(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138170
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】ケーブル
(51)【国際特許分類】
H01B 7/04 20060101AFI20240927BHJP
H01B 7/18 20060101ALI20240927BHJP
H01B 7/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
H01B7/04
H01B7/18 Z
H01B7/00 310
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024123527
(22)【出願日】2024-07-30
(62)【分割の表示】P 2020185956の分割
【原出願日】2020-11-06
(71)【出願人】
【識別番号】391008401
【氏名又は名称】株式会社三ツ星
(71)【出願人】
【識別番号】302027675
【氏名又は名称】カジレーネ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】礒嶋 良人
(72)【発明者】
【氏名】北村 嘉弘
(72)【発明者】
【氏名】本近 俊裕
(72)【発明者】
【氏名】井出 圭亮
(57)【要約】
【課題】十分な引張り強度と止水性とを兼ね備えるケーブルを提供する。
【解決手段】芯線と、導体と、被覆材とを含むケーブルであって、前記芯線が、繊維を撚り合わせた撚糸を含む芯部と、前記芯部の外周を被覆するエラストマー層1とを含む芯線であることを特徴とする、ケーブル。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯線と、
導体と、
被覆材と
を含むケーブルであって、
前記芯線が、繊維を撚り合わせた撚糸を含む芯部と、
前記芯部の外周を被覆するエラストマー層1と
を含む芯線であることを特徴とする、ケーブル。
【請求項2】
前記繊維が、引張り強度が2GPaを超える高強度繊維である、請求項1に記載のケーブル。
【請求項3】
前記繊維が、炭素繊維、ガラス繊維、ポリイミド繊維、ポリパラフェニレン・ベンゾビス・オキサゾール繊維、液晶ポリエステル繊維、アラミド繊維、ナイロン繊維、及びポリエチレン繊維からなる群より選択される少なくとも一種の繊維である、請求項1又は2に記載のケーブル。
【請求項4】
前記芯部が、前記撚糸の外周を、直接又は他の層を介して被覆する被覆糸をさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のケーブル。
【請求項5】
前記被覆糸が、前記撚糸の外周を、直接又は他の層を介してダブルカバリングにて被覆している、請求項4に記載のケーブル。
【請求項6】
前記芯線がエラストマー層2をさらに含み、
前記エラストマー層2は、前記撚糸の外周を、直接又は他の層を介して、ただし、前記芯部が前記被覆糸を含む場合は前記被覆糸の内側を、被覆している、請求項1~5のいずれか一項に記載のケーブル。
【請求項7】
前記導体を複数含み、
前記芯線の外周に前記導体が配置されている、
請求項1~6のいずれか一項に記載のケーブル。
【請求項8】
前記導体が、金属導体及び/又は光ファイバーである、請求項1~7のいずれか一項に記載のケーブル。
【請求項9】
送電用、電源用、制御用又は通信用である、請求項1~8のいずれか一項に記載のケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
導体として金属導体又は光ファイバー等を備える送電用、電源用、制御用又は通信用のケーブルとして様々なものが使用されている。
【0003】
特に耐屈曲性と止水性の両立を目指して各種のケーブルが提案されており、例えば導体の周りに特定の物性を有する防水体及び遮水体等を積層したケーブル等が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、十分な引張り強度と止水性とを兼ね備えるケーブルを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決すべく、鋭意検討を行ったところ、ケーブルにおいて、芯線と、導体と、被覆材とを含む構成を採用し、前記芯線として、繊維を撚り合わせた撚糸を含む芯部と、前記芯部の外周を被覆するエラストマー層とを含む芯線を使用することにより、ケーブルにおける引張り強度及び止水性が改善する傾向があることを見出した。本発明はかかる知見に基づいてさらに検討を加えることにより完成したものであり、以下の態様を含む。
【0007】
項1.
芯線と、
導体と、
被覆材と
を含むケーブルであって、
前記芯線が、繊維を撚り合わせた撚糸を含む芯部と、
前記芯部の外周を被覆するエラストマー層1と
を含む芯線であることを特徴とする、ケーブル。
項2.
前記繊維が、引張り強度が2GPaを超える高強度繊維である、項1に記載のケーブル。項3.
前記繊維が、炭素繊維、ガラス繊維、ポリイミド繊維、ポリパラフェニレン・ベンゾビス・オキサゾール繊維、液晶ポリエステル繊維、アラミド繊維、ナイロン繊維、及びポリエチレン繊維からなる群より選択される少なくとも一種の繊維である、項1又は2に記載のケーブル。
項4.
前記芯部が、前記撚糸の外周を、直接又は他の層を介して被覆する被覆糸をさらに含む、項1~3のいずれか一項に記載のケーブル。
項5.
前記被覆糸が、前記撚糸の外周を、直接又は他の層を介してシングルカバリング又はダブルカバリングにて被覆している、項4に記載のケーブル。
項6.
前記芯線がエラストマー層2をさらに含み、
前記エラストマー層2は、前記撚糸の外周を、直接又は他の層を介して、ただし、前記芯部が前記被覆糸を含む場合は前記被覆糸の内側を、被覆している、項1~5のいずれか一項に記載のケーブル。
項7.
前記導体を複数含み、
前記芯線の外周に前記導体が配置されている、
項1~6のいずれか一項に記載のケーブル。
項8.
前記導体が、金属導体及び/又は光ファイバーである、項1~7のいずれか一項に記載のケーブル。
項9.
送電用、電源用、制御用又は通信用である、項1~8のいずれか一項に記載のケーブル。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、引張り強度及び止水性に優れるケーブルを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】本発明のケーブルの作製過程を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.本発明のケーブルの構造
本発明のケーブルは、
芯線と、
導体と、
被覆材と
を含むケーブルであって、
前記芯線が、繊維を撚り合わせた撚糸を含む芯部と、
前記芯部の外周を被覆するエラストマー層1と
を含む芯線であることを特徴とする、ケーブルである。
【0011】
1.1.芯線
芯線は、繊維を撚り合わせた撚糸を含む芯部と、前記芯部の外周を被覆するエラストマー層1とを含む。
【0012】
本発明の芯線は、上記の構成に起因して、高い引張り強度を備える。
【0013】
繊維としては、引張り強度が2GPaを超える高強度繊維が好ましい。
【0014】
繊維としては、より具体的には炭素繊維、ガラス繊維、ポリイミド繊維、ポリパラフェニレン・ベンゾビス・オキサゾール繊維、液晶ポリエステル繊維、アラミド繊維、ナイロン繊維、及びポリエチレン繊維からなる群より選択される少なくとも一種の繊維が好ましい。
【0015】
繊維の繊度としては、67tex~3200texが好ましく、200tex~160
0texがより好ましく、400tex~800texがさらに好ましい。
【0016】
繊維の撚数としては、10~100T/mが好ましく、40~80T/mがより好ましく、50~70T/mがさらに好ましい。
【0017】
繊維の集合体である芯部自体は、それ単独では水に接した際、毛細管現象が起こり水を含んだ状態となりやすい。しかし、本発明の芯線は、芯部の外周を被覆するエラストマー層1を有しているため、一本の繊維となっており、毛細管現象が抑制される結果、止水性を発揮するものである。
【0018】
特に限定されないが、芯部の外周をエラストマー層1で被覆する方法としては、芯部を液体状のエラストマーに含浸させた後、エラストマーを乾燥、固化する方法等が挙げられる。
【0019】
エラストマー層1には、特に限定されず、幅広いエラストマーを使用できる。エラストマーとしては、ジエン系ゴム、非ジエン系ゴム、及び天然ゴムのいずれも使用でき、また、これらのうち少なくとも二種を混合したものも使用できる。
【0020】
ジエン系ゴムとしては、例えば、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR)等が挙げられる。ジエン系ゴムとしては、これらのうち1種を単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0021】
非ジエン系ゴムとしては、例えば、ブチルゴム(イソブチル・イソプレンゴム(IIR)、エチレン・プロピレンゴム(EPM)、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)、ウレタンゴム(PU)、シリコーンゴム、フッ素ゴム等が挙げられる。非ジエン系ゴムとしては、これらのうち1種を単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0022】
芯部の外周をエラストマー層1で被覆する場合、その被覆量は、芯部の重量を基準として、1~15重量%であれば好ましい。
【0023】
芯部が、前記撚糸の外周を、直接又は他の層を介して被覆する被覆糸をさらに含むことが好ましい。
【0024】
芯部が被覆糸をさらに含む場合、被覆の形式としては、シングルカバリングであってもよいし、ダブルカバリングであってもよく、あるいは、組紐方式等であってもよい。被覆の形式としては、生産性の観点からは、シングルカバリング及びダブルカバリングが特に好ましい。芯部が被覆糸をさらに含むことにより、本発明の芯線は、高い耐屈曲性を有するものとなる。
【0025】
被覆糸の材質としては、特に限定されないが、例えば、ポリエステル、ポリアミド(ナイロン(登録商標))、ポリプロピレン、及びポリエチレン等が挙げられる。
【0026】
被覆糸の繊度としては、16~3200dtexが好ましく、56~800dtexがより好ましく、84~400dtexがさらに好ましい。
【0027】
芯部が被覆糸をさらに含む場合、カバリング数としては、ダブルカバリングの場合、200~3000T/mであれば好ましい。シングルカバリングの場合、400~4000T/mであれば好ましい。
【0028】
芯線がエラストマー層2をさらに含み、エラストマー層2は、前記撚糸の外周を、直接又は他の層を介して、ただし、前記芯部が前記被覆糸を含む場合は前記被覆糸の内側を、被覆していてもよい。かかる構成を採ることにより、さらに止水性が高められる。
【0029】
エラストマー層2には、特に限定されず、幅広いエラストマーを使用でき、エラストマー層1において説明したものと同じ種類の中から選択できる。
【0030】
エラストマー層2の被覆量は、芯部の重量を基準として、0.1~5重量%であれば好ましい。
【0031】
1.2.導体
導体は、単線であってもよいし、複数の線からなる撚線であってもよい。導体が撚線である場合、芯部の外周を撚線が被覆している構造とすることが好ましい。撚線の数は特に限定されず、例えば3~10本程度とすることができる。
【0032】
導体は、ケーブルの用途に応じて適宜選択でき、特に限定されないが、例えば、銅や銅合金又はアルミやアルミ合金、等であってもよい。
【0033】
導体は、ケーブルの用途に応じて適宜選択でき、特に限定されないが、外径が0.2~5mmのものが好ましく、0.4~1.3mmのものがより好ましい。
【0034】
1.3.被覆材
被覆材は、特に限定されず、例えば、ポリ塩化ビニル混合物、架橋ポリエチレン混合物、EPゴム混合物、NRゴム混合物、及びテーピング材(不織布、ナイロン)等が使用できる。
【0035】
被覆材としては、上記したものの中から一種を使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0036】
被覆材は、例えば
図3に示すように、複数の被覆材が重なった構造となっていてもよい。このような構成とし、それぞれの被覆材の材質として適切なものを選択して組み合わせることにより、より止水性を向上できる。この場合、例えば、内側の被覆材としてポリ塩化ビニル混合物を用い、外側の被覆材としてEPゴム混合物を用いた態様等が挙げられる。
【0037】
本発明のケーブルは、芯線と、導体と、被覆材とを含む一次ケーブルが、複数本集まったケーブルであってもよい。このとき、複数の一次ケーブルの周りを、被覆材が埋めるようにして一本のケーブルが形作られていてもよい。
【0038】
2.本発明のケーブルの用途
本発明のケーブルは、送電用、電源用、制御用又は通信用ケーブルとして用いることができる。特に、水中での導体の水密性が高いため、本発明のケーブルは、水回りで使用できる。
【0039】
例えば、台風、大雨、及び洪水等の自然災害に備え、発電機、水中ポンプ、及び照明器具などへの非常用給電ケーブルとして使用することができる。また、例えば、水中でも沈まない浮力機能をさらに持たせたフローティングケーブルとして使用することもできる。
【実施例0040】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0041】
以下の仕様のカーボン線芯入りケーブルを作製した。具体的には、
図2に示されるように、カーボン線芯(撚数:60T/m)の周りを被覆糸(材質ポリエステル:繊度167dtex)でダブルカバリング(カバリング数:2200T/m)にて被覆した上で、さらにSBR(日本エイアンドエル株式会社社製、SR-100、被覆量:2.5重量%)で被覆し、さらにその線芯の外周に導体(材質銅)を撚って配置させ、被覆材で被覆した。
被覆材:EPゴム混合物、ポリ塩化ビニル混合物
外径:φ5.7
導体断面積:5.5sq
導体構成:φ1.09×6本
カーボン線芯:φ1.10
【0042】
以下の仕様のケーブルを比較例として作製した。
被覆材:EPゴム混合物
外径:φ5.2
導体断面積:5.5sq
導体構成:φ0.32×70本
【0043】
実施例及び比較例のケーブルについて、屈曲性能を以下のようにして評価した。
試験条件:90度曲げ屈曲試験;左右に90度屈曲した回数をカウントする。
マンドレル径:30mm(試料外径の約6倍)
おもり重量:1kg(試料サイズ×0.15kg)
【0044】
試験結果は以下の通りであった。
実施例:16310回にて全破断
比較例:2188回にて全破断
一般的に導体素線は外径が細いほど屈曲性能が向上する傾向にある。比較例の素線はφ0.32、実施例の素線はφ1.09のため、比較例のほうが屈曲性能は有利となるはずであるが、実施例のほうが約8倍も屈曲性能が優れていた。芯線を有する構造に起因して実施例のケーブルでは屈曲性能が大幅に向上したと考えられる。