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特開2024-137871中負荷及び/又は高負荷ディーゼルエンジンにおける改善された摩耗のための耐摩耗系
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137871
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】中負荷及び/又は高負荷ディーゼルエンジンにおける改善された摩耗のための耐摩耗系
(51)【国際特許分類】
   C10M 137/10 20060101AFI20240927BHJP
   C10N 10/04 20060101ALN20240927BHJP
   C10N 40/25 20060101ALN20240927BHJP
   C10N 30/06 20060101ALN20240927BHJP
【FI】
C10M137/10 A
C10N10:04
C10N40:25
C10N30:06
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024044694
(22)【出願日】2024-03-21
(31)【優先権主張番号】18/187,932
(32)【優先日】2023-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】391007091
【氏名又は名称】アフトン・ケミカル・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】Afton Chemical Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】110002848
【氏名又は名称】弁理士法人NIP&SBPJ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ドンハム、リア
(72)【発明者】
【氏名】リッツェンターラー、アバイゲアル
【テーマコード(参考)】
4H104
【Fターム(参考)】
4H104BA02A
4H104BA04A
4H104BA07A
4H104BB08A
4H104BB33A
4H104BB34A
4H104BH03A
4H104DA02A
4H104DA06A
4H104FA02
4H104LA03
4H104PA42
(57)【要約】      (修正有)
【課題】中負荷及び/又は高負荷ディーゼルエンジンにおけるバルブトレイン摩耗を改善するのに好適な潤滑組成物を提供する。
【解決手段】潤滑粘度の1つ以上の基油と、酸素リンカーによってリン原子に結合したヒドロカルビル基を含む1つ以上の過塩基性ジヒドロカルビルジチオリン酸亜鉛化合物から約500ppm以下のリン及び/又は約500ppm以下の亜鉛を提供する耐摩耗系と、を含み、前記耐摩耗系のヒドロカルビル基が、二級アルコール又は二級アルコールと一級アルコールとの組み合わせから提供され、ヒドロカルビル基が、約0.72以下の平均分岐度を有し、ヒドロカルビル基の少なくとも約50重量パーセントが、誘導された二級アルコールであり、前記耐摩耗系の前記1つ以上の過塩基性ジヒドロカルビルジチオリン酸亜鉛化合物が、約1.12:1未満の亜鉛対リン比を有する、中負荷又は高負荷ディーゼルエンジンクランクケース潤滑剤である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルブトレインの摩耗を低減させるための中負荷又は高負荷ディーゼルエンジンクランクケース潤滑剤であって、
潤滑粘度の1つ以上の基油と、
酸素リンカーによってリン原子に結合したヒドロカルビル基を含む1つ以上の過塩基性ジヒドロカルビルジチオリン酸亜鉛化合物から約500ppm以下のリン及び/又は約500ppm以下の亜鉛を提供する耐摩耗系と、を含み、
前記耐摩耗系の前記ヒドロカルビル基が、二級アルコール又は二級アルコールと一級アルコールとの組み合わせから提供され、前記ヒドロカルビル基が、約0.72以下の平均分岐度を有し、前記ヒドロカルビル基の少なくとも約50重量パーセントが、誘導された二級アルコールであり、
本明細書における前記耐摩耗系の前記1つ以上の過塩基性ジヒドロカルビルジチオリン酸亜鉛化合物が、約1.12:1未満の亜鉛対リン比を有する、中負荷又は高負荷ディーゼルエンジンクランクケース潤滑剤。
【請求項2】
前記摩耗防止系の前記1つ以上の過塩基性ジヒドロカルビルジチオリン酸亜鉛化合物が、約1.0:1~約1.12:1の亜鉛対リン比を有し、及び/又は前記耐摩耗系の前記ヒドロカルビル基が、5~7個の総炭素の平均鎖長を有し、及び/又は前記耐摩耗系中の前記ヒドロカルビル基の少なくとも約60重量パーセント、好ましくは、約60~約75重量パーセントが、二級アルコールから誘導される、請求項1に記載の中負荷又は高負荷クランクケース潤滑剤。
【請求項3】
Cummins ISBエンジン試験(ASTM D7484-21b)に従って試験されるとき、前記潤滑剤が、55μm以下の平均カムシャフト摩耗(ACSW)及び/又は100mg以下の平均タペット質量損失(ATWL)をもたらす、請求項1に記載の中負荷又は高負荷クランクケース潤滑剤。
【請求項4】
前記潤滑剤が、平均して、少なくとも約3重量パーセントの煤を含み、及び/又は前記耐摩耗系が、約0.2~約0.72の平均分岐度、5~7個の総炭素の平均鎖長を有するアルコールから誘導されたヒドロカルビル基を含み、前記ヒドロカルビル基の少なくとも約60重量パーセント、好ましくは、約60~約75重量パーセントが、二級アルコールから誘導される、請求項1に記載の中負荷から高負荷クランクケース潤滑剤。
【請求項5】
前記耐摩耗系が、約350ppm以下のリン及び/又は約350ppm以下の亜鉛を提供する、請求項4に記載の中負荷又は高負荷クランクケース潤滑剤。
【請求項6】
前記耐摩耗系の前記1つ以上の過塩基性ジヒドロカルビルジチオリン酸亜鉛化合物が、式I:
【化1】
の構造を有し、
式中、各R基が、独立して、直鎖若しくは分岐鎖C3~C16ヒドロカルビル基であり、並びに/又は各R基が、独立して、直鎖若しくは分岐鎖C3~C8ヒドロカルビル基であり、並びに/又は前記耐摩耗系の前記1つ以上の過塩基性ジヒドロカルビルジチオリン酸亜鉛化合物が、二級アルコールから誘導された約60重量パーセント~約75重量パーセントの前記R基を有し、並びに/又は前記耐摩耗系の前記ヒドロカルビル基が、エチルヘキシル基、ブチル基、メチルイソブチル基、ペンチル基、メチルペンチル基、イソペンチル基、イソブチル基、プロピル基、イソプロピル基、若しくはこれらの組み合わせのうちの1つ以上から選択される、請求項1に記載の中負荷又は高負荷クランクケース潤滑剤。
【請求項7】
前記潤滑剤が、API CJ-4、CK-4、及び/又はFA-4のうちの1つ以上の仕様を満たすか又は超える、請求項1に記載の中負荷又は高負荷クランクケース潤滑剤。
【請求項8】
バルブトレイン摩耗を低減させるためにディーゼルエンジンを潤滑する方法であって、
中負荷又は高負荷ディーゼルエンジンをクランクケース潤滑剤で潤滑することを含み、
前記クランクケース潤滑剤が、(i)潤滑粘度の1つ以上の基油と、(ii)酸素リンカーによってリン原子に結合したヒドロカルビル基を含む1つ以上の過塩基性ジヒドロカルビルジチオリン酸亜鉛化合物から約500ppm以下のリン及び/又は約500ppm以下の亜鉛を提供する耐摩耗系と、を含み、前記耐摩耗系の前記ヒドロカルビル基が、約0.72以下の平均分岐度を有する一級アルコール、二級アルコール、又はそれらの組み合わせから提供され、前記ヒドロカルビル基の少なくとも約50重量パーセントが、二級アルコールから誘導され、本明細書における前記耐摩耗系の前記1つ以上の過塩基性ジヒドロカルビルジチオリン酸亜鉛化合物が、約1.12:1未満の亜鉛対リン比を有し、
前記中負荷又は高負荷ディーゼルエンジンの前記潤滑が、Cummins ISBエンジン試験(ASTM D7484)において、55μm以下の平均カムシャフト摩耗(ACSW)及び/又は100mg以下の平均タペット質量損失(ATWL)をもたらす、方法。
【請求項9】
前記中負荷又は高負荷ディーゼルエンジンが、排気ガス再循環系を装備する、請求項8に記載のバルブトレイン摩耗を低減させるためにディーゼルエンジンを潤滑する方法。
【請求項10】
前記クランクケース潤滑剤が、APICJ-4、CK-4、及び/又はFA-4のうちの1つ以上の仕様を満たすか又は超える、請求項8に記載のバルブトレイン摩耗を低減させるためにディーゼルエンジンを潤滑する方法。
【請求項11】
前記クランクケース潤滑剤が、平均して、少なくとも約3重量パーセントの煤を有し、及び/又は前記耐摩耗系が、約0.2~約0.7の平均分岐度、5~7個の総炭素の平均鎖長を有するアルコールから提供されたヒドロカルビル基を含み、前記ヒドロカルビル基の少なくとも約60重量パーセント、好ましくは、約60~約75重量パーセントが、二級アルコールから誘導される、請求項8に記載のバルブトレイン摩耗を低減させるためにディーゼルエンジンを潤滑する方法。
【請求項12】
前記耐摩耗系が、約350ppm以下のリン及び/又は約350ppm以下の亜鉛を提供する、請求項11に記載のバルブトレイン摩耗を低減させるためにディーゼルエンジンを潤滑する方法。
【請求項13】
前記耐摩耗系の前記1つ以上の過塩基性ジヒドロカルビルジチオリン酸亜鉛化合物が、式I:
【化2】
の構造を有し、
式中、各R基が、独立して、直鎖若しくは分岐鎖C3~C16ヒドロカルビル基であり、並びに/又は各R基が、独立して、直鎖又は分岐鎖C3~C8ヒドロカルビル基であり、主に二級アルコールから誘導される、請求項8に記載のバルブトレイン摩耗を低減させるためにディーゼルエンジンを潤滑する方法。
【請求項14】
前記耐摩耗系の前記1つ以上の過塩基性ジヒドロカルビルジチオリン酸亜鉛化合物が、約60重量パーセント~約80重量パーセントの二級アルコールから誘導された前記R基を有する、請求項13に記載のバルブトレイン摩耗を低減させるためにディーゼルエンジンを潤滑する方法。
【請求項15】
前記耐摩耗系の前記ヒドロカルビル基が、エチルヘキシル基、ブチル基、メチルイソブチル基、ペンチル基、メチルペンチル基、イソペンチル基、イソブチル基、プロピル基、イソプロピル基、又はそれらの組み合わせのうちの1つ以上から選択される、請求項13に記載のバルブトレイン摩耗を低減させるためにディーゼルエンジンを潤滑する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、潤滑組成物に関し、具体的には、中負荷及び/又は高負荷ディーゼルエンジンにおけるバルブトレイン摩耗を改善するのに好適な潤滑組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
中負荷又は高負荷ディーゼルエンジンなどの圧縮点火ディーゼルエンジン用に設計された潤滑剤は、路上又はオフロード用途のいずれかの過酷な条件下で動作するディーゼルエンジンへの適合性に焦点を当てる傾向がある。中負荷ディーゼルエンジンは、概して、14,000ポンド~26,000ポンドの重量のトラック用に構成され、一方、高負荷ディーゼルエンジンは、概して、26,000ポンドを超える重量のトラック用に構成される。かかるエンジン用の潤滑剤は、多くの場合、エンジンが耐えるかなり過酷な動作条件を考慮して、乗用車用ディーゼル潤滑剤とは異なる要件を有する。例えば、Cummins ISBのような高負荷ディーゼルエンジンは、多くの場合、NO排出低減を支援するために排気ガス再循環(exhaust gas recirculation、EGR)系を含む。しかしながら、EGR系は、多くの場合、クランクケース潤滑剤中の煤の蓄積を増加させる。したがって、かかる用途のための潤滑剤は、持続的な高荷重及び/若しくはより高温の動作における性能により重点を置き、並びに/又はEGR系を有する中負荷及び高負荷用途において問題となり得る煤及び/若しくはスラッジの存在下で、摩擦及び粘度性能を維持するように構成される傾向がある。
【0003】
EGR系を備えた中負荷及び高負荷エンジンでは、潤滑油煤の蓄積が、経時的にバルブトレインの摩耗に影響を与える可能性がある。かかるエンジンにおけるバルブトレインは、バルブ、クロスヘッド、ロッカーアーム、プッシュロッド、タペット、及びカムシャフトを含み、これらは、エンジン動作中に吸気バルブ及び排気バルブを開閉するように動作する。Cummins ISBエンジン潤滑剤試験は、ASTM D7484-21bに記載されているように、煤生成及び関連するバルブトレイン摩耗を加速する条件下でエンジンを動作させたときに、バルブトレイン摩耗、具体的には、カムシャフト摩耗及びタペット摩耗を評価するように設計された性能試験である。
【0004】
自動車及びトラック製造元は、効率、流体寿命、及び燃費の改善を求め続けており、そのため、エンジン、潤滑剤、及びそれらの構成成分に対する要求事項は増加し続けている。これらの要件はまた、エンジンオイルの性能が、そのような現代のエンジンのより高い要求と、それらの独自の使用及び用途に関連付けられたそれらの対応する性能基準と、を満たすように進化しなければならないことも意味している。エンジンオイルに対するそのような厳しい要求により、潤滑剤製造元は、多くの場合、潤滑剤及びそれらの添加剤を、産業及び/又は製造元の用途のため一定の性能要件を満たすように調整する。典型的には、業界基準及び/又は自動車/トラック製造元は、一定の性能基準を要求し、そのため1つの使用又は用途のために設計された潤滑剤が、異なる使用又は用途の全ての性能仕様を満たさない場合がある。全ての性能基準を満たす潤滑剤を開発する際に、中負荷及び高負荷ディーゼルエンジンに対する需要などの高まる需要が課題を引き起こしている。
【発明の概要】
【0005】
一態様では、本開示は、バルブトレイン摩耗を低減するように構成された中負荷及び/又は高負荷ディーゼルエンジンクランクケース潤滑剤に関する。この態様の一実施形態又はアプローチでは、潤滑剤は、潤滑粘度の1つ以上の基油と、酸素リンカーによってリン原子に結合したヒドロカルビル基を含む1つ以上の過塩基性ジヒドロカルビルジチオリン酸亜鉛化合物から約500ppm以下のリン及び/又は約500ppm以下の亜鉛を提供する耐摩耗系と、を含む。この耐摩耗系のヒドロカルビル基は、好ましくは、二級アルコール又は二級アルコールと一級アルコールとの組み合わせから提供され、このヒドロカルビル基は、好ましくは、約0.72以下の平均分岐度を有し、ヒドロカルビル基の少なくとも約50重量パーセントは、誘導された二級アルコールである。追加的に、本明細書における耐摩耗系の1つ以上の過塩基性ジヒドロカルビルジチオリン酸亜鉛化合物は、好ましくは、約1.12:1未満の亜鉛対リン重量比を有する。
【0006】
他のアプローチ又は実施形態では、前段落の中負荷及び/又は高負荷クランクケース潤滑剤は、1つ以上の任意選択的な特徴又は任意選択的な実施形態を任意の組み合わせで有し得る。これらの任意選択的な特徴又は実施形態は、以下のうちの1つ以上を含み得る:耐摩耗系の過塩基性ジヒドロカルビルジチオリン酸亜鉛化合物は、約1.0:1~1.12:1の亜鉛対リンの重量比を有し、並びに/又は耐摩耗系のヒドロカルビル基は、5~7個の総炭素の平均鎖長を有し、並びに/又は耐摩耗系における少なくとも約60重量パーセントのヒドロカルビル基は、二級アルコールから誘導され、並びに/又はCummins ISBエンジン試験(ASTM D7484-21b)に従って試験した場合、本明細書の潤滑剤は、55μm以下の平均カムシャフト摩耗(Average Cam Shaft Wear、ACSW)及び/若しくは100mg以下の平均タペット質量損失(Average Tappet Mass Loss、ATWL)をもたらし、並びに/又は潤滑剤は、平均で2.9~3.2重量パーセントの煤(又は、ASTM D7484-21b)に従って、平均で少なくとも約3重量パーセントの煤)を含み、並びに/又は耐摩耗系が、約0.2~約0.72の平均分岐度、5~7個の総炭素の平均鎖長を有するアルコールから誘導されたヒドロカルビル基を含み、ヒドロカルビル基の少なくとも約60重量パーセントが、二級アルコールから誘導され、並びに/又は耐摩耗系が、約350ppm以下のリン及び/若しくは約350ppm以下の亜鉛を提供し、並びに/又は耐摩耗系の1つ以上の過塩基性ジヒドロカルビルジチオリン酸亜鉛化合物が、式I:
【0007】
【化1】
の構造を有し、
式中、各R基は、独立して、直鎖若しくは分岐鎖C3~C16ヒドロカルビル基であり、並びに/又は各R基は、独立して、直鎖若しくは分岐鎖C3~C8ヒドロカルビル基であり、並びに/又は耐摩耗系の1つ以上の過塩基性ジヒドロカルビルジチオリン酸亜鉛化合物は、二級アルコールから誘導された約60重量パーセント~約75重量パーセントのR基を有し、並びに/又は耐摩耗系のヒドロカルビル基は、エチルヘキシル基、ブチル基、メチルイソブチル基、ペンチル基、メチルペンチル基、イソペンチル基、イソブチル基、プロピル基、イソプロピル基、若しくはこれらの組み合わせのうちの1つ以上から選択され、並びに/又は潤滑剤は、API CJ-4、CK-4、及び/若しくはFA-4のうちの1つ以上の仕様を満たすか若しくは超える。
【0008】
別の態様では、本開示はまた、バルブトレインの摩耗を低減するために、中負荷及び/又は高負荷ディーゼルエンジンなどのディーゼルエンジンを潤滑する方法に関する。この態様の実施形態又はアプローチでは、本方法は、クランクケース潤滑剤で中負荷又は高負荷ディーゼルエンジンを潤滑することを含み、クランクケース潤滑剤が、(i)潤滑粘度の1つ以上の基油と、(ii)酸素リンカーによってリン原子に結合したヒドロカルビル基を含む1つ以上の過塩基性ジヒドロカルビルジチオリン酸亜鉛化合物から約500ppm以下のリン及び/又は約500ppm以下の亜鉛を提供する耐摩耗系と、を含み、耐摩耗系のヒドロカルビル基が、約0.72以下の平均分岐度を有する一級アルコール、二級アルコール、又はそれらの組み合わせから提供され、ヒドロカルビル基の少なくとも約50重量パーセントが、二級アルコールから誘導され、本明細書における耐摩耗系の1つ以上の過塩基性ジヒドロカルビルジチオリン酸亜鉛化合物は、約1.12:1未満の亜鉛対リン酸の重量比を有し、中負荷又は高負荷ディーゼルエンジンの潤滑が、Cummins ISBエンジン試験(ASTM D7484-21b)において、55μm以下の平均カムシャフト摩耗(ACSW)及び/又は100mg以下の平均タペット質量損失(ATWL)をもたらす。
【0009】
他の実施形態又はアプローチでは、上で説明された方法は、任意の組み合わせにおいて、任意選択的な特徴、ステップ、及び/又は実施形態を含み得る。方法のこれらの任意選択的な特徴、ステップ、及び/又は実施形態は、以下のうちの1つ以上を含み得る:中負荷又は高負荷ディーゼルエンジンは、排気ガス再循環系を装備し、並びに/又はクランクケース潤滑剤は、API CJ-4、CK-4、及び/若しくはFA-4のうちの1つ以上の仕様を満たすか、若しくは超え、並びに/又はクランクケース潤滑剤は、平均して、少なくとも約3重量パーセントの煤(又は、ASTM D7484-21bに記載されるように、平均して、約2.9~約3.2重量パーセントの煤)を有し、並びに/又は耐摩耗系が、約0.2~約0.7の平均分岐度、5~7個の総炭素の平均鎖長を有するアルコールから提供されたヒドロカルビル基を含み、ヒドロカルビル基の少なくとも約60重量パーセントが、二級アルコールから誘導され、並びに/又は耐摩耗系が、約350ppm以下のリン及び/又は約350ppm以下の亜鉛を提供し、並びに/又は耐摩耗系の1つ以上の過塩基性ジヒドロカルビルジチオリン酸亜鉛化合物が、式I:
【0010】
【化2】
の構造を有し、
式中、各R基は、独立して、直鎖若しくは分岐鎖C3~C16ヒドロカルビル基であり、並びに/又は各R基は、独立して、直鎖若しくは分岐鎖C3~C8ヒドロカルビル基であり、主に二級アルコールから誘導され、並びに/又は耐摩耗系の1つ以上の過塩基性ジヒドロカルビルジチオリン酸亜鉛化合物は、二級アルコールから誘導された約60重量パーセント~約80重量パーセントのR基を有し、並びに/又は耐摩耗系のヒドロカルビル基は、エチルヘキシル基、ブチル基、メチルイソブチル基、ペンチル基、メチルペンチル基、イソペンチル基、イソブチル基、プロピル基、イソプロピル基、若しくはこれらの組み合わせのうちの1つ以上から選択される。
【0011】
更に別の態様では、本開示はまた、Cummins ISBエンジン試験(ASTM D7484-21b)において、55μm以下の平均カムシャフト摩耗(ACSW)及び/又は100mg以下の平均タペット質量損失(ATWL)を達成するための、本概要において上で説明されるような中負荷及び/又は高負荷ディーゼルエンジンクランクケース潤滑剤の任意の実施形態の使用に関する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示は、限定されないが、Cummins ISBエンジンなどの中負荷及び/又は高負荷ディーゼルエンジン用に構成された潤滑組成物に関し、また、バルブトレイン摩耗を低減させるために、EGR系を有する中負荷及び/又は高負荷ディーゼルエンジンを潤滑する方法に関する。背景技術で述べられるように、中負荷及び/又は高負荷ディーゼルエンジンは、多くの場合、NO排出低減を支援するために、エンジンの排気ガスの一部分をエンジンシリンダに戻して再循環させるEGR系を含む。しかしながら、かかる排気ガス再循環は、煤もエンジンに再循環させる傾向があり、煤は、経時的に潤滑剤中に蓄積する可能性がある。潤滑剤中の煤は、バルブトレインタペット及びカムシャフト上の摩耗に影響を与える可能性がある。
【0013】
Cummins ISBエンジン潤滑剤試験は、ASTM D7484-21bに記載されているように、ある量の煤を有する潤滑剤の、バルブトレイン、具体的には、カムシャフトとタペットとの境界面の耐久性及び信頼性に対する影響を評価する。ジヒドロカルビルジチオリン酸亜鉛化合物(Zinc dihydrocarbyl dithiophosphate、ZDDP)は、一般に、耐摩耗剤として中負荷及び/又は高負荷潤滑剤に添加される。しかしながら、排出物制御の傾向は、多くの場合、処理系後の排出物への影響を低減するために、より低いレベルの亜鉛及び/又はリンを必要とする。このため、潤滑剤開発者は、ディーゼルエンジン用の潤滑剤におけるZDDPの使用と対立するジレンマを有し、それによって、この添加剤を低減することは、摩耗性能を犠牲にして処理系後の排出物の性能を改善し得る。
【0014】
本開示は、ZDDPを含む耐摩耗系からのリン及び/又は亜鉛のレベルがより低い、中負荷及び/又は高負荷ディーゼルエンジン用に構成されたクランクケース潤滑剤を説明する。亜鉛含有量及び/又はリン含有量が低減された本明細書の潤滑剤は、驚くべきことに、ASTM D7484-21bのCummins ISBエンジン潤滑剤試験において、良好な平均カム軸摩耗(ACSW)及び低レベルの平均タペット質量損失(ATWL)を達成する。
【0015】
本明細書におけるアプローチ及び実施形態では、潤滑剤は、潤滑粘度の1つ以上の基油と、酸素リンカーによってリン原子に結合したヒドロカルビル基を有する1つ以上の過塩基性ZDDPから約500ppm以下のリン及び/又は約500ppm以下の亜鉛を提供する耐摩耗系と、を含む。実施形態では、耐摩耗系は、1.12以下(すなわち、1.12:1以下)の亜鉛対リンの重量比(Zn:P)を有し得る。耐摩耗系が、特定の平均分岐度のヒドロカルビル基、及びZn:P比で組み合わされた二級アルコールから誘導された最小レベルのヒドロカルビル基を有する場合、耐摩耗系を含有する潤滑剤は、潤滑剤中のリン及び/又は亜鉛のレベルがより低くても、良好なタペット及びカムシャフト摩耗性能を提供したことがまた発見された。
【0016】
また、本明細書で使用される場合、耐摩耗系中のヒドロカルビル基の平均分岐度は、ZDDP中の酸素原子から離れた最長のヒドロカルビル鎖中の炭素の数を、そのヒドロカルビル基中の炭素の総数で割り、次いで、耐摩耗系中の各ヒドロカルビル基の比について調整したものである。例えば、メチルイソブチルカルビノール(methyl isobutyl carbinol、MIBC)を使用して、耐摩耗系中のZDDPを生成した場合、このアルコールから誘導されたヒドロカルビル基は、MIBCが合計6個の炭素を有し、ZDDP中の酸素原子から離れた最長鎖が4個の炭素である(すなわち、分岐度は、4/6又は0.67である)ので、0.67の分岐度を有するであろう。次いで、耐摩耗系全体の平均分岐度を、系中の各化合物上のヒドロカルビル基に関して調整する。一実施例として、耐摩耗系が、(0.67の分岐度を有する)MIBCから誘導された50パーセントのヒドロカルビル基及び1.0の分岐度を有する50パーセントのヒドロカルビル基(直鎖ヒドロカルビル基を意味する)を含む場合、完全な耐摩耗系は、0.83の平均分岐度(すなわち、(50%)(0.67)+(50%)(1.0))を有するであろう。以下で更に考察されるように、本明細書における耐摩耗系は、約0.72以下、好ましくは、約0.5~約0.7の平均分岐度を有する。
【0017】
金属ジヒドロカルビルジチオホスフェート化合物
本明細書における中負荷及び/又は高負荷クランクケース潤滑剤は、1つ以上の過塩基性金属ジヒドロカルビルジチオホスフェート化合物、好ましくは、1つ以上の過塩基性亜鉛ジヒドロカルビルジチオホスフェート化合物(ZDDP)を有する耐摩耗系を含む。1つのアプローチでは、本明細書における耐摩耗系の1つ以上の過塩基性金属ジヒドロカルビルジチオホスフェート化合物は、500ppm以下のリンを潤滑剤に提供し、好ましくは、約350ppm以下のリンを潤滑剤に提供する。他のアプローチでは、本明細書における1つ以上の過塩基性金属ジヒドロカルビルジチオホスフェート化合物は、約200ppm~約500ppmのリン、又は約250ppm~約450ppmのリン、又は約300ppm~約400ppmのリン、又は約300~約320ppmのリンを提供する。更に他のアプローチでは、本明細書における耐摩耗系の1つ以上の過塩基性金属ジヒドロカルビルジチオホスフェート化合物は、好ましくは、過塩基性亜鉛ジヒドロカルビルジチオホスフェート化合物であり、500ppm以下の亜鉛を潤滑剤に提供し、好ましくは、約350ppm以下の亜鉛を潤滑剤に提供する。他のアプローチでは、本明細書における1つ以上の過塩基性ジヒドロカルビルジチオリン酸亜鉛化合物は、約200ppm~約500ppmの亜鉛、又は約250ppm~約450ppmの亜鉛、又は約300ppm~約400ppmの亜鉛、又は約320~約350ppmの亜鉛を提供する。
【0018】
上で述べられるように、本明細書における中負荷及び/又は高負荷ディーゼル用途に好適なZDDPは、過塩基性であり、本明細書における実施形態では、過塩基性耐摩耗系は、1.12以下(すなわち、1.12:1以下)、いくつかのアプローチでは、約1.0~約1.12、他のアプローチでは、約1.0~約1.11、また更なるアプローチでは、約1.05~約1.11の亜鉛対リン重量比(Zn:P)を有する。
【0019】
本明細書における耐摩耗系の過塩基性金属ジヒドロカルビルジチオホスフェート化合物はまた、特定の平均分岐度を有する。アプローチ又は実施形態では、耐摩耗系は、約0.72以下、他のアプローチ又は実施形態では、約0.7以下、更に他のアプローチ又は実施形態では、約0.2~約0.72又は約0.5~約0.7の(上で定義されるような)平均分岐度を有する。上で述べられるように、この平均分岐度は、耐摩耗系中の全ての化合物の総ヒドロカルビル基に基づく。
【0020】
本明細書の耐摩耗系上のヒドロカルビル基はまた、特定の平均鎖長を有し得、いくつかの実施形態では、平均鎖長は、ヒドロカルビル基の5~7個の総炭素であり得る。本明細書中で使用される場合、本明細書中の耐摩耗系におけるヒドロカルビル基の平均鎖長は、金属ジヒドロカルビルジチオホスフェートを形成するために使用され、次いで、耐摩耗系の様々なヒドロカルビル基の比に関して調節されるアルコール基から誘導された炭素の総数を指す。例えば、MIBCから誘導されたヒドロカルビル基は、6個の総炭素の平均変化長を有し、イソプロパノールから誘導されたヒドロカルビル基は、3個の総炭素の平均変化長を有するであろう。
【0021】
好適な過塩基性金属ジヒドロカルビルジチオホスフェート化合物は、(約6~約10重量パーセントの金属などの)5~約10重量パーセントの金属と、(約13~約20重量パーセントの硫黄、又は約14~約19重量パーセントの硫黄などの)約10~約20重量パーセントの硫黄と、を含み得る。好適な過塩基性金属ジヒドロカルビルジチオホスフェート化合物は、ジヒドロカルビルジチオホスフェート金属塩を含み得、金属は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルミニウム、鉛、スズ、モリブデン、マンガン、ニッケル、銅、チタン、ジルコニウム、亜鉛、又はそれらの組み合わせであり得る。好ましくは、金属は、亜鉛である。
【0022】
本明細書における耐摩耗系の1つ以上の過塩基性金属ジヒドロカルビルジチオホスフェート化合物上のアルキル基は、上で述べられるような耐摩耗系に関する平均分岐度及び平均鎖長の述べられる関係が満たされる限り、一級アルコール、二級アルコール、フェノール、及び/又はそれらの混合物から誘導され得る。例えば、一級アルコールとしては、限定されないが、イソブチルアルコール、アミルアルコール、又は2-エチルヘキシルアルコールなどが挙げられ得る。二級アルコールとしては、限定されないが、メチルイソブチルカルビノール、イソプロパノールなどが挙げられ得る。いくつかの実施形態では、この耐摩耗系は、少なくとも約50重量パーセントの二級アルコールから誘導されたヒドロカルビル基、又はより好ましくは、少なくとも約65重量パーセントの二級アルコールから誘導されたヒドロカルビル基を含む。更に他の実施形態では、耐摩耗系は、二級アルコールから誘導された約50重量パーセント~約75重量パーセントのヒドロカルビル基、より好ましくは、二級アルコールから誘導された約65重量パーセント~約70重量パーセントのヒドロカルビル基を含む。
【0023】
耐摩耗系中の1つ以上の過塩基性金属ジヒドロカルビルジチオホスフェート化合物は、潤滑剤中のより低いレベルのリン及び/又は亜鉛で良好なバルブトレイン摩耗性能を達成するために上で述べられる、耐摩耗系全体がリン、亜鉛、分岐度、平均鎖長、及び/又はZn:P比のパラメータを満たす限り、特に限定されない。好適な過塩基性金属ジヒドロカルビルジチオホスフェート化合物の例としては、限定されないが、亜鉛O,O-ジ(C8-14-アルキル)ジチオホスフェート;亜鉛O,O-ビス(2-エチルヘキシル)ジチオホスフェート;亜鉛O,O-ジイソオクチルジチオホスフェート;亜鉛O,O-ビス(ドデシルフェニル)ジチオホスフェート;亜鉛O,O-ジイソデシルジチオホスフェート;亜鉛O,O-ビス(6-エチルヘキシル)ジチオホスフェート;亜鉛O,O-ジオクチルジチオホスフェート;亜鉛O,O-ジペンチルジチオホスフェート;亜鉛O-(2-メチルブチル)-O-(2-メチルプロピル)ジチオホスフェート;及び亜鉛O-(3-メチルブチル)-O-(2-メチルプロピル)ジチオホスフェート;亜鉛O,O-ビス(4-メチル-2-ペンチル)ジチオホスフェート;又はそれらの組み合わせが挙げられ得る。
【0024】
アプローチ又は実施形態では、本明細書の耐摩耗系に好適な過塩基性金属ジヒドロカルビルジチオホスフェート化合物はまた、式I:
【0025】
【化3】
の構造を有し得、式I中の各Rは、独立して、3~18個の炭素原子、又は3~12個の炭素原子、又は約3~10個の炭素原子を含有するが、ただし各リン原子は、平均して少なくとも10個の総炭素、好ましくは、少なくとも12個の総炭素又は10~12個の総炭素を有する。例えば、各Rは、独立して、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、sec-ブチル、アミル、n-ヘキシル、i-ヘキシル、n-オクチル、デシル、ドデシル、オクタデシル、2-エチルヘキシル、フェニル、ブチルフェニル、シクロヘキシル、メチルシクロペンチル、プロペニル、ブテニル、メチル-ペンチル、及び/若しくは4-メチル-2-ペンチル、又はそれらの組み合わせであり得る。上記式における各R基の炭素原子の数は、一般に、約3つ以上、約4つ以上、約6つ以上、又は約8つ以上である。式Iにおいて、Aは、金属、例えば、アルミニウム、鉛、スズ、モリブデン、マンガン、ニッケル、銅、チタン、ジルコニウム、亜鉛、又はそれらの組み合わせであり、好ましくは、Aは、亜鉛である。過塩基性金属ジヒドロカルビルジチオホスフェート化合物が式Iに示される構造を有し、Aが亜鉛である場合、化合物は、約4~約9重量パーセントのリン及び約6~約10重量パーセントの亜鉛を有し得る。
【0026】
いくつかのアプローチ又は実施形態では、当該技術分野では、硫黄-亜鉛配位配列のより正確な表現は、以下に示した対称配列によって表すことができ、本明細書で使用され得る式IIの化学構造は、上に示した式Iと相互交換可能であるということが理解される。式I及びIIに示した構造は、単量体、二量体、三量体、又はオリゴマー(例えば、四量体)として存在し得るということも理解される。
【0027】
【化4】
【0028】
過塩基性ジヒドロカルビルジチオホスフェート金属塩は、既知の技術に従って調製され得、通常、1つ以上のアルコール又はフェノールとPとを反応させて、ジヒドロカルビルジチオリン酸(dihydrocarbyl dithiophosphoric acid、DDPA)を最初に形成し、次いで形成されたDDPAを、酸化亜鉛などの金属化合物と中和することによって調整され得る。例えば、DDPAは、好適な量の一級アルコール及び/又は二級アルコールを含むアルコールの混合物を、Pと反応させることによって作製され得る。一実施形態では、DDPAは、耐摩耗系中の金属ジヒドロカルビルジチオホスフェート化合物の必要とされる平均分岐度を満たす必要に応じて、主に二級アルコール又は一級アルコールと二級アルコールの両方から誘導されたアルキル基を含む。代替的に、複数のDDPAを調製することができ、1つのDDPA上のアルキル基は二級アルコールから完全に誘導され、別のDDPA上のアルキル基は一級アルコールから完全に誘導される。次いでDDPAをともにブレンドして、耐摩耗系中の金属性ジヒドロカルビルジチオホスフェート化合物の平均分岐度に適合するアルキル基を有するDDPAの混合物を形成する。
【0029】
基油又は基油ブレンド
本明細書における中負荷及び/又は高負荷クランクケース潤滑剤において使用される基油は、潤滑粘度の1つ以上の油であり得、中負荷及び高負荷ディーゼル用途における使用に好適として、米国石油協会(American Petroleum Institute、API)基油互換性ガイドラインにおいて指定されるようなAPIグループI~Vの基油のいずれかから選択され得る。5つの基油グループを一般的に以下の表1に示す。
【0030】
【表1】
【0031】
グループI、グループII、及びグループIIIは、鉱油プロセス原料である。グループIVの基油は、オレフィン性不飽和炭化水素の重合によって生成される真の合成分子種を含有する。多くのグループVの基油もまた真の合成生成物であり、ジエステル、ポリオールエステル、ポリアルキレングリコール、アルキル化芳香族、ポリリン酸エステル、ポリビニルエーテル、及び/又はポリフェニルエーテルなどを含み得るが、植物油などの天然油であり得る。グループIIIの基油は、鉱油から誘導されたものであるが、これらの流体が受ける厳密な処理により、それらの物理的特性は、PAOなどのいくつかの真の合成油に非常に類似するものとなることに留意すべきである。したがって、グループIIIの基油から誘導された油は、産業において合成流体と称され得る。グループII+は、高粘度指数グループIIを含み得る。
【0032】
開示される潤滑油組成物中に使用される基油ブレンドは、鉱油、動物油、植物油、合成油、合成油ブレンド、又はそれらの混合物であり得る。好適な油は、水素化分解、水素化、水素化仕上げ、未精製油、精製油、及び再精製油、並びにそれらの混合物から誘導され得る。
【0033】
未精製油は、更なる精製処理を伴わない又はほとんど伴わない、天然、鉱物、又は合成の供給源から誘導されたものである。精製油は、1つ以上の特性の改善をもたらし得る1つ以上の精製ステップで処理されていることを除いて未精製油と同様である。好適な精製技術の例は、溶媒抽出、二次蒸留、酸又は塩基抽出、濾過、浸透などである。食用品質まで精製された油は、有用である場合又は有用でない場合がある。食用油は、ホワイト油とも呼ばれ得る。いくつかの実施形態では、潤滑油組成物は、食用油又はホワイト油不含である。
【0034】
再精製油はまた、再生油又は再処理油としても既知である。これらの油は、同じ又は類似のプロセスを使用して精製油と同様に得られる。多くの場合、これらの油は、使用済み添加剤及び油分解生成物の除去を対象とする技術によって更に処理される。
【0035】
鉱油は、掘削によって、又は植物及び動物から、又はそれらの任意の混合物から得られた油を含み得る。例えば、そのような油としては、ヒマシ油、ラード油、オリーブ油、ピーナツ油、トウモロコシ油、大豆油、及び亜麻仁油、並びに鉱物潤滑油、例えば、液体石油、及びパラフィン系、ナフテン系、若しくは混合パラフィン-ナフテン型の溶媒処理又は酸処理された鉱物潤滑油が挙げられ得るが、それらに限定されない。そのような油は、所望される場合、部分的又は完全に水素化され得る。石炭又は頁岩から誘導された油もまた、有用であり得る。
【0036】
有用な合成潤滑油としては、炭化水素油、例えば、重合化、オリゴマー化、又はインターポリマー化オレフィン(例えば、ポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレンイソブチレンコポリマー);ポリ(1-ヘキセン)、ポリ(1-オクテン)、1-デセンの三量体若しくはオリゴマー、例えば、ポリ(1-デセン)(そのような材料はしばしばα-オレフィンと称される)、及びそれらの混合物;アルキル-ベンゼン(例えば、ドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジノニルベンゼン、ジ-(2-エチルヘキシル)-ベンゼン);ポリフェニル(例えば、ビフェニル、ターフェニル、アルキル化ポリフェニル);ジフェニルアルカン、アルキル化ジフェニルアルカン、アルキル化ジフェニルエーテル及びアルキル化ジフェニルスルフィド、並びにそれらの誘導体、類似体、及び同族体、又はそれらの混合物が挙げられ得る。ポリアルファオレフィンは、典型的には水素化された材料である。
【0037】
他の合成潤滑油としては、ポリオールエステル、ジエステル、リン含有酸の液体エステル(例えば、リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル、及びデカンホスホン酸のジエチルエステル)、又はポリマーテトラヒドロフランが挙げられる。合成油は、フィッシャ・ トロプシュ反応によって生成され得、典型的には、水素化異性化フィッシャ・ トロプシュ炭化水素又はワックスであり得る。一実施形態では、油は、フィッシャ・ トロプシュ気液合成手順、並びに他の気液油によって調製され得る。
【0038】
潤滑組成物中に含まれる主要量の基油は、グループI、グループII、グループIII、グループIV、グループV、及び前述のもののうちの2つ以上の組み合わせからなる群から選択され得るが、基油の主要な量は、組成物中の添加剤成分又は粘度指数改善剤の提供から生じる基油以外のものである。別の実施形態では、潤滑組成物中に含まれる主要量の基油は、グループII、グループIII、グループIV、グループV、及び前述のもののうちの2つ以上の組み合わせからなる群から選択され得るが、基油の主要量は、組成物中の添加剤成分又は粘度指数改善剤の提供から生じる基油以外のものである。
【0039】
存在する潤滑粘度の油の量は、100重量%から、粘度指数改善剤及び/又は流動点降下剤及び/又は他のトップ処理添加剤を含む性能添加剤の量の合計を減算した後に残る残部であり得る。例えば、最終流体中に存在し得る潤滑粘度の油は、主要量、例えば、約50重量%超、約60重量%超、約70重量%超、約80重量%超、約85重量%超、又は約90重量%超であり得る。
【0040】
いくつかのアプローチ又は実施形態では、本明細書における基油系は、グループI~グループVの基油のうちの1つ以上を含み、本明細書における潤滑組成物は、約2~約20cSt、他のアプローチでは、約2~約15cSt、約3~約12cSt、更に他のアプローチでは、約4~約12cSt、及び他のアプローチでは、約4~約7cStのKV100(ASTM D445)を有し得る。
【0041】
任意選択的な添加剤
本明細書における潤滑油組成物はまた中負荷及び高負荷ディーゼル用途に関する性能規格を満たすために、いくつかの任意選択的な添加剤も含み得る。それらの任意選択的な添加剤は、以下の段落で説明する。
【0042】
分散剤
潤滑油組成物は、任意選択的に、1つ以上の分散剤又はそれらの混合物を含み得る。分散剤は、潤滑油組成物に混合する前に灰分を形成する金属を含まず、潤滑剤に添加するとき、通常灰分に寄与しないため、しばしば無灰型の分散剤として既知である。無灰型分散剤は、相対的に高分子量の炭化水素鎖に結合した極性基を特徴とする。典型的な無灰分散剤には、N-置換長鎖アルケニルスクシンイミドが挙げられる。N置換長鎖アルケニルスクシンイミドの例としては、ポリイソブチレン置換基の数平均分子量が、GPCにより測定した場合、約350~約5,000、又は~約3,000の範囲にある、ポリイソブチレンスクシンイミドが挙げられる。スクシンイミド分散剤及びその調製は、例えば、米国特許第7,897,696号又は米国特許第4,234,435号に開示されている。アルケニル置換基は、約2~約16個、又は約2~約8個、又は約2~約6個の炭素原子を含有する重合性モノマーから調製され得る。スクシンイミド分散剤は、典型的には、ポリアミン(典型的にはポリ(エチレンアミン))から形成されたイミドである。
【0043】
好ましいアミンは、ポリアミン及びヒドロキシアミンから選択される。使用され得るポリアミンの例としては、限定されないが、ジエチレントリアミン(diethylene triamine、DETA)、トリエチレンテトラミン(triethylene tetramine、TETA)、テトラエチレンペンタミン(tetraethylene pentamine、TEPA)、及びペンタエチレンヘキサミン(pentaethylene hexamine、PEHA)などのより高級の同族体が挙げられる。
【0044】
好適な重質ポリアミンは、TEPA及びPEHAなどの少量の低級ポリアミンオリゴマーを含むが、主に6個以上の窒素原子、分子当たり2個以上の一級アミン、及び従来のポリアミン混合物より広範な分岐を有するオリゴマーを含むポリアルキレン-ポリアミンの混合物である。重質ポリアミンは、好ましくは、分子当たり7個以上の窒素を含有し、分子当たり2個以上の一級アミンを有するポリアミンオリゴマーを含む。重質ポリアミンは、28重量%超(例えば、32重量%超)の総窒素と、当量当たり120~160グラムの当量の一級アミン基と、を含む。
【0045】
いくつかのアプローチでは、好適なポリアミンは、一般的にPAMとして既知であり、TEPA及びPEHAが、ポリアミンの主要部分であり、多くの場合、約80%未満である、エチレンアミンの混合物を含有する。
【0046】
典型的には、PAMは、1グラム当たり8.7~8.9ミリ当量の一級アミン(一級アミンの当量当たり115~112グラムの当量)及び約33~34重量%の総窒素含有量を有する。実質的にTEPAを含まず、ごく少量のPEHAを含むが、主に6個より多い窒素及びより広範な分岐を有するオリゴマーを含有するPAMオリゴマーのより重質なカットは、分散性が改善された分散剤を生成し得る。
【0047】
ある実施形態では、本開示は、GPCにより判定される場合に、約350~約5,000、又は~約3,000の範囲内にある数平均分子量を有するポリイソブチレンから誘導された少なくとも1つのポリイソブチレンスクシンイミド分散剤を更に含む。ポリイソブチレンスクシンイミドは、単独で、又は他の分散剤と組み合わせて使用され得る。
【0048】
いくつかの実施形態では、ポリイソブチレンが含まれる場合、そのポリイソブチレンは、50モル%を超える、60モル%を超える、70モル%を超える、80モル%を超える、又は90モル%を超える末端二重結合の含有量を有し得る。そのようなPIBは、高反応性PIB(「highly reactive PIB、HR-PIB」)とも称される。GPCにより判定される場合に、約800~約5,000の範囲の数平均分子量を有するHR-PIBが、本開示の実施形態における使用に好適である。従来のPIBは、典型的には、50モル%未満、40モル%未満、30モル%未満、20モル%未満、又は10モル%未満の末端二重結合の含有量を有する。
【0049】
GPCにより判定される場合に、約900~約3,000の範囲の数平均分子量を有するHR-PIBが、好適であり得る。そのようなHR-PIBは、商業的に入手可能であるか、又はBoerzel,et al.の米国特許第4,152,499号及びGateau,et al.の米国特許第5,739,355号に説明されているように、三フッ化ホウ素などの非塩素化触媒の存在下でのイソブテンの重合によって合成することができる。HR-PIBが上記熱エン反応で使用されるとき、そのHR-PIBは、反応性の増加に起因して、反応中のより高い転化率、及びより少ない沈殿物形成量をもたらし得る。好適な方法は米国特許第7,897,696号に説明されている。
【0050】
一実施形態では、本開示は、ポリイソブチレン無水コハク酸(「polyisobutylene succinic anhydride、PIBSA」)から誘導された少なくとも1つの分散剤を更に含む。PIBSAは、ポリマー当たり平均約1.0~約2.0のコハク酸部分を有し得る。
【0051】
アルケニル又はアルキル無水コハク酸の有効成分%は、クロマトグラフィ技術を使用して判定することができる。この方法は、米国特許第5,334,321号の第5欄及び第6欄に説明されている。
【0052】
ポリオレフィンの転化率は米国特許第5,334,321号の第5欄及び第6欄の式を使用して、有効成分%から計算される。
【0053】
一実施形態では、分散剤は、ポリアルファオレフィン(PAO)無水コハク酸から誘導され得る。一実施形態では、分散剤は、オレフィン無水マレイン酸コポリマーから誘導され得る。一例として、分散剤は、ポリ-PIBSAとして説明され得る。ある実施形態では、分散剤は、エチレン-プロピレンコポリマーにグラフト化される無水物から誘導され得る。
【0054】
好適なクラスの窒素含有分散剤は、オレフィンコポリマー(olefin copolymer、OCP)、より具体的には、無水マレイン酸でグラフト化され得るエチレン-プロピレン分散剤から誘導され得る。官能化OCPと反応させることができる窒素含有化合物のより完全なリストは、米国特許第7,485,603号、同第7,786,057号、同第7,253,231号、同第6,107,257号、及び同第5,075,383号に説明されており、かつ/又は商業的に入手可能である。
【0055】
好適な分散剤の1つのクラスはまた、マンニッヒ塩基であり得る。マンニッヒ塩基は、より高分子量のアルキル置換フェノール、ポリアルキレンポリアミン、及びホルムアルデヒドなどのアルデヒドの縮合によって形成される材料である。マンニッヒ塩基は、米国特許第3,634,515号により詳細に説明されている。
好適なクラスの分散剤はまた、高分子量エステル又は半エステルアミドであり得る。
【0056】
好適な分散剤はまた、従来の方法により様々な薬剤のうちのいずれかとの反応によって後処理され得る。これらの中には、ホウ素、尿素、チオ尿素、ジメルカプトチアジアゾール、二硫化炭素、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、炭化水素置換無水コハク酸、無水マレイン酸、ニトリル、エポキシド、カーボネート、環状カーボネート、ヒンダードフェノールエステル、及びリン化合物がある。米国特許第7,645,726号、米国特許第7,214,649号、及び米国特許第8,048,831号は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0057】
後処理試薬として使用されるホウ素化合物は、窒素組成物1モル当たり約0.1の原子割合のホウ素から使用される窒素の各原子割合当たり約20の原子割合のホウ素を提供する量の、酸化ホウ素、ハロゲン化ホウ素、ホウ酸、及びホウ酸のエステルから選択することができる。ホウ素で後処理された分散剤は、ホウ酸分散剤の総重量に基づいて、約0.05~約2.0重量パーセント、又は他のアプローチでは、約0.5重量パーセント~約1.0重量パーセントのホウ素を含有し得る。
【0058】
他のアプローチでは、カルボン酸はまた、後処理試薬として使用され得、飽和又は不飽和のモノ-、ジ-、又はポリ-カルボン酸であり得る。カルボン酸の例としては、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、及びナフタル二酸(例えば、1,8-ナフタル二酸)が挙げられるが、これらに限定されない。無水物はまた、後処理試薬として使用することができ、モノ-不飽和無水物(例えば、無水マレイン酸)、アルキル又はアルキレン置換環状無水物(例えば、無水コハク酸又は無水グルタミン酸)、及び芳香族無水カルボン酸(無水ナフタル酸、例えば1,8-無水ナフタル酸を含む)からなる群から選択することができる。
【0059】
一実施形態では、分散剤を後処理するプロセスは、最初に、上で説明されるようにスクシンイミド生成物を形成し、次いで、スクシンイミド生成物をホウ酸などのホウ素化合物などの後処理剤と更に反応させることを含む。場合によっては、本明細書の分散剤は、1つを超える後処理剤で後処理され得る。例えば、分散剤は、ホウ酸などのホウ素化合物で後処理され、かつまた無水マレイン酸などの無水物でも後処理され得る。場合によっては、分散剤は、無水マレイン酸及び/又は1,8-ナフタル酸無水物などの無水物で後処理され得る。
【0060】
上記の後処理に加えて、分散剤は、異なる特性を改善又は付与するように設計された様々な後処理で、後処理されるか、又は更に後処理され得る。そのような後処理は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,241,003号の欄27~29に要約されたものを含む。そのような処理には、以下による処理が含まれる:無機リン酸又は無水物(例えば、米国特許第3,403,102号及び同第4,648,980号)、有機リン化合物(例えば、米国特許第3,502,677号)、五硫化リン、既に上で述べられるようなホウ素化合物(例えば、米国特許第3,178,663及び同第4,652,387号)、カルボン酸、ポリカルボン酸、無水物、及び/又は酸ハロゲン化物(例えば、米国特許第3,708,522号及び同第4,948,386号)、エポキシドポリエポキシエート又はチオエポキシド(例えば、米国特許第3,859,318号及び同第5,026,495号)、アルデヒド又はケトン(例えば、米国特許第3,458,530号)、二硫化炭素(例えば、米国特許第3,256,185号)、グリシドール(例えば、米国特許第4,617,137号)、尿素、チオ尿素、又はグアニジン(例えば、米国特許第3,312,619号、同第3,865,813号、及び英国特許第1,065,595号)、有機スルホン酸(例えば、米国特許第3,189,544号及び英国特許第2,140,811号)、シアン化アルケニル(例えば、米国特許第3,278,550号及び同第3,366,569号)、ジケテン(例えば、米国特許第3,546,243号)、ジイソシアネート(例えば、米国特許第3,573,205号)、アルカンスルトン(例えば、米国特許第3,749,695号)、1,3-ジカルボニル化合物(例えば、米国特許第4,579,675号)、アルコキシル化アルコール又はフェノールのスルフェート(例えば、米国特許第3,954,639号)、環状ラクトン(例えば、米国特許第4,617,138号、同第4,645,515号、同第4,668,246号、同第4,963,275号、及び同第4,971,711号)、環状カーボネート又はチオカーボネート、直鎖モノカーボネート若しくはポリカーボネート、又はクロロホルメート(例えば、米国特許第4,612,132号、同第4,647,390号、同第4,648,886号、同第4,670,170号、窒素含有カルボン酸(例えば、米国特許第4,971,598号及び英国特許第2,140,811号)、ヒドロキシ保護クロロジカルボニルオキシ化合物(例えば、米国特許第4,614,522号)、ラクタム、チオラクタム、チオラクトン、又はジチオラクトン(例えば、米国特許第4,614,603及び同第4,666,460号)、環状カーボネート又はチオカーボネート、直鎖モノカーボネート若しくはポリカーボネート、又はクロロホルメート(例えば、米国特許第4,612,132号、同第4,647,390号、同第4,646,860号、及び同第4,670,170号)、窒素含有カルボン酸(例えば、米国特許第4,971,598号及び英国特許第2,440,811号)、ヒドロキシ保護クロロジカルボニルオキシ化合物(例えば、米国特許第4,614,522号)、ラクタム、チオラクタム、チオラクトン、又はジチオラクトン(例えば、米国特許第4,614,603及び同第4,666,460号)、環状カルバメート、環状チオカルバメート、又は環状ジチオカルバメート(例えば、米国特許第4,663,062号及び同第4,666,459号)、ヒドロキシ脂肪族カルボン酸(例えば、米国特許第4,482,464号、同第4,521,318号、同第4,713,189号)、酸化剤(例えば、米国特許第4,379,064号)、五硫化リン及びポリアルキレンポリアミンの組み合わせ(例えば、米国特許第3,185,647号)、カルボン酸又はアルデヒド又はケトン及び硫黄又は塩化硫黄の組み合わせ(例えば、米国特許第3,390,086号、同第3,470,098号)、ヒドラジン及び二硫化炭素の組み合わせ(例えば、米国特許第3,519,564号)、アルデヒド及びフェノールの組み合わせ(例えば、米国特許第3,649,229号、同第5,030,249号、同第5,039,307号)、アルデヒド及びジチオリン酸のO-ジエステルの組み合わせ(例えば、米国特許第3,865,740号)、ヒドロキシ脂肪族カルボン酸及びホウ酸の組み合わせ(例えば、米国特許第4,554,086号)、ヒドロキシ脂肪族カルボン酸、それに次ぐホルムアルデヒド及びフェノールの組み合わせ(例えば、米国特許第4,636,322号)、ヒドロキシ脂肪族カルボン酸、及びそれに次ぐ脂肪族ジカルボン酸の組み合わせ(例えば、米国特許第4,663,064号)、ホルムアルデヒド及びフェノール、並びにそれに次ぐグリコール酸の組み合わせ(例えば、米国特許第4,699,724号)、ヒドロキシ脂肪族カルボン酸又はシュウ酸と、それに次ぐジイソシアネートとの組み合わせ(例えば、米国特許第4,713,191号)、リンの無機酸若しくは無水物又はその部分的若しくは全体的硫黄類似体及びホウ素化合物の組み合わせ(例えば、米国特許第4,857,214号)、有機二酸、それに次ぐ不飽和脂肪酸、及びそれに次ぐニトロソ芳香族アミン、任意選択的にそれに続くホウ素化合物、並びにそれに次ぐグルコール化剤の組み合わせ(例えば、米国特許第4,973,412号)、アルデヒド及びトリアゾールの組み合わせ(例えば、米国特許第4,963,278号)、アルデヒド及びトリアゾール、それに次ぐホウ素化合物の組み合わせ(例えば、米国特許第4,981,492号)、環状ラクトン及びホウ素化合物の組み合わせ(例えば、米国特許第4,963,275号及び同第4,971,711号)。本明細書、先に言及した特許は、それらの全体が組み込まれる。
【0061】
好適な分散剤のTBNは、約50%の希釈油を含有する分散剤試料で測定した場合、約5~約30TBNに匹敵する、油不含基準で約10~約60mgKOH/gの分散剤であり得る。TBNは、ASTM D2896の方法によって測定される。
【0062】
分散剤は、存在する場合、潤滑油組成物の最終重量に基づいて、最大約15重量%を提供するのに十分な量で使用することができる。使用することができる分散剤の別の量は、本潤滑油組成物の最終重量に基づいて、約5重量%~約10重量%、又は約6重量%~約9重量%、又は約5~8重量%、又は約6重量%~8重量%、又は約7重量%~約8重量%であり得る。いくつかの実施形態では、潤滑油組成物は混合分散剤系を利用する。単一のタイプ又は任意の所望の比の2つ以上のタイプの分散剤の混合物が使用され得る。
【0063】
酸化防止剤
本明細書における潤滑油組成物はまた、任意選択的に、1つ以上の酸化防止剤を含有し得る。酸化防止剤化合物は既知であり、例えば、フェネート、フェネートスルフィド、硫化オレフィン、ホスホ硫化テルペン、硫化エステル、芳香族アミン、アルキル化ジフェニルアミン(例えば、ノニルジフェニルアミン、ジ-ノニルジフェニルアミン、オクチルジフェニルアミン、ジ-オクチルジフェニルアミン)、フェニル-アルファ-ナフチルアミン、アルキル化フェニル-アルファ-ナフチルアミン、ヒンダード非芳香族アミン、フェノール、ヒンダードフェノール、油溶性モリブデン化合物、高分子酸化防止剤、又はそれらの混合物が挙げられる。酸化防止剤化合物は、単独で、又は組み合わせて使用され得る。
【0064】
ヒンダードフェノール酸化防止剤は、立体障害基として、二級ブチル基及び/又は三級ブチル基を含有し得る。フェノール基は、ヒドロカルビル基及び/又は第2の芳香族基に結合する架橋基で更に置換され得る。好適なヒンダードフェノール酸化防止剤の例としては、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4-メチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4-エチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4-プロピル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール又は4-ブチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、又は4-ドデシル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノールが挙げられる。一実施形態では、ヒンダードフェノール酸化防止剤は、エステルであり得、例えばBASFから入手可能なIrganox(登録商標)L-135又は2,6-ジ-tert-ブチルフェノール及びアルキルアクリレートから誘導された付加生成物を含み得、アルキル基は、約1~約18個、又は約2~約12個、又は約2~約8個、又は約2~約6個、又は約4個の炭素原子を含有し得る。
【0065】
有用な酸化防止剤としては、アルキル化ジアリールアミン及び立体障害フェノールが挙げられ得る。ある実施形態では、潤滑油組成物は、アルキル化ジアリールアミンと立体障害フェノールとの混合物を含有し得るため、各酸化防止剤は、潤滑油組成物の最終重量に基づいて、最大約5重量%を提供するのに十分な量で存在し得る。ある実施形態では、酸化防止剤は、本潤滑油組成物の最終重量に基づいて、約0.5~約1.5重量%のアルキル化ジアリールアミンと約0.5~約1.5重量%の立体障害フェノールとの混合物であり得る。
【0066】
硫化されて硫化オレフィンを形成し得る好適なオレフィンの例としては、プロピレン、ブチレン、イソブチレン、ポリイソブチレン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセン、ウンデセン、ドデセン、トリデセン、テトラデセン、ペンタデセン、ヘキサデセン、ヘプタデセン、オクタデセン、ノナデセン、エイコセン、又はそれらの混合物が挙げられる。一実施形態では、ヘキサデセン、ヘプタデセン、オクタデセン、ノナデセン、エイコセン、又はそれらの混合物、並びにそれらの二量体、三量体、及び四量体は、特に有用なオレフィンである。代替的に、オレフィンは、1,3-ブタジエンなどのジエンのディールス・ アルダー付加物及びブチルアクリレートなどの不飽和エステルであり得る。
【0067】
別のクラスの硫化オレフィンには、硫化脂肪酸及びそのエステルが含まれる。脂肪酸は、多くの場合、植物油又は動物油から得られ、典型的には約4~約22個の炭素原子を含有する。好適な脂肪酸及びそのエステルの例としては、トリグリセリド、オレイン酸、リノール酸、パルミトレイン酸、又はそれらの混合物が挙げられる。多くの場合、脂肪酸は、ラード油、トール油、ピーナツ油、ダイズ油、綿実油、ヒマワリ種子油、又はそれらの混合物から得られる。脂肪酸及び/又はエステルは、α-オレフィンなどのオレフィンと混合され得る。
【0068】
別の代替的な実施形態では、酸化防止剤組成物は、上で考察されたフェノール性及び/又はアミン性酸化防止剤に加えて、モリブデン含有酸化防止剤も含有する。
【0069】
1つ以上の酸化防止剤は、潤滑油組成物の約0.5重量%~約5重量%、又は約1.0重量%~約4重量%、又は約2重量%~約3重量%の範囲で存在し得る。
【0070】
他の耐摩耗剤
本明細書における潤滑油組成物はまた、任意選択的に、1つ以上の追加の耐摩耗剤も含有し得る。好適な追加の耐摩耗剤の例としては、限定されないが、リン酸エステル又はその塩;リン酸エステル;ホスファイト;リン含有カルボン酸エステル、エーテル、又はアミド;硫化オレフィン;例えば、チオカルバメートエステル、アルキレン結合チオカルバメート、及びビス(S-アルキルジチオカルバミル)ジスルフィドなどの、チオカルバメート含有化合物;並びにそれらの混合物、が挙げられる。好適な耐摩耗剤は、モリブデンジチオカルバメートであり得る。リン含有耐摩耗剤は、欧州特許第612839号により完全に説明されている。ジアルキルジチオホスフェート塩中の金属は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルミニウム、鉛、スズ、モリブデン、マンガン、ニッケル、銅、チタン、又は亜鉛であり得る。有用な耐摩耗剤は、亜鉛ジアルキルジチオホスフェートであり得る。
【0071】
好適な耐摩耗剤の更なる例としては、チタン化合物、タータラート、タルトリミド、リン化合物の油溶性アミン塩、硫化オレフィン、ホスファイト(例えば、ジブチルホスファイト)、ホスホネート、チオカルバメート含有化合物、例えば、チオカルバメートエステル、チオカルバメートアミド、チオカルバミン酸エーテル、アルキレン結合チオカルバメート、及びビス(S-アルキルジチオカルバミル)ジスルフィドが挙げられる。タータラート又はタルトリミドは、アルキル-エステル基を含有し得るが、アルキル基上の炭素原子の合計は、少なくとも8であり得る。耐摩耗剤は、一実施形態では、シトレートを含み得る。
【0072】
追加的な耐摩耗剤は、潤滑油組成物の約0重量%~約15重量%、又は約0.01重量%~約10重量%、又は約0.05重量%~約5重量%、又は約0.1重量%~約3重量%を含む範囲で存在し得る。
【0073】
ホウ素含有化合物
本明細書における潤滑油組成物は、任意選択的に、1つ以上のホウ素含有化合物を含有し得る。ホウ素含有化合物の例としては、米国特許第5,883,057号に開示されているように、ホウ酸エステル、ホウ酸脂肪アミン、ホウ酸エポキシド、ホウ酸化清浄剤、及び、例えば、ホウ酸化スクシンイミド分散剤などのホウ酸化分散剤が挙げられる。ホウ素含有化合物は、存在する場合、潤滑油組成物の最大約8重量%、約0.01重量%~約7重量%、約0.05重量%~約5重量%、又は約0.1重量%~約3重量%を提供するのに十分な量で使用され得る。
【0074】
清浄剤
潤滑油組成物は、任意選択的に、1つ以上の中性、低塩基性、又は過塩基性清浄剤、及びこれらの混合物を更に含み得る。好適な清浄剤基質としては、フェネート、硫黄含有フェネート、スルホネート、カリキサラート、サリキサレート、サリチレート、カルボン酸、リン酸、モノ-及び/若しくはジ-チオリン酸、アルキルフェノール、硫黄結合アルキルフェノール化合物、又はメチレン架橋フェノールが挙げられる。好適な清浄剤及びその調製方法は、米国特許第7,732,390号及びその中に引用されている参考文献を含む多数の特許公開により詳細に説明されている。本明細書の潤滑剤組成物は、清浄剤添加剤がスルホネート量及び本明細書に説明される他の関係を満たす限り、約0.1~約5重量パーセントの個々の及び/又は全清浄剤添加剤、他のアプローチでは約0.15~約3重量パーセント、更に他のアプローチでは約0.5~2.5重量パーセントの個々の及び/又は全清浄剤添加剤を含み得る。
【0075】
概して、系中の好適な清浄剤は、石油スルホン酸、及びアリール基がベンジル、トリル、並びにキシリルである長鎖モノ若しくはジアルキルアリールスルホン酸、及び/又は様々なフェネート若しくはフェネートの誘導体の直鎖又は分岐鎖アルカリ若しくはアルカリ土類金属塩、例えば、カルシウム、ナトリウム、又はマグネシウムを含み得る。好適な清浄剤の例としては、以下の清浄剤、石炭酸カルシウム、カルシウム硫黄含有フェネート、スルホン酸カルシウム、カルシウムカリキサレート、カルシウムサリキサレート、カルシウムサリチレート、カルシウムカルボン酸、カルシウムリン酸、カルシウムモノ-及び/若しくはジ-チオリン酸、カルシウムアルキルフェノール、カルシウム硫黄結合アルキルフェノール化合物、カルシウムメチレン架橋フェノール、マグネシウムフェネート、マグネシウム硫黄含有フェネート、スルホン酸マグネシウム、マグネシウムカリキサレート、マグネシウムサリキサレート、サリチル酸マグネシウム、マグネシウムカルボン酸、マグネシウムリン酸、マグネシウムモノ-及び/若しくはジ-チオリン酸、マグネシウムアルキルフェノール、マグネシウム硫黄結合アルキルフェノール化合物、マグネシウムメチレン架橋フェノール、ナトリウムフェネート、ナトリウム硫黄含有フェネート、スルホン酸ナトリウム、ナトリウムカリキサレート、ナトリウムサリキサレート、サリチル酸ナトリウム、ナトリウムカルボン酸、ナトリウムリン酸、ナトリウムモノ-及び/若しくはジ-チオリン酸、ナトリウムアルキルフェノール、ナトリウム硫黄結合アルキルフェノール化合物、又はナトリウムメチレン架橋フェノールの低塩基性/中性及び過塩基性のバリエーションが挙げられる。
【0076】
理解されるように、過塩基性清浄剤添加剤は、当該技術分野において周知であり、アルカリ又はアルカリ土類金属過塩基性清浄剤添加剤であり得る。そのような清浄剤添加剤は、金属酸化物又は金属水酸化物を基質及び二酸化炭素ガスと反応させることによって、調製され得る。基質は、典型的には、酸、例えば、脂肪族置換スルホン酸、脂肪族置換カルボン酸、又は脂肪族置換フェノールなどの酸である。
【0077】
清浄剤基質は、限定されないが、カルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、リチウム、バリウム、又はそれらの混合物などのアルカリ金属又はアルカリ土類金属で塩化され得る。いくつかの実施形態では、清浄剤は、マグネシウム又はカルシウムなどの微量の他の金属を、50ppm以下、40ppm以下、30ppm以下、20ppm以下、又は10ppm以下などの量で含有し得る。好適な清浄剤としては、石油スルホン酸及びアリール基がベンジル、トリル、及びキシリルである長鎖モノ-又はジ-アルキルアリールスルホン酸のアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩が挙げられ得る。好適な清浄剤の例としては、石炭酸カルシウム、カルシウム硫黄含有フェネート、スルホン酸カルシウム、カルシウムカリキサラート、カルシウムサリキサレート、カルシウムサリチレート、カルシウムカルボン酸、カルシウムリン酸、カルシウムモノ-及び/若しくはジ-チオリン酸、カルシウムアルキルフェノール、カルシウム硫黄結合アルキルフェノール化合物、カルシウムメチレン架橋フェノール、石炭酸マグネシウム、マグネシウム硫黄含有フェネート、スルホン酸マグネシウム、マグネシウムカリキサラート、マグネシウムサリキサレート、サリチル酸マグネシウム、マグネシウムカルボン酸、マグネシウムリン酸、マグネシウムモノ-及び/若しくはジ-チオリン酸、マグネシウムアルキルフェノール、マグネシウム硫黄結合アルキルフェノール化合物、マグネシウムメチレン架橋フェノール、石炭酸ナトリウム、ナトリウム硫黄含有フェネート、スルホン酸ナトリウム、ナトリウムカリキサラート、ナトリウムサリキサレート、サリチル酸ナトリウム、ナトリウムカルボン酸、ナトリウムリン酸、ナトリウムモノ-及び/若しくはジ-チオリン酸、ナトリウムアルキルフェノール、ナトリウム硫黄結合アルキルフェノール化合物、又はナトリウムメチレン架橋フェノールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0078】
過塩基性清浄剤添加剤は、当該技術分野において周知であり、アルカリ又はアルカリ土類金属過塩基性清浄剤添加剤であり得る。そのような清浄剤添加剤は、金属酸化物又は金属水酸化物を基質及び二酸化炭素ガスと反応させることによって、調製され得る。基質は、典型的には、酸、例えば、脂肪族置換スルホン酸、脂肪族置換カルボン酸、又は脂肪族置換フェノールなどの酸である。
【0079】
「過塩基性」という用語は、存在する金属の量が化学量論的量を超える、スルホネート、カルボキシレート、及びフェネートの金属塩などの金属塩に関する。そのような塩は、100%を超える変換レベルを有し得る(すなわち、そのような塩は、酸をその「標準塩」、「中性塩」に変換するために必要とされる金属の理論量の100%より多くを含み得る)。多くの場合、MR(metal ratio)と略される「金属比」という表現は、既知の化学反応性及び化学量論に従って、過塩基性塩中の金属の総化学当量と中性塩中の金属の化学当量との比を示すために使用される。標準塩又は中性塩では、金属比(MR)は、1であるが、過塩基性塩では、MRは、1よりも大きい。それらは、一般に、過塩基性、高塩基性、又は超塩基性塩と称され、有機硫黄酸、カルボン酸、又はフェノールの塩であり得る。
【0080】
過塩基性清浄剤は、1.1:1、又は2:1、又は4:1、又は5:1、又は7:1、又は10:1以下、又は12:1以下、又は15:1以下、又は20:1以下の、金属対基質比を有し得る。
【0081】
本明細書で使用されるとき、「TBN」という用語は、ASTM D2896の方法によって測定される、単位「mgKOH/g」の全アルカリ価を表すために使用される。本明細書において使用される清浄剤は、中性又は過塩基性であり得る。例えば、低塩基又は中性清浄剤は、最大約175mgKOH/グラムの全塩基価(total base number、TBN)を有し得る。潤滑油組成物の過塩基性清浄剤は、約200mgKOH/g以上、又は更なる例として、約250mgKOH/g以上、若しくは約300mgKOH/g以上、若しくは約375mgKOH/g以上、若しくは約400mgKOH/g以上の全塩基価(TBN)を有し得る。TBNは、ASTM D2896の方法によって測定されている。
【0082】
好適な過塩基性清浄剤の例としては、過塩基性石炭酸カルシウム、過塩基性カルシウム硫黄含有フェネート、過塩基性カルシウムスルホネート、過塩基性カルシウムカリキサラート、過塩基性カルシウムサリキサレート、過塩基性カルシウムサリチレート、過塩基性カルシウムカルボン酸、過塩基性カルシウムリン酸、過塩基性カルシウムモノ-及び/若しくはジ-チオリン酸、過塩基性カルシウムアルキルフェノール、過塩基性カルシウム硫黄結合アルキルフェノール化合物、過塩基性カルシウムメチレン架橋フェノール、過塩基性マグネシウムフェネート、過塩基性マグネシウム硫黄含有フェネート、過塩基性スルホン酸マグネシウム、過塩基性マグネシウムカリキサラート、過塩基性マグネシウムサリキサレート、過塩基性サリチル酸マグネシウム、過塩基性マグネシウムカルボン酸、過塩基性マグネシウムリン酸、過塩基性マグネシウムモノ-及び/若しくはジ-チオリン酸、過塩基性マグネシウムアルキルフェノール、過塩基性マグネシウム硫黄結合アルキルフェノール化合物、又は過塩基性マグネシウムメチレン架橋フェノールが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、本明細書における潤滑剤に使用される清浄剤は、200~400、他のアプローチでは約250~約350の全塩基価を有する、少なくとも過塩基性スルホン酸カルシウムを含む。いくつかのアプローチでは、潤滑剤は、過塩基性スルホン酸カルシウム及び過塩基性フェネートカルシウム清浄剤のブレンドを含み、本明細書における潤滑剤は、約0.1~約2.0重量パーセントの過塩基性フェネートカルシウム清浄剤及び約0.1~約1.0重量パーセントの過塩基性スルホネートカルシウム清浄剤(又は他のアプローチでは、約0.5~約1.0重量パーセントの過塩基性スルホネートカルシウム清浄剤)を含み得る。存在する場合、過塩基性フェネートカルシウム清浄剤は、全てASTM D2896の方法により測定される場合、少なくとも約150mgKOH/g、少なくとも約225mgKOH/g、少なくとも約225mgKOH/g~約400mgKOH/g、少なくとも約225mgKOH/g~約350mgKOH/g、又は約230mgKOH/g~約350mgKOH/gの全塩基価を有し得る。そのような清浄剤組成物が、不活性希釈剤、例えばプロセス油、通常は鉱油中で形成されるとき、総塩基価は、希釈剤、及び清浄剤組成物に含まれ得る任意の他の物質(例えば、促進剤など)を含む全体組成物の塩基性を反映する。
【0083】
全清浄剤含有量は、潤滑組成物中に、約1.0重量%~約8重量%、又は約1重量%~約4重量%、又は約4重量%未満で存在し得る。
【0084】
極圧剤
本明細書の潤滑油組成物はまた、任意選択的に、1つ以上の極圧剤を含有し得る。油に可溶性である極圧(Extreme Pressure、EP)剤は、硫黄含有EP剤、及びリンEP剤を含む。かかるEP剤の例としては、ジベンジルジスルフィド、ジブチルテトラスルフィド、オレイン酸の硫化メチルエステル、硫化アルキルフェノール、硫化ジペンテン、硫化テルペン、ジチオカルバメート、及び硫化ディールス-アルダー付加物などの有機スルフィド並びにポリスルフィドが挙げられる。硫化リンとテルペンチン又はオレイン酸メチルとの反応生成物などのリン硫化炭化水素;ジヒドロカルビル及びトリヒドロカルビルホスファイト、例えば、ジブチルホスファイト、ジヘプチルホスファイト、ジシクロヘキシルホスファイト、ペンチルフェニルホスファイトなどのリン酸エステル;ジペンチルフェニルホスファイト、トリデシルホスファイト、ジステアリルホスファイト、及びポリプロピレン置換フェニルホスファイト;亜鉛ジオクチルジチオカルバメート及びバリウムヘプチルフェノール二酸などの金属チオカルバメート;例えば、ジアルキルジチオリン酸とプロピレンオキシドとの反応生成物のアミン塩を含む、アルキル及びジアルキルリン酸のアミン塩;並びにそれらの混合物が挙げられる。
【0085】
摩擦調整剤
本明細書における潤滑油組成物は、任意選択的に、1つ以上の摩擦調整剤を含有し得る。好適な摩擦調整剤には、金属含有及び金属不含摩擦調整剤が含まれ得るが、イミダゾリン、アミド、アミン、スクシンイミド、アルコキシル化アミン、アルコキシル化エーテルアミン、アミンオキシド、アミドアミン、ニトリル、ベタイン、四級アミン、イミン、アミン塩、アミノグアニジン、アルカノールアミド、ホスホネート、金属含有化合物、グリセロールエステル、硫化脂肪化合物及びオレフィン、ヒマワリ油、他の天然に生成する植物油又は動物油、ジカルボン酸エステル、ポリオールと1つ以上の脂肪族又は芳香族カルボン酸とのエステル又は部分エステルなどが含まれ得るが、これらに限定されない。
【0086】
好適な摩擦調整剤は、直鎖、分岐鎖、若しくは芳香族ヒドロカルビル基、又はそれらの混合物から選択されるヒドロカルビル基を含有し得るが、飽和又は不飽和であり得る。ヒドロカルビル基は、炭素及び水素又は硫黄若しくは酸素などのヘテロ原子で構成され得る。ヒドロカルビル基は、約12~約25個の炭素原子の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、摩擦調整剤は、長鎖脂肪酸エステルであり得る。別の実施形態では、長鎖脂肪酸エステルは、モノ-エステル、又はジ-エステル、又は(トリ)グリセリドであり得る。摩擦調整剤は、長鎖脂肪アミド、長鎖脂肪エステル、長鎖脂肪エポキシド誘導体、又は長鎖イミダゾリンであり得る。
【0087】
他の好適な摩擦調整剤には、有機、無灰(金属不含)、窒素不含有機摩擦調整剤が含まれ得る。そのような摩擦調整剤は、カルボン酸と無水物とをアルカノールと反応させることによって形成されるエステルを含み、一般に親油性炭化水素鎖に共有結合した極性末端基(例えば、カルボキシル又はヒドロキシル)を含み得る。有機無灰窒素不含摩擦調整剤の例は、一般に、オレイン酸のモノ-、ジ-、及びトリ-エステルを含有し得るモノオレイン酸グリセロール(glycerol monooleate、GMO)として既知である。他の好適な摩擦調整剤は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,723,685号に説明される。
【0088】
アミン性摩擦調整剤は、アミン又はポリアミンを含み得る。そのような化合物は、直鎖状の、飽和若しくは不飽和のいずれか、又はそれらの混合物であるヒドロカルビル基を有することができ、約12~約25個の炭素原子を含有し得る。好適な摩擦調整剤の更なる例としては、アルコキシル化アミン及びアルコキシル化エーテルアミンが挙げられる。そのような化合物は、直鎖状で、飽和、不飽和のいずれかのヒドロカルビル基、又はそれらの混合物を有し得る。これらは、約12~約25個の炭素原子を含有し得る。例としては、エトキシル化アミン及びエトキシル化エーテルアミンが挙げられる。
【0089】
アミン及びアミドは、それ自体として、又は酸化ホウ素、ハロゲン化ホウ素、メタボレート、ホウ酸又はモノ-、ジ-、若しくはトリ-アルキルボレートなどのホウ素化合物との付加物若しくは反応生成物の形態で使用され得る。他の好適な摩擦調整剤はその全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,300,291号に説明される。
【0090】
摩擦調整剤は、任意選択的に、約0重量%~約10重量%、又は約0.01重量%~約8重量%、又は約0.1重量%~約4重量%などの範囲内で存在し得る。
【0091】
モリブデン含有成分
本明細書における潤滑油組成物は、任意選択的に、1つ以上のモリブデン含有化合物も含有し得る。油溶性モリブデン化合物は、耐摩耗剤、酸化防止剤、摩擦調整剤、又はそれらの混合物の機能的性能を有し得る。油溶性モリブデン化合物には、モリブデンジチオカルバメート、モリブデンジアルキルジチオホスフェート、モリブデンジチオホスフィナート、モリブデン化合物のアミン塩、モリブデンキサンタート、モリブデンチオキサンタート、モリブデンスルフィド、モリブデンカルボキシレート、モリブデンアルコキシド、三核有機モリブデン化合物、及び/又はそれらの混合物が含まれ得る。硫化モリブデンとしては、二硫化モリブデンが挙げられる。二硫化モリブデンは、安定な分散液の形態にあり得る。一実施形態では、油溶性モリブデン化合物は、モリブデンジチオカルバメート、モリブデンジアルキルジチオホスフェー、モリブデン化合物のアミン塩、及びそれらの混合物からなる群から選択され得る。一実施形態では、油溶性モリブデン化合物は、モリブデンジチオカルバメートであり得る。
【0092】
使用され得るモリブデン化合物の好適な例としては、R.T.Vanderbilt Co.,Ltd.からのMolyvan(登録商標)822、Molyvan(登録商標)A、Molyvan(登録商標)2000、及びMolyvan(登録商標)855など、並びにAdeka Corporationから入手可能なAdeka Sakura-Lube(登録商標)S-165、S-200、S-300、S-310G、S-525、S-600、S-700、及びS-710などの商標名で販売されている市販の材料、及びそれらの混合物が挙げられる。好適なモリブデン成分は、米国特許第5,650,381号、米国再発行特許第37,363(E1)号、米国再発行特許第38,929(E1)号、及び米国再発行特許第40,595(E1)号に説明されており、それらの全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0093】
追加的に、モリブデン化合物は、酸性モリブデン化合物であり得る。含まれるものは、モリブデン酸、アンモニウムモリブレート、ナトリウムモリブレート、カリウムモリブレート、並びに他のアルカリ金属モリブレート及び他のモリブデン塩、例えば、水素ナトリウムモリブレート、MoOCl、MoOBr、MoCl、三酸化モリブデン又は類似の酸性モリブデン化合物である。代替的に、組成物は、例えば、米国特許第4,263,152号、同第4,285,822号、同第4,283,295号、同第4,272,387号、同第4,265,773号、同第4,261,843号、同第4,259,195号、及び同第4,259,194号、並びに国際公開第94/06897号に説明されているように、塩基性窒素化合物のモリブデン/硫黄錯体によってモリブデンを提供することができ、これらは、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0094】
別のクラスの好適な有機モリブデン化合物は、三核モリブデン化合物、例えば、式Moの化合物及びそれらの混合物であり、式中、Sは、硫黄を表し、Lは、化合物を油に可溶性又は分散性にするのに十分な数の炭素原子を有する有機基を有する独立して選択された配位子を表し、nは、1~4であり、kは、4~7で変化し、Qは、中性電子供与性化合物、例えば、水、アミン、アルコール、ホスフィン、及びエーテルの群から選択され、zは、0~5の範囲であり、非化学量論値を含む。少なくとも21個の総炭素原子は、少なくとも25個、少なくとも30個、又は少なくとも35個の炭素原子が、全ての配位子の有機基の間に存在し得る。追加の好適なモリブデン化合物は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第6,723,685号に説明されている。
【0095】
油溶性モリブデン化合物は、約0.5ppm~約2000ppm、約1ppm~約700ppm、約1ppm~約550ppm、約5ppm~約300ppm、又は約20ppm~約250ppmのモリブデンを提供するのに十分な量で存在し得る。
【0096】
遷移金属含有化合物
別の実施形態では、油溶性化合物は、遷移金属含有化合物又は半金属であり得る。遷移金属には、チタン、バナジウム、銅、亜鉛、ジルコニウム、モリブデン、タンタル、タングステンなどが挙げられ得るが、これらに限定されない。好適な半金属には、ホウ素、ケイ素、アンチモン、テルルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0097】
ある実施形態では、油溶性遷移金属含有化合物は、耐摩耗剤、摩擦調整剤、酸化防止剤、付着制御添加剤、又はこれらの機能のうちの2つ以上として機能し得る。ある実施形態では、油溶性遷移金属含有化合物は、チタン(IV)アルコキシドなどの油溶性チタン化合物であり得る。本開示の技術の油溶性材料の調製において使用され得るか、又はそのために使用され得るチタン含有化合物の中には、酸化チタン(IV)などの様々なTi(IV)化合物;硫化チタン(IV);硝酸チタン(IV);チタン(IV)アルコキシド、例えば、チタンメトキシド、チタンエトキシド、チタンプロポキシド、チタンイソプロポキシド、チタンブトキシド、チタン2-エチルヘキソキシド;及び他のチタン化合物又は錯体、例えば、限定されないが、チタンフェネート;チタンカルボキシレート、例えば、チタン(IV)2-エチル-1,3-ヘキサンジオエート又はチタンシトレート又はチタンオレエート;及びチタン(IV)(トリエタノールアミナト)イソプロポキシドが挙げられる。開示された技術に包含される他の形態のチタンには、チタンジチオホスフェート(例えば、ジアルキルジチオホスフェート)及びチタンスルホネート(例えば、アルキルベンゼンスルホネート)などのチタンホスフェート、又は一般に、油溶性塩などの塩を形成するチタン化合物と様々な酸物質との反応生成物が含まれる。したがって、チタン化合物は、とりわけ、有機酸、アルコール、及びグリコールから誘導され得る。Ti化合物はまた、Ti-O-Ti構造を含有する二量体又はオリゴマー形態でも存在し得る。そのようなチタン材料は、商業的に入手可能であるか、又は当業者に明白である適切な合成技術によって容易に調製することができる。これらは、特定の化合物に依存して、固体又は液体として室温で存在し得る。これらは、適切な不活性溶媒中の溶液形態でも提供され得る。
【0098】
一実施形態では、チタンは、スクシンイミド分散剤などのTi変性分散剤として供給され得る。そのような材料は、チタンアルコキシドとアルケニル-(又はアルキル)無水コハク酸などのヒドロカルビル置換無水コハク酸との間にチタン混合無水物を形成することによって調製され得る。得られたチタネート-スクシネート中間体は、直接使用され得るか、又は(a)遊離の縮合可能な-NH官能基を有するポリアミンベースのスクシンイミド/アミド分散剤;(b)ポリアミンベースのスクシンイミド/アミド分散剤の成分、すなわち、アルケニル(若しくはアルキル)無水コハク酸及びポリアミン;(c)置換無水コハク酸とポリオール、アミノアルコール、ポリアミン、若しくはそれらの混合物との反応によって調製されるヒドロキシ含有ポリエステル分散剤などのいくつかの物質のうちのいずれかと反応され得る。代替的に、チタネート-スクシネート中間体をアルコール、アミノアルコール、エーテルアルコール、ポリエーテルアルコール若しくはポリオール、又は脂肪酸などの他の薬剤と反応され得るが、その生成物は、潤滑剤にTiを付与するために直接使用され得るか、又は上で説明されるようにコハク酸分散剤と更に反応され得る。例として、チタン変性分散剤又は中間体を提供するために、テトライソプロピルチタネート1部(モル)をポリイソブテン置換無水コハク酸約2部(モル)と140~150℃で5~6時間反応され得る。得られた材料(30g)を、150℃で1.5時間、ポリイソブテン置換無水コハク酸及びポリエチレンポリアミン混合物(127グラム+希釈油)からのスクシンイミド分散剤と更に反応させて、チタン変性スクシンイミド分散剤を生成し得る。
【0099】
別のチタン含有化合物は、チタンアルコキシドとC~C25カルボン酸との反応生成物であり得る。反応生成物は、以下の式:
【0100】
【化5】
(式中、nは、2、3、及び4から選択される整数であり、Rは、約5~約24個の炭素原子を含有するヒドロカルビル基である)によって表され得るか、又は以下の式:
【0101】
【化6】
(式中、m+n=4であり、nは、1~3の範囲であり、Rは、1~8の範囲の炭素原子を有するアルキル部分であり、Rは、約6~25個の炭素原子を含有するヒドロカルビル基から選択され、R及びRは、同じ若しくは異なり、1~6個の炭素原子を含有するヒドロカルビル基から選択される)によって表され得るか、又は、チタン化合物は、以下の式:
【0102】
【化7】
(式中、xは、0~3の範囲であり、Rは、約6~25個の炭素原子を含有するヒドロカルビル基から選択され、R、及びRは、同じ若しくは異なり、約1~6個の炭素原子を含有するヒドロカルビル基から選択され、Rは、H、C~C25のカルボン酸部分のいずれかからなる群から選択される)によって表され得る。
【0103】
好適なカルボン酸には、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、オレイン酸、エルカ酸、リノール酸、リノレン酸、シクロヘキサンカルボン酸、フェニル酢酸、安息香酸、ネオデカン酸などが挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0104】
ある実施形態において、油溶性チタン化合物は、約0~約3000重量ppmのチタン、又は25~約1500重量ppmのチタン、又は約35重量ppm~約500重量ppmのチタン、又は約50重量ppm~約300重量ppmを提供するための量で潤滑油組成物中に存在し得る。
【0105】
粘度指数改善剤
本明細書の潤滑油組成物は、任意選択的に、1つ以上の粘度指数改善剤も含有し得る。好適な粘度指数改善剤には、ポリオレフィン、オレフィンコポリマー、エチレン/プロピレンコポリマー、ポリイソブテン、水素化スチレン-イソプレンポリマー、スチレン/マレイン酸エステルコポリマー、水素化スチレン/ブタジエンコポリマー、水素化イソプレンポリマー、アルファ-オレフィン無水マレイン酸コポリマー、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアルキルスチレン、水素化アルケニルアリール共役ジエンコポリマー、又はそれらの混合物が含まれ得る。粘度指数改善剤は星型ポリマーを含み得るが、好適な例は米国特許出願公開第20120101017(A1)号に説明されている。
【0106】
本明細書の潤滑油組成物は、任意選択的に、粘度指数改善剤に加えて、又は粘度指数改善剤の代わりに、1つ以上の分散剤粘度指数改善剤も含有し得る。好適な粘度指数改善剤としては、官能化ポリオレフィン、例えば、アシル化剤(無水マレイン酸など)とアミンとの反応生成物で官能化されたエチレン-プロピレンコポリマー、アミンで官能化されたポリメタクリレート、又はアミンと反応させたエステル化無水マレイン酸-スチレンコポリマーが挙げられ得る。
【0107】
粘度指数改善剤及び/又は分散性粘度指数改善剤の総量は、潤滑油組成物の約0重量%~約20重量%、約0.1重量%~約15重量%、約0.1重量%~約12重量%、又は約0.5重量%~約10重量%であり得る。
【0108】
他の任意選択的な添加剤
他の添加剤は、潤滑流体に必要とされる1つ以上の機能を実行するように選択され得る。更に、前述の添加剤のうちの1つ以上が、多官能性であり得、本明細書で記述される機能に追加して機能を提供し得るか、又はそれ以外の機能を提供し得る。
【0109】
本開示に従う潤滑油組成物は、任意選択的に他の性能添加剤を含み得る。他の性能添加剤は、本開示の指定された添加剤に対する追加であり得るが、かつ/又は金属不活性化剤、粘度指数改善剤、清浄剤、無灰TBNブースタ、摩擦調整剤、耐摩耗剤、腐食防止剤、防錆剤、分散剤、分散性粘度指数改善剤、極圧剤、酸化防止剤、泡抑制剤、解乳化剤、乳化剤、流動点降下剤、シール膨潤剤、及びそれらの混合物のうちの1つ以上を含み得る。典型的には、完全配合潤滑油は、これらの性能添加剤のうちの1つ以上を含有することになる。
【0110】
好適な金属不活性化剤としては、ベンゾトリアゾールの誘導体(典型的にはトリルトリアゾール)、ジメルカプトチアジアゾール誘導体、1,2,4-トリアゾール、ベンゾイミダゾール、2-アルキルジチオベンゾイミダゾール、又は2-アルキルジチオベンゾチアゾール;アクリル酸エチルとアクリル酸2-エチルヘキシルと任意選択的に酢酸ビニルとのコポリマーを含む泡抑制剤;トリアルキルホスフェート、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド及び(エチレンオキシド-プロピレンオキシド)ポリマーを含む解乳化剤;無水マレイン酸-スチレン、ポリメタクリレート、ポリアクリレート又はポリアクリルアミドのエステルを含む流動点降下剤が挙げられ得る。
【0111】
好適な泡抑制剤としては、シロキサンなどのケイ素ベースの化合物が挙げられる。
【0112】
好適な流動点降下剤は、ポリメチルメタクリレート又はそれらの混合物を含み得る。流動点降下剤は、潤滑油組成物の最終重量に基づいて、約0重量%~約1重量%、約0.01重量%~約0.5重量%、又は約0.02重量%~約0.04重量%を提供するのに十分な量で存在し得る。
【0113】
好適な防錆剤は、フェラスメタル表面の腐食を抑制する特性を有する単一の化合物、又は化合物の混合物であり得る。本明細書で有用な防錆剤の非限定的な例としては、2-エチルヘキサン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ベヘン酸、及びセロチン酸などの油溶性高分子量有機酸、並びにトール油脂肪酸、オレイン酸、及びリノール酸から生成されたものなどの二量体及び三量体酸を含む油溶性ポリカルボン酸が挙げられる。他の好適な腐食抑制剤には、約600~約3000の分子量範囲の長鎖アルファ、オメガ-ジカルボン酸、及びテトラプロペニルコハク酸、テトラデセニルコハク酸、及びヘキサデセニルコハク酸などの、アルケニル基が約10個以上の炭素原子を含有するアルケニルコハク酸が含まれる。別の有用なタイプの酸性腐食抑制剤は、アルケニル基中に約8~約24個の炭素原子を有するアルケニルコハク酸と、ポリグリコールなどのアルコールとの半エステルである。そのようなアルケニルコハク酸の対応する半アミドもまた、有用である。有用な防錆剤は、高分子量の有機酸である。
【0114】
防錆剤は、存在する場合、潤滑油組成物の最終重量に基づいて、約0重量%~約5重量%、約0.01重量%~約3重量%、約0.1重量%~約2重量%を提供するのに十分な量で使用され得る。
【0115】
一般的に言えば、本明細書における耐摩耗系を含む好適な潤滑剤は、以下の表に列挙される範囲の添加剤成分を含み得る。
【0116】
【表2】
【0117】
上記各成分のパーセンテージは、最終潤滑油組成物の重量に基づく各成分の重量パーセントを表す。潤滑油組成物の残りは、1つ以上の基油からなる。本明細書に説明される組成物を配合する際に使用される添加剤は、個々に又は様々な部分的な組み合わせで基油にブレンドされ得る。しかしながら、添加剤濃縮物(すなわち、添加剤プラス炭化水素溶媒などの希釈剤)を使用して、成分の全てを同時にブレンドすることが好適であり得る。完全配合潤滑剤は、その配合物において必要とされる特徴を供給する分散剤/抑制剤パッケージ又はDIパッケージと本明細書で称される添加剤パッケージを慣用的に含有する。
【0118】
定義
本開示の目的のために、化学元素は、Periodic Table of the Elements,CAS version,Handbook of Chemistry and Physics,75th Edに従って識別される。追加的に、有機化学の一般原理は、「Organic Chemistry」、Thomas Sorrell,University Science Books,Sausolito:1999、及び「March’s Advanced Organic Chemistry」、5th Ed.,Ed.:Smith,M.B.and March,J.,John Wiley & Sons,New York:2001に説明されており、これらの全容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0119】
本明細書に説明されるように、化合物は、上で概して例解されるように、又は特定のクラス、サブクラス、及び本開示の種によって例示されるように、1つ以上の置換基で任意選択的に置換され得る。
【0120】
別途その内容から明らかでない限り、「多量」という用語は、組成物の総重量に対して、50重量パーセント以上、例えば、約80~約98重量パーセントの量を意味すると理解される。また、本明細書で使用されるとき、「少量」という用語は、組成物の総重量に対して50重量パーセント未満の量を意味すると理解される。
【0121】
本明細書で使用される場合、「ヒドロカルビル基」又は「ヒドロカルビル」という用語は、当業者に周知のその通常の意味で使用される。具体的には、それは、分子の残りに直接結合した炭素原子を有し、主として炭化水素の特性を有する基を指す。ヒドロカルビル基の例としては、(1)炭化水素置換基、すなわち、脂肪族(例えば、アルキル又はアルケニル)置換基、脂環族(例えば、シクロアルキル、シクロアルケニル)置換基、及び芳香族置換、脂肪族置換、並びに脂環族置換された芳香族置換基、並びに環が、分子の別の部分を介して完成する(例えば、2つの置換基が一緒になって脂環族ラジカルを形成する)環状置換基;(2)置換された炭化水素置換基、すなわち、本開示の文脈において、主に炭化水素置換基を変化させない非炭化水素基(例えば、ハロ(特に、クロロ及びフルオロ)、ヒドロキシ、アルコキシ、メルカプト、アルキルメルカプト、ニトロ、ニトロソ、アミノ、アルキルアミノ、及びスルホキシ)を含有する置換基;(3)ヘテロ置換基、すなわち、本開示の文脈において、主に炭化水素の特性を有する一方で、環又は鎖中に炭素以外のものを含有するか、さもなければ炭素原子から構成される置換基、が挙げられる。ヘテロ原子は、硫黄、酸素、及び窒素を含み、ピリジル、フリル、チエニル、及びイミダゾリルなどの置換基を包含する。一般に、ヒドロカルビル基中の炭素原子10個毎に2個以下、又は更なる例として、ただ1個の非炭化水素置換基が存在し、いくつかの実施形態では、ヒドロカルビル基中に非炭化水素置換基は、存在しないであろう。
【0122】
本明細書で使用される場合、「脂肪族」という用語は、アルキル、アルケニル、アルキニルという用語を包含し、それらの各々は、以下に記載されるように任意選択的に置換されている。
【0123】
本明細書で使用される場合、「アルキル」基は、1~12個(例えば、1~8個、1~6個、又は1~4個)の炭素原子を含有する飽和脂肪族炭化水素基を指す。アルキル基は、直鎖又は分岐鎖であり得る。アルキル基の例には、これらに限定されないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、n-ヘプチル、又は2-エチルヘキシルが挙げられる。アルキル基は、1つ以上の置換基、
例えば、ハロ、ダマントル(damantl)、脂環族[例えば、シクロアルキル又はシクロアルケニル]、ヘテロ脂環族[例えば、ヘテロシクロアルキル又はヘテロシクロアルケニル]、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アロイル、ヘテロアロイル、アシル[例えば、(脂肪族)カルボニル、(脂環式)カルボニル、又は(ヘテロ脂環式)カルボニル]、ニトロ、シアノ、アミド[例えば、(シクロアルキルアルキル)カルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、アラルキルカルボニルアミノ、(ヘテロシクロアルキル)カルボニルアミノ、(ヘテロシクロアルキルアルキル)カルボニルアミノ、ヘテロアリールカルボニルアミノ、ヘテロアラルキルカルボニルアミノアルキルアミノカルボニル、シクロアルキルアミノカルボニル、ヘテロシクロアルキルアミノカルボニル、アリールアミノカルボニル、又はヘテロアリールアミノカルボニル]、アミノ、[例えば、脂肪族アミノ、脂環式アミノ、又はヘテロ脂環式アミノ]、スルホニル[例えば、脂肪族-SO-]、スルフィニル、スルファニル、スルホキシ、尿素、チオ尿素、スルファモイル、スルファミド、オキソ、カルボキシ、カルバモイル、脂環式オキシ、ヘテロシクロ脂肪族オキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アラルキルオキシ、ヘテロアリールアルコキシ、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、又はヒドロキシで、置換され(すなわち、任意選択的に置換され)得る。限定するものではないが、置換アルキルのいくつかの例としては、カルボキシアルキル(例えば、HOOC-アルキル、アルコキシカルボニルアルキル、及びアルキルカルボニルオキシアルキル)、シアノアルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、アシルアルキル、アラルキル、(アルコキシアリール)アルキル、(スルホニルアミノ)アルキル(例えば、(アルキル-SO-アミノ)アルキル)、アミノアルキル、アミドアルキル、(脂環式)アルキル、又はハロアルキルが挙げられる。
【0124】
本明細書で使用される場合、「アルケニル」基とは、2~8個(例えば、2~12、2~6、又は2~4個)の炭素原子及び少なくとも1つの二重結合を含有する脂肪族炭素基を指す。アルキル基のように、アルケニル基は、直鎖又は分岐鎖であり得る。アルケニル基の例には、これらに限定されないが、アリル、イソプレニル、2-ブテニル、及び2-ヘキセニルが挙げられる。アルケニル基は、
1つ以上の置換基、例えば、ハロ、ダマントル(damantl)、脂環族[例えば、シクロアルキル又はシクロアルケニル]、ヘテロ脂環族[例えば、ヘテロシクロアルキル又はヘテロシクロアルケニル]、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アロイル、ヘテロアロイル、アシル[例えば、(脂肪族)カルボニル、(脂環式)カルボニル、又は(ヘテロ脂環式)カルボニル]、ニトロ、シアノ、アミド[例えば、(シクロアルキルアルキル)カルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、アラルキルカルボニルアミノ、(ヘテロシクロアルキル)カルボニルアミノ、(ヘテロシクロアルキルアルキル)カルボニルアミノ、ヘテロアリールカルボニルアミノ、ヘテロアラルキルカルボニルアミノアルキルアミノカルボニル、シクロアルキルアミノカルボニル、ヘテロシクロアルキルアミノカルボニル、アリールアミノカルボニル、又はヘテロアリールアミノカルボニル]、アミノ、[例えば、脂肪族アミノ、脂環式アミノ、ヘテロ脂環式アミノ、又は脂肪族スルホニルアミノ]、スルホニル[例えば、アルキル-SO-、脂環式-SO-、又はアリール-SO-]、スルフィニル、スルファニル、スルホキシ、尿素、チオ尿素、スルファモイル、スルファミド、オキソ、カルボキシ、カルバモイル、脂環式オキシ、ヘテロ脂環式オキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アラルキルオキシ、ヘテロアラルコキシ、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、又はヒドロキシにより、任意選択的に置換され得る。限定するものではないが、置換アルケニルのいくつかの例としては、シアノアルケニル、アルコキシアルケニル、アシルアルケニル、ヒドロキシアルケニル、アラルケニル、(アルコキシアリール)アルケニル、(スルホニルアミノ)アルケニル(例えば、(アルキル-SO-アミノ)アルケニル)、アミノアルケニル、アミドアルケニル、(脂環式)アルケニル、又はハロアルケニルが挙げられる。
【0125】
本明細書で使用される場合、「アルキニル」基は、2~8個(例えば、2~12、2~6、又は2~4)の炭素原子を含有し、少なくとも1つの三重結合を有する脂肪族炭素基を指す。アルキニル基は、直鎖又は分岐鎖であり得る。アルキニル基の例としては、プロパルギル及びブチニルが挙げられるが、これらに限定されない。アルキニル基は、1つ以上の置換基で、例えば、アロイル、ヘテロアロイル、アルコキシ、シクロアルキルオキシ、ヘテロシクロアルキルオキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アラルキルオキシ、ニトロ、カルボキシ、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、スルホ、メルカプト、スルファニル[例えば、脂肪族スルファニル又は脂環式スルファニル]、スルフィニル[例えば、脂肪族スルフィニル又は脂環式フィニル]、スルホニル[例えば、脂肪族-SO-、脂肪族アミノ-SO-、又は脂環式-SO-]、アミド[例えば、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、アルキルカルボニルアミノ、シクロアルキルアミノカルボニル、ヘテロシクロアルキルアミノカルボニル、シクロアルキルカルボニルアミノ、アリールアミノカルボニル、アリールカルボニルアミノ、アラルキルカルボニルアミノ、(ヘテロシクロアルキル)カルボニルアミノ、(シクロアルキルアルキル)カルボニルアミノ、ヘテロアラルキルカルボニルアミノ、ヘテロアリールカルボニルアミノ、又はヘテロアリールアミノカルボニル]、尿素、チオ尿素、スルファモイル、スルファミド、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、脂環式、ヘテロ脂環式、アリール、ヘテロアリール、アシル[例えば、(脂環式)カルボニル又は(ヘテロ脂環式)カルボニル]、アミノ[例えば、脂肪族アミノ]、スルホキシ、オキソ、カルボキシ、カルバモイル、(脂環式)オキシ、(ヘテロ脂環式)オキシ、又は(ヘテロアリール)アルコキシで、任意選択的に置換することができる。
【0126】
本明細書で使用される場合、「アミノ」基とは、-NRを指し、式中、R及びRの各々は、独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、(シクロアルキル)アルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクロアルキル、(ヘテロシクロアルキル)アルキル、ヘテロアリール、カルボキシ、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、(アルキル)カルボニル、(シクロアルキル)カルボニル、((シクロアルキル)アルキル)カルボニル、アリールカルボニル、(アラルキル)カルボニル、(ヘテロシクロアルキル)カルボニル、((ヘテロシクロアルキル)アルキル)カルボニル、(ヘテロアリール)カルボニル、又は(ヘテロアラルキル)カルボニルであり、それらの各々は、本明細書に定義されており、任意選択的に置換されている。アミノ基の例には、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、又はアリールアミノが挙げられる。「アミノ」という用語が末端基(例えば、アルキルカルボニルアミノ)ではない場合、それは-NR-によって表される。Rは、上で定義されたものと同じ意味を有する。
【0127】
本明細書で使用される場合、「シクロアルキル」基は、3~10個(例えば、5~10個)の炭素原子の飽和炭素環式単環式又は二環式(融合又は架橋)環を指す。シクロアルキル基の例には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、アダマンチル、ノルボルニル、キュービル、オクタヒドロインデニル、デカヒドロナフチル、ビシクロ[3.2.1]オクチル、ビシクロ[2.2.2]オクチル、ビシクロ[3.3.1]ノニル、ビシクロ[3.3.2.]デシル、ビシクロ[2.2.2]オクチル、アダマンチル、又は((アミノカルボニル)シクロアルキル)シクロアルキルが挙げられる。
【0128】
本明細書で使用される場合、「ヘテロシクロアルキル」基は、3~10員の単環式又は二環式(融合又は架橋)(例えば、5~10員の単環式又は二環式)飽和環構造を指し、環原子のうちの1つ以上は、ヘテロ原子(例えば、N、O、S、又はそれらの組み合わせ)である。ヘテロシクロアルキル基の例としては、ピペリジル、ピペラジル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロフリル、1,4-ジオキソラニル、1,4-ジチアニル、1,3-ジオキソラニル、オキサゾリジル、イソオキサゾリジル、モルホリニル、チオモルホリル、オクタヒドロベンゾフリル、オクタヒドロクロメニル、オクタヒドロチオクロメニル、オクタヒドロインドリル、オクタヒドロピリンジニル、デカヒドロキノリニル、オクタヒドロベンゾ[b]チオフェニル、2-オキサ-ビシクロ[2.2.2]オクチル、1-アザ-ビシクロ[2.2.2]オクチル、3-アザ-ビシクロ[3.2.1]オクチル、及び2,6-ジオキサ-トリシクロ[3.3.1.0]ノニルが、挙げられる。単環式ヘテロシクロアルキル基は、ヘテロアリール類として分類されるであろうテトラヒドロイソキノリンなどの構造を形成するためにフェニル部分と融合させることができる。
【0129】
本明細書で使用される場合、「ヘテロアリール」基は、単環式、二環式又は4~15個の環原子を有する三環式環系を指し、1個以上の環原子がヘテロ原子であり(例えば、N、O、S、又はそれらの組み合わせ)、単環式環系が、香族であるか、又は二環式又は三環式環系中の環のうちの少なくとも1つが芳香族である。ヘテロアリール基は、2~3の環を有するベンゾ融合環系を含む。例えば、ベンゾ縮合基は、1又は2個の4~8員複素環式脂肪族部分(例えば、インドリジル、インドリル、イソインドリル、3H-インドリル、インドリニル、ベンゾ[b]フリル、ベンゾ[b]チオフェニル、キノリニル又はイソキノリニル)と縮合したベンゾを含む。ヘテロアリールのいくつかの例は、ピリジル、1H-インダゾリル、フリル、ピロリル、チエニル、チアゾリル、オキサゾリル、イミダゾリル、テトラゾリル、ベンゾフリル、イソキノリニル、ベンズチアゾリル、キサンテン、チオキサンテン、フェノチアジン、ジヒドロインドール、ベンゾ[1,3]ジオキソール、ベンゾ[b]フリル、ベンゾ[b]チオフェニル、インダゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル、プリル、シンノリル、キノリル、キナゾリル、シンノリル、フタラジル、キナゾリル、キノキサリル、イソキノリル、4H-キノリジル、ベンゾ-1,2,5-チアジアゾール、又は1,8-ナフチリジルである。
【0130】
限定するものではないが、単環式ヘテロアリールとしては、フリル、チオフェニル、2H-ピロリル、ピロリル、オキサゾリル、タゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、1,3,4-チアジアゾリル、2H-ピラニル、4-H-プラニル、ピリジル、ピリダジル、ピリミジル、ピラゾリル、ピラジル、又は1,3,5-トリアジルが挙げられる。単環式ヘテロアリール類は、標準的な化学命名法に従って番号付けされている。
【0131】
二環式ヘテロアリールとしては、インドリジル、インドリル、イソインドリル、3H-インドリル、インドリニル、ベンゾ[b]フリル、ベンゾ[b]チオフェニル、キノリニル、イソキノリニル、インドリジニル、イソインドリル、インドリル、ベンゾ[b]フリル、ベキソ[b]チオフェニル、インダゾリル、ベンズイミダジル、ベンズチアゾリル、プリニル、4H-キノリジル、キノリル、イソキノリル、シンノリル、フタラジル、キナゾリル、キノキサリル、1,8-ナフチリジル、又はプテリジルが挙げられる。二環式ヘテロアリールは、標準的な化学命名法に従って番号付けされている。
【0132】
本明細書で使用される場合、「処理率」という用語は、潤滑流体中の成分の重量パーセントを指す。
【0133】
重量平均分子量(Mw)又は数平均分子量(Mn)は、Watersから得られるゲル浸透クロマトグラフィ(gel permeation chromatography、GPC)機器又は同様の機器と、Waters Empower Software又は同様のソフトウェアとを用いて判定され得る。例えば、参照により本明細書に組み込まれる、W.W.Yau,J.J.Kirkland及びD.D.Bly、「Modern Size Exclusion Liquid Chromatography」、John Wiley and Sons,New York,1979も参照されたい。本明細書において、全ての分子量は、商業的に入手可能なポリスチレン標準(較正基準として180~約18,000の数平均分子量を有する)を使用するゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)により判定される数平均分子量である。GPC測定は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,266,223号にも説明されている。
【0134】
本明細書で使用される場合、「油組成物」、「潤滑組成物」、「潤滑油組成物」、「潤滑油」、「潤滑剤組成物」、「完全配合潤滑剤組成物」、「潤滑剤」、及び「潤滑及び冷却流体」という用語は、過半量の基油成分と、少量の清浄剤及び他の任意選択的な成分と、を含む、最終潤滑生成物を指す同義の完全に互換的な用語とみなされる。
【実施例0135】
本開示及びその多くの利点のより良好な理解は、以下の実施例を用いて明らかにされ得る。以下の実施例は、例解的なものであり、範囲又は趣旨のいずれにおいても、それを限定するものではない。当業者は、これらの実施例に説明されている構成要素、方法、ステップ、及びデバイスの変形形態を使用することができることを容易に理解するであろう。別途述べられない限り、又は以下の実施例及び本開示を通して考察の文脈から明らかでない限り、本開示において述べられる全ての百分率、比、及び部は、重量基準である。
【0136】
ASTM D7484-21bに記載されたCummins ISBエンジン試験に従って、中負荷及び/又は高負荷ディーゼルエンジンに好適な潤滑剤のための本発明及び比較の耐摩耗系を、バルブトレイン摩耗について評価した。以下のジヒドロカルビルジチオリン酸亜鉛化合物を、これらの流体の耐摩耗系において使用した。
・ ZDDP1は、一級アルコールから誘導され、0.75の平均分岐度、8の平均ヒドロカルビル鎖長、及び1.27のZn:Pを有する、ジヒドロカルビルジチオリン酸亜鉛化合物であった。
・ ZDDP2は、二級アルコールから誘導され、0.67の平均分岐度、6の平均ヒドロカルビル鎖長、及び1.10のZn:P重量比を有する、ジヒドロカルビルジチオリン酸亜鉛化合物であった。
・ ZDDP3は、一級アルコールと二級アルコールとの混合物(70重量パーセントの一級アルコール及び30重量パーセントの二級アルコール)から誘導され、0.73の平均分岐度、5.0の平均ヒドロカルビル鎖長、及び1.10のZn:P重量比を有する、ジヒドロカルビルジチオリン酸亜鉛化合物であった。
・ ZDDP4は、一級アルコールから誘導され、0.75の平均分岐度、8の平均ヒドロカルビル鎖長、及び1.11のZn:P重量比を有する、ジヒドロカルビルジチオリン酸亜鉛化合物であった。
・ ZDDP5は、一級アルコールの混合物から誘導され、0.77の平均分岐度、4.3の平均ヒドロカルビル鎖長、及び1.13のZn:P重量比を有する、ジヒドロカルビルジチオリン酸亜鉛化合物であった。
【0137】
本発明及び比較の潤滑組成物は、以下の表3に記載されるような耐摩耗系を含んでいた。各潤滑組成物は、同量の他の添加剤(分散剤、酸化防止剤、有機モリブデン添加剤、消泡剤、無灰摩耗防止添加剤、及びオレフィンコポリマー粘度調整剤を含む)を含んでいた。各潤滑剤が、約9.5~約11.8cStのkV100(ASTM D445)を有するように、基油の量をわずかに変化させただけで、添加剤を同一の基油にブレンドした。したがって、潤滑剤の各々における唯一の材料の変更は、使用されたZDDP添加剤であった。
【0138】
【表3】
【0139】
上の表3の流体を、表4に示されるように、亜鉛及びリンレベルに関して分析した。表4はまた、潤滑剤中のZDDP添加剤及び/又は耐摩耗系の構造的詳細を提供する。
【0140】
【表4】
【0141】
本発明の潤滑剤及び比較潤滑剤を、ASTM D7484-21bのCummins ISBエンジン試験に従って、平均カムシャフト摩耗(ACSW)及び平均タペット質量損失(ATWL)に関して評価した。API Engine Oil Classifications for Commercial Vehicle Engine Oil Requirementsによって定義されるように、CK-4潤滑剤は、55μmの最大ACSW及び100mgの最大ATWLを有しなければならない。合格/不合格の結果を以下の表5に示す。
【0142】
【表5】
【0143】
上の表3~5に示されるように、耐摩耗系及び潤滑剤が約500ppm未満のリン及び/又は約500ppm未満の亜鉛を有する場合、潤滑剤は、平均分岐度、平均鎖長、Zn:P重量比、及び/又は二級アルコール含有量が、本開示を通して考察されるような本発明の耐摩耗系の述べられるパラメータの範囲内にある場合、合格のタペット及びカムシャフト摩耗性能を達成する。かかるパラメータを満たさない流体は、より高いレベルの亜鉛及び/又はリンを有していても、1つ以上のバルブトレイン性能試験に依然として不合格である。本明細書で評価された潤滑剤は、各々、平均して約2.9~約3.2重量パーセントの煤を含んでいた。
【0144】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されているように、単数形「a」、「an」、及び「the」は、明示的かつ明確に1つの指示対象に限定されない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。したがって、例えば、「酸化防止剤」への言及は、2つ以上の異なる酸化防止剤を含む。本明細書で使用される場合、「含む」という用語及びその文法的変形は、リスト内の項目の列挙がリストの項目に置換又は追加され得る他の類似の項目を除外しないように非限定的であることを意図する。
【0145】
本明細書及び添付の特許請求の範囲の目的のために、別途示されない限り、本明細書及び特許請求の範囲において使用される量、パーセンテージ、又は割合、及び他の数値を表す全ての数は、全ての場合において、「約」という用語によって修飾されるものとして理解されるべきである。したがって、反対の指示がない限り、以下の明細書及び添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、本開示によって得ようとする所望の特性に応じて変化し得る近似値である。最低限、特許請求の範囲の範囲に対する均等物の適用を制限する試みとしてではなく、各数値パラメータは少なくとも、報告された有効数字の数の観点から及び通常の丸め技術を適用することによって解釈されるべきである。
【0146】
本明細書に開示される各成分、化合物、置換基、又はパラメータは、単独で、又は本明細書に開示されるありとあらゆる他の成分、化合物、置換基、若しくはパラメータのうちの1つ以上との組み合わせでの使用について開示されていると解釈されるべきであることを理解されたい。
【0147】
本明細書に開示される各範囲は、同じ数の有効数字を有する開示範囲内の各特定値の開示として解釈されるべきであることを更に理解されたい。したがって、例えば、1~4の範囲は、1、2、3、及び4の値だけでなく、そのような値の任意の範囲の明確な開示として解釈されるべきである。
【0148】
本明細書に開示される各範囲の各下限が、同じ成分、化合物、置換基、又はパラメータについて本明細書に開示される各範囲の各上限及び各範囲内の各特定値と組み合わせて開示されると解釈されるべきであることを更に理解されたい。したがって、本開示は、各範囲の各下限を各範囲の各上限と、若しくは各範囲内の各特定値と組み合わせることによって、又は各範囲の各上限を各範囲内の各特定値と組み合わせることによって導出される全ての範囲の開示として解釈されるべきである。すなわち、広い範囲内の終点値の間の任意の範囲も本明細書において考察されることもまた更に理解される。したがって、1~4の範囲は、1~3、1~2、2~4、2~3などの範囲をも意味する。
【0149】
更に、説明又は実施例において開示される成分、化合物、置換基、又はパラメータの特定量/値は、範囲の下限又は上限のいずれかの開示として解釈されるべきであり、したがって、本出願の他の箇所で開示される同じ成分、化合物、置換基、又はパラメータについての範囲の任意の他の下限若しくは上限又は特定量/値と組み合わせて、その成分、化合物、置換基、又はパラメータについての範囲を形成することができる。
【0150】
特定の実施形態について説明してきたが、出願人ら若しくは当業者にとって現在予想されていない、又は現在予想することができない代替、修正、変形、改善、及び実質的な均等物が現れ得る。したがって、出願された、及び修正され得る添付の特許請求の範囲は、全てのそのような代替、修正、変形、改善、及び実質的な均等物を包含することを意図している。
【外国語明細書】