(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138284
(43)【公開日】2024-10-08
(54)【発明の名称】抗FGFR2抗体製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 9/08 20060101AFI20241001BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20241001BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20241001BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20241001BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20241001BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20241001BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20241001BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20241001BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241001BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
A61K9/08
A61K39/395 N
A61K39/395 D
A61K47/22
A61K47/12
A61K47/02
A61K47/18
A61K47/26
A61K47/34
A61P35/00
A61P43/00 111
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024098544
(22)【出願日】2024-06-19
(62)【分割の表示】P 2021517575の分割
【原出願日】2019-10-04
(31)【優先権主張番号】62/741,772
(32)【優先日】2018-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】515302853
【氏名又は名称】ファイヴ プライム セラピューティクス インク
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】プラド, イサイアス
(72)【発明者】
【氏名】ホアン, チン-イー
(57)【要約】 (修正有)
【課題】液体として、すぐに使用できる形態で貯蔵することができ、静脈内(IV)注入によって静脈内投与され得る抗線維芽細胞増殖因子受容体2(FGFR2)抗体の製剤を提供する。
【解決手段】i)10~30mg/mLの抗線維芽細胞増殖因子受容体2(FGFR2)抗体と、ii)ヒスチジン、クエン酸塩、またはリン酸塩のうちの1つ以上から選択される5~40mMの緩衝液と、iii)130~170mMのアルギニンまたは250~290mMのスクロースと、iv)0.002%~0.1%のポリソルベート20またはポリソルベート80とを含み、製剤が、5.0~6.5のpHを有する、薬学的製剤とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬学的製剤であって、
i)10~30mg/mLの抗線維芽細胞増殖因子受容体2(FGFR2)抗体と、
ii)ヒスチジン、クエン酸塩、またはリン酸塩のうちの1つ以上から選択される5~40mMの緩衝液と、
iii)130~170mMのアルギニンまたは250~290mMのスクロースと、
iv)0.002%~0.1%のポリソルベート20またはポリソルベート80と、を含み、
前記製剤が、5.0~6.5のpHを有し、前記抗FGFR2抗体が、
a)配列番号2の配列を含む重鎖、及び配列番号3の配列を含む軽鎖を含む抗体、
b)配列番号6の配列を含む重鎖(HC)超可変領域1(HVR1)、配列番号7の配列を含むHC HVR2、及び配列番号8の配列を含むHC HVR3を含む重鎖と、配列番号9の配列を含む軽鎖(LC)HVR1、配列番号10の配列を含むLC HVR2、及び配列番号11の配列を含むLC HVR3を含む軽鎖とを含む抗体、ならびに
c)配列番号4の配列を含む可変領域配列を含む重鎖、及び配列番号5の配列を含む軽鎖可変領域配列を含む軽鎖を含む抗体、から選択される、前記薬学的製剤。
【請求項2】
前記製剤が、以下の特性:
(a)すぐに使用できる液体製剤である、
(b)患者への投与前に凍結乾燥されない、
(c)単回使用バイアル内に収容される、
(d)前記製剤中のタンパク質凝集が、5℃で6ヶ月間の貯蔵後に2.0%を超えて増加しない、
(e)前記製剤中のタンパク質凝集が、25℃で3ヶ月間の貯蔵後に2.0%または2.5%を超えて増加しない、
(f)前記製剤中のタンパク質凝集が、40℃で3ヶ月間の貯蔵後に7.0%を超えて増加しない、
(g)前記製剤中の荷電タンパク質多様体が、5℃で6ヶ月の貯蔵後に5%を超えて変化しない、
(h)前記製剤中のタンパク質凝集が、-70℃で5回の凍結融解サイクル後に2.0%を超えて増加しない、
(i)前記製剤中のタンパク質凝集が、500rpmで72時間の機械的ストレス後に2.0%を超えて増加しない、
(j)静脈内投与の前に生理食塩水中で希釈される、
(k)静脈内(例えば、静脈内注入によって)投与される、
(l)ヒト血漿と等張である、のうちの1つ以上を有する、請求項1に記載の薬学的製剤。
【請求項3】
前記製剤が、10~15mg/mL、15~20mg/mL、20~25mg/mL、18~22mg/mL、10mg/mL、11mg/mL、12mg/mL、13mg/mL、14mg/mL、15mg/mL、16mg/mL、17mg/mL、18mg/mL、19mg/mL、20mg/mL、21mg/mL、22mg/mL、23mg/mL、24mg/mL、または25mg/mLの前記抗FGFR2抗体を含む、請求項1または2に記載の薬学的製剤。
【請求項4】
前記製剤が、10~40mM、10~30mM、15~25mM、10~20mM、20~30mM、18~22mM、10mM、15mM、16mM、17mM、18mM、19mM、20mM、21mM、22mM、23mM、24mM、25mM、26mM、27mM、28mM、29mM、または30mMの前記緩衝液を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の薬学的製剤。
【請求項5】
前記緩衝液が、ヒスチジン緩衝液である、請求項4に記載の薬学的製剤。
【請求項6】
前記製剤が、130~150mM、150~170mM、140~160mM、130mM、135mM、140mM、145mM、150mM、155mM、160mM、165mM、または170mMのアルギニンを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の薬学的製剤。
【請求項7】
前記製剤が、スクロースを含まない、請求項6に記載の薬学的製剤。
【請求項8】
前記製剤の前記pHが、5.0~7.0、5.0~6.0、5.5~6.0、5.5~6.5、5.5~5.9、5.6~5.8、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、または6.5である、請求項6または7に記載の薬学的製剤。
【請求項9】
前記製剤の前記pHが、5.5~5.9、5.6~5.8、5.6、5.7、5.8、5.9、または6.0である、請求項8に記載の薬学的製剤。
【請求項10】
前記製剤が、260~280mM、250mM、260mM、270mM、280mM、または290mMのスクロースを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の薬学的製剤。
【請求項11】
前記製剤が、アルギニンを含まない、請求項8に記載の薬学的製剤。
【請求項12】
前記製剤の前記pHが、5.0~7.0、5.0~6.0、5.5~6.0、5.5~5.9、5.6~5.8、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、または6.5である、請求項10または11に記載の薬学的製剤。
【請求項13】
前記製剤の前記pHが、5.8~6.2、5.9~6.1、5.9、6.0、または6.1である、請求項12に記載の薬学的製剤。
【請求項14】
前記製剤が、0.01~0.1%、0.005~0.05%、0.002%、0.003%、0.004%、0.005%、0.006%、0.007%、0.008%、0.009%、0.01%、0.02%、0.03%、0.04%、0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%、または0.1%のポリソルベート20または80を含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の薬学的製剤。
【請求項15】
前記製剤が、0.01~0.1%、0.005~0.05%、0.002%、0.003%、0.004%、0.005%、0.006%、0.007%、0.008%、0.009%、0.01%、0.02%、0.03%、0.04%、0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%、または0.1%のポリソルベート20を含む、請求項14に記載の薬学的製剤。
【請求項16】
前記製剤が、抗FGFR2抗体;クエン酸塩、リン酸塩、またはヒスチジン緩衝液;アルギニンまたはスクロース;及びポリソルベート20または80から本質的になる、請求項1~15のいずれか1項に記載の薬学的製剤。
【請求項17】
前記製剤が、抗FGFR2抗体、ヒスチジン、アルギニンまたはスクロース、及びポリソルベート20から本質的になる、請求項16に記載の薬学的製剤。
【請求項18】
抗線維芽細胞増殖因子受容体2(FGFR2)抗体の薬学的製剤であって、前記製剤が、
i)10~25mg/mLの前記抗FGFR2抗体と、
ii)10~30mMのヒスチジン緩衝液と、
iii)140~160mMのアルギニンと、
iv)0.005%~0.05%のポリソルベート20と、を含む、使用前に凍結乾燥されていない液体製剤であり、
前記製剤が、5.6~5.8のpHを有する、前記薬学的製剤。
【請求項19】
抗線維芽細胞増殖因子受容体2(FGFR2)抗体の薬学的製剤であって、前記製剤が、
i)10~25mg/mLの前記抗FGFR2抗体と、
ii)20mMのヒスチジン緩衝液と、
iii)150mMのアルギニンと、
iv)0.01%のポリソルベート20と、を含む、使用前に凍結乾燥されていない液体製剤であり、
前記製剤が、5.7のpHを有する、前記薬学的製剤。
【請求項20】
抗線維芽細胞増殖因子受容体2(FGFR2)抗体の薬学的製剤であって、
i)20mg/mLの前記抗FGFR2抗体と、
ii)20mMのL-ヒスチジン緩衝液と、
iii)150mMのL-アルギニンと、
iv)0.01%のポリソルベート20と、を含み、
前記製剤が、5.7のpHを有し、使用前に凍結乾燥されていない液体製剤である、前記薬学的製剤。
【請求項21】
前記製剤が、前記抗FGFR2抗体、ヒスチジン、アルギニン、及びポリソルベート20から本質的になる、請求項18、19、または20に記載の薬学的製剤。
【請求項22】
抗線維芽細胞増殖因子受容体2(FGFR2)抗体の薬学的製剤であって、前記製剤が、
i)10~25mg/mLの前記抗FGFR2抗体と、
ii)10~30mMのヒスチジン緩衝液と、
iii)260~280mMのスクロースと、
iv)0.005%~0.05%のポリソルベート20と、を含む、使用前に凍結乾燥されていない液体製剤であり、
前記製剤が、5.8~6.2のpHを有する、前記薬学的製剤。
【請求項23】
抗線維芽細胞増殖因子受容体2(FGFR2)抗体の薬学的製剤であって、前記製剤が、
i)10~25mg/mLの前記抗FGFR2抗体と、
ii)20mMのヒスチジン緩衝液と、
iii)270mMのスクロースと、
iv)0.01%のポリソルベート20と、を含む、使用前に凍結乾燥されていない液体製剤であり、
前記製剤が、6.0のpHを有する、前記薬学的製剤。
【請求項24】
抗線維芽細胞増殖因子受容体2(FGFR2)抗体の薬学的製剤であって、
i)20mg/mLの前記抗FGFR2抗体と、
ii)20mMのL-ヒスチジン緩衝液と、
iii)270mMのスクロースと、
iv)0.01%のポリソルベート20と、を含み、
前記製剤が、6.0のpHを有し、使用前に凍結乾燥されていない液体製剤である、前記薬学的製剤。
【請求項25】
前記製剤が、前記抗FGFR2抗体、ヒスチジン、スクロース、及びポリソルベート20から本質的になる、請求項22、23、または24に記載の薬学的製剤。
【請求項26】
前記抗FGFR2抗体が、
a)配列番号2の配列を含む重鎖、及び配列番号3の配列を含む軽鎖を含む抗体、
b)配列番号6の配列を含む重鎖(HC)超可変領域1(HVR1)、配列番号7の配列を含むHC HVR2、及び配列番号8の配列を含むHC HVR3を含む重鎖と、配列番号9の配列を含む軽鎖(LC)HVR1、配列番号10の配列を含むLC HVR2、及び配列番号11の配列を含むLC HVR3を含む軽鎖とを含む抗体、ならびに
c)配列番号4の配列を含む可変領域配列を含む重鎖、及び配列番号5の配列を含む軽鎖可変領域配列を含む軽鎖を含む抗体、から選択される、請求項18~25のいずれか1項に記載の薬学的製剤。
【請求項27】
前記製剤が、以下の特性:
(a)単回使用バイアル内に収容される、
(b)前記製剤中のタンパク質凝集が、5℃で6ヶ月間の貯蔵後に2.0%を超えて増加しない、
(c)前記製剤中のタンパク質凝集が、25℃で3ヶ月間の貯蔵後に2.0%または2.5%を超えて増加しない、
(d)前記製剤中のタンパク質凝集が、40℃で3ヶ月間の貯蔵後に7.0%を超えて増加しない、
(e)前記製剤中の荷電タンパク質多様体が、5℃で6ヶ月間の貯蔵後に5%を超えて変化しない、
(f)前記製剤中のタンパク質凝集が、-70℃で5回の凍結融解サイクル後に2.0%を超えて増加しない、
(g)前記製剤中のタンパク質凝集が、500rpmで72時間の機械的ストレス後に2.0%を超えて増加しない、
(h)静脈内投与の前に生理食塩水中で希釈する、
(i)(例えば、IV注入によって)静脈内投与される、及び
(j)ヒト血漿と等張である、のうちの1つ以上を有する、請求項18~26のいずれか1項に記載の薬学的製剤。
【請求項28】
前記製剤が、10~15mg/mL、15~20mg/mL、20~25mg/mL、18~22mg/mL、10mg/mL、11mg/mL、12mg/mL、13mg/mL、14mg/mL、15mg/mL、16mg/mL、17mg/mL、18mg/mL、19mg/mL、20mg/mL、21mg/mL、22mg/mL、23mg/mL、24mg/mL、または25mg/mLの前記抗FGFR2抗体を含む、請求項18~19、21~23、または25~27のいずれか1項に記載の薬学的製剤。
【請求項29】
前記製剤が、スクロース以外の糖、糖アルコール、抗FGFR2抗体以外のタンパク質種、ポリソルベート20またはポリソルベート80以外の界面活性剤、アルギニン及びヒスチジン以外のアミノ酸、Cu2+、Mg2+、及びMn2+のうちの1つ以上を含まない、請求項1~28のいずれか1項に記載の薬学的製剤。
【請求項30】
前記製剤が、単回使用バイアル内に収容される、請求項1~29のいずれか1項に記載の薬学的製剤。
【請求項31】
固形腫瘍の治療を必要とする患者において固形腫瘍を治療する方法であって、有効量の請求項1~30のいずれか1項に記載の製剤を前記患者に投与することを含む、前記方法。
【請求項32】
前記製剤が、前記患者に(例えば、静脈内注入によって)静脈内投与される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記抗FGFR2抗体が、アフコシル化される、請求項1~32のいずれか1項に記載の薬学的製剤または方法。
【請求項34】
前記抗FGFR2抗体が、抗原結合断片、例えば、Fv、一本鎖Fv(scFv)、Fab、Fab′、または(Fab′)2である、請求項1~32のいずれか1項に記載の薬学的製剤または方法。
【請求項35】
前記抗体が、キメラ、ヒト化、またはヒトである、請求項1~34のいずれか1項に記載の薬学的製剤または方法。
【請求項36】
前記抗体が、二重特異性、多重特異性、またはコンジュゲートである、請求項1~35のいずれか1項に記載の薬学的製剤または方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年10月5日に出願された米国仮特許出願第62/741,772号の優先権の利益を主張し、参照によりその全体が組み込まれる。
【0002】
本開示は、抗FGFR2-IIIb抗体などの抗FGFR2(線維芽細胞増殖因子受容体2)抗体のための製剤に関し、いくつかの実施形態では、液体として長期間、例えばすぐに使用できる形態で貯蔵することができ、いくつかの実施形態では、例えば静脈内(IV)注入によって静脈内投与され得る。
【背景技術】
【0003】
本開示は、FGFR2に結合する抗体の特定の製剤、例えば、スプライス形態のFGFR2-IIIb(線維芽細胞増殖因子受容体2 IIIb)に関する。FGFR2は、4つのFGFRタンパク質(FGFR1、2、3、及び4)のうちの1つである。FGFRは、それらのmRNAの複数の代替スプライシングによって特徴付けられ、様々なアイソフォームをもたらす(Ornitz et al.,J.Biol.Chem.271:15292,1996、FGFR2及びそのアイソフォームの配列については、Swiss-Prot P21802及びアイソフォームP21802-1~-20も参照)。FGFR2に関して、代替スプライシングは、例えば、アイソフォームFGFR2-IIIb及びFGFR2-IIIc(または単なるFGFR2b及びFGFR2c)をもたらす。FGFR2のFGFR2-IIIb形態(K-sam-IIとも称される)は、FGF1及びKGFファミリーメンバー(FGF7、FGF10、及びFGF22)の両方に対する高親和性受容体である一方で、FGFR2-IIIc(K-sam-Iとも称される)は、FGF1及びFGF2の両方に十分に結合するが、KGFファミリーメンバーには結合しない(Miki et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:246,1992)。FGFR2-IIIbは、KGFファミリーメンバーの唯一の受容体であり(Ornitz et al.,1996,同前)、したがってKGFRとも称される。
【0004】
FGFR2の阻害剤は、抗体を含み得る。例えば、米国特許第8,101,723B2号は、例えば、ヒトFGFR2-IIIbに結合するが、FGFR2-IIIcにはそれほど十分に結合しない、または結合しない、及びその逆のモノクローナル抗体を記載している。米国特許公開第2015-0050273A1号は、FGFR2-IIIbに結合するある特定のアフコシル化抗体を記載している。本開示は、例えば、米国特許第8,101,723B2号及び米国特許公開第2015-0050273A1号に記載される抗体に使用され得る製剤を記載している。
【0005】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される抗FGFR2抗体が液体製剤の形態で調製され、数ヶ月の貯蔵後に安定したままであり、例えばIV注入によって静脈内投与されることを可能にする製剤条件が、本明細書で特定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第8,101,723号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2015/0050273号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Ornitz et al.,J.Biol.Chem.271:15292,1996
【非特許文献2】Miki et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:246,1992
【発明の概要】
【0008】
本開示は、例えば、i)10~30mg/mLの抗体、ii)5~40mMのヒスチジン、クエン酸塩、またはリン酸塩のうちの1つ以上から選択される緩衝液、iii)130~170mMのアルギニンまたは250~290mMのスクロース、及びiv)0.002%~0.1%のポリソルベート20またはポリソルベート80を含む、抗FGFR2抗体の薬学的製剤を包含し、製剤は、5.0~6.5のpHを有し、抗FGFR2抗体は、a)配列番号2の配列を含む重鎖及び配列番号3の配列を含む軽鎖を含む抗体、b)配列番号6の配列を含む重鎖(HC)超可変領域1(HVR1)、配列番号7の配列を含むHC HVR2、及び配列番号8の配列を含むHC HVR3を含む重鎖と、配列番号9の配列を含む軽鎖(LC)HVR1、配列番号10の配列を含むLC HVR2、及び配列番号11の配列を含むLC HVR3を含む軽鎖とを含む抗体、ならびにc)配列番号4の配列を含む可変領域配列を含む重鎖、及び配列番号5の配列を含む軽鎖可変領域配列を含む軽鎖を含む抗体から選択される。いくつかの実施形態では、製剤は、以下の特性のうちの1つ以上を有する:(a)すぐに使用できる液体製剤である、(b)患者への投与前に凍結乾燥されない、(c)単回使用バイアル内に収容される、(d)製剤中のタンパク質凝集は、5℃で6ヶ月間の貯蔵後に2.0%を超えて増加しない、(e)製剤中のタンパク質凝集は、25℃で3ヶ月間の貯蔵後に2.0%または2.5%を超えて増加しない、(f)製剤中のタンパク質凝集は、40℃で3ヶ月間の貯蔵後に7.0%を超えて増加しない、(g)製剤中の荷電タンパク質多様体は、5℃で6ヶ月間の貯蔵後に5%を超えて変化しない、(h)製剤中のタンパク質凝集は、-70℃で5回の凍結融解サイクル後に2.0%を超えて増加しない、(i)製剤中のタンパク質凝集は、500rpmで72時間の機械的ストレス後に2.0%を超えて増加しない、(j)静脈内投与前に生理食塩水溶液中で希釈される、(k)(例えば、静脈内注入によって)静脈内投与される、及び(l)ヒト血漿と等張性である。
【0009】
場合によっては、上記製剤は、10~15mg/mL、15~20mg/mL、20~25mg/mL、18~22mg/mL、10mg/mL、11mg/mL、12mg/mL、13mg/mL、14mg/mL、15mg/mL、16mg/mL、17mg/mL、18mg/mL、19mg/mL、20mg/mL、21mg/mL、22mg/mL、23mg/mL、24mg/mL、または25mg/mLの抗FGFR2抗体を含む。場合によっては、製剤は、10~40mM、10~30mM、15~25mM、10~20mM、20~30mM、18~22mM、10mM、15mM、16mM、17mM、18mM、19mM、20mM、21mM、22mM、23mM、24mM、25mM、26mM、27mM、28mM、29mM、または30mMの緩衝液を含む。いくつかの実施形態では、緩衝液は、ヒスチジン緩衝液である。いくつかの実施形態では、製剤は、130~150mM、150~170mM、140~160mM、130mM、135mM、140mM、145mM、150mM、155mM、160mM、165mM、または170mMのアルギニンを含む。場合によっては、アルギニンを含む製剤は、スクロースを含まない。いくつかの実施形態では、アルギニンを含む製剤のpHは、5.0~7.0、5.0~6.0、5.5~6.0、5.5~6.5、5.5~5.9、5.6~5.8、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、または6.5である。場合によっては、製剤のpHは、5.5~5.9、5.6~5.8、5.6、5.7、5.8、5.9、または6.0である。いくつかの実施形態では、製剤は、260~280mM、250mM、260mM、270mM、280mM、290mMのスクロースを含む。いくつかのそのような場合には、スクロースを含む製剤は、アルギニンを含まない。いくつかの実施形態では、スクロースを含む製剤のpHは、5.0~7.0、5.0~6.0、5.5~6.0、5.5~5.9、5.6~5.8、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、または6.5である。いくつかの実施形態では、製剤のpHは、5.8~6.2、5.9~6.1、5.9、6.0、または6.1である。
【0010】
上記製剤のうちのいずれかはまた、0.01~0.1%、0.005~0.05%、0.002%、0.003%、0.004%、0.005%、0.006%、0.007%、0.008%、0.009%、0.01%、0.02%、0.03%、0.04%、0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%、または0.1%のポリソルベート20または80を含み得る。場合によっては、製剤は、0.01~0.1%、0.005~0.05%、0.002%、0.003%、0.004%、0.005%、0.006%、0.007%、0.008%、0.009%、0.01%、0.02%、0.03%、0.04%、0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%、または0.1%のポリソルベート20を含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、製剤は、抗FGFR2抗体;クエン酸塩、リン酸塩、またはヒスチジン緩衝液;アルギニンまたはスクロース;及びポリソルベート20または80から本質的になる。いくつかのそのような場合には、製剤は、抗FGFR2抗体、ヒスチジン、アルギニンまたはスクロース、及びポリソルベート20から本質的になる。
【0012】
本開示はまた、例えば、抗FGFR2抗体の薬学的製剤を含み、製剤は、i)10~25mg/mLの抗FGFR2抗体、ii)10~30mMのヒスチジン緩衝液、iii)140~160mMのアルギニン、及びiv)0.005%~0.05%のポリソルベート20を含む、使用前に凍結乾燥されていない液体製剤であり、製剤は、5.6~5.8のpHを有する。本開示はまた、例えば、抗FGFR2抗体の薬学的製剤を含み、製剤は、i)10~25mg/mLの抗FGFR2抗体、ii)20mMのヒスチジン緩衝液、iii)150mMのアルギニン、及びiv)0.01%のポリソルベート20を含む、使用前に凍結乾燥されていない液体製剤であり、製剤は、5.7のpHを有する。本明細書の実施形態は、i)20mg/mLの抗FGFR2抗体、ii)20mMのL-ヒスチジン、iii)150mMのL-アルギニン、iv)0.01%のポリソルベート20を含む、抗線維芽細胞増殖因子受容体2(FGFR2)抗体の薬学的製剤をさらに含み、薬学的製剤は、5.7のpHを有し、使用前に凍結乾燥されていない液体製剤である。これらの場合のいずれにおいても、いくつかの実施形態では、製剤は、抗FGFR2抗体、ヒスチジン、アルギニン、及びポリソルベート20から本質的になる。いくつかのそのような実施形態では、抗FGFR2抗体は、a)配列番号2の配列を含む重鎖及び配列番号3の配列を含む軽鎖を含む抗体、b)配列番号6の配列を含む重鎖(HC)超可変領域1(HVR1)、配列番号7の配列を含むHC HVR2、及び配列番号8の配列を含むHC HVR3を含む重鎖と、配列番号9の配列を含む軽鎖(LC)HVR1、配列番号10の配列を含むLC HVR2、及び配列番号11の配列を含むLC HVR3を含む軽鎖とを含む抗体、ならびにc)配列番号4の配列を含む可変領域配列を含む重鎖、及び配列番号5の配列を含む軽鎖可変領域配列を含む軽鎖を含む抗体から選択され得る。上記の薬学的製剤は、以下の特性のうちの1つ以上を有し得る:(a)単回使用バイアル内に収容される、(b)製剤中のタンパク質凝集は、5℃で6ヶ月間の貯蔵後に2.0%を超えて増加しない、(c)製剤中のタンパク質凝集は、25℃で3ヶ月間の貯蔵後に2.0%または2.5%を超えて増加しない、(d)製剤中のタンパク質凝集は、40℃で3ヶ月間の貯蔵後に7.0%を超えて増加しない、(e)製剤中の荷電タンパク質多様体は、5℃で6ヶ月間の貯蔵後に5%を超えて変化しない、(f)製剤中のタンパク質凝集は、-70℃で5回の凍結融解サイクル後に2.0%を超えて増加しない、(g)製剤中のタンパク質凝集は、500rpmで72時間の機械的ストレス後に2.0%を超えて増加しない、(h)静脈内投与前に生理食塩水溶液中で希釈される、(i)(例えば、静脈内注入によって)静脈内投与される、及び(j)ヒト血漿と等張性である。10~25mg/mLの抗体を含む上記の薬学的製剤は、より具体的には、10~15mg/mL、15~20mg/mL、20~25mg/mL、18~22mg/mL、10mg/mL、11mg/mL、12mg/mL、13mg/mL、14mg/mL、15mg/mL、16mg/mL、17mg/mL、18mg/mL、19mg/mL、20mg/mL、21mg/mL、22mg/mL、23mg/mL、24mg/mL、または25mg/mLの抗FGFR2抗体を含み得る。
【0013】
本開示はまた、例えば、抗FGFR2抗体の薬学的製剤を含み、製剤は、i)10~25mg/mLの抗FGFR2抗体、ii)10~30mMのヒスチジン緩衝液、iii)260~280mMのスクロース、及びiv)0.005%~0.05%のポリソルベート20を含む、使用前に凍結乾燥されていない液体製剤であり、製剤は、5.8~6.2のpHを有する。本開示はまた、例えば、抗FGFR2抗体の薬学的製剤を含み、製剤は、i)10~25mg/mLの抗FGFR2抗体、ii)20mMのヒスチジン緩衝液、iii)270mMのスクロース、及びiv)0.01%のポリソルベート20を含む、使用前に凍結乾燥されていない液体製剤であり、製剤は、6.0のpHを有する。さらなる実施形態では、薬学的製剤は、i)20mg/mLの抗FGFR2抗体、ii)20mMのL-ヒスチジン、iii)270mMのスクロース、及びiv)0.01%のポリソルベート20を含んでよく、製剤は、6.0のpHを有し、使用前に凍結乾燥されていない液体製剤である。いくつかのそのような実施形態では、製剤は、抗FGFR2抗体、ヒスチジン、スクロース、及びポリソルベート20から本質的になる。いくつかのそのような実施形態では、抗FGFR2抗体は、a)配列番号2の配列を含む重鎖及び配列番号3の配列を含む軽鎖を含む抗体、b)配列番号6の配列を含む重鎖(HC)超可変領域1(HVR1)、配列番号7の配列を含むHC HVR2、及び配列番号8の配列を含むHC HVR3を含む重鎖と、配列番号9の配列を含む軽鎖(LC)HVR1、配列番号10の配列を含むLC HVR2、及び配列番号11の配列を含むLC HVR3を含む軽鎖とを含む抗体、ならびにc)配列番号4の配列を含む可変領域配列を含む重鎖、及び配列番号5の配列を含む軽鎖可変領域配列を含む軽鎖を含む抗体から選択され得る。上記の薬学的製剤は、以下の特性のうちの1つ以上を有し得る:(a)単回使用バイアル内に収容される、(b)製剤中のタンパク質凝集は、5℃で6ヶ月間の貯蔵後に2.0%を超えて増加しない、(c)製剤中のタンパク質凝集は、25℃で3ヶ月間の貯蔵後に2.0%または2.5%を超えて増加しない、(d)製剤中のタンパク質凝集は、40℃で3ヶ月間の貯蔵後に7.0%を超えて増加しない、(e)製剤中の荷電タンパク質多様体は、5℃で6ヶ月間の貯蔵後に5%を超えて変化しない、(f)製剤中のタンパク質凝集は、-70℃で5回の凍結融解サイクル後に2.0%を超えて増加しない、(g)製剤中のタンパク質凝集は、500rpmで72時間の機械的ストレス後に2.0%を超えて増加しない、(h)静脈内投与前に生理食塩水溶液中で希釈される、(i)(例えば、静脈内注入によって)静脈内投与される、及び(j)ヒト血漿と等張性である。10~25mg/mLの抗体を含む上記の薬学的製剤は、より具体的には、10~15mg/mL、15~20mg/mL、20~25mg/mL、18~22mg/mL、10mg/mL、11mg/mL、12mg/mL、13mg/mL、14mg/mL、15mg/mL、16mg/mL、17mg/mL、18mg/mL、19mg/mL、20mg/mL、21mg/mL、22mg/mL、23mg/mL、24mg/mL、または25mg/mLの抗FGFR2抗体を含み得る。
【0014】
本開示のいくつかの実施形態では、薬学的製剤は、スクロース以外の糖、糖アルコール、抗FGFR2抗体以外のタンパク質種、ポリソルベート20またはポリソルベート80以外の界面活性剤、アルギニン及びヒスチジン以外のアミノ酸、Cu2+、Mg2+、及びMn2+のうちの1つ以上を含まない場合がある。本開示の任意の実施形態では、製剤は、単回使用バイアル内に収容され得る。
【0015】
本開示はまた、有効量の本明細書の薬学的製剤を患者に投与することを含む、固形腫瘍の治療を必要とする患者においてそれを行う方法を包含する。いくつかの実施形態では、製剤は、患者に(例えば、静脈内注入によって)静脈内投与される。
【0016】
本明細書の製剤のいずれにおいても、抗FGFR2抗体は、任意にアフコシル化され得る。本明細書の製剤のいずれにおいても、抗FGFR2抗体は、全長抗体であり得るか、またはFv、一本鎖Fv(scFv)、Fab、Fab′、または(Fab′)2などの抗原結合断片であり得る。本明細書の製剤のいずれにおいても、抗体は、キメラ、ヒト化、またはヒトであり得る。本明細書の製剤のいずれにおいても、抗体は、二重特異性、多重特異性、またはコンジュゲートであり得る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】異なる濃度パーセントの過酸化水素(0.01%、0.1%、及び1.0%ならびに0%(対照))で抗体をインキュベートした後の、Biacore(登録商標)アッセイにおける、アフコシル化抗FGFR2IIIb抗体のFGFR2IIIbまたはタンパク質Aへの平均結合を示す。抗FGFR2IIIb抗体の過酸化水素でのインキュベーションは、FGFR2IIIbへの結合に干渉しなかったが、タンパク質Aの結合にある程度干渉した。
【
図2】pH4.0、5.0、及び6.0の抗FGFR2IIIb抗体のクエン酸塩/NaCl製剤の示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムを示す。データは、この範囲での製剤の展開温度が、pHとともに増加することを示す。
【
図3】以下の実施例5で考察されるように、pH4、5、6、7、及び8における抗FGFR2IIIb抗体スクリーニング試料のサイズ排除高性能液体クロマトグラフィーSE-HPLCクロマトグラムを示す。
【
図4】pH4~8の範囲のSE-HPLCによって決定された、及び40℃で0~2ヶ月の貯蔵期間にわたる凝集体形成に対する(クエン酸塩またはリン酸塩NaCl緩衝液中の)緩衝液pHの影響を示す。図は、他のpHと比較して、pH4における凝集体の大きな%増加を示す。
【
図5】pH4~8の範囲のSE-HPLCによって決定された、及び40℃で0~2ヶ月の貯蔵期間にわたるクリップ(断片)形成に対する(クエン酸塩またはリン酸塩NaCl緩衝液中の)緩衝液pHの影響を示す。図は、他のpHと比較して、pH4におけるクリップ形成の大きな%増加を示す。
【
図6】pH4~8の範囲のSE-HPLCによって決定された、及び25℃で0~2ヶ月の貯蔵期間にわたる凝集体形成に対する(クエン酸塩またはリン酸塩NaCl緩衝液中の)緩衝液pHの影響を示す。図は、pH8製剤を除いて、この期間にわたって全ての製剤が一般に3.0%未満の凝集体を含んでおり、その凝集体は、2ヶ月間の貯蔵にわたって約2.5%~約4%に増加したことを示す。
【
図7】pH4~8の範囲のSE-HPLCによって決定された、及び25℃で0~2ヶ月の貯蔵期間にわたるクリップ(断片)形成に対する(クエン酸塩またはリン酸塩NaCl緩衝液中の)緩衝液pHの影響を示す。図は、0.5%未満のクリップのままである他のpHと比較してpH4でのクリップの1.5%近くまで増加したことを示している。
【
図8】荷電多様体プロファイルを評価するための抗FGFR2IIIb製剤の代表的な弱カチオン交換(WCX)-HPLCクロマトグラムを示す。
【
図9】pH4~8の範囲のWCX-HPLCによって決定された、及び25℃で0~2ヶ月の貯蔵期間にわたる酸性多様体形成に対する(クエン酸塩またはリン酸塩NaCl緩衝液中の)緩衝液pHの影響を示す。pH8製剤において酸性多様体の比較的大きな%増加があり、pH7製剤は、次に最大の%増加を示した。
【
図10】pH4~8の範囲のWCX-HPLCによって決定された、及び25℃で0~2ヶ月の貯蔵期間にわたる塩基性多様体形成に対する(クエン酸塩またはリン酸塩NaCl緩衝液中の)緩衝液pHの影響を示す。pH8製剤において塩基性多様体の比較的大きな%減少があり、pH7製剤は、次に最大の%減少を示した。最も小さい%変化は、pH4で観察された。
【
図11】pH4~8の範囲のWCX-HPLCクロマトグラムにおける、及び25℃で0~2ヶ月の貯蔵期間にわたるメインピークのサイズに対する(クエン酸塩またはリン酸塩NaCl緩衝液中の)緩衝液pHの影響を示す。メインピークの最大%変化が、pH4及びpH8製剤において観察され、pH5及びpH6及びpH7製剤において最小%変化が観察された。
【
図12】500rpmで72時間振盪した後の、以下の表8に示される7つの抗FGFR2IIIb製剤の溶液の外観を示す。
【
図13】70℃~周囲温度で5回の凍結融解サイクルに対する抗FGFR2IIIb安定性に対する賦形剤の影響を示す。製剤は、表8に提供されるとおりである。ヒスチジン/NaCl製剤(表8の4番)のみが、複数の凍結融解サイクルで凝集体の増加を示すように見えた。
【
図14】SE-HPLCによって決定されるように、40℃で1ヶ月間にわたる抗FGFR2IIIb凝集体形成に対する緩衝液及びバルキング剤の影響を示す。
【
図15】SE-HPLCによって決定されるように、40℃で3ヶ月間にわたる抗FGFR2IIIb凝集体形成に対する緩衝液及びバルキング剤の影響を示す。
【
図16】WCX-HPLCによって決定される、25℃での3ヶ月間にわたる抗FGFR2IIIb酸性多様体形成に対する緩衝液及びバルキング剤の影響を示す。
【
図17】25℃で3ヶ月間にわたるメインWCX-HPLCピークのサイズに対する緩衝液及びバルキング剤の影響を示す。
【
図18】25℃で3ヶ月間にわたるメインWCX-HPLCピークのサイズに対する緩衝液及びバルキング剤の影響を示す。
【
図19】SE-HPLCによる凝集体の分析によって決定される、pH5.5~6.5のヒスチジン/アルギニンまたはヒスチジン/スクロース抗FGFR2IIIb抗体製剤に対する72時間にわたる機械的ストレスの影響を示す。
【
図20】SE-HPLCによるクリップ(断片)の分析によって決定される、pH5.5~6.5のヒスチジン/アルギニンまたはヒスチジン/スクロース抗FGFR2IIIb抗体製剤に対する72時間にわたる機械的ストレスの影響を示す。
【
図21】SE-HPLCによる凝集体の分析によって決定される、pH5.5~6.5でのヒスチジン/アルギニンまたはヒスチジン/スクロース抗FGFR2IIIb抗体製剤に対する-70℃~周囲温度での5サイクルの凍結融解の影響を示す。
【
図22】SE-HPLCによるクリップ(断片)の分析によって決定される、pH5.5~6.5でのヒスチジン/アルギニンまたはヒスチジン/スクロース抗FGFR2IIIb抗体製剤に対する-70℃~周囲温度での5サイクルの凍結融解の影響を示す。
【
図23】20mMのヒスチジン、150mMのアルギニン、及び0.01%のポリソルベート20を含むヒスチジン/アルギニン製剤中の凝集体形成に対するpH5.5~6.5の間のpHの効果を示す。Aは、pH5.5~6.0において、40℃で1ヶ月後、凝集体%が概して3%未満のままであったことを示す、凝集体形成を示す。Bは、pH5.5~6.0において、25℃で3ヶ月後、凝集体%が概して2.5%未満のままであったことを示す、凝集体形成を示す。Cは、全てのpHにおいて、5℃で6ヶ月後、凝集体%が概して約1.5%及び2%未満のままであったことを示す、凝集体形成を示す。
【
図24】20mMのヒスチジン、150mMのアルギニン、及び0.01%のポリソルベート20を含むヒスチジン/アルギニン製剤中のクリップ(断片)に対するpH5.5~6.5の間のpHの効果を示す。Aは、全てのpHにおいて、40℃で1ヶ月後、%クリップがpH6で概して約1%または1%未満のままであったことを示す、クリップ(断片)形成を示す。Bは、全てのpHにおいて、25℃で3ヶ月後、%クリップが概して1.5%未満のままであったことを示す、クリップ形成を示す。Cは、全てのpHにおいて、5℃で6ヶ月後、%クリップが概して1%未満のままであり、pH5.7または6.0での製剤中の%クリップが概して0.5%未満のままであったことを示す、クリップ形成を示す。
【
図25】20mMのヒスチジン、270mMのスクロース、及び0.01%のポリソルベート20を含むヒスチジン/スクロース製剤中の凝集体形成に対するpH5.5~6.5の間のpHの効果を示す。
図25Aは、pH5.5~6.0において、40℃で1ヶ月後、%凝集体が概して4%未満のままであり、pH6.0及び6.3では3%未満であり、pH5.5及び5.7では約2.5%であることを示す、凝集体形成を示す。Bは、pH5.5~5.7において、25℃で3ヶ月後、%凝集体が概して2.0%未満のままであり、pH6.0において、%凝集体が2.5%未満のままであることを示す、凝集体形成を示す。Cは、全てのpHにおいて、5℃で6ヶ月後、%凝集体が概して約1.5%及び2%未満のままであったことを示す、凝集体形成を示す。
【
図26】20mMのヒスチジン、270mMのスクロース、及び0.01%のポリソルベート20を含むヒスチジン/スクロース製剤中のクリップ(断片)に対するpH5.5~6.5の間のpHの効果を示す。Aは、全てのpHにおいて、40℃で1ヶ月後、%クリップが概して2%未満またはpH5.5~6.3において1.5%未満のままであったことを示す、クリップ(断片)形成を示す。Bは、全てのpHにおいて、25℃で3ヶ月後、%クリップが概して3.5%未満のままであったが、そのクリップ形成が、pH5.5製剤に関して1、2、及び3ヶ月で最も低いパーセンテージ、ならびにpH6.3製剤に関しては毎月最も高いパーセンテージでpH依存性であることを示す、クリップ形成を示す。Cは、6.0以下のpHで、5℃で6ヶ月後、%クリップが概して1%未満のままであることを示す、クリップ形成を示す。
【
図27】20mMのヒスチジン、270mMのスクロース、及び0.01%のポリソルベート20を含むヒスチジン/スクロース製剤中の酸性多様体形成に対するpH5.5~6.5の間のpHの効果を示す。Aは、pH5.5~6.0において、40℃で1ヶ月後、酸性多様体%が概して40%未満のままであったことを示す、酸性多様体形成を示す。Bは、pH5.5~6.0において、25℃で3ヶ月後、酸性多様体%が概して30.0%未満のままであったことを示す、酸性多様体形成を示す。Cは、全てのpHにおいて、5℃で6ヶ月後、%酸性多様体が概して25%未満のままであったことを示す、酸性多様体形成を示す。
【
図28】20mMのヒスチジン、150mMのアルギニン、及び0.01%のポリソルベート20を含むヒスチジン/アルギニン製剤中の酸性多様体形成に対するpH5.5~6.5の間のpHの効果を示す。Aは、pH5.5~6.0において、40℃で1ヶ月後、酸性多様体%が概して40%未満のままであったことを示す、酸性多様体形成を示す。Bは、pH5.5~6.0において、25℃で3ヶ月後、酸性多様体%が概して30.0%未満のままであったことを示す、酸性多様体形成を示す。Cは、全てのpHにおいて、5℃で6ヶ月後、%酸性多様体が概して25%未満のままであったことを示す、酸性多様体形成を示す。
【
図29】20mMのヒスチジン、270mMのスクロース、及び0.01%のポリソルベート20を含むヒスチジン/スクロース製剤中の塩基性多様体形成に対するpH5.5~6.5の間のpHの効果を示す。Aは、pH5.5~6.0において、40℃で1ヶ月後、%塩基性多様体がほとんど10%~20%の間のままであったことを示す、塩基性多様体形成を示す。Bは、pH5.5~6.0において、25℃で3ヶ月後、%塩基性多様体が概して20%~30%の間のままであったことを示す、塩基性多様体形成を示す。Cは、全てのpHにおいて、5℃で6ヶ月後、%塩基性多様体が概して25%~30%の間のままであったことを示す、塩基性多様体形成を示す。
【
図30】20mMのヒスチジン、150mMのアルギニン、及び0.01%のポリソルベート20を含むヒスチジン/アルギニン製剤中の塩基性多様体形成に対するpH5.5~6.5の間のpHの効果を示す。Aは、pH5.5~6.0において、40℃で1ヶ月後、%塩基性多様体がほとんど10%~20%の間のままであったことを示す、塩基性多様体形成を示す。Bは、pH5.5~6.0において、25℃で3ヶ月後、%塩基性多様体が概して15%~25%の間のままであったことを示す、塩基性多様体形成を示す。
図30Cは、全てのpHにおいて、5℃で6ヶ月後、%塩基性多様体が概して25%~30%の間のままであったことを示す、塩基性多様体形成を示す。
【0018】
上記の図のさらなる詳細については、本明細書の実施例セクションを参照されたい。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書で使用されるセクション見出しは、単なる組織的目的のためであり、記載される主題を限定するものとして解釈されるべきではない。特許出願及び刊行物を含む本明細書に引用される全ての参照文献は、任意の目的のために参照によりそれら全体が本明細書に組み込まれる。
【0020】
定義
別様に定義されない限り、本発明に関連して使用される科学用語及び技術用語は、当業者によって一般に理解される意味を有するものとする。さらに、文脈によって別段の必要がない限り、単数形の用語は複数を含み、複数形の用語は単数を含むものとする。
【0021】
本出願において、「または」の使用は、特に明記しない限り、「及び/または」を意味する。複数の従属請求項の文脈において、「または」の使用は、代替案においてのみ、2つ以上の先行する独立または従属請求項を指す。また、「要素」または「構成要素」などの用語は、特に明記しない限り、1つのユニットを含む要素及び構成要素、ならびに2つ以上のサブユニットを含む要素及び構成要素の両方を包含する。
【0022】
本明細書に記載されるように、任意の濃度範囲、パーセンテージ範囲、比率範囲または整数範囲は、別段の指示がない限り、列挙される範囲内の任意の整数の値、及び適切な場合、その端数(例えば、整数の10分の1及び100分の1)を含むと理解されるべきである。
【0023】
単位、接頭辞、及び記号は、Systeme International de Unites(SI)により受け入れられる形式で表される。数値範囲には、範囲を定義する数値が含まれる。測定値は、有意な桁と測定に関連する誤差を考慮して、おおよその値であると理解される。
【0024】
本明細書に提供される見出しは、本明細書全体を参照することによって有することができ、本開示の様々な態様の制限ではない。したがって、直下に定義される用語は、本明細書全体を参照することによってより完全に定義される。
【0025】
本開示に従って利用される場合、以下の用語は、別段の指示がない限り、以下の意味を有すると理解されるものとする。
【0026】
「投与すること」は、当業者に既知の様々な方法及び送達系のうちのいずれかを使用して、治療剤を含む組成物を対象に物理的に導入することを指す。抗体の一般的な投与経路としては、例えば、注射または注入による静脈内(IV)、筋肉内、皮下(SC)、腹腔内、脊髄、または他の非経口投与経路が挙げられる。本明細書で使用される場合、「非経口投与」という語句は、腸内及び局所投与以外、通常、注射による投与様式を意味し、静脈内、筋肉内、動脈内、くも膜下腔内、リンパ内、病変内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、嚢下、くも膜下、脊髄内、硬膜外、胸骨内注射及び注入、ならびにインビボ電気穿孔を含むが、これらに限定されない。非-非経口経路としては、例えば、経口、鼻腔内、膣、直腸、舌下、または局所等の局所、表皮、または粘膜投与経路が挙げられる。投与はまた、例えば、1回、複数回、及び/または1つ以上の延長期間にわたって行うこともできる。
【0027】
本明細書で使用される「薬学的製剤」または「治療製剤」は、薬学的使用、例えば、直接あるいは少なくとも1つのさらなる組成物で再構成、希釈、混合、もしくは溶解された後、または凍結状態から融解された後のいずれかによる患者への投与など、好適な抗体などの治療剤を含む組成物を指す。本明細書で使用される場合、「すぐに使用できる」製剤は、患者に直接投与することができるため、投与前に希釈する、再構成する、凍結状態から融解する、溶液中に溶解する、または他の成分と混合する必要がない製剤を意味する。
【0028】
本明細書で使用される場合、「皮下投与」は、皮膚の下に治療薬を投与することを指す。場合によっては、皮下投与(略してSCまたはSubQ)は、シリンジもしくはポンプに接続された針を使用して、または特殊なタイプのインジェクタデバイス(例えば、EpiPen(登録商標)等)を使用して行うことができる。場合によっては、SC投与は、皮膚層と筋肉層との間の組織内に、場合によっては筋肉層内に治療薬を放出し得る。
【0029】
本明細書で使用される場合、「注射可能」製剤は、SC注射による投与に好適な製剤である。
【0030】
本明細書で使用される場合、「静脈内投与」は、対象の静脈に治療薬を直接投与することを指す。静脈内投与は、「静脈内注入」によるものであり得る。注入とは、患者に治療薬を提供するために重力によって供給される圧力の使用を指す。
【0031】
本明細書の製剤は、「バイアル」に収容され得る。本明細書における「バイアル」は、液体薬学的製剤を保持するのに好適な任意の小さな容器を指す。場合によっては、「バイアル」は、シリンジまたはポンプに接続されてもよく、または「バイアル」は、例えば、バイアルの内容物を患者に注射するための投与デバイスの一部であってもよい。いくつかの実施形態では、製剤は、「単回使用バイアル」に含まれ得る。「単回使用バイアル」は、内容物が投与された後、バイアル全体またはバイアルの残りの内容物が廃棄される「バイアル」を指す。
【0032】
「凍結乾燥された」という用語は、製剤、材料、または組成物に適用される場合、凍結乾燥された製剤、材料、または組成物を指す。
【0033】
本明細書で使用される場合、「液体製剤」という用語は、例えば、溶液または液体エマルジョンを含む、液体状態にある製剤を意味する。
【0034】
本明細書で使用される場合、「緩衝液」は、溶液または製剤に添加されるとき、希釈時または酸性もしくは塩基性成分の添加時のpHの著しい変化に抵抗する物質である。本明細書における例示的な緩衝液は、ヒスチジン、クエン酸塩、及びリン酸緩衝液を含む。
【0035】
本明細書で言及される「等張性」製剤は、製剤が導入されるヒト体液、またはヒト血漿もしくはヒトリンパ液などの投与領域に存在するヒト体液とほぼ同等の浸透圧を有する製剤である。
【0036】
本明細書で使用される製剤中の「凝集」または「タンパク質凝集」は、製剤中のポリペプチド分子の凝集を指す。二量体または多量体などの凝集状態にある製剤中のポリペプチドの量は、例えば、製剤の総ポリペプチド含有量のパーセンテージとして表され得る。凝集は、例えば、サイズまたは分子量に基づいて溶液中のタンパク質を分離するサイズ排除クロマトグラフィーまたは他の技法によって検出され得る。そのような技法では、「凝集体」の量は、製剤の主要ポリペプチド種(例えば、抗FGFR2-IIIb抗体)の少なくとも2倍の分子量を有する製剤中のポリペプチドの量に等しくてもよい。製剤の主要ポリペプチド種の2倍の分子量を有する種は、本明細書において「二量体」と見なされ得る一方で、二量体の分子量よりも大きい分子量を有する検出可能な種は、「より高い分子量の凝集体」または「多量体」または同様の用語と称され得る。
【0037】
本明細書における製剤の貯蔵を指す場合、「暗所中で」という語句は、製剤が周囲光及び紫外線への曝露から保護されるように貯蔵されることを意味する。例えば、製剤は、暗い部屋もしくは空間に、またはそのような光から製剤を保護するパッケージ内に、またはそのような光から内容物を保護する材料で作製される壁を有するか、もしくは該材料で覆われるバイアル内に貯蔵され得る。
【0038】
本明細書のいくつかの実施形態では、薬学的製剤は、1つ以上のタイプの賦形剤または成分を「含まない」。この文脈において「含まない」という表現は、除外された成分が、例えば、他の意図的に添加された成分に見られる汚染または不純物のために、微量レベルを超えて存在しないことを意味する。
【0039】
本明細書における製剤の成分の混合物を指す場合、「から本質的になる」という用語は、明示的に列挙されるもの以外の成分が存在し得るが、そのような成分は、タンパク質濃度、粘度、熱安定性、浸透圧濃度、及びpHを含む配合物の基本的な特徴が変化しないように、微量またはそうでなければ十分に低い量でのみ見出されることを示す。
【0040】
「ポリペプチド」及び「タンパク質」という用語は、アミノ酸残基のポリマーを指すように互換的に使用され、最小長さに限定されない。そのようなアミノ酸残基のポリマーは、天然または非天然アミノ酸残基を含有し得、限定されないが、アミノ酸残基のペプチド、オリゴペプチド、二量体、三量体、及び多量体を含む。全長タンパク質及びその断片の両方が、定義に包含される。これらの用語はまた、ポリペプチドの発現後修飾、例えば、グリコシル化、シアリル化、アセチル化、リン酸化等も含む。さらに、本発明の目的のために、「ポリペプチド」は、タンパク質が所望の活性を維持する限り、天然配列に対する欠失、付加、及び置換(概して保存的性質)などの修飾を含むタンパク質を指す。これらの修飾は、部位特異的突然変異誘発を介して意図的であってもよく、または例えばPCR増幅に起因するタンパク質またはエラーを産生する宿主の突然変異を介して偶発的であってもよい。
【0041】
「FGFR2」は、非ヒトFGFR2が明示的に示されない限り(例えば、「マウスFGFR2」)、IIIa、IIIb及びIIIcスプライス形態などのその代替スプライス形態のうちのいずれかを含むヒト線維芽細胞増殖因子受容体2を指す。FGFR2という用語は、野生型FGFR2、及びいくつかのがん細胞に見られる、FGFR2活性化突然変異体形態、例えばFGFR2-S252Wなどの天然に存在する突然変異体形態を包含する。「FGFR2-IIIb」または「FGFR2b」は、線維芽細胞増殖因子受容体2IIIbスプライス形態を指すように互換的に使用される。例示的なヒトFGFR2-IIIbは、2013年7月7日付けのGenBank受託番号NP_075259.4に示される。非限定的な例示的成熟ヒトFGFR2-IIIbアミノ酸配列を、配列番号1に示す。「FGFR2-IIIc」または「FGFR2c」は、線維芽細胞増殖因子受容体2IIIcスプライス形態を指すように互換的に使用される。例示的なヒトFGFR2-IIIcは、2013年7月7日付けのGenBank受託番号NP_000132.3に示される。非限定的な例示的成熟FGFR2-IIIcアミノ酸配列を、配列番号13に示す。
【0042】
抗FGFR2-IIIb抗体に関して、リガンドの「結合をブロックする」または「結合を阻害する」という用語は、FGFR2-IIIbとFGFR2リガンド、例えばFGF1またはFGF2との間の相互作用を阻害する能力を指す。そのような阻害は、例えば、FGFR2-IIIb上の重複結合部位、及び/またはリガンド親和性を変化させる抗体によって誘導されるFGFR2-IIIbの立体構造変化のために、リガンド結合への直接干渉を含む任意の機構を通じて生じ得る。
【0043】
「親和性」または「結合親和性」は、分子(例えば、抗体)の単一の結合部位とその結合パートナー(例えば、抗原)との間の非共有相互作用の合計の強度を指す。いくつかの実施形態では、「結合親和性」とは、結合対(例えば、抗体及び抗原)のメンバー間の1:1の相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。分子XのパートナーYに対する親和性は、一般に、解離定数(Kd)によって表され得る。
【0044】
本明細書で使用される「抗体」という用語は、重鎖の少なくとも超可変領域(HVR)H1、H2、及びH3、ならびに軽鎖のL1、L2、及びL3を含む分子を指し、この分子は、抗原に結合することができる。抗体という用語としては、全長の重鎖及び軽鎖、ならびにFv、一本鎖Fv(scFv)、Fab、Fab′、及び(Fab′)2などの抗原に結合することができる断片(本明細書では「抗原結合断片」とも称される)を含む抗体が挙げられるが、これらに限定されない。抗体という用語には、限定されないが、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、及びマウス、ヒト、カニクイザル等の様々な種の抗体も含まれる。それにはまた、小分子薬物、二重特異性抗体、及び多重特異性抗体などの他の分子にコンジュゲートされる抗体も含まれる。
【0045】
「重鎖可変領域」という用語は、重鎖HVR1、フレームワーク(FR)2、HVR2、FR3、及びHVR3を含む領域を指す。いくつかの実施形態では、重鎖可変領域はまた、FR1の少なくとも一部、及び/またはFR4の少なくとも一部を含む。
【0046】
「重鎖定常領域」という用語は、少なくとも3つの重鎖定常ドメインCH1、CH2、及びCH3を含む領域を指す。非限定的な例示的重鎖定常領域としては、γ、δ、及びαが挙げられる。非限定的な例示的重鎖定常領域には、ε及びμも含まれる。各重定常領域は、抗体アイソタイプに対応する。例えば、γ定常領域を含む抗体は、IgG抗体であり、δ定常領域を含む抗体は、IgD抗体であり、α定常領域を含む抗体は、IgA抗体である。さらに、μ定常領域を含む抗体は、IgM抗体であり、ε定常領域を含む抗体は、IgE抗体である。ある特定のアイソタイプは、サブクラスにさらに細分化することができる。例えば、IgG抗体としては、限定されないが、IgG1(γ1定常領域を含む)、IgG2(γ2定常領域を含む)、IgG3(γ3定常領域を含む)、及びIgG4(γ4定常領域を含む)抗体が挙げられ、IgA抗体としては、限定されないが、IgA1(α1定常領域を含む)及びIgA2(α2定常領域を含む)抗体が挙げられ、IgM抗体としては、限定されないが、IgM1及びIgM2が挙げられる。
【0047】
「重鎖」という用語は、リーダー配列の有無にかかわらず、少なくとも重鎖可変領域を含むポリペプチドを指す。いくつかの実施形態では、重鎖は、重鎖定常領域の少なくとも一部を含む。「全長重鎖」という用語は、リーダー配列の有無にかかわらず、重鎖可変領域及び重鎖定常領域を含むポリペプチドを指す。
【0048】
「軽鎖可変領域」という用語は、軽鎖HVR1、フレームワーク(FR)2、HVR2、FR3、及びHVR3を含む領域を指す。いくつかの実施形態では、軽鎖可変領域は、FR1及び/またはFR4も含む。
【0049】
「軽鎖定常領域」という用語は、軽鎖定常ドメインCLを含む領域を指す。非限定的な例示的軽鎖定常領域としては、λ及びκが挙げられる。
【0050】
「軽鎖」という用語は、リーダー配列の有無にかかわらず、少なくとも軽鎖可変領域を含むポリペプチドを指す。いくつかの実施形態では、軽鎖は、軽鎖定常領域の少なくとも一部を含む。「全長軽鎖」という用語は、リーダー配列の有無にかかわらず、軽鎖可変領域及び軽鎖定常領域を含むポリペプチドを指す。
【0051】
「超可変領域」または「HVR」という用語は、配列において超可変であり、及び/または構造的に定義されたループ(「超可変ループ」)を形成する抗体可変ドメインの領域の各々を指す。一般に、天然4鎖抗体は、6つのHVRを含み、VHに3つ(H1、H2、H3)、VLに3つ(L1、L2、L3)を含む。HVRは、一般に、超可変ループ由来及び/または「相補性決定領域」(CDR)由来のアミノ酸残基を含み、後者は、最も高い配列可変性を有し、及び/または抗原認識に関与する。例示的な超可変ループは、アミノ酸残基26~32(L1)、50~52(L2)、91~96(L3)、26~32(H1)、53~55(H2)、及び96~101(H3)で生じる(Chothia and Lesk,J.Mol.Biol.196:901-917(1987).)。例示的なCDR(CDR-L1、CDR-L2、CDR-L3、CDR-H1、CDR-H2、及びCDR-H3)は、L1のアミノ酸残基24~34、L2のアミノ酸残基50~56、L3のアミノ酸残基89~97、H1のアミノ酸残基31~35B、H2のアミノ酸残基50~65、及びH3のアミノ酸残基95~102において生じる(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991))。超可変領域(HVR)及び相補性決定領域(CDR)という用語はいずれも、抗原結合領域を形成する可変領域の部分を指す。
【0052】
本明細書で使用される「キメラ抗体」は、第1の種(マウス、ラット、カニクイザル等)に由来する少なくとも1つの可変領域及び第2の種(ヒト、カニクイザル等)に由来する少なくとも1つの定常領域を含む抗体を指す。いくつかの実施形態では、キメラ抗体は、少なくとも1つのマウス可変領域及び少なくとも1つのヒト定常領域を含む。いくつかの実施形態では、キメラ抗体は、少なくとも1つのカニクイザル可変領域及び少なくとも1つのヒト定常領域を含む。いくつかの実施形態では、キメラ抗体は、少なくとも1つのラット可変領域及び少なくとも1つのマウス定常領域を含む。いくつかの実施形態では、キメラ抗体の可変領域の全ては、第1の種に由来し、キメラ抗体の定常領域の全ては、第2の種に由来する。
【0053】
本明細書で使用される「ヒト化抗体」は、非ヒト可変領域のフレームワーク領域内の少なくとも1つのアミノ酸が、ヒト可変領域由来の対応するアミノ酸に置き換えられた抗体を指す。いくつかの実施形態では、ヒト化抗体は少なくとも1つのヒト定常領域またはその断片を含む。いくつかの実施形態では、ヒト化抗体は、Fab、scFv、(Fab′)2等である。
【0054】
本明細書で使用される場合、「CDR移植抗体」または「HVR移植抗体」は、第1の(非ヒト)種の相補性決定領域(CDR)または超可変領域(HVR)が、第2の(ヒト)種のフレームワーク領域(FR)上に移植されたヒト化抗体を指す。
【0055】
本明細書で使用される「ヒト抗体」は、ヒトにおいて産生される抗体、XenoMouse(登録商標)などのヒト免疫グロブリン遺伝子を含む非ヒト動物で産生される抗体、及びファージディスプレイなどのインビトロ方法を使用して選択される抗体を指し、抗体レパートリーは、ヒト免疫グロブリン配列に基づく。
【0056】
「アフコシル化」抗体または「フコースを欠く」抗体は、その定常領域グリコシル化においてフコースを欠くIgG1またはIgG3アイソタイプ抗体を指す。ヒトIgG1またはIgG3のグリコシル化は、Asn297(N297)において、最大2Gal残基で終結したコアフコシル化二分岐複合体オリゴ糖グリコシル化として生じる。いくつかの実施形態では、アフコシル化抗体は、Asn297においてフコースを欠く。これらの構造は、末端Gal残基の量に応じてG0、G1(α1,6もしくはα1,3)またはG2グリカン残基として指定される。例えば、Raju,T.S.,BioProcess Int.1:44-53(2003)を参照されたい。抗体FcのCHO型グリコシル化は、例えば、Routier,F.H.,Glycoconjugate J.14:201-207(1997)を参照されたい。抗体の集団内で、集団の抗体の5%未満がAsn297でフコースを含む場合、抗体はアフコシル化されると見なされる。
【0057】
「エフェクター機能」は、抗体アイソタイプによって異なる、抗体のFc領域に起因する生物学的活性を指す。抗体エフェクター機能の例としては、Clq結合及び補体依存性細胞毒性(CDC)、Fc受容体結合、抗体依存性細胞媒介性細胞毒性(ADCC)、食作用、細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)の下方制御、及びB細胞活性化が挙げられる。
【0058】
「抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性」または「ADCC」は、ある特定の細胞傷害性細胞(例えば、NK細胞、好中球、及びマクロファージ)上に存在するFc受容体(FcR)に結合した分泌Igが、これらの細胞傷害性エフェクター細胞が抗原を有する標的細胞に特異的に結合し、その後、細胞毒で標的細胞を死滅させることを可能にする細胞傷害性の一形態を指す。ADCCを媒介するための一次細胞であるNK細胞は、FcγRIIIのみを発現する一方で、単球は、FcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIを発現する。造血細胞上のFcR発現は、Ravetch and Kinet,Annu.Rev.Immunol 9:457-92(1991)の464頁の表3に要約される。目的の分子のADCC活性を評価するために、米国特許第5,500,362号もしくは同第5,821,337号または米国特許第6,737,056号(Presta)に記載されるものなどのインビトロADCCアッセイを行ってもよい。そのようなアッセイに有用なエフェクター細胞としては、PBMC及びNK細胞が挙げられる。代替的に、または追加として、目的の分子のADCC活性は、インビボで、例えば、Clynes et al.Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)95:652-656(1998)に開示されるものなどの動物モデルにおいて評価されてもよい。Fc領域アミノ酸配列が変更され、ADCC活性が増加または減少した追加の抗体は、例えば、米国特許第7,923,538号、及び米国特許第7,994,290号に記載されている。
【0059】
「向上したADCC活性」を有する抗体は、親抗体と比較して(抗体と親抗体は、少なくとも1つの構造的態様において異なる)、アッセイで使用されるそのような抗体と親抗体の量が本質的に同じであるときに、インビトロまたはインビボでのADCCの媒介に、より効果的な抗体を指す。いくつかの実施形態では、抗体と親抗体は、同じアミノ酸配列を有するが、親抗体がフコシル化される一方、抗体はアフコシル化される。いくつかの実施形態では、ADCC活性は、米国公開第2015/0050273A1号に開示されているインビトロADCCアッセイを使用して決定することができるが、ADCC活性を決定するための他のアッセイまたは方法、例えば、動物モデルが企図される。他の実施形態では、ADCC活性が向上した抗体は、FcγRIIIAに対する親和性も向上している。いくつかの実施形態では、ADCC活性が向上した抗体は、FcγRIIIA(V158)に対する親和性が向上している。ある特定の実施形態では、ADCC活性が向上した抗体は、FcγRIIIA(F158)に対する親和性が向上している。
【0060】
「FcγRIIIAに対する親和性の向上」は、親抗体よりもFcγRIIIAに対する親和性が高い(場合によっては、CD16aとも称される)抗体を指し、抗体と親抗体は、少なくとも1つの構造的態様において異なる。いくつかの実施形態では、抗体と親抗体は、同じアミノ酸配列を有するが、親抗体がフコシル化される一方、抗体はアフコシル化される。FcγRIIIAに対する親和性を決定するための任意の好適な方法が使用され得る。いくつかの実施形態では、FcγRIIIAに対する親和性は、米国公開第2015/0050273-A1号に記載される方法によって判定される。他の実施形態では、FcγRIIIAに対する親和性が向上した抗体はまた、ADCC活性が向上している。ある特定の実施形態では、FcγRIIIAに対する親和性が向上した抗体は、FcγRIIIA(V158)に対する親和性が向上している。いくつかの実施形態では、FcγRIIIAに対する親和性が向上した抗体は、FcγRIIIA(F158)に対する親和性が向上している。
【0061】
「リーダー配列」という用語は、哺乳動物細胞からのポリペプチドの分泌を促進するポリペプチドのN末端に位置するアミノ酸残基の配列を指す。リーダー配列は、哺乳動物細胞からのポリペプチドの輸出時に切断され、成熟タンパク質を形成してもよい。リーダー配列は、天然であっても合成であってもよく、それらは、それらが結合するタンパク質に対して異種であっても相同であってもよい。非限定的な例示的リーダー配列としては、異種タンパク質由来のリーダー配列が挙げられる。いくつかの実施形態では、抗体は、リーダー配列を欠く。他の実施形態では、抗体は、天然抗体リーダー配列及び異種リーダー配列から選択され得る、少なくとも1つのリーダー配列を含む。
【0062】
本明細書で使用される場合、「単離された」という用語は、それが典型的に自然界に見出される構成要素のうちの少なくともいくつかから分離された分子を指す。例えば、ポリペプチドが、それが産生された細胞の構成要素のうちの少なくともいくつかから分離されるとき、ポリペプチドは、「単離された」と称される。発現後に細胞によってポリペプチドが分泌される場合、ポリペプチドを含有する上清を産生した細胞から物理的に分離することは、ポリペプチドを「単離する」と見なされる。同様に、ポリヌクレオチドは、それが典型的に天然に見出されるより大きなポリヌクレオチド(例えば、DNAポリヌクレオチドの場合はゲノムDNAもしくはミトコンドリアDNA)の一部ではない場合、または例えばRNAポリヌクレオチドの場合は、それが産生された細胞の構成要素のうちの少なくともいくつかから分離される場合、「単離された」と称される。したがって、宿主細胞内のベクターに含まれるDNAポリヌクレオチドは、そのポリヌクレオチドがそのベクターに天然に見出されない限り、「単離された」と称され得る。
【0063】
「対象」及び「患者」という用語は、ヒトを指すように本明細書において互換的に使用される。いくつかの実施形態では、げっ歯類、サル、ネコ、イヌ、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、哺乳動物実験動物、哺乳動物農場動物、哺乳動物スポーツ動物、及び哺乳動物ペットを含むがそれらに限定されない、他の哺乳動物を治療する方法も提供される。
【0064】
「がん」という用語は、本明細書において、異常に高いレベルの増殖及び成長を示す細胞群を指すように使用される。がんは、良性(良性腫瘍とも称される)、前悪性、または悪性であり得る。がん細胞は、固形がん細胞または白血病がん細胞であり得る。「がん成長」という用語は、本明細書において、がんのサイズまたは程度の対応する増加をもたらすがんを含む1つまたは複数の細胞による増殖または成長を指すように使用される。
【0065】
がんの例としては、限定されないが、がん、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、及び白血病が挙げられる。そのようながんのより具体的な非限定的例としては、扁平上皮癌、小細胞肺癌、下垂体癌、食道癌、星状細胞腫、軟組織肉腫、非小細胞肺癌(扁平上皮非小細胞肺癌を含む)、肺の腺癌、肺の肺扁平上皮癌、腹膜癌、肝細胞癌、胃腸癌、膵癌、神経膠芽腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝癌、膀胱癌、肝細胞癌、乳癌、結腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌または子宮癌、唾液腺癌、腎癌、腎細胞癌、肝癌、前立腺癌、外陰部癌、甲状腺癌、肝癌、脳癌、子宮内膜癌、精巣癌、胆管癌、胆嚢癌、胃癌、黒色腫、及び様々なタイプの頭頸部癌(頭頸部癌の扁平上皮癌を含む)が挙げられる。
【0066】
本明細書で使用される場合、「治療」とは、例えば、病態もしくは障害を治癒させるための、病態もしくは障害の重症度を低下させるかもしくは進行を遅くするための、または病態もしくは障害の再発を阻害するための治療的処置を指す。ある特定の実施形態では、「治療」という用語は、患者における疾患のための治療薬の任意の投与または適用を包含し、疾患もしくは疾患の進行を阻害もしくは減速させること、例えば、縮退を引き起こすことによって、または喪失、欠損、もしくは欠損した機能を回復もしくは修復することによって疾患を部分的もしくは完全に軽減すること、非効率的なプロセスを刺激すること、または安定期の疾患の重症度を低減させることを含む。「治療」という用語はまた、任意の表現型特徴の重症度を低減すること、及び/またはその特徴の発生率、程度、または可能性を低減することも含む。治療を必要とするものには、既に障害を有するもの、ならびに障害の再発の危険性があるもの、または障害の再発を予防または減速させる必要があるものが含まれる。
【0067】
「有効量」または「治療有効量」という用語は、対象における疾患または障害を治療するのに有効な薬物の量を指す。ある特定の実施形態では、有効量は、所望の治療結果を達成するために必要な投薬量及び期間において有効な量を指す。本発明の抗FGFR2抗体の治療有効量は、個体の疾患状態、年齢、性別、及び体重、ならびに個体において所望の応答を引き起こす1つ以上の抗体の能力などの要因によって異なり得る。治療有効量は、1つ以上の抗体のいかなる毒性または有害な作用をも治療的に有益な作用が上回る量を包含する。いくつかの実施形態では、「有効量」という表現は、がんを治療するために有効な抗体の量を指す。
【0068】
以下のセクションに追加の定義が提供される。
【0069】
抗FGFR2抗体
抗FGFR2抗体を含む本明細書に記載される製剤のいずれにおいても、抗FGFR2抗体は、モノクローナル抗体、遺伝子操作抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、またはヒト抗体であり得る。本明細書に記載される組成物または方法のいずれにおいても、抗FGFR2抗体は、Fab、Fv、scFv、Fab′、及び(Fab′)2から選択され得る。本明細書に記載される組成物または製剤のいずれにおいても、抗FGFR2抗体は、IgA、IgG、及びIgDから選択され得る。本明細書に記載される組成物または製剤のいずれにおいても、抗FGFR2抗体は、IgGであり得る。本明細書に記載される方法のいずれにおいても、抗体は、IgG1またはIgG3であり得る。
【0070】
例示的な抗FGFR2抗体は、FGFR2-IIIbに結合する抗体を含む。いくつかの実施形態では、抗FGFR2-IIIb抗体は、FGFR2-IIIbに結合するよりも低い親和性でFGFR2-IIIcに結合する。他の実施形態では、抗FGFR2-IIIb抗体は、FGFR2-IIIcに検出可能に結合しない。
【0071】
本明細書の実施形態で使用するための例示的な抗FGFR2-IIIb抗体は、参照により本明細書に具体的に組み込まれる、2012年1月24日に発行された米国特許第8,101,723B2号に記載されるHuGAL-FR21抗体である。米国特許第8,101,723B2号の
図13及び
図14は、HuGAL-FR21の可変領域及び全長成熟抗体鎖のアミノ酸配列を示し、参照により本明細書に組み込まれる。抗体HuGAL-FR21の重鎖可変領域配列は、米国特許第8,101,723B2号の
図13において下線が引かれ、参照により本明細書に具体的に組み込まれる。いくつかの実施形態では、抗体は、アフコシル化される。いくつかの実施形態では、抗体は、Asn297にフコースを欠くIgG1またはIgG3抗体である。本明細書の実施形態で使用され得るさらなる抗体は、ある特定のアフコシル化FGFR2-IIIb抗体を記載し、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許公開第2015-0050273-A1に記載されるものを含む。
【0072】
いくつかの実施形態では、抗FGFR2-IIIb抗体は、(a)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号7のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号8のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d)配列番号9のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-L3から選択される、少なくとも1、2、3、4、5、または6つの超可変領域(HVR、例えば、CDR)を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、アフコシル化される。いくつかの実施形態では、抗体は、Asn297にフコースを欠くIgG1またはIgG3抗体である。
【0073】
いくつかの実施形態では、抗FGFR2-IIIb抗体は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、抗FGFR2-IIIb抗体は、重鎖可変領域及び重鎖定常領域の少なくとも一部を含む少なくとも1つの重鎖、ならびに軽鎖可変領域及び軽鎖定常領域の少なくとも一部を含む少なくとも1つの軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、抗FGFR2-IIIb抗体は、2つの重鎖(各重鎖は、重鎖可変領域及び重鎖定常領域の少なくとも一部を含む)、ならびに2つの軽鎖(各軽鎖は、軽鎖可変領域及び軽鎖定常領域の少なくとも一部を含む)を含む。いくつかの実施形態では、抗FGFR2-IIIb抗体は、配列番号4のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号5のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、抗FGFR2-IIIb抗体は、配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号3のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、アフコシル化される。いくつかの実施形態では、抗体は、Asn297にフコースを欠くIgG1またはIgG3抗体である。
【0074】
いくつかの実施形態では、抗FGFR2-IIIb抗体は、(a)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号7のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号8のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d)配列番号9のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む、6つのHVRを含む。いくつかの実施形態では、抗FGFR2-IIIb抗体は、上記の6つのHVRを含み、FGFR2-IIIbに結合する。いくつかの実施形態では、抗FGFR-IIIb抗体は、FGFR2-IIIcに結合しない。いくつかの実施形態では、抗体は、アフコシル化される。いくつかの実施形態では、抗体は、Asn297にフコースを欠くIgG1またはIgG3抗体である。
【0075】
一態様では、抗FGFR2-IIIb抗体は、(a)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号7のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号8のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d)配列番号9のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む、6つのHVRを含む抗FGFR2-IIIb抗体と競合する。いくつかの実施形態では、抗体は、アフコシル化される。いくつかの実施形態では、抗体は、Asn297にフコースを欠くIgG1またはIgG3抗体である。
【0076】
いくつかの実施形態では、抗FGFR2-IIIb抗体は、(a)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号7のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び(c)配列番号8のアミノ酸配列を含むHVR-H3から選択される、少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てのVH HVR配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、アフコシル化される。いくつかの実施形態では、抗体は、Asn297にフコースを欠くIgG1またはIgG3抗体である。
【0077】
いくつかの実施形態では、抗FGFR2-IIIb抗体は、(a)配列番号9のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(b)配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(c)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-L3から選択される、少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てのVL HVR配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、アフコシル化される。いくつかの実施形態では、抗体は、Asn297にフコースを欠くIgG1またはIgG3抗体である。
【0078】
いくつかの実施形態では、抗FGFR2-IIIb抗体は、(a)(i)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(ii)配列番号7のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び(iii)配列番号8から選択されるアミノ酸配列を含むHVR-H3から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てのVH HVR配列を含むVHドメイン、ならびに(b)(i)配列番号9のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(ii)配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(c)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-L3から選択される少なくとも1つ、少なくとも2つ、または3つ全てのVL HVR配列を含むVLドメインを含む。いくつかの実施形態では、抗体は、アフコシル化される。いくつかの実施形態では、抗体は、Asn297にフコースを欠くIgG1またはIgG3抗体である。
【0079】
いくつかの実施形態では、抗FGFR2-IIIb抗体は、配列番号4のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)配列を含む。ある特定の実施形態では、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVH配列は、参照配列と比較して置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含有するが、その配列を含む抗FGFR2-IIIb抗体は、FGFR2-IIIbに結合する能力を保持する。ある特定の実施形態では、そのようなFGFR2-IIIb抗体は、FGFR2-IIIcに検出可能に結合することなくFGFR2-IIIbに選択的に結合する能力を保持する。ある特定の実施形態では、合計1~10個のアミノ酸が、配列番号4において置換、挿入、及び/または欠失されている。ある特定の実施形態では、置換、挿入、または欠失は、HVRの外側の領域(すなわち、FR)において生じる。任意選択で、抗FGFR2-IIIb抗体は、配列番号5のVH配列(その配列の翻訳後修飾を含む)を含む。特定の実施形態では、VHは、(a)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号7のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び(c)配列番号8のアミノ酸配列を含むHVR-H3から選択される、1つ、2つ、または3つのHVRを含む。いくつかの実施形態では、抗体は、アフコシル化される。いくつかの実施形態では、抗体は、Asn297にフコースを欠くIgG1またはIgG3抗体である。
【0080】
いくつかの実施形態では、抗FGFR2-IIIb抗体は、配列番号5のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)配列を含む。ある特定の実施形態では、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVL配列は、参照配列と比較して置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含有するが、その配列を含む抗FGFR2-IIIb抗体は、FGFR2-IIIbに結合する能力を保持する。ある特定の実施形態では、抗FGFR2-IIIb抗体は、FGFR2-IIIcに結合せずにFGFR2-IIIbに選択的に結合する能力を保持する。ある特定の実施形態では、合計1~10個のアミノ酸が、配列番号5において置換、挿入、及び/または欠失されている。ある特定の実施形態では、置換、挿入、または欠失は、HVRの外側の領域(すなわち、FR)において生じる。任意選択で、抗FGFR2-IIIb抗体は、配列番号4のVL配列(その配列の翻訳後修飾を含む)を含む。特定の実施形態では、VLは、(a)配列番号9のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(b)配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(c)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-L3から選択される1つ、2つ、または3つのHVRを含む。いくつかの実施形態では、抗体は、アフコシル化される。いくつかの実施形態では、抗体は、Asn297にフコースを欠くIgG1またはIgG3抗体である。
【0081】
いくつかの実施形態では、抗FGFR2-IIIb抗体は、配列番号4のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)配列、ならびに配列番号5のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を含む。ある特定の実施形態では、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVH配列は、参照配列に対して置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含み、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVL配列は、参照配列に対して置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含むが、その配列を含む抗FGFR2-IIIb抗体は、FGFR2-IIIbに結合する能力を保持する。ある特定の実施形態では、そのような抗FGFR2-IIIb抗体は、FGFR2-IIIcに結合せずにFGFR2-IIIbに選択的に結合する能力を保持する。ある特定の実施形態では、合計1~10個のアミノ酸が、配列番号4において置換、挿入、及び/または欠失されている。ある特定の実施形態では、合計1~10個のアミノ酸が、配列番号5において置換、挿入、及び/または欠失されている。ある特定の実施形態では、置換、挿入、または欠失は、HVRの外側の領域(すなわち、FR)において生じる。任意選択で、抗FGFR2-IIIb抗体は、配列番号4のVH配列、及び配列番号5のVL配列を含み、これには、一方または両方の配列の翻訳後修飾が含まれる。特定の実施形態では、VHは、(a)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号7のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び(c)配列番号8のアミノ酸配列を含むHVR-H3から選択される1つ、2つ、または3つのHVRを含み、VLは、(a)配列番号9のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(b)配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(c)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-L3から選択される1つ、2つ、または3つのHVRを含む。いくつかの実施形態では、抗体は、アフコシル化される。いくつかの実施形態では、抗体は、Asn297にフコースを欠くIgG1またはIgG3抗体である。
【0082】
いくつかの実施形態では、抗FGFR2-IIIb抗体は、上に提供される実施形態のうちのいずれかにあるようなVH、及び上に提供される実施形態のうちのいずれかにあるようなVLを含む。一実施形態では、抗体は、それらの配列の翻訳後修飾を含む、それぞれ配列番号4及び配列番号5のVH及びVL配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、アフコシル化される。いくつかの実施形態では、抗体は、Asn297にフコースを欠くIgG1またはIgG3抗体である。
【0083】
いくつかの実施形態では、抗FGFR2-IIIb抗体は、配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する重鎖配列を含む。ある特定の実施形態では、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有する重鎖配列は、参照配列と比較して置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含有するが、その配列を含む抗FGFR2-IIIb抗体は、FGFR2-IIIbに結合する能力を保持する。ある特定の実施形態では、そのような抗FGFR2-IIIb抗体は、FGFR2-IIIcに検出可能に結合せずにFGFR2-IIIbに選択的に結合する能力を保持する。ある特定の実施形態では、合計1~10個のアミノ酸が、配列番号2において置換、挿入、及び/または欠失されている。ある特定の実施形態では、置換、挿入、または欠失は、HVRの外側の領域(すなわち、FR)において生じる。任意選択で、抗FGFR2-IIIb抗体は、配列番号2のVH配列(その配列の翻訳後修飾を含む)を含む。特定の実施形態では、重鎖は、(a)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号7のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び(c)配列番号8のアミノ酸配列を含むHVR-H3から選択される、1つ、2つ、または3つのHVRを含む。いくつかの実施形態では、抗体は、アフコシル化される。いくつかの実施形態では、抗体は、Asn297にフコースを欠くIgG1またはIgG3抗体である。
【0084】
いくつかの実施形態では、抗FGFR2-IIIb抗体は、配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する軽鎖配列を含む。ある特定の実施形態では、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有する軽鎖配列は、参照配列と比較して置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含有するが、その配列を含む抗FGFR2-IIIb抗体は、FGFR2-IIIbに結合する能力を保持する。ある特定の実施形態では、そのような抗FGFR2-IIIb抗体は、FGFR2-IIIcに検出可能に結合せずにFGFR2-IIIbに選択的に結合する能力を保持する。ある特定の実施形態では、合計1~10個のアミノ酸が、配列番号3において置換、挿入、及び/または欠失されている。ある特定の実施形態では、置換、挿入、または欠失は、HVRの外側の領域(すなわち、FR)において生じる。任意選択で、抗FGFR2-IIIb抗体は、配列番号3のVL配列(その配列の翻訳後修飾を含む)を含む。特定の実施形態では、軽鎖は、(a)配列番号9のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(b)配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(c)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-L3から選択される1つ、2つ、または3つのHVRを含む。いくつかの実施形態では、抗体は、アフコシル化される。いくつかの実施形態では、抗体は、Asn297にフコースを欠くIgG1またはIgG3抗体である。
【0085】
いくつかの実施形態では、抗FGFR2-IIIb抗体は、配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する重鎖配列、及び配列番号3のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する軽鎖配列を含む。ある特定の実施形態では、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有する重鎖配列は、参照配列と比較して置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含有するが、その配列を含む抗FGFR2-IIIb抗体は、FGFR2-IIIbに結合する能力を保持する。ある特定の実施形態では、そのような抗FGFR2-IIIb抗体は、FGFR2-IIIcに検出可能に結合せずにFGFR2-IIIbに選択的に結合する能力を保持する。ある特定の実施形態では、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有する軽鎖配列は、参照配列と比較して置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含有するが、その配列を含む抗FGFR2-IIIb抗体は、FGFR2-IIIbに結合する能力を保持する。ある特定の実施形態では、そのような抗FGFR2-IIIb抗体は、FGFR2-IIIcに検出可能に結合せずにFGFR2-IIIbに選択的に結合する能力を保持する。ある特定の実施形態では、合計1~10個のアミノ酸が、配列番号2において置換、挿入、及び/または欠失されている。ある特定の実施形態では、合計1~10個のアミノ酸が、配列番号3において置換、挿入、及び/または欠失されている。ある特定の実施形態では、置換、挿入、または欠失は、HVRの外側の領域(すなわち、FR)において生じる。任意選択で、抗FGFR2-IIIb抗体重鎖は、配列番号2のVH配列(その配列の翻訳後修飾を含む)を含み、抗FGFR2-IIIb抗体軽鎖は、配列番号3のVL配列(その配列の翻訳後修飾を含む)を含む。特定の実施形態では、重鎖は、(a)配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号7のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び(c)配列番号8のアミノ酸配列を含むHVR-H3から選択される1つ、2つ、または3つのHVRを含み、軽鎖は、(a)配列番号9のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(b)配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(c)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-L3から選択される1つ、2つ、または3つのHVRを含む。いくつかの実施形態では、抗体は、アフコシル化される。いくつかの実施形態では、抗体は、Asn297にフコースを欠くIgG1またはIgG3抗体である。
【0086】
さらなる例示的な抗FGFR2抗体は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第8,101,723B2号に記載されるGAL-FR22及びGAL-FR23抗体である。例えば、GAL-FR22の軽鎖及び重鎖可変領域は、特許第8,101,723B2号において配列番号7及び8として提供され、一方、Kabat CDRならびに軽鎖及び重鎖可変領域は、参照により本明細書に組み込まれる、その特許の
図16にも提供される。GAL-FR21、GAL-FR22及びGAL-FR23産生ハイブリドーマは、それぞれ、2008年11月6日、11月6日、及び8月12日に、ATCC番号9586、9587及び9408として、American Type Culture Collection(PO Box 1549,Manassas VA,USA,20108)に寄託されている。したがって、いくつかの実施形態では、抗FGFR2抗体は、これら3つのハイブリドーマ株のうちの1つから得られる抗体のアミノ酸配列を含む抗体である。
【0087】
GAL-FR22の重鎖及び軽鎖可変領域はまた、本明細書において、配列番号15及び19として提示され、一方、Kabat CDRは、本明細書において、配列番号16~19及び20~22として提示される。したがって、いくつかの実施形態では、抗FGFR2-IIIb抗体重鎖可変領域は、(i)配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR1(CDR1)、(ii)配列番号17のアミノ酸配列を含むHVR2、及び(iii)配列番号18のアミノ酸配列を含むHVR3を含み、軽鎖可変領域は、(iv)配列番号20のアミノ酸配列を含むHVR1、(v)配列番号21のアミノ酸配列を含むHVR2、及び(vi)配列番号22のアミノ酸配列を含むHVR3を含む。
【0088】
いくつかの実施形態では、抗FGFR2抗体は、重鎖可変ドメインが配列番号15のアミノ酸配列と少なくとも95%、例えば少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%同一であるか、または配列番号15のアミノ酸配列を含む、FGFR2-IIIb抗体を含む。いくつかの実施形態では、抗FGFR2抗体は、軽鎖可変ドメインが配列番号19のアミノ酸配列と少なくとも95%、例えば少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%同一であるか、または配列番号19のアミノ酸配列を含む、FGFR2-IIIb抗体を含む。いくつかの実施形態では、重鎖可変ドメインは、配列番号15のアミノ酸配列と少なくとも95%、例えば少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%同一であるか、または配列番号39のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変ドメインは、配列番号19のアミノ酸配列と少なくとも95%、例えば少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%同一であるか、または配列番号19のアミノ酸配列を含む。いくつかのそのような実施形態では、抗FGFR2-IIIb抗体重鎖可変領域はまた、(i)配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR1(CDR1)、(ii)配列番号17のアミノ酸配列を含むHVR2、及び(iii)配列番号18のアミノ酸配列を含むHVR3を含み、及び/または軽鎖可変領域はまた、(iv)配列番号20のアミノ酸配列を含むHVR1、(v)配列番号21のアミノ酸配列を含むHVR2、及び(vi)配列番号22のアミノ酸配列を含むHVR3を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、Asn297にフコースを欠くIgG1またはIgG3抗体である。
【0089】
アフコシル化抗FGFR2抗体
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される抗FGFR2抗体は、Fc領域に(直接的または間接的に)結合したフコースを欠く炭水化物構造を有し、すなわち、抗体はアフコシル化される。いくつかの実施形態では、アフコシル化抗体は、Asn297にフコースを欠くIgG1またはIgG3抗体である。
【0090】
本明細書において、複数のそのような抗体が少なくとも95%のアフコシル化抗体を含む場合、抗体は、「アフコシル化された」と見なされる。フコースの量は、Asn297に結合した全ての糖構造(例えば、複合体、ハイブリッド、及び高マンノース構造)の合計と比較して、Asn297における糖鎖内のフコースの平均量を計算することによって決定され得る。抗体中のフコースの検出の非限定的な例示的方法としては、MALDI-TOF質量分析(例えば、WO2008/077546を参照)、放出された蛍光標識オリゴ糖のHPLC測定(例えば、Schneider et al.,″N-Glycan analysis of monoclonal antibodies and other glycoproteins using UHPLC with fluorescence detection,″Agilent Technologies,Inc.(2012)、Lines,J.Pharm.Biomed.Analysis,14:601-608(1996)、Takahasi,J.Chrom.,720:217-225(1996)を参照)、放出された蛍光標識オリゴ糖のキャピラリー電気泳動測定(例えば、Ma et al.,Anal.Chem.,71:5185-5192(1999)を参照)、及び単糖類組成を測定するためのパルスアンペロメトリック検出を有するHPLC(例えば、Hardy,et al.,Analytical Biochem.,170:54-62(1988)を参照)が挙げられる。いくつかの実施形態では、本明細書のアフコシル化抗体の組成物において、フコースは、これらの方法のうちの1つ以上によって検出不可能である。
【0091】
Asn297は、Fc領域の約297位(Fc領域残基のEU番号付け)に位置するアスパラギン残基を指すが、所与の抗体配列において、Asn297は、抗体のわずかな配列変異のために、297位の約±3アミノ酸上流または下流、すなわち、294位と300位との間に位置してもよい。本明細書に記載されるFGFR2-IIIb抗体において、Asn297は、配列
中に見出され、以下に示される配列表の配列番号2において太字及び下線で示される。
【0092】
フコシル化多様体は、改善されたADCC機能を有し得る。例えば、米国特許公開第2003/0157108号(Presta,L.)、同第2004/0093621号(Kyowa Hakko Kogyo Co.,Ltd)を参照されたい。「アフコシル化」または「フコース欠損」抗体に関連する刊行物の例としては、US2003/0157108、WO2000/61739、WO2001/29246、US2003/0115614、US2002/0164328、US2004/0093621、US2004/0132140、US2004/0110704、US2004/0110282、US2004/0109865、WO2003/085119、WO2003/084570、WO2005/035586、WO2005/035778、WO2005/053742、WO2002/031140、Okazaki et al.J.Mol.Biol.336:1239-1249(2004)、Yamane-Ohnuki et al.Biotech.Bioeng.87:614(2004)が挙げられる。アフコシル化抗体を産生することができる細胞株の例としては、タンパク質フコシル化を欠くLec13 CHO細胞(Ripka et al.Arch.Biochem.Biophys.249:533-545(1986)、Presta,Lの米国特許出願第US2003/0157108A1号、及びAdamsらのWO2004/056312A1号、特に実施例11)、ならびに機能性α-1,6-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子、FUT8、例えばノックアウトCHO細胞を欠く細胞株などのノックアウト細胞株(例えば、Yamane-Ohnuki et al.Biotech.Bioeng.87:614(2004)、Kanda,Y.et al.,Biotechnol.Bioeng.,94(4):680-688(2006)、及びWO2003/085107を参照)が挙げられる。
【0093】
本明細書における抗FGFR2抗体はまた、例えば、抗体のFc領域に結合した二分岐オリゴ糖がGlcNAcによって二分岐される二分岐オリゴ糖を有し得る。そのような抗体は、低減されたフコシル化及び/または改善されたADCC機能を有し得る。そのような抗体の例は、例えば、WO2003/011878(Jean-Mairet et al.)、米国特許第6,602,684号(Umana et al.)、及びUS2005/0123546号(Umana et al.)に記載されている。いくつかの実施形態では、FGFR2抗体は、Fc領域に結合したオリゴ糖中に少なくとも1つのガラクトース残基を有する。そのような抗体は、改善されたCDC機能を有し得る。そのような抗体は、例えば、WO1997/30087(Patel et al.)、WO1998/58964(Raju,S.)、及びWO1999/22764(Raju,S.)に記載されている。
【0094】
本発明のある特定の実施形態では、アフコシル化FGFR2抗体は、ヒトエフェクター細胞の存在下で、フコースを含む同じアミノ酸配列を有する抗体よりも効果的にADCCを媒介する。概して、ADCC活性は、米国公開第2015-0050273A1号に開示されているインビトロADCCアッセイを使用して決定することができるが、ADCC活性を決定するための他のアッセイまたは方法、例えば、動物モデル等が企図される。
【0095】
いくつかの実施形態では、FGFR2抗体は、配列番号2及び3の重鎖及び軽鎖配列を含む。他の実施形態では、配列番号2及び3の重鎖及び軽鎖配列を含む抗体は、アフコシル化される。
【0096】
抗FGFR2抗体の薬学的製剤
本開示は、ヒトへの投与に好適な抗FGFR2抗体の薬学的製剤を提供する。抗FGFR2抗体は、本明細書に開示される任意のそのような抗体であり得る。薬学的製剤中の組成物の量及び種類は、抗体、したがって、最大貯蔵寿命に最大の安定性を提供するように選択される。
【0097】
薬学的製剤は、例えば、抗FGFR2抗体、ヒスチジン、クエン酸塩、及びリン酸塩から選択される緩衝液、スクロース、ならびに界面活性剤を含み得る。いくつかの実施形態では、製剤は抗FGFR2抗体、ヒスチジン、クエン酸塩、及びリン酸塩から選択される緩衝液、スクロース、ならびに界面活性剤から本質的になる。薬学的製剤は、代替的に、例えば、抗FGFR2抗体、ヒスチジン、クエン酸塩、及びリン酸塩から選択される緩衝液、アルギニン、ならびに界面活性剤を含み得る。いくつかの実施形態では、製剤は、抗FGFR2抗体、ヒスチジン、クエン酸塩、及びリン酸塩から選択される緩衝液、アルギニン、ならびに界面活性剤から本質的になる。薬学的製剤は、例えば、抗FGFR2抗体、ヒスチジン、スクロース、及び界面活性剤を含み得る。いくつかの実施形態では、製剤は、抗FGFR2抗体、ヒスチジン、スクロース、及び界面活性剤から本質的になる。薬学的製剤は、代替として、例えば、抗FGFR2抗体、ヒスチジン、アルギニン、及び界面活性剤を含み得る。いくつかの実施形態では、製剤は、抗FGFR2抗体、ヒスチジン、アルギニン、及び界面活性剤から本質的になる。いくつかの実施形態では、製剤は、例えば、注入または注射による患者への静脈内投与に好適である。他の実施形態では、製剤は、例えば、注射による患者への皮下投与に好適である。ある特定の実施形態では、製剤は、ヒト血漿またはリンパ液などの投与領域における体液と等張性である。
【0098】
いくつかの実施形態では、本明細書における抗FGFR2抗体は、水性製剤中に最大180mg/mLの可溶性であることが見出されている。いくつかの実施形態では、製剤は、10~180mg/mLの抗FGFR2抗体、または10~30mg/mLの抗FGFR2抗体、または例えば、10~25mg/mL、20~30mg/mL、15~25mg/mL、10~15mg/mL、15~20mg/mL、20~25mg/mL、18~22mg/mL、10mg/mL、11mg/mL、12mg/mL、13mg/mL、14mg/mL、15mg/mL、16mg/mL、17mg/mL、18mg/mL、19mg/mL、20mg/mL、21mg/mL、22mg/mL、23mg/mL、24mg/mL、25mg/mL、26mg/mL、27mg/mL、28mg/mL、29mg/mL、または30mg/mLの抗FGFR2抗体を含む。いくつかの実施形態では、製剤は、20mg/mLの抗体を含む。
【0099】
いくつかの実施形態では、製剤は、緩衝液としてヒスチジン、クエン酸塩、またはリン酸塩を含む。いくつかのそのような場合には、製剤緩衝液は、ヒスチジンから本質的になる。いくつかの実施形態では、製剤は、5~40mM、例えば、10~40mM、10~30mM、15~25mM、10~20mM、20~30mM、15~20mM、20~25mM、25~30mM、または18~22mMのヒスチジン、クエン酸、またはリン酸塩を含む。いくつかの実施形態では、製剤は、10mM、15mM、16mM、17mM、18mM、19mM、20mM、21mM、22mM、23mM、24mM、25mM、26mM、27mM、28mM、29mM、もしくは30mMのヒスチジン、クエン酸塩、もしくはリン酸塩、またはそれらの濃度のうちの2つによって境界される範囲を含む。ある特定の実施形態では、製剤は、20mMのヒスチジン、クエン酸塩、またはリン酸塩を含む。
【0100】
いくつかの実施形態では、製剤は、緩衝液としてヒスチジンを含む。いくつかのそのような実施形態では、製剤は、クエン酸塩またはリン酸塩を含まない。いくつかのそのような場合には、製剤緩衝液は、ヒスチジンから本質的になる。いくつかの実施形態では、製剤は、緩衝液としてクエン酸塩を含む。いくつかのそのような実施形態では、製剤は、ヒスチジンまたはリン酸塩を含まない。いくつかのそのような場合には、製剤緩衝液は、本質的にクエン酸塩からなる。いくつかの実施形態では、製剤は、緩衝液としてリン酸塩を含む。いくつかのそのような実施形態では、製剤は、クエン酸塩またはヒスチジンを含まない。いくつかのそのような場合には、製剤緩衝液は、本質的にリン酸塩からなる。
【0101】
緩衝液としてヒスチジンを含むか、または本質的にそれからなるいくつかの実施形態では、製剤は、5~40mMのヒスチジン、例えば10~40mM、10~30mM、15~25mM、10~20mM、20~25mM、25~30mM、または18~22mMのヒスチジンを含む。いくつかの実施形態では、製剤は、10mM、15mM、16mM、17mM、18mM、19mM、20mM、21mM、22mM、23mM、24mM、25mM、26mM、27mM、28mM、29mM、もしくは30mMのヒスチジン、またはそれらの濃度のうちの2つによって境界される範囲を含む。いくつかの実施形態では、製剤は、20mMのヒスチジンを含む。
【0102】
いくつかの実施形態では、界面活性剤は、ポリソルベート、例えばポリソルベート20またはポリソルベート80である。いくつかのそのような場合において、製剤は、0.001~0.1%、0.002~0.1%、0.01~0.1%、0.005%~0.05%、0.005%、0.006%、0.007%、0.008%、0.009%、0.01%、0.02%、0.03%、0.04%、0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%、または0.1%のポリソルベート20または80を含む。いくつかの実施形態では、製剤は、0.005%~0.05%のポリソルベート20、例えば0.008%~0.012%のポリソルベート20を含む。他の実施形態では、製剤は、0.002~0.1%のポリソルベート20を含む。いくつかの実施形態では、製剤は、0.01%のポリソルベート20を含む。
【0103】
スクロースを含む製剤
いくつかの実施形態では、製剤は、抗FGFR2抗体、ヒスチジン、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート20)、及びスクロースの混合物を含むか、または本質的にそれらからなる。抗体、ヒスチジン、及びポリソルベートの濃度は、例えば、上に提供されるとおりであり得る。いくつかの実施形態では、スクロースは、体液と等張した配合物を提供する量で見出され得る。いくつかの実施形態では、製剤は、200~300mM、例えば200~250mM、250~300mM、200mM、210mM、220mM、230mM、240mM、250mM、260mM、270mM、280mM、290mM、または300mMのスクロースを含む。いくつかの実施形態では、製剤は、250~300mMのスクロースを含む。他の実施形態では、製剤は、260~280mMのスクロースを含む。ある特定の実施形態では、製剤は、250~270mMのスクロースを含む。いくつかの実施形態では、製剤は、270~300mMのスクロースを含む。他の実施形態では、製剤は、250mM、260mM、270mM、または280mMのスクロースを含む。ある特定の実施形態では、製剤は、270mMのスクロースを含む。いくつかの実施形態では、スクロースを含む製剤は、アルギニンを含まない。
【0104】
いくつかの実施形態では、薬学的製剤のpH範囲は、5.0~7.0である。いくつかの実施形態では、スクロース系薬学的製剤は、5.0~6.5、例えば5.0~6.0、5.5~6.0、5.5~6.5、5.8~6.2、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、または6.5のpHを有する。いくつかの実施形態では、pHは、5.8~6.2である。いくつかの実施形態では、pHは、6.0である。
【0105】
アルギニンを含む製剤
いくつかの実施形態では、製剤は、ヒスチジン、アルギニン、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート20)、及び抗体を含むか、または本質的にそれらからなる。いくつかのそのような実施形態では、製剤は、スクロースを含まない。
【0106】
いくつかの実施形態では、アルギニンは、100~200mM、例えば100~150mM、150~200mM、130~170mM、または140~160mMで見出される。ある特定の実施形態では、アルギニンは、100mM、110mM、120mM、130mM、140mM、150mM、160mM、170mM、180mM、190mM、または200mmの濃度で存在する。他の実施形態では、アルギニンは、140mM、150mM、または160mMで見出される。いくつかの実施形態では、アルギニンは、150mMで存在する。
【0107】
いくつかの実施形態では、薬学的製剤のpH範囲は、5.0~7.0である。いくつかの実施形態では、アルギニン系薬学的製剤は、5.0~6.5、例えば5.0~6.0、5.5~6.5、5.5~6.0、5.5~5.9、5.6~5.8、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、または6.5のpHを有する。いくつかの実施形態では、pHは、5.5~5.9である。いくつかの実施形態では、pHは、5.6~5.8である。いくつかの実施形態では、pHは、5.7である。
【0108】
特定の製剤の実施形態
他の実施形態では、薬学的製剤は、10~30mg/mLの抗FGFR2抗体、130~170mMのアルギニンまたは250~290mMのスクロース、0.002~0.1%のポリソルベート20、ならびに10~30mMのヒスチジン、クエン酸塩、及びリン酸塩から選択される1つ以上の緩衝液を含み、製剤は、5.0~7.0のpHを有する。いくつかのそのような場合では、薬学的製剤は、10~30mg/mLの抗FGFR2抗体、130~170mMのアルギニンまたは250~290mMのスクロース、0.002~0.1%のポリソルベート20、ならびに10~30mMのヒスチジン、クエン酸塩、及びリン酸塩から選択される1つ以上の緩衝液を含み、製剤は、5.0~7.0のpHを有する。
【0109】
いくつかの実施形態では、薬学的製剤は、10~30mg/mLの抗FGFR2抗体、130~170mMのアルギニンまたは250~290mMのスクロース、0.005~0.05%のポリソルベート20、ならびに10~30mMのヒスチジン、クエン酸塩、及びリン酸塩から選択される1つ以上の緩衝液を含み、製剤は、5.0~6.5のpHを有する。いくつかの実施形態では、薬学的製剤は、10~30mg/mLの抗FGFR2抗体、130~170mMのアルギニンまたは250~290mMのスクロース、0.005~0.05%のポリソルベート20、ならびに10~30mMのヒスチジン、クエン酸塩、及びリン酸塩から選択される1つ以上の緩衝液から本質的になり、製剤は、5.0~6.5のpHを有する。いくつかの実施形態では、薬学的製剤は、10~30mg/mLの抗FGFR2抗体、130~170mMのアルギニンまたは250~290mMのスクロース、0.005~0.05%のポリソルベート20、ならびに10~20mMのヒスチジン、クエン酸塩、及びリン酸塩から選択される1つ以上の緩衝液を含み、製剤は、5.0~6.5のpHを有する。いくつかの実施形態では、薬学的製剤は、10~20mg/mLの抗FGFR2抗体、130~170mMのアルギニンまたは250~290mMのスクロース、0.005~0.05%のポリソルベート20、ならびに10~30mMのヒスチジン、クエン酸塩、及びリン酸塩から選択される1つ以上の緩衝液を含み、製剤は、5.0~6.5のpHを有する。
【0110】
いくつかの実施形態では、薬学的製剤は、10~30mg/mLの抗FGFR2抗体、140~160mMのアルギニンまたは260~280mMのスクロース、0.005~0.05%のポリソルベート20、ならびに15~25mMのヒスチジン、クエン酸塩、及びリン酸塩から選択される1つ以上の緩衝液を含み、製剤は、5.5~6.5のpHを有する。いくつかの実施形態では、薬学的製剤は、10~30mg/mLの抗FGFR2抗体、140~160mMのアルギニンまたは260~280mMのスクロース、0.005~0.05%のポリソルベート20、ならびに15~25mMのヒスチジン、クエン酸塩、及びリン酸塩から選択される1つ以上の緩衝液から本質的になり、製剤は、5.5~6.5のpHを有する。いくつかの実施形態では、薬学的製剤は、10~20mg/mLの抗FGFR2抗体、140~160mMのアルギニンまたは260~280mMのスクロース、0.005~0.05%のポリソルベート20、ならびに15~25mMのヒスチジン、クエン酸塩、及びリン酸塩から選択される1つ以上の緩衝液を含み、製剤は、5.5~6.5のpHを有する。いくつかの実施形態では、薬学的製剤は、10~20mg/mLの抗FGFR2抗体、140~160mMのアルギニンまたは260~280mMのスクロース、0.005~0.05%のポリソルベート20、ならびに15~25mMのヒスチジン、クエン酸塩、及びリン酸塩から選択される1つ以上の緩衝液を含み、製剤は、5.5~6.5のpHを有する。
【0111】
いくつかの実施形態では、薬学的製剤は、10~30mg/mLの抗FGFR2抗体、150mMのアルギニンまたは270mMのスクロース、0.005~0.05%のポリソルベート20、ならびに15~25mMのヒスチジン、クエン酸塩、及びリン酸塩から選択される1つ以上の緩衝液を含み、製剤は、5.5~6.5のpHを有する。いくつかの実施形態では、薬学的製剤は、10~30mg/mLの抗FGFR2抗体、150mMのアルギニンまたは270mMのスクロース、0.005~0.05%のポリソルベート20、ならびに15~25mMのヒスチジン、クエン酸塩、及びリン酸塩から選択される1つ以上の緩衝液から本質的になり、製剤は、5.5~6.5のpHを有する。いくつかの実施形態では、薬学的製剤は、10~20mg/mLの抗FGFR2抗体、150mMのアルギニンまたは270mMのスクロース、0.005~0.05%のポリソルベート20、ならびに15~25mMのヒスチジン、クエン酸塩、及びリン酸塩から選択される1つ以上の緩衝液を含み、製剤は、5.5~6.5のpHを有する。いくつかの実施形態では、薬学的製剤は、10~20mg/mLの抗FGFR2抗体、150mMのアルギニンまたは270mMのスクロース、0.005~0.05%のポリソルベート20、ならびに15~25mMのヒスチジン、クエン酸塩、及びリン酸塩から選択される1つ以上の緩衝液を含み、製剤は、5.5~6.5のpHを有する。
【0112】
いくつかの実施形態では、薬学的製剤は、10~30mg/mLの抗FGFR2抗体、150mMのアルギニンまたは270mMのスクロース、0.005~0.05%のポリソルベート20、及び15~25mMのヒスチジンを含み、製剤は、5.5~6.5のpHを有する。いくつかの実施形態では、薬学的製剤は、10~30mg/mLの抗FGFR2抗体、150mMのアルギニンまたは270mMのスクロース、0.005~0.05%のポリソルベート20、及び15~25mMのヒスチジンから本質的になり、製剤は、5.5~6.5のpHを有する。いくつかの実施形態では、薬学的製剤は、10~20mg/mLの抗FGFR2抗体、150mMのアルギニンまたは270mMのスクロース、0.005~0.05%のポリソルベート20、及び15~25mMのヒスチジンを含み、製剤は、5.5~6.5のpHを有する。いくつかの実施形態では、薬学的製剤は、10~20mg/mLの抗FGFR2抗体、150mMのアルギニンまたは270mMのスクロース、0.005~0.05%のポリソルベート20、及び15~25mMのヒスチジンから本質的になり、製剤は、5.5~6.5のpHを有する。
【0113】
いくつかの実施形態では、薬学的製剤は、10~30mg/mLの抗FGFR2抗体、150mMのアルギニンまたは270mMのスクロース、0.008~0.012%のポリソルベート20、及び10~30mMのヒスチジンを含み、製剤は、5.5~6.5のpHを有する。いくつかの実施形態では、薬学的製剤は、10~30mg/mLの抗FGFR2抗体、150mMのアルギニンまたは270mMのスクロース、0.008~0.012%のポリソルベート20、及び10~30mMのヒスチジンから本質的になり、製剤は、5.5~6.5のpHを有する。いくつかの実施形態では、薬学的製剤は、10~20mg/mLの抗FGFR2抗体、150mMのアルギニンまたは270mMのスクロース、0.008~0.012%のポリソルベート20、及び10~30mMのヒスチジンを含み、製剤は、5.5~6.5のpHを有する。いくつかの実施形態では、薬学的製剤は、10~20mg/mLの抗FGFR2抗体、150mMのアルギニンまたは270mMのスクロース、0.008~0.012%のポリソルベート20、及び10~30mMのヒスチジンから本質的になり、製剤は、5.5~6.5のpHを有する。
【0114】
いくつかの実施形態では、薬学的製剤は、10~30mg/mLの抗FGFR2抗体、150mMのアルギニンまたは270mMのスクロース、0.008~0.012%のポリソルベート20、及び15~25mMのヒスチジンを含み、製剤は、5.5~6.5のpHを有する。いくつかの実施形態では、薬学的製剤は、10~30mg/mLの抗FGFR2抗体、150mMのアルギニンまたは270mMのスクロース、0.008~0.012%のポリソルベート20、及び15~25mMのヒスチジンから本質的になり、製剤は、5.5~6.5のpHを有する。いくつかの実施形態では、薬学的製剤は、10~20mg/mLの抗FGFR2抗体、150mMのアルギニンまたは270mMのスクロース、0.008~0.012%のポリソルベート20、及び15~25mMのヒスチジンを含み、製剤は、5.5~6.5のpHを有する。いくつかの実施形態では、薬学的製剤は、10~20mg/mLの抗FGFR2抗体、150mMのアルギニンまたは270mMのスクロース、0.008~0.012%のポリソルベート20、及び15~25mMのヒスチジンから本質的になり、製剤は、5.5~6.5のpHを有する。
【0115】
いくつかの実施形態では、薬学的製剤は、10~30mg/mLの抗FGFR2抗体、150mMのアルギニンまたは270mMのスクロース、0.01%のポリソルベート20、及び20mMのヒスチジンを含み、製剤は、5.5~6.5のpHを有する。いくつかの実施形態では、薬学的製剤は、10~30mg/mLの抗FGFR2抗体、150mMのアルギニンまたは270mMのスクロース、0.01%のポリソルベート20、及び20mMのヒスチジンから本質的になり、製剤は、5.5~6.5のpHを有する。いくつかの実施形態では、薬学的製剤は、10~20mg/mLの抗FGFR2抗体、150mMのアルギニンまたは270mMのスクロース、0.01%のポリソルベート20、及び20mMのヒスチジンを含み、製剤は、5.5~6.5のpHを有する。いくつかの実施形態では、薬学的製剤は、10~20mg/mLの抗FGFR2抗体、150mMのアルギニンまたは270mMのスクロース、0.01%のポリソルベート20、及び20mMのヒスチジンから本質的になり、製剤は、5.5~6.5のpHを有する。
【0116】
いくつかの実施形態では、薬学的製剤は、10~30mg/mLの抗FGFR2抗体、150mMのアルギニン、0.01%のポリソルベート20、及び20mMのヒスチジンを含み、製剤は、5.6~5.8または5.7のpHを有する。いくつかの実施形態では、薬学的製剤は、10~30mg/mLの抗FGFR2抗体、150mMのアルギニン、0.01%のポリソルベート20、及び20mMのヒスチジンから本質的になり、製剤は、5.6~5.8または5.7のpHを有する。いくつかの実施形態では、薬学的製剤は、10~20mg/mLの抗FGFR2抗体、150mMのアルギニン、0.01%のポリソルベート20、及び20mMのヒスチジンを含み、製剤は、5.6~5.8または5.7のpHを有する。いくつかの実施形態では、薬学的製剤は、10~20mg/mLの抗FGFR2抗体、150mMのアルギニン、0.01%のポリソルベート20、及び20mMのヒスチジンを含み、製剤は、5.6~5.8または5.7のpHを有する。
【0117】
いくつかの実施形態では、薬学的製剤は、10~30mg/mLの抗FGFR2抗体、270mMのスクロース、0.01%のポリソルベート20、及び20mMのヒスチジンを含み、製剤は、5.9~6.1または6.0のpHを有する。いくつかの実施形態では、薬学的製剤は、10~30mg/mLの抗FGFR2抗体、270mMのスクロース、0.01%のポリソルベート20、及び20mMのヒスチジンから本質的になり、製剤は、5.9~6.1または6.0のpHを有する。いくつかの実施形態では、薬学的製剤は、10~20mg/mLの抗FGFR2抗体、270mMのスクロース、0.01%のポリソルベート20、及び20mMのヒスチジンを含み、製剤は、5.9~6.1または6.0のpHを有する。いくつかの実施形態では、薬学的製剤は、10~20mg/mLの抗FGFR2抗体、270mMのスクロース、0.01%のポリソルベート20、及び20mMのヒスチジンを含み、製剤は、5.9~6.1または6.0のpHを有する。
【0118】
いくつかの実施形態では、薬学的製剤は、10~30mg/mLの抗FGFR2抗体、270mMのスクロース、0.01%のポリソルベート20、及び20mMのヒスチジンから本質的になり、製剤は、5.0~6.0のpHを有する。いくつかの実施形態では、薬学的製剤は、10~30mg/mLの抗FGFR2抗体、270mMのスクロース、0.01%のポリソルベート20、及び20mMのヒスチジンから本質的になり、製剤は、5.5~6.0のpHを有する。
【0119】
いくつかの実施形態では、製剤は、ある特定の種類の賦形剤を含まない。例えば、いくつかの実施形態では、製剤は、糖アルコール、抗FGFR2抗体以外のタンパク質、ポリソルベート以外の界面活性剤、ならびにアルギニン及び/またはヒスチジン以外のアミノ酸のうちの1つ以上を含まない。アルギニンを含むある特定の実施形態では、製剤は、糖、糖アルコール、抗FGFR2抗体以外のタンパク質、ポリソルベート以外の界面活性剤、ならびにアルギニン及びヒスチジン以外のアミノ酸のうちの1つ以上を含まない。スクロースを含むいくつかの実施形態では、製剤は、スクロース以外の糖、糖アルコール、抗FGFR2抗体以外のタンパク質、ポリソルベート以外の界面活性剤、及びヒスチジン以外のアミノ酸のうちの1つ以上を含まない。アルギニンを含むいくつかの実施形態では、製剤は、糖、糖アルコール、抗FGFR2抗体以外のタンパク質、ポリソルベート以外の界面活性剤、ならびにアルギニン及びヒスチジン以外のアミノ酸のうちのいずれも含まない。スクロースを含むいくつかの実施形態では、製剤は、スクロース以外の糖、糖アルコール、抗FGFR2抗体以外のタンパク質、ポリソルベート以外の界面活性剤、及びヒスチジン以外のアミノ酸のうちのいずれも含まない。ある特定の実施形態では、製剤は、ヒスチジン、クエン酸塩、及び/またはリン酸塩以外の他の緩衝液成分を含まない。ヒスチジン、クエン酸塩、またはリン酸塩を緩衝液として含むある特定の実施形態では、製剤は、他の緩衝液成分を含まない。本出願で先に述べたように、この文脈において「含まない」という表現は、除外された成分が、例えば、他の意図的に添加された成分に見られる汚染または不純物のために、微量レベルを超えて存在しないことを意味する。
【0120】
製剤の例示的な特性
いくつかの実施形態では、製剤は、液体として貯蔵され、患者に投与する前に凍結乾燥されない。いくつかの実施形態では、製剤は、すぐに使用できる液体製剤であり、したがって、患者に直接投与され得る。液体製剤は、すぐに使用可能であり、凍結乾燥製剤よりも患者に投与されやすいという利点を提供する。他の実施形態では、製剤は、生理食塩水、水中で希釈されるか、または投与前にタンパク質を希釈するために他の物質と混合される。例えば、IV注入のために設計された製剤は、投与前に、生理食塩水またはIVバッグ中の別の適切な緩衝液中で希釈され得る。いくつかの実施形態では、すぐに使用できる液体製剤などの液体製剤は、希釈せずに静脈内に直接投与される。
【0121】
いくつかの実施形態では、製剤は、例えば静脈内(IV)注入によって、静脈内投与される。投与は、病院、診療所、外来、または他の医療オフィス環境で行うことができる。IV投与は、比較的大量の液体中のタンパク質治療薬を投与することを可能にする。
【0122】
他の実施形態では、より高いタンパク質(抗体)濃度(例えば、300mg/mLを超える)に関して、本明細書の薬学的製剤は、注射可能であるか、または例えば、注射によって、例えば皮下投与デバイスを使用して、皮下投与される。いくつかの実施形態では、製剤は、バイアルに収容される。他の実施形態では、バイアルは、シリンジ及び針などの皮下投与デバイスの一部であるか、またはそれに取り付けられている。いくつかの実施形態では、バイアルは、単回使用バイアルである。本明細書のバイアルは、例えば、製剤の0.5mL、1mL、1.5mL、2mL、または3mLを保持し得る。いくつかの実施形態では、完全な単回投与量の抗FGFR2抗体は、1回、2回、または3回の皮下投与から投与され得る。したがって、いくつかのそのような実施形態では、完全な単回用量の抗体は、1つ、2つ、または3つの単回使用バイアル内に収容され得る。ある特定の実施形態では、バイアルは、1~2mLの製剤を含む。したがって、いくつかの実施形態では、患者のための完全な単回用量は、単一の1mL、1.5mL、2mL、2.5mL、もしくは3mLバイアル内に、または2つもしくは3つの0.5mL、1mL、0.5mL、もしくは2mLバイアル内に収容され得る。いくつかの実施形態では、液体製剤は、暗所に貯蔵される、例えば暗所のバイアル中に貯蔵される。
【0123】
いくつかの実施形態では、本明細書における薬学的製剤は、溶液中で安定したままであり、例えば、40℃で3ヶ月または6ヶ月後の薬学的使用に好適である。他の実施形態では、本明細書の薬学的製剤は、溶液中で安定したままであり、例えば、5℃及び/または25℃で6ヶ月後の薬学的使用に好適である。ある特定の実施形態では、製剤中のタンパク質凝集は、40℃で1ヶ月、2ヶ月、または3ヶ月間の貯蔵後に3%、4%、5%、6%、または7%を超えて増加し得ない。さらに他の実施形態では、製剤中のタンパク質凝集は、40℃で1ヶ月間の貯蔵後、3%もしくは4%を超えて増加し得ず、及び/または40℃で3ヶ月間の貯蔵後に7%を超えて増加し得ない。いくつかの実施形態では、製剤中のタンパク質凝集は、25℃で3ヶ月間の貯蔵後に2%または2.5%を超えて増加し得ない。いくつかの実施形態では、製剤中のタンパク質凝集は、5℃で6ヶ月間の貯蔵後に2%を超えて増加し得ない。
【0124】
凝集体に加えて、タンパク質の荷電多様体は、脱アミド化及び酸化などの化学変化の結果として、貯蔵中に形成され得る。例えば、いくつかの実施形態では、抗FGFR2抗体の酸性多様体は、25℃で3ヶ月間の貯蔵後に20%を超えて増加または減少しない。いくつかの実施形態では、5℃で6ヶ月間の貯蔵後の荷電多様体のパーセンテージに変化はない。荷電多様体の外観は、例えば、カチオン交換クロマトグラフィーまたはアニオン交換クロマトグラフィーを使用して検出され得る。
【0125】
ある特定の実施形態では、薬学的組成物は、40℃で1ヶ月間の貯蔵後に、40%以下の抗FGFR2抗体の酸性多様体、及び20%以下の抗FGFR2抗体の塩基性多様体を含む。いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、40℃で1ヶ月間の貯蔵後に、1%~40%、15%~40%、もしくは20%~40%、20%~30%、もしくは30%~40%の抗体の酸性多様体、及び/または5%~30%、5%~20%、10%~20%、20%~30%、もしくは15%~20%の抗体の塩基性多様体を含む。いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、抗FGFR2抗体を含み、組成物は、25℃で3ヶ月後に、15%~35%、20%~30%、もしくは25%~30%の抗体の酸性多様体、及び/または15%~40%、15%~30%、15%~25%、15%~20%、もしくは20%~25%の抗体もしくはその抗原結合断片の塩基性多様体を含む。いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、抗FGFR2抗体を含み、組成物は、5℃で6ヶ月後に、15%~30%、15%~25%、20%~30%、もしくは20%~25%の抗体の酸性多様体、及び/または20%~35%、20%~30%、もしくは25%~30%の抗体もしくはその抗原結合断片の塩基性多様体を含む。
【0126】
例えば、いくつかの実施形態では、本明細書のpH5.5~6.5のヒスチジン、スクロース、ポリソルベート20を含む製剤は、最初に、抗FGFR2抗体の20~25%の酸性多様体を含有するが、40℃で1ヶ月間の貯蔵後、20%~40%の酸性多様体を含有し、25℃で3ヶ月間の貯蔵後、25%~30%の酸性多様体を含有し、5℃で6ヶ月間の貯蔵後、20%~25%の酸性多様体を含有する(
図27A~Cを参照)。いくつかの実施形態では、本明細書のpH5.5~6.5のヒスチジン、スクロース、ポリソルベート20を含む製剤は、最初に、抗FGFR2抗体の20~25%の酸性多様体を含有するが、40℃で1ヶ月間の貯蔵後、20%~40%(例えば、30%~40%)の酸性多様体を含有し、25℃で3ヶ月間の貯蔵後、25%~30%の酸性多様体を含有し、5℃で6ヶ月間の貯蔵後、20%~25%の酸性多様体を含有する(
図28A~Cを参照)。いくつかの実施形態では、本明細書のpH5.5~6.5のヒスチジン、スクロース、ポリソルベート20を含む製剤は、最初に、抗FGFR2抗体の30%の塩基性多様体を含有するが、40℃で1ヶ月間の貯蔵後、10%~25%の塩基性多様体を含有し、25℃で3ヶ月間の貯蔵後、15%~30%(例えば、15%~25%)の塩基性多様体を含有し、5℃で6ヶ月間の貯蔵後、25%~30%の塩基性多様体を含有する(
図29A~Cを参照)。いくつかの実施形態では、本明細書のpH5.5~6.5のヒスチジン、アルギニン、ポリソルベート20を含む製剤は、最初に、抗FGFR2抗体の30~35%の塩基性多様体を含有するが、40℃で1ヶ月間の貯蔵後、10%~20%の塩基性多様体を含有し、25℃で3ヶ月間の貯蔵後、15%~30%(例えば、15%~25%)の塩基性多様体を含有し、5℃で6ヶ月間の貯蔵後、25%~30%の塩基性多様体を含有する(
図30A~Cを参照)。
【0127】
いくつかの実施形態では、薬学的製剤は、例えば、-70℃での1回以上の凍結融解サイクル、例えば、2、3、4、または5回の凍結融解サイクル後、薬学的使用に対して安定したままである。例えば、いくつかの実施形態では、製剤中のタンパク質凝集は、5回の凍結融解サイクル後、2.0%、1.5%、1.0%、または0.5%を超えて増加し得ない。ある特定の実施形態では、光散乱によって測定される高分子量タンパク質種のパーセンテージは、変化しないままであるか、または5回の凍結融解サイクル後に0.5%を超えて増加しない。いくつかの実施形態では、製剤はまた、製剤を含有するバイアルを長期間撹拌に曝露することによって決定され得る、機械的ストレスに対して安定したままである。他の実施形態では、凝集は、500rpmで72時間の機械的ストレス後に2.0%、1.5%、1.0%、または0.5%を超えて増加し得ない。
【0128】
抗FGFR2抗体薬学的製剤を使用する治療方法
本明細書に開示される薬学的製剤は、抗FGFR2抗体治療を必要とする患者を治療する方法において使用することができる。抗FGFR2抗体の使用は、例えば、それぞれ参照により本明細書に組み込まれる国際特許公開第WO2015/017600号及び第WO2017/091577号に開示されている。
【0129】
いくつかの実施形態では、本明細書における薬学的製剤は、がん患者を治療するために使用され得る。いくつかの実施形態では、がんは、固形腫瘍である。そのようながんのより具体的な非限定的例としては、扁平上皮癌、小細胞肺癌、下垂体癌、食道癌、星状細胞腫、軟組織肉腫、非小細胞肺癌(扁平上皮非小細胞肺癌を含む)、肺の腺癌、肺の肺扁平上皮癌、腹膜癌、肝細胞癌、胃腸癌、膵癌、神経膠芽腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝癌、膀胱癌、肝細胞癌、乳癌、結腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌または子宮癌、唾液腺癌、腎癌、腎細胞癌、肝癌、前立腺癌、外陰部癌、甲状腺癌、肝癌、脳癌、子宮内膜癌、精巣癌、胆管癌、胆嚢癌、胃癌、黒色腫、及び様々なタイプの頭頸部癌(頭頸部癌の扁平上皮癌を含む)が挙げられる。いくつかの実施形態では、がんは、胃癌または膀胱癌である。
【0130】
いくつかの実施形態では、がんは、手術、化学療法、放射線療法、またはそれらの組み合わせから選択される療法の後に再発または進行性である。いくつかの実施形態では、対象は、PD-1/PD-L1阻害剤に対する不十分な応答者である。PD-1/PD-L1阻害剤に対する不十分な応答者である対象は、PD-1/PD-L1阻害剤に以前に応答したことがあるが、PD-1/PD-L1阻害剤に対する応答性が低くなった可能性がある対象、またはPD-1/PD-L1阻害剤に応答したことがない可能性がある対象である。いくつかの実施形態では、対象は、PD-1/PD-L1阻害剤療法を以前に受けたことがある。
【0131】
いくつかの実施形態では、がんは、FGFR2遺伝子増幅を含む。いくつかの実施形態では、FGFR2遺伝子増幅を含むがんはまた、FGFR2IIIbを過剰発現する。いくつかの実施形態では、FGFR2増幅を含むがんは、FGFR2IIIbをFGFR2IIIcよりも大きな程度で過剰発現する。いくつかの実施形態では、FGFR2増幅を含むがんは、FGFR2IIIc発現の正規化レベルよりも2倍、3倍、5倍、または10倍超大きい正規化レベルでFGFR2IIIbを発現する。いくつかの実施形態では、発現レベルは、GUSBに正規化される。いくつかの実施形態では、がんは、FGFR2IIIbを過剰発現するが、FGFR2遺伝子増幅を含まない。
【0132】
いくつかの実施形態では、がんは、FGFR2遺伝子増幅を含む胃癌である。いくつかの実施形態では、FGFR2遺伝子増幅を含む胃癌は、FGFR2IIIbを過剰発現する。いくつかの実施形態では、FGFR2増幅を含む胃癌は、FGFR2IIIbをFGFR2IIIcよりも大きな程度で過剰発現する。いくつかの実施形態では、FGFR2増幅を含む胃癌は、FGFR2IIIc発現の正規化レベルよりも2倍、3倍、5倍、または10倍超大きい正規化レベルでFGFR2IIIbを発現する。いくつかの実施形態では、発現レベルは、GUSBに正規化される。いくつかの実施形態では、胃癌は、FGFR2IIIbを過剰発現するが、FGFR2遺伝子増幅を含まない。いくつかの実施形態では、過剰発現は、mRNA過剰発現である。いくつかの実施形態では、過剰発現は、タンパク質過剰発現である。
【0133】
FGFR2IIIb遺伝子増幅は、限定されないが、原位置ハイブリダイゼーション(ISH)を含む、当該技術分野における任意の好適な方法によって決定され得る。いくつかの実施形態では、FGFR2増幅は、3より大きいFGFR2:CEN10(染色体10セントロマー)比を含む。
【0134】
FGFR2IIIb mRNA過剰発現は、限定されないが、定量的PCR(qPCR)を含む方法を含む、当該技術分野における任意の好適な方法によって決定され得る。「FGFR2IIIb mRNA過剰発現」という用語は、そのような上昇レベルの原因にかかわらず(すなわち、上昇レベルが、mRNA、他の機構、または機構の組み合わせの増加した転写及び/または減少した分解の結果であるかどうか)、FGFR2IIIb mRNAの上昇レベルを意味する。
【0135】
FGFR2IIIbタンパク質過剰発現は、限定されないが、免疫組織化学(IHC)などの抗体ベースの方法を含む、当該技術分野における任意の好適な方法によって決定され得る。いくつかの実施形態では、IHC染色は、当該技術分野における方法に従ってスコア化される。「FGFR2IIIbタンパク質過剰発現」という用語は、そのようなレベルの上昇の原因にかかわらず(すなわち、レベルの上昇が、タンパク質、他の機構、または機構の組み合わせの増加した翻訳及び/または減少した分解の結果であるかどうか)、FGFR2IIIbタンパク質のレベルの上昇を意味する。いくつかの実施形態では、IHCによる腫瘍細胞の1+、2+、または3+染色は、FGFR2IIIb過剰発現を示す。例えば、過剰発現は、腫瘍細胞の少なくとも10%、例えば、腫瘍細胞の少なくとも20%、30%、40%、または50%における1+、2+、または3+のIHCシグナルによって決定され得る。いくつかの実施形態では、IHCによる腫瘍細胞の2+または3+染色は、FGFR2IIIb過剰発現を示す。例えば、過剰発現は、腫瘍細胞の少なくとも10%、例えば、腫瘍細胞の少なくとも20%、30%、40%、または50%における2+または3+のIHCシグナルによって決定され得る。
【0136】
いくつかの実施形態では、FGFR2過剰発現は「Hスコア」として報告され得る。例えば、いくつかのそのような実施形態では、腫瘍は、膀胱癌腫瘍である。Hスコアを決定するために、第1の膜染色強度は、0、1+、2+、または3+のスコアを得るために、例えばIHCを介して固定フィールド内の細胞について決定され得、Hスコアは、以下の式を使用して計算され得る。1×(1+のIHC強度で可視化された細胞の%)+2×(2+のIHC強度で可視化された細胞の%)+3×(3+のIHC強度で可視化された細胞の%)。理論的にはHスコアは0~300の範囲であり得、視野内の全ての細胞が3+のIHC染色を有する場合、300に等しい。いくつかの実施形態では、治療される患者は、>20のFGFR2b(例えば、FGFR2IIIb)などのFGFR2の出発Hスコア、例えば>30、>40、>50、もしくは>100、または20~300、20~100、20~50、20~40、もしくは20~30の範囲を有する。いくつかの実施形態では、患者は、>10のHスコアを有するか、または10~20もしくは15~20の範囲内にある。他の実施形態では、患者は、FGFR2過剰発現の欠如を示し得る0~10のHスコアを有する。いくつかのそのような実施形態では、患者は膀胱癌患者である。
【0137】
患者が胃癌または膀胱癌に罹患しているいくつかの実施形態では、対象は、以下のプロファイルのうちの1つを有することが以前に決定されていてもよく、あるいは、治療方法は、患者がFGFR2発現/遺伝子増幅に関して以下のプロファイルのうちの1つに適合するかどうかを決定することを含み、これは、治療に対する予想される応答性のレベルを示し得る:a)胃癌対象の場合、腫瘍細胞の少なくとも10%における3+のIHCシグナル、b)胃癌対象の場合、腫瘍細胞の少なくとも10%における3+のIHCシグナル、及びFGFR2遺伝子の増幅、c)胃癌対象の場合、FGFR2遺伝子の増幅なしで腫瘍細胞の少なくとも10%における3+のIHCシグナル、d)胃癌対象の場合、腫瘍細胞の少なくとも10%における1+または2+のIHCシグナル、e)膀胱癌対象の場合、腫瘍細胞の少なくとも10%における1+のIHCシグナル、f)膀胱癌対象の場合、腫瘍細胞の少なくとも10%における2+のIHCシグナル、g)膀胱癌対象の場合、20超のHスコア、h)膀胱癌対象の場合、10~19のHスコア、i)膀胱癌対象の場合、10未満のHスコア。患者が胃癌または膀胱癌に罹患しているいくつかの実施形態では、対象は、以下のプロファイルのうちの1つを有することが以前に決定されていてもよく、あるいは、治療方法は、患者がFGFR2発現/遺伝子増幅に関して以下のプロファイルのうちの1つに適合するかどうかを決定することを含み、これは、治療に対する予想される応答性のレベルを示し得る:a)胃癌対象の場合、腫瘍細胞の少なくとも5%における3+のIHCシグナル、b)胃癌対象の場合、腫瘍細胞の少なくとも5%における3+のIHCシグナル、及びFGFR2遺伝子の増幅、c)胃癌対象の場合、FGFR2遺伝子の増幅なしで腫瘍細胞の少なくとも5%における3+のIHCシグナル、d)胃癌対象の場合、腫瘍細胞の少なくとも5%における1+または2+のIHCシグナル、e)膀胱癌対象の場合、腫瘍細胞の少なくとも5%における1+のIHCシグナル、f)膀胱癌対象の場合、腫瘍細胞の少なくとも5%における2+のIHCシグナル、g)膀胱癌対象の場合、20超のHスコア、h)膀胱癌対象の場合、10~19のHスコア、i)膀胱癌対象の場合、10未満のHスコア。患者が胃癌または膀胱癌に罹患しているいくつかの実施形態では、対象は、以下のプロファイルのうちの1つを有することが以前に決定されている場合があるか、あるいは、治療方法は、患者がFGFR2発現/遺伝子増幅に関して以下のプロファイルのうちの1つに適合するかどうかを決定することを含み、これは、治療に対する予想される応答性のレベルを示し得る:a)がんは、がんの試料中で2+もしくは3+のFGFR2-IIIb免疫組織化学(IHC)シグナルを有する胃癌である、b)がんは、がんの試料中で2+もしくは3+のFGFR2-IIIb IHCシグナルを有する胃癌であり、FGFR2遺伝子が増幅されている、c)がんは、がんの試料中で2+もしくは3+のFGFR2-IIIb IHCシグナルを有する胃癌であり、FGFR2遺伝子は増幅されていない、またはd)がんは、がんの試料中で2+もしくは3+のFGFR2-IIIb IHCシグナルを有する膀胱癌である。
【0138】
いくつかの実施形態では、抗FGFR2抗体は、少なくとも0.1、0.3、0.5、1、2、3、4、5、10、15、20、25、もしくは30mg/kgの用量で、またはそれらの用量のうちのいずれか2つによって境界される範囲内で、がん患者に投与され得る。いくつかの実施形態では、抗体製剤は、1、2、3、4、または5週間に1回投与される。
【0139】
いくつかの実施形態では、抗FGFR2抗体を含む薬学的製剤は、免疫チェックポイント阻害剤(免疫刺激剤)及び化学療法剤などの薬剤の組み合わせの一部として提供される。例えば、抗FGFR2抗体またはそれらを含む製剤は、他の治療様式、例えば、手術、化学療法、または放射線療法の前に、実質的に同時に、または後に提供され得る。いくつかの実施形態では、有効量の、抗FGFR2抗体を含む本明細書の製剤は、別の抗がん剤と併せて投与される。抗FGFR2抗体と共に投与され得る非限定的な例示的抗がん剤としては、白金剤(シスプラチン、オキサリプラチン、及びカルボプラチンなど)、パクリタキセル(TAXOL(登録商標))、パクリタキセルのアルブミン操作ナノ粒子製剤(ABRAXANE(登録商標))、ドセタキセル(TAXOTERE(登録商標))、ゲムシタビン(GEMZAR(登録商標))、カペシタビン(XELODA(登録商標))、イリノテカン(CAMPTOSAR(登録商標)、エピルビシン(ELLENCE(登録商標)、PHARMORUBICIN(登録商標))、FOLFOX(5-FU及びロイコボリンと組み合わせたオキサリプラチン)、FOLFIRI(ロイコボリン、5-FU及びイリノテカンの組み合わせ)、ロイコボリン、フルオロウラシル(5-FU、EFUDEX(登録商標))、マイトマイシンC(MITOZYTREX(商標)、MUTAMYCIN(登録商標))、及びドキソルビシン塩酸塩(アドリアマイシンPFS、アドリアマイシンRDF、RUBEX(登録商標))が挙げられる。いくつかの実施形態では、有効量の抗FGFR2抗体を含む製剤は、パクリタキセルと併せて投与される。いくつかの実施形態では、有効量の抗FGFR2抗体製剤が、シスプラチン及び/または5-FUと併せて投与される。いくつかの実施形態では、有効量の抗FGFR2抗体製剤は、FOLFOX(オキサリプラチン、5-FU、及びロイコボリン)と併せて投与される。
【0140】
いくつかの実施形態では、抗FGFR2抗体及び少なくとも1つの免疫刺激剤を含む、有効量の薬学的製剤を投与することを含む、がんを治療するための方法が提供される。いくつかの他の実施形態では、有効量の抗FGFR2抗体を含む製剤及び有効量の少なくとも1つの免疫刺激剤を含む製剤を投与することを含む、がんを治療するための方法が提供される。例示的な実施形態では、少なくとも1つの免疫刺激剤は、PD-1/PD-L1阻害剤を含む。いくつかの実施形態では、抗FGFR2を含む製剤及びPD-1/PD-L1阻害剤などの少なくとも1つの免疫刺激剤を同時に投与する。いくつかの実施形態では、抗FGFR2抗体を含む製剤、及びPD-1/PD-L1阻害剤などの少なくとも1つの免疫刺激剤を順次投与する。いくつかの実施形態では、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3用量、少なくとも5用量、または少なくとも10用量の抗FGFR2抗体は、PD-1/PD-L1阻害剤などの少なくとも1つの免疫刺激剤の投与前に投与される。いくつかの実施形態では、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3用量、少なくとも5用量、または少なくとも10用量の、PD-1/PD-L1阻害剤などの少なくとも1つの免疫刺激剤は、抗FGFR2抗体を含む製剤の投与前に投与される。いくつかの実施形態では、PD-1/PD-L1阻害剤などの少なくとも1つの免疫刺激剤の最終用量は、抗FGFR2抗体の第1の用量の少なくとも1日、2日、3日、5日、もしくは10日、または1週間、2週間、3週間、5週間、12週間、もしくは24週間前に投与される。いくつかの他の実施形態では、抗FGFR2抗体の最終用量は、PD-1/PD-L1阻害剤などの少なくとも1つの免疫刺激剤の第1用量の少なくとも1日、2日、3日、5日、もしくは10日、または1週間、2週間、3週間、5週間、12週間、もしくは24週間前に投与される。いくつかの実施形態では、対象は、PD-1/PD-L1阻害剤療法を受けたか、または受けており、抗FGFR2抗体が治療レジメンに加えられる。
【実施例0141】
以下に考察される実施例は、純粋に本発明を例示することを意図しており、いかなる方法でも本発明を限定すると見なされるべきではない。使用される数値(例えば、量、温度等)に関して精度を保証するように努力がなされてはいるが、いくらかの実験誤差及び偏差が考慮されるべきである。
【0142】
実施例1:製剤研究で使用される材料及び方法
I.抗体産生
以下の実施例で使用される抗FGFR2-IIIb抗体は、FUT8遺伝子(α1,6-フコシルトランスフェラーゼ)を欠くチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株で産生され、発酵及び精製プロセスで変化を受けた様々なロットを抗体の開発に使用した。抗FGFR2-IIIb抗体は、アフコシル化されたヒト化IgG1モノクローナル抗体である。ナレッジベースの製剤開発アプローチを使用して、タンパク質に最大の安定性を提供する適切な組成物を特定した。そのためには、タンパク質の安定性に影響を与える可能性のある分子の固有特性及び外因性製剤成分の両方が考慮される。試験を実施して、IV注入のために希釈することができる10~20mg/mLの液体製剤を産生するための適切な成分を特定した。
【0143】
原材料:L-ヒスチジン(PN H3911)、L-ヒスチジン.HCl(PN H5659)及び塩化ナトリウム(PN S9888)をSigma Aldrichから入手した。L-アルギニン.HCl(PN 2067-06)、クエン酸(PN 0119)、クエン酸ナトリウム(PN 3627)、及びポリソルベート20(PN4116)をJT Baker(Thermo Fischer Scientific)から入手した。
【0144】
容器/密封:West Pharmaceutical Services,Inc.(PA)製の3cc I型West Pharmaceuticalガラスバイアル(PN 68000368)及び13mmストッパー(PN 19700116)、ポリプロピレン管及びガラスHPLCバイアルを使用して、製剤を充填した。
【0145】
II.一般的な製剤手順
製剤を、MWCO 20kD透析膜を使用して、薬物物質を標的製剤緩衝液に透析することによって調製した。製剤を、0.2μmのフィルターユニットを使用して積層フローフード内で濾過し、安定性評価のために適切な容器/密封システムに充填した。分析のために所定の時点で、個々のバイアルを指定された貯蔵条件から取り出した。
【0146】
III.分析方法
安定性試料を、以下に記載される早期開発アッセイを使用して分析した。
【0147】
目視検査:蛍光照明下で黒/白背景に対して視覚的評価を行った。
【0148】
タンパク質濃度:タンパク質濃度を、1.43cm-1[g/L]-1の理論吸収係数を使用し、280nmの紫外線吸収率によって決定した。試料を適切な製剤緩衝液で直線吸光度範囲内に希釈し、ダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)水に対して測定した。OD測定を、Beckman Coulter DU800 UV-Vis分光光度計(Beckman Coulter,Inc.,CA)で行った。
【0149】
pH:緩衝液pHを、較正されたBeckman Coulter pHi560 pHメーター(Beckman Coulter,Inc.,CA)を使用して決定した。
【0150】
浸透圧:緩衝液浸透圧を、Wescor VAPRO(登録商標)システム(Wescor,Inc.,UT)を使用して蒸気圧によって測定した。
【0151】
示差走査熱量測定(DSC)分析:高感度示差走査熱量測定(HSDSC)分析をVP-DSC(MicroCal,Northampton,MA)を用いて行った。およそ0.5mgの各試料を、試料細胞に負荷し、同量の一致する透析緩衝液を参照細胞に負荷した。試料を20から90℃または100℃まで1℃/分の速度で走査した。データは、Origin 7.0データ分析ソフトウェア(OriginLab,MA)で分析した。
【0152】
イオン交換クロマトグラフィー(IEX):カチオン交換クロマトグラフィーは、タンパク質多様体の正味表面電荷に基づいて分離する方法である。タンパク質の等電点(タンパク質が正味電荷を有しないpHである、pI)は、その一次アミノ酸配列によって決定されるが、タンパク質多様体の正味電荷は、タンパク質の等電電荷及び走行緩衝液pHに基づく。例えば、8.4の抗体のpIよりも約1単位低い走行緩衝液pH7において、タンパク質は、正味の正電荷を担持し、エチルビニルベンゼン-ジビニルベンゼンの基材を備えたPropac WCX-10カラム樹脂上に位置する、反対に弱く帯電した酸性カルボキシレート官能基に静電気的に、及び架橋結合する。280nmでのUV検出を備えた高性能液体クロマトグラフィーシステムを用いて、タンパク質多様体を分離し、漸増する塩勾配を適用するときにカラムから溶出し、最も弱いイオン相互作用を有する多様体が最初に溶出し始め、より強いイオン相互作用を有する多様体がより高い塩濃度で後に溶出した。アイソフォームを、酸性、メイン、及び塩基性として3つの領域に順次溶出し、最も高いピークがメインアイソフォームピークである。ピーク面積に基づいて、各領域は、計算された相対ピークパーセンテージを有した。弱カチオン交換HPLC法は、Dionex WCX-10 ProPac(商標)4X250mmカラム(Thermo Fischer Scientific)を使用して行った。試料を、Agilent 1200シリーズHPLC上で実行し、クロマトグラムをChemstationソフトウェア(Agilent Technologies,CA)を使用して統合した。移動相Aは、pH7.0で10mMのHEPESであり、移動相Bは、10mMのHEPES、pH7.0の100mMの塩化ナトリウムであった。28分間で40~90%Bからの勾配法を使用し、UVを280nmで検出した。酸性、塩基性、及びメインピークのパーセンテージは、各ピーク関連吸光度の総面積パーセントから報告された。
【0153】
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC):サイズ排除クロマトグラフィーは、タンパク質をそれらのサイズに基づいて分離する方法である。本方法は、異なるサイズの分子を分離するために多孔質樹脂に依存する。これらの分子が樹脂の孔にアクセスできず、支障なくカラムを通過することができないため、大きな分子は早期に溶出する。より小さい分子は、樹脂細孔にアクセスすることができ、樹脂粒子内の歪みに起因して、カラムを通る経路長が増加する。したがって、より小さい分子は、より大きな分子の後に溶出する。サイズ排除クロマトグラフィーのために2つの方法を使用した。第1の方法は、0.5mL/分で30分間移動相として、100mMのリン酸ナトリウム、700mMのアルギニン(pH6.8)を用いてTosoh G3000SWXL 7.8×300mmカラムを利用した(Sigma Aldrich,Inc.,MO)。第2の方法は、1mL/分で12分間移動相として、100mMのリン酸ナトリウム、400mMの塩化ナトリウム(pH6.8)を用いてSepax Zenix SEC-300 7.8×200mmカラムを、利用した(Sepax Technologies,Inc.,Delaware)。試料を、Agilent 1100&1200シリーズHPLCで実行し、280nmに設定された検出を伴うChemstationソフトウェアを使用してクロマトグラムを統合した。各ピーク関連吸光度の総面積パーセントから、凝集体、低分子量(LMW)、及びメインピークのパーセンテージが報告された。
【0154】
光の散乱:分光光度計を使用して、280nm(UV A280)での紫外線吸光度を測定した。抗体試料の濃度は、ビールの法則、A=εlc(ε=消滅係数、l=光が通過する溶液の長さ(キュベットの経路長)(cm)、及びc=溶液の濃度)を使用して計算した。抗体濃度決定には、理論的消滅係数を使用した(例えば、抗FGFR2抗体の理論的消滅係数は、1.43(OD・mL)/(mg・cm)である)。各試料調製物の濃度(mg/mL)を以下のように計算した。濃度=(A280での吸光度-A350での吸光度)×(希釈因子)/(消滅係数×経路長)。各試料の平均及び標準偏差を計算した。
【0155】
実施例2:水溶性
抗FGFR2-IIIb抗体を、およそ100mg/mLに濃縮し、水に透析した。次いで、試料をさらに180mg/mLに濃縮した。抗FGFR2-IIIb抗体は、180mg/mLで水溶性であった。最大溶解度に達しなかった。
【0156】
実施例3:抗FGFR2-IIIb抗体の初期凍結/融解安定性
抗FGFR2-IIIb抗体に対して凍結/融解研究を行った。抗体を11.6mg/mLに濃縮し、0.01%ポリソルベート20の有り無しで、pH7.4で1×PBSに配合した。配合した溶液をバイアルに充填し、-70℃から周囲温度まで最大3サイクルの凍結/融解に供した。試料バイアルを目視検査及びSE-HPLCによって分析した。凍結/融解結果を表1に示す。3回の凍結/融解サイクルにわたって凝集体のわずかな増加が観察された。結果は、製剤に対して1×PBSが許容されることを示唆している。
【0157】
実施例4:抗FGFR2-IIIb抗体の酸化試験
抗FGFR2-IIIb抗体は、合計10個のメチオニン残基を有し、その中で、4個のメチオニンが重鎖の各々にあり、いずれもCDR1に位置しない。加えて、軽鎖には1つのメチオニンが存在する。
【0158】
実験を行って、抗FGFR2-IIIb抗体を0.01%、0.1%、または1.0%の過酸化水素により室温で一晩インキュベートすることによって、メチオニンの酸化に対する感受性を評価した。その後、各メチオニン残基の酸化レベルを定性的に決定するために、酸化された試料をトリプシンマッピングLC/MSによって特徴付けた。酸化試料の活性は、効力についての細胞ベースのアッセイによって決定され、結合親和性はBiacore(商標)(GE Healthcare)によって分析された。表2に示されるペプチドマップLC/MS特徴付けは、軽鎖メチオニン5及び重鎖メチオニン81が酸化されにくいことを明らかにした。重鎖メチオニン249、355、及び425は、より酸化されやすかった。酸化された試料の全ては、ELISAアッセイによって対照と同等の効力を示した。
【0159】
抗FGFR2-IIIb抗体のFGFR2b及びタンパク質Aへの結合は、Biacoreによって測定された。重鎖メチオニンの酸化は、抗FGFR2-IIIb抗体のFGFR2bへの結合を妨げなかった(
図1及び表3)。酸化の増加は、タンパク質Aへの結合を妨げた。抗FGFR2-IIIb抗体の酸化分解は、抗FGFR2-IIIb抗体の活性が高度に酸化された試料において著しく影響されなかったことを考慮して重要ではなかった。
【0160】
実施例5:タンパク質安定性に対する緩衝液pHの効果
製剤pHは、タンパク質安定性に影響を及ぼす。製剤のpHは、脱アミド化、異性化、及び酸化などの生化学分解経路、ならびにタンパク質とそれらの環境との相互作用による凝集及び断片化などの生体物理分解に影響を及ぼし得る。緩衝液pHを、生成物安定性に影響を及ぼし得る製剤変数として研究した。貯蔵時の抗FGFR2-IIIb抗体立体構造安定性及び化学安定性に対するpHの影響を評価した。抗FGFR2-IIIb抗体を2段階精製し、pH値が4.0~8.0の範囲の9つの異なる等張製剤(表4の製剤1~9)に製剤化した。緩衝液交換溶液のタンパク質濃度を1mg/mLに調整し、溶液をDSC分析のためにバイアルに充填し、40℃及び25℃で等温安定性評価した。評価された製剤を表4に列挙する。
【0161】
示差走査熱量測定(DSC)分析による立体構造安定性
表4からの製剤1~9のDSCサーモグラムを生成し、分析した。製剤1~3を表5に*でマークし、その結果を
図2に示す。試料を加熱すると、3つの遷移が観察された。展開遷移後、IgG分子は不溶性凝集体を形成し、溶液から沈殿した。表5は、展開温度(T
M1)がpHの増加とともに増加し、pH6及びpH7で約69℃で最大T
M1に達したことを示す。緩衝液種は展開温度に対して著しい影響を示さなかった。
【0162】
等温安定性
凝集体、クリップ(断片)、及び荷電多様体の形成に対する緩衝液pHの影響を、40℃及び25℃での加速貯蔵条件下で試料安定性を監視することによって評価した。
【0163】
凝集体及びクリップの変化は、SE-HPLCによって決定した。選択した抗FGFR2-IIIb抗体のpHスクリーニング試料の代表的なSE-HPLCクロマトグラムを
図3に示す。メインピークはモノマーを表し、モノマーよりも早く溶出したピークは凝集体であり、後で溶出したピークはクリップである。可溶性凝集体は、40℃でpH4製剤中で急速に増加し、pH5.0及びpH8.0緩衝液中で可溶性凝集体の中程度の増加が見られた。クリップの形成に対するpHの同様の効果が観察された。
【0164】
40℃の凝集体(
図4)及びクリップ(
図5)に対する緩衝液pHの影響を、SE-HPLCによって分析した。表5に列挙される製剤1、2、3、7、8、及び9を試験した。試験したpH範囲内で、クリップ形成は、pH4において最も有意であった。中性pHでは、
図5に示すように、40℃で1ヶ月間の貯蔵後でもクリップの形成はごくわずかであった。25℃で少なくとも2ヶ月間の貯蔵後、pH5~pH8の製剤において凝集体の明らかな増加は観察されなかった(
図6)。25℃で少なくとも2ヶ月間の貯蔵後、pH5~pH8の製剤においてクリップの明らかな増加は観察されなかった(
図7)。
【0165】
荷電多様体分布の変化は、抗体の別の一般的な分解経路であり、典型的には、製剤緩衝液pHに関連する。抗FGFR2-IIIb抗体の荷電多様体を、弱いカチオン交換HPLC(WCX-HPLC)法で分析した。代表的なクロマトグラムを
図8に示す。メインピークの前に出現するピークは酸性種であり、メインピークの後に出現するピークは塩基性種である。酸性種の増加は、IgG分子中のアスパラギンの脱アミド化に起因する。荷電多様体プロファイルの変化は、40℃で劇的に生じた。したがって、荷電プロファイルの変化を25℃などのより低い温度で監視した。
図9~11は、弱いカチオン交換高性能液体クロマトグラフィー(WCX-HPLC)によって決定される、25℃での荷電多様体に対する緩衝液pHの影響を示す。
図9に示されるように、塩基性pH条件において、特にpH8.0において酸性種が急速に増加した。pH5~pH6の間で製剤化された試料は、25℃で2ヶ月間の貯蔵後でも安定したままであった。
図10は、25℃で0~2.5ヶ月間の貯蔵の塩基性多様体のパーセンテージに対するpHの影響を示す。
図11は、25℃で0~2.5ヶ月間の貯蔵のメインピークに対するpHの影響を示す。
【0166】
pHスクリーニング研究の結果は、ストレス貯蔵条件下で、抗FGFR2-IIIb抗体の安定性が製剤pHに強く依存していたことを示す。塩基性pHでは、酸性多様体の凝集及び形成が主な分解経路であった。抗FGFR2-IIIb抗体は、5.0~6.0のpH範囲において最も安定であることが決定された。
【0167】
実施例6:タンパク質安定性に対する賦形剤の効果
緩衝液種及びバルキング剤などの製剤賦形剤を、生成物安定性に対するそれらの効果について分析した。抗FGFR2-IIIb抗体の安定性に対する賦形剤の効果を評価するために、様々なクエン酸塩、リン酸塩、及びヒスチジン緩衝液を試験した。試験した、pH6.0で緩衝した7つの異なる等張溶液が、表6に列挙される。
【0168】
タンパク質濃度を20mg/mLに調整し、溶液をバイアルに充填した。表6中の製剤1~4をDSCによって分析した。全ての製剤について物理的安定性を評価し、40℃、25℃、5℃での等温安定性評価を製剤1~5について決定した。
【0169】
DSC分析による立体構造安定性
抗FGFR2-IIIb抗体の様々な製剤の展開温度が、DSC分析によって決定され、表7に要約される。90℃に加熱した後、全ての製剤において沈殿が観察された。製剤中の界面活性剤は、変性後の沈殿から抗体を保護しなかった。表7に示されるように、製剤は、同等の溶融温度を有した。
【0170】
抗FGFR2-IIIb抗体の様々な製剤を加熱すると、3つの温度遷移が検出された。抗FGFR2-IIIb抗体は、pH4製剤中で52.7℃で展開し始め、展開温度(Tm)は、pHの増加と共に増加し、pH6及びpH7で約70℃で最大Tm1に達し、Tmは、pH8でわずかに低下した。
【0171】
物理的安定性
タンパク質医薬品は剪断応力に曝されると凝集しやすいため、物理的安定性研究を実施して、複数の凍結/融解サイクル及び激しい撹拌に対する抗FGFR2-IIIb抗体の安定性に対する賦形剤の効果を評価した。不溶性及び可溶性凝集体について、視覚的観察、A350光散乱、及びSE-HPLCによって安定性を評価した。試料中の抗体濃度は、20mg/mLであった。
【0172】
試料バイアルを軌道シェーカー上に水平に配置し、試料を500RPMで77時間、室温で振盪させることによって、試料に撹拌応力を加えた。凝集形成の防止に対するポリソルベート20の効果を評価するために、0%、0.01%、0.05%、及び0.10%のポリソルベート20を有するアルギニン製剤の直接比較を行った。表8及び
図12に示されるように、全ての製剤において、SE-HPLCによって可溶性凝集体の明らかな増加は検出されなかった。
【0173】
凍結/融解試験も、5サイクルにわたって試料を-70℃で凍結し、周囲温度で融解することによって実施した。
図13に示されるように、ヒスチジン/NaCl製剤における可溶性凝集体において観察された唯一の明らかな変化は、凍結/融解サイクルの増加に伴って増加した。0.01%のポリソルベート20を製剤に添加することにより、振盪応力に対する抗FGFR2-IIIb抗体の安定性が向上した。
【0174】
等温安定性
凝集体、クリップ、及び荷電多様体の形成に対する緩衝液種及びバルキング剤の影響を、抗FGFR2-IIIb抗体の安定性を40℃、25℃、及び5℃の加速貯蔵条件下で監視することによって評価した。凝集体及びクリップの変化をSE-HPLCで監視した。以下の製剤を試験した:20mMクエン酸塩、150mM L-アルギニン、及び0.01%ポリソルベート20;20mMリン酸塩、150mM L-アルギニン、及び0.01%ポリソルベート20;20mMヒスチジン、150mM L-アルギニン、及び0.01%ポリソルベート20;20mMヒスチジン、150mM NaCl、及び0.01%ポリソルベート20;ならびに20mMヒスチジン、150mM L-アルギニン、ポリソルベート20なし。
【0175】
図14に示されるように、凝集体は、40℃でクエン酸塩及びリン酸塩製剤中でより高い速度で形成された。40℃で1ヶ月間の貯蔵後に、全ての製剤において不顕著な断片化が観察された。全ての製剤は、25℃で3ヶ月間の貯蔵後に、同じ凝集増加を示した(
図15)。
【0176】
製剤賦形剤は、貯蔵時に抗FGFR2-IIIb抗体の荷電プロファイルに影響を与えなかった。
図16に示されるように、全ての製剤において酸性多様体の増加があった。
図17は、経時的に全ての製剤における塩基性多様体の減少があったことを示し、
図18は、メインピークに対する賦形剤の経時的な影響を示す。
【0177】
抗体安定性試験に基づいて、L-ヒスチジンは、評価された緩衝液種間で抗体安定性に有意な影響を与えなかった。クエン酸ナトリウム及びリン酸ナトリウムは、40℃で1ヶ月後に凝集体の増加を有した。したがって、L-ヒスチジンは、クエン酸ナトリウムまたはリン酸ナトリウムよりも安定しており、凝集体は、クエン酸塩及びリン酸塩製剤においてより速い速度で増加した。
【0178】
評価されたバルキング剤の中で、NaClは、激しい振盪及び凍結/融解プロセスに曝すことによって誘導される凝集体形成をもたらした。最も安定した抗体プロファイルは、L-アルギニン製剤で得られた。
【0179】
実施例7:pH評価研究
製剤の化学的及び物理的安定性に対するpHの効果を試験した。以下の製剤を、pH5.5、6.0、及び6.5で試験した:(a)20mMヒスチジン、150mMアルギニン、0.01%ポリソルベート20、及び(b)20mMヒスチジン、270mMスクロース、0.01%ポリソルベート20(表9)。製剤を20mg/mLに調整し、ガラスバイアルに充填した。
【0180】
物理的安定性に対するpHの効果
複数の凍結/融解サイクル及び激しい撹拌に対する安定性を評価した。不溶性及び可溶性凝集体について、視覚的観察、A350光散乱、及びSE-HPLCによって、安定性を評価した。
【0181】
I.機械的撹拌
試料バイアルを軌道シェーカー上に水平に配置し、試料を500RPMで72時間、室温で振盪させることによって、試料に撹拌応力を加えた。全ての製剤において、SE-HPLCによって可溶性凝集体の明らかな増加は検出されなかった。
図19は、時間の経過とともに、pH5.5~6.5の間(pH5.5、6.0及び6.5)のヒスチジン/アルギニン及びヒスチジン/スクロース製剤の凝集に対する機械的ストレスの影響を示す。
図19は、pH5.5~6.5のヒスチジン/アルギニン及びヒスチジン/スクロース製剤のクリップに対する機械的ストレスの影響を示す。72時間の機械的撹拌後、濃度またはA350nmにおける光散乱に有意な変化はなかった(表10に示す)。
【0182】
II.凍結融解の安定性
5サイクルにわたって試料を-70℃で凍結し、周囲温度で融解することによって、凍結/融解研究を行った。
図21及び22は、pH5.5~6.5の間のヒスチジン/アルギニン及びヒスチジン/スクロース製剤の凝集及びクリップに対する凍結融解の影響を示す。
図21において、pH5.5~6.5の間のヒスチジン/アルギニン及びヒスチジン/スクロース製剤のいずれにおいても、SE-HPLCによって可溶性凝集体の明らかな増加は検出されなかった。
図22では、いずれの製剤においても、SE-HPLCによってクリップの明らかな増加は検出されなかった。
【0183】
【0184】
濃度及び光散乱は、凍結融解後も変化しないままであった。
【0185】
I.等温安定性に対するpHの効果
凝集体、クリップ、及び荷電多様体の形成に対する緩衝液pHの影響は、40℃、25℃での加速貯蔵条件下での試料安定性、及び5℃でのリアルタイム安定性を監視することによって評価された。以下の製剤を試験した:(A)20mMヒスチジン、150mMアルギニン、0.01%ポリソルベート20(「ヒスチジン/アルギニン製剤」)、及び(B)20mMヒスチジン、150mMスクロース、0.01%ポリソルベート20(「ヒスチジン/スクロース製剤」)。
【0186】
ヒスチジン/アルギニン及びヒスチジン/スクロース製剤において、40℃で1ヶ月後、及び25℃で3ヶ月後に凝集及びクリップ形成がpHと共に増加した。ヒスチジン/スクロース製剤は、わずかに低い凝集速度を示す。5℃で6ヶ月後も凝集は変わらないままであり、ヒスチジン/アルギニン及びヒスチジン/スクロース製剤の両方において、クリップ形成は約1%増加した。
【0187】
例えば、
図23A~Cは、(A)40℃で1ヶ月間、(B)25℃で3ヶ月間、及び(C)5℃で6ヶ月間にわたって測定された様々なpH条件についてのヒスチジン/アルギニン製剤中の凝集体の形成を示す。
図24A~Cは、(A)40℃で1ヶ月間、(B)25℃で3ヶ月間、及び(C)5℃で6ヶ月間にわたって測定した様々なpH条件(pH5.5~6.5)のヒスチジン/アルギニン製剤におけるクリップ形成を示す。
【0188】
図25A~Cは、(A)40℃で1ヶ月間、(B)25℃で3ヶ月間、及び(C)5℃で6ヶ月間にわたって測定された様々なpH条件のヒスチジン/スクロース製剤中の凝集体形成を示す。
図26A~Cは、(A)40℃で1ヶ月間、(B)25℃で3ヶ月間、及び(C)5℃で6ヶ月間にわたって測定した様々なpH条件(pH5.5~6.5)についてのヒスチジン/スクロース製剤中の抗体のクリップ形成を示す。
【0189】
荷電アイソフォームも、5℃で6カ月後に変化しないままであった。例えば、
図27A~Cは、(A)40℃で1ヶ月後、(B)25℃で3ヶ月後、及び(C)5℃で6ヶ月後に、ヒスチジン/スクロース製剤中の酸性多様体が増加したことを示す。
【0190】
加えて、
図28A~Cは、20mMのヒスチジン、150mMのアルギニン、及び0.01%のポリソルベート20を含むヒスチジン/アルギニン製剤中の酸性多様体形成に対するpH5.5~6.5の間のpHの効果を示す。
図28Aは、pH5.5~6.0において、40℃で1ヶ月後、酸性多様体%が概して40%未満のままであったことを示す、酸性多様体形成を示す。
図28Bは、pH5.5~6.0において、25℃で3ヶ月後、酸性多様体%が概して30.0%未満のままであったことを示す、酸性多様体形成を示す。
図28Cは、全てのpHにおいて、5℃で6ヶ月後、%酸性多様体が概して25%未満のままであったことを示す、酸性多様体形成を示す。
図29A~Cは、20mMのヒスチジン、270mMのスクロース、及び0.01%のポリソルベート20を含むヒスチジン/スクロース製剤中の塩基性多様体形成に対するpH5.5~6.5の間のpHの効果を示す。
図29Aは、pH5.5~6.0において、40℃で1ヶ月後、%塩基性多様体がほとんど10%~20%の間のままであったことを示す、塩基性多様体形成を示す。
図29Bは、pH5.5~6.0において、25℃で3ヶ月後、%塩基性多様体が概して20%~30%の間のままであったことを示す、塩基性多様体形成を示す。
図29Cは、全てのpHにおいて、5℃で6ヶ月後、%塩基性多様体が概して25%~30%の間のままであったことを示す、塩基性多様体形成を示す。
【0191】
図30A~Cは、20mMのヒスチジン、150mMのアルギニン、及び0.01%のポリソルベート20を含むヒスチジン/アルギニン製剤中の塩基性多様体形成に対するpH5.5~6.5の間のpHの効果を示す。
図30Aは、pH5.5~6.0において、40℃で1ヶ月後、%塩基性多様体がほとんど10%~20%の間のままであったことを示す、塩基性多様体形成を示す。
図30Bは、pH5.5~6.0において、25℃で3ヶ月後、%塩基性多様体が概して15%~25%の間のままであったことを示す、塩基性多様体形成を示す。
図30Cは、全てのpHにおいて、5℃で6ヶ月後、%塩基性多様体が概して25%~30%の間のままであったことを示す、塩基性多様体形成を示す。
【0192】
ヒスチジン/アルギニン及びヒスチジン/スクロース製剤の両方は、pH5.5~pH6.5の間で許容可能な安定性を維持した。全体的に、ヒスチジン/スクロース製剤は、pH5.5~6.0の間のヒスチジン/アルギニンよりも安定していた。
【0193】
25℃で3ヶ月での製剤安定性及び5℃で6ヶ月での安定性に関するデータ、ならびに上記実施例における他の製剤研究からのデータに基づいて、20mg/mLの抗FGFR2-IIIb抗体、20mMのL-ヒスチジン、270mMのスクロース、及び0.01%のポリソルベート20を6.0のpHで含有する液体製剤を開発した。20mg/mLの抗FGFR2-IIIb抗体、20mMのL-ヒスチジン、150mMのL-アルギニン、0.01%のポリソルベート20をpH5.7で含有する第2の製剤も開発した。
【0194】
本発明は、本明細書に記載される特定の実施形態によって範囲が限定されるべきではない。実際に、記載されるものに加えて、本明細書に提供される様々な修正は、前述の説明及び添付の図面から当業者には明白になるであろう。そのような修正は、添付の特許請求の範囲内に入ることが意図される。
【0195】
本明細書に引用される全ての参照文献(例えば、公開文献または特許または特許出願)は、参照によりそれら全体が本明細書に組み込まれ、各個々の参照文献(例えば、公開文献または特許または特許出願)が全ての目的のために参照によりその全体が組み込まれることが具体的かつ個々に示されているかのように同じ程度で、全ての目的のために本明細書に組み込まれる。
【0196】
他の実施形態は、以下の特許請求の範囲内である。
【0197】
配列の表
以下の配列表は、本明細書で考察されるある特定の配列を提供する。別段の指示がない限り、全てのポリペプチド及び抗体配列は、リーダー配列なしで示される。