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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137840
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】接着剤組成物、フィルム及び積層体
(51)【国際特許分類】
   C09J 167/00 20060101AFI20240927BHJP
   C09J 7/30 20180101ALI20240927BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20240927BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20240927BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20240927BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240927BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20240927BHJP
   C09J 4/02 20060101ALI20240927BHJP
   C08G 63/16 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
C09J167/00
C09J7/30
C08F2/44 C
C08F290/06
B32B27/36
B32B27/00 D
C09J11/06
C09J4/02
C08G63/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024042989
(22)【出願日】2024-03-19
(31)【優先権主張番号】P 2023046337
(32)【優先日】2023-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000109635
【氏名又は名称】星光PMC株式会社
(72)【発明者】
【氏名】安藤 仁
(72)【発明者】
【氏名】高田 圭吾
【テーマコード(参考)】
4F100
4J004
4J011
4J029
4J040
4J127
【Fターム(参考)】
4F100AB17
4F100AB33
4F100AH02A
4F100AK12
4F100AK12A
4F100AK25
4F100AK25A
4F100AK28
4F100AK28A
4F100AK41
4F100AK41A
4F100AK49
4F100AK51
4F100AK51A
4F100AL01A
4F100AT00B
4F100BA02
4F100BA07
4F100CB00
4F100CB00A
4F100EJ08
4F100EJ08A
4F100EJ17
4F100EJ42
4F100GB48
4F100JA05
4F100JA06
4F100JA07
4F100JB12A
4F100JB13
4F100JK02
4F100JK06
4F100JK07
4F100JK08
4F100JL11A
4F100YY00A
4J004AA01
4J004AA15
4J004AB05
4J004BA02
4J004CA06
4J004CB03
4J004CC02
4J004DB03
4J004FA05
4J011PA88
4J011PA90
4J011PC08
4J029AA03
4J029AB07
4J029AC03
4J029AD01
4J029AD02
4J029AD03
4J029AD07
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4J029HA01
4J029HB03A
4J029JB131
4J029JC143
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4J029KE09
4J029KH01
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4J040HB41
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4J040KA16
4J040KA23
4J040LA01
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4J040NA19
4J127AA03
4J127BA051
4J127BA052
4J127BB031
4J127BB032
4J127BB091
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4J127BB162
4J127BB221
4J127BB222
4J127BC021
4J127BC022
4J127BC131
4J127BC132
4J127BD232
4J127BD481
4J127BE511
4J127BE51Y
4J127BG052
4J127BG121
4J127BG181
4J127BG271
4J127CB351
4J127CC291
4J127DA53
4J127EA05
4J127FA14
4J127FA38
(57)【要約】
【課題】
本発明は、従来技術に比べて高溶解性かつ低誘電率及び低誘電正接であり、 また、銅箔やポリイミドフィルムへの密着性に優れ、更には柔軟性に優れた接着剤組成物を形成するポリエステル系樹脂、並びにこれを用いた接着剤組成物、当該接着剤組成物を硬化させて得られるフィルム及び当該フィルムを備える積層体を提供することを目的とする。
【解決手段】
下記(1)を含有することを特徴とする接着剤組成物。
(1)両末端カルボン酸メチルエステル基ポリスチレン由来の構造単位及び両末端水酸基の水添ポリブタジエン由来の構造単位を有するポリエステル系樹脂
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(1)を含有することを特徴とする接着剤組成物。
(1)両末端カルボン酸メチルエステル基ポリスチレン由来の構造単位及び両末端水酸基の水添ポリブタジエン由来の構造単位を有するポリエステル系樹脂
【請求項2】
下記(1)及び(2)を含有することを特徴とする接着剤組成物。
(1)両末端カルボン酸メチルエステル基ポリスチレン由来の構造単位及び両末端水酸基の水添ポリブタジエン由来の構造単位を有するポリエステル系樹脂、
(2)イソシアネート基を有する(メタ)アクリレート
【請求項3】
下記(1)から(3)のすべてを含有することを特徴とする接着剤組成物。
(1)両末端カルボン酸メチルエステル基ポリスチレン由来の構造単位及び両末端水酸基の水添ポリブタジエン由来の構造単位を有するポリエステル系樹脂
(2)イソシアネート基を有する(メタ)アクリレート
(3)有機過酸化物
【請求項4】
下記(1)から(4)のすべてを含有することを特徴とする接着剤組成物。
(1)両末端カルボン酸メチルエステル基ポリスチレン由来の構造単位及び両末端水酸基の水添ポリブタジエン由来の構造単位を有するポリエステル系樹脂
(2)イソシアネート基を有する(メタ)アクリレート
(3)有機過酸化物
(4)有機溶媒
【請求項5】
下記(1)から(5)のすべてを含有することを特徴とする接着剤組成物。
(1)両末端カルボン酸メチルエステル基ポリスチレン由来の構造単位及び両末端水酸基の水添ポリブタジエン由来の構造単位を有するポリエステル系樹脂
(2)イソシアネート基を有する(メタ)アクリレート
(3)有機過酸化物
(4)有機溶媒
(5)末端二重結合を有するポリフェニレンエーテル系樹脂
【請求項6】
下記(6)を含有することを特徴とする接着剤組成物。
(6)両末端カルボン酸メチルエステル基ポリスチレン由来の構造単位及び両末端水酸基の水添ポリブタジエン由来の構造単位を有するポリエステル系樹脂とイソシアネート基を有する(メタ)アクリレートとの反応物である両末端二重結合ポリエステル系樹脂
【請求項7】
下記(6)及び(7)を含有することを特徴とする接着剤組成物。
(6)両末端カルボン酸メチルエステル基ポリスチレン由来の構造単位及び両末端水酸基の水添ポリブタジエン由来の構造単位を有するポリエステル系樹脂とイソシアネート基を有する(メタ)アクリレートとの反応物である両末端二重結合ポリエステル系樹脂
(7)有機過酸化物
【請求項8】
下記(6)から(8)のすべてを含有することを特徴とする接着剤組成物。
(6)両末端カルボン酸メチルエステル基ポリスチレン由来の構造単位及び両末端水酸基の水添ポリブタジエン由来の構造単位を有するポリエステル系樹脂とイソシアネート基を有する(メタ)アクリレートとの反応物である両末端二重結合ポリエステル系樹脂
(7)有機過酸化物
(8)有機溶媒
【請求項9】
下記(6)から(9)のすべてを含有することを特徴とする接着剤組成物。
(6)両末端カルボン酸メチルエステル基ポリスチレン由来の構造単位及び両末端水酸基の水添ポリブタジエン由来の構造単位を有するポリエステル系樹脂とイソシアネート基を有する(メタ)アクリレートとの反応物である両末端二重結合ポリエステル系樹脂
(7)有機過酸化物
(8)有機溶媒
(9)末端二重結合を有するポリフェニレンエーテル系樹脂
【請求項10】
両末端カルボン酸メチルエステル基ポリスチレン由来の構造単位:両末端水酸基の水添ポリブタジエン由来の構造単位=10~60:90~40(質量比)であることを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項11】
請求項1~9のいずれか一項に記載の接着剤組成物を硬化させて得られるフィルム。
【請求項12】
請求項1~9のいずれか一項に記載の接着剤組成物を硬化させて得られるフィルムを備える積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電性が低く基材への密着性が良好で、柔軟性にも優れた接着剤組成物に関する。更に詳しくは、本発明は、電子部品等の接着用途、特に、フレキシブルプリント基板(以下、「FPC」ともいう)の関連製品の製造に適した接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の小型化、軽量化等に伴い、電子部品等の接着用途は多様化し、金属とプラスチックの積層体を作製するための接着剤の需要は増大している。接着剤が用いられるFPCの関連製品としては、例えばポリイミドフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、液晶ポリマー(LCP)フィルム等に銅箔を貼り合わせたフレキシブル銅張積層板(以下、「FCCL」ともいう)や、FCCLに電子回路を形成したFPC、あるいはFPCと補強板を貼り合せた補強板付きFPC、FCCL及びFPCを重ねて接合した多層板等がある。
【0003】
FCCLやFPC等を作成するための接着剤には、接着性のほか、誘電特性(低誘電率、低誘電正接)や耐屈曲性等の諸性能が要求される。特に、高速での信号伝送を伴うFPCにおいては、誘電特性は高周波領域での電気的信号の伝送損失を低減するうえで重要な特性である。従来、所望の誘電特性を持つ接着剤用材料としては、スチレン系エラストマーが多用されていたが、従来のスチレン系エラストマーは溶解性が低くハンドリング性に問題があるため、より高濃度かつ低粘度で溶解可能なハンドリング性の良いものが求められていた。
【0004】
例えば、特許文献1には比誘電率や誘電正接が十分低いと共に、高弾性率でも伸び率が高い接着剤組成物及びそれを用いた接着シートとして、変性ポリフェニレンエーテル樹脂とスチレン系エラストマーとシランカップリング剤を配合した接着剤組成物が提案されている。しかしながら、ハンドリング性を考慮すると接着成分を20%まで濃度低下させる必要があることや、ポリフェニレンエーテル樹脂は融点(軟化点)が高く常温では硬い性質を有するため、所望される誘電特性を十分満足する配合割合とした場合は弾性率が高くなると共に、伸び率や耐屈曲性が低下する傾向があることなど、改善の余地があった。
【0005】
一方、ポリエステルは耐熱性、耐薬品性、耐久性、機械的強度に優れているため、フィルムやペットボトル、繊維、トナー、電機部品、接着剤、粘着剤等、幅広い用途で用いられている。また、ポリエステルは、そのポリマー構造ゆえに極性が高いので、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、エポキシ樹脂等の極性ポリマー、及び銅、アルミニウム等の金属材料に対して優れた接着性を発現することが知られている。この特性を利用し、FCCLやFPC等を作製するための接着剤としての使用が検討されている。
【0006】
例えば、特許文献2には従来のポリエステル系樹脂より更に低誘電率及び低誘電正接であり、硬化後の初期接着性や湿熱環境下での長期耐久性にも優れるポリエステル系樹脂として、多価カルボン酸類由来の構造単位と多価アルコール類由来の構造単位を含む、特定のガラス転移温度と誘電正接を有するポリエステル系樹脂を含有する接着剤組成物が開示されている。また、特許文献3には溶剤溶解性、耐熱性、密着性に優れ、比誘電率及び誘電正接の低い、誘電特性に優れたポリエステル、フィルム及び接着剤組成物として、エステル基濃度を低くしてポリマーの極性を下げることで所望の誘電特性を発揮するポリエステルを含有する接着剤等が開示されている。しかしながら、いずれの開示技術においても、硬化前の誘電特性を評価してはいるものの、実装時に問題となる硬化後のフィルムの誘電特性については考慮されていなかった。実際、ポリエステル系樹脂を用いた接着剤において、近年の誘電特性の要求レベル(硬化後の比誘電率:3.0以下かつ硬化後の誘電正接:0.0035以下)を満足するものはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2022-026390号公報
【特許文献2】特開2022-051543号公報
【特許文献3】特開2022-068240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来技術に比べて高溶解性かつ低誘電率及び低誘電正接であり、また、銅箔やポリイミドフィルムへの密着性に優れ、更には柔軟性に優れた接着剤組成物を形成するポリエステル系樹脂、並びにこれを用いた接着剤組成物、フィルム及び積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
しかるに本発明者は、かかる事情に鑑み鋭意研究を重ねた結果、特定の構造単位を含むポリエステル系樹脂が、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
即ち、本発明は、
<1>下記(1)を含有することを特徴とする接着剤組成物、
(1)両末端カルボン酸メチルエステル基ポリスチレン由来の構造単位及び両末端水酸基の水添ポリブタジエン由来の構造単位を有するポリエステル系樹脂
<2>下記(1)及び(2)を含有することを特徴とする接着剤組成物、
(1)両末端カルボン酸メチルエステル基ポリスチレン由来の構造単位及び両末端水酸基の水添ポリブタジエン由来の構造単位を有するポリエステル系樹脂、
(2)イソシアネート基を有する(メタ)アクリレート
<3>下記(1)から(3)のすべてを含有することを特徴とする接着剤組成物、
(1)両末端カルボン酸メチルエステル基ポリスチレン由来の構造単位及び両末端水酸基の水添ポリブタジエン由来の構造単位を有するポリエステル系樹脂
(2)イソシアネート基を有する(メタ)アクリレート
(3)有機過酸化物
<4>下記(1)から(4)のすべてを含有することを特徴とする接着剤組成物、
(1)両末端カルボン酸メチルエステル基ポリスチレン由来の構造単位及び両末端水酸基の水添ポリブタジエン由来の構造単位を有するポリエステル系樹脂
(2)イソシアネート基を有する(メタ)アクリレート
(3)有機過酸化物
(4)有機溶媒
<5>下記(1)から(5)のすべてを含有することを特徴とする接着剤組成物、
(1)両末端カルボン酸メチルエステル基ポリスチレン由来の構造単位及び両末端水酸基の水添ポリブタジエン由来の構造単位を有するポリエステル系樹脂
(2)イソシアネート基を有する(メタ)アクリレート
(3)有機過酸化物
(4)有機溶媒
(5)末端二重結合を有するポリフェニレンエーテル系樹脂
<6>下記(6)を含有することを特徴とする接着剤組成物、
(6)両末端カルボン酸メチルエステル基ポリスチレン由来の構造単位及び両末端水酸基の水添ポリブタジエン由来の構造単位を有するポリエステル系樹脂とイソシアネート基を有する(メタ)アクリレートとの反応物である両末端二重結合ポリエステル系樹脂
<7>下記(6)及び(7)を含有することを特徴とする接着剤組成物、
(6)両末端カルボン酸メチルエステル基ポリスチレン由来の構造単位及び両末端水酸基の水添ポリブタジエン由来の構造単位を有するポリエステル系樹脂とイソシアネート基を有する(メタ)アクリレートとの反応物である両末端二重結合ポリエステル系樹脂
(7)有機過酸化物
<8>下記(6)から(8)のすべてを含有することを特徴とする接着剤組成物、
(6)両末端カルボン酸メチルエステル基ポリスチレン由来の構造単位及び両末端水酸基の水添ポリブタジエン由来の構造単位を有するポリエステル系樹脂とイソシアネート基を有する(メタ)アクリレートとの反応物である両末端二重結合ポリエステル系樹脂
(7)有機過酸化物
(8)有機溶媒
<9>下記(6)から(9)のすべてを含有することを特徴とする接着剤組成物、
(6)両末端カルボン酸メチルエステル基ポリスチレン由来の構造単位及び両末端水酸基の水添ポリブタジエン由来の構造単位を有するポリエステル系樹脂とイソシアネート基を有する(メタ)アクリレートとの反応物である両末端二重結合ポリエステル系樹脂
(7)有機過酸化物
(8)有機溶媒
(9)末端二重結合を有するポリフェニレンエーテル系樹脂
<10>両末端カルボン酸メチルエステル基ポリスチレン由来の構造単位:両末端水酸基の水添ポリブタジエン由来の構造単位=10~60:90~40(質量比)であることを特徴とする前記<1>~<9>に記載の接着剤組成物、
<11>前記<1>~<9>に記載の接着剤組成物を硬化させて得られるフィルム、
<12>前記<1>~<9>に記載の接着剤組成物を硬化させて得られるフィルムを備える積層体、
である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の接着剤組成物に含まれるポリエステル系樹脂は、低誘電率及び低誘電正接、特には低誘電正接であり、硬化後の接着性及び柔軟性に優れたフィルムを形成するものであり、とりわけかかる接着剤組成物は、金属箔とプラスチックフィルムからなる積層体を作製するための接着剤、例えば、電子材料部材の貼り合せ、なかでも、FCCLやカバーレイ、ボンディングシート等のFPC等の作製に用いられる接着剤として有効である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<ポリエステル系樹脂>
本発明の接着剤組成物は、両末端カルボン酸メチルエステル基ポリスチレン由来の構造単位及び両末端水酸基の水添ポリブタジエン由来の構造単位を有するポリエステル系樹脂を少なくとも含有する。
【0013】
[両末端カルボン酸メチルエステル基ポリスチレン]
両末端カルボン酸メチルエステル基ポリスチレンは、カルボン酸メチルエステル基を導入可能な開始剤を使用して、有機溶媒中でスチレンモノマー及び/又はスチレン誘導体を含むモノマーをラジカル重合することにより得ることができる。カルボン酸メチルエステル基を導入可能な開始剤としては、例えばジメチル2,2‘-アゾビス(2-メチルプロピオネート)が挙げられる。開始剤として前記ジメチル2,2‘-アゾビス(2-メチルプロピオネート)を使用した場合、その一部からはテトラメチルコハク酸ジメチルが生成する。テトラメチルコハク酸ジメチルはメチルエステルを有しているため、エステル交換反応に関与し、ポリエステル系樹脂重合を阻害する。そのため、両末端カルボン酸メチルエステル基ポリスチレンに不純物として含まれるテトラメチルコハク酸ジメチルはできる限り除去することが好ましい。両末端カルボン酸メチルエステル基ポリスチレンに不純物として含まれるテトラメチルコハク酸ジメチルの含有量は、2,000ppm以下が好ましく、1,000ppm以下がより好ましく、500ppm以下が特に好ましい。
【0014】
本発明においてスチレン誘導体とは、ビニル基をひとつだけ有し、かつビニル基以外の反応性基を有しないスチレン誘導体をいう。前記スチレン誘導体としては、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、p-n-ブチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、p-n-ヘキシルスチレン、p-n-オクチルスチレン、p-n-ノニルスチレン、p-n-デシルスチレン、p-n-ドデシルスチレン、p-メトキシスチレン及びp-フェニルスチレンが挙げられる。スチレンモノマー及び/又はスチレン誘導体の割合は、両末端カルボン酸メチルエステル基ポリスチレンの原料モノマー成分の80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、100質量%であることが特に好ましい。また汎用性や取扱いの観点から、スチレンモノマーが好ましい。
【0015】
本発明の効果を阻害しない限り、両末端カルボン酸メチルエステル基ポリスチレンの原料モノマーに、スチレンモノマーや前記スチレン誘導体以外の、ビニル基またはアリル基をひとつだけ有するその他のモノマーを使用することができる。特に、その他のモノマーとしてカルボキシル基や水酸基、アミノ基など、ビニル基及びアリル基以外の反応性基やエステル結合を有するモノマーを用いる場合は、その反応性基やエステル結合に起因した分岐構造をポリエステル系樹脂に与えてしまうことに留意する必要がある。反応性基やエステル結合を有するモノマーの使用割合は、通常、好ましくは両末端カルボン酸メチルエステル基ポリスチレンの原料モノマー成分の10質量%以下であり、より好ましくは5質量%以下、特に好ましくは1質量%以下である。その他のモノマーとしては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート等のアクリル系重合性モノマーが挙げられる。
【0016】
両末端カルボン酸メチルエステル基ポリスチレンの重量平均分子量(以下、Mwと略すことがある)は1,000以上20,000以下であることが好ましい。ポリスチレンを構成するフェニル基のπ電子が銅箔との密着に寄与するため、Mwが1,000以上の場合であれば、ポリエステル系樹脂中の両末端カルボン酸メチルエステル基ポリスチレン由来の構造単位の比率が高まるため、密着性が向上する。また、Mwが20,000以下であると、ポリスチレン部位の性質が強くなりすぎず、両末端水酸基の水添ポリブタジエン由来の構造単位による柔軟性が損なわれず、密着性を保つことができる。両末端カルボン酸メチルエステル基ポリスチレンのMwは、より好ましくは1,500以上10,000以下である。本発明において、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(以下、Mnと略すことがある)は、テトラヒドロフラン(以下、THFと略すことがある)可溶分をゲルパーミテーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した値をいう。分子量測定条件は以下のとおりである。
装置 : 東ソー株式会社製 HLC-8320
カラム : TSKGEL SUPERMULTIPORE HZ-H +TSKGEL SUPERMULTIPORE HZ-M
測定温度 :40℃試料濃度 :1.0g/L(THF溶液)
溶媒:THF
溶液注入量 : 100μL
検出装置 : 屈折率検出器
分子量校正曲線 : 標準ポリスチレンを用いて作成
【0017】
[両末端水酸基の水添ポリブタジエン]
両末端水酸基の水添ポリブタジエンは、両末端水酸基ポリブタジエンの水素添加物であり、両末端水酸基のポリブタジエンは、ブタジエンに由来する重合鎖とその重合鎖の両末端に水酸基を有する化合物である。ブタジエンに由来する重合鎖は、エラストマーとして作用し得るものであり、このような重合鎖を有することによって、ポリエステル系樹脂に接着性及び柔軟性を付与することが可能となる。両末端水酸基の水添ポリブタジエンは、分子内に平均1.8~2.5の水酸基を有していることが好ましい。分子内の水酸基が1.8以上あることで、ポリエステル系樹脂の重合が停止することなく、高分子量化が可能となり、2.5以下とすることで、架橋によるポリエステル系樹脂のゲル化を抑制し、高分子量化が可能となることで本発明の優れた効果が得られやすくなる。
【0018】
両末端水酸基の水添ポリブタジエンは市販品をそのまま用いることができる。両末端水酸基の水添ポリブタジエンの市販品としては、例えば、NISSO―PB(登録商標)GI―1000、GI―2000、GI―3000(いずれも商品名、日本曹達株式会社製)、Krasol(登録商標)HLBH―P2000、HLBH―P3000(いずれも商品名、CRAY VALLEY社製)等が挙げられる。これらは、分子内の水酸基の量に応じて1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。
【0019】
両末端水酸基の水添ポリブタジエンのMnは、粘度及び接着力のバランスの観点から、500~100,000であることが好ましく、700~50,000であることがより好ましく、さらに900~10,000であることが最も好ましい。
【0020】
両末端水酸基の水添ポリブタジエンは、水添ポリブタジエンの数平均分子量、重量平均分子量及びその分子内の水酸基の量を考慮すると、GI―3000(Mn3,920)が最も好ましい。
【0021】
[両末端カルボン酸メチルエステル基ポリスチレンと両末端水酸基の水添ポリブタジエンの割合]
ポリエステル系樹脂を構成する両末端カルボン酸メチルエステル基ポリスチレンと両末端水酸基の水添ポリブタジエンの割合は、後述する両末端水酸基を有するポリエステル系樹脂の生成量および重量平均分子量の最適化の観点を加味した上で、両末端カルボン酸メチルエステル基ポリスチレン:両末端水酸基の水添ポリブタジエン=10~60:40~90(質量%)であることが好ましい。前記範囲内とすることで、両末端カルボン酸メチルエステル基ポリスチレン由来の構造単位に起因したフィルム強度及び密着性の向上と、両末端水酸基の水添ポリブタジエン由来の構造単位に起因した柔軟性のバランスに優れた接着剤組成物となる。好ましくは両末端カルボン酸メチルエステル基ポリスチレン:両末端水酸基の水添ポリブタジエン=15~55:45~85(質量%)であり、より好ましくは20~50:50~80(質量%)である。
【0022】
[両末端水酸基を有するポリエステル系樹脂]
本発明の接着剤組成物に用いるポリエステル系樹脂は、末端水酸基を介した架橋反応によりフィルムを形成する。具体的には、両末端に水酸基を有するポリエステル系樹脂に対し、後述するイソシアネート基を有する(メタ)アクリレートやポリイソシアネート硬化剤を用いて硬化させる。そのため、本発明に用いるポリエステル系樹脂は、前記した密着性とバランスの両立を考慮した設計に加えて、両末端水酸基を有するポリエステル系樹脂を多く含むことが、所望する効果を満足したフィルムを得るうえで好ましい。両末端水酸基を有するポリエステル系樹脂は、前記した割合でも十分に生成するが、通常、両末端カルボン酸メチルエステル基ポリスチレンのモル数に対する、両末端水酸基の水添ポリブタジエンのモル数を多くすることにより、増加させることができる。
【0023】
[両末端水酸基の水添ポリブタジエン以外のポリオール]
ポリエステル系樹脂の調製においては、両末端水酸基の水添ポリブタジエンとともに両末端カルボン酸メチルエステル基ポリスチレンと反応可能なポリオール(以下、「その他のポリオール」ともいう)を併用してもよい。
【0024】
両末端水酸基の水添ポリブタジエンの比率は、柔軟性の観点から、ポリオール全量(両末端水酸基の水添ポリブタジエン、並びにその他のポリオールの合計)を基準として、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましい。ポリオールは、両末端水酸基の水添ポリブタジエンのみから構成されるものであってよい。その他のポリオールの含有量は、ポリオール全量を基準として、0~30質量%であることが好ましく、0~10質量%であることがより好ましい。
【0025】
その他のポリオールとしては、例えば、ダイマージオール類、ビスフェノール骨格含有モノマー、脂肪族多価アルコール、脂環族多価アルコール、芳香族多価アルコール、ポリエステル系樹脂ポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリアクリレートポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリシロキサンポリオール、ポリイソプレンポリオール、ポリオレフィンポリオール等が挙げられる。その他のポリオールは、1種を併用してもよく、2種以上を併用して用いてもよい。
【0026】
本発明において、ポリエステル系樹脂を構成する化合物は、その他のポリオールとしてダイマージオール類を含有することが好ましい。ダイマージオール類としては、例えば、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エルカ酸等から誘導されるダイマー酸類(炭素数36~44のものを主とする)の還元体であるダイマージオール類、及びそれらの水素添加物等が挙げられる。なかでもポリエステル系樹脂の製造時におけるゲル化抑制の点から、水素添加物が好ましい。
【0027】
その他のポリオールとしてダイマージオール類を含有する場合は、ポリオール全量に対するダイマージオールの含有量は、1~20質量%であることが好ましい。また、ポリエステル系樹脂全体に対するダイマージオール類の含有量は0.5~10重量%であることが好ましい。ダイマージオール類が0.5%以上含まれると密着性が向上する傾向があり、10質量%以下であることで誘電正接の値が好ましいものとなる。
【0028】
[ポリエステル系樹脂を構成するその他の原料]
ポリエステル系樹脂には、多価カルボン酸類を含んでもよい。ポリエステル系樹脂を構成する多価カルボン酸類としては、ダイマー酸類及び縮合多環式芳香族化合物等が挙げられる。ダイマー酸類としては、例えば、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エルカ酸等から誘導されるダイマー酸類(炭素数36~44のものを主とする)、及びそれらの水素添加物等が挙げられる。なかでもポリエステル系樹脂の製造時におけるゲル化抑制の点から、水素添加物が好ましい。縮合多環式芳香族化合物は、多価カルボン酸類の縮合多環式芳香族化合物として、例えば、ナフタレンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸ジメチル、アントラセンジカルボン酸等が挙げられ、なかでも、価格や入手容易性の観点からナフタレンジカルボン酸類が好ましく、反応性の点からナフタレンジカルボン酸ジメチルがより好ましい。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。多価カルボン酸類を含有する場合は、多価カルボン酸類の含有量は、0.5~10質量%であることが好ましい。多価カルボン酸類が0.5質量%含まれると密着性が向上する傾向があり、10質量%以下であることで誘電正接の値が好ましいものとなる。
【0029】
[ポリエステル系樹脂を構成する原料化合物全般]
ポリエステル系樹脂は、エステル基濃度が500eq/g以下であることが好ましい。エステル基濃度が低いことで、ポリマーの極性が下がることにより、低誘電特性を発揮する。エステル基濃度は好ましくは400eq/g以下、さらに好ましくは300eq/g以下である。
【0030】
[エステル基濃度の算出方法]
各酸成分と各グリコ―ル成分から生成するユニットの重量平均分子量の逆数の2×10倍をエステル基濃度として計算した。例えば、両末端カルボン酸メチルエステル基ポリスチレン(Mw5,040)とGI―3000(Mw5,380)から成るポリエステル系樹脂の場合、脱離するメタノール(分子量32)を考慮し、生成ユニットの重量平均分子量はMw=(5,040+5,380-32×2)=10,356であるので、エステル基濃度は193eq/10gと計算される。ここでグリコール(化1)と両末端カルボン酸メチルエステル基ポリスチレン(化2)からなる生成ユニットとは(化3)を意味する。
【0031】
【化1】
【0032】
【化2】
【0033】
【化3】
【0034】
[ポリエステル系樹脂の製造]
ポリマー末端官能基同士のエステル交換反応による重縮合は一般に反応性が低いため、両末端カルボン酸メチルエステル基ポリスチレンと両末端水酸基の水添ポリブタジエンとの反応を促進する目的で、両者の相溶化剤となり得る有機溶媒を用いることが好ましい。更に、エステル交換反応を促進する触媒を併用することもできる。重縮合は、相溶化剤となり得る有機溶媒を系内に留めつつ副生成物のメタノールを系外に留去することにより進めることができる。その後、減圧により有機溶媒を含む揮発成分を留去して高分子量化した両末端に水酸基を有するポリエステル系樹脂を得る。
【0035】
前記有機溶媒としては、トルエン、キシレン、ソルベントナフサ、ソルベッソ(登録商標)等の芳香族系有機溶媒から選ばれる1種又は2種以上の混合物を用いることが好ましい。両末端カルボン酸メチルエステル基ポリスチレン及び両末端水酸基の水添ポリブタジエンの溶解性およびエステル交換反応温度の観点から、特に、キシレンが好ましい。有機溶媒の使用量は、反応が促進可能な粘度に調整できるような量であればよい。有機溶媒の使用量は、好ましくは、溶質100質量部に対して10~50質量部である。有機溶媒の使用量を10質量部以上とすることで相溶化の効果が十分に発揮され、50質量部以下とすることでエステル交換反応が促進される。
【0036】
エステル交換反応を促進する触媒としては、例えば、テトラ-n-ブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、チタンオキシアセチルセトネート等のチタン化合物、三酸化アンチモン、トリブトキシアンチモン等のアンチモン化合物、酸化ゲルマニウム、テトラ-n-ブトキシゲルマニウム等のゲルマニウム化合物、その他、マグネシウム、鉄、亜鉛、マンガン、コバルト、アルミニウム等の酢酸塩等を使用することが出来る。これらの触媒は1種、又は2種以上を併用することができる。
【0037】
両末端カルボン酸メチルエステル基ポリスチレンと両末端水酸基の水添ポリブタジエン及びその他の原材料化合物との通常のエステル交換反応における温度は、140~220℃であり、反応時間は4~8時間である。通常の重縮合における温度は、160~240℃であり、反応時間は4~20時間である。
【0038】
[ポリエステル系樹脂の結晶性]
本発明においてポリエステル系樹脂は、非結晶性であると有機溶媒溶解性及び溶液安定性の観点で好ましい。非結晶性の樹脂とは、ガラス転移温度は有するものの融点を有しない樹脂をいい、結晶性の有無は後述するガラス転移温度の測定に用いる示差走査熱量計により、結晶融解による吸熱ピークの有無により確認することができる。
【0039】
[ポリエステル系樹脂のガラス転移温度(Tg)]
本発明に用いるポリエステル系樹脂のTgは、好ましくは、-50~0℃、より好ましくは-40~-15℃、特に好ましくは、-35~-25℃である。本発明のポリエステル系樹脂は、両末端水酸基ポリブタジエンを含有するために、硬化後も柔軟性を失わない。
【0040】
Tgの測定方法は以下のとおりである。Tgは示差走査熱量計を用いて測定することにより求める。
装置 : ティーエー・インスツルメント・ジャパン株式会社製Discovery DSC25
試料量 : 樹脂として10mg
測定方法 : 窒素雰囲気下、150℃まで昇温し(1回目の昇温)、その温度で10分間維持した後、降温速度10℃/minで-100℃まで冷却し、その温度で10分間維持した後、昇温速度10℃/minで昇温した(2回目の昇温)。
ガラス転移温度 : 2回目の昇温で得られるDSC曲線において、低温側のベースラインを高温側に延長した直線とピークの立ち上がり部分からピーク頂点での間での最大傾斜を示す接線との交点(交点1)、高温側のベースラインを低温側に延長した直線とピークの立ち上がり部分からピーク頂点までの間での最大傾斜を示す接線との交点(交点2)とした時、交点1と交点2の示す温度との中間の温度をガラス転移温度とした。
【0041】
[ポリエステル系樹脂の誘電特性]
(比誘電率(Dk))
本発明に用いるポリエステル系樹脂の温度23℃、相対湿度50%RH環境下での周波数10GHzにおける比誘電率は、2.8以下が好ましく、より好ましくは2.6以下、特に好ましくは2.5以下、更に好ましくは2.4以下である。上記比誘電率とすることで基板にした際の伝送速度を保ち、伝送損失を抑えることができる。
(誘電正接(Df))
本発明に用いるポリエステル系樹脂の温度23℃、相対湿度50%RH環境下での周波数10GHzにおける誘電正接は、0.0040以下であり、好ましくは,0.0030以下、より好ましくは,0.0025以下である。上記誘電正接とすることで、基板にした際の伝送損失を抑えることができる。
【0042】
ポリエステル系樹脂は、誘電正接を高める末端水酸基を有しているが、エステル基濃度が極めて低いため、硬化前の誘電正接も低く抑えられている。
【0043】
比誘電率及び誘電正接はネットワークアナライザ(Agilent Technologies E8361A)および円筒空洞共振器(関東電子応用開発 CP531)を用いた空洞共振器摂動法により求めることができる。なお、ポリエステル系樹脂の粘着性が強く単独での測定サンプルの作製が困難な場合は、PTFEチューブに差し込んだ状態で測定し、PTFEチューブ分を差し引くことでポリエステル系樹脂単独の誘電特性を算出する。
【0044】
かくして本発明において、従来に比べて、誘電正接の非常に小さいポリエステル系樹脂を得ることができる。そして、誘電正接の非常に小さいポリエステル系樹脂は、高周波数領域での伝送損失を抑制できる点から、電子材料部材の貼り合わせ等に用いる接着剤の原料として非常に有用となる。
【0045】
[ポリエステル系樹脂の重量平均分子量(Mw)]
本発明に用いるポリエステル系樹脂のMwは、10,000~400,000が好ましく、より好ましくは20,000~300,000、特に好ましくは50,000~250,000である。Mw が10,000より高いことで、密着性が良好となり、また、FCCLやFPC等のフレキシブル積層体を作製する際のプレス加工時に接着剤層のポリエステル系樹脂が流動し染み出してしまう等の不具合を防ぐことができる。また、Mwが400,000より低いことで、塗布時の溶液粘度を適正な範囲に保ち、均一な塗膜を得ることができる。
【0046】
<イソシアネート基を有する(メタ)アクリレート>
本発明の接着剤組成物は、イソシアネート基を有する(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。イソシアネート基を有する(メタ)アクリレートを含むことで、前記ポリエステル系樹脂に末端水酸基を介して末端二重結合を導入後、または導入と同時に有機過酸化物等のラジカル重合開始剤により架橋することで、樹脂を硬化させることが可能である。
【0047】
ポリエステル系樹脂の末端水酸基に二重結合を導入する反応は、例えばイソシアネート基を有する(メタ)アクリレートを含む接着剤組成物を基材に塗工した後に、40~150℃の温度に昇温することで行うことができる。
【0048】
本発明の接着剤組成物の別の態様として、予めポリエステル系樹脂とイソシアネート基を有する(メタ)アクリレートを反応させて両末端に二重結合を導入したポリエステル系樹脂を含む接着剤組成物が挙げられる。前記接着剤組成物は、例えばポリエステル系樹脂を後述する接着剤組成物に含ませることのできる有機溶媒に溶解後、30~120℃でイソシアネート基を有する(メタ)アクリレートを添加して反応させることで溶液として得られる。ポリエステル系樹脂とイソシアネート基を有する(メタ)アクリレートとの反応を促進するため、触媒を併用することも出来る。また、二重結合の重合反応を抑制するために重合禁止剤を併用することも出来る。
【0049】
ポリエステル系樹脂とイソシアネート基を有する(メタ)アクリレートとの反応を促進するための触媒としては、例えば、テトラ-n-ブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、チタンオキシアセチルセトネート等のチタン化合物、三酸化アンチモン、トリブトキシアンチモン等のアンチモン化合物、酸化ゲルマニウム、テトラ-n-ブトキシゲルマニウム等のゲルマニウム化合物、ビスマストリス(2―エチルヘキサノエート)などのビスマス触媒、その他、マグネシウム、鉄、亜鉛、マンガン、コバルト、アルミニウム等の酢酸塩等を使用することが出来る。これらの触媒は1種、又は2種以上を併用することができる。これらの中でも、特に、ポリエステル系樹脂の分解を抑制可能なビスマス触媒が好ましい。触媒の添加量としては、イソシアネート基を有する(メタ)アクリレートの総量に対して、0.01~0.1質量%の範囲が好ましい。
【0050】
二重結合の重合反応を抑制するための重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、p―メトキシフェノール、2,6-ジ -tert-ブチル-p-クレゾール(以下、BHTともいう)、ピロガロール、β-ナフトールなどが挙げられる 。重合禁止剤の添加量は、イソシアネート基を有する(メタ)アクリレートの総量に対して、0.01~1質量%の範囲が好ましい。
【0051】
いずれの場合も、ポリエステル系樹脂の末端に二重結合が導入されたことは、ポリエステル系樹脂とイソシアネート基を有する(メタ)アクリレートを含む場合であれば接着剤層のIR測定、予めポリエステル系樹脂とイソシアネート基を有する(メタ)アクリレートを反応させて両末端に二重結合を導入したポリエステル系樹脂を含む場合であれば接着剤組成物のIR測定において、2270cm-1付近のイソシアネートに帰属する吸収帯が低下する、あるいは、認められないことで確認できる。また、後者であれば反応前後の水酸基価測定により、導入量を確認できる。反応後に水酸基価の測定値が減少していれば、ポリエステル系樹脂の末端水酸基に二重結合が導入されたことを意味する。
【0052】
[水酸基価]
本発明における酸価及び水酸基価は、 JIS K0070の規定に従い、測定した値である。また、水酸基価の算出に用いる酸価の値もJIS K0070の規定に従い測定した値である。
【0053】
イソシアネート基を有する(メタ)アクリレートとしては、メタクリロイルイソシアネート、3―イソプロペニル-α,α-ジメチルベンジルイソシアネート、2-イソシアネートエチルメタクリレート等が挙げられる。
【0054】
イソシアネート基を有する(メタ)アクリレートとしては、市販されているものを用いることもでき、カレンズ(登録商標、以下本段落では省略する)シリーズ(株式会社レゾナック製)等がある。カレンズMOI、カレンズAOI、カレンズMOI-EG、カレンズBEI、カレンズMOI-BP、カレンズMOI-BM、カレンズMOI-EM 等が挙げられる。本発明では、反応性や低誘電性等の観点から、カレンズAOIあるいはカレンズMOI が好ましい。
【0055】
イソシアネート基を有する(メタ)アクリレートの添加量は、ポリエステル系樹脂100質量部に対して、通常、0.1~10質量部であり、0.3~6質量部が誘電特性や架橋性の観点から好ましい。
【0056】
<有機過酸化物>
また、本発明の接着剤組成物は更に有機過酸化物を含んでもよい。有機過酸化物は接着剤組成物に混合しても保存状態において化学的に安定で、かつ使用時に適切な温度でポリエステル系樹脂末端に導入された二重結合の重合反応による架橋を促進するものであれば特に限定されない。例えば、ジ-t-ブチルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキサイド)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキサイド)ヘキシン-3、α,α’-ジ(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン等が挙げられる。有機過酸化物は1種または2種以上を混合して用いることができる。有機過酸化物の含有量は、ポリエステル系樹脂と後述する変性ポリフェニレンエーテル樹脂の合計100質量部に対して、通常、0.1~10質量部であり、1~5質量部が好ましい。
【0057】
<有機溶媒>
加えて、本発明の接着剤組成物は更にポリエステル系樹脂が可溶な有機溶媒を含んでもよい。接着剤組成物は前記有機溶媒を含むことで、基材に塗工する際の接着剤組成物の粘度を適切な範囲に調整し、塗膜を形成する際の取り扱いを容易にすることができる。
【0058】
前記有機溶媒としては、例えば、ポリエステル系樹脂を製造する際に用いたキシレン等の芳香族系有機溶媒が好ましいが、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素系有機溶媒;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系有機溶媒;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール等のアルコール系有機溶媒;酢酸エチル、酢酸ノルマルブチル等エステル系有機溶媒;セロソルブアセテート、メトキシアセテート等のアセテート系有機溶媒;又はそれら有機溶媒の2種類以上の混合物も用いることができる。有機溶媒の使用量は特に限定されず、本発明の接着剤組成物を塗工する際に最適な粘度となるよう調整できる量であればよい。有機溶媒の使用量は、好ましくは、溶質100質量部に対して10~150質量部である。
【0059】
<共架橋成分>
本発明の接着剤組成物は、更に末端二重結合を導入したポリエステル系樹脂と共架橋させることが可能な共架橋成分を含んでもよい。共架橋させることで、共架橋させない場合に比べて密着性は多少低下するものの、耐久性(引張強度)を向上させることができるので、密着性と耐久性のバランスがよい接着剤層を得ることができる。共架橋成分としては、トリアリルイソシアヌレート、モノアルキルジアリルイソシアヌレート、リン系置換基含有ジアリルイソシアヌレート、末端二重結合を有する変性ポリフェニレンエーテル系樹脂等が挙げられる。なかでも、末端二重結合を有する変性ポリフェニレンエーテル系樹脂が好ましい。
【0060】
[変性ポリフェニレンエーテル系樹脂]
末端二重結合を導入したポリエステル系樹脂との反応性や、接着剤の誘電特性の観点から、変性ポリフェニレンエーテル樹脂は、両末端にエチレン性不飽和結合(例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニルベンジル基)の少なくとも1種を有することが好ましい。
【0061】
変性ポリフェニレンエーテル樹脂の一例である、両末端にビニルベンジル基を有する変性ポリフェニレンエーテル樹脂は、例えば、2官能フェノール化合物と1官能フェノール化合物を酸化カップリングさせて得られる2官能フェニレンエーテルオリゴマーの末端フェノール性水酸基をビニルベンジルエーテル化することで得られる。
【0062】
変性ポリフェニレンエーテル樹脂のMwは、ポリエステル系樹脂との相溶性や、接着剤層を介して、基材と配線パターンとを備える配線付樹脂基板の配線パターン側とを熱硬化(プレス)する際の段差追従性等の観点から、1,000~4,000であることが好ましい。
【0063】
変性ポリフェニレンエーテル樹脂の具体例としては、OPE-2St(両末端にビニルベンジル基を有する変性ポリフェニレンエーテル樹脂)、OPE-2EA(両末端にアクリロイル基を有する変性ポリフェニレンエーテル樹脂、以上、三菱ガス化学社製)、NORYL(登録商標)SA9000(両末端にメタクリロイル基を有する変性ポリフェニレンエーテル樹脂、SABIC社製)等を用いることができる。
【0064】
接着剤組成物中の変性ポリフェニレンエーテル樹脂の含有量は、本発明のポリエステル系樹脂と変性ポリフェニレンエーテル樹脂の合計100質量部に対して、3~60質量部であり、5~50質量部であることが好ましい。変性ポリフェニレンエーテル樹脂の含有量が60質量部以下とすることで、耐屈曲性を良好とすることができる。また、変性ポリフェニレンエーテル樹脂の含有量を3質量部以上とすることにより、耐熱性をより良好にすることができる。ポリフェニレンエーテル樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0065】
本発明の接着剤組成物においては、上記に挙げた成分以外に、所望の効果や目的に応じて共役ジエン系ポリマー、スチレン系エラストマーや変性スチレン系エラストマー等を含有してもよい。
【0066】
[共役ジエン系ポリマー]
共役ジエン系ポリマーとしては、共役ジエン系炭化水素を重合して得られる重合体、又は共役ジエン系炭化水素とモノオレフィン系不飽和化合物とを共重合して得られる共重合体も接着剤組成物として含有してもよいが挙げられる。共役ジエン系ポリマーの具体例としては、ブタジエン重合体、イソプレン重合体、クロロプレン重合体等が挙げられる。
【0067】
[スチレン系エラストマー、変性スチレン系エラストマー]
スチレン系エラストマーや変性スチレン系エラストマーも接着剤組成物として含有してもよい。スチレン系エラストマーの具体例としては、スチレン-ブタジエンブロック共重合体、スチレン-エチレンプロピレンブロック共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体、スチレン-エチレンブチレン-スチレンブロック共重合体及びスチレン-エチレンプロピレン-スチレンブロック共重合体等が挙げられ、変性スチレン系エラストマーの具体例としては、これらのブロック共重合体を不飽和カルボン酸で酸変性されたものが挙げられる。これらの各種スチレン系エラストマーは1種のみを含有してもよく、2種以上を含有してもよい。前記共重合体の中でも、接着性及び電気特性の観点から、スチレン-エチレンブチレン-スチレンブロック共重合体及びスチレン-エチレンプロピレン-スチレンブロック共重合体が好ましい。
【0068】
[その他成分]
本発明の接着剤組成物には、その機能性の更なる向上を目的として、上記に挙げた成分以外のその他成分を含んでいてもよい。その他成分としては、例えば、無機フィラー、シランカップリング剤等のカップリング剤、紫外線防止剤、酸化防止剤、可塑剤、フラックス、難燃剤、着色剤、分散剤、乳化剤、低弾性化剤、希釈剤、消泡剤、イオントラップ剤、レベリング剤、触媒等が挙げられる。その他成分の含有量は、好ましくは本発明の接着剤組成物の全量に対して70質量%以下であり、より好ましくは0.05~60質量%、特に好ましくは0.1~50質量%、更に好ましくは0.2~40質量%である。
【0069】
<フィルム>
フィルムは、接着剤組成物又は接着剤層を硬化することにより得ることができる。ここで、接着剤層とは基材フィルム又は金属箔上に形成された接着剤組成物の塗工乾燥物からなる層であり、少なくとも有機溶媒がほぼ揮発し流動性を失った状態にあるものをいう(本技術分野では一般に「Bステージ」と呼ばれる)。また、硬化とは接着剤又は接着剤層中の末端二重結合を重合させて架橋させることをいう。なお、作製工程において必要により部分的に硬化されたもの(後工程で硬化させるもの)も本発明では接着剤層と呼ぶ。フィルムは、誘電性が低く接着性に優れ、さらには柔軟性に優れるという効果を奏する。
【0070】
<フィルムの物性>
[ガラス転移温度(Tg)]
フィルムのTgは、好ましくは-50~0℃、より好ましくは-40~-10℃、特に好ましくは-30~-20℃である。本発明のポリエステル系樹脂は、両末端水酸基ポリブタジエンを含有するために、硬化後も柔軟性を失わない。
【0071】
[ゲル分率]
架橋の程度はフィルムのゲル分率によって確認することができる。本発明においてゲル分率は、フィルムをテトラヒドロフラン中に23℃×24時間浸漬して得られる不溶解成分質量の、浸漬前のフィルム質量に対する百分率で算出される。耐熱性や湿熱環境下での長期耐久性の観点から、好ましくはゲル分率が40%以上、より好ましくは50%以上、特に好ましくは60%以上、更に好ましくは70%以上である。
【0072】
[誘電特性]
フィルムの誘電特性は、フィルムを構成する接着成分中の双極子モーメントの大きさに依存し、水酸基などの双極子モーメントが大きい極性基等の存在は誘電性を高めることが知られている。従来の接着剤組成物(カルボキシル基含有ポリエステル系樹脂+エポキシ系架橋剤)におけるカルボキシル基とエポキシ基の架橋システムの場合、硬化前後で、誘電正接への悪影響の小さいカルボキシル基がエポキシ基との反応により水酸基を発生させるために、一般的に硬化により誘電正接が高くなる。一方、本発明の接着剤組成物においては、ポリエステル系樹脂の末端水酸基は一級水酸基であるため、イソシアネート基を有する(メタ)アクリレートにより、二重結合を容易に導入することが可能であるばかりでなく、フィルム中に残存する水酸基量を極力低減することができるため、フィルムの低誘電性を維持あるいは向上することに有効である。結果として、本発明のフィルムは、低誘電性、低誘電正接を有する。
【0073】
とりわけ、本発明のフィルムは高周波での電気特性に優れている。具体的には、好ましい態様である、両末端に水酸基を有するポリエステル系樹脂とイソシアネート基を有する(メタ)アクリレートとを反応後に有機過酸化物で架橋できる本発明のフィルムにおける周波数1~80GHzの領域での比誘電率(ε)が、3以下である。また、本発明のフィルムのより好ましい形態においては、周波数1~80GHzの領域での誘電正接(tanδ)が、0.0035以下であり、更に好ましい形態においては、0.0030以下であり、特に好ましい形態においては、0.0025以下である。本発明のフィルムにおける周波数1~80GHzの領域での、比誘電率(ε)及び誘電正接(tanδ)が、上記の範囲であることにより、3GHz以上の高周波領域における電気信号損失を、低減することができる。
【0074】
[密着性]
本発明の接着剤層は、FPCの配線をなす銅箔の粗化面及び光沢面のいずれにも、十分な密着性を有している。本発明のフィルムは、粗度の小さい銅箔表面に接着されることができる。したがって、本発明のフィルムは、粗度の影響を受けにくいので、伝送ロス(表皮効果による伝送ロス)を低減することができる。また、本発明のフィルムは、FPCの基板材料として用いられるポリイミドフィルムおよびLCPフィルムに対し、十分な密着性を有している。
【0075】
密着性は、後述する方法により180°剥離強度(N/cm)を測定することで評価することができ、剥離強度の数値が高いほど、基材との密着性に優れていることを表す。剥離強度は、両面に基材を貼り合せた接着剤層を備える積層体を圧力0.04MPa条件下で硬化処理(130℃で2時間硬化後、170℃で1時間硬化あるいは160℃で1時間硬化後、170℃で1時間硬化)した後に、1cm幅に切り出したものを試験片とし、両面テープを用いて試験片をプラスチック板に固定し、温度25℃の環境下で、テンシロン試験機(エー・アンド・デイ社製RTC-1150A)にて、180°剥離試験(引張速度20mm/min)にて評価することができる。具体的には、好ましい態様である、両末端に水酸基を有するポリエステル系樹脂とイソシアネート基を有する(メタ)アクリレートとを反応後に有機過酸化物で架橋できる本接着剤組成物においては、銅箔粗化面に対する180°剥離強度、銅粗化面とポリイミドフィルムに対する180°剥離強度および銅粗化面と液晶ポリマーフィルムに対する180°剥離強度が、6N/cm以上であり、より好ましい形態においては、7N/cm以上であり、特に好ましい形態においては、8N/cm以上である。
【0076】
<接着剤層を備える積層体>
接着剤層を備える積層体は、接着剤組成物からなる接着剤層と、該接着剤層の少なくとも一方の面に接する基材フィルムとを備える。
【0077】
接着剤層を備える積層体において接着剤層の厚さは、5~100μmであることが好ましく、10~70μmであることがより好ましく、10~50μmであることが更に好ましい。基材フィルム及び接着剤層の厚さは用途により選択されるが、電気特性を向上させるために基材フィルムはより薄くなる傾向にある。
【0078】
接着剤層を備える積層体としては、カバーレイフィルムやボンディングシートや樹脂付銅箔が挙げられる。カバーレイフィルムは、基材フィルムと接着剤層のはく離が困難な積層体である。一方、ボンディングシートは、基材フィルムとしてはく離が容易な離型フィルムが用いられた積層体であり、使用時は離型フィルムをはく離して接着に供する。ボンディングシートは、2枚の離型フィルムの間に接着剤層を備える態様であってもよい。接着剤層を備える積層体がカバーレイフィルムの場合は、保管等のため必要に応じて接着剤層の表面にボンディングシートに用いる離型フィルムを積層してもよい。
【0079】
カバーレイフィルムに用いる基材フィルムとしては、ポリイミドフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリフェニレンサルファイドフィルム、アラミドフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、液晶ポリマーフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、TPXフィルム、及びフッ素系樹脂フィルム等が挙げられる。これらの中でも、接着性及び電気特性の観点から、ポリイミドフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、及び液晶ポリマーフィルムが好ましく、ポリイミドフィルム及び液晶ポリマーフィルムがさらに好ましい。
【0080】
このような基材フィルムは市販されており、ポリイミドフィルムとしては、例えばカプトン(登録商標、東レ・デュポン株式会社製)、ゼノマックス(登録商標、東洋紡株式会社製)、ユーピレックスS(登録商標、宇部興産株式会社製)、アピカル(登録商標、株式会社カネカ製)等が挙げられる。また、ポリエチレンナフタレートフィルムとしては、テオネックス(登録商標、帝人デュポンフィルム株式会社製)等が挙げられる。そして液晶ポリマーフィルムとしては、Copolymen(登録商標、寧波JUJIA新素材技術有限公司)、ベクスター(登録商標、株式会社クラレ製)、バイアック(登録商標、株式会社伊勢村田製作所製)、ぺリキュールLCP(千代田インテグレ株式会社)等が挙げられる。基材フィルムは、該当する樹脂を所望の厚さにフィルム化して用いることもできる。
【0081】
ボンディングシートに用いる基材フィルム(離型フィルム)としては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、シリコーン離型処理紙、ポリオレフィン樹脂コート紙、ポリメチルペンテン(TPX)フィルム、フッ素系樹脂フィルム等が挙げられる。剥離可能であれば特に限定されないが、入手性、コスト、塗工や貼り合わせ時の加工性の点で、離型処理したポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。
【0082】
このような離型フィルムも市販されており、ルミラー(登録商標、東レフィルム加工株式会社製)、東洋紡エステル(登録商標)フィルム(東洋紡株式会社製)、アフレックス(登録商標、AGC株式会社製)、オピュラン(登録商標、三井化学東セロ株式会社製)等を用いることができる。
【0083】
接着剤層を備える積層体を製造する方法としては、例えば上記接着剤組成物を基材フィルムの表面に塗布後、乾燥することにより、接着剤層が形成された接着剤層を備える積層体を製造することができる。
【0084】
末端二重結合の導入反応は、例えば接着剤層の乾燥時に行われてもよい。その乾燥条件は、塗工液に使用される有機溶媒の種類及び量、塗工液の塗布の厚み、ならびに乾燥装置の相違等に応じて適宜設計され、特に限定されない。乾燥は、例えば40~150℃の温度で30分~3時間で大気圧下にて行う。乾燥温度が40℃以上であることにより、有機溶媒の残存による電気特性の悪化を防止し易くなり、150℃以下であることにより、接着剤層を得易くなる。具体的には、接着剤組成物が塗布された積層体を、熱風乾燥、遠赤外線加熱、及び高周波誘導加熱等がなされる炉の中を通過させることにより行う。
【0085】
<フレキシブル銅張積層体>
フレキシブル銅張積層体は、基材フィルムと銅箔とを接着剤層を介して貼り合わせた少なくとも一対の積層構造を有する。接着剤層は銅箔との接着性に優れるので、本発明のフレキシブル銅張積層体は形状安定性に優れる。
【0086】
フレキシブル銅張積層体を製造する方法としては、例えば、接着剤層を備える積層体の接着剤層上に銅箔を面接触させて80℃~150℃で熱ラミネートを行い、更に硬化処理により接着剤層を硬化する方法がある。硬化処理の条件は、例えば、100℃~200℃、30分~6時間、0.01~50MPaとすることができる。なお、前記銅箔は、特に限定されず、電解銅箔、圧延銅箔等を用いることが好ましい。
【0087】
また、接着剤層を備える積層体を使用しないでフレキシブル銅張積層体を製造することもできる。例えば、接着剤組成物を銅箔の被接着面に塗布し、接着剤層を備える積層体と同様にして乾燥する。その後、残る基材フィルムを乾燥形成された接着剤層上に載置し、上記の熱ラミネート及び硬化処理により接着剤層を硬化する。
【0088】
<用途>
本発明の接着剤組成物は低誘電率及び低誘電正接、とくには低誘電正接に優れ、それらを用いて得られたフィルムについても、低誘電率及び低誘電正接に優れ、かつ、ゲル分率が高く柔軟性に優れ、低弾性率であり、樹脂や金属等の各種材料からなる基材の接着に有効であり、特に、金属箔とプラスチックフィルムとの積層板を作製するための接着剤、例えば、電子材料部材の貼り合せに用いられる接着剤に好適である。本発明における「電子材料部材」としては、例えば、フレキシブルプリント基板、カバーレイ、ボンディングシート等が挙げられる。電子材料部材の貼り合せにより作製されるものとしては、例えば、フレキシブル銅張積層板やフレキシブルプリント基板等のフレキシブル積層板が好ましい。フレキシブル積層板は、例えば、「可撓性を有するフレキシブル基板/ 接着剤層/ 銅やアルミニウム、これらの合金等からなる導電性金属層」を順次積層した積層体であり、接着剤層を構成する接着剤として本発明の接着剤組成物を用いることができる。なお、フレキシブル積層板は、上記の各種層以外に、他の絶縁層、他の接着剤層、他の導電性金属層を更に含んでいてもよい。
【実施例0089】
以下、実施例及び比較例をあげて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、以下「部」、「%」で示される数値はすべて質量基準である。
【0090】
<両末端カルボン酸メチルエステル基ポリスチレン(PS)の合成例>
(PS-1)
温度計、撹拌機、還流塔、滴下ロート及び窒素導入管を具備した反応缶に、有機溶媒としてキシレン50質量部を仕込み、キシレン還流下にスチレンモノマー(St)100質量部と、開始剤としてジメチル2,2‘-アゾビス(2-メチルプロピオネート)19質量部とを5.5時間で滴下し、ラジカル重合させた。
【0091】
滴下終了から30分間還流下に保温した後、還流塔を蒸留系に変更し、170℃まで常圧蒸留した後、開始剤分解物テトラメチルコハク酸ジメチルを1,000ppm以下となるまで減圧蒸留した。その後、反応物を取出し、両末端カルボン酸メチルエステル基ポリスチレン(PS-1)を得た。
【0092】
(PS-2)~(PS-4)
表1のように合成に使用した有機溶媒種や開始剤量を変更した以外は、両末端カルボン酸メチルエステル基ポリスチレン(PS-1)と同様にして両末端カルボン酸メチルエステル基ポリスチレン(PS-2)~(PS-4)を合成した。
【0093】
(PS-5)
温度計、撹拌機、還流塔、滴下ポンプ及び窒素導入管を具備した加圧可能な反応缶に、有機溶媒としてシクロヘキサン30質量部を仕込み、攪拌しながら温度が120℃になるまで加圧下で昇温した後、スチレンモノマー(St)100質量部と、開始剤としてジメチル2,2‘-アゾビス(2-メチルプロピオネート)30部とを5.5時間で滴下し、ラジカル重合させた。その後は、蒸留温度を195℃に変更した以外は(PS-1)と同様に両末端カルボン酸メチルエステル基ポリスチレン(PS-5)を得た。
【0094】
【表1】
【0095】
<ポリエステル系樹脂(A-1)の合成>
温度計、撹拌機、予めトルエンを充填した分留器を備えた還流塔及び窒素導入管を具備した反応缶内に、有機溶媒としてキシレン25質量部、両末端カルボン酸メチルエステル基ポリスチレン(PS-1)及び両末端水酸基の水添ポリブタジエンとしてNISSO―PB(登録商標)GI―3000(日本曹達株式会社製)を表2に示す量を仕込んで反応缶内を窒素置換した後、撹拌しながら昇温した。反応缶内の温度が140℃に達した時点で、触媒としてテトライソプロピルチタネート(商品名:オルガチックス(登録商標)TA-10、マツモトファインケミカル株式会社製)を添加し、さらに反応缶内の温度を160℃から170℃まで上げてキシレン還流下に副生成物(メタノール)を系外に留去して、常圧反応10時間でエステル交換反応を進めた。その後、分留器を外して、蒸留系に変更し、キシレンを留去し、内温175℃に到達後、反応缶内を減圧して、さらに高分子量化し、減圧反応20時間でポリエステル系樹脂(A-1)を得た。
【0096】
<ポリエステル系樹脂(A-2)~(A-9)の合成>
表2―1のように原料種や量を変更した以外は、(A-1)と同様にして、ポリエステル系樹脂(A-2)~(A-9)を合成した。
【0097】
<ポリエステル系樹脂の有機溶媒ワニス(B-1)~(B-9)の調製>
得られたポリエステル系樹脂(A-1)~(A-9)を各々、表2―1に示すポリエステル系樹脂の質量%となるように、表2―1に示すメチルエチルケトン(MEK)とメチルシクロヘキサン(MCH)の使用比率で調製された有機溶媒を用いて溶解し、ポリエステル系樹脂(A-1)~(A-9)の有機溶媒ワニス(B-1)~(B-9)を得た。
【0098】
【表2-1】
【0099】
PS:両末端カルボン酸メチルエステル基ポリスチレン
GI-3000:両末端水酸基の水添ポリブタジエン(商品名:GI-3000、日本曹達株式会社製)
Pripol2033:ダイマージオール(商品名:Pripol(登録商標)2033、Croda社製)
TA:テトライソプロピルチタネート(商品名:TA-10、マツモトファインケミカル株式会社製)
【0100】
<両末端二重結合ポリエステル系樹脂の有機溶媒ワニス(B-10)の合成>
温度計、撹拌機、予めトルエンを充填した分留器を備えた還流塔及び窒素導入管を具備した反応缶内に、表2-2に記載の通り、ポリエスエル系樹脂の有機溶媒ワニス(B-7)、触媒としてビスマストリス(2―エチルヘキサノアート)と2―エチルヘキサン酸の混合物(商品名:ネオスタン(登録商標)U―600、日東化成株式会社製)および重合禁止剤として2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール(以下、BHTと略すことがある)を反応容器に仕込んで反応缶内を窒素置換した後、撹拌しながら昇温した。反応缶内の温度が80℃に達した時点で、イソシアネート基を有する(メタ)アクリレートとして2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(商品名:カレンズ(登録商標)MOI、株式会社レゾナック製)を3時間かけて添加した。その後、さらに2時間反応して、IR測定で2230cm-1のイソシアネート基の吸収ピークが消失したことを確認した。その後、反応容器を冷却し、両末端二重結合ポリエステル系樹脂の有機溶媒ワニス(B-10)を得た。
【0101】
<両末端二重結合ポリエステル系樹脂の有機溶媒ワニス(B-11、12)の合成>
表2―2のように原料種や量を変更した以外は、(B-10)と同様にして、両末端二重結合ポリエステル系樹脂の有機溶媒ワニス(B-11、12)を合成した。
【0102】
【表2-2】
【0103】
U―600:ビスマストリス(2―エチルヘキサノアート)と2―エチルヘキサン酸の混合物(商品名:ネオスタン(登録商標)U―600、日東化成株式会社製)
MOI:2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(商品名:カレンズ(登録商標)MOI、株式会社レゾナック製)
AOI:2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(商品名:カレンズ(登録商標)AOI、株式会社レゾナック製)
【0104】
ポリエステル系樹脂(A-1)~(A-12)の物性を表3―1及び表3-2に示す。なおポリエステル系樹脂および両末端二重結合ポリエステル系樹脂の物性評価方法は以下の通りである。
【0105】
<ポリエステル系樹脂の物性評価>
[Dk、Df、ガラス転移温度評価用ポリエステル系樹脂の樹脂フィルム作製]
ポリエステル系樹脂の有機溶媒ワニス(B-1)~(B-12)を離型フィルムに乾燥後の厚みが25μmになるように塗工後、乾燥処理(100℃で20分間乾燥)して得た樹脂フィルムを離型フィルムでカバーした。
【0106】
[Dk、Dfの測定]
作製した樹脂フィルムは離型フィルムを剥離して、10GHzにおけるDk、Dfの測定に供した。測定は、ネットワークアナライザ (Agilent Technologies E8361A)および円筒空洞共振器(関東電子応用開発 CP531)を用いた空洞共振器摂動法にて温度25℃、相対湿度50%RHの環境下で行った。
[酸価および水酸基価の測定]
酸価及び水酸基価は、 JIS K0070の規定に従い、測定した。
【0107】
[ガラス転移温度(Tg)の測定]
作製した樹脂フィルムは離型フィルムを剥離して、ガラス転移温度の測定に供した。測定は、示差走査熱量計(TAインスツルメント社製DSC25)を用い測定温度-100~150℃、測定速度10℃/分で行った。
【0108】
重量平均分子量(Mw)は、THF可溶分をゲルパーミテーションクロマトグラフィー(GPC)で下記条件により測定した。
装置 : 東ソー株式会社製 HLC-8320
カラム : TSKGEL SUPERMULTIPORE HZ-H +TSKGEL SUPERMULTIPORE HZ-M
測定温度 :40℃試料濃度 :1.0g/L(THF溶液)
溶媒:THF
溶液注入量 : 100μL
検出装置 : 屈折率検出器
分子量校正曲線 : 標準ポリスチレンを用いて作成
【0109】
【表3-1】
【0110】
表3-1中のエステル基濃度は、各酸成分と各グリコール成分から生成するユニットの重量平均分子量の逆数の2×10倍である。
【0111】
【表3-2】
【0112】
<接着剤組成物(C-1)の製造例>
温度計、撹拌機、還流塔及び窒素導入菅を具備したフラスコに、上記で得られたポリエステル系樹脂の有機溶媒ワニス(B-1)200質量部(ポリエステル系樹脂として100質量部)、イソシアネート基を有する(メタ)アクリレートとして2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(商品名:カレンズ(登録商標)MOI、株式会社レゾナック製)4質量部及び有機過酸化物として1,3-ジ(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン(製品名:パーブチル(登録商標)P、日油株式会社製)3質量部を加え、均一混合することにより、接着剤組成物(C-1)を得た。
【0113】
<接着剤組成物(C-2~9)の合成例>
表4―1のように使用するポリエステル系樹脂の有機溶媒ワニスや有機過酸化物および共架橋成分を変更した以外は(C-1)と同様にして、接着剤組成物(C-2)~(C-9)を得た。
【0114】
【表4-1】
【0115】
MOI:2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(商品名:カレンズ(登録商標)MOI、株式会社レゾナック製)
PBP:1,3-ジ(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン(商品名:パーブチル(登録商標)P、日油株式会社製)
PCD:ジクミルパーオキサイド(商品名:パークミル(登録商標)D、日油株式会社製)
TAIC:トリアリルイソシアヌレート(商品名:TAIC(登録商標)、株式会社新菱製)
SA9000:末端二重結合を有する変性ポリフェニレンエーテル系樹脂(商品名:NORYL(登録商標)SA9000、SABIC社製)
【0116】
<接着剤組成物(C-10)の製造例>
温度計、撹拌機、還流塔及び窒素導入菅を具備したフラスコに、上記で得られた両末端二重結合ポリエステル系樹脂の有機溶媒ワニス(B-10)200質量部(ポリエステル系樹脂として100質量部)、有機過酸化物として1,3-ジ(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン(製品名:パーブチル(登録商標)P、日油株式会社製)3質量部を加え、均一混合することにより、接着剤組成物(C-10)を得た。
【0117】
<接着剤組成物(C-11、12)の製造例>
表4-2のように使用するポリエステル系樹脂の有機溶媒ワニスや有機過酸化物および共架橋成分を変更した以外は(C-10)と同様にして、接着剤組成物(C-11、12)を得た。
【0118】
【表4-2】
【0119】
<フィルムの評価>
[Dk、Df、ガラス転移温度評価用のフィルム作製]
接着剤組成物(C-1)~(C-9)を離型フィルムに硬化後の厚みが25μmになるように塗工後、前処理(60℃で2時間乾燥後、100℃で20分間乾燥)して得たBステージ状のフィルムを離型フィルムでカバーし、硬化処理(130℃で2時間硬化後、170℃で1時間硬化)してフィルムを作製した。
【0120】
接着剤組成物(C-10)~(C-12)を離型フィルムに硬化後の厚みが25μmになるように塗工後、前処理(130℃で10分間乾燥)して得たBステージ状のフィルムを離型フィルムでカバーし、硬化処理(160℃で1時間硬化後、170℃で1時間硬化)してフィルムを作製した。
【0121】
[Dk、Dfの測定]
作製したフィルムは離型フィルムを剥離して、10GHzにおけるDk、Dfの測定に供した。Dk、Dfの測定は樹脂フィルムと同様にして行った。
【0122】
[ガラス転移温度の測定]
作製したフィルムは離型フィルムを剥離して、ガラス転移温度の測定に供した。ガラス転移温度の測定は樹脂フィルムと同様にして行った。
【0123】
[ゲル分率、引張強度、引張伸度、弾性率評価用のフィルム作成]
接着剤組成物(C-1)~(C-9)を各4枚の離型フィルムに硬化後の厚みが25μmになるように塗工後、前処理(60℃で2時間乾燥後、100℃で20分間乾燥)し、必要な厚み(100μm)となるようにフィルム同士を重ね合わせた後、離型フィルムでカバーし、硬化処理(130℃で2時間硬化後、170℃で1時間硬化)した。
【0124】
接着剤組成物(C-10)~(C-12)を各4枚の離型フィルムに硬化後の厚みが25μmになるように塗工後、前処理(130℃で10分間乾燥)し、必要な厚み(100μm)となるようにフィルム同士を重ね合わせた後、離型フィルムでカバーし、硬化処理(160℃で1時間硬化後、170℃で1時間硬化)した。
【0125】
[ゲル分率]
上記で得られた厚み100μmのフィルムを、3cm×3cmサイズに切り出した。テトラヒドロフラン中に23℃×24時間浸漬し、浸漬前のフィルム重量に対する残存した不溶解のフィルム成分の重量百分率をゲル分率とした。
【0126】
[引張強度、引張伸度、弾性率]
上記で得られた厚み100μmのフィルムを、JIS K6251のダンベル状1号形に切り出し、テンシロン試験機(エー・アンド・デイ社製RTG―1210)にて、引張試験(引張速度50mm/min)にて引張強度、引張伸度、弾性率を評価した。
【0127】
[銅箔密着性評価用積層体の作製]
接着剤組成物(C-1)~(C-9)を離型フィルムに硬化後の厚みが25μmになるように塗工後、前処理(60℃で2時間乾燥後、100℃で20分間乾燥)し、高周波用低粗度の銅箔の粗化面に転写後、銅箔の粗化面でカバーし、圧力0.04MPa条件下で硬化処理(130℃で2時間硬化後、170℃で1時間硬化)して積層体を得た。
[フィルム厚み]25μm
[銅箔]電解銅箔CF-T9DA-SV-18(福田金属箔粉株式会社製、厚み18μm、粗化面の粗度Rz0.7μm)
【0128】
接着剤組成物(C-10)~(C-12)を離型フィルムに硬化後の厚みが25μmになるように塗工後、前処理(130℃で10分間乾燥)し、高周波用低粗度の銅箔の粗化面に転写後、銅箔の粗化面でカバーし、圧力0.04MPa条件下で硬化処理(160℃で1時間硬化後、170℃で1時間硬化)して積層体を得た。
[フィルム厚み]25μm
[銅箔]電解銅箔CF-T9DA-SV-18(福田金属箔粉株式会社製、厚み18μm、粗化面の粗度Rz0.7μm)
【0129】
[ポリイミドフィルム/銅箔密着性評価用積層体の作製]
接着剤組成物(C-1)~(C-9)を離型フィルムに硬化後の厚みが25μmになるように塗工後、前処理(60℃で2時間乾燥後、100℃で20分間乾燥)し、高周波用低粗度の銅箔の粗化面に転写後、ポリイミド(以下、PIと略すことがある)フィルムでカバーし、圧力0.04MPa条件下で硬化処理(130℃で2時間硬化後、170℃で1時間硬化)して積層体を得た。
[ポリイミドフィルム]カプトン(登録商標)EN(東レ・デュポン株式会社製、厚み25μm)
【0130】
接着剤組成物(C-10)~(C-12)を離型フィルムに硬化後の厚みが25μmになるように塗工後、前処理(130℃で10分間乾燥)し、高周波用低粗度の銅箔の粗化面に転写後、ポリイミド(以下、PIと略すことがある)フィルムでカバーし、圧力0.04MPa条件下で硬化処理(160℃で1時間硬化後、170℃で1時間硬化)して積層体を得た。
[ポリイミドフィルム]カプトン(登録商標)EN(東レ・デュポン株式会社製、厚み50μm)
【0131】
[LCPフィルム/銅箔密着性評価用積層体の作製]
接着剤組成物(C-5)および(C-12)について、ポリイミドフィルムをLCPフィルムに変更した以外は、同様に積層体を得た。
[LCPフィルム]Copolymen(登録商標)(寧波JUJIA新素材技術有限公司)
【0132】
[密着性]
上記で得られた各密着性評価用積層体を1cm幅に切り出したものを試験片とした。両面テープを用いて試験片をプラスチック板に固定し、温度25℃の環境下で、テンシロン試験機(エー・アンド・デイ社製RTC-1150A)にて、180°剥離試験(引張速度20mm/min)にて評価した。
【0133】
<評価結果>
評価結果を表5にまとめた。LCP/銅箔密着性については、実施例5については7.5(N/cm)、実施例12については8.0(N/cm)であった。
【0134】
【表5】
【0135】
PI/銅箔密着性:ポリイミドフィルム/銅箔密着性
【0136】
表3―1、表3―2、表5より、本発明の要件を満たすポリエステル系樹脂(A-1~12)は低誘電率及び低誘電正接、とくには低誘電正接に優れ、それらを用いて得られたフィルムについても、低誘電率及び低誘電正接に優れ、各種基材への密着性に優れ、かつ、ゲル分率が高く柔軟性に優れ、低弾性率であることが示された。