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特開2024-137930リチウム二次電池の活性金属の回収方法
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  • 特開-リチウム二次電池の活性金属の回収方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137930
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】リチウム二次電池の活性金属の回収方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 26/12 20060101AFI20240927BHJP
   C22B 3/06 20060101ALI20240927BHJP
   C22B 3/44 20060101ALI20240927BHJP
   C22B 7/00 20060101ALI20240927BHJP
   H01M 10/54 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
C22B26/12
C22B3/06
C22B3/44 101A
C22B7/00 C
H01M10/54
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024047328
(22)【出願日】2024-03-22
(31)【優先権主張番号】10-2023-0038690
(32)【優先日】2023-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】308007044
【氏名又は名称】エスケー イノベーション カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK INNOVATION CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 110-728 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】ユ ス ミン
(72)【発明者】
【氏名】イ ヒョン ヒ
(72)【発明者】
【氏名】パク セ ウン
【テーマコード(参考)】
4K001
5H031
【Fターム(参考)】
4K001AA02
4K001AA10
4K001AA36
4K001BA05
4K001BA22
4K001DB03
4K001DB04
4K001DB05
4K001JA01
4K001JA03
4K001JA10
5H031RR02
(57)【要約】
【課題】不純物量が減少し、純度及び回収率の高いリチウム前駆体の回収方法を提供すること。
【解決手段】リチウム二次電池の活性金属の回収方法では、リチウム金属酸化物を含む回収対象物質に酸性浸出液を投入して、第1活性金属溶液と浸出残渣とを含む混合物を形成する。第1活性金属溶液を浸出残渣と固液分離して第2活性金属溶液を形成する。第2活性金属溶液に鉄塩を含む水酸化リチウム水溶液を投入して、不純物が除去または低減された第3活性金属溶液を形成する。第3活性金属溶液からリチウム前駆体を回収する。これにより、不純物量が減少し、純度及び回収率の高いリチウム前駆体の回収方法が提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム金属酸化物を含む回収対象物質に酸性浸出液を投入して、第1活性金属溶液と浸出残渣とを含む混合物を形成するステップと、
前記第1活性金属溶液を前記浸出残渣と固液分離して、第2活性金属溶液を形成するステップと、
前記第2活性金属溶液に鉄塩を含む水酸化リチウム水溶液を投入して、不純物が除去または低減された第3活性金属溶液を形成するステップと、
前記第3活性金属溶液からリチウム前駆体を回収するステップとを含む、リチウム二次電池の活性金属の回収方法。
【請求項2】
前記浸出残渣を水洗して洗浄液を生成するステップと、
前記洗浄液を前記混合物または前記第2活性金属溶液に供給するステップとをさらに含む、請求項1に記載のリチウム二次電池の活性金属の回収方法。
【請求項3】
前記水洗は、複数のサイクルで繰り返して行われ、
前記サイクル中の初期サイクルから生成された前記洗浄液は、前記第2活性金属溶液に供給され、
前記サイクル中の後期サイクルから生成された前記洗浄液は、前記混合物に供給される、請求項2に記載のリチウム二次電池の活性金属の回収方法。
【請求項4】
前記リチウム金属酸化物は、リチウムリン酸鉄系活物質を含み、
前記第1活性金属溶液は、硫酸リチウム、塩化リチウムまたは硝酸リチウムを含み、前記浸出残渣はリン酸鉄系物質を含む、請求項1に記載のリチウム二次電池の活性金属の回収方法。
【請求項5】
前記回収対象物質は、廃リチウム二次電池を粉砕して得られる、請求項1に記載のリチウム二次電池の活性金属の回収方法。
【請求項6】
前記不純物は、鉄(Fe)、リン(P)およびアルミニウム(Al)を含む、請求項1に記載のリチウム二次電池の活性金属の回収方法。
【請求項7】
前記鉄塩は、硫酸鉄、塩化鉄または硝酸鉄を含み、前記第2活性金属溶液から残余リンがリン酸鉄の形態で沈殿する、請求項1に記載のリチウム二次電池の活性金属の回収方法。
【請求項8】
前記水酸化リチウム水溶液は、リチウム以外のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩を含まない、請求項1に記載のリチウム二次電池の活性金属の回収方法。
【請求項9】
前記リチウム前駆体を回収するステップは、電気透析により、硫酸リチウム、塩化リチウムまたは硝酸リチウムをリチウム水酸化物に変換することを含む、請求項1に記載のリチウム二次電池の活性金属の回収方法。
【請求項10】
前記電気透析によって生成されたリチウム水酸化物の一部を、前記第3活性金属溶液を形成するステップにリサイクルするステップをさらに含む、請求項9に記載のリチウム二次電池の活性金属の回収方法。
【請求項11】
前記酸性浸出液は、硫酸、塩酸または硝酸を含み、前記電気透析によって生成された硫酸、塩酸または硝酸を、前記混合物を形成するステップにリサイクルするステップをさらに含む、請求項9に記載のリチウム二次電池の活性金属の回収方法。
【請求項12】
前記酸性浸出液は、過酸化水素、酸素、オゾン、および過硫酸リチウムからなる群より選択される少なくとも1つの酸化剤を含む、請求項1に記載のリチウム二次電池の活性金属の回収方法。
【請求項13】
前記水酸化リチウム水溶液は、前記第2活性金属溶液の全重量に対して0.1~0.5重量%で投入される、請求項1に記載のリチウム二次電池の活性金属の回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願の開示は、リチウム二次電池の活性金属の回収方法に関する。より詳細には、リチウム二次電池の正極活物質からの活性金属の回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池はカムコーダー、携帯電話、ノートパソコンなどの携帯用電子通信機器およびハイブリッド自動車、電気自動車などの車両の動力源として広く適用されている。二次電池としては、リチウム二次電池が、動作電圧および単位重量当たりのエネルギー密度が高く、充電速度および軽量化に有利である。
【0003】
前記リチウム二次電池の正極用活物質としては、リチウム金属酸化物を用いることができる。前記リチウム金属酸化物は、さらに鉄、ニッケル、コバルト、マンガンなどの有価金属を含有することができる。
【0004】
前記正極用活物質に前述した高コストの有価金属が使用され、また環境保護への関心が高まることによって、正極用活物質のリサイクル方法の研究が進められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示の1つの課題は、向上した純度及び効率性を有するリチウム二次電池の活性金属の回収方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の実施形態によるリチウム二次電池の活性金属の回収方法では、リチウム金属酸化物を含む回収対象物質に酸性浸出液を投入して、第1活性金属溶液と浸出残渣とを含む混合物を形成することができる。第1活性金属溶液を浸出残渣と固液分離して、第2活性金属溶液を形成することができる。第2活性金属溶液に鉄塩を含む水酸化リチウム水溶液を投入して、不純物が除去または低減された第3活性金属溶液を形成することができる。第3活性金属溶液からリチウム前駆体を回収することができる。
【0007】
いくつかの実施形態では、前記浸出残渣を水洗して洗浄液を生成することができる。前記洗浄液を前記混合物または前記第2活性金属溶液に供給することができる。
【0008】
いくつかの実施形態では、前記水洗は複数のサイクルで繰り返して行われ、前記サイクル中の初期サイクルから生成された前記洗浄液は、前記第2活性金属溶液に供給し、前記サイクル中の後期サイクルから生成された前記洗浄液は、前記混合物に供給することができる。
【0009】
いくつかの実施形態では、前記リチウム金属酸化物は、リチウムリン酸鉄系活物質を含み、前記第1活性金属溶液は、硫酸リチウム、塩化リチウムまたは硝酸リチウムを含み、前記浸出残渣は、リン酸鉄系物質を含むことができる。
【0010】
いくつかの実施形態では、前記回収対象物質は、廃リチウム二次電池を粉砕して得ることができる。
【0011】
いくつかの実施形態では、前記不純物は、鉄(Fe)、リン(P)及びアルミニウム(Al)を含むことができる。
【0012】
いくつかの実施形態では、前記鉄塩は、硫酸鉄、塩化鉄または硝酸鉄を含み、前記第2活性金属溶液から残余リンがリン酸鉄の形態で沈殿し得る。
【0013】
いくつかの実施形態では、前記水酸化リチウム水溶液は、リチウム以外のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩を含まなくてもよい。
【0014】
いくつかの実施形態では、前記リチウム前駆体を回収するステップは、電気透析により、硫酸リチウム、塩化リチウムまたは硝酸リチウムをリチウム水酸化物に変換することを含むことができる。
【0015】
いくつかの実施形態では、前記電気透析によって生成されたリチウム水酸化物の一部を、前記第3活性金属溶液を形成するステップにリサイクルすることができる。
【0016】
いくつかの実施形態では、前記酸性浸出液は、硫酸、塩酸または硝酸を含み、前記電気透析によって生成された硫酸、塩酸または硝酸を、前記混合物を形成するステップにリサイクルすることができる。
【0017】
いくつかの実施形態では、前記酸性浸出液は、過酸化水素、酸素、オゾンおよび過硫酸リチウムからなる群より選択される少なくとも1つの酸化剤を含むことができる。
【0018】
いくつかの実施形態では、前記水酸化リチウム水溶液は、前記第2活性金属溶液の全重量に対して0.1~0.5重量%で投入することができる。
【発明の効果】
【0019】
前述の例示的な実施形態によれば、沈殿残渣に対して繰り返して水洗処理を行うことによって第2活性金属溶液に含まれるリチウムの濃度を高くし、高濃度でリチウム前駆体を回収することができる。
【0020】
いくつかの実施形態では、第2活性金属溶液に鉄塩を含む水酸化リチウム水溶液を投入して残存する不純物を沈殿させ、固液分離して前記不純物を除去することができる。これにより、第3活性金属溶液を電気透析によってリチウム水酸化物に容易に変換することができ、高純度のリチウム前駆体を回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、例示的な実施形態によるリチウム二次電池の活性金属の回収方法を説明するための概略的なフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本開示の例示的な実施形態によれば、廃リチウム二次電池の正極から湿式ベースの工程により、リチウム前駆体を高純度および高収率で回収する方法を提供する。
【0023】
本明細書で使用される用語「前駆体」は、電極活物質に含まれる特定の金属を提供するために、前記特定の金属を含む化合物を包括的に指すものとして使用される。
【0024】
図1は、例示的な実施形態によるリチウム二次電池の活性金属の回収方法を説明するための概略的なフローチャートである。
【0025】
図1に示すように、リチウム金属酸化物を含む回収対象物質に酸性浸出液を投入して、第1活性金属溶液と浸出残渣とを含む混合物を形成することができる(例えば、S10工程)。
【0026】
いくつかの実施形態によれば、前記回収対象物質は、廃リチウム二次電池を粉砕して得ることができる。例えば、前記リチウム金属酸化物は、廃リチウム二次電池または使用済みのリチウム二次電池の正極活物質から得ることができる。
【0027】
前記リチウム二次電池は、正極と、負極と、前記正極と前記負極との間に介在する分離膜とを含む電極組立体を含むことができる。前記の正極および負極は、それぞれ正極集電体および負極集電体上にコーティングされた正極活物質層および負極活物質層を含むことができる。
【0028】
例えば、前記正極活物質層に含まれる正極活物質は、リチウムおよび遷移金属を含有するリチウム金属酸化物を含むことができる。
【0029】
いくつかの実施形態では、前記リチウム金属酸化物は、下記化学式1で表される構造を有する化合物を含むことができる。
【0030】
[化学式1]
LiFe(1-x)PO
【0031】
化学式1中、Mは、Ni、Co、Mn、Mg、Y、Zn、Ru、Ti、Nb、Mo、Cr、Cu、Zr、W、Ir及びVからなる群より選択される少なくとも1つを含み、0≦x≦1であってもよい。
【0032】
いくつかの実施形態では、前記リチウム金属酸化物は、リチウムリン酸鉄系活物質を含むことができ、例えば、鉄(Fe)およびリン(P)を含むLFP系リチウム酸化物を含むことができる。
【0033】
例えば、前記廃リチウム二次電池から前記正極を分離して廃正極を回収することができる。前記廃正極は、前述のように正極集電体(例えば、アルミニウム(Al))および正極活物質層を含み、前記正極活物質層は、前述の正極活物質に加えて、導電材及び結合剤を共に含むことができる。
【0034】
前記導電材は、例えば、黒鉛、カーボンブラック、グラフェン、カーボンナノチューブなどの炭素系物質を含むことができる。前記結合剤は、例えば、ビニリデンフルオリド-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF-co-HFP)、ポリビニリデンフルオリド(polyvinylidenefluoride,PVDF)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate)などの樹脂物質を含むことができる。
【0035】
いくつかの実施形態によれば、前記回収対象物質は、前記廃正極を粉砕して得ることができる。これにより、回収対象物質は、リチウム金属酸化物を含み、例えば、リチウムリン酸鉄系活物質(例えば、LiFePO)を含むことができる。
【0036】
前記回収対象物質は、前記正極集電体、前記結合剤または前記導電材に由来する成分を一部含んでもよい。一実施形態では、前記回収対象物質は、前記リチウム金属酸化物粒子から実質的に構成されてもよい。
【0037】
いくつかの実施形態では、前記回収対象物質に酸性浸出液を投入して反応させる前に熱処理を行うことができる。前記熱処理により、前記回収対象物質に含まれる前記の導電材および結合剤のような不純物が除去または低減され、前記リチウム金属酸化物の純度を高くすることができる。
【0038】
前記熱処理の温度は、例えば、約100℃~500℃または約350℃~450℃であってもよい。前記範囲内では、前記不純物が除去され、リチウム金属酸化物の分解、損傷を防止することができる。
【0039】
前述のいくつかの実施形態により準備されたリチウム金属酸化物を含む回収対象物質に酸性浸出液を投入して、第1活性金属溶液と浸出残渣とを含む混合物を形成することができる。
【0040】
例えば、前記廃リチウム二次電池から正極を分離した後、分離した正極に酸性浸出液を投入することができる。この場合、正極集電体から前記正極活物質層が剥離され、前記酸性浸出液に前記リチウム金属酸化物が溶解し得る。
【0041】
いくつかの実施形態では、前記酸性浸出液は、過酸化水素、酸素、オゾンおよび過硫酸リチウムからなる群より選択される少なくとも1つの酸化剤を含むことができる。
【0042】
例えば、前記酸化剤は、前記リチウム金属酸化物、例えばリチウムリン酸鉄系活物質(例えば、LiFePO)に含まれる鉄(Fe)を二価から三価に酸化させ、リン酸鉄の形態(例えば、FePO)に沈殿させることができる。例えば、前記酸性浸出液には、陽イオンの混入を防止できる過酸化水素が含まれていてもよい。
【0043】
いくつかの実施形態では、前記リチウム金属酸化物と前記酸化剤との当量比は、1:0.4~1:4であってもよく、例えば、前記当量比は、前記リチウム金属酸化物の1モルに対して前記酸化剤を0.4モル~4モル使用することを意味し得る。
【0044】
例えば、前記リチウム金属酸化物と前記酸化剤との当量比は、1:0.5~1:3.5、1:1~1:3.0、または1:1.5~1:2.5であってもよい。前記範囲内では、二価から三価に酸化される鉄の量および沈殿するFePOの量がより多くなり、不純物である鉄の濃度を減らすことができる。
【0045】
いくつかの実施形態では、前記酸性浸出液は、硫酸、塩酸または硝酸を含むことができる。これにより、前記リチウム金属酸化物、例えば、リチウムリン酸鉄系活物質(例えば、LiFePO)に含まれるリチウムが選択的に浸出した第1活性金属溶液を得ることができる。
【0046】
例えば、前記酸性浸出液に含まれる酸の種類によって、前記第1活性金属溶液は、硫酸リチウム(LiSO)、塩化リチウム(LiCl)または硝酸リチウム(LiNO)を含むことができる。
【0047】
いくつかの実施形態では、前記リチウム金属酸化物と前記酸との当量比は、0.8:1~2.2:1であってもよく、例えば、前記当量比は、前記酸の1モルに対して前記リチウム金属酸化物を0.8モル~2.2モル使用することを意味し得る。
【0048】
例えば、前記リチウム金属酸化物と前記酸との当量比は、0.9:1~2.1:1、1.0:1~2.0:1、または1.1:1~2.1:1であってもよい。
【0049】
例えば、前記リチウム金属酸化物と一価酸(例えば、塩酸及び硝酸)との当量比は、0.8:1~1.2:1、0.9:1~1.1:1、または1.0:1~1.2:1であってもよい。
【0050】
例えば、前記リチウム金属酸化物と二価酸(硫酸)との当量比は、1.8:1~2.2:1、1.9:1~2.1:1、または2.0:1~2.2:1であってもよい。
【0051】
前記範囲内では、選択的に浸出されるリチウムの量が増加して第1活性金属溶液に含まれるリチウムの濃度が高くなり、高純度のリチウム前駆体を回収することができる。
【0052】
いくつかの実施形態では、前記浸出残渣は、リン酸鉄系物質を含むことができる。例えば、前記浸出残渣は、三価鉄がリン酸鉄の形態(例えば、FePO)に沈殿して形成された沈殿物を含むことができる。また、前記浸出残渣には、第1活性金属溶液に含まれていない未回収リチウムの一部が含まれ得る。
【0053】
いくつかの実施形態では、0.1atm~5atmの圧力、50℃~90℃の温度、および100rpm~500rpmの回転数で1時間~4時間、前記混合物の形成を行うことができる。
【0054】
例えば、S10工程では、圧力は0.3atm~4atm、0.5atm~3atm、または0.8atm~2atmであってもよく、温度は60℃~85℃または70℃~80℃であってもよく、回転数は150rpm~400rpmまたは200rpm~300rpmであってもよく、実行時間は1.5~3時間または2時間~2.5時間であってもよい。前記圧力、温度、回転数および実行時間の範囲内では、第1活性金属溶液に含まれて回収されるリチウムの量をより増加させることができる。
【0055】
例えば、S20工程では、前記第1活性金属溶液を前記浸出残渣と固液分離して第2活性金属溶液を形成することができる。
【0056】
例示的な実施形態によれば、前記浸出残渣を水洗して洗浄液を生成し、前記洗浄液を前記混合物または前記第2活性金属溶液に供給することができる。
【0057】
いくつかの実施形態では、前記水洗は複数のサイクルで繰り返して行われ、前記サイクル中の初期サイクルから生成された前記洗浄液は、前記第2活性金属溶液に供給し、前記サイクル中の後期サイクルから生成された前記洗浄液は、前記混合物に供給することができる。
【0058】
これにより、浸出残渣に含まれるリチウムが第2活性金属溶液として回収され、第2活性金属溶液が高濃度のリチウムを含むように濃縮され得る。
【0059】
例えば、S30工程では、前記第2活性金属溶液に鉄塩を含む水酸化リチウム水溶液を投入して、不純物が除去または低減された第3活性金属溶液を形成することができる。
【0060】
いくつかの実施形態では、前記不純物は、鉄(Fe)、リン(P)およびアルミニウム(Al)を含むことができる。例えば、前記不純物は、廃リチウム二次電池または使用済みのリチウム二次電池の正極活物質層および正極集電体に由来し得る。
【0061】
いくつかの実施形態では、前記鉄塩は、硫酸鉄、塩化鉄または硝酸鉄を含み、前記第2活性金属溶液から残余リンがリン酸鉄の形態で沈殿し得る。例えば、前記硫酸鉄は、硫酸鉄(III)(Fe(SO)であってもよい。
【0062】
例えば、前記第2活性金属溶液中に残存するリンは、前記鉄塩と反応してリン酸鉄の形態(例えば、FePO)に沈殿し、後の固液分離によって除去することができる。また、第2活性金属溶液中に残存する鉄およびアルミニウムも沈殿物を形成し、固液分離によって除去することができる。
【0063】
いくつかの実施形態では、前記鉄塩は、前記第2活性金属溶液に含まれる鉄(Fe)およびリン(P)のモル比を1:1にするのに必要な量で投入することができる。これにより、より効果的にFePOが沈殿して残存するリンの濃度をより低くすることができ、回収されるリチウム前駆体の純度および収率をさらに高くすることができる。
【0064】
いくつかの実施形態では、前記水酸化リチウム水溶液は、リチウム以外のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩を含まなくてもよい。
【0065】
例えば、水酸化リチウム水溶液は、中和剤または塩基として作用することができ、リチウムイオン(Li)を含むので、他のイオン(例えば、アルカリ金属またはアルカリ土類金属のイオン)が不純物として残ることを防止することができる。これにより、電気透析によるリチウム水酸化物の取得がより容易になり、高純度のリチウム前駆体を回収することができる。
【0066】
例えば、水酸化リチウム水溶液の代わりに水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液および/またはアンモニア水を用いる場合には、ナトリウム、カリウムなどの不純物が残ることにより、回収されるリチウム前駆体の純度が低くなることがある。
【0067】
いくつかの実施形態では、前記水酸化リチウム水溶液は、前記第2活性金属溶液の全重量に対して0.1重量%~0.5重量%の量で投入することができる。例えば、前記水酸化リチウム水溶液の投入量は、前記第2活性金属溶液の全重量に対して、0.1重量%~0.45重量%、0.1重量%~0.4重量%、0.15重量%~0.5重量%、0.1重量%~0.3重量%、または0.15重量%~0.3重量%であってもよい。
【0068】
前記範囲内では、水酸化リチウム水溶液は中和剤として作用し、第2活性金属溶液に残存するリンをより効果的に沈殿させることができる。これにより、固液分離後の第3活性金属溶液に残る不純物の濃度が低くなり、回収されるリチウム前駆体の純度を高めることができる。
【0069】
例えば、S40工程では、前記第3活性金属溶液からリチウム前駆体を回収することができる。
【0070】
前記第3活性金属溶液は、硫酸リチウム、塩化リチウムまたは硝酸リチウムを含み、リチウム以外のアルカリ金属イオン(例えば、Na、K)を含まなくてもよく、微量で含んでもよい。前記リチウム前駆体は、リチウム水酸化物であってもよい。
【0071】
いくつかの実施形態では、電気透析により、硫酸リチウム、塩化リチウム、または硝酸リチウムをリチウム水酸化物に変換して、前記リチウム前駆体を回収することができる。
【0072】
例えば、前記電気透析は、イオン交換膜を挟んで互いに対向する正極および負極を含むバイポーラ電気透析装置によって行うことができる。
【0073】
例えば、下記の式1~式3により、前記バイポーラ電気透析装置内で加水分解反応を行うことができる。これにより、リチウムイオン(Li)(例えば、前記負極に移動)と硫酸イオン(SO 2-)、塩化物イオン(Cl)または硝酸イオン(NO )(例えば、前記正極に移動)がイオン交換膜によって分離移動してリチウム水酸化物および酸を生成することができる。リチウム水酸化物は、前記リチウム前駆体として収集することができる。
【0074】
[式1]
LiSO+2HO→2LiOH+HSO
【0075】
[式2]
LiCl+HO→LiOH+HCl
【0076】
[式3]
LiNO+HO→LiOH+HNO
【0077】
いくつかの実施形態では、前記電気透析によって生成されたリチウム水酸化物の一部を、前記第3活性金属溶液を形成するステップ(S30)にリサイクルすることができる。これにより、使用する水酸化リチウム水溶液の量が減少し、工程の環境親和性および生産性をさらに向上させることができる。
【0078】
いくつかの実施形態では、前記電気透析によって生成された硫酸、塩酸または硝酸を、前記混合物を形成するステップ(S10)にリサイクルすることができる。
【0079】
前記の式1~式3に示すように、電気透析によって分離された硫酸イオン(SO 2-)、塩化物イオン(Cl)または硝酸イオン(NO )は、水と反応して硫酸、塩酸または硝酸を生成することができる。生成された硫酸、塩酸または硝酸は、S10工程で投入された酸性浸出液に含まれる酸として用いることができる。
【0080】
これにより、S10工程で使用する酸性浸出液の量が減少し、工程効率を向上させることができ、環境汚染も大幅に低減することができる。
【0081】
以下、本開示の実施例及び比較例を記載する。しかし、下記実施例は本開示の一実施形態に過ぎず、本開示を限定するものではない。
【0082】
実施例および比較例
スクラップ金属であるリチウムリン酸鉄系活物質の100gに対して、32gの硫酸、40gの過酸化水素を含む酸性浸出液を投入し、1atm、80℃及び250rpmの条件で2時間反応させ、第1活性金属溶液と浸出残渣とを含む混合物を得た(1次浸出)。
【0083】
その後、固液分離装置を用いて前記混合物から第2活性金属溶液を得、分離された浸出残渣を水で洗浄(1次水洗)して得られた洗浄液を前記第2活性金属溶液に添加した。
【0084】
洗浄後の浸出残渣を再び水で洗浄(2次水洗)して得られた洗浄液は、同様の方法により得られた第1活性金属溶液と浸出残渣とを含む混合物(2次浸出)に添加し、その後、固液分離して得られた溶液を前記第2活性金属溶液に添加した。
【0085】
その後、第2活性金属溶液に下記表1に示すような塩基水溶液(中和剤)および硫酸鉄(Fe(SO)を添加し、形成された沈殿物を固液分離装置で分離して第3活性金属溶液を得た。
【0086】
【表1】
1)Fe(SOマージン:第2活性金属溶液に含まれる鉄(Fe)とリン(P)のモル比を1:1にするのに必要な硫酸鉄(Fe(SO)の量
2)第2活性金属溶液の全重量に対する投入量(重量%)
【0087】
実験例
1.1次浸出前のリチウムリン酸鉄系活物質の金属濃度
酸性浸出液を投入する前のリチウムリン酸鉄系活物質に含まれる金属の濃度を下記表2に示す。
【0088】
【表2】
【0089】
2.1次浸出および2次浸出後の金属濃度
(1)酸性浸出液の投入前のリチウムリン酸鉄系活物質に含まれたLi、Fe及びPの濃度に対する、第2活性金属溶液(洗浄液の添加前)に含まれたLi、Fe及びPの濃度の百分率(Li、Fe及びPの浸出率)を下記表3に示す。
【0090】
【表3】
【0091】
表3から、リチウムが選択的に浸出したことが分かる。
【0092】
(2)第2活性金属溶液(洗浄液の添加前)(a)、1次水洗して得られた洗浄液(b)、2次水洗して得られた洗浄液(c)、及び2次浸出後に固液分離して得られた溶液が添加された第2活性金属溶液(d)に含まれた金属の濃度を下記表4に示す。
【0093】
【表4】
【0094】
表4から、1次浸出後に分離された浸出残渣に残っていたリチウムを1次水洗して得られた洗浄液から回収し、追加の洗浄及び2次浸出によってより多くのリチウムを回収することにより、高濃度のリチウムを含む第2活性金属溶液が得られることが分かる。
【0095】
3.第3活性金属溶液の金属濃度
実施例および比較例による第3活性金属溶液に含まれた金属の濃度(単位:重量ppm)を下記表5に示す。
【0096】
【表5】
【0097】
表1及び表5に示すように、実施例による第3活性金属溶液は、比較例による第3活性金属溶液よりも不純物である鉄、リン及びナトリウムの濃度が低かった。
【0098】
水酸化リチウム水溶液を使用する一方、硫酸鉄を使用していない比較例1による第3活性金属溶液では、リンの濃度が高く、中和剤として水酸化ナトリウム水溶液を使用している比較例2及び3による第3活性金属溶液では、ナトリウムの濃度が高かった。
【0099】
また、水酸化リチウム水溶液の投入量が高い実施例2による第3活性金属溶液は、実施例1による第3活性金属溶液よりも鉄の濃度がさらに低かった。
【0100】
これらのことから、例示的な実施例の活性金属の回収方法によれば、不純物の混入が防止され、高純度および高収率のリチウム前駆体を回収できることが分かる。
図1