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特開2024-137828構造物の施工方法、構造物、および滑動許容部材
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137828
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】構造物の施工方法、構造物、および滑動許容部材
(51)【国際特許分類】
   E02D 17/18 20060101AFI20240927BHJP
   E02D 29/02 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
E02D17/18 A
E02D29/02 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024042073
(22)【出願日】2024-03-18
(31)【優先権主張番号】P 2023045041
(32)【優先日】2023-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】518264055
【氏名又は名称】株式会社エンバイン
(71)【出願人】
【識別番号】391047190
【氏名又は名称】岡三リビック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【弁理士】
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 隆史
(74)【代理人】
【識別番号】100212059
【弁理士】
【氏名又は名称】三根 卓也
(72)【発明者】
【氏名】中島 進
(72)【発明者】
【氏名】笠原 康平
(72)【発明者】
【氏名】倉上 由貴
(72)【発明者】
【氏名】太田 啓介
(72)【発明者】
【氏名】讃岐 賢太
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 翔太
(72)【発明者】
【氏名】山下 喜央
(72)【発明者】
【氏名】小浪 岳治
【テーマコード(参考)】
2D044
2D048
【Fターム(参考)】
2D044CA02
2D048AA81
(57)【要約】
【課題】構造物の施工の省力化を図る。
【解決手段】構造物の施工方法であって、埋設型枠21の内側に設けられた支持材(L形鋼)22の長さ方向に沿って滑動可能であり、支持材22の側方から取り付け可能な滑動許容部材25を、支持材22に取り付ける工程と、滑動許容部材25と埋設型枠固定用部材(埋設型枠固定用金具)26とを連結する工程と、埋設型枠21の内側にコンクリート32を打設する工程と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の施工方法であって、
埋設型枠の内側に設けられた支持材の長さ方向に沿って滑動可能であり、前記支持材の側方から取り付け可能な滑動許容部材を、前記支持材に取り付ける工程と、
前記滑動許容部材と埋設型枠固定用部材とを連結する工程と、
前記埋設型枠の内側にコンクリートを打設する工程と、を有することを特徴とする、構造物の施工方法。
【請求項2】
前記構造物は、盛土の表面に剛壁面を設けた補強盛土であり、
前記滑動許容部材は、前後両側から前記支持材に作用する水平荷重に抵抗し、
盛土を設ける位置の周囲に、前記支持材および鉄筋の下端部を埋設した基礎を設ける工程と、
前記基礎の上に埋設型枠を載置し、前記埋設型枠の片面に一端を取り付けたセパレータの他端部を前記支持材に溶接する工程と、
盛土材を敷設する位置に溶接金網を設ける工程と、
前記滑動許容部材を前記支持材に取り付け、前記埋設型枠固定用部材を介して前記滑動許容部材と前記溶接金網とを連結する工程と、
盛土材を敷設して転圧する工程と、を有し、
前記埋設型枠の載置から前記盛土材の転圧までの工程を繰り返して、所望する高さまで盛土を形成し、前記盛土の沈下が収束した後、前記埋設型枠と前記盛土との間にコンクリートを打設することを特徴とする、請求項1に記載の構造物の施工方法。
【請求項3】
前記滑動許容部材と前記溶接金網とを連結する工程は、
埋設型枠固定用部材の一端を前記溶接金網に取り付け、前記埋設型枠固定用部材の他端と前記滑動許容部材とを溶接することを特徴とする、請求項2に記載の構造物の施工方法。
【請求項4】
前記埋設型枠を載置し、前記埋設型枠の片面に型枠固定用セパレータを取り付ける工程と、
前記滑動許容部材を前記支持材に取り付け、前記埋設型枠固定用部材である補助用セパレータを前記滑動許容部材に取り付け、前記補助用セパレータと前記型枠固定用セパレータとを連結する工程と、
前記支持材の長さ方向における前記滑動許容部材の位置を調整する工程と、
前記滑動許容部材を前記支持材に溶接する固定と、
前記埋設型枠内にコンクリートを打設する工程と、を有することを特徴とする、請求項1に記載の構造物の施工方法。
【請求項5】
構造物であって、
埋設型枠と、
前記埋設型枠の内側に設けられた支持材と、
前記埋設型枠を固定するために設けられた埋設型枠固定用部材と、
前記支持材の長さ方向に沿って滑動可能であり、前記支持材の側方から取り付けられ、前記埋設型枠固定用部材が取り付けられた滑動許容部材と、を有し、
前記埋設型枠の内側にコンクリートが打設されていることを特徴とする、構造物。
【請求項6】
前記構造物は補強盛土であり、
盛土の周囲に設けられ、前記支持材および鉄筋の下端部を埋設した基礎と、
前記埋設型枠の片面と前記支持材とを連結するセパレータと、
盛土材の周囲に設けられた溶接金網と、をさらに有し、
前記埋設型枠は、前記基礎の上に載置され、
前記滑動許容部材は、前後両側から前記支持材に作用する水平荷重に抵抗し、前記支持材に取り付けられた前記滑動許容部材が、前記埋設型枠固定用部材を介して前記溶接金網に連結され、前記埋設型枠と前記盛土との間にコンクリートが打設されていることを特徴とする、請求項5に記載の構造物。
【請求項7】
前記滑動許容部材と前記溶接金網は、
一端が前記溶接金網に取り付けられた埋設型枠固定用部材の他端と前記滑動許容部材とが溶接されることにより連結されていることを特徴とする、請求項6に記載の構造物。
【請求項8】
前記埋設型枠の片面には、型枠固定用セパレータが取り付けられ、
前記滑動許容部材には、前記埋設型枠固定用部材である補助用セパレータが取り付けられ、
前記型枠固定用セパレータと前記補助用セパレータとが連結され、前記埋設型枠内にコンクリートが打設されていることを特徴とする、請求項5に記載の構造物。
【請求項9】
前記滑動許容部材は、前方からの水平荷重に抵抗する部分と、後方からの水平荷重に抵抗する部分とが一体に成形されていることを特徴とする、請求項5~8のいずれか一項に記載の構造物。
【請求項10】
前記支持材がL形鋼、C形鋼、I形鋼のいずれかであることを特徴とする、請求項5~8のいずれか一項に記載の構造物。
【請求項11】
前記埋設型枠固定用部材が二分割され、先端側の基端部および基端側の先端部にそれぞれねじが形成され、前記ねじが螺合されるめねじが形成された連結部で前記埋設型枠固定用部材の長さが調整可能であることを特徴とする、請求項5~8のいずれか一項に記載の構造物。
【請求項12】
前記支持材がL形鋼であり、
前記滑動許容部材は、持ち手部と、前記L形鋼の外周の2辺に沿う形状の折り曲げ部と、前記L形鋼の1辺の先端に引っ掛けるフック部とが順に形成され、前記フック部は、前記折り曲げ部に対して鉛直方向に角度を有していることを特徴とする、請求項5~8のいずれか一項に記載の構造物。
【請求項13】
形鋼の長さ方向に沿って滑動可能な滑動許容部材であって、
前記形鋼の外周に沿って滑動し、前記形鋼の側方から取り付け可能であることを特徴とする、滑動許容部材。
【請求項14】
前記形鋼の側方に作用する対向する両側からの力に抵抗し、
前記形鋼がL形鋼であり、
丸鋼で成形され、持ち手部と、前記L形鋼の外周の2辺に沿う形状の折り曲げ部と、前記L形鋼の1辺の先端に引っ掛けるフック部とを有し、前記フック部は、前記折り曲げ部に対して鉛直方向に角度を有していることを特徴とする、請求項13に記載の滑動許容部材。
【請求項15】
前記フック部がスライド板を介して前記L形鋼に接触するように前記フック部と前記L形鋼との間に設けられる前記スライド板を備えていることを特徴とする、請求項14に記載の滑動許容部材。
【請求項16】
前記形鋼がL形鋼であり、
丸鋼で形成され前記L形鋼の一方の辺の先端に引っ掛けるフック部と、板材で形成され、前記L形鋼の外周の2辺に沿う水平板部および前記L形鋼の他方の辺側の面に沿う鉛直板部とを有し、
前記フック部は、軸部が前記水平板部に溶接され、先端部が前記水平板部に対して鉛直方向に角度を有していることを特徴とする、請求項13に記載の滑動許容部材。
【請求項17】
前記水平板部に、部材取り付け用の孔が形成されていることを特徴とする、請求項16に記載の滑動許容部材。
【請求項18】
前記孔が、前記水平板部の前後および左右方向に複数箇所形成されていることを特徴とする、請求項17に記載の滑動許容部材。
【請求項19】
前記フック部がスライド板を介して前記L形鋼に接触するように前記フック部と前記L形鋼との間に設けられる前記スライド板と、前記L形鋼の前記他方の辺側の面において前記鉛直板部の上方に設けられる回転防止板のうち、いずれか一方または両方を備えていることを特徴とする、請求項16~18のいずれか一項に記載の滑動許容部材。
【請求項20】
前記形鋼がL形鋼であり、
丸鋼で成形され、前記L形鋼の一方の辺の先端に引っ掛けるフック部および前記L形鋼の一方の辺に沿う軸部と、板材で形成され、前記軸部に溶接され当該軸部に沿う第1鉛直板部および前記L形鋼の他方の辺側の面に沿う第2鉛直板部とを有し、
前記フック部は、先端部が前記軸部に対して鉛直方向に角度を有していることを特徴とする、請求項13に記載の滑動許容部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物の施工方法、構造物、および、構造物の施工等に用いられる滑動許容部材に関する。
【背景技術】
【0002】
表面に剛壁面を設けた構造物の一つである補強盛土は、高い耐震性が得られることから、従来、鉄道の土留め壁として広く利用されている。
【0003】
例えば特許文献1には、分割された壁面もしくは土のう等を組み合わせることにより、鉛直または鉛直に近い勾配の盛土を構築した後、盛土前面に全体剛性のある一体化した壁面を場所打ちする補強土擁壁の構築方法が開示されている。特許文献1の施工方法は従来の一般的な手順であり、まず補強盛土を構築した後、剛壁面を施工する。補強盛土は、施工時の転圧荷重や自重により沈下するため、沈下が収束した後に剛壁面を構築することで、高い安定性を発揮する構造となる。剛壁面を施工する際は、補強盛土の前面に足場を設けて型枠を設置し、型枠内にコンクリートを打設した後、型枠を撤去する。
【0004】
このような盛土構造では、通常、コンクリート打設時の側圧が作用して型枠が変形しないように、セパレータで型枠と支持材としてのL形鋼とを連結している。具体的には、型枠の裏面に取り付けたセパレータをL形鋼に溶接固定する。さらに、L形鋼は、補強盛土の溶接金網から外型枠固定用金具を用いて溶接により完全固定されている(非特許文献1参照)。
【0005】
一方、例えば特許文献2~4には、足場が不要な施工方法として、補強盛土側から剛壁面を施工できる方法が開示されている。
【0006】
特許文献2および3には、補強盛土側から固定可能な埋設型枠を用いる施工方法が開示されている。
【0007】
特許文献2では、埋設型枠の固定方法として、固定物にセパレータのフックをかけて固定する方法(特許文献2の図7)や、補強盛土側に固定された支持鋼材にセパレータを用いて溶接固定する方法(特許文献2の図12)が記載されている。
【0008】
特許文献3では、保持枠に固定された枠固定クランプと埋設型枠のパネルフックとを、両端にフックを有する連結具で連結することで、埋設型枠を固定している(特許文献3の図1図2)。連結する際は、あらかじめフックボルトを枠固定クランプおよびパネルフックにかけて、埋設型枠の位置調整を行った後、連結ボルトをナットで締める。特許文献3の方法は、溶接不要で、機械的な乾式接合で壁面パネルを保持枠に接合するものである。
【0009】
特許文献4では、自立する型枠を設置した後、補強盛土を構築し、コンクリートを打設して剛壁面を構築する手順としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平1-21122号公報
【特許文献2】特開2021-179096号公報
【特許文献3】特開2022-108436号公報
【特許文献4】特開平4-108917号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】RRR-B工法設計施工マニュアル 剛壁面を有する補強盛土の施工方法
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記特許文献に記載された従来の施工方法には、以下の問題点がある。
【0013】
特許文献1の施工方法の場合、剛壁面を構築する際に足場を設ける必要がある。ところが、既設線路や道路の存在、あるいは隣地境界が近い等、剛壁面の前面の用地に制限がある場合、足場を設けることが困難で施工ができないという問題がある。
【0014】
また、特許文献2、3のように撤去不要でかつ補強盛土側から固定が可能な埋設型枠を使用した場合には、補強盛土と型枠とを交互に構築していく必要がある。ところが、埋設型枠の固定を特許文献1~3に記載された方法と同様に行い、補強盛土と型枠とを交互に構築した場合、補強盛土に固定されているL形鋼、支持鋼材や保持枠は、補強盛土の沈下により変状し、それらに支持されている埋設型枠も変状する。すなわち、図32に示すように、盛土50が転圧や自重などの影響により沈下すると、L形鋼51が外型枠固定用金具52を介して下方向の力が加えられて変状し、L形鋼51に固定している外型枠53も変状する。
【0015】
さらに、図33に示すように、コンクリート打設前には、外型枠53は盛土50側に倒れる向きに風荷重を受ける。そして、コンクリート打設時には、風荷重とは逆向きにコンクリートからの側圧が作用する。そのため、盛土50の沈下を許容しつつ、水平の両方向の作用力に対して外型枠53が変状しないように抵抗できる構造とする必要がある。
【0016】
また、特許文献4のように自立する型枠の使用によって補強盛土側から剛壁面を構築する場合は、型枠の重量や高さ等の仕様が大きくなり、据付に手間と時間がかかる。さらに、補強盛土構築時は、特許文献4の第4図、第5図に示されるようにくさびと支持部材を用いるため、鉛直方向に補強用の鉄筋を設けることができず、剛壁面の強度を十分に確保できないという問題がある。
【0017】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、補強構造物の施工の省力化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記問題を解決するため、本発明は、構造物の施工方法であって、埋設型枠の内側に設けられた支持材の長さ方向に沿って滑動可能であり、前記支持材の側方から取り付け可能な滑動許容部材を、前記支持材に取り付ける工程と、前記滑動許容部材と埋設型枠固定用部材とを連結する工程と、前記埋設型枠の内側にコンクリートを打設する工程と、を有することを特徴としている。
【0019】
前記構造物は、盛土の表面に剛壁面を設けた補強盛土であり、前記滑動許容部材は、前後両側から前記支持材に作用する水平荷重に抵抗し、盛土を設ける位置の周囲に、前記支持材および鉄筋の下端部を埋設した基礎を設ける工程と、前記基礎の上に埋設型枠を載置し、前記埋設型枠の片面に一端を取り付けたセパレータの他端部を前記支持材に溶接する工程と、盛土材を敷設する位置に溶接金網を設ける工程と、前記滑動許容部材を前記支持材に取り付け、前記埋設型枠固定用部材を介して前記滑動許容部材と前記溶接金網とを連結する工程と、盛土材を敷設して転圧する工程と、を有し、前記埋設型枠の載置から前記盛土材の転圧までの工程を繰り返して、所望する高さまで盛土を形成し、前記盛土の沈下が収束した後、前記埋設型枠と前記盛土との間にコンクリートを打設してもよい。その場合、前記滑動許容部材と前記溶接金網とを連結する工程は、埋設型枠固定用部材の一端を前記溶接金網に取り付け、前記埋設型枠固定用部材の他端と前記滑動許容部材とを溶接してもよい。
【0020】
また、前記構造物の施工方法において、前記埋設型枠を載置し、前記埋設型枠の片面に型枠固定用セパレータを取り付ける工程と、前記滑動許容部材を前記支持材に取り付け、前記埋設型枠固定用部材である補助用セパレータを前記滑動許容部材に取り付け、前記補助用セパレータと前記型枠固定用セパレータとを連結する工程と、前記支持材の長さ方向における前記滑動許容部材の位置を調整する工程と、前記滑動許容部材を前記支持材に溶接する固定と、前記埋設型枠内にコンクリートを打設する工程と、を有してもよい。
【0021】
また、本発明は、構造物であって、埋設型枠と、前記埋設型枠の内側に設けられた支持材と、前記埋設型枠を固定するために設けられた埋設型枠固定用部材と、前記支持材の長さ方向に沿って滑動可能であり、前記支持材の側方から取り付けられ、前記埋設型枠固定用部材が取り付けられた滑動許容部材と、を有し、前記埋設型枠の内側にコンクリートが打設されていることを特徴としている。
【0022】
前記構造物は補強盛土であり、盛土の周囲に設けられ、前記支持材および鉄筋の下端部を埋設した基礎と、前記埋設型枠の片面と前記支持材とを連結するセパレータと、盛土材の周囲に設けられた溶接金網と、をさらに有し、前記埋設型枠は、前記基礎の上に載置され、前記滑動許容部材は、前後両側から前記支持材に作用する水平荷重に抵抗し、前記支持材に取り付けられた前記滑動許容部材が、前記埋設型枠固定用部材を介して前記溶接金網に連結され、前記埋設型枠と前記盛土との間にコンクリートが打設されてもよい。その場合、前記滑動許容部材と前記溶接金網は、一端が前記溶接金網に取り付けられた埋設型枠固定用部材の他端と前記滑動許容部材とが溶接されることにより連結されてもよい。
【0023】
前記構造物において、前記埋設型枠の片面には、型枠固定用セパレータが取り付けられ、前記滑動許容部材には、前記埋設型枠固定用部材である補助用セパレータが取り付けられ、前記型枠固定用セパレータと前記補助用セパレータとが連結され、前記埋設型枠内にコンクリートが打設されてもよい。
【0024】
前記滑動許容部材は、前方からの水平荷重に抵抗する部分と、後方からの水平荷重に抵抗する部分とが一体に成形されていてもよい。前記支持材がL形鋼、C形鋼、I形鋼のいずれかでもよい。また、前記埋設型枠固定用部材が二分割され、先端側の基端部および基端側の先端部にそれぞれねじが形成され、前記ねじが螺合されるめねじが形成された連結部で前記埋設型枠固定用部材の長さが調整可能であってもよい。
【0025】
前記支持材がL形鋼であり、前記滑動許容部材は、持ち手部と、前記L形鋼の外周の2辺に沿う形状の折り曲げ部と、前記L形鋼の1辺の先端に引っ掛けるフック部とが順に形成され、前記フック部は、前記折り曲げ部に対して鉛直方向に角度を有してもよい。
【0026】
さらにまた、本発明は、形鋼の長さ方向に沿って滑動可能な滑動許容部材であって、前記形鋼の外周に沿って滑動し、前記形鋼の側方から取り付け可能であることを特徴としている。
【0027】
前記滑動許容部材において、前記形鋼の側方に作用する対向する両側からの力に抵抗し、前記形鋼がL形鋼であり、丸鋼で成形され、持ち手部と、前記L形鋼の外周の2辺に沿う形状の折り曲げ部と、前記L形鋼の1辺の先端に引っ掛けるフック部とを有し、前記フック部は、前記折り曲げ部に対して鉛直方向に角度を有していてもよい。また、前記フック部がスライド板を介して前記L形鋼に接触するように前記フック部と前記L形鋼との間に設けられる前記スライド板を備えてもよい。
【0028】
また、前記形鋼がL形鋼であり、丸鋼で形成され前記L形鋼の一方の辺の先端に引っ掛けるフック部と、板材で形成され、前記L形鋼の外周の2辺に沿う水平板部および前記L形鋼の他方の辺側の面に沿う鉛直板部とを有し、前記フック部は、軸部が前記水平板部に溶接され、先端部が前記水平板部に対して鉛直方向に角度を有していてもよい。その場合、前記水平板部に、部材取り付け用の孔が形成されてもよい。前記孔が、前記水平板部の前後および左右方向に複数箇所形成されてもよい。さらに、前記フック部がスライド板を介して前記L形鋼に接触するように前記フック部と前記L形鋼との間に設けられる前記スライド板と、前記L形鋼の前記他方の辺側の面において前記鉛直板部の上方に設けられる回転防止板のうち、いずれか一方または両方を備えていてもよい。
【0029】
また、前記形鋼がL形鋼であり、丸鋼で成形され、前記L形鋼の一方の辺の先端に引っ掛けるフック部および前記L形鋼の一方の辺に沿う軸部と、板材で形成され、前記軸部に溶接され当該軸部に沿う第1鉛直板部および前記L形鋼の他方の辺側の面に沿う第2鉛直板部とを有し、前記フック部は、先端部が前記軸部に対して鉛直方向に角度を有していてもよい。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、構造物の施工の省力化を図ることができる。例えば補強盛土に適用した場合、足場を設けることなく補強盛土側から施工でき、施工時の補強盛土の沈下を許容し、且つ前方および後方からの水平力に支持材が抵抗できる構造の補強盛土とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の実施形態の一例の補強盛土構造の下部を示す側面図である。
図2】1段目の盛土周辺の取り付け状態を示す拡大図である。
図3】セパレータの取り付け例を示す斜視図である。
図4】本発明の実施形態の一例の滑動許容部材を示し、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は斜視図である。
図5図3の滑動許容部材をL形鋼に取り付ける手順を説明する斜視図である。
図6】滑動許容部材の取り付け手順を説明する側面図である。
図7】埋設型枠固定用金具と滑動許容部材との固定方法の例を示す斜視図であり、(a)は滑動許容部材の折り曲げ部で溶接する場合、(b)は滑動許容部材の持ち手部で溶接する場合を示す。
図8図1の補強盛土構造の施工の第一の手順を示す側面図である。
図9図8に続く手順を示す側面図である。
図10図9に続く工程を示す側面図である。
図11図10に続く工程を示す側面図である。
図12図11に続く工程を示す側面図である。
図13図12に続く工程を示す側面図である。
図14図13に続く工程を示す側面図である。
図15図14に続く工程を示す側面図である。
図16図15に続く工程を示す側面図である。
図17図16に続く工程を示す側面図である。
図18】本発明の実施形態の一例の補強盛土構造の側面図である。
図19】滑動許容部材の異なる実施形態を示し、(a)は平面図、(b)は(a)のA-A’線から見た図、(c)は斜視図である。
図20】滑動許容部材のさらに異なる実施形態を示し、(a)は平面図、(b)は(a)のB-B’線から見た図である。
図21】埋設型枠固定用金具に長さ調整部材を設けた例を示す断面図である。
図22】滑動許容部材のさらに異なる実施形態を示し、(a)は平面図、(b)は(a)のC-C’線から見た図、(c)は(a)のD-D’線から見た図である。
図23図4に示す滑動許容部材に図22に示す滑動許容部材のスライド板を取り付けた実施形態を示し、(a)は平面図、(b)は(a)のE-E’線から見た図である。
図24】滑動許容部材のさらに異なる実施形態を示す平面図である。
図25】滑動許容部材のさらに異なる実施形態を示し、(a)は平面図、(b)は(a)のF-F’線から見た図、(c)は(a)のG-G’線から見た図である。
図26図24に示す滑動許容部材を使用した補強構造物の内部構造の例を示す平面図である。
図27図26のH-H’線から見た図である。
図28図26の補強構造物の施工の第一の手順を示す側面図である。
図29図28に続く工程を示す側面図である。
図30図29に続く工程を示す側面図である。
図31】滑動許容部材を使用した構造物の内部構造の例を示す側面図である。
図32】従来の施工方法において補強盛土の転圧や沈下による力が支持材に作用することを説明する図である。
図33】補強盛土施工時に作用する水平方向の力の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態を、図を参照して説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素においては、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0033】
<補強盛土構造>
以下、構造物の一例である補強盛土構造の実施形態について説明する。図1および図2は、本実施形態にかかる補強盛土構造の例を示し、図1は補強盛土構造1の下部、図2は1段目の盛土10周辺の取り付け状態を示す拡大図である。なお、本明細書において、図1に示すように、盛土10からみて剛壁20側(外側)を、補強盛土構造1の前方、盛土10側を後方と称する。
【0034】
本発明の実施形態にかかる補強盛土構造1の剛壁20には、空積みが可能で、撤去不要な埋設型枠21が用いられる。埋設型枠21は、例えば1枚20kg程度で、人力で運搬および設置が可能なものが好ましい。埋設型枠21には、図3に示すように、設置時に盛土10側となる面に、セパレータ取り付け用のリング211が取り付けられている。リング211は、埋設型枠21の上下に2箇所、幅方向には例えば2箇所設けられている。さらに、埋設型枠21の積み上げ時には、上下の埋設型枠21の盛土10側の面の上下各端部に、上下各段の埋設型枠21同士を連結する転倒防止金具212が取り付けられる。
【0035】
また、埋設型枠21の支持材としてのL形鋼22が、埋設型枠21と盛土10を設ける位置との間に、基礎30から鉛直方向に設けられている。L形鋼22は、断面形状における各辺がそれぞれ補強盛土構造1の後方および側方に向けて設置される。L形鋼22は、埋設型枠21のリング211の位置に対向して設けられる。
【0036】
図2および図3に示すように、L形鋼22には、埋設型枠21の前後方向の位置を保つセパレータ23の一方の端部が溶接されている(w1)。セパレータ23の他端はフック形状であり、埋設型枠21のリング211に引っ掛けて固定されている。セパレータ23のフックをリング211に引っ掛けることにより、図2に示すように、リング211を支点にセパレータが23上下左右に回転することができる。そのため、補強用鉄筋24における水平方向の鉄筋24hを避けてセパレータ23をL形鋼に溶接固定することができる。
【0037】
盛土10は複数段に分けて施工され、各段の前面および前方の上下は、網目状の補強材11で囲まれている。さらに、補強材11の内側には溶接金網12が設けられている。
【0038】
埋設型枠21には、上述したように、補強盛土構造構築中の前方からの風荷重やコンクリート打設時の後方からの側圧が作用する(図33)。これらの力を受けた場合でも、埋設型枠21の支持材としてのL形鋼22の位置を固定する必要がある。さらに、盛土10が沈下しても、埋設型枠21側に鉛直方向の力が作用しないようにする必要がある。そのため、本実施形態では、図2に示すように滑動許容部材25および埋設型枠固定用部材としての埋設型枠固定用金具26を用いて、L形鋼22と溶接金網12とを固定する。すなわち、一端側のフックを溶接金網12に引っ掛けた埋設型枠固定用金具26の他端側と、L形鋼22に取り付けた滑動許容部材25とが溶接w2により固定されている。
【0039】
滑動許容部材25は、風荷重および側圧の両方の力に抵抗するとともに、転圧や自重によって盛土10が沈下したときに、L形鋼22が鉛直方向の力を受けないように、L形鋼22の長さ方向に沿って鉛直方向に滑動可能としたものである。すなわち、滑動許容部材25は、L形鋼22の外周に沿ってはめ込まれ、L形鋼22の前方および後方を支持する部位を有している。さらに、鉛直方向に伸びるL形鋼22に対して側面から取り付けられる形状を有し、取り付けた後は、前後両方向からの荷重を受けたり滑動したりしても自然にはL形鋼22から外れない構造となっている。なお、本実施形態では支持材をL形鋼22としたが、本発明の補強構造物の支持材はL形鋼22に限ることはなく、例えばC形鋼やI形鋼など、他の形状を採用しうる。
【0040】
<滑動許容部材>
図4は、滑動許容部材25の一例を示すものである。滑動許容部材25は、丸鋼を折り曲げ加工して成形され、持ち手部251と、折り曲げ部252と、フック部253とが順に形成されている。持ち手部251は、人の手で容易に掴める長さとし、且つ、盛土10側の構造物に干渉しない寸法とする。折り曲げ部252は、L形鋼22の断面形状の、補強盛土構造側方の辺と、後方の辺の少なくとも一部例えば半分の長さにわたって、L形鋼22の外周に沿う形状である。フック部253は、L形鋼22の側面の先端に引っ掛ける部分であり、折り曲げ部252の先端から平面視で180°方向に折り曲げられるとともに、折り曲げ部252に対して鉛直方向に角度を有している。すなわち、図4(a)~(c)に示すように、持ち手部251の長さ方向をX方向、持ち手部251の一端から直角に折り曲げる方向をY方向とすると、フック部253は、折り曲げ部252の先端からX方向の反対方向に屈曲するとともに、Z方向に角度を有している。このようにZ方向に角度θを有していることにより、滑動許容部材25は、図5(a)、(b)に示すように、フック部253をL形鋼22の先端に引っ掛けて回転させることで、L形鋼22の長さ方向途中の側方から取り付けることができる。Z方向の角度は、0°超且つ90°未満であり、上下どちらの方向でも構わない。なお、折り曲げ部252やフック部253の寸法は、L形鋼22に対して、寸法誤差等を許容できる程度のクリアランスを有している。
【0041】
L形鋼22に取り付けた滑動許容部材25は、折り曲げ部252が、埋設型枠21から盛土10方向に作用する風荷重に抵抗し、フック部253が、風荷重とは逆向きの盛土10側からの側圧に抵抗することができる(図5(c))。しかも、L形鋼22の長さ方向に沿って鉛直方向に滑動可能であり、盛土10が沈下した際にはL形鋼22の下方にスライドするので、L形鋼22に鉛直方向の力が加わることがない。
【0042】
なお、滑動許容部材25は、丸鋼を折り曲げ加工したものに限ることはなく、例えば板状部材であってもよい。具体的には、持ち手部251、折り曲げ部252、及びフック部253はそれぞれ、L形鋼22の側面に沿って鉛直方向に延伸する板状部材でもよい。例えば、折り曲げ部252とフック部253の板幅(鉛直方向長さ)が小さい場合には、上述した丸鋼と同様に、フック部253は、折り曲げ部252に対して鉛直方向に角度を有していてもよい。かかる場合、滑動許容部材25は、丸鋼の場合と同様の方法でL形鋼22に取り付けられる。また例えば、折り曲げ部252とフック部253の板幅が大きい場合には、折り曲げ部252とフック部253が平面視で略直線状となった状態で折り曲げ部252をL形鋼22の側面に沿って配置した後、フック部253をL形鋼22の端部で折り曲げて取り付けてもよい。
【0043】
また、風荷重を受ける部分と側圧を受ける部分とを別部材とし、ねじ等で接合する構造でも構わない。例えば、風荷重を受ける部分は、折り曲げ部252のうち少なくともL形鋼22の角部に沿って配置される部分を含む。また、側圧を受ける部分は、フック部253のうち少なくともL形鋼22の端部に沿って配置される部分を含む。かかる場合、風荷重を受ける部分と側圧を受ける部分を個別に用意しておき、滑動許容部材25をL形鋼22に取り付ける際に、これら両部分を接合すればよい。この場合、現場での滑動許容部材25の取り付けの自由度を向上させることができる。
【0044】
さらに、滑動許容部材25と埋設型枠固定用金具26とを一体で成形し、長さを調節できる機構を設けてもよい。例えば、滑動許容部材25の持ち手部251を省略し、折り曲げ部252と埋設型枠固定用金具26を、長さ調節機構を介して接続してもよい。但し、上記実施形態のように滑動許容部材25と埋設型枠固定用金具26を別部材とすることにより、簡易な構造で溶接金網12とL形鋼22との距離の寸法誤差に対応することができる。滑動許容部材の具体的な変形例については後述する。
【0045】
また、支持材がL形鋼以外の形状の場合には、滑動許容部材25は、その形状に合わせて水平方向の前後両側からの荷重、すなわち埋設型枠21から盛土10方向に作用する風荷重と盛土10側からの側圧を受ける形状とすればよい。例えば、支持材がC形鋼の場合は、上述した滑動許容部材25と同様の構成を取り得る。滑動許容部材25の折り曲げ部252はC形鋼の角部に沿って設けられ、フック部253はC形鋼の開口端部に設けられる。
【0046】
<滑動許容部材の取り付け方法>
滑動許容部材25の取り付け方法について、図6および図7を参照して説明する。
【0047】
1段分の盛土用の補強材11および溶接金網12を所定の位置に設置した後、溶接金網12の横筋に埋設型枠固定用金具26を引っ掛けて(図6(a))、1段分の盛土材14を敷設する(図6(b))。その後、L形鋼22に滑動許容部材25を取り付けて、滑動許容部材25と埋設型枠固定用金具26とを溶接固定する(図6(c))。その後、盛土10が沈下した場合には、溶接金網12と埋設型枠固定用金具26が沈下するとともに、滑動許容部材25がL形鋼22の長さ方向に沿って下方に滑動し、L形鋼22には下方への力が作用しない。
【0048】
滑動許容部材25と埋設型枠固定用金具26とを溶接する位置は、図7(a)に示すように滑動許容部材25の折り曲げ部252の一部でもよいし、持ち手部251に十分な長さがある場合には、図7(b)に示すように持ち手部251でもよい。折り曲げ部252を溶接する場合、滑動許容部材25が変形して滑動しにくくなる可能性もあるため、持ち手部251を溶接することが、より好ましい。
【0049】
<補強盛土の施工方法>
以下、本発明の実施形態にかかる補強盛土の施工手順の例について、図8図18を参照して説明する。
【0050】
先ず、基礎部分を掘削し、砕石27および均しコンクリート28を施工する(図8)。
【0051】
均しコンクリート28の上にL形鋼22を鉛直に建てて仮止めし、L形鋼22の前方に埋設型枠21、後方に仮設型枠29を設置する(図9)。
【0052】
埋設型枠21と仮設型枠29との間にコンクリート31を打設し、基礎30を形成する(図10)。
【0053】
基礎コンクリートの養生期間を設け、仮設型枠29を撤去し、掘削部を埋め戻す。その後、剛壁20の補強用鉄筋24を組み立てる(図11)。
【0054】
埋設型枠21を設置し、一端をリング211に取り付けたセパレータ23をL形鋼22に溶接固定する(図12)。
【0055】
1段目の盛土用の補強材11を敷設し、さらに溶接金網12を所定の位置に設置する。また、盛土のこぼれ出し防止シート13を敷設する(図13)。さらに、溶接金網12の横筋に埋設型枠固定用金具26を引っ掛ける(図14)。
【0056】
盛土10の1段分の盛土材14のまき出し、敷均し、転圧を行う(図15)。また、滑動許容部材25をL形鋼22の側面から取り付け、滑動許容部材25と埋設型枠固定用金具26とを溶接固定する(図16図7参照)。上述した通り、滑動許容部材25と埋設型枠固定用金具26とを溶接する位置は、滑動許容部材25の折り曲げ部252の一部でもよいし、持ち手部251でもよい。
【0057】
埋設型枠21と盛土10の各段を施工する図12から図16と同様の工程を、盛土10が所定高さになるまで繰り返す(図17)。
【0058】
盛土全体の自重による沈下が収束した後、剛壁部分のコンクリート32を打設し、施工が完了する(図18)。
【0059】
以上のように、本実施形態によれば、盛土10側から取り付け可能な埋設型枠21を用いることで、盛土10側から剛壁20を構築することが可能となり、足場が不要となる。そのため、剛壁20の前方に鉄道や道路等がある場合や用地制限がある場所でも、補強盛土構造1を施工することができる。
【0060】
また、人力で運搬可能で空積み可能な埋設型枠21を使用することで、運搬や埋設型枠21の位置調整にかかる手間や時間を短縮できて施工性が向上する。さらに、図2に示すように、埋設型枠21を固定するためのセパレータ23は、埋設型枠21に取り付けられたリング211を支点に上下左右に可動であるため、鉄筋24の位置を避けてL形鋼22に溶接できる。したがって、盛土10側から埋設型枠21の構築および鉄筋24の組み立てができ、鉄筋コンクリート構造の剛壁20の構築が可能となる。
【0061】
さらに、滑動許容部材25を用いて支持材としてのL形鋼22と盛土10側とを連結することで、盛土10が転圧や自重により沈下した際に、L形鋼22に沿って滑動許容部材25と埋設型枠固定用金具26が一体となって鉛直方向にスライドすることができる。そのため、盛土10と埋設型枠21とを交互に施工しても埋設型枠21が変状しない。また、図4に示す滑動許容部材25によれば、L形鋼22への取り付けが容易であり、フック部253と折り曲げ部252とを有していることで前後両方向の水平荷重(風荷重、コンクリート側圧)に対して抵抗することができる。
【0062】
なお、滑動許容部材25は、本実施形態のような補強盛土構造1の施工だけでなく、位置が固定された部材と、その部材の長さ方向に力が作用する構造物との間において、位置が固定された部材に長さ方向の力を加えることなく連結する部材として用いることができる。
【0063】
<滑動許容部材の変形例>
以下、滑動許容部材の他の実施形態の例を説明する。
【0064】
図19は、丸鋼と板材との組み合わせによって形成された滑動許容部材25aの例を示す。この滑動許容部材25aは、丸鋼で形成され、軸部253sおよびL形鋼22の前方の先端に引っ掛けるフック部253aと、板材で形成され、L形鋼22の外周の2辺に沿う水平板部254aおよびL形鋼22の後方の面に沿う鉛直板部255aで構成されている。軸部253sとフック部253aは、丸鋼を折り曲げ加工して成形され、この順に形成されている。なお、軸部253sとフック部253aは説明の便宜上分けて記載しているが、これら軸部253sとフック部253aは一体であり、例えばフック部253aが軸部253sを含んでいてもよい。軸部253sは、水平板部254aの下面に溶接されている。フック部253aは、水平板部254aの先端から折り曲げられて反対方向に屈曲するとともに、フック先端が鉛直方向に角度を有している。これにより、フック部253aをL形鋼22の先端に引っ掛けて回転させることで、L形鋼22の長さ方向途中の側方から滑動許容部材25aを取り付けることができる。フック部253aの鉛直方向の角度は、0°超且つ90°未満であり、上下どちらの方向でも構わない。また、例えば前述の補強盛土構造1で用いられる埋設型枠固定用金具26は、図19(a)、(b)に示すように、水平板部254aの上面に溶接される。なお、図19(c)においては、技術の理解を容易にするため、埋設型枠固定用金具26の図示を省略している。
【0065】
このような滑動許容部材25aは、L形鋼22に取り付けられると、フック部253aと鉛直板部255aとが、互いに対向する方向の水平荷重に抵抗することができる。すなわち、フック部253aが、盛土10側からのコンクリート打設時の側圧に抵抗し、鉛直板部255aが、盛土10方向に作用する風荷重に抵抗することができる。さらに、鉛直板部255aがL形鋼22に面で接触しているため、L形鋼22の長さ方向に沿ってより滑らかに滑動することができる。また、埋設型枠固定用金具26を水平板部254aの上面で溶接できるため、狭い作業スペースでも安定して溶接作業ができる。しかも、溶接による部材の変形等が、L形鋼22に対する滑動に影響したり、水平荷重を受ける際の強度低下を招いたりすることがない。
【0066】
図20に示す滑動許容部材25bは、図19に示す滑動許容部材25aを構成する軸部253s、フック部253a、鉛直板部255aを有し、さらに水平板部254aに代えて同形状の水平板部254bを設けたものである。水平板部254bの下面には、軸部253sが溶接されている。また、水平板部254bには、埋設型枠固定用金具26を取り付けるための孔300が形成されている。埋設型枠固定用金具26の先端部をフック形状とすることで、図20(b)に示すように、孔300に引っ掛けるだけで溶接工程を必要とせず、滑動許容部材25aに埋設型枠固定用金具26を取り付けることができる。この場合、現場において、施工誤差やL形鋼22の製品誤差等の影響で、埋設型枠固定用金具26の長さを調整する必要が生じる場合がある。その場合は、例えば図21に示すように、埋設型枠固定用金具26を二分割し、先端側261の基端部261a、基端側262の先端部262aにそれぞれねじを形成し、連結部に長さ調整部材として、それらのねじを螺合するめねじが形成された例えば長ナット301を用いて調整できるようにすればよい。例えば、埋設型枠固定用金具26としてターンバックルを用いてもよい。
【0067】
図22に示す滑動許容部材25cは、図19に示す滑動許容部材25aを構成する軸部253s、フック部253a、水平板部254a、鉛直板部255aに加えて、フック部253aとL形鋼22との間にスライド板256を設け、さらに鉛直板部255aの上方に回転防止板257を設けたものである。スライド板256は薄板で形成され、穴256hに軸部253sを通過させ、フック部253aを引っ掛ける側のL形鋼22の面に、L形鋼22の長手方向に沿って適宜長さで取り付けられる。回転防止板257は、フック部253aの軸部253sに対して鉛直板部255aと略対称に配置される板材である。本実施形態によれば、フック部253aの先端とL形鋼22とが点で接するのではなく、スライド板256を介して面で接するため、接触部分が引っ掛かりにくく、より滑らかに滑動することができる。また、鉛直板部255aと回転防止板257とが、フック部253aの上下に渡りL形鋼22と面で接するため、滑動許容部材25cが鉛直方向に(図22(b)中の点線矢印)回転して傾斜するのを防止することができる。これにより、滑動許容部材25cの引っかかりを防止し、より滑らかな滑動が可能になる。なお、スライド板256と回転防止板257は、両方設けてもよいし、いずれか一方だけを設けてもよい。
【0068】
図22に示す滑動許容部材25cを構成するスライド板256は、図4に示す滑動許容部材25と組み合わせて用いてもよい。すなわち、図23に示すように、スライド板256の穴256hに滑動許容部材25のフック部253を通過させ、フック部253の先端とL形鋼22とがスライド板256を介して面で接するようにする。これにより、滑動許容部材25のフック部253の先端がL形鋼に引っ掛かることなくスライドしやすくなる。また、上述したように、滑動許容部材25と埋設型枠固定用金具26とを溶接する際、折り曲げ部252を溶接すると変形することがあるが、スライド板256を利用して溶接することで、この変形を回避することもできる。
【0069】
また、図24に示す滑動許容部材25dは、図19に示す滑動許容部材25aを構成する軸部253s、フック部253a、鉛直板部255aを有し、さらに水平板部254aに代えて同形状の水平板部254dを設けたものである。水平板部254dの下面には、軸部253sが溶接されている。また、水平板部254dには、複数の孔302が形成されている。複数の孔302は、水平板部254dの前後および左右方向、すなわち図24のX方向およびY方向それぞれに複数箇所設けられており、それぞれの孔302に、例えば複数の方向からセパレータ45や埋設型枠固定用金具26などを取り付けることができる。
【0070】
また、図25に示す滑動許容部材25eは、図19に示す滑動許容部材25aを構成する軸部253s、フック部253aを有し、さらに水平板部254aと鉛直板部255aに代えてL型板258を設けたものである。なお、滑動許容部材25eにおいて、軸部253sは、L形鋼22の一方の辺に沿って設けられている。フック部253aは、軸部253sの先端から折り曲げられて反対方向に屈曲するとともに、フック先端が鉛直方向に角度を有し、L形鋼22の一方の辺(前方)の先端に引っ掛けられる。L型板258は、板材で形成され、軸部253sに溶接され当該軸部253sに沿う第1鉛直板部258aおよびL形鋼22の他方の辺側(後方)の面に沿う第2鉛直板部258bで構成されている。第1鉛直板部258aと第2鉛直板部258bは、板材を折り曲げ加工して成形されている。なお、例えば補強盛土構造1で用いられる埋設型枠固定用金具26は、軸部253sに溶接されるが、図25においては、技術の理解を容易にするため、埋設型枠固定用金具26の図示を省略している。
【0071】
このような滑動許容部材25eは、L形鋼22に取り付けられると、フック部253aと第2鉛直板部258bとが、互いに対向する方向の水平荷重に抵抗することができる。すなわち、上述したようにフック部253aは、盛土10側からのコンクリート打設時の側圧に抵抗する。また、第2鉛直板部258bは、上述した鉛直板部255aと同様の効果を享受でき、盛土10方向に作用する風荷重に抵抗することができる。さらに、第2鉛直板部258bがL形鋼22に面で接触しているため、L形鋼22の長さ方向に沿ってより滑らかに滑動することができる。また、埋設型枠固定用金具26を軸部253sで溶接できるため、狭い作業スペースでも安定して溶接作業ができる。しかも、溶接による部材の変形等が、L形鋼22に対する滑動に影響したり、水平荷重を受ける際の強度低下を招いたりすることがない。
【0072】
<橋脚の補強構造物>
以上のような滑動許容部材25、25a、25b、25c、25d、25eは、補強盛土構造1以外の構造物にも適用できる。以下、他の構造物として、既設橋脚の耐震補強構造物に適用した例について説明する。また本例では、滑動許容部材として滑動許容部材25dを用いる。図26および図27は、埋設型枠41を使用して既設橋脚49の耐震補強を行う際の補強構造物40の内部構造の例を示す。以下、図28図30を参照して、このような補強構造物40の施工方法の例について説明する。
【0073】
先ず、中央に支持材としてのL形鋼42を建て込み、既設橋脚49の周囲に鉄筋43を組み立て、さらに外周に埋設型枠41を配置する(図28)。
【0074】
次に、L形鋼42に例えば図24に示す滑動許容部材25dを取り付け、図24に示すように滑動許容部材25dの複数の孔302を利用して補助用セパレータ45の一端を連結する(図29)。
【0075】
その後、埋設型枠41の片面に一端を取り付けた埋設型枠固定用部材としての型枠固定用セパレータ46と補助用セパレータ45とを溶接固定する。その際、滑動許容部材25dをL形鋼42に沿って適宜上下方向にスライドさせ、型枠固定用セパレータ46が鉄筋43に干渉されないようにする。そして、鉄筋43の位置を避けて型枠固定用セパレータ46と補助用セパレータ45とを溶接できる位置で、滑動許容部材25dをL形鋼42に溶接し、固定する(図30)。なお、滑動許容部材25dをL形鋼42に取り付ける工程と、滑動許容部材25dと型枠固定用セパレータ46とを連結する工程は、どちらが先でもよい。
【0076】
一般に、既設橋脚49の耐震補強工事は、鉄筋43が密に配置されているため視野が狭く、また十分な作業スペースが確保できず、溶接工程を行うのが困難な場合が多い。また、鉄筋43と補助用セパレータ45や型枠固定用セパレータ46とが干渉する場合は、セパレータ45、46を斜めに取り付ける必要があり、角度の調整が困難である。しかも、このような工事は通常夜間工事として行うため、視認しにくく、溶接が困難である。このように施工条件の厳しい橋脚やその他の擁壁等の構造物を施工する際、滑動許容部材を用いてスライドさせることで、容易且つ適切に施工することができる。
【0077】
また、図24に示す滑動許容部材25dを用いれば、複数の位置(角度)にセパレータを取り付ける場合、複数の孔302にセパレータの一端を引っ掛けて溶接することで、仮に溶接が不十分であってもセパレータの脱落を防ぐことができる。また、セパレータの一端を孔302に引っ掛けることで、十分な張力を有して埋設型枠41とL形鋼42とを連結することができる。
【0078】
さらに、L形鋼42に、適宜間隔例えば200mmピッチで滑動許容部材25dを取り付けて溶接することにより、支持材の剛性が上がり、L形鋼42のたわみが減少するとともに、滑動許容部材25dが支持材の突起としてコンクリートとの滑りに抵抗し、支持材とコンクリートの付着を大幅に向上させる効果がある。
【0079】
なお、上記例では、橋脚の補強構造物40に滑動許容部材25dを適用した場合について説明したが、上述した他の滑動許容部材25、25a、25b、25c、25eも適用することができる。
【0080】
<他の構造物>
上述した様々な滑動許容部材25、25a、25b、25c、25d、25eは、全て、上記実施形態で例示した補強盛土構造1や補強構造物40の他、通常の新設構造物の施工に適用できる。
【0081】
図31は、構造物60の内部構造の例を示す。中央に支持材としてのL形鋼62が配置され、その周囲に鉄筋63、さらに外周に埋設型枠61が配置される。そして、L形鋼62に滑動許容部材25(25a、25b、25c、25d、25e)が取り付けられ、補助用セパレータ65の一端が連結される。さらに、埋設型枠61の片面に一端を取り付けられた埋設型枠固定用部材としての型枠固定用セパレータ66と補助用セパレータ65とが溶接固定される。この施工において、滑動許容部材25をL形鋼62に沿って適宜上下方向にスライドさせ、型枠固定用セパレータ66が鉄筋63に干渉されないようにして、鉄筋63の位置を避けて型枠固定用セパレータ66と補助用セパレータ65とを溶接できる位置で、滑動許容部材25dをL形鋼42に溶接し、固定する。
【0082】
このような構造物60においても、例えば、狭いスペースなど、作業性が悪い環境で施工する場合、滑動許容部材25、25a、25b、25c、25d、25eを用いることにより、施工性の向上に寄与する。
【0083】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到しうることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0084】
また、本明細書に記載された効果は、あくまで説明的または例示的なものであって限定的ではない。つまり、本開示に係る技術は、上記の効果とともに、又は、上記の効果に代えて、本明細書の記載から当業者には明らかな他の効果を奏しうる。
【0085】
なお、以下のような構成も本開示の技術的範囲に属する。
(1)構造物の施工方法であって、
埋設型枠の内側に設けられた支持材の長さ方向に沿って滑動可能であり、前記支持材の側方から取り付け可能な滑動許容部材を、前記支持材に取り付ける工程と、
前記滑動許容部材と埋設型枠固定用部材とを連結する工程と、
前記埋設型枠の内側にコンクリートを打設する工程と、を有することを特徴とする、構造物の施工方法。
(2)前記構造物は、盛土の表面に剛壁面を設けた補強盛土であり、
前記滑動許容部材は、前後両側から前記支持材に作用する水平荷重に抵抗し、
盛土を設ける位置の周囲に、前記支持材および鉄筋の下端部を埋設した基礎を設ける工程と、
前記基礎の上に埋設型枠を載置し、前記埋設型枠の片面に一端を取り付けたセパレータの他端部を前記支持材に溶接する工程と、
盛土材を敷設する位置に溶接金網を設ける工程と、
前記滑動許容部材を前記支持材に取り付け、前記埋設型枠固定用部材を介して前記滑動許容部材と前記溶接金網とを連結する工程と、
盛土材を敷設して転圧する工程と、を有し、
前記埋設型枠の載置から前記盛土材の転圧までの工程を繰り返して、所望する高さまで盛土を形成し、前記盛土の沈下が収束した後、前記埋設型枠と前記盛土との間にコンクリートを打設することを特徴とする、前記(1)に記載の構造物の施工方法。
(3)前記滑動許容部材と前記溶接金網とを連結する工程は、
埋設型枠固定用部材の一端を前記溶接金網に取り付け、前記埋設型枠固定用部材の他端と前記滑動許容部材とを溶接することを特徴とする、前記(2)に記載の構造物の施工方法。
(4)前記埋設型枠を載置し、前記埋設型枠の片面に型枠固定用セパレータを取り付ける工程と、
前記滑動許容部材を前記支持材に取り付け、前記埋設型枠固定用部材である補助用セパレータを前記滑動許容部材に取り付け、前記補助用セパレータと前記型枠固定用セパレータとを連結する工程と、
前記支持材の長さ方向における前記滑動許容部材の位置を調整する工程と、
前記滑動許容部材を前記支持材に溶接する固定と、
前記埋設型枠内にコンクリートを打設する工程と、を有することを特徴とする、前記(1)に記載の構造物の施工方法。
(5)構造物であって、
埋設型枠と、
前記埋設型枠の内側に設けられた支持材と、
前記埋設型枠を固定するために設けられた埋設型枠固定用部材と、
前記支持材の長さ方向に沿って滑動可能であり、前記支持材の側方から取り付けられ、前記埋設型枠固定用部材が取り付けられた滑動許容部材と、を有し、
前記埋設型枠の内側にコンクリートが打設されていることを特徴とする、構造物。
(6)前記構造物は補強盛土であり、
盛土の周囲に設けられ、前記支持材および鉄筋の下端部を埋設した基礎と、
前記埋設型枠の片面と前記支持材とを連結するセパレータと、
盛土材の周囲に設けられた溶接金網と、をさらに有し、
前記埋設型枠は、前記基礎の上に載置され、
前記滑動許容部材は、前後両側から前記支持材に作用する水平荷重に抵抗し、前記支持材に取り付けられた前記滑動許容部材が、前記埋設型枠固定用部材を介して前記溶接金網に連結され、前記埋設型枠と前記盛土との間にコンクリートが打設されていることを特徴とする、前記(5)に記載の構造物。
(7)前記滑動許容部材と前記溶接金網は、
一端が前記溶接金網に取り付けられた埋設型枠固定用部材の他端と前記滑動許容部材とが溶接されることにより連結されていることを特徴とする、前記(6)に記載の構造物。
(8)前記埋設型枠の片面には、型枠固定用セパレータが取り付けられ、
前記滑動許容部材には、前記埋設型枠固定用部材である補助用セパレータが取り付けられ、
前記型枠固定用セパレータと前記補助用セパレータとが連結され、前記埋設型枠内にコンクリートが打設されていることを特徴とする、前記(5)に記載の構造物。
(9)前記滑動許容部材は、前方からの水平荷重に抵抗する部分と、後方からの水平荷重に抵抗する部分とが一体に成形されていることを特徴とする、前記(5)~(8)のいずれかに記載の構造物。
(10)前記支持材がL形鋼、C形鋼、I形鋼のいずれかであることを特徴とする、前記(5)~(9)のいずれかに記載の構造物。
(11)前記埋設型枠固定用部材が二分割され、先端側の基端部および基端側の先端部にそれぞれねじが形成され、前記ねじが螺合されるめねじが形成された連結部で前記埋設型枠固定用部材の長さが調整可能であることを特徴とする、前記(5)~(10)のいずれかに記載の構造物。
(12)前記支持材がL形鋼であり、
前記滑動許容部材は、持ち手部と、前記L形鋼の外周の2辺に沿う形状の折り曲げ部と、前記L形鋼の1辺の先端に引っ掛けるフック部とが順に形成され、前記フック部は、前記折り曲げ部に対して鉛直方向に角度を有していることを特徴とする、前記(5)~(11)のいずれかに記載の構造物。
(13)形鋼の長さ方向に沿って滑動可能な滑動許容部材であって、
前記形鋼の外周に沿って滑動し、前記形鋼の側方から取り付け可能であることを特徴とする、滑動許容部材。
(14)前記形鋼の側方に作用する対向する両側からの力に抵抗し、
前記形鋼がL形鋼であり、
丸鋼で成形され、持ち手部と、前記L形鋼の外周の2辺に沿う形状の折り曲げ部と、前記L形鋼の1辺の先端に引っ掛けるフック部とを有し、前記フック部は、前記折り曲げ部に対して鉛直方向に角度を有していることを特徴とする、前記(13)に記載の滑動許容部材。
(15)前記フック部がスライド板を介して前記L形鋼に接触するように前記フック部と前記L形鋼との間に設けられる前記スライド板を備えていることを特徴とする、前記(14)に記載の滑動許容部材。
(16)前記形鋼がL形鋼であり、
丸鋼で形成され前記L形鋼の一方の辺の先端に引っ掛けるフック部と、板材で形成され、前記L形鋼の外周の2辺に沿う水平板部および前記L形鋼の他方の辺側の面に沿う鉛直板部とを有し、
前記フック部は、軸部が前記水平板部に溶接され、先端部が前記水平板部に対して鉛直方向に角度を有していることを特徴とする、前記(13)に記載の滑動許容部材。
(17)前記水平板部に、部材取り付け用の孔が形成されていることを特徴とする、前記(16)に記載の滑動許容部材。
(18)前記孔が、前記水平板部の前後および左右方向に複数箇所形成されていることを特徴とする、前記(17)に記載の滑動許容部材。
(19)前記フック部がスライド板を介して前記L形鋼に接触するように前記フック部と前記L形鋼との間に設けられる前記スライド板と、前記L形鋼の前記他方の辺側の面において前記鉛直板部の上方に設けられる回転防止板のうち、いずれか一方または両方を備えていることを特徴とする、前記(16)~(18)のいずれかに記載の滑動許容部材。
(20)前記形鋼がL形鋼であり、
丸鋼で成形され、前記L形鋼の一方の辺の先端に引っ掛けるフック部および前記L形鋼の一方の辺に沿う軸部と、板材で形成され、前記軸部に溶接され当該軸部に沿う第1鉛直板部および前記L形鋼の他方の辺側の面に沿う第2鉛直板部とを有し、
前記フック部は、先端部が前記軸部に対して鉛直方向に角度を有していることを特徴とする、前記(13)に記載の滑動許容部材。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明は、コンクリート構造物の施工に有用である。
【符号の説明】
【0087】
1 補強盛土構造
10、50 盛土
11 補強材
12 溶接金網
13 こぼれ出し防止シート
14 盛土材
20 剛壁
21、41、61 埋設型枠
22、42、51、62 L形鋼
23 セパレータ
24、43、63 鉄筋
25、25a、25b、25c、25d、25e 滑動許容部材
26 埋設型枠固定用金具
27 砕石
28 コンクリート
29 仮設型枠
30 基礎
31 コンクリート(基礎)
32 コンクリート(剛壁)
40 補強構造物
45、65 補助用セパレータ
46、66 型枠固定用セパレータ
49 既設橋脚
52 外型枠固定用金具
53 外型枠
60 構造物
211 リング
212 転倒防止金具
251 持ち手部
252 折り曲げ部
253、253a フック部
253s 軸部
254a、254b、254d 水平板部
255a 鉛直板部
256 スライド板
256h 穴
257 回転防止板
258 L型板
258a 第1鉛直板部
258b 第2鉛直板部
261 先端側
261a 基端部
262 基端側
262a 先端部
300 孔
301 長ナット
302 孔
w1、w2 溶接
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33