(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137844
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】電動モータのケース用のケース蓋、ケース蓋を有するケース組立体及び電動モータ
(51)【国際特許分類】
H02K 5/24 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
H02K5/24 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024043128
(22)【出願日】2024-03-19
(31)【優先権主張番号】10 2023 202 670.8
(32)【優先日】2023-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】591018763
【氏名又は名称】ベバスト エスエー
【氏名又は名称原語表記】Webasto SE
【住所又は居所原語表記】Kraillinger Strasse 5,82131 Stockdorf,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(74)【代理人】
【識別番号】100153822
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 重之
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルナー リスナー
【テーマコード(参考)】
5H605
【Fターム(参考)】
5H605AA05
5H605BB05
5H605DD21
5H605GG18
(57)【要約】 (修正有)
【課題】振動が伝達されて伝播するときに騒音を低減する、ケース蓋を提供する。
【解決手段】電動モータ(1000)のケース組立体(200、210)用のケース蓋(1)は、装着状態においてケース組立体のケースに面する内面、及びケースから離れる方向に面する、対応する外面(50)を有し、両面はそれぞれ縁部(19)を含む。蓋壁を補強するための隆起ウェブ(32、34)と、ウェブの間にそれぞれ形成された凹部(41、43)とのパターン(30)が、内面又は外面上に配置されている。パターンは、それぞれ、内面又は外面内の領域から実質的に半径方向外向きに、縁部へとそれぞれ延びる、ある数の第1のウェブ(32)、並びに、第1のウェブと交差する第2のウェブ(34)を含み、第1のウェブは、半径方向に沿ったそのセクションにおいてそれぞれ横方向にオフセットされている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両における可動構成部品、特に、スライディング・ルーフ、サンルーフ、又はローラ・ブラインドを駆動するための電動モータ(1000)のケース組立体(200、210)用のケース蓋(1)において、
装着状態において前記ケース組立体のケースに面する内面(60)、及び前記ケースから離れる方向に面する、対応する外面(50)を有し、両面はそれぞれ縁部(19)を含む、少なくとも部分的に平面状の蓋壁(2)と、
前記ケースの開口を閉じるために、前記ケースに設けられた対応する係合構造と結合するように、ケース蓋(1)と接続された、一つ又は複数の係合構造(11~17)と、を備え、
前記蓋壁(2)を補強するための隆起ウェブ(32、34)と、前記ウェブの間にそれぞれ形成された凹部(41~44)とのパターン(30)が、前記内面(60)又は前記外面(50)上に配置されている、ケース蓋(1)であって、
前記パターン(30)は、それぞれ、前記内面(60)又は前記外面(50)内の領域(80)から実質的に半径方向外向きに、前記縁部(19)へとそれぞれ延びる、ある数の第1のウェブ(32)、並びに、前記第1のウェブ(32)と交差する第2のウェブ(34)も含み、前記第1のウェブ(32)は、半径方向に沿った前記第1のウェブ(32)のセクションにおいてそれぞれ横方向にオフセットされていることを特徴とする、ケース蓋(1)。
【請求項2】
前記第1のウェブ(32)と交差する前記第2のウェブ(34)は、互いに同心円に配置されて、それぞれ、前記内面(60)又は前記外面(50)内で互いに所定の距離だけ延びており、前記第2のウェブ(34)のそれぞれがリング(341~344)を形成する、請求項1に記載のケース蓋(1)。
【請求項3】
前記パターン(30)は、回転中心(70)を含む回転対称性を有して配置され、前記回転中心(70)は、それぞれ、前記内面(60)又は前記外面(50)内の前記領域(80)を通って延びるか、又は前記領域(80)内に位置している、請求項1又は2に記載のケース蓋(1)。
【請求項4】
開口(20)は、それぞれ、前記内面(60)又は前記外面(50)内において、前記縁部(19)から距離を置いて形成されて、前記蓋壁(2)を通って延びており、
前記回転対称パターン(30)の前記回転中心(70)は、前記開口(20)の中心に位置している、請求項3に記載のケース蓋(1)。
【請求項5】
ウェブ(32、34)と、前記ウェブによって少なくとも部分的に包囲されている凹部(41~44)との前記パターン(30)が、前記蓋壁(2)の平面部において、それぞれ、前記内面(6)又は前記外面(50)の占有表面積の、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%の割合を含む、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のケース蓋(1)。
【請求項6】
前記第1のウェブ(32)と前記第2のウェブ(34)の占有表面積の、これらのウェブと、これらのウェブによって少なくとも部分的に包囲された前記凹部(41~44)とに占有された表面積に対する、局所割合は、それぞれ、前記内面(60)又は前記外面(50)内の前記領域(80)から、半径方向外向きの方向において、実質的に減少し、
好ましくは、回転対称の場合には、前記回転中心の近くで、そのまわりの内側リング区域の局所割合は、60%超、好ましくは80%超となると共に、前記回転中心から外向きに比較的遠くに位置するリング区域においては40%未満となる、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のケース蓋(1)。
【請求項7】
前記ケース蓋(1)が、プラスチック材料又は樹脂で製造されて、射出成形されている、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のケース蓋(1)。
【請求項8】
前記ケース蓋(1)が単一部品として形成されている、請求項1乃至7のいずれか一項に記載のケース蓋(1)。
【請求項9】
前記内面(60)に加えて前記外面(50)も、前記蓋壁(2)の平面を介して鏡映された、互いに鏡対称に配置された前記パターン(30)を含む、請求項1乃至8のいずれか一項に記載のケース蓋(1)。
【請求項10】
車両における可動構成部品、特に、スライディング・ルーフ、サンルーフ、又はローラ・ブラインドを駆動するための電動モータ(1000)用のケース組立体であって、請求項1乃至9のいずれか一項に記載のケース蓋(1)に加えて、変速機ケーシング(200)と、モータ・ケーシング(210)とを備える、ケース組立体。
【請求項11】
車両における可動構成部品、特に、スライディング・ルーフ、サンルーフ、又はローラ・ブラインドを駆動するための電動モータ(1000)、好ましくはDCモータであって、
変速機、制御ユニット及び前記制御ユニットによって作動させられる構成部品、特にステータとロータに加えて、請求項10に記載のケース組立体を備える、電動モータ(1000)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
様々な態様は、特に、スライディング・ルーフ又はサンルーフ、又はローラ・ブラインド、窓レギュレータ、その他などの車両内の可動構成部品を駆動するための、電動モータのケース用のケース蓋に関する。更なる態様は、ケース蓋を備えるケース組立体、及びケース組立体を有する電動モータにも関する。
【背景技術】
【0002】
車両において可動構成部品を駆動するのに使用されるような電動モータは、通常、複数機能を有するケース(又はケース組立体)を含む。例えば、ケースは、モータをコンパクトにする役割を果たすか、制御ユニット、モータ及び変速機を一体化するか、埃や外部の機械的損傷に対する保護を提供するか、必要な電気的な絶縁を提供するか、又は望ましくない騒音を生ずる可能性のある振動に対するある程度の減衰を確保する。
【0003】
車両における可動構成部品用の電動モータ(例えば、ブラシ・モータ又はBLDCモータとして設計されたDCモータ)は、実際のモータ、変速機及び電気制御器のための別個のチャンバを有する、一つ又は複数の基本構成部品を備えるケースを含むことがある。一例によれば、基本構成部品は、伝動装置ケーシングと、それに取り付けられるモータ・ケーシングを含むことがある。変速機ケーシングは開口を有し、この開口は、ケース蓋によって閉じることが可能であり、ケース蓋を通して、例えば、ロータ軸のような、変速機のそれぞれの構成部品を、組立て時に挿入することができる。それに装着されたモータ構成部品(例えば、ステータ)を有する、モータ・ケーシングは、次いで、好適な位置に嵌め込まれ、その結果として、ステータとロータが一体となる。次いで、ケース蓋が嵌め込まれて開口を閉じる。
【0004】
モータの動作は振動を発生させて、この振動は、モータの構成部品が強固にそれに接続されている、ケースに伝達される。ケースの材料(例えば、プラスチック又は樹脂)内を伝播する振動を吸収することが目指される。ケースを設計する際には、したがって、望ましくない音として振動を環境に伝達する可能性のある、固有周波数又は共振周波数において振動するケース部品が発生しないことを特に確実にするように注意が払われる。
【0005】
それぞれのケースのためのケース蓋は、通常は、平坦な構成部品として設計される。それらは、平坦な蓋壁を有することが多く、その平坦さは、例えば、蓋の下に配置される電子制御ユニットの回路基板の円滑な装着に対して特に望ましい。ケース蓋をベース構成部品に締結する取付け手段、又はケースのベース構成部品を包囲するケース蓋のセクションだけが、そのような平面から大幅に突き出てもよい。したがって、ケース蓋は、ケース蓋の下にある構成部品との機械的な相互作用を避けて、それによってそれらを保護するために、蓋壁の面の中央においてでも、十分な程度の剛性を必要とする。
【0006】
そのような剛性の向上は、例えば、ウェブのパターンによって達成できる。
図1は、従来型のそのようなウェブ又はリブのパターンの例を示しており、このパターンは、ケース蓋の本質的に平坦な蓋壁上に形成されている。その間に中間凹部を画定している、そのようなウェブのパターンは、そうでなければ基本的に平坦な外面の、ほとんど表面全体にわたって形成されている。図示されていない、内面上に、同じパターンが、鏡対称に(蓋の平面の反対側に鏡映して)規則的に形成され、その結果として、製造工程中の射出成形後の冷却時に歪みを生じない。並列ウェブの配置は、第1の方向、及び第1の方向に直角な第2の方向に延びて、その結果、補強は、本質的に方向に依存しない。ウェブ間の距離は、パターン内のどの場所でも同一であり、その結果として、規則的な格子の形状が得られる。実際に、この方策の結果として、平面に合致する平坦な蓋壁を有する、非常に安定なケース蓋が得られる。
【0007】
しかしながら、特に、寸法と設計の点において、車両において構成部品を作動させるように設計されている電動モータで、そのようなパターンを使用するときには、蓋の部品が振動して、望ましくない騒音を生じることがある。特に、車両ルーフにおける可動構成部品を作動させるためのモータの場合には、この騒音発達が容易に聞こえるようになり、したがって特に不快となることがある。
【0008】
したがって、機械的に補強されるだけでなく、振動が伝達されて伝播するときに騒音を低減する、ケース蓋を提供するニーズがある。
【0009】
文献DE102020108200A1は、そこでは底部壁とも呼ばれる、インバータ・カバー用のケース蓋を開示しており、このケース蓋は、モータ・ケーシング構成部品に隣接する間隔を画定し、その中に、モータ駆動圧縮機用のインバータが配置されており、このインバータは、車両空調システム用の冷却回路の一部である。このケース蓋は、内面と外面とを有する。リブのパターンが両表面に配置されており、これらは互いに直角に交差して、それによって格子を形成している。二つのリブ・パターンは周壁から、特にこの壁の中のボルトから間隔を空けられて、周壁の開口は、ケース蓋によって閉じられている。この間隔は、モータ・ケーシングから周壁を介して、ケース蓋の剛性がリブ・パターンによって増大されている、中心区域への振動の伝達をかなり制限する。
【0010】
文献CN107342652Aは、その中心に配置されたファン開口を有する、ウィンド・シールドを開示しており、このウィンド・シールドは、三相非同期モータのケースの背面を閉じて、モータ・コイルの冷却を助ける。ファン開口の中心から、縁部に向かってらせん状に延びるリブが、ウィンド・シールド内に配置されている。これらのリブは、ウィンド・シールドを機械的に補強し、同時に振動、すなわち望ましくない騒音の発達を低減することが意図されている。リブの幅は1mm以下であり、それぞれのウィンド・シールド・プレートの厚さは2~3mmである。
【0011】
文献EP2557667A1は、とりわけ、ポンプ・ユニット用の電動モータのためのインバータを収容する、制御器ケースを開示している。制御器ケースは、ケース本体とケース蓋とを有する。長手方向に互いに平行に延びる冷却フィンが、ケース蓋に配置されて、熱の放散を補助している。ハニカム形状リブの均一分布を有するパターンが、(ケース蓋の上、又はモータ・フレームへの接触側面の上ではなく)ケース本体の側面上だけに形成されており、これがケース蓋に取り付けられた閉止プレートと合わせて、振動抑制構造の一部を形成している。しかしながら、これらの側面において、ハニカム形状のリブのパターンは、表面全体にわたって形成する必要はなく、部分的な区域だけでよい。
【0012】
米国特許5,696,415Aは、車両用の発電器を開示している。後部カバーは、発電器の後部フレームに取り付けられたブラシ、整流器、調整器等の電気構成部品を保護する。後部フレームは前部フレームに接続されており、ステータとロータが両者の間の間隔に収容されている。二つの支持部分は、フレーム同士がボルトとナットで互いに固定されることを可能にする。冷却空気のための空気取入れ窓が、前部及び後部のフレームの反対側に形成されている。作動中に加熱される冷却空気のための空気取出し窓が両フレームの接続側に形成されている。空気取出し窓は、補強された窓リブによって分割されている。支持部分に近接して、窓リブは、ステータにおいて発生した磁気振動のフレームへの伝達を防止するのを助ける剛性を生成するために、他のリブと比較して、より大きい幅を有する。
【発明の概要】
【0013】
上述のニーズを考慮した、本発明の態様は、特に、車両における可動構成部品、例えばスライディング若しくはサン・ルーフ又はローラ・ブラインド等を駆動するための、電動モータのケース組立体用のケース蓋に関する。提案のケース蓋は、ケース蓋の装着状態においてケースに面する内面と、ケースから離れる方向に面する外面とを有する、少なくとも部分的に平面状の蓋壁を備え、内面と外面の両方とも周縁部を有する。更に、ケース蓋は、ケース組立体のケースにケース蓋を固定し、ケースの開口を閉じるように、ケースにおいて構成された、対応する係合構造と結合するために蓋壁に接続された、一つ又は複数の係合構造を備える。内面及び外面上に、蓋壁に剛性を与える隆起ウェブと、それらの間に形成されて、ウェブによって画定された凹部との、パターンが配置されている。本願において提案された態様によれば、パターンは、それぞれ、内面及び/又は外面内の領域から半径方向外向きに縁部へと延びる、ある数の第1のウェブを含む。更に、パターンは、横断方向において第1のウェブと交差する第2のウェブを含む。半径方向に延びる第1のウェブは、それによって、半径方向に沿ったそのセクションにおいて、それぞれ横方向にオフセットされている。
【0014】
パターンのこの構造によって、それぞれ、内面と外面の内部に領域が設けられ、この領域は、半径方向外向きに、周縁部に向かって延びるウェブに対する始点としての役割を果たす。言い換えると、ウェブはこの領域に向かって収束して、より高密度になる。この領域は、それぞれ、内面と外面の中心の近くに位置して、周縁部まで距離を有するのが好ましい。各隆起ウェブは、蓋壁の剛性への寄与につながるだけではなく、振動又は揺動の場合に動かされる、材料の量を局所的に増大させる。こうして定義された領域に向かって収束するウェブの集積は、それぞれ内面と外面の中心に向かってウェブによって運ばれる、材料の量の集中につながる。
【0015】
蓋壁の中心に蓄積された材料の質量におけるそのような増大は、それ自体、ケース蓋が、実際のモータからケースを介して伝達される振動によって加振されて揺動するときに、ケース蓋の揺動スペクトルの変化を生ずる。
【0016】
同様にして、これらの態様は、そのセクションにおいてそれぞれ横方向にオフセットされるように半径方向外向きに延びる、第1のウェブを提供する。第1のウェブの各々は、したがって、例えば、半径方向外向きに延びる直線に関して、交互するか、又は蛇行する形態をとってもよい。これにより、可能であれば、縁部から中心(又はそれぞれに、領域)に向かって完全に真っすぐで線形に延びる第1のウェブがないことが重要である。横方向にオフセットされたウェブ・セクションのいずれも、内向き又は外向きに隣接する、同一の半径方向ウェブの隣接するウェブ・セクションの半径方向射影内に延びないのが好ましい。
【0017】
すなわち、従来のウェブの配置の場合、連続的に線形に延びるウェブは、それぞれ内面と外面の中心に向かう揺動又は振動の、望ましくないが、残念ながら効果的な伝達と伝播を引き起こす可能性があることが分かった。本願で提案されているような、第1のウェブのそれぞれのセクションの横方向のオフセットのために、そのような直接伝達は回避される。むしろ、縁部を介してケースから導入された振動は、対応する半径方向ウェブの次の隣接するセクションに到達するために、各セクションの端部において(半径方向ラインに対して)横方向に伝播する。これにより、蓄積する蓋材料による減衰が増加することに加えて、振動波の分散が増加することになる。測定の結果、それぞれ、内面と外面の中心領域から半径方向に延びるウェブと、そのセクションのオフセットという二つの対策を組み合わせることで、十分な剛性を確保しながら、ケース蓋から発生する騒音放出レベルを低減できる可能性があることが分かった。
【0018】
いくつかの特定の実施形態によれば、全体的な騒音レベルを1~3dB低減することができる。しかし、特に、スペクトルにおけるピークのレベルは最大5dB平坦化することができ、ここで、対応する電動モータがその車両に設置される、車両製造業者の仕様に関して問題を引き起こすのは、まさに、ケース蓋の共振振動に対応する、これらのピークである。
【0019】
更に、本願で提案される態様は、ケース内又はケース上に騒音減衰又は吸収のための追加の構成部品を実装する必要なく、騒音低減されたケース蓋を提供することを可能にするのは、仕様(上記参照)もこれら無しで満たされるからである。これにより、部品点数、コスト、及び組立てに必要な工程時間の削減が可能になる。
【0020】
一実施形態によれば、半径方向を横切る方向に延び、第1のウェブと交差する第2のウェブは、互いに同心円状に配置され、それぞれ、内面又は外面の中心の、又はその近くの領域まで、それぞれ環状に且つ所定の距離だけ延びる。これにより、パターンが有効になり、パターン内では、半径方向に延びる第1のウェブが同様に分割され、これがセクションの画定を支援し、セクションは、それぞれに、円周方向において横方向オフセットを現わす。第2のウェブは、それにより、横断(円周)方向に同じ第1のウェブの隣接するウェブ・セクションを有する、横方向にオフセットされたウェブ・セクション間の接続を表わす。
【0021】
この態様の特定の実施形態では、パターンは、それぞれ、内面又は外面内の領域に回転中心を有する、回転対称性を有する。ここでの回転対称性とは、仮想回転中に第1と第2のウェブに対してパターンがそれ自体の上にマッピングされる、固定回転角度が多数あることを意味する(これは、蓋壁の内面又は外面の縁部に、若しくは縁部に隣接してそれぞれ設けられるか、又は蓋壁の開口、凹部又は突出部の近傍に設けられてもよい、追加のウェブには関係しない)。この形態のパターンでは、ウェブの密度は、外向きのすべての方向において減少する。機能的利点は別として、このパターンはまた、不規則な配置よりも視覚的に魅力的であるが、不規則な配置は、他の実施形態によれば除外はされない。
【0022】
別の実施形態によれば、蓋壁を貫通する開口は、それぞれ、内面又は外面内において、縁部から距離を置いて形成してもよい。このような実施形態では、回転対称パターンの回転中心を、開口の中心に置いてもよい。半径方向に延びる第1のウェブの起点となる、上記で定義された領域は、そのような場合、その開口の周囲又は近傍によって表わされ得る。このような開口は、一般に、パターンの中心としてのそのような開口を一体化することが特に有利になるように、強化された縁部を追加として含む。このような開口の一つは、例えば、車両の(可動)ルーフのフレーム部において(開口を通して挿入されるネジなどの固定手段によって)電動モータを固定するための役割を、例えば同時に果たすことができる。このようなルーフは、例えばモータの歯車を介して駆動されてもよい。
【0023】
更なる実施形態では、ウェブと、ウェブによって少なくとも部分的に包囲されている凹部とのパターンは、蓋壁の平面部において、それぞれ内面又は外面の表面積のある割合を占める。表面積の割合は、ここでは、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%になってもよい。
【0024】
代替的又は追加的に、第1及び第2のウェブによって占められる表面積の、これらのウェブ、及びウェブによって包囲された凹部の表面積との関係における、局所的な割合は、内面又は外面の中心に近い上記に定義された領域からの距離の増加に伴って実質的に減少し得る。「実質的に」とは、ここでは、狭く暫定的な上昇が可能であることを意味する-例えば、上記の定義された局所的な割合が、領域の回転中心からの第2のウェブの距離に対応する半径で考慮される状況のため、第2のウェブが同心円状に配置されている場合、そのような局所的な割合は、それぞれの第2のウェブの幅にわたって100%に達する可能性がある。また、局所的な割合は、蓋壁の周縁部で増加してもよい。パターンの回転対称性の場合、回転中心のまわりの(二つの隣接する第2のウェブの間)第1の内側の円形リングにおける第1及び第2のウェブの局所的な割合は、60%以上になることがあり、第1の円形リングと比較してより外側に位置する(二つの隣接する第2のウェブの間の)第2の円形リングでは40%未満になることがあるのが好ましい。
【0025】
実施形態によれば、ケース蓋は、プラスチック材料又は樹脂で製造されてもよく、射出成形されてもよい。このような場合、射出成形金型は、複数の製造されたケース蓋の目標を達成するために、有利には一度だけ適合されてもよい。また、ケース蓋は、単一部品として形成されてもよい。利点は既に上記で説明したとおりである。特定の実施形態では、蓋壁の外面に加えて内面も、同様にしてパターンを含んでもよい。これにより、回転の中心は、それぞれ、内面と外面の対応する反対側の場所に位置させられる。ただし、異なる場所が可能な場合もある。
【0026】
本発明の更なる態様は、車両における可動構成部品、特にスライディング・ルーフ又はサンルーフ又はローラ・ブラインドを駆動するための電動モータ用のケース組立体であって、上述した態様又は実施形態のいずれかによるケース蓋を備える、ケース組立体を提供する。
【0027】
更に、車両における可動構成部品、特にスライディング・ルーフ又はサンルーフ又はローラ・ブラインドを駆動する電動モータは、変速機、制御ユニット及び制御ユニットによって作動される電子構成部品、特にステータ及びロータに加えて、DCモータ、上述した更なる態様によるケース組立体を備えるのが好ましい。
【0028】
種々の態様の更なる利点、特徴及び詳細は、特許請求の範囲、好適な実施形態の以下の説明、並びに図面から明らかになる。図中、同一符号は同一の特徴及び機能を示す。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】構造を補強するウェブとその間に形成された凹部とで実質的に(鏡面)対称のパターンが形成されている、ケース蓋の比較例の斜視図である。
【
図2】電動モータの関連するケース上に設置された、
図1のケース蓋の上の振動又は揺動の強度の分布を示す図である。
【
図3】ケース蓋の外面の中心領域に定義された中心点を有する、実質的に回転対称のパターンが形成されている、本発明の一実施形態によるケース蓋の、
図1に示されるのと類似の斜視図である。
【
図4】実施形態による
図3のケース蓋を、その内側から見た、斜視図である。
【
図5】電動モータのケース上への装着以前の、
図3又は
図4のケース蓋の斜視図である。
【
図6】一実施形態による、
図5の組立済の電動モータの斜視図である。
【
図7】それぞれ従来型設計(左側の図)によるもの、及び本発明(右側の図)の実施形態によるものの、二つのケース蓋について50Hzから10kHzまでの周波数範囲にわたってプロットされた、測定又はシミュレーションされた、騒音レベルを示す図であり、上側の図は、モータの時計方向回転に関し、下側の図は、モータの反時計方向回転に関する。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下の好ましい実施形態の説明において、様々な態様の本開示は、以下の説明及び図に示される構成部品の構造及び配置の詳細に限定されないことに留意すべきである。図に示されていないものを含めて、すべての実施形態は、様々な方法で、実施するか、実現することができる。更に、本実施形態において使用される表現及び用語は、特定の説明だけの目的で使用され、当業者により限定された方法で解釈されるべきではないことに留意されたい。更に、以下の説明において、図における同一の参照記号は、同一又は類似の特徴又は対象物を表わし、その結果として、場合によっては、説明の簡潔さと明瞭さを維持するために、同一物の反復する詳細な説明は省略される。
【0031】
図1は、ケース蓋100の比較例の斜視図を示す。ケース蓋100は、射出成形プロセスにおいてプラスチック材料又は樹脂で作製されており、実質的に平坦な平面状の蓋壁2と、係合構造11~17とを備え、この係合構造は、電動モータ1000、ここでは、例えば、自動車の可動ルーフ構成部品を作動させるために設置される、ブラシレスDCモータのケース(実施形態として、
図5にだけ示されている、変速機ケーシング200)に設けられた対応する係合構造(ラッチング・ラグ213、214)と係合する。係合構造11~17は、簡単なラッチング・タブ(例えば、参照番号13、14を参照)であるか、又は案内表面(例えば、参照番号12を参照)を有する類似の構造であってもよい。係合構造11~17は、下にあるケースに対して、容易に取付け可能であって、信頼性があり、且つ取外し可能なケース蓋の接続を確実にする。ケース蓋100は、ケースの開口を覆い、この開口を介して、変速機の部品及び電動モータの電子部品を挿入、又は取り換えすることができる。開口20、21、22は、ケース蓋にも形成されている。開口20及び21は、モータが一旦、組み立てられると、その開口を通して挿入されるネジを用いて、問題の車両のルーフ・フレームにモータ全体を取り付けることを可能にするために使用される。一方、開口22は、電動モータにおいて蓋を装着する際に、ケースに設けられた対応する突出部と、ケース蓋100の内側のケースに対して、ケース蓋を事前位置合わせする役割を果たす。なお、開口部20~22及びその機能に関する説明は、以下に説明する実施形態にも適用される。
【0032】
本願においては、モータ及び歯車構成部品を収容すると共に、ケース蓋がそれに装着される、基体も、総称的にケースと呼ばれるのに対して、基体(ケース)とケース蓋の組合せは、ケース組立体と呼ばれることに留意すべきである。
【0033】
平面状の蓋壁2は、実質的に平坦な内面60と実施的に平坦な外面50とを有し、これらは互いに反対向きである。
図1(及び、説明される
図3)の斜視図において、内面は、直接見ることはできず、矢印と参照番号によって指示されているだけである。内面60は、組立て中には閉じられるケースの開口に面しているのに対して、図において見ることのできる外面50は、対応して、その下に位置するケースと反対向きであるか、又は係合構造11~17によって定義される挿入の方向と反対向きである。
【0034】
外面50上に、対称パターン130が、蓋構造を補強する隆起ウェブ132、134と、ウェブ132、134によって包囲された中間凹部136とで形成されている。特に、パターンは、互いに直角に配置された直線的なウェブ132、134を有する、周期的なグリッドとして形成されている。第1のウェブ132は、相互に同じ第2の距離138で互いに平行に延びており、第1のウェブと直角に走る、第2のウェブ134は、同じ第1の距離139で互いに平行に延びている。比較例において、第1及び第2の距離138及び139は同一である。したがって、第1と第2のウェブ132、134の間の凹部は正方形である。ウェブ132、134は、それぞれ、矩形又は台形の断面輪郭を有してもよい。
【0035】
パターン130は、周縁部19まで外面50のほぼ全面にわたって延びている。特定の例では、ケース蓋100は傾斜部18も有しており、この傾斜部18は、平坦な蓋壁2又は従来のパターン130の縁部19を起点として、蓋壁2の平面からわずかに外側に延びて、パターン130により覆われていない。
【0036】
図2は、比較例により、
図1に描かれているケース蓋100を含むケース組立体全体が斜視図で示されている図を示す。振動が、ケース内部に装着されたモータから伝達されるときに、シミュレーションにおいて決定された、外部輪郭上での振動の振幅がグレー・スケールで示されている。1061Hzにおける振動モードが示されている。最大の振幅がケース蓋100の中央又は中心において発生しているのが明確に見ることができる。ケース蓋100は、音生成振動体として作用する。更に、分析によると、外面50の中心を通って線形に延びる、ウェブ132、134は、非常に効率的に、且つ均質に中心へと振動を伝達し、その結果として、振幅はそこにおいて比較的に高くなることが明らかとなった。
【0037】
図3は、本発明による実施形態を示す。
図1に関する差異だけを説明する。ケース蓋1は、パターン130と異なる、本発明による別のパターン30を除いては、基本的に、
図1のケース蓋100と非常に類似する形状を有する。特に、しかしながら、
図3における、蓋壁2、係合構造11~17、傾斜部分18、縁部19、及び開口20、21、22は、
図1の蓋壁2、係合構造11~17、傾斜部分18、縁部19、及び開口20、21、22と一致する(しかしながら、内面60と外面50は、それぞれに異なるパターンのために、
図1と3の間で異なっている)。
図1のケース蓋100も、ケース蓋1がそれに嵌まるケース(
図5参照)に嵌まる。結果的に、ケース蓋1とケース蓋100とは、電動モータのケースに関して交換可能である。ケース蓋1が製作される材料は、上述したものと同様である。
【0038】
次に、パターン30の新しい設計について説明する。
【0039】
パターン30は、外面50上に形成されている。また、パターン30は、基本的には回転対称に配置され、第1のウェブ32及び第2のウェブ34によって画定されるパターン30が、それらの間に画定される凹部も含むものと考えられるときには、外面50を実質的にほぼ完全に覆っている。縁部19に位置しているために完全には包囲されていない凹部も、第1及び第2のウェブ32、34によって形成されており、したがってパターン30の一部であると考えられる。
【0040】
第1のウェブ32は、それぞれ、セクション321、322、323内で半径方向に延びている。半径方向に対する開始点は、外面50内部に形成された、上述の開口20の軸心に位置する、回転中心70である。回転中心70は、蓋壁2を通って延びる軸線として、又は蓋壁2の平面内に位置する点として見なすことができる。開口20は、開口21と類似して、それぞれ、車両のフレーム部、又はルーフに駆動装置を固定する役割だけを果たす。このルーフは、歯車を介して、例えば電動モータ1000によって駆動される。第2のウェブ34の最も内側の一つは、開口20のまわりに閉じた第1のリング341を形成する。第2のウェブ34の最も内側の一つ(リング341)の中心点は、パターン30の回転対称性の観点において、回転中心70と一致している。第2のウェブ34の最も内側の一つ、又はリング341は、それぞれ、回転中心70及び開口20と類似して、外面50内部でその中央近くの領域80内に位置している。半径方向の第1のウェブ32は、リング341を始点として半径方向外向きに縁部19に向かって延びている。領域80は、平面状の蓋壁2の縁部19からある距離だけ離れて位置している。
【0041】
第2のリング342、第3のリング343及び第4のリング344は、第1のリング341と同心円状に配置され(すなわち、同じ中心点又は回転中心を有し)、第2のウェブ34の第2の最も内側、第3の最も内側及び最も外側の一つにそれぞれ対応する。それぞれ隣接するリング間の半径方向の距離は、互いに実質的に類似しているか、又は等しい。第2、第3及び第4のリング342~344は、幾何学的な理由から外面の縁部19を越えて延びるので、パターン30は縁部19で切り取られて、第1のリング341のみが閉じている。
【0042】
実質的に半径方向に延びる第1のウェブ32の各々から、第1のセクション321が、第1のリング341と第2のリング342との間を真っすぐ且つ線形に半径方向に延びている。円周方向において隣接する、それぞれの二つの第1のセクション321の間に形成される角度は、パターン30全体にわたって等しい。本実施形態では、例えば24個の第1のセクションを設けて、この場合における角度が、例えば15°になるようにすることができる。その他の数や角度も可能である。第1のセクション321の幅は、半径方向に沿って一定である。
図3に見られるように、円周方向に配置された一連の最も内側の第1の凹部41は、それにより、相互に同じ形状のリング・セグメントを得ており、このリング・セグメントは、最も内側の第1のリング341に近い鋭い先端に向かって先細りになっている。第1のウェブ32の第1のセクションの数に対応して、第1のセクション321と第2のリング342のそれぞれ二つによって円周状に配置されて形成された24個の凹部41が存在する(リング・セグメント状の凹部41の鋭利な先端は、最も内側の第1のリング341を画定するように位置している)。
【0043】
半径方向に延びる第1のウェブ32の第2のセクション322は、第2のリング342と第3のリング343との間に延びている。
図3から明瞭に分かるように、第2のセクション322は、第1のセクション321に対して回転方向(円周方向)に横方向にオフセットされて位置している。第2のセクション322は、それぞれ第1のセクション321の半径方向射影内に位置していない。第2のセクション322の数は第1のセクション321の数と同一であるため、各々一つの第1のセクション321は、各々一つの第2のセクション322に関連付けられている。しかしながら、本発明によれば、これらの数は互いに異なるものとも考えられる。本実施形態における回転方向における横方向オフセットは7.5°に相当し、それによって、縁部19で切り取られたパターン30の部分が無視されるならば、第1のウェブ32の回転及び点対称の配置が現在、生じている。第2のセクション322は、半径方向に沿って外向きに幅が大きくなる。この方策により、第2及び第3のリング342、343と、第2のセクション322とによって画定される凹部42は、上方から見たときに、半径方向に沿って一定の幅、又は実質的に矩形形状をなして設けられる。
【0044】
半径方向に延びる第1のウェブ32の第3のセクション323は、第3のリング343と第4のリング344との間に延びている。第1のセクション321と同様に、第1のウェブ32の第3のセクション323も、半径方向に沿って一定の幅を有し、その結果、第2のウェブ34の第3及び第4のリング343及び344と、第1のウェブ32の相互に隣接する第3のセクション323とによって形成される、第3の凹部43もリング・セグメントとして成形される。また、横方向オフセットにより、第3のセクション323は、第3のセクション323から内側に隣接して延びる第2のセクション322の半径方向射影の外側に位置する。しかしながら、第3のセクション323は、第1のウェブ32の第1のセクション321の半径方向射影内に延びている。
【0045】
図3に示すように、第4の凹部44も形成されており、半径方向に延びるウェブ32の第4のセクションも同様にして形成されている。しかし、これらは半径方向に離れた周縁部区域にしか延びていないため、ケース蓋1の中央部分の振動挙動に関連する役割を果たさない。
【0046】
上述したように、半径方向に延びるウェブ32は、半径方向に沿って配置され、円周方向において相互に横方向にオフセットされた、セクション321~323により構成される。これらのセクションは、単に横断方向のウェブによって接続されているに過ぎず、横断方向ウェブは、第2のウェブ34(特に、リング342及び343はセクション間の接続に役立っている)として同時に機能し、第2のウェブ34は、こうして、回転方向(円周方向)において半径方向に延びる第1のウェブ32と交差する。その結果、パターン30は、中心領域80を始点としてその外側の端部まで連続的に真っすぐ且つ線形に延びて、蓋壁2の周縁部19で終わる、ウェブを含まない。結果として、縁部で導入されて中心区域に伝播する振動の効率的な伝搬が妨げられ、振動の減衰又は吸収が改善される。
【0047】
本実施形態において、リング341と342、342と343、並びに343と344の間の環状区域のそれぞれの中で、第1から第3の凹部41~43に対して、半径方向に延びる第1のウェブ32の第1から第3のセクション321~323が占める表面積の割合が、中心領域80から外縁部まで半径方向外向きに減少することも重要である。内側に収束する第1のウェブ32のため、外面50内の中心領域80の質量が蓄積され、増加する。その結果、ケース蓋1の振動挙動は、特に、そうでなければ中心から周縁部まで半径方向に連続的に延びるウェブの省略との組合せによって肯定的な影響を受ける。
【0048】
凹部41~44は、中心から外側に向かって見た場合、半径方向の長さが9.7mm、8.5mm、8.1mm、及び11.4mmである。蓋壁2の厚さは、ウェブ32、34の区域では1.7mm、凹部41~44の区域では1.1mmになる。両側(内面60、外面50)の段差高さは0.3mmになることを意味する。
【0049】
本発明の一つの効果は、射出成形中に対応する金型の射出開口の内側に縦方向に整列するガラス繊維が、ウェブによって形成される垂直段差で無秩序な配向に更に強く促されることである。半径方向に延びる第1のウェブ32の横方向オフセットにより、ガラス繊維が無秩序に配向する、複数の垂直段差が形成される。これは、振動挙動又は、蓋壁2の上への振動又は揺動、及びそれを通過する振動又は揺動の伝播に加えて、射出成形プロセス後の冷却時の機械的歪み又は反りに関しても、肯定的な効果をもたらす。
【0050】
図4は、
図3と同様のケース蓋1について、内面60の図を示している。外面50に形成されたパターン30に対して、同一又は類似のパターン30が鏡対称に形成されている(蓋壁2の蓋面を介して鏡映されている)ことが容易に分かる。
【0051】
図5は、
図3及び
図4に示した実施形態によるケース蓋1の組立体と、電動モータのケースとを斜視図で示している。ケースは、変速機ケーシング200とモータ・ケーシング210とからなり、このモータ・ケーシングは、後で、モータ(ステータ及びロータ)をその中に取り付けた状態で、変速機ケーシング200に取り付けられる。ロータ軸ホルダは、参照番号230で示されている。
【0052】
ケース蓋1における開口22は、
図4に見られるように、内側に向かう(すなわち内面60を起点とする)突出部を有する。ケース蓋1が変速機ケーシング200に設置されると、この突出部に変速機ケーシング200から上方に延びる位置決めピン222が挿入され、これにより、組立て時にケース蓋1を事前センタリングすることが可能になる。
図5に示す状態では、同図の透視では見えない回路基板が、電動モータ1000の制御ユニットとしてケース蓋1の下に既に嵌め込まれている。事前センタリングは、ケース蓋の更なる組立て中に、それを損傷から保護する。それはまた、回路基板上のホール・センサがモータの磁気ホイールに対して正確に位置していることを確実にする役割を主に果たす。変速機ケーシング200の中空円筒状の開口220及び221も、取付けプロセスが継続するにつれて、開口20及び21にセンタリングされる。更に、(上述した他のラグに加えて)係合構造13及び14は、最終的に、対応する係合構造213、214(ラッチング・ラグ)と係合する。(制御ユニット又は回路基板の電気接続用の)コネクタ又はマルチ・ピン・ヘッダは、参照番号90で示されている。このようにして組み立てられた電動モータ1000を
図6に示す。
【0053】
上述の振動挙動は
図7に示されている。特に、
図7は、従来式設計(左側の図)による、及び本発明の実施形態(右側の図)による二つのケース蓋に対して、50Hzから10kHzの周波数範囲にわたりプロットされている、測定騒音レベルを含む、四つの図を示しており、上側の図は、cw(時計回り回転モータ)に関し、下側の図は、ccw(反時計回り回転モータ)に関する。二つのサンプルが、それぞれの部分図において記録されている。この例における基本周波数は1061Hzである。
【0054】
車両製造業者により設定された一般的な許容限界値を反映している、太線で引かれた上側の線は、新設計(右側)のパターン30を有するケース蓋1を使用するときには、超えられることはないが、これに対して、従来型パターン130(左側)は許容限界を超えることがはっきりと分かる。
【符号の説明】
【0055】
1 ケース蓋
2 蓋壁
11~17 係合構造
18 傾斜部分
19 外面及び内面の縁部
20~22 開口
30 パターン
32 実質的に半径方向に延びるウェブ
321~323 各第1のウェブの横方向オフセットしたセクション
34 第1のウェブと交差する第2のウェブ
341~344 第1から第4のリング
41~44 第1と第2のウェブ間の凹部
50 外面
60 内面
70 回転中心
80 領域
90 コネクタ、マルチ・ピン・ヘッダ
100 ケース蓋(比較例)
130 パターン(比較例)
132 ウェブ(比較例)
134 ウェブ(比較例)
136 凹部(比較例)
138 距離(比較例)
139 距離(比較例)
200 変速機ケーシング(ケース)
210 モータ・ケーシング(ケース)
213、214 ラッチング・ラグ
220、221 ネジ用の中空円筒状開口
222 位置決めピン
230 ロータ軸ホルダ
1000 電動モータ
【外国語明細書】