(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137864
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】大型ターボ過給式2ストロークユニフロー掃気内燃機関のシリンダ内に燃料を噴射するための燃料弁、及びそのような燃料弁を備えた機関
(51)【国際特許分類】
F02M 61/18 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
F02M61/18 350C
F02M61/18 350D
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024044347
(22)【出願日】2024-03-21
(31)【優先権主張番号】PA202370148
(32)【優先日】2023-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(71)【出願人】
【識別番号】597061332
【氏名又は名称】エムエーエヌ・エナジー・ソリューションズ・フィリアル・アフ・エムエーエヌ・エナジー・ソリューションズ・エスイー・ティスクランド
(74)【代理人】
【識別番号】100127188
【弁理士】
【氏名又は名称】川守田 光紀
(72)【発明者】
【氏名】ヘーイン ピーダ
【テーマコード(参考)】
3G066
【Fターム(参考)】
3G066AA07
3G066AA08
3G066AA11
3G066AA15
3G066AA16
3G066AB02
3G066BA31
3G066CC01
3G066CC10
3G066CC20
3G066CC21
(57)【要約】 (修正有)
【課題】大型ターボ過給式2ストロークユニフロー掃気内燃機関用の燃料噴射弁を提供する。
【解決手段】軸X、近位端と遠位端を有する燃料弁ハウジングと、閉位置で弁座に着座し開位置で離座する弁針と、遠位端に配置されたノズル40とを備え、ノズルのボディは、軸Xに沿って近位端の基部から閉じた遠位端に至る領域を有し、基部と遠位端との間の縦長の部分43と、燃料弁ハウジングから液体燃料を受け入れるための入口と、夫々異なる径方向角度でノズルボディの外面に開口する複数のノズル孔45と、入口からノズルボディ内へと長手方向に延びる単一の主孔とを備え、ノズルは、自身及び主孔に対して斜めに配置された個別供給路によって主孔に接続される。弁針は、柄部に支持された円筒形端部を有する遠位部分を有する。この円筒形端部は、弁針が閉位置にあるときに前記供給路を主孔から流体的に切り離すように、主孔に摺動自在に嵌まっている。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロスヘッド式大型2ストロークターボ過給式ユニフロー掃気式内燃機関に液体燃料を噴射するための燃料弁であって、
長手方向軸、近位端、及び遠位端を有する縦長の燃料弁ハウジングと;
弁座上に着座する閉位置と、前記弁座から離座する開位置とを有する、軸方向に変位可能な弁針と;
前記縦長の燃料弁ハウジングの遠位端に配置されたノズルと;
を備え、前記ノズルはノズルボディを備え、前記ノズルボディは、前記長手方向軸に沿って前記ノズルボディの近位端の基部から前記ノズルボディの閉じた遠位端に至る領域を有し、前記基部は前記燃料弁ハウジングに取り付けられており、
前記ノズルボディは、
前記基部と前記閉じた遠位端との間の縦長の部分と;
前記燃料弁ハウジングから液体燃料を受け入れるための入口であって前記基部に開口する入口と;
それぞれ異なる径方向角度で前記ノズルボディの外面に開口する複数の真っ直ぐなノズル孔と;
前記入口から前記ノズルボディ内へと長手方向に延びる単一の真っ直ぐな主孔と;
を備え、
前記複数の真っ直ぐなノズル孔のうちの少なくとも3つは、自身及び前記真っ直ぐな主孔に対して斜めに配置された個別の供給路によって前記真っ直ぐな主孔に接続されており、
前記弁針は、柄部に支持された円筒形の端部を有する遠位部分を有し、前記円筒形の端部は、前記弁針が前記閉位置にあるときに前記個別の供給路を前記主孔から流体的に切り離すように前記主孔に摺動自在にぴったりと嵌まっている、
燃料弁。
【請求項2】
前記円筒形の端部は、前記弁針が開位置にあるとき、前記個別の供給路を前記真っ直ぐな主孔に流体的に接続する、請求項1に記載の燃料弁。
【請求項3】
前記円筒形の端部は、前記弁針が閉位置にあるとき、前記個別の供給路の開口部であって前記真っ直ぐな主孔への開口部を覆う、請求項1に記載の燃料弁。
【請求項4】
前記弁針が開位置にあるとき、前記円筒形の端部は、前記個別の供給路の開口部であって前記真っ直ぐな主孔への開口部を覆わない、請求項2に記載の燃料弁。
【請求項5】
前記個別の供給路は、前記入口から所定の軸方向距離で前記主孔に開口し、前記円筒状の端部は、前記弁針の閉位置において、前記所定の軸方向距離を越えた位置に達する、請求項1に記載の燃料弁。
【請求項6】
前記弁針は、前記縦長の燃料弁ハウジングの長手方向ボア内に摺動可能に受容され、前記弁針は、前記閉位置において弁座に着座し、前記開位置において前記弁座から離座する、請求項1に記載の燃料弁。
【請求項7】
前記縦長の燃料弁ハウジングに、液体燃料源に接続するための燃料入口ポートを備えている、請求項1に記載の燃料弁。
【請求項8】
前記複数の真っ直ぐなノズル孔は、全て等しい断面積又は直径を有する、請求項1に記載の燃料弁。
【請求項9】
前記真っ直ぐな主孔はブッシュに形成され、前記ブッシュは前記ノズルボディのボアにきつく嵌められる、請求項1に記載の燃料弁。
【請求項10】
前記円筒形の端部は、流体通路を形成するために中空である、請求項1に記載の燃料弁。
【請求項11】
前記複数の真っ直ぐなノズル孔はいずれも、前記円筒形の端部の表面に開口する、請求項1に記載の燃料弁。
【請求項12】
前記円筒形の端部の表面と、前記ノズルボディの平坦な遠位端面との間に丸みを帯びた移行面を有する、請求項1に記載の燃料弁。
【請求項13】
前記複数の真っ直ぐなノズル孔はいずれも、前記円筒形の端部の表面又は前記移行面に開口する、請求項12に記載の燃料弁。
【請求項14】
前記複数の真っ直ぐなノズル孔は、それぞれ、前記長手方向軸に対して鈍角で配置されるノズル軸を有する、請求項1に記載の燃料弁。
【請求項15】
前記長手方向軸に対する、前記複数の真っ直ぐなノズル孔のそれぞれの前記ノズル軸の径方向成分は、120度未満の円弧を有する扇型セクターに亘って分散配置される、請求項14に記載の燃料弁。
【請求項16】
請求項1から15のいずれかに記載の燃料弁を備えるクロスヘッド式大型2ストロークターボ過給式ユニフロー掃気内燃機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願により開示される事項(以下、本開示という)は、大型ターボ過給式2ストロークユニフロー掃気内燃機関のシリンダ内に液体燃料を噴射する燃料弁に関する。
【背景】
【0002】
大型ターボ過給式2ストロークユニフロー掃気クロスヘッド内燃機関は、通常、コンテナ船などの大型外航船や発電所の原動機として使用される。
【0003】
このタイプの機関のシリンダには、シリンダカバー即ちシリンダの上部の中央に排気弁が1つだけ設けられ、シリンダライナの下部にはピストン制御の掃気ポートがリング状に設けられている。シリンダ内のガス輸送方向は常に下から上に向かっており、それゆえユニフロー掃気という呼称がある。掃気ポートは斜めに配置されている。これは、燃焼室内のガスに渦巻きを発生させるためである。
【0004】
シリンダカバーには、中央に配置された排気弁の周りに、2つ又は3つの燃料弁が配置されている。燃料弁のノズルは燃焼室内に突出している。燃料弁は、シリンダカバーの周辺部に配置される。つまり中心部には配置されない。ノズルのノズル孔は、燃焼室内へと、渦(スワール)の方向を向くように配されており、シリンダ壁から遠ざかる方向に向けられる。時には、ノズルの1つのノズル孔が燃焼室内の渦に逆らうように向けられることもある。
【0005】
ノズルは燃料弁の前端部(遠位端)に取り付けられている。燃料弁は、縦長のハウジングを有する。このハウジングはシリンダカバーを貫通しており、後端部(近位端)がシリンダカバーの上面から突出し、前端部(遠位端)のノズルは燃焼室内に突出している。
【0006】
クロスヘッド式大型2ストロークディーゼル機関用の公知のノズルは、典型的には縦長のボディを有する。このノズルボディは、まっすぐな主孔を有する円筒部を有する。この主孔は、ノズルボディの近位端にあるノズルの基端から、ノズルボディの先端部(遠位端)の近傍に位置するノズル孔へと通じる。先端部又は遠位端は丸くても平らでもよいが、閉じている。これは、(ピストンが上死点にあるとき、すなわち圧縮着火機関の燃料噴射の瞬間、ピストンの上面がノズルの先端に非常に近いため、)ノズル孔がピストンに対して下向きであってはならないからである。このため、ノズル孔はノズル/燃料弁の主軸に対して主に横方向に向けられており、典型的には機関シリンダの主軸に対してほぼ直角である。典型的には、各ノズルは3~7個のノズル孔を備えている。これらはすべて主孔に接続されている。
【0007】
典型的には、液体燃料を噴射するための公知の燃料弁は、ノズルへの燃料の流れを制御するために、円錐形の弁座と、これに協働する軸方向に変位可能な弁針を備えている。弁針の前方部分は、主孔内に隙間なく受容される遠位部円筒からなり、弁針が閉位置にあるときにノズル孔を閉鎖するためのスライド弁として作用する。それによって、いわゆるサックボリューム、つまり、ノズル内の主孔によって形成される空間内の燃料の残留量(residual volume,RV)を著しく減少させる。このようなスライド弁構造がなければ、主孔内(及びノズル孔内)の残留燃料量は、燃料噴射終了後に燃焼室内に滴下し、燃料消費、信頼性、及び排出ガスに悪影響を及ぼす。
【0008】
ノズルボディは、燃焼室内に突出しているため、燃焼室の高温ガスにさらされ、ノズルボディの一部は最高約400℃の比較的高い温度に達する。重油で運転される機関の場合、流入する燃料の温度は約140℃である。つまり、ノズル孔を通ってノズルを出る主孔内の流入燃料は、ノズルボディの外面を囲むガスよりもかなり低い温度を有する。そのため、ノズルボディの材料はかなりの温度勾配にさらされ、ノズルの材料にストレスが発生する。
【0009】
従って、ノズルは、燃焼室内の高い運転温度のガスに曝されたときの材料の熱疲労と、噴射された燃料の強い冷却効果により、ノズル孔が位置するノズル領域、特にノズル孔とノズル孔の間に、クラックが発生する危険性がある。
【0010】
この問題は、単にノズル孔同士の間隔を長くして、ノズル孔間の材料を増やし、温度勾配を小さくするだけでは解決できない。なぜなら、ノズルの直径を大きくすることは、燃焼室からノズルに伝達される熱量を増加させる可能性が高いために、極めて望ましくないからである。また、シリンダカバーの周縁部には2つ又は3つの燃料弁が配置されており、ノズル孔の径方向の広がりが約110°の角度に制限されるため、ノズル孔の径方向の間隔を単純に大きくすることは不可能である。このことは、ノズル内にスライド弁がある場合に特に当てはまり、ノズル内の主孔がある直径を有することが要求され、その結果、ノズルボディの肉厚に制限が生じる。更に、ノズルボディ内にスライダを有する燃料弁では、ノズル孔が同時に燃料を噴射する場合、ノズルの基部から主孔まで実質的に同じ軸方向距離で開口することが要求される。
【0011】
US5765755Aは、燃料噴射装置用の噴射率整形ノズルアセンブリを開示している。このノズルアセンブリは、閉じたノズル弁要素と、噴射スピル回路を有する噴射率整形制御装置とを備え、前記噴射漏出回路は、燃焼室に噴射される燃料の流量に所定の時間変化を生成するために、噴射される燃料の一部を逃がす。スピル回路は、ノズル弁要素に一体的に形成されたスピル通路(逃がし路)を含む。噴射率整形制御装置は、スピル流量(逃がし流量)の急激な増加を生じさせるために、ノズル弁要素に形成されたスピル加速チャンバを有することができる。また、個々の噴射イベントの間に流出回路及び加速チャンバから燃料を除去するために、スピル回路パージ装置が設けられている。それによって次のスピルイベントの際に、妨げられることのない効果的なスピル燃料の流れを確保する。パージ装置は、過剰なパージガス流を回避しながら、噴射スピル回路からの十分な燃料除去を確実にするために、パージガスの流れを制限するための所定のサイズで形成されたパージ通路を含む。パージ通路は、ノズル弁要素とノズルハウジング壁との間に形成された環状のクリアランスギャップを有することができ、又は、ノズル弁要素の内側部分に形成されたオリフィス通路を有することができる。
【摘要】
【0012】
上記の点に鑑み、本発明の目的は、上記の問題点を克服するか、少なくとも軽減した、クロスヘッド式大型2ストロークユニフロー掃気内燃機関に液体燃料を噴射するための燃料弁を提供することにある。
【0013】
上述の課題やその他の課題が、独立請求項に記載の特徴により解決される。より具体的な実装形態は、従属請求項や明細書、図面から明らかになるだろう。
【0014】
第1の捉え方によれば、クロスヘッド式大型2ストロークターボ過給式ユニフロー掃気式内燃機関に液体燃料を噴射するための燃料弁が提供される。この燃料弁は、
長手方向軸、近位端、及び遠位端を有する縦長の燃料弁ハウジングと;
弁座上に着座する閉位置と、前記弁座から離座する開位置とを有する、軸方向に変位可能な弁針と;
前記縦長の燃料弁ハウジングの遠位端に配置されたノズルと;
を備え、前記ノズルはノズルボディを備え、前記ノズルボディは、前記長手方向軸に沿って前記ノズルボディの近位端の基部から前記ノズルボディの閉じた遠位端に至る領域を有し、前記基部は前記燃料弁ハウジングに取り付けられており、前記ノズルボディは、
前記基部と前記閉じた遠位端との間の縦長の(好ましくは円筒形の)部分と;
前記燃料弁ハウジングから液体燃料を受け入れるための入口であって前記基部に開口する入口と;
それぞれ異なる径方向角度で前記ノズルボディの外面に開口する複数の真っ直ぐなノズル孔と;
前記入口から前記ノズルボディ内へと長手方向に延びる単一の真っ直ぐな主孔と;
を備え、
前記複数の真っ直ぐなノズル孔の少なくとも2つは、それぞれ個別の供給路によって前記主孔に接続されており、前記個別の供給路は該個別の供給路が接続している前記ノズル孔及び前記主孔に対して斜めに配置されており、
前記弁針は、柄部に支持された円筒形の端部を有する遠位部分を有し、前記円筒形の端部は、前記弁針が前記閉位置にあるときに前記供給路を前記主孔から流体的に切り離すよう に、前記主孔に摺動自在にぴったりと嵌まっている。
【0015】
真っ直ぐなノズル孔及びノズル主孔に対して角度をなす個別供給路を設けることによって、真っ直ぐなノズル孔の主軸に対する角度及びノズルボディ材料におけるこれらノズル孔の位置を選択するための高い自由度が提供される。それによって、ノズルの全体的なサイズを大きくすることなく、特にノズルの円筒部の直径を大きくすることなく、熱係数及び熱ストレスに関連する亀裂の形成を低減するように、隣接するノズル孔間のノズルボディ材料をより多くするノズル孔の位置及び向きを選択することを可能にする。
【0016】
前記第1の捉え方の実装形態の一例において、前記個別の供給路は、該個別の供給路が前記主孔に接続する位置から見て、長手方向軸線に対して第1の角度で前記長手方向軸線から離れる方向に向けられ、その結果、前記ノズル孔の「基部」がより径方向外側に配置され、それによって、隣接する前記ノズル孔間の距離がより長くなり、従って、隣接する前記ノズル孔間のノズルボディ材料がより多くなる。この文脈では、「基部」は、前記真っ直ぐなノズル孔が前記個別の供給路に接続する箇所に位置する。
【0017】
前記第1の捉え方の実装形態の一例において、前記真っ直ぐなノズル孔は、該ノズル孔が前記個別の供給路に接続する位置から見て、長手方向軸線Xに対して第2の角度で前記長手方向軸線Xから離れる方向に向けられる。ただし前記第2の角度は前記第1の角度よりも大きい。
【0018】
前記第1の捉え方の実装形態の一例において、前記個別の供給路は真っ直ぐな孔であり、ノズル孔材料のストレスを低減するために、好ましくは丸みを帯びた、すなわち丸い端部を有する。
【0019】
前記第1の捉え方の実装形態の一例において、前記円筒形の端部は、前記弁針が開位置にあるとき、前記個別の供給路を前記真っ直ぐな主孔に流体的に接続する。
【0020】
前記第1の捉え方の実装形態の一例において、前記円筒形の端部は、前記弁針が閉位置にあるとき、前記個別の供給路の開口部であって前記真っ直ぐな主孔への開口部を覆う。
【0021】
前記第1の捉え方の実装形態の一例において、前記弁針が開位置にあるとき、前記円筒形の端部は、前記個別の供給路の開口部であって前記真っ直ぐな主孔への開口部を覆わない。
【0022】
前記第1の捉え方の実装形態の一例において、前記個別の供給路は、前記入口から所定の軸方向距離で前記主孔に開口し、前記円筒状の端部は、前記弁針の閉位置において、前記所定の軸方向距離を越えた位置に達する。
【0023】
前記第1の捉え方の実装形態の一例において、軸方向に変位可能な弁針は、縦長の弁ハウジングの長手方向ボア内に摺動可能に受容される。閉位置において、弁針は弁座に着座する。弁座は好ましくは円錐形の弁座である。開位置では弁針は弁座からリフトする。弁針は、好ましくは閉位置に向かって付勢される。好ましくは、弁針を囲み、弁座に開口する燃料チャンバが設けられる。
【0024】
前記第1の捉え方の実装形態の一例において、前記燃料弁は、前記縦長の燃料弁ハウジングに、液体燃料源に接続するための燃料入口ポートを備えている。
【0025】
前記第1の捉え方の実装形態の一例において、前記複数の真っ直ぐなノズル孔は、全て、実質的に等しい断面積又は直径を有し、また好ましくは実質的に等しい長さを有する。
【0026】
前記第1の捉え方の実装形態の一例において、前記複数の真っ直ぐなノズル孔は、全て等しい直径を有し、また好ましくは、前記個別の供給路は前記真っ直ぐなノズル孔の直径よりも大きい直径を有する。
【0027】
前記第1の捉え方の実装形態の一例において、前記真っ直ぐな主孔はブッシュに形成される。前記ブッシュはバルブボディのボアにきつく嵌められる。
【0028】
前記第1の捉え方の実装形態の一例において、前記円筒形の端部は、流体通路を形成するために中空である。前記流体通路は、好ましくは、前記柄部の外部に対して近位側に開口し、軸方向において遠位側に開口する。
【0029】
前記第1の捉え方の実装形態の一例において、前記複数の真っ直ぐなノズル孔は、それぞれ円筒面に開口している。
【0030】
前記第1の捉え方の実装形態の一例において、好ましくは丸みを帯びた移行面が、実質的に円筒形の表面と前記ノズルボディの平坦な遠位端面との間に設けられる。
【0031】
前記第1の捉え方の実装形態の一例において、前記複数の真っ直ぐなノズル孔は、円筒面及び/又は前記移行面に開口している。
【0032】
前記第1の捉え方の実装形態の一例において、前記複数の真っ直ぐなノズル孔は、それぞれノズル軸I,II,III,IV,Vを有し、各ノズル孔のノズル軸I,II,III,IV,Vは、主方向Xに対して鈍角αで配置される。
【0033】
前記第1の捉え方の実装形態の一例において、主軸Xに対するノズル軸I,II,III,IV,Vのそれぞれの径方向成分は、120度未満、好ましくは110度未満、更に好ましくは100度未満の円弧を有する扇型セクターにわたって分布しており、好ましくは実質的に均等に分布している。
【0034】
前記第1の捉え方の実装形態の一例において、前記複数の真っ直ぐなノズル孔のうちの少なくとも3つは、自身及び前記真っ直ぐな主孔に対して斜めに配置された前記個別供給路によって前記真っ直ぐな主孔に接続されている。
【0035】
第2の捉え方によれば、前記第1の捉え方による燃料弁又はその実装形態のいずれかを備えるクロスヘッド式大型2ストロークターボ過給式ユニフロー掃気内燃機関が提供される。
【0036】
本発明のこれら及びその他の側面は、以下に説明する実施例により更に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0037】
以下、図面に示される例示的な実施形態を参照しつつ、本願発明をより詳細に説明する。
【
図1】例示的な実施形態による大型2ストロークユニットフロー掃気ターボ機関の前面と一方の側面を示す斜視図である。
【
図2】
図1の機関の後面(aft end)と他方の側面を示す斜視図である。
【
図3】
図1の機関の吸気系と排気系を図式化したものである。
【
図4】
図1から
図3の機関に使用する燃料弁の一実施形態を示す断面図である。
【
図5】
図1から
図3の機関に使用する燃料弁の他の実施形態を示す断面図である。
【
図8】
図6のノズルの先端部の断面図であり、弁針の遠位端の円筒部が開位置にある場合の断面図である。
【
図9】これも
図6のノズルの先端部の断面図であるが、弁針の遠位端の円筒部は閉位置にある。
【
図11】
図6のノズル先端部の別の断面図である。この図において、弁針の遠位端の円筒部は閉位置にある。
【
図12】シリンダカバー内の
図5の燃料弁のノズルの位置を、ピストン側から見た図であり、ノズル孔の向きと、その結果生じる燃料の噴流を示している。
【詳細説明】
【0038】
以下の詳細説明では、例示的実施形態によって、燃料弁、及び燃料弁が使用される大型2ストローク機関について説明する。
図1から3は、ターボ過給式大型低速2ストローク内燃機関を描いている。この機関はクランクシャフト22及びクロスヘッド23を有する。
図3は、ターボ過給式大型低速2ストローク内燃機関を、その吸気システム及び排気システムと共に略図により表現したものである。この例示的実施形態において、機関は直列に6本のシリンダを有する。各シリンダはシリンダライナ1から形成される。ターボ過給式大型2ストローク内燃機関は通常、直列に配される5本から16本のシリンダを有する。これらのシリンダはエンジンフレーム24に担持される。またこのような機関は、例えば、外洋航行船の主機関や、発電所において発電機を動かすための固定型の機関として用いられることができる。機関の全出力は、例えば5000~110000kWの範囲でありうる。
【0039】
機関は2ストロークユニフロー式ディーゼル機関(圧縮着火型機関)であることができ、シリンダライナ1の下部領域には、ピストンにより制御されるポートであるリング状の掃気ポート19が設けられ、シリンダライナ1の頂部中央には排気弁が配される。このため、燃焼室内の流れは常に下から上に向かっており、機関はいわゆるユニフロー型である。掃気は、掃気受け2を通じて、各シリンダの掃気ポート19へと導かれる。なお、各シリンダは、それぞれシリンダライナ1により形成される。シリンダライナ1内の往復ピストン21が掃気を圧縮し、シリンダカバー26に配置された2つ又は3つの燃料弁30のノズルを通じて燃料が噴射される。燃焼が生じ、排気ガスが生成される。排気弁4が開くと、排気ガスは、シリンダ1に結びついた排気ダクト20を通って排気受け3へと流れ、更に第1の排気管18を通ってターボ過給器5のタービン6へと進む。そこから排気ガスは、第2の排気管7を通って排気される。タービン6は、シャフト8を介してコンプレッサ9を駆動する。コンプレッサ9には、空気入口10から空気が供給される。
【0040】
コンプレッサ9は、圧縮された掃気を、給気レシーバ2に繋がっている給気管11へと送り込む。掃気管11の掃気空気は、給気を冷却するためのインタークーラー12を通過する。冷却された給気は、電気モーター17により駆動される補助ブロワ16を通る。補助ブロワ16は、機関が低負荷又は部分負荷である場合に、給気レシーバ2へ向かう給気の流れを圧縮する。機関の負荷が高い場合は、ターボ過給器のコンプレッサ9が、十分に圧縮された掃気空気を供給することができるので、補助ブロワ16は、逆止弁15によってバイパスされる。
【0041】
シリンダはシリンダライナ1の中に形成される。シリンダライナ1はシリンダフレーム25によって担持される。シリンダフレーム25は期間フレーム24によって支持される。
【0042】
図4は、各シリンダのシリンダカバー26の貫通ボア内に装着される2つ又は3つの燃料弁30のうちの1つの実施形態を示す。燃料弁30は、後端31がシリンダカバー26の上側から突出し、ノズル40の遠位端(先端)が燃焼室内に僅かに突出した状態で、シリンダカバー26の貫通ボアに装着される。燃料弁30は、縦長の燃料弁ボディ32を有する。燃料弁ボディ32は、その遠位端33にノズルホルダを有する。ノズルホルダは、ノズル40を縦長の燃料弁ボディ32に結合する。液体燃料(例えば、エタノール、メタノール、ディーゼル、重油)は、燃料弁30によって、ノズル40を通じて燃焼室14に供給される。液体燃料は、制御された形で、またタイミングを計って、燃焼室14に供給される。
図4に示す燃料弁30は、縦長の外部ハウジング32を有する。ハウジング32はその近位端31にヘッドを有し、このヘッドによって、(公知の方法で、)燃料弁30をシリンダカバー26に取り付けてもよく、また燃料弁30を内燃機関の燃料ポンプ(図示せず)と接続してもよい。
【0043】
近位端31のヘッドは燃料入口83を有する。燃料入口83は、弁ボディ32を通って延びるダクトと流路が繋がっている。軸方向に変位可能な弁針35は、弁ハウジング32内に摺動自在に配置され、弁針35が(好ましくは円錐形)の弁座36から離座する開位置と、弁針35(の弁座36に対応する部分)が弁座36上に着座して弁を閉じる閉位置とを有する。弁針は、本実施形態では螺旋ばね83によって形成される弾性手段によって、閉位置に向かって弾性的に付勢されている。螺旋ばね83により付勢される力に抗する弁針35のリフトは、燃料弁30に供給される燃料の圧力によって引き起こされる。具体的には、当該圧力が、弁針35の表面に作用するか、弁針35を作動させるように弁針35に連結されたピストン又はプランジャに作用することによって、引き起こされる。弁針35を囲み、弁座36に開口する燃料室68が設けられる。燃料弁30は、その遠位端33にノズル40を担持している。ノズル40は、燃料弁30がシリンダカバー26に取り付けられているとき、機関シリンダライナ1の燃焼室14内に突出するように構成されている。
【0044】
本実施形態では、燃料弁は軸方向に可動な弁針35を備えている。弁針35は円錐形の部分を有し、この部分は、燃料弁30の縦長ハウジング32内の円錐形の座部36と協働する。
【0045】
図12は、ノズル40がシリンダカバー26の辺縁部にどのように配置されているかを図示している。
図12はまた、燃料噴射の方向も図示している。燃料噴射の方向は、ズル40のまっすぐなノズル孔45の軸I,II,III,IV,Vの方向に対応する。燃焼室内のガスの旋回方向は、湾曲した破線矢印66によって図示されている。
【0046】
図5は、別の実施形態による燃料弁30を示している。この実施形態は、燃料弁30に供給される燃料の圧力を増幅するブースターポンプを備えている点を除き、
図4の実施形態と同様である。ブースターポンプの主要構成部品は、ブースタープランジャ80である。本実施形態による燃料弁30の他の構成要素及びノズル40は、概念的に
図4の燃料弁と同一である。
【0047】
図6から
図11は、ノズル40と弁針35の遠位部をより詳細に示している。
【0048】
ノズル40は、近位端の基部42から、ノズル40の先端を形成する閉じた遠位端44へと至るノズルボディを有する。ノズルボディの円筒部43は、基部から遠位端44へと延びている。ノズルボディは、適切な材料、例えば当該技術分野で周知の適切な合金から作られる。
【0049】
入口48は、弁針35が開位置にあるときに燃料弁30から液体燃料を受け入れるために、基部42に開口している。単一の真っ直ぐな主孔50が、入口48から上記ノズルボディ内へと長手方向に延びている。本実施形態では、真っ直ぐな主孔50はブッシュ51内に形成されており、ブッシュ51は、例えば焼きばめによって弁ボディ内のボア51内にきつく嵌め込まれている。しかし、実施形態によっては、ノズルボディは単一の部品から作られ、ノズルはブッシュ51なしで構成される。
【0050】
閉じた遠位端(先端)44は、円形又は楕円形の外形を有する実質的に平面状の端面47を有する。端面47は、湾曲又は丸みを帯びた移行面46を介して円筒部分に接続される。
【0051】
ノズル40には、直線的な複数のノズル孔45が設けられている。ノズル40は、任意の望ましい数のノズル孔45を備える。好ましくはノズル孔45を3つから7つ備え、更に好ましくは3つから6つ備え、最も好ましくは5つ又は6つを備える。本実施形態によるノズル40は、5つのノズル孔45を備える。
【0052】
各ストレートノズル孔45は、それぞれ異なる径方向角度でノズルボディ43の外面に開口しており、燃料弁30が開いたときに、
図12に示すように、燃焼室内に扇型の燃料噴流を引き起こす。各ストレートノズル孔45は、それぞれ異なる径方向角度でノズルボディ43の外面に開口している。好ましくは、ノズル孔45は、円筒面43及び/又は)及び/又は移行面46に開口する。
【0053】
ノズル孔45はそれぞれノズル軸I,II,III,IV,Vを有する(
図10)。各ノズル孔45のノズル軸I,II,III,IV,Vは、主軸Xに対して鈍角αで配置されている。この鈍角αはノズル孔45ごとに異なってもよい。主軸Xに対する各ノズル軸I,II,III,IV,Vの径方向成分は、120度未満、好ましくは110度未満、更に好ましくは100度未満の円弧を有する扇型セクターにわたって分布する。主軸Xに対する各ノズル軸(I,II,III,IV,V)の径方向成分は、個々のノズル孔45間のノズルボディ材料の量を最大にするために、円形断面にわたって実質的に均等に分布している。
【0054】
基部42には、前記燃料弁30から燃料を受け入れるための入口ポート48が設けられている。主孔50は、前記入口ポート48からノズルボディ内へ、主軸Xに沿った方向で円筒部43内へと延び、ノズルボディの遠位端44に近い位置に達する。主孔50は、それぞれノズル孔45に繋がる複数の個別供給路49に接続する。各個別供給路49は、ストレートな主孔50の軸線と、当該個別供給路49が接続されるストレートノズル孔45の軸線とに対して角度をなして配置されている。
【0055】
主孔50の断面積は、供給路49の総断面積よりも実質的に大きい。供給路49の総断面積は、ノズル孔45の総断面積と実質的に等しい。
【0056】
各ノズル孔45を主孔50に接続するためにそれぞれ個別の供給路49を使用することにより、複数のノズル孔45を、それらの間のノズルボディの材料の量を最大にするような形で配置することができる。また、燃料噴流が所望の円セクターをカバーするように、ノズル孔45の軸I,II,III,IV,Vを配置することができる。
【0057】
実施形態によっては、入口ポート48は、主孔50の直径よりも大きい直径を有するボアによって形成される。あるいは、入口ポート48は、主孔と同じ直径を有することができる。
【0058】
ノズル40においてノズル孔45は広い範囲に分散しており、その結果、ノズル孔45間のノズル材料が多くなり、亀裂形成に対する耐性が向上する。ノズル40は、実質的に均一な燃料噴流を形成するために、各ノズル孔45に均一な入口条件を提供する。
【0059】
弁針35は、柄部38に担持された円筒状端部39を有する遠位部を備える。円筒状端部39は、まっすぐな主孔50に摺動自在にぴったりと嵌まっており、
図7,9及び11に示すように、弁針35が閉位置にあるときには、個別供給路49から主孔50への開口部を覆っている。このため弁針35が閉位置にあるときに、円筒状端部39は個別供給路49を主孔50から切り離す。従って、弁座36と主孔50の遠位端との間の空間内の燃料は、弁針35が閉位置にあるとき、燃焼室14内への漏出が防止される。
【0060】
円筒状端部39は、円筒状端部39の近位側から円筒状端部39の遠位側への燃料のための流体通路71を形成するために中空である。流体通路71は、柄部38の外部に対して近位側に開口し、軸方向において遠位側に開口する。
【0061】
円筒状端部39は、
図8に示すように、弁針35が開位置にあるときは、個別供給路49から主孔50への開口部を覆っていない。このため円筒状端部39は、弁針35が開位置にあるときに、各個別供給路49を主孔50に流体的に接続する。
【0062】
各個別供給路49は、前記入口48から所定の軸方向距離で前記主孔に開口する。円筒状端部39は、弁針35の閉位置において、前記所定の軸方向距離を越えた位置に達し、各個別供給路49への燃料の流れを妨げる。
【0063】
実施形態によっては、個別供給路49は、当該個別供給路49が主孔50に接続する位置から見て、長手方向軸線Xに対して第1の角度で長手方向軸線Xから離れる方向に向けられ、その結果、ノズル孔45の「基部」がより径方向外側に配置され、それによって、隣接するストレートノズル孔45間の距離がより長くなり、従って、隣接するストレートノズル孔45間のノズルボディ材料がより多くなる。この文脈では、「基部」の位置は、ストレートノズル孔45が個別供給路49に接続する位置である。
【0064】
実施形態によっては、ストレートノズル孔45は、当該ノズル孔45が個別供給路49に接続する位置から見て、長手方向軸線Xに対して第2の角度で長手方向軸線Xから離れる方向に向けられる。ここで前記第2の角度は前記第1の角度よりも大きい。
【0065】
前記第1の捉え方の実装形態の一例において、個別供給路49は真っ直ぐな孔であり、ノズル孔材料のストレスを低減するために、好ましくは丸みを帯びた、すなわち丸い端部(「基部」又はその近傍)を有する。
【0066】
様々な実施例を用いて、本発明を説明してきた。しかし、本願の明細書や図面、特許請求の範囲を検討すれば、当業者は、特許請求の範囲に記載される発明を実施するにおいて、説明された実施形態に加えて多くのバリエーションが存在することを理解し、また具現化することができるであろう。特許請求の範囲に記載される「備える」「有する」「含む」との語句は、記載されていない要素やステップが存在することを排除しない。特許請求の範囲において記載される要素の数が複数であると明示されていなくとも、当該要素が複数存在することを除外しない。いくつかの事項が別々の従属請求項に記載されていても、これらを組み合わせて実施することを排除するものではなく、組み合わせて実施して利益を得ることができる。特許請求の範囲で使用されている符号は発明の範囲を限定するものと解釈されてはならない。
【外国語明細書】