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  • 特開-印刷装置および印刷方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013798
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】印刷装置および印刷方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/525 20060101AFI20240125BHJP
   B41J 3/407 20060101ALI20240125BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240125BHJP
   B41J 2/21 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
B41J2/525
B41J3/407
B41J2/01 451
B41J2/01 401
B41J2/21
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022116169
(22)【出願日】2022-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【弁理士】
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】浅井 浩
【テーマコード(参考)】
2C056
2C262
【Fターム(参考)】
2C056EB13
2C056EB29
2C056EB45
2C056EB59
2C056EC72
2C056EE18
2C056HA41
2C262AA02
2C262AA10
2C262AA24
2C262AB13
2C262AC03
2C262DA07
2C262EA08
2C262GA29
(57)【要約】
【課題】いわゆる裏刷り印刷において、印刷媒体の透過性による影響を抑制し、高品質な印刷物を得ることができる、印刷装置および印刷方法を提供する。
【解決手段】この発明は、透明なシート状の印刷媒体に白色インクで白画像を印刷する白色印刷部と、印刷媒体に非白色インクで非白色画像を印刷する非白色印刷部と、白画像と非白色画像とが印刷媒体上で重なるように、白色印刷部および非白色印刷部を制御する制御部と、を備え、制御部が、印刷媒体の可視光に対する透過性に関連する透過性情報を取得する透過性情報取得部と、透過性情報に応じて、白画像を構成する白色インク量および非白色画像を構成する非白色インク量の少なくとも一方を調整するインク量調整部と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明なシート状の印刷媒体に白色インクで白画像を印刷する白色印刷部と、
前記印刷媒体に非白色インクで非白色画像を印刷する非白色印刷部と、
前記白画像と前記非白色画像とが前記印刷媒体上で重なるように、前記白色印刷部および前記非白色印刷部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記印刷媒体の可視光に対する透過性に関連する透過性情報を取得する透過性情報取得部と、
前記透過性情報に応じて、前記白画像を構成する白色インク量および前記非白色画像を構成する非白色インク量の少なくとも一方を調整するインク量調整部と、
を有する、ことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷装置であって、
前記インク量調整部は、前記透過性が低くなるにしたがって、前記白色インク量を減少させる一方で、前記非白色インク量を増大させる、印刷装置。
【請求項3】
請求項1に記載の印刷装置であって、
前記インク量調整部は、前記透過性が高くなるにしたがって、前記白色インク量を増加させる一方で、前記非白色インク量を減少させる、印刷装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の印刷装置であって、
前記制御部は、前記印刷媒体の種類毎のヘイズ値を予め規定した媒体情報データベースを記憶する記憶部と、前記印刷媒体の種類に関する媒体情報を取得する媒体情報取得部と、をさらに有し、
前記透過性情報取得部は、前記媒体情報取得部が取得した前記媒体情報に対応するヘイズ値を前記透過性情報として前記記憶部から読み出す、印刷装置。
【請求項5】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の印刷装置であって、
前記印刷媒体の透過率を測定する透過率測定部を備え、
前記透過性情報取得部は、前記透過率測定部が測定した透過率を透過性情報として取得する、印刷装置。
【請求項6】
透明なシート状の印刷媒体上で、白色インクで印刷された白画像と、非白色インクで印刷された非白色画像とを重ねる印刷方法であって、
前記印刷媒体の可視光に対する透過性に関連する透過性情報を取得する工程と、
前記透過性情報に応じて、前記白画像を構成する白色インク量および前記非白色画像を構成する非白色インク量の少なくとも一方を調整する工程と、
を備えることを特徴とする印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、透明なシート状の印刷媒体上で、白色インクで印刷された白色画像と、非白色インクで印刷された非白色画像とを重ねる、いわゆる裏刷り印刷に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、PET(ポリエチレンテレフタレート)、ナイロン、OPP(二軸延伸ポリプロピレン)、CPP(無軸延伸ポリプロピレン)等のフィルムあるいはセロファン等の軟包装材などの透明な印刷媒体上に白色画像と非白色画像とを重ねている。こうした印刷された印刷物は、印刷されていない側から印刷媒体越しでユーザに見られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-147267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記印刷媒体の種類により可視光に対する透過性が異なることがあり、それによって、印刷物の見え方が相違することがある。したがって、高画質な印刷物を行うためには、印刷媒体の透過性を考慮することが重要となる。しかしながら、従来、この点に十分な配慮がなされておらず、改善の余地があった。
【0005】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、いわゆる裏刷り印刷において、印刷媒体の透過性に影響されずに、高品質な印刷物を得ることができる、印刷装置および印刷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一の態様は、印刷装置であって、透明なシート状の印刷媒体に白色インクで白色画像を印刷する白色印刷部と、印刷媒体に非白色インクで非白色画像を印刷する非白色印刷部と、白色画像と非白色画像とが印刷媒体上で重なるように、白色印刷部および非白色印刷部を制御する制御部と、を備え、制御部は、印刷媒体の可視光に対する透過性に関連する透過性情報を取得する透過性情報取得部と、透過性情報に応じて、白色画像を構成する白色インク量および非白色画像を構成する非白色インク量の少なくとも一方を調整するインク量調整部と、を有する、ことを特徴としている。
【0007】
また、本発明の他の態様は、透明なシート状の印刷媒体上で、白色インクで印刷された白色画像と、非白色インクで印刷された非白色画像とを重ねる印刷方法であって、印刷媒体の可視光に対する透過性に関連する透過性情報を取得する工程と、透過性情報に応じて、白色画像を構成する白色インク量および非白色画像を構成する非白色インク量の少なくとも一方を調整する工程と、を備えることを特徴としている。
【0008】
このように構成された発明では、透明なシート状の印刷媒体上に白色画像と非白色画像とが重なるように印刷される。こうした印刷物を印刷されていない側から印刷媒体越しに印刷物を見る場合、印刷媒体の透過性の影響を受ける。そこで、本発明では、当該透過性に関連する透過性情報に応じて、白色インク量および非白色インク量の少なくとも一方が調整される。つまり、印刷媒体の透過性を配慮した印刷物が得られる。
【0009】
なお、本明細書において、「透明」とは、可視光に対して透過性を有する性質を意味し、無色透明および有色透明を含む概念である。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明によれば、いわゆる裏刷り印刷において、印刷媒体の透過性による影響を抑制し、高品質な印刷物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る印刷装置の第1実施形態を模式的に示す図である。
図2】第1実施形態で用いられる媒体情報データベースの一例を示す図である。
図3】本発明に係る印刷装置の第2実施形態を模式的に示す図である。
図4】第2実施形態で用いられる媒体情報データベースの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は本発明に係る印刷装置の第1実施形態を模式的に示す図である。また、図2は第1実施形態で用いられる媒体情報データベースの一例を示す図である。印刷装置1は、シートSを搬送方向Xに搬送する搬送部2と、本発明の「非白色画像」の一例であるカラー画像をシートSに印刷するカラー印刷部3と、本発明の「白色画像」の一例である白画像をシートSに印刷する下地印刷部4とを備える。このように本実施形態では、カラー印刷部3および下地印刷部4が、それぞれ本発明の「非白色印刷部」および「白色印刷部」の一例に相当している。
【0013】
シートSは、既述の透明なフィルムや透明な軟包装材で構成されており、可視光に対して透過性を有している。第1実施形態では、透過性を指標する値のひとつである「ヘイズ値」が5%以下の基材により構成されたシートSが用いられる。なお、「ヘイズ値」は、平行成分と拡散成分全てを含めた全光線透過率と平行成分を除いた拡散透過率の比であり、以下の式、
ヘイズ値=(拡散透過率)/(全光線透過率)×100
で示される値である。
【0014】
搬送部2は、ロール状に巻かれたシートSを繰り出す繰出ローラー21と、シートSをロール状に巻き取る巻取ローラー22とを有する。繰出ローラー21が繰り出したシートSを巻取ローラー22が巻き取ることで、シートSがロール・トゥ・ロールによって搬送方向Xに搬送される。
【0015】
カラー印刷部3は、搬送方向Xに搬送されるシートSに対してインクジェット方式でインクを吐出する複数(4個)の吐出ヘッド31k、31c、31m、31yを有する。これら吐出ヘッド31k、31c、31m、31yは、この順で搬送方向Xに並ぶ。吐出ヘッド31kは、ヘッド駆動部32kにより制御される。このヘッド駆動部32kは、装置全体を制御する制御部9からのブラック(K)用の印字データに受け取り、当該印字データを駆動パルス信号に変換して吐出ヘッド31kに与える。当該駆動パルス信号にしたがって吐出ヘッド31kが作動してブラック(K)のインクを吐出する。その他のインク色についても同様に、吐出ヘッド31c、31m、31yには、それぞれヘッド駆動部32c、32m、32yが接続され、印字データにしたがって、吐出ヘッド31cはシアン(C)のインクを吐出し、吐出ヘッド31mはマゼンタ(M)のインクを吐出し、吐出ヘッド31yはイエロー(Y)のインクを吐出する。こうして、カラー印刷部3は、吐出ヘッド31k、31c、31m、31yからプロセスカラー(K、C、M、Y)のインクを吐出することでカラー画像をシートSに印刷する。なお、吐出ヘッド31k、31c、31m、31yは、それぞれ大インク滴・中インク滴・小インク滴のサイズの異なる3通りのインク滴を吐出することが可能となっており、印字率や液滴量をフレキシブルに変更可能となっている。
【0016】
下地印刷部4は、カラー印刷部3の搬送方向Xの下流側で、搬送方向Xに搬送されるシートS上のカラー画像に対してインクジェット方式でインクを吐出する吐出ヘッド41wを有する。この吐出ヘッド41wは、カラー印刷部3の4個の吐出ヘッド31k、31c、31m、31yより搬送方向Xの下流側に配置されている。吐出ヘッド41wは当該吐出ヘッド41wを駆動するためのヘッド駆動部42wにより制御される。このヘッド駆動部42wは、制御部9からの白(W)用の印字データに受け取り、当該印字データを駆動パルス信号に変換して吐出ヘッド41wに与える。当該駆動パルス信号にしたがって吐出ヘッド41wが作動して白(W)のインクを吐出する。この吐出ヘッド41wも、大インク滴・中インク滴・小インク滴のサイズの異なる3通りのインク滴を吐出することが可能となっており、印字率や液滴量をフレキシブルに変更可能となっている。
【0017】
このように、本実施形態では、カラー画像を構成するカラーインク量および白画像を構成する白インク量を適宜調整可能となっている。そこで、本実施形態では、本願発明者による知見に基づきシートSのヘイズ値に応じてカラーインク量および白インク量を制御している。
【0018】
ここで、本願発明者による知見とは、可視光に対するシートSの透過性は基材によって相違する、例えば図2に示すように、シートSを構成する基材A~基材Cに応じてヘイズ値は大きく相違する場合、それによって以下のような光学的特性が現れる点である。例えば上記3種類のうち基材Cは、最も高いヘイズ値を有する。このことは、シートSは既に白濃度がオフセットされていることと等価であり、比較的少ない白インク量で高い白濃度(白の隠蔽性)を実現できることを意味している。その反面、カラー画像の濃度は上がり難い。このような傾向は、シートSを構成する基材のヘイズ値が高くなる、つまり透過性が低くなるに伴って顕著になる。そこで、シートSの透過性が低くなるのにしたがって、白色インク量を減少させるとともにカラーインク量を増大させるのが高品質な印刷物を得る上で好適であるといえる。
【0019】
逆に、例えば上記3種類のうち基材Aは、最も低いヘイズ値を有する。このことは、シートSの透過性は高く、比較的少ないカラーインク量でもシートS越しに視認されるカラー画像の濃度は高く、ユーザはカラー画像を明瞭に見ることが可能となっている。その反面、白の隠蔽性を確保するためには白インク量を増やす必要がある。このような傾向は、シートSを構成する基材のヘイズ値が低くなる、つまり透過性が高くなるに伴って顕著になる。そこで、シートSの透過性が高くなるのにしたがって、白色インク量を増やすとともにカラーインク量を減少させるのが高品質な印刷物を得る上で好適であるといえる。
【0020】
このような知見に基づき、本実施形態では、図1に示すように、制御部9は、例えば図2に示す媒体情報データベースを記憶部92に記憶している。また、制御部9は、シートSを構成する基材が変更される毎に、変更後の基材の種類に応じて各色の最大印字率を更新した上で、裏刷り印刷を実行するように構成されている。より詳しくは、図1に示すように、制御部9は、CPU(= Central Processing Unit)やRAM(=Random
Access Memory)等を有するコンピューターにより構成される演算処理部91と、ハードディスクドライブなどの記憶部92とが設けられている。演算処理部91は、予め記憶部92に記憶されている印刷プログラムを適宜読み出し、RAM(図示省略)に展開し、ユーザから印刷ジョブに基づいて印刷処理を実行する。
【0021】
印刷ジョブには、シートSに印刷すべき画像(以下「入力画像」という)が含まれている。演算処理部91は、印刷ジョブからシートSを構成する基材の種類を本発明の「媒体情報」の一例として求める。そして、演算処理部91は、媒体情報データベースを参照して当該基材のヘイズ値をシートSの可視光に対する透過性に関連する透過性情報として特定する。このように、演算処理部91は、本発明の「媒体情報取得部」および「透過性情報取得部」として機能する。さらに、演算処理部91はシートSを構成する基材のヘイズ値に対応する各色の最大印字率を取得し、それらに基づいて各色の印字データを作成する。
【0022】
このように、各色の最大印字率は、本来的には、基材の種類(媒体情報)からヘイズ値(透過性情報)を求める第1ステップと、第1ステップで得られたヘイズ値から各色の最大印字率を求める第2ステップとの2段階で求められる。しかしながら、本実施形態では図2のテーブルを参照することで、各色の最大印字率を迅速に求めることが可能となっている。つまり、図2に示すように、シートSを構成する基材A~C毎のヘイズ値、白(White)インクの最大印字率、黒(Black)インクの最大印字率、シアン(Cyan)インクの最大印字率、マゼンタ(Magenta)インクの最大印字率、およびイエロー(Yellow)インクの最大印字率を相互に関連付けながらテーブル形式でまとめた媒体情報データベースを予め作成している。したがって、演算処理部91は、シートSを構成する基材の種類から各色の最大印字率を直接的に求めている。したがって、図2の媒体情報データベースを予め準備しておくことで、上記した2段階ステップで各色の最大印字率を取得するよりも、迅速に取得することができ、処理速度を高めることができる。
【0023】
また、演算処理部91は、印刷ジョブに含まれる入力画像に対して分班処理や網掛け処理などを施して各色の印字データを作成する印字データ作成部として機能する。ただし、本実施形態では、単に印字データを作成するのではなく、シートSを構成する基材のヘイズ値を考慮している。つまり、演算処理部91は、当該ヘイズ値に対応する最大印字率になるように入力画像の画像値または網掛け処理における閾値(閾値マトリックスの値)を補正して各色の印字データを作成する。特に、本実施形態では、吐出ヘッド31k、31c、31m、31y、31wは、それぞれ大インク滴・中インク滴・小インク滴のサイズの異なる3通りのインク滴を吐出することが可能となっている、いわゆる多値出力が可能なヘッドであるため、例えばインク量を多くするために大きい目のドットの印字率が高くなるように、演算処理部91は制御する。このように、演算処理部91は、図1に示すように、インク量調整部を備える印字データ作成部として機能する。
【0024】
したがって、上記のように構成された印刷装置1では、演算処理部91は、シートSの透過性が低くなる(ヘイズ値が高くなる)のにしたがって、下地印刷部4から吐出される白色インク量を減少させるとともにカラー印刷部3から吐出されるカラーインク量を増大させる。一方、演算処理部91は、シートSの透過性が高くなる(ヘイズ値が低く)のにしたがって、下地印刷部4から吐出される白色インク量を増やすとともにカラー印刷部3から吐出されるカラーインク量を減少させる。その結果、いわゆる裏刷り印刷において、シートSの透過性による影響を抑制し、高品質な印刷物が得られる。
【0025】
上記した第1実施形態では、シートSが本発明の「シート状の印刷媒体」の一例に相当している。また、下地印刷部4およびカラー印刷部3がそれぞれ本発明の「白色印刷部」および「非白色印刷部」の一例に相当している。また、プロセスカラー(K、C、M、Y)のインクおよびインク量がそれぞれ本発明の「非白色インク」および「非白色インク量」の一例に相当している。また、シートSを構成する基材の種類が本発明の「印刷媒体の種類」の一例に相当している。
【0026】
図3は本発明に係る印刷装置の第2実施形態を模式的に示す図である。また、図4は第2実施形態で用いられる媒体情報データベースの一例を示す図である。第2実施形態が第1実施形態と大きく相違する点は、シートSの透過率を本発明の「透過性情報」として測定する透過率測定部5を有する点と、媒体情報データベースの構成とである。なお、その他の構成は基本的に第1実施形態と同一である。したがって、以下においては、相違点を中心に説明し、同一構成については同一符号を付して構成説明を省略する。
【0027】
第2実施形態では、図4に示すように、基材の種類およびヘイズ値の代わりに、透過率がリストアップされている。つまり、透過率と最大印字率との関係をテーブル形式でまとめた媒体情報データベースが記憶部92に記憶されている。
【0028】
また、シートSの搬送方向Xにおいて繰出ローラー21とカラー印刷部3との間に透過率測定部5が設けられている。透過率測定部5は、それぞれシートSの幅方向Y(搬送方向Xに直交する)に平行なライン光源51とラインセンサー52とを有し、ライン光源51とラインセンサー52とでシートSが挟まれる。この透過率測定部5は、カラー画像の印刷前にライン光源51から射出されてシートSを透過した可視光の強度をラインセンサー52で検出することで、シートSの可視光に対する透過率を測定している。この測定結果、つまり実測透過率が制御部9に出力される。
【0029】
制御部9の演算処理部91は、受け取った実測透過率と、図4の媒体情報データベースとに基づき各色の最大印字率を取得する。そして、第1実施形態と同様に、演算処理部91は、シートSの透過性が低くなる(実測透過率が低くなる)のにしたがって、下地印刷部4から吐出される白色インク量を減少させるとともにカラー印刷部3から吐出されるカラーインク量を増大させる。一方、演算処理部91は、シートSの透過性が高くなる(実測透過率が高くなる)のにしたがって、下地印刷部4から吐出される白色インク量を増やすとともにカラー印刷部3から吐出されるカラーインク量を減少させる。その結果、いわゆる裏刷り印刷において、シートSの透過性による影響を抑制し、高品質な印刷物が得られる。
【0030】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態では、インク量調整部として機能する演算処理部91は、透過性情報に応じて、白画像を構成する白色インク量およびカラー画像を構成するカラーインク量の両方を調整しているが、少なくとも一方を調整するように構成してもよい。
【0031】
また、上記第2実施形態では、印刷前のシートSの透過率を測定しているが、透過率の代わりに、ヘイズ値を測定してもよい。
【0032】
また、シートSの色は無色透明に限られず、上述の通り有色透明でも良い。
【0033】
非白色画像を印刷するために使用可能な非白色インクの色は、上述のプロセスカラーK、C、M、Yに限られず、例えば他の特色インクを用いてもよい。
【0034】
また、吐出ヘッド31k、31c、31m、31y、41wのそれぞれが吐出可能なインク滴の大きさは上記の3通りに限られない。この際、インク滴の大きさのバリエーションに応じて適宜変更して用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、透明なシート状の印刷媒体上で、白色インクで印刷された白色画像と、非白色インクで印刷された非白色画像とを重ねる、いわゆる裏刷り印刷技術の全般に適用可能である。
【符号の説明】
【0036】
1…印刷装置
2…搬送部
3…カラー印刷部(非白色印刷部)
4…下地印刷部(白色印刷部)
5…透過率測定部
9…制御部
91…演算処理部
S…シート(印刷媒体)
X…搬送方向
図1
図2
図3
図4