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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137931
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】センサシート
(51)【国際特許分類】
   G01L 1/14 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
G01L1/14 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024047349
(22)【出願日】2024-03-22
(31)【優先権主張番号】P 2023048568
(32)【優先日】2023-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】那須 将樹
(72)【発明者】
【氏名】大森 翔
(72)【発明者】
【氏名】早川 知範
(72)【発明者】
【氏名】中野 克彦
(72)【発明者】
【氏名】吉田 哲也
(57)【要約】
【課題】電気抵抗値の変化が抑制されたセンサシートを提供する。
【解決手段】第一面27および第二面28を有する絶縁シート24と、絶縁シート24の第一面27側に配置され、貫通した第一開口部34aを有する導電性の第一電極シート25と、絶縁シート24と第一電極シート25とを接合する第一接合部36と、絶縁シート24の第二面28側に配置され、貫通した第二開口部34bを有する導電性の第二電極シート26と、絶縁シート24と第二電極シート26とを接合する第二接合部37と、を備え、引張試験における応力―歪み曲線において、歪みが0.5~10%の区間に極大値を示す降伏点を有しないように構成され、第一開口部34aの開口面積の、第一電極シートの面積に対する割合である開口率が40%以上であり、第二開口部34bの開口面積の、第二電極シートの面積に対する割合である開口率が40%以上である、センサシート18。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一面および第二面を有し、発泡体により形成された絶縁シートと、
前記絶縁シートの前記第一面側に配置され、貫通した第一開口部を有する導電性の第一電極シートと、
前記絶縁シートと前記第一電極シートとを接合する第一接合部と、
前記絶縁シートの前記第二面側に配置され、貫通した第二開口部を有する導電性の第二電極シートと、
前記絶縁シートと前記第二電極シートとを接合する第二接合部と、を備え、
引張試験における応力―歪み曲線において、歪みが0.5~10%の区間に極大値を示す降伏点を有しないように構成され、
前記第一開口部の開口面積の、前記第一電極シートの面積に対する割合である開口率が40%以上であり、
前記第二開口部の開口面積の、前記第二電極シートの面積に対する割合である開口率が40%以上である、センサシート。
【請求項2】
前記第一電極シートおよび前記第二電極シートは、複数のフィラメント集合体が織られた導電布であり、
前記フィラメント集合体は、
複数のフィラメントが撚られた撚線と、
撚線の表面の少なくとも一部に形成されたメッキ層と、を備え、
前記第一電極シートは、前記複数のフィラメント集合体の間に開口する前記第一開口部を備え、
前記第二電極シートは、前記複数のフィラメント集合体の間に開口する前記第二開口部を備える、請求項1に記載のセンサシート。
【請求項3】
前記センサシートは、前記応力―歪み曲線において、歪みが0~5%における応力の最大値が0.5MPa以下となるように構成されている、請求項1に記載のセンサシート。
【請求項4】
前記センサシートは、前記応力―歪み曲線において、歪みが0~20%における応力の最大値が3MPa以下となるように構成されている、請求項3に記載のセンサシート。
【請求項5】
前記第一電極シートは、前記応力―歪み曲線において、歪みが0~5%における応力の最大値が3MPa以下となるように構成されている、請求項1に記載のセンサシート。
【請求項6】
前記第一電極シートは、前記応力―歪み曲線において、歪みが0~20%における応力の最大値が15MPa以下となるように構成されている、請求項5に記載のセンサシート。
【請求項7】
前記メッキ層は、前記撚線の表面の少なくとも一部に形成され、前記撚線の内部の少なくとも一部に形成されていない、請求項2に記載のセンサシート。
【請求項8】
前記応力―歪み曲線は、20mm×90mmの試験片を把持し、引張速度1mm/sで引張試験を実施した場合の応力―歪み曲線である、請求項1~7の何れか1項に記載のセンサシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサシートに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、誘電体層と、誘電体層の第一面に配置される第一電極シートと、を備えたセンサシートが開示されている。センサシートは、例えば、車両のステアリングホイールに取付けられて、乗員がステアリングホイールに接触したか否かを検知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-68414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載のセンサシートでは、センサの検知精度の信頼性に課題がある。例えばステアリングホイールにセンサシートを組付ける場合、センサシートを引っ張って伸ばしながらステアリングホイールに巻付けるため、引張り応力によって第一電極シートの導電経路が変化し、第一電極シートの電気抵抗値が変化するという課題がある。
【0005】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、電気抵抗値の変化が抑制されたセンサシートを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、
第一面および第二面を有し、発泡体により形成された絶縁シートと、
前記絶縁シートの前記第一面側に配置され、貫通した第一開口部を有する導電性の第一電極シートと、
前記絶縁シートと前記第一電極シートとを接合する第一接合部と、
前記絶縁シートの前記第二面側に配置され、貫通した第二開口部を有する導電性の第二電極シートと、
前記絶縁シートと前記第二電極シートとを接合する第二接合部と、を備え、
引張試験における応力―歪み曲線において、歪みが0.5~10%の区間に極大値を示す降伏点を有しないように構成され、
前記第一開口部の開口面積の、前記第一電極シートの面積に対する割合である開口率が40%以上であり、
前記第二開口部の開口面積の、前記第二電極シートの面積に対する割合である開口率が40%以上である、センサシートにある。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、センサシートに印加された引張り応力を、第一開口部および第二開口部が変形することにより吸収することができる。これにより、センサシートに印加される引張り応力の影響を軽減することができる。この結果、センサシートの電気抵抗値の変化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態1のセンサシートが取付けられたステアリングホイールを示す正面図である。
図2図1のA-A線断面図である。
図3】実施形態1のセンサシートを示す平面図である。
図4図3のB-B線断面図である。
図5】(a)は実施例1の第一電極シートを示す一部拡大平面図であり、(b)は実施例1の第二電極シートを示す一部拡大平面図である。
図6図5のC-C線断面図である。
図7】(a)は実施例2の第一電極シートを示す一部拡大平面図であり、(b)は実施例2の第二電極シートを示す一部拡大平面図である。
図8図7のD-D線断面図である。
図9】実施形態2の変形例(1)の第一電極シートの、図7のD-D線に対応する断面図である。
図10】実施例2の変形例(2)の第一電極シートの、図7のD-D線に対応する断面図である。
図11】(a)は比較例1の第一電極シートを示す一部拡大平面図であり、(b)は比較例1の第二電極シートを示す一部拡大平面図である。
図12図11のE-E線断面図である。
図13】第一電極シートに引張試験を実施した場合における、応力と歪みとの関係を表すグラフである。
図14】センサシートに引張試験を実施した場合における、応力と、歪みとの関係を表すグラフである。
図15】実施形態1に係るセンサシートに引張り試験を実施した場合における、第一電極シートを示す一部拡大平面図である。
図16】センサシートに引張試験を実施した場合における、直流抵抗値と、歪みとの関係を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施形態1)
1.センサシートの概要
センサシートは、静電型であり、例えば、電極間の静電容量の変化を利用して、電位を有する導電体の接触または接近を検出するセンサとして機能する。センサシートに、電位を有する導電体が接触または接近すると、電極間の静電容量が変化し、変化した電極間の静電容量に応じた電圧を検出することで、導電体の接触または接近を検出する。
【0010】
センサシートは、例えば車両のステアリングホイールに取付けられて、乗員の手(指、手の平、手の甲等)がステアリングホイールに接触または接近したか否かを検出する。
【0011】
2.ステアリングホイール10の全体構成
まず、ステアリングホイール10の構造について図1図2を参照して説明する。ステアリングホイール10は、図1に示すように、コア部11と、リング部12と、コア部11とリング部12とを接続する複数(本実施形態では3つ)の接続部13とを備える。
【0012】
リング部12は、円形リング形状に形成されている。ただし、リング部12は、円形に限られず、任意の形状に形成することができる。リング部12の軸直角断面形状は、図2に示すように、例えば、円形状に形成されている。
【0013】
3.ステアリングホイール10の詳細構成
ステアリングホイール10の詳細構成について、図1図2を参照して説明する。特に、リング部12の詳細構成について説明する。
【0014】
リング部12は、芯体16、樹脂内層材17、センサシート18、および表皮材19を備える。芯体16は、リング部12の中心部を構成し、リング部12の形状に対応する形状に形成されている。つまり、芯体16は、円形リング形状に形成され、円形状の軸直角断面を有している。ここで、芯体16の軸直角断面形状は、円形状に限られることなく、楕円形状、卵形状、U字状、C字状、多角形状等、任意の形状とすることができる。本形態の芯体16は、アルミニウム、マグネシウム等の金属により形成されており、導電性を有する。芯体16の材質は、金属以外の材料を適用することができる。
【0015】
樹脂内層材17は、芯体16の外面において、芯体16のリング形状の全周に亘って、且つ、芯体16の円断面形状の全周に亘って被覆する。本形態においては、樹脂内層材17の軸直角断面は円形状に形成されている。仮に、芯体16がU字状の軸直角断面を有する場合には、樹脂内層材17は、芯体16の軸直角断面における径方向外側に加えて、芯体16のU字状の凹所にも充填される。樹脂内層材17は、芯体16の外面側に射出成形により成形されており、芯体16の外面に直接的に接合されている。樹脂内層材17の軸直角断面形状は、円形状に限られることなく、卵形状、楕円形状、多角形状等、任意の形状とすることができる。樹脂内層材17は、例えば、発泡樹脂により成形されている。樹脂内層材17は、例えば、発泡ウレタン樹脂を用いる。なお、樹脂内層材17は、非発泡樹脂を用いることもできる。
【0016】
樹脂内層材17の外面には、センサシート18が巻き付けられている。センサシート18は、樹脂内層材17に巻き付けられた状態でC字状をなしている。センサシート18については、後に詳述する。
【0017】
表皮材19は、センサシート18の外面(センサシート18における樹脂内層材17とは反対側の面)において、センサシート18のリング形状の全周に亘って被覆する。つまり、表皮材19は、後述するように、第一電極シート25が絶縁シート24の第一面27側に露出している場合には、第一電極シート25の被覆材としても機能する。表皮材19は、射出成形により成形されており、センサシート18の外面側に巻き付けられてセンサシート18の外面に接合されている。表皮材19は、例えば、ウレタン樹脂により成形されている。表皮材19の外面は、意匠面を構成する。表皮材19の材質は特に限定されず、例えば、非発泡ウレタン樹脂、又は、僅かに発泡させたウレタン樹脂を用いることが好ましい。
【0018】
表皮材19の別の形態として、表皮材19に皮革や布を用い、センサシート18の外面側に巻き付けられてセンサシート18の外面に接合されても良い。表皮材19とセンサシート18との接合には、粘着材や接着剤を用い、さらに、表皮材19を縫製してステアリングホイール10の周囲を被覆しても良い。また、表皮材19の外面は、意匠面を構成する。表皮材19の材質は特に限定されず、革製(天然皮革、合成皮革など)、布・ゴム・樹脂製等の任意の材料を選択できるが、表皮材19は、革製(天然皮革、合成皮革など)が好ましい。
【0019】
4.センサシート18の全体構成
実施形態1のセンサシート18の全体構成について、図3図4を参照して説明する。図3に示すように、センサシート18は、全体として、長手方向Xに長尺な形状に形成されている。センサシート18は、全体として長方形状に形成されたシート本体部20を備える。シート本体部20は、長手方向Xに沿ってのびる一対の長側縁20aと、長手方向Xに交差する方向にのびる一対の短側縁20bと、を備える。なお、以下の説明において、矢線Xはセンサシート18の長手方向を示し、矢線Yは長手方向と交差する交差方向を示し、矢線Zはセンサシート18の厚さ方向を示す。
【0020】
シート本体部20の一対の長側縁20aには、長手方向Xと交差する交差方向Yについて内方に凹んだシート凹部21が形成されている。シート凹部21は、シート本体部20の一対の長側縁20aのうち交差方向Yについて重なる領域を含む位置に形成されている。ただし、シート凹部21は、一対の長側縁20aの一方にのみ形成される構成としてもよい。
【0021】
1つの長側縁20aには、複数(本形態では4つ)のシート凹部21が間隔を空けて形成されている。ただし、1つの長側縁20aに一つのシート凹部21が形成されても良い。また、1つの長側縁20aに2つ~3つまたは5つ以上のシート凹部21が形成されても良い。
【0022】
シート本体部20の一対の長側縁20aの一方には、シート本体部20の、長手方向Xの両端部寄りの位置に、一方の長側縁20aから、長手方向Xと交差する方向に延長するシート延長部22が形成されている。
【0023】
図4に、センサシート18の断面図を示す。センサシート18は、絶縁シート24と、第一電極シート25と、第二電極シート26と、絶縁シート24と第一電極シート25とを接合する第一接合部36と、絶縁シート24と第二電極シート26とを接合する第二接合部37と、を備える。第一電極シート25および第二電極シート26は、導電性を有するとともに、層状に形成されている。
【0024】
第一電極シート25は、絶縁シート24の第一面27側に配置されている。詳細には、第一電極シート25は、絶縁シート24の第一面27に積層されている。第一電極シート25は、絶縁シート24よりもやや小さな相似形に形成されている。これにより、絶縁シート24の第一面27の端縁部は、第一電極シート25の端縁部から露出している。
【0025】
図3に示すように、第一電極シート25のうち、センサシート18のシート凹部21に対応する位置には、交差方向Yについて内方に凹んだ凹部30が形成されている。第一電極シート25のうち、センサシート18のシート延長部22に対応する位置には、第一電極シート25の長手方向Xに沿う長側縁から、長手方向Xと交差する延長方向E1に延長する延長部31aと、延長方向E2に延長する延長部31bとが形成されている。延長部31a,31bには、電線32の端部から露出する芯線32aが接続されている。芯線32aと延長部31a,31bとは、はんだ付け、ロウ付け、超音波溶着等の公知の手法により電気的に接続されている。以下の説明において、延長部31aと延長部31bとを区別しないで記載する場合には、延長部31と記載する場合がある。
【0026】
図4に示すように、第二電極シート26は、絶縁シート24の第二面28側に配置されている。詳細には、第二電極シート26は、絶縁シート24の第二面28に積層されている。第二電極シート26は、絶縁シート24よりもやや小さな相似形に形成されている。これにより、絶縁シート24の第二面28の端縁部は、第二電極シート26の端縁部から露出している。
【0027】
第一電極シート25と第二電極シート26とは、同形同大であってもよいし、一方が他方よりもやや大きな相似形であってもよい。本形態においては、第一電極シート25と第二電極シート26は、略同一の構成を有する。
【0028】
絶縁シート24は、例えば発泡性樹脂を主成分として含んで形成される。これにより、絶縁シート24は発泡体として形成される。絶縁シート24は、発泡性樹脂を主成分として含んでいるので、柔軟である。つまり、絶縁シート24は、可撓性を有し、かつ、面方向に伸長可能に構成されている。絶縁シート24は、例えば、樹脂またはエラストマーの発泡体から製造することができる。エラストマーには、架橋ゴムおよび熱可塑性エラストマーが含まれる。例えば、ウレタンフォームの他、ポリスチレンフォーム、ポリエチレンフォーム、ポリプロピレンフォーム、ポリオレフィン発泡体、EVA(エチレン-酢酸ビニル共重合体)フォーム、PETフォーム、フェノールフォーム、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)フォーム、シリコーンフォーム、ポリ塩化ビニルフォーム、アクリルフォーム、ポリイミドフォーム、ポリ乳酸系樹脂発泡体、メラミンフォーム、ポリメタクリルイミドフォーム、フッ素樹脂フォームなどが挙げられる。
【0029】
また、絶縁シート24は、発泡性樹脂以外のゴム、樹脂、熱可塑性エラストマーや他の材料などを含んでいても良い。例えば、絶縁シート24がエチレン-プロピレンゴム(EPM、EPDM)などのゴムを含む場合には、絶縁シート24の柔軟性が向上する。絶縁シート24の柔軟性を向上させるという観点から、絶縁シート24に可塑剤などの柔軟性付与成分を含有させてもよい。さらに、絶縁シート24は、反応硬化性エラストマー、熱硬化性エラストマーを主成分として構成されるようにしても良い。
【0030】
さらに、絶縁シート24は、熱伝導性の良好な材料が好適である。そこで、絶縁シート24は、熱伝導率の高い熱可塑性エラストマーを用いるようにしても良いし、熱伝導率を高めることができるフィラーを含有させるようにしても良い。さらに、絶縁シート24はパーフォレーション(ミシン目に代表される規則的な物理孔)やスリット(切り込み、切り欠き)を有する構成としても良い。
【0031】
第一電極シート25は、絶縁シート24の第一面27、すなわち絶縁シート24の上面(図4の上面)側に配置されており、第二電極シート26は、絶縁シート24の第二面28、すなわち絶縁シート24の下面(図4の下面)側に配置されている。少なくとも第一電極シート25は、検出用電極を構成する。第一電極シート25および第二電極シート26は、導電性を有する。さらに、第一電極シート25および第二電極シート26は、柔軟である。つまり、第一電極シート25および第二電極シート26は、可撓性を有し、かつ、面方向に伸長可能に構成されている。
【0032】
5.第一電極シート25および第二電極シート26と、絶縁シート24と、の接合構造
図4に示すように、絶縁シート24の第一面27側には、第一接合部36によって第一電極シート25が接合されている。第一接合部36を構成する材料は特に限定されず、例えば、アクリル系粘着剤、シリコーン粘着剤、ウレタン粘着剤、ゴム系粘着剤等、任意の材料から適宜に選択できる。また、図4に示すように、絶縁シート24の第二面28側には、第二接合部37によって第二電極シート26が接合されている。第二接合部37を構成する材料は第一接合部36と同じなので、重複する説明を省略する。
【0033】
6.電極シートの構成
図5および図7を参照しつつ、第一電極シート25,25aおよび第二電極シート26,26aについて説明する。第一電極シート25,25aおよび第二電極シート26,26aは、導電性を備えた導電布である。第一電極シート25,25aおよび第二電極シート26,26aは、導電性を有しつつ、柔軟性を有する。第一電極シート25,25aおよび第二電極シート26,26aは、長手方向Xおよび交差方向Yへの伸縮性を有する。
【0034】
図5に示すように、第一電極シート25および第二電極シート26は、複数のフィラメント71が織られた基布にメッキ層33を形成することにより製造される。また、図7に示すように、第一電極シート25aおよび第二電極シート26aは、複数の撚線73が織られた基布にメッキ層33を形成することにより製造される。各撚線73は、複数のフィラメント71が撚られて形成されている。
【0035】
フィラメント71を構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン6、ナイロン6,6等のポリアミドを例示することができる。ただし、経糸41および緯糸42を構成する樹脂は上記に限られず、任意の樹脂を適宜に選択できる。第二電極シート26も同様の構成を備える。
【0036】
メッキ層33を形成する手法は特に限定されず、例えば、電解メッキでも良いし、無電解メッキでも良いし、無電解メッキを実施した後に電解メッキを実施しても良いし、電解メッキを実施した後に無電解メッキを実施しても良く、任意の手法を適宜に選択できる。
【0037】
基布の表面に形成されるメッキ層33を構成する金属としては、銅、ニッケル、スズ、半田等、任意の金属または合金を適宜に選択できる。基布の表面に形成されるメッキ層33は、1つの金属種により構成されても良いし、複数の金属種により構成されても良い。例えば、基布の表面に銅のみをメッキしてもよいし、基布の表面にニッケルのみをメッキしてもよいし、基布の表面に銅からなる銅メッキ層を形成し、この銅メッキ層の表面にニッケルからなるニッケルメッキ層を形成しても良い。基布の表面に形成されるメッキ層33は、電解メッキにより形成してもよいし、無電解メッキにより形成しても良い。第二電極シート26も同様の構成を備える。
【0038】
7.実施例、比較例、およびサンプル
7.1.実施例1およびサンプル1
(実施例1およびサンプル1)
図5図6を参照して、実施例1について説明する。図5(a)に示すように、本実施例の第一電極シート25は、複数の経糸41と、複数の緯糸42と、を備える。第一電極シート25は、経糸41と、複数の緯糸42とが織られることにより形成される。経糸41は1本のフィラメント71と、フィラメント71の表面に形成されたメッキ層33と、により構成され、緯糸42は1本のフィラメント71と、フィラメント71の表面に形成されたメッキ層33と、により構成されている。第一電極シート25と第二電極シート26とは、略同一の構成なので、以下の記載において、特に言及する場合を除いて、重複する説明を省略する。
【0039】
第一電極シート25は、複数の経糸41のうち隣り合う2つの経糸41と、複数の緯糸42のうち隣り合う2つの緯糸42と、の間に開口する第一開口部34aを備える。第一開口部34aは第一電極シート25を貫通している。本実施例1における、第一電極シート25に形成された第一開口部34aの開口面積の、第一電極シート25の面積に対する割合である開口率は、約63%である。なお、本開口率は、第一電極シート25の対象領域に形成された複数の第一開口部34aの開口面積の合計の、第一電極シート25の対象領域の面積に対する割合である。本開口率は、例えば、第一電極シート25において10mm×10mmの対象領域を特定し、対象領域内の第一開口部34aの面積を合計し、合計面積を対象領域の面積で除算して算出する。
【0040】
図5(b)に示すように、本実施例の第二電極シート26は、複数の経糸41と、複数の緯糸42と、を備える。第二電極シート26は、経糸41と、複数の緯糸42とが織られることにより形成される。経糸41は1本のフィラメント71により構成され、緯糸42は1本のフィラメント71により構成されている。
【0041】
第二電極シート26は、複数の経糸41のうち隣り合う2つの経糸41と、複数の緯糸42のうち隣り合う2つの緯糸42と、の間に開口する第二開口部34bを備える。本実施例1における、第二電極シート26に形成された第二開口部34bの開口面積の、第二電極シート26の面積に対する割合である開口率は、約63%である。
【0042】
図5(a)に示すように、複数の経糸41の長手方向Sと、第一電極シート25の長手方向Xと、が交差して配置されている。また、複数の緯糸42の長手方向Tと、第一電極シート25の長手方向Xと、が交差して配置されている。詳細には、複数の経糸41の長手方向Sは、第一電極シート25の長手方向Xに対して、鋭角の角度が実質的に45°である。また、複数の緯糸42の長手方向Tは、第一電極シート25の長手方向Xに対して、鋭角の角度が実質的に45°である。角度が実質的に45°であるということは、45°である場合を含むとともに、実質的に45°であると認定できる場合も含む。
【0043】
第一電極シート25の長手方向Xに対して、経糸41の長手方向Sが平行な場合(鋭角の角度が実質的に0°の場合)、第一電極シート25を方向Xに平行に伸張すると、経糸41そのものを引き延ばすこととなり、大きな荷重が必要である。
【0044】
一方、第一電極シート25の長手方向Xに対して、経糸41の長手方向Sが斜め45°に傾斜している場合(鋭角の角度が実質的に45°の場合)、第一電極シート25を長手方向Xに平行に伸張すると、緯糸42と経糸41で構成される正方形または長方形の格子が菱形形状に変形することとなり、経糸41または緯糸42そのものを引き延ばすことにならないため、大きな荷重を必要としない。すなわち、鋭角の角度が実質的に45°になっている場合には、構造的な柔軟性が付与される。さらに、開口率が高いほど、正方形または長方形の格子が菱形形状に変形しやすくなり、構造的な柔軟性が損なわれにくい。
【0045】
ただし、複数の経糸41の長手方向Sは、第一電極シート25の長手方向Xに対して、鋭角の角度が45°と異なる角度であっても良い。また、複数の緯糸42の長手方向Tは、第一電極シート25の長手方向Xに対して、鋭角の角度が45°と異なる角度であっても良い。第二電極シート26については、第一電極シート25と同様なので、重複する説明を省略する。
【0046】
図5(a)に示すように、本形態に係る複数の経糸41同士の間隔は実質的に等間隔に配置されている。ただし、実質的に等間隔とは、等間隔である場合を含むとともに、等間隔でない場合であっても、実質的に等間隔であると認定できる場合も含む。なお、複数の経糸41同士の間隔は、それぞれ異なっていても良い。
【0047】
また、本形態に係る複数の緯糸42同士の間隔は実質的に等間隔に配置されている。ただし、実質的に等間隔とは、等間隔である場合を含むとともに、等間隔でない場合であっても、実質的に等間隔であると認定できる場合も含む。なお、複数の緯糸42同士の間隔は、それぞれ異なっていても良い。
【0048】
図5(b)に示すように、第二電極シート26の構成は第一電極シート25と同様なので、重複する説明を省略する。
【0049】
図6に示すように、経糸41の少なくとも一部には、メッキ層33が形成されている。経糸41の全表面にメッキ層33が形成されていても良いし、経糸41の表面の一部にメッキ層33が形成されていても良い。
【0050】
また、緯糸42の少なくとも一部には、メッキ層33が形成されている。緯糸42の全表面にメッキ層33が形成されていても良いし、緯糸42の表面の一部にメッキ層33が形成されていても良い。
【0051】
本実施例1においては、経糸41の表面に形成されたメッキ層33と、緯糸42の表面に形成されたメッキ層33とが接触することにより、経糸41と緯糸42とが電気的に接続される。
【0052】
本実施例1においては、フィラメント71を構成する樹脂はPET(ポリエチレンテレフタレート)であり、フィラメント71の直径は、60~65μmである。メッキ層33を構成する金属は、3層構造に形成されており、最外層がNiであり、中間層がCuであり、最内層(フィラメント71側)がNiとされている。
【0053】
図4に示すように、上記した第一電極シート25を、発泡性樹脂を主成分として含んで形成された絶縁シート24の第一面27に、第一接合部36を介して接合する。絶縁シート24はエーテル系ポリウレタン発泡体である。絶縁シートの厚さは約1.0mmである。第一接合部36は、ノガワケミカル社製、アクリル系粘着剤である。第一接合部36の厚さは50μmである。また、第一電極シート25と同様の構成を備えた第二電極シート26を、絶縁シート24の第二面28に、第二接合部37を介して接合する。第一接合部36と第二接合部37とは同一なので重複する説明を省略する。このようにして、実施例1の第一電極シート25および第二電極シート26に係るセンサシート18のサンプル1を作製する。
【0054】
7.2.実施例2およびサンプル2
(実施例2およびサンプル2)
続いて、図7(a)~図7(b)を参照して、実施例2に係る第一電極シート25aおよび第二電極シート26aの構成について説明する。本形態に係る第一電極シート25aは、複数のフィラメント集合体72が織られた導電布である。複数のフィラメント集合体72は、複数のフィラメント71が撚られた撚線73と、撚線73の表面の少なくとも一部に形成されたメッキ層33と、を備える。また、複数のフィラメント集合体72は、経糸フィラメント集合体72aと、緯糸フィラメント集合体72bと、を備える。以下の記載において、経糸フィラメント集合体72aと、緯糸フィラメント集合体72bとを区別せずに説明する場合、フィラメント集合体72と記載する場合がある。なお、実施形態2以降において用いた符号のうち、既出の実施形態において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、既出の実施形態におけるものと同様の構成要素等を表す。
【0055】
本形態に係る第一電極シート25aは、複数のフィラメント71が撚られることにより形成された経糸を構成する撚線73と、複数のフィラメント71が撚られることにより形成された緯糸を構成する撚線73と、を織ることにより基布を形成し、この基布の表面にメッキ層33を形成することにより形成される。ただし、第一電極シート25aの製造方法は上記の方法に限定されない。第一電極シート25aと、第二電極シート26aとは、略同一の構成を備えるので、以下の説明において、特に言及する場合を除いて、重複する説明を省略する。
【0056】
図7(a)に示すように、本形態の第一電極シート25aは、複数の経糸フィラメント集合体72aと、複数の緯糸フィラメント集合体72bと、を備える。第一電極シート25aは、複数のフィラメント集合体72の間に開口する第一開口部34aを備える。第一開口部34aは第一電極シート25aを貫通している。本実施例2における、第一電極シート25aに形成された第一開口部34aの開口面積の、第一電極シート25aの面積に対する割合である開口率は、63%である。
【0057】
図7(b)に示すように、本形態の第二電極シート26aは、複数のフィラメント集合体72の間に開口する第二開口部34bを備える以外は、第一電極シート25aと略同一なので、重複する説明を省略する。本実施例2における、第二電極シート26aに形成された第二開口部34bの開口面積の、本形態の第二電極シート26aの面積に対する割合である開口率は、63%である。
【0058】
第一電極シート25aを構成するフィラメント集合体72に含まれるフィラメント71の本数は特に制限されない。本形態に係るフィラメント集合体72は6本のフィラメント71を備えるが、2~5本、または7本以上でも良い。
【0059】
図7(a)に示すように、複数の経糸フィラメント集合体72aの長手方向Sと、第一電極シート25aの長手方向Xと、が交差して配置されている。また、複数の緯糸フィラメント集合体72bの長手方向Tと、第一電極シート25aの長手方向Xと、が交差して配置されている。詳細には、複数の経糸フィラメント集合体72aの長手方向Sは、第一電極シート25aの長手方向Xに対して、鋭角の角度が実質的に45°である。また、複数の緯糸フィラメント集合体72bの長手方向Tは、第一電極シート25aの長手方向Xに対して、鋭角の角度が実質的に45°である。角度が実質的に45°であるということは、45°である場合を含むとともに、実質的に45°であると認定できる場合も含む。
【0060】
ただし、複数の経糸フィラメント集合体72aの長手方向Sは、第一電極シート25aの長手方向Xに対して、鋭角の角度が45°と異なる角度であっても良い。また、複数の緯糸フィラメント集合体72bの長手方向Tは、第一電極シート25aの長手方向Xに対して、鋭角の角度が45°と異なる角度であっても良い。
【0061】
図7(a)に示すように、本形態に係る複数の経糸フィラメント集合体72a同士の間隔は実質的に等間隔に配置されている。ただし、実質的に等間隔とは、等間隔である場合を含むとともに、等間隔でない場合であっても、実質的に等間隔であると認定できる場合も含む。また、複数の緯糸フィラメント集合体72b同士の間隔も、実質的に等間隔に配置されている。
【0062】
本形態においては、複数の経糸フィラメント集合体72a同士の間隔と、複数の緯糸フィラメント集合体72b同士の間隔は実質的に同じに設定されている。ただし、複数の経糸フィラメント集合体72a同士の間隔と、複数の緯糸フィラメント集合体72b同士の間隔は異なっていても良い。
【0063】
図8に示すように、フィラメント集合体72を構成する撚線73の表面の少なくとも一部には、メッキ層33が形成されている。本形態においては、撚線73の表面のうち外部に露出するフィラメント71の表面には、メッキ層33が形成されている。
【0064】
経糸フィラメント集合体72aのメッキ層33と、緯糸フィラメント集合体72bのメッキ層33とが接触することにより、経糸フィラメント集合体72aと緯糸フィラメント集合体72bとが電気的に接続される。
【0065】
また、本形態においては、撚線73を構成するフィラメント71の表面のうち、撚線73の内部に露出するフィラメント71の表面の一部には、メッキ層33が形成されていない。これにより、撚線73の内部に露出するフィラメント71の表面は、撚線73の内部の空間に露出した状態になっている。一方、本形態においては、撚線73を構成するフィラメント71の表面のうち、撚線73の内部に露出するフィラメント71の表面の他の一部には、メッキ層33が形成されている。このように、本形態においては、撚線73の内部に露出するフィラメント71の表面は、フィラメント71の表面が露出する部分と、メッキ層33が形成される部分と、を備える。
【0066】
メッキ層33が形成されておらず、フィラメント71の表面が露出する部分は、メッキ層33が形成された部分に比べて動きやすい構成となっている。これにより、センサシートに応力が印加された場合に、比較的に自由に動きやすいフィラメント71によって、応力を吸収することができる。
【0067】
本実施例2においては、フィラメント71を構成する樹脂はPET(ポリエチレンテレフタレート)であり、フィラメント71の直径は、約20μmである。メッキ層33を構成する金属は、最外層がNiであり、最内層(フィラメント71側)がCuにより形成されている。撚線73は、6本のフィラメント71により構成される。
【0068】
サンプル1と同様にして、実施例2の第一電極シート25aおよび第二電極シート26aに係るセンサシート18のサンプル2を作製する。サンプル1と重複する説明は省略する。
【0069】
(実施例2の変形例1)
次に、図9を参照して、実施例2の変形例1について説明する。図9に示すように、フィラメント71の表面の少なくとも一部には、メッキ層33が形成されている。本変形例1では、隣合うフィラメント71同士が接触する接触点を除いて、各フィラメント71の表面にメッキ層33が形成されている。本変形例1においては、フィラメント71の表面のうち、撚線73の内側に位置するフィラメント71の表面にもメッキ層33が形成されている。
【0070】
(実施例2の変形例2)
次に、図10を参照して、実施例2の変形例2について説明する。図10に示すように、撚線73を構成する複数のフィラメント71の表面の全周にメッキ層33が形成されている。隣合うフィラメント71の表面に形成されたメッキ層33が接触することにより、隣合うフィラメント71同士が電気的に接続される。
【0071】
7.3.比較例1およびサンプル3
(比較例1およびサンプル3)
次に、図11図12を参照して、比較例1について説明する。図11に示すように、比較例1およびに係る第一電極シート25bは、複数のフィラメント集合体72が織られた導電布である。複数のフィラメント集合体72は、複数のフィラメント71が撚られていない状態でまとめられた無撚糸束線74と、無撚糸束線74の表面の少なくとも一部に形成されたメッキ層33と、を備える。フィラメント集合体72は、第一電極シート25bの厚み方向に扁平な形状に形成されている。
【0072】
本比較例1に係る第一電極シート25bは、複数のフィラメント71が撚られていない状態でまとめられた経糸41と、複数のフィラメント71が撚られていない状態でまとめられた緯糸42と、を織ることにより基布を形成し、この基布の表面にメッキ層33を形成することにより形成される。ただし、第一電極シート25bの製造方法は上記の方法に限定されない。第一電極シート25bは、第二電極シート26bと略同一の構成を備えるので、以下の説明において、特に言及する場合を除いて重複する説明を省略する。
【0073】
図11(a)に示すように、本形態の第一電極シート25bは、複数の経糸フィラメント集合体72aと、複数の緯糸フィラメント集合体72bと、を備える。第一電極シート25bは、複数のフィラメント集合体72の間に開口する第一開口部34aを備える。第一開口部34aは第一電極シート25bを貫通している。本比較例1における、第一電極シート25bに形成された第一開口部34aの開口面積の、第一電極シート25bの面積に対する割合である開口率は、約20%である。
【0074】
図11(b)に示すように、本形態の第二電極シート26bは、複数のフィラメント集合体72の間に開口する第二開口部34bを備える以外は第一電極シート25bと略同一なので、重複する説明を省略する。第二電極シート26bに形成された第二開口部34bの開口面積の、本形態の第二電極シート26の面積に対する割合である開口率は、約20%である。
【0075】
第一電極シート25bを構成するフィラメント集合体72に含まれるフィラメント71の本数は特に制限されない。本形態に係るフィラメント集合体72は6本のフィラメント71を備えるが、2~5本、または7本以上でも良い。フィラメント集合体72に含まれる複数のフィラメント71は、1層に並べられた状態で配置されている。
【0076】
図12に示すように、フィラメント集合体72を構成する無撚糸束線74の表面の少なくとも一部には、メッキ層33が形成されている。本形態においては、無撚糸束線74の表面の全周に、メッキ層33が形成されている。
【0077】
経糸フィラメント集合体72aのメッキ層33と、緯糸フィラメント集合体72bのメッキ層33とが接触することにより、経糸フィラメント集合体72aと緯糸フィラメント集合体72bとが電気的に接続される。
【0078】
図11(a)に示すように、複数の経糸フィラメント集合体72aの長手方向Sと、第一電極シート25aの長手方向Xと、が交差して配置されている。また、複数の緯糸フィラメント集合体72bの長手方向Tと、第一電極シート25aの長手方向Xと、が交差して配置されている。詳細には、複数の経糸フィラメント集合体72aの長手方向Sは、第一電極シート25aの長手方向Xに対して、鋭角の角度が実質的に45°である。また、複数の緯糸フィラメント集合体72bの長手方向Tは、第一電極シート25aの長手方向Xに対して、鋭角の角度が実質的に45°である。角度が実質的に45°であるということは、45°である場合を含むとともに、実質的に45°であると認定できる場合も含む。
【0079】
ただし、複数の経糸フィラメント集合体72aの長手方向Sは、第一電極シート25aの長手方向Xに対して、鋭角の角度が45°と異なる角度であっても良い。また、複数の緯糸フィラメント集合体72bの長手方向Tは、第一電極シート25aの長手方向Xに対して、鋭角の角度が45°と異なる角度であっても良い。
【0080】
本比較例においては、フィラメント71を構成する樹脂はPET(ポリエチレンテレフタレート)であり、フィラメント71の直径は、10~20μmである。メッキ層33を構成する金属は3層構造であり、最外層がNiとされ、中間層がCuとされ、最内層(フィラメント71側)がNiとされる。無撚糸束線74は、6本のフィラメント71により構成される。
【0081】
サンプル1と同様にして、比較例1の第一電極シート25bおよび第二電極シート26bに係るセンサシート18のサンプル3を作製する。サンプル1と重複する説明は省略する。
【0082】
7.4.第一電極シートの引張試験
次に、図13を参照して、第一電極シートに対して実施した引張試験について説明する。サンプル1~2、およびサンプル3に係る第一電極シートを、150mm×20mmの短冊状に切出して試験片を作製した。第一電極シートの厚みは、約0.1mmである。試験片の長手方向と、経糸41または経糸フィラメント集合体72aの長手方向とのなす角度は、45°に設定する。
【0083】
試験片を、一対のチャックにより把持する。一対のチャック間距離は70mmである。試験片を1mm/secの引張速度で引張試験を実施し、荷重を試験片の断面積で除することにより応力を算出する。引張試験機は、島津製作所製、AGS-X 1kNである。引張試験は、歪みが0~20%の範囲で実施する。図13に、応力の、歪みに対する変化を示すグラフを示す。
【0084】
サンプル1およびサンプル2は、歪みが0~20%の領域において、応力は、きわめて緩やかに、単調に増加した。サンプル1およびサンプル2は、引張試験における応力―歪み曲線において、歪みが0.5~10%の区間に極大値を示す降伏点を有しない。
【0085】
サンプル1は、歪みが5%のときに約0.4MPaの応力を示し、歪みが20%のときに、応力の最大値である約0.8MPaを示す。したがって、引張試験におけるサンプル1の応力の最大値は1MPa以下である。同様に、サンプル2は、歪みが5%のときに約0.3MPaの応力を示し、歪みが20%のときに、応力の最大値である約0.5MPaを示す。従って、サンプル2についても、引張試験における応力の最大値は1MPa以下である。サンプル1およびサンプル2は、応力―歪み曲線において、歪みが0~5%における応力の最大値が3MPa以下であり、歪みが0~20%における応力の最大値が15MPa以下である。
【0086】
サンプル3は、引張試験における応力―歪み曲線において、歪みが0.5~10%の区間に極大値を示す降伏点を有する。歪みが0~約1%までの領域においては、応力は直線的に単調に増加した。歪みが約1%で、応力は極大値である約17MPaを示し、急激に、約12MPaにまで減少した。このように、サンプル3においては、歪みが約1%の前と後で、応力が増加傾向から減少傾向に転じた。その後、歪みが約1~約13%の領域で、応力は、約12~約10MPaまで単調に減少した。その後、歪みが約13~20%の領域で、応力は、約10~約12MPaまで単調に増加した。このように、サンプル3は、応力―歪み曲線において、歪みが0~5%における応力の最大値が3MPaより大きく、歪みが0~20%における応力の最大値が15MPaより大きい。
【0087】
7.5.センサシートの引張試験
次に、センサシートに対して実施した引張試験について説明する。サンプル1~2、およびサンプル3に係るセンサシートを、90mm×20mmの短冊状に切出すことにより試験片を作製する。センサシートの厚みは、約1mmである。試験片の長手方向と、第一電極シートおよび第二電極シートを構成する経糸41または経糸フィラメント集合体72aの長手方向とのなす角度は、45°に設定する。
【0088】
第一電極シートの長手方向の一方の端部に電線を接続し、直流電源と接続する。第一電極シートの長手方向の他方の端部に電線を接続し、電圧計測器と接続する。
【0089】
試験片を、一対のチャックにより把持する。一対のチャック間距離は50mmである。試験片を1mm/secの引張速度で引張試験を実施し、荷重を試験片の断面積で除することにより応力を算出する。また、引張試験の実施中に、直流電源の電圧と、センサシートの電圧降下から、センサシートの直流抵抗値(電気抵抗値の一例)を算出する。直流抵抗値の測定は、KEITHLEY社製、デジタルマルチメーター 2000シリーズを用いる。
【0090】
図14に示すように、サンプル1は、歪みが5%のときに約0.1MPaの応力を示し、歪みが20%のときに約0.4MPaの応力を示し、歪みが30%のときに応力の最大値である約1.3MPaの応力を示す。
【0091】
サンプル2は、歪みが5%のときに約0.1MPaの応力を示し、歪みが20%のときに約0.4MPaの応力を示し、歪みが30%のときに応力の最大値である約0.9MPaの応力を示す。
【0092】
サンプル1およびサンプル2は、応力―歪み曲線において、歪みが0~5%における応力が0.5MPa以下であり、歪みが0~20%における応力の最大値が3MPa以下である。
【0093】
サンプル1およびサンプル2は、応力―歪み曲線において、歪みが0~5%における応力が0.5MPa以下であり、歪みが0~20%における応力の最大値が3MPa以下である。
【0094】
サンプル3は、引張試験における応力―歪み曲線において、歪みが0.5~10%の区間に極大値を示す降伏点を有する。歪みが0~約3%までの領域においては、応力は直線的に単調に増加した。歪みが約3%で、応力は極大値である約0.7MPaを示し、急激に、約0.6MPaにまで減少した。このように、サンプル3においては、歪みが約1%の前と後で、応力が増加傾向から減少傾向に転じた。その後、歪みが約1~約13%の領域で、応力は、わずかに減少した。その後、歪みが約13~30%の領域で、応力は、約0.6~約1.7MPaまで単調に増加した。このように、サンプル3は、応力―歪み曲線において、歪みが0~5%における応力の最大値が0.5MPaより大きく、歪みが0~20%における応力の最大値が0.7MPaより大きい。
【0095】
サンプル1およびサンプル2に引張り力が印加されると、第一電極シートの第一開口部34aが、引張方向に伸長し、引張方向と交差する方向について縮む。図15に、サンプル1を例にして、第一開口部34aが変形する状態を示す。これにより、引張り力が吸収されるので、応力の変化が小さいと考えられる。なお、サンプル2についても同様なので、説明を省略する。
【0096】
サンプル1およびサンプル2においては、引張り力がセンサシートに印加された場合でも、経糸41と緯糸42とが交差する部分において、経糸41と緯糸42との相対的な位置が大きく変化しないので、経糸41と緯糸42との電気的な接続状態が維持されると考えられる。これによりサンプル1およびサンプル2においては、引張り力がセンサシートに印加された場合でも、直流抵抗値がほとんど変化しないと考えられる。
【0097】
一方、サンプル3は、歪みが0.5~5%の区間に極大値を示す降伏点を有する。サンプル3においては、歪みが0%から降伏点に至るまでの区間においては、経糸41と緯糸42とが交差する部分に形成されたメッキ層33が維持されることにより、弾性変形すると考えられる。その後、降伏点において、経糸41と緯糸42とが交差する部分に形成されたメッキ層33が破壊されると考えられる。
【0098】
その後、応力があまり変化しない区間(歪みが約5~約15%の区間)においては、サンプル1およびサンプル2と同様に、第一開口部34aおよび第二開口部34bが変形することにより、引張り力が吸収されると考えられる。
【0099】
その後、歪みが約15%より大きくなると、サンプル3の第一開口率および第二開口率は20%なので、第一開口部34aおよび第二開口部34bが完全に塞がってしまい、第一電極シートおよび第二電極シートに作用する引張力を吸収することができなくなると考えられる。これにより、応力が増加すると考えられる。
【0100】
7.6.センサシートの直流抵抗値
図16に、直流抵抗値の、歪みに対する変化を示すグラフを示す。図16には、歪みが0~30%の領域における直流抵抗値を示す。
【0101】
サンプル1は、歪みが0~30%の領域で、直流抵抗値が約0.1Ωでほとんど変化しなかった。サンプル2は、歪みが0~30%の領域で、直流抵抗値が約0.2Ωでほとんど変化しなかった。
【0102】
サンプル3は、歪みが0~約3%の領域で、直流抵抗値は約0.2Ωでほとんど変化しなかった。歪みが約3%を超えると、サンプル3の直流抵抗値は単調に増加し、歪みが30%において、約0.44Ωであった。このように、サンプル3は、約0.2~約0.44Ωまで直流抵抗値が変化した。
【0103】
センサシート18をステアリングホイール10に組付ける工程においては、センサシート18を引張って伸ばしながらステアリングホイール10に組付ける。センサシート18は、引張って伸ばされた状態でステアリングホイール10に固定される。このため、ステアリングホイー10ルに組付けられた状態のセンサシート18は、張力が印加された状態に維持される。時間が経過すると、センサシート18を構成する材料(金属、樹脂等)において残留応力が緩和し、センサシート18に印加されていた張力が変化することが想定される。張力が変化すると、センサシート18の電気抵抗値が変化するおそれがある。
【0104】
上記のように、センサシート18に対しては、引張り力が作用するとともに、この引張り力が経年変化する可能性がある。このため、センサシート18に対して引張り力を印加した場合に、センサシート18の直流抵抗値が変化すると、センサシート18の感度が変化するので好ましくない。
【0105】
実施形態1および2は、歪みが0~30%の領域で、直流抵抗値がほとんど変化しないので、好ましい。
【0106】
一方、サンプル3は、歪みが0~30%の領域で、直流抵抗値が、約0.2~約0.44Ωまで直流抵抗値が変化するので好ましくない。
【0107】
8.本形態の作用効果
続いて、本形態の作用効果について説明する。本形態に係るセンサシート18は、絶縁シート24と、第一電極シート25,25aと、第一接合部36と、第二電極シート26,26aと、第二接合部37と、を備える。絶縁シート24は、第一面27および第二面28を有し、発泡体により形成される。第一電極シート25,25aは、絶縁シート24の第一面27側に配置され、貫通した第一開口部34aを有する。第一電極シート25,25aは導電性を有する。第一接合部36は、絶縁シート24と第一電極シート25とを接合する。第二電極シート26,26aは、絶縁シート24の第二面28側に配置され、貫通した第二開口部34bを有する。第二電極シート26,26aは導電性を有する。第二接合部37は、絶縁シート24と第二電極シート26,26aとを接合する。センサシート18は、引張試験における応力―歪み曲線において、歪みが0.5~10%の区間に極大値を示す降伏点を有しないように構成される。第一開口部34aの開口面積の、第一電極シート25,25aの面積に対する割合である開口率は40%以上である。第二開口部34bの開口面積の、第二電極シート26,26aの面積に対する割合である開口率は40%以上である。
【0108】
第一開口部34aの開口面積の、第一電極シート25,25aの面積に対する割合である開口率は40%以上であり、第二開口部34bの開口面積の、第二電極シート26,26aの面積に対する割合である開口率は40%以上であるので、センサシート18に印加された引張り力を、第一開口部34aおよび第二開口部34bが変形することにより吸収することができる。これにより、センサシート18に印加される引張り力の影響を軽減することができるので、センサシート18の電気抵抗値が増加することを抑制できる。開口率は、センサシート18に加えられた引張り力を吸収しやすくなるので、50%以上がより好ましく、60%以上がさらに好ましい。
【0109】
本形態に係るセンサシート18は、引張試験における応力―歪み曲線において、歪みが0.5~10%の区間に極大値を示す降伏点を有しないように構成される。これにより、0.5~10%という比較的に歪みが小さな領域において、大きな応力が発生しないと共に応力が急激に変化することが抑制される。この結果、センサシート18をステアリングホイール10に組付ける作業の効率を向上させることができる。さらに、歪みが0.5~5%の区間に極大値を示す降伏点を有しないことにより、センサシート18をわずかに引張ったときに、大きな応力が発生しないと共に応力が変化しないので、作業性がより向上するので、より好ましい。
【0110】
また、本形態に係る第一電極シート25aおよび第二電極シート26aは、複数のフィラメント集合体72が織られた導電布である。フィラメント集合体72は、複数のフィラメント71が撚られた撚線73と、撚線73の表面の少なくとも一部に形成されたメッキ層33と、を備える。第一電極シート25aは、複数のフィラメント集合体72の間に開口する第一開口部34aを備える。第二電極シート26aは、複数のフィラメント集合体72の間に開口する第二開口部34bを備える。
【0111】
複数のフィラメント71が撚られた撚線73の表面の少なくとも一部にメッキ層33が形成されることにより、フィラメント集合体72の表面に複数の導電経路が形成される。これにより、センサシート18に引張り力が印加されて、一部のメッキ層33が破壊されることにより一部の導電経路が破断したとしても、他の導電経路により電気的接続を維持することができる。これにより、センサシート18の電気抵抗値が変化することを抑制できる。
【0112】
本形態によれば、引張試験における応力―歪み曲線において、歪みが0.5~10%の区間において、経糸41と緯糸42からなる格子が菱形形状に変形するため、大きな荷重を必要とせずに変形可能なだけでなく、その際に経糸41及び緯糸42そのものへの伸張歪みが抑制されるため、糸上に形成されたメッキ層33へ加わる歪みも小さく、めっき層の破壊が抑制される。すなわち、引張方向に対して、導電布を45°に傾斜配置することによって、構造的な柔軟性が発現し、その結果、伸張時に導電布の経糸41または緯糸42上に形成されたメッキ層33の破壊が抑えられるため、センサシート18の電気的抵抗値が変化することを抑制できる。
【0113】
本形態に係るセンサシート18は、応力―歪み曲線において、歪みが0~5%における応力の最大値が0.5MPa以下となるように構成されている。また、センサシート18は、応力―歪み曲線において、歪みが0~20%における応力の最大値が3MPa以下となるように構成されている。これにより、センサシート18に引張り力が印加された場合に、第一電極シート25,25aに対して過度に大きな応力が加わることを抑制できる。この結果、第一電極シート25,25aの構造が破壊されることを抑制できるので、センサシート18の電気抵抗値が変化することを抑制できる。
【0114】
第一電極シート25,25aに加わる応力を低減する観点から、応力―歪み曲線において、歪みが0~5%におけるセンサシート18の応力の最大値は、0.5MPa以下が好ましく、0.4MPa以下がより好ましく、0.3MPa以下がさらに好ましい。
【0115】
同様に、第一電極シート25,25aに加わる応力を低減する観点から、応力―歪み曲線において、歪みが0~20%におけるセンサシート18の応力の最大値は、3MPa以下が好ましく、2MPa以下がより好ましく、1.5MPa以下がさらに好ましい。
【0116】
また、本形態に係る第一電極シート25,25aは、応力―歪み曲線において、歪みが0~5%における第一電極シート25、25aの応力の最大値が3MPa以下となるように構成されている。また、第一電極シート25,25aは、応力―歪み曲線において、歪みが0~20%における応力の最大値が15MPa以下となるように構成されている。
【0117】
第一電極シート25,25aに加わる応力を低減する観点から、応力―歪み曲線において、歪みが0~5%における第一電極シート25,25aの応力の最大値は、3MPa以下が好ましく、2MPa以下がより好ましく、1MPa以下がさらに好ましい。
【0118】
同様に、第一電極シート25,25aに加わる応力を低減する観点から、歪みが0~20%における応力の最大値は、10MPa以下が好ましく、7MPa以下がより好ましく、3MPa以下がさらに好ましい。
【0119】
センサシート18または第一電極シート25,25aを上記の構成とすることにより、センサシート18に引張り力が印加された場合に、第一電極シート25,25aに対して過度に大きな応力が加わることを抑制できる。これにより、第一電極シート25,25aの構造が破壊されることを抑制できるので、センサシート18の電気抵抗値が変化することを抑制できる。
【0120】
本形態に係るメッキ層33は、撚線73の表面の少なくとも一部に形成され、撚線73の内部の少なくとも一部に形成されていない。これにより、撚線73の内部において、メッキ層33によって固定されないで自由に移動可能なフィラメント71が存在する。この結果、センサシート18に引張り力が印加された場合でも、自由に移動可能なフィラメント71によって応力を吸収することができるので、第一電極シート25,25aおよび第二電極シート26,26aに過度に大きな応力が加わることを抑制できる。この結果、センサシート18の電気抵抗値が変化することを抑制できる。
【0121】
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0122】
18:センサシート、24:絶縁シート、25,25a,25b:第一電極シート、26,26a,26b:第二電極シート、27:第一面、28:第二面、33:メッキ層、34a:第一開口部、34b:第二開口部、36:第一接合部、37:第二接合部、41:経糸、42:緯糸、71:フィラメント、72:フィラメント集合体、72a:経糸フィラメント集合体、72b:緯糸フィラメント集合体、73:撚線
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