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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138262
(43)【公開日】2024-10-08
(54)【発明の名称】変異体ポア
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/435 20060101AFI20241001BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20241001BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20241001BHJP
   C12N 15/63 20060101ALN20241001BHJP
   C12N 1/21 20060101ALN20241001BHJP
   C12Q 1/6869 20180101ALN20241001BHJP
【FI】
C07K14/435 ZNA
C12N15/12
C12M1/00 A
C07K14/435
C12N15/63 Z
C12N1/21
C12Q1/6869 Z
【審査請求】有
【請求項の数】24
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024095022
(22)【出願日】2024-06-12
(62)【分割の表示】P 2022041806の分割
【原出願日】2017-04-06
(31)【優先権主張番号】1605899.2
(32)【優先日】2016-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1608274.5
(32)【優先日】2016-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】511252899
【氏名又は名称】オックスフォード ナノポール テクノロジーズ ピーエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】ジャヤシンゲ,ラクマル
(72)【発明者】
【氏名】ブルース,マーク
(72)【発明者】
【氏名】マクニール,ルーク
(72)【発明者】
【氏名】ネイサニ,ラミッツ イクバール
(72)【発明者】
【氏名】シング,プラティク ラジ
(72)【発明者】
【氏名】ウッド,ネイル ロジャー
(72)【発明者】
【氏名】ヤング,ステファン ロバート
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ライセニンの変異体形態、およびライセニンの変異体形態を使用した標的分析物を特徴付ける方法を提供する。
【解決手段】特定のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するバリアントを含む変異体ライセニンモノマーであって、前記バリアントが、ポアを形成することが可能であり、前記特定のアミノ酸配列のS49において修飾を含む、変異体ライセニンモノマーを提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号2に示されるアミノ酸配列のバリアントを含む変異体ライセニンモノマーであ
って、前記バリアントが、以下の位置、K37、G43、K45、V47、S49、T5
1、H83、V88、T91、T93、V95、Y96、S98、K99、V100、I
101、P108、P109、T110、S111、K112、及びT114のうちの1
つ以上における修飾を含む、変異体ライセニンモノマー。
【請求項2】
前記バリアントが、以下の位置、T91、V95、Y96、S98、K99、V100
、I101、及びK112のうちの1つ以上における修飾を含む、請求項1に記載の変異
体モノマー。
【請求項3】
前記修飾が、セリン(S)またはグルタミン(Q)による置換である、請求項2に記載
の変異体モノマー。
【請求項4】
前記バリアントが、以下の置換、T91S、V95S、Y96S、S98Q、K99S
、V100S、I101S、及びK112Sのうちの1つ以上を含む、請求項2または3
に記載の変異体モノマー。
【請求項5】
前記バリアントが、以下の位置、K37、G43、K45、V47、S49、T51、
H83、V88、T91、T93、Y96、S98、K99、P108、P109、T1
10、S111、及びT114のうちの1つ以上における修飾を含む、請求項1に記載の
変異体モノマー。
【請求項6】
前記修飾が、アスパラギン(N)、トリプトファン(W)、セリン(S)、グルタミン
(Q)、リジン(K)、アスパラギン酸(D)、アルギニン(R)、トレオニン(T)、
チロシン(Y)、ロイシン(L)、またはイソロイシン(I)による置換である、請求項
5に記載の変異体モノマー。
【請求項7】
前記バリアントが、以下の置換、K37N/W/S/Q、G43K、K45D/R/N
/Q/T/Y、V47K/S/N、S49K/L、T51K、H83S/K、V88I/
T、T91K、T93K、Y96D、S98K、K99Q/L、P108K/R、P10
9K、T110K/R、S111K、及びT114Kのうちの1つ以上を含む、請求項5
または6に記載の変異体モノマー。
【請求項8】
前記バリアントが、以下の位置の組み合わせのうちの1つ以上における修飾を含む、請
求項5~7のいずれか1項に記載の変異体モノマー:
【表16】
【請求項9】
前記バリアントが、以下の置換の組み合わせのうちの1つ以上を含む、請求項8に記載
の変異体モノマー:
【表17】
【請求項10】
配列番号2に示されるアミノ酸配列のバリアントを含む変異体ライセニンモノマーであ
って、前記バリアントが、以下の置換のうちの1つ以上を含む、変異体ライセニンモノマ
ー:
D35N/S、
S74K/R、
E76D/N、
S78R/K/N/Q、
S80K/R/N/Q、
S82K/R/N/Q、
E84R/K/N/A、
E85N、
S86K/Q、
S89K、
M90K/I/A、
E92D/S、
E94D/Q/G/A/K/R/S/N、
E102N/Q/D/S、
T104R/K/Q、
T106R/K/Q、
R115S、
Q117S、及び
N119S。
【請求項11】
前記バリアントが、置換E94D/Q/G/A/K/R/S、S86Q、及びE92S
のうちの1つ以上を含む、請求項10に記載の変異体モノマー。
【請求項12】
前記バリアントが、以下の置換のうちの1つ以上を含む、請求項10に記載の変異体モ
ノマー:
D35N/S、
S74K/R、
E76D/N、
S78R/K/N/Q、
S80K/R/N/Q、
S82K/R/N/Q、
E84R/K/N/A、
E85N、
S86K、
S89K、
M90K/I/A、
E92D、
E94D/Q/K/N、
E102N/Q/D/S、
T104R/K/Q、
T106R/K/Q、
R115S、
Q117S、及び
N119S。
【請求項13】
前記バリアントが、以下の置換の組み合わせのうちの1つ以上を含む、請求項12に記
載の変異体モノマー:
【表18】

【請求項14】
配列番号2に示されるアミノ酸配列のバリアントを含む変異体ライセニンモノマーであ
って、前記バリアントが、以下の位置の組み合わせのうちの1つ以上における変異を含む
、変異体ライセニンモノマー:
【表19】
【請求項15】
前記バリアントが、以下の置換の組み合わせのうちの1つ以上を含む、請求項14に記
載の変異体モノマー:
【表20】

【請求項16】
配列番号2に示されるアミノ酸配列のバリアントを含む変異体ライセニンモノマーであ
って、前記バリアントが、以下の置換の対のうちの1つ以上を含む、変異体ライセニンモ
ノマー:
E84R/E94D、
E84K/E94D、
E84N/E94D、
E84A/E94Q、
E84K/E94Q、及び
E94Q/D121S。
【請求項17】
前記モノマーが、任意の数及び任意の組み合わせの、請求項1~16のいずれか1項に
定義される修飾及び/または置換を含む、請求項1~16のいずれか1項に記載の変異体
ライセニンモノマー。
【請求項18】
配列番号2に示される配列のバリアントを含む変異体ライセニンモノマーであって、前
記バリアントにおいて、(a)配列番号2の34位~70位のアミノ酸に対応するアミノ
酸のうちの2、4、6、8、10、12、14、16、18、または20個が欠失されて
おり、(b)配列番号2の71位~107位のアミノ酸に対応するアミノ酸のうちの2、
4、6、8、10、12、14、16、18、または20個が欠失されている、変異体ラ
イセニンモノマー。
【請求項19】
(a)及び(b)において同じ数のアミノ酸が欠失されている、請求項18に記載の変
異体モノマー。
【請求項20】
欠失されている前記アミノ酸の前記位置が、表1もしくは2の1行または表1及び/も
しくは2の2行以上に示されている、請求項18または19に記載の変異体。
【請求項21】
配列番号2中の以下のアミノ酸に対応するアミノ酸が欠失されている、請求項18~2
0のいずれか1項に記載の変異体モノマー:
(i)N46/V47/T91/T92、または
(ii)N48/S49/T91/T92。
【請求項22】
前記バリアントが、適切な場合、請求項1~17のいずれか1項に定義される前記修飾
及び/または置換のうちのいずれかをさらに含む、請求項18~21のいずれか1項に記
載の変異体モノマー。
【請求項23】
前記バリアントが、
配列番号2の以下の位置、(a)E84、E85、E92、E97、及びD126、(
b)E85、E97、及びD126、もしくは(c)E84及びE92のうちの1つ以上
における置換、または
E84Q/E85K/E92Q/E97S/D126Gのうちの1つ以上、もしくは、
適切な場合、E84Q/E85K/E92Q/E97S/D126Gの全てにおける置換
、をさらに含む、請求項1~22のいずれか1項に記載の変異体モノマー。
【請求項24】
前記バリアントが、以下の置換の組み合わせのうちの1つを含む、請求項23に記載の
変異体モノマー:
E84Q/E85K/E92Q/E94D/E97S/D126G、
E84Q/E85K/E92Q/E94Q/E97S/D126G、または
E84Q/E85K/E92Q/E94D/E97S/T106K/D126G。
【請求項25】
ポアを形成することが可能である、請求項1~24のいずれか1項に記載の変異体ライ
セニンモノマー。
【請求項26】
前記バリアントが、配列番号2に示される配列と少なくとも70%同一であるアミノ酸
配列を含む、請求項1に記載の変異体ライセニンモノマー。
【請求項27】
ライセニンに由来する2つ以上の共有結合したモノマーを含む構造体であって、前記モ
ノマーのうちの少なくとも1つが請求項1~26のいずれか1項に定義される変異体ライ
セニンモノマーである、構造体。
【請求項28】
前記2つ以上のモノマーが、同じであるか、または異なる、請求項27に記載の構造体
【請求項29】
前記2つ以上のモノマーが、遺伝的に融合されている、請求項27または28に記載の
構造体。
【請求項30】
請求項1~26のいずれか1項に記載の変異体ライセニンモノマーまたは請求項27に
記載の構造体をコードする、ポリヌクレオチド。
【請求項31】
請求項1~26のいずれか1項に記載の少なくとも1つの変異体ライセニンモノマー及
び/または請求項27~29のいずれか1項に記載の少なくとも1つの構造体を含む、ポ
ア。
【請求項32】
請求項1~26のいずれか1項に記載の6~12個の変異体ライセニンモノマーを含む
ホモオリゴマーポアである、請求項31に記載のポア。
【請求項33】
請求項1~26のいずれか1項に記載の少なくとも1つの変異体ライセニンモノマーを
含むヘテロオリゴマーポアである、請求項31に記載のポア。
【請求項34】
標的分析物を特徴付ける方法であって、
(a)前記標的分析物を、請求項31~33のいずれか1項に記載のポアと、前記標的
分析物が前記ポアを通って移動するように接触させることと、
(b)前記分析物が前記ポアに対して移動する間に、1つ以上の測定値であって、前記
標的分析物の1つ以上の特徴を示す、測定値をとり、それによって前記標的分析物を特徴
付けることと、を含む、方法。
【請求項35】
(i)前記ポアが、チャンバを2つの区画に分離する膜内に存在し、各区画が水溶液を
含み、
(ii)ステップ(a)が、1つの区画に前記分析物を提供することを含み、
(iii)ステップ(b)が、前記膜にわたって電位差を印加することを含み、及び/
または
(iv)ステップ(c)が、前記膜にわたる電流を測定することを含む、請求項34に
記載の方法。
【請求項36】
前記標的分析物が、金属イオン、無機塩、ポリマー、アミノ酸、ペプチド、ポリペプチ
ド、タンパク質、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、染料、漂白剤
、医薬品、診断薬、レクリエーショナルドラッグ、爆発物、または環境汚染物質である、
請求項34または35に記載の方法。
【請求項37】
前記標的分析物が、標的ポリヌクレオチドである、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
ステップ(a)が、前記標的ポリヌクレオチドを前記ポア及びポリヌクレオチド結合タ
ンパク質と接触させることを含み、前記タンパク質が前記ポアを通る前記標的ポリヌクレ
オチドの移動を制御する、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記標的ポリヌクレオチドを特徴付けることが、前記標的ポリヌクレオチドの配列を推
定することまたは前記標的ポリヌクレオチドをシークエンシングすることを含む、請求項
37または38に記載の方法。
【請求項40】
標的ポリヌクレオチドを特徴付けるためのセンサを形成する方法であって、請求項31
~33のいずれか1項に記載のポアとポリヌクレオチド結合タンパク質との間で複合体を
形成し、それにより前記標的ポリヌクレオチドを特徴付けるためのセンサを形成すること
を含む、方法。
【請求項41】
前記複合体が、(a)前記標的ポリヌクレオチドの存在下で前記ポア及び前記ポリヌク
レオチド結合タンパク質を接触させることと、(a)前記ポアにわたって電位を印加する
ことと、によって形成される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記電位が、電圧電位または化学的電位である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記複合体が、前記ポアを前記ポリヌクレオチド結合タンパク質に共有結合させること
によって形成される、請求項40に記載の方法。
【請求項44】
標的ポリヌクレオチドを特徴付けるためのセンサであって、請求項31~33のいずれ
か1項に記載のポアとポリヌクレオチド結合タンパク質との間の複合体を含む、センサ。
【請求項45】
標的分析物を特徴付けるための、請求項31~33のいずれか1項に記載のポアの使用
【請求項46】
(a)請求項31~33のいずれか1項に記載のポアと、(b)膜とを含む、標的ポリ
ヌクレオチドを特徴付けるためのキット。
【請求項47】
前記キットが、両親媒性層を含むチップをさらに含む、請求項46に記載のキット。
【請求項48】
(a)請求項31~33のいずれか1項に記載の複数のポアと、(b)複数のポリヌク
レオチド結合タンパク質とを含む、試料中の標的ポリヌクレオチドを特徴付けるための装
置。
【請求項49】
配列番号2に示される配列を含むライセニンモノマーのポリヌクレオチドを特徴付ける
能力を改善する方法であって、請求項1~26のいずれか1項に定義される前記修飾及び
/または置換のうちの1つ以上を行うことを含む、方法。
【請求項50】
請求項27~30のいずれか1項に記載の構造体を生成する方法であって、請求項1~
26のいずれか1項に記載の少なくとも1つの変異体ライセニンモノマーを、ライセニン
由来の1つ以上のモノマーに共有結合させることを含む、方法。
【請求項51】
請求項31~33のいずれか1項に記載のポアを形成する方法であって、請求項1~2
6のいずれか1項に記載の少なくとも1つの変異体モノマーまたは請求項27~30のい
ずれか1項に記載の少なくとも1つの構造体を、十分な数の、請求項1~26のいずれか
1項に記載のモノマー、請求項27~30のいずれか1項に記載の構造体、及び/または
ライセニン由来のモノマーとオリゴマー形成させて、ポアを形成することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ライセニンの変異体形態に関する。本発明はまた、ライセニンの変異体形態
を使用した分析物の特徴付けに関する。
【背景技術】
【0002】
ナノポアセンシングは、分析物分子と受容体との間の個々の結合または相互作用の事象
の観察に依拠するセンシングの手法である。ナノポアセンサは、ナノメートル寸法の単一
のポアを絶縁膜内に置き、分析物分子の存在下でポアを通る電圧駆動イオン輸送を測定す
ることによって作製され得る。分析物の同一性は、その固有の電流シグネチャ、とりわけ
電流ブロックの時間及び程度、ならびに電流レベルの変動を通して明らかになる。Oxf
ord Nanopore Technologies Ltdによって販売される、例
えば、電子チップ内に一体となったナノポアのアレイを含むMinION(商標)デバイ
スなどの、かかるナノポアセンサが市販されている。
【0003】
幅広い用途にわたって、迅速かつ安価な核酸(例えば、DNAまたはRNA)シークエ
ンシング技術が現在必要とされている。既存の技術は、主に、大量の核酸を生成するため
に増幅技術に依拠し、シグナル検出のための専門の蛍光薬剤が大量に必要とするため、時
間がかかりかつ高価である。ナノポアセンシングは、必要とされるヌクレオチド及び試薬
の量を減らすことによって迅速かつ安価な核酸シークエンシングを提供する可能性を有す
る。
【0004】
ナノポアセンシングを使用した核酸をシークエンシングする必須成分の1つは、ポアを
通る核酸移動の制御である。別のものは、核酸ポリマーがポアを通って移動する際のヌク
レオチドの識別である。過去に、ヌクレオチドの識別を達成するために、核酸は、溶血毒
の変異体を通されてきた。これは、配列依存性であることが示されてきた電流シグネチャ
を提供した。溶血毒ポアを使用したときに、認められた電流に多数のヌクレオチドが寄与
することも示し、これは、認められた電流とポリヌクレオチドとの間の直接的な関係を困
難にした。
【0005】
ヌクレオチドの識別のための電流範囲は、溶血毒ポアの変異体を通して改善されてきた
ものの、ヌクレオチド間の電流差をさらに改善させることができれば、シークエンシング
システムは、より高い性能を有することができるであろう。さらに、核酸がポアを通って
移動すると、いくつかの電流状態が高い変動性を示すことが認められた。いくつかの変異
体溶血毒ポアが他のものよりも高い変動を提示することも示された。これらの状態の変動
は配列特異情報を含み得る一方、システムを簡略化するために低い変動を有するポアを生
成することが望ましい。また、認められた電流に寄与するヌクレオチドの数を減らすこと
も望ましい。
【0006】
ライセニン(efL1としても既知である)は、ミミズ、エイセニアフェティダ(Ei
senia fetida)の体腔液から精製されたポア形成毒素である。これは、ライ
セニン誘導性溶血を阻害するスフィンゴミエリンに特異的に結合する(Yamaji e
t al.,J.Biol.Chem.1998;273(9):5300-6)。ライ
セニンモノマーの結晶構造は、De Colbis et al.,Structure
,2012;20:1498-1507に開示されている。
【発明の概要】
【0007】
本発明者らは、驚くべきことに、1つ以上の修飾がなされた新規の変異体ライセニンモ
ノマーがポリヌクレオチドと相互作用するモノマーの能力を改善することを同定した。本
発明者らはまた、驚くべきことに、新規の変異体モノマーを含むポアが、ポリヌクレオチ
ドと相互作用する向上した能力を有し、それによって、ポリヌクレオチドの配列などの特
徴を推定する向上した特性を提示することを示した。変異体ポアは、驚くべきことに、改
善されたヌクレオチドの識別を提示する。とりわけ、変異体ポアは、驚くことに、異なる
ヌクレオチド間の識別を容易にする電流範囲の増加、及びシグナル対ノイズ比を増加させ
る状態の変動の低下を提示する。さらに、ポアを通ってポリヌクレオチドが移動する間の
、電流に寄与するヌクレオチドの数は減少する。これは、ポアを通ってポリヌクレオチド
が移動する間に認められた電流と、ポリヌクレオチドとの間の直接的な関係性を特定する
ことを容易にする。
【0008】
本明細書に開示される全てのアミノ酸置換、欠失、及び/または付加は、別段記載され
ない限り、配列番号2に示される配列のバリアントを含む変異体ライセニンモノマーに関
連する。
【0009】
配列番号2に示される配列のバリアントを含む変異体ライセニンモノマーへの言及は、
配列番号14~16に示される配列のバリアントを含む変異体ライセニンモノマーを包含
する。アミノ酸置換、欠失、及び/または付加は、配列番号2に関連して本明細書に開示
される置換、欠失、及び/または付加と同等である配列番号2に示される配列のバリアン
トを含むライセニンモノマーに行われ得る。
【0010】
変異体モノマーは、単離されたモノマーとして考えられ得る。
【0011】
したがって、本発明は、配列番号2に示される配列のバリアントを含む変異体ライセニ
ンモノマーを提供し、モノマーがポアを形成することができ、バリアントが以下の位置、
K37、G43、K45、V47、S49、T51、H83、V88、T91、T93、
V95、Y96、S98、K99、V100、I101、P108、P109、T110
、S111、K112、及びT114のうちの1つ以上における修飾を含む。
【0012】
本発明はまた、配列番号2に示される配列のバリアントを含む変異体ライセニンモノマ
ーを提供し、モノマーがポアを形成することができ、バリアントが以下の置換のうちの1
つ以上を含む
D35N/S、
S74K/R、
E76D/N、
S78R/K/N/Q、
S80K/R/N/Q、
S82K/R/N/Q、
E84R/K/N/A、
E85N、
S86K/Q、
S89K、
M90K/I/A、
E92D/S、
E94D/Q/G/A/K/R/S/N、
E102N/Q/D/S、
T104R/K/Q、
T106R/K/Q、
R115S、
Q117S、及び
N119S。
【0013】
本発明はまた、配列番号2に示される配列のバリアントを含む変異体ライセニンモノマ
ーを提供し、モノマーがポアを形成することができ、バリアントが以下のうちの1つ以上
における変異を含む
D35/E94/T106、
K37/E94/E102/T106、
K37/E94/T104/T106、
K37/E94/T106、
K37/E94/E102/T106、
G43/E94/T106、
K45/V47/E92/E94/T106、
K45/V47/E94/T106、
K45/S49/E92/E94/T106、
K45/S49/E94/T106、
K45/E94/T106、
K45/T106、
V47/E94/T106、
V47/V88/E94/T106、
S49/E94/T106、
T51/E94D/T106、
S74/E94、
E76/E94、
S78/E94、
Y79/E94、
S80/E94、
S82/E94、
S82/E94/T106、
H83/E94、
H83/E94/T106、
E85/E94/T106、
S86/E94、
V88/M90/E94/T106、
S89/E94、
M90/E94/T106、
T91/E94/T106、
E92/E94/T106、
T93/E94/T106、
E94/Y96/T106、
E94/S98/K99/T106、
E94/K99/T106、
E94/E102、
E94/T104、
E94/T106、
E94/P108、
E94/P109、
E94/T110、
E94/S111、
E94/T114、
E94/R115、
E94/Q117、及び
E94/E119。
【0014】
本発明はまた、配列番号2に示される配列のバリアントを含む変異体ライセニンモノマ
ーを提供し、モノマーがポアを形成することができ、バリアントが以下の置換のうちの1
つ以上を含む:
E84R/E94D、
E84K/E94D、
E84N/E94D、
E84A/E94Q、
E84K/E94Q、及び
E94Q/D121S。
【0015】
本発明はまた、配列番号2に示される配列のバリアントを含む変異体ライセニンモノマ
ーを提供し、バリアントが以下の置換の組み合わせのうちの1つを含む:
E84Q/E85K/E92Q/E94D/E97S/D126G;
E84Q/E85K/E92Q/E94Q/E97S/D126G;または
E84Q/E85K/E92Q/E94D/E97S/T106K/D126G。
【0016】
本発明はまた、配列番号2に示される配列のバリアントを含む変異体ライセニンモノマ
ーを提供し、バリアント(a)において、配列番号2の34位~70位の、またはそれら
の位置に対応する、2、4、6、8、10、12、14、16、18、もしくは20個の
アミノ酸が欠失されており、(b)配列番号2の71位~107位の、またはそれらの位
置に対応する、2、4、6、8、10、12、14、16、18、もしくは20個のアミ
ノ酸が欠失されている。
【0017】
本発明はまた、以下:
ライセニンに由来する2つ以上の共有結合したモノマーを含む構造体であって、モノマ
ーの少なくとも1つが、本発明の変異体ライセニンモノマーである構造体と、
本発明の変異体モノマーまたは本発明の遺伝子的に融合される構造体をコードするポリ
ヌクレオチドと、
本発明の十分な数の変異体ライセニンモノマーを含むライセニンに由来するホモオリゴ
マーポアと、
本発明の少なくとも1つの変異体ライセニンモノマーを含むライセニンに由来するヘテ
ロオリゴマーポアと、
本発明の少なくとも1つの構造体を含むポアと、
標的分析物を特徴付ける方法であって、(a)標的分析物がポアを通って移動するよう
に、標的分析物を本発明のポアと接触させること及び(b)ポアに対して分析物が移動す
る間に1つ以上の測定値をとり、測定値が標的分析物の1つ以上の特性を示し、それによ
って標的分析物を特徴付けることと、を含む方法と、
標的ポリヌクレオチドを特徴付けるためのセンサを形成する方法であって、本発明のポ
アとポリヌクレオチド結合タンパク質との間で複合体を形成し、それにより標的ポリヌク
レオチドを特徴付けるためのセンサを形成することを含む、方法と、
標的ポリヌクレオチドを特徴付けるためのセンサであって、本発明のポアとポリヌクレ
オチド結合タンパク質との間の複合体を含む、センサと、
標的分析物を特徴付けるための本発明のポアの使用と、
(a)本発明のポアと、(b)膜とを含む、標的ポリヌクレオチドを特徴付けるための
キットと、
(a)本発明の複数のポアと、(b)複数のポリヌクレオチド結合タンパク質とを含む
、試料中のポリヌクレオチドを特徴付けるための装置と、
ポリヌクレオチドを特徴付けるために配列番号2に示される配列を含むライセニンモノ
マーの能力を改善する方法であって、本発明の1つ以上の修飾及び/または置換を行うこ
とを含む、方法と、
ライセニンに由来する1つ以上のモノマーに本発明の少なくとも1つの変異体ライセニ
ンモノマーを共有結合させることを含む、本発明の構造体を生成する方法と、
本発明のポアを形成する方法であって、本発明の少なくとも1つの変異体モノマーまた
は本発明の少なくとも1つの構造体を、十分な数の、本発明のモノマー、本発明の構造体
、またはライセニン由来のモノマーとオリゴマー形成させて、ポアを形成することを含む
方法と、を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】ライセニン変異体1の中央値のプロットを示す。
図2】ライセニン変異体10の中央値のプロットを示す。
図3】ライセニン変異体-ライセニン-(E84Q/E85K/E92Q/E94D/E97S/T106K/D126G/C272A/C283A)9(変異E84Q/E85K/E92Q/E94D/E97S/T106K/D126G/C272A/C283Aを有する配列番号2)の中央値のプロットを示す。
図4】ライセニン変異体-ライセニン-E94Cを介して結合した2-ヨード-N-(2,2,2-トリフルオロエチル)アセトアミドを有する(E84Q/E85K/E92Q/E94C/E97S/T106K/D126G/C272A/C283A)9(変異E84Q/E85K/E92Q/E94C/E97S/T106K/D126G/C272A/C283Aを有する配列番号2)の中央値のプロットを示す。
図5】実施例で使用したアダプターを示す。Aは30 iSpC3に対応する。Bは配列番号19に対応する。Cは4 iSp18に対応する。Dは配列番号20に対応する。Eは、その5’末端に結合した5BNA-G//iBNA-G//iBNA-T//iBNA-T//i-BNA-Aを有する配列番号21に対応する。Fは、5’ホスフェートを有する配列番号22に対応する。Gは配列番号24に対応する。Hはコレステロールに対応する。
図6】ライセニンのモノマーの3D構造を示す。スフィンゴミエリン含有膜との相互作用の際に、ライセニンモノマーは一緒に集まって、中間プレポアを介して九量体ポアを形成する。集合プロセスの間、黒色(配列番号2のアミノ酸65~74に対応する)で示されるポリペプチド部分が、図7に示されるベータバレルの最下部ループに変換される。黒色で示されるポリペプチド部分、それらのベータシートを黒色で示されたポリペプチド部分に連結するポリペプチド部分(配列番号2のアミノ酸34~64及び75~107に対応)は、図7に示すように、ポアのベータバレルを形成する。このような大きな構造変化は、モノマー構造を研究することによってライセニンポアのベータバレル領域を予測することを困難にする。
図7】ライセニンポアの領域を示す。図7Aは、ライセニンの九量体ポアの3D構造を示し、図7Bは、ライセニンポアから得たモノマーの構造を示す。各モノマーが、2つのベータシートをライセニンポアのバレルに寄与する。ベータシート(配列番号2のアミノ酸34~64及び75~107に対応するアミノ酸を含む)は、ポアの底で非構造ループ(配列番号2の位置65~74に対応するアミノ酸2)によって連結されている。
図8】3つのライセニン関連タンパク質(配列番号14~16)のアミノ酸配列とのライセニンのアミノ酸配列(配列番号2)のアラインメントである。ライセニンに密接に関連する配列を有する3つのライセニン相同体は、非重複タンパク質配列のデータベースを使用してBLAST検索を行うことによって同定された。ライセニン関連タンパク質1(LRP1)、ライセニン関連タンパク質2(LRP2)、及びライセニン関連タンパク質3(LRP3)のタンパク質配列は、ライセニンの配列と整列して4つのタンパク質の類似性を示した。濃い灰色の陰影は、全ての4つの配列に同一のアミノ酸が存在する位置を示す。LRP1はライセニンと約75%同一であり、LRP2はライセニンと約88%同一であり、LRP3はライセニンと約79%同一である。
【0019】
配列表の説明
配列番号1は、ライセニンモノマーをコードするポリヌクレオチド配列を示す。
【0020】
配列番号2は、ライセニンモノマーのアミノ酸配列を示す。
【0021】
配列番号3は、Phi29 DNAポリメラーゼをコードするポリヌクレオチド配列を
示す。
【0022】
配列番号4は、Phi29 DNAポリメラーゼのアミノ酸配列を示す。
【0023】
配列番号5は、E.coliからのsbcB遺伝子に由来するコドン最適化ポリヌクレ
オチド配列を示す。これは、E.coliからのエキソヌクレアーゼI酵素(EcoEx
o I)をコードする。
【0024】
配列番号6は、E.coliからのエキソヌクレアーゼI酵素(EcoExo I)の
アミノ酸配列を示す。
【0025】
配列番号7は、E.coliからのxthA遺伝子に由来するコドン最適化ポリヌクレ
オチド配列を示す。これは、E.coliからのエキソヌクレアーゼIII酵素をコード
する。
【0026】
配列番号8は、E.coliからのエキソヌクレアーゼIII酵素のアミノ酸配列を示
す。この酵素は、5’モノホスフェートヌクレオシドの分配性消化(distribut
ive digestion)を二本鎖DNA(dsDNA)の一方の鎖から3’-5’
方向で行う。鎖上の酵素開始は、約4個のヌクレオチドの5’オーバーハングを必要とす
る。
【0027】
配列番号9は、T.thermophilusからのrecJ遺伝子に由来するコドン
最適化ポリヌクレオチド配列を示す。これは、T.thermophilusからのRe
cJ酵素(TthRecJ-cd)をコードする。
【0028】
配列番号10は、T.thermophilusからのRecJ酵素(TthRecJ
-cd)のアミノ酸配列を示す。この酵素は、5’モノホスフェートヌクレオシドの加工
性消化(processive digestion)をssDNAから5’-3’方向
で行う。鎖上の酵素開始は、約4個のヌクレオチドを必要とする。
【0029】
配列番号11は、バクテリオファージラムダexo(redX)遺伝子に由来するコド
ン最適化ポリヌクレオチド配列を示す。これは、バクテリオファージラムダエキソヌクレ
アーゼをコードする。
【0030】
配列番号12は、バクテリオファージラムダエキソヌクレアーゼのアミノ酸配列を示す
。配列は、トリマーを形成する3つの同一のサブユニットのうちの1つである。酵素は、
高度な加工性消化をdsDNAの一方の鎖から5’-3’方向で行う(http://w
ww.neb.com/nebecomm/products/productM026
2.asp)。鎖上の酵素開始は、優先的に、5’ホスフェートを有する約4個のヌクレ
オチドの5’オーバーハングを必要とする。
【0031】
配列番号13は、Hel308 Mbuのアミノ酸配列を示す。
【0032】
配列番号14は、ライセニン関連タンパク質(LRP)1のアミノ酸配列を示す。
【0033】
配列番号15は、ライセニン関連タンパク質(LRP)2のアミノ酸配列を示す。
【0034】
配列番号16は、ライセニン関連タンパク質(LRP)3のアミノ酸配列を示す。
【0035】
配列番号17は、パラスポリン-2の活性化バージョンのアミノ酸配列を示す。全長タ
ンパク質は、そのアミノ及びカルボキシ末端で開裂して、ポアを形成することができる活
性化バージョンを形成する。
【0036】
配列番号18は、Dda 1993のアミノ酸配列を示す。
【0037】
配列番号19~24は、実施例で使用されるポリヌクレオチド配列を示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
開示される生成物及び方法の異なる適用が、当該技術分野における特定の必要性に適合
され得ることを理解されたい。本明細書で使用される専門用語は、本発明の特定の実施形
態のみを説明する目的のためのものであり、限定的であることは意図されないことも理解
されたい。
【0039】
さらに、本明細書及び添付の特許請求の範囲に使用される場合、単数形「a」、「an
」、及び「the」は、文脈が別途明確に示さない限り、複数の指示物を含む。したがっ
て、例えば、「変異体モノマー(a mutant monomer)」への言及は「変
異モノマー(mutant monomers)」を含み、「置換」への言及は2つ以上
のそのような置換を含み、「ポア」への言及は2つ以上のそのようなポアが含まれ、ポリ
ヌクレオチドへの言及は2つ以上のそのようなポリヌクレオチド等を含む。
【0040】
本明細書において、特定の位置における異なるアミノ酸が記号「/」によって分けられ
ている場合、それらの記号「/」は、「または」を意味する。例えば、P108R/Kは
P108RまたはP108Kを意味する。異なる位置または異なる置換が記号「/」によ
って分離されている本明細書では、記号「/」は「及び」を意味する。例えば、E94/
P108はE94及びP108を意味し、E94D/P108KはE94D及びP108
Kを意味する。
【0041】
上記または下記の本明細書に引用される全ての出版物、特許、及び特許出願は、その全
体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0042】
変異体ライセニンモノマー
一態様において、本発明は変異体ライセニンモノマーを提供する。変異体ライセニンモ
ノマーを使用して、本発明のポアを形成することができる。変異体ライセニンモノマーは
、その配列が野生型ライセニンモノマーの配列(例えば、配列番号2、配列番号14、配
列番号15、または配列番号16)と異なるモノマーである。変異体ライセニンモノマー
は、典型的には、本発明の他のモノマーまたはライセニンからの他のモノマーまたはライ
セニン由来のモノマーの存在下でポアを形成する能力を保持する。したがって、変異体モ
ノマーは、典型的には、ポアを形成することができる。変異体モノマーのポアを形成する
能力を確認するための方法は、当該技術分野で周知であり、実施例で説明される。例えば
、ポアの形成は電気生理学によって決定される。ポアは、典型的には、例えば、脂質膜ま
たはブロックコポリマー膜であり得る膜に挿入される。電気的または光学的測定値は、単
一のライセニンポア、例えば膜に挿入された本発明の1つ以上のモノマーを含むポアから
得ることができる。電位差が膜にわたって印加され、膜を通る電流が検出され得る。電流
の流れは、電気的または光学的手段等の任意の好適な方法によって検出され得る。ポリヌ
クレオチド結合タンパク質、DNA、燃料(例えば、MgCl2、ATP)プレミックス
を付加すること、電位差(例えば、180mV)を印加すること、及びポアを通る電流の
流れを監視することによって、ポリヌクレオチド、好ましくは一本鎖ポリヌクレオチドを
転位させるポアの能力を決定することができ、ポリヌクレオチド結合タンパク質によって
制御されるDNAの動きを検出する。
【0043】
変異体モノマーは、ポアに存在する場合、ポリヌクレオチドと相互作用する変化した能
力を有する。したがって、1つ以上の変異体モノマーを含むポアは、改善されたヌクレオ
チド読取り特性、例えば、(1)改善されたポリヌクレオチド捕捉及び(2)改善された
ポリヌクレオチド認識または識別を掲示する。とりわけ、変異体モノマーから構成された
ポアは、野生型よりも容易にヌクレオチド及びポリヌクレオチドを捕捉する。さらに、変
異体モノマーから構成されたポアは、異なるヌクレオチド間の識別を容易にする電流範囲
の増加、及びシグナル対ノイズ比を増加させる状態の変動の低下を提示する。さらに、変
異体から構成されたポアを通ってポリヌクレオチドが移動する間の、電流に寄与するヌク
レオチドの数は減少する。これは、ポアを通ってポリヌクレオチドが移動する間に認めら
れた電流と、ポリヌクレオチドとの間の直接的な関係性を特定することを容易にする。変
異体の改良されたヌクレオチド読取り特性は、5つの主なメカニズム、すなわち:
・立体構造(アミノ酸残基のサイズの増加または減少)、
・電荷(例えば、負電荷の導入または除去、及び/または正電荷の導入または除去)、
・水素結合(例えば、塩基対に水素結合できるアミノ酸を導入する)、
・piスタッキング(例えば、非局在化電子pi系を介して相互作用するアミノ酸を導
入する)、及び/または
・ポアの構造の変化(例えば、バレルまたはチャネルのサイズを増加させるアミノ酸の
導入)における変化を介して達成される。
【0044】
これらの5つのメカニズムの任意の1つ以上が、本発明の変異体モノマーから形成され
たポアの改善された特性を担う可能性がある。例えば、本発明の変異体モノマーを含むポ
アは、変化した立体構造、変化した水素結合、及び変化した構造の結果として、改善され
たヌクレオチド読取り特性を掲示し得る。
【0045】
本発明の変異体モノマーは、配列番号2に示される配列のバリアントを含む。配列番号
2は、ライセニンモノマーの野生型配列である。配列番号2のバリアントは、配列番号2
のアミノ酸配列と異なるアミノ酸配列を有するポリペプチドである。典型的には、バリア
ントは、ポアを形成するその能力を保持する。
【0046】
S80、T106、T104における置換を含む変異体モノマーのうちの1つ以上を含
むポアは、改善されたポリヌクレオチド捕捉を掲示する。そのような置換の特定の例とし
て、S80K/R、T104R/K、及びT106R/Kが挙げられる。これらの位置の
いずれか1つ以上、例えば2、3、4、または5で、アミノ酸側鎖の正電荷を増加させる
これらの位置における他の置換を使用して、変異体モノマーを含むポアの特性を改善し、
ポアまたはE84Q/E85K/E92Q/E97S/D126Gのような他の捕捉増強
変異を含む変異体モノマーを含む野生型ポア、例えばそれらの変異体のみを含む変異体モ
ノマーまたは以下の変異体、E84Q/E85K/E92Q/E94D/E97S/D1
26Gを含む変異体モノマーを含むポアと比較して、すなわちポリヌクレオチドの捕捉を
改善することができる。典型的には、E84Q/E85K/E92Q/E97S/D12
6GまたはE84Q/E85K/E92Q/E94D/E97S/D126Gのような他
の変異を含むポアについて改善が決定される場合、それらの変異体はまた、試験されてい
る変異体モノマー中に存在し、すなわち変異体または変異体の組み合わせの効果(複数可
)が、試験位置(複数可)以外で試験されるモノマー/ポアと同一であるベースラインモ
ノマー/ポアについて決定される。変異体モノマーはまたは対照モノマーを含むポアの特
性は、ヘテロオリゴマーポア、またはより好ましくはホモオリゴマーポアを使用して決定
することができる。変異の好ましい組み合わせの例は、本明細書を通して、例えば表9に
説明されている。
【0047】
D35、K37、K45、V47、S49、E76、S78、S82、V88、S89
、M90、T91、E92、E94、Y96、S98、V100、T104における置換
を含む変異体モノマーのうちの1つ以上を含むポアは、改善されたポリヌクレオチド認識
または識別を掲示する。そのような置換の具体的な例として、D35N、K37N/S、
K45R/K/D/T/Y/N、V47K/R、S49K/R/L、T51KE76S/
N、S78N、S82N、V88I、S89Q、M90I/A、T91S、E92D/E
、E94D/Q/N、Y96D、S98Q、V100S、及びT104Kが挙げられる。
これらの変異は、それぞれ、表9に説明されるように、ノイズを減少させ、電流範囲を増
大させ、及び/またはチャネル開閉を減少させ得る。これらの例示的な変異体のうちの任
意の1つ以上と同じ様式でアミノ酸側鎖のサイズを増加または減少させる、電荷を増加ま
たは減少させる、同じ水素結合形成をもたらす、及び/またはpiスタッキングに影響を
及ぼす他の変異が、配列番号2において特定された位置または配列番号2のバリアントに
おける対応する位置になされてもよい。変異は、個々にまたは組み合わせて導入され得る
。例えば、これらの位置の2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、
14、15、16、17、または18は変異されて、変異体モノマーを含むポアの特性を
改善、すなわちシグナル対ノイズを改善し得、野生型ポア、変異E84Q/E85K/E
92Q/E94D/E97S/D126G、変異E84Q/E85K/E92Q/E94
Q/E97S/D126G、及び/または変異E84Q/E85K/E92Q/E94D
/E97S/T106K/D126Gのそれらの変異のみを含むモノマーのような、変異
E84Q/E85K/E92QE97S/D126Gを含む変異体モノマーを含むポアと
比較して、ポリヌクレオチド認識または識別が改善されるように、範囲の増加、及び/ま
たはチャネル開閉を減少させる。典型的には、E84Q/E85K/E92Q/E97S
/D126G、E84Q/E85K/E92Q/E94D/E97S/D126G、E8
4Q/E85K/E92Q/E94Q/E97S/D126G、またはE84Q/E85
K/E92Q/E94D/E97S/T106K/D126Gのような他の変異を含むポ
アについて改善が決定される場合、それらの変異体はまた、試験されている変異体モノマ
ー中に存在し、すなわち変異体または変異体の組み合わせの効果(複数可)が、試験位置
(複数可)以外で試験されるモノマー/ポアと同一であるベースラインモノマー/ポアに
ついて決定される。変異体モノマーまたは対照モノマーを含むポアの特性は、ヘテロオリ
ゴマーポアまたはより好ましくはホモオリゴマーポアを使用して決定することができる。
変異の好ましい組み合わせの例は、本明細書を通して、例えば表9に説明されている。
【0048】
E94及び/またはY96における置換を含む変異体モノマーのうちの1つ以上を含む
ポアは、野生型ポアまたは変異E84Q/E85K/E92QE97S/D126Gを含
む変異体モノマーを含むポアと比較して、ポリヌクレオチドがポアを通って移動する間に
電流に寄与するヌクレオチドの数を減少させ得る。例えば、置換Y96D/Eは、好まし
くはE94Q/Dと組み合わせて、読取りヘッドのサイズを減少させることができる。野
生型ポアまたは変異E84Q/E85K/E92QE97S/D126Gを含む変異体モ
ノマーを含むポアと比較して、ポリヌクレオチドがポアを通って移動する間に電流に寄与
するヌクレオチドの数の減少は、ポアのバレルの一部を形成するモノマーの2つのベータ
ストランドの各々から、すなわち本明細書に説明されるような、配列番号2のアミノ酸3
4~65及び74~107に対応する位置であり、アミノ酸(典型的には、ポアの内腔及
びポアの内腔から離れて面する隣接アミノ酸に存在する)の数さえ欠失させることによっ
て達成し得る。
【0049】
本発明の修飾
本発明は、ライセニンポアにおけるバレルの構造に寄与するベータシートのアミノ酸配
列が野生型ライセニンと比較し、当該技術分野、例えば、WO2013/153359に
開示されているライセニン変異体と比較して改変される、変異体ライセニンモノマーを提
供する。本発明の修飾は、配列番号2のアミノ酸34~107、特に配列番号2のアミノ
酸34~65、及び74~107に対応するライセニンモノマーの領域にある。LR1、
LR2、及びLR3のモノマーの対応する領域は、図8のアラインメントに示される。
【0050】
本発明は、配列番号2に示される配列のバリアントを含む変異体ライセニンモノマーを
提供し、モノマーがポアを形成することができ、バリアントが例えば2~22、3~20
、4~15、5~10、6、7、8、または9等の、以下の位置、K37、G43、K4
5、V47、S49、T51、H83、V88、T91、T93、V95、Y96、S9
8、K99、V100、I101、P108、P109、T110、S111、K112
、及びT114のうちの1つ以上における修飾を含む。バリアントは、任意の数及び位置
の任意の組み合わせにおける修飾を含み得る。一態様において、修飾は、アミノ酸の置換
、欠失、または付加であり得、好ましくは、置換または欠失変異である。好ましい修飾は
、「更なる修飾」という見出しの下で以下に議論される。変異体ライセニンモノマーは、
配列番号2の他の位置における修飾を含み得る。例えば、2~20、3~15、4~10
、または6~8といった本発明の変異体のうちの1つ以上に加えて、変異体ライセニンモ
ノマーは、2~20、3~15、4~10、または6~8といった、当該技術分野、例え
ばWO2013/153359に説明される、配列番号2の配列における1つ以上のアミ
ノ酸置換または欠失を有し得る。
【0051】
バリアントは、好ましくは、以下の位置、T91、V95、Y96、S98、K99、
V100、I101、及びK112のうちの1つ以上における修飾を含む。バリアントは
、位置の任意の数及び任意の組み合わせにおける修飾を有してもよい。修飾は、好ましく
は、セリン(S)またはグルタミン(Q)による置換である。バリアントは、好ましくは
、置換、T91S、V95S、Y96S、S98Q、K99S、V100S、I101S
、及びK112Sのうちの1つ以上を含む。バリアントは、これらの置換の任意の数及び
組み合わせを含んでもよい。
【0052】
バリアントは、好ましくは、以下の位置、K37、G43、K45、V47、S49、
T51、H83、V88、T91、T93、Y96、S98、K99、P108、P10
9、T110、S111、及びT114のうちの1つ以上における修飾を含む。バリアン
トは、任意の数及び位置の任意の組み合わせにおける修飾を含み得る。修飾は、好ましく
は、トリプトファン(W)、セリン(S)、グルタミン(Q)、リジン(K)、アスパラ
ギン酸(D)、アルギニン(R)、スレオニン(T)、チロシン)、ロイシン(L)、ま
たはイソロイシン(I)との置換である。バリアントは、好ましくは、置換、K37N/
W/S/Q、G43K、K45D/R/N/Q/T/Y、V47K/S/N、S49K/
L、T51K、H83S/K、V88I/T、T91K、T93K、Y96D、S98K
、K99Q/L、P108K/R、P109K、T110K/R、S111K、及びT1
14Kのうちの1つ以上を含む。バリアントは、好ましくは、以下の位置のうちの1つ以
上における修飾を含む:
【表1】
【0053】
バリアントは、好ましくは、以下の置換のうちの1つ以上を含む:
【表2】
【0054】
本発明はまた、配列番号2に示される配列のバリアントを含む変異体ライセニンモノマ
ーを提供し、モノマーがポアを形成することができ、バリアントが以下の置換のうちの1
つ以上を含む:
D35N/S、
S74K/R、
E76D/N、
S78R/K/N/Q、
S80K/R/N/Q、
S82K/R/N/Q、
E84R/K/N/A、
E85N、
S86K/Q、
S89K、
M90K/I/A、
E92D/S、
E94D/Q/G/A/K/R/S/N、
E102N/Q/D/S、
T104R/K/Q、
T106R/K/Q、
R115S、
Q117S、及び
N119S。
【0055】
バリアントは、これらの置換の任意の数及び組み合わせを含んでもよい。バリアントは
、好ましくは、E94D/Q/G/A/K/R/S、S86Q、E92S、E94D/Q
/G/A/K/R/S及びS86Q、E94D/Q/G/A/K/R/S及びE92S、
S86Q及びE92S、またはE94D/Q/G/A/K/R/S、S86Q、及びE9
2S等の、置換E94D/Q/G/A/K/R/S、S86Q、及びE92Sのうちの1
つ以上を含む。
【0056】
バリアントは、好ましくは、以下の置換のうちの1つ以上を含む
D35N/S、
S74K/R、
E76D/N、
S78R/K/N/Q、
S80K/R/N/Q、
S82K/R/N/Q、
E84R/K/N/A、
E85N、
S86K、
S89K、
M90K/I/A、
E92D、
E94D/Q/K/N、
E102N/Q/D/S、
T104R/K/Q、
T106R/K/Q、
R115S、
Q117S、及び
N119S。
【0057】
バリアントは、これらの置換の任意の数及び組み合わせを含んでもよい。
【0058】
バリアントは、好ましくは、以下の置換のうちの1つ以上を含む
【表3】

【0059】
バリアントは、これらの置換の任意の数及び組み合わせを含んでもよい。
【0060】
本発明はまた、配列番号2に示される配列のバリアントを含む変異体ライセニンモノマ
ーを提供し、モノマーがポアを形成することができ、バリアントが以下のうちの1つ以上
における変異を含む
D35/E94/T106、
K37/E94/E102/T106、
K37/E94/T104/T106、
K37/E94/T106、
K37/E94/E102/T106、
G43/E94/T106、
K45/V47/E92/E94/T106、
K45/V47/E94/T106、
K45/S49/E92/E94/T106、
K45/S49/E94/T106、
K45/E94/T106、
K45/T106、
V47/E94/T106、
V47/V88/E94/T106、
S49/E94/T106、
T51/E94D/T106、
S74/E94、
E76/E94、
S78/E94、
Y79/E94、
S80/E94、
S82/E94、
S82/E94/T106、
H83/E94、
H83/E94/T106、
E85/E94/T106、
S86/E94、
V88/M90/E94/T106、
S89/E94、
M90/E94/T106、
T91/E94/T106、
E92/E94/T106、
T93/E94/T106、
E94/Y96/T106、
E94/S98/K99/T106、
E94/K99/T106、
E94/E102、
E94/T104、
E94/T106、
E94/P108、
E94/P109、
E94/T110、
E94/S111、
E94/T114、
E94/R115、
E94/Q117、及び
E94/E119。
【0061】
バリアントは、好ましくは、以下の置換のうちの1つ以上を含む:
D35N/E94D/T106K、
D35S/E94D/T106K、
K37Q/E94D/E102N/T106K、
K37S/E94D/E102S/T106K、
K37S/E94D/T104K/T106K、
K37N/E94D/T106K、
K37W/E94D/T106K、
K37S/E94D/T106K、
G43K/E94D/T106K、
K45N/V47K/E92D/E94N/T106K、
K45T/V47K/E94D/T106K、
K45N/S49K/E94N/E92D/T106K、
K45Y/S49K/E94D/T106K、
K45D/E94K/T106K、
K45R/E94D/T106K、
K45N/E94N/T106K、
K45Q/E94Q/T106K、
K45R/T106K、
V47S/E94D/T106K、
V47K/E94D/T106K、
V47N/V88T/E94D/T106K、
S49L/E94D/T106K、
T51K/E94D/T106K、
S74K/E94D、
S74R/E94D、
E76D/E94D、
E76N/E94D、
E76S/E94Q、
E76N/E94Q、
S78R/E94D、
S78K/E94D、
S78N/E94D、
S78Q/E94Q、
Y79S/E94Q、
S80K/E94D、
S80R/E94D、
S80N/E94D、
S80Q/E94Q、
S82K/E94D、
S82R/E94D、
S82N/E94D、
S82Q/E94Q、
S82K/E94D/T106K、
H83S/E94Q、
H83K/E94D/T106K、
E85N/E94D/T106K、
S86K/E94D、
V88I/M90A/E94D/T106K、
S89K/E94D、
M90K/E94D/T106K、
M90I/E94D/T106K、
T91K/E94D/T106K、
E92D/E94Q/T106K、
T93K/E94D/T106K、
E94Q/Y96D/T106K、
E94D/S98K/K99L/T106K、
E94D/K99Q/T106K、
E94D/E102N、
E94D/E102Q、
E94D/E102D、
E94D/T104R、
E94D/T104K、
E94Q/T104Q、
E94D/T106R、
E94D/T106K、
E94Q/T106Q、
E94Q/T106K、
E94D/P108K、
E94D/P108R、
E94D/P109K、
E94D/T110K、
E94D/T110R、
E94D/S111K、
E94D/T114K、
E94Q/R115S、
E94Q/Q117S、及び
E94Q/N119S。
【0062】
バリアントは、これらの置換の任意の数及び組み合わせを含んでもよい。
【0063】
本発明はまた、配列番号2に示される配列のバリアントを含む変異体ライセニンモノマ
ーを提供し、モノマーがポアを形成することができ、バリアントが以下の置換のうちの1
つ以上を含む
E84R/E94D、
E84K/E94D、
E84N/E94D、
E84A/E94Q、
E84K/E94Q、及び
E94Q/D121S。
【0064】
バリアントは、これらの置換の任意の数及び組み合わせを含んでもよい。
【0065】
本発明の変異体モノマーは、好ましくは、上記で定義した修飾及び/または置換の任意
の組み合わせを含む。例示的な組み合わせは、実施例に開示されている。
【0066】
バレル欠失
別の実施形態において、配列番号2に示される配列のバリアントを含む変異体ライセニ
ンモノマーを提供し、バリアント(a)において、配列番号2の34位~70位の、また
はそれらの位置に対応する、2、4、6、8、10、12、14、16、18、または2
0のアミノ酸が欠失されているか、あるいは配列番号2の34位~70位に対応する位置
でアミノ酸残基が欠失されており、(b)配列番号2の71位~107位の、またはそれ
らの位置に対応する、2、4、6、8、10、12、14、16、18、もしくは20の
アミノ酸が欠失されているか、あるいは配列番号2の71位~107位に対応する位置で
アミノ酸残基が欠失されている。
【0067】
34位~70位から欠失したアミノ酸の数は、71位~107位から欠失したアミノ酸
の数と異なっていてもよい。34位~70位から欠失されたアミノ酸の数は、71位~1
07位から欠失されたアミノ酸の数と同じであることが好ましい。
【0068】
34位~70位のアミノ酸及び71位~107位のアミノ酸の任意の組み合わせは、欠
失され得る。欠失されたアミノ酸の位置は、好ましくは、表1もしくは2の1行または表
1及び/もしくは2の2行以上に示される。例えば、D35及びV34が34位~70位
から欠失している場合、T104及びI105は71位~107位から欠失され得る。同
様に、D35、V34、K37、及びI38は、34位~70位から欠失され得、E10
2、H103、T104、及びI105は、71位~107位から欠失され得る。これは
、ポアのバレルを覆うベータシート構造の維持を確実にする。
【表4】
【表5】
【0069】
34位~70位及び71位~107位から欠失したアミノ酸は、表1または2の行にあ
る必要はない。例えば、D35及びV34が34位~70位から欠失している場合、I7
2及びE71は71位~107位から欠失され得る。
【0070】
34位~70位から欠失したアミノ酸は、好ましくは連続している。71位~107位
から欠失したアミノ酸は、好ましくは連続している。34位~70位から欠失したアミノ
酸及び71位~107位から欠失したアミノ酸は、好ましくは連続している。
【0071】
本発明は、好ましくは、以下の欠失した変異体モノマーを提供する:
(i)N46/V47/T91/T92、または
(ii)N48/S49/T91/T92。
【0072】
当業者は、本発明に従って欠失され得るアミノ酸の他の組み合わせを同定することがで
きる。以下の議論では、配列番号2での残基の番号付けを使用する(すなわち、上記で定
義したように任意のアミノ酸が欠失される前)。
【0073】
バレル欠失バリアントはさらに、好ましくは、適切な場合、上記または下記の修飾及び
/または置換のいずれかを含む。「適切な場合」とは、バレル欠失後に、位置が変異体モ
ノマー中に依然として存在するかどうかを意味する。
【0074】
化学修飾
別の態様において、本発明は、化学的に修飾された変異体ライセニンモノマーを提供す
る。変異体モノマーは、上記または下記に論じられるもののいずれかであり得る。その結
果として、以下の位置、K37、G43、K45、V47、S49、T51、H83、V
88、T91、T93、V95、Y96、S98、K99、V100、I101、P10
8、P109、T110、S111、K112、及びT114のうちの1つ以上における
修飾を含む配列番号2のバリアントか、または上記に論じられるバレル欠失を含むバリア
ントのような、本発明の変異体モノマーは、下記に論じられるように本発明に従って化学
的に修飾され得る。
【0075】
以下に議論される更なる修飾のいずれかを含む変異体モノマーは、すなわちモノマーま
たは好ましくはその領域の能力を変化させる配列番号2の約44位~約126位の領域内
に1つ以上の修飾を含み、ポリヌクレオチドと相互作用し、化学的に修飾され得る。これ
らの化学的に修飾されたモノマーは、本発明の修飾を含む必要はなく、すなわち、以下の
位置、K37、G43、K45、V47、S49、T51、H83、V88、T91、T
93、V95、Y96、S98、K99、V100、I101、P108、P109、T
110、S111、K112、及びT114のうちの1つ以上における修飾を含む必要が
ない。化学的に修飾された変異体モノマーは、好ましくは、配列番号2の以下の位置、(
a)E84、E85、E92、E97、及びD126、(b)E85、E97、及びD1
26、または(c)E84及びE92、のうちの1つ以上における置換を含む、配列番号
2のバリアントを含む。以下に議論される置換の任意の数及び組み合わせを行うことがで
きる。
【0076】
変異体モノマーは、モノマーから形成されるポアのバレルまたはチャネルの直径が減少
または狭められるような任意の方法で化学的に修飾されることができる。これは、以下に
より詳細に論じられる。
【0077】
化学修飾は、化学分子が、好ましくは、変異体モノマーに共有結合されるようなもので
ある。化学分子は、当該技術分野で既知の任意の方法を使用して変異体モノマーと共有結
合され得る。化学分子は、典型的には、化学結合を介して結合される。
【0078】
変異体モノマーは、好ましくは、1つ以上のシステインへの分子の結合(システイン結
合)、1つ以上のリジンへの分子の結合、1つ以上の非天然型アミノ酸への分子の結合、
またはエピトープの酵素修飾によって化学的に修飾される。化学修飾剤がシステイン結合
を介して結合している場合、1つ以上のシステインは、好ましくは、置換によって変異体
モノマーに導入されている。そのような修飾を実施するための好適な方法は、当該技術分
野で周知である。好適な非天然アミノ酸は、4-アジド-L-フェニルアラニン(Faz
)及びLiu C.C.and Schultz P.G.,Annu.Rev.Bio
chem.,2010,79,413-444の図1中のアミノ酸番号1~71のうちの
いずれか1つを含むが、これらに限定されない。
【0079】
変異体モノマーは、任意の位置または部位におけるモノマーから形成されたポアのバレ
ルの直径を減少または狭める効果を有する、任意の分子の結合によって化学的に修飾され
得る。例えば、変異体モノマーは、(i)4-フェニルアゾマレイナニル、1.N-(2
-ヒドロキシエチル)マレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、1.3-マレイミド
プロピオン酸、1.1-4アミノフェニル-1H-ピロール,2,5,ジオン、N-エチ
ルマレイミド、N-メトキシカルボニルマレイミド、N-tert-ブチルマレイミド、
N-(2-アミノエチル)マレイミド、3-マレイミド-プロキシル、N-(4-クロロ
フェニル)マレイミド、1-[4-(ジメチルアミノ)-3,5-ジニトロフェニル]-
1H-ピロール-2,5-ジオン、N-[4-(2-ベンズイミダゾリル)フェニル]マ
レイミド、N-[4-(2-ベンゾオキサゾリル)フェニル]マレイミド、N-(1-ナ
フチル)-マレイミド、N-(2,4-キシリル)マレイミド、N-(2,4-ジフルオ
ロフェニル)マレイミド、N-(3-クロロ-パラ-トリル)-マレイミド、1-(2-
アミノ-エチル)-ピロール-2,5-ジオンヒドロクロリド、1-シクロペンチル-3
-メチル-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-2,5-ジオン、1-(3-アミノプロ
ピル)-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-2,5-ジオンヒドロクロリド、3-メチ
ル-1-[2-オキソ-2-(ピペラジン-1-イル)エチル]-2,5-ジヒドロ-1
H-ピロール-2,5-ジオンヒドロクロリド、1-ベンジル-2,5-ジヒドロ-1H
-ピロール-2,5-ジオン、3-メチル-1-(3,3,3-トリフルオロプロピル)
-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-2,5-ジオン、1-[4-(メチルアミノ)シ
クロヘキシル]-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-2,5-ジオントリフルオロ酢酸
、SMILES O=C1C=CC(=O)N1CC=2C=CN=CC2、SMILE
S O=C1C=CC(=O)N1CN2CCNCC2、1-ベンジル-3-メチル-2
,5-ジヒドロ-1H-ピロール-2,5-ジオン、1-(2-フルオロフェニル)-3
-メチル-2,5-ジヒドロ1H-ピロール-2,5-ジオン、N-(4-フェノキシフ
ェニル)マレイミド、N-(4-ニトロフェニル)マレイミド等のマレイミド、(ii)
3-(2-ヨードアセトアミド)-プロキシル、N-(シクロプロピルメチル)-2-ヨ
ードアセトアミド、2-ヨード-N-(2-フェニルエチル)アセトアミド、2-ヨード
-N-(2,2,2-トリフルオロエチル)アセトアミド、N-(4-アセチルフェニル
)-2-ヨードアセトアミド、N-(4-(アミノスルホニル)フェニル)-2-ヨード
アセトアミド、N-(1,3-ベンゾチアゾール-2-イル)-2-ヨードアセトアミド
、N-(2,6-ジエチルフェニル)-2-ヨードアセトアミド、N-(2-ベンゾイル
-4-クロロフェニル)-2-ヨードアセトアミド等のヨードセトアミド、(iii)N
-(4-(アセチルアミノ)フェニル)-2-ブロモアセトアミド、N-(2-アセチル
フェニル)-2-ブロモアセトアミド、2-ブロモ-N-(2-シアノフェニル)アセト
アミド、2-ブロモ-N-(3-(トリフルオロメチル)フェニル)アセトアミド、N-
(2-ベンゾイルフェニル)-2-ブロモアセトアミド、2-ブロモ-N-(4-フルオ
ロフェニル)-3-メチルブタンアミド、N-ベンジル-2-ブロモ-N-フェニルプロ
ピオンアミド、N-(2-ブロモ-ブチリル)-4-クロロ-ベンゼンスルホンアミド、
2-ブロモ-N-メチル-N-フェニルアセトアミド、2-ブロモ-N-フェネチル-ア
セトアミド,2-アダマンタン-1-イル-2-ブロモ-N-シクロヘキシル-アセトア
ミド、2-ブロモ-N-(2-メチルフェニル)ブタンアミド、モノブロモアセトアニリ
ド等のブロモアセトアミド、(iv)アルドリチオール-2、アルドリチオール-4、イ
ソプロピルジスルフィ、1-(イソブチルジスルファニル)-2-メチルプロパン、ジベ
ンジルジスルフィド、4-アミノフェニルジスルフィド、3-(2-ピリジルジチオ)プ
ロピオン酸、3-(2-ピリジルジチオ)プロピオン酸ヒドラジド、3-(2-ピリジル
ジチオ)プロピオン酸N-スクシンイミジルエステル、am6amPDP1-βCD等の
ジスルフィド、及び(v)4-フェニルチアゾール-2-チオール、プルパルド、5,6
,7,8-テトラヒドロ-キナゾリン-2-チオール等のチオール、の結合によって化学
的に修飾され得る。
【0080】
変異体モノマーは、ポリエチレングリコール(PEG)、核酸、例えばDNA、色素、
フルオロフォア、または発色団の結合によって化学的に修飾され得る。いくつかの実施形
態において、変異体モノマーは、モノマーを含むポアと、標的分析物、標的ヌクレオチド
、または標的ポリヌクレオチドとの間の相互作用を容易にする分子アダプターによって化
学的に修飾される。アダプターの存在は、ポア及びヌクレオチドまたはポリヌクレオチド
のホスト-ゲストケミストリーを改善し、それにより変異体モノマーから形成されたポア
のシークエンシング能力を改善する。
【0081】
化学的に修飾された変異体モノマーは、好ましくは、配列番号2に示される配列のバリ
アントを含む。バリアントは以下に定義される。バリアントは、典型的には、1つ以上の
残基がシステイン、リジン、または非天然アミノ酸で置き換えられている1つ以上の置換
を含む。非天然アミノ酸には、4-アジド-L-フェニルアラニン(Faz)、4-アセ
チル-L-フェニルアラニン、3-アセチル-L-フェニルアラニン、4-アセトアセチ
ル-L-フェニルアラニン、O-アリル-L-チロシン、3-(フェニルセラニル)-L
-アラニン、O-2-プロピン-1-イル-L-チロシン、4-(ジヒドロキシボリル)
-L-フェニルアラニン、4-[(エチルスルファニル)カルボニル]-L-フェニルア
ラニン、(2S)-2-アミノ-3-4-[(プロパン-2-イルスルファニル)カルボ
ニル]フェニル;プロパン酸、(2S)-2-アミノ-3-4-[(2-アミノ-3-ス
ルファニルプロパノイル)アミノ]フェニル;プロパン酸、O-メチル-L-チロシン、
4-アミノ-L-フェニルアラニン、4-シアノ-L-フェニルアラニン、3-シアノ-
L-フェニルアラニン、4-フルオロ-L-フェニルアラニン、4-ヨード-L-フェニ
ルアラニン、4-ブロモ-L-フェニルアラニン、O-(トリフルオロメチル)チロシン
、4-ニトロ-L-フェニルアラニン、3-ヒドロキシ-L-チロシン、3-アミノ-L
-チロシン、3-ヨード-L-チロシン、4-イソプロピル-L-フェニルアラニン、3
-(2-ナフチル)-L-アラニン、4-フェニル-L-フェニルアラニン、(2S)-
2-アミノ-3-(ナフタレン-2-イルアミノ)プロパン酸、6-(メチルスルファニ
ル)ノルロイシン、6-オキソ-L-リジン、D-チロシン、(2R)-2-ヒドロキシ
-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン酸、(2R)-2-アンモニオオクタノエー
ト3-(2,2’-ビピリジン-5-イル)-D-アラニン、2-アミノ-3-(8-ヒ
ドロキシ-3-キノリル)プロパン酸、4-ベンゾイル-L-フェニルアラニン、S-(
2-ニトロベンジル)システイン、(2R)-2-アミノ-3-[(2-ニトロベンジル
)スルファニル]プロパン酸、(2S)-2-アミノ-3-[(2-ニトロベンジル)オ
キシ]プロパン酸、O-(4,5-ジメトキシ-2-ニトロベンジル)-L-セリン、(
2S)-2-アミノ-6-([(2-ニトロベンジル)オキシ]カルボニル;アミノ)ヘ
キサン酸、O-(2-ニトロベンジル)-L-チロシン、2-ニトロフェニルアラニン、
4-[(E)-フェニルジアゼニル]-L-フェニルアラニン、4-[3-(トリフルオ
ロメチル)-3H-ジアジレン-3-イル]-D-フェニルアラニン、2-アミノ-3-
[[5-(ジメチルアミノ)-1-ハフチル]スルホニルアミノ]プロパン酸、(2S)
-2-アミノ-4-(7-ヒドロキシ-2-オキソ-2H-クロメン-4-イル)ブタン
酸、(2S)-3-[(6-アセチルナフタレン-2-イル)アミノ]-2-アミノプロ
パン酸、4-(カルボキシメチル)フェニルアラニン、3-ニトロ-L-チロシン、O-
スルホ-L-チロシン、(2R)-6-アセトアミド-2-アンモニオヘキサノエート、
1-メチルヒスチジン、2-アミノノナン酸、2-アミノデカン酸、L-ホモシステイン
、5-スルファニルノルバリン、6-スルファニル-L-ノルロイシン、5-(メチルス
ルファニル)-L-ノルバリン、N-[(2R,3R)-3-メチル-3,4-ジヒド
ロ-2H-ピロール-2-イル]カルボニル;-L-リジン、N-[(ベンジルオキシ
)カルボニル]リジン、(2S)-2-アミノ-6-[(シクロペンチルカルボニル)ア
ミノ]ヘキサン酸、N-[(シクロペンチルオキシ)カルボニル]-L-リジン、(2
S)-2-アミノ-6-[(2R)-テトラヒドロフラン-2-イルカルボニル]アミノ
;ヘキサン酸、(2S)-2-アミノ-8-[(2R,3S)-3-エチニルテトラヒド
ロフラン-2-イル]-8-オキソオクタン酸、N-(tert-ブトキシカルボニル
)-L-リジン、(2S)-2-ヒドロキシ-6-([(2-メチル-2-プロパニル)
オキシ]カルボニル;アミノ)ヘキサン酸、N-[(アリルオキシ)カルボニル]リジ
ン、(2S)-2-アミノ-6-([(2-アジドベンジル)オキシ]カルボニル;アミ
ノ)ヘキサン酸、N-L-プロリル-L-リジン、(2S)-2-アミノ-6-[(プ
ロパ-2-イン-1-イルオキシ)カルボニル]アミノ;ヘキサン酸、及びN-[(2
-アジドエトキシ)カルボニル]-L-リジンが挙げられるが、これらに限定されない。
最も好ましい非天然アミノ酸は、4-アジド-L-フェニルアラニン(Faz)である。
【0082】
変異体モノマーは、配列番号2:K37、V47、S49、T55、S86、E92、
及びE94のいずれかの位置での任意の分子の結合によって化学的に修飾され得る。より
好ましくは、変異体モノマーは、位置E92及び/またはE94で、任意の分子の結合に
よって化学的に修飾され得る。一実施形態において、変異体モノマーは、これらの位置に
おける1つ以上のシステイン(システイン結合)、1つ以上のリジン、または1つ以上の
非天然アミノ酸への分子の結合によって化学的に修飾される。変異体モノマーは、好まし
くは、K37C、V47C、S49C、T55C、S86C、E92C、及びE94Cの
うちの1つ以上を含む、配列番号2に示される配列のバリアントを含み、1つ以上の分子
が1つ以上の導入されたシステインに結合している。変異体モノマーは、より好ましくは
、E92C及び/またはE94Cを含む配列番号2に示される配列のバリアントを含み、
1つ以上の分子が導入されたシステイン(複数可)に結合している。これらの2つの好ま
しい実施形態のそれぞれにおいて、1つ以上のシステイン(Cs)は、1つ以上のリジン
または1つ以上のFazのような1つ以上の非天然アミノ酸で置き換えられ得る。
【0083】
システイン残基の反応性は、隣接する残基の修飾によって増強され得る。例えば、側方
のアルギニン、ヒスチジン、またはリジン残基の塩基性基は、システインチオール基のp
Kaを、より反応性のS基のものに変えることになる。システイン残基の反応性は、d
TNBなどのチオール保護基によって保護され得る。これらは、リンカーが結合する前に
、変異体モノマーの1つ以上のシステイン残基と反応され得る。
【0084】
分子は、変異体モノマーと直接結合してもよい。分子は、好ましくは、化学架橋剤また
はペプチドリンカーなどのリンカーを使用して変異体モノマーに結合している。好適な化
学架橋剤は、当該技術分野で周知である。好ましい架橋剤には、2,5-ジオキソピロリ
ジン-1-イル3-(ピリジン-2-イルジスルファニル)プロパノエート、2,5-ジ
オキソピロリジン-1-イル4-(ピリジン-2-イルジスルファニル)ブタノエート、
及び2,5-ジオキソピロリジン-1-イル8-(ピリジン-2-イルジスルファニル)
オクタナノエート(octananoate)が含まれる。最も好ましい架橋剤は、スク
シンイミジル3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)である。典型的に
は、分子は、分子/架橋剤複合体が変異体モノマーと共有結合する前に二官能性架橋剤と
共有結合しているが、二官能性架橋剤/モノマー複合体が分子に結合する前に二官能性架
橋剤をモノマーと共有結合させることも可能である。
【0085】
リンカーは、好ましくは、ジチオトレイトール(DTT)に耐性である。好適なリンカ
ーには、ヨードアセトアミド系及びマレイミド系リンカーが挙げられるが、これらに限定
されない。
【0086】
本発明の化学的に修飾された変異体モノマーを含むポアの利点は、以下でより詳細に論
じられる。
【0087】
本発明に従って行われ得るさらなる化学修飾は、以下に論じられる。
【0088】
さらなる修飾
上記で論じられる変異体モノマーのいずれかは、適切な場合(すなわち、関連するアミ
ノ位が変異体モノマーに残っているか、または別のアミノ酸で修飾/置換されていない場
合)配列番号2の約44位~約126位の領域内でさらに修飾を有する。この領域の少な
くとも一部は、典型的には、ライセニンの膜貫通領域に寄与する。この領域の少なくとも
一部は、典型的には、ライセニンのバレルまたはチャネルに寄与する。この領域の少なく
とも一部は、典型的には、ライセニンの内壁また内部に寄与する。
【0089】
ライセニンの膜貫通領域は、配列番号2の44位~67位として同定されている(De
Colbis et al.,Structure,2012;20:1498-15
07)。
【0090】
バリアントは、好ましくは、モノマー、または好ましくは領域の能力を変化させて、ポ
リヌクレオチドと相互作用する配列番号2の約44位~約126位の領域内に1つ以上の
修飾を含む。モノマーとポリヌクレオチドとの間の相互作用は増減してもよい。モノマー
とポリヌクレオチドとの間の増加した相互作用は、例えば、変異体モノマーを含むポアに
よるポリヌクレオチドの捕捉を容易にするであろう。領域とポリヌクレオチドとの間の減
少した相互作用は、例えば、ポリヌクレオチドの認識または識別を改善するであろう。ポ
リヌクレオチドの認識または識別は、変異体モノマーを含むポアの状態の分散(シグナル
対ノイズ比を増加させる)を減少させること及び/または電流に寄与するポリヌクレオチ
ド中のヌクレオチドの数を、ポリヌクレオチドが変異体モノマーを含むポアを通って移動
する間に減少させることによって改善され得る。
【0091】
ポリヌクレオチドと相互作用するモノマーの能力は、当技術分野で周知の方法を用いて
決定することができる。モノマーは、例えば、疎水性相互作用、水素結合、ファンデルワ
ールス力、π(π)-カチオン相互作用、または静電気力等の非共有相互作用によって、
いずれかの方法でポリヌクレオチドと相互作用することができる。例えば、ポリヌクレオ
チドに結合する領域の能力は、従来の結合アッセイを用いて測定することができる。好適
なアッセイには、蛍光ベースの結合アッセイ、核磁気共鳴(NMR)、等温滴定熱量測定
(ITC)、または電子スピン共鳴(ESR)分光法が挙げられるが、これらに限定され
ない。代替的には、ポリヌクレオチドと相互作用する変異体モノマーのうちの1つ以上を
含むポアの能力は、上記または下記で論じられる方法のいずれかを使用して決定すること
ができる。好ましいアッセイは実施例に説明されている。
【0092】
1つ以上の修飾は、配列番号2の約44位~約126位の領域内でさらに行われ得る。
1つ以上の修飾は、好ましくは、以下の領域、約40位~約125位、約50位~約12
0位、約60位~約110位、及び約70位~約100位のうちの任意の1つ以内である
。1つ以上の修飾がポリヌクレオチド捕捉を改善するために行われている場合、それらは
、より好ましくは、以下の領域、約44位~約103位、約68位~約103位、約84
位~約103位、約44位~約97位、約68位~約97位、または約84位~約97位
のうちのいずれか1つ以内で行われる。1つ以上の修飾が、ポリヌクレオチド認識または
識別を改善するために行われている場合、それらは、より好ましくは、約44位~約10
9位、約44位~約97位、または約48位~約88位のうちのいずれか以内で行われる
。領域は、好ましくは、配列番号2の約44位~約67位である。
【0093】
1つ以上の修飾がポリヌクレオチド認識または識別を改善することを意図される場合、
それらは、好ましくは、ポリヌクレオチドの捕捉を改善するための1つ以上の修飾に加え
て行われる。これにより、変異体モノマーから形成されたポアが効果的にポリヌクレオチ
ドを捕捉し、以下に論じられるようにその配列を推定するなど、ポリヌクレオチドを特徴
付けることを可能にする。
【0094】
ポリヌクレオチドと相互作用する能力を変化させる、特にポリヌクレオチドを捕捉する
その能力及び/または認識または識別する能力を改変するタンパク質ナノポアの修飾は、
当技術分野で十分に文書化されている。例えば、そのような修飾は、WO2010/03
4018及びWO2010/055307に開示されている。同様の修飾は、本発明に従
ってライセニンモノマーに行われ得る。
【0095】
1回、2回、5回、10回、15回、20回、30回、またはそれ以上の修飾といった
任意の数の修飾を行うことができる。ポリヌクレオチドと相互作用するモノマーの能力が
変化される限り、任意の修飾を行うことができる。好適な修飾には、アミノ酸置換、アミ
ノ酸付加及びアミノ酸欠失が挙げられるが、これらに限定されない。1つ以上の修飾は、
好ましくは、1つ以上の置換である。これは、以下により詳細に論じられる。
【0096】
1つ以上の修飾は、好ましくは、(a)モノマーの立体効果を変化させるか、または好
ましくは領域の立体効果を変化させる、(b)モノマーの正味電荷を変化させるか、また
は好ましくは領域の正味電荷を変化させる、(c)モノマーの能力を変化させるか、また
は好ましくは領域の能力を変化させて、ポリヌクレオチドと水素結合する、(d)非局在
化電子pi系を介して相互作用する化学基を導入または除去する、及び/または(e)モ
ノマーの構造を変化させるか、または好ましくは領域の構造を変化させる。1つ以上の修
飾は、より好ましくは、(a)及び(b);(a)及び(c);(a)及び(d);(a
)及び(e);(b)及び(c);(b)及び(d);(b)及び(e);(c)及び(
d);(c)及び(e);(d)及び(e)、(a)、(b)、及び(c);(a)、(
b)、及び(d);(a)、(b)、及び(e);(a)、(c)、及び(d);(a)
、(c)、及び(e);(a)、(d)、及び(e);(b)、(c)、及び(d);(
b)、(c)、及び(e);(b)、(d)、及び(e);(c)、(d)、及び(e)
;(a)、(b)、(c)、及び(d);(a)、(b)、(c)、及び(e);(a)
、(b)、(d)、及び(e);(a)、(c)、(d)、及び(e);(b)、(c)
、(d)、及び(e);ならびに(a)、(b)、(c)、及び(d)のような(a)~
(e)の任意の組み合わせをもたらす。
【0097】
(a)については、モノマーの立体効果を増減させることができる。立体効果を変化さ
せる任意の方法を本発明に従って使用することができる。フェニルアラニン(F)、トリ
プトファン(W)、チロシン(Y)、またはヒスチジン(H)などの嵩高い残基の導入は
、モノマーの立体構造を増加させる。1つ以上の修飾は、好ましくは、F、W、Y、及び
Hのうちの1つ以上の導入である。F、W、Y、及びHの任意の組み合わせは、導入され
てもよい。F、W、Y、及びHのうちの1つ以上は、付加によって導入されてもよい。F
、W、Y、及びHのうちの1つ以上は、好ましくは置換によって導入される。このような
残基の導入のための好適な位置は、以下でより詳細に論じられる。
【0098】
フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、チロシン(Y)、またはヒスチジン
(H)のような嵩高い残基の除去は、逆にモノマーの立体構造を減少させる。1つ以上の
修飾は、好ましくは、F、W、Y、及びHの1つ以上の除去である。F、W、Y、及びH
の任意の組み合わせは、除去されてもよい。F、W、Y、及びHのうちの1つ以上は、欠
失によって除去され得る。セリン(S)、スレオニン(T)、アラニン(A)、及びバリ
ン(V)のような、より小さな側基を有する残基で置換することにより、F、W、Y、及
びHの1つ以上が好ましくは除去される。
【0099】
(b)については、正味の電荷は任意の方法で変化され得る。正味の正電荷は好ましく
は増加または減少される。正味の正電荷は、任意の様式で増加され得る。正味の正電荷は
、好ましくは、1つ以上の正に荷電したアミノ酸を導入することによって、好ましくは置
換によって及び/または1つ以上の負電荷を中和することによって、好ましくは置換によ
って、増加され得る。
【0100】
正味の正電荷は、好ましくは、1つ以上の正に荷電したアミノ酸を導入することによっ
て増加される。1つ以上の正に荷電したアミノ酸は、付加によって導入され得る。1つ以
上の正に荷電したアミノ酸は、好ましくは、置換によって導入される。正に荷電したアミ
ノ酸は、正味の正電荷を有するアミノ酸である。正に荷電したアミノ酸(複数可)は、天
然型であっても非天然型であってもよい。正に荷電したアミノ酸は、合成であっても修飾
されていてもよい。例えば、正味の正電荷を有する修飾アミノ酸は、本発明における使用
のために特別に設計され得る。アミノ酸へのいくつかの異なる種類の修飾が当該技術分野
で周知である。
【0101】
好ましい天然型の正に荷電したアミノ酸には、ヒスチジン(H)、リシン(K)、及び
アルギニン(R)が挙げられるが、これらに限定されない。1つ以上の修飾は、好ましく
は、H、K、及びRのうちの1つ以上の導入である。H、K、及びRの任意の数及び組み
合わせは、導入され得る。H、K、及びRのうちの1つ以上は、付加によって導入されて
もよい。H、K、及びRのうちの1つ以上は、好ましくは、置換によって導入される。こ
のような残基の導入のための好適な位置は、以下でより詳細に論じられる。
【0102】
天然型アミノ酸を付加または置換するための方法は、当該技術分野で周知である。例え
ば、メチオニン(M)は、モノマーをコードするポリヌクレオチドの関連する位置におい
てメチオニンのコドン(ATG)をアルギニンのコドン(AGA)に置き換えることによ
ってアルギニン(R)で置換され得る。ポリヌクレオチドは、次いで、以下に論じられる
ように発現され得る。
【0103】
非天然型アミノ酸を付加または置換するための方法は、当該技術分野で周知である。例
えば、非天然型アミノ酸は、ポアを発現させるために使用されるIVTTシステム中に合
成アミノアシル-tRNAを含むことによって導入され得る。代替的には、それらは、特
定のアミノ酸について栄養要求性であるE.coli中で、それらの特定のアミノ酸の合
成(すなわち、非天然型)類似体の存在下で、モノマーを発現させることによって導入さ
れ得る。それらはまた、ポアが部分的ペプチド合成を使用して生成される場合、ネイキッ
ドライゲーション(naked ligation)によって生成され得る。
【0104】
いずれのアミノ酸も正に荷電したアミノ酸で置換され得る。1つ以上の荷電していない
アミノ酸、非極性アミノ酸及び/または芳香族アミノ酸は、1つ以上の正に荷電したアミ
ノ酸で置換されていてもよい。荷電していないアミノ酸は正味の電荷を有さない。好適な
荷電していないアミノ酸には、システイン(C)、セリン(S)、トレオニン(T)、メ
チオニン(M)、アスパラギン(N)、及びグルタミン(Q)が挙げられるが、これらに
限定されない。非極性アミノ酸は、非極性側鎖を有する。好適な非極性アミノ酸には、グ
リシン(G)、アラニン(A)、プロリン(P)、イソロイシン(I)、ロイシン(L)
、及びバリン(V)が挙げられるが、これらに限定されない。芳香族アミノ酸は、芳香族
側鎖を有する。好適な芳香族アミノ酸には、ヒスチジン(H)、フェニルアラニン(F)
、トリプトファン(W)及び、チロシン(Y)が挙げられるが、これらに限定されない。
好ましくは、1つ以上の負に荷電したアミノ酸は、1つ以上の正に荷電したアミノ酸で置
換されている。好適な負に荷電したアミノ酸には、アスパラギン酸(D)及びグルタミン
酸(E)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0105】
好ましい導入には、KによるEの置換、RによるMの置換、HによるMの置換、Kによ
るM置換、RによるDの置換、HによるDの置換、KによるDの置換、RによるEの置換
、HによるE置換、RによるNの置換、RによるTの置換、及びRによるGの置換が挙げ
られるが、これらに限定されない。最も好ましくは、EはKで置換されている。
【0106】
任意の数の正に荷電したアミノ酸は、導入または置換され得る。例えば、1、2、5、
10、15、20、25、30、またはそれ以上の正に荷電したアミノ酸は、導入または
置換され得る。
【0107】
正味の正電荷は、より好ましくは、1つ以上の負電荷を中和することによって増加され
る。1つ以上の負電荷は、1つ以上の負に荷電したアミノ酸を1つ以上の非荷電アミノ酸
、非極性アミノ酸、及び/または芳香族アミノ酸で置換することによって中和され得る。
負電荷の除去は、正味の正電荷を増加させる。非荷電アミノ酸、非極性アミノ酸、及び/
または芳香族アミノ酸は、天然型または非天然型アミノ酸であり得る。それらは合成また
は修飾されていてもよい。好適な非荷電アミノ酸、非極性アミノ酸、及び芳香族アミノ酸
は、上記に論じられる。好ましい置換には、QによるEの置換、SによるEの置換、Aに
よるEの置換、QによるDの置換、NによるEの置換、NによるDの置換、GによるDの
置換、及びSによるDの置換が挙げられるが、これらに限定されない。
【0108】
非荷電アミノ酸、非極性アミノ酸、及び/または芳香族アミノ酸の任意の数及び組み合
わせが置換され得る。例えば、1、2、5、10、15、20、25、または30以上の
非荷電アミノ酸、非極性アミノ酸、及び/または芳香族アミノ酸が置換されていてもよい
。負に荷電したアミノ酸は、(1)非荷電アミノ酸、(2)非極性アミノ酸、(3)芳香
族アミノ酸、(4)非荷電アミノ酸及び非極性アミノ酸、(5)非荷電アミノ酸及び芳香
族アミノ酸、(5)非極性アミノ酸及び芳香族アミノ酸、または(6)非荷電アミノ酸、
非極性アミノ酸、及び芳香族アミノ酸で置換されてもよい。
【0109】
1個以上の負電荷は、1、2、3、または4個のアミノ酸以内等、1個以上の負に荷電
したアミノ酸に近いまたは隣接する1個以上の正に荷電したアミノ酸を導入することによ
って中和され得る。正及び負に荷電したアミノ酸の例は上記に論じられる。正に荷電した
アミノ酸は、例えば置換によって、上記に論じられる任意の様式で導入され得る。
【0110】
正味の正電荷は、好ましくは、1つ以上の負に荷電したアミノ酸を導入及び/または1
つ以上の正電荷を中和することによって減少される。これが行われる可能性のある方法は
、正味の正電荷を増加させることに関して上記の議論から明らかであろう。正味の正電荷
を増加させることに関して上記に論じられる全ての実施形態は、電荷が逆の方法で変化さ
れることを除いて正味の正電荷を減少させることに等しく適用する。特に、1つ以上の正
電荷は、好ましくは、1つ以上の正電荷アミノ酸を1つ以上の非荷電アミノ酸、非極性ア
ミノ酸、及び/または芳香族アミノ酸で置換することによって、あるいは1、2、3、も
しくは4つ以内に近いアミノ酸といった1つ以上の負に荷電したアミノ酸、または1つ以
上の正に荷電したアミノ酸に隣接して導入することによって中和され得る。
【0111】
正味の負電荷は、好ましくは増加または減少される。正味の正電荷を増加または減少さ
せることに関して上記に論じられる全ての上記の実施形態は、正味の負電荷をそれぞれ減
少または増加させることに等しく適用する。
【0112】
(c)については、水素結合に対するモノマーの能力は、任意の様式で変化され得る。
セリン(S)、スレオニン(T)、アスパラギン(N)、グルタミン(Q)、チロシン(
Y)、またはヒスチジン(H)の導入は、モノマーの水素結合能力を増加させる。1つ以
上の修飾は、好ましくは、S、T、N、Q、Y、及びHのうちの1つ以上の導入である。
S、T、N、Q、Y、及びHの任意の組み合わせは、導入され得る。S、T、N、Q、Y
、及びHのうちの1つ以上は、付加によって導入されてもよい。S、T、N、Q、Y、、
及びHのうちの1つ以上は、好ましくは、置換によって導入される。このような残基の導
入のための好適な位置は、以下でより詳細に論じられる。
【0113】
セリン(S)、スレオニン(T)、アスパラギン(N)、グルタミン(Q)、チロシン
(Y)、またはヒスチジン(H)の除去は、モノマーの水素結合能力を減少させる。1つ
以上の修飾は、好ましくは、S、T、N、Q、Y、及びHのうちの1つ以上の除去である
。S、T、N、Q、Y、及びHの任意の組み合わせは、除去され得る。S、T、N、Q、
Y、及びHのうちの1つ以上は、欠失によって除去され得る。アラニン(A)、バリン(
V)、イソロイシン(I)、及びロイシン(L)等の、水素結合があまり良好でない他の
アミノ酸で置換することによって、S、T、N、Q、Y、及びHのうちの1つ以上が好ま
しくは除去される。
【0114】
(d)については、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、チロシン(Y)
、またはヒスチジン(H)等の芳香族残基の導入は、モノマー中のpiスタッキングを増
加させる。フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、チロシン(Y)、またはヒ
スチジン(H)等の芳香族残基の除去もまた、モノマー中のpiスタッキングを減少させ
る。そのようなアミノ酸は、(a)を参照して上記に論じられるように導入または除去す
ることができる。
【0115】
(e)については、モノマーの構造を変化させる本発明に従って1つ以上の修正が行わ
れ得る。例えば、1つ以上のループ領域を除去、短縮、または拡張することができる。こ
れは、典型的には、ポリヌクレオチドのポアへの出入りを容易にする。1つ以上のループ
領域は、ポアのシス側、ポアのトランス側、またはポアの両側にあってもよい。代替的に
は、ポアのアミノ末端及び/またはカルボキシ末端のうちの1つ以上の領域は、拡張され
ることができるか、または欠失されることができる。これは、典型的には、ポアのサイズ
及び/または電荷を変化させる。
【0116】
特定のアミノ酸の導入が、2つ以上のメカニズムを介してポリヌクレオチドと相互作用
するモノマーの能力を高めることは、上記の考察から明らかであろう。例えば、EをHで
置換することは、(b)に従って正味の正電荷を(負電荷を中和することによって)増加
させるだけでなく、(c)に従ってモノマーの水素結合に対する能力も増加させるであろ
う。
【0117】
バリアントは、好ましくは、配列番号2の以下の位置、M44、N46、N48、E5
0、R52、H58、D68、F70、E71、S74、E76、S78、Y79、S8
0、H81、S82、E84、E85、S86、Q87、S89、M90、E92、E9
4、E97、E102、H103、T104、T106、R115、Q117、N119
、D121、及びD126のうちの1つ以上における置換を含む。バリアントは、好まし
くは、それらの位置のうちの1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、
13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、2
6、27、28、29、30、31、32、33、または34における置換を含む。バリ
アントは、好ましくは、配列番号2の以下の位置、D68、E71、S74、E76、S
78、S80、S82、E84、E85、S86、Q87、S89、E92、E102、
T104、T106、R115、Q117、N119、及びD121のうちの1つ以上に
おける置換を含む。バリアントは、好ましくは、これらの位置のうちの1、2、3、4、
5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、
または20における置換を含む。
【0118】
バリアントは、好ましくは、配列番号2の以下の位置、(a)E84、E85、E92
、E97、及びD126、(b)E85、E97、及びD126、または(c)E84及
びE92のうちの1つ以上における置換を含む。バリアントに置換されたアミノ酸は、天
然に存在するまたは天然に存在しないその誘導体であってもよい。バリアントに置換され
るアミノ酸は、D-アミノ酸であってもよい。上記に列挙される各位置は、アスパラギン
(N)、セリン(S)、グルタミン(Q)、アルギニン(R)、グリシン(G)、チロシ
ン(Y)、アスパラギン酸(D)、ロイシン(L)、リジン(K)、またはアラニン(A
)であり得る。
【0119】
バリアントは、好ましくは、配列番号2の以下の変異のうちの少なくとも1つを含む:
(a)44位のセリン(S)、
(b)46位のセリン(S)、
(c)48位のセリン(S)、
(d)52位のセリン(S)、
(e)58位のセリン(S)、
(f)68位のセリン(S)、
(g)70位のセリン(S)、
(h)71位のセリン(S)、
(i)76位のセリン(S)、
(j)79位のセリン(S)、
(k)81位のセリン(S)、
(l)84位のセリン(S)、アスパラギン酸(D)、またはグルタミン(Q)、
(m)85位のセリン(S)またはリジン(K)、
(n)87位のセリン(S)、
(o)90位のセリン(S)、
(p)92位のアスパラギン(N)またはグルタミン(Q)、
(q)94位のセリン(S)またはアスパラギン(N)、
(r)97位のセリン(S)またはアスパラギン(N)、
(s)102位のセリン(S)、
(t)103位のセリン(S)、
(u)121位のアスパラギン(N)またはセリン(S)、
(v)50位のセリン(S)、
(w)94位のアスパラギン(N)またはセリン(S)、
(x)97位のアスパラギン(N)またはセリン(S)、
(y)121位のセリン(S)またはアスパラギン(N)、
(z)126位のアスパラギン(N)またはグルタミン(Q)またはグリシン(G)、
及び
(aa)128位のセリン(S)またはアスパラギン(N)。
【0120】
バリアントは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14
、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26,または
27個等の変異(a)~(aa)の任意の数を含み得る。変異の好ましい組み合わせは、
以下で論じられる。バリアントに導入されるアミノ酸は、天然型または非天然型のその誘
導体であってもよい。バリアントに導入されるアミノ酸は、D-アミノ酸であってもよい
【0121】
バリアントは、好ましくは、配列番号2の以下の変異のうちの少なくとも1つを含む:
(a)68位のセリン(S)、
(b)71位のセリン(S)、
(c)76位のセリン(S)、
(d)84位のアスパラギン酸(D)またはグルタミン(Q)、
(e)85位のリジン(K)、
(f)92位のアスパラギン(N)またはグルタミン(Q)、
(g)102位のセリン(S)、
(h)121位のアスパラギン(N)またはセリン(S)、
(i)50位のセリン(S)、
(j)94位のアスパラギン(N)またはセリン(S)、
(k)97位のアスパラギン(N)またはセリン(S)、及び
(l)126位のアスパラギン(N)またはグルタミン(Q)またはグリシン(G)。
【0122】
バリアントは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12の変異
等の任意の数の変異(a)~(l)を含み得る。変異の好ましい組み合わせは、以下で論
じられる。バリアントに導入されるアミノ酸は、天然型または非天然型のその誘導体であ
ってもよい。バリアントに導入されるアミノ酸は、D-アミノ酸であってもよい。
【0123】
バリアントは、配列番号2の約44位~約126位の領域外で1つ以上の追加の修飾を
含むことができ、上記に論じられる領域中の修飾と組み合わせてポリヌクレオチドの捕獲
を改善し及び/またはポリヌクレオチドの認識または識別を改善する。好適な修飾は、D
35、E128、E135、E134、及びE167のうちの1つ以上における置換を含
むが、これらに限定されない。特に、位置128、135、134、及び167のうちの
1つ以上でEを置換することによる負電荷の除去は、ポリヌクレオチド捕獲を改善する。
これらの位置の1つ以上でのEは、上記に論じられる方法のいずれかで置換されてもよい
。好ましくは、E128、E135、E134、及びE167の全てが上記に論じられる
ように置換される。Eは好ましくはAで置換されている。換言すれば、バリアントは、好
ましくは、E128A、E135A、E134A、及びE167Aのうちの1つ以上また
は全てを含む。別の好ましい置換はD35Qである。
【0124】
好ましい実施形態において、バリアントは、配列番号2の以下の置換を含む:
i.E84D及びE85Kのうちの、両方等の、1個以上、
ii.E84Q、E85K、E92Q、E97S、D126G、及びE167Aのうち
の、2、3、4、5、もしくは6個等の、1個以上、
iii.E92N、E94N、E97N、D121N、及びD126Nのうちの、2、
3、4、もしくは5個等の、1個以上、
iv.E92N、E94N、E97N、D121N、D126N、及びE128Nのう
ちの、2、3、4、5、もしくは6個等の、1個以上、
v.E76S、E84Q、E85K、E92Q、E97S、D126G、及びE167
Aのうちの、2、3、4、5、6、もしくは7個等の、1個以上、
vi.E84Q、E85K、E92Q、E97S、D126G、E167A、及びE5
0Sのうちの、2、3、4、5、6、もしくは7個等の、1個以上、
vii.E84Q、E85K、E92Q、E97S、D126G、E167A、及びE
71Sのうちの、2、3、4、5、6、もしくは7個等の、1個以上、
viii.E84Q、E85K、E92Q、E97S、D126G、E167A、及び
E94Sのうちの、2、3、4、5、6、もしくは7個等の、1個以上、
ix.E84Q、E85K、E92Q、E97S、D126G、E167A、及びE1
02Sのうちの、2、3、4、5、6、もしくは7個等の、1個以上、
x.E84Q、E85K、E92Q、E97S、D126G、E167A、及びE12
8Sのうちの、2、3、4、5、6、もしくは7個等の、1個以上、
xi.E84Q、E85K、E92Q、E97S、D126G、E167A、及びE1
35Sのうち2、3、4、5、6、もしくは7個等の、1個以上、
xii.E84Q、E85K、E92Q、E97S、D126G、E167A、及びD
68Sのうちの、2、3、4、5、6、もしくは7個等の、1個以上、
xiii.E84Q、E85K、E92Q、E97S、D126G、E167A、及び
D121Sのうちの、2、3、4、5、6、もしくは7個等の、1個以上、
xiv.E84Q、E85K、E92Q、E97S、D126G、E167A、及びD
134Sのうちの、2、3、4、5、6、もしくは7個等の、1個以上、
xv.E84D、E85K、及びE92Qのうちの、2もしくは3個等の、1個以上、
xvi.E84Q、E85K、E92Q、E97S、D126G、及びE135Sのう
ち1、2、3、4、5、もしくは6個等の、1個以上、
xvii.E85K、E92Q、E94S、E97S、及びD126Gのうちの、1、
2、3、4、もしくは5個等の、1個以上、
xviii.E76S、E85K、E92Q、E97S、及びD126Gのうちの、1
、2、3、4、もしくは5個等の、1個以上、
xix.E71S、E85K、E92Q、E97S、及びD126Gのうちの、1、2
、3、4、もしくは5個等の、1個以上、
xx.D68S、E85K、E92Q、E97S、及びD126Gのうちの、1、2、
3、4、もしくは5個等の、1個以上、
xxi.E85K、E92Q、E97S、及びD126Gのうちの、1、2、3、もし
くは4個等の、1個以上、
xxii.E84Q、E85K、E92Q、E97S、H103S、及びD126Gの
うちの、1、2、3、4、5、もしくは6個等の、1個以上、
xxiii.E84Q、E85K、M90S、E92Q、E97S、及びD126Gの
うちの、1、2、3、4、5、もしくは6個等の、1個以上、
xxiv.E84Q、Q87S、E85K、E92Q、E97S、及びD126Gのう
ちの、1、2、3、4、5、もしくは6個等の、1個以上、
xxv.E84Q、E85S、E92Q、E97S、及びD126Gのうちの、1、2
、3、4、もしくは5個等の、1個以上、
xxvi.E84S、E85K、E92Q、E97S、及びD126Gのうちの、1、
2、3、4、もしくは5個等の、1個以上、
xxvii.H81S、E84Q、E85K、E92Q、E97S、及びD126Gの
うちの、1、2、3、4、5、もしくは6個等の、1個以上、
xxviii.Y79S、E84Q、E85K、E92Q、E97S、及びD126G
のうちの、1、2、3、4、5、もしくは6個等の、1個以上、
xxix.F70S、E84Q、E85K、E92Q、E97S、及びD126Gのう
ちの、1、2、3、4、5、もしくは6個等の、1個以上、
xxx.H58S、E84Q、E85K、E92Q、E97S、及びD126Gのうち
の、1、2、3、4、5、もしくは6個等の、1個以上、
xxxi.R52S、E84Q、E85K、E92Q、E97S、及びD126Gのう
ちの、1、2、3、4、5、もしくは6個等の、1個以上、
xxxii.N48S、E84Q、E85K、E92Q、E97S、及びD126Gの
うちの、1、2、3、4、5、もしくは6個等の、1個以上、
xxxiii.N46S、E84Q、E85K、E92Q、E97S、及びD126G
のうちの、1、2、3、4、5、もしくは6個等の、1個以上、
xxxiv.M44S、E84Q、E85K、E92Q、E97S、及びD126Gの
うちの、1、2、3、4、5、もしくは6個等の、1個以上、
xxxv.E92Q及びE97Sのうちの、両方等の、1個以上、
xxxvi.E84Q、E85K、E92Q、及びE97Sのうちの、1、2、3、も
しくは4個等の、1個以上、
xxxvii.E84Q及びE85Kのうちの、両方等の、1個以上、
xxxviii.E84Q、E85K、及びD126Gのうちの、1、2、もしくは3
個等の、1個以上、
xxxix.E84Q、E85K、D126G、及びE167Aのうちの、1、2、3
、もしくは4個等の、1個以上、
xl.E92Q、E97S、及びD126Gのうちの、1、2、もしくは3個等の、1
個以上、
xli.E84Q、E85K、E92Q、E97S、及びD126Gのうちの、1、2
、3、4、もしくは5個等の、1個以上、
xlii.E84Q、E85K、E92Q、E97S、及びE167Aのうちの、1、
2、3、4、もしくは5個等の、1個以上、
xliii.E84Q、E85K、E92Q、D126G、及びE167Aのうちの、
1、2、3、4、もしくは5個等の、1個以上、
xliv.E84Q、E85K、E97S、D126G、及びE167Aのうちの、1
、2、3、4、もしくは5個等の、1個以上、
xlv.E84Q、E92Q、E97S、D126G、及びE167Aのうちの、1、
2、3、4、もしくは5個等の、1個以上、
xlvi.E85K、E92Q、E97S、D126G、及びE167Aのうちの、1
、2、3、4、もしくは5個等の、1個以上、
xlvii.E84D、E85K、及びE92Qのうちの、1、2、もしくは3個等の
、1個以上、
xlviii.E84Q、E85K、E92Q、E97S、D126G、E167A、
及びD121Sのうちの、1、2、3、4、5、6、もしくは7個等の、1個以上、
xlix.E84Q、E85K、E92Q、E97S、D126G、E167A、及び
D68Sのうちの、1、2、3、4、5、6、もしくは7個等の、1個以上、
l.E84Q、E85K、E92Q、E97S、D126G、E167A、及びE13
5Sのうちの、1、2、3、4、5、6、もしくは7個等の、1個以上、
li.E84Q、E85K、E92Q、E97S、D126G、E167A、及びE1
28Sのうちの、1、2、3、4、5、6、もしくは7個等の、1個以上、
lii.E84Q、E85K、E92Q、E97S、D126G、E167A、及びE
102Sのうちの、1、2、3、4、5、6、もしくは7個等の、1個以上、
liii.E84Q、E85K、E92Q、E97S、D126G、E167A、及び
E94Sのうちの、1、2、3、4、5、6、もしくは7個等の、1個以上、
liv.E84Q、E85K、E92Q、E97S、D126G、E167A、及びE
71Sのうちの、1、2、3、4、5、6、もしくは7個等の、1個以上、
lv.E84Q、E85K、E92Q、E97S、D126G、E167A及びE50
Sのうちの、1、2、3、4、5、6、もしくは7個等の、1個以上、
lvi.E76S、E84Q、E85K、E92Q、E97S、D126G、及びE1
67Aのうちの、1、2、3、4、5、6、もしくは7個等の、1個以上、
lvii.E92N、E94N、E97N、D121N、D126N、及びE128N
のうちの、1、2、3、4、5、もしくは6個等の、1個以上、
lviii.E92N、E94N、E97N、D121N、及びD126Nのうちの、
1、2、3、4、もしくは5個等の、1個以上、または
lix.E84Q、E85K、E92Q、E97S、D126G、及びE167Aのう
ちの、1、2、3、4、5、もしくは6個等の、1個以上
【0125】
上記において、最初の文字は配列番号2のアミノ酸が置き換えられていることを示し、
数字は配列番号2の位置であり、2番目の文字は最初のものが置換されるアミノ酸を指す
。したがって、E84Dは、84位のグルタミン酸(E)をアスパラギン酸(D)で置換
することを意味する。
【0126】
バリアントは、例えば1、2、3、4、5、6、または7の、i~lixのうちのいず
れか1つで任意の数の置換を含み得る。バリアントは、好ましくは、上記のi~lixの
うちのいずれか1つに示される全ての置換を含む。
【0127】
好ましい実施形態において、バリアントは、上記のi~xvのうちのいずれか1つで置
換を含む。バリアントは、例えば1、2、3、4、5、6、または7の、i~xvのうち
のいずれか1つで任意の数の置換を含み得る。バリアントは、好ましくは、上記のi~x
vのうちのいずれか1つに示される全ての置換を含む。
【0128】
1つ以上の修飾が、ポリヌクレオチドを認識または識別するためのモノマーの能力を改
善することが意図される場合、それらは、好ましくは、E84Q、E85K、E92Q、
E97S、D126G、及びE167A等のポリヌクレオチド捕捉を改善する上記に論じ
られる修飾に加えて行われる。
【0129】
同定された領域に対して行われた1つ以上の修飾は、領域中の1つ以上のアミノ酸の、
ライセニンのホモログまたはパラログ中に対応する位置(複数可)に存在するアミノ酸に
よる置換に関係し得る。ライセニンのホモログの4つの例は、配列番号14~17に示さ
れる。そのような置換の利点は、ホモログモノマーもまたポアを形成するため、それらが
ポアを形成する変異体モノマーをもたらす可能性が高いことである。例えば、変異は、配
列番号2と配列番号14~17のうちのいずれか1つとの間で異なる配列番号2の位置の
うちの1つ以上において行われ得る。そのような変異は、配列番号2のアミノ酸の、配列
番号14~17のうちのいずれか1つで対応する位置からのアミノ酸、好ましくは配列番
号14~16のうちのいずれか1つのアミノ酸による置換であってもよい。代替的には、
これらの位置のうちのいずれか1つにおける変異は、任意のアミノ酸による置換であり得
るか、または欠失もしくは挿入変異、例えば2~20、3~10、または4~8のアミノ
酸等の1~30のアミノ酸の置換、欠失、もしくは挿入であり得る。本明細書中に開示さ
れる変異、及び先行技術に開示される変異以外では、例えばWO2013/153359
において、配列番号2と、配列番号14~17の全て、より好ましくは、配列番号14~
16の全てとの間で保存または同一であるアミノ酸は、好ましくは、保存されているか、
または本発明のバリアントに存在する。保存的変異は、配列番号2と配列番号14~17
またはより好ましくは配列番号14~16との間で保存されているかまたは同一であるこ
れらの位置のいずれか1つ以上において行われ得る。
【0130】
本発明は、配列番号2の特定の位置に対応するライセニンモノマーの構造の位置におい
て、配列番号2の特定の位置に置換されている、本明細書に記載されるアミノ酸のうちの
いずれか1つ以上を含むライセニン変異体モノマーを提供する。対応する位置は、当該技
術分野における標準的な技術によって決定され得る。例えば、上記に述べられているPI
LEUP及びBLASTアルゴリズムを使用して、ライセニンモノマーの配列を配列番号
2と整列させることができ、それによって対応する残基を同定することができる。
【0131】
変異体モノマーは、典型的には、野生型ライセニンモノマーと同じ3D構造、例えば配
列番号2の配列を有するライセニンモノマーと同じ3D構造を形成する能力を保持する。
ライセニンモノマーの3D構造は、当該技術分野で既知であり、例えば、De Colb
is et al.,Structure,2012(20):1498-1507に開
示されている。変異体モノマーは、典型的には、他のライセニンモノマーと共にホモオリ
ゴマー及び/またはヘテロオリゴマーのポアを形成する能力を保持する。変異体モノマー
は、典型的には、ポア中に存在する場合、野生型ライセニンモノマーと同じ3D構造を形
成するようにリフォールディングする能力を保持する。ライセニンポア中のライセニンモ
ノマーの3D構造は、本明細書の図7に示される。本明細書に説明される変異に加えて、
野生型ライセニン配列には、2~100、3~80、4~70、5~60、10~50、
または20~40個等の任意の数の変異が行われ得るが、但し、ライセニン変異体モノマ
ーが、本発明の変異によってそれに付与された改善された特性のうちの1つ以上を保持す
ることを条件とする。
【0132】
典型的には、ライセニンモノマーは、他の同一の変異体モノマーと、または異なるライ
セニン変異体モノマーと組み合わされてポアを形成する場合、2つのベータシートをライ
セニンポアのバレルに寄与する能力を保持するであろう。
【0133】
バリアントは、さらに好ましくは、E84Q/E85K/E92Q/E97S/D12
6Gのうちの1つ以上、または適切な場合、E84Q/E85K/E92Q/E97S/
D126Gの全てを含む。「適切な場合には」とは、位置が変異体モノマーにまだ存在す
るか、または異なるアミノ酸で修飾されていないかどうかを意味する。
【0134】
上記の特定の変異に加えて、バリアントは、他の変異を含んでもよい。これらの変異は
、ポリヌクレオチドと相互作用するモノマーの能力を必ずしも高めない。変異は、例えば
、発現及び/または精製を容易にし得る。配列番号2のアミノ酸配列の全長にわたって、
バリアントは、好ましくは、アミノ酸類似性または同一性に基づき、その配列に対して少
なくとも50%のホモログを有する。より好ましくは、バリアントは、配列全体にわたっ
て、アミノ酸類似性または同一性に基づき、配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくと
も55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%
、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、より好ましくは少なくとも
95%、97%、または99%のホモログを有し得る。100個以上、例えば125、1
50、175、または200個以上の連続したアミノ酸のストレッチにわたって、少なく
とも80%、例えば、少なくとも85%、90%、または95%のアミノ酸類似性または
同一性があってもよい(「ハードホモロジー(hardhomology)」)。
【0135】
相同性を判定するために、当該技術分野における標準的な方法が使用され得る。例えば
、UWGCG Packageは、例えばそのデフォルト設定で使用されて、相同性を計
算するために使用され得るBESTFITプログラムを提供する(Devereux e
t al(1984)Nucleic Acids Research 12,p387
-395)。例えば、Altschul S.F.(1993)J Mol Evol
36:290-300、Altschul,S.F et al(1990)J Mol
Biol 215:403-10に記載されるように、PILEUP及びBLASTア
ルゴリズムを使用して、相同性を計算するか、または配列を並べる(同等の残基または対
応する配列を同定する(典型的には、それらのデフォルト設定において))ことができる
。BLAST分析を実施するためのソフトウェアは、National Center
for Biotechnology Information(http://www
.ncbi.nlm.nih.gov/)を通じて一般に利用可能である。類似性は、ペ
アワイズ同一性を用いて、またはBLOSUM62等のスコアリングマトリックスを適用
し、同等の同一性に変換することによって測定することができる。それらは進化した変化
ではなく機能的なものであるため、相同性を判定する際に意図的に変異した位置はマスク
される。類似性は、タンパク質配列の包括的データベース上の例えばPSIBLASTを
使用する位置特異的スコアリングマトリックスの適用によってより敏感に決定され得る。
進化的時間スケール(例えば、電荷)にわたる置換の頻度よりもむしろアミノ酸の化学物
理的特性を反映する異なるスコアリングマトリックスを使用することができる。
【0136】
上記に論じられるものに加えて、配列番号2のアミノ酸配列に対するアミノ酸置換、例
えば最大で1、2、3、4、5、10、20、または30個の置換が行われ得る。保存的
置換は、アミノ酸を、類似の化学構造、類似の化学的特性、または類似の側鎖量の他のア
ミノ酸で置き換える。導入されるアミノ酸は、それらが置き換えるアミノ酸と類似の極性
、親水性、疎水性、塩基性、酸性、中性、または荷電性を有し得る。代替的には、保存的
置換は、既存の芳香族または脂肪族アミノ酸の代わりに、芳香族または脂肪族である別の
アミノ酸を導入してもよい。保存的アミノ酸変化は、当該技術分野で周知であり、以下の
表3に定義されるように、20個のアミノ酸の特性に従って選択され得る。アミノ酸が類
似の極性を有する場合、これはまた、表4におけるアミノ酸側鎖の疎水性スケールを参照
して判定することもできる。
【表6】
【表7】
【0137】
バリアントは、アミノ酸が、ライセニンのホモログ及びパラログ中で対応する位置(複
数可)において置き換えられている、上記で特定された領域外の1つ以上の置換を含み得
る。ライセニンのホモログの4つの例は、配列番号14~17に示される。
【0138】
配列番号2のアミノ酸配列の1つ以上のアミノ酸残基は、上記に説明されているバリア
ントからさらに欠失され得る。最大で1、2、3、4、5、10、20、または30個以
上の残基が欠失され得る。
【0139】
バリアントは、配列番号2の断片を含み得る。そのような断片は、ポア形成活性を保持
する。これは、上記のようにアッセイすることができる。断片は、少なくとも50、10
0、150、200、または250個のアミノ酸の長さであり得る。そのような断片を使
用して、本発明のポアを生成することができる。配列番号2の約44位~約126位の領
域は、本発明に従って1つ以上の欠失によって修飾され得るため、断片は全領域を含む必
要はない。したがって、未修飾領域の長さよりも短い断片が本発明によって想定される。
断片は、好ましくは、配列番号2のポア形成ドメインを含む。断片は、より好ましくは、
本発明に従って修飾されている配列番号2の約44位~約126位の領域を含む。
【0140】
代替的に、またはさらに、1つ以上のアミノ酸が上記に説明されているバリアントに付
加されてもよい。配列番号2のバリアントのアミノ酸配列のアミノ末端もしくはカルボキ
シ末端において、伸長が提供されてもよく、その断片を含む。伸長は非常に短くてもよく
、例えば、1~10アミノ酸長であってもよい。代替的には、伸長はより長くてもよく、
例えば、最大で50~100個のアミノ酸であってもよい。本発明によるアミノ酸配列に
、担体タンパク質が融合されてもよい。他の融合タンパク質は、以下により詳細に論じら
れる。
【0141】
上記のように、バリアントは、配列番号2とは異なるアミノ酸配列を有し、かつポアを
形成するその能力を保持するポリペプチドである。バリアントは、典型的には、ポア形成
を担う配列番号2の領域、すなわち約44位から約126位までを含み、この領域は上記
に論じられるように本発明に従って修飾されている。上記に論じられるように、この領域
の断片を含み得る。本発明の修飾に加えて、配列番号2のバリアントは、置換、付加、ま
たは欠失等の1つ以上の追加の修飾を含み得る。これらの修飾は、好ましくは、配列番号
2の約1位~約43位及び約127位~約297位(すなわち、本発明に従って修飾され
た領域外)に対応するバリアントのストレッチに位置する。
【0142】
変異体モノマーは、例えば、ポリペプチドがそのような配列を天然に含まない細胞から
のそれらの分泌を促進するための、ヒスチジン残基(hisタグ)、アスパラギン酸残基
(aspタグ)、ストレプトアビジンタグもしくはflagタグの付加によって、または
シグナル配列の付加によって修飾され、それらの同定または純化を補助することができる
。遺伝的タグを導入することの代替法は、ポア上の天然のまたは操作された位置上にタグ
を化学反応させることである。これの例は、ゲルシフト試薬を、ポアの外側に操作された
システインに反応させることであろう。これは、溶血毒ヘテロオリゴマーを分離するため
の方法として示されている(Chem Biol.1997 Jul;4(7):497
-505)。
【0143】
変異体モノマーは、顕示標識(revealing label)で標識されてもよい
。顕示標識は、ポアが検出されることを可能にする任意の好適な標識であり得る。好適な
標識には、蛍光分子、放射性同位体、例えば、125I、35S、酵素、抗体、抗原、ポ
リヌクレオチド、ポリエチレングリコール(PEG)、ペプチド、及びビオチン等のリガ
ンドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0144】
変異体モノマーはまた、D-アミノ酸を使用して生成され得る。例えば、変異体モノマ
ーは、L-アミノ酸及びD-アミノ酸の混合物を含み得る。これは、そのようなタンパク
質またはペプチドを生成するための当該技術分野における従来法である。
【0145】
変異体モノマーは、ポリヌクレオチドとの相互作用を容易にするための1つ以上の特異
的修飾を含む。モノマーはまた、それらがポア形成に干渉しない限り、他の非特異的修飾
を含んでもよい。いくつかの非特異的側鎖修飾は当該技術分野で既知であり、変異体モノ
マーの側鎖に行われ得る。そのような修飾には、例えば、アルデヒドとの反応に続くNa
BHでの還元によるアミノ酸の還元アルキル化、メチルアセトイミデート(methy
lacetimidate)によるアミジン化、または無水酢酸でのアシル化が含まれる
【0146】
変異体モノマーは、当該技術分野で既知の標準的な方法を用いて生成されることができ
る。モノマーは、合成的に、または組み換え手段によって作製され得る。例えば、モノマ
ーは、インビトロ翻訳及び転写(IVTT)によって合成され得る。ポアモノマーを生成
するための好適な方法は、国際出願第PCT/GB09/001690号(WO2010
/004273として公開)、第PCT/GB09/001679号(WO2010/0
04265として公開)、または第PCT/GB10/000133号(WO2010/
086603として公開)に記載されている。ポアを膜内に挿入するための方法は、以下
に論じられる。
【0147】
変異体モノマーをコードするポリヌクレオチド配列は、当該技術分野における標準的な
方法を使用して得られ、複製され得る。そのような配列は、以下により詳細に論じられる
。変異体モノマーをコードするポリヌクレオチド配列は、当該技術分野における標準的な
方法を使用して細菌宿主細胞において発現され得る。変異体モノマーは、組み換え発現ベ
クターからのポリペプチドのインサイツ発現によって細胞内で生成され得る。発現ベクタ
ーは、任意に、ポリペプチドの発現を制御するために誘導性プロモーターを担持する。
【0148】
変異体モノマーは、ポア生成有機体から、任意のタンパク質液体クロマトグラフィーシ
ステムによる精製に続いて、または以下に論じられるように組み換え発現の後に大規模に
生成され得る。典型的なタンパク質液体クロマトグラフィーシステムには、FPLC、A
KTAシステム、Bio-Cadシステム、Bio-Rad BioLogicシステム
、及びGilson HPLCシステムが含まれる。変異体モノマーは、次いで、本発明
に従って使用するための天然型または人工の膜に挿入され得る。ポアを膜内に挿入するた
めの方法は、以下に論じられる。
【0149】
いくつかの実施形態では、変異体モノマーは、化学修飾される。変異体モノマーは、任
意の方法で、任意の部位において化学修飾され得る。変異体モノマーは、好ましくは、1
つ以上のシステインへの分子の結合(システイン結合)、1つ以上のリジンへの分子の結
合、1つ以上の非天然型アミノ酸への分子の結合、エピトープの酵素修飾、または末端の
修飾によって化学修飾される。そのような修飾を実施するための好適な方法は、当該技術
分野で周知である。好適な非天然アミノ酸は、4-アジド-L-フェニルアラニン(Fa
z)及びLiu C.C.and Schultz P.G.,Annu.Rev.Bi
ochem.,2010,79,413-444の図1中のアミノ酸番号1~71のうち
のいずれか1つを含むが、これらに限定されない。変異体モノマーは、任意の分子の結合
によって化学的に修飾され得る。例えば、変異体モノマーは、ポリエチレングリコール(
PEG)、核酸、例えばDNA、色素、フルオロフォア、または発色団の結合によって化
学的に修飾され得る。
【0150】
いくつかの実施形態において、変異体モノマーは、モノマーを含むポアと、標的分析物
、標的ヌクレオチド、または標的ポリヌクレオチドとの間の相互作用を容易にする分子ア
ダプターによって化学的に修飾される。アダプターの存在は、ポア及びヌクレオチドまた
はポリヌクレオチドのホスト-ゲストケミストリーを改善し、それにより変異体モノマー
から形成されたポアのシークエンシング能力を改善する。ホスト-ゲストケミストリーの
原理は、当該技術分野で周知である。アダプターは、ヌクレオチドまたはポリヌクレオチ
ドとのその相互作用を改善させるポアの物理的または化学的特性に対する効果を有する。
アダプターは、ポアのバレルまたはチャネルの電荷を改変し得るか、またはヌクレオチド
もしくはポリヌクレオチドと特異的に相互作用するかもしくはそれらに結合し、それによ
りポアとのその相互作用を促進し得る。
【0151】
分子アダプターは、好ましくは、環状分子、例えばシクロデキストリン、ハイブリダイ
ゼーションが可能な種、DNA結合剤もしくは相互キレート剤(interchelat
or)、ペプチドもしくはペプチド類似体、合成ポリマー、芳香族平面分子、正に荷電し
た小分子、または水素結合が可能な小分子である。
【0152】
アダプターは、環状であってもよい。環状アダプターは、好ましくは、ポアと同じ対称
性を有する。
【0153】
アダプターは、典型的には、ホスト-ゲストケミストリーを介して、分析物、ヌクレオ
チド、またはポリヌクレオチドと相互作用する。アダプターは、典型的には、ヌクレオチ
ドまたはポリヌクレオチドと相互作用することができる。アダプターは、ヌクレオチドま
たはポリヌクレオチドと相互作用することができる1つ以上の化学基を含む。1つ以上の
化学基は、好ましくは、疎水性相互作用、水素結合、ファンデルワールス力、π-カチオ
ン相互作用、及び/または静電力などの非共有結合相互作用によって、ヌクレオチドまた
はポリヌクレオチドと相互作用する。ヌクレオチドまたはポリヌクレオチドと相互作用す
ることができる1つ以上の化学基は、好ましくは、正に荷電している。ヌクレオチドまた
はポリヌクレオチドと相互作用することができる1つ以上の化学基は、より好ましくはア
ミノ基を含む。アミノ基は、第1級、第2級、または第3級炭素原子に結合し得る。アダ
プターは、さらにより好ましくは、アミノ基の環、例えば、6、7、8、または9個のア
ミノ基の環を含む。アダプターは、最も好ましくは、6または9個のアミノ基の環を含む
。プロトン化されたアミノ基の環は、ヌクレオチドまたはポリヌクレオチド中の負に荷電
したリン酸基と相互作用し得る。
【0154】
ポア内でのアダプターの正しい位置付けは、アダプターと変異体モノマーを含むポアと
の間のホスト-ゲストケミストリーによって促進され得る。アダプターは、好ましくは、
ポア内の1つ以上のアミノ酸と相互作用することができる1つ以上の化学基を含む。アダ
プターは、より好ましくは、疎水性相互作用、水素結合、ファンデルワールス力、π-カ
チオン相互作用、及び/または静電力等の非共有結合相互作用を介して、ポア内の1つ以
上のアミノ酸と相互作用することができる1つ以上の化学基を含む。ポア内の1つ以上の
アミノ酸と相互作用することができる化学基は、典型的には、ヒドロキシルまたはアミン
である。ヒドロキシル基は、第1級、第2級、または第3級炭素原子に結合し得る。ヒド
ロキシル基は、ポア内の荷電していないアミノ酸と水素結合を形成し得る。ポアとヌクレ
オチドまたはポリヌクレオチドとの間の相互作用を容易にする任意のアダプターを使用す
ることができる。
【0155】
好適なアダプターには、シクロデキストリン、環状ペプチド、及びククルビツリルが挙
げられるが、これらに限定されない。アダプターは、好ましくは、シクロデキストリンま
たはその誘導体である。シクロデキストリンまたはその誘導体は、Eliseev,A.
V.,and Schneider、HJ.(1994)J.Am.Chem.Soc.
116,6081~6088に開示されているもののうちのいずれかであり得る。アダプ
ターは、より好ましくは、ヘプタキス-6-アミノ-β-シクロデキストリン(am
βCD)、6-モノデオキシ-6-モノアミノ-β-シクロデキストリン(am-βC
D)、またはヘプタキス-(6-デオキシ-6-グアニジノ)-シクロデキストリン(g
-βCD)である。gu-βCDのグアニジノ基は、am-βCDの第1級アミ
ンよりもはるかに高いpKaを有するため、より正に荷電されている。測定される残留電
流の精度を高めるため、ならびに高温または低いデータ取得率における塩基検出率を高め
るために、このgu-βCDアダプターを使用して、ポア中のヌクレオチドの滞留時間
を増加させることができる。
【0156】
以下により詳細に論じられるようにスクシンイミジル3-(2-ピリジルジチオ)プロ
ピオネート(SPDP)架橋剤が使用される場合、アダプターは、好ましくは、ヘプタキ
ス(6-デオキシ-6-アミノ)-6-N-モノ(2-ピリジル)ジチオプロパノイル-
β-シクロデキストリン(amamPDP-βCD)である。
【0157】
より好適なアダプターには、8個の糖単位を含む(及びしたがって、8回対称性を有す
る)、γ-シクロデキストリンが含まれる。γ-シクロデキストリンは、リンカー分子を
含み得るか、または上記のβ-シクロデキストリン例において使用された修飾された糖単
位のうちの全て以上を含むように修飾され得る。
【0158】
分子アダプターは、好ましくは、変異体モノマーと共有結合している。アダプターは、
当該技術分野で既知の任意の方法を使用してポアと共有結合され得る。アダプターは、典
型的には、化学結合を介して結合している。分子アダプターがシステイン結合を介して結
合している場合、1つ以上のシステインが、好ましくは、置換によって変異体に導入され
ている。本発明の変異体モノマーは、当然ながら、272位及び283位の一方または両
方でシステイン残基を含むことができる。変異体モノマーは、分子アダプターのこれらシ
ステインの一方または両方への結合によって化学的に修飾され得る。代替的には、変異体
モノマーは、他の位置で導入された1つ以上のシステインまたはFAz等の非天然型アミ
ノ酸への分子結合によって化学的に修飾され得る。
【0159】
システイン残基の反応性は、隣接する残基の修飾によって増強され得る。例えば、側方
のアルギニン、ヒスチジン、またはリジン残基の塩基性基は、システインチオール基のp
Kaを、より反応性のS基のものに変えることになる。システイン残基の反応性は、d
TNBなどのチオール保護基によって保護され得る。これらは、リンカーが結合する前に
、変異体モノマーの1つ以上のシステイン残基と反応され得る。分子は、変異体モノマー
と直接結合してもよい。分子は、好ましくは、化学架橋剤またはペプチドリンカーなどの
リンカーを使用して変異体モノマーに結合している。
【0160】
好適な化学架橋剤は、当該技術分野で周知である。好ましい架橋剤には、2,5-ジオ
キソピロリジン-1-イル3-(ピリジン-2-イルジスルファニル)プロパノエート、
2,5-ジオキソピロリジン-1-イル4-(ピリジン-2-イルジスルファニル)ブタ
ノエート、及び2,5-ジオキソピロリジン-1-イル8-(ピリジン-2-イルジスル
ファニル)オクタナノエート(octananoate)が含まれる。最も好ましい架橋
剤は、スクシンイミジル3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)である
。典型的には、分子は、分子/架橋剤複合体が変異体モノマーと共有結合する前に二官能
性架橋剤と共有結合しているが、二官能性架橋剤/モノマー複合体が分子に結合する前に
二官能性架橋剤をモノマーと共有結合させることも可能である。
【0161】
リンカーは、好ましくは、ジチオトレイトール(DTT)に耐性である。好適なリンカ
ーには、ヨードアセトアミド系及びマレイミド系リンカーが挙げられるが、これらに限定
されない。
【0162】
他の実施形態では、モノマーは、ポリヌクレオチド結合タンパク質に結合してもよい。
これは、本発明のシークエンシングの方法に使用され得るモジュラーシークエンシング(
modular sequencing)システムを形成する。ポリヌクレオチド結合タ
ンパク質は、以下に論じられる。
【0163】
ポリヌクレオチド結合タンパク質は、変異体モノマーに共有結合され得る。タンパク質
は、当該技術分野で既知の任意の方法を使用してポアに共有結合され得る。モノマー及び
タンパク質は、化学的に融合されるかまたは遺伝的に融合されてもよい。構造体全体が単
一のポリヌクレオチド配列から発現される場合、モノマー及びタンパク質は、遺伝的に融
合される。ポアのポリヌクレオチド結合タンパク質への遺伝的融合は、国際出願第PCT
/GB09/001679号(WO2010/004265として公開)に記載されてい
る。
【0164】
ポリヌクレオチド結合タンパク質がシステイン結合を介して結合している場合、1つ以
上のシステインは、好ましくは、置換によって変異体に導入されている。そのような置換
は、典型的には、変異または挿入が許容され得ることを示すホモログ間で低い保存性を有
するループ領域で行われる。したがって、それらはポリヌクレオチド結合タンパク質の結
合に好適である。そのような置換は、典型的には、配列番号2の残基1~43及び127
~297において行われる。システイン残基の反応性は、上記の修飾によって増強され得
る。
【0165】
ポリヌクレオチド結合タンパク質は、変異体モノマーに直接結合してもよく、または1
つ以上のリンカーを介して結合してもよい。ポリヌクレオチド結合タンパク質は、国際出
願第PCT/GB10/000132号(WO2010/086602として公開)に記
載されるハイブリダイゼーションリンカーを使用して変異体モノマーに結合されてもよい
。代替的には、ペプチドリンカーを使用してもよい。ペプチドリンカーは、アミノ酸配列
である。ペプチドリンカーの長さ、可動性、及び親水性は、典型的には、それがモノマー
及び分子の機能を妨げないように設計される。好ましい可動性ペプチドリンカーは、2~
20個、例えば4、6、8、10、または16個のセリン及び/またはグリシンアミノ酸
のストレッチである。より好ましい可動性リンカーは、(SG)、(SG)、(SG
、(SG)、(SG)、及び(SG)を含み、式中、Sはセリンであり、Gは
グリシンである。好ましい剛直なリンカーは、2~30個、例えば4、6、8、16、ま
たは24個のプロリンアミノ酸のストレッチである。より好ましい剛直なリンカーは、(
P)12を含み、式中、Pはプロリンである。
【0166】
変異体モノマーは、分子アダプター及びポリヌクレオチド結合タンパク質によって化学
修飾され得る。
【0167】
変異体ライセニンモノマーの作製
本発明はまた、ポリヌクレオチドを特徴付けるために配列番号2に示される配列を含む
ライセニンモノマーの能力を改善する方法を提供する。方法は、配列番号2において本発
明の1つ以上の修飾及び/または置換を行うことを含む。変異体ライセニンモノマーを参
照して上記に論じられる実施形態及びポリヌクレオチドの特徴付けを参照して以下に論じ
られる実施形態のいずれかを、本発明のこの方法に等しく適用する。
【0168】
構造体
本発明はまた、ライセニンに由来する2つ以上の共有結合したモノマーを含む構造体を
提供し、モノマーの少なくとも1つが、本発明の変異体ライセニンモノマーである。本発
明の構造体は、ポアを形成するその能力を保持する。本発明の1つ以上の構造体を使用し
て、標的分析物を特徴付けるためのポアを形成することができる。本発明の1つ以上の構
造体を使用して、標的ポリヌクレオチドを特徴付け、例えば標的ポリヌクレオチドをシー
クエンシングするためのポアを形成することができる。構造体は、2、3、4、5、6、
7、8、9、または10個以上のモノマーを含み得る。2個以上のモノマーは、同じであ
るか、または異なる。
【0169】
構造体中の少なくともモノマーは、本発明の変異体モノマーである。構造体中の2個以
上、3個以上、4個以上、5個以上、6個以上、7個以上、8個以上、9個以上、または
10個以上のモノマーが、本発明の変異体モノマーであってもよい。構造体中のモノマー
は全て、好ましくは、本発明の変異体モノマーである。変異体モノマーは、同じであるか
、または異なってもよい。好ましい実施形態では、構造体は、2個の本発明の変異体モノ
マーを含む。
【0170】
構造体中の本発明の変異体モノマーは、好ましくは、およそ同じ長さであるか、または
同じ長さである。構造体中の本発明の変異体モノマーのバレルは、好ましくは、およそ同
じ長さであるか、または同じ長さである。長さは、アミノ酸の数及び/または長さの単位
で測定され得る。構造体中の本発明の変異体モノマーは、好ましくは、上記に説明されて
いるように34位~70位及び/または71位~107位から欠失した同じ数のアミノ酸
を有する。
【0171】
構造体中の他のモノマーは、本発明の変異体モノマーである必要はない。例えば、少な
くとも1つのモノマーは、配列番号2に示される配列を含み得る。構造体中の少なくとも
1つのモノマーは、配列番号2のパラログまたはホモログであり得る。好適なホモログは
、配列番号14~17に示される。
【0172】
代替的には、少なくとも1つのモノマーは、アミノ酸同一性に基づいてその配列全体に
わたって、配列番号2に対して少なくとも50%ホモログである配列番号2のバリアント
を含んでもよいが、本発明の変異体モノマーによって必要とされるかまたはアミノ酸が上
記に説明されるように欠失されていない特定の変異のいずれも含まない。より好ましくは
、バリアントは、配列全体にわたって、アミノ酸同一性に基づき、配列番号2のアミノ酸
配列に対して少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70
%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、より
好ましくは少なくとも95%、97%、または99%のホモログであり得る。バリアント
は、上記に論じられる断片または任意の他のバリアントであってもよい。本発明の構造体
はまた、アミノ酸同一性に基づきその配列全体にわたって、配列番号14、15、16、
または17に対して、少なくとも50%ホモログまたは上記に述べられている相同性の少
なくともいずれかの他のレベルである、配列番号14、15、16、または17のバリア
ントを含み得る。
【0173】
構造体中のモノマーは全て、本発明の変異体モノマーであり得る。変異体モノマーは、
同じであるか、または異なってもよい。より好ましい実施形態では、構造体は2つのモノ
マーを含み、モノマーの少なくとも1つは本発明の変異体モノマーである。
【0174】
モノマーは、遺伝的に融合されてもよい。構造体全体が単一のポリヌクレオチド配列か
ら発現される場合、モノマーは、遺伝的に融合される。モノマーのコード配列は、任意の
方法で組み合わされて、構造体をコードする単一のポリヌクレオチド配列を形成し得る。
遺伝的融合は、国際出願番号PCT/GB09/001679(WO2010/0042
65として公開)に記載されている。
【0175】
モノマーは、任意の構成で遺伝的に融合されてもよい。モノマーは、それらの末端アミ
ノ酸を介して融合されてもよい。例えば、1つのモノマーのアミノ末端は、別のモノマー
のカルボキシ末端に融合され得る。
【0176】
2つ以上のモノマーは、直接共に遺伝的に融合されてもよい。モノマーは、好ましくは
、リンカーを使用して遺伝的に融合される。リンカーは、モノマーの移動を制約するよう
に設計され得る。好ましいリンカーは、アミノ酸配列(すなわち、ペプチドリンカー)で
ある。上記に論じられるペプチドリンカーのいずれかを使用することができる。
【0177】
ペプチドリンカーの長さ、可動性、及び親水性は、それぞれ典型的には、それらがモノ
マー及び分子の機能を妨げないように設計される。好ましい可動性ペプチドリンカーは、
2~20個、例えば4、6、8、10、または16個のセリン及び/またはグリシンアミ
ノ酸のストレッチである。より好ましい可動性リンカーは、(SG)、(SG)、(
SG)、(SG)、(SG)、及び(SG)を含み、式中、Sはセリンであり、
Gはグリシンである。好ましい剛直なリンカーは、2~30個、例えば4、6、8、16
、または24個のプロリンアミノ酸のストレッチである。より好ましい剛直なリンカーは
、(P)12を含み、式中、Pはプロリンである。
【0178】
別の好ましい実施形態において、モノマーは、化学的に融合されている。モノマーが、
例えば化学架橋剤を介して化学的に結合されている場合、モノマーは化学的に融合されて
いる。上記に論じられる化学架橋剤のいずれかを使用することができる。リンカーは、本
発明の変異体モノマー内に導入された1つ以上のシステイン残基またはFaz等の非天然
型アミノ酸に結合されてもよい 代替的には、リンカーは、構造体中のモノマーのうちの
1つの末端に結合されてもよい。モノマーは、典型的には、配列番号2の残基1~43及
び127~297のうちの1つ以上を介して連結される。
【0179】
構造体が異なるモノマーを含有する場合、モノマーのそれら自体への架橋は、モノマー
を大幅に超えてリンカーの濃度を維持することによって防止される。代替的には、2つの
リンカーが使用される「ロックアンドキー」配置を使用してもよい。各リンカーの一方の
端部のみが互いに反応してより長いリンカーを形成し、リンカーの他方の端部は各々、異
なるモノマーと反応し得る。そのようなリンカーは、国際出願第PCT/GB10/00
0132号(WO2010/086602として公開)に記載されている。
【0180】
本発明はまた、本発明の構造体を生成する方法を提供する。方法は、本発明の少なくと
も1つの変異体ライセニンモノマーをライセニンに由来する1つ以上のモノマーに共有結
合させることを含む。本発明の構造体を参照して上記に論じられる実施形態のいずれも、
構造体を生成する方法に等しく適用する。
【0181】
ポリヌクレオチド
本発明はまた、本発明の変異体モノマーをコードするポリヌクレオチド配列を提供する
。変異体モノマーは、上記に論じられるもののいずれかであり得る。ポリヌクレオチド配
列は、好ましくは、配列全体にわたって、ヌクレオチド同一性に基づき、配列番号1の配
列に対して少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、または95%ホモログ
の配列を含む。300個以上、例えば375、450、525、または600個以上の連
続したヌクレオチドのストレッチにわたって、少なくとも80%、例えば、少なくとも8
5%、90%、または95%のヌクレオチド同一性があってもよい(「ハードホモロジー
」)。相同性は、上記に論じられるように計算することができる。ポリヌクレオチド配列
は、遺伝暗号の縮重に基づき、配列番号1と異なる配列を含み得る。
【0182】
本発明はまた、遺伝的に融合された本発明の構造体のいずれかをコードするポリヌクレ
オチド配列を提供する。ポリヌクレオチドは、好ましくは、上記に説明されるように配列
番号1またはそのバリアントに示される2つ以上の配列を含む。
【0183】
ポリヌクレオチド配列は、当該技術分野における標準的な方法を使用して得られ、複製
され得る。野生型ライセニンをコードする染色体DNAは、ポア生成有機体、例えばエイ
セニアフェティダから抽出され得る。ポアモノマーをコードする遺伝子は、特異的プライ
マーを伴うPCRを使用して増幅され得る。増幅された配列は、次いで、部位特異的変異
誘発を経ることがある。部位特異的変異誘発の好適な方法は、当該技術分野で既知であり
、例えば、化合連鎖反応が含まれる。本発明の構造体をコードするポリヌクレオチドは、
Sambrook,J.and Russell,D.(2001).Molecula
r Cloning:A Laboratory Manual,3rd Editio
n.Cold Spring Harbor Laboratory Press,Co
ld Spring Harbor,NYに記載されるもの等の、周知の技術を使用して
作製され得る。
【0184】
得られたポリヌクレオチド配列は、次いで、複製可能な組み換えベクター、例えばクロ
ーニングベクターに組み込まれ得る。ベクターを使用して、適合する宿主細胞においてポ
リヌクレオチドを複製することができる。したがって、ポリヌクレオチド配列は、複製可
能なベクター内にポリヌクレオチドを導入し、適合する宿主細胞内にベクターを導入し、
ベクターの複製をもたらす条件下で宿主細胞を増殖させることによって作製され得る。ベ
クターは、宿油脂細胞から回収され得る。ポリヌクレオチドのクローニングのために好適
な宿主細胞は、当該技術分野で既知であり、以下により詳細に記載される。
【0185】
ポリヌクレオチド配列は、好適な発現ベクターへとクローニングされ得る。発現ベクタ
ーにおいて、ポリヌクレオチド配列は、典型的には、宿主細胞によるコード配列の発現を
提供することができる制御配列に作動可能に結合している。そのような発現ベクターを使
用して、ポアサブユニットを発現させることができる。
【0186】
「作動可能に結合している」という用語は、並置を指し、記載される構成要素は、それ
らの意図される様式で機能することを可能にする関係性にある。コード配列に「作動可能
に結合した」制御配列は、コード配列の発現が制御配列に適合した条件下で達成されるよ
うな方法でライゲーションされる。同じまたは異なるポリヌクレオチド配列の複数のコピ
ーが、ベクター内に導入されてもよい。
【0187】
発現ベクターは、次いで、好適な宿主細胞内に導入され得る。したがって、本発明の変
異体モノマーまたはポアは、発現ベクター内にポリヌクレオチド配列を挿入し、適合する
細菌宿主細胞内にベクターを導入し、ポリヌクレオチド配列の発現をもたらす条件下で宿
主細胞を増殖させることによって生成され得る。組み換え発現されたモノマーまたは構造
体は、宿主細胞膜のポア内に自己組織化し得る。代替的には、この様式で生成された組み
換えポアは、宿主細胞から除去され、別の膜内に挿入されてもよい。少なくとも2つの異
なるサブユニットを含むポアを生成するとき、異なるサブユニットは、上記に論じられる
ように異なる宿主細胞内で別個に発現され、宿主細胞から取り出され、ヒツジ赤血球膜ま
たはスフィンゴミエリンを含有するリポソーム等の別個の膜のポアを形成してもよい。
【0188】
例えば、ライセニンモノマーは、スフィンゴミエリンと以下の脂質、ホスファチジルセ
リン、POPE、コレステロール、及びSoy PCのうちの1つ以上とを含む脂質混合
物を添加し、混合物を例えば30℃で60分間インキュベートすることによってオリゴマ
ー形成され得る。オリゴマー形成されたモノマーは、任意の好適な方法、例えば、WO2
013/153359に記載されているようなSDS-PAGE及びゲル精製によって精
製され得る。
【0189】
ベクターは、例えば、プラスミド、または複製開始点を伴うウイルスまたはファージベ
クター、任意に当該ポリヌクレオチド配列の発現のためのプロモーター及び任意にプロモ
ーターのレギュレーターであり得る。ベクターは、1つ以上の選択的マーカー遺伝子、例
えば、テトラサイクリン抵抗性遺伝子を含み得る。プロモーター及び他の発現調節シグナ
ルは、そのために発現ベクターが設計される宿主細胞に適合するように選択され得る。T
7、trc、lac、ara、またはλプロモーターが典型的に使用される。
【0190】
宿主細胞は、典型的には、ポアサブユニットを高レベルで発現する。ポリヌクレオチド
配列によって形質転換された宿主細胞は、細胞を形質転換するために使用された発現ベク
ターと適合するように選択されることになる。宿主細胞は、典型的に細菌であり、好まし
くは、Escherichia coliである。λ DE3溶原菌を有する任意の細胞
、例えば、C41(DE3)、BL21(DE3)、JM109(DE3)、B834(
DE3)、TUNER、Origami、及びOrigami Bは、T7プロモーター
を含むベクターを発現することができる。上記に列挙されている条件に加えて、Proc
Natl Acad Sci USA.2008 Dec 30;105(52):2
0647-52に引用されている方法のいずれかは、ライセニンタンパク質を発現するた
めに使用され得る。
【0191】
ポア
本発明はまた、様々なポアを提供する。本発明のポアは、分析物の特徴付けに理想的で
ある。本発明のポアは、特に、それらが異なるヌクレオチドを高度の感受性で識別するこ
とができるため、ポリヌクレオチドの特徴付け、例えばシークエンシングに理想的である
。ポアは、核酸のシークエンシング及び単一の塩基変化の同定を含む、DNA及びRNA
のような核酸を特徴付けるために使用されることができる。本発明のポアは、さらに、メ
チル化ヌクレオチド及び非メチル化ヌクレオチドを識別することができる。本発明のポア
の塩基分解能は驚くほど高い。ポアは、4つのDNAヌクレオチドの全てのほぼ完全な分
離を示す。ポアはポア中の滞留時間及びポアを通って流れる電流に基づき、デオキシシチ
ジン一リン酸(dCMP)とメチル-dCMPを識別するためにさらに使用されることが
できる。
【0192】
本発明のポアはまた、一定範囲の条件下で異なるヌクレオチドを識別することができる
。とりわけ、ポアは、ポリヌクレオチドの特徴付け、例えばシークエンシングに好都合な
条件下でヌクレオチドを識別することになる。本発明のポアが異なるヌクレオチドを識別
することができる程度は、印加される電位、塩濃度、緩衝液、温度、ならびに尿素、ベタ
イン、及びDTTなどの添加剤の存在を変えることによって制御することができる。これ
は、特にシークエンシングの際に、ポアの機能を微調整することを可能にする。これは、
以下により詳細に論じられる。本発明を使用して、ヌクレオチドごとに行うのではなく、
1つ以上のモノマーとの相互作用からポリヌクレオチドポリマーを同定することもできる
【0193】
本発明のポアは、単離されているか、実質的に単離されているか、精製されているか、
または実質的に精製されていてもよい。本発明のポアは、それが脂質または他のポアなど
の任意の他の構成要素を一切含まない場合、単離または精製されている。ポアは、それが
、その意図される使用に干渉しない担体または希釈剤と混合されている場合、実質的に単
離されている。例えば、ポアは、それが、10%未満、5%未満、2%未満、または1%
未満の他の構成要素、例えば脂質または他のポアを含む形態で存在する場合、実質的に単
離されているか、または実質的に精製されている。代替的には、本発明のポアは、脂質二
分子層内に存在してもよい。
【0194】
本発明のポアは、個々のポア、または単一のポアとして存在し得る。代替的には、本発
明のポアは、ホモログまたは異種性集団もしくは複数の2つ以上のポアにおいて存在して
もよい。
【0195】
ホモオリゴマーポア
本発明はまた、本発明の同一の変異体モノマーを含むライセニンに由来するホモオリゴ
マーポアを提供する。モノマーは、それらのアミノ酸配列に関して同一である。本発明の
ホモオリゴマーポアは、ポリヌクレオチドの特徴付け、例えばシークエンシングに理想的
である。本発明のホモオリゴマーポアは、上記の利点のいずれかを有し得る。本発明の特
定のホモオリゴマーポアの利点は、実施例に示される。
【0196】
ホモオリゴマーポアは、任意の数の変異体モノマーを含み得る。ポアは、典型的には、
2つ以上の変異体モノマーを含む。ホモオリゴマーポアは、任意の数の変異体モノマーを
含み得る。ポアは、典型的には、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくと
も9、または少なくとも10個の同一の変異体モノマー、例えば6、7、8、9、または
10個の変異体モノマーを含む。ポアは、好ましくは、8または9個の同一の変異体モノ
マーを含む。ポアは、最も好ましくは、9個の同一の変異体モノマーを含む。このモノマ
ーの数は、本明細書では「十分な数」と呼ばれる。
【0197】
変異体モノマーのうちの1個以上、例えば2、3、4、5、6、7、8、9、または1
0個は、好ましくは、上記または下記に論じられるように化学的に修飾されている。
【0198】
変異体モノマーのうちの1つ以上は、好ましくは、上記または下記に論じられるように
化学的に修飾されている。換言すれば、化学的に修飾されているモノマーの1つ以上(及
び化学的に修飾されていない他のモノマー)は、モノマーの各々のアミノ酸配列が同一で
ある限り、ポアがホモオリゴマーであることを妨げない。
【0199】
ライセニンのポアを作製する方法は、実施例及びYamaji et al.,J.B
iol.Chem.1998;273(9):5300-6.に記載されている。
【0200】
ヘテロオリゴマーポア
本発明はまた、本発明の少なくとも1つの変異体モノマーを含むライセニンに由来する
ヘテロオリゴマーポアを提供し、モノマーの少なくとも1つが、他のものと異なる。モノ
マーは、そのアミノ酸配列に関して他のものと異なる。本発明のヘテロオリゴマーポアは
、ポリヌクレオチドの特徴付け、例えばシークエンシングに理想的である。ヘテロオリゴ
マーポアは、当該技術分野で既知の方法を使用して作製することができる(例えば、Pr
otein Sci.2002 Jul;11(7):1813-24)。
【0201】
ヘテロオリゴマーポアは、ポアを形成するために十分なモノマーを含有する。モノマー
は、例えば、野生型を含む、任意の種類であり得る。ポアは、典型的には、2つ以上のモ
ノマーを含む。ポアは、典型的には、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少な
くとも9、または少なくとも10個のモノマー、例えば6、7、8、9、または10個の
モノマーを含む。ポアは、好ましくは、8または9個のモノマーを含む。ポアは、最も好
ましくは9個のモノマーを含む。このモノマーの数は、本明細書では「十分な数」と呼ば
れる。
【0202】
ポアは、配列番号2に示される配列、そのパラログ、そのホモログ、または本発明の変
異体モノマーによって必要とされる変異を有さないかもしくは上記に論じられるようにア
ミノ酸が欠失されていないそのバリアントを含む少なくとも1つのモノマーを含み得る。
好適なバリアントは、配列番号2、14、15、16、及び17とそのバリアントを含む
、本発明の構造体を参照して上記に論じられるもののいずれかである。この実施形態にお
いて、残りのモノマーは、好ましくは、本発明の変異体モノマーである。
【0203】
好ましい実施形態において、ポアは、(a)本発明の変異体モノマー及び(b)ポアを
形成するのに十分な数の同一モノマーを含み、(a)における変異体モノマーが(b)に
おける同一モノマーと異なる。(b)における同一モノマーは、好ましくは、配列番号2
に示される配列、そのパラログ、そのホモログ、または本発明の変異体モノマーによって
必要とされる変異を有さないそのバリアント含む。
【0204】
本発明のヘテロオリゴマーポアは、好ましくは、本発明の1つの変異体ライセニンモノ
マーのみを含む。
【0205】
別の好ましい実施形態において、ヘテロオリゴマーポア中の全てのモノマーは、本発明
の変異体モノマーであり、それらのうちの少なくとも1つが他のものと異なる。
【0206】
ポア中の本発明の変異体モノマーは、好ましくは、およそ同じ長さであるか、または同
じ長さである。ポア中の本発明の変異体モノマーのバレルは、好ましくは、およそ同じ長
さであるか、または同じ長さである。長さは、アミノ酸の数及び/または長さの単位で測
定され得る。ポア内の本発明の変異体モノマーは、好ましくは、34位~70位及び/ま
たは71位~107位において欠失された同じ数のアミノ酸を有する。
【0207】
上記に論じられる全ての実施形態において、変異体モノマーのうちの1つ以上は、好ま
しくは、上記または下記に論じられるように化学的に修飾される。1つのモノマー上に化
学修飾が存在しても、ポアはヘテロオリゴマーではない。少なくとも1つのモノマーのア
ミノ酸配列は、他のモノマーの配列(複数可)と異なっていなければならない。ポアを作
製するための方法は、以下により詳細に論じられる。
【0208】
構造体含有ポア
本発明はまた、少なくとも1つの本発明の構造体を含むポアを提供する。本発明の構造
体は、ライセニンに由来する2つ以上の共有結合したモノマーを含み、モノマーの少なく
とも1つが、本発明の変異体ライセニンモノマーである。換言すれば、構造体は、1つ超
のモノマーを含有しなければならない。ポア中のモノマーのうちの少なくとも2つは、本
発明の構造体の形態にある。モノマーは、任意の種類であり得る。
【0209】
ポアは、典型的には、(a)2つのモノマーを含む1つの構造体及び(b)ポアを形成
するのに十分な数のモノマーを含む。構造体は、上記に論じられるもののいずれかであり
得る。モノマーは、本発明の変異体モノマーを含む、上記に論じられるもののいずれかで
あり得る。
【0210】
別の典型的なポアは、1個超の本発明の構造体、例えば2、3、または4個の本発明の
構造体を含む。そのようなポアは、ポアを形成するのに十分な数のモノマーをさらに含む
。モノマーは、上記に論じられるもののいずれかであり得る。本発明のさらなるポアは、
2個のモノマーを含む構造体のみを含む。本発明による特定のポアは、それぞれ2個のモ
ノマーを含むいくつかの構造体を含む。構造体は、各構造体の1個のみのモノマーがポア
に寄与するような構造で、ポア内にオリゴマー形成し得る。典型的には、構造体の他のモ
ノマー(すなわち、ポアを形成しないもの)は、ポアの外側にある。
【0211】
変異は、上記に論じられるように構造体内に導入され得る。変異は交互であってもよく
、すなわち、変異は2個のモノマー構造体以内の各モノマーについて異なり、構造体はホ
モオリゴマーとして形成され、交互修飾をもたらす。換言すれば、MutA及びMutB
を含むモノマーは、融合及び組織化されてA-B:A-B:A-B:A-Bポアを形成す
る。代替的には、変異は隣接していてもよく、すなわち、同一の変異が構造体中の2個の
モノマー内に導入され、これは次いで、異なる変異体モノマーとオリゴマー形成される。
換言すれば、MutAを含むモノマーは融合され、続いてMutB含有モノマーとオリゴ
マー形成されて、A-A:B:B:B:B:B:Bを形成する。
【0212】
構造体含有ポア中の本発明のモノマーのうちの1個以上は、上記または下記に論じられ
るように化学修飾されていてもよい。
【0213】
本発明の化学修飾されたポア
別の態様において、本発明は、組み立てられたポアのバレル/チャネルの開口径が2、
3、4または5個の部位等の、バレルの長さに沿って1個の部位またはそれ以上において
減少、縮小、または狭窄されるように、化学的に修飾されている1個以上の変異体モノマ
ーを含む化学修飾されたライセニンポアを提供する。ポアは、本発明のホモオリゴマー及
びヘテロオリゴマーのポアを参照して、上記に論じられる任意の数のモノマーを含み得る
。ポアは、好ましくは、9個の化学修飾されたモノマーを含む。化学修飾されたポアは、
上記に論じられるホモオリゴマーであってもよい。換言すれば、化学修飾されたポア内の
全てのモノマーは、同じアミノ酸配列を有してもよく、同様に化学的に修飾されていても
よい。化学修飾されたポアは、上記に論じられるようにヘテロオリゴマーであってもよい
。換言すれば、ポアは、(a)化学的に修飾された1個のモノマーのみ、(b)2、3、
4、5、6、7、または8個等の1個超の化学的に修飾されたモノマーであって、そこで
は3、4、5、6、または7個等の少なくとも2個の化学修飾されたモノマーが互いに異
なるモノマー、または(c)3、4、5、6、7、8、または9個等の少なくとも2個の
化学修飾されたモノマーが互いに異なる、化学修飾されたモノマーのみ(すなわち、モノ
マーの全てが化学的に修飾されている)を含み得る。モノマーは、それらのアミノ酸配列
、それらの化学修飾、それら化学修飾、またはそれらのアミノ酸配列及びそれらの化学修
飾の両方に関して互いに異なっていてもよい。化学修飾されたモノマー(複数可)は、上
記及び/または下記に論じられるもののいずれかであり得る。
【0214】
本発明はまた、下記に論じられる方法のいずれかで化学修飾された変異体ライセニンモ
ノマーを提供する。変異体モノマーは、上記または下記に論じられるもののいずれかであ
り得る。その結果として、以下の位置、K37、G43、K45、V47、S49、T5
1、H83、V88、T91、T93、V95、Y96、S98、K99、V100、I
101、P108、P109、T110、S111、K112、及びT114のうちの1
つ以上における修飾を含む配列番号2のバリアントか、または上記に論じられるバレル欠
失を含むバリアントのような、本発明の変異体モノマーは、下記に論じられるように本発
明に従って化学的に修飾され得る。
【0215】
変異体モノマーは、組み立てられたポアのバレルの直径が、ポアを通過する分析物のサ
イズに依存する任意の減少係数によって減少または狭められるように、化学修飾されるこ
とができる。狭窄領域の幅は、典型的には、例えば分析物がポアを通るイオン流を減少さ
せるために、分析物の転位中の測定シグナルの破壊の程度を決定する。シグナルの破壊が
大きいほど、典型的には測定における感度がより高くなる。したがって、狭窄領域は、転
位される分析物よりもわずかに広くなるように選択されてもよい。例えばssDNAの転
位の場合、狭窄領域の幅は、0.8~3.0nmの範囲の値から選択することができる。
【0216】
化学修飾はまた、狭窄領域の長さを決定し、次に、測定シグナルに寄与するポリマー単
位、例えばヌクレオチドの数を決定する。任意の特定の時点で電流シグナルに寄与するヌ
クレオチドは、k-merとして示され得、ここでkは整数であり、整数または端数であ
り得る。4種類の核酸塩基を有するポリヌクレオチドの測定の場合において、3量体は4
の潜在的なシグナルレベルを生じさせるであろう。より大きなkの値は、より大きな数
のシグナルレベルを生じさせる。典型的には、これは、測定シグナルデータの分析を簡単
にするため、狭い狭窄領域を提供することが望ましい。
【0217】
化学修飾は、化学分子が、好ましくは、変異体モノマーまたは1つ以上の変異体モノマ
ーに共有結合されるようなものである。化学分子は、当技術分野で既知の任意の方法を使
用して、ポア、変異体モノマー、または1つ以上の変異体モノマーに共有結合され得る。
化学分子は、典型的には、化学結合を介して結合される。
【0218】
変異体モノマーまたは1つ以上の変異体モノマーは、好ましくは、システインへの分子
の結合(システイン結合)、1つ以上のリジンへの分子の結合、1つ以上の非天然型アミ
ノ酸への分子の結合、またはエピトープの酵素修飾によって化学的に修飾される。化学修
飾剤がシステイン結合を介して結合している場合、1つ以上のシステインは、好ましくは
、置換によって変異体に導入されている。そのような修飾を実施するための好適な方法は
、当該技術分野で周知である。好適な非天然アミノ酸は、4-アジド-L-フェニルアラ
ニン(Faz)及びLiu C.C.and Schultz P.G.,Annu.R
ev.Biochem.,2010,79,413-444の図1中のアミノ酸番号1~
71のうちのいずれか1つを含むが、これらに限定されない。
【0219】
変異体モノマーまたは1つ以上変異体モノマーは、任意の位置または部位で組み立てら
れたポアのバレルの直径を減少または狭める効果を有する、任意の分子の結合によって化
学的に修飾され得る。例えば、変異体モノマーは、(i)4-フェニルアゾマレイナニル
、1.N-(2-ヒドロキシエチル)マレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、1.
3-マレイミドプロピオン酸、1.1-4アミノフェニル-1H-ピロール,2,5,ジ
オン、N-エチルマレイミド、N-メトキシカルボニルマレイミド、N-tert-ブチ
ルマレイミド、N-(2-アミノエチル)マレイミド、3-マレイミド-プロキシル、N
-(4-クロロフェニル)マレイミド、1-[4-(ジメチルアミノ)-3,5-ジニト
ロフェニル]-1H-ピロール-2,5-ジオン、N-[4-(2-ベンズイミダゾリル
)フェニル]マレイミド、N-[4-(2-ベンゾオキサゾリル)フェニル]マレイミド
、N-(1-ナフチル)-マレイミド、N-(2,4-キシリル)マレイミド、N-(2
,4-ジフルオロフェニル)マレイミド、N-(3-クロロ-パラ-トリル)-マレイミ
ド、1-(2-アミノ-エチル)-ピロール-2,5-ジオンヒドロクロリド、1-シク
ロペンチル-3-メチル-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-2,5-ジオン、1-(
3-アミノプロピル)-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-2,5-ジオンヒドロクロ
リド、3-メチル-1-[2-オキソ-2-(ピペラジン-1-イル)エチル]-2,5
-ジヒドロ-1H-ピロール-2,5-ジオンヒドロクロリド、1-ベンジル-2,5-
ジヒドロ-1H-ピロール-2,5-ジオン、3-メチル-1-(3,3,3-トリフル
オロプロピル)-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-2,5-ジオン、1-[4-(メ
チルアミノ)シクロヘキシル]-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-2,5-ジオント
リフルオロ酢酸、SMILES O=C1C=CC(=O)N1CC=2C=CN=CC
2、SMILES O=C1C=CC(=O)N1CN2CCNCC2、1-ベンジル-
3-メチル-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-2,5-ジオン、1-(2-フルオロ
フェニル)-3-メチル-2,5-ジヒドロ1H-ピロール-2,5-ジオン、N-(4
-フェノキシフェニル)マレイミド、N-(4-ニトロフェニル)マレイミド等のマレイ
ミド、(ii)3-(2-ヨードアセトアミド)-プロキシル、N-(シクロプロピルメ
チル)-2-ヨードアセトアミド、2-ヨード-N-(2-フェニルエチル)アセトアミ
ド、2-ヨード-N-(2,2,2-トリフルオロエチル)アセトアミド、N-(4-ア
セチルフェニル)-2-ヨードアセトアミド、N-(4-(アミノスルホニル)フェニル
)-2-ヨードアセトアミド、N-(1,3-ベンゾチアゾール-2-イル)-2-ヨー
ドアセトアミド、N-(2,6-ジエチルフェニル)-2-ヨードアセトアミド、N-(
2-ベンゾイル-4-クロロフェニル)-2-ヨードアセトアミド等のヨードアセトアミ
ド、(iii)N-(4-(アセチルアミノ)フェニル)-2-ブロモアセトアミド、N
-(2-アセチルフェニル)-2-ブロモアセトアミド、2-ブロモ-N-(2-シアノ
フェニル)アセトアミド、2-ブロモ-N-(3-(トリフルオロメチル)フェニル)ア
セトアミド、N-(2-ベンゾイルフェニル)-2-ブロモアセトアミド、2-ブロモ-
N-(4-フルオロフェニル)-3-メチルブタンアミド、N-ベンジル-2-ブロモ-
N-フェニルプロピオンアミド、N-(2-ブロモ-ブチリル)-4-クロロ-ベンゼン
スルホンアミド、2-ブロモ-N-メチル-N-フェニルアセトアミド、2-ブロモ-N
-フェネチル-アセトアミド,2-アダマンタン-1-イル-2-ブロモ-N-シクロヘ
キシル-アセトアミド、2-ブロモ-N-(2-メチルフェニル)ブタンアミド、モノブ
ロモアセトアニリド等のブロモアセトアミド、(iv)アルドリチオール-2、アルドリ
チオール-4、イソプロピルジスルフィ、1-(イソブチルジスルファニル)-2-メチ
ルプロパン、ジベンジルジスルフィド、4-アミノフェニルジスルフィド、3-(2-ピ
リジルジチオ)プロピオン酸、3-(2-ピリジルジチオ)プロピオン酸ヒドラジド、3
-(2-ピリジルジチオ)プロピオン酸N-スクシンイミジルエステル、am6amPD
P1-βCD等のジスルフィド、及び(v)4-フェニルチアゾール-2-チオール、プ
ルパルド、5,6,7,8-テトラヒドロ-キナゾリン-2-チオール等のチオール、の
結合によって化学的に修飾され得る。
【0220】
変異体モノマーまたは1つ以上の変異体モノマーは、ポリエチレングリコール(PEG
)、核酸、例えばDNA、色素、フルオロフォアまたは発色団の付着によって化学的に修
飾することができる。いくつかの実施形態では、変異体モノマーは、モノマーを含むポア
と標的ヌクレオチドまたは標的ポリヌクレオチド配列との間の相互作用を容易にする分子
アダプターによって化学修飾される。アダプターの存在は、ポア及びヌクレオチドまたは
ポリヌクレオチドのホスト-ゲストケミストリーを改善し、それにより変異体モノマーか
ら形成されたポアのシークエンシング能力を改善する。
【0221】
変異体モノマーまたは1つ以上の変異体モノマーは、位置K37、V47、S49、T
55、S86、E92、E94のいずれかで組み立てられたポアのバレルの開口直径を減
少または狭める効果を有する、任意の分子の結合によって化学的に修飾され得る。より好
ましくは、変異体モノマーまたは1つ以上の変異体モノマーは、E92及びE94で組み
立てられたポアのバレルの開口直径を減少または狭める効果を有する、任意の分子の結合
によって化学的に修飾され得る。一実施形態において、変異体モノマーまたは1つ以上の
変異体モノマーは、これらの位置における1つ以上のシステイン(システイン結合)への
分子の結合によって化学的に修飾される。
【0222】
システイン残基の反応性は、隣接する残基の修飾によって増強され得る。例えば、側方
のアルギニン、ヒスチジン、またはリジン残基の塩基性基は、システインチオール基のp
Kaを、より反応性のS基のものに変えることになる。システイン残基の反応性は、d
TNB等のチオール保護基によって保護され得る。これらは、リンカーが結合する前に、
変異体モノマーの1つ以上のシステイン残基と反応され得る。
【0223】
分子は、変異体モノマーまたは1つ以上の変異体モノマーと直接結合してもよい。分子
は、好ましくは、化学架橋剤またはペプチドリンカーなどのリンカーを使用して変異体モ
ノマーに結合される。好適な化学架橋剤は、当該技術分野で周知である。好ましい架橋剤
には、2,5-ジオキソピロリジン-1-イル3-(ピリジン-2-イルジスルファニル
)プロパノエート、2,5-ジオキソピロリジン-1-イル4-(ピリジン-2-イルジ
スルファニル)ブタノエート、及び2,5-ジオキソピロリジン-1-イル8-(ピリジ
ン-2-イルジスルファニル)オクタナノエート(octananoate)が含まれる
。最も好ましい架橋剤は、スクシンイミジル3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート
(SPDP)である。典型的には、分子は、分子/架橋剤複合体が変異体モノマーと共有
結合する前に二官能性架橋剤と共有結合しているが、二官能性架橋剤/モノマー複合体が
分子に結合する前に二官能性架橋剤をモノマーと共有結合させることも可能である。
【0224】
リンカーは、好ましくは、ジチオトレイトール(DTT)に耐性である。好適なリンカ
ーは、ヨードアセトアミド系及びマレイミド系リンカーを含むが、これらに限定されない
【0225】
この方法で化学的に修飾されたポアは、(i)読取りヘッドの鮮鋭さの改善、(ii)
塩基間の改善された識別、及び(iii)改善された範囲、すなわち改善されたシグナル
対ノイズ比の特定の利点を示す。
【0226】
バレル内の特定の位置を化学分子で修飾することによって、新しい読取りヘッドを導入
することができるか、または古い読取りヘッドを修飾することができる。修飾された分子
のサイズのために、読取りヘッドの物理的サイズを大幅に変化させることができる。同様
に、修飾された分子の化学的性質のために、読取りヘッドの特性を変化させることができ
る。2つの効果を組み合わせは、改善された分解能及び塩基のより良好な識別性を有する
読取りヘッドが得られることを示した。異なる位置の異なる塩基のシグナルへの相対的な
寄与が変化しただけでなく、極端における読取りヘッドの位置は、シグナルに対するそれ
らの寄与を意味する大幅に少ない識別が大幅に減少されることを示し、それによって、所
定の瞬間にアッセイされているKmerの長さがより短い。このより鮮鋭な読取りヘッド
は、生シグナルからKmersのデコンボリューションのプロセスを簡単にする。
【0227】
本発明のポアの生成
本発明はまた、本発明のポアを生成する方法を提供する。方法は、本発明の少なくとも
1つの変異体モノマーまたは本発明の少なくとも1つの構造体を、十分な数の、本発明の
変異体モノマー、本発明の構造体、ライセニンモノマー、またはライセニン由来のモノマ
ーとオリゴマー形成させて、ポアを形成することを含む。方法が本発明のホモオリゴマー
ポアを作製することに関する場合、その方法で使用される全てのモノマーは、同じアミノ
酸配列を有する本発明の変異体ライセニンモノマーである。方法が本発明のヘテロオリゴ
マーポアを作製することに関係する場合、モノマーの少なくとも1つは他のモノマーとは
異なる。
【0228】
典型的には、モノマーは、上記に論じられるように宿主細胞内で発現され、宿主細胞か
ら取り出され、ヒツジ赤血球膜またはスフィンゴミエリンを含有するリポソーム等の別個
の膜のポアを形成してもよい。
【0229】
例えば、ライセニンモノマーは、スフィンゴミエリンと以下の脂質、ホスファチジルセ
リン、POPE、コレステロール、及びSoy PCのうちの1つ以上とを含む脂質混合
物を添加し、混合物を例えば30℃で60分間インキュベートすることによってオリゴマ
ー形成され得る。オリゴマー形成されたモノマーは、任意の好適な方法、例えば、WO2
013/153359に記載されているようなSDS-PAGE及びゲル精製によって精
製され得る。
【0230】
本発明のポアを参照して上記に論じられる実施形態のいずれも、ポアを生成する方法に
等しく適用する。
【0231】
分析物を特徴付ける方法
本発明は、標的分析物を特徴付ける方法を提供する。方法は、(a)標的分析物がポア
を通って移動するように、標的分析物を本発明のポアと接触させることを含む。ポアは、
上記に論じられるもののいずれかであり得る。次に、当該技術分野で既知の標準的な方法
を使用して、分析物がポアに対して移動するにつれて、標的分析物の1つ以上の特性が測
定される。標的分析物の1つ以上の特性は、好ましくは、分析物がポアを通って移動する
につれて測定される。ステップ(a)及び(b)は、好ましくは、ポアにわたって電位が
印加された状態で実施される。以下により詳細に論じられるように、印加される電位は、
典型的には、ポアとポリヌクレオチド結合タンパク質との間で複合体の形成をもたらす。
印加される電位は、電圧電位であり得る。代替的には、印加される電位は、化学的電位で
あり得る。この例は、両親媒性層にわたって塩勾配を使用することである。塩勾配は、H
oldenet al.,J Am Chem Soc.2007 Jul 11;12
9(27):8650-5に開示されている。
【0232】
本発明の方法は、標的分析物を特徴付けるためのものである。方法は、少なくとも1つ
の分析物を特徴付けるためのものである。方法は、2つ以上の分析物を特徴付けることに
関し得る。方法は、任意の数の分析物、例えば2、5、10、15、20、30、40、
50、100個、またはそれ以上の分析物を特徴付けることを含んでもよい。
【0233】
標的分析物は、好ましくは、金属イオン、無機塩、ポリマー、アミノ酸、ペプチド、ポ
リペプチド、タンパク質、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、染料
、漂白剤、医薬品、診断薬、レクリエーショナルドラッグ、爆発物、または環境汚染物質
である。方法は、2つ以上の同じ種類の分析物、例えば2つ以上のタンパク質、2つ以上
のヌクレオチド、または2つ以上の医薬品を特徴付けることに関し得る。代替的には、方
法は、2つ以上の異なる種類の分析物、例えば1つ以上のタンパク質、1つ以上のヌクレ
オチド、及び1つ以上の医薬品を特徴付けることに関し得る。
【0234】
標的分析物は、細胞から分泌され得る。代替的には、標的分析物は、細胞の内部に存在
する分析物であり得、その場合、分析物は、本発明が実施され得る前に細胞から抽出され
なければならない。
【0235】
分析物は、好ましくは、アミノ酸、ペプチド、ポリペプチド、及び/またはタンパク質
である。アミノ酸、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質は、天然型であっても非
天然型であってもよい。ポリペプチドまたはタンパク質は、それらの中に合成または修飾
アミノ酸を含み得る。アミノ酸へのいくつかの異なる種類の修飾が当該技術分野で既知で
ある。好適なアミノ酸及びその修飾は、上記である。本発明の目的において、標的分析物
は、当該技術分野で利用可能な任意の方法によって修飾され得ることを理解されたい。
【0236】
タンパク質は、酵素、抗体、ホルモン、成長因子、または成長調節タンパク質、例えば
サイトカインであり得る。サイトカインは、インターロイキン、好ましくは、IFN-1
、IL-1、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-10、IL-12、及び
IL-13、インターフェロン、好ましくは、IL-γ、ならびに他のサイトカイン、例
えばTNF-αから選択され得る。タンパク質は、細菌タンパク質、真菌タンパク質、ウ
イルスタンパク質、または寄生虫由来のタンパク質であり得る。
【0237】
標的分析物は、好ましくは、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、またはポリヌクレオ
チドである。ヌクレオチドは、典型的には、核酸塩基、糖、及び少なくとも1つのリン酸
基を含有する。核酸塩基は、典型的には、複素環である。核酸塩基には、プリン及びピリ
ミジン、より具体的にはアデニン、グアニン、チミン、ウラシル、及びシトシンが挙げら
れるが、これらに限定されない。糖は、典型的には、五炭糖である。ヌクレオチド糖は、
リボース及びデオキシリボースを含むが、これらに限定されない。ヌクレオチドは、典型
的には、リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドである。ヌクレオチドは、典
型的には、一リン酸、二リン酸、または三リン酸を含有する。リン酸は、ヌクレオチドの
5’または3’側に結合され得る。
【0238】
ヌクレオチドには、アデノシン一リン酸(AMP)、アデノシン二リン酸(ADP)、
アデノシン三リン酸(ATP)、グアノシン一リン酸(GMP)、グアノシン二リン酸(
GDP)、グアノシン三リン酸(GTP)、チミジン一リン酸(TMP)、チミジン二リ
ン酸(TDP)、チミジン三リン酸(TTP)、ウリジン一リン酸(UMP)、ウリジン
二リン酸(UDP)、ウリジン三リン酸(UTP)、シチジン一リン酸(CMP)、シチ
ジン二リン酸(CDP)、シチジン三リン酸(CTP)、5-メチルシチジン一リン酸、
5-メチルシチジン二リン酸、5-メチルシチジン三リン酸、5-ヒドロキシメチルシチ
ジン一リン酸、5-ヒドロキシメチルシチジン二リン酸、5-ヒドロキシメチルシチジン
三リン酸、環状アデノシン一リン酸(cAMP)、環状グアノシン一リン酸(cGMP)
、デオキシアデノシン一リン酸(dAMP)、デオキシアデノシン二リン酸(dADP)
、デオキシアデノシン三リン酸(dATP)、デオキシグアノシン一リン酸(dGMP)
、デオキシグアノシン二リン酸(dGDP)、デオキシグアノシン三リン酸(dGTP)
、デオキシチミジン一リン酸(dTMP)、デオキシチミジン二リン酸(dTDP)、デ
オキシチミジン三リン酸(dTTP)、デオキシウリジン一リン酸(dUMP)、デオキ
シウリジン二リン酸(dUDP)、デオキシウリジン三リン酸(dUTP)、デオキシシ
チジン一リン酸(dCMP)、デオキシシチジン二リン酸(dCDP)、デオキシシチジ
ン三リン酸(dCTP)、5-メチル-2’-デオキシシチジン一リン酸、5-メチル-
2’-デオキシシチジン二リン酸、5-メチル-2’-デオキシシチジン三リン酸、5-
ヒドロキシメチル-2’-デオキシシチジン一リン酸、5-ヒドロキシメチル-2’-デ
オキシシチジン二リン酸、及び5-ヒドロキシメチル-2’-デオキシシチジン三リン酸
が挙げられるが、これらに限定されない。ヌクレオチドは、好ましくは、AMP、TMP
、GMP、UMP、dAMP、dTMP、dGMP、またはdCMPから選択される。ヌ
クレオチドは、脱塩基(すなわち、核酸塩基を欠く)であってもよい。ヌクレオチドは、
追加の修飾を含んでもよい。特に、好適な修飾ヌクレオチドには、2’-アミノピリミジ
ン(例えば、2’-アミノシチジン及び2’-アミノウリジン)、2’-ヒドロキシルプ
リン(例えば、2’-フルオロピリミジン(例えば、2’-フルオロシチジン及び2’フ
ルオロウリジン)、ヒロドキシルピリミジン(例えば、5’-α-P-ボラノウリジン)
、2’-O-メチルヌクレオチド(例えば、2’-O-メチルアデノシン、2’-O-メ
チルグアノシン、2’-O-メチルシチジン、及び2’-O-メチルウリジン)、4’-
チオピリミジン(例えば、4’-チオウリジン及び4’-チオシチジン)が含まれ、ヌク
レオチドは、核酸塩基(例えば、5-ペンチニル-2’-デオキシウリジン、5-(3-
アミノプロピル)-ウリジン及び1,6-ジアミノヘキシル-N-5-カルバモイルメチ
ルウリジン)の修飾を有するが、これらに限定されない。
【0239】
オリゴヌクレオチドは、典型的には50個以下のヌクレオチド、例えば40個以下、3
0個以下、20個以下、10個以下、または5個以下のヌクレオチドを有する短いヌクレ
オチドポリマーである。オリゴヌクレオチドは、脱塩基及び修飾ヌクレオチドを含む、上
記に論じられるヌクレオチドのいずれかを含んでもよい。本発明の方法は、好ましくは、
標的ポリヌクレオチドを特徴付けるためのものである。核酸等のポリヌクレオチドは、2
つ以上のヌクレオチドを含む高分子である。ポリヌクレオチドはまたは核酸は、任意のヌ
クレオチドの任意の組み合わせを含み得る。ヌクレオチドは、天然であっても人工であっ
てもよい。標的ポリヌクレオチド中の1つ以上のヌクレオチドは、酸化またはメチル化さ
れてもよい。標的ポリヌクレオチド中の1つ以上のヌクレオチドは、損傷していてもよい
。例えば、ポリヌクレオチドは、ピリミジンダイマーを含んでもよい。そのようなダイマ
ーは、典型的には、紫外線による損傷に関連付けられ、皮膚メラノーマの主因である。標
的ポリヌクレオチド中の1つ以上のヌクレオチドは、例えば標識またはタグによって修飾
され得る。好適な標識は、上記に説明される。標的ポリヌクレオチドは、1つ以上のスペ
ーサを含み得る。
【0240】
ヌクレオチドは上記に定義されている。ポリヌクレオチド中に存在するヌクレオチドに
は、典型的には、アデノシン一リン酸(AMP)、グアノシン一リン酸(GMP)、チミ
ジン一リン酸(TMP)、ウリジン一リン酸(UMP)、シチジン一リン酸(CMP)、
環状アデノシン一リン酸(cAMP)、環状グアノシン一リン酸(cGMP)、デオキシ
アデノシン一リン酸(dAMP)、デオキシグアノシン一リン酸(dGMP)、デオキシ
チミジン一リン酸(dTMP)、デオキシウリジン一リン酸(dUMP)、及びデオキシ
シチジン一リン酸(dCMP)が含まれるが、これらに限定されない。ヌクレオチドは、
好ましくは、AMP、TMP、GMP、CMP、UMP、dAMP、dTMP、dGMP
、dCMP、及びdUMPから選択される。
【0241】
ヌクレオチドは、脱塩基(すなわち、核酸塩基を欠く)であってもよい。
【0242】
ポリヌクレオチド中のヌクレオチドは、任意の様式で互いに結合され得る。ヌクレオチ
ドは、典型的には、核酸と同様に、それらの糖及びリン酸基によって結合される。ヌクレ
オチドは、ピリミジンダイマーと同様に、それらの核酸塩基を介して接続され得る。
【0243】
ポリヌクレオチドは、一本鎖であっても二本鎖であってもよい。ポリヌクレオチドの少
なくとも一部は、好ましくは、二本鎖である。一本鎖ポリヌクレオチドは、そこにハイブ
リダイズした1つ以上のプライマーを有し、それゆえに二本鎖ポリヌクレオチドの1つ以
上の短い領域を含む。プライマーは、標的ポリヌクレオチドと同じ種類のポリヌクレオチ
ドであってもよく、異なる種類のポリヌクレオチドであってもよい。
【0244】
ポリヌクレオチドは、デオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)などの核
酸であり得る。標的ポリヌクレオチドは、DNAの1本の鎖にハイブリダイズされたRN
Aの1本の鎖を含むことができる。ポリヌクレオチドは、当該技術分野で既知の任意の合
成核酸、例えば、ペプチド核酸(PNA)、グリセロール核酸(GNA)、トレオース核
酸(TNA)、ロックド核酸(LNA)、またはヌクレオチド側鎖を有する他の合成ポリ
マーであり得る。
【0245】
この方法を用いて、標的ポリヌクレオチドの全部または一部のみは、特徴付けられ得る
。標的ポリヌクレオチドは、任意の長さであり得る。例えば、ポリヌクレオチドは、少な
くとも10、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも150、少なくとも200
、少なくとも250、少なくとも300、少なくとも400、または少なくとも500ヌ
クレオチド対の長さであり得る。ポリヌクレオチドは、1000以上のヌクレオチド対、
5000以上のヌクレオチド対の長さ、または100000以上のヌクレオチド対の長さ
であり得る。
【0246】
標的ポリヌクレオチド等の標的分析物は、任意の好適な試料中に存在する。本発明は、
典型的には、標的ポリヌクレオチド等の標的分析物を含むことが既知であるか、それを含
む疑いがある試料上で実施される。代替的には、本発明は、1つ以上の標的ポリヌクレオ
チド等の1つ以上の標的分析物の同一性を確認するために、試料上で実施されてもよく、
試料中のその存在が既知であるかまたは予想される。
【0247】
試料は、生体試料であり得る。本発明は、任意の有機体または微生物から得られたかま
たは抽出された試料上でインビトロで実施され得る。有機体または微生物は、典型的には
、古細菌、原核生物、または真核生物であり、典型的には、植物界、動物界、真菌界、モ
ネラ界、及び原生生物界の5つの界のうちの1つに属する。本発明は、任意のウイルスか
ら得られたかまたは抽出された試料上でインビトロで実施され得る。試料は、好ましくは
、流体試料である。試料は、典型的には、患者の体液を含む。試料は、尿、リンパ液、唾
液、粘液、または羊水であり得るが、好ましくは、血液、血漿、または血清である。典型
的には、試料は、人間起源であるが、代替的には、別の哺乳動物、例えば、ウマ、ウシ、
ヒツジ、またはブタなどの商業用飼育動物であり得るか、または代替的には、ネコまたは
イヌなどの愛玩動物であり得る。代替的には、植物起源の試料は、典型的には、穀物、マ
メ科植物、果物、または野菜等の商業用作物、例えば、小麦、大麦、オート麦、セイヨウ
アブラナ、トウモロコシ、大豆、米、バナナ、リンゴ、トマト、ジャガイモ、ブドウ、タ
バコ、豆、レンズ豆、サトウキビ、ココア、綿から得られる。
【0248】
試料は、非生体試料であってもよい。非生体試料は、好ましくは、流体試料である。非
生体試料の例としては、外科用流体、水、例えば飲料水、海水、または河川水、及び臨床
検査用の試薬が挙げられる。
【0249】
試料は、典型的には、アッセイされる前に、例えば、遠心分離によって、または不必要
な分子もしくは細胞を濾過して取り除く膜を通した通過によって、処理される。試料は、
採取された直後に測定されてもよい。試料はまた、典型的には、アッセイの前に、好まし
くは-70℃未満で保管され得る。
【0250】
ポアは、典型的には、膜内に存在する。本発明に従い、任意の膜を使用することができ
る。好適な膜は、当該技術分野で周知である。膜は、好ましくは、スフィンゴミエリンを
含む。膜は、好ましくは、両親媒性層である。両親媒性層は、少なくとも1つの親水性部
分と少なくとも1つの親油性または疎水性部分の両方を有する、リン脂質等の両親媒性分
子から形成された層である。両親媒性分子は、合成または天然であり得る。非天然型両親
媒性物質及び単分子層を形成する両親媒性物質は、当該技術分野で既知であり、例えば、
ブロックコポリマー(Gonzalez-Perez et al.,Langmuir
,2009,25,10447-10450)が含まれる。ブロックコポリマーは、2つ
以上のモノマーサブユニットが共に重合されて単一ポリマー鎖を作製する、ポリマー材料
である。ブロックコポリマーは、典型的には、各モノマーサブユニットによって寄与され
る特性を有する。しかしながら、ブロックコポリマーは、個々のサブユニットから形成さ
れたポリマーが保有しない固有の特性を有し得る。ブロックコポリマーは、モノマーサブ
ユニットのうちの1つが疎水性(すなわち、親油性)である一方、他のサブユニット(複
数可)が水性媒体中で親水性であるように操作することができる。この場合、ブロックコ
ポリマーは、両親媒性特性を保有し得、生体膜を模倣する構造を形成し得る。ブロックコ
ポリマーは、ジブロック(2つのモノマーサブユニットからなる)であり得るが、3つ以
上のモノマーサブユニットから構築されて、両親媒性物質として挙動するより複雑な配置
でもあり得る。コポリマーは、トリブロック、テトラブロック、またはペンタブロックコ
ポリマーであってもよい。
【0251】
両親媒性層は、一分子層または二分子層であり得る。両親媒性層は、典型的には、平面
脂質二分子層または支持二分子層である。
【0252】
両親媒性層は、典型的には、脂質二分子層である。脂質二分子層は、細胞膜のモデルで
あり、幅広い実験研究のための優秀な基盤として働く。例えば、脂質二分子層は、シング
ルチャネルレコーディングによる膜タンパク質のインビトロ調査のために使用することが
できる。代替的には、脂質二分子層は、幅広い物質の存在を検出するためのバイオセンサ
として使用することができる。脂質に二分子層は、任意の脂質二分子層であり得る。好適
な脂質二分子層には、平面脂質二分子層、支持二分子層、またはリポソームが挙げられる
が、これらに限定されない。脂質二分子層は、好ましくは、平面脂質二分子層である。好
適な脂質二分子層は、国際出願第PCT/GB08/000563号(WO2008/1
02121として公開)、国際出願第PCT/GB08/004127号(WO2009
/077734として公開)、及び国際出願第PCT/GB2006/001057号(
WO2006/100484として公開)に開示されている。
【0253】
脂質二分子層を形成するための方法は、当該技術分野で既知である。好適な方法は実施
例に開示されている。脂質二分子層は、Montal and Mueller(Pro
c.Natl.Acad.Sci.USA.,1972;69:3561-3566)の
方法によって一般に形成され、この方法において、脂質一分子層は、水溶液/空気界面上
で、その界面に対して直角な孔の両側を通り過ぎて担持される。
【0254】
Montal & Muellerの方法は、費用効果があり、かつタンパク質ポア挿
入のために好適である高品質の脂質二分子層を形成する比較的簡単な形成方法であるため
、普及している。二分子層形成の他の一般的な方法には、先端浸漬(tip-dippi
ng)、二分子層の塗装(painting bilayers)、及びリポソーム二分
子層のパッチクランプが含まれる。
【0255】
好ましい実施形態では、脂質二分子層は、国際出願第PCT/GB08/004127
号(WO2009/077734として公開)に記載されるように形成される。別の好ま
しい実施形態において、膜は固体層である。固体層は生物起源のものではない。換言すれ
ば、固体層は、有機体または細胞等の生物学的環境、もしくは生物学的に利用可能な構造
の合成的に製造されたバージョンに由来しないか、またはそれらから単離されない。固体
層は、微細電子材料、絶縁材料、例えばSi、A1、及びSiO、有機及び
無機ポリマー、例えばポリアミド、プラスチック、例えばTeflon(登録商標)また
はエラストマー、例えば二成分付加硬化シリコンゴム、及びガラスを含むがこれらに限定
されない有機及び無機材料の両方から形成することができる。固体層は、グラフェン等の
単原子層、またはいくつかのみの原子の厚さの層から形成することができる。好適なグラ
フェン層は、国際出願第PCT/US2008/010637号(WO2009/035
647として公開)に開示されている。
【0256】
本方法は、典型的には、(i)ポアを含む人工両親媒性層、(ii)ポアを含む単離さ
れた天然型脂質二分子層、または(iii)ポアが内部に挿入された細胞を使用して実施
される。本方法は、典型的には、人工両親媒性層、例えば人工脂質二分子層を使用して実
施される。層は、ポアに加えて、他の膜貫通タンパク質及び/または膜内タンパク質、な
らびに他の分子を含んでもよい。好適な装置及び条件は、以下に論じられる。本発明の方
法は、典型的には、インビトロで実施される。標的ポリヌクレオチド等の分析物は、膜に
結合されてもよい。これは、任意の既知の方法を用いて行われ得る。膜が、脂質二分子層
(上記に詳細に論じられるように)等の両親媒性層である場合、標的ポリヌクレオチド等
の分析物は、好ましくは、膜中に存在するポリペプチドまたは膜中に存在する疎水性アン
カーを介して膜に結合される。疎水性アンカーは、好ましくは、脂質、脂肪酸、ステロー
ル、カーボンナノチューブ、またはアミノ酸である。
【0257】
標的ポリヌクレオチド等の分析物は、膜に直接結合されてもよい。標的ポリヌクレオチ
ド等の分析物は、好ましくは、リンカーを介して膜に結合される。好ましいリンカーには
、ポリマー、例えばポリヌクレオチド、ポリエチレングリコール(PEG)、及びポリペ
プチドが挙げられるが、これらに限定されない。ポリヌクレオチドが膜に直接結合されて
いる場合、膜とポアの内部との間の距離に起因して、特徴付けの実行がポリヌクレオチド
の末端まで続けることができないため、いくつかのデータが失われることになる。リンカ
ーが使用される場合、ポリヌクレオチドは完了するまで処理されることができる。リンカ
ーが使用される場合、リンカーは、任意の位置でポリヌクレオチドに結合され得る。リン
カーは、好ましくは、テールポリマーにおいてポリヌクレオチドに結合される。
【0258】
結合は、安定していても一時的であってもよい。特定の用途の場合、結合の一時的な性
質が好ましい。安定な結合分子がポリヌクレオチドの5’または3’末端のいずれかに直
接結合された場合、二分子層とポアの内部との間の距離に起因して、特徴付けの実行がポ
リヌクレオチドの末端まで続けることができないため、いくつかのデータが失われること
になる。結合が一時的である場合、結合した末端がランダムに二分子層から分離されると
、ポリヌクレオチドは完了するまで処理されることができる。膜と共に安定または過渡的
な関係を形成する化学基は、以下により詳細に論じられる。標的ポリヌクレオチド等の分
析物は、コレステロールまたは脂肪アシル鎖を使用して、脂質二分子層等の両親媒性層に
一時的に結合され得る。ヘキサデカン酸などの6~30個の炭素原子の長さを有する任意
の脂肪アシル鎖を使用することができる。
【0259】
好ましい実施形態において、標的ポリヌクレオチド等の分析物は、両親媒性層に結合さ
れる。核酸の合成脂質二分子層への標的ポリヌクレオチド等の分析物の結合は、以前に、
様々な異なるテザリング戦略を用いて実施されてきた。これらは、以下の表5に要約され
る。
【表8】
【0260】
ポリヌクレオチドは、チオール、コレステロール、脂質、及びビオチン基等の反応性基
の付加のために容易に適合可能である、合成反応において修飾ホスホラミダイトを用いて
官能化され得る。これらの異なる結合化学は、ポリヌクレオチドのための一式の結合オプ
ションを与える。欠く異なる修飾基は、わずかに異なる方法でポリヌクレオチドをつなぎ
、結合は、必ずしも永久的ではないため、ポリヌクレオチドについて異なる滞留時間を二
分子層に与える。一時的結合の利点は、上記に論じられる。
【0261】
ポリヌクレオチドの結合はまた、いくつかの他の手段によって達成され得るが、但し、
反応性基がポリヌクレオチドに付加され得ることを条件とする。DNAのいずれかの末端
への反応性基の付加は、以前に報告されている。ポリヌクレオチドキナーゼ及びATPγ
Sを使用して、チオール基をssDNAの5’に付加することができる(Grant,G
.P.and P. Z.Qin(2007).“A facile method f
or attaching nitroxide spin labels at th
e 5’ terminus of nucleic acids.”Nucleic
Acids Res 35(10):e77)。ビオチン、チオール、及びフルオロフォ
アなどの化学基のより多様な選択は、修飾オリゴヌクレオチドをssDNAの3’に組み
込むために、末端トランスフェラーゼを使用して付加することができる(Kumar,A
.,P.Tchen,et al.(1988).“Nonradioactive l
abelling of synthetic oligonucleotide pr
obes with terminal deoxynucleotidyl tran
sferase.”Anal Biochem 169(2):376-82)。
【0262】
代替的には、反応基は、二分子層に既に結合されているものに相補的なDNAの短片の
付加であると考えられ、その結果、ハイブリダイゼーションによって結合が達成され得る
。T4 RNAリガーゼIを使用した、ssDNAの短片のライゲーションが報告されて
いる(Troutt,A.B.,M.G.McHeyzer-Williams,et
al.(1992).“Ligation-anchored PCR:a simpl
e amplification technique with single-si
ded specificity.”Proc Natl Acad Sci U S
A 89(20):9823-5)。代替的には、ssDNAまたはdsDNAのいずれ
かは、天然のdsDNAに連結され、その後2本の鎖を熱変性または化学的変性によって
分離することができる。天然のdsDNAには、ssDNAの片を二本鎖の末端の一方ま
たは両方に付加するか、もしくは一方または両方の末端にdsDNAを付加することが可
能である。次いで、二本鎖が融解すると、各一本鎖は、ssDNAがライゲーションに使
用された場合、5’または3’修飾のいずれかを有することになるか、もしくはdsDN
Aがライゲーションに使用された場合、5’末端、3’末端、またはその両方における修
飾を有することになる。ポリヌクレオチドが合成鎖である場合、ポリヌクレオチドの化学
合成中に結合化学が組み込まれ得る。例えば、ポリヌクレオチドは、反応性基が結合した
プライマーを使用して合成することができる。
【0263】
ゲノムDNAの部分の増幅のための一般的な技術は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)
を使用することである。ここでは、2つの合成オリゴヌクレオチドプライマーを使用して
、DNAの同じ部分のいくつかのコピーを生成することができ、各コピーについて、二本
鎖中の各鎖の5’が、合成ポリヌクレオチドとなる。コレステロール、チオール、ビオチ
ン、または脂質等の反応性基を有するアンチセンスプライマーを使用することによって、
増幅された標的DNAの各コピーが、結合のための反応性基を含むことになる。
【0264】
本発明の方法で使用されるポアは、本発明のポア(すなわち、本発明の少なくとも1つ
の変異体モノマーまたは本発明の少なくとも1つの構造体を含むポア)である。ポアは、
上記に論じられる方法のいずれかにおいて化学的に修飾され得る。ポアは、好ましくは、
上記に論じられるように標的分析物と相互作用することができる共有結合アダプターで修
飾される。
【0265】
方法は、好ましくは、標的ポリヌクレオチドを特徴付けるためのものであり、ステップ
(a)が、標的ポリヌクレオチドをポア及びポリヌクレオチド結合タンパク質と接触させ
ることを含み、ポリヌクレオチド結合タンパク質がポアを通って標的ポリヌクレオチドの
移動を制御する。ポリヌクレオチド結合タンパク質は、ポリヌクレオチドに結合すること
ができ、かつポアを通るその移動を制御することができる任意のタンパク質であり得る。
ポリヌクレオチド結合タンパク質がポリヌクレオチドに結合するか否かを判定することは
、当該技術分野において簡単である。ポリヌクレオチド結合タンパク質は、典型的には、
ポリヌクレオチドの少なくとも1つの特性と相互作用するか、またはそれを修飾する。ポ
リヌクレオチド結合タンパク質は、それを開裂して個々のヌクレオチドまたはヌクレオチ
ドのより短い鎖、例えばジヌクレオチドまたはトリヌクレオチドを形成することによって
ポリヌクレオチドを修飾し得る。部分は、特定の位置にそれを配向するか、またはそれを
移動させる、すなわちその移動を制御することによってポリヌクレオチドを修飾し得る。
【0266】
ポリヌクレオチド結合タンパク質は、好ましくは、ポリヌクレオチドハンドリング酵素
である。ポリヌクレオチドハンドリング酵素は、ポリヌクレオチドの少なくとも1つの特
性と相互作用しかつそれを修飾することができるポリペプチドである。酵素は、それを開
裂して個々のヌクレオチドまたはヌクレオチドのより短い鎖、例えばジヌクレオチドまた
はトリヌクレオチドを形成することによってポリヌクレオチドを修飾し得る。酵素は、特
定の位置にそれを配向するか、またはそれを移動させることによってポリヌクレオチドを
修飾し得る。ポリヌクレオチド結合タンパク質は、典型的には、ポリヌクレオチド結合ド
メイン及び触媒ドメインを含む。ポリヌクレオチドハンドリング酵素は、それが、標的配
列に結合し、かつポアを通るその移動を制御することができる限り、酵素活性を提示する
必要がない。例えば、酵素は、その酵素活性を除去するように修飾されてもよく、または
酵素として作用することを防ぐ条件下で使用されてもよい。そのような条件は、以下によ
り詳細に論じられる。
【0267】
ポリヌクレオチドハンドリング酵素は、好ましくは、核酸分解酵素に由来する。酵素の
構造体に使用されるポリヌクレオチドハンドリング酵素は、より好ましくは、酵素分類(
EC)群3.1.11、3.1.13、3.1.14、3.1.15、3.1.16、3
.1.21、3.1.22、3.1.25、3.1.26、3.1.27、3.1.30
、及び3.1.31のうちのいずれかのメンバーに由来する。酵素は、国際出願第PCT
/GB10/000133号(WO2010/086603として公開)に開示されてい
るもののいずれかであり得る。
【0268】
好ましい酵素は、ポリメラーゼ、エキソヌクレアーゼ、ヘリカーゼ、及びトポイソメラ
ーゼ、例えばジャイレースである。好適な酵素には、E.coli由来のエキソヌクレア
ーゼI(配列番号6)、E.coli由来のエキソヌクレアーゼIII酵素(配列番号8
)、T.thermophilus由来のRecJ(配列番号10)及びバクテリオファ
ージラムダエキソヌクレアーゼ(配列番号12)、ならびにそれらのバリアントが挙げら
れるが、これらに限定されない。配列番号10に示される配列またはそのバリアントを含
む3つのサブユニットは相互作用して、トリマーエキソヌクレアーゼを形成する。酵素は
、Phi29 DNAポリメラーゼ(配列番号4)またはそのバリアントであり得る。酵
素は、ヘリカーゼであっても、ヘリカーゼ由来であってもよい。典型的なヘリカーゼは、
Hel308、RecD、またはXPD、例えばHel308 Mbu(配列番号13)
またはその変異体である。
【0269】
酵素は、最も好ましくは、Hel308ヘリカーゼ、RecDヘリカーゼ、例えばTr
aIヘリカーゼまたはTrwCヘリカーゼ、XPDヘリカーゼまたはDdaヘリカーゼに
由来する。ヘリカーゼは、国際出願第PCT/GB2012/052579号(WO20
13/057495として公開)、第PCT/GB2012/053274号(WO20
13/098562として公開)、第PCT/GB2012/053273号(WO20
13098561として公開)、第PCT/GB2013/051925号(WO201
4/013260として公開)、第PCT/GB2013/051924号(WO201
4/013259として公開)、第PCT/GB2013/051928号(WO201
4/013262として公開)、及び第PCT/GB2014/052736号に開示さ
れるヘリカーゼ、修飾ヘリカーゼ、またはヘリカーゼ構造体のいずれかであり得る。
【0270】
ヘリカーゼは、好ましくは、配列番号18(Dda)に示される配列またはそのバリア
ントを含む。バリアントは、膜貫通ポアについて以下に論じられる方法のいずれかにおい
て天然配列とは異なり得る。配列番号18の好ましいバリアントは、(a)E94C及び
A360C、または(b)E94C、A360C、C109A、及びC136A、ならび
に任意に(ΔM1)G1G2(すなわち、M1の欠失、及びその後G1及びG2の付加)
を含む。
【0271】
配列番号4、6、8、10、12、13、または18のバリアントは、配列番号4、6
、8、10、12、13、または18のものとは異なるアミノ酸配列を有し、かつポリヌ
クレオチド結合能力を保持する酵素である。バリアントは、高い塩濃度及び/または室温
において、ポリヌクレオチドの結合を促進し、かつ/またはその活性を容易にする修飾を
含んでもよい。
【0272】
配列番号4、6、8、10、12、13、または18のアミノ酸配列の全長にわたって
、バリアントは、好ましくは、アミノ酸同一性に基づき、その配列に対して少なくとも5
0%のホモログを有することになる。より好ましくは、バリアントポリペプチドは、配列
全体にわたって、アミノ酸同一性に基づき、配列番号4、6、8、10、12、13、ま
たは18のアミノ酸配列に対して少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65
%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少な
くとも90%、より好ましくは少なくとも95%、97%、または99%のホモログを有
し得る。200個以上、例えば230、250、270、または280個以上の連続した
アミノ酸のストレッチにわたって、少なくとも80%、例えば、少なくとも85%、90
%、または95%のアミノ酸同一性があってもよい(「ハードホモロジー(hardho
mology)」)。相同性は、上記に説明されるように判定される。バリアントは、配
列番号2に関して上記に論じられる方法のいずれかにおいて野生型配列とは異なり得る。
酵素は、下記に論じられるようにポアに共有結合され得る。
【0273】
ナノポアを使用してポリヌクレオチドのシークエンシングを行うためには、2つの主要
な戦略、すなわち鎖のシークエンシング及びエキソヌクレアーゼのシークエンシングが存
在する。本発明の方法は、鎖のシークエンシングまたはエキソヌクレアーゼのシークエン
シングのいずれかの方法に関し得る。
【0274】
鎖シークエンシングにおいて、DNAは、印加された電位と共にまたはそれに対して、
ナノポアを通って転移される。二本鎖DNA上で進行的または前進的に作用するエキソヌ
クレアーゼをポアのシス側に使用して、印加された電位化で、または逆電位下のトランス
側で、残りの一本鎖を貫通接続することができる。同様に、二本鎖DNAを解くヘリカー
ゼも、類似の様式で使用することができる。ポリメラーゼも使用することができる。印加
された電位に対する鎖転移を必要とするシークエンシングアプリケーションの可能性もあ
るが、DNAはまず、逆電位下または電位のない状態下で酵素によって「捕まら」なけれ
ばならない。その後、結合に続いて電位が戻されると、鎖は、ポアをシスからトランスへ
と通り、電流によって拡張された立体構造で保持されることになる。一本鎖DNAエキソ
ヌクレアーゼまたは一本鎖DNA依存性ポリメラーゼは分子モーターとして作用して、印
加された電位に対して、新たに転移された一本鎖を、制御された様式でポアを通ってトラ
ンスからシスへと引き戻すことができる。
【0275】
一実施形態では、標的ポリヌクレオチドを特徴付ける方法は、標的配列を、ポア及びヘ
リカーゼ酵素と接触させることを伴う。方法において、任意のヘリカーゼを使用すること
ができる。ヘリカーゼは、ポアに対して2つのモードで働き得る。最初に、本方法は、好
ましくは、それが印加された電位から生じる電界と共にポアを通る標的配列の移動を制御
するように、ヘリカーゼを使用して実施される。このモードにおいて、DNAの5’末端
がまずポア内に捕捉され、酵素は、それが最終的に二分子層のトランス側を通って転移す
るまで、標的配列が電界と共にポアに通されるように、DNAのポア内への移動を制御す
る。代替的には、方法は、好ましくは、ヘリカーゼ酵素が、印加された電位から生じる電
界に対してポアを通る標的配列の移動を制御するように実施される。このモードにおいて
、DNAの3’末端がまずポア内に捕捉され、酵素は、標的配列が、最終的に二分子層の
シス側に戻って排出されるまで、印加された電界に対してポアの外に引き出されるように
、ポアを通るDNAの移動を制御する。
【0276】
エキソヌクレアーゼシークエンシングにおいて、エキソヌクレアーゼは、個々のヌクレ
オチドを標的ポリヌクレオチドの一方の末端から放出し、これらの個々のヌクレオチドは
、以下に論じられるように同定される。別の実施形態では、標的ポリヌクレオチドを特徴
付ける方法は、標的配列をポア及びエキソヌクレアーゼ酵素と接触させることを伴う。方
法において、下記論じられるエキソヌクレアーゼのいずれかを使用することができる。酵
素は、下記に論じられるようにポアに共有結合され得る。
【0277】
エキソヌクレアーゼは、典型的には、ポリヌクレオチドの一方の末端にラッチされ、そ
の末端から1つずつのヌクレオチドで配列を消化する酵素である。エキソヌクレアーゼは
、5’から3’方向または3’から5’方向でポリヌクレオチドを消化することができる
。エキソヌクレアーゼが結合するポリヌクレオチドの末端は、典型的には、使用される酵
素の選択を介して、かつ/または当該技術分野で既知の方法を使用して判定される。典型
的には、ポリヌクレオチドの両端におけるヒドロキシル基またはキャップ構造を使用して
、ポリヌクレオチドの特定の末端へのエキソヌクレアーゼの結合を防止または容易にする
ことができる。
【0278】
方法は、上記に論じられるようなヌクレオチドの一部の特徴付けまたは同定を可能にす
る速度でヌクレオチドがポリヌクレオチドの末端から消化されるように、ポリヌクレオチ
ドをエキソ促進するヌクレアーゼと接触させることを伴う。これを行う方法は、当該技術
分野で周知である。例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用してそれら
が同定され得るように、ポリペプチドの末端から単一のアミノ酸を連続的に消化するため
にエドマン分解が使用される。本発明において、相同法が使用され得る。
【0279】
エキソヌクレアーゼが機能する速度は、典型的には、野生型エキソヌクレアーゼの最適
速度よりも遅い。本発明の方法におけるエキソヌクレアーゼの活性の好適な速度は、毎秒
0.5~1000ヌクレオチド、毎秒0.6~500ヌクレオチド、毎秒0.7~200
ヌクレオチド、毎秒0.8~100ヌクレオチド、毎秒0.9~50ヌクレオチド、毎秒
1~20または10ヌクレオチドの消化を伴う。速度は、好ましくは、毎秒1、10、1
00、500、または1000ヌクレオチドである。エキソヌクレアーゼ活性の好適な速
度は、様々な方法で達成することができる。例えば、活性の低減された最適速度を有する
バリアントエキソヌクレアーゼが本発明に従って使用され得る。
【0280】
本発明の方法は、標的ポリヌクレオチド等の標的分析物の1つ以上の特徴を測定するこ
とを含む。方法は、標的ポリヌクレオチド等の標的分析物の2、3、4、または5つ以上
の特徴を測定することを含み得る。標的ポリヌクレオチドについて、1つ以上の特徴は、
好ましくは、(i)標的ポリヌクレオチドの長さ、(ii)標的ポリヌクレオチドの同一
性、(iii)標的ポリヌクレオチドの配列、(iv)標的ポリヌクレオチドの二次構造
、及び(v)標的ポリヌクレオチドが修飾されているか否かから選択される。本発明に従
って、(i)~(v)の任意の組み合わせが測定され得る。
【0281】
(i)について、ポリヌクレオチドの長さは、標的ポリヌクレオチドとポアとの間の相
互作用の数を用いて測定され得る。
【0282】
(ii)について、ポリヌクレオチドの同一性は、いくつかの方法で測定され得る。ポ
リヌクレオチドの同一性は、標的ポリヌクレオチドの配列の測定と併せて、または標的ポ
リヌクレオチドの配列の測定を伴わずに測定され得る。前者は簡単であり、ポリヌクレオ
チドがシークエンシングされ、それにより同定される。後者は、いくつかの方法で行うこ
とができる。例えば、ポリヌクレオチド中の特定のモチーフの存在が測定され得る(ポリ
ヌクレオチドの残りの配列を測定することなく)。代替的には、本方法における特定の電
気的及び/または光学的シグナルの測定は、特定の供給源から得られるものとして標的ポ
リヌクレオチドを同定することができる。
【0283】
(iii)について、ポリヌクレオチドの配列は、前述のように判定することができる
。好適なシークエンシング方法、特に電気的測定を使用するものは、Stoddart
D et al.,Proc Natl Acad Sci,12;106(19):7
702-7,Lieberman KR et al,J Am Chem Soc.2
010;132(50):17961-72、及び国際出願第WO2000/28312
号に記載されている。
【0284】
(iv)について、二次構造は、様々な方法で測定され得る。例えば、方法が電気的測
定を伴う場合、二次構造は、滞留時間の変化またはポアを通過する電流の変化を使用して
測定され得る。これは、一本鎖及び二本鎖ポリヌクレオチドの領域を識別することを可能
にする。
【0285】
(v)について、任意の修飾の存在または不在が測定され得る。方法は、好ましくは、
メチル化によって、酸化によって、損傷によって、1つ以上のタンパク質によって、また
は1つ以上の標識、タグ、もしくはスペーサによって標的ポリヌクレオチドが修飾されて
いるか否かを判定することを含む。特異的修飾は、ポアとの特異的相互作用をもたらすこ
とになり、これは下記に説明される方法を使用して測定することができる。例えば、メチ
ルシオチン(methylcyotsine)は、各ヌクレオチドとのその相互作用中に
ポアを通過する電流に基づき、シトシンと区別され得る。
【0286】
本発明はまた、標的ポリヌクレオチドの配列を推定する方法を提供する。本発明はさら
に、標的ポリヌクレオチドをシークエンシングする方法を提供する。
【0287】
様々な異なる種類の測定を行うことができる。これは、電気的測定及び光学的測定を含
むが、これらに限定されない。考えられる電気的測定としては、電流測定、インピーダン
ス測定、トンネル効果測定(Ivanov AP et al., Nano Lett
.2011 Jan 12;11(1):279-85)、及びFET測定(国際出願第
WO2005/124888号)が挙げられる。蛍光の測定を含む好適な光学的方法は、
J. Am.Chem.Soc.2009,131 1652-1653によって開示さ
れている。光学的測定は、電気的測定(Soni GV et al.,Rev Sci
Instrum.2010 Jan;81(1):014301)と組み合わせられ得
る。測定は、膜貫通電流測定、例えば、ポアを通過するイオン電流の測定であり得る。
【0288】
電気的測定は、Stoddart D et al.,Proc Natl Acad
Sci,12;106(19):7702-7、Lieberman KR et a
l,J Am Chem Soc.2010;132(50):17961-72、及び
国際出願第WO2000/28312号に記載されているような標準的な単一チャネル記
録装置を使用して行われ得る。代替的には、電気的測定は、例えば、国際出願第WO20
09/077734号及び国際出願第WO2011/067559号に記載されているよ
うに、マルチチャネルシステムを使用して行われ得る。
【0289】
好ましい実施形態において、方法は、
(a)標的ポリヌクレオチドがポアを通って移動し、結合タンパク質がポアを通る標的
ポリヌクレオチドの移動を制御するように、標的ポリヌクレオチドを本発明のポア及びポ
リヌクレオチド結合タンパク質と接触させることと、
(b)ポリヌクレオチドがポアに対して移動する間に、ポアを通過する電流であって、
電流が標的ポリヌクレオチドの1つ以上の特徴を示す、電流を測定し、それによって標的
ポリヌクレオチドを特徴付けることと、を含む。
【0290】
方法は、ポアが膜内に挿入される膜/ポアシステムを調査するために好適な任意の装置
を使用して実施することができる。方法は、膜貫通ポアセンシングのために好適な任意の
装置を使用して実施され得る。例えば、装置は、水溶液を含むチャンバと、チャンバを2
つの部分に分ける障壁とを備える。障壁は、ポアを含む膜が形成される孔を有する。
【0291】
方法は、国際出願第PCT/GB08/000562号(WO2008/102120
)に記載される装置を使用して実施され得る。
【0292】
方法は、ポアに対して標的ポリヌクレオチド等の分析物が移動する間の、ポアを通過す
る電流を測定することを伴う。したがって、装置はまた、電位を印加し、膜及びポアにわ
たる電気シグナルを測定することができる電気回路を含み得る。方法は、パッチクランプ
または電圧クランプを使用して実施され得る。方法は、好ましくは、電圧クランプの使用
を伴う。
【0293】
本発明の方法は、ポアに対して標的ポリヌクレオチド等の分析物が移動する間の、ポア
を通過する電流の測定を伴う。膜貫通タンパク質ポアを通るイオン電流を測定するために
好適な条件は、当該技術分野で既知であり、実施例において開示される。方法は、典型的
には、膜及びポアにわたって電圧が印加された状態で実施される。使用される電圧は、典
型的には+2V~-2V、典型的には-400mV~+400mVである。使用される電
圧は、好ましくは、-400mV、-300mV、-200mV、-150mV、-10
0mV、-50mV、-20mV、及び0mVから選択される下限と、+10mV、+2
0mV、+50mV、+100mV、+150mV、+200mV、+300mV、及び
+400mVから独立して選択される上限とを有する範囲内である。使用される電圧は、
より好ましくは100mV~240mVの範囲内、最も好ましくは120mV~220m
Vの範囲内である。増加した印加電位を使用することによって、ポアによる異なるヌクレ
オチド間の識別を増加させることが可能である。
【0294】
方法は、典型的には、金属塩、例えばアルカリ金属塩、ハロゲン塩、例えば塩化物塩、
例えばアルカリ金属塩化物塩などの任意のチャージキャリアの存在下で実施される。チャ
ージキャリアには、イオン性液体または有機塩、例えば、塩化テトラメチルアンモニウム
、塩化トリメチルフェニルアンモニウム、塩化フェニルトリメチルアンモニウム、または
1-エチル-3-メチルイミダゾリウムクロリドが含まれ得る。上記の例示的な装置にお
いて、塩は、チャンバ内の水溶液中に存在する。塩化カリウム(KCl)、塩化ナトリウ
ム(NaCl)、または塩化セシウム(CsCl)が典型的には使用される。KClが好
ましい。塩濃度は、飽和であり得る。塩濃度は、3M以下であり得、典型的には、0.1
~2.5M、0.3~1.9M、0.5~1.8M、0.7~1.7M、0.9~1.6
M、または1M~1.4Mである。塩濃度は、好ましくは、150mM~1Mである。方
法は、好ましくは、少なくとも0.3M、例えば少なくとも0.4M、少なくとも0.5
M、少なくとも0.6M、少なくとも0.8M、少なくとも1.0M、少なくとも1.5
M、少なくとも2.0M、少なくとも2.5M、または少なくとも3.0Mの塩濃度を使
用して実施される。高い塩濃度は、高いシグナル対ノイズ比をもたらし、通常の電流変動
のバックグラウンドに対して、ヌクレオチドの存在を示す電流の同定を可能にする。
【0295】
方法は、典型的には、緩衝液の存在下で実施される。上記に論じられる例示的な装置に
おいて、緩衝液は、チャンバ内の水溶液中に存在する。本発明の方法において、任意の緩
衝液を使用することができる。典型的には、緩衝液はHEPESである。別の好適な緩衝
液は、Tris-HCl緩衝液である。方法は、典型的には、4.0~12.0、4.5
~10.0、5.0~9.0、5.5~8.8、6.0~8.7、または7.0~8.8
、または7.5~8.5のpHで実施される。使用されるpHは、好ましくは、約7.5
である。
【0296】
方法は、0℃~100℃、15℃~95℃、16℃~90℃、17℃~85℃、18℃
~80°C、19℃~70℃、または20℃~60°Cで実施され得る。方法は、典型的
には、室温で実施される。方法は、任意に、酵素機能を支持する温度、例えば約37℃で
実施される。
【0297】
方法は、典型的には、遊離ヌクレオチドまたは遊離ヌクレオチド類似体、及びヘリカー
ゼまたはエキソヌクレアーゼ等のポリヌクレオチド結合タンパク質の作用を容易にする酵
素補因子の存在下で実施される。遊離ヌクレオチドは、上記に論じられる個々のヌクレオ
チドのいずれかの1つ以上であり得る。遊離ヌクレオチドには、アデノシン一リン酸(A
MP)、アデノシン二リン酸(ADP)、アデノシン三リン酸(ATP)、グアノシン一
リン酸(GMP)、グアノシン二リン酸(GDP)、グアノシン三リン酸(GTP)、チ
ミジン一リン酸(TMP)、チミジン二リン酸(TDP)、チミジン三リン酸(TTP)
、ウリジン一リン酸(UMP)、ウリジン二リン酸(UDP)、ウリジン三リン酸(UT
P)、シチジン一リン酸(CMP)、シチジン二リン酸(CDP)、シチジン三リン酸(
CTP)、環状アデノシン一リン酸(cAMP)、環状グアノシン一リン酸(cGMP)
、デオキシアデノシン一リン酸(dAMP)、デオキシアデノシン二リン酸(dADP)
、デオキシアデノシン三リン酸(dATP)、デオキシグアノシン一リン酸(dGMP)
、デオキシグアノシン二リン酸(dGDP)、デオキシグアノシン三リン酸(dGTP)
、デオキシチミジン一リン酸(dTMP)、デオキシチミジン二リン酸(dTDP)、デ
オキシチミジン三リン酸(dTTP)、デオキシウリジン一リン酸(dUMP)、デオキ
シウリジン二リン酸(dUDP)、デオキシウリジン三リン酸(dUTP)、デオキシシ
チジン一リン酸(dCMP)、デオキシシチジン二リン酸(dCDP)、及びデオキシシ
チジン三リン酸(dCTP)が挙げられるが、これらに限定されない。遊離ヌクレオチド
は、好ましくは、AMP、TMP、GMP、CMP、UMP、dAMP、dTMP、dG
MP、またはdCMPから選択される。遊離ヌクレオチドは、好ましくは、アデノシン三
リン酸(ATP)である。酵素補因子は、ヘリカーゼが機能することを可能にする因子で
ある。酵素補因子は、好ましくは、二価金属カチオンである。二価金属カチオンは、好ま
しくは、Mg2+、Mn2+、Ca2+、またはCo2+である。酵素補因子は、最も好
ましくは、Mg2+である。
【0298】
標的ポリヌクレオチドは、任意の順序でポア及びポリヌクレオチド結合タンパク質と接
触させることができる。標的ポリヌクレオチドが、ポリヌクレオチド結合タンパク質及び
ポアと接触される場合、ポリヌクレオチドはまず、ポリヌクレオチド結合タンパク質と複
合体を形成することが好ましい。ポアにわたって電圧が印加されると、標的ポリヌクレオ
チド/タンパク質複合体は次いで、ポアと複合体を形成し、ポアを通るポリヌクレオチド
の移動を制御する。
【0299】
個々のヌクレオチドを同定する方法
本発明はまた、個々のヌクレオチドを特徴付ける方法を提供する。換言すれば、標的分
析物は個々のヌクレオチドである。方法は、ヌクレオチドがポアと相互作用するようにヌ
クレオチドを本発明のポアと接触させることと、相互作用中にポアを通過する電流を測定
することと、それによってヌクレオチドを特徴付けることと、を含む。したがって、本発
明は、個々のヌクレオチドのナノポアセンシングを含む。本発明はまた、相互作用中にポ
アを通過する電流を測定することと、それによってヌクレオチドの同一性を判定すること
と、を含む、個々のヌクレオチドを同定する方法を提供する。上記に論じられる本発明の
ポアのいずれかが使用され得る。ポアは、好ましくは、上記に論じられるように分子アダ
プターを用いて化学的に修飾される。
【0300】
ヌクレオチドについて特異的な様式で電流がポアを通過する場合(すなわち、ヌクレオ
チドに関連付けられる固有の電流がポアを通過することが検出された場合)、ヌクレオチ
ドは存在する。ヌクレオチドについて特異的な様式で電流がポアを通過しない場合、ヌク
レオチドは不在である。
【0301】
本発明を使用して、それらがポアを通過する電流にもたらす異なる影響に基づいて、類
似構造のヌクレオチドを区別することができる。個々のヌクレオチドは、それらがポアと
相互作用するときの電流振幅から、単一分子レベルで同定することができる。本発明を使
用して、試料中に特定のヌクレオチドが存在するか否かを判定することもできる。本発明
を使用して、試料中の特定のヌクレオチドの濃度を測定することもできる。
【0302】
ポアは、典型的には、膜内に存在する。方法は、上記に論じられる任意の好適な膜/ポ
ア系を使用して実施され得る。
【0303】
個々のヌクレオチドは、単一のヌクレオチドである。個々のヌクレオチドは、ヌクレオ
チド結合によって別のヌクレオチドまたはポリヌクレオチドと結合していないものである
。ヌクレオチド結合は、ヌクレオチドのリン酸基のうちの1つが、別のヌクレオチドの糖
基に結合することを伴う。個々のヌクレオチドは、典型的には、ヌクレオチドによって、
少なくとも5、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも50、少なくとも100、
少なくとも200、少なくとも500、少なくとも1000、または少なくとも5000
ヌクレオチドの別のポリヌクレオチドに結合していないものである。例えば、個々のヌク
レオチドは、標的ポリヌクレオチド配列、例えばDNAまたはRNA鎖から消化されてい
る。本発明の方法は、任意のヌクレオチドを同定するために使用され得る。ヌクレオチド
は、上記に論じられるもののいずれかであり得る。
【0304】
ヌクレオチドは、リボ核酸(RNA)またはデオキシリボ核酸(DNA)等の核酸配列
の消化に由来し得る。核酸配列は、当該技術分野で既知の任意の方法を使用して消化され
得る。好適な方法は、酵素または触媒を使用するものを含むが、これに限定されない。核
酸の触媒消化は、Deck et al.,Inorg.Chem.,2002;41:
669-677に開示されている。
【0305】
単一のポリヌクレオチドからの個々のヌクレオチドは、ポリヌクレオチドの全部または
一部をシークエンシングするために、連続した様式でポアと接触され得る。ポリヌクレオ
チドをシークエンシングすることが、上記により詳細に論じられる。
【0306】
ヌクレオチドは、膜の両側のポアと接触され得る。ヌクレオチドは、膜の両側のポアに
導入され得る。ヌクレオチドは、ヌクレオチドがポアを通って膜の反対側に通過すること
を可能にする膜の側面と接触され得る。例えば、ヌクレオチドはポアの末端と接触されて
おり、その天然環境において、ヌクレオチドがポアを通過し得るようにポアのバレルまた
はチャネルへイオンまたはヌクレオチド等の小分子の侵入を可能にする。そのような場合
において、ヌクレオチドは、ポアのバレルまたはチャネルを通って膜を通過する際に、ポ
ア及び/またはアダプターと相互作用する。代替的には、ヌクレオチドは、ヌクレオチド
がアダプターを介してまたはそれと併せてポアと相互作用し、ポアから解離し、膜の同じ
側に留まることを可能にする、膜の側面と接触され得る。本発明は、アダプターの位置が
固定されているポアを提供する。その結果として、ヌクレオチドは、好ましくは、アダプ
ターがヌクレオチドと相互作用することを可能にするポアの末端と接触される。
【0307】
個々のヌクレオチドは、任意の様式及び任意の部位でポアと相互作用し得る。ヌクレオ
チドは、好ましくは、アダプターを介してまたはそれと併せて、ポアに逆向きに結合する
。ヌクレオチドは、最も好ましくは、それが膜にわたってポアを通過する間に、アダプタ
ーを介してまたはそれと併せて、ポアに逆向きに結合する。ヌクレオチドはまた、それが
膜にわたってポアを通過する間に、アダプターを介してまたはそれと併せて、ポアのバレ
ルまたはチャネルに逆向きに結合することができる。
【0308】
ヌクレオチドとポアとの間の相互作用の間、ヌクレオチドは、そのヌクレオチドについ
て特異的な様式でポアを通って流れている電流に影響を及ぼす。例えば、特定のヌクレオ
チドは、特定の平均時間にわたり、かつ特定の程度まで、ポアを通って流れている電流を
低減させることになる。換言すれば、ポアを通って流れている電流は、特定のヌクレオチ
ドについて固有である。分析物の存在下で対照実験を実施して、ポアを通って流れている
電流に対して特定のヌクレオチドが有する影響を判定することができる。試験試料上で本
発明の方法を実施した結果を、その後、そのような対照実験から得られた結果と比較して
、試料中の特定のヌクレオチドを同定するか、または特定のヌクレオチドが試料中に存在
するかどうかを判定することができる。特定のヌクレオチドを示す様式でポアを通って流
れている電流が影響される周波数を使用して、試料中のそのヌクレオチドの濃度を判定す
ることができる。試料内の異なるヌクレオチドの割合も計算することができる。例えば、
dCMP対メチルdCMPの割合を計算することができる。
【0309】
方法は、上記に論じられる任意の装置、試料、または条件の使用を含み得る。
【0310】
センサ形成する方法
本発明はまた、標的ポリヌクレオチドを特徴づけるためのセンサを形成する方法を提供
する。方法は、本発明のポアと、ヘリカーゼまたはエキソヌクレアーゼ等のポリヌクレオ
チド結合タンパク質との間で複合体を形成することを含む。複合体は、ポア及びタンパク
質を標的ポリヌクレオチドの存在下で接触させることと、その後、ポアにわたって電位を
印加することと、によって形成され得る。印加される電位は、上記に論じられるように化
学的電位または電圧電位であり得る。代替的には、複合体は、ポアをタンパク質に共有結
合させることによって形成され得る。共有結合のための方法は、当該技術分野で既知であ
り、例えば、国際出願第PCT/GB09/001679号(WO2010/00426
5として公開)及び第PCT/GB10/000133号(WO2010/086603
として公開)に開示されている。複合体は、標的ポリヌクレオチドを特徴付けるためのセ
ンサである。方法は、好ましくは、本発明のポアとヘリカーゼとの間で複合体を形成する
ことを含む。上記に論じられる実施形態のいずれかを、この方法に等しく適用する。
【0311】
本発明はまた、標識ポリヌクレオチドを特徴づけるためのセンサを提供する。センサは
、本発明のポアとポリヌクレオチド結合タンパク質との間の複合体を含む。上記に論じら
れる実施形態のいずれかを、本発明のセンサに等しく適用する。
【0312】
キット
本発明はまた、例えばシークエンシングといった、標的ポリヌクレオチドを特徴付ける
ためのキットを提供する。キットは、(a)本発明のポアと、(b)膜の構成要素と、を
含む。キットは、好ましくは、ヘリカーゼまたはエキソヌクレアーゼ等のポリヌクレオチ
ド結合タンパク質をさらに含む。上記に論じられる実施形態のいずれかを、本発明のキッ
トに等しく適用する。
【0313】
本発明のキットは、上記に述べられる実施形態のいずれかを実施することを可能にする
1つ以上の他の試薬または器具をさらに含み得る。そのような試薬または器具には、以下
、好適な緩衝液(複数可)(水溶液)、対象から試料を得るための手段(容器もしくは針
を含む器具等)、ポリヌクレオチド配列を増幅及び/もしくは発現させるための手段、上
記に定義されるような膜、または電圧もしくはパッチクランプ装置のうちの1つ以上が含
まれる。試薬は、流体試料が試薬を再懸濁するように、乾燥状態でキット内に存在しても
よい。キットはまた、任意に、キットが本発明の方法で使用されることを可能にするため
の使用説明書、または本方法が使用され得る患者に関する詳細を含んでもよい。キットは
、任意に、ヌクレオチドを含み得る。
【0314】
装置
本発明はまた、サンプル中の標的ポリヌクレオチドをシークエンシングするなどの特徴
付けのための装置を提供する。装置は、(a)本発明の複数のポアと、(b)複数のポリ
ヌクレオチド結合タンパク質、例えば、ヘリカーゼまたはエキソヌクレアーゼとを含み得
る。装置は、分析物分析のための任意の従来の装置、例えばアレイまたはチップであり得
る。
【0315】
アレイまたはチップは、典型的には、それぞれが単一のナノポアが挿入されたブロック
コポリマー膜等の、膜の複数のウェルを含む。アレイは、電子チップ内に統合され得る。
【0316】
装置は、好ましくは、
複数のポア及び膜を支持することと、ポア及びタンパク質を使用して分析物の特徴付け
またはシークエンシングを実施するように動作可能であるようにすることと、が可能であ
るセンサデバイスと、
特徴付けまたはシークエンシングを実施するための材料を保持するための少なくとも
1つの貯蔵器と、
材料を少なくとも1つの貯蔵器からセンサデバイスへと制御可能に供給するように構
成された流体工学システムと、
それぞれの試料を受容するための複数の容器であって、流体工学システムが、試料を
容器からセンサデバイスへと選択的に供給するように構成されている、複数の容器と、を
備える。
【0317】
装置は、国際出願第PCT/GB10/000789号(WO2010/122293
として公開)、国際出願第PCT/GB10/002206号(WO2011/0675
59として公開)、または国際出願第PCT/US99/25679号(WO2000/
28312として公開)に記載されているもののいずれかであり得る。
【0318】
以下の実施例は、本発明を説明する。
【0319】
実施例1
この実施例は、ヘリカーゼ-T4 Dda-E94C/C109A/C136A/A3
60C(変異E94C/C109A/C136A/A360Cを有する配列番号18)が
どのように使用されて、いくつかの異なる変異体ライセニンナノポアを通したDNAの移
動を制御したかを説明する。試験した全てのナノポアは、DNAがナノポアを通って転位
した際の電流の変化を提示した。試験した変異体ナノポアは、変異体対照ナノポアと比較
した際に、1)増加した範囲、2)ノイズの低減、3)改善されたシグナル:ノイズ、ま
たはベースラインと比較した際に、5)変化した読取りヘッドのサイズを提示した。
【0320】
材料及び方法
DNA構造体の調製
●70μLのT4 Dda-E94C/C109A/C136A/A360Cを、2m
MのEDTAと共に70μLの1倍KOAc緩衝液に(Zebaカラムを使用して)緩衝
液交換した。
●70uLのT4 Dda-E94C/C109A/C136A/A360Cの緩衝液
交換混合物を、70uLの2μM DNAアダプターに添加した(シーケンスの詳細につ
いては図5を参照)。次に、試料を混合し、室温で5分間インキュベートした。
●1μLの140mM TMADを添加し、その試料を混合し、室温で60分間インキ
ュベートした。この試料は、試料Aとして既知であった。次に、Agilent分析のた
めに2ulのアリコートを取り除いた。
【0321】
HS/ATPステップ
●以下の表の試薬を混合し、室温で25分間インキュベートした。この試料は試料Bと
して既知であった。
【表9】
【0322】
SPRI精製
●1.1mLのSPRIビーズを試料Bに添加し、次にその試料を混合し、5分間イン
キュベートした。
●ビーズをペレット化し、上清を除去した。次にビーズを、50mMのTris.HC
l、2.5M NaCl、20%PEG8000で洗浄した。
●試料Cを、70uLの10mM Tris.HCl、20mM NaClで溶出した
【0323】
酵素を用いたアダプターへの10kbラムダCのライゲーション
●以下の表の試薬をサーモサイクラーで20℃で10分間インキュベートした。
【表10】

●次に、反応混合物(1倍500ulアリコート)を、200ulの20%SPRIビ
ーズでSPRI精製し、750ulの洗浄緩衝液1で洗浄し、125ulの溶出緩衝液1
で溶出させた。最終DNA配列(配列番号24)を、DNAにハイブリダイズさせた。こ
の試料は、試料Dとして既知であった。
【0324】
【表11】
【0325】
電気生理学実験
緩衝液(25mM Kリン酸緩衝液、150mMフェロシアン化カリウム(II)、1
50mMフェリシアン化カリウム(III)、pH8.0)中でブロックコポリマーに挿
入された単一ライセニンナノポアから電気的測定を得た。ブロックコポリマーに挿入され
た単一ポアを達成した後に、次いで、緩衝液(2mL、25mM Kリン酸緩衝液、15
0mMフェロシアン化カリウム(II)、150mMフェリシアン化カリウム(III)
、pH8.0)をシステムに通して流して任意の余剰ライセニンナノポアを除去した。次
いで、150uLの500mMKCl、25mM Kリン酸、pH8.0をシステムに通
して流した。10分後、さらに150μLの500mMKCl、25mM Kリン酸塩、
pH8.0をシステムに通して流し、次いでT4 Dda-E94C/C109A/C1
36A/A360C、DNA、燃料(MgCl2、ATP)プレミックス(合計150μ
L、試料D)を、単一ナノポア実験システムに流した。実験は180mVで行い、ヘリカ
ーゼ制御DNA移動を監視した。
【0326】
結果
膜貫通ポアの領域に対する変異の影響を判定するために、いくつかの異なるナノポアを
調査した。調査した変異体ポアを、それらを比較したベースラインナノポアと共に以下に
列挙する(ベースラインポア1-4)。改善されたナノポアの1)改善されたナノポアで
はベースラインより低くなるであろうシグナル(ノイズが全ての鎖にわたって計算された
鎖の全ての事象の標準偏差に等しい)の平均ノイズ、2)シグナル内の電流レベルの広が
りの尺度であり、改善されたナノポアではベースラインよりも高くなるであろう平均電流
範囲、3)全ての鎖中のノイズ(シグナルの平均ノイズによって分割された平均電流範囲
)に対するシグナルであり、改善されたナノポアではベースラインよりも高くなるであろ
う、表中に引用されるノイズに対する平均シグナル、4)改善されたナノポアではベース
ラインより高くなり得るであろうDNAの捕捉率、及び5)改善されたナノポアではベー
スラインの読取りヘッドのサイズに応じて増加または減少し得る読取りヘッドサイズ、を
同定するために、いくつかの異なるパラメータを調べた。
【0327】
以下の各表は、対応するベースラインナノポア、表6=変異体1、表7=変異体2、表
8=変異体3、及び後に変異したポアと比較された表9=変異体10の関連データを含む

ライセニン変異体1=ライセニン-(E84Q/E85K/E92Q/E97S/D12
6G)9(変異E84Q/E85K/E92Q/E97S/D126Gを有する配列番号
2)。(ベースライン1)
ライセニン変異体2=ライセニン-(E84Q/E85K/E92Q/E94D/E97
S/D126G)9(変異E84Q/E85K/E92Q/E94D/E97S/D12
6Gを有する配列番号2)。(ベースライン2)
ライセニン変異体3=ライセニン-(E84Q/E85K/E92Q/E94Q/E97
S/D126G)9(変異E84Q/E85K/E92Q/E94Q/E97S/D12
6Gを有する配列番号2)。(ベースライン3)
ライセニン変異体4=ライセニン-(E84Q/E85K/S89Q/E92Q/E97
S/D126G)9(変異E84Q/E85K/S89Q/E92Q/E97S/D12
6Gを有する配列番号2)。
ライセニン変異体5=ライセニン-(E84Q/E85K/T91S/E92Q/E97
S/D126G)9(変異E84Q/E85K/T91S/E92Q/E97S/D12
6Gを有する配列番号2)。
ライセニン変異体6=ライセニン-(E84Q/E85K/E92Q/E97S/S98
Q/D126G)9(変異E84Q/E85K/E92Q/E97S/S98Q/D12
6Gを有する配列番号2)。
ライセニン変異体7=ライセニン-(E84Q/E85K/E92Q/E97S/V10
0S/D126G)9(変異E84Q/E85K/E92Q/E97S/V100S/D
126Gを有する配列番号2)。
ライセニン変異体8=ライセニン-(E84Q/E85K/E92Q/E94D/E97
S/S80K/D126G)9(変異E84Q/E85K/E92Q/E94D/E97
S/S80K/D126Gを有する配列番号2)。
ライセニン変異体9=ライセニン-(E84Q/E85K/E92Q/E94D/E97
S/T106R/D126G)9(変異E84Q/E85K/E92Q/E94D/E9
7S/T106R/D126Gを有する配列番号2)。
ライセニン変異体10=ライセニン-(E84Q/E85K/E92Q/E94D/E9
7S/T106K/D126G)9(変異E84Q/E85K/E92Q/E94D/E
97S/T106K/D126Gを有する配列番号2)。(ベースライン4)
ライセニン変異体11=ライセニン-(E84Q/E85K/E92Q/E94D/E9
7S/T104R/D126G)9(変異E84Q/E85K/E92Q/E94D/E
97S/T104R/D126Gを有する配列番号2)。
ライセニン変異体12=ライセニン-(E84Q/E85K/E92Q/E94D/E9
7S/T104K/D126G)9(変異E84Q/E85K/E92Q/E94D/E
97S/T104K/D126Gを有する配列番号2)。
ライセニン変異体13=ライセニン-(S78N/E84Q/E85K/E92Q/E9
4D/E97S/D126G)9(変異S78N/E84Q/E85K/E92Q/E9
4D/E97S/D126Gを有する配列番号2)。
ライセニン変異体14=ライセニン-(S82N/E84Q/E85K/E92Q/E9
4D/E97S/D126G)9(変異S82N/E84Q/E85K/E92Q/E9
4D/E97S/D126Gを有する配列番号2)。
ライセニン変異体15=ライセニン-(E76N/E84Q/E85K/E92Q/E9
4Q/E97S/D126G)9(変異E76N/E84Q/E85K/E92Q/E9
4Q/E97S/D126Gを有する配列番号2)。
ライセニン変異体16=ライセニン-(E76S/E84Q/E85K/E92Q/E9
4Q/E97S/D126G)9(変異E76S/E84Q/E85K/E92Q/E9
4Q/E97S/D126Gを有する配列番号2)。
ライセニン変異体17=ライセニン-(E84Q/E85K/E92Q/E94Q/Y9
6D/D97S/T106K/D126G)9(変異E84Q/E85K/E92Q/E
94Q/Y96D/D97S/T106K/D126Gを有する配列番号2)。
ライセニン変異体18=ライセニン-(K45D/E84Q/E85K/E92Q/E9
4K/D97S/T106K/D126G)9(変異K45D/E84Q/E85K/E
92Q/E94K/D97S/T106K/D126Gを有する配列番号2)。
ライセニン変異体19=ライセニン-(K45R/E84Q/E85K/E92Q/E9
4D/D97S/T106K/D126G)9(変異K45R/E84Q/E85K/E
92Q/E94D/D97S/T106K/D126Gを有する配列番号2)。
ライセニン変異体20=ライセニン-(D35N/E84Q/E85K/E92Q/E9
4D/D97S/T106K/D126G)9(変異D35N/E84Q/E85K/E
92Q/E94D/D97S/T106K/D126Gを有する配列番号2)。
ライセニン変異体21=ライセニン-(K37N/E84Q/E85K/E92Q/E9
4D/D97S/T106K/D126G)9(変異K37N/E84Q/E85K/E
92Q/E94D/D97S/T106K/D126Gを有する配列番号2)。
ライセニン変異体22=ライセニン-(K37S/E84Q/E85K/E92Q/E9
4D/D97S/T106K/D126G)9(変異K37S/E84Q/E85K/E
92Q/E94D/D97S/T106K/D126Gを有する配列番号2)。
ライセニン変異体23=ライセニン-(E84Q/E85K/E92D/E94Q/D9
7S/T106K/D126G)9(変異E84Q/E85K/E92D/E94Q/D
97S/T106K/D126Gを有する配列番号2)。
ライセニン変異体24=ライセニン-(E84Q/E85K/E92E/E94Q/D9
7S/T106K/D126G)9(変異E84Q/E85K/E92E/E94Q/D
97S/T106K/D126Gを有する配列番号2)。
ライセニン変異体25=ライセニン-(K37S/E84Q/E85K/E92Q/E9
4D/D97S/T104K/T106K/D126G)9(変異K37S/E84Q/
E85K/E92Q/E94D/D97S/T104K/T106K/D126Gを有す
る配列番号2)。
ライセニン変異体26=ライセニン-(E84Q/E85K/M90I/E92Q/E9
4D/E97S/T106K/D126G)9(変異E84Q/E85K/M90I/E
92Q/E94D/E97S/T106K/D126Gを有する配列番号2)。
ライセニン変異体27=ライセニン-(K45T/V47K/E84Q/E85K/E9
2Q/E94D/E97S/T106K/D126G)9(変異K45T/V47K/E
84Q/E85K/E92Q/E94D/E97S/T106K/D126Gを有する配
列番号2)。
ライセニン変異体28=ライセニン-(T51K/E84Q/E85K/E92Q/E9
4D/E97S/T106K/D126G)9(変異T51K/E84Q/E85K/E
92Q/E94D/E97S/T106K/D126Gを有する配列番号2)。
ライセニン変異体29=ライセニン-(K45Y/S49K/E84Q/E85K/E9
2Q/E94D/E97S/T106K/D126G)9(変異K45Y/S49K/E
84Q/E85K/E92Q/E94D/E97S/T106K/D126Gを有する配
列番号2)。
ライセニン変異体30=ライセニン-(S49L/E84Q/E85K/E92Q/E9
4D/E97S/T106K/D126G)9(変異S49L/E84Q/E85K/E
92Q/E94D/E97S/T106K/D126Gを有する配列番号2)。
ライセニン変異体31=ライセニン-(E84Q/E85K/V88I/M90A/E9
2Q/E94D/E97S/T106K/D126G)9(変異E84Q/E85K/V
88I/M90A/E92Q/E94D/E97S/T106K/D126Gを有する配
列番号2)。
ライセニン変異体32=ライセニン-(K45N/S49K/E84Q/E85K/E9
2D/E94N/E97S/T106K/D126G)9(変異K45N/S49K/E
84Q/E85K/E92D/E94N/E97S/T106K/D126Gを有する配
列番号2)。
ライセニン変異体33=ライセニン-(K45N/V47K/E84Q/E85K/E9
2D/E94N/E97S/T106K/D126G)9(変異K45N/V47K/E
84Q/E85K/E92D/E94N/E97S/T106K/D126Gを有する配
列番号2)。
【表12】
【表13】
【表14】
【表15】
【0328】
読取りヘッド分析
ライセニン変異体1及び10について、全ての可能な9merポリヌクレオチドの予想
されるイオン電流分布のモデルを得た。モデルは、各9merの電流分布の平均及び標準
偏差を含み得る。
【0329】
ライセニン変異体1及び10について、得られたモデルの構造を調べ、比較した。図(
図1及び図2を参照)は、そのような比較の実施例を提供する。各モデル(すなわち、ラ
イセニン1または10)の場合において、形態A、x_2、x_3、x_4、x_5、x
_6、x_7、x_8、x_9、ここで、x_{i}は{A、C、G、T}から選択され
る任意のポリヌクレオチド)の全ての9merへの分布の平均を組み合わせて、平均に適
用される組み合わせは中央値をとる。この中央値の平均化は、位置1、及び全ての位置に
ついての全てのヌクレオチド{A、C、G、T}について、9merの9個の位置のいず
れかに存在する際、各ヌクレオチドの中央効果をコードする36個の中央値を得るように
繰り返される。
【0330】
図1(ライセニン変異体1)及び2(ライセニン変異体2)は、これらの中央値を2つ
の異なるポアについてプロットする。図1及び図2のプロットは、読取りヘッド内の各位
置における全ての塩基間の識別のレベルを示す。識別が大きいほど、その特定の位置にお
ける電流寄与レベル間の差が大きくなる。位置が読取りヘッドの一部でない場合、その位
置における電流寄与は4つの塩基全てについて同様であるだろう。図2(ライセニン変異
体10)は、読取りヘッドの6位~8位における4つの塩基全てについて同様の電流寄与
を示す。図1(ライセニン変異体1)は、読取りヘッドでの任意の位置における4つの塩
基全てについて同様の電流寄与を示さない。したがって、ライセニン変異体10は、ライ
セニン変異体1よりも短い読取りヘッドを有する。より短い読取りヘッドは、より少ない
塩基が、改善されたベースコール精度をもたらすことができる任意の時間におけるシグナ
ルに寄与するため、有利であり得る。
【0331】
実施例2
この実施例は、バレル/チャネルの減少した直径を有する化学的に修飾された形成され
たポアを生成するために使用されるプロトコルを説明する。
【0332】
モノマーライセニン試料(約10μモル)をまず還元して、システイン残基の最大反応
性を確実にし、したがって、高効率結合反応を確実にした。モノマーライセニン試料(約
10μモル)を、1mMジチオスレイトール(DTT)と共に5~15分間インキュベー
トした。次いで、細胞破片及び懸濁した凝集物を、20,000rpmで10分間の遠心
分離を通してペレット化した。次いで、可溶性画分を回収し、7Kd分子量カットのZe
baスピンカラム(ThermoFisher)を使用して、1mMトリス、1mMED
TA、pH8.0に緩衝液交換した。
【0333】
結合されるべき分子(例えば、2-ヨード-N-(2,2,2-トリフルオロエチル)
アセトアミド)を、好適な溶媒、典型的にはDMSO中に100mMの濃度で溶解した。
これを、1mMの最終濃度まで、緩衝液交換したライセニンモノマー試料に添加した。結
果として得られた溶液を30℃で2時間インキュベートした。次いで、修飾された試料(
100uL)を、20μLの、Encapsula Nanosciences(ホスフ
ァチジルセリン(0.325mg/ml):POPE(0.55mg/ml):コレステ
ロール(0.45mg/ml):Soy PC(0.9mg/ml):スフィンゴミエリ
ン(0.275mg/ml))からの5脂質混合物を添加することによって、オリゴマー
形成させた。試料を30℃で60分間インキュベートした。次いで、試料をSDS-PA
GEに供し、国際出願番号PCT/GB2013/050667(WO2013/153
359として公開)に記載されているようにゲルから精製した。
【0334】
実施例3
この実施例は、化学的に修飾された形成されたライセニンポアを、バレル/チャネルの
減少した直径と比較した(ライセニン-(E84Q/E85K/E92Q/E94D/E
97S/T106K/D126G/C272A/C283A)9(変異E84Q/E85
K/E92Q/E94D/E97S/T106K/D126G/C272A/C283A
を有する配列番号2)と共に、E94C(変異E84Q/E85K/E92Q/E94C
/E97S/T106K/D126G/C272A/C283Aを有する配列番号2)を
介して結合された2-ヨード-N-(2,2,2-トリフルオロエチル)アセトアミドを
有するライセニン-(E84Q/E85K/E92Q/E94C/E97S/T106K
/D126G/C272A/C283A)9。
【0335】
材料及び方法
DNA構造体を、実施例1に説明されるように調製した。電気生理学実験を、実施例1
に説明されるように実施した。
【0336】
結果
電気生理学実験は、化学的に修飾されたポア(E94C(変異E84Q/E85K/E
92Q/E94C/E97S/T106K/D126G/C272A/C283Aを有す
る配列番号2)を介して結合された2-ヨード-N-(2,2,2-トリフルオロエチル
)アセトアミドを有する(ライセニン-(E84Q/E85K/E92Q/E94C/E
97S/T106K/D126G/C272A/C283A)9が、12pAの中央値範
囲を示したライセニン-(E84Q/E85K/E92Q/E94D/E97S/T10
6K/D126G/C272A/C283A)9より大きかった21pAの中央値範囲を
提示したことを示した。この中央値範囲の増加は、kmersの分解能のためのより大き
な電流スペースを提供した。
【0337】
図3(ライセニン-(E84Q/E85K/E92Q/E94D/E97S/T106
K/D126G/C272A/C283A)9)及び図4(E94C(変異E84Q/E
85K/E92Q/E94C/E97S/T106K/D126G/C272A/C28
3Aを有する配列番号2)を介して結合された2-ヨード-N-(2,2,2-トリフル
オロエチル)アセトアミドを有する、(ライセニン-(E84Q/E85K/E92Q/
E94C/E97S/T106K/D126G/C272A/C283A)9は、実施例
1に説明されるように中央値のプロットを示した。図4図3と比較すると、異なる位置
における異なる塩基のシグナルに対する相対的な寄与は変化されており、図4の極端(7
位~8位)における読取りヘッド位置は、シグナルに対するそれらの寄与を意味する大幅
に少ない識別が大幅に減少されたことを示し、それによって、所定の瞬間にアッセイされ
ているKmerの長さはより短かった。このより短い読取りヘッドは、より少ない塩基が
、改善されたベースコール精度をもたらすことができる任意の時間におけるシグナルに寄
与するため、有利であり得る。
【0338】
実施例3に説明されるものと同様の実験を、E92C(変異E84Q/E85S/E9
2C/E94D/E97S/T106K/D126G/C272A/C283Aを有する
配列番号2を介して結合された2-ヨード-N-(2-フェニルエチル)アセトアミドを
有するライセニン-(E84Q/E85S/E92C/E94D/E97S/T106K
/D126G/C272A/C283A)9及びE92C(変異E84Q/E85S/E
92C/E94D/E97S/T106K/D126G/C272A/C283Aを有す
る配列番号2)を介して結合された1-ベンジル-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-
2,5-ジオンを有するライセニン-(E84Q/E85S/E92C/E94D/E9
7S/T106K/D126G/C272A/C283A)上で実施した。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【配列表】
2024138262000001.app
【手続補正書】
【提出日】2024-07-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号2に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するバリアントを含む変異体ライセニンモノマーであって、前記バリアントが、ポアを形成することが可能であり、配列番号2のS49において修飾を含む、変異体ライセニンモノマー。
【請求項2】
S49における前記修飾が、その位置において正電荷を増加させる、請求項1に記載の変異体モノマー。
【請求項3】
S49における前記修飾が、S49K/L/Rである、請求項1または2に記載の変異体モノマー。
【請求項4】
S49における前記修飾が、S49K/Lである、請求項3に記載の変異体モノマー。
【請求項5】
前記バリアントが、E94および/またはT106の位置における修飾をさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の変異体モノマー。
【請求項6】
前記バリアントが、以下の位置、K37、G43、K45、V47、T51、H83、V88、T91、T93、V95、Y96、S98、K99、V100、I101、P108、P109、T110、S111、K112及びT114のうちの1つ以上における修飾をさらに含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の変異体モノマー。
【請求項7】
前記バリアントが、以下の置換
D35N/S;
K37N/W/S/Q;
G43K;
K45D/R/N/Q/T/Y;
V47K/S/N;
S49K/L;
T51K;
S74K/R;
E76D/N;
S78R/K/N/Q;
S80K/R/N/Q;
S82K/R/N/Q;
H83S/K;
E84R/K/N/A;
E85N;
S86K/Q;
V88I/T;
S89K;
M90K/I/A;
T91KまたはT91S;
E92D/S;
T93K;
E94D/Q/G/A/K/R/S/N;
V95S;
Y96DまたはY96S;
S98KまたはS98Q;
K99Q/LまたはK99S;
V100S;
I101S
E102N/Q/D/S;
T104R/K/Q;
T106R/K/Q;
P108K/R;
P109K;
T110K/R;
S111K;
K112S;
T114K;
R115S;
Q117S;および
N119S
のうちの1つ以上をさらに含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の変異体モノマー。
【請求項8】
前記バリアントが、S86Kの置換を含む、請求項7に記載の変異体モノマー。
【請求項9】
前記バリアントが、E92Dの置換を含む、請求項7に記載の変異体モノマー。
【請求項10】
前記バリアントが、E94D/Q/K/Nの置換を含む、請求項7に記載の変異体モノマー。
【請求項11】
前記バリアントが、以下の位置の組み合わせ
K45/S49/E94/T106;
S49/E94/T106;および
K45/S49/E94/E92/T106
のうちの1つ以上における修飾をさらに含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の変異体モノマー
【請求項12】
前記バリアントが、K45Y/S49K/E94D/T106Kの修飾を含む、請求項11に記載の変異体モノマー。
【請求項13】
前記バリアントが、S49L/E94D/T106Kの修飾を含む、請求項11に記載の変異体モノマー。
【請求項14】
前記バリアントが、K45N/S49K/E94N/E92D/T106Kの修飾を含む、請求項11に記載の変異体モノマー。
【請求項15】
前記モノマーが、任意の数及び任意の組み合わせの、請求項1~14のいずれか1項に定義される修飾及び/または置換を含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の変異体ライセニンモノマー。
【請求項16】
記バリアントにおいて、(a)配列番号2の34位~70位のアミノ酸に対応するアミノ酸のうちの2、4、6、8、10、12、14、16、18、または20個が欠失されており、(b)配列番号2の71位~107位のアミノ酸に対応するアミノ酸のうちの2、4、6、8、10、12、14、16、18、または20個が欠失されている、請求項1~15のいずれか一項に記載の変異体ライセニンモノマー。
【請求項17】
配列番号2中の以下のアミノ酸:N46/V47/T91/T92
に対応するアミノ酸が欠失されている、請求項16に記載の変異体モノマー。
【請求項18】
前記バリアントが、
配列番号2の以下の位置、(a)E84、E85、E92、E97、及びD126、(b)E85、E97、及びD126、もしくは(c)E84及びE92のうちの1つ以上における置換、または
E84Q/E85K/E92Q/E97S/D126Gのうちの1つ以上における置換、をさらに含む、請求項1~17のいずれか1項に記載の変異体モノマー。
【請求項19】
前記バリアントが、E84Q/E85K/E92Q/E97S/D126Gのすべての置換を含む、請求項18に記載の変異体モノマー。
【請求項20】
前記変異体モノマーが、化学修飾されている、請求項1~19のいずれか1項に記載の変異体モノマー。
【請求項21】
ライセニンに由来する2つ以上の共有結合したモノマーを含む構造体であって、前記モノマーのうちの少なくとも1つが請求項1~20のいずれか1項に定義される変異体ライセニンモノマーである、構造体。
【請求項22】
請求項1~20のいずれか1項に記載の変異体ライセニンモノマーまたは請求項21に記載の構造体をコードする、ポリヌクレオチド。
【請求項23】
請求項1~20のいずれか1項に記載の少なくとも1つの変異体ライセニンモノマー及び/または請求項21に記載の少なくとも1つの構造体を含む、ポア。
【請求項24】
標的分析物を特徴付ける方法であって、
(a)前記標的分析物を、請求項23に記載のポアと、前記標的分析物が前記ポアを通って移動するように接触させることと、
(b)前記分析物が前記ポアに対して移動する間に、1つ以上の測定値であって、前記標的分析物の1つ以上の特徴を示す、測定値をとり、それによって前記標的分析物を特徴付けることと、を含む、方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0338
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0338】
実施例3に説明されるものと同様の実験を、E92C(変異E84Q/E85S/E92C/E94D/E97S/T106K/D126G/C272A/C283Aを有する配列番号2を介して結合された2-ヨード-N-(2-フェニルエチル)アセトアミドを有するライセニン-(E84Q/E85S/E92C/E94D/E97S/T106K/D126G/C272A/C283A)9及びE92C(変異E84Q/E85S/E92C/E94D/E97S/T106K/D126G/C272A/C283Aを有する配列番号2)を介して結合された1-ベンジル-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-2,5-ジオンを有するライセニン-(E84Q/E85S/E92C/E94D/E97S/T106K/D126G/C272A/C283A)上で実施した。

本願明細書に記載の発明は、以下の態様を包含し得る。
[1]
配列番号2に示されるアミノ酸配列のバリアントを含む変異体ライセニンモノマーであって、前記バリアントが、以下の位置、K37、G43、K45、V47、S49、T51、H83、V88、T91、T93、V95、Y96、S98、K99、V100、I101、P108、P109、T110、S111、K112、及びT114のうちの1つ以上における修飾を含む、変異体ライセニンモノマー。
[2]
前記バリアントが、以下の位置、T91、V95、Y96、S98、K99、V100、I101、及びK112のうちの1つ以上における修飾を含む、上記[1]に記載の変異体モノマー。
[3]
前記修飾が、セリン(S)またはグルタミン(Q)による置換である、上記[2]に記載の変異体モノマー。
[4]
前記バリアントが、以下の置換、T91S、V95S、Y96S、S98Q、K99S、V100S、I101S、及びK112Sのうちの1つ以上を含む、上記[2]または[3]に記載の変異体モノマー。
[5]
前記バリアントが、以下の位置、K37、G43、K45、V47、S49、T51、H83、V88、T91、T93、Y96、S98、K99、P108、P109、T110、S111、及びT114のうちの1つ以上における修飾を含む、上記[1]に記載の変異体モノマー。
[6]
前記修飾が、アスパラギン(N)、トリプトファン(W)、セリン(S)、グルタミン(Q)、リジン(K)、アスパラギン酸(D)、アルギニン(R)、トレオニン(T)、チロシン(Y)、ロイシン(L)、またはイソロイシン(I)による置換である、上記[5]に記載の変異体モノマー。
[7]
前記バリアントが、以下の置換、K37N/W/S/Q、G43K、K45D/R/N/Q/T/Y、V47K/S/N、S49K/L、T51K、H83S/K、V88I/T、T91K、T93K、Y96D、S98K、K99Q/L、P108K/R、P109K、T110K/R、S111K、及びT114Kのうちの1つ以上を含む、上記[5]または[6]に記載の変異体モノマー。
[8]
前記バリアントが、以下の位置の組み合わせのうちの1つ以上における修飾を含む、上記[5]~[7]のいずれか1項に記載の変異体モノマー:
【表16】


[9]
前記バリアントが、以下の置換の組み合わせのうちの1つ以上を含む、上記[8]に記載の変異体モノマー:
【表17】


[10]
配列番号2に示されるアミノ酸配列のバリアントを含む変異体ライセニンモノマーであって、前記バリアントが、以下の置換のうちの1つ以上を含む、変異体ライセニンモノマー:
D35N/S、
S74K/R、
E76D/N、
S78R/K/N/Q、
S80K/R/N/Q、
S82K/R/N/Q、
E84R/K/N/A、
E85N、
S86K/Q、
S89K、
M90K/I/A、
E92D/S、
E94D/Q/G/A/K/R/S/N、
E102N/Q/D/S、
T104R/K/Q、
T106R/K/Q、
R115S、
Q117S、及び
N119S。
[11]
前記バリアントが、置換E94D/Q/G/A/K/R/S、S86Q、及びE92Sのうちの1つ以上を含む、上記[10]に記載の変異体モノマー。
[12]
前記バリアントが、以下の置換のうちの1つ以上を含む、上記[10]に記載の変異体モノマー:
D35N/S、
S74K/R、
E76D/N、
S78R/K/N/Q、
S80K/R/N/Q、
S82K/R/N/Q、
E84R/K/N/A、
E85N、
S86K、
S89K、
M90K/I/A、
E92D、
E94D/Q/K/N、
E102N/Q/D/S、
T104R/K/Q、
T106R/K/Q、
R115S、
Q117S、及び
N119S。
[13]
前記バリアントが、以下の置換の組み合わせのうちの1つ以上を含む、上記[12]に記載の変異体モノマー:
【表18】



[14]
配列番号2に示されるアミノ酸配列のバリアントを含む変異体ライセニンモノマーであって、前記バリアントが、以下の位置の組み合わせのうちの1つ以上における変異を含む、変異体ライセニンモノマー:
【表19】


[15]
前記バリアントが、以下の置換の組み合わせのうちの1つ以上を含む、上記[14]に記載の変異体モノマー:
【表20】



[16]
配列番号2に示されるアミノ酸配列のバリアントを含む変異体ライセニンモノマーであって、前記バリアントが、以下の置換の対のうちの1つ以上を含む、変異体ライセニンモノマー:
E84R/E94D、
E84K/E94D、
E84N/E94D、
E84A/E94Q、
E84K/E94Q、及び
E94Q/D121S。
[17]
前記モノマーが、任意の数及び任意の組み合わせの、上記[1]~[16]のいずれか1項に定義される修飾及び/または置換を含む、上記[1]~[16]のいずれか1項に記載の変異体ライセニンモノマー。
[18]
配列番号2に示される配列のバリアントを含む変異体ライセニンモノマーであって、前記バリアントにおいて、(a)配列番号2の34位~70位のアミノ酸に対応するアミノ酸のうちの2、4、6、8、10、12、14、16、18、または20個が欠失されており、(b)配列番号2の71位~107位のアミノ酸に対応するアミノ酸のうちの2、4、6、8、10、12、14、16、18、または20個が欠失されている、変異体ライセニンモノマー。
[19]
(a)及び(b)において同じ数のアミノ酸が欠失されている、上記[18]に記載の変異体モノマー。
[20]
欠失されている前記アミノ酸の前記位置が、表1もしくは2の1行または表1及び/もしくは2の2行以上に示されている、上記[18]または[19]に記載の変異体。
[21]
配列番号2中の以下のアミノ酸に対応するアミノ酸が欠失されている、上記[18]~[20]のいずれか1項に記載の変異体モノマー:
(i)N46/V47/T91/T92、または
(ii)N48/S49/T91/T92。
[22]
前記バリアントが、適切な場合、上記[1]~[17]のいずれか1項に定義される前記修飾及び/または置換のうちのいずれかをさらに含む、上記[18]~[21]のいずれか1項に記載の変異体モノマー。
[23]
前記バリアントが、
配列番号2の以下の位置、(a)E84、E85、E92、E97、及びD126、(b)E85、E97、及びD126、もしくは(c)E84及びE92のうちの1つ以上における置換、または
E84Q/E85K/E92Q/E97S/D126Gのうちの1つ以上、もしくは、適切な場合、E84Q/E85K/E92Q/E97S/D126Gの全てにおける置換、をさらに含む、上記[1]~[22]のいずれか1項に記載の変異体モノマー。
[24]
前記バリアントが、以下の置換の組み合わせのうちの1つを含む、上記[23]に記載の変異体モノマー:
E84Q/E85K/E92Q/E94D/E97S/D126G、
E84Q/E85K/E92Q/E94Q/E97S/D126G、または
E84Q/E85K/E92Q/E94D/E97S/T106K/D126G。
[25]
ポアを形成することが可能である、上記[1]~[24]のいずれか1項に記載の変異体ライセニンモノマー。
[26]
前記バリアントが、配列番号2に示される配列と少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を含む、上記[1]に記載の変異体ライセニンモノマー。
[27]
ライセニンに由来する2つ以上の共有結合したモノマーを含む構造体であって、前記モノマーのうちの少なくとも1つが上記[1]~[26]のいずれか1項に定義される変異体ライセニンモノマーである、構造体。
[28]
前記2つ以上のモノマーが、同じであるか、または異なる、上記[27]に記載の構造体。
[29]
前記2つ以上のモノマーが、遺伝的に融合されている、上記[27]または[28]に記載の構造体。
[30]
上記[1]~[26]のいずれか1項に記載の変異体ライセニンモノマーまたは上記[27]に記載の構造体をコードする、ポリヌクレオチド。
[31]
上記[1]~[26]のいずれか1項に記載の少なくとも1つの変異体ライセニンモノマー及び/または上記[27]~[29]のいずれか1項に記載の少なくとも1つの構造体を含む、ポア。
[32]
上記[1]~[26]のいずれか1項に記載の6~12個の変異体ライセニンモノマーを含むホモオリゴマーポアである、上記[31]に記載のポア。
[33]
上記[1]~[26]のいずれか1項に記載の少なくとも1つの変異体ライセニンモノマーを含むヘテロオリゴマーポアである、上記[31]に記載のポア。
[34]
標的分析物を特徴付ける方法であって、
(a)前記標的分析物を、上記[31]~[33]のいずれか1項に記載のポアと、前記標的分析物が前記ポアを通って移動するように接触させることと、
(b)前記分析物が前記ポアに対して移動する間に、1つ以上の測定値であって、前記標的分析物の1つ以上の特徴を示す、測定値をとり、それによって前記標的分析物を特徴付けることと、を含む、方法。
[35]
(i)前記ポアが、チャンバを2つの区画に分離する膜内に存在し、各区画が水溶液を含み、
(ii)ステップ(a)が、1つの区画に前記分析物を提供することを含み、
(iii)ステップ(b)が、前記膜にわたって電位差を印加することを含み、及び/または
(iv)ステップ(c)が、前記膜にわたる電流を測定することを含む、上記[34]に記載の方法。
[36]
前記標的分析物が、金属イオン、無機塩、ポリマー、アミノ酸、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、染料、漂白剤、医薬品、診断薬、レクリエーショナルドラッグ、爆発物、または環境汚染物質である、上記[34]または[35]に記載の方法。
[37]
前記標的分析物が、標的ポリヌクレオチドである、上記[36]に記載の方法。
[38]
ステップ(a)が、前記標的ポリヌクレオチドを前記ポア及びポリヌクレオチド結合タンパク質と接触させることを含み、前記タンパク質が前記ポアを通る前記標的ポリヌクレオチドの移動を制御する、上記[37]に記載の方法。
[39]
前記標的ポリヌクレオチドを特徴付けることが、前記標的ポリヌクレオチドの配列を推定することまたは前記標的ポリヌクレオチドをシークエンシングすることを含む、上記[37]または[38]に記載の方法。
[40]
標的ポリヌクレオチドを特徴付けるためのセンサを形成する方法であって、上記[31]~[33]のいずれか1項に記載のポアとポリヌクレオチド結合タンパク質との間で複合体を形成し、それにより前記標的ポリヌクレオチドを特徴付けるためのセンサを形成することを含む、方法。
[41]
前記複合体が、(a)前記標的ポリヌクレオチドの存在下で前記ポア及び前記ポリヌクレオチド結合タンパク質を接触させることと、(a)前記ポアにわたって電位を印加することと、によって形成される、上記[40]に記載の方法。
[42]
前記電位が、電圧電位または化学的電位である、上記[41]に記載の方法。
[43]
前記複合体が、前記ポアを前記ポリヌクレオチド結合タンパク質に共有結合させることによって形成される、上記[40]に記載の方法。
[44]
標的ポリヌクレオチドを特徴付けるためのセンサであって、上記[31]~[33]のいずれか1項に記載のポアとポリヌクレオチド結合タンパク質との間の複合体を含む、センサ。
[45]
標的分析物を特徴付けるための、上記[31]~[33]のいずれか1項に記載のポアの使用。
[46]
(a)上記[31]~[33]のいずれか1項に記載のポアと、(b)膜とを含む、標的ポリヌクレオチドを特徴付けるためのキット。
[47]
前記キットが、両親媒性層を含むチップをさらに含む、上記[46]に記載のキット。
[48]
(a)上記[31]~[33]のいずれか1項に記載の複数のポアと、(b)複数のポリヌクレオチド結合タンパク質とを含む、試料中の標的ポリヌクレオチドを特徴付けるための装置。
[49]
配列番号2に示される配列を含むライセニンモノマーのポリヌクレオチドを特徴付ける能力を改善する方法であって、上記[1]~[26]のいずれか1項に定義される前記修飾及び/または置換のうちの1つ以上を行うことを含む、方法。
[50]
上記[27]~[30]のいずれか1項に記載の構造体を生成する方法であって、上記[1]~[26]のいずれか1項に記載の少なくとも1つの変異体ライセニンモノマーを、ライセニン由来の1つ以上のモノマーに共有結合させることを含む、方法。
[51]
上記[31]~[33]のいずれか1項に記載のポアを形成する方法であって、上記[1]~[26]のいずれか1項に記載の少なくとも1つの変異体モノマーまたは上記[27]~[30]のいずれか1項に記載の少なくとも1つの構造体を、十分な数の、上記[1]~[26]のいずれか1項に記載のモノマー、上記[27]~[30]のいずれか1項に記載の構造体、及び/またはライセニン由来のモノマーとオリゴマー形成させて、ポアを形成することを含む、方法。
【外国語明細書】