(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138112
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】内視鏡用照明装置
(51)【国際特許分類】
A61B 1/07 20060101AFI20240927BHJP
A61B 1/06 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
A61B1/07 733
A61B1/06 531
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024121329
(22)【出願日】2024-07-26
(62)【分割の表示】P 2023513804の分割
【原出願日】2021-08-19
(31)【優先権主張番号】102020122636.5
(32)【優先日】2020-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】ランデス,ヘルマン
(57)【要約】
【課題】大きい画角、とりわけ180°よりも大きい画角を有する対物レンズを備える内視鏡用の照明装置を提供する。
【解決手段】内視鏡先端部は、視野を画像化するための対物レンズと、視野を照明するための照明装置と、を備えており、対物レンズは、180°より大きい画角を有し、照明装置は、平面図において対物レンズの周りに配置され、照明装置は、照明光を視野へと出射する透明キャップを含み、照明装置は、発光を放射する1つ以上の発光素子を含み、発光素子のうちの1つに関して、発光の角度分布の重心が光軸から傾けられた方向に位置するか、あるいは反射面が、少なくとも発光を反射面への発光の入射の方向よりも光軸の方向からさらに遠ざかる方向に反射させる。
【選択図】
図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
視野を画像化するための対物レンズと、
前記視野を照明光で照明するための照明装置と、
を備えており、
前記対物レンズは、光軸を有し、
前記対物レンズは、180°より大きい画角を有し、
前記照明装置は、前記光軸に沿った平面図において前記対物レンズの周りに配置され、
前記照明装置は、前記照明光を前記視野へと出射する透明キャップを備え、
前記照明装置は、それぞれの発光面からそれぞれの発光を放射するように構成された発光ダイオードである1つ以上の発光素子を備え、
前記照明装置は、以下の条件、すなわち
前記照明装置が反射面を備え、前記反射面が、前記発光素子のうちの少なくとも1つの発光の少なくとも一部を、前記発光素子のうちの少なくとも前記1つの前記発光の少なくとも前記一部の前記反射面への入射の方向よりも前記光軸の方向からさらに遠ざかる方向に反射させること、
を満たし、
前記光軸に垂直な面に前記発光素子が取り付けられ、
前記光軸に平行な方向における前記光軸に垂直な面と前記対物レンズの先端との間に前記反射面が配置される
内視鏡先端部またはカプセル型内視鏡。
【請求項2】
前記照明装置は、以下の条件、すなわち
前記照明装置が、前記発光素子の各々について、それぞれの反射面を備え、前記それぞれの反射面が、前記それぞれの発光素子のうちの少なくとも1つの発光の少なくとも一部を、前記それぞれの発光素子のうち少なくとも前記1つの前記発光の少なくとも前記一部の前記それぞれの反射面への入射のそれぞれの方向よりも前記光軸の方向からさらに遠ざかるそれぞれの方向に反射させること、
を満たす、請求項1に記載の内視鏡先端部またはカプセル型内視鏡。
【請求項3】
前記照明装置は、回転軸を中心にして回転対称である、請求項2に記載の内視鏡先端部またはカプセル型内視鏡。
【請求項4】
前記照明装置は、前記回転軸が前記光軸と同一であるように配置される、請求項3に記載の内視鏡先端部またはカプセル型内視鏡。
【請求項5】
前記それぞれの反射面は、リングミラーの一部であり、前記リングミラーは、第2の円錐台表面の一部を形成する、請求項3に記載の内視鏡先端部またはカプセル型内視鏡。
【請求項6】
前記第2の円錐台表面の軸は、前記光軸と同一である、請求項5に記載の内視鏡先端部またはカプセル型内視鏡。
【請求項7】
前記光軸を含む平面内の前記照明光の角度分布は、90°より大きい角度範囲を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の内視鏡先端部またはカプセル型内視鏡。
【請求項8】
前記対物レンズは、前記内視鏡先端部に存在する唯一の対物レンズである、請求項1~7のいずれか一項に記載の内視鏡先端部またはカプセル型内視鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡用の照明装置に関する。とくには、本発明は、大きい画角、とりわけ180°よりも大きい画角を有する対物レンズを備える内視鏡用の照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡の照明システムは、対物レンズの周りに配置された複数のLEDを含むことができる。発光素子は、典型的には、対物レンズの光軸に垂直な平面内に配置され、発光素子は、光軸に平行な光を放射するように構成される。より正確には、放射の角度分布の重心が、光軸の方向に位置する。LEDの光は、透明キャップを通過し、その後に視野を照らす。透明キャップは、照明装置を、対物レンズの視野を含む物体空間に向かって境界付ける。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
撮像システムを備える内視鏡の対物レンズの視野が、
図1において180°の画角に関してハッチング領域によって示されるように、可能な限り均一に照明されることが望ましい。対物レンズが180°よりも大きい画角を有し、LEDが光軸の方向に透明キャップへと直接光を放射するランバート発光体である場合、
図2に示されるように、視野のおおむね均一な照明を達成することができない。
図2において、実線がランバート発光体の放射場を示している。
【課題を解決するための手段】
【0004】
視野を画像化するための対物レンズと、
前記視野を照明光で照明するための照明装置と、
を備えており、
前記対物レンズは、光軸を有し、
前記対物レンズは、180°より大きい画角を有し、
前記照明装置は、前記光軸に沿った平面図において前記対物レンズの周りに配置され、
前記照明装置は、前記照明光を前記視野へと出射する透明キャップを備え、
前記照明装置は、それぞれの発光面からそれぞれの発光を放射するように構成された発光ダイオードである1つ以上の発光素子を備え、
前記照明装置は、以下の条件、すなわち
前記照明装置が反射面を備え、前記反射面が、前記発光素子のうちの少なくとも1つの発光の少なくとも一部を、前記発光素子のうちの少なくとも前記1つの前記発光の少なくとも前記一部の前記反射面への入射の方向よりも前記光軸の方向からさらに遠ざかる方向に反射させること、
を満たし、
前記光軸に垂直な面に前記発光素子が取り付けられ、
前記光軸に平行な方向における前記光軸に垂直な面と前記対物レンズの先端との間に前記反射面が配置される
内視鏡先端部またはカプセル型内視鏡、が提供される。
【発明の効果】
【0005】
対物レンズの視野のおおむね均一な照明が、たとえ180°より大きい画角を有する場合であっても、照明装置によって達成される。「おおむね均一」とは、画角の全体における光強度が、最大光強度の50%~100%の間(好ましくは、最大光強度の75%~100%の間)であることを意味する。さらに、いくつかの実施例は、比較的単純かつ省スペースである。随意により、いくつかの場合(透明キャップにおけるおそらくは最小限の屈折が無視される場合)には光学屈折要素を省くことができ、これにより、製造が簡単になり、したがって費用効果が高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】対物レンズの視野の照明の均一性について、必要なプロファイルを示している。
【
図2】ランバート発光体が先行技術による視野をどのように照明するかを示している。
【
図3】本発明の一例による照明装置を取り付けることができる対物レンズを備える内視鏡先端部を示している。
【
図5】
図4の内視鏡先端部に位置する対物レンズの画角を示している。
【
図6】
図4の内視鏡先端部における対物レンズの画角を照明の出射角と比較している。
【
図7】
図4の内視鏡先端部のLEDの平面図を示している。
【
図8】
図4の内視鏡先端部の放射パターンを示している。
【
図9】内視鏡先端部のLEDについて可能な配置を示している。
【
図10】
図9の内視鏡先端部の放射パターンを示している。
【
図11】本発明の第1の実施例による内視鏡先端部を示している。
【
図12】
図11による内視鏡先端部の構成要素の断面図および平面図を示している。
【
図13】
図11の内視鏡先端部の照明の出射角と対物レンズの開口角とを比較している。
【
図15】本発明の第2の実施例による内視鏡先端部を示している。
【
図16】
図15による内視鏡先端部の構成要素の断面図および平面図を示している。
【
図17】
図15の内視鏡先端部の照明の出射角と対物レンズの開口角とを比較している。
【
図19】先行技術による内視鏡先端部における遮光の原理を示している。
【
図20】第2の実施例による遮光された光がどのように外側の視野を照明するために使用されるかを示している。
【
図21】本発明の実施例の原理を説明するための参考構成を示している。
【
図22】本発明の実施例の原理を説明するための本発明の実施例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図3が、対物レンズ1(好ましくは、180°を超える画角を有する広角対物レンズ)が配置された内視鏡先端部10の一例を示している。対物レンズ1の光軸11は、内視鏡先端部10の対称軸に平行に延びてよい。とくには、対物レンズ1の光軸11は、内視鏡先端部10の対称軸と同一であってよく、あるいは内視鏡先端部10の対称軸からオフセットされてもよい。しかしながら、光軸11は、
図3の例に示されるように、内視鏡先端部10の対称軸に対して傾けられてもよい。
【0008】
照明装置は、内視鏡先端部の遠位端の平面図において、対物レンズ1の周囲に取り付けられる。例えば、対物レンズ1の周囲に直接取り付けられてよく、あるいは対物レンズ1から離して配置されてもよい。照明装置は、回転対称であってよい。照明装置が回転対称である場合、その回転軸は、好ましくは(必ずしもではないが)対物レンズ1の光軸11と同一である。
【0009】
以下では、本発明を、対物レンズ1が内視鏡先端部10の軸に対して対称に取り付けられ、照明が対物レンズ1の光軸の周りに回転対称に取り付けられた内視鏡先端部10に関して説明する。しかしながら、本発明は、上記で説明したように、この特定の構成に限定されない。
【0010】
図4が、先行技術による内視鏡先端部を示している。180°を超える画角を有する対物レンズが、内視鏡先端部に配置されている。画角(「光学系開口角」)が、
図5に示されている。光学系の大きな開口角ゆえに、対物レンズは、内視鏡の先端部に位置すべきであり、他のすべての部品(内視鏡用キャップ、照明)は、視野内に現れることがないように対物レンズの後方に下げられる。
【0011】
内視鏡先端部は、対物レンズによって捉えられた視野の画像を取り込むためのカメラをさらに含むことができる。カメラは、例えば、センサとしてCCDチップまたはCMOSチップを有することができる。カメラの代わりに、内視鏡先端部は、対物レンズによって捉えられた画像を内視鏡の近位端へと導く中継光学系の一部を含んでもよい。
【0012】
内視鏡先端部は、対物レンズの視野(または、視野を含む物体空間)を照明するための照明装置をさらに含む。照明装置には、透明なキャップ(内視鏡用キャップ)を介して物体空間を照明するLEDが搭載されている。キャップは、その透明度が、波長の関数としてLEDの最大強度の少なくとも50%の強度で放射されるすべての波長について少なくとも75%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%である場合、透明である。キャップは着色性であってはならない。すなわち、異なる波長における透明度の違いが、20%以下、好ましくは10%以下でなければならない。また、LEDが可視範囲(400nm~800nm)外の波長の光も発する場合、上記の条件は可視範囲の波長に適用でき、可視範囲外の波長には適用できない。
【0013】
キャップの屈折力は、本質的に平面平行板のように作用するため、典型的には小さい。屈折力は、局所的に異なってもよい。例えば、最大局所屈折力は、2dpt(2m-1)、好ましくは1dpt(1m-1)、さらにより好ましくは0.5dpt(0.5m-1)であってよい。しかしながら、本発明のいくつかの例において、キャップを、照明光を視野の所定の領域へと向ける屈折力を有するレンズとして構成することができる。
【0014】
LEDは、すべてが同じ種類であっても、異なる種類であってもよい。例えば、2つの異なる種類を使用して、2つの異なる色で物体空間を照らすことができる。この場合、各々の個別の種類のLEDは、好ましくは、対物レンズの光軸を中心として回転対称に取り付けられるべきである。この一例が、
図7に平面図にて示されている。
【0015】
LEDはすべて、個別に制御可能またはグループにて制御可能であってよい。「制御可能」とは、少なくともLEDをオンおよびオフに切り替えることができることを意味する。いくつかの例においては、出射光の強度および/または色も制御することができる。
【0016】
図6が、先行技術による
図4の内視鏡先端部のLED照明の出射角を示している。この場合、LED照明の出射角は、対物レンズの視野が縁部において照明されず、あるいは充分に照明されないような出射角である。これは、対物レンズの大きな画角が(ほとんど)役に立たないことを意味する。出射角は、光の強度が(LEDから同じ距離にある)最大強度の少なくとも50%である範囲を示す。
図8が、
図6に対応する放射パターンを示している。図示のすべての放射パターンは、対物レンズの光軸に対する放射パターンである。図示のすべての放射パターンにおいて、全照明が100%に正規化されている。
【0017】
図9に示されるように、同じ種類の複数のLEDを半径方向に互いに隣接させて取り付けることを試みることができる。しかしながら、これによって出射角が変化することはなく(C=A)、したがって外側視野の一部は依然として照明がないままである。
図10が、
図8に示した放射パターンと定性的に違いがない対応する放射パターンを示している。原理的には、各々が対物レンズの光軸に平行に光を放射する複数のLEDを半径方向に取り付けても、個々のLEDの発光面の拡大に相当するにすぎない。
【0018】
図11が、本発明の第1の実施例による内視鏡先端部を示している。この内視鏡先端部は、LEDが対物レンズの光軸に平行には光を放射せず、対物レンズの光軸から有限の角度で光を放射することを除いて、
図4の内視鏡先端部に正確に相当する。有限の角度は、例えば、5°~85°、5°~80°、10°~85°、または10°~80°の範囲内、好ましくは5°~50°の範囲内、さらにより好ましくは10°~45°の範囲内であってよい。有限の角度は、0°および90°とは異なる。
【0019】
このため、LEDは、光軸に垂直な表面に対して傾けられた表面に取り付けられる。表面の傾きの角度が、照明装置の出射角の変化に相当し、所望の出射特性に応じて選択することが可能である。表面を、例えば、
図4によるLEDのための平坦な取り付け面の代わりに使用することができる円錐台によって形成することができる。好ましくは(必ずしも必要ではないが)、円錐台の軸は、対物レンズの光軸と一致する。
【0020】
さらに、
図11によれば、LEDは、円錐台表面に取り付けられているがゆえに、遠位端により近い。しかしながら、これは必須ではない。例えば、円錐台表面の代わりに、LED出射面の中心が光軸の方向において
図4と同じ高さに位置するように、
図4のLED取り付け面にトラフを配置することも可能である。
【0021】
図12が、
図11の内視鏡先端部の構成要素を断面図(左側)および平面図(右側)にて示している。平面図は、
図4の内視鏡先端部の平面図に正確に対応し、断面においては、LEDを取り付けるための円錐台のみが、
図4の内視鏡先端部の断面とは異なる。
【0022】
図13が、
図6の図に対応する
図11の内視鏡先端部の照明の出射角と対物レンズの開口角とを示している。見て分かるように、内視鏡の視野の外側領域が、今や実質的により良好に照明されている。
図14が、対応する放射パターンを示している。照明が、180°を超える画角においても依然として充分である。
【0023】
図15~
図18が、本発明の第2の実施例を示している。
図15~
図18は、それぞれ
図11~
図14に対応する。第1の実施例と対照的に、第2の実施例においては、LEDが、再び
図4と同様に光軸に垂直な面に取り付けられている。しかしながら、内視鏡先端部は、
図4の内視鏡先端部に加えて、対物レンズの周囲に取り付けられたリングミラーを有する。好ましくは、リングミラーは、対物レンズの光軸を回転軸として回転対称である。リングミラーの反射面が、LEDに面し、光軸に対して有限の角度で傾けられている。例えば、傾きの角度は、光軸に対して20°~70°の範囲内であってよい。これにより、放射の一部が視野の外側領域へと反射され、したがって、
図17および
図18に見られるように、視野の外側領域において、とくには180°を超える画角においても充分な照明が達成される。
【0024】
リングミラーは、好ましくは、対物レンズによる遮光の他に遮光を引き起こすことがないように取り付けられるべきである。これは、リングミラーの突出を、リングミラーが取り付けられる光軸方向における高さに応じて決定すべきであることを意味する。
【0025】
リングミラーは、好ましくは、
図4の内視鏡先端部において対物レンズによって遮光され、したがって物体空間の照明に寄与せず、あるいはわずかにしか寄与しないLEDからの出射光を反射させる。これにより、光の利用が改善され、エネルギー消費および発熱が低減される。
【0026】
これが、
図19および
図20に示されている。
図19は、LEDからの出射光の一部が対物レンズによって遮光される先行技術による内視鏡先端部(透明キャップなし)を示している。対照的に、第2の実施例によれば、
図20に示されるように、遮光された光が、リングミラーによって外側視野へと反射される。中心の遮光は変わらない。
【0027】
リングミラーのミラー表面は、光軸方向に光学屈折力が作用しない円錐台表面を形成することができる。しかしながら、本発明のいくつかの実施例においては、リングミラーが光軸の方向に光学屈折力を作用させ、光を視野の特定の領域に向けると好都合かもしれない。このような場合、
図15、
図16、
図17、および
図20の断面において、ミラー表面が湾曲する。リングミラーのミラー表面は、一般に、任意の形状を有することさえ可能である。好ましくは(必ずしも必要ではないが)、円錐台の軸は、対物レンズの光軸と一致する。
【0028】
加えて、本発明のいくつかの実施例においては、リングミラーの底面およびリングミラーの底面に隣接する対物レンズの外側シェルの少なくとも一部分が、反射性にコーティングされる。結果として、平坦な角度でLEDから現れる出射光を、対物レンズの外側シェルおよびリングミラーの底面における多重反射によって、外側視野へと向けることができる。これにより、光の利用がさらにもっと向上する。
【0029】
例えば、
図4および
図11のように、対物レンズの外側シェルが光軸方向におけるLEDの上側に突出部を有していれば、リングミラーを設けなくても同様の効果を得ることができる。本発明の第3の実施例によれば、突起部の底面、および突起部の下方かつ突起部に隣接する対物レンズの外側シェルの少なくとも一部分の両方が、LEDからの光を外側視野へと向けるために反射性にコーティングされる。
【0030】
本発明のいくつかの実施例においては、(
図11のように)LEDの出射方向が対物レンズの光軸に対して傾けられるとともに、(
図15のように)リングミラーが対物レンズの周りに取り付けられる。加えて、第3の実施例のように、対物レンズの外側シェルの一部を反射性にコーティングすることもできる。これにより、外側視野の照明をさらにもっと改善することができる。
【0031】
対物レンズの外側シェルが反射性にコーティングされていない限りにおいて、対物レンズは、ほとんど光を反射しないように黒色であってよい。
【0032】
反射面を、金属コーティングによって、例えば銀で形成することができる。あるいは、キャップと対物レンズの外側シェルとLEDの取り付け面との間の空間が透明な絶縁体で満たされる場合には、より屈折率の低い他の絶縁体によって反射面を形成することも可能である。さらに、この場合に、キャップは、透明な絶縁体の外側層と同一であってよい。
【0033】
本発明の第4の実施例によれば、光の一部を外側視野へと向けるために、光学屈折要素がLEDとキャップとの間の空間に取り付けられる。例えば、光学屈折要素は、LEDの発光面の外側部分に直接位置し、断面においてくさび形の様相で外側へと延びることができる。LEDからの光がくさび形の光学屈折要素から現れるとき、光は外側視野に向かって外側へと偏向される。
【0034】
LEDの光学屈折要素を、円錐台表面を形成するように接続することができ、円錐台の軸は、好ましくは(必ずしも必須ではないが)対物レンズの光軸と一致する。第4の実施例の光学屈折素子を、第1~第3の実施例のうちの1つ以上と組み合わせることも可能である。
【0035】
図21および
図22が、本発明のいくつかの実施例による一般原理を示している。
図21および
図22の各々は、対物レンズ1の光軸11および少なくとも1つのLED2の光出射軸によって広がる平面内の(仮想または実際の)内視鏡先端部の断面を示している。LED2は、光出射軸に対して対称に(仮想または実際の)発光20を出射する。
【0036】
図21は、先行技術による
図4に対応する仮想の参考構成を示している。参考構成において、LED2は、対物レンズ1の光軸11に垂直な平面内に配置される。LED2は、光軸11の方向に平行に(仮想の)発光20を出射する。(仮想の)発光20は、直接、すなわちミラーまたは光学屈折要素(レンズ)などの他の構成要素によって偏向されることなく、透明キャップ6に行き当たる。そこで、光はおそらくは偏向されて、仮想の照明光60として対物レンズ1の物体空間(または、視野)へと放射される。仮想の照明光は、LED2によってキャップ6へと直接放射される発光にのみ基づく。破線は、参考構成が仮想の構成であることを示している。
【0037】
本発明のいくつかの実施例による実際の構成が、
図22に比較のために示されている。実際の構成は、以下の条件の一方または両方が満たされるという点で参考構成から相違する。
【0038】
・発光20が、光軸11に平行でないLED2によって出射される。
【0039】
・(実際の)照明光61が、少なくとも部分的に、少なくとも1つのLED2によってキャップ6へと直接放射された発光ではなく、反射または屈折要素によって偏向された発光に基づく。
【0040】
他の点において、
図21の実際の構成は、
図22の仮想の構成と機能的に同一である。とくに、LED2からのそれぞれの発光軸の出口点は、同じ位置にある。
【0041】
図22は、発光20が光軸に対して非平行に出射される例を示している。加えて、発光20と照明光61との間にすき間が存在することにより、照明光にLED2によってキャップ6へと直接出射された成分以外の成分が含まれていることが示されている。
【0042】
図22から分かるように、実際の照明光61は、仮想の照明光60よりもさらに光軸から遠ざかる方向に向けられている。
【0043】
LED2の発光を表す矢印20は、発光の角度分布の重心を示している。典型的には、発光は、この重心を中心にして対称的に出射される(例えば、ランバート発光体)。(仮想または現実の)照明光を表す矢印60および61は、それぞれの照明光の角度分布の重心を示している。一般に、照明光の角度分布は、対物レンズによる遮光に起因し、さらに現実の照明光61の場合には、おそらくは照明光の反射または光学屈折または光学回折による成分にも起因して、この矢印に関して必ずしも対称ではない。
【0044】
LEDは、本発明のいくつかの実施例による発光素子の一例である。LEDに代えて、例えば光ガイドの出射端を使用することもできる。また、発光素子のいくつかがLEDであって、他の発光素子が光ガイドの出射端であってもよい。
【0045】
対物レンズは、シーンを像面上に画像化するレンズまたはレンズ系、およびおそらくはさらなる光学素子を意味すると理解される。とくに、対物レンズは、シーンを像面上に連続的に画像化する。これは、シーン内の隣接する点が、像面上の画像においても隣接することを意味する。対物レンズの画角は、180°より大きい。好ましくは200°より大きく、より好ましくは220°より大きく、さらにより好ましくは230°より大きい。そのような対物レンズは、例えば、欧州特許出願第19187218.3号に記載されている。典型的には、内視鏡先端部は、単一の対物レンズを含む。
【0046】
内視鏡は、内視鏡先端部の近位端が剛体管に接続された剛体内視鏡であってよい。内視鏡は、内視鏡先端部の近位端が可撓管に接続された可撓内視鏡であってよい。剛体管および可撓管のどちらも「シャフト」と呼ばれる。内視鏡先端部のシャフトへの接続を、直接的に、あるいは角度要素によって間接的に行うことができる。内視鏡は、シャフトを有さない自由に浮遊する内視鏡(カプセル型内視鏡)であってもよい。内視鏡(したがって、当然ながら、内視鏡先端部も)は、例えば、気管支鏡、喉頭鏡、または結腸鏡など、人体の腔への挿入に好適であってよい。