(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138105
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/37 20060101AFI20240927BHJP
A61K 8/35 20060101ALI20240927BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20240927BHJP
A61Q 17/00 20060101ALI20240927BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
A61K8/37
A61K8/35
A61K8/34
A61Q17/00
A61Q19/00
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024120847
(22)【出願日】2024-07-26
(62)【分割の表示】P 2020062613の分割
【原出願日】2020-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100149294
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 直人
(74)【代理人】
【識別番号】100137512
【弁理士】
【氏名又は名称】奥原 康司
(72)【発明者】
【氏名】川口 達也
(72)【発明者】
【氏名】横田 江利子
(72)【発明者】
【氏名】アン チンエク
(57)【要約】
【課題】本発明は、真菌類および細菌類の両方に対して高い防腐効果を有する化粧料を提供することを目的とする。さらに、本発明は、防腐剤フリーの化粧料を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、(A)炭素数8~12の脂肪酸グリセリルエステル、および(B)特定のアセトフェノン誘導体を含有することを特徴とする化粧料に関する。また、本発明は、化粧料等の防腐対象物に、前記(A)成分および前記(B)成分を配合することを含む、真菌類および細菌類に対する防腐力を高める方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)炭素数8~12の脂肪酸グリセリルエステル、および
(B)以下の式(1)で表されるアセトフェノン誘導体
【化1】
(式中、R
1およびR
2はそれぞれ独立して、水素、ヒドロキシ基またはメトキシ基を表す)
を含有し、
アシルプロリンおよびパラベンを含まない化粧料であって、
当該化粧料が2価グリコールを配合する場合には、その配合量が10質量%以下である、化粧料。
【請求項2】
前記(A)成分がカプリン酸グリセリルである、請求項1に記載の化粧料。
【請求項3】
前記(B)成分が4-ヒドロキシアセトフェノンである、請求項1又は2に記載の化粧料。
【請求項4】
フェノキシエタノールを含まない、請求項1に記載の化粧料。
【請求項5】
前記(A)成分の配合量が、化粧料全量に対して0.4質量%以下である、請求項1に記載の化粧料。
【請求項6】
アシルプロリンおよびパラベンを含まない化粧料であって、
当該化粧料が2価グリコールを配合する場合には、その配合量が10質量%以下である化粧料に、
(A)炭素数8~12の脂肪酸グリセリルエステル、および
(B)以下の式(I)で表されるアセトフェノン誘導体
【化2】
(式中、R
1およびR
2はそれぞれ独立して、水素、ヒドロキシ基またはメトキシ基を表す)
を配合することを含む、当該化粧料の真菌類および細菌類に対する防腐力を高める方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い防腐効果を有する化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧料は、開封後長期にわたって使用されるため、微生物の生育や繁殖を抑制するための防腐効果を有することが不可欠である。そのため、化粧料には、メチルパラベン、エチルパラベンなどのパラベン類やフェノキシエタノールといった防腐剤が配合されるのが一般的である。しかしながら、近年の安全性志向の高まりから、化粧料においても無添加化粧料が好まれる傾向があり、添加物の一つとして防腐剤を配合していない化粧料が求められている。そこで、従来の化粧料用防腐剤に替えて、化粧料に防腐効果を付与する技術が開発されている。
【0003】
中鎖脂肪酸グリセリンエステルやショ糖脂肪酸エステルは、安全性が高く、静菌作用を有する物質として提案されている。しかし、高い静菌作用を得ようとして多く配合すると皮膚への刺激が生じることがある。また、酵母やバクテリアに対して静菌作用を示す反面、カビ類に対しては静菌作用が弱く、化粧料に広い抗菌スペクトルを提供することは困難であった。
【0004】
特許文献1では、(A)0.2質量%以上の2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸n-ヘキシルと、(B)炭素数3~9の多価アルコール、炭素数6~8のアルキルグリセリルエーテルおよび炭素数8~12の脂肪酸グリセリルエステルから選択される1種又は2種以上とを特定比率で組み合わせることによって、防腐抗菌効果を有する皮膚外用剤が得られることが記載されている。
【0005】
また、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール等の2価グリコールは、安全性が高い保湿剤であり、広く化粧料に配合されるが、抗菌作用も有することが知られている。しかし、このような2価グリコールで高い防腐効果を得ようとすると化粧料中に高配合する必要があり、化粧料にべたつきが生じる場合があった。
【0006】
よって、化粧料に防腐作用を付与する物質としては、化粧料の使用性を損なうことなく、広い抗菌スペクトルが実現できるものが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、真菌類および細菌類に対して高い防腐効果を有する化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明者等は、前記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、ある種の脂肪酸グリセリルエステルと特定のアセトフェノン誘導体とを組み合わせた場合に、真菌類および細菌類の両方に対して高い防腐作用を発揮することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、
(A)炭素数8~12の脂肪酸グリセリルエステル、および
(B)以下の式(1)で表されるアセトフェノン誘導体
【0011】
【0012】
(式中、R1およびR2はそれぞれ独立して、水素、ヒドロキシ基またはメトキシ基を表す)
を含有してなる化粧料を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の化粧料は、上記構成とすることにより、真菌類および細菌類に対して高い防腐効果を有する化粧料を得ることができる。前記(A)成分と(B)成分により十分な防腐効果を得ることができるので、防腐効果を得るために2価グリコールや低級アルコールを高配合する必要がなく、べたつきや肌への刺激性のない、使用感の良好な化粧料を得ることができる。また、通常化粧料に用いられる防腐剤を含まない、すなわち「防腐剤フリー」の化粧料を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の化粧料は、(A)炭素数8~12の脂肪酸グリセリルエステルと、(B)特定のアセトフェノン誘導体とを含むことを特徴とする。前記(A)成分および(B)成分の配合により、化粧料に防腐効果が付与される。以下、本発明の化粧料を構成する各成分について詳述する。
【0015】
<(A)脂肪酸グリセリルエステル>
本発明の化粧料に配合される(A)脂肪酸グリセリルエステル(以下、単に「(A)成分」と称する場合がある)は、化粧料に通常配合される脂肪酸グリセリルエステルであって、炭素数が8~12のものである。例としては、カプリル酸グリセリル、2-エチルヘキサン酸グリセリル、カプリン酸グリセリル、ウンデシレン酸グリセリル、ラウリン酸グリセリル等が挙げられる。本発明の化粧料においては、(A)成分として上記の脂肪酸グリセリルエステルの1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。本発明においては、カプリン酸グリセリルを用いるのが好ましく、モノカプリン酸グリセリルを用いるのがさらに好ましい。
【0016】
(A)成分の配合量は、化粧料全量に対して、下限値が0.01質量%以上又は0.05質量%以上であることが好ましく、上限値が0.4質量%以下又は0.3質量%以下であることが好ましい。よって、好ましい配合量範囲として0.01~0.4質量%、0.01~0.3質量%、0.05~0.4質量%、0.05~0.3質量%等が挙げられる。配合量が0.01質量%未満であると十分な防腐・抗菌作用が得られない場合があり、配合量が0.4質量%を超えると肌に刺激を感じる場合がある。
【0017】
<(B)アセトフェノン誘導体>
本発明の化粧料に配合される(B)アセトフェノン誘導体(以下、単に「(B)成分」と称する場合がある)は、化粧料に通常配合されるアセトフェノン誘導体であって、以下の式(1)で表される化合物またはその塩である。
【0018】
【0019】
上記式中、R1およびR2はそれぞれ独立して、水素、ヒドロキシ基またはメトキシ基を表し、R1およびR2がアセチル基に対して、オルト、メタまたはパラ位に配置する。
【0020】
本発明においては、以下に挙げる化合物からなる群から選択される1種または2種以上であることが好ましい。
【0021】
アセトフェノン
【0022】
【0023】
2-ヒドロキシアセトフェノン
【0024】
【0025】
3-ヒドロキシアセトフェノン
【0026】
【0027】
4-ヒドロキシアセトフェノン
【0028】
【0029】
なかでも、本発明においては、4-ヒドロキシアセトフェノンがさらに好ましい。
【0030】
上記式(1)で表される化合物の塩としては、化粧品として許容可能な塩または薬学的に許容可能な塩であればよく、例としてナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる。
【0031】
(B)成分の配合量は、化粧料全量に対して、下限値が0.06質量%以上又は0.1質量%以上であることが好ましく、上限値が2.0質量%以下又は1.0質量%以下であることが好ましい。よって、好ましい配合量範囲として0.06~2.0質量%、0.06~1.0質量%、0.1~2.0質量%、0.1~1.0質量%等が挙げられる。配合量が0.06質量%未満であると十分な防腐・抗菌作用が得られない場合があり、配合量が2.0質量%を超えると肌に刺激を感じる場合がある。
【0032】
本明細書において、「抗菌」とは、対象物の表面上における菌の増殖を抑制することを意味し、「防腐」とは、微生物の侵入、生育、増殖を抑制し、腐敗や発酵が起こらないようにすることを意味する。よって、本発明における「防腐効果」あるいは「防腐作用」とは、「抗菌」および「防腐」の両方を含む効果を指し、対象物が化粧料の場合には、化粧料における細菌類、酵母、カビ等の真菌類の増殖を抑制して、菌による化粧料の変質を防ぎ、化粧料の保存性を高める効果を意味する。
【0033】
本発明の研究過程においては、脂肪酸グリセリルエステルは酵母やバクテリアに対する防腐作用が強く、カビに対しては防腐作用が弱い性質があること、アセトフェノン誘導体はカビに対する防腐作用が強く、酵母やバクテリアに対しては防腐作用が弱いという性質が明らかとなった。一方、防腐剤として化粧料に通常用いられるフェノキシエタノールは緑膿菌に対する防腐作用が強いがその他のバクテリアや酵母・カビに対しては防腐作用が劣っていた。そこで、フェノキシエタノールと脂肪酸グリセリルエステルとを組み合わせると、多くの微生物に対して防腐作用が向上したが、カビの死滅速度が著しく遅くなるという両者単独の場合に有していた防腐効果の一部が打ち消されることが明らかとなった。
【0034】
本発明においては、脂肪酸グリセリルエステルとアセトフェノン誘導体とを組み合わせることによって、互いの利点を打ち消すことなく、カビ、酵母、バクテリアのすべてに対して高い防腐効果が得られ、広い抗菌スペクトルをもつ新規の組み合わせを実現することができた。
【0035】
本発明に係る脂肪酸グリセリルエステルは、特許文献1において、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸n-ヘキシルとの組み合わせによって防腐抗菌効果を示すことが記載されている。また、本発明に係るアセトフェノン誘導体は、特許文献2(特開2018-90579)において、アシルプロリン(例としてデカノイルプロリン)、アシルグリシン(例としてオクタノイルグリシン、ウンデシレノイルグリシン)等のアシルアミノ酸と多価アルコールとの組み合わせによって、細菌や真菌に対して防腐効果を示すことが記載されている。
【0036】
一方、本発明においては、(A)脂肪酸グリセリルエステルと(B)特定のアセトフェノン誘導体とを組み合わせることによって防腐効果が発揮されるので、上記特許文献に記載される2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸n-ヘキシルや、アシルプロリン(例としてデカノイルプロリン)およびアシルグリシン(例としてオクタノイルグリシン、ウンデシレノイルグリシン)等のアシルアミノ酸を配合しなくともよい。よって、本発明の態様には、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸n-ヘキシルおよび/またはアシルアミノ酸を含まない態様が包含される。
【0037】
本発明の化粧料は、通常化粧料として配合される種種の成分を配合してよい。例として、通常化粧料に用いられる炭化水素油、高級脂肪酸、高級アルコール、合成エステル油、シリコーン油、液体油脂、固体油脂、ロウ等の油分、紫外線防御剤、油相増粘剤、界面活性剤、水、低級アルコール、多価アルコール、水溶性高分子、保湿剤、粉末、色材、香料、中和剤、キレート剤、pH調整剤、ビタミン類、酸化防止剤、薬剤等を適宜必要に応じて含む。
【0038】
本発明においては、前記(A)脂肪酸グリセリルエステルと前記(B)アセトフェノン誘導体により、十分な防腐効果が得られるので、防腐剤として化粧料に通常用いられるフェノキシエタノールおよびパラベン類を配合しなくともよい。したがって、本発明の態様には、フェノキシエタノールおよび/またはパラベン類を含まない態様が包含される。本発明によれば、防腐剤を含まない化粧料、すなわち「防腐剤フリー」の化粧料を実現することができる。
【0039】
従来から、化粧料に防腐効果を付与するために、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール等の2価グリコールを化粧料全量に対して10質量%を超えて配合される場合がある。本発明によれば、前記(A)脂肪酸グリセリルエステルと前記(B)アセトフェノン誘導体により十分な防腐効果が得られるので、2価グリコールの配合量を10質量%以下にすることが可能となる。よって、本発明の態様には、2価グリコールの配合量が10質量%以下である態様が包含される。2価グリコールの配合量を少なくすることにより、べたつきのない使用感を有する化粧料を得ることができる。
【0040】
また、従来から、エタノール等の低級アルコールの配合量を増やして抗菌効果を得る場合もある。本発明によれば、前記(A)脂肪酸グリセリルエステルと前記(B)アセトフェノン誘導体により十分な防腐効果が得られるので、低級アルコールの配合量を3質量%以下とすることができる。よって、本発明の態様には、エタノール等の低級アルコールの配合量が10質量%以下である態様、および低級アルコールを配合しない態様が包含される。低級アルコールの配合量を少なくすることにより、肌への刺激が十分に抑制された化粧料を得ることができる。
【0041】
本発明に係る(A)脂肪酸グリセリルエステルと(B)特定のアセトフェノン誘導体とを対象物に配合すると、配合した対象物は、細菌類、酵母、カビ等の真菌類に対して優れた防腐力を示す。このため、本発明によれば、防腐対象物に、本発明に係る(A)成分および(B)成分を配合することにより、該防腐対象物の細菌類および真菌類に対する防腐力を高めることができる。ここで、防腐対象物は化粧料に限定されず、軟膏等の皮膚外用剤、香水、コロン等のフレグランス製品、汗拭きシート等の生活衛生用品、おしり拭き等の乳児用衛生用品等が例示される。
【0042】
すなわち、本発明は、(A)炭素数8~12の脂肪酸グリセリルエステル、および
(B)以下の式(1)で表されるアセトフェノン誘導体
【0043】
【0044】
(式中、R1およびR2はそれぞれ独立して、水素、ヒドロキシ基またはメトキシ基を表す)
を、防腐対象物に配合することを含む、真菌類および細菌類に対する防腐力を高める方法に関する。本発明においては、防腐対象物が化粧料であることが好ましい。
【0045】
前記方法においては、本発明に係る(A)成分および(B)成分は、防腐対象物の完成品に添加されてもよいし、防腐対象物の製造工程の際に配合されてもよい。(A)成分および(B)成分は、同時に配合されてもよいし、別々に配合されてもよい。別々に配合する場合には、(A)成分および(B)成分のいずれが先でもよい。
【0046】
本発明に係る化粧料の剤形としては、特に限定されず、通常の化粧料の剤形であればいずれのものも利用できる。すなわち、液状、ゲル状、ペースト状、乳液状、クリーム状、噴霧状等のものが利用できる。
【0047】
本発明に係る化粧料としては、特に限定されず、化粧水、保湿クリーム等のスキンケア化粧料、ファンデーション、BBクリーム、アイシャドウ、口紅等のメイクアップ化粧料、日焼け止め化粧料、パック剤等に配合することができる。
【0048】
また、本発明は、前記(A)脂肪酸グリセリルエステルと前記(B)アセトフェノン誘導体との組み合わせにより真菌類および細菌類に対する防腐効果を奏するので、本発明によれば、真菌類および細菌類を含む幅広い抗菌スペクトルを有する防腐組成物を得ることができる。すなわち、本発明は、(A)炭素数8~12の脂肪酸グリセリルエステル、および(B)以下の式(1)で表されるアセトフェノン誘導体
【0049】
【0050】
(式中、R1およびR2はそれぞれ独立して、水素、ヒドロキシ基またはメトキシ基を表す)
からなる防腐剤組成物に関する。
【実施例0051】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳述するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。配合量は特記しない限り、その成分が配合される系に対する質量%で示す。各実施例について具体的に説明する前に、採用した試験方法および評価方法について説明する。
【0052】
常法により、表1に示す組成を有する試験例1~5の化粧水を調製し、防腐効果試験および使用試験を実施した。
【0053】
<防腐効果試験>
1.試験対象の菌類
Ps:緑膿菌(菌株名:Pseudomonas aeruginosa、ATCC15442)
E:大腸菌(菌株名:Escherichia coli、ATCC8739)
S:黄色ブドウ球菌(菌株名:Staphylococcus aureus、ATCC6538)
Can:カンジダ菌(酵母)標準株(菌株名:Candida albicans、ATCC10231)
Asp:黒カビ(菌株名:Aspergillus brasiliensis、ATCC16404)
【0054】
2.試験
防腐力評価方法試験はISO11930に準じた方法で実施し、以下の式により得られた対数減少値(LRV:Log Reduction Value)から細菌類、真菌類およびカビに対する防腐力を評価した。
LRV=log10(0日目の生菌濃度/サンプリング時の生菌濃度)
【0055】
3.評価
下記基準に従って防腐効果を評価し、A判定であったもののみを十分な防腐力と判断した。
Ps、E、Sに対する防腐効果の評価基準
A:7日後にLRVが3以上を示した。
B:LRVが3以上を示すのに8日~14日間必要であった。
C:14日以上経過してもLRVが3未満であった。
Canに対する防腐効果の評価基準
A:7日後にLRVが1以上を示した。
B:LRVが1以上を示すのに8日~14日間必要であった。
C:14日以上経過してもLRVが1未満であった。
Aspに対する防腐効果の評価基準
A:14日後にLRVが1以上を示した。
B:LRVが1以上を示すのに15日~28日間必要であった。
C:28日以上経過してもLRVが1未満であった。
【0056】
<使用性試験>
パネラー10名に対して1日あたり2回の頻度で1週間使用してもらい、使用感の満足度とともに皮膚刺激の有無を申告させた。使用感の評価は以下の4段階の基準に分類し、また、刺激感を訴えた人数を確認した。
A:皮膚刺激がなく、使用感が良いと認めたパネラーが8名以上
B:皮膚刺激がなく、使用感が良いと認めたパネラーが5名以上~8名未満
C:皮膚刺激がなく、使用感が良いと認めたパネラーが3名以上~5名未満
D:皮膚刺激がなく、使用感が良いと認めたパネラーが3名未満
【0057】
以下の表1に記載の組成を有する、化粧水(試験例1~5)を常法により調製した。上記試験および評価方法に従って、各菌類に対する防腐効果を評価した。
【0058】
【0059】
表1に示されるように、従来から防腐剤として用いられるフェノキシエタノールを配合した化粧水(試験例1)は、緑膿菌(Ps)に対する防腐効果は高く、大腸菌(E)、カンジダ菌(Can)および黒カビ(Asp)に対する防腐効果は中程度であり、黄色ブドウ球菌(S)に対する防腐効果は弱かった。アセトフェノン誘導体であるヒドロキシアセトフェノンを配合した化粧水(試験例2)は、Ps、EおよびAspに対する防腐効果は強く、Canに対する防腐効果は中程度であり、Sに対する防腐効果は弱かった。また、脂肪酸グリセリルエステルであるカプリン酸グリセリルとフェノキシエタノールとを組み合わせて配合した化粧水(試験例3、試験例4)は、フェノキシエタノール単独の場合(試験例1)と比較して、E、SおよびCanに対する防腐効果が向上した反面、Aspの死滅速度が遅くなり、カビに対する防腐効果が著しく低下した。このことから、脂肪酸グリセリルエステルをフェノキシエタノールと組み合わせるとフェノキシエタノールが有する防腐効果の一部が打ち消されることが示唆された。
一方、本発明の脂肪酸グリセリルエステルとアセトフェノン誘導体とを組み合わせて配合した化粧水(試験例5)は、Ps、E、S、Can、Aspのすべてに対して十分な防腐効果を示した。
【0060】
本発明は以下の態様を含む。
[第1項]
(A)炭素数8~12の脂肪酸グリセリルエステル、および
(B)以下の式(1)で表されるアセトフェノン誘導体
【化9】
(式中、R
1およびR
2はそれぞれ独立して、水素、ヒドロキシ基またはメトキシ基を表す)
を含有してなる化粧料。
[第2項]
前記(A)成分がカプリン酸グリセリルである、第1項に記載の化粧料。
[第3項]
前記(B)成分が4-ヒドロキシアセトフェノンである、第1項又は第2項に記載の化粧料。
[第4項]
フェノキシエタノールおよびパラベン類を含まない、第1項から第3項のいずれか一項に記載の化粧料。
[第5項]
前記(A)成分の配合量が、化粧料全量に対して0.3質量%以下である、第1項から第4項のいずれか一項に記載の化粧料。
[第6項]
(A)炭素数8~12の脂肪酸グリセリルエステル、および
(B)以下の式(I)で表されるアセトフェノン誘導体
【化10】
(式中、R
1およびR
2はそれぞれ独立して、水素、ヒドロキシ基またはメトキシ基を表す)
を、化粧料に配合することを含む、真菌類および細菌類に対する防腐力を高める方法。
[第7項]
(A)炭素数8~12の脂肪酸グリセリルエステル、および
(B)以下の式(I)で表されるアセトフェノン誘導体
【化11】
(式中、R
1およびR
2はそれぞれ独立して、水素、ヒドロキシ基またはメトキシ基を表す)
からなる防腐剤組成物。