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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138178
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】アイシング組成物およびアイシング
(51)【国際特許分類】
   A23L 29/256 20160101AFI20240927BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20240927BHJP
   A21D 13/13 20170101ALI20240927BHJP
   A21D 13/17 20170101ALI20240927BHJP
   A21D 13/28 20170101ALI20240927BHJP
【FI】
A23L29/256
A23L5/00 F
A21D13/13
A21D13/17
A21D13/28
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024123627
(22)【出願日】2024-07-30
(62)【分割の表示】P 2020166258の分割
【原出願日】2020-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000114318
【氏名又は名称】ミヨシ油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100218062
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 悠樹
(72)【発明者】
【氏名】坂田 光平
(72)【発明者】
【氏名】奥野 綾夏
(57)【要約】
【課題】アイシングの保形性向上や泣きを抑制することができるアイシング組成物を提供すること。
【解決手段】アイシング組成物は、ゲル強度が400g/cm以上900g/cm未満の寒天Aと、ゲル強度が前記寒天Aより大きく、かつ、3000g/cm以下である寒天Bとを含有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲル強度が400g/cm以上900g/cm未満の寒天Aと、ゲル強度が前記寒天Aより大きく、かつ、3000g/cm以下である寒天Bとを含有する、アイシング組成物。
【請求項2】
前記寒天Aと前記寒天Bを、寒天A:寒天B=1:4~4:1の割合で含有する、請求項1に記載のアイシング組成物。
【請求項3】
さらに乳蛋白質を含有する、請求項1または2に記載のアイシング組成物。
【請求項4】
前記乳蛋白質がカゼイン塩である、請求項3に記載のアイシング組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のアイシング組成物を2~12質量%含有する、アイシング。
【請求項6】
ゲル強度が400g/cm以上900g/cm未満の寒天Aを0.05~1.0質量%、ゲル強度が前記寒天Aより大きく、かつ、3000g/cm以下である寒天Bを0.02~0.4質量%含有する、アイシング。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アイシング組成物およびアイシングに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アイシングは、パン、ケーキ、菓子の製造において、白く表面を被覆して、見映え良く見せ、甘みを与え、楽しく食べるために考え出され、製菓、製パンにおける有効な技術として発展してきた。
【0003】
そして、アイシングを上掛けしたパンや菓子は、流通保管時において、20℃以上の高温下に長時間置かれると、アイシングの保形性が低下して、包材に付着したり、シロップが流れ出す場合があり(いわゆる泣きの発生)、見た目が損なわれるという問題が生じていた。
【0004】
このような問題を解決する手段として、例えば、特許文献1~3の技術が提案されている。特許文献1は、粉末糖類を含有し、ガム質、蛋白質、デンプン類が特定比率より成るアイシング組成物に関するものであり、特許文献2は、増粘多糖類及び冷水分散タイプの粉末油脂等を含有するベーカリー食品用上掛け組成物に関するものであり、特許文献3は、トレハロース、トレハロース以外の糖、増粘多糖類及び水を含むアイシング材に関するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開1985-251844号公報
【特許文献2】特開2012-016305号公報
【特許文献3】特開2015-002691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1~3の方法によってもアイシングの保形性向上や泣きの抑制効果が十分ではなく、更なる改善が求められていた。
【0007】
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、アイシングの保形性向上や泣きを抑制することができるアイシング組成物およびアイシングを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明は、ゲル強度が400g/cm以上900g/cm未満の寒天Aと、ゲル強度が900g/cm以上の寒天Bを含有することを特徴としている。
【0009】
本発明のアイシングは、上記のアイシング組成物を含有することを特徴としている。また、本発明のアイシングは、ゲル強度が400g/cm以上900g/cm未満の寒天Aを0.05~1.0質量%、ゲル強度が900g/cm以上の寒天Bを0.02~0.4質量%含有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明のアイシング組成物によれば、アイシングの保形性向上や泣きを抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明のアイシング組成物およびアイシング組成物の一実施形態について説明する。
【0012】
本発明において、「アイシング組成物」とは、所定の寒天、および、必要に応じて、後述するその他の材料を含む組成物であり、「アイシング」とは、アイシング組成物と、水や糖類などとが混合されたものを言う。
【0013】
本発明のアイシング組成物は、ゲル強度が400g/cm以上900g/cm未満の寒天Aと、ゲル強度が900g/cm以上の寒天Bを含有する。
【0014】
アイシングの保形性向上や泣きの抑制効果を高める観点から、寒天Aのゲル強度は400g/cm以上800g/cm未満が好ましく、400g/cm以上700g/cm未満がより好ましく、400g/cm以上500g/cm未満がさらに好ましい。アイシングの保形性向上や泣きの抑制効果を高める観点から、寒天Bのゲル強度は1000g/cm以上がより好ましい。アイシングの作業性が良好で、泣きの抑制効果も高める観点から、寒天Bのゲル強度の上限値は3000g/cm以下が好ましく、2000g/cm以下がより好ましく、1500g/cm以下がさらに好ましい。
【0015】
寒天Aおよび寒天Bのゲル強度は、1.5%寒天水溶液を調製し、20℃で15時間放置し凝固させたゲル1cmに対して、レオメーター(SUN RHEO METER,CR-500DX)にて、直径15mm円筒冶具を用いて50mm/minの速度で圧縮した時の最大荷重(g/cm)として算出された値である。
【0016】
寒天Aは、泣きの抑制効果を高める観点から、上記ゲル強度と、シュガーテストにおけるゲル強度の差が100g/cm以下のものが好ましい。
【0017】
シュガーテストにおけるゲル強度は、寒天4g、グラニュー糖250gを水200gに溶解し、20℃で15時間放置し凝固させたゲル1cmに対して、レオメーター(SUN RHEO METER,CR-500DX)にて、直径15mm円筒冶具を用いて50mm/minの速度で圧縮した時の最大荷重(g/cm)として算出することができる。
【0018】
アイシング組成物中の寒天Aの含有量は、特に限定されないが、アイシングの保形性向上や泣きの抑制効果を高める観点から、1.0~15質量%が好ましく、3.0~10質量%がより好ましい。アイシング組成物中の寒天Bの含有量は、特に限定されないが、アイシングの保形性向上や泣きの抑制効果を高める観点から、0.5質量%以上が好ましく、1.0質量%以上がより好ましい。アイシング組成物中の寒天Bの含有量の上限値は、アイシングの作業性を良好にする観点から、6.0質量%以下が好ましく、4.0質量%以下がより好ましく、3.0質量%以下がさらに好ましい。
【0019】
アイシング組成物中の寒天Aと寒天Bの含有量の比は、特に限定されないが、アイシングの保形性向上や作業性を良好にする観点から、寒天A:寒天Bは、1:4~4:1が好ましく、1:1~4:1がより好ましい。
【0020】
本発明のアイシング組成物は、アイシングの保形性向上や泣きの抑制効果を高める観点から、乳蛋白質を含有することが好ましい。
【0021】
乳蛋白質は、特に限定されないが、例えば、酸カゼイン、レンネットカゼイン、カゼイン塩(カゼインナトリウム、カゼインカリウム、カゼインカルシウム)、ホエイ蛋白、それらの酵素分解物である乳ペプチド、ミルクプロテインコンセントレート、トータルミルクプロテイン、全脂粉乳、脱脂粉乳、ホエイパウダー、バターミルクパウダーなどが例示される。なかでも、カゼイン塩が好ましく、カゼインナトリウムが特に好ましい。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0022】
アイシング組成物中の乳蛋白質の含有量は、特に限定されないが、アイシングの保形性向上や泣きの抑制効果を高める観点から、0.5質量%以上が好ましく、2.0質量%以上がより好ましい。アイシング組成物中の乳蛋白質の含有量の上限値は、アイシングの作業性を良好にする観点から、27.0質量%以下が好ましい。
【0023】
アイシング組成物中の寒天と乳蛋白質の含有量の比は、特に限定されないが、アイシングの保形性向上や作業性を良好にする観点から、寒天:乳蛋白質=7:1~1:4が好ましく、4:1~1:3がより好ましい。
【0024】
また、アイシング組成物には、例えば、乳蛋白質以外の蛋白質、乳化剤、カルシウム塩、糖質、食用ワックス、高甘味度甘味料、食塩、粉末油脂などの各種素材が配合されていてもよい。
【0025】
乳蛋白質以外の蛋白質としては、大豆蛋白質、エンドウ豆蛋白質、そら豆蛋白質、米蛋白質、小麦蛋白質、コラーゲン、コラーゲンペプチド、ゼラチンなどが例示される。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0026】
乳化剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、グリセリン有機酸脂肪酸エステル、ポリグリセリンエステル(ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル)、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、レシチン(大豆レシチン、卵黄レシチン、ヒマワリレシチン)、酵素分解レシチン(大豆リゾレシチン、卵黄リゾレシチン)、サポニン、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム、スフィンゴ脂質、植物ステロール類、胆汁末、トマト糖脂質などが例示される。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0027】
アイシング組成物中の乳化剤の含有量は、特に限定されないが、アイシングの保形性向上や泣きの抑制効果を高める観点から、0.1~1.0質量%が好ましく、0.3~0.8質量%がより好ましい。
【0028】
アイシング組成物中の寒天と乳化剤の含有量の比は、特に限定されないが、アイシングの保形性向上や作業性を良好にする観点から、寒天:乳化剤=30:1~5:1が好ましく、20:1~8:1がより好ましい。
【0029】
カルシウム塩としては、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、リン酸三カルシウム、リン酸水素カルシウム等の水に難溶性のカルシウム塩類が例示される。その他に、卵殻カルシウム、貝殻カルシウム、骨粉等の天然物も使用できる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0030】
糖質としては、単糖(グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノースなど)、二糖質(ラクトース(乳糖)、スクロース、マルトース、トレハロースなど)などの糖類;
フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖(4’-ガラクトシルラクトース)、キシロオリゴ糖、ビートオリゴ糖(ラフィノース)、大豆オリゴ糖(ラフィノース、スタキオース)、乳果オリゴ糖(ラクトスクロース)など)などのオリゴ糖;
デキストリン類(デキストリン、マルトデキストリン、イソマルトデキストリン(分岐マルトデキストリン)、水あめ、粉あめ、シクロデキストリン、分岐シクロデキストリン、焙焼デキストリン、高分子デキストリン、難消化性デキストリン)、イヌリン類(イヌリン、イヌリン分解物、アガベイヌリン)、増粘多糖類(LMペクチン、HMペクチン、プルラン、グアーガム、グアーガム分解物、キサンタンガム、アラビアガム、ガティガム、ネイティブジェランガム、脱アシル化ジェランガム、ローカストビーンガム、タラガム、ガラクトマンナン、グルコマンナン、コンニャクマンナン、カードラン、カラギーナン、カラヤガム、カシアガム、タマリンドシードガム、トラガントガム、フェヌグリークガム、サイリウムシードガム、スクシノグリカン、ラムザンガム、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、PGA(アルギン酸プロピレングリコールエステル)、大豆多糖類、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、寒天、フコイダン、ポルフィラン、ラミナラン)、澱粉、加工澱粉(エーテル化処理したカルボキシメチルデンプン、ヒドロキシプロピルデンプンや、エステル化処理したリン酸デンプン、オクテニルコハク酸デンプンナトリウム、酢酸デンプンや、湿熱処理デンプン、酸処理デンプン、架橋処理デンプン、α化処理デンプン、難消化性デンプン等)、レジスタントスターチ、イソマルツロース、ポリデキストロース、難消化性グルカン、アラビノガラクタンなどの多糖類;
エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、還元イソマルツロース、マンニトールなどの糖アルコール;
などが例示される。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0031】
糖質としては、20℃で液状のもの、20℃で粉末状のものがあるが、アイシングの作業性が良好となる観点から、20℃で粉末状のものが好ましい。
【0032】
食用ワックスとしては、モクロウ、キャンデリラワックス、カルナウバワックス、ライスワックス等の植物ワックスや、ラノリン、ミツロウ等の動物ワックスなどが例示される。
【0033】
本発明のアイシング組成物は、例えば、各種原材料を粉体混合することで製造することができる。
【0034】
本発明のアイシングの一実施形態では、上述した本発明のアイシング組成物を2~12質量%含有することが好ましく、3~8質量%含有することがより好ましい。本発明のアイシングの一実施形態では、本発明のアイシング組成物に、糖類、油脂、水などを混合することで製造することができる。
【0035】
糖類としては、粉糖、グラニュー糖、結晶麦芽糖、結晶ブドウ糖、果糖、精製ブドウ糖、粉末ブドウ糖、粉末還元麦芽糖などが例示され、嗜好性に応じて適宜選択することができる。
【0036】
アイシング中の糖類の含有量は、特に限定されないが、75~85質量%含有することが好ましい。
【0037】
油脂としては、パーム油、パーム核油、ヤシ油、菜種油、大豆油、綿実油、ヒマワリ油、米油、サフラワー油、コーン油、オリーブ油、ゴマ油、シア脂、サル脂、カカオ脂、豚脂(ラード)、牛脂、乳脂、それらの分別油、および、それらの加工油(硬化およびエステル交換反応のうち1つ以上の処理がなされたもの)などが例示され、特に硬化処理を行った加工油が好ましい。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。アイシング中の油脂の含有量は、特に限定されないが、0.5~5.0質量%含有することが好ましい。
【0038】
アイシング中の寒天Aおよび寒天Bの含有量は、特に限定されないが、アイシングの保形性向上や泣きの抑制効果を高める観点から、寒天Aの含有量は0.05~1.0質量%が好ましく、0.19~0.5質量%がより好ましい。寒天Bの含有量は0.02~0.40質量%が好ましく、0.06~0.20質量%がより好ましい。
【0039】
本発明のアイシングの別の実施形態では、ゲル強度が400g/cm以上900g/cm未満の寒天Aを0.05~1.0質量%、ゲル強度が900g/cm以上の寒天Bを0.02~0.4質量%含有する。
【0040】
すなわち、この実施形態のアイシングでは、例えば、上述した本発明のアイシング組成物を含むことで、アイシング中の寒天Aおよび寒天Bの含有量を所定の範囲に調製することもできるし、別途寒天Aおよび寒天Bを配合することで、アイシング中の寒天Aおよび寒天Bの含有量を所定の範囲に調製することもできる。アイシングに含まれる寒天Aおよび寒天Bの含有量が上記の範囲内であると、アイシングの保形性向上効果と、泣きの抑制効果を高めることができる。
【0041】
本発明のアイシングは、例えば、次の手順で製造することができる。
【0042】
アイシング組成物とグラニュー糖を混合し、水へ分散させた後に加熱する。沸騰後、硬化油を添加してさらに加熱し、アイシングミツを製造する。アイシングミツと粉糖をミキサーで混合したものが、アイシングとなる。
【0043】
このようにして得られたアイシングは、パン菓子類に好適に用いることができる。アイシングを40℃~70℃に保温して撹拌しながらパン菓子類の表面に上掛けすることで、コーティングを形成することができる。上掛けする方法としては、例えばグレーザーでアイシングを流し掛けしたり、浸漬機を用いて浸漬したり、あるいは刷毛等を用いて塗布したりすることができる。本発明におけるパン菓子類とは、ドーナツ類、かりんとう、揚げせんべいなどの揚げ菓子、デニッシュ、クロワッサン、スコーン、マフィン、バームクーヘン等の焼き菓子などが挙げられる。これらのパン菓子類の表面に本発明のアイシングを適量掛けたり、浸漬したり、塗布したりすると、アイシングが固化しコーティングが形成される。
【実施例0044】
以下に、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0045】
使用した寒天A~Cを表1に示した。
【0046】
【表1】
【0047】
<アイシング組成物の作製>
表2~表4に示す配合で、原材料を混合し、アイシング組成物を得た。
【0048】
<アイシングの作製>
表2~表4に示す配合で、以下の手順に従ってアイシングを作製した。
(1)水にアイシング組成物とグラニュー糖を加熱溶解した。
(2)100℃に達温後、硬化油を添加し、2分間加熱した。
(3)加熱によって蒸発した質量分の水を追加し、アイシングミツを調製した。
(4)(3)で調整したアイシングミツと粉糖をミキサーで混合攪拌し、均一なスラリー状のアイシングにした。
(5)(4)で調整したアイシングを使い捨て絞り袋に入れ、60℃に調温した。
【0049】
<アイシング上掛けクロワッサンの作製>
(6)焼成済み冷凍クロワッサンを210℃で3分間加熱後オーブンから取り出し、(5)のアイシングを上掛けした。
(7)20℃で30分間放冷後、クロワッサンを袋に詰め35℃で2日間放置した。
【0050】
得られたアイシングの作業性およびクロワッサンに上掛けしたアイシングについて次の評価を行った。
[保形性-1]
35℃で2日間放置した後のアイシングの外観を、下記基準に従って評価した。なお、割れはアイシングに一部亀裂が入っている状態を指し、ダレはアイシングが波打っている状態を指す。
3:割れもダレも見られない
2:割れもしくはダレがわずかにみられる
1:割れもしくはダレが顕著に見られる
0:割れやダレが激しい
[保形性-2]
袋に詰めたままのクロワッサン上部のアイシングに対し、テクスチャーアナライザーにて、直径8mm円筒冶具を用いて30cm/minで5mm圧縮した際の状態について、下記基準に従って評価した。
3:負荷をかける前と同じ状態に戻る
2:完全には戻らないが形は保っている
1:潰れてしまい袋にくっついた状態になっている
0:袋にくっつき剥がれているまたは割れている
[保形性-3]
アイシングの作製(4)で60℃に調温したアイシングを20℃で4分間放冷後、使い捨て絞り袋の先を2cm切り、バッドにアイシングで直線を引いた際の太さの最大値を、下記基準に従って評価した。細いほど、保形性が高いことを示している。なお、保形性-3の評価においては、3点を合格点とした。
3:4.0cm以下
2:4.0cm超4.5cm以下
1:4.5cm超5.0cm以下
0:5.0cm超
【0051】
保形性-1、保形性-2、保形性-3の合計点を保形性の総合点とした。なお、保形性の総合点で6点以上のものを、保形性が良好であると評価した。
【0052】
[泣き]
35℃で2日間放置した後のアイシングの外観を、下記基準に従って評価した。
4:袋の濡れが少なく、シロップの流れ出しが見られない
3:袋の濡れやシロップの流れ出しが少ない
2:袋の濡れやシロップの流れ出しが多い
1:袋の濡れやシロップの流れ出しが激しい
0:泣きが激しくアイシングが溶解し、剥がれ出している
【0053】
[作業性]
アイシングをクロワッサンに上掛けする際の作業性について、下記基準に従って評価した。
2:垂れることなく絞るのが容易
1:粘度が低く絞りにくい、もしくは硬くて絞るのが困難
0:絞らなくても垂れてくる、もしくは硬くて絞れない
【0054】
<結果>
結果を表2~表4に示す。
【0055】
【表2】
【0056】
【表3】
【0057】
【表4】
【0058】
比較例1では、寒天が使用されていないため、保形性、泣き、作業性の全ての項目において評価が低いことが把握される。また、比較例2~7では、寒天が使用されているものの、ゲル強度が400g/cm以上900g/cm未満の寒天A、または、ゲル強度が900g/cm以上の寒天Bのいずれか一方のみしか含有していないため、保形性、泣き、作業性の総合点が低いことが把握される(総合点:5~9点)。
【0059】
それに対して、実施例1~24によれば、ゲル強度が400g/cm以上900g/cm未満の寒天Aと、ゲル強度が900g/cm以上の寒天Bを含有することで、保形性、泣き、作業性の総合点が高いことが把握される(総合点:10~15点)。さらに、実施例17~24のように乳蛋白質を含有することで、特に保形性の評価が高くなることが把握される。