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  • 特開-膣リングを用いた膣の測定 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138249
(43)【公開日】2024-10-08
(54)【発明の名称】膣リングを用いた膣の測定
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/00 20060101AFI20241001BHJP
   A61B 10/00 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
A61B5/00 N
A61B5/00 102A
A61B10/00 N
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024092353
(22)【出願日】2024-06-06
(62)【分割の表示】P 2020555464の分割
【原出願日】2019-04-10
(31)【優先権主張番号】18166628.0
(32)【優先日】2018-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】18194033.9
(32)【優先日】2018-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】18194034.7
(32)【優先日】2018-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】515245343
【氏名又は名称】リ・ガリ・ベスローテン・フエンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】LI GALLI B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デ・ラート,ウィルヘルムス・ニコラース・ジェラルドゥス・マリア
(57)【要約】      (修正有)
【解決手段】ヒトまたは動物の体内に化合物の存在または生理学パラメータを測定するための方法は、化合物またはパラメータを測定するためのセンサを備えた膣内リングを膣粘膜と接触するように配置するステップと、センサによって生成された信号を記録するステップとを含む。さらに、ヒトまたは動物体内に化合物を投与および測定するための方法が開示される。この方法は、1つ以上の生物活性化合物を投与するステップと、1つ以上の生物活性化合物を投与することによって形成された同様および/または別の化合物の存在および/または濃度および/または生理学パラメータを同時におよび/またはその後に測定するステップとを含み、測定は、膣粘膜と接触するセンサを用いて行われる。測定は膣粘膜と接触するセンサを用いて行われる。
【効果】非侵襲的にグルコースレベルを測定することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトまたは動物の体内に化合物の存在または生理学パラメータを測定するための方法であって、
前記化合物またはパラメータを測定するためのセンサを備えた膣内リングを膣粘膜と接触するように配置するステップと、
前記センサによって生成された信号を記録するステップとを含む、方法。
【請求項2】
前記膣リングは、膣滲出液に密接する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
測定される前記化合物は、グルコース、ラクテート、エストラジオール、プロゲステロン、黄体形成ホルモン(LH)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、アンドロステンジオン、コルチゾール、トリヨードチロニン(T3)、チロキシン(T4)、ヨードチラミン(T1a)、チロナミン(T0a)、メラトニン、トロポニン、サイトカイン、テストステロン、デヒドロエピアンドロステロンから選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記生理学パラメータは、pH、膀胱収縮のような筋肉活動、骨盤底筋の状態または運動性から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
個体体内の血液グルコースおよび/または間質液グルコース値を決定するための方法であって、
請求項1から3のいずれか一項に記載の方法を含み、
前記センサから得られた値を基準値に相関することによって、対応の血液グルコースおよび/または間質液グルコース値を決定するステップを含む、方法。
【請求項6】
ヒトまたは動物の体内に化合物の投与および測定を併せて実行するための方法であって、
1つ以上の生物活性化合物を投与するステップと、
前記1つ以上の生物活性化合物を投与することによって形成された同様および/または別の化合物の存在および/または濃度および/または生理学パラメータを同時におよび/またはその後に測定するステップとを含み、
前記測定は、膣粘膜と接触するセンサを用いて行われる、方法。
【請求項7】
前記センサは、膣内リングに設けられる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記1つ以上の生物活性化合物の投与は、前記膣内リングによって行われる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
FSHまたはパルスGnRHを投与する場合、エストラジオールまたはエストラジオール/LHを測定する、請求項6~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
LHまたはHCGを投与する場合、プロゲステロンを測定する、請求項6~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
インスリンまたはグルカゴンを投与する場合、グルコースを測定する、請求項6~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
抗うつ薬または抗精神病薬を投与する場合、同様の薬物を測定する、請求項6~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記センサから得られた値は、スマートフォンなどの外部装置に送信される、請求項1~12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトまたは動物の体内に化合物の存在または生理学パラメータを測定するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
診断および治療のために、ヒトまたは動物の体内に、例えば、血液、血漿、尿、便および精液などのサンプル、呼吸または皮膚に特定の化合物の存在を決定することは、重要である。これらの全てのサンプルに対して、異なる技術が使用される。これらの技術のいくつかは、例えば採血するするため、侵襲的である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
例えば、糖尿病患者は、皮膚を穿刺するランセットまたは自動化指先穿刺装置を使用して、試験用の1滴の血液を採血することができる。これによって、採血のために病院に行かなければならないことに比べて、自宅で血糖を自己監視することができ、大きな改善が見られるが、患者にとってまだ負担になっている。頻繁な穿刺は、疼痛を引き起こし、コンプライアンスは、最適ではない。
【0004】
一日中グルコースレベルをリアルタイムで測定する方法の1つは、連続的グルコース測定(CGM)である。小さなグルコースセンサを皮膚下に挿入することによって、皮下脂肪組織の間質液中のグルコースレベルを測定する。このグルコースセンサは、監視装置に情報を送信するための送信機に接続される。針を用いてCGMのセンサを皮膚下に挿入する必要があるため、この方法は、侵襲的があり、完全に無痛ではない。他のセンサは、外科処置を介して皮膚下に挿入する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明をもたらした研究において、非常に緻密な微小循環領域の真上に位置する膣粘膜壁は、(グルコースなどの)生化学データおよび多くの他の化合物(例えば、LHおよびエストラジオール)を容易に通過させることができ、これらは、膣壁と接触するセンサを用いて測定できることを見出した。例えば膣内リングを介して、膣壁と接触するセンサを配置することは、外科処置を必要せず、患者自身で行うことができ、非侵襲的である。
【0006】
本発明をもたらした研究は、最初にグルコースに対して行った。膣滲出液がグルコースを含むことは、まだ医学文献に報告されていない。本発明の発明者は、健康な志願者からの直接なサンプルによって、膣滲出液が4~6mmol/Lのグルコースを含むことを初めて確認した。次の課題は、このグルコースレベルが毛細管血液および間質液中のグルコースレベルおよび血液グルコースの変動を反映するか否かを確認することである。
【0007】
これを調べるために、CGMによるグルコース監視結果、指先穿刺によるグルコース監視結果、および膣内リングに取り付けられたグルコースセンサによるグルコース監視結果を比較した。比較した結果、膣内リングとグルコースセンサとを含む膣内装置は、膣壁から安定且つ反復可能な信号を測定できることが分かった。結果によって、得られた膣液グルコースおよび血糖グルコースの同様のパターンが観察され、膣液グルコースと血糖グルコースとが相関することを明らかに示した。膣滲出液から得られたグルコース監視結果の全ての値は、CGMの参照として使用されたコンセンサスエラーグリッド(Consensus Error Grid)のA区域にあるため、臨床使用の基準を満たした。
【0008】
また、膣滲出液から、黄体形成ホルモン(LH)およびエストラジオール(E2)を測定できることが分かった。
【0009】
したがって、本発明は、ヒトまたは動物の体内に化合物の存在を測定するための方法に関する。この方法は、化合物またはパラメータを測定するためのセンサを備えた膣内リングを膣粘膜と接触するように配置するステップと、センサによって生成された信号を記録するステップとを含む。好適には、膣内リングは、膣滲出液と接触する。膣内リングの利点は、外部から装置を見えず、配線を備える外部装置に比べて着用者を妨害しないことである。
【0010】
診断用膣リングは、従来技術において公知であるが、温度監視のみに使用されている。このようなリングは、シリコーンエラストマーに埋め込まれた温度ロガーを含む。膣粘膜または滲出液から化合物を測定することは、まだ知られていない。
【0011】
本発明は、W02017/060299に開示された膣内リングを用いて実施することができる。このリングは、バッテリと、センサを制御および処理するための電子機器との両方を収容する十分な大きさを有する。したがって、このリングは、例えばアンテナを介してセンサから送信されたデータを受信するための外部装置を除き、外部素子を必要せず機能することができる独立型装置である。したがって、膣内診断装置は、外部から見えず、身体の内部または外部に追加の装置、例えば、送信機または監視装置を配置する必要がない。好適には、データは、スマートフォンアプリに直接に送信される。図5は、センサを備えないリングの構成を示している。
【0012】
膣内リングは、2つの機能、すなわち、診断のために1つ以上の化合物を測定する機能と、治療のために治療化合物を放出する機能とを有することができる。両方の機能を1つの装置に組み合わせることができる。化合物の測定値を用いて、膣リングの一部であるリザーバから治療薬の放出を制御することができる。
【0013】
いずれにせよ、診断機能を果たすために、リングは、化合物または他の目標パラメータを測定するためのセンサを含む必要がある。また、測定データを送信するための手段を含む必要がある。治療機能を果たすために、装置は、治療化合物を収容するためのリザーバまたは容器、治療化合物を放出するためのポンプ、および放出を制御するための手段を含む必要がある。制御手段は、例えば、測定手段と相互作用することによって、治療化合物の放出プロフィールを決定することができる。
【0014】
リング内のセンサの位置は、膣血管床に近いことが好ましい。図5において、この位置は、参照番号101および102に対応する。これによって、血管と膣滲出液との間の化合物の交換が最適になり、より精確な測定をもたらす。
【0015】
好ましい実施形態において、センサは、スマートフォンアプリと接続している。このアプリは、測定結果を示し、化合物濃度の変化を監視することができる。このアプリを用いて、リングの放出機能を制御することもできる。
【0016】
本発明を用いて、膣滲出液に存在する全ての化合物を測定することができる。特に、本発明は、グルコース、ラクテート、エストラジオール、プロゲステロン、黄体形成ホルモン(LH)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、アンドロステンショナル、コルチゾール、トリヨードチロニン(T3)、チロキシン(T4)、ヨードチラミン(T1a)、チロナミン(T0a)、メラトニン、テストステロン、デヒドロエピアンドロステロン、トロポニン、サイトカインなどの存在を決定することができる。また、この装置を用いて、pH、膀胱収縮のような筋肉活動、骨盤底筋状態または運動性などの他の生理学パラメータを測
定することができる。
【0017】
本発明を用いて、測定値を経時的に記録することによって、個人データプロファイルを形成することができる。この個人データプロファイルは、患者状態の監視、薬物またはライフスタイルの調整に重要である。
【0018】
診断リングは、ラボオンチップ(lab-on-a-chip)を備えた場合、投与した薬物の診断
誘導体を測定すること(例えば、インスリン/グルカゴンを投与した場合、グルコースを測定すること、FSHまたはパルスGnRHを投与した場合、エストラジオールを測定すること、HCGを投与した場合、プロゲステロンを測定すること、ブロモクリプチンを投与した場合、プロラクチンを測定すること)によって、または公知の非コンプライアントに摂取する抗うつ薬および抗精神病薬などの薬物を送達した場合、当該薬物のレベルを測定することによって、治療化合物の薬物送達結果を同時に測定することができる。膣リングは、100%のコンプライアンスを達成することができる。
【0019】
各々の化合物を測定するために、別個のセンサまたは別個のセンサ機能を設ける必要がある。一実施形態において、1つの膣リングに異なるセンサを組み合わせることができる。1つのセンサに異なるセンサ機能を組み合わせることもできる。
【0020】
また、本発明は、個体体内の血液グルコースおよび/または間質液グルコース値を決定するための方法に関する。この方法は、ヒトまたは動物の体内に化合物の存在を測定するための方法を実施することを含み、化合物を測定するためのセンサを備えた膣リングを膣粘膜と接触するように配置するステップと、センサによって生成された信号を記録するステップと、センサから得られた値を基準値に相関することによって、対応の血液グルコースおよび/または間質液グルコース値を決定するステップを含む。
【0021】
さらに、本発明は、ヒトまたは動物の体内に化合物を投与および測定するための方法に関する。この方法は、1つ以上の生物活性化合物を投与するステップと、1つ以上の生物活性化合物を投与することによって形成された同様および/または別の化合物の存在および/または濃度および/または生理学パラメータを同時におよび/またはその後に測定するステップとを含み、測定は、膣粘膜と接触するセンサを用いて行われる。
【0022】
好適には、センサは、膣内リングに設けられ、1つ以上の生物活性化合物の投与は、膣内リングによって行われる。
【0023】
一実施形態において、FSHまたはパルスGnRHを投与する場合、エストラジオールまたはエストラジオール/LHを測定する。別の実施形態において、LHまたはHCGを投与する場合、プロゲステロンを測定する。さらなる実施形態において、インスリンまたはグルカゴンを投与する場合、グルコースを測定する。
【0024】
また、この方法は、膣内リングによって患者に投与された抗うつ薬または抗精神病薬の測定にも適している。
【0025】
以下の実施例を用いて本発明をさらに説明する。しかしながら、これらの実施例は、例示を意図したものであり、本発明を限定するものではない。
【0026】
以下の実施例において、以下の図面が参照される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】グルコースセンサを備えたリングとカテーテルとの複合装置(カテーテルは、NovioSense製塗料でコーティングされ、外科スチール固定材料でリングに固定されている)を示す図である。
図2A】膣液グルコース対血液グルコースを示す図である。
図2B】膣液グルコース対血液グルコースを示す図である。
図3A】膣液グルコース対血液グルコースおよび間質液グルコースを示す図である。
図3B】膣液グルコース対血液グルコースおよび間質液グルコースを示す図である。
図4】予備臨床試験においてLiGalli/NovioSense膣内装置から収集したクラークエラーグリッド(左)およびコンセンサスエラーグリッド(右)を示す図である。
図5】膣内リング装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
[実施例1]
健康な志願者の膣滲出液中のグルコースの測定
概要
この予備研究は、ボーラス溶液を用いてセンサ近くの膣壁を洗浄した場合に、グルコースセンサがグルコース濃度の変化を測定できるか否かを調べるために実施された。また、膣壁と接触するように装置を配置した場合に、膣内からグルコースを測定できるか否かを調べることも重要であった。
【0029】
このように得られたグルコースセンサを備えたリング装置を、43歳の健康な女性志願者の膣壁と接触するように膣内に約1時間20分(71分)留置した。毛管血液グルコースレベルは、指先穿刺グルコース試験において、市販のBayerグルコース測定器から得た
。この予備研究において、血糖値を3回測定した。カニューレを通して、(各々2mLの)グルコースボーラス溶液(5mM、10mMおよび20mM)を用いて膣内を洗浄した。
【0030】
材料および方法
装置をNovioSense製塗料でコーティングし、外科用スチール材料でLiGalli製シリコー
ン膣内リングに取り付け、固定した。コーティングおよび/または組み立ての後、機能化された装置を冷蔵庫に保管した。
【0031】
装置のコーティングおよび組み立ては、無菌室で行った。
異なる濃度のグルコース溶液は、20mMグルコース溶液を生理食塩水(0.9%NaCl溶液)と混合することによって調製した。必要濃度のグルコース溶液を得るために、以下の割合の溶液を混合した。
【0032】
結果
この試験は、43歳の健康な女性志願者に対して行った。まず、0~10mMのグルコース溶液を用いて、カテーテルを備えたLiGalli製リング装置を較正した。較正後、装置
は、センサが膣壁と接触するように、婦人科医師によって膣内の正しい位置に挿入された。
【0033】
挿入された直後に、センサからの第1の信号を記録した。同時に、血液グルコース値を記録した。安定した線形信号が観察された。
【0034】
その後、カニューレを通して2mLの0.9%生理食塩水で洗浄し、信号の表示を記録した。
【0035】
次に、志願者が2錠のデキストロース錠剤を服用し、約10分間を待った後、グルコースセンサリング装置を用いて、信号の表示を再び監視した。同時に、毛細管血液グルコース値を記録した。
【0036】
臨床医の要求に応じてデキストロースを服用し、10分間を待った後に記録した測定値には、膣からの信号の増加は、観察されなかった。
【0037】
したがって、5mM、10mMおよび20mMのグルコースボーラス溶液2mLを用いてセンサ近くの膣壁を洗浄した場合に、装置がグルコース濃度の変化を測定できるか否かを調べるために、「2回目試験」を行った。
【0038】
5mMおよび10mMグルコース濃度の場合、測定された電流の増加があった。しかしながら、20mMグルコース濃度の場合、電流の増加が観察されなかった。最も可能な理由は、基質のレベルがグルコース濃度の増加に連れて高くなるため、20mMグルコース濃度の場合、基質のレベルが飽和レベルに達したからである。したがって、20mMグルコース濃度は、測定には高すぎる。また、センサがグルコース濃度の増加に対して即時応答を有するため、装置は、グルコースの変化を測定することができると断定することができる。
【0039】
膣液グルコースおよび血液グルコースに対する装置信号応答をプロットする。5mMおよび10mMグルコースボーラス溶液で洗浄するまで、装置の信号は、40分まで徐々に減少したが、平均信号は、比較的に安定していた。一方、測定された血液グルコース値は、増加したが、血液と膣分泌液との間の遅延時間に関するデータは、入手できない。図2Aおよび図2Bは、データを示す。しかしながら、この場合、得られた電流値は、較正測定値から得られたデータを用いて再計算されたものであった。まず、最初のセンサ較正から2つの勾配を取得し、次に、勾配を用いて膣測定値を再計算する。
【0040】
取得したデータから、最初に膣液および毛細管血液から測定されたグルコース値は、ほぼ同様であることが分かった。
【0041】
上述したように、LiGalli製カテーテル-リング装置は、挿入される前におよび膣から
除去された後に、2回較正された。較正曲線は、0~10mMのグルコース範囲に得られた。
【0042】
結論
インビボ予備研究は、グルコースセンサを備えたリング装置が機能することができ、膣液から安定且つ明確な応答を得ることができることを実証した。グルコース濃度(5mMおよび10mM)の増加に対してセンサの即時応答が観察されたため、装置は、グルコース濃度の変化を測定することができる。
[実施例2]
糖尿病患者の膣滲出液中のグルコースの決定
概要
この例の目的は、膣滲出液中のグルコースを測定する膣内装置の能力および有効性を調べることであった。また、この研究は、膣滲出液からサンプリングされたグルコースが、毛細管血液および間質液中のグルコースレベルを反映するか否かを調べるために行われた。
【0043】
使用された膣内装置は、W02017/060299(LiGalli社)に開示された膣内
リングとEP2699690(NovioSense社)に記載されたグルコースセンサ技術との組み合わせである。リングおよび測定センサは、膣壁に対して直接且つフレキシブルに接触
するように配置され、組織自体を貫通しない。したがって、装置は、分類上非侵襲的である。
【0044】
診断用カテーテルを改造して、NovioSense製塗料でコーティングした後、LiGalli製リ
ング装置(図1)に取り付けた。このように得られたリング装置を、インスリン依存性糖尿病(I型)と診断された23歳の女性志願者の膣壁と接触するように膣内に4時間(240分)留置した。装置を膣内に挿入する前に予め較正した。
【0045】
対象はまた、間質液からのグルコース値を測定するためのCGM装置(Abbott FreeStyle Libre)を持っていた。毛細管血液は、指先穿刺グルコース試験から得られ、グルコース測定器を用いて測定された。血糖および間質液糖を15分ごとに測定した。電流は、グルコースセンサを用いて約3分ごとに検出した。
【0046】
材料および方法
装置のコーティングおよび組み立ては、無菌室で行った。
【0047】
LiGalli製カテーテル-リング装置は、以下のように組み立てられた。カテーテルをNovioSense製塗料でコーティングし、外科用スチール材料でLiGalli製シリコーン膣内リングに取り付け、固定した。コーティングおよび/または組み立ての後、機能化された装置を冷蔵庫に保管した。
【0048】
較正は、0~10mMのグルコース濃度範囲に行った。生理食塩水で20%グルコース溶液を希釈することによって、20mMグルコース溶液を調製した。異なるグルコース濃度溶液は、20mMグルコース溶液を生理食塩水(0.9%NaCl溶液)と混合することによって調製された。
【0049】
結果および考察
この試験は、インスリン依存性糖尿病(I型)と診断された23歳の女性志願者に対して行った。較正後、装置は、センサが膣壁と良好に接触するように、婦人科医師によって膣内の正しい位置に挿入された。同時に、15分ごとに毛管血液グルコース値および間質グルコース値を監視した。
【0050】
膣内装置を用いて安定した信号を記録できることが分かった。
測定してから30分後、患者は、インスリンを注射し、昼食を食べた。血液グルコースおよび間質液グルコースの測定値の連続的な増加は、それぞれ45分および60分後観察されたが、膣内センサの電流応答の緩やかな上昇は、75分から検出された。測定開始98分後、患者は、6錠のデキストロース錠剤を服用した。その結果、3つ全ての装置は、見掛けピークに到達するまで測定値の緩やかな増加を示した。ピークに到達した後、測定値は、連続的に低下する。
【0051】
血液グルコースおよび間質液グルコースの監視に比べて、膣内装置を用いてより頻繁に(3分ごとに)電流を記録した。
【0052】
3つのグラフは全て、同様のパターンを示す。しかしながら、ピークの到達時間は、異なった。このことは、血液グルコース、間質液グルコースおよび膣液グルコースの間に遅延があり得ることを示す。
【0053】
約180分までに膣内装置を用いて測定した電流が、指先穿刺によって検出された血液グルコースと同様のパターンを有することは、観察された。30~50分の間に血液グルコースと膣液グルコースとの間に遅延がある可能性が最も高い。15分前後に間質液グル
コースと膣液グルコースとの間に遅延がある可能性がある。
【0054】
得られた電流値を再計算した。図3Aは、膣内装置によって検出された膣液グルコース対血液グルコースおよび間質液グルコースを示す。
【0055】
取得したデータから、膣液グルコースは、血液グルコースおよび間質液グルコースと同様の連続的な増加を有する。膣液グルコースは、120分前後にピークに到達した。この時点では、血液グルコースの測定値は、10.9mMであった。
【0056】
クラークエラーグリッド(Clarke error grid)をプロットして、血液グルコース値を
測定する膣内センサの能力を判断した。クラークエラーグリッドは、臨床決定に関するセンサの精度を図示および計算するためのグラフィカル方法である。センサから得られた値は、ポイントオブケア装置から得られ、ゴールドスタンダードとして知られている血液グルコースに対してプロットされる。クラークエラーグリッドに使用されたグラフは、異なる領域に分割され、アルファベット文字A~Eで示される。A領域およびB領域に含まれる点は、有効な測定値と見なされる。これは、その値に基づいた治療決定、すなわち、インスリンを投与するか否かという決定が正しいであることを意味する。C領域、D領域およびE領域に含まれるデータ点は、患者に異なるレベルの潜在的な危害を与える無効または不正確な治療決定を示す。Cは、患者に対して低いリスクの誤った決定であり、Eは、高いリスクである。予備実験から得られたクラークエラーグリッドおよびコンセンサスエラーグリッドは、図4に示される。
【0057】
データを収集する精度の国際要件は、ISO15197:2003から得られる。これによって、臨床に許容されるデータの95%は、A領域またはB領域に含まれる。図4に示された両方のエラーグリッドは、センサが次の開発段階に進むのに十分な精度を有することを証明した。
【0058】
結論
この実施例は、膣内装置が、最大4.5時間まで、膣内から安定且つ反復可能な信号を測定できることを示した。留意すべきことは、膣粘膜壁に対して配置されたグルコースセンサが安定するのに時間(約30分)を必要とすることである。
【0059】
結果から、膣液グルコースおよび血糖グルコースの同様のパターンを観察することができ、膣液グルコースと血糖グルコースとの間に相関があることを示した。得られたデータの精度は、クラークエラーグリッドおよびコンセンサスエラーグリッドの両方に示される場合、A領域およびB領域に含まれる。このことは、センサをさらに研究する見込みが高いことを示している。
[実施例3]
膣滲出液からエストラジオールおよびLHの測定
小さな綿棒で膣粘膜を掻き取った。続いて綿棒を遠心分離し、1μlのサンプル液を回収した。この少量のサンプル液からエストラジオールの濃度を測定するために、PBS溶液を添加し、エストラジオールの存在を測定した。サンプルは、0.082nmol/Lのエストラジオールを含むことが分かった。サンプルを50~75倍に希釈した。サンプル量が非常に少なく、希釈倍数が高いため、得られた値は非常に精確ではない可能性があるが、いずれにせよ、膣滲出液からエストラジオールを測定できることを証明した。
【0060】
同様の方法で、LH(黄体形成ホルモン)を分析した。1μlのサンプルを199μlのPBSに加えた。LHの濃度は、200×0.234=484U/Lであった。同様のサンプルにおいて、エストラジオール(E2)の濃度は、200×0.103=206nmol/Lであった。上述と同様に、使用したサンプル法による測定の精度には、同様の
欠点がある。
【0061】
この実施例は、膣滲出液からLHおよびエストラジオールを測定できることを示している。
【0062】
膣滲出液中のステロイドホルモンの濃度は、血漿中のホルモン濃度より高く、血漿中濃度よりも卵巣機能を表すことができる。血漿に比べて、膣組織から5~10倍高いエストラジオール濃度を測定した(Wiegerinck MA etal., J Clin Endocrinol Metab, 56(1): 76-86 (1983))。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2024-07-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトまたは動物の体内に化合物の存在または生理学パラメータを測定するための方法であって、
前記化合物またはパラメータを測定するためのセンサを備えた膣内リングを膣粘膜と接触するように配置するステップと、
前記センサによって生成された信号を記録するステップとを含む、方法。
【外国語明細書】