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  • 特開-積層体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138076
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】積層体
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20240927BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20240927BHJP
   B32B 7/022 20190101ALI20240927BHJP
   B32B 7/12 20060101ALI20240927BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
B32B27/00 H
B32B27/36
B32B7/022
B32B7/12
B65D65/40 D
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024117649
(22)【出願日】2024-07-23
(62)【分割の表示】P 2020033186の分割
【原出願日】2020-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(72)【発明者】
【氏名】門屋 春菜
(72)【発明者】
【氏名】工藤 茂樹
(57)【要約】
【課題】易引裂き性に優れる積層体を提供すること。
【解決手段】本発明は、包装袋を形成するための積層体10であって、結晶性ポリエステルフィルムを含む基材層1と、接着層2と、ポリエステルフィルムを含むシーラント層3と、をこの順に備え、シーラント層3の厚さが15~100μmであり、シーラント層3は、15mm幅で測定したMD方向の破断伸度を厚さで割った値が13%/μm以下であり、シーラント層3の面配向係数が0.001以上0.08以下である、積層体10を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
包装袋を形成するための積層体であって、
結晶性ポリエステルフィルムを含む基材層と、接着層と、ポリエステルフィルムを含むシーラント層と、をこの順に備え、
前記シーラント層の厚さが15~100μmであり、
前記シーラント層は、15mm幅で測定したMD方向の破断伸度を厚さで割った値が13%/μm以下であり、
前記シーラント層の面配向係数が0.001以上0.08以下である、積層体。
【請求項2】
前記ポリエステルフィルムの延伸倍率がMD方向に1.1倍以上である、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記基材層が、少なくとも一方の表面に無機酸化物の蒸着層を備える、請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項4】
水蒸気透過度が10g/m・day以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項5】
酸素透過度が5cc/m・day以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項6】
ポリエステル成分の合計質量が、前記積層体の全量を基準として、90質量%以上である、請求項1~5のいずれか一項に記載の積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体に関する。より詳細には、本発明は、包装袋を形成するための積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば食品の包装用に用いられる包装袋には、ベースフィルムとして耐熱性及び強靭性に優れた二軸延伸PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムと、シーラント層としてポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンフィルムとを備える積層体(軟包材)が知られている(例えば、特許文献1及び2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-178357号公報
【特許文献2】特許第5933309号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、ユニバーサルデザイン化の流れの中で、包装袋に対しても消費者への配慮が求められており、例えば開封しやすい包装袋として、易引裂き性を有する積層体を用いることが望まれている。ところが従来の包装袋に用いられる積層体は、易引裂き性の点で未だ改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、易引裂き性を有する積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、包装袋を形成するための積層体であって、結晶性ポリエステルフィルムを含む基材層と、接着層と、ポリエステルフィルムを含むシーラント層と、をこの順に備える積層体を提供する。積層体において、シーラント層は、15mm幅で測定したMD方向の破断伸度を厚さで割った値が13%/μm以下である。
【0007】
上記シーラント層の面配向係数は0.08以下であってもよい。
【0008】
上記基材層は、少なくとも一方の表面に無機酸化物の蒸着層を備えていてもよい。
【0009】
上記積層体は、水蒸気透過度が10g/m・day以下であってもよい。
【0010】
上記積層体は、酸素透過度が5cc/m・day以下であってもよい。
【0011】
上記積層体は、ポリエステル成分の合計質量が、前記積層体の全量を基準として、90質量%以上であってもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、易引裂き性を有する積層体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、一実施形態に係る積層体の模式断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、場合により図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0015】
<積層体>
図1は、一実施形態に係る積層体の模式断面図を示す。一実施形態に係る積層体10は、基材層1、接着層2及びシーラント層3をこの順に備える。
【0016】
[基材層]
基材層は支持体となるフィルム(ベースフィルム)であり、結晶性ポリエステルフィルムを含む。基材層は、結晶性ポリエステルフィルムからなるものであってよい。結晶性ポリエステルフィルムは延伸フィルムであってよく、非延伸フィルムであってよい。
【0017】
結晶性ポリエステルは、例えば、ジオール類とジカルボン酸とを縮重合させることによって得ることができる。
【0018】
ジオール類としては、脂肪族ジオールや脂環族ジオールが挙げられ、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、オクタメチレングリコール、ノナメチレングリコール、デカメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等の化合物が挙げられる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、バイオマス由来のエチレングリコールを用いてもよい。
【0019】
ジカルボン酸としては、脂肪族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸等が挙げられ、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、グルタコン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、メサコン酸、シトラコン酸、イタコン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、n-ドデシルコハク酸、n-デドセニルコハク酸、シクロヘキサンジカルボン酸、これらの酸の無水物又は低級アルキルエステル等の化合物が挙げられる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
包材の基材層としての機能を充分に発現する観点から、結晶性ポリエステルとして、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート等を用いることができる。
【0021】
基材層は、環境負荷を減らす観点から、再生ポリエステルを含んでもよい。再生ポリエステルとしてはエチレンテレフタレート単位を主体とするポリエステルからなる容器をケミカルリサイクルしてなるケミカルリサイクルポリエステル、エチレンテレフタレート単位を主体とするポリエステルからなる容器をメカニカルリサイクルしてなるメカニカルリサイクルポリエステル等を挙げることができる。
【0022】
基材層は、例えば水蒸気や酸素に対するガスバリア性向上の観点から、少なくとも一方の表面に無機酸化物の蒸着層を備えてよい。無機酸化物の蒸着層を用いることにより、積層体のリサイクル性に影響を与えない範囲のごく薄い層で、高いバリア性を得ることができる。無機酸化物としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化錫等が挙げられる。透明性及びバリア性の観点から、無機酸化物としては、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、及び酸化マグネシウムからなる群より選択されてよい。無機酸化物の蒸着層の厚さは、例えば5nm以上100nm以下とすることができ、10nm以上50nm以下であってよい。厚さが5nm以上であることでバリア性が良好に発揮され易く、厚さが100nm以下であることで、積層体の可撓性が維持され易い。蒸着層は、例えば物理気相成長法、化学気相成長法等によって形成することができる。
【0023】
基材層は、結晶性ポリエステルフィルム以外のフィルムを含んでいてもよく、結晶性ポリエステルフィルムを複数層含んでいてもよい。基材層が結晶性ポリエステルフィルムを複数層含む場合、各結晶性ポリエステルフィルムは同一であっても異なっていてもよい。基材層が結晶性ポリエステルフィルムを複数層含む場合は、少なくとも一層のポリエステルフィルムが、その表面に無機酸化物の蒸着層を備えてよい。
【0024】
基材層の厚さは、例えば5μm~1mmとすることができ、5~800μmであってよく、5~500μmであってよい。基材層が上記フィルムを複数含む場合は、その合計厚さを上記範囲内としてよい。
【0025】
[接着層]
接着層の接着成分としては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール等の主剤に、硬化剤として2官能以上の芳香族系又は脂肪族系イソシアネート化合物を作用させる、2液硬化型ポリウレタン系接着剤が挙げられる。
【0026】
接着層は、接着成分を基材層上に塗工後、乾燥することで形成することができる。ポリウレタン系接着剤を用いる場合、塗工後、例えば40℃で4日以上のエージングを行なうことで、取材の水酸基と硬化剤のイソシアネート基の反応が進行して強固な接着が可能となる。
【0027】
接着層の厚さは、接着性、追随性、加工性等の観点から、2~50μmとすることができ、3~20μmであってよい。
【0028】
[シーラント層]
シーラント層は、積層体においてヒートシールによる封止性を付与する層であり、ポリエステルフィルムを含む。シーラント層は、複数のポリエステルフィルムを含んでいてもよく、ポリエステルフィルムからなるものであってもよい。
【0029】
本実施形態において、シーラント層は、15mm幅で測定したMD方向の破断伸度を厚さで割った値が13%/μm以下である。上記値が13%/μm以下のシーラント層を用いることにより、積層体を引裂く際に樹脂の粘りによる伸びが発生しにくくなり、結果として積層体の引裂き強度を抑えることができる。このような観点から、シーラント層は、15mm幅で測定したMD方向の破断伸度を厚さで割った値が12%/μm以下であることが好ましく、11%/μm以下であることがより好ましい。15mm幅で測定したMD方向の破断伸度を厚さで割った値の下限値は特に制限されないが、例えば0.1%/μm以上であってよい。
【0030】
上記破断伸度は、シーラント層を構成するフィルム等の材質や、フィルム成形の際の延伸倍率等によって調整することができる。フィルム成形の際の延伸倍率としては、フィルムの材質等によって適宜変更し得るが、例えばMD方向に1.1倍以上であってよく、1.5倍以上であってよい。延伸倍率の上限値は特に制限されず、例えばMD方向に6倍以下であってよい。
【0031】
また、シーラント層の面配向係数は0.08以下であることが好ましい。通常、フィルムは配向方向へは引裂かれやすいが、配向方向以外の方向へは引裂かれにくい傾向がある。したがって、配向している2種以上のフィルムを任意に貼り合わせた積層体の場合、引裂く際にフィルム同士のデラミネーションによる引裂き阻害が発生し、股裂けが大きくなる場合がある。なお「股裂け」とは、2種以上のフィルムが同時に引裂かれる際に、互いの切り口(引裂き線)にずれが生じる現象をいう。シーラント層の面配向係数が0.08以下であると、積層体を引裂いた際に、シーラント層における配向の影響が小さくなり、股裂けを抑制することができる。このような観点から、シーラント層の面配向係数は、0.05以下であることがより好ましく、0.01以下であることが更に好ましい。シーラント層の面配向係数の下限値は特に制限されないが、例えば0以上であってよく、0.001以上であってよい。
【0032】
シーラント層に含まれるポリエステルフィルムは、例えば、ジオール類とジカルボン酸類とを縮重合させることによって得ることができる。ジオール及びジカルボン酸としては、上記基材層において例示した化合物が挙げられる。ポリエステルフィルムは、例えば、ジオール類及びジカルボン酸類を含むポリエステルフィルム形成用のレジンを、キャスト法等により押し出した後、フィルム搬送方向に所望の延伸倍率で延伸することで得ることができる。
【0033】
包材のシーラント層としての機能を充分に発現する観点から、ポリエステルとして、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート等を用いることができる。
【0034】
シーラント層は、環境負荷を減らす観点から、再生ポリエステル樹脂を含んでもよい。再生ポリエステル樹脂としてはエチレンテレフタレート単位を主体とするポリエステル樹脂からなる容器をケミカルリサイクルしてなるケミカルリサイクルポリエステル樹脂、エチレンテレフタレート単位を主体とするポリエステル樹脂からなる容器をメカニカルリサイクルしてなるメカニカルリサイクルポリエステル樹脂等を挙げることができる。
【0035】
シーラント層を構成するポリエステルフィルムには、難燃剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、粘着付与剤等の各種添加剤が添加されてよい。
【0036】
シーラント層の厚さは、シール強度の観点から、15~100μmであってよく、20~60μmであってよい。なお、シーラント層の厚さが15μm未満であると、積層体のサイズや内容物の量によってはシール強度が不足する傾向がある。また、積層体における接着剤やインキの占める質量比が高くなる傾向がある。シーラント層がポリエステルフィルムを複数層含む場合は、その合計厚さを上記範囲内としてよい。
【0037】
積層体の水蒸気透過度は、例えば10g/m・day以下とすることができる。また、積層体の酸素透過度は、例えば5cc/m・day以下とすることができる。これにより、内容物を水蒸気や酸素による劣化から保護し、長期的に品質を保持しやすくなる。この観点から、水蒸気透過度は7.5g/m・day以下であってよく、5g/m・day以下であってよく、1g/m・day以下であってよく、0.5g/m・day以下であってよい。また、酸素透過度は4cc/m・day以下であってよく、3cc/m・day以下であってよく、0.5cc/m・day以下であってよく、0.2cc/m・day以下であってよい。
【0038】
積層体は、ポリエステル成分を主構成とすることが好ましい。言い換えれば、積層体の構成フィルムの少なくとも一部をポリエステルフィルムとすることが好ましく、積層体の構成フィルムを実質的に全てポリエステルフィルムとすることがより好ましい。そのような積層体は、実質的に単一素材からなる(モノマテリアルの)積層体ということができ、当該積層体から形成される包装袋は、優れたリサイクル性が期待される。ここで、ポリエステル成分を主構成とする積層体とは、ポリエステル成分の合計質量が、積層体の全量を基準として、50質量%を超える積層体をいう。リサイクル性の観点からは、ポリエステル成分の合計質量が、積層体の全量を基準として、例えば、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、92.5質量%以上、又は95質量%以上であってよい。
【0039】
なおポリエステル成分とは、例えば、上述した基材層に含まれる結晶性ポリエステルフィルムや、シーラント層に含まれるポリエステルフィルム等が挙げられる。また、ポリエステル以外の成分としては、上記接着層における接着成分やインキ成分等が挙げられる。
【0040】
積層体は、内容物を包装するための包装袋を形成するために好適に用いることができる。内容物としては、液体調味料、トイレタリー用品、スープ、液体洗剤等の液状物、煮物等の固形物、カレー等の液状物と固形物の固液混合物などが挙げられる。上記積層体であれば、易引裂き性を有するため、容易に開封可能な包装袋を形成することができる。
【0041】
包装袋は、積層体のシーラント層同士を対向させた状態でヒートシールを行なうことで得られる。包装袋は、例えば積層体のシーラント層同士を対向させた状態で、積層体の三辺をヒートシールすることにより得ることができる。また、パッケージは、当該包装袋内に内容物を充填し、包装袋を密閉することで得られる。パッケージは、例えばヒートシールされていない残りの一辺から内容物を充填し、最後に残りの一辺をヒートシールすることにより得ることができる。
【実施例0042】
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0043】
[シーラント層用ポリエステルフィルムの作製]
表1に記載のモノマーを出発原料とするポリエステルフィルム形成用のレジン1及び2を準備した。表中、TPAはテレフタル酸、EGはエチレングリコール、NPGはネオペンチルグリコール、BDOは1,4-ブタンジオール、DEGはジエチレングリコール、CHDMは1,4-シクロヘキサンジメタノールであり、表中の数値の単位はmol%を表す。
【0044】
【表1】
【0045】
ポリエステルフィルムA:
上記で得られたレジン1をキャスト法により押し出した後、フィルム搬送方向(以下、「MD」という)に延伸倍率2倍で延伸することで、ポリエステルフィルムAを得た。延伸後の厚さは30μmであった。
【0046】
ポリエステルフィルムB:
延伸倍率を1.1倍としたこと以外はポリエステルフィルムAと同様にしてポリエステルフィルムBを得た。延伸後の厚さは30μmであった。
【0047】
ポリエステルフィルムC:
延伸後の厚さを50μmとしたこと以外はポリエステルフィルムAと同様にしてポリエステルフィルムCを得た。
【0048】
ポリエステルフィルムD:
延伸倍率を3倍としたこと以外はポリエステルフィルムAと同様にしてポリエステルフィルムDを得た。延伸後の厚さは30μmであった。
【0049】
ポリエステルフィルムE:
レジン1をレジン2に変更したこと以外はポリエステルフィルムBと同様にしてポリエステルフィルムEを得た。延伸後の厚さは30μmであった。
【0050】
(ポリエステルフィルムの破断伸度測定)
ポリエステルフィルムのMD方向の破断伸度をJIS K7127に準拠して測定した。試験片の幅は15mm、チャック間の初期距離は100mm、試験速度は300mm/分とした。
【0051】
(ポリエステルフィルムの面配向係数測定)
ポリエステルフィルムの面配向係数を以下のようにして測定・算出した。まず、JIS K7142「プラスチック―屈折率の求め方」(A法)に準拠して屈折率を測定した。測定機には、王子計測機器株式会社製KOBRA-WRを用いた。フィルムの長手方向の屈折率(nx)、幅方向の屈折率(ny)、厚さ方向の屈折率(nz)をそれぞれ測定し、下記式によって面配向係数(ΔP)を算出した。
ΔP=(nx+ny)/2-nz
【0052】
[積層体の作製]
(実施例1)
ベースフィルムとして、結晶性ポリエステルフィルムでありMD方向に対し30°の方向に配向している厚さ12μmの延伸PETフィルムを準備し、この延伸PETフィルムと、ポリエステルフィルムAとを、ドライラミネート法により貼り合わせて積層体を得た。ドライラミネートに用いる接着剤には、一般的なウレタン樹脂系接着剤を用いた。ウレタン樹脂系接着剤の乾燥後の塗布量は3g/m(厚さ3μm)となるように調整した。
【0053】
(実施例2)
ポリエステルフィルムAに代えてポリエステルフィルムBを用いたこと以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。
【0054】
(実施例3)
ポリエステルフィルムAに代えてポリエステルフィルムCを用いたこと以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。
【0055】
(実施例4)
ポリエステルフィルムAに代えてポリエステルフィルムDを用いたこと以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。
【0056】
(実施例5)
ポリエステルフィルムAに代えてポリエステルフィルムEを用いたこと以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。
【0057】
(実施例6)
ベースフィルムとしての延伸PETフィルムの一方の表面に、バリア層としてシリカ蒸着膜を設けることでバリアフィルムとし、このバリアフィルムのシリカ蒸着面と、ポリエステルフィルムAとを、ドライラミネート法により貼り合わせたこと以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。
【0058】
(実施例7)
ベースフィルムを、結晶性ポリエステルフィルムである延伸PETフィルム(ユニチカ社製、商品名「エンブレットPC」)に代えた以外は、実施例6と同様にして積層体を得た。
【0059】
(実施例8)
バリアフィルム上に、更に結晶性ポリエステルフィルムである厚さ12μmの延伸PETフィルムを積層したこと、ウレタン樹脂系接着剤の乾燥後の塗布量を4g/m(厚さ4μm)となるように調整したこと以外は、実施例6と同様にして積層体を得た。なお、延伸PETフィルムの積層においても上記ウレタン樹脂系接着剤を用い、乾燥後の塗布量を4g/m(厚さ4μm)となるように調整した。
【0060】
(比較例1)
ポリエステルフィルムAに代えて厚さ30μmのポリエステルフィルムG-13(倉敷紡績株式会社製)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。
【0061】
(比較例2)
ポリエステルフィルムAに代えて厚さ60μmのポリプロピレンフィルムZK207(東レフィルム加工株式会社製)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。
【0062】
(比較例3)
ポリエステルフィルムAに代えて厚さ30μmのポリエステルフィルムG-13(倉敷紡績株式会社製)を用いたこと以外は、実施例7と同様にして積層体を得た。
【0063】
[各種評価]
得られた積層体について、各種評価を行った。結果を表2及び表3に示す。
【0064】
(引裂き強度測定)
JIS K7128に記載のトラウザー法に準拠して、積層体のMD方向の引裂き強度を測定した。
【0065】
(股裂け幅測定)
積層体を90mm角で2枚切り出し、シーラント層同士を対面させて外周3辺をシールした後、水30mlを充填し、残り1辺をシールして密封することでサンプルを作製した。シール条件は厚0.2MPa、温度190℃、時間1秒とした。シールの幅は外周から5mmとした。
【0066】
作成したサンプルを試験者の手でMD方向へ引き裂いて開封し、互いに重なり合ったシートのうち表側シートの切り口と、裏側シートの切り口とのずれ量(以下、段差という)を測定した。段差の測定は、引裂き方向と直交する方向においてスケールを当てて行った。開封線に沿う段差の最大値を股裂け幅の測定値とした。
【0067】
(酸素透過度及び水蒸気透過度測定)
JIS K7126Bに準拠して、積層体の酸素透過度及び水蒸気透過度を測定した。
【0068】
(ポリエステル成分の質量比率測定)
積層体を構成する材料の全質量を基準として、ポリエステル成分(ポリエステルフィルム)の質量割合を算出した。
【0069】
【表2】
【0070】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明に係る積層体は、包材としての優れた易引裂き性を有する。また、その構成フィルムを実質的に全てポリエステルフィルムとすることができる。このような積層体は、単一素材からなる(モノマテリアルの)包装材料ということができ、優れたリサイクル性が期待される。
【符号の説明】
【0072】
1…基材層、2…接着層、3…シーラント層、10…積層体。
図1