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特開2024-138021発光デバイス、電子機器および照明装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138021
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】発光デバイス、電子機器および照明装置
(51)【国際特許分類】
   H10K 50/17 20230101AFI20240927BHJP
   H10K 50/12 20230101ALI20240927BHJP
   H10K 85/30 20230101ALI20240927BHJP
   H10K 85/60 20230101ALI20240927BHJP
   H10K 50/15 20230101ALI20240927BHJP
   H10K 50/165 20230101ALI20240927BHJP
   H10K 101/30 20230101ALN20240927BHJP
   H10K 101/40 20230101ALN20240927BHJP
【FI】
H10K50/17
H10K50/12
H10K85/30
H10K85/60
H10K50/15
H10K50/165
H10K101:30
H10K101:40
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024114430
(22)【出願日】2024-07-18
(62)【分割の表示】P 2021520481の分割
【原出願日】2020-05-07
(31)【優先権主張番号】P 2019094017
(32)【優先日】2019-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019216119
(32)【優先日】2019-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 哲史
(72)【発明者】
【氏名】門間 裕史
(72)【発明者】
【氏名】奥山 拓夢
(72)【発明者】
【氏名】橋本 直明
(72)【発明者】
【氏名】滝田 悠介
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 恒徳
(57)【要約】
【課題】長寿命な発光デバイスを提供する。
【解決手段】一対の電極間にEL層を有する発光デバイスにおいて、EL層が有する正孔注入層および電子輸送層に特定の構成を用いることにより、駆動時のキャリアバランスが自発的に変化するように制御し、発光デバイスの初期劣化を抑制するものである。さらにこの時、EL層が有する発光層と電子輸送層との積層界面の電子注入障壁を大きくすることにより、その自発的変化の速度が遅くなるため、長期劣化の観点でも優れた発光デバイスを実現できる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極と陰極との間の発光層と、
前記陽極と前記発光層との間の正孔注入層と、
前記陰極と前記発光層との間の電子輸送層と、を有し、
前記正孔注入層は、前記陽極と接し、
前記正孔注入層は、第1の物質と第2の物質とを有し、
前記第1の物質は、ハロゲンを有し、
前記発光層は、第3の物質と第4の物質とを有し、
前記第4の物質は、ホスト材料であり、
前記電子輸送層は、第1の電子輸送層と第2の電子輸送層とを有し、
前記第1の電子輸送層は、前記発光層と接し、
前記第1の電子輸送層は、第5の物質を有し、
前記第2の電子輸送層は、第6の物質と第7の物質とを有し、
前記第5の物質は、電子輸送性材料であり、
前記第6の物質は、金属錯体であり、
前記第7の物質は、電子輸送性材料であり、
前記第5の物質のLUMO準位は、前記第4の物質のLUMO準位よりも深く、かつその差が0.15eV以上0.40eV以下である発光デバイス。
【請求項2】
陽極と陰極との間の発光層と、
前記陽極と前記発光層との間の正孔注入層と、
前記陰極と前記発光層との間の電子輸送層と、を有し、
前記正孔注入層は、前記陽極と接し、
前記正孔注入層は、第1の物質と第2の物質とを有し、
前記第1の物質は、ハロゲンを有し、
前記第2の物質のHOMO準位は、-5.7eV以上-5.4eV以下であり、
前記発光層は、第3の物質と第4の物質とを有し、
前記第4の物質は、ホスト材料であり、
前記電子輸送層は、第1の電子輸送層と第2の電子輸送層とを有し、
前記第1の電子輸送層は、前記発光層と接し、
前記第1の電子輸送層は、第5の物質を有し、
前記第2の電子輸送層は、第6の物質と第7の物質とを有し、
前記第5の物質は、電子輸送性材料であり、
前記第6の物質は、金属錯体であり、
前記第7の物質は、電子輸送性材料であり、
前記第5の物質のLUMO準位は、前記第4の物質のLUMO準位よりも深く、かつその差が0.15eV以上0.40eV以下である発光デバイス。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、
前記第5の物質又は前記第7の物質の少なくとも一方は、ジアジン骨格又はトリアジン骨格と、他の複素芳香環とを有する、発光デバイス。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一において、
前記正孔注入層と、前記発光層との間に、正孔輸送層を有し、
前記正孔輸送層は、第10の物質を有し、
前記第10の物質は、前記第2の物質のHOMO準位以下であり、かつ前記第4の物質のHOMO準位よりも大きい、発光デバイス。
【請求項5】
請求項1乃至請求項3のいずれか一において、
前記正孔注入層と、前記発光層との間に、第1の正孔輸送層を有し、
前記第1の正孔輸送層と、前記発光層との間に、第2の正孔輸送層を有し、
前記第1の正孔輸送層は、前記第2の物質と同じ物質を有し、
前記第2の正孔輸送層は、第10の物質を有し、
前記第10の物質は、前記第2の物質のHOMO準位以下であり、かつ前記第4の物質のHOMO準位よりも大きい、発光デバイス。
【請求項6】
請求項4又は請求項5において、
前記第10の物質のHOMO準位は前記第2の物質のHOMO準位より深く、
前記第10の物質のHOMO準位と、前記第2の物質のHOMO準位との差は、0.2eV以下である、発光デバイス。
【請求項7】
請求項4乃至請求項6のいずれか一において、
前記第10の物質は、カルバゾール骨格を有する、発光デバイス。
【請求項8】
請求項4乃至請求項6のいずれか一において、
前記第10の物質は、ジベンゾフラン骨格を有する、発光デバイス。
【請求項9】
請求項4乃至請求項6のいずれか一において、
前記第10の物質は、ジベンゾチオフェン骨格を有する、発光デバイス。
【請求項10】
請求項4乃至請求項6のいずれか一において、
前記第10の物質は、フルオレン骨格を有する、発光デバイス。
【請求項11】
請求項1乃至請求項10のいずれか一において、
前記第5の物質は、HOMO準位が-6.0eV以上である、発光デバイス。
【請求項12】
請求項1乃至請求項11のいずれか一おいて、
前記第5の物質の電界強度[V/cm]の平方根が600の場合における電子移動度が、1×10-7cm/Vs以上5×10-5cm/Vs以下である、発光デバイス。
【請求項13】
請求項1乃至請求項12のいずれか一において、
前記第6の物質は、窒素及び酸素を有する配位子とアルカリ金属またはアルカリ土類金属とを有する金属錯体、のいずれか一である、発光デバイス。
【請求項14】
請求項1乃至請求項13のいずれか一において、
前記第6の物質は、8-ヒドロキシキノリナト構造を含む配位子と1価の金属イオンとを有する金属錯体である、発光デバイス。
【請求項15】
請求項1乃至請求項14のいずれか一において、
前記第6の物質は、8-ヒドロキシキノリナト構造を含む配位子を有するリチウム錯体である、発光デバイス。
【請求項16】
請求項1乃至請求項15のいずれか一に記載の発光デバイスと、
マイク、カメラ、操作用ボタン、外部接続部、または、スピーカの少なくとも一と、
を有する電子機器。
【請求項17】
請求項1乃至請求項15のいずれか一に記載の発光デバイスと、
筐体、またはカバーの少なくとも一と、
を有する照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、発光デバイス、発光装置、電子機器、および照明装置に関する。但し、本発明の一態様は、それらに限定されない。すなわち、本発明の一態様は、物、方法、製造方法、または駆動方法に関する。または、本発明の一態様は、プロセス、マシン、マニュファクチャ、または、組成物(コンポジション・オブ・マター)に関する。
【背景技術】
【0002】
有機化合物を用いたエレクトロルミネッセンス(EL:Electroluminescence)を利用する発光デバイス(有機ELデバイス、有機EL素子ともいう)の実用化が進んでいる。これら発光デバイスの基本的な構成は、一対の電極間に発光物質を含む有機化合物層(EL層)を挟んだものである。この素子に電圧を印加して、キャリアを注入し、当該キャリアの再結合エネルギーを利用することにより、発光物質からの発光を得ることができる。
【0003】
このような発光デバイスは自発光型であるためディスプレイの画素として用いると、液晶に比べて視認性が高く、バックライトが不要である等の利点があり、フラットパネルディスプレイ素子として好適である。また、このような発光デバイスを用いたディスプレイは、薄型軽量に作製できることも大きな利点である。さらに非常に応答速度が速いことも特徴の一つである。
【0004】
また、これらの発光デバイスは発光層を二次元に連続して形成することが可能であるため、面状に発光を得ることができる。これは、白熱電球やLEDに代表される点光源、あるいは蛍光灯に代表される線光源では得難い特色であるため、照明等に応用できる面光源としての利用価値も高い。
【0005】
このように発光デバイスを用いたディスプレイや照明装置はさまざまな電子機器に適用されており、より良好な効率、寿命を有する発光デバイスを求めて、更なる研究開発が進められている。
【0006】
特許文献1では正孔注入層に接する第1の正孔輸送層と、発光層との間に、第1の正孔注入層のHOMO準位とホスト材料のHOMO準位の間のHOMO準位を有する正孔輸送性材料を設ける構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2011/065136号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
発光デバイスの特性は、これまで目覚ましく向上してきたが、効率や信頼性などの特性に対する高度な要求に対応するには未だ十分とは言えない。
【0009】
そこで、本発明の一態様では、新規発光デバイスを提供することを目的とする。または、発光効率の良好な発光デバイスを提供することを目的とする。または、長寿命な発光デバイスを提供することを目的とする。または、駆動電圧の低い発光デバイスを提供することを目的とする。
【0010】
または、本発明の他の一態様では、信頼性の高い発光装置、電子機器及び表示装置を各々提供することを目的とする。または、本発明の他の一態様では、消費電力の小さい発光装置、電子機器及び表示装置を各々提供することを目的とする。
【0011】
なお、これらの課題の記載は、他の課題の存在を妨げるものではない。なお、本発明の一態様は、これらの課題の全てを解決する必要はないものとする。なお、これら以外の課題は、明細書、図面、請求項などの記載から、自ずと明らかとなるものであり、明細書、図面、請求項などの記載から、これら以外の課題を抽出することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様は、一対の電極間にEL層を有する発光デバイスにおいて、EL層が有する正孔注入層および電子輸送層に特定の構成を用いることにより、駆動時のキャリアバランスが自発的に変化するように制御し、発光デバイスの初期劣化を抑制するものである。さらに、EL層が有する発光層と電子輸送層との積層界面の電子注入障壁を大きくすることにより、その自発的変化の速度が遅くなるため、長期劣化の観点でも優れた発光デバイスを実現できる。結果として、発光デバイスを駆動した際の劣化曲線は、駆動初期・長期のいずれにおいてもよりフラットな形状に近づく。なお、該電子注入障壁は、陰極側から発光層に注入された電子が正孔輸送層に到達することを抑制し、電子の注入に伴うホール輸送層の劣化を抑えることもできる。
【0013】
本発明の一態様は、陽極と陰極との間にEL層を有し、EL層は、陽極側から正孔注入層、発光層、および電子輸送層を有し、正孔注入層は、陽極と接し、正孔注入層は、第1の物質と第2の物質を有し、第1の物質は、第2の物質に対する電子受容性を有し、第2の物質のHOMO準位は-5.7eV以上-5.4eV以下であり、発光層は、第3の物質と第4の物質とを有し、第4の物質はホスト材料であり、電子輸送層は、第1の電子輸送層および第2の電子輸送層を有し、第1の電子輸送層は、発光層と接し、第1の電子輸送層は、第5の物質を有し、第2の電子輸送層は、第6の物質を有し、第5の物質は、電子輸送性材料であり、第6の物質は、金属、金属塩、金属酸化物、または金属錯体であり、第5の物質のLUMO準位は、第4の物質のLUMO準位よりも深く、かつその差が0.15eV以上0.40eV以下である発光デバイスである。この時、第2の電子輸送層は、電子輸送性材料である第7の物質をさらに含むことができる。
【0014】
本発明の別の一態様は、陽極と陰極との間にEL層を有し、EL層は、陽極側から正孔注入層、発光層、および電子輸送層を有し、正孔注入層は、陽極と接し、正孔注入層は、第1の物質と第2の物質を有し、第1の物質は、第2の物質に対する電子受容性を有し、第2の物質のHOMO準位は-5.7eV以上-5.4eV以下であり、発光層は、第3の物質と第4の物質とを有し、第4の物質はホスト材料であり、電子輸送層は、第1の電子輸送層および第2の電子輸送層を有し、第1の電子輸送層は、発光層と接し、第1の電子輸送層は、第5の物質および第6の物質を有し、第2の電子輸送層は、第7の物質を有し、第5の物質および第7の物質は、電子輸送性材料であり、第6の物質は、金属、金属塩、金属酸化物、または金属錯体であり、第5の物質のLUMO準位は、第4の物質のLUMO準位よりも深く、かつその差が0.15eV以上0.40eV以下である発光デバイスである。
【0015】
本発明の別の一態様は、陽極と陰極との間にEL層を有し、EL層は、陽極側から正孔注入層、発光層、および電子輸送層を有し、正孔注入層は、陽極と接し、正孔注入層は、第1の物質と第2の物質を有し、第1の物質は、第2の物質に対する電子受容性を有し、第2の物質のHOMO準位は-5.7eV以上-5.4eV以下であり、発光層は、第3の物質と第4の物質とを有し、第4の物質はホスト材料であり、電子輸送層は、第1の電子輸送層および第2の電子輸送層を有し、第1の電子輸送層は、発光層と接し、第1の電子輸送層は、第5の物質および第6の物質を有し、第2の電子輸送層は、第7の物質および第8の物質を有し、第1の電子輸送層における第6の物質の割合は、第2の電子輸送層における第8の物質の割合よりも多く、第5の物質および第7の物質は、電子輸送性材料であり、第6の物質および第8の物質は、金属、金属塩、金属酸化物、または金属錯体であり、第5の物質のLUMO準位は、第4の物質のLUMO準位よりも深く、かつその差が0.15eV以上0.40eV以下である発光デバイスである。この時、第6の物質や第8の物質の各層における割合は、重量%であることが好ましい。
【0016】
また、上記構成において、第6の物質と第8の物質が同じであることが好ましい。さらに、上記各構成において、第5の物質と第7の物質が同じであることが好ましい。
【0017】
上記各構成において、第5の物質のLUMO準位は、第4の物質のLUMO準位よりも深く、かつその差が0.20eV以上0.40eV以下であることが好ましい。
【0018】
上記各構成において、第5の物質は、HOMO準位が-6.0eV以上であることが好ましい。
【0019】
上記各構成において、第5の物質の電界強度[V/cm]の平方根が600の場合における電子移動度が、1×10-7cm/Vs以上5×10-5cm/Vs以下であることが好ましい。
【0020】
上記各構成において、発光層は、さらに、第9の物質を有し、第4の物質と第9の物質は、励起錯体を形成する組み合わせであることが好ましい。なお、第4の物質は、電子輸送性材料であり、第9の物質は、正孔輸送性材料であることが好ましい。
【0021】
上記各構成において、EL層は、正孔輸送層を有し、正孔輸送層は、正孔注入層と発光層との間に位置し、正孔輸送層は、第10の物質を有し、第10の物質は、第2の物質のHOMO準位以下であり、かつ第4の物質のHOMO準位よりも大きいことが好ましい。なお、第10の物質は、カルバゾール骨格、ジベンゾフラン骨格、ジベンゾチオフェン骨格、及びフルオレン骨格のうち少なくとも一つを有することが好ましい。なお、第10の物質は、第2の物質と同じであることが好ましい。
【0022】
上記各構成において、第6の物質および第8の物質は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を有する金属錯体であることが好ましい。
【0023】
上記各構成において、第6の物質および第8の物質は、窒素及び酸素を有する配位子とアルカリ金属またはアルカリ土類金属とを有する金属錯体であることが好ましい。
【0024】
上記各構成において、第6の物質および第8の物質は、窒素及び酸素を有する配位子と1価の金属イオンとを有する金属錯体であることが好ましい。
【0025】
上記各構成において、第6の物質および第8の物質は、8-ヒドロキシキノリナト構造を含む配位子と1価の金属イオンとを有する金属錯体であることが好ましい。
【0026】
上記各構成において、第6の物質および第8の物質は、8-ヒドロキシキノリナト構造を含む配位子を有するリチウム錯体であることが好ましい。
【0027】
なお、本発明の一態様は、上述した発光デバイス(発光素子ともいう)を有する発光装置だけでなく、発光デバイスや発光装置を適用した電子機器(具体的には、発光デバイスや発光装置と、接続端子、または操作キーとを有する電子機器)および照明装置(具体的には、発光デバイスや発光装置と、筐体とを有する照明装置)も範疇に含めるものである。従って、本明細書中における発光装置とは、画像表示デバイス、もしくは光源(照明装置含む)を指す。また、発光装置にコネクター、例えばFPC(Flexible Printed Circuit)もしくはTCP(Tape Carrier Package)が取り付けられたモジュール、TCPの先にプリント配線板が設けられたモジュール、または発光デバイスにCOG(Chip On Glass)方式によりIC(集積回路)が直接実装されたモジュールも全て発光装置に含むものとする。
【発明の効果】
【0028】
本発明の一態様では、新規発光デバイスを提供することができる。または、長寿命な発光デバイスを提供することができる。または、発光効率の良好な発光デバイスを提供することができる。
【0029】
または、本発明の他の一態様では、信頼性の高い発光装置、電子機器及び表示装置を各々提供することができる。または、本発明の他の一態様では、消費電力の小さい発光装置、電子機器及び表示装置を各々提供することができる。
【0030】
なお、これらの効果の記載は、他の効果の存在を妨げるものではない。なお、本発明の一態様は、必ずしも、これらの効果の全てを有する必要はない。なお、これら以外の効果は、明細書、図面、請求項などの記載から、自ずと明らかとなるものであり、明細書、図面、請求項などの記載から、これら以外の効果を抽出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1A図1B、および図1Cは、発光デバイスの構造を示す図である。
図2図2Aおよび図2Bは、発光デバイスのメカニズムを説明する図である。
図3図3Aおよび図3Bは、発光デバイスの構造について説明する図である。
図4図4A図4B、および図4Cは、発光装置について説明する図である。
図5図5Aは、発光装置について説明する上面図である。図5Bは、発光装置について説明する断面図である。
図6図6Aは、モバイルコンピュータについて説明する図である。図6Bは、携帯型の画像再生装置について説明する図である。図6Cは、デジタルカメラについて説明する図である。図6Dは、携帯情報端末について説明する図である。図6Eは、携帯情報端末について説明する図である。図6Fは、テレビジョン装置について説明する図である。図6Gは、携帯情報端末について説明する図である。
図7図7A図7B、および図7Cは、電子機器について説明する図である。
図8図8Aおよび図8Bは、自動車について説明する図である。
図9図9Aおよび図9Bは、照明装置について説明する図である。
図10図10は、電子オンリー素子の構造を示す図である。
図11図11は、電子オンリー素子の電流密度-電圧特性である。
図12図12は、キャパシタンスCの周波数特性である。
図13図13は、-ΔBの周波数特性である。
図14図14は、各有機化合物における電子移動度の電界強度依存特性である。
図15図15は、発光デバイスについて説明する図である。
図16図16は、発光デバイス1および比較発光デバイス2の電流密度-輝度特性を示す図である。
図17図17は、発光デバイス1および比較発光デバイス2の電圧-輝度特性を示す図である。
図18図18は、発光デバイス1および比較発光デバイス2の輝度-電流効率特性を示す図である。
図19図19は、発光デバイス1および比較発光デバイス2の電圧-電流特性を示す図である。
図20図20は、発光デバイス1および比較発光デバイス2の輝度-電力効率特性を示す図である。
図21図21は、発光デバイス1および比較発光デバイス2の輝度-外部量子効率特性を示す図である。
図22図22は、発光デバイス1、および比較発光デバイス2の発光スペクトルを示す図である。
図23図23は、発光デバイス1、および比較発光デバイス2の信頼性を示す図である。
図24図24は、発光デバイス3および発光デバイス4の電流密度-輝度特性を示す図である。
図25図25は、発光デバイス3および発光デバイス4の電圧-輝度特性を示す図である。
図26図26は、発光デバイス3および発光デバイス4の輝度-電流効率特性を示す図である。
図27図27は、発光デバイス3および発光デバイス4の電圧-電流特性を示す図である。
図28図28は、発光デバイス3および発光デバイス4の輝度-電力効率特性を示す図である。
図29図29は、発光デバイス3および発光デバイス4の輝度-外部量子効率特性を示す図である。
図30図30は、発光デバイス3および発光デバイス4の発光スペクトルを示す図である。
図31図31は、発光デバイス3および発光デバイス4の信頼性を示す図である。
図32図32は、発光デバイス5、発光デバイス6、および発光デバイス7の電流密度-輝度特性を示す図である。
図33図33は、発光デバイス5、発光デバイス6、および発光デバイス7の電圧-輝度特性を示す図である。
図34図34は、発光デバイス5、発光デバイス6、および発光デバイス7の輝度-電流効率特性を示す図である。
図35図35は、発光デバイス5、発光デバイス6、および発光デバイス7の電圧-電流特性を示す図である。
図36図36は、発光デバイス5、発光デバイス6、および発光デバイス7の輝度-電力効率特性を示す図である。
図37図37は、発光デバイス5、発光デバイス6、および発光デバイス7の輝度-外部量子効率特性を示す図である。
図38図38は、発光デバイス5、発光デバイス6、および発光デバイス7の発光スペクトルを示す図である。
図39図39は、発光デバイス5、発光デバイス6、および発光デバイス7の信頼性を示す図である。
図40図40は、発光デバイス8、発光デバイス9、発光デバイス10、発光デバイス11、および発光デバイス12の電流密度-輝度特性を示す図である。
図41図41は、発光デバイス8、発光デバイス9、発光デバイス10、発光デバイス11、および発光デバイス12の電圧-輝度特性を示す図である。
図42図42は、発光デバイス8、発光デバイス9、発光デバイス10、発光デバイス11、および発光デバイス12の輝度-電流効率特性を示す図である。
図43図43は、発光デバイス8、発光デバイス9、発光デバイス10、発光デバイス11、および発光デバイス12の電圧-電流特性を示す図である。
図44図44は、発光デバイス8、発光デバイス9、発光デバイス10、発光デバイス11、および発光デバイス12の輝度-電力効率特性を示す図である。
図45図45は、発光デバイス8、発光デバイス9、発光デバイス10、発光デバイス11、および発光デバイス12の輝度-外部量子効率特性を示す図である。
図46図46は、発光デバイス8、発光デバイス9、発光デバイス10、発光デバイス11、および発光デバイス12の発光スペクトルを示す図である。
図47図47は、発光デバイス8、発光デバイス9、発光デバイス10、発光デバイス11、および発光デバイス12の信頼性を示す図である。
図48図48は、構造式(300)に示す有機化合物のH-NMRチャートである。
図49図49は、構造式(301)に示す有機化合物のH-NMRチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施の態様について図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0033】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様である、発光デバイスの構造について図1を用いて説明する。
【0034】
図1Aには、陽極として機能する第1の電極101と、陰極として機能する第2の電極102と、の間にEL層103が挟まれた構造を有する発光デバイスを示す。EL層103は、正孔(ホール)注入層111、正孔(ホール)輸送層112、発光層113、電子輸送層114、電子注入層115が機能層として、順次積層された構造を有する。
【0035】
正孔注入層111には、第1の物質と第2の物質とが含まれる。第1の物質は第2の物質に対し、電子受容性を示す物質である。また、第2の物質はそのHOMO準位が-5.7eV以上-5.4eV以下の比較的深いHOMO準位を有する物質であり、正孔輸送性材料であることが好ましい。この第2の物質が比較的深いHOMO準位を有することによって、正孔輸送層112および発光層113への正孔の注入が容易となる。一方で、第2の物質の比較的深いHOMO準位は、電子受容性を示す第1の物質との相互作用を適度に弱めるため、正孔注入層111における正孔の生成量は比較的少なくなり、第1の電極101(陽極)から正孔注入層111への正孔注入は適度に制御される。上記のHOMO準位の範囲は、このバランスを適切に取るためのものである。第1の物質と第2の物質の具体例については、実施の形態2で詳述する。
【0036】
また、発光層113には、第3の物質と第4の物質が含まれる。第3の物質はゲスト材料であることが好ましく、発光層113における発光材料であることが好ましい。第4の物質はホスト材料であることが好ましい。第3の物質と第4の物質の具体例については、実施の形態2で詳述する。
【0037】
ここで、本発明の一態様である発光デバイスは、EL層103中の発光層113と電子輸送層114とが接する界面において、電子注入障壁を有する。なお、電子輸送層114が、複数の積層構造を有し、例えば、図1Aに示すように第1の電子輸送層114-1および第2の電子輸送層114-2の2層からなる積層構造を有する場合には、発光層113と第1の電子輸送層114-1とが接する界面において、電子注入障壁を有する。
【0038】
また、発光層113と電子輸送層114とが接する界面において、電子注入障壁を有するとは、電子輸送層114が有する電子輸送性材料のLUMO準位が、発光層113が有するホスト材料のLUMO準位よりも深く、かつその差が所望の範囲を有することをいう。したがって、発光層113と第1の電子輸送層114-1とが接する図1Aの構造の場合には、第1の電子輸送層114-1が有する電子輸送性材料(第5の物質)のLUMO準位が、発光層113が有するホスト材料(第4の物質)のLUMO準位よりも深く、かつその差が所望の範囲を有することをいう。当該所望の範囲については後述する。
【0039】
さらに、本発明の一態様である発光デバイスにおける電子輸送層114は、第6の物質として、金属、金属塩、金属酸化物、または金属錯体を有する。金属としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、及び希土類金属が挙げられる。
【0040】
また、第6の物質として金属錯体が好ましい。ここでは特に、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を有する金属錯体を用いるのが好ましい。また、窒素及び酸素を有する配位子と、アルカリ金属またはアルカリ土類金属とを有する金属錯体であることがより好ましい。上記アルカリ金属、アルカリ土類金属、及び希土類金属としては、具体的には、Li、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Sr、Baなどが挙げられる。
【0041】
また、上記金属錯体としては、窒素及び酸素を有する配位子と1価の金属イオンとを有する金属錯体であることが好ましい。1価の金属イオンとしては、上述したアルカリ金属イオンの他、AgやAuが好ましい。
【0042】
なお、窒素及び酸素を有する配位子としては、当該窒素と当該酸素が金属に対してキレートを形成するような配位子であることが好ましい。
【0043】
また、上記金属錯体としては、8-ヒドロキシキノリナト構造を含む配位子と、1価の金属イオンと、を有する金属錯体であることが好ましい。8-ヒドロキシキノリナト構造を含む配位子としては、8-ヒドロキシキノリナト、及び、8-ヒドロキシキノリナトのメチル置換体(例えば2-メチル置換体、5-メチル置換体)などが挙げられる。なお、8-ヒドロキシキノリナト構造とは、置換もしくは無置換の8-ヒドロキシキノリノールにおける-OH基のプロトンが脱離した構造をいう。1価の金属イオンとしては、上述したアルカリ金属イオンの他、AgやAuが好ましい。
【0044】
したがって、上記アルカリ金属またはアルカリ土類金属を有する金属錯体としては、8-ヒドロキシキノリナト構造を含む配位子を有するリチウム錯体である、8-(ヒドロキシキノリナト)リチウム(略称:Liq)、8-ヒドロキシキノリナト構造を含む配位子を有するナトリウム錯体である、8-(ヒドロキシキノリナト)ナトリウム(略称:Naq)、8-ヒドロキシキノリナト構造を含む配位子を有するカリウム錯体である、8-(ヒドロキシキノリナト)カリウム(略称:Kq)、8-ヒドロキシキノリナト構造を含む配位子を有するマグネシウム錯体である、ビス(8-ヒドロキシキノリナト)マグネシウム(略称:Mgq)、その他の金属錯体としては、8-ヒドロキシキノリナト構造を含む配位子を有する亜鉛錯体である、ビス(8-ヒドロキシキノリナト)亜鉛(略称:Znq)などが挙げられる。なお、8-ヒドロキシキノリナト構造を含む配位子としては、8-ヒドロキシキノリナトだけでなく、8-ヒドロキシキノリナトのメチル置換体(例えば2-メチル置換体、5-メチル置換体)なども含まれる。また、8-ヒドロキシキノリナト構造とは、置換もしくは無置換の8-ヒドロキシキノリノールにおける-OH基のプロトンが脱離した構造をいう。
【0045】
なお、これらの金属、金属塩、金属酸化物、または金属錯体(すなわち第6の物質)は、電子輸送層114のいずれかの領域に存在していればよく、例えば、電子輸送層114が積層構造を有する場合には、そのいずれかの層または双方に存在していればよい。
【0046】
例えば、発光層113に接する電子輸送層114-1が第5の物質(電子輸送性材料)を有し、電子輸送層114-2が上記第6の物質を有する構成が好ましい。この時、電子輸送層114-2は、さらに第7の物質(電子輸送性材料)を有することがより好ましい。また、他の好ましい構成は、発光層113に接する電子輸送層114-1が第5の物質(電子輸送性材料)および上記第6の物質を有し、電子輸送層114-2が第7の物質(電子輸送性材料)を有する構成である。また、他の好ましい構成は、発光層に接する第1の電子輸送層114-1が第5の物質(電子輸送性材料)および第6の物質を有し、第2の電子輸送層114-2は、第7の物質(電子輸送性材料)および第8の物質(第6の物質と同様に金属、金属塩、金属酸化物、または金属錯体)を有し、第1の電子輸送層114-1における第6の物質の割合が、第2の電子輸送層114-2における第8の物質の割合よりも多い構成である。なお、この場合、第6の物質や第8の物質の各層における割合は、重量%であることが好ましい。
【0047】
なお、上記構成において、第6の物質と第8の物質は、同じ材料を用いても良い。これにより、製造コストを低減することができる。また、以下で述べる本発明の長寿命化の効果を得やすくなる。
【0048】
また、上記構成において、第5の物質と第7の物質(いずれも電子輸送性材料)が同じ材料であってもよい。これにより、製造コストを低減することができる。また、以下で述べる本発明の長寿命化の効果を得やすくなる。
【0049】
以上のような構成とすることで、長寿命な発光デバイスを得ることができる。以下、図1Bおよび図1Cを用いて説明する。図1Bには、本発明の一態様である発光デバイスの初期のキャリア移動の様子を示す。本発明の一態様である発光デバイスは、上述した通り、第2の物質が比較的深いHOMO準位を有することによって、正孔輸送層(HTL)112および発光層(EML)113への正孔の注入が容易となる。一方で、電子輸送層114(ETL)が有する電子輸送性材料のLUMO準位が、発光層113が有するホスト材料のLUMO準位よりも深く、かつその差が所望の範囲を有するため、発光効率を大きく損なわない程度に、第2の電極102(陰極)から発光層113への電子注入・輸送は抑制される。その結果、発光デバイスの初期状態は、発光層113における再結合領域113-1が電子輸送層114の一部である、第1の電子輸送層114-1にまでわずかに広がった状態となる(図1B)。
【0050】
次に、この発光デバイスを駆動した際に、駆動初期において以下のような変化が生じる。まず、電子輸送層114に含まれる第6の物質(および第8の物質)の変質により、電子輸送層114の電子輸送性が徐々に向上する。一方、上述した通り、正孔注入層111における正孔の生成量は比較的少なく、第1の電極101(陽極)から正孔注入層111への正孔注入は適度に制御されている。そのため、電子輸送層の一部にまでわずかに広がっていた再結合領域は変化し、より発光層内部で再結合が生じるようになる(図1C)。
【0051】
このことは、駆動により、発光効率がわずかに向上する方向に自発的な変化が生じることを意味する。この変化は劣化を相殺するため、初期劣化の小さい発光デバイスが得られる。場合によっては、図2Aに示す発光デバイスの信頼性のグラフにおける領域(d)に見られるように輝度が一旦上昇する傾向を示す。
【0052】
さらに、発光層113と電子輸送層114とが接する界面に電子注入障壁が存在するため、電子輸送層(ETL)114から発光層113に向かって注入される電子の割合は制御されている。このことは、上述した自発的変化の速度を遅くし、長期にわたって自発的変化の効果が得られることを意味するため、長期劣化の観点でも優れた発光デバイスを実現できる。結果として、発光デバイスを駆動した際の劣化曲線は、駆動初期・長期のいずれにおいてもよりフラットな形状に近づく。なお、発光層113を通過して、正孔輸送層112にまで注入させる電子の割合も低減されるため、電子が注入されることによる正孔輸送層112の劣化を抑制することができ、発光デバイスの信頼性を高めることができる効果も発現される。
【0053】
このような電子注入・輸送性の自発的変化は、第6の物質(および第8の物質)を電子輸送層内に一定以上含有させることによって誘発されることが分かっている。特に、第6の物質(および第8の物質)が、上述したような金属錯体である場合に効果が得られやすい。またその効果は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を有する金属錯体、窒素及び酸素を有する配位子とアルカリ金属またはアルカリ土類金属とを有する金属錯体、窒素及び酸素を有する配位子と1価の金属イオンとを有する金属錯体、8-ヒドロキシキノリナト構造を含む配位子と1価の金属イオンとを有する金属錯体である場合に顕著である。これら金属錯体は平面性が比較的高いという共通点がある。したがって、これら金属錯体の相変化、あるいはこれら金属錯体と電子輸送性材料(第5の物質や第7の物質)との相互作用の変化が、上述した電子注入・輸送性の自発的変化を引き起こしているものと考えられる。ただし、本発明の一態様である発光デバイスにおける長寿命化の機構は、必ずしもこの機構に限定されることはない。
【0054】
なお、上記の通り、第6の物質(および第8の物質)は電子輸送層内に一定以上含有させる必要がある。その割合は、第6の物質(および第8の物質)が含まれる各層において、重量%で55%以上80%以下が好ましい。より好ましくは65%以上80%以下である。
【0055】
次に、上述した、発光層113と電子輸送層114とが接する界面における電子注入障壁の所望の範囲について述べる。当該電子注入障壁は、電子輸送層114が有する電子輸送性材料のLUMO準位と発光層113が有するホスト材料のLUMO準位との差であり、図1B図1C中のaで表される段差に相当する。
【0056】
但し、発光層113と電子輸送層114とが接する界面に設ける電子注入障壁が大きすぎると、キャリアの再結合が阻害されてしまうため、発光効率の低下が生じる。そこで、発光層113に用いるホスト材料として、9-(1-ナフチル)-10-[4-(2-ナフチル)フェニル]アントラセン(略称:αN-βNPAnth)を用いた場合を例に、電子輸送層114に用いる電子輸送性材料の異なる発光デバイスを複数作製し、上記の所望の範囲を求めるべく、各発光デバイスの信頼性について評価を行った。実際の評価結果は、実施例1及び実施例2にそれぞれ示す。
【0057】
なお、実施例1及び実施例2で用いた電子輸送性材料は、2-{4-[9,10-ジ(ナフタレン-2-イル)-2-アントリル]フェニル}-1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール(略称:ZADN)、2-[3’-(ジベンゾチオフェン-4-イル)ビフェニル-3-イル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mDBTBPDBq-II)、2-フェニル-3-{4-[10-(3-ピリジル)-9-アントリル]フェニル}キノキサリン(略称:PyA1PQ)である。なお、電子輸送層114に用いたこれらの電子輸送性材料と、発光層113に用いたαN-βNPAnthのLUMO準位、およびこれらの電子輸送性材料とαN-βNPAnthとのLUMO準位の差は、以下の表1に示す通りである。
【0058】
【表1】
【0059】
実施例1及び実施例2において、αN-βNPAnthとの差が0.20eV以上と大きい、2mDBTBPDBq-IIおよびPyA1PQは、αN-βNPAnthとの差が0.13eVと小さいZADNに比べて、信頼性において良好な結果が得られた。すなわち、初期劣化が抑制されると同時に、長期劣化も抑制されたデバイスが達成できた。したがって、発光デバイスのデバイス特性に極力悪影響を与えない範囲でデバイスの信頼性を向上させるべく、発光層113と電子輸送層114とが接する界面に電子注入障壁を形成するために、電子輸送層114が有する電子輸送性材料のLUMO準位と、発光層113が有するホスト材料のLUMO準位を、以下の関係にすることが好ましいことが分かった。すなわち、電子輸送層114に用いる電子輸送性材料のLUMO準位は、発光層113が有するホスト材料のLUMO準位よりも深く、かつその差が0.15eV以上0.40eV以下、または、0.20eV以上0.40eV以下、または、0.20eV以上0.35eV以下、とすることが好ましいことが分かった。
【0060】
上記を踏まえて、本発明の一態様である発光デバイスの発光層113に用いるホスト材料としては、上記のαN-βNPAnthに加えて、例えば、同様の物性を示すと考えられる以下の構造式で示す、9-(1-ナフチル)-10-[3-(1-ナフチル)フェニル]アントラセン(略称:αN-mαNPAnth)、9-(2-ナフチル)-10-[3-(1-ナフチル)フェニル]アントラセン(略称:βN-mαNPAnth)、9-(2-ナフチル)-10-[3-(2-ナフチル)フェニル]アントラセン(略称:βN-mβNPAnth)などを用いることができる。ただし、ホスト材料はこれらに限られることはない。
【0061】
【化1】
【0062】
なお、これらのホスト材料のLUMO準位は、以下の表2に示すとおりである。
【0063】
【表2】
【0064】
また、本発明の一態様である発光デバイスの電子輸送層114に用いる電子輸送性材料(特に第5の物質)としては、比較的深いLUMO準位が要求される。したがって、二つ乃至三つの窒素を有する6員環の複素芳香環を有する化合物が好ましい。具体的には、ジアジン骨格(ピリミジン骨格、ピラジン骨格、ピリダジン骨格)あるいはトリアジン骨格を有することが好ましい。特に、上記ジアジン骨格に芳香環あるいは複素芳香環がさらに縮合した縮合複素芳香環を有する化合物が好ましい。このような縮合複素芳香環としては、キノキサリン環、ジベンゾキノキサリン環、ベンゾフロピリミジン環、ベンゾチオピリミジン環、ナフトフロピラジン環、フェナントロフロピラジン環などが挙げられる。また、上述した二つ乃至三つの窒素を有する6員環の複素芳香環を有する化合物は、さらに他の複素芳香環(例えばピリジン環やジベンゾチオフェン環)を有することが好ましい。これは、先に述べた電子輸送層114の電子注入・輸送性の自発的変化とも関係するためである。具体的な化合物としては、上記の2mDBTBPDBq-II、PyA1PQに加えて、例えば、以下の構造式で示す、2-フェニル-3-{4-[10-(ピリミジン-5-イル)-9-アントリル]フェニル}キノキサリン(略称:1PQPmA)、2-フェニル-3-{4-[10-(ピラジン-2-イル)-9-アントリル]フェニル}キノキサリン(略称:1PQPrA)、2-フェニル-3-{4-[4-(3-ピリジル)-1-ナフチル]フェニル}キノキサリン(略称:PyN1PQ)、2-フェニル-3-{4-[5-(3-ピリジル)-1-ナフチル]フェニル}キノキサリン(略称:PyN1PQ-02)、2-フェニル-3-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]キノキサリン(略称:PA1PQ)、2-フェニル-3-[4-(2-ピリジル)フェニル]キノキサリン(略称:2Py1PQ)、2-フェニル-3-[4-(3-ピリジル)フェニル]キノキサリン(略称:3Py1PQ)、2,3-ビス[4-(3-ピリジル)フェニル]キノキサリン(略称:3Py2PQ)、2-フェニル-3-[4’-(3-ピリジル)ビフェニル-4-イル]キノキサリン(略称:PPy1PQ)、2,2’-(ピリジン-2,6-ジイル)ビス[4-フェニルベンゾ[h]キナゾリン](略称:2,6(P-Bqn)2Py)、2-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mDBTPDBq-II)、2-[3-(ジベンゾフラン-4-イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mDBFPDBq-II)、2-[3-(3,6-ジフェニル-9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mCzPDBq-III)、2-[3’-(9H-カルバゾール-9-イル)ビフェニル-3-イル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mCzBPDBq)、2-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:PCPDBq)、2,2’-(ピリジン-2,6-ジイル)ビス(4-フェニルベンゾ[h]キナゾリン)(略称:2,6(P-Bqn)2Py)、4-[3’-(ジベンゾチオフェン-4-イル)ビフェニル-3-イル]ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン(略称:4mDBTBPBfpm-II)、4-[3’-(9H-カルバゾール-9-イル)ビフェニル-3-イル]ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン(略称:4mCzBPBfpm)、4,8-ビス[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン(略称:4,8mDBtP2Bfpm)、4,8-ビス[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]ベンゾチオ[3,2-d]ピリミジン(略称:4,8mDBtP2Btpm)、4,6-ビス[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン(略称:4,6mDBtP2Bfpm)、4,8-ビス[3-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン(略称:4,8mCzP2Bfpm)、9-[3’-(ジベンゾチオフェン-4-イル)ビフェニル-3-イル]ナフト[1’,2’:4,5]フロ[2,3-b]ピラジン(略称:9mDBtBPNfpr)、10-[3’-(ジベンゾチオフェン-4-イル)ビフェニル-3-イル]ナフト[1’,2’:4,5]フロ[2,3-b]ピラジン(略称:10mDBtBPNfpr)、12-[3’-(ジベンゾチオフェン-4-イル)ビフェニル-3-イル]フェナントロ[9’,10’:4,5]フロ[2,3-b]ピラジン(略称:12mDBtBPPnfpr)、9-[3’-(6-フェニルベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン-8-イル)ビフェニル-3-イル]ナフト[1’,2’:4,5]フロ[2,3-b]ピラジン(略称:9mBnfBPNfpr)、などを用いることができるが、これらに限られることはない。なお、これらの物質は第7の物質としても適用可能である。
【0065】
【化2】
【0066】
【化3】
【0067】
【化4】
【0068】
なお、これらの電子輸送性材料のLUMO準位は、以下の表3に示すとおりである。
【0069】
【表3】
【0070】
また、本発明の一態様である発光デバイスにおける電子輸送層114に用いる電子輸送性材料としては、上記のLUMO準位の条件に加えて、HOMO準位が-6.0eV以上である電子輸送性材料を用いることが好ましい。これは、駆動初期の状態において、わずかに正孔を受け取ることが図1で示したメカニズムを誘発するからである。さらに、この電子輸送性材料としては、電界強度[V/cm]の平方根が600における電子移動度が、1×10-7cm/Vs以上1×10-5cm/Vs以下であると好ましいが、1×10-7cm/Vs以上5×10-5cm/Vs以下であるとより好ましい。
【0071】
また、本発明の一態様である発光デバイスにおいて、正孔注入層111に用いる正孔輸送性材料(第2の物質)と、正孔輸送層112に用いる正孔輸送性材料(第9の物質)とのHOMO準位の関係は、正孔輸送層112に用いる正孔輸送性材料のHOMO準位が、正孔注入層111に用いる正孔輸送性材料のHOMO準位以下(等しい、もしくは深い)であり、その差が0.2eV以内であることが好ましい。また、これらの正孔輸送性材料としては、カルバゾール骨格、ジベンゾフラン骨格、ジベンゾチオフェン骨格およびフルオレン骨格を有する正孔輸送性材料が好ましい。なお、正孔注入層111に用いる正孔輸送性材料(第2の物質)と、正孔輸送層112に用いる正孔輸送性材料(第9の物質)は、同じ物質であることが好ましい。これにより、製造コストを低減することができる。また、製造装置を簡易にすることができる。具体的な化合物については、実施の形態2で詳述する。
【0072】
なお、図1において図示していないが、正孔輸送層112と発光層の間に、第2の正孔輸送層(例えば電子ブロック層)を設けても良い。この場合、第2の正孔輸送層に含まれる正孔輸送材料のHOMO準位は、正孔輸送層112に用いる正孔輸送性材料(第9の物質)のHOMO準位よりも深く、その差が0.2eV以内であることが好ましい。第2の正孔輸送層に含まれる正孔輸送材料としては、HOMO準位を発光層113のホスト材料のHOMO準位に近づける(深いHOMO準位を保有させる)ために、トリアリールアミン構造を有さない化合物を用いることが好適である。具体的な化合物については、実施の形態2で詳述する。
【0073】
図2Aには、図1A図1B図1Cに示した本発明の一態様である発光デバイスの劣化曲線(f)を実線で示し、図2Bに示すデバイス構造を有する、別の発光デバイスの劣化曲線(g)を破線で示す。なお、図2Aに示すグラフは、横軸に時間、縦軸に発光輝度を示す。なお、図2Bに示すデバイス構造を有する、発光デバイスは、発光層113と電子輸送層114とが接する界面において、図1B図1C中のaで表される段差(電子注入障壁)を有さず、b(但し、b<a)で表される段差を有する。(但し、図2Bは、駆動開始から一定時間経過後を示す)。
【0074】
ここで仮に、図1A図1B図1Cおよび図2Bで示した発光デバイスは、いずれも電子輸送層114の電子注入・輸送性が、発光効率がわずかに向上する方向に自発的に変化するものとする(電子注入・輸送性が駆動により上昇するものとする)。この場合、上述したように、初期劣化が抑制され、場合によっては図2Aの(d)で示したようなわずかな輝度上昇が生じる。一方で、図2Bで示される発光デバイスでは、発光層113と電子輸送層114とが接する界面における段差b(但し、b<a)が、電子注入障壁として不十分である。したがって、自発的変化の速度を遅くすることができず、長期にわたって自発的変化の効果が得られないため、長期劣化の観点では不利になる。また、電子輸送層114から発光層113に注入された電子が、矢印(c)で表されるように正孔輸送層112まで注入される確率が高まる。通常、電子が正孔輸送層112でトラップされると発光デバイスの劣化を招き、発光デバイスの信頼性が低下する(長期劣化の傾き(図2Aの(e))が大きくなる)という問題が生じる。
【0075】
したがって、図2Bで示される発光デバイスの劣化曲線が、図1Aに示す発光デバイスに比べて、長期劣化の観点で信頼性が悪くなることがわかる。
【0076】
以上より、EL層103に含まれる発光層113と電子輸送層114とが接する界面において、電子注入障壁を有する本発明の一態様である発光デバイスは、電子輸送層114から発光層に注入される電子が正孔輸送層112まで注入されにくい構造であるため、電子が正孔輸送層112でトラップされることによる発光デバイスの劣化を抑制し、信頼性の高い発光デバイスを得ることができる。
【0077】
(実施の形態2)
本実施の形態では、本発明の一態様である発光デバイスについて説明する。
【0078】
<発光デバイスの構成例>
図3Aには、一対の電極間に発光層を含むEL層を有する発光デバイスの一例を示す。具体的には、第1の電極101と第2の電極102との間にEL層103が挟まれた構造を有する。なお、EL層103は、例えば、第1の電極101を陽極とした場合、正孔(ホール)注入層111、正孔(ホール)輸送層112、発光層113、電子輸送層114、電子注入層115が機能層として、順次積層された構造を有する。
【0079】
また、その他の発光デバイスの構造として、一対の電極間に電荷発生層を挟んで形成される複数のEL層を有する構成(タンデム構造)とすることにより低電圧駆動を可能とする発光デバイスや、一対の電極間に微小光共振器(マイクロキャビティ)構造を形成することにより光学特性を向上させた発光デバイス等も本発明の一態様に含めることとする。なお、電荷発生層は、第1の電極101と第2の電極102に電圧を印加したときに、隣り合う一方のEL層に電子を注入し、他方のEL層に正孔を注入する機能を有する。
【0080】
なお、上記発光デバイスの第1の電極101と第2の電極102の少なくとも一方は、透光性を有する電極(透明電極、半透過・半反射電極など)とする。透光性を有する電極が透明電極の場合、透明電極の可視光の透過率は、40%以上とする。また、半透過・半反射電極の場合、半透過・半反射電極の可視光の反射率は、20%以上80%以下、好ましくは40%以上70%以下とする。また、これらの電極は、抵抗率が1×10-2Ωcm以下とするのが好ましい。
【0081】
また、上述した本発明の一態様である発光デバイスにおいて、第1の電極101と第2の電極102の一方が、反射性を有する電極(反射電極)である場合、反射性を有する電極の可視光の反射率は、40%以上100%以下、好ましくは70%以上100%以下とする。また、この電極は、抵抗率が1×10-2Ωcm以下とするのが好ましい。
【0082】
<第1の電極および第2の電極>
第1の電極101および第2の電極102を形成する材料としては、上述した両電極の機能が満たせるのであれば、以下に示す材料を適宜組み合わせて用いることができる。例えば、金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを適宜用いることができる。具体的には、In-Sn酸化物(ITOともいう)、In-Si-Sn酸化物(ITSOともいう)、In-Zn酸化物、In-W-Zn酸化物が挙げられる。その他、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、スズ(Sn)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、パラジウム(Pd)、金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)、イットリウム(Y)、ネオジム(Nd)などの金属、およびこれらを適宜組み合わせて含む合金を用いることもできる。その他、上記例示のない元素周期表の第1族または第2族に属する元素(例えば、リチウム(Li)、セシウム(Cs)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr))、ユウロピウム(Eu)、イッテルビウム(Yb)などの希土類金属およびこれらを適宜組み合わせて含む合金、その他グラフェン等を用いることができる。
【0083】
なお、これらの電極の作製には、スパッタ法や真空蒸着法を用いることができる。
【0084】
<正孔注入層>
正孔注入層111は、EL層103に正孔を注入しやすくする機能を有する。例えば、正孔注入層111は、陽極から注入された正孔を、正孔輸送層112(または発光層113など)に注入する機能を有することができる。例えば、正孔注入層111は、正孔を発生させ、当該正孔を正孔輸送層112(または発光層113など)に注入する機能を有することができる。また、正孔注入層111は、有機アクセプタ材料(電子受容性材料:第1の物質)および比較的HOMO準位の深い正孔輸送性材料(第2の物質)を有する。有機アクセプタ材料は、HOMO準位の深い正孔輸送性材料に対し、電子受容性を示す物質である。また、HOMO準位の深い正孔輸送性材料は、そのHOMO準位が-5.7eV以上-5.4eV以下の比較的深いHOMO準位を有する物質である。このように正孔輸送性材料が比較的深いHOMO準位を有することによって、正孔輸送層112への正孔の注入が容易となる。
【0085】
有機アクセプタ材料は、電子吸引基(特にフルオロ基のようなハロゲン基やシアノ基)を有する有機化合物等を用いることができ、そのような物質の中から、上記第2の物質に対して電子受容性を示す物質を適宜選択すれば良い。このような有機化合物としては、例えば、キノジメタン誘導体、クロラニル誘導体、ヘキサアザトリフェニレン誘導体などが挙げられる。具体的には、7,7,8,8-テトラシアノ-2,3,5,6-テトラフルオロキノジメタン(略称:F-TCNQ)、クロラニル、2,3,6,7,10,11-ヘキサシアノ-1,4,5,8,9,12-ヘキサアザトリフェニレン(略称:HAT-CN)、1,3,4,5,7,8-ヘキサフルオロテトラシアノ-ナフトキノジメタン(略称:F6-TCNNQ)、2-(7-ジシアノメチレン-1,3,4,5,6,8,9,10-オクタフルオロ-7H-ピレン-2-イリデン)マロノニトリル等を挙げることができる。特に、HAT-CNのように複素原子を複数有する縮合芳香環に電子吸引基が結合している化合物が、熱的に安定であり好ましい。また、電子吸引基(特にフルオロ基のようなハロゲン基やシアノ基)を有する[3]ラジアレン誘導体は、電子受容性が非常に高いため好ましく、具体的にはα,α’,α’’-1,2,3-シクロプロパントリイリデントリス[4-シアノ-2,3,5,6-テトラフルオロベンゼンアセトニトリル]、α,α’,α’’-1,2,3-シクロプロパントリイリデントリス[2,6-ジクロロ-3,5-ジフルオロ-4-(トリフルオロメチル)ベンゼンアセトニトリル]、α,α’,α’’-1,2,3-シクロプロパントリイリデントリス[2,3,4,5,6-ペンタフルオロベンゼンアセトニトリル]などが挙げられる。
【0086】
上記のHOMO準位の深い正孔輸送性材料としては、正孔輸送性骨格を有することが好ましい。当該正孔輸送性骨格としては、正孔輸送性材料のHOMO準位が高く(浅く)なりすぎない、カルバゾール骨格、ジベンゾフラン骨格、ジベンゾチオフェン骨格およびフルオレン骨格などが挙げられ、これらのいずれかを有していることが好ましい。特に、ジベンゾフラン環またはジベンゾチオフェン環を含む置換基を有する芳香族アミン、ナフタレン環を有する芳香族モノアミン、または9-フルオレニル基がアリーレン基を介してアミンの窒素に結合する芳香族モノアミンであっても良い。
【0087】
なお、上記のHOMO準位の深い正孔輸送性材料としては、電界強度[V/cm]の平方根が600における電子移動度が1×10-6cm/Vs以上の正孔移動度を有する物質が好ましい。なお、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いることができる。なお、これらの材料が、N,N-ビス(4-ビフェニル)アミノ基を有する物質であると、長寿命な発光デバイスを作製することができるため好ましい。
【0088】
以上のようなHOMO準位の深い正孔輸送性材料としては、具体的には、N-(4-ビフェニル)-6,N-ジフェニルベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン-8-アミン(略称:BnfABP)、N,N-ビス(4-ビフェニル)-6-フェニルベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン-8-アミン(略称:BBABnf)、4,4’-ビス(6-フェニルベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン-8-イル-4’’-フェニルトリフェニルアミン(略称:BnfBB1BP)、N,N-ビス(4-ビフェニル)ベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン-6-アミン(略称:BBABnf(6))、N,N-ビス(4-ビフェニル)ベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン-8-アミン(略称:BBABnf(8))、N,N-ビス(4-ビフェニル)ベンゾ[b]ナフト[2,3-d]フラン-4-アミン(略称:BBABnf(II)(4))、N,N-ビス[4-(ジベンゾフラン-4-イル)フェニル]-4-アミノ-p-ターフェニル(略称:DBfBB1TP)、N-[4-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]-N-フェニル-4-ビフェニルアミン(略称:ThBA1BP)、4-(2-ナフチル)-4’,4’’-ジフェニルトリフェニルアミン(略称:BBAβNB)、4-[4-(2-ナフチル)フェニル]-4’,4’’-ジフェニルトリフェニルアミン(略称:BBAβNBi)、4,4’-ジフェニル-4’’-(6;1’-ビナフチル-2-イル)トリフェニルアミン(略称:BBAαNβNB)、4,4’-ジフェニル-4’’-(7;1’-ビナフチル-2-イル)トリフェニルアミン(略称:BBAαNβNB-03)、4,4’-ジフェニル-4’’-(7-フェニル)ナフチル-2-イルトリフェニルアミン(略称:BBAPβNB-03)、4,4’-ジフェニル-4’’-(6;2’-ビナフチル-2-イル)トリフェニルアミン(略称:BBA(βN2)B)、4,4’-ジフェニル-4’’-(7;2’-ビナフチル-2-イル)トリフェニルアミン(略称:BBA(βN2)B-03)、4,4’-ジフェニル-4’’-(4;2’-ビナフチル-1-イル)トリフェニルアミン(略称:BBAβNαNB)、4,4’-ジフェニル-4’’-(5;2’-ビナフチル-1-イル)トリフェニルアミン(略称:BBAβNαNB-02)、4-(4-ビフェニリル)-4’-(2-ナフチル)-4’’-フェニルトリフェニルアミン(略称:TPBiAβNB)、4-(3-ビフェニリル)-4’-[4-(2-ナフチル)フェニル]-4’’-フェニルトリフェニルアミン(略称:mTPBiAβNBi)、4-(4-ビフェニリル)-4’-[4-(2-ナフチル)フェニル]-4’’-フェニルトリフェニルアミン(略称:TPBiAβNBi)、4-フェニル-4’-(1-ナフチル)トリフェニルアミン(略称:αNBA1BP)、4,4’-ビス(1-ナフチル)トリフェニルアミン(略称:αNBB1BP)、4,4’-ジフェニル-4’’-[4’-(カルバゾール-9-イル)ビフェニル-4-イル]トリフェニルアミン(略称:YGTBi1BP)、4’-[4-(3-フェニル-9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]トリス(1,1’-ビフェニル-4-イル)アミン(略称:YGTBi1BP-02)、4-ジフェニル-4’-(2-ナフチル)-4’’-{9-(4-ビフェニリル)カルバゾール)}トリフェニルアミン(略称:YGTBiβNB)、N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-N-[4-(1-ナフチル)フェニル]-9,9’-スピロビ(9H-フルオレン)-2-アミン(略称:PCBNBSF)、N,N-ビス(4-ビフェニリル)-9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-2-アミン(略称:BBASF)、N,N-ビス(1,1’-ビフェニル-4-イル)-9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-4-アミン(略称:BBASF(4))、N-(1,1’-ビフェニル-2-イル)-N-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-9,9’-スピロビ(9H-フルオレン)-4-アミン(略称:oFBiSF)、N-(4-ビフェニル)-N-(ジベンゾフラン-4-イル)-9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-アミン(略称:FrBiF)、N-[4-(1-ナフチル)フェニル]-N-[3-(6-フェニルジベンゾフラン-4-イル)フェニル]-1-ナフチルアミン(略称:mPDBfBNBN)、4-フェニル-4’-(9-フェニルフルオレン-9-イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)、4-フェニル-3’-(9-フェニルフルオレン-9-イル)トリフェニルアミン(略称:mBPAFLP)、4-フェニル-4’-[4-(9-フェニルフルオレン-9-イル)フェニル]トリフェニルアミン(略称:BPAFLBi)、4-フェニル-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBA1BP)、4,4’-ジフェニル-4’’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBBi1BP)、4-(1-ナフチル)-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBANB)、4,4’-ジ(1-ナフチル)-4’’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBNBB)、N-フェニル-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]スピロ-9,9’-ビフルオレン-2-アミン(略称:PCBASF)、N-(1,1’-ビフェニル-4-イル)-9,9-ジメチル-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-9H-フルオレン-2-アミン(略称:PCBBiF)、3,3’-(ナフタレン-1,4-ジイル)ビス(9-フェニル-9H-カルバゾール(略称:PCzN2)、4-(10-フェニル-9-アントリル)-4’-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)トリフェニルアミン(略称:FLPAPA)等を挙げることができる。
【0089】
なお、正孔注入層111は、公知の様々な成膜方法を用いて形成することができるが、例えば、真空蒸着法を用いて形成することができる。
【0090】
<正孔輸送層>
正孔輸送層112は、正孔注入層111によって、第1の電極101から注入された正孔を発光層113に輸送する層である。
【0091】
正孔輸送層112には、正孔輸送性材料を用いる。なお、上述した正孔輸送性材料を用いることもできる。但し、正孔注入層111に用いる正孔輸送性材料と、正孔輸送層112に用いる正孔輸送性材料とのHOMO準位の関係は、正孔輸送層112に用いる正孔輸送性材料のHOMO準位が、正孔注入層111に用いる正孔輸送性材料のHOMO準位以下(等しい、もしくは深い)であり、その差が0.2eV以内であることが好ましい。なお、両方とも同じ材料であると正孔の注入がスムーズとなるため、より好ましい。
【0092】
なお、正孔輸送層112と発光層113の間に、第2の正孔輸送層を有していても良い。なお、第2の正孔輸送層を有する場合、当該層は電子ブロック層としての機能を持たせても良い。
【0093】
また、正孔輸送層112と発光層113の間に、第2の正孔輸送層を有する場合、正孔輸送層112に用いる正孔輸送性材料のHOMO準位と、第2の正孔輸送層に用いる正孔輸送性材料のHOMO準位との比較において、後者のHOMO準位が前者のHOMO準位よりも深いほうが好ましい。さらに、その差が0.2eV以下になるように各々材料を選択するとよい。なお、正孔注入層111、および積層構造を有する正孔輸送層に用いる、これらの正孔輸送性材料のHOMO準位が上記の関係を有することにより、各層への正孔注入がスムーズに行われ、駆動電圧の上昇や発光層113における正孔の過少状態を防ぐことができる。
【0094】
なお、正孔注入層111、および積層構造を有する正孔輸送層112に用いる正孔輸送性材料は、各々正孔輸送性骨格を有することが好ましい。当該正孔輸送性骨格としては、これらの正孔輸送性材料のHOMO準位が浅くなりすぎないカルバゾール骨格、ジベンゾフラン骨格、ジベンゾチオフェン骨格およびフルオレン骨格が好ましい。また、正孔注入層111、および積層構造を有する正孔輸送層112に用いる正孔輸送性材料の正孔輸送性骨格が、隣り合う層同士で共通していると、正孔の注入がスムーズになるため好ましい。特にこれらの正孔輸送性骨格としては、ジベンゾフラン骨格が好ましい。また、トリアリールアミン構造を有することが好ましい。
【0095】
また、正孔注入層111、および積層構造を有する正孔輸送層112に用いる正孔輸送性材料が、隣り合う層で同一であると、陰極方向に隣り合う層への正孔の注入がよりスムーズとなるため好ましい。
【0096】
また、正孔輸送層112と発光層113の間に、第2の正孔輸送層を有する場合、第2の正孔輸送層は、電子ブロック層としての機能を有することが好ましい。なお、この場合、電子ブロック層として機能する第2の正孔輸送層には、正孔注入層111に用いることができるとして前述した正孔輸送性材料を用いることができる。具体的には、カルバゾール骨格、ジベンゾフラン骨格、およびジベンゾチオフェン骨格、フルオレン骨格のうち少なくとも一つを有することが好ましい。また、積層される正孔輸送層に用いる正孔輸送性材料のHOMO準位以下であり、その差が0.2eV以内であることが好ましい。また、第2の正孔輸送層に用いる化合物としてより好ましくは、トリアリールアミン構造を有さない化合物である。これは、HOMO準位を発光層113のホスト材料のHOMO準位に近づける(深いHOMO準位を保有させる)ためである。具体的には、3,3’-(ナフタレン-1,4-ジイル)ビス(9-フェニル-9H-カルバゾール(略称:PCzN2)、3,3’-(ナフタレン-1,5-ジイル)ビス(9-フェニル-9H-カルバゾール(略称:1,5PC2N)、8,8’-(ナフタレン-1,4-ジイル)ビス(11-フェニル-11H-ベンゾ[a]カルバゾール)(略称:PaBC2N)、12,12’-(ナフタレン-1,4-ジイル)ビス(9-フェニル-9H-ジベンゾ[a,c]カルバゾール)(略称:PacDBC2N)、10,10’-(ナフタレン-1,4-ジイル)ビス(7-フェニルベンゾ[c]カルバゾール)(略称:PcBC2N)、11-フェニル-8-[4-(9-フェニルカルバゾール-3-イル)-1-ナフチル]ベンゾ[a]カルバゾール(略称:PCNPaBC)、7-フェニル-10-[4-(9-フェニルカルバゾール-3-イル)-1-ナフチル]ベンゾ[c]カルバゾール(略称:PCNPcBC)、7-フェニル-10-[5-(9-フェニルカルバゾール-3-イル)-1-ナフチル]ベンゾ[c]カルバゾール(略称:1,5PCNPcBC)、2,2’-(ナフタレン-1,4-ジイル)ビス(5-フェニル-5H-ベンゾ[b]カルバゾール)(略称:PbBC2N)のような、カルバゾール骨格を有する化合物、あるいはナフタレン環を有する化合物が挙げられる。
【0097】
<発光層>
本発明の一態様である、発光デバイスにおいて、発光層113は、発光物質(ゲスト材料)と、発光物質を分散させるホスト材料を有する。
【0098】
なお、発光物質(ゲスト材料)としては、蛍光を発する物質(蛍光発光物質)、燐光を発する物質(燐光発光物質)、熱活性化遅延蛍光を示す熱活性化遅延蛍光(Thermally activated delayed fluorescence:TADF)材料、その他の発光物質等を用いることができる。また、ホスト材料としては、電子輸送性材料や正孔輸送性材料の他、上記TADF材料など様々なキャリア輸送材料を用いることができる。また、ホスト材料としては、正孔輸送性材料や電子輸送性材料などを用いることができる。なお、正孔輸送性材料や電子輸送性材料等の具体例としては、本明細書中に記載された材料や公知の材料を適宜、単数もしくは複数種用いることができる。
【0099】
発光層113のゲスト材料として用いることができる蛍光発光物質としては、例えば以下のようなものが挙げられる。また、これ以外の蛍光発光物質も用いることができる。
【0100】
5,6-ビス[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-2,2’-ビピリジン(略称:PAP2BPy)、5,6-ビス[4’-(10-フェニル-9-アントリル)ビフェニル-4-イル]-2,2’-ビピリジン(略称:PAPP2BPy)、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス[4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]ピレン-1,6-ジアミン(略称:1,6FLPAPrn)、N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-N,N’-ビス[3-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]ピレン-1,6-ジアミン(略称:1,6mMemFLPAPrn)、N,N’-ビス[4-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]-N,N’-ジフェニルスチルベン-4,4’-ジアミン(略称:YGA2S)、4-(9H-カルバゾール-9-イル)-4’-(10-フェニル-9-アントリル)トリフェニルアミン(略称:YGAPA)、4-(9H-カルバゾール-9-イル)-4’-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)トリフェニルアミン(略称:2YGAPPA)、N,9-ジフェニル-N-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:PCAPA)、ペリレン、2,5,8,11-テトラ-tert-ブチルペリレン(略称:TBP)、4-(10-フェニル-9-アントリル)-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBAPA)、N,N’’-(2-tert-ブチルアントラセン-9,10-ジイルジ-4,1-フェニレン)ビス[N,N’,N’-トリフェニル-1,4-フェニレンジアミン](略称:DPABPA)、N,9-ジフェニル-N-[4-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:2PCAPPA)、N-[4-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)フェニル]-N,N’,N’-トリフェニル-1,4-フェニレンジアミン(略称:2DPAPPA)、N,N,N’,N’,N’’,N’’,N’’’,N’’’-オクタフェニルジベンゾ[g,p]クリセン-2,7,10,15-テトラアミン(略称:DBC1)、クマリン30、N-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)-N,9-ジフェニル-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:2PCAPA)、N-[9,10-ビス(1,1’-ビフェニル-2-イル)-2-アントリル]-N,9-ジフェニル-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:2PCABPhA)、N-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)-N,N’,N’-トリフェニル-1,4-フェニレンジアミン(略称:2DPAPA)、N-[9,10-ビス(1,1’-ビフェニル-2-イル)-2-アントリル]-N,N’,N’-トリフェニル-1,4-フェニレンジアミン(略称:2DPABPhA)、9,10-ビス(1,1’-ビフェニル-2-イル)-N-[4-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]-N-フェニルアントラセン-2-アミン(略称:2YGABPhA)、N,N,9-トリフェニルアントラセン-9-アミン(略称:DPhAPhA)、クマリン545T、N,N’-ジフェニルキナクリドン(略称:DPQd)、ルブレン、5,12-ビス(1,1’-ビフェニル-4-イル)-6,11-ジフェニルテトラセン(略称:BPT)、2-(2-{2-[4-(ジメチルアミノ)フェニル]エテニル}-6-メチル-4H-ピラン-4-イリデン)プロパンジニトリル(略称:DCM1)、2-{2-メチル-6-[2-(2,3,6,7-テトラヒドロ-1H,5H-ベンゾ[ij]キノリジン-9-イル)エテニル]-4H-ピラン-4-イリデン}プロパンジニトリル(略称:DCM2)、N,N,N’,N’-テトラキス(4-メチルフェニル)テトラセン-5,11-ジアミン(略称:p-mPhTD)、7,14-ジフェニル-N,N,N’,N’-テトラキス(4-メチルフェニル)アセナフト[1,2-a]フルオランテン-3,10-ジアミン(略称:p-mPhAFD)、2-{2-イソプロピル-6-[2-(1,1,7,7-テトラメチル-2,3,6,7-テトラヒドロ-1H,5H-ベンゾ[ij]キノリジン-9-イル)エテニル]-4H-ピラン-4-イリデン}プロパンジニトリル(略称:DCJTI)、2-{2-tert-ブチル-6-[2-(1,1,7,7-テトラメチル-2,3,6,7-テトラヒドロ-1H,5H-ベンゾ[ij]キノリジン-9-イル)エテニル]-4H-ピラン-4-イリデン}プロパンジニトリル(略称:DCJTB)、2-(2,6-ビス{2-[4-(ジメチルアミノ)フェニル]エテニル}-4H-ピラン-4-イリデン)プロパンジニトリル(略称:BisDCM)、2-{2,6-ビス[2-(8-メトキシ-1,1,7,7-テトラメチル-2,3,6,7-テトラヒドロ-1H,5H-ベンゾ[ij]キノリジン-9-イル)エテニル]-4H-ピラン-4-イリデン}プロパンジニトリル(略称:BisDCJTM)、N,N’-ジフェニル-N,N’-(1,6-ピレン-ジイル)ビス[(6-フェニルベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン)-8-アミン](略称:1,6BnfAPrn-03)、3,10-ビス[N-(9-フェニル-9H-カルバゾール-2-イル)-N-フェニルアミノ]ナフト[2,3-b;6,7-b’]ビスベンゾフラン(略称:3,10PCA2Nbf(IV)-02)、3,10-ビス[N-(ジベンゾフラン-3-イル)-N-フェニルアミノ]ナフト[2,3-b;6,7-b’]ビスベンゾフラン(略称:3,10FrA2Nbf(IV)-02)などが挙げられる。特に、1,6FLPAPrnや1,6mMemFLPAPrn、1,6BnfAPrn-03のようなピレンジアミン化合物に代表される縮合芳香族ジアミン化合物は、ホールトラップ性が高く、発光効率や信頼性に優れているため好ましい。
【0101】
また、発光層113のゲスト材料として用いることができる燐光発光物質としては、例えば以下のようなものが挙げられる。
【0102】
トリス{2-[5-(2-メチルフェニル)-4-(2,6-ジメチルフェニル)-4H-1,2,4-トリアゾール-3-イル-κN2]フェニル-κC}イリジウム(III)(略称:[Ir(mpptz-dmp)])、トリス(5-メチル-3,4-ジフェニル-4H-1,2,4-トリアゾラト)イリジウム(III)(略称:[Ir(Mptz)])、トリス[4-(3-ビフェニル)-5-イソプロピル-3-フェニル-4H-1,2,4-トリアゾラト]イリジウム(III)(略称:[Ir(iPrptz-3b)])のような4H-トリアゾール骨格を有する有機金属イリジウム錯体や、トリス[3-メチル-1-(2-メチルフェニル)-5-フェニル-1H-1,2,4-トリアゾラト]イリジウム(III)(略称:[Ir(Mptz1-mp)])、トリス(1-メチル-5-フェニル-3-プロピル-1H-1,2,4-トリアゾラト)イリジウム(III)(略称:[Ir(Prptz1-Me)])のような1H-トリアゾール骨格を有する有機金属イリジウム錯体や、fac-トリス[(1-2,6-ジイソプロピルフェニル)-2-フェニル-1H-イミダゾール]イリジウム(III)(略称:[Ir(iPrpmi)])、トリス[3-(2,6-ジメチルフェニル)-7-メチルイミダゾ[1,2-f]フェナントリジナト]イリジウム(III)(略称:[Ir(dmpimpt-Me)])のようなイミダゾール骨格を有する有機金属イリジウム錯体や、ビス[2-(4’,6’-ジフルオロフェニル)ピリジナト-N,C2’]イリジウム(III)テトラキス(1-ピラゾリル)ボラート(略称:FIr6)、ビス[2-(4’,6’-ジフルオロフェニル)ピリジナト-N,C2’]イリジウム(III)ピコリナート(略称:FIrpic)、ビス{2-[3’,5’-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ピリジナト-N,C2’}イリジウム(III)ピコリナート(略称:[Ir(CFppy)(pic)])、ビス[2-(4’,6’-ジフルオロフェニル)ピリジナト-N,C2’]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:FIracac)のような電子吸引基を有するフェニルピリジン誘導体を配位子とする有機金属イリジウム錯体が挙げられる。これらは青色の燐光発光を示す化合物であり、440nmから520nmに発光のピークを有する化合物である。
【0103】
また、トリス(4-メチル-6-フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(mppm)])、トリス(4-t-ブチル-6-フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(tBuppm)])、(アセチルアセトナト)ビス(6-メチル-4-フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(mppm)(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス(6-tert-ブチル-4-フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(tBuppm)(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス[6-(2-ノルボルニル)-4-フェニルピリミジナト]イリジウム(III)(略称:[Ir(nbppm)(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス[5-メチル-6-(2-メチルフェニル)-4-フェニルピリミジナト]イリジウム(III)(略称:[Ir(mpmppm)(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス(4,6-ジフェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(dppm)(acac)])のようなピリミジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体や、(アセチルアセトナト)ビス(3,5-ジメチル-2-フェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(mppr-Me)(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス(5-イソプロピル-3-メチル-2-フェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(mppr-iPr)(acac)])のようなピラジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体や、トリス(2-フェニルピリジナト-N,C2’)イリジウム(III)(略称:[Ir(ppy)])、ビス(2-フェニルピリジナト-N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(ppy)(acac)])、ビス(ベンゾ[h]キノリナト)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(bzq)(acac)])、トリス(ベンゾ[h]キノリナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(bzq)])、トリス(2-フェニルキノリナト-N,C2’)イリジウム(III)(略称:[Ir(pq)])、ビス(2-フェニルキノリナト-N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(pq)(acac)])のようなピリジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体の他、トリス(アセチルアセトナト)(モノフェナントロリン)テルビウム(III)(略称:[Tb(acac)(Phen)])のような希土類金属錯体が挙げられる。これらは主に緑色の燐光発光を示す化合物であり、500nm~600nmに発光のピークを有する。なお、ピリミジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体は、信頼性や発光効率にも際だって優れるため、特に好ましい。
【0104】
また、(ジイソブチリルメタナト)ビス[4,6-ビス(3-メチルフェニル)ピリミジナト]イリジウム(III)(略称:[Ir(5mdppm)(dibm)])、ビス[4,6-ビス(3-メチルフェニル)ピリミジナト](ジピバロイルメタナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(5mdppm)(dpm)])、ビス[4,6-ジ(ナフタレン-1-イル)ピリミジナト](ジピバロイルメタナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(d1npm)(dpm)])のようなピリミジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体や、(アセチルアセトナト)ビス(2,3,5-トリフェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(tppr)(acac)])、ビス(2,3,5-トリフェニルピラジナト)(ジピバロイルメタナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(tppr)(dpm)])、(アセチルアセトナト)ビス[2,3-ビス(4-フルオロフェニル)キノキサリナト]イリジウム(III)(略称:[Ir(Fdpq)(acac)])のようなピラジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体や、トリス(1-フェニルイソキノリナト-N,C2’)イリジウム(III)(略称:[Ir(piq)])、ビス(1-フェニルイソキノリナト-N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(piq)(acac)])のようなピリジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体の他、2,3,7,8,12,13,17,18-オクタエチル-21H,23H-ポルフィリン白金(II)(略称:PtOEP)のような白金錯体や、トリス(1,3-ジフェニル-1,3-プロパンジオナト)(モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:[Eu(DBM)(Phen)])、トリス[1-(2-テノイル)-3,3,3-トリフルオロアセトナト](モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:[Eu(TTA)(Phen)])のような希土類金属錯体が挙げられる。これらは、赤色の燐光発光を示す化合物であり、600nmから700nmに発光のピークを有する。また、ピラジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体は、色度の良い赤色発光が得られる。
【0105】
また、以上で述べた以外にも公知の燐光発光物質を用いることができる。
【0106】
また、発光層113のゲスト材料として用いることができるTADF材料としては、例えば以下のようなものが挙げられる。
【0107】
フラーレン及びその誘導体、アクリジン及びその誘導体、エオシン誘導体等を用いることができる。またマグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、スズ(Sn)、白金(Pt)、インジウム(In)、もしくはパラジウム(Pd)等を含む金属含有ポルフィリンが挙げられる。該金属含有ポルフィリンとしては、例えば、以下の構造式に示されるプロトポルフィリン-フッ化スズ錯体(SnF(Proto IX))、メソポルフィリン-フッ化スズ錯体(SnF(Meso IX))、ヘマトポルフィリン-フッ化スズ錯体(SnF(Hemato IX))、コプロポルフィリンテトラメチルエステル-フッ化スズ錯体(SnF(Copro III-4Me))、オクタエチルポルフィリン-フッ化スズ錯体(SnF(OEP))、エチオポルフィリン-フッ化スズ錯体(SnF(Etio I))、オクタエチルポルフィリン-塩化白金錯体(PtClOEP)等も挙げられる。
【0108】
【化5】
【0109】
その他にも、下記の構造式に示すように、2-(ビフェニル-4-イル)-4,6-ビス(12-フェニルインドロ[2,3-a]カルバゾール-11-イル)-1,3,5-トリアジン(略称:PIC-TRZ)、2-{4-[3-(N-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-9H-カルバゾール-9-イル]フェニル}-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(略称:PCCzPTzn)、2-[4-(10H-フェノキサジン-10-イル)フェニル]-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(略称:PXZ-TRZ)、3-[4-(5-フェニル-5,10-ジヒドロフェナジン-10-イル)フェニル]-4,5-ジフェニル-1,2,4-トリアゾール(略称:PPZ-3TPT)、3-(9,9-ジメチル-9H-アクリジン-10-イル)-9H-キサンテン-9-オン(略称:ACRXTN)、ビス[4-(9,9-ジメチル-9,10-ジヒドロアクリジン)フェニル]スルホン(略称:DMAC-DPS)、10-フェニル-10H,10’H-スピロ[アクリジン-9,9’-アントラセン]-10’-オン(略称:ACRSA)、4-(9’-フェニル-3,3’-ビ-9H-カルバゾール-9-イル)ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン(略称:4PCCzBfpm)、4-[4-(9’-フェニル-3,3’-ビ-9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン(略称:4PCCzPBfpm)、9-[3-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)フェニル]-9’-フェニル-2,3’-ビ-9H-カルバゾール(略称:mPCCzPTzn-02)等のπ電子過剰型複素芳香環及びπ電子不足型複素芳香環を有する複素環化合物を用いてもよい。
【0110】
【化6】
【0111】
該複素環化合物は、π電子過剰型複素芳香環及びπ電子不足型複素芳香環を有するため、電子輸送性及び正孔輸送性が共に高く、好ましい。中でも、π電子不足型複素芳香環を有する骨格のうち、ピリジン骨格、ジアジン骨格(ピリミジン骨格、ピラジン骨格、ピリダジン骨格)、およびトリアジン骨格は、安定で信頼性が良好なため好ましい。特に、ベンゾフロピリミジン骨格、ベンゾチエノピリミジン骨格、ベンゾフロピラジン骨格、ベンゾチエノピラジン骨格はアクセプタ性が高く、信頼性が良好なため好ましい。
【0112】
また、π電子過剰型複素芳香環を有する骨格の中でも、アクリジン骨格、フェノキサジン骨格、フェノチアジン骨格、フラン骨格、チオフェン骨格、及びピロール骨格は、安定で信頼性が良好なため、当該骨格の少なくとも一を有することが好ましい。なお、フラン骨格としてはジベンゾフラン骨格が、チオフェン骨格としてはジベンゾチオフェン骨格が、それぞれ好ましい。また、ピロール骨格としては、インドール骨格、カルバゾール骨格、インドロカルバゾール骨格、ビカルバゾール骨格、3-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-9H-カルバゾール骨格が特に好ましい。
【0113】
なお、π電子過剰型複素芳香環とπ電子不足型複素芳香環とが直接結合した物質は、π電子過剰型複素芳香環の電子供与性とπ電子不足型複素芳香環の電子受容性が共に強くなり、S準位とT準位のエネルギー差が小さくなるため、熱活性化遅延蛍光を効率よく得られることから特に好ましい。なお、π電子不足型複素芳香環の代わりに、シアノ基のような電子吸引基が結合した芳香環を用いても良い。また、π電子過剰型骨格として、芳香族アミン骨格、フェナジン骨格等を用いることができる。また、π電子不足型骨格として、キサンテン骨格、チオキサンテンジオキサイド骨格、オキサジアゾール骨格、トリアゾール骨格、イミダゾール骨格、アントラキノン骨格、フェニルボランやボラントレン等の含ホウ素骨格、ベンゾニトリルまたはシアノベンゼン等のニトリル基またはシアノ基を有する芳香環や複素芳香環、ベンゾフェノン等のカルボニル骨格、ホスフィンオキシド骨格、スルホン骨格等を用いることができる。
【0114】
このように、π電子不足型複素芳香環およびπ電子過剰型複素芳香環の少なくとも一方の代わりにπ電子不足型骨格およびπ電子過剰型骨格を用いることができる。
【0115】
なお、TADF材料とは、S1準位とT1準位との差が小さく、逆項間交差によって三重項励起エネルギーから一重項励起エネルギーへエネルギーを変換することができる機能を有する材料である。そのため、三重項励起エネルギーをわずかな熱エネルギーによって一重項励起エネルギーにアップコンバート(逆項間交差)が可能で、一重項励起状態を効率よく生成することができる。また、三重項励起エネルギーを発光に変換することができる。
【0116】
また、2種類の物質で励起状態を形成する励起錯体(エキサイプレックス、エキシプレックスまたはExciplexともいう)は、S1準位とT1準位との差が極めて小さく、三重項励起エネルギーを一重項励起エネルギーに変換することが可能なTADF材料としての機能を有する。
【0117】
なお、T1準位の指標としては、低温(例えば77Kから10K)で観測される燐光スペクトルを用いればよい。TADF材料としては、その蛍光スペクトルの短波長側の裾において接線を引き、その外挿線の波長のエネルギーをS1準位とし、燐光スペクトルの短波長側の裾において接線を引き、その外挿線の波長のエネルギーをT1準位とした際に、そのS1とT1の差が0.3eV以下であることが好ましく、0.2eV以下であることがさらに好ましい。
【0118】
また、発光層113のゲスト材料として、TADF材料を用いる場合、ホスト材料のS1準位はTADF材料のS1準位より高い方が好ましい。また、ホスト材料のT1準位はTADF材料のT1準位より高いことが好ましい。
【0119】
発光層113のホスト材料としては、本発明の一態様である発光デバイスに用いるホスト材料として好ましい材料を実施の形態1に示したが、以下に示すホスト材料を必要に応じて用いても良い。
【0120】
発光層113のホスト材料として用いることができる正孔輸送性材料としては、電界強度[V/cm]の平方根が600における電子移動度が1×10-6cm/Vs以上の正孔移動度を有する物質が好ましく、例えば以下のようなものが挙げられる。
【0121】
4,4’-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB)、N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-N,N’-ジフェニル-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジアミン(略称:TPD)、4,4’-ビス[N-(スピロ-9,9’-ビフルオレン-2-イル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:BSPB)、4-フェニル-4’-(9-フェニルフルオレン-9-イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)、4-フェニル-3’-(9-フェニルフルオレン-9-イル)トリフェニルアミン(略称:mBPAFLP)、4-フェニル-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBA1BP)、4,4’-ジフェニル-4’’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBBi1BP)、4-(1-ナフチル)-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBANB)、4,4’-ジ(1-ナフチル)-4’’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBNBB)、9,9-ジメチル-N-フェニル-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]フルオレン-2-アミン(略称:PCBAF)、N-フェニル-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]スピロ-9,9’-ビフルオレン-2-アミン(略称:PCBASF)などの芳香族アミン骨格を有する化合物や、1,3-ビス(N-カルバゾリル)ベンゼン(略称:mCP)、4,4’-ジ(N-カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)、3,6-ビス(3,5-ジフェニルフェニル)-9-フェニルカルバゾール(略称:CzTP)、3,3’-ビス(9-フェニル-9H-カルバゾール)(略称:PCCP)などのカルバゾール骨格を有する化合物や、4,4’,4’’-(ベンゼン-1,3,5-トリイル)トリ(ジベンゾチオフェン)(略称:DBT3P-II)、2,8-ジフェニル-4-[4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]ジベンゾチオフェン(略称:DBTFLP-III)、4-[4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]-6-フェニルジベンゾチオフェン(略称:DBTFLP-IV)などのチオフェン骨格を有する化合物や、4,4’,4’’-(ベンゼン-1,3,5-トリイル)トリ(ジベンゾフラン)(略称:DBF3P-II)、4-{3-[3-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]フェニル}ジベンゾフラン(略称:mmDBFFLBi-II)などのフラン骨格を有する化合物が挙げられる。上述した中でも、芳香族アミン骨格を有する化合物やカルバゾール骨格を有する化合物は、信頼性が良好であり、また、正孔輸送性が高く、駆動電圧低減にも寄与するため好ましい。また、上記第2の有機化合物の例として挙げた有機化合物も用いることができる。
【0122】
また、発光層113のホスト材料として用いることができる電子輸送性材料としては、電界強度[V/cm]の平方根が600における電子移動度が1×10-6cm/Vs以上の電子移動度を有する物質が好ましく、例えば以下のようなものが挙げられる。その他にも、後述する電子輸送層114に用いることができる電子輸送性材料を用いることもできる。
【0123】
ビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(II)(略称:BeBq)、ビス(2-メチル-8-キノリノラト)(4-フェニルフェノラト)アルミニウム(III)(略称:BAlq)、ビス(8-キノリノラト)亜鉛(II)(略称:Znq)、ビス[2-(2-ベンゾオキサゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnPBO)、ビス[2-(2-ベンゾチアゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnBTZ)などの金属錯体や、2-(4-ビフェニリル)-5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール(略称:PBD)、3-(4-ビフェニリル)-4-フェニル-5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,2,4-トリアゾール(略称:TAZ)、1,3-ビス[5-(p-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]ベンゼン(略称:OXD-7)、9-[4-(5-フェニル-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:CO11)、2,2’,2’’-(1,3,5-ベンゼントリイル)トリス(1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール)(略称:TPBI)、2-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]-1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール(略称:mDBTBIm-II)などのポリアゾール骨格を有する複素環化合物や、2-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mDBTPDBq-II)、2-[3’-(ジベンゾチオフェン-4-イル)ビフェニル-3-イル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mDBTBPDBq-II)、2-[3’-(9H-カルバゾール-9-イル)ビフェニル-3-イル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mCzBPDBq)、4,6-ビス[3-(フェナントレン-9-イル)フェニル]ピリミジン(略称:4,6mPnP2Pm)、4,6-ビス〔3-(4-ジベンゾチエニル)フェニル〕ピリミジン(略称:4,6mDBTP2Pm-II)などのジアジン骨格を有する複素環化合物や、3,5-ビス[3-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]ピリジン(略称:35DCzPPy)、1,3,5-トリ[3-(3-ピリジル)フェニル]ベンゼン(略称:TmPyPB)などのピリジン骨格を有する複素環化合物が挙げられる。上述した中でも、ジアジン骨格を有する複素環化合物やピリジン骨格を有する複素環化合物は、信頼性が良好であり好ましい。特に、ジアジン(ピリミジンやピラジン)骨格を有する複素環化合物は、電子輸送性が高く、駆動電圧低減にも寄与する。
【0124】
また、発光層113のホスト材料としてTADF材料を用いる場合にも、先に挙げたものを同様に用いることができる。なお、TADF材料をホスト材料として用いると、TADF材料で生成した三重項励起エネルギーが、逆項間交差によって一重項励起エネルギーに変換され、さらに発光中心物質へエネルギー移動することで、発光素子の発光効率を高めることができる。このとき、TADF材料がエネルギードナーとして機能し、発光中心物質がエネルギーアクセプターとして機能する。従って、ホスト材料としてTADF材料を用いることは、ゲスト材料として蛍光発光物質を用いる場合に非常に有効である。また、このとき、高い発光効率を得るためには、TADF材料のS1準位は、蛍光発光物質のS1準位より高いことが好ましい。また、TADF材料のT1準位は、蛍光発光物質のS1準位より高いことが好ましい。したがって、TADF材料のT1準位は、蛍光発光物質のT1準位より高いことが好ましい。
【0125】
また、蛍光発光物質の最も低エネルギー側の吸収帯の波長と重なるような発光を呈するTADF材料を用いることが好ましい。そうすることで、TADF材料から蛍光発光物質への励起エネルギーの移動がスムーズとなり、効率よく発光が得られるため、好ましい。
【0126】
また、効率よく三重項励起エネルギーから逆項間交差によって一重項励起エネルギーが生成されるためには、TADF材料でキャリア再結合が生じることが好ましい。また、TADF材料で生成した三重項励起エネルギーが蛍光発光物質の三重項励起エネルギーに移動しないことが好ましい。そのためには、蛍光発光物質は、蛍光発光物質が有する発光団(発光の原因となる骨格)の周囲に保護基を有すると好ましい。該保護基としては、π結合を有さない置換基が好ましく、飽和炭化水素が好ましく、具体的には炭素数3以上10以下のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数3以上10以下のシクロアルキル基、炭素数3以上10以下のトリアルキルシリル基が挙げられ、保護基が複数あるとさらに好ましい。π結合を有さない置換基は、キャリアを輸送する機能に乏しいため、キャリア輸送やキャリア再結合に影響をほとんど与えずに、TADF材料と蛍光発光物質の発光団との距離を遠ざけることができる。ここで、発光団とは、蛍光発光物質において発光の原因となる原子団(骨格)を指す。発光団は、π結合を有する骨格が好ましく、芳香環を含むことが好ましく、縮合芳香環または縮合複素芳香環を有すると好ましい。縮合芳香環または縮合複素芳香環としては、フェナントレン骨格、スチルベン骨格、アクリドン骨格、フェノキサジン骨格、フェノチアジン骨格等が挙げられる。特にナフタレン骨格、アントラセン骨格、フルオレン骨格、クリセン骨格、トリフェニレン骨格、テトラセン骨格、ピレン骨格、ペリレン骨格、クマリン骨格、キナクリドン骨格、ナフトビスベンゾフラン骨格を有する蛍光発光物質は蛍光量子収率が高いため好ましい。
【0127】
また、発光層113のゲスト材料として蛍光発光物質を用いる場合、ホスト材料としては、アントラセン骨格を有する材料が好適である。アントラセン骨格を有する物質を用いると、発光効率、耐久性共に良好な発光層を実現することが可能である。なお、アントラセン骨格を有する物質としては、ジフェニルアントラセン骨格、特に9,10-ジフェニルアントラセン骨格を有する物質が化学的に安定であるため好ましい。
【0128】
また、ホスト材料がカルバゾール骨格を有する場合、正孔の注入・輸送性が高まるため好ましいが、カルバゾールにベンゼン環がさらに縮合したベンゾカルバゾール骨格を含む場合、カルバゾールよりもHOMO準位が0.1eV程度浅くなり、正孔が入りやすくなるためより好ましい。特に、ホスト材料がジベンゾカルバゾール骨格を含む場合、カルバゾールよりもHOMO準位が0.1eV程度浅くなり、正孔が入りやすくなる上に、正孔輸送性にも優れ、耐熱性も高くなるため好適である。
【0129】
したがって、アントラセン骨格である、9,10-ジフェニルアントラセン骨格、およびカルバゾール骨格(あるいはベンゾカルバゾール骨格やジベンゾカルバゾール骨格)を両方有する物質が、ホスト材料としてより好ましい。なお、上記の正孔注入・輸送性を向上させる観点から、カルバゾール骨格に換えて、ベンゾフルオレン骨格やジベンゾフルオレン骨格を用いてもよい。このような物質の例としては、9-フェニル-3-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:PCzPA)、3-[4-(1-ナフチル)-フェニル]-9-フェニル-9H-カルバゾール(略称:PCPN)、9-[4-(10-フェニル-9-アントラセニル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:CzPA)、7-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-7H-ジベンゾ[c,g]カルバゾール(略称:cgDBCzPA)、6-[3-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)フェニル]-ベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン(略称:2mBnfPPA)、9-フェニル-10-{4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)ビフェニル-4’-イル}アントラセン(略称:FLPPA)、9-(1-ナフチル)-10-[4-(2-ナフチル)フェニル]アントラセン(略称:αN-βNPAnth)等が挙げられる。特に、CzPA、cgDBCzPA、2mBnfPPA、PCzPAは非常に良好な特性を示すため、好ましい。
【0130】
なお、ホスト材料は複数種の物質を混合した材料であっても良く、混合したホスト材料を用いる場合は、電子輸送性材料と、正孔輸送性材料とを混合することが好ましい。電子輸送性材料と、正孔輸送性材料を混合することによって、発光層113の輸送性を容易に調整することができ、再結合領域の制御も簡便に行うことができる。正孔輸送性材料と電子輸送性材料の含有量の重量比は、正孔輸送性材料:電子輸送性材料=1:19~19:1とすればよい。
【0131】
なお、上記のように、ホスト材料が複数種の物質を混合してなる場合、その一部に燐光発光物質を用いることができる。燐光発光物質は、発光中心材料として蛍光発光物質を用いる際に蛍光発光物質へ励起エネルギーを供与するエネルギードナーとして用いることができる。
【0132】
また、上記のように混合された材料同士が、励起錯体を形成しても良い。この場合の材料の組み合わせとして、発光物質の最も低エネルギー側の吸収帯の波長と重なるような発光を呈する励起錯体を形成するような組み合わせを選択することで、エネルギー移動がスムーズとなり、効率よく発光を得ることができる。また、このような構成を用いることで駆動電圧を低下させることができるため好ましい。
【0133】
なお、励起錯体を形成する材料の少なくとも一方は、燐光発光物質であってもよい。この場合、逆項間交差により三重項励起エネルギーを効率良く一重項励起エネルギーへと変換することができる。
【0134】
なお、励起錯体を形成する材料の組み合わせとしては、正孔輸送性材料のHOMO準位が電子輸送性材料のHOMO準位以上であると好ましい。また、正孔輸送性材料のLUMO準位が電子輸送性材料のLUMO準位以上であると好ましい。なお、材料のLUMO準位およびHOMO準位は、サイクリックボルタンメトリ(CV)測定によって測定される材料の電気化学特性(還元電位および酸化電位)から導出することができる。
【0135】
なお、励起錯体の形成は、例えば正孔輸送性材料の発光スペクトル、電子輸送性材料の発光スペクトル、およびこれら材料を混合した混合膜の発光スペクトルを比較し、混合膜の発光スペクトルが、各材料の発光スペクトルよりも長波長シフトする(あるいは長波長側に新たなピークを持つ)現象を観測することにより確認することができる。あるいは、正孔輸送性材料の過渡フォトルミネッセンス(PL)、電子輸送性材料の過渡PL、及びこれら材料を混合した混合膜の過渡PLを比較し、混合膜の過渡PL寿命が、各材料の過渡PL寿命よりも長寿命成分を有する、あるいは遅延成分の割合が大きくなるなどの過渡応答の違いを観測することにより、確認することができる。また、上述の過渡PLは過渡エレクトロルミネッセンス(EL)と読み替えても構わない。すなわち、正孔輸送性材料の過渡EL、電子輸送性を有する材料の過渡EL及びこれらの混合膜の過渡ELを比較し、過渡応答の違いを観測することによっても、励起錯体の形成を確認することができる。
【0136】
<電子輸送層>
電子輸送層114は、第2の電極102から注入された電子を発光層113に輸送する層であり、発光層113に接して設けられる。なお、電子輸送層114は、電子輸送性材料、に加えて、金属、金属塩、金属酸化物、または金属錯体のいずれかを有する。特にアルカリ金属またはアルカリ土類金属を有する金属錯体を用いるのが好ましい。なお、これらの金属、金属塩、金属酸化物、または金属錯体は、電子輸送層114のいずれかの領域に存在していればよく、例えば、電子輸送層114が積層構造を有する場合には、そのいずれかの層に存在していればよい。また、発光層113と接する電子輸送層114(積層構造を有する場合は、そのうちの発光層と接する層)に用いる電子輸送性材料のLUMO準位は、発光層113に用いるホスト材料のLUMO準位よりも深く(または、小さく)、かつその差が0.15eV以上0.40eV以下、または、0.20eV以上0.40eV以下が好ましく、0.20eV以上0.35eV以下がより好ましい。
【0137】
電子輸送層114の電子輸送性材料(すなわち第5の物質や第7の物質)としては、本発明の一態様である発光デバイスに用いる電子輸送性材料として好ましい材料を実施の形態1に示したが、以下に示す電子輸送性材料を必要に応じて用いても良い。
【0138】
なお、電子輸送層114に用いる電子輸送性材料としては、HOMO準位が-6.0eV以上の電子輸送性材料が好ましく、HOMO準位が-6.0eV以上の電子輸送性材料としては、電界強度[V/cm]の平方根が600における電子移動度が、1×10-7cm/Vs以上1×10-5cm/Vs以下であると好ましいが、1×10-7cm/Vs以上5×10-5cm/Vs以下であるとより好ましい。
【0139】
なお、HOMO準位が-6.0eV以上の電子輸送性材料としては、アントラセン骨格を有することが好ましく、アントラセン骨格と複素環骨格を含むことがさらに好ましい。
【0140】
その他、上記ホスト材料に用いることが可能な電子輸送性材料の一部、または上記蛍光発光物質に組み合わせてホスト材料として用いることが可能な材料として挙げたものを電子輸送層114に用いることができる。
【0141】
電子輸送層114の金属、金属塩、金属酸化物、または金属錯体(すなわち第6の物質や第8の物質)としては、好ましい例を実施の形態1に示したが、以下に示す物質を必要に応じて用いても良い。
【0142】
金属としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、及び希土類金属が挙げられる。具体的には、Li、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Sr、Baなどが挙げられる。
【0143】
金属塩としては、例えば、上記金属のハロゲン化物、及び上記金属の炭酸塩が挙げられる。具体的には、LiF、NaF、KF、RbF、CsF、MgF、CaF、SrF、BaF、LiCl、NaCl、KCl、RbCl、CsCl、MgCl、CaCl、SrCl、BaCl、LiCO、CsCOなどが挙げられる。
【0144】
金属酸化物としては、例えば、上記金属の酸化物が挙げられる。具体的には、LiO、NaO、CsO、MgO、CaOなどが挙げられる。
【0145】
また、実施の形態1で述べた通り、第6の物質(および第8の物質)としては金属錯体が好ましい。金属錯体としては、8-ヒドロキシキノリナト構造を含む配位子と、1価の金属イオンと、を有する金属錯体であることが好ましい。8-ヒドロキシキノリナト構造を含む配位子としては、8-ヒドロキシキノリナト、及び、8-ヒドロキシキノリナトのメチル置換体(例えば2-メチル置換体、5-メチル置換体)などが挙げられる。なお、8-ヒドロキシキノリナト構造とは、置換もしくは無置換の8-ヒドロキシキノリノールにおける-OH基のプロトンが脱離した構造をいう。
【0146】
したがって、上記アルカリ金属またはアルカリ土類金属を有する金属錯体としては、8-ヒドロキシキノリナト構造を含む配位子を有するリチウム錯体である、8-(ヒドロキシキノリナト)リチウム(略称:Liq)、8-ヒドロキシキノリナト構造を含む配位子を有するナトリウム錯体である、8-(ヒドロキシキノリナト)ナトリウム(略称:Naq)、8-ヒドロキシキノリナト構造を含む配位子を有するカリウム錯体である、8-(ヒドロキシキノリナト)カリウム(略称:Kq)、8-ヒドロキシキノリナト構造を含む配位子を有するマグネシウム錯体である、ビス(8-ヒドロキシキノリナト)マグネシウム(略称:Mgq)、その他の金属錯体としては、8-ヒドロキシキノリナト構造を含む配位子を有する亜鉛錯体である、ビス(8-ヒドロキシキノリナト)亜鉛(略称:Znq)などが挙げられる。
【0147】
<電子注入層>
電子注入層115は、陰極102からの電子の注入効率を高めるための層であり、陰極102に用いる材料の仕事関数の値と、電子注入層115に用いる材料のLUMO準位の値とを比較した際、その差が小さい(0.5eV以下)材料を用いることが好ましい。従って、電子注入層115には、リチウム、セシウム、フッ化リチウム(LiF)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カルシウム(CaF)、8-(ヒドロキシキノリナト)リチウム(略称:Liq)、2-(2-ピリジル)フェノラトリチウム(略称:LiPP)、2-(2-ピリジル)-3-ピリジノラトリチウム(略称:LiPPy)、4-フェニル-2-(2-ピリジル)フェノラトリチウム(略称:LiPPP)リチウム酸化物(LiO)、炭酸セシウム等のようなアルカリ金属、アルカリ土類金属、またはこれらの化合物を用いることができる。また、フッ化エルビウム(ErF)のような希土類金属化合物を用いることができる。
【0148】
また、図3Bに示す発光デバイスのように、2つのEL層(103a、103b)の間に電荷発生層104を設けることにより、複数のEL層が一対の電極間に積層された構造(タンデム構造ともいう)とすることもできる。なお、本実施の形態において図3Aで説明する、正孔注入層(111)、正孔輸送層(112)、発光層(113)、電子輸送層(114)、電子注入層(115)のそれぞれは、図3Bで説明する、正孔注入層(111a、111b)、正孔輸送層(112a、112b)、発光層(113a、113b)、電子輸送層(114a、114b)、電子注入層(115a、115b)のそれぞれと、機能や用いる材料は共通である。
【0149】
<電荷発生層>
なお、図3Bの発光デバイスにおける電荷発生層104は、第1の電極(陽極)101と第2の電極(陰極)102との間に電圧を印加したときに、陽極である第1の電極101側のEL層103aに電子を注入し、陰極である第2の電極102側のEL層103bに正孔を注入する機能を有する。なお、電荷発生層104は、正孔輸送性材料に電子受容体(アクセプタ)が添加された構成(P型層)であっても、電子輸送性材料に電子供与体(ドナー)が添加された構成(N型層)であってもよい。また、これらの両方の構成が積層されていても良い。また、上記P型層と、後述する電子リレー層および電子注入バッファ層のいずれか一又は両方を組み合わせて形成されていても良い。なお、上述した材料を用いて電荷発生層104を形成することにより、EL層が積層された場合における駆動電圧の上昇を抑制することができる。
【0150】
電荷発生層104において、正孔輸送性材料に電子受容体が添加された構成(P型層)とする場合、正孔輸送性材料としては、本実施の形態で示した材料を用いることができる。また、電子受容体としては、7,7,8,8-テトラシアノ-2,3,5,6-テトラフルオロキノジメタン(略称:F-TCNQ)、クロラニル等を挙げることができる。また元素周期表における第4族乃至第8族に属する金属の酸化物を挙げることができる。具体的には、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化レニウムなどが挙げられる。
【0151】
また、電荷発生層104において、電子輸送性材料に電子供与体が添加された構成(N型層)とする場合、電子輸送性材料としては、本実施の形態で示した材料を用いることができる。また、電子供与体としては、アルカリ金属またはアルカリ土類金属または希土類金属または元素周期表における第2、第13族に属する金属およびその酸化物、炭酸塩を用いることができる。具体的には、リチウム(Li)、セシウム(Cs)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、イッテルビウム(Yb)、インジウム(In)、酸化リチウム、炭酸セシウムなどを用いることが好ましい。また、テトラチアナフタセンのような有機化合物を電子供与体として用いてもよい。
【0152】
上記で、P型層との組み合わせが好ましいとして示した電子リレー層は、電子注入バッファ層とP型層との間に設けることで、電子注入バッファ層とP型層との相互作用を防いで電子をスムーズに受け渡す機能を有する。なお、電子リレー層は、少なくとも電子輸送性材料を含み、電子リレー層に含まれる電子輸送性材料のLUMO準位は、P型層における電子受容性物質のLUMO準位と、電子注入バッファ層に含まれる物質のLUMO準位との間であることが好ましい。電子リレー層に用いられる電子輸送性材料におけるLUMO準位の具体的なエネルギー準位は-5.0eV以上、好ましくは-5.0eV以上-3.0eV以下とするとよい。なお、電子リレー層に用いられる電子輸送性材料としてはフタロシアニン系の材料又は金属-酸素結合と芳香族配位子を有する金属錯体を用いることが好ましい。
【0153】
電子注入バッファ層には、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、およびこれらの化合物(アルカリ金属化合物(酸化リチウム等の酸化物、ハロゲン化物、炭酸リチウムや炭酸セシウム等の炭酸塩を含む)、アルカリ土類金属化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む)、または希土類金属の化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む))等の電子注入性の高い物質を用いることが可能である。
【0154】
また、電子注入バッファ層が、電子輸送性材料と電子供与性物質を含んで形成される場合には、電子供与性物質として、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、およびこれらの化合物(アルカリ金属化合物(酸化リチウム等の酸化物、ハロゲン化物、炭酸リチウムや炭酸セシウム等の炭酸塩を含む)、アルカリ土類金属化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む)、または希土類金属の化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む))の他、テトラチアナフタセン(略称:TTN)、ニッケロセン、デカメチルニッケロセン等の有機化合物を用いることもできる。なお、電子輸送性材料としては、先に説明した電子輸送層を構成する材料と同様の材料を用いて形成することができる。
【0155】
なお、図3Bでは、EL層103が2層積層された構成を示したが、異なるEL層の間に電荷発生層を設けることにより3層以上のEL層の積層構造としてもよい。
【0156】
また、上記の電荷発生層は、上述した電子注入層の代わりに用いることもできる。なお、この場合には、陽極側から電子注入バッファ層、電子リレー層、P型層の順に積層されることが好ましい。
【0157】
<基板>
本実施の形態で示した発光デバイスは、様々な基板上に形成することができる。なお、基板の種類は、特定のものに限定されることはない。基板の一例としては、半導体基板(例えば単結晶基板又はシリコン基板)、SOI基板、ガラス基板、石英基板、プラスチック基板、金属基板、ステンレス・スチル基板、ステンレス・スチル・ホイルを有する基板、タングステン基板、タングステン・ホイルを有する基板、可撓性基板、貼り合わせフィルム、繊維状の材料を含む紙、又は基材フィルムなどが挙げられる。
【0158】
なお、ガラス基板の一例としては、バリウムホウケイ酸ガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、又はソーダライムガラスなどが挙げられる。また、可撓性基板、貼り合わせフィルム、基材フィルムなどの一例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルサルフォン(PES)に代表されるプラスチック、アクリル樹脂等の合成樹脂、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリフッ化ビニル、又はポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリイミド、アラミド樹脂、エポキシ樹脂、無機蒸着フィルム、又は紙類などが挙げられる。
【0159】
なお、本実施の形態で示す発光デバイスの作製には、蒸着法などの真空プロセスや、スピンコート法やインクジェット法などの溶液プロセスを用いることができる。蒸着法を用いる場合には、スパッタ法、イオンプレーティング法、イオンビーム蒸着法、分子線蒸着法、真空蒸着法などの物理蒸着法(PVD法)や、化学蒸着法(CVD法)等を用いることができる。特に発光デバイスのEL層に含まれる機能層(正孔注入層(111、111a、111b)、正孔輸送層(112、112a、112b)、発光層(113、113a、113b)、電子輸送層(114、114a、114b)、電子注入層(115、115a、115b))、および電荷発生層(104)については、蒸着法(真空蒸着法等)、塗布法(ディップコート法、ダイコート法、バーコート法、スピンコート法、スプレーコート法等)、印刷法(インクジェット法、スクリーン(孔版印刷)法、オフセット(平版印刷)法、フレキソ(凸版印刷)法、グラビア法、マイクロコンタクト法、ナノインプリント法等)などの方法により形成することができる。
【0160】
なお、本実施の形態で示す発光デバイスのEL層(103、103a、103b)を構成する各機能層(正孔注入層(111、111a、111b)、正孔輸送層(112、112a、112b)、発光層(113、113a、113b)、電子輸送層(114、114a、114b)、電子注入層(115、115a、115b))や電荷発生層(104)は、上述した材料に限られることはなく、それ以外の材料であっても各層の機能を満たせるものであれば組み合わせて用いることができる。一例としては、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)、中分子化合物(低分子と高分子の中間領域の化合物:分子量400乃至4000)、無機化合物(量子ドット材料等)等を用いることができる。なお、量子ドット材料としては、コロイド状量子ドット材料、合金型量子ドット材料、コア・シェル型量子ドット材料、コア型量子ドット材料などを用いることができる。
【0161】
以上のような構成を有する本発明の一態様の発光装置に用いられる発光デバイスは、長寿命な発光デバイスとすることが可能である。
【0162】
本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて用いることができるものとする。
【0163】
(実施の形態3)
本実施の形態では、本発明の一態様である発光装置について説明する。なお、図4Aに示す発光装置は、第1の基板201上のトランジスタ(FET)202と発光デバイス(203R、203G、203B、203W)が電気的に接続されてなるアクティブマトリクス型の発光装置であり、複数の発光デバイス(203R、203G、203B、203W)は、共通のEL層204を有し、また、各発光デバイスの発光色に応じて、各発光デバイスの電極間の光学距離が調整されたマイクロキャビティ構造を有する。また、EL層204から得られた発光が第2の基板205に形成されたカラーフィルタ(206R、206G、206B)を介して射出されるトップエミッション型の発光装置である。
【0164】
図4Aに示す発光装置において、第1の電極207は、反射電極として機能するように形成する。また、第2の電極208は、光(可視光または近赤外光)に対する透過性および反射性の両機能を有する、半透過・半反射電極として機能するように形成する。なお、第1の電極207および第2の電極208を形成する電極材料としては、他の実施形態の記載を参照し、適宜用いることができる。
【0165】
また、図4Aにおいて、例えば、発光デバイス203Rを赤色発光デバイス、発光デバイス203Gを緑色発光デバイス、発光デバイス203Bを青色発光デバイス、発光デバイス203Wを白色発光デバイスとする場合、図4Bに示すように発光デバイス203Rは、第1の電極207と第2の電極208との間が光学距離200Rとなるように調整し、発光デバイス203Gは、第1の電極207と第2の電極208との間が光学距離200Gとなるように調整し、発光デバイス203Bは、第1の電極207と第2の電極208との間が光学距離200Bとなるように調整する。なお、図4Bに示すように、発光デバイス203Rにおいて導電層210Rを第1の電極207に積層し、発光デバイス203Gにおいて導電層210Gを積層することにより、光学調整を行うことができる。
【0166】
第2の基板205には、カラーフィルタ(206R、206G、206B)が形成されている。なお、カラーフィルタは、可視光のうち特定の波長域を通過させ、特定の波長域を阻止するフィルタである。従って、図4Aに示すように、発光デバイス203Rと重なる位置に赤の波長域のみを通過させるカラーフィルタ206Rを設けることにより、発光デバイス203Rから赤色発光を得ることができる。また、発光デバイス203Gと重なる位置に緑の波長域のみを通過させるカラーフィルタ206Gを設けることにより、発光デバイス203Gから緑色発光を得ることができる。また、発光デバイス203Bと重なる位置に青の波長域のみを通過させるカラーフィルタ206Bを設けることにより、発光デバイス203Bから青色発光を得ることができる。但し、発光デバイス203Wは、カラーフィルタを設けることなく白色発光を得ることができる。なお、1種のカラーフィルタの端部には、黒色層(ブラックマトリックス)209が設けられていてもよい。さらに、カラーフィルタ(206R、206G、206B)や黒色層209は、透明な材料を用いたオーバーコート層で覆われていても良い。
【0167】
図4Aでは、第2の基板205側に発光を取り出す構造(トップエミッション型)の発光装置を示したが、図4Cに示すようにFET202が形成されている第1の基板201側に光を取り出す構造(ボトムエミッション型)の発光装置としても良い。なお、ボトムエミッション型の発光装置の場合には、第1の電極207を半透過・半反射電極として機能するように形成し、第2の電極208を反射電極として機能するように形成する。また、第1の基板201は、少なくとも透光性の基板を用いる。また、カラーフィルタ(206R’、206G’、206B’)は、図4Cに示すように発光デバイス(203R、203G、203B)よりも第1の基板201側に設ければよい。
【0168】
また、図4Aにおいて、発光デバイスが、赤色発光デバイス、緑色発光デバイス、青色発光デバイス、白色発光デバイスの場合について示したが、本発明の一態様である発光デバイスはその構成に限られることはなく、黄色の発光デバイスや橙色の発光デバイスを有する構成であっても良い。なお、これらの発光デバイスを作製するためにEL層(発光層、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層、電荷発生層など)に用いる材料としては、他の実施形態の記載を参照し、適宜用いればよい。なお、その場合には、また、発光デバイスの発光色に応じてカラーフィルタを適宜選択する必要がある。
【0169】
以上のような構成とすることにより、複数の発光色を呈する発光デバイスを備えた発光装置を得ることができる。
【0170】
なお、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて用いることができるものとする。
【0171】
(実施の形態4)
本実施の形態では、本発明の一態様である発光装置について説明する。
【0172】
本発明の一態様である発光デバイスのデバイス構成を適用することで、アクティブマトリクス型の発光装置やパッシブマトリクス型の発光装置を作製することができる。なお、アクティブマトリクス型の発光装置は、発光デバイスとトランジスタ(FET)とを組み合わせた構成を有する。従って、パッシブマトリクス型の発光装置、アクティブマトリクス型の発光装置は、いずれも本発明の一態様に含まれる。なお、本実施の形態に示す発光装置には、他の実施形態で説明した発光デバイスを適用することが可能である。
【0173】
本実施の形態では、アクティブマトリクス型の発光装置について図5を用いて説明する。
【0174】
なお、図5Aは発光装置を示す上面図であり、図5B図5Aを鎖線A-A’で切断した断面図である。アクティブマトリクス型の発光装置は、第1の基板301上に設けられた画素部302、駆動回路部(ソース線駆動回路)303と、駆動回路部(ゲート線駆動回路)(304a、304b)を有する。画素部302および駆動回路部(303、304a、304b)は、シール材305によって、第1の基板301と第2の基板306との間に封止される。
【0175】
また、第1の基板301上には、引き回し配線307が設けられる。引き回し配線307は、外部入力端子であるFPC308と電気的に接続される。なお、FPC308は、駆動回路部(303、304a、304b)に外部からの信号(例えば、ビデオ信号、クロック信号、スタート信号、リセット信号等)や電位を伝達する。また、FPC308にはプリント配線基板(PWB)が取り付けられていても良い。なお、これらFPCやのPWBが取り付けられた状態は、発光装置に含まれる。
【0176】
次に、図5Bに断面構造を示す。
【0177】
画素部302は、FET(スイッチング用FET)311、FET(電流制御用FET)312、およびFET312と電気的に接続された第1の電極313を有する複数の画素により形成される。なお、各画素が有するFETの数は、特に限定されることはなく、必要に応じて適宜設けることができる。
【0178】
FET309、310、311、312は、特に限定されることはなく、例えば、スタガ型や逆スタガ型などのトランジスタを適用することができる。また、トップゲート型やボトムゲート型などのトランジスタ構造であってもよい。
【0179】
なお、これらのFET309、310、311、312に用いることのできる半導体の結晶性については特に限定されず、非晶質半導体、結晶性を有する半導体(微結晶半導体、多結晶半導体、単結晶半導体、又は一部に結晶領域を有する半導体)のいずれを用いてもよい。なお、結晶性を有する半導体を用いることで、トランジスタ特性の劣化を抑制することができるため好ましい。
【0180】
また、これらの半導体としては、例えば、第14族の元素、化合物半導体、酸化物半導体、有機半導体などを用いることができる。代表的には、シリコンを含む半導体、ガリウムヒ素を含む半導体、インジウムを含む酸化物半導体などを適用することができる。
【0181】
駆動回路部303は、FET309とFET310とを有する。なお、駆動回路部303は、単極性(N型またはP型のいずれか一方のみ)のトランジスタを含む回路で形成されても良いし、N型のトランジスタとP型のトランジスタを含むCMOS回路で形成されても良い。また、外部に駆動回路を有する構成としても良い。
【0182】
第1の電極313の端部は、絶縁物314により覆われている。なお、絶縁物314には、ネガ型の感光性樹脂や、ポジ型の感光性樹脂(アクリル樹脂)などの有機化合物や、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化シリコン等の無機化合物を用いることができる。絶縁物314の上端部または下端部には、曲率を有する曲面を有するのが好ましい。これにより、絶縁物314の上層に形成される膜の被覆性を良好なものとすることができる。
【0183】
第1の電極313上には、EL層315及び第2の電極316が積層形成される。EL層315は、発光層、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層、電荷発生層等を有する。
【0184】
なお、本実施の形態で示す発光デバイス317の構成は、他の実施の形態で説明した構成や材料を適用することができる。なお、ここでは図示しないが、第2の電極316は外部入力端子であるFPC308に電気的に接続されている。
【0185】
また、図5Bに示す断面図では発光デバイス317を1つのみ図示しているが、画素部302において、複数の発光デバイスがマトリクス状に配置されているものとする。画素部302には、3種類(R、G、B)の発光が得られる発光デバイスをそれぞれ選択的に形成し、フルカラー表示可能な発光装置を形成することができる。また、3種類(R、G、B)の発光が得られる発光デバイスの他に、例えば、ホワイト(W)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)等の発光が得られる発光デバイスを形成してもよい。例えば、3種類(R、G、B)の発光が得られる発光デバイスに上述の数種類の発光が得られる発光デバイスを追加することにより、色純度の向上、消費電力の低減等の効果が得ることができる。また、カラーフィルタと組み合わせることによってフルカラー表示可能な発光装置としてもよい。なお、カラーフィルタの種類としては、赤(R)、緑(G)、青(B)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)等を用いることができる。
【0186】
第1の基板301上のFET(309、310、311、312)や、発光デバイス317は、第2の基板306と第1の基板301とをシール材305により貼り合わせることにより、第1の基板301、第2の基板306、およびシール材305で囲まれた空間318に備えられた構造を有する。なお、空間318には、不活性気体(窒素やアルゴン等)や有機物(シール材305を含む)で充填されていてもよい。
【0187】
シール材305には、エポキシ樹脂やガラスフリットを用いることができる。なお、シール材305には、できるだけ水分や酸素を透過しない材料を用いることが好ましい。また、第2の基板306は、第1の基板301に用いることができるものを同様に用いることができる。従って、他の実施形態で説明した様々な基板を適宜用いることができるものとする。基板としてガラス基板や石英基板の他、FRP(Fiber-Reinforced Plastics)、PVF(ポリビニルフロライド)、ポリエステルまたはアクリル樹脂等からなるプラスチック基板を用いることができる。シール材としてガラスフリットを用いる場合には、接着性の観点から第1の基板301及び第2の基板306はガラス基板であることが好ましい。
【0188】
以上のようにして、アクティブマトリクス型の発光装置を得ることができる。
【0189】
また、アクティブマトリクス型の発光装置を可撓性基板に形成する場合、可撓性基板上にFETと発光デバイスとを直接形成しても良いが、剥離層を有する別の基板にFETと発光デバイスを形成した後、熱、力、レーザ照射などを与えることによりFETと発光デバイスを剥離層で剥離し、さらに可撓性基板に転載して作製しても良い。なお、剥離層としては、例えば、タングステン膜と酸化シリコン膜との無機膜の積層や、ポリイミド等の有機樹脂膜等を用いることができる。また可撓性基板としては、トランジスタを形成することが可能な基板に加え、紙基板、セロファン基板、アラミドフィルム基板、ポリイミドフィルム基板、布基板(天然繊維(絹、綿、麻)、合成繊維(ナイロン、ポリウレタン、ポリエステル)若しくは再生繊維(アセテート、キュプラ、レーヨン、再生ポリエステル)などを含む)、皮革基板、又はゴム基板などが挙げられる。これらの基板を用いることにより、耐久性や耐熱性に優れ、軽量化および薄型化を図ることができる。
【0190】
また、アクティブマトリクス型の発光装置が有する発光デバイスの駆動は、発光デバイスをパルス状(例えば、kHz、MHz等の周波数を用いる)に発光させ、表示に用いる構成としても良い。上記有機化合物を用いて形成される発光デバイスは、優れた周波数特性を備えるため、発光デバイスを駆動する時間を短縮し、消費電力を低減することができる。また、駆動時間の短縮に伴い発熱が抑制されるため、発光デバイスの劣化を軽減することも可能である。
【0191】
なお、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示した構成を適宜組み合わせて用いることができる。
【0192】
(実施の形態5)
本実施の形態では、本発明の一態様である発光デバイス、本発明の一態様である発光デバイスを有する発光装置を適用して完成させた様々な電子機器や自動車の一例について、説明する。なお、発光装置は、本実施の形態で説明する電子機器において、主に表示部に適用することができる。
【0193】
図6A乃至図6Gに示す電子機器は、筐体7000、表示部7001、スピーカ7003、LEDランプ7004、操作キー7005(電源スイッチ、又は操作スイッチを含む)、接続端子7006、センサ7007(力、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、におい、又は赤外線を測定する機能を含むもの)、マイクロフォン7008、等を有することができる。
【0194】
図6Aはモバイルコンピュータであり、上述したものの他に、スイッチ7009、赤外線ポート7010、等を有することができる。
【0195】
図6Bは記録媒体を備えた携帯型の画像再生装置(たとえば、DVD再生装置)であり、上述したものの他に、第2表示部7002、記録媒体読込部7011、等を有することができる。
【0196】
図6Cはテレビ受像機能付きデジタルカメラであり、上述したものの他に、アンテナ7014、シャッターボタン7015、受像部7016、等を有することができる。
【0197】
図6Dは携帯情報端末である。携帯情報端末は、表示部7001の3面以上に情報を表示する機能を有する。ここでは、情報7052、情報7053、情報7054がそれぞれ異なる面に表示されている例を示す。例えば使用者は、洋服の胸ポケットに携帯情報端末を収納した状態で、携帯情報端末の上方から観察できる位置に表示された情報7053を確認することもできる。使用者は、携帯情報端末をポケットから取り出すことなく表示を確認し、例えば電話を受けるか否かを判断できる。
【0198】
図6Eは携帯情報端末(スマートフォンを含む)であり、筐体7000に、表示部7001、操作キー7005、等を有することができる。なお、携帯情報端末は、スピーカ7003、接続端子7006、センサ7007等を設けてもよい。また、携帯情報端末は、文字や画像情報をその複数の面に表示することができる。ここでは3つのアイコン7050を表示した例を示している。また、破線の矩形で示す情報7051を表示部7001の他の面に表示することもできる。情報7051の一例としては、電子メール、SNS、電話などの着信の通知、電子メールやSNSなどの題名、送信者名、日時、時刻、バッテリーの残量、アンテナ受信の強度などがある。または、情報7051が表示されている位置にはアイコン7050などを表示してもよい。
【0199】
図6Fは、大型のテレビジョン装置(テレビ、又はテレビジョン受信機ともいう)であり、筐体7000、表示部7001、等を有することができる。また、ここでは、スタンド7018により筐体7000を支持した構成を示している。また、テレビジョン装置の操作は、別体のリモコン操作機7111、等により行うことができる。なお、表示部7001にタッチセンサを備えていてもよく、指等で表示部7001に触れることで操作してもよい。リモコン操作機7111は、当該リモコン操作機7111から出力する情報を表示する表示部を有していてもよい。リモコン操作機7111が備える操作キーまたはタッチパネルにより、チャンネル及び音量の操作を行うことができ、表示部7001に表示される画像を操作することができる。
【0200】
図6A乃至図6Fに示す電子機器は、様々な機能を有することができる。例えば、様々な情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示部に表示する機能、タッチパネル機能、カレンダー、日付又は時刻などを表示する機能、様々なソフトウエア(プログラム)によって処理を制御する機能、無線通信機能、無線通信機能を用いて様々なコンピュータネットワークに接続する機能、無線通信機能を用いて様々なデータの送信又は受信を行う機能、記録媒体に記録されているプログラム又はデータを読み出して表示部に表示する機能、等を有することができる。さらに、複数の表示部を有する電子機器においては、一つの表示部を主として画像情報を表示し、別の一つの表示部を主として文字情報を表示する機能、または、複数の表示部に視差を考慮した画像を表示することで立体的な画像を表示する機能、等を有することができる。さらに、受像部を有する電子機器においては、静止画を撮影する機能、動画を撮影する機能、撮影した画像を自動または手動で補正する機能、撮影した画像を記録媒体(外部又はカメラに内蔵)に保存する機能、撮影した画像を表示部に表示する機能、等を有することができる。なお、図6A乃至図6Fに示す電子機器が有することのできる機能はこれらに限定されず、様々な機能を有することができる。
【0201】
図6Gは、腕時計型の携帯情報端末であり、例えばスマートウォッチとして用いることができる。この腕時計型の携帯情報端末は、筐体7000、表示部7001、操作用ボタン7022、7023、接続端子7024、バンド7025、マイクロフォン7026、センサ7029、スピーカ7030等を有している。表示部7001は、表示面が湾曲しており、湾曲した表示面に沿って表示を行うことができる。また、この携帯情報端末は、例えば無線通信可能なヘッドセットとの相互通信によりハンズフリーでの通話が可能である。なお、接続端子7024により、他の情報端末と相互にデータ伝送を行うことや、充電を行うこともできる。充電動作は無線給電により行うこともできる。
【0202】
ベゼル部分を兼ねる筐体7000に搭載された表示部7001は、非矩形状の表示領域を有している。表示部7001は、時刻を表すアイコン、その他のアイコン等を表示することができる。また、表示部7001は、タッチセンサ(入力装置)を搭載したタッチパネル(入出力装置)であってもよい。
【0203】
なお、図6Gに示すスマートウォッチは、様々な機能を有することができる。例えば、様々な情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示部に表示する機能、タッチパネル機能、カレンダー、日付又は時刻などを表示する機能、様々なソフトウエア(プログラム)によって処理を制御する機能、無線通信機能、無線通信機能を用いて様々なコンピュータネットワークに接続する機能、無線通信機能を用いて様々なデータの送信又は受信を行う機能、記録媒体に記録されているプログラム又はデータを読み出して表示部に表示する機能、等を有することができる。
【0204】
また、筐体7000の内部に、スピーカ、センサ(力、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、におい又は赤外線を測定する機能を含むもの)、マイクロフォン等を有することができる。
【0205】
なお、本発明の一態様である発光装置は、本実施の形態に示す電子機器の各表示部に用いることができ、長寿命な電子機器を実現できる。
【0206】
また、発光装置を適用した電子機器として、図7A乃至図7Cに示すような折りたたみ可能な携帯情報端末が挙げられる。図7Aには、展開した状態の携帯情報端末9310を示す。また、図7Bには、展開した状態又は折りたたんだ状態の一方から他方に変化する途中の状態の携帯情報端末9310を示す。さらに、図7Cには、折りたたんだ状態の携帯情報端末9310を示す。携帯情報端末9310は、折りたたんだ状態では可搬性に優れ、展開した状態では、継ぎ目のない広い表示領域により表示の一覧性に優れる。
【0207】
表示部9311はヒンジ9313によって連結された3つの筐体9315に支持されている。なお、表示部9311は、タッチセンサ(入力装置)を搭載したタッチパネル(入出力装置)であってもよい。また、表示部9311は、ヒンジ9313を介して2つの筐体9315間を屈曲させることにより、携帯情報端末9310を展開した状態から折りたたんだ状態に可逆的に変形させることができる。なお、本発明の一態様の発光装置は、表示部9311に用いることができる。また、長寿命な電子機器を実現できる。表示部9311における表示領域9312は折りたたんだ状態の携帯情報端末9310の側面に位置する表示領域である。表示領域9312には、情報アイコンや使用頻度の高いアプリやプログラムのショートカットなどを表示させることができ、情報の確認やアプリなどの起動をスムーズに行うことができる。
【0208】
また、発光装置を適用した自動車について、図8A図8Bに示す。すなわち、発光装置を、自動車と一体にして設けることができる。具体的には、図8Aに示す自動車の外側のライト5101(車体後部も含む)、タイヤのホイール5102、ドア5103の一部または全体などに適用することができる。また、図8Bに示す自動車の内側の表示部5104、ハンドル5105、シフトレバー5106、座席シート5107、インナーリアビューミラー5108、フロントガラス5109等に適用することができる。その他のガラス窓の一部に適用してもよい。
【0209】
以上のようにして、本発明の一態様である発光装置を適用した電子機器や自動車を得ることができる。なお、その場合には、長寿命な電子機器を実現できる。また、適用できる電子機器や自動車は、本実施の形態に示したものに限らず、あらゆる分野において適用することが可能である。
【0210】
なお、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示した構成と適宜組み合わせて用いることができる。
【0211】
(実施の形態6)
本実施の形態では、本発明の一態様である発光装置、またはその一部である発光デバイスを適用して作製される照明装置の構成について図9を用いて説明する。
【0212】
図9A図9Bは、照明装置の断面図の一例を示す。なお、図9Aは基板側に光を取り出すボトムエミッション型の照明装置であり、図9Bは、封止基板側に光を取り出すトップエミッション型の照明装置である。
【0213】
図9Aに示す照明装置4000は、基板4001上に発光デバイス4002を有する。また、基板4001の外側に凹凸を有する基板4003を有する。発光デバイス4002は、第1の電極4004と、EL層4005と、第2の電極4006を有する。
【0214】
第1の電極4004は、電極4007と電気的に接続され、第2の電極4006は電極4008と電気的に接続される。また、第1の電極4004と電気的に接続される補助配線4009を設けてもよい。なお、補助配線4009上には、絶縁層4010が形成されている。
【0215】
また、基板4001と封止基板4011は、シール材4012で接着されている。また、封止基板4011と発光デバイス4002の間には、乾燥剤4013が設けられていることが好ましい。なお、基板4003は、図9Aのような凹凸を有するため、発光デバイス4002で生じた光の取り出し効率を向上させることができる。
【0216】
図9Bの照明装置4200は、基板4201上に発光デバイス4202を有する。発光デバイス4202は第1の電極4204と、EL層4205と、第2の電極4206とを有する。
【0217】
第1の電極4204は、電極4207と電気的に接続され、第2の電極4206は電極4208と電気的に接続される。また第2の電極4206と電気的に接続される補助配線4209を設けてもよい。また、補助配線4209の下部に、絶縁層4210を設けてもよい。
【0218】
基板4201と凹凸のある封止基板4211は、シール材4212で接着されている。また、封止基板4211と発光デバイス4202の間にバリア膜4213および平坦化膜4214を設けてもよい。なお、封止基板4211は、図9Bのような凹凸を有するため、発光デバイス4202で生じた光の取り出し効率を向上させることができる。
【0219】
また、これらの照明装置の応用例としては、室内の照明用であるシーリングライトが挙げられる。シーリングライトには、天井直付型や天井埋め込み型等がある。なお、このような照明装置は、発光装置を筐体やカバーと組み合わせることにより構成される。
【0220】
その他にも床面に灯りを照射し、足元の安全性を高めることができる足元灯などへの応用も可能である。足元灯は、例えば、寝室や階段や通路などに使用するのが有効である。その場合、部屋の広さや構造に応じて適宜サイズや形状を変えることができる。また、発光装置と支持台とを組み合わせて構成される据え置き型の照明装置とすることも可能である。
【0221】
また、シート状の照明装置(シート状照明)として応用することも可能である。シート状照明は、壁面に張り付けて使用するため、場所を取らず幅広い用途に用いることができる。なお、大面積化も容易である。なお、曲面を有する壁面や筐体に用いることもできる。
【0222】
なお、上記以外にも室内に備えられた家具の一部に本発明の一態様である発光装置、またはその一部である発光デバイスを適用し、家具としての機能を備えた照明装置とすることができる。
【0223】
以上のように、発光装置を適用した様々な照明装置が得られる。なお、これらの照明装置は本発明の一態様に含まれるものとする。
【0224】
また、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示した構成と適宜組み合わせて用いることができる。
【実施例0225】
本実施例では、本発明の一態様である発光デバイスとして、発光層のホスト材料として9-(1-ナフチル)-10-[4-(2-ナフチル)フェニル]アントラセン(略称:αN-βNPAnth)を用い、電子輸送層の電子輸送性材料として、2-フェニル-3-{4-[10-(3-ピリジル)-9-アントリル]フェニル}キノキサリン(略称:PyA1PQ)とLiqを用いた発光デバイス1について説明する。なお、発光デバイス1における、発光層のホスト材料(αN-βNPAnth)と電子輸送層の電子輸送性材料(PyA1PQ)とのLUMO準位の差は、0.26eVである。また、比較のための発光デバイスとして作製した、比較発光デバイス2は、発光層のホスト材料にαN-βNPAnthを用い、電子輸送層の電子輸送性材料に2-{4-[9,10-ジ(ナフタレン-2-イル)-2-アントリル]フェニル}-1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール(略称:ZADN)を用いており、比較発光デバイス2における、発光層のホスト材料(αN-βNPAnth)と電子輸送層の電子輸送性材料(ZADN)とのLUMO準位の差は、0.13eVである。
【0226】
以下に、これらの発光デバイスの素子構造、作製方法およびその特性について説明する。なお、本実施例で用いる発光デバイスの素子構造を図15に示し、具体的な構成について表4に示す。また、本実施例で用いる材料の化学式を以下に示す。
【0227】
【表4】
【0228】
【化7】
【0229】
≪発光デバイスの作製≫
本実施例で示す発光デバイスは、図15に示すように基板900上に形成された第1の電極901上にEL層902を構成する、正孔注入層911、正孔輸送層912、発光層913、電子輸送層914が順次積層され、電子輸送層914上に第2の電極903が積層された構造を有する。
【0230】
まず、基板900上に第1の電極901を形成した。電極面積は、4mm(2mm×2mm)とした。また、基板900には、ガラス基板を用いた。また、第1の電極901は、酸化珪素を含むインジウム錫酸化物(ITSO)をスパッタリング法により、70nmの膜厚で成膜して形成した。
【0231】
ここで、前処理として、基板の表面を水で洗浄し、200℃で1時間焼成した後、UVオゾン処理を370秒行った。その後、1×10-4Pa程度まで内部が減圧された真空蒸着装置に基板を導入し、真空蒸着装置内の加熱室において、170℃で30分間の真空焼成を行った後、基板を30分程度放冷した。
【0232】
次に、第1の電極901上に正孔注入層911を形成した。正孔注入層911は、真空蒸着装置内を1×10-4Paに減圧した後、N,N-ビス(4-ビフェニル)-6-フェニルベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン-8-アミン(略称:BBABnf)と、ALD-MP001Q(分析工房株式会社、材料シリアル番号:1S20180314)とを、重量比で1:0.1(=BBABnf:ALD-MP001Q)となるように、10nm共蒸着して形成した。
【0233】
次に、正孔注入層911上に正孔輸送層912を形成した。本実施例で説明する発光デバイスの正孔輸送層912は、第1の正孔輸送層912-1と第2の正孔輸送層912-2との積層構造を有する。第1の正孔輸送層912-1として、BBABnfを20nmとなるように蒸着した後、第2の正孔輸送層912-2として、3,3’-(ナフタレン-1,4-ジイル)ビス(9-フェニル-9H-カルバゾール(略称:PCzN2)を10nmとなるように蒸着し、正孔輸送層912を形成した。なお、第2の正孔輸送層912-2は電子ブロック層としても機能する。
【0234】
次に、正孔輸送層912上に発光層913を形成した。
【0235】
発光層913は、αN-βNPAnthと、3,10-ビス[N-(9-フェニル-9H-カルバゾール-2-イル)-N-フェニルアミノ]ナフト[2,3-b;6,7-b’]ビスベンゾフラン(略称:3,10PCA2Nbf(IV)-02)とを、重量比1:0.015(=αN-βNPAnth:3,10PCA2Nbf(IV)-02)となるように共蒸着した。なお、膜厚は、25nmとした。
【0236】
次に、発光層913上に電子輸送層914を形成した。電子輸送層914の形成には、抵抗加熱による蒸着法を用いた。本実施例で説明する発光デバイスの電子輸送層914は、第1の電子輸送層914-1と第2の電子輸送層914-2との積層構造を有する。
【0237】
発光デバイス1の場合は、第1の電子輸送層914-1として、2-フェニル-3-{4-[10-(3-ピリジル)-9-アントリル]フェニル}キノキサリン(略称:PyA1PQ)と、8-ヒドロキシキノリナトリチウム(略称:Liq)とを重量比1:2(=PyA1PQ:Liq)となるように12.5nm共蒸着した後、第2の電子輸送層914-2として、PyA1PQと、Liqとを重量比2:1(=PyA1PQ:Liq)となるように12.5nm共蒸着し、電子輸送層914を形成した。
【0238】
発光デバイス2の場合は、第1の電子輸送層914-1として、2-{4-[9,10-ジ(ナフタレン-2-イル)-2-アントリル]フェニル}-1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール(略称:ZADN)と、Liqとを重量比1:2(=ZADN:Liq)となるように12.5nm共蒸着した後、第2の電子輸送層914-2として、ZADNと、Liqとを重量比2:1(=ZADN:Liq)となるように12.5nm共蒸着し、電子輸送層914を形成した。
【0239】
次に、電子輸送層914上に第2の電極903を形成した。第2の電極903は、アルミニウムを蒸着法により、膜厚が200nmとなるように形成した。なお、本実施例において、第2の電極903は、陰極として機能する。
【0240】
以上の工程により、基板900上に一対の電極間にEL層を挟んでなる発光デバイスを形成した。なお、上記工程で説明した正孔注入層911、正孔輸送層912、発光層913、電子輸送層914は、本発明の一態様におけるEL層を構成する機能層である。但し、必要に応じて、本明細書中で説明した、電子注入層915や電荷発生層などを設けても良い。また、上述した作製方法における蒸着工程では、全て抵抗加熱法による蒸着法を用いた。
【0241】
また、上記に示すように作製した発光デバイスは、別の基板(図示せず)により封止される。なお、別の基板(図示せず)を用いた封止の際は、窒素雰囲気のグローブボックス内において、紫外光により固化するシール剤を塗布した別の基板(図示せず)を基板900上に固定し、基板900上に形成された発光デバイスの周囲にシール剤が付着するよう基板同士を接着させた。封止時には365nmの紫外光を6J/cm照射しシール剤を固化し、80℃にて1時間熱処理することによりシール剤を安定化させた。
【0242】
≪発光デバイスの動作特性≫
作製した各発光デバイスの動作特性について測定した。なお、測定は室温(25℃に保たれた雰囲気)で行った。また、各発光デバイスの動作特性の結果として電流密度-輝度特性を図16、電圧-輝度特性を図17、輝度-電流効率特性を図18、電圧-電流特性を図19、輝度-電力効率特性を図20、輝度-外部量子効率特性を図21にそれぞれ示す。
【0243】
また、1000cd/m付近における各発光デバイスの主な初期特性値を以下の表5に示す。
【0244】
【表5】
【0245】
また、各発光デバイスに12.5mA/cmの電流密度で電流を流した際の発光スペクトルを、図22に示す。図22に示す通り、各発光デバイスの発光スペクトルは、457nm付近にピークを有しており、いずれも発光層913に含まれる、3,10PCA2Nbf(IV)-02の発光に由来していることが示唆される。
【0246】
図16乃至図21及び表5に示す結果より、発光層913にホスト材料としてαN-βNPAnthを用い、電子輸送層914に電子輸送性材料としてPyA1PQとLiqを用いた本発明の一態様である発光デバイス1は、比較発光デバイス2よりも電流-電圧特性、パワー効率、および発光効率の良好な発光デバイスであることがわかった。また、この発光特性は比較発光デバイス2と遜色ない特性を示すことが示された。
【0247】
また、各素子を一定電流密度(50mA/cm)で駆動させたときの駆動時間に対する輝度の変化を表すグラフを図23に示す。図23で示すように、本発明一態様である発光デバイス1は、駆動時間の蓄積に伴う輝度低下が小さく、寿命の良好な発光デバイスであることがわかった。これは、発光層913にホスト材料として用いたαN-βNPAnthと、電子輸送層914に電子輸送性材料として用いたPyA1PQとのLUMO準位の差が0.26eVと非常に大きく、発光層913と電子輸送層914との積層界面の電子注入障壁が大きくなるために陰極側から発光層に注入された電子が正孔輸送層912に到達することを抑制し、電子の注入に伴う正孔輸送層の劣化が抑えられたことに起因する結果であるといえる。一方で比較発光デバイス2は、駆動時間の蓄積に伴う輝度低下が発光デバイス1よりも大きい。比較発光デバイス2では電子輸送層914に電子輸送性材料として用いたZADNのLUMO準位がPyA1PQよりも浅く、発光層913のホスト材料として用いたαN-βNPAnthとのLUMO準位差が0.13eVしかない。そのため、陰極側から発光層に注入された電子が正孔輸送層912まで到達しやすくなり、正孔注入層の劣化がより見えることが考えられる。
【実施例0248】
本実施例では、実施例1で示した発光デバイス1を構成するEL層のうち、電子輸送層の構成が異なり、さらに電子輸送層と第2の電極との間に電子注入層を有する構造の発光デバイス3及び発光デバイス4について説明する。なお、発光デバイス3および発光デバイス4の電子輸送層は、いずれも電子輸送性材料として2-[3’-(ジベンゾチオフェン-4-イル)ビフェニル-3-イル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mDBTBPDBq-II)を少なくとも有し、発光層のホスト材料として、9-(1-ナフチル)-10-[4-(2-ナフチル)フェニル]アントラセン(略称:αN-βNPAnth)用いており、発光デバイス3および発光デバイス4における、発光層のホスト材料(αN-βNPAnth)と電子輸送層の電子輸送性材料(2mDBTBPDBq-II)とのLUMO準位の差は、0.20eVである。また、本実施例で説明する発光デバイスのデバイス構造は、図15の構造に加えて、電子輸送層914と第2の電極903との間に電子注入層915を有する構造であり、作製方法は、実施例1と同様である。
【0249】
本実施例で各発光デバイスに用いる材料の化学式を以下に示す。また、各発光デバイスの具体的な構成を以下の表6に示す。
【0250】
【化8】
【0251】
【表6】
【0252】
≪発光デバイスの動作特性≫
作製した各発光デバイスの動作特性について測定した。なお、測定は室温(25℃に保たれた雰囲気)で行った。また、各発光デバイスの動作特性の結果として電流密度-輝度特性を図24、電圧-輝度特性を図25、輝度-電流効率特性を図26、電圧-電流特性を図27、輝度-電力効率特性を図28、輝度-外部量子効率特性を図29にそれぞれ示す。
【0253】
また、1000cd/m付近における各発光デバイスの主な初期特性値を以下の表7に示す。
【0254】
【表7】
【0255】
また、各発光デバイスが輝度1000cd/mを出すための電圧を印加した際の発光スペクトルを、図30に示す。図30に示す通り、各発光デバイスの発光スペクトルは、いずれも458nm付近にピークを有しており、発光層913に含まれる、3,10PCA2Nbf(IV)-02の発光に由来していることが示唆される。
【0256】
図24乃至図29及び表7に示す結果より、発光層913にホスト材料としてαN-βNPAnthを用い、電子輸送層914に電子輸送性材料として少なくとも2mDBTBPDBq-IIを用いた本発明の一態様である発光デバイス3および発光デバイス4は、いずれも電流-電圧特性、パワー効率、および発光効率の良好な発光デバイスであることがわかった。
【0257】
また、各素子を一定電流密度(50mA/cm)で駆動させたときの駆動時間に対する輝度の変化を表すグラフを図31に示す。図31で示すように、本発明一態様である発光デバイス3および発光デバイス4は、駆動時間の蓄積に伴う輝度低下が小さく、寿命の良好な発光デバイスであることがわかった。これは、発光層913にホスト材料として用いたαN-βNPAnthと、電子輸送層914に電子輸送性材料として用いた2mDBTBPDBq-IIとのLUMO準位の差が0.20eVと非常に大きく、発光層913と電子輸送層914との積層界面の電子注入障壁が大きくなるために陰極側から発光層に注入された電子が正孔輸送層に到達することを抑制し、電子の注入に伴う正孔輸送層の劣化が抑えられたことに起因する結果であるといえる。なお、駆動時間の蓄積に伴う輝度変化は、輝度が初期値よりも大きくなる挙動が見られている。これは前述したとおり、今回の発光素子では電子輸送性の遅い電子輸送材料を用いることで、初期の駆動状態においてはキャリアの再結合する領域が電子輸送層内部にまで広がっているためである。駆動時間が蓄積されるとキャリアの再結合領域のうち、電子輸送層に広がっていた範囲が減少し、相対的に発光効率が増加し、輝度上昇につながっている物と考える。
【0258】
<参考例>
本参考例では、各実施例に適用できる有機化合物のHOMO準位、LUMO準位および電子移動度の算出方法について説明する。
【0259】
HOMO準位およびLUMO準位はサイクリックボルタンメトリ(CV)測定を元に算出することができる。
【0260】
測定装置としては電気化学アナライザー(ビー・エー・エス(株)製、型番:ALSモデル600Aまたは600C)を用いた。CV測定における溶液は、溶媒として脱水ジメチルホルムアミド(DMF)((株)アルドリッチ製、99.8%、カタログ番号;22705-6)を用い、支持電解質である過塩素酸テトラ-n-ブチルアンモニウム(n-Bu4NClO4)((株)東京化成製、カタログ番号;T0836)を100mmol/Lの濃度となるように溶解させ、さらに測定対象を2mmol/Lの濃度となるように溶解させて調製した。また、作用電極としては白金電極(ビー・エー・エス(株)製、PTE白金電極)を、補助電極としては白金電極(ビー・エー・エス(株)製、VC-3用Ptカウンター電極(5cm))を、参照電極としてはAg/Ag+電極(ビー・エー・エス(株)製、RE7非水溶媒系参照電極)をそれぞれ用いた。なお、測定は室温(20~25℃)で行った。また、CV測定時のスキャン速度は、0.1V/secに統一し、参照電極に対する酸化電位Ea[V]および還元電位Ec[V]を測定した。Eaは酸化-還元波の中間電位とし、Ecは還元-酸化波の中間電位とした。ここで、本実施例で用いる参照電極の真空準位に対するポテンシャルエネルギーは、-4.94[eV]であることが分かっているため、HOMO準位[eV]=-4.94-Ea、LUMO準位[eV]=-4.94-Ecという式から、HOMO準位およびLUMO準位をそれぞれ求めることができる。
【0261】
電子移動度はインピーダンス分光法(Impedance Spectroscopy:IS法)により測定することが可能である。
【0262】
EL材料のキャリア移動度の測定は、過渡光電流法(Time-of-flight:TOF法)や空間電荷制限電流(Space-charge-limited current:SCLC)のI-V特性から求める方法(SCLC法)などが古くから知られている。TOF法は実際の有機EL素子と比較してかなり厚い膜厚の試料が必要となる。SCLC法ではキャリア移動度の電界強度依存性が得られないなどの欠点がある。IS法では、測定に必要とする有機膜の膜厚が数百nm程度と薄いため、比較的少量のEL材料でも成膜することが可能であり、実際のEL素子に近い膜厚で移動度を測定できることが特徴であり、キャリア移動度の電界強度依存性も得ることができる。
【0263】
IS法では、EL素子に微小正弦波電圧信号(V=V[exp(jωt)])を与え、その応答電流信号(I=Iexp[j(ωt+φ)])の電流振幅と入力信号との位相差より、EL素子のインピーダンス(Z=V/I)を求める。高周波電圧から低周波電圧まで変化させて素子に印加させれば、インピーダンスに寄与する様々な緩和時間を有する成分を分離、測定することができる。
【0264】
ここで、インピーダンスの逆数であるアドミタンスY(=1/Z)は、下記式(1)のようにコンダクタンスGとサセプタンスBで表すことができる。
【0265】
【数1】
【0266】
さらに、単一電荷注入(single injection)モデルにより、それぞれ下記式(2)および(3)を算出することができる。ここで、g(式(4))は微分コンダクタンスである。なお、式中Cは静電容量(キャパシタンス)、θはωtであり走行角、ωは角周波数を表す。tは走行時間である。解析には電流の式、ポアソンの式、電流連続の式を用い、拡散電流およびトラップ準位の存在を無視している。
【0267】
【数2】
【0268】
静電容量の周波数特性から移動度を算出する方法が-ΔB法である。また、コンダクタンスの周波数特性から移動度を算出する方法がωΔG法である。
【0269】
実際には、まず、電子移動度を求めたい材料の電子オンリー素子を作製する。電子オンリー素子とは、キャリアとして電子のみが流れるように設計された素子である。本明細書では、静電容量の周波数特性から移動度を算出する方法(-ΔB法)について説明する。電子オンリー素子の模式図は、図10に示すとおりである。
【0270】
また、測定用に作製する電子オンリー素子は、図10に示すように第1の電極1001と第2の電極1002との間に、第1の層1010、第2の層1011、および第3の層1012を有する。なお、電子移動度を測定する材料は、第2の層1011に用いれば良い。ここではZADNとLiqの1:1(重量比)の共蒸着膜の電子移動度の測定について、例を挙げて説明する。具体的な構成例は以下の表にまとめた。
【0271】
【表8】
【0272】
ZADNとLiqの共蒸着膜を第2の層1011として作製した電子オンリー素子の電流密度-電圧特性を図11に示す。
【0273】
インピーダンス測定は、5.0V~9.0Vの範囲で直流電圧を印加しながら、交流電圧が70mV、周波数が1Hz~3MHzの条件で測定を行った。ここで得られたインピーダンスの逆数であるアドミタンス(前述の(1)式)からキャパシタンスを算出する。印加電圧7.0Vにおける算出されたキャパシタンスCの周波数特性を図12に示す。
【0274】
キャパシタンスCの周波数特性は、微小電圧信号により注入されたキャリアによる空間電荷が微小交流電圧に完全には追従できず、電流に位相差が生じることにより得られる。ここで、膜中のキャリアの走行時間は、注入されたキャリアが対向電極に到達する時間Tで定義され、以下の式(5)で表される。
【0275】
【数3】
【0276】
負サセプタンス変化(-ΔB)は、静電容量変化-ΔCに角周波数ωを乗じた値(-ωΔC)に対応する。その最も低周波側のピーク周波数f’max(=ωmax/2π)と走行時間Tとの間には、式(3)より、以下の式(6)の関係があることが導出される。
【0277】
【数4】
【0278】
上記測定から算出した(すなわち直流電圧が7.0Vの時の)-ΔBの周波数特性を図13に示す。図13より求まる最も低周波側のピーク周波数f’maxは、図中の矢印で示す。
【0279】
以上の測定および解析から得られるf’maxから、走行時間Tが求まるため(上記式(6)参照)、上記式(5)より、電圧7.0Vにおける電子移動度を求めることができる。同様の測定を、直流電圧5.0V~9.0Vの範囲で行うことで、各電圧(電界強度)での電子移動度が算出できるため、移動度の電界強度依存性も測定することができる。
【0280】
以上のような算出法により最終的に得られる、各有機化合物の電子移動度の電界強度依存性を図14に示し、図から読み取った、電界強度[V/cm]の平方根が600[V/cm]1/2の時の電子移動度の値を表9に示す。
【0281】
【表9】
【0282】
以上のように電子移動度を算出することが可能である。なお、詳しい測定方法に関しては、Takayuki Okachi 他 ”Japanese Journal of Applied Physics” Vol. 47, No. 12, 2008, pp. 8965-8972を参照されたい。
【実施例0283】
本実施例では、発光デバイス5、発光デバイス6、及び発光デバイス7について説明する。なお、発光デバイス5の電子輸送層に用いた材料は、実施例1に示す発光デバイス1と同じ材料である。また、発光デバイス6および発光デバイス7の電子輸送層は、いずれも電子輸送性材料として、ALD-MC057Q(分析工房株式会社、材料シリアル番号:1S20190330)(LUMO準位:-2.98eV)を少なくとも有し、また、発光デバイス6および発光デバイス7の発光層は、いずれもホスト材料として、9-(1-ナフチル)-10-[4-(2-ナフチル)フェニル]アントラセン(略称:αN-βNPAnth)用いている。したがって、発光デバイス6および発光デバイス7における、発光層のホスト材料(αN-βNPAnth)と電子輸送層の電子輸送性材料(ALD-MC057Q)とのLUMO準位の差は、0.24eVである。また、本実施例で説明する発光デバイスのデバイス構造は図15に示す通りであり、作製方法は、実施例2と同様である。
【0284】
本実施例で各発光デバイスに用いる材料の化学式を以下に示す。また、各発光デバイスの具体的な構成を以下の表10に示す。
【0285】
【化9】
【0286】
【表10】
【0287】
≪発光デバイスの動作特性≫
作製した各発光デバイスの動作特性について測定した。なお、測定は室温(25℃に保たれた雰囲気)で行った。また、各発光デバイスの動作特性の結果として電流密度-輝度特性を図32、電圧-輝度特性を図33、輝度-電流効率特性を図34、電圧-電流特性を図35、輝度-電力効率特性を図36、輝度-外部量子効率特性を図37にそれぞれ示す。
【0288】
また、1000cd/m付近における各発光デバイスの主な初期特性値を以下の表11に示す。
【0289】
【表11】
【0290】
また、各発光デバイスが輝度1000cd/mを出すための電圧を印加した際の発光スペクトルを、図38に示す。図38に示す通り、各発光デバイスの発光スペクトルは、いずれも460nm付近にピークを有しており、発光層913に含まれる、3,10PCA2Nbf(IV)-02の発光に由来していることが示唆される。
【0291】
図32乃至図37及び表11に示す結果より、発光層913にホスト材料としてαN-βNPAnthを用い、電子輸送層914に電子輸送性材料として少なくともALD-MC057Qを用いた本発明の一態様である発光デバイス6および発光デバイス7は、いずれも電流-電圧特性、パワー効率、および発光効率の良好な発光デバイスであることがわかった。
【0292】
また、各素子を一定電流密度(50mA/cm)で駆動させたときの駆動時間に対する輝度の変化を表すグラフを図39に示す。図39で示すように、本発明一態様である発光デバイス5、発光デバイス6、および発光デバイス7は、駆動時間の蓄積に伴う輝度低下が小さく、寿命の良好な発光デバイスであることがわかった。これは、発光層913にホスト材料として用いたαN-βNPAnthと、電子輸送層914に電子輸送性材料として用いた材料とのLUMO準位の差が、発光デバイス5の場合、PyA1PQとのLUMO準位の差が、0.26eV、発光デバイス6、および発光デバイス7の場合、ALD-MC057QとのLUMO準位の差が0.24eVといずれも非常に大きく、発光層913と電子輸送層914との積層界面の電子注入障壁が大きくなるために陰極側から発光層に注入された電子が正孔輸送層に到達することを抑制し、電子の注入に伴う正孔輸送層の劣化が抑えられたことに起因する結果であるといえる。なお、駆動時間の蓄積に伴う輝度変化は、輝度が初期値よりも大きくなる挙動が見られている。これは前述したとおり、今回の発光素子では電子輸送性の遅い電子輸送材料を用いることで、初期の駆動状態においてはキャリアの再結合する領域が電子輸送層内部にまで広がっているためである。駆動時間が蓄積されるとキャリアの再結合領域のうち、電子輸送層に広がっていた範囲が減少し、相対的に発光効率が増加し、輝度上昇につながっているものと考える。
【実施例0293】
本実施例では、発光デバイス8、発光デバイス9、発光デバイス10、発光デバイス11、及び発光デバイス12について説明する。なお、各発光デバイスに用いる材料は、下記の表12に示す通り、電子輸送層以外はいずれも共通である。なお、各発光デバイスにおける発光層のホスト材料のLUMO準位(αN-βNPAnth:-2.74eV)と、電子輸送層の電子輸送性材料のLUMO準位との差は、発光デバイス8では、0.26eV、発光デバイス9では、0.20eV、発光デバイス10では、0.27eV、発光デバイス11では、0.26eV、発光デバイス12では、0.26eVとなっている。また、本実施例で説明する発光デバイスのデバイス構造は図15に示す通りであり、作製方法は、実施例2と同様である。
【0294】
本実施例で各発光デバイスに用いる材料の化学式を以下に示す。また、各発光デバイスの具体的な構成を以下の表12に示す。
【0295】
【化10】
【0296】
【表12】
【0297】
≪発光デバイスの動作特性≫
作製した各発光デバイスの動作特性について測定した。なお、測定は室温(25℃に保たれた雰囲気)で行った。また、各発光デバイスの動作特性の結果として電流密度-輝度特性を図40、電圧-輝度特性を図41、輝度-電流効率特性を図42、電圧-電流特性を図43、輝度-電力効率特性を図44、輝度-外部量子効率特性を図45にそれぞれ示す。
【0298】
また、1000cd/m付近における各発光デバイスの主な初期特性値を以下の表13に示す。
【0299】
【表13】
【0300】
また、各発光デバイスが輝度1000cd/mを出すための電圧を印加した際の発光スペクトルを、図46に示す。図46に示す通り、各発光デバイスの発光スペクトルは、いずれも459nm付近にピークを有しており、発光層913に含まれる、3,10PCA2Nbf(IV)-02の発光に由来していることが示唆される。
【0301】
図40乃至図45及び表13に示す結果より、発光層913にホスト材料としてαN-βNPAnthを用い、電子輸送層914に電子輸送性材料として表12に示す電子輸送性材料を用いた本発明の一態様である、発光デバイス8、発光デバイス9、発光デバイス10、発光デバイス11、及び発光デバイス12は、いずれも電流-電圧特性、パワー効率、および発光効率の良好な発光デバイスであることがわかった。
【0302】
また、各素子を一定電流密度(50mA/cm)で駆動させたときの駆動時間に対する輝度の変化を表すグラフを図47に示す。図47で示すように、本発明一態様である発光デバイス8、発光デバイス9、発光デバイス10、発光デバイス11、及び発光デバイス12は、駆動時間の蓄積に伴う輝度低下が小さく、寿命の良好な発光デバイスであることがわかった。これは、発光層913にホスト材料として用いたαN-βNPAnthと、電子輸送層914に電子輸送性材料として用いた材料とのLUMO準位の差が、0.20eVから0.27eVといずれも非常に大きく、発光層913と電子輸送層914との積層界面の電子注入障壁が大きくなるために陰極側から発光層に注入された電子が正孔輸送層に到達することを抑制し、電子の注入に伴う正孔輸送層の劣化が抑えられたことに起因する結果であるといえる。なお、駆動時間の蓄積に伴う輝度変化は、輝度が初期値よりも大きくなる挙動が見られている。これは前述したとおり、今回の発光素子では電子輸送性の遅い電子輸送材料を用いることで、初期の駆動状態においてはキャリアの再結合する領域が電子輸送層内部にまで広がっているためである。駆動時間が蓄積されるとキャリアの再結合領域のうち、電子輸送層に広がっていた範囲が減少し、相対的に発光効率が増加し、輝度上昇につながっているものと考える。
【実施例0303】
≪合成例1≫
本実施例では、実施の形態1に示す有機化合物、2-フェニル-3-{4-[4-(3-ピリジル)-1-ナフチル]フェニル}キノキサリン(略称:PyN1PQ)(構造式(300))の合成方法について説明する。なお、PyN1PQの構造を以下に示す。
【0304】
【化11】
【0305】
3-(4-ブロモナフタレン-1-イル)ピリジン1.8g(6.2mmol)と4-(3-フェニルキノキサリン‐2-イル)フェニルボロン酸2.2g(6.8mmol)、トリ(o-トリル)ホスフィン0.19g(0.62mmol)、炭酸カリウム1.7g(6.0mmol)を加えフラスコ内を窒素置換した。この混合物にトルエン60mLとエタノール12mLと水6mLを加え、減圧下で撹拌することにより脱気した。この混合物に酢酸パラジウム(II)28mg(0.12mmol)を加え、窒素気流下、80℃で6時間撹拌した。
【0306】
所定時間経過後、この混合物に水を加え、水層をトルエンで抽出した。得られた抽出溶液と有機層を合わせ、水、飽和食塩水で洗浄し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた。この混合物を自然ろ過し、ろ液を濃縮して固体を3.5g得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:トルエン/酢酸エチル=9/1)により精製し、目的物の薄黄色固体を2.6g得た。得られた固体にメタノールを加え、超音波を照射後、固体を回収した。得られた固体をトルエン、メタノールの混合溶媒にて再結晶したところ、目的物の白色固体を2.1g(4.4mmol)、収率71%で得た。合成スキームを下記式(a-1)に示す。
【0307】
【化12】
【0308】
得られた白色固体2.1gをトレインサブリメーション法により昇華精製した。昇華精製は圧力3.6Pa、アルゴン流量5mL/minの条件で245℃に加熱して行った。昇華精製後、目的物である白色固体を2.0g、回収率94%で得た。
【0309】
なお、上記合成方法で得られた白色固体の核磁気共鳴分光法(H-NMR)による分析結果を下記に示す。また、H-NMRチャートを図48に示す。この結果から、本実施例において、上述の構造式(300)で表される有機化合物、PyN1PQが得られたことがわかった。
【0310】
H NMR(CDCl3,300MHz):δ=7.39-7.56(m,10H),7.62-7.72(m,4H),7.78-7.90(m,4H),7.96-8.03(m,1H)8.19-8.27(m,2H),8.71(dd,J=1.5Hz,4.8Hz,1H),8.80(dd,J=1.1Hz,2.2Hz,1H)。
【実施例0311】
≪合成例2≫
本実施例では、実施の形態1に示す有機化合物、2-フェニル-3-{4-[5-(3-ピリジル)-1-ナフチル]フェニル}キノキサリン(略称:PyN1PQ-02)(構造式(301))の合成方法について説明する。なお、PyN1PQ-02の構造を以下に示す。
【0312】
【化13】
【0313】
<ステップ1:3-(5-クロロナフタレン-1-イル)ピリジンの合成>
500mL三口フラスコ内に1-ブロモ-5-クロロナフタレン5.0g(21mmol)、3-ピリジンボロン酸2.5g(21mmol)、および炭酸カリウム11g(83mmol)を加え、フラスコ内を窒素置換した。この混合物にTHF200mLと水40mLを加え、減圧下で撹拌することにより脱気した。
【0314】
この混合物にトリ-tert-ブチルホスホニウムテトラフルオロボラート0.18g(0.62mmol)、およびトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0) 0.19g(0.21mmol)を加え、この溶液を80℃で2時間撹拌した。所定時間経過後、この混合物に水を加えて水層をトルエンで抽出し、得られた抽出溶液と有機層を合わせて、水、飽和食塩水で洗浄し、有機層を硫酸マグネシウムにより乾燥させた。次に、この混合物を自然濾過により濾別し、濾液を濃縮した。得られた固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 トルエン:酢酸エチル=2:1)により精製し、目的物の橙色固体を4.7g(20mmol)、収率94%で得た。ステップ1の合成スキームを下記式(b-1)に示す。
【0315】
【化14】
【0316】
<ステップ2:PyN1PQ-02の合成>
次に、ステップ1で得られた、3-(5-クロロナフタレン-1-イル)ピリジン1.3g(5.3mmol)、4-(3-フェニルキノキサリン-2-イル)フェニルボロン酸1.9g(5.9mmol)、リン酸カリウム3.4g(16mmol)、およびtert-ブチルアルコール1.2g(16mmol)を加え、フラスコ内を窒素置換した。
【0317】
この混合物にジグリム55mLを加え、減圧下で撹拌することにより脱気した。この混合物に、ジ(1-アダマンチル)-n-ブチルホスフィン0.19g(0.53mmol)と酢酸パラジウム(II)60mg(0.27mmol)を加え、窒素気流下、140℃で6時間撹拌した。
【0318】
所定時間経過後、この混合物に水を加え、水層をトルエンで抽出した。得られた抽出溶液と有機層を合わせ、水、飽和食塩水で洗浄し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた。この混合物を自然ろ過し、ろ液を濃縮して固体を得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 トルエン:酢酸エチル=9:1)により精製し、目的物の薄黄色固体を2.1g得た。得られた固体をトルエン、メタノールの混合溶媒にて再結晶したところ、目的物の白色固体を1.6g(3.4mmol)、収率63%で得た。ステップ2の合成スキームを下記式(b-2)に示す。
【0319】
【化15】
【0320】
得られた白色固体1.4gをトレインサブリメーション法により昇華精製した。昇華精製は圧力3.3Pa、アルゴン流量5mL/minの条件で235℃に加熱して行った。昇華精製後、白色固体を1.3g、回収率90%で得た。
【0321】
なお、上記ステップ2で得られた白色固体の核磁気共鳴分光法(H-NMR)による分析結果を下記に示す。また、H-NMRチャートを図49に示す。この結果から、本実施例において、上述の構造式(301)で表される有機化合物、PyN1PQ-02が得られたことがわかった。
【0322】
H NMR(CDCl3,300MHz):δ=7.40-7.55(m,10H),7.61-7.71(m,4H),7.78-7.88(m,4H),7.94-8.00(m,1H),8.19-8.27(m,2H),8.71(dd,J=1.8Hz,4.8Hz,1H),8.78(dd,J=1.1Hz,2.2Hz,1H)。
【符号の説明】
【0323】
101:第1の電極、102:第2の電極、103:EL層、111:正孔注入層、112:正孔輸送層、113:発光層、114:電子輸送層、114-1:第1の電子輸送層、114-2:第2の電子輸送層、115:電子注入層、103a、103b:EL層、104:電荷発生層、111a、111b:正孔注入層、112a、112b:正孔輸送層、113a、113b:発光層、114a、114b:電子輸送層、115a、115b:電子注入層、200R、200G、200B:光学距離、201:第1の基板、202:トランジスタ(FET)、203R、203G、203B、203W:発光デバイス、204:EL層、205:第2の基板、206R、206G、206B:カラーフィルタ、206R’、206G’、206B’:カラーフィルタ、207:第1の電極、208:第2の電極、209:黒色層(ブラックマトリックス)、210R、210G:導電層、301:第1の基板、302:画素部、303:駆動回路部(ソース線駆動回路)、304a、304b:駆動回路部(ゲート線駆動回路)、305:シール材、306:第2の基板、307:引き回し配線、308:FPC、309:FET、310:FET、311:FET、312:FET、313:第1の電極、314:絶縁物、315:EL層、316:第2の電極、317:発光デバイス、318:空間、900:基板、901:第1の電極、902:EL層、903:第2の電極、911:正孔注入層、912:正孔輸送層、913:発光層、914:電子輸送層、915:電子注入層、1001:第1の電極、1002:第2の電極、1010:第1の層、1011:第2の層、1012:第3の層、4000:照明装置、4001:基板、4002:発光デバイス、4003:基板、4004:第1の電極、4005:EL層、4006:第2の電極、4007:電極、4008:電極、4009:補助配線、4010:絶縁層、4011:封止基板、4012:シール材、4013:乾燥剤、4015:拡散板、4200:照明装置、4201:基板、4202:発光デバイス、4204:第1の電極、4205:EL層、4206:第2の電極、4207:電極、4208:電極、4209:補助配線、4210:絶縁層、4211:封止基板、4212:シール材、4213:バリア膜、4214:平坦化膜、4215:拡散板、5101:ライト、5102:ホイール、5103:ドア、5104:表示部、5105:ハンドル、5106:シフトレバー、5107:座席シート、5108:インナーリアビューミラー、5109:フロントガラス、7000:筐体、7001:表示部、7002:第2表示部、7003:スピーカ、7004:LEDランプ、7005:操作キー、7006:接続端子、7007:センサ、7008:マイクロフォン、7009:スイッチ、7010:赤外線ポート、7011:記録媒体読込部、7012:支持部、7013:イヤホン、7014:アンテナ、7015:シャッターボタン、7016:受像部、7018:スタンド、7020:カメラ、7021:外部接続部、7022、7023:操作用ボタン、7024:接続端子、7025:バンド、7026:マイクロフォン、7027:時刻を表すアイコン、7028:その他のアイコン、7029:センサ、7030:スピーカ、7052、7053、7054:情報、9310:携帯情報端末、9311:表示部、9312:表示領域、9313:ヒンジ、9315:筐体
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