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特開2024-137875MOF含有超分岐難燃剤及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137875
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】MOF含有超分岐難燃剤及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 21/14 20060101AFI20240927BHJP
   C07F 15/02 20060101ALI20240927BHJP
   C07F 7/28 20060101ALI20240927BHJP
   C08G 59/26 20060101ALI20240927BHJP
   C08G 59/32 20060101ALI20240927BHJP
   C08G 59/50 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
C09K21/14
C07F15/02
C07F7/28 F
C08G59/26
C08G59/32
C08G59/50
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024044778
(22)【出願日】2024-03-21
(31)【優先権主張番号】202310284991.X
(32)【優先日】2023-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】520463123
【氏名又は名称】中国安全生▲産▼科学研究院
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】史▲聡▼▲霊▼
(72)【発明者】
【氏名】錢小東
(72)【発明者】
【氏名】何理
(72)【発明者】
【氏名】▲車▼洪磊
(72)【発明者】
【氏名】井静云
(72)【発明者】
【氏名】劉国林
(72)【発明者】
【氏名】万梅
(72)【発明者】
【氏名】李建
(72)【発明者】
【氏名】胥旋
【テーマコード(参考)】
4H028
4H049
4H050
4J036
【Fターム(参考)】
4H028AA44
4H049VN05
4H049VP08
4H049VQ35
4H049VQ92
4H049VR41
4H049VR42
4H049VS35
4H049VS92
4H049VT48
4H049VT49
4H049VU25
4H049VV03
4H049VV12
4H049VV13
4H049VV14
4H049VW08
4H050AA02
4H050AA03
4H050AB80
4H050AD17
4H050BA51
4H050BB12
4H050BB20
4H050BB21
4H050BB22
4H050BB61
4H050BC10
4H050BC19
4H050BC31
4H050BE60
4H050WB13
4H050WB21
4J036AB16
4J036CB03
4J036CB26
4J036CC04
4J036DC02
4J036DC06
4J036DC09
4J036FA14
4J036JA15
4J036KA05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】MOFを含有する窒素含有超分岐難燃剤及びその製造方法を提供する。
【解決手段】特定のMOF、ジアミノ化合物及びシアヌル酸トリグリシジルを超分岐基本構造とすることにより、マトリックスとの相溶性が悪い、難燃化効率が低い、使用中に損失が生じるなどの添加型難燃剤の欠点を解決し、難燃性高分子の場合、少量のMOF含有超分岐難燃剤をリン含有難燃剤と配合すると、膨張型難燃化作用及び相乗触媒作用により、高い難燃化効果が得られる。本発明によるMOF含有超分岐難燃剤は、高い難燃化効率を有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iで示される構造を有する、ことを特徴とするMOF含有超分岐難燃剤。
【化1】
(式Iにおいて、Yは、-NH-又は-N-であり、Rは、ピペラジン環又は1~30個の炭素原子を含有する分岐アルキレン基、アリール基、多環芳香族炭化水素基であり、
蛇行線は、超分岐構造から延びたものであり、○は、アミノ含有MOF構造である。)
【請求項2】
MOF含有超分岐難燃剤の製造方法であって、
前記MOF含有超分岐難燃剤は、請求項1に記載のMOF含有超分岐難燃剤であり、前記製造方法は、
不活性ガス環境下で、ジアミン化合物を極性有機溶媒に溶解し、次に、触媒を加え、その後、70~150℃に昇温するステップ(1)と、
イソシアヌル酸トリグリシジルを極性有機溶媒に溶解し、その後、ステップ(1)で得られた混合液にゆっくりと加えて、不活性ガス保護下で、開環反応して80℃~150℃の開環反応温度を保持し、撹拌しながら8~24h反応させ、窒素含有超分岐難燃剤を得るステップ(2)と、
ステップ(2)で得られた窒素含有超分岐難燃剤にアミノ基を含有するMOF材料を加えて、8~24h持続して撹拌し、キャッピング反応を行い、その後、沈殿剤を加えて、固液分離、水洗、及び乾燥のステップを行うと、MOF構造を含有する、式Iで示される構造を有するMOF含有超分岐難燃剤ステップ(3)と、を含む、ことを特徴とするMOF含有超分岐難燃剤の製造方法。
【請求項3】
前記ジアミン化合物は、ピペラジン、エチレンジアミン、ヒドロキシエチルエチレンジアミン、3,3-ジアミノジフェニルスルホン、ジエチルトルエンジアミン、2,6-トルエンジアミン、N-アミノエチルピペラジン、N,N-ジメチル-1,3-プロピレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、又はジアミノジフェニルスルホンのうちの1種又は複数種の混合物である、ことを特徴とする請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記触媒は、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N,N',N'-テトラメチルアルキレンジアミン、N,N-ジメチルベンジルアミン、トリエチルアミン、N-エチルモルホリン、N,N’-ジエチルピペラジン、N,N’-ジメチルピリジン、又はピリジンである、ことを特徴とする請求項2に記載の製造方法。
【請求項5】
前記アミノ含有MOF構造は、アミノ含有金属有機骨格材料であり、NH-UiO-66(Zr)、NH-UiO-66(Hf)、NH-MIL-53(Fe)、NH-MIL-101(Fe)、NH-MIL-53(Al)、NH-MIL-101(Al)、NH-MIL-101(Cr)又はNH-MIL-125(Ti)のうちの1種又は複数種であり、前記キャッピング反応は、アミノ基のエポキシ開環反応により超分岐難燃剤をキャッピングすることである、ことを特徴とする請求項2に記載の製造方法。
【請求項6】
前記極性有機溶媒は、アセトニトリル、ジクロロエタン、クロロホルム、ジメチルホルムアミド、又はジメチルスルホキシドなどである、ことを特徴とする請求項2に記載の製造方法。
【請求項7】
前記イソシアヌル酸トリグリシジルとジアミン化合物とのモル比が(2.5~10):(1~2)であり、イソシアヌル酸トリグリシジル+ジアミン化合物とアミノ基を含有するMOF材料との質量比が(3~5):1である、ことを特徴とする請求項2に記載の製造方法。
【請求項8】
前記不活性ガスは、窒素ガス、アルゴンガス、又はヘリウムガスのうちの1種又は複数種である、ことを特徴とする請求項2に記載の製造方法。
【請求項9】
ステップ(3)における前記沈殿剤は水であり、
キャッピング反応により得られた反応生成物と水とを沈殿させ、その後、順次固液分離、水洗、及び乾燥を得て、式Iで示される構造を有するMOF含有超分岐難燃剤を得る、ことを特徴とする請求項2に記載の製造方法。
【請求項10】
請求項1に記載のMOF含有超分岐難燃剤又は請求項2~9のいずれか1項に記載の製造方法により製造されたMOF含有超分岐難燃剤の難燃分野に使用される、ことを特徴とする窒素含有超分岐難燃剤の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃剤の技術分野に関し、特にMOF含有超分岐難燃剤、その製造方法及び使用に関する。
【背景技術】
【0002】
イソシアヌル酸トリグリシジル(TGIC)は、複素環式ポリエポキシ化合物であり、良好な耐熱性、耐侯性、接着性及び優れた高温性を有する。TGICは、主にカルボキシル含有ポリエステル、カルボキシルアクリル樹脂粉体塗料の硬化剤として使用されており、高純度のTGICは、通常、接着剤、電気絶縁積層板、プラスチック安定剤などの製造に一般的に使用されている。TGICは、窒素含有量が高く、特徴的なエポキシ基を有することから、膨張性難燃剤中の窒素含有化合物の前駆体の製造に広く利用されている。
【0003】
金属有機骨格(MOF)は、金属イオンと有機配位子との自己集合によって生成される規則的な結晶骨格物である。大きな比表面積、規則的な空隙構造、及び表面化学的性質の調整が可能などの特徴があるため、ガス貯蔵、触媒、分離や薬物輸送などの分野で広く応用されている。近年、MOF材料は、熱安定性が高いことから、各種ポリマーの新規難燃剤として幅広く使用されている。MOFは、遷移金属、難燃化元素、潜在的炭素源の種類が豊富で、構造や性能の調整が容易なため、MOFやその誘導体、MOFハイブリッドは難燃研究への利用が期待されている。MOFの改質戦略に基づいて、MOF(金属有機骨格材料)とガス源をナノレベルで結合する。この総説は研究者がこの分野の最新の発展を迅速に把握するのに非常に有益である。
【0004】
超分岐ポリマーは、高度な三次元構造を有し、高度に分岐した高分子であり、従来技術では、超分岐ポリマー膨張性難燃剤は、窒素含有量が低く、炭素生成能が弱く、難燃化効率が低いという問題があったが、この超分岐難燃剤にMOF構造を導入することにより、現在の難燃剤の上記課題を解決することが期待される。
【0005】
中国発明特許公開CN104262680Bは、超分岐膨張性難燃剤及びその製造方法を開示しており、無水フタル酸とジエタノールアミン等を反応させてABモノマーを製造し、それによって、難燃剤の難燃化効率を向上させたが、その成分にMOFが含まれていないため、最適化が不十分である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、MOF含有超分岐難燃剤、その製造方法及び使用を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の技術的課題を解決するために、本発明は、以下の技術的解決手段によって達成される。
式Iで示される構造を有するMOF含有超分岐難燃剤。
【化1】
(式Iにおいて、Yは、-NH-又は-N-であり、Rは、ピペラジン環又は1~30個の炭素原子を含有する分岐アルキレン基、アリール基、多環芳香族炭化水素基であり、

蛇行線は、超分岐構造から延びたものであり、○は、アミノ含有MOF構造である。)
【0008】
MOF含有超分岐難燃剤の製造方法であって、
前記MOF含有超分岐難燃剤は、上記のMOF含有超分岐難燃剤であり、前記製造方法は、
不活性ガス環境下で、ジアミン化合物を極性有機溶媒に溶解し、次に、触媒を加え、その後、70~150℃に昇温するステップ(1)と、
イソシアヌル酸トリグリシジルを極性有機溶媒に溶解し、その後、ステップ(1)で得られた混合液にゆっくりと加えて、不活性ガス保護下で、開環反応して80℃~150℃の開環反応温度を保持し、撹拌しながら8~24h反応させ、窒素含有超分岐難燃剤を得るステップ(2)と、
ステップ(2)で得られた窒素含有超分岐難燃剤にアミノ基を含有するMOF材料を加えて、8~24h持続して撹拌し、キャッピング反応を行い、その後、沈殿剤を加えて、固液分離、水洗、及び乾燥のステップを行うと、MOF構造を含有する、式Iで示される構造を有するMOF含有超分岐難燃剤ステップ(3)と、を含む。
【0009】
好ましくは、前記ジアミン化合物は、ピペラジン、エチレンジアミン、ヒドロキシエチルエチレンジアミン、3,3-ジアミノジフェニルスルホン、ジエチルトルエンジアミン、2,6-トルエンジアミン、N-アミノエチルピペラジン、N,N-ジメチル-1,3-プロピレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、又はジアミノジフェニルスルホンのうちの1種又は複数種の混合物である。
【0010】
好ましくは、前記触媒は、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N,N',N'-テトラメチルアルキレンジアミン、N,N-ジメチルベンジルアミン、トリエチルアミン、N-エチルモルホリン、N,N’-ジエチルピペラジン、N,N’-ジメチルピリジン、又はピリジンである。
【0011】
好ましくは、前記アミノ含有MOF構造は、アミノ含有金属有機骨格材料であり、NH-UiO-66(Zr)、NH-UiO-66(Hf)、NH-MIL-53(Fe)、NH-MIL-101(Fe)、NH-MIL-53(Al)、NH-MIL-101(Al)、NH-MIL-101(Cr)、又はNH-MIL-125(Ti)のうちの1種又は複数種であり、前記キャッピング反応は、アミノ基のエポキシ開環反応により超分岐難燃剤をキャッピングすることである。
【0012】
好ましくは、前記極性有機溶媒は、アセトニトリル、ジクロロエタン、クロロホルム、ジメチルホルムアミド、又はジメチルスルホキシドである。
【0013】
好ましくは、前記イソシアヌル酸トリグリシジルとジアミン化合物とのモル比が(2.5~10):(1~2)であり、イソシアヌル酸トリグリシジル+ジアミン化合物とアミノ基を含有するMOF材料との質量比が(3~5):1である。
【0014】
好ましくは、前記不活性ガスは、窒素ガス、アルゴンガス、又はヘリウムガスのうちの1種又は複数種である。
【0015】
好ましくは、ステップ(3)における前記沈殿剤は水であり、
キャッピング反応により得られた反応生成物と水とを沈殿させ、その後、順次固液分離、水洗、及び乾燥を得て、式Iで示される構造を有するMOF含有超分岐難燃剤を得る。
【0016】
MOF含有超分岐難燃剤の使用方法であって、具体的には、上記のMOF含有超分岐難燃剤の難燃分野における使用である。
【0017】
本発明では、前記ジアミン化合物とMOFとが混合物である場合、前記混合物中の各物質の割合は、本発明の具体的な限定を除き、特に限定はなく、任意の割合の混合物を採用することができる。本発明は、具体的な限定を除き、前記ジアミン化合物の由来について特に限定はなく、当業者に公知の市販商品を採用すればよい。
【0018】
本発明では、前記開環反応の原理は、以下の反応方程式である。
【化2】
【0019】
上記の反応方程式において、Yは、-NH-又は-N-であり、Rは、ピペラジン環又は1~30個の炭素原子を含有する分岐アルキレン基、アリール基、多環芳香族炭化水素基であり、○は、アミノ含有MOF構造である。
【0020】
本発明では、沈殿完了後、沈殿後の系を固液分離して、固体生成物を得る。本発明では、固液分離の具体な方式に特に限定はなく、当業者に公知の固液分離方式、具体的には、濾過を採用すればよい。
【0021】
本発明では、固体生成物を得た後、好ましくは、固体生成物を水洗して、水洗生成物を得る。本発明では、水洗の回数及び水の使用量について特に限定はない。
【0022】
本発明では、水性生成物を得た後、好ましくは水洗生成物を乾燥して、窒素含有超分岐難燃剤を得る。本発明では、前記乾燥の具体的な方式について特に限定はなく、当業者に公知の乾燥方式を採用すればよく、具体的には、前記乾燥は、好ましくは50℃で2~10h真空乾燥することである。
【0023】
本発明は、上記の技術的解決手段に記載のMOF含有超分岐難燃剤又は上記の技術的解決手段のいずれかに記載の製造方法により製造されるMOF含有超分岐難燃剤の難燃分野における使用、より好ましくは難燃樹脂における使用を提供する。
【0024】
本発明では、前記MOF含有超分岐難燃剤のポリマー材料中の質量百分率は、好ましくは5~15%である。
【発明の効果】
【0025】
本発明の有益な効果は以下の通りである。
本発明では、具体的な構成によりアミノ含有MOF材料をコアとして構造を付加してMOFを含有する窒素含有超分岐難燃剤を形成する。その難燃剤で形成された難燃性材料は、難燃レベルが実質的にV0レベル(少なくともV1以上)に達し、限界酸素指数(LOI)が32以上に達し、より優れた実施形態では37以上(ポリオレフィン材料の限界酸素指数(LOI)は従来は21)に達し、それにより、難燃性を大幅に向上させることができる。
本発明による特定の製造方法は、反応条件が穏やかで、製造工程の実施が容易であり、また、高分子材料に良好な難燃性を付与することができる。超分岐難燃剤は、窒素含有量が高いため、膨張性難燃剤の優れたガス源及び相乗的難燃剤となり、エポキシ樹脂やポリオレフィンなどの材料に対して効率的な難燃化効果をもたらす。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施例における技術的態様を明確かつ完全に説明するが、説明される実施例は本発明の一部の実施例にすぎず、全ての実施例ではないことは明らかである。本発明の実施例に基づいて、当業者が創造的な労働を行わないことを前提として取得した他のすべての実施例は、本発明の保護範囲に属する。
【0027】
以下では、実施例を参照して、本発明によるMOF含有超分岐難燃剤、その製造方法及び使用について詳細に説明するが、これらは本発明の保護範囲を限定するものと理解することはできない。
【実施例0028】
無水ピペラジン0.52molをアセトニトリル250mlに溶解したものを、還流凝縮管、定圧滴液漏斗、撹拌器が装備された500mL三つ口フラスコに加え、トリエチルアミン0.01molを加え、系を85℃に昇温し、次に、イソシアヌル酸トリグリシジル(TAIC)0.25molをアセトニトリル100mLに溶解して上記の系に1滴ずつ滴下し、窒素保護下で、温度を85℃に調整して保持し、8時間機械的に撹拌し、NH-MIL-101(Fe)25gを加えて、8時間持続して撹拌し、その後、水200mLを沈殿剤として加え、撹拌を停止し、熱いうち吸引濾過し、3回水洗し、90℃で8時間真空乾燥させ、MOF含有超分岐難燃剤を得た。
【比較例1】
【0029】
本比較例では、「NH-MIL-101(Fe)を加える」ステップがない以外、残りのステップはすべて実施例1と同様であった。得られた結果の比較を表2に示す。
【実施例0030】
エチレンジアミン0.5molをジメチルスルホキシド300mLに溶解したものを、還流凝縮管、定圧滴液漏斗、撹拌器が装備された500mL三つ口フラスコに加え、トリエチルアミン0.01molを加え、系を120℃に昇温し、次に、イソシアヌル酸トリグリシジル(TAIC)0.20molをジメチルホルムアミド100mLに溶解して上記の系に1滴ずつ滴下し、窒素保護下で、120℃で保温して調整し10時間撹拌し、NH-MIL-125(Ti)15gを加えて、10時間持続して撹拌し、水100mLを沈殿剤として加え、撹拌を停止し、熱いうち吸引濾過し、6回水洗し、80℃で8時間真空乾燥させ、MOF含有超分岐難燃剤を得た。
【比較例2】
【0031】
本比較例では、「NH-MIL-125(Ti)を加える」ステップがない以外、残りのステップはすべて実施例2と同様であった。得られた結果の比較を表2に示す。
【実施例0032】
ジアミノジフェニルメタン0.5molをクロロホルム300mLに溶解したものを、還流凝縮管、定圧滴液漏斗、撹拌器が装備された500mL三つ口フラスコに加え、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン0.01molを加え、系を70℃に昇温し、次に、イソシアヌル酸トリグリシジル0.25molをクロロホルム100mlに溶解して上記の系に1滴ずつ滴下し、窒素保護下で80℃で保温し、8時間持続して撹拌し、NH-MIL-125(Ti)15gを加え、10時間持続して撹拌し、水150mlを沈殿剤として加え、撹拌を停止し、熱いうち吸引濾過し、4回水洗し、80℃で8時間真空乾燥させ、MOF含有超分岐難燃剤を得た。
【比較例3】
【0033】
本比較例では、「NH-MIL-125(Ti)」のステップがない以外、残りのステップはすべて実施例3と同様であった。得られた結果の比較を表2に示す。
【0034】
本発明のMOF含有超分岐難燃剤の難燃化作用を考察するために、可燃性エポキシ樹脂をマトリックスとして、実施例1、実施例2、及び実施例3で製造された難燃剤を表1の配合比でエポキシ樹脂に加え、均一に混合した後、金型に流し込み、熱硬化して標準サンプルを製造し、標準サンプルに対してUL94試験標準(SATM D3801-10)とLOI試験標準(ASRM D2863-06A)に従って難燃性試験を行い、その試験結果を表1に示す。
【0035】
【表1】
【0036】
比較例1、比較例2、及び比較例3の典型的な製造工程には、MOF難燃剤を加えるステップを含まず、MOFを含まない従来の窒素含有超分岐難燃剤を得る。表1と同様に、比較例1、比較例2、及び比較例3で製造された難燃剤を表2の配合比でエポキシ樹脂に加え(対応する配合方式は表1と対応する)、均一に混合した後、金型に流し込み、熱硬化して標準サンプルを製造し、標準試料に対してUL94試験標準(SATM D3801-10)とLOI試験標準(ASRM D2863-06A)に従って難燃性試験を行い、その試験結果を表2に示す。
【0037】
【表2】
【0038】
表1及び表2から分かるように、本発明で製造された難燃剤は、反応条件が穏やかで、製造工程が簡単で行われやすく、また、高分子材料に良好な難燃性を付与することができる。各実施例において、本発明の製造方法で製造されたMOF含有超分岐難燃剤をAPPとそれぞれ1:2及び2:1で混合して難燃性材料を形成し比較したところ、同じ割合で難燃性材料に添加された場合、LOI値は、いずれも表2のMOFを添加していない場合のLOI値よりも高く、このことは、本発明では、該難燃剤に適切なMOF材料を添加することにより、難燃性が向上することを示している。