(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138046
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】媒体搬送装置、制御方法及び制御プログラム
(51)【国際特許分類】
B65H 7/12 20060101AFI20240927BHJP
H04N 1/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
B65H7/12
H04N1/00 L
H04N1/00 567J
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024114932
(22)【出願日】2024-07-18
(62)【分割の表示】P 2021024578の分割
【原出願日】2021-02-18
(71)【出願人】
【識別番号】000136136
【氏名又は名称】株式会社PFU
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100180806
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(72)【発明者】
【氏名】堺 雅晃
(57)【要約】
【課題】媒体の重送が発生したか否かをより高精度に判定することが可能な媒体搬送装置、制御方法及び制御プログラムを提供する。
【解決手段】媒体搬送装置は、媒体を搬送する搬送部と、搬送される媒体の複数の位置において当該媒体を透過する超音波の透過情報又は当該媒体の厚さ情報を検出する検出部と、搬送される媒体において透過情報又は厚さ情報が所定範囲内である領域のサイズを算出する算出部と、透過情報又は厚さ情報に基づく値と閾値とを比較することにより、媒体の重送が発生したか否かを判定する判定部と、媒体の重送が発生したと判定された場合に異常処理を実行する制御部と、を有し、判定部は、サイズに応じて、閾値を変更する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体を搬送する搬送部と、
搬送される媒体の複数の位置において当該媒体を透過する超音波の透過情報又は当該媒体の厚さ情報を検出する検出部と、
搬送される媒体において前記透過情報又は前記厚さ情報が所定範囲内である領域のサイズを算出する算出部と、
前記透過情報又は前記厚さ情報に基づく値と閾値とを比較することにより、媒体の重送が発生したか否かを判定する判定部と、を有し、
前記判定部は、前記サイズに応じて、前記閾値を変更する、
ことを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項2】
前記算出部は、前記検出部が前記透過情報又は前記厚さ情報を検出するたびに、前記サイズを更新し、
前記判定部は、
前記検出部が前記透過情報又は前記厚さ情報を検出するたびに、前記透過情報又は前記厚さ情報に基づく値と前記閾値とを比較し、
前記更新されたサイズがサイズ閾値以上になったときに、前記閾値を変更する、請求項1に記載の媒体搬送装置。
【請求項3】
前記算出部は、前記検出部による前記透過情報又は前記厚さ情報の検出が完了した後に、前記サイズを算出し、
前記判定部は、
前記サイズに基づいて、前記閾値を決定し、
前記複数の位置において検出された前記透過情報又は前記厚さ情報に基づく値と前記決定した閾値とを比較する、請求項1に記載の媒体搬送装置。
【請求項4】
前記判定部は、前記サイズがサイズ閾値未満であり、且つ、前記透過情報に基づく値が前記閾値以上又は前記厚さ情報に基づく値が前記閾値以下である場合、搬送される媒体に貼付物が貼付されているとみなして、媒体の重送が発生していないと判定する、請求項1~3の何れか一項に記載の媒体搬送装置。
【請求項5】
利用者から、前記判定部による媒体の重送の判定結果が正しかったか否かを示す結果情報を受け付ける受付部をさらに有し、
前記判定部は、前記結果情報に基づいて、前記閾値を補正する、請求項1~4の何れか一項に記載の媒体搬送装置。
【請求項6】
前記判定部は、前記サイズがサイズ閾値以上であるか否かによって、前記閾値を変更し、
利用者から、前記判定部による媒体の重送の判定結果が正しかったか否かを示す結果情報を受け付ける受付部をさらに有し、
前記判定部は、前記結果情報に基づいて、前記サイズ閾値を補正する、請求項1~4の何れか一項に記載の媒体搬送装置。
【請求項7】
媒体の重送が発生したと判定された場合に異常処理を実行する制御部をさらに有する、請求項1~6の何れか一項に記載の媒体搬送装置。
【請求項8】
媒体を搬送する搬送部を有する媒体搬送装置の制御方法であって、
搬送される媒体の複数の位置において当該媒体を透過する超音波の透過情報又は当該媒体の厚さ情報を検出し、
搬送される媒体において前記透過情報又は前記厚さ情報が所定範囲内である領域のサイズを算出し、
前記透過情報又は前記厚さ情報に基づく値と閾値とを比較することにより、媒体の重送が発生したか否かを判定することを含み、
前記判定において、前記サイズに応じて、前記閾値を変更する、
ことを特徴とする制御方法。
【請求項9】
媒体を搬送する搬送部を有する媒体搬送装置の制御プログラムであって、
搬送される媒体の複数の位置において当該媒体を透過する超音波の透過情報又は当該媒体の厚さ情報を検出し、
搬送される媒体において前記透過情報又は前記厚さ情報が所定範囲内である領域のサイズを算出し、
前記透過情報又は前記厚さ情報に基づく値と閾値とを比較することにより、媒体の重送が発生したか否かを判定することを前記媒体搬送装置に実行させ、
前記判定において、前記サイズに応じて、前記閾値を変更する、
ことを特徴とする制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体搬送装置に関し、特に、媒体の重送が発生したか否かを判定する媒体搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、スキャナ等の媒体搬送装置は、複数の媒体が重なって搬送される重送が発生したか否かを検出し、重送が発生した際には媒体の搬送を自動的に停止する機能を有している。しかしながら、履歴書のような写真が貼付された媒体が搬送された場合にも、媒体搬送装置は、重送が発生したと判定してしまい、搬送を停止させる可能性がある。そのため、利用者は、写真が貼付された媒体をスキャンさせる際には、重送の検出機能をOFFに設定してから媒体を搬送させる必要があり、利用者の利便性が損なわれていた。
【0003】
原稿を搬送するための搬送ローラと搬送ローラに所定の付勢力で圧接されるとともに原稿厚さに応じて変位可能な従動ローラとを有する重送検知装置が開示されている(特許文献1を参照)。この重送検知装置は、両ローラ間を原稿が通過する間に検出した従動ローラの変位量の増加時間が所定時間よりも短い場合は重送判定を禁止するよう制御する。
【0004】
処理する物品を受け取り、物品の重送を検出する方法が開示されている(特許文献2を参照)。この方法では、物品の重送の重なり位置が許容範囲内であるか否かが判定され、その位置が所定の重なり基準内である場合、物品の処理は継続され、その位置が所定の重なり基準内でない場合、物品の処理は中止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7-291485号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2005/0228535号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
媒体搬送装置では、媒体の重送が発生したか否かをより高精度に判定することが望まれている。
【0007】
本発明の目的は、媒体の重送が発生したか否かをより高精度に判定することが可能な媒体搬送装置、制御方法及び制御プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面に係る媒体搬送装置は、媒体を搬送する搬送部と、搬送される媒体の複数の位置において当該媒体を透過する超音波の透過情報又は当該媒体の厚さ情報を検出する検出部と、搬送される媒体において透過情報又は厚さ情報が所定範囲内である領域のサイズを算出する算出部と、透過情報又は厚さ情報に基づく値と閾値とを比較することにより、媒体の重送が発生したか否かを判定する判定部と、媒体の重送が発生したと判定された場合に異常処理を実行する制御部と、を有し、判定部は、サイズに応じて、閾値を変更する。
【0009】
また、本発明の一側面に係る制御方法は、媒体を搬送する搬送部を有する媒体搬送装置の制御方法であって、搬送される媒体の複数の位置において当該媒体を透過する超音波の透過情報又は当該媒体の厚さ情報を検出し、搬送される媒体において透過情報又は厚さ情報が所定範囲内である領域のサイズを算出し、透過情報又は厚さ情報に基づく値と閾値とを比較することにより、媒体の重送が発生したか否かを判定し、媒体の重送が発生したと判定された場合に異常処理を実行することを含み、判定において、サイズに応じて、閾値を変更する。
【0010】
また、本発明の一側面に係る制御プログラムは、媒体を搬送する搬送部を有する媒体搬送装置の制御プログラムであって、搬送される媒体の複数の位置において当該媒体を透過する超音波の透過情報又は当該媒体の厚さ情報を検出し、搬送される媒体において透過情報又は厚さ情報が所定範囲内である領域のサイズを算出し、透過情報又は厚さ情報に基づく値と閾値とを比較することにより、媒体の重送が発生したか否かを判定し、媒体の重送が発生したと判定された場合に異常処理を実行することを媒体搬送装置に実行させ、判定において、サイズに応じて、閾値を変更する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、媒体搬送装置、制御方法及び制御プログラムは、媒体の重送が発生したか否かをより高精度に判定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態に係る媒体搬送装置100を示す斜視図である。
【
図2】媒体搬送装置100内部の搬送経路を説明するための図である。
【
図3】媒体搬送装置100の概略構成を示すブロック図である。
【
図4】記憶装置140及び処理回路150の概略構成を示す図である。
【
図5】媒体読取処理の動作の例を示すフローチャートである。
【
図6】重送判定処理の動作の例を示すフローチャートである。
【
図7A】技術的意義について説明するための模式図である。
【
図7B】技術的意義について説明するための模式図である。
【
図7C】技術的意義について説明するための模式図である。
【
図8】他の重送判定処理の動作の例を示すフローチャートである。
【
図9】他の媒体搬送装置200内部の搬送経路を説明するための図である。
【
図10A】技術的意義について説明するための模式図である。
【
図10B】技術的意義について説明するための模式図である。
【
図10C】技術的意義について説明するための模式図である。
【
図11】他の媒体搬送装置における処理回路350の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一側面に係る媒体搬送装置、制御方法及び制御プログラムについて図を参照しつつ説明する。但し、本発明の技術的範囲はそれらの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0014】
図1は、イメージスキャナとして構成された媒体搬送装置100を示す斜視図である。媒体搬送装置100は、原稿である媒体を搬送し、撮像する。媒体は、用紙、厚紙又はカード等である。また、媒体は、ラベル(シール)又は小型紙片(写真、切り抜き、切手、印紙等)等の貼付物が貼付された媒体を含む。媒体搬送装置100は、ファクシミリ、複写機、プリンタ複合機(MFP、Multifunction Peripheral)等でもよい。なお、搬送される媒体は、原稿でなく印刷対象物等でもよく、媒体搬送装置100はプリンタ等でもよい。
【0015】
媒体搬送装置100は、第1筐体101、第2筐体102、載置台103、排出台104、操作装置105及び表示装置106等を備える。
【0016】
第1筐体101は、媒体搬送装置100の上側に配置され、媒体つまり時、媒体搬送装置100内部の清掃時等に開閉可能なようにヒンジにより第2筐体102に係合している。
【0017】
載置台103は、搬送される媒体を載置可能に第2筐体102に係合している。載置台103は、第2筐体102の媒体供給側の側面に、不図示のモータによって略鉛直方向(高さ方向)A1に移動可能に設けられる。載置台103は、媒体を搬送していないときは媒体が容易に載置されるように下端の位置に配置され、媒体を搬送するときは最も上側に載置された媒体が後述するピックローラと接触する位置まで上昇する。排出台104は、排出された媒体を保持可能に第1筐体101上に形成され、排出された媒体を積載する。
【0018】
操作装置105は、ボタン等の入力デバイス及び入力デバイスから信号を取得するインタフェース回路を有し、利用者による入力操作を受け付け、利用者の入力操作に応じた操作信号を出力する。表示装置106は、液晶、有機EL(Electro-Luminescence)等を含むディスプレイ及びディスプレイに画像データを出力するインタフェース回路を有し、画像データをディスプレイに表示する。
【0019】
図1において矢印A2は媒体搬送方向を示し、矢印A3は媒体排出方向を示し、矢印A4は媒体搬送方向と直交する幅方向を示す。以下では、上流とは媒体搬送方向A2又は媒体排出方向A3の上流のことをいい、下流とは媒体搬送方向A2又は媒体排出方向A3の下流のことをいう。
【0020】
図2は、媒体搬送装置100内部の搬送経路を説明するための図である。
【0021】
媒体搬送装置100内部の搬送経路は、第1媒体センサ111、ピックローラ112、給送ローラ113、ブレーキローラ114、第2媒体センサ115、超音波発信器116a、超音波受信器116b、第1~第8搬送ローラ117a~h、第1~第8従動ローラ118a~h、第1撮像装置119a及び第2撮像装置119b等を有している。
【0022】
ピックローラ112、給送ローラ113、ブレーキローラ114、第1~第8搬送ローラ117a~h及び第1~第8従動ローラ118a~hは、媒体を搬送する搬送部の一例である。なお、ピックローラ112、給送ローラ113、ブレーキローラ114、第1~第8搬送ローラ117a~h及び/又は第1~第8従動ローラ118a~hのそれぞれの数は一つに限定されず、複数でもよい。その場合、複数のピックローラ112、給送ローラ113、ブレーキローラ114、第1~第8搬送ローラ117a~h及び/又は第1~第8従動ローラ118a~hは、それぞれ幅方向A4に間隔を空けて並べて配置される。以下では、第1撮像装置119a及び第2撮像装置119bをまとめて撮像装置119と称する場合がある。
【0023】
第1筐体101の、第2筐体102と対向する面は媒体の搬送路の第1ガイド101aを形成し、第2筐体102の、第1筐体101と対向する面は媒体の搬送路の第2ガイド102aを形成する。
【0024】
第1媒体センサ111は、載置台103に、即ち給送ローラ113及びブレーキローラ114より上流側に配置され、載置台103における媒体の載置状態を検出する。第1媒体センサ111は、媒体が接触している場合、又は、媒体が接触していない場合に所定の電流を流す接触検知センサにより、載置台103に媒体が載置されているか否かを判別する。第1媒体センサ111は、載置台103に媒体が載置されている状態と載置されていない状態とで信号値が変化する第1媒体信号を生成して出力する。なお、第1媒体センサ111は接触検知センサに限定されず、第1媒体センサ111として、光検知センサ等の、媒体の有無を検出可能な他の任意のセンサが使用されてもよい。
【0025】
ピックローラ112は、第1筐体101に設けられ、媒体搬送路と略同一の高さまで上昇した載置台103に載置された媒体と接触して、その媒体を下流側に向けて給送する。
【0026】
給送ローラ113は、第1筐体101内に、ピックローラ112より下流側に設けられ、載置台103に載置されてピックローラ112により給送された媒体をさらに下流側に向けて給送する。ブレーキローラ114は、第2筐体102内に、給送ローラ113と対向して配置される。給送ローラ113及びブレーキローラ114は、媒体の分離動作を行い、媒体を分離して一枚ずつ給送する。給送ローラ113は、ブレーキローラ114に対して上側に配置されており、媒体搬送装置100は、いわゆる上取り方式により媒体を給送する。
【0027】
第2媒体センサ115は、給送ローラ113及びブレーキローラ114より下流側且つ超音波発信器116a及び超音波受信器116bより上流側に配置される。第2媒体センサ115は、その位置に媒体が存在するか否かを検出する。第2媒体センサ115は、媒体の搬送路に対して一方の側に設けられた発光器及び受光器と、搬送路を挟んで発光器及び受光器と対向する位置に設けられたミラー等の反射部材とを含む。発光器は、搬送路に向けて光を照射する。一方、受光器は、発光器により照射され、反射部材により反射された光を受光し、受光した光の強度に応じた電気信号である第2媒体信号を生成して出力する。第2媒体センサ115の位置に媒体が存在する場合、発光器により照射された光はその媒体により遮光されるため、第2媒体センサ115の位置に媒体が存在する状態と存在しない状態とで第2媒体信号の信号値は変化する。なお、発光器及び受光器は、搬送路を挟んで相互に対向する位置に設けられ、反射部材は省略されてもよい。
【0028】
超音波発信器116a及び超音波受信器116bは、給送ローラ113及びブレーキローラ114より下流側且つ第1~第8搬送ローラ117a~h及び第1~第8従動ローラ118a~hより上流側に配置される。超音波発信器116a及び超音波受信器116bは、媒体の搬送路の近傍に、搬送路を挟んで対向して配置される。超音波発信器116aは、超音波を発信する。一方、超音波受信器116bは、超音波発信器116aにより発信され、媒体を通過した超音波を受信し、受信した超音波に応じた電気信号である超音波信号を生成して出力する。超音波信号は、搬送部により搬送される媒体内の複数の位置においてその媒体を透過する超音波の透過情報を示す。透過情報は、超音波受信器116bが受信した超音波の大きさを示す。以下では、超音波発信器116a及び超音波受信器116bを総じて超音波センサ116と称する場合がある。なお、超音波センサ116の数は一つに限定されず、複数でもよい。その場合、複数の超音波センサ116は、幅方向A4に間隔を空けて並べて配置される。
【0029】
第1~第8搬送ローラ117a~h及び第1~第8従動ローラ118a~hは、給送ローラ113及びブレーキローラ114より下流側に設けられ、給送ローラ113及びブレーキローラ114により給送された媒体を下流側に向けて搬送する。第1~第8搬送ローラ117a~h及び第1~第8従動ローラ118a~hは、それぞれ媒体搬送路を挟んで相互に対向して配置される。
【0030】
第1撮像装置119aは、撮像部の一例であり、媒体搬送方向A2において第1搬送ローラ117a及び第1従動ローラ118aより下流側、即ち超音波センサ116より下流側に設けられる。第1撮像装置119aは、主走査方向に直線状に配列されたCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)による撮像素子を有する等倍光学系タイプのCIS(Contact Image Sensor)によるラインセンサを有する。また、第1撮像装置119aは、撮像素子上に像を結ぶレンズと、撮像素子から出力された電気信号を増幅し、アナログ/デジタル(A/D)変換するA/D変換器とを有する。第1撮像装置119aは、搬送される媒体の表面を撮像して入力画像を生成し、出力する。
【0031】
同様に、第2撮像装置119bは、撮像部の一例であり、媒体搬送方向A2において第1搬送ローラ117a及び第1従動ローラ118aより下流側に設けられる。第2撮像装置119bは、主走査方向に直線状に配列されたCMOSによる撮像素子を有する等倍光学系タイプのCISによるラインセンサを有する。また、第2撮像装置119bは、撮像素子上に像を結ぶレンズと、撮像素子から出力された電気信号を増幅し、A/D変換するA/D変換器とを有する。第2撮像装置119bは、搬送される媒体の裏面を撮像して入力画像を生成し、出力する。
【0032】
媒体搬送装置100は、第1撮像装置119a及び第2撮像装置119bを一方だけ配置し、媒体の片面だけを読み取ってもよい。また、CMOSによる撮像素子を備える等倍光学系タイプのCISによるラインセンサの代わりに、CCD(Charge Coupled Device)による撮像素子を備える等倍光学系タイプのCISによるラインセンサが利用されてもよい。また、CMOS又はCCDによる撮像素子を備える縮小光学系タイプのラインセンサが利用されてもよい。
【0033】
載置台103に載置された媒体は、ピックローラ112、給送ローラ113がそれぞれ媒体給送方向A5、A6に回転することによって、第1ガイド101aと第2ガイド102aの間を媒体搬送方向A2に向かって搬送される。一方、ブレーキローラ114が媒体給送方向の反対方向A7に回転することによって、載置台103に複数の媒体が載置されている場合、載置台103に載置されている媒体のうち給送ローラ113と接触している媒体のみが分離される。
【0034】
媒体は、第1ガイド101aと第2ガイド102aによりガイドされながら、第1~第2搬送ローラ117a~bが矢印A8~A9の方向に回転することによって、撮像装置119の撮像位置に送り込まれ、撮像装置119によって撮像される。さらに、媒体は、第3~第8搬送ローラ117c~hがそれぞれ矢印A10~A15の方向に回転することによって排出台104上に排出される。排出台104は、第8搬送ローラ117hによって排出された媒体を積載する。
【0035】
図3は、媒体搬送装置100の概略構成を示すブロック図である。
【0036】
媒体搬送装置100は、前述した構成に加えて、モータ131、インタフェース装置132、記憶装置140及び処理回路150等をさらに有する。
【0037】
モータ131は、一又は複数のモータを含み、処理回路150からの制御信号によって、ピックローラ112、給送ローラ113、ブレーキローラ114及び第1~第8搬送ローラ117a~hを回転させて媒体を給送及び搬送させる。なお、第1~第8従動ローラ118a~hは、各搬送ローラの回転に従って従動回転するのでなく、モータからの駆動力によって回転するように設けられてもよい。
【0038】
インタフェース装置132は、例えばUSB等のシリアルバスに準じるインタフェース回路を有し、不図示の情報処理装置(例えば、パーソナルコンピュータ、携帯情報端末等)と電気的に接続して読取画像及び各種の情報を送受信する。また、インタフェース装置132の代わりに、無線信号を送受信するアンテナと、所定の通信プロトコルに従って、無線通信回線を通じて信号の送受信を行うための無線通信インタフェース回路とを有する通信部が用いられてもよい。所定の通信プロトコルは、例えば無線LAN(Local Area Network)である。
【0039】
記憶装置140は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等のメモリ装置、ハードディスク等の固定ディスク装置、又はフレキシブルディスク、光ディスク等の可搬用の記憶装置等を有する。また、記憶装置140には、媒体搬送装置100の各種処理に用いられるコンピュータプログラム、データベース、テーブル等が格納される。コンピュータプログラムは、コンピュータ読み取り可能な可搬型記録媒体から、公知のセットアッププログラム等を用いて記憶装置140にインストールされてもよい。可搬型記録媒体は、例えばCD-ROM(compact disc read only memory)、DVD-ROM(digital versatile disc read only memory)等である。
【0040】
処理回路150は、予め記憶装置140に記憶されているプログラムに基づいて動作する。処理回路150は、例えばCPU(Central Processing Unit)である。処理回路150として、DSP(digital signal processor)、LSI(large scale integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等が用いられてもよい。
【0041】
処理回路150は、操作装置105、表示装置106、第1媒体センサ111、第2媒体センサ115、超音波センサ116、撮像装置119、モータ131、インタフェース装置132及び記憶装置140等と接続され、これらの各部を制御する。処理回路150は、モータ131を制御して媒体を搬送し、撮像装置119を制御して入力画像を取得し、取得した入力画像を、インタフェース装置132を介して情報処理装置に送信する。また、処理回路150は、超音波センサ116から受信する超音波信号に基づいて媒体の重送が発生したか否かを判定する。特に、処理回路150は、超音波の大きさが所定範囲内である領域のサイズに応じて、超音波の大きさと比較するための重送閾値を変更する。重送閾値は、閾値の一例である。
【0042】
図4は、記憶装置140及び処理回路150の概略構成を示す図である。
【0043】
図4に示すように、記憶装置140には、制御プログラム141、検出プログラム142、算出プログラム143、判定プログラム144及び受付プログラム145等の各プログラムが記憶される。これらの各プログラムは、プロセッサ上で動作するソフトウェアにより実装される機能モジュールである。処理回路150は、記憶装置140に記憶された各プログラムを読み取り、読み取った各プログラムに従って動作することにより、制御部151、検出部152、算出部153、判定部154及び受付部155として機能する。
【0044】
図5は、媒体読取処理の動作の例を示すフローチャートである。
【0045】
以下、
図5に示したフローチャートを参照しつつ、媒体搬送装置100の媒体読取処理の動作の例を説明する。なお、以下に説明する動作のフローは、予め記憶装置140に記憶されているプログラムに基づき主に処理回路150により媒体搬送装置100の各要素と協働して実行される。
【0046】
最初に、制御部151は、利用者により操作装置105又は情報処理装置を用いて媒体の読み取りの指示が入力されて、媒体の読み取りを指示する操作信号を操作装置105又はインタフェース装置132から受信するまで待機する(ステップS101)。
【0047】
次に、制御部151は、第1媒体センサ111から媒体信号を取得し、取得した媒体信号に基づいて、載置台103に媒体が載置されているか否かを判定する(ステップS102)。載置台103に媒体が載置されていない場合、制御部151は、処理をステップS101へ戻し、操作装置105又はインタフェース装置132から新たに操作信号を受信するまで待機する。
【0048】
一方、載置台103に媒体が載置されている場合、制御部151は、載置台103を移動させるためのモータを駆動し、媒体を給送可能な位置に載置台103を移動させる。制御部151は、モータ131を駆動し、ピックローラ112、給送ローラ113、ブレーキローラ114及び第1~第8搬送ローラ117a~hを回転させ、載置台103に載置された媒体を給送及び搬送させる(ステップS103)。
【0049】
次に、制御部151は、媒体読取処理と並列に実行される重送判定処理において、媒体の重送が発生したと判定されたか否かを判定する(ステップS104)。重送判定処理において、判定部154は、超音波信号に基づく値と重送閾値とを比較することにより、媒体の重送が発生したか否かを判定する。また、判定部154は、搬送される媒体において超音波信号の信号値が所定範囲内である領域のサイズがサイズ閾値以上であるか否かによって、重送閾値を変更する。重送判定処理の詳細については後述する。
【0050】
重送判定処理において媒体の重送が発生したと判定された場合、制御部151は、異常処理を実行する(ステップS105)。制御部151は、異常処理として、モータ131を停止して、搬送部による媒体の給送及び搬送を停止する。また、制御部151は、異常処理として、媒体の重送が発生したことを示す情報を表示装置106に表示し又はインタフェース装置132を介して情報処理装置に送信することにより利用者に通知する。なお、制御部151は、異常処理として、現在搬送中の媒体を排出してから媒体読取処理を停止させてもよい。また、制御部151は、異常処理として、モータ131を駆動し、媒体を逆送させて載置台103に一旦戻してから再給送するように搬送部を制御してもよい。これにより、利用者は、媒体を載置台103に再載置して再給送する必要がなくなり、制御部151は、利用者の利便性を向上させることが可能となる。
【0051】
次に、受付部155は、利用者から、判定部154による媒体の重送の判定結果が正しかったか否かを示す結果情報を受け付ける(ステップS106)。受付部155は、利用者により操作装置105又は情報処理装置を用いて入力された結果情報を操作装置105又はインタフェース装置132から受信する。受付部155は、受け付けた結果情報を記憶装置140に記憶する。
【0052】
次に、判定部154は、結果情報に基づいて、重送判定処理における判定感度を補正し(ステップS107)、一連のステップを終了する。
【0053】
判定部154は、結果情報が媒体の重送の判定結果が誤っていたことを示す場合、判定感度を低くする。なお、判定部154は、判定感度が最後に更新された後に受け付けた二つ以上の結果情報に基づいて判定感度を補正してもよい。その場合、判定部154は、直近の所定回数の結果情報の中で、媒体の重送の判定結果が誤っていたことを示す結果情報の数又は割合が所定閾値を超える場合に、判定感度を低くする。これにより、媒体搬送装置100は、自装置が頻繁に搬送する種類の媒体に対して判定感度を適切に設定することが可能となる。
【0054】
例えば、判定部154は、判定感度として、重送閾値を補正する。その場合、判定部154は、結果情報が媒体の重送の判定結果が誤っていたことを示す場合に、重送閾値(後述する第1重送閾値及び/又は第2重送閾値)を小さくする。また、判定部154は、判定感度として、サイズ閾値を補正してもよい。その場合、判定部154は、結果情報が媒体の重送の判定結果が誤っていたことを示す場合に、サイズ閾値を大きくする。これらにより、媒体搬送装置100は、媒体の重送が発生したと誤って判定することを抑制できる。
【0055】
なお、判定部154は、結果情報が媒体の重送の判定結果が正しかったことを示す場合、判定感度を高くするように補正してもよい。但し、判定感度が高すぎると、頻繁に媒体の重送が発生したと誤って判定する可能性があるため、各判定感度には設定可能範囲が設けられてもよい。
【0056】
また、所定閾値は、利用者により設定されてもよい。これにより、媒体搬送装置100は、重送の発生を確実に検出すること、又は、媒体読取処理の処理時間を低減させることの何れを重視するかを、利用者の用途に応じて変更することが可能となり、利用者の利便性を向上させることが可能となる。また、媒体搬送装置100は、結果情報、又は、補正後の判定感度を他の媒体搬送装置に送信し、他の媒体搬送装置は、それらの情報に基づいて、自装置の判定感度を補正してもよい。これにより、媒体搬送装置100は、重送の判定結果を他の媒体搬送装置と共有して、媒体の重送の判定精度をより向上させることが可能となる。
【0057】
一方、ステップS104で、重送判定処理において媒体の重送が発生していないと判定された場合、制御部151は、媒体全体が撮像されたか否かを判定する(ステップS108)。制御部151は、例えば、第2媒体センサ115から受信する第2媒体信号に基づいて媒体の後端が第2媒体センサ115の位置を通過したか否かを判定する。制御部151は、第2媒体センサ115から定期的に第2媒体信号を取得し、第2媒体信号の信号値が、媒体が存在することを示す値から媒体が存在しないことを示す値に変化したときに、媒体の後端が第2媒体センサ115の位置を通過したと判定する。制御部151は、媒体の後端が第2媒体センサ115の位置を通過してから所定時間が経過した時に媒体の後端が撮像装置119の撮像位置を通過し、媒体全体が撮像されたと判定する。なお、制御部151は、媒体の給送を開始してから所定時間が経過した時に、搬送された媒体の全体が撮像されたと判定してもよい。
【0058】
まだ搬送された媒体の全体が撮像されていない場合、制御部151は、処理をステップS104へ戻し、ステップS104~S108の処理を繰り返す。
【0059】
一方、搬送された媒体の全体が撮像された場合、制御部151は、撮像装置119から入力画像を取得し、取得した入力画像をインタフェース装置132を介して情報処理装置に送信することにより出力する(ステップS109)。
【0060】
次に、制御部151は、第1媒体センサ111から受信する第1媒体信号に基づいて載置台103に媒体が残っているか否かを判定する(ステップS110)。載置台103に媒体が残っている場合、制御部151は、ステップS104へ処理を戻し、ステップS104~S110の処理を繰り返す。
【0061】
一方、載置台103に媒体が残っていない場合、制御部151は、モータ131を停止し、ピックローラ112、給送ローラ113、ブレーキローラ114及び第1~第8搬送ローラ117a~hを停止させる(ステップS111)。
【0062】
次に、受付部155は、ステップS106の処理と同様にして、利用者から、判定部154による媒体の重送の判定結果が正しかったか否かを示す結果情報を受け付ける(ステップS112)。受付部155は、受け付けた結果情報を記憶装置140に記憶する。
【0063】
次に、判定部154は、結果情報に基づいて、媒体内の各位置における判定感度を補正し(ステップS113)、一連のステップを終了する。
【0064】
判定部154は、結果情報が媒体の重送の判定結果が誤っていたことを示す場合、判定感度を高くする。なお、判定部154は、判定感度が最後に更新された後に受け付けた二つ以上の結果情報に基づいて判定感度を補正してもよい。その場合、判定部154は、直近の所定回数の結果情報の中で、媒体の重送の判定結果が誤っていたことを示す結果情報の数又は割合が所定閾値を超える場合に、判定感度を高くする。これにより、媒体搬送装置100は、自装置が頻繁に搬送する種類の媒体に対して判定感度を適切に設定することが可能となる。
【0065】
例えば、判定部154は、判定感度として、重送閾値を補正する。その場合、判定部154は、結果情報が媒体の重送の判定結果が誤っていたことを示す場合に、重送閾値を大きくする。また、判定部154は、判定感度として、サイズ閾値を補正してもよい。その場合、判定部154は、結果情報が媒体の重送の判定結果が誤っていたことを示す場合に、サイズ閾値を小さくする。これらにより、媒体搬送装置100は、重送が発生していたにも関わらず、媒体の重送が発生していないと判定することを抑制できる。
【0066】
なお、ステップS106~S107及びステップS112~S113の内の何れか一方又は両方は省略されてもよい。
【0067】
図6は、媒体搬送装置100の重送判定処理の動作の例を示すフローチャートである。
【0068】
以下、
図6に示したフローチャートを参照しつつ、媒体搬送装置100の重送判定処理の動作の例を説明する。なお、以下に説明する動作のフローは、予め記憶装置140に記憶されているプログラムに基づき主に処理回路150により媒体搬送装置100の各要素と協働して実行される。
図6に示す動作のフローは、媒体搬送中に実行される。
【0069】
最初に、検出部152は、超音波センサ116から超音波信号を受信する。検出部152は、受信した超音波信号に示される透過情報を、搬送部により搬送される媒体の複数の位置において、その媒体を透過する超音波の透過情報として検出し、現在時刻と関連付けて記憶装置140に記憶する(ステップS201)。
【0070】
次に、算出部153は、搬送される媒体内において、検出部152が検出した透過情報が所定範囲内である領域のサイズを、媒体の重なりが発生している重なりサイズとして算出する(ステップS202)。算出部153は、透過情報に基づく算出値が第1重送閾値未満である位置で媒体の重なりが発生しているとみなす。算出部153は、各透過情報が検出された前後の所定期間内に検出された透過情報の統計値(平均値、中央値、最大値又は最小値)を算出値として算出する。なお、算出部153は、各透過情報自体を算出値として使用してもよい。第1重送閾値は、例えば一枚のPPC(Plain Paper Copier)用紙が搬送された場合に検出される透過情報と、二枚のPPC用紙が搬送された場合に検出される透過情報との間の値に設定される。特に、第1重送閾値は、一枚のPPC用紙が搬送された場合に検出される透過情報と、二枚の薄紙が搬送された場合に検出される透過情報との間の値に設定される。算出部153は、最新の透過情報に基づく算出値が第1重送閾値以上である場合、重なりサイズを0に設定する。一方、算出部153は、最新の透過情報に基づく算出値が第1重送閾値未満である場合、記憶装置140に記憶された透過情報を参照し、算出値が第1重送閾値未満である状態が連続している、直近の連続時間に媒体の搬送速度を乗算した値を重なりサイズとして算出する。
【0071】
なお、超音波センサ116の数が複数である場合、算出部153は、超音波センサ116毎に、媒体搬送方向A2における重なりサイズを算出する。また、算出部153は、重なりサイズとして、媒体搬送方向A2において媒体の重なりが発生しているサイズに加えて又は代えて、幅方向A4においてサイズ媒体の重なりが発生しているサイズを算出してもよい。その場合、算出部153は、第1重送閾値未満である透過情報を出力した超音波センサ116の配置位置から幅方向A4における重なりサイズを算出する。
【0072】
次に、判定部154は、算出部153により算出された重なりサイズがサイズ閾値以上である否かを判定する(ステップS203)。サイズ閾値は、例えば一般的な履歴書に貼付される写真のサイズ、又は、切手もしくは印紙のサイズ等にマージンを加算した値(例えば50mm)に設定される。
【0073】
重なりサイズがサイズ閾値未満である場合、判定部154は、重送閾値を第2重送閾値に設定する(ステップS204)。第2重送閾値は、一枚のPPC用紙が搬送された場合に検出される透過情報と、二枚のPPC用紙が搬送された場合に検出される透過情報との間の値であり、且つ、第1重送閾値より小さい値に設定される。特に、第2重送閾値は、二枚の薄紙が搬送された場合に検出される透過情報と、二枚のPPC用紙が搬送された場合に検出される透過情報との間の値に設定される。
【0074】
一方、重なりサイズがサイズ閾値以上である場合、判定部154は、重送閾値を第2重送閾値から第1重送閾値に変更する(ステップS205)。
【0075】
このように、判定部154は、重なりサイズに応じて、重送閾値を変更する。特に、判定部154は、重なりサイズがサイズ閾値以上であるか否かによって、重送閾値を変更する。なお、判定部154は、重送閾値を三つ以上の値の何れかに設定してもよい。その場合、判定部154は、重なりサイズが大きいほど、重送閾値が大きくなるように重送閾値を変更する。これにより、判定部154は、よりフレキシブルに重送閾値を変更することができる。
【0076】
次に、判定部154は、透過情報に基づく算出値を算出し、算出値が重送閾値以上であるか否かを判定する(ステップS206)。判定部154は、記憶装置140から、直近の所定期間内に検出部152が検出した透過情報を読み出し、読み出した透過情報の統計値(平均値、中央値、最大値又は最小値)を算出値として算出する。なお、判定部154は、最新の透過情報自体を算出値として使用してもよい。
【0077】
算出値が重送閾値以上である場合、判定部154は、媒体の重送が発生していないと判定し(ステップS207)、処理をステップS201へ戻す。特に、判定部154は、算出値が第1重送閾値未満であっても、重なりサイズがサイズ閾値未満であり且つ算出値が重送閾値(第2重送閾値)以上である場合、搬送される媒体に貼付物が貼付されているとみなして媒体の重送が発生していないと判定する。これにより、判定部154は、小型サイズの媒体が貼付された媒体が搬送された場合に、媒体の重送が発生したと誤って判定することを抑制できる。
【0078】
一方、算出値が重送閾値未満である場合、判定部154は、媒体の重送が発生したと判定し(ステップS208)、処理をステップS201へ戻す。この場合、
図5のステップS104で重送が発生したと判定され、ステップS105で異常処理が実行される。
【0079】
このように、判定部154は、検出部152が検出した透過情報に基づく算出値と重送閾値とを比較することにより、媒体の重送が発生したか否かを判定する。特に、算出部153は、検出部152が透過情報を検出するたびに重なりサイズを更新する。判定部154は、検出部152が透過情報を検出するたびに、透過情報に基づく算出値と重送閾値とを比較し、更新された重なりサイズがサイズ閾値以上になったときに重送閾値を変更する。これにより、判定部154は、媒体搬送中にリアルタイムに媒体の重送が発生したか否かを判定し、媒体の重送が発生した場合に即時に媒体の搬送を停止することができる。したがって、媒体搬送装置100は、媒体の損傷の発生を抑制できる。
【0080】
なお、透過情報は、超音波受信器116bが受信した超音波の大きさでなく、超音波発信器116aが発信した超音波の位相に対する、超音波受信器116bが受信した超音波の位相のずれの大きさを示してもよい。媒体が重なっている場合は、媒体が重なっていない場合より、媒体を通過する超音波の位相のずれが大きくなる。そのため、透過情報として超音波の位相のずれの大きさが使用される場合、媒体搬送装置100は、重なりサイズが大きいほど、重送閾値が小さくなるように重送閾値を変更する。
【0081】
また、判定部154は、算出値が重送閾値未満である状態が所定時間以下である場合、外来雑音または貼付物内の気泡とみなして、この領域を重送判定の対象外としてもよい。これにより、判定部154は、重送判定におけるノイズの影響を低減させることができる。
【0082】
図7A、
図7B、
図7Cは、透過情報に基づいて媒体の重送が発生したか否かを判定する場合に、重なりサイズに応じて重送閾値を変更することの技術的意義について説明するための模式図である。
【0083】
図7A、
図7B、
図7Cは、透過情報(超音波の大きさ)の特性を示すグラフ700、710、720である。グラフ700、710、720の横軸は時間を示し、縦軸は透過情報を示す。グラフ700、710、720において値S1、値S2はそれぞれ第1重送閾値、第2重送閾値を示し、長さLはサイズ閾値を示す。
【0084】
グラフ700において、実線701はPPC用紙M1とPPC用紙M2が重なって搬送された時の透過情報の特性を示す。PPC用紙M1は、A4サイズ等の通常用紙であり、PPC用紙M2は、レシート又は名刺程度のサイズを有する小型用紙である。PPC用紙M1とPPC用紙M2が重なっている部分V1の長さはサイズ閾値Lより小さいが、PPC用紙M1とPPC用紙M2が重なっている部分V1における透過情報は第2重送閾値S2より小さい。したがって、PPC用紙M2の先端がPPC用紙M1と重なって超音波センサ116の位置を通過した時刻T1において、媒体の重送が発生したと正しく判定される。
【0085】
グラフ710において、実線711は薄紙M3と薄紙M4が重なって搬送された時の透過情報の特性を示す。薄紙M3及び薄紙M4は、A4サイズ等の通常用紙である。薄紙M3及び薄紙M4を透過する超音波の減衰量は、PPC用紙M1及びPPC用紙M2を透過する超音波の減衰量より小さい。そのため、薄紙M3と薄紙M4が重なっている部分V2における透過情報は、PPC用紙M1とPPC用紙M2が重なっている部分V1における透過情報より大きく、第1重送閾値S1と第2重送閾値S2の間の値を有している。一方、薄紙M3と薄紙M4が重なっている部分V2の長さはサイズ閾値L以上である。したがって、薄紙M4の先端が薄紙M3と重なって超音波センサ116の位置を通過した時刻T2では媒体の重送が発生したと判定されない。但し、その後、サイズ閾値L分だけ媒体が搬送された時刻T3において、重送閾値が第1重送閾値S1に変更されて、媒体の重送が発生したと正しく判定される。
【0086】
グラフ720において、実線721は貼付物Pが貼付されたPPC用紙M5が搬送された時の透過情報の特性を示す。PPC用紙M5は、A4サイズ等の通常用紙であり、貼付物Pは印紙等の小型媒体である。貼付物PがPPC用紙M5に貼付されている場合、PPC用紙M5と貼付物Pの間には空気層が存在しないため、貼付物PがPPC用紙M5に貼付されずに重なっている場合と比較して、超音波の減衰量は小さくなる。そのため、PPC用紙M5に貼付物Pが貼付されている部分V3における透過情報は、PPC用紙M1とPPC用紙M2が重なっている部分V1における透過情報より大きく、第1重送閾値S1と第2重送閾値S2の間の値を有している。したがって、PPC用紙M5の貼付物Pが貼付された部分が超音波センサ116の位置を通過した時刻T4では媒体の重送が発生したと判定されない。また、PPC用紙M5上で貼付物Pが貼付された部分V3の長さはサイズ閾値L未満であるため、重送閾値は第2重送閾値S2から変化しない。したがって、小型媒体が貼付された媒体が搬送された場合、媒体の重送が発生したと判定されない。
【0087】
図7A~
図7Cに示すように、二枚のPPC用紙を透過する超音波の大きさと、二枚の薄紙、又は、PPC用紙内で貼付物が貼付されている部分を透過する超音波の大きさとの差は十分に大きいため、第2重送閾値S2は適切に設定される。同様に、一枚のPPC用紙を透過する超音波の大きさと、二枚の薄紙、又は、PPC用紙内で貼付物が貼付されている部分を透過する超音波の大きさとの差は十分に大きいため、第1重送閾値S1は適切に設定される。しかしながら、
図7B及び
図7Cに示すように、二枚の薄紙を透過する超音波の大きさと、PPC用紙内で貼付物が貼付されている部分を透過する超音波の大きさとの差は近似するため、その間に適切な閾値を設定することは困難である。判定部154は、重なりサイズの大きさを利用することにより、薄紙の重送と、貼付物が貼付されている媒体とを適切に判別することができる。
【0088】
以上詳述したように、媒体搬送装置100は、搬送される媒体内の複数の位置で検出した超音波の透過情報に基づいて媒体の重送が発生したか否かを判定し、媒体内の重なり領域のサイズに応じて判定閾値を変更する。これにより、媒体搬送装置100は、媒体の重送が発生したか否かをより高精度に判定することが可能となった。
【0089】
特に、媒体搬送装置100は、貼付物が貼付された媒体が搬送された場合に、重送が発生したと誤って判定し、媒体の搬送を停止させてしまうことを抑制することが可能となった。これにより、媒体搬送装置100は、媒体読取処理にかかるトータル時間の増大を抑制することが可能となった。また、利用者は、媒体を載置台103に再載置して再搬送させる必要がなくなり、媒体搬送装置100は、利用者の利便性を向上させることが可能となった。
【0090】
一般に、媒体に貼付されるラベル又は小型紙片等のサイズは、媒体自体のサイズより十分に小さい。そのため、媒体搬送装置100は、重なりサイズの大きさを利用することにより、薄紙の重送と、貼付物が貼付されている媒体とを適切に判別することができる。
【0091】
また、媒体搬送装置100は、重なりサイズが小さい場合に、媒体の重送が発生したか否かの判定を省略する(実行しない)のでなく、重なりサイズに応じて重送閾値を変更する。そのため、例えばPPC用紙等が搬送される際に、名刺、レシート等の小型媒体が重なって搬送された場合でも、媒体搬送装置100は、媒体の重送の発生を検出することが可能となった。
【0092】
図8は、他の実施形態に係る重送判定処理の動作の例を示すフローチャートである。
【0093】
図8に示すフローチャートは、
図6に示したフローチャートの代わりに実行される。
図8に示す動作のフローは、媒体が搬送されるたびに実行される。
【0094】
最初に、検出部152は、
図6のステップS201と同様にして、超音波信号に示される透過情報を、媒体の複数の位置における透過情報として検出し、現在時刻と関連付けて記憶装置140に記憶する(ステップS301)。
【0095】
次に、検出部152は、媒体の後端が超音波センサ116の位置を通過したか否かを判定する(ステップS302)。制御部151は、
図5のステップS108と同様にして、媒体の後端が第2媒体センサ115の位置を通過したか否かを判定する。制御部151は、媒体の後端が第2媒体センサ115の位置を通過してから所定時間が経過した時に媒体の後端が超音波センサ116の位置を通過したと判定する。媒体の後端がまだ超音波センサ116の位置を通過していない場合、検出部152は、ステップS301へ処理を戻し、ステップS301~S302の処理を繰り返す。
【0096】
一方、媒体の後端が超音波センサ116の位置を通過した場合、算出部153は、搬送される媒体内において、検出部152が検出した透過情報が所定範囲内である領域のサイズを重なりサイズとして算出する(ステップS303)。算出部153は、現在までに記憶装置140に記憶された透過情報を参照し、透過情報が第1重送閾値未満である状態が連続している最大時間に媒体の搬送速度を乗算した値を重なりサイズとして算出する。
【0097】
次に、判定部154は、算出部153により算出された重なりサイズに基づいて重送閾値を決定する(ステップS304)。判定部154は、重なりサイズがサイズ閾値未満である場合、重送閾値として第2重送閾値を設定し、重なりサイズがサイズ閾値以上である場合、重送閾値として第1重送閾値を設定する。なお、判定部154は、重送閾値を三つ以上の値の何れかに設定してもよい。その場合、判定部154は、重なりサイズが大きいほど、重送閾値が大きくなるように重送閾値を設定する。これにより、判定部154は、よりフレキシブルに重送閾値を設定することができる。
【0098】
次に、判定部154は、記憶装置140に記憶された透過情報を参照し、一定期間に検出部152が検出した透過情報毎に各透過情報に基づく算出値を算出し、各算出値が重送閾値以上であるか否かを判定する(ステップS305)。
【0099】
全ての算出値が重送閾値以上である場合、判定部154は、媒体の重送が発生していないと判定し(ステップS306)、一連のステップを終了する。特に、判定部154は、何れかの算出値が第1重送閾値未満であっても重なりサイズがサイズ閾値未満であり且つその算出値が重送閾値(第2重送閾値)以上である場合、搬送される媒体に貼付物が貼付されているとみなして媒体の重送が発生していないと判定する。これにより、判定部154は、小型サイズの媒体が貼付された媒体が搬送された場合、媒体の重送が発生したと誤って判定することを抑制できる。
【0100】
一方、何れかの算出値が重送閾値未満である場合、判定部154は、媒体の重送が発生したと判定し(ステップS307)、一連のステップを終了する。この場合、
図5のステップS104で重送が発生したと判定され、ステップS105で異常処理が実行される。
【0101】
このように、算出部153は、検出部152による透過情報の検出が完了した後に、重なりサイズを算出する。判定部154は、重なりサイズに基づいて重送閾値を決定し、複数の位置において検出部152により検出された透過情報に基づく算出値と、決定した重送閾値とを比較する。これにより、判定部154は、媒体搬送中の演算量を低減させて、重送判定処理の処理負荷を軽減させつつ、媒体の重送が発生したか否かを適切に判定することができる。
【0102】
以上詳述したように、媒体搬送装置100は、媒体の後端が超音波センサ116の位置を通過した後に重送閾値を決定する場合も、媒体の重送が発生したか否かをより高精度に判定することが可能となった。
【0103】
図9は、他の実施形態に係る媒体搬送装置200内部の搬送経路を説明するための図である。
【0104】
図9に示すように、媒体搬送装置200は、媒体搬送装置100が有する各部を有する。但し、媒体搬送装置200は、超音波センサ116の代わりに、厚さセンサ216を有する。
【0105】
厚さセンサ216は、給送ローラ113及びブレーキローラ114より下流側且つ第1~第8搬送ローラ117a~h及び第1~第8従動ローラ118a~hより上流側に配置される。厚さセンサ216は、発光器216a及び受光器216bを含む。発光器216a及び受光器216bは、媒体の搬送路の近傍に、搬送路を挟んで対向して配置される。発光器216aは、受光器216bに向けて光(赤外光又は可視光)を照射する。一方、受光器216bは、発光器216aにより照射された光を受光し、受光した光の強度に応じた電気信号である厚さ信号を生成して出力する。厚さセンサ216の位置に媒体が存在する場合、発光器216aにより照射された光はその媒体により減衰し、媒体の厚さが大きい程、その減衰量は大きくなる。例えば、厚さセンサ216は、媒体の厚さが大きい程、信号値が大きくなるように厚さ信号を生成する。厚さ信号は、搬送部により搬送される媒体内の複数の位置におけるその媒体の厚さ情報を示す。なお、厚さセンサ216の数は一つに限定されず、複数でもよい。その場合、複数の厚さセンサ216は、幅方向A4に間隔を空けて並べて配置される。
【0106】
なお、厚さセンサ216として、反射光センサ、圧力センサ又は機械式センサが用いられてもよい。反射光センサは、媒体の搬送路に対して一方の側に設けられた発光器及び受光器のペアと、他方の側に設けられた発光器及び受光器のペアとを含む。反射光センサは、一方のペアが媒体の一方の面に光を照射してから反射光を受光するまでの時間と、他方のペアが媒体の他方の面に光を照射してから反射光を受光するまでの時間とから、各ペアと媒体の各面までの距離を検出する。反射光センサは、二つのペアの間の距離から、検出した各距離を減算した減算値を厚さ情報として示す厚さ信号を生成する。圧力センサは、媒体の厚さに応じて変化する圧力を検出し、検出した圧力を厚さ情報として示す厚さ信号を生成する。機械式センサは、媒体に接するローラ等の接触部材の移動量を検出し、検出した移動量を厚さ情報として示す厚さ信号を生成する。
【0107】
媒体搬送装置200は、媒体搬送装置100と同様に、
図5に示した媒体読取処理及び
図6に示した重送判定処理を実行する。
【0108】
但し、
図5のステップS107において、判定部154は、結果情報が媒体の重送の判定結果が誤っていたことを示す場合、重送閾値を高くする。また、ステップS113において、判定部154は、結果情報が媒体の重送の判定結果が誤っていたことを示す場合、重送閾値を低くする。
【0109】
また、
図6のステップS201において、検出部152は、厚さセンサ216から厚さ信号を受信する。検出部152は、受信した厚さ信号に示される厚さ情報を、搬送部により搬送される媒体の複数の位置における、その媒体の厚さ情報として検出し、現在時刻と関連付けて記憶装置140に記憶する。
【0110】
また、ステップS202において、算出部153は、搬送される媒体内において、検出部152が検出した厚さ情報が所定範囲内である領域のサイズを重なりサイズとして算出する。算出部153は、厚さ情報が第1重送閾値より大きい位置では媒体の重なりが発生しているとみなす。第1重送閾値は、例えば一枚のPPC用紙が搬送された場合に検出される厚さ情報と、二枚のPPC用紙が搬送された場合に検出される厚さ情報との間の値に設定される。特に、第1重送閾値は、一枚のPPC用紙が搬送された場合に検出される厚さ情報と、二枚の薄紙が搬送された場合に検出される厚さ情報との間の値に設定される。一方、第2重送閾値は、一枚のPPC用紙が搬送された場合に検出される厚さ情報と、二枚のPPC用紙が搬送された場合に検出される厚さ情報との間の値であり、且つ、第1重送閾値より大きい値に設定される。特に、第2重送閾値は、二枚の薄紙が搬送された場合に検出される厚さ情報と、二枚のPPC用紙が搬送された場合に検出される厚さ情報との間の値に設定される。算出部153は、最新の厚さ情報が第1重送閾値以下である場合、重なりサイズを0に設定する。一方、算出部153は、最新の厚さ情報が第1重送閾値より大きい場合、記憶装置140に記憶された厚さ情報を参照し、厚さ情報が第1重送閾値より大きい状態が連続している、直近の連続時間に媒体の搬送速度を乗算した値を重なりサイズとして算出する。
【0111】
なお、厚さセンサ216の数が複数である場合、算出部153は、厚さセンサ216毎に、媒体搬送方向A2における重なりサイズを算出する。また、算出部153は、重なりサイズとして、媒体搬送方向A2において媒体の重なりが発生しているサイズに加えて又は代えて、幅方向A4においてサイズ媒体の重なりが発生しているサイズを算出してもよい。その場合、算出部153は、第1重送閾値より大きい情報を出力した厚さセンサ216の配置位置から幅方向A4における重なりサイズを算出する。
【0112】
また、ステップS206において、判定部154は、直近の所定期間内に検出部152が検出した厚さ情報に基づく算出値を算出し、算出値が重送閾値以下であるか否かを判定する。判定部154は、厚さ情報の統計値(平均値、中央値、最大値又は最小値)を算出値として算出する。また、判定部154は、厚さ情報自体を算出値として使用してもよい。算出値が重送閾値以下である場合、ステップS207において、判定部154は、媒体の重送が発生していないと判定する。特に、判定部154は、算出値が第1重送閾値より大きい場合であっても重なりサイズがサイズ閾値未満であり且つ算出値が重送閾値(第2重送閾値)以下である場合、搬送される媒体に貼付物が貼付されているとみなして媒体の重送が発生していないと判定する。一方、算出値が重送閾値より大きい場合、ステップS208において、判定部154は、媒体の重送が発生したと判定する。
【0113】
このように、判定部154は、検出部152が検出した厚さ情報に基づく算出値と重送閾値とを比較することにより、媒体の重送が発生したか否かを判定する。特に、算出部153は、検出部152が厚さ情報を検出するたびに重なりサイズを更新する。判定部154は、検出部152が厚さ情報を検出するたびに、厚さ情報に基づく算出値と重送閾値とを比較し、更新された重なりサイズがサイズ閾値以上になったときに重送閾値を変更する。
【0114】
図10A、
図10B、
図10Cは、厚さ情報に基づいて媒体の重送が発生したか否かを判定する場合に、重なりサイズに応じて重送閾値を変更することの技術的意義について説明するための模式図である。
【0115】
図10A、
図10B、
図10Cは、厚さ情報(媒体の厚さ)の特性を示すグラフ1000、1010、1020である。グラフ1000、1010、1020の横軸は時間を示し、縦軸は厚さ情報の値を示す。グラフ1000、1010、1020において値S1、値S2はそれぞれ第1重送閾値、第2重送閾値を示し、長さLはサイズ閾値を示す。
【0116】
グラフ1000において、実線1001はPPC用紙M1とPPC用紙M2が重なって搬送された時の厚さ情報の特性を示す。PPC用紙M1とPPC用紙M2が重なっている部分V1の長さはサイズ閾値L未満であるが、PPC用紙M1とPPC用紙M2が重なっている部分V1における厚さ情報は第2重送閾値S2より大きい。したがって、PPC用紙M2の先端がPPC用紙M1と重なって超音波センサ116の位置を通過した時刻T1において、媒体の重送が発生したと正しく判定される。
【0117】
グラフ1010において、実線1011は薄紙M3と薄紙M4が重なって搬送された時の厚さ情報の特性を示す。薄紙M3及び薄紙M4の厚さは、PPC用紙M1及びPPC用紙M2の厚さより小さい。そのため、薄紙M3と薄紙M4が重なっている部分V2における厚さ情報は、PPC用紙M1とPPC用紙M2が重なっている部分V1における厚さ情報より小さく、第1重送閾値S1と第2重送閾値S2の間の値を有している。一方、薄紙M3と薄紙M4が重なっている部分V2の長さはサイズ閾値L以上である。したがって、薄紙M4の先端が薄紙M3と重なって厚さセンサ216の位置を通過した時刻T2では媒体の重送が発生したと判定されない。但し、その後、サイズ閾値L分だけ媒体が搬送された時刻T3において、重送閾値が第1重送閾値S1に変更されて、媒体の重送が発生したと正しく判定される。
【0118】
グラフ1020において、実線1021は貼付物Pが貼付されたPPC用紙M5が搬送された時の厚さ情報の特性を示す。貼付物Pは印紙等の小型媒体である。PPC用紙M5に貼付物Pが貼付されている場合、PPC用紙M5と貼付物Pは密着しているため、貼付物PがPPC用紙M5に貼付されずに重なっている場合と比較して、PPC用紙M5と貼付物Pによる厚さが小さくなる可能性がある。そのため、PPC用紙M5に貼付物Pが貼付されている部分V3における厚さ情報は、PPC用紙M1とPPC用紙M2が重なっている部分V1における厚さ情報より小さく、第1重送閾値S1と第2重送閾値S2の間の値を有している。したがって、PPC用紙M5の貼付物Pが貼付された部分が厚さセンサ216の位置を通過した時刻T4では媒体の重送が発生したと判定されない。また、PPC用紙M5上で貼付物Pが貼付された部分V3の長さはサイズ閾値L未満であるため、重送閾値は第2重送閾値S2から変化しない。したがって、小型媒体が貼付された媒体が搬送された場合、媒体の重送が発生したと判定されない。
【0119】
また、媒体搬送装置200は、媒体搬送装置100と同様に、
図6に示した重送判定処理の代わりに、
図8に示した重送判定処理を実行してもよい。
【0120】
その場合、
図8のステップS301において、検出部152は、厚さ信号に示される厚さ情報を、媒体の複数の位置における厚さ情報として検出し、現在時刻と関連付けて記憶装置140に記憶する。
【0121】
また、ステップS302において、検出部152は、媒体の後端が厚さセンサ216の位置を通過したか否かを判定する。媒体の後端が厚さセンサ216の位置を通過した場合、ステップS303において、算出部153は、搬送される媒体内において、検出部152が検出した厚さ情報が所定範囲内である領域のサイズを重なりサイズとして算出する。
【0122】
また、ステップS305において、判定部154は、記憶装置140に記憶された厚さ情報を参照し、一定期間に検出部152が検出した厚さ情報毎に各厚さ情報に基づく算出値を算出し、各算出値が重送閾値以下であるか否かを判定する。全ての算出値が重送閾値以下である場合、ステップS306において、判定部154は、媒体の重送が発生していないと判定する。特に、判定部154は、算出値が第1重送閾値より大きくても重なりサイズがサイズ閾値未満であり且つ算出値が重送閾値(第2重送閾値)以下である場合、搬送される媒体に貼付物が貼付されているとみなして媒体の重送が発生していないと判定する。一方、何れかの算出値が重送閾値より大きい場合、ステップS307において、判定部154は、媒体の重送が発生したと判定する。
【0123】
このように、算出部153は、検出部152による厚さ情報の検出が完了した後に、重なりサイズを算出する。判定部154は、重なりサイズに基づいて重送閾値を決定し、複数の位置において検出部152により検出された厚さ情報に基づく値と、決定した重送閾値とを比較する。
【0124】
以上詳述したように、媒体搬送装置200は、搬送される媒体内の複数の位置で検出した媒体の厚さ情報に基づいて媒体の重送が発生したか否かを判定し、媒体内の重なり領域のサイズに応じて判定閾値を変更する。これにより、媒体搬送装置200は、媒体の重送が発生したか否かをより高精度に判定することが可能となった。
【0125】
図11は、他の実施形態に係る媒体搬送装置の処理回路350の概略構成を示す図である。
【0126】
処理回路350は、処理回路150の代わりに使用され、処理回路150の代わりに、媒体読取処理等を実行する。処理回路350は、制御回路351、検出回路352、算出回路353、判定回路354及び受付回路355等を有する。なお、これらの各部は、それぞれ独立した集積回路、マイクロプロセッサ、ファームウェア等で構成されてもよい。
【0127】
制御回路351は、制御部の一例であり、制御部151と同様の機能を有する。制御回路351は、操作装置105又はインタフェース装置132から操作信号を、第1媒体センサ111から第1媒体信号を受信し、受信した各信号に基づいて、モータ131を制御して媒体を搬送する。制御回路351は、撮像装置119から入力画像を取得し、インタフェース装置132に出力する。また、制御回路351は、記憶装置140から重送が発生したか否かの判定結果を読み出し、媒体の重送が発生したと判定された場合に異常処理を実行する。
【0128】
検出回路352は、検出部の一例であり、検出部152と同様の機能を有する。検出回路352は、超音波センサ116から超音波信号を、又は、厚さセンサ216から厚さ信号を受信し、受信した信号に基づいて媒体内の複数の位置における透過情報又は厚さ情報を検出し、記憶装置140に記憶する。
【0129】
算出回路353は、算出部の一例であり、算出部153と同様の機能を有する。算出回路353は、記憶装置140から透過情報又は厚さ情報を読み出し、読み出した情報に基づいて重なりサイズを算出し、記憶装置140に記憶する。
【0130】
判定回路354は、判定部の一例であり、判定部154と同様の機能を有する。判定回路354は、記憶装置140から重なりサイズを読み出し、重なりサイズに基づいて重送閾値を設定する。また、判定回路354は、記憶装置140から透過情報又は厚さ情報を読み出し、設定した重送閾値と比較することにより媒体の重送が発生したか否かを判定し、判定結果を記憶装置140に記憶する。
【0131】
受付回路355は、受付部の一例であり、受付部155と同様の機能を有する。受付回路355は、操作装置105又はインタフェース装置132から結果情報を受信し、記憶装置140から重送の判定感度を読み出し、受信した結果情報に基づいて重送の判定感度を補正し、記憶装置140に記憶する。
【0132】
以上詳述したように、媒体搬送装置は、処理回路350によって媒体読取処理及び重送判定処理を実行する場合も、媒体の重送が発生したか否かをより高精度に判定することが可能となった。
【符号の説明】
【0133】
100、200 媒体搬送装置、112 ピックローラ、113 給送ローラ、114 ブレーキローラ、117a~h 第1~第8搬送ローラ、118a~h 第1~第8従動ローラ、151 制御部、152 検出部、153 算出部、154 判定部、155 受付部
【手続補正書】
【提出日】2024-07-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体を搬送する搬送部と、
搬送される媒体において媒体の重なりが発生している領域の長さに応じて、媒体の重送が発生したか否かの判定における感度を変更する判定部と、
を有することを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項2】
前記判定部は、
搬送される媒体に対して測定された測定情報に基づく値と閾値とを比較することにより、媒体の重送が発生したか否かを判定し、
前記感度として前記閾値を変更する、請求項1に記載の媒体搬送装置。
【請求項3】
前記判定部は、媒体の搬送中に前記閾値を変更する、請求項2に記載の媒体搬送装置。
【請求項4】
前記判定部は、搬送される媒体に対する前記測定情報の測定が完了した後に前記閾値を決定する、請求項2に記載の媒体搬送装置。
【請求項5】
前記判定部は、前記長さが長さ閾値未満である場合、搬送される媒体に貼付物が貼付されているとみなして、媒体の重送が発生していないと判定する、請求項1~4の何れか一項に記載の媒体搬送装置。
【請求項6】
利用者から、前記判定部による媒体の重送の判定結果が正しかったか否かを示す結果情報を受け付ける受付部をさらに有し、
前記判定部は、前記結果情報に基づいて、前記感度を補正する、請求項1~5の何れか一項に記載の媒体搬送装置。
【請求項7】
前記判定部は、前記長さが長さ閾値以上であるか否かによって、前記感度を変更し、
利用者から、前記判定部による媒体の重送の判定結果が正しかったか否かを示す結果情報を受け付ける受付部をさらに有し、
前記判定部は、前記結果情報に基づいて、前記長さ閾値を補正する、請求項1~5の何れか一項に記載の媒体搬送装置。
【請求項8】
媒体の重送が発生した場合に異常処理を実行する制御部をさらに有する、請求項1~7の何れか一項に記載の媒体搬送装置。
【請求項9】
媒体の重送が発生した場合に利用者に通知する制御部をさらに有する、請求項1~8の何れか一項に記載の媒体搬送装置。
【請求項10】
搬送部により、媒体を搬送し、
搬送される媒体において媒体の重なりが発生している領域の長さに応じて、媒体の重送が発生したか否かの判定における感度を変更する、
ことを特徴とする媒体搬送方法。
【請求項11】
媒体を搬送する搬送部を有する媒体搬送装置の制御プログラムであって、
搬送される媒体において媒体の重なりが発生している領域の長さに応じて、媒体の重送が発生したか否かの判定における感度を変更する、
ことを前記媒体搬送装置に実行させることを特徴とする制御プログラム。