IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ チルドレンズ メディカル センター コーポレーションの特許一覧

特開2024-138218間葉系間質細胞エキソソームおよびそれらの使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138218
(43)【公開日】2024-10-08
(54)【発明の名称】間葉系間質細胞エキソソームおよびそれらの使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/28 20150101AFI20241001BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20241001BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20241001BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20241001BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20241001BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20241001BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20241001BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20241001BHJP
   C12N 5/0775 20100101ALI20241001BHJP
【FI】
A61K35/28
A61P37/02
A61P31/00
A61P9/00
A61P37/06
A61P29/00 101
A61P19/02
A61P9/10
C12N5/0775
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024033810
(22)【出願日】2024-03-06
(62)【分割の表示】P 2020560991の分割
【原出願日】2019-04-26
(31)【優先権主張番号】62/664,696
(32)【優先日】2018-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】596115687
【氏名又は名称】ザ チルドレンズ メディカル センター コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110003971
【氏名又は名称】弁理士法人葛和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コーレンバナス,ステラ
(72)【発明者】
【氏名】ミチアリス,エス.,アレクサンダー
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA93X
4B065AC20
4B065CA44
4B065CA46
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB44
4C087BB63
4C087CA04
4C087MA66
4C087NA14
4C087ZA01
4C087ZA36
4C087ZA96
4C087ZB07
4C087ZB08
4C087ZB15
4C087ZB31
4C087ZC51
(57)【要約】
【課題】本明細書に提供されるのは、胸腺機能不全に関連する疾患の処置において間葉系間質/幹細胞(MCS)エキソソームを用いる方法である。
【解決手段】いくつかの態様において、MSCエキソソームは、胸腺機能不全(例として、高酸素への曝露によって引き起こされる)を有する対象において、胸腺アーキテクチャおよび発達を復元する。いくつかの態様において、対象はヒト対象(例として、ヒト新生児)である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
胸腺機能不全に関連する疾患を処置する方法であって、有効量の間葉系幹細胞(MSC)エキソソームを、それを必要とする対象へ投与することを含む、前記方法。
【請求項2】
単離されたMSCエキソソームが、MSC馴化培地から単離される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
MSCがホウォートンゼリーまたは骨髄からである、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
対象がヒト対象である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ヒト対象が、新生児、幼児、または成人である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ヒト対象が4週齢未満である、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
ヒト対象が4週齢から3歳である、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
ヒト対象が3~18歳である、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
ヒト対象が成人である、請求項4に記載の方法。
【請求項10】
ヒト対象が低体重で生まれる、請求項4~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
ヒト対象が妊娠37週より前に生まれた、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ヒト対象が妊娠26週より前に生まれた、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
ヒト対象が出生時にストレスを受けた、請求項4~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
対象が、酸素が投与されてきたまたは人工呼吸器を付けてきた、請求項4~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
対象が、酸素誘発性胸腺退縮を有する、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
対象が、先天性および/または適応免疫障害を有する、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
MSCエキソソームが、出生後即時に投与される、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
MSCエキソソームが、出生から1時間以内に投与される、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
単離されたMSCエキソソームが、出生から1月以内に投与される、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
単離されたMSCエキソソームが、静脈内投与される、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
MSCエキソソームが、胸腺アーキテクチャを復元する、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
MCSエキソソームが、胸腺細胞数を増やす、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
MSCエキソソームが、胸腺細胞アポトーシスを減らす、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
MSCエキソソームが、髄質胸腺上皮細胞の成熟化を促進する、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
MSCエキソソームが、胸腺中の胸腺細胞前駆体集団を復元する、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
胸腺機能不全に関連する疾患が免疫異常である、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
免疫異常が、自己免疫疾患、新生児ループス、リウマチ性関節炎、およびI型糖尿病からなる群から選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
胸腺機能不全に関連する疾患は、感染、とくにディ・ジョージ症候群の状況での先天性心疾患、外科的修復のために心臓にアクセスすべく胸腺摘出術が行われる心臓手術後、出生時傷害、または低酸素性虚血性脳症(HIE)である、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
対象が齧歯類の動物である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
齧歯類の動物がマウスまたはラットである、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
対象が伴侶動物である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
間葉系幹細胞(MSC)エキソソームの、これを必要とする対象における、胸腺機能不全に関連する疾患を処置するための使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2018年4月30日に出願され、「間葉系間質細胞エキソソームおよびそれらの使用」と題された米国仮出願第62/664696について35 USC § 119(e)の下で利益を主張し、その内容全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
背景
種々の臓器中の間葉系幹/間質細胞(MSC)の治療能力は、記載されてきた。MSCエキソソーム処置の有益な特性もまた、心筋梗塞、腎臓傷害、および神経学的疾病を含む数多の疾患モデルにおいて報告されてきた。
【発明の概要】
【0003】
概要
本開示は、いくつかの側面において、胸腺機能不全を処置することにおける、MSCエキソソームの治療効果を記載する。いくつかの態様において、対象は、幼児または新生児(例として、ヒト幼児または新生児)である。胸腺機能不全に関連する疾患を処置する方法もまた、提供される。
【0004】
本開示のいくつかの側面は、胸腺機能不全に関連する疾患を処置する方法を提供し、方法は、有効量の間葉系幹細胞(MSC)エキソソームを、これを必要とする対象へ投与することを含む。
【0005】
いくつかの態様において、単離されたMSCエキソソームは、MSC馴化培地から単離される。いくつかの態様において、MSCは、ホウォートンゼリーまたは骨髄からのものである。
【0006】
いくつかの態様において、対象はヒト対象である。いくつかの態様において、ヒト対象は、新生児、幼児、または成人である。いくつかの態様において、ヒト対象は、4週齢未満である。いくつかの態様において、ヒト対象は、4週齢から3歳である。いくつかの態様において、ヒト対象は、3~18歳である。いくつかの態様において、ヒト対象は成人である。
【0007】
いくつかの態様において、ヒト対象は、低体重で生まれる。いくつかの態様において、ヒト対象は、妊娠37週より前に生まれた。いくつかの態様において、ヒト対象は、妊娠26週より前に生まれた。
【0008】
いくつかの態様において、ヒト対象は、出生時にストレスを受けた。いくつかの態様において、対象は、酸素が投与されてきたまたは人工呼吸器を付けてきた。いくつかの態様において、対象は、酸素誘発性胸腺退縮を有する。いくつかの態様において、対象は、先天性および/または適応免疫障害を有する。
【0009】
いくつかの態様において、MSCエキソソームは、出生後即時に投与される。いくつかの態様において、MSCエキソソームは、出生から1時間以内に投与される。いくつかの態様において、単離されたMSCエキソソームは、出生から1月以内に投与される。いくつかの態様において、単離されたMSCエキソソームは、静脈内投与される。
【0010】
いくつかの態様において、MSCエキソソームは、胸腺アーキテクチャを復元する。いくつかの態様において、MCSエキソソームは、胸腺細胞数を増やす。いくつかの態様において、MSCエキソソームは、胸腺細胞アポトーシスを減らす。いくつかの態様において、MSCエキソソームは、髄質胸腺上皮細胞の成熟化を促進する。いくつかの態様において、MSCエキソソームは、胸腺中の胸腺細胞前駆体集団を復元する。
【0011】
いくつかの態様において、胸腺機能不全に関連する疾患は、免疫異常である。いくつかの態様において、免疫異常は、自己免疫疾患、新生児ループス、リウマチ性関節炎、およびI型糖尿病からなる群から選択される。いくつかの態様において、胸腺機能不全に関連する疾患は、感染、とくにディ・ジョージ症候群の状況での先天性心疾患、外科的修復のために心臓にアクセスすべく胸腺摘出術が行われる心臓手術後、出生時傷害、または低酸素性虚血性脳症(HIE)である。
【0012】
いくつかの態様において、対象は、齧歯類の動物である。いくつかの態様において、齧歯類の動物は、マウスまたはラットである。いくつかの態様において、対象は、伴侶動物である。
【0013】
また、本明細書に提供されるのは、間葉系幹細胞(MSC)エキソソームの、これを必要とする対象における、胸腺機能不全に関連する疾患を処置するための使用である。
【0014】
上記の概要は、本明細書に開示された技術の態様、利点、特色、および使用のいくつかを、非限定的に図示することを意図している。本明細書に開示される技術の他の態様、利点、特色、および使用は、詳細な説明、図面、例、および特許請求の範囲から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図面の簡単な記載
添付の図面は、縮尺どおりに描かれることを意図したものではない。図面において、様々な図に図示される同一またはほぼ同一の各構成要素は、同様の数字で表されている。明確にするために、すべての構成要素がすべての図面において標識されているわけではない。図面中:
【0016】
図1A-1D】図1Aから1D。MSCエキソソームは、胸腺アーキテクチャおよび胸腺細胞数を、対照レベルまで復元した。(図1A)新生FVBマウスは、HYRX(75%O2)へ7日間曝露された。HYRX曝露マウスは、PN4にて、MSCエキソソームで静脈内(IV)処置された。処置および非処置HYRXマウスの成果は、NRMX(室内気)で残ったマウスと比較された。収集された胸腺切片は、PN14にて、ヘマトキシリン&エオジン(H&E)について染色された。(図1B)NRMX(左)、HYRX(中央)およびHYRX+MSCエキソ(右)の対象となったマウスの胸腺アーキテクチャは、全体の皮質のおよび髄質のエリアの測定によって査定された(倍率4xでの顕微鏡写真)。(図1C)HYRX群の胸腺アーキテクチャは、NRMX対照と比較して増大した皮髄比率に変換される、胸腺の髄質エリアの退縮を呈した。MSCエキソソーム処置は、NRMX対照レベルと同様の皮髄比率によって証明されるとおり、胸腺アーキテクチャを復元した。(図1D)胸腺細胞数は、Countbrightビーズを用いるフローサイトメトリー分析によって決定された。HYRX群は、NRMXレベルと比較して、胸腺細胞の喪失を示した。胸腺細胞の数は、MSCエキソソーム処置でNRMXレベルまで復元された。データは、2つの個別の研究からの結果を表す。n=4~10の平均値±SEMおよび*p<0.05。
【0017】
図2A-2C】図2A~2D。MSCエキソソーム処置は、酸素誘発性胸腺細胞アポトーシスを減らし、髄質TECの正常な成熟化を促進した。3つの研究グループからの胸腺は、胸腺細胞の単細胞懸濁液へと機械的に破壊された。胸腺細胞は、アネキシンVおよびPIで標識され、アポトーシスレベルについて分析された。アポトーシス細胞は、AnnV+PI-細胞として決定された。(図2A)NRMX(左)、HYRX(中央)およびHYRX+MSCエキソソーム(右)の対象となったマウスからの胸腺細胞の代表的なグラフは、PN14での各群におけるアポトーシス細胞の全体的なパーセンテージにおける差を呈する。(図2B)HYRX胸腺細胞は、NRMX由来の胸腺細胞と比較してより高いアポトーシスレベルを呈した(夫々、50.74%±1.74vs27.24%±1.64)。MSCエキソソーム処置は、NRMX対照レベルに到達していないにもかかわらず、胸腺細胞のアポトーシスレベルにおける低減を誘発した(44.4%±1.74)。(図2C)NRMX、HYRXおよびHYRX+MSCエキソ群の胸腺髄質における、AIRE(自己免疫調節因子転写因子)発現の代表的な顕微鏡写真。HYRXは、NRMX対照と比較して、胸腺髄質エリアにおけるAIRE発現の低減を誘発した。MSCエキソソーム処置は、AIREの髄質発現を復元した。
図2D】(図2D)NRMX、HYRXおよびHYRX+MSCエキソ群における、AIRE発現の累積データ。データは、2つの個別の研究からの結果を表す。n=4~8の平均値±SEMおよび*p<0.05、***p<0.001。
【0018】
図3A-3C】図3A~3D。MSCエキソソーム処置は、胸腺中の胸腺細胞前駆体集団を復元する。(図3A)胸腺におけるT細胞発達段階の表現型の略図。骨髄から移動する移動性胸腺細胞前駆体は、CD44CD25であり、CD4およびCD8T細胞マーカーの発現について陰性である。胸腺細胞発達を通してずっと、前駆体はCD44の発現を失い、CD25(DN段階1~3)の発現を得る。この段階で、胸腺細胞は、胸腺皮質エリアにおいてポジティブ選択を経て、CD4およびCD8(DP)を発現し始める。これらの胸腺細胞は、胸腺の髄質エリアへ移動し、ここで、それらは抗原提示細胞(単球、樹状細胞、マクロファージおよびTECを発現するAIRE)と相互作用し、ここで、それらは、ナイーブCD4(SP4)およびCD8(SP8)T細胞のいずれかへのネガティブ選択(自己反応性T細胞の根絶)を経て、それらは次いで、胸腺から移動するだろう。(図3B)PN7での胸腺細胞のフローサイトメトリー分析は、NRMXと比較して、HYRX胸腺中の二重陰性前駆体の割合における低下を示す(夫々、9.14%±0.97vs11.7%±1.06)。MSCエキソソームは、二重陰性前駆体の割合を対照レベルまで復元した(13.8%±1.03)。結果は、フローサイトメトリーによって得られたとおり、DN1、DN2およびDN3の割合の和を表す。(図3C)PN14での二重陰性前駆体の割合に、差はなかった。
図3D】(図3D)CD44およびCD25発現を用いる、二重陰性前駆体分析の代表的なフローサイトメトリーのグラフ。データは、2つの個別の研究からの結果を表す。n=4~10の平均値±SEMおよび*p<0.05および**p<0.01。
【0019】
図4A-4B】図4A~4G。MSCエキソソーム処置は、胸腺におけるCD4T細胞の発達を促進するが、CD8T細胞の発達を阻害する。胸腺細胞は、CD4およびCD8の発現について分析された。二重陽性集団の割合において、差は検出されなかった(図示されず)。単一の陽性細胞(SP4=CD4CD8およびSP8=CD8CD4)の分析は、PN7(図4A)およびPN14(図4B)での3つの分析群間のSP4の全体的な割合において差を示さなかった。
図4C-4E】しかしながら、PN7で、SP8集団において差が検出されなかったにもかかわらず(図4C)、PN14で、MSCエキソソーム処置後に、SP8集団の有意な低下があった(図4D)。(図4E)代表的なフローサイトメトリーのグラフは、PN7およびPN14での胸腺中のSP4、SP8およびDP細胞の割合における差を示す。
図4F-4G】PN7での3つの分析群間で、CD4/CD8比率における変化は検出されなかった(図4F)。しかしながら、MSCエキソソーム処置は、PN14でのCD8+集団の喪失に起因して、高い胸腺CD4/CD8比率を誘発した(図4G)。データは、2つの個別の研究からの結果を表す。n=4~12の平均値±SEMおよび*p<0.05。
【0020】
図5A-5B】図5A~5C。MExは、高酸素へ曝露されたマウスの胸腺において、細胞のアポトーシスを予防する。出生後の14日目に収集されたマウスの胸腺は、フローサイトメトリーによってcountbrightビーズを用いて、全体的な胸腺細胞数について査定され、正常酸素および高酸素曝露マウス(±MEx)の胸腺スライドは、アポトーシス細胞の検出のためにTUNELについて染色された。図5Aは、高酸素曝露マウスの胸腺は、正常酸素群およびMEx処置群と比較して、より低い胸腺細胞数を表すことを示す。図5Bは、代表的なTUNEL染色顕微鏡写真を示し、図5Cは、アポトーシス細胞の数/mmを図示し、これは、高酸素へ曝露されたマウスが、MEx処置に際して正常酸素レベルまで復元される、TUNEL細胞の増大されたレベルを呈することを示す。
図5C図5Bは、代表的なTUNEL染色顕微鏡写真を示し、図5Cは、アポトーシス細胞の数/mmを図示し、これは、高酸素へ曝露されたマウスが、MEx処置に際して正常酸素レベルまで復元される、TUNEL細胞の増大されたレベルを呈することを示す。代表的な顕微鏡写真は、600xの倍率で撮られ、スケールバーは20μmを表す。データは、n≧6の平均値±SEMとして示される。*P≦0.05、****P≦0.0001。
【0021】
図6A-6B】図6A~6C。MExは、高酸素傷害後の髄質抗原提示細胞の表現型を復元する。図6Aは、胸腺髄質エリアの役割を示す概略図である。胸腺の皮質エリアにおけるポジティブ選択を経た後、CD4またはCD8(SP)のいずれかを発現するT細胞前駆体は、それらが髄質胸腺上皮細胞(mTEC)および樹状細胞(CD11cDC)と相互作用する、髄質エリアへ移動する。髄質において、mTECは、過多の組織特異的自己抗原(TRA)の発現につながる、自己免疫調節因子(AIRE)を発現する。AIREmTECは直接的にSPと相互作用するか、または、CD11cDCと緊密に協力して、自己反応性T細胞を削除し、ナイーブ制御性T細胞の生成を誘発する。これらの2つのサブセットの髄質細胞における高酸素およびMEx処置の効果を査定するために、出生後の14日目に収集されたマウスの胸腺切片は、AIREおよびCD11cで染色された。MEx処置は、mTECにおけるAIRE発現を復元し(図6B)、および高酸素へ曝露されたマウスの髄質エリアにおけるCD11cDC表現型を復元する(図6C)。
図6C】MEx処置は、mTECにおけるAIRE発現を復元し(図6B)、および高酸素へ曝露されたマウスの髄質エリアにおけるCD11cDC表現型を復元する(図6C)。代表的な免疫蛍光染色および累積的平均蛍光強度は、図6Bおよび6Cに示される。矢印は、CD11c染色DCをハイライトする。代表的な顕微鏡写真は、400x(図6B)および600x(図6C)の倍率で撮られ、スケールバー=50μmである。データは、n≧6の平均値±SEMとして示される。*P≦0.05、**P≦0.01、****P≦0.0001。
【0022】
図7A-7B】図7A~7D。MExは、多臓器レベルでの制御性T細胞表現型を復元する。MEx処置が制御性T細胞の生成上の効果を有したかどうかを調査するために、出生後の14日目に収集されたマウスの胸腺、肺および脾臓の細胞懸濁液は、制御性T細胞マーカー、すなわち、CD4、CD25およびFoxP3(胸腺)またはCD3、CD4、CD25およびFoxP3(肺および脾臓)で染色され、サイトメトリー分析によって査定された。図7A~7Bは、CD25の代表的なグラフ(図7A)および累積的データ(図7B)を示し、胸腺CD4CD25単一の陽性T細胞集団内でのFoxP3発現は、MEx処置が、高酸素に曝露されたマウスにおいて、制御性T細胞表現型を、正常酸素に似ているレベルまで復元することを指し示す。
図7C-7D】図7C~7Dは、CD25の代表的なグラフ(図7C)および累積的データ(図7D)を示し、CD3CD4T細胞ゲート内のFoxP3発現は、MExが、高酸素へ曝露されたマウスの脾臓および肺中のCD4T細胞において制御性表現型を誘発することを示す。データは、n≧5の平均値±SEMとして示される。*P≦0.05、**P≦0.01、***P≦0.001。
【0023】
ある態様の詳細な記載
酸素誘発性傷害は、広範な疾患を引き起こし得る。酸素補充を必須とする新生体(例として、幼児または新生児)において、酸素傷害は、制限された、肺成長ならびに肺胞のおよび血管の発達を引き起こし、肺機能障害をもたらす。これまでに、(例として、参照により本明細書に組み込まれる、Willis et al., American journal of respiratory and critical care medicine, doi:10.1164/rccm.201705-0925OC (2017)に記載されるとおり)、間葉系幹細胞(MSC)エキソソームは、高酸素によって誘発される肺機能の障害を含む肺疾患を処置するために、用いられ得ることが示されてきた。MSCエキソソームは、新生児高酸素症の実験モデルにおいて、肺形態学、低減された肺線維症および促進された血管のリモデリングを有意に改善し得る。これらの効果は、肺におけるマクロファージ表現型のモジュレーションを通じて、高酸素誘発性炎症の阻害を主に、介した
【0024】
適応免疫細胞の発達にとって不可欠な器官である胸腺における、持続的な高酸素の効果は、未踏のままである。新生児において、適応免疫系は、相対的に未発達である。本開示は、いくつかの側面において、胸腺アーキテクチャおよび機能における高酸素の効果を、適応免疫系が相対的に未発達である新生児において、とくに査定する。胸腺微小環境は、T細胞の発達およびレパートリーを導く胸腺上皮細胞(TEC)の一式から構成される、三次元の細胞アーキテクチャである。本明細書に記載のとおり、新生児高酸素症の実験モデルにおいて、胸腺は、自己反応性T細胞の成熟化を退行および促進させることが示された。酸素誘発性胸腺退縮は、二重陽性および二重陰性胸腺細胞の数および増殖における有意な低減を誘発した、増大された胸腺細胞アポトーシスに起因することが示された3,4。本明細書でさらに提供されるのは、機能不全の胸腺におけるMSCエキソソームの治療効果であり、これは、これまでに調査されてこなかった。MSCエキソソームは、胸腺アーキテクチャおよび機能を復元し、胸腺細胞のアポトーシス減らし、かつ、髄質TECの正常な成熟化を促進した。
【0025】
結果的に、本開示のいくつかの側面は、胸腺機能不全に関連する疾患を処置する方法を提供し、方法は、有効量の間葉系幹細胞(MSC)エキソソームを、これを必要とする対象へ投与することを含む。胸腺は、免疫系のためのT細胞を産生する、脊椎動物の首に位置したリンパ器官である。
【0026】
胸腺は、免疫系の固有な一次リンパ器官である。T細胞は、胸腺内で成熟する。T細胞は、身体が外部の侵略者に特異的に適応する、適応免疫系にとって不可欠である。胸腺は2つの同一の葉から構成され、解剖学的には、心臓の前で胸骨の後、縦隔前上部に位置付けられる。組織学的には、胸腺の各葉は、中央の髄質へと、および外部のカプセルに囲まれる末梢の皮質へと、分割され得る。皮質および髄質は、T細胞の発達において異なる役割を果たす。胸腺中の細胞は、胸腺間質細胞へと、および造血起源の細胞(骨髄に存在する造血幹細胞に由来する)へと分割され得る。発達中のT細胞は、胸腺細胞と称され、造血起源のものである。間質細胞は、胸腺皮質および髄質の上皮細胞、および樹状細胞を包含する。
【0027】
胸腺は、造血前駆細胞からのT細胞の発達のための、誘導環境を提供する。加えて、胸腺間質細胞は、機能的なおよび自己寛容なT細胞レパートリーの選択を、可能とする。したがって、胸腺の最も重要な役割の1つは、中枢性寛容の誘導である。胸腺は、新生児のおよび思春期前の期間中に、最も大きくかつ最も活性である。10代前半までに、胸腺は衰退し始め、胸腺間質は、脂質(脂肪)組織によってほとんど置き換えられる。それにもかかわらず、残存Tリンパ球新生は、成人期を通してずっと継続する。
【0028】
「胸腺機能不全」は、本明細書で用いられるとおり、処置されるべき対象中の、胸腺アーキテクチャおよび機能における障害を指す。いくつかの態様において、胸腺機能不全は、これらに限定されないが、胸腺上皮細胞(TEC)および樹状細胞の欠陥、T細胞発達の欠陥、および胸腺退縮を含む、胸腺微小環境中の機能不全である。科学理論に縛られることを望まないが、胸腺の主要な生物学的機能の1つは、適応免疫の発達のためのT細胞の多様なレパートリーを生成することであり、宿主免疫と自己寛容との間のバランスを保つ。よって、いくつかの態様において、胸腺機能不全は、対象の適応免疫系および/または自己寛容確立における機能不全を包含する。
【0029】
胸腺機能不全は、様々な理由によって引き起こされてもよい。いくつかの態様において、胸腺機能不全を有する対象は、出生時にストレスを受けた。対象が出生時にストレスを受けることを引き起こす因子は、限定せずに:早産、子宮内発育不全(IUGR)、絨毛羊膜炎、感染、呼吸困難、心疾患、低酸素性虚血性脳症(HIE)、胎盤失血、または集中治療処置および母親からの分離を必須とする任意の新生児疾病を含む。例えば、対象は、低体重で生まれてもよい。いくつかの態様において、対象は、(例として、対象が有するかもしれない任意の疾病の処置によって、必須とされるとおり)酸素が投与されてきたまたは人工呼吸器を付けてきた。いくつかの態様において、対象は、酸素誘発性胸腺退縮を有する。高酸素状態への曝露は、胸腺の進行性の収縮である、酸素誘発性胸腺退縮を引き起こし得る。胸腺退縮は、典型的には、T細胞(例として、ナイーブT細胞)の発達の減退、免疫寛容の障害および免疫系の減退に関連する。
【0030】
いくつかの態様において、胸腺機能不全を有する対象は、胸腺機能不全を有しない対象(例として、健常な対象)と比較して、減縮したサイズの胸腺を有する。例えば、胸腺機能不全を有する対象は、胸腺機能不全を有しない対象(例として、健常な対象)と比較して、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または100%減縮されるサイズの胸腺を有してもよい。いくつかの態様において、胸腺機能不全を有する対象は、胸腺機能不全を有しない対象(例として、健常な対象)と比較して、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または100%減縮されるサイズの胸腺を有する。
【0031】
いくつかの態様において、胸腺機能不全を有する対象は、胸腺機能不全を有しない対象(例として、健常な対象)と比較して、減縮された(例として、少なくとも20%)胸腺細胞数を有する。例えば、胸腺機能不全を有する対象は、胸腺機能不全を有しない対象(例として、健常な対象)と比較して、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または100%減縮される数多の胸腺細胞を有してもよい。いくつかの態様において、胸腺機能不全を有する対象は、胸腺機能不全を有しない対象(例として、健常な対象)と比較して、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または100%減縮される数多の胸腺細胞を有する。「胸腺細胞」は、胸腺中に存在する造血前駆細胞である。胸腺細胞の一次機能は、Tリンパ球(T細胞)の生成である。胸腺細胞は、細胞表面マーカーの発現に基づき、数多の別個の成熟段階へと分類される。最早の胸腺細胞段階は、二重陰性段階(CD4およびCD8の両方について陰性であり、本明細書において「胸腺細胞前駆細胞」とも称される)であり、これは、より最近では系統陰性としてよりよく説明されてきており、かつ、4つのサブ段階へと分割され得る。次の主要な段階は、二重陽性段階(CD4およびCD8の両方について陽性)である。成熟化における最終的な段階は、単一陽性段階(CD4またはCD8のいずれかについて陽性)である。
【0032】
いくつかの態様において、胸腺機能不全を有する対象は、胸腺機能不全を有しない対象(例として、健常な対象)と比較して、(例として、少なくとも20%)減縮された数の胸腺細胞前駆細胞を有する。例えば、胸腺機能不全を有する対象は、胸腺機能不全を有しない対象(例として、健常な対象)と比較して、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または100%減縮される数多の胸腺細胞前駆細胞を有してもよい。いくつかの態様において、胸腺機能不全を有する対象は、胸腺機能不全を有しない対象(例として、健常な対象)と比較して、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または100%減縮される数多の胸腺細胞前駆細胞を有する。
【0033】
いくつかの態様において、胸腺機能不全を有する対象は、胸腺機能不全を有しない対象(例として、健常な対象)と比較して、(例として、少なくとも20%)減縮された数のCD4および/またはCD8陽性T細胞を発達させる。例えば、胸腺機能不全を有する対象は、胸腺機能不全を有しない対象(例として、健常な対象)と比較して、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または100%減縮される数多のCD4および/またはCD8陽性T細胞を発達させてもよい。いくつかの態様において、胸腺機能不全を有する対象は、胸腺機能不全を有しない対象(例として、健常な対象)と比較して、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または100%減縮される数多のCD4および/またはCD8陽性T細胞を発達させる。いくつかの態様において、胸腺機能不全を有する対象は、胸腺機能不全を有しない対象(例として、健常な対象)と比較して、正常でない比率のCD4/CD8T細胞を有する。いくつかの態様において、胸腺機能不全を有する対象は、先天性および/または適応免疫系障害を有する。例えば、胸腺機能不全を有する対象は、(例として、感染を引き起こす)侵略病原体に対して減縮された活性、または(例として、自己免疫疾患を引き起こす)自己に対して増大された活性を有する適応免疫系を有してもよい。
【0034】
いくつかの態様において、胸腺機能不全を有する対象は、胸腺機能不全を有しない対象(例として、健常な対象)と比較して、(例として、少なくとも20%)減縮された数の成熟髄質胸腺上皮細胞を有する。例えば、胸腺機能不全を有する対象は、胸腺機能不全を有しない対象(例として、健常な対象)と比較して、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または100%減縮される、数多の成熟髄質胸腺上皮細胞を有してもよい。いくつかの態様において、胸腺機能不全を有する対象は、胸腺機能不全を有しない対象(例として、健常な対象)と比較して、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または100%減縮される、数多の成熟髄質胸腺上皮細胞を有する。
【0035】
いくつかの態様において、胸腺機能不全を有する対象は、胸腺機能不全を有しない対象(例として、健常な対象)と比較して、(例として、少なくとも20%)増大された胸腺細胞アポトーシスを有する。例えば、胸腺機能不全を有する対象における胸腺細胞アポトーシスは、胸腺機能不全を有しない対象(例として、健常な対象)と比較して、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも100倍、少なくとも1000倍、またはそれ以上、増大されてもよい。いくつかの態様において、胸腺機能不全を有する対象における胸腺細胞アポトーシスは、胸腺機能不全を有しない対象(例として、健常な対象)と比較して、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、2倍、5倍、10倍、100倍、1000倍、またはそれ以上増大される。
【0036】
胸腺機能不全は、(例として、参照により本明細書に組み込まれる、Sun et al., Biomed Res Int. 2014; 2014: 206929に記載されるとおり、)胸腺腫瘍、感染性疾患、および免疫異常を含む、多くの疾患に関連する。対象は、胸腺機能不全を有する、または胸腺機能不全に関連する疾患を発症するリスクがある。いくつかの態様において、胸腺機能不全を有する対象は、胸腺機能不全を有しない対象(例として、健常な対象)と比較して、先天性および/または適応免疫障害を有する。
【0037】
いくつかの態様において、胸腺機能不全に関連する疾患は、免疫異常である。「免疫異常」は、免疫系の過剰な活性の、正常でなく低い活性を引き起こす異常を指す。免疫系の過剰な活性の場合、身体は、その自己の組織を攻撃しおよび損傷させる(自己免疫疾患)。免疫不全症は、侵略者と戦う身体の能力を低下させ、感染に対する脆弱性を引き起こす。いくつかの態様において、免疫異常は:自己免疫疾患、新生児ループス、リウマチ性関節炎、およびI型糖尿病からなる群から選択される。いくつかの態様において、免疫異常は、自己免疫疾患である。自己免疫疾患の非限定例は:リウマチ性関節炎(RA)、全身性紅斑性狼瘡(SLE)、重症筋無力症(MG)、バセドウ病、特発性血小板減少紫斑病(ITP)、ギラン・バレー症候群、自己免疫心筋炎、膜糸球体腎炎、I型またはII型糖尿病、若年性発病糖尿病、多発性硬化症、レイノー症候群、自己免疫甲状腺炎、胃炎、セリアック病、白斑、肝炎、原発性胆汁性肝硬変、炎症性腸疾患、脊椎関節症、実験的自己免疫脳脊髄炎、免疫性好中球減少症、および典型的には結核、サルコイドーシス、および多発性筋炎において見られるサイトカイン、Tリンパ球によって媒介される遅延型過敏症に関連する免疫応答、多発性動脈炎、皮膚血管炎、天疱瘡(例として、尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡または傍腫瘍性天疱瘡)、類天疱瘡、グッドパスチャー症候群、川崎病、全身性硬化症、抗ホスホ脂質症候群、およびシェーグレン症候群を含む。
【0038】
いくつかの態様において、胸腺機能不全に関連する疾患は、感染(例として、細菌、ウイルス、真菌、および他の微生物などの病原体によって引き起こされる感染)である。いくつかの態様において、感染は、細菌によって引き起こされる。本開示のいくつかの態様における使用のために好適な、例示の非限定的な細菌分類群、種、および菌種は:Escherichia菌種、Enterobacter菌種(例として、Enterobacter cloacae)、Salmonella菌種(例として、Salmonella enteritidis、Salmonella typhi)、Shigella菌種、Pseudomonas菌種(例として、Pseudomonas aeruginosa、Pseudomonas pachastrellae、Pseudomonas stutzeri)、Moraxella菌種(例として、Moraxella catarrhalis)、Neisseria菌種(例として、Neisseria gonorrhoeae、Neisseria meningitidis)、Helicobacter菌種(例として、Helicobacter pylori)、Stenotrophomonas菌種、Vibrio菌種(例として、Vibrio cholerae)、Legionella菌種(Legionella pneumophila)、Hemophilus菌種(例として、Hemophilus influenzae)、Klebsiella菌種(例として、Klebsiella cholerae)、Proteus菌種(例として、Proteus mirabilis)、Serratia菌種(Serratia marcescens)、Streptococcus菌種、Staphylococcus菌種、Corynebacterium菌種、Listeria菌種、およびClostridium菌種、Bacillus菌種(例として、Bacillus anthracis) Bordetella菌種(例として、Bordetella pertussis);Borrelia菌種(例として、Borrelia burgdorferi);Brucella菌種(例として、Brucella abortus、Brucella canis、Brucella melitensis、Brucella suis);Campylobacter菌種(例として、Campylobacter jejuni);Chlamydia菌種およびChlamydophila菌種(例として、Chlamydia pneumoniae、Chlamydia trachomatis、Chlamydophila psittaci);Clostridium菌種(例として、Clostridium botulinum、Clostridium difficile、Clostridium perfringens、Clostridium tetani);Corynebacterium菌種(例として、Corynebacterium diphtheriae);Enterococcus菌種(例として、Enterococcus faecalis、Enterococcus faecium);Escherichia菌種(例として、Escherichia coli、Enterotoxic E. coli、enteropathogenic E. coli;E. coli O157:H7);Francisella菌種(例として、Francisella tularensis);Haemophilus菌種(例として、Haemophilus influenzae);Helicobacter菌種(例として、Helicobacter pylori);Legionella菌種(例として、Legionella pneumophila);Leptospira菌種(例として、Leptospira interrogans);Listeria菌種(例として、Listeria monocytogenes);Mycobacterium菌種(例として、Mycobacterium leprae、Mycobacterium tuberculosis、Mycobacterium ulcerans);Mycoplasma菌種(例として、Mycoplasma pneumoniae);Neisseria菌種(例として、 Neisseria gonorrhoeae、Neisseria meningitidis);Pseudomonas菌種(例として、Pseudomonas aeruginosa);Rickettsia菌種(例として、Rickettsia rickettsii);Salmonella菌種(例として、Salmonella typhi、Salmonella typhimurium);Shigella菌種(例として、Shigella sonnei);Staphylococcus菌種(例として、Staphylococcus aureus、Staphylococcus epidermidis、Staphylococcus saprophyticus);Streptococcus菌種(例として、Streptococcus agalactiae、Streptococcus pneumoniae、Streptococcus pyogenes);Treponema菌種(例として、Treponema pallidum);Pseudodiomarina菌種( 例として、P. maritima);Marinobacter菌種(例として、Marinobacter hydrocarbonoclasticus、Marinobacter vinifirmus) Alcanivorax菌種(例として、alcanivorax dieselolei);Acetinobacter菌種(例として、A. venetianus);Halomonas菌種(例として、H. shengliensis);Labrenzia菌種;Microbulifer菌種(例として、M. schleiferi);Shewanella菌種(例として、S. algae);Vibrio菌種(例として、Vibrio cholerae、Vibrio alginolyticus、Vibrio hepatarius);および Yersinia菌種(例として、Yersinia pestis)を含む。
【0039】
いくつかの態様において、細菌は、Bacillus anthracis(炭疽病を引き起こす)、 Bordetella pertussis(百日咳を引き起こす)、Corynebacterium diphtheriae(ジフテリアを引き起こす)、Clostridium tetani(破傷風を引き起こす)、Haemophilus influenzaeタイプb、pneumococcus(肺炎球菌感染症を引き起こす)、Staphylococci 菌種(AまたはB群連鎖球菌を含む)、Mycobacterium tuberculosis、Neiserria meningitidis(髄膜炎菌性疾患を引き起こす)、Salmonella typhi(腸チフスを引き起こす)、Vibrio cholerae(コレラを引き起こす)、またはYersinia pestis(ペストを引き起こす)である。
【0040】
いくつかの態様において、細菌は、グラム陰性細菌である。グラム陰性細菌種の非限定例は:Neisseria gonorrhoeaeおよびNeisseria meningitidisを含むNeisseria種、Branhamella catarrhalisを含むBranhamella種、Escherichia coliを含むEscherichia種、Enterobacter種、Proteus mirabilisを含むProteus種、Pseudomonas aeruginosa、Pseudomonas mallei、およびPseudomonas pseudomalleiを含むPseudomonas種、Klebsiella pneumoniaeを含むKlebsiella種、Salmonella種、Shigella種、Serratia種、Acinetobacter種;Haemophilus influenzaeおよびHaemophilus ducreyiを含むHaemophilus種;Brucella種、Yersinia pestisおよびYersinia enterocoliticaを含むYersinia種、Francisella tularensisを含むFrancisella種、Pasteurella multocidaを含むPasturella種、Vibrio cholerae、Flavobacterium種、meningosepticum、Campylobacter jejuniを含むCampylobacter種、Bacteroides fragilisを含むBacteroides種 (経口、咽頭)、Fusobacterium nucleatumを含むFusobacterium種、Calymmatobacterium granulomatis、Streptobacillus moniliformisを含むStreptobacillus種、Legionella pneumophilaを含むLegionella種を、含む。
【0041】
いくつかの態様において、細菌は、グラム陽性細菌である。例示のグラム陽性細菌は、これらに限定されないが、Staphylococcus菌種、Streptococcus菌種、Micrococcus菌種、Peptococcus菌種、Peptostreptococcus菌種、Enterococcus菌種、Bacillus菌種、Clostridium菌種、Lactobacillus菌種、Listeria菌種、Erysipelothrix菌種、Propionibacterium菌種、Eubacterium菌種、Corynebacterium菌種、Capnocytophaga菌種、Bifidobacterium菌種、およびGardnerella菌種を含む。いくつかの態様において、グラム陽性細菌は、Firmicutes門の細菌である。いくつかの態様において、グラム陽性細菌は、Streptococcusである。
【0042】
胸腺機能不全を有する対象において、感染を引き起こし得る細菌の他のタイプは、抗酸菌、スピロヘータ、および放線菌を含む。抗酸菌の例は、Mycobacterium tuberculosisおよびMycobacterium lepraeを含むMycobacterium種を、含む。スピロヘータの例は、Treponema pallidum、Treponema pertenueを含むTreponema種、Borrelia burgdorferi(ライム病)、およびBorrelia recurrentisを含むBorrelia 種、およびLeptospira種を含む。放線菌の例は:Actinomyces israeliiを含むActinomyces種、およびNocardia asteroidesを含むNocardia種を、含む。
【0043】
いくつかの態様において、感染は、ウイルスによって引き起こされる。ウイルスの例は、これらに限定されないが:レトロウイルス、HIV-1、HDTV-III、LAVE、HTLV-III/LAV、HIV-III、HIV-LPを含むヒト免疫不全ウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)、ピコルナウイルス、ポリオウイルス、A型肝炎ウイルス、エンテロウイルス、ヒトコクサッキーウイルス、ライノウイルス、エコーウイルス、カリシウイルス、トガウイルス、ウマの脳炎ウイルス、風疹ウイルス、フラビウイルス、デングウイルス、脳炎ウイルス、黄熱病ウイルス、コロナウイルス、ラブドウイルス、水疱性口内炎ウイルス、狂犬病ウイルス、フィロウイルス、エボラウイルス、パラミクソウイルス、パラインフルエンザウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、麻疹ウイルス、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、オルトミクソウイルス、インフルエンザウイルス、ブンガウイルス(bungavirus)、ハンターンウイルス、フレボウイルスおよびナイロウイルス、アレナウイルス、出血熱ウイルス、レオウイルス、オルビウイルス、ロタウイルス、ビルナウイルス、ヘパドナウイルス、B型肝炎ウイルス、パルボウイルス、パポバウイルス科、パピローマウイルス、ポリオマウイルス、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルス1および2を含むヘルペスウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、ポックスウイルス、天然痘ウイルス、ワクシニアウイルス、イリドウイルス、アフリカ豚熱ウイルス、デルタ肝炎ウイルス、非A、非B肝炎ウイルス、C型肝炎、ノーウォークウイルス、アストロウイルス、および未分類のウイルスを含む。いくつかの態様において、ウイルスは、アデノウイルス、灰白髄炎(ポリオ)などのエンテロウイルス、エボラウイルス、単純ヘルペスウイルスなどのヘルペスウイルス、サイトメガロウイルスおよび水痘帯状疱疹(水痘および帯状疱疹)、麻疹、流行性耳下腺炎、風疹、A、B、またはC型肝炎、ヒトパピローマウイルス、インフルエンザウイルス、狂犬病、日本脳炎、ロタウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、天然痘、黄熱病、ジカウイルス、またはデングウイルスである。
【0044】
いくつかの態様において、感染は、真菌によって引き起こされる。真菌の例は、これらに限定されないが:Crytococcus neoformansを含むCryptococcus種、Histoplasma capsulatumを含むHistoplasma種、Coccidiodes immitisを含むCoccidioides種、Paracoccidioides brasiliensisを含むParacoccidioides種、Blastomyces dermatitidisを含むBlastomyces種、Chlamydia trachomatisを含むChlamydia種、Candida albicansを含むCandida種、Sporothrix schenckiiを含むSporothrix種、Aspergillus種、およびムコール菌症の真菌を含む。いくつかの態様において、真菌は、Candida菌種、Aspergillus菌種、Cryptococcus菌種、Mucormycete、Blastomyces dermatitidis(ブラストミセス症を引き起こすもの)、またはHistoplasma capsulatum(ヒストプラスマ症を引き起こすもの)、またはSporothrix schenckii(スポロトリクム症を引き起こすもの)などの風土病性真菌症を引き起こす真菌である。
【0045】
胸腺機能不全を有する対象において、感染を引き起こし得る他の感染性生物は、限定せずに:寄生体を含む。寄生体は、Plasmodium falciparum、Plasmodium malariae、Plasmodium ovale、およびPlasmodium vivaxを含むPlasmodium種などのPlasmodium種、およびToxoplasma gondiiを含む。血液感染性のおよび/または組織寄生体は、Plasmodium種、Babesia microtiおよびBabesia divergensを含むBabesia種、Leishmania tropica、Leishmania種、Leishmania braziliensis、Leishmania donovaniを含むLeishmania種、Trypanosoma gambiense、Trypanosoma rhodesiense(アフリカ睡眠病)、およびTrypanosoma cruzi(シャーガス病)を含むTrypanosoma種を、含む。いくつかの態様において、寄生体は、Plasmodium菌種、Leishmania、または蠕虫である。
【0046】
他の医学的に関係のある微生物は、文献において広範に説明されてきており、例として、参照により本明細書に組み込まれるC. G. A Thomas, Medical Microbiology, Bailliere Tindall, Great Britain 1983を参照すべきである。
【0047】
いくつかの態様において、胸腺機能不全に関連する疾患は、がんである。本明細書に開示の方法を用いて処置されてもよいがんの種類は、限定せずに、新生物、悪性腫瘍、転移、または、がん性とみなされるであろうような制御不能な細胞成長によって特徴づけられる任意の疾患または異常を含む。がんは、原発または転移性がんであってもよい。がんは、これらに限定されないが、胆道がん;膀胱がん;膠芽腫および髄芽腫を含む脳がん;乳房がん;子宮頸がん;絨毛癌;結腸がん;子宮内膜がん;食道がん;胃がん;急性リンパ球性および骨髄性白血病を含む血液新生物;多発性骨髄腫;AIDS関連白血病および成人T細胞白血病リンパ腫;ボーウェン病およびパジェット病を含む上皮内新生物;肝臓がん;肺がん;ホジキン病およびリンパ球性リンパ腫を含むリンパ腫;神経芽細胞腫;扁平上皮細胞癌を含む口腔がん;上皮細胞、間質細胞、性細胞および間葉細胞から発生するものを含む卵巣がん;膵臓がん;前立腺がん;直腸がん;平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、脂肪肉腫、線維肉腫、および骨肉腫を含む肉腫;黒色腫、カポジ肉腫、基底細胞がん、および扁平上皮細胞がんを含む皮膚がん;精上皮腫、非精上皮などの胚腫瘍を含む精巣がん、奇形腫、絨毛癌;間質性腫瘍および性細胞腫瘍;甲状腺腺癌および髄質癌を含む甲状腺がん;および腺癌およびウィルムス腫瘍を含む腎がんを、含む。一般的に遭遇するがんは、乳房、前立腺、肺、卵巣、結腸直腸、および脳がんを含む。いくつかの態様において、がんは転移性である。
【0048】
MSCエキソソームは、胸腺機能不全に関連する疾患に対して治療効果を有することが、本明細書で見出される。「エキソソーム」は、細胞(例として、任意の真核細胞)から放出される膜(例として、脂質二重層)ベシクルである。エキソソームは、血液、尿、および細胞培養の培養培地を含む、真核生物の液体中に存在する。本開示のエキソソームは、間葉系幹細胞(MSC)から放出され、「間葉系幹細胞エキソソーム」または「MSCエキソソーム」と互換的に称される。
【0049】
「間葉系幹細胞(MSC)」は、神経細胞、脂肪細胞、軟骨細胞、骨芽細胞、筋細胞、心臓組織、および他の内皮細胞または上皮細胞に分化する能力を有する、前駆細胞である。(例えば、Wang, Stem Cells 2004;22(7);1330-7; McElreavey;1991 Biochem Soc Trans (1);29s; Takechi, Placenta 1993 March/April; 14 (2); 235-45; Takechi, 1993; Kobayashi; Early Human Development;1998; July 10; 51 (3); 223-33; Yen; Stem Cells; 2005; 23 (1) 3-9を参照のこと。)これらの細胞は、遺伝子またはタンパク質発現によって、表現型的に定義されてもよい。これらの細胞は、CD13、CD29、CD44、CD49a、b、c、e、f、CD51、CD54、CD58、CD71、CD73、CD90、CD102、CD105、CD106、CDw119、CD120a、CD120b、CD123、CD124、CD126、CD127、CD140a、CD166、P75、TGF-bIR、TGF-bIIR、HLA-A、B、C、SSEA-3、SSEA-4、D7およびPD-L1の1つ以上を発現する(したがってこれについて陽性である)ことを、特徴とされてきた。これらの細胞はまた、CD3、CD5、CD6、CD9、CD10、CD11a、CD14、CD15、CD18、CD21、CD25、CD31、CD34、CD36、CD38、CD45、CD49d、CD50、CD62E、L、S、CD80、CD86、CD95、CD117、CD133、SSEA-1、およびABOを発現しない(したがってこれについて陰性である)としても特徴付けられてきた。よって、MSCは、それらの分化の潜在力に従って、表現型的および/または機能的に特徴付けられてもよい。
【0050】
MSCは、骨髄、血液、骨膜、真皮、臍帯血および/またはマトリックス(例として、ホウォートンゼリー)、および胎盤を含むがこれらに限定されない数多の供給源から、収集されてもよい。MSCを収集するための方法は、当該技術分野、例として、参照により本明細書に組み込まれる米国特許番号5486359に記載されている。
【0051】
MSCは、組織培養プラスチックへのそれらの接着に基づいて、複数の供給源、例として、骨髄単核細胞、臍帯血、脂肪組織、胎盤組織から単離され得る。例えば、MSCは、市販の骨髄吸引液から単離され得る。細胞集団内のMSCの濃縮は、蛍光活性化細胞選別(FACS)を含むがこれに限定されない当該技術分野において知られている方法を用いて、達成され得る。
【0052】
MSCの成長、培養、および維持のためには、市販の培地が用いられてもよい。かかる培地は、ダルベッコ改良イーグル培地(DMEM)を含むが、これに限定されない。MSC、線維芽細胞、およびマクロファージの成長、培養、および維持に有用であるかかる培地の構成要素は、アミノ酸、ビタミン、炭素供給源(天然および非天然)、塩、糖、植物由来の加水分解物、ピルビン酸ナトリウム、界面活性剤、アンモニア、脂質、ホルモンまたは成長因子、バッファー、非天然アミノ酸、糖前駆体、指示薬、ヌクレオシドおよび/またはヌクレオチド、酪酸または有機物、DMSO、動物由来産物、遺伝子誘導物質、非天然糖、細胞内pHの調節剤、ベタインまたは浸透圧保護剤、微量元素、ミネラル、非天然ビタミンを包含するが、これらに限定されない。市販の組織培養培地を補充するために用いられ得る追加の構成要素は、例えば、動物血清(例として、ウシ胎仔血清(FBS)、ウシ胎仔血清(FCS)、ウマ血清(HS))、抗生物質(例として、ペニシリン、ストレプトマイシン、硫酸ネオマイシン、アンホテリシンB、ブラストサイジン、クロラムフェニコール、アモキシシリン、バシトラシン、ブレオマイシン、セファロスポリン、クロルテトラサイクリン、ゼオシン、およびピューロマイシンを含むがこれらに限定されない)、およびグルタミン(例として、L-グルタミン)を含む。間葉系幹細胞の生存と成長はまた、適切な好気性環境、pH、および温度の維持にも依存する。MSCは、例として、参照により本明細書に組み込まれるPittenger et al., Science, 284:143-147 (1999)に記載されるように、当該技術分野において知られている方法を用いて維持され得る。
【0053】
いくつかの態様において、胸腺機能不全に関連する疾患を処置するために用いられるMSCエキソソームは、単離されたエキソソームである。本明細書に用いられるとおり、「単離されたエキソソーム」は、その天然の環境から物理的に分離されるエキソソームである。単離されたエキソソームは、それが天然に存在する、MSC、線維芽細胞、およびマクロファージを含む組織または細胞から、全体的または部分的に、物理的に分離されていてもよい。いくつかの態様において、単離されたエキソソームは、MSCエキソソームである。いくつかの態様において、MSCエキソソームは、ヒト骨髄または臍帯ホウォートンゼリーからのMSCの培養培地から単離される。かかる培養培地は、本明細書では「MSC馴化培地」と称される。いくつかの態様において、単離されたエキソソームは、MSCなどの細胞を含まなくてもよく、または馴化培地を含まないかまたは実質的に含まなくてもよく、またはタンパク質などの如何なる生物学的夾雑物を含まなくてもよい。典型的には、単離されたエキソソームは、操作されていない馴化培地中に存在するエキソソームよりも高い濃度で提供される。
【0054】
いくつかの態様において、単離されたMSCエキソソームは、実質的に夾雑物(例として、タンパク質夾雑物)フリーである。単離されたMSCエキソソームの調製物が任意の他の物質(例として、タンパク質)を20%、15%、10%、5%、2%、1%よりも少なく、または1%未満含有する場合、単離されたMSCエキソソームは「実質的に夾雑物フリー」である。いくつかの態様において、単離されたMSCエキソソームの調製物が、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.9%の純度である場合、夾雑物(例えば、タンパク質)に関して、単離されたMSCは「実質的に夾雑物フリー」である。
【0055】
「タンパク質夾雑物」は、単離されたエキソソームに関連していない、および、エキソソームの生物活性に寄与しないタンパク質を指す。タンパク質夾雑物はまた、本明細書では「非エキソソームタンパク質夾雑物」とも呼ばれる。
【0056】
本明細書に記載される単離されたMSCエキソソームは、約30~150nmの直径を有する。例えば、MSCエキソソームは、以下の直径を有してもよい:30~150、30~140、30~130、30~120、30~110、30~100、30~90、30~80、30~70、30~60、30~50、30~40、40~150、40~140、40~130、40~120、40~110、40~100、40~90、40~80、40~70、40~60、40~50、50~150nm、50~140nm、50~130nm、50~120nm、50~110nm、50~100nm、50~90nm、50~80nm、50~70nm、50~60nm、60~150nm、60~140nm、60~130nm、60~120nm、60~110nm、60~100nm、60~90nm、60~80nm、60~70nm、70~150nm、70~140nm、70~130nm、70~120nm、70~110nm、70~100nm、70~90nm、70~80nm、80~150nm、80~140nm、80~130nm、80~120nm、80~110nm、80~100nm、80~90nm、90~150nm、90~140nm、90~130nm、90~120nm、90~110nm、90~100nm、100~150nm、100~140nm、100~130nm、100~120nm、100~110nm、110~150nm、110~140nm、110~130nm、110~120nm、120~150nm、120~140nm、120~130nm、130~150nm、130~140nm、または140~150nm。いくつかの態様において、MSCエキソソームは、約50nm、60nm、70nm、80nm、90nm、100nm、110nm、120nm、130nm、140nm、または150nmの直径を有してもよい。いくつかの態様において、MSCエキソソームは、両凹の形態を示す。
【0057】
MSCエキソソーム(例として、単離されたMSCエキソソーム)は、胸腺機能不全に関連する疾患を処置するために用いられてもよい。いくつかの態様において、MSCエキソソーム(例として、単離されたMSCエキソソーム)は、組成物中で製剤化される。いくつかの態様において、組成物は、薬学的に許容し得る濃度の塩、緩衝剤、防腐剤、適合性担体、および/または他の(すなわち、二次)治療剤をさらに含む。
【0058】
薬学的に許容し得る担体は、予防的または治療的な活性剤の運搬または輸送に関与する、液体または固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒または封入材料などの薬学的に許容し得る材料、組成物またはビヒクルである。各担体は、製剤の他の成分と適合する、および、対象に害を及ぼさないという意味で「許容し得る」ものでなければならない。薬学的に許容し得る担体として役立ち得る材料のいくつかの例は、ラクトース、グルコースおよびスクロースなどの糖;プロピレングリコールなどのグリコール;グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコールなどのポリオール;オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルなどのエステル;水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;パイロジェンフリーの水;等張生理食塩水;リンガー液;エチルアルコール;リン酸緩衝液;および医薬製剤に用いられる他の非毒性適合性物質を包含する。
【0059】
胸腺機能不全に関連する疾患を処置するために、有効量のMSCエキソソームまたはMSCエキソソームを含む組成物は、胸腺機能不全を有する対象へ投与される。「有効量」は、所望される成果を達成する薬剤の量である。絶対量は、投与のために選択される材料、投与が単回または複数回の用量であるか、年齢、体調、寸法、体重、および疾患の段階を含む個々の患者パラメーターを含む、様々な因子に依存するであろう。これらの因子は当業者に周知であり、わずかルーチンの実験で対処され得る。
【0060】
いくつかの態様において、有効量は、対象に毒性を引き起こさない剤の投薬量である。いくつかの態様において、有効量は、対象へ低減された毒性を引き起こす薬剤の投薬量である。毒性を測定する方法は、当該技術分野において周知である(例として、肝臓、脾臓、および/または腎臓の生検/組織学;肝臓毒性についてのアラニントランスフェラーゼ、アルカリホスファターゼおよびビリルビンアッセイ;および腎臓毒性についてのクレアチニンレベル)。
【0061】
「処置する」または「処置」は、肺疾患の発症の予防、低減、または停止、肺疾患の症状の低減または排除、または肺疾患の予防を含むが、これらに限定されない。
【0062】
対象は、ヒトまたは脊椎動物または哺乳動物を意味するものとし、これは、齧歯類の動物、例として、ラットまたはマウスなどの齧歯類の動物、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、シチメンチョウ、ニワトリおよび霊長目の動物、例として、サルを含むが、これらに限定されない。いくつかの態様において、対象はヒトである。いくつかの態様において、対象は伴侶動物である。「伴侶動物」は、本明細書に用いられるとおり、ペットおよび他の飼育動物を指す。伴侶動物の非限定例は、イヌおよびネコ;ウマ、畜牛、ブタ、ヒツジ、ヤギ、およびニワトリなどの家畜;およびマウス、ラット、モルモット、およびハムスターなどの他の動物を包含する。本開示の方法は、これを必要とする対象を処置するために有用である。これを必要とする対象は、胸腺機能不全に関連する疾患を有する、またはこれを発症するリスクを有する対象であり得る。
【0063】
対象は、本開示に記載のエキソソームを用いる処置に適する、本明細書に記載の疾患を有するものであってもよく、またはそれらは、かかる疾患を発症するリスクがあるものであってもよい。いくつかの態様において、対象は、ヒト対象である。いくつかの態様において、対象は、ヒト幼児である。例えば、対象は、新生児、および、とくに、低在胎齢で生まれた新生児であってもよい。本明細書で用いられるとおり、ヒト新生児は、出生時から約4週齢までのヒトを指す。本明細書で用いられるとおり、ヒト幼児は、約4週齢から約3歳までのヒトを指す。本明細書で用いられるとおり、低在胎齢は、所与の種について通常の在胎期間の前に生じる出産(または分娩)を指す。ヒトにおいて、全妊娠期間は約40週間であり、37週間から40週間超の範囲であってもよい。ヒトにおける低在胎齢は、早産に類似しており、妊娠37週の前に生じる出産と定義される。したがって、本開示は、さらに短い在胎期間(例として、妊娠36週前、35週前、34週前、33週前、32週前、31週前、30週前、29週前、28週前、27週前、26週前、または25週前)で生まれたものを含む、妊娠37週前に生まれた対象の予防および/または処置を企図している。
【0064】
幼児または新生児の場合、本開示は、新生児期をさらに超えて、小児期および/または成人期へのそれらの処置を企図する。例えば、いくつかの態様において、本開示の方法を用いて処置される対象は、3~18歳である。いくつかの態様において、本開示の方法を用いて処置される対象は、3~18、3~17、3~16、3~15、3~14、3~13、3~12、3~11、3~10、3~9、3~8、3~7、3~6、3~5、3~4、4~18、4~17、4~16、4~15、4~14、4~13、4~12、4~11、4~10、4~9、4~8、4~7、4~6、4~5、5~18、5~17、5~16、5~15、5~14、5~13、5~12、5~11、5~10、5~9、5~8、5~7、5~6、6~18、6~17、6~16、6~15、6~14、6~13、6~12、6~11、6~10、6~9、6~8、6~7、7~18、7~17、7~16、7~15、7~14、7~13、7~12、7~11、7~10、7~9、7~8、8~18、8~17、8~16、8~15、8~14、8~13、8~12、8~11、8~10、8~9、9~18、9~17、9~16、9~15、9~14、9~13、9~12、9~11、9~10、10~18、10~17、10~16、10~15、10~14、10~13、10~12、10~11、11~18、11~17、11~16、11~15、11~14、11~13、11~12、12~18、12~17、12~16、12~15、12~14、12~13、13~18、13~17、13~16、13~15、13~14、14~18、14~17、14~16、14~15、15~18、15~17、15~16、16~18、16~17、または17~18歳であってもよい。いくつかの態様において、対象は、例えば18歳または18歳超の成人である。
【0065】
特定の対象は、本明細書に記載される疾患(または状態)(例えば、自己免疫疾患またはがん)の特定の形態に対する遺伝的素因を有してもよく、それらの対象もまた、本開示に従って処置されてもよい。
【0066】
新生児およびとくに低在胎齢の新生児に関して、本開示は、出生から1年、11月、10月、9月、8月、7月、6月、5月、4月、3月、2月、1月、4週、3週、2週、1週、6日、5日、4日、3日、2日、1日、12時間、6時間、3時間、または1時間以内の単離されたMSCエキソソームの投与を企図する。いくつかの態様において、単離されたMSCエキソソームは、出生から1時間以内(例として、1時間以内、55分以内、50分以内、45分以内、40分以内、35分以内、30分以内、25分以内、20分以内、15分以内、10分以内、5分以内、または1分以内)に投与される。いくつかの態様において、MSCエキソソームは、出生後即時に、対象へ投与される。
【0067】
本開示はさらに、本明細書に記載の疾患または異常を示す症状がなくても、MSCエキソソームの投与を企図する。
【0068】
いくつかの態様において、MSCエキソソームまたは単離されたエキソソームを含む組成物は、対象(例として、新生児)へ1回投与される。いくつかの態様において、MSCエキソソームの2回、3回、4回、5回以上の投与を含む、MSCエキソソームの反復投与が企図される。いくつかの例において、MSCエキソソームは連続的に投与されてもよい。反復投与または連続投与は、処置されている状態の重症度に応じて、数時間(例として、1~2、1~3、1~6、1~12、1~18、または1~24時間)、数日(例として、1~2、1~3、1~4、1~5、1~6日、または1~7日)または数週(例として、1~2週、1~3週、または1~4週)にわたって生じてもよい。投与が繰り返されるが連続的でない場合、投与間の時間は、数時間(例として、4時間、6時間、または12時間)、数日(例として、1日、2日、3日、4日、5日、または6日)、または数週間(例として、1週間、2週間、3週間、または4週間)であってもよい。投与間の時間は同じであっても、異なっていてもよい。例として、疾患の症状が悪化しているように見える場合、a型エキソソームはより頻繁に投与されてもよく、その後、症状が安定するかまたは減少すると、a型エキソソームはより少ない頻度で投与されてもよい。
【0069】
いくつかの態様において、MSCエキソソームは、出生から24時間以内に少なくとも1回、および次いで、出生から1週以内に少なくとももう1回投与される。いくつかの態様において、MSCエキソソームは、出生から1時間以内に少なくとも1回、および次いで、出生から3~4日以内に少なくとももう1回投与される。
【0070】
MSCエキソソームは、胸腺への送達をもたらす任意の経路によって投与されてもよい。静脈内注射または連続注入などの全身投与経路が好適である。
【0071】
MSCエキソソームは、例えばボーラス注射または連続注入を含む、注射による非経口投与のために製剤化されてもよい。注射用の製剤は、添加された防腐剤の有無に関わらず、例として、アンプルまたは複数回用量容器の単位剤形で提供されてもよい。
組成物は、油性または水性ビヒクル中の水溶性懸濁液、溶液またはエマルションなどの形態をとってもよく、懸濁剤、安定剤および/または分散剤などの処方剤を含んでもよい。好適な親油性溶媒またはビヒクルは、ゴマ油などの脂肪油、またはオレイン酸エチルまたはトリグリセリドなどの合成脂肪酸エステルを包含する。水性注射用懸濁液は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、またはデキストランなどの、懸濁液の粘度を増加させる物質を含んでもよい。任意に、懸濁液はまた、可溶性を増加させる好適な安定剤または剤を含有してもよい。代替的に、エキソソームは、使用前に、好適なビヒクル、例として、滅菌されたパイロジェンフリーの水で構成するために、凍結乾燥されたあるいは他の粉末または固体の形態であってもよい。
【0072】
本開示に従って処置されている対象へ投与されるための他の剤は、経口投与、鼻腔内投与、気管内投与、吸入、静脈内投与などを含む任意の好適な経路によって投与されてもよいことが理解されるべきである。当業者は、かかる二次剤のための通常の投与の経路を知っているであろう。
【0073】
いくつかの態様において、MSCエキソソーム、またはMSCエキソソームを含む組成物は、対象へ投与される場合、胸腺機能を改善する。本明細書では、胸腺機能は、例として当業者に知られている任意の方法によって測定されるとおり、胸腺の機能性が、MSCエキソソームを投与された対象において、MSCエキソソームを投与されていない対象と比較して少なくとも20%改善される場合、「改善された」とみなされる。例えば、胸腺機能は、例として当業者に知られている任意の方法によって測定されるとおり、胸腺の機能性が、MSCエキソソームを投与された対象において、MSCエキソソームを投与されていない対象と比較して、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍またはそれよりも改善される場合、改善されたとみなされてもよい。いくつかの態様において、胸腺機能は、例として当業者に知られている任意の方法によって測定されたとおり、胸腺の機能性が、MSCエキソソームを投与された対象において、MSCエキソソームを投与されていない対象と比較して、20%、30%、40%、50%、70%、80%、90%、100%、2倍、5倍、10倍、50倍、100倍またはそれよりも改善される場合、改善されたとみなされる。
【0074】
胸腺機能を評価する方法は、当業者に知られている。かかる方法の非限定例は、サイズおよび/または皮髄比率を測定すること、胸腺を画像化すること、胸腺によるT細胞産生の能力を査定することおよび/または対象の(例として、感染に対する)免疫能を評価することを包含する。胸腺機能を評価する方法はまた、当該技術分野にも記載され、例として、参照により本明細書に組み込まれるLorenzi et al., J Immunol Methods. 2008 Dec 31; 339(2): 185-194; Harris et al., Clin Immunol. 2005 May;115(2):138-46; Saidakova et al., Klin Lab Diagn. 2011 Nov;(11):45-9; and Frush et al., Pediatric Chest Imaging pp 215-240に記載されるとおりである。例えば、胸腺機能を査定するための共通の試験は、胸腺から出る胸腺細胞中に存在する末梢血中のT細胞受容体切除サークル(TREC)の分析によるものである(例として、参照により本明細書に組み込まれるLorenzi et al, J Immunol Methods. 2008 Dec 31; 339(2)に記載されるとおりである)。
【0075】
いくつかの態様において、MSCエキソソーム、またはMSCエキソソームを含む組成物は、対象へ投与される場合、胸腺アーキテクチャを復元する。いくつかの態様において、胸腺のアーキテクチャが、例として、胸腺の皮髄比率によって指し示されるとおり(図1Eを参照のこと)、MSCエキソソームを投与された対象において、MSCエキソソームを投与されていない対象と比較して、少なくとも20%増大される場合、胸腺アーキテクチャは、「復元された」とみなされる。例えば、胸腺のアーキテクチャが、例として、胸腺の皮髄比率によって指し示されるとおり(図1Eを参照のこと)、MSCエキソソームを投与された対象において、MSCエキソソームを投与されていない対象と比較して、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍またはそれ以上増大される場合、胸腺アーキテクチャは「復元された」とみなされてもよい。いくつかの態様において、胸腺のアーキテクチャが、例として、胸腺の皮髄比率によって指し示されるとおり(図1Eを参照のこと)、MSCエキソソームを投与された対象において、MSCエキソソームを投与されていない対象と比較して、20%、30%、40%、50%、70%、80%、90%、100%、2倍、5倍、10倍、50倍、100倍またはそれ以上増大される場合、胸腺アーキテクチャは「復元された」とみなされる。
【0076】
いくつかの態様において、MSCエキソソーム、またはMSCエキソソームを含む組成物は、対象へ投与される場合、胸腺発達を復元する。いくつかの態様において胸腺細胞の数(「胸腺細胞数」としても称される)が、MSCエキソソームを投与された対象において、MSCエキソソームを投与されていない対象と比較して、少なくとも20%増大される場合、胸腺発達は「復元された」とみなされる。例えば、胸腺細胞の数が、MSCエキソソームを投与された対象において、MSCエキソソームを投与されていない対象と比較して、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍またはそれ以上増大される場合、胸腺発達は、「復元された」とみなされてもよい。いくつかの態様において、胸腺細胞の数が、MSCエキソソームを投与された対象において、MSCエキソソームを投与されていない対象と比較して、20%、30%、40%、50%、70%、80%、90%、100%、2倍、5倍、10倍、50倍、100倍またはそれ以上増大される場合、胸腺発達は、「復元された」とみなされる。
【0077】
いくつかの態様において、MSCエキソソーム、またはMSCエキソソームを含む組成物は、対象へ投与される場合、胸腺中の胸腺細胞前駆体集団を復元する。いくつかの態様において、胸腺細胞前駆細胞の数が、MSCエキソソームを投与された対象において、MSCエキソソームを投与されていない対象と比較して、少なくとも20%増大される場合、胸腺中の胸腺細胞前駆体集団は、「復元された」とみなされる。例えば、胸腺細胞前駆細胞の数が、MSCエキソソームを投与された対象において、MSCエキソソームを投与されていない対象と比較して、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍またはそれ以上増大される場合、胸腺中の胸腺細胞前駆体集団は「復元された」とみなされる。いくつかの態様において、胸腺細胞前駆細胞の数が、MSCエキソソームを投与された対象において、MSCエキソソームを投与されていない対象と比較して、20%、30%、40%、50%、70%、80%、90%、100%、2倍、5倍、10倍、50倍、100倍またはそれ以上増大される場合、胸腺中の胸腺細胞前駆体集団は「復元された」とみなされる。
【0078】
いくつかの態様において、MSCエキソソーム、またはMSCエキソソームを含む組成物は、対象へ投与される場合、胸腺細胞アポトーシスを減らす(例として、高酸素への曝露によって誘発される)。「アポトーシス」は、生物の成長または発達の正常なおよび制御された部分として生じる細胞の死を指す。いくつかの態様において、アポトーシスを起こす胸腺細胞の数が、MSCエキソソームを投与された対象において、MSCエキソソームを投与されていない対象と比較して、少なくとも20%減らされる場合、胸腺細胞アポトーシスは、「減らされた」とみなされる。例えば、アポトーシスを起こす胸腺細胞の数が、MSCエキソソームを投与された対象において、MSCエキソソームを投与されていない対象と比較して、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、または100%減らされる場合、胸腺細胞アポトーシスは「減らされた」とみなされてもよい。いくつかの態様において、アポトーシスを起こす胸腺細胞の数は、MSCエキソソームを投与された対象において、MSCエキソソームを投与されていない対象と比較して、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、または100%減らされる場合、胸腺細胞アポトーシスは「減らされた」とみなされる。
【0079】
いくつかの態様において、MSCエキソソーム、またはMSCエキソソームを含む組成物は、対象へ投与される場合、髄質胸腺上皮細胞の成熟化を復元する。「髄質胸腺上皮細胞」は、中枢性寛容の確立において必須の役割を果たし、かつ、機能的な哺乳動物の免疫系の発達にとって関係のある、胸腺のユニークな間質細胞集団を表す。いくつかの態様において、髄質胸腺上皮細胞の数が、例として、自己免疫調節因子(AIRE、例として、図2Eを参照のこと)の発現レベルを評価することによって指し示されるとおり、MSCエキソソームを投与された対象において、MSCエキソソームを投与されていない対象と比較して、少なくとも20%増大される場合、髄質胸腺上皮細胞の成熟化は「復元された」とみなされる。例えば、髄質胸腺上皮細胞の数が、例として、自己免疫調節因子(AIRE、例として、図2Eを参照のこと)の発現レベルを評価することによって指し示されるとおり、MSCエキソソームを投与された対象において、MSCエキソソームを投与されていない対象と比較して、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍またはそれ以上増大される場合、髄質胸腺上皮細胞の成熟化は、「復元された」とみなされてもよい。いくつかの態様において、髄質胸腺上皮細胞の数が、例として、自己免疫調節因子(AIRE、例として、図2Eを参照のこと)の発現レベルを評価することによって指し示されるとおり、MSCエキソソームを投与された対象において、MSCエキソソームを投与されていない対象と比較して、20%、30%、40%、50%、70%、80%、90%、100%、2倍、5倍、10倍、50倍、100倍またはそれ以上増大される場合、髄質胸腺上皮細胞の成熟化は、「復元された」とみなされる。
【0080】
いくつかの態様において、MSCエキソソーム、またはMSCエキソソームを含む組成物は、本明細書に記載の任意の疾患を処置するための他の剤と一緒に用いられる。いくつかの態様において、MSCエキソソームおよび他の剤は、同じ組成物において製剤化される。いくつかの態様において、MSCエキソソームおよび他の剤は、別々の組成物において製剤化される。いくつかの態様において、MSCエキソソームおよび他の剤は、対象へ同時に投与される。いくつかの態様において、MSCエキソソームおよび他の剤は、個別に投与される。いくつかの態様において、MSCエキソソームは、他の剤の前に投与される。いくつかの態様において、MSCエキソソームは、他の剤の後に投与される。
【0081】
例えば、自己免疫疾患を処置するために、MSCエキソソームは、自己免疫疾患に対して治療効果を有することが知られる剤と一緒に用いられてもよい。かかる剤は、限定せずに、非ステロイド性抗炎症薬、グルココルチコイド、メトロトレキサート(metrotrexate)、レフルノミド、抗TNF製剤(例として、インフリキシマブ、アダリムマブ、ゴリムマブ、またはセルトリズマブペゴルなどの抗体)を含む。自己免疫疾患を処置するための薬物は、当該技術分野において知られており、例として、参照により本明細書に組み込まれる、Li et al., Front Pharmacol. 2017; 8: 460に記載のとおりである。
【0082】
いくつかの態様において、感染を処置するために、MSCエキソソームは、他の抗感染剤とともに投与される。抗感染剤の非限定例は、抗細菌剤(例として、抗生物質)、抗ウイルス剤、抗真菌剤、抗寄生虫剤を包含する。
【0083】
いくつかの態様において、がんを処置するために、MSCエキソソームは、他の抗がん剤とともに投与される。いくつかの態様において、抗がん剤は:小分子、オリゴヌクレオチド、ポリペプチド、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの態様において、抗がん剤は、化学療法剤である。いくつかの態様において、化学療法剤は:アクチノマイシン、オールトランス型レチノイン酸、アザシチジン、アザチオプリン、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、カルボプラチン、カペシタビン、シスプラチン、クロラムブシル、シクロホスファミド、シタラビン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキシフルリジン、ドキソルビシン、エピルビシン、エポチロン、エトポシド、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、イダルビシン、イマニチブ、イリノテカン、メクロレタミン、メルカプトプリン、メトトレキサート、ミトキサントロン、オキサリプラチン、パクリタキセル、ペメトレキセド、テニポシド、チオグアニン、トポテカン、バルルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、およびビノレルビンからなる群から選択される。
【0084】
本明細書に開示の技術の態様、利点、特色、および使用のいくつかは、以下の例からより完全に理解されるであろう。例は、本開示のいくつかの利点を図示し、かつ、特定の態様を記載することを意図しているが、本開示の全範囲を例示することを意図しておらず、結果的に、本開示の範囲を限定しない。
【0085】

気管支肺異形成症(BPD)は、酸素補充を必要とする早産児に影響を与える多因子性慢性肺疾患である。それは、制限された肺成長、および肺胞および血管の肺機能障害をもたらす発達によって特徴づけられる。今日まで、BPDは、酸素誘発性傷害を予防するまたは処置するための有効な治療的アプローチを欠く。先の研究は、MSCエキソソームの単回用量が、新生児高酸素症の実験モデルにおいて、肺形態を有意に改善し、肺線維症を減らし、および血管のリモデリングを促進したことを実証した。これらの効果は、主に、肺におけるマクロファージ表現型のモジュレーションを通じた、高酸素誘発性炎症の阻害を介したものであった
【0086】
新生児において、適応免疫系は、相対的に未発達であり、および適応免疫細胞の発達にとって不可欠な器官である胸腺における持続的な高酸素の効果は、未踏のままである。胸腺微小環境は、T細胞の発達およびレパートリーを導く一連の胸腺上皮細胞(TEC)から構成される三次元の細胞アーキテクチャである。新生児高酸素症の実験モデルにおいて、胸腺は、自己反応性T細胞の成熟化を退行させることおよび促進することが示されてきた。酸素誘発性胸腺退縮は、増大された胸腺細胞アポトーシスに起因することが示され、これは、二重陽性および二重陰性胸腺細胞の数および増殖における有意な低減を誘発した3,4
【0087】
実験的BPDモデルにおいてMSCエキソソームで得られた結果を受け、MSCエキソソーム処置が、胸腺アーキテクチャおよび胸腺細胞発達を復元することができるかどうかを、本明細書で調査された。
【0088】
エキソソームは、ヒトホウォートンゼリー由来のMSCの馴化培地から精製された。新生マウスは、高酸素(75%O)に曝露され、出生後の4日目(PN4)にMSC-エキソソームで処置され、およびPN7上で室内気に戻された。処置された動物および適切な対照は、PN7およびPN14上で収集された。胸腺構造は、胸腺アーキテクチャの組織病理学によって分析された。髄質上皮細胞は、免疫系が自己を攻撃することから防ぐための「自己免疫調節因子(AutoImmune REgulator)」として機能する転写因子である、AIREの発現について分析された。AIREタンパク質レベルは、以下の抗体:CD44-PE、CD25-FITC、CD3-BV510、CD4-PECy7およびCD8-PerCPCy5.5を用いるフローサイトメトリー分析による免疫蛍光および胸腺細胞数によって検出された。
【0089】
MSCエキソソームは、胸腺アーキテクチャおよび胸腺細胞数を対照レベルまで復元したことが示された(図1A~1D)。MSCエキソソーム処置はまた、酸素誘発性胸腺細胞アポトーシスを減らし、髄質TECの正常な成熟化を促進した(図2A~2D)。さらに、MSCエキソソーム処置は、胸腺中の胸腺細胞前駆体集団を復元した(図3A~3D)。最後に、MSCエキソソーム処置は、胸腺中のCD4+T細胞の発達を促進したが、CD8+T細胞の発達を阻害した(図4A~4G)。
【0090】
データはさらに、MSCエキソソームが高酸素へ曝露されたマウスの胸腺における細胞のアポトーシスを予防したこと(図5A~5C)、高酸素傷害後に髄質抗原提示細胞の表現型を復元したこと(図6A~6C)、および多臓器レベルで制御性T細胞の表現型を復元することを示す(7A~7D)。
【0091】
参考文献
1 Willis, G. R. et al. Mesenchymal Stromal Cell Exosomes Ameliorate Experimental Bronchopulmonary Dysplasia and Restore Lung Function Through Macrophage Immunomodulation. American journal of respiratory and critical care medicine, doi:10.1164/rccm.201705-0925OC (2017).
2 Takahama, Y., Ohigashi, I., Baik, S. & Anderson, G. Generation of diversity in thymic epithelial cells. Nature reviews. Immunology 17, 295-305, doi:10.1038/nri.2017.12 (2017).
3 Rosen, D. et al. Accelerated Thymic Maturation and Autoreactive T Cells in Bronchopulmonary Dysplasia. American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine 174, 75-83, doi:10.1164/rccm.200511-1784OC (2006).
4 Angusamy, S. et al. Altered thymocyte and T cell development in neonatal mice with hyperoxia-induced lung injury. Journal of perinatal medicine, doi:10.1515/jpm-2016-0234 (2017).
【0092】
例えば、背景、概要、詳細な説明、例、および/または参考文献のセクションで、本明細書で言及されるすべての刊行物、特許、特許出願、刊行物、およびデータベースエントリ(例えば、配列データベースエントリ)は、個々の刊行物、特許、特許出願、刊行物、およびデータベースエントリが、参照により本明細書に具体的かつ個別に組み込まれたかのように、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。矛盾する場合、本明細書の定義を含む本出願が支配するであろう。
【0093】
均等物および範囲
当業者は、本明細書に記載の態様の多くの均等物を認識する、または日常的な実験のみを用いて確認することができるであろう。本開示の範囲は、上記の説明に限定されるものではなく、むしろ、添付の特許請求の範囲で表されるものである。
【0094】
「a」、「an」、および「the」などの冠詞は、反対の指示がない限り、または文脈から明白でない限り、1つ以上を意味してもよい。グループの2つ以上のメンバー間の「または」を包含する請求項または記載は、反対の指示がない限り、または文脈から明白でない限り、1つ、1つより多い、またはすべてのグループメンバーが存在する場合に満足されると考えられる。2つ以上のグループメンバー間に「または」を含むグループの本開示は、グループのメンバーが厳密に1つ存在する態様、グループのメンバーが1つより多く存在する態様、およびグループのメンバーのすべてが存在する態様を提供する。簡潔にするために、これらの態様は本明細書では個々に説明されてきていないが、これらの態様の各々は本明細書に提供され、具体的にクレームまたはディスクレームされてもよいことが理解されるであろう。
【0095】
本開示は、請求項の1つ以上からの、または記載の1つ以上の関連部分からの1つ以上の限定、要素、条項、または記述用語が、別の請求項に導入される、すべての変形、組み合わせ、および順列を包含することを理解されたい。例えば、別の請求項に従属する請求項は、同じベースの請求項に従属する任意の他の請求項に見られる1つ以上の限界を包含するために、修正され得る。さらに、請求項が組成物を記載する場合、特に断りのない限り、または不一致または不整合が生じるであろうことが当業者に明らかであろう場合を除き、本明細書に開示される作製するまたは用いる方法のいずれかに従う、またはもしあれば、当該技術分野において知られている方法に従う、組成物を作製するまたは用いる方法が含まれることを理解されたい。
【0096】
要素がリストとして、例としてマーカッシュグループ形式で提示される場合、要素のすべての可能なサブグループもまた開示されており、任意の要素または要素のサブグループはグループから除去され得ることを理解されたい。「含む(comprising)」なる用語は、オープンであることが意図され、追加の要素またはステップの包含を許可することにもまた留意されたい。一般に、態様、物、または方法が特定の要素、特色、またはステップを含むものとされる場合、かかる要素、特色、またはステップからなるか、またはそれらから本質的になる態様、物、または方法もまた提供されることが理解されるべきである。簡潔にするために、それらの態様は本明細書では個々に説明されていないが、これらの態様のそれぞれは本明細書に提供され、具体的にクレームまたはディスクレームされてもよいことが理解されるであろう。
【0097】
範囲が与えられている場合、エンドポイントが含まれる。さらにまた、特に断りのない限り、または文脈および/または当業者の理解から明白でない限り、範囲として表される値は、いくつかの態様において述べられた範囲内の任意の特定の値(文脈で明確に指示されていない限り、範囲の下限の単位の10分の1まで)をとり得ることを理解されたい。簡潔にするために、各範囲の値は本明細書中では個々に説明されていないが、これらの値の各々は本明細書中で提供されること、および具体的にクレームまたはディスクレームされてもよいことが理解されるであろう。また、特に断りのない限り、または文脈および/または当業者の理解から明白でない限り、範囲として表される値は、所与の範囲内の任意の下位範囲をとり得ることを理解されたい(下位範囲のエンドポイントは範囲の下限の10分の1の単位と同じ精度で表される)。
【0098】
Webサイトが提供される場合、URLアドレスは、ブラウザで実行できないコードとして提供され、それぞれのWebアドレスの期間は丸括弧で囲まれる。実際のWebアドレスは丸括弧を含まない。
【0099】
さらに、本開示の任意の特定の態様は、請求項のいずれか1以上から明示的に除外されてもよいことを理解されたい。範囲が与えられている場合、範囲内の任意の値は、いずれか1以上の請求項から明示的に除外されてもよい。本開示の組成物および/または方法の任意の態様、要素、特色、用途、または側面は、任意の1以上の請求項から除外され得る。簡潔にするために、1以上の要素、特色、目的、または側面が除外される態様のすべては、本明細書に明示的に記載されていない。
図1A-1D】
図2A-2C】
図2D
図3A-3C】
図3D
図4A-4B】
図4C-4E】
図4F-4G】
図5A-5B】
図5C
図6A-6B】
図6C
図7A-7B】
図7C-7D】
【手続補正書】
【提出日】2024-04-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
胸腺機能不全に関連する疾患を処置する方法であって、有効量の間葉系幹細胞(MSC)エキソソームを、それを必要とする対象へ投与することを含む、前記方法。
【外国語明細書】