IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヤマトエスロン株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001381
(43)【公開日】2024-01-10
(54)【発明の名称】歯ブラシ
(51)【国際特許分類】
   A46B 9/04 20060101AFI20231227BHJP
【FI】
A46B9/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022099966
(22)【出願日】2022-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】592111894
【氏名又は名称】ヤマトエスロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167092
【弁理士】
【氏名又は名称】鷹津 俊一
(72)【発明者】
【氏名】西村 亮
(72)【発明者】
【氏名】西川 昌志
【テーマコード(参考)】
3B202
【Fターム(参考)】
3B202AA06
3B202EA01
3B202EB14
3B202ED08
3B202EE01
3B202EF10
3B202EG17
(57)【要約】
【課題】
先細形状の毛が植毛されていながらも、毛が倒れてしまうことがなく、歯間及び歯面をそれぞれ効果的に清掃することができる歯ブラシを提供する。
【解決手段】
複数本の毛11,13が束ねられてヘッド部2の植毛面4から立設する毛束5が1本の円柱状を成し、巨視的には毛束5の先端部6が毛束5の中心軸と直交する略平面状に形成されるとともに、微視的には半数本の毛が先細形状に形成される先細毛11であり、残りの半数本の毛がその高さにかかわらず同一形状且つ同大の横断面を有する柱体形状に形成される柱体毛13であることを特徴とする。
【選択図】図7

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の毛が束ねられてヘッド部の植毛面から立設する毛束が1本の円柱状を成し、巨視的には前記毛束の先端部が前記毛束の中心軸と直交する略平面状に形成されるとともに、微視的には半数本の前記毛が先細形状に形成される先細毛であり、残りの半数本の前記毛がその高さにかかわらず同一形状且つ同大の横断面を有する柱体形状に形成される柱体毛である
ことを特徴とする歯ブラシ。
【請求項2】
一の前記先細毛は一本の用毛の一端側部分を構成し、
一の前記柱体毛は前記一本の用毛の他端側部分を構成し、
前記用毛は、複数本が共にその長さ方向の途中を2つ折りされるとともに、前記2つ折りの折り目が前記植毛面に穿設される植毛穴内に挿入されて前記ヘッド部に固定される状態で前記毛束を形成する
ことを特徴とする請求項1に記載の歯ブラシ。
【請求項3】
前記毛束は、前記円柱状のうち、一方の略半円柱部分において前記先細毛を有するとともに、他方の略半円柱部分において前記柱体毛を有する
ことを特徴とする請求項2に記載の歯ブラシ。
【請求項4】
前記先細毛は、その長さ方向の中心線を有するとともに最先端に上面を有する錐台状に形成される錐台状部と、前記長さ方向の中心線を有するとともに前記錐台状の底面と連続する柱体状に形成される柱体状部とを有する
ことを特徴とする請求項3に記載の歯ブラシ。
【請求項5】
前記錘台状部は円錐台状に形成され、
前記柱体状部及び前記柱体毛はそれぞれ円柱体状に形成される
ことを特徴とする請求項4に記載の歯ブラシ。
【請求項6】
前記各用毛は、前記一端側部分の前記柱体状部から前記他端側部分に至るまで同径に形成される
ことを特徴とする請求項5に記載の歯ブラシ。
【請求項7】
前記先細毛は、その長さ方向の中心線を有するとともに最先端に上面を有する円錐台状に形成される円錐台状部と、前記長さ方向の中心線を有するとともに前記円錐台状部の底面から連続する略角錐台状に形成される角錘台状部と、前記長さ方向の中心線を有するとともに前記角錐台状の底面と連続する角柱体状に形成される角柱体状部とを有し、
前記柱体毛は、前記角柱体状部と同一形状且つ同大の横断面を有する角柱体状に形成される
ことを特徴とする請求項3に記載の歯ブラシ。
【請求項8】
前記柱体毛の先端における周縁にはR面取りが施される
ことを特徴とする請求項1に記載の歯ブラシ。
【請求項9】
複数本の前記毛束が前記植毛面に対して垂直に立設し、前記複数の毛束のうちの一の前記毛束における前記植毛面から前記先端部までの高さと、同じく他の前記毛束における前記植毛面から前記先端部までの高さとが常に略同一となるように揃えられる
ことを特徴とする請求項1ないし8の何れかに記載の歯ブラシ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は歯ブラシに関し、詳細には複数本の毛が束ねられてヘッド部の植毛面から立設する毛束を備える歯ブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数本の毛が束ねられてヘッド部の植毛面から立設する毛束を備える歯ブラシがある。詳しくは、この歯ブラシの用毛がその長さ方向の途中を2つ折りされて、前記の毛束が、2つ折りの折り目が前記植毛面に穿設される植毛穴内に挿入されてヘッド部に固定される状態の毛束を形成する歯ブラシがある(特許文献1)。
【0003】
このような従来の歯ブラシは、図23に示されるように2つ折りされた用毛の間に平線が挟み込まれ、この平線が用毛を押し込むように前記植毛穴に打ち込まれることによって前記毛が前記植毛面に植設されている。図23において平線には符号40が付されている。このように、2つ折り前の用毛を用意して、前記平線と共に打ち込むことによって用毛の2つ折りと植毛とを同時に行うことになり、製造者は複数本の前記毛を一度に植設するため効率よく歯ブラシを量産することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-139518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の歯ブラシは、1本の毛束のうち、図23に示されるように符号31が付されている第1毛束部の高さと、符号32が付されている第2毛束部の高さとを異なるものとして段差を設けている。これにより、第1毛束部31と第2毛束部32とが口腔内の様々な箇所を有効的に清掃することを狙っている。
【0006】
これに対して、発明者は、1本の毛束のうち一部の毛の高さが残りの毛の高さよりも大きいとき、歯ブラシの使用を繰り返すうちにその高い方の毛が倒れるように変形してしまい、当該歯ブラシの寿命を短くしていることを見出した。以下において、高い方の毛を高位段側毛とよび、残りの毛を低位段側毛とよぶ。特に、高位段側毛のうち、低位段側毛よりも上向きに突出する部分は低位段側毛による横側からの支えを得られないことにより、前記突出する部分の最も低い位置から屈曲してしまいがちである。
【0007】
また、このように高位段側毛が倒れてしまうことにより、高位段側毛は、本来なら歯間に挿入して歯間の汚れを清掃するところが、必ずしもその先端が前記歯間を向かないため的確に前記歯間に挿入して清掃することができない。さらに、高位段側毛は、歯間に挿入しない上にその最先端が歯面に対して垂直に当接することも難しいため、歯面の汚れを清掃することができない。
【0008】
本発明はこのような課題の下、毛が倒れてしまうことがなく、歯間及び歯面をそれぞれ効果的に清掃することができる歯ブラシを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明は複数本の毛が束ねられてヘッド部の植毛面から立設する毛束が1本の円柱状を成し、巨視的には前記毛束の先端部が前記毛束の中心軸と直交する略平面状に形成されるとともに、微視的には半数本の前記毛が先細形状に形成される先細毛であり、残りの半数本の前記毛がその高さにかかわらず同一形状且つ同大の横断面を有する柱体形状に形成される柱体毛であることを特徴とする歯ブラシを提供するものである。
【0010】
すなわち、本発明の歯ブラシの毛束は、その先端部が略平面状に形成されることによって一部の毛とその残りの毛とが高さ方向の段差を有していない。よって、1本の毛束に含まれる毛同士は、前記の従来の歯ブラシにおける高位段側毛と低位段側毛との間にあるような高低差がない。そして、一部の毛が上向きに突出することがない。そのため、それぞれの毛は、隣接する毛との間において互いに支えられることにより、倒れずに歯を効率的に清掃することができる。さらに、それぞれの毛は、歯ブラシの使用を繰り返しても倒れて変形することが小さい。
【0011】
しかも、本発明の歯ブラシの毛束は、その半数本の前記毛が先細形状に形成される。よって、この先細毛の先端を歯間に大きな力を加えることなく挿入することができる。そして、隣接する毛同士が支え合っているために倒れることがなく、前記歯間に的確に挿入することができる。これらにより、この毛束は歯間の汚れを有効に清掃することができる。
【0012】
また、本発明の歯ブラシの毛束は、残りの半数本の前記毛が柱体形状に形成される。よって、この柱体毛が広い端面を有するために、前記柱体毛の先端は広い面積において接して歯面を磨くことができる。そして、隣接する毛同士が支え合っているために倒れることがなく、前記歯面に対してより垂直に近い角度において当接することができる。しかも、柱体毛の先端部分が先細毛の先端部分を支えることもできる。これらにより、この毛束は歯間の汚れと歯面の汚れとの両方を有効に清掃することができる。さらに、それぞれの毛は、歯ブラシの使用を繰り返しても倒れて変形することが小さい。
【0013】
(2)また、一の前記先細毛は一本の用毛の一端側部分を構成し、一の前記柱体毛は前記一本の用毛の他端側部分を構成し、前記用毛は、複数本が共にその長さ方向の途中を2つ折りされるとともに、前記2つ折りの折り目が前記植毛面に穿設される植毛穴内に挿入されて前記ヘッド部に固定される状態で前記毛束を形成してもよい。
【0014】
すなわち、本発明の歯ブラシは、2つ折りされる一本の用毛の一端側部分が先細形状に形成され、他端側部分が柱体形状に形成される。この歯ブラシの毛束は、このように前記用毛が2つ折りされた状態でヘッド部に固定されることによって、先細形状である半数本の毛と、柱体形状である残りの半数本の毛とを含む。こうして、先細形状の毛と柱体形状の毛とを同時に植毛することができる。よって、製造者は比較的簡素な工程を経るだけで本発明の歯ブラシの毛束を得ることができる。
【0015】
(3)また、前記毛束は、前記円柱状のうち、一方の略半円柱部分において前記先細毛を有するとともに、他方の略半円柱部分において前記柱体毛を有してもよい。
【0016】
複数本の用毛を合わせて2つ折りし、その折り目が植毛穴内に挿入されることによって毛束がヘッド部に固定される際に、予めこれら複数本の用毛をお互いに略平行となるように並べて、一方側の全ての用毛の先端が先細毛側の先端となり、他方側の用毛の先端が柱体毛側の先端となるように揃える。このことによって、前記毛束の一方の半円柱部分において先細毛を配置し、かつ、他方の半円柱部分において柱体毛を配置することができる。このように前記用毛の先端形状が揃うように予め並べることによって、容易に、上記のような半円柱部分単位で毛の形状を共通のものとすることができる。よって、毛束を一方の半円柱部分において先細毛を有するものとするとともに、他方の半円柱部分において柱体毛を有するものとすることによって、本発明の歯ブラシを効率良く製作することができる。
【0017】
(4)また、前記先細毛は、その長さ方向の中心線を有するとともに最先端に上面を有する錐台状に形成される錐台状部と、前記長さ方向の中心線を有するとともに前記錐台状の底面と連続する柱体状に形成される柱体状部とを有してもよい。
【0018】
すなわち、本発明の歯ブラシは、最先端を先頭にして先細毛の錘台状部を歯間に挿入することによって、毛束が歯間の汚れを有効に清掃するとともに、前記先細毛が柱体状部を有するために、この柱体状部において隣接する毛同士の周面が当接して横方向に支え合うことができる。また、先端毛と柱体毛とが隣接する場合においても、前記先細毛の前記柱体状部の周面と、前記柱体毛における前記柱体状部と隣り合う部分の周面とが当接して支え合うことができる。そのため、この歯ブラシの毛はより堅固に支えられて倒れにくい。
【0019】
(5)また、前記錘台状部は円錐台状に形成され、前記柱体状部及び前記柱体毛はそれぞれ円柱体状に形成されてもよい。
【0020】
すなわち、用毛の全体において横断面が円形に形成されるため、前記用毛は容易に整形することができ、効率的に製作することができる。
【0021】
(6)また、前記各用毛は、前記一端側部分の前記柱体状部から前記他端側部分に至るまで同径に形成されてもよい。
【0022】
複数本の用毛が合わせて2つ折りされて、その折り目が植毛穴内に挿入されることによって毛束がヘッド部に固定される。これら用毛は、この折り目部分を含んで一端側部分の柱体状部から他端側部分の先端までが同径に形成される。こうして、前記各用毛は、一端側部分の錘台状部を除いて全体が同径に形成されるために隣り合う前記用毛同士が密着し易い。これにより、各毛は密着してお互いに支え合い、毛束が堅固にヘッド部に固定される。その結果、本発明の歯ブラシは前記の各毛がより倒れにくい。
【0023】
(7)また、前記先細毛は、その長さ方向の中心線を有するとともに最先端に上面を有する円錐台状に形成される円錐台状部と、前記長さ方向の中心線を有するとともに前記円錐台状部の底面から連続する略角錐台状に形成される角錘台状部と、前記長さ方向の中心線を有するとともに前記角錐台状の底面と連続する角柱体状に形成される角柱体状部とを有し、前記柱体毛は、前記角柱体状部と同一形状且つ同大の横断面を有する角柱体状に形成されてもよい。
【0024】
すなわち、柱体毛が角柱体状に形成されることにより、前記柱体毛は先端部分が多角形の辺及び角を有するとともに、前記各角から延在する側稜を有する。これらの辺、角、側稜は尖っているため、効率良く歯面の汚れを清掃することができる。
【0025】
また、用毛の一端側部分の一部が角錐台状部と、前記角錘台状部と連続する角柱体状部とを有するとともに、他端側部分が前記角柱体状部と同一形状且つ同大の横断面を有する角柱体状に形成されるため、多角形横断面を有するこれらの部分は同時に整形することができ、効率的に製作することができる。さらに、前記一端側部分は先端が円錐台状に形成されるため、この先端を容易に先細形状に整形することができる。
【0026】
(8)また、前記柱体毛の先端における周縁にはR面取りが施されてもよい。
【0027】
すなわち、本発明の歯ブラシは、柱体毛先端の端面にR面取りが施されることにより、その端面の周縁が使用者の口腔内の部位を傷つけることが少ない。これにより、使用者は安心して歯間及び歯面を清掃することができる。
【0028】
(9)また、複数本の前記毛束が前記植毛面に対して垂直に立設し、前記複数の毛束のうちの一の前記毛束における前記植毛面から前記先端部までの高さと、同じく他の前記毛束における前記植毛面から前記先端部までの高さとが常に略同一となるように揃えられてもよい。
【0029】
すなわち、本発明の歯ブラシは、各毛束におけるそれぞれの先端部までの高さが略同一であるため、複数の毛束が並んで立設することにより、複数の前記先端部が合わさって巨視的な平面を形成する。この平面部分においては、それぞれの毛の先端が略同一の高さにおいて上向きに表出する。そのため、二以上の毛束のそれぞれに束ねられる先細毛同士が同時に1箇所の歯間に挿入することができる。また、二以上の毛束のそれぞれに束ねられる柱体毛同士が同時に広範囲の歯面に当接することができる。こうして、本発明の歯ブラシは、歯間及び歯面を効率的に清掃することができる。
【発明の効果】
【0030】
このように本発明では、毛が倒れてしまうことがなく、歯間及び歯面をそれぞれ効果的に清掃することができる歯ブラシを提供する。毛が倒れないことにより、一定期間の歯ブラシの使用にもかかわらず毛が変形して毛先の向きが変わってしまう状態の発生を低減することができる。毛が変形しにくく毛先の向きが変わりにくいことによって、先細毛による歯間を清掃する能力及び柱体毛による歯面を清掃する能力は、一定期間維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】(a)本発明の第1の実施形態に係る歯ブラシの平面図を表わす。(b)同じく右側面図を表わす。
図2】(a)図1の歯ブラシにおける毛束の平面図を表わす。(b)同じく右側面図を表わす。
図3】(a)図1の歯ブラシにおけるヘッド部の部分拡大平面図を表わす。(b)同じく部分拡大右側面図を表わす。
図4】(a)図1の歯ブラシにおける先細毛の側面図を表わす。(b)同じく平面図を表わす。(c)同じく先細形状部分の拡大側面図を表わす。
図5】(a)図1の歯ブラシにおける柱体毛の側面図を表わす。(b)同じく平面図を表わす。(c)同じく先端部分の拡大側面図を表わす。
図6図1の歯ブラシにおける毛束の平面図を表わす。
図7図1の歯ブラシにおける毛束の先端部付近を示した部分側面図を表わす。
図8図1の歯ブラシにおける毛束の部分断面側面図を表わす。
図9図1の歯ブラシにおける用毛の模式図を表わす。
図10】口腔内の歯、歯茎等を示す模式図を表わす。
図11】(a)歯ブラシの使用前における実施例に係る毛を側面から観察した写真を表わす。(b)同じく使用後における毛の写真を表わす。
図12】(a)歯ブラシの使用前における比較例1に係る毛を側面から観察した写真を表わす。(b)同じく使用後における毛の写真を表わす。
図13】(a)歯ブラシの使用前における比較例2に係る毛を側面から観察した写真を表わす。(b)同じく使用後における毛の写真を表わす。
図14】歯ブラシによる清掃前の下顎部のモデルを観察した写真を表わす。
図15】(a)実施例に係る歯ブラシによる清掃後の下顎部のモデルを観察した写真を表わす。(b)比較例1に係る歯ブラシによる清掃後の下顎部のモデルを観察した写真を表わす。(c)比較例2に係る歯ブラシによる清掃後の下顎部のモデルを観察した写真を表わす。
図16】本発明の第2の実施形態に係る歯ブラシの右側面図を表わす。
図17】本発明の第3の実施形態に係る歯ブラシの右側面図を表わす。
図18】(a)本発明の第4の実施形態に係る歯ブラシにおける先細毛の平面図を表わす。(b)同じく先細形状部分の拡大側面図を表わす。
図19】(a)図18(b)の拡大側面図に陰影を付した図を表わす。(b)図19(a)の先細毛を45度回転させた状態の図を表わす。
図20】(a)図18の歯ブラシにおける柱体毛の平面図を表わす。(b)同じく先端部分の拡大側面図を表わす。
図21図18の歯ブラシにおける毛束の平面図を表わす。
図22】(a)その他の実施形態に係る歯ブラシにおける先細毛の平面図を表わす。(b)同じく柱体毛の平面図を表わす。
図23】従来の歯ブラシの模式図を表わす。
【発明を実施するための形態】
【0032】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態を、図1図15を用いて説明する。図1(a)の平面図及び図1(b)の右側面図において1は歯ブラシであって、この歯ブラシ1がヘッド部2と、ヘッド部2と連続して設けられるハンドル部3とを備える。図においては、矢印Uの向きが歯ブラシ1の上方を示し、矢印Dの向きが同じく下方を示す。矢印Fの向きが同じく前方を示し、矢印Bの向きが同じく後方を示す。また、矢印Lの向きが同じく左方を示し、矢印Rの向きが同じく右方を示す。
【0033】
ヘッド部2は上向きの平面である植毛面4を有する。植毛面4から複数本の毛束5が上向きに立設される。1本1本の毛束5は上下方向の中心軸を有する直円柱状に形成される。それぞれの中心軸は植毛面4と直交する。これら毛束5の中心軸は、後述する図2において符号C1を付して表わす。図1(a)(b)の例においては32本の毛束がお互いに同等の間隔を空けて前後左右に配置されている。各毛束5には高さが揃えられる複数本の毛が束ねられている。使用者は、歯ブラシ1のハンドル部3を手指によって把持するとともにハンドル部3よりも前方に設けられるヘッド部2を口腔内に挿入し、毛束5を歯、歯間などに当ててこれらを清掃する。このとき、毛束5を歯、歯間などの部位に当てたままで上下左右前後に動かすことにより主に各毛束5の先端部がこれらの部位を清掃する。ヘッド部2及びハンドル部3は飽和ポリエステル(PET、PBT)、ポリプロピレン(PP)、ポリアセタール樹脂(POM)などの合成樹脂により一体に形成される。
【0034】
図2(a)は例として2本の毛束5を上方から視た平面図を示す。また、図2(b)はこれらの毛束5を右方から視た右側面図を示す。2本の毛束5は前後方向に隣り合って立設されている。各毛束5は、巨視的に上述の直円柱状に形成され、その上端に位置する先端部6が植毛面4と平行を成す平面状に形成される。各毛束5は一方の略半円柱部分である第1半円柱部7aと他方の略半円柱部分である第2半円柱部7bとを有する。図2(a)(b)の例においては、第1半円柱部7aと第2半円柱部7bとの境界面が、平面視において右方前寄りの位置から左方後ろ寄りの位置に向けて斜交いに毛束5を横切っている。この境界面は毛束5の中心軸C1を通過する。ただし、この境界面は、第1半円柱部7aに束ねられる複数本の毛と第2半円柱部7bに束ねられている複数本の毛との境を示す仮想の面であり、また、下述する図5に表わされるように隣り合う毛同士の間に挟まっているので微視的には完全な平面を形成していない。
【0035】
なお、第1半円柱部7aと第2半円柱部7bとの境界面は図2(a)(b)に例示するような方向の面でなくともよく、中心軸C1を通過するのであれば、これと異なった方向の面でもよい。
【0036】
図3(a)(b)は、図1(a)(b)に示したヘッド部2の部分拡大平面図及び部分拡大右側面図である。ヘッド部2には複数本の毛束5-1~5-Nが固定される。そして、これら毛束5-1~5-Nにおいて、植毛面4から、毛束5-1~5-Nのそれぞれの先端部6である各先端部6-1~6-Nまでの高さHが全てh1であって同一であるように揃えられている。
【0037】
第1半円柱部7aに束ねられている毛を図4(a)(b)(c)において符号11を付して表わす。この先細形状に形成される毛11を先細毛とよぶ。図4(a)が先細毛11全体の側面を示し、図4(b)がその平面を示し、また、図4(c)が先細形状部分の拡大側面を示す。先細毛11は、それぞれの中心線が先細毛11の中心線C2と一致する円錐台状部11aと円柱体状部11bとを有する。円錐台状部11aは、上ほど縮径する円錐台状に形成されて、先細毛11の最先端に円錐台の上面を有する。この上面は、先細毛11の最上部における上向きの平面を形成している。また、この上面を以下において先細毛端面とよぶとともに符号12を付して表わす。
【0038】
先細毛11は、円錐台状部11aの下側に円柱体状部11bを有する。円柱体状部11bは、円錐台状部11aの仮想の底面11cと同径の円柱体状に形成される。また、円錐台状部11aの仮想の底面11cと円柱体状部11bとは上下方向に連続する。
【0039】
第2半円柱部7bに束ねられている毛を図5(a)(b)(c)において符号13を付して表わす。このように先端が先細毛11と比べて寸胴な柱体形状に形成される毛13を柱体毛とよぶ。先細毛11の円柱体状部11bと柱体毛13とは同径である。図5(a)が柱体毛13全体の側面を示し、図5(b)がその平面を示し、また、図5(c)が先端部分の拡大側面を示す。柱体毛13は、中心線C3を有する略円柱状に形成されて上端に端面を有する。この端面を以下において柱体毛端面とよぶとともに符号14を付して表わす。
【0040】
柱体毛端面14の周縁にはR面取りが施される。図5(b)における柱体毛13の外形線の内側に描かれた同心円14aは、柱体毛端面14において中心線C3方向から見てR面取りの曲面が始まる境界線を表わす。この柱体毛端面14における同心円14aの内側である平面部分を柱体毛平面部とよび符号14bを付して表わす。柱体毛平面部14bは先細毛端面12よりも大径であり、面積が先細毛端面12よりも大きい。
【0041】
図6図2(a)と同様に毛束5を上方から視た平面図を示す。この図においては、図の概ね左半分に一方の略半円柱部分である第1半円柱部7aが示され、同じく右半分に他方の略半円柱部分である第2半円柱部7bが示されている。第1半円柱部7a及び第2半円柱部7bには、それぞれ18本の先細毛11と、これと同数本である18本の柱体毛13とが束ねられている。各先細毛11の最上部に先細毛端面12が形成され、また、各柱体毛13の最上部に柱体毛平面部14bが形成されている。なお、図6においてかくれ線により表わされている部材が下述する平線である。平線は15の符号を付して表わす。また、図6において先細毛11及び柱体毛13を囲む大きな円は、植毛面4から下向きに穿たれた植毛穴である。植毛穴は16の符号を付して表わす。下述する図8が示すように先細毛11の根元と柱体毛13の根元とは、植毛穴16の内周面と密着している。平線15は図2(a)においてもかくれ線により表わされている。
【0042】
図7は、図6の平面図により表わした毛束5の先端部6付近を示した部分側面図である。図7においても図6と同様に図の概ね左半分に毛束5の第1半円柱部7aが示され、同じく右側半分に第2半円柱部7bが示されている。また、図7は、ここに図示されていない第1半円柱部7aと第2半円柱部7bとの境界面の面方向から視た部分側面図である。
【0043】
図7が示すように、各毛11,13は先端部6付近において上下の鉛直方向に配置されている。また、各毛11,13の最上部である先細毛端面12及び柱体毛平面部14bは、それぞれが植毛面4から略同高さに位置する。
【0044】
また、各毛11,13は隣り合う毛11,13同士が左右前後方向に密着して配置されている。その結果、隣り合う先細毛11同士はそれらの円柱部11bにおいて密着する。隣り合う柱体毛13同士はそれらの略全長において密着する。また、隣り合う先細毛11及び柱体毛13は、先細毛11の円柱部11b、および、柱体毛13における前記円柱部11bとの隣接部分が密着する。
【0045】
図8は、毛束5の部分断面側面図であり、毛束5のうち図7に示した先端部6付近よりも下側の部分を示す。
【0046】
ところで、先細形状に形成される先細毛11と、柱体形状に形成される柱体毛13とは、これらの中間に被挿入部21を挟むように連続して1本の用毛22を構成する。この状態を模式的に図9に示す。すなわち、先細毛11の先端と柱体毛13の先端とは1本の用毛22の両端である。そして、被挿入部21は、先細毛11の円柱体状部11b及び柱体毛13と同様の円形断面且つ同径に形成される。用毛22は、先細毛11、被挿入部21及び柱体毛13が一体であるとともに材質がポリブチレンテレフタレート(PBT)である。この明細書において、先細毛11を用毛22の一端側部分とよび、また、柱体毛13を用毛22の他端側部分とよぶこともある。
【0047】
用毛22は、複数本を並べた上でそれらの中間部分を2つ折りし、その2つ折りの折り目を含む被挿入部21が植毛穴16内に挿入されてヘッド部2に固定される。そして用毛22はその状態で1本の毛束5を形成する。このとき、用毛22を2つ折りする段階で略直方体状の平線15を折り目の内側に挟んで、平線15と用毛22とが同時に植毛穴16に挿入される。この挿入時に平線15が植毛穴16の内周部分に圧入されるため、用毛22が植毛穴16から抜けてしまうことは困難である。これにより、用毛22は使用中又は使用後の歯ブラシ1から容易に抜脱しない。
【0048】
このような用毛22の植設工程を経て、被挿入部21が植毛穴16に留まる。これにより、図8が示すように先細毛11及び寸胴毛13は上下方向に直立して直円柱状の毛束5を形成する。
【0049】
以上の構成により、歯ブラシ1の毛束5は、先端部6が略平面状に形成されることによって一部の毛11,13とその残りの毛11,13とが高さ方向の段差を有していない。すなわち、1本の毛束5に含まれる毛11,13同士の間には高低差がない。そして、一部の毛11,13が上向きに突出することがない。そのため、それぞれの毛11,13は、隣接する毛11,13との間において互いに支えられることにより、倒れずに歯を効率的に清掃することができる。さらに、毛11,13は歯ブラシ1の使用を繰り返しても倒れて変形することが小さい。
【0050】
しかも、毛束5は、その半数本の先細毛11が先細形状に形成される。ここで、図10の模式図は歯T、歯茎G、隣り合う歯Tの隙間又は隣り合う歯T及び歯茎Gの隙間である歯間Tb、ならびに、歯Tのうち露出している面である歯面Tsを示す。そこで、先細形状の先端を歯間Tbに大きな力を加えることなく挿入することができる。そして、隣接する毛11,13同士が支え合っているために倒れることがなく、歯間Tbに的確に挿入することができる。これらにより、この毛束5は歯間Tbの汚れを有効に清掃することができる。
【0051】
また、毛束5は、残りの半数本の柱体毛13が柱体形状に形成される。よって、柱体毛13が広い柱体毛平面部14bを有するために、柱体毛13の先端は広い面積において接して歯面Tsを磨くことができる。そして、隣接する毛11,13同士が支え合っているために倒れることがなく、歯面Tsに対してより垂直に近い角度において当接することができる。しかも、柱体毛13の先端部分が先細毛11の先端部分を支えることもできる。これらにより、この毛束5は歯間Tbの汚れと歯面Tsの汚れとの両方を有効に清掃することができる。さらに、毛11,13は歯ブラシの使用を繰り返しても倒れて変形することが小さい。
【0052】
次に、毛束5は、用毛22が2つ折りされた状態でヘッド部2に固定され且つ先細形状である半数本の先細毛11と、柱体形状である残りの半数本の柱体毛13とを含む。これにより、先細形状の毛11と柱体形状の毛13とを同時に植毛することができる。よって、製造者は比較的簡素な工程を経るだけで毛束5を得ることができる。
【0053】
また、複数本の用毛22を合わせて2つ折りし、その折り目が植毛穴16内に挿入されることによって、毛束5がヘッド部2に固定する際に、予めこれら複数本の用毛22をお互いに略平行となるように並べて、一方側の全ての用毛22の先端が先細毛11側の先端となり、他方側の全ての用毛22の先端が柱体毛13側の先端となるように揃える。このことによって、第1半円柱部7aにおいて先細毛11を配置し、かつ、第2半円柱部7bにおいて柱体毛13を配置することができる。このように用毛22の先端形状が揃うように予め並べることによって、容易に、半円柱部7a,7bごとに毛11,13の形状を共通のものとすることができる。よって、毛束5を第1半円柱部7aにおいて先細毛11を有するものとするとともに、第2半円柱部7bにおいて柱体毛13を有するものとすることによって、歯ブラシ1を効率良く製作することができる。
【0054】
次に、歯ブラシ1は、最先端を先頭にして先細毛11の錘台状部を歯間Tbに挿入することによって、毛束5が歯間Tbの汚れを有効に清掃するとともに、先細毛11が柱体状部を有するために、この柱体状部において隣接する毛11同士の周面が当接して横方向に支え合うことができる。また、先端毛11と柱体毛13とが隣接する場合においても、先細毛11の柱体状部11bの周面と、柱体毛13における前記柱体状部11bと隣り合う部分の周面とが当接して支え合うことができる。そのため、毛11,13はより堅固に支えられて倒れにくい。
【0055】
また、本実施形態においては用毛22の全体において横断面が円形に形成されるため、用毛22は容易に整形することができ、効率的に製作することができる。
【0056】
さらに、用毛22は、植毛穴16内の折り目部分を含んで一端側部分である先細毛11の円柱体状部11bから他端側部分である柱体毛13の先端までが同径に形成される。こうして、各用毛22は、先細毛11の円錐台状部11aを除いて全体が同径に形成されるために隣り合う用毛22同士が密着し易い。これにより、各毛11,13は密着してお互いに支え合い、毛束5が堅固にヘッド部2に固定される。その結果、各毛11,13はより倒れにくい。
【0057】
次に、歯ブラシ1は、柱体毛端面14にR面取りが施されることにより、柱体毛端面14の周縁が使用者の口腔内の部位を傷つけることが少ない。これにより、使用者は安心して歯間Tb及び歯面Tsを清掃することができる。
【0058】
そして、歯ブラシ1は、各毛束5におけるそれぞれの先端部6までの高さHが略同一であるため、複数の毛束5が並んで立設することにより、複数の先端部6が合わさって巨視的な平面を形成する。この平面部分においては、それぞれの毛11,13の先端が略同一の高さh1において上向きに表出する。そのため、二以上の毛束5のそれぞれに束ねられる先細毛11同士が同時に1箇所の歯間Tbに挿入することができる。また、二以上の毛束5のそれぞれに束ねられる柱体毛13同士が同時に広範囲の歯面Tsに当接することができる。こうして、歯ブラシ1は、歯間Tb及び歯面Tsを効率的に清掃することができる。
【0059】
[実施例]
発明者は、実施例として本発明の第1の実施形態に係る歯ブラシ1を試作し、この実施例に係る試作品を一日2回の歯磨きに用い、この試作品の使用前における先端部6と、1ヶ月間の使用後における先端部6とを比較して観察した。図11は、図11(a)が使用前の先端部6の一部を側面視から観察した写真を示し、図11(b)が使用後の同じく写真を示す。これらの写真を比べて、各毛11,13はほとんど倒れていないことが見て取れる。これにより、本発明の歯ブラシ1は、長時間の使用にかかわらず毛11,13が倒れて変形することがなく、耐久性が高いことが分かる。
【0060】
次に、発明者は、比較例1として、第1半円柱部と第2半円柱部との両方において先細毛が束ねられている歯ブラシを試作した。この比較例1に係る歯ブラシは、実施例に係る歯ブラシと同様に、毛束が直円柱状に形成され、先端部が平面状に形成されている。すなわち、比較例1に係る歯ブラシの毛束は、全ての毛が先細毛によって占められている点において実施例に係る歯ブラシと異なる。
【0061】
そして、実施例に係る試作品と同様に、1ヶ月間、比較例1に係る試作品を一日2回の歯磨きに用い、使用前及び使用後におけるそれぞれの先端部を比較して観察した。図12は、図12(a)が使用前の先端部の一部を側面視から観察した写真を示し、図12(b)が使用後の同じく写真を示す。これらの写真を比べて、使用後の各毛の先端が折れ曲がって倒れていることが見て取れる。この使用後の状態では、各毛の先端を歯間に的確に挿入することができない。そして、比較例1の歯ブラシは、長時間の使用によって毛が倒れてしまい、実施例の歯ブラシと比べて耐久性が低いことが分かる。
【0062】
次に、発明者は、比較例2として、一方の半円柱部に先細毛が束ねられ且つ他方の半円柱部に柱体毛が束ねられている歯ブラシを試作した。また、各先細毛の先端位置が各柱体毛の先端位置よりも2mm~3mm程度高く、前記一方の半円柱部と前記他方の半円柱部との間には上下の段差が生じている。すなわち、比較例2に係る歯ブラシの毛束は、各先細毛が占める半円柱部と各柱体毛が示す半円柱部との間に段差が生じている点において実施例に係る歯ブラシと異なる。
【0063】
そして、実施例に係る試作品と同様に、1ヶ月間、比較例2に係る試作品を一日2回の歯磨きに用い、使用前及び使用後におけるそれぞれの毛の先端を比較して観察した。図13は、図13(a)が使用前の先端を側面視から観察した写真を示し、図13(b)が使用後の同じく写真を示す。これらの写真を比べて、使用後の先細毛の先端が夥しく折れ曲がって倒れていることが見て取れる。この使用後の状態では、各毛の先端を歯間に的確に挿入することができない。そして、比較例1の歯ブラシは、長時間の使用によって毛が倒れてしまい、実施例の歯ブラシと比べて耐久性が低いことが分かる。
【0064】
また、発明者は、図14の写真が示すような下顎部の歯科模型に人工プラークを塗布したモデルを用意した。歯科模型は株式会社ニッシン製のものを用いた。写真の濃い色で表される部分が、歯に人工プラークが付着した部分を示す。このモデルに対して、この実施例に係る歯ブラシ1に200gの負荷を加えてブラッシング試験を行った。試験後のモデルの状態を、図15(a)の写真によって示す。この写真から、モデルの歯面Ts及び歯間Tbの人工プラークが十分に刷掃されていることが見て取れる。これにより、本発明の歯ブラシ1は毛11,13が倒れずに、歯面Ts及び歯間Tbを効果的に清掃できて刷掃能力が高いことが分かる。
【0065】
次に、前記のモデルを用いて、この比較例1に係る歯ブラシに200gの負荷を加えてブラッシング試験を行った。試験時間は、上記の実施例に係る歯ブラシを用いた試験時の時間と同じ時間に設定した。試験後のモデルの状態を図15(b)の写真によって示す。この写真から、モデルの歯面Ts及び歯間Tbの人工プラークが部分的に付着したままであり、十分に刷掃されていないことが見て取れる。特に、歯間付近の付着が著しい。これらにより、比較例1の歯ブラシは毛が倒れてしまい、歯面Ts及び歯間Tbを効果的に清掃することができず、実施例の歯ブラシと比べて刷掃能力が低いことが分かる。
【0066】
次に、前記のモデルを用いて、この比較例2に係る歯ブラシに200gの負荷を加えてブラッシング試験を行った。試験時間は、上記の実施例に係る歯ブラシを用いた試験時の時間及び比較例1に係る歯ブラシを用いた試験時の時間と同じ時間に設定した。試験後のモデルの状態を図15(c)の写真によって示す。この写真から、モデルの歯面Ts及び歯間Tbの人工プラークが部分的に付着したままであり、十分に刷掃されていないことが見て取れる。特に、歯間付近の付着が著しい。これらにより、比較例2の歯ブラシは、毛が倒れてしまい、歯面Ts及び歯間Tbを効果的に清掃することができず、実施例の歯ブラシと比べて刷掃能力が低いことが分かる。
【0067】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態を図16を用いて説明する。図16は歯ブラシ101のヘッド部102を拡大した右側面図を表す。ヘッド部102が植毛面104を有し、植毛面104は上向き且つやや前向きの平面である。すなわち、植毛面104は、左右方向視において歯ブラシ101の軸方向である前後方向との間において図のθの角度を成して傾斜する。
【0068】
複数本の毛束105は、植毛面104に対して垂直を成すように立設される。すなわち、各毛束105の中心軸C1は植毛面104と直交する。また、それぞれの毛束105の中心軸C1方向において、植毛面104から全ての毛束105の先端部106までの高さHがh2であって同一であるように揃えられている。
【0069】
その他の構成は第1の実施形態と共通する。
【0070】
この実施形態の歯ブラシ101は、植毛面104が前向きに傾斜することにより、各毛束105が歯ブラシ101の上下方向に対して前向きに傾斜するように固定される。これにより、歯に対する歯ブラシ101の当て方に応じて、口腔内の局所を効率的に清掃することができる。
【0071】
このように、歯ブラシ101は、口腔内の局所を容易に清掃することができて、また、そのような場合でも各毛束105に束ねられる毛111,113が倒れてしまうことなく歯間Ts及び歯面Tbを効率的に清掃することができる。
【0072】
[第3の実施形態]
本発明の第3の実施形態を図17を用いて説明する。図17は歯ブラシ201のヘッド部202を拡大した右側面図を表す。ヘッド部202が上向きの植毛面204を有する。
【0073】
複数本の毛束205は、植毛面204に対して垂直を成すように立設される。すなわち、各毛束205は上下方向の中心軸を有する。また、複数本の毛束205には、植毛面204から各毛束205a~205cの先端部206a~206cまでの高さHがh3である長身毛束205aと、同じく高さHがh4である中身毛束205bと、同じく高さHがh5である低身毛束205cとが含まれている。高さHはh3が最も高く、h5が最も低い。
【0074】
その他の構成は第1の実施形態と共通する。
【0075】
この実施形態の歯ブラシ201は、高さHが異なる複数種の毛束205を有するため、例えば使用者の歯並びが悪いときでも、長身毛束205aが口腔内の内側に位置する歯Tの歯面Tsとその左右の歯間Tbとを効率良く清掃することができる。また、低身毛束205cが口腔内の外側に位置する歯Tの歯面Tsとその左右の歯間Tbとを効率良く清掃することができる。しかも、それらのような場合でも各毛束205に束ねられる毛211,213が倒れてしまうことなく歯間Ts及び歯面Tbを効率的に清掃することができる。
【0076】
なお、高さHがh3、h4及びh5の3種類の高さHを有する毛束205a~205cの例を挙げたが、歯ブラシ201は、2種類の高さHの毛束205又は4種類以上の高さHの毛束205を有してもよい。また、図15の長身毛束205a、中身毛束205b及び低身毛束205cが規則的に配置されているが、歯ブラシ201は、これらの毛束205a~205cが不規則的に配置されてもよい。
【0077】
[第4の実施形態]
本発明の第4の実施形態を図18図21を用いて説明する。図18(a)は歯ブラシ301の先細毛311の平面を表し、図18(b)は同じく先細毛311の先細形状部分の拡大側面を表す。歯ブラシ301の毛束305には、下述する図21に示す通り先細毛311及び柱体毛313が束ねられている。先細毛311は、最先端に円錐台状に形成される円錐台状部311aを有する。円錐台状部311aは、最先端にその上面である先端毛端面312を有する。また、円錐台状部311aは中心線C2を有する。次に、先細毛311は、この円錐台状部311aの仮想の底面311cから下向きに連続する略四角錘台状の四角錘台状部311dを有する。四角錘台状部311dの中心線は円錐台状部311aの中心線C2と一致する。さらに、先細毛311は、この四角錘台状部311dの仮想の底面311eから下向きに連続する四角柱体状の四角柱体状部311bを有する。四角柱体状部311bの中心線は、円錐台状部311a及び四角錘台状部311dの中心線C2と一致する。
【0078】
図19(a)は、図18(b)の拡大側面図にわかり易さのため陰影を付した図である。図19(b)は、図19(a)の先細毛311を中心線C2を中心に45度回転させた状態の下でわかり易さのため陰影を付した図である。これらの図が示すように、四角錐台状部311dは四角錐台よりも各側面がやや凸曲面状に膨れ上がった形状を成している。
【0079】
図20(a)は柱体毛313の平面を表し、図20(b)は柱体毛313の先端部分の拡大側面を表す。先細毛311の四角柱体状部311bの横断面と柱体毛313の横断面とは同一形状且つ同大である。柱体毛313は、中心線C3を有する略四角柱体状に形成されて上面に柱体毛端面314を有する。
【0080】
柱体毛端面314の周縁にはR面取りが施される。図20(a)における柱体毛313の外形線の内側に描かれた角丸四角形314aは、柱体毛端面314において中心線C3方向から見てR面取りの曲面が始まる境界線を表わす。この柱体毛端面314における角丸四角形314aの内側である平面部分を柱体毛平面部314bとよぶ。柱体毛平面部314bは先端毛端面312よりも面積が大きい。
【0081】
図21は毛束305を上方から視た平面図を示す。この図においては、図の概ね左半分に一方の略半円柱部分である第1半円柱部307aが示され、同じく右半分に他方の略半円柱部分である第2半円柱部307bが示されている。第1半円柱部307a及び第2半円柱部307bには、それぞれ35本の先細毛311と、これと同数本である35本の柱体毛313とが束ねられている。各先細毛311の最上部に先細毛端面312が形成され、また、各柱体毛313の最上部に柱体毛平面部314bが形成されている。なお、図21においてかくれ線により表わされている部材が下述する平線315である。また、図21において先細毛311及び柱体毛313を囲む大きな円は、植毛面304から下向きに穿たれた植毛穴316である。
【0082】
その他の構成は第1~3の実施形態と共通する。
【0083】
このように、柱体毛313が角柱体状に形成されることによって、柱体毛313は先端部分が四角形の辺及び角を有するとともに、これら各角から延在する側稜を有する。これらの辺、角、側稜は尖っているため、効率良く歯面の汚れを清掃することができる。
【0084】
また、用毛322の一端側部分の一部が四角錐台状部311dと、四角錘台状部311dと連続する四角柱体状部311bとを有するとともに、他端側部分が四角柱体状部311bと同一形状且つ同大の横断面を有する四角柱体状に形成されるため、四角形横断面を有するこれらの部分は同時に整形することができ、効率的に製作することができる。さらに、前記一端側部分は先端が円錐台状に形成されるため、この先端を容易に先細形状に整形することができる。
【0085】
なお、先細毛311及び柱体毛313の四角形横断面は正方形又は直方形でよい。図の四角形横断面は、一例として正方形を示している。また、同じく四角形横断面はひし形を含む平行四辺形でもよい。さらに、先細毛311及び柱体毛313は、四角形断面を有するものでなくともよく、四角形以外の多角形の断面を有するものでもよい。
【0086】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0087】
例えば、用毛の材質は、先細毛の先細形状などを容易に形成することができれば、ポリブチレンテレフタレート以外の合成樹脂でもよい。
【0088】
また、先細毛及び柱体毛は、図22(a)及び(b)がそれぞれの平面を示すように長円形の横断面を有していてもよい。このとき、先細毛の錐台状部は、長円形の横断面を有する変則的な円錐台状に形成されてもよい。
【0089】
さらに、第2の実施形態において植毛面が傾斜する構成を例示し、第3の実施形態において高さHが異なる複数種の毛束を有する構成を例示したが、本発明の歯ブラシは、植毛面が傾斜し且つ高さHが異なる複数種の毛束を有してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明は、使用者の口腔内における歯間や歯面を清掃する歯ブラシに利用できる。
【符号の説明】
【0091】
1,101,201,301 歯ブラシ
2,102,202 ヘッド部
3 ハンドル部
4,104,204,304 植毛面
5,105,205,305 毛束
6,106,206 先端部
7a,307a 第1半円柱部(一方の略半円柱部分)
7b,307b 第2半円柱部(他方の略半円柱部分)
11,311 先細毛
11a,311a 円錐台状部(錘台状部)
11b 円柱体状部(柱体状部)
12,312 先端毛端面
13,313 柱体毛
14,314 柱体毛端面
14b,314b 柱体毛平面部
15,315 平線
16,316 植毛穴
21 被挿入部
22,322 用毛
311b 四角柱体状部(角柱体状部)
311d 四角錘台状部(角錘台状部)


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23