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特開2024-138289発光素子、表示装置、電子機器および照明装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138289
(43)【公開日】2024-10-08
(54)【発明の名称】発光素子、表示装置、電子機器および照明装置
(51)【国際特許分類】
   H10K 50/12 20230101AFI20241001BHJP
   H10K 59/38 20230101ALI20241001BHJP
   H10K 59/12 20230101ALI20241001BHJP
   H10K 59/17 20230101ALI20241001BHJP
   H10K 59/40 20230101ALI20241001BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20241001BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20241001BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20241001BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20241001BHJP
   F21V 23/04 20060101ALI20241001BHJP
   H10K 85/30 20230101ALI20241001BHJP
   H10K 101/30 20230101ALN20241001BHJP
   H10K 101/40 20230101ALN20241001BHJP
   H10K 101/25 20230101ALN20241001BHJP
   H10K 101/10 20230101ALN20241001BHJP
   F21Y 115/15 20160101ALN20241001BHJP
   F21W 131/301 20060101ALN20241001BHJP
【FI】
H10K50/12
H10K59/38
H10K59/12
H10K59/17
H10K59/40
G09F9/30 365
G09F9/00 366A
C09K11/06 660
F21S2/00 250
F21V23/04 100
H10K85/30
C09K11/06 645
C09K11/06 650
C09K11/06 640
C09K11/06 602
H10K101:30
H10K101:40
H10K101:25
H10K101:10
F21Y115:15
F21W131:301
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024099283
(22)【出願日】2024-06-20
(62)【分割の表示】P 2022209877の分割
【原出願日】2017-05-03
(31)【優先権主張番号】P 2016093152
(32)【優先日】2016-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】石曽根 崇浩
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 哲史
(57)【要約】
【課題】発光効率が高い発光素子を提供する。
【解決手段】第1乃至第3の有機化合物を有する発光素子である。第1の有機化合物と第
2の有機化合物とが励起錯体を形成する組み合わせである。第1の有機化合物は燐光性化
合物であり、第3の有機化合物は蛍光性化合物である。発光素子が呈する発光は、第1の
有機化合物と第2の有機化合物とで形成する励起錯体から励起エネルギーを供与された第
3の有機化合物が呈する発光を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の電極間に発光層を有し、
前記発光層は、第1の有機化合物と、第2の有機化合物と、第3の有機化合物と、を有し、
前記第1の有機化合物のLUMO準位は、前記第2の有機化合物のLUMO準位以上であり、
前記第1の有機化合物のHOMO準位は、前記第2の有機化合物のHOMO準位以上であり、
前記第1の有機化合物は、室温で燐光を呈する燐光性化合物であり、
前記第3の有機化合物は、蛍光性化合物であり、
前記第3の有機化合物のS1準位は、前記第1の有機化合物のS1準位及び前記第2の有機化合物のS1準位より低い、発光素子。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1の有機化合物のT1準位は、前記第2の有機化合物のT1準位以上である、発光素子。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記第1の有機化合物は、イリジウムを有する、発光素子。
【請求項4】
請求項3において、
前記第1の有機化合物は、前記イリジウムに配位する配位子を有し、
前記配位子は、含窒素五員複素環骨格を有する、発光素子。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項において、
前記第2の有機化合物は、ピリジン骨格、ジアジン骨格またはトリアジン骨格を有する、発光素子。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の発光素子と、
カラーフィルタまたはトランジスタの少なくとも一方と、を有する表示装置。
【請求項7】
請求項6に記載の表示装置と、
筐体またはタッチセンサの少なくとも一方と、を有する電子機器。
【請求項8】
請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の発光素子と、
筐体またはタッチセンサの少なくとも一方と、を有する照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、発光素子、または該発光素子を有する表示装置、電子機器、及び照
明装置に関する。
【0002】
なお、本発明の一態様は、上記の技術分野に限定されない。本明細書等で開示する発明
の一態様の技術分野は、物、方法、または、製造方法に関する。または、本発明の一態様
は、プロセス、マシン、マニュファクチャ、または、組成物(コンポジション・オブ・マ
ター)に関する。そのため、より具体的に本明細書で開示する本発明の一態様の技術分野
としては、半導体装置、表示装置、液晶表示装置、発光装置、照明装置、蓄電装置、記憶
装置、それらの駆動方法、または、それらの製造方法、を一例として挙げることができる
【背景技術】
【0003】
近年、エレクトロルミネッセンス(Electroluminescence:EL)
を利用した発光素子の研究開発が盛んに行われている。これら発光素子の基本的な構成は
、一対の電極間に発光性の物質を含む層(EL層)を挟んだ構成である。この素子の電極
間に電圧を印加することにより、発光性の物質からの発光が得られる。
【0004】
上述の発光素子は自発光型であるため、これを用いた表示装置は、視認性に優れ、バッ
クライトが不要であり、消費電力が少ない等の利点を有する。さらに、薄型軽量に作製で
き、応答速度が高いなどの利点も有する。
【0005】
発光性の物質に有機化合物を用い、一対の電極間に当該発光性の有機化合物を含むEL
層を設けた発光素子(例えば、有機EL素子)の場合、一対の電極間に電圧を印加するこ
とにより、陰極から電子が、陽極から正孔(ホール)がそれぞれ発光性のEL層に注入さ
れ、電流が流れる。そして、注入された電子及び正孔が再結合することによって発光性の
有機化合物が励起状態となり、励起された発光性の有機化合物から発光を得ることができ
る。
【0006】
有機化合物が形成する励起状態の種類としては、一重項励起状態(S)と三重項励起
状態(T)があり、一重項励起状態からの発光が蛍光、三重項励起状態からの発光が燐
光と呼ばれている。また、発光素子におけるそれらの統計的な生成比率は、S:T
1:3である。そのため、蛍光を発する化合物(蛍光性化合物)を用いた発光素子より、
燐光を発する化合物(燐光性化合物)を用いた発光素子の方が、高い発光効率を得ること
が可能となる。したがって、三重項励起状態のエネルギーを発光に変換することが可能な
燐光性化合物を用いた発光素子の開発が近年盛んに行われている。例えば、非特許文献1
においては、燐光性化合物であるIr錯体の発光量子収率の温度依存性について詳細に調
査し、Ir錯体の分子構造と発光量子収率との関係およびその原因について探っている。
【0007】
燐光性化合物を用いた発光素子のうち、特に青色の発光を呈する発光素子においては、
高い三重項励起エネルギー準位を有する安定な化合物の開発が困難であるため、未だ実用
化に至っていない。そのため、より安定な蛍光性化合物を用いた発光素子の開発が行われ
ており、蛍光性化合物を用いた発光素子(蛍光発光素子)の発光効率を高める手法が探索
されている。
【0008】
三重項励起状態のエネルギーの一部を発光に変換することが可能な材料として、燐光性
化合物の他に、熱活性化遅延蛍光(Thermally Activated Dela
yed Fluorescence:TADF)材料が知られている。熱活性化遅延蛍光
材料では、三重項励起状態から逆項間交差により一重項励起状態が生成され、一重項励起
状態から発光に変換される。
【0009】
熱活性化遅延蛍光材料を用いた発光素子において、発光効率を高めるためには、熱活性
化遅延蛍光材料において、三重項励起状態から一重項励起状態が効率よく生成するだけで
なく、一重項励起状態から効率よく発光が得られること、すなわち蛍光量子収率が高いこ
とが重要となる。しかしながら、この2つを同時に満たす発光材料を設計することは困難
である。
【0010】
そこで、熱活性化遅延蛍光材料と、蛍光性化合物と、を有する発光素子において、熱活
性化遅延蛍光材料の一重項励起エネルギーを、蛍光性化合物へと移動させ、蛍光性化合物
から発光を得る方法が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2014-45179号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】T.sajoto、他5名、ジャーナル オブ アメリカン ケミカル ソサエティ、vol.131、9813(2009)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
熱活性化遅延蛍光材料と、蛍光性化合物と、を有する発光素子において、発光効率を高
めるためには、三重項励起状態から一重項励起状態が効率よく生成することが好ましいが
、熱活性化遅延蛍光材料として励起錯体を用いた発光素子については、三重項励起状態か
ら一重項励起状態を効率よく生成させて発光素子の発光効率をさらに向上させる手法の開
発が求められている。
【0014】
したがって、本発明の一態様では、発光効率が高い発光素子を提供することを課題の一
とする。または、本発明の一態様では、駆動電圧が低い発光素子を提供することを課題の
一とする。または、本発明の一態様では、消費電力が低減された発光素子を提供すること
を課題の一とする。または、本発明の一態様では、信頼性の良好な発光素子を提供するこ
とを課題の一とする。または、本発明の一態様では、新規な発光素子を提供することを課
題の一とする。または、本発明の一態様では、新規な発光装置を提供することを課題の一
とする。または、本発明の一態様では、新規な表示装置を提供することを課題の一とする
【0015】
なお、上記の課題の記載は、他の課題の存在を妨げない。なお、本発明の一態様は、必
ずしも、これらの課題の全てを解決する必要はない。上記以外の課題は、明細書等の記載
から自ずと明らかであり、明細書等の記載から上記以外の課題を抽出することが可能であ
る。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の一態様は、励起錯体を形成する組み合わせの2種類の有機化合物(第1の有機
化合物および第2の有機化合物)を有する発光素子であり、一方の有機化合物が三重項励
起エネルギーを発光に変換することができる機能を有する発光素子である。また、該励起
錯体から一重項励起エネルギーを発光に変換することができる機能を有する第3の有機化
合物への励起エネルギーの供与により、当該第3の有機化合物から効率よく発光を得るこ
とができる発光素子である。
【0017】
また、本発明の一態様は、発光層を有する発光素子であって、発光層は、第1の有機化
合物と、第2の有機化合物と、第3の有機化合物と、を有し、第1の有機化合物および第
2の有機化合物の一方のLUMO準位は、第1の有機化合物および第2の有機化合物の他
方のLUMO準位以上であり、第1の有機化合物および第2の有機化合物の一方のHOM
O準位は、第1の有機化合物および第2の有機化合物の他方のHOMO準位以上であり、
第1の有機化合物と、第2の有機化合物と、が励起錯体を形成する組み合わせであり、第
1の有機化合物は、三重項励起エネルギーを発光に変換することができる機能を有し、第
3の有機化合物は、一重項励起エネルギーを発光に変換することができる機能を有し、発
光層が呈する発光は、第3の有機化合物が呈する発光を有する発光素子である。
【0018】
また、本発明の他の一態様は、発光層を有する発光素子であって、発光層は、第1の有
機化合物と、第2の有機化合物と、第3の有機化合物と、を有し、第1の有機化合物およ
び第2の有機化合物の一方のLUMO準位は、第1の有機化合物および第2の有機化合物
の他方のLUMO準位以上であり、第1の有機化合物および第2の有機化合物の一方のH
OMO準位は、第1の有機化合物および第2の有機化合物の他方のHOMO準位以上であ
り、第1の有機化合物と、第2の有機化合物と、が励起錯体を形成する組み合わせであり
、第1の有機化合物は、蛍光を呈さず、且つ、燐光を呈することができる機能を有し、第
3の有機化合物は、蛍光を呈することができる機能を有し、発光層が呈する発光は、第3
の有機化合物が呈する発光を有する発光素子である。
【0019】
また、本発明の他の一態様は、発光層を有する発光素子であって、発光層は、第1の有
機化合物と、第2の有機化合物と、第3の有機化合物と、を有し、第1の有機化合物のL
UMO準位は、第2の有機化合物のLUMO準位以上であり、第1の有機化合物のHOM
O準位は、第2の有機化合物のHOMO準位以上であり、第1の有機化合物と、第2の有
機化合物と、が励起錯体を形成する組み合わせであり、第1の有機化合物は、Ru、Rh
、Pd、Os、Ir、またはPtを有し、発光層が呈する発光は、第3の有機化合物が呈
する発光を有する発光素子である。
【0020】
上記各構成において、第1の有機化合物の最低励起三重項エネルギー準位は、第2の有
機化合物の最低励起三重項エネルギー準位以上であると好ましい。
【0021】
また、上記各構成において、励起錯体は、第3の有機化合物へ励起エネルギーを供与す
る機能を有すると好ましい。また、励起錯体が呈する発光スペクトルは、第3の有機化合
物の吸収スペクトルの最も長波長側の吸収帯と重なる領域を有すると好ましい。
【0022】
また、上記各構成において、第1の有機化合物は、イリジウムを有すると好ましい。ま
た、第1の有機化合物は、イリジウムに配位する配位子を有し、配位子は、含窒素五員複
素環骨格を有すると好ましい。
【0023】
また、上記各構成において、第2の有機化合物は、電子を輸送することができる機能を
有すると好ましい。また、第2の有機化合物は、π電子不足型複素芳香族骨格を有する、
と好ましい。
【0024】
また、上記各構成において、第1の有機化合物は、室温で0%以上40%以下の発光量
子収率を有すると好ましい。
【0025】
また、上記各構成において、励起錯体は、第1の有機化合物が呈する発光の発光効率よ
り高い発光効率を有する発光を呈する機能を有すると好ましい。
【0026】
また、本発明の他の一態様は、上記各構成の発光素子と、カラーフィルタまたはトラン
ジスタの少なくとも一方と、を有する表示装置である。また、本発明の他の一態様は、当
該表示装置と、筐体またはタッチセンサの少なくとも一方と、を有する電子機器である。
また、本発明の他の一態様は、上記各構成の発光素子と、筐体またはタッチセンサの少な
くとも一方と、を有する照明装置である。また、本発明の一態様は、発光素子を有する発
光装置だけでなく、発光装置を有する電子機器も範疇に含める。従って、本明細書中にお
ける発光装置とは、画像表示デバイス、もしくは光源(照明装置含む)を指す。また、発
光素子にコネクター、例えばFPC(Flexible Printed Circui
t)、TCP(Tape Carrier Package)が取り付けられた表示モジ
ュール、TCPの先にプリント配線板が設けられた表示モジュール、または発光素子にC
OG(Chip On Glass)方式によりIC(集積回路)が直接実装された表示
モジュールも発光装置に含む場合がある。
【発明の効果】
【0027】
本発明の一態様により、発光効率が高い発光素子を提供することができる。または、本
発明の一態様により、駆動電圧が低い発光素子を提供することができる。または、本発明
の一態様により、消費電力が低減された発光素子を提供することができる。または、本発
明の一態様により、信頼性の良好な発光素子を提供することができる。または、本発明の
一態様により、新規な発光素子を提供することができる。または、本発明の一態様により
、新規な発光装置を提供することができる。または、本発明の一態様により、新規な表示
装置を提供することができる。
【0028】
なお、これらの効果の記載は、他の効果の存在を妨げない。なお、本発明の一態様は、
必ずしも、これらの効果の全てを有する必要はない。なお、これら以外の効果は、明細書
、図面、請求項などの記載から、自ずと明らかであり、明細書、図面、請求項などの記載
から、これら以外の効果を抽出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の一態様の発光素子の断面模式図。
図2】本発明の一態様の発光素子の発光層の断面模式図、及びエネルギー準位の相関を説明する図。
図3】本発明の一態様の発光素子の発光層のエネルギー準位の相関を説明する図。
図4】本発明の一態様の発光素子の断面模式図。
図5】本発明の一態様の発光素子の断面模式図。
図6】本発明の一態様の発光素子の断面模式図。
図7】本発明の一態様の表示装置を説明する上面図及び断面模式図。
図8】本発明の一態様の表示装置を説明する断面模式図。
図9】本発明の一態様の表示装置を説明する断面模式図。
図10】本発明の一態様の表示モジュールを説明する斜視図。
図11】本発明の一態様の電子機器について説明する図。
図12】本発明の一態様の表示装置を説明する図。
図13】本発明の一態様の照明装置について説明する図。
図14】実施例に係る、発光素子の輝度-電流密度特性を説明する図。
図15】実施例に係る、発光素子の輝度-電圧特性を説明する図。
図16】実施例に係る、発光素子の電流効率-輝度特性を説明する図。
図17】実施例に係る、発光素子の電力効率-輝度特性を説明する図。
図18】実施例に係る、発光素子の外部量子効率-輝度特性を説明する図。
図19】実施例に係る、発光素子の電界発光スペクトルを説明する図。
図20】実施例に係る、薄膜の発光スペクトルを説明する図。
図21】実施例に係る、化合物の吸収スペクトル及び発光スペクトルを説明する図。
図22】実施例に係る、発光素子の輝度-電流密度特性を説明する図。
図23】実施例に係る、発光素子の輝度-電圧特性を説明する図。
図24】実施例に係る、発光素子の電流効率-輝度特性を説明する図。
図25】実施例に係る、発光素子の電力効率-輝度特性を説明する図。
図26】実施例に係る、発光素子の外部量子効率-輝度特性を説明する図。
図27】実施例に係る、発光素子の電界発光スペクトルを説明する図。
図28】実施例に係る、化合物の吸収スペクトルを説明する図。
図29】実施例に係る、化合物の吸収スペクトルを説明する図。
図30】実施例に係る、発光素子の外部量子効率-輝度特性を説明する図。
図31】実施例に係る、発光素子の電界発光スペクトルを説明する図。
図32】実施例に係る、過渡EL曲線を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の態様について図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下
の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細
を様々に変更し得ることが可能である。従って、本発明は以下に示す実施の形態及び実施
例の記載内容に限定して解釈されない。
【0031】
なお、図面等において示す各構成の、位置、大きさ、範囲などは、理解の簡単のため、
実際の位置、大きさ、範囲などを表していない場合がある。このため、開示する発明は、
必ずしも、図面等に開示された位置、大きさ、範囲などに限定されない。
【0032】
また、本明細書等において、第1、第2等として付される序数詞は便宜上用いており、
工程順又は積層順を示さない場合がある。そのため、例えば、「第1の」を「第2の」又
は「第3の」などと適宜置き換えて説明することができる。また、本明細書等に記載され
ている序数詞と、本発明の一態様を特定するために用いられる序数詞は一致しない場合が
ある。
【0033】
また、本明細書等において、図面を用いて発明の構成を説明するにあたり、同じものを
指す符号は異なる図面間でも共通して用いる場合がある。
【0034】
また、本明細書等において、「膜」という用語と、「層」という用語とは、互いに入れ
替えることが可能である。例えば、「導電層」という用語を、「導電膜」という用語に変
更することが可能な場合がある。または、例えば、「絶縁膜」という用語を、「絶縁層」
という用語に変更することが可能な場合がある。
【0035】
また、本明細書等において、一重項励起状態(S)は、励起エネルギーを有する一重
項状態のことである。また、S1準位は一重項励起エネルギー準位の最も低い準位であり
、最も低い一重項励起状態(S1状態)の励起エネルギー準位のことである。また、三重
項励起状態(T)は、励起エネルギーを有する三重項状態のことである。また、T1準
位は、三重項励起エネルギー準位の最も低い準位であり、最も低い三重項励起状態(T1
状態)の励起エネルギー準位のことである。なお、本明細書等において、単に一重項励起
状態および一重項励起エネルギー準位と表記した場合であっても、S1状態およびS1準
位を表す場合がある。また、三重項励起状態および三重項励起エネルギー準位と表記した
場合であっても、T1状態およびT1準位を表す場合がある。
【0036】
また、本明細書等において蛍光性化合物とは、一重項励起状態から基底状態へ緩和する
際に可視光領域に発光を与える化合物である。燐光性化合物とは、三重項励起状態から基
底状態へ緩和する際に、室温において可視光領域に発光を与える化合物である。換言する
と燐光性化合物とは、三重項励起エネルギーを可視光へ変換可能な化合物の一つである。
【0037】
なお、本明細書等において、室温とは0℃以上40℃以下の範囲の温度をいう。
【0038】
また、本明細書等において、青色の波長領域は、400nm以上490nm未満であり
、青色の発光は、該波長領域に少なくとも一つの発光スペクトルピークを有する。また、
緑色の波長領域は、490nm以上580nm未満であり、緑色の発光は、該波長領域に
少なくとも一つの発光スペクトルピークを有する。また、赤色の波長領域は、580nm
以上680nm以下であり、赤色の発光は、該波長領域に少なくとも一つの発光スペクト
ルピークを有する。
【0039】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様の発光素子について、図1乃至図3を用いて以下説
明する。
【0040】
<発光素子の構成例>
まず、本発明の一態様の発光素子の構成について、図1を用いて、以下説明する。
【0041】
図1は、本発明の一態様の発光素子150の断面模式図である。
【0042】
発光素子150は、一対の電極(電極101及び電極102)を有し、該一対の電極間
に設けられたEL層100を有する。EL層100は、少なくとも発光層130を有する
【0043】
また、図1に示すEL層100は、発光層130の他に、正孔注入層111、正孔輸送
層112、電子輸送層118、及び電子注入層119等の機能層を有する。
【0044】
なお、本実施の形態においては、一対の電極のうち、電極101を陽極として、電極1
02を陰極として説明するが、発光素子150の構成としては、その限りではない。つま
り、電極101を陰極とし、電極102を陽極とし、当該電極間の各層の積層を、逆の順
番にしてもよい。すなわち、陽極側から、正孔注入層111と、正孔輸送層112と、発
光層130と、電子輸送層118と、電子注入層119と、が積層する順番とすればよい
【0045】
なお、EL層100の構成は、図1に示す構成に限定されず、正孔注入層111、正孔
輸送層112、電子輸送層118、及び電子注入層119の中から選ばれた少なくとも一
つを有する構成とすればよい。あるいは、EL層100は、正孔または電子の注入障壁を
低減する、正孔または電子の輸送性を向上する、正孔または電子の輸送性を阻害する、ま
たは電極による消光現象を抑制する、ことができる等の機能を有する機能層を有する構成
としてもよい。なお、機能層はそれぞれ単層であっても、複数の層が積層された構成であ
ってもよい。
【0046】
<発光素子の発光機構>
次に、発光層130の発光機構について、以下説明を行う。
【0047】
本発明の一態様の発光素子150においては、一対の電極(電極101及び電極102
)間に電圧を印加することにより、陰極から電子が、陽極から正孔(ホール)が、それぞ
れEL層100に注入され、電流が流れる。そして、注入された電子及び正孔が再結合す
ることによって、励起子が形成される。キャリア(電子および正孔)の再結合によって生
じる励起子のうち、一重項励起子と三重項励起子の比(以下、励起子生成確率)は、統計
的確率により、1:3となる。すなわち、一重項励起子が生成する割合は25%であり、
三重項励起子が生成する割合は75%であるため、三重項励起子を発光に寄与させること
が、発光素子の発光効率を向上させるためには重要である。したがって、発光層130に
用いる発光材料としては、三重項励起エネルギーを発光に変換することができる機能を有
する材料であると好ましい。
【0048】
三重項励起エネルギーを発光に変換することができる機能を有する材料として、燐光を
発することができる化合物(以下、燐光性化合物ともいう)が挙げられる。本明細書等に
おいて、燐光性化合物とは、低温(例えば77K)以上室温以下の温度範囲(すなわち、
77K以上313K以下)のいずれかにおいて、燐光を呈し、且つ蛍光を呈さない化合物
のことをいう。燐光性化合物が、効率よく三重項励起エネルギーを発光に変換するために
は、重原子を有すると好ましい。燐光性化合物が重原子を有する場合、スピン軌道相互作
用(電子のスピン角運動量と軌道角運動量との相互作用)により、一重項状態と三重項状
態との項間交差が促進されるため、燐光性化合物において一重項基底状態と三重項励起状
態との間の遷移が許容となる。すなわち、燐光性化合物の一重項基底状態と三重項励起状
態との間の遷移確率が高まるため、当該遷移に係わる発光の効率および吸収の確率を高め
ることができる。そのためには、燐光性化合物がスピン軌道相互作用の大きい金属元素を
有すると好ましく、具体的には遷移金属元素が好ましく、特に白金族元素(ルテニウム(
Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(I
r)、または白金(Pt))を有することが好ましく、中でもイリジウムを有することで
、一重項基底状態と三重項励起状態との間の直接遷移に係わる遷移確率を高めることがで
き好ましい。
【0049】
また、三重項励起エネルギーを発光に変換することができる機能を有する材料としては
、熱活性化遅延蛍光(TADF)材料が挙げられる。なお、熱活性化遅延蛍光材料とは、
S1準位とT1準位との差が小さく、逆項間交差によって三重項励起エネルギーから一重
項励起エネルギーへエネルギーを変換することができる機能を有する材料である。そのた
め、三重項励起エネルギーをわずかな熱エネルギーによって一重項励起エネルギーにアッ
プコンバート(逆項間交差)が可能で、一重項励起状態を効率よく生成することができる
。励起錯体(エキサイプレックス、エキシプレックスまたはExciplexともいう)
は、S1準位とT1準位との差が極めて小さく、三重項励起エネルギーを一重項励起エネ
ルギーに変換することが可能な熱活性化遅延蛍光材料としての機能を有する。
【0050】
そこで、本発明の一態様は、発光層130に励起錯体を形成する2種類の物質を有する
。さらに、本発明の一態様は、発光層130に、一重項励起エネルギーを発光に変換する
ことができる材料を発光材料として有する。そのような構成とすることで、励起錯体で三
重項励起エネルギーを逆項間交差によって一重項励起エネルギーに変換し、当該一重項励
起エネルギーを発光材料にエネルギー移動することで、効率よく発光材料から発光を得る
ことができる。
【0051】
さらに、励起錯体を形成する一方の化合物に、単体で三重項励起エネルギーを発光に変
換することができる機能を有する化合物を用いることで、非発光性の三重項励起エネルギ
ーを、効率よく発光性の一重項励起エネルギーまたは三重項励起エネルギーに変換するこ
とができる励起錯体を形成させることが可能であることを本発明者らは見出した。励起錯
体を形成する一方の化合物に重原子を有する化合物を用いると、スピン軌道相互作用(電
子のスピン角運動量と軌道角運動量との相互作用)により、一重項状態と三重項状態との
間の項間交差が促進される。すなわち、励起錯体において三重項励起状態から一重項励起
状態への逆項間交差が促進されるため、励起錯体において一重項励起状態の生成確率を高
めることができる。したがって、励起錯体が一重項励起状態から発光する場合において、
効率よく発光する励起錯体を形成することができる。一方、この励起錯体は三重項励起状
態から、一重項基底状態への遷移確率を向上させることもできるため、励起錯体が三重項
励起状態から発光する場合においても、効率よく発光する励起錯体を形成することができ
る。すなわち、いずれの場合においても、フェルスター型エネルギー移動の媒体(ドナー
)として非常に好適となる。励起錯体がいずれの励起状態から発光するかについては必ず
しも限定されない(励起錯体の一重項、三重項のエネルギーは近接するため、いずれでも
良い)が、励起錯体の励起(発光)寿命は、通常の熱活性化遅延蛍光材料の発光寿命と比
較し、大幅に減少する。この特徴は、励起錯体から発光材料へのエネルギー移動にも反映
されるため、励起状態からの劣化の抑制につながり、本質的に駆動寿命の長い発光素子を
得ることが出来る。このような状態を形成するためには、励起錯体を形成する一方の化合
物がスピン軌道相互作用の大きい金属元素を有すると好ましく、具体的には遷移金属元素
が好ましく、特に白金族元素(ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(P
d)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、または白金(Pt))を有することが
好ましく、中でもイリジウムを有することで、励起錯体の一重項励起状態と三重項励起状
態との間の項間交差を促進させることができ好ましい。
【0052】
上記構成においては、励起錯体を形成する材料に発光量子収率が高い材料を用いる必要
がないため、材料設計が容易となり、材料選択の幅が広がる。具体的には、励起錯体を形
成する少なくとも一方の化合物が、単体で三重項励起エネルギーを発光に変換することが
できる機能を有する、または白金族元素(Ru、Rh、Pd、Os、Ir、またはPt)
を有する場合において、当該化合物の発光量子収率は、室温または常温において、0%以
上50%以下であってもよく、0%以上40%以下であってもよく、0%以上25%以下
であってもよく、0%以上10%以下であってもよく、さらには0%以上1%以下であっ
てもよい。
【0053】
図2(A)は、図1に示す発光層130の一例を示す断面模式図である。図2(A)に
示す発光層130は、化合物131と、化合物132と、化合物133と、を有する。本
発明の一態様において、化合物133は、蛍光性化合物であると好ましい。また、化合物
131は、燐光性化合物であると好ましい。以下の説明においては、化合物131として
、燐光性化合物を用いる構成について説明するが、白金族元素を有する化合物であれば室
温で発光を示さない化合物であってもよい。
【0054】
また、発光層130が有する化合物131および化合物132は、励起錯体を形成する
組み合わせであると好ましい。
【0055】
化合物131と化合物132との組み合わせは、励起錯体を形成することが可能な組み
合わせであればよいが、一方が正孔を輸送する機能(正孔輸送性)を有する化合物であり
、他方が電子を輸送する機能(電子輸送性)を有する化合物であることが、より好ましい
。この場合、ドナー-アクセプター型の励起錯体を形成しやすくなり、効率よく励起錯体
を形成することができる。また、化合物131と化合物132との組み合わせが、正孔輸
送性を有する化合物と電子輸送性を有する化合物との組み合わせである場合、その混合比
によってキャリアバランスを容易に制御することが可能となる。具体的には、正孔輸送性
を有する化合物:電子輸送性を有する化合物=1:9から9:1(重量比)の範囲が好ま
しい。また、該構成を有することで、容易にキャリアバランスを制御することができるこ
とから、キャリア再結合領域の制御も簡便に行うことができる。
【0056】
また、効率よく励起錯体を形成する化合物131及び化合物132としては、化合物1
31及び化合物132のうち一方のHOMO(Highest Occupied Mo
lecular Orbital、最高被占軌道ともいう)準位が他方のHOMO準位よ
り高く、一方のLUMO(Lowest Unoccupied Molecular
Orbital、最低空軌道ともいう)準位が他方のLUMO準位より高いことが好まし
い。なお、化合物131のHOMO準位が化合物132のHOMO準位と同等、または化
合物131のLUMO準位が化合物132のLUMO準位と同等であってもよい。
【0057】
なお、化合物のLUMO準位およびHOMO準位は、サイクリックボルタンメトリ(C
V)測定によって測定される化合物の電気化学特性(還元電位および酸化電位)から導出
することができる。
【0058】
例えば、化合物131が正孔輸送性を有し、化合物132が電子輸送性を有する場合、
図2(B)に示すエネルギーバンド図のように、化合物131のHOMO準位が化合物1
32のHOMO準位より高いことが好ましく、化合物131のLUMO準位が化合物13
2のLUMO準位より高いことが好ましい。このようなエネルギー準位の相関とすること
で、一対の電極(電極101および電極102)から注入されたキャリアである正孔及び
電子が、化合物131および化合物132に、それぞれ注入されやすくなり好適である。
【0059】
なお、図2(B)において、Comp(131)は化合物131を表し、Comp(1
32)は化合物132を表し、ΔEC1は化合物131のLUMO準位とHOMO準位と
のエネルギー差を表し、ΔEC2は化合物132のLUMO準位とHOMO準位とのエネ
ルギー差を表し、ΔEExは化合物132のLUMO準位と化合物131のHOMO準位
とのエネルギー差を表す、表記及び符号である。
【0060】
また、化合物131と化合物132とが形成する励起錯体は、化合物131にHOMO
の分子軌道を有し、化合物132にLUMOの分子軌道を有する励起錯体となる。また、
該励起錯体の励起エネルギーは、化合物132のLUMO準位と化合物131のHOMO
準位とのエネルギー差(ΔEEx)に概ね相当し、化合物131のLUMO準位とHOM
O準位とのエネルギー差(ΔEC1)及び化合物132のLUMO準位とHOMO準位と
のエネルギー差(ΔEC2)より小さくなる。したがって、化合物131と化合物132
とで励起錯体を形成することで、より低い励起エネルギーで励起状態を形成することが可
能となる。また、より低い励起エネルギーを有するため、該励起錯体は、安定な励起状態
を形成することができる。
【0061】
また、発光層130における化合物131と、化合物132と、化合物133と、のエ
ネルギー準位の相関を図2(C)に示す。なお、図2(C)における表記及び符号は、以
下の通りである。
・Comp(131):化合物131(燐光性化合物)
・Comp(132):化合物132
・Guest(133):化合物133(蛍光性化合物)
・SC1:化合物131のS1準位
・TC1:化合物131のT1準位
・SC2:化合物132のS1準位
・TC2:化合物132のT1準位
・S:化合物133のS1準位
・T:化合物133のT1準位
・SEx:励起錯体のS1準位
・TEx:励起錯体のT1準位
【0062】
本発明の一態様の発光素子においては、発光層130が有する化合物131と化合物1
32とで励起錯体を形成する。励起錯体のS1準位(SEx)と励起錯体のT1準位(T
Ex)とは、互いに隣接したエネルギー準位となる(図2(C) ルートA参照)。
【0063】
励起錯体は2種類の物質からなる励起状態であり、その形成過程には、主に以下の2つ
の過程がある。
【0064】
一つは、エレクトロプレックス(Electroplex)の形成過程である。本明細
書等において、エレクトロプレックスとは、キャリアが注入しイオン化した(カチオン状
態またはアニオン状態の)化合物131と化合物132とが相互作用することで、励起錯
体を形成したものをいう。なお、エレクトロプレックスの形成過程は電気励起において生
じる現象である。本実施の形態では、化合物131または化合物132の一方が正孔を、
他方が電子を受け取り、互いに相互作用することで速やかに励起錯体が形成される過程が
、エレクトロプレックス形成過程に相当する。なお、エレクトロプレックス形成過程にお
いては、化合物131及び化合物132の双方がそれぞれ単体で励起状態を形成せずに、
速やかに励起錯体が形成される。そのため、励起錯体を形成する各化合物(化合物131
および化合物132)の励起寿命や発光量子収率などの特性は、励起錯体の形成過程に影
響しない。すなわち、励起錯体を形成する各化合物(化合物131および化合物132)
の発光量子収率が低い場合であっても本発明の一態様であれば効率よく励起錯体を形成す
ることができる。なお、上記過程においては、化合物131のS1準位(SC1)は化合
物132のS1準位(SC2)より高くてもよく低くてもよい。また、化合物131のT
1準位(TC1)は化合物132のT1準位(TC2)より高くてもよく低くてもよい。
【0065】
もう一つは、励起エネルギーを受けて励起状態となった一方の化合物が、基底状態であ
る他方の化合物と相互作用することによって励起錯体を形成する過程である。この励起錯
体形成過程は光励起および電気励起において生じ得る現象である。本実施の形態では、化
合物131または化合物132の一方が光または電気エネルギーを受け取り励起状態とな
り、基底状態である他方と速やかに相互作用することで励起錯体が形成される過程が、前
述の励起錯体形成過程に相当する。なお、この励起錯体形成過程においては、化合物13
1の励起状態が生成し、その励起状態の失活速度が速い場合であっても、化合物131の
T1準位(TC1)が化合物132のT1準位(TC2)以上であれば、化合物131の
T1準位(TC1)から化合物132のT1準位(TC2)へ励起エネルギーが移動する
ことができる。また、化合物131のT1準位(TC1)から化合物132のT1準位(
C2)へ励起エネルギーが移動した後、化合物131と化合物132とで励起錯体を形
成することができる。そのため、化合物131の励起状態の失活速度が速く、化合物13
1の発光量子収率が低い場合であっても、本発明の一態様であれば効率よく励起錯体を形
成することができる。なお、上記過程においては、化合物131のS1準位(SC1)は
化合物132のS1準位(SC2)より高くてもよく低くてもよい。
【0066】
上記の過程によって生成した励起錯体は、光を発する、または励起エネルギーを他の材
料へ供与する等、励起エネルギーを失うことによって基底状態になると、励起錯体を形成
していた2種類の物質は、また元の別々の物質として振る舞う。
【0067】
励起錯体の励起エネルギー準位(SExおよびTEx)は、励起錯体を形成する各物質
(化合物131および化合物132)のS1準位(SC1およびSC2)より低くなるた
め、より低い励起エネルギーで励起状態を形成することが可能となる。これによって、発
光素子150の駆動電圧を低減することができる。
【0068】
励起錯体のS1準位(SEx)とT1準位(TEx)は、互いに隣接したエネルギー準
位であるため、熱活性化遅延蛍光を呈する機能を有する。すなわち、励起錯体は三重項励
起エネルギーを逆項間交差(アップコンバージョン)によって一重項励起エネルギーに変
換する機能を有する。したがって、発光層130で生成した三重項励起エネルギーの一部
は励起錯体により一重項励起エネルギーに変換される。そのためには、励起錯体のS1準
位(SEx)とT1準位(TEx)とのエネルギー差は、好ましくは0eVより大きく0
.2eV以下、より好ましくは0eVより大きく0.1eV以下である。なお、逆項間交
差を効率よく生じさせるためには、励起錯体のT1準位(TEx)が、励起錯体を形成す
る各物質(化合物131および化合物132)のT1準位(TC1およびTC2)よりも
低いことが好ましい。これにより、化合物131及び化合物132による励起錯体の三重
項励起エネルギーのクエンチが生じにくくなり、励起錯体によって効率よく三重項励起エ
ネルギーから一重項励起エネルギーへの逆項間交差が発生する。
【0069】
また、励起錯体の一重項励起エネルギー準位(SEx)は、発光材料である化合物13
3の一重項励起エネルギー準位(S)より高いことが好ましい。このようなエネルギー
準位の相関とすることで、生成した励起錯体の一重項励起エネルギーは、励起錯体の一重
項励起エネルギー準位(SEx)から化合物133の一重項励起エネルギー準位(S
へエネルギー移動することができる。
【0070】
また、本発明の一態様においては、励起錯体を形成する一方の化合物に重原子を有する
化合物を用いるため、一重項状態と三重項状態との間の項間交差が促進される。そのため
、三重項励起状態から一重項基底状態への遷移が可能な(すなわち燐光を呈することが可
能な)励起錯体を形成することができる。この場合、励起錯体の三重項励起エネルギー準
位(TEx)は、発光材料である化合物133の一重項励起エネルギー準位(S)より
高いことが好ましい。このようなエネルギー準位の相関とすることで、生成した励起錯体
の三重項励起エネルギーは、励起錯体の三重項励起エネルギー準位(TEx)から化合物
133の一重項励起エネルギー準位(S)へエネルギー移動することができる。なお、
励起錯体のS1準位(SEx)とT1準位(TEx)は、互いに隣接したエネルギー準位
であるため、発光スペクトルにおいて、蛍光と燐光とを明確に区別することが困難な場合
がある。その場合、発光寿命によって、蛍光または燐光を区別することが可能な場合があ
る。
【0071】
上述のようなエネルギー移動過程を経て、化合物133が一重項励起状態となり、発光
することができる(図2(C) ルートA参照)。
【0072】
なお、発光材料である化合物133の一重項励起状態から効率よく発光を得るためには
、化合物133の蛍光量子収率は高いことが好ましく、具体的には、好ましくは50%以
上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは90%以上である。
【0073】
なお、励起錯体の一重項励起エネルギー準位(SEx)から、化合物133の三重項励
起エネルギー準位(T)へのエネルギー移動は、化合物133が蛍光性化合物であるた
め、化合物133の一重項基底状態から三重項励起状態への直接遷移が禁制であることか
ら、主たるエネルギー移動過程になりにくい。
【0074】
また、励起錯体の三重項励起エネルギー準位(TEx)から化合物133の三重項励起
エネルギー準位(T)へ三重項励起エネルギー移動が生じると、三重項励起エネルギー
は失活してしまう(図2(C) ルートA参照)。そのため、ルートAのエネルギー
移動が少ない方が、化合物133の三重項励起状態の生成効率を低減することができ、熱
失活を減少することができるため好ましい。そのためには、化合物131及び化合物13
2の総量と化合物133との重量比は、化合物133の重量比が低いことが好ましく、具
体的には化合物131及び化合物132の総量に対する化合物133の重量比が、好まし
くは0.001以上0.05以下であり、より好ましくは0.001以上0.01以下で
ある。
【0075】
なお、化合物133においてキャリアの直接再結合過程が支配的になると、発光層13
0において三重項励起子が多数生成することになり、熱失活によって発光効率を損ねてし
まう。そのため、化合物133においてキャリアが直接再結合する過程よりも、励起錯体
の生成過程を経たエネルギー移動過程(図2(C) ルートA及びA)の割合が多い
方が、化合物133の三重項励起状態の生成効率を低減することができ、熱失活を抑制す
ることができるため好ましい。そのためには、やはり化合物131及び化合物132の総
量と化合物133との重量比は、化合物133の重量比が低いことが好ましく、具体的に
は化合物131及び化合物132の総量に対する化合物133の重量比が、好ましくは0
.001以上0.05以下であり、より好ましくは0.001以上0.01以下である。
【0076】
また、上記のエレクトロプレックス形成過程を優勢に生じさせるためには、例えば、化
合物131が正孔輸送性を有し、化合物132が電子輸送性を有する場合、化合物131
のHOMO準位が化合物132のHOMO準位より高いことが好ましく、化合物131の
LUMO準位が化合物132のLUMO準位より高いことが好ましい。具体的には、化合
物131のHOMO準位と化合物132のHOMO準位とのエネルギー差は、好ましくは
0.1eV以上であり、より好ましくは0.2eV以上であり、さらに好ましくは0.3
eV以上である。また、化合物131のLUMO準位と化合物132のLUMO準位との
エネルギー差は、好ましくは0.1eV以上であり、より好ましくは0.2eV以上であ
り、さらに好ましくは0.3eV以上である。このようなエネルギー準位の相関とするこ
とで、一対の電極(電極101および電極102)から注入されたキャリアである正孔及
び電子が、化合物131および化合物132に、それぞれ注入されやすくなり好適である
【0077】
なお、化合物131が電子輸送性を有し、化合物132が正孔輸送性を有する構成であ
ってもよい。その場合、図3に示すエネルギーバンド図のように、化合物132のHOM
O準位が化合物131のHOMO準位より高いことが好ましく、化合物132のLUMO
準位が化合物131のLUMO準位より高いことが好ましい。
【0078】
また、化合物131と化合物132との重量比は、化合物131の重量比が低いことが
好ましく、具体的には化合物132に対する化合物131の重量比が、好ましくは0.0
1以上0.5以下であり、より好ましくは0.05以上0.3以下である。
【0079】
以上のように、上述のルートA及びAのエネルギー移動過程が全て効率よく生じれ
ば、発光層130で生成した一重項励起エネルギー及び三重項励起エネルギーの双方が効
率よく化合物133の一重項励起状態のエネルギーに変換されるため、発光素子150は
高い発光効率で発光することが可能となる。
【0080】
上記に示すルートA、及びAの過程を、本明細書等において、ExSET(Exc
iplex-Singlet Energy Transfer)またはExEF(Ex
ciplex-Enhanced Fluorescence)と呼称する場合がある。
別言すると、発光層130は、励起錯体から蛍光性化合物への励起エネルギーの供与があ
る。
【0081】
発光層130を上述の構成とすることで、発光層130の蛍光性化合物からの発光を効
率よく得ることができる。
【0082】
<エネルギー移動機構>
ここで、分子間のエネルギー移動過程の支配因子について説明する。分子間のエネルギ
ー移動の機構としては、フェルスター機構(双極子-双極子相互作用)と、デクスター機
構(電子交換相互作用)の2つの機構が提唱されている。ここでは、励起状態である第1
の材料から基底状態である第2の材料への励起エネルギーの供与に関し、第1の材料と第
2の材料との分子間のエネルギー移動過程について説明するが、どちらか一方が励起錯体
の場合も同様である。
【0083】
≪フェルスター機構≫
フェルスター機構では、エネルギー移動に、分子間の直接的接触を必要とせず、第1の
材料及び第2の材料の双極子振動の共鳴現象を通じてエネルギー移動が起こる。双極子振
動の共鳴現象によって第1の材料が第2の材料にエネルギーを受け渡し、励起状態の第1
の材料が基底状態になり、基底状態の第2の材料が励起状態になる。なお、フェルスター
機構の速度定数kh*→gを数式(1)に示す。
【0084】
【数1】
【0085】
数式(1)において、νは、振動数を表し、f’(ν)は、第1の材料の規格化され
た発光スペクトル(一重項励起状態からのエネルギー移動を論じる場合は蛍光スペクトル
、三重項励起状態からのエネルギー移動を論じる場合は燐光スペクトル)を表し、ε
ν)は、第2の材料のモル吸光係数を表し、Nは、アボガドロ数を表し、nは、媒体の屈
折率を表し、Rは、第1の材料と第2の材料の分子間距離を表し、τは、実測される励起
状態の寿命(蛍光寿命や燐光寿命)を表し、cは、光速を表し、φは、発光量子収率(一
重項励起状態からのエネルギー移動を論じる場合は蛍光量子収率、三重項励起状態からの
エネルギー移動を論じる場合は燐光量子収率)を表し、Kは、第1の材料と第2の材料
の遷移双極子モーメントの配向を表す係数(0から4)である。なお、ランダム配向の場
合はK=2/3である。
【0086】
≪デクスター機構≫
デクスター機構では、第1の材料と第2の材料が軌道の重なりを生じる接触有効距離に
近づき、励起状態の第1の材料の電子と、基底状態の第2の材料との電子の交換を通じて
エネルギー移動が起こる。なお、デクスター機構の速度定数kh*→gを数式(2)に示
す。
【0087】
【数2】
【0088】
数式(2)において、hは、プランク定数であり、Kは、エネルギーの次元を持つ定数
であり、νは、振動数を表し、f’(ν)は、第1の材料の規格化された発光スペクト
ル(一重項励起状態からのエネルギー移動を論じる場合は蛍光スペクトル、三重項励起状
態からのエネルギー移動を論じる場合は燐光スペクトル)を表し、ε’(ν)は、第2
の材料の規格化された吸収スペクトルを表し、Lは、実効分子半径を表し、Rは、第1の
材料と第2の材料の分子間距離を表す。
【0089】
ここで、第1の材料から第2の材料へのエネルギー移動効率φETは、数式(3)で表
される。kは、第1の材料の発光過程(一重項励起状態からのエネルギー移動を論じる
場合は蛍光、三重項励起状態からのエネルギー移動を論じる場合は燐光)の速度定数を表
し、kは、第1の材料の非発光過程(熱失活や項間交差)の速度定数を表し、τは、実
測される第1の材料の励起状態の寿命を表す。
【0090】
【数3】
【0091】
数式(3)より、エネルギー移動効率φETを高くするためには、エネルギー移動の速
度定数kh*→gを大きくし、他の競合する速度定数k+k(=1/τ)が相対的に
小さくなれば良いことがわかる。
【0092】
≪エネルギー移動を高めるための概念≫
まず、フェルスター機構によるエネルギー移動を考える。数式(3)に数式(1)を代
入することでτを消去することができる。したがって、フェルスター機構の場合、エネル
ギー移動効率φETは、第1の材料の励起状態の寿命τに依存しない。また、エネルギー
移動効率φETは、発光量子収率φ(一重項励起状態からのエネルギー移動を論じる場合
は蛍光量子収率、三重項励起状態からのエネルギー移動を論じる場合は燐光量子収率)が
高い方が良いと言える。
【0093】
また、第1の材料の発光スペクトル(一重項励起状態からのエネルギー移動を論じる場
合は蛍光スペクトル、三重項励起状態からのエネルギー移動を論じる場合は燐光スペクト
ル)と第2の材料の吸収スペクトル(一重項基底状態から一重項励起状態への遷移に相当
する吸収)との重なりが大きいことが好ましい。さらに、第2の材料のモル吸光係数も高
い方が好ましい。このことは、第1の材料の発光スペクトルと、第2の材料の最も長波長
側に現れる吸収帯とが重なることを意味する。なお、第2の材料における一重項基底状態
から三重項励起状態への直接遷移が禁制であることから、第2の材料において三重項励起
状態が係わるモル吸光係数は無視できる量である。このことから、フェルスター機構によ
る第1の材料の励起状態から第2の材料の三重項励起状態へのエネルギー移動過程は無視
でき、第2の材料の一重項励起状態へのエネルギー移動過程のみ考慮すればよい。
【0094】
次に、デクスター機構によるエネルギー移動を考える。数式(2)によれば、速度定数
h*→gを大きくするには第1の材料の発光スペクトル(一重項励起状態からのエネル
ギー移動を論じる場合は蛍光スペクトル、三重項励起状態からのエネルギー移動を論じる
場合は燐光スペクトル)と第2の材料の吸収スペクトル(一重項基底状態から一重項励起
状態への遷移に相当する吸収)との重なりが大きい方が良いことがわかる。したがって、
エネルギー移動効率の最適化は、第1の材料の発光スペクトルと、第2の材料の最も長波
長側に現れる吸収帯とが重なることによって実現される。
【0095】
また、数式(3)に数式(2)を代入すると、デクスター機構におけるエネルギー移動
効率φETは、τに依存することが分かる。デクスター機構は、電子交換に基づくエネル
ギー移動過程であるため、第1の材料の一重項励起状態から第2の材料の一重項励起状態
へのエネルギー移動と同様に、第1の材料の三重項励起状態から第2の材料の三重項励起
状態へのエネルギー移動も生じる。
【0096】
なお、第1の材料から第2の材料へのエネルギー移動と同様に、励起錯体から蛍光性化
合物へのエネルギー移動過程についても、フェルスター機構、及びデクスター機構の双方
の機構によるエネルギー移動が生じる。
【0097】
本発明の一態様の発光素子においては、第2の材料は蛍光性化合物であるため、第2の
材料の三重項励起状態へのエネルギー移動効率は低いことが好ましい。すなわち、第1の
材料から第2の材料へのデクスター機構に基づくエネルギー移動効率は低いことが好まし
く、第1の材料から第2の材料へのフェルスター機構に基づくエネルギー移動効率は高い
ことが好ましい。
【0098】
また、既に述べたように、フェルスター機構におけるエネルギー移動効率は、第1の材
料の励起状態の寿命τに依存しない。一方、デクスター機構におけるエネルギー移動効率
は、第1の材料の励起寿命τに依存し、デクスター機構におけるエネルギー移動効率を低
下させるためには、第1の材料の励起寿命τは短いことが好ましい。
【0099】
そこで、本発明の一態様は、第1の材料として励起錯体を用い、該励起錯体を形成する
一方の化合物が三重項励起エネルギーを発光に変換する機能を有する。本発明の一態様の
構成により、励起錯体(第1の材料)の三重項励起状態から一重項励起状態への逆項間交
差を促進させ、励起錯体(第1の材料)の三重項励起状態の励起寿命τを短くすることが
できる。また、励起錯体(第1の材料)の三重項励起状態から一重項基底状態への遷移を
促進させ、励起錯体(第1の材料)の三重項励起状態の励起寿命τを短くすることができ
る。その結果、励起錯体(第1の材料)の三重項励起状態から蛍光性化合物(第2の材料
)への三重項励起状態へのデクスター機構におけるエネルギー移動効率を低下させること
ができる。
【0100】
また、既に述べたように、フェルスター機構による励起錯体の励起状態から蛍光性化合
物(第2の材料)の三重項励起状態へのエネルギー移動過程は無視できる。したがって、
本発明の一態様により、フェルスター機構およびデクスター機構の双方において、励起錯
体の励起状態から蛍光性化合物(第2の材料)の三重項励起状態のエネルギー移動過程を
生じにくくすることができる。その結果、発光層130における三重項励起エネルギーの
失活を抑制することができ、発光効率の高い発光素子を提供することができる。
【0101】
また、励起錯体が呈する発光のうち、熱活性化遅延蛍光成分における蛍光寿命は短いこ
とが好ましく、具体的には、好ましくは10ns以上50μs以下、より好ましくは10
ns以上20μs以下、さらに好ましくは10ns以上10μs以下である。
【0102】
なお、フェルスター機構の速度定数は、第1の材料と第2の材料の距離の6乗に反比例
し、デクスター機構の速度定数は、第1の材料と第2の材料の距離の指数関数に反比例す
る。そのため、二分子間の距離がおよそ1nm以下ではデクスター機構が優勢となり、お
よそ1nm以上ではフェルスター機構が優勢となる。したがって、デクスター機構におけ
るエネルギー移動効率を低下させるためには、第1の材料と第2の材料との距離を大きく
することが好ましく、具体的には、好ましくは0.7nm以上、より好ましくは0.9n
m以上、さらに好ましくは1nm以上である。また、フェルスター機構が効率よく生じる
ためには、第1の材料と第2の材料との距離は、5nm以下であることが好ましい。
【0103】
したがって、本発明の一態様において、蛍光性化合物である化合物133は、炭素数2
以上のアルキル基を2つ以上有すると好ましい。あるいは、化合物133は、炭素数3以
上10以下の分岐を有するアルキル基を2つ以上有すると好ましい。あるいは、化合物1
33は、炭素数3以上10以下の環式炭化水素基を2つ以上、または炭素数3以上10以
下の架橋環式炭化水素基を2つ以上有すると好ましい。さらに、化合物133は、炭素数
3以上12以下の縮合芳香族炭化水素を有すると好ましい。
【0104】
また、励起錯体が呈する発光のうち、熱活性化遅延蛍光成分が占める割合は高いことが
好ましい。具体的には、励起錯体が呈する発光のうち、熱活性化遅延蛍光成分が占める割
合は好ましくは10%以上、より好ましくは30%以上、さらに好ましくは50%以上で
ある。
【0105】
<材料>
次に、本発明の一態様に係わる発光素子の構成要素の詳細について、以下説明を行う。
【0106】
≪発光層≫
発光層130に用いることができる材料について、それぞれ以下に説明する。
【0107】
化合物131および化合物132としては、互いに励起錯体を形成する組み合わせであ
れば、特に限定はないが、一方が電子を輸送する機能を有し、他方が正孔を輸送する機能
を有すると好ましい。
【0108】
化合物132が正孔を輸送する機能を有する場合、化合物132はπ電子過剰型複素芳
香族骨格または芳香族アミン骨格の少なくとも一を有すると好ましい。
【0109】
化合物132が有するπ電子過剰型複素芳香族骨格としては、フラン骨格、チオフェン
骨格、及びピロール骨格は安定で信頼性が良好なため、当該骨格の中から選ばれるいずれ
か一つまたは複数を有することが好ましい。なお、フラン骨格としてはジベンゾフラン骨
格が、チオフェン骨格としてはジベンゾチオフェン骨格が、それぞれ好ましい。また、ピ
ロール骨格としては、インドール骨格、カルバゾール骨格、及び3-(9-フェニル-9
H-カルバゾール-3-イル)-9H-カルバゾール骨格が好ましい。なお、これらの骨
格は置換基を有していても良い。
【0110】
また、化合物132が有する芳香族アミン骨格としては、NH結合を有さないいわゆる
3級アミンが好ましく、特にトリアリールアミン骨格が好ましい。トリアリールアミン骨
格のアリール基としては、環を形成する炭素数が6乃至13の置換又は無置換のアリール
基が好ましく、例えば、フェニル基、ナフチル基、フルオレニル基等が挙げられる。
【0111】
π電子過剰型複素芳香族骨格および芳香族アミン骨格を有する構造は、正孔輸送性に優
れ、安定で信頼性が良好なため、特に好ましく、例えば、カルバゾール骨格およびアリー
ルアミン骨格を有する構造が挙げられる。
【0112】
上記のπ電子過剰型複素芳香族骨格および芳香族アミン骨格としては、例えば、下記一
般式(101)乃至(117)で表される骨格が挙げられる。なお、一般式(115)乃
至(117)中のXは、酸素原子または硫黄原子を表す。
【0113】
【化1】
【0114】
または、化合物132が電子を輸送する機能を有する場合、化合物132はπ電子不足
型複素芳香族骨格を有すると好ましい。π電子不足型複素芳香族骨格としては、ピリジン
骨格、ジアジン骨格(ピリミジン骨格、ピラジン骨格、ピリダジン骨格)、及びトリアジ
ン骨格が好ましく、中でもジアジン骨格またはトリアジン骨格は安定で信頼性が良好なた
め好ましい。
【0115】
上記のπ電子不足型複素芳香族骨格としては、例えば、下記一般式(201)乃至(2
18)で表される骨格が挙げられる。なお、一般式(209)乃至(211)中のXは、
酸素原子または硫黄原子を表す。
【0116】
【化2】
【0117】
また、正孔輸送性を有する骨格(具体的にはπ電子過剰型複素芳香族骨格および芳香族
アミン骨格の少なくとも一方)と、電子輸送性を有する骨格(具体的にはπ電子不足型複
素芳香族骨格)とが、直接またはアリーレン基を介して結合した化合物を用いてもよい。
なお、当該アリーレン基としては、例えば、フェニレン基、ビフェニルジイル基、ナフタ
レンジイル基、フルオレンジイル基等が挙げられる。
【0118】
上記の正孔輸送性を有する骨格と、電子輸送性を有する骨格とを結合する結合基として
は、例えば、下記一般式(301)乃至(315)で表される基が挙げられる。
【0119】
【化3】
【0120】
上述した芳香族アミン骨格(具体的には例えばトリアリールアミン骨格)、π電子過剰
型複素芳香族骨格(具体的には例えばフラン骨格、チオフェン骨格、ピロール骨格を有す
る環)、π電子不足型複素芳香族骨格(具体的には例えばジアジン骨格またはトリアジン
骨格を有する環)、あるいは上記の一般式(101)乃至(117)、一般式(201)
乃至(218)、及び一般式(301)乃至(315)は、置換基を有していてもよい。
当該置換基としては、炭素数1乃至炭素数6のアルキル基、炭素数3乃至炭素数6のシク
ロアルキル基、または炭素数6乃至炭素数12の置換もしくは無置換のアリール基も置換
基として選択することができる。炭素数1乃至炭素数6のアルキル基としては具体的には
、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基
、tert-ブチル基、n-ヘキシル基などを挙げることができる。また、炭素数3乃至
炭素数6のシクロアルキル基、としては具体的には、例えば、シクロプロピル基、シクロ
ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などを挙げることができる。また、炭素
数6乃至炭素数12のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニ
ル基などを具体例として挙げることができる。また、上記置換基は互いに結合して環を形
成してもよい。このような例としては、例えば、フルオレン基における9位の炭素が置換
基としてフェニル基を二つ有する場合、当該フェニル基同士が結合することによって、ス
ピロフルオレン骨格を形成するような場合が挙げられる。なお、無置換の場合、合成の容
易さや原料の価格の面で有利である。
【0121】
また、Arは、単結合または炭素数6乃至炭素数13のアリーレン基を表し、該アリー
レン基は置換基を有していてもよく、該置換基は互いに結合して環を形成してもよい。こ
のような例としては、例えば、フルオレニル基の9位の炭素が置換基としてフェニル基を
二つ有し、当該フェニル基同士が結合することによって、スピロフルオレン骨格を形成す
るような場合が挙げられる。炭素数6乃至炭素数13のアリーレン基としては、例えば、
フェニレン基、ナフタレンジイル基、ビフェニルジイル基、フルオレンジイル基などを具
体例として挙げることができる。なお、該アリーレン基が置換基を有する場合、当該置換
基としては、炭素数1乃至炭素数6のアルキル基、炭素数3乃至炭素数6のシクロアルキ
ル基、または炭素数6乃至炭素数12のアリール基も置換基として選択することができる
。炭素数1乃至炭素数6のアルキル基としては具体的には、例えば、メチル基、エチル基
、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ヘ
キシル基などを挙げることができる。また、炭素数3乃至炭素数6のシクロアルキル基と
しては具体的には、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シ
クロヘキシル基などを挙げることができる。また、炭素数6乃至炭素数12のアリール基
としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基などを具体例として挙げるこ
とができる。
【0122】
また、Arで表されるアリーレン基は、例えば、下記構造式(Ar-1)乃至(Ar-
18)で表される基を適用することができる。なお、Arとして用いることのできる基は
これらに限られない。
【0123】
【化4】
【0124】
また、R及びRは、それぞれ独立に、水素、炭素数1乃至炭素数6のアルキル基、
炭素数3乃至炭素数6のシクロアルキル基、または炭素数6乃至炭素数13の置換もしく
は無置換のアリール基のいずれかを表す。炭素数1乃至炭素数6のアルキル基としては具
体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソ
ブチル基、tert-ブチル基、n-ヘキシル基などを挙げることができる。また、炭素
数3乃至炭素数6のシクロアルキル基、としては具体的には、例えば、シクロプロピル基
、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などを挙げることができる。ま
た、炭素数6乃至炭素数13のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、
ビフェニル基、フルオレニル基などを具体例として挙げることができる。さらに、上述し
たアリール基やフェニル基は置換基を有していてもよく、該置換基は互いに結合して環を
形成してもよい。当該置換基としては、炭素数1乃至炭素数6のアルキル基、炭素数3乃
至炭素数6のシクロアルキル基、または炭素数6乃至炭素数12のアリール基も置換基と
して選択することができる。炭素数1乃至炭素数6のアルキル基としては具体的には、例
えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t
ert-ブチル基、n-ヘキシル基などを挙げることができる。また、炭素数3乃至炭素
数6のシクロアルキル基としては具体的には、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル
基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などを挙げることができる。また、炭素数6乃
至炭素数12のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基な
どを具体例として挙げることができる。
【0125】
また、R及びRで表されるアルキル基またはアリール基は、例えば、下記構造式(
R-1)乃至(R-29)で表される基を適用することができる。なお、アルキル基また
はアリール基として用いることのできる基はこれらに限られない。
【0126】
【化5】
【0127】
また、一般式(101)乃至(117)、一般式(201)乃至(218)、一般式(
301)乃至(315)、及びAr、R及びRが有することができる置換基は、例え
ば、上記構造式(R-1)乃至(R-24)で表されるアルキル基またはアリール基を適
用することができる。なお、アルキル基またはアリール基として用いることのできる基は
これらに限られない。
【0128】
化合物132としては、例えば以下の正孔輸送性材料および電子輸送性材料を用いるこ
とができる。
【0129】
正孔輸送性材料としては、電子よりも正孔の輸送性の高い材料を用いることができ、1
×10-6cm/Vs以上の正孔移動度を有する材料であることが好ましい。具体的に
は、芳香族アミン、カルバゾール誘導体などを用いることができる。また、該正孔輸送性
材料は高分子化合物であっても良い。
【0130】
これら正孔輸送性の高い材料として、例えば、芳香族アミン化合物としては、N,N’
-ジ(p-トリル)-N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン(略称:DTDP
PA)、4,4’-ビス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ
]ビフェニル(略称:DPAB)、N,N’-ビス{4-[ビス(3-メチルフェニル)
アミノ]フェニル}-N,N’-ジフェニル-(1,1’-ビフェニル)-4,4’-ジ
アミン(略称:DNTPD)、1,3,5-トリス[N-(4-ジフェニルアミノフェニ
ル)-N-フェニルアミノ]ベンゼン(略称:DPA3B)等を挙げることができる。
【0131】
また、カルバゾール誘導体としては、具体的には、3-[N-(4-ジフェニルアミノ
フェニル)-N-フェニルアミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzDPA1
)、3,6-ビス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]-9
-フェニルカルバゾール(略称:PCzDPA2)、3,6-ビス[N-(4-ジフェニ
ルアミノフェニル)-N-(1-ナフチル)アミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称
:PCzTPN2)、3-[N-(9-フェニルカルバゾール-3-イル)-N-フェニ
ルアミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA1)、3,6-ビス[N-
(9-フェニルカルバゾール-3-イル)-N-フェニルアミノ]-9-フェニルカルバ
ゾール(略称:PCzPCA2)、3-[N-(1-ナフチル)-N-(9-フェニルカ
ルバゾール-3-イル)アミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzPCN1)
等を挙げることができる。
【0132】
また、カルバゾール誘導体としては、他に、4,4’-ジ(N-カルバゾリル)ビフェ
ニル(略称:CBP)、1,3,5-トリス[4-(N-カルバゾリル)フェニル]ベン
ゼン(略称:TCPB)、1,4-ビス[4-(N-カルバゾリル)フェニル]-2,3
,5,6-テトラフェニルベンゼン等を用いることができる。
【0133】
また、正孔輸送性の高い材料としては、例えば、4,4’-ビス[N-(1-ナフチル
)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPBまたはα-NPD)やN,N’-ビ
ス(3-メチルフェニル)-N,N’-ジフェニル-[1,1’-ビフェニル]-4,4
’-ジアミン(略称:TPD)、4,4’,4’’-トリス(カルバゾール-9-イル)
トリフェニルアミン(略称:TCTA)、4,4’,4’’-トリス[N-(1-ナフチ
ル)-N-フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:1-TNATA)、4,4’,
4’’-トリス(N,N-ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(略称:TDATA)
、4,4’,4’’-トリス[N-(3-メチルフェニル)-N-フェニルアミノ]トリ
フェニルアミン(略称:m-MTDATA)、4,4’-ビス[N-(スピロ-9,9’
-ビフルオレン-2-イル)-N―フェニルアミノ]ビフェニル(略称:BSPB)、4
-フェニル-4’-(9-フェニルフルオレン-9-イル)トリフェニルアミン(略称:
BPAFLP)、4-フェニル-3’-(9-フェニルフルオレン-9-イル)トリフェ
ニルアミン(略称:mBPAFLP)、N-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2
-イル)-N-{9,9-ジメチル-2-[N’-フェニル-N’-(9,9-ジメチル
-9H-フルオレン-2-イル)アミノ]-9H-フルオレン-7-イル}フェニルアミ
ン(略称:DFLADFL)、N-(9,9-ジメチル-2-ジフェニルアミノ-9H-
フルオレン-7-イル)ジフェニルアミン(略称:DPNF)、2-[N-(4-ジフェ
ニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]スピロ-9,9’-ビフルオレン(略称:
DPASF)、4-フェニル-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)
トリフェニルアミン(略称:PCBA1BP)、4,4’-ジフェニル-4’’-(9-
フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBBi1B
P)、4-(1-ナフチル)-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)
トリフェニルアミン(略称:PCBANB)、4,4’-ジ(1-ナフチル)-4’’-
(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBN
BB)、4-フェニルジフェニル-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)ア
ミン(略称:PCA1BP)、N,N’-ビス(9-フェニルカルバゾール-3-イル)
-N,N’-ジフェニルベンゼン-1,3-ジアミン(略称:PCA2B)、N,N’,
N’’-トリフェニル-N,N’,N’’-トリス(9-フェニルカルバゾール-3-イ
ル)ベンゼン-1,3,5-トリアミン(略称:PCA3B)、N-(4-ビフェニル)
-N-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-9-フェニル-9H-カル
バゾール-3-アミン(略称:PCBiF)、N-(1,1’-ビフェニル-4-イル)
-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-9,9-ジ
メチル-9H-フルオレン-2-アミン(略称:PCBBiF)、9,9-ジメチル-N
-フェニル-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]フ
ルオレン-2-アミン(略称:PCBAF)、N-フェニル-N-[4-(9-フェニル
-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]スピロ-9,9’-ビフルオレン-2-ア
ミン(略称:PCBASF)、2-[N-(9-フェニルカルバゾール-3-イル)-N
-フェニルアミノ]スピロ-9,9’-ビフルオレン(略称:PCASF)、2,7-ビ
ス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]スピロ-9,9’-
ビフルオレン(略称:DPA2SF)、N-[4-(9H-カルバゾール-9-イル)フ
ェニル]-N-(4-フェニル)フェニルアニリン(略称:YGA1BP)、N,N’-
ビス[4-(カルバゾール-9-イル)フェニル]-N,N’-ジフェニル-9,9-ジ
メチルフルオレン-2,7-ジアミン(略称:YGA2F)などの芳香族アミン化合物等
を用いることができる。また、3-[4-(1-ナフチル)-フェニル]-9-フェニル
-9H-カルバゾール(略称:PCPN)、3-[4-(9-フェナントリル)-フェニ
ル]-9-フェニル-9H-カルバゾール(略称:PCPPn)、3,3’-ビス(9-
フェニル-9H-カルバゾール)(略称:PCCP)、1,3-ビス(N-カルバゾリル
)ベンゼン(略称:mCP)、3,6-ビス(3,5-ジフェニルフェニル)-9-フェ
ニルカルバゾール(略称:CzTP)、4-{3-[3-(9-フェニル-9H-フルオ
レン-9-イル)フェニル]フェニル}ジベンゾフラン(略称:mmDBFFLBi-I
I)、4,4’,4’’-(ベンゼン-1,3,5-トリイル)トリ(ジベンゾフラン)
(略称:DBF3P-II)、1,3,5-トリ(ジベンゾチオフェン-4-イル)ベン
ゼン(略称:DBT3P-II)、2,8-ジフェニル-4-[4-(9-フェニル-9
H-フルオレン-9-イル)フェニル]ジベンゾチオフェン(略称:DBTFLP-II
I)、4-[4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]-6-フェ
ニルジベンゾチオフェン(略称:DBTFLP-IV)、4-[3-(トリフェニレン-
2-イル)フェニル]ジベンゾチオフェン(略称:mDBTPTp-II)等のアミン化
合物、カルバゾール化合物、チオフェン化合物、フラン化合物、フルオレン化合物、トリ
フェニレン化合物、フェナントレン化合物等を用いることができる。ここに述べた物質は
、主に1×10-6cm/Vs以上の正孔移動度を有する物質である。但し、電子より
も正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外の物質を用いてもよい。
【0134】
電子輸送性材料としては、正孔よりも電子の輸送性の高い材料を用いることができ、1
×10-6cm/Vs以上の電子移動度を有する材料であることが好ましい。電子を受
け取りやすい材料(電子輸送性を有する材料)としては、亜鉛やアルミニウムを有する金
属錯体や、含窒素複素芳香族化合物のようなπ電子不足型複素芳香族化合物などを用いる
ことができる。金属錯体としては、キノリン配位子、ベンゾキノリン配位子、オキサゾー
ル配位子、またはチアゾール配位子を有する金属錯体が挙げられる。また、π電子不足型
複素芳香族化合物としては、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、フェナント
ロリン誘導体、ピリジン誘導体、ビピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、トリアジン誘導
体などが挙げられる。
【0135】
例えば、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(III)(略称:Alq)、トリ
ス(4-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)(略称:Almq)、ビ
ス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(II)(略称:BeBq
)、ビス(2-メチル-8-キノリノラト)(4-フェニルフェノラト)アルミニウム(
III)(略称:BAlq)、ビス(8-キノリノラト)亜鉛(II)(略称:Znq)
など、キノリン骨格またはベンゾキノリン骨格を有する金属錯体等である。また、この他
ビス[2-(2-ベンゾオキサゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnPBO)
、ビス[2-(2-ベンゾチアゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnBTZ)
などのオキサゾール系、チアゾール系配位子を有する金属錯体なども用いることができる
。さらに、金属錯体以外にも、2-(4-ビフェニリル)-5-(4-tert-ブチル
フェニル)-1,3,4-オキサジアゾール(略称:PBD)や、1,3-ビス[5-(
p-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]ベンゼン
(略称:OXD-7)、9-[4-(5-フェニル-1,3,4-オキサジアゾール-2
-イル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:CO11)、3-(4-ビフェニリル
)-4-フェニル-5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,2,4-トリアゾール
(略称:TAZ)、2,2’,2’’-(1,3,5-ベンゼントリイル)-トリス(1
-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール)(略称:TPBI)、2-[3-(ジベンゾチ
オフェン-4-イル)フェニル]-1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール(略称:m
DBTBIm-II)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン
(略称:BCP)、2,9-ビス(ナフタレン-2-イル)-4,7-ジフェニル-1,
10-フェナントロリン(略称:NBPhen)などの複素環化合物や、2-[3-(ジ
ベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2m
DBTPDBq-II)、2-[3’-(ジベンゾチオフェン-4-イル)ビフェニル-
3-イル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mDBTBPDBq-II)、2
-[3’-(9H-カルバゾール-9-イル)ビフェニル-3-イル]ジベンゾ[f,h
]キノキサリン(略称:2mCzBPDBq)、2-[4-(3,6-ジフェニル-9H
-カルバゾール-9-イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2Cz
PDBq-III)、7-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]ジベンゾ
[f,h]キノキサリン(略称:7mDBTPDBq-II)、及び、6-[3-(ジベ
ンゾチオフェン-4-イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:6mD
BTPDBq-II)、4,6-ビス[3-(フェナントレン-9-イル)フェニル]ピ
リミジン(略称:4,6mPnP2Pm)、4,6-ビス[3-(4-ジベンゾチエニル
)フェニル]ピリミジン(略称:4,6mDBTP2Pm-II)、4,6-ビス[3-
(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]ピリミジン(略称:4,6mCzP2Pm
)などのジアジン骨格を有する複素環化合物や、2-{4-[3-(N-フェニル-9H
-カルバゾール-3-イル)-9H-カルバゾール-9-イル]フェニル}-4,6-ジ
フェニル-1,3,5-トリアジン(略称:PCCzPTzn)などのトリアジン骨格を
有する複素環化合物や、3,5-ビス[3-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル
]ピリジン(略称:35DCzPPy)、1,3,5-トリ[3-(3-ピリジル)フェ
ニル]ベンゼン(略称:TmPyPB)などのピリジン骨格を有する複素環化合物、4,
4’-ビス(5-メチルベンゾオキサゾール-2-イル)スチルベン(略称:BzOs)
などの複素芳香族化合物も用いることができる。また、ポリ(2,5-ピリジンジイル)
(略称:PPy)、ポリ[(9,9-ジヘキシルフルオレン-2,7-ジイル)-co-
(ピリジン-3,5-ジイル)](略称:PF-Py)、ポリ[(9,9-ジオクチルフ
ルオレン-2,7-ジイル)-co-(2,2’-ビピリジン-6,6’-ジイル)](
略称:PF-BPy)のような高分子化合物を用いることもできる。ここに述べた物質は
、主に1×10-6cm/Vs以上の電子移動度を有する物質である。なお、正孔より
も電子の輸送性の高い物質であれば、上記以外の物質を用いても構わない。
【0136】
化合物131としては、三重項励起エネルギーを発光に変換することができる機能を有
すると好ましい。化合物131が重原子を有する場合、スピン軌道相互作用(電子のスピ
ン角運動量と軌道角運動量との相互作用)により、一重項状態と三重項状態との項間交差
が促進されるため、化合物131において一重項基底状態と三重項励起状態との間の遷移
が許容となる。すなわち、化合物131の一重項基底状態と三重項励起状態との間の遷移
に係わる発光の効率および吸収の確率を高めることができる。そのためには、化合物13
1がスピン軌道相互作用の大きい金属元素を有すると好ましく、具体的には遷移金属元素
が好ましく、特に白金族元素(ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(P
d)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、または白金(Pt))を有することが
好ましく、中でもイリジウムを有することで、一重項基底状態と三重項励起状態との間の
直接遷移に係わる遷移確率を高めることができ、好ましい。
【0137】
また、化合物131(燐光性化合物)としては、イリジウム、ロジウム、または白金系
の有機金属錯体、あるいは金属錯体が挙げられる。また、ポルフィリン配位子を有する白
金錯体や有機イリジウム錯体が挙げられ、中でも例えば、イリジウム系オルトメタル錯体
等の有機イリジウム錯体が好ましい。オルトメタル化する配位子としては4H-トリアゾ
ール配位子、1H-トリアゾール配位子、イミダゾール配位子、ピリジン配位子、ピリミ
ジン配位子、ピラジン配位子、あるいはイソキノリン配位子などが挙げられる。この場合
、化合物131(燐光性化合物)は三重項MLCT(Metal to Ligand
Charge Transfer)遷移の吸収帯を有する。
【0138】
青色または緑色に発光ピークを有する物質としては、例えば、トリス{2-[5-(2
-メチルフェニル)-4-(2,6-ジメチルフェニル)-4H-1,2,4-トリアゾ
ール-3-イル-κN]フェニル-κC}イリジウム(III)(略称:Ir(mpp
tz-dmp))、トリス(5-メチル-3,4-ジフェニル-4H-1,2,4-ト
リアゾラト)イリジウム(III)(略称:Ir(Mptz))、トリス[4-(3-
ビフェニル)-5-イソプロピル-3-フェニル-4H-1,2,4-トリアゾラト]イ
リジウム(III)(略称:Ir(iPrptz-3b))、トリス[3-(5-ビフ
ェニル)-5-イソプロピル-4-フェニル-4H-1,2,4-トリアゾラト]イリジ
ウム(III)(略称:Ir(iPr5btz))、のような4H-トリアゾール骨格
を有する有機金属イリジウム錯体や、トリス[3-メチル-1-(2-メチルフェニル)
-5-フェニル-1H-1,2,4-トリアゾラト]イリジウム(III)(略称:Ir
(Mptz1-mp))、トリス(1-メチル-5-フェニル-3-プロピル-1H-
1,2,4-トリアゾラト)イリジウム(III)(略称:Ir(Prptz1-Me)
)のような1H-トリアゾール骨格を有する有機金属イリジウム錯体や、fac-トリ
ス[1-(2,6-ジイソプロピルフェニル)-2-フェニル-1H-イミダゾール]イ
リジウム(III)(略称:Ir(iPrpmi))、トリス[3-(2,6-ジメチ
ルフェニル)-7-メチルイミダゾ[1,2-f]フェナントリジナト]イリジウム(I
II)(略称:Ir(dmpimpt-Me))のようなイミダゾール骨格を有する有
機金属イリジウム錯体や、ビス[2-(4’,6’-ジフルオロフェニル)ピリジナト-
N,C2’]イリジウム(III)テトラキス(1-ピラゾリル)ボラート(略称:FI
r6)、ビス[2-(4’,6’-ジフルオロフェニル)ピリジナト-N,C2’]イリ
ジウム(III)ピコリナート(略称:FIrpic)、ビス{2-[3’,5’-ビス
(トリフルオロメチル)フェニル]ピリジナト-N,C2’}イリジウム(III)ピコ
リナート(略称:Ir(CFppy)(pic))、ビス[2-(4’,6’-ジフ
ルオロフェニル)ピリジナト-N,C2’]イリジウム(III)アセチルアセトナート
(略称:FIr(acac))のような電子吸引基を有するフェニルピリジン誘導体を配
位子とする有機金属イリジウム錯体が挙げられる。上述した中でも、4H-トリアゾール
骨格、1H-トリアゾール骨格およびイミダゾール骨格のような含窒素五員複素環骨格を
有する有機金属イリジウム錯体は、高い三重項励起エネルギーを有し、信頼性や発光効率
にも優れるため、特に好ましい。
【0139】
また、緑色または黄色に発光ピークを有する物質としては、例えば、トリス(4-メチ
ル-6-フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(mppm))、
トリス(4-t-ブチル-6-フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:I
r(tBuppm))、(アセチルアセトナト)ビス(6-メチル-4-フェニルピリ
ミジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(mppm)(acac))、(アセチ
ルアセトナト)ビス(6-tert-ブチル-4-フェニルピリミジナト)イリジウム(
III)(略称:Ir(tBuppm)(acac))、(アセチルアセトナト)ビス
[4-(2-ノルボルニル)-6-フェニルピリミジナト]イリジウム(III)(en
do-,exo-混合物)(略称:Ir(nbppm)(acac))、(アセチルア
セトナト)ビス[5-メチル-6-(2-メチルフェニル)-4-フェニルピリミジナト
]イリジウム(III)(略称:Ir(mpmppm)(acac))、(アセチルア
セトナト)ビス{4,6-ジメチル-2-[6-(2,6-ジメチルフェニル)-4-ピ
リミジニル-κN]フェニル-κC}イリジウム(III)(略称:Ir(dmppm
-dmp)(acac))、(アセチルアセトナト)ビス(4,6-ジフェニルピリミ
ジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(dppm)(acac))のようなピリ
ミジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体や、(アセチルアセトナト)ビス(3,5-
ジメチル-2-フェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(mppr-M
e)(acac))、(アセチルアセトナト)ビス(5-イソプロピル-3-メチル-
2-フェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(mppr-iPr)
acac))のようなピラジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体や、トリス(2-フ
ェニルピリジナト-N,C2’)イリジウム(III)(略称:Ir(ppy))、ビ
ス(2-フェニルピリジナト-N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート
(略称:Ir(ppy)(acac))、ビス(ベンゾ[h]キノリナト)イリジウム
(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(bzq)(acac))、トリス(ベ
ンゾ[h]キノリナト)イリジウム(III)(略称:Ir(bzq))、トリス(2
-フェニルキノリナト-N,C2’)イリジウム(III)(略称:Ir(pq))、
ビス(2-フェニルキノリナト-N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナー
ト(略称:Ir(pq)(acac))のようなピリジン骨格を有する有機金属イリジ
ウム錯体や、ビス(2,4-ジフェニル-1,3-オキサゾラト-N,C2’)イリジウ
ム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(dpo)(acac))、ビス{2
-[4’-(パーフルオロフェニル)フェニル]ピリジナト-N,C2’}イリジウム(
III)アセチルアセトナート(略称:Ir(p-PF-ph)(acac))、ビス
(2-フェニルベンゾチアゾラト-N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナ
ート(略称:Ir(bt)(acac))など有機金属イリジウム錯体の他、トリス(
アセチルアセトナト)(モノフェナントロリン)テルビウム(III)(略称:Tb(a
cac)(Phen))のような希土類金属錯体が挙げられる。上述した中でも、ピリ
ミジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体は、信頼性や発光効率にも際だって優れるた
め、特に好ましい。
【0140】
また、黄色または赤色に発光ピークを有する物質としては、例えば、(ジイソブチリル
メタナト)ビス[4,6-ビス(3-メチルフェニル)ピリミジナト]イリジウム(II
I)(略称:Ir(5mdppm)(dibm))、ビス[4,6-ビス(3-メチル
フェニル)ピリミジナト](ジピバロイルメタナト)イリジウム(III)(略称:Ir
(5mdppm)(dpm))、ビス[4,6-ジ(ナフタレン-1-イル)ピリミジ
ナト](ジピバロイルメタナト)イリジウム(III)(略称:Ir(d1npm)
dpm))のようなピリミジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体や、(アセチルアセ
トナト)ビス(2,3,5-トリフェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:I
r(tppr)(acac))、ビス(2,3,5-トリフェニルピラジナト)(ジピ
バロイルメタナト)イリジウム(III)(略称:Ir(tppr)(dpm))、(
アセチルアセトナト)ビス[2,3-ビス(4-フルオロフェニル)キノキサリナト]イ
リジウム(III)(略称:Ir(Fdpq)(acac))のようなピラジン骨格を
有する有機金属イリジウム錯体や、トリス(1-フェニルイソキノリナト-N,C2’
イリジウム(III)(略称:Ir(piq))、ビス(1-フェニルイソキノリナト
-N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(piq)
acac))のようなピリジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体の他、2,3,7,
8,12,13,17,18-オクタエチル-21H,23H-ポルフィリン白金(II
)(略称:PtOEP)のような白金錯体や、トリス(1,3-ジフェニル-1,3-プ
ロパンジオナト)(モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:Eu(DB
M)(Phen))、トリス[1-(2-テノイル)-3,3,3-トリフルオロアセ
トナト](モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:Eu(TTA)
Phen))のような希土類金属錯体が挙げられる。上述した中でも、ピリミジン骨格を
有する有機金属イリジウム錯体は、信頼性や発光効率にも際だって優れるため、特に好ま
しい。また、ピラジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体は、色度の良い赤色発光が得
られる。
【0141】
また、発光層130において化合物133としては、蛍光性化合物が好ましい。蛍光性
化合物としては、特に限定はないが、アントラセン誘導体、テトラセン誘導体、クリセン
誘導体、フェナントレン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、スチルベン誘導体、ア
クリドン誘導体、クマリン誘導体、フェノキサジン誘導体、フェノチアジン誘導体などが
好ましい。
【0142】
具体的には、5,6-ビス[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-2
,2’-ビピリジン(略称:PAP2BPy)、5,6-ビス[4’-(10-フェニル
-9-アントリル)ビフェニル-4-イル]-2,2’-ビピリジン(略称:PAPP2
BPy)、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス[4-(9-フェニル-9H-フルオ
レン-9-イル)フェニル]ピレン-1,6-ジアミン(略称:1,6FLPAPrn)
、N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-N,N’-ビス[3-(9-フェニル-9H
-フルオレン-9-イル)フェニル]ピレン-1,6-ジアミン(略称:1,6mMem
FLPAPrn)、N,N’-ビス[4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル
)フェニル]-N,N’-ビス(4-tert-ブチルフェニル)ピレン-1,6-ジア
ミン(略称:1,6tBu-FLPAPrn)、N,N’-ビス[4-(9-フェニル-
9H-フルオレン-9-イル)フェニル]-N,N’-ジフェニル-3,8-ジシクロヘ
キシルピレン-1,6-ジアミン(略称:ch-1,6FLPAPrn)、N,N’-ビ
ス[4-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]-N,N’-ジフェニルスチルベ
ン-4,4’-ジアミン(略称:YGA2S)、4-(9H-カルバゾール-9-イル)
-4’-(10-フェニル-9-アントリル)トリフェニルアミン(略称:YGAPA)
、4-(9H-カルバゾール-9-イル)-4’-(9,10-ジフェニル-2-アント
リル)トリフェニルアミン(略称:2YGAPPA)、N,9-ジフェニル-N-[4-
(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール-3-アミン(略
称:PCAPA)、ペリレン、2,5,8,11-テトラ(tert-ブチル)ペリレン
(略称:TBP)、4-(10-フェニル-9-アントリル)-4’-(9-フェニル-
9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBAPA)、N,N’
’-(2-tert-ブチルアントラセン-9,10-ジイルジ-4,1-フェニレン)
ビス[N,N’,N’-トリフェニル-1,4-フェニレンジアミン](略称:DPAB
PA)、N,9-ジフェニル-N-[4-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)フ
ェニル]-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:2PCAPPA)、N-[4-(9
,10-ジフェニル-2-アントリル)フェニル]-N,N’,N’-トリフェニル-1
,4-フェニレンジアミン(略称:2DPAPPA)、N,N,N’,N’,N’’,N
’’,N’’’,N’’’-オクタフェニルジベンゾ[g,p]クリセン-2,7,10
,15-テトラアミン(略称:DBC1)、クマリン30、N-(9,10-ジフェニル
-2-アントリル)-N,9-ジフェニル-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:2
PCAPA)、N-[9,10-ビス(1,1’-ビフェニル-2-イル)-2-アント
リル]-N,9-ジフェニル-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:2PCABPh
A)、N-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)-N,N’,N’-トリフェニル
-1,4-フェニレンジアミン(略称:2DPAPA)、N-[9,10-ビス(1,1
’-ビフェニル-2-イル)-2-アントリル]-N,N’,N’-トリフェニル-1,
4-フェニレンジアミン(略称:2DPABPhA)、9,10-ビス(1,1’-ビフ
ェニル-2-イル)-N-[4-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]-N-フ
ェニルアントラセン-2-アミン(略称:2YGABPhA)、N,N,9-トリフェニ
ルアントラセン-9-アミン(略称:DPhAPhA)、クマリン6、クマリン545T
、N,N’-ジフェニルキナクリドン(略称:DPQd)、ルブレン、2,8-ジ-te
rt-ブチル-5,11-ビス(4-tert-ブチルフェニル)-6,12-ジフェニ
ルテトラセン(略称:TBRb)、ナイルレッド、5,12-ビス(1,1’-ビフェニ
ル-4-イル)-6,11-ジフェニルテトラセン(略称:BPT)、2-(2-{2-
[4-(ジメチルアミノ)フェニル]エテニル}-6-メチル-4H-ピラン-4-イリ
デン)プロパンジニトリル(略称:DCM1)、2-{2-メチル-6-[2-(2,3
,6,7-テトラヒドロ-1H,5H-ベンゾ[ij]キノリジン-9-イル)エテニル
]-4H-ピラン-4-イリデン}プロパンジニトリル(略称:DCM2)、N,N,N
’,N’-テトラキス(4-メチルフェニル)テトラセン-5,11-ジアミン(略称:
p-mPhTD)、7,14-ジフェニル-N,N,N’,N’-テトラキス(4-メチ
ルフェニル)アセナフト[1,2-a]フルオランテン-3,10-ジアミン(略称:p
-mPhAFD)、2-{2-イソプロピル-6-[2-(1,1,7,7-テトラメチ
ル-2,3,6,7-テトラヒドロ-1H,5H-ベンゾ[ij]キノリジン-9-イル
)エテニル]-4H-ピラン-4-イリデン}プロパンジニトリル(略称:DCJTI)
、2-{2-tert-ブチル-6-[2-(1,1,7,7-テトラメチル-2,3,
6,7-テトラヒドロ-1H,5H-ベンゾ[ij]キノリジン-9-イル)エテニル]
-4H-ピラン-4-イリデン}プロパンジニトリル(略称:DCJTB)、2-(2,
6-ビス{2-[4-(ジメチルアミノ)フェニル]エテニル}-4H-ピラン-4-イ
リデン)プロパンジニトリル(略称:BisDCM)、2-{2,6-ビス[2-(8-
メトキシ-1,1,7,7-テトラメチル-2,3,6,7-テトラヒドロ-1H,5H
-ベンゾ[ij]キノリジン-9-イル)エテニル]-4H-ピラン-4-イリデン}プ
ロパンジニトリル(略称:BisDCJTM)、5,10,15,20-テトラフェニル
ビスベンゾ[5,6]インデノ[1,2,3-cd:1’,2’,3’-lm]ペリレン
、などが挙げられる。
【0143】
また、化合物131と化合物132とで形成される励起錯体の発光ピークが、発光材料
である化合物133の最も長波長側(低エネルギー側)の吸収帯と重なるように、化合物
131、化合物132、及び化合物133を選択することが好ましい。これにより、発光
効率が飛躍的に向上した発光素子とすることができる。
【0144】
なお、発光層130は2層以上の複数層でもって構成することもできる。例えば、第1
の発光層と第2の発光層を正孔輸送層側から順に積層して発光層130とする場合、第1
の発光層のホスト材料として正孔輸送性を有する物質を用い、第2の発光層のホスト材料
として電子輸送性を有する物質を用いる構成などがある。
【0145】
また、発光層130において、化合物131、化合物132、及び化合物133以外の
材料(化合物134)を有していても良い。その場合、化合物131及び化合物132が
効率よく励起錯体を形成するためには、化合物131及び化合物132のうち一方のHO
MO準位が発光層130中の材料のうち最も高いHOMO準位を有し、他方のLUMO準
位が発光層130中の材料のうち最も低いLUMO準位を有すると好ましい。すなわち、
化合物131及び化合物132のうち一方のHOMO準位が他方のHOMO準位および化
合物134のHOMO準位より高く、他方のLUMO準位が一方のLUMO準位および化
合物134のLUMO準位より低いことが好ましい。そのようなエネルギー準位の相関と
することで、化合物132と化合物134とで励起錯体を形成する反応を抑制することが
できる。
【0146】
例えば、化合物131が正孔輸送性を有し、化合物132が電子輸送性を有する場合、
化合物131のHOMO準位が化合物132のHOMO準位および化合物134のHOM
O準位より高いことが好ましく、化合物132のLUMO準位が化合物131のLUMO
準位および化合物134のLUMO準位より低いことが好ましい。この場合、化合物13
4のLUMO準位は、化合物131のLUMO準位より高くても低くてもよい。また、化
合物134のHOMO準位は、化合物132のHOMO準位より高くても低くてもよい。
【0147】
なお、化合物131が電子輸送性を有し、化合物132が正孔輸送性を有する構成であ
ってもよい。その場合、化合物132のHOMO準位が化合物131のHOMO準位およ
び化合物134のHOMO準位より高いことが好ましく、化合物131のLUMO準位が
化合物132のLUMO準位および化合物134のLUMO準位より低いことが好ましい
。この場合、化合物134のLUMO準位は、化合物132のLUMO準位より高くても
低くてもよい。また、化合物134のHOMO準位は、化合物131のHOMO準位より
高くても低くてもよい。
【0148】
発光層130に用いることが可能な材料(化合物134)としては、特に限定はないが
、例えば、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(III)(略称:Alq)、トリ
ス(4-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)(略称:Almq)、ビ
ス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(II)(略称:BeBq
)、ビス(2-メチル-8-キノリノラト)(4-フェニルフェノラト)アルミニウム(
III)(略称:BAlq)、ビス(8-キノリノラト)亜鉛(II)(略称:Znq)
、ビス[2-(2-ベンゾオキサゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnPBO
)、ビス[2-(2-ベンゾチアゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnBTZ
)などの金属錯体、2-(4-ビフェニリル)-5-(4-tert-ブチルフェニル)
-1,3,4-オキサジアゾール(略称:PBD)、1,3-ビス[5-(p-tert
-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]ベンゼン(略称:OX
D-7)、3-(4-ビフェニリル)-4-フェニル-5-(4-tert-ブチルフェ
ニル)-1,2,4-トリアゾール(略称:TAZ)、2,2’,2’’-(1,3,5
-ベンゼントリイル)-トリス(1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール)(略称:T
PBI)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BC
P)、9-[4-(5-フェニル-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)フェニル
]-9H-カルバゾール(略称:CO11)などの複素環化合物、4,4’-ビス[N-
(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPBまたはα-NPD)
、N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-N,N’-ジフェニル-[1,1’-ビフェ
ニル]-4,4’-ジアミン(略称:TPD)、4,4’-ビス[N-(スピロ-9,9
’-ビフルオレン-2-イル)-N―フェニルアミノ]ビフェニル(略称:BSPB)な
どの芳香族アミン化合物が挙げられる。また、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導
体、ピレン誘導体、クリセン誘導体、ジベンゾ[g,p]クリセン誘導体等の縮合多環芳
香族化合物が挙げられ、具体的には、9,10-ジフェニルアントラセン(略称:DPA
nth)、N,N-ジフェニル-9-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニ
ル]-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:CzA1PA)、4-(10-フェニル
-9-アントリル)トリフェニルアミン(略称:DPhPA)、4-(9H-カルバゾー
ル-9-イル)-4’-(10-フェニル-9-アントリル)トリフェニルアミン(略称
:YGAPA)、N,9-ジフェニル-N-[4-(10-フェニル-9-アントリル)
フェニル]-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:PCAPA)、N,9-ジフェニ
ル-N-{4-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]フェニル}-9H
-カルバゾール-3-アミン(略称:PCAPBA)、N,9-ジフェニル-N-(9,
10-ジフェニル-2-アントリル)-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:2PC
APA)、6,12-ジメトキシ-5,11-ジフェニルクリセン、N,N,N’,N’
,N’’,N’’,N’’’,N’’’-オクタフェニルジベンゾ[g,p]クリセン-
2,7,10,15-テトラアミン(略称:DBC1)、9-[4-(10-フェニル-
9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:CzPA)、3,6-ジフェ
ニル-9-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール
(略称:DPCzPA)、9,10-ビス(3,5-ジフェニルフェニル)アントラセン
(略称:DPPA)、9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、2
-tert-ブチル-9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン(略称:t-BuDN
A)、9,9’-ビアントリル(略称:BANT)、9,9’-(スチルベン-3,3’
-ジイル)ジフェナントレン(略称:DPNS)、9,9’-(スチルベン-4,4’-
ジイル)ジフェナントレン(略称:DPNS2)、1,3,5-トリ(1-ピレニル)ベ
ンゼン(略称:TPB3)などを挙げることができる。また、これら及び公知の物質の中
から、上記化合物131及び化合物132のエネルギーギャップより大きなエネルギーギ
ャップを有する物質を、一種もしくは複数種選択して用いればよい。
【0149】
≪一対の電極≫
電極101及び電極102は、発光層130へ正孔と電子を注入する機能を有する。電
極101及び電極102は、金属、合金、導電性化合物、およびこれらの混合物や積層体
などを用いて形成することができる。金属としてはアルミニウム(Al)が典型例であり
、その他、銀(Ag)、タングステン、クロム、モリブデン、銅、チタンなどの遷移金属
、リチウム(Li)やセシウムなどのアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム(Mg)
などの第2族金属を用いることができる。遷移金属としてイッテルビウム(Yb)などの
希土類金属を用いても良い。合金としては、上記金属を含む合金を使用することができ、
例えばMgAg、AlLiなどが挙げられる。導電性化合物としては、例えば、インジウ
ム錫酸化物(Indium Tin Oxide、以下ITO)、珪素または酸化珪素を
含むインジウム錫酸化物(略称:ITSO)、インジウム亜鉛酸化物(Indium Z
inc Oxide)、タングステン及び亜鉛を含有したインジウム酸化物などの金属酸
化物が挙げられる。導電性化合物としてグラフェンなどの無機炭素系材料を用いても良い
。上述したように、これらの材料の複数を積層することによって電極101及び電極10
2の一方または双方を形成しても良い。
【0150】
また、発光層130から得られる発光は、電極101及び電極102の一方または双方
を通して取り出される。したがって、電極101及び電極102の少なくとも一つは可視
光を透過する機能を有する。光を透過する機能を有する導電性材料としては、可視光の透
過率が40%以上100%以下、好ましくは60%以上100%以下であり、かつその抵
抗率が1×10-2Ω・cm以下の導電性材料が挙げられる。また、光を取り出す方の電
極は、光を透過する機能と、光を反射する機能と、を有する導電性材料により形成されて
も良い。該導電性材料としては、可視光の反射率が20%以上80%以下、好ましくは4
0%以上70%以下であり、かつその抵抗率が1×10-2Ω・cm以下の導電性材料が
挙げられる。光を取り出す方の電極に金属や合金などの光透過性の低い材料を用いる場合
には、可視光を透過できる程度の厚さ(例えば、1nmから10nmの厚さ)で電極10
1及び電極102の一方または双方を形成すればよい。
【0151】
なお、本明細書等において、光を透過する機能を有する電極には、可視光を透過する機
能を有し、且つ導電性を有する材料を用いればよく、例えば上記のようなITOに代表さ
れる酸化物導電体層に加えて、酸化物半導体層、または有機物を含む有機導電体層を含む
。有機物を含む有機導電体層としては、例えば、有機化合物と電子供与体(ドナー)とを
混合してなる複合材料を含む層、有機化合物と電子受容体(アクセプター)とを混合して
なる複合材料を含む層等が挙げられる。また、透明導電層の抵抗率としては、好ましくは
1×10Ω・cm以下、さらに好ましくは1×10Ω・cm以下である。
【0152】
また、電極101及び電極102の成膜方法は、スパッタリング法、蒸着法、印刷法、
塗布法、MBE(Molecular Beam Epitaxy)法、CVD法、パル
スレーザ堆積法、ALD(Atomic Layer Deposition)法等を適
宜用いることができる。
【0153】
≪正孔注入層≫
正孔注入層111は、一対の電極の一方(電極101または電極102)からのホール
注入障壁を低減することでホール注入を促進する機能を有し、例えば遷移金属酸化物、フ
タロシアニン誘導体、あるいは芳香族アミンなどによって形成される。遷移金属酸化物と
しては、モリブデン酸化物やバナジウム酸化物、ルテニウム酸化物、タングステン酸化物
、マンガン酸化物などが挙げられる。フタロシアニン誘導体としては、フタロシアニンや
金属フタロシアニンなどが挙げられる。芳香族アミンとしてはベンジジン誘導体やフェニ
レンジアミン誘導体などが挙げられる。ポリチオフェンやポリアニリンなどの高分子化合
物を用いることもでき、例えば自己ドープされたポリチオフェンであるポリ(エチレンジ
オキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホン酸)などがその代表例である。
【0154】
正孔注入層111として、正孔輸送性材料と、これに対して電子受容性を示す材料の複
合材料を有する層を用いることもできる。あるいは、電子受容性を示す材料を含む層と正
孔輸送性材料を含む層の積層を用いても良い。これらの材料間では定常状態、あるいは電
界存在下において電荷の授受が可能である。電子受容性を示す材料としては、キノジメタ
ン誘導体やクロラニル誘導体、ヘキサアザトリフェニレン誘導体などの有機アクセプター
を挙げることができる。具体的には、7,7,8,8-テトラシアノ-2,3,5,6-
テトラフルオロキノジメタン(略称:F-TCNQ)、クロラニル、2,3,6,7,
10,11-ヘキサシアノ-1,4,5,8,9,12-ヘキサアザトリフェニレン(略
称:HAT-CN)等の電子吸引基(ハロゲン基やシアノ基)を有する化合物である。ま
た、遷移金属酸化物、例えば第4族から第8族金属の酸化物を用いることができる。具体
的には、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化クロム、酸化モリブデン、酸
化タングステン、酸化マンガン、酸化レニウムなどである。中でも酸化モリブデンは大気
中でも安定であり、吸湿性が低く、扱いやすいため好ましい。
【0155】
正孔輸送性材料としては、電子よりも正孔の輸送性の高い材料を用いることができ、1
×10-6cm/Vs以上の正孔移動度を有する材料であることが好ましい。具体的に
は、発光層130に用いることができる正孔輸送性材料として挙げた芳香族アミンおよび
カルバゾール誘導体を用いることができる。また、芳香族炭化水素およびスチルベン誘導
体などを用いることができる。また、該正孔輸送性材料は高分子化合物であっても良い。
【0156】
芳香族炭化水素としては、例えば、2-tert-ブチル-9,10-ジ(2-ナフチ
ル)アントラセン(略称:t-BuDNA)、2-tert-ブチル-9,10-ジ(1
-ナフチル)アントラセン、9,10-ビス(3,5-ジフェニルフェニル)アントラセ
ン(略称:DPPA)、2-tert-ブチル-9,10-ビス(4-フェニルフェニル
)アントラセン(略称:t-BuDBA)、9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン
(略称:DNA)、9,10-ジフェニルアントラセン(略称:DPAnth)、2-t
ert-ブチルアントラセン(略称:t-BuAnth)、9,10-ビス(4-メチル
-1-ナフチル)アントラセン(略称:DMNA)、2-tert-ブチル-9,10-
ビス[2-(1-ナフチル)フェニル]アントラセン、9,10-ビス[2-(1-ナフ
チル)フェニル]アントラセン、2,3,6,7-テトラメチル-9,10-ジ(1-ナ
フチル)アントラセン、2,3,6,7-テトラメチル-9,10-ジ(2-ナフチル)
アントラセン、9,9’-ビアントリル、10,10’-ジフェニル-9,9’-ビアン
トリル、10,10’-ビス(2-フェニルフェニル)-9,9’-ビアントリル、10
,10’-ビス[(2,3,4,5,6-ペンタフェニル)フェニル]-9,9’-ビア
ントリル、アントラセン、テトラセン、ルブレン、ペリレン、2,5,8,11-テトラ
(tert-ブチル)ペリレン等が挙げられる。また、この他、ペンタセン、コロネン等
も用いることができる。このように、1×10-6cm/Vs以上の正孔移動度を有し
、炭素数14以上炭素数42以下である芳香族炭化水素を用いることがより好ましい。
【0157】
なお、芳香族炭化水素は、ビニル骨格を有していてもよい。ビニル基を有している芳香
族炭化水素としては、例えば、4,4’-ビス(2,2-ジフェニルビニル)ビフェニル
(略称:DPVBi)、9,10-ビス[4-(2,2-ジフェニルビニル)フェニル]
アントラセン(略称:DPVPA)等が挙げられる。
【0158】
また、ポリ(N-ビニルカルバゾール)(略称:PVK)やポリ(4-ビニルトリフェ
ニルアミン)(略称:PVTPA)、ポリ[N-(4-{N’-[4-(4-ジフェニル
アミノ)フェニル]フェニル-N’-フェニルアミノ}フェニル)メタクリルアミド](
略称:PTPDMA)、ポリ[N,N’-ビス(4-ブチルフェニル)-N,N’-ビス
(フェニル)ベンジジン](略称:Poly-TPD)等の高分子化合物を用いることも
できる。
【0159】
≪正孔輸送層≫
正孔輸送層112は正孔輸送性材料を含む層であり、正孔注入層111の材料として例
示した材料を使用することができる。正孔輸送層112は正孔注入層111に注入された
正孔を発光層130へ輸送する機能を有するため、正孔注入層111のHOMO準位と同
じ、あるいは近いHOMO準位を有することが好ましい。
【0160】
上記正孔輸送性材料として、正孔注入層111の材料として例示した材料を用いること
ができる。また、1×10-6cm/Vs以上の正孔移動度を有する物質であることが
好ましい。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外の物質を用い
てもよい。なお、正孔輸送性の高い物質を含む層は、単層だけでなく、上記物質からなる
層が二層以上積層してもよい。
【0161】
≪電子輸送層≫
電子輸送層118は、電子注入層119を経て一対の電極の他方(電極101または電
極102)から注入された電子を発光層130へ輸送する機能を有する。電子輸送性材料
としては、正孔よりも電子の輸送性の高い材料を用いることができ、1×10-6cm
/Vs以上の電子移動度を有する材料であることが好ましい。電子を受け取りやすい化合
物(電子輸送性を有する材料)としては、含窒素複素芳香族化合物のようなπ電子不足型
複素芳香族化合物や金属錯体などを用いることができる。具体的には、発光層130に用
いることができる電子輸送性材料として挙げたキノリン配位子、ベンゾキノリン配位子、
オキサゾール配位子、あるいはチアゾール配位子を有する金属錯体が挙げられる。また、
オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、フェナントロリン誘導体、ピリジン誘導
体、ビピリジン誘導体、ピリミジン誘導体などが挙げられる。また、1×10-6cm
/Vs以上の電子移動度を有する物質であることが好ましい。なお、正孔よりも電子の輸
送性の高い物質であれば、上記以外の物質を電子輸送層として用いても構わない。また、
電子輸送層118は、単層だけでなく、上記物質からなる層が二層以上積層してもよい。
【0162】
また、電子輸送層118と発光層130との間に電子キャリアの移動を制御する層を設
けても良い。電子キャリアの移動を制御する層は、上述したような電子輸送性の高い材料
に、電子トラップ性の高い物質を少量添加した層であり、電子キャリアの移動を抑制する
ことによって、キャリアバランスを調節することが可能となる。このような構成は、発光
層を電子が突き抜けてしまうことにより発生する問題(例えば素子寿命の低下)の抑制に
大きな効果を発揮する。
【0163】
≪電子注入層≫
電子注入層119は電極102からの電子注入障壁を低減することで電子注入を促進す
る機能を有し、例えば第1族金属、第2族金属、あるいはこれらの酸化物、ハロゲン化物
、炭酸塩などを用いることができる。また、先に示す電子輸送性材料と、これに対して電
子供与性を示す材料の複合材料を用いることもできる。電子供与性を示す材料としては、
第1族金属、第2族金属、あるいはこれらの酸化物などを挙げることができる。具体的に
は、フッ化リチウム(LiF)、フッ化ナトリウム(NaF)、フッ化セシウム(CsF
)、フッ化カルシウム(CaF)、リチウム酸化物(LiO)等のようなアルカリ金
属、アルカリ土類金属、またはそれらの化合物を用いることができる。また、フッ化エル
ビウム(ErF)のような希土類金属化合物を用いることができる。また、電子注入層
119にエレクトライドを用いてもよい。該エレクトライドとしては、例えば、カルシウ
ムとアルミニウムの混合酸化物に電子を高濃度添加した物質等が挙げられる。また、電子
注入層119に、電子輸送層118で用いることが出来る物質を用いても良い。
【0164】
また、電子注入層119に、有機化合物と電子供与体(ドナー)とを混合してなる複合
材料を用いてもよい。このような複合材料は、電子供与体によって有機化合物に電子が発
生するため、電子注入性および電子輸送性に優れている。この場合、有機化合物としては
、発生した電子の輸送に優れた材料であることが好ましく、具体的には、例えば上述した
電子輸送層118を構成する物質(金属錯体や複素芳香族化合物等)を用いることができ
る。電子供与体としては、有機化合物に対し電子供与性を示す物質であればよい。具体的
には、アルカリ金属やアルカリ土類金属や希土類金属が好ましく、リチウム、セシウム、
マグネシウム、カルシウム、エルビウム、イッテルビウム等が挙げられる。また、アルカ
リ金属酸化物やアルカリ土類金属酸化物が好ましく、リチウム酸化物、カルシウム酸化物
、バリウム酸化物等が挙げられる。また、酸化マグネシウムのようなルイス塩基を用いる
こともできる。また、テトラチアフルバレン(略称:TTF)等の有機化合物を用いるこ
ともできる。
【0165】
なお、上述した、発光層、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、及び電子注入層は、
それぞれ、蒸着法(真空蒸着法を含む)、インクジェット法、塗布法、ノズルプリント法
、グラビア印刷等の方法で形成することができる。また、上述した、発光層、正孔注入層
、正孔輸送層、電子輸送層、及び電子注入層には、上述した材料の他、量子ドットなどの
無機化合物または高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)を用いてもよ
い。
【0166】
なお、量子ドットとしては、コロイド状量子ドット、合金型量子ドット、コア・シェル
型量子ドット、コア型量子ドット、などを用いてもよい。また、2族と16族、13族と
15族、13族と17族、11族と17族、または14族と15族の元素グループを含む
量子ドットを用いてもよい。または、カドミウム(Cd)、セレン(Se)、亜鉛(Zn
)、硫黄(S)、リン(P)、インジウム(In)、テルル(Te)、鉛(Pb)、ガリ
ウム(Ga)、ヒ素(As)、アルミニウム(Al)、等の元素を有する量子ドットを用
いてもよい。
【0167】
ウェットプロセスに用いる液媒体としては、たとえば、メチルエチルケトン、シクロヘ
キサノン等のケトン類、酢酸エチル等の脂肪酸エステル類、ジクロロベンゼン等のハロゲ
ン化炭化水素類、トルエン、キシレン、メシチレン、シクロヘキシルベンゼン等の芳香族
炭化水素類、シクロヘキサン、デカリン、ドデカン等の脂肪族炭化水素類、ジメチルホル
ムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等の有機溶媒を用いることがで
きる。
【0168】
また、発光層に用いることができる高分子化合物としては、例えば、ポリ[2-メトキ
シ-5-(2-エチルヘキシルオキシ)-1,4-フェニレンビニレン](略称:MEH
-PPV)、ポリ(2,5-ジオクチル-1,4-フェニレンビニレン)等のポリフェニ
レンビニレン(PPV)誘導体、ポリ(9,9-ジ-n-オクチルフルオレニル-2,7
-ジイル)(略称:PF8)、ポリ[(9,9-ジ-n-オクチルフルオレニル-2,7
-ジイル)-alt-(ベンゾ[2,1,3]チアジアゾール-4,8-ジイル)](略
称:F8BT)、ポリ[(9,9-ジ-n-オクチルフルオレニル-2,7-ジイル)-
alt-(2,2’-ビチオフェン-5,5’-ジイル)](略称F8T2)、ポリ[(
9,9-ジオクチル-2,7-ジビニレンフルオレニレン)-alt-(9,10-アン
トラセン)]、ポリ[(9,9-ジヘキシルフルオレン-2,7-ジイル)-alt-(
2,5-ジメチル-1,4-フェニレン)]等のポリフルオレン誘導体、ポリ(3-ヘキ
シルチオフェン-2,5-ジイル)(略称:P3HT)等のポリアルキルチオフェン(P
AT)誘導体、ポリフェニレン誘導体等が挙げられる。また、これらの高分子化合物や、
ポリ(9-ビニルカルバゾール)(略称:PVK)、ポリ(2-ビニルナフタレン)、ポ
リ[ビス(4-フェニル)(2,4,6-トリメチルフェニル)アミン](略称:PTA
A)等の高分子化合物に、発光性の化合物をドープして発光層に用いてもよい。発光性の
化合物としては、先に挙げた発光性の化合物を用いることができる。
【0169】
≪基板≫
また、本発明の一態様に係る発光素子は、ガラス、プラスチックなどからなる基板上に
作製すればよい。基板上に作製する順番としては、電極101側から順に積層しても、電
極102側から順に積層しても良い。
【0170】
なお、本発明の一態様に係る発光素子を形成できる基板としては、例えばガラス、石英
、又はプラスチックなどを用いることができる。また可撓性基板を用いてもよい。可撓性
基板とは、曲げることができる(フレキシブル)基板のことであり、例えば、ポリカーボ
ネート、ポリアリレートからなるプラスチック基板等が挙げられる。また、フィルム、無
機蒸着フィルムなどを用いることもできる。なお、発光素子、及び光学素子の作製工程に
おいて支持体として機能するものであれば、これら以外のものでもよい。あるいは、発光
素子、及び光学素子を保護する機能を有するものであればよい。
【0171】
例えば、本発明等においては、様々な基板を用いて発光素子を形成することが出来る。
基板の種類は、特に限定されない。その基板の一例としては、半導体基板(例えば単結晶
基板又はシリコン基板)、SOI基板、ガラス基板、石英基板、プラスチック基板、金属
基板、ステンレス・スチル基板、ステンレス・スチル・ホイルを有する基板、タングステ
ン基板、タングステン・ホイルを有する基板、可撓性基板、貼り合わせフィルム、繊維状
の材料を含むセルロースナノファイバ(CNF)や紙、又は基材フィルムなどがある。ガ
ラス基板の一例としては、バリウムホウケイ酸ガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、又は
ソーダライムガラスなどがある。可撓性基板、貼り合わせフィルム、基材フィルムなどの
一例としては、以下が挙げられる。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポ
リエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリテトラフル
オロエチレン(PTFE)に代表されるプラスチックがある。または、一例としては、ア
クリル等の樹脂などがある。または、一例としては、ポリプロピレン、ポリエステル、ポ
リフッ化ビニル、又はポリ塩化ビニルなどがある。または、一例としては、ポリアミド、
ポリイミド、アラミド、エポキシ、無機蒸着フィルム、又は紙類などがある。
【0172】
また、基板として、可撓性基板を用い、可撓性基板上に直接、発光素子を形成してもよ
い。または、基板と発光素子との間に剥離層を設けてもよい。剥離層は、その上に発光素
子を一部あるいは全部完成させた後、基板より分離し、他の基板に転載するために用いる
ことができる。その際、耐熱性の劣る基板や可撓性の基板にも発光素子を転載できる。な
お、上述の剥離層には、例えば、タングステン膜と酸化シリコン膜との無機膜の積層構造
の構成や、基板上にポリイミド等の樹脂膜が形成された構成等を用いることができる。
【0173】
つまり、ある基板を用いて発光素子を形成し、その後、別の基板に発光素子を転置し、
別の基板上に発光素子を配置してもよい。発光素子が転置される基板の一例としては、上
述した基板に加え、セロファン基板、石材基板、木材基板、布基板(天然繊維(絹、綿、
麻)、合成繊維(ナイロン、ポリウレタン、ポリエステル)若しくは再生繊維(アセテー
ト、キュプラ、レーヨン、再生ポリエステル)などを含む)、皮革基板、又はゴム基板な
どがある。これらの基板を用いることにより、壊れにくい発光素子、耐熱性の高い発光素
子、軽量化された発光素子、または薄型化された発光素子とすることができる。
【0174】
また、上述した基板上に、例えば電界効果トランジスタ(FET)を形成し、FETと
電気的に接続された電極上に発光素子150を作製してもよい。これにより、FETによ
って発光素子の駆動を制御するアクティブマトリクス型の表示装置を作製できる。
【0175】
以上、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態と適宜組み合わせて用いることがで
きる。
【0176】
(実施の形態2)
本実施の形態においては、実施の形態1に示す構成と異なる構成の発光素子、及び当該
発光素子の発光機構について、図4を用いて、以下説明を行う。なお、図4において、図
1に示す符号と同様の機能を有する箇所には、同様のハッチパターンとし、符号を省略す
る場合がある。また、同様の機能を有する箇所には、同様の符号を付し、その詳細な説明
は省略する場合がある。
【0177】
<発光素子の構成例>
図4は、発光素子250の断面模式図である。
【0178】
図4に示す発光素子250は、一対の電極(電極101及び電極102)の間に、複数
の発光ユニット(図4においては、発光ユニット106及び発光ユニット108)を有す
る。1つの発光ユニットは、図1で示すEL層100と同様な構成を有する。つまり、図
1で示した発光素子150は、1つの発光ユニットを有し、発光素子250は、複数の発
光ユニットを有する。なお、発光素子250において、電極101が陽極として機能し、
電極102が陰極として機能するとして、以下説明するが、発光素子250の構成として
は、逆であっても構わない。
【0179】
また、図4に示す発光素子250において、発光ユニット106と発光ユニット108
とが積層されており、発光ユニット106と発光ユニット108との間には電荷発生層1
15が設けられる。なお、発光ユニット106と発光ユニット108は、同じ構成でも異
なる構成でもよい。例えば、発光ユニット106に、図1で示すEL層100と同様の構
成を用いると好ましい。
【0180】
また、発光素子250は、発光層130と、発光層140と、を有する。また、発光ユ
ニット106は、発光層130の他に、正孔注入層111、正孔輸送層112、電子輸送
層113、及び電子注入層114を有する。また、発光ユニット108は、発光層140
の他に、正孔注入層116、正孔輸送層117、電子輸送層118、及び電子注入層11
9を有する。
【0181】
電荷発生層115は、正孔輸送性材料に電子受容体であるアクセプター性物質が添加さ
れた構成であっても、電子輸送性材料に電子供与体であるドナー性物質が添加された構成
であってもよい。また、これらの両方の構成が積層されていても良い。
【0182】
電荷発生層115に、有機化合物とアクセプター性物質の複合材料が含まれる場合、該
複合材料には実施の形態1に示す正孔注入層111に用いることができる複合材料を用い
ればよい。有機化合物としては、芳香族アミン化合物、カルバゾール化合物、芳香族炭化
水素、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)など、種々の化合物を用
いることができる。なお、有機化合物としては、正孔移動度が1×10-6cm/Vs
以上である物質を適用することが好ましい。ただし、電子よりも正孔の輸送性の高い物質
であれば、これら以外の物質を用いてもよい。有機化合物とアクセプター性物質の複合材
料は、キャリア注入性、キャリア輸送性に優れているため、低電圧駆動、低電流駆動を実
現することができる。なお、発光ユニット108のように、発光ユニットの陽極側の面が
電荷発生層115に接している場合は、電荷発生層115が発光ユニットの正孔注入層ま
たは正孔輸送層の役割も担うことができるため、該発光ユニットには正孔注入層または正
孔輸送層を設けなくとも良い。
【0183】
なお、電荷発生層115は、有機化合物とアクセプター性物質の複合材料を含む層と他
の材料により構成される層を組み合わせた積層構造として形成してもよい。例えば、有機
化合物とアクセプター性物質の複合材料を含む層と、電子供与性物質の中から選ばれた一
の化合物と電子輸送性の高い化合物とを含む層とを組み合わせて形成してもよい。また、
有機化合物とアクセプター性物質の複合材料を含む層と、透明導電性材料を含む層とを組
み合わせて形成してもよい。
【0184】
なお、発光ユニット106と発光ユニット108とに挟まれる電荷発生層115は、電
極101と電極102とに電圧を印加した場合に、一方の発光ユニットに電子を注入し、
他方の発光ユニットに正孔を注入するものであれば良い。例えば、図4において、電極1
01の電位の方が電極102の電位よりも高くなるように電圧を印加した場合、電荷発生
層115は、発光ユニット106に電子を注入し、発光ユニット108に正孔を注入する
【0185】
なお、電荷発生層115は、光取出し効率の点から、可視光に対して透光性(具体的に
は、電荷発生層115に対する可視光の透過率が40%以上)を有することが好ましい。
また、電荷発生層115は、一対の電極(電極101及び電極102)よりも低い導電率
であっても機能する。電荷発生層115の導電率が一対の電極と同程度に高い場合、電荷
発生層115によって発生したキャリアが、膜面方向に流れることで、電極101と電極
102とが重ならない領域で発光が生じてしまう場合がある。このような不良を抑制する
ためには、電荷発生層115は、一対の電極よりも導電率が低い材料で形成されると好ま
しい。
【0186】
上述した材料を用いて電荷発生層115を形成することにより、発光層が積層された場
合における駆動電圧の上昇を抑制することができる。
【0187】
また、図4においては、2つの発光ユニットを有する発光素子について説明したが、3
つ以上の発光ユニットを積層した発光素子についても、同様に適用することが可能である
。発光素子250に示すように、一対の電極間に複数の発光ユニットを電荷発生層で仕切
って配置することで、電流密度を低く保ったまま、高輝度発光を可能とし、さらに長寿命
な発光素子を実現できる。また、消費電力が低い発光素子を実現することができる。
【0188】
なお、複数のユニットのうち、少なくとも一つのユニットに、図1で示すEL層100
の構成を適用することによって、発光効率の高い、発光素子を提供することができる。
【0189】
また、発光ユニット106が有する発光層130は、実施の形態1で示した構成を有す
ると好ましい。発光ユニット106が有する発光層130が実施の形態1で示した構成を
有することで、発光素子250は、発光効率の高い発光素子となり好適である。
【0190】
なお、発光ユニット106および発光ユニット108に用いるゲスト材料としては、同
じであっても異なっていてもよい。発光ユニット106と発光ユニット108とで同じゲ
スト材料を有する場合、発光素子250は少ない電流値で高い発光輝度を呈する発光素子
となり好ましい。また、発光ユニット106と発光ユニット108とで異なるゲスト材料
を有する場合、発光素子250は多色発光を呈する発光素子となり好ましい。特に、演色
性の高い白色発光、あるいは少なくとも赤色と緑色と青色とを有する発光、になるようゲ
スト材料を選択することが好適である。
【0191】
なお、発光ユニット106、発光ユニット108、及び電荷発生層115は、蒸着法(
真空蒸着法を含む)、インクジェット法、塗布法、グラビア印刷等の方法で形成すること
ができる。
【0192】
なお、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示した構成と適宜組み合わせて用
いることができる。
【0193】
(実施の形態3)
本実施の形態では、実施の形態1及び実施の形態2に示す構成と異なる構成の発光素子
の例について、図5及び図6を用いて以下に説明する。
【0194】
<発光素子の構成例1>
図5は、本発明の一態様の発光素子を示す断面図である。なお、図5において、図1
示す符号と同様の機能を有する箇所には、同様のハッチパターンとし、符号を省略する場
合がある。また、同様の機能を有する箇所には、同様の符号を付し、その詳細な説明は省
略する場合がある。
【0195】
図5に示す発光素子260は、基板200側に光を取り出す下面射出(ボトムエミッシ
ョン)型の発光素子であってもよく、基板200と反対方向に光を取り出す上面射出(ト
ップエミッション)型の発光素子であってもよい。なお、本発明の一態様はこれに限定さ
れず、発光素子が呈する光を基板200の上方および下方の双方に取り出す両面射出(デ
ュアルエミッション)型の発光素子であっても良い。
【0196】
発光素子260が、ボトムエミッション型である場合、電極101は、光を透過する機
能を有することが好ましい。また、電極102は、光を反射する機能を有することが好ま
しい。あるいは、発光素子260が、トップエミッション型である場合、電極101は、
光を反射する機能を有することが好ましい。また、電極102は、光を透過する機能を有
することが好ましい。
【0197】
発光素子260は、基板200上に電極101と、電極102とを有する。また、電極
101と電極102との間に、発光層123Bと、発光層123Gと、発光層123Rと
、を有する。また、正孔注入層111と、正孔輸送層112と、電子輸送層118と、電
子注入層119と、を有する。
【0198】
また、電極101は、複数の導電層で形成されてもよい。その場合、光を反射する機能
を有する導電層と、光を透過する機能を有する導電層とが積層する構成であると好ましい
【0199】
なお、電極101は、実施の形態1で示した電極101または電極102と同様の構成
および材料を用いることができる。
【0200】
図5においては、電極101と電極102とで挟持された領域221B、領域221G
、及び領域221R、の間に隔壁145を有する。隔壁145は、絶縁性を有する。隔壁
145は、電極101の端部を覆い、該電極と重なる開口部を有する。隔壁145を設け
ることによって、各領域の基板200上の電極101を、それぞれ島状に分離することが
可能となる。
【0201】
なお、発光層123Bと、発光層123Gとは、隔壁145と重なる領域において、互
いに重なる領域を有していてもよい。また、発光層123Gと、発光層123Rとは、隔
壁145と重なる領域において、互いに重なる領域を有していてもよい。また、発光層1
23Rと、発光層123Bとは、隔壁145と重なる領域において、互いに重なる領域を
有していてもよい。
【0202】
隔壁145としては、絶縁性であればよく、無機材料または有機材料を用いて形成され
る。該無機材料としては、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シ
リコン、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム等が挙げられる。該有機材料としては、例
えば、アクリル樹脂、またはポリイミド樹脂等の感光性の樹脂材料が挙げられる。
【0203】
また、発光層123R、発光層123G、及び発光層123Bは、それぞれ異なる色を
呈する機能を有する発光材料を有することが好ましい。例えば、発光層123Rが赤色を
呈する機能を有する発光材料を有することで、領域221Rは赤色の発光を呈し、発光層
123Gが緑色を呈する機能を有する発光材料を有することで、領域221Gは緑色の発
光を呈し、発光層123Bが青色を呈する機能を有する発光材料を有することで、領域2
21Bは青色の発光を呈する。このような構成を有する発光素子260を、表示装置の画
素に用いることで、フルカラー表示が可能な表示装置を作製することができる。また、そ
れぞれの発光層の膜厚は、同じであっても良いし、異なっていても良い。
【0204】
また、発光層123B、発光層123G、及び発光層123R、のいずれか一つまたは
複数の発光層は、実施の形態1で示した発光層130と同様の構成を有することが好まし
い。発光層123B、発光層123G、及び発光層123Rのいずれか一つまたは複数の
発光層が実施の形態1で示した発光層130と同様の構成を有することで、発光効率の良
好な発光素子を作製することができる。
【0205】
なお、発光層123B、発光層123G、発光層123R、のいずれか一つまたは複数
の発光層は、2層以上が積層された構成としても良い。
【0206】
以上のように、少なくとも一つの発光層が実施の形態1で示した発光層を有し、該発光
層を有する発光素子260を、表示装置の画素に用いることで、発光効率の高い表示装置
を作製することができる。すなわち、発光素子260を有する表示装置は、消費電力を低
減することができる。
【0207】
なお、光を取り出す電極上に、カラーフィルタを設けることで、発光素子260の色純
度を向上させることができる。そのため、発光素子260を有する表示装置の色純度を高
めることができる。
【0208】
また、光を取り出す電極上に、偏光板を設けることで、発光素子260の外光反射を低
減することができる。そのため、発光素子260を有する表示装置のコントラスト比を高
めることができる。
【0209】
なお、発光素子260における他の構成については、実施の形態1における発光素子の
構成を参酌すればよい。
【0210】
<発光素子の構成例2>
次に、図5に示す発光素子と異なる構成例について、図6(A)(B)を用いて、以下
説明を行う。
【0211】
図6(A)(B)は、本発明の一態様の発光素子を示す断面図である。なお、図6(A
)(B)において、図5に示す符号と同様の機能を有する箇所には、同様のハッチパター
ンとし、符号を省略する場合がある。また、同様の機能を有する箇所には、同様の符号を
付し、その詳細な説明は省略する場合がある。
【0212】
図6(A)(B)は、一対の電極間に、発光層を有する発光素子の構成例である。図6
(A)に示す発光素子262aは、基板200と反対の方向に光を取り出す上面射出(ト
ップエミッション)型の発光素子、図6(B)に示す発光素子262bは、基板200側
に光を取り出す下面射出(ボトムエミッション)型の発光素子である。ただし、本発明の
一態様はこれに限定されず、発光素子が呈する光を発光素子が形成される基板200の上
方および下方の双方に取り出す両面射出(デュアルエミッション)型であっても良い。
【0213】
発光素子262a及び発光素子262bは、基板200上に電極101と、電極102
と、電極103と、電極104とを有する。また、電極101と電極102との間、及び
電極102と電極103との間、及び電極102と電極104との間に、少なくとも発光
層130と、電荷発生層115とを有する。また、正孔注入層111と、正孔輸送層11
2と、発光層140と、電子輸送層113と、電子注入層114と、正孔注入層116と
、正孔輸送層117と、電子輸送層118と、電子注入層119と、を有する。
【0214】
また、電極101は、導電層101aと、導電層101a上に接する導電層101bと
、を有する。また、電極103は、導電層103aと、導電層103a上に接する導電層
103bと、を有する。電極104は、導電層104aと、導電層104a上に接する導
電層104bと、を有する。
【0215】
図6(A)に示す発光素子262a、及び図6(B)に示す発光素子262bは、電極
101と電極102とで挟持された領域222B、電極102と電極103とで挟持され
た領域222G、及び電極102と電極104とで挟持された領域222R、の間に、隔
壁145を有する。隔壁145は、絶縁性を有する。隔壁145は、電極101、電極1
03、及び電極104の端部を覆い、該電極と重なる開口部を有する。隔壁145を設け
ることによって、各領域の基板200上の該電極を、それぞれ島状に分離することが可能
となる。
【0216】
また、発光素子262a及び発光素子262bは、領域222B、領域222G、及び
領域222Rから呈される光が取り出される方向に、それぞれ光学素子224B、光学素
子224G、及び光学素子224Rを有する基板220を有する。各領域から呈される光
は、各光学素子を介して発光素子外部に射出される。すなわち、領域222Bから呈され
る光は、光学素子224Bを介して射出され、領域222Gから呈される光は、光学素子
224Gを介して射出され、領域222Rから呈される光は、光学素子224Rを介して
射出される。
【0217】
また、光学素子224B、光学素子224G、及び光学素子224Rは、入射される光
から特定の色を呈する光を選択的に透過する機能を有する。例えば、光学素子224Bを
介して射出される領域222Bから呈される光は、青色を呈する光となり、光学素子22
4Gを介して射出される領域222Gから呈される光は、緑色を呈する光となり、光学素
子224Rを介して射出される領域222Rから呈される光は、赤色を呈する光となる。
【0218】
光学素子224R、光学素子224G、及び光学素子224Bには、例えば、着色層(
カラーフィルタともいう)、バンドパスフィルタ、多層膜フィルタなどを適用できる。ま
た、光学素子に色変換素子を適用することができる。色変換素子は、入射される光を、当
該光の波長より長い波長の光に変換する光学素子である。色変換素子として、量子ドット
を用いる素子であると好適である。量子ドットを用いることにより、表示装置の色再現性
を高めることができる。
【0219】
なお、光学素子224R、光学素子224G、及び光学素子224B上に複数の光学素
子を重ねて設けてもよい。他の光学素子としては、例えば円偏光板や反射防止膜などを設
けることができる。円偏光板を、表示装置の発光素子が発する光が取り出される側に設け
ると、表示装置の外部から入射した光が、表示装置の内部で反射されて、外部に射出され
る現象を防ぐことができる。また、反射防止膜を設けると、表示装置の表面で反射される
外光を弱めることができる。これにより、表示装置が発する発光を、鮮明に観察できる。
【0220】
なお、図6(A)(B)において、各光学素子を介して各領域から射出される光を、青
色(B)を呈する光、緑色(G)を呈する光、赤色(R)を呈する光、として、それぞれ
破線の矢印で模式的に図示している。
【0221】
また、各光学素子の間には、遮光層223を有する。遮光層223は、隣接する領域か
ら発せられる光を遮光する機能を有する。なお、遮光層223を設けない構成としても良
い。
【0222】
遮光層223としては、外光の反射を抑制する機能を有する。または、遮光層223と
しては、隣接する発光素子から発せられる光の混色を防ぐ機能を有する。遮光層223と
しては、金属、黒色顔料を含んだ樹脂、カーボンブラック、金属酸化物、複数の金属酸化
物の固溶体を含む複合酸化物等を用いることができる。
【0223】
なお、基板200、及び光学素子を有する基板220としては、実施の形態1を参酌す
ればよい。
【0224】
さらに、発光素子262a及び発光素子262bは、マイクロキャビティ構造を有する
【0225】
≪マイクロキャビティ構造≫
発光層130、及び発光層140から射出される光は、一対の電極(例えば、電極10
1と電極102)の間で共振される。また、発光層130及び発光層140は、射出され
る光のうち所望の波長の光が強まる位置に形成される。例えば、電極101の反射領域か
ら発光層130の発光領域までの光学距離と、電極102の反射領域から発光層130の
発光領域までの光学距離と、を調整することにより、発光層130から射出される光のう
ち所望の波長の光を強めることができる。また、電極101の反射領域から発光層140
の発光領域までの光学距離と、電極102の反射領域から発光層140の発光領域までの
光学距離と、を調整することにより、発光層140から射出される光のうち所望の波長の
光を強めることができる。すなわち、複数の発光層(ここでは、発光層130及び発光層
140)を積層する発光素子の場合、発光層130及び発光層140のそれぞれの光学距
離を最適化することが好ましい。
【0226】
また、発光素子262a及び発光素子262bにおいては、各領域で導電層(導電層1
01b、導電層103b、及び導電層104b)の厚さを調整することで、発光層130
及び発光層140から呈される光のうち所望の波長の光を強めることができる。なお、各
領域で正孔注入層111及び正孔輸送層112のうち、少なくとも一つの厚さを異ならせ
ることで、発光層130及び発光層140から呈される光を強めても良い。
【0227】
例えば、電極101乃至電極104において、光を反射する機能を有する導電性材料の
屈折率が、発光層130または発光層140の屈折率よりも小さい場合においては、電極
101が有する導電層101bの膜厚を、電極101と電極102との間の光学距離がm
λ/2(mは自然数、λは領域222Bで強める光の波長を、それぞれ表す)と
なるよう調整する。同様に、電極103が有する導電層103bの膜厚を、電極103と
電極102との間の光学距離がmλ/2(mは自然数、λは領域222Gで強め
る光の波長を、それぞれ表す)となるよう調整する。さらに、電極104が有する導電層
104bの膜厚を、電極104と電極102との間の光学距離がmλ/2(mは自
然数、λは領域222Rで強める光の波長を、それぞれ表す)となるよう調整する。
【0228】
上記のように、マイクロキャビティ構造を設け、各領域の一対の電極間の光学距離を調
整することで、各電極近傍における光の散乱および光の吸収を抑制し、高い光取り出し効
率を実現することができる。なお、上記構成においては、導電層101b、導電層103
b、導電層104bは、光を透過する機能を有することが好ましい。また、導電層101
b、導電層103b、導電層104b、を構成する材料は、互いに同じであっても良いし
、異なっていても良い。また、導電層101b、導電層103b、導電層104bは、そ
れぞれ2層以上の層が積層された構成であっても良い。
【0229】
なお、図6(A)に示す発光素子262aは、上面射出型の発光素子であるため、導電
層101a、導電層103a、及び導電層104aは、光を反射する機能を有することが
好ましい。また、電極102は、光を透過する機能と、光を反射する機能とを有すること
が好ましい。
【0230】
また、図6(B)に示す発光素子262bは、下面射出型の発光素子であるため、導電
層101a、導電層103a、導電層104aは、光を透過する機能と、光を反射する機
能と、を有することが好ましい。また、電極102は、光を反射する機能を有することが
好ましい。
【0231】
また、発光素子262a及び発光素子262bにおいて、導電層101a、導電層10
3a、または導電層104a、に同じ材料を用いても良いし、異なる材料を用いても良い
。導電層101a、導電層103a、導電層104a、に同じ材料を用いる場合、発光素
子262a及び発光素子262bの製造コストを低減できる。なお、導電層101a、導
電層103a、導電層104aは、それぞれ2層以上の層が積層された構成であっても良
い。
【0232】
また、発光素子262a及び発光素子262bにおける発光層130は、実施の形態1
で示した構成を有することが好ましい。発光素子262a及び発光素子262bにおける
発光層130が実施の形態1で示した構成を有することで、高い発光効率を示す発光素子
を作製することができる。
【0233】
また、発光層130及び発光層140は、例えば発光層140a及び発光層140bの
ように、一方または双方で2層が積層された構成としてもよい。2層の発光層に、第1の
発光材料及び第2の発光材料という、異なる色を呈する機能を有する2種類の発光材料を
それぞれ用いることで、複数の色を含む発光を得ることができる。特に発光層130と、
発光層140と、が呈する発光により、白色となるよう、各発光層に用いる発光材料を選
択すると好ましい。
【0234】
また、発光層130または発光層140は、一方または双方で3層以上が積層された構
成としても良く、発光材料を有さない層が含まれていても良い。
【0235】
以上のように、実施の形態1で示した発光層の構成を有する発光素子262aまたは発
光素子262bを、表示装置の画素に用いることで、発光効率の高い表示装置を作製する
ことができる。すなわち、発光素子262aまたは発光素子262bを有する表示装置は
、消費電力を低減することができる。
【0236】
なお、発光素子262a及び発光素子262bにおける他の構成については、発光素子
260、あるいは実施の形態1及び実施の形態2で示した発光素子の構成を参酌すればよ
い。
【0237】
なお、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示した構成と適宜組み合わせて用
いることができる。
【0238】
(実施の形態4)
本実施の形態では、本発明の一態様の発光素子を有する表示装置について、図7乃至図
9を用いて説明する。
【0239】
<表示装置の構成例1>
図7(A)は表示装置600を示す上面図、図7(B)は図7(A)の一点鎖線A-B
、及び一点鎖線C-Dで切断した断面図である。表示装置600は、駆動回路部(信号線
駆動回路部601、及び走査線駆動回路部603)、並びに画素部602を有する。なお
、信号線駆動回路部601、走査線駆動回路部603、及び画素部602は、発光素子の
発光を制御する機能を有する。
【0240】
また、表示装置600は、素子基板610と、封止基板604と、シール材605と、
シール材605で囲まれた領域607と、引き回し配線608と、FPC609と、を有
する。
【0241】
なお、引き回し配線608は、信号線駆動回路部601及び走査線駆動回路部603に
入力される信号を伝送するための配線であり、外部入力端子となるFPC609からビデ
オ信号、クロック信号、スタート信号、リセット信号等を受け取る。なお、ここではFP
C609しか図示されていないが、FPC609にはプリント配線基板(PWB:Pri
nted Wiring Board)が取り付けられていても良い。
【0242】
また、信号線駆動回路部601は、Nチャネル型のトランジスタ623とPチャネル型
のトランジスタ624とを組み合わせたCMOS回路が形成される。なお、信号線駆動回
路部601または走査線駆動回路部603は、種々のCMOS回路、PMOS回路、また
はNMOS回路を用いることが出来る。また、本実施の形態では、基板上に駆動回路部を
形成したドライバと画素とを同一の表面上に設けた表示装置を示すが、必ずしもその必要
はなく、駆動回路部を基板上ではなく外部に形成することもできる。
【0243】
また、画素部602は、スイッチング用のトランジスタ611と、電流制御用のトラン
ジスタ612と、電流制御用のトランジスタ612のドレインに電気的に接続された下部
電極613と、を有する。なお、下部電極613の端部を覆って隔壁614が形成されて
いる。隔壁614としては、ポジ型の感光性アクリル樹脂膜を用いることができる。
【0244】
また、被覆性を良好にするため、隔壁614の上端部または下端部に曲率を有する曲面
が形成されるようにする。例えば、隔壁614の材料としてポジ型の感光性アクリルを用
いた場合、隔壁614の上端部のみに曲率半径(0.2μm以上3μm以下)を有する曲
面を持たせることが好ましい。また、隔壁614として、ネガ型の感光性樹脂、またはポ
ジ型の感光性樹脂のいずれも使用することができる。
【0245】
なお、トランジスタ(トランジスタ611、612、623、624)の構造は、特に
限定されない。例えば、スタガ型のトランジスタを用いてもよい。また、トランジスタの
極性についても特に限定はなく、Nチャネル型およびPチャネル型のトランジスタを有す
る構造、及びNチャネル型のトランジスタまたはPチャネル型のトランジスタのいずれか
一方のみからなる構造を用いてもよい。また、トランジスタに用いられる半導体膜の結晶
性についても特に限定はない。例えば、非晶質半導体膜、結晶性半導体膜を用いることが
できる。また、半導体材料としては、14族(ケイ素等)半導体、化合物半導体(酸化物
半導体を含む)、有機半導体等を用いることができる。トランジスタとしては、例えば、
エネルギーギャップが2eV以上、好ましくは2.5eV以上、さらに好ましくは3eV
以上の酸化物半導体を用いることで、トランジスタのオフ電流を低減することができるた
め好ましい。該酸化物半導体としては、In-Ga酸化物、In-M-Zn酸化物(Mは
、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr
)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、錫(Sn)、ハフニウム(Hf)、またはネ
オジム(Nd)を表す)等が挙げられる。
【0246】
下部電極613上には、EL層616、および上部電極617がそれぞれ形成されてい
る。なお、下部電極613は、陽極として機能し、上部電極617は、陰極として機能す
る。
【0247】
また、EL層616は、蒸着マスクを用いた蒸着法(真空蒸着法を含む)、液滴吐出法
(インクジェット法ともいう)、スピンコート法等の塗布法、グラビア印刷法等の種々の
方法によって形成される。また、EL層616を構成する材料としては、低分子化合物、
または高分子化合物(オリゴマー、デンドリマーを含む)であっても良い。
【0248】
なお、下部電極613、EL層616、及び上部電極617により、発光素子618が
形成される。発光素子618は、実施の形態1乃至実施の形態3の構成を有する発光素子
であると好ましい。なお、画素部に複数の発光素子が形成される場合、実施の形態1乃至
実施の形態3に記載の発光素子と、それ以外の構成を有する発光素子の両方が含まれてい
ても良い。
【0249】
また、シール材605で封止基板604を素子基板610と貼り合わせることにより、
素子基板610、封止基板604、およびシール材605で囲まれた領域607に発光素
子618が備えられた構造になっている。なお、領域607には、充填材が充填されてお
り、不活性気体(窒素やアルゴン等)が充填される場合の他、シール材605に用いるこ
とができる紫外線硬化樹脂または熱硬化樹脂で充填される場合もあり、例えば、PVC(
ポリビニルクロライド)系樹脂、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、エポキシ系樹脂、
シリコーン系樹脂、PVB(ポリビニルブチラル)系樹脂、またはEVA(エチレンビニ
ルアセテート)系樹脂を用いることができる。封止基板には凹部を形成し、そこに乾燥剤
を設けると水分の影響による劣化を抑制することができ、好ましい構成である。
【0250】
また、発光素子618と互いに重なるように、光学素子621が封止基板604の下方
に設けられる。また、封止基板604の下方には、遮光層622が設けられる。光学素子
621及び遮光層622としては、それぞれ、実施の形態3に示す光学素子、及び遮光層
と同様の構成とすればよい。
【0251】
なお、シール材605にはエポキシ系樹脂やガラスフリットを用いるのが好ましい。ま
た、これらの材料はできるだけ水分や酸素を透過しにくい材料であることが望ましい。ま
た、封止基板604に用いる材料としてガラス基板や石英基板の他、FRP(Fiber
Reinforced Plastics)、PVF(ポリビニルフロライド)、ポリ
エステルまたはアクリル等からなるプラスチック基板を用いることができる。
【0252】
以上のようにして、実施の形態1乃至実施の形態3に記載の発光素子及び光学素子を有
する表示装置を得ることができる。
【0253】
<表示装置の構成例2>
次に、表示装置の別の一例について、図8(A)(B)を用いて説明を行う。なお、図
8(A)(B)は、本発明の一態様の表示装置の断面図である。
【0254】
図8(A)には基板1001、下地絶縁膜1002、ゲート絶縁膜1003、ゲート電
極1006、1007、1008、第1の層間絶縁膜1020、第2の層間絶縁膜102
1、周辺部1042、画素部1040、駆動回路部1041、発光素子の下部電極102
4R、1024G、1024B、隔壁1025、EL層1028、発光素子の上部電極1
026、封止層1029、封止基板1031、シール材1032などが図示されている。
【0255】
また、図8(A)では、光学素子の一例として、着色層(赤色の着色層1034R、緑
色の着色層1034G、及び青色の着色層1034B)を透明な基材1033に設けてい
る。また、遮光層1035をさらに設けても良い。着色層及び遮光層が設けられた透明な
基材1033は、位置合わせし、基板1001に固定する。なお、着色層、及び遮光層は
、オーバーコート層1036で覆われている。また、図8(A)においては、着色層を透
過する光は赤、緑、青となることから、3色の画素で映像を表現することができる。
【0256】
図8(B)では、光学素子の一例として、着色層(赤色の着色層1034R、緑色の着
色層1034G、青色の着色層1034B)をゲート絶縁膜1003と第1の層間絶縁膜
1020との間に形成する例を示している。このように、着色層は基板1001と封止基
板1031の間に設けられていても良い。
【0257】
なお、光学素子の一例として、着色層(赤色の着色層1034R、緑色の着色層103
4G、青色の着色層1034B)を第1の層間絶縁膜1020と第2の層間絶縁膜102
1との間に形成してもよい。
【0258】
また、以上に説明した表示装置では、トランジスタが形成されている基板1001側に
光を取り出す構造(ボトムエミッション型)の表示装置としたが、封止基板1031側に
発光を取り出す構造(トップエミッション型)の表示装置としても良い。
【0259】
<表示装置の構成例3>
トップエミッション型の表示装置の断面図の一例を図9(A)(B)に示す。図9(A
)(B)は、本発明の一態様の表示装置を説明する断面図であり、図8(A)(B)に示
す駆動回路部1041、周辺部1042等を省略して例示している。
【0260】
この場合、基板1001は光を通さない基板を用いることができる。トランジスタと発
光素子の陽極とを接続する接続電極を作製するまでは、ボトムエミッション型の表示装置
と同様に形成する。その後、電極1022を覆うように、第3の層間絶縁膜1037を形
成する。この絶縁膜は平坦化の役割を担っていても良い。第3の層間絶縁膜1037は第
2の層間絶縁膜と同様の材料の他、様々な材料を用いて形成することができる。
【0261】
発光素子の下部電極1024R、1024G、1024Bはここでは陽極とするが、陰
極であっても構わない。また、図9(A)(B)のようなトップエミッション型の表示装
置である場合、下部電極1024R、1024G、1024Bは光を反射する機能を有す
ることが好ましい。また、EL層1028上に上部電極1026が設けられる。上部電極
1026は光を反射する機能と、光を透過する機能を有し、下部電極1024R、102
4G、1024Bと、上部電極1026との間で、マイクロキャビティ構造を採用し、特
定波長における光強度を増加させると好ましい。
【0262】
図9(A)のようなトップエミッションの構造では、着色層(赤色の着色層1034R
、緑色の着色層1034G、及び青色の着色層1034B)を設けた封止基板1031で
封止を行うことができる。封止基板1031には画素と画素との間に位置するように遮光
層1035を設けても良い。なお、封止基板1031は透光性を有する基板を用いると好
適である。
【0263】
また、図9(A)においては、複数の発光素子と、該複数の発光素子にそれぞれ着色層
を設ける構成を例示したが、これに限定されない。例えば、図9(B)に示すように、緑
色の着色層を設けずに、赤色の着色層1034R、及び青色の着色層1034Bを設けて
、赤、緑、青の3色でフルカラー表示を行う構成としてもよい。図9(A)に示すように
、発光素子と、該発光素子にそれぞれ着色層を設ける構成とした場合、外光反射を抑制で
きるといった効果を奏する。一方で、図9(B)に示すように、発光素子に、緑色の着色
層を設けずに、赤色の着色層、及び青色の着色層を設ける構成とした場合、緑色の発光素
子から射出された光のエネルギー損失が少ないため、消費電力を低くできるといった効果
を奏する。
【0264】
以上に示す表示装置は、3色(赤色、緑色、青色)の副画素を有する構成を示したが、
4色(赤色、緑色、青色、黄色、あるいは赤色、緑色、青色、白色)の副画素を有する構
成としてもよい。その場合、黄色の光を透過する機能、あるいは青色、緑色、黄色、赤色
の中から選ばれる複数の光を透過する機能を有する着色層を用いることができる。該着色
層が青色、緑色、黄色、赤色の中から選ばれる複数の光を透過する機能を有する場合、該
着色層を透過した光は白色であってもよい。黄色あるいは白色の発光を呈する発光素子は
発光効率が高いため、このような構成を有する表示装置は、消費電力を低減することがで
きる。
【0265】
また、図7に示す表示装置600は、素子基板610、封止基板604、及びシール材
605で囲まれた領域607に、封止層を形成してもよい。該封止層には、例えば、PV
C(ポリビニルクロライド)系樹脂、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、エポキシ系樹
脂、シリコーン系樹脂、PVB(ポリビニルブチラル)系樹脂、またはEVA(エチレン
ビニルアセテート)系樹脂等の樹脂を用いることができる。また、酸化シリコン、酸化窒
化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム等
の無機材料を用いてもよい。領域607に封止層を形成することで、水などの不純物によ
る発光素子618の劣化を抑制することができ好ましい。なお、封止層を形成する場合、
シール材605を設けなくてもよい。
【0266】
また、封止層を多層にすることで、水などの不純物が、表示装置600の外部から表示
装置内部の発光素子618まで侵入するのを効果的に防ぐことができるため好ましい。な
お、封止層が多層の場合、樹脂と無機材料とを積層させると好ましい構成である。
【0267】
なお、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態や本実施の形態中の他の構成と適宜
組み合わせることが可能である。
【0268】
(実施の形態5)
本実施の形態では、本発明の一態様の発光素子を有する表示モジュール、電子機器、発
光装置、及び照明装置について、図10乃至図13を用いて説明を行う。
【0269】
<表示モジュールに関する説明>
図10に示す表示モジュール8000は、上部カバー8001と下部カバー8002と
の間に、FPC8003に接続されたタッチセンサ8004、FPC8005に接続され
た表示装置8006、フレーム8009、プリント基板8010、バッテリ8011を有
する。
【0270】
本発明の一態様の発光素子は、例えば、表示装置8006に用いることができる。
【0271】
上部カバー8001及び下部カバー8002は、タッチセンサ8004及び表示装置8
006のサイズに合わせて、形状や寸法を適宜変更することができる。
【0272】
タッチセンサ8004は、抵抗膜方式または静電容量方式のタッチセンサを表示装置8
006に重ねて用いることができる。また、表示装置8006の対向基板(封止基板)に
、タッチセンサ機能を持たせるようにすることも可能である。また、表示装置8006の
各画素内に光センサを設け、光学式のタッチセンサとすることも可能である。
【0273】
フレーム8009は、表示装置8006の保護機能の他、プリント基板8010の動作
により発生する電磁波を遮断するための電磁シールドとしての機能を有する。またフレー
ム8009は、放熱板としての機能を有していてもよい。
【0274】
プリント基板8010は、電源回路、ビデオ信号及びクロック信号を出力するための信
号処理回路を有する。電源回路に電力を供給する電源としては、外部の商用電源であって
も良いし、別途設けたバッテリ8011による電源であってもよい。バッテリ8011は
、商用電源を用いる場合には、省略可能である。
【0275】
また、表示モジュール8000は、偏光板、位相差板、プリズムシートなどの部材を追
加して設けてもよい。
【0276】
<電子機器に関する説明>
図11(A)乃至図11(G)は、電子機器を示す図である。これらの電子機器は、筐
体9000、表示部9001、スピーカ9003、操作キー9005(電源スイッチ、又
は操作スイッチを含む)、接続端子9006、センサ9007(力、変位、位置、速度、
加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電
場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、におい又は赤外線を測定する
機能を含むもの)、マイクロフォン9008、等を有することができる。また、センサ9
007は、脈拍センサや指紋センサ等のように生体情報を測定する機能を有してもよい。
【0277】
図11(A)乃至図11(G)に示す電子機器は、様々な機能を有することができる。
例えば、様々な情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示部に表示する機能、タッ
チセンサ機能、カレンダー、日付または時刻などを表示する機能、様々なソフトウェア(
プログラム)によって処理を制御する機能、無線通信機能、無線通信機能を用いて様々な
コンピュータネットワークに接続する機能、無線通信機能を用いて様々なデータの送信ま
たは受信を行う機能、記録媒体に記録されているプログラムまたはデータを読み出して表
示部に表示する機能、等を有することができる。なお、図11(A)乃至図11(G)に
示す電子機器が有することのできる機能はこれらに限定されず、様々な機能を有すること
ができる。また、図11(A)乃至図11(G)には図示していないが、電子機器には、
複数の表示部を有する構成としてもよい。また、該電子機器にカメラ等を設け、静止画を
撮影する機能、動画を撮影する機能、撮影した画像を記録媒体(外部またはカメラに内蔵
)に保存する機能、撮影した画像を表示部に表示する機能、等を有していてもよい。
【0278】
図11(A)乃至図11(G)に示す電子機器の詳細について、以下説明を行う。
【0279】
図11(A)は、携帯情報端末9100を示す斜視図である。携帯情報端末9100が
有する表示部9001は、可撓性を有する。そのため、湾曲した筐体9000の湾曲面に
沿って表示部9001を組み込むことが可能である。また、表示部9001はタッチセン
サを備え、指やスタイラスなどで画面に触れることで操作することができる。例えば、表
示部9001に表示されたアイコンに触れることで、アプリケーションを起動することが
できる。
【0280】
図11(B)は、携帯情報端末9101を示す斜視図である。携帯情報端末9101は
、例えば電話機、手帳又は情報閲覧装置等から選ばれた一つ又は複数の機能を有する。具
体的には、スマートフォンとして用いることができる。なお、携帯情報端末9101は、
スピーカ9003、接続端子9006、センサ9007等を省略して図示しているが、図
11(A)に示す携帯情報端末9100と同様の位置に設けることができる。また、携帯
情報端末9101は、文字や画像情報をその複数の面に表示することができる。例えば、
3つの操作ボタン9050(操作アイコンまたは単にアイコンともいう)を表示部900
1の一の面に表示することができる。また、破線の矩形で示す情報9051を表示部90
01の他の面に表示することができる。なお、情報9051の一例としては、電子メール
やSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)や電話などの着信を知らせる表示
、電子メールやSNSなどの題名、電子メールやSNSなどの送信者名、日時、時刻、バ
ッテリの残量、電波等の受信信号の強度を示す表示などがある。または、情報9051が
表示されている位置に、情報9051の代わりに、操作ボタン9050などを表示しても
よい。
【0281】
筐体9000の材料としては、例えば、合金、プラスチック、セラミックス等を用いる
ことができる。プラスチックとしては強化プラスチックを用いることもできる。強化プラ
スチックの一種である炭素繊維強化樹脂複合材(Carbon Fiber Reinf
orced Plastics:CFRP)は軽量であり且つ腐食しない利点がある。ま
た、他の強化プラスチックとしては、ガラス繊維を用いた強化プラスチック、アラミド繊
維を用いた強化プラスチックを挙げることができる。合金としては、アルミニウム合金や
マグネシウム合金が挙げられるが、中でもジルコニウムと銅とニッケルとチタンを含む非
晶質合金(金属ガラスとも呼ばれる)が弾性強度の点で優れている。この非晶質合金は、
室温においてガラス遷移領域を有する非晶質合金であり、バルク凝固非晶質合金とも呼ば
れ、実質的に非晶質原子構造を有する合金である。凝固鋳造法により、少なくとも一部の
筐体の鋳型内に合金材料が鋳込まれ、凝固させて一部の筐体をバルク凝固非晶質合金で形
成する。非晶質合金は、ジルコニウム、銅、ニッケル、チタン以外にもベリリウム、シリ
コン、ニオブ、ボロン、ガリウム、モリブデン、タングステン、マンガン、鉄、コバルト
、イットリウム、バナジウム、リン、炭素などを含んでもよい。また、非晶質合金は、凝
固鋳造法に限定されず、真空蒸着法、スパッタ法、電解めっき法、無電解メッキ法などに
よって形成してもよい。また、非晶質合金は、全体として長距離秩序(周期構造)を持た
ない状態を維持するのであれば、微結晶またはナノ結晶を含んでもよい。なお、合金とは
、単一の固体相構造を有する完全固溶体合金と、2つ以上の相を有する部分溶体の両方を
含むこととする。筐体9000に非晶質合金を用いることで高い弾性を有する筐体を実現
できる。従って、携帯情報端末9101を落下させても、筐体9000が非晶質合金であ
れば、衝撃が加えられた瞬間には一時的に変形しても元に戻るため、携帯情報端末910
1の耐衝撃性を向上させることができる。
【0282】
図11(C)は、携帯情報端末9102を示す斜視図である。携帯情報端末9102は
、表示部9001の3面以上に情報を表示する機能を有する。ここでは、情報9052、
情報9053、情報9054がそれぞれ異なる面に表示されている例を示す。例えば、携
帯情報端末9102の使用者は、洋服の胸ポケットに携帯情報端末9102を収納した状
態で、その表示(ここでは情報9053)を確認することができる。具体的には、着信し
た電話の発信者の電話番号又は氏名等を、携帯情報端末9102の上方から観察できる位
置に表示する。使用者は、携帯情報端末9102をポケットから取り出すことなく、表示
を確認し、電話を受けるか否かを判断できる。
【0283】
図11(D)は、腕時計型の携帯情報端末9200を示す斜視図である。携帯情報端末
9200は、移動電話、電子メール、文章閲覧及び作成、音楽再生、インターネット通信
、コンピュータゲームなどの種々のアプリケーションを実行することができる。また、表
示部9001はその表示面が湾曲して設けられ、湾曲した表示面に沿って表示を行うこと
ができる。また、携帯情報端末9200は、通信規格された近距離無線通信を実行するこ
とが可能である。例えば無線通信可能なヘッドセットと相互通信することによって、ハン
ズフリーで通話することもできる。また、携帯情報端末9200は、接続端子9006を
有し、他の情報端末とコネクターを介して直接データのやりとりを行うことができる。ま
た接続端子9006を介して充電を行うこともできる。なお、充電動作は接続端子900
6を介さずに無線給電により行ってもよい。
【0284】
図11(E)(F)(G)は、折り畳み可能な携帯情報端末9201を示す斜視図であ
る。また、図11(E)が携帯情報端末9201を展開した状態の斜視図であり、図11
(F)が携帯情報端末9201を展開した状態または折り畳んだ状態の一方から他方に変
化する途中の状態の斜視図であり、図11(G)が携帯情報端末9201を折り畳んだ状
態の斜視図である。携帯情報端末9201は、折り畳んだ状態では可搬性に優れ、展開し
た状態では、継ぎ目のない広い表示領域により表示の一覧性に優れる。携帯情報端末92
01が有する表示部9001は、ヒンジ9055によって連結された3つの筐体9000
に支持されている。ヒンジ9055を介して2つの筐体9000間を屈曲させることによ
り、携帯情報端末9201を展開した状態から折りたたんだ状態に可逆的に変形させるこ
とができる。例えば、携帯情報端末9201は、曲率半径1mm以上150mm以下で曲
げることができる。
【0285】
また、電子機器としては、例えば、テレビジョン装置(テレビ、又はテレビジョン受信
機ともいう)、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、
デジタルフォトフレーム、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともいう)、ゴーグル型
ディスプレイ(ヘッドマウントディスプレイ)、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再
生装置、パチンコ機などの大型ゲーム機などが挙げられる。
【0286】
また、本発明の一態様の電子機器は、二次電池を有していてもよく、非接触電力伝送を
用いて、二次電池を充電することができると好ましい。
【0287】
二次電池としては、例えば、ゲル状電解質を用いるリチウムポリマー電池(リチウムイ
オンポリマー電池)等のリチウムイオン二次電池、リチウムイオン電池、ニッケル水素電
池、ニカド電池、有機ラジカル電池、鉛蓄電池、空気二次電池、ニッケル亜鉛電池、銀亜
鉛電池などが挙げられる。
【0288】
本発明の一態様の電子機器は、アンテナを有していてもよい。アンテナで信号を受信す
ることで、表示部で映像や情報等の表示を行うことができる。また、電子機器が二次電池
を有する場合、アンテナを、非接触電力伝送に用いてもよい。
【0289】
また、本発明の一態様の電子機器又は照明装置は可撓性を有するため、家屋やビルの内
壁もしくは外壁、又は、自動車の内装もしくは外装の曲面に沿って組み込むことも可能で
ある。例えば、自動車のダッシュボードや、フロントガラス、天井等に照明を設置するこ
とができる。
【0290】
<発光装置に関する説明>
本実施の形態で示す、発光装置3000の斜視図を図12(A)に、図12(A)に示
す一点鎖線E-F間に相当する断面図を図12(B)に、それぞれ示す。なお、図12
A)において、図面の煩雑さを避けるために、構成要素の一部を破線で表示している。
【0291】
図12(A)(B)に示す発光装置3000は、基板3001と、基板3001上の発
光素子3005と、発光素子3005の外周に設けられた第1の封止領域3007と、第
1の封止領域3007の外周に設けられた第2の封止領域3009と、を有する。
【0292】
また、発光素子3005からの発光は、基板3001及び基板3003のいずれか一方
または双方から射出される。図12(A)(B)においては、発光素子3005からの発
光が下方側(基板3001側)に射出される構成について説明する。
【0293】
また、図12(A)(B)に示すように、発光装置3000は、発光素子3005が第
1の封止領域3007と、第2の封止領域3009とに、囲まれて配置される二重封止構
造である。二重封止構造とすることで、発光素子3005側に入り込む外部の不純物(例
えば、水、酸素など)を、好適に抑制することができる。ただし、第1の封止領域300
7及び第2の封止領域3009を、必ずしも設ける必要はない。例えば、第1封止領域3
007のみの構成としてもよい。
【0294】
なお、図12(B)において、第1の封止領域3007及び第2の封止領域3009は
、基板3001及び基板3003と接して設けられる。ただし、これに限定されず、例え
ば、第1の封止領域3007及び第2の封止領域3009の一方または双方は、基板30
01の上方に形成される絶縁膜、あるいは導電膜と接して設けられる構成としてもよい。
または、第1の封止領域3007及び第2の封止領域3009の一方または双方は、基板
3003の下方に形成される絶縁膜、あるいは導電膜と接して設けられる構成としてもよ
い。
【0295】
基板3001及び基板3003としては、それぞれ先の実施の形態に記載の基板200
と、基板220と同様の構成とすればよい。発光素子3005としては、先の実施の形態
に記載の発光素子と同様の構成とすればよい。
【0296】
第1の封止領域3007としては、ガラスを含む材料(例えば、ガラスフリット、ガラ
スリボン等)を用いればよい。また、第2の封止領域3009としては、樹脂を含む材料
を用いればよい。第1の封止領域3007として、ガラスを含む材料を用いることで、生
産性や封止性を高めることができる。また、第2の封止領域3009として、樹脂を含む
材料を用いることで、耐衝撃性や耐熱性を高めることができる。ただし、第1の封止領域
3007と、第2の封止領域3009とは、これに限定されず、第1の封止領域3007
が樹脂を含む材料で形成され、第2の封止領域3009がガラスを含む材料で形成されて
もよい。
【0297】
また、上述のガラスフリットとしては、例えば、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、
酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化セシウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸
化ホウ素、酸化バナジウム、酸化亜鉛、酸化テルル、酸化アルミニウム、二酸化珪素、酸
化鉛、酸化スズ、酸化リン、酸化ルテニウム、酸化ロジウム、酸化鉄、酸化銅、二酸化マ
ンガン、酸化モリブデン、酸化ニオブ、酸化チタン、酸化タングステン、酸化ビスマス、
酸化ジルコニウム、酸化リチウム、酸化アンチモン、ホウ酸鉛ガラス、リン酸スズガラス
、バナジン酸塩ガラス又はホウケイ酸ガラス等を含む。赤外光を吸収させるため、少なく
とも一種類以上の遷移金属を含むことが好ましい。
【0298】
また、上述のガラスフリットとしては、例えば、基板上にフリットペーストを塗布し、
これに加熱処理、またはレーザ照射などを行う。フリットペーストには、上記ガラスフリ
ットと、有機溶媒で希釈した樹脂(バインダとも呼ぶ)とが含まれる。また、ガラスフリ
ットにレーザ光の波長の光を吸収する吸収剤を添加したものを用いても良い。また、レー
ザとして、例えば、Nd:YAGレーザや半導体レーザなどを用いることが好ましい。ま
た、レーザ照射の際のレーザの照射形状は、円形でも四角形でもよい。
【0299】
また、上述の樹脂を含む材料としては、例えば、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリ
アミド(ナイロン、アラミド等)、ポリイミド、ポリカーボネートまたはアクリル樹脂、
ポリウレタン、エポキシ樹脂を用いることができる。もしくは、シリコーンなどのシロキ
サン結合を有する樹脂を含む材料を用いることができる。
【0300】
なお、第1の封止領域3007及び第2の封止領域3009のいずれか一方または双方
にガラスを含む材料を用いる場合、当該ガラスを含む材料と、基板3001との熱膨張率
が近いことが好ましい。上記構成とすることで、熱応力によりガラスを含む材料または基
板3001にクラックが入るのを抑制することができる。
【0301】
例えば、第1の封止領域3007にガラスを含む材料を用い、第2の封止領域3009
に樹脂を含む材料を用いる場合、以下の優れた効果を有する。
【0302】
第2の封止領域3009は、第1の封止領域3007よりも、発光装置3000の外周
部に近い側に設けられる。発光装置3000は、外周部に向かうにつれ、外力等による歪
みが大きくなる。よって、歪みが大きくなる発光装置3000の外周部側、すなわち第2
の封止領域3009に、樹脂を含む材料によって封止し、第2の封止領域3009よりも
内側に設けられる第1の封止領域3007にガラスを含む材料を用いて封止することで、
外力等の歪みが生じても発光装置3000が壊れにくくなる。
【0303】
また、図12(B)に示すように、基板3001、基板3003、第1の封止領域30
07、及び第2の封止領域3009に囲まれた領域には、第1の領域3011が形成され
る。また、基板3001、基板3003、発光素子3005、及び第1の封止領域300
7に囲まれた領域には、第2の領域3013が形成される。
【0304】
第1の領域3011及び第2の領域3013としては、例えば、希ガスまたは窒素ガス
等の不活性ガスが充填されていると好ましい。あるいは、アクリルやエポキシ等の樹脂が
充填されていると好ましい。なお、第1の領域3011及び第2の領域3013としては
、大気圧状態よりも減圧状態であると好ましい。
【0305】
また、図12(B)に示す構成の変形例を図12(C)に示す。図12(C)は、発光
装置3000の変形例を示す断面図である。
【0306】
図12(C)は、基板3003の一部に凹部を設け、該凹部に乾燥剤3018を設ける
構成である。それ以外の構成については、図12(B)に示す構成と同じである。
【0307】
乾燥剤3018としては、化学吸着によって水分等を吸着する物質、または物理吸着に
よって水分等を吸着する物質を用いることができる。例えば、乾燥剤3018として用い
ることができる物質としては、アルカリ金属の酸化物、アルカリ土類金属の酸化物(酸化
カルシウムや酸化バリウム等)、硫酸塩、金属ハロゲン化物、過塩素酸塩、ゼオライト、
シリカゲル等が挙げられる。
【0308】
<照明装置に関する説明>
図13は、発光素子を室内の照明装置8501として用いた例である。なお、発光素子
は大面積化も可能であるため、大面積の照明装置を形成することもできる。その他、曲面
を有する筐体を用いることで、発光領域が曲面を有する照明装置8502を形成すること
もできる。本実施の形態で示す発光素子は薄膜状であり、筐体のデザインの自由度が高い
。したがって、様々な意匠を凝らした照明装置を形成することができる。さらに、室内の
壁面に大型の照明装置8503を備えても良い。また、照明装置8501、8502、8
503に、タッチセンサを設けて、電源のオンまたはオフを行ってもよい。
【0309】
また、発光素子をテーブルの表面側に用いることによりテーブルとしての機能を備えた
照明装置8504とすることができる。なお、その他の家具の一部に発光素子を用いるこ
とにより、家具としての機能を備えた照明装置とすることができる。
【0310】
以上のようにして、本発明の一態様の発光素子を適用して表示モジュール、発光装置、
電子機器、及び照明装置を得ることができる。なお、適用できる照明装置及び電子機器は
、本実施の形態に示したものに限らず、あらゆる分野の電子機器に適用することが可能で
ある。
【0311】
また、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示した構成と適宜組み合わせて用
いることができる。
【実施例0312】
本実施例では、本発明の一態様の発光素子と比較発光素子の作製例を説明する。本実施
例で作製した発光素子の構成は図1と同様である。素子構造の詳細を表1に示す。また、
使用した化合物の構造と略称を以下に示す。
【0313】
【化6】
【0314】
【表1】
【0315】
<発光素子の作製>
以下に、本実施例で作製した発光素子の作製方法を示す。
【0316】
≪発光素子1の作製≫
ガラス基板上に電極101として、ITSO膜を厚さが70nmになるように形成した
。なお、電極101の電極面積は、4mm(2mm×2mm)とした。
【0317】
次に、電極101上に正孔注入層111として、DBT3P-IIと、酸化モリブデン
(MoO)と、を重量比(DBT3P-II:MoO)が1:0.5になるように、
且つ厚さが60nmになるように共蒸着した。
【0318】
次に、正孔注入層111上に正孔輸送層112として、9-[3-(9-フェニル-9
H-フルオレン-9-イル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:mCzFLP)を
厚さが20nmになるように蒸着した。
【0319】
次に、正孔輸送層112上に発光層130として、4,6mCzP2Pmと、Ir(d
mpimpt-Me)と、TBRbと、を重量比(4,6mCzP2Pm:Ir(dm
pimpt-Me):TBRb)が1:0.1:0.05になるように、且つ厚さが4
0nmになるように共蒸着した。発光層130においては、Ir(dmpimpt-Me
が第1の有機化合物となる燐光性化合物であり、4,6mCzP2Pmが第2の有機
化合物であり、TBRbが第3の有機化合物となる蛍光性化合物である。
【0320】
次に、発光層130上に、電子輸送層118として、4,6mCzP2Pmを厚さが2
0nmになるよう、及びBPhenの厚さが10nmになるよう、順次蒸着した。次に、
電子輸送層118上に、電子注入層119として、LiFを厚さが1nmになるように蒸
着した。
【0321】
次に、電子注入層119上に、電極102として、アルミニウム(Al)を厚さが20
0nmになるように形成した。
【0322】
次に、窒素雰囲気のグローブボックス内において、封止するためのガラス基板を、有機
EL用シール材を用いて、有機材料を形成したガラス基板に固定することで、電極及びE
L層を封止した。具体的には、ガラス基板に形成した有機材料の周囲にシール材を塗布し
、該ガラス基板と封止するためのガラス基板とを貼り合わせ、波長が365nmの紫外光
を6J/cm照射し、80℃にて1時間熱処理した。以上の工程により発光素子1を得
た。
【0323】
≪比較発光素子1、及び比較発光素子2の作製≫
比較発光素子1、及び比較発光素子2は、先に示す発光素子1と、発光層130の形成
工程のみ異なり、それ以外の工程は発光素子1と同様の作製方法とした。
【0324】
比較発光素子1の発光層130として、4,6mCzP2Pmと、TBRbと、を重量
比(4,6mCzP2Pm:TBRb)が1:0.005になるように、且つ厚さが40
nmになるように共蒸着した。発光層130においては、第1の有機化合物を有さず、4
,6mCzP2Pmが第2の有機化合物であり、TBRbが第3の有機化合物となる蛍光
性化合物である。
【0325】
比較発光素子2の発光層130として、4,6mCzP2Pmと、Ir(dmpimp
t-Me)と、を重量比(4,6mCzP2Pm:Ir(dmpimpt-Me)
が1:0.1になるように、且つ厚さが40nmになるように共蒸着した。発光層130
においては、Ir(dmpimpt-Me)が第1の有機化合物となる燐光性化合物で
あり、4,6mCzP2Pmが第2の有機化合物であり、第3の有機化合物となる蛍光性
化合物を有さない。
【0326】
≪比較発光素子3の作製≫
ガラス基板上に電極101として、ITSO膜を厚さが110nmになるように形成し
た。なお、電極101の電極面積は、4mm(2mm×2mm)とした。
【0327】
次に、電極101上に正孔注入層111として、DBT3P-IIと、酸化モリブデン
(MoO)と、を重量比(DBT3P-II:MoO)が1:0.5になるように、
且つ厚さが60nmになるように共蒸着した。
【0328】
次に、正孔注入層111上に正孔輸送層112として、mCPを厚さが20nmになる
ように蒸着した。
【0329】
次に、正孔輸送層112上に発光層130として、mCPと、Ir(dmpimpt-
Me)と、を重量比(mCP:Ir(dmpimpt-Me))が1:0.08にな
るように、且つ厚さが30nmになるように共蒸着した。発光層130において、Ir(
dmpimpt-Me)がゲスト材料となる燐光性化合物であり、mCPがホスト材料
である。
【0330】
次に、発光層130上に、電子輸送層118として、mDBTBIm-IIと、Ir(
dmpimpt-Me)と、を重量比(mDBTBIm-II:Ir(dmpimpt
-Me))が1:0.08になるように、且つ厚さが10nmになるように共蒸着し、
続いてBPhenを厚さが15nmになるよう蒸着した。次に、電子輸送層118上に、
電子注入層119として、LiFを厚さが1nmになるように蒸着した。
【0331】
次に、電子注入層119上に、電極102として、アルミニウム(Al)を厚さが20
0nmになるように形成した。
【0332】
次に、窒素雰囲気のグローブボックス内において、封止するためのガラス基板を、有機
EL用シール材を用いて、有機材料を形成したガラス基板に固定することで、電極及びE
L層を封止した。具体的な方法は発光素子1と同様である。以上の工程により比較発光素
子3を得た。
【0333】
<発光素子の特性>
次に、上記作製した発光素子1及び比較発光素子1乃至比較発光素子3の特性を測定し
た。輝度およびCIE色度の測定には色彩輝度計(トプコン社製、BM-5A)を用い、
電界発光スペクトルの測定にはマルチチャンネル分光器(浜松ホトニクス社製、PMA-
11)を用いた。
【0334】
発光素子1及び比較発光素子1乃至比較発光素子3の輝度-電流密度特性を図14に、
輝度-電圧特性を図15に、電流効率-輝度特性を図16に、電力効率-輝度特性を図1
7に、外部量子効率-輝度特性を図18に、それぞれ示す。また、発光素子1及び比較発
光素子1乃至比較発光素子3に、それぞれ2.5mA/cmの電流密度で電流を流した
際の電界発光スペクトルを図19に示す。なお、各発光素子の測定は室温(23℃に保た
れた雰囲気)で行った。
【0335】
また、1000cd/m付近における、発光素子1及び比較発光素子1乃至比較発光
素子3の素子特性を表2に示す。
【0336】
【表2】
【0337】
図19に示すように、発光素子1及び比較発光素子1の電界発光スペクトルは、ピーク
波長が572nm及び565nmであり、蛍光性化合物であるTBRbに由来する黄色の
発光を示した。
【0338】
また、比較発光素子3の電界発光スペクトルは、ピーク波長が460nmであり、燐光
性化合物であるIr(dmpimpt-Me)に由来する青色の発光を示した。また、
比較発光素子2の電界発光スペクトルは、ピーク波長が545nmである黄色の発光を示
した。発光素子1及び比較発光素子1乃至比較発光素子3の電界発光スペクトルの半値全
幅はそれぞれ、83nm、78nm、105nm、52nmであり、比較発光素子2の電
界発光スペクトルは、他の発光素子(発光素子1、比較発光素子1及び比較発光素子3)
より幅が広いスペクトル形状を示した。比較発光素子2が呈する、幅が広いスペクトル形
状を有する発光は、後に示すように、4,6mCzP2PmとIr(dmpimpt-M
e)とで形成した励起錯体に由来する発光である。
【0339】
また、図14乃至図18、及び表2で示すように、発光素子1は、同様にTBRbに由
来する発光を示す比較発光素子1より高い発光効率(電流効率、電力効率、及び外部量子
効率)を示している。なお、一対の電極から注入されたキャリア(正孔及び電子)の再結
合によって生成する一重項励起子の生成確率が最大で25%であるため、外部への光取り
出し効率を30%とした場合の外部量子効率は、最大で7.5%となる。発光素子1にお
いては、外部量子効率が7.5%より高い効率が得られている。発光素子1の外部量子効
率が高い理由は、発光素子1において、一対の電極から注入されたキャリア(正孔及び電
子)の再結合によって生成した一重項励起子に由来する発光に加えて、三重項励起子から
のエネルギー移動に由来する発光、または励起錯体における逆項間交差によって三重項励
起子から生成した一重項励起子に由来する発光が蛍光性化合物より得られているためであ
る。すなわち、発光素子1はExEFを利用した本発明の一態様の発光素子である。
【0340】
また、発光素子1は、比較発光素子2より高輝度側での発光効率の低下(ロールオフと
もいう)が少なく、高輝度領域で比較発光素子2より高い発光効率(電流効率、電力効率
、及び外部量子効率)を示している。このように、励起錯体に由来する発光を呈する発光
素子よりロールオフが少ない点が本発明の一態様の発光素子の特徴の一つである。
【0341】
また、発光素子1は、比較発光素子3より高い発光効率(電流効率、電力効率、及び外
部量子効率)且つ低い駆動電圧で駆動している。そのため、本発明の一態様である発光素
子1は、発光効率が高く、駆動電圧が低く、消費電力が低い発光素子である。
【0342】
<CV測定結果>
次に、上記の化合物の電気化学的特性(酸化反応特性および還元反応特性)をサイクリ
ックボルタンメトリ(CV)測定によって測定した。なお測定には、電気化学アナライザ
ー(ビー・エー・エス(株)製、型番:ALSモデル600Aまたは600C)を用い、
各化合物をN,N-ジメチルホルムアミド(略称:DMF)に溶解させた溶液を測定した
。測定では、参照電極に対する作用電極の電位を適切な範囲で変化させて各々酸化ピーク
電位、及び還元ピーク電位を得た。また、参照電極のレドックスポテンシャルが-4.9
4eVであることが見積もられているため、この数値と得られたピーク電位から、各化合
物のHOMO準位およびLUMO準位を算出した。
【0343】
CV測定の結果、4,6mCzP2Pmの酸化電位は0.95V、還元電位は-2.0
6Vであった。また、CV測定より算出した4,6mCzP2PmのHOMO準位は-5
.89eV、LUMO準位は-2.88eVであった。このことから、4,6mCzP2
Pmは、低いLUMO準位を有することが分かった。また、Ir(dmpimpt-Me
の酸化電位は0.24V、還元電位は-2.67Vであった。また、CV測定より算
出したIr(dmpimpt-Me)のHOMO準位は-5.18eV、LUMO準位
は-2.27eVであった。このことから、Ir(dmpimpt-Me)は、高いH
OMO準位を有することが分かった。
【0344】
以上のように、4,6mCzP2PmのLUMO準位は、Ir(dmpimpt-Me
のLUMO準位より低く、Ir(dmpimpt-Me)のHOMO準位は、4,
6mCzP2PmのHOMO準位より高い。そのため、発光素子1及び比較発光素子2の
ように、発光層に当該化合物を用いた場合、一対の電極から注入されたキャリアである電
子および正孔が、効率よく4,6mCzP2PmとIr(dmpimpt-Me)にそ
れぞれ注入され、4,6mCzP2PmとIr(dmpimpt-Me)とで励起錯体
を形成することができる。
【0345】
また、4,6mCzP2PmとIr(dmpimpt-Me)とで形成する励起錯体
は、4,6mCzP2PmにLUMO準位を有し、Ir(dmpimpt-Me)にH
OMO準位を有する励起錯体となる。また、4,6mCzP2PmのLUMO準位とIr
(dmpimpt-Me)のHOMO準位とのエネルギー差は、2.30eVである。
この値は、図19で示した比較発光素子2の電界発光スペクトルのピーク波長から算出さ
れる発光エネルギー(2.28eV)と概ね一致している。このことから、比較発光素子
2の電界発光スペクトルは、4,6mCzP2Pm及びIr(dmpimpt-Me)
で形成する励起錯体に基づく発光であるといえる。なお、励起錯体は、S1準位とT1準
位の差が小さいため、当該発光エネルギーが励起錯体のS1準位及びT1準位のエネルギ
ー(2.28eV)と見なすことができる。
【0346】
また、図29にTBRbを有するトルエン溶液の吸収スペクトルを測定した結果を示す
。なお、吸収スペクトルの測定には紫外可視分光光度計(日本分光株式会社製、V550
型)を用い、室温(23℃に保たれた雰囲気)で測定を行った。
【0347】
図29に示すようにTBRbの吸収スペクトルは、450nm乃至550nm付近に高
いモル吸光係数を有する吸収帯を有する。これは、比較発光素子2が呈する励起錯体(4
,6mCzP2PmとIr(dmpimpt-Me)とで形成する励起錯体)の電界発
光スペクトルと重なる領域を有する。そのため、4,6mCzP2PmとIr(dmpi
mpt-Me)とで形成する励起錯体から、蛍光性化合物であるTBRbへ効率よく励
起エネルギーを供与することが可能である。
【0348】
また、発光素子1が呈するTBRbの発光エネルギーは、比較発光素子2が呈する励起
錯体(4,6mCzP2PmとIr(dmpimpt-Me)とで形成する励起錯体)
の発光エネルギーより低い。このことからも、発光素子1は、4,6mCzP2PmとI
r(dmpimpt-Me)とで形成する励起錯体から、蛍光性化合物であるTBRb
に励起エネルギーを供与することが可能であるといえる。その結果、発光素子1は、TB
Rbに由来する高効率な発光を得ることができる。
【0349】
発光素子1及び比較発光素子2は、4,6mCzP2PmとIr(dmpimpt-M
e)との励起錯体が形成されるため、4,6mCzP2PmのLUMO準位とIr(d
mpimpt-Me)のHOMO準位との差(2.30eV)に相当するエネルギーで
該励起錯体を形成することができる。一方、比較発光素子3は、Ir(dmpimpt-
Me)が励起し発光するため、少なくともIr(dmpimpt-Me)のLUMO
準位とHOMO準位との差(2.91eV)に相当するエネルギーを励起に要する。した
がって、発光素子1及び比較発光素子2は、比較発光素子3より低い駆動電圧で発光する
ことができる。
【0350】
<T1準位の測定>
次に、発光層130に用いた化合物のT1準位を求めるため、石英基板上に真空蒸着法
により4,6mCzP2Pmの薄膜を作成し、該薄膜の発光スペクトルを低温(10K)
で測定した。
【0351】
測定には、顕微PL装置 LabRAM HR-PL ((株)堀場製作所)を用い、
測定温度は10K、励起光として波長が325nmのHe-Cdレーザを用い、検出器に
はCCD検出器を用いた。
【0352】
なお、該発光スペクトルの測定は、通常の発光スペクトルの測定に加えて、発光寿命が
長い発光に着目した時間分解発光スペクトルの測定も行った。本発光スペクトルの測定は
、低温(10K)で行ったため、通常の発光スペクトルの測定では、主な発光成分である
蛍光に加えて、一部燐光も観測された。また、発光寿命が長い発光に着目した時間分解発
光スペクトルの測定では、主に燐光が観測された。4,6mCzP2Pmの低温で測定し
た時間分解発光スペクトルを図20に示す。
【0353】
上記測定した発光スペクトルの結果より、4,6mCzP2Pmの発光スペクトルの燐
光成分の最も短波長側のピーク(ショルダーを含む)の波長は459nmであった。
【0354】
したがって、上記ピーク波長より、4,6mCzP2PmのT1準位は2.70eVと
算出された。
【0355】
<化合物の吸収スペクトル及び発光スペクトル>
次に、Ir(dmpimpt-Me)の吸収スペクトル及び発光スペクトルの測定結
果を図21に示す。
【0356】
吸収スペクトル及び発光スペクトルを測定するため、Ir(dmpimpt-Me)
を溶解させた1×10-4Mのジクロロメタン溶液を作製し、石英セルを用いて吸収スペ
クトルを測定した。吸収スペクトルの測定には紫外可視分光光度計(日本分光株式会社製
、V550型)を用いた。測定した該溶液のスペクトルから石英セル及び溶媒の吸収スペ
クトルを差し引いた。発光スペクトルの測定は、PL-EL測定装置(浜松ホトニクス社
製)を用いて該溶液を測定した。測定は、室温(23℃に保たれた雰囲気)で行った。
【0357】
図21に示すように、Ir(dmpimpt-Me)の吸収スペクトルにおける最も
低エネルギー側(長波長側)の吸収端は、450nm付近である。また、吸収スペクトル
のデータより、吸収端を求め、直接遷移を仮定した遷移エネルギーを見積もった結果、I
r(dmpimpt-Me)の遷移エネルギーは2.71eVと算出された。Ir(d
mpimpt-Me)は燐光化合物であるため、最も低エネルギー側の吸収帯は、三重
項励起状態からの遷移に基づく吸収帯である。したがって、Ir(dmpimpt-Me
のT1準位は2.71eVと算出される。
【0358】
以上の測定結果から、4,6mCzP2PmのT1準位は、Ir(dmpimpt-M
e)のT1準位と同等であり、Ir(dmpimpt-Me)のT1準位は、4,6
mCzP2PmとIr(dmpimpt-Me)とで形成する励起錯体のT1準位(2
.28eV)より大きい。そのため、4,6mCzP2PmとIr(dmpimpt-M
e)とで形成する励起錯体の三重項励起エネルギーは、4,6mCzP2PmおよびI
r(dmpimpt-Me)それぞれによって失活することはない。したがって、該励
起錯体の三重項励起エネルギーは、発光に変換される、逆項間交差によって一重項励起エ
ネルギーに変換される、または蛍光性化合物へエネルギー移動することができる。
【0359】
<化合物の発光量子収率>
次に、Ir(dmpimpt-Me)の発光量子収率を測定した。発光量子収率の測
定は、Ir(dmpimpt-Me)を溶解させた1×10-5Mのトルエン溶液を用
い、絶対量子収率測定装置(浜松ホトニクス社製、C9920-02)にて測定した。励
起波長は350nmから550nmの範囲で測定した。
【0360】
測定の結果、Ir(dmpimpt-Me)の発光量子収率は7%であった。このこ
とから、Ir(dmpimpt-Me)は発光材料としては低い発光量子収率を有する
材料であることが分かる。
【0361】
一方、比較発光素子2は、4,6mCzP2PmとIr(dmpimpt-Me)
で形成する励起錯体に由来する発光を呈する発光素子であり、Ir(dmpimpt-M
e)に由来する発光を呈する発光素子である比較発光素子3より高い発光効率を有して
いる。比較発光素子2が比較発光素子3より高い発光効率を有する理由は、比較発光素子
2において、一対の電極から注入されたキャリア(正孔及び電子)の再結合によって生成
した一重項励起子に由来する発光に加えて、三重項励起子に由来する発光、または励起錯
体における逆項間交差によって三重項励起子から生成した一重項励起子に由来する発光が
得られているためである。すなわち、発光量子収率が低い化合物を用いる場合であっても
、高い発光効率を有する発光素子を得ることができる。
【0362】
さらに、本発明の一態様である発光素子1は、励起錯体において生成した一重項励起子
及び三重項励起子のエネルギーを蛍光性化合物であるTBRbに供与し、TBRbから発
光を得ている。励起錯体の励起エネルギーを蛍光性化合物に供与し、蛍光性化合物から発
光を得ることで、発光スペクトルの幅が狭く、高輝度領域で効率の低下が少ない、高効率
な発光を得ることができる。
【0363】
以上、本発明の一態様により、発光効率が高い発光素子を提供することができる。また
、本発明の一態様により、駆動電圧が低く消費電力が低い発光素子を提供することができ
る。
【実施例0364】
本実施例では、本発明の一態様の発光素子と比較発光素子の作製例を説明する。本実施
例で作製した発光素子の構成は図1と同様である。素子構造の詳細を表3に示す。また、
使用した化合物の構造と略称を以下に示す。なお、他の化合物の構造と略称は、実施例1
を参酌すればよい。
【0365】
【化7】
【0366】
【表3】
【0367】
<発光素子の作製>
以下に、本実施例で作製した発光素子の作製方法を示す。なお、発光素子2及び比較発
光素子4は、先に示す発光素子1と、発光層130の形成工程のみ異なり、それ以外の工
程は発光素子1と同様の作製方法とした。
【0368】
発光素子2の発光層130として、4,6mCzP2Pmと、トリス[2-(1H-ピ
ラゾール-1-イル-κN)フェニル-κC]イリジウム(III)(略称:Ir(p
pz))と、TBRbと、を重量比(4,6mCzP2Pm:Ir(ppz):TB
Rb)が1:0.2:0.005になるように、且つ厚さが40nmになるように共蒸着
した。発光層130において、Ir(ppz)が第1の有機化合物であり、4,6mC
zP2Pmが第2の有機化合物であり、TBRbが第3の有機化合物となる蛍光性化合物
である。
【0369】
比較発光素子4の発光層130として、4,6mCzP2Pmと、Ir(ppz)
、を重量比(4,6mCzP2Pm:Ir(ppz))が1:0.2になるように、且
つ厚さが40nmになるように共蒸着した。発光層130において、Ir(ppz)
第1の有機化合物であり、4,6mCzP2Pmが第2の有機化合物であり、第3の有機
化合物となる蛍光性化合物を有さない。
【0370】
<発光素子の特性>
次に、上記作製した発光素子2及び比較発光素子4の特性を測定した。なお、測定方法
は実施例1と同様である。
【0371】
発光素子2及び比較発光素子4の輝度-電流密度特性を図22に、輝度-電圧特性を図
23に、電流効率-輝度特性を図24に、電力効率-輝度特性を図25に、外部量子効率
-輝度特性を図26に、それぞれ示す。また、発光素子2及び比較発光素子4に、それぞ
れ2.5mA/cmの電流密度で電流を流した際の電界発光スペクトルを図27に示す
。なお、各発光素子の測定は室温(23℃に保たれた雰囲気)で行った。
【0372】
また、1000cd/m付近における、発光素子2及び比較発光素子4の素子特性を
表4に示す。
【0373】
【表4】
【0374】
図27に示すように、発光素子2の電界発光スペクトルは、ピーク波長が560nmで
あり半値全幅が80nmの黄色発光を示した。発光素子2が呈する発光は、蛍光性化合物
であるTBRbに由来する発光である。なお、発光素子2に用いたIr(ppz)は低
温で青色に発光する化合物であることが知られているが、Ir(ppz)に由来する発
光は観測されなかった。
【0375】
また、比較発光素子4の電界発光スペクトルは、ピーク波長が537nmであり半値全
幅が94nmの幅広いスペクトル形状を示した。比較発光素子4が呈する発光は、上述の
ように、4,6mCzP2PmとIr(ppz)とで形成した励起錯体に由来する発光
である。
【0376】
また、図22乃至図26、及び表4で示すように、発光素子2は、比較発光素子4より
高い発光効率(電流効率、電力効率、及び外部量子効率)を示している。また、発光素子
2及び比較発光素子4においては、外部量子効率が7.5%より高い効率が得られている
。発光素子2及び比較発光素子4の外部量子効率が高い理由は、一対の電極から注入され
たキャリア(正孔及び電子)の再結合によって生成した一重項励起子に由来する発光に加
えて、三重項励起子に由来する発光、または励起錯体における逆項間交差によって三重項
励起子から生成した一重項励起子に由来する発光が得られているためである。すなわち、
比較発光素子4は、励起錯体に由来する発光であり、発光素子2はExEFを利用した本
発明の一態様の発光素子である。
【0377】
また、発光素子2は、比較発光素子4より高輝度側での効率の低下(ロールオフともい
う)が少なく、高輝度領域でも高い発光効率(電流効率、電力効率、及び外部量子効率)
を示している。このように、励起錯体に由来する発光を呈する発光素子よりロールオフが
少ない点が本発明の一態様の発光素子の特徴の一つである。
【0378】
<CV測定結果>
次に、上記の化合物の電気化学的特性(酸化反応特性および還元反応特性)をサイクリ
ックボルタンメトリ(CV)測定によって測定した。なお測定方法は実施例1と同様であ
る。また、4,6mCzP2Pmの測定結果は実施例1を参酌すればよい。
【0379】
CV測定の結果、Ir(ppz)の酸化電位は0.45V、還元電位は-3.17V
であった。また、CV測定より算出したIr(ppz)のHOMO準位は-5.39e
V、LUMO準位は-1.77eVであった。このことから、Ir(ppz)は、高い
HOMO準位を有することが分かった。
【0380】
以上のように、4,6mCzP2PmのLUMO準位は、Ir(ppz)のLUMO
準位より低く、Ir(ppz)のHOMO準位は、4,6mCzP2PmのHOMO準
位より高い。そのため、発光素子2のように、発光層に当該化合物を用いた場合、一対の
電極から注入されたキャリアである電子および正孔が、効率よく4,6mCzP2Pmと
Ir(ppz)にそれぞれ注入され、4,6mCzP2PmとIr(ppz)とで励
起錯体を形成することができる。
【0381】
また、4,6mCzP2PmとIr(ppz)とで形成する励起錯体は、4,6mC
zP2PmにLUMO準位を有し、Ir(ppz)にHOMO準位を有する励起錯体と
なる。また、4,6mCzP2PmのLUMO準位とIr(ppz)のHOMO準位と
のエネルギー差は、2.51eVである。この値は、図27で示した比較発光素子4の電
界発光スペクトルのピーク波長から算出される発光エネルギー(2.31eV)と概ね一
致している。このことから、比較発光素子4の電界発光スペクトルは、4,6mCzP2
Pm及びIr(ppz)で形成する励起錯体に基づく発光であるといえる。なお、励起
錯体は、S1準位とT1準位の差が小さいため、当該発光エネルギーが励起錯体のS1準
位及びT1準位のエネルギー(2.31eV)と見なすことができる。
【0382】
また、図29に示したように、TBRbの吸収スペクトルは、450nm乃至550n
m付近に高いモル吸光係数を有する吸収帯を有する。これは、比較発光素子4が呈する励
起錯体(4,6mCzP2PmとIr(ppz)とで形成する励起錯体)の電界発光ス
ペクトルと重なる領域を有する。そのため、4,6mCzP2PmとIr(ppz)
で形成する励起錯体から、蛍光性化合物であるTBRbへ効率よく励起エネルギーを供与
することが可能である。
【0383】
また、発光素子2が呈するTBRbの発光エネルギーは、比較発光素子4が呈する励起
錯体(4,6mCzP2PmとIr(ppz)とで形成する励起錯体)の発光エネルギ
ーより低い。このことからも、発光素子2は、4,6mCzP2PmとIr(ppz)
とで形成する励起錯体から、蛍光性化合物であるTBRbに励起エネルギーを供与するこ
とが可能であるといえる。その結果、発光素子2は、TBRbに由来する高効率な発光を
得ることができる。
【0384】
また、4,6mCzP2PmとIr(ppz)とで形成する励起錯体の励起エネルギ
ー準位は、4,6mCzP2PmのLUMO準位とHOMO準位とのエネルギー差(3.
01eV)より小さい。そのため、該励起錯体を形成することで、駆動電圧が低い発光素
子を得ることができる。
【0385】
<化合物の吸収スペクトル>
次に、Ir(ppz)の吸収スペクトルの測定結果を図28に示す。
【0386】
吸収スペクトルを測定するため、Ir(ppz)を溶解させた1×10-4Mのジク
ロロメタン溶液を作製し、石英セルを用いて吸収スペクトルを測定した。吸収スペクトル
の測定には紫外可視分光光度計(日本分光株式会社製、V550型)を用いた。測定した
該溶液のスペクトルから石英セル及び溶媒の吸収スペクトルを差し引いた。測定は、室温
(23℃に保たれた雰囲気)で行った。
【0387】
図28に示すように、Ir(ppz)の吸収スペクトルにおける最も低エネルギー側
(長波長側)の吸収端は、370nm付近である。また、吸収スペクトルのデータより、
吸収端を求め、直接遷移を仮定した遷移エネルギーを見積もった結果、Ir(ppz)
の遷移エネルギーは3.27eVと算出された。Ir(ppz)は燐光化合物であるた
め、最も低エネルギー側の吸収帯は、三重項励起状態からの遷移に基づく吸収帯である。
したがって、Ir(ppz)のT1準位は、該吸収端より3.27eVと算出される。
【0388】
以上の測定結果から、4,6mCzP2PmのT1準位は、Ir(ppz)のT1準
位より小さく、4,6mCzP2PmのT1準位は、4,6mCzP2PmとIr(pp
z)とで形成する励起錯体のT1準位(2.28eV)より大きい。そのため、4,6
mCzP2PmとIr(ppz)とで形成する励起錯体の三重項励起エネルギーは、4
,6mCzP2PmおよびIr(ppz)それぞれによって失活することはない。した
がって、該励起錯体の三重項励起エネルギーは、発光に変換される、逆項間交差によって
一重項励起エネルギーに変換される、または蛍光性化合物へエネルギー移動することがで
きる。
【0389】
また、Ir(ppz)の発光スペクトルの測定を室温で試みたところ、Ir(ppz
の発光は観測されなかった。非特許文献1には、Ir(ppz)の発光量子収率が
室温で1%未満であることが記載されている。このことから、Ir(ppz)は室温で
発光しない材料であることが分かる。
【0390】
一方、比較発光素子4は、4,6mCzP2PmとIr(ppz)とで形成する励起
錯体に由来する発光を呈する発光素子であり、外部量子効率が20%を超える高い効率を
示している。比較発光素子4の外部量子効率が高い理由は、比較発光素子4において、一
対の電極から注入されたキャリア(正孔及び電子)の再結合によって生成した一重項励起
子に由来する発光に加えて、三重項励起子に由来する発光、または励起錯体における逆項
間交差によって三重項励起子から生成した一重項励起子に由来する発光が得られているた
めである。すなわち、発光量子収率が1%未満と低い化合物を用いる場合であっても、高
い発光効率を有する発光素子を得ることができる。
【0391】
さらに、本発明の一態様である発光素子2は、励起錯体において生成した一重項励起子
のエネルギーを蛍光性化合物であるTBRbに供与し、TBRbから発光を得ている。励
起錯体の励起エネルギーを蛍光性化合物に供与し、蛍光性化合物から発光を得ることで、
発光スペクトルの幅が狭く、高輝度領域で効率の低下が少ない、高効率な発光を得ること
ができる。
【0392】
以上、本発明の一態様により、発光効率が高い発光素子を提供することができる。また
、本発明の一態様により、駆動電圧が低く消費電力が低い発光素子を提供することができ
る。
【実施例0393】
本実施例では、本発明の一態様の発光素子である発光素子と、比較発光素子の作製例に
ついて説明する。素子構造の詳細を表5に示す。また、使用した化合物の構造と略称を以
下に示す。なお、他の化合物の構造と略称は、先の実施例を参酌すればよい。
【0394】
【化8】
【0395】
【表5】
【0396】
<発光素子の作製>
以下に、本実施例で作製した発光素子の作製方法を示す。なお、発光素子3及び比較発
光素子5は、先に示す発光素子1と、発光層130の形成工程のみ異なり、それ以外の工
程は発光素子1と同様の作製方法とした。
【0397】
発光素子3の発光層130として、4,6mCzP2Pmと、Ir(ppz)と、T
BRbと、を重量比(4,6mCzP2Pm:Ir(ppz):TBRb)が1:0.
1:0.005になるように、且つ厚さが40nmになるように共蒸着した。発光層13
0において、Ir(ppz)が第1の有機化合物であり、4,6mCzP2Pmが第2
の有機化合物であり、TBRbが第3の有機化合物となる蛍光性化合物である。
【0398】
比較発光素子5の発光層130として、4,6mCzP2Pmと、Ir(ppz)
、を重量比(4,6mCzP2Pm:Ir(ppz))が1:0.1になるように、且
つ厚さが40nmになるように共蒸着した。発光層130において、Ir(ppz)
第1の有機化合物であり、4,6mCzP2Pmが第2の有機化合物であり、第3の有機
化合物となる蛍光性化合物を有さない。
【0399】
<比較発光素子6の作製>
ガラス基板上に電極101として、ITSO膜を厚さが70nmになるように形成した
。なお、電極101の電極面積は、4mm(2mm×2mm)とした。
【0400】
次に、電極101上に正孔注入層111として、DBT3P-IIと、酸化モリブデン
(MoO)と、を重量比(DBT3P-II:MoO)が1:0.5になるように、
且つ厚さが40nmになるように共蒸着した。
【0401】
次に、正孔注入層111上に正孔輸送層112として、4-フェニル-4’-(9-フ
ェニルフルオレン-9-イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)を厚さが20
nmになるように蒸着した。
【0402】
次に、正孔輸送層112上に発光層130として、4,6mCzP2Pmと、N-(4
-ビフェニル)-N-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-9-フェニ
ル-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:PCBiF)と、を重量比(4,6mCz
P2Pm:PCBiF)が0.8:0.2になるように、且つ厚さが40nmになるよう
に共蒸着した。
【0403】
次に、発光層130上に、電子輸送層118として、4,6mCzP2Pmを厚さが2
0nmになるよう、及びBPhenの厚さが15nmになるよう、順次蒸着した。次に、
電子輸送層118上に、電子注入層119として、LiFを厚さが1nmになるように蒸
着した。
【0404】
次に、電子注入層119上に、電極102として、アルミニウム(Al)を厚さが20
0nmになるように形成した。
【0405】
次に、窒素雰囲気のグローブボックス内において、封止するためのガラス基板を、有機
EL用シール材を用いて、有機材料を形成したガラス基板に固定することで、電極及びE
L層を封止した。具体的には、ガラス基板に形成した有機材料の周囲にシール材を塗布し
、該ガラス基板と封止するためのガラス基板とを貼り合わせ、波長が365nmの紫外光
を6J/cm照射し、80℃にて1時間熱処理した。以上の工程により比較発光素子6
を得た。
【0406】
<発光素子の特性>
次に、上記作製した発光素子3及び比較発光素子5、比較発光素子6の特性を測定した
。なお、測定方法は実施例1と同様である。
【0407】
発光素子3及び比較発光素子5、比較発光素子6の、外部量子効率-輝度特性を図30
に示す。また、発光素子3及び比較発光素子5、比較発光素子6に、それぞれ2.5mA
/cmの電流密度で電流を流した際の電界発光スペクトルを図31に示す。なお、各発
光素子の測定は室温(23℃に保たれた雰囲気)で行った。
【0408】
また、1000cd/m付近における、発光素子3及び比較発光素子5、比較発光素
子6の素子特性を表6に示す。
【0409】
【表6】
【0410】
図31に示すように、比較発光素子5及び比較発光素子6の電界発光スペクトルは、
ピーク波長がそれぞれ526nm及び548nmであり、半値全幅が95nm及び91n
mと幅が広い黄色の発光を示した。比較発光素子5から得られる発光は上述の通り、4,
6mCzP2PmとIr(ppz)との励起錯体からの発光である。また、発光素子3
の電界発光スペクトルは、ピーク波長が558nmであり半値全幅が84nmの黄色発光
を示した。発光素子3が呈する発光は、蛍光性化合物であるTBRbに由来する発光であ
る。なお、発光素子3に用いたIr(ppz)は低温で青色に発光する化合物であるこ
とが知られているが、Ir(ppz)に由来する発光は観測されなかった。
【0411】
比較発光素子6から得られる発光のピーク波長から算出される発光エネルギーは2.26
eVである。これは、実施例1に記載の方法でCV測定から算出した、4,6mCzP2
PmのLUMO準位-2.88eVと、PCBiFのHOMO準位-5.26eVとのエ
ネルギー差である2.38eVと概ね一致する。すなわち、比較発光素子6から得られる
発光は、発光層中の4,6mCzP2PmとPCBiFで形成される励起錯体に由来する
発光であるといえる。
【0412】
また、図31より比較発光素子5と比較発光素子6を比較すると比較発光素子5の方が外
部量子効率が高いことが分かる。また、比較発光素子5と発光素子3は同等の効率を示し
ていることが分かる。発光素子3は比較発光素子5の発光層に蛍光性材料であるTBRb
を加えた構成となっている。よって、比較発光素子5が高効率であることが、発光素子3
の高効率の要因であると言える。これは、比較発光素子5中の励起錯体から蛍光性化合物
であるTBRbへ効率よく励起エネルギーを供与することが可能であることを示している
【0413】
<薄膜の過渡EL測定>
次に発光素子3及び比較発光素子5、比較発光素子6の過渡EL測定を行った。測定には
ピコ秒蛍光寿命測定システム(浜松ホトニクス社製)を用いた。本測定では、発光素子に
おける蛍光発光の寿命を測定するため、発光素子に矩形パルス電圧を印加し、その電圧の
立下りから減衰していく発光をストリークカメラにより時間分解測定した。パルス電圧は
10Hzの周期で印加し、繰り返し測定したデータを積算することにより、S/N比の高
いデータを得た。また、測定は室温(300K)で、印加パルス電圧が3V前後、印加パ
ルス時間幅が100μsec、負バイアス電圧が-5V、測定時間範囲は発光素子3、比
較発光素子5は20μsec、比較発光素子6は50μsecの条件で行った。得られた
結果を図32に示す。
【0414】
図32より、比較発光素子6は遅延蛍光成分が多く、かつ発光寿命が非常に長い。一方、
比較発光素子5は遅延成分が多くはないが、図30に示すように外部量子効率は比較発光
素子6より高い効率を示している。また、図32より発光寿命が非常に短い。これは、励
起状態から短時間に基底状態へ失活することを示している。このような発光寿命が短い発
光素子は信頼性が良いため好ましい。比較発光素子5には、励起錯体を形成する材料に重
原子であるIrを有しているため、通常のホスト材料を用いた励起錯体やTADF材料と
は異なる挙動を示していると考えられる。
【0415】
上記、比較発光素子5をエネルギー移動の媒体として用いた本発明の一態様である発光素
子3は、図32より比較発光素子5よりもさらに発光寿命が短くなっている。ここからも
、比較発光素子5中の励起錯体から蛍光性化合物であるTBRbへ効率よく励起エネルギ
ー移動していることが分かる。よって、発光寿命が短くなることで、信頼性が向上するこ
とが予想される。
【0416】
以上、本発明の一態様により、発光効率が高い発光素子を提供することができる。また
、本発明の一態様により、信頼性が良好な発光素子を提供することができる。
【符号の説明】
【0417】
100 EL層
101 電極
101a 導電層
101b 導電層
102 電極
103 電極
103a 導電層
103b 導電層
104 電極
104a 導電層
104b 導電層
106 発光ユニット
108 発光ユニット
111 正孔注入層
112 正孔輸送層
113 電子輸送層
114 電子注入層
115 電荷発生層
116 正孔注入層
117 正孔輸送層
118 電子輸送層
119 電子注入層
123B 発光層
123G 発光層
123R 発光層
130 発光層
131 化合物
132 化合物
133 化合物
134 化合物
140 発光層
140a 発光層
140b 発光層
145 隔壁
150 発光素子
200 基板
220 基板
221B 領域
221G 領域
221R 領域
222B 領域
222G 領域
222R 領域
223 遮光層
224B 光学素子
224G 光学素子
224R 光学素子
250 発光素子
260 発光素子
262a 発光素子
262b 発光素子
600 表示装置
601 信号線駆動回路部
602 画素部
603 走査線駆動回路部
604 封止基板
605 シール材
607 領域
608 配線
609 FPC
610 素子基板
611 トランジスタ
612 トランジスタ
613 下部電極
614 隔壁
616 EL層
617 上部電極
618 発光素子
621 光学素子
622 遮光層
623 トランジスタ
624 トランジスタ
1001 基板
1002 下地絶縁膜
1003 ゲート絶縁膜
1006 ゲート電極
1007 ゲート電極
1008 ゲート電極
1020 層間絶縁膜
1021 層間絶縁膜
1022 電極
1024B 下部電極
1024G 下部電極
1024R 下部電極
1025 隔壁
1026 上部電極
1028 EL層
1029 封止層
1031 封止基板
1032 シール材
1033 基材
1034B 着色層
1034G 着色層
1034R 着色層
1035 遮光層
1036 オーバーコート層
1037 層間絶縁膜
1040 画素部
1041 駆動回路部
1042 周辺部
3000 発光装置
3001 基板
3003 基板
3005 発光素子
3007 封止領域
3009 封止領域
3011 領域
3013 領域
3018 乾燥剤
8000 表示モジュール
8001 上部カバー
8002 下部カバー
8003 FPC
8004 タッチセンサ
8005 FPC
8006 表示装置
8009 フレーム
8010 プリント基板
8011 バッテリ
8501 照明装置
8502 照明装置
8503 照明装置
8504 照明装置
9000 筐体
9001 表示部
9003 スピーカ
9005 操作キー
9006 接続端子
9007 センサ
9008 マイクロフォン
9050 操作ボタン
9051 情報
9052 情報
9053 情報
9054 情報
9055 ヒンジ
9100 携帯情報端末
9101 携帯情報端末
9102 携帯情報端末
9200 携帯情報端末
9201 携帯情報端末
図1
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