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特開2024-137862音抑制装置、音抑制システム及びウェアラブルサウンドデバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137862
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】音抑制装置、音抑制システム及びウェアラブルサウンドデバイス
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/178 20060101AFI20240927BHJP
   H04R 3/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
G10K11/178 100
H04R3/00 310
【審査請求】有
【請求項の数】30
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024044193
(22)【出願日】2024-03-19
(31)【優先権主張番号】63/453,473
(32)【優先日】2023-03-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/541,867
(32)【優先日】2023-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】18/608,899
(32)【優先日】2024-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】521287935
【氏名又は名称】エクスメムス ラブズ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100229448
【弁理士】
【氏名又は名称】中槇 利明
(72)【発明者】
【氏名】ジェム ユエ リヤーン
(72)【発明者】
【氏名】シイ‐シュヨン チェン
(72)【発明者】
【氏名】張 傑堯
【テーマコード(参考)】
5D061
5D220
【Fターム(参考)】
5D061FF02
5D220AA44
(57)【要約】
【課題】広帯域ノイズを抑制することができる音抑制装置、音抑制システム及びウェアラブルサウンドデバイスを提供する。
【解決手段】音抑制装置は、音を感知するように構成された音感知デバイスと;超音波パルスレートで複数の空気パルスを発生するように構成された空気パルス発生デバイスを有する音生成デバイスとを有する。超音波パルスレートでの複数の空気パルスは、反音を形成する。反音は、音を抑制するように構成された成分を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
音抑制装置であって、
音を感知するように構成された音感知デバイス;及び
超音波パルスレートで複数の空気パルスを生成するように構成された空気パルス発生デバイスを有する音生成デバイス;
を有し、
前記超音波パルスレートでの前記複数の空気パルスは、反音を形成し;
前記反音は、前記音を抑制するように構成された成分を含む、
音抑制装置。
【請求項2】
前記音感知デバイス及び前記音生成デバイスは、コントローラに結合され;
前記コントローラは、前記音感知デバイスからの音信号を受信し、前記空気パルス発生デバイスが前記反音を形成する前記超音波パルスレートで前記複数の空気パルスを生成するための制御信号を生成するように構成される、
請求項1に記載の音抑制装置。
【請求項3】
前記コントローラは、前記反音の周波数応答を調整するように構成されたフィルタを有する、
請求項2に記載の音抑制装置。
【請求項4】
前記空気パルス発生デバイスの寸法は、抑制されることになるノイズの最大ノイズ周波数に対応する波長未満である、
請求項1に記載の音抑制装置。
【請求項5】
前記空気パルス発生デバイスの背面上、背面のそば、又は背面下に配置されたバックエンクロージャがない、
請求項1に記載の音抑制装置。
【請求項6】
前記音感知デバイスと前記空気パルス発生デバイスとの間の距離が、抑制されることになるノイズの最大周波数に対応する波長未満である、
請求項1に記載の音抑制装置。
【請求項7】
前記音抑制装置は、ウェアラブルサウンドデバイス内に組み込まれる、
請求項1に記載の音抑制装置。
【請求項8】
前記音感知デバイスは、前記ウェアラブルサウンドデバイスを装着したときに、前記音感知デバイスの感知孔がユーザの外耳道に向くように、前記ウェアラブルサウンドデバイス内に配置され、
前記音生成デバイスは、前記ウェアラブルサウンドデバイスを装着したときに、外耳道の外側に配置される、
請求項7に記載の音抑制装置。
【請求項9】
前記空気パルス発生デバイスは、フィルム構造体を有し;
前記フィルム構造体は、フラップ対を有し、前記フラップ対は、互いに対向して配置された第1のフラップ及び第2のフラップを有し;
前記フラップ対は、前記超音波パルスレートと同期した開口レートで開口を形成するよう差動モード運動を実行するように作動される、
請求項1に記載の音抑制装置。
【請求項10】
前記反音を形成する前記複数の空気パルスは、オープンフィールドに向かって伝搬し;
前記空気パルス発生デバイスの前面は、前記空気パルス発生デバイスのホストデバイスの周囲に向かって配置される、
請求項1に記載の音抑制装置。
【請求項11】
前記音感知デバイス及び前記音生成デバイスは、コントローラに結合され;
前記音感知デバイス、前記音生成デバイス及び前記コントローラは、フィードバック制御ループを形成し;
前記コントローラは、前記フィードバック制御ループのループゲイン又はレイテンシを適応的に調整する、
請求項1に記載の音抑制装置。
【請求項12】
前記コントローラは、環境の音響測定値に従って前記フィードバック制御ループの前記ループゲイン又は前記レイテンシを調整する、
請求項11に記載の音抑制装置。
【請求項13】
前記コントローラは、前記環境の前記音響測定値が低くなるとき、前記ループゲインを小さくするように調整する、
請求項12に記載の音抑制装置。
【請求項14】
前記コントローラは、前記環境の前記音響測定値が高くなるとき、前記レイテンシを小さくするように調整し;
前記コントローラは、前記環境の前記音響測定値が低くなるとき、前記レイテンシを大きくするように調整する、
請求項12に記載の音抑制装置。
【請求項15】
前記コントローラが前記レイテンシの調整を実行するとき、ヒステリシスが含まれる、
請求項12に記載の音抑制装置。
【請求項16】
音抑制システムであって:
アレイに配置された複数の音抑制装置;を有し、
前記複数の音抑制装置のうちの1つが、音を感知するように構成された音感知デバイスと、反音を生成するように構成された音生成デバイスとを有し;
前記反音は、前記音を抑制するように構成される、
音抑制システム。
【請求項17】
前記音抑制装置は、音響スクリーンを形成するように配置される、
請求項16に記載の音抑制システム。
【請求項18】
前記音響スクリーンは、光又は空気流に対して透過性である、
請求項17に記載の音抑制システム。
【請求項19】
前記音響スクリーンは、プライベート空間を形成するために使用される、
請求項17に記載の音抑制システム。
【請求項20】
前記複数の音抑制装置又は前記音抑制システムは、ノイズの激しい環境のそば又は座席に配置される、
請求項16に記載の音抑制システム。
【請求項21】
前記音生成デバイスの物理的寸法は、20mm(ミリメートル)未満である、
請求項16に記載の音抑制システム。
【請求項22】
前記音生成デバイスは、超音波パルスレートで複数の空気パルスを発生するように構成された空気パルス発生デバイスを有し;
前記超音波パルスレートでの前記複数の空気パルスは、前記反音を形成する、
請求項16に記載の音抑制システム。
【請求項23】
音響絶縁方法であって、
音響絶縁スクリーンを形成するステップであって、前記音響絶縁スクリーンは、請求項16に記載の音抑制システムを有する、ステップと;
空間内に前記音響絶縁スクリーンを配置するステップと;
を含み、
前記音響絶縁スクリーンは、前記空間を第1の部分空間及び第2の部分空間に分割し;
前記第1の部分空間から来る第1の音が前記音響絶縁スクリーンによって抑制され、前記第1の音に対応する抑制された第1の音が前記第2の部分空間に向かって伝播し;
前記抑制された第1の音の音響的大きさは、前記第1の音の音響的大きさよりも小さい、
音響絶縁方法。
【請求項24】
ノイズ抑制方法であって:
請求項16に記載の複数の音抑制装置を、ノイズの激しい空間若しくはノイズの激しい機械のそばに又はシートに配置するステップを含む、
ノイズ抑制方法。
【請求項25】
プライベート空間を形成する方法であって:
前記1つ以上の音響絶縁スクリーンによって囲まれる前記プライベート空間を形成するように、請求項23に記載の1つ以上の音響絶縁スクリーンを配置するステップを含む、
方法。
【請求項26】
音響絶縁方法であって:
音響絶縁スクリーンを形成するステップであって、前記音響絶縁スクリーンは空気流に対して透過性である、ステップと;
空間内に前記音響絶縁スクリーンを配置するステップと;
を含み、
前記音響絶縁スクリーンは、前記空間を第1の部分空間と第2の部分空間とに分割し;
前記第1の部分空間から来る第1の音が前記音響絶縁スクリーンによって抑制され、前記第1の音に対応する抑制された第1の音が前記第2の部分空間に向かって伝播し;
前記抑制された第1の音の音響的大きさは、前記第1の音の音響的大きさより小さい、
音響絶縁方法。
【請求項27】
前記音響絶縁スクリーンは光に対して透過性である、
請求項26に記載の音響絶縁方法。
【請求項28】
ウェアラブルサウンドデバイスであって:
音を感知するように構成された音感知デバイス;及び
反音を生成するように構成された音生成デバイスであって、前記反音は、前記音を抑制するように構成された成分を含む、音生成デバイス;
を有し、
前記反音を生成する前記音生成デバイスは、ユーザが前記ウェアラブルサウンドデバイスを装着したときに外耳道の外側に位置する、
ウェアラブルサウンドデバイス。
【請求項29】
前記音感知デバイスは、前記ユーザが前記ウェアラブルサウンドデバイスを装着したときに前記ユーザの前記外耳道の中にある、
請求項28に記載のウェアラブルサウンドデバイス。
【請求項30】
前記音生成デバイスは、超音波パルスレートで複数の空気パルスを発生するように構成された空気パルス発生デバイスを有し;
前記超音波パルスレートでの前記複数の空気パルスは、前記反音を形成する、
請求項28に記載のウェアラブルサウンドデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、音抑制装置、音抑制システム及びウェアラブルサウンドデバイスに関し、より具体的には、広帯域ノイズを抑制することができる音抑制装置、音抑制システム及びウェアラブルサウンドデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
スピーカドライバ及びバックエンクロージャ(back enclosure)が従来のスピーカ業界において2つの主要な設計課題である。従来のスピーカでは、可聴周波数帯域全体、例えば、20Hzから20KHzをカバーすることは困難である。所望の音圧レベル(SPL)で広い可聴帯域の音を生成するために、従来のスピーカでは、バックエンクロージャの放射/移動面と容積/サイズの両方を大きくする必要がある。広い可聴帯域の音を発生する大きいサイズのスピーカを考えると、フルバンドノイズ抑制を行うことは、特にオープンフィールドでは、困難である。
【0003】
さらに、従来のスピーカ(例えば、ダイナミックドライバ)は、可聴帯域全体で位相の不整合を発生する。言い換えれば、低周波における(従来のスピーカで発生する)位相は高周波における位相は大きく異なる。このような位相の不整合は、ノイズキャンセル/抑制に対処するのをより困難にすることになり、これはまた、従来のANC(アクティブノイズキャンセリング)の課題である。
【0004】
したがって、既存の技術をいかに超えるかがこの分野における重要な課題である。
【発明の概要】
【0005】
そこで、本出願の主な目的は、従来技術の欠点を改善するために、広帯域ノイズを抑制することができる音抑制装置、音抑制システム及びウェアラブルサウンドデバイスを提供することにある。
【0006】
本発明の一実施形態は、音抑制装置を提供する。音抑制装置は、音を感知するように構成された音感知デバイスと;超音波パルスレートで複数の空気パルスを発生するように構成された空気パルス発生デバイスを有する音生成デバイスとを有する。超音波パルスレートでの複数の空気パルスは、反音(anti-sound)を形成する。反音は、音を抑制するように構成された成分(component)を含む。
【0007】
本発明の一実施形態は、音抑制システムを提供する。音抑制システムは、アレイに配置された複数の音抑制装置を有する。各音抑制装置は、音を感知するように構成された音感知デバイス及び反音を生成するように構成された音生成デバイスを有する。反音は、音を抑制するように構成される。
【0008】
本発明の一実施形態は、ウェアラブルサウンドデバイスを提供する。ウェアラブルサウンドデバイスは、音を感知するように構成された音感知デバイス、及び反音を生成するように構成された音生成デバイスを有する。反音は、音を抑制するように構成された成分を含む。反音を生成する音生成デバイスは、外耳道の外側に位置する。
【0009】
本発明のこれらの目的及び他の目的は、種々の図及び図面に示される好ましい実施形態の以下の詳細な説明を読めば、当業者には明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本出願の一実施形態による音抑制装置の概略図である。
【0011】
図2】本出願の一実施形態による空気パルス発生デバイスの概略図である。
【0012】
図3】本出願の音抑制装置に結合されたコントローラの概略図を示す。
【0013】
図4】本出願の一実施形態のフィードバック制御ループを示す。
【0014】
図5】本出願の一実施形態によるウェアラブルサウンドデバイス内に配置された音抑制装置の概略図を示す。
【0015】
図6】本出願の一実施形態によるウェアラブルサウンドデバイス内に配置された音抑制装置の概略図を示す。
【0016】
図7】本出願の一実施形態によるウェアラブルサウンドデバイス内に配置された音抑制装置の概略図を示す。
【0017】
図8】本出願の一実施形態による外耳道の周囲に取り付けられた音感知デバイス及び音生成デバイスの概略図を示す。
【0018】
図9】本出願の一実施形態によるループゲイン調整及びレイテンシ調整の概略図を示す。
【0019】
図10】本出願の一実施形態による音抑制システムの概略図である。
【0020】
図11】音響スクリーンに適用される音抑制システムの一実施形態の概略図を示す。
【0021】
図12】音響絶縁空間を形成することに適用される音抑制システムの一実施形態の概略図を示す。
【0022】
図13】本発明の一実施形態による音抑制システムの一適用としてのオフィスのシナリオの概略図を示す。
【0023】
図14】本発明の一実施形態による音抑制装置/システムの一適用としての航空機客室のシナリオの概略図を示す。
【0024】
図15】本発明の一実施形態による音抑制システムの一適用としての建築側のシナリオの概略図を示す。
【0025】
図16】本発明の一実施形態による音抑制システムの一適用としての居住空間のシナリオの概略図を示す。
【0026】
図17】本発明の一実施形態による音抑制システムの適用としての居住空間のシナリオの概略図を示す。
【0027】
図18】本発明の一実施形態による音抑制装置の適用としての座席のシナリオの概略図を示す。
【0028】
図19】本発明の一実施形態による音抑制装置の適用としての防音壁(soundwall)のシナリオの概略図を示す。
【0029】
図20】音、反音及び超音波空気パルスの波形の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
米国特許出願第16/125,761号、第17/553,806号及び第18/321,759号の内容が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0031】
米国特許出願第16/125,761号、第17/553,806号及び第18/321,759号は、APPS(APPS:空気圧パルススピーカ)音生成原理の下で動作するAPG(APG:空気パルス発生/ジェネレータ)デバイスを開示しており、人間の可聴範囲をはるかに超える超音波パルスレートで超音波音響パルスの振幅を変調することによって可聴音響を発生させることができ、その結果、発生された各超音波音響パルスは、周囲空気圧に対して、生成されることになる可聴音響の超音波パルスレートでサンプリングされた振幅に比例する非対称性を有する。
【0032】
米国特許出願第18/321,759号に開示されたAPGデバイスは、MEMS技術を用いて小さいサイズで製造され得、負荷音(load sound)を生成し得る。一実施形態では、米国特許出願第18/321,759号に開示されたAPGデバイスは、5.68×5.28×0.85mm3(L:長さ、W:幅、H:高さ、mm:ミリメートル)のL×W×H寸法を有し得、1メートル離れた距離で78±2dBのSPL(SPL:音圧レベル)を10Hz~20KHzにわたって発生させることができる。20KHzの音に対応する波長は実質的に346/K=17.3mmであるので、APGデバイスの物理的な実装は、20KHzの音の第3波長(third wavelength)λ/3よりも小さいL/W/H寸法を有することに留意されたい。言い換えると、APGデバイスの寸法(L、W、又はHであることができる)は、抑制されることになるノイズ(例えば、上述の20KHz)の最大ノイズ周波数に対応する波長未満である。又は、(W+L+H)/2≦λ/πであり、ここでλは、抑制されることになるノイズの最大ノイズ周波数に対応する波長である。
【0033】
APGデバイスの別の態様は、バックエンクロージャの必要性をなくすことであり、バックエンクロージャは、多くの従来のスピーカにおいて、前面放射音波/背面放射音波が互いに打ち消し合うのを防ぐために、背面放射音波を閉じ込めるために使用される。第16/125,761号及び第18/321,759号(及びその中の参考文献(複数可))で説明されているように、APPS動作の態様を利用して、APGデバイスの背面(又はホストデバイス(hosting device)の内部容積に面する)からの可聴(ベースバンド)放射を、APGデバイスの前面(又はホストデバイスの周囲に面する)からの可聴(ベースバンド)放射よりもはるかに弱くする。一実施形態では、背面放射波は前面放射波よりも5~50倍弱くされ得るが、これに限定されない。この場合、前面放射音波と背面放射音波が互いに打ち消し合っても、SPLはあまり変動しない。
【0034】
以下で説明するように、このような小さいサイズのAPGスピーカは、広い可聴帯域にわたって音響ノード応答を達成する(acoustic nodal response)(すなわち、クワイエットゾーン(quiet zone)又は沈黙のポケット(POS)を確立する)のに役立つ。
【0035】
図1は、本出願の一実施形態による音抑制装置10の概略図を示す。本出願では、音抑制装置はまた、局所的なクワイエットゾーン又はPOSを形成することができる音響ノード端末(ANTと略記される)と呼ばれ得る(ここで、ANT及び音抑制装置は、本出願において互換的に使用される)。音抑制装置10は、音感知デバイス(SSD、例えば、マイクロホン)101及び音生成デバイス(SPD)102を有する。SSD101は、SPD102の近くに又は近接して配置され得る。SSDは、音S又はノイズN(ユーザの観点から好ましくない音の一種)を感知するように構成される。SPD102は、第16/125,761号、第17/553,806号及び/又は第18/321,759号からの教示によるAPGデバイスによって実現され得る。SPDはAPGデバイスを有するとみなすことができる。APGデバイスは、超音波パルスレートで複数の空気パルスUAPを発生するように構成される。超音波パルスレートでの複数の空気パルスは、反音ASを形成する。概して、反音ASは、音成分又は反(アンチ)ノイズ成分ANを含み、反ノイズ成分ANは、望ましくないノイズNを抑制するように構成される。
【0036】
図20は、音Sの波形、反音AS’の画像及び超音波空気パルスUAP’の画像を示しており、画像AS’及びUAP’は、APG102によって発生した反音AS及び超音波空気パルスUAPの負のものを表す又は示すことができ、こては、AS’=-AS及びUAP’=-UAPとして表すことができる。AS/AS’は、UAP/UAP’の包絡線又は低周波成分として見られ得る。図20からわかるように、クワイエットゾーン又はPOS内で、音Sは、反音AS及び/又は超音波空気パルスUAPによってほぼ打ち消される。その結果、残留音S-AS’(又はS+AS)又はS-UAP’(又はS+UAP)の大きさは識別できないほど低くなる、又は、残留音S-AS’(又はS+AS)又はS-UAP’(又はS+UAP)の周波数は識別できないほど高くなる。
【0037】
第18/321,759号にしたがって、図2は、本出願の一実施形態によるAPGデバイスの概略図を示す。本出願では、APGデバイスは102で示される。図2(の上部)に示すように、APGデバイス102は、フィルム構造体12を有する。第18/321,759号に教示されているように、フィルム構造体12は、可聴音信号ASSにしたがって超音波音響/空気波UAWを生成する変調動作を実行するように構成され、超音波音響/空気波UAWにしたがって超音波パルスアレイ(ultrasonic pulse array)UPAを生成する復調動作を実行するように構成される。変調動作は、フィルム構造体12のコモンモード動作(common-mode movement)によって実行され、復調動作は、フィルム構造体12の差動モード動作(differential-mode movement)によって実行される。自然/物理的環境及び人間の聴覚系の固有のローパスフィルタリング効果の後、可聴音信号ASSに対応する音が再生される。
【0038】
フィルム構造体12は、フラップ対12pを有する。フラップ対12pは、変調動作を実行するためにコモンモード動作を実行するように作動され、この変調動作は超音波/空気波UAWを生成することになる。一方で、フラップ対12pは、復調動作を実行するために差動モード動作(又は簡潔にするために差動動作)を実行するように作動され、この復調動作は、超音波/空気波UAWにしたがって、超音波パルスレート(例えば、72KHz、128KHz又は192KHz)で超音波パルスアレイUPAを生成することになる。
【0039】
フラップ対12pは、互いに対して反対側に配置された第1のフラップ12a及び第2のフラップ12bを有する。フラップ対12pは、超音波パルスレートである(と同期した)開口レート(opening rate)で開口部112を形成するように差動モード動作を実行するように作動される。
【0040】
さらに、APGデバイス102は、第1アクチュエータ14a及び第2アクチュエータ14bを有する。アクチュエータ14a/14bは、フラップ12a/12b上に配置される。アクチュエータ14a,14bの各々は、上部電極及び下部電極を有する。上部電極及び下部電極は、変調信号SM及び復調信号+SV又は-SVを受信する。図2の下部に示す実施形態では、アクチュエータ14a及び14bの上部電極は、それぞれ復調信号-SV及び+SVを受信し、アクチュエータ14a及び14bの下部電極は、(共通(common(コモン))変調信号SMを受信する。バイアス電圧VBIASは、ここでは簡略化のために省略される。フラップ対12pが開口部112を形成するために差動動作を実行するように、復調信号+SV及び-SVがアクチュエータ14a及び14bに印加される。APGデバイス102の動作原理の詳細については、第18/321,759号を参照されたいが、簡略化のためにここでは説明しない。
【0041】
一実施形態では、反音ASを形成する複数の超音波空気パルス又は超音波パルスアレイUPAは、オープンフィールド(開放フィールド(open field))に向かって伝搬され得、そこでは超音波空気パルスの反射がANT10で無視できる。一実施形態では、APGデバイス102の前面(空気パルスが放射する側)は、APGデバイス102のホストデバイスの周囲に面している。一実施形態では、APGデバイス102の前面は、APGデバイス102が配置されるホストデバイスの周囲に向かって配置される。
【0042】
前述したように、一実施形態では、APGデバイス102は、コンパクトなサイズで、78±2dBのSPLを10Hz~20KHz(可聴帯域全体をほぼカバーする)にわたって生成し得、これは、広い可聴帯域でのノイズ/サウンド抑制に適している。
【0043】
さらに、SPD/APG102によって生成される位相は、様々な音響周波数とは無関係に、パルスレート/サイクル及びSPDからSSDへの伝搬レイテンシに関連している。言い換えれば、SPD/APG102によって生成される位相は非常に一貫している。したがって、SPD/APG102は、DD(ダイナミックドライバ)などの従来のスピーカと比較して、ノイズ/サウンド抑制にさらに適している。
【0044】
図1に戻ると、SSD101及びAPGデバイス102は、有線又はBluetooth(登録商標)などの無線リンクを介してコントローラ16に接続され得る。コントローラ16は、SSD101からサウンド信号SSを受信し、反音ASを形成する超音波パルスレートで複数の空気パルスを生成するためにAPGデバイス102用の制御信号CSを生成するように構成される。一実施形態では、制御信号CSは、変(復)調信号SM、±SVを含み得る、変(復)調信号SM、±SVであり得る又は変(復)調信号SM、±SV生成するために使用され得る。
【0045】
ANT10又はコントローラ16の動作は、図3に示すシステム30などの負帰還OPアンプ回路(演算増幅器)の動作に例えられ得/類似し得、VSは、SSD101によって感知された入射音圧に対応し、VASは、音発生器102によって発生された反音音圧に対応する。VSは、音信号SSに対応/関連しており、VASは、制御信号CSに対応/関連し得る。理想的なOPの場合、大きい開ループゲインg(例えば、g>>1,000)及び位相が1MHzにわたって0°に近いままであり、(OPアンプの仮想接地/短絡原理に従って)V-として示されるOPアンプの負入力端子における電圧は、0に近づき、すなわち、V-≒0、VASは、概念的には、VSの負に近づく、すなわち、VAS≒-VS。したがって、反音ASは、(SSD101の感度を無視し、SPD102のゲインを増幅することによって)望ましくない音S又はNを抑制/キャンセルし、システム30は、人間の可聴周波数の20KHz上限を十分に超える周波数の音波を処理する。
【0046】
システム30は、望ましくないノイズ/サウンドを純粋に抑制するように構成されており、これは、望ましいサウンドを組み込むように拡張することができる。図3に示すシステム32を参照されたい。S/VSが望ましくないサウンド/信号を表すシステム30に加えて、システム32は、望ましい信号VS1及びVS2を組み込む。コントローラ16の出力又はAPGデバイス102の入力とみなされ得るVAS’は、V’AS=-RFB×(VS/RS+VS1/RS1+VS2/RS2)と表され得る。
【0047】
もちろん、システム32は、より望ましい信号を組み込むように容易に変更され得、VAS’は、VAS’=-RFB×(VS/RS+VS1/RS1+...+VSn/RSn)と表され得る。これは、システム32のループゲインが高く設定されると、SPD102によって生成される音響出力は、-S(望ましくない音/ノイズを抑制するように構成されている)の音成分だけでなく、-(k1・S1,...,-kn・Sn)も含むことを意味し、ここで、knはRFB/RSnであり得(又はこれに対応し得)、S1,...,Snは望ましい音を表す。コントローラ16は、図3に示すOPアンプを備えていても備えていなくてもよいことに留意されたい。
【0048】
別の観点/実施形態では、ANT10の動作は、フィードバック制御ループと見ることができる。図4は、本出願の一実施形態による、ANT10及びコントローラ16によって形成されるシステム(又はフィードバック制御ループ)40を示す。図4において、実線/矢印は電気経路を表し、破線/矢印は音響経路を表す。Kは、コントローラ16内の制御ブロックの伝達関数を表す。HPは、SPD102(及びSPD102及びSSD101からの音響チャネル)の伝達関数を表す。HSは、SSD101の伝達関数を表す。Wは、音響妨害又は望ましくない音響音を表す。Yは、システム40又はANT10の音響システム出力を表し、これはユーザに聞こえる。Rは、聞こえることになる所望の信号を表し、図3のVS1...、VSnの積分に類似している。Ymは、測定/マイクロホン出力を表し、図3のVS又は図1のSSに対応/類似している。Eは、RとYmとの間の誤差信号を表す。Uは、コントローラ出力を表し、図3のVAS又は図1のCSに対応/類似している。
【0049】
フィードバック制御ループとして、システム出力Yは、Y=T・R+S・Wと表すことができる。Sは、フィードバック制御ループ40の感度関数又はノイズ伝達関数とみなすことができ、Wが抑制される抑制の程度を表し、S=1/(1+HP・K・HS)と表すことができる。Tは、フィードバック制御ループ40の閉ループ伝達関数又は信号伝達関数とみなすことができ、RがYから知覚される程度を表し、T=HP・K/(1+HP・K・HS)と表すことができる。関心帯域(例えば、可聴帯域又は20KHz以下のスペクトル帯域)内で、Kは、T→1及びS<<1となるように設計される。
【0050】
ANT10は、ウェアラブルサウンドデバイス、例えば、イヤホン又はヘッドホン内に配置/組み立てられて、局所的なクワイエットゾーン又はPOSを生成し得る。ここで、コントローラ16は、ウェアラブルサウンドデバイス内に配置されてもよいし、配置されなくてもよい。一実施形態では、コントローラ16は、ウェアラブルサウンドデバイスとの無線接続を有する電子デバイス内に配置され得、ANT10がその中に配置される。
【0051】
この種の適用の図5及び図6を参照されたい。この適用シナリオの下で、反音を介して局所POSを作り出す各個々のANTの能力は、波長λの音に対してr=λ/2πの半径内に局所POSを作り出すために利用される。例えば、図5の52の構成では、ANT10は、成人に対して直径8~10mmの半楕円形である外耳道の外側開口部又は外側に配置される。シリコン又は任意の適切な材料のような材料で作られ得るウェアラブルサウンドデバイスのホルダ508は、506,507に示すように、ANT10を外耳道の入口の近く又は中央に保持し得、ここで、507は外耳道の断面を表し、506は外耳道内の通路を表す。図5のANT10が作り出すPOSの有効上限周波数は、346/(4.5×10-3×2π)=12.24KHz(外耳道の外側開口部の半径を4.5mmと仮定することにより)と推定することができ、これは、ほとんどの環境ノイズを抑制するのに十分である。
【0052】
さらに、実施形態として、ANTの寸法が2.5×4.6×8mm3であると仮定すると、ANT10によってブロックされる外耳道506/507の面積のパーセンテージは、実質的に(2.5×4.6)/(4.52×2π)≒18%であり、これは、ホルダ308の優れた設計により、外耳道通路306の80%までを開放することができ、これにより、空気流が外耳道に出入りすることを可能にし、8時間以上の睡眠などの長時間の着用中に不快感を引き起こすことを回避するのに役立つ。
【0053】
これらの2つの特徴(有効周波数12KHzまでのPOS;最小の不快感/不快感がない)を適切な環境制御と組み合わせることにより、ANT10は、夜間の周囲ノイズ制御を備えてデバイス52内に配置され得る。デバイス52はまた、長時間の着用中に最小限の不快感で/不快感無しで、静かで安らかなプライバシーを求めるあらゆる場面に適用され得る。
【0054】
安全上の懸念から、コントローラ16は、意図された仮想クワイエットゾーン適用に対して最適化され得る。例えば、ANT10内のコントローラ16は、周囲音がユーザに聞こえ得るように、手動又は自動的に「アンビエントパススルー((周囲通過(ambient passthrough))」モードに入り得る。アンビエントパススルーモードは、システム30/32内のRSを調整すること、閉ループフィードバック制御システム40の感度Sを調整すること、又は図4に示す望ましい信号Rに周囲音を(部分的に)含めることによって実現され得る。一実施形態では、ANT10は(周囲の)ブザー音又は警告音を感知し得、自動的にアンビエントパススルーモードに入り得る。スマートフォン/腕時計などの個人用電子デバイスが、無線又はBTを介して、緊急通知又はAI(人工知能)によるデバイスのチューニングを実行することを可能にするように、追加の制御信号(複数可)が追加され得る。
【0055】
図6に示すように、局所POS又は小さいクワイエットゾーンを作り出すANT10は、あらゆる種類のイヤホン(例えば、61、62)及びヘッドセット(例えば、63、64)に適用され得る。なお、オーディオ用途における従来のANC技術とは異なり、音の抑制/キャンセルはオープンフィールド(open field)で実行される。図5又は図6では、ほとんどの環境ノイズが、それら(環境ノイズ)が外耳道に入る機会を得る前にANT/APGによって発生された反音によって打ち消されるように、1つ又は複数のANT10が、耳の先端付近など、外耳道の入口付近に「仮想クワイエットゾーン」を作り出している。
【0056】
ウェアラブルサウンドデバイス上のANTの位置は限定されず、実際の要件に従って最適化され得ることに留意されたい。
【0057】
言い換えると、外耳道の内部に反音を生成する従来のANCとは異なり、ANT10は、外耳道の外部に位置する自身のスピーカ102を介して反音を発生させ、ANT10は、オープンフィールドで音の抑制/キャンセルを実行する。SPD102は外耳道の外部に配置されるので、SPD102によって発生された反音は、周囲音波を打ち消し、これは、理想的には外耳道に入る正味0の(net-0)周囲ノイズの残留音波をもたらす。すなわち、反音を発生することによって局所的な無音のポケットを作り出すことによって、周囲ノイズは、それら(周囲ノイズ)がイヤホンの耳の先端に到達する前に打ち消され、したがって、ノイズが外耳道に入った後にノイズをキャンセルする必要性を回避する。さらに、ANT10は、周囲音が受動的な絶縁を経て、外耳道内の共振によって混乱され、汚染される前に、オープンフィールドで動作する。
【0058】
図1を再び参照すると、コントローラ16は、オプションでフィルタ167を有し得るが、これに限定されない。一実施形態では、フィルタ167は、ANT10によって生成される反音の有効周波数範囲をカスタマイズするように、制御信号CSの周波数応答を調整するように構成され得る。例えば、フィルタ167は、反音に対してローパスフィルタリング又は帯域阻止(ノッチフィルタリング)を課し得る。
【0059】
一実施形態では、コントローラ16は、図7に示すようにSSD708に結合され得る。図7では、ANT10が耳に装着/配置されるので、SSD708は、ユーザの口に面するように装着され得、これは音声をキャプチャ/感知するために使用され得る。図3のVS1(ここで、図3のVS2は、一例として、再生されることになる音楽ファイルに対応する)に対応する/類似する、SSD708によって感知される音声信号VSは、SPD102が音声信号VSに対応する音声を生成し得るように、コントローラ16に送出され得、それは、聞かれることになるアンビエントパススルー音/信号(の一部)であり得る。
【0060】
SSD101及びSPD102の配置は限定されない。一実施形態では、図8に示すように、ANT10は、SPD102が外耳道の外側に配置され、一方、SSD101が外耳道の内側に配置されるように、ウェアラブルサウンドデバイス(例えば、OWS(Open Wearable Stereo(オープンウェアラブルステレオ))イヤホン)上/内に配置され得る。この場合、ユーザは、(周囲の)音響的に透明で閉塞のない体験をし得、これはユーザエクスペリエンスを向上させる。
【0061】
外耳道の直径(典型的には5~6mm)は、可聴音の波長よりもはるかに小さいので、外耳道に伝播した後の可聴音波は、それが外耳道に入る前に球状の音波であっても、平面波として見られ得る(又は強制的にされ得る)。SSD101を外耳道内に配置することは、SPD102によって生成される(球状の)音波の1/r伝播減衰の効果をバイパス/低減し得、音/ノイズを正確にキャプチャすることができる。
【0062】
一実施形態では、SSD101(の検知孔)は、(外耳から外耳道移行面までの)距離を外耳道内に有するように、外耳道内に配置され得る。この距離は、(1/3)×φ外耳道~1×φ外耳道であり、φ外耳道は外耳道の直径を表す。φ外耳道を12mmと仮定すると、一実施形態では、SSD101(の検知孔)は外耳道内に(実質的に)2~6mmにあり得る。
【0063】
ANT10がOWSイヤホンなどのウェアラブルサウンドデバイス内に配置されるとき、SPD/APG102は、ノイズなどの不要なサウンドを抑制するノイズ抑制動作だけでなく、音楽などの所望のサウンドを生成する音生成動作も実行し得る。OWSイヤホン内に埋め込まれたANT10は、ANT10又はSPD102のノイズ抑制動作がオフにされるとき(サウンド生成動作は機能したままであり得るが)、ほぼ「全開」又は「完全なアンビエントパススルー」モードを達成することに留意されたい。言い換えれば、究極のアンビエントパススルーモードは、ノイズ抑制動作を単に一時停止することによって達成され得る。
【0064】
ノイズ抑制の有効帯域幅は、dASとして示されるSSD101とSPD102との間の距離に関連する。有効帯域幅が大きいほど、必要な距離dASは小さくなる。一実施形態では、距離dASは、抑制されることが望まれるノイズの最大周波数に対応する波長未満であり得る。例えば、距離dASは、20KHz(である抑制されることが望まれるノイズの最大周波数)に対応する波長である5.77mm未満であり得るが、これに限定されない。抑制されることが望まれるノイズの最大周波数は、7KHz(人間の音声帯域の大部分をカバーする)であってもよく、dASは50mm未満であってもよく、又は16KHz(35歳を超えるほとんどの成人の可聴周波数の上限をカバーする)であってもよく、dASは22mm未満であってもよい。
【0065】
周波数f(有効帯域幅に関連する)は
【数1】
のように表すことができ、ここで、φ101はSSD101によってもたらされる位相遅れを表し、φPMは安定性を維持する位相マージンを表し、τ102はSPD/APG102によって発生されるパルス間隔/サイクルを表し(すなわち、τ102は1/fpulseであり得、ここで、fpulseはパルスレート、例えば、200KHzである)、τASはSPD102からSSD101への伝搬遅延を表し、ここでτAS=dAS/c0であり、c0は音速である。一実施形態では、距離dASは、抑制されることが望まれるノイズの最大周波数に対応する半波長又は第3波長未満であり得、ここでφ101=10°及びφPM=50°は第3波長を導出するために仮定され得る。
【0066】
図4を再び参照すると、SSD101、SPD102及びコントローラ16がフィードバック制御ループ40を形成する場合、フィードバック制御ループ40は、ループゲインL(L=HP・K・HSとして表され得る)又は開ループゲインgOL(gOL=HP・Kとして表され得る)を有する。一般に、(関心帯域又はHS→1のスペクトル帯域内で)残留誤差は、ループゲインが増加するにつれて減少する。
【0067】
一実施形態では、ループゲインgOL/Lは、ノイズの多い環境では高く、静かな環境では低く(自動的に)調整され得る。
【0068】
すなわち、ループゲインgOL/Lは、周囲/環境SPLが大きいか又は増加するとき増加され得、その逆も同様である。周囲/環境SPLは、SSDによって測定され得、このssdはSSD101であってもなくてもよい。
【0069】
言い換えれば、コントローラ16は、適応ゲイン制御(AGC)動作を実行し得る。コントローラ16は、環境SPLを受信し得、環境SPLに従ってフィードバック制御ループ40に対応するループゲインgOL/Lを調整し得る。一実施形態では、環境SPLが大きいほど、ループゲインgOL/Lは高く調整される。あるいは、等価的に、コントローラ16は、環境SPLがより低い場合に、ループゲインgOL/Lを低くし得る。
【0070】
AGC調整スキームは、図9(a)に示され得る。図9(a)に示すように、環境SPLがしきい値SPLL-thとSPLH-thの間にあるとき、環境SPLが増加するにつれて、ループゲインが増加され得る。ループゲインは、環境SPLがSPLH-thより大きいときにgmaxに設定され得、環境SPLがSPLL-thより小さいときにgminに設定され得る。一実施形態では、環境SPLがあるSPLしきい値(例えば、SPLL-th)より小さいときに、音抑制をオフにしてもよい。言い換えれば、電力消費を低減/最小化するために、コントローラ16内の一部の増幅回路(特にループゲインgOL/Lを含むもの)は、又はSPD102さえも、オフにされ得る。
【0071】
一実施形態では、SPLL-thは、耳のささやき声のSPLレベルに対応する30dBより3dB高い33dBであり得;SPLH-thは、ソフトな会話のSPLレベルに対応する50dBより2dB高い52dBであり得るが、これに限定されない。
【0072】
さらに、ループゲインを調整するAGCの重要な目標は、残留ノイズレベルを、意図された用途に適した閾値以下に維持することである。例えば、閾値は、睡眠については35~45dB、覚醒活動については50~55dB、適切な周囲認識については60~65dBであり得るが、これらに限定されない。
【0073】
さらに、コントローラ16は、フィードバック制御ループ40内にレイテンシ(latency)tadjを課し得る。調整可能なレイテンシtadjは、AGC調整の応答時間を含み得る。一般に、コントローラ16は、AGCが雑音の多い環境ではより速く(小さなtadjで)応答し、静かな環境ではより遅く(大きなtadjで)応答するようにレイテンシtadjを調整し得る。言い換えれば、コントローラ16は、環境SPLに従ってレイテンシtadjを調整し得る。一実施形態では、環境SPLが大きいほど、レイテンシtadjはより低く調整される。
【0074】
さらに、一実施形態では、AGC調整は、周囲の環境がより静かである(になる)シナリオと比較して、周囲の環境がより騒がしい又はより騒がしくなるときにより速く応答し得る。
【0075】
例えば、図9(b)は、本出願の一実施形態によるレイテンシ調整スキームを示す。コントローラ16は、(SSD101によって感知され得る)環境SPLがSPLL,1より大きくSPLH,1より小さいときに時間レイテンシtadjを減少させるように制御し得、(SSD101によって感知され得る)環境SPLがSPLH,2より小さくSPLL,2より大きいときに時間レイテンシtadjを増加させるように制御し得る。一実施形態では、レイテンシ調整のオプションのヒステリシスが含まれ得、これは、SPLH,2>SPLH,1かつSPLL,2>SPLL,1を意味する。ヒステリシスは、ループゲイン調整の上下振動を防止することができ、これは、ANT10のループ動作を安定させ得る。一実施形態では、(SPLL,1,SPLL,2,SPLH,1,SPLH,2)は、(27dB、33dB、52dB、65dB)であり得、これは、実用的な要件に従って設計され得るが、これらに限定されない。一実施形態では、図9の値は、gminについて1~10dB、gmaxについて30~600dB、tminについて10~100μS(マイクロ秒)及びtmaxについて1~200mS(ミリ秒)として選択され得るが、これらに限定されない。
【0076】
ここでSPLは、(一例として)環境の音響量の測定値(measurement)を指すものであり、これに限定されるものではないことに留意されたい。任意の種類の音響測定値が上述したAGC及びレイテンシ調整に適用されることができる。
【0077】
さらに、クワイエットゾーン又はPOSを確立する概念が、一定のパターン又は規則性の下で配置され得る複数/多数の音抑制装置を介して、音響絶縁又は音響反射を達成するために拡張され得る。
【0078】
図10は、実施形態による音抑制システム90a及び90bの概略図を示す。音抑制システム90a/90bは、図10に影付きの円で示され、10で示される複数の音抑制装置(例えば、SSD及びSPDを有する音抑制装置10)を有する。複数の音抑制装置は、システム90aのように一次元アレイとして配置されてもよいし、システム90bのように二次元アレイとして配置されてもよいが、これらに限定されない。音抑制装置は、図10に示すように、dNNのANT間の間隔を有し得る。一実施形態では、音抑制装置は、特定のパターン、例えば、システム90bのように、ANT間の間隔dNNを持つ正三角形のパターンで配置され得るが、これに限定されない。
【0079】
複数の音抑制装置はまた、円形アレイ(例えば、等間隔又は不等間隔で配置され得るMRI(磁気共鳴イメージング)装置又はドローンなどのノイズが激しい機械に配置すること)として、又は三次元アレイとして配置され得る。音抑制装置の配置が、望ましくない音/ノイズを効果的に抑制できる限り、それは本発明の範囲内である。
【0080】
一実施形態では、(音抑制システム90b内の)複数の音抑制装置は、メッシュ状のネットワークを形成するようにm紐/コード/ロープなどの何らかの接続構造を介して物理的に接続され得る。メッシュ状の音抑制システムは、カーテン又はスクリーンの形態であり得、これは、光及び/又は気流に対して高い透過性である、例えば、光及び/又は気流に対して60%を超える透過性である。本出願では、光及び/又は気流に対して透過性であるということは、光及び/又は気流の両方に対して50%を超える透過性であることを意味する。
【0081】
音抑制システム内の音抑制装置のSPDは、上述のAPGデバイスに限定されないことに留意されたい。音抑制装置が、特定のパターン、例えば、アレイ又はメッシュに配置され、ある程度の音響絶縁/反射を提供する限り、それは本出願の範囲内である。好ましくは、音抑制装置のSPDは、コンパクトなサイズを有し、実質的なSPLで完全な可聴帯域幅にわたって音を生成することができることが提案され、これは音抑制装置/システムの構成に適している。さらに、SPDを生成し、一貫した位相を運ぶことは、ノイズ抑制にも有益である。
【0082】
図11は、音響(絶縁)スクリーンに適用される音抑制システムの実施形態/用途91の概略図を示す。実施形態/用途91では、音抑制システム90bは、音響(絶縁)スクリーン911及び915を形成するように構成される。音響スクリーン915は、より低い密度の音抑制装置を有し得る(これは、音響スクリーン915のANT間の間隔dNNが音響スクリーン911のANT間の間隔dNNよりも大きいことを意味する)。
【0083】
音響(絶縁)スクリーン911/915は、スクリーン911/915の一方の側の音を抑制するように構成され、スクリーン911/915の一方の側の音が他方に伝播するのを防ぐことを意図している。すなわち、スクリーン911/915は、スクリーン911/915の第1の側(例えば、右側)の第1の部分空間内の第1の音源からの第1の音を減衰/抑制するように構成される。第1の音は、スクリーン911/915を通って第2の側の第2の部分空間に向かって伝播し得る。第1の音が、光及び/又は空気流に対して透過性であるスクリーン911/915を通過した後、抑制された第1の音が、スクリーン911/915の第2の側(例えば、左側)の第2の部分空間に向かって伝播し、抑制された第1の音の音響の大きさ(acoustic magnitude)マグニチュードは、第1の音の音響の大きさよりもかなり小さい(例えば、10dB低い、又は少なくとも3dB低い)。ここで、音響の大きさは、SPL、音圧、音響インテンシティなど、又はアコースティックサウンド(acoustic sound)の強さを表す音響測定値を指し得る。
【0084】
構成体91には、カーテン912及び913がさらにオプションで含まれ得る。布又は布状の材料で作られ得るカーテン912及び913は、スクリーン915の第1及び第2の側に配置され得、音抑制装置の密度の強度及びスクリーン915の製造コストを低減することができるように、より高い周波数の音波吸収を提供及び支援し得る。また、上部スクリーン911は、拡張された(高い)周波数範囲の音響絶縁のために、より高い密度を有し得る。
【0085】
構成体91は、医療用途、例えば、病棟又は診療所において、プライバシーが必要な場合に部屋の空間を分割するために使用され得る。医療用途において重要である清潔及び衛生上の理由から交換可能であることに加えて、布カーテン912及び913はまた、音の減衰の役割を果たし得る。小さなチャンバ内の吸音材の存在は、快適性に寄与するであろう。
【0086】
図12は、音響的に絶縁された空間の形成に適用され得る、音抑制システムの一実施形態/適用92の概略図を示す。音抑制システム(複数可)90bは、音響絶縁スクリーン920内に埋め込まれ得る。携帯可能であり得る音響絶縁スクリーン920は、空間/部屋922を形成/取り囲む。空間/部屋922は、音響的に絶縁され得る。
【0087】
空間/部屋922は、プライバシーのために設立され得、これは、例えば、オフィスの会議室として使用され得る、又は、家族/友人との(裏庭の)パーティーを主催するために使用され得る。又は、小さな面積を占有するが、大きなノイズを発生するいくつかの建設(例えば、アパートの床タイルの部分的な改修)が、(遊牧民の)空間/部屋922内で行われることがあり得る。
【0088】
本出願における音響絶縁空間又はプライベート空間は、内部の会話(又は空間内の他の種類の音)を中に閉じ込め、内部の会話(又は他の種類の音)が外部に伝播するのを実質的に遮断する空間を指し得る。本出願における音響絶縁空間又はプライベート空間はまた、外部のノイズ/音を入らせない空間を指し得、これは、外部のノイズ/音が内部に伝播するのを実質的に遮断する
【0089】
図13は、本発明の一実施形態によるノイズ抑制システムの適用93としてのオフィスのシナリオの概略図を示す。音抑制システム(複数可)90bは、空気流及び/又は光に対して透過性であり得る音響絶縁スクリーン930L、930R、930Fの内部に埋め込まれ得る。音響絶縁スクリーン930L、930R、930Fは、キュービクルのパーティションとして使用され得る。一例として、キュービクル932を取り上げる。キュービクル932は、左側のスクリーン930L、右側のスクリーン930R及び前方のスクリーン930Fによって囲まれている。気流に対して高い透過性であるため、オフィスの周囲の雰囲気は、依然としてオープンオフィスの雰囲気であり、アイディアの自由な交換が妨げられることなく行われることができる。しかしながら、採用されたスクリーン930L、930R、930Fは、集中及び集中することが必要なときはいつでも、その場でプライベートなワークスペースを作成することを可能にする。
【0090】
図14は、本発明の一実施形態による音抑制装置/システムの適用94としての航空機キャビンのシナリオの概略図を示す。音抑制装置940は、航空機キャビンの側壁に配置され得る。航空機キャビン内のノイズスペクトルは、8.6m(メートル)~5.8mの波長λに対応する40~60Hzの間で発生するピーク(複数可)を有し得、半波長λ/2は、例えば3.63mのキャビン幅に一致する2.9m~4.3mの間にある。換言すれば、航空機キャビンの側壁(複数可)に音抑制装置を配置することは、乗客の飛行体験を向上させるキャビン共鳴ノイズを効果的にゼロにし得る又は低減し得る。
【0091】
図15は、本発明の一実施形態による音抑制システムの適用95としての建設現場のシナリオの概略図を示す。音抑制システム(複数可)90bは、音響絶縁スクリーン950の内部に埋め込まれ得る。建物内で発生する建設ノイズは、音響絶縁スクリーン950によって抑制/絶縁され、それによって、音響絶縁スクリーンがない場合に比べて、建設現場の近隣はむしろ静かになる。
【0092】
図16及び17は、本発明の実施形態による音抑制システムの適用96及び97としての居住空間のシナリオの概略図を示す。居住空間96の室内空間967の場合、音抑制システムは、乾式壁の間(例えば、建造物962/964)、天井の下(例えば、建造物961)、又は床の内部(例えば、建造物965)に設置され得る。パティオ968の場合、音抑制システムは、音響スクリーンとして形成され、位置/窓963又は位置/入口966に配置され得、これは、外部のノイズを中に入れず、居住者の私的な会話を外に出さない。居住空間97の場合、音抑制システムは、スクリーン(例えば、971,972,973,976、外部ノイズを遮断するための)又はカーテン(例えば、974,975、機能的空間を分割するための)の形態であり得る。
【0093】
さらに、音抑制システム内の音抑制装置(複数可)は、特に音抑制システムがかなりの電力を消費する場合に、上記のループゲイン及び/又はレイテンシ調整を実行し得る。例えば、80m2(平方メートル)の面積、5KHzまでの有効ノイズ抑制帯域幅(dNN=4cm及び1,440ANT/m2の密度を必要とし得る)のパティオへの音響絶縁スクリーンの適用に対して、各ANTが0.87mW(ミリワット)を消費すると仮定すると、総電力消費量は100W(ワット)となる。したがって、総消費電力に電力を供給するために、上述したループゲイン調整を行うことが望ましい場合がある。
【0094】
図18は、本発明の一実施形態による音抑制装置の適用98としての座席のシナリオの概略図を示す。音抑制装置980は、車両、列車、バス、飛行機、フェリーなどの輸送機関の座席に配置され得る。
【0095】
図19は、本発明の一実施形態による音抑制システムの適用99としての防音壁のシナリオの概略図を示す。音抑制システム90bは、防音壁991上に配置され得る。物理的妨害物(の左側)に能動的な音源が存在せず、回折効果が物理的妨害物のエッジに沿って生じる、物理的妨害物(physical blockage)であり得る従来の防音壁とは異なり、防音壁991は、能動的な反音源であり、回折効果を消滅させ得る音抑制装置を有する。
【0096】
エッジ回折は、防音壁が一般的に非常に高くなければならない主な理由であり得、防音壁は一般に、高速道路のノイズ抑制においてはわずかにしか効果がなく、空港や鉄道のノイズ抑制においては一般的に使用されないことに留意されたい。
【0097】
エッジ回折がないことの利点は、図18に示されており、経路993は、エッジ回折がある場合に音波が伝搬する経路を表し、経路992は、エッジ回折がない場合に音波が伝搬する経路を表す。防音壁991が音抑制装置を有する場合、回折経路993に沿った音波は弱い。それは、防音壁の必要な高さを減少させるだけでなく、(居住建物に到達する)有効ノイズも減少させる。
【0098】
一般に、複数の音抑制装置/システムは、軍用戦車、MRI(磁気共鳴画像)装置又はドローンなどのノイズの激しい機械のそば(by(横))を含む、ノイズの激しい環境、例えば、建設現場、新幹線の駅、空港の滑走路、歩道、又は道路、航空機の客室、空母のデッキのそば(横)に配置される。
【0099】
要約すると、コンパクトなサイズを有し、完全な可聴帯域幅にわたって音を生成することができる音生成デバイスは、ノイズ/音抑制(装置)に適している。特定のパターンで配置された複数の音抑制装置は、音抑制システム又は音響絶縁スクリーンを形成し得、音響絶縁スクリーンは、音響絶縁を提供し得るが、光及び/又は空気流に対して透過性であり得、プライバシー又は人間の生活の質を高める。
【0100】
当業者は、本発明の教示を維持しながら、装置及び方法の多数の修正及び変更を行うことができることを容易に理解するであろう。したがって、上記開示は、添付の特許請求の範囲の事項及び範囲によってのみ限定されるものと解釈されるべきである。
図1
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【外国語明細書】