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特開2024-137997自動養蚕システム、自動養蚕方法、プログラム及び記憶媒体
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137997
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】自動養蚕システム、自動養蚕方法、プログラム及び記憶媒体
(51)【国際特許分類】
   A01K 67/04 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
A01K67/04 302B
A01K67/04 A
A01K67/04 309
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024113891
(22)【出願日】2024-07-17
(62)【分割の表示】P 2021506782の分割
【原出願日】2020-03-18
(31)【優先権主張番号】P 2019049552
(32)【優先日】2019-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】517334883
【氏名又は名称】紫紘株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100139103
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 卓志
(74)【代理人】
【識別番号】100139114
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 貞嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100214260
【弁理士】
【氏名又は名称】相羽 昌孝
(72)【発明者】
【氏名】野中 明
(72)【発明者】
【氏名】八木 良樹
(72)【発明者】
【氏名】梶浦 善太
(57)【要約】
【課題】 無菌状態で蚕を飼育可能であると共に、養蚕の全ての工程を自動化できる自動養蚕システムを提供する。
【解決手段】 本発明の一態様の自動養蚕システムは、集団飼育容器に卵を自動で供給する卵供給手段、集団飼育容器に飼料を自動で供給する飼料供給手段、蚕の育成状態を自動で判定する育成状態判定手段、及び、前記育成状態判定手段によって判定された所定の育成状態の蚕を集団飼育容器から自動でピックアップするピックアップ手段を備えることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
集団飼育容器に卵を自動で供給する卵供給手段、
集団飼育容器に飼料を自動で供給する飼料供給手段、
蚕の育成状態を自動で判定する育成状態判定手段、及び、
前記育成状態判定手段によって判定された所定の育成状態の蚕を集団飼育容器から自動でピックアップするピックアップ手段を備えることを特徴とする自動養蚕システム。
【請求項2】
前記卵は消毒され、
前記飼料は殺菌処理されており、かつ、
前記各手段は除菌ないし無菌環境に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の自動養蚕システム。
【請求項3】
前記飼料は乾燥されたパウダー、副飼料及び水分を混合すると共に、
蚕の成長に応じて所望の形状ないし大きさに成形されたものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の自動養蚕システム。
【請求項4】
前記卵供給手段は、消毒液槽及び吸引部材を備えており、
前記卵は前記消毒液槽に投入され、
前記消毒液槽の中の卵は前記吸引部材により吸引され、前記集団飼育容器の所定の場所に載置されることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の自動養蚕システム。
【請求項5】
前記飼料供給手段は、蚕の成長に応じて、前記集団飼育容器の異なる位置に飼料を供給することを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の自動養蚕システム。
【請求項6】
前記飼料供給手段は、蚕の成長に応じて、配合比の異なる飼料を供給することを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の自動養蚕システム。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の自動養蚕システムの各手段を動作させるための演算を実行するためのプログラム。
【請求項8】
請求項7に記載のプログラムを記憶したことを特徴とする記憶媒体。
【請求項9】
集団飼育容器に卵を自動で供給するステップ、
集団飼育容器に飼料を自動で供給するステップ、
集団飼育容器から個別飼育容器に蚕を自動で移動させるステップ、
個別飼育容器から繭を自動で取り出すステップ、
集団飼育容器及び/又は個別飼育容器を飼育棚に自動で収納すると共に、飼育棚から自動で取り出すステップ、及び、
前記各手段の間で集団飼育容器及び/又は個別飼育容器を自動で移動させるステップ、を備えることを特徴とする自動養蚕方法。
【請求項10】
集団飼育容器に卵を自動で供給するステップ、
集団飼育容器に飼料を自動で供給するステップ、
蚕の育成状態を自動で判定するステップ、及び、
前記蚕の育成状態を自動で判定するステップによって判定された所定の育成状態の蚕を集団飼育容器から自動でピックアップするステップを備えることを特徴とする自動養蚕方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動養蚕システム、自動養蚕方法、プログラム及び記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
蚕を飼育するための蚕飼育容器が知られている。蚕飼育容器内には、蚕および餌が収容される。蚕飼育容器内の蚕は、蚕飼育容器内の餌を食べて成長する。
【0003】
蚕を飼育する場合、一般的には、桑の葉等の餌を、毎日(蚕の眠期を除く)、蚕飼育容器に供給する必要がある。蚕の幼虫期は約25日であり、幼虫期に4回脱皮する。そして、蚕は、最終齢の5齢期に、体内で絹蛋白を合成して、約1200mの糸を吐き、当該糸によって繭を作る。
【0004】
関連する技術として、特許文献1には、養蚕方法が記載されている。特許文献1に記載の養蚕方法では、平板状のパレットにシート状の養蚕用飼料が敷かれ、その上にネットが配設される。ネットは、蚕が脱皮をするときに掴まるために利用される。
【0005】
従来から養蚕の省力化の試みが紹介されている。特許文献2には、人工飼料を用いた蚕の飼育方法であって、複数段に重なられた飼育トレイの積み替えや、蚕を飼育する飼育ネットの移動をアーム部にて行うことにより、作業を簡略する蚕の飼育方法が記載されている。また、特許文献1には無菌室での飼育での蚕の飼育を行う場合には、作業工程を簡略することで、外部からの雑菌の侵入や室内での落下菌の影響を少なくすることが記載されている。
【0006】
特許文献3には、大量の蚕を飼育する際に省力化を図るため、複数段の飼育棚に収容された飼育ケージ10を駆動設備によって循環移動させたり、作業口まで自動で搬送させたりする蚕の飼育装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004-129546号公報
【特許文献2】特許第3657326号公報
【特許文献3】特許第6134021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1では、蚕の飼育の大部分は、人手によって行われている。このため、蚕の飼育に要するコストが高い。また、蚕の飼育の大部分が人手によって行われることにより、蚕の飼育環境に雑菌が混入するリスクが相対的に高い。
【0009】
また、特許文献2に記載の蚕の飼育方法では、人工飼料を入れた飼育トレイの積み替えや飼育ネットの移動にアームを用いることができるが、飼料の供給や状族装置の設置等は自動化できておらず、養蚕の全ての工程を自動化するものではない。
【0010】
そして、特許文献3に記載の蚕の飼育装置においては、飼育ケージ10を駆動設備によって循環移動させたり、作業口まで自動で搬送させたりするものであるが、ビニール袋の着脱、飼育ケージの交換等は自動化できておらず、養蚕の全ての工程を自動化するものではない。
【0011】
本発明の目的は、無菌状態で蚕を飼育可能であると共に、養蚕の全ての工程を自動化できる自動養蚕システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明にかかる天然蛋白質原料精製方法は、
絹糸虫の虫体を粉砕し、第1取得目的物質及び第2取得目的物質を有する絹糸腺を含む処理液を製造する前処理と、
前記前処理した前記処理液から比重分離により前記絹糸腺を主とする沈降物を取得し、前記絹糸腺以外の虫体各部分を除去する第1分離処理と、
前記第1分離処理で取得した前記沈降物から前記第2取得目的物質を溶出させた水溶液を得、前記第1取得目的物質を主に含む絹糸腺内容物、及び、前記第2取得目的物質を含む水溶液を別々に取得する第2分離処理と、
前記第2分離処理で取得した前記第1取得目的物質を主に含む絹糸腺内容物から前記第1取得目的物質を取得する第1取得目的物質回収処理と、
前記第2分離処理で取得した前記第2取得目的物質を含む水溶液から前記第2取得目的物質を取得する第2取得目的物質回収処理と、
を有する
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る自動養蚕システムによれば、無菌状態で蚕を飼育可能であると共に、養蚕の全ての工程を自動化できる自動養蚕システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1の実施形態における蚕飼育システムを模式的に示す図である。
図2】第1の実施形態における蚕飼育方法の一例を示すフローチャートである。
図3】第2の実施形態における蚕飼育システムを模式的に示す図である。
図4】第2の実施形態における蚕飼育システムを模式的に示す概略斜視図である。
図5】餌供給装置の一例を模式的に示す図である。
図6】第1飼育容器の一例を模式的に示す概略斜視図である。
図7】仕切り部材移動装置の一例を模式的に示す図である。
図8】第1飼育工程の一例を示すフローチャートである。
図9】第1飼育工程の一例を模式的に示す図である。
図10】第1飼育容器の一例を模式的に示す概略斜視図である。
図11】卵移載装置の一例を模式的に示す概略断面図である。
図12】卵移載装置の一例を模式的に示す概略正面図である。
図13】第2の実施形態における蚕飼育システムを模式的に示す図である。
図14】第2飼育容器の一例を模式的に示す概略斜視図である。
図15】第2飼育容器の一例を模式的に示す概略斜視図である。
図16】第2の実施形態における蚕飼育方法の一例を示すフローチャートである。
図17】実施形態における蚕飼育システムにおいて採用可能な蚕移載装置の一例を模式的に示す図である。
図18】システム全体の平面図である。
図19】第1コンテナの平面図である。
図20】第2コンテナの平面図である。
図21図20の側面図である。
図22】集団飼育容器の写真である。
図23】仕切部材の写真である。
図24】個別飼育容器から仕切部材が突出している場合の写真である。
図25】個別飼育容器から繭を取り出す際の写真である。
図26】ロボットアームの写真である。(アーム右側に糞回収容器、アーム手前に繭回収容器)
図27】カメラの写真である。
図28】繭ピックアップ手段の写真である。
図29】飼育棚の写真である。
図30】飼育容器自動収納手段のレールの写真である。
図31】飼育容器自動収納手段の写真である。
図32】漏斗移動方式の説明図である。
図33】シャッター付き漏斗の説明図である。
図34】升目移動方式の説明図である。
図35】波型升目の説明図である。
図36】網型升目の説明図である。
図37】蚕分散方式の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施形態に係る自動養蚕システム、自動養蚕方法、プログラム及び記憶媒体について説明する。但し、以下に示す実施形態は本発明の技術思想を具体化するための自動養蚕システム、自動養蚕方法、プログラム及び記憶媒体を例示するものであって、本発明をこれらに特定するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものにも等しく適用し得るものである。なお、以下の説明において、同じ機能を有する部材、部位については、同一の符号が付され、同一の符号が付されている部材、部位について、繰り返しの説明は省略される。
【0016】
[第1の実施形態]
図1および図2を参照して、第1の実施形態における蚕飼育システム1Aおよび蚕飼育方法について説明する。図1は、第1の実施形態における蚕飼育システム1Aを模式的に示す図である。図2は、第1の実施形態における蚕飼育方法の一例を示すフローチャートである。
【0017】
第1の実施形態における蚕飼育システム1Aは、第1飼育容器C1から第2飼育容器C2に蚕を移載する蚕移載装置10と、第2飼育容器C2を搬送する第2飼育容器搬送装置20とを具備する。
【0018】
第1飼育容器C1の内部では、複数の蚕Aが集団飼育されることが好ましい。換言すれば、第1飼育容器C1は、飼育室内で複数の蚕を集団飼育するための集団飼育用容器であることが好ましい。第1飼育容器C1内では、例えば、10個以上1000個以下、30個以上500個以下、あるいは、50個以上300個以下の蚕が集団飼育される。1個の第1飼育容器C1における飼育領域の面積(平面視における面積)は、例えば、100cm以上10000cm以下、400cm以上4900cm以下、900cm以上2500cm以下である。第1飼育容器C1は、例えば、上方が開放された容器である。
【0019】
第2飼育容器C2の内部では、複数の蚕Aが個別飼育されることが好ましい。換言すれば、第2飼育容器C2は、各飼育室内で1個の蚕を個別飼育するための個別飼育用容器であることが好ましい。図1に記載の例では、第2飼育容器C2は、互いに隔離された複数の飼育室SPを含む。図1に記載の例では、第2飼育容器C2は、第1飼育室SP1および第2飼育室SP2を含み、第1飼育室SP1と第2飼育室SP2とは、互いに隔離されている。第2飼育容器C2が備える飼育室SPの数は、例えば、10個以上、30個以上、あるいは、50個以上である。
【0020】
各飼育室SPは、独立した筒状容器によって規定されていてもよいし、ハウジング部材内(例えば、容器内または枠内)に配置された仕切壁によって規定されていてもよい。換言すれば、第2飼育容器C2は、複数の筒状容器の集合体であってもよいし、外壁を規定するハウジング部材の内側に複数の仕切壁が配置されたものであってもよい。
【0021】
蚕移載装置10は、第1飼育容器C1から第2飼育容器C2に蚕Aを移載する。
【0022】
図1に記載の例では、蚕移載装置10は、各飼育室SPに1個のみの蚕Aが収容されるように(例えば、第1飼育室SP1に1個のみの蚕が収容され、第2飼育室SP2に1個のみの蚕が収容されるように)、第1飼育容器C1から第2飼育容器C2に蚕Aを移載する。
【0023】
蚕移載装置10は、例えば、蚕保持部材11と、蚕保持部材11を第1飼育容器C1から第2飼育容器C2に向けて移動させる保持部材移動装置12とを備える。蚕移載装置10は、蚕を撮像可能なカメラ13を備えていてもよい。
【0024】
蚕保持部材11は、蚕を保持することが可能な部材である。蚕保持部材11は、第1把持部11aと第2把持部11bとを備えていてもよい。この場合、第1把持部11aと第2把持部11bとの間の間隔を小さくすることにより、蚕保持部材11は、1個の蚕を把持することが可能である。代替的に、あるいは、付加的に、蚕保持部材11は、蚕の表皮を吸着可能な真空吸着部11cを備えていてもよい。
【0025】
保持部材移動装置12は、例えば、蚕保持部材11の位置を三次元的に変更可能な装置である。保持部材移動装置12は、例えば、ロボットアームである。
【0026】
カメラ13は、制御装置30からの制御指令に基づいて、第1飼育容器C1内の複数の蚕Aを撮像する。カメラ13によって取得された画像データは、有線または無線によって、制御装置30に送信される。制御装置30は、画像データに基づいて、複数の蚕のうちの各々の蚕の位置および姿勢を判定する。制御装置30は、判定結果に基づいて、保持部材移動装置12および蚕保持部材11を制御する。制御装置30によって制御された蚕保持部材11は、一個の蚕を保持する。その後、制御装置30は、保持部材移動装置12を制御して、蚕保持部材11を第2飼育容器C2のうちの1つの飼育室SP(例えば、第1飼育室SP1)に向けて移動させる。制御装置30は、蚕保持部材11を制御して、蚕保持部材11による蚕の保持を解除する。その結果、蚕は、第2飼育容器C2のうちの1つの飼育室SP(例えば、第1飼育室SP1)に収容される。
【0027】
第1飼育容器C1内の蚕を、第2飼育容器C2のうちの1つの飼育室SPに移載する動作は繰り返し実行される。例えば、第1飼育室SP1に、1つの蚕が収容された後、カメラ13は、制御装置30からの制御指令に基づいて、第1飼育容器C1内の複数の蚕を、再度撮像する。カメラ13によって取得された画像データは、制御装置30に送信される。制御装置30は、画像データに基づいて、複数の蚕のうちの各々の蚕の位置および姿勢を判定する。制御装置30は、判定結果に基づいて、保持部材移動装置12および蚕保持部材11を制御する。制御装置30によって制御された蚕保持部材11は、一個の蚕を保持する。その後、制御装置30は、保持部材移動装置12を制御して、蚕保持部材11を第2飼育容器C2のうちの1つの飼育室SP(例えば、第2飼育室SP2)に向けて移動させる。制御装置30は、蚕保持部材11を制御して、蚕保持部材11による蚕の保持を解除する。その結果、蚕は、第2飼育容器C2のうちの1つの飼育室SP(例えば、第2飼育室SP2)に収容される。
【0028】
第2飼育容器搬送装置20は、蚕移載領域ARから第2飼育容器保管領域AR2に、第2飼育容器C2を移動させる。蚕移載領域ARは、第1飼育容器C1から第2飼育容器C2への蚕Aの移載が行われる領域である。他方、第2飼育容器保管領域AR2は、第2飼育容器C2が保管される領域である。図1に記載の例では、第2飼育容器保管領域AR2に棚T2が配置されており、当該棚T2に、第2飼育容器C2が保管されている。
【0029】
図1に記載の例では、棚T2は、第2飼育容器保管領域AR2に設置された固定棚である。また、第2飼育容器搬送装置20は、第2飼育容器C2を、蚕移載領域ARと第2飼育容器保管領域AR2との間で搬送する。代替的に、第2飼育容器搬送装置20は、第2飼育容器C2が載置された棚T2を、蚕移載領域ARと第2飼育容器保管領域AR2との間で搬送してもよい。換言すれば、棚T2は、移動棚であってもよい。
【0030】
第2飼育容器C2が、第2飼育容器保管領域AR2にあるとき、第2飼育容器C2内の蚕は、餌Fを食べて成長する。
【0031】
第2飼育容器C2が、第2飼育容器保管領域AR2にあるとき、第2飼育容器C2内の蚕は、餌Fを食べて成長する。
【0032】
第2飼育容器搬送装置20は、ベルトコンベヤ、ローラコンベヤ等のコンベヤを含んでいてもよい。代替的に、あるいは、付加的に、第2飼育容器搬送装置20は、棚T2に第2飼育容器C2を移載する移載装置付きの搬送装置(例えば、スタッカークレーン)を含んでいてもよい。第2飼育容器搬送装置20は、制御装置30からの指令に基づいて、第2飼育容器C2を、第2飼育容器保管領域AR2中の所定の保管位置(複数の保管位置のうち空き状態の保管位置)に搬送する。第2飼育容器搬送装置20は、例えば、モータによって駆動される。
【0033】
制御装置30は、蚕移載装置10、および/または、第2飼育容器搬送装置20の動作を制御する。制御装置30が有するコンピュータの数は、1台であってもよいし、複数台であってもよい。換言すれば、1台のコンピュータが制御装置30として機能してもよいし、複数台のコンピュータが連携することにより複数のコンピュータが制御装置30として機能してもよい。
【0034】
第1の実施形態における蚕飼育システム1は、蚕移載装置10、および、第2飼育容器搬送装置20を含む。よって、第1飼育容器C1から第2飼育容器C2への蚕の移載と、蚕が移載された第2飼育容器C2の移動とを、自動化することができる。その結果、蚕の飼育が効率化される。また、蚕の移載と、第2飼育容器C2の移動とが、手作業で行われないことにより、実質的に、蚕の飼育環境に雑菌が混入することがない。 第1の実施形態において、蚕飼育システム1Aは、第1飼育容器保管領域AR1から蚕移載領域ARに、第1飼育容器C1を搬送する第1飼育容器搬送装置40を備えていてもよい。第1飼育容器搬送装置40は、第2飼育容器搬送装置20とは別の搬送装置であることが好ましい。第1飼育容器搬送装置40は、例えば、ベルトコンベヤ、ローラコンベヤ等のコンベヤを含む。第1飼育容器搬送装置40は、棚T1に第1飼育容器C1を移載する移載装置付きの搬送装置を含んでいてもよい。第1飼育容器搬送装置40は、例えば、モータによって駆動される。
【0035】
蚕飼育システム1Aが第1飼育容器搬送装置40を備える場合、蚕移載領域ARへの第1飼育容器C1の移動を自動化することができる。その結果、蚕の飼育が更に効率化される。また、第1飼育容器C1の移動が、手作業で行われないことにより、実質的に、蚕の飼育環境に雑菌が混入することがない。
【0036】
図1に記載の例では、第1飼育容器保管領域AR1に棚T1が配置されており、当該棚T1に、第1飼育容器C1が保管されている。第1飼育容器C1が、第1飼育容器保管領域AR1にあるとき、第1飼育容器C1内の蚕は、餌を食べて成長する。
【0037】
第1の実施形態において、第1飼育容器保管領域AR1は、無菌雰囲気AT内に配置されていることが好ましい。また、第2飼育容器保管領域AR2は、無菌雰囲気AT内に配置されていることが好ましい。同様に、蚕移載領域ARは、無菌雰囲気AT内に配置されていることが好ましい。なお、本明細書において、無菌雰囲気ATとは、外部と実質的に隔離された空間内の雰囲気であって、微生物の存在量が外部より少なくなるように設定された雰囲気を意味する。無菌雰囲気ATにおける清浄度は、ISO基準(ISO14644-1:2015)で、例えば、Class6からClass8までの清浄度、より好ましくは、Class7以下の清浄度である。なお、Class6の清浄度は、米国連邦規格FED-STD 209Eのクラス1000相当の清浄度であり、Class7の清浄度は、米国連邦規格FED-STD 209Eのクラス10000相当の清浄度であり、Class8の清浄度は、米国連邦規格FED-STD 209Eのクラス100000相当の清浄度である。
【0038】
(蚕飼育方法) 続いて、第1の実施形態における蚕飼育方法の一例について説明する。
【0039】
第1ステップST1において、第1飼育容器C1内で、複数の蚕が飼育される。第1ステップST1は、第1蚕飼育工程である。第1蚕飼育工程では、例えば、複数の蚕Aが、第1飼育容器C1内で集団飼育される。
【0040】
第2ステップST2において、第1飼育容器C1内の複数の蚕が、第2飼育容器C2に移載される。当該移載は、蚕移載装置10を用いて実行される。
【0041】
第2ステップST2は、第1飼育容器C1を蚕移載領域ARに搬送する第1搬送工程と、第2飼育容器C2を蚕移載領域ARに搬送する第2搬送工程と、蚕移載装置10を用いて、複数の蚕Aを、第1飼育容器C1から第2飼育容器C2に移載する移載工程とを有していてもよい。
【0042】
第1搬送工程は、例えば、第1飼育容器搬送装置40を用いて実行される。第2搬送工程は、例えば、第2飼育容器搬送装置20を用いて実行される。第2搬送工程は、第1搬送工程よりも前に実行されてもよいし、第1搬送工程より後に実行されてもよいし、第1搬送工程と同時に実行されてもよい。
【0043】
図1に記載の例では、第2飼育容器C2は、個別飼育用の複数の飼育室SPを含む。この場合、第2ステップST2(蚕移載工程)は、第1飼育容器C1内で飼育された複数の蚕Aを、複数の飼育室SPに、それぞれ移載することを含んでいてもよい。図1に記載の例では、蚕移載装置10が、第1飼育容器C1内で集団飼育された複数の蚕Aを、個別飼育用の複数の飼育室SPに、それぞれ移載する。このため、蚕の飼育環境に雑菌を混入させることなく、集団飼育から個別飼育への切り替えを、円滑に実行することが可能である。なお、蚕移載装置10によって実行される蚕移載工程(すなわち、第1飼育容器C1から第2飼育容器C2に蚕Aを移載する蚕移載工程)は、第1飼育容器C1内の蚕を、第2飼育容器C2内の餌支持部PL(図14を参照。)に移載することを含んでいてもよい。代替的に、蚕移載装置10によって実行される蚕移載工程(すなわち、第1飼育容器C1から第2飼育容器C2に蚕Aを移載する蚕移載工程)は、第1飼育容器C1内の蚕を、第2飼育容器C2外の餌支持部PL(図5を参照。)に移載することと、蚕Aが支持された餌支持部PLを第2飼育容器C2内に挿入することとを含んでいてもよい。
【0044】
第2ステップST2の実行後、複数の蚕Aが移載された第2飼育容器C2は、蚕移載領域ARから第2飼育容器保管領域AR2に搬送される。当該搬送は、例えば、第2飼育容器搬送装置20を用いて実行される。
【0045】
第3ステップST3において、第2飼育容器C2内で、複数の蚕Aが飼育される。第3ステップST3は、第2蚕飼育工程である。第2蚕飼育工程では、例えば、複数の蚕Aの各々が、独立した飼育室SP内で個別飼育される。
【0046】
第1の実施形態における蚕飼育方法では、第1飼育容器C1から第2飼育容器C2への蚕の移載が、蚕移載装置10によって行われる。よって、第1飼育容器C1から第2飼育容器C2への蚕の移載を自動化することができる。その結果、蚕の飼育が効率化される。また、蚕の移載が蚕移載装置10によって行われるため、実質的に、蚕の飼育環境に雑菌が混入しない。
【0047】
また、第1の実施形態において、第1飼育容器C1内で、複数の蚕Aが集団飼育され、第2飼育容器C2内で、複数の蚕Aの各々が個別飼育される場合には、日齢の小さな蚕を小スペースで効率的に集団飼育することができ、かつ、日齢の大きな蚕をストレスが抑制された状態で個別飼育することができる。よって、第1の実施形態では、蚕の飼育の省スペース化と、蚕の飼育の効率化と、蚕のストレス抑制とを両立することができる。さらに、個別飼育用の飼育室内で、蚕に繭を形成させる場合、繭が形成される場所を局在化することができる。この場合、繭の回収(例えば、ロボットによる繭の回収)が容易となる。
【0048】
[第2の実施形態]
図3乃至図16を参照して、第2の実施形態における蚕飼育システム1B、および、蚕飼育方法について説明する。図3は、第2の実施形態における蚕飼育システム1Bを模式的に示す図(コンテナ2の内部の様子を模式的に示す概略平面図)である。図4は、第2の実施形態における蚕飼育システム1Bを模式的に示す概略斜視図である。図5は、餌供給装置60の一例を模式的に示す図である。図6は、第1飼育容器C1の一例を模式的に示す概略斜視図である。図7は、仕切り部材移動装置70の一例を模式的に示す図である。図8は、第1飼育工程の一例を示すフローチャートである。図9は、第1飼育工程の一例を模式的に示す図である。図10は、第1飼育容器C1の一例を模式的に示す概略斜視図である。図11は、卵移載装置80の一例を模式的に示す概略断面図である。図12は、卵移載装置80の一例を模式的に示す概略正面図である。図13は、第2の実施形態における蚕飼育システム1Bを模式的に示す図である。図14は、第2飼育容器C2の一例を模式的に示す概略斜視図である。図15は、第2飼育容器C2の一例を模式的に示す概略斜視図である。図16は、第2の実施形態における蚕飼育方法の一例を示すフローチャートである。
【0049】
第2の実施形態における蚕飼育システム1Bは、蚕飼育システム1Bを構成する複数の装置のうちの少なくとも一つが配置されるコンテナ2を含む。第2の実施形態では、第1の実施形態と異なる点を中心に説明し、第1の実施形態において説明済みの事項についての繰り返しとなる説明は省略する。したがって、第2の実施形態において、明示的に説明をしなかったとしても、第1の実施形態において説明済み事項を第2の実施形態に適用できることは、言うまでもない。このことは、他の実施形態においても同様である。
【0050】
蚕飼育システム1Bは、例えば、蚕移載装置10、第1飼育容器搬送装置40、第2飼育容器搬送装置20、制御装置30のうちの少なくとも1つを備える。蚕移載装置10、第1飼育容器搬送装置40、第2飼育容器搬送装置20、制御装置30については、第1の実施形態において説明済みであるため、これらの構成要素についての繰り返しとなる説明は省略する。
【0051】
図3に記載の例では、蚕飼育システム1Bは、2個のコンテナ2(より具体的には、第1コンテナ2A、第2コンテナ2B)を備える。しかし、蚕飼育システム1Bが備えるコンテナ2の個数は、1個、または、3個以上であってもよい。
【0052】
図3に記載の例では、コンテナ2(より具体的には、第2コンテナ2B)内に、第2飼育容器搬送装置20が配置されている。コンテナ2は、実質的な閉空間(より具体的には、無菌雰囲気AT)を規定することが可能である。このため、コンテナ2内に、第2飼育容器搬送装置20が配置されている場合、第2飼育容器C2の搬送経路に、雑菌が混入しにくい。
【0053】
搬送装置を閉空間内に設置する場合、搬送装置は、閉空間を規定する建物内に設置されるのが一般的である。これに対し、第2の実施形態では、コンテナ2内に、第2飼育容器搬送装置20等の搬送装置が配置される。コンテナ2は、屋外に配置された場合でも、実質的な閉空間を規定することが可能である。このため、搬送装置を配置するために新たに建物を建設する必要がない。また、コンテナ2を、既存の建物内に配置する場合であっても、コンテナ2が実質的な閉空間を規定するため、当該既存の建物に高い密閉度が要求されない。また、コンテナ2は、車両、船舶等によって運搬可能であるため、コンテナ2の配置の自由度は高い。また、1度所定の場所に配置されたコンテナを、別の場所に移動させることも容易である。
【0054】
コンテナ2は、例えば、ISO668(例えば、ISO668:1995、ISO668:2005、ISO668:2013等)によって規格化された可搬式コンテナである。コンテナ2は、例えば、45フィートコンテナ(ISO668の「1EEE」コンテナ、「1EE」コンテナ等)、40フィートコンテナ(ISO668の「1AAA」コンテナ、「1AA」コンテナ、「1A」コンテナ、「1AX」コンテナ等)、30フィートコンテナ(ISO668の「1BBB」コンテナ、「1BB」コンテナ、「1B」コンテナ、「1BX」コンテナ等)、20フィートコンテナ(ISO668の「1CC」コンテナ、「1C」コンテナ、「1CX」コンテナ等)、10フィートコンテナ(ISO668の「1D」コンテナ、「1DX」コンテナ等)、6.5フィートコンテナ(ISO668の「1E」コンテナ等)、5フィートコンテナ(ISO668の「1F」コンテナ等)である。以下、本明細書において、ISO668によって規格化された可搬式コンテナのことを「ISOコンテナ」と呼ぶ。
【0055】
(第1コンテナ2A)
図1に記載の例では、蚕飼育システム1Bは、第1コンテナ2Aを有する。第1コンテナ2Aは、例えば、ISOコンテナである。第1コンテナ2Aの長さは、例えば、45フィート、40フィート、30フィート、20フィート、10フィート、6.5フィート、または、5フィートである。
【0056】
図1に記載の例では、第1コンテナ2Aは、第1飼育容器保管領域AR1を有する。図1に記載の例では、第1コンテナ2Aの外壁Waの内面Wsに沿って、断熱材91が配置されている。また、第1コンテナ2Aには、第1コンテナ2A内の温度を調整する空調装置92が配置されている。
【0057】
蚕飼育システム1Bが、第1飼育容器保管領域AR1を有する第1コンテナ2Aと、断熱材91と、空調装置92とを備える場合には、第1飼育容器C1内の蚕飼育環境を好適な環境に設定することが可能である。空調装置92は、温度を調整可能な空調装置であっても良く、温度および湿度を調整可能な空調装置であってもよい。空調装置92によって、第1飼育容器保管領域AR1の温度は、例えば、摂氏20度以上摂氏35度以下、あるいは、摂氏25度以上摂氏30度以下に維持される。
【0058】
空調装置92が作動すると、第1コンテナ2A内の圧力は、第1コンテナ2A外の圧力よりも高くなるように設定されている。第1コンテナ2A内の圧力と、第1コンテナ2A外の圧力との圧力差は、例えば、10Pa(パスカル)以上、100Pa以上、1000Pa以上、3000Pa以上、あるいは、5000Pa以上である。第1コンテナ2A内の圧力が、第1コンテナ2A外の圧力よりも高くなるように設定されていることにより、第1コンテナ2A内に雑菌が混入するリスクが低減される。
【0059】
空調装置92が作動すると、第1飼育容器保管領域AR1内の圧力は、第1コンテナ2A内における第1飼育容器保管領域AR1外の領域の圧力よりも高くなるように設定されていることが好ましい。両領域間の圧力差は、例えば、10Pa(パスカル)以上、100Pa以上、1000Pa以上である。第1飼育容器保管領域AR1内の圧力が、第1飼育容器保管領域AR1外の領域の圧力よりも高くなるように設定されていることにより、第1飼育容器保管領域AR1内に雑菌が混入するリスクが低減される。第1飼育容器保管領域AR1内の圧力を、第1飼育容器保管領域AR1外の領域の圧力よりも高くするために、空調装置92の空気供給口92aが、第1飼育容器保管領域AR1に配置されていてもよい。
【0060】
空調装置92は、第1コンテナ2A外から第1コンテナ2A内に空気を供給するファン921と、当該空気の温度を上昇または下降させる熱交換器922と、当該空気から雑菌を除去するフィルタ923(例えば、HEPAフィルタ)とを備える。
【0061】
空調装置92は、第1コンテナ2A内の空気を第1コンテナ2A内で循環させる循環流路と、循環流路に配置されたフィルタ924(例えば、HEPAフィルタ)とを備えていてもよい。空調装置92が循環流路と、フィルタ924とを備える場合には、第1コンテナ2A内に侵入した雑菌が、フィルタ924によって除去される。
【0062】
(第2コンテナ2B)
図3に記載の例では、蚕飼育システム1Bは、第2コンテナ2Bを有する。第2コンテナ2Bは、例えば、ISOコンテナである。第2コンテナ2Bの長さは、例えば、45フィート、40フィート、30フィート、20フィート、10フィート、6.5フィート、または、5フィートである。
【0063】
図3に記載の例では、第2コンテナ2Bは、第2飼育容器保管領域AR2を有する。図3に記載の例では、第2コンテナ2Bの外壁Waの内面Wsに沿って、断熱材91が配置されている。また、第2コンテナ2Bには、第2コンテナ2B内の温度を調整する空調装置92が配置されている。第2コンテナ2Bに配置される空調装置92は、第1コンテナ2Aに配置される空調装置92と同様の空調装置である。第2コンテナ2Bに配置される空調装置92は、第1コンテナ2Aに配置される空調装置92と同様に、ファン921、熱交換器922、フィルタ(923、924)等を備える。空調装置92によって、第2飼育容器保管領域AR2の温度は、例えば、摂氏20度以上摂氏35度以下、あるいは、摂氏25度以上摂氏30度以下に維持される。
【0064】
空調装置92が作動すると、第2コンテナ2B内の圧力は、第2コンテナ2B外の圧力よりも高くなるように設定されている。第2コンテナ2B内の圧力と、第2コンテナ2B外の圧力との圧力差は、例えば、10Pa(パスカル)以上、100Pa以上、1000Pa以上、3000Pa以上、あるいは、5000Pa以上である。
【0065】
空調装置92が作動すると、第2飼育容器保管領域AR2内の圧力は、第2コンテナ2B内における第2飼育容器保管領域AR2外の領域の圧力よりも高くなるように設定されていることが好ましい。両領域間の圧力差は、例えば、10Pa(パスカル)以上、100Pa以上、1000Pa以上である。第2飼育容器保管領域AR2内の圧力を、第2飼育容器保管領域AR2外の領域の圧力よりも高くするために、空調装置92の空気供給口92aが、第2飼育容器保管領域AR2に配置されていてもよい。
【0066】
図3に記載の例では、蚕飼育システム1Bは、第1飼育容器保管領域AR1を有する第1コンテナ2Aと、第2飼育容器保管領域AR2を有する第2コンテナ2Bとを有する。また、第2コンテナ2Bは、第1コンテナ2Aとは別のコンテナである。この場合、蚕飼育システム1Bは、相対的に日齢の小さな蚕を飼育するための飼育環境(第1コンテナ2A)と、相対的に日齢の大きな蚕を飼育するための飼育環境(第2コンテナ2B)とを独立して設定することが可能となる。例えば、相対的に日齢の小さな蚕については、集団飼育をすることによって、比較的小さなスペースで、大量の蚕を飼育することが可能である。他方、相対的に日齢の大きな蚕については、個別飼育をすることによって、蚕に作用するストレスの低減を図ることが可能である。
【0067】
なお、相対的に日齢の大きな蚕については、相対的に大きな飼育スペースが必要となる。このため、第2飼育容器保管領域AR2を有する第2コンテナ2Bのサイズは、第1飼育容器保管領域AR1を有する第1コンテナ2Aのサイズよりも大きなサイズであってもよい。代替的に、あるいは、付加的に、第2飼育容器保管領域AR2を有する第2コンテナ2Bの個数が、第1飼育容器保管領域AR1を有する第1コンテナ2Aの個数よりも多くなるように、複数のコンテナ2が配置されてもよい。例えば、1つの第1コンテナ2Aと、2つ以上の第2コンテナ2Bとが連結されてもよい。第1コンテナ2Aに連結される第2コンテナ2Bの数は、3個以上、5個以上、あるいは、10個以上であってもよい。
【0068】
(コンテナ連結部95)
図3に記載の例では、蚕飼育システム1Bは、第1コンテナ2Aと第2コンテナ2Bとを連結するコンテナ連結部95を備える。コンテナ連結部95の存在により、第1コンテナ2Aまたは第2コンテナ2Bへの雑菌の侵入が抑制される。より具体的には、第1コンテナ2Aと第2コンテナ2Bとの間で、第1飼育容器C1、第2飼育容器C2等を搬送する際に、第1コンテナ2Aの開口部または第2コンテナ2Bの開口部から雑菌が侵入するおそれがある。図3に記載の例では、第1コンテナ2Aと第2コンテナ2Bとがコンテナ連結部95によって連結されているため(より具体的には、第1コンテナ2Aの開口部および第2コンテナ2Bの開口部がコンテナ連結部95によって覆われているため)、これらの開口部から雑菌が侵入するリスクが低減される。コンテナ連結部95は、ビニル等の合成樹脂製の可撓性部材によって構成されていてもよく、金属板等の剛性部材によって構成されていてもよく、可撓性部材と剛性部材の組み合わせによって構成されていてもよい。
【0069】
図3に記載の例では、第1コンテナ2Aの開口部に、第1扉DR1が配置され、第2コンテナ2Bの開口部に、第2扉DR2が配置されている。しかし、第1扉DR1および/または第2扉DR2は、省略されても構わない。
【0070】
(餌供給装置60)
図3に記載の例では、蚕飼育システム1Bは、餌供給装置60を備える。餌供給装置60は、第1飼育容器C1または第2飼育容器C2に餌(蚕の餌)を供給する装置である。蚕飼育システム1Bが、餌供給装置60を備える場合、第1飼育容器C1または第2飼育容器C2への餌の供給を自動化することができる。この場合、餌の供給に際して、蚕の飼育環境に雑菌が混入することが抑制される。
【0071】
図3に記載の例では、餌供給装置60は、第1コンテナ2A内に配置されている。代替的に、あるいは、付加的に、餌供給装置60は、第2コンテナ2B内に配置されていてもよい。餌供給装置60がコンテナ2内に配置される場合、餌の供給に際して、蚕の飼育環境に雑菌が混入することがより一層効果的に抑制される。ただし、蚕飼育システム1Bが、上述のコンテナ2を有さない場合には、餌供給装置60は、コンテナ2とは異なる任意の場所に配置されていてもよい。
【0072】
図5を参照して、餌供給装置60の一例について説明する。餌供給装置60は、例えば、餌貯留容器61と、ノズル部材62と、移動装置63と、餌供給管64と、餌供給ポンプ65とを備える。
【0073】
餌貯留容器61は、蚕の餌を一時的に収容するための容器である。餌貯留容器61には、例えば、桑F1(より具体的には、桑の葉の粉末)と、おからF2と、水とが投入される。図5に記載の例では、桑F1は、桑容器から餌貯留容器61に投入され、おからF2は、おから容器から餌貯留容器61に投入される。当該投入は、桑供給装置および/またはおから供給装置によって自動的に行われてもよいし、手作業によって行われてもよい。
【0074】
図5に記載の例では、水供給管67が、餌貯留容器61に接続されている。そして、餌貯留容器61への水の供給は、水供給管67を用いて自動的に実行される。図5に記載の例では、水供給管67に、開閉弁671、および、フィルタ672が配置されている。開閉弁671と制御装置30とは、有線または無線によって、信号伝達可能に接続されており、開閉弁671は、制御装置30からの指令に基づいて開閉される。開閉弁671が開状態のときには、水が餌貯留容器61に供給され、開閉弁が閉状態のときには、水は餌貯留容器61に供給されない。フィルタ672は、水から異物または雑菌を除去する。
【0075】
図5に記載の例では、餌貯留容器61に投入された、桑、おから、および、水が、餌貯留容器61内で攪拌される。当該攪拌は、モータM1によって駆動される攪拌装置611によって行われる。モータM1と制御装置30とは、有線または無線によって、信号伝達可能に接続されており、モータM1は、制御装置30からの指令に基づいて駆動される。モータM1が駆動すると、攪拌装置611は、桑、おから、および、水を含む混合飼料を攪拌する。
【0076】
桑、おから、および、水を含む混合飼料(より具体的には、練餌)は、餌供給ポンプ65によって、餌貯留容器61からノズル部材62に向けて供給される。図5に記載の例では、餌供給ポンプ65は、スクリューコンベヤまたはスネークポンプを含んでいてもよい。図5に記載の例では、餌供給ポンプ65は、モータM2、および、モータM2によって駆動される回転シャフト651を含む。餌供給ポンプ65は、回転シャフト651に取り付けられた羽根部材652を含んでいてもよい。代替的に、あるいは、付加的に、回転シャフト651は、非直線状の回転シャフト(例えば、螺旋形状の回転シャフト)であってもよい。この場合、羽根部材652は、省略されても構わない。
【0077】
モータM2と制御装置30とは、有線または無線によって、信号伝達可能に接続されており、モータM2は、制御装置30からの指令に基づいて駆動される。モータM2が駆動すると、回転シャフト651が回転する。その結果、回転シャフト651、または、回転シャフト651に取り付けられた羽根部材652が、餌供給ポンプ65の上流側から餌供給ポンプ65の下流側に向けて、餌(練餌)を押し出す。なお、図5に記載の例では、餌貯留容器61の排出口と、餌供給ポンプ65の上流側とが接続されている。そして、餌貯留容器61の排出口から排出された餌(練餌)が、餌供給ポンプ65の上流側に供給される。また、図5に記載の例では、餌供給ポンプ65から排出された餌が、餌供給管64を介して、ノズル部材62に供給される。
【0078】
餌供給管64は、剛体管であってもよいし、可撓管であってもよいし、一部が剛体管で他の一部が可撓管であってもよい。
【0079】
図5に記載の例では、餌供給管64は、餌貯留容器61とノズル部材62とを連結する管である。上述の餌供給ポンプ65は、餌供給管64の途中に配置されている。
【0080】
図5に記載の例では、餌供給管64には、開閉弁641が配置されている。開閉弁641と制御装置30とは、有線または無線によって、信号伝達可能に接続されており、開閉弁641は、制御装置30からの指令に基づいて開閉される。開閉弁641が開状態のときには、餌がノズル部材62-1に供給され、開閉弁641が閉状態のときには、餌はノズル部材62-1に供給されない。
【0081】
図5に記載の例では、餌供給管64は、メイン管64mと、第1分岐管64dとを含む。第1分岐管64dには、上述の開閉弁641が配置され、第1分岐管64dは、上述のノズル部材62-1に接続されている。
【0082】
餌供給管64は、第2分岐管64eを含んでいてもよい。図5に記載の例では、第2分岐管64eには、開閉弁643が配置され、第2分岐管64eは、第2ノズル部材62-2に接続されている。開閉弁643と制御装置30とは、有線または無線によって、信号伝達可能に接続されており、開閉弁643は、制御装置30からの指令に基づいて開閉される。
【0083】
図5に記載の例では、メイン管64mと、第1分岐管64dとが、分岐部D1を介して接続されている。また、図5に記載の例では、メイン管64mと、第2分岐管64eとが、分岐部D2を介して接続されている。
【0084】
図5に記載の例では、餌供給管64は、戻り管64rを備える。餌供給管64が戻り管64rを備える場合には、メイン管64mを流れる餌のうち、ノズル部材62に供給されない余剰餌は、戻り管64rを介して、餌貯留容器61に戻される。図5に記載の例では、餌供給管64のうちの分岐部D1と餌貯留容器61との間の部分が、戻り管64rを構成している。戻り管64rには、開閉弁645が配置されていてもよい。
【0085】
ノズル部材62(ノズル部材62-1または第2ノズル部材62-2)は、餌を吐出する開口62hを備える。図5に記載の例では、ノズル部材62-1は、第1ノズル621と、第2ノズル622とを含む複数のノズルを備える。第1ノズル621の吐出部(第1開口)の開口面積(あるいは、直径)は、第2ノズル622の吐出部(第2開口)の開口面積(あるいは、直径)よりも小さい。また、第2ノズル622の吐出部(第2開口)の開口面積(あるいは、直径)は、第3ノズル623の吐出部(第3開口)の開口面積(あるいは、直径)よりも小さい。ノズル部材62-1は、例えば、制御装置30からの指令によって作動する切替弁620を備える。切替弁620は、複数のノズル(621、622、623)のうちの一つに選択的に餌を供給する。より具体的には、制御装置30からの指令に基づいて、餌供給管64と第1ノズル621とが連通するように切替弁620が作動すると、第1ノズル621の開口から餌が吐出される。また、制御装置30からの指令に基づいて、餌供給管64と第2ノズル622とが連通するように切替弁620が作動すると、第2ノズル622の開口から餌が吐出される。第2ノズル622から吐出される餌は、第1ノズル621から吐出される餌よりも太い。また、制御装置30からの指令に基づいて、餌供給管64と第3ノズル623とが連通するように切替弁620が作動すると、第3ノズル623の開口から餌が吐出される。第3ノズル623から吐出される餌は、第2ノズル622から吐出される餌よりも太い。
【0086】
図5に記載の例では、第2ノズル部材62-2は、一つのノズルを含む。第2ノズル部材62-2のノズルから吐出される餌は、ノズル部材62-1のノズル(例えば、第1ノズル621、第2ノズル622、または、第3ノズル623)から吐出される餌よりも太い。代替的に、第2ノズル部材62-2のノズルから吐出される餌の太さは、第3ノズル623から吐出される餌の太さと同程度であってもよい。
【0087】
移動装置63は、ノズル部材62を、餌支持部PLに対して相対移動させる装置である。図5に記載の例では、移動装置63は、ノズル部材62を移動させるノズル移動装置である。代替的に、移動装置63は、餌支持部PLを移動させる装置であってもよい。
【0088】
移動装置63と制御装置30とは、有線または無線によって、信号伝達可能に接続されており、移動装置63は、制御装置30からの指令に基づいて動作する。移動装置63は、制御装置30からの指令に基づいて、ノズル部材62の位置を三次元的に変更する。図5に記載の例では、移動装置63は、ロボットアーム630を含む。
【0089】
図5に記載の例では、移動装置63(より具体的には、移動装置63-1)は、ノズル部材62-1を、餌支持部PLに対して相対移動させる。餌支持部PLは、例えば、第1飼育容器C1内に配置された餌支持部である。餌支持部PLは、メッシュ状の部材(換言すれば、網状の部材)によって構成されていることが好ましい。この場合、蚕の糞は、メッシュ状の部材の各開口を介して、餌支持部PLの下方に落下する。よって、餌支持部PLの上方の領域では、蚕の飼育環境が悪化しにくい。
【0090】
図5に記載の例では、移動装置63(より具体的には、第2移動装置63-2)は、第2ノズル部材62-2を、餌支持部PLに対して相対移動させる。餌支持部PLは、例えば、第2飼育容器C2内に配置されることとなる餌支持部である。餌支持部PLは、メッシュ状の部材(換言すれば、網状の部材)によって構成されていることが好ましい。この場合、蚕の糞は、メッシュ状の部材の各開口を介して、餌支持部PLの下方に落下する。よって、餌支持部PLの上方の領域では、蚕の飼育環境が悪化しにくい。
【0091】
(仕切り部材P)
図5に記載の例では、第1飼育容器C1の内部に、仕切り部材Pが配置されている。図6に示されるように、仕切り部材P(より具体的には、第1仕切り部材P1)は、第1飼育容器C1内の空間を、蚕が育成される第1領域R1と、蚕の進入が制限された第2領域R2(すなわち、蚕が進入できない領域)とに仕切る部材である。仕切り部材Pの位置は、第1領域R1と第2領域R2とを仕切る第1位置(図6の上側の図を参照。)と、仕切り部材による仕切り状態が解除された第2位置(図6の下側の図を参照。)との間で位置変更可能である。第1位置(換言すれば、仕切り位置)は、例えば、仕切り部材Pが第1飼育容器C1内に配置されている時の仕切り部材Pの位置である。第2位置(換言すれば、非仕切り位置)は、例えば、仕切り部材Pが第1飼育容器C1から取り外されている時の仕切り部材Pの位置である。
【0092】
(仕切り部材移動装置70)
図7に記載の例では、蚕飼育システム1Bは、第1飼育容器C1に配置された仕切り部材Pを移動させる仕切り部材移動装置70を備える。仕切り部材移動装置70は、例えば、仕切り部材Pを、第1飼育容器C1内の第1位置から、第1飼育容器C1外の第2位置に移動させる。
【0093】
図7に記載の例では、仕切り部材移動装置70は、仕切り部材保持部71と、保持部移動装置72とを含む。仕切り部材保持部71は、仕切り部材Pを保持可能な部分である。仕切り部材保持部71は、第1把持部71aと第2把持部71bとを備えていてもよい。この場合、第1把持部71aと第2把持部71bとの間の間隔を小さくすることにより、仕切り部材保持部71は、仕切り部材Pを把持することが可能である。代替的に、仕切り部材保持部71は、仕切り部材Pを吊り下げ可能なフック部71c(必要であれば、図5を参照。)を備えていてもよい。
【0094】
保持部移動装置72は、例えば、ロボットアームを含む。保持部移動装置72のロボットアームは、図5に記載の移動装置63-1のロボットアーム630であってもよいし、移動装置63-1のロボットアーム630とは別のロボットアームであってもよい。なお、仕切り部材移動装置70は、仕切り部材Pを移動可能な装置であれば、その形状および構造に特に制限はない。
【0095】
仕切り部材移動装置70と制御装置30とは、有線または無線によって、信号伝達可能に接続されており、仕切り部材移動装置70は、制御装置30からの指令に基づいて動作する。より具体的には、仕切り部材移動装置70の仕切り部材保持部71は、制御装置30からの指令に基づいて、仕切り部材Pを保持する。その後、仕切り部材移動装置70の保持部移動装置72は、制御装置30からの指令に基づいて、仕切り部材保持部71を第1位置から第2位置に向かう方向に移動させる。こうして、仕切り部材Pが、第1飼育容器C1から取り外される。
【0096】
(第1蚕飼育工程)
図8および図9を参照して、第1飼育容器C1内で、複数の蚕Aを飼育する第1飼育工程(上述の第1ステップST1)の一例についてより詳細に説明する。
【0097】
ステップST201において、第1飼育容器C1内に配置された第1仕切り部材P1の一方側の第1領域R1で、複数の蚕が飼育される。ステップST201は、例えば、第1飼育容器保管領域AR1内に配置された第1飼育容器C1内で実行される。図9(b)に記載の例では、第1飼育容器保管領域AR1内に、複数の第1飼育容器C1が収容されている。第1飼育容器保管領域AR1内に収容されている第1飼育容器C1の数は、例えば、10個以上、50個以上、あるいは、100個以上である。
【0098】
ステップST201において、第1領域R1には、餌Fおよび複数の蚕Aが配置されている。また、ステップST201において、第2領域R2には、餌Fおよび蚕Aが配置されていない。
【0099】
第1飼育容器C1の第1領域R1には、予め、蚕の餌Fが供給される。第1領域R1への餌の供給は、例えば、餌供給装置60のノズル部材62-1(より具体的には、上述の第1ノズル621)を介して行われる(図9(a)を参照。)。第1領域R1に供給される餌の太さ(換言すれば、直径)は、例えば、3mm以下、あるいは、2mm以下である。第1領域R1内の複数の蚕Aは、第1領域R1内の餌Fを食べて成長する。なお、餌支持部PLが、メッシュ状の部材(換言すれば、網状の部材)である場合には、蚕の糞Mは、餌支持部PLの下方に落下する。よって、餌支持部PL上における蚕の飼育環境が悪化しない。
【0100】
ステップST202において、第1仕切り部材P1の他方側の第2領域R2に、餌Fが供給される。ステップST202は、例えば、第1飼育容器C1が、第1飼育容器保管領域AR1から餌供給装置60に向けて、搬送された後に行われる。
【0101】
第2領域R2への餌Fの供給は、例えば、餌供給装置60のノズル部材62-1(より具体的には、上述の第2ノズル622)を介して行われる(図9(c)を参照。)。ステップST202において、第2領域R2には蚕Aが存在していないため、第2領域R2に餌Fを供給するに際して蚕Aが邪魔になることはない。なお、第2ノズル622から供給される餌Fの太さは、第1ノズル621から供給される餌Fの太さよりも太いことが好ましい。第2ノズル622から供給される餌Fの太さ(換言すれば、直径)は、例えば、6mm以下、あるいは、5mm以下である。
【0102】
ステップST203において、第1仕切り部材P1によって第1領域R1と第2領域R2とが仕切られている状態(仕切り状態)が解除される(図9(d)を参照。)。当該解除は、例えば、仕切り部材移動装置70が、第1仕切り部材P1を移動させることにより実行される。図9(d)に記載の例では、当該解除は、仕切り部材移動装置70が、第1飼育容器C1から第1仕切り部材P1を取り外すことにより実行される。図9(d)に記載の例では、仕切り部材移動装置70は、仕切り部材Pの係合部Paに係合可能なフック部71cを備える。代替的に、仕切り部材移動装置70は、仕切り部材Pを把持可能な把持部を備えていてもよい。
【0103】
第1仕切り部材P1による仕切り状態が解除されると、第1領域R1と第2領域R2とが合体されることにより、複数の蚕Aが飼育される領域が大きくなる。よって、第1領域R1において成長した複数の蚕にとって、より適切な飼育環境が提供されることとなる。
【0104】
ステップST203の実行後、第1飼育容器C1は、第1飼育容器保管領域AR1に搬送される。第1飼育容器C1には、ステップST202において、新鮮な餌Fが供給されている。よって、複数の蚕Aは、新鮮な餌を食べて、更に成長する。
【0105】
図9に記載の例では、第1飼育容器C1に、第1仕切り部材P1に加えて、第2仕切り部材P2が配置されている。第2仕切り部材P2は、第1仕切り部材P1が第1飼育容器C1から取り外された後において、新たな第1領域Rn1(拡大された第1領域)と、新たな第2領域Rn2とを仕切る部材である(図9(d)を参照。)。
【0106】
第1飼育容器C1内に第2仕切り部材P2が配置されている場合には、ステップST204において、新たな第2領域Rn2に、餌Fが供給される。ステップST204は、例えば、第1飼育容器C1が、第1飼育容器保管領域AR1から餌供給装置60に向けて、搬送された後に行われる。
【0107】
新たな第2領域Rn2への餌の供給は、例えば、餌供給装置60のノズル部材62-1(より具体的には、上述の第3ノズル623)を介して行われる(図9(e)を参照。)。なお、第3ノズル623から供給される餌Fの太さは、第2ノズル622から供給される餌Fの太さよりも太いことが好ましい。第3ノズル623から供給される餌Fの太さ(換言すれば、直径)は、例えば、7mm以下である。
【0108】
ステップST205において、第2仕切り部材P2によって新たな第1領域Rn1と新たな第2領域Rn2とが仕切られている状態(仕切り状態)が解除される(図9(f)を参照。)。当該解除は、例えば、仕切り部材移動装置70が、第2仕切り部材P2を移動させることにより実行される。図9に記載の例では、当該解除は、仕切り部材移動装置70が、第1飼育容器C1から第2仕切り部材P2を取り外すことにより実行される。
【0109】
図9に記載の例では、第1飼育容器C1は、トレイ(換言すれば、上方が開放された比較的浅い容器)である。第1飼育容器C1の上方が開放されていることにより、第1飼育容器C1から仕切り部材Pを取り外し易い。
【0110】
図9に記載の例では、第1飼育容器C1内に配置される仕切り部材Pの数は、2個である。代替的に、第1飼育容器C1内に配置される仕切り部材Pの数は、1個、あるいは、3個以上であってもよい。また、図6に記載の例では、平面視において、仕切り部材Pは、L字形状を有する。しかし、仕切り部材Pの形状は、図6に記載の例に限定されない。例えば、図10に示されるように、平面視において、仕切り部材Pは、四角枠形状を有していてもよい。
【0111】
(卵移載装置80)
図11および図12を参照して、第1飼育容器C1(例えば、トレイ)に、蚕卵を移載する卵移載装置80の一例について説明する。
【0112】
卵移載装置80は、複数の蚕卵Eを収容した容器C3から、第1飼育容器C1に蚕卵Eを移載する。蚕飼育システム1が、卵移載装置80を有する場合、第1飼育容器C1(例えば、トレイ)に、蚕卵Eを移載する作業が自動化される。その結果、蚕の飼育が効率化される。また、蚕卵Eが、卵移載装置80によって自動的に行われることにより、実質的に、蚕の飼育環境に雑菌が混入することがない。卵移載装置80は、例えば、コンテナ2内(より具体的には、第1コンテナ2A内)に配置される。卵移載装置80が、コンテナ2内に配置される場合、蚕の飼育環境に雑菌が混入することがより一層効果的に抑制される。
【0113】
図11に記載の例では、卵移載装置80は、液中の蚕卵Eを吸引する吸引管81と、吸引管81を、第1飼育容器C1に対して相対移動させる吸引管移動装置86とを含む。液中では、死んだ蚕卵E1は、生きている蚕卵E2よりも浮かびやすい。よって、液中の蚕卵(より具体的には、液中に沈んでいる蚕卵)を吸引することにより、生きている蚕卵E2を選別してピックアップすることが可能である。
【0114】
容器C3中の液体は、例えば、消毒液である。蚕卵Eが、容器C3中の消毒液に浸されることにより、蚕卵Eが滅菌される。この場合、蚕卵Eが第1飼育容器C1に移載されるときに、第1飼育容器C1に雑菌が混入するリスクが低減される。
【0115】
なお、容器C3からの蚕卵Eのピックアップを容易にする観点から、容器C3の先端部は、先端に向かうにつれて細くなる先細り形状を備えていることが好ましい。容器C3の先端部が先細り形状を有することにより、複数の蚕卵Eが、容器C3の底部近傍に集まりやすい。よって、吸引管81を、容器C3の底部近傍(換言すれば、容器C3の最深部)に挿入するだけで、吸引管81の先端を蚕卵Eの近傍に配置することが可能となる。
【0116】
図11に記載の例では、吸引管81は、配管82を介して、真空ポンプ84に接続されている。また、配管82には、開閉弁83が配置されている。吸引管81の先端が、容器C3中の液体中に位置している状態で、開閉弁83が開状態にされることにより、吸引管81は、1つの蚕卵Eを吸引する。代替的に、ピストンをシリンダに対して相対移動させることにより、吸引管81に吸引力を発生させてもよい。この場合、真空ポンプ84は、省略されてもよい。
【0117】
吸引管81が蚕卵Eを吸引した後、吸引管移動装置86は、吸引管81を、容器C3から第1飼育容器C1に向かう方向に移動させる。吸引管81の先端が、第1飼育容器C1の上方に来ると、吸引管81は蚕卵Eをリリースする。当該リリースは、吸引管81にエアを送ることにより実行されてもよいし、吸引管81を大気に開放することによって行われてもよい。
【0118】
図11に記載の例では、第1飼育容器C1に、仕切り部材Pが配置されている。この場合、卵移載装置80は、仕切り部材Pの一方側の領域(第1領域R1)のみに蚕卵Eを移載することが好ましい。換言すれば、卵移載装置80は、仕切り部材Pの他方側の領域(第2領域R2)には、蚕卵Eを移載しないことが好ましい。なお、第1飼育容器C1に仕切り部材Pが配置されていない場合には、卵移載装置80は、第1飼育容器C1の任意の位置に蚕卵Eを移載すればよい。
【0119】
卵移載装置80による蚕卵Eの移載は、第1飼育容器C1(より具体的には、第1領域R1)に餌Fが配置された後に実行されてもよいし、第1飼育容器C1(より具体的には、第1領域R1)に餌Fが配置される前に実行されてもよい。
【0120】
図11に記載の例では、吸引管移動装置86は、吸引管81を、鉛直方向(換言すれば、Z方向)に沿って移動させることができる。また、図11に記載の例では、吸引管移動装置86は、吸引管81を、第1水平方向(換言すれば、X方向)に沿って移動させることができる。
【0121】
図12に示されるように、卵移載装置80は、複数の吸引管81を備えていてもよい。卵移載装置80が、複数の吸引管81を備えている場合には、卵移載装置80は、複数の蚕卵を、同時に、第1飼育容器C1に移動させることが可能となる。なお、図12に記載の例では、卵移載装置80は、6個の吸引管81を備える。代替的に、卵移載装置80は、1個、2個、3個、4個、5個、あるいは、7個以上の吸引管81を備えていてもよい。
【0122】
図12に記載の例では、吸引管移動装置86は、吸引管81を、第2水平方向(換言すれば、X方向およびZ方向に対して垂直なY方向)に沿って移動させることができる。図11および図12に記載の例では、吸引管移動装置86は、吸引管81を3次元的に移動可能である。代替的に、吸引管移動装置86は、吸引管81を2次元的に移動可能であってもよい(例えば、吸引管移動装置86は、XZ平面に平行な面に沿う方向にのみ、吸引管81を移動可能であってもよい。)。
【0123】
図13に示されるように、蚕飼育システム1は、卵移載装置80と第1飼育容器保管領域AR1との間で、第1飼育容器C1を搬送する搬送装置41を備えていてもよい。図13に記載の例では、搬送装置41は、第1飼育容器搬送装置40とは別の搬送装置である。搬送装置41は、例えば、鉛直方向(換言すれば、Z方向)、および、第1水平方向(例えば、X方向)に沿って、第1飼育容器C1を搬送可能である。搬送装置41は、例えば、コンベヤ、または、棚T1に第1飼育容器C1を移載する移載装置付きの搬送装置を含む。
【0124】
(蚕飼育システム1のその他の構成要素)
図13を参照して、蚕飼育システム1のその他の構成要素について説明する。
【0125】
蚕飼育システム1は、監視用パソコン101を備えていてもよい。監視用パソコン101は、各装置(10、20、30、40、41、60、70、80、92)の状態を監視する。監視用パソコン101は、各装置(10、20、30、40、41、60、70、80、92)に異常が存在する場合、異常のある装置を特定する情報と、異常の種類を特定する情報とを、作業者に報知する。なお、上述の実施形態では、制御装置30が、各装置(10、20、30、40、41、60、70、80、92)を制御する例について説明された。代替的に、監視用パソコン101と制御装置30とが協働して各装置(10、20、30、40、41、60、70、80、92)を制御してもよい。
【0126】
蚕飼育システム1は、繭回収装置103を備えていてもよい。繭回収装置103は、第2飼育容器C2から繭を回収する装置(例えば、第2飼育容器C2から繭を回収するロボット)である。
【0127】
蚕飼育システム1は、第1飼育容器C1および/または第2飼育容器C2を洗浄する洗浄装置105を備えていてもよい。洗浄装置105は、例えば、第1飼育容器C1(または、第2飼育容器C2)にエアを吹き付けて、第1飼育容器C1(または、第2飼育容器C2)から、糞または残餌を取り除く。第1飼育容器C1(または、第2飼育容器C2)から取り出された糞は、他の家畜の飼料、あるいは、薬の成分として利用するために回収されてもよい。蚕が無菌環境で飼育されるとき、蚕の糞も無菌状態に維持される。よって、当該蚕の糞は、他の家畜の飼料、あるいは、薬の成分として好適である。
【0128】
なお、上述の例では、洗浄装置105は、エアを用いたエア洗浄装置である。代替的に、あるいは、付加的に、洗浄装置105は、第1飼育容器C1(または、第2飼育容器C2)に水または消毒液を吹き付けて、第1飼育容器C1(または、第2飼育容器C2)から、糞または残餌を取り除く装置であってもよい。
【0129】
洗浄装置105によって洗浄された第1飼育容器C1は、第1飼育容器保管領域AR1内での蚕の飼育のために再利用される。また、洗浄装置105によって洗浄された第2飼育容器C2は、第2飼育容器保管領域AR2内での蚕の飼育のために再利用される。
【0130】
図13に記載の例では、監視用パソコン101、繭回収装置103、洗浄装置105が第1コンテナ2A内に配置されている。代替的に、監視用パソコン101、繭回収装置103、洗浄装置105のうちの少なくとも1つが、第2コンテナ2B内に配置されてもよい。代替的に、監視用パソコン101、繭回収装置103、洗浄装置105のうちの少なくとも1つが、コンテナ2外に配置されていてもよい。
【0131】
(蚕飼育方法)
続いて、図13乃至図16を参照して、第2の実施形態における蚕飼育方法の一例について説明する。
【0132】
第1ステップST1において、第1飼育容器C1内で、複数の蚕が飼育される。第1ステップST1は、第1蚕飼育工程である。
【0133】
第1ステップST1では、まず、ステップST101において、蚕の餌Fが、第1飼育容器C1(より具体的には、第1領域R1)に供給される。ステップST101は、例えば、上述の餌供給装置60を用いて実行される。より具体的には、第1ノズル621が、第1飼育容器C1(より具体的には、第1領域R1)に対して相対移動しつつ、第1ノズル621が、第1飼育容器C1(より具体的には、第1領域R1)に餌Fを吐出する。
【0134】
ステップST102において、複数の蚕卵Eが、第1飼育容器C1に移載される。ステップST102は、例えば、上述の卵移載装置80を用いて実行される。より具体的には、搬送装置41が、卵移載装置80に向けて、第1飼育容器C1を搬送し、その後、卵移載装置80が、容器C3から第1飼育容器C1に、複数の蚕卵Eを移載する。なお、1つの第1飼育容器C1内に配置される蚕卵Eの数は、例えば、10個以上1000個以下、30個以上500個以下、あるいは、50個以上300個以下である。第1飼育容器C1は、複数の蚕卵Eが移載される前に、予め消毒液等によって滅菌されていることが好ましい。滅菌済みの第1飼育容器C1に、滅菌済みの蚕卵Eが移載され、かつ、当該第1飼育容器C1が無菌雰囲気ATに配置されることにより、第1飼育容器C1内で飼育される蚕の無菌状態が維持される。
【0135】
ステップST102は、ステップST101の前に実行されてよいし、ステップST101の後に実行されてもよい。ステップST101およびステップST102の実行後、第1飼育容器C1は、搬送装置41によって、第1飼育容器保管領域AR1に搬送される。
【0136】
その後、上述のステップST201乃至ステップST205が実行される。
【0137】
ステップST201において、第1飼育容器C1において(より具体的には、第1領域R1において)、複数の蚕Aが飼育される。第1飼育容器C1に第1仕切り部材P1が配置されている場合、第1仕切り部材P1によって規定された第1領域R1内で蚕が飼育される第1飼育期間は、数日間(例えば、5日間)である。
【0138】
第1飼育期間の経過後、第1飼育容器C1は、第1飼育容器保管領域AR1から餌供給装置60に向けて搬送される。当該搬送は、例えば、搬送装置41等を用いて実行される。
【0139】
ステップST202において、蚕の餌Fが、第1飼育容器C1(より具体的には、第2領域R2)に供給される。ステップST202は、例えば、上述の餌供給装置60を用いて実行される。より具体的には、第2ノズル622が、第1飼育容器C1(より具体的には、第2領域R2)に対して相対移動しつつ、第2ノズル622が、第1飼育容器C1(より具体的には、第2領域R2)に餌Fを吐出する。
【0140】
ステップST203において、第1仕切り部材P1が、第1位置(仕切り位置)から、第2位置(非仕切り位置)に移動される。ステップST203は、例えば、上述の仕切り部材移動装置70を用いて実行される。
【0141】
ステップST203の実行後、第1飼育容器C1は、搬送装置41等によって、第1飼育容器保管領域AR1に搬送される。ステップST202の実行後(換言すれば、2回目の餌供給後)、第2仕切り部材P2によって規定された新たな第1領域Rn1内で蚕が飼育される第2飼育期間は、数日間(例えば、5日間)である。
【0142】
第2飼育期間の経過後、第1飼育容器C1は、第1飼育容器保管領域AR1から餌供給装置60に向けて搬送される。当該搬送は、例えば、搬送装置41等を用いて実行される。
【0143】
ステップST204において、蚕の餌Fが、第1飼育容器C1(より具体的には、新たな第2領域Rn2)に供給される。ステップST204は、例えば、上述の餌供給装置60を用いて実行される。より具体的には、第3ノズル623が、第1飼育容器C1(より具体的には、第2領域Rn2)に対して相対移動しつつ、第3ノズル623が、第1飼育容器C1(より具体的には、第2領域Rn2)に餌Fを吐出する。
【0144】
ステップST205において、第2仕切り部材P2が、第1位置(仕切り位置)から第2位置(非仕切り位置)に移動される。ステップST205は、例えば、上述の仕切り部材移動装置70を用いて実行される。
【0145】
ステップST205の実行後、第1飼育容器C1は、搬送装置41等によって、第1飼育容器保管領域AR1に搬送される。ステップST204の実行後(換言すれば、3回目の餌供給後)、第1飼育容器C1内で蚕が飼育される第3飼育期間は、数日間(例えば、5日間)である。
【0146】
なお、上述の例では、1つの第1飼育容器C1に、数日毎に、合計3回餌Fが供給される。代替的に、1つの第1飼育容器C1に餌が供給される回数は、1回、2回、あるいは、4回以上であってもよい。なお、第1飼育容器C1に、数日毎に餌Fが供給される場合には、蚕Aは、新鮮な餌を食べて成長することができる。これに対し、第1飼育容器C1に、1回しか餌Fが供給されない場合には、餌Fが、乾燥等により劣化するおそれがある。
【0147】
第1飼育容器C1内で、蚕が飼育される合計期間(例えば、第1飼育期間と、第2飼育期間と、第3飼育期間との合計)は、十数日間(例えば、15日間)である。この場合、第1飼育容器C1で、蚕は、卵から4齢幼虫に成長する。
【0148】
第1ステップST1(第1飼育工程)の実行後、第2ステップST2において、第1飼育容器C1内の複数の蚕(例えば、複数の4齢幼虫)が、第2飼育容器C2に移載される。当該移載は、蚕移載装置10を用いて実行される。
【0149】
第2ステップST2では、まず、第1飼育容器C1および第2飼育容器C2が蚕移載領域ARに搬送される。
【0150】
図13に記載の例では、破線B1に示されるように、第1飼育容器C1が、第1飼育容器保管領域AR1から蚕移載領域ARに搬送される。蚕移載領域ARへの第1飼育容器C1の搬送は、第1飼育容器搬送装置40を含む複数の搬送装置を用いて実行されてもよい。図13に記載の例では、第1飼育容器保管領域AR1が第1コンテナ2A内にあり、蚕移載領域ARが第2コンテナ2B内にある。このため、第1飼育容器C1は、第1コンテナ2Aから第2コンテナ2Bに搬送されることとなる。第1コンテナ2Aから第2コンテナ2Bへの第1飼育容器C1の搬送は、コンテナ連結部95を通って行われる。
【0151】
図13に記載の例では、破線B2に示されるように、第2飼育容器C2が、第2飼育容器保管領域AR2から蚕移載領域ARに搬送される。蚕移載領域ARへの第2飼育容器C2の搬送は、第2飼育容器搬送装置20を含む複数の搬送装置を用いて実行されてもよい。図13に記載の例では、第2飼育容器搬送装置20は、第2飼育容器保管領域AR2内に配置されている。
【0152】
図13に記載の例では、第2飼育容器保管領域AR2が第2コンテナ2B内にあり、餌供給装置60が、第1コンテナ2A内にある。この場合、第2飼育容器C2に餌Fを供給するために、第2飼育容器C2は、第2コンテナ2B内の第2飼育容器保管領域AR2から第1コンテナ2A内の餌供給装置60に搬送される。当該搬送は、例えば、第2飼育容器搬送装置20および第1飼育容器搬送装置40を含む複数の搬送装置を用いて行われる。
【0153】
図13に記載の例では、蚕移載領域ARが第2コンテナ2B内にある。このため、第2飼育容器C2の飼育室SPに餌Fが供給された後、第2飼育容器C2は、第1コンテナ2Aから第2コンテナ2B(より具体的には、第2コンテナ2B内の蚕移載領域AR)に搬送される。
【0154】
第1飼育容器C1および第2飼育容器C2が蚕移載領域ARに搬送された後、蚕移載装置10は、蚕Aを、第1飼育容器C1から第2飼育容器C2の飼育室に移載する。なお、第2飼育容器C2の各飼育室に移載される蚕Aの数は、1個であることが好ましい。蚕Aが個別飼育されることにより、蚕Aのストレスが低減される。
【0155】
図14に記載の例では、第2飼育容器C2の第1端部Caに複数の開口OPが形成されている。複数の開口OPは、それぞれ、複数の飼育室SPの入口に対応する。蚕移載装置10は、当該開口OPを介して、各飼育室SPに、蚕Aを移載する。図14に記載の例では、開口OPは、第2飼育容器C2の側部に形成されている。第2飼育容器C2に複数の蚕が収容された後、複数の開口OPは、蓋部材CL(必要であれば、図1を参照。)によって覆われる。蓋部材CLには、通気孔が形成されていることが好ましい。蓋部材CLは、複数の開口OPが開放された第1状態と、複数の開口OPが蓋部材CLによって閉鎖された第2状態との間で状態変更する部材である。なお、第1状態は、開口OPを介して、蚕を飼育室SP内に挿入可能な状態を意味し、第2状態は、蚕が、開口OPを介して、飼育室SP外に抜け出せない状態を意味する。1つの蓋部材CLは、複数の開口OPが同時に閉鎖可能であることが好ましい。この場合、蓋部材CLによって複数の開口OPを効率的に閉鎖することができる。
【0156】
各飼育室SPの形状は、例えば、細長形状である。より具体的には、飼育室SPの奥行は、飼育室SPの高さの2倍以上であり、飼育室SPの奥行は、飼育室の幅の2倍以上である。飼育室SPの形状が細長形状である場合には、複数の蚕を個別養蚕する際のスペースが相対的に小さくて済む。図14に記載の例では、各飼育室SPの奥行方向の長さ(換言すれば、第2飼育容器C2の第1端部Caから第2端部Cbに向かう方向の長さ)は、例えば、20cm以上、30cm以上、あるいは、40cm以上である。飼育室SPの長手方向は、水平面に略平行であることが好ましい(換言すれば、飼育室SPの長手方向と水平面との間のなす角度は、20度以下であることが好ましい)。また、飼育室SPの長手方向端部に、上述の開口OPが形成されていることが好ましい。
【0157】
図14に記載の例では、第2飼育容器C2は、複数の飼育室SPを備える。第2飼育容器C2が備える飼育室SPの数は、例えば、10個以上1000個以下、30個以上500個以下、あるいは、50個以上300個以下である。各飼育室SP内には、餌Fを支持する餌支持部PLが配置されることが好ましい。餌支持部PLは、例えば、メッシュ状の部材(換言すれば、網状の部材)によって構成される。この場合、蚕の糞は、メッシュ状の部材の各開口を介して、餌支持部PLの下方に落下する。よって、餌支持部PLの上方の領域では、蚕の飼育環境が悪化しにくい。
【0158】
なお、餌支持部PLは、第2飼育容器C2の第1端部Ca(換言すれば、第2飼育容器C2の長手方向第1端部)から第2端部Cb(換言すれば、第2飼育容器C2の長手方向第2端部)に向かう方向に沿って延在していることが好ましい。また、餌支持部PL上に配置される餌Fは、第2飼育容器C2の第1端部Caから第2端部Cbに向かう方向に沿って延在していることが好ましい。
【0159】
図14に記載の例では、飼育室SPの各々が独立した筒状容器CYによって形成されており、当該筒状容器CYの集合体が、第2飼育容器C2の少なくとも一部を構成している。複数の筒状容器CYが、ハウジング部材Hによって囲まれることにより、第2飼育容器C2が構成されてもよい。この場合、筒状容器CYによって、第1の無菌雰囲気が提供され、複数の筒状容器CYを収容するハウジング部材Hによって、第2の無菌雰囲気が提供され、第2飼育容器C2を収容する第2飼育容器保管領域AR2(または、第2コンテナ2B等のコンテナ2)によって、第3の無菌雰囲気が提供される。よって、飼育室SP内の無菌状態がより確実に維持される。また、無菌の程度が、段階的に設定されることにより、効率良く低コストで、飼育室SP内の無菌状態を実現することができる。
【0160】
代替的に、図15に示されるように、飼育室SPの各々がハウジング部材H内に配置される仕切壁Jによって規定されてもよい。この場合、仕切壁Jによって、第1の無菌雰囲気が提供され、仕切壁Jを収容するハウジング部材Hによって、第2の無菌雰囲気が提供され、第2飼育容器C2を収容する第2飼育容器保管領域AR2(または、第2コンテナ2B等のコンテナ2)によって、第3の無菌雰囲気が提供される。よって、飼育室SP内の無菌状態がより確実に維持される。また、無菌の程度が、段階的に設定されることにより、効率良く低コストで、飼育室SP内の無菌状態を実現することができる。
【0161】
図14図15に記載の例において、飼育室長手方向に垂直な面における飼育室SPの断面形状は、四角形状である。代替的に、飼育室長手方向に垂直な面における飼育室SPの断面形状は、六角形形状、八角形形状、または、その他の多角形形状であってもよい。更に代替的に、飼育室長手方向に垂直な面における飼育室SPの断面形状は、円形状であってもよい。
【0162】
図13に記載の例において、複数の蚕が、第1飼育容器C1から第2飼育容器C2に移載された後、第2飼育容器C2は、蚕移載領域ARから第2飼育容器保管領域AR2に搬送される。当該搬送は、第2飼育容器搬送装置20等を用いて実行される。また、複数の蚕が、第1飼育容器C1から第2飼育容器C2に移載された後、第1飼育容器C1は、洗浄装置105に搬送される。第1飼育容器C1は、洗浄装置105によって洗浄された後、蚕を集団飼育するために再利用される。
【0163】
第3ステップST3(第2飼育工程)において、第2飼育容器C2内で、複数の蚕が飼育される。第2蚕飼育工程では、例えば、複数の蚕Aの各々が、独立した飼育室SP内で個別飼育される。第2蚕飼育工程において、各々の蚕は、4齢幼虫から5齢幼虫に成長し、その後、5齢幼虫は、繭をつくる。
【0164】
5齢幼虫が繭を作る前に、空調装置92は、第2飼育容器C2の第1端部Caまたは第2端部Cbに乾燥空気を供給することが好ましい。5齢幼虫は、乾燥空気を好むため、第2飼育容器C2の第1端部Caまたは第2端部Cbに乾燥空気を供給することにより、5齢幼虫が、第1端部Caまたは第2端部Cbに集まる。この場合、第1端部Caまたは第2端部Cbから繭を取り出すのが容易となる(例えば、繭回収装置103、より具体的には、ロボットが、第1端部Caまたは第2端部Cbから繭を取り出すのが容易となる。)。
【0165】
5齢幼虫が繭を作った後、第2飼育容器C2は、第2飼育容器保管領域AR2から繭回収装置103に向けて搬送される。当該搬送は、例えば、第2飼育容器搬送装置20等の搬送装置を用いて実行される。
【0166】
図13に記載の例では、第2飼育容器保管領域AR2が第2コンテナ2B内にあり、繭回収装置103が第1コンテナ2A内にある。このため、第2飼育容器C2は、第2コンテナ2Bから第1コンテナ2Aに搬送されることとなる。図13に記載の例では、第1コンテナ2A内での第2飼育容器C2の搬送は、第1飼育容器搬送装置40を用いて実行される。第2飼育容器C2から繭が取り出された後、第2飼育容器C2は、洗浄装置105に搬送される。第2飼育容器C2は、洗浄装置105によって洗浄された後、蚕を個別飼育するために再利用される。
【0167】
第2の実施形態における蚕飼育方法では、日齢が相対的に小さな蚕の飼育と、日齢が相対的に大きな蚕の飼育とを、分割して行うことにより、相対的に小さなスペースで、効率的に蚕を飼育することができる。また、第1飼育容器C1から第2飼育容器C2への蚕の移載、第1飼育容器C1または第2飼育容器C2の搬送、第1飼育容器C1への蚕卵の移載、第1飼育容器C1または第2飼育容器C2への餌Fの供給、第1飼育容器C1または第2飼育容器C2の洗浄、第2飼育容器C2からの繭の回収のうちの少なくとも1つの動作(好ましくは、全ての動作)が、機械的に自動的に実行される。このため、蚕の飼育効率が向上し、かつ、蚕の飼育環境に雑菌が混入しにくくなる。
【0168】
なお、第1飼育容器C1および/または第2飼育容器C2が、洗浄されて再利用される場合、無菌雰囲気外から無菌雰囲気内(例えば、コンテナ2内)に、第1飼育容器C1および/または第2飼育容器C2を補充することなく、蚕の飼育を繰り返し実行することが可能である。よって、無菌雰囲気AT内に雑菌が進入するリスクが低減される。なお、繭回収装置103によって回収された繭は、コンテナ2(より具体的には、第1コンテナ2A)の扉DR(必要であれば、図4を参照。)を介して取り出されてもよい。また、餌Fおよび/または蚕卵Eの補充は、コンテナ2(より具体的には、第1コンテナ2A)の扉DRを介して行われてもよい。当該扉DRは、コンテナ2内への雑菌の進入を防止する観点から、2重扉であることが好ましい。
【0169】
(蚕移載装置10)
図17を参照して、実施形態における蚕飼育システム1において採用可能な蚕移載装置10の一例について説明する。
【0170】
図17に記載の例では、蚕移載装置10は、保持部材移動装置12(より具体的には、アーム部)と、把持部110とを有する。保持部材移動装置12は、例えば、1個以上の関節部を含むロボットアームである。また、把持部110は、例えば、第1把持片111aおよび第2把持片111bを含む複数の把持片111を有する。なお、把持部110が有する把持片111の数は、2個であってもよいし、3個以上であってもよい。
【0171】
把持片111のうちの蚕と接触する接触部112は、弾性変形可能な部材(弾性部材)で構成されていることが好ましい。接触部112は、例えば、シリコーンゴムによって形成される。接触部112を弾性材料(例えば、シリコーンゴム)によって形成することにより、形状が変化し、かつ、運動する蚕を、好適に把持することが可能となる。
【0172】
把持片111は、例えば、弾性材料によって囲まれた内部空間ISを有する把持片であってもよい。この場合、内部空間ISにエア等の流体を供給することにより、把持片111を駆動することが可能である。図17に記載の例では、各把持片111は、内部空間ISに流体を供給する流体供給路PHを備える。
【0173】
本発明は上記各実施形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、各実施形態は適宜変形又は変更され得ることは明らかである。また、各実施形態又は変形例で用いられる種々の技術は、技術的矛盾が生じない限り、他の実施形態又は変形例にも適用可能である。さらに、各実施形態又は変形例における任意付加的な構成は、適宜省略可能である。例えば、第2の実施形態に含まれる各構成要素は、第1の実施形態においても採用可能である。
【0174】
第2の実施形態では、複数の蚕が、複数のコンテナ(2A、2B)を用いて飼育される例について説明された。しかし、第2の実施形態において、複数の蚕が、1つのコンテナ2を用いて飼育されても構わない。また、第2の実施形態において、複数の蚕が、コンテナとは関係のなく設定された無菌環境内で飼育されても構わない。
【0175】
第2の実施形態では、蚕移載装置10、および、第2飼育容器搬送装置20が、第2コンテナ2B内に配置される例について説明された。代替的に、蚕移載装置10、または、第2飼育容器搬送装置20が、第1コンテナ2A内に配置されてもよい。更に代替的に、蚕移載装置10、または、第2飼育容器搬送装置20が、コンテナとは関係のない無菌環境内に配置されてもよい。
【0176】
また、第2の実施形態では、第1飼育容器搬送装置40、餌供給装置60、仕切り部材移動装置70、および、卵移載装置80が、第1コンテナ2A内に配置される例について説明された。代替的に、第1飼育容器搬送装置40、餌供給装置60、仕切り部材移動装置70、または、卵移載装置80が、第2コンテナ2B内に配置されてもよい。更に代替的に、第1飼育容器搬送装置40、餌供給装置60、仕切り部材移動装置70、または、卵移載装置80が、コンテナとは関係のない無菌環境内に配置されてもよい。
【0177】
また、第2の実施形態では、第1飼育容器C1から第2飼育容器C2に移載される蚕が、4齢幼虫の蚕である場合の例について説明された。代替的に、第1飼育容器C1から第2飼育容器C2に移載される蚕は、例えば、5齢幼虫の蚕であってもよい。また、5齢幼虫の蚕(より具体的には、繭を作る直前の蚕)が、第2飼育容器C2に移載される場合、第2飼育容器C2に餌を配置することが省略されてもよい。この場合、第2飼育容器C2を餌供給装置60に向けて搬送する必要はない。また、第2飼育容器C2に餌を配置しない場合には、上述の実施形態の説明において、「餌支持部PL」は、「支持部」に読み替えられる。「支持部」は、蚕を支持可能な支持部である。
【0178】
また、図14図15に記載の例では、第2飼育容器C2の第1端部Ca(第1端面)に、蚕が通過可能なOPが配置されている。付加的に、第2飼育容器C2の第2端部Cb(第2端面)に、蚕が通過可能な開口が配置されていてもよい。
【0179】
[実施形態3]図18図31を参照して、実施態様3に係る自動養蚕システム、自動養蚕方法、プログラム及び記憶媒体について説明する。
【0180】
[蚕の成長]
蚕の卵は、30度以上で約3日間で孵化するので、孵化するタイミングを調製することが可能である。孵化から日数を数えておき、幼虫、稚蚕(ちさん)、脱皮1齢、2齢、3齢、4齢、5齢、5齢の熟蚕までを管理する。概ね3齢~5齢までは集団で飼育する。1つのコンテナにおいて、100万頭程度の蚕の飼育が可能である。
【0181】
例えば15日目、3齢から4齢への脱皮前の蚕の活動が少ない時期に、ピッキングロボで集団飼育容器から蚕を取り出して、個別飼育容器に移動する。あるいは、卵の時から個別飼育容器で飼育することも可能である。卵、稚蚕、1齢~5齢、熟蚕のいずれの段階で、集団飼育容器から個別飼育容器に蚕を移動してもよい。
【0182】
個別飼育容器はSUS製であり製造コストがかかるものであるため、なるべく使用頻度を高めたい。このためには、熟蚕まで集団飼育を行い、熟蚕となってから個別飼育容器に移動すると有利である。例えば25日目の熟蚕になるまで集団飼育容器で飼育し、糸を吐き始める準備ができた熟蚕を、個別飼育容器に移動させてもよい。この場合、糸を吐き始める準備ができたかどうかは、大量の糞とおしっこをすること、体色が白から黄色がかった透明に変化すること、頭を持ち上げること等の特徴から目視により、又は、カメラからの画像を画像認識することにより自動的に検出することができる。
【0183】
5齢の熟蚕(じゅくさん)となる際の特徴は、10日餌を間食べ続けること、その後、おしっこ、大量の糞、白から黄色(透明)への変化である。孵化後25日目から糸を吐き始める。28日目で繭を作り始め、3日くらいで繭を取り出す。日数が目安になるので、ほぼ時期は特定できるが、センシングによって繭を取り出す時期を調整してもよい。センシングは1時間に1回程度の頻度でよい。繭が完成すると蚕は繭の中で動かなくなるため、繭に光を当ててセンサで見ることで、繭が完成したことを検出可能である。また、カメラとしては、カラーカメラ、モノクロカメラに加え、X線カメラ、赤外線カメラ等を用いることも可能である。
【0184】
成虫から卵をとる場合には、繭を破って出てくる成虫の蚕蛾まで飼育する。一頭の雌が卵約200個を生む。
【0185】
[飼料について]
桑の葉を乾燥パウダーとすると、重量は生の葉の三分の一となる。パウダーの細かさは、例えば80μm~100μm程度とする。桑の葉の水分は冬60%、夏70%低出である。この水分量の70%~60%が、30%程度となるまでヒートポンプ式乾燥機で約6時間かけて乾燥させる。さらに、水分量3%までは乾燥3日間程度の時間を要する。そこで、水分量30%から3%まで乾燥させるときに、真空においてマイクロ波を照射しながら攪拌して乾燥させると、例えば20分間程度の短時間で乾燥できる。乾燥パウダーからババロア状のかまぼこ型ブロックを整形する。形は、かまぼこ型に限らず、大きさ、形状も任意である。飼育ケースの所望の位置に、所定の大きさの餌のブロックを所定の配置、所定の量だけ配置することができる。柔らかさは成分ないし比率によって、概ね、マヨネーズくらいから、うどんぐらいの硬さまでとする。
【0186】
ヒートポンプ式乾燥機で最初から最後まで乾燥させてもよい。調合した餌をホッパーから投入すると、ポンプにより絞り出され、所望の太さのかまぼこ型グロックの餌を飼育容器の所定の場所に提供できる。太さ、配合比は、蚕の成長に合わせて変更できる。餌の配合や、ブロックの大きさ、太さ等の調整も自動化されている。
【0187】
桑の葉の乾燥パウダーは、前述の製法により、無菌化されている。副飼料である、脱脂大豆醤油や豆腐製造から出たおからを乾燥させたものは、食用であり無菌化されている。副飼料には、アミノ酸、プロテインが含まれる。さらに、水分(水は殺菌済みの水、無菌の水を使用。)が加えられ、これら3者を混ぜ合わせてババロア状の柔らかい、餌のブロックに成形する。
【0188】
餌の配合比率は、例えば、桑パウダー10%、副飼料20%、水分70%程度とする。桑の葉を高温乾燥した場合には、栄養成分失われているため、補助的な添加剤を加えることが望ましい。一方、桑の葉を低温乾燥させた場合には、栄養成分が失われにくいため、補助的な添加剤が必要ない可能性がある。
【0189】
桑の葉を乾燥させる温度は、オーブンでの乾燥(繭内の蚕を処理するためのオーブン)は80℃程度、ヒートポンプ方式の乾燥は50~60℃程度、真空中のマイクロ波での乾燥は40℃程度であり、その他、フリーズドライのように乾燥及び粉砕を行ってもよい。
【0190】
集団飼育容器には飼料供給手段によって飼料が自動で供給される。蚕の成長に合わせて飼料の太さ、配合比を調整できる。集団飼育容器において、飼料を供給する位置を蚕の成長に合わせて変える。例えば、5日目の飼料の補充時には、卵と最初の餌を供給する位置と隣接する位置に所定の配合比、サイズ(太さ)の餌を供給する。また、10日目の飼料の補充時には、5日目に配置した飼料の位置からさらに隣接した位置に、所定の配合比、サイズ(太さ)の餌を供給する。さらに、15日目の飼料の補充時には、10日目に配置した飼料の位置からさらに隣接した位置に、所定の配合比、サイズ(太さ)の餌を供給する。このように、飼料を供給する位置をずらしていくことで、蚕の位置を飼料のある場所に誘導することによって、糞が特定の飼料の位置だけに溜まることを防ぐことができる。
【0191】
図18は、システム全体の平面図であり、第1コンテナ202及び第2コンテナ203からなる。図19は第1コンテナの平面図であり、図20は、第2コンテナの平面図であり、図21図20の側面図である。第1コンテナは処理用のスペースであり、第2コンテナは蚕育成用のスペースである。集団飼育容器への蚕の卵の投入、餌の投入、蚕の積み替え等の処理は全て第1コンテナにおいて、自動的に行われる。第1コンテナでは、餌や卵の補充などのメンテナンス以外は全自動であるため、無人かつ無菌化が可能である。第2コンテナにはメンテナンス以外では作業者が入ることはなく、蚕の飼育環境は常に無人かつ無菌化が可能である。自動化によって作業者が立ち入らないことにより、無菌化がしやすいことも本実施形態の特徴である。
【0192】
第1コンテナ202は、ロボットアーム210、卵ないし飼料供給位置211、蚕のピックアップ位置(回転テーブル)212、個別飼育容器への蚕の移動ないし個別飼育容器からの繭の取り出し位置(昇降可能)213等を備えている。卵ないし飼料供給位置211において飼育容器に卵ないし飼料が供給される。蚕のピックアップ位置には、飼育容器を回転させる回転テーブルが設けられており、集団飼育容器から蚕をピックアップする。このピックアップされた蚕は、個別飼育容器への蚕の取り出し位置213に搬送された個別飼育容器へ移動させる。また、個別飼育容器からの繭の取り出し位置213においては、個別飼育容器内で蚕が作った繭を取り出す。図22は、ロボットアーム210が本来の位置とは異なる位置にある時の写真であるが、中央上方が卵ないし飼料供給位置211、中央手前には集団飼育容器が搬送されており、その左上には蚕のピックアップ位置(回転テーブル)212があり、さらにその左上には本来はロボットアーム210が位置する。図22の左上には個別飼育容器への蚕の移動ないし個別飼育容器からの繭の取り出し位置(昇降可能)213が設けられている。
【0193】
第2コンテナ203は、飼育容器自動収納手段215及び飼育棚216等を備えている。飼育容器自動収納手段215が飼育容器を自動的に搬送することにより、無人化を実現している。飼育容器自動収納手段215は第2コンテナ内の長さ方向に移動可能であると共に第2コンテナ内の全ての飼育棚216にアクセスし、飼育棚を自動的に取り回すことができる。さらに、第1コンテナと第2コンテナとの間は連結コンベア214により連結されており、第1コンテナと第2コンテナとの間で、無人かつ無菌状態で飼育容器の搬送が可能である。
【0194】
[蚕移動手段]
ロボットアーム210は蚕をピックアップするピッキングロボとして使用できる。ピッキングロボにおいては、ソフトロボティックスの技術を用いた吸盤ないしハンドにより、蚕を優しくソフトにピックアップすることが可能である。例えば、3齢3cmぐらいの蚕については、ロボットアーム先端の真空吸盤で吸い上げる。また例えば、柔らかいエアー駆動のハンドによって蚕を把持するとよい。ハンドの材手としては粘着性シリコン製の柔らかい材料が望まし。また例えば、柔らかいエアー駆動のハンドで把持すると共に、真空吸盤で吸い上げることも有効である。ロボットアーム210を繭のピックアップハンドとして用いる場合には、例えばピックアップハンドをエアーで駆動し、繭をソフトに把持することが望ましい。蚕をピックアップするハンドと、繭をピックアップするハンドとは、自動的に交換可能である。
【0195】
蚕のピックアップ位置212では、回転テーブルになっているため、集団飼育容器を回転させながらピッキングロボットによって蚕をピッキングすることができる。例えば、単眼カメラによる二次元の画像認識により、蚕の位置を判定する。また、単眼カメラによる二次元の画像認識により、繭の位置を判定して、繭ピッキング用ハンドにより、繭を取り出す。蚕ピック位置にカメラ1台、繭ピック位置に別のカメラ1台。ただし、二軸カメラ(ステレオカメラ)を用いて、三次元での画像認識を行うことも可能である。個別飼育容器への蚕の移動ないし個別飼育容器からの繭の取り出し位置213においては、個別飼育容器はリフターによって昇降可能となっている。個別飼育容器への蚕の移動と、個別飼育容器からの繭の取り出しは、同じ位置213において行われる。
【0196】
図27は検知用カメラの写真である。検知用カメラはピッキングロボットの上方に、例えば蚕ピック位置にカメラ1台、繭ピック位置に別のカメラ1台が設けられている。カメラの近傍には撮影範囲を照明するための照明手段が設けられている。この検知用カメラにより得られた画像を画像認識することにより、ピックアップする蚕ないし繭を検知する。
【0197】
[卵供給手段]
卵ないし飼料供給位置211において、卵は飼育容器に投入される。蚕の卵の特徴として、水中では元気な卵は沈み、死んだ卵は浮き上がる。そこで、元気な卵をスポイトにより取り出す、ロボット利用して、卵を飼育容器に投入する例を説明する。V溝状の消毒液槽に卵を投入すると、正常な卵はV溝の底に沈む。底に沈んでいる卵を吸引手段(スポイト状の吸引手段、複数併設)により吸引し、集団飼育容器の所定の場所に卵を投入する。複数列、例えば6列に卵を並べていく。餌も卵の配列と平行に、その卵の配列の間に、複数列供給する。消毒液は例えばオスバン液(登録商標)を用いることができる。原液を1%程度に薄める。オゾン水でもよい。卵の表面を消毒する。これにより、蚕の卵も無菌状態とすることができる。
【0198】
[養蚕システムをコンテナで実現した例]
特に限定されるものではないが、本実施形態の自動養蚕システムは2つのコンテナに収容することで、実現可能である。第1コンテは作業スペースであり、第2コンテナは飼育室となり、両者を接続するコンベアで接続する。これらのコンテナにより、2万頭程度の蚕を飼育することができ、さらに規模を拡大すれば、100万頭単位での養蚕が可能である。
【0199】
第1コンテナでの作業には、卵の選別、集団飼育容器の準備、個別飼育容器の準備、餌の追加、蚕のピックアップ、集団飼育容器から個別飼育容器への移動等が含まれる。ロボットアームについては、複数台のピッキングロボを用いることもできる。この場合、例えば、円周状等の周回状のコンベアの周囲(内周側や外周側)に複数のピッキングロボを配置し、カメラによる画像認識により、熟蚕だけをピックアップしていくことが可能である。並列処理により、ピックアップ作業の時間短縮がかのである。
【0200】
第2コンテナは、個別飼育容器、集団飼育容器を格納する複数の飼育棚が設けられている。図29図31に、第2コンテナに配置される飼育棚、飼育容器自動収納手段を示す。図29は、飼育棚の写真である。図30は、飼育容器自動収納手段のレールの写真である。図31は、飼育容器自動収納手段の写真である。飼育容器自動収納手段は昇降手段、及び、飼育棚への飼育容器の収納ないし取り出し手段が設けられている。
【0201】
[無菌飼育]
餌、卵、飼育容器、第1及び第2コンテナ内等が全て無菌状態である、すなわち、完全無菌である。コンテナ内湿度は70%とされ、餌が乾くのを防いでいる。餌の水分量は70%であり、先のコンテナ内湿度条件はこれに一致させている。室温は蚕が好む20~25℃とすることが望ましい。無菌状態樽の出、餌がいたみにくいので、蚕の健康を維持することが可能である。無菌状態とするために、卵の外側を消毒している。前述のとおり、V溝状の消毒液槽に卵を投入して、底に沈んだものだけを取り出している。無菌の飼料を供給しており、また、飼育環境を除菌ないし無菌環境としている。例えばへパフィルター(HEPAフィルター)を用いた空気清浄機を用いたクリーンルームとされ、1ミクロンサイズのごみを取り除くことが可能である。
【0202】
蚕の卵は、30度以上で3日程度で孵化するので、卵の購入時に孵化定日を指定することで、孵化日の管理が可能である。卵の購入時には、品種、個数、孵化日等が指定される。
【0203】
[飼育方法]
定期的に例えば5日ごとに餌やりを行う。飼育容器に卵と餌を投入し、5日目に餌をやり、また5日後に餌やり、さらに5日後に餌やりを行い、合計15日後に、3齢から4齢への脱皮前の動かない期間、3齢で3cmくらいの大きさの蚕を、ピッキングロボ(例えば真空引きした吸盤)にて個別飼育用のチューブへ移す、チューブ内には餌を満載、例えば20g程度与えておく。個別飼育容器内で25日目に糸を吐き出し繭を作り始め、その3日後、合計28日目には、繭をピッキングハンドで取り出す。
【0204】
[洗浄工程]
蚕の糞は漢方薬として利用できる為、糞も回収する。糞は個別飼育容器の金網の隙間から落ちて底にたまるので、糞だけを回収することが可能である。脱皮の抜け殻、餌の残りは、金網の上に残るので、分別可能である。集団飼育容器、個別飼育容器、仕切部材は、使用後には洗浄、例えば自動洗浄される。特に限定されるものではないが、例えば洗浄槽内の水流による自動洗浄の採用も可能である。
【0205】
集めた繭の回収、集めた糞の回収、集めた残渣(食べ残し、脱皮物)の回収、飼料の補充、卵の補充等についても全て自動化可能であるので、養蚕の無人化が可能であり、完全自動化の養蚕システムが実現できる。ただし、これらの中のいずれかを人手で行うようにしてもよい。
【0206】
卵供給手段、飼料供給手段、蚕移動手段、繭取出手段、飼育容器自動収納手段、及び、飼育容器移動手段も全て自動化されており、人手を介さないことで、無菌化しやすく、蚕のストレスを低減できる。伝統養蚕では、まぶしに入れるタイミング、上蔟(じょうぞく)時期を揃えることがとても難しかった。本実施形態では、上蔟時期をセンシングにより、分析し、分析結果に応じた可変作業が可能である。監視(センサ)、データ分析・意思決定(AIの利用)、分析結果に応じた可変作業(ロボットで自動化)が可能である。3~5齢で、個別飼育容器に移す場合には、上蔟時期の管理は不要である。繭を取り出す時期は、日数によって、あるいは、センシングによって、決定できる。熟蚕だけを選んでピックアップする場合には、同じ集団飼育容器内でも生育の遅い蚕もいるため、ピックアップ作業時期を調整できるように、ピックアップ位置近傍に集団飼育容器を一時的にストックできる集団飼育容器ストッカを設けておくとよい。IoT技術を用いることにより、蚕の育成状況をモニタリングし、成長に応じた作業時期の最適化が可能である。例えば、カメラにより蚕ないし繭の状況をモニタリングする。例えば1時間ごとにモニタリングする。
【0207】
[個別飼育容器]
個別飼育容器は、マトリックス状に、例えば5段×10列で飼育スペースが設けられている。1つの飼育スペースを仕切部材で2つの部屋に仕切られている。繭の取り出しは、作業台上で片方ずつ仕切部材を長さ方向半分まで押し出す。例えば、縦5段横10列、チューブ中央に仕切り、網による底上げがあり、フンは網の下にたまっている。中央の仕切りの周囲が弾性部材、例えばスポンジになっていて、仕切りを半分移動させると、中の糞を掻き出せる。繭を取り出すと同時に、一次的な清掃が完了する。両面に着脱可能な蓋(透光性)が設けられている。
【0208】
[集団飼育容器]
集団飼育容器は、略方形有底状の容器であり、中央には乾燥防止用の水分供給手段が設けられている。図22の中央下の略方形の容器を参照。水分供給手段は水分をしみこませたスポンジ等とすることができる。あるいは、直接水を水分供給手段としての容器に入れておくこともできる。集団飼育容器の上面には着脱可能な蓋(透光性)が設けられている。
【0209】
[仕切部材]
図23は仕切部材の写真である。仕切部材240は個別飼育容器の飼育スペースに挿入されている。仕切部材240は、仕切部241及び平面部243を有している。仕切部241は飼育スペースを2つの空間に仕切る。平面部243は、蚕ないし繭を飼育するための床となる。平面部243には複数の孔部が設けられており、蚕の糞は孔部から落ちて、飼育スペースの底部と、平面部243の下部との間に溜まる。仕切部241の周囲には例えばスポンジ等からなる弾性部材242が設けられている。弾性部材242は、飼育スペースの内壁の形状及び寸法に対応している。平面部の243の両端部には上面側に凸となる、凸部246が設けられている。
【0210】
図24は、仕切部材240を仕切部材移動手段220によって、仕切部材240の長さの半分の距離だけ飼育スペースから押し出した場合を示した図である。このように仕切部材240を飼育スペースから半分だけ押し出すと、弾性部材242は飼育スペースの内壁に摺接しているので、収納スペース内の糞と糞以外の残渣とを分別して取り出すことができる。図25は、個別飼育容器から繭を取り出す際の写真である。図25は実際の設置位置とは異なる参考写真であるため、実際の配置関係とは異なっている。繭を取り出す位置は、仕切部材240を飼育スペースから半分だけ押し出した位置であると共に、仕切部材収容部は個別飼育容器に接した状態で、突出した側の仕切部材240が仕切部材収容部に嵌められている。この状態では糞は弾性部材242により掻き出され、糞回収容器により回収される。一方、糞以外の残渣である食べ残された餌や脱皮した皮等は、平面部の243の上に残るため、糞と糞以外の残渣とを分別して取り出すことが可能である。繭の取出しには、例えば図26に示される繭ピッキングアームを用いることができる。
【0211】
図24の位置から仕切部材240を飼育スペース内に戻すために、仕切部材移動手段220に設けられた爪部は、凸部246と係合するようになっている。個別飼育容器はリフターの上に載せられているので、その高さを調整できる。個別飼育容器は例えば5段10列の合計50個の飼育スペースを有している。各段には10個の飼育スペースがあり、この各段の10個の収納スペースに挿入されている仕切部材240は、仕切部材移動手段220の10個のアームにより、同時に移動させることができる。仕切部材移動手段220に設けられた爪部と凸部246との係合、及び、係合解除は、リフターの高さ調整により行われる。個別飼育容器を180度回転させれば、反対側からも212の両側から仕切部材240を飼育スペースから半分だけ押し出すと、反対側からも仕切部材240を飼育スペースから押し出すことができる。
【0212】
[実施形態4] 本実施形態では、図31図37を参照して、集団飼育容器から個別飼育へと移す際に、実施形態3とは異なり、ピッキングロボを用いない方法を説明する。
【0213】
2齢(20mmくらい)からまぶし(仕切によって仕切られた50mm×50mm程度の複数の升(ます))の中に移す。すなわち、集団飼育から個別飼育へ移す。
【0214】
(実施例1)
図32において、漏斗(ろうと)のような例えば円錐状の器具(漏斗310)を用いて、蚕を上蔟室容器300に1頭ずつ入れていく。各升301に蚕が1頭ずつ入らない場合、例えば、1つの升の中に2頭入ってしまう場合や、空の升が生じた場合等には、ピックロボットを用いて各升に蚕が1頭ずつ入るように蚕を移動させる。
【0215】
3日程度で繭が取れるので、年間120回の繭の生産が可能となる。飼育器の施入日数が少なくて済む。
【0216】
図33に変形例の漏斗310Aを示す。漏斗301Aの抽出口の上方には第1シャッター311が設けられ、抽出口の下方には第2シャッター312が設けられ、第1シャッターと第2シャッターとの間にはシャッター室313が設けられる。第1シャッター311を開き、例えば1頭の蚕が第1シャッター室に移動したら、すぐに第1シャッター311を閉じることにより、1頭の蚕がシャッター室313に移動する。次に、第2シャッター312を開くとシャッター室から1頭の蚕が漏斗310から、1つの升301へと抽出される。これにより、升301に対し1頭ずつの蚕を収容することができる。シャッター室313にセンサを設けた場合には、このセンサによる蚕の検出に応じて、第1シャッター311及び第2シャッター312を制御することが可能となる。これにより、蚕を1頭ずつシャッター室313に移動させ、蚕を確実に1頭ずつ漏斗から抽出することが可能となる。
【0217】
(実施例2)
図34では、集団飼育容器320の上から、複数の升331に仕切られた個別移動升330をかぶされる。集団飼育容器320の内側寸法は、個別移動升330外形寸法に略一致している。蚕は上の方に登る習性と他の蚕との距離をとる習性があるため、升部材の各升の中に1頭の蚕が自ら入っていく。
【0218】
(実施例2の変形例2-1)
格子状の升部材に代えて、例えば波状の仕切部材を複数積層したもの、すなわち、複数の波型升333が設けられた波型個別移動升333を用いる。図35の波型個別移動升333は、図34の個別移動升330のような矩形の升部材を製造するよりも、仕切部材を積層して製造する方が簡単であるため、装置が安価となる。仕切部材は波型に限らず、例えば連続的な矩形でもよい。
【0219】
(実施例2の変形例2-2)
格子状の個別移動升330に代えて、例えば図36Bのように、金網335(図36A)を連続的な波型形状に屈曲成形した金網型個別移動升336(図36B)を用いて、蚕を上蔟することができる。熟蚕は立体形状の場所で繭を作る習性がある。この蚕の習性を利用すると、金網型個別移動升336に形成された金網間の立体的なスペースを蚕は立体形状と認識し、このスペースに繭を作る。
【0220】
(実施例2の変形例2-3)
図37に示すように、蚕が餌のある場所に集まる習性を利用し、ペースト状の餌を分散配置することにより、集団飼育容器320中で蚕を全体に分散配置させ、それにより、個別移動升330を上からかぶせた時に、升331に蚕が1頭ずつ移動するように誘導することが可能となる。
【0221】
図37Aでは、卵から孵ったばかりの小さい蚕を、第1仕切321内で飼育する場合の図である。餌325は第1仕切321内に分散して配置される。蚕は分散された餌のところに集まることにより、結果的に蚕を分散して飼育することができる。
【0222】
図37Bは、蚕が大きくなってきたときに、第1仕切321を取り外し、第2仕切322で飼育する場合の説明図である。第2仕切に餌が均等に分散され、この餌に蚕が集まることにより、結果的に第2仕切内322において蚕を分散して飼育することができる。
【0223】
図37Cは、さらに蚕が大きく成長すると、第2仕切322を取り外し、集団飼育容器320全体で蚕を飼育する。集団飼育容器320内には均等にペースト状の餌が分散配置される。蚕は餌に集まるため、結果として、蚕は集団飼育容器320内に略均等に分散される。この状態で蚕が熟さんとなった時に、集団飼育容器320の上から個別移動升330をかぶせると、略均等に分散した熟蚕を升331に1頭ずつ誘導することが可能となる。
【0224】
(実施例3)
集団飼育容器320内で飼育した場合には、集団飼育容器320内には蚕の他に、蚕の糞と、餌の残り等の残渣が溜まっている。上蔟するためには熟蚕だけを取り出したいが、容器からそのまま熟蚕を取り出そうとすると、どうしても残渣が一緒に出てきてしまう。そこで、蚕が自力で集団飼育容器320内で踏み留まれる程度の出力の真空吸引ノズルを用いることにより、集団飼育容器320内の残渣だけを吸い取り、熟蚕だけをまとめて取り出すことが可能となる。熟蚕だけを取り出せれば、図32の実施例の漏斗310に蚕をまとめて投入することが可能となる。さらには、漏斗310を用いなくとも、蚕は他の蚕と距離をとる性質があるため、上蔟室容器300の上に熟蚕をばらまくだけで、蚕は自ら1頭ずつ各升301に入り、そこで繭を作ることができる。ここでは、上蔟室容器300に蚕をばらまく例を説明したが、本実施例はこれに限定されるものではなく、例えば蚕を図36Bの金網型個別移動升、竹で編んだ網状の升部材等に蚕をばらまくことによっても、蚕は自ら1頭ずつ各升ないしは個別スペースに入っていき、そこで、繭を作ることができる。
【0225】
これらの各実施例、変形例において、蚕の習性・蚕は互いに距離を取ろうとする習性、・上に登ろうとする習性、及び、・熟蚕は、3次元スペースでは繭をつくり、2次元空間では平面に糸を吐くとうい習性等、を利用して、蚕が自ら1頭ずつ各升に入っていくような装置について説明したが、全ての蚕が自らの行動により、上蔟させることができるとは限らない。何頭かは蚕の自らの行動によっては上蔟させることができないことがあるので、このような蚕については、例えば図28に図示されたロボットアームによって、強制的に上蔟させるようにすることができる。また、ロボットアームを複数用いれば、蚕を上蔟させる処理時間をより短くすることができる。
【0226】
以上、本発明の実施形態の自動養蚕システム、自動養蚕方法、プログラム及び記憶媒体について説明したが、これらの実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための自動養蚕システム、自動養蚕方法、プログラム及び記憶媒体を説明するために例示したものであり、本発明をこの実施形態例に限定することを意図するものではない。本発明は、各実施形態や各実施例ないし変形例を組み合わせたものや、種々の変更を行ったものにも均しく適用し得るものである。
【符号の説明】
【0227】
1、1A、1B 蚕飼育システム
2 コンテナ
2A 第1コンテナ
2B 第2コンテナ
10 蚕移載装置
11 蚕保持部材
11a 第1把持部
11b 第2把持部
11c 真空吸着部
12 保持部材移動装置
13 カメラ
20 第2飼育容器搬送装置
30 制御装置
40 第1飼育容器搬送装置
41 搬送装置
60 餌供給装置
61 餌貯留容器
62、62-1 ノズル部材
62-2 第2ノズル部材
62h 開口
63、63-1 移動装置
63-2 第2移動装置
64 餌供給管
64d 第1分岐管
64e 第2分岐管
64m メイン管
64r 戻り管
65 餌供給ポンプ
67 水供給管
70 仕切り部材移動装置
71 仕切り部材保持部
71a 第1把持部
71b 第2把持部
71c フック部
72 保持部移動装置
80 卵移載装置
81 吸引管
82 配管
83 開閉弁
84 真空ポンプ
86 吸引管移動装置
91 断熱材
92 空調装置
92a 空気供給口
95 コンテナ連結部
101 監視用パソコン
103 繭回収装置
105 洗浄装置
110 把持部
111 把持片
111a 第1把持片
111b 第2把持片
112 接触部
201 自動養蚕システム
202 第1コンテナ
203 第2コンテナ
210 ロボットアーム
211 卵ないし飼料供給位置
212 蚕のピックアップ位置(回転テーブル)
213 個別飼育容器への蚕の移動ないし個別飼育容器からの繭の取り出し位置(昇降可能)
214 連結コンベア
215 飼育容器自動収納手段
216 飼育棚
220 仕切部材移動手段(押す、引く(仕切部材の凸部に爪をかけて引く))
230 飼育容器自動収納手段のレール
240 仕切部材
241 仕切部
242 弾性部材
243 平面部
244 孔
245 フランジ部
246 凸部
300 上蔟室容器
301 升
310 漏斗
311 第1シャッター
312 第2シャッター
320 集団飼育容器
321 第1仕切
322 第2仕切
325 餌
330 個別移動升
331 升
332 波型個別移動升
333 波型升
335 金網
336 金網型個別移動升
611 攪拌装置
620 切替弁
621 第1ノズル
622 第2ノズル
623 第3ノズル
630 ロボットアーム
641、643、645 開閉弁
651 回転シャフト
652 羽根部材
671 開閉弁
672 フィルタ
921 ファン
922 熱交換器
923 フィルタ
924 フィルタ
A 蚕
AR 蚕移載領域
AR1 第1飼育容器保管領域
AR2 第2飼育容器保管領域
AT 無菌雰囲気
C1 第1飼育容器
C2 第2飼育容器
C3 容器
CL 蓋部材
CY 筒状容器
Ca 第1端部
Cb 第2端部
D1 分岐部
D2 分岐部
DR 扉
DR1 第1扉
DR2 第2扉
E、E1、E2 蚕卵
F 餌
F1 桑
F2 おから
H ハウジング部材
IS 内部空間
J 仕切壁
M 糞
M1、M2 モータ
OP 開口
P 仕切り部材
P1 第1仕切り部材
P2 第2仕切り部材
PH 流体供給路
PL 餌支持部
Pa 係合部
R1 第1領域
R2 第2領域
Rn1 第1領域
Rn2 第2領域
SP 飼育室
SP1 第1飼育室
SP2 第2飼育室
T1 棚
T2 棚
Wa 外壁
Ws 内面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
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図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37