(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138013
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】回転伝達装置
(51)【国際特許分類】
A01G 9/24 20060101AFI20240927BHJP
E06B 9/76 20060101ALI20240927BHJP
F16D 43/02 20060101ALI20240927BHJP
F16D 63/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
A01G9/24 F
A01G9/24 K
E06B9/76
F16D43/02
F16D63/00 R
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024114250
(22)【出願日】2024-07-17
(62)【分割の表示】P 2020177899の分割
【原出願日】2020-10-23
(31)【優先権主張番号】P 2019226990
(32)【優先日】2019-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020062091
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000221568
【氏名又は名称】東都興業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004200
【氏名又は名称】弁理士法人山名国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】窪田 亮
(72)【発明者】
【氏名】西脇 正敏
(57)【要約】
【課題】入力軸と出力軸の外周に嵌める軸受スリーブの中に不動構造のパッキンを設け、入力軸と出力軸の水密状態での回転を確保して水の侵入が防止された高品質な回転伝達装置を提供する。
【解決手段】入力軸1と出力軸2の外周には各々軸受スリーブ8が嵌められ、軸受スリーブ8の内周面81に内パッキン7が嵌まり込んで拘束される凹状の内パッキン拘束溝82が形成されており、その内パッキン拘束溝82に嵌まり込んだ不動構造の内パッキン7の内周に、入力軸1と出力軸2がそれぞれ水密状態で摺動自在に嵌挿されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のケーシング内に、内接状態で配設され両端部を内方へ突出するように屈曲したフック部を有するコイル状のブレーキバネと、回転中心線上に配置された軸ピンの両端部に同軸ピンを中心として回転自在に相対峙する入力軸と出力軸が配設され、且つ前記入力軸及び出力軸の各内端から回転伝達部と被回転伝達部が軸ピンと平行配置で突出され、前記ブレーキバネの両端のフック部に対して、入力軸の回転伝達部はフック部の内側部に当接してブレーキバネを縮径させ、出力軸の被回転伝達部は前記フック部の外側部に当接してブレーキバネを拡径させる回転伝達装置において、
前記入力軸と出力軸の外周には各々軸受スリーブが嵌められ、前記軸受スリーブの内周面に環状の内パッキンが嵌まり込んで拘束される凹状の内パッキン拘束溝が形成されており、その内パッキン拘束溝に嵌まり込んだ不動構造の内パッキンの内周に、入力軸と出力軸がそれぞれ水密状態で摺動自在に嵌挿されていることを特徴とする回転伝達装置。
【請求項2】
前記軸受スリーブは、分割タイプの一対の軸受スリーブで構成されていることを特徴とする、請求項1に記載した回転伝達装置。
【請求項3】
前記入力軸と出力軸の外周に各々嵌められる単体又は一対で成る軸受スリーブの外周面に環状の外パッキンを介在した状態で、前記入力軸と出力軸は前記ケーシング内に配設されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載した回転伝達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、
図22に示したようなビニルハウスを覆うフィルムシートの巻き上げと巻き下げに使用される回転機の駆動部に適した回転伝達装置の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
換気用開閉システムの操作に好適な回転機の駆動部として内蔵される回転伝達装置に関し、例えば下記特許文献1には、ケーシング20内に装填されるコイルばね30と、前記コイルばね30に形成された各フック部31、32の内側面間に位置するように配置され、回転することにより、側端面のいずれかが前記いずれかのフック部31、32の内側面に当接し、コイルばね30を巻き締める入力側作用片43を有する入力軸40と、前記コイルばね30に形成された各フック部31、32の外側面間であって、入力軸40の入力側作用片43の形成位置よりも軸心寄りに位置するように形成された出力側作用片53を有すると共に、該出力側作用片53の側端面に、外向きに突出させた鍔部56、57を有し、回転することにより、該鍔部56、57が前記いずれかのフック部31、32における屈曲部位寄りの外側面に当接してコイルばね30を巻き戻す出力軸50を具備する回転伝達機構10が記載されている(同文献1の請求項1参照)。
【0003】
また、本出願人は、下記特許文献2に記載のように、制動ドラム10の筒内部に、捻りコイルバネ11が、外径面を制動ドラム10の内周面に接する状態に設置され、該コイルバネ11の両端の被駆動端部11aは半径方向内方側へ、且つ円周方向に相対峙する向きの半円形状に湾曲され、入力軸12と出力軸23は軸ピン14の両端部に、回転自在に相対峙する配置とされ、それぞれの内端部から軸ピン14と平行する方向に突き出された回転伝達部12cと被回転伝達部13cは、捻りコイルバネ11の被駆動端部11aに対して、入力軸12の回転伝達部12cは半円形状の内周側へ当たってコイルバネ11を縮径させ、出力軸23の被回転伝達部13cは前記半円形状の外周側へ当たってコイルバネ11を拡径させる回転伝達装置を開発しているところである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-34353号公報
【特許文献2】実用新案登録第3180597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
回転伝達装置の基本構造は、出力軸の作動時に、バネはケーシングの中にあるので、バネは拡径しようとするとき、ケーシングの内壁に当たって止まる。一方、入力軸の作動時には、バネは縮径(収縮)する。この拡径と縮径に時間差(ロス)があると、拡径-縮径-拡径-縮径-を繰り返しガタガタする。よって、バネを緩める力を最小限にしつつ入力軸から出力軸に回転力を伝達することが課題となっている。
この点、上記した特許文献1に記載の回転伝達機構は、「入力軸」→「バネ」→「出力軸」というように、バネを介して出力軸を回していく構造である。そのため、バネにかかる力(応力)を解除する力を大きくする必要があって使い勝手が悪い。
すなわち、特許文献1に係る回転伝達機構は、入力軸から力を入れたときに、出力軸が内側に当たると、入力軸からの力が出力軸の内側に入っていくので、ロスが大きくなるため、鍔部56、57を出して同じ位置に当たるように入力軸と出力軸の関係を保ってはいるが、鍔部56、57が当たるところによっては、中のロスが変ってくる。また、ハウス奥行きが長い場合やシートが厚い場合、ハウスバンドの締め込み方が緩い場合等に起こる高負荷や、経年使用によって鍔部56、57が変形し、バランスを保てず回転が不安定になる恐れがある。
【0006】
上述した「入力軸」→「バネ」→「出力軸」というように、バネを介して出力軸を回していく構造は、特許文献2に記載の回転伝達装置についても同様のことがいえる。
また、例えば、上述した特許文献2に記載の入力軸12と出力軸23の外周に嵌められる軸受スリーブ15に、内外のパッキン(Oリング)G、Qを介在させて実施すると、
図23に示したように、内パッキンGは、ただ軸受スリーブ15の内部に入力軸12(又は出力軸23)との間で揺動可能に収まっているだけで内パッキンG自体が圧迫されておらず、内パッキンGは横方向(軸方向)に動ける遊びがある構造である。これは
図24に示した如く公知の内外のパッキンG’、Q’を、軸受スリーブZに入力軸Y(出力軸)を介在させて実施する当該リング状構造の内パッキンG’についても同様のことがいえる訳である。
それ故に、入力軸(12)と出力軸(23)の回転に応じて当該内パッキンG(G’)が動くと、その動いた隙間から装置の中に水が浸入してしまう。というのも、仮に内パッキンG(G’)を固く締めると、入力軸(12)と出力軸(23)が回転できなくなるので、そもそも圧力をかけられず、水の侵入を許容する構造となっている。そのため、回転伝達装置の中に水が浸入すると、部品が経年劣化したり、錆びてきしんだり、破損が生じる恐れがある問題も解決すべき課題となっている。
【0007】
また、従来の回転伝達装置の入力軸と出力軸は、経年使用の強度に耐える鉄製で製造しているが、アルミニウムで実施できれば、製作が容易で軽量化が図れる上、製造コストの低廉化が図れるので、それを実現するために入力軸と出力軸を改良して解決できないかが課題とされている。
【0008】
したがって、本発明の目的は、入力軸と出力軸の外周に嵌める軸受スリーブの中に不動構造のパッキンを設け、入力軸と出力軸の水密状態での回転を確保して水の侵入が防止された高品質な回転伝達装置を提供することである。
また、入力軸に段差部を設けてその中にブレーキバネのフック部を収納し、入力軸の回転時には、入力軸がまず最初に出力軸に当接され、その後時間差をあけないで即座にバネに当接する「入力軸」→「出力軸」→「バネ」という構造を実現し、入力軸から出力軸に直結させた後にバネを緩める力を最小限にして回転させて回転伝達効率が良好で使い勝手に優れた回転伝達装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決する手段として、請求項1に記載した発明は、筒状のケーシング4内に、内接状態で配設され両端部を内方へ突出するように屈曲したフック部30、31を有するコイル状のブレーキバネ3と、回転中心線上に配置された軸ピン5の両端部に同軸ピン5を中心として回転自在に相対峙する入力軸1と出力軸2が配設され、且つ前記入力軸1及び出力軸2の各内端から回転伝達部10と被回転伝達部20が軸ピン5と平行配置で突出され、前記ブレーキバネ3の両端のフック部30、31に対して、入力軸1の回転伝達部10はフック部30、31の内側部30a、31aに当接してブレーキバネ3を縮径させ、出力軸2の被回転伝達部20は前記フック部30、31の外側部30b、31bに当接してブレーキバネ3を拡径させる回転伝達装置において、
前記入力軸1と出力軸2の外周には各々軸受スリーブ8が嵌められ、前記軸受スリーブ8の内周面81に内パッキン7が嵌まり込んで拘束される凹状の内パッキン拘束溝82が形成されており、その内パッキン拘束溝82に嵌まり込んだ不動構造の内パッキン7の内周に、入力軸1と出力軸2がそれぞれ水密状態で摺動自在に嵌挿されていることを特徴とする回転伝達装置である。
【0010】
請求項2に記載した発明は、前記軸受スリーブ8は、分割タイプの一対の軸受スリーブ8A、8Bで構成されていることを特徴とする、請求項1に記載した回転伝達装置である。
【0011】
請求項3に記載した発明は、前記入力軸1と出力軸2の外周に各々嵌められる単体又は一対の軸受スリーブ8(8A、8B)が外周面83に外パッキン6を介在した状態で、前記入力軸1と出力軸2は前記ケーシング4内に配設されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載した回転伝達装置である。
【発明の効果】
【0012】
本回転伝達装置によれば、軸受スリーブの内周面に環状の内パッキンが嵌まり込んで拘束される凹状の内パッキン拘束溝が形成され、その内パッキン拘束溝に嵌まり込んだ不動構造の内パッキンの内周に入力軸と出力軸が水密状態で摺動自在に嵌挿されているので、両軸の回転時における水の侵入の防止が高品質に達成される。
また、この回転伝達装置は、入力軸の回転伝達部の基端と先端に、ブレーキバネの両端のフック部をそれぞれ遊動状態で収納するスペースが確保された段差状の基端段差部及び先端段差部が、回転伝達部の両側縁部より内方に形成され、ブレーキバネの各フック部は基端段差部内と先端段差部内に収納されて垂直方向の内方に微動自在に構成されているので、入力軸の回転時には、入力軸がまず最初に出力軸に当接され、その後時間差をあけないで即座にブレーキバネに当接し、入力軸から出力軸に直結させた後にブレーキバネを緩める力を最小限にして回転伝達効率が良好で使い勝手に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】回転伝達装置の各構成要素を分解して示した斜視図である。
【
図2】本発明の回転伝達装置の軸受スリーブに拘束された内パッキンと外パッキンを示した斜視図である。
【
図3】Aは軸受スリーブに拘束された内パッキンと外パッキンを示した断面図(BのD-D線断面)、Bは同側面図である。
【
図4】外パッキンが装填された軸受スリーブと、同軸受スリーブに拘束される前段階の内パッキンを示した斜視図である。
【
図5】回転伝達装置の組み立て状態を示した斜視図である。
【
図6】回転伝達装置の組み立て状態を示した正面図である。
【
図7】Aは回転伝達装置の内部構造を示した断面図(BのB-B線断面)、Bは同側面図である。
【
図8】内外のパッキンを装着する前の回転伝達装置の内部構造を示した断面図である。
【
図9】異なる軸受スリーブに拘束された内パッキンと外パッキンを示した斜視図である。
【
図10】Aは
図9の異なる軸受スリーブに拘束された内パッキンと外パッキンを示した断面図(BのC-C線断面)、Bは同側面図である。
【
図11】
図8の異なる軸受スリーブに外パッキンが装填された状態と、同軸受スリーブに拘束される前段階の内パッキンを示した斜視図である。
【
図12】A、B、B’の各図は入力軸が半時計回り(正回転)で回転する際の説明図である。 Aの上図は回転直前の状態の正面図で、Aの中図は前記A上図のE-E線断面図、Aの下図は前記A上図のF-F線断面図を示している。 Bの上図は入力軸が回転して出力軸に当接した状態の正面図で、Bの中図は前記B上図のC-C線断面図、Bの下図は前記B上図のD-D線断面図を示している。 B’の上図は前記B図においてブレーキバネを削除して示した正面図で、B’の中図は前記B’上図のA-A線断面図、B’の下図は前記B’上図のB-B線断面図を示している。
【
図13】A、B、B’の各図は入力軸が時計回り(逆回転)で回転する際の説明図である。 Aの上図は回転直前の状態の正面図で、Aの中図は前記A上図のK-K線断面図、Aの下図は前記A上図のL-L線断面図を示している。 Bの上図は入力軸が回転して出力軸に当接した状態の正面図で、Bの中図は前記B上図のI-I線断面図、Bの下図は前記B上図のJ-J線断面図を示している。 B’の上図は前記B図においてブレーキバネを削除して示した正面図で、B’の中図は前記B’上図のG-G線断面図、B’の下図は前記B’上図のH-H線断面図を示している。
【
図14】Aは入力軸を示した正面図、Bは同平面図、Cは同背面図、Dは同右側面図、Eは同左側面図、Fは同底面図、G、H、I、Jは同斜視図である。
【
図15】Aはブレーキバネが装着された入力軸を示した正面図、Bは同平面図、Cは同背面図、Dは同右側面図、Eは同左側面図、Fは同底面図、G、H、I、Jは同斜視図である。
【
図16】Aは出力軸を示した正面図、Bは同平面図、Cは同背面図、Dは同右側面図、Eは同左側面図、Fは同底面図、G、H、I、Jは同斜視図である。
【
図17】Aはブレーキバネが装着された出力軸を示した正面図、Bは同平面図、Cは同背面図、Dは同右側面図、Eは同左側面図、Fは同底面図、G、H、I、Jは同斜視図である。但し、通常は
図15のようにブレーキバネが入力軸に装着されるためこの
図17に図示したブレーキバネは参考例である。
【
図18】Aは異なる入力軸を示した斜視図、Bは同左側面図、Cは同背面図、Dは同正面面図、Eは同平面図、Fは同斜視図、Gは同右側面図である。
【
図19】Aはブレーキバネが装着された
図18の入力軸を示した左側面図、B、C、D、Eは同斜視図である。
【
図20】Aは異なる出力軸を示した斜視図、Bは同左側面図、Cは同背面図、Dは同正面面図、Eは同平面図、Fは同斜視図、Gは同右側面図である。
【
図21】Aはブレーキバネが装着された
図20の出力軸を示した左側面図、B、C、D、Eは同斜視図である。
【
図22】本発明の回転伝達装置を適用した回転機によるビニルハウスでの実施状況を例示した斜視図である。
【
図23】Aは従来の軸受スリーブに装填された内パッキンと外パッキンを示した断面図(BのH-H線断面)、Bは同正面図である。
【
図24】Aは異なる従来の軸受スリーブに装填された内パッキンと外パッキンを示した断面図(BのG-G線断面)、Bは同正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の回転伝達装置は、
図22に示したようなビニルハウスの側面から屋根面にかけて非止着状態に覆い、上端(又は下端)のみ止着したプラスチック製フィルムシートNの下端側(又は上端側)を巻き軸Rへ巻き込み、支持棒9’を握りつつ前記巻き軸Rを回転機9のハンドルMで正転させることにより、少ない力でスムーズにフィルムシートNを巻き上げて換気用開口Tを形成し、又は逆に巻き軸Rを逆回転させて同フィルムシートNを巻き下ろし換気用開口TをフィルムシートNで閉鎖する、換気用開閉システムの操作に適した回転機9の内蔵駆動部として好適に実施されるものである。
なお、前記回転機9が負担する後記のブレーキ力(制動力)に対する反力は、最終的には、
図22に示した如く地面へ垂直に突き挿して固定したガイドバーPによって与えられる。即ち、回転機9に形成された垂直方向の貫通孔にガイドバーPを通し、入力軸1へハンドルMを取り付け、出力軸2へは巻き軸Rを接続し、使用者は一方の手で支持棒9’を握って使用姿勢を保ち、他方の手でハンドルMを回転操作して、開口Tの開閉を行う仕組みである。
【0015】
この回転伝達装置の基本的な構成は、
図1に示したように、両端部を半径方向内方へ突出するように屈曲したフック部30、31を有するコイル状のブレーキバネ3が、内径が約28mm程度の筒状のケーシング4内に、内接された状態で配設されている。なお、前記筒状のケーシング4の前後両端には、相対峙して切り欠かれた凹部40がそれぞれ2つずつ形成されており、組み立て時に前記凹部40が嵌合する凸部80が軸受スリーブ8(後述)の基端寄り外周にそれぞれ形成されている。また、当該ケーシング4内には、
図1、
図12、
図13に示したように、回転中心線上に配置された軸ピン5の両端部に同軸ピン5を中心として回転自在に相対峙する入力軸1と出力軸2が配設されている。そして、前記入力軸1及び出力軸2の各内端から回転伝達部10と被回転伝達部20が軸ピン5と平行配置で突出され、前記ブレーキバネ3の両端のフック部30、31に対して、入力軸1の回転伝達部10はフック部30、31の内側部30a、31aに当接してブレーキバネ3を縮径させ、出力軸2の被回転伝達部20は前記フック部30、31の外側部30b、31bに当接してブレーキバネ3を拡径させる構成である。
【0016】
本実施例のブレーキバネ3は、厚さが約2.5mm程度、高さが約2.0mm程度で、4.3周程度巻装された外径が約28.3mm程度でなり、その両端で各々駆動されるフック部30、31が形成されている。各フック部30、31は、半径方向内向きに湾曲するU字状で、入力軸1の回転伝達部10の両側縁に内包されるが如く(
図5G、H、I、J参照)、円周方向に略相対峙する向きに形成され、入力軸1の略弓形をなす回転伝達部10が占める回転角の170°程度と略同じ角度で配置される(
図15B参照)。
【0017】
図14に示した入力軸1及び
図16に示した出力軸2の両者は、およそ同形、同大で略対称的形態の構成であり、
図12と
図13に示したように、上記ブレーキバネ3の内径部へ納まる外径を有し、一定大きさの回転トルクを伝達可能な厚みのある筒状体に製作されている。この入力軸1と出力軸2には、基本的に同径で有底の筒状体たる軸部の内端側に、軸ピン5用の軸孔13c、23cが穿設されたやや大径の円盤状のディスク部13、23が各々形成され、同ディスク部13、23から内方へ延びる略弓形断面の回転伝達部10と被回転伝達部20がそれぞれ形成されている。本実施形態の回転伝達部10の弓形角度は約167°程度、被回転伝達部20の弓形角度は約140°程度である。
前記各ディスク部13、23の外周の一部が所定高さ(約1~2mm程度)の外周壁部13a、13b、23a、23bに形成されている。その外周壁部13a、13b、23a、23bの上面は、前記ブレーキバネ3の両端面部で傾斜するバネ端面部Bの傾斜角度(当該傾斜角度は約3°程度)に対応して、ブレーキバネ3が水平状態を維持できるように同じ傾斜角度(約3°程度)で傾斜するスロープ部Sにそれぞれ形成されている。ブレーキバネ3は、通常は水平方向に真っすぐカーブを描くが、ビニルハウスの奥行きが長い場合やフィルムシートNが厚い場合、又はハウスバンドの締め込み方が緩い場合等に起こる高負荷や、経年使用で変形してしまう。つまり、ブレーキバネ3のフック部30、31は、水平方向の厚みが2.5mm程度あって水平方向からの負荷に強く、遊びで当該フック部30、31が斜めになると、高さが2.0mm程度である上方向あるいは下方向に低い負荷で変形してしまう。そのため、ブレーキバネ3をケーシング4内で真っすぐにするため、入力軸1と出力軸2側に前記のスロープ部Sを設けて、ブレーキバネ3の遊びを極力減らし、ケーシング4に内接するブレーキバネ3を真っすぐに当てて力が維持できると共に、フック部30、31と出力軸2を真っすぐに当ててフック部30、31の力を維持できる構成になっている。
【0018】
そして、例えば
図12に示したように組み立てた場合、前記入力軸1と出力軸2には、各々前記ディスク部13、23にぴったり接する位置まで、
図1に示した大きな外側の外パッキン6と小さな内側の内パッキン7を介して軸受けスリーブ8が嵌められ、
図22に例示した形態の回転機9を形成するケーシング4によって前記ディスク部13、23が支持され、入力軸1及び出力軸2の安定した回転自在状態が確保される。
【0019】
ここで、本発明の内パッキン7と内パッキン拘束溝82について説明する。
図2~
図8に示したように、前記入力軸1と出力軸2(外径は各々約19mm程度)の外周に各々嵌められる軸受スリーブ8の内周面81を一周するように、Oリングの内パッキン7が嵌まり込んで拘束される凹状の内パッキン拘束溝82が窪んで形成されている(
図8参照)。内パッキン7(及び外パッキン6)はOリングで成り、本実施例の内パッキン7の内径は約18.8mm程度、外径は約22.6mm程度、厚さは約1.9mm程度である。内パッキン拘束溝82の外径は約22mm程度、溝幅は約2.5mm程度である。したがって、前記の内パッキン拘束溝82に嵌まり込んで装填した不動構造の内パッキン7の内周に、入力軸1と出力軸2がそれぞれ水密状態で摺動自在に嵌挿された構成となっている。
また、軸受スリーブ8の外周面83にOリングの外パッキン6が嵌まり込む凹状の外周溝84が形成されており、その外周溝84に外パッキン6が装填されている。よって、前記入力軸1と出力軸2の外周に各々嵌められる軸受スリーブ8が外周面83に外パッキン6を介在した状態で、入力軸1と出力軸2はケーシング4内に配設されている(下記の一対の軸受スリーブ8A、8Bにおいても同じ)。なお、前記内パッキン7と外パッキン6はゴム製で好適に実施されるが、合成樹脂製その他の材質でもよい。
【0020】
また、
図9~
図11に示したような分割タイプの一対の軸受スリーブ8A、8Bに異なる内パッキン拘束溝82’と内パッキン7を適用する実施形態も好適に実施される。すなわち、このタイプの軸受スリーブ8A、8Bは、略中央の横断面で2分割され、入力軸1と出力軸2の外周に各々一対の軸受スリーブ8A、8Bが嵌められる構成である。
図11に示した如く2分割された一方の分割片に係る軸受スリーブ8A(又は図示を省略した軸受スリーブ8B)の内方の内周面81’(一周)に、上記のような内パッキン拘束溝82’が形成されている。その内パッキン拘束溝82’に内パッキン7を嵌め込み、挟み込むように前記一対の軸受スリーブ8A、8Bが合体され(
図10)、やはり不動構造の内パッキン7の内周に入力軸1と出力軸2がそれぞれ水密状態で摺動自在に嵌挿されている。
【0021】
なお、回転伝達部10と被回転伝達部20の軸方向長さは、回転中心を形成する軸ピン5の両端部へ、入力軸1と出力軸2の内端側中心部に形成した軸孔13c、23cを嵌めて回転自在に相対峙する配置に組み立てた際、ケーシング4の内周面に内接するように設置したブレーキバネ3の中空部内へ組み入れた状態で、回転伝達部10と被回転伝達部20が内部に納まって、各々の側縁部14、24が互いに突き当たる長さに形成されている(
図1、
図12A、
図13A参照)。
【0022】
前記入力軸1の回転伝達部10に形成する段差部11、12について説明する。
図14と
図15に各方向から示したように、前記入力軸1の回転伝達部10の基端に、前記ブレーキバネ3の一端(基端)のフック部30が収納される段差状の基端段差部11が形成されている。この段差状の基端段差部11は、ブレーキバネ3の基端フック部30が遊動状態で収納するスペースを確保するように、入力軸1の回転伝達部10の一方の端縁部14の下部を中心側湾曲部と円周側コ字状部の凹状に切欠して形成されている。その際、段差部11のスペースを余り大きくとらないで、段差部11がフック部30に極力近くなるようにして上述したブレーキバネ3の解除時間のロスを少なくするのが肝要である。そのため本実施例の場合、ブレーキバネ3のフック部30の厚み(2.5mm程度)より若干長い約4mm程度の前記中心側湾曲状部と円周側コ字状部における奥行が確保されている。また、その高さは、前記湾曲した中心側湾曲状部では回転伝達部10の高さと同等に長い一方、前記円周側コ字状部ではフック部30端部の高さ(2mm程度)より若干長い約4mm程度に形成されている。
かくして、前記ブレーキバネ3の一方の基端フック部30は、
図15に示した如く前記基端段差部11内に僅かに遊動可能に収納され、回転伝達部10(基端段差部11)による解除の時間(ロス)が少なくなるよう設計されているため、入力軸1の回転によって出力軸2に伝達された直後に垂直方向の内方に微動自在に構成されている(
図13参照)。
【0023】
また、同様に、回転伝達部10の先端にも、前記ブレーキバネ3の他端(先端)のフック部31を遊動状態で収納するスペースが確保された段差状の先端段差部12が形成されている。この段差状の先端段差部12は、ブレーキバネ3の他方の先端フック部31が遊動状態で収納するスペースを確保するように、入力軸1の回転伝達部10の他方の端縁部14の上部を中心側湾曲部と円周側L字状部の凹状に切欠して形成されている。本実施例の場合も上記のようにブレーキバネ3の解除時間のロスを少なくするため段差部12をフック部31に極力近くなるように、ブレーキバネ3のフック部31の厚み(2.5mm程度)より若干長い約4mm程度の前記中心側湾曲状部と円周側L字状部における奥行が確保されている。その高さは、前記中心側湾曲状部と円周側L字状部ともフック部31端部の高さ(2mm程度)より若干長い約4mm程度に形成されている。
よって、前記ブレーキバネ3の他方の先端フック部31においても、前記先端段差部12内に僅かに遊動可能に収納され、回転伝達部10(先端段差部12)による解除時間のロスが少なくなるよう設計されているため、入力軸1の回転によって出力軸2に伝達された直後に垂直方向の内方に微動自在に構成されている(
図12参照)。
【0024】
したがって、上記構成により、入力軸1が正方向(反時計回り)に回転する時に、同入力軸1の回転伝達部10の一方の側縁部14は、出力軸2の被回転伝達部20の一方の側縁部24に直接当接して入力軸1が出力軸2に直結され、その直後に、入力軸1の回転伝達部10の凹状先端段差部12の内側部12aが同先端段差部12に収納されたフック部31の内側部31aに当接され、出力軸2に余分な力が加わらない状態で出力軸2の被回転伝達部20が押されつつブレーキバネ3が押され同ブレーキバネ3が縮径されて回転力が伝達される。
これを
図12の詳細図により説明する。同
図12Aは、入力軸1を正回転する直前の状態を示している。同
図12A上図のF-F線断面でみた同
図12A下図に示したように、出力軸2がブレーキバネ3の外側部31bに当接して出力軸2でブレーキバネ3が拡径状態にあり、これより更に入力軸1が正方向(反時計回り)に回転するとブレーキバネ3の負荷がなくなっていく(
図12B参照)。
図12Bは、入力軸1と出力軸2の直結直後の状態を示している。前記
図12Aの状態から、入力軸1が更に正方向に回転して出力軸2に当接し、直後にブレーキバネ3を押している状態を示している。すなわち、同
図12B上図のC-C断面を示した同
図12B中図のように、入力軸1がまず最初に直接出力軸2に当接して同出力軸2を押しているため入力軸1と出力軸2が直結状態となるので、出力軸2を押しながら、その直後にケーシング4に内接しているブレーキバネ3が引きずられていくように押される(
図12B下図参照)。なお、
図12B’は、前記
図2Bと同じ動作時を示しているが、
図12Bにおけるブレーキバネ3を省略して特には入力軸1の位置関係を示しており、その他の説明は同様なので省略する。
【0025】
上記した入力軸1の正回転時と同様に、逆方向(時計回り)に回転時する際も、同入力軸1の回転伝達部10の他方の側縁部14は、出力軸2の被回転伝達部20の他方の側縁部24に直接当接して入力軸1が出力軸2に直結され、その直後に、入力軸1の回転伝達部10の凹状基端段差部11の内側部11aが同基端段差部11に収納されたフック部30の内側部30aに当接されて、やはり出力軸2に余分な力が加わらない状態で出力軸2の被回転伝達部20が押されつつブレーキバネ3が押され同ブレーキバネ3を縮径されて回転力が伝達される構成となっている。
これを
図13で詳しく説明する。同
図13Aは、入力軸1を逆回転する直前の状態を示している。同
図13A上図のK-K線断面でみた同
図3A中図に示したように、出力軸2がブレーキバネ3の外側部30bに当接して出力軸2でブレーキバネ3が拡径状態にあり、これより更に入力軸1が逆方向(時計回り)に回転するとブレーキバネ3の負荷がなくなっていく(
図13B参照)。
図13Bは、この逆回転時における入力軸1と出力軸2の直結直後の状態を示している。前記
図3Aの状態から、入力軸1が更に逆方向に回転して出力軸2に当接し、直後にブレーキバネ3を押している状態を示している。すなわち、同
図13B上図のJ-J断面を示した同
図13B下図のように、入力軸1がまず最初に直接出力軸2に当接して同出力軸2を押しているため入力軸1と出力軸2が直結状態となるので、出力軸2を押しながら、その直後にケーシング4に内接しているブレーキバネ3が押される(
図13Bの中図参照)。なお、
図13B’は、前記
図13Bと同じ動作時を示しているが、
図13Bにおけるブレーキバネ3を省略して特には入力軸1の位置関係を示している。
【0026】
かような次第で、入力軸1の回転伝達部10の側縁部14が、正逆回転に伴って、まず最初に出力軸2の側縁部24に当接し出力軸2と直結状態になる。その直後に、ブレーキバネ3のフック部30又は31の内側部30a又は31aへ当接するので、該ブレーキバネ3は弱い力で縮径されて、ケーシング4の筒内面と間に生じているブレーキ力が解消し、軽快な共回りの状態で、正転方向又は逆転方向のいずれへも軽快に回転操作できる(
図18)。
逆に、出力軸2が回転すると、その被回転伝達部20の両側縁部24は、ブレーキバネ3の前記フック部30又は31の外側部30b又は31bへ突き当たりる。しかしこの場合、その外側部30b又は31bは半径方向外向きに押し出されてブレーキバネ3を拡径させる作用を及ぼし、ブレーキバネ3がケーシング4の筒内面へ一層強く密接して大きな制動力(ブレーキ作用)を発生させ、正転であれ逆転であれ、きっちり止められて回転することはない。
【0027】
次に、
図18~
図21に示した入力軸1と出力軸2の異なる実施形態について説明する。本実施形態の入力軸1と出力軸2は、特にアルミニウム製(又はアルミニウム合金製)で好適に実施される。
この入力軸1の回転伝達部10の基端と先端は、舌片状に湾曲する舌片端部15、15にそれぞれ形成されている。すなわち、当該回転伝達部10の弓形角度は約116°程度で、
図18Bに示した正面方向視の形状が、直径線から約5.8mm程度下がった弦から円周に至る部位が肉厚に形成され、その両端が約2.5mm程度の曲率半径で湾曲する舌片端部15、15にそれぞれ形成されている。
したがって、
図19に示したように、当該湾曲状の舌片端部15、15が、上述したブレーキバネ3の両端のフック部30、31の半円形状先端をなす内側部30a、31aに、うまい具合に引っ掛かって食い込んでブレーキバネの良好な縮径動作が実現されている。
一方、前記出力軸2の被回転伝達部20は、
図10Bに示した正面方向視が、直径線から約2.5mm程度下がった弦から円周に至る部位が肉厚な半割円筒状で、その基端と先端は平坦なフラット端部25、25にそれぞれ形成されている。よって、そのフラット端部25、25が、
図21に示したように、前記ブレーキバネ3の両端のフック部30、31の外側部30b、31bに当接してブレーキバネ3を拡径自在となっている。
【0028】
以上、実施例を図面に基づいて説明したが、本発明は図示例の限りではなく、その技術的思想を逸脱しない範囲において、当業者が通常に行う設計変更、応用のバリエーションの範囲を含むことを念のために申し添える。
【符号の説明】
【0029】
1 入力軸
10 回転伝達部
11 基端段差部(凹状)
11a 内側部
12 先端段差部(凹状)
12a 内側部
13 ディスク部
13a 外周壁部
13b 外周壁部
13c 軸孔
14 側縁部
15 舌片端部
2 出力軸
20 被回転伝達部
23 ディスク部
23a 外周壁部
23b 外周壁部
23c 軸孔
24 側縁部
25 フラット端部
3 ブレーキバネ
30 フック部(基端)
30a 内側部
30b 外側部
31 フック部(先端)
31a 内側部
31b 外側部
4 ケーシング
5 軸ピン
6 外パッキン(Oリング)
7 内パッキン(Oリング)
8 軸受スリーブ
8A、8B 一対の軸受スリーブ
80 凸部
81 内周面
82 内パッキン拘束溝
83 外周面
B バネ端面部
S スロープ部