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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138091
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20240927BHJP
   H01L 29/739 20060101ALI20240927BHJP
   H01L 21/8234 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
H01L29/78 652D
H01L29/78 653A
H01L29/78 652Q
H01L29/78 652F
H01L29/78 655D
H01L29/78 657D
H01L27/06 102A
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024119501
(22)【出願日】2024-07-25
(62)【分割の表示】P 2020164288の分割
【原出願日】2020-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109612
【弁理士】
【氏名又は名称】倉谷 泰孝
(74)【代理人】
【識別番号】100116643
【弁理士】
【氏名又は名称】伊達 研郎
(74)【代理人】
【識別番号】100184022
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 美保
(72)【発明者】
【氏名】工藤 和樹
(72)【発明者】
【氏名】藤井 秀紀
(72)【発明者】
【氏名】高橋 徹雄
(57)【要約】
【課題】RC-IGBTのダイオード領域のリカバリ損失を低減した半導体装置を得る。
【解決手段】本開示に係る半導体装置は、IGBT領域10とダイオード領域20とが隣接して設けられたRC-IGBTである。ダイオード領域20には、n型ドリフト層1よりも第1主面側に設けられたp型アノード層25と、p型アノード層25の第1主面側であって半導体基板の第1主面側の表層に設けられ、エミッタ電極6に接続されたp型コンタクト層24と、半導体基板の第2主面側の表層に設けられたn型カソード層26と、が設けられている。p型コンタクト層24は、p型不純物としてアルミを含有し、p型コンタクト層24の厚さは、IGBT領域10に設けられたn型ソース層13の厚さよりも小さい。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面と前記第1主面に対向する第2主面との間にn型のドリフト層を有するシリコンで形成された半導体基板に、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ領域とダイオード領域とが隣接して設けられ、前記半導体基板の前記第1主面上にエミッタ電極が設けられた半導体装置であって、
前記絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ領域には、
前記ドリフト層よりも前記第1主面側に設けられたp型のベース層と、
前記ベース層の前記第1主面側であって、前記半導体基板の前記第1主面側の表層に選択的に設けられたn型のソース層と、
前記ベース層の前記第1主面側であって、前記半導体基板の前記第1主面側の表層のうち前記ソース層が設けられない領域に設けられ、前記エミッタ電極に接続されたp型の第1コンタクト層と、
前記ベース層を貫通し前記ドリフト層に達するトレンチの内面に設けられたゲートトレンチ絶縁膜と、
前記ゲートトレンチ絶縁膜を介して前記トレンチ内に設けられたゲートトレンチ電極と、
前記半導体基板の前記第2主面側の表層に設けられたp型のコレクタ層と、が設けられ、
前記ダイオード領域には、
前記ドリフト層よりも前記第1主面側に設けられたp型のアノード層と、
前記アノード層の前記第1主面側であって、前記半導体基板の前記第1主面側の表層に設けられ、前記エミッタ電極に接続されたp型の第2コンタクト層と、
前記半導体基板の前記第2主面側の表層に設けられたn型のカソード層と、が設けられ、
前記第2コンタクト層は、p型不純物としてアルミを含有する、半導体装置。
【請求項2】
前記第1コンタクト層は、p型不純物としてアルミを含有する、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1コンタクト層及び、前記第2コンタクト層の厚さは、前記ソース層の厚さよりも小さい、請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記ソース層の両端は、隣り合った2つの前記トレンチに接する、請求項2に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1コンタクト層の両端は、隣り合った2つの前記トレンチに接する、請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記ダイオード領域には、
前記アノード層に達するトレンチの内面に設けられたダイオードトレンチ絶縁膜と、
前記ダイオードトレンチ絶縁膜を介して前記トレンチ内に設けられたダイオードトレンチ電極と、がさらに設けられ、
前記第2コンタクト層の両端は、隣り合った2つの前記トレンチに接する、請求項5に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第1コンタクト層及び、前記第2コンタクト層は、前記エミッタ電極とオーミック接触される、請求項2に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記コレクタ層は、前記絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ領域と前記ダイオード領域との境界から前記ダイオード領域側にはみ出して設けられる、請求項1に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)と還流用のダイオードとを一つの半導体基板に形成した半導体装置であるRC-IGBT(Reverse Conducting IGBT:逆導通IGBT)が提案されている。このような半導体装置では、ダイオード領域のアノード部において表面電極とアノード部とのコンタクト抵抗を下げるため、アノード部の表層に不純物濃度が高いp型コンタクト層が設けられる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-192597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、p型コンタクト層をダイオード領域のアノード部に設けた場合、ダイオード動作時にアノード部からのホールの注入量が多くなり、リカバリ損失が増大するという課題があった。
【0005】
本開示は、上記した課題を解決するためになされたものであり、RC-IGBTのダイオード領域のリカバリ損失を低減した半導体装置を得ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る半導体装置は、第1主面と第1主面に対向する第2主面との間にn型のドリフト層を有する半導体基板に、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ領域とダイオード領域とが隣接して設けられ、半導体基板の第1主面上にエミッタ電極が設けられた半導体装置であって、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ領域には、ドリフト層よりも第1主面側に設けられたp型のベース層と、ベース層の第1主面側であって、半導体基板の第1主面側の表層に選択的に設けられたn型のソース層と、ベース層の第1主面側であって、半導体基板の第1主面側の表層のうちソース層が設けられない領域に設けられ、エミッタ電極に接続されたp型の第1コンタクト層と、ベース層を貫通しドリフト層に達するトレンチの内面に設けられたゲートトレンチ絶縁膜と、ゲートトレンチ絶縁膜を介してトレンチ内に設けられたゲートトレンチ電極と、半導体基板の第2主面側の表層に設けられたp型のコレクタ層と、が設けられ、ダイオード領域には、ドリフト層よりも第1主面側に設けられたp型のアノード層と、アノード層の第1主面側であって、半導体基板の第1主面側の表層に設けられ、エミッタ電極に接続されたp型の第2コンタクト層と、半導体基板の第2主面側の表層に設けられたn型のカソード層と、が設けられ、第2コンタクト層は、p型不純物としてアルミを含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る半導体装置は、RC-IGBTのダイオード領域に設けられる第2コンタクト層がp型不純物としてアルミを含有するため、ダイオード領域のリカバリ損失を低減した半導体装置を得ることができるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1の半導体装置を示す平面図である。
図2】実施の形態1の半導体装置の他の構成を示す平面図である。
図3】実施の形態1の半導体装置のIGBT領域の構成を示す部分拡大平面図である。
図4】実施の形態1の半導体装置のIGBT領域の構成を示すA-A断面図である。
図5】実施の形態1の半導体装置のIGBT領域の構成を示すB-B断面図である。
図6】実施の形態1の半導体装置のダイオード領域の構成を示す部分拡大平面図である。
図7】実施の形態1の半導体装置のダイオード領域の構成を示すC-C断面図である。
図8】実施の形態1の半導体装置のダイオード領域の構成を示すD-D断面図である。
図9】実施の形態1の半導体装置のIGBT領域とダイオード領域の境界の構成を示すG-G断面図である。
図10】実施の形態1の半導体装置の終端領域の構成を示す断面図である。
図11】実施の形態1の半導体装置の製造方法を示す第1の図である。
図12】実施の形態1の半導体装置の製造方法を示す第2の図である。
図13】実施の形態1の半導体装置の製造方法を示す第3の図である。
図14】実施の形態1の半導体装置の製造方法を示す第4の図である。
図15】実施の形態1の半導体装置の製造方法を示す第5の図である。
図16】実施の形態1の半導体装置の製造方法を示す第6の図である。
図17】実施の形態2の半導体装置のIGBT領域とダイオード領域の境界の構成を示すG-G断面図である。
図18】実施の形態2の半導体装置の変形例のIGBT領域とダイオード領域の境界の構成を示すG-G断面図である。
図19】実施の形態3の半導体装置の変形例のIGBT領域とダイオード領域の境界の構成を示すG-G断面図である。
図20】実施の形態4の半導体装置の変形例のIGBT領域とダイオード領域の境界の構成を示すG-G断面図である。
図21】実施の形態5の半導体装置の変形例のIGBT領域とダイオード領域の境界の構成を示すG-G断面図である。
図22】実施の形態6の半導体装置の変形例のIGBT領域とダイオード領域の境界の構成を示すG-G断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面に基づいて実施の形態について説明する。なお、以下の図面において同一又は相当する部分には同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。また、以下の説明では、「上」又は「下」の特定の方向を意味する用語が用いられる場合があるが、これらの用語は便宜上用いられているものであり、実際に実施される際の方向とは関係しない。
【0010】
以下の説明において、nおよびpは半導体の導電型を示す。また、nは不純物濃度がnよりも低濃度であることを示し、nは不純物濃度がnよりも高濃度であることを示す。同様に、pは不純物濃度がpよりも低濃度であることを示し、pは不純物濃度がpよりも高濃度であることを示す。
【0011】
実施の形態1.
実施の形態1の半導体装置及び半導体装置の製造方法について、図1から図16を用いて説明する。
【0012】
まず、実施の形態1の半導体装置の全体構成について、図1及び図2を用いて説明する。図1は、RC-IGBTである半導体装置100を示す平面図である。また、図2は、他の構成のRC-IGBTである半導体装置101を示す平面図である。
【0013】
図1に示す半導体装置100は、IGBT領域10とダイオード領域20とがストライプ状に並んで設けられたものであり、単に「ストライプ型」と呼んでよい。図2に示す半導体装置101は、ダイオード領域20が縦方向と横方向に複数設けられ、ダイオード領域20の周囲にIGBT領域10が設けられたものであり、単に「アイランド型」と呼んでよい。
【0014】
図1において、半導体装置100は、1つの半導体装置内にIGBT領域10とダイオード領域20とを備えている。IGBT領域10およびダイオード領域20は、半導体装置100の一端側から他端側に延伸し、IGBT領域10およびダイオード領域20の延伸方向と直交する方向に交互にストライプ状に設けられている。図1では、IGBT領域10を3個、ダイオード領域を2個で示し、全てのダイオード領域20がIGBT領域10で挟まれた構成で示しているが、IGBT領域10とダイオード領域20の数はこれに限るものでなく、IGBT領域10の数は3個以上でも3個以下でもよく、ダイオード領域20の数も2個以上でも2個以下でもよい。また、図1のIGBT領域10とダイオード領域20の場所を入れ替えた構成であってもよく、全てのIGBT領域10がダイオード領域20に挟まれた構成であってもよい。また、IGBT領域10とダイオード領域20とがそれぞれ1つずつ互いに隣り合って設けられた構成であってもよい。
【0015】
図1に示すように、紙面下側のIGBT領域10に隣接してパッド領域40が設けられている。パッド領域40は半導体装置100を制御するための制御パッド41が設けられる領域である。IGBT領域10およびダイオード領域20を合わせてセル領域と呼ぶ。セル領域およびパッド領域40を合わせた領域の周囲には半導体装置100の耐圧保持のために終端領域30が設けられている。終端領域30には、周知の耐圧保持構造を適宜選択して設けることができる。耐圧保持構造は、例えば、半導体装置100のおもて面側である第1主面側に、p型半導体のp型終端ウェル層でセル領域を囲ったFLR(Field Limiting Ring)や濃度勾配をつけたp型ウェル層でセル領域を囲ったVLD(Variation of Lateral Doping)を設けて構成してよく、FLRに用いられるリング状のp型終端ウェル層の数やVLDに用いられる濃度分布は、半導体装置100の耐圧設計によって適宜選択してよい。また、パッド領域40のほぼ全域に亘ってp型終端ウェル層を設けてもよく、パッド領域40にIGBTセルやダイオードセルを設けてもよい。
【0016】
制御パッド41は、例えば、電流センスパッド41a、ケルビンエミッタパッド41b、ゲートパッド41c、温度センスダイオードパッド41d、41eであってよい。電流センスパッド41aは、半導体装置100のセル領域に流れる電流を検知するための制御パッドで、半導体装置100のセル領域に電流が流れる際に、セル領域全体に流れる電流の数分の1から数万分の1の電流が流れるようにセル領域の一部のIGBTセルまたはダイオードセルに電気的に接続された制御パッドである。
【0017】
ケルビンエミッタパッド41bおよびゲートパッド41cは、半導体装置100をオンオフ制御するためのゲート駆動電圧が印加される制御パッドである。ケルビンエミッタパッド41bはIGBTセルのp型ベース層に電気的に接続され、ゲートパッド41cはIGBTセルのゲートトレンチ電極に電気的に接続される。ケルビンエミッタパッド41bとp型ベース層とはp型コンタクト層を介して電気的に接続されてもよい。温度センスダイオードパッド41d、41eは、半導体装置100に設けられた温度センスダイオードのアノードおよびカソードに電気的に接続された制御パッドである。セル領域内に設けられた図示しない温度センスダイオードのアノードとカソードとの間の電圧を測定して、半導体装置100の温度を測定する。
【0018】
図2において、半導体装置101は、1つの半導体装置内にIGBT領域10とダイオード領域20とを備えている。ダイオード領域20は、半導体装置内の縦方向および横方向にそれぞれ複数並んで配置されており、ダイオード領域20は周囲をIGBT領域10に取り囲まれている。つまり、IGBT領域10内に複数のダイオード領域20がアイランド状に設けられている。図2では、ダイオード領域20は紙面左右方向に4列、紙面上限方向に2行のマトリクス状に設けた構成で示しているが、ダイオード領域20の個数および配置はこれに限るものではなく、IGBT領域10内に1つまたは複数のダイオード領域20が点在して設けられ、それぞれのダイオード領域20が周囲をIGBT領域10に囲まれた構成であればよい。
【0019】
図2に示すように、IGBT領域10の紙面下側に隣接してパッド領域40が設けられ、パッド領域40とIGBT領域10とダイオード領域20とを含むセル領域とを合わせた領域の周囲には半導体装置101の耐圧保持のために終端領域30が設けられている。パッド領域40および終端領域30の構造は図1に示す半導体装置100と同様であってよい。
【0020】
次に、実施の形態1の半導体装置のIGBT領域の構成について、図3から図5を用いて詳細を説明する。図3は、RC-IGBTである半導体装置のIGBT領域の構成を示す部分拡大平面図である。また、図4および図5は、RC-IGBTである半導体装置のIGBT領域の構成を示す断面図である。図3は、図1に示した半導体装置100または図2に示した半導体装置101における破線82で囲った領域を拡大して示したものである。図4は、図3に示した半導体装置100または半導体装置101の破線A-Aにおける断面図であり、図5は、図3に示した半導体装置100または半導体装置101の破線B-Bにおける断面図である。
【0021】
図3に示すように、IGBT領域10には、アクティブトレンチゲート11とダミートレンチゲート12とがストライプ状に設けられている。半導体装置100では、アクティブトレンチゲート11およびダミートレンチゲート12は、IGBT領域10の長手方向に延伸しておりIGBT領域10の長手方向がアクティブトレンチゲート11およびダミートレンチゲート12の長手方向となっている。一方、半導体装置101では、IGBT領域10に長手方向と短手方向の区別が特段にないが、紙面左右方向をアクティブトレンチゲート11およびダミートレンチゲート12の長手方向としてもよく、紙面上下方向をアクティブトレンチゲート11およびダミートレンチゲート12の長手方向としてもよい。
【0022】
アクティブトレンチゲート11は、半導体基板に形成されたトレンチ内にゲートトレンチ絶縁膜11bを介してゲートトレンチ電極11aが設けられて構成されている。ダミートレンチゲート12は、半導体基板に形成されたトレンチ内にダミートレンチ絶縁膜12bを介してダミートレンチ電極12aが設けられて構成されている。アクティブトレンチゲート11のゲートトレンチ電極11aは、ゲートパッド41cに電気的に接続される。ダミートレンチゲート12のダミートレンチ電極12aは、半導体装置100または半導体装置101の第1主面上に設けられるエミッタ電極に電気的に接続される。
【0023】
型ソース層13が、アクティブトレンチゲート11の幅方向の両側にゲートトレンチ絶縁膜11bに接して設けられる。n型ソース層13は、n型不純物として例えばヒ素またはリン等を有する半導体層であり、n型不純物の濃度は1.0E+17/cm~1.0E+20/cmである。n型ソース層13は、アクティブトレンチゲート11の延伸方向に沿って、p型コンタクト層14と交互に設けられる。p型コンタクト層14は、隣り合った2つのダミートレンチゲート12の間にも設けられる。p型コンタクト層14は、p型不純物としてアルミを有する半導体層であり、p型不純物としてのアルミの濃度は1.0E+12/cm~1.0E+18/cmであることが望ましい。
【0024】
図3に示すように半導体装置100または半導体装置101のIGBT領域10では、アクティブトレンチゲート11が3本並んだ隣に、ダミートレンチゲート12が3本並び、ダミートレンチゲート12が3本並んだ隣に、アクティブトレンチゲート11が3本並んだ構成をしている。IGBT領域10は、このようにアクティブトレンチゲート11の組とダミートレンチゲート12の組が交互に並んだ構成をしている。図3では、1つのアクティブトレンチゲート11の組に含まれるアクティブトレンチゲート11の数を3としたが、1以上であればよい。また、1つのダミートレンチゲート12の組に含まれるダミートレンチゲート12の数は1以上であってよく、ダミートレンチゲート12の数は0であってもよい。すなわち、IGBT領域10に設けられるトレンチの全てをアクティブトレンチゲート11としてもよい。
【0025】
図4は、半導体装置100または半導体装置101の図3における破線A-Aでの断面図であり、IGBT領域10の断面図である。半導体装置100または半導体装置101は、半導体基板からなるn型ドリフト層1を有している。n型ドリフト層1は、n型不純物として例えばヒ素またはリン等を有する半導体層であり、n型不純物の濃度は1.0E+12/cm~1.0E+15/cmであり、n型ドリフト層1のn型不純物の濃度は、p型コンタクト層14のp型不純物の濃度より低い。半導体基板は、図4においては、n型ソース層13およびp型コンタクト層14からp型コレクタ層16までの範囲である。図4においてn型ソース層13およびp型コンタクト層14の紙面上端を半導体基板の第1主面、p型コレクタ層16の紙面下端を半導体基板の第2主面と呼ぶ。半導体基板の第1主面は、半導体装置100のおもて面側の主面であり、半導体基板の第2主面は、半導体装置100の裏面側の主面である。半導体装置100は、セル領域であるIGBT領域10において、第1主面と第1主面に対向する第2主面との間にn型ドリフト層1を有している。
【0026】
図4に示すように、IGBT領域10では、n型ドリフト層1の第1主面側に、n型ドリフト層1よりもn型不純物の濃度が高いn型キャリア蓄積層2が設けられている。n型キャリア蓄積層2は、n型不純物として例えばヒ素またはリン等を有する半導体層であり、n型不純物の濃度は1.0E+13/cm~1.0E+17/cmである。なお、半導体装置100または半導体装置101は、n型キャリア蓄積層2が設けられずに、図4で示したn型キャリア蓄積層2の領域にもn型ドリフト層1が設けられた構成であってもよい。n型キャリア蓄積層2を設けることによって、IGBT領域10に電流が流れた際の通電損失を低減することができる。n型キャリア蓄積層2とn型ドリフト層1とを合わせてドリフト層と呼んでもよい。
【0027】
n型キャリア蓄積層2は、n型ドリフト層1を構成する半導体基板に、n型不純物をイオン注入し、その後アニールによって注入したn型不純物をn型ドリフト層1である半導体基板内に拡散させることで形成される。
【0028】
n型キャリア蓄積層2の第1主面側には、p型ベース層15が設けられている。p型ベース層15は、p型不純物として例えばボロンまたはアルミ等を有する半導体層であり、p型不純物の濃度は1.0E+12/cm~1.0E+18/cmである。p型ベース層15はアクティブトレンチゲート11のゲートトレンチ絶縁膜11bに接している。p型ベース層15の第1主面側には、アクティブトレンチゲート11のゲートトレンチ絶縁膜11bに接してn型ソース層13が設けられ、残りの領域にp型コンタクト層14が設けられている。n型ソース層13およびp型コンタクト層14は半導体基板の第1主面を構成している。なお、p型コンタクト層14は、p型ベース層15よりもp型不純物の濃度が高い領域であり、p型コンタクト層14とp型ベース層15とを区別する必要がある場合にはそれぞれを個別に呼称してよく、p型コンタクト層14とp型ベース層15とを合わせてp型ベース層と呼んでもよい。
【0029】
p型コンタクト層14は、図3および図4に示すように、トレンチ間の表層に形成され、p型不純物としてアルミを含有する半導体層である。p型コンタクト層14は、p型不純物としてアルミを含有することにより、n型ソース層13よりも厚さを小さく形成することができ、n型ソース層13の厚さの1/2以下の厚さを有することが望ましい。また、p型コンタクト層14におけるアルミの不純物濃度は、1.0E+12/cm~1.0E+18/cmであることが望ましい。アルミのドーピング方法としては、第1主面側からアルミイオンを注入してもよいし、あるいは、アルミを含んだ電解液を用いてもよい。なお、p型コンタクト層14は、トレンチ間の表層の少なくとも一部に形成されていればよい。
【0030】
また、半導体装置100または半導体装置101は、n型ドリフト層1の第2主面側に、n型ドリフト層1よりもn型不純物の濃度が高いn型バッファ層3が設けられている。n型バッファ層3は、半導体装置100がオフ状態のときにp型ベース層15から第2主面側に伸びる空乏層がパンチスルーするのを抑制するために設けられる。n型バッファ層3は、例えば、リン(P)あるいはプロトン(H)を注入して形成してよく、リン(P)およびプロトン(H)の両方を注入して形成してもよい。n型バッファ層3のn型不純物の濃度は1.0E+12/cm~1.0E+18/cmである。
【0031】
なお、半導体装置100または半導体装置101は、n型バッファ層3が設けられずに、図4で示したn型バッファ層3の領域にもn型ドリフト層1が設けられた構成であってもよい。また、n型バッファ層3とn型ドリフト層1とを合わせてドリフト層と呼んでもよい。
【0032】
半導体装置100または半導体装置101は、n型バッファ層3の第2主面側に、p型コレクタ層16が設けられている。すなわち、n型ドリフト層1と第2主面との間に、p型コレクタ層16が設けられている。p型コレクタ層16は、p型不純物として例えばボロンまたはアルミ等を有する半導体層であり、p型不純物の濃度は1.0E+16/cm~1.0E+20/cmである。p型コレクタ層16は半導体基板の第2主面を構成している。p型コレクタ層16は、IGBT領域10だけでなく、終端領域30にも設けられており、p型コレクタ層16のうち終端領域30に設けられた部分はp型終端コレクタ層16aを構成している。また、p型コレクタ層16は、IGBT領域10からダイオード領域20に一部がはみ出して設けられてもよい。
【0033】
図4に示すように、半導体装置100または半導体装置101は、半導体基板の第1主面からp型ベース層15を貫通し、n型ドリフト層1に達するトレンチが形成されている。トレンチ内にゲートトレンチ絶縁膜11bを介してゲートトレンチ電極11aが設けられることでアクティブトレンチゲート11が構成されている。ゲートトレンチ電極11aは、ゲートトレンチ絶縁膜11bを介してn型ドリフト層1に対向している。また、トレンチ内にダミートレンチ絶縁膜12bを介してダミートレンチ電極12aが設けられることでダミートレンチゲート12が構成されている。ダミートレンチ電極12aは、ダミートレンチ絶縁膜12bを介してn型ドリフト層1に対向している。アクティブトレンチゲート11のゲートトレンチ絶縁膜11bは、p型ベース層15およびn型ソース層13に接している。ゲートトレンチ電極11aにゲート駆動電圧が印加されると、アクティブトレンチゲート11のゲートトレンチ絶縁膜11bに接するp型ベース層15にチャネルが形成される。
【0034】
図4に示すように、アクティブトレンチゲート11のゲートトレンチ電極11aの上には層間絶縁膜4が設けられている。半導体基板の第1主面の層間絶縁膜4が設けられていない領域の上、および層間絶縁膜4の上にはバリアメタル5が形成されている。バリアメタル5は、チタン(Ti)やチタン合金で形成されることが望ましく、例えば、チタンを含む導電体であってよく、例えば、窒化チタンであってよく、チタンとシリコン(Si)を合金化させたTiSiであってよい。図4に示すように、バリアメタル5は、n型ソース層13、p型コンタクト層14およびダミートレンチ電極12aにオーミック接触し、n型ソース層13、p型コンタクト層14およびダミートレンチ電極12aと電気的に接続されている。
【0035】
バリアメタル5の上には、エミッタ電極6が設けられる。エミッタ電極6は、例えば、アルミニウムシリコン合金(Al―Si系合金)などのアルミ合金で形成してもよく、アルミ合金で形成した電極上に、無電解めっき、あるいは電解めっきでめっき膜を形成した複数層の金属膜からなる電極であってもよい。無電解めっき、あるいは電解めっきで形成するめっき膜は、例えば、ニッケル(Ni)めっき膜であってよいし、あるいは、銅(Cu)めっき膜であってもよい。エミッタ電極6を銅めっき膜などの機械強度が大きい銅または銅合金で形成することで、パワーサイクル耐量が向上する効果を奏する。なお、エミッタ電極6は、ニッケルめっき膜上または銅めっき膜上にさらに金(Au)めっき膜を有してもよい。
【0036】
また、隣接する層間絶縁膜4間等の微細な領域であって、エミッタ電極6では良好な埋め込みが得られない領域がある場合には、エミッタ電極6よりも埋込性が良好なタングステンを微細な領域に配置して、タングステンの上にエミッタ電極6を設けてもよい。また、n型ソース層13などのn型の半導体層の上のみにバリアメタル5を設けてもよい。バリアメタル5とエミッタ電極6とを合わせてエミッタ電極と呼んでよい。なお、図4では、ダミートレンチゲート12のダミートレンチ電極12aの上には層間絶縁膜4が設けられない図を示したが、層間絶縁膜4をダミートレンチゲート12のダミートレンチ電極12aの上に形成しても良い。層間絶縁膜4をダミートレンチゲート12のダミートレンチ電極12aの上に形成した場合には、別の断面においてエミッタ電極6とダミートレンチ電極12aとを電気的に接続すれば良い。
【0037】
なお、本実施の形態の半導体装置ではバリアメタル5を有する構成について説明するが、バリアメタル5を設けずに、n型ソース層13、p型コンタクト層14およびダミートレンチ電極12aの上にエミッタ電極6を設けることもできる。バリアメタルを構成するチタンは、p型シリコンに対するエネルギー障壁高さが高いため、従来、p型コンタクト層の不純物濃度を高くすることで、バリアメタルとp型シリコンであるp型コンタクト層とのオーミック接触を可能にしていた。一方、エミッタ電極を構成するアルミは、p型シリコンに対する障壁高さがチタンに比べて低く、p型の不純物濃度が低くてもエミッタ電極とp型シリコンであるp型コンタクト層とのオーミック接触が可能となる。
【0038】
p型コレクタ層16の第2主面側には、コレクタ電極7が設けられる。コレクタ電極7は、エミッタ電極6と同様、アルミ合金やアルミ合金とめっき膜とで構成されていてもよい。また、コレクタ電極7はエミッタ電極6と異なる構成であってもよい。コレクタ電極7は、p型コレクタ層16にオーミック接触し、p型コレクタ層16と電気的に接続されている。
【0039】
図5は、半導体装置100または半導体装置101の図3における破線B-Bでの断面図であり、IGBT領域10の断面図である。図4に示した破線A-Aでの断面図とは、アクティブトレンチゲート11に接して、半導体基板の第1主面側に設けられるn型ソース層13が、図5の破線B-Bでの断面には見られない点が異なる。つまり、図3に示したように、n型ソース層13は、p型ベース層の第1主面側に選択的に設けられている。なお、ここで言うp型ベース層とは、p型ベース層15とp型コンタクト層14とを合わせて呼ぶp型ベース層のことである。
【0040】
次に、実施の形態1の半導体装置のダイオード領域の構成について、図6から図8を用いて詳細を説明する。図6は、RC-IGBTである半導体装置のダイオード領域の構成を示す部分拡大平面図である。また、図7および図8は、RC-IGBTである半導体装置のダイオード領域の構成を示す断面図である。図6は、図1に示した半導体装置100または半導体装置101における破線83で囲った領域を拡大して示したものである。図7は、図6に示した半導体装置100の破線C-Cにおける断面図である。図8は、図6に示した半導体装置100の破線D-Dにおける断面図である。
【0041】
ダイオードトレンチゲート21は、半導体装置100または半導体装置101の第1主面に沿ってセル領域であるダイオード領域20の一端側から対向する他端側に向かって延伸している。ダイオードトレンチゲート21は、ダイオード領域20の半導体基板に形成されたトレンチ内にダイオードトレンチ絶縁膜21bを介してダイオードトレンチ電極21aが設けられることで構成される。ダイオードトレンチ電極21aはダイオードトレンチ絶縁膜21bを介してn型ドリフト層1に対向している。隣接する2つのダイオードトレンチゲート21の間には、p型コンタクト層24およびp型アノード層25が設けられている。p型コンタクト層24は、p型不純物としてアルミを有する半導体層であり、p型不純物としてのアルミの濃度は1.0E+12/cm~1.0E+18/cmであることが望ましい。p型アノード層25は、p型不純物として例えばボロンまたはアルミ等を有する半導体層であり、p型不純物の濃度は1.0E+12/cm~1.0E+18/cmである。p型コンタクト層24とp型アノード層25とはダイオードトレンチゲート21の長手方向に交互に設けられている。
【0042】
図7は、半導体装置100または半導体装置101の図6における破線C-Cでの断面図であり、ダイオード領域20の断面図である。半導体装置100または半導体装置101は、ダイオード領域20においてもIGBT領域10と同じく半導体基板からなるn型ドリフト層1を有している。ダイオード領域20のn型ドリフト層1とIGBT領域10のn型ドリフト層1とは連続して一体的に構成されたものであり、同一の半導体基板によって構成されている。図7において半導体基板は、p型コンタクト層24からn型カソード層26までの範囲である。図7においてp型コンタクト層24の紙面上端を半導体基板の第1主面、n型カソード層26の紙面下端を半導体基板の第2主面と呼ぶ。ダイオード領域20の第1主面とIGBT領域10の第1主面は同一面であり、ダイオード領域20の第2主面とIGBT領域10の第2主面は同一面である。
【0043】
図7に示すように、ダイオード領域20においてもIGBT領域10と同様に、n型ドリフト層1の第1主面側にn型キャリア蓄積層2が設けられ、n型ドリフト層1の第2主面側にn型バッファ層3が設けられている。ダイオード領域20に設けられるn型キャリア蓄積層2およびn型バッファ層3は、IGBT領域10に設けられるn型キャリア蓄積層2およびn型バッファ層3と同一の構成である。なお、IGBT領域10およびダイオード領域20にn型キャリア蓄積層2は必ずしも設ける必要はなく、IGBT領域10にn型キャリア蓄積層2を設ける場合であっても、ダイオード領域20にはn型キャリア蓄積層2を設けない構成としてもよい。また、IGBT領域10と同じく、n型ドリフト層1、n型キャリア蓄積層2およびn型バッファ層3を合わせてドリフト層と呼んでもよい。
【0044】
n型キャリア蓄積層2の第1主面側には、p型アノード層25が設けられている。p型アノード層25は、n型ドリフト層1と第1主面との間に設けられている。p型アノード層25は、IGBT領域10のp型ベース層15とp型不純物の濃度を同じ濃度にして、p型アノード層25とp型ベース層15とを同時に形成してもよい。また、p型アノード層25のp型不純物の濃度を、IGBT領域10のp型ベース層15のp型不純物の濃度よりも低くして、ダイオード動作時にダイオード領域20に注入される正孔の量を減少させるように構成してもよい。ダイオード動作時に注入される正孔の量を減少させることでダイオード動作時のリカバリ損失を低減することができる。
【0045】
p型アノード層25の第1主面側には、p型コンタクト層24が設けられている。p型コンタクト層24のp型不純物としてのアルミの濃度は、IGBT領域10のp型コンタクト層14のp型不純物としてのアルミと同じ濃度としてよく、異なる濃度としてもよい。p型コンタクト層24は半導体基板の第1主面を構成している。なお、p型コンタクト層24は、p型アノード層25よりもp型不純物の濃度が高い領域であり、p型コンタクト層24とp型アノード層25とを区別する必要がある場合にはそれぞれを個別に呼称してよく、p型コンタクト層24とp型アノード層25とを合わせてp型アノード層と呼んでもよい。
【0046】
ダイオード領域20には、n型バッファ層3の第2主面側に、n型カソード層26が設けられている。n型カソード層26は、n型ドリフト層1と第2主面との間に設けられている。n型カソード層26は、n型不純物として例えばヒ素またはリン等を有する半導体層であり、n型不純物の濃度は1.0E+16/cm~1.0E+21/cmである。図2で示したように、n型カソード層26は、ダイオード領域20の一部または全部に設けられる。n型カソード層26は半導体基板の第2主面を構成している。なお、図示していないが、上述のようにn型カソード層26を形成した領域に、さらにp型不純物を選択的に注入して、n型カソード層26を形成した領域の一部をp型半導体としてp型カソード層を設けてもよい。
【0047】
図7に示すように、半導体装置100または半導体装置101のダイオード領域20には、半導体基板の第1主面からp型アノード層25を貫通し、n型ドリフト層1に達するトレンチが形成されている。ダイオード領域20のトレンチ内にダイオードトレンチ絶縁膜21bを介してダイオードトレンチ電極21aが設けられることでダイオードトレンチゲート21が構成されている。ダイオードトレンチ電極21aはダイオードトレンチ絶縁膜21bを介してn型ドリフト層1に対向している。
【0048】
図7に示すように、ダイオードトレンチ電極21a、およびp型コンタクト層24の上にはバリアメタル5が設けられている。バリアメタル5は、ダイオードトレンチ電極21aおよびp型コンタクト層24とオーミック接触し、ダイオードトレンチ電極およびp型コンタクト層24に電気的に接続されている。バリアメタル5は、IGBT領域10のバリアメタル5と同一の構成であってよい。バリアメタル5の上には、エミッタ電極6が設けられる。ダイオード領域20に設けられるエミッタ電極6は、IGBT領域10に設けられたエミッタ電極6と連続して形成されている。なお、IGBT領域10の場合と同様に、バリアメタル5を設けずに、ダイオードトレンチ電極21aおよびp型コンタクト層24とエミッタ電極6とをオーミック接触させてもよい。なお、図7では、ダイオードトレンチゲート21のダイオードトレンチ電極21aの上には層間絶縁膜4が設けられない図を示したが、層間絶縁膜4をダイオードトレンチゲート21のダイオードトレンチ電極21aの上に形成してもよい。層間絶縁膜4をダイオードトレンチゲート21のダイオードトレンチ電極21aの上に形成した場合には、別の断面においてエミッタ電極6とダイオードトレンチ電極21aとを電気的に接続すればよい。
【0049】
型カソード層26の第2主面側には、コレクタ電極7が設けられる。エミッタ電極6と同様、ダイオード領域20のコレクタ電極7は、IGBT領域10に設けられたコレクタ電極7と連続して形成されている。コレクタ電極7は、n型カソード層26にオーミック接触し、n型カソード層26に電気的に接続されている。
【0050】
図8は、半導体装置100または半導体装置101の図6における破線D-Dでの断面図であり、ダイオード領域20の断面図である。図7に示した破線C-Cでの断面図とは、p型アノード層25とバリアメタル5との間に、p型コンタクト層24が設けられておらず、p型アノード層25が半導体基板の第1主面を構成している点が異なる。つまり、図7で示したp型コンタクト層24は、p型アノード層25の第1主面側に選択的に設けられている。
【0051】
ここで、実施の形態1の半導体装置のIGBT領域とダイオード領域との境界領域について、図9を用いて説明する。図9は、RC-IGBTである半導体装置のIGBT領域とダイオード領域の境界の構成を示す断面図である。図9は、図1に示した半導体装置100または半導体装置101における破線G-Gにおける断面図である。また、図9は、図3の破線A-Aで示すように、その断面にn型ソース層13を有する部位における断面図である。
【0052】
図9に示すように、IGBT領域10の第2主面側に設けられたp型コレクタ層16は、IGBT領域10とダイオード領域20との境界から距離U1だけダイオード領域20側にはみ出して設けられている。このように、p型終端コレクタ層16aをダイオード領域20にはみ出して設けることにより、ダイオード領域20のn型カソード層26とアクティブトレンチゲート11との距離を大きくすることができ、還流ダイオード動作時にゲートトレンチ電極11aにゲート駆動電圧が印加された場合であっても、IGBT領域10のアクティブトレンチゲート11に隣接して形成されるチャネルからn型カソード層26に電流が流れるのを抑制することができる。距離U1は、例えば100μmであってよい。なお、RC-IGBTである半導体装置100または半導体装置101の用途によっては、距離U1がゼロまたは100μmより小さい距離であってもよい。
【0053】
また、p型コンタクト層24は、図9に示すように、トレンチ間の表層に形成され、p型不純物としてアルミを含有する半導体層である。p型コンタクト層24は、p型不純物としてアルミを含有することにより、n型ソース層13よりも厚さを小さく形成することができ、n型ソース層13の厚さの1/2の厚さを有することが望ましい。アルミのドーピング方法としては、第1主面側からアルミイオンを注入してもよいし、あるいは、アルミを含んだ電解液を用いてもよい。なお、p型コンタクト層24は、トレンチ間の表層の少なくとも一部に形成されていればよい。
【0054】
また、実施の形態1の半導体装置の終端領域の構成について、図10を用いて説明する。図10は、RC-IGBTである半導体装置の終端領域の構成を示す断面図である。図10(a)は、図1または図2における破線E-Eでの断面図であり、IGBT領域10から終端領域30にかけての断面図である。また、図10(b)は、図1における破線F-Fでの断面図であり、ダイオード領域20から終端領域30にかけての断面図である。
【0055】
図10(a)および図10(b)に示すように、半導体装置100の終端領域30は、半導体基板の第1主面と第2主面との間にn型ドリフト層1を有している。終端領域30の第1主面および第2主面は、それぞれIGBT領域10およびダイオード領域20の第1主面および第2主面と同一面である。また、終端領域30のn型ドリフト層1は、それぞれIGBT領域10およびダイオード領域20のn型ドリフト層1と同一構成であり連続して一体的に形成されている。
【0056】
型ドリフト層1の第1主面側、すなわち半導体基板の第1主面とn型ドリフト層1との間にp型終端ウェル層31が設けられている。p型終端ウェル層31は、p型不純物として例えばボロンまたはアルミ等を有する半導体層であり、p型不純物の濃度は1.0E+14/cm~1.0E+19/cmである。p型終端ウェル層31は、IGBT領域10およびダイオード領域20が含まれるセル領域を取り囲んで設けられている。p型終端ウェル層31は複数のリング状に設けられており、p型終端ウェル層31が設けられる数は、半導体装置100または半導体装置101の耐圧設計によって適宜選択される。また、p型終端ウェル層31のさらに外縁側にはn型チャネルストッパ層32が設けられており、n型チャネルストッパ層32はp型終端ウェル層31を取り囲んでいる。
【0057】
型ドリフト層1と半導体基板の第2主面との間には、p型終端コレクタ層16aが設けられている。p型終端コレクタ層16aは、セル領域に設けられるp型コレクタ層16と連続して一体的に形成されている。従って、p型終端コレクタ層16aを含めてp型コレクタ層16と呼んでもよい。また、図1に示した半導体装置100のようにダイオード領域20が終端領域30と隣接しても受けられる構成では、図10(b)に示すように、p型終端コレクタ層16aは、ダイオード領域20側の端部が距離U2だけダイオード領域20にはみ出して設けられている。このように、p型終端コレクタ層16aをダイオード領域20にはみ出して設けることにより、ダイオード領域20のn型カソード層26とp型終端ウェル層31との距離を大きくすることができ、p型終端ウェル層31がダイオードのアノードとして動作するのを抑制することができる。距離U2は、例えば100μmであってよい。
【0058】
半導体基板の第2主面上にはコレクタ電極7が設けられている。コレクタ電極7は、IGBT領域10およびダイオード領域20を含むセル領域から終端領域30まで連続して一体的に形成されている。一方、終端領域30の半導体基板の第1主面上にはセル領域から連続しているエミッタ電極6と、エミッタ電極6とは分離された終端電極6aとが設けられる。
【0059】
エミッタ電極6と終端電極6aとは、半絶縁性膜33を介して電気的に接続されている。半絶縁性膜33は、例えば、sinSiN(semi-insulating Silicon Nitride:半絶縁性シリコン窒化膜)であってよい。終端電極6aとp型終端ウェル層31およびn型チャネルストッパ層32とは、終端領域30の第1主面上に設けられた層間絶縁膜4に形成されたコンタクトホールを介して電気的に接続されている。また、終端領域30には、エミッタ電極6、終端電極6aおよび半絶縁性膜33を覆って終端保護膜34が設けられている。終端保護膜34は、例えば、ポリイミドで形成してよい。
【0060】
次に、実施の形態1の半導体装置の製造方法について、図11から図16を用いて説明する。図11から図16は、RC-IGBTである半導体装置の製造方法を示す図である。図11から図14は半導体装置100または半導体装置101のおもて面側を形成する工程を示す図であり、図15および図16は、半導体装置100または半導体装置101の裏面側を形成する工程を示す図である。
【0061】
まず、図11(a)に示すようにn型ドリフト層1を構成する半導体基板を準備する。半導体基板には、例えば、FZ(Floating Zone)法で作製された、いわゆるFZウエハやMCZ(Magnetic applied CZochralki)法で作製された、いわゆるMCZウエハを用いてよく、n型不純物を含むn型ウエハであってよい。半導体基板に含まれるn型不純物の濃度は、作製される半導体装置の耐圧によって適宜選択され、例えば、耐圧が1200Vの半導体装置では、半導体基板を構成するn型ドリフト層1の比抵抗が40~120Ω・cm程度となるようにn型不純物の濃度が調整される。図11(a)に示すように、半導体基板を準備する工程では、半導体基板の全体がn型ドリフト層1となっているが、このような半導体基板の第1主面側または第2主面側から、p型あるいはn型の不純物イオンを注入し、その後熱処理などによって半導体基板内に拡散させることで、p型あるいはn型の半導体層を形成し、半導体装置100または半導体装置101は製造される。
【0062】
図11(a)に示すように、n型ドリフト層1を構成する半導体基板は、IGBT領域10およびダイオード領域20になる領域を備えている。また、図示しないがIGBT領域10およびダイオード領域20になる領域の周囲には終端領域30となる領域を備えている。以下では、半導体装置100または半導体装置101のIGBT領域10およびダイオード領域20の構成の製造方法について主として説明するが、半導体装置100または半導体装置101の終端領域30については周知の製造方法により作製してよい。例えば、終端領域30に耐圧保持構造としてp型終端ウェル層51を有するFLRを形成する場合、半導体装置100または半導体装置101のIGBT領域10およびダイオード領域20を加工する前にp型不純物イオンを注入して形成してもよく、半導体装置100のIGBT領域10あるいはダイオード領域20にp型不純物をイオン注入する際に同時にp型不純物イオンを注入して形成してもよい。
【0063】
次に、図11(b)に示すように、半導体基板の第1主面側からリン(P)などのn型不純物を注入してn型キャリア蓄積層2を形成する。また、半導体基板の第1主面側からボロン(B)などのp型不純物を注入してp型ベース層15およびp型アノード層25を形成する。n型キャリア蓄積層2、p型ベース層15およびp型アノード層25は、半導体基板内に不純物イオンを注入した後、熱処理により不純物イオンを拡散させることで形成される。n型不純物およびp型不純物は、半導体基板の第1主面上にマスク処理を施した後イオン注入されるため、半導体基板の第1主面側に選択的に形成される。n型キャリア蓄積層2、p型ベース層15およびp型アノード層25は、IGBT領域10およびダイオード領域20に形成され、終端領域30でp型終端ウェル層51に接続される。なお、マスク処理とは、半導体基板上にレジストを塗布し、写真製版技術を用いてレジストの所定の領域に開口を形成し、開口を介して半導体基板の所定の領域にイオン注入を施したり、エッチングを施したりするために、半導体基板上にマスクを形成する処理を言う。
【0064】
p型ベース層15およびp型アノード層25は、同時にp型不純物をイオン注入して形成してもよい。この場合、p型ベース層15とp型アノード層25の深さやp型不純物濃度は同じとなり同一の構成となる。また、マスク処理によりp型ベース層15とp型アノード層25とに別々にp型不純物をイオン注入することで、p型ベース層15とp型アノード層25の深さやp型不純物濃度を異ならせてもよい。
【0065】
また、別の断面において形成されるp型終端ウェル層51は、p型アノード層25と同時にp型不純物をイオン注入して形成してもよい。この場合、p型終端ウェル層51とp型アノード層25との深さやp型不純物濃度は同じとなり同一の構成とすることが可能である。また、p型終端ウェル層51とp型アノード層25とを同時にp型不純物をイオン注入して形成して、p型終端ウェル層51とp型アノード層25とのp型不純物濃度を異なる濃度とすることも可能である。この場合、いずれか一方または双方のマスクをメッシュ状のマスクとして、開口率を変更すれば良い。また、マスク処理によりp型終端ウェル層51およびp型アノード層25を別々にp型不純物をイオン注入することで、p型終端ウェル層51およびp型アノード層25の深さやp型不純物濃度を異ならせてもよい。p型終端ウェル層51、p型ベース層15、およびp型アノード層25を同時にp型不純物をイオン注入して形成してもよい。
【0066】
次に、図12(a)に示すように、マスク処理によりIGBT領域10のp型ベース層15の第1主面側に選択的にn型不純物を注入してn型ソース層13を形成する。注入するn型不純物は、例えば、砒素(As)またはリン(P)であってよい。また、マスク処理によりIGBT領域のp型ベース層15の第1主面側に選択的にp型不純物であるアルミを注入してp型コンタクト層14を形成する。さらに、マスク処理によりダイオード領域20のp型アノード層25の第1主面側に選択的にp型不純物であるアルミを注入してp型コンタクト層24を形成する。このとき、p型コンタクト層14、24は、n型ソース層13よりも厚さが小さく、例えばn型ソース層13の厚さの1/2以下の厚さを有するように形成する。なお、p型コンタクト層14とp型コンタクト層24とは同時に形成してもよく、別々に形成してもよい。
【0067】
次に、図12(b)に示すように、半導体基板の第1主面側からp型ベース層15およびp型アノード層25を貫通し、n型ドリフト層1に達するトレンチ8を形成する。IGBT領域10において、n型ソース層13およびp型コンタクト層14を貫通するトレンチ8は、側壁の一部をn型ソース層13およびp型コンタクト層14が構成する。トレンチ8は、半導体基板上にSiOなどの酸化膜を堆積させた後、マスク処理によってトレンチ8を形成する部分の酸化膜に開口を形成し、開口を形成した酸化膜をマスクとして半導体基板をエッチングすることで形成してよい。図12(b)では,IGBT領域10とダイオード領域20とでトレンチ8のピッチを同じにして形成しているが、IGBT領域10とダイオード領域20とでトレンチ8のピッチを異ならせてもよい。トレンチ8のピッチは平面視におけるパターンは、マスク処理のマスクパターンにより適宜変更することができる。
【0068】
次に、図13(a)に示すように、酸素を含む雰囲気中で半導体基板を加熱してトレンチ8の内壁および半導体基板の第1主面に酸化膜9を形成する。トレンチ8の内壁に形成された酸化膜9のうち、IGBT領域10のトレンチ8に形成された酸化膜9がアクティブトレンチゲート11のゲートトレンチ絶縁膜11bおよびダミートレンチゲート12のダミートレンチ絶縁膜12bである。また、ダイオード領域20のトレンチ8に形成された酸化膜9がダイオードトレンチ絶縁膜21bである。半導体基板の第1主面に形成された酸化膜9は後の工程で除去される。
【0069】
次に、図13(b)に示すように、内壁に酸化膜9を形成したトレンチ8内に、CVD(chemical vapor deposition)などによってn型またはp型の不純物をドープしたポリシリコンを堆積させて、ゲートトレンチ電極11a、ダミートレンチ電極12aおよびダイオードトレンチ電極21aを形成する。
【0070】
次に、図14(a)に示すように、IGBT領域10のアクティブトレンチゲート11のゲートトレンチ電極11a上に層間絶縁膜4を形成した後に半導体基板の第1主面に形成された酸化膜9を除去する。層間絶縁膜4は、例えば、SiOであってよい。そして、マスク処理により堆積させた層間絶縁膜4にコンタクトホールを形成する。コンタクトホールは、n型ソース層13上、p型コンタクト層14上、p型コンタクト層24上、ダミートレンチ電極12a上およびダイオードトレンチ電極21a上に形成される。
【0071】
次に、図14(b)に示すように、半導体基板の第1主面および層間絶縁膜4上にバリアメタル5を形成し、さらにバリアメタル5の上にエミッタ電極6を形成する。バリアメタル5は、窒化チタンをPVD(physical vapor deposition)やCVDによって製膜することで形成される。
【0072】
エミッタ電極6は、例えば、スパッタリングや蒸着などのPVDによってアルミシリコン合金(Al-Si系合金)をバリアメタル5の上に堆積させて形成してよい。また、形成したアルミシリコン合金の上に、無電解めっきや電解めっきでニッケル合金(Ni合金)をさらに形成してエミッタ電極6としてもよい。エミッタ電極6をめっきで形成すると、エミッタ電極6として厚い金属膜を容易に形成することができるので、エミッタ電極6の熱容量を増加させて耐熱性を向上させることができる。なお、PVDでアルミシリコン合金からなるエミッタ電極6を形成した後に、めっき処理でニッケル合金をさらに形成する場合、ニッケル合金を形成するためのめっき処理は半導体基板の第2主面側の加工を行った後に実施してもよい。
【0073】
次に、図15(a)に示すように半導体基板の第2主面側を研削し、半導体基板を設計した所定の厚さに薄板化する。研削後の半導体基板の厚さは、例えば、80μm~200μmであってよい。
【0074】
次に、図15(b)に示すように、半導体基板の第2主面側からn型不純物を注入しn型バッファ層3を形成する。さらに、半導体基板の第2主面側からp型不純物を注入しp型コレクタ層16を形成する。n型バッファ層3はIGBT領域10、ダイオード領域20および終端領域30に形成してよく、IGBT領域10またはダイオード領域20のみに形成してもよい。
【0075】
n型バッファ層3は、例えば、リン(P)イオンを注入して形成してよい。また、プロトン(H)を注入して形成してよい。さらに、プロトンとリンの両方を注入して形成してよい。プロトンは比較的低い加速エネルギーで半導体基板の第2主面から深い位置にまで注入することができる。また、加速エネルギーを変えることでプロトンを注入する深さを比較的容易に変更することができる。このため、n型バッファ層3をプロトンで形成する際に、加速エネルギーを変更しながら複数回注入すると、リンで形成するよりも半導体基板の厚さ方向に幅が広いn型バッファ層3を形成することができる。
【0076】
また、リンはプロトンに比較して、n型不純物としての活性化率を高くすることができるので、リンでn型バッファ層3を形成することにより薄板化した半導体基板であってもより確実に空乏層がパンチスルーするのを抑制することができる。半導体基板をより一層薄板化するには、プロトンとリンの両方を注入してn型バッファ層3を形成するのが好ましく、この際には、プロトンはリンよりも第2主面から深い位置に注入される。
【0077】
p型コレクタ層16は、例えば、ボロン(B)を注入して形成してよい。p型コレクタ層16は、終端領域30にも形成され、終端領域30のp型コレクタ層16がp型終端コレクタ層16aとなる。半導体基板の第2主面側からイオン注入した後に、第2主面にレーザーを照射してレーザーアニールすることで、注入したボロンが活性化しp型コレクタ層16が形成される。この際、半導体基板の第2主面から比較的浅い位置に注入されたn型バッファ層3のためのリンも同時に活性化される。一方、プロトンは380℃~420℃といった比較的低いアニール温度で活性化されるので、プロトンを注入した後はプロトンの活性化のための工程以外で、半導体基板全体が380℃~420℃より高い温度にならないように留意する必要がある。レーザーアニールは、半導体基板の第2主面近傍のみを高温にできるため、プロトンを注入した後であってもn型不純物やp型不純物の活性化に用いることができる。
【0078】
次に、図16(a)に示すように、ダイオード領域20にn型カソード層26を形成する。n型カソード層26は、例えば、リン(P)を注入して形成してよい。図16(a)に示すように、IGBT領域10とダイオード領域20との境界からダイオード領域20側に距離U1の位置に、p型コレクタ層16とn型カソード層26との境界が位置するように、リンが第2主面側からマスク処理により選択的に注入される。n型カソード層26を形成するためのn型不純物の注入量は、p型コレクタ層16を形成するためのp型不純物の注入量より多い。図16(a)では、第2主面からのp型コレクタ層16とn型カソード層26の深さを同じに示しているが、n型カソード層26の深さはp型コレクタ層16の深さ以上である。n型カソード層26が形成される領域は、p型不純物が注入された領域にn型不純物を注入してn型半導体にする必要があるので、n型カソード層26が形成される領域の全てで注入されたp型不純物の濃度をn型不純物の濃度より高くする。
【0079】
次に、図16(b)に示すように、半導体基板の第2主面上にコレクタ電極7を形成する。コレクタ電極7は、第2主面のIGBT領域10、ダイオード領域20および終端領域30の全面に亘って形成される。また、コレクタ電極7は、半導体基板であるn型ウエハの第2主面の全面に亘って形成してよい。コレクタ電極7は、スパッタリングや蒸着などのPVDによって、アルミシリコン合金(Ai-Si系合金)やチタン(Ti)などを堆積させて形成してよく、アルミシリコン合金、チタン、ニッケルあるいは金など複数の金属を積層させて形成してもよい。さらには、PVDで形成した金属膜上に無電解めっきや電解めっきで、さらに金属膜を形成してコレクタ電極7としてもよい。
【0080】
以上のような工程により半導体装置100または半導体装置101は作製される。半導体装置100または半導体装置101は、1枚のn型ウエハにマトリクス状に複数作製されるので、レーザーダイシングやブレードダイシングにより個々の半導体装置100または半導体装置101に切り分けることで半導体装置100または半導体装置101は完成する。
【0081】
以上のように構成された本実施の形態の半導体装置及び半導体装置の製造方法の効果について説明する。
【0082】
本実施の形態の半導体装置100および101は、p型コンタクト層14およびp型コンタクト層24のp型不純物としてアルミを用いるため、p型コンタクト層14およびp型コンタクト層24の厚さをn型ソース層13の厚さよりも小さくすることができる。これは、ボロンよりもアルミのほうが原子半径が大きいため、同じ加速エネルギーでイオン注入した場合に、原子半径の小さいボロンは深くまで注入されるのに対し、原子半径が大きいアルミはボロンよりも浅い位置の注入にとどまるためである。また、金属であるアルミをp型不純物として用いることで、電極部とのオーミック接触性を維持することができるため、従来の半導体装置よりもp型コンタクト層の不純物濃度を低くすることができ、従来の半導体装置よりもp型コンタクト層14またはp型コンタクト層24からn型ドリフト層1に多量のホールが注入されるのを抑制することができる。その結果、本実施の形態の半導体装置100および101は、コンタクト抵抗を抑えつつ、ダイオード領域20のリカバリ損失を低減できるという効果を奏する。
【0083】
なお、本実施の形態の半導体装置100および101は、p型コンタクト層14および24の厚さがn型ソース層13よりも小さいものとして説明したが、これに限られるものではなく、p型コンタクト層14および24のp型不純物としてアルミが用いられたものであればよい。このように構成することで、少なくとも電極部とのオーミック接触性を維持することができるため、p型コンタクト層の不純物濃度を低くすることができることから、コンタクト抵抗を抑えつつ、ダイオード領域20のリカバリ損失を低減できるという効果を奏する。
【0084】
実施の形態2.
実施の形態2の半導体装置について、図17を用いて説明する。図17は、RC-IGBTである半導体装置のIGBT領域とダイオード領域の境界の構成を示す断面図である。図17は、図1に示した半導体装置100または半導体装置101における破線G-Gにおける断面図に対応する。また、図17は、図3の破線A-Aで示すように、その断面にn型ソース層13を有する部位における断面図である。
【0085】
本実施の形態の半導体装置は、IGBT領域10に、ダイオード領域20のp型コンタクト層24よりも不純物濃度が高いp型コンタクト層44を有する点で、実施の形態1の半導体装置100または101と異なる。本実施の形態の半導体装置のその他の構成は、実施の形態1の半導体装置100または101と同様であるため、以下では半導体装置100または101と異なる点を中心に説明する。
【0086】
p型コンタクト層24は、実施の形態1と同様であり、n型ソース層13よりも厚さが小さく、例えばn型ソース層13の厚さの1/2の厚さを有する。また、p型コンタクト層24におけるアルミの不純物濃度は、1.0E+12/cm~1.0E+18/cmであることが望ましい。
【0087】
型コンタクト層44は、トレンチ間の表層に形成され、p型不純物としてボロンを有する半導体層であり、p型不純物の濃度は1.0E+15/cm~1.0E+20/cmである。p型コンタクト層44は、p型コンタクト層24よりも不純物濃度が高い。また、p型コンタクト層44は、図17に示すように、n型ソース層13よりも厚さが大きく、例えばn型ソース層13の厚さの1.5倍の厚さを有する。
【0088】
なお、p型コンタクト層44は、p型不純物としてボロンが用いられることが望ましいが、これに限られるものではなく、アルミを用いてもよいし、あるいはそれ以外のp型不純物を用いてもよい。また、p型コンタクト層44の厚さは、n型ソース層13の厚さよりも大きくすることが望ましいが、n型ソース層13の厚さと同等の厚さとしてもよい。
【0089】
このように構成された本実施の形態の半導体装置にあっては、ダイオード領域20に形成されるp型コンタクト層24の不純物濃度がIGBT領域10に形成されるp型コンタクト層44の不純物濃度よりも低いことで、リカバリ損失低減とIGBT領域の通電性能との両立ができる効果を奏する。また、IGBTの順方向動作時に、ホールがp型コンタクト層44へ流入することを促進し、ラッチアップ耐量を向上するためには、IGBT領域10のp型コンタクト層44の厚さは、n型ソース層13の厚さよりも大きい方が望ましく、不純物にボロン等を用いるまたは不純物濃度を1.0E+15/cm以上とすることで、厚いpコンタクト層を形成できる。
【0090】
実施の形態2の半導体装置の変形例について、図18を用いて説明する。図18は、図1に示した半導体装置100または半導体装置101における破線G-Gにおける断面図に対応するが、図17の断面図とは異なる位置の断面図である。図17および図18は、RC-IGBTである半導体装置のIGBT領域とダイオード領域の境界の構成であるが、図17は、図3の破線A-Aで示すように、その断面にn型ソース層13を有する部位における断面図であり、図18は、図3の破線B-Bで示すように、その断面にn型ソース層13を有さない部位における断面図である。
【0091】
本実施の形態の変形例に係る半導体装置は、図18に示すように、IGBT領域10側の境界領域においてp型コンタクト層14がさらに形成される点で、本実施の形態の半導体装置と異なる。変形例に係る半導体装置のその他の構成は、本実施の形態の半導体装置と同様であるため、以下では異なる点を中心に説明する。
【0092】
p型コンタクト層14の構成は、実施の形態1の半導体装置に設けられるp型コンタクト層14と同様であり、n型ソース層13よりも厚さが小さく、n型ソース層13の厚さの1/2以下の厚さを有することが望ましい。また、p型コンタクト層14におけるアルミの不純物濃度は、1.0E+12/cm~1.0E+18/cmであることが望ましい。本実施の形態の半導体装置では、p型コンタクト層14は、IGBT領域10とダイオード領域20との境界領域のIGBT領域10側にのみ設けられる。
【0093】
なお、実施の形態2において、IGBT領域10とダイオード領域20との境界とは、IGBT領域10の最もダイオード領域20に近い位置にあるn型ソース層13に接するトレンチのうち、最もダイオード領域20側に位置するトレンチの位置である。このIGBT領域10の最もダイオード領域20に近い位置にあるn型ソース層13に接するトレンチのうち、最もダイオード領域20側に位置するトレンチは、境界のトレンチと呼んでよく、境界トレンチと呼んでもよいが、ここでは境界トレンチ50とする。境界トレンチ50は、半導体基板に形成されたトレンチ内に境界トレンチ絶縁膜50bを介して境界トレンチ電極50aが設けられて構成されている。
【0094】
このように、境界トレンチ50に近い位置にはp型コンタクト層14が設けられ、一方で境界トレンチ50から離れた位置にはp型コンタクト層44が設けられるため、IGBT領域10のp型コンタクト層からn型ドリフト層1に注入されるホールの量を、境界トレンチ50の近傍において低減できるので、IGBT領域10からダイオード領域20に流れ込むホールの量を低減し、ダイオード領域20のリカバリ損失をさらに低減することができるという効果を奏する。
【0095】
実施の形態3.
実施の形態3の半導体装置について、図19を用いて説明する。図19は、RC-IGBTである半導体装置のIGBT領域とダイオード領域の境界の構成を示す断面図である。図19は、図1に示した半導体装置100または半導体装置101における破線G-Gにおける断面図に対応する。また、図19は、図3の破線A-Aで示すように、その断面にn型ソース層13を有する部位における断面図である。
【0096】
本実施の形態の半導体装置は、ダイオード領域20におけるp型コンタクト層24の下部に、アルミをp型不純物としたp型アノード層45を有し、n型キャリア蓄積層2を有しない点で、実施の形態1の半導体装置100または101と異なる。本実施の形態の半導体装置のその他の構成は、実施の形態1の半導体装置100または101と同様であるため、以下では半導体装置100または101と異なる点を中心に説明する。
【0097】
型アノード層45は、p型不純物としてアルミを有し、IGBT領域10に形成されるp型ベース層15よりもp型不純物濃度が低い。p型アノード層45のアルミの不純物濃度は、1.0E+12/cm~1.0E+17/cmである。また、p型アノード層45の下部には、n型キャリア蓄積層2は形成されない。
【0098】
なお、p型アノード層45は、IGBT領域10に形成されるp型ベース層15のp型不純物濃度と同等の不純物濃度であってもよいが、p型ベース層15のp型不純物濃度よりも低くすることでさらにダイオード領域20のリカバリ損失を低減できるため、望ましい。
【0099】
このように構成された本実施の形態の半導体装置にあっては、p型コンタクト層24がトレンチ間の表層の一部に形成され、p型アノード層45のp型不純物をアルミにしたので、p型コンタクト層24およびp型アノード層45からのホールの注入を抑制でき、ダイオード領域20のリカバリ損失を更に低減することができる効果を奏する。
【0100】
実施の形態4.
実施の形態4の半導体装置について、図20を用いて説明する。図20は、RC-IGBTである半導体装置のIGBT領域とダイオード領域の境界の構成を示す断面図である。図20は、図1に示した半導体装置100または半導体装置101における破線G-Gにおける断面図に対応する。また、図20は、図3の破線A-Aで示すように、その断面にn型ソース層13を有する部位における断面図である。
【0101】
本実施の形態の半導体装置は、ダイオード領域20におけるn型カソード層26にp型コレクタ層16が点在している点で、実施の形態1の半導体装置100または101と異なる。ダイオード領域20のn型カソード層26に点在するp型コレクタ層16は、IGBT領域10のp型コレクタ層16と同時に形成してよく、ダイオード領域20のn型カソード層26に点在するp型コレクタ層16は、第2主面側でコレクタ電極7に接し、第1主面側でn型バッファ層3に接している。
【0102】
このように構成された本実施の形態の半導体装置にあっては、ダイオードの逆方向動作時に、nドリフト層へ適度にホールを注入することができるため、ダイオード性能がさらに向上する効果を奏する。
【0103】
実施の形態5.
実施の形態5の半導体装置について、図21を用いて説明する。図21は、RC-IGBTである半導体装置のIGBT領域とダイオード領域の境界の構成を示す断面図である。図21は、図1に示した半導体装置100または半導体装置101における破線G-Gにおける断面図に対応する。また、図21は、図3の破線A-Aで示すように、その断面にn型ソース層13を有する部位における断面図である。
【0104】
本実施の形態の半導体装置は、ダイオード領域20にトレンチが形成されていない点で、実施の形態1の半導体装置100または101と異なる。なお、「ダイオード領域20にトレンチが形成されていない」とは、実施の形態1において説明したダイオードトレンチゲート21を有していない構成を意味しており、IGBT領域10とダイオード領域20との境界に境界トレンチ50を有するものを含む。
【0105】
このように構成された本実施の形態の半導体装置にあっては、ダイオード領域20にトレンチを形成しないことで、キャリアの導通面積が大きくなり、電流が流れやすくなるので、オン電圧を低減できる効果を奏する。
【0106】
実施の形態6.
実施の形態6の半導体装置について、図22を用いて説明する。図22は、RC-IGBTである半導体装置のIGBT領域とダイオード領域の境界の構成を示す断面図である。図22は、図1に示した半導体装置100または半導体装置101における破線G-Gにおける断面図に対応する。また、図22は、図3の破線A-Aで示すように、その断面にn型ソース層13を有する部位における断面図である。
【0107】
本実施の形態の半導体装置は、隣り合うトレンチ間に、凹型のトレンチコンタクト46を有する点で、実施の形態1の半導体装置100または101と異なる。本実施の形態の半導体装置のその他の構成は、実施の形態1の半導体装置100または101と同様であるため、以下では半導体装置100または101と異なる点を中心に説明する。
【0108】
本実施の形態の半導体装置では、隣り合うトレンチ間に、第1主面から凹んで形成されたトレンチコンタクト46を有し、トレンチコンタクト46内にエミッタ電極6が埋め込まれている。IGBT領域10側のトレンチコンタクト46の表層には、アルミをp型不純物としたp型コンタクト層17が形成され、ダイオード領域20側のトレンチコンタクト46の表層には、アルミをp型不純物としたp型コンタクト層27が形成されている。また、トレンチコンタクト46内のエミッタ電極6とp型コンタクト層17またはp型コンタクト層27との間には、バリアメタル5が形成されている。トレンチコンタクト46の底部は、n型ソース層13よりも第2主面側に位置している。なお、トレンチコンタクト46は、全ての隣り合うトレンチ間に形成されなくもよい。
【0109】
このように構成された本実施の形態の半導体装置にあっては、IGBT領域10のトレンチコンタクト底部に、p型コンタクト層17が位置することで、ラッチアップ耐量が向上する効果を奏する。また、トレンチコンタクトができたことにより、コンタクトの表面積が大きくなるので、コンタクト抵抗を更に低減できる効果を奏する。
【0110】
なお、各実施の形態を、適宜、組み合わせたり、変形や省略することも、本開示の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0111】
1 n型ドリフト層、5 バリアメタル、10 IGBT領域、11 アクティブトレンチゲート、11a ゲートトレンチ電極、11b ゲートトレンチ絶縁膜、12 ダミートレンチゲート、12a ダミートレンチ電極、12b ダミートレンチ絶縁膜、13 n型ソース層、14、17 p型コンタクト層、15 p型ベース層、16 p型コレクタ層、16a p型終端コレクタ層、20 ダイオード領域、21 ダイオードトレンチゲート、21a ダイオードトレンチ電極、21b ダイオードトレンチ絶縁膜、24、27 p型コンタクト層、25 p型アノード層、26 n型カソード層、30 終端領域、31 p型終端ウェル層、44 p型コンタクト層、45 p型アノード層、46 トレンチコンタクト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22