(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137876
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】エレクトレット繊維シートおよびその製造方法、ならびにエアフィルター濾材
(51)【国際特許分類】
D04H 3/007 20120101AFI20240927BHJP
D04H 3/16 20060101ALI20240927BHJP
D06M 11/56 20060101ALI20240927BHJP
D06M 11/13 20060101ALI20240927BHJP
B01D 39/16 20060101ALI20240927BHJP
B03C 3/28 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
D04H3/007
D04H3/16
D06M11/56
D06M11/13
B01D39/16 A
B03C3/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024045028
(22)【出願日】2024-03-21
(31)【優先権主張番号】P 2023046535
(32)【優先日】2023-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000187046
【氏名又は名称】東レ・ファインケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 智雄
(72)【発明者】
【氏名】武田 祐一
(72)【発明者】
【氏名】平原 武彦
【テーマコード(参考)】
4D019
4D054
4L031
4L047
【Fターム(参考)】
4D019AA01
4D019BA13
4D019BB03
4D019BC01
4D019BD01
4D019CB06
4D019DA02
4D019DA03
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4D054AA11
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4L031AA14
4L031AB34
4L031BA07
4L031BA13
4L031BA17
4L031DA00
4L047AA14
4L047AA29
4L047AB03
4L047BA08
4L047CC12
4L047DA00
(57)【要約】
【課題】 本発明は、捕集性能に優れたエレクトレット繊維シートを提供する。
【解決手段】 本発明のエレクトレット繊維シートは、主として非導電性繊維を含んでなるエレクトレット繊維シートであって、前記エレクトレット繊維シートがヒンダードアミン系化合物を0.1~5.0質量%含有し、かつ、前記エレクトレット繊維シートの繊維表面に塩素原子、硫黄原子の少なくとも1つが1~500ppm存在することを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主として非導電性繊維を含んでなるエレクトレット繊維シートであって、前記エレクトレット繊維シートがヒンダードアミン系化合物を0.1~5.0質量%含有し、かつ、前記エレクトレット繊維シートの繊維表面に塩素原子、硫黄原子の少なくとも1つが1~500ppm存在することを特徴とするエレクトレット繊維シート。
【請求項2】
前記エレクトレット繊維シートの繊維表面に、更にナトリウム原子、カリウム原子の少なくとも1つが1~500ppm存在することを特徴とする請求項1に記載のエレクトレット繊維シート。
【請求項3】
前記非導電性繊維がポリオレフィン系樹脂からなる請求項1または2に記載のエレクトレット繊維シート。
【請求項4】
前記エレクトレット繊維シートのQF値が0.20Pa-1以上である、請求項1または2に記載のエレクトレット繊維シート。
【請求項5】
請求項1または2に記載のエレクトレット繊維シートからなるエアフィルター濾材。
【請求項6】
請求項1または2に記載のエレクトレット繊維シートの製造方法であって、ポリオレフィン系樹脂および0.1~5.0質量%のヒンダードアミン系化合物からなるポリオレフィン系樹脂組成物を調製し、前記ポリオレフィン系樹脂組成物から繊維シートを形成し、その繊維シートを、塩素原子および/または硫黄原子を含む水溶液と接触させることを特徴とするエレクトレット繊維シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不織布に関するものである。さらに詳しくは、捕集性能に優れたエレクトレット繊維シートとその製造方法、およびエアフィルター濾材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、気体中の花粉や塵埃、飛沫等を除去するためにエアフィルターが使用されており、そのエアフィルター濾材として不織布が多く用いられている。
【0003】
一般に、不織布を用いたエアフィルターにおいて、捕集効率を高くしつつ、圧力損失を低くすることが困難であることから、不織布をエレクトレット加工して、物理的作用に加えて静電気的作用を利用することにより、高捕集効率かつ低圧力損失を同時に満足させる試みがなされている。
【0004】
例えば、アース電極上に不織布を接触させた状態で、このアース電極と不織布を共に移動させながら、非接触型印加電極で高圧印加を行なって連続的にエレクトレット化する、エレクトレット繊維シートの製造方法が提案されている(例えば特許文献1参照)。その他に水を繊維に接触させて帯電する方法として、繊維シートに対して水の噴流もしくは水滴流を不織布内部まで水が浸透するのに十分な圧力で噴霧させてエレクトレット化し、正極性と負極性の電荷を均一に混在させる方法(例えば特許文献2参照)や、繊維シートをスリット状のノズル上を通過させ、ノズルで水を吸引することにより繊維シートに水を浸透させて、正極性と負極性の電荷を混在させる方法(例えば特許文献3参照)や、有機もしくは無機化合物を含有する水溶液を、繊維シート内を通過するのに十分な圧力で噴射させてエレクトレット化させる方法(例えば特許文献4参照)のような、いわゆるハイドロチャージ法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭61-289177号公報
【特許文献2】米国特許第6119691号明細書
【特許文献3】特開2003-3367号公報
【特許文献4】特開2004-66026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の特許文献1~4に記載の提案のように、メルトブロー不織布をエレクトレット化することによって、捕集性能はある程度向上させることはできるものの、例えばエアフィルターとして使用する際においては、捕集効率を損なうことなく、より低圧力損失のフィルターが求められている。
【0007】
そこで本発明の課題は、上記のような問題点に着目し、低い圧力損失でありながらも高い捕集効率を達成するようにした、より高い捕集性能を有するエレクトレット繊維シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決する本発明のエレクトレット繊維シートおよびその製造方法、ならびにエアフィルター濾材は、以下の構成からなる。
[1] 主として非導電性繊維を含んでなるエレクトレット繊維シートであって、前記エレクトレット繊維シートがヒンダードアミン系化合物を0.1~5.0質量%含有し、かつ、前記エレクトレット繊維シートの繊維表面に塩素原子、硫黄原子の少なくとも1つが1~500ppm存在することを特徴とするエレクトレット繊維シート。
【0009】
[2] 前記エレクトレット繊維シート表面に、更にナトリウム原子、カリウム原子の少なくとも1つが1~500ppm存在する[1]に記載のエレクトレット繊維シート。
[3] 前記非導電性繊維がポリオレフィン系樹脂からなる[1]または[2]に記載のエレクトレット繊維シート。
[4] 前記エレクトレット繊維シートのQF値が0.20Pa-1以上である[1]乃至[3]のいずれかに記載のエレクトレット繊維シート。
【0010】
[5] [1]乃至[4]のいずれかに記載のエレクトレット繊維シートからなるエアフィルター濾材。
[5] [1]乃至[4]のいずれかに記載のエレクトレット繊維シートの製造方法であって、ポリオレフィン系樹脂および0.1~5.0質量%のヒンダードアミン系化合物からなるポリオレフィン系樹脂組成物を調製し、前記ポリオレフィン系樹脂組成物から繊維シートを形成し、その繊維シートを、塩素原子および/または硫黄原子を含む水溶液と接触させることを特徴とするエレクトレット繊維シートの製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、エレクトレット化したヒンダードアミン系化合物を含有した繊維シートの繊機表面に塩素原子および/または硫黄原子を存在させることにより、低い圧力損失および高い捕集効率を両立し、優れた捕集性能を有するエレクトレット繊維シートを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】捕集効率および圧力損失の測定装置を示す概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のエレクトレット繊維シートは、主として非導電性繊維を含んでなるエレクトレット繊維シートであって、前記エレクトレット繊維シートがヒンダードアミン系化合物を0.1~5.0質量%含有し、かつ、前記エレクトレット繊維シートの繊維表面に塩素原子、硫黄原子の少なくとも1つが1~500ppm存在することを特徴とする。以下に、その構成要素について詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下に説明する範囲に何ら限定されるものではない。
【0014】
本発明において、非導電性とは、体積抵抗率が1012・Ω・cm以上であることをいい、1014・Ω・cm以上であることが好ましい形態である。
本発明において、「主として非導電性繊維を含んでなる」とは、エレクトレット繊維シート中に90質量%以上の非導電性繊維を含むことを指す。非導電性繊維は、好ましくは95質量%以上、より好ましくは97質量%以上含むとよい。エレクトレット繊維シート中に非導電性繊維が90質量%未満であると十分なエレクトレット性能が得られないため好ましくない。
【0015】
本発明に用いられる非導電性繊維の樹脂原料としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートおよびポリ乳酸等のポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、フッ素系樹脂、ポリスチレンエラストマー、ポリオレフィンエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマーおよびポリウレタンエラストマー等のエラストマー、およびこれらの共重合体または混合物などを挙げることができる。
【0016】
これらの中でも、非導電性繊維として、ポリオレフィン系樹脂からなる繊維が好ましく用いられる。ポリオレフィン系樹脂は、体積抵抗率が高く、吸水性が低いため、ポリオレフィン系樹脂の繊維シート(不織布)をエレクトレット加工した際の帯電性および電荷保持性を強くすることができ、これらの効果によって高い捕集効率を達成することができる。
【0017】
本発明において、ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテンおよびポリメチルペンテン等のホモポリマーなどが挙げられる。また、これらのホモポリマーのオレフィン成分に異なるオレフィン成分を共重合したコポリマーや、異なる2種以上のポリマーブレンド品等の樹脂を用いることもできる。これらの中でも、帯電保持性の観点から、ポリプロピレン系樹脂およびポリメチルペンテン系樹脂が好ましく用いられる。特に、安価に利用できること、繊維径の細径化が容易という観点から、ポリプロピレン系樹脂が好ましく用いられる。なお、ポリプロピレン系樹脂とは、ポリプロピレンのホモポリマー、他のオレフィン成分との共重合体(コポリマー)および異種樹脂とのポリマーブレンドなどの樹脂が挙げられる。このうち、ポリプロピレンホモポリマーおよびプロピレン単位を90質量%以上含有するポリプロピレンのコポリマーが好ましい。また、ポリオレフィン系樹脂からなる繊維は、複合繊維であってもよく、例えば、芯鞘型、偏心芯鞘型、サイドバイサイド型、分割型、海島型、アロイ型などの複合繊維の形態をとってもよい。
【0018】
本発明のエレクトレット繊維シートは、これを構成する繊維中にヒンダードアミン系化合物を0.1質量%以上5.0質量%以下含有する。ヒンダードアミン系化合物を0.1質量%以上、好ましくは0.7質量%以上含有することで、エレクトレット加工を施した際の帯電性、電荷保持性に優れるエレクトレット繊維シートを得ることができる。一方、ヒンダードアミン系化合物を5.0質量%以下、好ましくは3.0質量%以下含有することで、より低コストで上記帯電性と電荷保持性を発現させることが可能となる。
【0019】
エレクトレット繊維シートを構成する繊維中のヒンダードアミン系化合物の含有量は、例えば、次のようにして求めることができる。すなわち、エレクトレット繊維シートをメタノール/クロロホルム混合溶液でソックスレー抽出後、その抽出物についてHPLC分取を繰り返し、各分取物についてIR測定、GC測定、GC/MS測定、MALDI-MS測定、1H-NMR測定、および13C-NMR測定で構造を確認する。ヒンダードアミン系化合物の含まれる分取物の質量を合計し、エレクトレット繊維シート全体に対する割合を求め、これをヒンダードアミン系化合物の含有量とする。
【0020】
本発明に用いられるヒンダードアミン系化合物としては、例えば、ポリ[(6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)イミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル)((2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ)ヘキサメチレン((2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ)](BASFジャパン(株)製、“キマソーブ”(登録商標)944LD)、コハク酸ジメチル-1-(2-ヒドロキシエチル)-4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン重縮合物(BASFジャパン(株)製、“チヌビン”(登録商標)622LD)、および2-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2-n-ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)(BASFジャパン(株)製、“チヌビン”(登録商標)144)、BASFジャパン(株)製、“キマソーブ”(登録商標)2020FDLなどが挙げられる。
【0021】
また、エレクトレット繊維シートの非導電性繊維に用いられるポリオレフィン系樹脂組成物には、上述したヒンダードアミン系化合物のほか、本発明の効果を損なわない限り、ポリオレフィン系樹脂組成物中に熱安定剤、結晶核剤、耐候剤および重合禁止剤等の添加剤を添加することができる。
【0022】
本発明のエレクトレット繊維シートは、その繊維表面に塩素原子、硫黄原子の少なくとも1つを1~500ppm含有する。なお、塩素原子と硫黄原子の両方を含むとき、これらの合計が1~500ppmである。塩素原子および/または硫黄原子を1ppm以上、好ましくは5ppm以上含有することで、帯電性に優れるエレクトレット繊維シートを得ることができる。一方、塩素原子および/または硫黄原子を500ppm以下、好ましくは300ppm以下含有することで、より低コストで帯電性を発現させることが可能となる。エレクトレット繊維シートの繊維表面に存在させる塩素原子および硫黄原子の濃度は、後述するエレクトレット処理(帯電処理)に使用する水溶液中の塩素原子および硫黄原子の濃度や塩素原子または硫黄原子を含む化合物の種類、水の種類、繊維シートの繊維径、等により調整することができる。
【0023】
塩素原子および硫黄原子の含有量は、例えば、次のようにして求めることができる。すなわち、エレクトレット繊維シートを燃焼管内で燃焼させ、発生したガスを吸収液に吸収後、塩素原子および硫黄原子をイオンクロマトグラフィーで測定、定量する。また、エレクトレット繊維シートを純水に浸漬し、十分に洗浄後、洗浄後の繊維シートを燃焼管内で燃焼させ、発生したガスを吸収液に吸収後、塩素原子および硫黄原子をイオンクロマトグラフィーで測定、定量する。洗浄前の繊維シート中の塩素および硫黄の原子のエレクトレット繊維シートの質量当たりの濃度と、洗浄後の繊維シート中の塩素および硫黄の原子のエレクトレット繊維シートの質量当たりの濃度の差分をエレクトレット繊維シート表面の塩素原子および硫黄原子の濃度とすることができる。
【0024】
本発明に用いられる塩素原子または硫黄原子を含む化合物としては、例えば、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸カリウム、チオ硫酸マグネシウム、チオ硫酸カルシウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸マグネシウム、亜硫酸カルシウムなどが挙げられる。
【0025】
本発明のエレクトレット繊維シートは、繊維シート(不織布)がエレクトレット処理(帯電処理)されている。本発明に係る繊維シートをエレクトレット化する方法としては、例えば、繊維シートに対して水の噴流もしくは水滴流を繊維シートの内部まで水が浸透するのに十分な圧力で噴霧させてエレクトレット化し、正極性と負極性の電荷を均一に混在させる方法、あるいは、繊維シートをスリット状のノズル上を通過させ、ノズルで水を吸引することにより繊維シートに水を浸透させて、正極性と負極性の電荷を均一に混在させる方法(ハイドロチャージ法)などを用いることができる。
【0026】
本発明において、エレクトレット化する際に用いられる水溶液として、塩素原子および/または硫黄原子を含む水溶液を使用することにより、エレクトレット繊維シートの繊維表面に塩素原子および/または硫黄原子を存在させることができる。例えば、上記の塩素原子および/または硫黄原子を含む無機塩を、液体フィルター等で汚れを除去した水に溶解した水溶液を使用したり、アルカリ電解水を使用することができる。特に、溶媒になる水として、イオン交換水、蒸留水および逆浸透膜で透過した濾過水等の純水が好ましく用いられる。また、純水としてのレベルは、導電率で102μS/m以下の純水である。
【0027】
また、本発明のエレクトレット繊維シートは、その繊維表面に塩素原子および/または硫黄原子と共に、ナトリウム原子、カリウム原子の少なくとも1つが1~500ppm存在することが好ましい。なお、ナトリウム原子とカリウム原子の両方を含むとき、これらの合計が1~500ppmである。ナトリウム原子および/またはカリウム原子を1ppm以上、好ましくは5ppm以上含有することで、帯電性に優れるエレクトレット繊維シートを得ることができる。一方、ナトリウム原子および/またはカリウム原子を500ppm以下、好ましくは300ppm以下含有することで、より低コストで帯電性を発現させることが可能となる。
【0028】
ナトリウム原子およびカリウム原子の含有量は、例えば、次のようにして求めることができる。すなわち、エレクトレット繊維シートに硫酸を加えて加熱炭化したのち加熱灰化する。灰分を硫酸およびフッ化水素酸で加熱分解し、希硝酸で溶解して定容とする。この溶液を用いて原子吸光法でナトリウムおよびカリウムを測定する。エレクトレット繊維シートを純水に浸漬し、十分に洗浄する前後におけるナトリウム原子およびカリウム原子の含有量を定量し、洗浄前の繊維シート中のナトリウムおよびカリウムの原子のエレクトレット繊維シートの質量当たりの濃度と、洗浄後の繊維シート中のナトリウムおよびカリウムの原子のエレクトレット繊維シートの質量当たりの濃度の差分をエレクトレット繊維シート表面のナトリウム原子およびカリウム原子の濃度とすることができる。
【0029】
本発明に用いられるナトリウム原子またはカリウム原子を含む化合物としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸カリウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウムなどが挙げられる。これらの化合物を含む水溶液をエレクトレット処理(帯電処理)に使用することにより、エレクトレット繊維シートの繊維表面にナトリウム原子および/またはカリウム原子を存在させることができる。また、エレクトレット繊維シートの繊維表面に存在させるナトリウム原子およびカリウム原子の濃度は、エレクトレット処理に使用する水溶液中のナトリウム原子およびカリウム原子の濃度やナトリウム原子またはカリウム原子を含む化合物の種類、水の種類、繊維シートの繊維径、等により調整することができる。
【0030】
また、本発明のエレクトレット繊維シートは、メルトブロー不織布からなることが好ましい。メルトブロー不織布からなることにより、複雑な工程を必要とせず、数μmの細繊維が容易に得られ、高い塵埃捕集特性を達成しやすくすることができる。
【0031】
本発明のエレクトレット繊維シートを構成する繊維の平均単繊維径は、0.1μm以上8.0μm以下の範囲であることが好ましい。平均単繊維径を好ましくは0.1μm以上8.0μm以下、より好ましくは0.3μm以上7.0μm以下、さらに好ましくは0.5μm以上5.0μm以下とすることにより、通気性と塵埃捕集特性に優れたエレクトレット繊維シートが得られやすくなる。
【0032】
なお、本発明におけるエレクトレット繊維シートに用いられる繊維の平均単繊維径は、繊維シートの幅方向3点(側端部2点と中央1点)、それを長手方向5cmおきに5点、合計15点から、3mm×3mmの測定サンプルを15個採取し、走査型電子顕微鏡(例えば、株式会社キーエンス社製「VE-9800」など)で倍率を2000倍に調節して、採取した測定サンプルから繊維表面写真を各1枚ずつ、計15枚を撮影し、それぞれの写真の中の繊維直径(単繊維径)がはっきり確認できる繊維について単繊維径(単位はμm)を測定し、平均した値の小数点以下第2位を四捨五入して得られる値のことを指すこととする。
【0033】
また、本発明のエレクトレット繊維シートの目付は、5g/m2以上100g/m2以下であることが好ましい。目付を好ましくは5g/m2以上、より好ましくは7g/m2以上、さらに好ましくは10g/m2以上とすることでエレクトレットメルトブロー不織布の捕集効率を向上させることができる。一方、100g/m2以下、より好ましくは80g/m2以下、さらに好ましくは60g/m2以下とすることでエレクトレット繊維シートの圧力損失を低くすることができる。
【0034】
なお、本発明におけるエレクトレット繊維シートの目付は、繊維シートから、タテ×ヨコ=15cm×15cmのサンプルを採取し、そのサンプルの質量を測定して得られた値を1m2当たりの値に換算し、小数点以下第1位を四捨五入して、繊維シートの目付(g/m2)を算出することとする。
【0035】
本発明のエレクトレット繊維シートは、上記の構成を取ることによって、高い捕集効率と低い圧力損失とを両立する。これら捕集効率および圧力損失からなる捕集性能の指標として、QF値(Pa-1)がある。QF値は、以下の式で表されるように、捕集効率と圧力損失との関係を示し、QF値が高い程、捕集効率が高く、圧力損失が低いことを示している。
・QF値(Pa-1)=-[ln(1-捕集効率(%)/100)]/圧力損失(Pa)
上記式中、エレクトレット繊維シートの捕集効率(%)は、JIS K0901に基づく0.3~0.5μm粒子の捕集率であり、圧力損エレクトレット繊維シートの圧力損失(Pa)は、エレクトレット繊維シートの上流と下流の静圧差である。
【0036】
エレクトレット繊維シートのQF値は、好ましくは0.20Pa-1以上、より好ましくは0.22Pa-1以上である。QF値が0.20Pa-1以上であることは、エレクトレット繊維シートが、高い捕集効率と低い圧力損失とを両立していること意味する。
【0037】
ここで、本発明におけるエレクトレット繊維シートの捕集効率と圧力損失の測定方法は以下の手順で測定し、算出される値である。
(1)エレクトレット繊維シートの幅方向5カ所で、タテ×ヨコ=15cm×15cmの測定サンプルMをそれぞれ1つずつ(計5つ)採取する。
(2)
図1の概略側面図に示す捕集効率測定装置を準備する。この捕集効率測定装置は、測定サンプルMをセットするサンプルホルダー1の上流側に、ダスト導入口2を連結し、下流側に流量計3、流量調整バルブ4およびブロワ5を連結している。また、サンプルホルダー1のサンプルMの上流側にパーティクルカウンター6を使用し、サンプルMの下流側にパーティクルカウンター7を使用して、測定サンプルMの上流側のダスト個数と下流側のダスト個数とをそれぞれ測定することができるものである。
(3)ダスト導入口2を開放し、大気を導入する。
(4)測定サンプルMを、サンプルホルダー1にセットし、風量をフィルター通過速度が3.0m/分になるように、流量調整バルブ4で調整し、大気塵ダスト濃度を1万~4万個/2.83×10
-4m
3以上で安定していることを確認する。
(5)測定サンプルMの上流のダスト個数Dをパーティクルカウンター6(例えば、リオン株式会社製「KC-01E」など)および下流のダスト個数dをパーティクルカウンター7で1個の測定サンプルM当り3回測定し、JIS K0901:1991の「気体中のダスト試料捕集用ろ過材の形状、寸法並びに性能試験方法」に基づいて、下記の計算式を用いて、0.3~0.5μm粒子の捕集効率(%)を求める。
・捕集効率(%)=〔1-(d/D)〕×100
(ただし、dは下流ダストの3回測定トータル個数を表し、Dは上流のダストの3回測定トータル個数を表す。)
(6)併せて、測定サンプルMの上流と下流の静圧差を圧力計8で読み取り、測定サンプルMの圧力損失(Pa)を求める。
(7)5つの測定サンプルMについての捕集効率(%)の平均値を算出し、小数点第3位を四捨五入して得られる値をそのエレクトレット繊維シートの捕集効率(%)とする。
(8)5つの測定サンプルMについての圧力損失(Pa)の平均値を算出し、小数点第2位を四捨五入して得られる値をそのエレクトレット繊維シートの圧力損失(Pa)とする。
【0038】
続いて、本発明のエレクトレット繊維シートの製造方法を説明する。
本発明のエレクトレット繊維シートの製造方法は、ポリオレフィン系樹脂および0.1~5.0質量%のヒンダードアミン系化合物からなるポリオレフィン系樹脂組成物を調製し、前記ポリオレフィン系樹脂組成物から繊維シート(不織布)を形成し、その繊維シートを、塩素原子および/または硫黄原子を含む水溶液と接触させることを特徴とする。
【0039】
<樹脂組成物>
本発明のエレクトレット繊維シートの非導電性繊維を構成するポリオレフィン系樹脂組成物の調製は、ポリオレフィン樹脂およびヒンダードアミン系化合物を一度に混合する方法や、後述するポリオレフィン系樹脂とヒンダードアミンのマスターバッチを用いてチップブレンドする方法がある。
【0040】
一度に混合してポリオレフィン系樹脂組成物を調製する方法としては、ポリオレフィン系樹脂に対し、ヒンダードアミン系化合物を0.1質量%以上5.0質量%以下となるように含有し、二軸押出機などを使用して押し出す方法がある。
【0041】
また、ポリオレフィン系樹脂とヒンダードアミンのマスターバッチを用いてチップブレンドを作製した後に押し出す方法としては、例えばポリオレフィン系樹脂にヒンダードアミン系化合物を練り込んだマスターバッチを準備し、これにポリオレフィン系樹脂をチップブレンドし、押出機内で練り込んでポリオレフィン系樹脂組成物を調製する方法がある。
【0042】
<繊維シート>
続いて、得られたポリオレフィン系樹脂組成物から繊維シート(不織布)を形成する。メルトブロー法としては、所定の孔径を有するノズルから溶融したポリオレフィン系樹脂組成物を吐出させながら、糸条を形成する。その吐出部に対して一定の角度から熱風を噴射することで糸条を細径化し、その糸条を捕集部に体積させることで繊維シートを形成する。
【0043】
<エレクトレット処理>
さらに、得られた繊維シートをエレクトレット加工する。本発明に係る繊維シートをエレクトレット化する方法としては、導電率102μS/m以下の純水に塩素原子および/または硫黄原子を含む無機塩を溶解させた水溶液や、アルカリ電解水を用い、繊維シートに対して、水溶液の噴流もしくは水滴流を繊維シートの内部まで水溶液が浸透するのに十分な圧力で噴霧させてエレクトレット化し、正極性と負極性の電荷を均一に混在させる方法、あるいは、繊維シートをスリット状のノズル上を通過させ、ノズルで水溶液を吸引することにより不織布に水溶液を浸透させて、正極性と負極性の電荷を均一に混在させる方法(ハイドロチャージ法)などを用いる。
【0044】
<エアフィルター濾材>
本発明のエレクトレット繊維シートは、エアフィルター濾材に好適に用いることができる。このエアフィルター濾材は、捕集効率が高いのと同時に、圧力損失が低く、優れた捕集性能を有している。
【実施例0045】
次に、実施例に基づき本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、各物性の測定において、特段の記載がないものは、前記の方法に基づいて測定を行ったものである。
[測定方法]
(1)エレクトレット繊維シートの平均単繊維径:
走査型電子顕微鏡として、株式会社キーエンス社製「VE-9800」を用い、上記の方法によって測定した。
(2)エレクトレット繊維シートの目付:
上記の方法によって測定を行った。
(3)エレクトレット繊維シートの捕集効率、圧力損失、QF値:
上記の方法によって測定を行った。また、捕集効率測定装置のパーティクルカウンターには、リオン株式会社製「KC-01E」を用いた。
(4)エレクトレット繊維シートの繊維表面の塩素原子、硫黄原子の存在量
上記の方法によって測定を行った。
(5)エレクトレット繊維シートの繊維表面のナトリウム原子、カリウム原子の存在量
上記の方法によって測定を行った。
(6)水および処理水溶液の導電率
東亜ディーケーケー株式会社製CM-31Pを使用して導電率の測定を行った。
【0046】
[エレクトレット繊維シート作製用樹脂組成物]
下記比較実施例において、エレクトレット繊維シートの原料として使用した樹脂および化合物は以下の通りである。
・メルトブロー不織布用樹脂(PP):ポリプロピレン(MFR:850g/10分)
・ヒンダードアミン系化合物(HA1):キマソーブ 944
・ヒンダードアミン系化合物(HA2):キマソーブ 2020
【0047】
[実施例1]
メルトブロー不織布製造装置を用いて、原料として、MFRが850g/10分のホモポリマーからなるポリプロピレン樹脂(PP)にヒンダードアミン系化合物(HA1:キマソーブ944)を1.0質量%添加したポリオレフィン系樹脂組成物を押出機で溶融し、ダイ設定温度260℃、孔径が0.3mmの紡糸ノズルから単孔吐出量が0.36g/分で吐出した。紡糸ノズルの両側から設定温度290℃で加熱圧縮された空気を1200Nm3/hrで吹き付け、捕集ドラムで捕集することで目付が40g/m2のメルトブロー不織布を得た。続いて、純水(導電率:2μS/m、pH7.1)にNaClを溶解させ、10ppmに調整したNaCl水溶液を供給した水槽の表面に沿って、得られたメルトブロー不織布を走行させながら、その表面にスリット状の吸引ノズルを当接させてNaCl水溶液を吸引することにより浸透処理し、次いで水切り後に80℃で20分熱風乾燥することにより、エレクトレット繊維シートを得た。エレクトレット処理に使用した水溶液の性状および得られたエレクトレット繊維シートの特性値について、表1に示す。
【0048】
[実施例2]
エレクトレット処理時のNaCl水溶液濃度を28ppmとした以外は、実施例1と同様の方法によりエレクトレット繊維シートを得た。エレクトレット処理に使用した水溶液の性状および得られたエレクトレット繊維シートの特性値について、表1に示す。
【0049】
[実施例3]
原料のポリプロピレン樹脂中のヒンダードアミン系化合物を、ヒンダードアミン系化合物(HA2:キマソーブ2020)にした以外は、実施例2と同様の方法によりエレクトレット繊維シートを得た。エレクトレット処理に使用した水溶液の性状および得られたエレクトレット繊維シートの特性値について、表1に示す。
【0050】
[実施例4]
エレクトレット処理時のNaCl水溶液濃度を58ppmとした以外は、実施例1と同様の方法によりエレクトレット繊維シートを得た。エレクトレット処理に使用した水溶液の性状および得られたエレクトレット繊維シートの特性値について、表1に示す。
【0051】
[実施例5]
エレクトレット処理時のNaCl水溶液濃度を80ppmとした以外は、実施例1と同様の方法によりエレクトレット繊維シートを得た。エレクトレット処理に使用した水溶液の性状および得られたエレクトレット繊維シートの特性値について、表1に示す。
【0052】
[実施例6]
エレクトレット処理時のNaCl水溶液をKCl水溶液にし、濃度を4ppmとした以外は、実施例1と同様の方法によりエレクトレット繊維シートを得た。エレクトレット処理に使用した水溶液の性状および得られたエレクトレット繊維シートの特性値について、表1に示す。
【0053】
[実施例7]
エレクトレット処理時のKCl水溶液濃度を13ppmとした以外は、実施例6と同様の方法によりエレクトレット繊維シートを得た。エレクトレット処理に使用した水溶液の性状および得られたエレクトレット繊維シートの特性値について、表1に示す。
【0054】
[実施例8]
エレクトレット処理時のKCl水溶液濃度を36ppmとした以外は、実施例6と同様の方法によりエレクトレット繊維シートを得た。エレクトレット処理に使用した水溶液の性状および得られたエレクトレット繊維シートの特性値について、表1に示す。
【0055】
[実施例9]
エレクトレット処理時のNaCl水溶液をNa2SO4水溶液にし、濃度を10ppmとした以外は、実施例1と同様の方法によりエレクトレット繊維シートを得た。エレクトレット処理に使用した水溶液の性状および得られたエレクトレット繊維シートの特性値について、表2に示す。
【0056】
[実施例10]
エレクトレット処理時のNa2SO4水溶液濃度を26ppmとした以外は、実施例9と同様の方法によりエレクトレット繊維シートを得た。エレクトレット処理に使用した水溶液の性状および得られたエレクトレット繊維シートの特性値について、表2に示す。
【0057】
[実施例11]
エレクトレット処理時のNa2SO4水溶液濃度を68ppmとした以外は、実施例9と同様の方法によりエレクトレット繊維シートを得た。エレクトレット処理に使用した水溶液の性状および得られたエレクトレット繊維シートの特性値について、表2に示す。
【0058】
[実施例12]
エレクトレット処理時のNaCl水溶液をアルカリ電解水(パナソニック製アルカリイオン整水器TK-AS47-Hを使用し作製)とした以外は、実施例1と同様の方法によりエレクトレット繊維シートを得た。エレクトレット処理に使用したアルカリ電解水の性状および得られたエレクトレット繊維シートの特性値について、表2に示す。
【0059】
[実施例13]
エレクトレット処理時のNaCl水溶液をK2SO4水溶液にし、濃度を16ppmとした以外は、実施例1と同様の方法によりエレクトレット繊維シートを得た。エレクトレット処理に使用した水溶液の性状および得られたエレクトレット繊維シートの特性値について、表2に示す。
【0060】
[実施例14]
エレクトレット処理時のK2SO4水溶液濃度を31ppmとした以外は、実施例13と同様の方法によりエレクトレット繊維シートを得た。エレクトレット処理に使用した水溶液の性状および得られたエレクトレット繊維シートの特性値について、表2に示す。
【0061】
[実施例15]
エレクトレット処理時のK2SO4水溶液濃度を94ppmとした以外は、実施例13と同様の方法によりエレクトレット繊維シートを得た。エレクトレット処理に使用した水溶液の性状および得られたエレクトレット繊維シートの特性値について、表2に示す。
【0062】
[比較例1]
エレクトレット処理時のNaCl水溶液を純水(導電率:2μS/m、pH7.1)とした以外は、実施例1と同様の方法によりエレクトレット繊維シートを得た。エレクトレット処理に使用した水溶液の性状および得られたエレクトレット繊維シートの特性値について、表3に示す。
【0063】
[比較例2]
原料のポリプロピレン樹脂中のヒンダードアミン系化合物を含有しないこと以外は、実施例1と同様の方法によりエレクトレット繊維シートを得た。エレクトレット処理に使用した水溶液の性状および得られたエレクトレット繊維シートの特性値について、表3に示す。
【0064】
[比較例3]
エレクトレット処理時のNaCl水溶液をNa2CO3水溶液にし、濃度を40ppmとした以外は、実施例1と同様の方法によりエレクトレット繊維シートを得た。エレクトレット処理に使用した水溶液の性状および得られたエレクトレット繊維シートの特性値について、表3に示す。
【0065】
[比較例4]
エレクトレット処理時のNaCl水溶液を酸性電解水(パナソニック製アルカリイオン整水器TK-AS47-Hを使用し作製)とした以外は、実施例1と同様の方法によりエレクトレット繊維シートを得た。エレクトレット処理に使用した酸性電解水の性状および得られたエレクトレット繊維シートの特性値について、表3に示す。
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
表1~2から明らかなように、本発明の実施例1~15に記載のエレクトレット繊維シートは、低い圧力損失でありながらも高い捕集効率を達成しており、優れた捕集性能を有していることが分かる。
【0070】
これに対し、表3から明らかなように、エレクトレット繊維表面に塩素原子および硫黄原子のいずれも含まない、比較例1および比較例3では、実施例1に記載のエレクトレット繊維シートに対して、捕集効率が低い結果であった。
【0071】
また、繊維シート中にヒンダードアミン系化合物を含有しない比較例2では、実施例1に記載のエレクトレット繊維シートに対して、捕集効率が低い結果であった。
【0072】
そして、エレクトレット処理時に酸性電解水を用いた比較例4では、繊維表面に塩素原子または硫黄原子を含まず、実施例1に記載の積層エレクトレット不織布に対して、捕集効率が低い結果であった。
【0073】
以上のように本発明によれば、エレクトレット化したヒンダードアミン系化合物を含有した繊維シートの表面に塩素原子および/または硫黄原子を存在させることにより、これまでにない高い捕集性能を有するエレクトレット繊維シートを得ることができる。そして、このエレクトレット繊維シートは、エアフィルター濾材ならびに、エアフィルター全般に好適に用いることができる。