(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137947
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】インターフェロン-ガンマバイアス型アゴニスト
(51)【国際特許分類】
C07K 14/57 20060101AFI20240927BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240927BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20240927BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20240927BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20240927BHJP
C12N 15/23 20060101ALN20240927BHJP
【FI】
C07K14/57 ZNA
A61P35/00
A61P31/00
A61P37/06
A61K38/16
C07K14/57
C12N15/23
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024095641
(22)【出願日】2024-06-13
(62)【分割の表示】P 2021505349の分割
【原出願日】2019-07-29
(31)【優先権主張番号】62/712,128
(32)【優先日】2018-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】503115205
【氏名又は名称】ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(72)【発明者】
【氏名】ケナン クリストファー ガルシア
(72)【発明者】
【氏名】ジュアン ルイス メンドーザ
(57)【要約】
【課題】IFN-γを治療剤として使用するためにその特性を改善する追加アプローチの提供。特に、特定の下流遺伝子を選択的に活性化し、他の遺伝子よりも作用を選択的に活性化し、抗腫瘍剤または免疫調整剤としての使用の改善につながるIFN-γのバリアントの提供。
【解決手段】本願で開示されているのは、INF-γ受容体の少なくとも1つを通じて媒介される下流シグナル伝達を完全に作動させるか部分的に作動させることによってINF-γを媒介としたシグナル伝達を変化させる組成物と方法である。より具体的には、本開示により、INF-γ受容体の少なくとも1つに対する結合親和性が低下した新規なINF-γポリペプチドバリアントが提供される。本開示により、このような分子を作製するのに有用な組成物と方法のほか、INF-γによって媒介されるシグナル伝達の乱れに関係する健康障害を治療する方法も提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1のアミノ酸配列を持つインターフェロン-ガンマ(IFN-γ)ポリペプチドと少なくとも95%一致する第1のアミノ酸配列を含むとともに、
配列番号1のQ1、D2、P3、K6、Q64、Q67、K68、E71、T72、K74、E75、D76、N78、V79、K80、N83、S84、K86、R89、およびD90からなるグループから選択されたアミノ酸残基に対応する位置、およびそれらいずれかの組み合わせに少なくとも1個のアミノ酸置換をさらに含む組換えポリペプチド。
【請求項2】
前記少なくとも1個のアミノ酸置換が、配列番号1のK74、E75、およびN83からなるグループから選択された1個のアミノ酸残基に対応する位置、およびそれらいずれかの組み合わせにある、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
前記少なくとも1個のアミノ酸置換が、配列番号1のアミノ酸残基K74に対応する位置にある、請求項1または2に記載のポリペプチド。
【請求項4】
前記少なくとも1個のアミノ酸置換が、LysからAlaへの置換(K74A)である、請求項3に記載のポリペプチド。
【請求項5】
前記少なくとも1個のアミノ酸置換が、配列番号1のアミノ酸残基E75に対応する位置にある、請求項1または2に記載のポリペプチド。
【請求項6】
前記少なくとも1個のアミノ酸置換が、GluからTyrへの置換(E75Y)である、請求項5に記載のポリペプチド。
【請求項7】
前記少なくとも1個のアミノ酸置換が、配列番号1のアミノ酸残基N83に対応する位置にある、請求項1または2に記載のポリペプチド。
【請求項8】
前記少なくとも1個のアミノ酸置換が、AsnからArgへの置換(N83R)である、請求項7に記載のポリペプチド。
【請求項9】
前記第1のアミノ酸配列が、アミノ酸置換K74A、E75Y、およびN83Rを含む、請求項1~8のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項10】
前記第1のアミノ酸配列が、配列番号1のA23、D24、N25、H111からなるグループから選択された1個のアミノ酸残基に対応する位置、およびそれらいずれかの組み合わせに1つ以上の追加アミノ酸置換をさらに含む、請求項1~9のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項11】
配列番号1のアミノ酸配列を持つガンマ-インターフェロンポリペプチドと少なくとも95%一致する第2のアミノ酸配列をさらに含み、ここで、前記第2のアミノ酸配列が前記第1のアミノ酸配列と機能可能に連結されている、請求項1~10のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項12】
前記第2のアミノ酸配列が、配列番号1のQ1、D2、P3、K6、Q64、Q67、K68、E71、T72、K74、E75、D76、N78、V79、K80、N83、S84、K86、R89、およびD90からなるグループから選択された1個のアミノ酸残基に対応する位置、およびそれらのいずれかの組み合わせに少なくとも1個のアミノ酸置換を含む、請求項11に記載のポリペプチド。
【請求項13】
前記第2のアミノ酸配列が、配列番号1のK74、E75、およびN83からなるグループから選択された1個のアミノ酸残基に対応する位置、およびそれらのいずれかの組み合わせに少なくとも1個のアミノ酸置換を含む、請求項11または12に記載のポリペプチド。
【請求項14】
前記第2のアミノ酸配列の中の前記少なくとも1個のアミノ酸置換が、配列番号1のK74、E75、およびN83からなるグループから選択された1個のアミノ酸残基に対応する位置、およびそれらいずれかの組み合わせにある、請求項11または12に記載のポリペプチド。
【請求項15】
前記第2のアミノ酸配列の中の前記少なくとも1個のアミノ酸置換が、配列番号1のアミノ酸残基K74に対応する位置にある、請求項11~14のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項16】
前記第2のアミノ酸配列の中の前記少なくとも1個のアミノ酸置換が、LysからAlaへの置換(K74A)である、請求項15に記載のポリペプチド。
【請求項17】
前記第2のアミノ酸配列の中の前記少なくとも1個のアミノ酸置換が、配列番号1のアミノ酸残基E75に対応する位置にある、請求項11~14のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項18】
前記第2のアミノ酸配列の中の前記少なくとも1個のアミノ酸置換が、GluからTyrへの置換(E75Y)である、請求項17に記載のポリペプチド。
【請求項19】
前記第2のアミノ酸配列の中の前記少なくとも1個のアミノ酸置換が、配列番号1のアミノ酸残基N83に対応する位置にある、請求項11~14のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項20】
前記第2のアミノ酸配列の中の前記少なくとも1個のアミノ酸置換が、AsnからArgへの置換(N83R)である、請求項19に記載のポリペプチド。
【請求項21】
前記第1のアミノ酸配列と前記第2のアミノ酸配列が同じアミノ酸置換を含む、請求項11~20のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項22】
前記第1のアミノ酸配列と前記第2のアミノ酸配列が異なるアミノ酸置換を含む、請求項11~20のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項23】
前記第2のアミノ酸配列がペプチドリンカー配列を介して前記第1のアミノ酸配列に機能可能に連結されている、請求項11~22のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項24】
前記ペプチドリンカー配列が1~100個のアミノ酸残基を含む、請求項23に記載のポリペプチド。
【請求項25】
前記ペプチドリンカー配列が少なくとも1個のグリシン残基を含む、請求項23または24に記載のポリペプチド。
【請求項26】
前記ペプチドリンカー配列がグリシン-セリンリンカーを含む、請求項23~25のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項27】
前記ペプチドリンカー配列が切断可能なリンカー配列である、請求項23~26のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項28】
N末端からC末端の方向に向かって、
a)配列番号1と配列が100%一致する第1のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチドセグメントと;
b)切断可能なリンカー配列と;
c)アミノ酸置換K74A、E75Y、およびN83Rを有する配列番号1のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチドセグメントを含む、請求項11~27のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項29】
N末端からC末端の方向に向かって、
a)アミノ酸置換H111Dを有する配列番号1のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチドセグメントと;
b)切断可能なリンカー配列と;
c)アミノ酸置換K74A、E75Y、およびN83Rを有する配列番号1のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチドセグメントを含む、請求項11~27のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項30】
N末端からC末端の方向に向かって、
a)アミノ酸置換A23E、D24E、N25K、およびH111Dを有する配列番号1のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチドセグメントと;
b)切断可能なリンカー配列と;
c)アミノ酸置換K74A、E75Y、およびN83Rを有する配列番号1のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチドセグメントを含む、請求項11~27のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項31】
配列番号1、配列番号2、配列番号3、および配列番号4からなるグループから選択されたアミノ酸配列を含む、請求項1~30のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項32】
前記アミノ酸置換の少なくとも1つが、インターフェロン-ガンマ受容体サブユニット1(IFN-γR1)および/またはインターフェロン-ガンマ受容体サブユニット2(IFN-γR2)のそれぞれに対して、前記少なくとも1個のアミノ酸置換を欠く参照ポリペプチドの結合親和性と比べて低下した結合親和性を与える、請求項1~31のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項33】
前記少なくとも1個のアミノ酸置換が、インターフェロン-ガンマ受容体サブユニット1(IFN-γR1)とインターフェロン-ガンマ受容体サブユニット2(IFN-γR2)のそれぞれに対する前記少なくとも1個のアミノ酸置換を欠く参照ポリペプチドの結合親和性と比べて、インターフェロン-ガンマ受容体サブユニット2(IFN-γR2)に対しては実質的に低下した結合親和性を与える一方で、インターフェロン-ガンマ受容体サブユニット1(IFN-γR1)に対しては結合親和性を実質的に保持している、請求項1~32のいずれか1項に記載のポリペプチド。
【請求項34】
前記ポリペプチドのIFN-γR2結合親和性とIFN-γR1結合親和性の比が、固相受容体結合アッセイによって求めたときに約1:500~約1:2である、請求項33に記載のポリペプチド。
【請求項35】
請求項1~34のいずれか1項に記載のポリペプチドのアミノ酸配列と配列が少なくとも90%一致するアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする核酸配列を含む組換え核酸分子。
【請求項36】
前記核酸配列が、異種核酸配列に機能可能に連結されている、請求項35に記載の核酸分子。
【請求項37】
前記核酸分子が、発現カセットまたは発現ベクターとしてさらに規定される、請求項35または36に記載の核酸分子。
【請求項38】
請求項35~37のいずれか1項に記載の組換え核酸分子を含む組換え細胞。
【請求項39】
前記組換え細胞が、原核細胞または真核細胞である、請求項38に記載の組換え細胞。
【請求項40】
請求項38または39に記載の少なくとも1個の組換え細胞と培地を含む細胞培養物。
【請求項41】
ポリペプチドを産生させる方法であって、
請求項38または39に記載の1個以上の組換え細胞を用意し;および
これら1個以上の組換え細胞を培地の中で培養することで、これら細胞に、前記組換え核酸分子によってコードされるポリペプチドを産生させることを含む、方法。
【請求項42】
請求項41に記載の方法によって産生される組換えポリペプチド。
【請求項43】
請求項1~34と請求項42のいずれか1項に記載のポリペプチドと医薬的に許容される賦形剤を含む組成物。
【請求項44】
請求項35~37のいずれか1項に記載の核酸分子と医薬的に許容される賦形剤を含む組成物。
【請求項45】
請求項38または39のいずれか1項に記載の組換え細胞と医薬的に許容される賦形剤を含む組成物。
【請求項46】
対象内でIFN-γを媒介としたシグナル伝達を変化させる方法であって、
請求項1~34と請求項42のいずれか1項に記載のポリペプチド;または
請求項35~37のいずれか1項に記載の核酸分子
の有効量を前記対象に投与することを含む方法。
【請求項47】
健康障害を治療する必要のある対象でその疾患を治療する方法であって、
請求項1~34と請求項42のいずれか1項に記載のポリペプチド;または
請求項35~37のいずれか1項に記載の核酸分子
の有効量を前記対象に投与することを含む方法。
【請求項48】
投与された前記ポリペプチドが、前記少なくとも1個のアミノ酸置換を欠く参照ポリペプチドと比べて、前記対象においてプログラムされた死リガンド1(PD-L1)の発現を上方調節する能力が低下している、請求項46または47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
投与された前記ポリペプチドが、MHCクラスI分子の1個以上の発現を上方調節する能力を実質的に保持している、請求項46~48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
投与された前記ポリペプチドが、前記対象においてPD-L1の発現を上方調節する能力が低下している一方で、MHCクラスI分子の1個以上の発現を上方調節する能力を実質的に保持している、請求項46~48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
前記ポリペプチドまたは前記核酸分子の投与が前記対象においてT細胞の活性を抑制しない、請求項46~50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
投与された前記ポリペプチドまたは前記核酸分子が、腫瘍微小環境内で抗腫瘍免疫を増強する、請求項46~51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
前記ポリペプチドまたは前記核酸分子を、前記対象に、単一の治療剤として、または1つ以上の追加治療剤との組み合わせで投与する、請求項46~52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
前記対象が哺乳動物である、請求項46~53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
前記哺乳動物がヒトである、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記対象が、INF-γを媒介としたシグナル伝達と関係する健康障害を有するか、その健康障害を有することが疑われる、請求項46~55のいずれか1項に記載の方法。
【請求項57】
前記健康障害が、がん、免疫疾患、慢性感染症のいずれかである、請求項56に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦が資金提供する研究開発に関する宣言
本発明は、政府のサポートを得て、国立衛生研究所から資金提供された契約AI051321とCA177684のもとでなされた。政府は本発明において所定の権利を有する。
【0002】
関連する出願の相互参照
本出願は、2018年7月30日に出願されたアメリカ合衆国仮特許出願シリアル番号第62/712,128号の恩恵を主張する。言及したこの出願の開示内容は、図面を含めてその全体が参照によって明示的に本明細書に組み込まれている。
【0003】
配列リストの組み込み
添付の配列リストの中の材料は、参照によって本出願に組み込まれている。添付の配列リストのテキストファイルは078430-505001WO_Sequence Listing.txtという名称で2018年7月17日に作成されたものであり、13KBである。
【0004】
本開示は全体として分子生物学と免疫学の分野に関するものであり、特に、インターフェロン-ガンマ(IFN-γ)受容体の少なくとも1つに対する結合親和性が低下した新規なIFN-γポリペプチドバリアントに関する。本開示により、IFN-γポリペプチドバリアントを作製するのに有用な組成物と方法のほか、IFN-γを媒介としたシグナル伝達を変化させる方法、および/またはIFN-γによって媒介されるシグナル伝達の乱れに関係する健康障害を治療する方法も提供される。
【背景技術】
【0005】
バイオ医薬品、すなわち疾患または健康障害を治療するための治療用タンパク質を含む医薬組成物の使用は、多数の医薬品企業とバイオテクノロジー企業にとっての中心的な戦略である。例えば、サイトカインファミリーのいくつかのメンバーががんの治療に有効であることがこれまでに報告されており、がん免疫療法の発展に大きな役割を果たしている。したがって、このサイトカインファミリーが臨床における多くの作業と努力の焦点となり、その投与と生物学的同化(bio-assimilation)が改善されてきた。しかし、サイトカイン類が関与する既存の臨床アプローチの臨床における成功は限られていた。この限界は、これらサイトカインのオフターゲット毒性と無効性に起因することがしばしばあり、その大半は、これらサイトカインが、望ましい反応細胞と望ましくない反応細胞の両方の表面に受容体を持つため、これら反応細胞が互いに相殺して望ましくない副作用につながるという事実に起因する。近年、サイトカインエンジニアリングは、より望ましい活性を有し、毒性が低減された組換えサイトカインを得るために、サイトカインを操作する様々な試みが行われており、有望な戦略として浮上してきた。
【0006】
特に、インターフェロンが、その強力な免疫調節効果を理由として、免疫療法に関して特に臨床で興味が持たれてきた。しかし、インターフェロンは極めて多面発現性(例えば、多くの異なるタイプの細胞に作用する)であるため、いくつかの例外的なケースを除いてあまり効果がなかった。例えば、ヒトインターフェロン-ガンマ(IFN-γ)は一般に免疫系の中心的な調節因子であると見なされており、強力で治療活性のある試薬であることが報告されてきた。IFN-γは、IL-2とともに最も中心的で多面発現性のサイトカインであり、反応する細胞タイプに応じて様々な免疫機能の活性化と抑制の両方に作用する。IFN-γは多彩な免疫細胞(活性化されたT細胞やナチュラルキラー(NK)細胞など)の中で産生される。IFN-γは細胞の表面で特定の受容体と相互作用し、このサイトカインの免疫調節効果を生じさせるシグナル伝達経路を活性化する。IFN-γは主要組織適合複合体(MHC)クラスI分子の上方調節を誘導し、その結果としてウイルスと腫瘍からの抗原提示を増強することで、ウイルスに感染した細胞や腫瘍細胞の殺傷の改善につながる。IFN-γは多彩な疾患(慢性肉芽腫症と悪性骨粗鬆症が含まれる)を治療するために認可されている。したがって、IFN-γは重要な治療剤となり得るが、その受容体が多くの異なる細胞型で発現しているため、多能性によってその効果が緩和され、その結果、活性が相殺され、疾患の治療効果が低下する。それに加え、天然のIFN-γポリペプチドは望ましくない副作用を誘起するとともに、投与、生物学的利用能、短い半減期の様々な問題を誘起する。例えば、IFN-γは腫瘍細胞の表面にある様々なチェックポイント受容体(プログラムされた細胞死リガンド-1(PD-L1)など)も上方調節し、これにより抗腫瘍反応を減少させることが報告されている。
【0007】
したがって、IFN-γを治療剤として使用するためにその特性を改善する追加アプローチが必要とされている。特に、特定の下流遺伝子を選択的に活性化し、他の遺伝子よりも作用を選択的に活性化し、抗腫瘍剤または免疫調整剤としての使用の改善につながるIFN-γのバリアントが必要とされている。
【発明の概要】
【0008】
本開示は全体として分子生物学と免疫学の分野に関するものであり、特に、IFN-γによって媒介されるシグナル伝達経路を変化させる必要がある対象でそのシグナル伝達経路を変化させるための組成物と方法に関する。下により詳しく記述されているように、IFN-γを媒介としたシグナル伝達は、IFN-γの2つの受容体、すなわちインターフェロン受容体サブユニット1(IFN-γR1)とインターフェロン受容体サブユニット2(IFN-γR2)の一方または両方へのIFN-γの結合を選択的に低下させることを通じて変化させることができる。いくつかの特定の実施形態において、本開示は、IFN-γR1またはIFN-γR2に対する結合親和性が低下していて、それぞれの受容体IFN-γR1受容体および/またはIFN-γR2によって媒介される下流シグナル伝達を完全にまたは部分的に刺激する(agonize)新規なIFN-γポリペプチドバリアントを提供する。本開示はまた、このようなIFN-γポリペプチドバリアントを産生するのに有用な組成物と方法、並びにIFN-γによって媒介されるシグナル伝達の乱れに関係する健康障害を治療する方法も提供される。
【0009】
一態様において、本明細書では、配列番号1のアミノ酸配列を持つIFN-γポリペプチドと少なくとも95%一致する第1のアミノ酸配列を含むとともに、配列番号1のQ1、D2、P3、K6、Q64、Q67、K68、E71、T72、K74、E75、D76、N78、V79、K80、N83、S84、K86、R89、およびD90からなるグループから選択されたアミノ酸残基に対応する位置と、その任意の組み合わせに少なくとも1個のアミノ酸置換をさらに含む様々な組換えポリペプチドが提供される。
【0010】
本開示によれば、開示されている組換えポリペプチドの代表的な非限定的な実施形態は、以下の特徴の1つ以上を含んでいる。いくつかの実施形態では、少なくとも1個のアミノ酸置換は、配列番号1のK74、E75、N83からなるグループから選択された1個のアミノ酸残基に対応する位置と、その任意の組み合わせにある。いくつかの実施形態では、少なくとも1個のアミノ酸置換は、配列番号1のアミノ酸残基K74に対応する位置にある。いくつかの実施形態では、少なくとも1個のアミノ酸置換は、LysからAlaへの置換(K74A)である。いくつかの実施形態では、少なくとも1個のアミノ酸置換は、配列番号1のアミノ酸残基E75に対応する位置にある。いくつかの実施形態では、少なくとも1個のアミノ酸置換は、GluからTyrへの置換(E75Y)である。いくつかの実施形態では、少なくとも1個のアミノ酸置換は、配列番号1のアミノ酸残基N83に対応する位置にある。いくつかの実施形態では、少なくとも1個のアミノ酸置換は、AsnからArgへの置換(N83R)である。いくつかの実施形態では、第1のアミノ酸配列は、アミノ酸置換K74A、E75Y、およびN83Rを含んでいる。いくつかの実施形態では、第1のアミノ酸配列は、配列番号1のA23、D24、N25、およびH111からなるグループから選択された1個のアミノ酸残基に対応する位置と、その任意の組み合わせに1個以上の追加アミノ酸置換をさらに含んでいる。
【0011】
本明細書に開示されているいくつかの実施形態では、本開示の組換えポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列を持つガンマ-インターフェロンポリペプチドと少なくとも95%が一致する第2のアミノ酸配列をさらに含み、この第2のアミノ酸配列は第1のアミノ酸配列に機能可能に連結されている。いくつかの実施形態では、第2のアミノ酸配列は、配列番号1のQ1、D2、P3、K6、Q64、Q67、K68、E71、T72、K74、E75、D76、N78、V79、K80、N83、S84、K86、R89、およびD90からなるグループから選択された1個のアミノ酸残基に対応する位置と、その任意の組み合わせに少なくとも1個のアミノ酸置換を含んでいる。いくつかの実施形態では、第2のアミノ酸配列は、配列番号1のK74、E75、N83からなるグループから選択された1個のアミノ酸残基に対応する位置と、その任意の組み合わせに少なくとも1個のアミノ酸置換を含んでいる。いくつかの実施形態では、第2のアミノ酸配列の中の少なくとも1個のアミノ酸置換は、配列番号1のK74、E75、N83からなるグループから選択されたアミノ酸残基に対応する位置と、その任意の組み合わせにある。いくつかの実施形態では、第2のアミノ酸配列の中の少なくとも1個のアミノ酸置換は、配列番号1のアミノ酸残基K74に対応する位置にある。いくつかの実施形態では、第2のアミノ酸配列の中の少なくとも1個のアミノ酸置換は、LysからAlaへの置換(K74A)である。いくつかの実施形態では、第2のアミノ酸配列の中の少なくとも1個のアミノ酸置換は、配列番号1のアミノ酸残基E75に対応する位置にある。いくつかの実施形態では、第2のアミノ酸配列の中の少なくとも1個のアミノ酸置換は、GluからTyrへの置換(E75Y)である。いくつかの実施形態では、第2のアミノ酸配列の中の少なくとも1個のアミノ酸置換は、配列番号1のアミノ酸残基N83の位置にある。いくつかの実施形態では、第2のアミノ酸配列の中の少なくとも1個のアミノ酸置換は、AsnからArgへの置換(N83R)である。
【0012】
本明細書に開示されている組換えポリペプチドのいくつかの実施形態では、ポリペプチドの第1のアミノ酸配列と第2のアミノ酸配列は同じアミノ酸置換を含んでいる。いくつかの実施形態では、第1のアミノ酸配列と第2のアミノ酸配列は異なるアミノ酸置換を含んでいる。いくつかの実施形態では、第2のアミノ酸配列はペプチドリンカー配列を介して第1のアミノ酸配列に機能可能に連結されている。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカー配列は1~100個のアミノ酸残基を含んでいる。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカー配列は少なくとも1個のグリシン残基を含んでいる。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカー配列はグリシン-セリンリンカーを含んでいる。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカー配列は切断可能なリンカー配列である。
【0013】
いくつかの実施形態では、本開示の組換えポリペプチドは、N末端からC末端の方向に向かって、(a)配列番号1と配列が100%一致する第1のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチドセグメントと;(b)切断可能なペプチドリンカー配列と;(c)アミノ酸置換K74A、E75Y、N83Rを有する配列番号1のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチドセグメントを含んでいる。別のいくつかの実施形態では、本開示の組換えポリペプチドは、N末端からC末端の方向に向かって、(a)アミノ酸置換H111Dを有する配列番号1のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチドセグメントと;(b)切断可能なリンカー配列と;(c)アミノ酸置換K74A、E75Y、N83Rを有する配列番号1のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチドセグメントを含んでいる。さらに別のいくつかの実施形態では、本開示の組換えポリペプチドは、N末端からC末端の方向に向かって、(a)アミノ酸置換A23E、D24E、N25K、およびH111Dを有する配列番号1のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチドセグメントと;(b)切断可能なリンカー配列と;(c)アミノ酸置換K74A、E75Y、およびN83Rを有する配列番号1のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチドセグメントを含んでいる。いくつかの実施形態では、本開示の組換えポリペプチドは、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5からなるグループから選択されたアミノ酸配列を含んでいる。
【0014】
本開示の組換えポリペプチドのいくつかの実施形態では、アミノ酸置換の少なくとも1つが、インターフェロン-ガンマ受容体サブユニット1(IFN-γR1)および/またはインターフェロン-ガンマ受容体サブユニット2(IFN-γR2)のそれぞれに対して、少なくとも1個のアミノ酸置換を欠く参照ポリペプチドの結合親和性と比べて低下した結合親和性をもたらす。いくつかの実施形態では、少なくとも1個のアミノ酸置換が、インターフェロン-ガンマ受容体サブユニット1(IFN-γR1)とインターフェロン-ガンマ受容体サブユニット2(IFN-γR2)のそれぞれに対する少なくとも1個のアミノ酸置換を欠く参照ポリペプチドの結合親和性と比べて、インターフェロン-ガンマ受容体サブユニット2(IFN-γR2)に対しては実質的に低下した結合親和性を与える一方で、インターフェロン-ガンマ受容体サブユニット1(IFN-γR1)に対しては結合親和性を実質的に保持している。いくつかの実施形態では、ポリペプチドのIFN-γR2結合親和性とIFN-γR1結合親和性の比は、固相受容体結合アッセイによって求めたときに約1:500~約1:2である。
【0015】
一態様において、本開示のいくつかの実施形態は、本明細書に開示されている組換えポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも90%が一致するアミノ酸配列を含む組換え核酸分子に関する。いくつかの実施形態では、核酸配列は異種核酸配列に機能可能に連結されている。いくつかの実施形態では、核酸分子は発現カセットまたは発現ベクターとしてさらに規定される。
【0016】
他の一態様において、本開示のいくつかの実施形態は、本明細書に開示されている組換え核酸分子を含む組換え細胞に関する。いくつかの実施形態では、組換え細胞は、原核細胞または真核細胞である。別の一態様では、本開示のいくつかの実施形態は、本明細書に開示されている少なくとも1個の組換え細胞を含む細胞培養物に関する。
【0017】
さらに他の一態様において、本明細書に、ポリペプチドを産生させる方法の実施形態として、(i)本明細書に開示されている1個以上の組換え細胞を用意し;(ii)これら1個以上の組換え細胞を培地の中で培養することで、これら細胞に、組換え核酸分子によってコードされるポリペプチドを産生させることを含む方法が開示されている。いくつかの実施形態では、この態様による方法は、インビトロ、生体内、生体外のいずれかで実施される。本明細書では、他の一態様において、本明細書に開示されている産生法によって産生される組換えポリペプチドがさらに提供される。
【0018】
一態様において、本開示のいくつかの実施形態は、本明細書に開示されているポリペプチドと医薬的に許容される賦形剤を含む組成物に関する。
【0019】
他の一態様において、本開示のいくつかの実施形態は、本明細書に開示されている核酸分子と医薬的に許容される賦形剤を含む組成物に関する。
【0020】
他の一態様において、本開示のいくつかの実施形態は、本明細書に開示されている組換え細胞と医薬的に許容される賦形剤を含む組成物に関する。
【0021】
さらに他の一態様において、本明細書に開示されているいくつかの実施形態は、対象内でIFN-γを媒介としたシグナル伝達を変化させる方法に関するものであり、この方法は、本明細書に開示されているポリペプチドまたは本明細書に開示されている核酸分子の有効量を対象に投与することを含んでいる。
【0022】
さらに他の一態様において、本明細書に開示されているいくつかの実施形態は、健康障害を治療する必要のある対象でその疾患を治療する方法に関するものであり、この方法は、本明細書に開示されているポリペプチドまたは本明細書に開示されている核酸分子の有効量を対象に投与することを含んでいる。
【0023】
本開示による治療法の実施形態の実施は、以下の特徴のうちの1つ以上を含むことができる。いくつかの実施形態では、投与されたポリペプチドは、少なくとも1個のアミノ酸置換を欠く参照ポリペプチドと比べて、対象においてプログラムド-デス-リガンド1(programmed death-ligand 1)(PD-L1)の発現を上方調節する能力が低下している。いくつかの実施形態では、投与されたポリペプチドは、MHCクラスI分子の1個以上の発現を上方調節する能力を実質的に保持している。いくつかの実施形態では、投与されたポリペプチドは、対象においてPD-L1の発現を上方調節する能力が低下している一方で、MHCクラスI分子の1個以上の発現を上方調節する能力を実質的に保持している。いくつかの実施形態では、ポリペプチドまたは核酸分子の投与は対象においてT細胞の活性を抑制しない。いくつかの実施形態では、投与されたポリペプチドまたは核酸分子は、腫瘍微小環境内で抗腫瘍免疫を増強する。いくつかの実施形態では、ポリペプチドまたは核酸分子は、対象に、単一の治療剤として、または1つ以上の追加治療剤との組み合わせで投与される。いくつかの実施形態では、対象は哺乳動物である。いくつかの実施形態では、哺乳動物はヒトである。いくつかの実施形態では、対象は、IFN-γを媒介としたシグナル伝達と関係する健康障害を有するか、その健康障害を有することが疑われる。いくつかの実施形態では、健康障害は、がん、免疫疾患、慢性感染症のいずれかである。
【0024】
本明細書に記載されている態様と実施形態のそれぞれは組み合わせて利用できるが、その実施形態または態様の文脈から明示的に、または明確に除外される場合は別である。
【0025】
上記の概要は説明だけを目的としており、いかなる意味でも制限する意図はない。本明細書に記載されている説明用の実施形態と特徴に加え、本開示のさらなる態様、実施形態、目的、特徴が、図面と、詳細な説明と、請求項から十分に明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、IFN-γR1およびIFN-γR2とのIFN-γ複合体の立体構造図を示している。IFN-γ(白色と濃い灰色の太いリボン)は、2つの受容体IFN-γR1(薄い灰色のリボン)と2つの受容体IFN-γR2(黒色のリボン)に結合するホモ二量体サイトカインである。IFN-γ分子内のIFN-γR1結合部位を部位Iaおよび部位Ibと呼ぶのに対し、IFN-γ分子内のIFN-γR2結合部位は部位IIaおよび部位IIbと呼ぶ。
【
図2】
図2は、IFN-γ分子内にあってIFN-γR2と相互作用するアミノ酸残基の立体構造図を示している。
図2はIFN-γ二量体(白色と濃い灰色のリボン)の側面図を示しており、この図では、IFN-γR2結合インターフェイスの1つに位置するアミノ酸残基の位置が黒色のスティックで示されている。この図では、IFN-γR2と相互作用するIFN-γのアミノ酸残基は、Q1、D2、P3、K6、Q64、Q67、K68、E71、T72、K74、E75、D76、N78、V79、K80、N83、S84、K86、R89、D90を含んでいる。
【
図3A】
図3A~
図3Cは、本開示のいくつかの実施形態によるIFN-γポリペプチドバリアントの非限定的な一例を示すために実施した実験からの結果をまとめた図とグラフである。
図3AはIFN-γ二量体(白色と濃い灰色の表面)の表面図を示しており、この図では、変異E74A、E75Y、N75R(黒い表面)がIFN-γR2結合インターフェイスにあり、結合を変化させることが予測される。
図3Bは、野生型2:2 IFN-γ/IFN-γR1中間複合体に対するIFN-γR2の親和性を測定する表面プラズモン共鳴(SPR)実験の結果をまとめたものである。
図3Cは、SPRトレースから証明されるように、野生型IFN-γと比べて2:2 IFN-γ(K74A/E75Y/N75R)/IFN-γR1複合体に対してはIFN-γR2の結合が低下していることを示している。
【
図3B-3C】
図3A~
図3Cは、本開示のいくつかの実施形態によるIFN-γポリペプチドバリアントの非限定的な一例を示すために実施した実験からの結果をまとめた図とグラフである。
図3AはIFN-γ二量体(白色と濃い灰色の表面)の表面図を示しており、この図では、変異E74A、E75Y、N75R(黒い表面)がIFN-γR2結合インターフェイスにあり、結合を変化させることが予測される。
図3Bは、野生型2:2 IFN-γ/IFN-γR1中間複合体に対するIFN-γR2の親和性を測定する表面プラズモン共鳴(SPR)実験の結果をまとめたものである。
図3Cは、SPRトレースから証明されるように、野生型IFN-γと比べて2:2 IFN-γ(K74A/E75Y/N75R)/IFN-γR1複合体に対してはIFN-γR2の結合が低下していることを示している。
【
図4A-4B】
図4A~
図4Dは、本開示のいくつかの実施形態による非限定的な4つの代表的なIFN-γポリペプチドバリアントの立体構造図を示している。これらの図面では、IFN-γ分子(白色と灰色の表面)は、2つの受容体IFN-γR1(薄い灰色)と2つの受容体IFN-γR2(黒色)に結合するホモ二量体サイトカインである。
図4A~
図4Dは、(半透明の円で示した)受容体インターフェイスの1つ以上に対する結合が変化するように設計した4つの代表的なIFN-γバリアントの構造を示している。
図4AはIFN-γバリアントGIFN1の構造を示しており、この図では、3個のアミノ酸置換K74A、E75Y、N83RがIFN-γ分子の部位IIbに入るように操作されている。
図4Bは、IFN-γ分子の部位IIbに入るように操作された3個のアミノ酸置換K74A、E75Y、N83Rと、部位Ibに入るように操作された置換H111Dを含有するIFN-γバリアントGIFN2の構造を示している。
図4CはIFN-γバリアントGIFN3の構造を示しており、3個のアミノ酸置換K74A、E75Y、N83RがIFN-γ分子の部位IIaと部位IIbに入るように操作されている。
図4DはIFN-γバリアントGIFN4の構造を示しており、IFN-γ分子の中に以下のアミノ酸置換、すなわち部位IIaと部位IIb内のK74A、E75Y、N83Rと;部位Ia内のA23E、D24E、N25Kと;部位Ib内のH111Dを含有している。
【
図4C-4D】
図4A~
図4Dは、本開示のいくつかの実施形態による非限定的な4つの代表的なIFN-γポリペプチドバリアントの立体構造図を示している。これらの図面では、IFN-γ分子(白色と灰色の表面)は、2つの受容体IFN-γR1(薄い灰色)と2つの受容体IFN-γR2(黒色)に結合するホモ二量体サイトカインである。
図4A~
図4Dは、(半透明の円で示した)受容体インターフェイスの1つ以上に対する結合が変化するように設計した4つの代表的なIFN-γバリアントの構造を示している。
図4AはIFN-γバリアントGIFN1の構造を示しており、この図では、3個のアミノ酸置換K74A、E75Y、N83RがIFN-γ分子の部位IIbに入るように操作されている。
図4Bは、IFN-γ分子の部位IIbに入るように操作された3個のアミノ酸置換K74A、E75Y、N83Rと、部位Ibに入るように操作された置換H111Dを含有するIFN-γバリアントGIFN2の構造を示している。
図4CはIFN-γバリアントGIFN3の構造を示しており、3個のアミノ酸置換K74A、E75Y、N83RがIFN-γ分子の部位IIaと部位IIbに入るように操作されている。
図4DはIFN-γバリアントGIFN4の構造を示しており、IFN-γ分子の中に以下のアミノ酸置換、すなわち部位IIaと部位IIb内のK74A、E75Y、N83Rと;部位Ia内のA23E、D24E、N25Kと;部位Ib内のH111Dを含有している。
【
図6】
図6A~
図6Bは、本開示のいくつかの実施形態によるIFN-γポリペプチドバリアントの非限定的な一例であるGIFN1の構造とアミノ酸配列を示している。IFN-γバリアントGIFN1のアミノ酸配列(配列番号2、
図6B)には、IFN-γ分子の部位IIbに入るように操作された3個のアミノ酸置換K74A、E75Y、N83Rが太字で示されている。2つのIFN-γ単量体のアミノ酸配列は、切断可能なペプチドリンカー(イタリックで表示)を介して互いに連結されている。
【
図7】
図7A~
図7Bは、本開示のいくつかの実施形態によるIFN-γポリペプチドバリアントの別の非限定的な一例であるGIFN2の構造とアミノ酸配列を示している。IFN-γバリアントGIFN2のアミノ酸配列(配列番号3、
図7B)では、3個のアミノ酸置換(K74A、E75Y、N83R)(太字)がIFN-γ分子の部位IIbに入るように操作され、置換H111D(四角形)が部位Ibに入るように操作されている。2つのIFN-γ単量体のアミノ酸配列は、切断可能なペプチドリンカー(イタリック)を介して互いに連結されている。
【
図8】
図8Aは、本開示のいくつかの実施形態によるIFN-γポリペプチドバリアントの別の非限定的な一例であるGIFN3のホモ二量体構造を示している。
図8BはGIFN3単量体のアミノ酸配列(配列番号4)を示しており、(太字で示されている)3個のアミノ酸置換K74A、E75Y、N83RがIFN-γ分子の部位IIaと部位IIbに入るように操作されている。
【
図9】
図9A~
図9Bは、本開示のいくつかの実施形態によるIFN-γポリペプチドバリアントのさらに別の非限定的な一例であるGIFN4の構造とアミノ酸配列を示している。
図9Bに示されているように、IFN-γバリアントGIFN4のアミノ酸配列は、IFN-γ分子の中に以下のアミノ酸置換、すなわち部位IIaと部位IIbの中のK74A、E75Y、N83R(太字で示す)と;鎖Aの部位Iaの中のA23E、D24E、N25K(太いイタリック)と;鎖Aの部位Ibの中のH111D(四角形)を含有している。2つのIFN-γ単量体のアミノ酸配列は、切断可能なペプチドリンカー(イタリック)を介して互いに連結されている。
【
図10A】
図10A~
図10Iは、IFN-γを媒介としたシグナル伝達を変化させる本開示のいくつかの実施形態による方法の非限定的な一例を説明するために実施した実験からの結果をまとめたグラフである。示されているように、IFN-γ部分的アゴニストは、ホスホ-STATシグナル伝達を変化させることにより、PD-L1の発現と比べてバイアスのあるクラスI MHC抗原提示(HLA-ABC)を生じさせる。
図10Aは、IFN-γ(黒色)とIFN-γバリアント(GIFN1(黒い点線)、GIFN2(灰色)、GIFN3(灰色の点線)、GIFN4(薄い灰色))のホスホ-STAT1シグナル伝達に関する用量-反応曲線を示している。
図10Bでは、ヒト肺がん細胞系A549を、0.1 nM、0.5 nM、2.5 nM、12.5 nM、62.5 nMの用量(左の棒から右の棒へ)のIFN-γ(野生型)またはIFN-γバリアントで処理した。48時間後、細胞を染色してPD-L1の発現を探し、分析した。
図10Cでは、A549細胞を62.5 nMの各タンパク質で48時間にわたって処理することにより、PD-L1遺伝子の発現をqPCRで測定した。処理なし(白色);野生型IFN-γ(黒色);GIFN2(灰色);GIFN3(灰色の点線);GIFN4(薄い灰色)。
図10Dでは、
図10Bに記載されているのと同様にして実験を実施したが、クラスI MHCをFACS技術によって測定した点が異なっている。
図10Eでは、A549細胞を62.5 nMのタンパク質で48時間にわたって処理することにより、HLA-A遺伝子の発現をqPCRで測定した。処理なし(白色);野生型IFN-γ(黒色);GIFN2(灰色);GIFN3(灰色の点線);GIFN4(薄い灰色)。
図10F~
図10Gでは、樹状細胞をヒトの血液から精製した後、IFN-γ(野生型)または部分的アゴニストで処理し、PD-L1またはMHCクラスI抗原の発現を明らかにした。
図10H~
図10Iは、異なる濃度の各IFN-γ部分的アゴニストで処理したA549細胞(
図10H)と樹状細胞(
図10I)におけるMHC I:PD-L1発現の比を求めるために実施した抗体に基づく実験の結果を、野生型IFN-γで処理した対照細胞と比較してまとめたグラフである。
【
図10B-10C】
図10A~
図10Iは、IFN-γを媒介としたシグナル伝達を変化させる本開示のいくつかの実施形態による方法の非限定的な一例を説明するために実施した実験からの結果をまとめたグラフである。示されているように、IFN-γ部分的アゴニストは、ホスホ-STATシグナル伝達を変化させることにより、PD-L1の発現と比べてバイアスのあるクラスI MHC抗原提示(HLA-ABC)を生じさせる。
図10Aは、IFN-γ(黒色)とIFN-γバリアント(GIFN1(黒い点線)、GIFN2(灰色)、GIFN3(灰色の点線)、GIFN4(薄い灰色))のホスホ-STAT1シグナル伝達に関する用量-反応曲線を示している。
図10Bでは、ヒト肺がん細胞系A549を、0.1 nM、0.5 nM、2.5 nM、12.5 nM、62.5 nMの用量(左の棒から右の棒へ)のIFN-γ(野生型)またはIFN-γバリアントで処理した。48時間後、細胞を染色してPD-L1の発現を探し、分析した。
図10Cでは、A549細胞を62.5 nMの各タンパク質で48時間にわたって処理することにより、PD-L1遺伝子の発現をqPCRで測定した。処理なし(白色);野生型IFN-γ(黒色);GIFN2(灰色);GIFN3(灰色の点線);GIFN4(薄い灰色)。
図10Dでは、
図10Bに記載されているのと同様にして実験を実施したが、クラスI MHCをFACS技術によって測定した点が異なっている。
図10Eでは、A549細胞を62.5 nMのタンパク質で48時間にわたって処理することにより、HLA-A遺伝子の発現をqPCRで測定した。処理なし(白色);野生型IFN-γ(黒色);GIFN2(灰色);GIFN3(灰色の点線);GIFN4(薄い灰色)。
図10F~
図10Gでは、樹状細胞をヒトの血液から精製した後、IFN-γ(野生型)または部分的アゴニストで処理し、PD-L1またはMHCクラスI抗原の発現を明らかにした。
図10H~
図10Iは、異なる濃度の各IFN-γ部分的アゴニストで処理したA549細胞(
図10H)と樹状細胞(
図10I)におけるMHC I:PD-L1発現の比を求めるために実施した抗体に基づく実験の結果を、野生型IFN-γで処理した対照細胞と比較してまとめたグラフである。
【
図10D-10E】
図10A~
図10Iは、IFN-γを媒介としたシグナル伝達を変化させる本開示のいくつかの実施形態による方法の非限定的な一例を説明するために実施した実験からの結果をまとめたグラフである。示されているように、IFN-γ部分的アゴニストは、ホスホ-STATシグナル伝達を変化させることにより、PD-L1の発現と比べてバイアスのあるクラスI MHC抗原提示(HLA-ABC)を生じさせる。
図10Aは、IFN-γ(黒色)とIFN-γバリアント(GIFN1(黒い点線)、GIFN2(灰色)、GIFN3(灰色の点線)、GIFN4(薄い灰色))のホスホ-STAT1シグナル伝達に関する用量-反応曲線を示している。
図10Bでは、ヒト肺がん細胞系A549を、0.1 nM、0.5 nM、2.5 nM、12.5 nM、62.5 nMの用量(左の棒から右の棒へ)のIFN-γ(野生型)またはIFN-γバリアントで処理した。48時間後、細胞を染色してPD-L1の発現を探し、分析した。
図10Cでは、A549細胞を62.5 nMの各タンパク質で48時間にわたって処理することにより、PD-L1遺伝子の発現をqPCRで測定した。処理なし(白色);野生型IFN-γ(黒色);GIFN2(灰色);GIFN3(灰色の点線);GIFN4(薄い灰色)。
図10Dでは、
図10Bに記載されているのと同様にして実験を実施したが、クラスI MHCをFACS技術によって測定した点が異なっている。
図10Eでは、A549細胞を62.5 nMのタンパク質で48時間にわたって処理することにより、HLA-A遺伝子の発現をqPCRで測定した。処理なし(白色);野生型IFN-γ(黒色);GIFN2(灰色);GIFN3(灰色の点線);GIFN4(薄い灰色)。
図10F~
図10Gでは、樹状細胞をヒトの血液から精製した後、IFN-γ(野生型)または部分的アゴニストで処理し、PD-L1またはMHCクラスI抗原の発現を明らかにした。
図10H~
図10Iは、異なる濃度の各IFN-γ部分的アゴニストで処理したA549細胞(
図10H)と樹状細胞(
図10I)におけるMHC I:PD-L1発現の比を求めるために実施した抗体に基づく実験の結果を、野生型IFN-γで処理した対照細胞と比較してまとめたグラフである。
【
図10F-10G】
図10A~
図10Iは、IFN-γを媒介としたシグナル伝達を変化させる本開示のいくつかの実施形態による方法の非限定的な一例を説明するために実施した実験からの結果をまとめたグラフである。示されているように、IFN-γ部分的アゴニストは、ホスホ-STATシグナル伝達を変化させることにより、PD-L1の発現と比べてバイアスのあるクラスI MHC抗原提示(HLA-ABC)を生じさせる。
図10Aは、IFN-γ(黒色)とIFN-γバリアント(GIFN1(黒い点線)、GIFN2(灰色)、GIFN3(灰色の点線)、GIFN4(薄い灰色))のホスホ-STAT1シグナル伝達に関する用量-反応曲線を示している。
図10Bでは、ヒト肺がん細胞系A549を、0.1 nM、0.5 nM、2.5 nM、12.5 nM、62.5 nMの用量(左の棒から右の棒へ)のIFN-γ(野生型)またはIFN-γバリアントで処理した。48時間後、細胞を染色してPD-L1の発現を探し、分析した。
図10Cでは、A549細胞を62.5 nMの各タンパク質で48時間にわたって処理することにより、PD-L1遺伝子の発現をqPCRで測定した。処理なし(白色);野生型IFN-γ(黒色);GIFN2(灰色);GIFN3(灰色の点線);GIFN4(薄い灰色)。
図10Dでは、
図10Bに記載されているのと同様にして実験を実施したが、クラスI MHCをFACS技術によって測定した点が異なっている。
図10Eでは、A549細胞を62.5 nMのタンパク質で48時間にわたって処理することにより、HLA-A遺伝子の発現をqPCRで測定した。処理なし(白色);野生型IFN-γ(黒色);GIFN2(灰色);GIFN3(灰色の点線);GIFN4(薄い灰色)。
図10F~
図10Gでは、樹状細胞をヒトの血液から精製した後、IFN-γ(野生型)または部分的アゴニストで処理し、PD-L1またはMHCクラスI抗原の発現を明らかにした。
図10H~
図10Iは、異なる濃度の各IFN-γ部分的アゴニストで処理したA549細胞(
図10H)と樹状細胞(
図10I)におけるMHC I:PD-L1発現の比を求めるために実施した抗体に基づく実験の結果を、野生型IFN-γで処理した対照細胞と比較してまとめたグラフである。
【
図10H-10I】
図10A~
図10Iは、IFN-γを媒介としたシグナル伝達を変化させる本開示のいくつかの実施形態による方法の非限定的な一例を説明するために実施した実験からの結果をまとめたグラフである。示されているように、IFN-γ部分的アゴニストは、ホスホ-STATシグナル伝達を変化させることにより、PD-L1の発現と比べてバイアスのあるクラスI MHC抗原提示(HLA-ABC)を生じさせる。
図10Aは、IFN-γ(黒色)とIFN-γバリアント(GIFN1(黒い点線)、GIFN2(灰色)、GIFN3(灰色の点線)、GIFN4(薄い灰色))のホスホ-STAT1シグナル伝達に関する用量-反応曲線を示している。
図10Bでは、ヒト肺がん細胞系A549を、0.1 nM、0.5 nM、2.5 nM、12.5 nM、62.5 nMの用量(左の棒から右の棒へ)のIFN-γ(野生型)またはIFN-γバリアントで処理した。48時間後、細胞を染色してPD-L1の発現を探し、分析した。
図10Cでは、A549細胞を62.5 nMの各タンパク質で48時間にわたって処理することにより、PD-L1遺伝子の発現をqPCRで測定した。処理なし(白色);野生型IFN-γ(黒色);GIFN2(灰色);GIFN3(灰色の点線);GIFN4(薄い灰色)。
図10Dでは、
図10Bに記載されているのと同様にして実験を実施したが、クラスI MHCをFACS技術によって測定した点が異なっている。
図10Eでは、A549細胞を62.5 nMのタンパク質で48時間にわたって処理することにより、HLA-A遺伝子の発現をqPCRで測定した。処理なし(白色);野生型IFN-γ(黒色);GIFN2(灰色);GIFN3(灰色の点線);GIFN4(薄い灰色)。
図10F~
図10Gでは、樹状細胞をヒトの血液から精製した後、IFN-γ(野生型)または部分的アゴニストで処理し、PD-L1またはMHCクラスI抗原の発現を明らかにした。
図10H~
図10Iは、異なる濃度の各IFN-γ部分的アゴニストで処理したA549細胞(
図10H)と樹状細胞(
図10I)におけるMHC I:PD-L1発現の比を求めるために実施した抗体に基づく実験の結果を、野生型IFN-γで処理した対照細胞と比較してまとめたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本開示は、一般に、分子生物学と免疫学と医学の分野に関するものであり、IFN-γを媒介としたシグナル伝達経路を調節する必要がある対象でそのシグナル伝達経路を調節するための組成物と方法を含んでいる。本開示のいくつかの実施形態は、改変されていないIFN-γポリペプチドおよび野生型IFN-γポリペプチドとは異なる物理的特性と活性を示すように改変されたIFN-γポリペプチドバリアントに関する。これらIFN-γポリペプチドバリアントをコードする核酸分子も提供される。これらIFN-γポリペプチドバリアントを用いた治療と診断の方法も提供される。
【0028】
本開示のさらに別のいくつかの実施形態では、IFN-γを媒介としたシグナル伝達が、2つの受容体IFN-γR1とIFN-γR2の一方へのIFN-γの結合を選択的に減らすことを介して調節される。より具体的には、いくつかの実施形態では、本開示により、インターフェロン受容体サブユニット1(IFN-γR1)またはインターフェロン受容体サブユニット2(IFN-γR2)に対する結合親和性が低下していて、それぞれの受容体IFN-γR1またはIFN-γR2を通じて媒介される下流シグナル伝達を完全にまたは部分的に刺激する新規なIFN-γポリペプチドバリアントが提供される。本開示のいくつかの実施形態は、このようなIFN-γポリペプチドバリアントを産生するのに有用な組成物と方法、並びにIFN-γによって媒介されるシグナル伝達の乱れに関係する健康障害を治療する方法に関する。
【0029】
下により詳しく記述されているように、臨床で役立つIFN-γのバリアントの作製を試みるため、本開示により特に、ヒトIFN-γとその受容体IFN-γR1およびIFN-γR2からなる複合体の結晶構造が決定される。加えて、IFN-γが対応する受容体にどのように結合するかを調べるための作業見取り図としてこの構造を用いることにより、IFN-γの中のいくつかの変異した残基を操作してIFN-γR1とIFN-γR2の結合の一方または両方を弱め、STAT1-Pのための部分的シグナル伝達アゴニストとIFN-γの下流作用のためのバイアス型アゴニストとして作用するIFN-γのバリアントを作成した。特に、これらIFN-γバリアントは、PD-L1の発現を上方調節する能力の低下を示す一方で、MHCクラスIの発現を上方調節する大きな能力を保持している。下により詳しく記述されているように、IFN-γのいくつかの機能的出力(その中に含まれるのはENA78、EOTAXIN、G-CSF、HGF、IFN-b、IL-10、IL-12P70、IL-13、IL-15、IL-17F、IL-18、IL-1b、IL-2、IL-23、IL-27、IL-5、IL-7、IL-8、IL-9、IP-10、レプチン、LIF、MCP-3、MIG、PDGF-BB、RANTES、sCD40L、SCF、sFAS、sICAM-1、sVCAM-1、TGF-a、TGF-b、TNF-a、TNF-b、およびVEGF-Dである)を調べたところ、ビーズに基づくイムノアッセイサイトカイン分泌実験で明らかになったように、対照と比べて分泌が異なることが見いだされた。理論に囚われることは望まないが、これらバイアス型アゴニストは、多くの異なる反応細胞でIFN-γの他の機能的出力に関するバイアスも示すと考えられている。本明細書に記載されているバイアス型アゴニストのアプローチに適した細胞表面マーカーの非限定的な例に含まれるのは、MHCクラスI、PD-L1、MHCクラスII(HLA-DR)、CD40、CD86、CD80、CD107a、CD69である。本明細書に開示されているIFN-γバリアントは、治療に向けてIFN-γシグナル伝達をチューニングするための新規なアプローチを示している。特に本明細書に記載されている構造情報は、望ましい治療特性のためのIFN-γの設計を教えてくれる。下により詳しく記述されているように、本開示により特に、(1)部分的IFN-γアゴニストとバイアス型IFN-γアゴニストの分子および特性と、(2)以前は公開されていなくて本明細書に記載されている結晶構造に基づいて同定されたIFN-γのIFN-γR2結合部位内にあり、追加のバイアス型アゴニストを作成するための変異標的として機能する可能性があるアミノ酸位置が提供される。特に、理論に囚われることは望まないが、これらアミノ酸は、IFN-γR2についてだけ変異しているか、IFN-γR1変異とタンデムになっていて、バイアス型アゴニストを設計して作製するための標的部位をIFN-γ上に規定することができる。したがって本明細書に記載されている結晶構造により、IFN-γバイアス型アゴニストを創出することができる。本開示の様々な実施形態では、バイアス型アゴニストIFN-γ配列のいくつかは、IFN-γ分子のIFN-γR2結合部位内のこれらアミノ酸の一部に変異を含有する一方で、他の配列は、IFN-γ分子のIFN-γR1結合部位内に変異した残基を含有している。
【0030】
本明細書に開示されているIFN-γバリアントはいくつかの利点を提供する。バイアス型アゴニストという考え方は非常に柔軟かつ多様であり、原則として、広い範囲の免疫療法の臨床で役立つ可能性がある。例えば、野生型IFN-γは、これまでに実施された臨床試験で有用であることがまだ実証されていないが、本明細書に開示されている部分的アゴニストとバイアス型アゴニスト(例えば、IFN-γバリアント)は、IFN-γの複数ある下流作用を分離させるため、このようなIFN-γバリアントを免疫療法において、例えば、がんや他の免疫疾患(自己免疫疾患を含む)の治療に用いる道を開く。
【0031】
定義
特に断わらない限り、本明細書で用いられているあらゆる専門用語、表記、他の科学用語は、本開示が関係する分野の当業者が一般に理解している意味を持つものとする。いくつかのケースでは、一般に理解されている意味を持つ用語は、明確にすること、および/または容易に参照できるようにすることを目的として本明細書で定義されているが、本明細書にそのような定義が含まれることが、本分野で一般に理解されていることと実質的に異なることを必ず表わすと解釈されてはならない。本明細書に記載されるか言及されている技術と手続きの多くは当業者によく理解されており、従来から方法を用いて一般に利用されている。
【0032】
単数形「1つの」と「その」には、文脈から明らかに異なることがわかる場合を除き、複数形が含まれる。例えば「1個の細胞」という表現には、1個以上の細胞が含まれ、その中には細胞の混合物が含まれる。「Aおよび/またはB」には、本明細書では、それに代わる表現である「A」、「B」、「AまたはB」、「AとB」がすべて含まれる。
【0033】
「約」という用語は、本明細書では、ほぼという通常の意味を持つ。ほぼの程度が文脈から明確でない場合には、「約」は、提示されている値の±10%、または最も近い丸めた有効数字を意味し、あらゆる場合に提示されている値を含む。範囲が示されている場合には、その範囲に境界値が含まれる。
【0034】
本明細書で用いられている「投与」と「投与する」という用語は、生物活性な組成物または製剤を1つの投与経路(その非限定的な例に含まれるのは、経口投与、静脈内投与、動脈内投与、筋肉内投与、腹腔内投与、皮下投与、局所投与と、これらの組み合わせである)によって送達することを意味する。この用語の非限定的な例に含まれるのは、医学の専門家による投与と、自己投与である。
【0035】
本開示の対象となる組換えポリペプチドの「有効な量」、または「治療に有効な量」、または「医薬として有効な量」という表現は、一般に、ある組成物が、この組成物がない場合と比べて述べられている目的を実現する(例えば、この組成物を投与した効果を実現する、疾患を治療する、シグナル伝達経路を弱める、疾患または健康障害の1つ以上の症状を減らす)のに十分な量を意味する。「有効な量」の一例は、疾患の1つまたは複数の症状の治療、または予防、または低減に寄与するのに十分な量であり、それは「治療に有効な量」と呼ぶこともできよう。症状の「低減」は、症状の重症度または頻度を低下させること、または症状をなくすことを意味する。「治療に効果的な量」を含む組成物の正確な量は治療の目的に依存するであろうし、当業者によって既知の技術を利用して確認されることになろう(例えば、Lieberman、『Pharmaceutical Dosage Forms』(第1巻~第3巻、1992年);Lloyd、『The Art, Science and Technology of Pharmaceutical Compounding』(1999年);Pickar、『Dosage Calculations』(1999年);『Remington: The Science and Practice of Pharmacy』、第20版、2003年、Gennaro編、Lippincott, Williams & Wilkins社を参照されたい)。
【0036】
本明細書で用いられている「機能可能に連結された」という表現は、2つ以上の要素(例えば、ポリペプチド配列またはポリヌクレオチド配列)が、想定されるやり方で機能できるように物理的または機能的に連結されていることを意味する。例えば、興味あるポリヌクレオチドと調節配列(例えば、プロモータ)の間の機能可能な連結は、興味あるポリヌクレオチドの発現を可能にする機能的な連結である。この意味で、「機能可能に連結された」という表現は、調節領域と転写されるコード配列の位置を意味し、調節領域は、興味あるコード配列の転写または翻訳を調節するのに有効であるような位置にされている。したがってプロモータは、核酸配列の転写を媒介できる場合に、核酸配列と機能可能に連結されている。機能可能に連結された要素は連続していても不連続でもよいことを理解すべきである。ポリペプチドの文脈では、「機能可能に連結された」は、ポリペプチドの記載されている活性を提供するため、複数のアミノ酸配列(例えば、異なるセグメント、モジュール、ドメイン)が物理的に(例えば、直接的または間接的に)連結されていることを意味する。本開示では、本開示の組換えポリペプチドの様々なセグメント、または領域、またはドメインは、細胞内の組換えポリペプチドの適切な折り畳み、プロセシング、ターゲティング、発現、結合や、それ以外の機能的特性を保持するように機能可能に連結することができる。特に断わらない限り、本開示の組換えポリペプチドの様々なモジュール、ドメイン、セグメントは、互いに機能可能に連結されている。本開示の多価ポリペプチドまたは多価抗体の機能可能に連結されたモジュール、ドメイン、セグメントは、連続していても不連続でもよい(例えば、互いにリンカーを通じて連結されている)。
【0037】
本明細書において2つ以上の核酸またはタンパク質の文脈で用いられている「配列の一致」という用語は、BLASTまたはBLAST 2.0という配列比較アルゴリズムを下記のデフォルトパラメータで用いて、または手作業によるアラインメントと目視で測定したとき、まったく同じであるか、指定された割合のヌクレオチドまたはアミノ酸が同じである(比較ウインドウまたは指定された領域で比較して対応が最大になるようにアラインメントしたとき、指定された領域で例えば、約60%の配列一致、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれよりも多くの割合が一致する)2つ以上の配列または部分配列を意味する。例えば、NCBIのウェブサイトncbi.nlm.nih.gov/BLASTを参照されたい。このような配列は「実質的に一致している」と言われる。この定義は、試験配列の相補的配列も意味すること、または試験配列の相補的配列に適用することができる。この定義には、欠失および/または付加がある配列のほか、置換がある配列も含まれる。配列の一致は、典型的には、長さが少なくとも約20個のアミノ酸またはヌクレオチドの領域、または長さが10~100個のアミノ酸またはヌクレオチドの領域、または所与の配列の全長に存在する。
【0038】
必要な場合には、配列の一致は、公開されている技術と広く利用されているコンピュータプログラムを用いて計算することができ、その例は、GCSプログラムパッケージ(Devereux他、Nucleic Acids Res. 第12巻:387ページ、1984年)、BLASTP、BLASTN、FASTA(Atschul他、J. Molecular Biol. 第215巻:403ページ、1990年)である。配列の一致は、配列分析ソフトウエア(例えばUniversity of Wisconsin Biotechnology Center(1710ユニヴァーシティ・アヴニュ、マディソン、ウィスコンシン州、53705)のGenetics Computer Groupの配列分析ソフトウエアパッケージ)をデフォルトパラメータで用いて測定することができる。
【0039】
「医薬的に許容される賦形剤」という用語は、本明細書では、対象に興味ある化合物を投与することを目的として、医薬的に許容される担体、または添加剤、または希釈剤を提供する適切な任意の物質を意味する。そのため「医薬的に許容される賦形剤」には、医薬として許容可能な希釈剤、医薬として許容可能な添加剤、医薬的に許容される担体と呼ばれる物質を含めることができる。本明細書では、「医薬的に許容される担体」という用語の非限定的な例に含まれるのは、医薬の投与に適合した生理食塩水、溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌剤、抗真菌剤、等張剤、吸収遅延剤などである。追加の活性化合物(例えば、抗生剤、追加治療剤)も組成物の中に組み込むことができる。
【0040】
本明細書で用いられている「組換え」核酸分子または「操作された」核酸分子という用語は、ヒトによる介入を通じて変えられた核酸分子を意味する。非限定的な例として、cDNAは組換えDNA分子であり、インビトロのポリメラーゼ反応によって生成した任意の核酸分子、またはリンカー配列が付着した核酸分子、またはベクター(クローニングベクターや発現ベクターなど)に組み込まれた核酸分子も同様に組換えDNA分子である。非限定的な例として、可能な組換え核酸分子は:1)核酸分子が例えば、化学技術または酵素技術(例えば、化学的核酸合成、または複製、重合、エキソヌクレアーゼ消化、エンドヌクレアーゼ消化、連結、逆転写、転写、塩基修飾(例えば、メチル化が含まれる)のための酵素、または組換え(相同組換えと部位特異的組換えが含まれる))を利用してインビトロで合成されるか改変された組換え核酸分子;および/または2)天然状態では結合していない結合した核酸配列を含む組換え核酸分子;および/または3)分子クローニング技術を利用して操作されて、天然の核酸分子配列と比べて1個以上のヌクレオチドを欠いている組換え核酸分子;および/または4)分子クローニング技術を利用して操作されて、天然の核酸配列と比べて1つ以上の配列が変化または再構成されている組換え核酸分子である。非限定的な例として、cDNAは組換えDNA分子であり、インビトロのポリメラーゼ反応によって生成した任意の核酸分子、またはリンカー配列が付着した核酸分子、またはベクター(クローニングベクターや発現ベクターなど)に組み込まれた核酸分子も同様に組換えDNA分子である。組換え核酸と組換えタンパク質の別の非限定的な一例は、本明細書に開示されているIFN-γポリペプチドバリアントである。
【0041】
本明細書では、「対象」または「個体」または「患者」に、動物、例えば、ヒト(例えば、ヒト対象)と非ヒト動物が含まれる。したがって対象として、興味ある疾患(例えば、がん)および/またはその疾患の1つ以上の症状を持つか、持つことが疑われるヒト患者、または個体が可能である。対象として、診断時に、または診断後に興味ある疾患のリスクがあると診断された個体も可能である。「非ヒト動物」という用語にはあらゆる脊椎動物が含まれ、例えば、哺乳動物(例えば、齧歯類(例えば、マウス))と非哺乳動物(非ヒト霊長類など)、例えば、ヒツジ、イヌ、ウシ、ニワトリ、両生類、爬虫類などが含まれる。
【0042】
本明細書では、IFN-γポリペプチドの「バリアント」という用語は、参照IFN-γポリペプチドのアミノ酸配列と比べて1個以上のアミノ酸の置換および/または欠失および/または挿入が中に存在しているポリペプチドを意味する。そのため「IFN-γポリペプチドバリアント」という用語には、IFN-γポリペプチドの天然のアレルバリアントまたは選択的スプライスバリアントが含まれる。例えば、ポリペプチドバリアントは、親ポリペプチドのアミノ酸配列の中に、似ているか相同なアミノ酸、または似ていないアミノ酸で置換された1個以上のアミノ酸を含んでいる。アミノ酸の類似性または相同性をランク付けすることのできるスケールが多く存在している(Gunnar von Heijne、『Sequence Analysis in Molecular Biology』、123~139ページ(Academic Press社、ニューヨーク、ニューヨーク州、1987年))。代表的なバリアントは、アミノ酸位置の1つ以上にアラニン置換を含んでいる。他の代表的な置換に含まれるのは、ポリペプチドの全体的な正味の電荷、または極性、または疎水性にほとんど影響しないか、まったく影響しない保存された置換である。
【0043】
当業者には理解されるように、あらゆる目的(文字による記述の提供など)で、本明細書に開示されているあらゆる範囲には、可能なあらゆる部分範囲と、その部分範囲の組み合わせも含まれる。掲載されているどの範囲も、十分な記述であることと、その同じ範囲を少なくとも同等な半分、1/3、1/4、1/5、1/10などに分割できることを容易に認識できる。非限定的な一例として、本明細書で論じられている各範囲は、下位の1/3、中央の1/3、上位の1/3などに容易に分割できる。「まで」、「少なくとも」、「超」、「未満」などのあらゆる表現は、記載されている数値を含むこと、そして上記の部分範囲にその後分割できる複数の範囲を意味することが、やはり当業者に理解される。最後に、当業者には理解されるように、1つの範囲には個々のメンバーが含まれる。したがって例えば、1~3個の要素を持つグループは、1個、または2個、または3個の要素を持つグループを意味する。同様に、1~5個の要素を持つグループは、1個、2個、3個、4個、または5個いずれかの要素を持つグループを意味し、以下同様である。
【0044】
本明細書で用いられている「ベクター」という用語は、別の核酸分子を移すか輸送することのできる核酸分子または配列を意味する。移された核酸分子は一般にベクター核酸分子に連結(例えば挿入)される。一般にベクターは、適切な制御エレメントと組み合わされたときに複製が可能である。「ベクター」という用語には、クローニングベクターと発現ベクターのほか、ウイルスベクターと組み込みベクターが含まれる。「発現ベクター」は調節領域を含むベクターであり、この調節領域によってDNAの配列と断片をインビトロおよび/または生体内で発現することができる。ベクターは、細胞内で自律的な複製を指令する配列を含むこと、または宿主細胞のDNAへの組み込みを可能にするのに十分な配列を含むことができる。有用なベクターに含まれるのは、例えば、プラスミド(例えば、DNAプラスミドまたはRNAプラスミド)、トランスポゾン、コスミド、細菌人工染色体、ウイルスベクターである。有用なウイルスベクターに含まれるのは、例えば、複製に欠陥があるレトロウイルスとレンチウイルスである。いくつかの実施形態では、ベクターは遺伝子送達ベクターである。いくつかの実施形態では、ベクターは遺伝子を細胞の中に移すための遺伝子送達ビヒクルとして用いられる。
【0045】
本明細書に記載されている開示の態様と実施形態には、態様と実施形態を「含む」、態様と実施形態「からなる」、態様と実施形態「から主になる」が含まれると理解される。本明細書では、「含む」は、「包含する」、「含有する」、「特徴とする」の同義語であり、包括的であるため、または数に制限がないため、追加の記載されていない要素、または方法の工程が除外されることはない。本明細書では、「からなる」は、権利を請求する組成物または方法の中に記載されていないあらゆる要素、工程、成分を排除する。本明細書では、「から主になる」は、権利を請求する組成物または方法の基本的な特徴と新規な特徴に実質的に影響しない材料または工程を排除しない。本明細書で特に組成物の構成成分の記述、または方法の構成の記述における「含む」という用語へのあらゆる言及は、言及されている構成成分または工程から主になる組成物および方法と、言及されている構成成分または工程からなる組成物および方法を包含すると理解される。
【0046】
項目の記号、例えば、(a)、(b)、(i)などは、単に明細書と請求項を読みやすくするために示されている。明細書または請求項における項目の記号の使用は、英字または数字の順番であること、すなわちそれらが示されている順番に工程または要素を実施する必要があることを要求しない。
【0047】
インターフェロン-ガンマ
IFN-γは、ウイルスの感染やがんの増殖に反応して分泌されるサイトカインである。IFN-γは、T細胞クラスIとII MHC抗原の発現、Fc受容体、マクロファージを調節する(Stark他、Annu Rev Biochem、第67巻、227~264ページ、1998年)。IFN-γは、2本の異なる鎖、すなわちIFN-γ受容体結合サブユニット(IFN-γR、IFN-γR1)と膜貫通アクセサリ因子(AF-1、IFN-γR2)からなる多量体受容体複合体を通じてシグナルを伝える。IFN-γ受容体複合体の構成要素間の相互作用は文献に広く記載されている(Kotenko他、J Biol Chem、第270巻、20915~20921ページ、1995年)。IFN-γシグナル伝達複合体は、大きな親和性で結合する2つのIFN-γR1分子と小さな親和性で結合する2つのIFN-γR2分子からなるIFN-γ受容体がリガンドによって二量体化するときに形成される(FarrarとSchreiber、Annu Rev Immunol 第11巻:571~611ページ、1993年)。2:2 IFN-γ/IFN-γR1中間複合体に対するIFN-γR2の親和性が元々小さいことが、完全な六量体シグナル伝達複合体を結晶化させる努力の障害となってきた。下により詳しく記述されているように、本開示のいくつかの実施形態により、親和性がより大きくてIFN-γR2との相互作用を安定化させるIFN-γR1が提供され、そのことによって2:2:2 IFN-γ/IFN-γR1/IFN-γR2構造を3.1オングストロームで決定することができる。結晶構造からの見通しを利用していくつかのIFN-γバリアントを生成させ、複合体形成の各工程がシグナル伝達と機能にどう寄与しているかを明らかにした。本明細書に記載されている構造-機能の研究は、IFN-γR1受容体が感度を提供する一方で、IFN-γR2はシグナル伝達とIFN-γ反応の効力を最大にするのに不可欠であることを実証している。本明細書に記載されている実験により、操作されたIFN-γ分子が、IFN-γ受容体によって媒介される細胞シグナル伝達の細胞シグナルの強度をチューニングすることを通じ、IFN-γ活性を識別するための道を提供することが実証された。一例として、1つの部分的アゴニストGIFN4は、クラスI MHC抗原の発現を十分に上方調節する一方で、肺がん細胞と血液の両方から精製した樹状細胞の表面におけるPD-L1の発現を制限する。本開示に記載されている実験結果から、IFN-γリガンド-受容体相互作用と、これら相互作用を妨げる疾患関連変異と、IFN-γを媒介とするシグナル伝達と疾患を研究するための新たな分子に関する新たな見通しが提供される。
【0048】
IFN-γは、抗ウイルス活性を持つことに加え、強力な免疫調節サイトカインであるという点で、3つのIFNファミリーの中で独自の役割を有することが示されている(Pace他、J. Immunol. 第134巻:977~981ページ、1985年)。IFN-γがクローニングされたこと(GrayとGoeddel、Nature、第298巻、859~863ページ、1982年;Gray他、Nature、第295巻、503~508ページ、1982年)により、組換えタンパク質の使用を通じて野生型分子IFN-γのシグナル伝達と活性を研究することが容易になった。IFN-γホモ二量体の構造は視覚化された最初のIFNであったが(Ealick他、Science 第252巻、698~702ページ、1991年)、完全な細胞外六量体(2:2:2 IFN-γ/IFN-γR1/IFN-γR2)シグナル伝達複合体の構造は、解明すべき最後のIFNスーパーファミリー構造である。
【0049】
本明細書では、IFN-γポリペプチドは任意のインターフェロン-γポリペプチドを意味し、その非限定的な例に含まれるのは、組換えで作製したポリペプチド、合成されたポリペプチド、細胞または組織(例えば、Tリンパ球、NK細胞や、他の供給源)から単離されたIFN-γである。IFN-γポリペプチドは、任意の供給源から単離されたとき、または作製されたとき、長さが様々である可能性があり、典型的には長さが124~146個の範囲のアミノ酸である。違いは、典型的には両端で観察される。一般に、違いは、N末端ではアミノ酸Cys-Tyr-Cysが翻訳後に除去されることが原因で存在し、C末端では変動するタンパク質分解プロセシングが原因で存在する。違いは、ポリペプチドのN-グリコシル化が原因で起こる可能性もある。IFN-γポリペプチドの違いは、IFN-γポリペプチドの供給源によって異なる可能性がある。したがってIFN-γポリペプチドへの言及は、作製されるか単離された不均一な集団を意味する。均一な調製物を想定するときには、そのように記載する。本明細書では、IFN-γポリペプチドへの言及は、必要に応じてその単量体形態または二量体形態である。
【0050】
例えば、本明細書で用いられている「ヒトIFN-γ」(hIFN-γ)という用語に、ヒトの組織と細胞から単離されたIFN-γ、アレルバリアントアイソフォーム、合成分子、タンパク質と、これらの修飾形態が含まれる。修飾されていない代表的な成熟ヒトIFN-γポリペプチドの非限定的な例に含まれるのは、修飾されていないIFN-γポリペプチドおよび野生型 IFN-γポリペプチド(配列番号1に記載されている配列を含むポリペプチドなど)と、シグナルペプチドを含む修飾されていない前駆IFN-γポリペプチドおよび野生型前駆IFN-γポリペプチドである。
【0051】
IFN-γポリペプチドという用語には、IFN-γのアレルバリアントまたは種バリアントと、その切断形態または断片で、実質的にIFN-γ活性を保持しているものや、これら切断形態または断片の出所である完全長成熟IFN-γポリペプチドの少なくとも1つの活性を保持しているものも含まれる。IFN-γという用語には、異なる種からの相同なポリペプチドが含まれ、異なる種の非限定的な例に含まれるのは、ヒトと非ヒト種(他の哺乳動物など)を含む動物である。ヒトIFN-γと同様、非ヒトIFN-γにも、長さの異なるバリアント、またはIFN-γの十分な長さの断片または部分、すなわちバリアントの出所である完全長成熟IFN-γポリペプチドの少なくとも1つの活性を保持している適切な領域を含む断片または部分が含まれる。
【0052】
本明細書では、IFN-γ二量体は、同じ数または異なる数のアミノ酸および/または異なる配列のアミノ酸を持つ2つの単量体IFN-γポリペプチドの組み合わせを意味する。本明細書の目的では、二量体の第1の単量体を「鎖A」と呼び、二量体の第2の単量体を「鎖B」と呼ぶ。典型的には、二量体形態のポリペプチドは、非共有相互作用(疎水性相互作用、水素結合、ファンデルワールス相互作用、他のそのような相互作用など)を通じて会合した2つの単量体を含有している。このようなIFN-γ二量体は、発現したときに自発的に形成される可能性があり、典型的には自発的に形成される(例えば、本明細書に記載されているタンパク質作製法を利用したときに起こる)。IFN-γ二量体は、場合によっては単量体の間にポリペプチドリンカー配列を提供することにより、例えば、同じ単量体または異なる単量体からなる一本鎖二量体IFN-γポリペプチドの形態の融合タンパク質として作製することもできる。
【0053】
本開示の組成物
インターフェロン-ガンマ(IFN-γ)ポリペプチドバリアント
一態様では、本明細書において、IFN-γ受容体によって媒介される細胞シグナル伝達の強度を野生型IFN-γポリペプチドと比べて低下させる新規なIFN-γポリペプチドバリアントが提供される。これらIFN-γポリペプチドバリアントをIFN-γ「部分的アゴニスト」と呼ぶ。いくつかの実施形態では、開示されているIFN-γポリペプチドバリアントは、その天然の受容体(例えば、インターフェロン受容体サブユニット1(IFN-γR1)および/またはインターフェロン受容体サブユニット2(IFN-γR2))の少なくとも1つに対する結合親和性が低下しているため、それら受容体の1つ以上に対してIFN-γポリペプチドバリアントが結合することで、そのような受容体を通じて媒介される下流シグナルが完全に作動するか、部分的に作動する。いくつかの実施形態では、開示されているIFN-γ部分的アゴニストは、IFN-γR1によって媒介される細胞シグナル伝達の強度を野生型IFN-γで観察される反応と比べて低下させる。いくつかの実施形態では、開示されているIFN-γ部分的アゴニストは、IFN-γR2によって媒介される細胞シグナル伝達の強度を、野生型IFN-γで観察される反応と比べて低下させる。いくつかの実施形態では、開示されているIFN-γ部分的アゴニストは、IFN-γR1とIFN-γR2の両方によって媒介される細胞シグナル伝達の強度を低下させる。
【0054】
いくつかの実施形態では、本開示のIFN-γポリペプチドバリアントは、IFN-γポリペプチドのIFN-γR1結合インターフェイスに位置するアミノ酸位置に1個以上のアミノ酸置換を含んでいる。当業者には理解されるように、本明細書に開示されているIFN-γポリペプチドの結合インターフェイスは、IFN-γポリペプチドの中にあって第2のポリペプチド(例えば、IFN-γR1またはIFN-γR2)のインターフェイスの中の1個以上のアミノ酸残基と相互作用するアミノ酸残基を含んでいる。そのため本明細書に記載されているIFN-γ複合体の結合インターフェイスは、IFN-γ複合体のタンパク質構造の中の2本のポリペプチド鎖を非共有相互作用によって付着させる一群のアミノ酸を含んでいる。いくつかの実施形態では、本開示のIFN-γポリペプチドバリアントは、IFN-γポリペプチドのIFN-γR2結合インターフェイスに位置するアミノ酸位置に1個以上のアミノ酸置換を含んでいる。IFN-γR1結合インターフェイスとIFN-γR2結合インターフェイスに関する追加情報は、例えば、Nuara AA他、Proc Natl Acad Sci USA 2月12日;第105巻(6):1861~1866ページ、2008年;Walter MR他、Nature 第376巻:230~235ページ、1995年;Randal MとKossiakoff AA、Structure (London) 第9巻:155~163ページ、2001年に見いだすことができる。
【0055】
いくつかの実施形態では、本明細書において、配列番号1のアミノ酸配列を持つIFN-γポリペプチドと配列が少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%のいずれかの割合で一致する第1のアミノ酸配列(例えば鎖A)を含むとともに、IFN-γポリペプチドのIFN-γR2結合インターフェイスに位置するアミノ酸位置に1個以上のアミノ酸置換ををさらに含む組換えポリペプチドが提供される。いくつかの実施形態では、組換えポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列を持つIFN-γポリペプチドと配列が少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%のいずれかの割合で一致する第1のアミノ酸配列を含むとともに、IFN-γポリペプチドのIFN-γR2結合インターフェイスに位置するアミノ酸位置に1個以上のアミノ酸置換をさらに含み、配列番号1のアミノ酸配列を持つIFN-γポリペプチドの実質的なIFN-γ活性または少なくとも1つの活性を保持している。
【0056】
当業者には理解されるように、ポリペプチドに関して用いられている「アミノ酸残基に対応する1つまたは複数の位置」という表現は、特定の参照タンパク質との配列および/または構造のアラインメントに基づいて互いに対応すると判断されるアミノ酸位置を意味する。例えば、配列番号1に示されているヒトIFN-γポリペプチドのアミノ酸位置に対応する位置は、配列番号1に記載されているアミノ酸の配列を興味ある特定のIFN-γポリペプチドとアラインメントさせることによって経験的に決定することができる。対応する位置は、手作業によるアラインメントを利用した当業者によるそのようなアラインメントによって決定すること、または利用できる多数のアラインメントプログラム(例えばBLASTP)を利用して決定することができる。対応する位置は、例えば、タンパク質構造のアラインメントのコンピュータシミュレーションを利用することによる構造的アラインメントに基づくことも可能である。ポリペプチドのアミノ酸が、開示されている配列の中のアミノ酸に対応するという記述は、一致または相同性を最大にする(そのとき、保存されたアミノ酸がアラインメントされる)ため標準的なアラインメントアルゴリズム(GAPアルゴリズムなど)を利用してそのポリペプチドを開示されている配列とアラインメントさせたときに同定されるアミノ酸を意味する。本明細書では、「~に対応する位置に」は、核酸分子またはタンパク質の中の興味ある位置(例えば、塩基番号または残基番号)を別の参照核酸分子または参照タンパク質の中の位置と比べたときのその興味ある位置を意味する。別の参照タンパク質に対する興味ある位置は、例えば、前駆タンパク質、アレルバリアント、異種タンパク質、別の種の同じタンパク質からのアミノ酸配列などの中に存在することができる。異なる種に由来するIFN-γポリペプチドの配列を互いにアラインメントさせることにより、当業者は、保存されたアミノ酸残基および一致するアミノ酸残基をガイドとして用いて対応する残基を同定することができる。対応する位置は、ヌクレオチドまたは残基が一致する数を最大にするため配列を比較してアラインメントさせて、例えば、配列間の一致が95%超、好ましくは96%超、より好ましくは97%超、より一層好ましくは98%超、最も好ましくは99%超になるようにすることによって決定できる。すると興味ある位置は、参照核酸分子の中に割り当てられた番号として与えられる。
【0057】
いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列を持つIFN-γポリペプチドと配列が少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%のいずれかの割合で一致する第1のアミノ酸配列を含むとともに、IFN-γポリペプチドのIFN-γR2結合インターフェイスに位置するアミノ酸位置に1個以上のアミノ酸置換をさらに含んでいる。一般に、その1個以上のアミノ酸置換として、IFN-γポリペプチドのIFN-γR2結合インターフェイスにある任意のアミノ酸位置が可能である。本明細書に開示されているIFN-γポリペプチドのIFN-γR2相互作用インターフェイスにあるアミノ酸位置の非限定的な例に含まれるのは、配列番号1のアミノ酸配列のQ1、D2、P3、K6、Q64、Q67、K68、E71、T72、K74、E75、D76、N78、V79、K80、N83、S84、K86、R89、D90に対応するアミノ酸位置である。いくつかの実施形態では、開示されているポリペプチドの第1のアミノ酸配列は、IFN-γポリペプチドのIFN-γR2結合インターフェイスに位置するアミノ酸位置に少なくとも1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、または20個のいずれかのアミノ酸置換を含んでいる。いくつかの実施形態では、本開示のポリペプチドの第1のアミノ酸配列は、IFN-γポリペプチドのIFN-γR2結合インターフェイスに位置するアミノ酸位置に約1~5個、約2~10個、約5~15個、約10~20個、約15~20個、約2~8個、約3~10個、または約4~12個いずれかのアミノ酸置換を含んでいる。いくつかの実施形態では、本開示のポリペプチドの第1のアミノ酸配列は、IFN-γポリペプチドのIFN-γR2結合インターフェイスに位置するアミノ酸位置に1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個のいずれかのアミノ酸置換を含んでいる。
【0058】
いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列を持つIFN-γポリペプチドと配列が少なくとも95%一致する第1のアミノ酸配列を含むとともに、配列番号1のQ1、D2、P3、K6、Q64、Q67、K68、E71、T72、K74、E75、D76、N78、V79、K80、N83、S84、K86、R89、およびD90からなるグループから選択されたアミノ酸残基に対応する位置とこれらの任意の組み合わせに少なくとも1個のアミノ酸置換をさらに含んでいる。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列を持つIFN-γポリペプチドと配列が少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%のいずれかの割合で一致する第1のアミノ酸配列を含むとともに、配列番号1のQ1、D2、P3、K6、Q64、Q67、K68、E71、T72、K74、E75、D76、N78、V79、K80、N83、S84、K86、R89、およびD90からなるグループから選択されたアミノ酸残基に対応する位置とこれらの任意の組み合わせに少なくとも1個のアミノ酸置換をさらに含んでいる。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列と配列が100%一致する第1のアミノ酸配列を含むとともに、配列番号1のQ1、D2、P3、K6、Q64、Q67、K68、E71、T72、K74、E75、D76、N78、V79、K80、N83、S84、K86、R89、およびD90からなるグループから選択されたアミノ酸残基に対応する位置とこれらの任意の組み合わせに少なくとも1個のアミノ酸置換をさらに含んでいる。いくつかの実施形態では、少なくとも1個のアミノ酸置換は、配列番号1のK74、E75、およびN83からなるグループから選択されたアミノ酸残基とこれらの任意の組み合わせに対応する位置にある。いくつかの実施形態では、少なくとも1個のアミノ酸置換は、配列番号1のアミノ酸残基K74に対応する位置にある。いくつかの実施形態では、少なくとも1個のアミノ酸置換は、LysからAlaへの置換(K74A)である。いくつかの実施形態では、少なくとも1個のアミノ酸置換は、配列番号1のアミノ酸残基E75に対応する位置にある。いくつかの実施形態では、少なくとも1個のアミノ酸置換は、GluからTyrへの置換(E75Y)である。いくつかの実施形態では、少なくとも1個のアミノ酸置換は、配列番号1のアミノ酸残基N83に対応する位置にある。いくつかの実施形態では、少なくとも1個のアミノ酸置換は、AsnからArgへの置換(N83R)である。いくつかの実施形態では、第1のアミノ酸配列の中の少なくとも1個のアミノ酸置換は、配列番号1の置換K74A、E75Y、およびN83Rに対応する位置にある。
【0059】
いくつかの実施形態では、第1のアミノ酸配列は、IFN-γポリペプチドのIFN-γR1結合インターフェイスに位置するアミノ酸位置に1個以上のアミノ酸置換をさらに含んでいる。一般に、1個以上のアミノ酸置換は、IFN-γポリペプチドのIFN-γR1結合インターフェイスに位置する任意のアミノ酸位置に存在することができる。本明細書に開示されているIFN-γポリペプチドのIFN-γR1結合インターフェイスに位置するアミノ酸位置の非限定的な例に含まれるのは、配列番号1のアミノ酸配列のQ1、D2、Y4、V5、E9、K12、A17、G18、H19、S20、D21、V22、A23、D24、N25、G26、T27、L28、L30、K34、K37、K108、H111、E112、I114、Q115、A118、E119、A124、K125に対応するアミノ酸位置である。いくつかの実施形態では、開示されているポリペプチドの第1のアミノ酸配列は、IFN-γポリペプチドのIFN-γR1結合インターフェイスに位置するアミノ酸位置に少なくとも1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、または20個いずれかのアミノ酸置換を含んでいる。いくつかの実施形態では、開示されているポリペプチドの第1のアミノ酸配列は、IFN-γポリペプチドのIFN-γR1結合インターフェイスに位置するアミノ酸位置に約1~5個、約2~10個、約5~15個、約10~20個、約15~20個、約2~8個、約3~10個、または約4~12個いずれかのアミノ酸置換を含んでいる。いくつかの実施形態では、開示されているポリペプチドの第1のアミノ酸配列は、IFN-γポリペプチドのIFN-γR1結合インターフェイスの位置に1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個いずれかのアミノ酸置換を含んでいる。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されているIFN-γポリペプチドのIFN-γR1結合インターフェイスの位置の1個以上のアミノ酸置換は、配列番号1の配列のA23、D24、N25、H111に対応するアミノ酸置換を含んでいる。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されているIFN-γポリペプチドの第1のアミノ酸配列の中の1個以上のアミノ酸置換は、配列番号1のQ1、D2、Y4、V5、E9、K12、A17、G18、H19、S20、D21、V22、A23、D24、N25、G26、T27、L28、L30、K34、およびK37からなるグループから選択されたアミノ酸残基と、これらの任意の組み合わせに対応する位置にある。
【0060】
いくつかの実施形態では、本開示のポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列を持つIFN-γポリペプチドと少なくとも95%一致する第2のアミノ酸配列(例えば鎖B)をさらに含んでおり、この第2のアミノ酸配列は、第1のアミノ酸配列に機能可能に連結されている。いくつかの実施形態では、開示されているポリペプチドの第2のアミノ酸配列は、配列番号1のアミノ酸配列を持つIFN-γポリペプチドと少なくとも95%一致していて、配列番号1のアミノ酸配列を持つIFN-γポリペプチドの実質的なIFN-γ活性または少なくとも1つの活性を保持している。いくつかの実施形態では、本開示のポリペプチドの第2のアミノ酸配列は、配列番号1のアミノ酸配列を持つIFN-γポリペプチドと配列が少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%のいずれかの割合で一致する。いくつかの実施形態では、開示されているポリペプチドの第2のアミノ酸配列は、配列番号1のアミノ酸配列を持つIFN-γポリペプチドと配列が100%一致する。いくつかの実施形態では、第2のアミノ酸配列は、IFN-γポリペプチドのIFN-γR2結合インターフェイスに位置するアミノ酸位置に1個以上のアミノ酸置換を含んでおり、配列番号1のアミノ酸配列を持つIFN-γポリペプチドの少なくとも1つの活性を保持している。一般に、第2のアミノ酸配列の中の1個以上のアミノ酸置換は、IFN-γポリペプチドのIFN-γR2結合インターフェイスにある任意のアミノ酸位置に対応することができる。本明細書に開示されているIFN-γポリペプチドのIFN-γR2結合インターフェイスに位置する第2のアミノ酸配列の中のアミノ酸位置の非限定的な例に含まれるのは、配列番号1のアミノ酸配列のQ1、D2、P3、K6、Q64、Q67、K68、E71、T72、K74、E75、D76、N78、V79、K80、N83、S84、K86、R89、およびD90に対応するアミノ酸位置である。いくつかの実施形態では、本開示のポリペプチドの第2のアミノ酸配列は、IFN-γポリペプチドのIFN-γR2結合インターフェイスに位置するアミノ酸位置に少なくとも1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、または20個いずれかのアミノ酸置換を含んでいる。いくつかの実施形態では、本開示のポリペプチドの第2のアミノ酸配列は、IFN-γポリペプチドのIFN-γR2結合インターフェイスに位置するアミノ酸位置に約1~5個、約2~10、約5~15個、約10~20個、約15~20個、約2~8個、約3~10個、または約4~12個いずれかのアミノ酸置換を含んでいる。
【0061】
いくつかの実施形態では、開示されているIFN-γポリペプチドの第2のアミノ酸配列は、配列番号1のアミノ酸配列を持つIFN-γポリペプチドと少なくとも95%一致し、配列番号1のQ1、D2、P3、K6、Q64、Q67、K68、E71、T72、K74、E75、D76、N78、V79、K80、N83、S84、K86、R89、およびD90からなるグループから選択されたアミノ酸残基に対応する位置に少なくとも1個のアミノ酸置換をさらに含んでいる。いくつかの実施形態では、開示されているポリペプチドの第2のアミノ酸配列は、配列番号1のアミノ酸配列を持つIFN-γポリペプチドの配列と少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%のいずれかの割合で一致し、配列番号1の配列のQ1、D2、P3、K6、Q64、Q67、K68、E71、T72、K74、E75、D76、N78、V79、K80、N83、S84、K86、R89、およびD90からなるグループから選択されたアミノ酸残基に対応する位置とこれらの任意の組み合わせに少なくとも1個のアミノ酸置換をさらに含んでいる。いくつかの実施形態では、本開示のポリペプチドの第2のアミノ酸配列は、配列番号1のアミノ酸配列と配列が100%一致し、配列番号1のQ1、D2、P3、K6、Q64、Q67、K68、E71、T72、K74、E75、D76、N78、V79、K80、N83、S84、K86、R89、およびD90からなるグループから選択されたアミノ酸残基に対応する位置とこれらの任意の組み合わせに少なくとも1個のアミノ酸置換をさらに含んでいる。いくつかの実施形態では、第2のアミノ酸配列の中の少なくとも1個のアミノ酸置換は、配列番号1のK74、E75、N83からなるグループから選択された1個のアミノ酸残基に対応する位置と、その任意の組み合わせにある。いくつかの実施形態では、第2のアミノ酸配列の中の少なくとも1個のアミノ酸置換は、配列番号1のアミノ酸残基K74に対応する位置にある。いくつかの実施形態では、第2のアミノ酸配列の中の少なくとも1個のアミノ酸置換は、LysからAlaへの置換(K74A)である。いくつかの実施形態では、第2のアミノ酸配列の中の少なくとも1個のアミノ酸置換は、配列番号1のアミノ酸残基E75に対応する位置にある。いくつかの実施形態では、第2のアミノ酸配列の中の少なくとも1個のアミノ酸置換は、GluからTyrへの置換(E75Y)である。いくつかの実施形態では、第2のアミノ酸配列の中の少なくとも1個のアミノ酸置換は、配列番号1のアミノ酸残基N83に対応する位置にある。いくつかの実施形態では、第2のアミノ酸配列の中の少なくとも1個のアミノ酸置換は、AsnからArgへの置換(N83R)である。いくつかの実施形態では、第2のアミノ酸配列の中の少なくとも1個のアミノ酸置換は、配列番号1の置換K74A、E75Y、およびN83Rに対応する位置にある。
【0062】
いくつかの実施形態では、第2のアミノ酸配列は、IFN-γポリペプチドのIFN-γR1結合インターフェイスに位置するアミノ酸位置に1個以上のアミノ酸置換をさらに含んでいる。一般に、第2のアミノ酸配列内の1個以上のアミノ酸置換は、本明細書に開示されているIFN-γポリペプチドのIFN-γR1結合インターフェイスに位置する任意のアミノ酸位置に存在することができ、配列番号1のアミノ酸配列のQ1、D2、Y4、V5、E9、K12、A17、G18、H19、S20、D21、V22、A23、D24、N25、G26、T27、L28、L30、K34、K37、K108、H111、E112、I114、Q115、A118、E119、A124、K125に対応するアミノ酸位置をさらに含んでいる。いくつかの実施形態では、第2のアミノ酸配列は、IFN-γポリペプチドのIFN-γR1結合インターフェイスに位置するアミノ酸位置に少なくとも1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、または20個いずれかのアミノ酸置換を含み、配列番号1のアミノ酸配列を持つIFN-γポリペプチドの少なくとも1つの活性を保持している。いくつかの実施形態では、第2のアミノ酸配列は、IFN-γポリペプチドのIFN-γR1結合インターフェイスに位置するアミノ酸位置に約1~5個、約2~10個、約5~15個、約10~20個、約15~20個、約2~8個、約3~10個、または約4~12個いずれかのアミノ酸置換を含んでいる。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されているIFN-γポリペプチドの第2のアミノ酸配列の中の1個以上のアミノ酸置換は、配列番号1のK108、H111、E112、I114、Q115、A118、E119、A124、K125からなるグループから選択されたアミノ酸残基に対応する位置と、これらの任意の組み合わせにある。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されているIFN-γポリペプチドの第2のアミノ酸配列の中の1個以上のアミノ酸置換は、配列番号1の配列のA23、D24、N25、H111に対応するアミノ酸置換を含んでいる。
【0063】
いくつかの実施形態では、第1のアミノ酸配列は、第2のアミノ酸配列に直接連結される。いくつかの実施形態では、第1のアミノ酸配列は、少なくとも1つの共有結合を通じて第2のアミノ酸配列に直接連結される。いくつかの実施形態では、第1のアミノ酸配列は、少なくとも1つのペプチド結合を通じて第2のアミノ酸配列に直接連結される。いくつかの実施形態では、第1のアミノ酸配列のC末端アミノ酸を第2のアミノ酸配列のN末端アミノ酸に機能可能に連結させることができる。あるいは第1のアミノ酸配列のN末端アミノ酸を第2のアミノ酸配列のC末端アミノ酸に機能可能に連結させることができる。
【0064】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されている組換えポリペプチドは、第1のアミノ酸配列と第2のアミノ酸配列の間に介在するアミノ酸残基を持たない。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されている組換えポリペプチドの第1のアミノ酸配列は、リンカーを介して第2のアミノ酸配列に機能可能に連結されている。本明細書に開示されているポリペプチドで使用できるリンカー配列に対する特別な制限はない。いくつかの実施形態では、リンカーは合成化合物リンカー(例えば化学的架橋剤)である。市販されている適切な架橋剤の非限定的な例に含まれるのは、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、ジスクシンイミジルスベリン酸塩(DSS)、ビス(スルホスクシンイミジル)スベリン酸塩(BS3)、ジチオビス(スクシンイミジルプロピオン酸塩)(DSP)、ジチオビス(スルホスクシン意味シルプロピオン酸塩)(DTSSP)、ビス(スクシンイミジルコハク酸)エチレングリコール(EGS)、ビス(スルホスクシンイミジルコハク酸)エチレングリコール(スルホ-EGS)、酒石酸ジスクシンイミジル(DST)、酒石酸ジスルホスクシンイミジル(スルホ-DST)、ビス[2-(スクシンイミジルオキシカルボニルオキシ)エチル]スルホン(BSOCOES)、およびビス[2-(スルホスクシンイミドオキシカルボニルオキシ)エチル]スルホン(スルホ-BSOCOES)である。本開示の組換えポリペプチドに適した代わりの構造と結合の別の例に、Spiess他、Mol. Immunol. 第67巻:95~106ページ、2015年に記載されているものが含まれる。
【0065】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されているポリペプチドの第1のアミノ酸配列は、リンカーポリペプチド配列を介して第2のアミノ酸配列に機能可能に連結されている(例えばペプチド結合)。原則として、リンカーポリペプチド配列の長さおよび/またはアミノ酸組成に特別な制約はない。いくつかの実施形態では、約1~100個のアミノ酸残基(例えば、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個などのアミノ酸残基)を含む任意の一本鎖ペプチドをペプチドリンカーとして用いることができる。いくつかの実施形態では、リンカーポリペプチド配列は、約5~50個、約10~60個、約20~70個、約30~80個、約40~90個、約50~100個、約60~80個、約70~100個、約30~60個、約20~80個、約30~90個のアミノ酸残基を含んでいる。いくつかの実施形態では、ポリペプチド配列は、約1~10個、約5~15個、約10~20個、約15~25個、約20~40個、約30~50個、約40~60個、約50~70個のアミノ酸残基を含んでいる。いくつかの実施形態では、リンカーポリペプチド配列は、約40~70個、約50~80個、約60~80個、約70~90個、または約80~100個いずれかのアミノ酸残基を含んでいる。いくつかの実施形態では、リンカーポリペプチド配列は、約1~10個、約5~15個、約10~20個、約15~25個のアミノ酸残基を含んでいる。
【0066】
いくつかの実施形態では、リンカーポリペプチド配列の長さおよび/またはアミノ酸組成を、第1のアミノ酸配列と第2のアミノ酸配列の互いの向き、および/または近接度を変えることによって最適化し、組換えポリペプチド(例えば、本明細書に開示されているIFN-γポリペプチドバリアント)の望む活性を実現することができる。いくつかの実施形態では、第1のアミノ酸配列と第2のアミノ酸配列の互いの向き、および/または近接度を「チューニング」ツールとして変化させ、IFN-γポリペプチドバリアントの標的の1つ以上に対する結合親和性(例えば、インターフェロン受容体サブユニット1(IFN-γR1)および/またはインターフェロン受容体サブユニット2(IFN-γR2)に対する結合親和性)を増大または低下させると考えられるチューニング効果を実現することができる。いくつかの実施形態では、第1のアミノ酸配列と第2のアミノ酸配列の互いの向き、および/または近接度を最適化し、IFN-γポリペプチドバリアントの完全アゴニストバージョンに対する部分的アゴニストを創出することができる。いくつかの実施形態では、リンカーは、グリシン残基および/またはセリン残基だけ(例えば、グリシン-セリンリンカー)を含んでいる。このようなペプチドリンカーの例に含まれるのは、Gly、Ser;Gly Ser;Gly Gly Ser;Ser Gly Gly;Gly Gly Gly Ser;Ser Gly Gly Gly;Gly Gly Gly Gly Ser;Ser Gly Gly Gly Gly;Gly Gly Gly Gly Gly Ser;Ser Gly Gly Gly Gly Gly;Gly Gly Gly Gly Gly Gly Ser;Ser Gly Gly Gly Gly Gly Gly;(Gly Gly Gly Gly Ser)n(ただしnは1以上の整数である);(Ser Gly Gly Gly Gly)n(ただしnは1以上の整数である)である。いくつかの実施形態では、リンカーポリペプチドを改変し、(伝統的なGly/Serリンカーポリペプチド反復の接合部に生じる)アミノ酸配列GSGが存在しないようにする。例えば、いくつかの実施形態では、ポリペプチドリンカーは、(GGGXX)nGGGGSとGGGGS(XGGGS)n(ただしXは、配列の中に挿入できるが配列GSGを含むポリペプチドになることのない任意のアミノ酸であり、nは0~4の整数である)からなるグループから選択されたアミノ酸配列を含んでいる。いくつかの実施形態では、リンカーポリペプチドの配列は(GGGX1X2)nGGGGSである(ただしX1はPであり、X2はSであり、nは0~4の整数である)。別のいくつかの実施形態では、リンカーポリペプチドの配列は(GGGX1X2)nGGGGSである(ただしXiはGであり、X2はQであり、nは0~4の整数である)。他のいくつかの実施形態では、リンカーポリペプチドの配列は(GGGX1X2)nGGGGSである(X1はGであり、X2はAであり、nは0~4の整数である)。さらに別のいくつかの実施形態では、リンカーポリペプチドの配列はGGGGS(XGGGS)nである(ただしXはPであり、nは0~4の整数である)。いくつかの実施形態では、本開示のリンカーポリペプチドは、アミノ酸配列 (GGGGA)2GGGGSを含むか、このアミノ酸配列からなる。いくつかの実施形態では、リンカーポリペプチドは、アミノ酸配列(GGGGQ)2GGGGSを含むか、このアミノ酸配列からなる。別の一実施形態では、リンカーポリペプチドは、アミノ酸配列(GGGPS)2GGGGSを含むか、このアミノ酸配列からなる。別の一実施形態では、リンカーポリペプチドは、アミノ酸配列GGGGS(PGGGS)2を含むか、このアミノ酸配列からなる。さらに別の一実施形態では、リンカーポリペプチドは、配列番号6に示されているアミノ酸配列を含むか、このアミノ酸配列からなる。
【0067】
当業者が本開示を読めばわかるように、本明細書に記載されているポリペプチドリンカー配列として、切断不能な配列、または切断可能な配列が可能である(例えば、プロテアーゼのためのコンセンサス切断部位)。したがって本開示のいくつかの実施形態では、ポリペプチドリンカー配列は切断可能なリンカー配列である。いくつかの実施形態では、リンカー配列は1つ以上のタンパク質分解切断部位を含んでいる。いくつかの実施形態では、それら1つ以上のタンパク質分解切断部位は、切断可能なリンカーの配列内に位置する、および/または切断可能なリンカーのいずれかの末端に隣接する。一般に、本分野で知られている任意のタンパク質分解切断部位を本開示のポリペプチドに組み込むことができ、その例として、産生後にプロテアーゼによって切断されるタンパク質分解切断配列が可能である。適切なタンパク質分解切断部位には、外部プロテアーゼの添加後に切断することのできるタンパク質分解切断配列も含まれる。いくつかの実施形態では、1つ以上のタンパク質分解切断部位の少なくとも1つは、トロンビン、PreScission(商標)プロテアーゼ、タバコエッチウイルス(TEV)プロテアーゼからなるグループから選択されたプロテアーゼによって切断することができる。いくつかの実施形態では、1つ以上のタンパク質分解切断部位の少なくとも1つは、エンドペプチダーゼによって切断することができる。このエンドペプチダーゼはエンドプロテイナーゼまたはタンパク質分解ペプチダーゼと呼ばれることがときにあり、末端アミノ酸の末端部からペプチド結合を切断するエキソペプチダーゼとは異なり、非末端アミノ酸(すなわち分子内)のペプチド結合を切断する。開示されている抗体に適したエンドペプチダーゼの非限定的な例に含まれるのは、トリプシン、キモトリプシン、エラスターゼ、テルモリシン、ペプシン、グルタミルエンドペプチダーゼ、またはネプリライシンである。
【0068】
いくつかの実施形態では、本開示のポリペプチドは、第1のアミノ酸配列の下流かつ第2のアミノ酸配列の上流に機能可能に連結された自己プロテアーゼペプチドを含んでいる。本明細書では、「自己プロテアーゼ」という用語は、自己タンパク質分解活性を持つ「自己切断」ペプチドを意味し、それ自身をより大きなポリペプチド部分から切断することができる。口蹄疫ウイルス(FMDV)で最初に同定されたピコルナウイルスのグループのメンバーであり、その後いくつかの自己プロテアーゼが同定されている。それは例えば、ウマ鼻炎Aウイルス(E2A)、ブタテシオウイルス-1(P2A)、トセア・アシグナ(Thosea asigna)ウイルス(T2A)からの「2A様」ペプチドであり、タンパク質分解による切断におけるその活性が様々なインビトロ真核細胞系と生体内真核細胞系で示されている。そのため自己プロテアーゼという考え方を当業者は利用することができ、多くの天然の自己プロテアーゼ系が同定されている。よく研究されている自己プロテアーゼ系は、例えばウイルスプロテアーゼ、発生タンパク質(例えば、HetR、ヘッジホッグタンパク質)、RumA自己プロテアーゼドメイン、UmuDなどである。本開示の組成物と方法に適した自己プロテアーゼペプチド配列の非限定的な例に含まれるのは、ブタテシオウイルス-1 2A(P2A)、口蹄疫ウイルス(FMDV)2A(F2A)、ウマ鼻炎Aウイルス(ERAV)2A(E2A)、トセア・アシグナウイルス2A(T2A)、細胞質多角体病ウイルス2a(BmCPV2A)、軟化病ウイルス2A(BmIFV2A)からのペプチド配列、またはこれらの組み合わせである。
【0069】
本開示のいくつかの実施形態では、本開示の組換えIFN-γポリペプチドは、天然状態では連結されていない第2のアミノ酸配列に機能可能に連結された第1のアミノ酸配列を含むキメラポリペプチド(例えば融合ポリペプチド)である。第1のアミノ酸配列と第2のアミノ酸配列は、通常、キメラポリペプチド中に一緒に持ち込まれる別個のタンパク質として存在してもよく、または、通常、同じタンパク質中に存在するが、キメラポリペプチド中の新たな配列に配置されてもよい。当業者は、本明細書に開示されているキメラIFN-γポリペプチドを例えば、化学合成によって創出できること(例えば合成ポリペプチド)、またはペプチド領域が望む関係でコードされているポリヌクレオチドを創出して翻訳することによって作成できることを容易に理解するであろう。
【0070】
当業者は容易に理解するように、本明細書に開示されている組換えIFN-γポリペプチドの2つのアミノ酸配列を「第1の」アミノ酸配列および/または「第2の」アミノ酸配列と呼ぶが、キメラIFN-γポリペプチドの中でその「第1」と「第2」のアミノ酸配列が特定の構造配置にあることを意味しているわけではない。非限定的な例として、いくつかの実施形態では、本開示の組換えIFN-γ二量体の第1の単量体(例えば鎖A)と第2の単量体(例えば鎖B)のアミノ酸配列は順番を入れ換えることができる。例えばいくつかの実施形態では、本開示の二量体IFN-γポリペプチドは、N末端からC末端の方向に向かって、第1の単量体(例えば鎖A)をコードするアミノ酸配列と、リンカーと、第2の単量体(例えば鎖B)をコードするアミノ酸配列を含むことができる。別のいくつかの実施形態では、本開示の二量体IFN-γポリペプチドは、N末端からC末端の方向に向かって:第2の単量体(例えば鎖B)をコードするアミノ酸配列と、リンカーと、第1の単量体(例えば鎖A)をコードするアミノ酸配列を含むことができる。別のいくつかの実施形態では、本明細書に開示されている二量体IFN-γポリペプチドは、(1)IFN-γR1結合インターフェイスに少なくとも1個のアミノ酸置換を含むN末端アミノ酸配列と、(2)IFN-γR2結合インターフェイスに少なくとも1個のアミノ酸置換を含むC末端アミノ酸配列を含むことができる。別の実施形態では、本明細書に開示されている二量体IFN-γポリペプチドは、(1)IFN-γR2結合インターフェイスに少なくとも1個のアミノ酸置換を含むN末端アミノ酸配列と、(2)IFN-γR1結合インターフェイスに少なくとも1個のアミノ酸置換を含むC末端部分アミノ酸配列を含むことができる。それに加え、またはその代わりに、本開示のいくつかの実施形態による組換えIFN-γポリペプチドは、IFN-γR1結合インターフェイスにアミノ酸置換を含む2つ以上のアミノ酸配列、および/またはIFN-γR1結合インターフェイスにアミノ酸置換を含む2つ以上のアミノ酸配列を含むことができる。
【0071】
本明細書に開示されている組換えIFN-γポリペプチドの第1のアミノ酸配列と第2のアミノ酸配列が同じアミノ酸置換または異なるアミノ酸置換を含むことができることも考えられる。したがって本開示のいくつかの実施形態では、本明細書に開示されている組換えポリペプチドの第1のアミノ酸配列と第2のアミノ酸配列は同数のアミノ酸置換を含んでいる。本開示のいくつかの実施形態では、本明細書に開示されている組換えポリペプチドの第1のアミノ酸配列と第2のアミノ酸配列は異なる数のアミノ酸置換を含んでいる。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されている組換えポリペプチドの第1のアミノ酸配列と第2のアミノ酸配列は同じアミノ酸置換を含んでいる。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されている組換えポリペプチドの第1のアミノ酸配列と第2のアミノ酸配列は異なるアミノ酸置換を含んでいる。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されている組換えポリペプチドの第1のアミノ酸配列と第2のアミノ酸配列の少なくとも1つは、天然のIFN-γポリペプチドと比べてアミノ酸置換をまったく含んでいない。
【0072】
いくつかの実施形態では、本開示の組換えポリペプチドは、N末端からC末端の方向に向かって:(a)配列番号1と配列が100%一致する第1のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチドセグメントと;(b)切断可能なペプチドリンカー配列と;(c)アミノ酸置換K74A、E75Y、N83Rを有する配列番号1のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチドセグメントを含んでいる(例えば
図6A~
図6B参照)。別のいくつかの実施形態では、本開示の組換えポリペプチドは、N末端からC末端の方向に向かって:(a)アミノ酸置換H111Dを有する配列番号1のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチドセグメントと;(b)切断可能なペプチドリンカー配列と;(c)アミノ酸置換K74A、E75Y、N83Rを有する配列番号1のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチドセグメントを含んでいる(例えば
図7A~
図7B参照)。さらに別の実施形態では、本開示の組換えポリペプチドは、N末端からC末端の方向に向かって:(a)アミノ酸置換A23E、D24E、N25K、H111Dを有する配列番号1のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチドセグメントと;(b)切断可能なペプチドリンカー配列と;(c)アミノ酸置換K74A、E75Y、N83Rを有する配列番号1のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチドセグメントを含んでいる(例えば
図9A~
図9B参照)。上述した通り、当業者は容易に理解するように、本明細書に開示されている組換えIFN-γポリペプチドの2つのアミノ酸配列を「第1の」アミノ酸配列および/または「第2の」アミノ酸配列と呼ぶが、キメラIFN-γポリペプチドの中でその「第1」と「第2」のアミノ酸配列が特定の構造配置にあることを意味しているわけではない。したがっていくつかの実施形態では、本開示の組換えIFN-γ二量体の第1のポリペプチドセグメント(例えば鎖A)と第2のポリペプチドセグメント(例えば鎖B)は順番を入れ換えることができる。
【0073】
いくつかの実施形態では、本開示の組換えポリペプチドは、配列番号2、3、4、および5からなるグループから選択されたアミノ酸配列と配列が少なくとも80%一致するアミノ酸配列を含んでいる。いくつかの実施形態では、組換えポリペプチドは、配列番号2、3、4、および5からなるグループから選択されたアミノ酸配列と配列が少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%のいずれかの割合で一致するアミノ酸配列を含んでいる。いくつかの実施形態では、組換えポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸配列と配列が少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%のいずれかの割合で一致するアミノ酸配列を含んでいる。いくつかの実施形態では、組換えポリペプチドは、配列番号3のアミノ酸配列と配列が少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%のいずれかの割合で一致するアミノ酸配列を含んでいる。いくつかの実施形態では、組換えポリペプチドは、配列番号4のアミノ酸配列と配列が少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%のいずれかの割合で一致するアミノ酸配列を含んでいる。いくつかの実施形態では、組換えポリペプチドは、配列番号5のアミノ酸配列と配列が少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%のいずれかの割合で一致するアミノ酸配列を含んでいる。いくつかの実施形態では、本開示の組換えポリペプチドは、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5からなるグループから選択されたアミノ酸配列を含んでいる。
【0074】
本明細書に開示されている組換えポリペプチドいくつかの実施形態では、アミノ酸置換の少なくとも1つは、インターフェロン受容体サブユニット1(IFN-γR1)および/またはインターフェロン受容体サブユニット2(IFN-γR2)に対するポリペプチドの結合親和性を、少なくとも1個のアミノ酸置換を欠く参照ポリペプチドのそれぞれの結合親和性と比べて低下させる。いくつかの実施形態では、少なくとも1個のアミノ酸置換は、インターフェロン受容体サブユニット2(IFN-γR2)に対するポリペプチドの結合親和性を実質的に低下させる一方で、インターフェロン受容体サブユニット1(IFN-γR1)に対する結合親和性を実質的に保持している(少なくとも1個のアミノ酸置換を欠く参照ポリペプチドのそれぞれの結合親和性との比較)。
【0075】
本開示の組換えポリペプチドの結合活性は、本明細書に記載されているIFN-γポリペプチドバリアントの結合活性を含め、本分野で知られている適切な任意の方法によって調べることができる。例えば、本明細書に開示されているIFN-γポリペプチドバリアントとその受容体(例えば、IFN-γR1および/またはIFN-γR2)の結合活性は、スキャッチャード分析(Munsen他、Analyt. Biochem. 第107巻:220~239ページ、1980年)によって求めることができる。特異的結合は本分野で知られている技術を利用して評価することもでき、その非限定的な例に含まれるのは、競合ELISA、および/またはBiacore(登録商標)アッセイ、および/またはKinExA(登録商標)アッセイである。標的タンパク質に「選択的に結合する」または「特異的に結合する」(本明細書では交換可能に用いられる)ポリペプチドは本分野でよく理解されている用語であり、そのような特異的な結合または選択的な結合を明らかにする方法も本分野で知られている。ポリペプチドは、特定の標的タンパク質と、それに代わるタンパク質に対するのと比べてより頻繁に、および/またはより迅速に、および/またはより長時間、および/またはより大きな親和性で反応または会合する場合に、「特異的な結合」または「選択的な結合」を示すと言われる。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、他の物質に結合するよりも大きな親和性および/またはアビディティで、および/またはより容易に、および/またはより長時間にわたって結合する場合に、標的に「特異的に結合する」または「選択的に結合する」。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、サンプル中に存在する他の物質に結合するよりも大きな親和性および/またはアビディティで、および/またはより容易に、および/またはより長時間にわたって結合する場合に、標的に「特異的に結合する」または「選択的に結合する」。例えば、受容体(例えばIFN-γR1またはIFN-γR2)に特異的または選択的に結合する本明細書に記載のIFN-γポリペプチドは、この受容体に、他のIFN-γ受容体または非IFN-γ受容体に結合するよりも大きな親和性および/またはアビディティで、および/またはより容易に、および/またはより長時間にわたって結合するIFN-γポリペプチドである。この定義を読めば、例えば、第1の標的に特異的または選択的に結合するポリペプチドは、第2の標的に特異的または選択的に結合してもしなくてもよいことも理解される。そのため「特異的な結合」または「選択的な結合」は必ずしも排他的な結合を必要としないが、排他的な結合を含んでいてもよい。
【0076】
多彩な形態のアッセイを利用して、興味ある分子(例えば、IFN-γR1またはIFN-γR2)に結合する組換えポリペプチドを選択することができる。例えば、固相ELISAイムノアッセイ、免疫沈降、Biacore(商標)(GE Healthcare社、ピスカタウェイ、ニュージャージー州)、KinExA、蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)、Octet(商標)(ForteBio, Inc.社、メンロ・パーク、カリフォルニア州)、ウエスタンブロット分析が、受容体またはそのリガンド結合部分(コグネイトリガンドまたは結合パートナーと特異的に結合する)と特異的に反応するポリペプチドの同定に使用できる多数のアッセイのうちのいくつかである。一般に、特異的または選択的な結合反応は、バックグラウンドのシグナルまたは雑音の少なくとも2倍、より典型的にはバックグラウンドの10倍超、バックグラウンドの20倍超、より典型的にはバックグラウンドの50倍超、バックグラウンドの75倍超、バックグラウンドの100倍超、より一層典型的にはバックグラウンドの500倍超、それ以上に典型的にはバックグラウンドの1000倍超、さらに典型的にはバックグラウンドの10,000倍超になろう。いくつかの実施形態では、IFN-γポリペプチドバリアントは、平衡解離定数(KD)が7 nMで未満であるとき、リガンドまたは受容体に「特異的に結合する」と言われる。
【0077】
当業者であればわかるように、「結合親和性」を2個の分子(例えば、IFN-γポリペプチドとIFN-γ受容体)間の非共有相互作用の強度の指標として用いることもできる。「結合親和性」という用語は、1価相互作用(固有活性)を記述するのに用いられる。2個の分子の間の結合親和性は、解離定数(KD)を求めることによって定量化が可能である。すると、例えば、表面プラズモン共鳴(SPR)法(Biacore社)を利用して複合体の形成と解離の速度を測定することによってKDを求めることができる。1価複合体の会合と解離に対応する速度定数は、それぞれ、会合速度定数ka(またはkon)と解離速度定数kd(またはkoff)と呼ばれる。KDは、式KD=kd/kaを通じてkaおよびkdと関係している。解離定数の値は周知の方法によって直接求めることができ、複合体混合物についてさえCaceci他(Byte 第9巻:340~362ページ、1984年)に記載されているような方法によって計算することができる。例えば、KDは、WongとLohman(1993年、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 第90巻:5428~5432ページ)に開示されているような二重フィルタニトロセルロースフィルタ結合アッセイを利用して確立することができる。標的受容体に対する本開示のIFN-γポリペプチドバリアントの結合能力を評価するための他の標準的なアッセイが本分野で知られており、その中には、ELISA、ウエスタンブロット、RIA、フローサイトメトリー分析や、実施例に例示されている他のアッセイが含まれる。IFN-γポリペプチドバリアントの結合速度と結合親和性は、本分野で知られている標準的なアッセイ(表面プラズモン共鳴(SPR)など)により、例えば、Biacore(商標)システム、KinExAを用いて評価することもできる。いくつかの実施形態では、IFN-γR2および/またはIFN-γR1に対する本開示のIFN-γポリペプチドバリアントの結合親和性は、固相受容体結合アッセイ(Matrosovich MN他、Methods Mol Biol. 第865巻:71~94ページ、2012年)によって求められる。いくつかの実施形態では、IFN-γR2および/またはIFN-γR1に対する本開示のIFN-γポリペプチドバリアントの結合親和性は、表面プラズモン共鳴(SPR)アッセイによって求められる。
【0078】
いくつかの実施形態では、本開示のIFN-γポリペプチドバリアントのIFN-γR2結合親和性とIFN-γR1結合親和性の比は、約1:500~約1:2である。いくつかの実施形態では、ポリペプチドのIFN-γR2結合親和性とIFN-γR1結合親和性の比は、約1:500~約1:200、約1:400~約1:100、約1:300~約1:50、約1:200~約1:20~約1:100~約1:2、約1:50~約1:2のいずれかである。いくつかの実施形態では、ポリペプチドのIFN-γR2結合親和性とIFN-γR1結合親和性の比は、約1:500、約1:400、約1:300、約1:200、約1:100、約1:50、約1:20、約1:10、約1:5、約1:200、または約1:2のいずれかである。いくつかの実施形態では、ポリペプチドのIFN-γR2結合親和性とIFN-γR1結合親和性の比は、固相受容体結合アッセイによって求めると、約1:500~約1:2である。
【0079】
いくつかの実施形態では、本開示のIFN-γポリペプチドバリアント(例えば、IFN-γ部分的アゴニスト)は、野生型IFN-γで処理した対照細胞内で観察される参照比と比べたMHC I:PD-L1発現比によって判断するとき、そのようなIFN-γ部分的アゴニストで処理した細胞の中でPD-L1上方調節のレベルを顕著に低下させる一方で、MHCクラスIの発現を上方調節する顕著な能力は保持している。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されているIFN-γ部分的アゴニストで処理した細胞内のMHC I:PD-L1発現比は、野生型IFN-γで処理した対照細胞内で観察される参照比と比べて約2:1~約100:1である。いくつかの実施形態では、本開示のIFN-γ部分的アゴニストで処理した細胞内のMHC I:PD-L1発現比は、野生型IFN-γで処理した対照細胞内で観察される参照比と比べて約2:1~約50:1、約5:1~約40:1、約10:1~約30:1、約20:1~約50:1、約5:1~約40:1、約15:1~約30:1、または約10:1~約20:1のいずれかである。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されているIFN-γ部分的アゴニストで処理した細胞内のMHC I:PD-L1発現比は、適切な発現アッセイ(例えば、核酸に基づく発現アッセイ、または抗体に基づく発現アッセイ)によって求めると、野生型IFN-γで処理した対照細胞内で観察される参照比と比べて約2:1~約50:1、約5:1~約20:1、約10:1~約40:1、約20:1~約30:1、約5:1~約10:1、約2:1~約5:1、または約40:1~約50:1のいずれかである。
【0080】
上述のように、IFN-γが誘起する副作用は一般に、少なくとも部分的にはIFN-γの多面発現活性パターンによって起こると考えられている。その理由は、全身投与されたときIFN-γが体内のたいていの細胞サイプに作用して複雑な毒性パターンを引き起こすことにある。同様の全身毒性は、他の多くの免疫調節サイトカイン(インターロイキン-1(IL-1)、IL-2、腫瘍壊死因子(TNF)など)の適用も妨げる。したがって、どの理論にも囚われることは望まないが、本明細書に開示されている組換えポリペプチドは、特定の細胞タイプ、組織、またはその近傍を標的とすることも考慮して、本開示の組換えポリペプチドを、それを必要とする対象に全身投与することによって起こる潜在的な毒性問題をさらに回避する。多くの戦略で、本開示のポリペプチドを、特定の細胞タイプ、組織、またはその近傍を標的として送達することの追究が可能である。一般に、本明細書に開示されているポリペプチドを、標的とする細胞タイプ、組織、またはその近傍に送達することは、本分野で知られているいくつかの方法と戦略のいずれか1つ(例えば、三次元ガイダンスシステムを通じた腫瘍部位への直接的な注入など)によって効果的に実現できる。本開示のポリペプチドを標的に有効に送達するのに適した別の戦略の一例は、ベクター(例えば、ウイルスベクターまたは腫瘍浸潤免疫細胞)の使用である。
【0081】
標的化送達の別の1つの戦略では、本開示のポリペプチドを1つ以上の標的部分(例えば、核酸、リガンド、ハプテン、抗体、アプタマー)に機能可能に連結させることができる。場合によっては、リンカー(例えば生物分解性リンカー)を通じ、開示されているポリペプチドを少なくとも1つの標的部分に付着させることができる。例えば、開示されているポリペプチドの抗体IFN-γ融合タンパク質を用い、開示されているIFN-γポリペプチドバリアントを腫瘍部位へと特異的にガイドすることができる。したがって、いくつかの実施形態では、開示されているIFN-γポリペプチドバリアントを1つ以上の腫瘍標的部分に融合させることができる。いくつかの特別な実施形態では、本開示のポリペプチドは、発がん性受容体、またはマーカー、または腫瘍細胞に関係する細胞外マトリックスの構成要素を標的とする1つ以上のモノクローナル抗体または抗体フラグメントに機能可能に連結される。別のいくつかの特別な実施形態では、本開示のポリペプチドは、腫瘍細胞が発現する発がん性受容体または受容体の1つ以上のリガンドに機能可能に連結される。この点に関するさらなる情報は、例えば、UzeとTavernierによる最近のレビュー(Cytokine & Growth Factor Reviews 第26巻(2015年)179~182ページ)に見いだすことができる(参照によって本明細書に組み込まれている)。
【0082】
当業者が本開示を読めばわかるように、本明細書に開示されているIFN-γ部分的アゴニストの任意の1つを免疫細胞の異なるサブセットに向かわせることで、そのバイアスのある作用を標的となる免疫細胞サブセットに及ぼすことができる。一般に、本開示のIFN-γ部分的アゴニストは、既知の任意の免疫細胞タイプ、組織、器官、またはこれらの近傍を標的とすることができる。本明細書に開示されているIFN-γ部分的アゴニストの標的とするのに適した免疫細胞のタイプの非限定的な例に含まれるのは、B細胞、T細胞、NK細胞、単球、マクロファージと、これらの任意の組み合わせである。適切なB細胞とT細胞の非限定的な例に含まれるのは、活性化されたCD4、ナイーブCD4、活性化されたCD48、ナイーブCD8、および末梢B細胞である。本明細書に開示されているIFN-γ部分的アゴニスト標的として適したNK細胞の非限定的な例に含まれるのは、CD3 NK細胞、CD16+ NK細胞、CD56+ NK細胞である。それに加え、またはその代わりに、マーカーであるCD14、CD16、CD56のうちの1つ以上を発現する単球が、本明細書に開示されているIFN-γ部分的アゴニストの標的として適した単球の非限定的な例である。
【0083】
理論に囚われることは望まないが、本開示のポリペプチドを抗体との複合体にすることで、この化合物を、想定する作用部位(例えば、がん細胞、腫瘍、またはこれらの近傍)に標的化送達することが容易になり、全身毒性のリスクが低下する。
【0084】
当業者は、本明細書に開示されている組換えポリペプチドの任意の1つの完全なアミノ酸配列を用い、逆翻訳される遺伝子を構成できることがわかるであろう。例えば、所与のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列をコードするヌクレオチド配列を含有するDNAオリゴマーを合成することができる。例えば、所望のポリペプチドの一部をコードするいくつかの小さなオリゴヌクレオチドを合成した後、連結させることができる。個々のオリゴヌクレオチドは、典型的には5'オーバーハングまたは3'オーバーハングを相補的な組み立てのために含んでいる。
【0085】
本明細書に開示されている組換えポリペプチドをコードするDNA配列は、(合成、または部位指定突然変異誘発、または別の方法)によって組み立てられると、発現ベクターの中に挿入されて、所望の形質転換された宿主の中で組換えポリペプチドを発現させるのに適した発現制御配列に機能可能に連結されることになる。適切な組み立ては、ヌクレオチドのシークエンシングと、制限マッピングと、適切な宿主の中での生物活性なポリペプチドの発現によって確認することができる。本分野で知られているように、宿主にトランスフェクトされた遺伝子が高発現するには、その遺伝子を、選択された発現宿主の中で機能する転写と翻訳の発現制御配列に機能可能に連結させる必要がある。
【0086】
それに加え、またはその代わりに、本明細書に記載されている組換えポリペプチドの任意の1つの生成は、組換え分子生物学の技術によって改変された核酸分子の発現を通じて実現できる。さらに、本開示による組換えポリペプチドは化学的に合成することができる。化学合成されるポリペプチドは、当業者によって日常的な作業で生成される。
【0087】
核酸分子
一態様では、本明細書に開示されているいくつかの実施形態は、本開示の組換えポリペプチドをコードする組換え核酸分子に関するものであり、その中には、異種核酸配列(例えば、宿主細胞または生体外無細胞発現系の中でIFN-γポリペプチドバリアントを発現させることのできる調節配列)に機能可能に連結されたこれら核酸分子を含む本明細書に記載のIFN-γポリペプチドバリアント、発現カセット、および発現ベクターが含まれる。
【0088】
「核酸分子」と「ポリヌクレオチド」という用語は本明細書では交換可能に用いられ、RNA分子とDNA分子の両方を意味していて、その中には、核酸分子(cDNA、ゲノムDNA、合成DNAが含まれる)と、核酸類似体を含有するDNA分子またはRNA分子が含まれる。核酸分子は二本鎖または一本鎖が可能である(例えば、センス鎖またはアンチセンス鎖)。核酸分子は、非伝統的(unconventional)ヌクレオチドまたは修飾されたヌクレオチドを含むことができる。「ポリヌクレオチド配列」と「核酸配列」という用語は本明細書では交換可能に用いられ、ポリヌクレオチド分子の配列を意味する。本明細書に開示されているポリヌクレオチドとポリペプチドの配列は、37 CFR§1.82(その中には、参照によってWIPO標準ST.25(1998年)、付録2、表1~6が組み込まれている)に記載されているヌクレオチド塩基とアミノ酸に関する標準的な略号を用いて示されている。
【0089】
本開示の核酸分子として任意の長さの核酸分子が可能であり、その中には、一般に約5 Kb~約50 Kb、例えば、約5 Kb~約40 Kb、約5 Kb~約30 Kb、約5 Kb~約20 Kb、約10 Kb~約50 Kbのいずれか、例えば、約15 Kb~30 Kb、約20 Kb~約50 Kb、約20 Kb~約40 Kb、約5 Kb~約25 Kb、または約30 Kb~約50 Kbの核酸分子が含まれる。
【0090】
本明細書に開示されているいくつかの実施形態では、本開示の核酸分子は、本明細書に開示されている組換えポリペプチドのアミノ酸配列と配列が少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%のいずれかの割合で一致するアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含んでいる。いくつかの実施形態では、本開示の核酸分子は、配列番号1のアミノ酸配列を持つIFN-γポリペプチドと少なくとも95%一致する第1のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むとともに;配列番号1のQ1、D2、P3、K6、Q64、Q67、K68、E71、T72、K74、E75、D76、N78、V79、K80、N83、S84、K86、R89、およびD90からなるグループから選択されたアミノ酸残基に対応する位置とこれらの任意の組み合わせに少なくとも1個のアミノ酸置換をさらに含んでいる。いくつかの実施形態では、本開示の核酸分子は、配列番号1のアミノ酸配列を持つガンマ-インターフェロンポリペプチドと少なくとも95%一致する第2のアミノ酸配列を含んでおり、この第2のアミノ酸配列は、第1のアミノ酸配列に機能可能に連結されている。いくつかの実施形態では、第2のアミノ酸配列は、配列番号1のQ1、D2、P3、K6、Q64、Q67、K68、E71、T72、K74、E75、D76、N78、V79、K80、N83、S84、K86、R89、およびD90からなるグループから選択された1個のアミノ酸残基に対応する位置とその任意の組み合わせに少なくとも1個のアミノ酸置換を含んでいる。
【0091】
本明細書に開示されているいくつかの実施形態では、本開示の核酸分子は、配列番号2、3、4、および5からなるグループから選択されたアミノ酸配列と配列が少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%のいずれかの割合で一致するアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含んでいる。いくつかの実施形態では、本開示の核酸分子は、配列番号2のアミノ酸配列と配列が少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%いずれかの割合で一致するアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含んでいる。いくつかの実施形態では、本開示の核酸分子は、配列番号3のアミノ酸配列と配列が少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%のいずれかの割合で一致するアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含んでいる。いくつかの実施形態では、本開示の核酸分子は、配列番号4のアミノ酸配列と配列が90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%のいずれかの割合で一致するアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含んでいる。いくつかの実施形態では、本開示の核酸分子は、配列番号5のアミノ酸配列と配列が90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%のいずれかの割合で一致するアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含んでいる。いくつかの実施形態では、本開示の核酸分子は、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5からなるグループから選択されたアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含んでいる。
【0092】
本明細書に開示されているいくつかの実施形態は、本明細書に開示されている組換え核酸分子を含むベクターまたは発現カセットに関する。本明細書では、「発現カセット」という用語は、遺伝物質のコンストラクトであって、コード配列と、生体内および/または生体外のレシピエント細胞の中でコード配列の適切な転写および/または翻訳を指令する十分な調節情報を含有しているものを意味する。発現カセットは、所望の宿主細胞および/または対象を標的とするベクターに挿入することができる。そのため発現カセットという用語は、「発現コンストラクト」という用語と交換可能に用いることができる。本明細書では、「コンストラクト」という用語は、任意の供給源に由来し、ゲノムの組み込みまたは自己複製が可能で、内部で1つ以上の核酸配列が機能を発揮できるように連結されている(例えば、機能可能に連結されている)核酸分子を含む任意の組換え核酸分子(例えば、発現カセット、プラスミド、コスミド、ウイルス、自己複製ポリヌクレオチド分子、ファージ、直線状または環状で一本鎖または二本鎖のDNAまたはRNAポリヌクレオチド分子)を意味する。
【0093】
本明細書では、本明細書に開示されている任意の組換えポリペプチドをコードする核酸分子の1個以上を含有するベクター、プラスミド、ウイルスも提供される。上記の核酸分子は、例えば、ベクターを用いて形質転換/遺伝子導入された細胞の中でこれら核酸分子の発現を指令することのできるベクターの中に含めることができる。真核細胞と原核細胞で用いるのに適したベクターは本分野で知られており、市場で入手すること、または当業者が容易に調製することができる。追加のベクターは、例えば、『Current Protocols in Molecular Biology』(Ausubel FM他編、1987年、2014年までの追補を含む)と『Molecular Cloning: A Laboratory Manual』、第4版(Sambrook他、2012年)にも見いだすことができる。
【0094】
すべてのベクターと発現制御配列が本明細書に記載されているDNA配列を発現させるのに同様にうまく機能するわけではないことを理解すべきである。すべての宿主が同じ発現系で同様にうまく機能するわけでもない。しかし、当業者は、これらのベクター、発現制御配列、宿主の中から選択し、過度な実験なしに本開示のポリペプチドの所望の発現レベルを実現することができる。例えば、ベクターを選択するとき、宿主細胞が考慮される。なぜならそのような宿主細胞の中での複製にベクターが必要とされるからである。ベクターのコピー数、コピー数を制御する能力、ベクターによってコードされる他の任意のタンパク質(抗生物質マーカーなど)の発現も考慮すべきである。例えば、使用可能なベクターに、本開示の組換えポリペプチドをコードするDNAがコピー数を増幅できるようにするベクターが含まれる。このような増幅可能ベクターは本分野で知られている。
【0095】
したがって、いくつかの実施形態では、本開示の組換えポリペプチドは、本明細書に記載されているIFN-γポリペプチドバリアントを含め、ベクター(例えば発現ベクター)から発現させることができる。ベクターは宿主細胞の中での自律的複製に有用であり、あるいはベクターは宿主細胞の中に導入したときに宿主細胞のゲノムに組み込むことができ、そのことによって宿主のゲノムとともに複製される(例えば非エピソーマル哺乳類ベクター)。一般に発現ベクターは、宿主細胞における発現を容易にするコード配列に機能可能に連結された発現制御エレメントを含んでいる。一般に、組換えDNA技術において有用な発現ベクターは、プラスミド(ベクター)の形態であることがしばしばある。しかし他の形態の発現ベクターであるウイルスベクター(例えば、複製可能な、または複製不全のレトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、およびアデノ随伴ウイルスベクター)なども含まれる。代表的な組換え発現ベクターは、発現に用いる宿主細胞に基づいて選択されて発現させる核酸配列に機能可能に連結された1つ以上の調節配列を含むことができる。いくつかの実施形態では、ベクターは、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、またはレトロウイルスベクターのいずれかである。
【0096】
DNAベクターは、通常の形質転換技術またはトランスフェクション技術によって原核細胞または真核細胞の中に導入することができる。宿主細胞の形質転換またはトランスフェクションに適した方法は、Sambrook他(2012年、上記文献)と、他の標準的な分子生物学の実験室マニュアルに見いだすことができる。
【0097】
本開示の組換えポリペプチドをコードする核酸配列は、本明細書に記載されているIFN-γポリペプチドバリアントを含め、興味ある宿主細胞の中での発現を最適化することができる。例えば、配列のG-C含量は、宿主細胞の中で発現している既知の遺伝子を参照して計算される所与の細胞宿主の平均レベルに調節することができる。コドン最適化の方法は本分野で知られている。本明細書に開示されている組換えポリペプチドのコード配列内におけるコドンの利用を最適化して宿主細胞の中での発現を増強することができ、例えば、コード配列内のコドンの約1%、約5%、約10%、約25%、約50%、約75%が、または100%までもが特定の宿主細胞における発現を最適化されている。
【0098】
用いるのに適したベクターに含まれるのは、細菌の中で用いるためのT7に基づくベクター、哺乳動物の細胞の中で用いるためのpMSXND発現ベクター、昆虫細胞の中で用いるためのバキュロウイルス由来のベクターである。いくつかの実施形態では、核酸インサートは、これらベクターの中の対象となる組換えポリペプチドをコードしており、例えば、中で発現させる細胞タイプに基づいて選択されるプロモータに機能可能に連結させることができる。
【0099】
発現制御配列を選択するとき、多彩な因子も考慮すべきである。そうした因子に含まれるのは、例えば、その配列の相対的強度、その配列の制御可能性や、特に可能な二次構造に関して、対象となるポリペプチドをコードする実際のDNA配列とその配列の適合性である。宿主の選択は、選択されるベクターとの適合性、本開示のDNA配列によってコードされる産物の毒性、分泌特性、ポリペプチドを正しく折り畳む能力、発酵または培養の条件、DNA配列によってコードされる産物の精製の容易さを考慮してなされるべきである。
【0100】
当業者は、これらパラメータの中で、発酵培養物または大規模動物細胞培養物の中で例えば、CHO細胞またはCOS-7細胞を用いて所望のDNA配列を発現させる様々なベクター/発現制御配列/宿主の組み合わせを選択することができる。
【0101】
発現制御配列と発現ベクターの選択は、いくつかの実施形態では、宿主の選択に依存するであろう。広い範囲の発現宿主/ベクターの組み合わせを利用できる。真核宿主にとって有用な発現ベクターの非限定的な例に含まれるのは、例えば、SV40、ウシパピローマウイルス、アデノウイルス、サイトメガロウイルスからの発現制御配列を持つベクターである。細菌宿主で有用な発現ベクターの非限定的な例に含まれるのは、既知の細菌プラスミド、例えば、大腸菌からのプラスミド(その中にはcol El、pCRI、pER32z、pMB9と、これらの誘導体が含まれる)、宿主の範囲がより広いプラスミド(RP4など)、ファージDNA(例えば、ファージλの多くの誘導体、例えばNM989)、他のDNAファージ(M13など)、フィラメント状一本鎖DNAファージである。酵母細胞にとって有用な発現ベクターの非限定的な例に含まれるのは、2μプラスミドとその誘導体である。昆虫細胞にとって有用なベクターの非限定的な例に含まれるのは、pVL 941とpFastBac(商標)1である。
【0102】
それに加え、多彩な発現制御配列のうちの任意のものをこれらのベクターで使用することができる。これらの有用な発現制御配列には、上記の発現ベクターの構造遺伝子に関係する発現制御配列が含まれる。有用な発現制御配列の例に含まれるのは、例えば、SV40またはアデノウイルスの初期プロモータと後期プロモータ、lac系、trp系、TAC系またはTRC系、ファージλの主要なオペレータ領域とプロモータ領域(例えばPL)、fdコートタンパク質の制御領域、3-ホスホグリセリン酸キナーゼまたは他の糖分解酵素のためのプロモータ、酸性ホスファターゼのためのプロモータ(例えばPhoA)、酵母a-接合系のプロモータ、バキュロウイルスのポリへドリンプロモータ、原核細胞または真核細胞またはこれら細胞のウイルスの遺伝子の発現を制御することが知られている他の配列と、これらの様々な組み合わせである。
【0103】
T7プロモータを細菌で用いることができ、ポリへドリンプロモータを昆虫細胞で用いることができ、サイトメガロウイルスプロモータまたはメタロチオネインプロモータを哺乳動物の細胞で用いることができる。また、より高等な真核細胞では、組織特異的プロモータと細胞タイプ特異的プロモータが広く利用される。これらプロモータは、体内の所与の組織または細胞タイプにおいて核酸分子の発現を指令する能力を理由としてそのように呼ばれている。当業者は、核酸の発現を指令するのに使用できる多くのプロモータと他の調節エレメントを容易に認識することができる。
【0104】
ベクターは、挿入された核酸分子の転写を容易にする配列に加え、複製起点と、選択マーカーをコードする他の遺伝子を含有することができる。例えば、ネオマイシン耐性(neoR)遺伝子は、この遺伝子を発現させる細胞にG418耐性を与えるため、トランスフェクトされた細胞の表現型選択が可能である。当業者は、所与の調節エレメントまたは選択マーカーが特定の実験文脈で用いるのに適しているかどうかを容易に判断することができる。
【0105】
本開示で用いることのできるウイルスベクターに含まれるのは、例えば、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ベクターベクター、ヘルペスウイルスベクター、サルウイルス40(SV40)ベクター、ウシパピローマウイルスベクター(例えば、Gluzman(編)『Eukaryotic Viral Vectors』、1982年、CSH Laboratory Press、コールド・スプリング・ハーバー、ニューヨーク州)である。
【0106】
対象となる本明細書に開示の組換えポリペプチドをコードする核酸分子を含有していてこの核酸分子を発現する原核細胞または真核細胞も本開示の特徴である。本開示の細胞は、トランスフェクトされた細胞である(例えば組換えDNA技術によって核酸分子(例えばIFN-γポリペプチドバリアント)をコードする核酸分子が導入されている細胞)。このような細胞の子孫も本開示の範囲に含まれると見なされる。
【0107】
発現系の正確な構成要素は広く変動する可能性がある。例えば、本明細書に開示されているIFN-γポリペプチドバリアントは、原核宿主(細菌である大腸菌など)または真核宿主(昆虫細胞(例えばSf21細胞)や哺乳類細胞(例えば、COS細胞、NIH 3T3細胞、HeLa細胞)など)の中で産生させることができる。これらの細胞は多くの販売元から入手することができ、その中にはAmerican Type Culture Collection(マナサス、ヴァージニア州)が含まれる。発現系を選択するとき、発現系の構成要素は互いに適合している必要がある。専門家または当業者はそのような判断をすることができる。さらに、発現系を選択するのにガイダンスが必要な場合には、当業者はAusubel他(『Current Protocols in Molecular Biology』、John Wiley and Sons社、ニューヨーク、ニューヨーク州、1993年)とPouwels他(『Cloning Vectors: A Laboratory Manual』、1985年、追補1987年)を参照することができる。
【0108】
発現したポリペプチドは、生化学の定型的な手続きを利用して発現系から単離することができ、本明細書に記載されているように、例えば、治療剤として用いることができる。
【0109】
いくつかの実施形態では、得られた組換えポリペプチドは、この組換えポリペプチドを産生させるのに用いる宿主生物に応じてグリコシル化されるか、グリコシル化されない。宿主として細菌を選択する場合には、産生される組換えポリペプチドはグリコシル化されない。それに対して真核細胞では、典型的には組換えポリペプチドがグリコシル化されるが、おそらく元のポリペプチドがグリコシル化されるのと同じやり方ではない。形質転換された宿主によって産生される組換えポリペプチドは、本分野で知られている適切な任意の方法に従って精製することができる。産生された組換えポリペプチドは、細菌(大腸菌など)の中で生成した封入体から、または本開示の所与の組換えポリペプチドを産生する哺乳動物培養物または酵母培養物からの馴化培地から、カチオン交換、および/またはゲル濾過、および/または逆相液体クロマトグラフィを利用して単離することができる。
【0110】
それに加え、またはその代わりに、本開示の組換えポリペプチドをコードするDNA配列を作製する別の代表的な方法は、化学合成による方法である。そこには、記載されている特性を示す組換えポリペプチドをコードするアミノ酸配列を、化学的手段によるペプチドの直接的合成で合成する方法が含まれる。この方法により、標的タンパク質を有する組換えポリペプチドの結合親和性に影響を与える位置に天然のアミノ酸と非天然のアミノ酸の両方を組み込むことができる。あるいは所望の組換えポリペプチドをコードする遺伝子は、オリゴヌクレオチド合成装置を利用した化学的手段によって合成することができる。このようなオリゴヌクレオチドは、所望の組換えポリペプチドのアミノ酸配列に基づいて設計され、好ましくは、本開示の組換えポリペプチドが産生されることになる宿主細胞の中で好まれるコドンが選択される。この点に関し、遺伝暗号は縮重していることと、1個のアミノ酸は2つ以上のコドンによってコードできることが本分野ではよく認識されている。例えば、Phe(F)は2通りのコドンTICまたはTTTによってコードされ、Tyr(Y)はTACまたはTATによってコードされ、His(H)はCACまたはCATによってコードされている。Trp(W)は単一のコドンTGGによってコードされている。したがって当業者は、特定の組換えポリペプチドをコードする所与のDNA配列について、その組換えポリペプチドをコードすることになる多くのDNA縮重配列が存在することを認識しているであろう。例えば、配列リストに示されている組換えポリペプチドのためのDNA配列に加え、本明細書に開示されている組換えポリペプチドをコードする多くの縮重DNA配列が存在することが理解されよう。これら縮重DNA配列は本開示の範囲であると見なされる。したがって本開示の文脈における「その縮重バリアント」は、特定の組換えポリペプチドをコードしていて、そのことによってその特定の組換えポリペプチドの発現を可能にするすべてのDNA配列を意味する。
【0111】
対象となる組換えポリペプチドをコードするDNA配列は、部位指定突然変異誘発、化学的方法、それ以外の方法のどれによって調製されたものであれ、シグナル配列をコードするDNA配列も含むことができる。このようなシグナル配列は、存在する場合には、組換えポリペプチドを発現させるために選択した細胞によって認識されるものでなければならない。その細胞として、原核細胞、または真核細胞、またはこれら2つの組み合わせが可能である。一般に、シグナル配列を含めるかどうかは、本明細書に開示されている組換えポリペプチドを産生する組換え細胞からその組換えポリペプチドを分泌させることを望むかどうかに依存する。選択された細胞が原核細胞である場合には、DNA配列は一般にシグナル配列をコードしていない。選択された細胞が真核細胞である場合には、シグナル配列が含まれることがしばしばある。
【0112】
提供される核酸分子は、天然の配列を含むか、天然の配列とは異なるが遺伝暗号の縮重が理由で同じポリペプチドをコードしている配列を含むことができる。これら核酸分子は、RNAまたはDNA(例えば、ゲノムDNA、cDNA、合成DNA(例えば、ホスホロアミダイトに基づく合成によって作製されるもの))からなること、またはこのようなタイプの核酸内のヌクレオチドの組み合わせまたは修飾からなることができる。それに加え、核酸分子は二本鎖または一本鎖が可能である(例えば、センス鎖またはアンチセンス鎖)。
【0113】
核酸分子がポリペプチドをコードする配列に限定されることはなく;コード配列(例えば、IFN-γポリペプチドバリアントのコード配列)の上流または下流にある非コード配列のいくつか、またはすべても核酸分子に含めることができる。分子生物学の当業者は、核酸分子を単離するための定型的な手続きに馴染んでいる。核酸分子は、例えば、ゲノムDNAを制限エンドヌクレアーゼで処理することによって、またはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を実施することによって生成させることができる。核酸分子がリボ核酸(RNA)である場合には、分子を、例えば、インビトロの転写によって作製することができる。
【0114】
本開示の単離された代表的な核酸分子は、天然状態でそのまま見いだされることのない断片を含むことができる。したがって本開示は、組換え分子、例えば、核酸配列(例えば、IFN-γポリペプチドバリアントをコードする配列)がベクター(例えば、プラスミドベクターまたはウイルスベクター)または異種細胞のゲノム(または相同な細胞のゲノムの天然の染色体位置以外の位置に)に組み込まれている組換え分子を包含する。
【0115】
本明細書で用いられている「細胞」、「細胞培養物」、「細胞系」、「組換え宿主細胞」、「レシピエント細胞」、「宿主細胞」という用語には、対象となる初代細胞とその任意の子孫が含まれ、継代の数は考慮されない。(意図的な変異または不注意による変異、環境の違いが原因で)すべての子孫が親細胞と正確に同じではないことを理解すべきである;しかしそのように変化した子孫は、その子孫が最初に形質転換された細胞と同じ機能を保持している限り、これらの用語に含まれる。
【0116】
医薬組成物
いくつかの実施形態では、本開示の組換えポリペプチドは、本明細書に記載されているIFN-γポリペプチドバリアント、核酸を含め、組成物(医薬組成物を含む)に組み込むことができる。このような組成物は、典型的には、組換えポリペプチドと、医薬的に許容される賦形剤(例えば、担体)を含んでいる。
【0117】
注射で用いるのに適した医薬組成物には、減菌した水溶液(水溶性の場合)または分散液と、減菌した注射溶液または分散液を即席で調製するための減菌粉末が含まれる。静脈内投与のための適切な担体に含まれるのは、生理食塩水、静菌水、Cremophor EL(商標)(BASF社、パーシッパニー、ニュージャージー州)、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)である。あらゆる場合に組成物は減菌されていなければならず、注射器に収容するのが容易である程度の流動性がなければならない。組成物は製造と保管の条件下で安定でなければならず、微生物(細菌や真菌など)の汚染作用から保護されていなければならない。担体として、溶媒、または分散媒体(例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)と、これらの適切な混合物をが含有するもの)が可能である。適切な流動性の維持は、例えばコーティング(レシチンなど)を利用することによって、または分散液の場合には必要な粒径を維持することによって、または界面活性剤(例えば、ドデシル硫酸ナトリウム)を利用することによって可能である。微生物の作用の防止は、様々な抗菌剤と抗真菌剤(例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなど)によって実現できる。多くの場合、一般に等張剤(例えば、糖類、ポリアルコール(マンニトールなど)、ソルビトール、塩化ナトリウム)を組成物の中に含めることになる。注射可能な組成物の長時間にわたる吸収は、組成物の中に吸収を遅延させる薬剤(例えば、モノステアリン酸アルミニウム、ゼラチン)を含めることによって実現できる。
【0118】
減菌注射溶液は、必要な量の活性化合物を、必要に応じて上に列挙した成分の1つまたは組み合わせとともに適切な溶媒に組み込んだ後、濾過減菌することによって調製できる。一般に、分散液は、活性化合物を、塩基性分散媒体と上に列挙した中からの必要な他の諸成分を含有する減菌ビヒクルに組み込むことによって調製される。減菌注射溶液を調製するための減菌粉末の場合には、好ましい調製法は真空乾燥と凍結乾燥であり、これにより、活性成分の粉末に加え、以前に減菌濾過した溶液からの所望の任意の追加成分を得ることが可能である。
【0119】
経口組成物は、使用される場合には、一般に不活性な希釈剤または食用担体を含んでいる。経口で治療剤を投与する目的では、活性化合物(例えば、本開示の組換えポリペプチド、および/またはIFN-γポリペプチドバリアント、および/またはIFN-γ部分的アゴニスト、および/または核酸分子)を賦形剤とともに組み込み、錠剤、トローチ、カプセル(例えば、ゼラチンカプセル)いずれかの形態で使用することができる。経口組成物は、口内洗浄液として使用するための流体担体を用いて調製することもできる。医薬との適合性がある結合剤および/またはアジュバント材料を組成物の一部として含めることができる。錠剤、ピル、カプセル、トローチなどは、以下の成分の任意のもの、またはそれと似た性質の化合物を含有することができる:結合剤(微結晶セルロース、トラガカントゴムまたはゼラチンなど);賦形剤(デンプン、ラクトースなど)、崩壊剤(アルギン酸、Primogel(商標)、コーンスターチなど);潤滑剤(ステアリン酸マグネシウム、Sterotes(商標)など);流動促進剤(コロイド状二酸化ケイ素など);甘味剤(スクロース、サッカリンなど);香味剤(ペパーミント、サリチル酸メチル、オレンジフレーバーなど)。
【0120】
吸入による投与の場合には、本開示の対象となる組換えポリペプチドは、適切な推進剤(例えば、二酸化炭素などのガス)を収容した加圧容器またはディスペンサから、または噴霧器から、エアロゾルスプレーの形態で供給される。このような方法には、アメリカ合衆国特許第6,468,798号に記載されている方法が含まれる。
【0121】
本開示の対象である組換えポリペプチドの全身投与は、経粘膜手段または経皮手段によっても可能である。経粘膜投与または経皮投与のためには、透過させる障壁に適した浸透剤を製剤で用いる。そのような浸透剤は本分野で一般に知られており、その中に含まれるのは、例えば、経粘膜投与のための洗浄剤、胆汁酸塩、フシジン酸誘導体である。経粘膜投与は、鼻腔用スプレーまたは座薬を用いて実現することができる。経皮投与のためには、活性化合物を本分野で一般に知られているようにして軟膏、膏薬、ゲル、クリームに製剤化する。
【0122】
いくつかの実施形態では、本開示の組換えポリペプチドは、直腸に送達するため、(例えば、カカオバターや他のグリセリドなどの従来からある座薬ベースを用いて)座薬または停留浣腸の形態にすることもできる。
【0123】
いくつかの実施形態では、本開示の組換えポリペプチドは、本分野で知られている方法を利用したトランスフェクションまたは感染によって投与することもできる。方法の非限定的な例に含まれるのは、McCaffrey他(Nature第418巻:6893ページ、2002年)、またはXia他(Nature Biotechnol. 第20巻:1006~1010ページ、2002年)、またはPutnam(Am. J. Health Syst. Pharm. 第53巻:151~160ページ、1996年、Am. J. Health Syst. Pharm. 第53巻:325ページ、1996年の訂正)に記載されている方法である。
【0124】
いくつかの実施形態では、本開示の対象である組換えポリペプチドは、組換えポリペプチドが身体から急速に排泄されることから保護する担体(例えば、制御放出製剤であり、その中にはインプラントとマイクロカプセル化された送達系が含まれる)を用いて調製される。生物分解性ポリマー、生体適合性ポリマー(エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、ポリ酢酸など)を用いることができる。このような製剤は、標準的な技術を利用して調製することができる。材料は、Alza Corporation社とNova Pharmaceuticals, Inc.社から市販されているものを取得することもできる。(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体を用いて感染した細胞を標的とするリポソームを含む)リポソーム懸濁液も、医薬的に許容される担体として用いることができる。これらは、当業者に知られている方法(例えば、アメリカ合衆国特許第4,522,811号に記載されている方法)に従って調製することができる。下により詳しく記載されているように、本開示の組換えポリペプチドは、作用期間を延長するため、例えば、PEG化、アシル化、Fc融合、分子(アルブミンなど)への連結などによって改変することもできる。いくつかの実施形態では、組換えポリペプチドは、生体内および/または生体外での半減期を長くするためさらに改変することができる。本開示の組換えポリペプチドを改変するのに適した既知の戦略と方法の非限定的な例に含まれるのは、(1)組換えポリペプチドがプロテアーゼと接触することを阻止する大きな可溶性巨大分子(ポリエチレングリコール(「PEG」)など)を用いた本明細書に記載の組換えポリペプチドの化学的修飾と;(2)本明細書に記載されている組換えポリペプチドと適切なタンパク質(例えば、アルブミン)の共有結合または複合体化である。したがって、いくつかの実施形態では、本開示の組換えポリペプチドは安定なタンパク質(アルブミンなど)に融合させることができる。例えば、ヒトアルブミンは、それが融合したポリペプチドの安定性を増大させる最も有効なタンパク質の1つであることが知られており、そのような多数の融合タンパク質が報告されている。
【0125】
いくつかの実施形態では、本開示の医薬組成物は、1つ以上のPEG化剤を含んでいる。本明細書では、「PEG化」という用語は、ポリエチレングリコール(PEG)を共有結合させることによってタンパク質を改変することを意味し、「PEG化された」は、PEGが付着したタンパク質を意味する。約10,000ダルトン~約40,000ダルトンから選択される範囲のサイズのPEGまたはPEG誘導体を、多彩な化学を用いて本開示の組換えポリペプチドに付着させることができる。いくつかの実施形態では、PEGまたはPEG誘導体の平均分子量は、約1 kD~約200 kD、例えば、約10 kD~約150 kD、約50 kD~約100 kD、約5 kD~約100 kD、約20 kD~約80 kD、約30 kD~約70 kD、約40 kD~約60 kD、約50 kD~約100 kD、約100 kD~約200 kD、または約150 kD~約200 kDのいずれかである。いくつかの実施形態では、PEGまたはPEG誘導体の平均分子量は、約5 kD、約10 kD、約20 kD、約30 kD、約40 kD、約50 kD、約60 kD、約70 kD、または約80 kDのいずれかである。いくつかの実施形態では、PEGまたはPEG誘導体の平均分子量は約40 kDである。いくつかの実施形態では、PEG化試薬の選択は、プロピオン酸メトキシポリエチレングリコール-スクシンイミジル(mPEG-SPA)、酪酸mPEG-スクシンイミジル(mPEG-SBA)、コハク酸mPEG-スクシンイミジル(mPEG-SS)、炭酸mPEG-スクシンイミジル(mPEG-SC)、グルタル酸mPEG-スクシンイミジル(mPEG-SG)、mPEG-N-ヒドロキシル-スクシンイミド(mPEG-NHS)、mPEG-トレシラート、mPEG-アルデヒドからなされる。いくつかの実施形態では、PEG化試薬はポリエチレングリコールである。例えば、PEG化試薬は、本開示の組換えポリペプチドのN末端メチオニン残基に共有結合した平均分子量が20,000ダルトンのポリエチレングリコールである。いくつかの実施形態では、PEG化試薬は、本開示の組換えポリペプチドのN末端メチオニン残基に共有結合した平均分子量が約5 kD、約10 kD、約20 kD、約30 kD、約40 kD、約50 kD、約60 kD、約70 kD、または約80 kDのいずれかであるポリエチレングリコールである。いくつかの実施形態では、PEG化試薬は、本開示の組換えポリペプチドのN末端メチオニン残基に共有結合した平均分子量が約40 kDのポリエチレングリコールである。
【0126】
したがって、いくつかの実施形態では、本開示の組換えポリペプチドは1つ以上のポリエチレングリコール部分を用いて化学的に修飾される(例えば、PEG化;または同様の修飾(例えば、PAS化)。いくつかの実施形態では、PEG分子またはPAS分子は、開示されている組換えポリペプチドの1つ以上のアミノ酸側鎖に結合する。いくつかの実施形態では、PEG化またはPAS化されたポリペプチドは、PEG部分またはPAS部分を1個だけのアミノ酸の表面に含有している。別の実施形態では、PEG化またはPAS化されたポリペプチドは、PEG部分またはPAS部分を2個以上のアミノ酸の表面に含有している(例えば、2個以上、または5個以上、または10個以上、または15個以上、または20個以上の異なるアミノ酸残基に付着している)。いくつかの実施形態では、PEG鎖またはPAS鎖は、2000 Da、2000 Da超、5000 Da、5,000 Da超、10,000 Da、10,000 Da超、20,000 Da、20,000 Da超、および30,000 Daである。PAS化されたポリペプチドは、アミノ基、スルフヒドリル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基のいずれかを通じてPEGまたはPASに(例えば、連結基なしで)直接カップルさせることができる。いくつかの実施形態では、本開示の組換えポリペプチドは、平均分子量が20,000ダルトンのポリエチレングリコールに共有結合している。いくつかの実施形態では、本開示の組換えポリペプチドは、平均分子量が約1 kD~約200 kD、例えば、約10 kD~約150 kD、約50 kD~約100 kD、約5 kD~約100 kD、約20 kD~約80 kD、約30 kD~約70 kD、約40 kD~約60 kD、約50 kD~約100 kD、約100 kD~約200 kD、または約150 kD~約200 kDのいずれかであるポリエチレングリコールに共有結合している。いくつかの実施形態では、本開示の組換えポリペプチドは、平均分子量が約5 kD、約10 kD、約20 kD、約30 kD、約40 kD、約50 kD、約60 kD、約70 kD、または約80 kDのいずれかであるポリエチレングリコールに共有結合している。いくつかの実施形態では、本開示の組換えポリペプチドは、平均分子量が約40 kDのポリエチレングリコールに共有結合している。
【0127】
治療法
本明細書に記載されている治療用組成物(例えば、組換えポリペプチド、IFN-γポリペプチドバリアント、IFN-γ部分的アゴニスト、核酸、医薬組成物)の任意の1つを投与してそれに関連する疾患(がん、慢性感染症など)の患者を治療することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されている組換えポリペプチド、および/またはIFN-γポリペプチドバリアント、および/またはIFN-γ部分的アゴニスト、および/または核酸、および/または医薬組成物は、チェックポイント抑制と関係する1つ以上の自己免疫障害または健康障害を持つ個体、そのような障害を持つことが疑われる個体、そのような障害が進行する大きなリスクがある可能性のある個体を治療する方法で用いるための治療剤に組み込むことができる。代表的な自己免疫障害と健康障害の非限定的な例に含めることができるのは、がんと慢性感染症である。
【0128】
したがって、一態様では、本開示のいくつかの実施形態は、対象でIFN-γを媒介としたシグナル伝達を変化させる方法に関するものであり、この方法は、本明細書に開示されているポリペプチド、または本明細書に開示されている核酸分子の有効量を対象に投与することを含んでいる。別の一態様では、いくつかの実施形態は、健康障害の治療を必要とする対象でその健康障害を治療する方法に関するものであり、この方法は、本明細書に開示されているポリペプチド、または本明細書に開示されている核酸分子の有効量を対象に投与することを含んでいる。
【0129】
いくつかの実施形態では、開示されている医薬組成物は、想定する投与経路に適合するように製剤化される。本開示の組換えポリペプチドは、経口で、または吸入によって与えることができるが、非経口経路を通じて投与される可能性がより大きい。非経口投与の例に含まれるのは、例えば、静脈内投与、皮内投与、皮下投与、経皮(局所)投与、経粘膜投与、直腸投与である。非経口投与に用いる溶液または懸濁液は、以下の諸成分、すなわち減菌希釈剤(注射用の水、生理食塩溶液、不揮発油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、これら以外の合成溶媒など);抗菌剤(ベンジルアルコール、メチルパラベンなど);抗酸化剤(アスコルビン酸、亜硫酸水素ナトリウムなど);キレート剤(エチレンジアミン四酢酸(EDTA)など);バッファ(酢酸塩、クエン酸塩、リン酸塩など);等張性を調節する薬剤(塩化ナトリウムまたはデキストロースなど)を含むことができる。pHは酸または塩基(例えば、一塩基性リン酸ナトリウムおよび/または二塩基性リン酸ナトリウム、塩酸、水酸化ナトリウム)を用いて調節することができる(例えば、pHを約7.2~7.8、例えば、7.5にする)。非経口調製物は、ガラスまたはプラスチックでできたアンプル、使い捨て注射器、多回投与バイアルの中に封止することができる。
【0130】
本開示の対象であるこのような組換えポリペプチドの用量、毒性、治療効果は、細胞培養物または実験動物において例えば、LD50(集団の50%にとっての致死用量)とED50(集団の50%で治療に有効な用量)を求めるための標準的な医薬手続きによって明らかにすることができる。毒性効果と治療効果の間の用量比は治療指数であり、比LD50/ED50として表わすことができる。大きな治療指数を示す化合物が一般に適切である。毒性副作用を示す化合物を使用できるが、感染していない細胞に対する潜在的な損傷を最少にし、そのことによって副作用を減らすため、そのような化合物を病気組織の部位に向かわせる送達系の設計に注意する必要がある。
【0131】
細胞培養アッセイと動物研究から得られたデータを利用して、ヒトで用いる用量範囲の製剤にすることができる。このような化合物の用量は、毒性がほとんどないか、まったくないED50を含む循環濃度の範囲内であることが好ましい。用量は、利用する剤形と投与経路に応じてこの範囲内で変えることができる。本開示の方法で用いるどの化合物でも、治療に有効な用量は、最初は細胞培養アッセイから推測することができる。1回分の用量を動物モデルで製剤化し、細胞培養物で求められたIC50(例えば、症状の50%抑制を実現する試験化合物の濃度)を含む循環血漿濃度範囲を実現することができる。このような情報を利用して、ヒトで有用な用量をより正確に決めることができる。血漿中のレベルは、例えば、高性能液体クロマトグラフィによって測定することができる。
【0132】
本明細書に定義されているように、本開示の対象である組換えポリペプチドの「治療に有効な量」(例えば、有効な用量)は、選択されるポリペプチドに依存する。例えば、患者の体重1 kg当たり約0.001~0.1 mgの範囲の1回用量を投与することができる。いくつかの実施形態では、約0.005 mg/kg、0.01 mg/kg、0.05 mg/kgを投与することができる。いくつかの実施形態では600,000 IU/kgが投与される(IUはリンパ球増殖バイオアッセイによって求めることができ、インターロイキン-2(ヒト)に関する世界保健機関の第1国際標準によって確立された国際単位(IU)で表わされる)。用量は、PROLEUKIN(登録商標)に関して処方されるのと同様である可能性があるが、より少ないことが予想される。組成物は、1日に1回以上から1週間に1回以上投与することができる(その中には2日に1回が含まれる)。当業者は、いくつかの因子が、対象を効果的に治療するのに必要な用量とタイミングに影響を与える可能性があることを理解するであろう。そうした因子の非限定的な例に含まれるのは、疾患の重症度、以前の治療、対象の全体的な健康状態および/または年齢、存在する他の疾患である。さらに、本開示の対象となる組換えポリペプチドの治療に有効な量を用いた対象の治療は、1回だけの治療を含むこと、または一連の治療を含むことができる。いくつかの実施形態では、組成物は、5日間にわたって8時間ごとに投与された後、2~14日間(例えば9日間)の休止期間があり、その後、さらに5日間にわたって8時間ごとに投与される。
【0133】
一態様では、本明細書において、対象でIFN-γを媒介としたシグナル伝達を変化させる方法が提供され、この方法は、本明細書に開示されているポリペプチド、または本明細書に開示されている核酸分子の有効量を対象に投与することを含んでいる。
【0134】
別の一態様では、本明細書において、健康障害の治療を必要とする対象でその健康障害を治療する方法が提供され、この方法は、本明細書に開示されているポリペプチド、または本明細書に開示されている核酸分子の有効量を対象に投与することを含んでいる。
【0135】
いくつかの実施形態では、投与された組換えポリペプチドは、細胞表面における受容体の1つ以上の発現にバイアスを実質的に与える。したがっていくつかの実施形態では、本明細書に開示されているIFN-γポリペプチドバリアントを対象に投与すると、細胞表面における1つ以上の受容体(例えば、PD-L1、MHCクラスI分子、MHCクラスII(HLA-DR)、CD40、CD69、CD80、CD107a、およびCD86)の発現にバイアスを与えられる可能性がある。いくつかの実施形態では、投与されたポリペプチドは、PD-L1、MHCクラスI分子、MHCクラスII、CD80、CD86の1つ以上と、これらの任意の組み合わせの細胞表面における発現にバイアスを実質的に与える。いくつかの実施形態では、投与されるポリペプチドは、PD-L1とMHCクラスI分子の1個以上の細胞表面での発現にバイアスを実質的に与える。
【0136】
いくつかの実施形態では、投与された組換えポリペプチドは、対象でPD-L1の発現を上方調節する能力が、少なくとも1個のアミノ酸置換を欠く参照ポリペプチド(例えば、野生型IFN-γポリペプチド)と比べて低下している。したがっていくつかの実施形態では、本明細書に開示されているIFN-γポリペプチドバリアントを対象に投与すると、対象でPD-L1の発現を上方調節する能力を参照ポリペプチドと比べて低下させることができる可能性がある。PD-L1の発現を上方調節する能力は、少なくとも1個のアミノ酸置換を欠く参照ポリペプチド(例えば、野生型IFN-γポリペプチド)がPD-L1発現を上方調節する能力と比べて少なくとも約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%のいずれか、またはこれらの任意の2つの値の範囲、例えば、約20%~約60%(これら%値の間の値が含まれる)低下させることができる。したがっていくつかの実施形態では、本明細書に開示されているIFN-γポリペプチドバリアントを対象に投与すると、PD-L1発現を上方調節する能力を、参照ポリペプチドがPD-L1の発現を上方調節する能力と比べて少なくとも約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約100%のいずれか低下させることができる。いくつかの実施形態では、開示されているIFN-γポリペプチドバリアントを対象に投与すると、PD-L1発現を上方調節する能力を、参照ポリペプチドがPD-L1の発現を上方調節する能力と比べて約20%~約50%、約40%~約70%、約60%~約90%、約70%~約100%、約50%~約100%、約60%~約90%、または約70%~約80%のいずれかの範囲低下させることができる。
【0137】
いくつかの実施形態では、投与されたポリペプチドは、MHCクラスI分子(例えば、HLA-A、HLA-B、HLA-C)の1つ以上の発現を上方調節する能力を、少なくとも1個のアミノ酸置換を欠く参照ポリペプチド(例えば、野生型IFN-γポリペプチド)と比べて実質的に保持している。したがっていくつかの実施形態では、本明細書に開示されているIFN-γポリペプチドバリアントを対象に投与すると、HLA-A、HLA-B、HLA-Cの1つ、または2つ、または3つすべての発現を上方調節する能力を参照ポリペプチドと比べて保持できる可能性がある。いくつかの実施形態では、投与されたポリペプチドは、対象でPD-L1の発現を上方調節する能力が低下している一方で、1つ以上のMHCクラスI分子の発現を上方調節する能力は実質的に保持している。
【0138】
いくつかの実施形態では、ポリペプチドまたは核酸分子の投与は、対象におけるT細胞の活性を抑制しない。いくつかの実施形態では、投与された組換えポリペプチドは、腫瘍微小環境における抗腫瘍免疫を参照対象と比べて増強する。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されているIFN-γポリペプチドバリアントを対象に投与すると自然免疫反応を増強することができ、腫瘍の制御につながる。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されているIFN-γポリペプチドバリアントを対象に投与すると、適応免疫反応(例えば、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)および/またはプログラムされた細胞死受容体1(PD-1)のほか、そのリガンド(PD-L1であり、B7-H1とも呼ばれる)によって媒介される適応免疫反応)を増強することができる。いくつかの実施形態では、腫瘍微小環境における抗腫瘍免疫を、同様の条件下の治療されていない対象における抗腫瘍免疫と比べて少なくとも約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%のいずれか、またはこれらの任意の2つの値の範囲、例えば、約20%~約60%(これら%値の間の値が含まれる)増強することができる。したがっていくつかの実施形態では、本明細書に開示されているIFN-γポリペプチドバリアントを対象に投与すると、腫瘍微小環境における抗腫瘍免疫を、同様の条件下の治療されていない対象における抗腫瘍免疫と比べて少なくとも約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約100%のいずれか増強できる可能性がある。いくつかの実施形態では、開示されているIFN-γポリペプチドバリアントを対象に投与すると、腫瘍微小環境における抗腫瘍免疫を、同様の条件下の治療されていない対象における抗腫瘍免疫と比べて約20%~約50%、約40%~約70%、約60%~約90%、約70%~約100%、約50%~約100%、約60%~約90%、または約70%~約80%のいずれかの範囲増できる可能性がある。
【0139】
いくつかの実施形態では、対象は哺乳動物である。いくつかの実施形態では、哺乳動物はヒトである。いくつかの実施形態では、対象は、細胞表面受容体によって媒介される細胞シグナル伝達の抑制に関係する健康障害を持つか、その健康障害を持つことが疑われる。特定のいくつかの実施形態では、健康障害は、がんまたは慢性感染症である。
【0140】
システムまたはキット
本開示のシステムまたはキットには、ポリペプチド、IFN-γポリペプチドバリアント、核酸、ベクター、本明細書に開示されている医薬組成物のうちの任意の1つ以上のほか、組換えポリペプチド、IFN-γポリペプチドバリアント、核酸、ベクター、医薬組成物のうちの任意のものを個体に投与するのに用いる注射器(薬剤充填済み注射器が含まれる)および/またはカテーテル(薬剤充填済みカテーテルが含まれる)が含まれる。キットには、組換えポリペプチド、IFN-γポリペプチドバリアント、核酸、ベクター、本明細書に開示されている医薬組成物のうちの任意のもののほか、これらを投与するのに用いる注射器および/またはカテーテルを使用するための指示書面も含まれる。
【0141】
本明細書全体を通じて与えられているあらゆる上限値には、それよりも小さなあらゆる限界値が、そのより小さな限界値が本明細書に明示的に記載されているかのようにして含まれるものとする。本明細書全体を通じて与えられているあらゆる下限値には、それよりも大きなあらゆる限界値が、そのより大きな限界値が本明細書に明示的に記載されているかのようにして含まれる。本明細書全体を通じて与えられているあらゆる数値範囲には、このようにより広い数値範囲に含まれるより狭いあらゆる数値範囲が、そのようなより狭い数値範囲が本明細書に明示的に記載されているかのようにして含まれる。
【0142】
本開示で言及されているあらゆる刊行物と特許出願は、個々の刊行物または特許出願が具体的かつ、個別的に参照によって組み込まれていることが示されているかのように、参照によって本明細書に組み込まれている。
【0143】
本明細書で引用されているどの参考文献も、先行技術を構成すると認めるものではない。参考文献に関する議論は、その著者が何を主張しているかを述べているのであり、本発明の発明者は、引用されている文献の正確さと関連性に異議を申し立てる権利を有する。本明細書では多数の情報源(学術誌の論文、特許文書、教科書が含まれる)に言及されているが、この言及は、これら文献のどれかが本分野に共通の一般的知識を形成することを認めるものではないことが明確に理解されよう。
【0144】
本明細書に与えられている一般的な方法に関する議論は、説明だけを目的としている。代替法または代替物は、本開示を読んだ当業者にとっては明らかであろうゆえ、本出願の精神と範囲に含まれる。
【実施例0145】
追加の実施形態が、以下の実施例により詳しく開示されている。実施例は説明のために提示されているのであり、本開示または請求項の範囲を制限する意図はまったくない。