(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013827
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】多気筒エンジンユニット
(51)【国際特許分類】
F02D 45/00 20060101AFI20240125BHJP
F02D 43/00 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
F02D45/00 362
F02D45/00 368Z
F02D43/00 310Z
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022116207
(22)【出願日】2022-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001531
【氏名又は名称】弁理士法人タス・マイスター
(72)【発明者】
【氏名】平野 敦士
(72)【発明者】
【氏名】岩本 一輝
(72)【発明者】
【氏名】笠原 龍哉
(72)【発明者】
【氏名】干鯛 敦也
(72)【発明者】
【氏名】木下 久寿
【テーマコード(参考)】
3G384
【Fターム(参考)】
3G384AA07
3G384BA03
3G384DA36
3G384FA37Z
3G384FA57Z
3G384FA58Z
(57)【要約】
【課題】クランクシャフトの回転速度の変動を用いて空燃比の気筒間インバランスを検出する多気筒エンジンユニットにおいて、検出精度を向上させる。
【解決手段】多気筒エンジンユニット1において、制御装置14は、以下の(A)-(C)のいずれかの燃焼間隔において出現するクランクシャフト12の回転速度の変動を用いて複数の気筒11A,11Bにおける空燃比の気筒間インバランスを検出する。
(A)クランク角で360度以上、720度以下の燃焼間隔。
(B)クランク角で240度以上、720度以下の燃焼間隔。
(C)クランク角で240度以上となり、且つ、慣性トルクが低減されるように構成されたクロスプレーン型のクランクシャフトにおけるクランク角で240度以上、720度以下の燃焼間隔。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多気筒エンジンユニットは、
それぞれがピストンとともに燃焼室を形成する複数の気筒と、
前記燃焼室において燃料が燃焼することで回転するクランクシャフトと、
前記クランクシャフトが回転することで電力を生成する発電機と、
前記クランクシャフトの回転速度の変動を用いて前記複数の気筒における空燃比の気筒間インバランスを検出する制御装置と、を備え、
前記発電機は、
永久磁石を有し、前記クランクシャフトに前記クランクシャフトと同軸になるように固定され、前記クランクシャフトに対して固定された変速比で回転するロータと、
前記ロータが回転することで起電力が生じるコイルを有するステータと、を含み、
前記制御装置は、燃焼による前記クランクシャフトの回転速度の変動が出現する燃焼間隔のときの前記クランクシャフトの回転速度の変動を用いて前記複数の気筒における空燃比の気筒間インバランスを検出し、以下の(A)-(C)のいずれかを満足する。
(A)前記クランクシャフトの回転サイクルにおける少なくとも一つの燃焼間隔がクランク角で360度以上となるように構成された前記クランクシャフトにおけるクランク角で360度以上、720度以下の燃焼間隔において出現する前記回転速度の変動を用いて前記複数の気筒における空燃比の気筒間インバランスを検出する。
(B)前記クランクシャフトの回転サイクルにおける全ての燃焼間隔がクランク角で240度以上となるように構成された前記クランクシャフトにおけるクランク角で240度以上、720度以下の燃焼間隔において出現する前記回転速度の変動を用いて前記複数の気筒における空燃比の気筒間インバランスを検出する。
(C)前記クランクシャフトの回転サイクルにおける少なくとも一つの燃焼間隔がクランク角で240度以上となり、且つ、慣性トルクが低減されるように構成されたクロスプレーン型の前記クランクシャフトにおけるクランク角で240度以上、720度以下の燃焼間隔において出現する前記回転速度の変動を用いて前記複数の気筒における空燃比の気筒間インバランスを検出する。
【請求項2】
請求項1に記載の多気筒エンジンユニットであって、
前記制御装置は、
前記クランクシャフトの回転速度を得るように構成された回転速度取得部と、
前記回転速度取得部により得られる回転速度に基づいて、前記クランクシャフトの回転速度の変動に含まれる周期的なうねりを検出するように構成されたうねり検出部と、
前記クランクシャフトの回転速度から、前記うねり検出部により検出された前記周期的なうねりを除去するように構成されたうねり除去部と、を含み、
前記うねりは、クランク角で720度よりも長い角度周期を有し、
前記制御装置は、前記うねり除去部により前記周期的なうねりが除去された前記クランクシャフトの回転速度から算出された前記クランクシャフトの回転速度の変動を用いて前記複数の気筒における空燃比の気筒間インバランスを検出する。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の多気筒エンジンユニットであって、
前記制御装置が(A)を満足する場合、
前記複数の気筒は、360度以上、720度以下の前記燃焼間隔において前記クランクシャフトの最大回転速度を生じさせる燃焼を行う基準気筒と、前記基準気筒とは異なる対象気筒とを含み、
前記制御装置は、前記基準気筒における燃焼によって生じる前記クランクシャフトの最大回転速度と、前記対象気筒における燃焼によって生じる前記クランクシャフトの最大回転速度とに基づいて得られる前記クランクシャフトの回転速度の変動を用いて前記複数の気筒における空燃比の気筒間インバランスを検出し、
前記制御装置が(B)を満足する場合、
前記複数の気筒は、240度以上、720度以下の前記燃焼間隔において前記クランクシャフトの最大回転速度を生じさせる燃焼を行う任意に選択された基準気筒と、前記基準気筒とは異なり且つ任意に選択された対象気筒とを含み、
前記制御装置は、前記基準気筒における燃焼によって生じる前記クランクシャフトの最大回転速度と、前記対象気筒における燃焼によって生じる前記クランクシャフトの最大回転速度とに基づいて得られる前記クランクシャフトの回転速度の変動を用いて前記複数の気筒における空燃比の気筒間インバランスを検出し、
前記制御装置が(C)を満足する場合、
前記複数の気筒は、240度以上、720度以下の前記燃焼間隔において前記クランクシャフトの最大回転速度を生じさせる燃焼を行う基準気筒と、前記基準気筒とは異なり且つ任意に選択された対象気筒とを含み、
前記制御装置は、前記基準気筒における燃焼によって生じる前記クランクシャフトの最大回転速度と、前記対象気筒における燃焼によって生じる前記クランクシャフトの最大回転速度とに基づいて得られる前記クランクシャフトの回転速度の変動を用いて前記複数の気筒における空燃比の気筒間インバランスを検出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多気筒エンジンユニットに関する。より詳細には、本発明は、クランクシャフトの回転速度の変動を用いて複数の気筒における空燃比の気筒間インバランスを検出する多気筒エンジンユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
クランクシャフトの回転速度の変動を用いて複数の気筒における空燃比の気筒間インバランスを検出する装置は、例えば、特許文献1に開示される。この装置は、例えばクランクシャフトの回転速度の単位時間当たりの変化量を用いてクランクシャフトの回転速度の変動の不均一の程度を検出し、空燃比の気筒間インバランスを検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、クランクシャフトの回転速度の変動を用いて空燃比の気筒間インバランスを検出する多気筒エンジンユニットにおいて、検出精度を向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)本発明の実施形態に係る多気筒エンジンユニットは、それぞれがピストンとともに燃焼室を形成する複数の気筒と、燃焼室において燃料が燃焼することで回転するクランクシャフトと、クランクシャフトが回転することで電力を生成する発電機と、クランクシャフトの回転速度の変動を用いて複数の気筒における空燃比の気筒間インバランスを検出する制御装置と、を備える。発電機は、永久磁石を有し、クランクシャフトにクランクシャフトと同軸になるように固定され、クランクシャフトに対して固定された変速比で回転するロータと、ロータが回転することで起電力が生じるコイルを有するステータと、を含む。制御装置は、燃焼によるクランクシャフトの回転速度の変動が出現する燃焼間隔のときのクランクシャフトの回転速度の変動を用いて複数の気筒における空燃比の気筒間インバランスを検出し、以下の(A)-(C)のいずれかを満足する。
(A)クランクシャフトの回転サイクルにおける少なくとも一つの燃焼間隔がクランク角で360度以上となるように構成されたクランクシャフトにおけるクランク角で360度以上、720度以下の燃焼間隔において出現する回転速度の変動を用いて複数の気筒における空燃比の気筒間インバランスを検出する。
(B)クランクシャフトの回転サイクルにおける全ての燃焼間隔がクランク角で240度以上となるように構成されたクランクシャフトにおけるクランク角で240度以上、720度以下の燃焼間隔において出現する回転速度の変動を用いて複数の気筒における空燃比の気筒間インバランスを検出する。
(C)クランクシャフトの回転サイクルにおける少なくとも一つの燃焼間隔がクランク角で240度以上となり、且つ、慣性トルクが低減されるように構成されたクロスプレーン型のクランクシャフトにおけるクランク角で240度以上、720度以下の燃焼間隔において出現する回転速度の変動を用いて複数の気筒における空燃比の気筒間インバランスを検出する。
【0006】
一般に、多気筒エンジンユニットでは、複数の気筒において定められた順に燃料を燃焼させる。クランクシャフトの回転速度は、燃焼が行われた直後に最大となり、その後次の燃焼が行われるまで減速する。このように、クランクシャフトの回転速度は、増減を繰り返し、山と谷とが交互に現れるように変動する。
上記多気筒エンジンユニットにおいて、制御装置が上記(A)を満足する場合、ある燃焼から次の燃焼までにクランクシャフトは360度以上回転する。このようなクランクシャフトを含む多気筒エンジンユニットは、例えば、2気筒エンジンユニットである。この場合、多気筒エンジンユニットは、2つの気筒を備える。2気筒エンジンユニットは、例えば、等間隔燃焼型又は不等間隔燃焼型の2気筒エンジンユニットである。等間隔燃焼型の2気筒エンジンユニットは、例えば、クランク角で360度・360度の燃焼間隔を有する。不等間隔燃焼型の2気筒エンジンユニットは、例えば、クランク角で270度・450度の燃焼間隔を有する。不等間隔燃焼型の2気筒エンジンユニットは、クランク角で180度・540度の燃焼間隔を有していてもよい。制御装置は、この燃焼間隔が360度以上空く期間において回転速度の変動を用いた空燃比の気筒間インバランスを検出する。360度以上の燃焼間隔は、例えば4ストロークエンジンで言えば、クランクシャフトの回転サイクル(720度)における半分以上を占める長い期間である。そのため、クランクシャフトの回転速度の変動の山と谷とを明確に把握しやすい。したがって、クランクシャフトの回転速度の変動を用いて空燃比の気筒間インバランスを検出する多気筒エンジンユニットにおいて、検出精度を向上させることができる。
制御装置が上記(B)を満足する場合、ある燃焼から次の燃焼までにクランクシャフトは240度以上回転する。このようなクランクシャフトを含む多気筒エンジンユニットは、例えば、3気筒エンジンユニットである。この場合、多気筒エンジンユニットは、3つの気筒を備える。3気筒エンジンユニットは、例えば、等間隔燃焼型の3気筒エンジンユニットである。等間隔燃焼型の3気筒エンジンユニットは、例えば、クランク角で240度・240度・240度の燃焼間隔を有する。制御装置は、この燃焼間隔が240度以上空く期間において回転速度の変動を用いた空燃比の気筒間インバランスを検出する。240度以上の燃焼間隔は、例えば4ストロークエンジンで言えば、クランクシャフトの回転サイクルにおける1/3以上を占める長い期間である。そのため、クランクシャフトの回転速度の変動の山と谷とを明確に把握しやすい。したがって、クランクシャフトの回転速度の変動を用いて空燃比の気筒間インバランスを検出する多気筒エンジンユニットにおいて、検出精度を向上させることができる。
制御装置が上記(C)を満足する場合、クランクシャフトはクロスプレーン型である。このようなクランクシャフトを含む多気筒エンジンユニットは、例えば、4気筒エンジンユニットである。この場合、多気筒エンジンユニットは、4つの気筒を備える。4気筒エンジンユニットは、例えば、不等間隔燃焼型の4気筒エンジンユニットである。不等間隔燃焼型の4気筒エンジンユニットは、例えば、クランク角で270度・180度・90度・180度の燃焼間隔を有する。ここで、クランクシャフトの回転速度の変動は、主に、燃焼変動と、燃焼によって動かされたピストン、コンロッド、クランクシャフトが運動し続けることで発生するトルク(慣性トルクとも称される)とに依存する。クロスプレーン型のクランクシャフトは、クランクシャフトの軸方向視で、4つのクランクピンが90度ずつずれて配置されており、記号+のような形状を有している。このような構成のクロスプレーン型のクランクシャフトでは、各クランクピンに繋がる4つのピストンにおいて、180度ずれて配置されるピストン同士が互いに逆の動きをする。これにより、各ピストンによってクランクシャフトに発生する慣性トルクが、打ち消し合うように作用する。クロスプレーン型のクランクシャフトでは、各ピストンによってクランクシャフトに発生する慣性トルクが低減されるため、クランクシャフトの回転速度の変動を把握すれば、実質的に燃焼による回転速度の変動を把握することができる。また、ある燃焼から次の燃焼までにクロスプレーン型のクランクシャフトは240度以上回転する。制御装置は、この燃焼間隔が240度以上空く期間において回転速度の変動を用いた空燃比の気筒間インバランスを検出する。このように、制御装置は、燃焼による回転速度の変動をより正確に把握しつつ、クランクシャフトの回転速度の変動の山と谷とを明確に把握しやすい燃焼間隔が240度以上の期間において、空燃比の気筒間インバランスを検出する。したがって、クランクシャフトの回転速度の変動を用いて空燃比の気筒間インバランスを検出する多気筒エンジンユニットにおいて、検出精度を向上させることができる。
【0007】
(2)上記(1)の多気筒エンジンユニットにおいて、制御装置は、クランクシャフトの回転速度を得るように構成された回転速度取得部と、回転速度取得部により得られる回転速度に基づいて、クランクシャフトの回転速度の変動に含まれる周期的なうねりを検出するように構成されたうねり検出部と、クランクシャフトの回転速度から、うねり検出部により検出された周期的なうねりを除去するように構成されたうねり除去部と、を含んでいてもよい。この場合、うねりは、クランク角で720度よりも長い角度周期を有する。制御装置は、うねり除去部により周期的なうねりが除去されたクランクシャフトの回転速度から算出されたクランクシャフトの回転速度の変動を用いて複数の気筒における空燃比の気筒間インバランスを検出する。
【0008】
クランクシャフトの回転速度は、各気筒での燃焼以外の要因によっても変動する。例えば、クランクシャフトの回転速度は、車両が勾配路、悪路を走行したときに受ける負荷、車両の構造等の外的要因によって変動する。空燃比の気筒間インバランスの検出精度を向上させるには、これらの外的要因の影響を低減し、燃焼を要因とするクランクシャフトの回転速度の変動を把握しやすくすることが望ましい。上記(2)のエンジンユニットでは、制御装置は、クランク角で720度よりも長い角度周期を有するうねりが除去されたクランクシャフトの回転速度の変動を用いて複数の気筒における空燃比の気筒間インバランスを検出する。したがって、燃焼を要因とするクランクシャフトの回転速度の変動が把握しやすくなり、クランクシャフトの回転速度の変動を用いて空燃比の気筒間インバランスを検出する多気筒エンジンユニットにおいて、検出精度を向上させることができる。
【0009】
(3)上記(1)又は(2)の多気筒エンジンユニットにおいて、
制御装置が(A)を満足する場合、複数の気筒は、360度以上、720度以下の燃焼間隔においてクランクシャフトの最大回転速度を生じさせる燃焼を行う基準気筒と、基準気筒とは異なる対象気筒とを含んでいてもよい。この場合、制御装置は、基準気筒における燃焼によって生じるクランクシャフトの最大回転速度と、対象気筒における燃焼によって生じるクランクシャフトの最大回転速度とに基づいて得られるクランクシャフトの回転速度の変動を用いて複数の気筒における空燃比の気筒間インバランスを検出する。
制御装置が(B)を満足する場合、複数の気筒は、240度以上、720度以下の燃焼間隔においてクランクシャフトの最大回転速度を生じさせる燃焼を行う任意に選択された基準気筒と、基準気筒とは異なり且つ任意に選択された対象気筒とを含んでいてもよい。この場合、制御装置は、基準気筒における燃焼によって生じるクランクシャフトの最大回転速度と、対象気筒における燃焼によって生じるクランクシャフトの最大回転速度とに基づいて得られるクランクシャフトの回転速度の変動を用いて複数の気筒における空燃比の気筒間インバランスを検出する。
制御装置が(C)を満足する場合、複数の気筒は、240度以上、720度以下の燃焼間隔においてクランクシャフトの最大回転速度を生じさせる燃焼を行う基準気筒と、基準気筒とは異なり且つ任意に選択された対象気筒とを含んでいてもよい。この場合、制御装置は、基準気筒における燃焼によって生じるクランクシャフトの最大回転速度と、対象気筒における燃焼によって生じるクランクシャフトの最大回転速度とに基づいて得られるクランクシャフトの回転速度の変動を用いて複数の気筒における空燃比の気筒間インバランスを検出する。
【0010】
一般に、クランクシャフトの回転速度の変動を用いて空燃比の気筒間インバランスを検出するには、クランクシャフトの回転サイクル間における回転速度の変動を比較する。例えば、4ストロークエンジンの場合、あるクランクシャフトの1回転サイクル(720度)におけるクランクシャフトの平均回転速度と、次のクランクシャフトの1回転サイクルにおけるクランクシャフトの平均回転速度とを比較することで、空燃比の気筒間インバランスが検出される。この方法は正常時におけるクランクシャフトの回転サイクル間の回転速度の変動がさほど大きくないエンジンユニットにおける、空燃比の気筒間インバランスの検出に有効である。しかしながら、正常時におけるクランクシャフトの回転サイクル間の回転速度の変動が大きいエンジンユニットでは、クランクシャフトの回転サイクル間の回転速度の変動が、空燃比の気筒間インバランスによるものか否かを判定することが難しい。このようなエンジンユニットは、例えば、自動二輪車等の傾斜車両に搭載される。これに対し、上記(3)のエンジンユニットにおいて、制御装置が(A)を満足する場合、例えば、等間隔燃焼型又は不等間隔燃焼型の2気筒エンジンユニットの1番気筒における燃焼によって生じるクランクシャフトの最大回転速度と、2番気筒における燃焼によって生じるクランクシャフトの最大回転速度とを用いて複数の気筒における空燃比の気筒間インバランスを検出する。制御装置が(B)を満足する場合、例えば、等間隔燃焼型の3気筒エンジンユニットの1番気筒における燃焼によって生じるクランクシャフトの最大回転速度と、2番及び3番気筒の少なくとも一つにおける燃焼によって生じるクランクシャフトの最大回転速度とを用いて複数の気筒における空燃比の気筒間インバランスを検出する。制御装置が(C)を満足する場合、例えば、不等間隔燃焼型の4気筒エンジンユニットの1番気筒における燃焼によって生じるクランクシャフトの最大回転速度と、2番-4番気筒の少なくとも一つにおける燃焼によって生じるクランクシャフトの最大回転速度とを用いて複数の気筒における空燃比の気筒間インバランスを検出する。そのため、同一回転サイクル内におけるクランクシャフトの回転速度の変動を用いることができ、クランクシャフトの回転サイクル間の回転速度の変動が大きいエンジンユニットであっても空燃比の気筒間インバランスを検出しやすい。したがって、クランクシャフトの回転速度の変動を用いて空燃比の気筒間インバランスを検出する多気筒エンジンユニットにおいて、検出精度を向上させることができる。
【0011】
「多気筒エンジンユニット」は、例えば、吸排気系を含んでいてもよい。多気筒エンジンユニットは、例えば、多気筒エンジンユニットが搭載される車両の走行のための動力を生成するエンジンを含む。エンジンは、内燃機関である。エンジンは、電気モータではない。エンジンは、例えば、レシプロケーティングエンジンである。エンジンは、例えば、4ストロークエンジンである。エンジンは、例えば、点火プラグによって燃料が燃焼するガソリンエンジンである。エンジンは、圧縮空気によって燃料が燃焼するディーゼルエンジンであってもよい。エンジンは、例えば、直列、V型又は水平対向型の多気筒エンジンである。エンジンは、例えば、複数の気筒と、ピストンと、クランクシャフトとを含む。多気筒エンジンユニットは、エンジンと、電気モータとを含むハイブリッドエンジンユニットであってもよい。ハイブリッドエンジンユニットは、例えば、パラレル型ハイブリッドエンジンユニットであってもよいし、シリーズ型ハイブリッドエンジンユニットであってもよい。
【0012】
多気筒エンジンユニットは、例えば、不等間隔燃焼型の多気筒エンジンユニットである。不等間隔燃焼型の多気筒エンジンユニットは、クランクシャフトの回転サイクルにおいて、クランク角で表された燃焼間隔全てが等しくならないように構成されたエンジンユニットを意味する。クランク角で表された燃焼間隔とは、ある気筒での燃焼を基準(クランク角が0度)としたとき、次に燃焼を行う別の気筒での燃焼までのクランクシャフトの回転角を意味する。例えば、不等間隔燃焼型の4ストローク2気筒エンジンユニットを考える。このエンジンユニットでは、1番気筒での燃焼を基準とすると、1番気筒での燃焼からクランクシャフトが270度回転したときに2番気筒で燃焼が行われる。2番気筒での燃焼からクランクシャフトが450度回転したときに再び1番気筒で燃焼が行われる。この場合、不等間隔燃焼型の2気筒エンジンユニットは、クランク角で270度・450度の燃焼間隔を有する。不等間隔燃焼型の2気筒エンジンユニットは、クランク角で180度・540度の燃焼間隔を有していてもよい。多気筒エンジンユニットは、例えば、不等間隔燃焼型の2又は4気筒エンジンユニットである。不等間隔燃焼型の4気筒エンジンユニットは、例えば、クランク角で270度・180度・90度・180度の燃焼間隔を有する。多気筒エンジンユニットは、例えば、不等間隔燃焼型の3気筒エンジンユニットを含まない。多気筒エンジンユニットは、例えば、不等間隔燃焼型の5気筒以上のエンジンユニットを含まない。
【0013】
多気筒エンジンユニットは、例えば、等間隔燃焼型の多気筒エンジンユニットである。等間隔燃焼型の多気筒エンジンユニットは、クランクシャフトの回転サイクルにおいて、クランク角で表された燃焼間隔全てが等しくなるように構成されたエンジンユニットを意味する。多気筒エンジンユニットは、例えば、等間隔燃焼型の2又は3気筒エンジンユニットである。多気筒エンジンユニットは、例えば、等間隔燃焼型の4気筒以上のエンジンユニットを含まない。
【0014】
多気筒エンジンユニットは、例えば、クランクシャフトの回転角を検出するクランク角センサを備える。クランク角センサは、例えば、クランクシャフトに設けられた被検出部の通過を検出すると信号を制御装置へ送る。クランクシャフトの回転角の検出方法は、特に限定されず、他の周知の方法であってもよい。
【0015】
多気筒エンジンユニットは、例えば、複数の気筒それぞれに供給する空気が通る複数の吸気路を含む。多気筒エンジンユニットは、例えば、複数の気筒と同数の吸気路を含む。複数の吸気路は、例えば、互いに独立している。複数の吸気路はそれぞれ、対応する気筒に接続される。ただし、複数の吸気路は、外気を取り入れる吸気口において一体にまとめられていてもよい。
【0016】
多気筒エンジンユニットは、例えば、独立スロットル型のエンジンユニットである。多気筒エンジンユニットは、例えば、複数の吸気路それぞれに設けられたスロットル弁を含む。複数のスロットル弁は、例えば、対応する気筒に流入する空気量を調整する。複数のスロットル弁は、例えば、一斉に制御される。複数のスロットル弁は、個別に制御されてもよい。複数のスロットル弁の開度は、例えば、公称値で同一となるように制御される。複数のスロットル弁の開度は、公称値で異なるように制御されてもよい。
【0017】
多気筒エンジンユニットは、例えば、複数の吸気路それぞれに設けられ、燃料を噴射するインジェクタを含む。複数のインジェクタはそれぞれ、例えば、吸気の流れ方向において、スロットル弁の下流に設けられる。複数のインジェクタはそれぞれ、例えば、電子制御される。複数のインジェクタはそれぞれ、例えば、吸気路内に燃料を噴射する。複数のインジェクタはそれぞれ、例えば、気筒内に燃料を直接噴射しない。
【0018】
多気筒エンジンユニットは、例えば、傾斜車両に搭載される。傾斜車両は、輸送機器である。傾斜車両は、人が運転する乗物である。傾斜車両は、例えば、傾斜車両が左に旋回するときには左に傾斜し、傾斜車両が右に旋回するときには右に傾斜する車体を含む。傾斜車両は、例えば、自動二輪車である。傾斜車両は、自動二輪車に限定されず、例えば、自動三輪車、自動四輪車であってもよい。傾斜車両は、例えば、少なくとも1つの前輪と、少なくとも1つの後輪とを備える。傾斜車両としては、特に限定されず、例えば、スクータ型、モペット型、オフロード型、オンロード型の傾斜車両が挙げられる。
【0019】
多気筒エンジンユニットは、例えば、鞍乗型車両に搭載される。鞍乗型車両は、傾斜車両の一種である。鞍乗型車両は、運転者がサドルに跨って着座する形式の車両である。鞍乗型車両では、着座した運転者の左足は鞍乗型車両の左右方向における中央より左に位置し、右足は鞍乗型車両の左右方向における中央より右に位置する。上述した自動二輪車及び自動三輪車は、それぞれ鞍乗型車両の一例である。更に、鞍乗型車両としては、例えば、ATV(All-Terrain Vehicle)が挙げられる。ATVは、鞍乗型の自動四輪車の一例である。更に、鞍乗型車両は、例えば、車輪を備えていなくてもよい。このような鞍乗型車両としては、例えば、スノーモービルが挙げられる。スノーモービルは、例えば、車輪の代わりにトラックベルトを備える。
【0020】
「複数の気筒」はそれぞれ、例えば、円柱形状の内部空間を有する。複数の気筒はそれぞれ、内部空間にピストンを収容する。複数の気筒の内部空間それぞれは、ピストンとともに燃料と空気との混合気を燃焼させる燃焼室を形成する。燃焼室それぞれにおいて混合気が燃焼することでピストンは往復運動する。
【0021】
「クランクシャフト」は、例えば、ジャーナルと、ジャーナルに対して偏心したクランクピンと、ジャーナルとクランクピンとを繋ぐクランクアームとを含む。クランクシャフトは、例えば、コネクティングロッドを介してピストンと繋がる。コネクティングロッドは、ピストンとクランクピンとを繋ぐ。クランクシャフトは、例えば、ピストンの往復運動を回転運動に変換する。
【0022】
「発電機」は、例えば、クランクシャフトの回転を利用して発電する。発電機は、例えば、蓄電装置と電気的に接続される。発電機は、例えば、発電した電力を蓄電装置に送る。発電機は、例えば、ロータと、ステータとを含む。ロータは、例えば、クランクシャフトの端部に設けられる。ロータは、例えば、クランクシャフトに固定される。ロータは、例えば、クランクシャフトと同じ回転速度で回転する。ロータは、例えば、クランクシャフトの径方向に伸びる円盤部と、円盤部の外周部に設けられた円筒部とを含む。円筒部の内周壁には、例えば、複数の永久磁石が周方向に並んで固定される。永久磁石の数は、特に限定されず、1以上であればよい。ステータは、例えば、ロータの内方に配置される。ステータは、例えば、円筒形状を有するステータコアと、複数のコイルとを含む。ステータコアは、例えば、周方向に並べられた複数の歯部を含む。複数の歯部はそれぞれ、例えば、ステータコアの径方向に向かって伸びる。複数のコイルはそれぞれ、例えば、ステータコアの歯部に設けられる。複数のコイルは、例えば、ロータの複数の永久磁石との間に空隙が存在するように設けられる。複数のコイルは、例えば、導電性を有する。複数のコイルは、例えば、複数の永久磁石の磁界と反応できるように設けられる。複数のコイルは、例えば、ロータが回転することで生じる磁界の変化によって誘導起電力が生じるように設けられる。コイルの数は、特に限定されず、1以上であればよい。
【0023】
発電機は、例えば、発電機能に加えて、スターターモータとしての機能も有する始動発電機であってもよい。始動発電機は、例えば、クランクシャフトが回転していないときにスターターモータとして機能し、クランクシャフトが回転しているときに発電機として機能する。
【0024】
「制御装置」は、例えば、ECU(Electronic Control Unit)である。制御装置は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)等のプロセッサを含む。制御装置は、例えば、制御装置が実行する演算処理の一部又は全部を含む1又は複数のプログラムが記録された不揮発性メモリを含んでいてもよい。制御装置は、例えば、プロセッサが不揮発性メモリに記録された1又は複数のプログラムを読み出して実行することで、少なくとも空燃比の気筒間インバランスの検出を実現する。
【0025】
制御装置は、例えば、酸素センサ又は空燃比センサを用いて、複数の気筒全体として空燃比が目標空燃比から所定の範囲内に収まるように各気筒に供給される燃料の量をフィードバック制御する。制御装置は、例えば、酸素センサ又は空燃比センサの検出結果を用いて、空燃比がリッチであると判定すると複数の気筒へ供給する燃料の量を減らし、空燃比がリーンであると判定すると複数の気筒へ供給する燃料の量を増やす。このようにして制御装置は、例えば、複数の気筒全体としての空燃比を目標空燃比近傍の値に維持する。なお、目標空燃比に対して燃料が過剰な状態を、空燃比がリッチであると言う。目標空燃比に対して空気が過剰な状態を、空燃比がリーンであると言う。目標空燃比は、理論空燃比を含む値又は範囲であってもよく、理論空燃比から若干ずれた値又は範囲であってもよい。しかしながら、ある気筒における空燃比が、何らかの要因によって目標空燃比から許容範囲を超えて大きくずれたとする。この場合、複数の気筒間において空燃比が大きくばらつき、排気ガス中の成分が想定と異なり、触媒の浄化機能にも影響を与える。そのため、このような場合、多気筒エンジンユニットが搭載されている車両の運転者等に空燃比が目標空燃比から大きくずれていることを通知するのが望ましい。
【0026】
そこで、制御装置は、例えば、クランク角で最も広い燃焼間隔において出現するクランクシャフトの回転速度の変動を用いて複数の気筒における空燃比の気筒間インバランスを検出する。具体的には、不等間隔燃焼型の2気筒エンジンユニットにおいて、最も広い燃焼間隔は、例えば、450度又は540度の燃焼間隔である。この450度又は540度の燃焼間隔は、あるクランクシャフトの回転サイクルにおける2番目の燃焼から次の回転サイクルにおける1番目の燃焼までの間隔である。不等間隔燃焼型の4気筒エンジンユニットにおいて、最も広い燃焼間隔は、例えば、270度の燃焼間隔である。この270度の燃焼間隔は、クランクシャフトの回転サイクルにおける1番目の燃焼から2番目の燃焼までの間隔である。
【0027】
制御装置は、例えば、クランク角で最も広い燃焼間隔において出現するクランクシャフトの最大回転速度の変動を用いて複数の気筒における空燃比の気筒間インバランスを検出する。より詳細には、制御装置は、例えば、空燃比の気筒間インバランスが生じていないときの、クランクシャフトの回転サイクルにおける最も広い燃焼間隔において出現するクランクシャフトの最大回転速度を基準に設定する。制御装置は、例えば、基準の最大回転速度と、あるクランクシャフトの回転サイクルにおける最も広い燃焼間隔において出現するクランクシャフトの最大回転速度とを用いて複数の気筒における空燃比の気筒間インバランスを検出する。制御装置は、例えば、基準の最大回転速度と、あるクランクシャフトの回転サイクルにおける最も広い燃焼間隔において出現するクランクシャフトの最大回転速度との差分が閾値よりも大きいか否かによって複数の気筒における空燃比の気筒間インバランスを検出する。
【0028】
制御装置が、複数の気筒のうちの少なくとも一つの気筒における空燃比の異常を検出することを、空燃比の気筒間インバランスを検出すると言う。ここで言う異常は、フィードバック制御による燃料の補正量が予め定めた閾値を超えることを言う。閾値は、常時一定値であってもよいし、状況に応じて変更される可変値であってもよい。制御装置は、例えば、少なくとも一つの気筒において空燃比の気筒間インバランスを検出すると、運転者等に多気筒エンジンユニットを点検するように通知するための処理を実行する。ただし、制御装置は、少なくともクランク角で最も広い燃焼間隔において出現するクランクシャフトの回転速度の変動を用いて複数の気筒における空燃比の気筒間インバランスを検出すればよく、複数の気筒における空燃比の気筒間インバランスの検出方法は、上記例に限定されない。
【0029】
制御装置は、例えば、同じクランクシャフトの回転サイクル内における複数の燃焼間隔それぞれにおいて出現するクランクシャフトの最大回転速度の一部又は全部を用いて複数の気筒における空燃比の気筒間インバランスを検出してもよい。例えば、制御装置は、クランクシャフトの回転サイクル間における、基準気筒最大回転速度と対象気筒最大回転速度との差分の変動を用いて複数の気筒における空燃比の気筒間インバランスを検出する。基準気筒最大回転速度は、基準気筒における燃焼によって生じるクランクシャフトの最大回転速度である。基準気筒は、例えば、最も広い燃焼間隔においてクランクシャフトの最大回転速度を生じさせる燃焼を行う気筒である。対象気筒最大回転速度は、対象気筒における燃焼によって生じるクランクシャフトの最大回転速度である。対象気筒は、例えば、基準気筒とは異なり且つ任意に選択された気筒である。制御装置は、例えば、基準気筒最大回転速度と対象気筒最大回転速度との差分の変動が閾値よりも大きいか否かであるかに基づいて複数の気筒における空燃比の気筒間インバランスを検出する。
【0030】
この発明の上述の目的及びその他の目的、特徴、局面及び利点は、添付図面に関連して行われる以下のこの発明の実施形態の詳細な説明から一層明らかとなろう。本明細書にて使用される場合、用語「及び/又は(and/or)」は1つの、又は複数の関連した列挙されたアイテム(items)のあらゆる又は全ての組み合わせを含む。本明細書中で使用される場合、用語「含む、備える(including)」、「含む、備える(comprising)」又は「有する(having)」及びその変形の使用は、記載された特徴、工程、操作、要素、成分及び/又はそれらの等価物の存在を特定するが、ステップ、動作、要素、コンポーネント、及び/又はそれらのグループのうちの1つ又は複数を含むことができる。他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての用語(技術用語及び科学用語を含む)は、本発明が属する当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。一般的に使用される辞書に定義された用語のような用語は、関連する技術及び本開示の文脈における意味と一致する意味を有すると解釈されるべきであり、本明細書で明示的に定義されていない限り、理想的又は過度に形式的な意味で解釈されることはない。本発明の説明においては、多数の技術及び工程が開示されていると理解される。これらの各々は個別の利益を有し、それぞれは、他の開示された技術の1つ以上、又は、場合によっては全てと共に使用することもできる。従って、明確にするために、この説明は、不要に個々のステップの可能な組み合わせの全てを繰り返すことを控える。それにもかかわらず、明細書及び特許請求の範囲は、そのような組み合わせが全て本発明及び特許請求の範囲内にあることを理解して読まれるべきである。以下の説明では、説明の目的で、本発明の完全な理解を提供するために多数の具体的な詳細を述べる。しかしながら、当業者には、これらの特定の詳細なしに本発明を実施できることが明らかである。本開示は、本発明の例示として考慮されるべきであり、本発明を以下の図面又は説明によって示される特定の実施形態に限定することを意図するものではない。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、クランクシャフトの回転速度の変動を用いて空燃比の気筒間インバランスを検出する多気筒エンジンユニットにおいて、検出精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】
図1(A)は、本実施形態の多気筒エンジンユニットの概略図であり、
図1(B)は、本実施形態の多気筒エンジンユニットに含まれる発電機の概略図であり、
図1(C)は、本実施形態の多気筒エンジンユニットにおける燃焼タイミングとクランクシャフトの回転速度との関係を示す図である。
【
図2】
図2は、本実施形態の多気筒エンジンユニットにおいて空燃比の気筒間インバランスが生じたときのクランクシャフトの回転速度の変動の変化を示す図である。
【
図3】
図3は、本実施形態の空燃比の気筒間インバランスの検出処理を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、他の実施形態の多気筒エンジンユニットにおける制御装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る多気筒エンジンユニットについて説明する。なお、以下に説明する実施形態は、あくまでも一例である。本発明は、以下に説明する実施形態によって、何等、限定的に解釈されるものではない。
【0034】
図1(A)は、本実施形態の多気筒エンジンユニットの概略図である。多気筒エンジンユニット1は、独立スロットル型且つ不等間隔燃焼型の2気筒エンジンユニットである。多気筒エンジンユニット1は、複数の気筒11A,11Bと、クランクシャフト12と、発電機13と、制御装置14とを備える。
【0035】
複数の気筒11A,11Bはそれぞれ、ピストン111とともに燃焼室112を形成する。複数の気筒11A,11Bは、直列に配置される。複数の気筒11A,11Bはそれぞれ、燃焼室112の一部を形成する円柱形状の内部空間を有する。燃焼室112は、複数の気筒11A,11Bそれぞれに形成される。燃焼室112はそれぞれ、吸気管及び排気管と繋がる。各燃焼室112では、吸気管から流入する燃料と空気との混合気が燃焼する。混合気の燃焼は、排気ガスを生成する。生成された排気ガスは、排気管から流出する。ピストン111はそれぞれ、円柱形状を有する。ピストン111はそれぞれ、対応する気筒11A,11Bの内部空間に配置され、往復運動する。ピストン111はそれぞれ、コネクティングロッドを介してクランクシャフト12に繋がる。
【0036】
クランクシャフト12は、燃焼室112において燃料が燃焼することで回転する。クランクシャフト12は、ピストン111の往復運動を回転運動に変換する。本実施形態では多気筒エンジンユニット1が2気筒エンジンユニットであるため、クランクシャフト12は、2つのクランクピンを含む。2つのクランクピンは、クランクシャフトの軸方向視で270度ずれて配置される。
【0037】
発電機13は、クランクシャフト12の端部に設けられる。発電機13は、クランクシャフト12が回転することで電力を生成する。発電機13は、ロータ131と、ステータ132とを含む。
【0038】
図1(B)は、本実施形態の多気筒エンジンユニットに含まれる発電機の概略図である。ロータ131は、概略円筒形状を有する。ロータ131は、周方向に等間隔に配置された複数の永久磁石1311を有する。ロータ131は、クランクシャフト12にクランクシャフト12と同軸になるように固定される。ロータ131は、クランクシャフト12に対して固定された変速比で回転する。本実施形態では、ロータ131は、クランクシャフト12と同じ回転速度で回転する。ステータ132は、ロータ131の内方に配置される。ステータ132は、概略円柱形状を有する。ステータ132は、周方向に等間隔に配置された複数のコイル1321を有する。複数のコイル1321は、ロータ131の径方向において、複数の永久磁石1311と僅かな隙間を空けて設けられる。複数のコイル1321には、ロータ131が回転することで起電力が生じる。
【0039】
図1(C)は、本実施形態の多気筒エンジンユニットにおける燃焼タイミングとクランクシャフトの回転速度との関係を示す図である。図中、縦軸はクランクシャフトの回転速度を示し、横軸はクランク角を示す。制御装置14は、クランクシャフト12の回転速度の変動を用いて複数の気筒11A,11Bにおける空燃比の気筒間インバランスを検出する。本実施形態では、クランクシャフト12は、クランクシャフト12の回転サイクルにおける一つの燃焼間隔T1がクランク角で360度以上となるように構成される。制御装置14は、クランク角で360度以上、720度以下の燃焼間隔T1において出現する回転速度の変動を用いて複数の気筒11A,11Bにおける空燃比の気筒間インバランスを検出する。
【0040】
<空燃比の気筒間インバランスの検出>
図2は、本実施形態の多気筒エンジンユニットにおいて空燃比の気筒間インバランスが生じたときのクランクシャフトの回転速度の変動の変化を示す図である。図中、縦軸はクランクシャフトの回転速度を示し、横軸はクランク角を示す。本実施形態では気筒11Aを対象気筒と定義し、気筒11Bを基準気筒と定義する。対象気筒11A及び基準気筒11Bでは、ピストン111が上死点に到達した際に燃料が燃焼する。対象気筒11Aにおいて燃料が燃焼するときをクランク角がゼロ度であると定義する。ただし、対象気筒11A及び基準気筒11Bにおいて燃料が燃焼するタイミングは、ピストン111が上死点に到達したときに限られず、ピストン111が上死点に到達する前又は到達後であってもよい。図中、実線は、多気筒エンジンユニットにおいて空燃比の気筒間インバランスが生じていない場合のクランクシャフトの回転速度の変動を示す。破線は、対象気筒の空燃比がリーンであり、基準気筒の空燃比がリッチとなる気筒間インバランスが生じている場合のクランクシャフトの回転速度の変動を示す。一点鎖線は、対象気筒の空燃比がリッチであり、基準気筒の空燃比がリーンとなる気筒間インバランスが生じている場合のクランクシャフトの回転速度の変動を示す。
【0041】
実線を参照して、対象気筒11Aで燃料が燃焼するとクランクシャフト12の回転速度が上昇し、クランク角がおよそ90度において回転速度が最大となる。その後、クランクシャフト12の回転速度は減少し、クランク角がおよそ270度のときに基準気筒11Bで燃料が燃焼すると再度上昇する。基準気筒11Bでの燃焼によるクランクシャフト12の回転速度は、クランク角がおよそ360度において最大となる。本実施形態の多気筒エンジンユニット1は、270度・450度の燃焼間隔を有する独立スロットル型且つ不等間隔燃焼型の多気筒エンジンユニットである。このような多気筒エンジンユニットでは、対象気筒11Aと基準気筒11Bとで供給される空気量がばらつきやすく、燃焼によるエネルギー量が異なる。そのため、対象気筒11Aでの燃焼によるクランクシャフト12の回転速度の最大値と、基準気筒11Bでの燃焼によるクランクシャフト12の回転速度の最大値とが異なる。対象気筒11Aでの燃焼によるクランクシャフト12の回転速度の最大値から基準気筒11Bでの燃焼によるクランクシャフト12の回転速度の最大値を引いた値を差分D0(正の値)とする。
【0042】
破線を参照して、対象気筒11Aの空燃比がリーンになると、混合気中の燃料の割合が低下する。そのため、対象気筒11Aでの燃焼によるクランクシャフト12の回転速度の最大値が実線の場合と比べて低くなる。制御装置14は、複数の気筒11A,11B全体としての空燃比が目標空燃比となるように複数の気筒それぞれへ供給する燃料の量を制御する。制御装置14は、対象気筒11Aの空燃比がリーンとなれば、基準気筒11Bの空燃比がリッチとなるように制御し、複数の気筒11A,11B全体としての空燃比を目標空燃比に維持しようとする。その結果、基準気筒11Bでの燃焼によるクランクシャフト12の回転速度の最大値は実線の場合と比べて高くなる。対象気筒11Aでの燃焼によるクランクシャフト12の回転速度の最大値から基準気筒11Bでの燃焼によるクランクシャフト12の回転速度の最大値を引いた値を差分D1とする。差分D1は、負の値となり、差分D0と比べて小さい値となる。
【0043】
一点鎖線を参照して、対象気筒11Aの空燃比がリッチになると、混合気中の燃料の割合が増加する。そのため、対象気筒11Aでの燃焼によるクランクシャフト12の回転速度の最大値が実線の場合と比べて高くなる。この場合、制御装置14は、基準気筒11Bの空燃比がリーンとなるように制御する。その結果、基準気筒11Bでの燃焼によるクランクシャフト12の回転速度の最大値は実線の場合と比べて低くなる。対象気筒11Aでの燃焼によるクランクシャフト12の回転速度の最大値から基準気筒11Bでの燃焼によるクランクシャフト12の回転速度の最大値を引いた値を差分D2とする。差分D2は、正の値となり、差分D0と比べて大きな値となる。
【0044】
このように、複数の気筒11A,11Bにおいて空燃比の気筒間インバランスが生じると、対象気筒11Aでの燃焼によるクランクシャフト12の回転速度の最大値と基準気筒11Bでの燃焼によるクランクシャフト12の回転速度の最大値との差分が変化する。制御装置14は、この差分の変化を用いて複数の気筒11A,11Bにおける空燃比の気筒間インバランスを検出する。すなわち、制御装置14は、対象気筒11Aにおける燃焼によって生じるクランクシャフト12の最大回転速度と、基準気筒11Bにおける燃焼によって生じるクランクシャフト12の最大回転速度とを用いて複数の気筒11A,11Bにおける空燃比の気筒間インバランスを検出する。
【0045】
図3は、本実施形態の空燃比の気筒間インバランスの検出処理を示すフローチャートである。ここでは、多気筒エンジンユニット1が既に稼働している状態を想定する。
【0046】
まず、制御装置14は、複数の気筒11A,11Bにおける空燃比の気筒間インバランスが生じていないときの差分D0を取得する。差分D0は、対象気筒11Aにおける燃焼によって生じるクランクシャフト12の最大回転速度から基準気筒11Bにおける燃焼によって生じるクランクシャフト12の最大回転速度を引いた値である。差分D0は、予めメモリに保存されていてもよいし、多気筒エンジンユニット1の稼働中に算出してもよい(ステップS11)。
【0047】
次に、制御装置14は、図示しないクランク角センサからクランク角を取得する。制御装置14は、クランクシャフト12の回転サイクル(720度)にわたってクランク角を定期的又は不定期に取得する(ステップS12)。
【0048】
次に、制御装置14は、取得したクランク角を用いてそのクランク角におけるクランクシャフト12の回転速度を算出する。制御装置14は、クランクシャフト12の回転サイクルにわたってクランクシャフト12の回転速度を算出する(ステップS13)。
【0049】
次に、制御装置14は、クランクシャフト12の回転サイクルにわたって算出したクランクシャフト12の回転速度に基づいて、対象気筒11Aにおける燃焼によって生じるクランクシャフト12の最大回転速度から基準気筒11Bにおける燃焼によって生じるクランクシャフト12の最大回転速度を引いた差分Dを算出する(ステップS14)。
【0050】
次に、制御装置14は、差分D0から差分Dを引いた値と閾値とを比較する。閾値は、予めメモリに保存される(ステップS15)。
【0051】
制御装置14は、差分D0から差分Dを引いた値が閾値以下の場合(ステップS15でNO)、ステップS12以降のステップを繰り返す。制御装置14は、差分D0から差分Dを引いた値が閾値よりも大きい場合(ステップS15でYES)、複数の気筒11A,11Bにおける空燃比の気筒間インバランスが生じていると判定する(ステップS16)。
【0052】
<その他の実施形態>
図4は、他の実施形態の多気筒エンジンユニットにおける制御装置の構成を示すブロック図である。制御装置14は、回転速度取得部141と、うねり検出部142と、うねり除去部143とを含む。
【0053】
回転速度取得部141は、クランクシャフト12の回転速度を得るように構成される。具体的には、回転速度取得部141は、クランク角センサ121が検出したクランク角を取得する。回転速度取得部141は、取得したクランク角を用いてクランクシャフト12の回転速度を算出する。回転速度取得部141は、算出したクランクシャフト12の回転速度をうねり検出部142及びうねり除去部143へ送る。
【0054】
うねり検出部142は、回転速度取得部141から受けたクランクシャフト12の回転速度に基づいて、クランクシャフト12の回転速度の変動に含まれる周期的なうねりを検出するように構成される。うねりは、クランク角で720度よりも長い角度周期を有する。うねり検出部142は、周期的なうねりを検出すると、うねり除去部143へうねりが検出された旨を通知する。
【0055】
うねり除去部143は、うねり検出部142からの通知を受け、回転速度取得部141から取得したクランクシャフト12の回転速度から、うねり検出部142により検出された周期的なうねりを除去するように構成される。
【0056】
制御装置14は、うねり除去部143により周期的なうねりが除去されたクランクシャフト12の回転速度から算出されたクランクシャフト12の回転速度の変動を用いて複数の気筒11A,11Bにおける空燃比の気筒間インバランスを検出する。
【0057】
上述の説明では、多気筒エンジンユニット1が2気筒エンジンユニットであり、制御装置14が360度以上、720度以下の燃焼間隔において出現する回転速度の変動を用いて空燃比の気筒間インバランスを検出する場合について説明した。しかしながら、多気筒エンジンユニットは3気筒エンジンユニットであってもよい。この場合、制御装置14は、240度以上、720度以下の燃焼間隔において出現する回転速度の変動を用いて空燃比の気筒間インバランスを検出する。また、多気筒エンジンユニットは4気筒エンジンユニットであり、クランクシャフトは慣性トルクが低減されるように構成されたクロスプレーン型のクランクシャフトであってもよい。この場合、クランクシャフトの回転サイクルにおける少なくとも一つの燃焼間隔がクランク角で240度以上となる。制御装置14は、クランク角で240度以上、720度以下の燃焼間隔において出現する回転速度の変動を用いて空燃比の気筒間インバランスを検出する。
【0058】
本明細書において記載と図示の少なくとも一方がなされた実施形態及び変形例は、本開示の理解を容易にするためのものであって、本開示の思想を限定するものではない。上記の実施形態及び変形例は、その趣旨を逸脱することなく変更・改良され得る。当該趣旨は、本明細書に開示された実施形態に基づいて当業者によって認識されうる、均等な要素、修正、削除、組み合わせ(例えば、実施形態及び変形例に跨る特徴の組み合わせ)、改良、変更を包含する。特許請求の範囲における限定事項は当該特許請求の範囲で用いられた用語に基づいて広く解釈されるべきであり、本明細書あるいは本願のプロセキューション中に記載された実施形態及び変形例に限定されるべきではない。そのような実施形態及び変形例は非排他的であると解釈されるべきである。例えば、本明細書において、「好ましくは」、「よい」という用語は非排他的なものであって、「好ましいがこれに限定されるものではない」、「よいがこれに限定されるものではない」ということを意味する。
【符号の説明】
【0059】
1 :多気筒エンジンユニット
11A,11B:気筒
111 :ピストン
112 :燃焼室
12 :クランクシャフト
121 :クランク角センサ
13 :発電機
131 :ロータ
1311 :永久磁石
132 :ステータ
1321 :コイル
14 :制御装置
141 :回転速度取得部
142 :うねり検出部
143 :うねり除去部