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特開2024-138287可溶性ポリペプチド、および白血病抑制因子の活性を阻害するためのその使用方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138287
(43)【公開日】2024-10-08
(54)【発明の名称】可溶性ポリペプチド、および白血病抑制因子の活性を阻害するためのその使用方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/715 20060101AFI20241001BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20241001BHJP
【FI】
C07K14/715 ZNA
C07K14/715
C12N15/12
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024098901
(22)【出願日】2024-06-19
(62)【分割の表示】P 2021502769の分割
【原出願日】2019-07-19
(31)【優先権主張番号】62/701,399
(32)【優先日】2018-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】503115205
【氏名又は名称】ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】ハンター、ショーン アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】コクラン、 ジェニファー アール.
(57)【要約】      (修正有)
【課題】可溶性白血病抑制因子受容体(LIFR)ポリペプチド、可溶性糖タンパク質130(gp130)ポリペプチド、ならびにこのようなポリペプチドを含む可溶性融合タンパク質および二量体を提供する。
【解決手段】可溶性白血病抑制因子受容体(LIFR)ポリペプチドであって、特定の配列に対して少なくとも70%の同一性であるアミノ酸配列を含み、前記LIFRポリペプチドが、対応する野生型LIFRポリペプチドと比較して、白血病抑制因子(LIF)に対して増加された結合親和性を示す、可溶性LIFRポリペプチドが提供される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可溶性白血病抑制因子受容体(LIFR)ポリペプチドであって、配列番号2に対して
少なくとも70%の同一性であるアミノ酸配列を含み、前記LIFRポリペプチドが、対
応する野生型LIFRポリペプチドと比較して、白血病抑制因子(LIF)に対して増加
された結合親和性を示す、可溶性LIFRポリペプチド。
【請求項2】
L218位のアミノ酸置換、および
N277位のアミノ酸置換
の一方または両方を含み、
ここで位置の識別は、配列番号2に対するものである、
請求項1に記載の可溶性LIFRポリペプチド。
【請求項3】
L218Pアミノ酸置換、および
N277Dアミノ酸置換
の一方または両方を含む、請求項2に記載の可溶性LIFRポリペプチド。
【請求項4】
I257位のアミノ酸置換、
V262位のアミノ酸置換、および
T273位のアミノ酸置換
のうちの1つ、2つ、または各々を含み、
ここで位置の識別は、配列番号2に対するものである、請求項1~3のいずれか一項に
記載の可溶性LIFRポリペプチド。
【請求項5】
I257Vアミノ酸置換、
V262Aアミノ酸置換、および
T273Iアミノ酸置換
のうちの1つ、2つ、または各々を含む、請求項4に記載の可溶性LIFRポリペプチド
【請求項6】
I217位のアミノ酸置換、
H240位のアミノ酸置換、および
I260位のアミノ酸置換
のうちの1つ、2つ、または各々を含み、
ここで位置の識別は、配列番号2に対するものである、請求項1~5のいずれか一項に
記載の可溶性LIFRポリペプチド。
【請求項7】
I217Vアミノ酸置換、
H240Rアミノ酸置換、および
I260Vアミノ酸置換
のうちの1つ、2つ、または各々を含む、請求項6に記載の可溶性LIFRポリペプチド
【請求項8】
N242位のアミノ酸置換を含み、前記位置の識別は、配列番号2に対するものである
、請求項1~7のいずれか一項に記載の可溶性LIFRポリペプチド。
【請求項9】
N242Dアミノ酸置換を含む、請求項8に記載の可溶性LIFRポリペプチド。
【請求項10】
配列番号2に対して少なくとも80%の同一性であるアミノ酸配列を含む、請求項1~
9のいずれか一項に記載の可溶性LIFRポリペプチド。
【請求項11】
配列番号2に対して少なくとも90%の同一性であるか、または少なくとも95%の同
一性であるアミノ酸配列を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の可溶性LIFRポ
リペプチド。
【請求項12】
前記可溶性LIFRポリペプチドが、1つ以上の異種ポリペプチドに融合されている、
請求項1~11のいずれか一項に記載の可溶性LIFRポリペプチド。
【請求項13】
前記1つ以上の異種ポリペプチドが、Fcドメイン、アルブミン、トランスフェリン、
XTEN、ホモ-アミノ酸ポリマー、プロリン-アラニン-セリンポリマー、エラスチン
様ペプチド、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される異種ポリペプチ
ドを含む、請求項12に記載の可溶性LIFRポリペプチド。
【請求項14】
前記1つ以上の異種ポリペプチドが、Fcドメインを含む、請求項13に記載の可溶性
LIFRポリペプチド。
【請求項15】
前記1つ以上の異種ポリペプチドが、請求項27~38のいずれか一項に記載の可溶性
gp130ポリペプチドを含む、請求項12~14のいずれか一項に記載の可溶性LIF
Rポリペプチド。
【請求項16】
前記可溶性LIFRポリペプチドおよび可溶性gp130ポリペプチドが、リンカーを
介して融合されている、請求項15に記載の可溶性LIFRポリペプチド。
【請求項17】
前記リンカーが、GlySerリンカーを含む、請求項16に記載の可溶性LIFRポ
リペプチド。
【請求項18】
前記GlySerリンカーが、(Gly4Ser)リンカーを含む、請求項17に記
載の可溶性LIFRポリペプチド。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか一項に記載の可溶性LIFRポリペプチドと二量体化されて
いる、請求項1~18のいずれか一項に記載の可溶性LIFRポリペプチド。
【請求項20】
各可溶性LIFRポリペプチドがFcドメインを含み、二量体化が前記Fcドメインを
介している、請求項19に記載の可溶性LIFRポリペプチド。
【請求項21】
請求項1~18のいずれか一項に記載の可溶性LIFRポリペプチドをコードする核酸
【請求項22】
請求項21に記載の核酸を含む、発現ベクター。
【請求項23】
請求項1~18のいずれか一項に記載の可溶性LIFRポリペプチド、
請求項21に記載の核酸、
請求項22に記載の発現ベクター、または
それらの任意の組み合わせ
を含む、細胞。
【請求項24】
請求項1~18のいずれか一項に記載の可溶性LIFRポリペプチドを産生する方法で
あって、
細胞が前記LIFRポリペプチドを産生する条件下で、請求項22に記載の発現ベクタ
ーを含む前記細胞を培養することを含む、方法。
【請求項25】
前記細胞を培養する前に、前記細胞に前記発現ベクターを導入することをさらに含む、
請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記細胞を培養した後に、前記細胞から前記LIFRポリペプチドを精製することをさ
らに含む、請求項24または請求項25に記載の方法。
【請求項27】
可溶性糖タンパク質130(gp130)ポリペプチドであって、配列番号4に対して
少なくとも70%の同一性であるアミノ酸配列を含み、前記gp130ポリペプチドが、
対応する野生型gp130ポリペプチドと比較して、白血病抑制因子(LIF)に対して
増加された結合親和性を示す、可溶性gp130ポリペプチド。
【請求項28】
K45位のアミノ酸置換を含み、ここで前記位置の識別は、配列番号4に対するもので
ある、請求項27に記載の可溶性gp130ポリペプチド。
【請求項29】
K45Eアミノ酸置換を含む、請求項28に記載の可溶性gp130ポリペプチド。
【請求項30】
Y95位のアミノ酸置換、および
K184位のアミノ酸置換
のうちの一方または両方を含み、
ここで位置の識別は、配列番号4に対するものである、請求項27~29のいずれか一
項に記載の可溶性gp130ポリペプチド。
【請求項31】
Y95Dアミノ酸置換、および
K184Eアミノ酸置換
のうちの一方または両方を含む、請求項30に記載の可溶性gp130ポリペプチド。
【請求項32】
F46位のアミノ酸置換、および
I130位のアミノ酸置換、のうちの一方または両方を含み、
ここで位置の識別は、配列番号4に対するものである、請求項27~31のいずれか一
項に記載の可溶性gp130ポリペプチド。
【請求項33】
F46Lアミノ酸置換、および
I130Mアミノ酸置換
のうちの一方または両方を含む、請求項32に記載の可溶性gp130ポリペプチド。
【請求項34】
配列番号4に対して少なくとも80%の同一性であるアミノ酸配列を含む、請求項27
~33のいずれか一項に記載の可溶性gp130ポリペプチド。
【請求項35】
配列番号4に対して少なくとも90%の同一性であるか、または少なくとも95%の同
一性であるアミノ酸配列を含む、請求項27~33のいずれか一項に記載の可溶性gp1
30ポリペプチド。
【請求項36】
前記可溶性gp130ポリペプチドが、1つ以上の異種ポリペプチドに融合されている
、請求項27~35のいずれか一項に記載の可溶性gp130ポリペプチド。
【請求項37】
前記1つ以上の異種ポリペプチドが、Fcドメイン、アルブミン、トランスフェリン、
XTEN、ホモ-アミノ酸ポリマー、プロリン-アラニン-セリンポリマー、エラスチン
様ペプチド、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される異種ポリペプチ
ドを含む、請求項36に記載の可溶性gp130ポリペプチド。
【請求項38】
前記1つ以上の異種ポリペプチドが、Fcドメインを含む、請求項37に記載の可溶性
gp130ポリペプチド。
【請求項39】
前記1つ以上の異種ポリペプチドが、請求項1~14のいずれか一項に記載の可溶性L
IFRポリペプチドを含む、請求項36~38のいずれか一項に記載の可溶性gp130
ポリペプチド。
【請求項40】
前記可溶性gp130ポリペプチドおよび可溶性LIFRポリペプチドが、リンカーを
介して融合されている、請求項39に記載の可溶性gp130ポリペプチド。
【請求項41】
前記リンカーが、GlySerリンカーを含む、請求項40に記載の可溶性gp130
ポリペプチド。
【請求項42】
前記GlySerリンカーが、(Gly4Ser)リンカーを含む、請求項41に記
載の可溶性gp130ポリペプチド。
【請求項43】
請求項27~42のいずれか一項に記載の可溶性gp130ポリペプチドと二量体化さ
れている、請求項27~42のいずれか一項に記載の可溶性gp130ポリペプチド。
【請求項44】
各可溶性gp130ポリペプチドがFcドメインを含み、二量体化が前記Fcドメイン
を介している、請求項43に記載の可溶性gp130ポリペプチド。
【請求項45】
請求項27~42のいずれか一項に記載の可溶性gp130ポリペプチドをコードする
核酸。
【請求項46】
請求項45に記載の核酸を含む、発現ベクター。
【請求項47】
請求項27~42のいずれか一項に記載の可溶性gp130ポリペプチド、
請求項45に記載の核酸、
請求項46に記載の発現ベクター、または
それらの任意の組み合わせ
を含む、細胞。
【請求項48】
請求項27~42のいずれか一項に記載の可溶性gp130ポリペプチドを産生する方
法であって、
細胞が前記可溶性gp130ポリペプチドを産生する条件下で、請求項46に記載の発
現ベクターを含む前記細胞を培養することを含む、方法。
【請求項49】
前記細胞を培養する前に、前記細胞に前記発現ベクターを導入することをさらに含む、
請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記細胞を培養した後に、前記細胞から前記可溶性gp130ポリペプチドを精製する
ことをさらに含む、請求項48または請求項49に記載の方法。
【請求項51】
請求項27~38のいずれか一項に記載の可溶性gp130ポリペプチドと二量体化さ
れた、請求項1~14のいずれか一項に記載の可溶性LIFRポリペプチドを含む、ヘテ
ロ二量体タンパク質。
【請求項52】
前記可溶性LIFRポリペプチドおよび前記可溶性gp130ポリペプチドがそれぞれ
二量体化ドメインを含み、前記二量体化ドメインを介して前記可溶性LIFRポリペプチ
ドおよび前記可溶性gp130ポリペプチドが二量体化される、請求項51に記載のヘテ
ロ二量体タンパク質。
【請求項53】
前記二量体化ドメインが、Fcドメインを含む、請求項52に記載のヘテロ二量体タン
パク質。
【請求項54】
白血病抑制因子(LIF)に結合し、配列番号2に対して少なくとも70%の同一性で
あるアミノ酸配列を含む、可溶性白血病抑制因子受容体(LIFR)ポリペプチドと、
薬学的に許容される担体と
を含む、医薬組成物。
【請求項55】
白血病抑制因子(LIF)に結合し、配列番号4に対して少なくとも70%の同一性で
あるアミノ酸配列を含む、可溶性糖タンパク質130(gp130)ポリペプチドと、
薬学的に許容される担体と
を含む、医薬組成物。
【請求項56】
白血病抑制因子(LIF)に結合し配列番号4に対して少なくとも70%の同一性であ
るアミノ酸配列を含む可溶性糖タンパク質130(gp130)ポリペプチドと二量体化
された、白血病抑制因子(LIF)に結合し配列番号2に対して少なくとも70%の同一
性であるアミノ酸配列を含む可溶性白血病抑制因子受容体(LIFR)ポリペプチドと、
薬学的に許容される担体と
を含む、医薬組成物。
【請求項57】
請求項1~18のいずれか一項に記載の可溶性LIFRポリペプチドと、
薬学的に許容される担体と
を含む、医薬組成物。
【請求項58】
請求項27~42のいずれか一項に記載の可溶性gp130ポリペプチドと、
薬学的に許容される担体と
を含む、医薬組成物。
【請求項59】
請求項51~53のいずれか一項に記載のヘテロ二量体タンパク質と、
薬学的に許容される担体と
を含む、医薬組成物。
【請求項60】
治療有効量の請求項54~59のいずれか一項に記載の医薬組成物を、必要とする個体
に投与することを含む、方法。
【請求項61】
必要とする前記個体が、がんを有する個体である、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記がんが、膵臓がんである、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
請求項54~59のいずれか一項に記載の医薬組成物と、
必要とする個体に前記医薬組成物を投与するための説明書と
を含む、キット。
【請求項64】
前記医薬組成物が、1つ以上の単位剤形で存在する、請求項63に記載のキット。
【請求項65】
前記医薬組成物が、2つ以上の単位剤形で存在する、請求項63に記載のキット。
【請求項66】
必要とする前記個体が、がんを有する個体である、請求項63~65のいずれか一項に
記載のキット。
【請求項67】
前記がんが、膵臓がんである、請求項66に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年7月20日に出願された米国仮特許出願第62/701,399
号の利益を主張し、この出願はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
白血病抑制因子(LIF)は、IL-6スーパーファミリーに属する多機能サイトカイ
ンである。Il-6スーパーファミリーの他のメンバーとしては、オンコスタチンM(O
SM)、IL-6、IL-11、毛様体神経栄養因子(CNTF)、およびカルジオトロ
フィン-1(CT-1)が挙げられる。LIF遺伝子は、ヒトとマウスとの間で高度に保
存されている(約75%)。LIFタンパク質は、グリコシル化によって修飾されること
が多い単量体タンパク質である。グリコシル化されていないLIFタンパク質の分子量は
、20~25kDaであり、一方、グリコシル化タンパク質の分子量は、37~63kD
aの範囲である。
【0003】
LIFは、自己分泌様式および傍分泌様式の両方により機能する。LIFは、その特異
的な受容体(白血病抑制因子受容体-LIFR)に結合し、次いで、糖タンパク質130
(gp130)を動員して、JAK/STAT3シグナル伝達経路を含む下流のシグナル
経路の活性化を誘導する高親和性受容体複合体を形成する(図1)。
【0004】
LIFは、腫瘍の発生および進行において、何らかの役割を果たす。白血球細胞の成長
を阻害する際のその役割とは対照的に、LIFは、多くの種類の固形腫瘍の発生および進
行を促進することが多い。LIFの過剰発現は、培養されたヒトがん細胞の増殖を促進し
、様々なヒト腫瘍細胞によって形成される異種移植腫瘍の成長を増加させる。加えて、L
IFは、腫瘍細胞の移動および浸潤性を高め、乳がんおよび横紋筋肉腫の転移を促進する
。低酸素症は、固形腫瘍におけるLIFの過剰発現に重要な役割を果たす。IL-6およ
びIL-1βなどのサイトカインも、LIF発現を誘導することができる。
【0005】
加えて、LIFは、膵臓がんにおいて注目され始めている因子である。最近の研究は、
遺伝子操作によるまたは抗体阻害を介してかのいずれかで膵臓がんモデルにおけるLIF
の阻害が、マウスの寿命を改善し、腫瘍量を減らし、発がんイニシエーションを制限する
ことを示す。最も致命的ながんの1つであるにもかかわらず、膵臓がんの治療選択肢は不
足している。LIFを阻害する現在の方法は、抗LIF抗体を採用する。しかしながら、
抗体は、LIFの1つの特異的な面を標的とすることのみができるため、受容体結合と完
全には競合することができない。さらに、LIFとその受容体との間の内因性相互作用の
親和性は非常に高く(約50~100pM)、抗体のみを使用して真に競合するには困難
なレベルの親和性である。したがって、LIFを標的とし、LIFの活性/シグナル伝達
を阻害する改善された方式が必要である。
【発明の概要】
【0006】
可溶性白血病抑制因子受容体(LIFR)ポリペプチド、可溶性糖タンパク質130(
gp130)ポリペプチド、ならびにこのようなポリペプチドを含む可溶性融合タンパク
質および二量体が提供される。可溶性ポリペプチドは、白血病抑制因子(LIF)に結合
する。特定の態様では、可溶性ポリペプチドは、対応する野生型ポリペプチドと比較して
、LIFに対して増加した結合親和性を示す。そのような可溶性ポリペプチドをコードす
る核酸、そのような核酸を含む発現ベクター、ならびにそのような核酸および/または発
現ベクターを含む細胞もまた提供される。LIF活性の阻害を必要とする個体(例えば、
がんを治療するため)においてLIF活性を阻害する方法を含む、可溶性ポリペプチドを
使用する方法もまた提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】LIFRとgp130を介したLIFシグナル伝達の概略図。
図2】本開示の一実施形態による、可溶性ポリペプチドの二量体を使用するLIF活性の阻害の概略図。
図3】パネルA:複数のソーティングから単離されたLIFR Ig様ドメインバリアントで観察されたコンセンサス突然変異。パネルB:低い(10pM、100pM)LIF濃度での正規化された合計蛍光結合値から計算されるLIFRバリアントの結合スコア。すべてのスコアは、野生型に対して、酵母表面での差次的発現について正規化された。
図4】パネルA:部位特異的突然変異誘発を使用して生成されたLIFRバリアントのまとめ。パネルB:LIFRバリアントの結合スコア。野生型(WT)に対して正規化された発現も示される。
図5】ヒトLIFR(青色)に結合するヒトLIF(桃色)のPyMOLモデル化構造において示される、図4のパネルAからのコンセンサス突然変異。突然変異は赤色で示され、PyMOLを使用して導入される。ループ1、2および3における突然変異のクラスターは、挿入図で拡大されている。
図6】パネルA:複数のソーティングから単離されたgp130 CBMドメインバリアントで観察されたコンセンサス突然変異。パネルB:部位特異的突然変異誘発を使用して生成された変異体gp130バリアントのまとめ。パネルC:gp130バリアントの結合スコア。野生型(WT)に対して正規化された発現も示される。
図7】gp130 ELDME構造におけるコンセンサス突然変異。ヒトgp130(桃色)に結合するヒトLIF(青色)の解析された構造において示される、図6のパネルAからのコンセンサス突然変異の選択。PyMOLを使用して挿入された突然変異は、青緑色で示される。ゾーン1および2における突然変異のクラスターは、挿入図で拡大されている。
図8】ヒトLIFに対する、酵母ディスプレイされたLIFR VPRVVAIDおよびgp130 ELDMEの結合。パネルA:ヒトLIFに結合する、LIFR野生型(WT)(丸)、「PDD」バリアント(L218P-N42D-N277D)(四角)、およびVPRVVAIDバリアント(図4のパネルAの突然変異)(三角)。VPRVVAIDバリアントのKは、30pMで測定され、これは野生型(WT)と比較して32倍高い親和性である。パネルB:ヒトLIFに結合する、gp130野生型(WT)(丸)、「8M」バリアント(E4K-K5R-N14D-K45E-F46L-K83R-Y95D-N100S)(四角)、およびELDMEバリアント(図4のパネルAの突然変異)(三角)。ELDMEバリアントのKは、5nMで測定され、これは野生型(WT)と比較して12倍高い親和性である。
図9】本開示のホモ二量体およびヘテロ二量体の可溶性LIFRおよび/またはgp130融合構築物の例の概略図(パネルC~F)。パネルA:gp130結合面を標的とする抗LIFモノクローナル抗体「G1」。パネルB:LIFR結合面を標的とする抗LIFモノクローナル抗体「L1」。パネルC:gp130 CBMドメイン(ELDME)Fc融合体。パネルD:LIFR CBMI-Ig様CBMIIドメイン(VPRVVAID)Fc融合体。パネルE:LIFR CBMI-Ig様CBMIIドメイン(VPRVVAID)-gp130 CBMドメイン(ELDME)Fc融合体。これはホモ二量体であり、5x Gly4Serリンカーを使用して融合されたLIFRおよびgp130を有する。パネルF:LIFR CBMI-Ig様CBMIIドメイン(VPRVVAID)-gp130 CBMドメイン(ELDME)ヘテロ二量体Fc融合体。このバリアントは、Fcの一方のアームにLIFRを有し、Fcの他方のアームにgp130を有する。すべてのバリアントは、首尾良く発現され、精製された。
図10】精製されたLIF阻害剤の結合。KinExAを使用して測定される、可溶性ヒトLIFに結合するLIFR CBMI-Ig様CBMII野生型Fc融合体(丸)、LIFR CBMI-Ig様CBMII(VPRVVAID)Fc融合体(三角)、およびLIFR CBMI-Ig様CBMII(VPRVVAID)-gp130 CBM(ELDME)Fc融合体(ひし形)。K値は、KinExAソフトウェアによってから計算され、近似曲線が示される。
図11】ホモ二量体LIF阻害剤は、一度に複数のLIFに結合する。パネルA:複数LIFの結合アッセイの概略図。LIFが酵母表面上に提示される。阻害剤は、飽和濃度でインキュベートされ、過剰分は洗い流される。次に、LIF-Hisを、10nMおよび100nMの濃度で阻害剤結合酵母と共に培養する。結合は、LIFのHis-タグドメインを介して検出され、これは阻害剤が一度に複数のLIFに結合することができ、「ブリッジ」として作用する場合にのみ存在するはずである。パネルB:複数LIFの結合実験からの結果。LIFが酵母上に提示され、LIFR-WT-Fc、LIFR-VPRVVAID-Fc、LIFR-gp130融合体-Fc、または抗LIF mAbであるL1が、提示されたLIF-Hisと可溶性LIF-Hisとの間の結合ブリッジとして使用された。各条件での抗His蛍光抗体からの蛍光発光が、LIF-Hisを添加していない対照に対して正規化された。
図12】競合体の存在下でLIFに結合するとき、組換え阻害剤は、WTと比較して改善されたオフレートを示す。パネルA:競合LIF結合アッセイの概略図。LIFが酵母表面上に提示される。阻害剤は、飽和濃度でインキュベートされ、過剰分は洗い流される。次に、LIF-Hisを、10nMおよび100nMの濃度で阻害剤結合酵母と共に培養する。結合は、阻害剤Fc融合体のFcドメインを介して検出され、これは、高濃度の可溶性LIF-Hisによって、酵母提示されたLIFから競合的に離される。パネルB:競合LIF結合実験からの結果。LIFが酵母上に提示され、LIFR-WT-Fc、LIFR-VPRVVAID-Fc、LIFR-gp130融合体-Fc、または抗LIF mAbであるL1が結合パートナーとして添加された。過剰な阻害剤を洗い流し、可溶性LIFを競合体として24時間添加した。各条件での抗Fc蛍光抗体からの蛍光発光は、過剰な阻害剤が除去されず可溶性LIFが添加されていない対照に対して正規化された。
図13】LIF阻害剤は、LIFに同時に結合する。パネルA:同時結合アッセイの概略図。gp130(示される)およびLIFRが酵母表面上に提示される。LIFは、飽和濃度でインキュベートされ、過剰分は洗い流される。次いで、阻害剤(LIFR-VPRVVAID-Fcが示される)を、LIF結合酵母と共培養する。結合は、阻害剤のFcドメインを介して検出され、これは、LIFを「ブリッジ」として使用して同時の受容体結合が起こる場合にのみ存在するはずである。パネルB:同時結合実験からの結果。LIFRまたはgp130のいずれかが酵母上に提示され、ヒトLIFが結合ブリッジとして使用された。蛍光発光は、LIFを添加していない対照に対して正規化された、抗Fc蛍光抗体の読み取り値である。LIFR-VPRVVAID-Fc、gp130-ELDME-Fc、LIFR-gp130ヘテロ二量体Fc、LIFR-gp130ホモ二量体融合体-Fc、抗LIF mAb L1、および抗LIF mAb G1の同時結合が示される。
図14】LIF阻害剤は、競合して野生型受容体からLIFを分離させる。パネルA:競合結合アッセイの概略図。野生型gp130またはLIFR(示される)が酵母表面上に提示される。ヒトLIF-Hisが飽和濃度でインキュベートされる。次いで、阻害剤(LIFR-VPRVVAID-Fcが示される)を、過剰量で、LIF結合酵母と共培養する。LIF結合は、LIF上のHis6-タグを介して検出される。阻害剤インキュベーション後に結合したままのLIFが少ないほど、阻害剤はよく競合してWT受容体からLIFを分離させることができている。パネルB:競合結合実験からの結果。野生型LIFRまたはgp130のいずれかが酵母上に提示され、ヒトLIF-Hisで飽和された。結合した比率は、阻害剤無添加に対して正規化された、LIF-Hisから検出された蛍光発光である。LIFR-WT-Fc、gp130-ELDME-Fc(組換え)、LIFR-VPRVVAID-Fc(組換え)、LIFR-gp130融合体-Fc(組換え)、LIFR-gp130ヘテロ二量体Fc(組換え)、抗LIF mAb L1、および抗LIF mAb G1の競合結合が示される。
図15】組換え阻害剤は、HeLaルシフェラーゼレポーター細胞における下流STAT3シグナル伝達をブロックする。パネルA:HeLaレポーター細胞におけるLIFシグナル伝達の概略図。LIFは、LIFRとgp130の二量体化を促進し、STAT3のリン酸化、下流のシグナル伝達の活性化、および最終的なSTAT3応答エレメント制御下でのルシフェラーゼの産生を引き起こす。パネルB:異なる濃度のLIFR VPRVVAID Fc、LIFR-gp130融合体組換えFc、およびLIFR WT Fcによる、LIF由来ルシフェラーゼ活性の阻害。パネルC:LIFR Fcまたは融合体Fcの遅延添加時のLIF由来ルシフェラーゼシグナル。パネルD:何桁にもわたる[阻害剤]におけるLIF由来ルシフェラーゼ活性の阻害。LIFR VPRVVAID Fc IC50=35pM、LIFR WT Fcに対して53倍の改善。パネルE:イラスト図-IL-6ファミリーメンバーのLIFおよびOSMに結合するLIFR。グラフ-LIFR VPRVVAID FcまたはLIFR WT Fcと共にインキュベートされた、LIFまたはOSMに由来するルシフェラーゼシグナルの測定値。
図16】LIF阻害剤は、膵臓がん細胞におけるLIFシグナル伝達を除去する。パネルA:LIFシグナル伝達の概略図。LIFは、LIFRおよびgp130に結合し、受容体のヘテロ二量体化を引き起こす。二量体化によって、JAKが動員され、チロシン705上のSTAT3をリン酸化する。これにより、STAT3の二量体化、核への侵入、および転写プログラミングの活性化が起こる。したがって、pSTAT3-Y705は、LIFシグナル伝達の読み取り値である。パネルB:135pMのヒトLIFおよび異なる濃度のLIFR-VPRVVAID-Fc(組換え)、LIFR-WT-Fc、LIFR-VPRVVAID-gp130-ELDME Fc、およびL1抗LIF mAbに曝露された、PANC1(ヒト膵臓がん細胞株)溶解物のウェスタンブロット。パネルC:チューブリンシグナルに対して正規化された、pSTAT3シグナルの定量化。
【発明を実施するための形態】
【0008】
可溶性白血病抑制因子受容体(LIFR)ポリペプチド、可溶性糖タンパク質130(
gp130)ポリペプチド、ならびにこのようなポリペプチドを含む可溶性融合タンパク
質および二量体が提供される。可溶性ポリペプチドは、白血病抑制因子(LIF)に結合
する。特定の態様では、可溶性ポリペプチドは、対応する野生型ポリペプチドと比較して
、LIFに対して増加した結合親和性を示す。そのような可溶性ポリペプチドをコードす
る核酸、そのような核酸を含む発現ベクター、ならびにそのような核酸および/または発
現ベクターを含む細胞もまた提供される。LIF活性の阻害を必要とする個体(例えば、
がんを治療するため)においてLIF活性を阻害する方法を含む、可溶性ポリペプチドを
使用する方法もまた提供される。
【0009】
本開示の可溶性ポリペプチド、核酸、発現ベクター、細胞および方法をより詳細に記載
する前に、可溶性ポリペプチド、核酸、発現ベクター、細胞および方法が、記載される特
定の実施形態に限定されず、当然のことながら変更され得ることが理解されるべきである
。本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を記載するためのものであるにすぎず、
可溶性ポリペプチド、核酸、発現ベクター、細胞および方法の範囲は添付の特許請求の範
囲のみによって限定されるため、限定的であることは意図されないこともまた理解された
い。
【0010】
ある範囲の値が提供される場合、文脈上明確に指示されていない限り、下限の単位の1
0分の1まで、各間に含まれる値は、その範囲の上限と下限との間であり、その記載され
た範囲内の任意の他の述べられている値またはその間に含まれる値は、可溶性ポリペプチ
ド、核酸、発現ベクター、細胞および方法に包含されることを理解されたい。これらのよ
り小さい範囲の上限および下限は、独立してより小さい範囲内に含まれてもよく、また、
記載される範囲内の任意の特定の除外される限界を条件として、可溶性ポリペプチド、核
酸、発現ベクター、細胞および方法内にも包含される。述べられる範囲が限界の一方また
は両方を備える場合、それらの含まれる限界のうちのいずれかまたは両方を除外する範囲
もまた、可溶性ポリペプチド、核酸、発現ベクター、細胞および方法に含まれる。
【0011】
特定の範囲は、数値の前に用語「約」が付された状態で本明細書に提示される。「約」
という用語は、それが先行する正確な数字、およびその用語が先行する数字に近接または
近似する数字に逐語的支持を提供するために本明細書において使用される。数が特定の列
挙された数に近いかほぼ等しいかを決定するにあたり、近似または近似の列挙されていな
い数は、それが提示されている文脈において具体的に列挙された数と実質的に等価な数で
あり得る。
【0012】
別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、可
溶性ポリペプチド、核酸、発現ベクター、細胞および方法が属する技術分野の当業者に一
般に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似または同等の
任意の可溶性ポリペプチド、核酸、発現ベクター、細胞および方法もまた、可溶性ポリペ
プチド、核酸、発現ベクター、細胞および方法の実施または試験において使用され得るが
、代表的な例示的な可溶性ポリペプチド、核酸、発現ベクター、細胞および方法をここで
記載する。
【0013】
本明細書に引用されるすべての刊行物および特許は、各個々の刊行物または特許が参照
により組み込まれるように具体的かつ個別に示されているかのように参照により本明細書
に組み込まれ、刊行物が引用される関連する方法および/または材料を開示かつ記載する
ために、参照により本明細書に組み込まれる。任意の刊行物の引用は、出願日前のその開
示のためのものであり、提供される刊行日は、個別に確認を必要とし得る実際の刊行日と
は異なる場合があるので、本発明の可溶性ポリペプチド、核酸、発現ベクター、細胞およ
び方法が、その刊行物よりも先行する権利を有しないことを認めるものと解釈されるべき
ではない。
【0014】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、お
よび「the」は、文脈上他に明確に指示されない限り、複数の指示対象を含むことに留
意されたい。特許請求の範囲はいかなる任意選択的な要素も排除するように起草されても
よいことにさらに留意されたい。このように、この記述は、特許請求の要素の列挙に関連
して「専ら」、「唯一の」などのような排他的な用語の使用または「否定的な」制限の使
用のための先行基準としての役割を果たすことを意図する。
【0015】
明瞭さのために別の実施形態の文脈中で記載された、可溶性ポリペプチド、核酸、発現
ベクター、細胞および方法の特定の特徴はまた、単一の実施形態と組み合わせて提供され
得ることが認識される。逆に、簡潔にするために、単一の実施形態の文脈で説明される、
可溶性ポリペプチド、核酸、発現ベクター、細胞および方法の様々な特徴は、別々にまた
は任意の好適なサブコンビネーションで提供されてもよい。実施形態のすべての組み合わ
せは、本開示によって具体的に包含され、本明細書において、このような組み合わせが実
施可能なプロセスおよび/または組成物を内包する程度まで、ありとあらゆる組み合わせ
が個別にかつ明示的に開示されたかのように開示される。加えて、そのような変数を記載
している実施形態に列挙されるすべてのサブコンビネーションも、本発明の可溶性ポリペ
プチド、核酸、発現ベクター、細胞および方法によって具体的に包含され、そのようなあ
りとあらゆるサブコンビネーションが、個別にかつ明示的に開示されたかのように、本明
細書に開示される。
【0016】
本開示を読むと当業者には明らかであるように、本明細書に説明され例証された個々の
実施形態の各々は、本開示の方法の範囲または趣旨から逸脱することなく、他のいくつか
の実施形態のいずれかの特徴から容易に分離され得る、または組み合わせられ得る個別の
構成要素および特徴を有する。いかなる列挙された方法も、列挙された事象の順序で、ま
たは論理的に可能なあらゆる他の順序で実行され得る。
【0017】
可溶性ポリペプチド
上にまとめたように、本開示の態様は、可溶性ポリペプチドを含む。可溶性ポリペプチ
ドは、白血病抑制因子(LIF)(UniProtKB-P15018(ヒト)およびU
niProtKB-P09056(マウス))に結合し、LIF活性を阻害する。LIF
は、多機能サイトカインであり、その受容体としては、白血病抑制因子受容体(LIFR
)(UniProtKB-P42702(ヒト)およびUniProtKB-P4270
3(マウス))、ならびに糖タンパク質130(gp130)(UniProtKB-P
40189(ヒト)およびUniProtKB-Q00560(マウス))が挙げられる
【0018】
図1図15のパネルA、および図16のパネルAに概略的に示されるように、LIF
は、LIFRおよびgp130に結合し、受容体のヘテロ二量体化を引き起こす。二量体
化によって、JAKが動員され、チロシン705上のSTAT3をリン酸化する。これに
より、STAT3の二量体化、核への侵入、および転写プログラミングの活性化が起こる
【0019】
本発明のポリペプチドは、LIFRおよび/またはgp130の細胞外(したがって可
溶性)部分に基づき、様々な状況での使用が見出される。例えば、可溶性ポリペプチドは
、LIF活性の阻害を必要とする個体、例えば、LIF活性の阻害が有益であるがんまた
は他の医学的状態を有する個体に投与される場合、治療薬としての使用が見出される。可
溶性ポリペプチドは、LIFリガンドの「トラップ」として作用する「デコイ」受容体と
して使用され得るため、細胞(例えば、がん細胞)の表面上のその天然受容体に結合する
ためのLIFの利用可能性が、実質的に減少するか、またはなくなり、それによって、L
IF活性/シグナル伝達が減少するか、またはなくなる。一実施形態に係るそのようなL
IFリガンドトラップの概略図は、図2に概略的に示される。この例では、可溶性ポリペ
プチドは二量体化されており、この二量体の各単量体は、フラグメント結晶化可能(Fc
)ドメイン208(例えば、ヒトIgG1 Fcドメイン、マウスIgG2a Fcドメ
インなど)に(直接的または間接的に)融合されたLIFR部分202(ここでは、ヒト
LIFRの最初の3つのドメインを含む部分(サイトカイン結合モチーフI-Ig様-サ
イトカイン結合モチーフII))を含む。図2に示されるように、二量体は、細胞210
の表面上のその天然LIFRおよびgp130受容体からLIFを隔離するLIFリガン
ドトラップとして作用し、それにより、LIFシグナル伝達/活性を阻害する。本開示の
可溶性ポリペプチドはまた、例えば、がん(例えば、膵臓がん)検出のバイオマーカーと
してのLIFを検出するための診断用途において、また、例えば、LIFの生物学的効果
を決定するためにLIFシグナル伝達/活性を阻害するための研究用途において、使用が
見出される。次に、本開示の可溶性ポリペプチドについてさらに詳細に説明する。
【0020】
可溶性LIFRポリペプチド
本開示は、可溶性LIFRポリペプチドを提供する。「可溶性LIFRポリペプチド」
とは、例えば、可溶性LIFRポリペプチドがLIFRの細胞外部分またはそのフラグメ
ントのみを含むために、細胞膜に組み込まれないLIFRポリペプチドを意味する。いく
つかの実施形態では、可溶性LIFRポリペプチドは、LIFRの最初の3つのドメイン
を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなり、それはN末端からC末端に向
かう順序で、(1)サイトカイン結合モチーフI(CBMI)ドメイン、(2)Ig様ド
メイン、および(3)サイトカイン結合モチーフII(CBMII)ドメインである。以
下の表1に、野生型ヒトLIFRのアミノ酸配列(シグナル配列を除く)が示される。下
線が引かれているアミノ酸は、CBMI、Ig様、およびCBMIIドメインを構成する

【表1】
【0021】
特定の態様では、本開示の可溶性LIFRポリペプチドは、配列番号2に対して少なく
とも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90
%、少なくとも95%、少なくとも99%、または100%の同一性であるアミノ酸配列
、または配列番号2に記載されるアミノ酸配列の400~489、420~489、44
0~489、460~489、470~489、475~489、480~489、また
は485~489の連続アミノ酸を含むそのLIF結合フラグメントを含む。
【0022】
可溶性LIFRポリペプチドは、野生型LIFRアミノ酸配列を有してもよい。他の態
様では、可溶性LIFRポリペプチドは、1つ以上の保存的アミノ酸置換、対応する野生
型LIFRポリペプチドと比較して、LIFに対する結合親和性を増加させる1つ以上の
アミノ酸置換(例えば、LIFに対するLIFRの結合親和性を増加させる本明細書に記
載されるいずれかのアミノ酸置換の1つ以上)、またはそれらの組み合わせを含む「バリ
アント」である。本明細書で使用される場合、「保存的置換」は、アミノ酸が、同様の特
性を有する別のアミノ酸で置換されたものであり、その結果、ペプチド化学の当業者が、
ポリペプチドの二次構造および疎水性親水性の性質が実質的に変わらないと予想するとこ
ろのものである。特定の実施形態で想定されるポリヌクレオチドおよびポリペプチドの構
造において、改変がなされてもよく、ポリペプチドは、所望な特徴を有するバリアントま
たは誘導体ポリペプチドをコードする機能性分子を少なくともほぼ有し、それを依然とし
て得るポリペプチドを含む。ポリペプチドのアミノ酸配列を変更して、同等の、またはさ
らに改良されたバリアントポリペプチドを作成することが望ましい場合、当業者は、例え
ば、コードするDNA配列のコドンの1つ以上を変更することができる。
【0023】
上にまとめたように、本開示の可溶性LIFRポリペプチドは、配列番号2と少なくと
も70%の同一性であるアミノ酸配列を含んでもよく、ここで、LIFRポリペプチドは
、対応する野生型LIFRポリペプチドと比較して、LIFに対して増加した結合親和性
を示す。本明細書で使用される場合、「対応する」野生型ポリペプチドは、1つ以上の親
和性を増加させるアミノ酸置換を含むように組換えされた、親の野生型ポリペプチド(ヒ
ト、マウスなどに由来する)である。
【0024】
本明細書で使用される場合、「増加した結合親和性」とは、可溶性LIFRポリペプチ
ドまたは可溶性gp130ポリペプチドが、対応する野生型ポリペプチドと比較して、L
IFに対して、より強い結合を示す(より低いK値によって示される)ことを意味する
。LIFに対する可溶性LIFRまたはgp130ポリペプチドの結合親和性を測定する
ための方法が利用可能である。例えば、表面プラズモン共鳴(SPR)技術(例えば、B
IAcore(商標)2000装置を使用する)、KinExA(登録商標)結合平衡除
外アッセイ(Sapidyne Instruments)、Bio-Layer In
terferometry(BLI)技術(例えば、ForteBio Octet(登
録商標))、または他の同様のアッセイ/技術を用いて、可溶性LIFRまたはgp13
0ポリペプチドが所望な結合親和性を示すかどうかを決定してもよい。本開示の文脈にお
いて結合親和性を測定するための好適な手法は、例えば、Hunter,S.A.and
Cochran,J.R.(2016)Methods Enzymol.580:2
1-44に記載されるものを含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、直接結合アッセイにおいて、平衡結合定数(K)は、フル
オロフォアまたは放射性同位体に接合した可溶性LIFRまたはgp130ポリペプチド
、または標識された抗体による検出のためのN末端またはC末端エピトープタグを含む可
溶性LIFRまたはgp130ポリペプチドを使用して測定されてもよい。標識またはタ
グが実行可能ではないか、または望ましくない場合、競合結合アッセイを使用して、標識
された競合体の最大シグナルの50%が検出可能である標識されていない可溶性LIFR
またはgp130ポリペプチドの量である、最大半値阻害濃度(IC50)を決定するこ
とができる。次いで、測定されたIC50値からK値を計算することができる。
【0026】
特定の態様では、LIFに対して増加した結合親和性を有する可溶性LIFRポリペプ
チドは、L218位のアミノ酸置換、およびN277位のアミノ酸置換の一方または両方
を含み、ここで、位置の識別は、配列番号2に対するものである。L218位およびN2
77位のアミノ酸置換の非限定的な例としては、L218Pアミノ酸置換、およびN27
7Dアミノ酸置換の一方または両方を含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、LIFに対して増加した結合親和性を有する可溶性LIFR
ポリペプチドは、I257位のアミノ酸置換、V262位のアミノ酸置換、およびT27
3位のアミノ酸置換のうちの1つ、2つ、または各々を含み、ここで、位置の識別は、配
列番号2に対するものである。I257位、V262位、およびT273位のアミノ酸置
換の例としては、限定されないが、I257Vアミノ酸置換、V262Aアミノ酸置換、
およびT273Iアミノ酸置換のうちの1つ、2つ、または各々を含む。
【0028】
特定の態様では、LIFに対して増加した結合親和性を有する可溶性LIFRポリペプ
チドは、I217位のアミノ酸置換、H240位のアミノ酸置換、およびI260位のア
ミノ酸置換のうちの1つ、2つ、または各々を含み、ここで、位置の識別は、配列番号2
に対するものである。I217位、H240位およびI260位のアミノ酸置換の非限定
的な例としては、I217Vアミノ酸置換、H240Rアミノ酸置換、およびI260V
アミノ酸置換のうちの1つ、2つ、または各々を含む。
【0029】
いくつかの実施形態では、LIFに対して増加した結合親和性を有する可溶性LIFR
ポリペプチドは、N242位のアミノ酸置換を含み、ここで、位置の識別は、配列番号2
に対するものである。N242アミノ酸置換の非限定的な例は、N242Dアミノ酸置換
である。
【0030】
特定の態様では、本開示の可溶性LIFRポリペプチドは、配列番号2と少なくとも7
0%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少
なくとも95%、または少なくとも98%の同一性であるアミノ酸配列、または配列番号
2に記載されるアミノ酸配列の400~489、420~489、440~489、46
0~489、470~489、475~489、480~489、または485~489
の連続アミノ酸を含むそのLIF結合フラグメントを含み、可溶性LIFRポリペプチド
は、I217位、L218位、H240位、I257位、I206位、V262位、T2
71位、およびN277位のいずれかに、任意の組み合わせで1つ以上のアミノ酸置換を
含む。
【0031】
いくつかの実施形態では、本開示の可溶性LIFRポリペプチドは、配列番号2と少な
くとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも9
0%、少なくとも95%、または少なくとも98%の同一性であるアミノ酸配列、または
配列番号2に記載されるアミノ酸配列の400~489、420~489、440~48
9、460~489、470~489、475~489、480~489、または485
~489の連続アミノ酸を含むそのLIF結合フラグメントを含み、可溶性LIFRポリ
ペプチドは、LIFに対してLIFRの結合親和性を増加させる本明細書に記載のいずれ
かのアミノ酸置換のうちの1つ以上、例えば、本明細書の他の箇所で記載されるように、
任意の組み合わせで、アミノ酸置換I217V、L218P、H240R、I257V、
I206V、V262A、T271I、およびN277Dの1つ、2つ、3つ、4つ、5
つ、6つ、7つ、または各々を含む。
【0032】
可溶性gp130ポリペプチド
可溶性gp130ポリペプチドもまた、本開示によって提供される。「可溶性gp13
0ポリペプチド」とは、例えば、可溶性gp130ポリペプチドがgp130の細胞外部
分またはそのフラグメントのみを含むために、細胞膜に組み込まれないgp130ポリペ
プチドを意味する。いくつかの実施形態では、可溶性gp130ポリペプチドは、gp1
30のサイトカイン結合モチーフ(CBM)ドメインを含むか、本質的にそれからなるか
、またはそれからなる。以下の表2に、野生型ヒトgp130のアミノ酸配列(シグナル
配列を除く)が示される。下線が引かれているアミノ酸は、CBMドメインを構成する。
【表2】
【0033】
特定の態様では、本開示の可溶性gp130ポリペプチドは、配列番号4と少なくとも
70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、
少なくとも95%、少なくとも99%、または100%の同一性であるアミノ酸配列、ま
たは配列番号4に記載されるアミノ酸配列の150~200、160~200、170~
200、180~200、185~200、190~200、または195~200の連
続アミノ酸を含むそのLIF結合フラグメントを含む。
【0034】
可溶性gp130ポリペプチドは、野生型gp130アミノ酸配列を有してもよい。他
の態様では、可溶性gp130ポリペプチドは、1つ以上の保存的アミノ酸置換、対応す
る野生型gp130ポリペプチドと比較して、LIFに対する結合親和性を増加させる1
つ以上のアミノ酸置換(例えば、LIFに対するgp130の結合親和性を増加させる本
明細書に記載されるいずれかのアミノ酸置換の1つ以上)、またはそれらの組み合わせを
含む「バリアント」である。
【0035】
上にまとめたように、本開示の可溶性gp130ポリペプチドは、配列番号4と少なく
とも70%の同一性であるアミノ酸配列を含んでもよく、ここで、gp130ポリペプチ
ドは、対応する野生型gp130ポリペプチドと比較して、LIFに対して増加した結合
親和性を示す。
【0036】
いくつかの実施形態では、LIFに対して増加した結合親和性を有する可溶性gp13
0ポリペプチドは、K45位のアミノ酸置換を含み、ここで、位置の識別は、配列番号4
に対するものである。K45位のアミノ酸置換の非限定的な例は、K45Eアミノ酸置換
である。
【0037】
特定の態様では、LIFに対して増加した結合親和性を有する可溶性gp130ポリペ
プチドは、Y95位のアミノ酸置換、およびK184位のアミノ酸置換の一方または両方
を含み、ここで、位置の識別は、配列番号4に対するものである。Y95位およびK18
4位のアミノ酸置換の非限定的な例としては、Y95Dアミノ酸置換、およびK184E
アミノ酸置換の一方または両方を含む。
【0038】
いくつかの実施形態では、LIFに対して増加した結合親和性を有する可溶性gp13
0ポリペプチドは、F46位のアミノ酸置換、およびI130位のアミノ酸置換の一方ま
たは両方を含み、ここで、位置の識別は、配列番号4に対するものである。F46位およ
びI130位のアミノ酸置換の例としては、限定されないが、F46Lアミノ酸置換、お
よびI130Mアミノ酸置換の一方または両方を含む。
【0039】
特定の態様では、本開示の可溶性gp130ポリペプチドは、配列番号4と少なくとも
70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、
少なくとも95%、または少なくとも98%の同一性であるアミノ酸配列、または配列番
号4に記載されるアミノ酸配列の150~200、160~200、170~200、1
80~200、185~200、190~200、または195~200の連続アミノ酸
を含むそのLIF結合フラグメントを含み、可溶性gp130ポリペプチドは、K45位
、F46位、Y95位、I130位、およびK184位のいずれかに、任意の組み合わせ
で1つ以上のアミノ酸置換を含む。
【0040】
いくつかの実施形態では、本開示の可溶性gp130ポリペプチドは、配列番号4と少
なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも
90%、少なくとも95%、または少なくとも98%の同一性であるアミノ酸配列、また
は配列番号4に記載されるアミノ酸配列の150~200、160~200、170~2
00、180~200、185~200、190~200、または195~200の連続
アミノ酸を含むそのLIF結合フラグメントを含み、可溶性gp130ポリペプチドは、
LIFに対してgp130の結合親和性を増加させる本明細書に記載のいずれかのアミノ
酸置換のうちの1つ以上、例えば、本明細書の他の箇所で記載されるように、任意の組み
合わせで、アミノ酸置換K45E、F46L、Y95D、I130M、およびK184E
の1つ、2つ、3つ、4つ、または各々を含む。
【0041】
融合および二量体タンパク質
本開示の可溶性LIFRポリペプチドまたは可溶性gp130ポリペプチドのいずれか
を含む融合タンパク質も提供される。「融合タンパク質」とは、アミノ酸の単一の連続鎖
の一部として、1つ以上の異種ポリペプチドに融合した可溶性LIFRポリペプチドまた
は可溶性gp130ポリペプチドを含む融合体を意味し、この鎖は、天然には存在しない
。特定の態様では、1つ以上の異種ポリペプチドは、Fcドメイン、アルブミン、トラン
スフェリン、XTEN、ホモ-アミノ酸ポリマー、プロリン-アラニン-セリンポリマー
、エラスチン様ペプチド、およびそれらの任意の組み合わせから選択される。特定の態様
では、融合タンパク質は、可溶性gp130ポリペプチドに融合した可溶性LIFRポリ
ペプチドを含む。
【0042】
本開示の融合タンパク質の2つ以上のドメインは、直接的または間接的に融合されても
よい。例えば、可溶性LIFRポリペプチドは、リンカーを介して間接的に可溶性gp1
30ポリペプチドに融合されてもよい。また、例として、可溶性LIFRポリペプチドま
たは可溶性gp130ポリペプチドは、リンカーを介して異種ポリペプチド(例えば、F
cドメイン)に融合されてもよい。好適なリンカーとしては、限定されないが、ペプチド
リンカーが挙げられる。特定の態様では、ペプチドリンカーは、グリシンおよびセリンを
含むリンカー、例えば、GlySerリンカーである。目的のGlySerリンカーとし
ては、限定されないが、(Gly4Ser)リンカーが挙げられる。
【0043】
いくつかの実施形態では、1つ以上の異種ポリペプチドは、Fcドメイン、例えば、ヒ
トFcドメインまたはマウスFcドメインを含む。Fcドメインは、全長Fcドメインま
たはそのフラグメントであってもよい。本開示の可溶性LIFRまたはgp130ポリペ
プチドのいずれかに融合し得るヒトFcドメインの非限定的な例は、以下の表3に記載の
配列(配列番号5)を有するヒトIgG1 Fcドメイン、またはそのフラグメントであ
る。
【表3】
【0044】
本開示の融合タンパク質の例のアミノ酸配列(シグナル配列を除く)は、表4に提供さ
れる。リンカー(ここでは、3x グリシン-セリン(GS)リンカー、波線の下線部)
)を介してヒトIgG1 Fcドメイン(イタリック体)に融合したgp130ドメイン
(下線部)を含む融合タンパク質(「gp130 ELDME hIgG1」)のアミノ
酸配列が提供される(配列番号6)。gp130ドメインは、本明細書の他の箇所で記載
されるように、アミノ酸置換K45E、F46L、Y95D、I130M、およびK18
4E(「ELDME」)を含む。この融合タンパク質は、図9のパネルCに概略的に示さ
れる二量体タンパク質の単量体に対応する。リンカー(ここでは、3x グリシン-セリ
ン(GS)リンカー、波線の下線部))を介してヒトIgG1 Fcドメイン(イタリッ
ク体)に融合したLIFRサイトカイン結合モチーフI(CBMI)-サイトカイン結合
モチーフII(CBMII)ドメイン(下線部)を含む融合タンパク質(「LIFR V
PRVVAID hIgG1」)のアミノ酸配列も表4に提供される(配列番号7)。L
IFRサイトカイン結合モチーフI(CBMI)-サイトカイン結合モチーフII(CB
MII)ドメインは、本明細書の他の箇所で記載されるように、アミノ酸置換I217V
、L218P、H240R、I257V、I206V、V262A、T271I、および
N277D(「VPRVVAID」)を含む。この融合タンパク質は、図9のパネルDに
概略的に示される二量体タンパク質の単量体に対応する。表4は、リンカー(ここでは、
5x グリシン-セリン(GS)リンカー、波線の下線部)を介して「gp130
ELDME hIgG1」融合タンパク質のELDME gp130ドメイン(二重下
線部)に融合した「LIFR VPRVVAID hIgG1」融合タンパク質のVPR
VVAID LIFRドメイン(下線部)を含む融合タンパク質(「LIFR-gp13
0 VPRVVAID-ELDME hIgG1」)のアミノ酸配列であって、ここで、
ELDME gp130ドメインは、リンカー(ここでは、3x グリシン-セリン(G
S)リンカー、波線の下線部)を介してヒトIgG1 Fcドメイン(イタリック体)に
融合した、アミノ酸配列も提供する(配列番号8)。この融合タンパク質は、図9のパネ
ルEに概略的に示される二量体タンパク質の単量体に対応する。表4は、さらに、図9
パネルFに概略的に示される二量体タンパク質の融合タンパク質単量体のアミノ酸配列を
提供する。第1のモノマーは、リンカー(ここでは、3x グリシン-セリン(GS)リ
ンカー、波線の下線部)を介してヒトIgG1 Fcノブ-イン-ホール(KiH)CH
3Aドメイン(イタリック体)に融合した「LIFR VPRVVAID hIgG1」
融合タンパク質のVPRVVAID LIFRドメイン(下線部)を含む(配列番号9)
。第2のモノマーは、リンカー(ここでは、3x グリシン-セリン(GS)リンカー、
波線の下線部)を介してヒトIgG1 Fcノブ-イン-ホール(KiH)CH3Bドメ
イン(イタリック体)に融合した「gp130 ELDME hIgG1」融合タンパク
質のELDME gp130ドメイン(下線部)を含む(配列番号10)。
【表4-1】
【表4-2】
【表4-3】
【0045】
可溶性LIFRポリペプチド、可溶性gp130ポリペプチド、またはこれらを含む融
合タンパク質のいずれかと二量体化された、可溶性LIFRポリペプチド、可溶性gp1
30ポリペプチド、またはこれらを含む融合タンパク質(例えば、表4の融合タンパク質
のいずれか、またはそのLIF結合性バリアント)のいずれかを含む二量体タンパク質も
提供される。いくつかの実施形態では、各単量体は、Fcドメインを含む融合タンパク質
であり、単量体の二量体化は、Fcドメインを介して行われる。本開示の例示的な二量体
タンパク質としては、以下の実験の章に記載されるもの、および図9に概略的に示される
ものが挙げられる。
【0046】
可溶性LIFRおよびgp130ポリペプチドの組換え/開発および産生
1つ以上の所望な機能性を有するさらなる可溶性LIFRまたはgp130ポリペプチ
ドを組換え/開発する方法も、本開示によって提供される。可溶性LIFRまたはgp1
30ポリペプチドが開発される様式は、様々であってもよい。合理的かつ組み合わせのア
プローチを使用して、新規な特性、例えば、LIFに対して増加した結合親和性および/
または特異性を有する可溶性LIFRおよびgp130ポリペプチドを組換えすることが
できる。例えば、可溶性LIFRまたはgp130ポリペプチドを開発するために、可溶
性LIFRまたはgp130ポリペプチドのライブラリーを作成し、例えば、細菌ディス
プレイ、ファージディスプレイ、酵母表面ディスプレイ、蛍光活性化細胞選別(FACS
)、および/または任意の他の好適なスクリーニング方法によってスクリーニングしても
よい。
【0047】
酵母表面ディスプレイは、新規の分子認識特性、増加した標的結合親和性、適切な折り
畳み、および改善された安定性を有するタンパク質を設計するために使用されてきた強力
なコンビナトリアル技術である。このプラットフォームでは、所望の生化学的および生物
物理学的特性を有する変異体を単離するために、タンパク質変異体のライブラリーがハイ
スループット様式で生成およびスクリーニングされる。以下の実験の章に示されるように
、本願発明者らは、LIFに対して増加した結合親和性を有する可溶性LIFRおよびg
p130ポリペプチドを組換えするための酵母表面ディスプレイを首尾良く用いてきた。
酵母表面ディスプレイは、真核生物分泌経路、シャペロンの補助による折り畳み、および
効率的なジスルフィド結合形成の品質管理機構から利益を得る。
【0048】
目的の望ましい特性を有する可溶性LIFRまたはgp130ポリペプチドを開発する
ための1つの例示的な方法は、酵母接合アグルチニンタンパク質Aga2pに可溶性LI
FRまたはgp130ポリペプチドを遺伝子的に融合することを含み、このタンパク質は
、酵母細胞壁タンパク質Aga1pに対して2つのジスルフィド結合によって接続する。
このAga2p融合構築物、および染色体に組み込まれたAga1p発現カセットは、ガ
ラクトース誘導性プロモーター等の好適なプロモーターの制御下で発現させることができ
る。蛍光標識された一次または二次抗体を使用するフローサイトメトリーによって細胞表
面発現レベルを測定するために、N末端またはC末端のエピトープタグを含めることがで
きる。この構築物は、最も広く使用されるディスプレイフォーマットを表し、ここで、可
溶性LIFRまたはgp130ポリペプチドのN末端は、Aga2pに融合されてもよい
が、酵母表面ディスプレイプラスミドのいくつかの代替変形例が記載されており、本開示
の可溶性LIFRまたはgp130ポリペプチドを開発するために使用されてもよい。フ
ァージディスプレイまたはmRNAディスプレイで使用されるパニングに基づく方法に勝
る、このスクリーニングプラットフォームの利点の1つは、2色FACSを使用して、特
定の標的に対する結合親和性がわずか2倍程異なるクローンを定量的に識別することがで
きることである。
【0049】
DNAレベルでLIFRまたはgp130を選択的に突然変異させるために、アプロー
チの一例は、エラープローンPCRであり、これを使用して、プルーフリーディング(す
なわち、エキソヌクレアーゼ)活性を有しないポリメラーゼを使用すること、ヌクレオシ
ドアナログのトリホスフェート誘導体の混合物を使用すること、変化させた比率のdNT
Pを使用すること、マグネシウムまたはマンガンの濃度を変えることなどを含め、任意の
数の変化させた反応条件によって突然変異を導入することができる。代替的に、例えば、
オーバーラップエクステンションPCRを使用してオリゴヌクレオチドアセンブリによっ
て、縮重コドンを導入することができる。次いで、酵母における相同組換えのために酵母
ディスプレイベクターと十分に重複する隣接プライマーを使用して遺伝物質が増幅され得
る。これらの方法により、比較的低コストおよび少ない労力で、LIFRまたはgp13
0ライブラリーを作成することが可能になる。ライブラリー組成に対する規定された制御
を可能にする合成ライブラリーおよび最新の方法が開発されている。
【0050】
特定の態様では、ディスプレイライブラリー(例えば、酵母ディスプレイライブラリー
)は、FACSによって目的の標的(例えば、LIF)に対する結合についてスクリーニ
ングされる。ライブラリースクリーニングのために2色FACSを使用してもよく、ここ
で、1つの蛍光標識を使用してc-mycエピトープタグを検出することができ、他方を
使用して、目的の結合標識に対する可溶性LIFRまたはgp130ポリペプチドの相互
作用を測定することができる。単一細胞分解能で2つの蛍光体の励起および発光特性を測
定するために、異なる機器レーザーおよび/またはフィルターセットを使用することがで
きる。これにより、結合と共に酵母の発現レベルを正規化することが可能になる。すなわ
ち、低い酵母発現を示すが大量の標的に結合する可溶性LIFRまたはgp130ポリペ
プチドを、高レベルで発現されるが標的に対して弱く結合する可溶性LIFRまたはgp
130ポリペプチドと区別することができる。したがって、結合対発現の二次元フローサ
イトメトリープロットでは、対角線上に、標的抗原に結合する酵母細胞の集団が現れる。
高親和性結合剤は、ライブラリー選別ゲートを使用して単離することができる。代替的に
、初期のソーティングラウンドにおいて、所望な長さのポリペプチドを発現しない望まし
くないクローンのライブラリーを除去することが有用であり得る。
【0051】
目的の可溶性LIFRまたはgp130ポリペプチドをコードするクローンについての
可溶性LIFRまたはgp130ポリペプチドライブラリーの富化後、酵母プラスミドが
回収され、配列決定される。高い選別ストリンジェンシー下で、さらなるラウンドのFA
CSを実施することができる。次いで、酵母に提示されたLIFRまたはgp130ポリ
ペプチドクローンの結合親和性または動的オフレートを測定してもよい。
【0052】
目的のLIFRまたはgp130ポリペプチドが、表面ディスプレイ(例えば、酵母表
面ディスプレイ)によって同定されたら、組換え可溶性LIFRまたはgp130ポリペ
プチド、またはこれを含む任意の融合タンパク質が、好適な方法を使用して産生されても
よい。特定の態様では、可溶性LIFRまたはgp130ポリペプチド、またはこれを含
む任意の融合タンパク質は、組換えDNAアプローチを使用して産生される。様々な宿主
細胞型において、組換え方法を使用してポリペプチドを生成するための戦略が開発されて
きた。例えば、機能的な可溶性LIFRまたはgp130ポリペプチドは、E.coli
ペリプラズム空間における折り畳みを促進し有用な精製ハンドルとして機能するバルナー
ゼを遺伝子融合パートナーとして用いて産生されてもよい。特定の実施形態によれば、組
換え可溶性LIFRまたはgp130ポリペプチドは、酵母(例えば、酵母株Pichi
a pastorisまたはSaccharomyces cerevesiae)また
は哺乳動物細胞(例えば、ヒト胎児由来腎臓細胞またはチャイニーズハムスター卵巣細胞
)において発現される。発現構築物は、1つ以上のタグ(例えば、金属キレートクロマト
グラフィー(Ni-NTA)による精製のためのC末端ヘキサヒスタジンタグ)をコード
してもよい。次いで、サイズ排除クロマトグラフィーを用いて、凝集物、誤って折り畳ま
れた多量体等を除去することができる。
【0053】
本開示の態様は、本開示の可溶性LIFRおよびgp130ポリペプチド(およびこれ
を含む任意の融合タンパク質)をコードする核酸を含む。すなわち、本明細書に記載の可
溶性LIFRまたはgp130ポリペプチドのいずれかを含む、本開示の可溶性LIFR
もしくはgp130ポリペプチドまたは融合タンパク質のいずれかをコードする核酸が提
供される。ある特定の態様において、そのような核酸は発現ベクター中に存在する。発現
ベクターは、薬剤(例えば、可溶性LIFRまたはgp130ポリペプチド)をコードす
る核酸に作動可能に連結されたプロモーターを含み、プロモーターは、この薬剤を発現す
るために選択された宿主細胞の種類に基づいて選択される。好適な発現ベクターは、典型
的には、エピソームとしてまたは宿主染色体DNAに統合された部分として宿主生物内で
複製可能である。一般的に、発現ベクターは、所望のDNA配列で形質転換されたこれら
の細胞の検出を可能にするために選択マーカー(例えば、アンピシリン耐性、ハイグロマ
イシン耐性、テトラサイクリン耐性、カナマイシン耐性、ネオマイシン耐性等)を含む。
【0054】
本明細書に記載の可溶性LIFRまたはgp130ポリペプチドのいずれかを含み、本
開示の可溶性LIFRまたはgp130ポリペプチドのいずれかをコードする核酸を含む
宿主細胞、ならびにこれを含む任意の発現ベクターも提供される。大腸菌(Escher
ichia coli)は、本開示の可溶性LIFRまたはgp130ポリペプチドをコ
ードする核酸をクローニングするために使用することができる原核生物宿主細胞の一例で
ある。使用に好適な他の微生物宿主には、枯草菌等の桿菌、およびサルモネラ菌、セラチ
ア、および様々なシュードモナス種等の他の腸内細菌科が含まれる。これらの原核生物宿
主において、発現ベクターを作製することもでき、それは典型的には、宿主細胞と適合性
のある発現制御配列(例えば複製起点)を含有するであろう。さらに、ラクトースプロモ
ーター系、トリプトファン(trp)プロモーター系、β-ラクタマーゼプロモーター系
、またはλファージ由来のプロモーター系等の、任意の数の様々な周知のプロモーターが
存在するであろう。プロモーターは、典型的には、任意選択的にオペレーター配列を用い
て発現を制御し、転写および翻訳を開始および完了するためのリボソーム結合部位配列等
を有するであろう。
【0055】
酵母等の他の微生物もまた、発現に有用である。Saccharomyces(例えば
S.cerevisiae)およびピキア(Pichia)は、必要に応じて発現制御配
列(例えばプロモーター)、複製起点、終結配列等を有する好適なベクターを含む好適な
酵母宿主細胞の例である。典型的なプロモーターには、3-ホスホグリセリン酸キナーゼ
および他の解糖系酵素が含まれる。誘導性酵母プロモーターには、とりわけ、アルコール
デヒドロゲナーゼ、イソチトクロームC、ならびにマルトースおよびガラクトース利用に
関与する酵素からのプロモーターが含まれる。
【0056】
微生物に加えて、哺乳動物細胞(例えば、インビトロ細胞培養で成長させた哺乳動物細
胞)を使用して、本開示の可溶性LIFRおよびgp130ポリペプチドを発現し、産生
することもできる。好適な哺乳動物宿主細胞には、ヒト細胞系、非ヒト霊長類細胞系、げ
っ歯類(例えば、マウス、ラット)細胞系等が含まれる。好適な哺乳動物細胞系として、
HeLa細胞(例えば、American Type Culture Collect
ion(ATCC)番号CCL-2)、CHO細胞(例えば、ATCC番号CRL961
8、CCL61、CRL9096)、293細胞(例えば、ATCC番号CRL-157
3)、Vero細胞、NIH 3T3細胞(例えば、ATCC番号CRL-1658)、
Huh-7細胞、BHK細胞(例えば、ATCC番号CCL10)、PC12細胞(AT
CC番号CRL1721)、COS細胞、COS-7細胞(ATCC番号CRL1651
)、RAT1細胞、マウスL細胞(ATCC番号CCLI.3)、ヒト胎児由来腎臓(H
EK)細胞(ATCC番号CRL1573)、HLHepG2細胞等が挙げられるが、こ
れらに限定されない。これらの細胞のための発現ベクターは、複製起点、プロモーター、
およびエンハンサー等の発現制御配列、ならびにリボソーム結合部位、RNAスプライス
部位、ポリアデニル化部位、および転写ターミネーター配列等の必要なプロセシング情報
部位を含み得る。好適な発現制御配列の例は、免疫グロブリン遺伝子、SV40、アデノ
ウイルス、ウシパピローマウイルス、サイトメガロウイルス等に由来するプロモーターで
ある。
【0057】
(例えば、組換えによって)合成されると、可溶性LIFRまたはgp130ポリペプ
チドは、硫酸アンモニウム沈殿、アフィニティーカラム、カラムクロマトグラフィー、高
速液体クロマトグラフィー(HPLC)精製、ゲル電気泳動等を含む、当該技術分野で既
知の標準的な手順に従って精製され得る。主題の可溶性LIFRまたはgp130ポリペ
プチドは、実質的に純粋、例えば、少なくとも約80%~85%純粋、少なくとも約85
%~90%純粋、少なくとも約90%~95%純粋、または98%~99%以上純粋であ
ってもよく、例えば、細胞片、可溶性LIFRまたはgp130ポリペプチド以外の高分
子などの混入物質を含まない。
【0058】
組成物
本開示の可溶性LIFRおよび/または可溶性gp130ポリペプチド(これらを含む
任意の融合および/または二量体タンパク質を含む)を含む組成物も提供される。
【0059】
特定の態様では、組成物は、液体媒体中に存在する本開示の可溶性LIFRおよび/ま
たは可溶性gp130ポリペプチドを含む。液体媒体は、水、緩衝溶液等の水性液体媒体
であってもよい。1つ以上の添加剤、例えば、塩(例えば、NaCl、MgCl、KC
l、MgSO)、緩衝剤(トリス緩衝液、N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-
N’-(2-エタンスルホン酸)(HEPES)、2-(N-モルホリノ)エタンスルホ
ン酸(MES)、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸ナトリウム塩(MES)、3
-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)、N-トリス[ヒドロキシメチル
]メチル-3-アミノプロパンスルホン酸(TAPS)等)、プロテアーゼ阻害剤、グリ
セロール等が、そのような組成物中に存在してもよい。
【0060】
医薬組成物もまた提供される。医薬組成物は、本開示の可溶性LIFRポリペプチド、
可溶性gp130ポリペプチド、融合タンパク質、および/または二量体化タンパク質(
これらはいずれも、本明細書で「LIF結合剤」と呼ばれ得る)と、薬学的に許容される
担体と、を含む。医薬組成物は、一般に、治療有効量のLIF結合剤を含む。「治療有効
量」とは、所望の結果をもたらすのに十分な投薬量、例えば、LIFシグナル伝達に関連
する細胞増殖性障害(例えば、がん、例えば膵臓がん)を有する個体における細胞増殖の
減少など、有益または所望な治療(予防を含む)効果をもたらすのに十分な量を意味する
【0061】
本開示のLIF結合剤は、治療的投与のために様々な製剤に組み込まれ得る。より具体
的には、LIF結合剤は、適切な薬学的に許容される賦形剤または希釈剤と組み合わせる
ことによって、医薬組成物に製剤化することができ、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、
軟膏剤、液剤、注射剤、吸入剤、およびエアロゾル剤等の固体、半固体、液体、または気
体形態の製剤に製剤化することができる。
【0062】
個体への投与に好適な(例えば、ヒト投与に好適な)本開示のLIF結合剤の製剤は、
一般に滅菌であり、選択される投与経路に従って個体に投与するには禁忌である検出可能
な発熱物質または他の混入物質をさらに含まない状態であり得る。
【0063】
医薬剤形において、LIF結合剤は、単独で、または他の薬学的に活性な化合物との適
切な会合において、および組み合わせて、投与することができる。以下の方法および賦形
剤は単なる例であり、決して限定するものではない。
【0064】
経口製剤の場合、LIF結合剤は、単独で、または適切な添加剤、例えば、ラクトース
、マンニトール、トウモロコシデンプンまたはジャガイモデンプン等の従来の添加剤;結
晶セルロース、セルロース誘導体、アカシア、コーンスターチまたはゼラチン等のバイン
ダー;トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプンまたはカルボキシメチルセルロースナ
トリウム等の崩壊剤;タルクまたはステアリン酸マグネシウム等の滑沢剤;および所望な
場合、希釈剤、緩衝剤、湿潤剤、防腐剤および香味剤と組み合わせて使用され、錠剤、散
剤、顆粒剤またはカプセル剤を作製してもよい。
【0065】
LIF結合剤は、植物油もしくは他の類似の油、合成脂肪酸グリセリド、高次脂肪酸の
エステル、またはプロピレングリコール等の水性溶媒もしくは非水性溶媒にLIF結合剤
を溶解、懸濁または乳化することによって、また、所望な場合、可溶化剤、等張剤、懸濁
化剤、乳化剤、安定剤および防腐剤等の従来の添加剤を用いて、注射用製剤に製剤化する
ことができる。
【0066】
医薬組成物は、液体形態、凍結乾燥形態、または凍結乾燥形態から再構成された液体形
態であってもよく、凍結乾燥製剤は投与前に滅菌溶液で再構成されるべきである。凍結乾
燥組成物を再構成するための標準的な手順は、一定量の純水(典型的には、凍結乾燥中に
除去された体積と当量である)を加え戻すことであるが、非経口投与用の医薬組成物の産
生に抗菌剤を含む溶液が使用されてもよい。
【0067】
LIF結合剤の水性製剤は、例えば、約4.0~約7.0、または約5.0~約6.0
の範囲のpH、または代替的に約5.5のpH緩衝液中で調製することができる。この範
囲内のpHに好適である緩衝液の例には、リン酸緩衝液、ヒスチジン緩衝液、クエン酸緩
衝液、コハク酸緩衝液、酢酸緩衝液および他の有機酸緩衝液が含まれる。緩衝液濃度は、
例えば、緩衝液および製剤の所望の張性に応じて、約1mM~約100mM、または約5
mM~約50mMであり得る。
【0068】
使用方法
本開示の可溶性LIFRポリペプチド、可溶性gp130ポリペプチド、融合タンパク
質、および/または二量体化タンパク質(これらはいずれも、本明細書で「LIF結合剤
」と呼ばれ得る)を使用する方法も提供される。特定の実施形態によれば、LIF活性の
阻害を必要とする個体に、治療有効量の本開示の可溶性LIFRポリペプチド、可溶性g
p130ポリペプチド、融合タンパク質、および/または二量体化タンパク質、または任
意のこのようなLIF結合剤を含む医薬組成物を投与することを含む方法が提供される。
特定の態様では、LIF活性の阻害を必要とする個体は、LIFシグナル伝達に関連する
細胞増殖性障害を有し、投与は、細胞増殖性障害を治療するのに有効である。ある特定の
態様において、細胞増殖性疾患はがんである。目的のがんとしては、限定されないが、膵
臓がんが挙げられる。
【0069】
例えば、いくつかの実施形態では、本開示のLIF結合剤または医薬組成物は、LIF
結合剤または医薬組成物が有効量で投与される場合に、宿主におけるがん細胞の成長、転
移および/または浸潤を阻害する。「がん細胞」とは、例えば、異常な細胞成長、異常な
細胞増殖、密度依存的増殖阻害の損失、足場非依存性の増殖能力、免疫無防備状態の非ヒ
ト動物モデルにおける腫瘍の増殖および/もしくは発生を促進させる能力、ならびに/ま
たは細胞形質転換の任意の適切な指標のうちの1つ以上によって特徴付けることができる
、新生物細胞表現型を示す細胞を意味する。本明細書において「がん細胞」は、「腫瘍細
胞」、「悪性細胞」または「がん性細胞」と互換的に使用され得、固形腫瘍、半固形腫瘍
、原発腫瘍、転移性腫瘍などのがん細胞を包含する。
【0070】
本開示の方法を使用して治療可能ながんとしては、限定されないが、固形腫瘍、肺がん
(例えば、非小細胞肺がん(NSCLC)、乳がん、前立腺がん、膵臓がん、大腸がん、
腎細胞がん、および本開示のLIF結合剤または医薬組成物を使用して治療され得る任意
の他の種類のがんが挙げられる。
【0071】
LIF結合剤は、単独で(例えば、単剤療法において)、または1つ以上のさらなる治
療薬剤と組み合わせて(例えば、併用療法において)、投与され得る。
【0072】
いくつかの実施形態では、有効量のLIF結合剤(またはこれを含む医薬組成物)は、
単独で(例えば、単剤療法において)、または1つ以上のさらなる治療薬剤と組み合わせ
て(例えば、併用療法において)、1回以上の用量で投与されたときに、LIF結合剤ま
たは医薬組成物を用いる治療が存在しない状態での個体における症状と比較して、個体に
おける細胞増殖性障害(例えば、がん)の症状を、少なくとも約5%、少なくとも約10
%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30
%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70
%、少なくとも約80%、少なくとも約90%以上減少するのに有効な量である。
【0073】
特定の態様では、本開示の方法は、LIF結合剤または医薬組成物が有効量で投与され
る場合、個体におけるがん細胞の成長、転移および/または浸潤を阻害する。
【0074】
LIF結合剤または医薬組成物は、インビボおよびエクスビボでの方法、および全身お
よび局所的な投与経路を含め、薬物送達に好適な任意の利用可能な方法および経路を使用
して、個体に投与されてもよい。従来のおよび医薬的に許容される投与経路としては、鼻
腔内、筋肉内、気管内、皮下、皮内、局所適用、眼内、静脈内、動脈内、経鼻、経口、お
よび他の経腸および非経口投与経路が含まれる。投与経路は、所望な場合、組み合わされ
てもよく、またはLIF結合剤および/または所望な効果に応じて調節されてもよい。L
IF結合剤または医薬組成物は、単回投与または複数回投与で投与することができる。い
くつかの実施形態では、LIF結合剤または医薬組成物は、静脈内投与される。いくつか
の実施形態では、LIF結合剤または医薬組成物は、例えば、全身送達(例えば、静脈内
注入)のために、または局所部位に、注射によって投与される。
【0075】
様々な個体が本方法に従って治療可能である。一般に、そのような対象は「哺乳動物」
または「哺乳類」であり、これらの用語は、肉食目(例えば、イヌおよびネコ)、げっ歯
目(例えば、マウス、モルモットおよびラット)、および霊長目(例えば、ヒト、チンパ
ンジー、およびサル)を含む哺乳類綱内の生物を説明するために広く使用される。いくつ
かの実施形態において、個体はヒトである。
【0076】
「治療すること」または「治療」とは、個体の細胞増殖性疾患(例えば、がん)に関連
する症状の少なくとも改善を意味し、改善は、あるパラメータ、例えば、治療される細胞
増殖性疾患に関連する症状の程度における少なくとも軽減を指すために広義で使用される
。したがって、治療はまた、個体が細胞増殖性疾患、または少なくとも細胞増殖性疾患を
特徴付ける症状にそれ以上苦しむことがないように、病的状態または少なくともそれに関
連する症状が完全に抑制された、例えば、発生するのを防止された、または停止された、
例えば、中止された状況も含む。
【0077】
投薬は、治療される疾患状態の重症度および応答性に依存する。最適な投薬スケジュー
ルは、患者の体内における薬物蓄積の測定値から計算することができる。投与する医師は
、最適な投薬量、投薬方法および反復率を決定することができる。最適な投薬量は、個々
のLIF結合剤の相対的な効力に応じて変わってもよく、一般に、インビトロおよびイン
ビボでの動物モデルなどにおいて有効であることがわかっているEC50に基づいて推定
され得る。一般に、投薬量は、体重1kgあたり0.01μg~100gであり、1日、
1週間、1ヶ月、または1年に1回以上投与され得る。治療する医師は、測定された滞留
時間、および体液または組織中の薬物の濃度に基づいて、投与の繰り返し率を推定するこ
とができる。治療が成功した後、疾患状態の再発を防止するために、維持療法を対象に受
けさせることが望ましい場合があり、LIF結合剤または医薬組成物は、体重1kgあた
り0.01μg~100gの範囲の維持用量で、1日に1回以上、数ヶ月ごとに1回、6
ヶ月ごとに1回、毎年1回、または任意の他の好適な頻度で投与される。
【0078】
本開示の治療方法は、対象に1種類のLIF結合剤を投与することを含んでもよく、ま
たは異なるLIF結合剤のカクテルの投与によって、2種類以上のLIF結合剤を対象に
投与することを含んでもよい。
【0079】
いくつかの実施形態では、LIFシグナル伝達に関連する細胞増殖性障害を有するもの
として個体を同定することを含む方法が提供される。LIFシグナル伝達に関連する細胞
増殖性障害を有するものとして個体を同定することは、種々のアプローチおよびそれらの
組み合わせを使用して実施され得る。特定の態様では、同定することは、個体から得られ
た試料(例えば、体液試料、腫瘍生検等)におけるLIF存在量に基づく。いくつかの実
施形態では、LIF存在量は、本開示の可溶性LIFRポリペプチド、可溶性gp130
ポリペプチド、融合タンパク質、および/または二量体化タンパク質をLIF捕捉剤とし
て使用して定量化される。
【0080】
特定の態様では、同定することは、個体から得られる試料中のLIFシグナル伝達のレ
ベルに基づく。LIFシグナル伝達のレベルは、Jak-STATシグナル伝達経路にお
ける分子を含む、1つ以上のLIFシグナル伝達経路分子のリン酸化状態に基づいてもよ
く、その非限定的な例は、pSTAT3(例えば、pSTAT3-Y705)である。あ
る特定の実施形態によれば、同定することはイムノアッセイに基づく。ELISA、フロ
ーサイトメトリーアッセイ、組織切片試料に対する免疫組織化学、組織切片試料に対する
免疫蛍光、ウエスタン分析等を含む様々な好適なイムノアッセイフォーマットが利用可能
である。
【0081】
いくつかの実施形態において、同定することは核酸配列決定に基づく。例えば、対象と
するタンパク質をコードするmRNAに対応する配列決定リードの数が、そのタンパク質
の発現レベルを決定するために使用され得る。特定の態様では、配列決定は、次世代配列
決定システムを使用して、例えば、Illumina(登録商標)(例えば、HiSeq
(商標)、MiSeq(商標)および/またはGenome Analyzer(商標)
配列決定システム);Oxford Nanopore Technologies(例
えば、MinION(商標)、GridIONx5(商標)、PromethION(商
標)、またはSmidgION(商標)ナノポア配列決定デバイス)、Ion Torr
ent(商標)(例えば、Ion PGM(商標)および/またはIon Proton
(商標)配列決定システム);Pacific Biosciences(例えば、PA
CBIO RS II配列決定システム);Life Technologies(商標
)(例えば、SOLiD配列決定システム);Roche(例えば、454 GS FL
X+および/またはGS Junior配列決定システム);または目的の任意の他の配
列決定プラットフォームによって提供される配列決定プラットフォームで行われる。組織
または体液試料から核酸を単離するためのプロトコル、および所望の配列決定プラットフ
ォームに適した配列決定アダプターを有する配列決定ライブラリーを調製するためのプロ
トコルが容易に利用可能である。
【0082】
いくつかの実施形態では、LIFシグナル伝達に関連する細胞増殖性障害を有するもの
として個体を同定することを含む方法は、個体から試料を得ることをさらに含む。
【0083】
個体から得られる試料は、個体がLIFシグナル伝達に関連する細胞増殖性障害を有す
るかどうかを決定するのに好適な任意の試料であってもよい。ある特定の態様において、
試料は、全血、血清、血漿等の体液試料である。いくつかの実施形態において、試料は組
織試料である。対象とする組織試料として腫瘍生検試料等が挙げられるが、これに限定さ
れない。
【0084】
キット
キットもまた、本開示によって提供される。いくつかの実施形態では、本開示の可溶性
LIFRポリペプチド、可溶性gp130ポリペプチド、融合タンパク質、および/また
は二量体化タンパク質のいずれかを含む医薬組成物を含むキットが提供される。キットは
、LIF活性の阻害を必要とする個体、例えば、細胞増殖性障害(例えば、がん、例えば
膵臓がん)、またはLIF活性の阻害が有益である他の医学的状態を有する個体に医薬組
成物を投与するための説明書をさらに含んでもよい。特定の態様では、キットは、1つ以
上(例えば、2つ以上)の単位剤形で存在する医薬組成物を含む。
【0085】
特定の態様では、本開示の可溶性LIFRポリペプチド、可溶性gp130ポリペプチ
ド、融合タンパク質、および/または二量体化タンパク質のいずれかを含むキットが提供
され、このようなキットは、試料(例えば、体液試料、組織試料など)中のLIFを検出
するためにこれらを使用するための説明書をさらに含む。
【0086】
いくつかの実施形態では、本開示の可溶性LIFRポリペプチド、可溶性gp130ポ
リペプチド、融合タンパク質、および/または二量体化タンパク質のいずれかを含むキッ
トが提供され、このようなキットは、例えば、研究目的のために、インビトロまたはイン
ビボでLIFシグナル伝達/活性を抑制するためのこれらを使用するための説明書をさら
に含む。
【0087】
キットの成分は、別々の容器内に存在してもよく、または複数の成分が単一の容器内に
存在してもよい。好適な容器は、単一チューブ(例えば、バイアル)、1つ以上のウェル
のプレート(例えば、96ウェルプレート、384ウェルプレートなど)などを含む。
【0088】
キットの説明書は、好適な記録媒体に記録することができる。例えば、説明書は、紙ま
たはプラスチック等の基材上に印刷することができる。そのため、説明書は、添付文書と
してキット内に、キットまたはその成分の容器のラベル内(すなわち、包装または副次的
な包装と関連して)等に存在していてもよい。他の実施形態では、説明書は、ポータブル
フラッシュドライブ、DVD、CD-ROM、ディスケットなどの好適なコンピュータ可
読記憶媒体上に存在する、電子記憶データファイルとして存在する。さらに他の実施形態
では、実際の説明書は、キット内には存在しないが、例えばインターネットを介してリモ
ートソースから説明書を取得するための手段が提供される。この実施形態の一例は、説明
書を閲覧することができ、かつ/または説明書をダウンロードすることができるウェブア
ドレスを含むキットである。説明書と同様に、説明書を得るための手段は、好適な基材上
に記録される。
【0089】
添付の特許請求の範囲にかかわらず、本開示は、以下の条項によっても定義される。
1.可溶性白血病抑制因子受容体(LIFR)ポリペプチドであって、配列番号2と少な
くとも70%同一であるアミノ酸配列を含み、LIFRポリペプチドが、対応する野生型
LIFRポリペプチドと比較して、白血病抑制因子(LIF)に対して増加した結合親和
性を示す、可溶性LIFRポリペプチド。
【0090】
2.
L218位のアミノ酸置換、および
N277位のアミノ酸置換、の一方または両方を含み、
位置の識別は、配列番号2に対するものである、第1の条項に記載の可溶性LIFRポ
リペプチド。
【0091】
3.
L218Pアミノ酸置換、および
N277Dアミノ酸置換、の一方または両方を含む、第2の条項に記載の可溶性LIF
Rポリペプチド。
【0092】
4.
I257位のアミノ酸置換、
V262位のアミノ酸置換、および
T273位のアミノ酸置換、のうちの1つ、2つ、または各々を含み、
位置の識別は、配列番号2に対するものである、第1~3の条項のいずれか1つに記載
の可溶性LIFRポリペプチド。
【0093】
5.
I257Vアミノ酸置換、
V262Aアミノ酸置換、および
T273Iアミノ酸置換、のうちの1つ、2つ、または各々を含む、第4の条項に記載
の可溶性LIFRポリペプチド。
【0094】
6.
I217位のアミノ酸置換、
H240位のアミノ酸置換、および
I260位のアミノ酸置換、のうちの1つ、2つ、または各々を含み、
位置の識別は、配列番号2に対するものである、第1~5の条項のいずれか1つに記載
の可溶性LIFRポリペプチド。
【0095】
7.
I217Vアミノ酸置換、
H240Rアミノ酸置換、および
I260Vアミノ酸置換、のうちの1つ、2つ、または各々を含む、第6の条項に記載
の可溶性LIFRポリペプチド。
【0096】
8.N242位のアミノ酸置換を含み、位置の識別は、配列番号2に対するものである
、第1~7の条項のいずれか1つに記載の可溶性LIFRポリペプチド。
【0097】
9.N242Dアミノ酸置換を含む、第8の条項に記載の可溶性LIFRポリペプチド
【0098】
10.配列番号2と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む、第1~9の条項
のいずれか1つに記載の可溶性LIFRポリペプチド。
【0099】
11.配列番号2と少なくとも90%同一であるか、または少なくとも95%同一であ
るアミノ酸配列を含む、第1~9の条項のいずれか1つに記載の可溶性LIFRポリペプ
チド。
【0100】
12.可溶性LIFRポリペプチドが、1つ以上の異種ポリペプチドに融合している、
第1~11の条項のいずれか1つに記載の可溶性LIFRポリペプチド。
【0101】
13.1つ以上の異種ポリペプチドが、Fcドメイン、アルブミン、トランスフェリン
、XTEN、ホモ-アミノ酸ポリマー、プロリン-アラニン-セリンポリマー、エラスチ
ン様ペプチド、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される異種ポリペプ
チドを含む、第12の条項に記載の可溶性LIFRポリペプチド。
【0102】
14.1つ以上の異種ポリペプチドが、Fcドメインを含む、第13の条項に記載の可
溶性LIFRポリペプチド。
【0103】
15.1つ以上の異種ポリペプチドが、第27~38の条項のいずれか1つに記載の可
溶性gp130ポリペプチドを含む、第12~14の条項のいずれか1つに記載の可溶性
LIFRポリペプチド。
【0104】
16.可溶性LIFRポリペプチドおよび可溶性gp130ポリペプチドが、リンカー
を介して融合されている、第15の条項に記載の可溶性LIFRポリペプチド。
【0105】
17.リンカーが、GlySerリンカーを含む、第16の条項に記載の可溶性LIF
Rポリペプチド。
【0106】
18.GlySerリンカーが、(Gly4Ser)リンカーを含む、第17節に記
載の可溶性LIFRポリペプチド。
【0107】
19.第1~18の条項のいずれか1つに記載の可溶性LIFRポリペプチドと二量体
化されている、第1~18の条項のいずれか1つに記載の可溶性LIFRポリペプチド。
【0108】
20.各可溶性LIFRポリペプチドがFcドメインを含み、二量体化がFcドメイン
を介している、第19の条項に記載の可溶性LIFRポリペプチド。
【0109】
21.第1~18の条項のいずれか1つに記載の可溶性LIFRポリペプチドをコード
する核酸。
【0110】
22.第21の条項に記載の核酸を含む、発現ベクター。
【0111】
23.細胞であって、
第1~18の条項のいずれか1つに記載の可溶性LIFRポリペプチド、
第21の条項に記載の核酸、
第22の条項に記載の発現ベクター、または
それらの任意の組み合わせを含む、細胞。
【0112】
24.第1~18節のいずれか1つに記載の可溶性LIFRポリペプチドを製造する方
法であって、
細胞が可溶性LIFRポリペプチドを産生する条件下で、第22の条項に記載の発現ベ
クターを含む細胞を培養することを含む、方法。
【0113】
25.細胞を培養する前に、細胞に発現ベクターを導入することをさらに含む、第24
の条項に記載の方法。
【0114】
26.細胞を培養した後に、細胞からLIFRポリペプチドを精製することをさらに含
む、第24の条項または第25の条項に記載の方法。
【0115】
27.可溶性糖タンパク質130(gp130)ポリペプチドであって、配列番号4と
少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を含み、gp130ポリペプチドが、対応する
野生型gp130ポリペプチドと比較して、白血病抑制因子(LIF)に対して増加した
結合親和性を示す、可溶性gp130ポリペプチド。
【0116】
28.K45位にアミノ酸置換を含み、位置の識別は、配列番号4に対するものである
、第27の条項に記載の可溶性gp130ポリペプチド。
【0117】
29.K45Eアミノ酸置換を含む、第28の条項に記載の可溶性gp130ポリペプ
チド。
【0118】
30.
Y95位のアミノ酸置換、および
K184位のアミノ酸置換、の一方または両方を含み、
位置の識別は、配列番号4に対するものである、第27~29の条項のいずれか1つに
記載の可溶性gp130ポリペプチド。
【0119】
31.
Y95Dアミノ酸置換、および
K184Eアミノ酸置換、の一方または両方を含む、第30の条項に記載の可溶性gp
130ポリペプチド。
【0120】
32.
F46位のアミノ酸置換、および
I130位のアミノ酸置換、の一方または両方を含み、
位置の識別は、配列番号4に対するものである、第27~31の条項のいずれか1つに
記載の可溶性gp130ポリペプチド。
【0121】
33.
F46Lアミノ酸置換、および
I130Mアミノ酸置換、のうちの一方または両方を含む、第32の条項に記載の可溶
性gp130ポリペプチド。
【0122】
34.配列番号4と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む、第27~33の
条項のいずれか1つに記載の可溶性gp130ポリペプチド。
【0123】
35.配列番号4と少なくとも90%同一であるか、または少なくとも95%同一であ
るアミノ酸配列を含む、第27~33の条項のいずれか1つに記載の可溶性gp130ポ
リペプチド。
【0124】
36.可溶性gp130ポリペプチドが、1つ以上の異種ポリペプチドに融合している
、第27~35の条項のいずれか1つに記載の可溶性gp130ポリペプチド。
【0125】
37.1つ以上の異種ポリペプチドが、Fcドメイン、アルブミン、トランスフェリン
、XTEN、ホモ-アミノ酸ポリマー、プロリン-アラニン-セリンポリマー、エラスチ
ン様ペプチド、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される異種ポリペプ
チドを含む、第36の条項に記載の可溶性gp130ポリペプチド。
【0126】
38.1つ以上の異種ポリペプチドが、Fcドメインを含む、第37の条項に記載の可
溶性gp130ポリペプチド。
【0127】
39.1つ以上の異種ポリペプチドが、第1~14の条項のいずれか1つに記載の可溶
性LIFRポリペプチドを含む、第36~38の条項のいずれか1つに記載の可溶性gp
130ポリペプチド。
【0128】
40.可溶性gp130ポリペプチドおよび可溶性LIFRポリペプチドが、リンカー
を介して融合されている、第39の条項に記載の可溶性gp130ポリペプチド。
【0129】
41.リンカーが、GlySerリンカーを含む、第40の条項に記載の可溶性gp1
30ポリペプチド。
【0130】
42.GlySerリンカーが、(Gly4Ser)リンカーを含む、第41の条項
に記載の可溶性gp130ポリペプチド。
【0131】
43.第27~42の条項のいずれか1つに記載の可溶性gp130ポリペプチドと二
量体化されている、第27~42の条項のいずれか1つに記載の可溶性gp130ポリペ
プチド。
【0132】
44.各可溶性gp130ポリペプチドがFcドメインを含み、二量体化がFcドメイ
ンを介している、第43の条項に記載の可溶性gp130ポリペプチド。
【0133】
45.第27~42の条項のいずれか1つに記載の可溶性gp130ポリペプチドをコ
ードする核酸。
【0134】
46.第45の条項に記載の核酸を含む、発現ベクター。
【0135】
47.細胞であって、
第27~42の条項のいずれか1つに記載の可溶性gp130ポリペプチド、
第45の条項に記載の核酸、
第46の条項に記載の発現ベクター、または
それらの任意の組み合わせを含む、細胞。
【0136】
48.第27~42節のいずれか1つに記載の可溶性gp130ポリペプチドを製造す
る方法であって、
細胞が可溶性gp130ポリペプチドを産生する条件下で、第46の条項に記載の発現
ベクターを含む細胞を培養することを含む、方法。
【0137】
49.細胞を培養する前に、細胞に発現ベクターを導入することをさらに含む、第48
の条項に記載の方法。
【0138】
50.細胞を培養した後に、細胞から可溶性gp130ポリペプチドを精製することを
さらに含む、第48の条項または第49の条項に記載の方法。
【0139】
51.ヘテロ二量体タンパク質であって、
第27~38の条項のいずれか1つに記載の可溶性gp130ポリペプチドと二量体化
された、第1~14の条項のいずれか1つに記載の可溶性LIFRポリペプチドを含む、
ヘテロ二量体タンパク質。
【0140】
52.可溶性LIFRポリペプチドおよび可溶性gp130ポリペプチドがそれぞれ二
量体化ドメインを含み、前記二量体化ドメインを介して前記可溶性LIFRポリペプチド
および可溶性gp130ポリペプチドが二量体化される、第51の条項に記載のヘテロ二
量体タンパク質。
【0141】
53.二量体化ドメインが、Fcドメインを含む、第52の条項に記載のヘテロ二量体
タンパク質。
【0142】
54.医薬組成物であって、
白血病抑制因子(LIF)に結合し、配列番号2と少なくとも70%同一であるアミノ
酸配列を含む、可溶性白血病抑制因子受容体(LIFR)ポリペプチドと、
薬学的に許容される担体と、を含む、医薬組成物。
【0143】
55.医薬組成物であって、
白血病抑制因子(LIF)に結合し、配列番号4と少なくとも70%同一であるアミノ
酸配列を含む、可溶性糖タンパク質130(gp130)ポリペプチドと、
薬学的に許容される担体と、を含む、医薬組成物。
【0144】
56.医薬組成物であって、
白血病抑制因子(LIF)に結合し、配列番号4と少なくとも70%同一であるアミノ
酸配列を含む、可溶性糖タンパク質130(gp130)ポリペプチドと二量体化された
、白血病抑制因子(LIF)に結合し、配列番号2と少なくとも70%同一であるアミノ
酸配列を含む、可溶性白血病抑制因子受容体(LIFR)ポリペプチドと、
薬学的に許容される担体と、を含む、医薬組成物。
【0145】
57.医薬組成物であって、
第1~18の条項のいずれか1つに記載の可溶性LIFRポリペプチドと、
薬学的に許容される担体と、を含む、医薬組成物。
【0146】
58.医薬組成物であって、
第27~42の条項のいずれか1つに記載の可溶性gp130ポリペプチドと、
薬学的に許容される担体と、を含む、医薬組成物。
【0147】
59.医薬組成物であって、
第51~53の条項のいずれか1つに記載のヘテロ二量体タンパク質と、
薬学的に許容される担体と、を含む、医薬組成物。
【0148】
60.治療有効量の第54~59の条項のいずれか1つに記載の医薬組成物を、必要と
する個体に投与することを含む、方法。
【0149】
61.必要とする個体が、がんを有する個体である、第60の条項に記載の方法。
【0150】
62.がんが、膵臓がんである、第61の条項に記載の方法。
【0151】
63.キットであって、
第54~59の条項のいずれか1つに記載の医薬組成物と、
必要とする個体に前記医薬組成物を投与するための説明書と、を含む、キット。
【0152】
64.医薬組成物が、1つ以上の単位剤形で存在する、第63の条項に記載のキット。
【0153】
65.医薬組成物が、2つ以上の単位剤形で存在する、第63の条項に記載のキット。
【0154】
66.必要とする個体が、がんを有する個体である、第63~65の条項のいずれか1
つに記載のキット。
【0155】
67.がんが、膵臓がんである、第66の条項に記載のキット。
【実施例0156】
以下の実施例は、限定ではなく例示として提供される。
【0157】
実験
実施例1-組換え可溶性LIFRポリペプチド
この実施例では、LIFRバリアントが、酵母表面上に提示されたヒトLIFRのIg
様ドメインのライブラリーから同定され、FACSを使用して、ヒトLIFに対して最適
な結合体についてソーティングされた。複数回のソーティング後、バリアントが選択され
、配列決定され、特性決定された。ソーティングから単離されたLIFRバリアントは、
図3にまとめられる。
【0158】
図3のパネルAは、複数のソーティングから単離されたLIFR Ig様ドメインバリ
アントで観察されたコンセンサス突然変異を示す。番号付けは、LIFRサイトカイン結
合モチーフI(CBMI)ドメインの先頭から始まる。図3のパネルBは、低い(10p
M、100pM)LIF濃度での正規化された合計蛍光結合値から計算されるLIFRバ
リアントの結合スコアを示す。すべてのスコアは、野生型に対して、酵母表面での差次的
発現について正規化された。
【0159】
同定されたLIFR突然変異(図3のパネルAに示される)に基づき、いずれのソーテ
ィングでも観察されなかった、可能な変異体LIFRバリアントの複数の組み合わせを、
部位特異的突然変異誘発を使用して作成した。図4のパネルAは、部位特異的突然変異誘
発を使用して生成されたバリアントをまとめたものである。図4のパネルBは、図3のパ
ネルBについて上に記載されるように計算された、このようなバリアントの結合スコアを
示す。野生型(WT)に対して正規化された発現も示される。この分析から、VPRVV
AID(I217V-L218P-H240R-I257V-I206V-V262A-
T271I-N277D)が、最適なLIFRバリアントとして同定された。
【0160】
図5では、図4のパネルAからのコンセンサス突然変異が、ヒトLIFR(青色)に結
合するヒトLIF(桃色)のPyMOLモデル化構造において示される。突然変異は赤色
で示され、PyMOLを使用して導入されている。ループ1、2および3における突然変
異のクラスターは、挿入図で拡大されている。
【0161】
実施例2-組換え可溶性gp130ポリペプチド
この実施例では、gp130バリアントが、酵母表面上に提示されたヒトgp130の
CBMドメインのライブラリーから同定され、FACSを使用して、ヒトLIFに対して
最適な結合体についてソーティングされた。複数回のソーティング後、バリアントが選択
され、配列決定され、特性決定された。ソーティングから単離されたgp130バリアン
トは、図6にまとめられる。
【0162】
図6のパネルAは、複数のソーティングから単離されたgp130 CBMドメインバ
リアントで観察されたコンセンサス突然変異を示す。番号付けは、gp130サイトカイ
ン結合モチーフI(CBM)ドメインの先頭から始まる。図6のパネルBは、部位特異的
突然変異誘発を使用して生成された変異体gp130バリアントのまとめを示す。図6
パネルCは、低LIF濃度として100pMおよび1nMを使用して、図3のパネルBに
記載されているように計算されたgp130バリアントの結合スコアを示す。野生型(W
T)に対して正規化された発現も示される。この分析から、ELDME(K45E-F4
6L-Y95D-I130M-K184E)が、最適なgp130バリアントとして同定
された。
【0163】
図7では、図6のパネルAから選択されたコンセンサス突然変異が、ヒトgp130(
桃色)に結合するヒトLIF(青色)の解析された構造において示される。PyMOLを
使用して挿入された突然変異は、青緑色で示される。ゾーン1および2における突然変異
のクラスターは、挿入図で拡大されている。
【0164】
実施例3-ヒトLIFに対するLIFRおよびgp130バリアントの結合
この実施例では、LIFRおよびgp130のバリアントが、酵母表面上に提示された
。ヒトLIFに対する結合は、フローサイトメトリーを使用して蛍光抗体検出によって測
定された。
【0165】
図8のパネルAは、ヒトLIFに対する、酵母に提示された野生型LIFRおよびLI
FRバリアントの結合結果を示す。LIFR野生型(WT)(丸)、「PDD」バリアン
ト(L218P-N42D-N277D)(四角)、およびVPRVVAIDバリアント
図4のパネルAの突然変異)(三角)の結果が示される。VPRVVAIDバリアント
のKは、30pMで測定され、これは野生型(WT)と比較して32倍高い親和性であ
る。
【0166】
図8のパネルBは、ヒトLIFに対する、酵母に提示された野生型gp130およびg
p130バリアントの結合結果を示す。gp130野生型(WT)(丸)、「8M」バリ
アント(E4K-K5R-N14D-K45E-F46L-K83R-Y95D-N10
0S)(四角)、およびELDMEバリアント(図4のパネルAの突然変異)(三角)の
結果が示される。ELDMEバリアントのKは、5nMで測定され、これは野生型(W
T)と比較して12倍高い親和性である。
【0167】
実施例4-ホモ二量体とヘテロ二量体の可溶性LIFRおよびgp130融合ポリペプチ

この実施例では、ホモ二量体およびヘテロ二量体の、可溶性LIFRおよび/またはg
p130 Fc融合構築物を生成した。図9のパネルAおよびBは、それぞれ、LIFの
gp130結合面およびLIFR結合面を標的とする、抗LIFモノクローナル抗体G1
およびL1を概略的に示す。これらの抗体は、有効性のベンチマークとして機能する。
【0168】
図9のパネルCに概略的に示されるのは、gp130サイトカイン結合モチーフ(CB
M)バリアント(ELDME)Fc融合ホモ二量体であり、二量体化は、Fcドメインを
介して行われる。この構築物は、「gp130 ELDME Fc」と呼ばれる場合があ
る。
【0169】
図9のパネルDは、LIFRサイトカイン結合モチーフ1-Ig様-サイトカイン結合
モチーフ2(CBMI-Ig様-CBMII)バリアント(VPRVVAID)Fc融合
ホモ二量体を概略的に示し、ここで、二量体化は、Fcドメインを介して行われる。この
構築物は、「LIFR VPRVVAID Fc」と呼ばれる場合がある。
【0170】
図9のパネルEに概略的に示されるのは、5x Gly4Serリンカーを介してgp
130 CBM ELDMEバリアントに融合したLIFR CBMI-Ig様-CBM
II VPRVVAIDバリアントを各単量体が含む、ホモ二量体である。Fcドメイン
は、gp130部分に対してC末端にあり、二量体化は、Fcドメインを介して行われる
。この構築物は、「LIFR-gp130 V-E融合対Fc」と呼ばれる場合がある。
【0171】
図9のパネルFは、Fcドメインを介して二量体化された、パネルCに示されるgp1
30 ELDME Fc単量体とパネルDに示されるLIFR VPRVVAID Fc
単量体とを含むヘテロ二量体を概略的に示す。
【0172】
図9のパネルC~Fに概略的に示される構築物の各々は、首尾よく発現され、精製され
た。
【0173】
可溶性LIFに対する、精製されたLIF阻害剤の結合を、KinExAを使用して試
験した。図10には、(1)各単量体としてWT LIFR CBMI-Ig様-CBM
II Fc融合体を有するホモ二量体、(2)各単量体としてLIFR VPRVVAI
D Fcを有するホモ二量体、および(3)各単量体としてLIFR-gp130 V-
E融合体Fcを有するホモ二量体に対する結合結果が示される。K値は、KinExA
ソフトウェアから計算され、近似曲線が示される。LIFR-VPRVVAID-Fcは
、ヒトLIFに対して23pMの親和性、LIFR-WT-Fcと比較して43倍の改善
を有する。
【0174】
実施例5-複数LIFの結合アッセイ
結合アッセイを図11のパネルAに概略的に示されるように実施し、LIFに結合した
受容体デコイがもう1つのLIF分子にも係合することができるかどうかを決定した。目
標は、Fc融合体としてホモ二量体である阻害剤が、二量体の各アームで同時にLIFに
結合することができるかどうかを示すことであった。このアッセイによって、LIFが、
酵母表面上に提示される。Fc融合体阻害剤(LIFR-VPRVVAID-Fcが示さ
れている)を飽和濃度で導入し、提示されたリガンドに結合させ、過剰分は洗い流される
。次に、可溶性LIF-Hisを、Fc融合体結合酵母と共培養する。LIF結合は、L
IF-HisのHis-タグドメインを介して検出され、これは、「ブリッジ」として作
用するホモ二量体を用い、Fc融合体に対する複数のLIF結合が起こる場合にのみ存在
するはずである。
【0175】
複数LIFの結合アッセイの結果を図11のパネルBに示す。LIFが酵母上に提示さ
れ、Fc融合体阻害剤が、提示されたLIFと可溶性LIFとの間の結合ブリッジとして
使用された。各条件での抗His6タグ蛍光抗体からの蛍光発光は、LIF-Hisを添
加していない対照に対して正規化された。提示されたLIFに対するFc融合体結合も、
抗Fcタグ蛍光抗体を使用して確認された(図12のパネルBに示されるデータ)。LI
FR-WT-Fc、LIFR-VPRVVAID-Fc、LIFR-gp130融合体-
Fc、および抗LIF mAb L1についての複数LIFの結合結果を示す。
【0176】
これらの結果から、試験した4種類すべてのホモ二量体が、複数のLIF分子に結合す
ることができることが決定される。組換えLIFR-Fcは、おそらくLIFに対する改
善された親和性および遅いオフレート(実施例6で説明される)に起因して、LIFR-
WT-Fcと比較して改善された複数LIF結合を示す。LIFR-gp130融合体-
Fcは、おそらく4つのLIF結合ドメインが存在することに起因して、最大の複数LI
F結合能を示す。両方の組換えFc融合体は、抗LIF mAb、L1と比較した場合、
潜在的に高い親和性に起因して、より大きな複数LIF結合を示す。全体として、これら
の結果は、Fc融合体として、阻害剤が、2:1のLIF:阻害剤の化学量論でLIFに
結合することができることを暗示しており、複数LIFの結合および隔離を介するさらに
大きな治療利益の可能性を与える。
【0177】
実施例6-競合LIF結合アッセイ
結合アッセイを図12のパネルAに概略的に示されるように実施し、LIFに結合した
受容体デコイが、過剰な可溶性LIF競合剤の存在下でどの程度LIFに結合したままで
あるかを決定した。目標は、組換え受容体が、過剰な競合剤による競合に対する改善され
た耐性によって示されるように、より遅いオフレート(off-rate)を引き起こすかどうか
を決定することであった。このアッセイによって、LIFが、酵母表面上に提示される。
Fc融合体阻害剤(LIFR-VPRVVAID-Fcが示されている)を飽和濃度で導
入し、提示されたリガンドに結合させ、過剰分は洗い流される。次に、可溶性LIF-H
isを、Fc融合体結合酵母と共培養する。Fc融合体結合は、阻害剤のFcドメインを
介して検出され、これは、高濃度の可溶性LIF-Hisによって競合され、酵母提示さ
れたLIFから分離され得る。
【0178】
競合LIF結合アッセイの結果を図12のパネルBに示す。LIFが酵母上に提示され
、結合パートナーとしてLIFR-WT-Fc、LIFR-VPRVVAID-Fc、L
IFR-gp130融合体-Fc、または抗LIF mAbであるL1が添加された。過
剰な阻害剤を洗い流し、可溶性LIFを競合体として24時間添加した。各条件での抗F
c蛍光抗体からの蛍光発光は、過剰な阻害剤が除去されず可溶性LIFが添加されていな
い対照に対して正規化された。
【0179】
これらの結果から、組換えLIFR-FcおよびLIFR-gp130融合体-Fcが
、LIFR-WT-Fcと比較したときに、劇的に改善されたオフレートを有すると決定
される。このことは、高レベル(100nM)のLIF-His競合剤存在下で最も顕著
であり、組換え受容体は、50%より多くが結合したままであり、一方、LIFR-WT
-Fcは、酵母提示されたLIFからほぼ完全に競合で分離している。結合したままのF
c融合体の相対量は、抗LIF mAb、L1に匹敵する。組換えFc融合体によって示
される改善されたオフレートは、おそらく改善された親和性を部分的に説明し、より大き
な治療有効性につながるはずである。
【0180】
実施例7-同時受容体結合アッセイ
結合アッセイを図13のパネルAに概略的に示されるように実施し、LIFに結合した
受容体デコイがgp130またはLIFRとも同時に係合することができるかどうかを決
定した。目標は、阻害剤が、LIFに結合することにおいて、LIFR、gp130、ま
たはその両方と競合するかどうかを示すことであった。このアッセイによって、gp13
0(示されている)またはLIFRが、酵母表面上に提示される。LIFを飽和濃度で導
入し、提示された受容体に結合させ、過剰分は洗い流される。次いで、阻害剤(LIFR
-VPRVVAID-Fcが示される)を、LIF結合酵母と共培養する。結合は、阻害
剤のFcドメインを介して検出され、これは、「ブリッジ」としてLIFを使用して同時
受容体結合が起こる場合にのみ存在するはずである。阻害剤の結合が検出されない場合は
、提示された受容体が共にインキュベートされた阻害剤と競合関係にあり、したがってL
IFに対する阻害剤の結合を妨げていると決定される。
【0181】
同時結合アッセイの結果を図13のパネルBに示す。LIFRまたはgp130のいず
れかが酵母上に提示され、ヒトLIFが結合ブリッジとして使用された。蛍光発光は、L
IFを添加していない対照に対して正規化された、抗Fc蛍光抗体の読み取り値である。
提示された受容体に対するLIF結合も、抗His6タグ蛍光抗体を使用して確認された
(データは示されず)。LIFR-VPRVVAID-Fc、gp130-ELDME-
Fc、LIFR-gp130ヘテロ二量体Fc、LIFR-gp130ホモ二量体融合体
-Fc、抗LIF mAb L1、および抗LIF mAb G1の同時結合の結果が示
される。
【0182】
これらの結果から、LIFR-FcがLIF-gp130複合体に結合することができ
(およびはるかに少ない程度で、そしていくぶん驚くべきことに、LIF-LIFR複合
体とも)、一方、gp130-Fcは、LIF-LIFR複合体にのみ結合することがで
きると決定される。このことは、LIFR-Fcが、LIFRがLIFに結合することを
効果的にブロックし、一方、gp130-Fcは、gp130がLIFに結合することを
ブロックすることを意味する。両方の受容体(ヘテロ二量体Fcおよび融合体Fc)を有
するポリペプチドは、両方の提示された受容体に対する同時結合を比較的等しい程度で示
す。抗LIFモノクローナル抗体(mAb)L1およびG1は、各1つの提示された受容
体LIF複合体-すなわちそれぞれgp130-LIFまたはLIFR-LIFとしか同
時に結合することができない。このことは、L1が、LIFRと競合し(LIFRが提示
されるときに阻害剤の結合が観察されない)、一方、G1は、gp130と競合する(g
p130が提示されるときに阻害剤の結合が観察されない)ことを意味する。したがって
、阻害機構の観点から、L1はLIFR-Fcに匹敵し、一方、G1はgp130-Fc
に匹敵する。すべての場合において、LIFが存在しない状態では結合が観察されず、こ
のことは、同時結合にLIFが必要であることを示す。
【0183】
実施例8-競合結合アッセイ
競合結合アッセイを図14のパネルAに概略的に示されるように実施した。このアッセ
イによれば、野生型gp130またはLIFR(示される)が酵母表面上に提示される。
ヒトLIF-Hisが飽和濃度で導入される。次いで、阻害剤(LIFR-VPRVVA
ID-Fcが示される)を、過剰量で、LIF結合酵母と共培養する。LIF結合は、L
IF上のHis6-タグを介して検出される。阻害剤インキュベーション後に結合したま
まのLIFが少ないほど、阻害剤は、よりよく競合してWT受容体からLIFを離すこと
ができている。
【0184】
競合結合アッセイの結果を図14のパネルBに示す。野生型LIFRまたはgp130
のいずれかが酵母上に提示され、ヒトLIF-Hisで飽和された。結合した比率は、阻
害剤無添加に対して正規化された、LIF-Hisから検出された蛍光発光である。LI
FR-WT-Fc、gp130-ELDME-Fc(組換え)、LIFR-VPRVVA
ID-Fc(組換え)、LIFR-gp130融合体-Fc(組換え)、LIFR-gp
130ヘテロ二量体Fc(組換え)、抗LIF mAb L1、および抗LIF mAb
G1の競合結合が示される。
【0185】
これらの結果から、野生型LIFR-Fcは競合して野生型LIFRから、そして予想
外にgp130からも、LIFを分離させると決定される。組換えLIFR-Fcは、こ
の観点で野生型LIFR-Fcよりも改善されており、強力に競合してLIFをLIFR
およびgp130の両方から分離させることができる。組換えgp130-Fcは、gp
130とはよく競合してLIFを分離させるが、予想されるように、LIFRがLIFに
結合する能力には影響を有さない。ホモ二量体およびヘテロ二量体の両方としてのLIF
Rおよびgp130の融合体は、同じ阻害剤中に両方の組換え受容体を有することによっ
て予想されるように、LIFRおよびgp130の両方と競合してLIFを分離させる強
い能力を示す。抗LIFモノクローナル抗体L1およびG1は、各1つの受容体、すなわ
ちそれぞれLIFRおよびgp130のみと効果的に競合してLIFを分離させるが、実
際のところ、逆の受容体すなわちそれぞれgp130およびLIFRに対するLIF結合
は強化させている。
【0186】
実施例9-HeLaルシフェラーゼレポーター細胞における下流LIFシグナル伝達の遮

LIFは、LIFRおよびgp130に結合し、LIFRおよびgp130のヘテロ二
量体化を引き起こす。二量体化によって、JAKが動員され、STAT3をリン酸化する
。これにより、STAT3の二量体化、核への侵入、およびSTAT3応答エレメントを
介した転写プログラミングの活性化が起こる。STAT3応答エレメントによって先行さ
れるルシフェラーゼの遺伝子を含むように細胞株を改変して、pSTAT3の活性化によ
ってルシフェラーゼが産生するようにすることができる。この状況では、ルシフェリンを
用いる標準的なルシフェラーゼアッセイを使用して決定されるルシフェラーゼ活性は、細
胞内のLIFシグナル伝達と直接的に相関し得る。図15のパネルAは、HeLa細胞に
おけるこのLIFレポーター細胞系を概略的に示す。
【0187】
図15のパネルBに示されるのは、ルシフェラーゼアッセイからの結果であり、HeL
aレポーター細胞は、0.5nMのLIFおよび異なる濃度のLIFR-VPRVVAI
D-Fc、LIFR-VPRVVAID-gp130-ELDME Fc、およびLIF
R-WT-Fcに曝露された。細胞を5時間インキュベートした後、溶解させ、ルシフェ
ラーゼアッセイを行った。結果は、阻害剤無添加に対して正規化される。図15のパネル
Cは、遅延阻害剤添加アッセイからの結果を示す。このアッセイによれば、0.5nMの
LIFがHeLaレポーター細胞に1.5時間添加され、次いで、LIFR-VPRVV
AID-Fc、LIFR-WT-Fc、またはLIFR-VPRVVAID-gp130
-ELDME Fcのいずれかを5nM、25nM、または50nMでウェルに直接添加
する。ルシフェラーゼレベルは、LIF添加から20時間後に測定される。結果は、ベー
スラインを差し引き、阻害剤無添加に対して正規化される。図15のパネルDは、LIF
R-VPRVVAID-FcについてのIC50を、LIFR-WT-Fcと比べて決定
するための広範囲の阻害剤濃度にわたるLIF由来ルシフェラーゼ阻害を示す。組換え後
、改善された阻害の53倍のシフトが観察される。図15のパネルEは、HeLaレポー
ター細胞が、LIFの近縁種であるオンコスタチン-M(OSM)を含め複数のIL-6
ファミリーメンバーサイトカインに応答する能力を利用する。細胞を、0.5nMのLI
FまたはOSMおよび1μMのLIFR-VPRVVAID-FcまたはLIFR-WT
-Fcのいずれかと共に5時間インキュベートし、ルシフェラーゼレベルを測定した。
【0188】
まとめると、これらの結果は、LIFR-VPRVVAID-FcおよびLIFR-V
PRVVAID-gp130-ELDME Fcが、低い濃度であっても、LIFが媒介
する下流のシグナル伝達を強力に低減させ、LIFが媒地中に既に存在した後に添加され
る場合に、LIFシグナル伝達を大幅にブロックすることができることを示し、これは治
療薬のための有望な兆候である。LIFR-WT-Fcと比較した場合、両方の組換え阻
害剤がはるかに優れた阻害を示し、LIFR-WT-Fcと比べてLIFR-VPRVV
AID-FcによるIC50に53倍の改善があったほどである。WTおよび組換えLI
FR-Fcの両方が、LIFに対して高度な特異性を示し、OSMはLIFRに結合する
ことができるという事実にもかかわらず、高い受容体濃度であっても、OSM由来ルシフ
ェラーゼシグナルの低減は示さない。組換え阻害剤が、その高い親和性に起因して、WT
よりも、LIFに対してさらに選択的であるという事実は、治療薬としてのこの組換えト
ラップに付随するオフターゲット毒性がない可能性が高いことを示す。
【0189】
実施例10-膵臓がん細胞におけるLIFシグナル伝達の除去
LIFは、LIFRおよびgp130に結合し、LIFRおよびgp130のヘテロ二
量体化を引き起こす。二量体化によって、JAKが動員され、チロシン705上のSTA
T3をリン酸化する。これにより、STAT3の二量体化、核への侵入、および転写プロ
グラミングの活性化が起こる。したがって、pSTAT3-Y705は、LIFシグナル
伝達の読み取り値である。図16のパネルAは、LIFシグナル伝達を概略的に示す。
【0190】
図16のパネルBに示されるのは、135pMのヒトLIFおよび異なる濃度のLIF
R-VPRVVAID-Fc(「LIFR Fc組換え」)、LIFR-WT-Fc(「
LIFR Fc WT」)、LIFR-VPRVVAID-gp130-ELDME F
c(「融合体Fc組換え」)、およびL1抗LIF mAb(「抗LIF mAb」)に
曝露されたPANC1(ヒト膵臓がん細胞株)由来の溶解物のウェスタンブロットの結果
である。細胞を37℃で20分間インキュベートした後、プロテアーゼおよびホスファタ
ーゼの阻害剤の存在下で溶解した。タンパク質濃度を正規化し、SDS-PAGEによっ
て、ゲル上に流した。ウェスタンブロットでホスホ-STAT3(Y705)、STAT
3(全体)、およびβ-チューブリンの染色が行われた。図16のパネルCは、チューブ
リンシグナルに対して正規化された、pSTAT3シグナルの定量化を示す。
【0191】
これらの結果は、わずか約3倍過剰量でインキュベートされた場合であっても、LIF
R-VPRVVAID-FcおよびLIFR-VPRVVAID-gp130-ELDM
E Fcが、がん細胞においてLIFが媒介するpSTAT3レベルを減少させることが
でき、治療に関連するようにより過剰量でインキュベートされる場合には、LIFシグナ
ル伝達を完全に除去することができることを示す。阻害の程度は、定量化(パネルC)に
示されるように、抗LIF mAb、L1よりも改善されている。LIFR-WT-Fc
は、LIF由来のシグナル伝達をブロックする効果がはるかに低く、このことは、親和性
操作によって得られる利点を示している。強力なシグナル阻害は、KP4ヒト膵臓がん細
胞(図示せず)でも観察された。
【0192】
このように、上述の内容は、単に本開示の原理を説明しているにすぎない。本明細書に
明示的に記載または図示されていないが、本発明の原理を具現化し、その趣旨および範囲
内に含まれる様々な構成を当業者であれば工夫することができることが理解されよう。さ
らに、本明細書に列挙されたすべての例および条件的文言は、主として本発明の原理およ
び発明者らにより当該技術分野の促進のために寄与された概念を理解する上で読者を助け
ることを意図しており、このような具体的に列挙された例および条件への限定ではないと
解釈されるべきである。また、本発明の原理、態様、および実施形態、ならびにその具体
的な例を列挙する本明細書におけるすべての記述は、その構造的および機能的等価物の両
方を包含することを意図する。加えて、そのような等価物は、現在知られている等価物お
よび将来開発される等価物の両方、すなわち、構造にかかわらず同じ機能を果たすあらゆ
る開発要素も含むことが意図される。したがって、本発明の範囲は、本明細書に図示およ
び記載の例示的な実施形態に限定されることを意図しない。
図1
図2
図3-1】
図3-2】
図4
図5-1】
図5-2】
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15-1】
図15-2】
図15-3】
図16-1】
図16-2】
【配列表】
2024138287000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2024-07-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可溶性白血病抑制因子受容体(LIFR)ポリペプチドであって、配列番号2に対して少なくとも70%の同一性であるアミノ酸配列を含み、前記LIFRポリペプチドが、対応する野生型LIFRポリペプチドと比較して、白血病抑制因子(LIF)に対して増加された結合親和性を示す、可溶性LIFRポリペプチド。
【外国語明細書】