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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137866
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20240927BHJP
   C08L 79/08 20060101ALI20240927BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240927BHJP
   C08F 212/04 20060101ALI20240927BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20240927BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
C08L101/00
C08L79/08 Z
C08K3/013
C08F212/04
C08G73/10
H05K1/03 610N
H05K1/03 610R
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024044361
(22)【出願日】2024-03-21
(31)【優先権主張番号】18/187,201
(32)【優先日】2023-03-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
2.TEFLON
3.MATLAB
(71)【出願人】
【識別番号】591016862
【氏名又は名称】デュポン エレクトロニック マテリアルズ インターナショナル,エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】DUPONT ELECTRONIC MATERIALS INTERNATIONAL,LLC
(71)【出願人】
【識別番号】519372065
【氏名又は名称】デュポン エレクトロニクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コリン ヘイズ
(72)【発明者】
【氏名】アントン チャベス
(72)【発明者】
【氏名】ノラ サビナ ラドゥ
(72)【発明者】
【氏名】ジャクリン マーフィー
(72)【発明者】
【氏名】チン ミン ワン
(72)【発明者】
【氏名】タオ ホアン
(72)【発明者】
【氏名】アントン リー
(72)【発明者】
【氏名】ターニャ エヌ.シング-ラチフォード
(72)【発明者】
【氏名】マイケル ギャラガー
【テーマコード(参考)】
4J002
4J043
4J100
【Fターム(参考)】
4J002AA02W
4J002BC04W
4J002CM04X
4J002DE146
4J002DJ016
4J002DK006
4J002DL006
4J002EU027
4J002EW158
4J002FD016
4J002FD138
4J002FD147
4J002FD208
4J002GQ00
4J043PA04
4J043PB02
4J043PC145
4J043PC146
4J043QB15
4J043QB26
4J043QB31
4J043RA35
4J043SA06
4J043SA47
4J043SA54
4J043SB03
4J043TA22
4J043TA71
4J043TB01
4J043UA131
4J043UA132
4J043UA141
4J043UB022
4J043UB131
4J043UB401
4J043VA021
4J043VA022
4J043VA041
4J043VA062
4J043VA071
4J043VA081
4J043XA16
4J043XB08
4J043YA08
4J043ZB47
4J100AB04Q
4J100AB07P
4J100AQ12R
4J100AS11S
4J100BA02P
4J100BC48P
4J100CA05
4J100CA06
4J100FA03
4J100JA43
(57)【要約】
【課題】 樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 (a)少なくとも1種の熱硬化性樹脂を30~80重量%と、(b)少なくとも1種の可溶性ポリイミド樹脂を20~70重量%と;を含む混合物からの樹脂組成物を提供する。この樹脂組成物はエレクトロニクス用途に使用することができる。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂組成物であって:
(a)少なくとも1種の熱硬化性樹脂を30~80重量%と;
(b)少なくとも1種の可溶性ポリイミド樹脂を20~70重量%と;
を含む混合物からの樹脂組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1種の熱硬化性樹脂は:
(a1)1種以上の付加重合性アリールシクロブテンモノマーを10~50モル%と;
(a2)1種以上のジエノフィルモノマーを15~60モル%;
(a3)1種以上のジエンモノマーを0~50モル%;
(a4)1種以上の可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)剤を0~20モル%;及び
(a5)1種以上の複素環含有モノマー0~10モル%;からなる群から選択される1種以上のモノマーと;
を含む混合物からの重合生成物を含むアリールシクロブテン樹脂である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1種の可溶性ポリイミド樹脂は:
(b1)1種以上のテトラカルボン酸成分残基と;
(b2)1種以上のジアミン成分残基と;
(b3)1種以上の末端封止化合物と;
を含み、
前記1種以上の末端封止化合物は、1つ以上の架橋基を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
液体組成物であって、
(a)1種以上の熱硬化性樹脂を2~20重量%と;
(b)1種以上の可溶性ポリイミド樹脂を1~25重量%と;
(c)1種以上の追加の樹脂を0~25重量%と;
(d)1種以上の無機微粒子フィラーを35~80重量%と;
(e)1種以上の架橋剤を5~45重量%と;
(f)1種以上の接着促進剤を0~15重量%と;
を含み、
前記重量%の範囲は前記液体組成物の不揮発性物質の総重量に対する、液体組成物。
【請求項5】
溶媒を更に含み;
前記溶媒は、前記液体組成物全体の10~70重量%である、請求項4に記載の液体組成物。
【請求項6】
前記1種以上の接着促進剤は、有機含窒素リン化合物である、請求項5に記載の液体組成物。
【請求項7】
前記有機含窒素リン化合物はSPV-100であり、前記液体組成物の不揮発性物質の総重量の5~10重量%である、請求項6に記載の液体組成物。
【請求項8】
前記1種以上の架橋剤はマレイミドである、請求項4に記載の液体組成物。
【請求項9】
表面処理された金属箔であって、前記表面処理された金属箔の少なくとも1つの面は、請求項4に記載の液体組成物を含む表面処理剤を含む、金属箔。
【請求項10】
ドライフィルムであって:
(a)1種以上の熱硬化性樹脂を2~20重量%と;
(b)1種以上の可溶性ポリイミド樹脂を1~25重量%と;
(c)1種以上の追加の樹脂を0~25重量%と;
(d)1種以上の無機微粒子フィラーを35~80重量%と;
(e)1種以上の架橋剤を5~45重量%と;
(f)1種以上の接着促進剤を0~15重量%と;
を含む組成物を含み、
前記重量%の範囲は液体組成物の不揮発性物質の総重量に対するものであり、
前記1種以上の接着促進剤は、表面処理剤の1種以上の成分と共に架橋剤として機能することができる、ドライフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ポリマー樹脂組成物、そのような樹脂を調製するための方法及び電子デバイスの製造におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマー樹脂は、スピンオン誘電体パッケージング、回路基板、ラミネート、金属箔の被覆、アンテナ・イン・パッケージ及び他の電子用途に使用されている。この樹脂は、良好な機械特性及び良好な接着特性並びに低い誘電特性を有する膜/被覆を提供する必要がある。特に、高い引張強度、高い引張伸び、高いガラス転移温度(T)、低い熱膨張係数(CTE)、銅への良好な接着性並びに高周波数で低い比誘電率(Dk)及び損失正接(Df)を示すことが望ましい。加えて、過度に長い時間硬化を行うことなく、より低い温度で樹脂を硬化できることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第7,198,878号明細書
【特許文献2】米国特許第8,143,360号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第20190169327A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これらの用途に使用するための改善された特性を有する誘電性樹脂組成物が絶えず求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書全体を通して使用される場合、以下の略語は、文脈が別の意味を特に明確に示していない限り、以下の意味を有するものとする:℃=摂氏度;g=グラム;nm=ナノメートル、μm=ミクロン=マイクロメートル;mm=ミリメートル;sec.=秒;及びmin.=分。特に明記しない限り、量は全て重量パーセント(「重量%」)であり、比は全てモル比である。全ての数値範囲は、そのような数値範囲の合計が100%になるように制約されることが明らかである場合を除いて、包括的であり、且つ任意の順序で組み合わせることが可能である。特に明記しない限り、ポリマー及びオリゴマーの分子量は全て、g/モル又はダルトン単位の重量平均分子量(「Mw」)であり、ゲル浸透クロマトグラフィーを用いてポリスチレン標準物質と比較して決定されたものである。
【0006】
冠詞「a」、「an」及び「the」は、そうではないと文脈が明確に示していない限り、単数形及び複数形を指す。本明細書で使用される用語「及び/又は」は、関連する項目の1つ以上のあらゆる組合せを包含する。
【0007】
本明細書に使用されるR、R、R、R’、R”及び他の任意の可変要素は総称記号であり、式中で定義される可変要素は同一であるか又は異なり得る。
【0008】
本明細書に使用される用語「付加重合性」は、それがモノマーに適用される場合は、他の生成物を同時に生成することなく、単純に基を連結することにより重合することができる不飽和モノマーを意味することを意図している。
【0009】
用語「隣接する」は、置換基に言及する場合、単結合又は多重結合によって連結している炭素に結合している置換基を意味することを意図している。典型的な隣接するR基を以下に示す:
【0010】
【化1】
【0011】
用語「アルコキシ」は、RO-基(Rはアルキル基である)を意味することを意図している。
【0012】
用語「アルキル」は、脂肪族炭化水素から誘導された基を意味することを意図し、直鎖、分岐状又は環状基を包含する。化合物「から誘導された」基は、1個以上の水素又は重水素を除去することによって形成される基を表す。いくつかの実施形態では、アルキルは、1~20個の炭素原子を有する。
【0013】
用語「アミン」は、孤立電子対を持つ塩基性窒素原子を含む化合物を意味することを意図し、ここで孤立電子対は、別の原子と共有されていない1組の2個の価電子を指す。用語「アミノ」は、官能基-NH、-NHR又は-NR(式中、Rは、出現毎に同一であるか又は異なり、アルキル基又はアリール基であり得る)を指す。用語「ジアミン」は、孤立電子対を伴う2個の塩基性窒素原子を含む化合物を意味することを意図している。用語「ポリアミン」は、孤立電子対を伴う2個以上の塩基性窒素原子を含む化合物を意味することを意図している。用語「芳香族ジアミン」は、2つのアミノ基を有する芳香族化合物を意味することを意図している。用語「芳香族ポリアミン」は、2つ以上のアミノ基を有する芳香族化合物を意味することを意図している。用語「屈曲ジアミン」は、2個の塩基性窒素原子及び関連する孤立電子対が、対応する化合物又は官能基の対称中心の周りに非対称に配置されているジアミン、例えばm-フェニレンジアミン:
【0014】
【化2】
【0015】
を意味することを意図している。
【0016】
用語「芳香族ジアミン残基」は、芳香族ジアミン内の2つのアミノ基に結合している部分を意味することを意図している。用語「芳香族ポリアミン残基」は、芳香族ポリアミン内の2つ以上のアミノ基に結合している部分を意味することを意図している。用語「芳香族ジイソシアネート残基」は、芳香族ジイソシアネート化合物内の2つのイソシアネート基に結合している部分を意味することを意図している。用語「芳香族ポリイソシアネート残基」は、芳香族ポリイソシアネート化合物内の2つ以上のイソシアネート基に結合している部分を意味することを意図している。これを以下に更に例示する。
【0017】
【化3】
【0018】
用語「ジアミン残基」及び「ジイソシアネート残基」は、それぞれ、2つのアミノ基又は2つのイソシアネート基に結合している部分を意味することを意図しており、これらの部分は脂肪族又は芳香族である。用語「ポリアミン残基」及び「ポリイソシアネート残基」は、それぞれ、2つ以上のアミノ基又は2つ以上のイソシアネート基に結合している部分を意味することを意図しており、これらの部分は脂肪族又は芳香族である。
【0019】
用語「芳香族化合物」は、4n+2個の非局在化π電子を有する少なくとも1個の不飽和環状基を含む有機化合物を意味することを意図している。
【0020】
用語「アリール」は、1個以上の結合点を有する、芳香族化合物から誘導された基を意味することを意図している。この用語は、単環を有する基、及び単結合によって連結していても一緒に縮合していてもよい複数の環を有する基を包含する。炭化水素アリール基は、環構造中に炭素のみを有する。ヘテロアリール基は、環構造中に少なくとも1個のヘテロ原子を有する。
【0021】
用語「アルキルアリール」は、1つ以上のアルキル置換基を有するアリール基を意味することを意図している。
【0022】
用語「アリールオキシ」は、RO-基(Rはアリール基である)を意味することを意図している。
【0023】
用語「架橋基」は、1つの高分子鎖を別の高分子鎖と連結するために使用される結合又は短い連続した結合を含む官能基を指す。
【0024】
用語「硬化性」は、組成物に適用される場合、放射及び/若しくは熱に曝露されるか又は使用条件下で、硬さが増大すると共に溶媒中の溶解度が低くなる材料を意味することを意図している。
【0025】
用語「末端封止化合物」は、進行している重合を阻害し、それにより樹脂全体の分子量を制御するために樹脂中で使用される、別個の化合物又は基を指す。
【0026】
用語「液体組成物」は、材料が溶解して溶液を形成している液体媒体、材料が分散して分散液を形成してる液体媒体、又は材料が懸濁して懸濁液若しくは乳濁液を形成している液体媒体を意味することを意図している。
【0027】
用語「(メタ)アクリレート」は、アクリレート又はメタクリレートのどちらかである基を意味することを意図している。
【0028】
用語「ポリイミド」は、1種以上の多官能性無水物成分と1種以上の1級ポリアミン又はポリイソシアネートとの反応により生成する縮合ポリマーを指す。これらは、ポリマー骨格の主鎖に沿って、直鎖状又は複素環式単位としてのイミド構造-CO-NR-CO-を含む。
【0029】
用語「可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)剤」は、明確な構造を有し、官能性が予測できるポリマーの調製が可能になるように、フリーラジカル重合の分子量及び分子量分布を制御するために使用されるモノマー又は化合物を意味することを意図している。
【0030】
本明細書に使用される用語「半導体ウェハ」は、シングルチップのウェハ、マルチチップのウェハ、様々なレベル用のパッケージ、発光ダイオード(LED)用基板又ははんだ接続を必要とする他の組立体などの、「半導体基板」、「半導体デバイス」及び様々なレベルの相互接続のための様々なパッケージを包含することを意図している。シリコンウェハ、ガリウムヒ素ウェハ及びシリコンゲルマニウムウェハなどの半導体ウェハは、パターン形成されていても、パターン形成されていなくてもよい。本明細書に使用される用語「半導体基板」には、半導体デバイスの有効部分又は動作可能部分を含む1つ以上の半導体層又は半導体構造を有する任意の基板が含まれる。用語「半導体基板」は、半導体デバイスなどの、半導体材料を含む任意の構造を意味すると定義される。半導体デバイスは、少なくとも1つのマイクロ電子デバイスがその上に製造されているか又は製造されることになる半導体基板を指す。熱的に安定なポリマーとしては、これらに限定されないが、アリールシクロブテン材料の硬化に用いられる温度で安定な、ポリイミド、例えば、KAPTONTMポリイミド(DuPont、Wilmington、DE)、液晶ポリマー、例えばVECSTARTMLCP膜(株式会社クラレ、東京、日本)及びビスマレイミド-トリアジン(BT)樹脂(MGC、東京、日本)などの任意のポリマーが挙げられる。更なるポリマー基板としては、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリ塩化ビニルなどのポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」と略記することがある)及びポリエチレンナフタレートなどのポリエステルの膜;又はポリカーボネート膜を挙げることができる。更に、離型紙及び金属箔、例えば銅箔及びアルミニウム箔などを使用することができる。支持体及び後述する保護膜は、マット処理及びコロナ処理などの表面処理が施されていてもよい。或いは、支持体及び保護膜は、シリコーン樹脂系離型剤、アルキド樹脂系離型剤又はフッ素樹脂系離型剤などの離型剤で離型処理されていてもよい。いくつかの非限定的な実施形態では、支持体は10~150μmの厚さを有し、いくつかの非限定的な実施形態では25~50μmである。
【0031】
用語「溶媒」は、使用温度で液体である有機化合物を意味することを意図している。この用語は、単一種の有機化合物又は2種以上の有機化合物の混合物を包含することを意図している。
【0032】
用語「テトラカルボン酸成分」は、以下のいずれか1種以上を意味することを意図している:テトラカルボン酸、テトラカルボン酸一無水物、テトラカルボン酸二無水物、テトラカルボン酸モノエステル及びテトラカルボン酸ジエステル。
【0033】
用語「テトラカルボン酸成分残基」は、テトラカルボン酸成分内で4個のカルボキシ基に結合している部分を意味することを意図している。これを以下に更に例示する。
【0034】
【化4】
【0035】
用語「熱硬化性樹脂」は、処理を行うと、そのポリマー又は材料の形状を実質的に作り直すことができないように不可逆的に架橋するか又は網目の分子量が不可逆的に増大する、ポリマー又は材料を意味することを意図している。
【0036】
用語「膜(フィルム)」及び「層」は、本明細書全体にわたり同義で用いられる。
【0037】
全ての範囲は包括的であり、且つ、組み合わせ可能である。例えば、用語「50~3000cPsの範囲又は100cPs以上」には、50~100cPs、50~3000cPs及び100~3000cPsのそれぞれが含まれることになる。
【0038】
本明細書において、特に明示的に述べられているか又は使用される文脈で反対のことが示されていない限り、本明細書の主題の実施形態が、特定の特徴又は要素を、含むか、包含するか、含有するか、有するか、それらから又はそれらによってなる又は構成されると述べられているか又は記載されている場合、その実施形態には、明示的に述べられた又は記載されたものに加えて1つ以上の特徴又は要素が存在し得る。本明細書に開示する主題の別の実施形態は、特定の特徴又は要素から本質的になると記載され、その実施形態には、実施形態の操作原理又は他と区別される特徴を実質的に変更することになる特徴又は要素は存在しない。本明細書に記載する主題の更なる別の実施形態は、特定の特徴又は要素からなると記載され、その実施形態又はその非実質的な変形形態では、具体的に述べられた又は記載された特徴又は要素のみが存在する。
【0039】
特に定義しない限り、本明細書に用いられる全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと同様の又は均等な方法及び材料を本開示の実施形態の実施又は試験に使用することができるが、好適な方法及び材料を以下に記載する。更に、材料、方法及び実施例は例示に過ぎず、限定を意図していない。
【0040】
本明細書に記載されていない範囲の具体的な材料、加工行為及び回路に関する多くの詳細は従来通りであり、フォトレジスト、誘電体材料及び半導電性部材の技術分野の教科書及び他の情報源において見出すことができる。
【0041】
樹脂組成物であって:(a)少なくとも1種の熱硬化樹脂を30~80重量%と;(b)少なくとも1種の可溶性ポリイミド樹脂を20~70重量%と;
を含む混合物からの樹脂組成物を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0042】
この少なくとも1種の熱硬化性樹脂は特に限定されず、アリールシクロブテン、ビニルラジカル硬化ポリマー、ビスマレイミド熱硬化性樹脂、エポキシ熱硬化性樹脂及びマイケル付加によって硬化される熱硬化性樹脂からなる群から選択される。いくつかの非限定的な実施形態では、この少なくとも1種の熱硬化性樹脂はアリールシクロブテンである。
【0043】
この少なくとも1種のアリールシクロブテン樹脂は、(a1)1種以上の付加重合性アリールシクロブテンモノマーを10~50モル%と、(a2)1種以上のジエノフィルモノマーを15~60モル%;(a3)1種以上のジエンモノマーっを0~50モル%;(a4)1種以上の可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)剤を0~20モル%;及び(a5)1種以上の複素環含有モノマーを0~10モル%;からなる群から選択される1種以上のモノマーと、を含む混合物からの重合生成物を含む。
【0044】
少なくとも1種のアリールシクロブテン樹脂は、少なくとも1つの付加重合性置換基を有するアリールシクロブテンである付加重合性アリールシクロブテンモノマーから調製される。この置換基は、ビニル基、アリル基又は(メタ)アクリレート基とすることができる。このモノマーは、共重合時に存在するモノマー全体を基準として5~60モル%、いくつかの非限定的な実施形態では10~50モル%、いくつかの非限定的な実施形態では20~40モル%、いくつかの非限定的な実施形態では25~35モル%の量で存在することができる。
【0045】
いくつかの実施形態において、アリールシクロブテンモノマーは、以下に示す式A-1、式A-2又は式A-3を有する:
【0046】
【化5】
【0047】
式A-1において、Kは、アルキル、アリール、炭素環式アリール、多環式アリール、ヘテロアリール、アリールオキシ、アリールアルキル、カルボニル、エステル、カルボキシル、エーテル、チオエステル、チオエーテル、第三級アミン及びこれらの組合せからなる群から選択される二価基とすることができる。いくつかの非限定的な実施形態では、Kは、ヘテロ原子を持たない無置換C6~36炭素環式アリール基、若しくはヘテロ原子を持たない無置換C6~18炭素環式アリール基;又はアルキル及びアルコキシからなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有する置換C6~36炭素環式アリール基、若しくはアルキル及びアルコキシからなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有する置換C6~18炭素環式アリール基;又は無置換C3~36ヘテロアリール基、若しくは無置換C3~18ヘテロアリール基;又はアルキル及びアルコキシからなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有する置換C6~36ヘテロアリール基、若しくはアルキル及びアルコキシからなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有する置換C6~18ヘテロアリール基;又は環ヘテロ原子を持たない無置換C6~36アリールオキシ基、若しくは環ヘテロ原子を持たない無置換C6~18アリールオキシ基;又はアルキル及びアルコキシからなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有する置換C3~36ヘテロアリールオキシ基、若しくはアルキル及びアルコキシからなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有する置換C3~18ヘテロアリールオキシ基;又はヘテロ原子を持たない無置換C6~36アリールアルキル基、若しくはヘテロ原子を持たない無置換C6~18アリールアルキル基;又はアルキル及びアルコキシからなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有する置換C3~36ヘテロアリールアルキル基、若しくはアルキル及びアルコキシからなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有する置換C3~18ヘテロアリールアルキル基とすることができる。
【0048】
式A-1において、Lは、共有結合又は多価連結基である。いくつかの非限定的な実施形態では、Lは、環ヘテロ原子を持たないC6~12炭素環式アリール基であるか又はフェニル、ビフェニル及びナフチルからなる群から選択される。
【0049】
式A-1において、Mは、置換若しくは無置換の二価芳香族若しくは多環芳香族基又は置換若しくは無置換の二価ヘテロ芳香族若しくは多環ヘテロ芳香族基である。式A-1のいくつかの非限定的な実施形態では、Mは、ヘテロ原子を持たない無置換C6~36炭素環式アリール基、若しくはヘテロ原子を持たない無置換C6~18炭素環式アリール基;又はアルキル及びアルコキシからなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有する置換C6~36炭素環式アリール基、若しくはアルキル及びアルコキシからなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有する置換C6~18炭素環式アリール基;又は無置換C3~36ヘテロアリール基、若しくは無置換C3~18ヘテロアリール基;又はアルキル及びアルコキシからなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有する置換C6~36ヘテロアリール基、若しくはアルキル及びアルコキシからなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有する置換C6~18ヘテロアリール基である。
【0050】
式A-1において、Rは、水素、置換又は無置換アルキル、置換又は無置換アルキルオキシ、置換又は無置換アリール、置換又は無置換アリールオキシ、アルキルチオ、アリールチオール、置換アルキルアミノ及び置換アリールアミノからなる群から選択される。式A-1のいくつかの非限定的な実施形態では、Rは、水素;又はC1~6アルキル若しくはC1~3アルキル;又はC1~6アルコキシ若しくはC1~3アルコキシである。
【0051】
式A-1において、R及びRは同一であるか又は異なり、水素、重水素、シアノ、ハロ、メチル、ビニル、アリル及び1~100個の炭素原子を有する置換又は無置換イソプレンからなる群から独立して選択される。
【0052】
式A-1のいくつかの非限定的な実施形態では、R=R=R=水素である。
【0053】
式A-1のいくつかの非限定的な実施形態では、x及びyは同一であるか又は異なり、1~5の整数であり、Lが共有結合である場合はy=1である。
【0054】
式A-2において、Kは、単結合であるか、又はアルキル、アリール、炭素環式アリール、多環式アリール、ヘテロアリール、アリールオキシ、アリールアルキル、カルボニル、エステル、カルボキシル及びエーテル、チオエステル、チオエーテル、第三級アミン並びにこれらの組合せからなる群から選択される二価基とすることができる。いくつかの非限定的な実施形態では、Kは、共有結合;又はヘテロ原子を持たない無置換C6~36炭素環式アリール基、若しくはヘテロ原子を持たない無置換C6~18炭素環式アリール基;又はアルキル及びアルコキシからなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有する置換C6~36炭素環式アリール基、若しくはアルキル及びアルコキシからなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有する置換C6~18炭素環式アリール基;又は無置換C3~36ヘテロアリール基、若しくは無置換C3~18ヘテロアリール基;又はアルキル及びアルコキシからなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有する置換C6~36ヘテロアリール基、若しくはアルキル及びアルコキシからなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有する置換C6~18ヘテロアリール基;又は環ヘテロ原子を持たない無置換C6~36アリールオキシ基、若しくは環ヘテロ原子を持たない無置換C6~18アリールオキシ基;又はアルキル及びアルコキシからなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有する置換C3~36ヘテロアリールオキシ基、若しくはアルキル及びアルコキシからなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有する置換C3~18ヘテロアリールオキシ基;又はヘテロ原子を持たない無置換C6~36アリールアルキル基、若しくはヘテロ原子を持たない無置換C6~18アリールアルキル基;又はアルキル及びアルコキシからなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有する置換C3~36ヘテロアリールアルキル基、若しくはアルキル及びアルコキシからなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有する置換C3~18ヘテロアリールアルキル基とすることができる。
【0055】
式A-1におけるL、M、x及びyは、式A-2におけるL、M、x及びyに等しく適用される。式A-1におけるRに関する上の実施形態は全て、式A-2におけるR~Rに等しく適用される。
【0056】
式A-3において、Kは、ビニル、スチリル、マレイミド、アクリル、メタクリル、アリル、アルキニル又は機能的均等物からなる群から選択される重合性官能基である。
【0057】
式A-1及びA-2におけるL、M、x及びyは、式A-3におけるL、M、x及びyに等しく適用される。式A-1及びA-2におけるR~Rに関する上の実施形態は全て、式A-3におけるR~Rに等しく適用される。
【0058】
非限定的な一実施形態において、アリールシクロブテンモノマーは、式A-1-aを有する:
【0059】
【化6】
【0060】
(式中、Arは、置換又は無置換の炭素環式アリール又は置換又は無置換のヘテロアリール基であり;Qは、共有結合、O、S又はNRであり、Rは、水素、重水素、置換又は無置換の炭素環式アリール及び置換又は無置換のヘテロアリールからなる群から選択され、R~Rは、同一であるか又は異なり、水素、重水素、アルキル、アルコキシ、置換又は無置換の炭素環式アリール基及び置換又は無置換のヘテロアリール基からなる群から独立して選択され、Rは、アルキル、アルコキシ、置換又は無置換の炭素環式アリール基及び置換又は無置換のヘテロアリール基からなる群から選択され;aは0~4の整数である)。
【0061】
式A-1-aにおいて、Arは、6~36個の環炭素を有する無置換の炭素環式アリール基若しくは6~12個の環炭素を有する無置換の炭素環式アリール基;又は6~36個の環炭素を有しアルキル及びアルコキシからなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有する置換炭素環式アリール基若しくは6~12個の環炭素を有しアルキル及びアルコキシからなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有する置換炭素環式アリール基;又は3~36個の環炭素を有するヘテロアリール基若しくは3~12個の環炭素を有するヘテロアリール基;又は6~36個の環炭素を有しアルキル及びアルコキシからなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有する置換ヘテロアリール基若しくは3~12個の環炭素を有しアルキル及びアルコキシからなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有する置換ヘテロアリール基であるか;又はフェニル、ビフェニル及びナフチルからなる群から選択される。
【0062】
式A-1-aのいくつかの非限定的な実施形態では、Qは、共有結合又はO又はS又はNH又はNCHである。
【0063】
式A-1-aのいくつかの非限定的な実施形態では、aは、0;又は1;又は2;又は>0であるか;又は>0であり、且つ少なくとも1つのRがC1~6アルキル若しくはC1~3アルキルであるか;又は>0であり、且つ少なくとも1つのRがC1~6アルコキシ若しくはC1~3アルコキシである。
【0064】
他の非限定的な実施形態において、アリールシクロブテンモノマーは、式A-2-aを有する:
【0065】
【化7】
【0066】
(式中、Arは、置換又は無置換の炭素環式アリール又は置換又は無置換のヘテロアリール基であり;Qは、共有結合、O、S又はNRであり;Rは、水素、重水素、置換又は無置換の炭素環式アリール及び置換又は無置換のヘテロアリールからなる群から選択され;R~Rは同一であるか又は異なり、水素、重水素、アルキル、アルコキシ、アリールオキシ、置換又は無置換の炭素環式アリール基及び置換又は無置換のヘテロアリール基からなる群から独立して選択され;Rは、アルキル、アルコキシ、置換又は無置換の炭素環式アリール基及び置換又は無置換のヘテロアリール基からなる群から選択され;bは0~3の整数である)。
【0067】
式A-2-aにおいて、bは、0;又は1;又は2;又は>0とすることができ;又は>0であり、且つ少なくとも1つのRがC1~6アルキル若しくはC1~3アルキルであるか;>0であり、且つ少なくとも1つのRがC1~6アルコキシ若しくはC1~3アルコキシである。
【0068】
式A-1-aにおけるAr及びQに関する上の実施形態は全て、式A-2-aにおけるAr及びQに等しく適用される。式A-1におけるRに関する上の実施形態は全て、式A-2-aにおけるR~Rに等しく適用される。
【0069】
アリールシクロブテンモノマーの例としては、1-(4-ビニルフェノキシ)-ベンゾシクロブテン、1-(4-ビニルメトキシ)-ベンゾシクロブテン、1-(4-ビニルフェニル)-ベンゾシクロブテン、1-(4-ビニルヒドロキシナフチル)-ベンゾシクロブテン、4-ビニル-1-メチル-ベンゾシクロブテン、4-ビニル-1-メトキシ-ベンゾシクロブテン及び4-ビニル-1-フェノキシ-ベンゾシクロブテンを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0070】
アリールシクロブテン樹脂は、共重合時に存在するモノマー全体を基準として5~70モル%、いくつかの実施形態では15~60モル%、いくつかの実施形態では25~45モル%の量で存在する、式(II)で与えられる構造を有する1種以上のジエノフィルモノマーから調製され:
【0071】
【化8】
【0072】
式(II)において、Bは、水素、置換若しくは無置換アルキル、置換若しくは無置換アリール、置換若しくは無置換ヘテロアリール、置換若しくは無置換アルキルオキシ又はヒドロキシであってもよい。R~R11は、同一であるか又は異なり、水素、重水素、メチル、ビニル、アリル、1~100個の炭素原子を有する置換又は無置換のイソプレン、1~100個の炭素原子を有する置換又は無置換のアルキル、ハロゲン、シアノ、6~100個の炭素原子を有する置換又は無置換のアリール、6~100個の炭素原子を有する置換又は無置換のヘテロアリール及びこれらの組合せからなる群から独立して選択される。
【0073】
いくつかの非限定的な実施形態では、1種以上のジエノフィルモノマーは、式(III)で与えられる構造を有する
【0074】
【化9】
【0075】
(式中、R12~R14は、同一であるか又は異なり、水素及びC1~5アルキルからなる群から独立して選択され;R15は、出現毎に同一であるか又は異なり、水素及びC1~5アルキルからなる群から選択され、隣接するR15基は一緒になって6員の縮合芳香環を形成することができる)。
【0076】
いくつかの非限定的な実施形態では、1種以上のジエノフィルモノマーは、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、1-ビニルナフタレン及び2-ビニルナフタレンからなる群から選択される。
【0077】
ジエンモノマーは、共重合時に存在するモノマー全体を基準として0~60モル%、0~50モル%、10~40モル%又は20~30モル%の量で存在することができる。一実施形態では、ジエンモノマーは、以下に示す式(IV)を有する:
【0078】
【化10】
【0079】
(式中、R16は、出現毎に同一であるか又は異なり、水素及びメチルからなる群から選択され;R17は、出現毎に同一であるか又は異なり、水素、C1~5アルキル、C1~5アルコキシ、C1~5チオアルキル及びC5~12アルケニルからなる群から選択される)。
【0080】
式IVにおいて、R16は全て水素であってもよく、又は3つのR16が水素であり、1つのR16がメチルである。2つのR17は、同一であるか;若しくは異なるか;又は少なくとも1つのR17が水素であるか;又は少なくとも1つのR17がC1~3アルキル若しくはメチルであるか;又は少なくとも1つのR17がC1~3アルコキシ若しくはメトキシであるか;又は少なくとも1つのR17が式-(CH-CH=C(R18(式中、cは、1~5の整数であり、R18は、水素又はメチルである)を有するアルケニルである。
【0081】
ジエンモノマーの例としては、ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、2,4-ヘキサジエン、シクロペンタジエン、β-ミルセン、オシメン、シクロオクタジエン、ファルネセン及び重合性テルペンを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0082】
1種以上の可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)剤は、共重合時に存在するモノマー全体を基準として、0~40モル%、0~30モル%、0~20モル%、2~18モル%又は5~15モル%の量で存在することができる。本明細書に開示する樹脂組成物には幅広い種類のRAFT剤を何種類使用してもよく、これらは他の樹脂成分の重合を開始させると共に、その過程で狭い多分散度を達成できるものであることが必要である。効率的なRAFT重合のためには、開始RAFT剤は、通常、反応性C=S二重結合を含み;中間体ラジカルは、副反応を起こすことなく速やかに開裂することが必要であり;この中間体は、生成物の方を選択するように分配されることが必要であり;放出されたラジカルは重合を効率的に再開始させることが必要である。いくつかの非限定的な実施形態では、RAFT剤は式(V)を有するチオカルボニルチオ化合物である:
【0083】
【化11】
【0084】
(式中、Rは、フリーラジカル脱離基であり、Zは、RAFT重合の付加及び開裂の速度を調整する基である)。例示的なRAFT剤としては、重合性フリーラジカルと可逆的に会合することができる、ジチオエステル化合物(式中、Z=アリール、ヘテロアリール又はアルキルである)、トリチオカーボネート化合物(式中、Z=アルキルチオ、アリールチオ又はヘテロアリールチオである)、ジチオカルバメート化合物(式中、Z=アリールアミン又はヘテロアリールアミン又はアルキルアミンである)及びキサンテート化合物(式中、Z=アルコキシ、アリールオキシ又はヘテロアリールオキシである)が挙げられるが、これらに限定されない。他の実施形態では、Zは、スルホニル、ホスホネート又はホスフィンとすることもできる。
【0085】
いくつかの非限定的な実施形態では、1種以上の可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)剤は、重合性フリーラジカルと可逆的に会合することができるチオカルボニルチオ化合物、ジチオエステル化合物、トリチオカーボネート化合物、ジチオカルバメート化合物及びキサンテート化合物からなる群から選択される。
【0086】
いくつかの非限定的な実施形態では、1種以上の可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)剤は、1-フェニルエチルベンゾジチオアート、1-フェニルエチル2-フェニルプロパンジチオアート及びジベンジルトリチオカーボネートからなる群から選択される。
【0087】
混合物は、付加重合性ビニル置換C3~12複素環又はビニル置換C3~5複素環モノマーを0~20モル%又は0~15モル%又は0~10モル%又は2~8モル%を更に含むことができる。いくつかの実施形態において、複素環モノマーは、1種以上のC1~6アルキル、C6~12炭素環式アリール又はC3~12ヘテロアリールで更に置換されていてもよい。この複素環モノマーは、N-複素環、S-複素環、N,S-複素環及びこれらの置換誘導体からなる群から選択される。
【0088】
N-複素環は、少なくとも1個の環窒素を有することができる。N-複素環の例としては、ピロール、ピリジン、ジアジン、トリアジン、イミダゾール、ベンゾイミダゾール及びキノロンを挙げることができるが、これらに限定されない。S-複素環は、少なくとも1個の環硫黄を有することができる。S-複素環の例としては、チオフェン、ベンゾチオフェン及びジベンゾチオフェンを挙げることができるが、これらに限定されない。N,S-複素環は、少なくとも1個の環窒素及び1個の環硫黄を有することができる。N,S-複素環の例としては、チアゾール、チアジアゾール及びチアジアジンを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0089】
非限定的な一実施形態では、複素環モノマーは以下に示す式VIを有する:
【0090】
【化12】
【0091】
(式中、Z及びZは、同一であるか又は異なり、N又はCR22aであり;R19~R21及びR22aは、出現毎に同一であるか又は異なり、水素及びC1~5アルキルからなる群から選択される)。
【0092】
式VIにおいて、Z=Zであるか;又はZ≠Zであるか;又はZは、CH若しくはCR22a若しくはN若しくはCHであり;又はZは、CR22a若しくはNである。R19は、水素又はC1~3アルキル又はメチルである。式VにおけるR19に関する上の実施形態は全て、式VにおけるR20、R21及びR22aに等しく適用されるか、又はR19=R20=R21=水素である。
【0093】
複素環モノマーの例としては、4-ビニルピリジン、4-ビニル-1,3-ジアジン、2-ビニル-1,3,5-トリアジン及び4-メチル-5-ビニル-1,3-チアゾールを挙げることができるが、これらに限定されない。更に、1種以上の追加の付加重合性モノマーを重合時に存在させることができる。
【0094】
いくつかの非限定的な実施形態では、少なくとも1種のアリールシクロブテン樹脂は、式(VII)で与えられる構造を有する
【0095】
【化13】
【0096】
(式中、Rは、フリーラジカル脱離基であり、Arは、N、S、O又はP原子を含む複素環であり;R23は、H、CH、エチル又はt-ブチルであり;R24は、H、CH、C~C12アルキル又はC~C12アルキレンであり;R25は、シクロブテン、1-オキシ-シクロブテン又はα-メチルシクロブテンであり;lは0~10の整数であり;R26は、1~12個の炭素原子を有するアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基であり;nは5~70の整数であり;mは0~50の整数であり;oは5~50の整数であり;pは0~50の整数であり;l、m、n、o及びpは、それぞれのモノマー単位のモル分率である)。
【0097】
少なくとも1種の可溶性ポリイミド樹脂は、樹脂組成物中に存在する樹脂の総量を基準として10~80モル%、いくつかの実施形態では20~70モル%、いくつかの実施形態では30~60モル%、いくつかの実施形態では40~50モル%の量で存在することができる。この少なくとも1種の可溶性ポリイミド樹脂は:(b1)1種以上のテトラカルボン酸成分残基と;(b2)1種以上のジアミン成分残基と;(b3)1種以上の末端封止化合物と;を含み:この1種以上の末端封止化合物は、1つ以上の架橋基を含む。
【0098】
この1種以上のテトラカルボン酸成分残基は特に限定されず、芳香族テトラカルボン酸二無水物及び脂肪族テトラカルボン酸二無水物からなる群から選択される、対応するテトラカルボン酸二無水物から誘導されたものである。
【0099】
いくつかの非限定的な実施形態では、芳香族テトラカルボン酸二無水物は、4,4’-(ヘキサフルオロ-イソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA);4,4’-オキシジフタル酸二無水物(ODPA);ピロメリット酸二無水物(PMDA);3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA);2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s-BDA);非対称2,3,3’,4’-ビフェニル-テトラカルボン酸二無水物(a-BPDA);3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA);3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(DSDA);4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸無水物(DTDA);デカヒドロ-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)ナフト[1,2-c]フラン-1,3-ジオン;ヘキサヒドロ-4,9-メタノ-3H-フロ[3,4-g][2]ベンゾピラン-1,3,5,7(3aH)-テトロン;3,3’,4,4’-ビシクロヘキシルテトラカルボン酸二無水物;ヘキサヒドロ-4,8-メタノ-1H,3H-ベンゾ[1,2-c:4,5-c’]ジフラン-1,3,5,7-テトロン;ヘキサヒドロ-1H,3H-ベンゾ[1,2-c:4,5-c’]ジフラン-1,3,5,7-テトロン;3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(DSDA);エチレングリコールビス(無水トリメリット酸)エステル;4,4’-ビスフェノールA二無水物(BPADA);などからなる群から選択される。
【0100】
いくつかの非限定的な実施形態では、芳香族テトラカルボン酸二無水物は、アルキル;アリール;ニトロ;シアノ;-N(R’)(R”);ハロ;ヒドロキシ;カルボキシ;アルケニル;アルキニル;シクロアルキル;ヘテロアリール;アルコキシ;アリールオキシ;ヘテロアリールオキシ;アルコキシカルボニル;パーフルオロアルキル;パーフルオロアルコキシ;アリールアルキル;シリル;シロキシ;シロキサン;チオアルコキシ;-S(O)2-;-C(=O)-N(R’)(R”);(R’)(R”)N-アルキル;(R’)(R”)N-アルコキシアルキル;(R’)(R”)N-アルキルアリールオキシアルキル;-S(O)S-アリール;及び-S(O)S-ヘテロアリール;及び硬化過程で新しくC-C又はC-ヘテロ原子結合を形成する能力のある他の基;からなる群から選択される官能基で更に置換されていてもよく;R’及びR”は、出現毎に同一であるか又は異なり、アルキル、シクロアルキル又はアリール基で任意選択的に置換されており;0≦S≦2であり;官能基は、任意選択的に架橋基を含む。
【0101】
いくつかの非限定的な実施形態では、脂肪族テトラカルボン酸二無水物は、シクロブタン二無水物(CBDA);3-(カルボキシメチル)-1,2,4-シクロペンタントリカルボン酸1,4:2,3-二無水物;ビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物;1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物;1,2,4,5-シクロヘキサン-テトラカルボン酸二無水物;1,2,3,4-テトラメチル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物;1,3-ジメチル-1,2,3,4-シクロブタン-テトラカルボン酸二無水物;トリシクロ[6.4.0.02,7]ドデカン-1,8:2,7-テトラカルボン酸二無水物;メソ-ブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物;4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロフタレン-1,2-ジカルボン酸無水物;5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフリル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物などからなる群から選択される。
【0102】
いくつかの非限定的な実施形態では、脂肪族テトラカルボン酸二無水物は、アルキル;アリール;ニトロ;シアノ;-N(R’)(R”);ハロ;ヒドロキシ;カルボキシ;アルケニル;アルキニル;シクロアルキル;ヘテロアリール;アルコキシ;アリールオキシ;ヘテロアリールオキシ;アルコキシカルボニル;パーフルオロアルキル;パーフルオロアルコキシ;アリールアルキル;シリル;シロキシ;シロキサン;チオアルコキシ;-S(O)2-;-C(=O)-N(R’)(R”);(R’)(R”)N-アルキル;(R’)(R”)N-アルコキシアルキル;(R’)(R”)N-アルキルアリールオキシアルキル;-S(O)S-アリール;及び-S(O)S-ヘテロアリール;及び硬化過程で新しくC-C又はC-ヘテロ原子結合を形成する能力のある他の基;からなる群から選択される官能基で更に置換されていてもよく;R’及びR”は、出現毎に同一であるか又は異なり、アルキル、シクロアルキル又はアリール基で任意選択的に置換されており;0≦S≦2であり;官能基は、任意選択的に架橋基を含む。
【0103】
1種以上のジアミン成分残基は特に限定されず、芳香族ジアミン及び脂肪族ジアミンからなる群から選択される、対応するジアミンから誘導されるものである。
【0104】
いくつかの非限定的な実施形態では、芳香族ジアミンは、p-フェニレンジアミン(PPD);2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB);m-フェニレンジアミン(MPD);4,4’-オキシジアニリン(4,4’-ODA)、3,4’-オキシジアニリン(3,4’-ODA);2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(BAHFP);2,2-ビス(4-アミノフェノキシ)ヘキサフルオロプロパン(HFBAPP);1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン(m-BAPB)、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル(p-BAPB);2,2-ビス(3-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン(BAPF);ビス[4-(3-アミノフェノキシ)-フェニル]スルホン(m-BAPS);2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(p-BAPS);m-キシリレンジアミン(m-XDA);2,2-ビス(3-アミノ-4-メチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン(BAMF);9,9’-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン(FDA)、4,4’-(3,3,3’,3’-テトラメチル-2,2’,3,3’-テトラヒドロ-1,1’-スピロビ[インデン]-6,6’-ジイル)ジアニリン、3,3’-(3,3,3’,3’-テトラメチル-2,2’,3,3’-テトラヒドロ-1,1’-スピロビ[インデン]-6,6’-ジイル)ジアニリン、3,3’-(3,3,3’,3’-テトラメチル-2,2’,3,3’-テトラヒドロ-1,1’-スピロビ[インデン]-6,6’-ジイル)ジアニリン、ヘキサメチレンジアミン(HMD)、1,4-シクロヘキサン-ジアミン(CHDA)、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジアミノフェニルメタン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン;1,3’-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン(APB-133)などからなる群から選択される。
【0105】
いくつかの非限定的な実施形態では、芳香族ジアミンは、アルキル;アリール;ニトロ;シアノ;-N(R’)(R”);ハロ;ヒドロキシ;カルボキシ;アルケニル;アルキニル;シクロアルキル;ヘテロアリール;アルコキシ;アリールオキシ;ヘテロアリールオキシ;アルコキシカルボニル;パーフルオロアルキル;パーフルオロアルコキシ;アリールアルキル;シリル;シロキシ;シロキサン;チオアルコキシ;-S(O)2-;-C(=O)-N(R’)(R”);(R’)(R”)N-アルキル;(R’)(R”)N-アルコキシアルキル;(R’)(R”)N-アルキルアリールオキシアルキル;-S(O)S-アリール;及び-S(O)S-ヘテロアリール;及び硬化過程で新しくC-C又はC-ヘテロ原子結合を形成する能力のある他の基;からなる群から選択される官能基で更に置換されていてもよく;R’及びR”は、出現毎に同一であるか又は異なり、アルキル、シクロアルキル又はアリール基で任意選択的に置換されており;0≦S≦2であり;官能基は、任意選択的に架橋基を含む。
【0106】
いくつかの非限定的な実施形態では、脂肪族ジアミンは、1,3-ビス(アミノエチル)シクロヘキサン(m-CHDA);1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(p-CHDA);1,3-シクロヘキサンジアミン;(8,8’-(4-ヘキシル-3-オクチルシクロヘキサン-1,2-ジイル)ビス(オクタン-1-アミン);trans-1,4-ジアミノシクロヘキサン;4,4’-メチレンビ(シクロヘキシルアミン);ビス(アミノメチル)ノルボルナン;α-,ω-ジアミノアルカン(例えば、1,6-ヘキサンジアミン;1,8-オクタンジアミン;1,12-ドデカンジアミン);などからなる群から選択される。
【0107】
いくつかの非限定的な実施形態では、脂肪族ジアミンは、アルキル;アリール;ニトロ;シアノ;-N(R’)(R”);ハロ;ヒドロキシ;カルボキシ;アルケニル;アルキニル;シクロアルキル;ヘテロアリール;アルコキシ;アリールオキシ;ヘテロアリールオキシ;アルコキシカルボニル;パーフルオロアルキル;パーフルオロアルコキシ;アリールアルキル;シリル;シロキシ;シロキサン;チオアルコキシ;-S(O)2-;-C(=O)-N(R’)(R”);(R’)(R”)N-アルキル;(R’)(R”)N-アルコキシアルキル;(R’)(R”)N-アルキルアリールオキシアルキル;-S(O)S-アリール;及び-S(O)S-ヘテロアリール;及び硬化過程で新しくC-C又はC-ヘテロ原子結合を形成する能力のある他の基;からなる群から選択される官能基で更に置換されていてもよく;R’及びR”は、出現毎に同一であるか又は異なり、アルキル、シクロアルキル又はアリール基で任意選択的に置換されており;0≦S≦2であり;官能基は、任意選択的に架橋基を含む。
【0108】
1つ以上の架橋基を含む1種以上の末端封止化合物は特に限定されず、脂肪族末端封止化合物、芳香族末端封止化合物、ヘテロ芳香族末端封止化合物、アルキニル末端封止化合物、アルケニル末端封止化合物、マレイミド末端封止化合物、ビニル末端封止化合物、アリル系末端封止化合物、シアン酸エステル末端封止化合物、エステル末端封止化合物などからなる群から選択される。
【0109】
いくつかの非限定的な実施形態では、末端封止化合物の架橋基は、ラジカル架橋基、カチオン性架橋基、アニオン性架橋基、自身と架橋することによってホモポリマーを形成することができる架橋基、他の架橋基と架橋することによってヘテロポリマーを形成することができる架橋基及びこれらの組合せからなる群から選択される。
【0110】
いくつかの非限定的な実施形態では、末端封止化合物の架橋基は、炭素-炭素又は炭素-ヘテロ原子結合を形成することができる任意の基であり、ビニル基、アルキニル基、アルケニル基、マレイミド基、アリル性基、シアン酸エステル基及びエステル基からなる群から選択される。
【0111】
いくつかの非限定的な実施形態では、1つ以上の架橋基を含む1種以上の末端封止化合物は、4-エチニルアニリン(4-EA)、2,4-ジアミノ-6-ジアリルアミノ-1,3,5-トリアジン(DAMA)、4-アミノスチレン(4AS)などからなる群から選択される。
【0112】
いくつかの非限定的な実施形態では、本明細書に開示する可溶性ポリイミド樹脂は、単一種のテトラカルボン酸成分残基を含む。いくつかの非限定的な実施形態では、本明細書に開示する可溶性ポリイミド樹脂は2種のテトラカルボン酸成分残基を含み、各テトラカルボン酸成分残基は0.1%~99.9%の間のモルパーセントで存在し;いくつかの非限定的な実施形態では、本明細書に開示する可溶性ポリイミド樹脂は3種のテトラカルボン酸成分残基を含み、各テトラカルボン酸成分残基は0.1%~99.9%の間のモルパーセントで存在し;いくつかの非限定的な実施形態では、本明細書に開示する可溶性ポリイミド樹脂は4種のテトラカルボン酸成分残基を含み、各テトラカルボン酸成分残基は0.1%~99.9%の間のモルパーセントで存在し;いくつかの非限定的な実施形態では、本明細書に開示する可溶性ポリイミド樹脂は5種のテトラカルボン酸成分残基を含み、各テトラカルボン酸成分残基は0.1%~99.9%の間のモルパーセントで存在し;いくつかの非限定的な実施形態では、本明細書に開示する可溶性ポリイミド樹脂は6種以上のテトラカルボン酸成分残基を含み、各テトラカルボン酸成分残基は0.1%~99.9%の間のモルパーセントで存在する。
【0113】
いくつかの非限定的な実施形態では、本明細書に開示する可溶性ポリイミド樹脂は、単一種のジアミン成分残基を含む。いくつかの非限定的な実施形態では、本明細書に開示する可溶性ポリイミド樹脂は2種のジアミン成分残基を含み、各ジアミン成分残基は0.1%~99.9%のモルパーセントで存在し;いくつかの非限定的な実施形態では、本明細書に開示する可溶性ポリイミド樹脂は3種のジアミン成分残基を含み、各ジアミン成分残基は0.1%~99.9%の間のモルパーセントで存在し;いくつかの非限定的な実施形態では、本明細書に開示する可溶性ポリイミド樹脂は4種のジアミン成分残基を含み、各ジアミン成分残基は0.1%~99.9%の間のモルパーセントで存在し;いくつかの非限定的な実施形態では、本明細書に開示する可溶性ポリイミド樹脂は5種のジアミン成分残基を含み、各ジアミン成分残基は0.1%~99.9%の間のモルパーセントで存在し;いくつかの非限定的な実施形態では、本明細書に開示する可溶性ポリイミド樹脂は6種以上のジアミン成分残基を含み、各ジアミン成分残基は0.1%~99.9%の間のモルパーセントで存在する。
【0114】
いくつかの非限定的な実施形態では、本明細書に開示する可溶性ポリイミド樹脂は、単一種の末端封止化合物を含み;いくつかの非限定的な実施形態では、2種の末端封止化合物を含み;いくつかの非限定的な実施形態では、3種の末端封止化合物を含み;いくつかの非限定的な実施形態では、4種以上の末端封止化合物を含む。
【0115】
本明細書に開示する可溶性ポリイミド樹脂及び/又は関連する配合物に使用される1種以上の末端封止化合物の量は、対象とする特性の目標値(例えば、熱的特性、機械的特性など)に応じて変化する。いくつかの非限定的な実施形態では、1種以上の末端封止化合物は、0.1モル%~70モル%;いくつかの非限定的な実施形態では1モル%~65モル%;いくつかの非限定的な実施形態では5モル%~60モル%;いくつかの非限定的な実施形態では10モル%~50モル%;いくつかの非限定的な実施形態では15モル%~40モル%;いくつかの非限定的な実施形態では20モル%~35モル%;いくつかの非限定的な実施形態では25モル%~30モル%;いくつかの非限定的な実施形態では約4モル%;いくつかの非限定的な実施形態では約5モル%;いくつかの非限定的な実施形態では約6モル%;いくつかの非限定的な実施形態では約7モル%;いくつかの非限定的な実施形態では約8モル%使用される。
【0116】
更に、可溶性ポリイミド樹脂であって:(b1)1種以上のテトラカルボン酸成分残基;(b2)1種以上のジアミン成分残基;及び(b3)1種以上の末端封止化合物;を含み:更に(d)1種以上のトリアミン成分残基;(e)1種以上のテトラアミン成分残基;(f)1種以上のヘキサカルボン酸三無水物成分残基;及び(g)1種以上のジカルボン酸一無水物成分残基;からなる群から選択される1種以上の残基を含み、1種以上の末端封止化合物は1つ以上の架橋基を含む、可溶性ポリイミド樹脂を提供する。
【0117】
(b1)1種以上のテトラカルボン酸成分残基;(b2)1種以上のジアミン成分残基;及び(b3)1種以上の末端封止化合物に関する特定の実施形態であって:この1種以上の末端封止化合物が、これらの可溶性ポリイミド樹脂のための1種以上の架橋基を含む、特定の実施形態は、本明細書において上に開示したものと同一である。
【0118】
1種以上のトリアミン成分残基は特に限定されず、芳香族トリアミン及び脂肪族トリアミンからなる群から選択される、対応するトリアミンから誘導されたものである。
【0119】
いくつかの非限定的な実施形態では、1種以上のトリアミンは、ジエチレントリアミン、4,4’,4”-メタントリイルトリアニリン、5’-(4-アミノフェニル)-[1,1’:3’,1”-テルフェニル]-4,4”-ジアミン、4,4’,4”-(1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリイル)トリアニリン、N,N-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン-1,4-ジアミン、N1,N1-ビス(3-アミノフェニル)ベンゼン-1,3-ジアミン、4’-(3-アミノフェニル)-[1,1’:2’,1”-テルフェニル]-3,3”-ジアミン、5’-(3-アミノフェニル)-[1,1’:3’,1”-テルフェニル]-3,3”-ジアミン、5’-(4-アミノフェニル)-[1,1’:3’,1”-テルフェニル]-3,3”-ジアミンからなる群から選択される。
【0120】
いくつかの非限定的な実施形態では、トリアミンは、アルキル;アリール;ニトロ;シアノ;-N(R’)(R”);ハロ;ヒドロキシ;カルボキシ;アルケニル;アルキニル;シクロアルキル;ヘテロアリール;アルコキシ;アリールオキシ;ヘテロアリールオキシ;アルコキシカルボニル;パーフルオロアルキル;パーフルオロアルコキシ;アリールアルキル;シリル;シロキシ;シロキサン;チオアルコキシ;-S(O)2-;-C(=O)-N(R’)(R”);(R’)(R”)N-アルキル;(R’)(R”)N-アルコキシアルキル;(R’)(R”)N-アルキルアリールオキシアルキル;-S(O)S-アリール;及び-S(O)S-ヘテロアリール;及び硬化過程で新しくC-C又はC-ヘテロ原子結合を形成する能力のある他の基;からなる群から選択される官能基で更に置換されていてもよく;R’及びR”は、出現毎に同一であるか又は異なり、アルキル、シクロアルキル又はアリール基で任意選択的に置換されており;0≦S≦2であり;官能基は、任意選択的に架橋基を含む。
【0121】
1種以上のテトラアミン成分残基は特に限定されず、芳香族テトラアミン及び脂肪族テトラアミンからなる群から選択される、対応するテトラアミンから誘導されたものである。
【0122】
いくつかの非限定的な実施形態では、1種以上のテトラアミンは、テトラアミノエチレン、[1,1’:3’,1”-テルフェニル]-3,3”,5,5”-テトラアミン、[1,1’:4’,1”-テルフェニル]-3,3”,5,5”-テトラアミン、5,5’-(1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル)ビス(ベンゼン-1,3-ジアミン)、5,5’-(9-メチル-9H-カルバゾール-3,6-ジイル)ビス(ベンゼン-1,3-ジアミン)及び5,5’-(9H-カルバゾール-3,9-ジイル)ビス(ベンゼン-1,3-ジアミン)からなる群から選択される。
【0123】
いくつかの非限定的な実施形態では、テトラアミンは、アルキル;アリール;ニトロ;シアノ;-N(R’)(R”);ハロ;ヒドロキシ;カルボキシ;アルケニル;アルキニル;シクロアルキル;ヘテロアリール;アルコキシ;アリールオキシ;ヘテロアリールオキシ;アルコキシカルボニル;パーフルオロアルキル;パーフルオロアルコキシ;アリールアルキル;シリル;シロキシ;シロキサン;チオアルコキシ;-S(O)2-;-C(=O)-N(R’)(R”);(R’)(R”)N-アルキル;(R’)(R”)N-アルコキシアルキル;(R’)(R”)N-アルキルアリールオキシアルキル;-S(O)S-アリール;及び-S(O)S-ヘテロアリール;及び硬化過程で新しくC-C又はC-ヘテロ原子結合を形成する能力のある他の基からなる群から選択される官能基で更に置換されていてもよく;R’及びR”は、出現毎に同一であるか又は異なり、アルキル、シクロアルキル又はアリール基で任意選択的に置換されており;0≦S≦2であり;官能基は、任意選択的に架橋基を含む。
【0124】
1種以上のヘキサカルボン酸三無水物成分残基は特に限定されず、芳香族ヘキサカルボン酸三無水物及び脂肪族ヘキサカルボン酸三無水物からなる群から選択される、対応するトリカルボン酸から誘導されたものである。
【0125】
いくつかの非限定的な実施形態では、1種以上のヘキサカルボン酸三無水物は、5,5’,5”-ニトリロトリス(イソベンゾフラン-1,3-ジオン)及び5,5’,5”-(ベンゼン-1,3,5-トリイル)トリス(イソベンゾフラン-1,3-ジオン)からなる群から選択される。
【0126】
いくつかの非限定的な実施形態では、ヘキサカルボン酸三無水物は、アルキル;アリール;ニトロ;シアノ;-N(R’)(R”);ハロ;ヒドロキシ;カルボキシ;アルケニル;アルキニル;シクロアルキル;ヘテロアリール;アルコキシ;アリールオキシ;ヘテロアリールオキシ;アルコキシカルボニル;パーフルオロアルキル;パーフルオロアルコキシ;アリールアルキル;シリル;シロキシ;シロキサン;チオアルコキシ;-S(O)2-;-C(=O)-N(R’)(R”);(R’)(R”)N-アルキル;(R’)(R”)N-アルコキシアルキル;(R’)(R”)N-アルキルアリールオキシアルキル;-S(O)S-アリール;及び-S(O)S-ヘテロアリール;及び硬化過程で新しくC-C又はC-ヘテロ原子結合を形成する能力のある他の基;からなる群から選択される官能基で更に置換されていてもよく;R’及びR”は、出現毎に同一であるか又は異なり、アルキル、シクロアルキル又はアリール基で任意選択的に置換されており;0≦S≦2であり;官能基は、任意選択的に架橋基を含む。
【0127】
1種以上のジカルボン酸一無水物成分残基は特に限定されず、芳香族ジカルボン酸及び脂肪族ジカルボン酸からなる群から選択される、対応するジカルボン酸から誘導されたものである。
【0128】
いくつかの非限定的な実施形態では、1種以上のジカルボン酸一無水物は、5-エテニル-1,3-イソベンゾフランジオン、5-エチニルイソベンゾフラン-1,3-ジオン、5-アリルイソベンゾフラン-1,3-ジオン、5-(ビニルオキシ)イソベンゾフラン-1,3-ジオン及び5-(エチニルオキシ)イソベンゾフラン-1,3-ジオンからなる群から選択される。
【0129】
いくつかの非限定的な実施形態では、ジカルボン酸一無水物は、アルキル;アリール;ニトロ;シアノ;-N(R’)(R”);ハロ;ヒドロキシ;カルボキシ;アルケニル;アルキニル;シクロアルキル;ヘテロアリール;アルコキシ;アリールオキシ;ヘテロアリールオキシ;アルコキシカルボニル;パーフルオロアルキル;パーフルオロアルコキシ;アリールアルキル;シリル;シロキシ;シロキサン;チオアルコキシ;-S(O)2-;-C(=O)-N(R’)(R”);(R’)(R”)N-アルキル;(R’)(R”)N-アルコキシアルキル;(R’)(R”)N-アルキルアリールオキシアルキル;-S(O)S-アリール;及び-S(O)S-ヘテロアリール;及び硬化過程で新しくC-C又はC-ヘテロ原子結合を形成する能力のある他の基;からなる群から選択される官能基で更に置換されていてもよく;R’及びR”は、出現毎に同一であるか又は異なり、アルキル、シクロアルキル又はアリール基で任意選択的に置換されており;0≦S≦2であり;官能基は、任意選択的に架橋基を含む。
【0130】
本明細書に開示する可溶性ポリイミド樹脂及び/又は関連する配合物に使用される(d)1種以上のトリアミン成分残基;(e)1種以上のテトラアミン成分残基;(f)1種以上のトリカルボン酸成分残基;及び(g)1種以上のジカルボン酸成分残基;からなる群から選択される1種以上の残基の量は、対象とする特性の目標値(例えば、熱的特性、機械的特性など)に応じて変化する。いくつかの非限定的な実施形態では、1種以上のこれらの残基は0.1モル%~70モル%;いくつかの非限定的な実施形態では1モル%~65モル%;いくつかの非限定的な実施形態では5モル%~60モル%;いくつかの非限定的な実施形態では10モル%~50モル%;いくつかの非限定的な実施形態では15モル%~40モル%;いくつかの非限定的な実施形態では20モル%~35モル%;いくつかの非限定的な実施形態では25モル%~30モル%;いくつかの非限定的な実施形態では約4モル%;いくつかの非限定的な実施形態では約5モル%;いくつかの非限定的な実施形態では約6モル%;いくつかの非限定的な実施形態では約7モル%;いくつかの非限定的な実施形態では約8モル%使用される。
【0131】
本明細書に開示する可溶性PI樹脂の非限定的な例として以下が挙げられる:
ODPA//TFMB/APB-133/4AS 100//49/49/4;
ODPA//TFMB/APB-133/DAMA/4AS 100//46.5/46.5/5/4;
BPADA//APB-133/TFMB/4AS 100/42.5/42.5/30;
ODPA/6FDA//TFMB/PriamineTM1075/4-AS 85/15//91/05/08;
ODPA//APB-133/TFMB/DAMA/4-EA 100//46.5/46.5/05/04;
ODPA//APB-133/TFMB/M1309/4-AS 100//46/46/04/08;
BPADA//APB-133/4-AS 100//85/30;及び
BPADA//APB133/TFMB/1-(4-アミノフェニル)-1H-ピロール-2,5-ジオン) 100//42.5/42.5/30。
【0132】
本明細書に開示するアリールシクロブテン樹脂は、上述の付加重合性モノマーに熱開始剤、光開始剤又は他の光活性化合物を作用させることによって共重合させることにより形成することができる。一実施形態では、共重合プロセスは、上に記載した付加重合性モノマー及びラジカル開始剤を極性溶媒中に含む混合物を提供することと;この混合物を5~50時間の期間にわたり50~150℃の温度に加熱することと;を含む。別の実施形態では、共重合プロセスは、上に記載した付加重合性モノマーを極性溶媒中に含む混合物を提供することと;この混合物を50~150℃の温度に加熱して加熱された混合物を形成することと;加熱された混合物にラジカル開始剤を5~50時間の期間にわたり連続的に供給することと;を含む。
【0133】
極性溶媒は、単一種の有機化合物又は化合物の混合物とすることができる。極性溶媒は、モノマーがその中で混和又は分散するものである。極性溶媒は、反応混合物の総重量を基準として10~70重量%又は20~50重量%の量で存在することができる。一実施形態では、極性溶媒は、(シクロ)アルカノン若しくは環状エステル又は直鎖若しくは分岐ケトン及びC1~8エステルなどの非プロトン性有機溶媒とすることができる。
【0134】
ラジカル開始剤は、概してアゾ化合物又は有機過酸化物である。一実施形態では、ラジカル開始剤は、油溶性アゾ化合物である。そのような開始剤としては、例えば、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオン酸)ジメチル及び2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)を挙げることができる。添加される開始剤は、出発反応混合物の重量を基準として、合計1~5重量%の範囲とすることができる。
【0135】
所望の反応時間が経過した後に得られる、結果として生成する最終反応混合物を、室温(20~25℃)に冷却し、必要に応じて処理する。本開示のポリマーは、そのまま使用してもよいし、又は水若しくはメタノールなどの非溶媒を添加してポリマーを溶液から析出させた後、有機溶媒を除去することによって単離することもできる。
【0136】
本明細書に開示する可溶性ポリイミド樹脂は、以下に示す工程を順に実施することにより形成することができる:(a)1種以上のジアミンを高沸点極性非プロトン性溶媒に溶解する工程;(b)(a)で調製した溶液に1種以上の末端封止化合物を添加する工程;(c)(b)で調製した溶液に1種以上の二無水物を添加する工程;(d)(c)で調製した溶液を予め定められた第1期間撹拌する工程;(e)(d)で調製した溶液を予め定められた第1温度に加熱し、1種以上のイミド化触媒の溶液を添加する工程;(f)(e)で調製した溶液を予め定められた第2温度に加熱し、予め定められた第2期間撹拌する工程;及び(g)(f)で調製した溶液を冷却し、固体ポリイミド樹脂を単離する工程。
【0137】
いくつかの非限定的な実施形態では、1種以上のイミド化触媒は、脂肪族酸無水物、酸無水物、脂肪族第三級アミン、第三級アミン及び複素環式第三級アミンからなる群から選択される。
【0138】
更に本開示は、1種以上の有機溶媒に溶解した又は分散した上述の樹脂を含む液体組成物に関する。この液体組成物は、任意の公知の技術を用いて基板上へ堆積させて膜を形成し、その後、加熱して溶媒を除去することができる。これに続いて、膜を更に硬化させるための追加の加熱工程を行うことができる。いくつかの非限定的な実施形態では、本開示の液体組成物は、フォトリソグラフィー、パッケージング、接着剤、封止及びスピンオンコーティング又は緩衝層などのバルク誘電体用途に使用するための誘電体膜を形成するために使用することができる。基板上に形成された誘電体膜は、そのまま使用することもできるし、又は剥離してから電子デバイスにおける様々な基板上で使用することもできる。
【0139】
本開示には、当該技術分野において公知の任意の基板を使用することができる。基板の例としては、シリコン、銅、銀、酸化インジウムスズ、二酸化ケイ素、ガラス、窒化ケイ素、アルミニウム、金、ポリイミド及びエポキシモールドコンパウンドを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0140】
好適な有機溶媒は、樹脂がその中に溶解するものである。特に有用な有機溶媒は、アリールシクロブテンポリマーの製造又は配合に有用な任意の溶媒である。有機溶媒の例としては、極性プロトン性及び極性非プロトン性溶媒、例えば、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ガンマ-ブチロラクトン、3-メトキシプロピオネート、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、3-メトキシブチルアセテート、アニソール、メシチレン、2-ヘプタノン、シレン、2-ブタノン、乳酸エチル、酢酸アミル、酢酸n-ブチル、n-メチル-2-ピロリドン、N-ブチル-2-ピロリドン、2-ブタノン、トルエン及びこれらの混合物を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0141】
いくつかの非限定的な実施形態では、本明細書に開示する液体組成物は、1種以上の無機微粒子フィラーを、組成物の不揮発性物質の総重量の35~80重量%、いくつかの非限定的な実施形態では45~75重量%、いくつかの非限定的な実施形態では50~72重量%、いくつかの非限定的な実施形態では54~68重量%含む。
【0142】
本明細書に開示する液体組成物のいくつかの非限定的な実施形態では、少なくとも1種以上の無機微粒子フィラーは、誘電率が5未満であり、且つ誘電損失(GHz帯)が0.002未満である無機フィラーからなる群から選択される。平均径が約2μm未満又は絶対径が約8μm未満であり、良好な絶縁特性及び/又は良好な誘電特性を有しているものであれば、上述の特性を有する任意の微粒子フィラーが概して有用である。いくつかの非限定的な実施形態では、無機微粒子フィラーは、好ましくは、最終製品中の誘電性複合材料の層の厚さの10パーセント以下の平均粒子径を有する。いくつかの非限定的な実施形態では、無機微粒子フィラーは、誘電率が4.0以下であり、且つ誘電損失が0.001未満である。無機微粒子フィラーの非限定的な例としては、シリカ、アルミナ、窒化ホウ素、ガラス及び石英が挙げられる。
【0143】
本明細書に開示する液体組成物のいくつかの非限定的な実施形態では、少なくとも1種の無機微粒子フィラーは、1種以上のシランカップリング剤と反応させることによって表面改質されている。この少なくとも1種の無機微粒子フィラーを表面改質するために使用されるシランカップリング剤の選択は特に限定されない。本明細書に開示する誘電体複合材料のいくつかの非限定的な実施形態では、1種以上のアクリル系シランカップリング剤は、式(VII):
【0144】
【化14】
【0145】
(式中、Rは、出現毎に同一であるか又は異なり、アルキル、アリール、アセチル、ケトイミノ及びアルケニルからなる群から選択され;Xは、アクリルオキシ、メタクリルオキシ、アリルオキシ、ビニル、マレイミド、フマル酸エステル、マレイン酸エステル、エチニル、フェニルエチニル、フェニルアミノ、フェニル、スチルベン、プロピオル酸エステル及びフェニルプロピオル酸エステルからなる群から選択される不飽和基であり;nは0~10の整数である)で与えられる構造を有する。いくつかの非限定的な実施形態では、シランカップリング剤はアクリル系である。いくつかの非限定的な実施形態では、シランカップリング剤は単量体であり、いくつかの非限定的な実施形態では、シランカップリング剤はビニル基を介して重合される。
【0146】
アクリル系シランカップリング剤の例としては、ビス(トリメトキシシリル)プロピルフマレート、8-メタクリルオキシオクチルトリメトキシシラン(KBM-5803)、アクリルオキシ及びメチルメトキシシランオリゴマー(KR-513)、メタクリルオキシ及びメチルメトキシシランオリゴマー(X-40-9296)、メルカプト及びメチルメトキシシランオリゴマー(KR-519)、メルカプトメトキシシラン有機鎖オリゴマー(X-12-1154)並びに3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(KBM-503)、3-メタクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン(KBM-502)、3-メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン(KBE-503)、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(KBM-573)及びフェニルトリメトキシシラン(KBM-103)を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0147】
本明細書に開示する誘電体複合材料のいくつかの非限定的な実施形態では、1種以上のアクリル系シランカップリング剤は、無機微粒子フィラーを表面改質するための1種以上の高分子シランと併用される。いくつかの非限定的な実施形態では、1種以上の高分子シランは、式(VIII):
【0148】
【化15】
【0149】
(式中、R27は、アルキル及びHからなる群から選択され;R28は、アルキル及びアリール、アセチル、ケトイミノ並びにアルケニルからなる群から選択され;R29は、COOCHCH=CH、CH及びHからなる群から選択され;R30は、4-アリルオキシフェニル、COOCHCH=CH及び反応性ジエノフィルを含む任意の基からなる群から選択され;X及びYは同一であるか又は異なり、メチル及びHからなる群から選択され;m及びnは同一であるか又は異なり、10~1000の整数であり;oは0~1000の整数であり;pは0~10の整数である)で与えられる構造を有する。
【0150】
いくつかの非限定的な実施形態では、本明細書に開示する液体組成物は、ゴム粒子などであってもよい1種以上の有機微粒子フィラーを含む。ゴム粒子は、本開示の樹脂組成物の調製に使用される有機溶媒にさえも溶解せず、アリールシクロブテン樹脂などの樹脂組成物の構成成分とも混和しない。したがって、本発明におけるゴム粒子は、本開示の樹脂組成物のワニス中に分散した状態で存在する。このようなゴム粒子は、通常、これらが有機溶媒及び樹脂に溶解しない程度までゴム成分の分子量を高くして、粒子にすることによって調製される。例えば、溶媒に可溶であり、樹脂組成物中のアリールシクロブテン樹脂などの他の成分と混和性を示すゴム成分を配合してしまうと、粗面化処理後の粗さが大幅に増大し、硬化後の生成物の耐熱性も低下する。
【0151】
本発明のゴム粒子の非限定的な例としては、コアシェル型ゴム粒子、架橋アクリロニトリルブタジエンゴム粒子、架橋スチレンブタジエンゴム粒子及びアクリレートゴム粒子が挙げられる。コアシェル型ゴム粒子は、粒子がコア層及びシェル層を有するゴム粒子であり、その例が、外層であるシェル層がガラス状ポリマーであり、内層であるコア層がゴム状ポリマーである2層構造及び外層であるシェル層がガラス状ポリマーであり、中間層がゴム状ポリマーであり、コア層がガラス状ポリマーである3層構造である。ガラス層は、例えば、メタクリル酸メチルのポリマーから構成され、一方、ゴム状ポリマーは、例えば、アクリル酸ブチルのポリマー(ブチルゴム)から構成される。コアシェル型ゴム粒子の具体例としては、Staphyloid AC 3832及びAC 3816 N(Ganz Chemical Co.,Ltd.の商品名)及びMetablen KW-4426(三菱レイヨン株式会社の商品名)が挙げられる。アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)粒子の具体例としては、XER-91(平均粒子径:0.5μm;JSR株式会社製)などが挙げられる。スチレンブタジエンゴム(SBR)粒子の具体例として、XSK-500(平均粒子径:0.5μm;JSR株式会社製)などが挙げられる。アクリレートゴム粒子の具体例として、Metablen W300A(平均粒子径:0.1μm)及びW450A(平均粒子径:0.2μm)(三菱レイヨン株式会社製)が挙げられる。このようなゴム粒子は、硬化物の機械強度の向上、硬化物の応力の緩和などの効果を付与することができる。
【0152】
配合されるゴム粒子の平均粒子径は、概して0.005~1μmの範囲内にあり、いくつかの非限定的な実施形態では0.2~0.6μmの範囲内にある。本発明におけるゴム粒子の平均粒子径は、動的光散乱法を用いて測定することができる。この測定は、例えば、ゴム粒子を適切な有機溶媒中に超音波などによって均一に分散させ、FPRA-1000(大塚電子株式会社製)を使用してゴム粒子の質量基準の粒子径分布を作成することにより実施され、そのメジアン径を平均粒子径として採用する。
【0153】
いくつかの非限定的な実施形態では、本明細書に開示する液体組成物は、1種以上の有機微粒子フィラーを40~80重量%、いくつかの非限定的な実施形態では45~75重量%、いくつかの非限定的な実施形態では50~72重量%、いくつかの非限定的な実施形態では54~68重量%含む。
【0154】
いくつかの非限定的な実施形態では、本明細書に開示する液体組成物は、更に1種以上の架橋剤を1~30重量%、いくつかの非限定的な実施形態では2~25重量%、いくつかの非限定的な実施形態では5~20重量%、いくつかの非限定的な実施形態では12~18重量%含む。
【0155】
本発明の液体組成物には任意の好適な架橋剤を使用することができる。好適な架橋剤は、当業者によって選択される、アルケン及びディールスアルダージエンなどの樹脂組成物中の官能基と反応することができる。そのような好適な架橋剤としては、多官能性チオール、多官能性アジド、多官能性アジリン及びビスアリールシクロブテンモノマー並びに(メタ)アクリレート、マレイミド、アリル化合物、ビニルシラン化合物などの多官能性ジエノフィル、又は組成物の硬化に使用される条件下で本開示のポリマーを架橋する他の好適なジエノフィルを挙げることができる。そのような架橋剤の選択は当業者の能力の範囲内である。
【0156】
いくつかの非限定的な実施形態では、1種以上の架橋剤は、多官能性チオール、多官能性アジド、多官能性アジリジン、ビスアリールシクロブテン、(メタ)アクリレート、マレイミド、アリル化合物、ビニルシラン化合物及び他の好適なジエノフィルからなる群から選択される。いくつかの非限定的な実施形態では、1種以上の架橋剤はマレイミドである。いくつかの非限定的な実施形態では、マレイミドは1つ以上のビフェニル基を含む。いくつかの非限定的な実施形態では、1種以上の架橋剤は、MIR3000、MIR5000、BMI4000、BMI5100及びBMI-TMHからなる群から選択される。
【0157】
いくつかの非限定的な実施形態では、本明細書に開示する液体組成物は更に、マレイミド樹脂、シアン酸エステル、アリル系樹脂、ブタジエン樹脂及び(メタ)アクリレート樹脂からなる群から選択される1種以上の成分を、1~40重量%;いくつかの非限定的な実施形態では2~30重量%;いくつかの非限定的な実施形態では5~20重量%;いくつかの非限定的な実施形態では8~12重量%含む。
【0158】
いくつかの非限定的な実施形態では、マレイミド樹脂は、MIR3000、MIR5000、BMI4000、BMI5100、BMI-TMH、BMI-689、BMI-1000、BMI-2000、BMI-3000、BMI-4000、BMI-5100、BMI-7000、BMI-3000、BMI-1400、BMI-1500、BMI-1550、BMI-1700、BMI-5000、BMI-2500、BMI-2560、PERKALINK 900、
【0159】
【化16】
【0160】
からなる群から選択される。
【0161】
【化17】
【0162】
【化18】
【0163】
いくつかの非限定的な実施形態では、シアン酸エステルは、L-10、M-10、XUS-371、F-10(Lonza)、DT-4000(Lonza)、ケイ皮酸アリル、TA-G(四国化成工業株式会社)、LDAIC(四国化成工業株式会社)、MeDAIC(四国化成工業株式会社)、BANI-M(丸善石油株式会社)及びBANI-X(丸善石油株式会社)からなる群から選択される。
【0164】
いくつかの非限定的な実施形態では、アリル系樹脂は、TAC、TAIC、フェノール系樹脂の対応する酸素エーテル、例えば、アルデヒドとフェノール又はアミン誘導体との縮合物からなる群から選択され、日本化薬株式会社からのKAYAHARD GPH-65、GPH-103及びKTG-105、
【0165】
【化19】
【0166】
などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0167】
【化20】
【0168】
いくつかの非限定的な実施形態では、ブタジエン樹脂は、BAC45(大阪有機化学工業株式会社)、GI1000(日本曹達株式会社)、GI2000(日本曹達株式会社)、GI3000(日本曹達株式会社)、B1000(日本曹達株式会社)、B2000(日本曹達株式会社)及びB3000(日本曹達株式会社)からなる群から選択される。
【0169】
いくつかの非限定的な実施形態では、(メタ)アクリレート樹脂は、DCP-M(興和株式会社)、PEAM-645、PEAM-1044、PEAM-1769、PEAM-665、PEAM-1066(Designer Molecules)、SR444、SR355、SR335、SR351、SR295、SR399、SR454、CN1964、CN9025、CN9030、CN4002、CN132、CN133、CN2261、CN2262、CN2279(Sartomer Americas)、SA9000(Sabic)、
【0170】
【化21】
【0171】
からなる群から選択される。
【0172】
好適な添加剤を任意選択的に本開示の液体組成物に添加することができる。添加剤の例としては、硬化剤、ポリマーとは別の架橋性モノマーなどの架橋剤、界面活性剤、無機フィラー、有機フィラー、可塑剤、接着促進剤、金属不動態化材料及び前述したもののいずれかの組合せのそれぞれのうちの1種以上を挙げることができるが、これらに限定されない。好適な界面活性剤は当業者に周知であり、非イオン界面活性剤が好ましい。そのような界面活性剤は、0~10g/L又は0~5g/Lの量で存在し得る。
【0173】
任意の好適な無機フィラーを任意選択的に本組成物に使用することができ、これらは当業者に周知である。例示的な無機フィラーとしては、シリカ、アルミナ、硫酸バリウム、タルク、粘土、粉状雲母、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、ホウ酸アルミニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、ジルコン酸バリウム及びジルコン酸カルシウムを挙げることができるが、これらに限定されない。いくつかの非限定的な実施形態では、シリカは、非晶質シリカ、シリカ微粉末、ヒュームドシリカ、結晶シリカ、合成シリカ又は中空シリカとすることができる。いくつかの非限定的な実施形態では、球状シリカが使用される。無機フィラーは、単独で使用することもできるし、又は2種以上を組み合わせて使用することもできる。いくつかの非限定的な実施形態では、無機フィラーは使用されない。
【0174】
無機フィラーの平均粒子径は特に限定されない。絶縁層上に微細な配線を形成する観点から、無機フィラーの平均粒子径の上限は5μm以下であり、いくつかの非限定的な実施形態では3μm以下であり、いくつかの非限定的な実施形態では1μm以下であり、いくつかの非限定的な実施形態では0.7μm以下であり、いくつかの非限定的な実施形態では0.5μm以下であり、いくつかの非限定的な実施形態では0.4μm以下であり、いくつかの非限定的な実施形態では0.3μm以下である。他方で、無機フィラーの平均粒径の下限は0.01μm以上、いくつかの非限定的な実施形態では0.03μm以上、いくつかの非限定的な実施形態では0.05μm以上、いくつかの限定的な実施形態では0.07μm以上、いくつかの非限定的な実施形態では0.1μm以上とすることができる。
【0175】
無機フィラーの平均粒子径は、ミー散乱理論に基づき、レーザー回折及び散乱法により測定することができる。具体的には、レーザー回折式粒度分布測定装置を使用して無機フィラーの体積基準の粒度分布を作成し、そのメジアン径を平均粒子径として測定することができる。測定は、超音波によって、無機フィラーが水中に分散されている分散液に対して行うことができる。測定は、株式会社堀場製作所製のLA-500、750及び950などの市販の装置で行うことができる。
【0176】
無機フィラーは、典型的には、組成物の不揮発性物質の総重量を基準として35重量%~80重量%の量で使用される。
【0177】
無機フィラーは、フィラーを熱硬化性樹脂と相溶化させるためにカップリング剤による表面処理が施されていてもよいし、又は表面処理が施されていなくてもよい。当業者は、適切な熱硬化性樹脂の化学的性質に合わせるためにどのように表面処理を選択すべきかを理解することができる。表面処理剤の非限定的な例としては、フェニルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン及びジイソプロポキシチタンビス(トリエタノールアミネ-ト)が挙げられる。
【0178】
金属不動態化材料は、銅不動態化剤とすることができる。好適な銅不動態化剤は当該技術分野において周知であり、イミダゾール、ベンゾトリアゾール、エチレンジアミン又はその塩若しくは酸エステル及びイミノ二酢酸又はそれらの塩が挙げられる。銅不動態化剤は、典型的には、組成物中の重合性モノマーの総重量を基準として、0~5重量%又は0.2~1重量%の量で使用される。
【0179】
フォトリソグラフィーに有用な本開示の液体組成物には様々な硬化剤を使用することができる。好適な硬化剤は、ビスベンゾシクロブテン含有材料の硬化を助けることができ、且つ熱又は光によって活性化することができるものである。例示的な硬化剤としては、熱的に生成する開始剤及び光活性化合物(光で生成する開始剤)を挙げることができるが、これらに限定されない。そのような硬化剤の選択は当業者の能力の範囲内である。好ましい熱的に生成する開始剤は、これらに限定されないが、アゾビスイソブチロニトリル、過酸化ジベンゾイル及び過酸化ジクミルなどのフリーラジカル開始剤である。好ましい光活性硬化剤は、IrgacureブランドでBASFから入手可能なフリーラジカル光開始剤及びジアゾナフトキノン(DNQ)化合物のスルホネートエステルを含むDNQ化合物である。好適なDNQ化合物は、DNQスルホン酸エステル部分などのDNQ部分を有する任意の化合物及び本組成物において光活性化合物として機能する任意の化合物であり、すなわちこれらは、適切な放射に曝露されると溶解抑制剤として機能する。好適なDNQ化合物は、(特許文献1)及び(特許文献2)に開示されており、これらの内容全体を参照により本明細書に援用する。
【0180】
光活性化合物の量は、ポリマー固形分の総重量を基準として、0~30重量%の間で変化する。光活性化合物が存在する場合、この光活性化合物は、典型的には、ポリマー固形分の総重量を基準として、5~30重量%又は5~25重量%又は10~25重量%の量で使用される。
【0181】
本開示の液体組成物には任意の好適な接着促進剤を使用することができ、このような接着促進剤の選択は十分に当業者の能力の範囲内にある。いくつかの非限定的な例において、接着促進剤は、シラン含有材料若しくはチタン酸テトラアルキルであるか又はトリアルコキシシラン含有材料である。例示的な接着促進剤としては、これらに限定されるものではないが、
ビス(トリメトキシシリルエチル)ベンゼンなどのビス(トリアルコキシシリルアルキル)ベンゼン;アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン及びフェニルアミノプロピルトリエトキシシランなどのアミノアルキルトリアルコキシシラン;並びに他のシランカップリング剤並びに前述したものの混合物が挙げられる。接着促進剤は、プライマー層として最初に適用するか、又は組成物の添加剤として適用することができる。特に好適な接着促進剤として、AP3000、AP8000及びAP9000C(DuPont de Nemours、Wilmington、DE)が挙げられる。本開示の液体組成物は、接着促進剤を、組成物の総重量を基準として0~15重量%又は0.5~10重量%又は1~10重量%又は2~10重量%含有することができる。
【0182】
他の好適な接着促進剤としては、他のヘテロ原子を含んでいても含まなくてもよい有機リン化合物が挙げられる。このような化学種は特に限定されず、概して、P(III)、P(V)の有機リン化合物及びこれらの誘導体からなる群から選択される。
【0183】
P(III)の有機リン化合物の非限定的な例としては、ホスフィン(PR、アルキルジアリールホスフィン、二座アルキルジアリールホスフィン、二座トリアリールホスフィン、ジアルキルアリールホスフィン、トリアルキルホスフィン、トリアリールホスフィンを含む)、アミノホスフィン(PR(NR))、ホスフィニット(PR(OR))、ジアミノホスフィン(PR(NR)、ホスホンアミダイト(PR(OR)(NR)、ホスホナイト(PR(OR)、ジアルキルアリールホスホナイト及び二座アリールホスホナイトを含む)、トリアミノホスフィン(P(NR)、ホスホロジアミダイト(P(OR)(NR)、ホスホロアミダイト(P(OR)(NR)及びホスファイト(P(OR)、トリアリールホスファイト及び二座アリールホスファイトを含む)が挙げられる。通常、これらのP(V)化合物において、Rは、水素、置換若しくは無置換(C1~C30)アルキル、置換若しくは無置換(C2~C30)アルケニル、置換若しくは無置換(C5~C30)アリール、置換若しくは無置換5~30員ヘテロアリール又はCNからなる群から選択されるか;或いは、隣接する置換基に連結して、置換又は無置換の単環式又は多環式の、(C5~C30)の脂肪族環又は芳香族環を形成していてもよく、その炭素原子は、窒素、酸素、硫黄、Si、PO、SO、SO及びSeOから選択される少なくとも1個のヘテロ原子に置き換えられていてもよい。
【0184】
P(III)の有機リン化合物のいくつかの非限定的な実施形態では、Rの少なくとも1個がC1~C30アルキルであり、いくつかの実施形態では、全てのRがC1~C30アルキルである。
【0185】
P(V)の有機リン化合物の非限定的な例としては、ホスフィンオキシド(PR(O)、トリアルキルホスフィンオキシド及びトリアリールホスフィンオキシドを含む)、ホスフィナート(PR(O)(OR)、アリールホスフィン酸及びジアルキルホスフィン酸を含む)、ホスフィンアミド(PR(O)(NR))、ホスホナート(PR(O)(OR)、トリアルキルホスホナート、トリアリールホスホナート及びジアルキルアリールホスホナートを含む)、ホスホンアミデート(PR(O)(OR)(NR))、ホスホンアミド(PR(O)(NR)、
ホスフェート(P(O)(OR)、アルキルリン酸を含む)、ホスホロアミデート(P(O)(OR)(NR))、ホスホロジアミデート(P(O)(OR)(NR)及びホスホロアミド(P(O)(NR)が挙げられる。通常、これらのP(V)化合物において、Rは、出現毎に同一であるか又は異なり、水素、置換若しくは無置換(C1~C30)アルキル、置換若しくは無置換(C2~C30)アルケニル、置換若しくは無置換(C5~C30)アリール、置換若しくは無置換5~30員ヘテロアリール又はCNからなる群から選択されるか;或いは、隣接する置換基に連結して、置換又は無置換の単環式又は多環式の、(C5~C30)の脂肪族環又は芳香族環を形成していてもよく、その炭素原子は、窒素、酸素、硫黄、Si、PO、SO、SO及びSeOから選択される少なくとも1個のヘテロ原子に置き換えられていてもよい。
【0186】
P(V)の有機リン化合物のいくつかの非限定的な実施形態では、Rの少なくとも1個はC1~C30アルキルであり、いくつかの実施形態では、全てのRがC1~C30アルキルである。いくつかの非限定的な実施形態では、有機リン化合物は、SP670及びSP703(四国化成工業株式会社)などのリン酸エステルアミド化合物、SPB-100、SPV-100及びSPE-100(大塚化学株式会社)並びにFPシリーズ(株式会社伏見製薬所)などのホスファゼン化合物とすることができる。有用な可能性のある金属水酸化物としては、UD65、UD650及びUD653(宇部マテリアルズ株式会社)などの水酸化マグネシウム;並びにB-30、B-325、B-315、B-308、B-303及びUFH-20(巴工業株式会社)などの水酸化アルミニウムが挙げられる。
【0187】
好ましい接着促進剤としては、本開示の被覆用組成物の1種以上の構成成分と架橋する能力を有するものを挙げることができる。このような接着促進剤は、ビニル、スチリル、マレイミド、アクリル、メタクリル、アリル性、アルキニル又は機能的均等物からなる群から選択される1種以上の官能基を含む。
【0188】
本開示の液体組成物には任意の好適な可撓化剤又は可塑剤を使用することができ、その選択は十分に当業者の能力の範囲内にある。可撓化剤の例としては、BMI689(Designer Molecules)、ジアリルフタレート及び異性体、ヘキサンジオールジアクリレート並びに25℃の温度で液体である他の適切な材料が挙げられるが、これらに限定されない。可撓化剤は、組成物の不揮発性物質の総重量の0~20重量%又は2~10重量%又は3~5%で使用される。
【0189】
本開示の液体組成物には任意の好適な難燃剤を使用することができ、その選択は十分に当業者の能力の範囲内にある。難燃剤の例としては、有機リン系難燃剤、有機含窒素リン化合物、窒素化合物、シリコーン系難燃剤及び金属水酸化物を挙げることができる。有機リン系難燃剤は、HCA、HCA-HQ及びHCA-NQ(三光株式会社)などのフェナントレン型のリン化合物;HFB-2006M(昭和高分子株式会社)などのリン含有ベンゾオキサジン化合物;REOFOS 30、50、65、90、110、TPP、RPD、BAPP、CPD、TCP、TXP、TBP、TOP、KP140及びTIBP(味の素ファインテクノ株式会社)、TPPO及びPPQ(北興化学工業株式会社)、OP930(Clariant Ltd.)及びPX200(大八化学工業株式会社)などのリン酸エステル化合物;FX289、FX305及びTX0712(東都化成株式会社)などのリン含有エポキシ樹脂;ERF001(東都化成株式会社)などのリン含有フェノキシ樹脂;並びにYL7613(日本エポキシ樹脂製造株式会社)などのリン含有エポキシ樹脂とすることができる。
【0190】
有機含窒素リン化合物は、SP670及びSP703(四国化成工業株式会社)などのリン酸エステルアミド化合物、SPB-100、SPV-100及びSPE-100(大塚化学株式会社)及びFPシリーズ(株式会社伏見製薬所)などのホスファゼン化合物とすることができる。金属水酸化物は、UD65、UD650及びUD653(宇部マテリアルズ株式会社)などの水酸化マグネシウム;並びにB-30、B-325、B-315、B-308、B-303及びUFH-20(巴工業株式会社)などの水酸化アルミニウムとすることができる。
【0191】
いくつかの非限定的な実施形態では、難燃剤の含有量は、樹脂組成物中の不揮発性成分100重量%に対して0.5~10重量%であり、いくつかの非限定的な実施形態では1~5重量%である。
【0192】
本開示の液体組成物には任意の好適な表面レベリング剤又は「レベリング剤」を使用することができ、その選択は十分に当業者の能力の範囲内にある。レベリング剤の大部分は、次に示すモノマー:Si(R)(R)(OR(式中、R、R又はRは、C~C20アルキル若しくはC~C20脂肪族基又はC~C20アリール基からそれぞれ独立して選択される)を重合させることにより誘導されるシリコーン単位を含み得る。非限定的な一実施形態では、レベリング剤は非イオン性であり、カチオン性光硬化プロセス又は熱硬化条件下で、ケイ素及び非ケイ素樹脂中に含まれる官能基と化学反応することができる少なくとも2つの官能基を含み得る。いくつかの非限定的な実施形態では、非反応性基を含むレベリング剤が存在する。レベリング剤は、ケイ素から誘導された単位に加えて、オキシラン環を含むC~C20脂肪族分子の重合により誘導される単位も含み得る。加えて、レベリング剤は、ヒドロキシル基を含むC~C50脂肪族分子から誘導される単位も含み得る。いくつかの非限定的な実施形態では、レベリング剤はハロゲン置換基を含まない。いくつかの非限定的な実施形態では、レベリング剤の分子構造は、主に直鎖、分岐状若しくは超分岐状であるか又はグラフト構造であり得る。
【0193】
いくつかの非限定的な実施形態では;レベリング剤は、AD1700、MD700;Megaface F-114、F-251、F-253、F-281、F-410、F-430、F-477、F-510、F-551、F-552、F-553、F-554、F-555、F-556、F-557、F-558、F-559、F-560、F-561、F-562、F-563、F-565、F-568、F-569、F-570、F-574、F-575、F-576、R-40、R-40-LM、R-41、R-94、RS-56、RS-72-K、RS-75、RS-76-E、RS-76-NS、RS-78、RS-90、DS-21(DIC Sun Chemical);KY-164、KY-108、KY-1200、KY-1203(信越化学株式会社);Dowsil 14、Dowsil 11、Dowsil 54、Dowsil 57、Dowsil FZ2110、FZ-2123;Xiameter OFX-0077;ECOSURF EH-3、EH-6、EH-9、EH-14、SA-4、SA-7、SA-9、SA-15;Tergitol 15-S-3、15-S-5、15-S-7、15-S-9、15-S-12、15-S-15、15-S-20、15-S-30、15-S-40、L61、L-62、L-64、L-81、L-101、XD、XDLW、XH、XJ、TMN-3、TMN-6、TMN-10、TMN-100X、NP-4、NP-6、NP-7、NP-8、NP-9、NP-9.5、NP-10、NP-11、NP-12、NP-13、NP-15、NP-30、NP-40、NP-50、NP-70;Triton CF-10、CF-21、CF-32、CF76、CF87、DF-12、DF-16、DF-20、GR-7M、BG-10、CG-50、CG-110、CG-425、CG-600、CG-650、CA、N-57、X-207、HW 1000、RW-20、RW-50、RW-150、X-15、X-35、X-45、X-114、X-100、X-102、X-165、X-305、X-405、X-705;PT250、PT700、PT3000、P425、P1000TB、P1200、P2000、P4000、15-200(Dow Chemical);DC ADDITIVE 3、7、11、14、28、29、54、56、57、62、65、67、71、74、76、163(Dow Silicones);TEGO Flow 425、Flow 370、Glide 100、Glide 410、Glide 415、Glide 435、Glide 432、Glide 440、Glide 450、Flow 425、Wet 270、Wet 500、Rad 2010、Rad 2200N、Rad 2011、Rad 2250、Rad 2500、Rad 2700、Dispers 670、Dispers 653、Dispers 656、Airex 962、Airex 990、Airex 936、Airex 910(Evonik);BYK-300、BYK-301/302、BYK-306、BYK-307、BYK-310、BYK-315、BYK-313、BYK-320、BYK-322、BYK-323、BYK-325、BYK-330、BYK-331、BYK-333、BYK-337、BYK-341、BYK-342、BYK-344、BYK-345/346、BYK-347、BYK-348、BYK-349、BYK-370、BYK-375、BYK-377、BYK-378、BYK-UV3500、BYK-UV3510、BYK-UV3570、BYK-3550、BYK-SILCLEAN 3700、Modaflow(登録商標)9200、Modaflow(登録商標)2100、Modaflow(登録商標)Lambda、Modaflow(登録商標)Epsilon、Modaflow(登録商標)Resin、Efka FL、Additol XL 480、Additol XW 6580及びBYK-SILCLEAN 3720からなる群から選択される。
【0194】
いくつかの非限定的な実施形態では、レベリング剤は、0~1重量%又は0.001~0.9重量%又は0.05~0.5重量%又は0.05~0.25重量%又は0.05~0.2重量%又は0.1~0.15重量%の量で存在することができる。
【0195】
本開示のフォトリソグラフィー用液体組成物は、本開示の1種以上のポリマーと、任意の有機溶媒、水又は追加の成分と、硬化剤としての光活性化合物とを任意の順序で組み合わせることによって調製することができる。有機溶媒は上に記載したものと同一である。本組成物が、ジアゾナフトキノン、オニウム塩又は光開始剤などの光活性化合物を含有する場合、硬化剤を先ず好適な有機溶媒又はアルカリ水溶液に溶解し、次いで1種以上の本ポリマー及び任意の任意選択的な界面活性剤と合一し、次いで任意の任意選択的な接着促進剤と合一することが好ましい。好適な光活性化合物の選択は当該技術分野の通常の技術水準の範囲内にある。
【0196】
いくつかの非限定的な実施形態では、本開示の液体組成物は、基板上に任意の好適な方法によって塗工又は堆積させることができる。基板は上に記載したものと同一である。本組成物の塗工に適した方法としては、数ある方法の中でも、スピンコート、カーテンコート、スプレーコート、ローラーコート、ディップコート、蒸着及び真空ラミネート並びに熱ロールラミネートなどのラミネートを挙げることができるが、これらに限定されない。半導体製造業において、スピンコートは、既存の設備及びプロセスを活用するための好ましい方法である。スピンコートでは、塗布される表面上で組成物の所望の厚さを達成するために、組成物の固形分を、回転速度と共に調整することができる。
【0197】
本開示の液体組成物が接着促進剤を含有しない場合、本組成物が塗工される基板の表面を、任意選択的に、先ず好適な接着促進剤と接触させるか又は蒸気処理することができる。当該技術分野において公知のプラズマ処理などの様々な蒸気処理を行うことにより、基板表面への本開示のポリマーの接着性を高めることができる。特定の用途においては、本組成物で表面を塗工する前に接着促進剤を使用して基板表面を処理することが好ましい場合もある。接着促進剤は上に記載したものと同一である。
【0198】
典型的には、本開示の液体組成物は、400~4000rpmの回転速度でスピンコートされる。ウェハ又は基板上に吐出される本組成物の量は、組成物中の総固形分、結果として生成する層の所望の厚さ及び当業者に公知のその他の因子に依存する。本組成物の膜又は層がスピンコートによってキャスティングされる場合、溶媒の多く(又は全て)は、膜の堆積中に蒸発する。好ましくは、表面上に堆積した後の組成物は、あらゆる残留溶媒を除去するために加熱(ソフトベーク)される。典型的なベーク温度は90~120℃であるが、他の温度を好適に用いることもできる。残留溶媒を除去するためのそのようなベーキングは、典型的には、およそ1又は2分間行われるが、より長い時間又はより短い時間も好適に用いられ得る。
【0199】
本開示の組成物は、典型的には、ある一定の時間加熱することによって硬化する。好適な硬化温度は、140~300℃又は170~250℃の範囲にある。典型的には、硬化時間は、1~600分間又は30~240分間又は30~120分間の範囲にある。
【0200】
概して、形成された樹脂組成物層の厚さは、導電層の厚さ以上である。回路基板の導電層の厚さは、概して5~70μmの範囲内にあるので、樹脂組成物層の厚さは、概して10~100μmである。一実施形態では、本明細書に記載するポリマーを含む液体組成物は、銅箔上にスピンキャストすることができる。その結果として、いくつかの非限定的な実施形態では、表面処理された銅箔であって、この表面処理された銅箔の少なくとも1つの面に、(a)少なくとも1種の熱硬化性樹脂を30~80重量%と;(b)少なくとも1種の可溶性ポリイミド樹脂を20~70重量%と;任意選択的な(c)1種以上の無機微粒子フィラーを50~72重量%と;(d)1種以上の架橋剤を2~25重量%と;を含む混合物からの樹脂組成物を含み、ここに示した重量%は、組成物の不揮発性成分全体に関する、銅箔が得られる。
【0201】
銅箔には、圧延焼鈍(RA)銅箔及び電着(ED)銅箔が含まれる。これらの箔は様々な方法を用いて製造されるので、これらは、機械的特性、屈曲性及び必要とされる銅の粗面化処理に関し互いに異なる可能性がある。概して、ED銅箔は、光沢のない面(析出面)及び光沢のある面(ドラム面)を有し;一方、RA銅箔は、両方の表面が平滑である。本銅箔は、高周波数及び/又は高速用途向けフレキシブル銅張積層板(FCCL)及びフレキシブルプリント回路基板(FPCB)に使用することが意図されているため、好適な銅箔は、未処理銅箔の表面の少なくとも1つに従来の表面処理を施すことにより得られる、表面処理された銅箔である。
【0202】
銅箔がフレキシブル銅張積層板に組み込まれている場合、銅箔の誘電体層に面している側は「積層側」と呼ばれる。「積層側」の反対側は「レジスト側」と呼ばれる。本表面処理銅箔が1つのみの処理表面を有するのであれば、その処理表面は、フレキシブル銅張積層板に組み込まれる際は積層側になる。
【0203】
電流密度及び/又はめっき時間及び/又はめっき浴の温度及び/又はめっき液の添加剤を制御することによって、異なる粒径、表面粗さ及び厚さを有する表面処理銅箔を得ることができる。
【0204】
いくつかの非限定的な実施形態では、本明細書に使用される銅箔は、Mitsui MT 18FL(1.5μm、18μmのキャリアを備える)、BF-NN-HT、BFL-NN-HT、BFL-NN-Zなどからなる群から選択される。
【0205】
本発明のいくつかの非限定的な実施形態では、本表面処理銅箔の断面の平均粒径は、好ましくは2.5μm以下又は2.0μm以下である。
【0206】
導体損失を増加させることなく適切な接着性を確保するという観点から、表面処理銅箔の少なくとも1つの処理表面の、レーザー顕微鏡によって測定される表面粗さ(Sz、10点平均粗さ)は、2.5μm以下又は2.0μm以下である。表面粗さ(Sz)は、ISO 25178に従いレーザー顕微鏡を用いて測定される。
【0207】
本表面処理銅箔の積層側及び/又はレジスト側には、FPCに使用するために銅箔の適応性を高めることを目的として、ノジュール形成層、不動態化層及び/又は接着促進層を組み込むことができる。表面処理銅箔のレジスト側の表面特性は、その後に続くマイクロエッチング、酸リンス、褐色酸化物処理、黒色酸化物処理、予備はんだマスク処理などの多くのプリント回路製造プロセスによる影響を受ける。したがって、表面粗さ、ノジュール密度及び銅以外の金属元素の総量が本表面処理銅箔の積層側の評価基準となる。いくつかの非限定的な実施形態では、表面処理銅箔の少なくとも1つの処理表面は、ノジュール密度が300個/25μm以下;又は200個/25μm以下;又は100個/25μm以下;又は50個/25μm以下であるノジュール形成層を含む。
【0208】
ノジュール形成電着(nodule electrodeposition)処理を行った後、変色防止、耐熱性及び耐薬品性などの追加の所望の特性を付与するために、銅箔の片面又は両面に1つ以上の不動態化処理を適用することができる。不動態化層は、一般に、亜鉛、ニッケル、クロム、コバルト、モリブデン、タングステン及びこれらの組合せなどの銅以外の金属元素を含む。
【0209】
本表面処理銅箔がフレキシブル銅張積層板に組み込まれる場合、銅箔と誘電体層との間の接着は、銅箔の粗さによる機械的接着に由来するが、接着促進層が存在する場合、接着促進剤による化学結合にも由来する。一般に、最終表面処理は、リン系又はシラン系カップリング剤などの公知の接着促進剤で処理することによって接着促進層を形成することにより行われる。接着促進剤による処理が完了した後、電気ヒーターで水分を除去することにより、本発明の表面処理銅箔を得ることができる。
【0210】
他の非限定的な実施形態において、本明細書に開示する組成物を、スロットダイコーター又は他の適切な装置を介してキャスト成形することにより、マイクロエレクトロニクス用途に望ましいドライフィルムを形成することができる。キャスト膜は、残留溶媒を除去するために70~150℃又は90~120℃の温度で30秒間~10分間ソフトベークすることができる。次いでソフトベークされた膜を、30分間~4時間、150~250℃の硬化条件に付すことができる。
【0211】
他の非限定的な実施形態では、本開示の液体組成物の層は、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのキャリア層本体に塗工されたドライフィルムと、ポリエチレン(PE)又はポリプロピレン(PP)などの保護シートと、に形成することもできる。この保護シートは取り除くことができ、ドライフィルムをキャリア層本体と一緒に基材表面にラミネートによって配置することができる。ラミネートに基づくプロセスにおいて、接着膜が厚さ1~40μmの保護膜を有する場合は、先ず保護膜を剥がした後、必要に応じて接着膜及び回路基板を予熱し、接着膜を加圧及び加熱しながら回路基板に圧着する。いくつかの非限定的な実施形態では、接着膜を真空ラミネート法により減圧下で回路基板にラミネートする方法が好適に採用される。非限定的なラミネート条件には、圧着温度(ラミネート温度)を70~140℃とし、圧着圧力を1~11kgf/cm(9.8×10~107.9×10N/m)とし、空気圧を20mHg(26.7hPa)以下に減圧することが含まれ得る。ラミネート方法は、バッチ式であってもロールを使用する連続式であってもよい。真空ラミネートは、市販の真空ラミネーターを使用して行うことができる。市販の真空ラミネーターの例としては、ニチゴー・モートン株式会社製の真空アプリケーター、株式会社名機製作所製の真空加圧ラミネーター、株式会社日立インダストリイズ製のロール式ドライコーター及び日立エーアイシー株式会社製の真空ラミネーターが挙げられる。
【0212】
減圧下で加熱及び加圧を行うラミネート工程は、一般的な真空熱プレス機を使用して行うことができる。例えば、ラミネート工程は、加熱されたSUS板などの金属板を支持層側から押し付けることによって行うことができる。ラミネートは、通常1×10-2MPa以下の減圧下で行われ、いくつかの非限定的な実施形態では、1×10-3MPa以下で行われる。加熱及び加圧は1段階で行うことができるものの、通常は樹脂のブリードを抑えるために加熱及び加圧を2段階以上に分けて行うと有利である。例えば、1段階目のプレスは、1~15kgf/cmの圧力及び70~150℃の温度で行うことができ、2段階目のプレスは、1~40kgf/cmの圧力及び150~200℃の温度で行うことができる。いくつかの非限定的な実施形態では、プレスは各段階で30~120分間行われる。市販の真空ホットプレス機の例としては、MNPC-V-750-5-200(株式会社名機製作所)及びVH1-1603(北川精機株式会社)が挙げられる。
【0213】
回路基板に接着膜をラミネートし、ラミネートを室温程度まで冷却し、支持体を剥離する場合は支持体を剥離し、その後樹脂組成物層を熱硬化させることによって、回路基板上に絶縁層を形成することができる。熱硬化の適切な条件は、本明細書に開示する樹脂組成物中の各樹脂成分の種類及び含有量に応じて選択することができる。いくつかの非限定的な実施形態では、熱硬化の温度及び時間は150~220℃で20~180分間の範囲から選択され、いくつかの非限定的な実施形態では160~210℃で30~120分間の範囲から選択される。
【0214】
絶縁層を形成した後、硬化前に支持体を剥離しなかった場合は支持体を剥離する。その後、回路基板上に形成された絶縁層を必要に応じて穿孔することにより、ビアホール又はスルーホールを形成する。穿孔は、例えば、ドリル、レーザー、プラズマなどを含む当業者に公知の1つ以上の方法によって行うことができる。いくつかの非限定的な実施形態では、穿孔は、炭酸ガスレーザー及びYAGレーザーなどのレーザーを使用して達成される。
【0215】
続いて、乾式めっき又は湿式めっきにより、絶縁層上に導電層を形成する。乾式めっき法の非限定的な例としては、蒸着、スパッタリング及びイオンプレーティングが挙げられる。湿式めっきでは、絶縁層の表面に、膨潤液による膨潤処理、酸化剤による粗面化処理、中和液による中和処理を順次施すことにより、凹凸のアンカーを形成する。膨潤液による膨潤処理は、絶縁層を50~80℃の膨潤液に5~20分間浸漬することによって行うことができる。膨潤液の非限定的な例としては、アルカリ溶液及び界面活性剤溶液が挙げられる。アルカリ溶液の例としては、水酸化ナトリウム溶液及び水酸化カリウム溶液が挙げられる。市販の膨潤液としては、Swelling Dip Securiganth P及びSwelling Dip Securiganth SBU(アトテックジャパン株式会社)が挙げられる。酸化剤による粗面化処理は、絶縁層を60~80℃の酸化剤溶液に10~30分間浸漬することによって行うことができる。酸化剤の非限定的な例としては、過マンガン酸カリウム又は過マンガン酸ナトリウムを水酸化ナトリウムの水溶液に溶解させたアルカリ性過マンガン酸塩溶液、重クロム酸塩、オゾン、過酸化水素/硫酸及び硝酸が挙げられる。アルカリ性過マンガン酸塩溶液中の過マンガン酸塩の濃度は、約5~10重量%とすることができる。市販の酸化剤の例としては、Concentrate Compact CP及びDosing Solution Securiganth P(アトテックジャパン株式会社)などのアルカリ性過マンガン酸塩溶液が挙げられる。中和液による中和処理は、絶縁層を30~50℃の中和液に3~10分間浸漬することにより行うことができる。いくつかの非限定的な例では、中和液は酸性水溶液とすることができる。市販の中和液の例としては、Reduction Solution Securiganth P(アトテックジャパン株式会社)が挙げられる。
【0216】
別法として、導電層の反転パターンを有するめっきレジストを形成し、無電解めっきのみを行うことによって導電層を形成してもよい。それに続くパターン形成方法として、当業者に公知のサブトラクティブ法又はセミアディティブ法を使用してもよい。
【0217】
本開示はまた、(a)1種以上の熱硬化性樹脂を2~20重量%と;(b)1種以上の可溶性ポリイミド樹脂を1~25重量%と;(c)1種以上の追加の樹脂を0~25重量%と;(d)1種以上の無機微粒子フィラーを35~80重量%と;(e)1種以上の架橋剤を5~45重量%と;(f)1種以上の接着促進剤を0~15重量%と;を含む樹脂で形成された絶縁層と;めっきにより形成された導電層と;を備える多層プリント配線板であって、この重量%の範囲は液体組成物の不揮発性物質の総重量に関するものであり、1種以上の接着促進剤は、表面処理剤の1種以上の成分と共に架橋剤として機能することができ;(a)~(f)は本明細書の他の箇所に開示した通りである、多層プリント配線板にも関する。
【0218】
本開示は、電子デバイス基板上に本出願の誘電体膜の少なくとも1つの層を備える多種多様な電子デバイスにも関する。電子デバイス基板は、任意の電子デバイスの製造に使用される任意の基板とすることができる。例示的な電子デバイス基板としては、これらに限定されないが、半導体ウェハ、ガラス、サファイア、シリケート材料、窒化ケイ素材料、炭化ケイ素材料、ディスプレイデバイス基板、エポキシモールドコンパウンドウェハ(epoxy mold compound wafer)、回路基板基材及び熱的に安定なポリマーが挙げられる。
【実施例0219】
原材料:
モノマー及び他の成分は、以下のように入手/調製した:β-ミルセン(Vigon)、スチレン(Sigma Aldrich)、ビニルトルエン異性体混合物及びパラ異性体混合物(Deltech Corporation)、Vazo 65開始剤(株式会社和光ケミカル)、トリチオ炭酸ジベンジル (Boron MolecularからのBM1361 )、4-ビニルピリジン(Vertellus、入手したままの状態で使用)、ビスマレイミドBMI-689(Designer Molecules)、SPV-100(大塚化学株式会社、入手したままの状態で使用)、平均粒径0.5μmの球状シリカ(SC2050-MTM(メタクリル酸プロピルリガンド処理)及び5SM-CM4(メタクリル酸オクチルリガンド処理)、株式会社アドマテックスから入手したままの状態で使用)。ビニルフェノキシBCB[1-(4-ビニルフェノキシ)ベンゾシクロブテン)]は、(特許文献3)(その全内容を、参照により本明細書に援用する)に従い調製した。ビフェニルマレイミド樹脂MIR-3000は日本化薬株式会社から入手した。ジアリルビスフェノールA H126及びシアン酸エステルAroCy L-10、M-10及びXUS-371はHuntsman Corporationから入手した。ポリブタジエンジアクリレートBAC45は大阪有機化学工業株式会社から入手した。SA9000メタクリレート末端ポリフェニルオキシドポリマーはSaudi Basic Industries Corporationから入手した。CN9167(ウレタンアクリレート)及びSR533(イソシアヌル酸トリアリル)はSartomer USA,LLCから入手した。シアヌル酸トリアリルはTCI America,Inc.から入手した。
【0220】
ジアミン、二無水物及びポリイミド合成のための試薬は全てTCI America,Inc及びSigma Aldrichから入手した。本開示において使用する(二)無水物、(ジ)アミン、ポリイミド及び関連する呼称には以下が含まれる: 6FDA(4,4’-ヘキサフルオロイソプロピリデンビスフタル酸二無水物)、BPDA(3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物)、FDA(9,9’-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン)、TFMB(2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン)、BPADA(4,4’-ビスフェノールA型酸二無水物)、APB-133(1,3’-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン)、ODPA(4,4-オキシジフタル酸無水物)、(4-エチニルアニリン)(4-EA)、(ビス(3-アミノプロピル)末端ポリ(ジメチルシロキサン)(平均Mn約2500))、DAMA(2,4-ジアミノ-6-ジアリルアミノ-1,3,5-トリアジン)、4AS(4-アミノスチレン)、DMAC(ジメチルアセトアミド)及びPAA(ポリアミド酸)。全ての他の溶媒及び化学物質は、Fisher Scientificから入手し、更に精製することなく、入手したままの状態で使用した。
【0221】
厚さ18μmの銅箔を、光学顕微鏡で測定した粗さが平均400nmになるまで粗面化エッチング処理剤MEC CZ8101(メック株式会社の製品)に曝露した。
【0222】
分子量測定:
(1)アリールシクロブテン及び他の非ポリイミド樹脂:
ポリマー試料を、0.5重量%のテトラヒドロフラン溶液として調製し、0.2ミクロンのTeflonフィルターを通して濾過した。移動相は、トリエチルアミン0.5%、メタノール5%及びテトラヒドロフラン94.5%とした。使用したカラムは、Waters Styragel HR5E7.8×300mmカラムのロット番号0051370931とした。注入量を100マイクロリットルとし、運転時間を27分とした。分子量データはポリスチレン標準物質と比較して報告する。
【0223】
(2)ポリイミド樹脂:
ポリイミド樹脂の分子量測定にはポンプ及びインジェクターを含むWatersのModel BreezeTMを使用した。移動相は、塩化リチウム0.1%(wt/v)及びパラ-トルエンスルホン酸0.025%(wt/v)を含むジメチルアセトアミドから構成されるものとした。分離カラムは、2本のShodex GPC KD806スチレン-ジビニルベンゼンゲル、1本のWaters Styragel HR 0.5及び1本のWaters Styragel HR1の組とした。カラム温度を40℃とし、流量を1.0ml/分とし、検出器を、セルのサイズが10マイクロリットルであるWaterからの2414TM示差屈折率検出器とした。試料濃度を1.0mg/mlとし、試料の注入量を0.100mlとした。分子量はポリスチレン標準物質により決定した。
【0224】
膜試料の作製及び処理:
配合物の溶液を、6ミルの間隙を有するスチール鋼製バーを介して、PET基材(NANYA NV38G、厚さ38μm又はMitsubishi Polyester 2MDK-100、厚さ36μm)上にドローダウン塗工した。膜を115℃で3分間ソフトベークした。膜を好適な基板又は自身の上に、Meiki(MVLP 500/600)ラミネーターを用いて、第1段階は約2hPaの真空を30秒間印加し、90℃の温度でゴム製の圧子(contact)を介して0.95MPaの圧力を60秒間印加することによりラミネートした。剥離試験試料は以下に示す通りに作製した:第1段階は約2hPaの真空を30秒間印加し、100℃の温度でゴム製の圧子を介して0.95MPaの圧力を60秒間、第2ステージはスチール鋼板で1.5MPaの圧力を100℃の温度で60秒間印加した。自立膜試料の場合は、試料をそれ自身にラミネートし、次いで試料をシリコン基板上で、Blue Mオーブンで130℃で30分間、次いで200℃で1時間、酸素が100ppm未満の窒素中で硬化させた。次いで試験片を剥がしてPETを取り除き、分析用として所望の寸法に切断可能な自立膜試料を得た。
【0225】
試験方法
(1)誘電特性:
それぞれ10GHzの空洞周波数を有するように機械加工された銅スプリットシリンダ共振器及びKeysight N5224A PNAネットワークアナライザーを使用し、IPC試験方法TM-650 2.5.5.13(01/07改訂)を使用して、自立膜の誘電特性を決定した。膜形状は、基板が2つの円筒空洞部の直径を超えて延在するようなものとした。誘電体基板の厚さは0.01mm~5.0mmまで変化させることができるが、これらの試験では0.03mmの厚さの基板を使用した。自立膜をスプリット円筒共振器の空洞に配置し、TE011共振モードの共振周波数及び品質係数を、ネットワークアナライザーを使用して測定した。膜の比誘電率(Dk)及び損失正接(Df)を、MATLABで作成されたカスタムソフトウェアを使用してTE011共振モードから計算した。
【0226】
(2)熱力学的分析及び重量分析:
自立膜を10mm×25mmの形状に切断して、TA Instrumentsの動的機械分析装置であるQ800装置に取り付け、ひずみ速度を0.06%、プリロードを1ニュートン、周波数を1ヘルツとした。50℃の温度で平衡化し、その後5℃毎分の速度で250℃まで昇温した。tanδ曲線の最大値をガラス転移温度値とした。熱機械分析は、TA Instruments Thermomechanical Analyzer Q400を用いて引張モードで行った。試料を5℃から200℃まで一定の速度で加熱し、次いで-50℃まで降温し、その後同じ速度で250℃まで戻した。熱膨張係数は、最終サイクルにおける25℃~150℃の寸法の線形変化として決定した。
【0227】
剥離試験
18μm銅箔の剥離試験
銅箔試料を硬化させた後、試験片(coupon)上で適切な刃を用いて幅1センチメートルの剥離片の切り込みを入れ、その後Instron引張試験機で50mm/分の速度で90度の角度で銅ストリップを剥離した。剥離力の値をキログラム重/センチメートル単位で求めた。この値が0.75kgf/cmを超えるものは優れていると見なし、一方、この値が0.4kgf/cmを下回るものは本明細書に開示する実施形態に許容できないものと見なした。
【0228】
合成実施例S1(アリールシクロブテン樹脂「RAFT 5k」)
以下のモノマー及び溶媒を、オーバーヘッド撹拌機で撹拌しながら20Lのジャケット付き反応器に入れ、窒素雰囲気中で75℃に加熱した:1-(4-ビニルフェノキシ)ベンゾシクロブテン3999.7g、ビニルトルエン4653.8 g、ビニルピリジン331.9g、トリチオ炭酸ベンジル297.4g及びシクロペンタノン3850.9g。V65を149.0g及びシクロペンタノン3571.0gの開始剤供給物を一定速度で反応器に20時間供給し、温度を更に3時間保持した後、40℃に戻した。この溶液をそのまま配合物実施例に使用した。GPC Mn 4.7k、Mw 7.9k。
【0229】
【化22】
【0230】
合成実施例S2(アリールシクロブテン樹脂「5G Polymer」)
以下のモノマー及び溶媒を、オーバーヘッド撹拌機で撹拌しながら100Lのジャケット付き反応器に入れ、窒素雰囲気中で79℃に加熱した:1-(4-ビニルフェノキシ)ベンゾシクロブテン19695.8g、ビニルトルエン15090.5g、ビニルピリジン1517.7g、β-ミルセン8445.6g及びシクロペンタノン19178.4g。V65を1401.1g及びシクロペンタノン17131.5gの開始剤供給物を一定速度で反応器に20時間供給し、温度を更に3時間保持した後、40℃に戻した。この溶液をそのまま配合物実施例に使用した。GPC Mn 7.4k、Mw 33.5k。
【0231】
【化23】
【0232】
合成実施例S3
(ポリイミド BPADA//APB-133/TFMB/4AS 100//42.5/42.5/30)
窒素入口及び出口及び機械的撹拌機及び熱電対を備えた1Lの反応フラスコに、TFMB16.33g(0.051モル)、APB-133を14.91g(0.051モル)、4ASを4.29g(0.036モル)及びDMAC217mLを装入した。混合物を室温の窒素雰囲気下で約30分間撹拌した。その後、このジアミンの溶液を撹拌しながらBPADA61.21g(0.1176モル)を少量ずつゆっくりと加えた。二無水物の添加が完了したら、DMAC24mLを追加で使用して、容器及び反応フラスコ壁に残った二無水物粉末を洗浄して洗液を加えた。得られた混合物を24時間撹拌した。それとは別に、DMAC中BPADAの5%溶液を調製し、4日間かけて24時間毎に少量(約6.25g)ずつ加えた。BPADAのDMAC溶液は合計24.98g加えた。得られた反応物を更に室温で1~2日間穏やかに撹拌した。この溶液を40℃に加熱した後、無水酢酸56.04g及び3-メチルピリジン51.12gを加えることによりPAAのイミド化を実施した。次いで、反応混合物を80℃で5~7時間加熱した。このポリマー溶液を室温に冷却した後、ブレンダー内の4LのMeOH中に注ぎ、ポリマー固体を微粉砕するために急速に撹拌した。微粉砕されたポリマー固体をブレンダー内で10分間撹拌した後、濾過して回収した。ポリマー粉末を一晩風乾し、更に60℃の真空下で2日間乾燥させた。91グラムの量のポリマーを得た。GPC Mn 10.5k、Mw 21.9k。
【0233】
合成実施例S4
(ポリイミド ODPA//TFMB/APB-133/DAMA/4AS 100//46.5/46.5/5/4)
モノマーODPA//TFMB/APB-133/DAMA/4ASを以下の比で使用したことを除いて、S3と同一の手順に従いS4を合成した:100//46.5/46.5/5/4。GPC Mn 15.3k、Mw 37.6k。
【0234】
合成実施例S5
(ポリイミド ODPA/6FDA//TFMB/PriamineTM 1075/4-AS 85/15//91/5/8)
モノマーODPA/6FDA//TFMB/PriamineTM 1075/4-ASを以下の比で使用したことを除いて、S3と同一の手順に従いS5を合成した:85/15//91/05/08。GPC Mn 26.0k、Mw 75.1k。
【0235】
合成実施例S6
(ポリイミド ODPA//APB-133/TFMB/DAMA/4-EA 100//46.5/46.5/5/4)
モノマーODPA//APB-133/TFMB/DAMA/4-EAを以下の比で使用したことを除いて、S3と同一の手順に従いS6を合成した:100//46.5/46.5/5/4。GPC Mn 11.8k、Mw 35.9k。
【0236】
合成実施例S7
(ポリイミド ODPA//APB-133/TFMB/M1309/4-AS 100//46/46/4/8)
モノマーODPA//APB-133/TFMB/M1309/4-ASを以下の比で使用したことを除いて、S3と同一の手順に従いS7を合成した:100//46/46/4/8。GPC Mn 14.7k、Mw 64.3k。
【0237】
合成実施例S8
(ポリイミド BPADA//APB-133/4-AS 100//85/30)
モノマーBPADA//APB-133/4-ASを以下の比で使用したことを除いて、S3と同一の手順に従いS8を合成した:100//85/30。GPC Mn 8.3k、Mw 14.5k。
【0238】
配合物及び膜の作製
(1)配合物及び膜実施例1
アリールシクロブテン樹脂S1を4.7部、ポリイミドS3を6.2部、架橋剤MIR3000を20.2部及び処理されたシリカ粒子SC2050-MTM69部(全て不揮発性成分の固形分基準)をガラスバイアル内で混合した。揮発性成分であるメメチルエチルケトン35.3部、シクロペンタノン22.4部及びトルエン1.8部を加えた。この混合物を均質化するために内容物を一晩回転させた後、膜の試験片を原材料項に記載したように作製した。
【0239】
(2)配合物及び膜実施例2~36並びに比較例1~5
配合物及び膜実施例2~36(表1)並びに比較例1~5(表2)を、以下の表に記載する組成で、実施例1に記載したものと類似の手順を用いて調製した。対応する膜の試験データを表3及び4に示す。
【0240】
【表1】
【0241】
【表2】
【0242】
【表3】
【0243】
【表4】
【0244】
【表5】
【0245】
全体として、本明細書に開示する樹脂組成物は、本明細書の表3に記載する熱的特性、誘電的特性及びピール強度特性を示すことから、意図されたエレクトロニクス用途に有用である。このことは、適切なBCB及び/又はポリイミド樹脂のうちの1種以上を欠く表4に記載する比較例1~5が示す特性と対比すると特に分かりやすい。実際、いくつかの比較用組成物から生成した膜は、開発材料に関し意図された測定を行うのに十分な品質を有していなかった。また、特定の配合物を用いることにより、優れた吸水性を示す膜を生成することが可能であった。TGA-SAによる測定で、吸水性が65%改善された(熱重量分析-収着分析)。本明細書に開示する組成物の一部は、膜の吸水性を35%も低減し得る効果を示すことが観測された。
【0246】
標的とする組成物の測定結果は幾分ばらつきがあるが(表3)、そのうちの一部は組成物自体の性能に関連するものではない可能性がある。フィラー粒子及び/又は箔の経時数又は品質などの要因も測定結果に影響を与える可能性がある。表3の結果は、本開示の樹脂組成物は、様々な組成にわたり、有用なD、Tg、CTE及びピール強度の組合せを有する膜を確実に生成することを可能にすることを確かに示している。ここに示すように、非常に高いピール強度と、低いD及び本明細書に示す他の特性とのバランスが達成されたことは驚くべきことであり、予期せぬことである。
【0247】
(3)配合物及び膜実施例41~46
本明細書に開示する配合物の組成、特に使用する追加の樹脂の種類及び量が、どのように、ピール強度の測定値(表6)に影響を与え得るかを示すために、実施例1に記載したものと類似の手順を用いて、配合物及び膜実施例41~46(表5)を以下の表に記載する組成で作製した。
【0248】
【表6】
【0249】
【表7】
【0250】
一般的な説明又は実施例において上に記載された行為の全てが必要であるわけではないこと、特定の行為の一部が必要とされない場合があること及び1つ以上の更なる行為が、記載されているものに加えて行われ得ることに留意されたい。更にまた、行為が列挙される順番は、必ずしも行為が行われる順番ではない。
【0251】
上述の本明細書では、特定の実施形態を参照しながら概念を説明してきた。しかしながら、当業者は、後述する特許請求の範囲に記載する本開示の範囲から逸脱することなく、様々な修正及び変更を行うことができることを理解する。したがって、本明細書及び図面は、限定的な意味よりも寧ろ例示的な意味で考えられるべきであり、全てのそのような修正は本開示の範囲内に包含されることが意図されている。
【0252】
特定の実施形態に関して、利益、他の利点及び問題の解決策を上に記載してきた。しかしながら、この利益、利点、問題の解決策及び任意の利益、利点又は解決策を生じさせ得るか又はより顕著にし得る任意の特徴は、任意の又は全ての請求項の、決定的に重要であるか、必要とされるか又は不可欠な特徴であると解釈するべきではない。
【0253】
本明細書において、明確化のために、別々の実施形態と関連させて記載されている特定の特徴を、組み合わせて単一の実施形態で提供することができることも十分に理解されるべきである。反対に、簡潔化のために、単一の実施形態に関連させて記載されている様々な特徴を、個別に又は任意の部分的な組合せで提供することもできる。本明細書で指定した様々な範囲の数値の使用は、記述される範囲内の最小値及び最大値が両方とも「約」という単語に先行されているかのように近似値として記述されている。この形式では、記述範囲のわずかな上下変動を用いても、範囲内の値と実質的に同じ結果を達成することができる。また、これらの範囲の開示は、1つの値の成分のいくつかを、別の値の成分と組み合わせることによって生じ得る分数値を含む、最小平均値と最大平均値との間のあらゆる値を含む連続した範囲であることが意図されている。更に、より広い及びより狭い範囲が開示されるとき、1つの範囲からの最小値を別の範囲からの最大値と組み合わせることは、本開示の予想の範囲内にあり、その逆も同様である。
【外国語明細書】