(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138207
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20240927BHJP
H01L 29/06 20060101ALI20240927BHJP
H01L 29/739 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
H01L29/78 652J
H01L29/78 652H
H01L29/78 652K
H01L29/78 652P
H01L29/78 653A
H01L29/78 655B
H01L29/78 655D
H01L29/78 655G
H01L29/78 657D
H01L29/06 301V
H01L29/06 301G
【審査請求】有
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024125095
(22)【出願日】2024-07-31
(62)【分割の表示】P 2023026044の分割
【原出願日】2017-08-08
(31)【優先権主張番号】P 2016158680
(32)【優先日】2016-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017025389
(32)【優先日】2017-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017111218
(32)【優先日】2017-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017119106
(32)【優先日】2017-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内藤 達也
(57)【要約】
【課題】半導体装置においては、ターンオン損失を低減することが好ましい。
【解決手段】第1導電型のドリフト領域を有する半導体基板と、半導体基板の内部においてドリフト領域の上方に設けられ、ドリフト領域よりもドーピング濃度の高い第1導電型のエミッタ領域と、半導体基板の内部においてエミッタ領域とドリフト領域の間に設けられた第2導電型のベース領域と、半導体基板の内部においてベース領域とドリフト領域の間に設けられ、ドリフト領域よりもドーピング濃度の高い第1導電型の第1の蓄積領域と、半導体基板の上面からエミッタ領域、ベース領域および第1の蓄積領域を貫通して設けられ、内部に導電部が設けられた複数のトレンチ部と、第1の蓄積領域よりも下方に設けられ、ゲート-コレクタ間容量を付加する容量付加部とを備える半導体装置を提供する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランジスタ部およびダイオード部を備える半導体装置であって、
第1導電型のドリフト領域を有する半導体基板と、
前記半導体基板において前記ドリフト領域の上方に設けられ、前記ドリフト領域よりもドーピング濃度の高い第1導電型のエミッタ領域と、
前記半導体基板において前記ドリフト領域の上方に設けられた第2導電型のベース領域と、
前記半導体基板において前記ベース領域の下方に設けられ、前記ドリフト領域よりもドーピング濃度の高い第1導電型の複数の蓄積領域と、
前記半導体基板のおもて面から裏面側に延伸して設けられ、内部に導電部が設けられた複数のトレンチ部と、
を備え、
前記複数の蓄積領域は、第1の蓄積領域と、前記半導体基板の深さ方向において、前記第1の蓄積領域よりも下方に設けられた第2の蓄積領域とを有し、
前記第1の蓄積領域および前記第2の蓄積領域は、前記トランジスタ部および前記ダイオード部のそれぞれに設けられる
半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)等の半導体装置が知られている(例えば、特許文献1-3参照)。
特許文献1 特開2007-311627号公報
特許文献2 特表2014-61075号公報
特許文献3 特開2015-138884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
半導体装置においては、ターンオン損失を低減することが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様においては、半導体装置を提供する。半導体装置は、第1導電型のドリフト領域を有する半導体基板を備えてよい。半導体装置は、ドリフト領域の上方に設けられ、前記ドリフト領域よりもドーピング濃度の高い第1導電型の第1半導体領域を備えてよい。半導体装置は、第1半導体領域とドリフト領域の間に設けられた第2導電型の第2半導体領域を備えてよい。半導体装置は、半導体基板のおもて面側で第1方向に沿って配列され、第1方向と垂直な第2方向に沿って延伸する延伸部分を有する複数のトレンチ部を備えてよい。半導体装置は、2つのトレンチ部に挟まれたメサ部を備えてよい。複数のトレンチ部の少なくとも一つのトレンチ部は、第2半導体領域の下面の深さ位置よりも上側に、第1方向における幅が上側にいくほど小さくなる第1テーパー部を有してよい。
半導体装置は、半導体基板の内部においてドリフト領域の上方に設けられ、ドリフト領域よりもドーピング濃度の高い第1導電型のエミッタ領域を備えてよい。半導体装置は、半導体基板の内部においてエミッタ領域とドリフト領域の間に設けられた第2導電型のベース領域を備えてよい。半導体装置は、半導体基板の内部においてベース領域とドリフト領域の間に設けられ、ドリフト領域よりもドーピング濃度の高い第1導電型の第1の蓄積領域を備えてよい。半導体装置は、半導体基板の上面からエミッタ領域、ベース領域および第1の蓄積領域を貫通して設けられ、内部に導電部が設けられた複数のトレンチ部を備えてよい。半導体装置は、第1の蓄積領域よりも下方に設けられ、ゲート-コレクタ間容量を付加する容量付加部を備えてよい。
【0005】
容量付加部は、2つのトレンチ部の間において、第1の蓄積領域よりも下方に設けられ、ドリフト領域よりもドーピング濃度の高い第1導電型の蓄積領域を有してよい。容量付加部は、ドリフト領域よりもドーピング濃度の高い第1導電型の蓄積領域を、半導体基板の深さ方向において複数有してよい。第1の蓄積領域よりも下側に形成された少なくとも一つの蓄積領域は、第1の蓄積領域よりもドーピング濃度が高くてよい。
【0006】
最も下側に形成された蓄積領域の半導体基板の深さ方向におけるドーピング濃度分布のピーク位置が、トレンチ部の下端よりも上側に配置されていてよい。最も下側に形成された前記蓄積領域の下端が、トレンチ部の下端よりも上側に配置されていてよい。半導体基板の深さ方向において、最も下側に形成された蓄積領域のドーピング濃度分布のピーク位置が、トレンチ部の中央よりも下側に配置されていてよい。
【0007】
第1の蓄積領域以外の蓄積領域において、より下側の蓄積領域のほうが、より上側の蓄積領域よりもドーピング濃度が高くてよい。
【0008】
半導体基板の深さ方向において、第1の蓄積領域と、第1の蓄積領域の次に配置された蓄積領域との間隔は、最も下側の蓄積領域と下側から2番目の蓄積領域との間隔よりも大きくてよい。第1の蓄積領域と、第1の蓄積領域の次に配置された蓄積領域との間の領域におけるドーピング濃度は、ドリフト領域のドーピング濃度よりも高くてよい。
【0009】
第1の蓄積領域と、第1の蓄積領域の次に配置された蓄積領域との間の領域におけるドーピング濃度の最小値が、第1の蓄積領域のドーピング濃度のピーク値の1/10以下であってよい。第1の蓄積領域は、ドーパントとしてリンを含み、第1の蓄積領域以外の蓄積領域は、ドーパントとして水素を含んでよい。
【0010】
トレンチ部は、半導体基板の上面からエミッタ領域、ベース領域および第1の蓄積領域を貫通して設けられたトレンチと、トレンチの内壁に形成され、導電部を囲む絶縁膜とを有してよい。第1の蓄積領域よりも下側における絶縁膜の少なくとも一部は、第1の蓄積領域よりも上側における絶縁膜よりも薄く形成されてよい。第1の蓄積領域よりも下側における絶縁膜が、容量付加部として機能してよい。
【0011】
トレンチ部は、半導体基板の上面からエミッタ領域、ベース領域および第1の蓄積領域を貫通して設けられたトレンチと、トレンチの内壁に形成され、導電部を囲む絶縁膜とを有してよい。第1の蓄積領域よりも下側における絶縁膜の少なくとも一部は、第1の蓄積領域よりも上側における絶縁膜よりも誘電率が高くてよい。第1の蓄積領域よりも下側における絶縁膜が、容量付加部として機能してよい。
【0012】
半導体装置は、半導体基板の内部において複数のトレンチ部よりも下方に設けられた、ドリフト領域よりもドーピング濃度の高い第1導電型の高濃度領域を備えてよい。高濃度領域のドーピング濃度は、第1の蓄積領域のドーピング濃度よりも低くてよい。半導体装置は、最も下側の蓄積領域と、ドリフト領域との間に設けられた、第2導電型の底部領域を備えてよい。
【0013】
複数のトレンチ部の少なくとも一つのトレンチ部は、半導体基板の上面と平行な方向における幅が上側にいくほど小さくなる第1テーパー部を有してよい。第1テーパー部は、第1の蓄積領域およびベース領域の境界の深さ位置よりも上側に配置されてよい。
【0014】
少なくとも一つのトレンチ部は、下側にいくほど前記幅が大きくなる第2テーパー部を有してよい。第2テーパー部は、第1の蓄積領域およびベース領域の境界の深さ位置よりも下側に配置されてよい。
【0015】
少なくとも一つのトレンチ部は、下側にいくほど前記幅が小さくなる第3テーパー部を有してよい。第3テーパー部は、第1の蓄積領域およびベース領域の境界の深さ位置よりも下側に配置されてよい。
【0016】
少なくとも一つのトレンチ部は、第1テーパー部と第3テーパー部との間に、幅が最大となる最大幅部を有してよい。いずれかの蓄積領域が、最大幅部と同一の深さ位置に配置されていてよい。
【0017】
複数のトレンチ部は、半導体基板の上面からエミッタ領域、ベース領域および第1の蓄積領域を貫通して設けられたトレンチを有してよい。複数のトレンチ部は、トレンチの内壁に形成され、導電部を囲む絶縁膜を有してよい。複数のトレンチ部の少なくとも一つのトレンチ部は、トレンチ部の底部を含む下側部を有してよい。当該トレンチ部は、下側部よりも上側に設けられ、絶縁膜が下側部の絶縁膜よりも薄い薄膜部を有してよい。最も上側の蓄積領域が、薄膜部と対向して配置されていてよい。
【0018】
本発明の第2の態様においては、第1導電型のドリフト領域を有する半導体基板を備える半導体装置を提供する。半導体装置は、ドリフト領域の上方に設けられ、前記ドリフト領域よりもドーピング濃度の高い第1導電型の第1半導体領域を備えてよい。半導体装置は、第1半導体領域とドリフト領域の間に設けられた第2導電型の第2半導体領域を備えてよい。半導体装置は、半導体基板のおもて面側で第1方向に沿って配列され、第1方向と垂直な第2方向に沿って延伸する延伸部分を有する複数のトレンチ部を備えてよい。半導体装置は、2つのトレンチ部に挟まれたメサ部を備えてよい。半導体装置は、互いに分離して設けられた第1上面電極および第2上面電極を備えてよい。半導体装置は、第1上面電極および第2上面電極の下方に設けられた層間絶縁膜を備えてよい。複数のトレンチ部は、トレンチの内壁に設けられた第1絶縁膜と、当該トレンチの内部で第1絶縁膜よりも内側に設けられ、第1上面電極と接続された第1導電部と、を有する第1トレンチ部と、トレンチの内壁に設けられた第2絶縁膜と、当該トレンチの内部で第2絶縁膜よりも内側に設けられ、第2上面電極と接続された第2導電部と、を有する第2トレンチ部と、を含んでよい。第1導電部および第2導電部の少なくとも一方は、第2半導体領域の下面の深さ位置よりも上側に、第1方向における幅が上側にいくほど小さくなっている部分を有してよい。
半導体装置は、半導体基板の内部においてドリフト領域の上方に設けられ、ドリフト領域よりもドーピング濃度の高い第1導電型のエミッタ領域を有してよい。半導体装置は、半導体基板の内部においてエミッタ領域とドリフト領域の間に設けられた第2導電型のベース領域を有してよい。半導体装置は、半導体基板の内部においてベース領域とドリフト領域の間に設けられ、ドリフト領域よりもドーピング濃度の高い第1導電型の蓄積領域を有してよい。半導体装置は、半導体基板の上面からエミッタ領域、ベース領域および蓄積領域を貫通して設けられ、内部に導電部が設けられた複数のトレンチ部を有してよい。複数のトレンチ部の少なくとも一つのトレンチ部は、蓄積領域およびベース領域の境界の深さ位置よりも上側に設けられた第1テーパー部を有してよい。第1テーパー部は、半導体基板の上面と平行な面における幅が上側にいくほど小さくなってよい。当該トレンチ部は、蓄積領域およびベース領域の境界の深さ位置よりも下側に設けられた第3テーパー部を有してよい。第3テーパー部は、下側にいくほど幅が小さくなってよい。当該トレンチ部は、第1テーパー部と第3テーパー部との間に設けられ、幅が最大となる最大幅部を有してよい。蓄積領域が、最大幅部と同一の深さ位置に配置されていてよい。
【0019】
半導体基板の深さ方向において、第1の蓄積領域の上端から、最も下側に配置された蓄積領域の下端までの距離をL1とし、最も下側に配置された蓄積領域の下端から、トレンチ部の下端までの距離をL2とした場合に、距離L2が距離L1の2倍以上、3倍以下であってよい。容量付加部は、第1導電型の蓄積領域を一つだけ有してよい。第1導電型の蓄積領域のドーピング濃度が、第1の蓄積領域のドーピング濃度よりも高くてよい。
【0020】
本発明の第3の態様においては、半導体装置を提供する。半導体装置は、第1導電型のドリフト領域を有する半導体基板を備えてよい。半導体装置は、ドリフト領域の上方に設けられ、前記ドリフト領域よりもドーピング濃度の高い第1導電型の第1半導体領域を備えてよい。半導体装置は、第1半導体領域とドリフト領域の間に設けられた第2導電型の第2半導体領域を備えてよい。半導体装置は、半導体基板のおもて面側で第1方向に沿って配列され、第1方向と垂直な第2方向に沿って延伸する延伸部分を有する複数のトレンチ部を備えてよい。半導体装置は、第1方向において、隣接する一方のトレンチ部の底部から、他方のトレンチ部の底部まで設けられる第2導電型の底部領域を備えてよい。複数のトレンチ部の少なくとも一つのトレンチ部は、第2半導体領域の下面の深さ位置よりも上側に、第1方向における幅が上側にいくほど小さくなる第1テーパー部を有してよい。
半導体装置の製造方法を提供する。製造方法は、第1導電型のドリフト領域を有する半導体基板の内部においてドリフト領域の上方に設けられ、ドリフト領域よりもドーピング濃度の高い第1導電型のエミッタ領域を形成するエミッタ領域形成段階を備えてよい。製造方法は、半導体基板の内部においてエミッタ領域とドリフト領域の間に設けられた第2導電型のベース領域を形成するベース領域形成段階を備えてよい。製造方法は、半導体基板の内部においてベース領域とドリフト領域の間に設けられ、ドリフト領域よりもドーピング濃度の高い第1導電型の第1の蓄積領域を形成する第1の蓄積領域形成段階を備えてよい。製造方法は、半導体基板の上面からエミッタ領域、ベース領域および第1の蓄積領域を貫通して設けられ、内部に導電部が設けられた複数のトレンチ部を形成するトレンチ形成段階を備えてよい。製造方法は、第1の蓄積領域よりも下方に設けられ、ゲート-コレクタ間容量を付加する容量付加部を形成する容量付加部形成段階を備えてよい。
【0021】
容量付加部形成段階において、半導体基板の上面側からプロトンを注入して、ドリフト領域よりもドーピング濃度の高い第1導電型の蓄積領域を、前記第1の蓄積領域の下側に形成してよい。
【0022】
上記の発明の概要は、本発明の特徴の全てを列挙したものではない。これらの特徴群のサブコンビネーションも発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施形態に係る半導体装置100の上面を部分的に示す図である。
【
図2】
図1におけるa-a'断面の一例を示す図である。
【
図3】
図2のc-c'断面におけるドーピング濃度分布の一例を示す図である。
【
図4】ターンオン時におけるコレクタ電流Icの波形例を示す図である。
【
図5】
図2のc-c'断面におけるドーピング濃度分布の他の例を示す図である。
【
図6】
図2のc-c'断面におけるドーピング濃度分布の他の例を示す図である。
【
図7】
図1におけるa-a'断面の他の例を示す図である。
【
図8】第1の蓄積領域16、第2の蓄積領域26および第3の蓄積領域28の配置例を示す図である。
【
図9】半導体装置100の製造方法の一例を示すフローチャートである。
【
図10】
図1におけるa-a'断面の他の例を示す図である。
【
図11】半導体装置100の
図1におけるa-a'断面の他の例を示す図である。
【
図12】
図11に示した半導体装置100の、c-c'断面におけるドーピング濃度分布の一例を示す図である。
【
図13】第1の蓄積領域16のみを有する比較例における、メサ部61近傍の電子電流および変位電流が流れる経路の一例を示す図である。
【
図14】第1の蓄積領域16、第2の蓄積領域26および第3の蓄積領域28を備える半導体装置100におけるターンオン時の電子電流および変位電流を示す図である。
【
図15】ターンオン時におけるゲート電圧Vgおよびコレクタ・エミッタ間電圧Vceの時間波形の一例を示す図である。
【
図16】
図1におけるa-a'断面の他の例を示す図である。
【
図17】
図16のd-d'断面における、ドーピング濃度分布の一例を示す図である。
【
図18】室温、低電流条件における、ターンオフ損失Eoffと、距離L2との関係を示す図である。
【
図19】室温、低電流条件における、ターンオン損失Eonと、距離L2との関係を示す図である。
【
図20】室温、低電流条件における、ターンオン損失および逆回復損失の和Eon+Errと、距離L2との関係を示す図である。
【
図21】高温、大電流条件における、ターンオフ損失Eoffと、距離L2との関係を示す図である。
【
図22】高温、大電流条件における、ターンオン損失Eonと、距離L2との関係を示す図である。
【
図23】高温、大電流条件における、ターンオン損失および逆回復損失の和Eon+Errと、距離L2との関係を示す図である。
【
図24】室温、低電流条件における、スイッチング損失と、トランジスタ部70のオン電圧およびダイオード部80の順方向電圧の和とのトレードオフ関係を示す図である。
【
図25】高温、大電流条件における、スイッチング損失と、トランジスタ部70のオン電圧およびダイオード部80の順方向電圧の和とのトレードオフ関係を示す図である。
【
図26】
図16のd-d'断面における、ドーピング濃度分布の他の例を示す図である。
【
図27】
図1におけるa-a'断面の他の例を示す図である。
【
図28】本発明の他の実施形態に係る半導体装置300の上面を部分的に示す図である。
【
図32】本発明の他の実施形態に係る半導体装置400の断面の一例を示す図である。
【
図33】半導体装置400の他の例を示す図である。
【
図34】本発明の他の実施形態に係る半導体装置500の上面を部分的に示す図である。
【
図36】ゲートトレンチ部40の断面形状を説明する図である。
【
図37】ゲートトレンチ部40の断面形状の他の例を示す図である。
【
図40】ゲートトレンチ部40の断面形状の他の例を示す図である。
【
図41】ゲートトレンチ部40の断面形状を説明する図である。
【
図42】ゲートトレンチ部40の最大幅部98の深さ位置と、第1の蓄積領域16との関係例を示す図である。
【
図44】
図43の例において、ゲートトレンチ部40の最大幅部98の深さ位置と、第1の蓄積領域16との関係例を示す図である。
【
図45】第1テーパー部45および第3テーパー部47を有するゲートトレンチ部40の形成工程の一例を示す図である。
【
図46】ゲートトレンチ部40の断面形状の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0025】
図1は、本発明の実施形態に係る半導体装置100の上面を部分的に示す図である。本例の半導体装置100は、IGBT等のトランジスタを含むトランジスタ部70、および、FWD(Free Wheel Diode)等のダイオードを含むダイオード部80を有する半導体チップである。ダイオード部80は、半導体基板の上面においてトランジスタ部70と隣接して形成される。
図1においてはチップ端部周辺のチップ上面を示しており、他の領域を省略している。
【0026】
また、
図1においては半導体装置100における半導体基板の活性領域を示すが、半導体装置100は、活性領域を囲んでエッジ終端構造部を有してよい。活性領域は、半導体装置100をオン状態に制御した場合に電流が流れる領域を指す。エッジ終端構造部は、半導体基板の上面側の電界集中を緩和する。エッジ終端構造部は、例えばガードリング、フィールドプレート、リサーフおよびこれらを組み合わせた構造を有する。
【0027】
本例の半導体装置100は、半導体基板の上面側の内部に形成されたゲートトレンチ部40、ダミートレンチ部30、ウェル領域11、エミッタ領域12、ベース領域14およびコンタクト領域15を備える。また、本例の半導体装置100は、半導体基板の上面の上方に設けられたエミッタ電極52およびゲート電極50を備える。エミッタ電極52およびゲート電極50は互いに分離して設けられる。ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30は、トレンチ部の一例である。
【0028】
エミッタ電極52およびゲート電極50と、半導体基板の上面との間には層間絶縁膜が形成されるが、
図1では省略している。本例の層間絶縁膜には、コンタクトホール56、コンタクトホール58、コンタクトホール49およびコンタクトホール54が、当該層間絶縁膜を貫通して形成される。
【0029】
エミッタ電極52は、コンタクトホール54を通って、半導体基板の上面におけるエミッタ領域12、コンタクト領域15およびベース領域14と接触する。また、エミッタ電極52は、コンタクトホール56およびコンタクトホール58を通って、ダミートレンチ部30内のダミー導電部と接続される。エミッタ電極52とダミー導電部との間には、不純物がドープされたポリシリコン等の、導電性を有する材料で形成された接続部21および接続部25が設けられてよい。接続部21および接続部25は、半導体基板の上面に形成される。接続部21および接続部25と半導体基板との間には、熱酸化膜等の絶縁膜が形成される。
【0030】
ゲート電極50は、コンタクトホール49を通って、ゲート配線48と接触する。ゲート配線48は、不純物がドープされたポリシリコン等で形成される。ゲート配線48と半導体基板との間には、熱酸化膜等の絶縁膜が形成される。ゲート配線48は、半導体基板の上面において、ゲートトレンチ部40内のゲート導電部と接続される。ゲート配線48は、ダミートレンチ部30内のダミー導電部とは接続されない。本例のゲート配線48は、コンタクトホール49の下方から、ゲートトレンチ部40の先端部41まで形成される。先端部41は、ゲートトレンチ部40において、最もゲート電極50に近い端部である。ゲートトレンチ部40の先端部においてゲート導電部は半導体基板の上面に露出しており、ゲート配線48と接触する。
【0031】
エミッタ電極52およびゲート電極50は、金属を含む材料で形成される。例えば、各電極の少なくとも一部の領域はアルミニウムまたはアルミニウム‐シリコン合金で形成される。各電極は、アルミニウム等で形成された領域の下層に、チタンやチタン化合物等で形成されたバリアメタルを有してよい。さらにコンタクトホール内において、バリアメタルとアルミニウム等に接するようにタングステン等を埋め込んで形成されたプラグを有してもよい。
【0032】
1以上のゲートトレンチ部40および1以上のダミートレンチ部30は、トランジスタ部70の領域において所定の配列方向(短手方向)に沿って所定の間隔で配列される。トランジスタ部70においては、配列方向に沿って1以上のゲートトレンチ部40と、1以上のダミートレンチ部30とが交互に形成されてよい。
【0033】
本例のゲートトレンチ部40は、配列方向と垂直な延伸方向(長手方向)に沿って延伸する2つの延伸部分39(延伸方向に沿って直線状であるトレンチの部分)と、2つの延伸部分を接続する先端部41を有してよい。先端部41の少なくとも一部は曲線状に形成されることが好ましい。ゲートトレンチ部40の2つの延伸部分39において、延伸方向に沿った直線形状の端である端部どうしを先端部41が接続することで、延伸部分39の端部における電界集中を緩和できる。ゲート配線48は、ゲートトレンチ部40の先端部41において、ゲート導電部と接続してよい。
【0034】
本例のダミートレンチ部30は、ゲートトレンチ部40のそれぞれの延伸部分39の間に設けられる。これらのダミートレンチ部30は、延伸方向に延伸する直線形状を有してよい。
【0035】
トランジスタ部70において、ダイオード部80と隣接する境界には、表面にエミッタ領域が形成されない中間領域90を備える。また、トランジスタ部70において、中間領域90に隣接する部分には、複数のダミートレンチ部30が連続して配列されてよい。中間領域90に隣接する部分に形成されるダミートレンチ部30も、延伸部分29と先端部31とを有してよい。先端部31および延伸部分29は、先端部41および延伸部分39と同様の形状を有する。先端部31を有するダミートレンチ部30と、直線形状のダミートレンチ部30の延伸方向における長さは同一であってよい。
【0036】
ダイオード部80との境界において連続して配列されるダミートレンチ部30の数は、ダイオード部80と離れたトランジスタ部70の内側において連続して配列されるダミートレンチ部30の数よりも多くてよい。なお、トレンチ部の数とは、配列方向に配列されたトレンチ部の延伸部分の数を指す。
【0037】
図1の例では、ダイオード部80との境界におけるトランジスタ部70(すなわち、中間領域90およびその隣接部分)では、先端部31および延伸部分29を有するダミートレンチ部30が設けられている。
図1の例では、先端部31を介して接続された2本の延伸部分29が、延伸部分29の延伸方向とは垂直な配列方向に連続して配列されている。これに対して、トランジスタ部70の内側では、ゲートトレンチ部40の延伸部分39および直線形状のダミートレンチ部30が1本ずつ交互に配列されている。
【0038】
エミッタ電極52は、ゲートトレンチ部40、ダミートレンチ部30、ウェル領域11、エミッタ領域12、ベース領域14およびコンタクト領域15の上方に形成される。ウェル領域11は、ゲート電極50が設けられる側の活性領域のコンタクトホール54の長手方向の端から離れて、所定の範囲で形成される。ウェル領域11の拡散深さは、ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30の深さよりも深くてよい。ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30の、ゲート電極50側の一部の領域はウェル領域11に形成される。直線形状のダミートレンチ部30の延伸方向の端、および、ダミートレンチ部30の先端部31の底は、ウェル領域11に覆われていてよい。
【0039】
各トレンチ部に挟まれたメサ部61には、ベース領域14が形成される。メサ部61とは、トレンチ部に挟まれた半導体基板の領域において、トレンチ部の最も深い底部よりも上面側の領域である。ベース領域14は、ウェル領域11よりもドーピング濃度の低い第2導電型である。ウェル領域11は第2導電型である。本例のベース領域14はP-型であり、ウェル領域11はP+型である。
【0040】
メサ部61のベース領域14の上面には、ベース領域14よりもドーピング濃度の高い第2導電型のコンタクト領域15が形成される。本例のコンタクト領域15はP+型である。ウェル領域11は、活性領域におけるコンタクト領域15のうち、トレンチ部の延伸方向で最も端に配置されたコンタクト領域15から、ゲート電極50の方向に離れて形成されてよい。また、トランジスタ部70においては、コンタクト領域15の上面の一部に、半導体基板よりもドーピング濃度が高い第1導電型のエミッタ領域12が選択的に形成される。本例のエミッタ領域12はN+型である。
【0041】
コンタクト領域15およびエミッタ領域12のそれぞれは、隣接する一方のトレンチ部から、他方のトレンチ部まで形成される。トランジスタ部70の1以上のコンタクト領域15および1以上のエミッタ領域12は、トレンチ部の延伸方向に沿って交互にメサ部61の上面に露出するように形成される。
【0042】
他の例においては、トランジスタ部70におけるメサ部61には、コンタクト領域15およびエミッタ領域12が延伸方向に沿ってストライプ状に形成されていてもよい。例えばトレンチ部に隣接する領域にエミッタ領域12が形成され、エミッタ領域12に挟まれた領域にコンタクト領域15が形成される。
【0043】
ダイオード部80のメサ部61には、エミッタ領域12が形成されていなくてよい。また、中間領域90のメサ部61(本明細書では中間メサ部60と称する)には、ダミートレンチ部30を挟んで、トランジスタ部70における少なくとも一つのコンタクト領域15と対向する領域に、コンタクト領域15が形成される。さらに中間メサ部60の最表面のうち、ダミートレンチ部30を挟んで隣接するトランジスタ部70のエミッタ領域12と互いに向き合う最表面にも、コンタクト領域15を形成してよい。この場合、トレンチ延伸方向における中間メサ部60の両端で露出するベース領域14に挟まれて、コンタクト領域15が連続して形成されてよい。
【0044】
トランジスタ部70において、コンタクトホール54は、コンタクト領域15およびエミッタ領域12の各領域の上方に形成される。コンタクトホール54は、ベース領域14およびウェル領域11に対応する領域には形成されない。
【0045】
ダイオード部80において、コンタクトホール54は、コンタクト領域15およびベース領域14の上方に形成される。本例のコンタクトホール54は、ダイオード部80のメサ部61における複数のベース領域14のうち、最もゲート電極50に近いベース領域14に対しては形成されない。本例においてトランジスタ部70のコンタクトホール54と、ダイオード部80のコンタクトホール54とは、各トレンチ部の延伸方向において同一の長さを有する。
【0046】
ダイオード部80において、半導体基板の下面と隣接する領域には、N+型のカソード領域82が形成される。
図1においては、カソード領域82が形成される領域を点線で示している。半導体基板の下面と隣接する領域においてカソード領域82が形成されていない領域には、P+型のコレクタ領域が形成されてよい。
【0047】
図2は、
図1におけるa-a'断面の一例を示す図である。本例の半導体装置100は、当該断面において、半導体基板10、層間絶縁膜38、エミッタ電極52およびコレクタ電極24を有する。エミッタ電極52は、半導体基板10および層間絶縁膜38の上面に形成される。
【0048】
コレクタ電極24は、半導体基板10の下面に形成される。エミッタ電極52およびコレクタ電極24は、金属等の導電材料で形成される。本明細書において、エミッタ電極52とコレクタ電極24とを結ぶ方向を深さ方向と称する。
【0049】
半導体基板10は、シリコン基板であってよく、炭化シリコン基板であってよく、窒化ガリウム等の窒化物半導体基板等であってもよい。本例の半導体基板10はシリコン基板である。当該断面の半導体基板10の上面側には、P-型のベース領域14が形成される。
【0050】
当該断面において、トランジスタ部70の上面側には、N+型のエミッタ領域12、P-型のベース領域14およびN+型の第1の蓄積領域16が、半導体基板10の上面側から順番に形成される。
【0051】
当該断面において、ダイオード部80の上面側には、P-型のベース領域14が形成されている。ダイオード部80には、第1の蓄積領域16が形成されていない。また、トランジスタ部70と隣接する中間メサ部60の上面には、コンタクト領域15が形成されている。
【0052】
トランジスタ部70において、第1の蓄積領域16の下面にはN-型のドリフト領域18が形成される。ドリフト領域18とベース領域14との間に、ドリフト領域18よりも高濃度の第1の蓄積領域16を設けることで、キャリア注入促進効果(IE効果)を高めて、オン電圧を低減することができる。
【0053】
第1の蓄積領域16は、トランジスタ部70の各メサ部61に形成される。第1の蓄積領域16は、各メサ部61におけるベース領域14の下面全体を覆うように設けられてよい。ダイオード部80において、ベース領域14の下面には、ドリフト領域18が形成される。トランジスタ部70およびダイオード部80の双方において、ドリフト領域18の下面にはN+型のバッファ領域20が形成される。
【0054】
バッファ領域20は、ドリフト領域18の下面側に形成される。バッファ領域20のドーピング濃度は、ドリフト領域18のドーピング濃度よりも高い。バッファ領域20は、ベース領域14の下面側から広がる空乏層が、P+型のコレクタ領域22およびN+型のカソード領域82に到達することを防ぐフィールドストップ層として機能してよい。
【0055】
トランジスタ部70において、バッファ領域20の下面には、P+型のコレクタ領域22が形成される。ダイオード部80において、バッファ領域20の下面には、N+型のカソード領域82が形成される。なお、活性領域において、カソード領域82に一致する下面の領域をダイオード部80とする。または、半導体基板10の上面に対して、半導体基板10の下面と垂直な方向にカソード領域82を投影したときの投影領域をダイオード部80としてもよい。また、活性領域において、半導体基板の上面に対して、半導体基板10の下面と垂直な方向にコレクタ領域22を投影したときの投影領域であって、且つ、エミッタ領域12およびコンタクト領域15を含む所定の単位構成が規則的に配置された領域をトランジスタ部70とする。
【0056】
半導体基板10の上面側には、1以上のゲートトレンチ部40、および、1以上のダミートレンチ部30が形成される。各トレンチ部は、半導体基板10の上面から、ベース領域14を貫通して、ドリフト領域18に到達する。エミッタ領域12、コンタクト領域15および第1の蓄積領域16の少なくともいずれかが設けられている領域においては、各トレンチ部はこれらの領域も貫通して、ドリフト領域18に到達する。トレンチ部がドーピング領域を貫通するとは、ドーピング領域を形成してからトレンチ部を形成する順序で製造したものに限定されない。トレンチ部を形成した後に、トレンチ部の間にドーピング領域を形成したものも、トレンチ部がドーピング領域を貫通しているものに含まれる。
【0057】
第1の蓄積領域16のトレンチ部の延伸方向における端は、例えば
図1に示した平面視においてトレンチ部の延伸方向における両端に配置されたコンタクト領域15の内部(半導体基板10の深さ方向ではコンタクト領域15の下部)に位置してよい。さらに、第1の蓄積領域16のトレンチ部の延伸方向における端は、エミッタ領域12よりはゲート電極50側であって、コンタクトホール54の延伸方向における端よりはエミッタ領域12側に位置してよい。
【0058】
ゲートトレンチ部40は、半導体基板10の上面側に形成されたゲートトレンチ、ゲート絶縁膜42およびゲート導電部44を有する。ゲート絶縁膜42は、ゲートトレンチの内壁を覆って形成される。ゲート絶縁膜42は、ゲートトレンチの内壁の半導体を酸化または窒化して形成してよい。ゲート導電部44は、ゲートトレンチの内部においてゲート絶縁膜42よりも内側に形成される。つまりゲート絶縁膜42は、ゲート導電部44と半導体基板10とを絶縁する。ゲート導電部44は、ポリシリコン等の導電材料で形成される。
【0059】
ゲート導電部44は、深さ方向において、ゲート絶縁膜42を挟んで、少なくとも隣接するベース領域14と対向する領域を含む。当該断面におけるゲートトレンチ部40は、半導体基板10の上面において層間絶縁膜38により覆われる。ゲート導電部44に所定の電圧が印加されると、ベース領域14のうちゲートトレンチに接する界面の表層に電子の反転層によるチャネルが形成される。
【0060】
ダミートレンチ部30は、当該断面において、ゲートトレンチ部40と同一の構造を有してよい。ダミートレンチ部30は、半導体基板10の上面側に形成されたダミートレンチ、ダミー絶縁膜32およびダミー導電部34を有する。ダミー絶縁膜32は、ダミートレンチの内壁を覆って形成される。ダミー導電部34は、ダミートレンチの内部に形成され、且つ、ダミー絶縁膜32よりも内側に形成される。ダミー絶縁膜32は、ダミー導電部34と半導体基板10とを絶縁する。ダミー導電部34は、ゲート導電部44と同一の材料で形成されてよい。例えばダミー導電部34は、ポリシリコン等の導電材料で形成される。ダミー導電部34は、深さ方向においてゲート導電部44と同一の長さを有してよい。当該断面におけるダミートレンチ部30は、半導体基板10の上面において層間絶縁膜38により覆われる。なお、ダミートレンチ部30およびゲートトレンチ部40の底部は、下側に凸の曲面状(断面においては曲線状)であってよい。
【0061】
半導体装置100は、メサ部61において第1の蓄積領域16よりも下方に設けられ、ゲート-コレクタ間容量を付加する容量付加部を更に備える。つまり、容量付加部は、容量付加部を設けない場合に比べて、ゲート導電部44と、コレクタ電極24との間のターンオン時の過渡的なゲート-コレクタ間容量を増加させる。
図2の例の半導体装置100は、容量付加部として第2の蓄積領域26を有する。
【0062】
第2の蓄積領域26は、2つのトレンチ部の間において、第1の蓄積領域16よりも下方に設けられる。第2の蓄積領域26に隣接する2つのトレンチ部のうち、少なくとも一方はゲートトレンチ部40であってよい。また、第2の蓄積領域26は、2つのダミートレンチ部30の間にも設けられてよい。第2の蓄積領域26は、ドリフト領域18よりもドーピング濃度の高いN+型である。
【0063】
また、2つのトレンチ部の間には、3つ以上の蓄積領域が設けられてもよい。
図2の例では、第1の蓄積領域16と第2の蓄積領域26の間に、第3の蓄積領域28が設けられている。第3の蓄積領域28は、ドリフト領域18よりもドーピング濃度の高いN+型である。
【0064】
図3は、
図2のc-c'断面におけるドーピング濃度分布の一例を示す図である。
図3においては、トランジスタ部70におけるエミッタ領域12からドリフト領域18の上端までのドーピング濃度分布を示す。
図3のように、ドーピングの濃度を示す図の縦軸は対数軸である。縦軸における一つの目盛が10倍を示している。本明細書においてドーピング濃度とは、ドナーまたはアクセプタ化した不純物(ドーパント)の濃度を指す。
図3に示す不純物濃度は、ドナーおよびアクセプタの濃度差(ネットドーピング濃度)に対応する。
【0065】
深さ方向におけるドーピング濃度分布は、第1の蓄積領域16、第3の蓄積領域28および第2の蓄積領域26のそれぞれにおいてピークを有する。第1の蓄積領域16、第3の蓄積領域28および第2の蓄積領域26は、半導体基板10の上面または下面から不純物を注入して形成してよい。
【0066】
一例として、第1の蓄積領域16のドーピング濃度のピーク値Dc、第3の蓄積領域28のドーピング濃度のピーク値D2、第2の蓄積領域26におけるドーピング濃度分布のピーク値D1は、同一である。ただし、これらのピーク値は±10%程度の誤差を有していてもよい。
【0067】
一例として、第1の蓄積領域16のドーピング濃度のピーク位置P3、第3の蓄積領域28のドーピング濃度のピーク位置P2、第2の蓄積領域26におけるドーピング濃度分布のピーク位置P1は、深さ方向において等間隔に配置される。ただし、これらのピーク位置は±10%程度の誤差を有していてもよい。ピーク位置P3と、ピーク位置P1との距離は、第1の蓄積領域16の深さ方向における幅よりも大きくてよい。また、ピーク位置P3と、ピーク位置P2との距離も、第1の蓄積領域16の深さ方向における幅よりも大きくてよい。ここで、第1の蓄積領域16の深さ方向における幅、とは、例えばピーク濃度に対する半値全幅(FWHM)でもよく、
図3の両矢印88で示すようにピーク位置の前後でドーピング濃度が極小となる位置の間の幅であってもよい。
【0068】
また、複数の蓄積領域のうち、最も下側に形成された蓄積領域(本例では第2の蓄積領域26)は、隣接するトレンチ部の下端近傍でかつメサ部61に設けられることが好ましい。ただし、複数の蓄積領域のうち、最も下側に形成された蓄積領域(本例では第2の蓄積領域26)のピーク位置P1が、隣接するゲートトレンチ部40の下端の位置Ptよりも上側に配置されることが好ましい。さらには、トレンチ側壁が略直線状から曲面に変化する境界Pt2よりも上側に配置されてよい。トレンチ部に挟まれる領域に第2の蓄積領域26を設けることで、ターンオン時の過渡的なゲート-コレクタ間容量を増大させることができる。
【0069】
また、複数の蓄積領域のうち、最も下側に形成された蓄積領域(本例では第2の蓄積領域26)の下端の位置Pbが、隣接するゲートトレンチ部40の下端位置Ptよりも上側に配置されていてもよい。さらには、トレンチ側壁が略直線状から曲面に変化する境界Pt2よりも上側に配置されてよい。第2の蓄積領域26の下端とは、第2の蓄積領域26のピークP1よりも下側において、ドリフト領域18のドーピング濃度Ddの10倍のドーピング濃度となる位置であってよい。
【0070】
第1の蓄積領域16と、第1の蓄積領域16の次に配置された蓄積領域(本例では第3の蓄積領域28)との間の領域におけるドーピング濃度は、ドリフト領域Ddのドーピング濃度よりも高くてよい。つまり、第1の蓄積領域16と第3の蓄積領域28との境界におけるドーピング濃度分布の極小値D3は、ドリフト領域のドーピング濃度Ddより大きくてよい。第1の蓄積領域16以外の蓄積領域どうしの境界におけるドーピング濃度分布の極小値も、ドリフト領域のドーピング濃度Ddより大きくてよい。
【0071】
ただし、第1の蓄積領域16と、第1の蓄積領域16の次に配置された蓄積領域(本例では第3の蓄積領域28)との境界におけるドーピング濃度分布の極小値D3が、第1の蓄積領域16におけるドーピング濃度のピーク値Dcに近すぎると、第1の蓄積領域16と第3の蓄積領域28が1つの蓄積領域として機能するようになる。このため、第1の蓄積領域16の下方に設けた蓄積領域が容量付加領域として機能できなくなる。すなわち、第1の蓄積領域16と、隣り合う容量付加領域としての蓄積領域(本例では第2の蓄積領域26)との間のドーピング濃度は、第1の蓄積領域16のピーク濃度よりも所定の割合で低くてよい。一例として、第1の蓄積領域16と第3の蓄積領域28との境界におけるドーピング濃度分布の極小値D3は、第1の蓄積領域16のドーピング濃度のピーク値Dcの1/10以下であってよい。極小値D3は、ピーク値Dcの1/100以下であってもよい。
【0072】
また、複数の蓄積領域のうち、最も下側に形成された蓄積領域(本例では第2の蓄積領域26)のピーク位置P1が、隣接するゲートトレンチ部40の中央よりも下側に配置されていてよい。また、第1の蓄積領域16の次に配置された蓄積領域(本例では第3の蓄積領域28)のピーク位置P2も、隣接するゲートトレンチ部40の中央よりも下側に配置されていてよい。
【0073】
また、複数の蓄積領域のうち、最も下側に形成された蓄積領域(本例では第2の蓄積領域26)のピーク位置P1が、隣接するゲートトレンチ部40の下側1/4の範囲に配置されていてよく、下側1/8の範囲に配置されていてもよい。第2の蓄積領域26を、ゲートトレンチ部40の底部近傍に設けることで、ターンオン時における過渡的なゲート-コレクタ間容量を増大させることができる。
【0074】
なお、第2の蓄積領域26と第3の蓄積領域28との間で、ドーピング濃度分布が谷の形状となる部分の極小の濃度が、第1の蓄積領域16と第2の蓄積領域26との間でドーピング濃度分布が谷の形状となる部分の極小の濃度よりも低くてよい。これにより、ターンオン時における過渡的なゲート-コレクタ間容量を効率的に増大させることができる。
【0075】
蓄積領域をベース領域14の近傍に配置すると、負性容量が増大してしまい、過渡的なゲート-コレクタ間の正の容量を増大させることができない。これに対してそれぞれの蓄積領域の位置を例えば上記のように調整することで、過渡的なゲート-コレクタ間の正の容量を増大させることができる。
【0076】
図4は、ターンオン時におけるコレクタ電流Icの波形例を示す図である。波形93は、第1の蓄積領域16、第2の蓄積領域26および第3の蓄積領域28のいずれも設けない場合のコレクタ電流Icを示している。
【0077】
波形94は、第1の蓄積領域16を設け、第2の蓄積領域26および第3の蓄積領域28を設けない場合のコレクタ電流Icを示している。第1の蓄積領域16は、ベース領域14の近傍に設けられるので、ゲート-コレクタ間における負性容量を増加させる。このため、ターンオン時のコレクタ電流Icのdi/dtが増加する。第1の蓄積領域16を設けることで、オン電圧とターンオフ損失のトレードオフを改善することができるが、ターンオン時のdi/dtが増大するので、ゲート抵抗を大きくして、di/dt増加を抑えると、ターンオン損失が増大してしまう。
【0078】
波形91は、第1の蓄積領域16および第2の蓄積領域26を設けた場合のコレクタ電流Icを示している。第2の蓄積領域26は、ベース領域14から離れた位置に設けられるので、ゲート-コレクタ間における容量を増加させる。このため、ターンオン時のコレクタ電流Icのdi/dtが減少する。従って、オン電圧とターンオフ損失のトレードオフを改善しつつ、ターンオン損失を低減することができる。
【0079】
波形92は、第1の蓄積領域16、第2の蓄積領域26および第3の蓄積領域28を設けた場合のコレクタ電流Icを示している。第3の蓄積領域28を設けることで、ゲート-コレクタ間の容量が更に増大する。このため、オン電圧とターンオフ損失のトレードオフを改善しつつ、ターンオン損失を更に低減することができる。
【0080】
図5は、
図2のc-c'断面におけるドーピング濃度分布の他の例を示す図である。本例では、第1の蓄積領域16以外の蓄積領域において、より下側の蓄積領域のほうが、より上側の蓄積領域よりもドーピング濃度が高い。より具体的には、第2の蓄積領域26のドーピング濃度のピーク値D1のほうが、第3の蓄積領域28のドーピング濃度のピーク値D2よりも高い。第2の蓄積領域26のドーピング濃度のピーク値D1は、第1の蓄積領域16のドーピング濃度のピーク値Dcよりも高くてよい。例えば、第2の蓄積領域26のドーピング濃度のピーク値D1は第1の蓄積領域16のドーピング濃度のピーク値Dcの3倍から7倍程度とすると良い。このような構成により、第1の蓄積領域16よる負性容量を増加の影響を緩和して、ターンオン時のコレクタ電流Icのdi/dtが減少させることができる。従って、第2の蓄積領域26のドーピング濃度の高濃度化により、IE効果による蓄積効果がさらに高まることで、オン電圧とターンオフ損失のトレードオフを改善しつつ、ターンオンdi/dtを減少させることでさらにターンオン損失を低減することができる。
【0081】
また、最も下側の第2の蓄積領域26のドーピング濃度のピーク値D1が、第1の蓄積領域16および第3の蓄積領域28のドーピング濃度のピーク値D2、Dcよりも小さくてよい。ベース領域14からの距離が最も大きい蓄積領域のドーピング濃度を小さくすることで、ゲート-コレクタ間の容量付加量を効率よく減少させることができる。
【0082】
図6は、
図2のc-c'断面におけるドーピング濃度分布の他の例を示す図である。本例では、半導体基板10の深さ方向において、第1の蓄積領域16と、第1の蓄積領域16の次に配置された蓄積領域(本例では第3の蓄積領域28)との間隔P2-P3は、最も下側の蓄積領域(本例では第2の蓄積領域26)と、下側から2番目の蓄積領域(本例では第3の蓄積領域28)との間隔P1-P2よりも大きい。
【0083】
間隔P2-P3は、間隔P1-P2の1.5倍以上であってよく、2倍以上であってもよい。また、蓄積領域どうしの間隔は一定であってよい。ベース領域14の近傍に蓄積領域を形成するとゲート-コレクタ間の負性容量が増大してしまう場合があるが、上述した構成により、ゲート-コレクタ間の負性容量を増大させずに、容量付加量を効率よく増大させることができる。
【0084】
図7は、
図1におけるa-a'断面の他の例を示す図である。本例では、中間領域90と、トランジスタ部70においてダミートレンチ部30を挟んで中間領域90に隣接するメサ部61における蓄積領域の数が、トランジスタ部70の内部のメサ部61における蓄積領域の数よりも少ない。トランジスタ部70のメサ部61における蓄積領域の数は、中間領域90に近づくほど減少してよい。
【0085】
図7の例では、ダミートレンチ部30を挟んで中間領域90に隣接するメサ部61には、第3の蓄積領域28が形成されているが、第2の蓄積領域26が形成されていない。当該メサ部61に対して、中間領域90とは逆側に隣接するメサ部61には、第2の蓄積領域26および第3の蓄積領域28が形成されている。このような構成により、蓄積領域の数を徐々に変化させることができ、境界部分における電界集中を緩和できる。
【0086】
また、中間領域90のメサ部61(中間メサ部60)にも、第1の蓄積領域16が形成されていてもよい。中間メサ部60には、他の蓄積領域が形成されていない。また、中間メサ部60の半導体基板10の上面近傍には、コンタクト領域15が形成されていてよい。また、中間メサ部60に対して、ダイオード部80のメサ部61には、第1の蓄積領域16、第2の蓄積領域26および第3の蓄積領域28のいずれも形成されていない。このような構成により、ベース領域14の下側に形成したN+型の領域の数を徐々に変化させることができる。
【0087】
図8は、第1の蓄積領域16、第3の蓄積領域28および第2の蓄積領域26の配置例を示す図である。
図8において横軸は半導体基板10の深さ方向を示しており、縦軸はドーピング濃度を示している。また、ベース領域14の下端よりも下側に突出するゲートトレンチ部40の長さをαとし、各蓄積領域のピーク位置の間隔をβとする。
【0088】
また、各蓄積領域のドーピング濃度分布において、ピーク濃度の1/10倍の濃度になる位置の間隔をγとする。例えば、第1の蓄積領域16のドーピング濃度分布において、ピーク位置よりも下側でピーク濃度の1/10倍の濃度になる位置と、第3の蓄積領域28のドーピング濃度分布において、ピーク位置よりも上側でピーク濃度の1/10倍の濃度になる位置との間隔をγ1とする。同様に、第3の蓄積領域28のドーピング濃度分布において、ピーク位置よりも下側でピーク濃度の1/10倍の濃度になる位置と、第2の蓄積領域26のドーピング濃度分布において、ピーク位置よりも上側でピーク濃度の1/10倍の濃度になる位置との間隔をγ2とする。
【0089】
それぞれのピーク位置の間隔βk(下面側に向かってk=1、2、・・・)は、0.3α以上、0.9α以下程度である。上述したように、β1はβ2よりも大きくてよい。また、それぞれの間隔γkは、0.2βk以上、0.8βk以下程度である。
図8におけるドーピング濃度分布はガウス分布であるが、他の例では、ドーピング濃度分布は矩形等の形状を有してもよい。一例として、各領域をイオン注入で形成した場合、ドーピング濃度分布はガウス分布で近似され、各領域をエピタキシャル成長で形成した場合、ドーピング濃度分布は矩形で近似される。ドーピング濃度分布が矩形の場合、ピーク位置はドーピング濃度が極大値を示す区間の中央である。
【0090】
βkは、半導体基板10の深さ方向で下面側に向かって深くなるほど、小さくてよい。または、βkは、深さ方向で下面側に向かって深くなるほど、大きくてもよい。またγkは、深さ方向で下面側に向かって深くなるほど、大きくてもよい。または、γkは、深さ方向で下面側に向かって深くなるほど、小さくてもよい。
【0091】
複数の蓄積領域は、ベース領域14とトレンチ底との間の中点の深さに対して、トレンチ底側の蓄積領域の個数が、ベース領域14側の蓄積領域の個数よりも大きくてよい。あるいは、複数の蓄積領域は、ベース領域14とトレンチ底との間の中点の深さに対して、トレンチ底側の蓄積領域の個数が、ベース領域14側の蓄積領域の個数よりも小さくてよい。
【0092】
図9は、半導体装置100の製造方法の一例を示すフローチャートである。まず工程S1200において、半導体装置100の上面側の構造を形成する。工程S1200には、エミッタ領域12およびベース領域14を形成するドーピング領域形成段階が含まれる。ベース領域14は、リン等のドーピングを注入して形成してよい。また、工程S1200には、ドーピング領域形成段階の後に各トレンチ部を形成するトレンチ形成段階が含まれる。また、工程S1200には、各トレンチ部を覆う層間絶縁膜38を形成する層間絶縁膜形成段階が含まれる。
【0093】
次に工程S1202において、半導体基板10および層間絶縁膜38の上面全体にバリアメタルを形成する。次に工程S1204において、半導体基板10の上面側からプロトンを注入して第1の蓄積領域16および他の蓄積領域(例えば、第2の蓄積領域26および第3の蓄積領域28)を形成する。S1204においては、プロトンを注入する飛程を異ならせて、プロトンを複数回注入する。注入したプロトンの一部がドナー化して、各蓄積領域を形成する。この場合、第1の蓄積領域16および他の蓄積領域には、不純物として水素が含まれる。また、工程S1204においては、半導体基板10の下面側からプロトンを注入してもよい。プロトンを注入した後、350℃から450℃程度の温度で熱処理を行ってプロトンを活性化してもよい。
【0094】
プロトンは、リンイオン等に比べて容易に深い位置まで注入することができ、注入位置のばらつきも小さい。プロトンで蓄積領域を形成することで、深い位置にある蓄積領域を容易に形成することができる。また、蓄積領域のドーピング濃度分布のピークを急峻に形成できるので、狭い幅の蓄積領域を容易に形成でき、ゲート-コレクタ間容量を容易に増大させることができる。また、バリアメタルを形成した後に半導体基板10の上面側からプロトンを注入することで、プロトンまたは水素が半導体基板10の上面側から抜け出てしまうことを抑制できる。
【0095】
次に工程S1206において、エミッタ電極52を形成する。エミッタ電極52の形成温度は、350℃から450℃程度である。プロトン注入後の熱処理を省略して、エミッタ電極52の形成時にプロトンを活性化させてもよい。なお、工程S1204および工程S1206の順番は入れ替えてもよい。エミッタ電極52を形成した後にプロトンを注入することで、プロトンが半導体基板10の上面から抜け出ることを更に抑制できる。また、エミッタ電極52を形成した後に、半導体基板10に電子線を照射して、キャリアライフタイムを調整してもよい。
【0096】
次に工程S1208において、半導体基板10の下面側を研削して、半導体基板10の厚みを調整する。半導体基板10の厚みは、半導体装置100が有するべき耐圧あるいは定格電圧に応じて設定される。ここで耐圧とは、例えばアバランシェ電流が所定の値で流れるときの印加電圧であってよい。
【0097】
次に工程S1210において、半導体装置100の下面側の構造を形成する。下面側の構造とは、例えばコレクタ領域22およびカソード領域82である。次に、工程S1212において、半導体基板10の下面側からプロトンを注入して、バッファ領域20を形成する。次に工程S1214において熱処理を行い、バッファ領域20に注入したプロトンを活性化させる。
【0098】
バッファ領域20には、深さ位置を異ならせて複数回プロトンを注入してよい。これにより、バッファ領域20の深さ方向におけるドーピング濃度分布には、複数のピークが形成される。バッファ領域20のドーピング濃度分布において、半導体基板10の下面から見て最も深い位置のピーク値は、次に深い位置のピーク値よりも大きい。このような方法により、半導体装置100を製造することができる。
【0099】
他の製造方法の例では、第1の蓄積領域16の不純物をリンとしてもよい。この場合、工程S1200において、第1の蓄積領域16に不純物を注入してよい。第1の蓄積領域16は、比較的に浅い位置に形成するので、リンで形成することができる。これに対して他の蓄積領域(例えば第2の蓄積領域26および第3の蓄積領域28)は、比較的に深い位置に形成される。第1の蓄積領域16以外の蓄積領域の不純物を水素とすることで、上述したように、第1の蓄積領域16以外の蓄積領域を容易に形成することができ、また、第1の蓄積領域16以外の蓄積領域の幅を狭くすることができる。
【0100】
また、他の製造方法の例では,第1の蓄積領域16以外の蓄積領域のうち、少なくとも一つの蓄積領域の不純物をリンとしてもよい。例えば、第1の蓄積領域16以外の蓄積領域のうち、最も浅い位置の蓄積領域(第3の蓄積領域28)の不純物をリンとしてもよい。この場合、工程S1200において、当該蓄積領域に不純物を注入してよい。工程S1200においては、ベース領域14にリンを注入した後、1150℃程度の熱処理を3時間程度行ってよい。
【0101】
次に、第1の蓄積領域16および他の1以上の蓄積領域にリンを注入する。このとき、より深い位置に注入するリンイオンの価数を、より高くしてよい。これにより、加速電圧をそれほど向上させなくとも、深い位置にリンイオンを注入することができる。第1の蓄積領域16および他の蓄積領域にリンを注入した後、ベース領域14よりも低温、短時間の熱処理を行う。例えば、1000℃程度の熱処理を30分程度行う。他の工程は、
図9に示した工程と同様である。
【0102】
図10は、
図1におけるa-a'断面の他の例を示す図である。本例の半導体装置100は、各トレンチ部の絶縁膜に、容量付加部33を有する。
図10の各トレンチ部において、第1の蓄積領域16よりも下側における絶縁膜の少なくとも一部は、第1の蓄積領域16よりも上側における絶縁膜よりも薄く形成されている。本例では、第1の蓄積領域16よりも下側において、厚みの小さい絶縁膜が、容量付加部33として機能する。
【0103】
第1の蓄積領域16よりも下側における絶縁膜を薄く形成することで、第1の蓄積領域16よりも下側において、ターンオン時の過渡的なゲート-コレクタ間容量を増大させることができる。容量付加部33の上端(すなわち、厚みの小さい絶縁膜の部分の上端)は、第1の蓄積領域16の下端とは、深さ方向において離れて形成されている。深さ方向における、容量付加部33の上端と第1の蓄積領域16の下端との距離は、第1の蓄積領域16の深さ方向における長さの0.5倍以上であってよく、1倍以上であってもよい。
【0104】
他の例では、各トレンチ部において、第1の蓄積領域16よりも下側における絶縁膜の少なくとも一部は、第1の蓄積領域16よりも上側における絶縁膜よりも誘電率が高く形成されている。誘電率の高い絶縁膜の部分が、容量付加部33として機能する。容量付加部33として機能する絶縁膜は、他の絶縁膜の部分とは異なる材料で形成されていてよい。また、容量付加部33として機能する絶縁膜は、他の絶縁膜の部分とは異なる温度条件で形成されていてもよい。このような構成によっても、ターンオン時の過渡的なゲート-コレクタ間容量を増大させることができる。
【0105】
なお、
図1から
図9に示したいずれかの半導体装置100に、容量付加部33を適用してもよい。つまり、各トレンチ部における絶縁膜に容量付加部33を形成しつつ、複数の蓄積領域を更に形成してもよい。最も深い位置にある第2の蓄積領域26のドーピング濃度のピーク位置は、容量付加部33と対向する深さ範囲に設けられてよい。
【0106】
図11は、半導体装置100の
図1におけるa-a'断面の他の例を示す図である。本例の半導体装置100は、
図1から
図10において説明したいずれかの態様の半導体装置100の構成に加えて、ドリフト領域18よりもドーピング濃度の高いN+型の高濃度領域19を更に備える。
【0107】
高濃度領域19は、半導体基板10の内部において、複数のトレンチ部よりも下方であって、バッファ領域20よりも上方に設けられる。高濃度領域19は、半導体基板10の深さ方向における中点よりも上側に配置されてよい。高濃度領域19は、複数のトレンチ部とは離れて設けられてよい。高濃度領域19と、それぞれのトレンチ部との間には、ドリフト領域18が設けられてよい。
【0108】
高濃度領域19は、トランジスタ部70の少なくとも一部の領域に設けられる。
図11の例では、高濃度領域19がトランジスタ部70の活性領域全体(エミッタ領域12が規則的に形成された領域全体)に設けられている。例えば、半導体基板10の上面と平行な面内において、高濃度領域19は、コレクタ領域22全体と重なるように設けられてよい。当該面内において、高濃度領域19の端部は、コレクタ領域22の端部と重なる位置に配置されてよい。また、高濃度領域19の端部は、コレクタ領域22の端部よりもトランジスタ部70側に配置されてよく、ダイオード部80側に配置されてもよい。
【0109】
また、高濃度領域19は、ダイオード部80の少なくとも一部の領域には設けられていない。ただし、中間領域90のメサ部61(中間メサ部60)の少なくとも一部の領域は、高濃度領域19により覆われていないことが好ましい。中間メサ部60には、コンタクト領域15が設けられている。これにより、中間メサ部60からの正孔の引き抜きを維持できる。
図11の例では、高濃度領域19は、ダイオード部80および中間領域90の全体において設けられていない。
【0110】
半導体装置100においては、活性領域以外の領域で電流集中が発生して、ターンオフ時の破壊耐量(ターンオフ耐量)が低下する場合がある。特に、半導体装置100を微細化していくと、活性領域における耐圧が高くなり、活性領域以外の領域でアバランシェ降伏が生じやすくなる。活性領域以外の領域でアバランシェブ降伏が生じると、半導体装置100のターンオフ耐量が低下してしまう。これに対して、トランジスタ部70に高濃度領域19を設けることで、トランジスタ部70における耐圧が下がる。このため、活性領域以外の領域よりも先に、比較的に面積の大きいトランジスタ部70全体でアバランシェ降伏させることができ、半導体装置100の耐量を改善することができる。
【0111】
図12は、
図11に示した半導体装置100の、c-c'断面におけるドーピング濃度分布の一例を示す図である。上述したように、ゲートトレンチ部40の下端位置Ptよりも深い位置P19に、高濃度領域19が設けられる。高濃度領域19のドーピング濃度D19(例えばピーク濃度)は、第1の蓄積領域16のドーピング濃度Dcよりも低い。高濃度領域19のドーピング濃度D19は、いずれの蓄積領域のドーピング濃度よりも低くてよい。高濃度領域19のドーピング濃度D19は、複数の蓄積領域のドーピング濃度のうち、最も小さいドーピング濃度の半分以下であってよい。また、高濃度領域19のドーピング濃度D19は、複数の蓄積領域のドーピング濃度のうち、最も大きいドーピング濃度の1/10以下であってもよい。なお、高濃度領域19は、半導体基板10の上面側からプロトン等を注入することで形成してよい。
【0112】
なお、
図2等に示した複数の蓄積領域を備える半導体装置100においては、蓄積領域の数が1以下の半導体装置に比べて、電子電流がメサ部61を流れる経路が異なる。これによっても、半導体装置100は、ターンオン時の損失を低減できる。
【0113】
図13は、第1の蓄積領域16のみを有する比較例における、メサ部61近傍の電子電流および変位電流が流れる経路の一例を示す図である。
図13においては、ターンオン時の電流経路を示している。ターンオン時には、ゲート導電部44の電圧が、0[V]から徐々に立上る。これにより、ベース領域14のゲートトレンチ部40近傍には負電荷が誘起することでチャネルが形成される。
【0114】
ターンオン時の初期における電流の主体は、正孔電流ではなく電子電流である。初期とは、ゲート電圧Vgeが、閾値電圧に達する直前から、ほぼ閾値電圧の値でVgeが一定となるミラー期間に入る前までの期間である。Vgeが閾値電圧に近くなると、チャネルが開きかけ、電子のドリフト領域への注入が始まる。
【0115】
図13の比較例において、チャネルから下方に向かう電子は、第1の蓄積領域16において一旦配列方向(X軸方向、または、ゲートトレンチ部40の近傍からメサ部61中央に向かう方向)に流れる可能性がある。ただし、第1の蓄積領域16よりも下方のドリフト領域18においては、ゲートトレンチ部40近傍は、電子の蓄積層が既に形成されているため(N型領域の電子の蓄積層が形成される閾値電圧は、P型領域の反転層の閾値電圧よりはるかに小さい)、ドリフト領域18よりも低インピーダンスである。そのため、電子電流はゲートトレンチ部40近傍を主として流れる。
【0116】
電子が裏面のコレクタ領域22に達すると、コレクタ領域22からバッファ領域20およびドリフト領域18にかけて、正孔の注入が開始する。これにより、トレンチ部の下端近傍に正孔が蓄積される。一例として、ゲートトレンチ部40の下端近傍から、第1の蓄積領域16よりも下方のダミートレンチ部30の側部にかけて、正孔が1E+16[cm-3]のオーダーで存在する。
【0117】
正孔は、ゲートトレンチ部40の下端と、ダミートレンチ部30の下端に集まる。特にダミー導電部34はエミッタ電極52と同電位であるため、ダミートレンチ部30の側壁には正孔の反転層が形成されやすい。コレクタ領域22から注入された正孔は、この正孔の反転層の近傍に集まる。正孔は、ダミートレンチ部30からゲートトレンチ部40の下端にかけて連続的に分布する。この正孔分布に起因して、ターンオン時に、ゲートトレンチ部40の下端近傍へ、大きな変位電流が流れる。
【0118】
正孔の蓄積に起因する変位電流は、ゲート絶縁膜42を挟んで対向するゲート導電部44の充電を生じさせる。このゲート導電部44の充電が、ゲート電極Vgeの瞬間的な増加を引き起こす。当該変位電流が大きいほど、ゲート導電部44が充電されるため、ゲート導電部44の電位がよりすばやく上昇する。その結果、ゲート導電部44の電位がゲート閾値を瞬間的に超える。
【0119】
これにより、電子と正孔の大量の注入が始まり、コレクタ・エミッタ間電流が増加する。コレクタ・エミッタ間電流の増加による電流変化率に応じて、コレクタ・エミッタ間電圧の電圧減少率(dV/dt)が増加する。変位電流が大きいほど、dV/dtが大きくなる。特に、蓄積された正孔がエミッタ電極52に流れない程、変位電流は大きく、ゲート導電部44の電位の瞬間的な増加は大きくなる。それゆえ、
図13の比較例においては、dV/dtが比較的大きくなり、電磁ノイズもまた比較的大きくなる。
【0120】
図14は、第1の蓄積領域16、第2の蓄積領域26および第3の蓄積領域28を備える半導体装置100におけるターンオン時の電子電流および変位電流を示す図である。本例においても、チャネルを通過した電子は、第1の蓄積領域16において配列方向(X軸方向)に行きかける。ただし本例においては、第1の蓄積領域16の下方に第3の蓄積領域28および第2の蓄積領域26が設けられている。
【0121】
本例において、電子電流にとってのインピーダンスは、第1の蓄積領域16の中央近傍からゲートトレンチ部40近傍に戻って第3の蓄積領域28に流れる経路よりも、第1の蓄積領域16から第3の蓄積領域28に直接流れる経路の方が低い。同様に、第3の蓄積領域28の中央近傍からゲートトレンチ部40近傍に戻って第2の蓄積領域26に流れる経路よりも、第3の蓄積領域28から第2の蓄積領域26に直接流れる経路の方が低い。
【0122】
それぞれの蓄積領域の下方のうち、ゲートトレンチ部40に隣接するホール高濃度領域には正孔が蓄積されやすい。また、電子電流がゲートトレンチ部40の近傍ではなく、メサ部61中央近傍を流れることで、当該ホール高濃度領域への正孔の蓄積が促進される。このため、電子電流がメサ部61中央近傍に流れることが促進される。
図14においては、正孔が蓄積されたホール高濃度領域を模式的に示しているが、ホール高濃度領域は、ゲートトレンチ部40と半導体基板10との境界近傍だけに存在していてもよい。
【0123】
上述したように、本例の電子電流は、ゲートトレンチ部40近傍に戻ることなく、ゲートトレンチ部40とダミートレンチ部30に挟まれたメサ部61の中央付近を下方に進む。つまり、本例の電子電流は、ゲートトレンチ部40近傍ではなくメサ部61の中央付近を流れる。この電子電流がメサ部61の中央付近を流れる効果は、複数の蓄積領域を深さ方向に配列することで生じる。
【0124】
電子電流がメサ部61の中央付近を流れると、メサ部61の底部近傍における正孔分布は、メサ部61中央付近で分断される。このため電子電流の経路よりもダミートレンチ部30側の正孔は、ゲートトレンチ部40側には流れない。このメサ部61中央部における正孔分布の分断が、ゲートトレンチ部40の下端における正孔の蓄積を抑制する。その結果、
図13の例と比べて、
図14の例においては、変位電流を小さくできる。変位電流を小さくできるので、ゲート導電部44の充電も小さくなり、ゲート電極Vgeの瞬間的な増加も抑制される。これにより、コレクタ・エミッタ間電圧の電圧減少率(dV/dt)も抑制できる。
【0125】
正孔がゲートトレンチ部40の下端ならびにダミートレンチ部30の下端および側部に主として分布し、メサ部61の中央部にはほとんど分布しないことを、本件の発明者はシミュレーションにより確認した。一例としてゲートトレンチ部40の下端近傍およびダミートレンチ部30の下端近傍において正孔が1E+13[cm
-3]のオーダーで存在し、
図13の比較例における1E+16[cm
-3]よりも十分に低い。なお、1E+13とは、1×10
13のことである。
【0126】
以下の理由に限定されるものではないが、
図14の例における正孔分布は、ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30間の正孔分布が電子電流により分断されたことに起因すると考えられる。また、当該正孔分布に起因して、ターンオン時には、ダミートレンチ部30の下端近傍からゲートトレンチ部40の下端近傍へ、
図13の比較例よりも小さな変位電流が流れる。
【0127】
それゆえ、本例においては、
図13の比較例に比べて変位電流が小さいので、
図13の比較例に比べてdV/dtが小さくなり、電磁ノイズもまた小さくすることができる。また、本例においては、ゲート導電部44の電位がすばやく上昇することを抑えることを目的とした付加的なゲート抵抗Rgをゲート導電部44に接続しなくてもよい。または、小さいゲート抵抗Rgをゲート導電部44に接続すれば、ゲート導電部44の電位の急峻な上昇を抑制できる。従って、
図13の比較例に比べてターンオン時の電力損失を低減することができる。
【0128】
なお、第2の蓄積領域26および第3の蓄積領域28は、ダミートレンチ部30に直接接していなくてもよい。この場合、正孔は、ダミートレンチ部30の下端からダミートレンチ部30の側部における第1の蓄積領域16の直下まで存在することができる。これにより、ターンオフ時における、エミッタ電極52への正孔の引き抜きを促進することができる。
【0129】
図15は、ターンオン時におけるゲート電圧Vgおよびコレクタ・エミッタ間電圧Vceの時間波形の一例を示す図である。
図15においては、
図14に示した半導体装置100の特性を実線で示し、
図13に示した比較例の特性を点線200で示している。
【0130】
図15に示すように、半導体装置100によれば、比較例に比べて、ターンオン時のゲート電圧Vgeおよびコレクタ・エミッタ間電圧Vceの変動が緩やかである。このため、ターンオン損失を低減することができる。一例として半導体装置100は、比較例に比べて、ターンオン損失を30%以上低減できる。
【0131】
図13から
図15において説明したターンオン損失の低減は、半導体装置100が微細化された場合により顕著になる。半導体装置100が微細化され、トレンチピッチが小さくなると、それぞれのメサ部61の底部近傍における正孔密度が上昇する。このため、ゲートトレンチ部40に対して変位電流が流れやすくなる。一方で、半導体装置100のように、複数の蓄積領域を設けて、ターンオン時の電子電流をメサ部61の中央部に流すことで、メサ部61の底部近傍における正孔分布を分断して、ゲートトレンチ部40に流れる変位電流を抑制できる。このため、半導体装置100を微細化しても、ターンオン損失を抑制できる。
【0132】
図16は、
図1におけるa-a'断面の他の例を示す図である。本例では、トランジスタ部70のメサ部61において、容量付加部が蓄積領域を一つだけ有する。つまり、トランジスタ部70のメサ部61には、第1の蓄積領域16に加え、第2の蓄積領域26が一つだけ設けられている。また、ダイオード部80のメサ部61には、いずれの蓄積領域も設けられていない。中間メサ部60においては、第1の蓄積領域16が設けられ、他の蓄積領域は設けられていない。
【0133】
図17は、
図16のd-d'断面における、ドーピング濃度分布の一例を示す図である。d-d'断面は、トランジスタ部70のメサ部61において、半導体基板10の上面と垂直な断面である。上述したように、メサ部61には、第1の蓄積領域16と、第2の蓄積領域26とが設けられている。
【0134】
半導体基板10の深さ方向において、第1の蓄積領域16の上端から、最も下側に配置された蓄積領域(本例では第2の蓄積領域26)の下端までの距離をL1とする。本例では、第1の蓄積領域16の上端とは、第1の蓄積領域16とベース領域14との境界を指す。第2の蓄積領域26の下端は、上述したように、第2の蓄積領域26のピークP1よりも下側において、ドリフト領域18のドーピング濃度Ddの10倍のドーピング濃度となる位置であってよい。
【0135】
また、最も下側に配置された蓄積領域(本例では第2の蓄積領域26)の下端から、トレンチ部(本例ではゲートトレンチ部40)の下端までの距離をL2とする。距離L2は、距離L1の2倍以上、3倍以下であることが好ましい。これにより、半導体装置100におけるスイッチング損失を低減できる。
【0136】
図18から
図23は、
図16に示した半導体装置100におけるスイッチング損失と、距離L2との関係を示す図である。
図18から
図23において、距離L2は、距離L1で正規化している。
図18から
図23の例では、最も下側に配置された蓄積領域の下端の位置を固定(すなわちL1を固定)して、ゲートトレンチ部40の下端の位置を変化させた。一例として、最も下側に配置された蓄積領域の下端の位置は、半導体基板10の上面から2.0μm以上、3.0μm以下程度であり、ゲートトレンチ部40の下端の位置は、半導体基板の上面から4μm以上、8μm以下程度である。
【0137】
図18は、周囲温度が25度、半導体装置100の動作電流が10A/cm
2の条件(室温、低電流条件と称する)における、ターンオフ損失Eoffと、距離L2との関係を示す図である。
図19は、室温、低電流条件における、ターンオン損失Eonと、距離L2との関係を示す図である。
図20は、室温、低電流条件における、ターンオン損失および逆回復損失の和Eon+Errと、距離L2との関係を示す図である。
【0138】
図21は、周囲温度が150度、半導体装置100の動作電流が400A/cm
2程度の条件(高温、大電流条件と称する)における、ターンオフ損失Eoffと、距離L2との関係を示す図である。
図22は、高温、大電流条件における、ターンオン損失Eonと、距離L2との関係を示す図である。
図23は、高温、大電流条件における、ターンオン損失および逆回復損失の和Eon+Errと、距離L2との関係を示す図である。
【0139】
図18から
図23に示すように、距離L2を距離L1の2倍以上、3倍以下にすることで、半導体装置100のスイッチング損失を低減できる。特に、室温、低電流条件におけるターンオン損失および逆回復損失を低減できる。また、距離L2を距離L1の2.5倍程度にすると、半導体装置100のスイッチング損失を極小化できる。距離L2は、距離L1の2.25倍以上、2.75倍以下であってもよい。
【0140】
距離L2が距離L1の2.5倍より小さい領域で、距離L2を増大させていくと、ターンオン時のコレクタ-エミッタ間電圧の時間変化dV/dtが大きくなり、ターンオン損失は減少する。しかし、距離L2を増大させすぎると、ゲート-コレクタ間のミラー容量が増大してしまい。ターンオン損失が増大してしまう。
図18から
図23に示すように、距離L2を適切に設定することで、スイッチング損失を極小化できる。
【0141】
図24は、室温、低電流条件における、スイッチング損失(Eoff+Eon+Err)と、トランジスタ部70のオン電圧およびダイオード部80の順方向電圧の和(Von+Vf)とのトレードオフ関係を示す図である。
図24では、メサ部61における蓄積領域の段数を1段、2段、3段とした場合の各特性を示している。本例の距離L2は、距離L1の2.5倍程度である。
【0142】
図24に示すように、メサ部61における蓄積領域の段数を2段(例えば、第1の蓄積領域16および第2の蓄積領域26の2段)にすることで、スイッチング損失とオン電圧等とのトレードオフを改善できる。なお、蓄積領域の段数が1段の場合も、トレードオフは比較的に良好であるが、ゲートに寄生する負性容量が増大してしまい、ゲート導電部44における電圧の時間変化が急峻になりすぎてしまう。
【0143】
また、蓄積領域の段数を3段にすると、蓄積領域の下側に蓄積されるキャリアの濃度が高くなりすぎてしまう。このため、ターンオフ損失が非常に大きくなってしまい、スイッチング損失が増大する。メサ部61に設ける蓄積領域の段数は2段(すなわち、容量付加部の蓄積領域の段数が1段)であることが好ましい。
【0144】
図25は、高温、大電流条件における、スイッチング損失(Eoff+Eon+Err)と、トランジスタ部70のオン電圧およびダイオード部80の順方向電圧の和(Von+Vf)とのトレードオフ関係を示す図である。
図25に示すように、蓄積領域を2段にすることで、蓄積領域が3段の場合に比べてトレードオフが改善している。
【0145】
図26は、
図16のd-d'断面における、ドーピング濃度分布の他の例を示す図である。
図5に示した例と同様に、第2の蓄積領域26のドーピング濃度D1は、第1の蓄積領域16のドーピング濃度Dcよりも高くてよい。第2の蓄積領域26のドーピング濃度D1は、ベース領域14のドーピング濃度より高くてもよい。また、第2の蓄積領域26のドーピング濃度D1は、第1の蓄積領域16のドーピング濃度Dcより低くてもよい。
【0146】
図27は、
図1におけるa-a'断面の他の例を示す図である。本例の半導体装置100は、中間メサ部60およびダイオード部80のメサ部61も、
図16に示したトランジスタ部70のメサ部61と同様の構造を有する。つまり、メサ部61および中間メサ部60のそれぞれは、第1の蓄積領域16および第2の蓄積領域26を有する。このような構造によっても、半導体装置100のターンオン損失を低減でき、また、スイッチング損失とオン電圧等とのトレードオフを改善できる。
【0147】
図28は、本発明の他の実施形態に係る半導体装置300の上面を部分的に示す図である。半導体装置300は、中間領域90Aとダイオード部80との間に、新たに中間領域90Bを設ける点で半導体装置100と相違する。半導体装置300における中間領域90Aは、半導体装置100における中間領域90に対応する。他の構造は、
図1から
図27において説明したいずれかの態様の半導体装置100と同一である。
【0148】
中間領域90Bでは、コンタクトホール54の延伸方向の両端のみにコンタクト領域15を備える。また、延伸方向の両端のコンタクト領域15の間は、ベース領域14が半導体基板上面に露出する。中間領域90Bの上面において、ベース領域14が露出する面積は、コンタクト領域15の面積に対して、5倍以上であってよく、10倍以上であってよく、20倍以上であってよい。
【0149】
また、中間領域90Bの中間メサ部60の個数は、中間領域90Aの中間メサ部60の個数以上か、あるいは多くてよい。ここで中間メサ部60の個数とは、配列方向においてトレンチ部に挟まれた中間メサ部60の個数のことである。本例では、中間領域90Aの中間メサ部60の個数は1つであり、中間領域90Bの中間メサ部60の個数は2つである。
【0150】
図29は、
図28のa-a'断面図である。中間領域90Bの直下の半導体基板10下面には、中間領域90Aのコレクタ領域22が延伸して形成されてよい。本例において第1の蓄積領域16、第2の蓄積領域26および第3の蓄積領域28は、中間領域90Aおよび中間領域90Bには形成されない。ダイオード部80が順方向に導通する場合において、トランジスタ部70の中間領域90Aから、ダイオード部80のカソード領域82に向かって正孔が流れる。中間領域90Aの表面はコンタクト領域15がほぼ全面に形成されているため、正孔の注入量が多い。中間領域90Bを設けることで、中間領域90Aとカソード領域82との距離が長くなり、中間領域90Aからダイオード部80への正孔の注入量が抑えられる。
【0151】
図30は、
図28のa-a'断面図の他の例である。本例では、トランジスタ部70からダイオード部80に向かうに従って、各メサ部に設けられる蓄積領域の段数が減少する。他の構造は、
図29に示した半導体装置300と同一である。
図30に示す例では、トランジスタ部70のメサ部61は第1の蓄積領域16および第2の蓄積領域26が形成され、中間領域90Aに隣接するトランジスタ部70のメサ部61は第1の蓄積領域16のみ形成される。ダイオード部80、中間領域90Aおよび中間領域90Bのメサ部には蓄積領域が形成されていない。本例においても、中間領域90Bを設けることで、中間領域90Aとカソード領域82との距離が長くなり、中間領域90Aからダイオード部80への正孔の注入量が抑えられる。
【0152】
図31は、
図28のa-a'断面図の他の例である。本例では、トランジスタ部70および中間領域90Aのメサ部に蓄積領域が形成され、ダイオード部80および中間領域90Bのメサ部には、蓄積領域が形成されていない。
図31に示す例では、トランジスタ部70および中間領域90Aの各メサ部に、第1の蓄積領域16と第2の蓄積領域26が形成される。本例においても、中間領域90Bを設けることで、中間領域90Aとカソード領域82との距離が長くなり、中間領域90Aからダイオード部80への正孔の注入量が抑えられる。
【0153】
図32は、本発明の他の実施形態に係る半導体装置400の断面の一例を示す図である。半導体装置400は、
図1から
図31において説明した半導体装置の構成に加え、底部領域17を更に備える。底部領域17以外の構成は、
図1から
図31において説明したいずれかの態様の半導体装置と同様である。
図32においては、
図2のa-a'断面の構成に、底部領域17を追加した構成を示している。
【0154】
底部領域17は、第2導電型の不純物がドーピングされた領域である。本例の底部領域17は、P-型である。底部領域17のドーピング濃度のピーク値は、ベース領域14のドーピング濃度のピーク値より小さくてよく、大きくてよく、同一であってもよい。
【0155】
底部領域17は、トランジスタ部70の各メサにおいて、最も下側に形成された蓄積領域(
図32の例では第2の蓄積領域26)と、ドリフト領域18との間に設けられる。底部領域17は、各メサの両側のトレンチ部に隣接して設けられてよい。底部領域17は、中間領域90およびダイオード部80には設けられていなくてよい。
【0156】
底部領域17は、ベース領域14およびエミッタ電極52に対して電気的にフローティングであってよい。他の例では、底部領域17は、P型の領域を介してベース領域14またはエミッタ電極52と接続されていてもよい。
【0157】
底部領域17は、半導体基板10の深さ方向において、ゲート導電部44と対向する範囲に設けられてよい。また、底部領域17は、隣接するトレンチ部の底部よりも上側に配置されてよい。他の例では、底部領域17は、隣接するトレンチ部の底部の少なくとも一部を覆ってもよい。
【0158】
底部領域17を設けることで、それぞれのメサ部61における電界集中を緩和して、耐圧を向上できる。特に、複数の蓄積領域を設けたメサ部61においては、メサ部61に電界が集中しやすくなる。底部領域17は、複数の蓄積領域が設けられたメサ部61に設けられてよい。蓄積領域が1つだけ、または、蓄積領域が設けられていないメサ部には、底部領域17を設けなくともよい。半導体基板10の深さ方向において、複数の蓄積領域16、26、28の間は、複数の蓄積領域16、26、28のピーク濃度よりもドーピング濃度が低いN型でもよい。
【0159】
あるいは、半導体基板10の深さ方向において、複数の蓄積領域16、26、28の間は、P型であってもよい。この場合、複数の蓄積領域16、26、28の間のP型領域のドーピング濃度は、ベース領域14の最大ドーピング濃度以下で底部領域17の最大ドーピング濃度以上であってよく、または底部領域17の最大ドーピング濃度以下であってもよい。特に、複数の蓄積領域16、26、28の間のP型領域のドーピング濃度が底部領域17の最大ドーピング濃度以下であれば、電子電流がメサ部61の中央付近を流れやすくなる。
【0160】
一例として、半導体装置400におけるバッファ領域20は、深さ方向におけるドーピング濃度分布において、複数のピーク13を有する。ただし、バッファ領域20におけるドーピング濃度分布は、単一のピークを有してよく、全体に渡ってほぼ均一な濃度を有していてもよい。
図32に示す半導体装置400は、バッファ領域20において4つのピークを有している。最も上側に配置されたピーク13-1は、次に上側に配置されたピーク13-2よりも高濃度であってよい。
【0161】
図33は、半導体装置400の他の例を示す図である。
図33においては、
図7のa-a'断面の構成に、底部領域17を追加した構成を示している。他の構成は、
図7に示した半導体装置100と同一である。
【0162】
本例の半導体装置400は、2つ以上の蓄積領域が形成されたメサ部61に、底部領域17を設けている。他のメサ部には、底部領域17が設けられていない。
【0163】
また、蓄積領域の段数が異なるメサ部61においても、底部領域17の下端の深さ位置は同一であってよい。つまり、蓄積領域の段数が少ないメサ部61の底部領域17の深さ方向における厚みは、蓄積領域の段数が多いメサ部61の底部領域17の厚みより大きくてよい。他の例では、それぞれの底部領域17の厚みは、蓄積領域の段数によらず一定であってもよい。このような構造によっても、それぞれのメサ部61における電界集中を緩和して、耐圧を向上できる。
【0164】
図34は、本発明の他の実施形態に係る半導体装置500の上面を部分的に示す図である。半導体装置500は、
図1から
図33に説明したいずれかの半導体装置に対して、トレンチ部の断面形状が異なる。他の構造は、
図1から
図33に説明したいずれかの半導体装置と同一であってよい。
【0165】
図34に示す半導体装置500は、更に、ゲート配線48およびコンタクトホール49を備えない点で、
図1から
図33に説明した半導体装置と相違する。
図34に示す半導体装置500は、ゲート電極50がゲートトレンチ部40の先端部41と重なる位置に配置されている。ゲート電極50は、層間絶縁膜38に形成されたコンタクトホール59を通過して、ゲートトレンチ部40のゲート導電部44と直接接続する。ただし半導体装置500は、
図1から
図33における半導体装置と同様に、ゲート配線48およびコンタクトホール49を備えていてもよい。
【0166】
図35は、
図34のa-a'断面図である。上述したように、半導体装置500は、トレンチ部の断面形状が、
図1から
図33の半導体装置と異なる。
図35の例では、メサ部61には第1の蓄積領域16および第2の蓄積領域26が設けられ、中間メサ部60およびダイオード部80には、蓄積領域が設けられていない。ただし、各メサ部における蓄積領域の段数は、
図1から
図33において説明したいずれかの半導体装置における蓄積領域の段数と同一であってもよい。
【0167】
本例のゲートトレンチ部40は、半導体基板10の上面と平行な方向における幅(すなわち、ゲートトレンチ部40の延伸方向と垂直な方向における幅)が、上側にいくほど小さくなるテーパー部を有する。ダミートレンチ部30は、ゲートトレンチ部40と同一の形状を有してよく、
図1から
図33において説明したゲートトレンチ部40と同一の形状を有してもよい。
【0168】
図36は、ゲートトレンチ部40の断面形状を説明する図である。本例では、半導体基板10の深さ方向におけるベース領域14と第1の蓄積領域16との境界を境界位置とする。境界位置は、ゲートトレンチ部40と接する領域における、ベース領域14と第1の蓄積領域16との境界位置であってよい。
【0169】
ゲートトレンチ部40は、半導体基板10の上面と平行な方向における幅が、上側にいくほど(すなわち半導体基板10の上面に近づくほど)小さくなる第1テーパー部45を、境界位置よりも上側に有する。第1テーパー部45は、境界位置と半導体基板10の上面との間の領域全体に渡って形成されてよく、一部だけに形成されていてもよい。第1テーパー部45は、ベース領域14よりも広い範囲に渡って形成されてよく、境界位置と半導体基板10の上面との間の領域の半分以上の領域に渡って形成されていてもよい。
【0170】
半導体基板10の上面におけるゲートトレンチ部40の幅W1は、境界位置におけるゲートトレンチ部40の幅W10より小さくてよい。また、ゲートトレンチ部40の幅W1は、ゲートトレンチ部40の底部における幅W2より小さくてもよい。半導体基板10の上面におけるゲートトレンチ部40の幅W1を小さくすることで、ゲートトレンチ部40と、コンタクトホール54との間の距離を大きくできる。このため、半導体装置500を微細化しても、ゲートトレンチ部40とコンタクトホール54との距離を確保して、ゲートトレンチ部40とエミッタ電極52との距離を確保できる。このため、半導体装置500を微細化することが容易になる。
【0171】
本例のゲートトレンチ部40は、下側にいくほど幅が大きくなる第2テーパー部46を、境界位置よりも下側に有する。第2テーパー部46は、境界位置とトレンチ底部との間の領域全体に渡って形成されてよく、一部だけに形成されていてもよい。第2テーパー部46は、最も上側の蓄積領域(本例では第1の蓄積領域16)の上端から、最も下側の蓄積領域(本例では第2の蓄積領域26)の下端までの領域よりも広い範囲に形成されてよく、境界位置とトレンチ底部との間の領域の半分以上の領域に渡って形成されていてもよい。
【0172】
このような構造により、半導体基板10の上面におけるゲートトレンチ部40の幅W1を容易に小さくできる。なお、ゲートトレンチ部40が第2テーパー部46を有することで、トレンチ底部におけるゲートトレンチ部40とダミートレンチ部30との間のメサ幅W5が小さくなる。このため、
図13および
図14に示した変位電流が流れやすくなる。これに対して、半導体装置500によれば、複数の蓄積領域をメサ部61に設けているので、
図14に示したように電子電流がメサ部61の中央近傍を流れやすくなる。このため、トレンチ底部近傍における正孔分布をメサ部61の中央で分断でき、変位電流を抑制できる。
【0173】
半導体基板10の上面におけるゲートトレンチ部40の幅W1は、ゲートトレンチ部40における最大幅W2(本例では、トレンチ底部における幅)の0.8倍以下であってよく、0.7倍以下であってもよい。ゲートトレンチ部40の幅W1は、メサ部61の最大幅W3(本例では、基板上面におけるメサ幅)より小さくてよく、メサ部61の最小幅W5(本例では、トレンチ底部におけるメサ幅)より小さくてよく、コンタクトホール54の幅W4より小さくてもよい。
【0174】
ゲートトレンチ部40における最大幅W2は、メサ部61の最小幅W5より大きくてよい。ゲートトレンチ部40における最大幅W2は、メサ部61の最大幅W3より大きくてもよい。半導体基板10の上面と平行な面に対する、第1テーパー部45の側壁の角度θ1と、第2テーパー部46の側壁の角度θ2とは、同一であってよく、異なっていてもよい。角度θ1はθ2より大きくてもよく、小さくてもよい。本例では角度θ1とθ2とは等しい。なお、角度θ1およびθ2は、それぞれのテーバー部の側壁の接線と基板上面とがなす角度のうち最大の角度であってよい。また、それぞれの角度θ1およびθ2は、それぞれのテーパー部における深さ方向の中央位置における側壁の接線の角度を用いてもよい。
【0175】
図37は、ゲートトレンチ部40の断面形状の他の例を示す図である。本例のゲートトレンチ部40は、トレンチ底部における角が曲線形状を有する。他の構造は、
図36に示したゲートトレンチ部40と同一であってよい。このような構造により、トレンチ底部の角における電界を緩和できる。また、トレンチ底部におけるゲートトレンチ部40とダミートレンチ部30との距離を大きくでき、変位電流を抑制できる。
【0176】
図38は、
図34のb-b'断面図である。上述したように、本例のゲート電極50は、コンタクトホール59を介して、ゲートトレンチ部40の先端部41におけるゲート導電部と直接接続される。これに対して
図1に示したように、ゲート配線48を介してゲート導電部とゲート電極50が接続される場合、ゲート配線48を通って基板上面と平行に流れる電荷が、ゲート導電部において基板深さ方向に流れることになる。この場合、ゲート配線48とゲート導電部との接続点が急峻な角部を有すると、角部に電荷が集中して好ましくない。このため、ゲート配線48とゲート導電部との接続角度を緩和すべく、ゲートトレンチ部40は、半導体基板10の上面近傍において、半導体基板10の上面に近づくほど幅が大きくなる逆テーパー構造を有することが好ましい。しかし、ゲートトレンチ部40の上端において逆テーパー構造を有すると、
図36に示した断面においてゲートトレンチ部40とコンタクトホール54との距離が小さくなってしまう。
【0177】
本例では、ゲート電極50がゲート導電部と直接接続するので、ゲートトレンチ部40の上端が逆テーパー構造を有さなくともよい。このため、
図36等に示したように、ゲートトレンチ部40に第1テーパー部45を設け、基板上面におけるゲートトレンチ部40の幅W1を容易に小さくできる。
【0178】
なお、ゲートトレンチ部40の上端の幅W1を小さくすると、
図38に示すように、ゲート電極50とゲートトレンチ部40とのアライメントが比較的に困難になる。このため、ゲート電極50と接触する部分におけるゲートトレンチ部40の上端の幅W6は、ゲート電極50と接触しない部分におけるゲートトレンチ部40の上端の幅W1より大きいことが好ましい。例えば、ゲート電極50と接触する部分におけるゲートトレンチ部40の幅W6は、ゲートトレンチ部40の延伸部分39における幅W1より大きい。
【0179】
図39は、
図35から
図38に示したゲートトレンチ部40の形成工程の一例を示す図である。まずS550において、半導体基板10の上面501に、浅い溝部502を形成する。溝部502は、半導体基板10の上面501に所定のパターンのマスクを形成して、半導体基板10の上面501をエッチングすることで形成できる。
図39における各溝部は異方性エッチングで形成してよく、等方性エッチングで形成してもよい。溝部502を形成した後、溝部502の側壁に窒化膜等の保護膜503を形成する。
【0180】
S552において、溝部502の底面をエッチングして、溝部504を形成する。溝部504の幅は、溝部502の幅よりも大きい。溝部504を形成した後、溝部504の側壁に保護膜503を形成する。S554において、溝部の形成を繰り返す。形成すべきトレンチ部の深さに応じて、溝部の段数を調整してよい。最後に形成した溝部505の側壁には保護膜503を形成しない。
【0181】
S555において、溝部505を形成した後に、それぞれの保護膜503を除去する。これにより、テーパー形状のトレンチ506を形成できる。保護膜503を除去した後、更に、トレンチ506の内壁全体を等方性エッチングすることで、トレンチ506内壁を滑らかな形状にしてもよい。
【0182】
図40は、ゲートトレンチ部40の断面形状の他の例を示す図である。半導体装置500は、ゲートトレンチ部40の断面形状以外は、
図35から
図38において説明した例と同一の構造を有してよい。
【0183】
図41は、ゲートトレンチ部40の断面形状を説明する図である。本例のゲートトレンチ部40は、第1テーパー部45と第3テーパー部47とを有する。第1テーパー部45は、
図35から
図38において説明した第1テーパー部45と同様である。ただし、
図35に示した第1テーパー部45の側壁は略直線形状であるが、本例の第1テーパー部45の側壁は、外側に凸の曲線形状を有している。なお、
図35の例および本例における第1テーパー部45の側壁は、直線形状および曲線形状のいずれであってもよい。
【0184】
第3テーパー部47は、境界位置よりも下側に設けられ、下側にいくほど幅が小さくなる。第3テーパー部47は、境界位置とトレンチ底部との間の領域全体に渡って形成されてよく、一部だけに形成されていてもよい。第3テーパー部47は、境界位置とトレンチ底部との間の領域の半分以上の領域に渡って形成されていてよい。第3テーパー部47の側壁は、直線形状を有してよく、曲線形状を有してもよい。
図41の例における第3テーパー部47の側壁は、外側に凸の曲線形状を有している。
【0185】
ゲートトレンチ部40が第1テーパー部45および第3テーパー部47を有することで、基板上面におけるゲートトレンチ部40の幅W8を小さくしつつ、トレンチ底部におけるゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30の距離を大きくできる。このため、半導体装置500を容易に微細化でき、且つ、変位電流を抑制できる。
【0186】
ゲートトレンチ部40は、第1テーパー部45および第3テーパー部47との間に、ゲートトレンチ部40の幅が最大となる最大幅部98を有する。最大幅部98は、ベース領域14および第1の蓄積領域16の境界位置よりも下側に配置されてよい。最大幅部98におけるゲートトレンチ部40の幅W7は、基板上面におけるゲートトレンチ部40の幅の1.2倍以上であってよく、1.3倍以上であってもよい。
【0187】
半導体基板10の上面と平行な面に対する、第1テーパー部45の側壁の角度をθ1、第2テーパー部46の側壁の角度をθ2とする。角度θ1を鋭角とすると、角度θ3は鈍角となる。すなわちθ1とθ3は互いにどちらかが鋭角でどちらかが鈍角となる関係であってよい。なお、角度θ1およびθ3は、それぞれのテーバー部の側壁の接線と基板上面とがなす角度のうち最大値であってよい。また、第1テーパー部45の深さ方向の任意の位置において角度θ1は鋭角であってよい。第3テーパー部47の深さ方向の任意の位置において角度θ3は鈍角であってよい。また、それぞれの角度θ1およびθ2は、それぞれのテーパー部における深さ方向の中央位置における側壁の接線の角度を用いてもよい。第1テーパー部45の側壁は、上側に凸の形状を有してよい。第3テーパー部47の側壁は、下側に凸の形状を有してよい。
【0188】
いずれかの蓄積領域は、最大幅部98と同一の深さ位置に配置されてよい。
図41の例では、第1の蓄積領域16が最大幅部98と同一の深さ位置に配置されている。最大幅部98が設けられている領域は、メサ部61の幅が小さくなる。当該位置に蓄積領域を設けることで、狭い領域に正孔を蓄積することになるので、蓄積領域により蓄積される正孔の濃度を大きくできる。
【0189】
図42は、ゲートトレンチ部40の最大幅部98の深さ位置と、第1の蓄積領域16との関係例を示す図である。上述したように、第1の蓄積領域16は、最大幅部98と同一の深さ位置に配置されている。本例では、ベース領域14と第1の蓄積領域16との境界から、第1の蓄積領域16と第2の蓄積領域26との境界までを、第1の蓄積領域16の範囲R1とする。最大幅部98の位置(最大幅位置)は、第1の蓄積領域16の範囲R1内に配置されてよい。
【0190】
また、第1の蓄積領域16の深さ方向におけるドーピング濃度分布の半値幅の範囲R2に、最大幅部98が配置されていてもよい。また、第1の蓄積領域16の深さ方向におけるドーピング濃度分布のピーク位置と、最大幅部98の深さ位置とが重なっていてもよい。
【0191】
図43は、
図34のa-a'断面図の他の例である。本例の半導体装置500は、
図40から
図42において説明した半導体装置500に対して、メサ部61における蓄積領域の段数が異なる。他の構造は、
図40から
図42において説明した半導体装置500と同一である。
【0192】
本例の半導体装置500は、メサ部61において蓄積領域を一つだけ有する(本例では第1の蓄積領域16)。本例のゲートトレンチ部40は、トレンチ底部の幅が小さいので、トレンチ底部におけるダミートレンチ部30との距離が大きい。このため、変位電流を抑制できる。従って、蓄積領域を1段だけにしても、大きな変位電流が流れない。
【0193】
図44は、
図43の例において、ゲートトレンチ部40の最大幅部98の深さ位置と、第1の蓄積領域16との関係例を示す図である。本例においても、第1の蓄積領域16は、最大幅部98と同一の深さ位置に配置されていてよい。本例では、ベース領域14と第1の蓄積領域16との境界から、第1の蓄積領域16とドリフト領域18との境界までを、第1の蓄積領域16の範囲R1とする。最大幅部98の位置(最大幅位置)は、第1の蓄積領域16の範囲R1内に配置されてよい。
【0194】
また、第1の蓄積領域16の深さ方向におけるドーピング濃度分布の半値幅の範囲R2に、最大幅部98が配置されていてもよい。また、第1の蓄積領域16の深さ方向におけるドーピング濃度分布のピーク位置と、最大幅部98の深さ位置とが重なっていてもよい。
【0195】
図45は、第1テーパー部45および第3テーパー部47を有するゲートトレンチ部40の形成工程の一例を示す図である。S550およびS552の工程は、
図39における工程と同様である。ゲートトレンチ部40を形成すべき深さに応じて、S552の工程を繰り返して幅が徐々に増大する複数の溝部504を形成してよい。
【0196】
S556において、各溝部の保護膜503を除去する。S557において、各溝部の側壁および底面全体を等方性エッチングしてトレンチ510を形成する。これにより、溝部が形成されていた領域に第1テーパー部45を形成し、溝部よりも下側に第3テーパー部47を形成できる。
【0197】
図46は、ゲートトレンチ部40の断面形状の他の例を示す図である。本例のゲートトレンチ部40は、ゲートトレンチ部40の底部を含む下側部86と、下側部86よりも上側に設けられ、ゲート絶縁膜42が下側部86のゲート絶縁膜42よりも薄い薄膜部84とを有する。トレンチ底部のゲート絶縁膜42を厚くすることで、電界が集中しやすいトレンチ底部におけるゲート絶縁膜42の耐圧を大きくできる。
【0198】
薄膜部84および下側部86の間には、ゲート絶縁膜42の厚みが連続的に変化する中間部87が設けられてよい。薄膜部84におけるゲート絶縁膜42の厚みは略一定であってよい。下側部86におけるゲート絶縁膜42の厚みは略一定であってよい。中間部87におけるゲート絶縁膜42の膜厚変化の傾きは、薄膜部84および下側部86におけるゲート絶縁膜42の膜厚変化の傾きより大きい。
【0199】
本例のメサ部61には、複数の蓄積領域が設けられる。
図46の例では、第1の蓄積領域16および第2の蓄積領域26が設けられている。蓄積領域のうち、最も上側に配置された第1の蓄積領域16は、薄膜部84と対向して配置されてよい。第1の蓄積領域16が薄膜部84と対向するとは、第1の蓄積領域16の深さ方向におけるドーピング濃度分布のピーク位置が、薄膜部84と対向して配置されていることを指す。第1の蓄積領域16の全体が、薄膜部84と対向して配置されてもよい。
【0200】
蓄積領域のうち、最も下側に配置された第2の蓄積領域26は、容量付加部としても機能する。第2の蓄積領域26は、中間部87および下側部86の少なくとも一方と対向して配置されてよい。第2の蓄積領域26は、深さ方向におけるドーピング濃度分布のピーク位置が下側部86と対向して配置されてよく、全体が下側部86と対向して配置されてもよい。第2の蓄積領域26は、下側部86のゲート絶縁膜42を厚くしたことにより減少するゲート-コレクタ間容量を補える程度に、ゲート-コレクタ間容量を増大させることが好ましい。第2の蓄積領域26のドーピング濃度のピーク値は、第1の蓄積領域16のドーピング濃度のピーク値よりも高くてよい。
【0201】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0202】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0203】
10・・・半導体基板、11・・・ウェル領域、12・・・エミッタ領域、14・・・ベース領域、15・・・コンタクト領域、16・・・第1の蓄積領域、17・・・底部領域、18・・・ドリフト領域、19・・・高濃度領域、20・・・バッファ領域、21・・・接続部、22・・・コレクタ領域、24・・・コレクタ電極、25・・・接続部、26・・・第2の蓄積領域、28・・・第3の蓄積領域、29・・・延伸部分、30・・・ダミートレンチ部、31・・・先端部、32・・・ダミー絶縁膜、33・・・容量付加部、34・・・ダミー導電部、38・・・層間絶縁膜、39・・・延伸部分、40・・・ゲートトレンチ部、41・・・先端部、42・・・ゲート絶縁膜、44・・・ゲート導電部、45・・・第1テーパー部、46・・・第2テーパー部、47・・・第3テーパー部、48・・・ゲート配線、49・・・コンタクトホール、50・・・ゲート電極、52・・・エミッタ電極、54・・・コンタクトホール、56、58、59・・・コンタクトホール、60・・・中間メサ部、61・・・メサ部、70・・・トランジスタ部、80・・・ダイオード部、82・・・カソード領域、84・・・薄膜部、86・・・下側部、87・・・中間部、88・・・両矢印、90・・・中間領域、91、92、93、94・・・波形、98・・・最大幅部、100・・・半導体装置、200・・・点線、300・・・半導体装置、400・・・半導体装置、500・・・半導体装置、501・・・上面、502・・・溝部、503・・・保護膜、504・・・溝部、505・・・溝部、506・・・トレンチ、510・・・トレンチ
【手続補正書】
【提出日】2024-09-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板に所定の単位構成を規則的に配置した領域であるトランジスタ領域と、前記トランジスタ領域を囲むエッジ終端構造部を含む半導体装置であって、
前記半導体基板に設けられた第1導電型のドリフト領域と、
前記半導体基板において前記ドリフト領域の上方に設けられた第2導電型のベース領域と、
前記半導体基板のおもて面側に設けられ、内部に導電部を有する複数のトレンチ部と、
前記エッジ終端構造部の側に設けられた第2導電型のウェル領域と、
前記ウェル領域と前記トランジスタ領域とが離れた離間領域と、
を含み、
前記トランジスタ領域は、
前記トレンチ部に挟まれた前記半導体基板の領域であって第1方向に長手を有するメサ部において、前記第1方向に複数設けられた第1導電型のエミッタ領域と、
前記メサ部において、複数の前記エミッタ領域の下方にかけて設けられ、前記半導体基板のおもて面側から順番に設けられた第1導電型の蓄積領域及び第2導電型の底部領域と、
を備える半導体装置。
【請求項2】
前記底部領域は、前記蓄積領域と前記ドリフト領域との間に設けられ、且つ、前記メサ部に隣接する一方の前記トレンチ部から他方の前記トレンチ部にかけて設けられている
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記底部領域は、隣接する前記トレンチ部の底部の少なくとも一部を覆っている
請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記蓄積領域が設けられていない前記メサ部に、前記底部領域が設けられていない領域を有する
請求項1から3のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1方向における前記蓄積領域の端は、平面視で前記トランジスタ領域の内部に位置している
請求項1から4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記トランジスタ領域は、前記底部領域が設けられていない領域を含む
請求項1から5のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項7】
半導体基板に所定の単位構成を規則的に配置した領域であるトランジスタ領域と、前記トランジスタ領域を囲むエッジ終端構造部を含む半導体装置であって、
前記半導体基板に設けられた第1導電型のドリフト領域と、
前記半導体基板において前記ドリフト領域の上方に設けられた第2導電型のベース領域と、
前記半導体基板において前記ベース領域の上方に設けられた第1導電型のエミッタ領域と、
前記半導体基板のおもて面側に設けられ、内部に導電部を有する複数のトレンチ部と、
前記エッジ終端構造部の側に設けられた第2導電型のウェル領域と、
前記ウェル領域と前記エミッタ領域とが離れた離間領域と、
を含み、
前記トランジスタ領域は、
前記トレンチ部に挟まれた前記半導体基板の領域であって第1方向に長手を有するメサ部において、前記第1方向に複数設けられた前記エミッタ領域と、
前記メサ部において、複数の前記エミッタ領域の下方にかけて設けられ、前記半導体基板のおもて面側から順番に設けられた第1導電型の蓄積領域及び第2導電型の底部領域と、
を備え、
前記離間領域は、前記トランジスタ領域が備える複数の前記エミッタ領域のうち最も前記ウェル領域側に設けられた前記エミッタ領域と、前記ウェル領域とを離間する
半導体装置。
【請求項8】
前記トランジスタ領域は、前記メサ部に設けられ、前記ベース領域よりもドーピング濃度の高い第2導電型のコンタクト領域を備え、
前記トランジスタ領域は、前記エミッタ領域および前記コンタクト領域が規則的に配置された領域である
請求項1から7のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記トレンチ部は、前記導電部としてゲート導電部を有するゲートトレンチ部と、前記導電部としてダミー導電部を有するダミートレンチ部と、を含み、
前記メサ部として、前記ゲートトレンチ部に隣接して配置され前記ゲート導電部に所定のゲート電圧が印加されると内部の前記ベース領域にチャネルが形成される第1メサ部と、前記ダミートレンチ部に隣接して配置され前記ゲート導電部に所定のゲート電圧が印加されても内部の前記ベース領域にチャネルが形成されない第2メサ部と、が設けられている
請求項1から8のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記底部領域は、前記メサ部としての前記第1メサ部と前記第2メサ部とで厚みが異なる
請求項9に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記蓄積領域の少なくとも一部は、前記底部領域と同一の深さ位置に設けられている
請求項1から10のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記蓄積領域は、前記ドリフト領域よりもドーピング濃度が高い
請求項1から11のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記蓄積領域は、深さ方向におけるドーピング濃度分布において、複数のピークを有する
請求項1から12のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項14】
前記底部領域は、前記ベース領域よりもドーピング濃度のピーク値が小さい
請求項1から13のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項15】
前記底部領域は、電気的にフローティングである
請求項1から14のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項16】
前記トランジスタ領域は、前記ウェル領域から離れて設けられ、前記第1方向に長手を有するコンタクトホールを備える
請求項1から15のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項17】
前記コンタクトホールは、前記第1方向において最も前記ウェル領域側の前記エミッタ領域より外側まで設けられている
請求項16に記載の半導体装置。
【請求項18】
前記コンタクトホールは、前記離間領域には形成されていない
請求項16または17に記載の半導体装置。
【請求項19】
前記離間領域は、前記ドリフト領域が前記ベース領域の下面に接触している
請求項1から18のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項20】
当該半導体装置は、前記半導体基板にダイオード部が設けられた半導体チップである
請求項1から19のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項21】
前記複数のトレンチ部の少なくとも一つのトレンチ部は、
前記ベース領域の下面の深さ位置よりも上側に、前記第1方向と垂直な第2方向における幅が上側にいくほど小さくなる第1テーパー部と、
前記ベース領域の下面の深さ位置よりも下側に、前記幅が下側にいくほど大きくなる第2テーパー部と、を有し、
前記蓄積領域は、
前記半導体基板の深さ方向において、前記ベース領域の下面の深さ位置から前記トレンチ部の底部の深さ位置の間に設けられ、
前記トレンチ部の深さの中央よりも深く、
少なくとも前記トレンチ部の下端よりも前記おもて面側の前記メサ部に設けられる
請求項1から20のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項22】
前記複数のトレンチ部の少なくとも一つのトレンチ部は、
前記ベース領域の下面の深さ位置よりも上側に、前記第1方向と垂直な第2方向における幅が上側にいくほど小さくなる第1テーパー部と、
前記ベース領域の下面の深さ位置よりも下側に、前記幅が下側にいくほど小さくなる第3テーパー部と、を有し、
前記蓄積領域は、
前記半導体基板の深さ方向において、前記ベース領域の下面の深さ位置から前記トレンチ部の底部の深さ位置の間に設けられ、
前記トレンチ部の深さの中央よりも深く、
少なくとも前記トレンチ部の下端よりも前記おもて面側の前記メサ部に設けられる
請求項1から20のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項23】
互いに分離して設けられた第1上面電極および第2上面電極と、
前記第1上面電極および前記第2上面電極の下方に設けられた層間絶縁膜と、
を備え、
前記第2上面電極は、前記層間絶縁膜に設けられたコンタクトホールを介し前記エミッタ領域に接する
請求項21または22に記載の半導体装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0003
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0003】
半導体装置においては、電界集中を緩和することが好ましい。