(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137921
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】廃電線の処理設備および廃電線の処理方法
(51)【国際特許分類】
B09B 3/35 20220101AFI20240927BHJP
【FI】
B09B3/35
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024047033
(22)【出願日】2024-03-22
(31)【優先権主張番号】P 2023047195
(32)【優先日】2023-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】522119075
【氏名又は名称】四国アセチレン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134979
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 博
(74)【代理人】
【識別番号】100167427
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】大橋 正明
【テーマコード(参考)】
4D004
【Fターム(参考)】
4D004AA22
4D004BA05
4D004CA05
4D004CB13
(57)【要約】
【課題】廃電線から電線の状態を維持したまま樹脂などの被覆材を除去して銅線を回収する廃電線の処理設備および廃電線の処理方法を提供する。
【解決手段】銅線CWと銅線CWを被覆する被覆材Dからなる廃電線EWから銅線CWを回収する廃電線の処理設備であって、廃電線EWを液体窒素LNに浸漬し被覆材Dを被覆材Dの脆性温度以下まで冷却する冷却部4と、冷却部4で冷却された廃電線EWに力を加えて被覆材Dを破砕する破砕部50と、を備えており、破砕部50は、冷却部4で冷却された廃電EWを挟んで加圧する、互いに平行な回転軸53a,54aを有する一対のローラ53,54を有するローラ対52を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅線と銅線を被覆する被覆材からなる廃電線から銅線を回収する廃電線の処理設備であって、
廃電線を液体窒素に浸漬し被覆材を該被覆材の脆性温度以下まで冷却する冷却部と、
該冷却部で冷却された廃電線に力を加えて被覆材を破砕する破砕部と、を備えており、
該破砕部は、
前記冷却部で冷却された廃電線を挟んで加圧する、互いに平行な回転軸を有する一対のローラを有するローラ対を備えている
ことを特徴とする廃電線の処理設備。
【請求項2】
前記破砕部のローラ対の一対のローラは、
基準となる直径の円筒状面から突出した複数の突起部と、基準となる直径の円筒状面から凹んだ複数の凹み部とを有しており、
該一対のローラの軸方向および円周方向に沿って突起部と凹み部が交互に繰り返されるように設けられている
ことを特徴とする請求項1記載の廃電線の処理設備。
【請求項3】
前記一対のローラが、
円板の外周面に複数の突起と複数の凹みとを有する複数枚の破砕板を並べて形成されたものであり、
該複数枚の破砕板は、
突起の先端面で形成される先端円の直径と、凹みの底面で形成される底面円の直径と、が異なる2種類以上の破砕板で構成されている
ことを特徴とする請求項2記載の廃電線の処理設備。
【請求項4】
前記破砕部のローラ対の一対のローラは、
その周面に複数の突起を有しており、
該複数の突起は、
一方のローラの突起の先端から他方のローラにおける突起が形成されている周面までの距離W1が、廃電線の線径DRに対して、以下の式1を満たすように形成されている、
および/または、
前記一対のローラの回転軸方向における一方のローラの突起と他方のローラの突起との距離W2が、廃電線の線径DRに対して、以下の式2を満たすように形成されている
ことを特徴とする請求項1記載の廃電線の処理設備。
式1
1.5<DR/W1<8
式2
1.5<DR/W2<8
【請求項5】
前記破砕部のローラ対の一対のローラが、
円板である複数の第一部材と、円板の外周面に歯状の突起を有する複数の第二部材とを、交互に並べて形成されている
ことを特徴とする請求項4記載の廃電線の処理設備。
【請求項6】
前記破砕部に前記冷却部で冷却された廃電線を供給する供給機構を備えており、
該供給機構は、
前記破砕部に向かって回転する第一供給ローラと、
該第一供給ローラと平行かつ該第一供給ローラとの間に間隔を空けて設けられた第二供給ローラと、を有する投入部を備えており、
該投入部の第一供給ローラの外面には、
回転方向の前方に外面の接面と交差する交差面を有する凹み部が該ローラの円周方向に沿って複数設けられており、
前記投入部の第二供給ローラは、
断面が多角形に形成されたローラであり、
前記破砕部から離間する方向に回転するまたは前記破砕部に向かって前記第一供給ローラと異なる周速度で回転するものである
ことを特徴とする請求項1記載の廃電線の処理設備。
【請求項7】
前記第一供給ローラの凹み部は、
該第一供給ローラの外面と前記交差面とが形成する端縁における接面と略平行な底面を有している
ことを特徴とする請求項6記載の廃電線の処理設備。
【請求項8】
前記冷却部は、
液体窒素が収容された浸漬槽を備えており、
前記供給機構は、
上部に開口を有する廃電線を収容する保持容器と、
該保持容器が前記浸漬槽内の液体窒素に浸漬された状態である冷却位置と、前記投入部の上方に位置する供給位置と、の間で移動させる昇降機構と、を備えており、
該昇降機構は、
前記冷却位置から前記供給位置まで移動する間は前記保持容器の開口が上方に向いた状態に保持し、
前記供給位置において開口から廃電線が前記投入部に供給されるように前記保持容器を転回する転回機構を有している
ことを特徴とする請求項6記載の廃電線の処理設備。
【請求項9】
前記破砕部が、
前記ローラ対を複数備えており、
該複数のローラ対は、
前記冷却部で冷却された廃電線が供給される第一ローラ対から順次廃電線が供給されるように配設されており、
前記第一ローラ対の一対の第一ローラの表面には、前記廃電線と係合し該廃電線を該一対の第一ローラ間に引き込む突起が設けられている
ことを特徴とする請求項1記載の廃電線の処理設備。
【請求項10】
前記破砕部のローラ対は、
該一対のローラをその半径方向に沿って移動可能に保持する移動機構と、
該一対のローラをその半径方向に沿って付勢し、該一対のローラ間に供給された前記廃電線に付勢力を加える付勢機構と、を備えており、
該付勢機構は、
前記一対のローラ間に廃電線が供給された際に、前記付勢機構に加わる反力が所定の力よりも大きくなると、前記一対のローラをその半径方向に沿って離間させる機能を有している
ことを特徴とする請求項1記載の廃電線の処理設備。
【請求項11】
前記破砕部のローラ対の一対のローラは、
その周面に複数の突起を有しており、
前記移動機構は、
前記付勢機構に加わる反力が所定の力の範囲内の場合には、一方のローラの突起の先端から他方のローラにおける突起が形成されている周面までの距離W1が、廃電線の線径DRに対して、以下の式1を満たすように前記一対のローラを移動させるように構成されている、
および/または、
前記一対のローラの複数の突起は、前記一対のローラの回転軸方向における一方のローラの突起と他方のローラの突起との距離W2が、廃電線の線径DRに対して、以下の式2を満たすように形成されている
ことを特徴とする請求項10記載の廃電線の処理設備。
式1
1.5<DR/W1<8
式2
1.5<DR/W2<8
【請求項12】
前記冷却部は、
液体窒素が収容された浸漬槽と、
廃電線を収容する保持容器と、を有しており、
該保持容器を、前記浸漬槽内の液体窒素に浸漬した状態と、前記浸漬槽内の液体窒素から取り出した状態と、の間で移動可能に設けられている、
または、
前記浸漬槽を、前記保持容器を液体窒素に浸漬させる状態と、前記保持容器を液体窒素から離脱させる状態と、の間で移動可能に設けられている
ことを特徴とする請求項1記載の廃電線の処理設備。
【請求項13】
内部が所定の温度に維持された処理空間を有する装置建屋を有しており、
前記冷却部および前記破砕部は、
前記装置建屋の処理空間内に設置されている
ことを特徴とする請求項1記載の廃電線の処理設備。
【請求項14】
前記冷却部から前記破砕部に対して移動する際に、前記保持容器内の廃電線に液体窒素を噴きつける噴き付けるノズルを備えている
ことを特徴とする請求項13記載の廃電線の処理設備。
【請求項15】
前記装置建屋は、
前記処理空間内が外部と気密に維持され、該処理空間内で発生した液体窒素が該処理空間外に漏れることを防止する機能を有している
ことを特徴とする請求項14記載の廃電線の処理設備。
【請求項16】
銅線と銅線を被覆する被覆材からなる廃電線を液体窒素に浸漬し被覆材を該被覆材の脆性温度以下まで冷却する冷却工程と、
冷却工程によって冷却した廃電線に力を加えて被覆材を破砕する破砕工程と、
破砕工程で破砕された被覆材を銅線から分離して銅線を回収する回収工程と、を順に実施する
ことを特徴とする廃電線の処理方法。
【請求項17】
前記破砕工程では、
請求項1に記載された破砕部によって廃電線に力を加えて被覆材を破砕する作業を実施する
ことを特徴とする請求項16記載の廃電線の処理方法。
【請求項18】
廃電線を液体窒素から取り出した後、廃電線に液体窒素を噴きつけながら、または、液体窒素を供給した空間で破砕工程を実施する
ことを特徴とする請求項16記載の廃電線の処理方法。
【請求項19】
破砕工程を実施したのち、再度冷却工程で廃電線を冷却し、
再度冷却された廃電線に対して破砕工程を実施する
ことを特徴とする請求項16記載の廃電線の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃電線の処理設備および廃電線の処理方法に関する。さらに詳しくは廃電線から銅線を回収する廃電線の処理設備および廃電線の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
脱炭素社会への取り組みが加速する中、銅の重要性が増している。とくに、電気自動車ではモータやワイヤーハーネス等の銅の使用量がガソリン車の3~4倍にのぼるとされており、電気自動車の普及を想定した場合、銅の需要は大幅に拡大することが想定される。しかし、電線の原料となる銅の資源は限られており、銅鉱山から生産される銅だけでなく、産業廃棄物として回収された廃電線から銅を回収して再利用することが求められている。
また、従来は、廃電線など産業廃棄扱い品は、海外(主に中国等)に輸出して資源の仕分け、選別回収が行われていたが、相手国にて輸入規制が厳しくなり、国内での仕分け選別回収する必要となり、廃電線の回収も自動化が求めらる背景がある。
【0003】
廃電線では、銅線がポリ塩化ビニール(PVC)やポリエチレン(PE)等の樹脂によって被覆されているため、廃電線から銅を回収する際には、被覆していた樹脂と銅線を分離する必要がある。廃電線がある程度の太さを有する場合には、廃電線中の銅線を樹脂から引き抜くことによって銅線を回収することもできるが、細い廃電線ではこの方法で銅線を回収することは難しい。
【0004】
一方、上述した方法とは異なる方法で、廃電線から銅線を回収する方法として、特許文献1~3に記載の方法がある。特許文献1~3には、廃電線や廃電線を含む廃棄物を細かく裁断し、裁断物を液体窒素に浸漬して樹脂等の脆化温度以下まで冷却した後、裁断物に力を加えて樹脂等を破壊することによって、銅線から樹脂等を除去する方法が開示されている。
【0005】
しかし、特許文献1~3の方法では、廃棄物を細かく裁断しているので、銅線と樹脂等とが分離されたとしても、銅線と樹脂とを分けて回収する際における銅線の回収効率が悪く回収のために余分な工程や装置が必要になる。また、より細い廃電線の場合、粉砕の裁断にも限界がある。
【0006】
一方、特許文献4には、廃電線を電線の状態のままで冷却手段によって-50~-30℃に冷却したのち脆化した被覆などを破砕して線状の銅線を回収する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000-312836号公報
【特許文献2】特開2001-283661号公報
【特許文献3】韓国公開特許第10-2015-0066418号公報
【特許文献4】特開平10-225675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献4には、単に廃電線を電線の状態を維持したままで冷却して破砕することが開示されているだけである。つまり、特許文献4には、廃電線を電線の状態を維持したままで冷却すれば被覆材が完全に脆化し、脆化した被覆材に破砕力を加えれば被覆材は簡単に電線から剥がれ落ちるだろうという期待が開示されているだけであり、特許文献4の方法では、実際に電線の状態を維持したままで廃電線から被覆材を取り除くことは困難である。とくに、特許文献4に開示されているような-50~-30℃に廃電線を冷却しただけでは被覆材を被覆材などを完全に脆化することはできない可能性が高いし、また、被覆材などをある程度は脆化することができたとしても破砕するまでの間に一旦冷却した被覆材が元の温度に戻ってしまい破砕力を加えても被覆材などを破砕できない可能性が高い。
【0009】
以上のように、特許文献4には、被覆されている廃電線を冷却し電線の状態を維持したままで被覆材を脆化して電線から除去するという期待は開示されているものの、電線の状態を維持したまま被覆材を電線から除去する実現可能な技術は開発されておらず、かかる技術の開発が求められている。
【0010】
本発明は上記事情に鑑み、廃電線から電線の状態を維持したまま樹脂などの被覆材を銅線から除去して銅線を回収する廃電線の処理設備および廃電線の産業用に適し、環境にもやさしい処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の廃電線の処理設備は、銅線と銅線を被覆する被覆材からなる廃電線から銅線を回収する廃電線の処理設備であって、廃電線を液体窒素に浸漬し被覆材を該被覆材の脆性温度以下まで冷却する冷却部と、該冷却部で冷却された廃電線に力を加えて被覆材を破砕する破砕装置を備えた破砕部と、を備えており、該破砕部は、前記冷却部で冷却された廃電線を挟んで加圧する、互いに平行な回転軸を有する一対のローラを有するローラ対を備えていることを特徴とする。
本発明の廃電線の処理方法は、銅線と銅線を被覆する被覆材からなる廃電線を液体窒素に浸漬し被覆材を該被覆材の脆性温度以下まで冷却する冷却工程と、冷却工程によって冷却した廃電線に力を加えて被覆材を破砕する破砕工程と、破砕工程で破砕された被覆材を銅線から分離して銅線を回収する回収工程と、を順に実施することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の廃電線の処理設備によれば、廃電線をそのまま供給すれば、廃電線から被覆材を除去することができるので、廃電線から銅線を回収する処理を簡素化できる。
本発明の廃電線の処理方法によれば、廃電線の銅線から被覆材を簡単に除去することができるし、しかも、廃電線をそのまま処理することができるので、電線全てを細かく裁断粉砕してする分離する方式よりも廃電線から銅線を回収する処理を簡素化できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施形態の廃電線の処理方法のフローチャートである。
【
図2】本実施形態の廃電線の処理設備1の概略構成図である。
【
図4】他の実施形態の廃電線の処理設備1Bの概略説明図である。
【
図5】破砕部50の概略説明図であり、(A)は平面図であり、(B)は(A)のB-B線矢視図である。
【
図6】一対のローラ53,54の概略説明図であり、(A)は回転軸53a,53bを軸方向から見た図であり、(B)一対のローラ53,54の一部分の概略平面図であり(C)は(A)のX部分の拡大図である。
【
図7】一対のローラ53,54の概略説明図であり、(A)は平面図であり、(B)は(A)のB部分の拡大図である。
【
図8】複数のローラ対52A,52Bを有する破砕部50Bの概略説明図である。
【
図11】ローラ対52Cの一対のローラ53C,54C間の距離を調整した状態の概略説明図である。
【
図12】(A)は破砕板53eの概略説明図であり、(B)は(A)B部分の概略説明図である。
【
図13】(A)は破砕板53fの概略説明図であり、(B)は(A)B部分の概略説明図である。
【
図14】(A)は破砕板53gの概略説明図であり、(B)は(A)B部分の概略説明図である。
【
図15】ローラ対52Cの一対のローラ53C,54Cの噛み合わせを半径方向から見た状態の拡大説明図である。
【
図16】(A)はローラ53Dの表面の拡大斜視図であり、(B)はローラ53Cの表面の拡大斜視図である。
【
図17】(A)は破砕板53j,53kの概略説明図であり、(B)は(A)のB部分の概略説明図であり、(C)は(A)のC部分の概略説明図である。
【
図18】供給機構60を有する処理設備1Cの概略説明図であって、保持容器7が冷却位置に配置されている状態の概略説明図である。
【
図19】供給機構60を有する処理設備1Cの概略説明図であって、保持容器7が供給位置に配置されている状態であって保持容器7を転回している状態の概略説明図である。
【
図20】供給機構60を有する処理設備1Cの概略説明図であって、保持容器7が供給位置に配置されている状態であって保持容器7を転回している状態の概略説明図である。
【
図21】処理設備1Cの破砕部50と投入部65の概略拡大説明図である。
【
図22】処理設備1Cの投入部65の概略拡大説明図である。
【
図23】
図18のXXIII-XXIII線概略矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本実施形態の廃電線の処理方法は、廃電線から被覆材を除去して銅線を回収する方法であり、処理前の廃電線に特別な処理などをすることなく、電線の状態を維持したまま銅線を回収できるようにしたことに特徴を有している。
【0015】
本実施形態の廃電線の処理方法で処理される廃電線はとくに限定されない。被覆材から廃電線を引き抜くことが困難である細い廃電線(例えば、線径が10mm以下の廃電線)や、解すことが難しい状態(複数の電線が絡まっていたり、ツイストペアケーブルなど複雑に撚り込まれたりしている状態)の廃電線の処理を行うこともできる。
【0016】
また本明細書にいう、「電線の状態を維持したまま」とは、電線が一定以上の長さを有している状態を意味している。例えば、被覆材が除去された銅線の軸方向の長さが100mm以上である場合を意味している。
【0017】
<本実施形態の廃電線の処理設備1>
まず、本実施形態の廃電線の処理方法を実施できる処理設備1、つまり、本実施形態の廃電線の処理設備1を説明する。
【0018】
図2に示すように、本実施形態の廃電線の処理設備1(以下単に処理設備1という場合がある)は、銅線CWと銅線CWを被覆する被覆材Dとからなる廃電線EWから銅線CWを回収する設備である。
【0019】
<装置ライン2>
図2において、符号2は、処理設備1の装置ラインを示している。この装置ライン2は、外部と気密に隔離され、かつ、外部と熱的に分離された処理空間2hを有している。つまり、装置ライン2は、処理空間2h内で発生した窒素ガスが外部に漏れることを防止でき(気密性)、かつ、処理空間2h内を所定の温度(例えば-50°以下)に維持することができる機能(断熱性、保冷性)を有している。処理設備1は、投入部3と、冷却部4と、破砕部5と、回収部6と、を備えている。この投入部3、冷却部4、破砕部5、回収部6のうち、投入部3と回収部6は装置ライン2の処理空間2hの外部に設けられており、冷却部4と破砕部5は装置ライン2の処理空間2h内に設けられている。
【0020】
なお、装置ライン2には、保持容器7を投入部3から冷却部4に搬送する際に開閉するゲートや保持容器7を破砕部5から回収部6に搬送する際に開閉するゲートを備えている。各ゲートは、ゲートを開けば処理空間2h内と外部とを連通でき、ゲートを閉じれば処理空間2h内と外部とを気密に遮断できるようになっている。
【0021】
<保持容器7>
この処理設備1は、処理対象となる廃電線EWを収容する保持容器7を備えている。この保持容器7は、後述する液体窒素に保持容器7を浸漬すると内部に液体窒素が入り、かつ、後述するように底部の孔を通して廃電線EWから分離された被覆材Dを外部に排出できる構造を有している。保持容器7としては、例えば、網状の部材で箱状に形成された容器や、内部と外部とを連通する孔を有する容器(例えば、底がパンチングプレートや格子状の部材で形成されたもの等)を挙げることができる。
【0022】
<移動機構>
処理設備1は、保持容器7を、投入部3と、冷却部4と、破砕部5と、回収部6と、の間で移動させる移動機構を備えている。この移動機構は、廃電線EWを収容した状態で保持容器7を移動させることができるものであればよく、その構成はとくに限定されてない。後述するように、保持容器7を冷却部4の浸漬槽4aに浸漬でき、かつ、破砕部5において保持容器7内に収容されている状態の廃電線EWに対して被覆材Dを破砕できる力を加えられるように、保持容器7を搬送できる構成であればよい。
【0023】
<投入部3>
投入部3は、保持容器7に廃電線EWを供給する設備である。投入部3は、例えば、シュート等を介して架台等に載せた状態の保持容器7に廃電線EWを供給できる構成を有している。なお、保持容器7に廃電線EWを供給する構成はとくに限定されない。
なお、投入部3は、必ずしも設けなくてもよく、冷却部4の液体窒素内に直接廃電線EWを投入するようにしてもよい。例えば、保持容器7を冷却部4の浸漬槽4a内の液体窒素にあらかじめ浸漬させておき、その状態で冷却部4の浸漬槽4aに直接廃電線EWを投入するようにしてもよい。
【0024】
<冷却部4>
冷却部4は、投入部3において廃電線EWが供給された保持容器7が供給される設備である。この冷却部4は、液体を収容できる収容空間4hを有する浸漬槽4aを備えている。この浸漬槽4aは、上部に開口を有しこの開口から収容空間4h内に保持容器7を入れることができる構造を有している(
図2の冷却部4の上段の浸漬槽4a参照)。冷却部4は、浸漬槽4aの収容空間4h内に液体窒素を供給する液体窒素供給機能を有している。この液体窒素供給機能によって液体窒素を浸漬槽4aの収容空間4h内に供給することにより、浸漬槽4aの収容空間4h内に所定の量の液体窒素を貯留しておくことができるようになっている。
【0025】
この冷却部4は、浸漬槽4aを上下に昇降する昇降機構を有しており、保持容器7を浸漬槽4aの上部に配置し浸漬槽4aを上昇させれば、浸漬槽4a内に貯留されている液体窒素に保持容器7を浸漬でき(
図2の冷却部4の上段の浸漬槽4a参照)、浸漬槽4aを下降させれば昇浸漬槽4a内の液体窒素から保持容器7を離脱させることができるようになっている(
図2の冷却部4の下段の浸漬槽4a参照)。つまり、浸漬槽4aを昇降させれば、保持容器7内の廃電線EWを収容空間4h内の液体窒素に浸漬して廃電線EWを冷却したり保持容器7内の廃電線EWを液体窒素から離脱させたりすることができる。
【0026】
なお、浸漬槽4aを構成する素材はとくに限定されず、液体窒素を収容した状態でも所定の強度を保つことができる素材によって形成されていればよい。例えばステンレス鋼や断熱材で形成された容器等を浸漬槽4aとして使用することができる。
【0027】
また、浸漬槽4a内に貯留される液体窒素の量はとくに限定されない。保持容器7内に保持されている廃電線EWを浸漬槽4aの収容空間4h内の液体窒素に所定の時間だけ浸漬すれば、保持容器7内に保持されている廃電線EWの被覆材Dを脆性温度以下まで冷却することができる量だけ貯留されていればよい。なお、液体窒素は保持容器7を浸漬した際、また、時間の経過とともに蒸発するので、浸漬槽4aには所定の貯留量を満たすように、適宜、液体窒素供給機能によって液体窒素が補充されるようになっている。
【0028】
また、液体窒素に廃電線EWを浸漬する時間もとくに限定されない。液体窒素から離脱した後、後述する破砕部5に廃電線EWが投入されるまでの間(つまり破砕部5によって加圧されるまでの間)は廃電線EWの被覆材Dを脆性温度以下に維持できるように廃電線EWの被覆材Dの温度を低下させることができる時間(以下、理想浸漬時間という場合がある)であればよい。なお、液体窒素に浸漬される全ての廃電線EWの被覆材Dが上記状態になることが望ましいが、必ずしも全ての廃電線EWの被覆材Dが上記状態にならなくてもよい。つまり、一部の廃電線EWの被覆材Dは、破砕部5に廃電線EWが投入されるまでの間にその脆性温度よりも高くなっていてもよい。この場合、被覆材Dがその脆性温度よりも高くなった廃電線EWは被覆材Dが破砕できず被覆材Dが銅線CWから除去できない状態となるが、再度冷却部4で被覆材Dが上記状態になるように冷却して破砕部5において被覆材Dを破砕すればよい。
【0029】
<破砕部5>
破砕部5は、冷却部4で冷却された廃電線EWを保持した保持容器7が供給される設備である。破砕部5は、冷却部4で冷却された廃電線EWの被覆材Dを破砕するものである。この破砕部5は、保持容器7が収容され保持容器7を下方から支持するトレー5tと、冷却部4で冷却された廃電線EWに力を加えて破砕する破砕装置5aとを備えている。この破砕装置5aは、このトレー5t上に支持されている保持容器7内の廃電線EWに破砕部材dを押し付ける機能を有している。つまり、破砕装置5aは、冷却部4で冷却された廃電線EWを保持容器7に保持した状態で、破砕部材dと保持容器7の底部との間に廃電線EWを挟んで加圧する機能を有している。
【0030】
なお、廃電線EWは液体窒素で冷却されており被覆材Dは脆性破壊する温度(脆性温度)以下になっているので、被覆材Dを加圧すると、被覆材Dは破砕されて、被覆材Dは廃電線EWから分離される。
【0031】
また、トレー5tは、廃電線EWから分離され保持容器7の底部の孔から落下した被覆材Dを保持しておくことができる機能を有していればよく、その形状や素材はとくに限定されない。例えば、トレー5tには、底に孔等を有しない容器などのように、被覆材Dが透過しないように形成された容器を使用することができる。
【0032】
<回収部6>
回収部6は、破砕部5で被覆材Dが破砕された廃電線EWを収容した保持容器7がトレー5tとともに供給される設備である。この回収部6は、保持容器7とともに供給されたトレー5tを保持容器7から分離する機構を有している。つまり、回収部6は、保持容器7は所定の位置に保持したままで、トレー5tだけを下降させる機能を有している。被覆材Dは保持容器7を透過してトレー5t上に落下しているので、トレー5tだけを下降させれば、廃電線EWから被覆材Dを分離でき、銅線CWは保持容器7内に保持されたままになる。したがって、回収部6では銅線CWと被覆材Dを分離して、それぞれ別々に回収することができる。
【0033】
<廃電線の処理方法>
上記のような本実施形態の廃電線の処理設備1を使用すれば、廃電線EWから被覆材Dを分離して銅線CWを回収することができる(
図1および
図2参照)。
【0034】
まず、投入部3に保持されている保持容器7内に廃電線EWを供給する。このとき、とくに事前処理をせず、廃電線EWを保持容器7内に供給する(供給工程S1)。
【0035】
保持容器7に廃電線EWが供給されると、保持容器7は移動機構によって装置ライン2内の冷却部4に搬送される。冷却部4に搬送された保持容器7は、浸漬槽4aの上方の所定の位置に配置される。すると、浸漬槽4aが昇降機構によって上昇され、浸漬槽4a内の液体窒素に保持容器7内の廃電線EWが全て浸漬された状態となると、浸漬槽4aの上昇が停止する。そして、保持容器7内の廃電線EWの被覆材Dが脆性温度以下となるまで(好ましくは理想浸漬時間の間)、浸漬槽4aは上昇した状態で維持される(冷却工程S2)。なお、液体窒素は-196℃以下であるので、一般的な被覆樹脂の脆化温度(約-50℃)や特殊な樹脂の脆化温度(-150℃)以下まで冷却できるので、廃電線EWの被覆材Dを脆性温度以下とすることができる。
【0036】
保持容器7内の廃電線EWがその被覆材Dが脆性温度以下となるまで冷却されると、浸漬槽4aが下降され、保持容器7が浸漬槽4aから離脱すると、保持容器7は破砕部5まで移動される。破砕部5では破砕装置5aのトレー5tの位置まで保持容器7が移動され、保持容器7はトレー5t上に配置される。すると、破砕装置5aの破砕部材dによって廃電線EWが保持容器7の底との間に挟まれて、被覆材Dが破砕される(破砕工程S3)。なお、破砕された被覆材D、つまり、廃電線EWから分離された被覆材Dは、保持容器7の底の孔を通過するが、トレー5tに受け止められる。
【0037】
破砕工程S3で被覆材Dが破砕されると、保持容器7はトレー5tとともに移動機構によって装置ライン2外の回収部6まで搬送される。回収部6まで保持容器7およびトレー5tが移動すると、保持容器7を所定の位置に保持したままで、トレー5tだけが下降される。すると、廃電線EWから分離された被覆材Dはトレー5tとともに銅線CWから分離されるので、保持容器7から銅線CWを取り出せば、廃電線EWから被覆材Dが除去された銅線CWを回収できる。
【0038】
以上のように、本実施形態の廃電線の処理設備1によれば、廃電線EWの銅線CWから被覆材Dを簡単に除去することができるし、廃電線EWに特別な処理をしなくても、廃電線EWから銅線CWを回収する処理を簡素化できる。
【0039】
<装置ライン2について>
上記例では、装置ライン2の処理空間2h内に冷却部4と破砕部5とだけを設けた場合を説明したが、装置ライン2内に投入部3と回収部6も設けてもよい。
【0040】
また、装置ライン2に、処理空間2h内に液体窒素を噴き出すノズル9を設けてもよい。例えば、冷却部4の液体窒素から取り出された廃電線EWが破砕部5に搬送される途中でノズル9から液体窒素を破砕部5に搬送される廃電線EWに噴き付けるようにしてもよい。かかるノズル9を設ければ、ノズル9から噴出される液体窒素により処理空間2h内を低温に維持できるので、冷却部4の液体窒素から取り出された後でも、廃電線EWの被覆材Dを脆性温度以下に維持し易くなる。したがって、廃電線EWの被覆材Dを破砕部5によって破砕し易くなる。とくに、破砕部5の破砕装置5aによって廃電線EWに力を加えている間も、ノズル9によって保持容器7内の廃電線EWに液体窒素を噴き付けるようにすれば、廃電線EWの被覆材Dの温度が脆性温度以上になることを防止し易くなる。特に細線においては、冷却後脆性温度帯からの温度上昇が早く維持しずらいので冷却用のノズル9による液体窒素の噴き付けは効果的である。
【0041】
さらに、装置ライン2は、処理空間2h内で発生した窒素ガスを処理する排気ファン等の排気装置を備えていることが望ましい。例えば、装置ライン2に排気装置を設けておけば、装置ライン2の処理空間2h内の気体、つまり、液体窒素が蒸発して発生した窒素ガスを処理空間2外に放出できるので、処理空間2h内の窒素ガスの濃度や内部圧力をある程度の範囲に維持することができる。この場合、排気装置は、装置ライン2外の空間、つまり、作業者が通常の作業を行う空間に窒素ガスを放出しない、または、窒素ガスが放出されても装置ライン2外の空間の窒素ガス濃度が一定の濃度以下にとなるように窒素ガスを放出する機能を有することが必要になる。
【0042】
さらに、装置ライン2の壁面等には、公知の破裂板や安全弁などを設けておくことが望ましい。かかる破裂板や安全弁を設けておけば、万が一、液体窒素が大量に蒸発して処理空間2h内の圧力が想定以上に高くなった場合でも、装置ライン2が破裂するなどの問題が生じることを防止できる。
【0043】
さらに、装置ライン2には、処理空間2h内の状況、例えば、冷却工程や破砕工程における処理の状況等が確認できる覗き窓を設けてもよい。かかる覗き窓を設ければ、冷却工程や破砕工程の処理の不具合を目視で確認できるので、操業の安定性や安全性を確保し易くなる。もちろん、処理空間2h内に監視カメラ等を設けて、冷却工程や破砕工程における処理の状況等をリモートで確認するようにしてもよい。
【0044】
<冷却部4について>
上記例では、浸漬槽4aを上昇させて液体窒素に保持容器7を浸漬させる構成としたが、浸漬槽4aを移動させず、保持容器7を下降させて液体窒素に保持容器7を浸漬する構成としてもよい。
【0045】
また、廃電線EWの被覆材Dの冷却は、廃電線EWを液体窒素に浸漬する方法が望ましいが、廃電線EWの被覆材Dを脆性破壊する温度まで低下させることができる方法であれば、他の方法を採用することも可能である。しかし、液体窒素に廃電線EWを浸漬する方法であれば、液体窒素と廃電線EWの被覆材Dとをより確実かつ密接に接触させることができ、冷却不良となる廃電線EWを少なくできる。
【0046】
<破砕部5について>
上記例では、保持容器7に収容された状態の廃電線EWに破砕装置5aによって力を加えて被覆材Dを破砕する構成としたが、破砕部5では、保持容器7から廃電線EWを取り出してから、破砕装置によって力を加えるようにしてもよい。例えば、コンベア等の上に保持容器7から取り出した廃電線EWを載せて、コンベア上で廃電線EWに力を加える構成としてもよい。この場合には、コンベアによって廃電線EWを回収部6に供給して、コンベアから回収部6に廃電線EWを排出する際や排出した後に、篩等によって被覆材Dと銅線CWとを分けるようにすることができる。
【0047】
<回収部6について>
回収部6は、保持容器7に振動を加える振動機構を設けてもよい。振動機構を設ければ、銅線CWから分離された被覆材Dが銅線CWに引っ掛かっていても、かかる被覆材Dを銅線CWから分離して除去することができる。つまり、被覆材Dを銅線CWから分離する効率を向上できる。
【0048】
また、上記例では、保持容器7が、被覆材Dを底部の孔を通して外部に排出できる構造を有する場合を説明したが、保持容器7は、底部に被覆材Dが透過できる孔を有しない構成としてもよい。この場合には、保持容器7から被覆材Dと銅線CWの両方が供給される篩などを回収部6に設けて、この篩によって被覆材Dと銅線CWとを分離して、銅線CWを回収するようにしてもよい。
【0049】
<複数回の冷却について>
上記例では、冷却工程S2および破砕工程S3を一回だけ行う場合を説明したが、冷却工程S2および破砕工程S3を複数回行ってもよい。つまり、破砕工程S3を行った後、再度、廃電線EWを液体窒素に浸漬して冷却工程S2を実施した後、破砕工程S3を実施するようにしてもよい。かかる構成とすれば、一回の処理で被覆材Dが破砕できなかった廃電線EWであっても、再度冷却工程S2において処理し、被覆材Dを脆性温度以下としてから破砕することも可能になるので、被覆材Dを銅線CWから分離する効率を高くできる。例えば、破砕工程S3を実施している間に被覆材Dの温度が脆性温度より高くなったり破砕工程S3まで搬送する間に被覆材Dの温度が脆性温度より高くなったりした廃電線EWが存在する場合がある。この場合には、破砕できなかった被覆材Dが付着している廃電線EWを再度冷却工程S2において処理し、被覆材Dを脆性温度以下としてから破砕することも可能になる。
【0050】
冷却工程S2および破砕工程S3を複数回行う方法はとくに限定されない。例えば、上述した処理設備1であれば、破砕部5で廃電線EWを処理したのち、保持容器7だけを冷却部4に搬送すれば、上述した方法で冷却工程S2と破砕工程S3とを再度実施することができる。
【0051】
また、破砕部5で廃電線EWを処理したのち、回収部6で破砕された被覆材Dと被覆材Dが除去された銅線CWとを保持容器7から取り除いた後、保持容器7を冷却部4に搬送すれば、被覆材Dが除去できなかった廃電線EWだけを冷却工程S2および破砕工程S3で再度処理することができる。この場合、破砕された被覆材Dや被覆材Dが除去された銅線CWを完全に保持容器7から取り除かなくてもよい。
【0052】
<他の実施形態の廃電線の処理設備1B>
上記例では、廃電線の処理設備1が、破砕部5において、保持容器7内の廃電線EWに破砕装置5aの破砕部材dを押し付けて被覆材Dを破砕する場合を説明した。つまり、廃電線EWを破砕部材dと保持容器7の底部との間に挟んで加圧することによって被覆材Dを破砕する場合を説明した。
【0053】
破砕部5において被覆材Dを破砕する方法や装置は上記の構成に限られず、廃電線EWに適切に力を加えて被覆材Dを適切に破砕することができる構成となっていればよい。
【0054】
例えば、
図4に示す廃電線の処理設備1Bのように、ローラ対52によって廃電線EWの被覆材Dを破砕する装置を破砕部50として採用してもよい。以下、廃電線の処理設備1Bの破砕部50を説明する。
【0055】
なお、廃電線の処理設備1Bにおいて、投入部3や冷却部4の構成は実質的に廃電線の処理設備1と同じ構成であるので、説明は割愛する。
【0056】
また、廃電線の処理設備1Bの破砕部50は、冷却部4で冷却された廃電線EWを保持する保持容器7のままで廃電線EWを処理できないので、保持容器7から破砕部50に対して廃電線EWを供給することになる。このため、図示しないが、廃電線の処理設備1Bでは、保持容器7内の廃電線EWを破砕部50に供給する設備が設けられる。例えば、保持容器7を回転させて破砕部50の投入口51aに廃電線EWを投入する設備や、保持容器7内の廃電線EWを掴んで破砕部50の投入口51aに投入する設備などを設けることができる。
【0057】
<破砕部50>
図4~
図7に示すように、廃電線の処理設備1Bは、破砕部50を備えている。
この破砕部50は、ローラ間に廃電線EWを挟んで廃電線EWに力を加えて被覆材Dを破砕するものである。
【0058】
<本体ケーシング51>
図4および
図5(B)に示すように、破砕部50は、上端に投入口51aを有し、下端に排出口51bを有する本体ケーシング51を有している。この本体ケーシング51は、内部が中空な構造体である。
【0059】
<ローラ対52>
この本体ケーシング51内には、ローラ対52が設けられている。このローラ対52は、その回転軸53a,54aが互いに平行となり、かつ、本体ケーシング51に回転可能に支持された一対のローラ53,54を有している。一対のローラ53,54は、図示しないモータなどの駆動機構によって同時に回転するように設けられている。例えば、ローラ53の回転軸53aがモータなどの駆動源と連結され、図示しない伝達機構によってローラ53の回転軸53aとローラ54の回転軸54aとが互いに逆方向に回転するように連結された構成とすることができる。具体的には、ローラ54の回転軸54aはチェーン駆動機構等によって駆動機構の主軸に連結され、ローラ54の回転軸54aとローラ53の回転軸53aとは歯車によって連結される。すると、ローラ54の回転軸54aとローラ53の回転軸53aとを互いに逆方向に回転させることができる。
【0060】
かかる構成とすれば、駆動機構を作動すれば、一対のローラ53,54は互いに逆方向に回転し、
図4および
図5(B)ではローラ53が時計回り(矢印Aの方向)に回転すればローラ54を反時計回り(矢印Bの方向)に回転させることができる。すると、一対のローラ53,54を回転させた状態で本体ケーシング51の投入口51aから廃電線EWを投入すると、一対のローラ53,54の回転によって廃電線EWを一対のローラ53,54間に引き込むことができる。
【0061】
なお、駆動機構は、上述した方向と逆方向に一対のローラ53,54を回転させる機能を有していることが望ましい。つまり、駆動機構は、一対のローラ53,54を廃電線EWを引き込む方向と逆方向に回転(以下では単に逆回転という)させる機能を有していることが望ましい。かかる機能を有していれば、一対のローラ53,54間に廃電線EWが詰まった場合等に、一対のローラ53,54を逆回転させることによって、詰まった廃電線EWを一対のローラ53,54間から取り除きやすくなるという利点が得られる。
【0062】
<一対のローラ53,54>
図4~
図7に示すように、一対のローラ53,54は、実質的に同じ構造を有するローラであって、その周面に複数の突起53p,54pを有する略円筒状のローラである。この一対のローラ53,54は、複数枚の第一部材53c,54cと、複数枚の第二部材53d,54dと、回転軸53a,54aと、によって形成されている。
【0063】
回転軸53a,54aは、複数枚の第一部材53c,54cおよび複数枚の第二部材53d,54dが取り付けられる軸状の部材である。この回転軸53a,54aは、一対のローラ53,54を形成した後、上述したように本体ケーシング51に回転可能に保持され、かつ、ローラ53の回転軸53aが駆動機構に連結される。
【0064】
第一部材53cおよび第一部材54cは、中心に回転軸53a,54aを挿通する貫通孔を有する円板である。第一部材53cと第一部材54cとは、同一形状に形成されている。つまり、第一部材53cと第一部材54cとは、その厚さが同じであり、その直径も同じに形成されている。
なお、第一部材53cの周面および第一部材54cの周面が、一対のローラ53,54を形成した際に、一対のローラ53,54の表面53s,54sとなる。以下では、単に、第一部材53cの周面および第一部材54cの周面を一対のローラ53,54の表面53s,54sという場合がある。
【0065】
第二部材53dおよび第二部材54dは、周面に突起53p,54pが形成された、中心に回転軸53a,54aを挿通する貫通孔を有する円板である。言い換えれば、第二部材53dおよび第二部材54dは中心に貫通孔を有する歯車状の部材である。第二部材53dと第二部材54dとは、同一形状に形成されている。つまり、第二部材53dと第二部材54dとは、その厚さが同じであり、その表面の直径(歯車の歯底円直径に相当する直径)や突起53p,54pの先端の直径(歯車の歯先円直径に相当する直径)も同じに形成された同一形状の部材である。
【0066】
図5(A)および
図7(A)に示すように、一対のローラ53,54は、上記のような、複数枚の第一部材53c,54cと、複数枚の第二部材53d,54dと、を、回転軸53a,54aの軸方向に沿って交互に並べて形成されている。このため、一対のローラ53,54は、その表面53s,54sから、複数枚の第二部材53d,54dの突起53p,54pが突出したような構造を有するものとなる。
【0067】
そして、
図5(A)および
図7(A)に示すように、一対のローラ53,54は、複数枚の第一部材53cと複数枚の第二部材53dとが対応し、複数枚の第一部材54cと複数枚の第二部材54dとが対応するように本体ケーシング51に設置されている。つまり、ローラ53の隣接する第二部材53dの突起53p間に、ローラ54の第二部材54dの突起54pが位置するように配設されている。言い換えれば、ローラ54の隣接する第二部材54dの第二部材54dの突起54p間に、ローラ53の第二部材53dの突起53pが位置するように配設されている。
【0068】
<破砕部50の動作>
破砕部50が上記のような構造を有しているので、本体ケーシング51の投入口51aから一対のローラ53,54間に廃電線EWが供給されれば、廃電線EWが一対のローラ53,54間を通過するときに、一対のローラ53,54によって廃電線EWを加圧して、廃電線EWの被覆材Dを破砕することができる。具体的には、一対のローラ53,54の表面53s,54sと複数枚の第二部材53d,54dの突起53p,54pの先端との間に廃電線EWを挟んで加圧することができ、廃電線EWの被覆材Dを破砕することができる。また、複数枚の第二部材53dの突起53pと複数枚の第二部材54dの突起54pの間にも廃電線EWを挟んで加圧することができ、廃電線EWの被覆材Dを破砕することができる。とくに、複数枚の第二部材53d,54dの突起53p,54pの先端のエッジが廃電線EWに接触すれば、廃電線EWを強く加圧することができるので、廃電線EWの被覆材Dを破砕する効果を高くできる。
【0069】
<一対のローラ53,54について>
上記例では、一対のローラ53,54が複数枚の第一部材53c,54cと、複数枚の第二部材53d,54dと、を回転軸53a,54aの軸方向に沿って交互に並べて形成されている場合を説明した。しかし、一対のローラ53,54は、本体ケーシング51に設置した際に、式2および/または後述する式1を満たすように、表面53s,54sおよび突起53p,54pが設けられているものであればよく、その構造はとくに限定されない。例えば、滑らかな表面を有する円筒状のロールの表面に突起を形成する部材を取り付けるなどして突起を形成し一対のローラ53,54を形成してもよい。
式2
1.5<DR/W2<8
【0070】
なお、W2は、隣接する突起53p,54pの距離(回転軸53a,54aの軸方向おける距離)である(
図7(B)参照)。DRは、処理対象となる廃電線Eの外径(被覆材Dを含む外径)である。
【0071】
上記のように、DR/W2が1.5<DR/W2<8であれば適切に廃電線EWを適切に加圧できる。DR/W2は、8より小さければ適切に廃電線EWを加圧できるが、DR/W2が7より小さければより適切に廃電線EWを加圧できるし、DR/W2が6.5より小さければさらに適切に廃電線EWを加圧できる。DR/W2は、1.5より大きければ適切に廃電線EWを加圧できるが、DR/W2が2より大きければより適切に廃電線EWを加圧できるし、DR/W2が2.5より大きければさらに適切に廃電線EWを加圧でき、DR/W2が3より大きければさらに適切に廃電線EWを加圧できる。
【0072】
また、上記例では、一対のローラ53,54が同じ構造・形状を有する場合を説明したが、一対のローラ53,54は必ずしも同じ構造・形状としなくてもよい。例えば、一方のローラは上述した一対のローラ53,54と同様の構造とし、他方のローラは円筒状のロールの表面に突起を設けた構造としてもよい。また、ローラ53,54は、その表面の直径や突起の高さも異なっていてもよい。もちろん、一対のローラ53,54をいずれも上述したような板状の第一部材と第二部材で形成する場合において、ローラ53の第一部材およびローラ54の第一部材として形状などが異なるものを採用してもよいし、ローラ53の第二部材およびローラ54の第二部材として形状などが異なるものを採用してもよい。
なお、一対のローラ53,54が異なる形状となる場合でも、式2および/または後述する式1を満たすように一対のローラ53,54が本体ケーシング51に設置されていれば、外径DRの廃電線EWを適切に加圧して、被覆材Dを破砕し銅線CWから被覆材Dを除去することができる。
【0073】
<移動機構>
破砕部50は、ローラ対52の一対のローラ53,54間の距離L(
図5(A)、
図7(A)参照)、言い換えれば、各ローラ53,54の突起53p,54pと、他方のローラ53,54の表面53s,54sとの距離W1を調整する調整機構として、一対のローラ53,54の回転軸53a,54aを移動固定可能に保持する移動機構を設けておくことが望ましい。かかる移動機構を設ければ、破砕する対象となる廃電線EWの線径DRに合わせて一対のローラ53,54間の距離Lを調整できるので、廃電線EWの被覆材Dを適切に破砕することができ、廃電線EWが一対のローラ53,54間に詰まることも防止しやすくなる。
【0074】
なお、移動機構は、一対のローラ53,54の両方を移動させて一対のローラ53,54間の距離Lを調整する構成としてもよいし、一対のローラ53,54のうち一方のローラ53,54だけを移動させて距離Lを調整する構成としてもよい。
【0075】
また、移動機構は、一対のローラ53,54が一定の距離以上接近しないように一対のローラ53,54の一方または両方を移動可能に保持する機能や、一対のローラ53,54が一定の距離以上離間しないように一対のローラ53,54の一方または両方を移動可能に保持する機能を有していることが望ましい。
【0076】
<付勢機構>
破砕部50に、移動機構を設けた場合、一対のローラ53,54間の距離Lを所定の距離で固定してもよいし、一対のローラ53,54の距離Lが所定の範囲で移動できるように設けてもよい。一対のローラ53,54の距離Lが所定の範囲で移動できるように設けた場合、一対のローラ53,54を接近させるように一対のローラ53,54の両方または一方のローラ53,54を他方のローラ53,54に向けて付勢する付勢手段を設ける。例えば、ローラ54は移動可能としローラ53は移動を固定する。そして、ローラ54をローラ53に向かって付勢する(押し付ける)ばねやシリンダ機構等を付勢機構として設ける。すると、一対のローラ53,54間に廃電線EWが挟まれた際に、廃電線EWが所定の範囲の線径DRであれば、廃電線EWの線径DRに応じて一対のローラ53,54から適切な力を加えることができる。もちろん、一対のローラ53,54の両方が移動できるようにして、一対のローラ53,54の両方を他方のローラ53,54に向かって付勢する(押し付ける)ばねやシリンダ機構等を設けてもよい。
【0077】
また、付勢機構を設ける場合には、移動機構は、付勢機構に加わる反力が一定以上になると、一対のローラ53,54間の距離Lが変更されるような機能を有していることが望ましい。つまり、付勢機構に加わる反力が一定以上になると、一対のローラ53,54間の距離Lを所定の距離よりも長くするように、一対のローラ53,54の両方または一対のローラ53,54のうちいずれか一方を移動させる機能を移動機構に設けることが望ましい。移動機構にかかる機能を設ければ、想定以上の量の廃電線EWや想定を超える線径の廃電線EWが一対のローラ53,54間に供給された場合でも、破砕部50の損傷を防止できるという利点が得られる。
【0078】
付勢機構はとくに限定されないが、上記のように、ある程度の範囲で一対のローラ53,54を移動できるようにする上では、ばねやエアシリンダ機構が望ましい。
【0079】
上述した所定の距離は、例えば、廃電線EWの外径(つまり被覆材Dを含む外径)をDRとした場合には、以下の式1を満たす距離が望ましい。つまり、式1または式1と式2の両方を満たすように一対のローラ53,54を形成し、式1を満たすように一対のローラ53,54間の距離Lを移動機構や付勢機構を利用して本体ケーシング51に設置することが望ましい。このように所定の距離が式1を満たすようにすると、外径DRの廃電線EWを適切に加圧して、被覆材Dを破砕し銅線CWから被覆材Dを除去することができる。
式1
1.5<DR/W1<8
【0080】
なお、W1は、一対のローラ53,54の表面53s,54sと複数枚の第二部材53d,54dの突起53p,54pの先端が最も接近した状態での距離である(
図7(B)参照)。つまり、一対のローラ53,54の回転軸53a,54aの中心軸を含む面において、複数枚の第二部材53d,54dの突起53p,54pの先端が一対のローラ53,54の表面53s,54sに最も接近した状態での距離がW1になる(
図7(B)参照)。
【0081】
上記のように、DR/W1が1.5<DR/W1<8であれば外径DRの廃電線EWを適切に加圧できる。DR/W1が8よりも小さければ適切に廃電線EWを加圧できるが、DR/W1が7よりも小さければより適切に廃電線EWを加圧できるし、DR/W1が6.5よりも小さければさらに適切に廃電線EWを加圧できる。DR/W1が1.5よりも大きければ適切に廃電線EWを加圧できるが、DR/W1が2よりも大きければより適切に廃電線EWを加圧できるし、DR/W1が2.5よりも大きければさらに適切に廃電線EWを加圧でき、DR/W1が3よりも大きければさらに適切に廃電線EWを加圧できる。
【0082】
なお、一対のローラ53,54間の距離Lが固定されている場合であれば、DR/W1が3程度までは廃電線EWを適切に処理することが可能であるし、DR/W1が2~2.5であっても銅線CWや被覆材Dの状態によっては適切に処理することが可能である
【0083】
<本体ケーシング51について>
本体ケーシング51は、投入口51aと排出口51bとを連通する空間51hを有し、その空間51h内にローラ対52を安定して保持しておくことができるように形成されていればよく、その構造や形状、本体ケーシング51を形成する材料等はとくに限定されない。ここで、「ローラ対52を内部に安定して保持しておくことができる」とは、ローラ対52が回転した際や一対のローラ53,54間に廃電線EWが挟まれた際に、本体ケーシング51の変形や振動などによってローラ対52の一対のローラ53,54間の距離が変動しないような剛性を有することを意味している。
【0084】
なお、「ローラ対52を内部に安定して保持しておくことができる」には、移動機構によって一対のローラ53,54間の距離が変更できる場合には、移動機構による一対のローラ53,54を安定して移動させることができることも含んでいる。例えば、移動機構が、廃電線EWに一対のローラ53,54から加わる反力が所定の力よりも大きくなると、一対のローラ53,54をその半径方向に沿って離間させる機能を有しているとする。この場合には、一対のローラ53,54がその半径方向に沿って離間する場合に、移動機構が安定して一対のローラ53,54を離間させることができる場合も、「ローラ対52を内部に安定して保持しておくことができる」に含まれる。
【0085】
<回収部について>
上述した廃電線の処理設備1Bでは、廃電線の処理設備1における回収部6に相当する設備は設けていない。上述したように、破砕部50では、破砕部50の排出口51bから、破砕された被覆材Dと被覆材Dが除去された銅線CW、また、被覆材Dが十分に除去できていない廃電線EW(処理不良の廃電線EW)が混在する状態で排出されるので、排出口51bの下方に回収トレー56に設けておけば、銅線CW等が混在した状態で銅線CW等を回収トレー56に回収することができる。したがって、銅線CW等を回収する場合には、回収トレー56を廃電線の処理設備1Bから搬出し、別の装置や設備で銅線CW等を分離してもよい。例えば、処理不良の廃電線EWが含まれている場合であれば、別の装置や設備において処理不良の廃電線EWをこするなどして摩擦力を加えれば、銅線CWから被覆材Dを除去することができる場合がある。
【0086】
もちろん、廃電線の処理設備1Bにも、廃電線の処理設備1の回収部6のように、回収トレー56内の被覆材Dと銅線CW(処理不良の廃電線EWを含む)とを分離する回収部を設けてもよい。この場合、回収トレー56を、上述した廃電線の処理設備1のトレー5tに相当する本体容器と、この容器内に分離可能に配置される上述した廃電線の処理設備1の保持容器7に相当する分離容器と、を有するものとしてもよい。すると、回収部において分離容器を本体容器から取り外せは、銅線CWや処理不良の廃電線EWを、破砕された被覆材Dから分離して回収することが可能になる。この場合も、回収部に分離容器に振動を加える振動機構を設ければ、被覆材Dを銅線CWから分離する効率を向上できる。
【0087】
<複数段のローラ対52を有する場合>
上記例では、破砕部50がローラ対52を一つだけ設けた場合を説明したが、ローラ対52は複数設けてもよい(
図8参照)。具体的には、本体ケーシング51の投入口51aから排出口51bに向かって並ぶように(つまり上下方向に並ぶように)本体ローラ対52を複数設ければ、廃電線EWに力を複数回加えることができるので、廃電線EWから被覆材Dを除去する効率を高くできる可能性がある。この場合、複数のローラ対52は、全て同じ構造のローラ対52を設けてもよいし、ローラ対52ごとに異なる形状(例えば突起の形状や数)のローラを採用してもよい。
【0088】
また、ローラ対52の一対のローラとして、突起を有しないローラを採用することも可能である。この場合、ローラ対52のローラの表面が滑らかになっているので、ローラ対52の一対のローラ間に廃電線EWを引き込みにくい。そこで、ローラ対52の一対のローラとして突起を有しないローラを採用する場合には、複数の段のローラ対52を設けて、突起を有しないローラを採用したローラ対52の上段(つまり上流側)に、突起を有するローラを採用したローラ対52を設けることが望ましい。例えば、
図8に示すように、突起を有しないローラ53B,54Bを有するローラ対52Bを設けて、このローラ対52Bの上段に、突起を有するローラ53A,54Aを有するローラ対52Aを設ける。すると、突起を有するローラ53A,54A間で処理された廃電線EWは、ローラ53A,54Aによってローラ対52Bに押し込むことができる。したがって、突起を有しないローラ53B,54Bを有するローラ対52Bであっても、ローラ対52Bのローラ53B,54B間に廃電線EWが押し込まれることによって、突起を有しないローラ53B,54Bによる廃電線EWの加圧を確実に行うことができる。
【0089】
なお、突起を有しないローラ53B,54Bを有するローラ対52Bの上段に設けるローラ対52Aは、上述したような突起53p,54pを有するローラ53,54を有するローラ対52(
図4~
図7参照)でもよいし、単に廃電線EWを引っ掛けてローラ対52Bに向かって廃電線EWを押し込む爪等を有するローラでもよい。
【0090】
<ローラ対52の構造について>
上記例では、破砕部50に設けられるローラ対52の一対のローラ53,54として、その表面53s,54sに突起53p,54pを有するものを説明した。ローラ対52の一対のローラ53,54は、その表面53s,54sに突起だけでなく凹み部を有していてもよい。以下、突起と凹み部を有する一対のローラによって構成されるローラ対52Cの一例を説明する。
【0091】
図10に示すように、ローラ対52は、一対のローラ53C,54Cから構成されている。ローラ53Cは、回転軸53aと、3種類の破砕板53e~53gと、で構成されている。また、ローラ54Cは、回転軸54aと、3種類の破砕板54e~54gと、で構成されている。ローラ53Cの回転軸53aとローラ54Cの回転軸54aとは実質的に同じものであり、ローラ53Cの3種類の破砕板とローラ54Cの3種類の破砕板実質的に同じものである。つまり、破砕板53eと破砕板54e、破砕板53fと破砕板54f、破砕板53gと破砕板54g、は実質的に同じものである。ローラ53Cとローラ54Cの相違は、両者における3種類の破砕板54e~54gの配置(回転軸53a,54aの軸方向における設置位置)のみであるので(
図15参照)、以下の説明では、ローラ53Cを代表として説明する。
【0092】
ローラ53Cは、回転軸53aの軸方向に沿って3種類の破砕板53e~53gを順番に並べて形成されている(
図15参照)。ローラ53Cの回転軸53aは、3種類の破砕板53e~53gが取り付けられる軸状の部材である。この回転軸53aは、ローラ53Cを形成した後、本体ケーシング51(
図24参照)に回転可能に保持される。
【0093】
なお、ローラ53Cでは、回転軸53aの端部(
図24(A)では上方の端部)にスプロケットspが設けられており、このスプロケットspがチェーンcnによって駆動機構Mの主軸に設けられているスプロケットMsに連結されている。また、ローラ54Cの回転軸54aとローラ53Cの回転軸53aとは歯車によって連結される。
また、ローラ54Cの回転軸54aの両端部は移動機構57によって保持されており、この移動機構57によってローラ53Cと回転軸53aとの距離L(
図11、
図24(A)参照)、つまり、ローラ53Cとローラ54Cとの間に形成される隙間52x(
図15参照)を調整できるようになっている(
図11参照)。なお、
図11では、隙間52xが(A)、(B)、(C)の順に狭くなっており、(D)では隙間52xが無い状態を閉め示している。
【0094】
図12~
図14に示すように、破砕板53e~53gは、いずれも中心に回転軸53aを挿通する貫通孔hを有する円板である。言い換えれば、破砕板53e~53gは、中心に貫通孔hを有する歯車状の部材である。破砕板53e~53gは、それぞれ中心軸(言い換えれば破砕板53e~53gの中心軸)を中心とする所定の直径の円によって形成される仮想の円筒状の面SF1に対して外方に突出した複数の突起53pと、仮想の円筒状の面から内方に凹んだ複数の凹み部53hと、が交互に形成された部材である。破砕板53e~53gは、厚さは異なるが、突起53pと凹み部53hとによって形成される歯の形状(以下単に歯の形状という)は実質的に同じ形状に形成されているが、面SF1に対する突起53pの突出量および面SFに対する凹み量が異なるものである。例えば、破砕板53e~53gにおいて、それぞれ面SF1に対する突起53pの突出量および面SF1に対する凹み部53hの凹み量を、破砕板53eでは突出量pe1および凹み量de1とし、破砕板53fでは突出量pf1および凹み量df1とし、破砕板53gでは突出量pg1および凹み量dg1とする。すると、突出量pe1,pf1,pg1が以下の式3、の関係となり、凹み量de1,df1,dg1が以下の式4の関係になるように破砕板53e~53gは形成されている。
式3
pe1>pf1>pg1
式4
de1<df1<dg1
【0095】
また、
図12~
図14に示すように、破砕板53e~53gでは、歯の形状は、いずれも中心に対する距離が異なる4つの面が所定のピッチpt(各面が設けられる中心軸周りの角度)で階段状に並ぶように形成されている。具体的には、3段の階段状の歯が形成されるように4つの面が形成されている。例えば、
図12であれば、半径R1の底面、半径R2の底面、半径R3の底面、半径R4の底面(言い換えれば歯先面)を有するように歯が形成されている。破砕板53e~53gにおける各底面の半径R1~R4、面SF1の半径RS、ピッチptは、ローラ53Cおよびローラ54Cを形成した際に、両者間に適切な隙間ができ、かつ、両者間で廃電線EWの被覆材Dに適切な力を加えることができるのであれば、その各底面の半径R1~R4やピッチptはとくに限定されない。例えば、破砕板53e~53gについて、以下の表1に示すような、ピッチptと半径R1~R4で形成することができる。
【表1】
【0096】
そして、ローラ53Cの破砕板53e~53gとローラ54Cの破砕板54e~54gは、ローラ53Cの破砕板53eとローラ54Cの破砕板54gとが対向し、ローラ53Cの破砕板53gとローラ54Cの破砕板54eとが対向し、ローラ53Cの破砕板53fとローラ54Cの破砕板54fとが対向するように、回転軸53aおよび回転軸54aにそれぞれ取り付けられている。例えば、
図15に示すような並びとなるように、破砕板53e~53gが回転軸53aに取り付けられてローラ53Cが形成され、破砕板54e~54gが回転軸54aに取り付けられてローラ54Cが形成され、上記のように破砕板53e~53gと破砕板54e~54gとが対向するように、一対のローラ53C,54Cを本体ケーシング51に配置される。
【0097】
このようにローラ53Cおよびローラ54Cを構成すれば、ローラ53Cおよびローラ54Cには
図16(B)のように島状の突起を有するような複雑な表面が形成される。したがって、
図6および
図7に示すようなローラ53,54を使用する場合に比べて、廃電線EWをローラ53Cとローラ54Cとの間の隙間に噛み込み易くなるし、廃電線EWの被覆材Dを破砕する効果を高くすることができる。なお、
図16(B)において、A、B、Cは、それぞれ、破砕板53eの半径R4の底面(つまり、破砕板53eの歯先面)、破砕板53fの半径R4の底面(つまり、破砕板53fの歯先面)、破砕板53gの半径R4の底面(つまり、破砕板53gの歯先面)に相当する面になる。
【0098】
<破砕板の枚数について>
上述したような3段の歯を有する破砕板の種類は3種類に限られず、4種類以上でもよいし2種類でもよい。廃電線EWをローラ53とローラ54との間の隙間に噛み込むことができ、廃電線EWの被覆材Dを破砕する効果を高くできる構成であればよい。例えば、
図17(B)、(C)に示すような歯型を有する2種類の破砕板53j,53kによってローラ53Dとローラ54Dと形成してもよい。このような破砕板53j,53kを使用する場合には、回転軸53aおよび回転軸54aの軸方向に沿って2種類の破砕板53j,53kを交互に取り付けて、ローラ53Dおよびローラ54Dを構成する。そして、ローラ53Dの破砕板53j(破砕板53k)とローラ54Dの破砕板53k(破砕板53j)とが対応するように、一対のローラ53D,54Dを本体ケーシング51に配置する。すると、ローラ53Dおよびローラ54Dには
図16(A)のような複雑な表面が形成されるので、廃電線EWをローラ53Dとローラ54Dとの間の隙間に噛み込み易くなるし、廃電線EWの被覆材Dを破砕する効果を高くすることができる。
【0099】
破砕板53j,53kの各底面の半径R1~R4やピッチptはとくに限定されない。例えば、破砕板53j,53kについて、以下の表2に示すような、ピッチptと半径R1~R4で形成することができる。
【表2】
【0100】
<供給機構>
廃電線の処理設備は、
図18に示すような供給機構60を有する設備(以下では処理設備1Cという)としてもよい。
【0101】
図18~
図20に示すように、処理設備1Cは、装置ライン2の処理空間2h内に、処理設備1Bと同様に、液体窒素を収容できる収容空間4hを有する浸漬槽4aを備えた冷却部4を備えている。また、処理設備1Cは、装置ライン2の処理空間2h内に、処理設備1Bと同様に、一対のローラ53C,54Cを有するローラ対52Cを備えた破砕部50Cが設けられている。
【0102】
この処理設備1Cは、冷却部4で冷却された廃電線EWを破砕部50Cに供給する供給機構60を備えている。この供給機構60は、破砕部50Cに廃電線EWを供給する投入部65と、投入部65まで廃電線EWを搬送する搬送機構と、を有している。
【0103】
<搬送機構>
まず、搬送機構は、処理設備1や処理設備1Bで使用される保持容器7と実質的に同様の構造を有する保持容器7を有している。つまり、搬送機構は、液体窒素が収容されている浸漬槽4aに浸漬すると内部に液体窒素が入る構造を有する保持容器7を有している。この保持容器7は上部に開口7aを有しているので、開口7aから廃電線EWを保持容器7内に入れてその保持容器7を浸漬槽4aに浸漬すれば(
図18参照)、保持容器7内の廃電線EWを液体窒素によって冷却できる。また、保持容器7を浸漬槽4aに浸漬した状態(
図18参照)で投入口2sから開口7aを通して保持容器7内に廃電線EWを入れれば、保持容器7に投入された廃電線EWを液体窒素によって冷却できる。
【0104】
図18~
図20に示すように、供給機構60の搬送機構は、保持容器7を昇降する昇降機構61を備えている。
図23に示すように、昇降機構61は、保持容器7が連結された移動フレーム62と、一対の案内レール61r,61rと、を備えている。一対の案内レール61r,61rは、移動フレーム62の移動を案内する鉛直に配設された柱状の部材であり、互いに対向する内側の面に上下方向に沿って延びる案内溝が設けられている。この案内溝内には、案内溝に沿って移動するカム部材62cが設けられており、このカム部材62cは移動フレーム62に連結されている。また、移動フレーム62は、移動フレーム62を上下方向に移動させる駆動装置64が設けられている(
図18~20では省略している)。駆動装置64の構成はとくに限定されない。例えば、
図23に示すように、一対の案内レール61r,61r間に鉛直に配設された(つまり一対の案内レール61r,61rと平行に設けられた)ラック部材64aと、このラック部材64aと連結されたピニオンギア64bと、ピニオンギア64bが主軸に連結された駆動モータ64cと、を有する機構、つまり、ラックアンドピニオン機構を駆動装置64として採用することができる。したがって、駆動装置64を駆動すれば、保持容器7が浸漬槽4a内の液体窒素に浸漬された状態となる位置(冷却位置、
図18参照)と、保持容器7が浸漬槽4aから離脱して後述する投入部65に廃電線EWを投入できる位置(供給位置、
図19、
図20参照)との間で移動させることができる。なお、駆動装置64は前述したようなラックアンドピニオン機構に限られず、チェーン駆動機構やねじ機構などを駆動装置64として採用することも可能である。
【0105】
また、
図23に示すように、保持容器7は、移動フレーム62に水平かつ軸周りに回転可能に設けられた転回機構63の回転軸63aに固定されている。この回転軸63aは、減速機を介して転回モータ63mに連結されている。そして、転回モータ63mを駆動すると、回転軸63aが回転し、回転軸63aの中心軸周りに保持容器7が転回するようになっている。したがって、転回機構63の転回モータ63mを駆動すると、保持容器7の開口7aが上方を向いた状態から(
図18参照)、保持容器7の開口7aが側方(
図19参照)や斜め下方(
図20参照)を向いた状態、つまり、保持容器7内の廃電線EWを排出できる状態に保持容器7の姿勢を変化させることができる。
【0106】
<投入部65>
図18~
図20に示すように、供給機構60は破砕部50Cの上方に設けらえた投入部65を有している。この投入部65は、第一供給ローラ66と第二供給ローラ67とを有している。第一供給ローラ66は、破砕部50Cの一対のローラ53C,54Cの上方に設けられている。具体的には、第一供給ローラ66は、一対のローラ53C,54C間の隙間よりも上方(
図18~
図20ではローラ53Cの上方)に位置するように設けられている。
図22に示すように、この第一供給ローラ66は、破砕部50に向かう方向(
図22では矢印Aの方向)に回転するように設けられている。この第一供給ローラ66は、その外面66aに円周方向に沿って複数の凹み66gが設けられている。各凹み66gは、回転方向の前方に外面66aと交差する交差面66bを有している。例えば、交差面66bは、交差面66bと外面66aと交差面66bとが形成する端縁eにおける接面tfと交差する(例えば、交差面66bと接面tfとのなす角度θは90°±10°程度となる)ように設けられている。また、凹み66gは、交差面66bの回転方向前方側に接面tfと略平行な底面66cを有している。なお、交差面66bおよび底面66cは、第一供給ローラ66の軸方向(
図22であれば紙面と直交する方向)に沿って延びるように設けられている。
【0107】
図22に示すように、第一供給ローラ66の近傍には、第一供給ローラ66との間に隙間65hができるように第二供給ローラ67が設けられている。この第二供給ローラ67は、その断面が四角形や5角形等の多角形に形成されたローラである。つまり、第二供給ローラ67は、その外周面にエッジ67aを有するローラである。この第二供給ローラ67は、破砕部50に向かう方向と逆方向(
図22では矢印Bの方向)に回転するように設けられている。言い換えれば、第二供給ローラ67は、第一供給ローラ66の回転方向とは逆方向に回転するように設けられている。例えば、第二供給ローラ67は、好ましくは、その中心軸67sと第一供給ローラ66の中心軸66sとを結ぶ線分CL上に、第一供給ローラ66の端縁eと第二供給ローラ67のエッジ67aが同時に位置するように回転するように設けられている。
【0108】
そして、第一供給ローラ66および第二供給ローラ67の上方には、保持容器7から供給される廃電線EWを第一供給ローラ66と第二供給ローラ67との間に隙間65hに案内するシュート部材68a,68bが設けられている。
【0109】
したがって、保持容器7から廃電線EWが供給されると、シュート部材68a,68bに案内されて廃電線EWは第一供給ローラ66と第二供給ローラ67との間の隙間65hに供給される。すると、第一供給ローラ66は破砕部50に向かう方向に回転しているので、凹み66gの交差面66bに廃電線EWが引っ掛かると第一供給ローラ66の回転によって廃電線EWは隙間65hに向かって押し込まれる。したがって、隙間65hを通して廃電線EWを安定して破砕部50Cの一対のローラ53C,54C間に供給できる。しかも、第二供給ローラ67は、破砕部50に向かう方向と逆方向、言い換えれば、廃電線EWの移動方向と逆方向に回転しており、しかも、断面多角形状であり外周にエッジ67aが形成されている。すると、廃電線EWをほぐすような力を第二供給ローラ67のエッジ67aから廃電線EWに加えることができるので、詰まりにくい状態や破砕を行いやすい状態で廃電線EWを破砕部50Cの一対のローラ53C,54C間に供給することができる。したがって、廃電線EWを保持容器7からそのまま破砕部50Cの一対のローラ53C,54C間に供給する場合に比べて、廃電線EWを効率よく処理することができる。
【0110】
なお、前述した例では、保持容器7から供給される廃電線EWを第一供給ローラ66と第二供給ローラ67との間の隙間65hに案内する機構として、シュート部材68a,68bを設けた場合を説明した。シュート部材68a,68bはホッパーのような構造を輸しているが、案内する機構はかかる構造に限定されない。保持容器7から供給される廃電線EWを第一供給ローラ66と第二供給ローラ67との間の隙間65hに安定して供給でき、第一供給ローラ66および第二供給ローラ67の回転を阻害しないようになっていればよい。
【0111】
<処理設備1Cによる廃電線EWの処理作業>
処理設備1Cは、上記のような構成であるので、以下のように廃電線EWを処理することができる。
【0112】
まず、搬送機構によって保持容器7を供給位置に配置する。すると、保持容器7は、液体窒素が収容されている浸漬槽4aに浸漬された状態になる。その状態で、投入口2sから開口7aを通して廃電線EWを保持容器7内に入れれば、保持容器7に投入された廃電線EWを液体窒素によって冷却できる。
【0113】
廃電線EWが液体窒素によって所定の時間冷却されると、保持容器7は搬送機構によって供給位置まで移動される。すると、転回機構63によって保持容器7が転回し、保持容器7の開口7aから廃電線EWが投入部65のシュート部材68a,68b間に投入される。
【0114】
シュート部材68a,68bに投入された廃電線EWは凹み66gの交差面66bに引っ掛かるので、第一供給ローラ66の回転によって第一供給ローラ66と第二供給ローラ67との間の隙間65hに押し込まれる。このとき、第二供給ローラ67は破砕部50に向かう方向と逆方向に回転しているので、第二供給ローラ67のエッジ67aが廃電線EWに接触すれば廃電線EWをほぐしたりならしたりする力が加わる。
【0115】
したがって、隙間65hを通して、ある程度処理しやすい状態になった廃電線EWを破砕部50Cの一対のローラ53C,54C間に供給できるから、廃電線EWを効率よく処理することができる。
【0116】
また、第一供給ローラ66の交差面66bは接面tfと交差する面であり、その接面tfと交差面66bとのなす角度θが90°±10°程度であるので、廃電線EWが交差面66bに引っ掛かって第一供給ローラ66に絡みつくことを防止することができる。なお、接面tfと交差面66bとのなす角度θはとくに限定されず、廃電線EWが端縁eに引っ掛かって廃電線EWが第一供給ローラ66に絡みつくことが無い角度に形成されていればよい。
【0117】
<第二供給ローラ67の回転について>
前述した例では、第二供給ローラ67が破砕部50に向かう方向と逆方向(つまり第一供給ローラ66の回転方向とは逆方向)に回転するように設けられている場合を説明した。第二供給ローラ67は、破砕部50に向かう方向、つまり第一供給ローラ66の回転方向と同じ方向に回転させてもよい。この場合には、第二供給ローラ67は、その周速度(エッジ67aの移動速度)が第一供給ローラ66の周速度(端縁eの移動速度)と異なる速度となるように駆動される。すると、第一供給ローラ66による廃電線EWの移動速度と第二供給ローラ67のエッジ67aの移動速度に差が生じるので、第二供給ローラ67が第一供給ローラ66と同じ方向に回転しても、廃電線EWをほぐすような力を第二供給ローラ67のエッジ67aから廃電線EWに加えることができる。しかも、両者の周速度の差(つまりエッジ67aの移動速度と端縁eの移動速度の差)を調整すれば廃電線EWに合わせてほぐす力を調整することができる。
【0118】
<他の実施形態の廃電線の処理設備>
上述した破砕部50は、冷却された廃電線EWが供給されさえすれば、廃電線EWを処理できる。つまり、破砕部50を有する廃電線の処理設備は、
図4に示すような投入部3や冷却部4を設けなくても、廃電線EWを液体窒素に浸漬して廃電線EWを冷却できる装置を有していれば、廃電線EWを処理できる。したがって、上述した破砕部50を有する廃電線の処理設備は、廃電線EWを液体窒素に浸漬して廃電線EWを冷却する冷却部40と、上述した破砕部50と、だけで構成してもよい。この場合、冷却部で冷却された廃電線EWを破砕部50に供給する方法はとくに限定されず、上述したような保持容器に入れた状態で廃電線EWを冷却して、保持容器から廃電線EWを破砕部50に供給してもよい。また、保持容器の有無にかかわらず、廃電線EWを保持し搬送するアームを設けてこのアームによって液体窒素に浸漬されている廃電線EWを掴んで破砕部50に供給するようにしてもよい。また、作業者が火ばし等の器具を使って液体窒素に浸漬されている廃電線EWを掴んで破砕部50に供給するようにしてもよい。
【0119】
また、前述した電線の処理設備の例では、冷却部40および破砕部50が装置ライン2内で外部からある気密に遮断される場合を説明したが、冷却部40や破砕部50は必ずしも外部から気密に遮断されていなくてもよい。冷却部40や破砕部50の周囲に簡単な囲いなどを設けて、発生した窒素ガスから作業者をある程度隔離できるような環境が形成されていればよい。また、窒素ガスから作業者が悪影響を受けない状況が形成できるのであれば、冷却部40や破砕部50の周囲に囲いなどを設けなくてもよい。
【実施例0120】
本発明の方法によって、廃電線の銅線から被覆材を除去できることを確認した。
図3に示すように、束ねられた廃電線(
図3(A))を、バケツに溜められている液体窒素にそのまま浸漬して(
図3(B))、概ね1分経過後に取り出して、コンクリート上に配置し木づちで叩いた。すると、被覆材がくだけて銅線が露出する状態となった。この作業を数回繰り返した後、銅線からくだけた被覆材を除去すると、ほぼ銅線のみの状態とすることができた(
図3(C))。