(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138057
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】大型2ストローク圧縮点火高圧ガス噴射内燃エンジンのための燃料供給システム
(51)【国際特許分類】
F02M 21/02 20060101AFI20240927BHJP
F02M 59/02 20060101ALI20240927BHJP
F02B 25/02 20060101ALN20240927BHJP
【FI】
F02M21/02 L
F02M59/02
F02B25/02
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024115302
(22)【出願日】2024-07-19
(62)【分割の表示】P 2022199890の分割
【原出願日】2017-05-23
(31)【優先権主張番号】PA201670360
(32)【優先日】2016-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(71)【出願人】
【識別番号】516330468
【氏名又は名称】マン エナジー ソリューションズ フィリアル ア マン エナジー ソリューションズ エスイー チュスクラン
【氏名又は名称原語表記】MAN Energy Solutions, filial af MAN Energy Solutions SE, Tyskland
【住所又は居所原語表記】Teglholmsgade 41,DK-2450 Copenhagen SV,Danmark
(74)【代理人】
【識別番号】100127188
【弁理士】
【氏名又は名称】川守田 光紀
(72)【発明者】
【氏名】クレスチャン クアトイス ヴェング
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ホルスト
(72)【発明者】
【氏名】ラスムス ボーウビェア ニルスン
(57)【要約】
【課題】大型2ストローク圧縮点火内燃エンジンに高圧ガスを供給する燃料供給システムを提供する。
【解決手段】燃料供給システムは、液化ガス貯蔵タンク(8)の出口を高圧ポンプの入口(40)に接続するフィード管(9)と、高圧ポンプの出口を高圧気化器(14)の入口に接続する移送管(50)と、高圧気化器の出口をエンジンの燃料噴射システムの入口に接続する供給管(18)とを備える。高圧ポンプは、個別に動作する2つ以上の極低温ポンプ・ユニット(41、42、43)を備える。各ポンプ・ユニットは、ポンプ・シリンダ(61)に摺動可能に配置されたポンプ・ピストン(62)と、ポンプ・ピストンを駆動する液圧駆動ピストン(46)を有する駆動シリンダ(45)とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧ガスを大型2ストローク圧縮点火内燃エンジンに供給するための燃料供給システムであって、前記エンジンには供給された高圧ガスを前記エンジンの燃焼室に噴射するための燃料噴射システムが設けられ、前記燃料供給システムは、
液化ガスを液化ガス貯蔵タンク(8)から高圧ポンプ(40)へ移送するために、前記液化ガス貯蔵タンク(8)の出口を前記高圧ポンプ(40)の入口に接続するフィード管(9)と、
高圧液化ガスを前記高圧ポンプ(40)から高圧気化器(14)へ移送するために、前記高圧ポンプ(40)の出口を前記高圧気化器(14)の入口に接続する移送管(50)と、
高圧の気化ガスを前記エンジンの前記燃料噴射システムへ移送するために、前記高圧気化器(14)の出口を前記エンジンの前記燃料噴射システムの入口に接続する供給管(18)と、
電子制御ユニット(70)と、
を備え、
前記高圧ポンプ(40)は、2つ以上の個別の、そして個々に動作する極低温ポンプ・ユニット(41、42、43)を備え、
前記各極低温ポンプ・ユニット(41、42、43)は、ポンプ・シリンダ(61)内に摺動可能に配置された単一のポンプピストン(62)と、前記ポンプピストン(62)を駆動するための単一のピストンロッド(49)によって前記単一のポンプピストン(62)に結合され、駆動シリンダ(45)に摺動可能に配置された単一の液圧駆動ピストン(46)とを備え、
前記各極低温ポンプユニット(41、42、43)は、互いに機械的に独立しており、前記電子制御ユニット(70)によって個別に制御および操作される、
燃料供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は大型低速2ストローク・ユニフロー圧縮点火内燃エンジンのための燃料供給システムに関し、特に、エンジンの内燃室に高圧ガスを高圧で噴射して供給する、大型低速2ストローク圧縮点火内燃エンジンのための燃料供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、大型2ストローク・ユニフロー・ターボチャージャ付き圧縮点火内燃クロスヘッド・エンジンは、大型船の推進システム又は発電所の原動機として使用される。その圧倒的なサイズ、重量、及び出力は、一般的な内燃エンジンとは全く異なり、大型2ストローク・ターボチャージャ付き圧縮点火内燃エンジンは独自のものとして分類される。
【0003】
大型2ストローク圧縮点火内燃エンジンは従来、例えば燃料油すなわち重油等の液体燃料によって動作する。しかし、環境面への関心の高まりによって、ガス、メタノール、石炭スラリー、石油コークス等の代替燃料の使用に向けた開発が成されてきた。需要が増加しつつある燃料の1つのグループとして、液化ガス、特に液化天然ガス(LNG)が挙げられる。天然ガスは、液化プラントにおいて極低温(cryogenic temperature)で液体状に変換される。LNGは特別に設計された極低温船舶(LNG船)によって長距離にわたって目的地まで運搬される。
【0004】
LNG船には1つ又は複数のLNG貯蔵タンクが設けられる。LNG貯蔵タンクはLNGを-162℃(-260°F)の超低温で貯蔵する能力を有する。一般にLNG貯蔵タンクは二重のコンテナを有し、内側にLNGを入れて外側コンテナは断熱材を包含する。最も一般的なタンクのタイプは、フル・コンテインメント・タンクである。用途によってタンクのサイズは大幅に変わる。実質的に断熱ではあるが、熱は外部からLNG貯蔵タンク内のLNGに継続的に伝わり、LNG貯蔵タンク内でLNGの気化を引き起こす。このLNGの蒸気がLNG貯蔵タンクから解放されなければ、LNG貯蔵タンク内部の圧力と温度が上昇し続けるが、これは容認できることではなく危険である。LNGは寒剤であり、超低温下で液体状に保たれる。気化ガスを貯蔵タンクから逃がすことによって圧力を一定に保てば、タンク内の温度は一定に維持されるであろう。この処理は自動冷蔵として知られている。したがって、LNG船によるLNGの運搬の間にLNGは継続的に気化して、LNG貯蔵タンク内にボイルオフ・ガスが発生する。
【0005】
LNG貯蔵タンク内で発生したボイルオフ・ガスは、船舶推進エンジンのために使用されるか、又はガス燃焼器で燃焼される。
【0006】
高圧ガス噴射エンジン、例えば大型2ストローク圧縮点火内燃エンジンがLNG船の船舶推進エンジンとして使用される場合、高圧の液化天然ガスをLNG貯蔵タンクから高圧気化器へ圧送するために、高圧極低温ポンプが使用される。通常、極低温ポンプは2つ以上のポンプ・シリンダを有し、その中にポンプ・ピストンが摺動可能に配置される。クランクシャフトを使用してポンプ・ピストンを駆動する、極低温ポンプが知られている。このクランクシャフトは、ベルト伝導を介する電気駆動モータによって駆動される。
【0007】
高圧極低温ポンプによって気化器に送達されたLNGの圧力は、電気駆動モータの動作及び制御バルブの使用によって調整される。しかし、この知られている制御システムは比較的遅く、特に大型2ストローク・ディーゼル・エンジンからの燃料需要の比較的急な変化を伴う非定常的な動作を制御することは困難である。
【0008】
LNGは常温常圧において気体燃料であり、この適用の状況では、摂氏20度(℃)、1気圧(atm)である。一般にLNGは、沸点又は沸点に近い約-160℃で、真空断熱された容器に貯蔵される。通常、極低温とは-150℃未満の任意の温度である。
【0009】
特許文献1では、回転型液圧モータによって駆動される往復ピストン式極低温ポンプを備える、燃料ガス供給装置が開示されている。回転型液圧モータの慣性と組み合わされるクランクシャフト及びピストンのような、往復ピストン式極低温ポンプの構成要素の慣性によって、極低温ポンプ・アセンブリに大きい合成慣性をもたらす。その結果、回転型液圧モータへの供給圧力の変化は、往復ピストン極低温ポンプの出口における圧力の変化に即座に伝わらないであろう。なぜなら、移動質量に蓄えられたエネルギーはポンプの出口でエネルギーに変換される際に時間を要するからである。したがって、往復ピストン極低温ポンプによって送達された圧力の動的制御は、この遅延によって妨げられ、そのため、送達された圧力が動的に適合される必要のある状況では不正確となろう。
【0010】
したがって、高圧ガスを大型2ストローク圧縮点火内燃エンジンに供給するための、改善された燃料供給システムを提供することが必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、上述した問題を克服又は少なくとも軽減する燃料供給システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述及び他の目的は、独立請求項の特徴によって達成される。さらなる実装形式は、従属請求項、明細書、及び図面によって明白となる。
【0014】
第1の態様によると、高圧ガスを大型2ストローク圧縮点火内燃エンジンに供給する燃料供給システムが提供される。このエンジンには供給された高圧ガスをエンジンの燃焼室に噴射するための燃料噴射システムが設けられる。燃料供給システムは、液化ガスを液化ガス貯蔵タンクから高圧ポンプまで移送するために、液化ガス貯蔵タンクの出口を高圧ポンプの入口に接続するフィード管と、高圧液化ガスを高圧ポンプから高圧気化器に移送するために、高圧ポンプの出口を高圧気化器の入口に接続する移送管と、高圧の気化ガスをエンジンの燃料噴射システムに移送するために、高圧気化器の出口をエンジンの燃料噴射システムの入口に接続する供給管とを備える。高圧ポンプは2つ以上の個別に動作するポンプ・ユニットを含み、各ポンプ・ユニットは、ポンプ・シリンダに摺動可能に配置されたポンプ・ピストン、及び駆動シリンダに摺動可能に配置された液圧駆動ピストンを備え、駆動ピストンはポンプ・ピストンを駆動するためにポンプ・ピストンに結合されている。
【0015】
ポンプ・ピストンの各々がリニア液圧アクチュエータによって作動される高圧ポンプを有する燃料供給システムを提供することにより、気化器に送達された高圧液化ガスの圧力は、リニア・アクチュエータに供給される作動液の圧力を制御することによって正確に制御され得る。これが可能であるのは、他のタイプの駆動に比べて液圧リニア・アクチュエータを基礎とする駆動システムには実質的に慣性がないためであり、液圧リニア・アクチュエータを基礎とする駆動システムは、液圧リニア・アクチュエータに送達された作動液の圧力変化に直ちに応答する。したがって、リニア・アクチュエータに送達された作動液の圧力変化は気化器に供給された液化ガスの圧力に直ちに反映する。液圧供給圧力を制御することは、比較的容易で簡単である。したがって、ガスの圧力は、大幅に迅速な応答時間及びより少ない超過で制御され得る。
【0016】
第1の態様の第1の可能な実施形態によると、燃料供給システムは、1つ又は複数のポンプ・ユニットの駆動シリンダへの作動液の流れ及び駆動シリンダからの作動液の流れを制御するために、高圧作動液の供給源及びタンクに接続された少なくとも1つの液圧制御バルブを更に備え、高圧作動液の供給源は、好ましくは可変で制御可能な圧力レベルの供給源である。
【0017】
第1の態様の第2の可能な実施形態によると、駆動シリンダは駆動室及び戻し室を備える。
【0018】
第1の態様の第3の可能な実施形態によると、駆動室は液圧制御バルブに接続され、戻し室は、高圧作動液の供給源の圧力よりも低い圧力である作動液の供給源に好ましくは常時接続される。
【0019】
第1の態様の第4の可能な実施形態によると、駆動シリンダに、関係する駆動シリンダ中の駆動ピストンの位置を感知するための位置センサが設けられる。
【0020】
第1の態様の第5の可能な実施形態によると、燃料供給システムは、位置センサからの信号を受け取る電子制御ユニットを更に備え、少なくとも1つの液圧制御バルブは電子制御ユニットに結合された電子制御バルブである。
【0021】
第1の態様の第6の可能な実施形態によると、電子制御ユニットは、ポンプ・ユニットの駆動室を高圧作動液の供給源又はタンクに選択的に接続するよう構成される。
【0022】
第1の態様の第7の可能な実施形態によると、電子制御ユニットは、駆動ピストンのポンプ・ストロークを、別の駆動ピストンのポンプ・ストロークが終点に近づき、終わるポンプ・ストロークと始まるポンプ・ストロークとの間に小さいオーバーラップがあるときに開始するよう構成される。したがって、大きい圧力変動もなく、LNGの気化器への実質的に安定した流れが実現できる。
【0023】
第1の態様の第8の可能な実施形態によると、電子制御ユニットは、高圧ポンプから高圧気化器への高圧液化ガスの実質的に一定な流れを得るために、ポンプ・ストロークが終わる際の動力及びポンプ・ストロークが始まる際の動力を計算に入れるよう構成される。
【0024】
第1の態様の第9の可能な実施形態によると、電子制御ユニットは、駆動シリンダ/ユニットの内の1つのポンプ・ストロークをいつ開始すべきかを決定するよう、及び駆動シリンダの内の任意のポンプ・ストロークをいつ終了すべきかを決定するよう、構成される。したがって、ポンプ・ストロークが始まる地点、及び特に、どこでポンプ・ストロークが終わるかが正確に制御され得る。
【0025】
第1の態様の第10の可能な実施形態によると、電子制御ユニットは、それぞれの駆動シリンダを実質的に連続して、好ましくは小さいオーバーラップで作動させるよう構成される。
【0026】
第1の態様の第11の可能な実施形態によると、電子制御ユニットは、ポンプ・ユニットの1つが故障した場合、残りの機能しているポンプ・ユニットの駆動ピストンを動作させるよう構成される。したがって、冗長性が得られ、ポンプ・ユニットの1つが故障してもポンプ作用を続けることができる。
【0027】
第1の態様の第12の可能な実施形態によると、電子制御ユニットは、残りの機能しているポンプ・ユニットの駆動シリンダが実質的に連続して、好ましくは小さいオーバーラップで作動されるよう、残りの機能しているポンプ・ユニットの駆動ピストンを動作させるよう構成される。
【0028】
第1の態様の第13の可能な実施形態によると、電子制御ユニットは、高圧ポンプから高圧気化器までの液化ガスの流れの大きさに関連して、駆動室が高圧作動液の供給源から切り離される駆動ピストンの位置を調整するよう構成される。したがって、ポンプ・ピストン及び駆動ピストンのスピード及び生じた慣性に関わらず、ポンプ・ストロークが逆転する位置を同じ位置に保つことができる。
【0029】
第1の態様の第14の可能な実施形態によると、電子制御ユニットは、高圧ポンプから高圧気化器までの液化ガスの流れが増加するとき、関係する駆動ピストンの駆動室が高圧液の供給源から切り離される駆動ピストンの位置を駆動ストロークの方向と反対方向に調整するよう構成される。
【0030】
第1の態様の第15の可能な実施形態によると、電子制御ユニットは、高圧ポンプから高圧気化器までの液化ガスの流れが減少するとき、関係する駆動ピストンの駆動室が高圧液の供給源から切り離される駆動ピストンの位置を駆動ストロークの方向に調整するよう構成される。
【0031】
第1の態様の第16の可能な実施形態によると、電子制御ユニットは、ポンプ・シリンダの摩耗を軽減するためにポンプ・ピストンのストローク領域にわたってポンプ・ピストンが逆転する位置を分散させるために、アルゴリズム、計画、又は無作為によって、関係する駆動ピストンの駆動室が高圧液の供給源から切り離される駆動ピストンの位置を調整するよう構成される。
【0032】
第1の態様の第17の可能な実施形態によると、電子制御ユニットは、駆動室に供給された作動液の圧力を制御することによって、移送管内の液化ガスの圧力を制御するよう構成される。したがって、移送管内の液化ガスの圧力の効果的かつ即座に反応する制御が実現される。
【0033】
第1の態様の第18の可能な実施形態によると、電子制御ユニットは、駆動室に供給される作動液の圧力を制御するためのフィードフォワード機能において、移送管内の液化ガスの所望の圧力を使用するよう構成される。液圧を介する液化ガスの圧力のフィードフォワード制御を使用することによって、液化ガスの圧力の更に迅速で安定した制御が実現できる。
【0034】
第1の態様の第19の可能な実施形態によると、電子制御ユニットは、駆動室に供給される作動液の圧力を制御するためのフィードバック機能において、移送管内の液化ガスの測定された圧力を使用するよう構成される。したがって、非直線性及び一時的変動を制御システムによって適応させることができる。
【0035】
第1の態様の第20の可能な実施形態によると、電子制御ユニットは、駆動室へ供給される作動液の圧力を制御することとは独立に、それぞれの駆動ピストンの作動及び作動停止を制御するよう構成される。したがって、駆動ピストンの作動のための制御方法は、圧力制御とは独立に電子制御ユニットによって最適化され得る。
【0036】
第1の態様の第21の可能な実施形態によると、電子制御ユニットは、駆動ピストンの作動及び作動停止を制御するために、駆動ピストンの位置を表す信号を使用するよう構成される。
【0037】
第2の態様によると、第1の態様及びその任意の可能な実施形態による高圧ガス噴射システム、及び燃料供給システムを有する、大型2ストローク・ターボチャージャ付き圧縮点火内燃エンジンが提供される。
【0038】
第3の態様によると、第2の態様によるエンジンを備える、LNG船又は液化ガス・タンクを有する貨物船が提供される。
【0039】
第4の態様によると、高圧ガスをエンジンに噴射するために、高圧の気化ガスを内燃エンジンに供給するための方法が提供される。この方法は、
液化ガスを液化ガス貯蔵タンクに貯蔵することと、
高圧ポンプを用いて液化ガスを高圧気化器に圧送することと、
高圧気化器内の高圧液化ガスを気化することと、
気化した高圧ガスをエンジンに供給することと、を備え、
高圧ポンプは2つ以上の個別に動作するポンプ・ユニットを備え、各ポンプ・ユニットはポンプ・シリンダに摺動可能に配置されたポンプ・ピストン、及びポンプ・ピストンを駆動するためにポンプ・ピストンに結合された液圧駆動ピストンを備え、方法は更に、
個別に駆動ピストンを駆動するために、高圧の作動液を駆動シリンダに個々に供給することと、
駆動シリンダに供給される作動液の圧力を個々に制御することによって、高圧ポンプを離れる液化ガスの圧力を制御することと、を備える。
【0040】
第4の態様の第1の可能な実施形態によると、方法は、駆動ストロークのために駆動ピストンの1つを作動させることと、その後リターン・ストロークのためにその1つの駆動ピストンを作動停止させることと、を更に備える。
【0041】
第4の態様の第2の可能な実施形態によると、ポンプ・ピストン及び駆動ピストンは互いに接続されて同時に動く。
【0042】
第4の態様の第3の可能な実施形態によると、方法は、駆動ピストンのポンプ・ストロークを、別の駆動ピストンのポンプ・ストロークが終点に近づき、終わるポンプ・ストロークと始まるポンプ・ストロークとの間に小さいオーバーラップがあるときに開始することを更に備える。
【0043】
第4の態様の第4の可能な実施形態によると、方法は、高圧ポンプから高圧気化器への高圧液化ガスの実質的に一定な流れを得るために、ポンプ・ストロークが終わる際の動力及びポンプ・ストロークが始まる際の動力を計算に入れることを更に備える。
【0044】
第4の態様の第5の可能な実施形態によると、方法は、それぞれの駆動シリンダを実質的に連続して、好ましくは小さいオーバーラップで作動させることを更に備える。
【0045】
本発明のこれら及び他の態様は、以下に説明する実施形態から明白になろう。
【0046】
本開示の以下の詳細部分において、本発明は図面に示す例示的な実施形態を参照して、更に詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】例示的な実施形態による、大型2ストローク・ディーゼル・エンジンの立正 面図
【
図2】高圧天然ガスをLNG貯蔵タンクから
図1の大型2ストローク・ディーゼル ・エンジンに供給する燃料供給システムを表す図
【
図3】
図2の燃料噴射システムの高圧ポンプの立面図
【
図5】
図3の高圧ポンプのポンプ・ユニットの詳細断面図
【
図9】
図3の高圧ポンプを制御するための制御システムを表す図
【
図10】様々なスピードにおける
図3の高圧ポンプのピストンの動きを例示するグ ラフ
【
図11】様々なスピードにおける
図3の高圧ポンプのピストンの動きを例示するグ ラフ
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下の詳細な説明では、クロスヘッドを有する大型2ストローク低速ターボチャージャ付き圧縮点火内燃エンジンのための燃料供給システムが例示的な実施形態を参照して説明されるが、この内燃エンジンは、ターボチャージャ付き又はターボチャージャ無し、排気ガス再循環若しくは選択的接触還元付き又は排気ガス再循環若しくは選択的接触還元無しの、2ストロークのオットー、4ストロークのオットー又はディーゼル等の別のタイプでもあり得る。
【0049】
図1に、回転輪及びクロスヘッドを有する大型低速ターボチャージャ付き2ストローク・ディーゼル・エンジンを示す。この例示的な実施形態では、エンジンは直列6気筒である。大型低速ターボチャージャ付き2ストローク・ディーゼル・エンジンは通常、直列の4個から14個のシリンダを有し、エンジン・フレーム6に支えられたシリンダ・フレームに支えられる。このエンジンは、例えば、船舶の主エンジン又は発電所の発電機を動作させる定置エンジンとして使用され得る。このエンジンの総出力は、例えば、1,000~110,000kWの範囲であり得る。
【0050】
この例示的な実施形態では、エンジンは、シリンダ1の下部領域に掃気口、及びシリンダ・ライナー1の上部に中央排気バルブ4を有する、2ストローク・ユニフロー・タイプの圧縮点火エンジンである。掃気は、掃気レシーバ2から個々のシリンダ1の掃気口へ送られる。シリンダ・ライナー1のピストンは掃気を圧縮し、高圧のガス燃料はシリンダ・カバー内の燃料バルブを通して噴射され、燃焼が起こり、排気ガスが発生する。
【0051】
排気バルブ4が開くと、排気ガスはシリンダ1に関連付けられた排気ダクトを通して排気ガス・レシーバ3に流れ、ターボチャージャ5のタービンに進み、そこから排気ガスは排気管を通して大気へ流出する。ターボチャージャ5のタービンは、空気入口を介して外気を供給されたコンプレッサを駆動する。コンプレッサは、圧縮した掃気を掃気レシーバ2に導く掃気管へ送達する。掃気管内の掃気はインタークーラー7を通過して、冷却される。
【0052】
図2は、エンジンの燃料供給システムの簡略図である。燃料供給システムは、例えばLNG船、又は例えば液化ガス・タンクを有するコンテナ船のような液化ガス・タンクを有する貨物船等の船舶に設置することができる。
【0053】
燃料供給システムは、天然ガスが極低温状態で貯蔵されるLNG貯蔵タンク8を備える。例えばポイラー又は船舶の予備エンジンのような低圧ガス噴射エンジンに使用するために、タンクからボイルオフ・ガスを逃がすことができるので、LNG貯蔵タンク8内の圧力は比較的低くかつ一定に保たれる。ボイルオフのプロセスはまた、貯蔵タンク内のLNGを低温に保つ。貯蔵タンク8内の液化ガスは、例えばエタン又はメタン等の、天然ガスとは別のタイプでもよい。
【0054】
フィード管9は、LNG貯蔵タンク8の出口を高圧ポンプ40の入口に接続する。低圧フィード・ポンプ10は、液化ガスがLNG貯蔵タンク8から高圧ポンプ40の入口まで移送するのを補助する。或いは、LNG貯蔵タンク8を加圧して低圧供給ポンプ10を省くことができる。移送管50は、高圧液化ガスを前記高圧ポンプ40から高圧気化器14へ移送するために、高圧ポンプ40の出口を前記高圧気化器14の入口に接続する。高圧ポンプ40は、液化ガスを、前記移送管50を介して高圧気化器14に圧送する。高圧気化器14は高圧液化ガスを受け取り、高圧気化器14の熱交換器を使用してガスを気化する。高圧気化器14は、例えば循環回路15を通して循環するグリコール等の熱交換媒体と、液化ガスとの間で熱を交換する。循環回路15は循環ポンプ16及びヒータ17を含む。高圧の気化ガスは、供給管18に接続された高圧気化器14の出口を介して高圧気化器14を離れる。
【0055】
供給管18は、高圧気化器14の出口をエンジンの燃料噴射システムの入口に接続して、高圧の気化ガスをエンジンの燃料噴射システムへ移送できるようにする。バルブ装置19は、燃料供給システムと大型2ストローク・ディーゼル・エンジンとの間の接続を制御する。
【0056】
高圧ポンプ40には、2つ以上のポンプ・ユニット41、42、43(本実施形態では3つのポンプ・ユニットが示される)が設けられる。各ポンプ・ユニット41、42、43は、ポンプ・シリンダ61に摺動可能に配置されたポンプ・ピストン62と、前記ポンプ・ピストン62を駆動するためにポンプ・ピストン62に結合された駆動ピストン46を有する駆動シリンダ45に摺動可能に配置された液圧駆動ピストン46とを含む。
【0057】
ポンプ・ピストン62及びポンプ・シリンダ61は、極低温容積式ポンプを形成する。ポンプ・ピストン62及びポンプ・シリンダ61は、ポンプ室63を有するポンプ・ユニットのいわゆるコールド・エンドを形成する。コールド・エンドは、液化ガス循環供給管11及び液化ガス循環戻し管12を含む循環回路によって、低温に保たれる。循環する液化ガスは、ポンプ・ユニット41、42、43のコールド・エンドを冷却する役割を担う。
【0058】
ポンプ・シリンダ61は、関係したポンプ・ユニット41、42、43の駆動ピストンにピストン・ロッド49を介して接続される。駆動ピストン46は、駆動シリンダ45の内部を駆動室48と戻し室47とに分割する。
【0059】
駆動シリンダ45は、高圧作動液の供給源20、例えば高圧作動液供給管23を介したポンプ又はポンプ・ステーションに接続される。示された実施形態において、高圧作動液の供給源20は、高圧ポンプ22を駆動する電動駆動モータ21を含む。高圧ポンプ22は、例えば容積式ポンプ、好ましくは可変容量形容積式ポンプとすることができる。1つの実施形態において、冗長性目的のため、高圧作動液の供給源は、それぞれがその電気駆動モータ21によって駆動する2つの高圧液圧ポンプ22を含む。
【0060】
図3は、フレーム35によって支持された、それぞれポンプ・シリンダ61を有する3つのポンプ・ユニット41、42、43と、駆動シリンダ45と、制御バルブ24とを有する高圧ポンプ40を、高圧ポンプ40の高い圧力を均一化し、かつ戻し室の低い圧力を均一化するためのアキュムレータ53とともに示す立面図である。ポンプ・ユニット41、42、43は、フレーム35上にコンパクトに配置され、フレーム35上の構成要素はスパークが発生しない構成要素でATEXに承認された電気構成要素のみを有し、そのため、ユニットはATEX環境に対して問題なく設置できる。
【0061】
図4は、高圧ポンプ40を、そのポンプ・ユニット41、42、43とともに表す図である。各ポンプ・ユニット41、42、43は、作動液戻しライン26を介してタンクに接続され、かつ、作動液供給管23を介してそれぞれのポンプ・ユニット41、42、及び43に接続する可変容量形容積式ポンプ22を含む高圧作動液の供給源に接続される。各ポンプ・ユニット41、42、及び43は、移送管50に接続される。
【0062】
各ポンプ・ユニット41、42、43は、それぞれの駆動室48を制御管25を介して高圧作動液の供給源又はタンクに選択的に接続するよう構成された液圧制御バルブ24を備える。
【0063】
各ポンプ・ユニット41、42、43は、駆動ピストン46が中に摺動可能に配置された駆動シリンダ45によって形成されるリニア液圧アクチュエータの形式の駆動ユニット44を備える。したがって、ポンプ・ユニットは互いに機械的に独立している。戻し室47は液圧供給源に常時接続される。液圧供給源は液圧ポンプ30、例えば可変容量形容積式ポンプを、戻し室供給ライン31を介して含み、戻し室供給ライン31は好ましくは流量制限33を含み、戻し室47へ加圧された作動液を安定して供給することを確かにするためのアキュムレータ32に結合される。或いは、圧力低減バルブを介して高圧液圧システムから低圧供給源が得られる。1つの実施形態において、戻し室に供給される作動液の圧力は、駆動室48に供給される作動液の圧力よりも大幅に小さい。或いは、戻し室47に面した駆動ピストン46の側面の有効圧力面は、駆動室48に面した駆動ピストンの有効圧力面よりも大幅に小さくなるよう配置され得る。後者の場合、戻し室47内の作動液の圧力は駆動室に供給される作動液の圧力と実質的に等しくすることができる。
【0064】
各ポンプ・ユニット41、42、43は、ポンプ室63を形成するためポンプ・ピストン62をそこに受けるポンプ・シリンダ61によって形成されるリニア容積式ポンプの形式のポンプ60を備える。ポンプ室63は、圧力室63への流れだけを可能にする第1の一方向弁51を介して、フィード管9に接続される。ポンプ室63は、圧力室63からの流れだけを可能にする第2の一方向弁52を介して、移送管50に接続される。
【0065】
図5は、高圧ポンプ40のポンプ・ユニット41、42、43の詳細断面図である。ポンプ・ユニット41、42、43は、駆動ピストン46が中に配置されたシリンダ45を含む液圧リニア・アクチュエータ44を備える。駆動ピストン46はピストン・シャフト47に、好ましくは一体として接続される。ピストン・ロッド49及び駆動ピストン46には、位置センサ56のロッド57を受ける穴58が設けられる。位置センサ56の信号は電子制御ユニット70へ送られる。駆動ピストン46は、駆動シリンダ45の内部を駆動室48と戻し室47とに分割する。
図5において、駆動ピストン46が駆動ストロークの終点に達しているために戻し室は確認できない。駆動室48は穴25を介して液圧制御バルブ24に接続される。戻し室47は穴31を介して液圧の供給源に常時接続される。
【0066】
リニア液圧アクチュエータ44のピストン・ロッド49は、極低温ポンプ60のピストン・ロッド62に接続される。ピストン・ロッド49とピストン・ロッド62との間の接続は、コネクタ・ピース54によってピストン・ロッド49とピストン・ロッド62とが一体で動くように確立される。駆動シリンダ45は、ボルト接続部55によってポンプ・シリンダ61に接続される。極低温ポンプ60にはポンプ室63を移送管50に接続する出口が設けられる。
【0067】
図9は高圧ポンプ40の動作を制御するための電子制御ユニット70の形式の制御システムを表す図である。
【0068】
電子制御ユニット70はガス圧設定点71を受け取る。ガス圧設定点71は加算地点72に送られる。第1の加算地点72において測定されたガス圧は差し引かれ、設定点と測定されたガス圧との間の差がフィードバック制御ループの一部であるPIコントローラ74に送られる。
【0069】
ガス圧設定点はフィードフォワード・ピストン比率ゲイン・ユニット78に送られる。フィードフォワード・ピストン比率ゲイン・ユニット78からの信号は、第2の加算地点76においてPIコントローラ74からの信号と比較される。
【0070】
第1の加算地点72に送られた測定されたガス圧は、エンジンのパイプ・ボリューム85内、すなわちバルブ装置19の下流のガス圧の測定値に基づく。バルブ装置19は二輪ブロックで、供給管18から気化ガスの流れを受け取るブリード・バルブ装置である。測定されたガス圧はフィルター86でフィルターにかけられる。
【0071】
第2の加算地点76における比較の結果は、高圧作動液の供給源20に送られる。その信号に基づき、高圧作動液の供給源20は修正した圧力を有する作動液を高圧ポンプ・ユニット40へ送達する。
【0072】
電子制御ユニット70は、駆動ピストンの位置を表す信号を受け取り、ピストン監理ユニット92においてこの位置信号を処理する。ピストン監理ユニット92はピストン作動方法ユニット90に結合される。ピストン監理ユニット92及びピストン作動方法ユニット90の動作の詳細は、以下で更に詳細に示され説明される。ピストン作動方法ユニット90の信号は、駆動ピストン46を作動させるために高圧ポンプ40の制御バルブ24に送られる。
【0073】
駆動ピストン46が作動することにより、液化された高圧ガスを、高圧気化器14を通して供給管18へ圧送する。
【0074】
電子制御ユニット70の主圧力制御はフィードフォワードである。PI(比例積分)コントローラは、非直線性を補償し、一時的変動に対して補助を行う。
【0075】
ガス圧は、液圧送りの圧力をポンプ・ユニット41、42、43に設定することによって自動制御される。圧力制御は液圧側で行われ、ガス側で行う必要はない。液圧が適切に制御される場合、このシステムではガス圧が高くなりすぎることは起こり得ない。
【0076】
駆動ピストン46は、圧力制御のアクティブパーツではない制御方法を介して制御される。
【0077】
各ポンプ・ユニット41、42、43は個別に制御可能である。したがって、異なるピストン方法及び種々の動作条件で稼働させることが可能である。更に、2ストロークの間で3つのポンプ・ユニット41、42、43から2つのポンプ・ユニットに変えることが可能なため、ポンプ・ユニット41、42、43を個別に稼働させる可能性は冗長性を提供する。
【0078】
戻るスピードは前進する(ポンプ)スピードより速くなり得るので、2つのポンプ・ユニットだけを稼働するときにオーバーラップすることが可能になる。ポンプ・ユニット41、42、43の間のオーバーラップは、圧力スパイクを減少させるための必要性に従って調整され得る。
【0079】
シリンダの固定位置で高い摩耗が起こることと対照的に、ポンプ・シリンダ61の領域にわたって摩耗を分散するために、ポンプ・ストロークの最終位置は経時的に変化し得る。
【0080】
システムにより、たとえ突然のシャットダウン時(ピストン停止)でも過度の圧力はほとんど又は全く発生しない。これは非常に低い慣性及び動的応答に否定的に影響する他の要因のためである。
【0081】
制御バルブ24は液圧制御バルブ又は電子制御バルブであり得る。制御バルブ24は液圧制御バルブである本実施形態において、電子制御されたソレノイド・バルブ(図示せず)が設けられ、制御バルブ24への液圧制御信号を制御する。電子制御されたソレノイド・バルブは電子制御ユニット70から電子制御信号を受け取る。
【0082】
電子制御ユニット70、詳細にはピストン作動方法ユニット90は、ポンプ・ユニット41、42、43の駆動室48を高圧作動液の供給源20又はタンクに選択的に接続するよう構成される。
【0083】
電子制御ユニット70、詳細にはピストン作動方法ユニット90は、駆動ピストン47のポンプ・ストロークを、別の駆動ピストン47のポンプ・ストロークが終点に近づき、終わるポンプ・ストロークと始まるポンプ・ストロークとの間に小さいオーバーラップがあるときに開始するよう構成される。1つの実施形態において、電子制御ユニット70は、それぞれの駆動シリンダを実質的に連続して、好ましくは小さいオーバーラップで作動させるよう構成される。したがって、
図6及び
図7の例示のように、大きい圧力変動もなく、LNGの高圧気化器14への実質的に安定した流れが実現できる。
【0084】
図6、
図7、及び
図8は、高圧ポンプ40の通常動作を例示する。薄い連続線はポンプ・ユニット41を表し、濃い連続線はポンプ・ユニット42を表し、点線はポンプ・ユニット43を表す。
図6は、駆動ピストン46/ポンプ・ピストン62の動きを示すグラフである。グラフからわかるように、次のポンプ・ユニットのポンプ・ストロークは、現在作動しているポンプ・ユニットのポンプ・ストロークが終わる直前に始まる。
図7は、3つのポンプ・ユニット41、42、43の移送管50からの圧力出力から構成されて得られた圧力を示す。得られた圧力は実質的に一定で、変動がない。
【0085】
図8は、ポンプ・ユニットのスピードの特徴を示す。ここでは戻りストロークのスピードがポンプ・ストロークのスピードより著しく速いことが明確に見られ、そのため、3つ以上のポンプ・ユニットの内2つだけを使用しても、ポンプ・ユニット間のオーバーラップを可能にする。
【0086】
1つの実施形態において、電子制御ユニット70、詳細にはピストン作動方法ユニット90は、高圧ポンプから高圧気化器14への高圧液化ガスの実質的に一定な流れを得るために、ポンプ・ストロークが終わる際の動力及びポンプ・ストロークが始まる際の動力を計算に入れるよう構成される。
【0087】
1つの実施形態において、電子制御ユニット70、詳細にはピストン作動方法ユニット90は、ポンプ・ユニット41、42、43の内の1つのポンプ・ストロークをいつ開始すべきかを決定するよう、及び駆動ユニット41、42、43の内の任意のポンプ・ストロークをいつ終えるべきかを決定するよう構成される。したがって、ポンプ・ストロークを開始する地点、詳細にはポンプ・ストロークを終える地点は、ピストン作動方法ユニット90によって、好ましくはピストン監理ユニット92とともに正確に制御され得る。
【0088】
1つの実施形態において、電子制御ユニット70は、ポンプ・ユニット41、42、43の内の1つが故障した場合、ポンプ・ユニット41、42、43の内の機能する残りの駆動ピストンが動作するよう構成される。したがって、冗長性が得られ、ポンプ・ユニット41、42、43の内の1つが故障してもポンプ作用を続けることができる。
【0089】
1つの実施形態において、電子制御ユニット70は、高圧ポンプ40から高圧気化器までの液化ガスの流れの大きさに関連して、駆動室48が高圧作動液の供給源から切り離される駆動ピストン46の位置を調整するよう構成される。したがって、駆動ピストン46及びポンプ・ピストン62のスピード及び生じた慣性に関わらず、ポンプ・ストロークが逆転する位置を制御することができる。
【0090】
1つの実施形態によると、高圧ポンプから高圧気化器への液化ガスの流れが増加する場合、電子制御ユニット70は、関係する駆動ピストン46の駆動室48が高圧液の供給源20から切り離される位置で、駆動ピストンの位置を駆動ストロークと反対の方向に調整するよう構成される。また、高圧ポンプから高圧気化器への液化ガスの流れが減少する場合、電子制御ユニット70は、関係する駆動ピストン46の駆動室48が高圧液の供給源20から切り離される位置で、駆動ピストン46の位置を駆動ストロークの方向に調整するよう構成される。これは
図10及び
図11に示されている。
【0091】
図10は、駆動ストローク/ポンプ・ストロークの最終位置での駆動ピストン46及びポンプ・ピストン62の増加したスピードの効果を示している。薄い連続線はポンプ・ユニット41を表し、濃い連続線はポンプ・ユニット42を表し、点線はポンプ・ユニット43を表す。電子制御ユニット70は、駆動ピストンが80mmのストロークに達したとき、高圧ポンプ40によって送達された液化ガスの流れの荷重/大きさに関係なく、液圧制御バルブ24に対して駆動室48をタンクに接続するようシグナリングする。慣性とより速いスピードのため、駆動ピストン46の停止/逆転位置は、25%荷重での85mmから、50%荷重での89mm、100パーセント荷重での98mmへと変化する。
【0092】
図11は、荷重が大きい場合はより短いストロークで、また荷重が小さいときはより長いストロークで、駆動室48をタンクに接続することによって駆動ピストン46/ポンプ・ピストン62の増加したスピードを補償する電子制御ユニット70の効果を示すグラフである。グラフに見られるように、電子制御ユニット70は駆動/ポンプ・ストロークの最終位置を、このように正確にコントロールできる。
【0093】
グラフの例において、次の駆動シリンダのための25%荷重(すなわち、高圧ポンプ40の最大容量の25%)のために駆動室48をタンクに接続する信号は、前のシリンダが駆動室に75mm入ったときに発せられる。「前の」駆動シリンダの駆動室は、そのシリンダが駆動室に93mm入ったときに、タンクに接続される。次の駆動シリンダの高圧の供給源への接続の「信号ON」及び、「前の」シリンダのタンクへの接続の「信号OFF」は以下の表1に示される。
【0094】
【0095】
当然、ポンプ・シリンダ61の摩耗を低減するために開始位置を意図的に変えるよう、電子制御ユニット70をプログラムすることもまた可能である。
【0096】
1つの実施形態において、電子制御ユニット70は、ポンプ・シリンダ61の摩耗を軽減するためにポンプ・ピストン62のストローク領域にわたってポンプ・ピストン62が逆転する位置を分散させるため、アルゴリズム、計画、又は無作為によって、関係する駆動ピストン46の駆動室48が高圧液の供給源20から切り離される駆動ピストン46の位置を調整するよう構成される。ポンプ・シリンダ61の摩耗は、ポンプ・ストロークの終点位置が最も激しいことが知られている。ポンプ・ストロークの終点位置を変化させることによって、ポンプ・シリンダ61の摩耗はより大きい領域にわたって拡散され得るので、ポンプ・シリンダ61の寿命は大幅に増加され得る。
【0097】
1つの実施形態において、電子制御ユニット70は、駆動室48へ供給される作動液の制御圧力とは独立に、それぞれの駆動ピストン46の作動及び作動停止を制御するよう構成される。したがって、駆動ピストンの作動のための制御方法は、圧力制御とは関係なく電子制御ユニット70によって最適化され得る。
【0098】
本発明について、本明細書の様々な実施形態とともに説明してきた。しかし、請求された発明を実行する当業者は、図面、本開示、及び添付の特許請求の範囲を検討することによって、開示された実施形態の他の変形を理解し、実現することができる。特許請求の範囲において、「備える」という単語は他の要素又はステップを排除せず、複数であり得ることが明記されていない構成が複数であり得ることを排除しない。電子制御ユニットは、個別の電子制御ユニットの組合せによって形成され得る。特定の測定値が互いに異なる従属クレームに列挙されているということだけでは、これら測定されたものの組合せを利点として使用できない、ということを示さない。特許請求の範囲で使用される参照符号を、範囲を制限するものと解釈してはならない。