(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001382
(43)【公開日】2024-01-10
(54)【発明の名称】歯間清掃用綿棒及びこれを有する歯間清掃具
(51)【国際特許分類】
A61C 15/04 20060101AFI20231227BHJP
【FI】
A61C15/04 501
A61C15/04 502
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022099967
(22)【出願日】2022-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】592111894
【氏名又は名称】ヤマトエスロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167092
【弁理士】
【氏名又は名称】鷹津 俊一
(72)【発明者】
【氏名】糸山 秀史
(72)【発明者】
【氏名】林 信之
(57)【要約】
【課題】
綿体が歯間に入り込むことができて、しかも、汚れを十分に捕集することができる歯間清掃用綿棒、および、この歯間清掃用綿棒を有する歯間清掃具を提供する。
【解決手段】
軸体12と、軸体12に保持される複数本のマイクロファイバー13の集合体である綿体14とを有する歯間清掃用綿棒11及びこの歯間清掃用綿棒11を有する歯間清掃具15であって、軸体12は各マイクロファイバー13を挟む二つ折りのワイヤ17を有することを特徴とする。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸体と、前記軸体に保持される複数本のマイクロファイバーの集合体である綿体とを有する歯間清掃用綿棒であって、
前記軸体は前記各マイクロファイバーを挟む二つ折りのワイヤを有する
ことを特徴とする歯間清掃用綿棒。
【請求項2】
前記綿体は、前記軸体の長さ方向に延在する棒状に形成され、
前記軸体は、前記綿体の前記長さ方向視における内側に配置される
ことを特徴とする請求項1に記載の歯間清掃用綿棒。
【請求項3】
前記各マイクロファイバーは、それぞれの繊維長方向における略中央位置において前記二つ折りのワイヤによって挟まれる
ことを特徴とする請求項2に記載の歯間清掃用綿棒。
【請求項4】
前記ワイヤは金属製であり、
前記軸体の少なくとも一部は、前記二つ折りのワイヤが捻り合わされる多重螺旋構造を形成する
ことを特徴とする請求項3に記載の歯間清掃用綿棒。
【請求項5】
前記各マイクロファイバーが切り揃えられ、前記綿体は略円柱状に形成される
ことを特徴とする請求項4に記載の歯間清掃用綿棒。
【請求項6】
前記各マイクロファイバーが切り揃えられ、前記綿体は略円錐台状に形成される
ことを特徴とする請求項4に記載の歯間清掃用綿棒。
【請求項7】
前記各マイクロファイバーが切り揃えられ、前記綿体の前記長さ方向における一部は、前記軸体の中心線に対して、前記軸体の一方の先端側よりも他方の先端側の方が大径に形成される
ことを特徴とする請求項4に記載の歯間清掃用綿棒。
【請求項8】
請求項1ないし7の何れかに記載の歯間清掃用綿棒を有し、前記二つ折りワイヤよりも軸太に形成される把持部を前記軸体の一端側において備える
ことを特徴とする歯間清掃具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は歯間清掃用綿棒及びこれを有する歯間清掃具に関し、詳細にはマイクロファイバーの集合体である綿体を有する歯間清掃用綿棒及びこれを有する歯間清掃具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紙製の軸体の先端に繊維を巻き付けて接着することにより形成される綿棒がある。この繊維を巻き付けることによって得られる綿体は、涙滴状、ラグビーボール状、球状などに形成される(特許文献1)。
【0003】
こうした従来の綿棒は、その先端から先端付近に有する綿体が液体、半固体、液体及び固体の混合物、粉体などを吸収することができる。そのため、従来の綿棒は、使用者が軸体を手指で把持することにより、例えば、耳、鼻、口腔などの身体の部位に綿体を当てて、これらの部位に付着されている汚れを清掃することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の綿棒は、綿体が、軸体の先端から先端付近にかけて巻き付けられた繊維によって構成されるため、綿体が直接に接することができる範囲において汚れを清掃することができる。ただし、軸体が棹状に成形された紙であることから、その軸体に一定の強度を持たせるためにはそれ相応の軸体の直径を確保せねばならない。そのため、身体の部位が狭小である場合は、従来の綿棒の径が大き過ぎるとき清掃することができない。例えば、歯と歯との間及び歯と歯茎との間である歯間の内側を清掃するためには、紙製の軸体に巻き付けられた綿体の径が大き過ぎる。また、綿体の最先端部分を歯間の入口に当てても、この最先端部分の面積が広いため、繊維は歯間に入り込むことができない。これらにより、従来の綿棒によっては歯間を十分に清掃することが困難である。
【0006】
また、綿体が軸体の先端から先端付近にかけて設けられるため、この範囲の綿体に含まれる毛量には限りがある。例えば、綿体が歯垢のような半固体、食べかすのような液体及び固体の混合物等の汚れを清掃するためには、歯間において綿体が掻き出す汚れを、歯間内に留まらないように捕集する必要がある。これに対して、綿体の毛量が少なければ汚れを十分に捕集することができない。
【0007】
さらに、従来の綿棒は、綿体が軸体に巻き付けられた繊維によって構成されるため、一本一本の繊維の軸体に対する接着が弱ければ綿体が軸体から外れてしまうおそれが生じる。
【0008】
そこで本発明は、このような課題の下、綿体が歯間に入り込むことができて、しかも、汚れを十分に捕集することができる歯間清掃用綿棒及び歯間清掃具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明は軸体と、前記軸体に保持される複数本のマイクロファイバーの集合体である綿体とを有する歯間清掃用綿棒であって、前記軸体は前記各マイクロファイバーを挟む二つ折りのワイヤを有することを特徴とする歯間清掃用綿棒、および、この歯間清掃用綿棒を有する歯間清掃具を提供するものである。
【0010】
すなわち、本発明の歯間清掃用綿棒は、綿体に含まれる繊維であるマイクロファイバーをワイヤによって保持するように構成されるため、軸体を径小に形成することができる。そして、そのぶん歯間清掃用綿棒の径を小さくすることができる。これにより、綿体が歯間に入り込むことができて、本発明の歯間清掃用綿棒及び歯間清掃具によって歯間の内側を清掃することが容易になる。
【0011】
また、複数本のマイクロファイバーがワイヤに挟まれて保持されるため、軸体の長さ方向における、マイクロファイバーを保持する範囲を長くすることによって、より多くの本数のマイクロファイバーを挟むことができる。そのため、大毛量の綿体を保持することができ、本発明の歯間清掃用綿棒及び歯間清掃具によって汚れを十分に捕集することができる。
【0012】
しかも、大毛量の綿体が歯間に入り込むことができるため、軸体をその長手方向に往復動させることにより、歯間の汚れを効率的に清掃することができる。
【0013】
さらに、一本一本のマイクロファイバーが二つ折りのワイヤによって挟まれるため、綿体が軸体から外れてしまうおそれが少ない。
【0014】
(2)また、前記綿体は、前記軸体の長さ方向に延在する棒状に形成され、前記軸体は、前記綿体の前記長さ方向視における内側に配置されてもよい。
【0015】
すなわち、綿体が棒状に形成されるため、多くの本数のマイクロファイバーを保持しつつも綿体を径小に形成することができる。これにより、綿体が容易に歯間に入り込むことができる。また、軸体が綿体の内側に配置されるため、綿体は軸体をその全周から囲むことができ、挿入された歯間の内側全体を清掃することができる。
【0016】
(3)また、前記各マイクロファイバーは、それぞれの繊維長方向における略中央位置において前記二つ折りのワイヤによって挟まれてもよい。
【0017】
すなわち、マイクロファイバーが略中央位置で挟まれるため、マイクロファイバーが二つ折りのワイヤから抜けて歯間清掃用綿棒から外れることが低減する。また、綿体は、マイクロファイバーの両端がそれぞれ軸体から略等距離に位置するため、これらの両端を歯間の内側に当てて歯間を効率よく清掃するこができる。
【0018】
(4)また、前記ワイヤは金属製であり、前記軸体の少なくとも一部は、前記二つ折りのワイヤが捻り合わされる多重螺旋構造を形成してもよい。
【0019】
すなわち、二つ折りのワイヤが多重螺旋構造を形成するように捻り合わされるため、マイクロファイバーを、軸体の長さ方向視における何れの向きをも向くように挟むことができる。その結果、各マイクロファイバーを、軸体の長さ方向視における全ての方向において配置することができる。そして、全てのマイクロファイバーの先端が、歯間の内側全体を万遍なく清掃することができる。
【0020】
また、軸体は金属製のワイヤを捻り合わせて形成されるため、多重螺旋構造を径小に形成することができる。そのため、綿体はより容易に歯間に入り込むことができる。しかも、金属製のワイヤは捻り合わされた後に元に戻らないため、マイクロファイバーの脱抜を低減することができる。
【0021】
なお、金属製のワイヤを用いながらも、綿体がワイヤをその周りから囲むため、綿体が覆う部分のワイヤは直接に口腔内の部位に触れにくい。これにより、ワイヤが使用者に対してガルバニー電流による刺激を与えるおそれが小さく、また、口腔内の部位を傷つけるおそれが小さい。
【0022】
(5)また、前記各マイクロファイバーが切り揃えられ、前記綿体は略円柱状に形成されてもよい。
【0023】
すなわち、綿体が略円柱状に形成されることにより、綿体を、その中心線方向に容易に往復動させることができる。これにより、綿体は歯間の内側を効率的に清掃することができる。また、綿体は各マイクロファイバーを切り揃えることにより成形されて略円柱状に形成されるため、容易に加工することができる。
【0024】
(6)あるいは、前記各マイクロファイバーが切り揃えられ、前記綿体は略円錐台状に形成されてもよい。
【0025】
すなわち、綿体が略円錐台状に形成されることにより、この略円錐台状の中心線方向の位置によって綿体の径が異なる。そのため、歯間清掃用綿棒の挿入の深浅によって歯間の内側と綿体との間における摩擦の強弱が変わる。そのため、使用者は、綿体による歯間の内側に対する力の加わり具合を調整することができる。また、綿体は各マイクロファイバーを切り揃えることにより整形されて略円錐台状に形成されるため、容易に加工することができる。
【0026】
(7)あるいは、前記各マイクロファイバーが切り揃えられ、前記綿体の前記長さ方向における一部は、前記軸体の中心線に対して、前記軸体の一方の先端側よりも他方の先端側の方が大径に形成されてもよい。
【0027】
すなわち、綿体の径が軸体の中心線方向の位置によって異なる部分がある。そのため、このような部分においては、歯間清掃用綿棒の挿入の深浅によって歯間の内側と綿体との間における摩擦の強弱が変わる。また、綿体の形状によって、歯間への挿入時又は歯間からの引抜き時に歯間から受ける抵抗の大小に変化が生じる。これらにより、使用者は、綿体による歯間の内側に対する力の加わり具合を調整することができる。また、製作者は、挿入時又は引抜き時における抵抗の生じ具合を調整することができる。さらに、綿体は各マイクロファイバーを切り揃えることにより整形されてこのような形状に形成されるため、容易に加工することができる。
【0028】
(8)また、前記二つ折りワイヤよりも軸太に形成される把持部を前記軸体の一端側において備えてもよい。
【0029】
すなわち、使用者は、軸太に形成される把持部を手指で把持することにより、歯間清掃具を容易に操作することができる。また、歯間の内側に対する綿体の力の加え方を微妙に調整することができる。
【発明の効果】
【0030】
このように本発明では、綿体が歯間に入り込むことができて歯間の汚れを効率的に清掃することができ、かつ、汚れを十分に捕集することができる歯間清掃用綿棒及び歯間清掃具を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】(a)本発明の第1の実施形態に係る歯間清掃用綿棒の正面図である。(b)
図1(a)の歯間清掃用綿棒の右側面図である。(c)これらの歯間清掃用綿棒を有する歯間清掃具の右側面図である。
【
図2】
図1(b)に示すA-A線から視た歯間清掃用綿棒のA-A線断面図である。
【
図3】(a)
図1(b)の歯間清掃用綿棒における二つ折りワイヤが捻り合わされる前の右側面図である。(b)同じく二つ折りワイヤが捻り合わされた状態の右側面図である。
【
図4】
図1(b)の歯間清掃用綿棒を側面視から観察した写真である。
【
図5】(a)
図1(b)の歯間清掃用綿棒においてマイクロファイバーが後方に靡いている状態の縦断面図である。(b)同じくマイクロファイバーが前方に靡いている状態の縦断面図である。
【
図6】
図1(a)に示すD-D線から視た歯間清掃用綿棒のD-D線断面の部分拡大断面図である。
【
図7】本発明の第2の実施形態に係る歯間清掃用綿棒を有する歯間清掃具の右側面図である。
【
図8】本発明の第3の実施形態に係る歯間清掃用綿棒を有する歯間清掃具の右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
[第1の実施形態]
本発明の歯間清掃用綿棒についての第1の実施形態と、この第1の実施形態に係る歯間清掃用綿棒を有する歯間清掃具とを、
図1~
図6を用いて説明する。
図1(a)及び
図1(b)において11は歯間清掃用綿棒である。歯間清掃用綿棒11は、軸体12と、軸体12に保持される複数本のマイクロファイバー13の集合体である綿体14とを有する。また、
図1(c)において15は歯間清掃具である。歯間清掃具15は、歯間清掃用綿棒11と把持部16とを有する。
図1(a)~(c)において、矢印F方向が歯間清掃用綿棒11及び歯間清掃具15の前方を示し、矢印B方向がこれらの後方を示す。
図1(a)は歯間清掃用綿棒11の正面図を表し、
図1(b)及び(c)はそれぞれ歯間清掃用綿棒11及び歯間清掃具15の右側面図を表す。綿体14は棒状であり、前後方向の中心線を有する略円柱状に形成される。また、軸体12は、前側の部分が綿体14の中心線に沿って綿体14の内側に延在し、後側の部分が綿体14から後方に突出する。歯間清掃用綿棒11及び歯間清掃具15の図示しない平面、底面及び左側面は、それぞれ概ねこれら右側面図と同様に表わされる。
【0033】
図2は、
図1(b)に示すA-A線から視た歯間清掃用綿棒11のA-A線断面図を表わす。
図2において、矢印U方向が歯間清掃用綿棒11の上方を示し、矢印D方向が歯間清掃用綿棒11の下方を示す。矢印L方向が歯間清掃用綿棒11の左方を示し、矢印R方向が歯間清掃用綿棒11の右方を示す。
【0034】
軸体12は各マイクロファイバー13を挟む二つ折りのワイヤを有する。この二つ折りワイヤ17のうち、折り返し部よりも一端側の部分を第1のワイヤ部17aと呼び、同じく折り返し部よりも他端側の部分を第2のワイヤ部17bと呼ぶ。例えば、
図2においては左側に表わされる断面が第1のワイヤ部17aの断面であり、右側に表わされる断面が第2のワイヤ部17bの断面である。各マイクロファイバー13は、第1のワイヤ部17aと第2のワイヤ部17bとの間において挟まれる。二つ折りのワイヤ17の材質としては、バネ材等に用いられるオーステナイト系ステンレス、マルテンサイト系ステンレス、フェライト系ステンレス、Co-Co合金、タングステン、チタン合金等を採用する。
【0035】
また、軸体12の少なくとも一部は、二つ折りワイヤ17が捻り合わされる多重螺旋構造を形成する。
図3(a)(b)は、二つ折りワイヤ17の右側面を示す。歯間清掃用綿棒11においては、図示しない各マイクロファイバー13が第1のワイヤ部17aと第2のワイヤ部17bとの間に挟まれている。二つ折りワイヤ17は、
図3(a)の例において、折り返し部17cにおいて二つ折りされた後、捻り合わされる前に第1のワイヤ部17aを上側に、第2のワイヤ部17bを下側にそれぞれ配置する。そして、マイクロファイバー13をこれらの間で左右から挟む。その上で、
図3(b)のように、中心線C1を中心にして複数回回転させることによりこれらを捻り合わせる。これにより、二つ折りワイヤ17は多重螺旋構造を形成する。この中心線C1は軸体12全体の中心線に相当する。
【0036】
なお、
図3(b)において二つ折りワイヤ17が、その全長において捻り合わされた状態を示すが、二つ折りワイヤ17は、例えば前端側だけが捻り合わされていてもよい。
【0037】
マイクロファイバー13として、例えば複合紡糸の後に分割・割繊する分割・割繊型のマイクロファイバーを用いることができる。また、分割・割繊型のマイクロファイバーのうちでも、ポリエステルのポリマーとナイロンのポリマーとを放射状又は並列状に張り合わせた断面を有する剥離割繊タイプのマイクロファイバーを用いることにより、材質をポリエステルとするマイクロファイバーと、材質をナイロンとするマイクロファイバーとを併せて二つ折りワイヤ17に挟むことができる。このような剥離割繊タイプのマイクロファイバーを採用することにより、使用するマイクロファイバー13を0.5デシテックス以上、かつ、2.0デシテックス未満の太さを有するものとすることができる。
【0038】
各マイクロファイバー13は、それぞれの繊維長方向における略中央位置において二つ折りワイヤ17によって挟まれる。そして、二つ折りワイヤ17によって挟み込まれた後、綿体14が、その中心線と軸体12の中心線C1とが一致する略円柱状となるように切り揃えられる。
【0039】
図4は各マイクロファイバー13が切り揃えられた状態の歯間清掃用綿棒11を側面視から観察した写真を表わす。
【0040】
綿体14は、捻り合わされて多重螺旋構造に形成される二つ折りワイヤ17に複数本のマイクロファイバー13が保持されていることにより、これらマイクロファイバー13が前後方向に延在する棒状の集合体である。マイクロファイバー13は、合成樹脂製であるとともに極細であるために柔軟に曲がることができる。これにより、綿体14の前端を歯間に当ててから綿体14が歯間の内側を通るように前方に動かす場合、綿体14は、各マイクロファイバー13が後方に曲がることによって
図5(a)の縦断面が示すように後方に靡くことができる。これにより、綿体14は、各マイクロファイバー13が曲がることに伴って径が小さくなり、靡く前よりも容易に歯間の内側を往き来することができる。しかも、綿体14は口腔中の唾液を含むことによってマイクロファイバー13同士が密着し、さらに径が小さくなることができる。これらにより、使用者は綿体14を前後方向に容易に往復動することができて効率良く歯間を清掃することが可能となる。
【0041】
また、使用者が綿体14を後方に動かすときは、各マイクロファイバー13が前方に曲がることによって綿体14が
図5(b)の縦断面のように前方に靡くことができる。これにより、前方に動かす場合と同様に、綿体14の径が小さくなり、歯間の内側を移動することができる。その結果、使用者は綿体14を容易に前後動させることができて且つ歯間から引き抜くことができる。また、口腔中の唾液を含むことによる効果も同様である。
【0042】
図5(a)(b)に示す中心線C2は綿体14の中心線を表す。綿体14の中心線C2は軸体の中心線C1と一致する。そして、図の想像線は各マイクロファイバー13が後方又は前方に曲がる前の状態の綿体14を表す。そして、実線は、綿体14が後方又は前方に靡いて径が小さくなった後の状態を示す。
【0043】
発明者は、複数種の歯間清掃用綿棒11を試作して、十分な強度を有し且つ最も細い各ワイヤ部17a,17bの径が0.2mmであって、この各ワイヤ部17a,17bを用いて多重螺旋構造を製作する場合の軸体12の径が0.4mmであることを見出した。そして、この軸体12にマイクロファイバー13を挟み込み、靡く前の綿体14が、その中心線C2と軸体12の中心線C1とが一致する略円柱状となり、かつ、この綿体14の径が2.0mmとなるように各マイクロファイバー13を切り揃えて整形した。これらにより、各マイクロファイバー13が曲がり、この綿体14が全体に前後に靡いた状態の径が0.6mmであることを見出した。なお、このときの切り揃えられた後の各マイクロファイバー13の長さは2mm~4mmであった。
【0044】
これに対して、人の歯間の隙間は0.6mm~1.8mm程度であることが知られている。この隙間の大きさに応じて、全日本ブラシ工業協同組合が1999年8月1日に施行した「歯間ブラシに関する組合自主規格」は、最小規格サイズの歯間ブラシの最小通過穴直径が0.8mm未満であり、また、最大規格サイズの歯間ブラシの最小通過穴直径が1.8mm以上であることを示している。そのため、歯間の隙間が0.6mmであっても、綿体14が靡いた状態の歯間清掃用綿棒11は容易にこの歯間の内側を清掃することができる。
【0045】
また、発明者は、径が0.6mmの軸体12を採用するとともに、綿体14の径が3.0mmとなるように各マイクロファイバー13を切り揃えて整形する場合は、この綿体14が全体に前後に靡いた状態の径が1.8mmであることを見出した。そのため、歯間の隙間が1.8mmの場合であっても、綿体14が靡いた状態の歯間清掃用綿棒11はマイクロファイバー13がちょうどこの歯間の内側を擦って清掃することができる。よって、靡く前の綿体14の径は、2.0mm以上であり、かつ、3.0mm以下であることが好ましい。なお、綿体14の径が3.0mmの場合、切り揃えられた後の各マイクロファイバー13の長さは3mm~6mmであった。
【0046】
次に、柔らかいマイクロファイバー13は、綿体14においてまちまちの方向に曲がっている。そのため、例えば、一のマイクロファイバー13は上下方向又は左右方向に曲がって且つ隣り合う他のマイクロファイバー13と接して交差する。
【0047】
また、
図6は
図1(a)に示すD-D線から視た歯間清掃用綿棒11のD-D線断面の部分拡大断面図を表わす。ここにおいても、柔らかいマイクロファイバー13は、綿体14においてまちまちの方向に曲がっている。そのため、この図が示すように、一のマイクロファイバー13は前後方向又は上下方向に曲がって且つ隣り合う他のマイクロファイバー13と接して交差する。
【0048】
これらのように、一部のマイクロファイバー13同士がお互いに接して交差することによって絡み合い、綿体14は歯間の汚れをこれら絡み合っているマイクロファイバー13同士の間において容易に捕集することができる。
【0049】
また、綿体14は、各マイクロファイバー13を切り揃えて略円柱状に整形されるため、
図2及び
図6が示すように一部のマイクロファイバー13の先端である表出先端13aが、綿体14の表面に表出する。そのため、綿体14は、歯間の内面に表出先端13aが当接して、効率良く歯間の内面に付着する汚れを掻くことができる。その結果、歯間清掃用綿棒11は、歯間の内面から掻いた汚れと、歯間に浮遊している汚れとをマイクロファイバー13同士の間において捕集して絡み取る。そして、使用者は、歯間清掃用綿棒11と、これに捕集されている汚れとを合わせて歯間から取り出すことができる。
【0050】
また、綿体14内において各マイクロファイバー13が捻り合わされた二つ折りワイヤ17によって保持されているため、使用時などに外力が加わってもマイクロファイバー13が植毛位置から移動してしまうことはない。これにより、綿体14は常に軸体12を覆うことになり、二つ折りワイヤ17は直接に口腔内の部位に触れにくい。
【0051】
ところで、発明者は、綿体14に含まれるマイクロファイバー13の本数についても複数の条件の下で歯間清掃用綿棒11を試作した。具体的には、軸体12の前後方向における単位長さに対して多重螺旋構造に挟まれるマイクロファイバー13の本数を変更した。また、綿体14の前後方向の長さが8mm~20mmの歯間清掃用綿棒11を用意した。このとき、1mmの軸体12の長さに対して100,000本以上のマイクロファイバー13を挟む場合、マイクロファイバー13は、軸体12の直径方向において2列以上の列を成していないと第1のワイヤ部17aと第2のワイヤ部17bとの間に収まりきらないことを見出した。仮に、無理に100,000本/mm以上のマイクロファイバー13を挟めば、二つ折りワイヤ17が正しく多重螺旋構造を成さずに、軸体12が直線状を形成しない。
【0052】
その一方で、1mmの長さに対して250本未満のマイクロファイバー13を挟む場合、綿体14はマイクロファイバー13の密度が低く、密度が高いときに口腔内で感じる柔らかさを得られないことを見出した。また、歯間の汚れを捕集することによって得られる絡み取りの効果を発揮できないことを見出した。さらに、挟まれたマイクロファイバー13が捻り合わされた二つ折りワイヤ17の線方向において疎であり、各マイクロファイバー13は、隣り合うマイクロファイバー13による摩擦力を受けにくいため、二つ折りワイヤ17から脱抜しやすいことを見出した。これらにより、マイクロファイバー13は、軸体12の1mmの長さに対して、250本以上、かつ、100,000本未満の範囲の本数を挟むことが好ましい。
【0053】
以上のように、歯間清掃用綿棒11は、綿体14に含まれる繊維であるマイクロファイバー13を二つ折りワイヤ17によって保持するように構成されるため軸体12を径小に形成することができる。そして、そのぶん歯間清掃用綿棒11の径を小さくすることができる。これにより、綿体14が歯間に入り込むことができて、歯間清掃用綿棒11及びこの歯間清掃用綿棒11を有する歯間清掃具15によって歯間の内側を清掃することが容易になる。
【0054】
また、複数本のマイクロファイバー13が二つ折りワイヤ17に挟まれて保持されるため、前後方向においてマイクロファイバー13を保持する範囲を長くすることによって、より多くの本数のマイクロファイバー13を挟むことができる。そのため、大毛量の綿体14を保持することができ、歯間清掃用綿棒11及び歯間清掃具15によって汚れを十分に捕集することができる。
【0055】
しかも、大毛量の綿体14が歯間に入り込むことができるため、軸体12を前後方向に往復動させることにより、歯間の汚れを効率的に清掃することができる。
【0056】
さらに、一本一本のマイクロファイバー13が二つ折りワイヤ17によって挟まれるため、綿体14が軸体12から外れてしまうおそれが少ない。
【0057】
また、綿体14が棒状に形成されるため、多くの本数のマイクロファイバー13を保持しつつも綿体14を径小に形成することができる。これにより、綿体14が容易に歯間に入り込むことができる。さらに、二つ折りワイヤ17が各マイクロファイバー13の一の表出先端13aから他の表出先端13aまでの途中を挟むため、軸体12は前後方向視において綿体14の内側に配置される。これにより、綿体14は軸体12をその全周から囲むことができ、挿入された歯間の内側全体を清掃することができる。
【0058】
また、各マイクロファイバー13が、一の表出先端13aから他の表出先端13aまでの特に略中央位置において挟まれるため、マイクロファイバー13が二つ折りワイヤ17から抜けて歯間清掃用綿棒11から外れることが低減する。また、綿体14は、マイクロファイバー13の表出先端13aが軸体12から略等距離に位置するため、それぞれの表出先端13aが綿体14の表面において一つの曲面を成しており、これらを歯間の内側に当てて歯間を効率よく清掃するこができる。
【0059】
また、二つ折りワイヤ17が多重螺旋構造を形成するように捻り合わされるため、マイクロファイバー13を、歯間清掃用綿棒11の前後方向視における何れの向きをも向くように挟むことができる。その結果、各マイクロファイバー13を、前後方向視における全ての方向において配置することができる。そして、各表出先端13aが、歯間の内側全体を万遍なく清掃することができる。
【0060】
さらに、軸体12は金属製の二つ折りワイヤ17を捻り合わせて形成されるため、多重螺旋構造を径小に形成することができる。そのため、綿体14はより容易に歯間に入り込むことができる。しかも、金属製の二つ折りワイヤ17は捻り合わされた後に元に戻らないため、マイクロファイバー13の脱抜を低減することができる。
【0061】
さらに、金属製の二つ折りワイヤ17を用いながらも、綿体14が二つ折りワイヤ17をその周りから囲むため、綿体14が覆う部分のワイヤは直接に口腔内の部位に触れにくい。これにより、二つ折りワイヤ17が使用者に対してガルバニー電流による刺激を与えるおそれが小さく、また、口腔内の部位を傷つけるおそれが小さい。
【0062】
また、綿体14は略円柱状に形成されため、前後方向に容易に往復動させることができる。これにより、綿体14は歯間の内側を効率的に清掃することができる。しかも、綿体14は各マイクロファイバー13を切り揃えることにより成形されて略円柱状に形成されるため、容易に加工することができる。
【0063】
以上において説明した第1の実施形態に係る歯間清掃用綿棒11は、把持部16と合わせて歯間清掃具15を構成することができる。すなわち、
図1(c)が示すように、歯間清掃具15は、歯間清掃用綿棒11を軸体12の先端側に備えるとともに、二つ折りワイヤ17よりも軸太に形成される把持部16を軸体12の後端側において備える。把持部16はポリプロピレン(PP)、飽和ポリエスエル(PET)等の合成樹脂により形成される。そして、これら二つ折りワイヤ17と把持部16とは、例えば把持部16が射出成形によって成形される際に、二つ折りワイヤ17の後端側がインサート成形されることによって固定される。
【0064】
このような構成のため、使用者は、軸太に形成される把持部16を手指で把持することにより、歯間清掃具15を容易に操作することができる。また、歯間の内側に対する綿体14の力の加え方を微妙に調整することができる。
【0065】
[第2の実施形態]
本発明の歯間清掃用綿棒21についての第2の実施形態と、この第2の実施形態に係る歯間清掃用綿棒21を有する歯間清掃具25とを
図7を用いて説明する。歯間清掃用綿棒21は、軸体22と、軸体22に保持される複数本のマイクロファイバー23の集合体である綿体24とを有する。歯間清掃具25は、歯間清掃用綿棒21と把持部26とを有する。綿体24は棒状であり、前後方向の中心線C2を有する略円錐台状に形成される。
【0066】
軸体22は各マイクロファイバー23を挟む二つ折りワイヤ27を有する。この各マイクロファイバー23は、二つ折りワイヤ27によって挟み込まれた後、綿体24が、その中心線C2と軸体22の中心線とが一致する略円錐台状となるように切り揃えられる。綿体24は、前側の底面24aの径よりも後側の底面24bの径のほうが大きい略円錐台状に形成される。
【0067】
他の構成は第1の実施形態と共通とする。
【0068】
以上のような構成のため、綿体24が略円錐台状に形成されることにより、前後方向の位置によって綿体24の径が異なる。そのため、本発明の歯間清掃用綿棒21及び歯間清掃具25の挿入の深浅によって歯間の内側と綿体との間における摩擦の強弱が変わる。そのため、使用者は、綿体24による歯間の内側に対する力の加わり具合を調整することができる。また、綿体24は各マイクロファイバー23を切り揃えることにより整形されて略円錐台状に形成されるため、容易に加工することができる。
【0069】
[第3の実施形態]
本発明の歯間清掃用綿棒31についての第3の実施形態と、この第3の実施形態に係る歯間清掃用綿棒31を有する歯間清掃具35とを
図8を用いて説明する。歯間清掃用綿棒31は、軸体32と、軸体32に保持される複数本のマイクロファイバー33の集合体である綿体34とを有する。歯間清掃具35は、歯間清掃用綿棒31と把持部36とを有する。綿体34は棒状であり、前端面34aから後端面34bにかけて順に略円錐台状の前側円錐台状部38a、略円柱状の円柱状部39及び略円錐台状の後側円錐台状部38bを有する。前側円錐台状部38a、円柱状部39及び後側円錐台状部38bは、それぞれ共通に前後方向の中心線C2を有するとともに共通の軸体32によって保持される。また、前後の円錐台状部38a,38bが、それぞれ円柱状部39と接する仮想の底面34c,34dは円柱状部39の底面と同大である。これらにより、前側円錐台状部38a、円柱状部39及び後側円錐台状部38bは前後に連続して、一体的に綿体34を構成する。
【0070】
ここで、それぞれ綿体34の前後方向における一部である各円錐台状部38a,38bは、前後の端面34a,34bよりも仮想の底面34c,34dの方が大径に形成されている。前側円錐台状部38aにおいては前端面34aがより前端側に位置するとともに仮想の底面34cがより後端側に位置する。また、後側円錐台状部38bにおいては仮想の底面34dがより前端側に位置するとともに後端面34bがより後端側に位置する。
【0071】
軸体32は各マイクロファイバー33を挟む二つ折りワイヤ37を有する。この各マイクロファイバー33は、二つ折りワイヤ37によって挟み込まれた後、綿体34が、その中心線C2と軸体32の中心線とが一致する略円錐台状及び略円柱状となるように切り揃えられる。
【0072】
他の構成は第1の実施形態と共通とする。
【0073】
以上のような構成のため、綿体34の径が前後方向の位置によって異なる部分がある。そのため、このような部分においては、歯間清掃用綿棒31及び歯間清掃具35の挿入の深浅によって歯間の内側と綿体34との間における摩擦の強弱が変わる。また、綿体34の形状によって、歯間への挿入時又は歯間からの引抜き時に歯間から受ける抵抗の大小に変化が生じる。これらにより、使用者は、綿体34による歯間の内側に対する力の加わり具合を調整することができる。また、製作者は、挿入時又は引抜き時における抵抗の生じ具合を調整することができる。さらに、綿体34は各マイクロファイバー33を切り揃えることにより整形されてこのような形状に形成されるため、容易に加工することができる。
【0074】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0075】
例えば、二つ折りワイヤは、
図3(b)の例において正面から視て各ワイヤ部が反時計向きに捻れながら後ろ向きに進むように捻り合わされているが、この反対の向きに捻り合わされてもよい。
【0076】
また、綿体は、円柱状、円錐台状及びこれらを組み合わせた形状の例を示したが、これら立体の角が丸まったものであってもよく、例えば、円柱の底面が半球体状に膨出したような形状であってもよい。あるいは、円錐台状部と円柱状部とを組み合わせた形状については、円錐台状部と円柱部との境界がはっきりしたものでなくともよく、例えば、この境界部分にRが設けられたような形状であってもよい。
【0077】
また、第2の実施形態として示した略円錐台状の形状は、前後の向きが逆であり、前側の底面の径よりも後側の底面の径のほうが小さい略円錐台状であってもよい。あるいは、第3の実施形態として示した立体は、前後いずれかの円錐台状部だけを有するものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、使用者の歯間を清掃するための、歯間清掃用綿棒又はそれを有する歯間清掃具に利用できる。
【符号の説明】
【0079】
11,21,31 歯間清掃用綿棒
12,22,32 軸体
13,23,33 マイクロファイバー
13a 表出先端
14,24,34 綿体
15,25,35 歯間清掃具
16,26,36 把持部
17,27,37 二つ折りワイヤ(二つ折りのワイヤ)
17a 第1のワイヤ部
17b 第2のワイヤ部
38a 前側円錐台状部
38b 後側円錐台状部
39 円柱状部