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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137929
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】ガス貯蔵構造及びガス貯蔵装置
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/00 20060101AFI20240927BHJP
   F17C 11/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
C01B3/00 B
F17C11/00 C
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024047311
(22)【出願日】2024-03-22
(31)【優先権主張番号】112111121
(32)【優先日】2023-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】524111732
【氏名又は名称】純萃材料股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Aura Material Inc.
【住所又は居所原語表記】2F., No.58, Yuanqu 2nd Rd., Baoshan Township, Hsinchu County 308, Taiwan,
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】戴清智
(72)【発明者】
【氏名】潘信宏
(72)【発明者】
【氏名】張芳卿
【テーマコード(参考)】
3E172
4G140
【Fターム(参考)】
3E172AA02
3E172AA05
3E172AB01
3E172BA10
3E172BB03
3E172BB12
3E172BB17
3E172EA02
3E172EB02
3E172FA07
4G140AA24
(57)【要約】
【課題】ガス貯蔵構造及びガス貯蔵装置を提供する。
【解決手段】少なくとも1つのチャネルと、少なくとも1つのチャネルを取り囲み、それぞれ複数の孔を有し、同じ単位体積内で異なる孔サイズ及び異なる孔数を有する少なくとも2つのガス貯蔵層と、を含む少なくとも1つの管状ユニットを備え、各ガス貯蔵層は、複数の結晶粒を含み、複数の孔は、複数の結晶粒を互いに接続することによって形成され、且つ少なくとも1つのチャネルから放射状に分布するガス貯蔵構造。これにより、本発明のガス貯蔵構造は、ガス充填時間を短縮し、ガス放出率を向上させ、結晶粒の劣化及び粉状化を防止し、更にガス貯蔵構造の安定性及び耐用年数を向上させる利点を有し、関連する市場潜在力がある。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのチャネルと、前記少なくとも1つのチャネルを取り囲み、それぞれ複数の孔を有し、同じ単位体積内で異なる孔サイズ及び異なる孔数を有する少なくとも2つのガス貯蔵層と、を含む少なくとも1つの管状ユニットを備え、
各前記ガス貯蔵層は、複数の結晶粒を含み、前記孔は、前記結晶粒を互いに接続することによって形成され、且つ前記孔は、前記少なくとも1つのチャネルから放射状に分布するガス貯蔵構造。
【請求項2】
各前記孔の孔サイズは、0.1μm~500μmである請求項1に記載のガス貯蔵構造。
【請求項3】
前記少なくとも2つのガス貯蔵層の数は2つであり、2つの前記ガス貯蔵層はそれぞれ第1ガス貯蔵層と第2ガス貯蔵層であり、前記第1ガス貯蔵層と前記第2ガス貯蔵層は、前記少なくとも1つのチャネルから前記少なくとも1つの管状ユニットの周縁に順次接続され、且つ同心に設けられ、
前記第1ガス貯蔵層の密度は、前記第2ガス貯蔵層の密度より小さいか又は大きい請求項1に記載のガス貯蔵構造。
【請求項4】
前記第1ガス貯蔵層の前記密度が前記第2ガス貯蔵層の前記密度より小さくなると、前記第1ガス貯蔵層の前記孔の平均孔サイズは100μm~200μmであり、前記第2ガス貯蔵層の前記孔の平均孔サイズは0.1μm~100μmである請求項3に記載のガス貯蔵構造。
【請求項5】
各前記結晶粒の結晶粒径は、0.5μm~100μmである請求項1に記載のガス貯蔵構造。
【請求項6】
各前記結晶粒の材質は、炭素族元素材料、ホウ素族元素材料、窒素族元素材料、ゼオライト材料、金属有機骨格材料、金属酸化物材料、シリカゲル、エアロゲル、リチウムモレキュラーシーブ、共有結合有機骨格材料、ベントナイト、又はセピオライトを含む請求項1に記載のガス貯蔵構造。
【請求項7】
各前記結晶粒の材質は、AB、AB、AB、AB、AB、A、A23、固溶体及びマグネシウム基合金からなる群から選択され、Aは放熱性金属であり、Bは吸熱性金属である請求項1に記載のガス貯蔵構造。
【請求項8】
各前記結晶粒の材質は、銀、銅、炭素、チタン、ニッケル、鉄、コバルト、バナジウム、白金、パラジウム、クロム、金、ランタン、及びセリウムの触媒材料からなる群から選択される請求項1に記載のガス貯蔵構造。
【請求項9】
前記ガス貯蔵構造は、商用の顆粒状水素貯蔵構造又は商用のインゴット状水素貯蔵構造に比べて、ガス充填時間が少なくとも20%短縮される請求項1に記載のガス貯蔵構造。
【請求項10】
前記ガス貯蔵構造のガス放出率は、56%以上である請求項1に記載のガス貯蔵構造。
【請求項11】
ガス出入口と、前記ガス出入口と連通する収容空間と、を含む本体と、
前記収容空間の中に設けられる請求項1~10の何れか1項に記載のガス貯蔵構造と、
前記本体に設けられ、且つ前記ガス出入口と連通し、前記収容空間と本体外部空間を連通するガス弁と、
を備え、
前記ガス出入口の最大横断直径は、前記少なくとも1つの管状ユニットの最大横断直径に平行であり、
前記ガス弁が開くと、前記ガス貯蔵構造の前記チャネルは前記本体外部空間と連通し、この時、前記ガス貯蔵装置は、ガスを貯蔵又は放出するために用いられるガス貯蔵装置。
【請求項12】
前記本体は、
前記収容空間の中に設けられ、前記ガス弁と前記ガス貯蔵構造との間に位置し、複数のガスガイド孔を含み、各前記ガスガイド孔の最大横断直径が前記少なくとも1つの管状ユニットの前記最大横断直径に平行であるガスガイド構造を更に含み、
前記ガスガイド構造は、前記ガス貯蔵装置のガス充填速度又はガス放出速度を制御するために用いられる請求項11に記載のガス貯蔵装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス貯蔵構造及びガス貯蔵装置を提供し、特に、管状であり、且つ少なくとも2つのガス貯蔵層を有するガス貯蔵構造及び前記ガス貯蔵構造を備えるガス貯蔵装置を提供する。
【背景技術】
【0002】
現代社会では、エネルギーは人間の活動に不可欠な資源となっており、人間のエネルギー需要を供給する上で化石燃料が主導的な地位を占めている。近年、エネルギー不足や地球規模の気候変動問題が徐々に注目されるに伴い、再生可能なグリーンエネルギーを探すことが急務となっている。水素は、発熱量が約120MJ/kgで、その燃焼生成物が水であり、大容量で長時間にエネルギー貯蔵が可能という利点を有することから、大型トラック、列車、船舶等の交通輸送分野では良好な応用見通しを示しているため、水素エネルギーは、21世紀の発展の潜在力のある再生可能エネルギーとみなされている。
【0003】
水素の貯蔵は水素エネルギー応用の鍵となり、現在の水素貯蔵技術には主にガス状高圧水素貯蔵、低温液体水素貯蔵、固体水素貯蔵などが含まれるが、その中で固体水素貯蔵は比較的安全で便利であり、且つ水素を精製する能力があるため、水素貯蔵技術の重要な研究方向となっている。
【0004】
現在、市販されている固体水素貯蔵材料の構造形態には、粉末状、顆粒状、インゴット状の三種があり、その中で顆粒状水素貯蔵構造は、接着剤(binder)を添加して水素貯蔵材料中の結晶粒を互いに強固に結合させることにより形成され、インゴット状水素貯蔵構造は、結晶粒を緻密に圧縮することにより形成される。顆粒状水素貯蔵構造とインゴット状水素貯蔵構造のどちらも単位体積あたりの水素貯蔵量を向上させることができるが、顆粒状水素貯蔵構造の結晶粒の表面が接着剤で覆われており、インゴット状水素貯蔵構造の結晶粒の間の空間が少ないので、前記二種の水素貯蔵構造の水素分子が結晶粒の内部格子に拡散することが妨げられ、顆粒状とインゴット状水素貯蔵構造は何れも長い充填時間を必要とし、また水素放出効率が低く、使用回数の増加により結晶粒の老化や粉状化(pulverization behavior)が発生する問題があり、その結果、水素貯蔵効率の低下という欠点を招く。
【0005】
顆粒状水素貯蔵構造又はインゴット状水素貯蔵構造の水素充填効率を向上させるために、従来技術では、高圧、例えば200Kg/cmの圧力で水素分子を結晶粒の内部まで強制的に拡散させることで、結晶粒が水素を吸着して貯蔵する速度を加速し、水素貯蔵構造のガス充填時間を短縮する。しかしながら、顆粒状水素貯蔵構造とインゴット状水素貯蔵構造には、水素放出効率が低く、使用回数の増加により水素貯蔵効率が低下するという欠点が依然としてある。
【0006】
これに鑑みて、如何にしてガス貯蔵構造に優れたガス貯蔵量を持たせ、充填圧力を高めずにガス充填時間を短縮し、ガス放出率を増加させ、ガス貯蔵構造の安定性とガス貯蔵装置の耐用年数を向上させるかは、依然として現在の市場では経済的価値のある要求となっている。
【発明の概要】
【0007】
本発明の一実施形態は、少なくとも1つのチャネルと、少なくとも1つのチャネルを取り囲み、それぞれ複数の孔を有し、同じ単位体積内で異なる孔サイズ及び異なる孔数を有する少なくとも2つのガス貯蔵層と、を含む少なくとも1つの管状ユニットを備え、各ガス貯蔵層は、複数の結晶粒を含み、複数の孔は、複数の結晶粒を互いに接続することによって形成され、且つ複数の孔は、少なくとも1つのチャネルから放射状に分布するガス貯蔵構造を提供する。
【0008】
前記実施形態のガス貯蔵構造によれば、各孔の孔サイズは、0.1μm~500μmであってよい。
【0009】
前記実施形態のガス貯蔵構造によれば、少なくとも2つのガス貯蔵層の数は2つであってよく、2つのガス貯蔵層はそれぞれ第1ガス貯蔵層と第2ガス貯蔵層であってよく、第1ガス貯蔵層と第2ガス貯蔵層は、少なくとも1つのチャネルから少なくとも1つの管状ユニットの周縁に順次接続され、且つ同心に設けられてよく、第1ガス貯蔵層の密度は、第2ガス貯蔵層の密度より小さいか又は大きくてもよい。
【0010】
前記実施形態のガス貯蔵構造によれば、第1ガス貯蔵層の密度が第2ガス貯蔵層の密度より小さくなると、第1ガス貯蔵層の複数の孔の平均孔サイズは100μm~200μmであってよく、第2ガス貯蔵層の複数の孔の平均孔サイズは0.1μm~100μmであってよい。
【0011】
前記実施形態のガス貯蔵構造によれば、各結晶粒の結晶粒径は、0.5μm~100μmであってよい。
【0012】
前記実施形態のガス貯蔵構造によれば、各結晶粒の材質は、炭素族元素材料、ホウ素族元素材料、窒素族元素材料、ゼオライト材料、金属有機骨格材料、金属酸化物材料、シリカゲル、エアロゲル、リチウムモレキュラーシーブ、共有結合有機骨格材料、ベントナイト、又はセピオライトを含んでよい。
【0013】
前記実施形態のガス貯蔵構造によれば、各結晶粒の材質は、AB、AB、AB、AB、AB、A、A23、固溶体及びマグネシウム基合金からなる群から選択されてよく、Aは放熱性金属であり、Bは吸熱性金属である。
【0014】
前記実施形態のガス貯蔵構造によれば、各結晶粒の材質は、銀、銅、炭素、チタン、ニッケル、鉄、コバルト、バナジウム、白金、パラジウム、クロム、金、ランタン、及びセリウムの触媒材料からなる群から選択されてよい。
【0015】
前記実施形態のガス貯蔵構造によれば、ガス貯蔵構造は、商用の顆粒状水素貯蔵構造又は商用のインゴット状水素貯蔵構造に比べて、ガス充填時間が少なくとも20%短縮されてよい。
【0016】
前記実施形態のガス貯蔵構造によれば、ガス貯蔵構造のガス放出率は、56%以上であってよい。
【0017】
本発明の別の実施形態は、ガス出入口と、ガス出入口と連通する収容空間と、を含む本体と、収容空間の中に設けられる前の段落に記載のガス貯蔵構造と、本体に設けられ、且つガス出入口と連通し、収容空間と本体外部空間を連通するガス弁と、を備え、ガス出入口の最大横断直径は、少なくとも1つの管状ユニットの最大横断直径に平行であり、ガス弁が開くと、ガス貯蔵構造のチャネルは本体外部空間と連通し、この時、ガス貯蔵装置は、ガスを貯蔵又は放出するために用いられるガス貯蔵装置を提供する。
【0018】
前記実施形態のガス貯蔵装置によれば、本体は、収容空間の中に設けられ、ガス弁とガス貯蔵構造との間に位置し、複数のガスガイド孔を含んでよく、各ガスガイド孔の最大横断直径が少なくとも1つの管状ユニットの最大横断直径に平行であるガスガイド構造を更に含んでよく、ガスガイド構造は、ガス貯蔵装置のガス充填速度又はガス放出速度を制御するために用いられることができる。
【0019】
それにより、本発明のガス貯蔵構造及びガス貯蔵装置は、ガス貯蔵構造が少なくとも1つの管状ユニットを含み、管状ユニットが少なくとも2つのガス貯蔵層を含み、且つガス貯蔵層の複数の孔が管状ユニットのチャネルから外へ放射状に分布するという構造配置により、ガス貯蔵構造の比表面積を増加させ、ガス貯蔵構造におけるガスの流れ方向をガイドするのに有利であり、それによりガスの物質移動抵抗を低減し、結晶粒のガス貯蔵又は放出効率を効果的に向上させ、且つガス貯蔵構造のガス充填時間を短縮することができる。また、少なくとも2つのガス貯蔵層が異なる密度を有するという構造配置により、結晶粒がガス貯蔵及び放出による熱変化と体積変化の過程においてより安定し、更にガス貯蔵構造の耐用年数が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
本発明の上記及びその他の目的、特徴、利点及び実施例をより明確且つ理解しやすくするために、添付図面を以下に説明する。
図1】本発明の一実施形態の一実施例のガス貯蔵構造を示す模式図である。
図2図1のガス貯蔵構造を示す部分拡大図である。
図3】本発明の別の実施形態の一実施例のガス貯蔵装置を示す模式図である。
図4】本発明の別の実施形態の別の実施例のガス貯蔵装置を示す模式図である。
図5A】本発明の実施例1のガス貯蔵構造の管状ユニットを示す画像である。
図5B図5Aのガス貯蔵構造を示す部分断面画像である。
図6A】本発明の実施例2のガス貯蔵構造の管状ユニットを示す画像である。
図6B図6Aのガス貯蔵構造を示す部分拡大図である。
図6C図6Bの第1ガス貯蔵層を示す拡大図である。
図6D図6Bの第2ガス貯蔵層を示す拡大図である。
図7】実施例2のガス貯蔵構造の結晶粒を示す画像である。
図8】実施例2のガス貯蔵構造及び比較例1のガス貯蔵構造のガス放出試験結果を示す図である。
図9】実施例2のガス貯蔵構造及び比較例2のガス貯蔵構造のガス放出試験結果を示す図である。
図10図9の0minから30minのガス放出試験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の各実施形態について更に詳細に説明する。しかしながら、この実施形態は、様々な発明の概念の応用であってよく、様々な特定の範囲内で具体的に実行されてよい。特定の実施形態は単に説明を目的とするものであり、開示される範囲に制限されない。また、図面を簡略化するために、従来慣用の構造や部品が図面において簡単に模式的に示され、且つ重複する部品が同じ番号で示される可能性がある。
【0022】
[本発明のガス貯蔵構造]
図1及び図2を参照されたい。図1は、本発明の一実施形態の一実施例のガス貯蔵構造100を示す模式図であり、図2は、図1のガス貯蔵構造100を示す部分拡大図である。ガス貯蔵構造100は、少なくとも1つの管状ユニット110を含む。
【0023】
管状ユニット110は、少なくとも1つのチャネル111及び少なくとも2つのガス貯蔵層を含む。2つのガス貯蔵層はチャネル111を取り囲み、各ガス貯蔵層は複数の孔(図示せず)を有し、2つのガス貯蔵層は同じ単位体積内で異なる孔サイズ及び異なる孔数を有する。
【0024】
具体的には、図1の実施例では、ガス貯蔵層の数は2つであり、2つのガス貯蔵層はそれぞれ第1ガス貯蔵層112と第2ガス貯蔵層113である。第1ガス貯蔵層112と第2ガス貯蔵層113とは、チャネル111から管状ユニット110の周縁(図示せず)に順次接続され、且つ同心に設けられる。
【0025】
図示していないが、ガス貯蔵構造100において、各ガス貯蔵層は、複数の結晶粒を含み、各ガス貯蔵層は、複数の結晶粒が積層されてなり、複数の孔は、複数の結晶粒を互いに接続することによって形成され、図2に示すように、第1ガス貯蔵層112と第2ガス貯蔵層113は、外観上、中央のチャネル111から管状ユニット110の周縁に向かって延びる放射状構造となり、第1ガス貯蔵層112と第2ガス貯蔵層113の複数の孔は、チャネル111から外へ放射状に分布する。本発明の結晶粒及びガス貯蔵層の孔の詳細については、後述の実施例の内容に合わせて更に詳しく説明する。
【0026】
これにより、ガス貯蔵構造100が少なくとも1つの管状ユニット110を含むという配置により、本発明のガス貯蔵構造100は、より大きい比表面積を有することができ、ガス充填速度の増加に有利である。更に、複数の孔が少なくとも1つのチャネル111から放射状に分布するという構造配置により、ガス貯蔵構造100の比表面積を更に増加させることができ、ガスをガス貯蔵層内の結晶粒の表面に直接到達するようにガイドすることができる。それにより、ガスの物質移動抵抗を低減し、複数の結晶粒がガスを吸着して貯蔵する速度を向上させ、更に本発明のガス貯蔵構造100を商用の顆粒状水素貯蔵構造又は商用のインゴット状水素貯蔵構造の充填時間より少なくとも20%短縮する。ここで、商用の顆粒状水素貯蔵構造は、接着剤を添加することで水素貯蔵材料における結晶粒を互いに強固に結合させることにより形成され、商用のインゴット状水素貯蔵構造は、結晶粒を緻密に圧縮することにより形成される。
【0027】
本発明のガス貯蔵構造100において、各孔の孔サイズは0.1μm~500μmであってもよく、ガス貯蔵構造100に必要な靭性を持たせることでガスをガス貯蔵構造100全体に拡散しやすくするが、本発明はそれに限定されない。
【0028】
本発明のガス貯蔵構造100において、第1ガス貯蔵層112の密度は、第2ガス貯蔵層113の密度より小さいか又は大きくてもよい。前記密度は、単位体積当たりの質量を指す。図2に示すように、第1ガス貯蔵層112の密度が第2ガス貯蔵層113の密度より小さくなると、第1ガス貯蔵層112の複数の孔の平均孔サイズは100μm~200μmであってよく、それにより第1ガス貯蔵層112にガス貯蔵及びガス拡散速度向上の目的を達成し、第2ガス貯蔵層113の複数の孔の平均孔サイズは0.1μm~100μmであってよく、それにより第2ガス貯蔵層113が大容量のガス貯蔵空間を備える。これにより、第1ガス貯蔵層112及び第2ガス貯蔵層113が放射状に分布する孔及び異なる密度の構造配置を有することにより、本発明のガス貯蔵構造100は、ガス放出時に、放射状に分布する孔によって、密度の大きい第2ガス貯蔵層113から密度の小さい第1ガス貯蔵層112及びチャネル111にガスをガイドすることができ、更に本発明のガス貯蔵構造100のガス放出率が80%以上に達し、優れた産業上の応用可能性を有する。また、図示していないが、他の実施例において、異なるガス貯蔵要求に対応するように、第1ガス貯蔵層の密度は第2ガス貯蔵層の密度より大きくてもよく、本発明はそれに限定されない。
【0029】
本発明のガス貯蔵構造100において、各結晶粒の1つの結晶粒の結晶粒径は、0.5μm~100μmであってよく、それによりガス貯蔵構造100により高い強度及び靭性を持たせる。各結晶粒の材質は、貯蔵要求に応じて選択してよい。具体的には、各結晶粒の材質は、炭素族元素材料、ホウ素族元素材料、窒素族元素材料、ゼオライト材料、金属有機骨格材料、金属酸化物材料、シリカゲル、エアロゲル、リチウムモレキュラーシーブ、活性炭、共有結合有機骨格材料、ベントナイト、モルデナイト、又はセピオライトを含んでよい。又は、各結晶粒の材質は、AB、AB、AB、AB、AB、A、A23、固溶体及びマグネシウム基合金からなる群から選択されてもよく、Aは放熱性金属であり、Bは吸熱性金属である。又は、各結晶粒の材質は、銀、銅、炭素、チタン、ニッケル、鉄、コバルト、バナジウム、白金、パラジウム、クロム、金、ランタン、及びセリウムの触媒材料からなる群から選択されてもよい。言い換えれば、各結晶粒の材質は、上記何れか1つの材質又はそれらの組み合わせであってよいが、本発明はそれに限定されない。
【0030】
更に言えば、各結晶粒の結晶粒径が上記サイズ範囲を満たし、且つ各結晶粒の材質が上記何れか1つの材質又はそれらの組み合わせである場合、複数の結晶粒を互いに積層してターゲットガスに曝すことにより、各結晶粒は、温度変化や圧力変化等の環境因子の変化によってターゲットガスを繰り返して吸着したり放出したりする。このようにして、各結晶粒は、エネルギーの吸収と放出と、を伴って二種の異なる位相(phase)の間で繰り返して変化し、各結晶粒は、ターゲットガスを複数回吸着して放出した後、その表面に結晶核(crystal nucleus)が形成され、そして各結晶粒の間の接触面は、互いに生じる相変化及び核形成(nucleation)現象によって互いに接続され、結晶粒が互いに接続された後に結晶粒に占められていない空間には、複数の孔が更に形成される。
【0031】
例えば、各結晶粒の材質がAB合金であり、且つターゲットガスが水素ガスである場合、各結晶粒は水素ガスを吸着する前に金属相である。各結晶粒が水素ガスを吸着する過程において、水素分子は水素原子に分解され、水素原子の形態で各結晶粒内部の格子配位隙間に充填され、この時、各結晶粒は金属相から金属水素化物相に変化する。各結晶粒が相変化を複数回繰り返して発生した後、複数の結晶粒の間の接触面は核形成現象によって互いに接続される。また、本発明の複数の孔が放射状に分布する詳細については、後述の実施例の内容に合わせてより詳しく説明する。
【0032】
本発明のガス貯蔵構造100は、押出成形、射出成形、又は3D印刷技術によって製造されてよいが、本発明はそれらに限定されない。
【0033】
[本発明のガス貯蔵装置]
図3を参照されたい。図3は、本発明の別の実施形態のガス貯蔵装置200を示す模式図である。ガス貯蔵装置200は、本体210、ガス貯蔵構造100及びガス弁213を含む。
【0034】
本体210は、ガス出入口211と、ガス出入口211と連通する収容空間212と、を含む。
【0035】
ガス貯蔵構造100は、収容空間212に設けられ、且つ少なくとも1つの管状ユニット110を含み、図3の実施例において、ガス貯蔵構造100は、複数の管状ユニット110を含み、図1のガス貯蔵構造100であってよく、そのため、同じ部品の詳細については、図1のガス貯蔵構造100の説明を参照されたい。ここでは説明を省略する。
【0036】
ガス弁213は、本体210に設けられ、且つガス出入口211と連通し、ガス弁213は、収容空間212と本体外部空間を連通する。また、ガス弁213は、ガスの出入りを制御する機能を有する市販の装置を選択してよいが、本発明はそれに限定されない。
【0037】
具体的には、ガス貯蔵装置200において、ガス出入口211は最大横断直径を有し、ガス出入口211の最大横断直径はガス貯蔵構造100の少なくとも1つの管状ユニット110の最大横断直径に平行である。ガス出入口211の最大横断直径を管状ユニット110の最大横断直径と平行に配置することにより、ガス出入口211はガス貯蔵構造100の管状ユニット110と効果的に連通する。ガス弁213が開くと、収容空間212は本体外部空間と連通し、この時、ガス貯蔵構造100の管状ユニット110のチャネル111は収容空間212を介して本体外部空間と連通し、ガス貯蔵装置200はガス弁213の制御によってガスを貯蔵又は放出することができる。
【0038】
図4を更に参照されたい。図4は、本発明の別の実施形態の別のガス貯蔵装置300を示す模式図である。ガス貯蔵装置300は、本体310、ガス貯蔵構造100及びガス弁313を含む。
【0039】
本体310は、ガス出入口311、収容空間312及びガスガイド構造314を含む。ガス出入口311は、収容空間312と連通する。ガスガイド構造314は、収容空間312の中に設けられ、ガスガイド構造314は、ガス弁313とガス貯蔵構造100との間に位置し、複数のガスガイド孔315を含み、本体310及びガス弁313は、図3の本体210及びガス弁213と構造が同じであり、ガス貯蔵構造100は、図1のガス貯蔵構造100であってよく、そのため、同じ部品の詳細についてはここでは説明を省略する。
【0040】
具体的には、ガス貯蔵装置300において、ガスガイド構造314の各ガスガイド孔315は、最大横断直径を有し、ガスガイド孔315の最大横断直径は、ガス貯蔵構造100の少なくとも1つの管状ユニット110の最大横断直径に平行であり、それによりガスガイド孔315と管状ユニット110のチャネル111とが効果的に連通する。ガス弁313が開くと、収容空間312は本体外部空間と連通し、この時、ガス貯蔵構造100の管状ユニット110のチャネル111は、収容空間312及びガスガイド構造314を介して本体外部空間と連通し、ガスガイド構造314は、異なるサイズのガスガイド孔315によってガス貯蔵装置300のガス充填速度又はガス放出速度を制御することができる。
【0041】
これにより、本発明のガス貯蔵装置200とガス貯蔵装置300は、ガス貯蔵構造100を含むことにより、急速ガス貯蔵及びガス放出の効果を効果的に達成することができ、関連市場における優れた応用潜在力を有する。
【0042】
[実施例と比較例]
以下、それぞれ本発明の実施例1と実施例2を用いて本発明のガス貯蔵構造の詳細及びガス貯蔵における応用効果を説明する。
【0043】
図5A及び図5Bを同時に参照されたい。図5Aは、本発明の実施例1のガス貯蔵構造の管状ユニット410を示し画像であり、図5Bは、図5Aのガス貯蔵構造を示す部分断面画像である。
【0044】
管状ユニット410は、チャネル411、第1ガス貯蔵層412及び第2ガス貯蔵層413を含み、第1ガス貯蔵層412及び第2ガス貯蔵層413は、チャネル411から管状ユニット410の周縁に順次接続され、且つ同心に設けられ、第1ガス貯蔵層412と第2ガス貯蔵層413とは異なる密度を有する。前記密度は、単位体積当たりの質量を指す。具体的には、図5A及び図5Bに示すように、第1ガス貯蔵層412の複数の結晶粒及び第2ガス貯蔵層413の複数の結晶粒が相変化及び核形成現象によって互いに接続されると、第1ガス貯蔵層412及び第2ガス貯蔵層413における複数の結晶粒に占められていない空間には複数の孔が形成される。そのうち第1ガス貯蔵層412の組織配列は疎であり、第2ガス貯蔵層413の組織配列は密であり、それにより、第1ガス貯蔵層412の密度は第2ガス貯蔵層413の密度より小さく、このように、第1ガス貯蔵層412及び第2ガス貯蔵層413の複数の孔はチャネル411から外へ放射状に分布し、更に第1ガス貯蔵層412はガスガイド、ガス貯蔵及びガス拡散速度向上の優れた効果を備え、且つ第2ガス貯蔵層413は大容量のガス貯蔵空間を備える。
【0045】
図5Bに示すように、第1ガス貯蔵層412と第2ガス貯蔵層413とは互いに接続され、且つ同心に設けられ、第1ガス貯蔵層412と第2ガス貯蔵層413との間に遷移層(図示せず)が含まれてよい。詳細には、第1ガス貯蔵層412の孔は、比較的大きい孔サイズを有し、孔サイズは、第1ガス貯蔵層412から第2ガス貯蔵層413へ徐々に減少し、第1ガス貯蔵層412の複数の孔の平均孔サイズは、100μm~200μmであってよく、第2ガス貯蔵層413の複数の孔の平均孔サイズは、0.1μm~100μmであってよく、遷移層の複数の孔の平均孔サイズは、10μm~100μmであってよい。これにより、第1ガス貯蔵層412と第2ガス貯蔵層413とが異なる密度を有するという構造配置により、ガス貯蔵構造を疎から密、漸進的な放射状のガイド構造とすることができ、ガスを充填又は放出する効率を向上させ、ガス貯蔵構造の構造安定性を強化することができる。
【0046】
図6A図6Dを参照されたい。図6Aは、本発明の実施例2のガス貯蔵構造の管状ユニット510を示す画像であり、図6Bは、図6Aのガス貯蔵構造を示す部分拡大図であり、図6Cは、図6Bの第1ガス貯蔵層512を示す拡大図であり、図6Dは、図6Bの第2ガス貯蔵層513を示す拡大図である。
【0047】
図6A及び図6Bに示すように、管状ユニット510は、7つのチャネル511、1つの第1ガス貯蔵層512及び1つの第2ガス貯蔵層513を含む。図6Aから分かるように、1つのチャネル511は管状ユニット510の中央に位置し、6つのチャネル511は中央に位置するチャネル511を取り囲み、管状ユニット510のチャネル511は、外観上、放射状に分布する。図6Bから分かるように、第2ガス貯蔵層513は、管状ユニット510の最外周に設けられ、且つ7つのチャネル511を被覆し、第1ガス貯蔵層512は、各チャネル511を取り囲み、且つ第2ガス貯蔵層513に被覆され、第1ガス貯蔵層512と第2ガス貯蔵層513は、各チャネル511から管状ユニット510の周縁に順次接続され、且つ同心又は偏心に設けられる。これにより、管状ユニット510が複数のチャネル511を含む構造配置により、本発明のガス貯蔵構造は優れた比表面積を有することができ、ガス貯蔵構造のガス充填速度の向上に有利である。
【0048】
図6C及び図6Dに示すように、第1ガス貯蔵層512及び第2ガス貯蔵層513は、複数の孔を有し、第1ガス貯蔵層512は、第2ガス貯蔵層513に比べて多く且つ細長い外観を呈する孔を有し、それにより第1ガス貯蔵層512は、優れたガスガイド及びガス拡散促進の効果を備える。また、第2ガス貯蔵層513が第1ガス貯蔵層512に比べて孔サイズが小さく且つ孔分布が密であるという構造配置を有することにより、第2ガス貯蔵層513に大容量のガス貯蔵空間を持たせることができる。
【0049】
図7を参照されたい。それは実施例2のガス貯蔵構造の結晶粒514を示す画像である。具体的には、実施例2のガス貯蔵構造において、第1ガス貯蔵層512と第2ガス貯蔵層513は、何れも複数の結晶粒514が積層されてなり、各結晶粒514の間の接続方式はネック接続(neck-connecting)であり、複数の孔515は、第1ガス貯蔵層512と第2ガス貯蔵層513における複数の結晶粒514に占められていない空間によって形成される。実施例2のガス貯蔵構造において、結晶粒514の材質はAB合金であり、それによりガス貯蔵構造は、ガスを急速に充填するとともに、20Kg/cm未満の圧力でガスを充填でき、且つ10Kg/cm未満の圧力で高いガス貯蔵量を達成するという利点を有する。詳細には、ガス貯蔵とガス放出の過程において、ターゲットガスは、結晶粒514に入って結晶粒514の結晶格子構造を変化させ、同時に温度を変化させる。複数回のガス貯蔵とガス放出の後、ガス貯蔵構造の結晶粒514の間の結晶格子の境界線はぼやける傾向があるが、依然として完全な粒状構造を保持することができ、且つ結晶粒514の接続によって形成された孔515も結晶格子構造の相変化で崩壊することがなく、更に熱力学的に平衡な状態に達することができ、全体構造をより安定させる。
【0050】
図8及び表1を参照されたい。図8は、実施例2のガス貯蔵構造及び比較例1のガス貯蔵構造のガス放出試験結果を示す図である。実施例2のガス貯蔵構造は図6Aのガス貯蔵構造であり、そのため、同じ部品の詳細については図6Aのガス貯蔵構造の説明を参照されたい。ここでは説明を省略する。表1は、実施例2のガス貯蔵構造及び比較例1のガス貯蔵構造の単位構造重量当たりのガス貯蔵量、充填時間、充填速度及びガス放出率の数値を示す。具体的には、実施例2では、単位構造重量当たりのガス貯蔵量は、10-20℃の環境温度と5Kg/cmの充填圧力で、単位構造当たりに貯蔵されるターゲットガスの重量である。充填時間は、10℃-20℃の環境温度で、ガス貯蔵構造がターゲットガスを充填するのに必要な時間である。充填速度は、20℃の環境温度と2Kg/cmの充填圧力で、単位時間当たりに単位構造が増加するターゲットガスの重量である。ガス放出率は、40℃の環境温度で6時間連続ガス放出したガス貯蔵構造から放出されたターゲットガスの重量である。詳細には、本試験では、水素ガス(H)をターゲットガスとして、実施例2のガス貯蔵構造の異なる時点でのガス放出の現象を更に分析する。本試験では、実施例2は本発明のガス貯蔵構造で実験を行い、比較例1は顆粒状ガス貯蔵構造で行い、且つ比較例1のガス貯蔵構造は放射状の孔を有さない。なお、本試験におけるガス放出率は、以下のガス放出率の計算式で計算する。
【数1】
【表1】
【0051】
図8に示すように、比較例1に比べて、実施例2のガス貯蔵構造のガス流速は240min前に何れも比較例1のガス貯蔵構造より高く、表1に示すように、実施例2のガス貯蔵構造のガス放出率は85.7%に達することができたが、比較例1のガス貯蔵構造のガス放出率は55.6%のみであった。また、比較例1の充填時間に比べて、実施例2のガス貯蔵構造の充填時間は少なくとも20%短縮された。また、比較例1の充填速度に比べて、実施例2のガス貯蔵構造の充填速度は55%向上した。詳細には、比較例1のガス貯蔵構造は顆粒状ガス貯蔵構造であり、それは接着剤を添加することで結晶粒を互いに接続するため、結晶粒の表面は接着剤に被覆される。水素分子が接着剤の被覆層に浸透して通過することができるが、接着剤の被覆層は、水素分子から結晶粒の表面までの距離を増加させ、更に結晶粒が水素ガスを吸着して貯蔵する速度に影響を与える。それに対し、実施例2のガス貯蔵構造は、1つの管状ユニットが複数のチャネルを含み、2つのガス貯蔵層が異なる密度を有し、且つ複数の孔がチャネルから外へ放射状に分布するという構造配置を有し、それによりガス貯蔵構造が優れた比表面積を有する。したがって、水素ガスを充填する際に、水素ガスの分子が放射状に分布する孔によって各ガス貯蔵層の結晶粒子の表面に迅速に拡散し、水素ガス分子の物質移動抵抗を効果的に低減することができる。また、実施例2のガス貯蔵構造の複数の孔が複数の結晶粒を互いに接続することによって形成され、前記結晶粒の表面に接着剤が被覆されていないため、複数の結晶粒が水素ガスを吸着して貯蔵する速度を速めることができ、且つ水素ガスを吸着した後に貯蔵安定状態となる。上記結果から分かるように、本発明のガス貯蔵構造は、管状ユニットの異なる密度の2つのガス貯蔵層及び放射状に分布する孔の構造配置により、ガス充填時間を効果的に短縮し、且つガス放出率を向上させることができる。
【0052】
他の実施例において、本発明のガス貯蔵構造のガス放出率は56%以上であってよい。又は、本発明のガス貯蔵構造のガス放出率は60%以上であってよい。又は、本発明のガス貯蔵構造のガス放出率は70%以上であってよい。又は、本発明のガス貯蔵構造のガス放出率は80%以上であってよい。又は、本発明のガス貯蔵構造のガス放出率は85%以上であってよい。
【0053】
図9及び図10を参照されたい。図9は、実施例2のガス貯蔵構造及び比較例2のガス貯蔵構造のガス放出試験結果を示す図である。実施例2のガス貯蔵構造は図6Aのガス貯蔵構造であり、そのため、同じ部品の詳細については図6Aのガス貯蔵構造の説明を参照されたい。ここでは説明を省略する。図10は、図9の0minから30minのガス放出試験結果を示す図である。詳細には、本試験では同様に水素ガスをターゲットガスとし、実施例2は本発明のガス貯蔵構造で実験を行い、比較例2は孔の分布が断片化されたネットワークのように分布する市販のガス貯蔵構造であり、本発明のガス貯蔵構造の放射状の孔の分布とは異なる。
【0054】
図9に示すように、比較例2に比べて、実施例2のガス貯蔵構造は、ガス流速が比較例2のガス貯蔵構造より高い。図10に示すように、ガス流速が100ml/minに維持された場合(矢印で示す箇所)、実施例2では、高い流速を維持する状況下でガス放出時間が長く、比較例2に比べて、実施例2のガス放出時間を1倍以上延ばすことができた。
【0055】
以上より、本発明のガス貯蔵構造及びガス貯蔵装置の利点は以下のとおりである。1、ガス貯蔵構造が少なくとも1つの管状ユニットを含み、管状ユニットが少なくとも2つのガス貯蔵層を含み、且つガス貯蔵層の複数の孔が管状ユニットのチャネルから外へ放射状に分布するという構造配置により、ガス貯蔵構造の比表面積を増加させ、ガス貯蔵構造におけるガスの流れ方向をガイドするのに有利であり、それによりガスの物質移動抵抗を低減し、結晶粒のガス貯蔵又は放出効率を効果的に向上させ、且つガス貯蔵構造のガス充填時間を短縮することができる。2、少なくとも2つのガス貯蔵層が異なる密度を有するという構造配置により、結晶粒がガス貯蔵及び放出による熱変化と体積変化の過程においてより安定し、更にガス貯蔵構造の耐用年数が向上する。3、結晶粒の結晶粒径を0.5μm~100μmに柔軟に調整するという構造配置により、ガス貯蔵構造により高い強度及び靭性を持たせることができる。4、本発明のガス貯蔵構造は、異なるガス貯蔵要求に応じて異なる結晶粒材質を選択し、又は組み合わせてよく、優れたガス放出効果を達成することができる。したがって、本発明のガス貯蔵構造は、関連産業における商業応用の潜在力を有する。
【0056】
本発明は、実施形態に基づいて以上のように開示されたが、上記した実施形態は本発明を限定するものではなく、当業者の誰でも、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、様々な変更や修正を行うことができ、よって、本発明の保護範囲は、添付の特許請求の範囲に定義されるものを基準とすべきである。
【符号の説明】
【0057】
100 ガス貯蔵構造
110、410、510 管状ユニット
111、411、511 チャネル
112、412、512 第1ガス貯蔵層
113、413、513 第2ガス貯蔵層
200、300 ガス貯蔵装置
210、310 本体
211、311 ガス出入口
212、312 収容空間
213、313 ガス弁
314 ガスガイド構造
315 ガスガイド孔
514 結晶粒
515 孔
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図6D
図7
図8
図9
図10