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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137810
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】撥剤
(51)【国際特許分類】
   C09D 171/00 20060101AFI20240927BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20240927BHJP
   C09D 101/00 20060101ALI20240927BHJP
   C09D 103/00 20060101ALI20240927BHJP
   D06M 13/148 20060101ALI20240927BHJP
   D06M 13/17 20060101ALI20240927BHJP
   D06M 13/224 20060101ALI20240927BHJP
   D06M 15/03 20060101ALI20240927BHJP
   D06M 15/53 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
C09D171/00
C09D201/00
C09D101/00
C09D103/00
D06M13/148
D06M13/17
D06M13/224
D06M15/03
D06M15/53
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024040910
(22)【出願日】2024-03-15
(31)【優先権主張番号】P 2023048620
(32)【優先日】2023-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129791
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 真由美
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】芥 諒
(72)【発明者】
【氏名】坂巻 達記
(72)【発明者】
【氏名】島野 真由美
(72)【発明者】
【氏名】中野 麻里奈
(72)【発明者】
【氏名】松本 あかね
(72)【発明者】
【氏名】池内 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】東 昌弘
【テーマコード(参考)】
4J038
4L033
【Fターム(参考)】
4J038BA011
4J038BA021
4J038BA111
4J038BA212
4J038DA152
4J038DB002
4J038DG022
4J038DG262
4J038GA03
4J038KA03
4J038KA09
4J038MA08
4J038MA10
4J038NA07
4J038PA18
4J038PA19
4J038PC03
4J038PC06
4J038PC08
4J038PC10
4L033AA02
4L033AB01
4L033AC03
4L033AC04
4L033BA12
4L033BA14
4L033BA21
4L033CA02
4L033CA48
(57)【要約】      (修正有)
【課題】基材(例えば、繊維、紙)に耐油性を付与できる新規な撥剤の提供。
【解決手段】ポリオール修飾体、及び分散剤を含む、水分散型の撥剤であって、前記ポリオール修飾体は、重合度が5以上の重合体である、撥剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール修飾体、及び分散剤を含む、水分散型の撥剤であって、
前記ポリオール修飾体は、重合度が5以上の重合体である、撥剤。
【請求項2】
前記ポリオール修飾体が、ポリオールに対して、置換基を有してもよい一価の炭素数1以上40以下の炭化水素基又は一価のポリシロキサン基を修飾してなる化合物である、請求項1に記載の撥剤。
【請求項3】
前記ポリオール修飾体が置換基を有してもよい炭素数6以上40以下のアルキル基を有する、請求項1に記載の撥剤。
【請求項4】
前記ポリオール修飾体が、ポリオールの一以上のヒドロキシ基を下記式:
-Y-Z
[式中、
Yは、Y及びYからなる群から選択される一以上から構成される1+n価の基であり、
は、直接結合、-O-、-C(=O)-、-C(=NR’)-、-S-、-S(=O)-、-NR’-、-C(OR’)R’-、及び-C(OR’)(-)、-N(-)(式中、R’は、各出現において独立して、水素原子又は炭素数1~30の有機基である。)からなる群から選択される一以上から構成される基であり、
は、置換基を有してもよい2~4価の炭素数1~40の脂肪族炭化水素基、置換基を有してもよい2~4価の炭化水素芳香環、及び置換基を有してもよい2~4価のヘテロ環からなる群から選択される一以上から構成される基であり、
Zは、置換基を有してもよい一価の炭素数1以上40以下の炭化水素基又は一価のポリシロキサン基であり、
nは、1以上3以下の整数である。]
で表される基により置換した化合物である、請求項1に記載の撥剤。
【請求項5】
Yが
-O-Y11-、又は
-O-Y11-Y21-Y12
[式中、各記号は各出現において独立して、
11が、直接結合、-C(=O)-、-C(=O)-NR’-、又は-C(=S)-NR’-であり、
21が、置換基を有してもよい炭素数1~40の炭化水素基であり、
12が-O-、-O-C(=O)-、-O-C(=O)-O-、-C(=O)-NR’-、-O-C(=O)-NR’-、-NR’-、-NR’-C(=O)-、-NR’-C(=O)-O-、-NR’-C(=O)-NR’-、-C(=O)-、-C(=O)-O-、-C(=O)-NR’-、-SO-、-SONR’-、-C(OR’)R’-、又は-C(OR’)(-)である。]、
である、請求項4に記載の撥剤。
【請求項6】
ポリオールが、多糖類、及びヒドロキシ基含有化合物重合体からなる群から選択される少なくとも一種である、請求項1に記載の撥剤。
【請求項7】
ポリオールが、澱粉、セルロース、カードラン、プルラン、アルギン酸、カラギーナン、グアーガム、キチン、キトサン、ローカストビーンガム、カッパカラギーナン、イオタカラギーナン、イソマルトデキストリン、ザンサンガム、ジェラガム、タマリンドシードガム、シクロアミロース、およびポリグリセリンからなる群から選択される少なくとも一種である、請求項1に記載の撥剤。
【請求項8】
レーザー回折散乱法による測定される100μm以上の粒子の体積存在比率が25%以下である、請求項1に記載の撥剤。
【請求項9】
前記ポリオール修飾体のバイオベース度が20%以上である、請求項1に記載の撥剤。
【請求項10】
前記ポリオール修飾体が有するヒドロキシ基のうち5以上のヒドロキシ基が修飾されている、請求項1に記載の撥剤。
【請求項11】
前記ポリオール修飾体が、ポリオールの5以上のヒドロキシ基を下記式:
-Y-Z
[式中、
Yが
-O-Y11-、又は
-O-Y11-Y21-Y12
[式中、各記号は各出現において独立して、
11が、直接結合、-C(=O)-、-C(=O)-NR’-、又は-C(=S)-NR’-であり、
21が、炭素数1~40の炭化水素基であり、
12が-O-、-O-C(=O)-、-O-C(=O)-O-、-C(=O)-NR’-、-O-C(=O)-NR’-、-NR’-、-NR’-C(=O)-、-NR’-C(=O)-O-、-NR’-C(=O)-NR’-、-C(=O)-、-C(=O)-O-、-C(=O)-NR’-、-SO-、-SONR’-、-C(OR’)R’-、又は-C(OR’)(-)である。]
であり、
Zは、炭素数6以上40以下の炭化水素基であり、
nは、1以上3以下の整数である。]
で表される基により置換した化合物であり、
前記ポリオールが、澱粉、セルロース、カードラン、プルラン、アルギン酸、カラギーナン、グアーガム、キチン、キトサン、ローカストビーンガム、カッパカラギーナン、イオタカラギーナン、イソマルトデキストリン、ザンサンガム、ジェラガム、タマリンドシードガム、シクロアミロース、およびポリグリセリンからなる群から選択される少なくとも一種である、請求項1に記載の撥剤。
【請求項12】
前記ポリオール修飾体が、ポリグリセリンが有するヒドロキシ基を下記式:
-O-C(=O)-Z
[式中、
Zは、炭素数14以上24以下のアルキル基である。]
で表される基により置換した化合物であり、
前記ポリグリセリンの重合度は、5以上15以下であり、
前記ポリオール修飾体におけるヒドロキシ基置換率が50%以上である、請求項1に記載の撥剤。
【請求項13】
繊維製品用又は紙製品用である、請求項1に記載の撥剤。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の撥剤により処理された製品。
【請求項15】
繊維製品又は紙製品である、請求項14に記載の製品。
【請求項16】
耐油紙または耐水紙である、請求項14に記載の製品。
【請求項17】
食品包装材又は食品容器である、請求項14に記載の製品。
【請求項18】
請求項1~13のいずれか一項に記載の撥剤で基材を処理する工程を含む、処理された製品の製造方法。
【請求項19】
前記処理が内添処理である、請求項18に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、撥剤及び撥剤によって処理された製品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種基材に撥液性(撥水性、撥油性、耐油性、及び/又は耐水性)を付与することができる非フッ素系撥剤の開発が進められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開2022/065382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、天然物を修飾して得られる修飾天然物を含む耐油剤が開示されている。特許文献1に記載の耐油剤は、紙に耐油性を付与することができるが、より高い耐油性が求められている。
【0005】
本開示は、基材(例えば、繊維、紙)に耐油性を付与できる新規な撥剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は以下の態様を含む:
[項1]
ポリオール修飾体、及び分散剤を含む、水分散型の撥剤であって、
前記ポリオール修飾体は、重合度が5以上の重合体である、撥剤。
[項2]
前記ポリオール修飾体が、ポリオールに対して、置換基を有してもよい一価の炭素数1以上40以下の炭化水素基又は一価のポリシロキサン基を修飾してなる化合物である、項1に記載の撥剤。
[項3]
前記ポリオール修飾体が置換基を有してもよい炭素数6以上40以下のアルキル基を有する、項1または2に記載の撥剤。
[項4]
前記ポリオール修飾体が、ポリオールの一以上のヒドロキシ基を下記式:
-Y-Z
[式中、
Yは、Y及びYからなる群から選択される一以上から構成される1+n価の基であり、
は、直接結合、-O-、-C(=O)-、-C(=NR’)-、-S-、-S(=O)-、-NR’-、-C(OR’)R’-、及び-C(OR’)(-)、-N(-)(式中、R’は、各出現において独立して、水素原子又は炭素数1~30の有機基である。)からなる群から選択される一以上から構成される基であり、
は、置換基を有してもよい2~4価の炭素数1~40の脂肪族炭化水素基、置換基を有してもよい2~4価の炭化水素芳香環、及び置換基を有してもよい2~4価のヘテロ環からなる群から選択される一以上から構成される基であり、
Zは、置換基を有してもよい一価の炭素数1以上40以下の炭化水素基又は一価のポリシロキサン基であり、
nは、1以上3以下の整数である。]
で表される基により置換した化合物である、項1~3のいずれか一項に記載の撥剤。
[項5]
Yが
-O-Y11-、又は
-O-Y11-Y21-Y12
[式中、各記号は各出現において独立して、
11が、直接結合、-C(=O)-、-C(=O)-NR’-、又は-C(=S)-NR’-であり、
21が、置換基を有してもよい炭素数1~40の炭化水素基であり、
12が-O-、-O-C(=O)-、-O-C(=O)-O-、-C(=O)-NR’-、-O-C(=O)-NR’-、-NR’-、-NR’-C(=O)-、-NR’-C(=O)-O-、-NR’-C(=O)-NR’-、-C(=O)-、-C(=O)-O-、-C(=O)-NR’-、-SO-、-SONR’-、-C(OR’)R’-、又は-C(OR’)(-)である。]、
である、項4に記載の撥剤。
[項6]
ポリオールが、多糖類、及びヒドロキシ基含有化合物重合体からなる群から選択される少なくとも一種である、項1~5のいずれか一項に記載の撥剤。
[項7]
ポリオールが、澱粉、セルロース、カードラン、プルラン、アルギン酸、カラギーナン、グアーガム、キチン、キトサン、ローカストビーンガム、カッパカラギーナン、イオタカラギーナン、イソマルトデキストリン、ザンサンガム、ジェラガム、タマリンドシードガム、シクロアミロース、およびポリグリセリンからなる群から選択される少なくとも一種である、項1~6のいずれか一項に記載の撥剤。
[項8]
レーザー回折散乱法による測定される100μm以上の粒子の体積存在比率が25%以下である、項1~7のいずれか一項に記載の撥剤。
[項9]
前記ポリオール修飾体のバイオベース度が20%以上である、項1~8のいずれか一項に記載の撥剤。
[項10]
前記ポリオール修飾体が有するヒドロキシ基のうち5以上のヒドロキシ基が修飾されている、項1~9のいずれか一項に記載の撥剤。
[項11]
前記ポリオール修飾体が、ポリオールの5以上のヒドロキシ基を下記式:
-Y-Z
[式中、
Yが
-O-Y11-、又は
-O-Y11-Y21-Y12
[式中、各記号は各出現において独立して、
11が、直接結合、-C(=O)-、-C(=O)-NR’-、又は-C(=S)-NR’-であり、
21が、炭素数1~40の炭化水素基であり、
12が-O-、-O-C(=O)-、-O-C(=O)-O-、-C(=O)-NR’-、-O-C(=O)-NR’-、-NR’-、-NR’-C(=O)-、-NR’-C(=O)-O-、-NR’-C(=O)-NR’-、-C(=O)-、-C(=O)-O-、-C(=O)-NR’-、-SO-、-SONR’-、-C(OR’)R’-、又は-C(OR’)(-)である。]
であり、
Zは、炭素数6以上40以下の炭化水素基であり、
nは、1以上3以下の整数である。]
で表される基により置換した化合物であり、
前記ポリオールが、澱粉、セルロース、カードラン、プルラン、アルギン酸、カラギーナン、グアーガム、キチン、キトサン、ローカストビーンガム、カッパカラギーナン、イオタカラギーナン、イソマルトデキストリン、ザンサンガム、ジェラガム、タマリンドシードガム、シクロアミロース、およびポリグリセリンからなる群から選択される少なくとも一種である、項1~10のいずれか一項に記載の撥剤。
[項12]
前記ポリオール修飾体が、ポリグリセリンが有するヒドロキシ基を下記式:
-O-C(=O)-Z
[式中、
Zは、炭素数14以上24以下のアルキル基である。]で表される基により置換した化合物であり、
前記ポリグリセリンの重合度は、5以上15以下であり、
前記ポリオール修飾体におけるヒドロキシ基置換率が50%以上である、項1~11のいずれか一項に記載の撥剤。
[項13]
繊維製品用又は紙製品用である、項1~12のいずれか一項に記載の撥剤。
[項14]
項1~13のいずれか一項に記載の撥剤により処理された製品。
[項15]
繊維製品又は紙製品である、項14に記載の製品。
[項16]
耐油紙または耐水紙である、項14又は15に記載の製品。
[項17]
食品包装材又は食品容器である、項14~16のいずれか一項に記載の製品。
[項18]
項1~11のいずれか一項に記載3撥剤で基材を処理する工程を含む、処理された製品の製造方法。
[項19]
前記処理が内添処理である、項18に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本開示における撥剤は、紙製品に良好な撥液性(特に耐油性)を付与できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<用語の定義>
本明細書において用いられる場合、「n価の基」とは、n個の結合手を有する基、すなわちn個の結合を形成する基を意味する。また、「n価の有機基」とは、炭素を含有するn価の基を意味する。かかる有機基としては、特に限定されないが、炭化水素基又はその誘導体であり得る。炭化水素基の誘導体とは、炭化水素基の末端又は分子鎖において、1つ又はそれ以上のN、O、S、Si、アミド、スルホニル、シロキサン、カルボニル、カルボニルオキシ、ハロゲン等を有している基を意味する。
【0009】
本明細書において用いられる場合、「炭化水素基」とは、炭素及び水素を含む基であって、炭化水素から水素原子を脱離させた基を意味する。かかる炭化水素基としては、特に限定されるものではないが、C1-20炭化水素基、例えば、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基等が挙げられる。上記「脂肪族炭化水素基」は、直鎖状、分枝鎖状又は環状のいずれであってもよく、飽和又は不飽和のいずれであってもよい。また、炭化水素基は、1つ又はそれ以上の環構造を含んでいてもよい。炭化水素基は、明示的に記載した場合、1つ又はそれ以上の置換基により置換されていてもよい。
【0010】
本明細書において、「各出現において独立して」、「互いにそれぞれ独立して」、「それぞれ独立して」又はこれと同様の表現が明示的に記載されているか否かに関わらず、例外である旨の記載がある場合を除き、化学構造中に複数出現し得る用語(記号)が定義される場合、出現毎に独立して当該定義が適用される。
【0011】
本明細書において説明される化学構造は、当業者によって化学的に不可能または極めて不安定であると認識される化学構造を包含しないように理解されるべきである。
【0012】
<撥剤>
本開示における撥剤は基材(例えば、繊維基材、紙基材)に撥液性(撥水性、撥油性、耐油性、及び/又は耐水性)を付与するものであり、撥水剤、撥油剤、耐油剤、及び耐水剤からなる群から選択される少なくとも一として機能し得る。本開示における撥剤は、基材に耐油性(撥油性)及び/又は耐水性(撥水性)を良好に付与でき、例えば耐油性と耐水性の両方を良好に付与し得る。
【0013】
本開示における撥剤は、ポリオール修飾体、及び分散剤を含む、水分散型の撥剤であって、上記ポリオール修飾体は、重合度が5以上の重合体である、撥剤であってよい。
【0014】
本開示における撥剤は炭素数8以上のフルオロアルキル基を有する化合物、炭素数8以上のパーフルオロアルキル基を有する化合物、炭素数4以上のフルオロアルキル基を有する化合物、炭素数4以上のパーフルオロアルキル基を有する化合物、パーフルオロアルキル基を有する化合物、フルオロアルキル基を有する化合物、及びフッ素原子を有する化合物からなる群から選択されるいずれかを有しなくてもよい。本開示における撥剤は、これらのフッ素化合物を含まなくても、基材に撥液性を付与し得る。
【0015】
〔粒子の体積存在比率〕
本開示の撥剤におけるレーザー回折散乱法による測定される100μm以上の粒子の体積存在比率は25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、5%以下、3%以下、又は1.5%以下であってよく、好ましくは15%以下、又は5%以下である。100μm以上の粒子の体積存在比率が上記範囲にあることが被覆性の観点から好ましい。レーザー回折散乱法による測定される100μm以上の粒子の体積存在比率を25%以下とする方法は限定されないが、例えば、粉砕機やホモジナイザー等を用いて、原料及び/又は分散液中の粒子を微細化すればよい。
【0016】
〔体積メジアン径〕
本開示の撥剤におけるレーザー回折散乱法による測定される体積メジアン径は、10nm以上、30nm以上、50nm以上、100nm以上であってよく、好ましくは150nm以上、又は200nm以上であり、また100μm以下、90μm以下、80μm以下、70μm以下、60μm以下、50μm以下、40μm以下、30μm以下、20μm以下、又は10μm以下であってよく、好ましくは30μm以下、又は25μm以下である。本開示において体積メジアン径とは、レーザー回折錯乱法による体積基準の粒度分布におけるメジアン径(D50)を指す。
【0017】
〔示差走査熱量測定〕
本開示の撥剤から液状媒体を除去して得られる固形成分の示差走査熱量測定において、25℃~180℃の温度帯の最大吸熱ピーク温度が55℃以上であることが好ましい。これにより、本開示の効果がより良好に奏され得る。当該最大吸熱ピーク温度は55℃以上、60℃以上、又は65℃以上であり、また150℃以下、140℃以下、130℃以下、120℃以下、100℃以下、90℃以下、80℃以下、又は70℃以下であってよい。
【0018】
〔温度可変X線回折法測定〕
本開示の撥剤から液状媒体を除去して得られる固形成分の温度可変X線回折法測定において、2θが15°~30°の領域における測定温度25℃の最大ピークのピーク強度A25℃と測定温度55℃の最大ピークのピーク強度A55℃との回折強度比[A55℃/A25℃]が0.5以上であることが好ましい。回折強度比[A55℃/A25℃]は0.6以上、0.7以上、0.8以上、0.9以上、1.0以上、1.1以上であってよく、好ましくは0.8以上、又は0.9以上であり、また3以下、2.75以下、2.5以下、2.35以下、又は2.0以下であってよい。上記下限値以上であることにより、高温度域でもアルキル鎖の配列構造を保持できるようになり、本開示の効果がより良好に奏され得る。
【0019】
〔ポリオール修飾体〕
本開示におけるポリオール修飾体は、基材に付着して、基材に撥液性、耐油性、耐水性を付与し得るものである。
【0020】
[ポリオール修飾体の特性等]
ポリオール修飾体のHD(n-ヘキサデカン)接触角は10°以上、15°以上、25°以上、35°以上、40°以上、45°以上、55°以上、55°以上、又は65°以上であってよく、好ましくは30°以上であり、また100°以下、90°以下、又は75°以下であってよい。ポリオール修飾体が上記の下限以上のHD接触角を有することにより、基材に良好に撥液性(特に撥油性)を付与し得る。HD接触角とは、実施例に示すようにポリオール修飾体のスピンコート膜に対する静的接触角であって、スピンコート膜上に、2μLのHDを滴下し、着滴1秒後の接触角を測定して得られるものをいう。
【0021】
ポリオール修飾体の水接触角は35°以上、40°以上、45°以上、50°以上、55°以上、65°以上、75°以上、85°以上、90°以上、又は100°以上であり、また160°以下、140°以下、130°以下、120°以下、110°以下、100°以下、又は90°以下であってよい。ポリオール修飾体が上記の下限以上の水接触角を有することにより、基材に良好に撥液性(特に撥水性)を付与し得る。水接触角とは、実施例に示すようにポリオール修飾体のスピンコート膜に対する静的接触角であって、スピンコート膜上に、2μLの水を滴下し、着滴1秒後の接触角を測定して得られるものをいう。
【0022】
ポリオール修飾体は、バイオベース起源の炭素を有する化合物であることが好ましい。バイオベース度は、ASTM D6866に準拠して測定される。バイオベース度は、20%以上であってよく、好ましくは30%以上、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上、最も好ましくは80%以上または90%以上、例えば100%である。バイオベース度が高いことは、石油等に代表される化石資源系材料の使用量が少ないことを意味しており、かかる観点において、ポリオール修飾体のバイオベース度は高いほど好ましいといえる。
【0023】
ポリオール修飾体は、好ましくは5%以上の生分解性を有する。環境負荷が小さくなることから、かかる生分解性は高いほど好ましい。ポリオール修飾体の生分解性は、例えば10%以上、20%以上、30%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、または90%以上であってもよく、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上、最も好ましくは90%以上であり得る。かかる生分解性は、JIS K 6953-1またはASTM D6400に規定される180日時点の生分解性であり得る。
【0024】
本開示におけるポリオール修飾体は炭素数8以上のフルオロアルキル基、炭素数8以上のパーフルオロアルキル基、炭素数4以上のフルオロアルキル基、炭素数4以上のパーフルオロアルキル基、パーフルオロアルキル基、フルオロアルキル基、及びフッ素原子からなる群から選択されるいずれかを有しなくてもよい。ポリオール修飾体がこれらのフッ素含有基を含まなくても、基材に撥液性を付与し得る。
【0025】
ポリオール修飾体の示差走査熱量測定において、25℃~180℃の温度帯の最大吸熱ピーク温度が55℃以上であることが好ましい。これにより、本開示の効果がより良好に奏され得る。当該最大吸熱ピーク温度は55℃以上、60℃以上、又は65℃以上であり、また100℃以下、90℃以下、80℃以下、又は70℃以下であってよい。
【0026】
[重合度]
本開示におけるポリオール修飾体は、重合度が5以上の重合体である。撥液性向上の観点から、ポリオール修飾体の重合度は、6以上であってよく、好ましくは7以上、より好ましくは8以上、さらに好ましくは9以上であり、また撥剤の取り扱い性の向上の観点から100以下であってよく、好ましくは50以下、より好ましくは30以下、さらに好ましくは15以下、特に好ましくは12以下であってよい。なお、重合度とは、重合体を構成する単量体単位の繰り返し数を意味する。
【0027】
本開示における重合度は、平均重合度を意味する。本開示における平均重合度とは、下記条件で測定して得られる重合を意味する。
【0028】
本開示におけるポリオール修飾体がポリグリセリンを修飾して得られるポリグリセリン修飾体である場合、ポリオール修飾体の重合度は、上記ポリグリセリンの平均重合度を意味する。ポリグリセリンの平均重合度は、末端基分析法による水酸基価から算出される平均重合度(n)である。詳しくは、次式(式1)及び(式2)から平均重合度と平均分子量が算出される。
(式1)平均分子量=74n+18
(式2)水酸基価=56110(n+2)/平均分子量
上記(式2)中の水酸基価とは、ポリグリセリンに含まれる水酸基数の大小の指標となる数値である。水酸基価は1gのポリグリセリンに含まれる遊離ヒドロキシル基をアセチル化するために必要な酢酸を中和するのに要する水酸化カリウムの量から算出し、社団法人日本油化学会編纂、「日本油化学会制定、基準油脂分析試験法(I)、2003年度版」に準じて算出される。原料となるポリグリセリンの水酸基価を上記基準油脂分析試験法に従い実測し、上記関係式よりポリグリセリンの平均重合度と平均分子量を算出することができる。
【0029】
本開示におけるポリオール修飾体が多糖類を修飾して得られる多糖類修飾体である場合、ポリオール修飾体の重合度は、上記多糖類の平均重合度を意味する。多糖類の平均重合度の分析は、以下のようにして行うことができる。尚、重合度とは、多糖類中の単糖単位(フルクトース及びグルコース単位)の数であり、平均重合度は、例えば、以下のようにして、HPLC、GC、HPAEC等の通常の分析法によって求めた各分析結果のピークの内のトップを平均重合度としたものである。カラムとして、例えば、信和化工製のULTRON PS-80N(8×300mm)(溶媒;水、流速;0.5ml/min、温度;50℃)あるいは、TOSOH製のTSK-GEL G30000 PWXL(7.8×300mm)(溶媒;水、流速;0.5ml/min、温度;50℃)を用い、検出器として示差屈折計を使用することによって測定することができる。
【0030】
ポリオール修飾体は、低分子(例えば重量平均分子量1500未満、1000未満、500以下)および/または高分子であってもよい。ポリオール修飾体の重量平均分子量は、100以上、200以上、300以上、400以上、500以上、1000以上、3000以上、5000以上、10000以上、30000以上、100000以上、300000以上、又は500000以上であり、また1000000以下、750000以下、500000以下、3000000以下、100000以下、75000以下、50000以下、30000以下、10000以下、9000以下、8000以下、7000以下、6000以下、5000以下、3000以下、2000以下、1000以下、又は500以下であってよい。
【0031】
ポリオール修飾体の重量平均分子量(Mw)、及び数平均分子量(Mn)は、下記の装置及び条件により、ポリエチレングリコール/ポリエチレンオキシドを標準試料として用いたGFC分析により測定した値であってよい。
分離カラム:SB-806M(8mm×30mm、Shodex)
カラム温度:40℃
移動相溶媒:イオン交換水
移動相流速:1.0 mL/min
試料濃度 :0.5wt%
注入量:50μL
検出器:RI検出器(Waters2414、Waters社)
【0032】
ポリオール修飾体のポリスチレン換算の、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)及び多分散度(Mw/Mn)は、テトラヒドロフラン(THF)を溶出液とし、昭和電工社製のShodex KF400RL及びKF400RHカラム(ポリスチレンゲル)を使用するゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)測定により求めてよい。
【0033】
ポリオール修飾体におけるヒドロキシ基の置換率は、1%以上、3%以上、5%以上、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、又は100%であってよく、好ましくは10%以上、例えば30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、特に80%以上であり、またポリオール修飾体におけるヒドロキシ基の置換率は、100%以下、95%以下、85%以下、75%以下、65%以下、55%以下、45%以下、35%以下、25%以下、15%以下であってよく、例えば95%以下である。ここで、当該「置換率」とは、ポリオール由来のヒドロキシ基のうち、修飾されている割合(mol%)を意味し、置換基を有してもよい一価の炭素数1以上40以下の炭化水素基又は一価のポリシロキサン基により修飾されている割合(mol%)を意味してよい。
【0034】
ポリオール修飾体におけるヒドロキシル基の残存率は、1%以上、3%以上、5%以上、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、又は90%以上であってよく、例えば5%以上であってよく、また100%以下、95%以下、85%以下、75%以下、65%以下、55%以下、45%以下、35%以下、25%以下、15%以下、又は5%以下であってよく、例えば50%以下、30%以下、又は10%以下であってよい。ここで、当該「残存率」とは、ポリオール由来のヒドロキシ基のうち、修飾されていない割合(mol%)を意味する。
【0035】
ポリオール修飾体が有する修飾基の数(つまり、ポリオールが有するヒドロキシ基のうち修飾されているヒドロキシ基の数)は、2以上、5以上、7以上、8以上、9以上、10以上、12以上、15以上、30以上、又は50以上であってよく、また1000以下、750以下、500以下、300以下、100以下、50以下、30以下、又は20以下であってよい。ここで、修飾基は、好ましくは、置換基を有していてもよい一価の炭化水素基又は一価のポリシロキサン基である。
【0036】
ポリオール修飾体の修飾基当量は、150以上、250以上、350以上、450以上、550以上、650以上、750以上、又は1000以上であってよく、また2500以下、2000以下、1500以下、1000以下、750以下、500以下、又は400以下であってよい。ポリオール修飾体の重量平均分子量を修飾基の数で除した値である。ここで、修飾基は、好ましくは、置換基を有していてもよい一価の炭化水素基又は一価のポリシロキサン基である。
【0037】
[修飾基の構造]
ポリオール修飾体は、ポリオールの一以上のヒドロキシ基が修飾基により置換されている。修飾基は、好ましくは、置換基を有していてもよい一価の炭化水素基又は一価のポリシロキサン基である。撥液性向上の観点から、ポリオール修飾体が、ポリオールに対して、置換基を有してもよい炭素数6以上40以下のアルキル基(例えば非置換の炭素数6以上40以下のアルキル基)を有していてよい。
【0038】
(置換基を有していてもよい一価の炭化水素基)
ポリオール修飾体のポリオールに対して修飾される炭化水素基は置換基を有していてもよい一価の炭化水素基であってよい。
【0039】
炭化水素基は、炭素数1以上40以下の一価の炭化水素基であってよい。炭化水素基は芳香族炭化水素基又は脂肪族炭化水素基であってよく、脂肪族炭化水素基、特に飽和の脂肪族炭化水素基(アルキル基)であることが好ましい。炭化水素基は、分岐鎖状又は直鎖状であってよく、より好ましくは直鎖状である。
【0040】
炭化水素基の炭素数は、1以上、3以上、6以上、8以上、10以上、12以上、14以上、16以上、18以上、20以上、又は22以上であってよく、好ましくは6以上、10以上、12以上、又は、16以上であり、また40以下、35以下、30以下、25以下、20以下、15以下、又は10以下であってよく、好ましくは30以下、25以下、又は20以下である。
【0041】
炭化水素基は置換基を有してもよいが、無置換であることが好ましい。置換基の例としては、-OR’、-N(R’)、-COOR’、及びハロゲン原子等(式中、R’は、各出現において独立して、水素原子又は炭素数1~30、1~20、1~10、又は1~4の有機基(例えば炭化水素基、特に脂肪族炭化水素基)である)が挙げられる。置換基は活性水素を有してもよいし、有していなくてもよい。置換基の数は、6個以下、5個以下、4個以下、3個以下、2個以下、1個以下、又は0であってよい。置換基を有する炭化水素基において、炭素原子及びヘテロ原子の量に対する炭素原子の量が70mol%以上、80mol%以上、90mol%以上、95mol%以上、又は99mol%以上であってよく、好ましくは75mol%以上であり、また95mol%以下、90mol%以下、85mol%以下、又は80mol%以下であってよい。
【0042】
(一価のポリシロキサン基)
ポリオール修飾体のポリオールに対して修飾されるポリシロキサン基は、一価のポリシロキサン基であってよい。(一価の)炭化水素基と同様に(一価の)ポリシロキサン基が基材に撥液性を付与し得る。
【0043】
ポリシロキサン基は、下記式:
-[-Si(R-O-]
[式中、
は、各出現において独立して、炭素数1~40の炭化水素基又は反応性基であり、
aは5以上10000以下の整数である。]
で表されてもよい。
【0044】
は、炭素数1~40の炭化水素基、又は反応性基である。
【0045】
炭素数1~40の炭化水素基の例としては、炭素数1~5の炭化水素基及び炭素数6~40の炭化水素基が挙げられる。
【0046】
炭素数1~5の炭化水素基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基等の炭素数1~5の炭化水素基(特に脂肪族炭化水素基、特にアルキル基、例えばメチル基又はエチル基、特にメチル基)が挙げられる。
【0047】
炭素数6~40の炭化水素基は芳香族炭化水素基又は脂肪族炭化水素基であってよく、脂肪族炭化水素基であることが好ましく、特に飽和の脂肪族炭化水素基(アルキル基)であることが好ましい。炭化水素基は環状、直鎖状、分岐鎖状であってよく、好ましくは直鎖状である。炭化水素基の炭素数は6以上、8以上、10以上、12以上、14以上、16以上、又は18以上であってよく、好ましくは10以上、より好ましくは12以上であり、また40以下、35以下、30以下、25以下、20以下、15以下、又は10以下であってよく、好ましくは30以下、より好ましくは25以下である。
【0048】
反応性基の例は、官能基(例えば、ヒドロキシ基、アミノ基、メルカプト基、エポキシ基、カルボキシル基、ハロゲン置換アルキル基、ビニル基、(メタ)アクリル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、及び(メタ)アクリルアミド基、ケイ素原子に直接結合した水素原子等)を有する基である。これらの官能基はケイ素原子に直結していてもよいし、ケイ素原子に直結した有機基に結合していてもよい。有機基は炭化水素基であってよく、例えばアルキレン基又は2価の芳香族基であってもよい。炭化水素基は炭素数2以上12以下であってよく、アルキレン基としては炭素数2以上10以下のものが好ましい。2価の芳香族基としては炭素数6以上12以下のものが好ましい。反応性基は、ヒドロキシ基、エポキシ環、カルボキシル基、(メタ)アクリル基、及びアミノ基からなる群から選択される基であってもよく、例えば、エポキシ環、ヒドロキシ基、(メタ)アクリル基及びカルボキシル基からなる群から選択される少なくとも一種であってもよい。
【0049】
aは3以上、5以上、10以上、30以上、50以上、100以上、500以上、1000以上、2000以上、又は3000以上であってよく、好ましくは10以上であり、また10000以下、7500以下、5000以下、3000以下、1500以下、1000以下、500以下、300以下、200以下、100以下、又は50以下であってよく、好ましくは500以下である。
【0050】
ポリシロキサン基中、炭素数1~5の炭化水素基であるRの量は、Rの合計に対して、20モル%以上、40モル%以上、60モル%以上、又は80モル%以上であってよく、好ましくは50モル%以上であり、またRの合計に対して、100モル%以下、90モル%以下、80モル%以下、又は70モル%以下であってよい。例えば、R基の合計に対して、50モル%以上がメチル基又はエチル基(特にメチル基)であってもよい。
【0051】
ポリシロキサン基中、炭素数6~40の炭化水素基であるRの量は、Rの合計に対して、3モル%以上、10モル%以上、20モル%以上、又は30モル%以上であり、また100モル%以下、90モル%以下、80モル%以下、又は70モル%以下であってよい。
【0052】
ポリシロキサン基中、反応性基であるRの量は、Rの合計に対して、5モル%以上、10モル%以上、20モル%以上、又は30モル%以上であり、また50モル%以下、40モル%以下、30モル%以下、又は20モル%以下であってよい。
【0053】
基は、ランダム又はブロックで導入されていてもよいが、ランダムであることが好ましい。
【0054】
上述したポリシロキサン基の末端構造は、限定されないが、-OR、-Si(R等であってよい。末端構造のRの一以上の反応性基を有していてもよい。反応性基の例は上述したとおりであり、例えば、エポキシ環、ヒドロキシ基、(メタ)アクリル基及びカルボキシル基からなる群から選択される少なくとも一種であってよい。
【0055】
ポリシロキサン基はリンカーを有してもよく、ポリオールとポリシロキサン基とはリンカーを介して結合していてよく、そのようなリンカーとしては、限定されないが、酸素原子で中断されていてよい炭素数1~40(例えば1~20)の炭化水素基、例えば炭素数1~40(例えば1~20)の(ポリ)オキシアルキレン基であってもよい。
【0056】
ポリシロキサン基の例としては、
-[-Si(R)2-O-]a-Si(Rs)3
-Ls1-[-Si(R)2-O-]a-Si(Rs)3
-Ls1-O-Ls1-[-Si(R)2-O-]a-Rs
-Ls1-[-Si(R)2-O-]a-Si(Rs)3
-Ls1-O-Ls1-[-Si(R)2-O-]a-Rs
-Ls1-[-Si(R)2-O-]a-Si(Rs)3、
-Ls1-[-Si(R)2-O-]a-Rs
[式中、
は、各出現において独立して、炭素数1~40の炭化水素基又は反応性基であり、末端のRは一以上の反応性基を有し、
基の合計に対して、50モル%以上がメチル基であり、
Ls1は炭素数1~20の炭化水素基であり、
aは5以上10000以下である。]、
【化1】
[式中、aは0~150の整数を表し、bは1~150の整数を表し、(a+b)は5~200であり、nは0~36の整数である。]
等が挙げられる。
【0057】
撥液性向上の観点から、ポリオール修飾体が、ポリオールに対して、置換基を有してもよい炭素数6以上40以下のアルキル基を修飾してなる化合物であってよい。
【0058】
(-Y-Z
本開示におけるポリオール修飾体は、ポリオールの一以上のヒドロキシ基が下記式:
-Y-Z
[式中、
Yは、Y及びYからなる群から選択される一以上から構成される1+n価の基であり、
は、直接結合、-O-、-C(=O)-、-C(=NR’)-、-S-、-S(=O)-、-NR’-、-C(OR’)R’-、及び-C(OR’)(-)、-N(-)(式中、R’は、各出現において独立して、水素原子又は炭素数1~30(例えば炭素数1~20、1~10、又は1~4)の有機基(例えば炭化水素基、特に脂肪族炭化水素基)である。)からなる群から選択される一以上から構成される基であり、
は、置換基を有してもよい2~4価の炭素数1~40の脂肪族炭化水素基、置換基を有してもよい2~4価の炭化水素芳香環、及び置換基を有してもよい2~4価のヘテロ環からなる群から選択される一以上から構成される基であり、
Zは、置換基を有していてもよい一価の炭素数1以上40以下の炭化水素基又は一価のポリシロキサン基であり、
nは、1以上3以下の整数である。]
で表される基により置換されている。
【0059】
(Y)
Yは、Y及びYからなる群から選択される一以上から構成される1+n価の基であり、
は、直接結合、-O-、-C(=O)-、-C(=NR’)-、-S-、-S(=O)-、-NR’-、-C(OR’)R’-、及び-C(OR’)(-)、-N(-)(式中、R’は、各出現において独立して、水素原子又は炭素数1~30(例えば炭素数1~20、1~10、又は1~4)の有機基(例えば炭化水素基、特に脂肪族炭化水素基)である。)からなる群から選択される一以上から構成される基であり、
は、置換基を有してもよい2~4価の炭素数1~40の脂肪族炭化水素基、置換基を有してもよい2~4価の炭化水素芳香環、及び置換基を有してもよい2~4価のヘテロ環からなる群から選択される一以上から構成される基である。
【0060】
nは、Yと結合するZの数であり、1以上3以下の整数であってよい。nは1以上、2以上、又は3以上であってよく、また3以下、2以下、又は1以下であってよく、例えば2以下である。
【0061】
Yの分子量は10以上、50以上、100以上、200以上、300以上、500以上、又は750以上であってよく、また3000以下、2500以下、2000以下、1500以下、1000以下、750以下、500以下、300以下、200以下、100以下、又は50以下であってよい。
【0062】
○ Y
は、非炭化水素のリンカーである。
【0063】
は、直接結合若しくは二価以上の基である。Yの価数は2~4、2~3、又は2であってよい。Yは直接結合のみでないことが好ましい。
【0064】
の分子量は2000以下、1500以下、1000以下、750以下、又は500以下であってよく、10以上、50以上、100以上、200以上、300以上、又は500以上であってよい。
【0065】
は、直接結合、-O-、-C(=O)-、-S(=O)-、-NR’-、-C(OR’)R’-、及び-C(OR’)(-)(式中、R’は、各出現において独立して、水素原子又は炭素数1~30(例えば炭素数1~20、1~10、又は1~4)の有機基(例えば炭化水素基、特に脂肪族炭化水素基)である。)からなる群から選択される一以上から構成されてよい。Yの例としては、
直接結合、
-O-、
-O-C(=O)-、
-O-C(=O)-O-、
-O-C(=O)-NR’-、
-NR’-、
-NR’-C(=O)-、
-NR’-C(=O)-O-、
-NR’-C(=O)-NR’-、
-C(=O)-、
-C(=O)-O-、
-C(=O)-NR’-、
-SO-、
-SONR’-、
-C(OR’)R’-、
-C(OR’)(-)
(式中、R’は、各出現において独立して、水素原子又は炭素数1~30(例えば炭素数1~20、1~10、又は1~4)の有機基(例えば炭化水素基、特に脂肪族炭化水素基)である。)
が挙げられる。
【0066】
○ Y
は、置換基を有してもよい炭化水素又は置換基を有してもよい炭化水素芳香環又は置換基を有してもよいヘテロ環のリンカーである。
【0067】
は炭化水素基又は非炭化水素基(ヘテロ原子を含む)であってよい。Yは脂肪族又は芳香族であってよい。Yは直鎖状、分岐鎖状、環状であってもよい。
【0068】
は、二価以上の基である。Yの価数は例えば、2~4、2~3、又は2であってよい。
【0069】
の炭素数は、1以上、2以上、3以上、4以上、6以上、8以上、10以上、12以上、14以上、16以上、又は18以上であってよく、また40以下、35以下、30以下、25以下、20以下、15以下、10以下、又は5以下であってよい。
【0070】
は、置換基を有してもよい2~4価の炭素数1~40の脂肪族炭化水素基、置換基を有してもよい2~4価の炭化水素芳香環、及び置換基を有してもよい2~4価のヘテロ環からなる群から選択される一以上から構成される。
【0071】
2~4価の炭素数1~40の脂肪族炭化水素基は、環状、分岐鎖、又は直鎖の炭化水素基であってよい。2~4価の炭素数1~40の脂肪族炭化水素基は、飽和又は不飽和(例えば飽和)の脂肪族炭化水素基であってよい。炭素数1~40の脂肪族炭化水素基の炭素数は1以上、2以上、3以上、4以上、6以上、8以上、又は10以上であってよく、また35以下、30以下、25以下、15以下、10以下、又は5以下であってよい。脂肪族炭化水素基の価数は2以上、3以上、又は4であってよく、4以下、3以下、又は2であってよい。
【0072】
脂肪族炭化水素基は、置換基を有していてもよい。置換基の例としては、-OR’、-N(R’)、-COOR’、及びハロゲン原子等(式中、R’は、各出現において独立して、水素原子又は炭素数1~30、1~20、1~10、又は1~4の有機基(例えば炭化水素基、特に脂肪族炭化水素基)である。)が挙げられる。置換基は活性水素を有してもよいし、有していなくてもよい。置換基の数は、6個以下、5個以下、4個以下、3個以下、2個以下、1個以下、又は0であってよい。置換基を有する脂肪族炭化水素基において、炭素原子及びヘテロ原子の量に対する炭素原子の量が70mol%以上、80mol%以上、90mol%以上、95mol%以上、又は99mol%以上であってよく、好ましくは75mol%以上である。置換基を有する脂肪族炭化水素基において、炭素原子及びヘテロ原子の量に対する炭素原子の量が95mol%以下、90mol%以下、85mol%以下、又は80mol%以下であってよい。
【0073】
2~4価の炭化水素芳香環の例としては、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、テトラセン(ナフタセン)、ペンタセン、ピレン、及びコロネン等の炭化水素芳香環から2~4個の水素を取り除いた基が挙げられる。炭化水素芳香環の環構成原子数は3~20、4~16、又は5~12であり、好ましくは5~12である。炭化水素芳香環の価数は2以上、3以上、又は4であってよく、4以下、3以下、又は2であってよい。
【0074】
炭化水素芳香環は、置換基を有していてもよい。置換基の例としては、-R’、-OR’、-N(R’)、-COOR’、及びハロゲン原子等(式中、R’は、各出現において独立して、水素原子又は炭素数1~30、1~20、1~10、又は1~4の有機基(例えば炭化水素基、特に脂肪族炭化水素基)である。)が挙げられる。置換基は活性水素を有してもよいし、有していなくてもよい。置換基の数は、6個以下、5個以下、4個以下、3個以下、2個以下、1個以下、又は0であってよい。置換基を有する炭化水素芳香環において、炭素原子及びヘテロ原子の量に対する炭素原子の量が70mol%以上、80mol%以上、90mol%以上、95mol%以上、又は99mol%以上であってよく、好ましくは75mol%以上である。置換基を有する炭化水素芳香環において、炭素原子及びヘテロ原子の量に対する炭素原子の量が95mol%以下、90mol%以下、85mol%以下、又は80mol%以下であってよい。
【0075】
2~4価のヘテロ環は、脂肪族基又は芳香族基であってよい。2~4価のヘテロ環の例としては、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、シンノリン、フタラジン、キノキサリン、ピロール、インドール、フラン、ベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、ピラゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、トリアゾール、オキサゾール、ベンズオキサゾール、チアゾール、ベンゾチアゾール、イソチアゾール、ベンズイソチアゾール、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、イミダゾリジン、チアゾリン等から2~4個の水素を取り除いた基が挙げられる。ヘテロ環の環構成原子数は3~20、4~16、又は5~12であり、好ましくは5~12である。ヘテロ環の価数は2以上、3以上、又は4であってよく、4以下、3以下、又は2であってよい。
【0076】
ヘテロ環は、置換基を有していてもよい。置換基の例としては、-R’、-OR’、-N(R’)、-COOR’、及びハロゲン原子等(式中、R’は、各出現において独立して、水素原子又は炭素数1~30、1~20、1~10、又は1~4の有機基(例えば炭化水素基、特に脂肪族炭化水素基)である。)が挙げられる。置換基は活性水素を有してもよいし、有していなくてもよい。置換基の数は、6個以下、5個以下、4個以下、3個以下、2個以下、1個以下、又は0であってよい。置換基を有するヘテロ環において、炭素原子及びヘテロ原子の量に対する炭素原子の量が60mol%以上、70mol%以上、80mol%以上、90mol%以上、95mol%以上、又は99mol%以上であってよく、例えば65mol%以上である。置換基を有するヘテロ環において、炭素原子及びヘテロ原子の量に対する炭素原子の量が95mol%以下、90mol%以下、85mol%以下、80mol%以下、又は70mol%以以下であってよい。
【0077】
の例としては、
-Ali-
-Cy-
-Ali(-)
-Cy(-)
(-)Ali-
(-)Cy-
(-)Ali(-)
(-)Cy(-)
-Ali-Cy-
-Cy-Ali-
-Cy-Ali-Cy-
-Ali-Cy-Ali-
[式中、Aliは炭素数1~20の脂肪族炭化水素基であり、Cyは炭化水素芳香環またはヘテロ環である。]
等が挙げられる。
【0078】
の具体例としては、
炭素数1~40、1~20、又は1~10の不飽和結合を有する直鎖状の炭化水素基、
炭素数1~40、1~20、又は1~10の枝分かれ構造を有する炭化水素基、
-(CH-Cy-(CH-(q及びrはそれぞれ独立して0~20、例えば1~10であり、Cyは炭化水素芳香環またはヘテロ環である)
等が挙げられる。
【0079】
(Yの例)
Yの例を説明する。なお、下記において、R’は、各出現において独立して、水素原子又は炭素数1~30(例えば炭素数1~20、1~10、又は1~4)の有機基(例えば炭化水素基、特に脂肪族炭化水素基)である。
【0080】
Yの例としては、Yが二価の場合、-Y-、-Y-Y-、-Y-Y-Y-、-Y-Y-Y-Y-、-Y-、-Y-Y-、-Y-Y-Y-、-Y-Y-Y-Y-、等が挙げられる。
【0081】
Yの例としては、Yが三価の場合、-Y(-)、-Y-Y(-)、-Y-(Y-)、-Y-Y-Y(-)、-Y-Y(-Y-)、-Y-(Y-Y-)、-Y-Y-Y-Y(-)、-Y-Y-Y-(Y-)2、-Y-Y-(Y-Y-)2、-Y-(Y-Y-Y-)
-Y(-)、-Y-Y(-)、-Y-(Y-)、-Y-Y-Y(-)、-Y-Y(-Y-)、-Y-(Y-Y-)、-Y-Y-Y-Y(-)、-Y-Y-Y-(Y-)2、-Y-Y-(Y-Y-)2、-Y-(Y-Y-Y-);等が挙げられる。
【0082】
Yの例としては、Yが4価の場合、-Y(-)、-Y-Y(-)、-Y-(Y-)、-Y-Y-Y(-)、-Y-Y(-Y-)、-Y-(Y-Y-)、-Y-Y-Y-Y(-)、-Y-Y-Y-(Y-)3、-Y-Y-(Y-Y-)3、-Y-(Y-Y-Y-)
-Y(-)、-Y-Y(-)、-Y-(Y-)、-Y-Y-Y(-)、-Y-Y(-Y-)、-Y-(Y-Y-)、-Y-Y-Y-Y(-)、-Y-Y-Y-(Y-)3、-Y-Y-(Y-Y-)3、-Y-(Y-Y-Y-);等が挙げられる。
【0083】
Yの好ましい例としては
-Y-、-Y-Y-、-Y-Y-Y-、-Y-Y(-)、-Y-、-Y-Y-、-Y-Y-Y-、-Y-Y(-)、等が挙げられる。
【0084】
(好ましいYの例)
好ましくは、Yが
-O-Y11-、又は
-O-Y11-Y21-Y12
[式中、各記号は各出現において独立して、
11が、直接結合、-C(=O)-、-C(=O)-NR’-、又は-C(=S)-NR’-であり、
21が、置換基を有してもよい炭素数1~40の炭化水素基であり、
12が-O-、-O-C(=O)-、-O-C(=O)-O-、-C(=O)-NR’-、-O-C(=O)-NR’-、-NR’-、-NR’-C(=O)-、-NR’-C(=O)-O-、-NR’-C(=O)-NR’-、-C(=O)-、-C(=O)-O-、-C(=O)-NR’-、-SO-、-SONR’-、-C(OR’)R’-、又は-C(OR’)(-)である。]、
であってよい。
【0085】
11は、非炭化水素のリンカーであり、直接結合若しくは二価以上の基である。
【0086】
11の分子量は2000以下、1500以下、1000以下、750以下、又は500以下であり、また10以上、50以上、100以上、200以上、300以上、又は500以上であってよい。
【0087】
11は、直接結合、-C(=O)-、-C(=O)-NR’-、又は-C(=S)-NR’-であってよい。
【0088】
21は、二価の炭化水素のリンカーであり、炭素数1~40の炭化水素基であってよい。
【0089】
21の炭素数は、1以上、2以上、3以上、4以上、6以上、8以上、10以上、12以上、14以上、16以上、又は18以上であり、また40以下、35以下、30以下、25以下、20以下、15以下、10以下、又は5以下であってよい。
【0090】
ここで、炭素数1~40の炭化水素基は、環状、分岐鎖、又は直鎖の炭化水素基であってよく、飽和又は不飽和(例えば飽和)の脂肪族炭化水素基であってよい。
【0091】
炭化水素基は、置換基を有してもよい。置換基の例としては、-OR’、-N(R’)、-COOR’、及びハロゲン原子等(式中、R’は、各出現において独立して、水素原子又は炭素数1~30、1~20、1~10、又は1~4の有機基(例えば炭化水素基、特に脂肪族炭化水素基)である。)が挙げられる。置換基は活性水素を有してもよいし、有していなくてもよい。置換基の数は、6個以下、5個以下、4個以下、3個以下、2個以下、1個以下、又は0であってよい。置換基を有する炭化水素基において、炭素原子及びヘテロ原子の量に対する炭素原子の量が70mol%以上、80mol%以上、90mol%以上、95mol%以上、又は99mol%以上であってよく、好ましくは75mol%以上であり、また95mol%以下、90mol%以下、85mol%以下、又は80mol%以下であってよい。
【0092】
21の具体例としては、
炭素数1~40、1~20、又は1~10の不飽和結合を有する直鎖状の炭化水素基、
炭素数1~40、1~20、又は1~10の枝分かれ構造を有する炭化水素基、
-(CH-Cy-(CH-(q及びrはそれぞれ独立して0~20、例えば1~10であり、Cyは炭化水素芳香環またはヘテロ環である)
等が挙げられる。
【0093】
12は、非炭化水素のリンカーであり、二価以上の基である。
【0094】
12の分子量は2000以下、1500以下、1000以下、750以下、又は500以下であり、また10以上、50以上、100以上、200以上、300以上、又は500以上であってよい。
【0095】
12が-O-、-O-C(=O)-、-O-C(=O)-O-、-O-C(=O)-NR’-、-NR’-、-NR’-C(=O)-、-NR’-C(=O)-O-、-NR’-C(=O)-NR’-、-C(=O)-、-C(=O)-O-、-C(=O)-NR’-、-SO-、-SONR’-、-C(OR’)R’-、又は-C(OR’)(-)であってよい。
【0096】
[Z]
Zは、置換基を有していてもよい一価の炭素数1以上40以下の炭化水素基又は一価のポリシロキサン基であり、上述の(炭化水素基)及び(ポリシロキサン基)における説明を援用する。ここに、炭素数は好ましくは6以上、8以上、10以上、12以上、14以上、16以上、又は18以上が好ましく、30以下、25以下、20以下、15以下、又は10以下が好ましい。また不飽和結合が含んでもよい。不飽和結合数は好ましくは4つ以下、2つ以下、1つが好ましい。置換基はOHが好ましい。
【0097】
[その他修飾基]
ポリオールのヒドロキシ基が-Y-Z以外の修飾基で置換されていてもよい。修飾基の例は、アニオン性基及び/又はカチオン性基である。
【0098】
アニオン性基としては、カルボキシル基、スルホン酸基又はリン酸基を有する単量体が挙げられる。
【0099】
アニオン性基の塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、又はアンモニウム塩、例えばメチルアンモニウム塩、エタノールアンモニウム塩、トリエタノールアンモニウム塩などが挙げられる。
【0100】
カチオン性基としては、アミノ基、好ましくは、三級アミノ基及び四級アミノ基である。三級アミノ基において、窒素原子に結合する2つの基は、同じか又は異なって、炭素数1~5の脂肪族基(特にアルキル基)、炭素数6~20の芳香族基(アリール基)又は炭素数7~25の芳香脂肪族基(特にアラルキル基、例えばベンジル基(C -CH -))であることが好ましい。四級アミノ基において、窒素原子に結合する3つの基は、同じか又は異なって、炭素数1~5の脂肪族基(特にアルキル基)、炭素数6~20の芳香族基(アリール基)又は炭素数7~25の芳香脂肪族基(特にアラルキル基、例えばベンジル基(C-CH-))であることが好ましい。三級アミノ基及び四級アミノ基において、窒素原子に結合する残りの1つの基が、炭素―炭素二重結合を有していてよい。カチオン性基は塩の形でもよい。
【0101】
塩であるカチオン性基は、酸(有機酸又は無機酸)との塩である。有機酸、例えば炭素数1~20のカルボン酸(特に、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ステアリン酸などのモノカルボン酸)が好ましい。
【0102】
[製造方法]
ポリオール修飾体は、修飾基(又は修飾基の前駆構造)を有する修飾剤を、ポリオールのヒドロキシ基と反応させることによって製造してもよい。
【0103】
(ポリオール)
ポリオールは、2以上のヒドロキシ基を有する化合物であり、ポリオール修飾体の原料となる化合物である。ポリオールとは、分子内にヒドロキシ基を2個以上有する化合物である。ポリオールは、脂肪族又は芳香族であってもよいが、好ましくは脂肪族である。例えば、ポリオールは、多糖類、及びヒドロキシ基含有化合物重合体からなる群から選択される少なくとも一種であってよい。
【0104】
ポリオールは、エーテル結合を有してもよい。好ましくは、ポリオールは、2以上のエーテル結合を有してもよい。具体的には、ポリオールは、2以上のヒドロキシ基および2以上のエーテル結合を有する化合物であることが好ましい。換言すると、ポリオールは、2以上のヒドロキシ基を有するポリエーテルであることが好ましい。
【0105】
ポリオールが重合体である場合、単量体単位の繰り返し構造中に、ヒドロキシ基とエーテル結合とを有してもよい。
【0106】
ポリオールは、低分子(例えば重量平均分子量1000未満、500以下)および/または高分子であってもよい。ポリオールの重量平均分子量は、50万以上、100以上、300以上、500以上、1000以上、3000以上、5000以上、10000以上、30000以上、100000以上、300000以上、又は500000以上であり、また1000000以下、750000以下、500000以下、300000以下、100000以下、75000以下、50000以下、30000以下、10000以下、5000以下、3000以下、2000以下、1000以下、又は500以下であってよい。
【0107】
ポリオールが有するヒドロキシ基の数は、2以上、5以上、7以上、10以上、15以上、30以上、50以上、又は100以上であり、また3000以下、1000以下、750以下、500以下、300以下、100以下、50以下、30以下、又は20以下であってよい。であってよい。
【0108】
ポリオールのヒドロキシ基当量は、20以上、40以上、60以上、80以上、100以上、120以上、150以上であり、また1000以下、800以下、600以下、400以下、200以下、100以下、又は75以下であってよい。ポリオールのヒドロキシ基当量は、ポリオールの重量平均分子量を水酸基の数で除した値である。
【0109】
ポリオールは、天然物であってもよい。当該天然物は、高分子天然物、低分子天然物またはこれらの誘導体であってよい。上記天然物の中に微生物から変換された化合物も含む。ポリオールの例としては、重合体のポリオールが挙げられ、例えば多糖類、ヒドロキシ基含有化合物重合体、ポリエーテルポリオール、ポリマーポリオール、ポリエステルポリオール等が挙げられる。
【0110】
多糖類の例としては、澱粉、セルロース、カードラン、プルラン、アルギン酸、カラギーナン、グアーガム、キチン、キトサン、ローカストビーンガム、カッパカラギーナン、イオタカラギーナン、イソマルトデキストリン、ザンサンガム、ジェランガム、タマリンドシードガム等が挙げられる。
【0111】
ポリエーテルポリオールの例としては、開始剤に、アルキレンオキサイドを付加重合させて得られる化合物であってよい。開始剤は、例えば2官能以上のヒドロキシル基を有する化合物が挙げられる。例えば、開始剤は、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、トリメチロールプロパン、トリエタノールアミン、ペンタエリスリトール、エチレンジアミン、芳香族ジアミン、ジエチレントリアミン、ソルビトール、およびスクロース(蔗糖)等が挙げられる。アルキレンオキサイドは、例えばエチレンオキサイド、およびプロピレンオキサイド等が挙げられる。上記開始剤にアルキレンオキサイドを付加重合させて得られるポリエーテルポリオールは、ポリオキシアルキレンポリオールまたはポリオールのオキシアルキレン誘導体とも称される。ポリエーテルポリオールとしては、例えばグリセリンにプロピレンオキサイドを付加重合させて得られるポリオキシプロピレントリオールが挙げられ、ポリグリセリンにプロピレンオキサイドを付加重合させて得られるポリオキシプロピレンポリグリセリルエーテルが挙げられる。
【0112】
ポリマーポリオールの例としては、ポリエーテルポリオール中でそのポリエーテルポリオールの少なくとも一部をエチレン性不飽和単量体と重合させることにより得られる化合物である。上記エチレン性不飽和単量体としては、アクリロニトリル、スチレン等が挙げられる。
【0113】
ポリエステルポリオールの例としては、2官能以上のカルボキシル基を有する化合物と2官能以上のヒドロキシル基を有する化合物とを脱水縮合させて得られる化合物であってよい。2官能以上のカルボキシル基を有する化合物としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、メチルフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、およびこれらの酸無水物が挙げられる。2官能以上のヒドロキシル基を有する化合物としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、およびこれらの重合体等が挙げられる。
【0114】
ヒドロキシ基含有化合物重合体としては、ポリグリセリン等が挙げられる。
【0115】
ポリオールは、好ましくは、澱粉、セルロース、カードラン、プルラン、アルギン酸、カラギーナン、グアーガム、キチン、キトサン、ローカストビーンガム、カッパカラギーナン、イオタカラギーナン、イソマルトデキストリン、ザンサンガム、ジェラガム、タマリンドシードガム、シクロアミロース、およびポリグリセリンからなる群から選択される少なくとも一種であってよい。
【0116】
ポリオールは、重合度が5以上の重合体であってよい。撥液性向上の観点から、ポリオールの重合度は、6以上であってよく、好ましくは7以上、より好ましくは8以上、さらに好ましくは9以上であり、また撥剤の取り扱い性の向上の観点から100以下であってよく、好ましくは50以下、より好ましくは30以下、さらに好ましくは15以下であってよく、最も好ましくは12以下でよい。なお、重合度とは、重合体を構成する単量体単位の繰り返し数を意味する。
【0117】
(修飾剤)
修飾剤は、ポリオールとの反応性を有する化合物であって、上述した、置換基を有してもよい一価の炭素数1以上40以下の炭化水素基又は一価のポリシロキサン基を有する化合物であることが好ましい。
【0118】
修飾剤の例は、次のとおりである。
酸ハロゲン化物 G(O=)C-Z
酸無水物 O(C(=O)-Z)
カルボン酸 HO(O=)C-Z
イソシアネート O=C=N-Z
チオイソシアネート S=C=N-Z
エポキシ (CHOCH)CHO-Z
ハロゲン化物 G-Z
アミン HN-Z
ヒドロキシ HO-Z
[式中、Zは上述のとおりであり、Gはハロゲン原子(例えばF、Cl、Br、又はI)である。]
【0119】
上述の修飾剤の構造におけるZを、修飾基を構成する任意の基に置き換えてもよく、例えば、Zを、置換基を有してもよい一価の炭素数1以上40以下の炭化水素基又は一価のポリシロキサン基を有する基としてもよいし、例えば、Zを-Y-Zとしてもよい。
【0120】
ポリオール修飾体は、ポリオールと修飾剤とを反応させて、合成してもよい。例えば、酸ハロゲン化合物、酸無水物、又はカルボン酸である修飾剤と、ポリオールのヒドロキシ基とを反応させて、エステル結合を形成して、ポリオール修飾体を合成できる。また、ハロゲン化物又はエポキシ化合物である修飾剤と、ポリオールのヒドロキシ基とを反応させて、エーテル結合を形成して、ポリオール修飾体を生成できる。ポリオールと修飾剤との反応条件は、当業者であれば、目的とする生成物に応じて触媒(例えば酸触媒・塩基触媒)の利用、縮合剤の利用等、適宜設計できる。
【0121】
〔分散剤〕
本開示の撥剤は、分散剤を含ことが好ましい。
【0122】
分散剤は、有機分散剤及び無機分散剤から選択される。少なくとも一種であってよい。分散剤は、非アニオン性であってよく、ノニオン性分散剤、カチオン性分散剤、両性分散剤、及び無機分散剤から選択される少なくとも一種であってよい。撥剤がアニオン性分散剤を含まなくてもよい。前記分散剤は、7以上のHLB値を有する脂肪酸エステル以外の分散剤を含んでもよい。例えば、前記分散剤は、7未満のHLB値を有する脂肪酸エステル系分散剤を含んでもよいし、脂肪酸エステル以外の分散剤を含んでもよい。
【0123】
分散剤は有機分散剤及び無機分散剤のそれぞれを用いてもよいし、有機分散剤及び無機分散剤の組み合わせであってもよい。
【0124】
分散剤として有機分散剤を用いてもよい。有機分散剤はノニオン性分散剤、アニオン性分散剤、カチオン性分散剤、両性分散剤に分類でき、有機分散剤は界面活性剤を意味してよい。
【0125】
分散剤は非フッ素であってもよい。
【0126】
[ノニオン性分散剤]
分散剤はノニオン性分散剤を含んでいてもよい。ノニオン性分散剤はノニオン性界面活性剤であってよい。
【0127】
ノニオン性分散剤は低分子型であっても高分子型であってもよい。分子量は、100以上、500以上、1000以上、2000以上、4000以上、又は6000以上であり、また100000以下、10000以下、7500以下、5000以下、25000以下、750以下、又は250以下であってよい。
【0128】
ノニオン性分散剤の例としては、エーテル、エステル、エステルエーテル、アルカノールアミド、ポリオール及びアミンオキシドが挙げられる。
【0129】
エーテルの例は、オキシアルキレン基(好ましくは、ポリオキシエチレン基)を有する化合物である。
【0130】
エステルの例は、アルコールと脂肪酸のエステルである。アルコールの例は、1~30価(特に2~10価)の炭素数1~50(特に炭素数10~30)のアルコール(例えば、脂肪族アルコール)である。脂肪酸の例は、炭素数2~50、特に炭素数5~30の飽和又は不飽和の脂肪酸である。
【0131】
エステルエーテルの例は、アルコールと脂肪酸のエステルに、アルキレンオキシド(特にエチレンオキシド)を付加した化合物である。アルコールの例は、1~30価(特に2~10価)の炭素数1~50(特に炭素数3~30)のアルコール(例えば、脂肪族アルコール)である。脂肪酸の例は、炭素数2~50、特に炭素数5~30の飽和又は不飽和の脂肪酸である。
【0132】
アルカノールアミドの例は、脂肪酸とアルカノールアミンから形成されている。アルカノールアミドは、モノアルカノールアミド又はジアルカノールアミノであってよい。脂肪酸の例は、炭素数2~50、特に炭素数5~30の飽和又は不飽和の脂肪酸である。アルカノールアミンは、1~3のアミノ基及び1~5ヒドロキシル基を有する炭素数2~50、特に5~30のアルカノールであってよい。
【0133】
ポリオールは、2~5価の炭素数10~30のアルコールであってよい。
アミンオキシドは、アミン(二級アミン又は好ましくは三級アミン)の酸化物(例えば炭素数5~50)であってよい。
【0134】
ノニオン性分散剤は、オキシアルキレン基(好ましくはポリオキシエチレン基)を有するノニオン性分散剤であることが好ましい。オキシアルキレン基におけるアルキレン基の炭素数は、2~10であることが好ましい。ノニオン性分散剤の分子におけるオキシアルキレン基の数は、一般に、2~100であることが好ましい。
【0135】
ノニオン性分散剤は、エーテル、エステル、エステルエーテル、アルカノールアミド、ポリオール及びアミンオキシドからなる群から選択されており、オキシアルキレン基を有するノニオン性分散剤であることが好ましい。
【0136】
ノニオン性分散剤は、直鎖状及び/又は分岐状の脂肪族(飽和及び/又は不飽和)基のアルキレンオキシド付加物、直鎖状及び/又は分岐状脂肪酸(飽和及び/又は不飽和)のポリアルキレングリコールエステル、直鎖状及び/又は分岐状脂肪酸(飽和及び/又は不飽和)のソルビタンエステル、直鎖状及び/又は分岐状脂肪酸(飽和及び/又は不飽和)のグリセリンエステル、直鎖状及び/又は分岐状脂肪酸(飽和及び/又は不飽和)のポリグリセリンエステル、直鎖状及び/又は分岐状脂肪酸(飽和及び/又は不飽和)のショ糖エステル、ポリオキシエチレン(POE)/ポリオキシプロピレン(POP)共重合体(ランダム共重合体又はブロック共重合体)、アセチレングリコールのアルキレンオキシド付加物等であってよい。これらの中で、アルキレンオキシド付加部分及びポリアルキレングリコール部分の構造がポリオキシエチレン(POE)又はポリオキシプロピレン(POP)又はPOE/POP共重合体(ランダム共重合体であってもブロック共重合体であってよい)であるものが好ましい。
また、ノニオン性分散剤は、芳香族基を含まなくてもよい。
【0137】
ノニオン性分散剤は、式:
1O-(CHCHO)p-(R2O)q-R3
[式中、R1は炭素数1~22のアルキル基又は炭素数2~22のアルケニル基又はアシル基であり、
2のそれぞれは、独立的に同一又は異なって、炭素数3以上(例えば、3~10)のアルキレン基であり、
3は水素原子、炭素数1~22のアルキル基又は炭素数2~22のアルケニル基であり、
pは2以上の数であり、
qは0又は1以上の数である。]
で示される化合物であってよい。
【0138】
1は、炭素数8~20、特に10~18であることが好ましい。R1の好ましい具体例としては、オクチル基、ノニル基、トリメチルノニル基、ラウリル基、トリデシル基、オレイル基、ステアリル基が挙げられる。
2の例は、プロピレン基、ブチレン基である。
ノニオン性分散剤において、pは3以上の数(例えば、5~200)であってよい。qは、2以上の数(例えば5~200)であってよい。すなわち、-(R2O)q-がポリオキシアルキレン鎖を形成してもよい。
ノニオン性分散剤は、中央に親水性のポリオキシエチレン鎖と疎水性のオキシアルキレン鎖(特に、ポリオキシアルキレン鎖)を含有したポリオキシエチレンアルキレンアルキルエーテルであってよい。疎水性のオキシアルキレン鎖としては、オキシプロピレン鎖、オキシブチレン鎖、スチレン鎖等が挙げられるが、中でも、オキシプロピレン鎖が好ましい。
【0139】
ノニオン性分散剤の具体例には、エチレンオキシドとヘキシルフェノール、イソオクタチルフェノール、ヘキサデカノール、オレイン酸、アルカン(C12-C16)チオール、ソルビタンモノ脂肪酸(C-C19)又はアルキル(C12-C18)アミン等との縮合生成物、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、レシチン誘導体等が包含される。
【0140】
ポリオキシエチレンブロックの割合がノニオン性分散剤(コポリマー)の分子量に対して5~80重量%、例えば30~75重量%、特に40~70重量%であることができる。
ノニオン性分散剤の平均分子量は、一般に300~5,000、例えば、500~3,000である。
ノニオン性分散剤は、一種単独であってよく、あるいは二種以上の混合物であってもよい。ノニオン分散剤は、HLB(親水性疎水性バランス)が15未満(特に5以下)である化合物とHLBが15以上である化合物の混合物であってよい。
【0141】
[カチオン性分散剤]
分散剤はカチオン性分散剤を含んでいてもよい。カチオン性分散剤は、カチオン性界面活性剤であってよい。カチオン性分散剤は低分子型(例えば、分子量2000以下、特に10000以下)であってもよいし、高分子型(例えば、分子量2000以上)であってもよい。カチオン性分散剤は、アミド基を有しない化合物であってもよい。
【0142】
カチオン性分散剤は低分子型であっても高分子型であってもよい。分子量は、100以上、500以上、1000以上、2000以上、4000以上、又は6000以上であり、また100000以下、10000以下、7500以下、5000以下、25000以下、750以下、又は250以下であってよい。
【0143】
カチオン性分散剤は、アミン塩、4級アンモニウム塩、オキシエチレン付加型アンモニウム塩であってよい。カチオン性分散剤の具体例としては、特に限定されないが、アルキルアミン塩、アミノアルコール脂肪酸誘導体、ポリアミン脂肪酸誘導体、イミダゾリン等のアミン塩型分散剤、アルキルトリメチルアンモニム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、塩化ベンゼトニウム等の4級アンモニウム塩型分散剤等が挙げられる。
【0144】
カチオン性分散剤の好ましい例は、
21-N(-R22)(-R23)(-R24)X
[式中、R21、R22、R23及びR24は炭素数1~40の炭化水素基、
Xはアニオン性基である。]
で表される化合物である。
21、R22、R23及び-R24の具体例は、アルキル基(例えば、メチル基、ブチル基、ステアリル基、パルミチル基)である。Xの具体例は、ハロゲン(例えば、塩素)、酸(例えば、塩酸、酢酸)である。
カチオン性分散剤は、モノアルキルトリメチルアンモニウム塩(アルキルの炭素数4~40)であることが特に好ましい。
【0145】
カチオン性分散剤は、アンモニウム塩であることが好ましい。カチオン性分散剤は、式:
-N
[式中、RはC12以上(例えばC12~C50)の直鎖状及び/又は分岐状の脂肪族(飽和及び/又は不飽和)基、
はH又はC1~4のアルキル基、ベンジル基、ポリオキシエチレン基(オキシエチレン基の数例えば1(特に2、特別には3)~50)
(CH、Cが特に好ましい)、
Xはハロゲン原子(例えば、)、C~Cの脂肪酸塩基、
pは1又は2、qは2又は3で、p+q=4である。]
で示されるアンモニウム塩であってよい。Rの炭素数は、12~50、例えば12~30であってよい。
【0146】
カチオン性分散剤の具体例には、ドデシルトリメチルアンモニウムアセテート、トリメチルテトラデシルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、トリメチルオクタデシルアンモニウムクロライド、(ドデシルメチルベンジル)トリメチルアンモニウムクロライド、ベンジルドデシルジメチルアンモニウムクロライド、メチルドデシルジ(ヒドロポリオキシエチレン)アンモニウムクロライド、ベンジルドデシルジ(ヒドロポリオキシエチレン)アンモニウムクロライド、N-[2-(ジエチルアミノ)エチル]オレアミド塩酸塩が包含される。
【0147】
[アニオン性分散剤]
分散剤はアニオン性分散剤を含んでいてもよい。アニオン性分散剤はアニオン性界面活性剤であってよい。分散剤はアニオン性分散剤を含まなくてもよい。
【0148】
アニオン性分散剤は低分子型であっても高分子型であってもよい。分子量は、100以上、500以上、1000以上、2000以上、4000以上、又は6000以上であり、また100000以下、10000以下、7500以下、5000以下、25000以下、750以下、又は250以下であってよい。
【0149】
アニオン性分散剤の例としては、アルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩、アルケニルエーテル硫酸塩、アルケニル硫酸塩、オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、飽和又は不飽和脂肪酸塩、アルキル又はアルケニルエーテルカルボン酸塩、α-スルホン脂肪酸塩、N-アシルアミノ酸型分散剤、リン酸モノ又はジエステル型分散剤、及びスルホコハク酸エステルが挙げられる。
【0150】
[両性分散剤]
分散剤は両性分散剤を含んでいてもよい。両性分散剤は、両性界面活性剤であってよい。
【0151】
両性分散剤は低分子型であっても高分子型であってもよい。分子量は、100以上、500以上、1000以上、2000以上、4000以上、又は6000以上であり、また100000以下、10000以下、7500以下、5000以下、25000以下、750以下、又は250以下であってよい。
【0152】
両性分散剤の例としては、アラニン類、イミダゾリニウムベタイン類、アミドベタイン類、酢酸ベタイン等が挙げられ、具体的には、ラウリルベタイン、ステアリルベタイン、ラウリルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン等が挙げられる。
【0153】
[無機分散剤]
分散剤は無機分散剤を含んでいてもよい。
【0154】
無機分散剤の平均一次粒子径は、5nm以上、30nm以上、100nm以上、1μm以上、10μm以上、又は25μm以上であり、また100μm以下、50μm以下、10μm以下、1μm以下、500nm以下、又は300nm以下であってよい。平均一次粒子径は例えば顕微鏡(走査型電子顕微鏡又は透過型電子顕微鏡)による観察で測定することができる。無機分散剤は親水性粒子であってもよい。
【0155】
無機分散剤の例としては、リン酸三カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、ヒドロキシアパタイト等のリン酸多価金属塩;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩;メタケイ酸カルシウム等のケイ酸塩;硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の硫酸塩;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の水酸化物等が挙げられる。
【0156】
[分散剤の量]
分散剤の量は、ポリオール修飾体100重量部に対して、0.01重量部以上、0.1重量部以上、1重量部以上、3重量部以上、5重量部以上、10重量部以上、15重量部以上、20重量部以上、50重量部以上、75重量部以上、又は100重量部以上であり、またポリオール修飾体100重量部に対して、500重量部以下、300重量部以下、200重量部以下、100重量部以下、30重量部以下、20重量部以下、10重量部以下、5重量部以下、3重量部以下、又は1重量部以下であってよい。
【0157】
〔液状媒体〕
本開示における撥剤は、液状媒体を含んでもよい。液状媒体は水、有機溶媒、又は水と有機溶媒との混合物であってよい。撥剤は分散液又は溶液であってよい。本開示における撥剤は、水分散型であり、少なくとも水を含む。
【0158】
有機溶媒の例は、エステル(例えば、炭素数2~40のエステル、具体的には、酢酸エチル、酢酸ブチル)、ケトン(例えば、炭素数2~40のケトン、具体的には、メチルエチルケトン、ジイソブチルケトン)、アルコール(例えば、炭素数1~40のアルコール、具体的には、イソプロピルアルコール)、芳香族系溶剤(例えば、トルエン及びキシレン)、石油系溶剤(例えば、炭素数5~10のアルカン、具体的には、ナフサ、灯油)である。有機溶媒は水溶性有機溶媒であることが好ましい。水溶性有機溶媒は少なくとも一のヒドロキシ基を有している化合物(例えば、アルコール、グリコール系溶媒等のポリオール、ポリオールのエーテル体(例えばモノエーテル体)等)を含んでいてもよい。これらは単独で用いてもよいし、又は二以上を併用してもよい。
【0159】
[液状媒体の量]
液状媒体の量は、ポリオール修飾体1重量部に対して、1重量部以上、3重量部以上、5重量部以上、10重量部以上、20重量部以上、30重量部以上、40重量部以上、又は50重量部以上、100重量部以上、200重量部以上、300重量部以上、500重量部以上、又は1000重量部以上であり、またポリオール修飾体1重量部に対して、3000重量部以下、2000重量部以下、1000重量部以下、500重量部以下、200重量部以下、175重量部以下、150重量部以下、125重量部以下、100重量部以下、80重量部以下、60重量部以下、40重量部以下、20重量部以下、又は10重量部以下であってよい。
【0160】
水の量は、ポリオール修飾体1重量部に対して、1重量部以上、3重量部以上、5重量部以上、10重量部以上、20重量部以上、30重量部以上、40重量部以上、50重量部以上、100重量部以上、200重量部以上、300重量部以上、500重量部以上、又は1000重量部以上であり、また3000重量部以下、2000重量部以下、1000重量部以下、500重量部以下、200重量部以下、175重量部以下、150重量部以下、125重量部以下、100重量部以下、80重量部以下、60重量部以下、40重量部以下、20重量部以下、又は10重量部以下であってよい。
【0161】
有機溶媒の量は、ポリオール修飾体1重量部に対して、1重量部以上、3重量部以上、5重量部以上、10重量部以上、20重量部以上、30重量部以上、40重量部以上、50重量部以上、100重量部以上、200重量部以上、300重量部以上、500重量部以上、又は1000重量部以上であり、また3000重量部以下、2000重量部以下、1000重量部以下、500重量部以下、200重量部以下、175重量部以下、150重量部以下、125重量部以下、100重量部以下、80重量部以下、60重量部以下、40重量部以下、20重量部以下、又は10重量部以下であってよい。
【0162】
〔シリコーン〕
本開示における撥剤は、シリコーン(ポリオルガノシロキサン)を含んでもよい。シリコーンを含むことで、良好な撥液性に加え、風合いや耐久性を良好に兼ね備え得る。
【0163】
シリコーンとしては、公知のシリコーンを用いることができ、シリコーンの例としては、ポリジメチルシロキサン、変性シリコーン(アミノ変性、エポキシ変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、メチルハイドロジェンシリコーン等)が挙げられる。シリコーンはワックス状の性質を有するシリコーンワックスであってもよい。これらは単独で用いてもよいし、又は二以上を併用してもよい。
【0164】
シリコーンの重量平均分子量は、1000以上、10000以上、又は50000以上であり、また500000以下、2500000以下、100000以下、又は50000以下であってよい。
【0165】
[シリコーンの量]
シリコーンの量は、ポリオール修飾体100重量部に対して、0.1重量部以上、1重量部以上、3重量部以上、5重量部以上、10重量部以上、15重量部以上、20重量部以上、50重量部以上、75重量部以上、又は100重量部以上であり、また500重量部以下、300重量部以下、200重量部以下、100重量部以下、50重量部以下、40重量部以下、30重量部以下、20重量部以下、10重量部以下、又は5重量部以下であってよい。
【0166】
〔ワックス〕
本開示における撥剤は、ワックスを含んでもよい。ワックスを含むことで、撥液性を良好に基材に付与し得る。
【0167】
ワックスの例としては、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス、ポリオレフィンワックス(ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等)、酸化ポリオレフィンワックス、シリコーンワックス、動植物蝋、及び鉱物蝋等が挙げられる。パラフィンワックスが好ましい。ワックスを構成する化合物の具体例は、ノルマルアルカン(例えば、トリコサン、テトラコサン、ペンタコサン、ヘキサコサン、ヘプタコサン、オクタコサン、ノナコサン、トリアコンタン、ヘントリアコンタン、ドトリアコンタン、トリトリアコンタン、テトラトリアコンタン、ペンタトリアコンタン、ヘキサトリアコンタン)、ノルマルアルケン(例えば、1-エイコセン、1-ドコセン、1-トリコセン、1-テトラコセン、1-ペンタコセン、1-ヘキサコセン、1-ヘプタコセン、1-オクタコセン、ノナコサン、トリアコンタン、ヘントリアコンタン、ドトリアコンタン、トリトリアコンタン、テトラトリアコンタン、ペンタトリアコンタン、ヘキサトリアコンタン)である。ワックスを構成する化合物の炭素数は、20~60、例えば、25~45であることが好ましい。ワックスの分子量は、200~2000、例えば250~1500、300~1000であってよい。これらは単独で用いてもよいし、又は二以上を併用してもよい。
【0168】
ワックスの融点は、50℃以上、55℃以上、60℃以上、65℃以上、又は70℃以上であってよく、好ましくは55℃以上、より好ましくは60℃以上である。ワックスの融点は、JIS K 2235-1991に準拠して測定される。
【0169】
[ワックスの量]
ワックスの量は、ポリオール修飾体100重量部に対して、0.1重量部以上、1重量部以上、3重量部以上、5重量部以上、10重量部以上、15重量部以上、20重量部以上、50重量部以上、75重量部以上、又は100重量部以上であり、また500重量部以下、300重量部以下、200重量部以下、100重量部以下、50重量部以下、40重量部以下、30重量部以下、20重量部以下、10重量部以下、5重量部以下であってよい。
【0170】
〔有機酸〕
本開示の撥剤は有機酸を含んでもよい。有機酸としては、公知のものを用いることができる。有機酸としては、カルボン酸、スルホン酸、スルフィン酸等が好ましく挙げられ、特にカルボン酸が好ましい。該カルボン酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、リンゴ酸、クエン酸等が挙げられ、特にギ酸又は酢酸が好ましい。本開示においては、有機酸は、一種を用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。たとえば、ギ酸と酢酸とを組み合わせて用いてもよい。
【0171】
[有機酸の量]
有機酸の量は、ポリオール修飾体100重量部に対して、0.1重量部以上、1重量部以上、3重量部以上、5重量部以上、10重量部以上、15重量部以上、20重量部以上、50重量部以上、75重量部以上、又は100重量部以上であり、また500重量部以下、300重量部以下、200重量部以下、100重量部以下、50重量部以下、40重量部以下、30重量部以下、20重量部以下、10重量部以下、又は5重量部以下であってよい。撥剤のpHが、3~10、例えば5~9、特に6~8となるように有機酸の量は調整されてもよい。撥剤は酸性(pH7以下、例えば6以下)であってもよい。
【0172】
〔硬化剤〕
本開示の撥剤は、硬化剤(活性水素反応性化合物又は活性水素含有化合物)を含んでよい。
【0173】
撥剤における硬化剤(架橋剤)はポリオール修飾体を良好に硬化させ得る。硬化剤は、ポリオール修飾体の有する活性水素又は活性水素反応性基と反応する活性水素反応性化合物又は活性水素含有化合物であってよい。活性水素反応性化合物の例は、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、クロロメチル基含有化合物、カルボキシル基含有化合物及びヒドラジド化合物である。活性水素含有化合物の例は、ヒドロキシル基含有化合物、アミノ基含有化合物及びカルボキシル基含有化合物、ケトン基含有化合物、ヒドラジド化合物及びメラミン化合物である。
【0174】
硬化剤はイソシアネート化合物を含んでよい。イソシアネート化合物は、ポリイソシアネート化合物であってよい。ポリイソシアネート化合物は、1分子中にイソシアネート基を2個以上有する化合物である。ポリイソシアネート化合物は、架橋剤として働く。ポリイソシアネート化合物の例は、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート及びこれらポリイソシアネートの誘導体等を挙げることができる。イソシアネート化合物は、ブロックドイソシアネート化合物(例えばブロックドポリイソシアネート化合物であってよい)。ブロックイソシアネート化合物は、イソシアネート化合物のイソシアネート基をブロック剤でマスクし反応を抑制した化合物である。
【0175】
脂肪族ポリイソシアネートの例は、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、1,2-ブチレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、2,4,4-又は2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6-ジイソシアナトメチルカプロエートの脂肪族ジイソシアネート、及びリジンエステルトリイソシアネート、1,4,8-トリイソシアナトオクタン、1,6,11-トリイソシアナトウンデカン、1,8-ジイソシアナト-4-イソシアナトメチルオクタン、1,3,6-トリイソシアナトヘキサン、2,5,7-トリメチル-1,8-ジイソシアナト-5-イソシアナトメチルオクタン等の脂肪族トリイソシアネート等である。これらは単独で用いてもよいし、又は二以上を併用して用いてもよい。
【0176】
脂環族ポリイソシアネートの例は、脂環族ジイソシアネート及び脂環族トリイソシアネート等である。脂環族ポリイソシアネートの具体例は、1,3-シクロペンテンジイソシアネート、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート)、1,3,5-トリイソシアナトシクロヘキサンである。これらは単独で用いてもよいし、又は二以上を併用して用いてもよい。
【0177】
芳香脂肪族ポリイソシアネートの例は、芳香脂肪族ジイソシアネート及び芳香脂肪族トリイソシアネートである。芳香脂肪族ポリイソシアネートの具体例は、1,3-若しくは1,4-キシリレンジイソシアネート又はその混合物、1,3-又は1,4-ビス(1-イソシアナト-1-メチルエチル)ベンゼン(テトラメチルキシリレンジイソシアネート)若しくはその混合物、1,3,5-トリイソシアナトメチルベンゼンである。これらは単独で用いてもよいし、又は二以上を併用して用いてもよい。
【0178】
芳香族ポリイソシアネートの例は、芳香族ジイソシアネート、芳香族トリイソシアネート、芳香族テトライソシアネートである。芳香族ポリイソシアネートの具体例は、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、2,4’-又は4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート若しくはその混合物、2,4-又は2,6-トリレンジイソシアネート若しくはその混合物、トリフェニルメタン-4,4’,4’’-トリイソシアネート、及び4,4’-ジフェニルメタン-2,2’,5,5’-テトライソシアネート等である。これらは単独で用いてもよいし、又は二以上を併用して用いてもよい。
【0179】
ポリイソシアネートの誘導体は、例えば、上記したポリイソシアネート化合物のダイマー、トリマー、ビウレット、アロファネート、カルボジイミド、ウレトジオン、ウレトイミン、イソシアヌレート、イミノオキサジアジンジオン等の各種誘導体を挙げることができる。これらは単独で用いてもよいし、又は二以上を併用して用いてもよい。
【0180】
これらポリイソシアネートは、一種又は二種以上を組合せて使用することができる。
ポリイソシアネート化合物として、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基をブロック剤でブロックした化合物であるブロック化ポリイソシアネート化合物(ブロックイソシアネート)を使用することが好ましい。溶液中でも比較的安定であり、撥剤と同じ溶液中でも使用可能である等の理由からブロック化ポリイソシアネート化合物を使用することが好ましい。
【0181】
ブロック剤は、遊離のイソシアネート基を封鎖するものである。ブロック化ポリイソシアネート化合物は、例えば、100℃以上、例えば130℃以上に加熱することにより、イソシアネート基が再生し、ヒドロキシル基と容易に反応することができる。ブロック剤の例は、フェノール系化合物、ラクタム系化合物、脂肪族アルコール系化合物、オキシム系化合物等である。ポリイソシアネート化合物は、単独で又は二種以上を組合せて使用することができる。
【0182】
エポキシ化合物は、エポキシ基を有する化合物である。エポキシ化合物の例は、ポリオキシアルキレン基を有するエポキシ化合物、例えば、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル及びポリプロピレングリコ-ルジグリシジルエ-テル;並びにソルビトールポリグリシジルエーテル等である。
クロロメチル基含有化合物はクロロメチル基を有する化合物である。クロロメチル基含有化合物の例は、クロロメチルポリスチレン等である。
カルボキシル基含有化合物はカルボキシル基を有する化合物である。カルボキシル基含有化合物の例は、(ポリ)アクリル酸、(ポリ)メタクリル酸等である。
【0183】
ケトン基含有化合物の具体例としては、(ポリ)ジアセトンアクリルアミド、ジアセトンアルコール等が挙げられる。
ヒドラジド化合物の具体例としては、ヒドラジン、カルボヒドラジド、アジピン酸ヒドラジド等が挙げられる。
メラミン化合物の具体例としては、メラミン樹脂、メチルエーテル化メラミン樹脂等が挙げられる。
【0184】
[硬化剤の量]
硬化剤の量は、ポリオール修飾体100重量部に対して、0.1重量部以上、1重量部以上、3重量部以上、5重量部以上、10重量部以上、15重量部以上、又は20重量部以上、50重量部以上、75重量部以上、又は100重量部以上であり、また500重量部以下、300重量部以下、200重量部以下、100重量部以下、50重量部以下、40重量部以下、30重量部以下、20重量部以下、10重量部以下、5重量部以下であってよい。
【0185】
〔他の成分〕
撥剤は、上記成分以外の他の成分を含んでよい。他の成分の例としては、多糖類、紙力増強剤、凝集剤、歩留まり向上剤、凝結剤、バインダー樹脂、スリップ防止剤、サイズ剤、紙力増強剤、充填剤、帯電防止剤、防腐剤、紫外線吸収剤、抗菌剤、消臭剤、香料等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、又は二以上を併用して用いてもよい。
前記の成分以外に、その他成分として、その他の撥水及び/又は撥油剤、分散剤、風合い調整剤、柔軟剤、難燃剤、塗料定着剤、防シワ剤、乾燥速度調整剤、架橋剤、造膜助剤、相溶化剤、凍結防止剤、粘度調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、pH調整剤、防虫剤、消泡剤、縮み防止剤、洗濯じわ防止剤、形状保持剤、ドレープ性保持剤、アイロン性向上剤、増白剤、白化剤、布地柔軟化クレイ、ポリビニルピロリドン等の移染防止剤、高分子分散剤、汚れ剥離剤、スカム分散剤、4,4-ビス(2-スルホスチリル)ビフェニルジナトリウム(チバスペシャルティケミカルズ製チノパールCBS-X)等の蛍光増白剤、染料固定剤、1,4-ビス(3-アミノプロピル)ピペラジン等の退色防止剤、染み抜き剤、繊維表面改質剤としてセルラーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ、ケラチナーゼ等の酵素、抑泡剤、水分吸放出性等絹の風合い・機能を付与できるものとしてシルクプロテインパウダー、それらの表面改質物又は乳化分散液(例えばK-50、K-30、K-10、A-705、S-702、L-710、FPシリーズ(出光石油化学)、加水分解シルク液(上毛)、シルクゲンGソルブルS(一丸ファルコス))、汚染防止剤(例えばアルキレンテレフタレート及び/又はアルキレンイソフタレート単位とポリオキシアルキレン単位からなる非イオン性高分子化合物(例えば互応化学工業製FR627)、クラリアントジャパン製SRC-1等)等を配合することができる。これらは単独で使用してもよく、また二以上を併用して使用してもよい。
【0186】
[多糖類]
多糖類の例としては、澱粉、キサンタンガム、カラヤガム、ウェランガム、グアーガム、ペクチン、タマリンドガム、カラギーナン、キトサン、アラビアガム、ローカストビーンガム、セルロース、アルギン酸、寒天、デキストラン、セルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、キチンナノファイバー、セルロースナノファイバー及びプルラン等が挙げられる。多糖類は、置換されている変性多糖類(上述したポリオール修飾体は除かれる)であってよく、特に、水酸基やカチオン性基を導入した変性多糖類であってよい。
【0187】
[紙力増強剤、凝集剤、歩留まり向上剤又は凝結剤]
紙力増強剤、凝集剤、歩留まり向上剤又は凝結剤の例としては、スチレン系重合体(スチレン/マレイン酸系重合体、スチレン/アクリル酸系重合体)、尿素‐ホルムアルデヒド重合体、ポリエチレンイミン、メラミン‐ホルムアルデヒド重合体、ポリアミドアミン‐エピクロルヒドリン重合体、ポリアクリルアミド系重合体、ポリアミン系重合体、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、アルキルアミン・エピクロルヒドリン縮合物、アルキレンジクロライドとポリアルキレンポリアミンの縮合物、ジシアンジアミド・ホルマリン縮合物、ジメチルジアリルアンモニウムクロライド重合体、及びオレフィン/無水マレイン酸重合体等が挙げられる。
【0188】
[サイズ剤]
サイズ剤の例としては、セルロース反応性サイズ剤、例えばロジン系石鹸などのロジン系サイズ剤、ロジン系乳濁液/分散液、セルロース反応性サイズ剤、例えばアルキルおよびアルケニルコハク酸無水物(ASA)などの酸無水物の乳濁液/分散液、アルケニルおよびアルキルケテン二量体(AKD)および多量体、ならびにエチレン性不飽和モノマーのアニオン性、カチオン性および両性のポリマー、例えばスチレンとアクリレートとの共重合体が挙げられる。
【0189】
[帯電防止剤]
帯電防止剤の例としては、第4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、第1、第2、第3アミノ基等のカチオン性官能基を有すカチオン型帯電防止剤;スルホン酸塩や硫酸エステル塩、ホスホン酸塩、リン酸エステル塩等のアニオン性官能基を有するアニオン型帯電防止剤;アルキルベタイン及びその誘導体、イミダゾリン及びその誘導体、アラニン及びその誘導体等の両性型帯電防止剤、アミノアルコール及びその誘導体、グリセリン及びその誘導体、ポリエチレングリコール及びその誘導体等のノニオン型帯電防止剤等が挙げられる。これらのカチオン型、アニオン型、両性イオン型のイオン導電性基を有する単量体を重合若しくは共重合して得られたイオン導電性重合体であってもよい。これらは単独で使用してもよく、また二以上を併用してもよい。
【0190】
[防腐剤]
防腐剤は、主に、防腐力、殺菌力を強化し、長期保存中の防腐性を保つために用いられ得る。防腐剤としては、例えば、イソチアゾロン系有機硫黄化合物、ベンズイソチアゾロン系有機硫黄化合物、安息香酸類、2-ブロモ-2-ニトロ-1,3-プロパンジオール等が挙げられる。
【0191】
[紫外線吸収剤]
紫外線吸収剤は、紫外線を防御する効果のある薬剤であり、紫外線を吸収し、赤外線や可視光線等に変換して放出する成分である。紫外線吸収剤としては、例えば、アミノ安息香酸誘導体、サリチル酸誘導体、ケイ皮酸誘導体、ベンゾフェノン誘導体、アゾール系化合物、4-t-ブチル-4'-メトキシベンゾイルメタン等が挙げられる。
【0192】
[抗菌剤]
抗菌剤は、繊維上での菌の増殖を抑え、さらには微生物の分解物由来の嫌なにおいの発生を抑える効果を有する成分である。抗菌剤としては、例えば、四級アンモニウム塩等のカチオン性殺菌剤、ビス-(2-ピリジルチオ-1-オキシド)亜鉛、ポリヘキサメチレンビグアニジン塩酸塩、8-オキシキノリン、ポリリジン等が挙げられる。
【0193】
[消臭剤]
消臭剤としては、クラスターデキストリン、メチル-β-シクロデキストリン、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、モノアセチル-β-シクロデキストリン、アシルアミドプロピルジメチルアミンオキシド、アミノカルボン酸系金属錯体(国際公開第2012/090580号記載のメチルグリシンジ酢酸3ナトリウムの亜鉛錯体)等が挙げられる。
【0194】
[他の成分の量]
他の成分の各量又は総量は、ポリオール修飾体100重量部に対して、0.1重量部以上、1重量部以上、3重量部以上、5重量部以上、10重量部以上、15重量部以上、20重量部以上、50重量部以上、75重量部以上、又は100重量部以上であり、また500重量部以下、300重量部以下、200重量部以下、100重量部以下、50重量部以下、40重量部以下、30重量部以下、20重量部以下、10重量部以下、又は5重量部以下であってよい。
【0195】
<処理された繊維製品又は紙製品の製造方法>
本開示における撥剤で処理された製品の製造方法は、上述した撥剤で基材を処理する処理工程を含む。
【0196】
「処理」とは、撥剤を、浸漬、噴霧、塗布等により基材に適用することを意味する。処理により、撥剤の有効成分であるポリオール修飾体が基材の内部及び/又は表面に付着する。ここで、付着とは物理的な付着又は化学的な付着であってもよく、例えば、ポリオール修飾体が基材(繊維、紙、ガラス等)の有する水酸基に物理的又は(反応して)化学的に修飾されていてもよい。
【0197】
[基材]
本開示における撥剤で処理される基材は限定されないが、好適には繊維製品又は紙製品、特に紙製品である。
【0198】
本開示における撥剤は基材(例えば、繊維基材、紙基材)に撥液性を付与するものであり、撥水剤、撥油剤、耐油剤、及び耐水剤からなる群から選択される少なくとも一として機能し得る。本開示における撥剤で処理された基材は、例えば、耐油紙又は耐水紙である。
【0199】
繊維製品の基材の例としては、綿、麻、羊毛、絹等の動植物性天然繊維、ポリアミド、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン等の合成繊維、レーヨン、アセテート等の半合成繊維、ガラス繊維、炭素繊維、アスベスト繊維等の無機繊維、あるいはこれらの混合繊維が挙げられる。繊維製品には、織物、編物及び不織布、衣料品形態(例えば撥水性衣服、例えば雨合羽)の布及びカーペットが含まれるが、布とする前の状態の繊維、糸、中間繊維製品(例えば、スライバー又は粗糸等)に対して、処理がなされてもよい。
【0200】
紙製品の基材の例としては、クラフトパルプあるいはサルファイトパルプ等の晒あるいは未晒化学パルプ、砕木パルプ、機械パルプあるいはサーモメカニカルパルプ等の晒あるいは未晒高収率パルプ、新聞古紙、雑誌古紙、段ボール古紙あるいは脱墨古紙等の古紙パルプ等からなる紙、紙でできた容器、紙でできた成形体等が挙げられる。紙製品の具体例としては、食品包装材、食品容器、石膏ボード原紙、コート原紙、中質紙、一般ライナー及び中芯、中性純白ロール紙、中性ライナー、防錆ライナー及び金属合紙、クラフト紙、中性印刷筆記用紙、中性コート原紙、中性PPC用紙、中性感熱用紙、中性感圧原紙、中性インクジェット用紙及び中性情報用紙、モールド紙(モールド容器)等が挙げられ、好適な例としては食品包装材及び食品容器が挙げられる。
【0201】
本開示の撥剤で処理される基材としては、繊維製品又は紙製品に限られず、他にも、石材、フィルター(例えば、静電フィルター)、防塵マスク、燃料電池の部品(例えば、ガス拡散電極及びガス拡散支持体)、ガラス、木、皮革、毛皮、石綿、レンガ、セメント、金属及び酸化物、窯業製品、プラスチック、塗面、及びプラスター等を挙げることができる。
【0202】
基材がガラスである場合、製造されるガラス製品は光学部材であってよい。ガラス基材の表面(最外層)に何らかの層(または膜)、例えばハードコート層や反射防止層などが形成されていてもよい。反射防止層には、単層反射防止層および多層反射防止層のいずれを使用してもよい。反射防止層に使用可能な無機物の例としては、SiO、SiO、ZrO、TiO、TiO、Ti、Ti、Al、Ta、CeO、MgO、Y、SnO、MgF、WOなどが挙げられる。これらの無機物は、単独で、またはこれらの2種以上を組み合わせて(例えば混合物として)使用してもよい。多層反射防止層とする場合、その最外層にはSiOおよび/またはSiOを用いることが好ましい。製造すべき物品が、タッチパネル用の光学ガラス部品である場合、透明電極、例えば酸化インジウムスズ(ITO)や酸化インジウム亜鉛などを用いた薄膜を、基材(ガラス)の表面の一部に有していてもよい。また、基材は、その具体的仕様等に応じて、絶縁層、粘着層、保護層、装飾枠層(I-CON)、霧化膜層、ハードコーティング膜層、偏光フィルム、相位差フィルム、および液晶表示モジュールなどを有していてもよい。
【0203】
[処理方法]
本開示の撥剤は、処理剤(特に表面処理剤)として、従来既知の方法により基材に適用することができる。処理の方法としては、本開示における撥剤を、必要により有機溶媒又は水に分散して希釈して、浸漬塗布、スプレー塗布、泡塗布等のような既知の方法により、基材の内部及び/又は表面に付着させ、乾燥する方法であってよい。乾燥後、撥剤における固形成分が付着した繊維製品が得られる。また、必要ならば、適当な架橋剤と共に適用し、キュアリングを行ってもよい。本開示の撥剤に、必要により、さらに、撥水及び/又は撥油剤、スリップ防止剤、帯電防止剤、風合い調整剤、柔軟剤、抗菌剤、難燃剤、塗料定着剤、防シワ剤、乾燥速度調整剤、架橋剤、造膜助剤、相溶化剤、凍結防止剤、粘度調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、pH調整剤、防虫剤、消泡剤等の各種添加剤とを併用することも可能である。各種添加剤の例としては、上述の説明における「他の成分」で説明したものと同様であってよい。基材と接触させる処理剤における撥剤の濃度は、用途によって適宜変更されてよいが、0.01~10重量%、例えば0.05~5重量%であってよい。
【0204】
撥剤は、基材を液体で処理するために知られている方法のいずれかによって基材に適用することができる。基材を撥剤に浸してよく、あるいは、基材に溶液を付着又は噴霧してよい。処理された基材は、撥液性を発現させるために、好ましくは、加熱により乾燥及びキュアリングが行われる。加熱温度は例えば100℃~200℃、100℃~170℃又は100℃~120℃であってよい。本開示において低温加熱(例えば、100℃~140℃)であっても良好な性能が得られる。本開示において加熱時間は5秒~60分であってよく、例えば30秒~3分であってよい。繊維製品が紙であるときには、紙に塗工してよく、あるいは、紙に溶液を付着又は噴霧してよく、あるいは、抄造前のパルプスラリーと混合して処理してもよい。処理は外添処理であっても、内添処理であってもよい。あるいは、撥剤はクリーニング法によって繊維製品に適用してよく、例えば、洗濯適用又はドライクリーニング法等において繊維製品に適用してよい。
[紙製品の処理]
紙基材としては、紙、紙でできた容器、紙でできた成形体(例えばパルプモールド)などが挙げられる。
【0205】
紙は、従来既知の抄造方法によって製造できる。抄造前のパルプスラリーに撥剤を添加する内添処理方法、又は抄造後の紙に撥剤を適用する外添処理方法を用いることができる。
【0206】
外添処理方法のサイズプレスは、塗布方式によって以下のように分けることも可能である。
1つの塗布方式は、2本のゴムロールの間に紙を通して形成されるニップ部に塗布液(サイズ液)を供給し、ポンドと呼ばれる塗液溜りを作り、この塗液溜りに紙を通して紙の両面にサイズ液を塗布する、いわゆるポンド式ツーロールサイズプレスである。他の塗布方式は、サイズ液を表面転写型により塗布するゲートロール型、及び、ロッドメタリングサイズプレスである。ポンド式ツーロールサイズプレスにおいてサイズ液は紙の内部まで浸透しやすく、表面転写型においてサイズ液成分は紙の表面に留まりやすい。表面転写型は、ポンド式ツーロールサイズプレスと比べて、塗布層が紙の表面に留まりやすく、表面に形成される塗布層がポンド式ツーロールサイズプレスより多い。本開示では、前者のポンド式2ロールサイズプレスを用いた場合でも紙に性能を付与できる。このように処理された紙は、室温又は高温での簡単な乾燥後に、任意に、紙の性質に依存して300℃まで、例えば200℃まで、特に80℃~180℃の温度範囲をとり得る熱処理を伴うことで、優れた耐油性及び耐水性等を示し得る。
【0207】
内添処理方法は抄造前のパルプスラリーに撥剤を添加する処理方法を意味してよい。内添処理方法として、パルプスラリーに撥剤を添加して攪拌混合する工程と、当該工程で調製したパルプ組成物を所定形状の網状体を介して吸引脱水してパルプ組成物を堆積さてパルプモールド中間体を形成する工程と、当該パルプモールド中間体を加温された成形型によって成型乾燥することで、紙、紙でできた容器、紙でできた成形体を得る工程の一以上を含んでもよいが、この限りではない。処理された紙は、室温又は高温での簡単な乾燥後に、任意に、紙の性質に依存して熱処理を施してもよい。熱処理の温度は150℃以上、180℃以上、又は210℃以上であり、また300℃以下、250℃以下、又は200℃以下であってよく、特に80℃~180℃範囲であってよい。斯かる温度範囲で熱処理を行うことにより、優れた耐油性及び耐水性等を示し得る。
【0208】
本開示は、石膏ボード原紙、コート原紙、中質紙、一般ライナー及び中芯、中性純白ロール紙、中性ライナー、防錆ライナー及び金属合紙、クラフト紙などにおいて使用することができる。また、中性印刷筆記用紙、中性コート原紙、中性PPC用紙、中性感熱用紙、中性感圧原紙、中性インクジェット用紙及び中性情報用紙においても用いることができる。
【0209】
パルプ原料としては、クラフトパルプあるいはサルファイトパルプ等の晒あるいは未晒化学パルプ、砕木パルプ、機械パルプあるいはサーモメカニカルパルプ等の
晒あるいは未晒高収率パルプ、新聞古紙、雑誌古紙、段ボール古紙あるいは脱墨古紙等の古紙パルプのいずれも使用することができる。また、上記パルプ原料と石綿、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリビニルアルコール等の合成繊維との混合物も使用することができる。
【0210】
サイズ剤を加えて、紙の耐水性を向上させることができる。サイズ剤の例は、カチオン性サイズ剤、アニオン性サイズ剤、ロジン系サイズ剤(例えば、酸性ロジン系サイズ剤、中性ロジン系サイズ剤)である。サイズ剤の量は、パルプに対して0.01~5重量%であってよい。
【0211】
紙には必要に応じて、通常使用される程度の製紙用薬剤として、澱粉、変性澱粉、カルボキシメチルセルロース、ポリアミドポリアミン-エピクロルヒドリン樹脂等の紙力増強剤、凝集剤、定着剤、歩留り向上剤、染料、蛍光染料、スライムコントロール剤、消泡剤等の紙の製造で使用される添加剤を使用することができる。澱粉及び変性澱粉を用いることが好ましい。 必要により、澱粉、ポリビニルアルコール、染料、コーティングカラー、防滑剤等を用いて、サイズプレス、ゲートロールコーター、ビルブレードコーター、キャレンダー等によって、撥剤を紙に塗布することができる。
【0212】
外添においては、塗布層に含まれるポリオール修飾体の量が0.01~2.0g/m、特に0.1~1.0g/mであることが好ましい。塗布層は、撥剤と澱粉及び/又は変性澱粉によって形成されることが好ましい。塗布層における紙用撥剤の固形分量は2g/m以下であることが好ましい。
内添においては、紙を形成するパルプ100重量部に対して、撥剤の量が0.01~50重量部又は0.01~30重量部、例えば0.01~10重量部、特に0.2~5.0重量部となるように、撥剤をパルプと混合することが好ましい。
【0213】
外添において、ロールとロールの間に処理液をため、任意のロールスピードとニップ圧で、ロール間の処理液に原紙を通す、いわゆるポンド式2ロールサイズプレス処理を用いても紙に耐油性を付与することができる。
【0214】
外添処理において、紙基材はサイズ剤、紙力増強剤、凝集剤、歩留まり剤又は凝結剤などの添加剤を含んでよい。添加剤はノニオン性、カチオン性、アニオン性又は両性であってよい。添加剤のイオン電荷密度は-10000~10000 μeq/g、好ましくは-4000~8000 μeq/gであり、より好ましくは-1000~7000 μeq/gであってよい。サイズ剤、紙力増強剤、凝集剤、歩留まり剤又は凝結剤などの添加剤(固形分又は活性成分)は、パルプに対して、一般に、0.1~10重量%(例えば、0.2~5.0重量%)の量で使用できる。カチオン性の添加剤(例えば、サイズ剤、紙力増強剤、凝集剤、歩留まり剤又は凝結剤)を含む紙基材の場合は、撥剤はアニオン性であることが好ましい。
【0215】
内添処理において、パルプ濃度が0.5~5.0重量%(例えば、2.5~4.0重量%)であるパルプスラリーを抄紙することが好ましい。パルプスラリーに添加剤(例えば、サイズ剤、紙力増強剤、凝集剤、歩留まり剤又は凝結剤など)及びポリオール修飾体を添加することができる。添加剤(例えば、サイズ剤、紙力増強剤、凝集剤、歩留まり剤又は凝結剤など)の例は、アルキルケテンダイマー、アルケニル無水コハク酸、スチレン系重合体(スチレン/マレイン酸系重合体、スチレン/アクリル酸系重合体)、尿素‐ホルムアルデヒド重合体、ポリエチレンイミン、メラミン‐ホルムアルデヒド重合体、ポリアミドアミン‐エピクロルヒドリン重合体、ポリアクリルアミド系重合体、ポリアミン系重合体、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、アルキルアミン・エピクロルヒドリン縮合物、アルキレンジクロライドとポリアルキレンポリアミンの縮合物、ジシアンジアミド・ホルマリン縮合物、ジメチルジアリルアンモニウムクロライド重合体、オレフィン/無水マレイン酸重合体である。
【0216】
[繊維製品の前処理]
繊維製品は、本開示の撥剤で処理する前に前処理されていてもよい。繊維製品の前処理を行うことで、撥剤で処理後の繊維製品に優れた堅牢性を付与し得る。
【0217】
繊維製品の前処理の例は、反応性第四級アンモニウム塩との反応等によるカチオン化処理、スルホン化、カルボキシル化、リン酸化等のアニオン化処理、アニオン化処理後のアセチル化処理、ベンゾイル化処理、カルボキシメチル化処理、グラフト化処理、タンニン酸処理、高分子コーティング処理等が挙げられる。
【0218】
繊維製品を前処理する方法としては、限定されないが、従来既知の方法により繊維製品を前処理することができる。前処理液を必要により有機溶媒又は水に分散して希釈して、浸漬塗布、スプレー塗布、泡塗布等のような既知の方法により、繊維製品の内部及び/又は表面に付着させ、乾燥する方法であってよい。求める処理の程度に応じて前処理液のpH及び温度等が調整されてよい。繊維製品を前処理する方法の一例として、繊維製品を上述の処理剤で前処理する方法について詳述する。
【0219】
繊維製品の前処理方法は、繊維に-SO(式中、Mは一価のカチオンを示す)で示される1価の基、-COOM(式中、Mは一価のカチオンを示す)で示される1価の基、及び-O-P(O)(OX)(OX)(式中、X及びXはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1~22のアルキル基を示す)で示される1価の基からなる群より選ばれる一以上の官能基(以下、「特定官能基」という場合もある)を付与する工程を備えてもよい。
【0220】
としては、H、K、Na又は置換基を有していてもよいアンモニウムイオンが挙げられる。Mとしては、H、K、Na又は置換基を有していてもよいアンモニウムイオンが挙げられる。X又はXがアルキル基である場合、炭素数1~22のアルキル基であることが好ましく、炭素数4~12のアルキル基であることがより好ましい。
【0221】
上記特定官能基を含む繊維(以下、「官能基含有繊維」という場合もある)は、例えば、以下の方法により用意することができる。
(i)繊維材料に、上記特定官能基を有する化合物を付着させる。なお、化合物の付着は、上記特定官能基が十分な量で残される範囲で化合物の一部と繊維の一部とが化学的に結合している状態であってもよい。
(ii)繊維を構成する材料に上記特定官能基が直接導入されている繊維を用意する。
【0222】
(i)の場合、例えば、繊維材料を、上記特定官能基を有する化合物の一種以上が含まれる前処理液で処理する官能基導入工程により、官能基含有繊維を得ることができる。
【0223】
繊維材料の素材としては、特に制限はなく、綿、麻、絹、羊毛等の天然繊維、レーヨン、アセテート等の半合成繊維、ポリアミド(ナイロン等)、ポリエステル、ポリウレタン、ポリプロピレン等の合成繊維及びこれらの複合繊維、混紡繊維等が挙げられる。繊維材料の形態は繊維(トウ、スライバー等)、糸、編物(交編を含む)、織物(交織を含む)、不織布等のいずれの形態であってもよい。
【0224】
本実施形態においては、得られる繊維製品の撥水性が良好になる観点から、ポリアミド及びポリエステルを素材として含む繊維材料を用いることが好ましく、特に、ナイロン6、ナイロン6,6等のナイロン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチルテレフタレート、ポリ乳酸等のポリエステル、及びこれらが含まれる混合繊維を用いることが好ましい。
【0225】
上記-SOを有する化合物としては、フェノール系高分子を用いることができる。このようなフェノール系高分子としては、例えば、下記一般式で表される化合物を少なくとも一種含むものが挙げられる。
【0226】
【化2】

[式中、Xは-SO(式中、Mは1価のカチオンを示す)又は下記一般式で表される基を表し、nは20~3000の整数である。]
【0227】
【化3】

[式中、Mは1価のカチオンを表す。]
【0228】
上記Mとしては、H、K、Na又は置換基を有していてもよいアンモニウムイオンが挙げられる。
【0229】
上記Mとしては、H、K、Na又は置換基を有していてもよいアンモニウムイオンが挙げられる。
【0230】
上記一般式で表される化合物は、例えば、フェノールスルホン酸のホルマリン縮合物、スルホン化ビスフェノールSのホルマリン縮合物であってもよい。
【0231】
上記-COOMを有する化合物としては、ポリカルボン酸系ポリマーが挙げられる。
【0232】
ポリカルボン酸系ポリマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸等をモノマーとして用いて従来公知のラジカル重合法で合成したポリマー、又は、市販されているものを使用することができる。
【0233】
ポリカルボン酸系ポリマーの製造方法としては、例えば、上記モノマー及び/又はその塩の水溶液にラジカル重合開始剤を添加して、30~150℃で2~5時間加熱反応させる方法が挙げられる。このとき、上記モノマー及び/又はその塩の水溶液に、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類やアセトン等の水性溶剤を添加してもよい。ラジカル重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、過硫酸塩と重亜硫酸ナトリウム等の組み合わせによるレドックス系重合開始剤、過酸化水素、水溶性アゾ系重合開始剤等が挙げられる。これらのラジカル重合開始剤は単独で使用してもよく、又は二以上を併用してもよい。さらに、ラジカル重合の際には、重合度を調整する目的で連鎖移動剤(例えば、チオグリコール酸オクチル)を添加してもよい。
【0234】
ラジカル重合には、上記モノマーのほかに共重合可能なモノマーを使用することができる。共重合可能なモノマーとしては、エチレン、塩化ビニル、酢酸ビニル等のビニル系モノマー、アクリルアミド、アクリレート類、メタクリレート類等が挙げられる。アクリレート類及びメタクリレート類は、ヒドロキシル基等の置換基を有していてもよい炭素数1~3の炭化水素基を有するものが好ましい。このようなアクリレート類又はメタクリレート類としては、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート等が挙げられる。これらの共重合可能なモノマーは、単独で使用してもよく、又は二以上を併用してもよい。
【0235】
ポリカルボン酸系ポリマー中のカルボキシル基はフリーであっても、アルカリ金属やアミン系化合物等によって中和されていてもよい。アルカリ金属としては、ナトリウム、カリウム、リチウム等が挙げられ、アミン系化合物としてはアンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。
【0236】
ポリカルボン酸系ポリマーの重量平均分子量は、得られる繊維製品の撥水性が良好となる観点から、1000~20000が好ましく、3000~15000がより好ましい。
【0237】
ポリカルボン酸系ポリマーは、「ネオクリスタル770」(日華化学株式会社製、商品名)、「セロポールPC-300」(三洋化成工業株式会社製、商品名)等の市販品を用いることができる。
【0238】
上記-O-P(O)(OX)(OX)を有する化合物としては、例えば、下記一般式で表されるリン酸エステル化合物が挙げられる。
【化4】
[式中、X又はXは上記と同義であり、Xは炭素数1~22のアルキル基を示す。]
【0239】
上記リン酸エステル化合物としては、アルキルエステル部分が、炭素数1~22のアルキル基であるリン酸モノエステル、ジエステル及びトリエステル、並びにこれらの混合物を用いることができる。
【0240】
得られる繊維製品の撥水性が良好となる観点から、ラウリルリン酸エステル、デシルリン酸エステルを用いることが好ましい。
【0241】
リン酸エステル化合物は、例えば、「フォスファノールML-200」(東邦化学工業株式会社製、商品名)等の市販品を用いることができる。
【0242】
上記特定官能基を有する化合物の一種以上が含まれる前処理液は、例えば、上述した化合物の水溶液とすることができる。また、前処理液には、酸、アルカリ、界面活性剤、キレート剤等を含有させてもよい。
【0243】
繊維材料を上記前処理液で処理する方法としては、例えば、パディング処理、浸漬処理、スプレー処理、コーティング処理が挙げられる。パディング処理としては、例えば、繊維染色加工辞典(昭和38年、日刊工業新聞社発行)の396~397頁や色染化学III(1975年、実教出版株式会社発行)の256~260頁に記載のパディング装置を用いた方法が挙げられる。コーティング処理としては、例えば、染色仕上機器総覧(昭和56年、繊維社発行)の473~477頁に記載のコーティング機を用いる方法が挙げられる。浸漬処理としては、例えば、染色仕上機器総覧(昭和56年、繊維社発行)の196~247頁に記載のバッチ式染色機を用いる方法が挙げられ、液流染色機、気流染色機、ドラム染色機、ウインス染色機、ワッシャー染色機、チーズ染色機等を用いることができる。スプレー処理としては、例えば、圧搾空気で処理液を霧状にして吹き付けるエアースプレーや、液圧霧化方式のエアースプレーを用いた方法が挙げられる。このときの処理液の濃度や付与後の熱処理等の処理条件は、その目的や性能等の諸条件を考慮して、適宜調整することができる。また、前処理液が水を含有する場合は、繊維材料に付着させた後に水を除去するために乾燥させることが好ましい。乾燥方法としては、特に制限はなく、乾熱法、湿熱法のいずれであってもよい。乾燥温度も特に制限されないが、例えば、室温~200℃で10秒~数日間乾燥させればよい。必要に応じて、乾燥後に100~180℃の温度で10秒~5分間程度加熱処理してもよい。
【0244】
なお、繊維材料が染色されるものである場合、前処理液による処理は、染色前でも、染色と同浴で行ってもよいが、還元ソーピングを行う場合は、その過程で吸着した上記特定官能基を有する化合物(例えば、フェノール系高分子化合物等)が、脱落してしまうおそれがあるので、染色後の還元ソーピング後に行うことが好ましい。
【0245】
浸漬処理における処理温度は、60~130℃とすることができる。処理時間は、5~60分とすることができる。
【0246】
前処理液による官能基導入工程は、上記特定官能基を有する化合物の付着量が、繊維材料100重量部に対し、1.0~7.0重量部になる量で処理することが好ましい。この範囲内であると、耐久撥水性及び風合いを高水準で両立させることができる。
【0247】
前処理液は、pHを3~5に調整することが好ましい。pH調整は、酢酸、リンゴ酸等のpH調整剤を用いることができる。
【0248】
前処理液には、上記特定官能基を有する化合物を塩析効果により有効に繊維材料に吸着させるために塩を併用することもできる。使用できる塩としては、例えば、塩化ナトリウ
ム、炭酸ナトリウム、硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウムが挙げられる。
【0249】
前処理液による官能基導入工程では、過剰に処理された上記特定官能基を有する化合物を除去することが好ましい。除去方法としては、水洗による方法が挙げられる。十分な除去を行うことにより、後段の撥水加工において撥水性の発現が阻害されることを抑制することができ、加えて、得られる繊維製品の風合が良好となる。また、得られる官能基含有繊維は、上述の処理剤に接触させる前に、十分乾燥させておくことが好ましい。
【0250】
(ii)繊維を構成する材料に上記特定官能基が直接導入されている繊維としては、例えば、カチオン可染ポリエステル(CD-PET)が挙げられる。
【0251】
官能基含有繊維は、得られる繊維製品の撥水性が良好となる観点から、表面のゼータ電位が-100~-0.1mVであることが好ましく、-50~-1mVであることがより好ましい。繊維の表面のゼータ電位は、例えば、ゼータ電位・粒径測定システムELSZ-1000ZS(大塚電子株式会社製)にて測定することができる。
【0252】
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【実施例0253】
以下、実施例を挙げて本開示を詳しく説明するが、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0254】
<試験方法>
試験の手順は次のとおりである。
【0255】
[100μm以上の粒子の体積存在比率]
水分散型の撥剤のレーザー回折/散乱装置による測定によって得られる体積基準の頻度分布(体積分布)から、100μm以上の粒子の存在比率を算出し、その値を100μm以上の粒子の体積存在比率とした。
【0256】
[メジアン径(メディアン径)D50]
水分散型の撥剤のレーザー回折/散乱装置による測定によって求めた。
【0257】
[ポリオール修飾体の示差走査熱量測定]
ポリオール修飾体の最大吸熱ピーク温度、融点、結晶化温度、およびガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)により算出した。DSC測定は窒素雰囲気下、-20℃に冷却した後、その後の10℃/分で150℃まで昇温過程に観測される吸熱ピークを測定した。複数融解ピークが現れる場合、最も吸熱熱量の大きいピークを最大吸熱ピークとし、そのピークトップを最大吸熱ピーク温度とした。吸熱熱量は吸熱ピーク温度の±10℃の範囲の熱量を計算して算出した。
【0258】
[撥剤から液状媒体を除去して得られる固形成分の示差走査熱量測定]
撥剤から液状媒体を除去して得られる固形成分の最大吸熱ピーク温度、融点、結晶化温度、およびガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)により算出した。なお撥剤からの液状媒体の除去は、撥剤を150℃で1時間乾燥することで行った。
DSC測定は窒素雰囲気下、-20℃に冷却した後、その後の10℃/分で150℃まで昇温過程に観測される吸熱ピークを測定した。複数吸熱ピークが現れる場合、最も高温側の吸熱ピークを最大吸熱ピークとし、そのピークトップを最大吸熱ピーク温度とした。吸熱熱量は吸熱ピーク温度の±10℃の範囲の熱量を計算して算出した。
【0259】
[撥剤から液状媒体を除去して得られる固形成分の温度可変X線回折法測定]
撥剤から液状媒体を除去して得られる固形成分の結晶状態は、RIGAKUのSmartLabを用いてX線回折法(XRD)にて測定した。光源にはCuのKα線を用いた。温度可変XRD(XRD-DSC)測定は窒素雰囲気下、-20℃に冷却した後、5℃/分で25℃又は55℃まで昇温後、5分保持した後の測定を行った。
ピークの半値幅は、ベースラインとピークトップの半分の強度でのピークの2θの幅とした。
回折強度比[A55℃/A25℃]は次のように算出した。
測定温度25℃において2θが15°~30°の領域における回折強度の極大点の強度を[ピーク強度A25℃]とした。また測定温度55℃において2θが15°~30°の領域における回折強度の極大点の強度を[ピーク強度A55℃]した。以下の式の通り、[ピーク強度A55℃]を[ピーク強度A25℃]で除することで回折強度比[A55℃/A25℃]を算出した。
回折強度比[A55℃/A25℃]=[ピーク強度A55℃]/[ピーク強度A25℃
なお撥剤からの液状媒体の除去は150℃で1時間乾燥することで行った。
【0260】
[HD接触角]
ポリオール修飾体の固形分濃度1.0%の溶液(または分散液)を、シリコンウェハー上に2500rpm、25秒の条件でスピンコートし、スピンコート膜を得た。これを140℃で1分間加熱することで、ポリオール修飾体で処理したシリコンウェハーを作製した。溶媒または分散媒にはクロロホルムを用いた。ポリオール修飾体処理したシリコンウェハー上に、2μLのHD(ヘキサデカン)を滴下し、着滴1秒後の接触角をポリオール修飾体のHD接触角とした。
【0261】
[水接触角]
ポリオール修飾体の固形分濃度1.0%の溶液(または分散液)を、シリコンウェハー上に2500rpm、25秒の条件でスピンコートし、スピンコート膜を得た。これを140℃で1分間加熱することで、ポリオール修飾体で処理したシリコンウェハーを作製した。溶媒または分散媒にはクロロホルムを用いた。ポリオール修飾体処理したシリコンウェハー上に、2μLの水を滴下し、着滴1秒後の接触角をポリオール修飾体の水接触角とした。
【0262】
[パルプモールドの作製]
自動モールド成型機を使用し、パルプモールドを成型した。下部には、多数の吸引孔を設けた金属製のパルプモールド成形型の上に網状体を配置したもの、上部には、金属製の槽を配置させ、上部の金属槽にパルプスラリーと水分散型撥剤の混合物を入れた。パルプモールド成形型の網状体が配置された側と反対側から、真空ポンプによりパルプ含有水性組成物をパルプモールド成形型および網状体を介して吸引・脱水し、パルプ含有水性組成物に含まれる固形分(パルプ等)を網状体の上に堆積させて、パルプモールド中間体を得た。次に、得られたパルプモールド中間体を、60~250℃に加温された金属製のオスメス成形型で上下から、0.05~5MPaの圧力下で乾燥させる。これにより、容器の形状に成形されたパルプモールド製品を製造した。
【0263】
[常温耐油試験]
パルプモールドに25℃のコーン油100mlを注ぎ、室温で45分放置した後に、コーン油をパルプモールドから取り出し、パルプモールドの染みの度合いを評価した。染み込みの程度により、以下のように評価数値を設定した。
5:内側に染み無
4:内側に染み有。裏側に染み無。
3:内側に染み有。裏側にわずかに染み出しあり。
2:内側に染み有。裏への染み出しが面積の50%未満。
1:内側に染み有。裏への染み出しが面積の50%以上100%未満。
0:裏側全体に染み出し。
【0264】
[常温耐水試験]
パルプモールドに25℃の水100mlを注ぎ、室温で45分放置した後に、水をパルプモールドから取り出し、パルプモールドの染みの度合いを評価した。染み込みの程度により、以下のように評価数値を設定した。
5:内側に染み無
4:内側に染み有。裏側に染み無。
3:内側に染み有。裏側にわずかに染み出しあり。
2:内側に染み有。裏への染み出しが面積の50%未満。
1:内側に染み有。裏への染み出しが面積の50%以上100%未満。
0:裏側全体に染み出し。
【0265】
[処理紙の作製]
木材パルプとして、LBKP(広葉樹さらしクラフトパルプ)とNBKP(針葉樹さらしクラフトパルプ)の重量比率が、60重量%と40重量%で、かつ、パルプのろ水度が400ml(Canadian Standard Freeness)のパルプスラリーを調製し、このパルプスラリーに湿潤紙力剤、サイズ剤を添加して長網抄紙機により、紙密度が0.58g/cmの坪量45g/mの紙を外添処理(サイズプレス処理)の原紙として使用した。この原紙の耐油性(KIT値)は0、耐水性(Cobb値)は52g/mであった。
【0266】
この原紙に対して、化合物をクロロホルムに14.9mg/mLの割合で溶解させた処理液を、ギャップを0milの設定したベーカー式アプリケータ―で塗工し乾燥を繰り返す操作を三回行い、140℃で1分乾燥することで処理紙を作製した。
【0267】
[KIT試験(耐油性)]
3Mキットテスト(TAPPI T-559cm-02)により測定した。3Mキットテスト法は、ヒマシ油、トルエン、ヘプタンが配合された試験油を処理紙の表面におき、15 秒後に試験油を拭った際、処理紙への油染みの有無により評価する。キット番号1~6の試験油にて試験を実施し、染みが見られなかった最大のキット番号を耐油性の評価結果とした。
【0268】
[コーン油耐性試験(耐油性)]
コーン油を処理紙の表面におき、15秒後に試験油を拭った際、処理紙への油染みの有無により評価する。
染みがない場合を〇、染みが見られるときを×とする。
【0269】
<評価結果>
[ポリオール修飾体のHD接触角測定結果および示差走査熱量測定]
まず、ポリオール修飾体単独のHD接触角測定結果および示差走査熱量測定(DSC)を行った結果を表1に示した。ポリオール修飾体は、下記の実施例および比較例として用いたポリオール修飾体を用いた。
実施例1:デカグリセロールドデカベヘニルエステル(重合度10 ヒドロキシ基置換率:12/12*100、バイオベース度:100%)、
実施例3:デカグリセロールヘプタベヘニルエステル(重合度10 ヒドロキシ基置換率:7/12*100、バイオベース度:100%)、
実施例4:デカグリセロールデカステアリルエステル(重合度10 ヒドロキシ基置換率:10/12*100、バイオベース度:100%)、
実施例5:ヘキサグリセロールペンタステアリルエステル(重合度6 ヒドロキシ基置換率:5/8*100、バイオベース度:100%)、
比較例1:テトラグリセロールトリステアリルエステル(重合度4 ヒドロキシ基置換率:3/6*100、バイオベース度:100%)、
比較例2:グリセリントリステアリルエステル(重合度1 ヒドロキシ基置換率:3/3*100)
【実施例0270】
ポリオール修飾体としてデカグリセロールドデカベヘニルエステル(重合度10 ヒドロキシ基置換率:12/12*100[100%]、バイオベース度:100%) 2g、ポリエチレンオキシドアルキルエーテル(アルキル炭素数6~16) 0.2g、水17.8gを混合し、水分散型撥剤の前駆体Aを得た。この水分散型撥剤の前駆体Aを80℃まで加温した後、マグネチックスターラーで攪拌しながら放冷することで、水分散型撥剤の前駆体Bを得た。水分散型撥剤の前駆体Bを高圧湿式微粒子化装置にて100MPaの条件で2回処理することで、水分散型撥剤を得た。得られた水分散型撥剤の100μm以上の粒子の体積存在比率は0%であり、メジアン径(メディアン径)D50は6.1μmであった。
水分散型撥剤水分散型撥剤から液状媒体を除去して得られる固形成分の示差走査熱量測定の温度可変X線回折法測定を行った結果を表1に示した。水分散組成物を、固形分換算でパルプに対して3.5wt%の比率になるように濃度0.5wt%のパルプスラリーに添加し、パルプ組成物を調整した。パルプ組成物を自動モールド成型機に投入し、パルプモールドを作製した。パルプモールドを常温の耐油試験および常温の耐水試験に処したところ、耐油性4点と耐水性4点であった。その結果を表1に示した。
【実施例0271】
ポリオール修飾体としてデカグリセロールドデカベヘニルエステル(重合度10 ヒドロキシ基置換率:12/12*100[100%]、バイオベース度:100%) 2g、ポリエチレンオキシドトリメチルノニルエーテル 0.2g、水17.8gを混合し、水分散型撥剤の前駆体Aを得た。この水分散型撥剤の前駆体Aを80℃まで加温した後、ホモジナイザーにより7000rpmで20分間攪拌することで水分散型撥剤を得た。得られた水分散型撥剤の100μm以上の粒子の体積存在比率およびメジアン径(メディアン径)D50、および水分散型撥剤から液状媒体を除去して得られる固形成分の示差走査熱量測定の温度可変X線回折法測定を行った結果を表1に示した。
実施例1と同様に、常温の耐油試験および常温の耐水試験に処したところ、耐油性4点と耐水性4点であった。
【実施例0272】
ポリオール修飾体としてデカグリセロールヘプタベヘニルエステル(重合度10 ヒドロキシ基置換率:7/12*100[58%]、バイオベース度:100%) 2g、ポリエチレンオキシドトリメチルノニルエーテル 0.2g、水17.8gを混合し、水分散型撥剤の前駆体Aを得た。この水分散型撥剤の前駆体Aを80℃まで加温した後、ホモジナイザーにより7000rpmで20分間攪拌することで水分散型撥剤を得た。得られた水分散型撥剤の100μm以上の粒子の体積存在比率およびメジアン径(メディアン径)D50および水分散型撥剤から液状媒体を除去して得られる固形成分の示差走査熱量測定の温度可変X線回折法測定を行った結果を表1に示した。水分散組成物を、固形分換算でパルプに対して5wt%の比率になるように濃度0.5wt%のパルプスラリーに添加し、パルプ組成物を調整した。パルプ組成物を自動モールド成型機に投入し、パルプモールドを作製した。パルプモールドを常温の耐油試験および常温の耐水試験に処したところ、耐油性4点と耐水性4点であった。
【実施例0273】
ポリオール修飾体としてデカグリセロールデカステアリルエステル(重合度10 ヒドロキシ基置換率:10/12*100[83%]、バイオベース度:100%)2g、ポリエチレンオキシドトリメチルノニルエーテルに変更した以外は実施例3と同様の手法で水分散型撥剤を得た。得られた水分散型撥剤の100μm以上の粒子の体積存在比率およびメジアン径(メディアン径)D50および水分散型撥剤から液状媒体を除去して得られる固形成分の示差走査熱量測定の温度可変X線回折法測定を行った結果を表1に示した。実施例3と同様に、常温の耐油試験および常温の耐水試験に処したところ、耐油性4点と耐水性4点であった。
【実施例0274】
ポリオール修飾体をヘキサグリセロールペンタステアリルエステル(重合度6 ヒドロキシ基置換率:5/8*100[63%]、バイオベース度:100%)に変更した以外は実施例3と同様の手法で水分散型撥剤を得た。得られた水分散型撥剤の100μm以上の粒子の体積存在比率およびメジアン径(メディアン径)D50および水分散型撥剤から液状媒体を除去して得られる固形成分の示差走査熱量測定の温度可変X線回折法測定を行った結果を表1に示した。実施例3と同様に、常温の耐油試験および常温の耐水試験に処したところ、耐油性4点と耐水性4点であった。
【実施例0275】
実施例1と同様の方法で水分散型撥剤を得た。木材パルプとして、LBKP(広葉樹さらしクラフトパルプ)とNBKP(針葉樹さらしクラフトパルプ)の重量比率が、60重量%と40重量%で、かつ、パルプのろ水度が400ml(Canadian Standard Freeness)のパルプスラリーを調製し、このパルプスラリーに湿潤紙力剤、サイズ剤を添加して長網抄紙機により、紙密度が0.58g/cmの坪量45g/mの紙を外添処理(サイズプレス処理)の原紙として使用した。この原紙の耐油性(KIT値)は0、耐水性(Cobb値)は52g/mであった。
この原紙に対して、化合物をクロロホルムに14.9mg/mLの割合で溶解させた処理液を、ギャップを7milの設定したベーカー式アプリケータ―で塗工し乾燥を繰り返す操作を三回行い、140℃で5分乾燥することで処理紙を作製した。
処理紙のコーン油耐性は『〇』であり、KIT点数は4点であった。
【実施例0276】
実施例1と同様の方法で水分散型撥剤を得た。カチオン性澱粉2.5gを水47.5gと混合し、60℃で1時間攪拌し、カチオン性澱粉水溶液を調整した。
水分散型撥剤を、固形分換算でパルプに対して3.5wt%の比率になるように濃度0.5wt%のパルプスラリーに添加し、次いでカチオン性澱粉が固形分換算でパルプに対して10wt%の比率になるようにカチオン性澱粉水溶液を添加し、パルプ組成物を調整した。パルプ組成物を自動モールド成型機に投入し、パルプモールドを作製した。パルプモールドを常温耐油試験に処したところ4点であった。
【比較例1】
【0277】
ポリオール修飾体をテトラグリセロールトリステアリルエステル(重合度4 ヒドロキシ基置換率:3/6*100[50%]、バイオベース度:100%)2g、ポリエチレンオキシドトリメチルノニルエーテル 0.2g、水17.8gを混合し、水分散型撥剤の前駆体Aを得た。この水分散型撥剤の前駆体Aを80℃まで加温した後、ホモジナイザーにより7000rpmで20分間攪拌することで水分散型撥剤を得た。得られた水分散型撥剤の100μm以上の粒子の体積存在比率およびメジアン径(メディアン径)D50および水分散型撥剤から液状媒体を除去して得られる固形成分の示差走査熱量測定の温度可変X線回折法測定を行った結果を表1に示した。実施例3と同様に、常温の耐油試験に処したところ、耐油性1点であった。
【比較例2】
【0278】
グリセリントリステアリルエステル(重合度1 ヒドロキシ基置換率:3/3*100[100%])に変更した以外は比較例1と同様の手法で水分散型撥剤を得た。得られた水分散型撥剤の100μm以上の粒子の体積存在比率およびメジアン径(メディアン径)D50および水分散型撥剤から液状媒体を除去して得られる固形成分の示差走査熱量測定の温度可変X線回折法測定を行った結果を表1に示した。実施例3と同様に、常温の耐油試験および耐水試験に処したところ、耐油性1点であった。
【0279】
【表1】
【手続補正書】
【提出日】2024-07-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール修飾体、及び分散剤を含む、水分散型の撥剤であって、
前記ポリオール修飾体は、重合度が5以上100以下の重合体である、撥剤。
【請求項2】
前記ポリオール修飾体が、ポリオールに対して、置換基を有してもよい一価の炭素数1以上40以下の炭化水素基又は一価のポリシロキサン基を修飾してなる化合物である、請求項1に記載の撥剤。
【請求項3】
前記ポリオール修飾体が置換基を有してもよい炭素数6以上40以下のアルキル基を有する、請求項1に記載の撥剤。
【請求項4】
前記ポリオール修飾体が、ポリオールの一以上のヒドロキシ基を下記式:
-Y-Z
[式中、
Yは、Y及びYからなる群から選択される一以上から構成される1+n価の基であり、
は、直接結合、-O-、-C(=O)-、-C(=NR’)-、-S-、-S(=O)-、-NR’-、-C(OR’)R’-、及び-C(OR’)(-)、-N(-)(式中、R’は、各出現において独立して、水素原子又は炭素数1~30の有機基である。)からなる群から選択される一以上から構成される基であり、
は、置換基を有してもよい2~4価の炭素数1~40の脂肪族炭化水素基、置換基を有してもよい2~4価の炭化水素芳香環、及び置換基を有してもよい2~4価のヘテロ環からなる群から選択される一以上から構成される基であり、
Zは、置換基を有してもよい一価の炭素数1以上40以下の炭化水素基又は一価のポリシロキサン基であり、
nは、1以上3以下の整数である。]
で表される基により置換した化合物である、請求項1に記載の撥剤。
【請求項5】
Yが
-O-Y11-、又は
-O-Y11-Y21-Y12
[式中、各記号は各出現において独立して、
11が、直接結合、-C(=O)-、-C(=O)-NR’-、又は-C(=S)-NR’-であり、
21が、置換基を有してもよい炭素数1~40の炭化水素基であり、
12が-O-、-O-C(=O)-、-O-C(=O)-O-、-C(=O)-NR’-、-O-C(=O)-NR’-、-NR’-、-NR’-C(=O)-、-NR’-C(=O)-O-、-NR’-C(=O)-NR’-、-C(=O)-、-C(=O)-O-、-C(=O)-NR’-、-SO-、-SONR’-、-C(OR’)R’-、又は-C(OR’)(-)である。]、
である、請求項4に記載の撥剤。
【請求項6】
ポリオールが、多糖類、及びヒドロキシ基含有化合物重合体からなる群から選択される少なくとも一種である、請求項1に記載の撥剤。
【請求項7】
ポリオールが、澱粉、セルロース、カードラン、プルラン、アルギン酸、カラギーナン、グアーガム、キチン、キトサン、ローカストビーンガム、カッパカラギーナン、イオタカラギーナン、イソマルトデキストリン、ザンサンガム、ジェラガム、タマリンドシードガム、シクロアミロース、およびポリグリセリンからなる群から選択される少なくとも一種である、請求項1に記載の撥剤。
【請求項8】
レーザー回折散乱法による測定される100μm以上の粒子の体積存在比率が25%以下である、請求項1に記載の撥剤。
【請求項9】
前記ポリオール修飾体のバイオベース度が20%以上である、請求項1に記載の撥剤。
【請求項10】
前記ポリオール修飾体が有するヒドロキシ基のうち5以上のヒドロキシ基が修飾されている、請求項1に記載の撥剤。
【請求項11】
前記ポリオール修飾体が、ポリオールの5以上のヒドロキシ基を下記式:
-Y-Z
[式中、
Yが
-O-Y11-、又は
-O-Y11-Y21-Y12
[式中、各記号は各出現において独立して、
11が、直接結合、-C(=O)-、-C(=O)-NR’-、又は-C(=S)-NR’-であり、
21が、炭素数1~40の炭化水素基であり、
12が-O-、-O-C(=O)-、-O-C(=O)-O-、-C(=O)-NR’-、-O-C(=O)-NR’-、-NR’-、-NR’-C(=O)-、-NR’-C(=O)-O-、-NR’-C(=O)-NR’-、-C(=O)-、-C(=O)-O-、-C(=O)-NR’-、-SO-、-SONR’-、-C(OR’)R’-、又は-C(OR’)(-)である。]
であり、
Zは、炭素数6以上40以下の炭化水素基であり、
nは、1以上3以下の整数である。]
で表される基により置換した化合物であり、
前記ポリオールが、澱粉、セルロース、カードラン、プルラン、アルギン酸、カラギーナン、グアーガム、キチン、キトサン、ローカストビーンガム、カッパカラギーナン、イオタカラギーナン、イソマルトデキストリン、ザンサンガム、ジェラガム、タマリンドシードガム、シクロアミロース、およびポリグリセリンからなる群から選択される少なくとも一種である、請求項1に記載の撥剤。
【請求項12】
前記ポリオール修飾体が、ポリグリセリンが有するヒドロキシ基を下記式:
-O-C(=O)-Z
[式中、
Zは、炭素数14以上24以下のアルキル基である。]
で表される基により置換した化合物であり、
前記ポリグリセリンの重合度は、5以上15以下であり、
前記ポリオール修飾体におけるヒドロキシ基置換率が50%以上である、請求項1に記載の撥剤。
【請求項13】
繊維製品用又は紙製品用である、請求項1に記載の撥剤。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の撥剤により処理された製品。
【請求項15】
繊維製品又は紙製品である、請求項14に記載の製品。
【請求項16】
耐油紙または耐水紙である、請求項14に記載の製品。
【請求項17】
食品包装材又は食品容器である、請求項14に記載の製品。
【請求項18】
請求項1~13のいずれか一項に記載の撥剤で基材を処理する工程を含む、処理された製品の製造方法。
【請求項19】
前記処理が内添処理である、請求項18に記載の製造方法。