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特開2024-137848電池セル層の位置に関する電池セル積層体を検査するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137848
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】電池セル層の位置に関する電池セル積層体を検査するための方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024043395
(22)【出願日】2024-03-19
(31)【優先権主張番号】10 2023 202 492.6
(32)【優先日】2023-03-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】596107062
【氏名又は名称】フォルクスヴァーゲン アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】VOLKSWAGEN AKTIENGESELLSCHAFT
【住所又は居所原語表記】Berliner Ring 2, 38440 Wolfsburg, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】シュテフェン マズーフ
【テーマコード(参考)】
5H028
【Fターム(参考)】
5H028AA05
5H028BB11
5H028BB19
5H028CC01
5H028CC08
5H028HH05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】電池セル層の積層体の検査方法を提供する。
【解決手段】少なくともアノード2a及び/又はカソード2bの大面積部分のうちの少なくとも1つの大面積部分の幾何形状を求め、電池セル層が積層体1に積層され、続いて、アノード及び/又はカソードの位置検査のため積層体がX線照射され、検出されたX線を用いて、積層体の対向する側面の少なくとも1つの対に関して、該対の考慮されるタイプの電極の縁部間に存在する最大縁部間隔距離が求められ、該距離が、第1の許容誤差値よりも小さいかどうかが検査され、肯定的な場合、該距離が第1の許容誤差値よりもその値分だけ小さい値の半分を張出量として定義し、該距離が、一方では考慮されるタイプの電極の全ての算出方向に関する最短寸法の和から求まり、他方では第2の許容誤差値と半分の張出量との差分から求まる値よりも小さいかどうかが検査され、肯定的な場合、積層体は許容可能と評価される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極(2)の第1のタイプとしてのアノード(2a)、電極(2)の第2のタイプとしてのカソード(2b)、およびセパレータ(3)の形態の複数の電池セル層の積層体(1)を検査するための方法であって、
前記電池セル層は、多角形の大面積部分を有し、前記大面積部分に対して垂直に配列される積層方向(4)に沿って積層されており、ここで、
第1の算出ステップでは、少なくとも前記アノード(2a)および/または前記カソード(2b)の大面積部分のうちの少なくとも1つの大面積部分の幾何形状が求められ、
積層ステップでは、前記電池セル層が前記積層体(1)に積層され、
続いて、前記アノード(2a)および/または前記カソード(2b)の位置検査のために、
第2の算出ステップでは、前記積層体(1)が、X線照射器(7)によって照射されX線検出器(8)によって検出されるX線(9)を用いて照射され、前記X線(9)は、前記電池セル層の大面積部分に関して垂直に配列され、検出されたX線を用いて、前記積層体(1)の対向する側面の少なくとも1つの対に関して、当該対の考慮されるタイプの電極の縁部間に存在する最大縁部間隔距離(K_W_R_TD)が求められ、
第1の検査ステップでは、前記最大縁部間隔距離(K_W_R_TD)が、第1の許容誤差値(K_W_R_TDmax)よりも小さいかどうかが検査され、ここで、
否定的な場合、前記積層体(1)は許容不可と評価され、
肯定的な場合、第2の検査ステップが実施され、ここで、
前記第2の検査ステップでは、
前記最大縁部間隔距離(K_W_R_TD)が前記第1の許容誤差値(K_W_R_TDmax)よりもその値分だけ小さい値の半分を張出量(v_R)として定義し、
前記最大縁部間隔距離(K_W_R_TD)が、一方では考慮されるタイプの前記電極(2)の全ての算出方向に関する最短寸法(K_W_R_min)の和から求まり、他方では第2の許容誤差値(T_G)と半分の張出量(v_R)との差分から求まる値よりも小さいかどうかが検査され、ここで
否定的な場合、前記積層体(1)は、許容不可と評価され、
肯定的な場合、前記積層体(1)は、許容可能と評価される、方法。
【請求項2】
前記第1の算出ステップでは、前記考慮されるタイプの電極(2)の全ての隅部または一部の隅部のみを形成する縁部の位置が求められる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記第2の算出ステップおよび前記第1および前記第2の検査ステップは、前記積層体(1)の対向する側面の少なくとも2つの対に対して実施される、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
1つのタイプの電極(2)のみが、前記第2の算出ステップならびに前記第1および前記第2の検査ステップに従って検査され、さらなる算出および検査ステップにおいて、前記積層体(1)は、X線照射器(7)によって照射され、X線検出器(8)によって検出されるX線(9)を用いて照射され、前記X線(9)は、前記電池セル層の大面積部分に関して垂直に配列され、前記積層体(1)の少なくとも1つの側面に関して検出されたX線を用いて、前記積層体(1)の当該側面に割り当てられた他のタイプの全ての電極(2)の縁部間に存在する最大間隔距離(dmax)が求められ、それに基づいて、前記間隔距離(dmax)が、それぞれ、第3の許容誤差値よりも小さいかどうかが検査され、ここで、
否定的な場合、前記積層体(1)は、許容不可もしくは除外と評価され、
肯定的な場合、前記積層体(1)は、許容可能と評価される、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記積層体(1)が許容不可と評価された場合に、第3の検査ステップにおいて、前記積層体(1)が補足的に少なくとも1つの許容誤差範囲の維持に関して検査され、
否定的な場合、前記積層体(1)は、除外と評価され、
肯定的な場合、前記積層体(1)は、許容可能と評価される、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記第3の検査ステップでは、前記積層体(1)は、X線照射器(7)によって照射され、X線検出器(8)によって検出されるX線(9)を用いて照射され、前記X線(9)に相対する前記積層体(1)の配列は、積層方向(4)に沿って延在する前記積層体(1)の少なくとも1つの縁部が、前記X線(9)により少なくとも2つの異なる位置において完全に捕捉され、それに基づいて、前記積層体(1)の当該縁部を形成する、少なくとも前記アノード(2a)および/または前記カソード(2b)の隅部の相対位置が求められるように選択される、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記積層ステップにおける前記電池セル層の積層の後に、前記電池セル層が座屈部の存在について検査される、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記座屈部検査は、前記電池セル層の幾何形状を求めて評価することにより、かつ/または前記積層体(1)の幾何形状を求めて評価することにより実施される、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記電池セル層の幾何形状を求めることおよび/または前記積層体(1)の幾何形状を求めることは、光学的カメラシステムを用いて実施される、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記カメラシステムの画像は、前記電池セル層の大面積部分に関する上面図で記録される、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記電池セル層の幾何形状は、それぞれ、形成される前記積層体(1)に載置された後で求められる、請求項8および10記載の方法。
【請求項12】
形成された前記積層体(1)における前記電池セル層の幾何形状を求めるために、前記カメラシステムの画像が前記積層体(1)に関する側面図で記録される、請求項8および9記載の方法。
【請求項13】
前記積層体(1)の幾何形状を求めることは、複数の箇所で前記積層体(1)の高さを求めることを含む、請求項8記載の方法。
【請求項14】
前記高さを求めることは機械的に行われる、請求項13記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アノード、カソード、およびセパレータの形態の複数の電池セル層の積層体を検査するための方法に関する。そのような積層体は、電極セパレータ複合体(ESV)とも称され、特に電池の構成部品として設けられることがある。
【0002】
電池の自動化された製造では、電池セル層は、積層機を用いて積層体に積層され(米国特許出願公開第2022/0216501号明細書参照)、ここで、電池セル層の、特に電極の積層精度は、積層機の処理能力に対する品質基準である。多角形、特に矩形の電池セル層の全ての縁部は、一方では、電池の可及的に最適な電気化学的性能を保証するために、また他方では、不十分な積層精度による隣接する電極間の短絡を回避するために、定義された間隔距離を相互に有している必要があり、また定義された許容誤差範囲におく必要がある。そのような短絡は、該当する電池の故障につながりかねない。
【0003】
現下で使用される積層機の積層精度を考慮して、不十分な積層精度による隣接する電極間の短絡を確実に回避するために、一方ではセパレータとアノードとの間、ならびに他方ではアノードとカソードとの間で例えば1ミリメートルの張出量が全周にわたって生じるように、積層体のセパレータをアノードよりも大きく寸法設定し、アノードもカソードよりも大きく寸法設定することが想定されてよい。そのような張出量によっても、電極の不正確な位置決めによる積層体の化学的性能の低下を回避することができる。しかしながら、そのような許容誤差に起因するアノードおよびセパレータの過剰寸法設定は、積層体の製造における材料消費を高め、ひいては積層体のコスト、所要スペース、および重量、ひいては電池の重量を増加させる。それゆえ、積層体において、そのような許容誤差に起因する電池セル層の過剰寸法設定を最小化することが有意な場合がある。このためには、不十分な積層精度による隣接する電極間の短絡を回避する目的で、積層に使用する積層機の積層精度を高めたり、かつ/または積層体の製造の枠内で品質保証を向上させたりするべきであり、それによって、短絡した積層体の製造を十分確実に回避するか、またはこれを製造の枠内で確実に選別することができる。
【0004】
国際公開第2016/114257号には、X線を使用してESVを検査する方法が開示されている。
【0005】
本発明が基礎とする課題は、十分な精度のもとで可及的に簡単でかつ/または迅速に実施可能である、電池セル積層体の電池セル層の積層精度を求めるための方法を提供することにある。
【0006】
この課題は、請求項1による方法において解決される。本発明による方法の好適な実施形態は、さらなる特許請求の範囲の対象であり、本発明の以下の説明から明らかとなる。
【0007】
本発明によれば、電極の第1のタイプとしてのアノード、電極の第2のタイプとしてのカソード、および(アノードとカソードとを分離し、電気的に絶縁された)セパレータの形態の複数の電池セル層の少なくとも1つの積層体を検査するための方法が提供され、ここで、電池セル層は、多角形、好適には矩形の大面積部分を有する。電池セル層の大面積部分は、少なくとも部分的に異なるサイズを有することができる。電池セル層は、大面積部分に対して垂直に配列される積層方向に積層されている。電池セルの電極は、少なくとも含まれる活物質に関して異なる可能性があり、これにより、アノードとして設計された電極は、アノード活性であり、カソードとして設計された電極はカソード活性である(それぞれ電池セルの放電に関する)。
【0008】
電池セル層は、好適にはプレート状に設計されてよい。「プレート状」として、ここでは、本体の長手方向および幅方向に延在する2つの(外側)大面積部分を有する本体または本体区分と理解され(例えば、帯状セパレータの蛇行状の経過の場合、ここでは、隣接する電極間に存在するその区分がプレート状のセパレータを表し)、この場合、大面積部分の(最大)間隔距離に対応する本体の(最大)高さは、(最大)長さおよび(最大)幅よりも小さい(特に最大で1/10または1/100または1/100)。
【0009】
本方法の第1の算出ステップでは、少なくとも(全ての)アノードおよび/または(全ての)カソード、場合によっては付加的にセパレータの大面積部分のうちの少なくとも1つの大面積部分の幾何形状(すなわち、特に形状および寸法に関する幾何学的データ)が求められる。このことは、好適には、電池セル層の個別化された状態で行われる。
【0010】
少なくともアノードおよび/またはカソードの幾何形状の算出は、好適には、光学的メラシステムの画像に基づいて、すなわち、1つまたは複数のカメラを含んだ可視光に基づく画像生成システムによって実施することができる。これは、第1の算出ステップの簡単でかつコスト効率のよい実施を可能にする。ここでは、カメラシステムのカメラの画像捕捉は、好適には上面図で、すなわち電池セル層の大面積部分への「目線」でもって、特に好適には、これらの大面積部分に関するカメラシステムのカメラの光軸の垂直配列によって記録することができる。このことは、第1の算出ステップの実施に関しても同様に好適に作用し得る。なぜなら、これによって、電池セルの可及的に大面積の区分を捕捉することができるようになるからである。
【0011】
積層ステップでは、電池セル層が積層体に積層される。ここでは、好適には、電池セル層が定義された順序で積層体に積層されることおよび/またはこれが行われる順序が求められて記憶されることが想定されてよい。これらの第1の算出ステップおよび積層ステップは、好適には、例えば、形成された積層体上に載置された電池セル層から、あるいはさらに次に載置すべき電池セル層から上部に存在する大面積部分の幾何形状を求めることによって、少なくとも部分的に同時に実施することができる。しかしながら、積層ステップが第1の算出ステップへの接続においてのみ実施されることが想定されてもよい。
【0012】
続いて、少なくともアノードおよび/またはカソードの位置検査のために、これらが第1の算出ステップにおいて幾何学的に測定されている限り、複数の方法ステップが実施される。ここでは、位置検査が、アノードおよびカソードのために行われると、これらの方法ステップは、それぞれ、一方ではアノードのために、他方ではカソードのために別個に(ただし、好適には少なくとも一時的に同時に)実施される。
【0013】
第2の算出ステップでは、最初に、積層体が、X線照射器によって照射されX線検出器によって検出されるX線を用いて照射され、ここで、X線(すなわち、少なくとも1つのビーム、特にその中心ビーム)は、電池セル層の大面積部分に関して垂直に配列される。ここでは、好適には、X線照射器とX線検出器とが静止している間に積層体を動かすことにより、積層体とX線との間で相対移動が生じる。この相対移動は、好適には、直線的であってよい。次いで、検出されたX線を用いて、積層体の対向する側面の少なくとも1つの対に関して、この対の縁部間に存在する最大縁部間隔距離が求められる。ここでの間隔距離は、本発明によれば、基本的に、可及的に直接的な経路もしくは最短の経路で決定される。
【0014】
次いで、第1の検査ステップでは、この最大縁部間隔距離が、第1の許容誤差値よりも小さいかどうかが検査される。否定の場合、すなわち、最大縁部間隔距離が第1の許容誤差値よりも小さくなく、したがって第1の許容誤差値以上の場合、積層体は許容不可と評価される。それに対して、肯定の場合、すなわち、最大縁部間隔距離が第1の許容誤差値よりも小さい場合、第2の検査ステップがさらに実施される。
【0015】
この第2の検査ステップでは、求められた最大縁部間隔距離が、一方では全ての各電極(アノードまたはカソード)の算出方向(積層体の対向する側面対の間の接続方向)に関する最短(幾何学的)寸法の和から求まり、他方では第2の許容誤差値と半分の張出量との差分から求まる値よりも小さいかどうかが検査される。張出量として、ここでは、最大縁部間隔距離が第1の許容誤差値よりもその値分だけ小さい値の半分が定義される。この第2の検査ステップが否定的な検査結果をもたらす場合、すなわち、最大縁部間隔距離が小さくなく、したがって、一方では全ての各電極の最短寸法の和から求まり、他方では第2の許容誤差値と半分の張出量との差分から求まる値以上である場合、積層体は許容不可と評価される。それに対して、第2の検査ステップが肯定的な検査結果をもたらす場合、すなわち、最大縁部間隔距離が、一方では全ての各電極の最短延在部分の和から求まり、他方では第2の許容誤差値と半分の張出量との差分から求まる値よりも小さい場合、積層体は許容可能と評価される。許容可能と評価された積層体は、電池の製造のために制限なく使用されることが想定されてよい。
【0016】
本発明による方法は、第1の算出ステップからの幾何学的データを第2の算出ステップからの算出結果と好適には結合させることを目的とし、ここでは、複数の検査ステップによる具体的な評価により、全てのアノードおよび/またはカソードの位置を検査することが可能になる。このことは、第2の算出ステップ中のX線を用いた積層体の(垂直)照射の比較的簡単に維持されるタイプにもかかわらず可能である。このタイプの照射は、詳細には、X線検出器によって測定されたX線の評価により、これらの全ての各電極の縁部を正確に求めることができないことにつながる可能性がある。むしろ、積層体の選択された側面対を形成する、各電極の相互に最も広く離間している縁部間の間隔距離のみが求められるにもかかわらず、各電極(アノードおよび/またはカソード)の全ての幾何学的データとの結合ならびに複数の検査ステップに従った具体的な評価により、考慮される電極の全てが十分な位置精度を有することが比較的高い精度で保証される。このことは、積層体の比較的迅速な検査を可能にする。なぜなら、垂直照射が可能なため、X線が迅速かつ容易な手法で積層体を移動することができるからである。
【0017】
本発明による方法の好適な実施形態によれば、第1の算出ステップにおいて、各電極、すなわちアノードまたはカソードの全ての隅部を形成する縁部または縁部区分の経過が求められることが想定されてよい。これにより、結果的に、これらの各電極の大面積部分の完全な幾何形状が求められることになろう。これにより、第1の算出ステップが一部の電池セル層に対してのみ、例えば専らカソードおよび/またはアノードに対してのみ実施される場合でも、積層体全体に対して十分に正確な検査結果を達成することが可能となる。しかしながら、基本的には、第1の算出ステップにおいて各電極の一部の隅部のみを形成する縁部または縁部区分の経過を求めることで十分であってもよい。
【0018】
積層体についての可及的に確実な検査結果を達成するために、好適には、第2の算出ステップおよびそれに追従する検査ステップが、積層体の対向する側面の少なくとも2つもしくは厳密に2つの対に対して実施されることが想定されてよい。したがって、矩形の大面積部分を有する電池セル層の好適な設計に関連して、一方では各電極の長さに関する最大間隔距離を画定する縁部の各組み合わせについて、他方では各電極の幅に関する最大間隔距離について、算出および検査が実施される。これにより、電池セル層相互の位置に関するとりわけ正確な検査を実施することができるにもかかわらず、このことは、積層体とX線との間の2つの簡単な直線的相対移動だけで実現することができる。第2の算出ステップならびに第1および第2の検査ステップの実施は、少なくとも2つまたは正確に2つの対に対して相前後して実施することができ、そのため、積層体は、例えば、最初に積層体の長手方向に沿ってX線に対して相対移動され、続いて、積層方向周りで例えば90°だけ回転させた後、幅方向に沿ってX線に対して相対移動される。ただし、2つの対の縁部の同時捕捉も同様に実行することが可能である。
【0019】
本発明による方法の好適な実施形態によれば、1つのタイプの電極のみ、特にカソードのみが、第2の算出ステップならびに第1および第2の検査ステップに従って検査されることが想定されてよい。これは、具体的に構造化された構造に基づくこのタイプの電極については、X線検出器によって検出されたX線の評価により求めることができる画像に基づいて全ての縁部の位置を正確にもしくは一義的に求めることができないことに起因するものであってよく、このことは、X線に対する比較的顕著な吸収特性に起因するものであってよい。
【0020】
それに対して、他のタイプの電極、特にアノードの相対位置については、より簡単でかつ/またはより正確なタイプの評価が想定されてよい。この目的のために、本発明による方法の、場合によっては第2の算出ステップの一部としてもしくは第2の算出ステップと同時に実施することができるさらなる算出および検査ステップにおいて、積層体が、X線照射器によって照射され、X線検出器によって検出されるX線を用いて照射され、ここで、このX線は、電池セル層の大面積部分に関して垂直に配列され、ここで、積層体の少なくとも1つの側面に関して検出されたX線を用いて、積層体のこの側面に割り当てられたこのタイプの全ての電極の縁部間に存在する最大縁部間隔距離が求められ、それに基づいて、この縁部間隔距離が第3の許容誤差値よりも小さいかどうかが検査される。ここでは、否定的な結果が生じている場合、すなわち、最大縁部間隔距離が小さいのではなく、むしろ第3の許容誤差値以上である場合、積層体は、許容不可もしくは除外と評価される。除外と評価された積層体は、特に、電池の製造の際にさらなる使用が決定的に不適切であるとみなすことができる。それに対して、肯定的な結果の場合、積層体は、許容可能と評価される。好適には、可及的に正確な検査結果を実現するために、さらなる算出および検査ステップが、積層体の全ての側面に対して実施されるが、少なくとも、積層体方向に延在する積層体の縁部のうちの少なくとも2つを画定する積層体の側面に対して実施される。
【0021】
第2の算出ステップならびに第1および第2の検査ステップによる手順は、算出結果の簡素化に基づいている。この簡素化は、評価のために、対の縁部間の寸法に関して全ての各電極の最小のものが、この対の最大縁部間隔距離を決定する縁部の1つを表すことが常に想定されることに基づいている。最小の電極は、ここでは、第1の算出ステップの枠内で求められたものである。これにより、実際には与えられていない、許容不可としての積層体の評価が生じる可能性がある。なぜなら、必ずしも電極の最小のものが最大縁部間隔距離を定義する縁部の1つを表しているわけではないからである。したがって、簡素化は、ある程度の不正確さが許容不可としての積層体の評価に関してのみ存在するように選択される。
【0022】
したがって、特に第2の算出ステップならびに第1および第2の検査ステップにおいて、場合によってはさらなる算出および検査ステップでも、許容不可と評価された積層体を新たに検査することが好適な場合もある。この目的のために、好適には、積層体が許容不可と評価された場合に、第3の検査ステップにおいて、積層体が補足的に少なくとも1つの許容誤差範囲の維持に関して検査されることが想定されてよく、ここで、否定的な場合には積層体は除外と評価され、肯定的な場合には積層体は許容可能と評価される。
【0023】
第3の検査ステップでは、積層体を、好適には、X線照射器によって照射され、X線検出器によって検出されるX線を用いて照射することができ、ここで、X線に相対する積層体の配列は、積層方向に沿って延在する積層体の少なくとも1つの縁部が、X線によってカバーされる空間内の少なくとも2つの異なる位置において完全に捕捉され、それに基づいて、積層体の当該縁部を形成する電池セル層の隅部(もしくはこれらの隅部を画定する縁部区分)の相対位置が求められるように選択される。この手順は、従来のコンピュータ断層撮影法における手順に類似もしくは対応し得る。
【0024】
本発明による方法の好適な実施形態によれば、積層ステップの枠内で電池セル層の積層中または積層の後に、電池セル層が座屈部の存在について検査されることが想定されてよい。なぜなら、そのような座屈部は、積層体の検査に関する結果を改ざんしかねないからである。座屈部とは、ここでは、電池セル層の大面積部分の角度付けられた経過、特に、少なくとも45°または少なくとも90°角度付けられた経過と理解される。ここでは、この経過の角度は、約0°/360°であることもでき、これにより、この電池セル層の2つの区分がほぼ平行に延在する。そのような座屈部検査は、第1の算出ステップと同時に実施することもでき、特に、同じ装置(特に光学的カメラシステム)の使用により、第1の算出ステップに統合することも可能である。
【0025】
座屈部検査は、好適には、電池セル層の幾何形状を求めて評価することにより、かつ/または積層体の幾何形状を求めて評価することにより実施することができる。
【0026】
座屈部検査の枠内で、電池セル層の幾何形状を求めることおよび/または積層体の幾何形状を求めることは、同様に好適には光学的カメラシステムを用いて実施することもできる。ここでは、カメラシステムの画像は、好適には、電池セル層の大面積部分に関する上面図で記録することができる。電池セル層に関するカメラシステムのそのような配列は、特に、個々の電池セル層の幾何形状が、それぞれ、形成すべき積層体への載置後もしくは載置中に求められる場合に想定されてよい。代替的に、形成された積層体における電池セル層の幾何形状を求めるために、カメラシステムの画像が積層体に関する側面図で記録されることが想定されてもよい。
【0027】
積層体の幾何形状を求めることは、特に、複数の箇所で積層方向に沿った積層体の高さを、すなわち、積層体の延在を求めることを含むことができ、これは比較的簡単でかつコスト効率のよい手法で機械的に行うこともできる。
【0028】
本発明による方法の枠内で使用される電池セルは、好適には、それぞれ、アノードの大面積部分がカソードの大面積部分よりも大きく、かつ/またはセパレータの大面積部分がカソードの大面積部分よりも大きくかつ好適にはまたアノードの大面積部分よりも大きくなるように設計することができる。異なる電池セル層の大面積部分の異なるサイズの設計により、それぞれ次に小さな電池セル層と比べて、比較的大きな電池セル層(セパレータおよびアノード)のそれぞれ1つの全面的な張出量が実現されるはずである。これにより、特に、第2の算出ステップと、場合により想定されるさらなる算出および検査ステップとを好適に実施することが可能になる。このことは、これらの異なる電池セル層のX線に対する異なる吸収率に起因し得る。これらの異なる吸収率は、異なる電池セル層が設計されている材料の違いに基づく可能性がある。ここでは、カソードの吸収率が最も高く、セパレータの吸収率は最も低い可能性がある。
【0029】
以下では、本発明を、図面に示されている設計および実施例に基づいてより詳細に説明する。これらの図面は、それぞれ概略図で示されている。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】アノード、カソード、およびセパレータの形態の電池セル層からなる積層体の区分の断面図である。
図2】積層体のカソード、アノード、およびセパレータのため積層領域を示した図である。
図3】本発明による方法の第1の算出ステップで使用するための第1の変形形態による積層体の個別化された電池セル層およびカメラシステムを示した図である。
図4】本発明による方法の第1の算出ステップで使用するための第2の変形形態による積層体の個別化された電池セル層およびカメラシステムを示した図である。
図5】本発明による方法の座屈部検査で使用するための第1の変形形態による積層体およびカメラシステムを示した図である。
図6】本発明による方法の座屈部検査で使用するための第2の変形形態による積層体およびカメラシステムを示した図である。
図7】本発明による方法の座屈部検査に使用するための積層体および機械的測定システムの側面図である。
図8図7による積層体および測定システムの上面図である。
図9】本発明による方法の第2の算出ステップで使用するための積層体およびX線システムを示した図である。
図10】X線システムのX線検出器に相対する積層体の1つの位置を示した図である。
図11】X線システムのX線検出器に相対する積層体の1つの位置を示した図である。
図12】X線システムのX線検出器に相対する積層体の1つの位置を示した図である。
図13】X線システムのX線検出器に相対する積層体の1つの位置を示した図である。
図14】X線システムのX線検出器に相対する積層体の1つの位置を示した図である。
図15】積層体のカソードに対する寸法を示した図である。
図16】本発明による方法の第3の検査ステップで使用するための積層体およびX線システムを示した図である。
図17図16によるX線システムを用いて作成された積層体の一区分の画像を示した図である。
【0031】
電池セル製造の枠内では、積層方向4に沿って交互の順序でプレート状の電極2の形態および電気絶縁性のプレート状のセパレータ3の形態の電池セル層を含む積層体1を製造することができる。これらの電極2は、ここでも交互に、アノード2aおよびカソード2bとしての使用に対応する設計および配置構成で積層体1内に配置されている。電極2およびセパレータ3は、矩形の大面積部分を有し、ここで、アノード2a、カソード2b、およびセパレータ3の大面積部分は、少なくともまだ対応する許容誤差範囲内にある積層の際の不精度にもかかわらず、隣接するアノード2aとカソード2bとの間の短絡、ならびに製造すべき電池の電気的性能に関する過度な損失を回避するために異なるサイズである。図1によれば、カソード2bは最小の大面積部分を有し、セパレータ3は最大の大面積部分を有することが想定されてよく、これにより、全範囲にわたる(すなわち、電池セル層の幅に関しても長さに関しても存在する)縁部側の、一方ではカソード2bに関するアノード2aの張出量と、他方ではアノード2aに(ひいてはカソード2bにも)関するセパレータ3の張出量とが生じる。
【0032】
プレート状のセパレータ3は、少なくとも部分的に、蛇行状に案内されるセパレータストリップ(図示せず)の区分であってもよい。隣接するセパレータ3の張り出している縁部領域が接着されていてもよい。
【0033】
図2は、積層方向4に沿って延在する積層体1の全部で4つの縁部のうちの1つについての電池セル層の十分正確な積層のための可能な設定仕様を示し、この場合、これらの設定仕様は、これらの縁部全てについて満たされるべきであろう。したがって、アノード2a、カソード2b、およびセパレータ3の全てに対して、これらの異なるタイプの電池セル層の縁部がその内部に存在すべきそれぞれ1つの積層領域A,A,Aが設けられていてよい。これについては付加的に、様々なタイプの電池セル層の各々について、それぞれの幅および長さに関して最適な位置S,S,Sが示されており、この場合、これらの最適な位置S,S,Sは、それぞれ、各積層領域A,A,A内部の中央に延在している。これらの積層領域A,A,Aの幅は、例えば、それぞれの最適な位置S,S,Sの両側でそれぞれ1.0mmないしは±0.5mmであり得る。積層体1の全ての電池セルの異なるタイプの電池セル層に対する様々な積層領域A,A,Aに対して付加的に、十分正確な積層のための設定仕様として、さらに様々な積層領域A,A,Aの間に最小間隔距離dAK,dASが設けられてもよい。アノード2a用積層領域Aとカソード2b用積層領域Aとの間の最小間隔距離dAK、ならびにアノード2a用積層領域Aとセパレータ3用積層領域Aとの間の最小間隔距離dASは、例えば、それぞれ0.8mmであり得る。これにより、これらの2つの最小間隔距離dAK,dAS、ならびにアノード2a用積層管領域Aの幅を含む連鎖部を介して、カソード2b用積層領域Aとセパレータ3用積層領域Aとの間の最小間隔距離も生じる。
【0034】
本発明による方法は、複数の算出および検査ステップの組み合わせにより、積層体1の少なくとも電極2の十分正確な位置に関する積層体1の可及的に簡単でかつ迅速な検査を可能にする。
【0035】
本方法の第1の算出ステップでは、全ての電池セル層の大面積部分のうちのそれぞれ1つの幾何形状が求められる。このことは、上面図(図3および図4参照)における光学的カメラシステムを使用して行われ、それを用いることにより、個別化された電池セル層のそれぞれ少なくとも1つの画像が記録されて評価される。ここでは、好適には、第1の光源(図示せず)が、個別化された電池セル層に関してカメラシステムの少なくとも1つのカメラ5と同じ側に配置され、第2の光源(図示せず)は、個別化された電池セル層に関して対向側に配置されてよい。
【0036】
使用される少なくとも1つのカメラ5の捕捉領域5aが十分に大きい場合には、個別化された電池セル層は、このカメラ5に対する相対移動なしでも完全に捕捉することができる。しかしながら、比較的高い解像度を実現するために、個別化された電池セル層と少なくとも1つのカメラ5とを相互に相対移動させることが想定されていてもよく、この場合は、少なくとも1つのカメラ5によってそれぞれ電池セル層の区分のみが捕捉される。相対移動なしでの比較的高い解像度は、電池セル層の大面積部分よりも小さいそれぞれ1つの捕捉領域5aをさらに有することができる複数のカメラ5を使用した場合に達成することができる。図4は、これに関して、それぞれ1つのカメラ5が個別化された電池セル層の4つの隅部の各々に割り当てられている実施例を示す。
【0037】
好適には、第1の算出ステップにおける個別化された電池セル層の幾何形状を求めることと同時かそれともその後で、電池セル層は、本方法の積層ステップにおいて、定義された数で積層体1に積層され、また任意選択的に後付けされた順序で積層体1に積層される。
【0038】
電池セル層の積層中または積層の後に、これらの電池セル層は、座屈部の存在についてもさらに検査される。このことは、同様にカメラシステムを使用して行うことができる。これは、好適には、第1の算出ステップで使用されるものと同じカメラシステムであってよい。しかしながら、それとは異なるカメラシステムであってもよい。異なるカメラシステムは、例えば、複数の積層体の一連の検査の枠で、これらの複数の積層体が、個々の積層体に関して順次実行される異なる算出および検査ステップを同時に受ける場合、有意に使用することができる。
【0039】
図5図8は、座屈部検査の実施のための様々な手段を示す。図5および図6による座屈部検査についてはそれぞれ1つのカメラシステムが使用される。
【0040】
図5によるカメラシステムでは、カメラ5は、画像の記録のために電池セル層の大面積部分の上面図で位置決めされる。これにより、カメラを用いて、第1の算出ステップによる手順と比較可能に、(形成される)積層体1の電池セル層の大面積部分の幾何形状を求めることができ、その際には座屈部(図示せず)の存在を検査することができる。このことは、好適には、第1の算出ステップにおいて事前に求められた各電池セル層についての幾何学的データとの比較を実施することができる。ただし、このことは、必ずしも必要なわけではない。なぜなら、電池セル層の座屈部は、通常、座屈部検査が、その際に求められた幾何形状と、全ての電池セル層のタイプについて定義された基準幾何形状との比較に基づき十分であってもよい位の大きさの幾何学的偏差につながるからである。上面図で画像を記録する場合、積層体1の全ての電池セル層の幾何形状は完全に捕捉することができないため、座屈部検査を、図5によるカメラシステムを使用して、積層中に個々の電池セル層に対して順次実施することが想定されており、すなわち、それぞれ積層中に形成される積層体1上に載置される各電池セル層について、さらなる電池セル層が積層体1上に載置される前に、少なくとも1つの画像がカメラ5を用いて捕捉される。
【0041】
それに対して、図6によるカメラシステムでは、カメラ5が、積層体1に関して側面図で画像を記録するために配置されている。これにより、対応する側面図において全ての電池セル層の経過を同時に求めることができ、座屈部(図示せず)の存在を検査することができる。可及的に完全な座屈部検査のためには、ここでは、積層体1の対向する少なくとも2つの側面の画像が作成されて評価されるべきであり、このために、カメラシステムは、少なくとも2つのカメラ5(図示せず)を含むことができる。しかしながら、代替的に、積層体の複数の側面が相前後して個々のカメラ5の画像によって捕捉されるように積層体1とカメラシステムとの間の相対回転が設けられていてもよい。図6によるカメラシステムを用いれば、同時に全ての電池セル層を座屈部の存在について検査することができるため、対応する座屈部検査を、好適には、既に完全に形成された積層体1において実施することができる。
【0042】
図7および図8による座屈部検査は、複数の測定点において積層体1のそれぞれの高さを求めることに基づいている。このことは、例えば測定プローブ6を用いて機械的に行うことができる。ここでは、好適には、それぞれ少なくとも1つの測定箇所が、積層方向4に沿って延在する積層体1の縁部の各々に割り当てられるか、もしくはこの縁部近傍に配置される。なぜなら、特に、これらの縁部を形成する電池セル層の隅部が、積層の際に座屈部リスクにさらされるからである。
【0043】
座屈部検査を伴う積層ステップに続いて、第2の算出ステップが実施される。この場合、積層体1は、X線照射器7によって照射され、X線検出器8によって検出されるX線9を用いて照射される(図9参照)。ここでは、X線9が、電池セル層の大面積部分に関して垂直に配列されることが想定され、この場合、垂直配列は、X線照射器7からテーパー状もしくは円錐状に伝播するX線9の中心ビーム9aに関連する。
【0044】
X線検出器8を用いて検出されたX線の評価により、可能な限り少なくともアノード2aおよびカソード2bの縁部の位置が求められる。
【0045】
アノード2aは、一方ではカソード2bよりも大きく、他方ではX線の吸収が中程度しか生じないため、X線検出器8によって捕捉されたX線から、アノード2aの全ての縁部の位置を求めることが可能である。なぜならこの縁部に対しては対応する画像内に十分なコントラストが存在するからである。アノード2aよりもさらに大きい大面積部分を有するセパレータ3によるX線の非常に僅かな吸収は、この評価を著しく阻害するものではない。
【0046】
アノード2aの位置検査については、本方法のさらなる算出および検査ステップによるアノード2aの縁部の求められた位置から、積層体1の個々の側面を形成する全てのアノード2aの縁部間に存在するそれぞれ最大間隔距離dmax図9参照)が求められ、さらに、この最大間隔距離dmaxが、それぞれの(第3の)許容誤差値よりも小さいかどうかが検査される。ここでは、この(第3の)許容誤差値は、積層体1の様々な側面について異なっていてもよい。この前提条件がそれぞれ満たされている場合、積層体1は、許容可能と評価される。そうでない場合、積層体1は、許容不可もしくは除外と評価される。
【0047】
カソード2bについては、アノード2a用に設けられているような位置検査は、必ずしも可能なわけではない。なぜなら、他のカソード2bによって覆われた縁部の位置は、カソード2bによるX線の比較的強い吸収に基づいて認識できないかもしくは一義的に認識できない。このことは、とりわけ、X線照射器7に対する配列に関して他の全てのカソード2bによって重なっているカソード2bのうちの1つの縁部に当てはまる。それゆえ、本方法は、第2の算出ステップにおいて、積層体1の対向する側面の2つの対について検出されたX線から、それぞれ、個々の対のカソード2bの全ての縁部間に存在する最大縁部間隔距離(K_W_R_TD)を求めることを想定する。このことは、図15に具体的に示されている。アノード2aが、これのために説明した位置検査を実施することができないように設計されている場合、カソード2bについて説明した方法をアノード2aについても好適に適用することができる。
【0048】
図15では、簡単化のために、積層体1の3つのカソード2bのみが示されている。その第1のカソード2b’は、具体的な対の側面間の積層体1の延在に関して最大寸法(長さまたは幅)を有する。ここでは、この第1のカソード2b’は、この寸法に関して、これに関連する定義された公称寸法に対応し得る第2のカソード2b’’よりも大きくてよい。それに対して、第3のカソード2b’’’は、考慮された寸法に関して(積層体の全てのカソード2bのうちの)最小である。X線用の第1のカソード2b’により第2のカソード2b’’および第3のカソード2b’’’の縁部が少なくとも部分的に覆われることに基づき、これらの覆われた縁部の一義的な算出が阻害されてよい。この理由から、第2の算出ステップとそれに続く第1および第2の検査ステップは、算出結果の簡略化に基づいている。しかしながら、この簡略化は、不精度が、許容不可との積層体1の評価に関してのみ存在するように選択され、それにより、許容可能と評価された積層体は、常に、少なくとも電極2の位置精度に関する全ての配置構成を満たす。
【0049】
この目的のために、第1の検査ステップにおいて、積層体1の側面の具体的な対のカソード2bの縁部間に存在する最大縁部間隔距離(K_W_R_TD)が、第1の許容誤差値(K_W_R_TDmax)よりも小さいかどうかが検査されることが想定され、この場合、積層体1は、否定的な場合(K_W_R_TD≧K_W_R_TDmax)には、許容不可と評価され、肯定的な場合(K_W_R_TD<K_W_R_TDmax)には、第2の検査ステップが実施される。
【0050】
第2の検査ステップでは、最大縁部間隔距離(K_W_R_TD)が、一方では算出方向に関する積層体の全てのカソードの最短寸法(長さまたは幅)(K_W_R_min)の和から求まり、他方では第2の許容誤差値(T_G)と半分の張出量(v_R)との差分から求まる値よりも小さいかどうかが検査される。張出量(v_R)として、ここでは、最大縁部間隔距離(K_W_R_TD)が第1の許容誤差値(K_W_R_TDmax)よりもその値分だけ小さい値の半分が定義される。第2の許容誤差値(T_G)は、ここでは、カソード2bの縁部に対して許容可能と定義された(考慮される対の側面間の延在方向における)最大位置偏差に対応し得る。この第2の検査ステップが否定的な検査結果(K_W_R_TD≧(T_G-v_R)+K_W_R_min)をもたらす場合、積層体は許容不可と評価される。それに対して、第2の検査ステップが肯定的な検査結果(K_W_R_TD<(T_G-v_R)+K_W_R_min)をもたらす場合、積層体は許容可能と評価される。
【0051】
第2の算出ステップならびにさらなる算出および検査ステップの枠内で縁部の位置を求めるために、この縁部をその全長にわたってX線を用いて捕捉する必要はない。むしろ、縁部の2つの異なる区分を相前後して求め(図10図14参照)、これに関連する部分結果を、個々の縁部経過の算出のために相互に結合することができる。この目的のために、積層体1は、例えば図10図14に従って、組み合わせてX線検出器8を表す2つの線状検出器10の線状の捕捉領域を通して所期のように移動させることができる。図10図14では、それぞれの捕捉ステップにおいてまだ捕捉中の縁部区分は右傾の陰影線で示し、既に事前に捕捉された縁部区分は左傾の陰影線で示している。電池セル積層体1を線状検出器10の捕捉領域を通して移動させることにより、平坦な捕捉領域が得られる。これは、積層体1の対向する側面の2つの対に割り当てられた縁部の同時捕捉も可能にさせる。線状検出器10は、図10図14による実施形態では、相互に垂直に交わる十字型に配置されている。他の配置構成、例えばL字型も同様に可能である。積層体1の移動は、これらの線状検出器10のうちの一方の捕捉領域に関してそれぞれ垂直に配列される。
【0052】
第2の算出ステップの算出結果の簡略化に基づいて、第2の算出ステップならびにそれに所属する第1および第2の検査ステップで許容不可と評価された積層体1を、補足的に第3の検査ステップで検査することが想定され、ここでは、これに関連して、コンピュータ断層撮影法のタイプのより複雑な検査が実施される。この目的のために、ワークピース支持体11に固定された図16による積層体1は、積層方向4に沿って延在する積層体1の少なくとも1つの縁部が捕捉されるようにX線9の領域内に位置決めされる。回転軸線12周りの積層体1の回転により、この縁部を通るX線9の陰影が積層体の複数の位置で求められ、それに基づいて、積層体1のこの縁部を形成する電池セル層の隅部の相対位置が求められる。これに関して、図17は、考慮される縁部を含む積層体1の区分から捕捉されたX線9に基づいて生成された画像例を示す。
【0053】
好適には、この第3の検査ステップは、積層体1の少なくとも2つの縁部に対して実施され、ここでは、検査された縁部が2つのみの場合、それらは積層体1において相互に対角線上に存在するはずである。
【0054】
次いで、第3の検査ステップで求められた縁部の位置に基づいて、これらが定義された許容誤差範囲内にあるかどうかがさらに検査され、ここでは、否定的な場合には積層体1が除外と評価され、肯定的な場合には積層体1が許容可能と評価される。したがって、第3の検査ステップは、第2の算出ステップならびにそれに所属する第1および第2の検査ステップにおいて許容不可なもの、ひいては電池の製造に使用するのに潜在的に不適切なものとして求められた積層体1が、実際にも不適切であるのかどうか、ひいては除外であるか、またはこれが単に、第1および第2の検査ステップを基礎とする簡略化に基づいて許容不可と段階付けされただけであるのかどうかに関する検証に用いられる。次いで、そのような段階付けは、第3の検査ステップによって検討され、それによって、電池の製造に適した積層体1が除外として処理されることが阻止される。
【符号の説明】
【0055】
1 積層体
2 電極
2a アノード
2b カソード
2b’ 第1のカソード
2b’’ 第2のカソード
2b’’’ 第3のカソード
3 セパレータ
4 積層方向
5 カメラ
5a カメラの捕捉領域
6 測定プローブ
7 X線照射器
8 X線検出器
9 X線
9a X線の中心ビーム
10 線状検出器
11 ワークピース支持体
12 回転軸線
アノード用積層領域
カソード用積層領域
セパレータ用積層領域
アノード縁部の最適位置
カソード縁部の最適位置
セパレータ縁部の最適位置
AK 電池セルのアノード縁部とカソード縁部との間の最小間隔距離
AS 電池セルのアノード縁部とセパレータ縁部との間の最小間隔距離
max 全てのアノードの同様に存在する縁部間の最大間隔距離
K_W_R_TD 積層体の側面対に関するカソードの最大縁部間隔距離
K_W_R_TDmax 第1の許容誤差値
K_W_R_min 積層体の側面対に関するカソードの最短寸法
T_G 第2の許容誤差値
v_R 張出量
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
【手続補正書】
【提出日】2024-04-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極(2)の第1のタイプとしてのアノード(2a)、電極(2)の第2のタイプとしてのカソード(2b)、およびセパレータ(3)の形態の複数の電池セル層の積層体(1)を検査するための方法であって、
前記電池セル層は、多角形の大面積部分を有し、前記大面積部分に対して垂直に配列される積層方向(4)に沿って積層されており、ここで、
第1の算出ステップでは、少なくとも前記アノード(2a)および/または前記カソード(2b)の大面積部分のうちの少なくとも1つの大面積部分の幾何形状が求められ、
積層ステップでは、前記電池セル層が前記積層体(1)に積層され、
続いて、前記アノード(2a)および/または前記カソード(2b)の位置検査のために、
第2の算出ステップでは、前記積層体(1)が、X線照射器(7)によって照射されX線検出器(8)によって検出されるX線(9)を用いて照射され、前記X線(9)は、前記電池セル層の大面積部分に関して垂直に配列され、検出されたX線を用いて、前記積層体(1)の対向する側面の少なくとも1つの対に関して、当該対の考慮されるタイプの電極の縁部間に存在する最大縁部間隔距離(K_W_R_TD)が求められ、
第1の検査ステップでは、前記最大縁部間隔距離(K_W_R_TD)が、第1の許容誤差値(K_W_R_TDmax)よりも小さいかどうかが検査され、ここで、
否定的な場合、前記積層体(1)は許容不可と評価され、
肯定的な場合、第2の検査ステップが実施され、ここで、
前記第2の検査ステップでは、
前記最大縁部間隔距離(K_W_R_TD)が前記第1の許容誤差値(K_W_R_TDmax)よりもその値分だけ小さい値の半分を張出量(v_R)として定義し、
前記最大縁部間隔距離(K_W_R_TD)が、一方では考慮されるタイプの前記電極(2)の全ての算出方向に関する最短寸法(K_W_R_min)の和から求まり、他方では第2の許容誤差値(T_G)と半分の張出量(v_R)との差分から求まる値よりも小さいかどうかが検査され、ここで
否定的な場合、前記積層体(1)は、許容不可と評価され、
肯定的な場合、前記積層体(1)は、許容可能と評価される、方法。
【請求項2】
前記第1の算出ステップでは、前記考慮されるタイプの電極(2)の全ての隅部または一部の隅部のみを形成する縁部の位置が求められる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記第2の算出ステップおよび前記第1および前記第2の検査ステップは、前記積層体(1)の対向する側面の少なくとも2つの対に対して実施される、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
1つのタイプの電極(2)のみが、前記第2の算出ステップならびに前記第1および前記第2の検査ステップに従って検査され、さらなる算出および検査ステップにおいて、前記積層体(1)は、X線照射器(7)によって照射され、X線検出器(8)によって検出されるX線(9)を用いて照射され、前記X線(9)は、前記電池セル層の大面積部分に関して垂直に配列され、前記積層体(1)の少なくとも1つの側面に関して検出されたX線を用いて、前記積層体(1)の当該側面に割り当てられた他のタイプの全ての電極(2)の縁部間に存在する最大間隔距離(dmax)が求められ、それに基づいて、前記間隔距離(dmax)が、それぞれ、第3の許容誤差値よりも小さいかどうかが検査され、ここで、
否定的な場合、前記積層体(1)は、許容不可もしくは除外と評価され、
肯定的な場合、前記積層体(1)は、許容可能と評価される、
請求項1または2記載の方法。
【請求項5】
前記積層体(1)が許容不可と評価された場合に、第3の検査ステップにおいて、前記積層体(1)が補足的に少なくとも1つの許容誤差範囲の維持に関して検査され、
否定的な場合、前記積層体(1)は、除外と評価され、
肯定的な場合、前記積層体(1)は、許容可能と評価される、
請求項1または2記載の方法。
【請求項6】
前記第3の検査ステップでは、前記積層体(1)は、X線照射器(7)によって照射され、X線検出器(8)によって検出されるX線(9)を用いて照射され、前記X線(9)に相対する前記積層体(1)の配列は、積層方向(4)に沿って延在する前記積層体(1)の少なくとも1つの縁部が、前記X線(9)により少なくとも2つの異なる位置において完全に捕捉され、それに基づいて、前記積層体(1)の当該縁部を形成する、少なくとも前記アノード(2a)および/または前記カソード(2b)の隅部の相対位置が求められるように選択される、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記積層ステップにおける前記電池セル層の積層の後に、前記電池セル層が座屈部の存在について検査される、請求項1または2記載の方法。
【請求項8】
前記座屈部検査は、前記電池セル層の幾何形状を求めて評価することにより、かつ/または前記積層体(1)の幾何形状を求めて評価することにより実施される、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記電池セル層の幾何形状を求めることおよび/または前記積層体(1)の幾何形状を求めることは、光学的カメラシステムを用いて実施される、請求項1または2記載の方法。
【請求項10】
前記カメラシステムの画像は、前記電池セル層の大面積部分に関する上面図で記録される、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記電池セル層の幾何形状は、それぞれ、形成される前記積層体(1)に載置された後で求められる、請求項8および10記載の方法。
【請求項12】
形成された前記積層体(1)における前記電池セル層の幾何形状を求めるために、前記カメラシステムの画像が前記積層体(1)に関する側面図で記録される、請求項8および9記載の方法。
【請求項13】
前記積層体(1)の幾何形状を求めることは、複数の箇所で前記積層体(1)の高さを求めることを含む、請求項8記載の方法。
【請求項14】
前記高さを求めることは機械的に行われる、請求項13記載の方法。
【外国語明細書】