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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137918
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】プライマー組成物およびその利用
(51)【国際特許分類】
   C09D 133/00 20060101AFI20240927BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20240927BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20240927BHJP
   C09J 7/50 20180101ALI20240927BHJP
   B32B 27/26 20060101ALI20240927BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20240927BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20240927BHJP
   C09J 7/30 20180101ALN20240927BHJP
【FI】
C09D133/00
C09D5/00 D
C09D7/63
C09J7/50
B32B27/26
B32B27/30 A
B32B27/18 Z
C09J7/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024046838
(22)【出願日】2024-03-22
(31)【優先権主張番号】P 2023048841
(32)【優先日】2023-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】八幡 雄大
(72)【発明者】
【氏名】松尾 陽一
【テーマコード(参考)】
4F100
4J004
4J038
【Fターム(参考)】
4F100AB03B
4F100AB10B
4F100AB31B
4F100AD00B
4F100AG00B
4F100AH08A
4F100AH08H
4F100AK12A
4F100AK25A
4F100AK26A
4F100AK51A
4F100AK51C
4F100AT00B
4F100BA03
4F100BA07
4F100CA02A
4F100CA30A
4F100CB00C
4F100EH46A
4F100EH46C
4F100EJ67A
4F100JA05A
4F100JA07A
4F100JB01
4F100JB07
4F100JJ03
4F100JJ04
4F100JL08A
4F100JL11A
4J004AA14
4J004CD05
4J004FA08
4J038CG001
4J038GA15
4J038JA34
4J038JC02
4J038JC34
4J038JC35
4J038JC38
4J038KA03
4J038KA04
4J038KA08
4J038KA09
4J038KA10
4J038NA12
4J038NA26
4J038PC02
4J038PC03
(57)【要約】
【課題】無機系基材と接着剤との密着性および貯蔵安定性に優れるプライマー組成物を提供する。
【解決手段】本開示に係るプライマー組成物は、(a1)アクリル系共重合体、(a2)ポリイソシアネート化合物、(a3)シランカップリング剤、(a4)有機錫化合物、(a5)メルカプト化合物、および/または、β-ジカルボニル化合物、ならびに、(a6)脱水剤を含む、プライマー組成物であって、前記(a1)アクリル系共重合体は、主鎖がアクリル系共重合体鎖を含み、主鎖末端および/または側鎖に反応性シリル基を有し、水酸基価が15mgKOH/g以下であり、前記プライマー組成物の全量に対して、前記(a1)アクリル系共重合体を10重量%超30重量%以下含み、前記(a2)ポリイソシアネート化合物を5重量%以上20重量%以下含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a1)アクリル系共重合体、
(a2)ポリイソシアネート化合物、
(a3)シランカップリング剤、
(a4)有機錫化合物、
(a5)メルカプト化合物、および/または、β-ジカルボニル化合物、ならびに、
(a6)脱水剤
を含む、プライマー組成物であって、
前記(a1)アクリル系共重合体は、主鎖がアクリル系共重合体鎖を含み、主鎖末端および/または側鎖に反応性シリル基を有し、水酸基価が15mgKOH/g以下であり、
前記プライマー組成物の全量に対して、
前記(a1)アクリル系共重合体を10重量%超30重量%以下含み、
前記(a2)ポリイソシアネート化合物を5重量%以上20重量%以下含む、
プライマー組成物。
【請求項2】
前記(a3)シランカップリング剤が、ビス(トリアルコキシシリルプロピル)アミンまたはケチミン型シラン類を含む、請求項1に記載のプライマー組成物。
【請求項3】
前記(a3)シランカップリング剤が、さらに、エポキシシラン化合物を含む、請求項2に記載のプライマー組成物。
【請求項4】
前記(a1)アクリル系共重合体と前記(a2)ポリイソシアネート化合物との比率(a1)/(a2)が0.7~3.0の範囲を満たす、請求項1または2に記載のプライマー組成物。
【請求項5】
前記(a4)有機錫化合物が、β-ジカルボニル構造を有する、請求項1または2に記載のプライマー組成物。
【請求項6】
前記(a2)ポリイソシアネート化合物が、ヘキサメチレンジイソシアネート、および/または、その変性体を含む、請求項1または2に記載のプライマー組成物。
【請求項7】
請求項1または2に記載のプライマー組成物を被着体上に塗布してプライマー層を形成させた後、前記プライマー層上に接着剤を塗布して接着剤層を形成して得られる、前記プライマー層と前記接着剤層とが貼り合わされた、積層部材。
【請求項8】
(a1)反応性シリル基を有し、水酸基価が15mgKOH/g以下のアクリル系共重合体、
(a2)ポリイソシアネート化合物、
(a3)シランカップリング剤、
(a4)有機錫化合物、
(a5)メルカプト化合物、および/または、β-ジカルボニル化合物、ならびに、
(a6)脱水剤
を含むプライマー組成物の製造方法であって、
前記製造方法は、
前記(a4)有機錫化合物と、前記(a5)メルカプト化合物、および/または、β-ジカルボニル化合物とを混合し、触媒活性を調節する工程を含み、
前記プライマー組成物全量に対して、
前記(a1)アクリル系共重合体が10重量%超30重量%以下、
前記(a2)ポリイソシアネート化合物が5重量%以上20重量%以下含まれるよう調整することを特徴とする、
プライマー組成物の製造方法。
【請求項9】
前記(a4)有機錫化合物と、前記(a5)メルカプト化合物、および/または、β-ジカルボニル化合物とを混合する工程に次いで、(a2)ポリイソシアネート化合物を混合する工程を含む、請求項8に記載のプライマー組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プライマー組成物、その製造方法および積層部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、塗料およびシーリング材分野では、金属、樹脂、ガラス等の各種基材と接着剤との密着性を強化すること等を目的として、プライマー組成物が使用されている(例えば、特許文献1、2)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2016/039028号
【特許文献2】特開2012-116961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のプライマー組成物は、金属およびガラスといった無機系基材と接着剤との密着性の点、ならびに貯蔵安定性の点で改善の余地があった。
【0005】
そこで、本発明の目的は、無機系基材と接着剤との密着性および貯蔵安定性に優れるプライマー組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、プライマー組成物の構成として、(a1)アクリル系共重合体、(a2)ポリイソシアネート化合物、(a3)シランカップリング剤、(a4)有機錫化合物、(a5)メルカプト化合物、および/または、β-ジカルボニル化合物、ならびに、(a6)脱水剤を含み、かつ(a1)アクリル系共重合体として、特定のアクリル系共重合体を用い、(a1)アクリル系共重合体の量を特定量とすることにより、無機系基材と接着剤との密着性および貯蔵安定性に優れるプライマー組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
したがって、本発明の一態様は、(a1)アクリル系共重合体、(a2)ポリイソシアネート化合物、(a3)シランカップリング剤、(a4)有機錫化合物、(a5)メルカプト化合物、および/または、β-ジカルボニル化合物、ならびに、(a6)脱水剤を含む、プライマー組成物であって、前記(a1)アクリル系共重合体は、主鎖がアクリル系共重合体鎖を含み、主鎖末端および/または側鎖に反応性シリル基を有し、水酸基価が15mgKOH/g以下であり、前記プライマー組成物の全量に対して、前記(a1)アクリル系共重合体を10重量%超30重量%以下含み、前記(a2)ポリイソシアネート化合物を5重量%以上20重量%以下含む、プライマー組成物(以下、「本プライマー組成物」と称する。)である。
【0008】
また、本発明の一態様は、(a1)反応性シリル基を有し、水酸基価が15mgKOH/g以下のアクリル系共重合体、(a2)ポリイソシアネート化合物、(a3)シランカップリング剤、(a4)有機錫化合物、(a5)メルカプト化合物、および/または、β-ジカルボニル化合物、ならびに、(a6)脱水剤を含む、プライマー組成物の製造方法であって、前記製造方法は、前記(a4)有機錫化合物と前記(a5)メルカプト化合物、および/または、β-ジカルボニル化合物とを混合し、触媒活性を調節する工程を含み、前記プライマー組成物全量に対して、前記(a1)アクリル系共重合体が10重量%超30重量%以下、前記(a2)ポリイソシアネート化合物が5重量%以上20重量%以下含まれるよう調整することを特徴とする、プライマー組成物の製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、無機系基材と接着剤との密着性および貯蔵安定性に優れるプライマー組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施の一形態について、以下に詳細に説明する。なお、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上、B以下」を意味する。また、本明細書中に記載された文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。
【0011】
〔1.本発明の概要〕
上述のように、特許文献1に記載のプライマー組成物および特許文献2に記載の1液組成物は、無機系基材と接着剤との密着性および貯蔵安定性の点で改善の余地があった。
【0012】
そこで、本発明者らは、無機系基材と接着剤との密着性および貯蔵安定性を同時に達成し得るプライマー組成物を提供すべく鋭意検討を行った結果、以下の知見を得ることに成功した。
・プライマー組成物の構成として、(a1)アクリル系共重合体、(a2)ポリイソシアネート化合物、(a3)シランカップリング剤、(a4)有機錫化合物、(a5)メルカプト化合物、および/または、β-ジカルボニル化合物、ならびに、(a6)脱水剤を含み、かつ(a1)アクリル系共重合体として、特定のアクリル系共重合体を用い、(a1)アクリル系共重合体の量を特定量とすることにより、無機系基材と接着剤との密着性および貯蔵安定性に優れるプライマー組成物が得られる。
【0013】
無機系基材と接着剤との密着性および貯蔵安定性を同時に達成し得るプライマー組成物は、これまでに存在しなかったものであり、本プライマー組成物は、無機系基材と接着剤との密着性および貯蔵安定性を有するプライマー組成物が求められる種々の分野において、極めて有用である。
【0014】
〔2.プライマー組成物〕
本プライマー組成物は、上記構成を有するが故に、無機系基材と接着剤との密着性および貯蔵安定性に優れるとの効果を発揮できる。
【0015】
((a1)アクリル系共重合体)
本プライマー組成物は、(a1)アクリル系共重合体を含む。本プライマー組成物は、無機系基材との初期接着性を向上させる観点から、本プライマー組成物の全量100重量%に対して、(a1)アクリル系共重合体を10重量%超含み、12.5重量%以上含むことが好ましく、15重量%以上含むことがより好ましい。また、本プライマー組成物は、貯蔵安定性を向上させる観点から、本プライマー組成物の全量100重量%に対して、(a1)アクリル系共重合体を30重量%以下含み、27重量%以下含むことが好ましく、21重量%以下含むことがより好ましい。
【0016】
「主鎖がアクリル系共重合体鎖を含む」とは、主鎖が実質的にアクリル系単量体を共重合した主鎖からなる共重合体であることを意図する。(a1)アクリル系共重合体は、反応性シリル基を主鎖末端および/または側鎖の炭素原子に結合した形式で含む。そのため、得られる本プライマー組成物は、無機系基材と接着剤との密着性および貯蔵安定性に優れる。
【0017】
(a1)アクリル系共重合体の水酸基価は、貯蔵安定性の観点から、15mgKOH/g以下、12mgKOH/g以下、又は10mgKOH/g以下であり、7.5mgKOH/g以下であることが好ましく、5.0mgKOH/g以下であることがより好ましい。また、(a1)アクリル系共重合体の水酸基価は、0mgKOH/mg以上であり得、耐水性の観点から、0.01mgKOH/g以上であることが好ましく、0.1mgKOH/g以上であることがより好ましく、1.0mgKOH/g以上であることがさらに好ましい。
【0018】
(a1)アクリル系共重合体中の水酸基は、(a2)ポリイソシアネート化合物と溶液中で結合し、高分子量化および架橋することで、増粘およびゲル化を引き起こす。このことから、本発明の一実施形態に係るプライマー組成物は、(a1)アクリル系共重合体中の水酸基価を、例えば、0~15mgKOH/gの範囲とすることで、高い貯蔵安定性を達成している。
【0019】
反応性シリル基は、下記一般式(I)で表されることが好ましい。
【0020】


-Si-(OR3-a (I)
式中、Rは水素原子または炭素数1~10のアルキル基、Rは水素原子または炭素数1~10のアルキル基、炭素数6~25のアリール基および炭素数7~12のアラルキル基から選ばれた1価の炭化水素基、aは0~2の整数を示すことが好ましい。
【0021】
(a1)アクリル系共重合体において、炭素原子に結合した一般式(I)で表される反応性シリル基の数は、アクリル系共重合体(A)1分子あたり1個以上、好ましくは1~15個、更に好ましくは2~10個であることが、本プライマー組成物から形成されるプライマーの接着強度、耐アルカリ性、耐久性などが優れるという点から好ましい。反応性シリル基の数が1個未満の場合は接着強度が低くなる傾向にある。
【0022】
一般式(I)において、Rは水素原子または炭素数1~10のアルキル基、好ましくはたとえばメチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基などの炭素数1~4のアルキル基である。前記アルキル基の炭素数が10を超える場合には、反応性シリル基の反応性が低下する傾向がある。また、一般式(I)において、Rが例えばフェニル基、ベンジル基などの、アルキル基以外の基である場合にも、反応性シリル基の反応性が低下する傾向がある。
【0023】
また、一般式(I)において、Rは水素原子または炭素数1~10のアルキル基、例えばフェニル基などの好ましくは炭素数6~25のアリール基およびたとえばベンジル基などの好ましくは炭素数7~12のアラルキル基から選ばれた1価の炭化水素基である。これらの中では、本プライマー組成物が硬化性に優れるという点から炭素数1~4のアルキル基が好ましく、特には炭素数1または2のアルキル基が好ましい。
【0024】
一般式(I)において、(OR3-aは3-aが1以上3以下になるように、すなわちaが0~2になるように選ばれるが、(a1)アクリル系共重合体の硬化性が良好になるという点からは、aが0または1の整数であることが好ましい。
【0025】
一般式(I)中に存在する(OR3-aまたはR の数が2個以上の場合、2個以上含まれるRまたはRはそれぞれ同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0026】
また、(a1)アクリル系共重合体としては、その分子内に炭素原子に結合した一般式(I)で表される反応性シリル基を含有する単量体単位を用いて合成したものが好ましい。なお、(a1)アクリル系共重合体中の前記単量体単位(a)の含有割合は、硬化性を向上させる点から、重合成分全量の1重量%以上であることが好ましく、2重量%以上であることがより好ましい。また、(a1)アクリル系共重合体中の前記単量体単位(a)の含有割合は、貯蔵安定性を向上させる点から、重合成分全量の30重量%以下であることが好ましく、20重量%以下であることがより好ましく、15重量%以下であることがさらに好ましい。
【0027】
(a1)アクリル系共重合体の数平均分子量は、密着性、耐久性などの物性が優れるという点から、2000以上であることが好ましく、6000以上であることがより好ましく、また、50000以下であることが好ましく、25000以下であることがより好ましい。
【0028】
(a1)アクリル系共重合体のガラス転移温度は、指触乾燥性、ほこり付着性などの物性が優れるという点から、35℃以上であることが好ましい。
【0029】
(a1)アクリル系共重合体は、単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0030】
次いで、(a1)アクリル系共重合体の製法の一例について説明する。
【0031】
(a1)アクリル系共重合体は、例えば、重合性2重結合および炭素原子に結合した反応性シリル基を含有する単量体を重合することによって製造することができる。さらに、(a1)アクリル系共重合体は、反応性シリル基を含有する単量体と、任意に、水酸基を含有する単量体、および/または、必要により用いられるその他の単量体とを含有するものを重合することによっても製造することができる。
【0032】
反応性シリル基を含有する単量体の具体例としては、例えば、
【0033】
【化1】
【0034】
などの下記一般式(II):

| |
CH=C-Si-(OR3-a (II)
(式中、R、R、aは前記と同じ、Rは水素原子またはメチル基を示す)で表される化合物;
【0035】
【化2】
【0036】
などの下記一般式(III):

| |
CH=C-COO(CH-Si-(OR3-a (III)
(式中、R、R、Rおよびaは前記と同じ、nは1~12の整数を示す。)で表される化合物等が例示できる。
【0037】
水酸基を含有する単量体の具体例としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、N-メチロ-ル(メタ)アクリルアミド、4-ヒドロキシスチレン、東亞合成(株)製のアロニックスM-5700、日油(株)製のブレンマーPPシリーズ(ポリプロピレングリコールメタクリレート)、ブレンマーPEシリーズ(ポリエチレングリコールモノメタクリレート)、ブレンマーPEPシリ-ズ(ポリエチレングリコ-ルポリプロピレングリコールメタクリレート)、ブレンマーAP-400(ポリプロピレングリコールモノアクリレート)、ブレンマーAE-350(ポリエチレングリコールモノアクリレート)およびブレンマーGLM(グリセロールモノメタクリレート)などの(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル類、水酸基含有化合物とε-カプロラクトンとの反応により得られるε-カプロラクトン変性ヒドロキシアルキルビニル系共重合体化合物PlaccelFA-1、PlaccelFA-4、PlaccelFM-1、PlaccelFM-4(以上株式会社ダイセル製)、TONEM-201(DOW社製)、ポリカーボネート含有ビニル系化合物(具体例としては、HEMAC-1(株式会社ダイセル製))等が例示できる。
【0038】
その他の単量体の具体例としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、3,3,5,-トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2ーエチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロシクロヘキシル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、グリシジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、α-エチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、マクロモノマーであるAS-6、AA-6、AB-6などの化合物(以上、東亞合成(株)製)、(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル類とリン酸またはリン酸エステル類との縮合生成物などのリン酸エステル基含有(メタ)アクリル系化合物、ウレタン結合および/またはシロキサン結合を含む(メタ)アクリレートなどのシリル基および水酸基を含まない単量体等が例示できる。
【0039】
((a2)ポリイソシアネート化合物)
本プライマー組成物は、(a2)ポリイソシアネート化合物を含む。(a2)ポリイソシアネート化合物は、ウレタン系接着剤と反応する。そのため、本プライマー組成物が、(a2)ポリイソシアネート化合物を含むことにより、変性シリコーン系接着剤だけでなく、ウレタン系接着剤と、本プライマー組成物との間の密着性を向上させることができる。
【0040】
本明細書において、ポリイソシアネート化合物とは、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物を意図する。すなわち、(a2)ポリイソシアネート化合物は、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する。
【0041】
(a2)ポリイソシアネート化合物の有するイソシアネート基の数は、1分子中に2個以上であれば特に限定されないが、1分子中に2.1個以上であることが好ましく、2.3個以上であることがより好ましく、2.5個以上であることがさらに好ましい。(a2)ポリイソシアネート化合物の有するイソシアネート基の数の上限は、特に限定されないが、例えば、20個以下であること好ましく、10個以下であることがより好ましい。
【0042】
(a2)ポリイソシアネート化合物の数平均分子量(Mn)は、特に限定されないが、相溶性および反応性が良好となることから、150~1000であることが好ましく、200~800であることがより好ましく、300~700であることがさらに好ましい。なお、(a2)ポリイソシアネート化合物の数平均分子量(Mn)は、GPCを用いて、ポリスチレン換算で算出した値である。
【0043】
(a2)ポリイソシアネート化合物としては、従来公知のポリイソシアネート化合物を使用することができる。そのようなポリイソシアネート化合物としては、例えば、脂肪族ポリイソシアネート化合物、脂環族ポリイソシアネート化合物、芳香脂肪族ポリイソシアネート化合物、芳香族ポリイソシアネート化合物等が挙げられる。
【0044】
脂肪族ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、1,2-ブチレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、2,4,4-または2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6-ジイソシアネートメチルカプロエート等のジイソシアネート化合物;リジンエステルトリイソシアネート、1,4,8-トリイソシアネートオクタン、1,6,11-トリイソシアネートウンデカン、1,8-ジイソシアネート-4-イソシアネートメチルオクタン、1,3,6-トリイソシアネートヘキサン、2,5,7-トリメチル-1,8-ジイソシアネート-5-イソシアネートメチルオクタン等の3つ以上のイソシアネート基を有する化合物;およびそれらの変性体等が挙げられる。
【0045】
(a2)ポリイソシアネート化合物は、ウレタン系接着剤との密着性およびカーボンブラック等の顔料分散性に優れる観点から、低分子かつNCO%(イソシアネート基含有率)が高いものが好ましい。具体的には、(a2)ポリイソシアネート化合物のNCO%は、10%以上であることが好ましく、15%以上であることがより好ましく、20%以上であることがさらに好ましい。また、(a2)ポリイソシアネート化合物は、気中湿分と反応して炭酸ガスを発生するため、炭酸ガスの発生が過剰に起こるとプライマー組成物と接着剤との界面で気泡となって残り、水を呼び込み、耐水性の低下を引き起こすことがある。そのため、(a2)ポリイソシアネート化合物は、密着性および耐水性の観点から、50%以下であることが好ましく、40%以下であることがより好ましく、30%以下であることがさらに好ましい。中でも、(a2)ポリイソシアネート化合物は、ヘキサメチレンジイソシアネート、および/または、その変性体を含むことが好ましい。
【0046】
脂環族ポリイソシアネート化合物としては、例えば、1,3-シクロペンテンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、3-イソシアネートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、4,4′-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物;1,3,5-トリイソシアネートシクロヘキサン、1,3,5-トリメチルイソシアネートシクロヘキサン、3-イソシアネートメチル-3,3,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、2-(3-イソシアネートプロピル)-2,5-ジ(イソシアネートメチル)-ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2-(3-イソシアネートプロピル)-2,6-ジ(イソシアネートメチル)-ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、3-(3-イソシアネートプロピル)-2,5-ジ(イソシアネートメチル)-ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、5-(2-イソシアネートエチル)-2-イソシアネートメチル-3-(3-イソシアネートプロピル)-ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、6-(2-イソシアネートエチル)-2-イソシアネートメチル-3-(3-イソシアネートプロピル)-ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、5-(2-イソシアネートエチル)-2-イソシアネートメチル-2-(3-イソシアネートプロピル)-ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、6-(2-イソシアネートエチル)-2-イソシアネートメチル-2-(3-イソシアネートプロピル)-ビシクロ[2,2,1]ヘプタン等の3つ以上のイソシアネート基を有する化合物;等が挙げられる。
【0047】
芳香脂肪族ポリイソシアネート化合物としては、例えば、1,3-もしくは1,4-キシリレンジイソシアネートまたはそれらの混合物、ω,ω′-ジイソシアネート-1,4-ジエチルベンゼン、1,3-もしくは1,4-ビス(1-イソシアネート-1-メチルエチル)ベンゼンまたはそれらの混合物等のジイソシアネート化合物;1,3,5-トリイソシアネートメチルベンゼン等の3つ以上のイソシアネート基を有する化合物;等が挙げられる。
【0048】
芳香族ポリイソシアネート化合物としては、例えば、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4′-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-または2,6-トリレンジイソシアネート、4,4′-トルイジンジイソシアネート、4,4′-ジフェニルエーテルジイソシアネート等のジイソシアネート化合物;トリフェニルメタン-4,4′,4″-トリイソシアネート、1,3,5-トリイソシアネートベンゼン、2,4,6-トリイソシアネートトルエン、4,4′-ジフェニルメタン-2,2′,5,5′-テトライソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(ポリメリックMDI)、トリイソシアネートトリフェニルチオフォスフェート等の3つ以上のイソシアネート基を有する化合物;等が挙げられる。
【0049】
本発明の一実施形態において、(a2)ポリイソシアネート化合物として、前記各種のポリイソシアネート化合物の変性体を使用してもよい。そのような、変性体としては、アロファネート変性体、ビウレット変性体、イソシアヌレート変性体等が挙げられる。
【0050】
(a2)ポリイソシアネート化合物は、環状構造または直鎖構造もしくは分岐鎖構造を有するポリイソシアネートであることが好ましく、(a2)ポリイソシアネート化合物は、芳香族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、および芳香脂肪族ポリイソシアネートよりなる群から選択される1種以上であることがさらに好ましい。脂環族ポリイソシアネート化合物、芳香脂肪族ポリイソシアネート化合物、芳香族ポリイソシアネート化合物等の、分子内に環状構造を有するポリイソシアネートは、得られる硬化物の物性(接着性、靭性、耐衝撃性)改良効果が顕著である為、より好ましい。これらの中でも、芳香族ポリイソシアネートがよりさらに好ましく、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-または2,6-トリレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(ポリメリックMDI)が、得られる本プライマー組成物が接着性に優れることから特に好ましい。
【0051】
脂肪族ポリイソシアネート化合物、脂環族ポリイソシアネート化合物を使用した場合、得られる硬化物の耐候性に優れることから好ましい。特に、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、および、これらのイソシアヌレート変性体が好ましい。
【0052】
これらポリイソシアネート化合物の使用に際し、黄変性が問題になる場合には、脂肪族、脂環族、または芳香脂肪族のポリイソシアネートを使用するのが好ましく、脂肪族ポリイソシアネートまたは脂環族ポリイソシアネートがより好ましい。
【0053】
本発明の一実施形態において、(a2)ポリイソシアネート化合物としては、イソシアネート基をブロック剤でマスクし、常温で不活性化したブロックイソシアネートとすることも可能である。ここで、ブロック剤としては、例えば、アルコール類、フェノール類、オキシム類、トリアゾール類、カプロラクタム類、アセチルアセトンおよびアセト酢酸エチル等のβ-ジカルボニル化合物等が挙げられる。
【0054】
本プライマー組成物は、(a2)ポリイソシアネート化合物を含む。本プライマー組成物は、ウレタン系接着剤との接着性を向上させる観点から、本プライマー組成物の全量に対して、5重量%以上20重量%以下含むことが好ましい。
【0055】
また、(a1)アクリル系共重合体と(a2)ポリイソシアネート化合物の比率:(a1)/(a2)は、0.7、0.8、0.9又は1.0以上であることが好ましく、3.0以下であることが好ましい。(a1)/(a2)が0.7以上である場合、(a1)アクリル系共重合体に由来する無機基材との密着性を十分に得ることができる。これをプライマーとして用いた場合、基材/プライマー組成物間での剥離を防ぐことができる。一方で、(a1)/(a2)が3.0以下である場合、ウレタン接着剤との密着性を十分に得ることができる。これをプライマーとして用いた場合、ウレタン接着剤/プライマー組成物間での剥離を防ぐことができる。
【0056】
別の実施形態においては、本プライマー組成物は、(a1)アクリル系共重合体100重量部に対して、(a2)ポリイソシアネート化合物を5重量部以上含むことが好ましく、20重量部以上含むことがより好ましく、40重量部以上含むことがさらに好ましい。また、本プライマー組成物は、(a1)アクリル系共重合体100重量部に対して、(a2)ポリイソシアネート化合物を200重量部以下含むことが好ましく、150重量部以下含むことがより好ましく、100重量部以下含むことがさらに好ましい。(a2)ポリイソシアネート化合物の含有量が当該範囲内であることにより、ウレタン系接着剤および無機系基材のいずれに対しても密着性を向上させることができる。
【0057】
(a1)アクリル系共重合体および(a2)ポリイソシアネート化合物の総量に対するNCO%は、本プライマー組成物とウレタン系接着剤との接着性を向上させる観点から、5.0%以上であることが好ましく、7.0%以上であることがより好ましく、9.0%以上であることがさらに好ましい。また、(a1)アクリル系共重合体および(a2)ポリイソシアネート化合物の総量に対するNCO%は、耐水性の観点から、50%以下であることが好ましく、40%以下であることがより好ましく、30%以下であることがさらに好ましい。
【0058】
本発明の一実施形態に係るプライマー組成物においては、(a1)アクリル系共重合体/(a2)ポリイソシアネート化合物比を高くすることで、特にガラスおよびセラミック等の無機材料への接着性を向上させることができる。例えば、(a1)/(a2)比は、0.7以上、0.8以上、0.9以上又は1.0以上であり、5.0以下、4.0以下、3.0以下、又は2.5以下となるよう調整すれば、本発明の効果がより十分に発揮され得る。
【0059】
((a3)シランカップリング剤)
本プライマー組成物は、(a3)シランカップリング剤を含む。本プライマー組成物が、(a3)シランカップリング剤を含むことにより、無機系基材と接着剤との密着性を向上させることができる。
【0060】
(a3)シランカップリング剤の具体例としては、ビス(トリメトキシシリルプロピル)アミン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)アミン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-β-アミノエチル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-アミノエチル-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、(2-アミノエチル)アミノメチルトリメトキシシランなどのアミノシラン化合物;γ-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、γ-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ-イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン、α-イソシアネートメチルトリメトキシシラン、α-イソシアネートメチルジメトキシメチルシラン等のイソシアネートシラン化合物;γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等のメルカプトシラン化合物;γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシシラン化合物、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ-メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロイルオキシメチルトリメトキシシラン等のビニル型不飽和基含有シラン類、N-(1,3-ジメチルブチリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン、カルボニル化合物とアミノ基含有シランから製造されるケチミン型シラン等のケチミン型シラン類、トリス(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート等のイソシアヌレートシラン類等が挙げられる。
【0061】
また、アミノシランの縮合物、アミノシランと他のアルコキシシランとの縮合物、等の各種シランカップリング剤の縮合物;アミノシランとエポキシシランの反応物、アミノシランと(メタ)アクリル基含有シランの反応物、等の各種シランカップリング剤の反応物も使用できる。
【0062】
(a3)シランカップリング剤は1種類のみで使用しても良いし、2種類以上混合使用しても良い。
【0063】
(a3)シランカップリング剤は、第2級アミンを含むことが好ましく、ビス(トリアルコキシシリルプロピル)アミンを含むことがより好ましい。(a3)シランカップリング剤がビス(トリアルコキシシリルプロピル)アミンを含むことにより、無機系基材と接着剤との密着性をさらに向上させることができる。また、ビス(トリアルコキシシリルプロピル)アミンは第2級アミンであるため、本プライマー組成物中で(a2)ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基と反応して結合を形成することを防ぐことができる。そのため、(a3)シランカップリング剤がビス(トリアルコキシシリルプロピル)アミンを含むことにより、貯蔵安定性を向上させることもできる。また、接着安定性の観点から(a3)シランカップリング剤がケチミン型シラン類を含むことも好ましい。
【0064】
(a3)シランカップリング剤は、ビス(トリアルコキシシリルプロピル)アミンに加えて、さらに、エポキシシラン化合物を含むことが好ましい。(a3)シランカップリング剤が、さらに、エポキシシラン化合物を含むことにより、無機系基材と接着剤との密着性をさらに向上させることができる。
【0065】
本プライマー組成物は、無機系基材と接着剤との密着性を向上させる観点から、(a1)アクリル系共重合体100重量部に対して、(a3)シランカップリング剤を0.1重量部以上含むことが好ましく、15重量部以上含むことがより好ましく、30重量部以上含むことがさらに好ましい。また、本プライマー組成物は、耐水性の観点から、(a1)アクリル系共重合体100重量部に対して、(a3)シランカップリング剤を100重量部以下含むことが好ましく、75重量部以下含むことがより好ましく、50重量部以下含むことがさらに好ましい。
【0066】
((a4)有機錫化合物)
本プライマー組成物は、(a4)有機錫化合物を含む。(a4)有機錫化合物は、(a1)アクリル系共重合体を硬化するためのシラノール縮合触媒である。具体的には、シラノール縮合触媒は、反応性シリル基を有する(a1)アクリル系共重合体の反応性シリル基を加水分解および縮合させる反応を促進し、重合体を鎖延長または架橋させる触媒である。本プライマー組成物が、(a4)有機錫化合物を含むことにより、プライマー養生時間を短縮することができ、かつ、無機系基材と接着剤との密着性を向上させることができる。
【0067】
有機錫化合物の具体例としては、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオクタノエート、ジブチル錫ビス(ブチルマレエート)、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫オキサイド、ジブチルビス(2,4-ペンタンジオナト)スズ(IV)等のジブチル錫化合物、ジオクチル錫ビス(アセチルアセトナート)、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジステアレート、ジオクチル錫ジアセテート、ジオクチル錫オキサイド等のジオクチル錫化合物、ジブチル錫オキサイドとシリケート化合物との反応物、ジオクチル錫オキサイドとシリケート化合物との反応物、ジブチル錫オキサイドとフタル酸エステルとの反応物などが挙げられる。
【0068】
(a4)有機錫化合物は、無機系基材との初期接着性を向上させる観点から、β-ジカルボニル構造を有することが好ましい。
【0069】
本プライマー組成物は、プライマー養生時間を短縮することができ、かつ、無機系基材と接着剤との密着性を向上させる観点から、(a1)アクリル系共重合体100重量部に対して、(a4)有機錫化合物を0.05重量部以上含むことが好ましく、1.5重量部以上含むことがより好ましく、3.0重量部以上含むことがさらに好ましい。また、本プライマー組成物は、耐水性の観点から、(a1)アクリル系共重合体100重量部に対して、(a4)有機錫化合物を20重量部以下含むことが好ましく、15重量部以下含むことがより好ましく、10重量部以下含むことがさらに好ましい。
【0070】
((a5)メルカプト化合物、および/または、β-ジカルボニル化合物)
本プライマー組成物は、(a5)メルカプト化合物、および/または、β-ジカルボニル化合物を含む。(a5)メルカプト化合物、および/または、β-ジカルボニル化合物は、本プライマー組成物の貯蔵中において(a4)有機錫化合物による(a1)アクリル系共重合体に含まれる反応性シリル基の加水分解および縮合反応を防止する。そのため、本プライマー組成物が、(a5)メルカプト化合物、および/または、β-ジカルボニル化合物を含むことにより、例えば、配位子交換によって(a4)有機錫化合物の触媒活性を低減したり、メルカプト化合物に含まれるチオール基がSi-OH間の脱水縮合を遅延させたりする効果があることから、貯蔵安定性を向上させることができる。
【0071】
メルカプト化合物としては、例えば、n-ドデシルメルカプタン(nDM)、t-ドデシルメルカプタン、n-ブチルメルカプタン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0072】
β-ジカルボニル化合物とは、1個の炭素原子に2個のカルボニル基が結合した構造を有する化合物である。β-ジカルボニル化合物としては、特に限定されないが、例えば、エチルアセトアセテート、アセチルアセトネート、メチルアセトアセテート、ジメチルマロネート等が挙げられる。
【0073】
本プライマー組成物は、貯蔵安定性を向上させる観点から、(a1)アクリル系共重合体100重量部に対して、(a5)メルカプト化合物、および/または、β-ジカルボニル化合物を、合計で0.05重量部以上含むことが好ましく、1.5重量部以上含むことがより好ましく、3.0重量部以上含むことがさらに好ましい。また、本プライマー組成物は、硬化性の観点から、(a1)アクリル系共重合体100重量部に対して、(a5)メルカプト化合物、および/または、β-ジカルボニル化合物を、合計で20重量部以下含むことが好ましく、15重量部以下含むことがより好ましく、10重量部以下含むことがさらに好ましい。
【0074】
((a6)脱水剤)
本プライマー組成物は、(a6)脱水剤を含む。水分がある場合、(a1)アクリル系共重合体中のアルコキシシリル基の加水分解反応が進行する。そのため、本プライマー組成物が、(a6)脱水剤を含むことにより、当該加水分解反応を防止し、貯蔵安定性を向上させることができる。
【0075】
特に本発明の好ましい実施態様においては、(a6)脱水剤を、(a1)アクリル系共重合体、及び(a3)シランカップリング剤と事前に混合しておくことで、(a1)アクリル系共重合体/(a2)ポリイソシアネート化合物比を高めたときの貯蔵安定性を保つことができる。
【0076】
脱水剤の具体例としては、例えば、イソシアン酸トシル、オルトギ酸メチル、オルトギ酸エチル、オルト酢酸メチル(オルソ酢酸メチル)、オルト酢酸エチル、オルトプロピオン酸トリメチル、オルトプロピオン酸トリエチル、オルトイソプロピオン酸トリメチル、オルトイソプロピオン酸トリエチル、オルト酪酸トリメチル、オルト酪酸トリエチル、オルトイソ酪酸トリメチル、オルトイソ酪酸トリエチルなどの加水分解性エステル化合物などが挙げられる。これらの中では脱水効果の点でオルト酢酸メチルが好ましい。これらは単独で用いてもよく2種以上併用してもよい。
【0077】
本プライマー組成物は、貯蔵安定性を向上させる観点から、(a1)アクリル系共重合体100重量部に対して、(a6)脱水剤を0.1重量部以上含むことが好ましく、1.0重量部以上含むことがより好ましく、3.0重量部以上含むことがさらに好ましい。また、本プライマー組成物は、接着性の観点から、(a1)アクリル系共重合体100重量部に対して、(a6)脱水剤を50重量部以下含むことが好ましく、40重量部以下含むことがより好ましく、30重量部以下含むことがさらに好ましい。
【0078】
(その他の成分)
本プライマー組成物は、本発明の効果を奏する範囲で、当該技術分野において通常用いられる添加剤を含んでいてもよい。そのような添加剤としては、例えば、充填剤、難燃剤、分散剤、消泡剤、可塑剤、粘着性付与剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、エポキシ樹脂、酸化防止剤、光安定化剤、紫外線吸収剤、シランカップリング剤、加水分解安定化剤、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤、離型剤、帯電防止剤、滑剤、低収縮剤、シリコーン界面活性剤、水分等が挙げられる。添加剤としては、1種のみが含まれていてもよいし、2種以上が含まれていてもよい。これら添加剤の量は、その使用目的に応じて当業者が適宜設定可能である。
【0079】
<充填材>
本プライマー組成物は、充填材を含んでもよい。充填材としては、特に限定されないが、例えば、フュームドシリカ、沈降性シリカ、結晶性シリカ、溶融シリカ、ドロマイト、無水ケイ酸、含水ケイ酸、およびカーボンブラック等の補強性充填材;重質炭酸カルシウム、膠質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、ケイソウ土、焼成クレー、クレー、タルク、バライト、無水石膏、酸化チタン、ベントナイト、有機ベントナイト、酸化第二鉄、アルミニウム微粉末、フリント粉末、酸化亜鉛、活性亜鉛華、マイカ、亜鉛華、鉛白、リトポン、硫化亜鉛、シラスバルーン、ガラスミクロバルーン、フェノール樹脂または塩化ビニリデン樹脂の有機ミクロバルーン、PVC粉末、PMMA粉末などの粉末状の充填材;石綿、ガラス繊維およびフィラメント等の繊維状充填材等が挙げられる。また、上記以外に、例えば、酸化チタン、クロム酸鉛、酸化クロム、ウルトラマリン、コバルトブルー、シアニンブルー、シアニングリーン、レーキレッド、キナクリドンレッドなどの着色顔料も用いることができる。
【0080】
本プライマー組成物における充填剤の含有量は、本プライマー組成物の全量100重量%に対して、例えば、1.0~50重量%であり、5.0~40重量%であることが好ましく、10~30重量%であることがより好ましい。
【0081】
<難燃剤>
本プライマー組成物は、難燃剤を含んでもよい。難燃剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリリン酸アンモニウム、トリクレジルホスフェートなどのリン系可塑剤、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、および、熱膨張性黒鉛等が挙げられる。これら難燃剤は単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0082】
前記ポリリン酸アンモニウムとしては、従来公知のものを広く使用することができる。これらの中でも、耐水性の観点から、樹脂により被覆し、マイクロカプセル化されたポリリン酸アンモニウム、または、表面改質されたポリリン酸アンモニウム等の表面処理されたポリリン酸アンモニウムが好ましく、表面をメラミンホルムアルデヒド樹脂で被覆されたものがさらに好ましい。
【0083】
本プライマー組成物における難燃剤の含有量は、本プライマー組成物の全量100重量%に対して、例えば、0.1~10重量%であり、0.5~5.0重量%であることが好ましく、1.0~4.0重量%であることがより好ましい。
【0084】
<分散剤>
本プライマー組成物は、分散剤を含んでもよい。分散剤としては、顔料と、分散剤と、を公知の方法に従って混合分散して得られる顔料分散ペーストを配合し、使用することも可能である。分散剤としては、市販されているものを使用することもできる。例えば、ANTI-TERRA(登録商標)-U、ANTI-TERRA(登録商標)-U100、ANTI-TERRA(登録商標)-204、ANTI-TERRA(登録商標)-205、DISPERBYK(登録商標)-101、DISPERBYK(登録商標)-102、DISPERBYK(登録商標)-103、DISPERBYK(登録商標)-106、DISPERBYK(登録商標)-108、DISPERBYK(登録商標)-109、DISPERBYK(登録商標)-110、DISPERBYK(登録商標)-111、DISPERBYK(登録商標)-112、DISPERBYK(登録商標)-116、DISPERBYK(登録商標)-130、DISPERBYK(登録商標)-140、DISPERBYK(登録商標)-142、DISPERBYK(登録商標)-145、DISPERBYK(登録商標)-161、DISPERBYK(登録商標)-162、DISPERBYK(登録商標)-163、DISPERBYK(登録商標)-164、DISPERBYK(登録商標)-166、DISPERBYK(登録商標)-167、DISPERBYK(登録商標)-168、DISPERBYK(登録商標)-170、DISPERBYK(登録商標)-171、DISPERBYK(登録商標)-174、DISPERBYK(登録商標)-180、DISPERBYK(登録商標)-182、DISPERBYK(登録商標)-183、DISPERBYK(登録商標)-184、DISPERBYK(登録商標)-185、DISPERBYK(登録商標)-2000、DISPERBYK(登録商標)-2001、DISPERBYK(登録商標)-2008、DISPERBYK(登録商標)-2009、DISPERBYK(登録商標)-2022、DISPERBYK(登録商標)-2025、DISPERBYK(登録商標)-2050、DISPERBYK(登録商標)-2070、DISPERBYK(登録商標)-2096、DISPERBYK(登録商標)-2150、DISPERBYK(登録商標)-2155、DISPERBYK(登録商標)-2163、DISPERBYK(登録商標)-2164、BYK(登録商標)-P104、BYK(登録商標)-P104S、BYK(登録商標)-P105、BYK(登録商標)-9076、BYK(登録商標)-9077、BYK(登録商標)-220S、ANTI-TERRA(登録商標)-250、DISPERBYK(登録商標)-187、DISPERBYK(登録商標)-190、DISPERBYK(登録商標)-191、DISPERBYK(登録商標)-192、DISPERBYK(登録商標)-193、DISPERBYK(登録商標)-194、DISPERBYK(登録商標)-198、DISPERBYK(登録商標)-2010、DISPERBYK(登録商標)-2012、DISPERBYK(登録商標)-2013、DISPERBYK(登録商標)-2015、DISPERBYK(登録商標)-2090、DISPERBYK(登録商標)-2091、DISPERBYK(登録商標)-2095(いずれもビックケミー社製)、DISPARLON(登録商標)2150、DISPARLON(登録商標)KS-860、DISPARLON(登録商標)KS-873N、DISPARLON(登録商標)7004、DISPARLON(登録商標)1831、DISPARLON(登録商標)1850、DISPARLON(登録商標)1860、DISPARLON(登録商標)DA-1401、DISPARLON(登録商標)PW-36、DISPARLON(登録商標)DA-1200、DISPARLON(登録商標)DA-550、DISPARLON(登録商標)DA-703-50、DISPARLON(登録商標)DA-7301、DISPARLON(登録商標)DN-900、DISPARLON(登録商標)DA-325、DISPARLON(登録商標)DA-375、DISPARLON(登録商標)DA-234(いずれも楠本化成社製)、EFKAPOLYMER4550(EFKA社製)、ソルスパース(登録商標)27000、ソルスパース(登録商標)41000、ソルスパース(登録商標)53095(いずれもアビシア社製)等を挙げることができる。
【0085】
分散剤の数平均分子量は、1000~10万であることが好ましく、2000~5万であることが好ましく、4000~5万であることがさらに好ましい。分散剤の数平均分子量が1000以上であれば、十分な分散安定性を得ることができ、10万以下であれば、組成物の粘度が高くなりすぎる虞がなく、取り扱い性に優れる組成物となる。
【0086】
本プライマー組成物における分散剤の含有量は、本プライマー組成物の全量100重量%に対して、例えば、0.1~10重量%であり、0.3~5.0重量%であることが好ましく、0.5~3.0重量%であることがより好ましい。
【0087】
<消泡剤>
本プライマー組成物は消泡剤を含んでもよい。消泡剤としては、特に限定されないが、例えば、市販されているものを使用することができる。そのような市販の消泡剤としては、例えば、BYK(登録商標)-051、BYK(登録商標)-052、BYK(登録商標)-053、BYK(登録商標)-054、BYK(登録商標)-055、BYK(登録商標)-057、BYK(登録商標)-1752、BYK(登録商標)-1790、BYK(登録商標)-060N、BYK(登録商標)-063、BYK(登録商標)-065、BYK(登録商標)-066N、BYK(登録商標)-067A、BYK(登録商標)-077、BYK(登録商標)-088、BYK(登録商標)-141、BYK(登録商標)-354、BYK(登録商標)-392、BYK(登録商標)-011、BYK(登録商標)-012、BYK(登録商標)-017、BYK(登録商標)-018、BYK(登録商標)-019、BYK(登録商標)-020、BYK(登録商標)-021、BYK(登録商標)-022、BYK(登録商標)-023、BYK(登録商標)-024、BYK(登録商標)-025、BYK(登録商標)-028、BYK(登録商標)-038、BYK(登録商標)-044、BYK(登録商標)-093、BYK(登録商標)-094、BYK(登録商標)-1610、BYK(登録商標)-1615、BYK(登録商標)-1650、BYK(登録商標)-1730、BYK(登録商標)-1770などの消泡剤(いずれもビックケミー社製)、DISPARLON(登録商標)OX-880EF、DISPARLON(登録商標)OX-881、DISPARLON(登録商標)OX-883、DISPARLON(登録商標)OX-883HF、DISPARLON(登録商標)OX-70、DISPARLON(登録商標)OX-77EF、DISPARLON(登録商標)OX-60、DISPARLON(登録商標)OX-710、DISPARLON(登録商標)OX-720、DISPARLON(登録商標)OX-720EF、DISPARLON(登録商標)OX-750HF、DISPARLON(登録商標)LAP-10、DISPARLON(登録商標)LAP-20、DISPARLON(登録商標)LAP-30等のアクリル系消泡剤、DISPARLON(登録商標)OX-66、DISPARLON(登録商標)OX-715等のシリコーン系アクリル系複合型消泡剤、DISPARLON(登録商標)1950、DISPARLON(登録商標)1951、DISPARLON(登録商標)1952、DISPARLON(登録商標)P-410EF、DISPARLON(登録商標)P-420、DISPARLON(登録商標)P-450、DISPARLON(登録商標)P-425、DISPARLON(登録商標)PD-7等のビニル系消泡剤、DISPARLON(登録商標)1930N、DISPARLON(登録商標)1934等のシリコーン系消泡剤(いずれも楠本化成社製)等を挙げることができる。
【0088】
本プライマー組成物における消泡剤の含有量は、本プライマー組成物の全量100重量%に対して、例えば、0.1~5.0重量%であり、0.2~4.0重量%であることが好ましく、0.3~3.0重量%であることがより好ましい。
【0089】
<粘着性付与剤>
本プライマー組成物は、粘着性付与剤を含んでもよい。粘着性付与剤としては、特に限定されず、常温で固体、液体を問わず通常使用されるものを使用することができる。具体的には、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン-エチレンブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-エチレンプロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体(SIBS)等のスチレン系ブロック共重合体、および、その水素添加物、フェノール樹脂、変性フェノール樹脂(例えば、カシューオイル変性フェノール樹脂、トール油変性フェノール樹脂等)、テルペンフェノール樹脂、キシレン-フェノール樹脂、シクロペンタジエン-フェノール樹脂、クマロンインデン樹脂、ロジン系樹脂、ロジンエステル樹脂、水添ロジンエステル樹脂、キシレン樹脂、低分子量ポリスチレン系樹脂、スチレン共重合体樹脂、石油樹脂(例えば、C5炭化水素樹脂、C9炭化水素樹脂、C5C9炭化水素共重合樹脂等)、水添石油樹脂、テルペン系樹脂、DCPD樹脂等が挙げられる。上記粘着性付与剤は1種類を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0090】
本プライマー組成物における粘着性付与剤の含有量は、本プライマー組成物の全量100重量%に対して、例えば、0.1~10重量%であり、0.3~5.0重量%であることが好ましく、0.5~3.0重量%であることがより好ましい。
【0091】
<レベリング剤>
本プライマー組成物は、レベリング剤を含んでもよい。レベリング剤としては、特に限定されないが、例えば、市販されているものを使用することができる。そのような市販のレベリング剤としては、例えば、BYKETOL(登録商標)-OK、BYKETOL(登録商標)-SPECIAL、BYKETOL(登録商標)-AQ、BYKETOL(登録商標)-WS(いずれもビックケミー社製)、DISPARLON(登録商標)1970、DISPARLON(登録商標)230、DISPARLON(登録商標)LF-1980、DISPARLON(登録商標)LF-1982、DISPARLON(登録商標)LF-1983、DISPARLON(登録商標)LF-1984、DISPARLON(登録商標)LF-1985(いずれも楠本化成社製)等を挙げることができる。
【0092】
本プライマー組成物におけるレベリング剤の含有量は、本プライマー組成物の全量100重量%に対して、例えば、0.05~5.0重量%であり、0.1~4.0重量%であることが好ましく、0.2~3.0重量%であることがより好ましい。
【0093】
<チクソ性付与剤>
本プライマー組成物は、チクソ性付与剤(垂れ防止剤)を含んでもよい。垂れ防止剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリアミドワックス類;水添ヒマシ油誘導体類;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸バリウム等の金属石鹸類等が挙げられる。充填材として示した前記ヒュームドシリカもまた、チクソ性付与剤として使用できる。また、特開平11-349916号公報に記載されているような粒子径10~500μmのゴム粉末、または特開2003-155389号公報に記載されているような有機質繊維を用いると、チクソ性が高く作業性の良好な組成物が得られる。これらチクソ性付与剤(垂れ防止剤)は1種類を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0094】
本プライマー組成物におけるチクソ性付与剤の含有量は、本プライマー組成物の全量100重量%に対して、例えば、0.1~5.0重量%であり、0.2~4.0重量%であることが好ましく、0.3~3.0重量%であることがより好ましい。
【0095】
<エポキシ樹脂>
本プライマー組成物は、エポキシ樹脂を含んでもよい。エポキシ樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA(又はF)型エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、含アミノグリシジルエーテル樹脂、および、これらのエポキシ樹脂に、ビスフェノールA(又はF)類、多塩基酸類等を付加反応させて得られるエポキシ化合物等、公知のエポキシ樹脂が挙げられる。
【0096】
本プライマー組成物におけるエポキシ樹脂の含有量は、本プライマー組成物の全量100重量%に対して、例えば、5.0~50重量%であり、7.0~40重量%であることが好ましく、10~30重量%であることがより好ましい。
【0097】
<酸化防止剤>
本プライマー組成物は、酸化防止剤(老化防止剤)を含んでもよい。本プライマー組成物が酸化防止剤を含む場合、得られる硬化物の耐熱性を高めることができる。酸化防止剤としては、特に限定されないが、例えば、ヒンダードフェノール系、モノフェノール系、ビスフェノール系、ポリフェノール系が挙げられる。中でも、ヒンダードフェノール系が好ましい。本発明の一実施形態において、酸化防止剤として、チヌビン(登録商標)622LD,チヌビン(登録商標)144,CHIMASSORB(登録商標)944LD,CHIMASSORB(登録商標)119FL(以上いずれもチバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製);MARKLA-57,MARKLA-62,MARKLA-67,MARKLA-63,MARKLA-68(以上いずれも株式会社ADEKA製);サノール(登録商標)LS-770,サノール(登録商標)LS-765,サノール(登録商標)LS-292,サノール(登録商標)LS-2626,サノール(登録商標)LS-1114,サノール(登録商標)LS-744(以上いずれも三共株式会社製)等のヒンダードアミン系光安定化剤を使用することもできる。
【0098】
本プライマー組成物における酸化防止剤の含有量は、本プライマー組成物の全量100重量%に対して、例えば、0.1~5.0重量%であり、0.3~4.0重量%であることが好ましく、0.5~3.0重量%であることがより好ましい。
【0099】
<光安定化剤>
本プライマー組成物は、光安定化剤を含んでもよい。本プライマー組成物が光安定化剤を含む場合、得られる硬化物の光酸化劣化を防止できる。光安定化剤としては、特に限定されないが、例えば、ベンゾトリアゾール系、ヒンダードアミン系、ベンゾエート系化合物等が挙げられる。中でも、ヒンダードアミン系化合物が好ましい。特に、3級アミン含有ヒンダードアミン系光安定化剤が、本プライマー組成物の貯蔵安定性を改良できるため好ましい。3級アミン含有ヒンダードアミン系光安定化剤としては、より具体的には、チヌビン(登録商標)622LD,チヌビン(登録商標)144,CHIMASSORB(登録商標)119FL(以上いずれもBASF製);MARKLA-57,LA-62,LA-67,LA-63(以上いずれも株式会社ADEKA製);サノール(登録商標)LS-765,LS-292,LS-2626,LS-1114,LS-744(以上いずれも三共株式会社製)などの光安定化剤が挙げられる。
【0100】
本プライマー組成物における光安定化剤の含有量は、本プライマー組成物の全量100重量%に対して、例えば、0.1~5.0重量%であり、0.3~4.0重量%であることが好ましく、0.5~3.0重量%であることがより好ましい。
【0101】
<紫外線吸収剤>
本プライマー組成物は、紫外線吸収剤を含んでもよい。本プライマー組成物が紫外線吸収剤を含む場合、得られる硬化物の表面耐候性を高めることができる。紫外線吸収剤としては、特に限定されないが、例えば、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリシレート系、置換トリル系及び金属キレート系化合物等が挙げられるが、特にベンゾトリアゾール系化合物が好ましい。
【0102】
本発明の一実施形態において、フェノール系、または、ヒンダードフェノール系酸化防止剤と、ヒンダードアミン系光安定化剤と、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を混合して使用することが特に好ましい。
【0103】
本プライマー組成物における紫外線吸収剤の含有量は、本プライマー組成物の全量100重量%に対して、例えば、0.1~5.0重量%であり、0.3~4.0重量%であることが好ましく、0.5~3.0重量%であることがより好ましい。
【0104】
本プライマー組成物は、上記各成分、およびその他の成分、等に由来する水分を含む場合がある。本プライマー組成物が水分を含む場合、本プライマー組成物の貯蔵安定性が損なわれる虞がある。したがって、本プライマー組成物における水分の含有量は、本プライマー組成物の全量100重量%に対して、例えば、0.3重量%以下であり、0.2重量%以下であることが好ましく、0.1重量%以下であることがより好ましい。下限は特に限定されず、0重量%であってもよい。
【0105】
<溶剤、希釈剤>
本プライマー組成物には溶剤または希釈剤を添加することができる。溶剤及び希釈剤としては、特に限定されないが、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、脂環族炭化水素、ハロゲン化炭化水素、アルコール、エステル、ケトン、エーテルなどを使用することができる。溶剤または希釈剤を使用する場合、溶剤または希釈剤は、沸点が低く、乾燥の速い酢酸エチルおよびメチルエチルケトン等の極性溶媒であることが特に好ましい。本プライマー組成物に溶剤または希釈剤を添加することにより、本プライマー組成物の乾燥時間が短くなり、接着剤施工までの工程時間を短縮することができる。上記溶剤または希釈剤は単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0106】
(プライマー組成物の用途)
本プライマー組成物は、無機系基材用の接着剤用のプライマー組成物として使用することができる。本プライマー組成物は、変性シリコーン系接着剤だけでなく、ウレタン系接着剤のプライマーとして使用することができる。また、ガラス面とボディ面の両方に使用することができるダイレクトグレージング(DG)工法用プライマーとして使用することができる。
【0107】
(プライマー組成物の製造方法)
上述したプライマー組成物の製造方法は、(a4)有機錫化合物と、(a5)メルカプト化合物、および/または、β-ジカルボニル化合物とを混合し、触媒活性を調節する工程を含むことを特徴とする。それにより、(a5)成分と有機錫化合物との配位子交換が起き、触媒活性を適切に調節することができる。
【0108】
該工程に次いで、(a2)ポリイソシアネート化合物を配合することにより、(a5)メルカプト化合物、および/または、β-ジカルボニル化合物と、(a2)ポリイソシアネート化合物とが反応して結合を形成することを防止することができる。したがって、得られる本プライマー組成物において、(a5)メルカプト化合物、および/または、β-ジカルボニル化合物の配合による貯蔵安定性向上の効果を十分に得ることができる。
【0109】
本発明の製造方法における最も好ましい実施形態は、(a1)アクリル系共重合体、(a3)シランカップリング剤および(a6)脱水剤の配合物をA液、(a2)ポリイソシアネート化合物、(a4)有機錫化合物および(a5)メルカプト化合物、および/または、β-ジカルボニル化合物の配合物をB液に分けて調製することが挙げられる。更に、A液及びB液は、以下の順で配合することが望ましい。
【0110】
A液:(a1)アクリル系共重合体と(a6)脱水剤とを混合した後、(a3)シランカップリング剤を追加して調製;
B液:(a4)有機錫化合物と(a5)メルカプト化合物、および/または、β-ジカルボニル化合物とを混合した後、(a2)ポリイソシアネート化合物を追加して調製。
【0111】
A液において、先に(a1)アクリル系共重合体と(a6)脱水剤とを混合することにより、(a1)アクリル系共重合体を事前に脱水することができる。これにより、(a4)有機錫化合物の混合時および混合後に溶液中で反応性シリル基が加水分解および架橋することを防止することができる。そのため、得られる本プライマー組成物の貯蔵安定性を向上させることができる。
【0112】
A液とB液とを別々に調製後に、両者を混合することにより、(a3)シランカップリング剤がB液中で加水分解されるのを防ぐことができる。そのため、貯蔵安定性を長期にわたって優れたものにできる。
【0113】
(a3)シランカップリング剤は、アミノ基を含有することが、接着性の観点から好ましい。一方で、アミノ基と(a2)ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基は反応してウレア結合を形成し、貯蔵安定性が低下する。とりわけ、(a3)シランカップリング剤としてアミノ基が第2級アミンのものを使用する場合は、(a2)ポリイソシアネート化合物との付加反応によるウレア結合形成を低減することができる。
【0114】
とりわけ、(a2)ポリイソシアネート化合物と(a3)シランカップリング剤とを高濃度で接触させた場合には、ウレア結合が形成されるため、接着安定性の観点から、(a2)と(a3)とを高濃度で混合することは避けることが好ましい。以上の観点から、A液とB液とを別々に調製し、その後、両者を混合することで貯蔵安定性を長期にわたって優れたものにできる。
【0115】
別の実施形態において、プライマー組成物の製造方法は、(a4)有機錫化合物と(a5)メルカプト化合物、および/または、β-ジカルボニル化合物とを混合する混合工程と、混合工程で得られた混合物に、(a1)アクリル系共重合体、(a2)ポリイソシアネート化合物、(a3)シランカップリング剤および(a6)脱水剤を配合する工程と、を含んでいてもよい。
【0116】
〔3.積層部材〕
本発明の一態様に係る積層部材は、プライマー組成物を被着体上に塗布してプライマー層を形成させた後、前記プライマー層上に接着剤を塗布して接着剤層を形成して得られる、プライマー層と接着剤層とが貼り合わされた、積層部材であることが好ましい。
【0117】
(積層部材の製造方法)
本発明の一態様に係る積層部材の製造方法は、プライマー層形成工程と、接着剤積層工程とを含むことが好ましい。
【0118】
プライマー層形成工程では、上述したプライマー組成物を被着体上に塗布して、プライマー層を形成させる。プライマー層形成工程において、プライマー組成物を被着体上に塗布した後に、乾燥させて仮硬化させることが好ましい。仮硬化とは、プライマー組成物を塗布して形成されたプライマー層の表面が硬化し、接着剤積層工程において接着剤をプライマー層上に塗布したときにプライマー組成物と接着剤とが混ざり合うことなく、二層構造を保つ状態であることを意図する。
【0119】
乾燥時間は、接着性の観点から、10分以上であることが好ましく、20分以上であることがより好ましく、30分以上であることがさらに好ましい。乾燥時間は、接着性の観点から、4時間以下であることが好ましく、2時間以下であることがより好ましく、1時間以下であることがさらに好ましい。
【0120】
乾燥温度は、接着性の観点から、5℃以上であることが好ましく、10℃以上であることがより好ましく、20℃以上であることがさらに好ましい。また、乾燥温度は、接着性の観点から、60℃以下であることが好ましく、45℃以下であることがより好ましく、30℃以下であることがさらに好ましい。
【0121】
接着剤積層工程では、接着剤をプライマー層上に塗布して接着剤層を形成して、プライマー層と接着剤層とが貼り合わされた積層部材を得る。
【0122】
上述したように、接着剤積層工程において、プライマー層が乾燥して仮硬化した後に接着剤を塗布して、接着剤層を形成することが好ましい。プライマー層が仮硬化した後に接着剤を塗布しても、プライマー層と接着剤層との密着性は保たれている。これは、プライマー層および接着剤層における未反応の官能基等が、プライマー層と接着剤層との界面で反応しているものと推測される。
【0123】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0124】
すなわち、本発明の一実施形態は、以下である。
<1>(a1)アクリル系共重合体、
(a2)ポリイソシアネート化合物、
(a3)シランカップリング剤、
(a4)有機錫化合物、
(a5)メルカプト化合物、および/または、β-ジカルボニル化合物、ならびに、
(a6)脱水剤
を含む、プライマー組成物であって、
前記(a1)アクリル系共重合体は、主鎖がアクリル系共重合体鎖を含み、主鎖末端および/または側鎖に反応性シリル基を有し、水酸基価が15mgKOH/g以下であり、
前記プライマー組成物の全量に対して、
前記(a1)アクリル系共重合体を10重量%超30重量%以下含み、
前記(a2)ポリイソシアネート化合物を5重量%以上20重量%以下含む、
プライマー組成物。
<2>前記(a3)シランカップリング剤が、ビス(トリアルコキシシリルプロピル)アミンまたはケチミン型シラン類を含む、<1>に記載のプライマー組成物。
<3>前記(a3)シランカップリング剤が、さらに、エポキシシラン化合物を含む、<2>に記載のプライマー組成物。
<4>前記(a1)アクリル系共重合体と前記(a2)ポリイソシアネート化合物との比率(a1)/(a2)が0.7~3.0の範囲を満たす、<1>~<3>のいずれか1つに記載のプライマー組成物。
<5>前記(a4)有機錫化合物が、β-ジカルボニル構造を有する、<1>~<4>のいずれか1つに記載のプライマー組成物。
<6>前記(a2)ポリイソシアネート化合物が、ヘキサメチレンジイソシアネート、および/または、その変性体を含む、<1>~<5>のいずれか1つに記載のプライマー組成物。
<7><1>~<6>のいずれか1つに記載のプライマー組成物を被着体上に塗布してプライマー層を形成させた後、前記プライマー層上に接着剤を塗布して接着剤層を形成して得られる、前記プライマー層と前記接着剤層とが貼り合わされた、積層部材。
<8>(a1)反応性シリル基を有し、水酸基価が15mgKOH/g以下のアクリル系共重合体、
(a2)ポリイソシアネート化合物、
(a3)シランカップリング剤、
(a4)有機錫化合物、
(a5)メルカプト化合物、および/または、β-ジカルボニル化合物、ならびに、
(a6)脱水剤
を含むプライマー組成物の製造方法であって、
前記製造方法は、
前記(a4)有機錫化合物と、前記(a5)メルカプト化合物、および/または、β-ジカルボニル化合物とを混合し、触媒活性を調節する工程を含み、
前記プライマー組成物全量に対して、
前記(a1)アクリル系共重合体が10重量%超30重量%以下、
前記(a2)ポリイソシアネート化合物が5重量%以上20重量%以下含まれるよう調整することを特徴とする、
プライマー組成物の製造方法。
<9>前記(a4)有機錫化合物と、前記(a5)メルカプト化合物、および/または、β-ジカルボニル化合物とを混合する工程に次いで、(a2)ポリイソシアネート化合物を混合する工程を含む、<8>に記載のプライマー組成物の製造方法。
【0125】
本発明の一実施形態は、以下であってもよい。
<1>(a1)アクリル系共重合体、
(a2)ポリイソシアネート化合物、
(a3)シランカップリング剤、
(a4)有機錫化合物、
(a5)メルカプト化合物、および/または、β-ジカルボニル化合物、ならびに、
(a6)脱水剤
を含む、プライマー組成物であって、
前記(a1)アクリル系共重合体は、主鎖がアクリル系共重合体鎖を含み、主鎖末端および/または側鎖に反応性シリル基を有し、水酸基価が10mgKOH/g以下であり、
前記プライマー組成物の全量100重量%に対して、前記(a1)アクリル系共重合体を10重量%超30重量%以下含む、プライマー組成物。
<2>前記(a3)シランカップリング剤が、ビス(トリアルコキシシリルプロピル)アミンを含む、<1>に記載のプライマー組成物。
<3>前記(a3)シランカップリング剤が、さらに、エポキシシラン化合物を含む、<2>に記載のプライマー組成物。
<4>前記(a1)アクリル系共重合体100重量部に対して、前記(a2)ポリイソシアネート化合物を5重量部以上200重量部以下含む、<1>~<3>のいずれかに記載のプライマー組成物。
<5>前記(a4)有機錫化合物が、β-ジカルボニル構造を有する、<1>~<4>のいずれかに記載のプライマー組成物。
<6>前記(a2)ポリイソシアネート化合物が、ヘキサメチレンジイソシアネート、および/または、その変性体を含む、<1>~<5>のいずれかに記載のプライマー組成物。
<7><1>~<6>のいずれかに記載のプライマー組成物を被着体上に塗布してプライマー層を形成させた後、前記プライマー層上に接着剤を塗布して接着剤層を形成して得られる、前記プライマー層と前記接着剤層とが貼り合わされた、積層部材。
<8>(a1)アクリル系共重合体、
(a2)ポリイソシアネート化合物、
(a3)シランカップリング剤、
(a4)有機錫化合物、
(a5)メルカプト化合物、および/または、β-ジカルボニル化合物、ならびに、
(a6)脱水剤
を含む、プライマー組成物であって、
前記(a1)アクリル系共重合体は、主鎖がアクリル系共重合体鎖を含み、主鎖末端および/または側鎖に反応性シリル基を有し、水酸基価が10mgKOH/g以下であり、
前記プライマー組成物の全量100重量%に対して、前記(a1)アクリル系共重合体を10重量%超30重量%以下含む、プライマー組成物の製造方法であって、
前記(a4)有機錫化合物と前記(a5)メルカプト化合物、および/または、β-ジカルボニル化合物とを混合する混合工程と、
前記混合工程で得られた混合物に、前記(a1)アクリル系共重合体、前記(a2)ポリイソシアネート化合物、前記(a3)シランカップリング剤および前記(a6)脱水剤を配合する工程と、
を含む、プライマー組成物の製造方法。
<9>前記(a1)アクリル系共重合体、前記(a3)シランカップリング剤および前記(a6)脱水剤の配合物をA液、前記(a2)ポリイソシアネート化合物、前記(a4)有機錫化合物および前記(a5)メルカプト化合物、および/または、β-ジカルボニル化合物の配合物をB液とし、下記の順で配合された前記A液と前記B液とを混合して、前記プライマー組成物を得る、<8>に記載のプライマー組成物の製造方法;
A液:前記(a1)アクリル系共重合体と前記(a6)脱水剤とを混合した後、前記(a3)シランカップリング剤を追加して調製;
B液:前記(a4)有機錫化合物と前記(a5)メルカプト化合物とを混合した後、前記(a2)ポリイソシアネート化合物を追加して調製。
【実施例0126】
以下、本発明を実施例に基づいてより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0127】
〔材料〕
実施例および比較例において、以下の材料を使用した。
【0128】
<(a1)アクリル系共重合体>
以下の材料を用いて、製造例1~4の方法で製造した、a-1-1~a-1-4。
【0129】
γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(略称「TSMA」):(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製の「SILQUEST A-174」、分子量248.1)
ステアリルメタクリレート(略称「SMA」):(日油株式会社製の「ブレンマーSMA」、分子量338.58)
メチルメタクリレート(略称「MMA」):(三菱ガス化学株式会社製の「メタクリル酸メチル」、分子量100)
n-ブチルアクリレート(略称「BA」):(株式会社日本触媒製の「アクリル酸ブチル」、分子量128.2)
スチレン(略称「St」):(NSスチレンモノマー株式会社製の「スチレン」、分子量104.15)
アクリルアミド(略称「AM」):(東京化成工業株式会社製の「Acrylamide Monomer」、分子量71.08)
2-ヒドロキシエチルメタクリレート(略称「HEMA」):(三菱ケミカル株式会社製の「アクリルエステルHO」、分子量130.14)
2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)(略称「V-59」):(和光純薬工業株式会社製の「V-59」、分子量192.26)
酢酸ブチル(略称「BuAc」):(KHネオケム株式会社製の「酢酸ブチル」、分子量116.2)
アジピン酸ジメチルエステル(略称「DMA」):(田岡化学工業株式会社製の「DMA」、分子量174.19)
<(a2)ポリイソシアネート化合物>
ヘキサメチレンジイソシアネートの多量体(NCO%20.5~22.0%、数平均分子量(Mn)820):(東ソー株式会社製の「コロネート(登録商標)HX」)
ヘキサメチレンジイソシアネートの多量体(NCO%22.5~23.9%、数平均分子量(Mn)650):(東ソー株式会社製の「コロネート(登録商標)HXLV」)
<(a3)シランカップリング剤>
トリス(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート:(信越化学工業株式会社製の「KBM-9659」)
γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン:(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製の「A-187」)
ビス[3-(トリメトキシシリルプロピル)]アミン:(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製の「A-1170」)
N-(1,3-ジメチルブチリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン:(JNC株式会社製の「サイラエースS340」)
<(a4)有機錫化合物>
(ジブチル錫化合物)
ジブチルビス(2,4-ペンタンジオナト)スズ(IV):(富士フィルム和光純薬株式会社の「ビス(アセチルアセトナト)ジ-n-ブチルすず」、分子量431.15)
<(a5)メルカプト化合物>
n-ドデシルメルカプタン(略称「n-DM」):(和光純薬工業株式会社製)
<(a5)β-ジカルボニル化合物>
アセチルアセトン(略称「AcAc」):(東京化成工業株式会社製)
<(a6)脱水剤>
オルソ酢酸メチル(略称「MOA」):(日宝化学株式会社製)
イソシアン酸トシル(略称「TI」):(東京化成工業株式会社製)
<希釈溶剤>
酢酸エチル(略称「EtAc」):(KHネオケム株式会社製)
〔測定および評価方法〕
実施例および比較例における測定および評価を、以下の方法で行った。
【0130】
<密着性:ハンドピール試験>
(初期接着性)
表1で得られたプライマー組成物を各種基材に刷毛を用い2回塗布した。23℃で30分放置後、ウレタン接着剤を用いビード状に打設し試験体を作製した。ウレタン接着剤にはSikaTack(登録商標)Go!(日本シーカ株式会社製)を用いた。得られた試験体を23℃50%RHで7日間養生した。その後、ウレタン接着剤と基材の界面にカッターナイフで約1cm程度の切込みを入れ、90°ハンドピール試験を行い、破壊状態を観察した。
【0131】
(耐水接着性)
23℃50%RHで7日間養生して得られた試験片を23℃の水に7日間浸漬し、取り出し後、カッターナイフで約1cm程度の切込みを入れ、90°ハンドピール試験を行い、破壊状態を観察した。
【0132】
(耐湿熱接着性)
耐湿熱試験では、23℃で7日間養生して得られた試験片を綿布で包み込み、外綿布の包みを10倍の水で飽和状態にし、蒸発を防止するためにアルミホイル、PEホイルで包み込んだ。包装された試験片は、70℃で7日間さらしてから、包装を解いて23℃に戻した後、カッターナイフで約1cm程度の切込みを入れ、90°ハンドピール試験を行い、破壊状態を観察した。
【0133】
(湿熱曝露後耐低温接着性)
湿熱曝露後耐低温接着性については、耐湿熱試験後の包装された試験片を、-40℃に1日間さらしてから、包装を解いて23℃に戻した後、カッターナイフで約1cm程度の切込みを入れ、90°ハンドピール試験を行い、破壊状態を観察した。
【0134】
(評価基準)
A:基材にシーラントが残り、凝集破壊状態である(凝集破壊率100%)。
B:基材にシーラントが残り、凝集破壊状態である(凝集破壊率50%以上、100%未満)。
C:一部界面で剥離がみられる(凝集破壊率10%以上50%未満)。
D:ほとんど界面で剥離している(凝集破壊率10%未満)。
【0135】
<密着性:クイックナイフ試験>
(初期接着性)
得られたプライマー組成物を各種基材に刷毛を用い2回塗布した。23℃で30分放置後、ウレタン接着剤を用い10mm(高さ)×10~15mm(幅)×100mm(長さ)の接着剤ビードを塗布する。塗布した接着剤ビードを高さ約6mmまで圧縮し試験体を作製した。ウレタン接着剤にはSikaTack(登録商標)Go!(日本シーカ株式会社製)を用いた。得られた試験体を23℃で7日間養生した。その後、ウレタン接着剤と基材の界面にカッターナイフで約1cm程度の切込みを入れ、90°の角度で引きはがす。約10mmごとに、剥がした接着剤ビードを基材界面までナイフで切り込み、剥離を続けた。剥がした試験片の破壊状態の割合に従って評価した。
【0136】
(耐湿熱接着性)
23℃50%RHで7日間養生して得られた試験片を80℃85%RHの環境下に300時間に曝してから、23℃に戻した後、初期接着性評価と同様にクイックナイフ試験を行い、破壊状態を観察して評価した。
【0137】
(サイクル試験)
23℃50%RHで7日間養生して得られた試験片を用いて、以下の(1)~(5)を1サイクルとして、20サイクル繰り返した。
(1)試験片を23℃50%RHから80℃80%RHまで60分かけて加温および加湿。
(2)80℃80%RH到達後240分間保持。
(3)-40℃まで120分かけて冷却。
(4)-40℃到達後240分保持。
(5)23℃まで60分かけて加温。
【0138】
試験終了後、初期接着性評価と同様にクイックナイフ試験を行い、破壊状態を観察して評価した。
【0139】
(評価基準)
ハンドピール試験と同じ評価基準で評価した。
【0140】
<貯蔵安定性>
得られたプライマー組成物を50℃にて4週間保存した後の性状を確認した。
【0141】
(評価基準)
A:ほとんど増粘なし。
B:やや増粘あり。
D:著しい増粘あり。
【0142】
〔製造例〕
(製造例1)
撹拌機、温度計、還流冷却器、窒素ガス導入管および滴下ロートを備えた反応容器に酢酸ブチル46.3重量部を仕込み、窒素ガスを導入しつつ110℃に昇温した。そののち、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン6.5重量部、ステアリルメタクリレート14重量部、メチルメタクリレート70.4重量部、n-ブチルアクリレート5.3重量部、スチレン2.0重量部、アクリルアミド1重量部、酢酸ブチル18重量部および2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)0.8重量部からなる混合物を滴下ロートにより5時間かけて等速滴下した。滴下終了後、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)0.1重量部、酢酸ブチル9重量部を1時間かけて等速滴下したのち、110℃で2時間熟成してから冷却し、樹脂溶液に酢酸ブチル、オルソ酢酸エステルおよびアジピン酸ジメチルエステルを加えて樹脂固形分濃度が40%のアクリル系共重合体(a-1-1)を得た。得られたアクリル系共重合体(a-1-1)の数平均分子量は19000であった。また、計算上のガラス転移温度は52℃であり、水酸基価は0mgKOH/gであった。
【0143】
(製造例2)
撹拌機、温度計、還流冷却器、窒素ガス導入管および滴下ロートを備えた反応容器に酢酸ブチル46.3重量部を仕込み、窒素ガスを導入しつつ110℃に昇温した。そののち、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン6.5重量部、ステアリルメタクリレート14重量部、メチルメタクリレート68.1重量部、n-ブチルアクリレート5.1重量部、スチレン2.0重量部、アクリルアミド1重量部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート2.0重量部、酢酸ブチル18重量部および2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)0.8重量部からなる混合物を滴下ロートにより5時間かけて等速滴下した。滴下終了後、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)0.1重量部、酢酸ブチル9重量部を1時間かけて等速滴下したのち、110℃で2時間熟成してから冷却し、樹脂溶液に酢酸ブチル、オルソ酢酸エステルおよびアジピン酸ジメチルエステルを加えて樹脂固形分濃度が40%のアクリル系共重合体(a-1-2)を得た。得られたアクリル系共重合体(a-1-2)の数平均分子量は19000であった。また、計算上のガラス転移温度は51℃であり、水酸基価は8.6mgKOH/gであった。
【0144】
(製造例3)
撹拌機、温度計、還流冷却器、窒素ガス導入管および滴下ロートを備えた反応容器に酢酸ブチル46.3重量部を仕込み、窒素ガスを導入しつつ110℃に昇温した。そののち、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン6.5重量部、ステアリルメタクリレート14重量部、メチルメタクリレート64.6重量部、n-ブチルアクリレート11.1重量部、スチレン2.0重量部、アクリルアミド1重量部、酢酸ブチル18重量部および2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)0.8重量部からなる混合物を滴下ロートにより5時間かけて等速滴下した。滴下終了後、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)0.1重量部、酢酸ブチル9重量部を1時間かけて等速滴下したのち、110℃で2時間熟成してから冷却し、樹脂溶液に酢酸ブチル、オルソ酢酸エステルおよびアジピン酸ジメチルエステルを加えて樹脂固形分濃度が40%のアクリル系共重合体(a-1-3)を得た。得られたアクリル系共重合体(a-1-3)の数平均分子量は19000であった。また、計算上のガラス転移温度は40℃であり、水酸基価は0mgKOH/gであった。
【0145】
(製造例4)
撹拌機、温度計、還流冷却器、窒素ガス導入管および滴下ロートを備えた反応容器に酢酸ブチル46.3重量部を仕込み、窒素ガスを導入しつつ110℃に昇温した。そののち、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン6.5重量部、ステアリルメタクリレート14重量部、メチルメタクリレート65.8重量部、n-ブチルアクリレート4.9重量部、スチレン2.0重量部、アクリルアミド1重量部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート5.0重量部、酢酸ブチル18重量部および2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)0.8重量部からなる混合物を滴下ロートにより5時間かけて等速滴下した。滴下終了後、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)0.1重量部、酢酸ブチル9重量部を1時間かけて等速滴下したのち、110℃で2時間熟成してから冷却し、樹脂溶液に酢酸ブチル、オルソ酢酸エステルおよびアジピン酸ジメチルエステルを加えて樹脂固形分濃度が40%のアクリル系共重合体(a-1-4)を得た。得られたアクリル系共重合体(a-1-4)の数平均分子量は19000であった。また、計算上のガラス転移温度は50℃であり、水酸基価は21.4mgKOH/gであった。
【0146】
〔実施例1〕
A液:(a1)アクリル系共重合体を溶剤で希釈し、(a6)脱水剤を添加し、撹拌機を用いて60分間攪拌し、脱水を促した。その後、(a3)シランカップリング剤を添加してA液を得た。
【0147】
B液:溶剤中に(a5)メルカプト化合物、(a4)有機錫化合物を添加し、30分間静置した。その後、(a2)ポリイソシアネート化合物を添加してB液を得た。
【0148】
得られたA液とB液とを混合し、プライマー組成物を得た。
【0149】
〔実施例2~11、比較例1~5〕
各成分の配合量を表1~3に記載の通りに変更したこと以外は実施例1と同様の手順により、プライマー組成物を作製した。得られたプライマー組成物について、密着性および貯蔵安定性を評価した。
【0150】
〔比較例6〕
A液:(a1)アクリル系共重合体を溶剤で希釈し、(a6)脱水剤を添加、撹拌機を用いて60分間攪拌し、脱水を促した。その後、(a3)シランカップリング剤を添加してA液を得た。
【0151】
B液:溶剤中に(a5)メルカプト化合物、(a2)ポリイソシアネート化合物を添加し、30分間静置した。その後、(a4)有機錫化合物を添加してB液を得た。
【0152】
得られたA液とB液を混合し、プライマー組成物を得た。
【0153】
表1に、実施例1~10および比較例1~5で得られたプライマー組成物の配合直後のハンドピール試験による密着性および貯蔵安定性の評価結果を示す。表1における「SUS304」とは、ステンレス鋼である。また、表1における「アルミ(5052P無処理)」とは、A5052Pに分類されるアルミ合金である。表2に、実施例4および比較例6で得られたプライマー組成物の配合直後および配合後50℃で2週間貯蔵後の、ハンドピール試験による密着性の評価結果を示す。表3に、実施例1、7および11の配合直後のクイックナイフ試験による密着性および貯蔵安定性の評価結果を示す。
【0154】
【表1】
【0155】
【表2】
【0156】
【表3】
【0157】
〔結果〕
表1~3より、実施例1~11のプライマー組成物は、無機系基材と接着剤との密着性および貯蔵安定性に優れることが示された。すなわち、本発明の一実施形態によれば、無機系基材と接着剤との密着性および貯蔵安定性に優れるプライマー組成物を提供できることが示された。β-ジカルボニル構造を有する(a4)有機錫化合物を用いることで、無機系基材との初期接着性に優れるプライマー組成物を提供することができることが示された。
【0158】
一方、表1、2より、比較例1~5のプライマー組成物は、無機系基材と接着剤との密着性および貯蔵安定性の少なくとも1つが不良となっている。比較例1、2は(a1)アクリル共重合体比率が少なく、プライマーと基材との間で剥離し、密着性が不十分であった。比較例3は、(a1)/(a2)比=1.0であったが、(a4)錫化合物及び(a5)メルカプト化合物を添加しなかったために、(a1)アクリル共重合体の架橋が十分に進まず、プライマーと基材間の密着性が不十分であった。比較例4は、(a1)アクリル共重合体の水酸基価が高く、組成物として、安定性が十分ではなかった。比較例5は、(a2)ポリイソシアネート化合物比率が低く、プライマーと接着剤との間で剥離した。すなわち、プライマー組成物が本プライマー組成物の構成を満たさない場合、優れた無機系基材と接着剤との密着性および貯蔵安定性を同時に達成することができないことが示された。
【産業上の利用可能性】
【0159】
本プライマー組成物は、無機系基材と接着剤との密着性および貯蔵安定性に優れるため、無機系基材用の接着剤を用いた接着に好適に利用することができる。