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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137865
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】光画像化可能な誘電体
(51)【国際特許分類】
   C08G 73/10 20060101AFI20240927BHJP
   C08L 79/08 20060101ALI20240927BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20240927BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240927BHJP
   C08K 5/00 20060101ALI20240927BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20240927BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20240927BHJP
   B32B 15/088 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
C08G73/10
C08L79/08
C08L101/00
C08K3/013
C08K5/00
H05K1/03 610N
H05K1/03 610R
C08J5/18 CFG
B32B15/088
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024044359
(22)【出願日】2024-03-21
(31)【優先権主張番号】18/187,072
(32)【優先日】2023-03-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
2.TEFLON
3.MATLAB
(71)【出願人】
【識別番号】591016862
【氏名又は名称】デュポン エレクトロニック マテリアルズ インターナショナル,エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】DUPONT ELECTRONIC MATERIALS INTERNATIONAL,LLC
(71)【出願人】
【識別番号】519372065
【氏名又は名称】デュポン エレクトロニクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ノラ サビナ ラドゥ
(72)【発明者】
【氏名】ジャクリン マーフィー
(72)【発明者】
【氏名】チャイ キット ンガイ
(72)【発明者】
【氏名】グレッグ エー ホステトラー
(72)【発明者】
【氏名】チン ミン ワン
(72)【発明者】
【氏名】タオ ホアン
(72)【発明者】
【氏名】アントン リー
(72)【発明者】
【氏名】ターニャ エヌ.シング-ラチフォード
【テーマコード(参考)】
4F071
4F100
4J002
4J043
【Fターム(参考)】
4F071AA60
4F071AA81
4F071AA88
4F071AE17
4F071AF15Y
4F071AF20Y
4F071AF21Y
4F071AF40Y
4F071AF62Y
4F071AH13
4F071BA02
4F071BA03
4F071BB02
4F071BC01
4F071BC12
4F100AA01A
4F100AB17A
4F100AB33A
4F100AH00B
4F100AK49B
4F100AK49C
4F100BA071
4F100CA02B
4F100CA23B
4F100CA23C
4F100CA30B
4F100CB00B
4F100EJ64B
4F100JB08B
4J002AA00X
4J002CD00X
4J002CD06X
4J002CM04W
4J002CP03Y
4J002CP05Y
4J002DE149
4J002DJ019
4J002DK009
4J002ED058
4J002EE027
4J002EE058
4J002EK007
4J002EK027
4J002EQ017
4J002EU026
4J002EU038
4J002EU196
4J002EV026
4J002EW019
4J002EW069
4J002EX009
4J002FD019
4J002FD146
4J002FD159
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4J002FD208
4J002FD310
4J002GQ00
4J002GQ05
4J002HA06
4J043PA01
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4J043PA06
4J043PA08
4J043PB23
4J043PC145
4J043QB26
4J043RA05
4J043RA34
4J043SA06
4J043SA07
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4J043SB02
4J043TA22
4J043TB02
4J043UA121
4J043UA122
4J043UA131
4J043UA132
4J043UA141
4J043UB122
4J043UB131
4J043UB401
4J043UB402
4J043VA021
4J043VA022
4J043VA062
4J043VA071
4J043XB08
4J043XB27
4J043XB35
4J043YA13
4J043YA23
4J043ZA06
4J043ZA21
4J043ZA42
4J043ZB47
4J043ZB50
(57)【要約】
【課題】 光画像化可能な誘電体を提供する。
【解決手段】 可溶性ポリイミド樹脂であって:(a)1種以上のテトラカルボン酸成分残基と:(b)1種以上のジアミン成分残基と;(c)1種以上の末端封止化合物と;を含み:この1種以上の末端封止化合物は、1つ以上の架橋基を含む、可溶性ポリイミド樹脂を提供する。この可溶性ポリイミド樹脂はエレクトロニクス用途に使用することができる。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可溶性ポリイミド樹脂であって:
(a)1種以上のテトラカルボン酸成分残基と;
(b)1種以上のジアミン成分残基と;
(c)1種以上の末端封止化合物と;
を含み、
前記1種以上の末端封止化合物は、1つ以上の架橋基を含む、可溶性ポリイミド樹脂。
【請求項2】
1つ以上の架橋基を含む前記1種以上の末端封止化合物は、脂肪族末端封止化合物、芳香族末端封止化合物、ヘテロ芳香族末端封止化合物、アルキニル末端封止化合物、アルケニル末端封止化合物、マレイミド末端封止化合物、ビニル末端封止化合物、アリル系末端封止化合物、シアン酸エステル末端封止化合物及びエステル末端封止化合物からなる群から選択される、請求項1に記載の可溶性ポリイミド樹脂。
【請求項3】
前記1つ以上の架橋基は、ラジカル架橋基、カチオン性架橋基、アニオン性架橋基、自身と架橋することによってホモポリマーを形成することができる架橋基、他の架橋基と架橋することによってヘテロポリマーを形成することができる架橋基及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項2に記載の可溶性ポリイミド樹脂。
【請求項4】
前記1つ以上の架橋基は、アリル基、ビニル基、アルキニル基、アルケニル基、(メタ)アクリレート基、ベンゾシクロブテン基、マレイミド基、アリル系基、シアン酸エステル基及びエステル基からなる群から選択される、請求項3に記載の可溶性ポリイミド樹脂。
【請求項5】
以下の2つ以上を含む液体組成物:
(a)1種以上の可溶性ポリイミド樹脂を1~90重量%;
(b)1種以上の架橋性化合物を2~75重量%:
(c)1種以上の光開始剤又は熱ラジカル開始剤を0~5重量%;
(d)1種以上の酸化触媒を0~5重量%;及び
(e)1種以上の溶媒を0~85重量%。
【請求項6】
前記液体組成物は、以下の1つ以上を更に含む、請求項5に記載の液体組成物:
(f)1種以上の追加の樹脂を10~60重量%;
(g)1種以上の表面レベリング剤を0~10重量%;
(h)1種以上の有機又は無機フィラーを0~70重量%;及び
(i)1種以上の接着促進剤を0~25重量%。
【請求項7】
表面処理された金属箔であって、前記表面処理された金属箔の少なくとも1つの面は:
(a)1種以上の可溶性ポリイミド樹脂と;
(b)1種以上の有機又は無機フィラーと;
(c)1種以上の接着促進剤と;
(d)1種以上の開始剤と;
を含む表面処理剤を含み、
前記1種以上の接着促進剤は、前記表面処理剤の1種以上の成分と共に架橋剤として機能することができる、表面処理された金属箔。
【請求項8】
請求項7に記載の表面処理された金属箔を備える構造体であって、前記構造体は:
金属表面を有する基板と、前記金属表面上に配された前記表面処理剤とを備え、前記表面処理剤は、硬化した前記バルクポリイミド樹脂及び前記無機フィラーを含み、前記無機フィラーの少なくとも一部は前記硬化したバルクポリマー材料に結合しており;誘電体層は:
前記金属表面に隣接する第1領域と;
前記第1領域に隣接し、前記金属表面の反対側にある第2領域と;を含み、前記第1領域は前記無機フィラーを相対的に少ない量で含み、前記第2領域は前記無機フィラーを相対的に多い量で含む、構造体。
【請求項9】
請求項1に記載の可溶性ポリイミド樹脂を含むドライフィルムであって、前記ドライフィルムは:
(a)前記可溶性ポリイミド樹脂を5重量%~50重量%と;
(b)1種以上の表面官能基化された架橋性有機又は無機フィラーを0重量%以上~50重量%と;
(c)光開始剤、熱ラジカル開始剤、架橋剤、追加の樹脂、表面レベリング剤及び接着促進剤からなる群から選択される1種以上の添加剤を15重量%~30重量%と;
を含む、ドライフィルム。
【請求項10】
請求項1に記載の可溶性ポリイミド樹脂から構成される絶縁層と、めっきにより形成される導電層とを備える多層プリント配線板であって、前記絶縁層は:
(a)前記可溶性ポリイミド樹脂を5重量%~50重量%と;
(b)1種以上の表面官能基化された架橋性有機又は無機フィラーを50重量%以上と;
(c)追加の樹脂、表面レベリング剤及び接着促進剤からなる群から選択される1種以上の添加剤を15重量%~30重量と;
を含む、多層プリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、可溶性ポリイミド樹脂組成物、そのような樹脂を調製するための方法及び電子デバイスの製造におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマー樹脂は、スピンオン誘電体パッケージング、回路基板、ラミネート、金属箔の被覆、アンテナ・イン・パッケージ及び他の電子用途に使用されている。この樹脂は、良好な機械特性及び良好な接着特性並びに低い誘電特性を有する膜/被覆を提供する必要がある。特に、高い引張強度、高い引張伸び、高いガラス転移温度(T)、低い熱膨張係数(CTE)、銅への良好な接着性並びに高周波数で低い比誘電率(Dk)及び損失正接(Df)を示すことが望ましい。加えて、過度に長い時間硬化を行うことなく、より低い温度で樹脂を硬化できることが望ましい。
【0003】
このようなバランスのとれた特性は、複数種のポリマー、フィラー、他の構成成分などを組み合わせ、系の特性を調整し、及び/又は樹脂間の反応を推進するように設計された樹脂系でなければ得られないであろう。長年にわたり採用されてきた従来のパッケージ材料は数多くあるが、ポリイミドは、電気的、機械的及び熱的特性が優れていることから、半導体パッケージ用途に好んで選ばれてきた材料である。しかしながら、この種の用途にポリイミドを使用すると、硬化イミド化温度が高く、CTEが高く、且つ吸水量が高いことに関連する難点が生じる。CTEが高いと硬化したポリイミド膜が収縮し、それに伴う高い残留ひずみによりシリコンウェハのチップに反りが生じる可能性がある。
【0004】
可溶性ポリイミドは公知であり、これらのポリマーを含む感光性組成物が開示されている。概して、分子量の低いポリイミドポリマーであれば、許容できるフォトリソグラフィー特性が得られることが確認されている。しかし、このようなポリマーを使用した組成物は、パッケージング工程でアドバンスドパッケージング材料として使用することができない程度まで機械特性が低下する。ポリイミドの分子量を高くすれば、許容できる機械特性を得ることができる。ところが、結果として得られるポリイミド組成物の現像液への溶解度が低下する可能性があり、それに従いリソグラフィー性能が低下することが多い。
【0005】
感光性組成物に理想的なポリイミドは、低損失であるのみならず、光画像化が可能であり、パッケージング用途に用いられる加工条件にも適合する(すなわち、硬化温度が低く、有機溶媒で現像可能である)ものである。処理が完了した材料は、高い伸び、許容される機械特性及びアドバンスドパッケージング用途に一般に使用されている基板(例えば、銅、シリコン、窒化ケイ素など)への良好な接着を示すことが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第7,198,878号明細書
【特許文献2】米国特許第8,143,360号明細書
【特許文献3】韓国特許第10-2422883B1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
こうした状況下で、このような材料を開発することが絶えず求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書全体を通して使用される場合、以下の略語は、文脈が別の意味を特に明確に示していない限り、以下の意味を有するものとする:℃=摂氏度;g=グラム;nm=ナノメートル、μm=ミクロン=マイクロメートル;mm=ミリメートル;sec.=秒;及びmin.=分。特に明記しない限り、量は全て重量パーセント(「重量%」)であり、比は全てモル比である。全ての数値範囲は、そのような数値範囲の合計が100%になるように制約されることが明らかである場合を除いて、包括的であり、且つ任意の順序で組み合わせることが可能である。特に明記しない限り、ポリマー及びオリゴマーの分子量は全て、g/モル又はダルトン単位の重量平均分子量(「Mw」)であり、ゲル浸透クロマトグラフィーを用いてポリスチレン標準物質と比較して決定されたものである。
【0009】
冠詞「a」、「an」及び「the」は、そうではないと文脈が明確に示していない限り、単数形及び複数形を指す。本明細書で使用される用語「及び/又は」は、関連する項目の1つ以上のあらゆる組み合わせを包含する。
【0010】
本明細書に使用されるR、R、R、R’、R”及び他の任意の可変要素は総称的記号であり、式中で定義される可変要素は同一であるか又は異なり得る。
【0011】
本明細書に使用される用語「付加重合性」は、それがモノマーに適用される場合は、他の生成物を同時に生成することなく、単純に基を連結することにより重合することができる不飽和モノマーを意味することを意図している。
【0012】
用語「隣接する」は、置換基に言及する場合、単結合又は多重結合によって連結している炭素に結合している置換基を意味することを意図している。典型的な隣接するR基を以下に示す:
【0013】
【化1】
【0014】
用語「アルコキシ」は、RO-基(Rはアルキル基である)を意味することを意図している。
【0015】
用語「アルキル」は、脂肪族炭化水素から誘導された基を意味することを意図し、直鎖、分岐状又は環状基を包含する。化合物「から誘導された」基は、1個以上の水素又は重水素を除去することによって形成される基を表す。いくつかの実施形態では、アルキルは、1~20個の炭素原子を有する。
【0016】
用語「アミン」は、孤立電子対を持つ塩基性窒素原子を含む化合物を意味することを意図し、ここで孤立電子対は、別の原子と共有されていない1組の2個の価電子を指す。用語「アミノ」は、官能基-NH、-NHR又は-NR(式中、Rは、出現毎に同一であるか又は異なり、アルキル基又はアリール基であり得る)を指す。用語「ジアミン」は、孤立電子対を伴う2個の塩基性窒素原子を含む化合物を意味することを意図している。用語「ポリアミン」は、孤立電子対を伴う2個以上の塩基性窒素原子を含む化合物を意味することを意図している。用語「芳香族ジアミン」は、2つのアミノ基を有する芳香族化合物を意味することを意図している。用語「芳香族ポリアミン」は、2つ以上のアミノ基を有する芳香族化合物を意味することを意図している。用語「屈曲ジアミン」は、2個の塩基性窒素原子及び関連する孤立電子対が、対応する化合物又は官能基の対称中心の周りに非対称に配置されているジアミン、例えばm-フェニレンジアミン:
【0017】
【化2】
【0018】
を意味することを意図している。
【0019】
用語「芳香族ジアミン残基」は、芳香族ジアミン内の2つのアミノ基に結合している部分を意味することを意図している。用語「芳香族ポリアミン残基」は、芳香族ポリアミン内の2つ以上のアミノ基に結合している部分を意味することを意図している。用語「芳香族ジイソシアネート残基」は、芳香族ジイソシアネート化合物内の2つのイソシアネート基に結合している部分を意味することを意図している。用語「芳香族ポリイソシアネート残基」は、芳香族ポリイソシアネート化合物内の2つ以上のイソシアネート基に結合している部分を意味することを意図している。これを以下に更に例示する。
【0020】
【化3】
【0021】
用語「ジアミン残基」及び「ジイソシアネート残基」は、それぞれ、2つのアミノ基又は2つのイソシアネート基に結合している部分を意味することを意図しており、これらの部分は脂肪族又は芳香族である。用語「ポリアミン残基」及び「ポリイソシアネート残基」は、それぞれ、2つ以上のアミノ基又は2つ以上のイソシアネート基に結合している部分を意味することを意図しており、これらの部分は脂肪族又は芳香族である。
【0022】
用語「芳香族化合物」は、4n+2個の非局在化π電子を有する少なくとも1個の不飽和環状基を含む有機化合物を意味することを意図している。
【0023】
用語「アリール」は、1個以上の結合点を有する、芳香族化合物から誘導された基を意味することを意図している。この用語は、単環を有する基、及び単結合によって連結していても一緒に縮合していてもよい複数の環を有する基を包含する。炭素環式アリール基は、環構造中に炭素のみを有する。ヘテロアリール基は、環構造中に少なくとも1個のヘテロ原子を有する。
【0024】
用語「アルキルアリール」は、1つ以上のアルキル置換基を有するアリール基を意味することを意図している。
【0025】
用語「アリールオキシ」は、RO-基(Rはアリール基である)を意味することを意図している。
【0026】
用語「架橋基」は、1つの高分子鎖を別の高分子鎖と連結するために使用される結合又は短い連続した結合を含む官能基を指す。
【0027】
用語「硬化性」は、組成物に適用される場合、放射及び/若しくは熱に曝露されるか又は使用条件下で、硬さが増大すると共に溶媒中の溶解度が低くなる材料を意味することを意図している。
【0028】
用語「末端封止化合物」は、進行している重合を阻害し、それにより樹脂全体の分子量を制御するために樹脂中で使用される、別個の化合物又は基を指す。
【0029】
用語「液体組成物」は、材料が溶解して溶液を形成している液体媒体、材料が分散して分散液を形成している液体媒体、又は材料が懸濁して懸濁液若しくは乳濁液を形成している液体媒体を意味することを意図している。
【0030】
用語「(メタ)アクリレート」は、アクリレート又はメタクリレートのどちらかである基を意味することを意図している。
【0031】
用語「ポリイミド」は、1種以上の多官能性無水物成分と1種以上の1級ポリアミン又はポリイソシアネートとの反応により生成する縮合ポリマーを指す。これらは、ポリマー骨格の主鎖に沿って、直鎖状又は複素環式単位としてのイミド構造-CO-NR-CO-を含む。
【0032】
本明細書に使用される用語「半導体ウェハ」は、シングルチップのウェハ、マルチチップのウェハ、様々なレベル用のパッケージ、発光ダイオード(LED)用基板又ははんだ接続を必要とする他の組立体などの、「半導体基板」、「半導体デバイス」及び様々なレベルの相互接続のための様々なパッケージを包含することを意図している。シリコンウェハ、ガリウムヒ素ウェハ及びシリコンゲルマニウムウェハなどの半導体ウェハは、パターン形成されていても、パターン形成されていなくてもよい。本明細書に使用される用語「半導体基板」には、半導体デバイスの有効部分又は動作可能部分を含む1つ以上の半導体層又は半導体構造を有する任意の基板が含まれる。用語「半導体基板」は、半導体デバイスなどの、半導体材料を含む任意の構造を意味すると定義される。半導体デバイスは、少なくとも1つのマイクロ電子デバイスがその上に製造されているか又は製造されることになる半導体基板を指す。熱的に安定なポリマーとしては、これらに限定されないが、アリールシクロブテン材料の硬化に用いられる温度で安定な、ポリイミド、例えば、KAPTONTMポリイミド(DuPont、Wilmington、DE)、液晶ポリマー、例えばVECSTARTMLCP膜(株式会社クラレ、東京、日本)及びビスマレイミド-トリアジン(BT)樹脂(MGC、東京、日本)などの任意のポリマーが挙げられる。更なるポリマー基板としては、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリ塩化ビニルなどのポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」と略記することがある)及びポリエチレンナフタレートなどのポリエステルの膜;又はポリカーボネート膜を挙げることができる。更に、離型紙及び金属箔、例えば銅箔及びアルミニウム箔などを使用することができる。支持体及び後述する保護膜は、マット処理及びコロナ処理などの表面処理が施されていてもよい。或いは、支持体及び保護膜は、シリコーン樹脂系離型剤、アルキド樹脂系離型剤又はフッ素樹脂系離型剤などの離型剤で離型処理されていてもよい。いくつかの非限定的な実施形態では、支持体は10~150μmの厚さを有し、いくつかの非限定的な実施形態では25~50μmである。
【0033】
用語「溶媒」は、使用温度で液体である有機化合物を意味することを意図している。この用語は、単一種の有機化合物又は2種以上の有機化合物の混合物を包含することを意図している。
【0034】
用語「テトラカルボン酸成分残基」は、テトラカルボン酸成分内で4個のカルボキシ基に結合している部分を意味することを意図している。これを以下に更に例示する。
【0035】
【化4】
【0036】
用語「熱硬化性樹脂」は、加熱又は放射に曝露すると、その処理を行った後はその材料の形状を実質的に作り直すことができないように不可逆的に架橋するか又は網目の分子量が不可逆的に増大する、液状又は軟質のポリマーを意味することを意図している。
【0037】
用語「膜(フィルム)」及び「層」は、本明細書全体にわたり同義で用いられる。
【0038】
全ての範囲は包括的であり、且つ、組み合わせ可能である。例えば、用語「50~3000cPsの範囲又は100cPs以上」には、50~100cPs、50~3000cPs及び100~3000cPsのそれぞれが含まれることになる。
【0039】
本明細書において、特に明示的に述べられているか又は使用される文脈で反対のことが示されていない限り、本明細書の主題の実施形態が、特定の特徴又は要素を、含むか、包含するか、含有するか、有するか、それらから又はそれらによってなる又は構成されると述べられているか又は記載されている場合、その実施形態には、明示的に述べられた又は記載されたものに加えて1つ以上の特徴又は要素が存在し得る。本明細書に開示する主題の別の実施形態は、特定の特徴又は要素から本質的になると記載され、その実施形態には、実施形態の操作原理又は他と区別される特徴を実質的に変更することになる特徴又は要素は存在しない。本明細書に記載する主題の更なる別の実施形態は、特定の特徴又は要素からなると記載され、その実施形態又はその非実質的な変形形態では、具体的に述べられた又は記載された特徴又は要素のみが存在する。
【0040】
特に定義しない限り、本明細書に用いられる全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと同様の又は均等な方法及び材料を本開示の実施形態の実施又は試験に使用することができるが、好適な方法及び材料を以下に記載する。更に、材料、方法及び実施例は例示に過ぎず、限定を意図していない。
【0041】
本明細書に記載されていない範囲の具体的な材料、加工行為及び回路に関する多くの詳細は従来通りであり、フォトレジスト、誘電体材料及び半導電性部材の技術分野の教科書及び他の情報源において見出すことができる。
【0042】
可溶性ポリイミド樹脂であって:(a)1種以上のテトラカルボン酸成分残基と;(b)1種以上のジアミン成分残基と;(c)1種以上の末端封止化合物と;を含み:この1種以上の末端封止化合物は、1つ以上の架橋基を含む、可溶性ポリイミド樹脂を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0043】
この1種以上のテトラカルボン酸成分残基は特に限定されず、芳香族テトラカルボン酸二無水物及び脂肪族テトラカルボン酸二無水物からなる群から選択される、対応するテトラカルボン酸二無水物から誘導されるものである。
【0044】
いくつかの非限定的な実施形態では、芳香族テトラカルボン酸二無水物は、4,4’-(ヘキサフルオロ-イソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA);4,4’-オキシジフタル酸二無水物(ODPA);ピロメリット酸二無水物(PMDA);3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA);2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s-BDA);非対称2,3,3’,4’-ビフェニル-テトラカルボン酸二無水物(a-BPDA);3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA);3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(DSDA);4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸無水物(DTDA);デカヒドロ-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)ナフト[1,2-c]フラン-1,3-ジオン;ヘキサヒドロ-4,9-メタノ-3H-フロ[3,4-g][2]ベンゾピラン-1,3,5,7(3aH)-テトロン;3,3’,4,4’-ビシクロヘキシルテトラカルボン酸二無水物;ヘキサヒドロ-4,8-メタノ-1H,3H-ベンゾ[1,2-c:4,5-c’]ジフラン-1,3,5,7-テトロン;ヘキサヒドロ-1H,3H-ベンゾ[1,2-c:4,5-c’]ジフラン-1,3,5,7-テトロン;3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(DSDA);エチレングリコールビス(無水トリメリット酸)エステル;4,4’-ビスフェノールA二無水物(BPADA);などからなる群から選択される。
【0045】
いくつかの非限定的な実施形態では、芳香族テトラカルボン酸二無水物は、アルキル;アリール;ニトロ;シアノ;-N(R’)(R”);ハロ;ヒドロキシ;カルボキシ;アルケニル;アルキニル;シクロアルキル;ヘテロアリール;アルコキシ;アリールオキシ;ヘテロアリールオキシ;アルコキシカルボニル;パーフルオロアルキル;パーフルオロアルコキシ;アリールアルキル;シリル;シロキシ;シロキサン;チオアルコキシ;-S(O)-;-C(=O)-N(R’)(R”);(R’)(R”)N-アルキル;(R’)(R”)N-アルコキシアルキル;(R’)(R”)N-アルキルアリールオキシアルキル;-S(O)-アリール;及び-S(O)-ヘテロアリール;及び硬化過程で新しくC-C又はC-ヘテロ原子結合を形成する能力のある他の基;からなる群から選択される官能基で更に置換されていてもよく;R’及びR”は、出現毎に同一であるか又は異なり、アルキル、シクロアルキル又はアリール基で任意選択的に置換されており;0≦S≦2であり;官能基は、任意選択的に架橋基を含む。
【0046】
芳香族テトラカルボン酸二無水物の量は、1~99モル%、5~95モル%、10~90モル%、15~85モル%、20~80モル%、25~75モル%、30~70モル%、35~65モル%、40~60モル%、45~55モル%、1~10モル%、10~20モル%、20~30モル%、30~40モル%、40~50モル%、50~60モル%、60~70モル%、70~80モル%、80~90モル%又は90~99モル%の範囲とすることができる。
【0047】
いくつかの非限定的な実施形態では、脂肪族テトラカルボン酸二無水物は、シクロブタン二無水物(CBDA);3-(カルボキシメチル)-1,2,4-シクロペンタントリカルボン酸1,4:2,3-二無水物;ビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物;1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物;1,2,4,5-シクロヘキサン-テトラカルボン酸二無水物;1,2,3,4-テトラメチル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物;1,3-ジメチル-1,2,3,4-シクロブタン-テトラカルボン酸二無水物;トリシクロ[6.4.0.02,7]ドデカン-1,8:2,7-テトラカルボン酸二無水物;メソ-ブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物;4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロフタレン-1,2-ジカルボン酸無水物;5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフリル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物などからなる群から選択される。
【0048】
いくつかの非限定的な実施形態では、脂肪族テトラカルボン酸二無水物は、アルキル;アリール;ニトロ;シアノ;-N(R’)(R”);ハロ;ヒドロキシ;カルボキシ;アルケニル;アルキニル;シクロアルキル;ヘテロアリール;アルコキシ;アリールオキシ;ヘテロアリールオキシ;アルコキシカルボニル;パーフルオロアルキル;パーフルオロアルコキシ;アリールアルキル;シリル;シロキシ;シロキサン;チオアルコキシ;-S(O)2-;-C(=O)-N(R’)(R”);(R’)(R”)N-アルキル;(R’)(R”)N-アルコキシアルキル;(R’)(R”)N-アルキルアリールオキシアルキル;-S(O)S-アリール;及び-S(O)S-ヘテロアリール;及び硬化過程で新しくC-C又はC-ヘテロ原子結合を形成する能力のある他の基;からなる群から選択される官能基で更に置換されていてもよく;R’及びR”は、出現毎に同一であるか又は異なり、アルキル、シクロアルキル又はアリール基で任意選択的に置換されており;0≦S≦2であり;官能基は、任意選択的に架橋基を含む。
【0049】
脂肪族テトラカルボン酸二無水物の量は、1~99モル%、5~95モル%、10~90モル%、15~85モル%、20~80モル%、25~75モル%、30~70モル%、35~65モル%、40~60モル%、45~55モル%、1~10モル%、10~20モル%、20~30モル%、30~40モル%、40~50モル%、50~60モル%、60~70モル%、70~80モル%、80~90モル%又は90~99モル%の範囲とすることができる。
【0050】
いくつかの実施形態では、芳香族テトラカルボン酸二無水物対脂肪族テトラカルボン酸二無水物の比は、100/1、90/1、80/1、70/1、60/1、50/1、40/1、30/1、20/1、10/1、9/1、8/1、7/1、6/1、5/1、4/1、3/1、2/1、1/1、1/2、1/3、1/4、1/5、1/6、1/7、1/8、1/9、1/10、1/20、1/30、1/40、1/50、1/60、1/70、1/80、1/90又は1/100とすることができる。
【0051】
1種以上のジアミン成分残基は特に限定されず、芳香族ジアミン及び脂肪族ジアミンからなる群から選択される対応するジアミンから誘導されるものである。
【0052】
いくつかの非限定的な実施形態では、芳香族ジアミンは、p-フェニレンジアミン(PPD);2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB);m-フェニレンジアミン(MPD);4,4’-オキシジアニリン(4,4’-ODA)、3,4’-オキシジアニリン(3,4’-ODA);2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(BAHFP);2,2-ビス(4-アミノフェノキシ)ヘキサフルオロプロパン(HFBAPP);1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン(m-BAPB)、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル(p-BAPB);2,2-ビス(3-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン(BAPF);ビス[4-(3-アミノフェノキシ)-フェニル]スルホン(m-BAPS);2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(p-BAPS);m-キシリレンジアミン(m-XDA);2,2-ビス(3-アミノ-4-メチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン(BAMF);9,9’-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン(FDA)、4,4’-(3,3,3’,3’-テトラメチル-2,2’,3,3’-テトラヒドロ-1,1’-スピロビ[インデン]-6,6’-ジイル)ジアニリン、3,3’-(3,3,3’,3’-テトラメチル-2,2’,3,3’-テトラヒドロ-1,1’-スピロビ[インデン]-6,6’-ジイル)ジアニリン、3,3’-(3,3,3’,3’-テトラメチル-2,2’,3,3’-テトラヒドロ-1,1’-スピロビ[インデン]-6,6’-ジイル)ジアニリン、ヘキサメチレンジアミン(HMD)、1,4-シクロヘキサン-ジアミン(CHDA)、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジアミノフェニルメタン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン;1,3’-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン(APB-133);4,4’-メチレンビス(2-エチル-6-メチルアニリン)(MEMA)、m-トリジン(2,2’-ジメチルベンジジン)、3-(4-アミノフェニル)-1,1,3-トリメチル-5-インダンアミン(TMDA)などからなる群から選択される。
【0053】
いくつかの非限定的な実施形態では、芳香族ジアミンは、アルキル;アリール;ニトロ;シアノ;-N(R’)(R”);ハロ;ヒドロキシ;カルボキシ;アルケニル;アルキニル;シクロアルキル;ヘテロアリール;アルコキシ;アリールオキシ;ヘテロアリールオキシ;アルコキシカルボニル;パーフルオロアルキル;パーフルオロアルコキシ;アリールアルキル;シリル;シロキシ;シロキサン;チオアルコキシ;-S(O)2-;-C(=O)-N(R’)(R”);(R’)(R”)N-アルキル;(R’)(R”)N-アルコキシアルキル;(R’)(R”)N-アルキルアリールオキシアルキル;-S(O)S-アリール;及び-S(O)S-ヘテロアリール;及び硬化過程で新しくC-C又はC-ヘテロ原子結合を形成する能力のある他の基;からなる群から選択される官能基で更に置換されていてもよく;R’及びR”は、出現毎に同一であるか又は異なり、アルキル、シクロアルキル又はアリール基で任意選択的に置換されており;0≦S≦2であり;官能基は、任意選択的に架橋基を含む。
【0054】
芳香族ジアミンの量は、1~99モル%、5~95モル%、10~90モル%、15~85モル%、20~80モル%、25~75モル%、30~70モル%、35~65モル%、40~60モル%、45~55モル%、1~10モル%、10~20モル%、20~30モル%、30~40モル%、40~50モル%、50~60モル%、60~70モル%、70~80モル%、80~90モル%又は90~99モル%の範囲とすることができる。
【0055】
いくつかの非限定的な実施形態では、脂肪族ジアミンは、1,3-ビス(アミノエチル)シクロヘキサン(m-CHDA);1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(p-CHDA);1,3-シクロヘキサンジアミン;(8,8’-(4-ヘキシル-3-オクチルシクロヘキサン-1,2-ジイル)ビス(オクタン-1-アミン);trans-1,4-ジアミノシクロヘキサン;4,4’-メチレンビ(シクロヘキシルアミン);ビス(アミノメチル)ノルボルナン;α-,ω-ジアミノアルカン(例えば、1,6-ヘキサンジアミン;1,8-オクタンジアミン;1,12-ドデカンジアミン);などからなる群から選択される。
【0056】
いくつかの非限定的な実施形態では、脂肪族ジアミンは、アルキル;アリール;ニトロ;シアノ;-N(R’)(R”);ハロ;ヒドロキシ;カルボキシ;アルケニル;アルキニル;シクロアルキル;ヘテロアリール;アルコキシ;アリールオキシ;ヘテロアリールオキシ;アルコキシカルボニル;パーフルオロアルキル;パーフルオロアルコキシ;アリールアルキル;シリル;シロキシ;シロキサン;チオアルコキシ;-S(O)-;-C(=O)-N(R’)(R”);(R’)(R”)N-アルキル;(R’)(R”)N-アルコキシアルキル;(R’)(R”)N-アルキルアリールオキシアルキル;-S(O)-アリール;及び-S(O)-ヘテロアリール;及び硬化過程で新しくC-C又はC-ヘテロ原子結合を形成する能力のある他の基;からなる群から選択される官能基で更に置換されていてもよく;R’及びR”は、出現毎に同一であるか又は異なり、アルキル、シクロアルキル又はアリール基で任意選択的に置換されており;0≦S≦2であり;官能基は、任意選択的に架橋基を含む。
【0057】
脂肪族ジアミンの量は、1~99モル%、5~95モル%、10~90モル%、15~85モル%、20~80モル%、25~75モル%、30~70モル%、35~65モル%、40~60モル%、45~55モル%、1~10モル%、10~20モル%、20~30モル%、30~40モル%、40~50モル%、50~60モル%、60~70モル%、70~80モル%、80~90モル%又は90~99モル%の範囲とすることができる。
【0058】
いくつかの実施形態では、芳香族ジアミン対脂肪族ジアミンの比は、100/1、90/1、80/1、70/1、60/1、50/1、40/1、30/1、20/1、10/1、9/1、8/1、7/1、6/1、5/1、4/1、3/1、2/1、1/1、1/2、1/3、1/4、1/5、1/6、1/7、1/8、1/9、1/10、1/20、1/30、1/40、1/50、1/60、1/70、1/80、1/90又は1/100とすることができる。
【0059】
1つ以上の架橋基を含む1種以上の末端封止化合物は特に限定されず、脂肪族末端封止化合物、芳香族末端封止化合物、ヘテロ芳香族末端封止化合物、アルキニル末端封止化合物、アルケニル末端封止化合物、マレイミド末端封止化合物、ビニル末端封止化合物、アリル系末端封止化合物、シアン酸エステル末端封止化合物、エステル末端封止化合物などからなる群から選択される。
【0060】
いくつかの非限定的な実施形態では、末端封止化合物の架橋基は、ラジカル架橋基、カチオン性架橋基、アニオン性架橋基、自身と架橋することによってホモポリマーを形成することができる架橋基、他の架橋基と架橋することによってヘテロポリマーを形成することができる架橋基及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0061】
いくつかの非限定的な実施形態では、末端封止化合物の架橋基は、炭素-炭素又は炭素-ヘテロ原子結合を形成することができる任意の基であり、アリル基、ビニル基、アルキニル基、アルケニル基、(メタ)アクリレート基、ベンゾシクロブテン基、マレイミド基、アリル系基、シアン酸エステル基及びエステル基からなる群から選択される。
【0062】
いくつかの非限定的な実施形態では、1つ以上の架橋基を含む1種以上の末端封止化合物は、4-エチニルアニリン(4-EA)、2,4-ジアミノ-6-ジアリルアミノ-1,3,5-トリアジン(DAMA)、4-アミノスチレン(4AS)、4-エチニルフタル酸無水物、4-フェニルエチニルフタル酸無水物、5-(3-フェニルプロピオロイル)-1,3-イソベンゾフランジオン、4-メチルエチニルフタル酸無水物、5-(1-オキソ-3-フェニル-2-プロピン-1-イル)-1,3-イソベンゾフランジオン、5-(1-オキソ-3-フェニル-2-プロピン-1-イル)-1,3-イソベンゾフランジオン(PETA)などからなる群から選択される。
【0063】
いくつかの非限定的な実施形態では、本明細書に開示する可溶性ポリイミド樹脂は、単一種のテトラカルボン酸成分残基を含む。いくつかの非限定的な実施形態では、本明細書に開示する可溶性ポリイミド樹脂は2種のテトラカルボン酸成分残基を含み、各テトラカルボン酸成分残基は0.1%~99.9%の間のモルパーセントで存在し;いくつかの非限定的な実施形態では、本明細書に開示する可溶性ポリイミド樹脂は3種のテトラカルボン酸成分残基を含み、各テトラカルボン酸成分残基は0.1%~99.9%の間のモルパーセントで存在し;いくつかの非限定的な実施形態では、本明細書に開示する可溶性ポリイミド樹脂は4種のテトラカルボン酸成分残基を含み、各テトラカルボン酸成分残基は0.1%~99.9%の間のモルパーセントで存在し;いくつかの非限定的な実施形態では、本明細書に開示する可溶性ポリイミド樹脂は5種のテトラカルボン酸成分残基を含み、各テトラカルボン酸成分残基は0.1%~99.9%の間のモルパーセントで存在し;いくつかの非限定的な実施形態では、本明細書に開示する可溶性ポリイミド樹脂は6種以上のテトラカルボン酸成分残基を含み、各テトラカルボン酸成分残基は0.1%~99.9%の間のモルパーセントで存在する。
【0064】
いくつかの非限定的な実施形態では、本明細書に開示する可溶性ポリイミド樹脂は、単一種のジアミン成分残基を含む。いくつかの非限定的な実施形態では、本明細書に開示する可溶性ポリイミド樹脂は2種のジアミン成分残基を含み、各ジアミン成分残基は0.1%~99.9%のモルパーセントで存在し;いくつかの非限定的な実施形態では、本明細書に開示する可溶性ポリイミド樹脂は3種のジアミン成分残基を含み、各ジアミン成分残基は0.1%~99.9%の間のモルパーセントで存在し;いくつかの非限定的な実施形態では、本明細書に開示する可溶性ポリイミド樹脂は4種のジアミン成分残基を含み、各ジアミン成分残基は0.1%~99.9%の間のモルパーセントで存在し;いくつかの非限定的な実施形態では、本明細書に開示する可溶性ポリイミド樹脂は5種のジアミン成分残基を含み、各ジアミン成分残基は0.1%~99.9%の間のモルパーセントで存在し;いくつかの非限定的な実施形態では、本明細書に開示する可溶性ポリイミド樹脂は6種以上のジアミン成分残基を含み、各ジアミン成分残基は0.1%~99.9%の間のモルパーセントで存在する。
【0065】
いくつかの非限定的な実施形態では、本明細書に開示する可溶性ポリイミド樹脂は、単一種の末端封止化合物を含み;いくつかの非限定的な実施形態では、2種の末端封止化合物を含み;いくつかの非限定的な実施形態では、3種の末端封止化合物を含み;いくつかの非限定的な実施形態では、4種以上の末端封止化合物を含む。
【0066】
本明細書に開示する可溶性ポリイミド樹脂及び/又は関連する配合物に使用される1種以上の末端封止化合物の量は、対象とする特性の目標値(例えば、熱的特性、機械的特性、誘電的特性など)に応じて変化する。本明細書に開示する可溶性ポリイミド樹脂及び/又は関連する配合物に使用される1種以上の末端封止化合物の量は、0.1~70モル%、1~65モル%、2~60モル%、5~55モル%、10~50モル%、15~45モル%、20~40モル%又は25~30モル%の範囲とすることができる。本明細書に開示する可溶性ポリイミド樹脂及び/又は関連する配合物に使用される1種以上の末端封止化合物の量は、2~10モル%、3~9モル%、4~8モル%、5~7モル%、2~6モル%、2~5モル%、2~4モル%、2~3モル%、3~6モル%、3~5モル%、3~4モル%、4~6モル%又は4~5モル%の範囲とすることができる。
【0067】
更に、可溶性ポリイミド樹脂であって:(a)1種以上のテトラカルボン酸成分残基と;(b)1種以上のジアミン成分残基と;(c)1種以上の末端封止化合物と;を含み:更に(d)1種以上のトリアミン成分残基;(e)1種以上のテトラアミン成分残基;(f)1種以上のヘキサカルボン酸三無水物成分残基;及び(g)1種以上のジカルボン酸一無水物成分残基ジカルボン酸成分残基;からなる群から選択される1種以上の残基を含み、1種以上の末端封止化合物は1つ以上の架橋基を含む、可溶性ポリイミド樹脂を提供する。
【0068】
(a)1種以上のテトラカルボン酸成分残基;(b)1種以上のジアミン成分残基;及び(c)1種以上の末端封止化合物に関する特定の実施形態であって:この1種以上の末端封止化合物が、これらの可溶性ポリイミド樹脂のための1種以上の架橋基を含む特定の実施形態は、本明細書において上に開示したものと同一である。
【0069】
1種以上のトリアミン成分残基は特に限定されず、芳香族トリアミン及び脂肪族トリアミンからなる群から選択される、対応するトリアミンから誘導されるものである。
【0070】
いくつかの非限定的な実施形態では、1種以上のトリアミンは、ジエチレントリアミン、4,4’,4”-メタントリイルトリアニリン、5’-(4-アミノフェニル)-[1,1’:3’,1”-テルフェニル]-4,4”-ジアミン、4,4’,4”-(1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリイル)トリアニリン、N,N-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン-1,4-ジアミン、N1,N1-ビス(3-アミノフェニル)ベンゼン-1,3-ジアミン、4’-(3-アミノフェニル)-[1,1’:2’,1”-テルフェニル]-3,3”-ジアミン、5’-(3-アミノフェニル)-[1,1’:3’,1”-テルフェニル]-3,3”-ジアミン及び5’-(4-アミノフェニル)-[1,1’:3’,1”-テルフェニル]-3,3”-ジアミンからなる群から選択される。
【0071】
いくつかの非限定的な実施形態では、トリアミンは、アルキル;アリール;ニトロ;シアノ;-N(R’)(R”);ハロ;ヒドロキシ;カルボキシ;アルケニル;アルキニル;シクロアルキル;ヘテロアリール;アルコキシ;アリールオキシ;ヘテロアリールオキシ;アルコキシカルボニル;パーフルオロアルキル;パーフルオロアルコキシ;アリールアルキル;シリル;シロキシ;シロキサン;チオアルコキシ;-S(O)2-;-C(=O)-N(R’)(R”);(R’)(R”)N-アルキル;(R’)(R”)N-アルコキシアルキル;(R’)(R”)N-アルキルアリールオキシアルキル;-S(O)S-アリール;及び-S(O)S-ヘテロアリール;及び硬化過程で新しくC-C又はC-ヘテロ原子結合を形成する能力のある他の基;からなる群から選択される官能基で更に置換されていてもよく;R’及びR”は、出現毎に同一であるか又は異なり、アルキル、シクロアルキル又はアリール基で任意選択的に置換されており;0≦S≦2であり;官能基は、任意選択的に架橋基を含む。
【0072】
トリアミン成分残基の量は、1~99モル%、5~95モル%、10~90モル%、15~85モル%、20~80モル%、25~75モル%、30~70モル%、35~65モル%、40~60モル%、45~55モル%、1~10モル%、10~20モル%、20~30モル%、30~40モル%、40~50モル%、50~60モル%、60~70モル%、70~80モル%、80~90モル%又は90~99モル%の範囲とすることができる。
【0073】
1種以上のテトラアミン成分残基は特に限定されず、芳香族テトラアミン及び脂肪族テトラアミンからなる群から選択される、対応するテトラアミンから誘導されるものである。
【0074】
いくつかの非限定的な実施形態では、1種以上のテトラアミンは、テトラアミノエチレン、[1,1’:3’,1”-テルフェニル]-3,3”,5,5”-テトラアミン、[1,1’:4’,1”-テルフェニル]-3,3”,5,5”-テトラアミン、5,5’-(1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル)ビス(ベンゼン-1,3-ジアミン)、5,5’-(9-メチル-9H-カルバゾール-3,6-ジイル)ビス(ベンゼン-1,3-ジアミン)及び5,5’-(9H-カルバゾール-3,9-ジイル)ビス(ベンゼン-1,3-ジアミン)からなる群から選択される。
【0075】
いくつかの非限定的な実施形態では、テトラアミンは、アルキル;アリール;ニトロ;シアノ;-N(R’)(R”);ハロ;ヒドロキシ;カルボキシ;アルケニル;アルキニル;シクロアルキル;ヘテロアリール;アルコキシ;アリールオキシ;ヘテロアリールオキシ;アルコキシカルボニル;パーフルオロアルキル;パーフルオロアルコキシ;アリールアルキル;シリル;シロキシ;シロキサン;チオアルコキシ;-S(O)2-;-C(=O)-N(R’)(R”);(R’)(R”)N-アルキル;(R’)(R”)N-アルコキシアルキル;(R’)(R”)N-アルキルアリールオキシアルキル;-S(O)S-アリール;及び-S(O)S-ヘテロアリール;及び硬化過程で新しくC-C又はC-ヘテロ原子結合を形成する能力のある他の基;からなる群から選択される官能基で更に置換されていてもよく;R’及びR”は、出現毎に同一であるか又は異なり、アルキル、シクロアルキル又はアリール基で任意選択的に置換されており;0≦S≦2であり;官能基は、任意選択的に架橋基を含む。
【0076】
テトラアミン成分残基の量は、1~99モル%、5~95モル%、10~90モル%、15~85モル%、20~80モル%、25~75モル%、30~70モル%、35~65モル%、40~60モル%、45~55モル%、1~10モル%、10~20モル%、20~30モル%、30~40モル%、40~50モル%、50~60モル%、60~70モル%、70~80モル%、80~90モル%又は90~99モル%の範囲とすることができる。
【0077】
1種以上のヘキサカルボン酸三無水物成分残基は特に限定されず、芳香族ヘキサカルボン酸三無水物及び脂肪族ヘキサカルボン酸三無水物からなる群から選択される、対応するトリカルボン酸から誘導されたものである。
【0078】
いくつかの非限定的な実施形態では、1種以上のヘキサカルボン酸三無水物は、5,5’,5”-ニトリロトリス(イソベンゾフラン-1,3-ジオン)及び5,5’,5”-(ベンゼン-1,3,5-トリイル)トリス(イソベンゾフラン-1,3-ジオン)からなる群から選択される。
【0079】
いくつかの非限定的な実施形態では、ヘキサカルボン酸三無水物は、アルキル;アリール;ニトロ;シアノ;-N(R’)(R”);ハロ;ヒドロキシ;カルボキシ;アルケニル;アルキニル;シクロアルキル;ヘテロアリール;アルコキシ;アリールオキシ;ヘテロアリールオキシ;アルコキシカルボニル;パーフルオロアルキル;パーフルオロアルコキシ;アリールアルキル;シリル;シロキシ;シロキサン;チオアルコキシ;-S(O)-;-C(=O)-N(R’)(R”);(R’)(R”)N-アルキル;(R’)(R”)N-アルコキシアルキル;(R’)(R”)N-アルキルアリールオキシアルキル;-S(O)-アリール;及び-S(O)-ヘテロアリール;及び硬化過程で新しくC-C又はC-ヘテロ原子結合を形成する能力のある他の基;からなる群から選択される官能基で更に置換されていてもよく;R’及びR”は、出現毎に同一であるか又は異なり、アルキル、シクロアルキル又はアリール基で任意選択的に置換されており;0≦S≦2であり;官能基は、任意選択的に架橋基を含む。
【0080】
ヘキサカルボン酸三無水物成分残基の量は、1~99モル%、5~95モル%、10~90モル%、15~85モル%、20~80モル%、25~75モル%、30~70モル%、35~65モル%、40~60モル%、45~55モル%、1~10モル%、10~20モル%、20~30モル%、30~40モル%、40~50モル%、50~60モル%、60~70モル%、70~80モル%、80~90モル%又は90~99モル%の範囲とすることができる。
【0081】
1種以上のジカルボン酸一無水物成分残基は特に限定されず、芳香族ジカルボン酸及び脂肪族ジカルボン酸からなる群から選択される、対応するジカルボン酸から誘導されたものである。
【0082】
いくつかの非限定的な実施形態では、1種以上のジカルボン酸一無水物は、5-エテニル-1,3-イソベンゾフランジオン、5-エチニルイソベンゾフラン-1,3-ジオン、5-アリルイソベンゾフラン-1,3-ジオン、5-(ビニルオキシ)イソベンゾフラン-1,3-ジオン及び5-(エチニルオキシ)イソベンゾフラン-1,3-ジオンからなる群から選択される。
【0083】
いくつかの非限定的な実施形態では、ジカルボン酸一無水物は、アルキル;アリール;ニトロ;シアノ;-N(R’)(R”);ハロ;ヒドロキシ;カルボキシ;アルケニル;アルキニル;シクロアルキル;ヘテロアリール;アルコキシ;アリールオキシ;ヘテロアリールオキシ;アルコキシカルボニル;パーフルオロアルキル;パーフルオロアルコキシ;アリールアルキル;シリル;シロキシ;シロキサン;チオアルコキシ;-S(O)-;-C(=O)-N(R’)(R”);(R’)(R”)N-アルキル;(R’)(R”)N-アルコキシアルキル;(R’)(R”)N-アルキルアリールオキシアルキル;-S(O)-アリール;及び-S(O)-ヘテロアリール;及び硬化過程で新しくC-C又はC-ヘテロ原子結合を形成する能力のある他の基;からなる群から選択される官能基で更に置換されていてもよく;R’及びR”は、出現毎に同一であるか又は異なり、アルキル、シクロアルキル又はアリール基で任意選択的に置換されており;0≦S≦2であり;官能基は、任意選択的に架橋基を含む。
【0084】
ジカルボン酸一無水物成分残基の量は、1~99モル%、5~95モル%、10~90モル%、15~85モル%、20~80モル%、25~75モル%、30~70モル%、35~65モル%、40~60モル%、45~55モル%、1~10モル%、10~20モル%、20~30モル%、30~40モル%、40~50モル%、50~60モル%、60~70モル%、70~80モル%、80~90モル%又は90~99モル%の範囲とすることができる。
【0085】
本明細書に開示する可溶性PI樹脂の非限定的な例として、以下が挙げられる:
ODPA//TFMB/APB-133/4AS 100//49/49/4;
ODPA//TFMB/APB-133/DAMA/4AS 100//46.5/46.5/5/4;
BPADA//APB-133/TFMB/4AS 100//42.5/42.5/30;
BPADA//APB-133/TFMB/4AS 100//45/45/20;
ODPA/6FDA//TFMB/PriamineTM1075/4-AS 85/15//91/05/08;
ODPA//APB-133/TFMB/DAMA/4-EA 100//46.5/46.5/05/04;
ODPA//APB-133/TFMB/M1309/4-AS 100//46/46/04/08;
BPADA//APB-133/4-AS 100//85/30;及び
BPADA//APB133/TFMB/1-(4-アミノフェニル)-1H-ピロール-2,5-ジオン) 100//42.5/42.5/30
ODPA/4-EPA//APB-133/MEMA 98/2//50/50
BPDA/4-EPA//APB-133/MEMA 85/30//50/50
BPADA//APB-133/m-トリジン/4AS 100//42.5/42.5/30
BPADA/PETA//APB-133/TFMB 85/30//50/50
BPADA/ODPA//m-トリジン/FDA/PriamineTM1075/4AS 90/10//77/10/05/16
BPADA/4-EPA//TMDA/m-トリジン 98/04//50/50。
【0086】
本明細書に開示する可溶性ポリイミド樹脂を含有する溶液は、構成成分(すなわち、モノマー及び溶媒)をどのように導入するかに関し様々な利用可能な方法を用いて調製することができる。可溶性ポリイミド樹脂の溶液を製造するいくつかの変形形態として以下が挙げられる:
(1)ジアミン成分及び二無水物成分を事前に一緒に混合し、次いでこの混合物を溶媒に少量ずつ撹拌しながら添加する方法。
(2)ジアミン成分及び二無水物成分の混合物に溶媒を(上の(a)とは反対に)撹拌しながら添加する方法。
(3)溶媒にジアミンのみを溶解し、次いでそこに二無水物を、反応速度が制御できるような比率で添加する方法。
(4)溶媒に二無水物成分のみを溶解し、次いでそこにアミン成分を、反応速度が制御できるような比率で添加する方法。
(5)ジアミン成分及び二無水物成分を別々に溶媒に溶解し、次いでこれらの溶液を反応器内で混合する方法。
(6)アミン成分を過剰に含むポリアミド酸と、二無水物成分を過剰に含む別のポリアミド酸とを事前に形成しておき、次いで、反応器内で、特に非ランダムコポリマー又はブロックコポリマーが生成するような様式で互いに反応させる方法。
(7)アミン成分及び二無水物成分の特定部分を先ず反応させ、次いで残りのジアミン成分を反応させるか又はその逆を行う方法。
(8)成分の一部又は全部を溶媒の一部又は全部のいずれかに任意の順序で添加する方法であって、任意の成分の一部又は全部は、溶媒の一部又は全部の溶液として添加することもできる、方法。
(9)まず二無水物成分のうちの1種をジアミン成分のうちの1種と反応させることにより第1ポリアミド酸を得る方法。次いで、他の二無水物成分を他のアミン成分と反応させることにより、第2のポリアミド酸を得る。次いで、膜を形成する前に、いくつかある方法のいずれか1つにより、これらのアミド酸を合わせる。
【0087】
概して、可溶性ポリイミド樹脂を含有する溶液は、上に開示した調製方法又は他の類似の方法のいずれか1つから、当業者が実施するようにして得ることができる。
【0088】
使用される具体的な1種又は複数種の溶媒の選択は一般に制限されず、当業者が選択することができる。高沸点の極性非プロトン性溶媒が好ましい場合が多い。この種の溶媒の非限定的な例としては、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ブチロラクトン、ジブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなど及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0089】
可溶性ポリイミド樹脂を調製するための方法の非限定的な例として、以下の工程を順に実施する方法が挙げられる:(a)1種以上のジアミンを高沸点極性非プロトン性溶媒に溶解する工程;(b)(a)で調製した溶液に1種以上の末端封止化合物を添加する工程;(c)(b)で調製した溶液に1種以上の二無水物を添加する工程;(d)(c)で調製した溶液を予め定められた第1期間撹拌する工程;(e)(d)で調製した溶液を予め定められた第1温度に加熱し、任意選択的に、1種以上のイミド化触媒の溶液を添加する工程;(f)(e)で調製した溶液を予め定められた第2温度に加熱し、予め定められた第2期間撹拌する工程;及び(g)(f)で調製した溶液を冷却し、固体ポリイミド樹脂を単離する工程。
【0090】
本明細書に開示する方法のいくつかの非限定的な実施形態では、上の工程(c)で調製した溶液に、1種以上の追加の溶液を段階的に添加する。いくつかの非限定的な実施形態では、この追加の溶液は、1種以上の二無水物が10モル%以下であり、いくつかの非限定的な実施形態では、1種以上の二無水物は5モル%であり、いくつかの非限定的な実施形態では、1種以上の二無水物は2.5モル%以下である。
【0091】
本明細書に開示する方法のいくつかの非限定的な実施形態では、工程(e)に使用される1種以上のイミド化触媒は、脂肪族酸無水物、酸無水物、アルコール/酸共触媒、脂肪族第三級アミン、芳香族第三級アミン及び複素環式第三級アミンからなる群から選択される。
【0092】
本明細書に開示するいくつかの非限定的な実施形態では、ポリアミド酸のキャスト液をポリイミドに転化するための転化剤(すなわち、触媒)を利用しても利用しなくてもよい熱転化プロセスを用いることができる。転化剤を使用する場合、このプロセスは、改良型(modified)熱転化プロセスと見なされる。どちらの種類の熱転化プロセスにおいても、膜の溶媒の乾燥及びイミド化反応の実施の両方を目的とする膜の加熱には、熱エネルギーのみが使用される。本明細書に開示するポリイミド膜の作製には、概して、転化触媒を使用する又は使用しない熱転化プロセスが用いられる。
【0093】
対象とする特性を付与するのは膜の組成のみでないため、方法の具体的なパラメータが事前に選択される。寧ろ、本明細書に開示する目的の使用に最も望ましい特性を達成するためには、硬化温度及び昇温プロファイルも重要な役割を果たす。ポリアミド酸をイミド化する温度は、その後に続くあらゆる処理工程(例えば、機能的ディスプレイの製造に必要な無機層又は他の層の堆積)の中で最も高い温度又はそれを超える温度とする必要があるが、この温度は、ポリアミドの重大な分解/変色が起こる温度よりも低い。特に、イミド化により高い処理温度を用いる場合は、一般に不活性雰囲気が好ましいことにも留意すべきである。
【0094】
本明細書に開示するポリアミド酸/ポリイミドを得るためには、その後に続く処理温度を300℃超とする必要がある場合は、300℃~400℃の温度が典型的に用いられる。適正な硬化温度を選択することにより、熱的特性と機械温度特性との最善のバランスを達成する十分に硬化したポリイミドを得ることが可能になる。この温度が非常に高いため、不活性雰囲気が必要となる。典型的には、オーブン内の酸素濃度は100ppm未満とするべきである。酸素濃度を非常に低くすることにより、ポリマーに重大な分解/変色を起こさせることなく最も高い硬化温度を用いることが可能になる。イミド化プロセスを加速する触媒は、約200℃~300℃の硬化温度でより高水準のイミド化を達成するのに効果的である。この手法は、硬化温度の上限をポリイミドのTよりも低くしてフレキシブルデバイスを作製する場合に、任意選択的に用いることができる。
【0095】
可能性のある硬化工程の各時間の長さもプロセスの重要な検討事項である。概して、最大温度で硬化する場合に用いる時間は最小限に維持すべきである。例えば、320℃で硬化を行う場合、不活性雰囲気中での硬化時間は最大1時間程度となり得るが、硬化温度がそれよりも高い場合は、熱分解を回避するためにこの時間を短縮すべきである。一般的に言うと、温度がより高ければ、時間をより短くすることが要求される。当業者は、ポリイミドの特性を具体的な最終用途に最適化するための温度及び時間のバランスに関し認識しているであろう。
【0096】
特定の実施形態では、可溶性ポリイミド樹脂は、PTFE製撹拌シャフト、Oリング及びベアリング組立体を備える三ツ口反応容器に、不活性雰囲気を提供するために窒素ガスを導入することにより調製することができる。ほとんどのジアミンは、所望のアミノ化合物を室温でDMAcに溶解することができる。特定の実施形態では、添加したジアミンを全て溶解するためにDMACを適切な温度に加温することができる。ジアミンの溶液を撹拌しながら、所望の二無水物モノマーを反応混合物に、内部温度が所望の温度を超えないように少量ずつ添加することができる。次いで反応混合物を、結果として得られるポリアミド酸溶液の粘度が所望の範囲になるまで撹拌することができる。
【0097】
次いでこのポリアミド酸溶液に、無水酢酸及びβ-ピコリンを添加することができる。反応混合物を80℃に加熱することができ、この温度を約3時間維持して反応を維持した後、一晩撹拌することができる。次いで、得られたポリイミドを、水及び/又は追加の析出共溶媒、例えば、メタノール、アセトンで析出させることにより粉末として単離することができる。このポリマーをメタノールで洗浄し、乾燥させることができる。ポリイミドは白色粉末として単離し、GPC及びNMR分光法により特性評価することができる。特定の実施形態及びその変形形態を実施例に示す。
【0098】
本明細書に開示するように調製された可溶性ポリイミド樹脂は、概して、それを本明細書に開示する電子用途に使用するのに十分に適したものにする複数の機械、電子的及び熱的特性を有している。いくつかの非限定的な実施形態では、可溶性ポリイミド樹脂は:(a)80,000未満のMn;(b)150,000未満のMw;(c)0.007未満の損失正接;及び(d)50ppm/K未満の熱膨張係数を有する。
【0099】
いくつかの非限定的な実施形態では、本明細書に開示する可溶性PI樹脂のMnは70,000未満であり、いくつかの非限定的な実施形態では60,000未満であり、いくつかの非限定的な実施形態では50,000未満であり、いくつかの非限定的な実施形態では40,000未満であり、いくつかの非限定的な実施形態では30,000未満であり、いくつかの非限定的な実施形態では20,000未満であり、いくつかの非限定的な実施形態では10,000未満である。
【0100】
いくつかの非限定的な実施形態では、本明細書に開示する可溶性PI樹脂のMwは140,000未満であり、いくつかの非限定的な実施形態では1300,000未満であり、いくつかの非限定的な実施形態では120,000未満であり、いくつかの非限定的な実施形態では110,000未満であり、いくつかの非限定的な実施形態では100,000未満であり、いくつかの非限定的な実施形態では90,000未満であり、いくつかの非限定的な実施形態では80,000未満であり、いくつかの非限定的な実施形態では70,000未満であり、いくつかの非限定的な実施形態では60,000未満であり、いくつかの非限定的な実施形態では50,000未満であり、いくつかの非限定的な実施形態では40,000未満であり、いくつかの非限定的な実施形態では30,000未満であり、いくつかの非限定的な実施形態では20,000未満であり、いくつかの非限定的な実施形態では10,000未満である。
【0101】
いくつかの非限定的な実施形態では、本明細書に開示する可溶性PI樹脂の損失正接(D)は0.006未満であり、いくつかの非限定的な実施形態では0.005未満であり、いくつかの非限定的な実施形態では0.004未満であり、いくつかの非限定的な実施形態では0.003未満であり、いくつかの非限定的な実施形態では0.002未満であり、いくつかの非限定的な実施形態では0.001未満である。
【0102】
いくつかの非限定的な実施形態では、本明細書に開示する可溶性PI樹脂の熱膨張係数(CTE)は40ppm/K未満であり、いくつかの非限定的な実施形態では30ppm/K未満であり、いくつかの非限定的な実施形態では20ppm/K未満であり、いくつかの非限定的な実施形態では10ppm/K未満である。
【0103】
更に、以下の2つ以上を含む液体組成物を提供する:(a)1種以上の可溶性ポリイミド樹脂を15~90重量%;(b)1種以上の架橋性化合物を5~75重量%;(c)1種以上の光開始剤又は熱ラジカル開始剤を0~5重量%;(d)1種以上の酸化触媒を0~5重量%;及び(e)1種以上の溶媒を0~65重量%。
【0104】
この1種以上の可溶性ポリイミド樹脂に関する具体的な実施形態は、本明細書において上に開示したものと同一である。
【0105】
本発明の液体組成物には任意の好適な架橋性化合物(「架橋剤」)を使用することができる。好適な架橋剤は、当業者により選択される、アルケン、フリーラジカル硬化機構、マイケル反応を進行させる官能基及びディールズアルダージエンなどの、樹脂組成物中の官能基と反応することができるものである。このような好適な架橋剤として、多官能性チオール、多官能性アジド、多官能性アジリジン及びビスアリールシクロブテンモノマーに加えて、(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリレート、マレイミド、ビスマレイミド、多官能性マレイミド、アリル化合物、ジアリル化合物、ビニルシラン化合物、ジビニル化合物、シアン酸エステル並びに二-、三-及び多官能性アミンなどの多官能性ジエノフィル又は組成物の硬化に使用される条件下で本開示のポリマーと架橋する他の好適なジエノフィルを挙げることができる。そのような架橋剤の選択は当業者の能力の範囲内である。
【0106】
いくつかの非限定的な実施形態では、1種以上の架橋剤は、多官能性チオール、多官能性アジド、多官能性アジリジン、ビスアリールシクロブテン、(メタ)アクリレート、マレイミド、アリル化合物、ビニル又は他のアルケニル化合物、ビニルシラン化合物、ジエノフィル及び他の好適な反応相手からなる群から選択される。いくつかの非限定的な実施形態では、1種以上の架橋剤は(メタ)アクリレートである。いくつかの非限定的な実施形態では、1種以上の架橋剤はマレイミドである。いくつかの非限定的な実施形態では、マレイミドは、1つ以上のビフェニル基又は長鎖脂肪族基を含む。いくつかの非限定的な実施形態では、1種以上の架橋剤は、MIR3000、MIR5000、BMI4000、BMI5100、BMI-TMH、BMI689、SR454、イソシアヌル酸トリアリル(TAIC)、シアヌル酸トリアリル(TAC)及びSPV-100からなる群から選択される。
【0107】
いくつかの非限定的な実施形態では、本明細書に開示する液体組成物は、1種以上の架橋剤を5~75重量%、いくつかの非限定的な実施形態では10~60重量%、いくつかの非限定的な実施形態では15~50重量%、いくつかの非限定的な実施形態では20~40重量%、いくつかの非限定的な実施形態では12~18重量%含む。
【0108】
本発明の液体組成物の硬化剤としては、任意の好適な光開始剤又は熱ラジカル開始剤を使用することができる。フォトリソグラフィーに有用な本開示の液体組成物には様々な硬化剤を使用することができる。好適な硬化剤は、ポリイミド含有材料の硬化を助けることができ、且つ熱又は光によって活性化することができるものである。例示的な硬化剤としては、熱的に生成する開始剤及び光活性化合物(光で生成する開始剤)を挙げることができるが、これらに限定されない。そのような硬化剤の選択は当業者の能力の範囲内である。好ましい熱的に生成する開始剤は、これらに限定されないが、アゾビスイソブチロニトリル、過酸化ジベンゾイル及び過酸化ジクミル(DCP)などのフリーラジカル開始剤である。いくつかの非限定的な実施形態では、光開始剤は、アシルホスフィンオキシド、アルファ-アミノアルキルフェノン、アルファ-ジアルキルオキシアセトフェノン及びオキシムエステルからなる群から選択される。好ましい光活性硬化剤は、IrgacureブランドでBASFから入手可能なフリーラジカル光開始剤及びジアゾナフトキノン(DNQ)化合物のスルホネートエステルを含むDNQ化合物である。好適なDNQ化合物は、DNQスルホン酸エステル部分などのDNQ部分を有する任意の化合物及び本組成物において光活性化合物として機能する任意の化合物であり、すなわちこれらは、適切な放射に曝露されると溶解抑制剤として機能する。好適なDNQ化合物は、(特許文献1)及び(特許文献2)に開示されており、これらの内容全体を参照により本明細書に援用する。
【0109】
光開始剤又は熱開始剤の量は、ポリマー固形分の総重量を基準として、0~30重量%の間で変化する。光活性化合物が存在する場合、この光活性化合物は、典型的には、ポリマー固形分の総重量を基準として、5~30重量%又は5~25重量%又は10~25重量%の量で使用される。
【0110】
本発明の液体組成物には任意の好適な酸化触媒を使用することができる。いくつかの非限定的な実施形態では、1種以上の酸化触媒は、TEMPO、4-ヒドロキシ-TEMPO、4-アミノ-TEMPO、アルキル化ヒドロキノン、アルキル化ヒドロキシトルエン、アルキル化ヒドロキシアニソール及び当業者に知られているであろう他のものからなる群から選択される。
【0111】
酸化触媒の量は、ポリマー固形分の総重量を基準として、0~30重量%の間で変化する。存在する場合、酸化触媒は、典型的には、ポリマー固形分の総重量を基準として、5~30重量%又は5~25重量%又は10~25重量%の量で使用される。
【0112】
本発明の液体組成物には、組成物の成分がその中に可溶であるか又は分散可能である限り、あらゆる好適な溶媒を使用することができる。1種以上の溶媒の非限定的な例としては、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ガンマ-ブチロラクトン、3-メトキシプロピオネート、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、3-メトキシブチルアセテート、アニソール、メシチレン、2-ヘプタノン、シレン、2-ブタノン、乳酸エチル、酢酸アミル、酢酸n-ブチル、n-メチル-2-ピロリドン、N-ブチル-2-ピロリドン、2-ブタノン、トルエン、アセトン、メチルエチルケトンなど及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0113】
溶媒は、液体組成物の成分の総重量を基準として、10~90重量%又は20~80重量%又は30~70重量%又は40~60重量%の量で存在することができる。
【0114】
更に、本明細書において上に記載した液体組成物であって、以下の1種以上を追加で含む組成物を提供する:(f)10~60重量%の量の1種以上の追加の樹脂;(g)0~10重量%の量の1種以上の表面レベリング剤;(h)0~70重量%の量の1種以上の有機又は無機フィラー及び(i)0~25重量%の1種以上の接着促進剤。
【0115】
(a)15~90重量%の1種以上の可溶性ポリイミド樹脂;(b)5~75重量%の1種以上の架橋性化合物;(c)0~5重量%の1種以上の光開始剤又は熱ラジカル開始剤;(d)0~5重量%の1種以上の酸化触媒;及び(e)0~65重量%の1種以上の溶媒に関する具体的な実施形態は、本明細書において上に開示したものと同一である。
【0116】
本明細書に開示する組成物に追加の樹脂を使用することによって、標的とする電子的用途用配合物(electronic formulation)に最適な特性を有する材料を提供することができる。追加の樹脂の非限定的な例としては、MIR-3000、NC-3000、エポキシ樹脂、ノボラック樹脂及び当業者に知られているであろう他のものが挙げられる。追加の樹脂が存在する場合、この追加の樹脂は、0.5~60重量%又は1~40重量%又は5~30重量%又は10~20重量%の量で存在することができる。
【0117】
本開示の液体組成物には任意の好適な表面レベリング剤又は「レベリング剤」を使用することができ、その選択は十分に当業者の能力の範囲内にある。レベリング剤の大部分は、次に示すモノマー:Si(R)(R)(OR(式中、R、R又はRは、C~C20アルキル若しくはC~C20脂肪族基又はC~C20アリール基からそれぞれ独立して選択される)を重合させることにより誘導されるシリコーン単位を含み得る。非限定的な一実施形態では、レベリング剤は非イオン性であり、カチオン性光硬化プロセス又は熱硬化条件下で、ケイ素及び非ケイ素樹脂中に含まれる官能基と化学反応することができる少なくとも2つの官能基を含み得る。いくつかの非限定的な実施形態では、非反応性基を含むレベリング剤が存在する。レベリング剤は、ケイ素から誘導された単位に加えて、オキシラン環を含むC~C20脂肪族分子の重合により誘導される単位も含み得る。加えて、レベリング剤は、ヒドロキシル基を含むC~C50脂肪族分子から誘導される単位も含み得る。いくつかの非限定的な実施形態では、レベリング剤はハロゲン置換基を含まない。いくつかの非限定的な実施形態では、レベリング剤の分子構造は、主に直鎖、分岐状若しくは超分岐状であるか又はグラフト構造であり得る。
【0118】
いくつかの非限定的な実施形態では;レベリング剤は、AD1700、MD700;Megaface F-114、F-251、F-253、F-281、F-410、F-430、F-477、F-510、F-551、F-552、F-553、F-554、F-555、F-556、F-557、F-558、F-559、F-560、F-561、F-562、F-563、F-565、F-568、F-569、F-570、F-574、F-575、F-576、R-40、R-40-LM、R-41、R-94、RS-56、RS-72-K、RS-75、RS-76-E、RS-76-NS、RS-78、RS-90、DS-21(DIC Sun Chemical);KY-164、KY-108、KY-1200、KY-1203(信越化学株式会社);Dowsil 14、Dowsil 11、Dowsil 54、Dowsil 57、Dowsil FZ2110、FZ-2123;Xiameter OFX-0077;ECOSURF EH-3、EH-6、EH-9、EH-14、SA-4、SA-7、SA-9、SA-15;Tergitol 15-S-3、15-S-5、15-S-7、15-S-9、15-S-12、15-S-15、15-S-20、15-S-30、15-S-40、L61、L-62、L-64、L-81、L-101、XD、XDLW、XH、XJ、TMN-3、TMN-6、TMN-10、TMN-100X、NP-4、NP-6、NP-7、NP-8、NP-9、NP-9.5、NP-10、NP-11、NP-12、NP-13、NP-15、NP-30、NP-40、NP-50、NP-70;Triton CF-10、CF-21、CF-32、CF76、CF87、DF-12、DF-16、DF-20、GR-7M、BG-10、CG-50、CG-110、CG-425、CG-600、CG-650、CA、N-57、X-207、HW 1000、RW-20、RW-50、RW-150、X-15、X-35、X-45、X-114、X-100、X-102、X-165、X-305、X-405、X-705;PT250、PT700、PT3000、P425、P1000TB、P1200、P2000、P4000、15-200(Dow Chemical);DC ADDITIVE 3、7、11、14、28、29、54、56、57、62、65、67、71、74、76、163(Dow Silicones);TEGO Flow 425、Flow 370、Glide 100、Glide 410、Glide 415、Glide 435、Glide 432、Glide 440、Glide 450、Flow 425、Wet 270、Wet 500、Rad 2010、Rad 2200N、Rad 2011、Rad 2250、Rad 2500、Rad 2700、Dispers 670、Dispers 653、Dispers 656、Airex 962、Airex 990、Airex 936、Airex 910(Evonik);BYK-300、BYK-301/302、BYK-306、BYK-307、BYK-310、BYK-315、BYK-313、BYK-320、BYK-322、BYK-323、BYK-325、BYK-330、BYK-331、BYK-333、BYK-337、BYK-341、BYK-342、BYK-344、BYK-345/346、BYK-347、BYK-348、BYK-349、BYK-370、BYK-375、BYK-377、BYK-378、BYK-UV3500、BYK-UV3510、BYK-UV3570、BYK-3550、BYK-SILCLEAN 3700、Modaflow(登録商標)9200、Modaflow(登録商標)2100、Modaflow(登録商標)Lambda、Modaflow(登録商標)Epsilon、Modaflow(登録商標)Resin、Efka FL、Additiol XL 480、Additol XW 6580及びBYK-SILCLEAN 3720からなる群から選択される。
【0119】
いくつかの非限定的な実施形態では、レベリング剤は、0~10重量%又は0~5重量%又は0~1重量%又は0.001~0.9重量%又は0.05~0.5重量%又は0.05~0.25重量%又は0.05~0.2重量%又は0.1~0.15重量%の量で存在することができる。
【0120】
本明細書に開示する液体組成物のいくつかの非限定的な実施形態では、少なくとも1種の又は2種の無機微粒子フィラーは、誘電率が5未満であり、且つ誘電損失(GHz帯)が0.002未満である無機フィラーからなる群から選択される。平均径が約2μm未満又は絶対径が約8μm未満であり、良好な絶縁特性及び/又は良好な誘電特性を有しているものであれば、上述の特性を有する任意の微粒子フィラーが概して有用である。いくつかの非限定的な実施形態では、無機微粒子フィラーの平均粒子径は、好ましくは、最終製品中の誘電性複合材料の層の厚さの10パーセント以下である。いくつかの非限定的な実施形態では、無機微粒子フィラーは、誘電率が4.0以下であり、且つ誘電損失が0.001未満である。無機微粒子フィラーの非限定的な例としては、シリカ、アルミナ、窒化ホウ素、ガラス及び石英が挙げられる。
【0121】
本明細書に開示する液体組成物のいくつかの非限定的な実施形態では、少なくとも1種の無機微粒子フィラーは、1種以上のシランカップリング剤と反応させることによって表面改質されている。この少なくとも1種の無機微粒子フィラーを表面改質するために使用されるシランカップリング剤の選択は特に限定されない。本明細書に開示する誘電体複合材料のいくつかの非限定的な実施形態では、1種以上のアクリル系シランカップリング剤は、式:
【0122】
【化5】
【0123】
(式中、Rは、出現毎に同一であるか又は異なり、アルキル、アリール、アセチル、ケトイミノ及びアルケニルからなる群から選択され;Xは、アクリルオキシ、メタクリルオキシ、アリルオキシ、ビニル、マレイミド、フマル酸エステル、マレイン酸エステル、エチニル、フェニルエチニル、フェニルアミノ、フェニル、スチルベン、プロピオラート及びフェニルプロピオル酸エステルからなる群から選択される不飽和基であり;nは0~10の整数である)によって与えられる構造を有する。いくつかの非限定的な実施形態では、シランカップリング剤はアクリル系である。いくつかの非限定的な実施形態では、シランカップリング剤は単量体であり、いくつかの非限定的な実施形態では、シランカップリング剤はビニル基を介して重合される。
【0124】
アクリル系シランカップリング剤の例としては、ビス(トリメトキシシリル)プロピルフマレート、8-メタクリルオキシオクチル-トリメトキシシラン(KBM-5803)、アクリルオキシ及びメチルメトキシシランオリゴマー(KR-513)、メタクリルオキシ及びメチルメトキシシランオリゴマー(X-40-9296)、メルカプト及びメチルメトキシシランオリゴマー(KR-519)、メルカプトメトキシシラン有機鎖オリゴマー(X-12-1154)並びに3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(KBM-503)、3-メタクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン(KBM-502)、3-メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン(KBE-503)、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(KBM-573)及びフェニルトリメトキシシラン(KBM-103)を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0125】
本明細書に開示する誘電体複合材料のいくつかの非限定的な実施形態では、1種以上のアクリル系シランカップリング剤は、無機微粒子フィラーを表面改質するための1種以上の高分子シランと併用される。いくつかの非限定的な実施形態では、1種以上の高分子シランは、式:
【0126】
【化6】
【0127】
(式中、R27は、アルキル及びHからなる群から選択され;R28は、アルキル及びアリール、アセチル、ケトイミノ並びにアルケニルからなる群から選択され;R29は、COOCHCH=CH、CH及びHからなる群から選択され;R30は、4-アリルオキシフェニル、COOCHCH=CH及び反応性ジエノフィルを含む任意の基からなる群から選択され;X及びYは同一であるか又は異なり、メチル及びHからなる群から選択され;m及びnは同一であるか又は異なり、10~1000の整数であり;oは0~1000の整数であり;pは0~10の整数である)で与えられる構造を有する。
【0128】
いくつかの非限定的な実施形態では、本明細書に開示する液体組成物は、1種以上の無機微粒子フィラーを0~80重量%、いくつかの非限定的な実施形態では20~75重量%、いくつかの非限定的な実施形態では40~72重量%、いくつかの非限定的な実施形態では54~68重量%含む。
【0129】
いくつかの非限定的な実施形態では、本明細書に開示する液体組成物は、ゴム粒子などであってもよい1種以上の有機微粒子フィラーを含む。ゴム粒子は、本開示の樹脂組成物の調製に使用される有機溶媒にさえも溶解せず、アリールシクロブテン樹脂などの樹脂組成物の構成成分とも混和しない。したがって、本発明におけるゴム粒子は、本開示の樹脂組成物のワニス中に分散した状態で存在する。このようなゴム粒子は、通常、これらが有機溶媒及び樹脂に溶解しない程度までゴム成分の分子量を高くして、粒子にすることによって調製される。例えば、溶媒に可溶であり、樹脂組成物中のアリールシクロブテン樹脂などの他の成分と混和性を示すゴム成分を配合してしまうと、粗面化処理後の粗さが大幅に増大し、硬化後の生成物の耐熱性も低下する。
【0130】
本発明のゴム粒子の非限定的な例としては、コアシェル型ゴム粒子、架橋アクリロニトリルブタジエンゴム粒子、架橋スチレンブタジエンゴム粒子及びアクリレートゴム粒子が挙げられる。コアシェル型ゴム粒子は、粒子がコア層及びシェル層を有するゴム粒子であり、その例が、外層であるシェル層がガラス状ポリマーであり、内層であるコア層がゴム状ポリマーである2層構造及び外層であるシェル層がガラス状ポリマーであり、中間層がゴム状ポリマーであり、コア層がガラス状ポリマーである3層構造である。ガラス層は、例えば、メタクリル酸メチルのポリマーから構成され、一方、ゴム状ポリマーは、例えば、アクリル酸ブチルのポリマー(ブチルゴム)から構成される。コアシェル型ゴム粒子の具体例としては、Staphyloid AC 3832及びAC 3816 N(Ganz Chemical Co.,Ltd.の商品名)及びMetablen KW-4426(三菱レイヨン株式会社の商品名)が挙げられる。アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)粒子の具体例としては、XER-91(平均粒子径:0.5μm;JSR株式会社製)などが挙げられる。スチレンブタジエンゴム(SBR)粒子の具体例として、XSK-500(平均粒子径:0.5μm;JSR株式会社製)などが挙げられる。アクリレートゴム粒子の具体例として、Metablen W300A(平均粒子径:0.1μm)及びW450A(平均粒子径:0.2μm)(三菱レイヨン株式会社製)が挙げられる。このようなゴム粒子は、硬化物の機械強度の向上、硬化物の応力の緩和などの効果を付与することができる。
【0131】
配合されるゴム粒子の平均粒子径は、概して0.005~1μmの範囲内にあり、いくつかの非限定的な実施形態では0.2~0.6μmの範囲内にある。本発明におけるゴム粒子の平均粒子径は、動的光散乱法を用いて測定することができる。この測定は、例えば、ゴム粒子を適切な有機溶媒中に超音波などにより均一に分散させ、FPRA-1000(大塚電子株式会社製)を使用してゴム粒子の質量基準の粒子径分布を作成することにより実施され、そのメジアン径を平均粒子径として採用する。
【0132】
いくつかの非限定的な実施形態では、本明細書に開示する液体組成物は、1種以上の有機微粒子フィラーを0~80重量%、いくつかの非限定的な実施形態では20~75重量%、いくつかの非限定的な実施形態では40~72重量%、いくつかの非限定的な実施形態では54~68重量%含む。
【0133】
本開示の液体組成物には任意の好適な接着促進剤を使用することができ、その選択は十分に当業者の能力の範囲内にある。いくつかの非限定的な例において、接着促進剤は、シラン含有材料若しくはチタン酸テトラアルキルであるか又はトリアルコキシシラン含有材料である。例示的な接着促進剤としては、これらに限定されるものではないが、ビス(トリメトキシシリルエチル)ベンゼンなどのビス(トリアルコキシシリルアルキル)ベンゼン;アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン及びフェニルアミノプロピルトリエトキシシランなどのアミノアルキルトリアルコキシシラン;並びに他のシランカップリング剤並びに前述したものの混合物が挙げられる。いくつかの非限定的な実施形態では、使用される接着促進剤は、ジエノフィルからなる群から選択される。接着促進剤は、プライマー層として最初に適用するか、又は組成物の添加剤として適用することができる。適切な接着促進剤の非限定的ないくつかの例として、AP3000、AP8000及びAP9000C(DuPont de Nemours、Wilmington、DE)が挙げられる。
【0134】
他の好適な接着促進剤としては、他のヘテロ原子を含んでも含まなくてもよい有機リン化合物が挙げられる。このような化学種は特に限定されず、概して、P(III)、P(V)の有機リン化合物及びこれらの誘導体からなる群から選択される。
【0135】
P(III)の有機リン化合物の非限定的な例としては、ホスフィン(PR、アルキルジアリールホスフィン、二座アルキルジアリールホスフィン、二座トリアリールホスフィン、ジアルキルアリールホスフィン、トリアルキルホスフィン、トリアリールホスフィンを含む)、アミノホスフィン(PR(NR))、ホスフィニット(PR(OR))、ジアミノホスフィン(PR(NR)、ホスホンアミダイト(PR(OR)(NR)、ホスホナイト(PR(OR)、ジアルキルアリールホスホナイト及び二座アリールホスホナイトを含む)、トリアミノホスフィン(P(NR)、ホスホロジアミダイト(P(OR)(NR)、ホスホロアミダイト(P(OR)(NR)及びホスファイト(P(OR)、トリアリールホスファイト及び二座アリールホスファイトを含む)が挙げられる。通常、これらのP(III)化合物において、Rは、水素、置換若しくは無置換(C1~C30)アルキル、置換若しくは無置換(C2~C30)アルケニル、置換若しくは無置換(C5~C30)アリール、置換若しくは無置換5~30員ヘテロアリール又はCNからなる群から選択されるか;或いは、隣接する置換基に連結して、置換又は無置換の単環式又は多環式の(C5~C30)脂肪族環又は芳香族環を形成していてもよく、その炭素原子は、窒素、酸素、硫黄、Si、PO、SO、SO及びSeOから選択される少なくとも1個のヘテロ原子で置き換えられていてもよい。
【0136】
P(III)の有機リン化合物のいくつかの非限定的な実施形態では、Rの少なくとも1個がC1~C30アルキルであり、いくつかの実施形態では、全てのRがC1~C30アルキルである。
【0137】
P(V)の有機リン化合物の非限定的な例としては、ホスフィンオキシド(PR(O)、トリアルキルホスフィンオキシド及びトリアリールホスフィンオキシドを含む)、ホスフィナート(PR(O)(OR)、アリールホスフィン酸及びジアルキルホスフィン酸を含む)、ホスフィンアミド(PR(O)(NR))、ホスホナート(PR(O)(OR)、トリアルキルホスホナート、トリアリールホスホナート及びジアルキルアリールホスホナートを含む)、ホスホンアミデート(PR(O)(OR)(NR))、ホスホンアミド(PR(O)(NR)、ホスフェート(P(O)(OR)、アルキルリン酸を含む)、ホスホロアミデート(P(O)(OR)(NR))、ホスホロジアミデート(P(O)(OR)(NR)及びホスホロアミド(P(O)(NR)が挙げられる。通常、これらのP(V)化合物において、Rは、出現毎に同一であるか又は異なり、水素、置換若しくは無置換(C1~C30)アルキル、置換若しくは無置換(C2~C30)アルケニル、置換若しくは無置換(C5~C30)アリール、置換若しくは無置換5~30員ヘテロアリール又はCNからなる群から選択されるか;或いは、隣接する置換基に連結して、置換又は無置換の単環式又は多環式の、(C5~C30)の脂肪族環又は芳香族環を形成していてもよく、その炭素原子は、窒素、酸素、硫黄、Si、PO、SO、SO及びSeOから選択される少なくとも1個のヘテロ原子に置き換えられていてもよい。
【0138】
P(V)の有機リン化合物のいくつかの非限定的な実施形態では、Rの少なくとも1個はC1~C30アルキルであり、いくつかの実施形態では、全てのRがC1~C30アルキルである。いくつかの非限定的な実施形態では、有機リン化合物は、SP670及びSP703(四国化成工業株式会社)などのリン酸エステルアミド化合物、SPB-100、SPV-100及びSPE-100(大塚化学株式会社)並びにFPシリーズ(株式会社伏見製薬所)などのホスファゼン化合物とすることができる。有用な可能性のある金属水酸化物としては、UD65、UD650及びUD653(宇部マテリアルズ株式会社)などの水酸化マグネシウム;並びにB-30、B-325、B-315、B-308、B-303及びUFH-20(巴工業株式会社)などの水酸化アルミニウムが挙げられる。
【0139】
好ましい接着促進剤としては、本開示の被覆用組成物の1種以上の構成成分を架橋する能力を有するものを挙げることができる。このような接着促進剤は、ビニル、スチリル、マレイミド、アクリル、メタクリル、アリル系、アルキニル又は機能的均等物からなる群から選択される1種以上の官能基を含む。
【0140】
本開示の液体組成物は、接着促進剤を、組成物の総重量を基準として0~25重量%又は1~20重量%又は2~15重量%又は5~10重量%含有し得る。
【0141】
更に、本明細書に開示する1種以上の液体組成物を含む架橋樹脂を提供する。
【0142】
架橋樹脂の成分に関する具体的な実施形態は、本明細書において上に開示したものと同一である。
【0143】
本明細書に開示するように調製された架橋樹脂は、概して、それを本明細書に開示する電子用途に使用するのに十分に適したものにする複数の機械的、電子的及び熱的特性を有している。いくつかの非限定的な実施形態では、架橋樹脂は以下を示す:(1)50ppm/K未満の熱膨張係数;(2)180℃を超えるTg;(3)0.007未満のDf;(4)3.3未満のDk;及び(5)90MPaを超える引張強度。
【0144】
いくつかの非限定的な実施形態では、本明細書において調製された架橋樹脂は、熱膨張係数が40ppm/K未満であり、いくつかの非限定的な実施形態では30ppm/K未満であり、いくつかの非限定的な実施形態では20ppm/K未満であり、いくつかの非限定的な実施形態では10ppm/K未満である。
【0145】
いくつかの非限定的な実施形態では、本明細書において調製された架橋樹脂は、Tgが180℃を超え、いくつかの非限定的な実施形態では190℃を超え、いくつかの非限定的な実施形態では200℃を超え、いくつかの非限定的な実施形態では210℃を超え、いくつかの非限定的な実施形態では220℃を超え、いくつかの非限定的な実施形態では230℃を超え、いくつかの非限定的な実施形態では240℃を超え、いくつかの非限定的な実施形態では250℃を超える。
【0146】
いくつかの非限定的な実施形態では、本明細書において調製された架橋樹脂は、Dfが0.006未満であり、いくつかの非限定的な実施形態では0.005未満であり、いくつかの非限定的な実施形態では0.004未満であり、いくつかの非限定的な実施形態では0.002未満であり、いくつかの非限定的な実施形態では0.001未満である。
【0147】
いくつかの非限定的な実施形態では、本明細書において調製された架橋樹脂は、Dkが3.2未満であり、いくつかの非限定的な実施形態では3.1未満であり、いくつかの非限定的な実施形態では3.0未満であり、いくつかの非限定的な実施形態では2.9未満であり、いくつかの非限定的な実施形態では2.8未満であり、いくつかの非限定的な実施形態では2.7未満であり、いくつかの非限定的な実施形態では2.6未満であり、いくつかの非限定的な実施形態では2.5未満であり、いくつかの非限定的な実施形態では2.4未満であり、いくつかの非限定的な実施形態では2.3未満であり、いくつかの非限定的な実施形態では2.2未満であり、いくつかの非限定的な実施形態では2.1未満であり、いくつかの非限定的な実施形態では2.0未満である。
【0148】
いくつかの非限定的な実施形態では、本明細書において調製された架橋樹脂は、引張強度が100MPaを超え、いくつかの非限定的な実施形態では110MPaを超え、いくつかの非限定的な実施形態では120MPaを超え、いくつかの非限定的な実施形態では130MPaを超え、いくつかの非限定的な実施形態では140MPaを超え、いくつかの非限定的な実施形態では150MPaを超え、いくつかの非限定的な実施形態では160MPaを超え、いくつかの非限定的な実施形態では170MPaを超え、いくつかの非限定的な実施形態では180MPaを超え、いくつかの非限定的な実施形態では190MPaを超え、いくつかの非限定的な実施形態では200MPaを超える。
【0149】
本明細書に開示する可溶性ポリイミド樹脂を含む架橋樹脂を調製するための方法の非限定的な例は、以下に示す順序の工程を含む:(a)本明細書に開示する液体組成物を基材上に塗工する工程;(b)塗工された基材を予め選択された1つ以上の温度で予め選択された1つ以上の長さの時間ソフトベークする工程;(c)塗工された基材を予め選択された波長及び予め選択された照射量のUV放射に予め選択された長さの時間露光する工程;(d)塗工され、UV照射された基材を複数の予め選択された温度で複数の予め選択された長さの時間処理する工程:(e)塗工され、UV照射され、熱処理された基材を放冷する工程;及び(f)塗膜を溶媒浴で現像し、リンスする工程。
【0150】
本開示の液体組成物は、本開示の1種以上の可溶性ポリイミドと、任意の有機溶媒と、水又は追加の成分と、硬化剤としての光活性化合物とを任意の順序で組み合わせることによって調製することができる。有機溶媒は上に記載したものと同一である。本組成物が、ジアゾナフトキノン、オニウム塩又は光開始剤などの光活性化合物を含有する場合は、硬化剤を先ず好適な有機溶媒又はアルカリ水溶液に溶解し、次いで1種以上の本ポリマー及び任意の任意選択的な界面活性剤と混ぜ合わせ、次いで任意の任意選択的な接着促進剤と混ぜ合わせることが好ましい。好適な光活性化合物の選択は当該技術分野の通常の技術水準の範囲内にある。
【0151】
いくつかの非限定的な実施形態では、本開示の液体組成物は、基板上に任意の好適な方法によって塗工又は堆積させることができる。基板は上に記載したものと同一であり得る。本組成物の塗工に適した方法としては、数ある方法の中でも、スピンコート、カーテンコート、スプレーコート、ローラーコート、ディップコート、蒸着及び真空ラミネート並びに熱ロールラミネートなどのラミネートを挙げることができるが、これらに限定されない。半導体製造業において、スピンコートは、既存の設備及びプロセスを活用するための好ましい方法である。スピンコートでは、塗布される表面上で組成物の所望の厚さを達成するために、組成物の固形分を、回転速度と共に調整することができる。
【0152】
本開示の液体組成物が接着促進剤を含有しない場合、本組成物が塗工される基板の表面を、任意選択的に、先ず好適な接着促進剤と接触させるか又は蒸気処理することができる。当該技術分野において公知のプラズマ処理などの様々な蒸気処理を行うことにより、基板表面への本開示のポリマーの接着性を高めることができる。特定の用途においては、本組成物で表面を塗工する前に接着促進剤を使用して基板表面を処理することが好ましい場合もある。接着促進剤は上に記載したものと同一である。
【0153】
典型的には、本開示の液体組成物は、400~4000rpmの回転速度でスピンコートされる。ウェハ又は基板上に吐出される本組成物の量は、組成物中の総固形分、結果として生成する層の所望の厚さ及び当業者に公知のその他の因子に依存する。本組成物の膜又は層がスピンコートによってキャスティングされる場合、溶媒の多く(又は全て)は、膜の堆積中に蒸発する。好ましくは、表面上に堆積した後の組成物は、あらゆる残留溶媒を除去するために加熱(ソフトベーク)される。典型的なベーク温度は80~120℃であるが、他の温度を好適に用いることもできる。残留溶媒を除去するためのそのようなベーキングは、典型的には、およそ1~5分間行われるが、より長い時間又はより短い時間も好適に用いられ得る。
【0154】
本開示の組成物は、典型的には、ある一定の時間加熱することによって硬化する。好適な硬化温度は、140~300℃;又は170~250℃の範囲にある。典型的には、硬化時間は、1~600分間又は30~240分間又は30~120分間の範囲にある。
【0155】
概して、形成された樹脂組成物層の厚さは、導電層の厚さ以上である。回路基板の導電層の厚さは、概して5~70μmの範囲内にあるので、樹脂組成物層の厚さは、概して10~100μmである。
【0156】
更に、表面処理された金属箔であって、金属箔の少なくとも1つの表面は、(a)1種以上の可溶性ポリイミド樹脂と;(b)1種以上の無機フィラーと;(c)1種以上の接着促進剤と;(d)1種以上の開始剤と;を含む表面処理剤を含み;この1種以上の接着促進剤は、表面処理剤の1種以上の成分と共に架橋剤として機能することができる、金属箔を提供する。
【0157】
金属箔の非限定的な例は、銅箔、ニッケル箔、コバルト箔、チタン箔、ステンレス鋼箔及び当業者に知られている他のものからなる群から選択される。
【0158】
一実施形態では、本明細書に記載するポリマーを含む液体組成物は、銅箔上に塗工することができる。その結果として、いくつかの非限定的な実施形態では、表面処理された銅箔であって、この表面処理された銅箔の少なくとも1つの面に、(a)15~90重量%の1種以上の可溶性ポリイミド樹脂と;(b)5~75重量%の1種以上の架橋性化合物と;(c)0~5重量%の1種以上の光開始剤と;(d)0~5重量%の1種以上の酸化触媒と;(e)0~65重量%の1種以上の溶媒と;(f)0~60重量%の1種以上の追加の樹脂と;(g)0~10重量%の1種以上の表面レベリング剤と;(h)0~70重量%の1種以上の有機又は無機フィラーと;(i)0~25重量%の1種以上の接着促進剤と;を含む銅箔が得られる。この組成物の(a)~(i)に関連する実施形態は、樹脂、組成物などに含まれる対応する成分に関し本明細書の他の箇所に開示したものと概して同一である。
【0159】
銅箔には、圧延焼鈍(RA)銅箔及び電着(ED)銅箔が含まれる。これらの箔は様々な方法を用いて製造されるので、これらは、機械的特性、屈曲性及び必要とされる銅の粗面化処理に関し互いに異なる可能性がある。概して、ED銅箔は、光沢のない面(析出面)及び光沢のある面(ドラム面)を有し;一方、RA銅箔は、両方の表面が平滑である。本銅箔は、高周波数及び/又は高速用途向けフレキシブル銅張積層板(FCCL)及びフレキシブルプリント回路基板(FPCB)に使用することが意図されているため、好適な銅箔は、未処理銅箔の表面の少なくとも1つに従来の表面処理を施すことにより得られる、表面処理された銅箔である。
【0160】
銅箔がフレキシブル銅張積層板に組み込まれている場合、銅箔の誘電体層に面している側は「積層側」と呼ばれる。「積層側」の反対側は「レジスト側」と呼ばれる。本表面処理銅箔が1つのみの処理表面を有するのであれば、その処理表面は、フレキシブル銅張積層板に組み込まれる際は積層側になる。
【0161】
電流密度及び/又はめっき時間及び/又はめっき浴の温度及び/又はめっき液の添加剤を制御することによって、異なる粒径、表面粗さ及び厚さを有する表面処理銅箔を得ることができる。
【0162】
いくつかの非限定的な実施形態では、本明細書に使用される銅箔は、Mitsui MT 18FL(1.5μm、18μmのキャリアを備える)、BF-NN-HT、BFL-NN-HT、BFL-NN-Zなどからなる群から選択される。
【0163】
本発明のいくつかの非限定的な実施形態では、本表面処理銅箔の断面の平均粒径は、好ましくは2.5μm以又は2.0μm以下である。
【0164】
導体損失を増加させることなく適切な接着性を確保するという観点から、表面処理銅箔の少なくとも1つの処理表面の、レーザー顕微鏡によって測定される表面粗さ(Sz、10点平均粗さ)は、2.5μm以下又は2.0μm以下である。表面粗さ(Sz)は、ISO 25178に従いレーザー顕微鏡を用いて測定される。
【0165】
本表面処理銅箔の積層側及び/又はレジスト側には、FPCに使用するために銅箔の適応性を高めることを目的として、ノジュール形成層、不動態化層及び/又は接着促進層を組み込むことができる。表面処理銅箔のレジスト側の表面特性は、その後に続くマイクロエッチング、酸リンス、褐色酸化物処理、黒色酸化物処理、予備はんだマスク処理などの多くのプリント回路製造プロセスによる影響を受ける。したがって、表面粗さ、ノジュール密度及び銅以外の金属元素の総量が本表面処理銅箔の積層側の評価基準となる。いくつかの非限定的な実施形態では、表面処理銅箔の少なくとも1つの処理表面は、ノジュール密度が300個/25μm以下;又は200個/25μm以下;又は100個/25μm以下;又は50個/25μm以下であるノジュール形成層を含む。
【0166】
ノジュール形成電着(nodule electrodeposition)処理を行った後、変色防止、耐熱性及び耐薬品性などの追加の所望の特性を付与するために、銅箔の片面又は両面に1つ以上の不動態化処理を適用することができる。不動態化層は、一般に、亜鉛、ニッケル、クロム、コバルト、モリブデン、タングステン及びこれらの組み合わせなどの銅以外の金属元素を含む。
【0167】
本表面処理銅箔がフレキシブル銅張積層板に組み込まれる場合、銅箔と誘電体層との間の接着は、銅箔の粗さによる機械的接着に由来するが、接着促進層が存在する場合、接着促進剤による化学結合にも由来する。一般に、最終表面処理は、リン系又はシラン系カップリング剤などの公知の接着促進剤で処理することによって接着促進層を形成することにより行われる。接着促進剤による処理が完了した後、電気ヒーターで水分を除去することにより、本発明の表面処理銅箔を得ることができる。
【0168】
いくつかの非限定的な実施形態では、本明細書に開示する表面処理された金属箔を備える構造体が形成される。この構造体は、金属表面を有する基板と、金属表面上に配された表面処理剤とを備え、表面処理剤は、硬化したバルクポリイミド樹脂及び無機フィラーを含み、無機フィラーの少なくとも一部は硬化したバルクポリマー材料に結合しており;この誘電体層は、金属表面に隣接する第1領域を含む。この構造体は、第1領域に隣接し、金属表面の反対側にある第2領域を更に含み、第1領域は無機フィラーを相対的に少ない量で含み、第2領域は無機フィラーを相対的に多い量で含む。このような構造体を形成することにより、金属箔及び表面処理剤の間の接着性を向上することができ、これは例えば(特許文献3)に記載されている。
【0169】
表面処理銅箔の作製については以下の実施例項で更に例示する。
【0170】
更に、ドライフィルムであって:(a)1種以上のテトラカルボン酸成分残基と;(b)1種以上のジアミン成分残基と;(c)1種以上の末端封止化合物と;を含む可溶性ポリイミド樹脂を含み:この1種以上の末端封止化合物は1つ以上の架橋基を含む、ドライフィルムを提供する。
【0171】
1種以上の末端封止化合物が1つ以上の架橋基を含む、(a)1種以上のテトラカルボン酸成分残基;(b)1種以上のジアミン成分残基;及び(c)1種以上の末端封止化合物に関する特定の実施形態は、本明細書において上に開示したものと同一である。
【0172】
このようなドライフィルムの作製において、本明細書に開示する組成物を、スロットダイコーター又は他の適切な装置を介してキャスティングすることにより、マイクロエレクトロニクス用途に望ましいドライフィルムを形成することができる。キャスト膜は、残留溶媒を除去するために70~150℃又は90~120℃の温度で30秒~10分間ソフトベークすることができる。次いでソフトベークされた膜を、30分~4時間、150~250℃の硬化条件に付すことができる。
【0173】
他の非限定的な実施形態では、本開示の液体組成物の層は、ドライフィルムとして形成し、ラミネートによって基板表面に配置することができる。好適な基板の非限定的な例として、シリコン、銅、銀、酸化インジウムスズ、二酸化ケイ素、ガラス、窒化ケイ素、アルミニウム、金、ポリイミド及びエポキシモールドコンパウンドが挙げられる。ラミネートに基づくプロセスにおいて、接着膜が厚さ1~40μmの保護膜を有する場合は、先ず保護膜を剥がした後、必要に応じて接着膜及び回路基板を予熱し、接着膜を加圧及び加熱しながら回路基板に圧着する。いくつかの非限定的な実施形態では、接着膜を真空ラミネート法により減圧下で回路基板にラミネートする方法が好適に採用される。非限定的なラミネート条件には、圧着温度(ラミネート温度)を70~140℃とし、圧着圧力を1~11kgf/cm(9.8×10~107.9×10N/m)とし、空気圧を20mHg(26.7hPa)以下に減圧することが含まれ得る。ラミネート方法は、バッチ式であってもロールを使用する連続式であってもよい。真空ラミネートは、市販の真空ラミネーターを使用して行うことができる。市販の真空ラミネーターの例としては、ニチゴー・モートン株式会社製の真空アプリケーター、株式会社名機製作所製の真空加圧ラミネーター、株式会社日立インダストリイズ製のロール式ドライコーター及び日立エーアイシー株式会社製の真空ラミネーターが挙げられる。
【0174】
いくつかの非限定的な実施形態では、金属箔の表面粗さは50~1000nmであり、いくつかの非限定的な実施形態では100~1000nmであり、いくつかの非限定的な実施形態では150~1000nmであり、いくつかの非限定的な実施形態では200~1000nmである。いくつかの非限定的な実施形態では、金属箔の厚さは、1~2.5μmであり、いくつかの非限定的な実施形態では1~5.0μmであり、いくつかの非限定的な実施形態では1~10μmであり、いくつかの非限定的な実施形態では1~20.0μmである。
【0175】
いくつかの非限定的な実施形態では、ドライフィルムの金属箔に対する接着エネルギーG1cは60~80J/mであり、いくつかの非限定的な実施形態では70~90J/mであり、いくつかの非限定的な実施形態では80~100J/mであり、いくつかの非限定的な実施形態では100J/m未満であり;G1cは、亀裂伝播開始時の接着エネルギーを指す。いくつかの非限定的な実施形態では、金属箔に対するドライフィルムのピール強度は0.3N/mmを超え、いくつかの非限定的な実施形態では0.4N/mmを超え、いくつかの非限定的な実施形態では0.5N/mmを超え、いくつかの非限定的な実施形態では0.6N/mmを超え、いくつかの非限定的な実施形態では0.7N/mmを超える。
【0176】
減圧下で加熱及び加圧を行うラミネート工程は、一般的な真空熱プレス機を使用して行うことができる。例えば、ラミネート工程は、加熱されたSUS板などの金属板を支持層側から押し付けることによって行うことができる。ラミネートは、通常1×10-2MPa以下の減圧下で行われ、いくつかの非限定的な実施形態では、1×10-3MPa以下で行われる。加熱及び加圧は1段階で行うことができるものの、通常は樹脂のブリードを抑えるために加熱及び加圧を2段階以上に分けて行うと有利である。例えば、1段階目のプレスは、1~15kgf/cmの圧力及び70~150℃の温度で行うことができ、2段階目のプレスは、1~40kgf/cmの圧力及び150~200℃の温度で行うことができる。いくつかの非限定的な実施形態では、プレスは各段階で30~120分間行われる。市販の真空ホットプレス機の例としては、MNPC-V-750-5-200(株式会社名機製作所)及びVH1-1603(北川精機株式会社)が挙げられる。
【0177】
回路基板に接着膜をラミネートし、ラミネートを室温程度まで冷却し、支持体を剥離する場合は支持体を剥離した後、樹脂組成物層を熱硬化させることによって、回路基板上に絶縁層を形成することができる。熱硬化の適切な条件は、本明細書に開示の樹脂組成物中の各樹脂成分の種類及び含有量に応じて選択することができる。いくつかの非限定的な実施形態では、熱硬化のための温度及び時間は150~220℃で20~180分間の範囲から選択され、いくつかの非限定的な実施形態では160~210℃で30~120分間の範囲から選択される。
【0178】
絶縁層を形成した後、硬化前に支持体を剥離しなかった場合は支持体を剥離する。その後、回路基板上に形成された絶縁層を必要に応じて穿孔することにより、ビアホール又はスルーホールを形成する。穿孔は、例えば、ドリル、レーザー、プラズマなどを含む当業者に公知の1つ以上の方法によって行うことができる。いくつかの非限定的な実施形態では、穿孔は、炭酸ガスレーザー及びYAGレーザーなどのレーザーを使用して達成される。
【0179】
続いて、乾式めっき又は湿式めっきにより、絶縁層上に導電層を形成する。乾式めっき法の非限定的な例としては、蒸着、スパッタリング及びイオンプレーティングが挙げられる。湿式めっきでは、絶縁層の表面に、膨潤液による膨潤処理、酸化剤による粗面化処理、中和液による中和処理を順次施すことにより、凹凸のアンカーを形成する。膨潤液による膨潤処理は、絶縁層を50~80℃の膨潤液に5~20分間浸漬することによって行うことができる。膨潤液の非限定的な例としては、アルカリ溶液及び界面活性剤溶液が挙げられる。アルカリ溶液の例としては、水酸化ナトリウム溶液及び水酸化カリウム溶液が挙げられる。市販の膨潤液としては、Swelling Dip Securiganth P及びSwelling Dip Securiganth SBU(アトテックジャパン株式会社)が挙げられる。酸化剤による粗面化処理は、絶縁層を60~80℃の酸化剤溶液に10~30分間浸漬することによって行うことができる。酸化剤の非限定的な例としては、過マンガン酸カリウム又は過マンガン酸ナトリウムを水酸化ナトリウムの水溶液に溶解させたアルカリ性過マンガン酸塩溶液、重クロム酸塩、オゾン、過酸化水素/硫酸及び硝酸が挙げられる。アルカリ性過マンガン酸塩溶液中の過マンガン酸塩の濃度は約5~10重量%とすることができる。市販の酸化剤の例としては、Concentrate Compact CP及びDosing Solution Securiganth P(アトテックジャパン株式会社)などのアルカリ性過マンガン酸塩溶液が挙げられる。中和液による中和処理は、絶縁層を30~50℃の中和液に3~10分間浸漬することにより行うことができる。いくつかの非限定的な例では、中和液は酸性水溶液とすることができる。市販の中和液の例としては、Reduction Solution Securiganth P(アトテックジャパン株式会社)が挙げられる。
【0180】
別法として、導電層の反転パターンであるめっきレジストを形成し、無電解めっきのみを行うことによって導電層を形成してもよい。それに続くパターン形成方法として、当業者に公知のサブトラクティブ法又はセミアディティブ法を使用してもよい。
【0181】
更に、多層プリント配線板であって:(a)1種以上のテトラカルボン酸成分残基と;(b)1種以上のジアミン成分残基と;(c)1種以上の末端封止化合物と;を含む可溶性ポリイミド樹脂から形成された絶縁層であって:この1種以上の末端封止化合物は1つ以上の架橋基を含む、絶縁層と;めっきにより形成された導電層と;を備える多層プリント配線板も提供する。可溶性ポリイミド樹脂及び導電層に関する特定の実施形態は、本明細書において上に開示したものと同一である。
【0182】
本開示は、電子デバイス基板上に本出願の誘電体膜の少なくとも1つの層を備える多種多様な電子デバイスにも関する。電子デバイス基板は、任意の電子デバイスの製造に使用される任意の基板とすることができる。例示的な電子デバイス基板としては、これらに限定されないが、半導体ウェハ、ガラス、サファイア、シリケート材料、窒化ケイ素材料、炭化ケイ素材料、ディスプレイデバイス基板、エポキシモールドコンパウンドウェハ(epoxy mold compound wafer)、回路基板基材及び熱的に安定なポリマーが挙げられる。
【0183】
本明細書に記載されるものと同様の又は均等な方法及び材料が本発明の実施又は試験において使用できるが、好適な方法及び材料を以下に記載する。更に、この材料、方法及び実施例は例示に過ぎず、限定することを意図していない。本明細書に記載する全ての刊行物、特許出願、特許及び他の参考文献全体を、参照により本明細書に援用する。
【実施例0184】
本明細書に記載する概念を以下の実施例において更に説明するが、これは特許請求の範囲に記載する本発明の範囲を限定するものではない。
【0185】
原材料:
ジアミン、二無水物及びポリイミド合成のための試薬は全てTCI America,Inc及びSigma Aldrichから入手した。本開示において使用する(二)無水物、(ジ)アミン、ポリイミド及び関連する呼称には以下が含まれる:6FDA(4,4’-ヘキサフルオロイソプロピリデンビスフタル酸二無水物)、BPDA(3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物)、FDA(9,9’-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン)、TFMB(2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン)、BPADA(4,4’-ビスフェノールA型酸二無水物)、APB-133(1,3’-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン)、ODPA(4,4-オキシジフタル酸無水物)、(4-エチニルアニリン)(4-EA)、(ビス(3-アミノプロピル)末端ポリ(ジメチルシロキサン)(平均Mn約2500))、DAMA (2,4-ジアミノ-6-ジアリルアミノ-1,3,5-トリアジン)、4AS(4-アミノスチレン)、4-EPA(4-エチニルフタル酸無水物)、MEMA(4,4’-メチレンビス(2-エチル-6-メチルアニリン))、DMAC(ジメチルアセトアミド)及びPAA(ポリアミド酸)。全ての他の溶媒及び化学物質は、Fisher Scientificから入手し、更に精製することなく、入手したままの状態で使用した。
【0186】
厚さ18μmの銅箔を、光学顕微鏡で測定した粗さが平均400nmになるまで粗面化エッチング処理剤MEC CZ8101(メック株式会社の製品)に曝露した。
【0187】
分子量測定:
(1)ポリイミド樹脂:
ポリイミド樹脂の分子量測定にはポンプ及びインジェクターを含むWatersのModel BreezeTMを使用した。移動相は、塩化リチウム0.1%(wt/v)及びパラ-トルエンスルホン酸0.025%(wt/v)を含むジメチルアセトアミドから構成されるものとした。分離カラムは、2本のShodex GPC KD806スチレン-ジビニルベンゼンゲル、1本のWaters Styragel HR 0.5及び1本のWaters Styragel HR1の組とした。カラム温度を40℃とし、流量を1.0ml/分とし、検出器を、セルのサイズが10マイクロリットルであるWatersからの2414TM示差屈折率検出器とした。試料濃度を1.0mg/mlとし、試料の注入量を0.100mlとした。分子量はポリスチレン標準物質により決定した。データの収集及び処理にはWatersからのシステムであるBreezeTM v.2を使用した。
【0188】
分子量分布及び平均分子量はGPC法により相対較正を用いて測定した。固体ポリマー5.0mgを20mlの瓶に装入し、溶離液5.0mL(塩化リチウム0.1%及びトルエンスルホン酸250ppmを含むN,N-ジメチルアセトアミド)を加え、この溶液が十分に溶解して透明になるまで混合することにより試料を調製した。次いで、この溶液2mlを0.2PTFEフィルターで濾過して2mlの注入バイアルに入れた。試料溶液100マイクロリットルをシリンジを使用してWatersのModel BreezeTMに注入した。報告した試験結果は、較正曲線と比較することにより得たものである。全ての試験手法及びその後に続く報告は、EPA document 744-B-97-001,“Polymer Exemption Guidance Manual”で推奨されている、化学物質の試験に関するOECDガイドライン(OECD Guideline for Testing of Chemicals)118に準拠している。
【0189】
(2)アリールシクロブテン及び他の非ポリイミド樹脂:
ポリマー試料を、0.5重量%のテトラヒドロフラン溶液として調製し、0.2ミクロンのTeflonフィルターを通して濾過した。移動相は、トリエチルアミン0.5%、メタノール5%及びテトラヒドロフラン94.5%とした。使用したカラムは、Waters Styragel HR5E7.8×300mmカラムのロット番号0051370931とした。注入量を100マイクロリットルとし、運転時間を27分とした。分子量データはポリスチレン標準物質と比較して報告する。
【0190】
試験方法
(1)誘電特性:
それぞれ10GHzの空洞周波数を有するように機械加工された銅スプリットシリンダ共振器及びKeysight N5224A PNA又はRohde&Schwarz ZNB40ネットワークアナライザーを使用し、IPC試験方法TM-650 2.5.5.13(01/07改訂)を使用して、自立膜の誘電特性を決定した。膜形状は、基板が2つの円筒空洞部の直径を超えて延在するようなものとした。誘電体基板の厚さは0.01mm~5.0mmまで変化させることができるが、これらの試験では0.03mmの厚さの基板を使用した。自立膜をスプリット円筒共振器の空洞に配置し、TE011共振モードの共振周波数及び品質係数を、ネットワークアナライザーを使用して測定した。膜の比誘電率(Dk)及び損失正接(Df)を、MATLABで作成されたカスタムソフトウェアを使用してTE011共振モードから計算した。
【0191】
(2)熱機械分析及び重量分析:
自立膜を10mm×25mmの形状に切断して、TA Instrumentsの動的機械分析装置であるQ800装置に取り付け、ひずみ速度を0.06%、プリロードを1ニュートン、周波数を1ヘルツとした。50℃の温度で平衡化し、その後5℃毎分の速度で250℃まで昇温した。tanδ曲線の最大値をガラス転移温度値とした。熱機械分析は、TA Instruments Thermomechanical Analyzer Q400を用いて引張モードで行った。試料を5℃から200℃まで一定の速度で加熱し、次いで-50℃まで降温し、その後同じ速度で250℃まで戻した。熱膨張係数は、最終サイクルにおける25℃~150℃の寸法の線形変化として決定した。
【0192】
(3)18μm銅箔の剥離試験
銅箔試料を硬化させた後、試験片(coupon)上で適切な刃を用いて幅1センチメートルの剥離片の切り込みを入れ、その後Instron引張試験機で50mm/分の速度で90度の角度で銅ストリップを剥離した。剥離力の値をキログラム重/センチメートル単位で求めた。この値が0.75kgf/cmを超えるものは優れていると見なし、一方、この値が0.4kgf/cmを下回るものは本明細書に開示する実施形態に許容できないものと見なした。
【0193】
(4)Instron試験
自立膜を51mm×13mmの試験片に切断し、Instron 5943又はInstron 68SC-1 Universal Testing Systemのいずれかに配置した。試料をASTM-D822-12、Standard Test Method for Tensile Properties of Thin Plastic Sheetingに従い試験した。データをIntron Bluehill(登録商標)ソフトウェアで収集して解析した。
【0194】
(5)感光性ポリイミド組成物のInstron試験
自立膜を1cm×6cmの試験片に切断し、Instron 68SC-1 Universal Testing Systemに配置した。試料をASTM-D822-12、Standard Test Method for Tensile Properties of Thin Plastic Sheetingに従い試験した。データをInstron Bluehill(登録商標)ソフトウェアで収集して解析した。
【0195】
(6)感光性ポリイミド組成物の動的機械分析
自立膜を10mm×25mmの形状に切断し、TA Instrumentsの動的機械分析装置であるQ800装置に取り付け、ひずみ速度を0.06%、プリロードを1ニュートン、周波数を1ヘルツとした。温度を50℃で平衡化し、その後、毎分5℃の速度で200℃まで昇温した。tanδ曲線の最大値をガラス転移温度値とした。
【0196】
可溶性ポリイミド樹脂の一般合成
PTFE製撹拌シャフト、Oリング及びベアリング組立体を備える三ツ口反応容器に窒素中で装入した。ほとんどのジアミンは、所望のアミノ化合物を室温でDMAcに溶解した。特定の実施形態では、添加した全てのジアミンを溶解するためにDMACを適切な温度に加温する。ジアミンの溶液を撹拌しながら、所望の二無水物モノマーを反応混合物に、内部温度が所望の温度を超えないように少量ずつ添加した。次いで反応混合物を、結果として得られるポリアミド酸溶液の粘度が所望の範囲になるまで撹拌した。
【0197】
ポリアミド酸溶液に、無水酢酸及びβ-ピコリンを添加した。反応混合物の温度を80℃に昇温し、この温度で反応を約3時間維持した後、一晩撹拌した。次いで、得られたポリイミドを水から析出させることにより粉末として単離した。次いでポリマーをメタノールで洗浄し、乾燥させた。ポリイミドを白色粉末として単離し、GPC及びNMR分光法により特性評価した。
【0198】
可溶性PI樹脂1-SPI1の調製
可溶性スチレン末端ポリイミドコポリマー(ODPA//TFMB/APB-133/4AS-100//49/49/4)の調製
窒素入口及び出口並びに機械的撹拌機を備えた1リットルの反応フラスコに、トリフルオロメチルベンジジン(TFMB)31.38g及びジメチルアセトアミド(DMAC)175gを装入した。TFMBを溶解させるために、混合物を室温の窒素雰囲気下で約30分間撹拌した。その後、1,3,3-アミノフェノキシベンゼン(APB-133)28.65g及び4-アミノスチレン(4AS)0.95グラムをDMAC50gと一緒に加えた。アミンが溶解したら、反応物を撹拌しながらオキシジフタル酸無水物(ODPA)60.80gをDMAC59gと一緒に加えた。この二無水物の添加速度は、最大反応温度が40℃未満になるように調整した。二無水物を溶解及び反応させ、ポリアミド酸(PAA)溶液を約24時間撹拌した。その後、ポリマーの分子量及びポリマー溶液の粘度を上昇させるために、ODPAを制御しながら0.310gずつ添加した。反応フラスコから少量の試料を試験用に取り出し、ブルックフィールドコーンプレート型粘度計を使用して溶液粘度を監視した。ODPAは合計1.24g添加した。ポリマーが平衡状態に達するように、穏やかに撹拌しながら反応を更に室温で72時間進行させた。ポリアミド酸の最終粘度は10,600cPとなった。
【0199】
このポリアミド酸コポリマー溶液に無水酢酸50.4グラム及び3-メチルピリジン45.99グラムを添加し、次いでこれを80℃で4時間加熱した。この混合物を水(1000mL×2)中で析出させ、メタノール(1000mL)で洗浄した。単離された固体ポリイミドを70℃の真空下で2~3日間乾燥させた。この固体を後段で様々な溶媒(NMP、DMAc及びシクロペンタノン)に溶解して配合した。
【0200】
可溶性PI樹脂2-SPI2の調製
可溶性スチレン末端ポリイミドコポリマー(ODPA//TFMB/APB-133/2,4-ジアミノ-6-ジアリルアミノ-1,3,5-トリアジン(DAMA)/4AS 100//46.5/46.5/5/4)の調製
窒素入口及び出口並びに機械的撹拌機を備えた500mLの反応フラスコに、トリフルオロメチルベンジジン(TFMB)22.34g及びジメチルアセトアミド(DMAC)150gを装入した。TFMBを溶解させるために、混合物を室温の窒素雰囲気下で約30分間撹拌した。その後、1,3,3-アミノフェノキシベンゼン(APB-133)20.39g、2,4-ジアミノ-6-ジアリルアミノ-1,3,5-トリアジン(DAMA)1.55g及び4-アミノスチレン(4AS)0.72グラムをDMAC36gと一緒に加えた。アミンが溶解したら、反応物を撹拌しながらオキシジフタル酸無水物(ODPA)45.6gをDMAC25gと一緒に加えた。この二無水物の添加速度は、最大反応温度が40℃未満になるように調整した。二無水物を溶解及び反応させ、ポリアミド酸(PAA)溶液を約24時間撹拌した。その後、ポリマーの分子量及びポリマー溶液の粘度を上昇させるために、ODPAを制御しながら0.233gずつ添加した。反応フラスコから少量の試料を試験用に取り出し、ブルックフィールドコーンプレート型粘度計を使用して溶液粘度を監視した。ODPAは合計0.931g添加した。ポリマーが平衡状態に達するように、穏やかに撹拌しながら反応を更に室温で72時間進行させた。ポリアミド酸の粘度は829cPとなった。
【0201】
このポリアミド酸混合物に無水酢酸37.67グラム及び3-メチルピリジン34.36グラムを加え、80℃で4時間加熱した。この混合物を水(1000mL×2)中で析出させ、メタノール(1000mL)で洗浄した。単離された固体ポリイミドを70℃の真空下で2~3日間乾燥させた。この固体を後段で様々な溶媒(NMP、DMAc及びシクロペンタノン)に溶解して配合した。
【0202】
可溶性PI樹脂3-SPI3の調製
可溶性スチレン末端ポリイミドコポリマーBPADA//APB-133/TFMB/4AS 100//42.5/42.5/30の調製
窒素入口及び出口及び機械的撹拌機及び熱電対を備えた1Lの反応フラスコに、TFMB16.33g(0.051モル)、APB-133を14.91g(0.051モル)、4ASを4.29g(0.036モル)及びDMAC217mLを装入した。混合物を窒素雰囲気下、室温で約30分間撹拌した。その後、このジアミンの溶液を撹拌しながらBPADA61.21g(0.1176モル)を少量ずつゆっくりと加えた。二無水物の添加が完了したら、DMAC24mLを追加で使用して、容器及び反応フラスコ壁に残った二無水物粉末を洗浄して洗液を加えた。得られた混合物を24時間撹拌した。それとは別に、DMAC中BPADAの5%溶液を調製し、4日間かけて24時間毎に少量(約6.25g)ずつ加えた。BPADAのDMAC溶液は合計24.98g加えた。得られた反応物を更に室温で1~2日間穏やかに撹拌した。この溶液を40℃に加熱した後、無水酢酸56.04g及び3-メチルピリジン51.12gを加えることによりPAAのイミド化を実施した。次いで、反応混合物を80℃で5~7時間加熱した。このポリマー溶液を室温に冷却した後、ブレンダー内の4LのMeOH中に注ぎ、ポリマー固体を微粉砕するために急速に撹拌した。微粉砕されたポリマー固体をブレンダー内で10分間撹拌した後、濾過して回収した。ポリマー粉末を一晩風乾させ、更に60℃の真空下で2日間乾燥させた。91グラムの量のポリマーを得た。
【0203】
以下を含む可溶性ポリイミド樹脂を調製した:
SPI1:ODPA//TFMB/APB-133/4AS 100//49/49/4
SPI2:ODPA//TFMB/APB-133/DAMA/4AS 100//46.5/46.5/5/4
SPI3:BPADA//APB-133/TFMB/4AS 100/42.5/42.5/30
SPI4:ODPA/6FDA//TFMB/PriamineTM 1075/4-AS 85/15//91/05/08
SPI5:ODPA//APB-133/TFMB/DAMA/4-EA 100//46.5/46.5/05/04
SPI6:ODPA//APB-133/TFMB/M1309/4-AS 100//46/46/04/08
SPI7:BPADA//APB-133/4-AS 100//85/30
SPI8:ODPA/4-EPA//APB-133/MEMA 98/2//50/50
関連する特性を表1に示す。
【0204】
【表1】
【0205】
比較用PI樹脂1-CPI1の調製
ODPA、BisP及びTFMBを含み、ポリスチレン標準物質に対するMnが約72,500であり、Mwが約314,300であるポリイミドを、この材料が完全に溶解すると20重量%の溶液が生成するようにシクロペンタノン中に投入した。バイアルを長時間回転させても、再溶解したポリマーは5重量%未満であった。
【0206】
一般配合並びに自立膜の作製及び試験
20mLのシンチレーションバイアル内で、乾燥ポリイミド粉末及びN-メチル-2-ピロリドン(NMP)を混合する。バイアルにキャップを付けて密封した後、ポリイミドポリマーを溶解して溶液にするために、混合物を適切な時間、通常は24~48時間回転させる。最初の混合時間が完了した後、架橋剤、接着促進剤などの追加の成分をポリイミド溶液に加える。次いで、この配合物を含むバイアルを更に24時間回転させることにより均質な溶液を調製する。この配合物をプラスチックシリンジを用いて3μmのポリプロピレンフィルター膜を介して濾過する。微粒子フィラー又は他の不均質成分を含む配合物の場合、これらの成分は濾過後に添加し、不溶性成分を分散させるために配合物を、通常は更に6~24時間回転させる。
【0207】
膜の作製には自動ドローダウンバー(DDB)コーターを使用する。塗工したい基板を自動コーターの台に載せて固定した。配合物を基板上に吐出し、所望の膜厚を得るために適切な間隙を有するDDBを使用して基板上に膜を形成する。塗工直後に、膜を有する基板を80℃に設定したホットプレートに移し、10分間ソフトベークする。ソフトベークが完了した後、塗工された基板をホットプレートから取り出し、室温まで放冷する。
【0208】
ソフトベークされた膜をベルト炉を使用して窒素雰囲気中で硬化させた。膜を所望の基板上で硬化させた。これを、ベルト炉内の、最大硬化温度が200℃で60分間又は最大硬化温度が300℃で20分間となるように連続した加熱ゾーンを通過させた。最大硬化温度が200℃又は300℃のいずれかであり、ベルト速度が0.7インチ毎インチである典型的な硬化プロファイルを表2に示す。
【0209】
【表2】
【0210】
塗膜を有する基板を脱イオン水中に少なくとも24時間又は膜が基板から離れるまで浸漬することにより、硬化膜を基板から剥離した。別法として、膜を15~20psi、125℃のプレッシャークッカーに18~24時間入れた後、室温に冷却した。次いで、剥離した膜を空気中で又は70℃、圧力1inHg未満に設定した真空オーブンで18~24時間乾燥させた。
【0211】
自立膜1-FSF1の作製
上に概説した手順に従い、NMP(7.977g)中にポリイミドSPI3(3.002g)及び架橋剤MIR-3000(1.294g)を含む配合物を調製し、塗工し、ソフトベークし、硬化させた。こうして作製した自立膜は、厚さが20.4μmであり、Dk(10GHz)が2.83であり、Df(10GHz)が0.0038であり、平均引張弾性率が1.85GPa(最大値2.35GPa)であり、平均引張強度が70.5MPa(最大値74.0MPa)であり、平均Ebが6.4%(最大値7.9%)であった。
【0212】
自立膜2-FSF2の作製
上に概説した手順に従い、NMP(7.954g)中にポリイミドSPI3(3.000g)及び架橋剤SR454(1.283g)を含む配合物を調製し、塗工し、ソフトベークし、硬化させた。こうして作製した自立膜は、厚さが27.2μmであり、Dk(10GHz)が2.88であり、Df(10GHz)が0.0151であり、平均引張弾性率が1.84GPa(最大値2.02GPa)であり、平均引張強度が69.8MPa(最大値88.5MPa)であり、平均Ebが7.6%(最大値12.0%)であった。
【0213】
自立膜3-FSF3の作製
上に概説した手順に従い、NMP(7.959g)中にポリイミドSPI3(3.000g)、架橋剤MIR-3000(0.643g)及び架橋剤Kowa DCP-M(0.643g)を含む配合物を調製し、塗工し、ソフトベークし、硬化させた。こうして作製した自立膜は、厚さが31.8μmであり、Dk(10GHz)が2.66であり、Df(10GHz)が0.0046であり、平均引張弾性率が2.32GPa(最大値2.62GPa)であり、平均引張強度が83.6MPa(最大値125.7MPa)であり、平均Ebが8.9%(最大値10.8%)であった。膜の特性を表3にまとめる。
【0214】
【表3】
【0215】
自立膜4-FSF4の作製
上に概説した手順に従い、NMP(7.959g)中にポリイミドSPI3(3.000g)、架橋剤MIR-3000(0.643g)及び架橋剤Kowa DCP-M(0.643g)を含む配合物を調製し、塗工し、ソフトベークし、硬化させた。こうして作製した自立膜は、厚さが31.8μmであり、Dk(10GHz)が2.66であり、Df(10GHz)が0.0046であり、平均引張弾性率が2.32GPa(最大値2.62GPa)であり、平均引張強度が83.6MPa(最大値125.7MPa)であり、平均Ebが8.9%(最大値10.8%)であった。
【0216】
シリカを含むPIベースの配合物を調製するための一般手順
シリカ50重量%含有配合物:
容器に可溶性ポリイミド(DM-120)35.4重量%を加えた後、シクロペンタノンなどの溶媒を加えることにより、総質量に対する固形分が45重量%である配合物を生成した。このポリイミドを十分に混合して溶媒に十分に溶解した後、このポリイミド溶液を、シアヌル酸トリアリル(TAC)又はイソシアヌル酸トリアリル(TAIC)5重量%、Homide 116を2.5重量%、Sartomer(SR454)2.5重量%、SPV-100を3.5重量%、熱ラジカル開始剤である過酸化ジクミル(DCP)1重量%及び界面活性剤であるPolyfox 656を0.1重量%と十分に混合した。最後に、平均粒子径が0.5mmであり、トップカット径が5mmであるアドマテックスのシリカ5GX-CM1(メチルエチルケトン中70重量%)50重量%を加えた。得られた混合物は塗工する前に均質化した。
【0217】
シリカ70重量%含有配合物:
容器に可溶性ポリイミド(DM-120)21.24重量%を加えた後、シクロペンタノンなどの溶媒を加えることにより、成分の総質量が45重量%である配合物を生成した。このポリイミドを溶媒と共に十分に混合した後、このポリイミド溶液を、シアヌル酸トリアリル(TAC)又はイソシアヌル酸トリアリル(TAIC)3重量%、Homide 116を1.5重量%、Sartomer(SR454)1.5重量%、SPV-100を2.1重量%、熱ラジカル開始剤である過酸化ジクミル(DCP)0.6重量%及び界面活性剤であるPolyfox 656を0.06重量%と十分に混合した。最後に、平均粒子径が0.5mmであり、トップカット径が5mmであるアドマテックスのシリカSC2050-MTM/5GX-CM1混合物(1:1、w/w)(メチルエチルケトン中70重量%)70重量%を加えた。得られた混合物は塗工する前に均質化した。
【0218】
PI被覆銅-RCC1及びRCC2の作製:
ポリイミドをベースとする樹脂、架橋剤、界面活性剤、熱ラジカル開始剤及び官能基化シリカ粒子などの無機フィラーを含む全ての成分を、固形分が概して45%となるようにシクロペンタノン中で混合した後、確実に完全に混合されるように一晩回転させることにより、可溶性ポリイミドをベースとする配合物を調製した。次いでこの配合物の溶液を、ドライフィルムとする場合はNan Ya N738G離型PET基材上に、又は樹脂付き銅(RCC)とする場合は銅箔上に、間隙200ミクロンのスチール鋼製バーを介して速度6mm/sでドローダウン塗工し、膜を90℃のホットプレートで3分間ソフトベークすることにより、GCによる残留溶媒が確実に1%未満になるようにした。ソフトベーク後、ドライフィルム又はRCCを保管するためにPEフィルムで覆った。
【0219】
また、スロットダイコーター(すなわち、nTact nRad Extrusion Deposition System)でも、2ミルのシムを使用し、塗工間隙を150μmとし、相対速度を13mm毎秒として、可溶性ポリイミドをベースとする配合物を塗工した。塗工液吐出速度を238μL毎秒とし、チャックを使用して塗工開始時の吐出遅延(dispense delay)を1000msとした。ソフトベーク条件を80℃の対流オーブンで12分間とした。基板は1.5及び18μmのBFL-NN-HT銅箔及びNan Ya N738G離型PETを含むものとした。
【0220】
Meiki(MVLP 500/600)ラミネーターを用いて、ドライフィルム又はRCCを、好適な基板上に、第1段階は約2hPaの真空を30秒間印加し、95~110℃でゴム製の圧子(contact)を介して0.95~1.00MPaの圧力を60秒間、第2段階はスチール鋼板で1.2MPaの圧力を60秒間印加することによりラミネートした。
【0221】
ドライフィルム試料は、ラミネート後、SierraThermベルト炉(型番7K9-74C122-8ANLIR)を用いて、窒素(酸素100ppm未満)中、135℃で40分間及び200℃で60分間硬化させた。次いで、試験片を剥がしてPETを取り除き、分析用として所望の寸法に切断可能な自立膜試料を得た。
【0222】
銅箔の剥離試験を行う場合は、試料を対応する銅箔(すなわちRCC)上に直接塗工した後、CCL板にラミネートするか、又はドライフィルムを、誘電体膜面を下側に向けて対応する銅箔にラミネートした後にPETを剥がし、誘電体膜の反対側をCCL板にラミネートするかのいずれかとした。次いで、ラミネートした試験片を、先に記載したものと同じベルト炉条件下で硬化させた。
【0223】
本明細書で作製したPI被覆銅の組成を表4にまとめる。
【0224】
【表4】
【0225】
関連する特性を表5にまとめる。
【0226】
【表5】
【0227】
RCC1及びRCC2は、T及びCu箔上のピール強度が高く、CTEが比較的低いが、膜の屈曲性及び誘電特性は維持されていることが確認された。
【0228】
PI被覆銅-RCC3~RCC7の作製:
本明細書において上に記載したように、可溶性ポリイミドをベースとする配合物を調製し、銅箔に被覆した。組成を表6に記載する。
【0229】
【表6】
【0230】
関連する特性を表7にまとめる。
【0231】
【表7】
【0232】
被覆組成物にSPV-100を使用するとピール強度の測定値が増大することが認められた。これに加えて、混合シリカを使用すると、本明細書において調製した被覆組成物のピール強度が増大することも認められた。
【0233】
銅箔の選択がピール強度の実測値に与える影響
上述の手順を用いて様々な銅箔を配合物RCC4で被覆した。その特性を表8に記載する。
【0234】
【表8】
【0235】
ピール強度及び表面抵抗率の測定値は、銅箔の選択及び箔表面の処理剤の存在の有無に応じて異なることが認められた。
【0236】
感光性ポリイミド組成物の調製
【0237】
【表9】
【0238】
【表10】
【0239】
表9に記載した全ての成分を混合することにより、可溶性感光性ポリイミドをベースとする配合物を調製し、一晩回転した後、5.0μmのシリンジフィルターで濾過した。
【0240】
リソグラフィー評価を行うためにポリマー配合物をスピンコートによりシリコン基板上に堆積させ、90℃~110℃で1~2分間ソフトベークした。膜厚は、光学式Filmetrics及び対応するソフトウェアツールを使用して測定した。リソグラフィー処理を行うために、Karl Suessマスクアライナー又はOAI広帯域光源で、様々なフィーチャを含むmulti-transmission maskを通して最大1000mJ/cm2の露光量でウェハを露光した。次いでこの膜を、任意選択的に65℃又は85℃で60秒間、露光後ベークした。次いで膜をシクロペンタノンによりパドル現像に付し、パドル時間を10~75秒間の範囲とするか又は2×60秒間(その間にスピン乾燥を行う)とするか又は2×60秒間の後、1×30秒間(その間にスピン乾燥を行う)とし、次いでスピン乾燥を行った。パドル現像の長さは、ウェハの未露光領域を除去するのに必要な時間により決定した。現像前後の膜厚を測定することにより膜の光パターニング性を評価した。
【0241】
自立膜試料の場合は、ポリマー配合物をスピンコートにより銅ウェハ基板上又はシリコン基板上に堆積させ、90℃~110℃で1~2分間ソフトベークし、1000mJ/cmでフラッド露光し、次いでBlue Mオーブンで130℃で30分間、次いで200℃で1時間、酸素が100ppm未満の窒素中で硬化させた。被覆された銅ウェハ基板を好適なサイズに切断し、膜を硫酸アンモニウム5%を含む水浴中で剥がし、すすぎ洗いし、乾燥させることにより、分析用の自立膜を得た。被覆されたシリコンウェハ基板は、プレッシャークッカー内で加熱した水中に24時間浸漬することにより、分析用の自立膜を浮き上がらせた。特性を表10に報告する。
【0242】
【表11】
【0243】
一般的な説明又は実施例において上に記載された行為の全てが必要であるわけではないこと、特定の行為の一部が必要とされない場合があること及び1つ以上の更なる行為が、記載されているものに加えて行われ得ることに留意されたい。更にまた、行為が列挙されている順番は、必ずしも行為が行われる順番ではない。
【0244】
上述の本明細書では、特定の実施形態を参照しながら概念を記載してきた。しかしながら、当業者は、後述する特許請求の範囲に記載する本開示の範囲から逸脱することなく、様々な修正及び変更を行うことができることを理解する。したがって、本明細書及び図面は、限定的な意味よりも寧ろ例示的な意味で考えられるべきであり、全てのそのような修正は本開示の範囲内に包含されることが意図されている。
【0245】
特定の実施形態に関して、利益、他の利点及び問題の解決策を上に記載してきた。しかしながら、この利益、利点、問題の解決策及び任意の利益、利点又は解決策を生じさせ得るか又はより顕著にし得る任意の特徴は、任意の又は全ての請求項の、決定的に重要であるか、必要とされるか又は不可欠な特徴であると解釈するべきではない。
【0246】
本明細書において、明確化のために、別々の実施形態と関連させて記載されている特定の特徴を、組み合わせて単一の実施形態で提供することができることも十分に理解されるべきである。反対に、簡潔化のために、単一の実施形態に関連させて記載されている様々な特徴を、個別に又は任意の部分的な組み合わせで提供することもできる。本明細書で指定した様々な範囲の数値の使用は、記述される範囲内の最小値及び最大値が両方とも「約」という単語に先行されているかのように近似値として記述されている。この形式では、記述範囲のわずかな上下変動を用いても、範囲内の値と実質的に同じ結果を達成することができる。また、これらの範囲の開示は、1つの値の成分のいくつかを、別の値の成分と組み合わせることによって生じ得る分数値を含む、最小平均値と最大平均値との間のあらゆる値を含む連続した範囲であることが意図されている。更に、より広い及びより狭い範囲が開示されるとき、1つの範囲からの最小値を別の範囲からの最大値と組み合わせることは、本開示の予想の範囲内にあり、その逆も同様である。
【外国語明細書】