが分かり、その重量差から二酸化炭素吸収量が0.20mmolであり、収率が95%であることが分かった。
【0126】
また、上記の式(11)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体の重量は、二酸化炭素吸収前後で8.9mg増加していることが分かり、その重量差から二酸化炭素吸収量が0.20mmolであり、収率が59%であることが分かった。
【0127】
また、上記の式(14)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体の重量は、二酸化炭素吸収前後で19.9mg増加していることが分かり、その重量差から二酸化炭素吸収量が0.45mmolであり、収率が94%であることが分かった。
【0128】
また、上記の式(15)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体の重量は、二酸化炭素吸収前後で6.7mg増加していることが分かり、その重量差から二酸化炭素吸収量が0.15mmolであり、収率が100%超であることが分かった。
【0129】
また、上記の式(16)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体の重量は、二酸化炭素吸収前後で8.1mg増加していることが分かり、その重量差から二酸化炭素吸収量が0.18mmolであり、収率が90%超であることが分かった。
【0130】
また、上記の式(17)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体の重量は、二酸化炭素吸収前後で6.6mg増加していることが分かり、その重量差から二酸化炭素吸収量が0.15mmolであり、収率が75%超であることが分かった。
【0131】
次に、二酸化炭素を吸収した、各アミノ基含有インディゴ誘導体の二酸化炭素放出実験を行った。二酸化炭素放出実験は、図9に示した装置と同様の装置を用いて行った。まず、二酸化炭素を吸収したアミノ基含有インディゴ誘導体が入っているバイアル瓶をガラス容器に入れ、青色LEDの上に設置した。そこにマスフローコントローラーで流速を200mL/minに設定し、窒素ガスを流入しながらLED照射を行い、出口側の二酸化炭素検出部にて二酸化炭素濃度を経時的に測定した。なお、上記の式(8)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体、上記の式(11)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体、上記の式(14)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体、上記の式(15)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体、および、上記の式(16)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体について、LEDによってλ=600~680nmの光を照射した。また、上記の式(17)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体について、LEDによってλ=525nmの光を照射した。
【0132】
図22は、二酸化炭素放出実験の測定結果を示すグラフである。図22において、縦軸は、二酸化炭素濃度[ppm]を示し、横軸は時間[分]を示す。表2は、二酸化炭素放出実験の測定結果を示す表である。
【0133】
【表2】
【0134】
図22の白い丸および表2に示すように、上記の式(8)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体は、LED照射直後から二酸化炭素が放出され、25分程度で放出の最大値を記録し、約10ppmとなった。その後、時間経過と共に二酸化炭素放出量が減少した。
【0135】
図22の白い四角および表2に示すように、上記の式(11)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体は、LED照射直後から二酸化炭素が放出され、15分程度で放出の最大値を記録し、約20ppmとなった。そして、40分が経過するまでは、約14ppmで維持され、40分後には約19ppmとなった。その後、時間経過と共に二酸化炭素放出量が減少した。
【0136】
図22の黒い丸および表2に示すように、上記の式(14)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体は、LED照射直後から二酸化炭素が放出され、35分程度で放出の最大値を記録し、約32ppmとなった。その後、時間経過と共に二酸化炭素放出量が減少した。
【0137】
図22の黒い四角および表2に示すように、上記の式(15)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体は、LED照射直後から二酸化炭素が放出され、30分程度で放出の最大値を記録し、約8ppmとなった。その後、時間経過と共に二酸化炭素放出量が減少し。
【0138】
図22の白い三角および表2に示すように、上記の式(16)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体は、LED照射直後から二酸化炭素が放出され、25分程度で放出の最大値を記録し、約20ppmとなった。その後、35分が経過するまで、二酸化炭素放出量が約20ppmに維持された。そして、時間経過と共に二酸化炭素放出量が減少した。
【0139】
図22の黒い三角および表2に示すように、上記の式(17)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体は、LED照射直後から二酸化炭素が放出され、15分程度で放出の最大値を記録し、約32ppmとなった。その後、時間経過と共に二酸化炭素放出量が減少した。
【0140】
以上の結果から、二酸化炭素吸収後の、上記の式(8)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体、上記の式(11)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体、上記の式(14)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体、上記の式(15)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体、上記の式(16)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体、および、上記の式(17)で表されるアミノ基含有インディゴ誘導体は、可視光照射によって二酸化炭素を放出することが明らかとなった。
【0141】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0142】
例えば、上記実施形態において、二酸化炭素吸収剤200が乾燥剤を備える場合を例に挙げた。しかし、二酸化炭素吸収剤200は、乾燥剤を備えずともよい。二酸化炭素吸収剤200は、少なくともアミノ基含有インディゴ誘導体を備えていればよい。二酸化炭素吸収剤200は、アミノ基含有インディゴ誘導体のみで構成されてもよい。
【0143】
また、上記吸収工程S110は、例えば、本願発明者らが開発した特許第6782961号公報に記載された方法、または、特開2019-127417号公報に記載された方法に従って行われてもよい。
【0144】
また、上記実施形態において、容器本体112が遮光性を有する場合を例に挙げた。しかし、容器本体112は、遮光性を有していなくてもよい。この場合、例えば、吸収工程S110を夜間に行い、放出工程S120を昼間に行ってもよい。
【0145】
また、上記実施形態において放出処理部130がルーバー132およびアクチュエータ134を備える構成を例に挙げた。しかし、ルーバー132およびアクチュエータ134は、必須の構成ではない。ルーバー132およびアクチュエータ134を備えない場合、放出処理部130は、吸収処理部120を制御して、吸収工程S110を夜間に行い、放出工程S120を昼間に行ってもよい。
【0146】
また、放出処理部130は、二酸化炭素を吸収した二酸化炭素吸収剤200に、可視光を含む光を照射してもよい。放出処理部130は、例えば、可視光を含む光を照射する光源(例えば、LED)を有していてもよい。
【0147】
また、上記放出工程S120において、収容容器110に、スイープガスを供給してもよい。スイープガスは、例えば、窒素ガスである。この場合、二酸化炭素回収装置100は、収容容器110にスイープガスを供給するスイープガス供給部を備えるとよい。スイープガス供給部は、例えば、ブロワと、接続管と、バルブとを含む。スイープガス供給部のブロワの吸入側は、スイープガスの供給源に接続される。スイープガス供給部のブロワの吐出側は、スイープガス供給部の接続管に接続される。スイープガス供給部の接続管は、ブロワの吐出側と、収容容器110の入口112aとを接続する。スイープガス供給部のバルブは、接続管に設けられる。バルブは、接続管に形成される流路を開閉する。
【産業上の利用可能性】
【0148】
本発明は、二酸化炭素回収方法、二酸化炭素回収装置、および、二酸化炭素吸収剤に利用することができる。
【符号の説明】
【0149】
SL 太陽光
100 二酸化炭素回収装置
120 吸収処理部
130 放出処理部
200 二酸化炭素吸収剤
図1
図2
図3
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図5
図6
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図8
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図10
図11
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図22