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特開2024-137927蓄電デバイス用外装材、その製造方法、及び蓄電デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137927
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】蓄電デバイス用外装材、その製造方法、及び蓄電デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/131 20210101AFI20240927BHJP
   H01M 50/129 20210101ALI20240927BHJP
   H01M 50/133 20210101ALI20240927BHJP
   H01M 50/121 20210101ALI20240927BHJP
   H01G 11/78 20130101ALI20240927BHJP
【FI】
H01M50/131
H01M50/129
H01M50/133
H01M50/121
H01G11/78
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024047258
(22)【出願日】2024-03-22
(31)【優先権主張番号】P 2023046076
(32)【優先日】2023-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(72)【発明者】
【氏名】岡野 愛
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 美帆
【テーマコード(参考)】
5E078
5H011
【Fターム(参考)】
5E078AA15
5E078AB01
5E078HA02
5E078HA12
5E078HA13
5E078HA26
5H011AA02
5H011BB04
5H011CC02
5H011CC10
5H011KK00
5H011KK01
(57)【要約】
【課題】蓄電デバイスが100℃環境といった高温環境で使用された場合にも、窒素ガス又は酸素ガスの蓄電デバイス内部への透過を抑制し得る、蓄電デバイス用外装材を提供する。
【解決手段】
少なくとも、外側から、基材層、バリア層、及び熱融着性樹脂層をこの順に備える積層体から構成されており、
前記熱融着性樹脂層は、100℃環境における窒素透過量が、1000cm3/(m2・24h・atm)以下である、又は、前記熱融着性樹脂層は、100℃環境における酸素透過量が、20000cm3/(m2・24h・atm)以下である、蓄電デバイス用外装材。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、外側から、基材層、バリア層、及び熱融着性樹脂層をこの順に備える積層体から構成されており、
前記熱融着性樹脂層は、100℃環境における窒素透過量が、1000cm3/(m2・24h・atm)以下である、蓄電デバイス用外装材。
【請求項2】
前記熱融着性樹脂層は、100℃環境における酸素透過量が、20000cc/m2・24h・atm以下である、請求項1に記載の蓄電デバイス用外装材。
【請求項3】
少なくとも、外側から、基材層、バリア層、及び熱融着性樹脂層をこの順に備える積層体から構成されており、
前記熱融着性樹脂層は、100℃環境における酸素透過量が、20000cc/m2・24h・atm以下である、蓄電デバイス用外装材。
【請求項4】
前記熱融着性樹脂層は、100℃環境における窒素透過量が、1000cm3/(m2・24h・atm)以下である、請求項3に記載の蓄電デバイス用外装材。
【請求項5】
前記熱融着性樹脂層は、25℃環境における窒素透過量が、300cc/m2・24h・atm以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用外装材。
【請求項6】
前記熱融着性樹脂層は、25℃環境における酸素透過量が、5000cc/m2・24h・atm以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用外装材。
【請求項7】
前記熱融着性樹脂層は、ポリブチレンテレフタレートを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用外装材。
【請求項8】
前記熱融着性樹脂層は、未延伸ポリブチレンテレフタレートフィルムにより形成されている、請求項1~4のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用外装材。
【請求項9】
前記熱融着性樹脂層は、ホモポリブチレンテレフタレート及び共重合ポリブチレンテレフタレートの少なくとも一方を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用外装材。
【請求項10】
前記共重合ポリブチレンテレフタレートは、ポリブチレンテレフタレート構造に加えて、さらに、ポリエーテル構造及びポリエステル構造Bからなる群より選択される少なくとも1種を含み、
前記ポリエステル構造Bは、ポリブチレンテレフタレート構造とは異なる構造である、請求項9に記載の蓄電デバイス用外装材。
【請求項11】
前記ポリエステル構造Bが、イソフタル酸、ドデカンジオン酸、及びセバシン酸からなる群より選択される少なくとも1種と、1,4-ブタンジオールとの重縮合構造を備えている、請求項10に記載の蓄電デバイス用外装材。
【請求項12】
JIS K7127:1999の規定に準拠し、以下の測定方法によって測定される150℃環境でのシール強度が、40N/15mm以上である、請求項1~4のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用外装材。
<150℃環境でのシール強度の測定方法>
蓄電デバイス用外装材から、TDの方向の幅が15mmの短冊状に裁断した試験サンプルを次の手順で準備する。
前記熱融着性樹脂層同士が対向するようにして、蓄電デバイス用外装材を折り目(MDの方向の中間)の位置でMDの方向に2つ折りにする。折り目から10mmMDの方向に内側において、シール幅7mm、温度240℃、面圧とシール時間を熱融着樹脂層の厚みがシール前の厚みに対して75%以上85%以下の厚みとなる条件で熱融着性樹脂層同士をヒートシールし熱融着部を形成する。次に、TDの方向の幅が15mmとなるようにして、MDの方向に裁断して試験片を得る。次に、試験片を温度150℃の環境で2分間放置し、150℃環境において、引張り試験機で前記熱融着部の前記熱融着性樹脂層を300mm/分の速度で剥離させる。剥離時の最大強度をシール強度(N/15mm)とする。チャック間距離は、50mmとする。
【請求項13】
前記熱融着性樹脂層の厚みが、60μm以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用外装材。
【請求項14】
前記バリア層と前記熱融着性樹脂層との間に接着層をさらに備える、請求項1~4のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用外装材。
【請求項15】
前記基材層と前記バリア層との間に接着剤層をさらに備える、請求項1~4のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用外装材。
【請求項16】
前記蓄電デバイス用外装材は、全固体電池用、半固体電池用、擬固体電池用、ポリマー電池用、又は全樹脂電池用である、請求項1~4のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用外装材。
【請求項17】
少なくとも、外側から、基材層と、バリア層と、熱融着性樹脂層とがこの順に積層された積層体を得る工程を備えており、
前記熱融着性樹脂層は、100℃環境における窒素透過量が、1000cm3/(m2・24h・atm)以下である、蓄電デバイス用外装材の製造方法。
【請求項18】
少なくとも、外側から、基材層と、バリア層と、熱融着性樹脂層とがこの順に積層された積層体を得る工程を備えており、
前記熱融着性樹脂層は、100℃環境における酸素透過量が、20000cm3/(m2・24h・atm)以下である、蓄電デバイス用外装材の製造方法。
【請求項19】
前記蓄電デバイス用外装材は、全固体電池用、半固体電池用、擬固体電池用、ポリマー電池用、又は全樹脂電池用である、請求項17又は18に記載の蓄電デバイス用外装材の製造方法。
【請求項20】
少なくとも正極、負極、及び電解質を備えた蓄電デバイス素子が、請求項1~4のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用外装材により形成された包装体中に収容されている、蓄電デバイス。
【請求項21】
少なくとも正極、負極、及び電解質を備えた蓄電デバイス素子が、請求項1~4のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用外装材により形成された包装体中に収容されている、全固体電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蓄電デバイス用外装材、その製造方法、及び蓄電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、様々なタイプの蓄電デバイスが開発されているが、あらゆる蓄電デバイスにおいて、電極や電解質などの蓄電デバイス素子を封止するために外装材が不可欠な部材になっている。従来、蓄電デバイス用外装材として金属製の外装材が多用されていた。
【0003】
一方、近年、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、パソコン、カメラ、携帯電話などの高性能化に伴い、蓄電デバイスには、多様な形状が要求されると共に、薄型化や軽量化が求められている。しかしながら、従来多用されていた金属製の蓄電デバイス用外装材では、形状の多様化に追従することが困難であり、しかも軽量化にも限界があるという欠点がある。
【0004】
そこで、近年、多様な形状に加工が容易で、薄型化や軽量化を実現し得る蓄電デバイス用外装材として、基材層/バリア層/熱融着性樹脂層が順次積層されたフィルム状の積層体が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0005】
このような蓄電デバイス用外装材においては、一般的に、冷間成形により凹部が形成され、当該凹部によって形成された空間に電極や電解液などの蓄電デバイス素子を配し、熱融着性樹脂層を熱融着させることにより、蓄電デバイス用外装材の内部に蓄電デバイス素子が収容された蓄電デバイスが得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008-287971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来、基材層/バリア層/熱融着性樹脂層が順次積層されたフィルム状の積層体から構成された、蓄電デバイス用外装材の熱融着性樹脂層(シーラント層)としては、ポリプロピレンが使用されている。ポリプロピレンを用いた熱融着性樹脂層は、幅広い温度領域において安定的に蓄電デバイス素子を封止することができるという利点を有する。
【0008】
一方、蓄電デバイスの電解質(例えばリチウムを含む電解質)は、窒素ガス又は酸素ガスと反応して劣化する(例えば容量が低下する)ことが知られている。また、例えば全固体電池など、蓄電デバイスの種類によっては、例えば100℃環境といった高温環境で使用されることがある。
【0009】
ポリプロピレンは、高温環境における酸素透過量又は窒素透過量が多いことから、蓄電デバイスが高温環境で使用された場合、熱融着性樹脂層を通じて窒素ガス又は酸素ガスが蓄電デバイスの内部に透過し、電解質と反応して蓄電デバイスを劣化させることが懸念される。
【0010】
このような状況下、本開示は、蓄電デバイスが100℃環境といった高温環境で使用された場合にも、窒素ガス又は酸素ガスの蓄電デバイス内部への透過を抑制し得る、蓄電デバイス用外装材を提供することを主な目的とする。本開示は、当該蓄電デバイス用外装材の製造方法及び当該蓄電デバイス用外装材を用いた蓄電デバイスを提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の発明者らは、上記のような課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、少なくとも、外側から、基材層、バリア層、及び熱融着性樹脂層をこの順に備える積層体から構成された蓄電デバイス用外装材において、熱融着性樹脂層の100℃環境における窒素透過量を1000cm3/(m2・24h・atm)以下とすることで、蓄電デバイスが100℃環境といった高温環境で使用された場合に窒素ガスの蓄電デバイス内部への透過を抑制し得ることを見出した。また、熱融着性樹脂層の100℃環境における酸素透過量を20000cm3/(m2・24h・atm)以下とすることで、蓄電デバイスが100℃環境といった高温環境で使用された場合に酸素ガスの蓄電デバイス内部への透過を抑制し得ることを見出した。
【0012】
本開示は、これらの新規な知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。即ち、本開示は、下記に掲げる第1の態様及び第2の態様の発明を提供する。
【0013】
(第1の態様)
少なくとも、外側から、基材層、バリア層、及び熱融着性樹脂層をこの順に備える積層体から構成されており、
前記熱融着性樹脂層は、100℃環境における窒素透過量が、1000cm3/(m2・24h・atm)以下である、蓄電デバイス用外装材。
【0014】
(第2の態様)
少なくとも、外側から、基材層、バリア層、及び熱融着性樹脂層をこの順に備える積層体から構成されており、
前記熱融着性樹脂層は、100℃環境における酸素透過量が、20000cc/m2・24h・atm以下である、蓄電デバイス用外装材。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、蓄電デバイスが100℃環境といった高温環境で使用された場合にも、窒素ガス又は酸素ガスの蓄電デバイス内部への透過を抑制し得る、蓄電デバイス用外装材を提供することができる。また、本開示によれば、当該蓄電デバイス用外装材の製造方法及び当該蓄電デバイス用外装材を用いた蓄電デバイスを提供することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本開示の蓄電デバイス用外装材の断面構造の一例を示す模式図である。
図2】本開示の蓄電デバイス用外装材の断面構造の一例を示す模式図である。
図3】本開示の蓄電デバイス用外装材の断面構造の一例を示す模式図である。
図4】本開示の蓄電デバイス用外装材の断面構造の一例を示す模式図である。
図5】本開示の蓄電デバイス用外装材により形成された包装体中に蓄電デバイス素子を収容する方法を説明するための模式図である。
図6】シール強度の測定方法を説明するための模式図である。
図7】シール強度の測定方法を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本開示の第1の態様に係る蓄電デバイス用外装材は、少なくとも、外側から、基材層、バリア層、及び熱融着性樹脂層をこの順に備える積層体から構成されており、前記熱融着性樹脂層は、100℃環境における窒素透過量が、1000cm3/(m2・24h・atm)以下である。第1の態様に係る蓄電デバイス用外装材は、当該構成を備えることにより、蓄電デバイスが100℃環境といった高温環境で使用された場合にも、窒素ガスの蓄電デバイス内部への透過を抑制し得る。
【0018】
また、本開示の第2の態様に係る蓄電デバイス用外装材は、少なくとも、外側から、基材層、バリア層、及び熱融着性樹脂層をこの順に備える積層体から構成されており、前記熱融着性樹脂層は、100℃環境における酸素透過量が、20000cc/m2・24h・atm以下である。第2の態様に係る蓄電デバイス用外装材は、当該構成を備えることにより、蓄電デバイスが100℃環境といった高温環境で使用された場合にも、酸素ガスの蓄電デバイス内部への透過を抑制し得る。
【0019】
以下、本開示の蓄電デバイス用外装材について詳述する。なお、以下の説明において、第1の態様又は第2の態様に特有の事項については、それぞれ、何れの態様に関する説明であるか明示し、第1の態様及び第2の態様に共通する事項については、特に明示せずに本開示に関する説明とする。
【0020】
また、本開示において、「~」で示される数値範囲は「以上」、「以下」を意味する。例えば、2~15mmとの表記は、2mm以上15mm以下を意味する。本開示に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、別個に記載された、上限値と上限値、上限値と下限値、又は下限値と下限値を組み合わせて、それぞれ、数値範囲としてもよい。また、本開示に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0021】
なお、蓄電デバイス用外装材において、後述のバリア層3については、通常、その製造過程におけるMD(Machine Direction)とTD(Transverse Direction)を判別することができる。例えば、バリア層3がアルミニウム合金箔やステンレス鋼箔等の金属箔により構成されている場合、金属箔の圧延方向(RD:Rolling Direction)には、金属箔の表面に、いわゆる圧延痕と呼ばれる線状の筋が形成されている。圧延痕は、圧延方向に沿って伸びているため、金属箔の表面を観察することによって、金属箔の圧延方向を把握することができる。また、積層体の製造過程においては、通常、積層体のMDと、金属箔のRDとが一致するため、積層体の金属箔の表面を観察し、金属箔の圧延方向(RD)を特定することにより、積層体のMDを特定することができる。また、積層体のTDは、積層体のMDとは垂直方向であるため、積層体のTDについても特定することができる。
【0022】
また、アルミニウム合金箔やステンレス鋼箔等の金属箔の圧延痕により蓄電デバイス用外装材のMDが特定できない場合は、次の方法により特定することができる。蓄電デバイス用外装材のMDの確認方法として、蓄電デバイス用外装材の熱融着性樹脂層の断面を電子顕微鏡で観察し海島構造を確認する方法がある。当該方法においては、熱融着性樹脂層の厚み方向に対して垂直な方向の島の形状の径の平均が最大であった断面と平行な方向を、MDと判断することができる。具体的には、熱融着性樹脂層の長さ方向の断面と、当該長さ方向の断面と平行な方向から10度ずつ角度を変更し、長さ方向の断面に対して垂直な方向までの各断面(合計10の断面)について、それぞれ、電子顕微鏡写真で観察して海島構造を確認する。次に、各断面において、それぞれ、個々の島の形状を観察する。個々の島の形状について、熱融着性樹脂層の厚み方向に対して垂直方向の最左端と、当該垂直方向の最右端とを結ぶ直線距離を径yとする。各断面において、島の形状の当該径yが大きい順に上位20個の径yの平均を算出する。島の形状の当該径yの平均が最も大きかった断面と平行な方向をMDと判断する。
【0023】
1.蓄電デバイス用外装材の積層構造及び物性
本開示の蓄電デバイス用外装材10は、例えば図1から図4に示すように、少なくとも、基材層1、バリア層3、及び熱融着性樹脂層4をこの順に備える積層体から構成されている。蓄電デバイス用外装材10において、基材層1が最外層側になり、熱融着性樹脂層4は最内層になる。蓄電デバイス用外装材10と蓄電デバイス素子を用いて蓄電デバイスを組み立てる際に、蓄電デバイス用外装材10の熱融着性樹脂層4同士を対向させた状態で、周縁部を熱融着させることによって形成された空間に、蓄電デバイス素子が収容される。本開示の蓄電デバイス用外装材10を構成する積層体において、バリア層3を基準とし、バリア層3よりも熱融着性樹脂層4側が内側であり、バリア層3よりも基材層1側が外側である。
【0024】
蓄電デバイス用外装材10は、例えば図2から図4に示すように、基材層1とバリア層3との間に、これらの層間の接着性を高めることなどを目的として、必要に応じて接着剤層2を有していてもよい。また、例えば図3及び図4に示すように、バリア層3と熱融着性樹脂層4との間に、これらの層間の接着性を高めることなどを目的として、必要に応じて接着層5を有していてもよい。また、図4に示すように、基材層1の外側(熱融着性樹脂層4側とは反対側)には、必要に応じて表面被覆層6などが設けられていてもよい。
【0025】
蓄電デバイス用外装材10を構成する積層体の厚みとしては、特に制限されないが、コスト削減、エネルギー密度向上等の観点からは、例えば約250μm以下、好ましくは約190μm以下、約180μm以下、約155μm以下、約120μm以下が挙げられる。また、蓄電デバイス用外装材10を構成する積層体の厚みとしては、蓄電デバイス素子を保護するという蓄電デバイス用外装材の機能を維持する観点からは、好ましくは約35μm以上、約45μm以上、約60μm以上が挙げられる。また、蓄電デバイス用外装材10を構成する積層体の好ましい範囲については、例えば、35~250μm程度、35~190μm程度、35~180μm程度、35~155μm程度、35~120μm程度、45~250μm程度、45~190μm程度、45~180μm程度、45~155μm程度、45~120μm程度、60~250μm程度、60~190μm程度、60~180μm程度、60~155μm程度、60~120μm程度が挙げられ、特に蓄電デバイスを軽量薄膜化する場合には60~155μm程度が好ましく、成形性を向上させる場合には155~190μm程度が好ましい。
【0026】
また、蓄電デバイス用外装材10は、全固体電池に対して好適に適用することができる。この場合、蓄電デバイス用外装材10を構成する積層体の厚みとしては、特に制限されないが、コスト削減、エネルギー密度向上等の観点からは、好ましくは約10000μm以下、約8000μm以下、約5000μm以下が挙げられ、電池素子を保護するという全固体電池用外装材の機能を維持する観点からは、好ましくは約10μm以上、約15μm以上、約20μm以上が挙げられ、好ましい範囲については、例えば、10~10000μm程度、10~8000μm程度、10~5000μm程度、15~10000μm程度、15~8000μm程度、15~5000μm程度、20~10000μm程度、20~8000μm程度、20~5000μm程度が挙げられ、特に20~5000μm程度が好ましい。
【0027】
蓄電デバイス用外装材10において、蓄電デバイス用外装材10を構成する積層体の厚み(総厚み)に対する、基材層1、必要に応じて設けられる接着剤層2、バリア層3、必要に応じて設けられる接着層5、熱融着性樹脂層4、及び必要に応じて設けられる表面被覆層6の合計厚みの割合は、好ましくは90%以上であり、より好ましくは95%以上であり、さらに好ましくは98%以上である。具体例としては、本開示の蓄電デバイス用外装材10が、基材層1、接着剤層2、バリア層3、接着層5、及び熱融着性樹脂層4を含む場合、蓄電デバイス用外装材10を構成する積層体の厚み(総厚み)に対する、これら各層の合計厚みの割合は、好ましくは90%以上であり、より好ましくは95%以上であり、さらに好ましくは98%以上である。また、本開示の蓄電デバイス用外装材10が、基材層1、接着剤層2、バリア層3、及び熱融着性樹脂層4を含む積層体である場合にも、蓄電デバイス用外装材10を構成する積層体の厚み(総厚み)に対する、これら各層の合計厚みの割合は、例えば80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上とすることができる。
【0028】
また、本開示の蓄電デバイス用外装材10は、以下の測定方法によって測定される150℃環境でのシール強度が、好ましくは40N/15mm以上、より好ましくは45N/15mm以上である。なお、当該シール強度の上限は、例えば200N/15mm以下、好ましくは180N/15mm以下である。当該シール強度の好ましい範囲としては、40~200N/15mm程度、45~180N/15mm程度、45~200N程度、40~180N/15mm程度が挙げられる。
【0029】
<150℃環境でのシール強度の測定>
JIS K7127:1999の規定に準拠して、150℃の測定温度における外装材のシール強度を次のようにして測定する。外装材から、TDの方向の幅が15mmの短冊状に裁断した試験サンプルを準備する。具体的には、図6に示すように、まず、各外装材を60mm(TDの方向)×200mm(MDの方向)に裁断する(図6a)。次に、熱融着性樹脂層同士が対向するようにして、外装材を折り目P(MDの方向の中間)の位置でMDの方向に2つ折りにする(図6b)。折り目Pから10mmMDの方向に内側において、シール幅7mm、温度240℃、面圧とシール時間を熱融着樹脂層の厚みがシール前に対して80±10%の厚みとなる条件で熱融着性樹脂層同士をヒートシールする(図6c)。図6cにおいて、斜線部Sがヒートシールされている部分である。次に、TDの方向の幅が15mmとなるようにして、MDの方向に裁断(図6dの二点鎖線の位置で裁断)して試験片13を得る(図6e)。次に、試験片13を温度150℃環境で2分間放置し、温度150℃環境において、引張り試験機で熱融着部の熱融着性樹脂層を300mm/分の速度で剥離させる(図7)。剥離時の最大強度をシール強度(N/15mm)とする。チャック間距離は、50mmとする。
【0030】
2.蓄電デバイス用外装材を形成する各層
[基材層1]
本開示において、基材層1は、蓄電デバイス用外装材の基材としての機能を発揮させることなどを目的として設けられる層である。基材層1は、蓄電デバイス用外装材の外層側に位置する。
【0031】
基材層1を形成する素材については、基材としての機能、すなわち少なくとも絶縁性を備えるものであることを限度として特に制限されない。基材層1は、例えば樹脂を用いて形成することができ、樹脂には後述の添加剤が含まれていてもよい。
【0032】
基材層1が樹脂により形成されている場合、基材層1は、例えば、樹脂フィルムにより形成することができる。基材層1を樹脂フィルムにより形成する場合、基材層1をバリア層3などと積層して本開示の蓄電デバイス用外装材10を製造する際に、予め形成された樹脂フィルムを基材層1として用いてもよい。また、基材層1を形成する樹脂を、押出成形や塗布などによってバリア層3などの表面上でフィルム化して、樹脂フィルムにより形成された基材層1としてもよい。樹脂フィルムは、未延伸フィルムであってもよいし、延伸フィルムであってもよい。延伸フィルムとしては、一軸延伸フィルム、二軸延伸フィルムが挙げられ、二軸延伸フィルムが好ましい。二軸延伸フィルムを形成する延伸方法としては、例えば、逐次二軸延伸法、インフレーション法、同時二軸延伸法等が挙げられる。樹脂を塗布する方法としては、ロールコーティング法、グラビアコーティング法、押出コーティング法などが挙げられる。
【0033】
基材層1を形成する樹脂としては、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリウレタン、珪素樹脂、フェノール樹脂などの樹脂や、これらの樹脂の変性物が挙げられる。また、基材層1を形成する樹脂は、これらの樹脂の共重合物であってもよいし、共重合物の変性物であってもよい。さらに、これらの樹脂の混合物であってもよい。
【0034】
基材層1は、これらの樹脂を主成分として含んでいることが好ましく、ポリエステル又はポリアミドを主成分として含んでいることがより好ましい。ここで、主成分とは、基材層1に含まれる樹脂成分のうち、含有率が、例えば50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは98質量%以上、さらに好ましくは99質量%以上の樹脂成分であることを意味する。例えば、基材層1がポリエステル又はポリアミドを主成分として含むとは、基材層1に含まれる樹脂成分のうち、ポリエステル又はポリアミドの含有率が、それぞれ、例えば50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは98質量%以上、さらに好ましくは99質量%以上であることを意味する。
【0035】
基材層1を形成する樹脂としては、これらの中でも、好ましくはポリエステル、ポリアミドが挙げられる。
【0036】
ポリエステルとしては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、共重合ポリエステル等が挙げられる。また、共重合ポリエステルとしては、エチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体とした共重合ポリエステル等が挙げられる。具体的には、エチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体としてエチレンイソフタレートと重合する共重合体ポリエステル(以下、ポリエチレン(テレフタレート/イソフタレート)にならって略す)、ポリエチレン(テレフタレート/アジペート)、ポリエチレン(テレフタレート/ナトリウムスルホイソフタレート)、ポリエチレン(テレフタレート/ナトリウムイソフタレート)、ポリエチレン(テレフタレート/フェニル-ジカルボキシレート)、ポリエチレン(テレフタレート/デカンジカルボキシレート)等が挙げられる。これらのポリエステルは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0037】
また、ポリアミドとしては、具体的には、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン12、ナイロン46、ナイロン6とナイロン66との共重合体等の脂肪族ポリアミド;テレフタル酸及び/又はイソフタル酸に由来する構成単位を含むナイロン6I、ナイロン6T、ナイロン6IT、ナイロン6I6T(Iはイソフタル酸、Tはテレフタル酸を表す)等のヘキサメチレンジアミン-イソフタル酸-テレフタル酸共重合ポリアミド、ポリアミドMXD6(ポリメタキシリレンアジパミド)等の芳香族を含むポリアミド;ポリアミドPACM6(ポリビス(4-アミノシクロヘキシル)メタンアジパミド)等の脂環式ポリアミド;さらにラクタム成分や、4,4’-ジフェニルメタン-ジイソシアネート等のイソシアネート成分を共重合させたポリアミド、共重合ポリアミドとポリエステルやポリアルキレンエーテルグリコールとの共重合体であるポリエステルアミド共重合体やポリエーテルエステルアミド共重合体;これらの共重合体等のポリアミドが挙げられる。これらのポリアミドは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0038】
基材層1は、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム、及びポリオレフィンフィルムのうち少なくとも1つを含むことが好ましく、延伸ポリエステルフィルム、及び延伸ポリアミドフィルム、及び延伸ポリオレフィンフィルムのうち少なくとも1つを含むことが好ましく、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、延伸ポリブチレンテレフタレートフィルム、延伸ナイロンフィルム、延伸ポリプロピレンフィルムのうち少なくとも1つを含むことがさらに好ましく、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリブチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ナイロンフィルム、二軸延伸ポリプロピレンフィルムのうち少なくとも1つを含むことがさらに好ましい。
【0039】
基材層1は、単層であってもよいし、2層以上により構成されていてもよい。基材層1が2層以上により構成されている場合、基材層1は、樹脂フィルムを接着剤などで積層させた積層体であってもよいし、樹脂を共押出しして2層以上とした樹脂フィルムの積層体であってもよい。また、樹脂を共押出しして2層以上とした樹脂フィルムの積層体を、未延伸のまま基材層1としてもよいし、一軸延伸または二軸延伸して基材層1としてもよい。
【0040】
基材層1において、2層以上の樹脂フィルムの積層体の具体例としては、ポリエステルフィルムとナイロンフィルムとの積層体、2層以上のナイロンフィルムの積層体、2層以上のポリエステルフィルムの積層体などが挙げられ、好ましくは、延伸ナイロンフィルムと延伸ポリエステルフィルムとの積層体、2層以上の延伸ナイロンフィルムの積層体、2層以上の延伸ポリエステルフィルムの積層体が好ましい。例えば、基材層1が2層の樹脂フィルムの積層体である場合、ポリエステル樹脂フィルムとポリエステル樹脂フィルムの積層体、ポリアミド樹脂フィルムとポリアミド樹脂フィルムの積層体、またはポリエステル樹脂フィルムとポリアミド樹脂フィルムの積層体が好ましく、ポリエチレンテレフタレートフィルムとポリエチレンテレフタレートフィルムの積層体、ナイロンフィルムとナイロンフィルムの積層体、またはポリエチレンテレフタレートフィルムとナイロンフィルムの積層体がより好ましい。また、ポリエステル樹脂は、例えば電解液が表面に付着した際に変色し難いことなどから、基材層1が2層以上の樹脂フィルムの積層体である場合、ポリエステル樹脂フィルムが基材層1の最外層に位置することが好ましい。
【0041】
基材層1が、2層以上の樹脂フィルムの積層体である場合、2層以上の樹脂フィルムは、接着剤を介して積層させてもよい。好ましい接着剤については、後述の接着剤層2で例示する接着剤と同様のものが挙げられる。なお、2層以上の樹脂フィルムを積層させる方法としては、特に制限されず、公知方法が採用でき、例えばドライラミネート法、サンドイッチラミネート法、押出ラミネート法、サーマルラミネート法などが挙げられ、好ましくはドライラミネート法が挙げられる。ドライラミネート法により積層させる場合には、接着剤としてポリウレタン接着剤を用いることが好ましい。このとき、接着剤の厚みとしては、例えば2~5μm程度が挙げられる。また、樹脂フィルムにアンカーコート層を形成し積層させても良い。アンカーコート層は、後述の接着剤層2で例示する接着剤と同様のものが挙げられる。このとき、アンカーコート層の厚みとしては、例えば0.01~1.0μm程度が挙げられる。
【0042】
また、基材層1の表面及び内部の少なくとも一方には、滑剤、難燃剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、粘着付与剤、耐電防止剤、着色剤等の添加剤が存在していてもよい。添加剤は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0043】
本開示において、蓄電デバイス用外装材の成形性を高める観点からは、基材層1の表面及び内部の少なくとも一方には、滑剤が存在していることが好ましい。滑剤としては、特に制限されないが、好ましくはアミド系滑剤が挙げられる。アミド系滑剤の具体例としては、例えば、飽和脂肪酸アミド、不飽和脂肪酸アミド、置換アミド、メチロールアミド、飽和脂肪酸ビスアミド、不飽和脂肪酸ビスアミド、脂肪酸エステルアミド、芳香族ビスアミドなどが挙げられる。飽和脂肪酸アミドの具体例としては、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミドなどが挙げられる。不飽和脂肪酸アミドの具体例としては、オレイン酸アミド、エルカ酸アミドなどが挙げられる。置換アミドの具体例としては、N-オレイルパルミチン酸アミド、N-ステアリルステアリン酸アミド、N-ステアリルオレイン酸アミド、N-オレイルステアリン酸アミド、N-ステアリルエルカ酸アミドなどが挙げられる。また、メチロールアミドの具体例としては、メチロールステアリン酸アミドなどが挙げられる。飽和脂肪酸ビスアミドの具体例としては、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンヒドロキシステアリン酸アミド、N,N’-ジステアリルアジピン酸アミド、N,N’-ジステアリルセバシン酸アミドなどが挙げられる。不飽和脂肪酸ビスアミドの具体例としては、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’-ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’-ジオレイルセバシン酸アミドなどが挙げられる。脂肪酸エステルアミドの具体例としては、ステアロアミドエチルステアレートなどが挙げられる。また、芳香族ビスアミドの具体例としては、m-キシリレンビスステアリン酸アミド、m-キシリレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、N,N’-ジステアリルイソフタル酸アミドなどが挙げられる。滑剤は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよく、2種類以上を組み合わせることが好ましい。
【0044】
基材層1の表面に滑剤が存在する場合、その存在量としては、特に制限されないが、例えば約3mg/m2以上、好ましくは約4mg/m2以上、約5mg/m2以上が挙げられる。また、基材層1の表面に存在する滑剤量としては、例えば約15mg/m2以下、好ましくは約14mg/m2以下、約10mg/m2以下が挙げられる。また、基材層1の表面に存在する滑剤量の好ましい範囲としては、3~15mg/m2程度、3~14mg/m2程度、3~10mg/m2程度、4~15mg/m2程度、4~14mg/m2程度、4~10mg/m2程度、5~15mg/m2程度、5~14mg/m2程度、5~10mg/m2程度が挙げられる。
【0045】
基材層1の表面に存在する滑剤は、基材層1を構成する樹脂に含まれる滑剤を滲出させたものであってもよいし、基材層1の表面に滑剤を塗布したものであってもよい。
【0046】
基材層1の厚みについては、基材としての機能を発揮すれば特に制限されないが、例えば約3μm以上、好ましくは約10μm以上が挙げられる。また、基材層1の厚みとしては、例えば約50μm以下、好ましくは約35μm以下、13μm以下、11μm以下、8μm以下、7μm以下、6μm以下が挙げられる。また、基材層1の厚みの好ましい範囲としては、3~50μm程度、3~35μm程度、3~13μm程度、3~11μm程度、3~8μm程度、3~7μm程度、3~6μm程度、10~50μm程度、10~35μm程度、10~13μm程度が挙げられ、特に蓄電デバイスを軽量薄膜化する場合には3~35μm程度、3~11μm程度、3~8μm程度、3~7μm程度、3~6μm程度が好ましく、成形性を向上させる場合には35~50μm程度が好ましい。基材層1が、2層以上の樹脂フィルムの積層体である場合、各層を構成している樹脂フィルムの厚みとしては、特に制限されないが、それぞれ、例えば約2μm以上、好ましくは約10μm以上、約18μm以上が挙げられる。また、各層を構成している樹脂フィルムの厚みとしては、例えば約33μm以下、好ましくは約28μm以下、約23μm以下、約18μm以下、11μm以下、8μm以下が挙げられる。また、各層を構成している樹脂フィルムの厚みの好ましい範囲としては、2~33μm程度、2~28μm程度、2~23μm程度、2~18μm程度、2~11μm程度、2~8μm程度、10~33μm程度、10~28μm程度、10~23μm程度、10~18μm程度、18~33μm程度、18~28μm程度、18~23μm程度が挙げられる。
【0047】
基材層1が着色剤を含んでいることにより、蓄電デバイス用外装材を着色することができる。着色剤としては、顔料、染料などの公知のものが使用できる。また、着色剤は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0048】
顔料の種類は、基材層1の基材としての機能を損なわない範囲であれば、特に限定されない。有機顔料としては、例えば、アゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、アンスラキノン系、ジオキサジン系、インジゴチオインジゴ系、ペリノン-ペリレン系、イソインドレニン系、ベンズイミダゾロン系等の顔料が挙げられ、無機顔料としては、カーボンブラック系、酸化チタン系、カドミウム系、鉛系、酸化クロム系、鉄系等の顔料が挙げられ、その他に、マイカ(雲母)の微粉末、魚鱗箔等が挙げられる。
【0049】
着色剤の中でも、例えば蓄電デバイス用外装材の外観を黒色とするためには、カーボンブラックが好ましい。また、蓄電デバイスから発生する熱を放熱する観点からは、マイカを用いることが好ましい。
【0050】
顔料の平均粒子径としては、特に制限されず、例えば、0.03~5μm程度、好ましくは0.05~2μm程度が挙げられる。なお、顔料の平均粒子径は、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置で測定されたメジアン径とする。
【0051】
基材層1における着色剤の含有量としては、蓄電デバイス用外装材が着色されれば特に制限されず、例えば5~60質量%程度、好ましくは10~40質量%程度が挙げられる。
【0052】
[接着剤層2]
本開示の蓄電デバイス用外装材において、接着剤層2は、基材層1とバリア層3との接着性を高めることを目的として、必要に応じて、これらの間に設けられる層である。
【0053】
接着剤層2は、基材層1とバリア層3とを接着可能である接着剤によって形成される。接着剤層2の形成に使用される接着剤は限定されないが、化学反応型、溶剤揮発型、熱溶融型、熱圧型等のいずれであってもよい。また、2液硬化型接着剤(2液性接着剤)であってもよく、1液硬化型接着剤(1液性接着剤)であってもよく、硬化反応を伴わない樹脂でもよい。また、接着剤層2は単層であってもよいし、多層であってもよい。
【0054】
接着剤に含まれる接着成分としては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、共重合ポリエステル等のポリエステル;ポリエーテル;ポリウレタン;エポキシ樹脂;フェノール樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、共重合ポリアミド等のポリアミド;ポリオレフィン、環状ポリオレフィン、酸変性ポリオレフィン、酸変性環状ポリオレフィンなどのポリオレフィン系樹脂;ポリ酢酸ビニル;セルロース;(メタ)アクリル樹脂;ポリイミド;ポリカーボネート;尿素樹脂、メラミン樹脂等のアミノ樹脂;クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレン-ブタジエンゴム等のゴム;シリコーン樹脂等が挙げられる。これらの接着成分は1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの接着成分の中でも、好ましくはポリウレタン接着剤が挙げられる。また、これらの接着成分となる樹脂は適切な硬化剤を併用して接着強度を高めることができる。前記硬化剤は、接着成分の持つ官能基に応じて、ポリイソシアネート、多官能エポキシ樹脂、オキサゾリン基含有ポリマー、ポリアミン樹脂、酸無水物などから適切なものを選択する。
【0055】
ポリウレタン接着剤としては、例えば、ポリオール化合物を含有する第1剤と、イソシアネート化合物を含有する第2剤とを含むポリウレタン接着剤が挙げられる。好ましくはポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、およびアクリルポリオール等のポリオールを第1剤として、芳香族系又は脂肪族系のポリイソシアネートを第2剤とした二液硬化型のポリウレタン接着剤が挙げられる。また、ポリウレタン接着剤としては、例えば、予めポリオール化合物とイソシアネート化合物とを反応させたポリウレタン化合物と、イソシアネート化合物とを含むポリウレタン接着剤が挙げられる。また、ポリウレタン接着剤としては、例えば、予めポリオール化合物とイソシアネート化合物とを反応させたポリウレタン化合物と、ポリオール化合物とを含むポリウレタン接着剤が挙げられる。また、ポリウレタン接着剤としては、例えば、予めポリオール化合物とイソシアネート化合物とを反応させたポリウレタン化合物を、空気中などの水分と反応させることによって硬化させたポリウレタン接着剤が挙げられる。ポリオール化合物としては、繰り返し単位の末端の水酸基に加えて、側鎖にも水酸基を有するポリエステルポリオールを用いることが好ましい。第2剤としては、脂肪族、脂環式、芳香族、芳香脂肪族のイソシアネート系化合物が挙げられる。イソシアネート系化合物としては、例えばヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水素化XDI(H6XDI)、水素化MDI(H12MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)等が挙げられる。また、これらのジイソシアネートの1種類又は2種類以上からの多官能イソシアネート変性体等が挙げられる。また、ポリイソシアネート化合物として多量体(例えば三量体)を使用することもできる。このような多量体には、アダクト体、ビウレット体、ヌレート体等が挙げられる。接着剤層2がポリウレタン接着剤により形成されていることで蓄電デバイス用外装材に優れた電解液耐性が付与され、側面に電解液が付着しても基材層1が剥がれることが抑制される。
【0056】
また、接着剤層2は、接着性を阻害しない限り他成分の添加が許容され、着色剤や熱可塑性エラストマー、粘着付与剤、フィラーなどを含有してもよい。接着剤層2が着色剤を含んでいることにより、蓄電デバイス用外装材を着色することができる。着色剤としては、顔料、染料などの公知のものが使用できる。また、着色剤は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0057】
顔料の種類は、接着剤層2の接着性を損なわない範囲であれば、特に限定されない。有機顔料としては、例えば、アゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、アンスラキノン系、ジオキサジン系、インジゴチオインジゴ系、ペリノン-ペリレン系、イソインドレニン系、ベンズイミダゾロン系等の顔料が挙げられ、無機顔料としては、カーボンブラック系、酸化チタン系、カドミウム系、鉛系、酸化クロム系、鉄系等の顔料が挙げられ、その他に、マイカ(雲母)の微粉末、魚鱗箔等が挙げられる。
【0058】
着色剤の中でも、例えば蓄電デバイス用外装材の外観を黒色とするためには、カーボンブラックが好ましい。
【0059】
顔料の平均粒子径としては、特に制限されず、例えば、0.03~5μm程度、好ましくは0.05~2μm程度が挙げられる。なお、顔料の平均粒子径は、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置で測定されたメジアン径とする。
【0060】
接着剤層2における着色剤の含有量としては、蓄電デバイス用外装材が着色されれば特に制限されず、例えば5~60質量%程度、好ましくは10~40質量%が挙げられる。
【0061】
接着剤層2の厚みは、基材層1とバリア層3とを接着できれば、特に制限されないが、例えば、約1μm以上、約2μm以上である。また、接着剤層2の厚みは、例えば、約10μm以下、約5μm以下である。また、接着剤層2の厚みの好ましい範囲については、1~10μm程度、1~5μm程度、2~10μm程度、2~5μm程度が挙げられる。
【0062】
[着色層]
着色層は、基材層1とバリア層3との間に必要に応じて設けられる層である(図示を省略する)。接着剤層2を有する場合には、基材層1と接着剤層2との間、接着剤層2とバリア層3との間に着色層を設けてもよい。また、基材層1の外側に着色層を設けてもよい。着色層を設けることにより、蓄電デバイス用外装材を着色することができる。
【0063】
着色層は、例えば、着色剤を含むインキを基材層1の表面、またはバリア層3の表面に塗布することにより形成することができる。着色剤としては、顔料、染料などの公知のものが使用できる。また、着色剤は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0064】
着色層に含まれる着色剤の具体例としては、[接着剤層2]の欄で例示したものと同じものが例示される。
【0065】
[バリア層3]
蓄電デバイス用外装材において、バリア層3は、少なくとも水分の浸入を抑止する層である。
【0066】
バリア層3としては、例えば、バリア性を有する金属箔、蒸着膜、樹脂層などが挙げられる。蒸着膜としては金属蒸着膜、無機酸化物蒸着膜、炭素含有無機酸化物蒸着膜などが挙げられ、樹脂層としてはポリ塩化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)を主成分としたポリマー類やテトラフルオロエチレン(TFE)を主成分としたポリマー類やフルオロアルキル基を有するポリマー、およびフルオロアルキル単位を主成分としたポリマー類などのフッ素含有樹脂、エチレンビニルアルコール共重合体などが挙げられる。また、バリア層3としては、これらの蒸着膜及び樹脂層の少なくとも1層を設けた樹脂フィルムなども挙げられる。バリア層3は、複数層設けてもよい。バリア層3は、金属材料により構成された層を含むことが好ましい。バリア層3を構成する金属材料としては、具体的には、アルミニウム合金、ステンレス鋼、チタン鋼、鋼板などが挙げられ、金属箔として用いる場合は、アルミニウム合金箔及びステンレス鋼箔の少なくとも一方を含むことが好ましい。
【0067】
バリア層3において、前述した金属材料により構成された層は、金属材料のリサイクル材を含んでいてもよい。金属材料のリサイクル材としては、例えば、アルミニウム合金、ステンレス鋼、チタン鋼、又は鋼板のリサイクル材が挙げられる。これらのリサイクル材は、それぞれ、公知の方法で入手できる。アルミニウム合金のリサイクル材は、例えば、国際公開第2022/092231号に記載の製造方法によって入手できる。バリア層3は、リサイクル材のみによって構成されてもよいし、リサイクル材とバージン材との混合材料によって構成されもよい。なお、金属材料のリサイクル材とは、いわゆる市中で使用された各種製品や、製造工程から出る廃棄物などを回収・単離・精製などを行って再利用可能な状態にした金属材料をいう。また、金属材料のバージン材とは、金属の天然資源(原材料)から精錬された新品の金属材料であって、リサイクル材でないものをいう。
【0068】
アルミニウム合金箔は、蓄電デバイス用外装材の成形性を向上させる観点から、例えば、焼きなまし処理済みのアルミニウム合金などにより構成された軟質アルミニウム合金箔であることがより好ましく、より成形性を向上させる観点から、鉄を含むアルミニウム合金箔であることが好ましい。鉄を含むアルミニウム合金箔(100質量%)において、鉄の含有量は、0.1~9.0質量%であることが好ましく、0.5~2.0質量%であることがより好ましい。鉄の含有量が0.1質量%以上であることにより、より優れた成形性を有する蓄電デバイス用外装材を得ることができる。鉄の含有量が9.0質量%以下であることにより、より柔軟性に優れた蓄電デバイス用外装材を得ることができる。軟質アルミニウム合金箔としては、例えば、JIS H4160:1994 A8021H-O、JIS H4160:1994 A8079H-O、JIS H4000:2014 A8021P-O、又はJIS H4000:2014 A8079P-Oで規定される組成を備えるアルミニウム合金箔が挙げられる。また必要に応じて、ケイ素、マグネシウム、銅、マンガンなどが添加されていてもよい。また軟質化は焼鈍処理などで行うことができる。
【0069】
また、ステンレス鋼箔としては、オーステナイト系、フェライト系、オーステナイト・フェライト系、マルテンサイト系、析出硬化系のステンレス鋼箔などが挙げられる。さらに成形性に優れた蓄電デバイス用外装材を提供する観点から、ステンレス鋼箔は、オーステナイト系のステンレス鋼により構成されていることが好ましい。
【0070】
ステンレス鋼箔を構成するオーステナイト系のステンレス鋼の具体例としては、SUS304、SUS301、SUS316Lなどが挙げられ、これら中でも、SUS304が特に好ましい。
【0071】
バリア層3の厚みは、金属箔の場合、少なくとも水分の浸入を抑止するバリア層としての機能を発揮すればよく、例えば9~200μm程度が挙げられる。バリア層3の厚みは、好ましくは約85μm以下、より好ましくは約50μm以下、さらに好ましくは約40μm以下、特に好ましくは約35μm以下である。また、バリア層3の厚みは、好ましくは約10μm以上、さらに好ましくは約20μm以上、より好ましくは約25μm以上である。また、バリア層3の厚みの好ましい範囲としては、10~85μm程度、10~50μm程度、10~40μm程度、10~35μm程度、20~85μm程度、20~50μm程度、20~40μm程度、20~35μm程度、25~85μm程度、25~50μm程度、25~40μm程度、25~35μm程度が挙げられる。バリア層3がアルミニウム合金箔により構成されている場合、上述した範囲が特に好ましい。また、蓄電デバイス用外装材10に高成形性及び高剛性を付与する観点からは、バリア層3の厚みは、好ましくは約35μm以上、より好ましくは約45μm以上、さらに好ましくは約50μm以上、さらに好ましくは約55μm以上であり、また、好ましくは約200μm以下、より好ましくは約85μm以下、さらに好ましくは約75μm以下、さらに好ましくは約70μm以下であり、好ましい範囲としては、35~200μm程度、35~85μm程度、35~75μm程度、35~70μm程度、45~200μm程度、45~85μm程度、45~75μm程度、45~70μm程度、50~200μm程度、50~85μm程度、50~75μm程度、50~70μm程度、55~200μm程度、55~85μm程度、55~75μm程度、55~70μm程度である。蓄電デバイス用外装材10が高成形性を備えることにより、深絞り成形が容易となり、蓄電デバイスの高容量化に寄与し得る。また、蓄電デバイスが高容量化されると、蓄電デバイスの重量が増加するが、蓄電デバイス用外装材10の剛性が高められることにより、蓄電デバイスの高い密封性に寄与できる。また、特に、バリア層3がステンレス鋼箔により構成されている場合、ステンレス鋼箔の厚みは、好ましくは約60μm以下、より好ましくは約50μm以下、さらに好ましくは約40μm以下、さらに好ましくは約30μm以下、特に好ましくは約25μm以下である。また、ステンレス鋼箔の厚みは、好ましくは約10μm以上、より好ましくは約15μm以上である。また、ステンレス鋼箔の厚みの好ましい範囲としては、10~60μm程度、10~50μm程度、10~40μm程度、10~30μm程度、10~25μm程度、15~60μm程度、15~50μm程度、15~40μm程度、15~30μm程度、15~25μm程度が挙げられる。
【0072】
また、バリア層3が金属箔の場合は、溶解や腐食の防止などのために、少なくとも基材層と反対側の面に耐腐食性皮膜を備えていることが好ましい。バリア層3は、耐腐食性皮膜を両面に備えていてもよい。ここで、耐腐食性皮膜とは、例えば、ベーマイト処理などの熱水変成処理、化成処理、陽極酸化処理、ニッケルやクロムなどのメッキ処理、コーティング剤を塗工する腐食防止処理をバリア層の表面に行い、バリア層に耐腐食性(例えば耐酸性、耐アルカリ性など)を備えさせる薄膜をいう。耐腐食性皮膜は、具体的には、バリア層の耐酸性を向上させる皮膜(耐酸性皮膜)、バリア層の耐アルカリ性を向上させる皮膜(耐アルカリ性皮膜)などを意味している。耐腐食性皮膜を形成する処理としては、1種類を行ってもよいし、2種類以上を組み合わせて行ってもよい。また、1層だけではなく多層化することもできる。さらに、これらの処理のうち、熱水変成処理及び陽極酸化処理は、処理剤によって金属箔表面を溶解させ、耐腐食性に優れる金属化合物を形成させる処理である。なお、これらの処理は、化成処理の定義に包含される場合もある。また、バリア層3が耐腐食性皮膜を備えている場合、耐腐食性皮膜を含めてバリア層3とする。
【0073】
耐腐食性皮膜は、蓄電デバイス用外装材の成形時において、バリア層(例えば、アルミニウム合金箔)と基材層との間のデラミネーション防止、電解質と水分とによる反応で生成するフッ化水素により、バリア層表面の溶解、腐食、特にバリア層がアルミニウム合金箔である場合にバリア層表面に存在する酸化アルミニウムが溶解、腐食することを防止し、かつ、バリア層表面の接着性(濡れ性)を向上させ、ヒートシール時の基材層とバリア層とのデラミネーション防止、成形時の基材層とバリア層とのデラミネーション防止の効果を示す。
【0074】
化成処理によって形成される耐腐食性皮膜としては、種々のものが知られており、主には、リン酸塩、クロム酸塩、フッ化物、トリアジンチオール化合物、及び希土類酸化物のうち少なくとも1種を含む耐腐食性皮膜などが挙げられる。リン酸塩、クロム酸塩を用いた化成処理としては、例えば、クロム酸クロメート処理、リン酸クロメート処理、リン酸-クロム酸塩処理、クロム酸塩処理などが挙げられ、これらの処理に用いるクロム化合物としては、例えば、硝酸クロム、フッ化クロム、硫酸クロム、酢酸クロム、蓚酸クロム、重リン酸クロム、クロム酸アセチルアセテート、塩化クロム、硫酸カリウムクロムなどが挙げられる。また、これらの処理に用いるリン化合物としては、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸アンモニウム、ポリリン酸などが挙げられる。また、クロメート処理としてはエッチングクロメート処理、電解クロメート処理、塗布型クロメート処理などが挙げられ、塗布型クロメート処理が好ましい。この塗布型クロメート処理は、バリア層(例えばアルミニウム合金箔)の少なくとも内層側の面を、まず、アルカリ浸漬法、電解洗浄法、酸洗浄法、電解酸洗浄法、酸活性化法等の周知の処理方法で脱脂処理を行い、その後、脱脂処理面にリン酸Cr(クロム)塩、リン酸Ti(チタン)塩、リン酸Zr(ジルコニウム)塩、リン酸Zn(亜鉛)塩などのリン酸金属塩及びこれらの金属塩の混合体を主成分とする処理液、または、リン酸非金属塩及びこれらの非金属塩の混合体を主成分とする処理液、あるいは、これらと合成樹脂などとの混合物からなる処理液をロールコート法、グラビア印刷法、浸漬法等の周知の塗工法で塗工し、乾燥する処理である。処理液は例えば、水、アルコール系溶剤、炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤など各種溶媒を用いることができ、水が好ましい。また、このとき用いる樹脂成分としては、フェノール系樹脂やアクリル系樹脂などの高分子などが挙げられ、下記一般式(1)~(4)で表される繰り返し単位を有するアミノ化フェノール重合体を用いたクロメート処理などが挙げられる。なお、当該アミノ化フェノール重合体において、下記一般式(1)~(4)で表される繰り返し単位は、1種類単独で含まれていてもよいし、2種類以上の任意の組み合わせであってもよい。アクリル系樹脂は、ポリアクリル酸、アクリル酸メタクリル酸エステル共重合体、アクリル酸マレイン酸共重合体、アクリル酸スチレン共重合体、またはこれらのナトリウム塩、アンモニウム塩、アミン塩等の誘導体であることが好ましい。特にポリアクリル酸のアンモニウム塩、ナトリウム塩、又はアミン塩等のポリアクリル酸の誘導体が好ましい。本開示において、ポリアクリル酸とは、アクリル酸の重合体を意味している。また、アクリル系樹脂は、アクリル酸とジカルボン酸又はジカルボン酸無水物との共重合体であることも好ましく、アクリル酸とジカルボン酸又はジカルボン酸無水物との共重合体のアンモニウム塩、ナトリウム塩、又はアミン塩であることも好ましい。アクリル系樹脂は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0075】
【化1】
【0076】
【化2】
【0077】
【化3】
【0078】
【化4】
【0079】
一般式(1)~(4)中、Xは、水素原子、ヒドロキシ基、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、アリル基またはベンジル基を示す。また、R1及びR2は、それぞれ同一または異なって、ヒドロキシ基、アルキル基、またはヒドロキシアルキル基を示す。一般式(1)~(4)において、X、R1及びR2で示されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基などの炭素数1~4の直鎖または分枝鎖状アルキル基が挙げられる。また、X、R1及びR2で示されるヒドロキシアルキル基としては、例えば、ヒドロキシメチル基、1-ヒドロキシエチル基、2-ヒドロキシエチル基、1-ヒドロキシプロピル基、2-ヒドロキシプロピル基、3-ヒドロキシプロピル基、1-ヒドロキシブチル基、2-ヒドロキシブチル基、3-ヒドロキシブチル基、4-ヒドロキシブチル基などのヒドロキシ基が1個置換された炭素数1~4の直鎖または分枝鎖状アルキル基が挙げられる。一般式(1)~(4)において、X、R1及びR2で示されるアルキル基及びヒドロキシアルキル基は、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。一般式(1)~(4)において、Xは、水素原子、ヒドロキシ基またはヒドロキシアルキル基であることが好ましい。一般式(1)~(4)で表される繰り返し単位を有するアミノ化フェノール重合体の数平均分子量は、例えば、500~100万程度であることが好ましく、1000~2万程度であることがより好ましい。アミノ化フェノール重合体は、例えば、フェノール化合物又はナフトール化合物とホルムアルデヒドとを重縮合して上記一般式(1)又は一般式(3)で表される繰返し単位からなる重合体を製造し、次いでホルムアルデヒド及びアミン(R12NH)を用いて官能基(-CH2NR12)を上記で得られた重合体に導入することにより、製造される。アミノ化フェノール重合体は、1種単独で又は2種以上混合して使用される。
【0080】
耐腐食性皮膜の他の例としては、希土類元素酸化物ゾル、アニオン性ポリマー、カチオン性ポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有するコーティング剤を塗工するコーティングタイプの腐食防止処理によって形成される薄膜が挙げられる。コーティング剤には、さらにリン酸またはリン酸塩、ポリマーを架橋させる架橋剤を含んでもよい。希土類元素酸化物ゾルには、液体分散媒中に希土類元素酸化物の微粒子(例えば、平均粒径100nm以下の粒子)が分散されている。希土類元素酸化物としては、酸化セリウム、酸化イットリウム、酸化ネオジウム、酸化ランタン等が挙げられ、密着性をより向上させる観点から酸化セリウムが好ましい。耐腐食性皮膜に含まれる希土類元素酸化物は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。希土類元素酸化物ゾルの液体分散媒としては、例えば、水、アルコール系溶剤、炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤など各種溶媒を用いることができ、水が好ましい。カチオン性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンイミン、ポリエチレンイミンとカルボン酸を有するポリマーからなるイオン高分子錯体、アクリル主骨格に1級アミンをグラフト重合させた1級アミングラフトアクリル樹脂、ポリアリルアミンまたはその誘導体、アミノ化フェノールなどが好ましい。また、アニオン性ポリマーとしては、ポリ(メタ)アクリル酸またはその塩、あるいは(メタ)アクリル酸またはその塩を主成分とする共重合体であることが好ましい。また、架橋剤が、イソシアネート基、グリシジル基、カルボキシル基、オキサゾリン基のいずれかの官能基を有する化合物とシランカップリング剤よりなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。また、前記リン酸またはリン酸塩が、縮合リン酸または縮合リン酸塩であることが好ましい。
【0081】
耐腐食性皮膜の一例としては、リン酸中に、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化セリウム、酸化スズなどの金属酸化物や硫酸バリウムの微粒子を分散させたものをバリア層の表面に塗布し、150℃以上で焼付け処理を行うことにより形成したものが挙げられる。
【0082】
耐腐食性皮膜は、必要に応じて、さらにカチオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーの少なくとも一方を積層した積層構造としてもよい。カチオン性ポリマー、アニオン性ポリマーとしては、上述したものが挙げられる。
【0083】
なお、耐腐食性皮膜の組成の分析は、例えば、飛行時間型2次イオン質量分析法を用いて行うことができる。
【0084】
化成処理においてバリア層3の表面に形成させる耐腐食性皮膜の量については、特に制限されないが、例えば、塗布型クロメート処理を行う場合であれば、バリア層3の表面1m2当たり、クロム酸化合物がクロム換算で例えば0.5~50mg程度、好ましくは1.0~40mg程度、リン化合物がリン換算で例えば0.5~50mg程度、好ましくは1.0~40mg程度、及びアミノ化フェノール重合体が例えば1.0~200mg程度、好ましくは5.0~150mg程度の割合で含有されていることが望ましい。
【0085】
耐腐食性皮膜の厚みとしては、特に制限されないが、皮膜の凝集力や、バリア層や熱融着性樹脂層との密着力の観点から、好ましくは1nm~20μm程度、より好ましくは1nm~100nm程度、さらに好ましくは1nm~50nm程度が挙げられる。なお、耐腐食性皮膜の厚みは、透過電子顕微鏡による観察、または、透過電子顕微鏡による観察と、エネルギー分散型X線分光法もしくは電子線エネルギー損失分光法との組み合わせによって測定することができる。飛行時間型2次イオン質量分析法を用いた耐腐食性皮膜の組成の分析により、例えば、CeとPとOからなる2次イオン(例えば、Ce2PO4 +、CePO4 -などの少なくとも1種)や、例えば、CrとPとOからなる2次イオン(例えば、CrPO2 +、CrPO4 -などの少なくとも1種)に由来するピークが検出される。
【0086】
化成処理は、耐腐食性皮膜の形成に使用される化合物を含む溶液を、バーコート法、ロールコート法、グラビアコート法、浸漬法などによって、バリア層の表面に塗布した後に、バリア層の温度が70~200℃程度になるように加熱することにより行われる。また、バリア層に化成処理を施す前に、予めバリア層を、アルカリ浸漬法、電解洗浄法、酸洗浄法、電解酸洗浄法などによる脱脂処理に供してもよい。このように脱脂処理を行うことにより、バリア層の表面の化成処理をより効率的に行うことが可能となる。また、脱脂処理にフッ素含有化合物を無機酸で溶解させた酸脱脂剤を用いることで、金属箔の脱脂効果だけでなく不動態である金属のフッ化物を形成させることが可能であり、このような場合には脱脂処理だけを行ってもよい。
【0087】
[熱融着性樹脂層4]
本開示の蓄電デバイス用外装材において、熱融着性樹脂層4は、最内層を含み、蓄電デバイスの組み立て時に熱融着性樹脂層同士が熱融着して蓄電デバイス素子を密封する機能を発揮する層(シーラント層)である。
【0088】
本開示の第1の態様の蓄電デバイス用外装材10において、熱融着性樹脂層4は、100℃環境における窒素透過量が、1000cm3/(m2・24h・atm)以下である。本開示の発明の効果をより一層好適に発揮する観点から、熱融着性樹脂層4の当該窒素透過量は、好ましくは約800cm3/(m2・24h・atm)以下、より好ましくは約600cm3/(m2・24h・atm)以下、さらに好ましくは約500cm3/(m2・24h・atm)以下である。熱融着性樹脂層4の当該窒素透過量の下限については、例えば、約0.1cm3/(m2・24h・atm)、約1cm3/(m2・24h・atm)、約5cm3/(m2・24h・atm)、約10cm3/(m2・24h・atm)などである。熱融着性樹脂層4の当該窒素透過量の好ましい範囲としては、0.1~1000cm3/(m2・24h・atm)程度、0.1~800cm3/(m2・24h・atm)程度、0.1~600cm3/(m2・24h・atm)程度、0.1~500cm3/(m2・24h・atm)程度、1~1000cm3/(m2・24h・atm)程度、1~800cm3/(m2・24h・atm)程度、1~600cm3/(m2・24h・atm)程度、1~500cm3/(m2・24h・atm)程度、5~1000cm3/(m2・24h・atm)程度、5~800cm3/(m2・24h・atm)程度、5~600cm3/(m2・24h・atm)程度、5~500cm3/(m2・24h・atm)程度、10~1000cm3/(m2・24h・atm)程度、10~800cm3/(m2・24h・atm)程度、10~600cm3/(m2・24h・atm)程度、10~500cm3/(m2・24h・atm)程度などが挙げられる。本開示の第2の態様の蓄電デバイス用外装材10においても、熱融着性樹脂層4は、これらの窒素透過量を満たすことが好ましい。
【0089】
また、本開示の発明の効果をより一層好適に発揮する観点から、本開示の第1の態様の蓄電デバイス用外装材10において、熱融着性樹脂層4は、25℃環境における窒素透過量が、好ましくは約200cm3/(m2・24h・atm)以下、より好ましくは約180cm3/(m2・24h・atm)以下、さらに好ましくは約160cm3/(m2・24h・atm)以下、さらに好ましくは約150cm3/(m2・24h・atm)以下である。熱融着性樹脂層4の当該窒素透過量の下限については、例えば、約0.01cm3/(m2・24h・atm)、約0.1cm3/(m2・24h・atm)、約0.5cm3/(m2・24h・atm)、約1cm3/(m2・24h・atm)などである。熱融着性樹脂層4の当該窒素透過量の好ましい範囲としては、0.01~200cm3/(m2・24h・atm)程度、0.01~180cm3/(m2・24h・atm)程度、0.01~160cm3/(m2・24h・atm)程度、0.01~150cm3/(m2・24h・atm)程度、0.1~200cm3/(m2・24h・atm)程度、0.1~180cm3/(m2・24h・atm)程度、0.1~160cm3/(m2・24h・atm)程度、0.1~150cm3/(m2・24h・atm)程度、0.5~200cm3/(m2・24h・atm)程度、0.5~180cm3/(m2・24h・atm)程度、0.5~160cm3/(m2・24h・atm)程度、0.5~150cm3/(m2・24h・atm)程度、1~200cm3/(m2・24h・atm)程度、1~180cm3/(m2・24h・atm)程度、1~160cm3/(m2・24h・atm)程度、1~150cm3/(m2・24h・atm)程度が挙げられる。本開示の第2の態様の蓄電デバイス用外装材10においても、熱融着性樹脂層4は、これらの窒素透過量を満たすことが好ましい。
【0090】
また、本開示の第2の態様の蓄電デバイス用外装材10において、熱融着性樹脂層4は、100℃環境における酸素透過量が、約20000cm3/(m2・24h・atm)以下である。本開示の発明の効果をより一層好適に発揮する観点から、熱融着性樹脂層4の当該酸素透過量は、好ましくは約18000cm3/(m2・24h・atm)以下、好ましくは約15000cm3/(m2・24h・atm)以下、より好ましくは約13000cm3/(m2・24h・atm)以下、さらに好ましくは約12000cm3/(m2・24h・atm)以下であ。また、熱融着性樹脂層4の当該酸素透過量の下限については、例えば、約0.1cm3/(m2・24h・atm)、約1cm3/(m2・24h・atm)、約5cm3/(m2・24h・atm)、約10cm3/(m2・24h・atm)などである。熱融着性樹脂層4の当該酸素透過量の好ましい範囲としては、0.1~20000cm3/(m2・24h・atm)程度、0.1~18000cm3/(m2・24h・atm)程度、0.1~15000cm3/(m2・24h・atm)程度、0.1~13000cm3/(m2・24h・atm)程度、0.1~12000cm3/(m2・24h・atm)程度、1~20000cm3/(m2・24h・atm)程度、1~18000cm3/(m2・24h・atm)程度、1~15000cm3/(m2・24h・atm)程度、1~13000cm3/(m2・24h・atm)程度、1~12000cm3/(m2・24h・atm)程度、5~20000cm3/(m2・24h・atm)程度、5~18000cm3/(m2・24h・atm)程度、5~15000cm3/(m2・24h・atm)程度、5~13000cm3/(m2・24h・atm)程度、5~12000cm3/(m2・24h・atm)程度、10~20000cm3/(m2・24h・atm)程度、10~18000cm3/(m2・24h・atm)程度、10~15000cm3/(m2・24h・atm)程度、10~13000cm3/(m2・24h・atm)程度、10~12000cm3/(m2・24h・atm)程度が挙げられる。本開示の第1の態様の蓄電デバイス用外装材10においても、熱融着性樹脂層4は、これらの酸素透過量を満たすことが好ましい。
【0091】
また、本開示の発明の効果をより一層好適に発揮する観点から、本開示の第2の態様の蓄電デバイス用外装材10において、熱融着性樹脂層4は、25℃環境における酸素透過量が、好ましくは約5000cm3/(m2・24h・atm)以下、より好ましくは約3000cm3/(m2・24h・atm)以下、さらに好ましくは約2000cm3/(m2・24h・atm)以下である。熱融着性樹脂層4の当該酸素透過量の下限については、例えば、約0.01cm3/(m2・24h・atm)、約0.1cm3/(m2・24h・atm)、約0.5cm3/(m2・24h・atm)、約1cm3/(m2・24h・atm)である。熱融着性樹脂層4の当該酸素透過量の好ましい範囲としては、0.01~5000cm3/(m2・24h・atm)程度、0.01~3000cm3/(m2・24h・atm)程度、0.01~2000cm3/(m2・24h・atm)程度、0.1~5000cm3/(m2・24h・atm)程度、0.1~3000cm3/(m2・24h・atm)程度、0.1~2000cm3/(m2・24h・atm)程度、0.5~5000cm3/(m2・24h・atm)程度、0.5~3000cm3/(m2・24h・atm)程度、0.5~2000cm3/(m2・24h・atm)程度、1~5000cm3/(m2・24h・atm)程度、1~3000cm3/(m2・24h・atm)程度、1~2000cm3/(m2・24h・atm)程度が挙げられる。本開示の第1の態様の蓄電デバイス用外装材10においても、熱融着性樹脂層4は、これらの酸素透過量を満たすことが好ましい。
【0092】
熱融着性樹脂層4を形成する樹脂は、熱融着可能であって、第1の態様の熱融着性樹脂層4については100℃環境における窒素透過量が1000cm3/(m2・24h・atm)以下であり、第2の態様の熱融着性樹脂層4については100℃環境における酸素透過量が20000cm3/(m2・24h・atm)以下であることを限度として特に制限されないが、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィンは、これらの窒素透過量又は酸素透過量を超えるため、本開示の熱融着性樹脂層4としては望ましくない。
【0093】
本開示において、熱融着性樹脂層4は、ポリブチレンテレフタレートを含むことが好ましく、ホモポリブチレンテレフタレート及び共重合ポリブチレンテレフタレートの少なくとも一方を含むことがより好ましい。特に、例えば150℃環境といった非常に高温環境における熱融着性樹脂層のシール強度を高める観点からは、ポリブチレンテレフタレートを含むことが好ましく、ホモポリブチレンテレフタレート及び共重合ポリブチレンテレフタレートの少なくとも一方を含むことがより好ましい。さらに、当該シール強度を高める観点から、熱融着性樹脂層4は、ポリブチレンテレフタレートを含み、かつ、未延伸であることが好ましく、この場合も、ポリブチレンテレフタレートとしてホモポリブチレンテレフタレート及び共重合ポリブチレンテレフタレートの少なくとも一方を含むことがより好ましい。
【0094】
熱融着性樹脂層4は、例えば、ホモポリブチレンテレフタレートフィルムにより形成されていることが好ましく、ホモポリブチレンテレフタレートの含有率は、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。
【0095】
熱融着性樹脂層4が、ホモポリブチレンテレフタレートフィルムからなる樹脂層である場合、熱融着性樹脂層4に含まれる樹脂は、実質的に(例えば99質量%以上、さらには100質量%以下が)ホモポリブチレンテレフタレートのみである。すなわち、この場合の熱融着性樹脂層4は、ホモポリブチレンテレフタレートとは異なる樹脂を実質的に含まない、ホモポリブチレンテレフタレートフィルムにより形成されている。例えば、この場合の熱融着性樹脂層4は、エラストマー及び共重合ポリブチレンテレフタレートを含まない、ホモポリブチレンテレフタレートフィルムからなる層である。
【0096】
また、熱融着性樹脂層4に含まれるホモポリブチレンテレフタレートは、酸変性されていてもよいし、酸変性されていなくてもよい。ホモポリブチレンテレフタレートが酸変性ホモポリブチレンテレフタレートである場合、ホモポリブチレンテレフタレートの酸変性は、無水マレイン酸、アクリル酸などの酸成分で行うことができる。
【0097】
ホモポリブチレンテレフタレートにより形成された熱融着性樹脂層4は、例えば、融解ピーク温度が220~230℃である。なお、本開示において、層を構成している樹脂の融解ピーク温度は、示差走査熱量計(DSC)で測定される吸熱ピークであり、具体的には以下の方法で測定される。
【0098】
<融解ピーク温度の測定>
層を形成している樹脂について、JIS K7121:2012(プラスチックの転移温度測定方法(JIS K7121:1987の追補1))の規定に準拠して融解ピーク温度を測定する。測定は、示差走査熱量計を用いて行う。測定サンプルを、-50℃で15分間保持した後、10℃/分の昇温速度で-50℃から300℃まで昇温させて、1回目の融解ピーク温度P(℃)を測定した後、300℃にて2分間保持する。次に、10℃/分の降温速度で300℃から-50℃まで降温させて15分間保持する。さらに、10℃/分の昇温速度で-50℃から300℃まで昇温させて2回目の融解ピーク温度Q(℃)を測定する。なお、窒素ガスの流量は50ml/分とする。以上の手順によって、1回目に測定される融解ピーク温度P(℃)と、2回目に測定される融解ピーク温度Q(℃)を求め、1回目に測定された融解ピーク温度を融解ピーク温度とする。
【0099】
また、熱融着性樹脂層4は、共重合ポリブチレンテレフタレートを含む層であることも好ましい。熱融着性樹脂層4が共重合ポリブチレンテレフタレートにより形成されている場合、熱融着性樹脂層4に含まれる共重合ポリブチレンテレフタレートの含有率は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上である。
【0100】
熱融着性樹脂層4が、共重合ポリブチレンテレフタレートフィルムからなる樹脂層である場合、熱融着性樹脂層4に含まれる樹脂は、実質的に(例えば99質量%以上、さらには100質量%以上が)共重合ポリブチレンテレフタレートのみである。すなわち、この場合の熱融着性樹脂層4は、共重合ポリブチレンテレフタレートとは異なる樹脂を実質的に含まない、共重合ポリブチレンテレフタレートフィルムにより形成されている。例えば、この場合の熱融着性樹脂層4は、エラストマー及び共重合ポリブチレンテレフタレートを含まない、共重合ポリブチレンテレフタレートフィルムからなる層である。
【0101】
本開示の発明の効果をより好適に発揮する観点から、共重合ポリブチレンテレフタレートを含む熱融着性樹脂層4の融解ピーク温度は、好ましくは170℃以上、より好ましくは190℃以上、さらに好ましくは200℃以上であり、また、好ましくは350℃以下、より好ましくは300℃以下、さらに好ましくは270℃以下、さらに好ましくは230℃以下、さらに好ましくは220℃以下、さらに好ましくは217℃以下であり、好ましい範囲としては170~350℃程度、170~300℃程度、170~270℃程度、170~230℃程度、170~220℃程度、170~217℃程度、190~350℃程度、190~300℃程度、190~270℃程度、190~230℃程度、190~220℃程度、190~217℃程度、200~350℃程度、200~300℃程度、200~270℃程度、200~230℃程度、200~220℃程度、200~217℃程度などが挙げられる。当該融解ピーク温度の測定方法は、前記の通りである。
【0102】
本開示において、熱融着性樹脂層4に含まれる共重合ポリブチレンテレフタレートは、ポリブチレンテレフタレート構造に加えて、さらに、ポリエーテル構造及びポリエステル構造Bからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。ここで、ポリエステル構造Bは、ポリブチレンテレフタレート構造とは異なる構造である。
【0103】
ポリエーテル構造は、ポリブチレンテレフタレート構造の多価カルボン酸(すなわちテレフタル酸)と、ポリエーテル構造を有する化合物(モノマー)とを重縮合反応させることで、樹脂に導入することができる。ポリエーテル構造は、熱融着性樹脂層4中の樹脂のソフトセグメントを構成することが望ましい。ポリブチレンテレフタレート構造の多価カルボン酸(すなわちテレフタル酸)と重縮合反応してこのようなソフトセグメントを構成する化合物(モノマー)としては、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ネオペンチルグリコールなどの伸縮性を発現し得るジオールが挙げられる。ポリエーテル構造は、ポリテトラメチレンエーテルグリコール及びネオペンチルグリコールからなる群より選択される少なくとも1種に由来するポリエーテル構造であることが好ましい。ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ネオペンチルグリコールなどが、樹脂のポリエーテル構造中において構成単位を形成する。ソフトセグメントとしてポリエーテル構造を樹脂に導入することで、樹脂のゴム弾性が高まり、樹脂が破断し難くなることで、低温環境において高いシール強度が好適に発揮される。
【0104】
また、ポリエステル構造Bは、ポリブチレンテレフタレート構造で用いられるブタンジオールと重縮合反応してポリエステル構造を形成する化合物(モノマー)を用いることで樹脂に導入することができる。ポリエステル構造Bは、熱融着性樹脂層4中の樹脂のソフトセグメントを構成することが望ましく、ポリブチレンテレフタレート構造のブタンジオールと重縮合反応してこのようなソフトセグメントを構成する化合物(モノマー)としては、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸や、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、シクロヘキサンジカルボン酸など脂肪族ジカルボン酸(炭素数が4~20の脂肪族ジカルボン酸が好ましい)などのジカルボン酸が挙げられる。芳香族ジカルボン酸や脂肪族ジカルボン酸などが、樹脂のポリエステル構造B中において構成単位を形成する。ポリエステル構造Bは、ポリオールと、イソフタル酸、セバシン酸及びドデカンジオン酸からなる群より選択される少なくとも1種のジカルボン酸との重縮合によるポリエステル構造であることが特に好ましい。ソフトセグメントとしてポリエステル構造Bを樹脂に導入することで、樹脂のゴム弾性が高まり、樹脂が破断し難くなることで、低温環境において高いシール強度が好適に発揮される。
【0105】
本開示の発明の効果をより好適に発揮する観点から、熱融着性樹脂層4を形成する樹脂は、ポリブチレンテレフタレート構造に加えて、さらに、ポリエーテル構造を含み、当該ポリエーテル構造が、ポリテトラメチレンエーテルグリコール及びネオペンチルグリコールの少なくとも一方とポリブチレンテレフタレート構造のテレフタル酸との重縮合構造を備えていることが特に好ましい。また、熱融着性樹脂層4を形成する樹脂は、ポリブチレンテレフタレート構造に加えて、さらに、ポリエステル構造Bを含み、当該ポリエステル構造Bが、イソフタル酸、ドデカンジオン酸、及びセバシン酸からなる群より選択される少なくとも1種と、ポリブチレンテレフタレート構造の1,4-ブタンジオールとの重縮合構造を備えていることが特に好ましい。
【0106】
また、本開示の発明の効果をより好適に発揮する観点から、熱融着性樹脂層4を形成する共重合ポリブチレンテレフタレートは、ポリブチレンテレフタレート構造が主成分であることが好ましい。なお、主成分とは、樹脂を構成する全成分100質量%に対する割合が50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上であることを意味している。また、熱融着性樹脂層4を形成する樹脂は、ポリエーテル構造及びジカルボン酸構造の少なくとも一方の割合が、樹脂を構成する全成分(全モノマー単位)100質量%に対して、好ましくは2~30質量%程度、より好ましくは3~25質量%程度、さらに好ましくは3~20質量%程度である。
【0107】
熱融着性樹脂層4は、ホモポリブチレンテレフタレート及び共重合ポリブチレンテレフタレートの少なくとも一方を含む層であってもよいし、ホモポリブチレンテレフタレート及び共重合ポリブチレンテレフタレートを含まない層であってもよい。ポリブチレンテレフタレートとは異なる樹脂については、本開示の効果を阻害しないことを限度として、特に制限されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ETFEなどの高温環境における窒素透過量又は酸素透過量の小さい熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0108】
熱融着性樹脂層4は、1種の樹脂単独で形成してもよく、また2種以上の樹脂を組み合わせたブレンドポリマーにより形成してもよい。さらに、熱融着性樹脂層4は、1層のみで形成されていてもよいが、同一又は異なる樹脂によって2層以上で形成されていてもよい。
【0109】
熱融着性樹脂層4は、必要に応じて滑剤などを含んでいてもよい。熱融着性樹脂層4が滑剤を含む場合、蓄電デバイス用外装材の成形性を高め得る。滑剤としては、特に制限されず、公知の滑剤を用いることができる。
【0110】
滑剤としては、特に制限されないが、好ましくはアミド系滑剤が挙げられる。滑剤の具体例としては、基材層1で例示したものが挙げられる。滑剤は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよく、2種類以上を組み合わせることが好ましい。
【0111】
本開示において、蓄電デバイス用外装材の成形性を高める観点からは、熱融着性樹脂層4の表面及び内部の少なくとも一方には、滑剤が存在していることが好ましい。滑剤としては、特に制限されないが、好ましくはアミド系滑剤が挙げられる。アミド系滑剤の具体例としては、例えば、飽和脂肪酸アミド、不飽和脂肪酸アミド、置換アミド、メチロールアミド、飽和脂肪酸ビスアミド、不飽和脂肪酸ビスアミド、脂肪酸エステルアミド、芳香族ビスアミドなどが挙げられる。飽和脂肪酸アミドの具体例としては、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミドなどが挙げられる。不飽和脂肪酸アミドの具体例としては、オレイン酸アミド、エルカ酸アミドなどが挙げられる。置換アミドの具体例としては、N-オレイルパルミチン酸アミド、N-ステアリルステアリン酸アミド、N-ステアリルオレイン酸アミド、N-オレイルステアリン酸アミド、N-ステアリルエルカ酸アミドなどが挙げられる。また、メチロールアミドの具体例としては、メチロールステアリン酸アミドなどが挙げられる。飽和脂肪酸ビスアミドの具体例としては、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンヒドロキシステアリン酸アミド、N,N’-ジステアリルアジピン酸アミド、N,N’-ジステアリルセバシン酸アミドなどが挙げられる。不飽和脂肪酸ビスアミドの具体例としては、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’-ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’-ジオレイルセバシン酸アミドなどが挙げられる。脂肪酸エステルアミドの具体例としては、ステアロアミドエチルステアレートなどが挙げられる。また、芳香族ビスアミドの具体例としては、m-キシリレンビスステアリン酸アミド、m-キシリレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、N,N’-ジステアリルイソフタル酸アミドなどが挙げられる。滑剤は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよく、2種類以上を組み合わせることが好ましい。
【0112】
熱融着性樹脂層4の表面に滑剤が存在する場合、その存在量としては、特に制限されないが、蓄電デバイス用外装材の成形性を高める観点からは、好ましくは約1mg/m2以上、より好ましくは約3mg/m2以上、さらに好ましくは約5mg/m2以上、さらに好ましくは約10mg/m2以上、さらに好ましくは約15mg/m2以上であり、また、好ましくは約50mg/m2以下、さらに好ましくは約40mg/m2以下であり、好ましい範囲としては、1~50mg/m2程度、1~40mg/m2程度、3~50mg/m2程度、3~40mg/m2程度、5~50mg/m2程度、5~40mg/m2程度、10~50mg/m2程度、10~40mg/m2程度、15~50mg/m2程度、15~40mg/m2程度が挙げられる。
【0113】
熱融着性樹脂層4の内部に滑剤が存在する場合、その存在量としては、特に制限されないが、蓄電デバイス用外装材の成形性を高める観点からは、好ましくは約100ppm以上、より好ましくは約300ppm以上、さらに好ましくは約500ppm以上であり、また、好ましくは約3000ppm以下、より好ましくは約2000ppm以下であり、好ましい範囲としては、100~3000ppm程度、100~2000ppm程度、300~3000ppm程度、300~2000ppm程度、500~3000ppm程度、500~2000ppm程度が挙げられる。熱融着性樹脂層4の内部に滑剤が2種類以上存在する場合、上記の滑剤量は合計滑剤量である。また、熱融着性樹脂層4の内部に滑剤が2種類以上存在する場合、1種類目の滑剤の存在量は、特に制限されないが、蓄電デバイス用外装材の成形性を高める観点からは、好ましくは約100ppm以上、より好ましくは約300ppm以上、さらに好ましくは約500ppm以上であり、また、好ましくは約3000ppm以下、より好ましくは約2000ppm以下であり、好ましい範囲としては、100~3000ppm程度、100~2000ppm程度、300~3000ppm程度、300~2000ppm程度、500~3000ppm程度、500~2000ppm程度が挙げられる。2種類目の滑剤の存在量は、特に制限されないが、蓄電デバイス用外装材の成形性を高める観点からは、好ましくは約50ppm以上、より好ましくは約100ppm以上、さらに好ましくは約200ppm以上であり、また、好ましくは約1500ppm以下、より好ましくは約1000ppm以下であり、好ましい範囲としては、50~1500ppm程度、50~1000ppm程度、100~1500ppm程度、100~1000ppm程度、200~1500ppm程度、200~1000ppm程度が挙げられる。
【0114】
熱融着性樹脂層4の表面に存在する滑剤は、熱融着性樹脂層4を構成する樹脂に含まれる滑剤を滲出させたものであってもよいし、熱融着性樹脂層4の表面に滑剤を塗布したものであってもよい。
【0115】
また、熱融着性樹脂層4の厚みとしては、熱融着性樹脂層同士が熱融着して蓄電デバイス素子を密封する機能を発揮すれば特に制限されないが、例えば約100μm以下、好ましくは約85μm以下、より好ましくは15~85μm程度が挙げられる。なお、例えば、後述の接着層5の厚みが10μm以上である場合には、熱融着性樹脂層4の厚みとしては、好ましくは約85μm以下、より好ましくは15~45μm程度が挙げられ、例えば後述の接着層5の厚みが10μm未満である場合や接着層5が設けられていない場合には、熱融着性樹脂層4の厚みとしては、好ましくは約20μm以上、より好ましくは35~85μm程度が挙げられる。
【0116】
(熱融着性樹脂層4の製造方法)
熱融着性樹脂層4の製造方法は、本開示の熱融着性樹脂層4が得られれば特に限定されず、公知または慣用の製膜方法、積層方法を適用することができる。フィルムの製造は、例えば、押出法または共押出法、キャスト成形法、Tダイ法、切削法、インフレーション法等の、公知の製膜化法および/または積層法により行うことができる。例えば、予め作製された熱融着性樹脂層4を構成するフィルムを、接着剤層を介して積層してもよく、予め作製された層上に溶融した樹脂組成物を押出または共押出法によって積層してもよく、複数層を同時に作製しながら溶融圧着によって積層してもよく、または、他の層上に、1種または2種以上の樹脂を、塗布及び乾燥してコーティングしてもよい。
【0117】
熱融着性樹脂層4は、熱融着性樹脂層4に含まれる層を、押出しまたは共押出しで、エクストルージョンコート法で積層したり、インフレーション法やキャスト法により製膜後に接着層を介して積層したりすることもできる。エクストルージョンコート法の場合でも、必要に応じて接着層を介して、積層してもよい。または、予め製膜された吸水層(又は硫黄系ガス吸収層)用のフィルムを、エクストルージョンコート法、ドライラミネート法、ノンソルベントラミネート法等により積層された接着層を介して積層、接着してもよい。そして、必要に応じてエージング処理を行ってもよい。
【0118】
例えば、エクストルージョンコート法によりフィルムなどを積層する場合においては、まず、フィルムを形成する樹脂を加熱して溶融させて、Tダイスで必要な幅方向に拡大伸張させてカーテン状に(共)押出し、該溶融樹脂を被積層面上へ流下させて、ゴムロールと冷却した金属ロールとで挟持することで、該層の形成と、被積層面への積層および接着を同時に行うことができる。エクストルージョンコート法により積層する場合の各樹脂成分のメルトマスフローレート(MFR)は、0.2~50g/10分が好ましく、0.5~30g/10分がより好ましい。MFRが上記範囲よりも小さい、または大きいと加工適性が劣り易い。なお、本明細書において、MFRとはJIS K7210に準拠した手法から測定された値である。
【0119】
インフレーション法を用いる場合の樹脂成分のメルトマスフローレート(MFR)は、0.2~10g/10分が好ましく、0.2~9.5g/10分がより好ましい。MFRが上記範囲よりも小さいまたは大きいと、加工適性が劣り易い。
【0120】
また、熱融着性樹脂層4には、接着性を向上させるために、表面に、必要に応じて、予め、所望の表面処理を施すことができる。例えば、コロナ放電処理、オゾン処理、酸素ガスまたは窒素ガス等を用いた低温プラズマ処理、グロー放電処理、化学薬品等を用いた酸化処理等の前処理を任意に施して、コロナ処理層、オゾン処理層、プラズマ処理層、酸化処理層等を形成して設けることができる。或いは、表面に、プライマーコート剤層、アンダーコート剤層、アンカーコート剤層、接着剤層、蒸着アンカーコート剤層等の各種コート剤層を任意に形成して、表面処理層とすることもできる。上記の各種コート剤層には、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリエチレンもしくはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂またはその共重合体ないし変性樹脂、セルロース系樹脂等をビヒクルの主成分とする樹脂組成物を用いることができる。
【0121】
熱融着性樹脂層4に含まれる層は、さらに、必要に応じて、テンター方式やチューブラー方式等を利用して、従来公知の方法によって、1軸延伸または2軸延伸することができる。
【0122】
[接着層5]
本開示の蓄電デバイス用外装材において、接着層5は、バリア層3(又は耐腐食性皮膜)と熱融着性樹脂層4を強固に接着させるために、これらの間に必要に応じて設けられる層である。
【0123】
接着層5は、バリア層3と熱融着性樹脂層4とを接着可能である樹脂によって形成される。接着層5の形成に使用される樹脂としては、例えば接着剤層2で例示した接着剤と同様のものが使用できる。
【0124】
また、接着層5と熱融着性樹脂層4とを強固に接着する観点から、接着層5の形成に使用される樹脂としてはポリオレフィン骨格を含んでいることが好ましく、前述の熱融着性樹脂層4で例示したポリオレフィン、酸変性ポリオレフィン、環状ポリオレフィン、酸変性環状ポリオレフィンが挙げられる。一方、バリア層3と接着層5とを強固に接着する観点から、接着層5は酸変性ポリオレフィンを含むことが好ましい。酸変性成分としては、マレイン酸、イタコン酸、コハク酸、アジピン酸などのジカルボン酸やこれらの無水物、アクリル酸、メタクリル酸などが挙げられるが、変性のし易さや汎用性などの点から無水マレイン酸が最も好ましい。また、蓄電デバイス用外装材の耐熱性の観点からは、オレフィン成分はポリプロピレン系樹脂であることが好ましく、接着層5は無水マレイン酸変性ポリプロピレンを含むことが最も好ましい。
【0125】
接着層5の形成に使用される樹脂としてはポリオレフィン骨格を含んでいる場合、接着層5は、ポリオレフィン骨格を含む樹脂を主成分として含んでいることが好ましく、酸変性ポリオレフィンを主成分として含んでいることがより好ましく、酸変性ポリプロピレンを主成分として含んでいることがさらに好ましい。ここで、主成分とは、接着層5に含まれる樹脂成分のうち、含有率が、例えば50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは98質量%以上、さらに好ましくは99質量%以上の樹脂成分であることを意味する。例えば、接着層5が酸変性ポリプロピレンを主成分として含むとは、接着層5に含まれる樹脂成分のうち、酸変性ポリプロピレンの含有率が、例えば50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは98質量%以上、さらに好ましくは99質量%以上であることを意味する。
【0126】
接着層5を構成している樹脂がポリオレフィン骨格を含むことは、例えば、赤外分光法、ガスクロマトグラフィー質量分析法などにより分析可能であり、分析方法は特に問わない。また、接着層5を構成している樹脂が酸変性ポリオレフィンを含むことは、例えば、赤外分光法にて無水マレイン酸変性ポリオレフィンを測定すると、波数1760cm-1付近と波数1780cm-1付近に無水マレイン酸由来のピークが検出される。ただし、酸変性度が低いとピークが小さくなり検出されない場合がある。その場合は核磁気共鳴分光法にて分析可能である。
【0127】
さらに、蓄電デバイス用外装材の耐熱性や耐内容物性などの耐久性や、厚みを薄くしつつ成形性を担保する観点からは、接着層5は酸変性ポリオレフィンと硬化剤を含む樹脂組成物の硬化物であることがより好ましい。酸変性ポリオレフィンとしては、好ましくは、前記のものが例示できる。
【0128】
また、接着層5は、酸変性ポリオレフィンと、イソシアネート基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物、及びエポキシ基を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種とを含む樹脂組成物の硬化物であることが好ましく、酸変性ポリオレフィンと、イソシアネート基を有する化合物及びエポキシ基を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種とを含む樹脂組成物の硬化物であることが特に好ましい。また、接着層5は、ポリウレタン、ポリエステル、及びエポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、ポリウレタン及びエポキシ樹脂を含むことがより好ましい。ポリエステルとしては、例えばエポキシ基と無水マレイン酸基の反応により生成するエステル樹脂、オキサゾリン基と無水マレイン酸基の反応で生成するアミドエステル樹脂が好ましい。なお、接着層5に、イソシアネート基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物、エポキシ樹脂などの硬化剤の未反応物が残存している場合、未反応物の存在は、例えば、赤外分光法、ラマン分光法、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS)などから選択される方法で確認することが可能である。
【0129】
また、バリア層3と接着層5との密着性をより高める観点から、接着層5は、酸素原子、複素環、C=N結合、及びC-O-C結合からなる群より選択される少なくとも1種を有する硬化剤を含む樹脂組成物の硬化物であることが好ましい。複素環を有する硬化剤としては、例えば、オキサゾリン基を有する硬化剤、エポキシ基を有する硬化剤などが挙げられる。また、C=N結合を有する硬化剤としては、オキサゾリン基を有する硬化剤、イソシアネート基を有する硬化剤などが挙げられる。また、C-O-C結合を有する硬化剤としては、オキサゾリン基を有する硬化剤、エポキシ基を有する硬化剤などが挙げられる。接着層5がこれらの硬化剤を含む樹脂組成物の硬化物であることは、例えば、ガスクロマトグラフ質量分析(GCMS)、赤外分光法(IR)、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS)、X線光電子分光法(XPS)などの方法で確認することができる。
【0130】
イソシアネート基を有する化合物としては、特に制限されないが、バリア層3と接着層5との密着性を効果的に高める観点からは、好ましくは多官能イソシアネート化合物が挙げられる。多官能イソシアネート化合物は、2つ以上のイソシアネート基を有する化合物であれば、特に限定されない。多官能イソシアネート系硬化剤の具体例としては、ペンタンジイソシアネート(PDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、これらをポリマー化やヌレート化したもの、これらの混合物や他ポリマーとの共重合物などが挙げられる。また、アダクト体、ビウレット体、イソシアヌレート体などが挙げられる。
【0131】
接着層5における、イソシアネート基を有する化合物の含有量としては、接着層5を構成する樹脂組成物中、0.1~50質量%の範囲にあることが好ましく、0.5~40質量%の範囲にあることがより好ましい。これにより、バリア層3と接着層5との密着性を効果的に高めることができる。
【0132】
オキサゾリン基を有する化合物は、オキサゾリン骨格を備える化合物であれば、特に限定されない。オキサゾリン基を有する化合物の具体例としては、ポリスチレン主鎖を有するもの、アクリル主鎖を有するものなどが挙げられる。また、市販品としては、例えば、日本触媒社製のエポクロスシリーズなどが挙げられる。
【0133】
接着層5における、オキサゾリン基を有する化合物の割合としては、接着層5を構成する樹脂組成物中、0.1~50質量%の範囲にあることが好ましく、0.5~40質量%の範囲にあることがより好ましい。これにより、バリア層3と接着層5との密着性を効果的に高めることができる。
【0134】
エポキシ基を有する化合物としては、例えば、エポキシ樹脂が挙げられる。エポキシ樹脂としては、分子内に存在するエポキシ基によって架橋構造を形成することが可能な樹脂であれば、特に制限されず、公知のエポキシ樹脂を用いることができる。エポキシ樹脂の重量平均分子量としては、好ましくは50~2000程度、より好ましくは100~1000程度、さらに好ましくは200~800程度が挙げられる。なお、本開示において、エポキシ樹脂の重量平均分子量は、標準サンプルとしてポリスチレンを用いた条件で測定された、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)により測定された値である。
【0135】
エポキシ樹脂の具体例としては、トリメチロールプロパンのグリシジルエーテル誘導体、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、変性ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールF型グリシジルエーテル、ノボラックグリシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテル、ポリグリセリンポリグリシジルエーテルなどが挙げられる。エポキシ樹脂は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0136】
接着層5における、エポキシ樹脂の割合としては、接着層5を構成する樹脂組成物中、0.1~50質量%の範囲にあることが好ましく、0.5~40質量%の範囲にあることがより好ましい。これにより、バリア層3と接着層5との密着性を効果的に高めることができる。
【0137】
ポリウレタンとしては、特に制限されず、公知のポリウレタンを使用することができる。接着層5は、例えば、2液硬化型ポリウレタンの硬化物であってもよい。
【0138】
接着層5における、ポリウレタンの割合としては、接着層5を構成する樹脂組成物中、0.1~50質量%の範囲にあることが好ましく、0.5~40質量%の範囲にあることがより好ましい。これにより、電解液などのバリア層の腐食を誘発する成分が存在する雰囲気における、バリア層3と接着層5との密着性を効果的に高めることができる。
【0139】
なお、接着層5が、イソシアネート基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物、及びエポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも1種と、前記酸変性ポリオレフィンとを含む樹脂組成物の硬化物である場合、酸変性ポリオレフィンが主剤として機能し、イソシアネート基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物、及びエポキシ基を有する化合物は、それぞれ、硬化剤として機能する。
【0140】
接着層5には、カルボジイミド基を有する改質剤が含まれていてもよい。
【0141】
接着層5をバリア層3や熱融着性樹脂層4などと積層して本開示の蓄電デバイス用外装材10を製造する際に、予め形成された樹脂フィルムを接着層5として用いてもよい。また、接着層5を形成する熱融着性樹脂を、押出成形や塗布などによってバリア層3や熱融着性樹脂層4などの表面上でフィルム化して、樹脂フィルムにより形成された接着層5としてもよい。
【0142】
接着層5の厚さは、好ましくは、約50μm以下、約40μm以下、約30μm以下、約20μm以下、約5μm以下である。また、接着層5の厚さは、好ましくは、約0.1μm以上、約0.5μm以上である。また、接着層5の厚さの範囲としては、好ましくは、0.1~50μm程度、0.1~40μm程度、0.1~30μm程度、0.1~20μm程度、0.1~5μm程度、0.5~50μm程度、0.5~40μm程度、0.5~30μm程度、0.5~20μm程度、0.5~5μm程度が挙げられる。より具体的には、接着剤層2で例示した接着剤や、酸変性ポリオレフィンと硬化剤との硬化物である場合は、好ましくは1~10μm程度、より好ましくは1~5μm程度が挙げられる。また、熱融着性樹脂層4で例示した樹脂を用いる場合であれば、好ましくは2~50μm程度、より好ましくは10~40μm程度が挙げられる。なお、接着層5が接着剤層2で例示した接着剤や、酸変性ポリオレフィンと硬化剤を含む樹脂組成物の硬化物である場合、例えば、当該樹脂組成物を塗布し、加熱等により硬化させることにより、接着層5を形成することができる。また、熱融着性樹脂層4で例示した樹脂を用いる場合、例えば、熱融着性樹脂層4と接着層5との押出成形により形成することができる。
【0143】
本開示の蓄電デバイス用外装材において、バリア層3よりも内側の層(熱融着性樹脂層4,必要に応じて設けられる接着層5等のうち、少なくとも1層)は、吸水剤及び硫黄系ガス吸収剤のうち少なくとも一方を含んでいてもよい。本開示において、吸水材を含む層を「吸水層」と表記することがある。また、本開示において、硫黄系ガス吸収剤を含む層を「硫黄系ガス吸収層」と表記することがある。バリア層3よりも内側の層に吸水剤と硫黄系ガス吸収剤が含まれる場合、吸水剤と硫黄系ガス吸収剤は同じ層に含まれていてもよいし、異なる層に含まれていてもよい。バリア層3よりも内側の層が2層以上により構成されている場合であれば、硫黄系ガス吸収剤は、吸水剤を含まない層に含まれていて硫黄系ガス吸収層を構成していることが好ましい。
【0144】
吸水剤が吸収対象とする水分は、気体および/または液体の水分である。吸収対象の水分は、例えば固体電解質タイプのリチウムイオンバッテリーに吸収された際に、種々のアウトガスを発生させてしまうものである。また、硫黄系ガス吸収剤が吸収対象とする硫黄系ガスとしては、硫化水素やジメチルスルフィド、メチルメルカプタン、SOxで表されるイオウ酸化物等が挙げられる。硫黄系ガスは、該アウトガスの成分(例えば、蓄電デバイスが硫化物系無機固体電解質を用いた全固体電池である場合や、正極にリチウム硫黄が使用されたリチウム二次電池の場合に発生する)である。
【0145】
吸水層に含まれる吸水剤は、樹脂中に分散させて吸水性を発揮するものであれば、特に制限されない。例えば、蓄電デバイス中における経時安定性の観点から、無機系吸水剤を好適に使用することができる。無機系吸水剤の好ましい具体例としては、酸化カルシウム、無水硫酸マグネシウム、酸化マグネシウム、塩化カルシウム、ゼオライト、酸化アルミニウム、シリカゲル、アルミナゲル、及び焼ミョウバンなどが挙げられる。一般的に、無機系吸水剤の中でも無機系化学吸水剤は、無機系物理吸水剤よりも吸水効果が高く、含有量を低減することが可能であり、十分な吸水性と熱融着性を単層で実現しやすい。そして、無機系化学吸水剤の中でも、酸化カルシウム、無水硫酸マグネシウム、酸化マグネシウムは、水分の再放出が少なく、包装体内の低湿度状態の経時安定性が高く、絶乾効果を有することから、特に好ましい。なお、絶乾効果とは、相対湿度が0%付近になるまで吸水する効果を示し、調湿効果とは、湿度が高い時には吸水し、湿度が低い時には放湿して、湿度を一定にする効果を指す。
【0146】
吸水層に含まれる樹脂の含有率としては、例えば50質量%以上、好ましくは55質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上である。
【0147】
吸水層に含まれる吸水剤の含有量としては、本開示の効果を奏することを限度として特に制限されず、吸水層に含まれる樹脂100質量部に対して、好ましくは約0.5質量部以上、より好ましくは約2質量部以上、さらに好ましくは約3質量部以上であり、また、好ましくは約50質量部以下、より好ましくは約45質量部以下、さらに好ましくは40質量部以下であり、当該含有量の好ましい範囲としては、0.5~50質量部程度、0.5~45質量部程度、0.5~40質量部程度、2~50質量部程度、2~45質量部程度、2~40質量部程度、3~50質量部程度、3~45質量部程度、3~40質量部程度が挙げられる。
【0148】
硫黄系ガス吸収剤は、硫黄系ガス物理吸収剤および/または硫黄系ガス化学吸収剤を含有することが好ましい。各種の硫黄系ガス吸収剤を併用、例えば硫黄系ガス物理吸収剤と硫黄系ガス化学吸収剤とを併用することによって、多種の硫黄系ガスを容易に吸収することが可能になる。硫黄系ガス吸収剤は例えば粉体で用いられる。硫黄系ガス吸収剤の最大粒子径は20μm以下が好ましく、粉体の数平均粒子径は0.1μm以上、1.0μm以上などが好ましく、また、15μm以下、10μm以下、8μm以下などが好ましく、好ましい範囲としては、0.1~15μm程度、0.1~10μm程度、0.1~8μm程度、1~15μm程度、1~10μm程度、1~8μm程度が挙げられる。数平均粒子径が上記範囲よりも小さいと、硫黄系ガス吸収剤が凝集し易くなり、数平均粒子径が上記範囲よりも大きいと、硫黄系ガス吸収フィルムの均質性が劣る虞があり、硫黄系ガス吸収剤の表面積が小さくなることから硫黄系ガス吸収が劣る虞がある。
【0149】
(硫黄系ガス物理吸収剤)
硫黄系ガス物理吸収剤は、吸収対象の硫黄系ガスを物理的に吸収する作用を有するガス吸収剤である。硫黄系ガス物理吸収剤は、SiO2/Al23モル比が1/1~2000/1の疎水性ゼオライト、ベントナイト、セピオライトからなる群から選ばれる1種または2種以上を含有することが好ましい。
【0150】
疎水性ゼオライトは、硫黄系ガスのような極性の低い分子の吸収性に優れたゼオライトであり、多孔質構造を有する。一般的にゼオライトは、構成成分であるSiO2/Al23のモル比が高い程、疎水性が高くなる。そして、疎水性が高くなることによって硫黄系ガスのような極性の低い分子を吸収し易くなり、逆に、水のような極性の高い分子との親和性が低くなり、これらを吸収し難くなる。疎水性ゼオライトのSiO2/Al23モル比は、30/1~10000/1が好ましく、35/1~9000/1がより好ましく、40/1~8500/1がさらに好ましい。また、疎水性ゼオライトは耐熱性が高く、230℃以上の高温に晒されても、吸収効果を維持することができる。本発明においては、硫黄系ガス吸収能と入手し易さのバランスから、上記範囲のモル比の疎水性ゼオライトが好ましく用いられる。
【0151】
ベントナイトとは、粘土鉱物であるモンモリロナイトを主成分し、層状のフィロケイ酸アルミニウムを多く含み、不純物として石英や長石などの鉱物を含む無機物である。ベントナイトには、例えば、Na+イオンを多く含むNa型ベントナイトと、Ca2+イオンを多く含むCa型ベントナイト、Ca型ベントナイトに対して数wt%の炭酸ナトリウムを加えて人工的にNa型化させた活性化ベントナイト等がある。
【0152】
セピオライトは、含水マグネシウム珪酸塩を主成分とする粘土鉱物であり、一般的な化学組成はMg8Si1230(OH24(OH)4・6~8H2Oで表され、多孔質構造を有する。pH(3%サスペンジョン)は、入手し易さの点から、8.0~9.0のものが好ましく、8.9~9.3のものがより好ましい。
【0153】
(硫黄系ガス化学吸収剤)
硫黄系ガス化学吸収剤は、吸収対象ガスの硫黄系ガスを化学的に吸収または分解する作用を有するガス吸収剤である。そして、化学的な吸収または分解であることにより、水等の影響を受けにくく、一旦吸収した硫黄系ガス分子は脱離し難く、効率的に吸収を行うことができる。また、分解生成物は、硫黄系ガス物理吸収剤または硫黄系ガス化学吸収剤によって吸収される。硫黄系ガス化学吸収剤は、金属酸化物が担持された無機物、金属が混入されたガラス、金属イオンが混入されたガラスからなる群から選ばれる1種または2種以上を含有することが好ましい。金属酸化物が担持された無機物における金属酸化物は、CuO、ZnO、AgOからなる群から選ばれる1種または2種以上を含有することが好ましい。また、担持する無機物は、ゼオライトのような無機多孔体が好ましい。金属が混入されたガラスにおける金属、または金属イオンが混入されたガラスにおける金属イオンの金属種は、Ca、Mg、Na、Cu、Zn、Ag、Pt、Au、Fe、Al、Niからなる群から選ばれる1種または2種以上を含むことが好ましい。
【0154】
硫黄系ガス吸収層に含まれる硫黄系ガス吸収剤の含有量としては、硫黄系ガスを吸収することを限度として特に制限されず、硫黄系ガス吸収層に含まれる樹脂100質量部に対して、好ましくは約5質量部以上、より好ましくは約6質量部以上、さらに好ましくは約7質量部以上であり、また、好ましくは約60質量部以下、より好ましくは約55質量部以下、さらに好ましくは約50質量部以下、さらに好ましくは約30質量部以下であり、当該含有量の好ましい範囲としては、5~60質量部程度、5~55質量部程度、5~50質量部程度、5~30質量部程度、6~60質量部程度、6~55質量部程度、6~50質量部程度、6~30質量部程度、7~60質量部程度、7~55質量部程度、7~50質量部程度、7~30質量部程度が挙げられる。
【0155】
[表面被覆層6]
本開示の蓄電デバイス用外装材は、意匠性、耐電解液性、耐傷性、成形性などの向上の少なくとも1つを目的として、必要に応じて、基材層1の上(基材層1のバリア層3とは反対側)に、表面被覆層6を備えていてもよい。表面被覆層6は、蓄電デバイス用外装材を用いて蓄電デバイスを組み立てた時に、蓄電デバイス用外装材の最外層側に位置する層である。
【0156】
表面被覆層6は、例えば、ポリ塩化ビニリデン、ポリエステル、ポリアミド、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリウレタン、珪素樹脂、フェノール樹脂などの樹脂や、これらの樹脂の変性物が挙げられる。また、これらの樹脂の共重合物であってもよいし、共重合物の変性物であってもよい。さらに、これらの樹脂の混合物であってもよい。樹脂は、好ましくは硬化性樹脂である。すなわち、表面被覆層6は、硬化性樹脂を含む樹脂組成物の硬化物から構成されていることが好ましい。
【0157】
表面被覆層6を形成する樹脂が硬化型の樹脂である場合、当該樹脂は、1液硬化型及び2液硬化型のいずれであってもよいが、好ましくは2液硬化型である。2液硬化型樹脂としては、例えば、2液硬化型ポリウレタン、2液硬化型ポリエステル、2液硬化型エポキシ樹脂などが挙げられる。これらの中でも2液硬化型ポリウレタンが好ましい。
【0158】
2液硬化型ポリウレタンとしては、例えば、ポリオール化合物を含有する第1剤と、イソシアネート化合物を含有する第2剤とを含むポリウレタンが挙げられる。好ましくはポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、およびアクリルポリオール等のポリオールを第1剤として、芳香族系又は脂肪族系のポリイソシアネートを第2剤とした二液硬化型のポリウレタンが挙げられる。また、ポリウレタンとしては、例えば、予めポリオール化合物とイソシアネート化合物とを反応させたポリウレタン化合物と、イソシアネート化合物とを含むポリウレタンが挙げられる。ポリウレタンとしては、例えば、予めポリオール化合物とイソシアネート化合物とを反応させたポリウレタン化合物と、ポリオール化合物とを含むポリウレタンが挙げられる。ポリウレタンとしては、例えば、予めポリオール化合物とイソシアネート化合物とを反応させたポリウレタン化合物を、空気中などの水分と反応させることによって硬化させたポリウレタンが挙げられる。ポリオール化合物としては、繰り返し単位の末端の水酸基に加えて、側鎖にも水酸基を有するポリエステルポリオールを用いることが好ましい。第2剤としては、脂肪族、脂環式、芳香族、芳香脂肪族のイソシアネート系化合物が挙げられる。イソシアネート系化合物としては、例えばヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水素化XDI(H6XDI)、水素化MDI(H12MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)等が挙げられる。また、これらのジイソシアネートの1種類又は2種類以上からの多官能イソシアネート変性体等が挙げられる。また、ポリイソシアネート化合物として多量体(例えば三量体)を使用することもできる。このような多量体には、アダクト体、ビウレット体、ヌレート体等が挙げられる。なお、脂肪族イソシアネート系化合物とは脂肪族基を有し芳香環を有さないイソシアネートを指し、脂環式イソシアネート系化合物とは脂環式炭化水素基を有するイソシアネートを指し、芳香族イソシアネート系化合物とは芳香環を有するイソシアネートを指す。表面被覆層6がポリウレタンにより形成されていることで蓄電デバイス用外装材に優れた電解液耐性が付与される。
【0159】
表面被覆層6は、表面被覆層6の表面及び内部の少なくとも一方には、該表面被覆層6やその表面に備えさせるべき機能性等に応じて、必要に応じて、前述した滑剤や、アンチブロッキング剤、艶消し剤、難燃剤、酸化防止剤、光安定化剤、粘着付与剤、耐電防止剤、顔料等の添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、平均粒子径が0.5nm~5μm程度の微粒子が挙げられる。添加剤の平均粒子径は、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置で測定されたメジアン径とする。
【0160】
添加剤は、無機物及び有機物のいずれであってもよい。また、添加剤の形状についても、特に制限されず、例えば、球状、繊維状、板状、不定形、鱗片状などが挙げられる。
【0161】
添加剤の具体例としては、タルク、シリカ、グラファイト、カオリン、モンモリロナイト、マイカ、ハイドロタルサイト、シリカゲル、ゼオライト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ネオジウム、酸化アンチモン、酸化チタン、酸化セリウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、炭酸リチウム、安息香酸カルシウム、シュウ酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、アルミナ、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、高融点ナイロン、アクリレート樹脂、架橋アクリル、架橋スチレン、架橋ポリエチレン、ベンゾグアナミン、金、アルミニウム、銅、ニッケルなどが挙げられる。添加剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの添加剤の中でも、分散安定性やコストなどの観点から、好ましくはシリカ、硫酸バリウム、酸化チタンが挙げられる。また、添加剤には、表面に絶縁処理、高分散性処理などの各種表面処理を施してもよい。
【0162】
表面被覆層6を形成する方法としては、特に制限されず、例えば、表面被覆層6を形成する樹脂を塗布する方法が挙げられる。表面被覆層6に添加剤を配合する場合には、添加剤を混合した樹脂を塗布すればよい。
【0163】
表面被覆層6が着色剤を含んでいることにより、蓄電デバイス用外装材を着色することができる。着色剤としては、顔料、染料などの公知のものが使用できる。また、着色剤は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0164】
顔料の種類は、特に限定されず、有機顔料としては、例えば、アゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、アンスラキノン系、ジオキサジン系、インジゴチオインジゴ系、ペリノン-ペリレン系、イソインドレニン系、ベンズイミダゾロン系等の顔料が挙げられ、無機顔料としては、カーボンブラック系、酸化チタン系、カドミウム系、鉛系、酸化クロム系、鉄系等の顔料が挙げられ、その他に、マイカ(雲母)の微粉末、魚鱗箔等が挙げられる。
【0165】
着色剤の中でも、例えば蓄電デバイス用外装材の外観を黒色とするためには、カーボンブラックが好ましい。また、蓄電デバイスから発生する熱を放熱する観点からは、マイカを用いることが好ましい。
【0166】
顔料の平均粒子径としては、特に制限されず、例えば、0.03~5μm程度、好ましくは0.05~2μm程度が挙げられる。なお、顔料の平均粒子径は、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置で測定されたメジアン径とする。
【0167】
表面被覆層6における着色剤の含有量としては、蓄電デバイス用外装材が着色されれば特に制限されず、例えば5~60質量%程度、好ましくは10~40質量%程度が挙げられる。
【0168】
表面被覆層6の厚みとしては、表面被覆層6としての上記の機能を発揮すれば特に制限されず、例えば0.5~10μm程度、好ましくは1~5μm程度が挙げられる。
【0169】
3.蓄電デバイス用外装材の製造方法
蓄電デバイス用外装材の製造方法については、本開示の蓄電デバイス用外装材が備える各層を積層させた積層体が得られる限り、特に制限されず、少なくとも、基材層1、バリア層3、及び熱融着性樹脂層4がこの順となるように積層する工程を備える方法が挙げられる。
【0170】
本開示の蓄電デバイス用外装材の製造方法の一例としては、以下の通りである。まず、基材層1、接着剤層2、バリア層3が順に積層された積層体(以下、「積層体A」と表記することもある)を形成する。積層体Aの形成は、具体的には、基材層1上又は必要に応じて表面が化成処理されたバリア層3に接着剤層2の形成に使用される接着剤を、グラビアコート法、ロールコート法などの塗布方法で塗布、乾燥した後に、当該バリア層3又は基材層1を積層させて接着剤層2を硬化させるドライラミネート法によって行うことができる。
【0171】
次いで、積層体Aのバリア層3上に、熱融着性樹脂層4を積層させる。バリア層3上に熱融着性樹脂層4を直接積層させる場合には、積層体Aのバリア層3上に、熱融着性樹脂層4をサーマルラミネート法、押出ラミネート法などの方法により積層すればよい。また、バリア層3と熱融着性樹脂層4の間に接着層5を設ける場合には、接着層5と熱融着性樹脂層4は、例えば、(1)押出ラミネート法、(2)サーマルラミネート法、(3)サンドイッチラミネート法、(4)ドライラミネート法などにより積層することができる。(1)押出ラミネート法としては、例えば、積層体Aのバリア層3上に、接着層5及び熱融着性樹脂層4を押出しすることにより積層する方法(共押出ラミネート法、タンデムラミネート法)などが挙げられる。また、(2)サーマルラミネート法としては、例えば、別途、接着層5と熱融着性樹脂層4が積層した積層体を形成し、これを積層体Aのバリア層3上に積層する方法や、積層体Aのバリア層3上に接着層5が積層した積層体を形成し、これを熱融着性樹脂層4と積層する方法などが挙げられる。また、(3)サンドイッチラミネート法としては、例えば、積層体Aのバリア層3と、予めシート状に製膜した熱融着性樹脂層4との間に、溶融させた接着層5を流し込みながら、接着層5を介して積層体Aと熱融着性樹脂層4を貼り合せる方法などが挙げられる。また、(4)ドライラミネート法としては、例えば、積層体Aのバリア層3上に、接着層5を形成させるための接着剤を溶液コーティングし、乾燥させる方法や、さらには焼き付ける方法などにより積層させ、この接着層5上に予めシート状に製膜した熱融着性樹脂層4を積層する方法などが挙げられる。
【0172】
表面被覆層6を設ける場合には、基材層1のバリア層3とは反対側の表面に、表面被覆層6を積層する。表面被覆層6は、例えば表面被覆層6を形成する上記の樹脂を基材層1の表面に塗布することにより形成することができる。なお、基材層1の表面にバリア層3を積層する工程と、基材層1の表面に表面被覆層6を積層する工程の順番は、特に制限されない。例えば、基材層1の表面に表面被覆層6を形成した後、基材層1の表面被覆層6とは反対側の表面にバリア層3を形成してもよい。
【0173】
上記のようにして、必要に応じて設けられる表面被覆層6/基材層1/必要に応じて設けられる接着剤層2/バリア層3/必要に応じて設けられる接着層5/熱融着性樹脂層4をこの順に備える積層体が形成されるが、必要に応じて設けられる接着剤層2及び接着層5の接着性を強固にするために、さらに、加熱処理に供してもよい。
【0174】
蓄電デバイス用外装材において、積層体を構成する各層には、必要に応じて、コロナ処理、ブラスト処理、酸化処理、オゾン処理などの表面活性化処理を施すことにより加工適性を向上させてもよい。例えば、基材層1のバリア層3とは反対側の表面にコロナ処理を施すことにより、基材層1表面へのインクの印刷適性を向上させることができる。
【0175】
4.蓄電デバイス用外装材の用途
本開示の蓄電デバイス用外装材は、正極、負極、電解質等の蓄電デバイス素子を密封して収容するための包装体に使用される。すなわち、本開示の蓄電デバイス用外装材によって形成された包装体中に、少なくとも正極、負極、及び電解質を備えた蓄電デバイス素子を収容して、蓄電デバイスとすることができる。換言すれば、本開示の蓄電デバイス用外装材によって蓄電デバイス素子を包むことによって、蓄電デバイスとすることができる。
【0176】
具体的には、少なくとも正極、負極、及び電解質を備えた蓄電デバイス素子を、本開示の蓄電デバイス用外装材で、前記正極及び負極の各々に接続された金属端子を外側に突出させた状態で、蓄電デバイス素子の周縁にフランジ部(熱融着性樹脂層同士が接触する領域)が形成できるようにして被覆し、前記フランジ部の熱融着性樹脂層同士をヒートシールして密封させることによって、蓄電デバイス用外装材を使用した蓄電デバイスが提供される。なお、本開示の蓄電デバイス用外装材により形成された包装体中に蓄電デバイス素子を収容する場合、本開示の蓄電デバイス用外装材の熱融着性樹脂部分が内側(蓄電デバイス素子と接する面)になるようにして、包装体を形成する。2つの蓄電デバイス用外装材の熱融着性樹脂層同士を対向させて重ね合わせ、重ねられた蓄電デバイス用外装材の周縁部を熱融着して包装体を形成してもよく、また、図5に示す例のように、1つの蓄電デバイス用外装材を折り返して重ね合わせ、周縁部を熱融着して包装体を形成してもよい。折り返して重ね合わせる場合は、図5に示す例のように、折り返した辺以外の辺を熱融着して三方シールにより包装体を形成してもよいし、フランジ部が形成できるように折り返して四方シールしてもよい。なお、蓄電デバイス用外装材の最内層および最外層が熱融着性樹脂層である場合、最内層の熱融着性樹脂層と、最外層の熱融着性樹脂層とを熱融着することによって、包装体を形成してもよい。
蓄電デバイス素子は、蓄電デバイス用外装材に加えて、蓋体によって封止されてもよい。すなわち、蓄電デバイス用外装材および蓋体は、蓄電デバイス素子を密封する外装体(蓄電デバイス用の外装体)を構成する。例えば、筒状に構成された蓄電デバイス用外装材の内部に蓄電デバイス素子を収容し、開口部を蓋体によって閉じてもよい。別の例では、開口部が形成されるように筒状に構成された蓄電デバイス用外装材の内部に蓋体と接続された状態の蓄電デバイス素子を収容し、開口部を蓋体によって閉じてもよい。蓋体と、蓄電デバイス用外装材とは、任意の手段で接合されることが好ましい。蓄電デバイスの体積エネルギー密度を向上させるべく蓄電デバイス素子と蓄電デバイス用外装材との間のデッドスペースを削減する観点から、蓄電デバイス用外装材は、蓄電デバイス素子および蓋体に巻き付けられることが好ましい。蓋体は、例えば、樹脂成形品、金属成形品、蓄電デバイス用外装材、およびこれらの組み合わせなどで形成できる。本開示において、蓋体が樹脂成形品と表現される場合、蓋体は、JIS K6900-1994[プラスチック―用語]によって規定されるフィルムのみによって構成される態様は含まれない。蓋体が金属成形品である場合、蓋体が金属端子としての機能を兼ねるため、金属端子を省略することもできる。蓋体は、樹脂材料および導電性材料を含んで構成されてもよい。また、蓄電デバイス用外装材には、蓄電デバイス素子を収容するための凹部が、深絞り成形または張出成形によって形成されてもよい。図5に示す例のように、一方の蓄電デバイス用外装材には凹部を設けて他方の蓄電デバイス用外装材には凹部を設けなくてもよいし、他方の蓄電デバイス用外装材にも凹部を設けてもよい。
【0177】
本開示の蓄電デバイス用外装材は、電池(コンデンサー、キャパシター等を含む)などの蓄電デバイスに好適に使用することができる。また、本開示の蓄電デバイス用外装材は、一次電池、二次電池のいずれに使用してもよいが、好ましくは二次電池に使用される。本開示の蓄電デバイス用外装材が適用される二次電池の種類については、特に制限されず、例えば、リチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池、全固体電池、半固体電池、擬固体電池、ポリマー電池、全樹脂電池、鉛蓄電池、ニッケル・水素蓄電池、ニッケル・カドミウム蓄電池、ニッケル・鉄蓄電池、ニッケル・亜鉛蓄電池、酸化銀・亜鉛蓄電池、金属空気電池、多価カチオン電池、コンデンサー、キャパシター等が挙げられる。これらの二次電池の中でも、本開示の蓄電デバイス用外装材の好適な適用対象として、リチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池、全固体電池が挙げられる。
【実施例0178】
以下に実施例及び比較例を示して本開示を詳細に説明する。但し本開示は実施例に限定されるものではない。
【0179】
<熱融着性樹脂層>
(実施例1)
実施例1の熱融着性樹脂層(厚み40μm)は、ホモポリブチレンテレフタレートフィルム(未延伸ホモPBT:(構成単位は、テレフタル酸と1,4-ブタンジオールの2種類である))により形成した。
【0180】
(実施例2,5,6)
実施例2,5,6の熱融着性樹脂層(厚み40μm)は、共重合ポリブチレンテレフタレートフィルム(未延伸共重合PBT)により形成した。共重合ポリブチレンテレフタレートフィルムは、主成分であるポリブチレンテレフタレート構造を形成するテレフタル酸と1,4-ブタンジオールが2つの構成単位を構成しており、さらに、ポリブチレンテレフタレート構造に対し、副成分としてポリエステル構造Bがポリブチレンテレフタレート構造にブロック重合されたものである。ポリエステル構造Bは、ドデカンジオン酸(ドデカン二酸)が3種類目の構成単位として、前記の1,4-ブタンジオールと共重合されることで樹脂に導入される構造である。したがって、フィルムを形成する樹脂は、ポリブチレンテレフタレート構造(モノマー単位としてのテレフタル酸と1,4-ブタンジオールが、2種類の構成単位となる)とポリエステル構造B(モノマー単位としてのドデカンジオン酸が、1種類の構成単位となる)とを含んでおり、合計3種類の構成単位が共重合された構造を備えている。熱融着性樹脂層の共重合ポリブチレンテレフタレートフィルムにおいて、ポリエステル構造Bが10質量%含まれている(モノマー単位として、テレフタル酸と1,4-ブタンジオールと、ドデカン二酸とのモル比(テレフタル酸残基:1,4-ブタンジオール残基:ドデカン二酸残基)が100:112:13の比率)。
【0181】
(実施例3)
実施例3の熱融着性樹脂層(厚み40μm)は、共重合ポリブチレンテレフタレートフィルム(未延伸共重合PBT)により形成した。共重合ポリブチレンテレフタレートフィルムは、主成分であるポリブチレンテレフタレート構造を形成するテレフタル酸と1,4-ブタンジオールが2つの構成単位を構成しており、さらに、ポリブチレンテレフタレート構造に対し、副成分としてポリエーテル構造がブロック重合されたものである。ポリエーテル構造は、ポリテトラメチレンエーテルグリコールが3種類目の構成単位として、前記のテレフタル酸と共重合されることで樹脂に導入される構造である。したがって、フィルムを形成する樹脂は、ポリブチレンテレフタレート構造(モノマー単位としてのテレフタル酸と1,4-ブタンジオールが、2種類の構成単位となる)とポリエーテル構造(モノマー単位としてのポリテトラメチレンエーテルグリコールが、1種類の構成単位となる)とを含んでおり、合計3種類の構成単位が共重合された構造を備えている。熱融着性樹脂層のフィルムを形成する樹脂には、モノマー単位として、テレフタル酸と1,4-ブタンジオールと、ポリテトラメチレングリコールとのモル比(テレフタル酸残基:1,4-ブタンジオール残基:ポリテトラメチレングリコール残基)が100:112:13の比率で含まれている。
【0182】
(実施例4)
実施例4の熱融着性樹脂層(厚み40μm)は、延伸ホモポリブチレンテレフタレートフィルム(ホモPBT:(構成単位は、テレフタル酸と1,4-ブタンジオールの2種類である))により形成した。
【0183】
(比較例1~2)
比較例1,2の熱融着性樹脂層(厚さ40μm)は、それぞれ、ポリプロピレンフィルムである。比較例1のポリプロピレンフィルムは、未延伸ランダム系のポリプロピレンフィルムであり、比較例2のポリプロピレンフィルムは、未延伸ホモ系のポリプロピレンフィルムである。
【0184】
なお、熱融着性樹脂層のフィルムを形成する樹脂の組成は、次のようにして確認した。GCMSについては、前処理として誘導体化法を適用し、その後GCMS測定を行った。450℃同時誘導体化法は、サンプル約0.1mgをサンプルカップに入れ、TMAHを1μl滴下し下記条件にて測定し、樹脂中に含まれる構造について定性した。装置として、7890A/5975C(Agilent Technologies)及び熱分解炉AS-1020E(Frontier Lab)を用いた。カラムとして、InertCap 5MS/Silを用いた。昇温条件として、50℃で5分間の保持、10℃/minで昇温し、320℃で3分間の保持とした。スプリット比は1:50とした。次に、NMRについては、前処理としてサンプルをHFIPに約4wt%となるよう溶解し、CDCl3で2倍に希釈した。NMR測定として装置:AVANCEIIIHD(BRUKER)を用いて下記条件にて測定し、構造の同定を行った。核種は1H、溶媒は、CDCl3+HFIP(1:1)、室温、積算回数は64回とした。
【0185】
<窒素透過量及び酸素透過量の測定>
熱融着性樹脂層のバリア層側をセンサー側にし、蓄電デバイス素子側からガスが透過するように熱融着性樹脂層を設置し、窒素および酸素の透過度を測定した。試験方法は、JIS K7126-1:2006準拠(差圧法)に従い、検知器は、ガスクロマトグラフ[熱伝導度検出器(TCD)]を用いた。測定時の試験片は、φ60mmとし、試験条件は、窒素ガス(乾燥状態)または、酸素ガス(乾燥条件)を用いた。差圧:1atm+101kPa加圧で、温度は、(100±2)℃又は(25±2)℃で、透過面積:15.2×10-42(透過部径φ4.4×10-2m)とした。測定装置は、差圧式ガス・蒸気透過率測定装置[GTR-30XAD2,G2700T・F]-2[GTRテック(株)ヤナコテクニカルサイエンス(株)製]を用いた。なお、蓄電デバイス用外装材を塩酸等の酸に浸漬してバリア層を溶解させ、熱融着性樹脂層の単膜を得て測定対象とすることもできる。
【0186】
<外装材の製造>
(実施例1~4)
基材層として、ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ25μm)の貼り合わせ面側にコロナ処理を施したものを用意した。また、バリア層として、アルミニウム合金箔(JIS H4160:1994 A8021H-O、厚さ40μm)を用意した。また、熱融着性樹脂層として、前記の各フィルムを用いた。次に、2液硬化型ウレタン接着剤(ポリエステルポリオールと脂環式イソシアネート化合物)を用い、ドライラミネート法により、基材層とバリア層とを接着し、基材層/接着剤層/バリア層が順に積層された積層体を作製した。
【0187】
次に、2液硬化型ウレタン接着剤(ポリエステルポリオールと脂環式イソシアネート化合物)を用い、ドライラミネート法により、得られた積層体のバリア層側と、前記の実施例1~4の各フィルムとを接着し、バリア層の上に接着層(4μm)/熱融着性樹脂層を積層させた。次に、得られた積層体をエージングし、加熱することにより、基材層/接着剤層/バリア層/接着層/熱融着性樹脂層がこの順に積層された積層体からなる蓄電デバイス用外装材を得た。
【0188】
(実施例5)
基材層のポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ6μm)に変更したこと以外は、実施例2と同様にして基材層/接着剤層/バリア層/接着層/熱融着性樹脂層がこの順に積層された積層体からなる蓄電デバイス用外装材を得た。
【0189】
(実施例6)
基材層のポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ12μm)に変更したこと以外は、実施例2と同様にして基材層/接着剤層/バリア層/接着層/熱融着性樹脂層がこの順に積層された積層体からなる蓄電デバイス用外装材を得た。
【0190】
(比較例1~2)
基材層として、ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ12μm)とナイロンフィルム(厚さ25μm)とが2液硬化型ウレタン接着剤(ポリエステルポリオールと芳香族イソシアネート化合物 硬化後の厚みが3μm)で接着された積層フィルムを用意した。また、バリア層として、アルミニウム合金箔(JIS H4160:1994 A8021H-O、厚さ40μm)を用意した。また、熱融着性樹脂層として、前記の比較例1~2の各フィルムを、後述するように接着層と共押出し成形する形で用いた。次に、2液硬化型ウレタン接着剤(ポリエステルポリオールと芳香族式イソシアネート化合物)を用い、ドライラミネート法により、基材層のナイロンフィルム側とバリア層とを接着し、基材層/接着剤層/バリア層が順に積層された積層体を作製した。
【0191】
次に、接着層としての無水マレイン酸変性ポリプロピレンと熱融着性樹脂層とを共押出し成形し、バリア層の上に接着層(40μm)/熱融着性樹脂層を積層させた。次に、得られた積層体をエージングし、加熱することにより、基材層/接着剤層/バリア層/接着層/熱融着性樹脂層がこの順に積層された積層体からなる蓄電デバイス用外装材を得た。
【0192】
<150℃環境でのシール強度の測定>
JIS K7127:1999の規定に準拠して、150℃の測定温度における外装材のシール強度を次のようにして測定した。外装材から、TDの方向の幅が15mmの短冊状に裁断した試験サンプルを準備する。具体的には、図6に示すように、まず、各外装材を60mm(TDの方向)×200mm(MDの方向)に裁断した(図6a)。次に、熱融着性樹脂層同士が対向するようにして、外装材を折り目P(MDの方向の中間)の位置でMDの方向に2つ折りにした(図6b)。折り目Pから10mmMDの方向に内側において、シール幅7mm、温度240℃、面圧とシール時間を熱融着樹脂層の厚みがシール前に対して80±10%の厚みとなる条件で熱融着性樹脂層同士をヒートシールした(図6c)。図6cにおいて、斜線部Sがヒートシールされている部分である。次に、TDの方向の幅が15mmとなるようにして、MDの方向に裁断(図6dの二点鎖線の位置で裁断)して試験片13を得た(図6e)。次に、試験片13を温度150℃環境で2分間放置し、温度150℃環境において、引張り試験機(島津製作所製、AG-Xplus(商品名))で熱融着部の熱融着性樹脂層を300mm/分の速度で剥離させた(図7)。剥離時の最大強度をシール強度(N/15mm)とした。チャック間距離は、50mmとした。シール強度の評価基準は以下の通りであり、評価A及びBが合格である。結果を表1に示す。
(シール強度の評価基準)
A:シール強度が40N/15mm以上である。
B:シール強度が30N/15mm以上40N/15mm未満である。
C:シール強度が30N/15mm未満である。
【0193】
【表1】
【0194】
以上の通り、本開示は、以下に示す態様の発明を提供する。
項1. 少なくとも、外側から、基材層、バリア層、及び熱融着性樹脂層をこの順に備える積層体から構成されており、
前記熱融着性樹脂層は、100℃環境における窒素透過量が、1000cm3/(m2・24h・atm)以下である、蓄電デバイス用外装材。
項2. 前記熱融着性樹脂層は、100℃環境における酸素透過量が、20000cc/m2・24h・atm以下である、項1に記載の蓄電デバイス用外装材。
項3. 少なくとも、外側から、基材層、バリア層、及び熱融着性樹脂層をこの順に備える積層体から構成されており、
前記熱融着性樹脂層は、100℃環境における酸素透過量が、20000cc/m2・24h・atm以下である、蓄電デバイス用外装材。
項4. 前記熱融着性樹脂層は、100℃環境における窒素透過量が、1000cm3/(m2・24h・atm)以下である、項3に記載の蓄電デバイス用外装材。
項5. 前記熱融着性樹脂層は、25℃環境における窒素透過量が、300cc/m2・24h・atm以下である、項1~4のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用外装材。
項6. 前記熱融着性樹脂層は、25℃環境における酸素透過量が、5000cc/m2・24h・atm以下である、項1~5のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用外装材。
項7. 前記熱融着性樹脂層は、ポリブチレンテレフタレートを含む、項1~6のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用外装材。
項8. 前記熱融着性樹脂層は、未延伸ポリブチレンテレフタレートフィルムにより形成されている、項1~7のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用外装材。
項9. 前記熱融着性樹脂層は、ホモポリブチレンテレフタレート及び共重合ポリブチレンテレフタレートの少なくとも一方を含む、項1~8のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用外装材。
項10. 前記共重合ポリブチレンテレフタレートは、ポリブチレンテレフタレート構造に加えて、さらに、ポリエーテル構造及びポリエステル構造Bからなる群より選択される少なくとも1種を含み、
前記ポリエステル構造Bは、ポリブチレンテレフタレート構造とは異なる構造である、項9に記載の蓄電デバイス用外装材。
項11. 前記ポリエステル構造Bが、イソフタル酸、ドデカンジオン酸、及びセバシン酸からなる群より選択される少なくとも1種と、1,4-ブタンジオールとの重縮合構造を備えている、項10に記載の蓄電デバイス用外装材。
項12. JIS K7127:1999の規定に準拠し、以下の測定方法によって測定される150℃環境でのシール強度が、40N/15mm以上である、項1~11のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用外装材。
<150℃環境でのシール強度の測定方法>
蓄電デバイス用外装材から、TDの方向の幅が15mmの短冊状に裁断した試験サンプルを次の手順で準備する。
前記熱融着性樹脂層同士が対向するようにして、蓄電デバイス用外装材を折り目(MDの方向の中間)の位置でMDの方向に2つ折りにする。折り目から10mmMDの方向に内側において、シール幅7mm、温度240℃、面圧とシール時間を熱融着樹脂層の厚みがシール前の厚みに対して75%以上85%以下の厚みとなる条件で熱融着性樹脂層同士をヒートシールし熱融着部を形成する。次に、TDの方向の幅が15mmとなるようにして、MDの方向に裁断して試験片を得る。次に、試験片を温度150℃の環境で2分間放置し、150℃環境において、引張り試験機で前記熱融着部の前記熱融着性樹脂層を300mm/分の速度で剥離させる。剥離時の最大強度をシール強度(N/15mm)とする。チャック間距離は、50mmとする。
項13. 前記熱融着性樹脂層の厚みが、60μm以下である、項1~12のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用外装材。
項14. 前記バリア層と前記熱融着性樹脂層との間に接着層をさらに備える、項1~13のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用外装材。
項15. 前記基材層と前記バリア層との間に接着剤層をさらに備える、項1~14のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用外装材。
項16. 前記蓄電デバイス用外装材は、全固体電池用、半固体電池用、擬固体電池用、ポリマー電池用、又は全樹脂電池用である、項1~15のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用外装材。
項17. 少なくとも、外側から、基材層と、バリア層と、熱融着性樹脂層とがこの順に積層された積層体を得る工程を備えており、
前記熱融着性樹脂層は、100℃環境における窒素透過量が、1000cm3/(m2・24h・atm)以下である、蓄電デバイス用外装材の製造方法。
項18. 少なくとも、外側から、基材層と、バリア層と、熱融着性樹脂層とがこの順に積層された積層体を得る工程を備えており、
前記熱融着性樹脂層は、100℃環境における酸素透過量が、20000cm3/(m2・24h・atm)以下である、蓄電デバイス用外装材の製造方法。
項19. 前記蓄電デバイス用外装材は、全固体電池用、半固体電池用、擬固体電池用、ポリマー電池用、又は全樹脂電池用である、項17又は18に記載の蓄電デバイス用外装材の製造方法。
項20. 少なくとも正極、負極、及び電解質を備えた蓄電デバイス素子が、項1~16のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用外装材により形成された包装体中に収容されている、蓄電デバイス。
項21. 少なくとも正極、負極、及び電解質を備えた蓄電デバイス素子が、項1~16のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用外装材により形成された包装体中に収容されている、全固体電池。
【符号の説明】
【0195】
1 基材層
2 接着剤層
3 バリア層
4 熱融着性樹脂層
5 接着層
6 表面被覆層
10 蓄電デバイス用外装材
13 試験片
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7