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特開2024-138313表面品質及びスポット溶接性に優れた亜鉛めっき鋼板、並びにその製造方法
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  • 特開-表面品質及びスポット溶接性に優れた亜鉛めっき鋼板、並びにその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138313
(43)【公開日】2024-10-08
(54)【発明の名称】表面品質及びスポット溶接性に優れた亜鉛めっき鋼板、並びにその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 2/06 20060101AFI20241001BHJP
   C22C 38/00 20060101ALI20241001BHJP
   C22C 38/60 20060101ALI20241001BHJP
   C21D 9/46 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
C23C2/06
C22C38/00 302Z
C22C38/00 301T
C22C38/60
C21D9/46 J
C21D9/46 P
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024104093
(22)【出願日】2024-06-27
(62)【分割の表示】P 2022532724の分割
【原出願日】2020-12-03
(31)【優先権主張番号】10-2019-0158894
(32)【優先日】2019-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】592000691
【氏名又は名称】ポスコホールディングス インコーポレーティッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】カン、 キ-チョル
(72)【発明者】
【氏名】ウム、 サン-ホ
(72)【発明者】
【氏名】イ、 チョン-ホワン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】表面品質及びスポット溶接性に優れた亜鉛めっき鋼板、並びにその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の一側面による亜鉛めっき鋼板は、素地鋼板及び上記素地鋼板の表面に形成された亜鉛系めっき層を含む亜鉛めっき鋼板であって、上記素地鋼板の表面から深さ方向に測定された酸素のGDOESのプロファイルが、表面から深さ方向に極小点及び極大点が順に現れる形態を有し、上記極小点での酸素濃度(極小値)と極大点での酸素含有量(極大値)の差(極大値-極小値)が0.1重量%以上である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
素地鋼板、及び
前記素地鋼板の表面に形成された亜鉛系めっき層
を含む亜鉛めっき鋼板であって、
前記素地鋼板の表面から深さ方向に測定された酸素のGDOESのプロファイルが、前
記表面から深さ方向に極小点及び極大点が順に現れる形態を有し、
前記極小点での酸素濃度(極小値)と前記極大点での酸素含有量(極大値)との差(極
大値-極小値)が0.1重量%以上である、亜鉛めっき鋼板。
【請求項2】
前記極小点が、素地鋼板の表面から深さ方向に0.5~10μmの範囲で現れる、請求
項1に記載の亜鉛めっき鋼板。
【請求項3】
前記極大点が、素地鋼板の表面から深さ方向に4~15μmの範囲で現れる、請求項1
に記載の亜鉛めっき鋼板。
【請求項4】
前記極大点での酸素濃度が0.2重量%以上である、請求項3に記載の亜鉛めっき鋼板
【請求項5】
前記極小点での酸素濃度(極小値)と前記極大点での酸素含有量(極大値)との差(極
大値-極小値)が0.39重量%以下である、請求項1に記載の亜鉛めっき鋼板。
【請求項6】
前記亜鉛系めっき層のめっき付着量が30~70g/mである、請求項1に記載の亜
鉛めっき鋼板。
【請求項7】
前記鋼板が、C:0.05~1.5%、Si:2.0%以下、Mn:1.0~30%、
S-Al(酸可溶性アルミニウム):3%以下、Cr:2.5%以下、Mo:1%以下、
B:0.005%以下、Nb:0.2%以下、Ti:0.2%以下、V:0.2%以下、
Sb+Sn+Bi:0.1%以下、N:0.01%以下を含む組成を有する、請求項1~
6のいずれか1項に記載の亜鉛めっき鋼板。
【請求項8】
鋼スラブを熱間圧延して鋼板を得る段階、
前記鋼板を590~750℃の温度で巻き取って熱延鋼板を得る段階、
前記熱延鋼板を180~250mpmの通板速度で酸洗する段階、
前記熱延鋼板を35~60%の圧下率で冷間圧延して冷延鋼板を得る段階、
650~900℃から~-10~30℃の露点の雰囲気で前記冷延鋼板を再結晶焼鈍す
る段階、及び
前記焼鈍した冷延鋼板を溶融亜鉛めっきする段階
を含む、亜鉛めっき鋼板の製造方法。
【請求項9】
前記再結晶焼鈍する段階が、水素(H)を5~10体積%含む湿窒素ガス雰囲気で行
われる、請求項8に記載の亜鉛めっき鋼板の製造方法。
【請求項10】
前記再結晶焼鈍時の通板速度が40~130mpmである、請求項9に記載の亜鉛めっ
き鋼板の製造方法。
【請求項11】
前記溶融亜鉛めっきが、420~500℃の鋼板引き込み温度でAl濃度が0.1~0
.25重量%である溶融めっき浴に浸漬して行われる、請求項8に記載の亜鉛めっき鋼板
の製造方法。
【請求項12】
前記溶融亜鉛めっき後に480~560℃の温度で合金化する段階をさらに含む、請求
項11に記載の亜鉛めっき鋼板の製造方法。
【請求項13】
前記鋼スラブが、C:0.05~1.5%、Si:2.0%以下、Mn:1.0~30
%、S-Al(酸可溶性アルミニウム):3%以下、Cr:2.5%以下、Mo:1%以
下、B:0.005%以下、Nb:0.2%以下、Ti:0.2%以下、V:0.2%以
下、Sb+Sn+Bi:0.1%以下、N:0.01%以下を含む組成を有する、請求項
8~12のいずれか1項に記載の亜鉛めっき鋼板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面品質及びスポット溶接性に優れた亜鉛めっき鋼板、並びにその製造方法
に関するものである。
【背景技術】
【0002】
環境汚染などの問題により自動車排出ガス及び燃費に対する規制は、日々強化されてき
ている。それにより、自動車鋼板の軽量化による燃料消耗量の減少に対する要求が強くな
っており、これに伴って、単位厚さ当たりの強度が高い様々な種類の高強度鋼板が開発さ
れて発売されている。
【0003】
高強度鋼とは、一般的に490MPa以上の強度を有する鋼を意味するが、必ずしもこ
れに限定するものではなく、変態誘起塑性(Transformation Induc
ced Plasticity;TRIP)鋼、双晶誘起塑性(Twin Induce
d Plasticity;TWIP)鋼、二相組織(Dual Phase;DP)鋼
、複合組織(Complex Phase;CP)鋼などもこれに該当してよい。
【0004】
一方、自動車鋼材は、耐食性を確保するために表面にめっきを施しためっき鋼板の形態
で供給されるが、その中でも亜鉛めっき鋼板(GI鋼板)または合金化亜鉛めっき鋼板(
GA)は、亜鉛の犠牲防食特性を用いて高い耐食性を有するため、自動車用素材として多
く用いられる。
【0005】
ところで、高強度鋼板の表面を亜鉛でめっきする場合、スポット溶接性が脆くなるとい
う問題がある。すなわち、高強度鋼の場合には、引張強度とともに降伏強度が高いため、
溶接中に発生する引張応力を塑性変形によって解消しにくく、表面に微小クラックが発生
する可能性が高い。高強度亜鉛めっき鋼板に対して溶接を行うと、融点の低い亜鉛が鋼板
の微小クラックに浸透することがある。その結果、液相金属脆化(Liquid Met
al Embrittlement;LME)という現象が起こり鋼板が破壊に至るとい
う問題が発生する可能性があり、これは、鋼板の高強度化に大きな障害となる。
【0006】
それだけでなく、高強度鋼板に多量に含まれるSi、Al、Mnなどの合金元素は、製
造過程で鋼板表面に拡散して表面酸化物を形成することがある。その結果、亜鉛の濡れ性
が大きく低下し、未めっきなどの表面品質の低下が生じるおそれがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の一側面によると、表面品質及びスポット溶接性に優れた亜鉛めっき鋼板、並び
にその製造方法が提供される。
【0008】
本発明の課題は、上述した内容に限定されない。本発明が属する技術分野において通常
の知識を有する者であれば、本発明の明細書の全体的な内容から本発明のさらなる課題を
理解するのに何ら困難がない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面による亜鉛めっき鋼板は、素地鋼板及び上記素地鋼板の表面に形成され
た亜鉛系めっき層を含む亜鉛めっき鋼板であって、上記素地鋼板の表面から深さ方向に測
定された酸素のGDOESのプロファイルが、表面から深さ方向に極小点と極大点が順に
現れる形態を有し、上記極小点での酸素濃度(極小値)と極大点での酸素含有量(極大値
)の差(極大値-極小値)は0.1重量%以上であってよい。
【0010】
また、本発明の一側面による亜鉛めっき鋼板の製造方法は、鋼スラブを熱間圧延して鋼
板を得る段階、上記鋼板を590~750℃の温度で巻き取って熱延鋼板を得る段階、上
記熱延鋼板を180~250mpmの通板速度で酸洗する段階、上記熱延鋼板を35~6
0%の圧下率で冷間圧延して冷延鋼板を得る段階、650~900℃で-10~30℃の
露点の雰囲気で上記冷延鋼板を再結晶焼鈍する段階、及び上記焼鈍された冷延鋼板を溶融
亜鉛めっきする段階を含んでよい。
【発明の効果】
【0011】
上述したように、本発明は、めっき層を形成する素地鋼板の内部に形成される酸素プロ
ファイルを適切に制御することで、スポット溶接時にクラックが発生することを抑制する
ことができるとともに、優れた表面品質を有する亜鉛めっき鋼板を提供することができる
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態による極大点及び極小点を有する酸素濃度のGDOESのプロファイルを示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、いくつかの実施形態を挙げて本発明を詳細に説明する。
【0014】
本発明において、亜鉛めっき鋼板とは、亜鉛めっき鋼板(GI鋼板)だけでなく、合金
化亜鉛めっき鋼板(GA)はもちろん、亜鉛が主に含まれた亜鉛系めっき層が形成された
めっき鋼板の全てを含む概念であることに留意する必要がある。亜鉛が主に含まれるとは
、めっき層に含まれた元素のうち亜鉛の割合が最も高いことを意味する。但し、合金化亜
鉛めっき鋼板では、亜鉛より鉄の割合が高い場合があり、鉄を除いた残りの成分のうち亜
鉛の割合が最も高い鋼板までを本発明の範囲に含めることができる。
【0015】
本発明の発明者らは、溶接時に発生する液相金属脆化(LME)は鋼板の表面から発生
する微小クラックにその原因があることに着目して、表面の微小クラックを抑制する手段
に関して研究し、その手段として鋼板表面を軟質化することが必要であることを見出して
本発明に至った。
【0016】
一般的に、高強度鋼の場合には、鋼の硬化能やオーステナイト安定性などを確保するた
めに、C、Mn、Si、Cr、Mo、Vなどの元素を多量に含むことができるが、これら
の元素は鋼のクラックに対する感受性を高める役割を果たす。したがって、これらの元素
を多量に含む鋼は、微小クラックが容易に発生して、最終的には溶接時に液相金属脆化の
原因となる。
【0017】
本発明者らの研究結果によると、深さ方向における酸素濃度の分布を特定の形態に制御
した場合、表面に微小クラックが発生する可能性を顕著に減らすことができ、スポット溶
接性を改善することができる。すなわち、本発明の一実施形態では、GDOES(Glo
w Discharge Optical Emission Spectrometr
y)を用いて素地鋼板の表面から内部まで測定した酸素濃度のプロファイルが、図1と類
似した形態を有することができ、このようにプロファイルを制御した場合、めっき鋼板の
表面品質を改善できることはもちろん、微小クラック及びそれによるLMEの発生を顕著
に防止することもできる。
【0018】
すなわち、本発明の一実施形態による鋼板の表面から深さ方向の酸素濃度プロファイル
は、鋼板の表面下で極小点を有した後、再びそれよりも深さ方向の内部で極大点を有する
形態である。すなわち、表面から深さ方向に極小点及び極大点が順に現れる形態を有する
。但し、ここで表面とは、めっき層ではなく、素地鋼板の表面を意味しており、もし、め
っき層が形成されていれば、めっき層と鋼板との界面を意味する。
【0019】
本発明では、鋼板の表面から深い側に酸素プロファイルの極大点が現れるようにするこ
とで、酸化物を形成する内部酸化物が表面まで拡散できず、内部に集積されるようにする
。また、表面近傍に、酸素プロファイルの極小点を有するようにすることで、酸化物のよ
うな形態の固定酸素を抑制するとともに脱炭層がよく発達するように調節することができ
る。特に、本発明の発明者らの研究結果によると、上記極大点での酸素濃度と極小点での
酸素濃度との差を0.1重量%以上に制御した場合には、LME現象の発生を大きく抑制
することができる。本発明の他の実施形態によると、上記GDOESの酸素の深さプロフ
ァイルにおける極小点での酸素濃度と極大点での酸素濃度との差値は、0.12重量%以
上であってよい。また他の実施形態では、上記GDOESの酸素の深さプロファイルにお
ける極小点での酸素濃度と極大点での酸素濃度との差値(以下、単に「極小値と極大値と
の差」ともいう)は、0.14重量%以上、または0.16重量%以上であってよい。
【0020】
上記GDOESの酸素の深さプロファイルにおいて、極小値と極大値との差値は高いほ
ど有利であるため、脱炭率の上限を特に制限する必要はない。但し、本発明の一実施形態
によると、上記GDOESの酸素の深さプロファイルにおける極小値と極大値との差値の
上限は、0.39重量%に定めることができる。他の実施形態では、上記GDOESの酸
素の深さプロファイルにおける極小値と極大値との差値の上限は0.37重量%に定める
ことができ、さらに他の実施形態では、上記GDOESの酸素の深さプロファイルにおけ
る極小値と極大値との差値の上限は0.35重量%に定めることができる。
【0021】
本発明の一実施形態では、めっき時の未めっきなどによる表面品質の不良を防止するた
めには、上記極大点での酸素濃度は0.2重量%以上であることがさらに有利である。ま
た、本発明の一実施形態によると、上記極大点での酸素濃度は0.25重量%以上であっ
てよく、場合によっては0.3重量%以上であってもよい。極大点での酸素濃度の上限を
特に定める必要はないが、通常、極大点での酸素濃度の上限は、5.0重量%、4.0重
量%、または3.0重量%と定義することができる。
【0022】
したがって、本発明の一実施形態では、鋼の全体的な組成は、高強度のために高合金鋼
の高い組成を有するようにするが、クラックが発生する地点である表層部では軟質層を形
成すると同時に、内部酸化物の分布を制御することで、溶接時にLMEに対する抵抗性及
び表面品質を同時に向上させることができる。
【0023】
本発明で極大点における酸素濃度及び極小点における酸素濃度は、次のように求めるこ
とができる。まず、図1に示したように、GDOESのプロファイルを求める。このとき
、上記GDOESのプロファイルは、10~30nmの深さ間隔で求めたものを用いるこ
とができ、本発明の一実施形態では、20nmの深さ間隔で求めたものを用いた。得られ
た最初のデータは、図1に示したように、ほぼ極小点及び極大点を有した形態を有するが
、その正確な位置を決定することが少し困難なこともある。このとき、各地点の酸素濃度
は、その地点及び前後の各2地点のデータ値を平均した5点平均値を用いて求めた場合、
平滑な形態を示すことができる。
【0024】
このような過程により求められた酸素濃度プロファイルから、極小点及び極大点、そし
てそれに該当する酸素濃度を求めることができる。極小点は、平滑化された酸素濃度プロ
ファイルにおいて最低値を示す地点であり、極大点は、上記極小値の後の地点で最も高い
値を示す部分を意味する。本発明の一実施形態において、上記極小点は鋼板の表面から深
さ10μm以内の地点で現れ、上記極大点は鋼板の表面から4μm以降の深さで現れる。
また、本発明の一実施形態によると、上記極小点は鋼板の表面から0.5μm以降の深さ
で現れ、上記極大点は鋼板の表面から15μm以内の深さで現れる。
【0025】
本発明の一実施形態では、上記GDOESの酸素の深さプロファイルは、鋼板の幅方向
の中心部で測定したものを用いることができる。しかしながら、一般的には、鋼板の幅方
向の中心部に比べて幅方向のエッジ部でより高い値を有する場合が多いため、スポット溶
接性をより効果的に改善するためには、エッジ部で測定したプロファイルを用いることも
できる。このとき、エッジ部とは、鋼板の両端部を意味しているが、上記地点に汚染が発
生するなど、試験片の健全性に問題がある場合には、端部から幅方向に1mm内側の地点
を意味してもよい。
【0026】
本発明で対象とする鋼板は、強度490MPa以上の高強度鋼板であれば、その種類は
制限されない。但し、必ずしもこれに制限するものではないが、本発明で対象とする鋼板
は、重量比率で、C:0.05~1.5%、Si:2.0%以下、Mn:1.0~30%
、S-Al(酸可溶性アルミニウム):3%以下、Cr:2.5%以下、Mo:1%以下
、B:0.005%以下、Nb:0.2%以下、Ti:0.2%以下、V:0.2%以下
、Sb+Sn+Bi:0.1%以下、N:0.01%以下を含む組成を有することができ
る。残りの成分は、鉄及びその他の不純物であり、他にも上記には列挙されていないが、
鋼中に含まれ得る元素を合計1.0%以下の範囲でさらに含むことまでは排除しない。本
発明において、各成分元素の含有量は、特に断りのない限り、重量を基準として表示する
。上述した組成は、鋼板のバルク組成、すなわち、鋼板厚さの1/4地点の組成を意味す
る(以下、同一)。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態では、上記高強度鋼板としてTRIP鋼などを対象とする
ことができる。これらの鋼は、細かく区分すると、以下の組成を有することができる。
【0028】
鋼組成1:C:0.05~0.30%(好ましくは0.10~0.25%)、Si:0
.5~2.5%(好ましくは1.0~1.8%)、Mn:1.5~4.0%(好ましくは
2.0~3.0%)、S-Al:1.0%以下(好ましくは0.05%以下)、Cr:2
.0%以下(好ましくは1.0%以下)、Mo:0.2%以下(好ましくは0.1%以下
)、B:0.005%以下(好ましくは0.004%以下)、Nb:0.1%以下(好ま
しくは0.05%以下)、Ti:0.1%以下(好ましくは0.001~0.05%)、
Sb+Sn+Bi:0.05%以下、N:0.01%以下、残部Fe及び不可避不純物を
含む。場合によっては、上記に記載されてはいないが、鋼中に含まれ得る元素を合計1.
0%以下の範囲までさらに含むことができる。
【0029】
鋼組成2:C:0.05~0.30%(好ましくは0.10~0.2%)、Si:0.
5%以下(好ましくは0.3%以下)、Mn:4.0~10.0%(好ましくは5.0~
9.0%)、S-Al:0.05%以下(好ましくは0.001~0.04%)、Cr:
2.0%以下(好ましくは1.0%以下)、Mo:0.5%以下(好ましくは0.1~0
.35%)、B:0.005%以下(好ましくは0.004%以下)、Nb:0.1%以
下(好ましくは0.05%以下)、Ti:0.15%以下(好ましくは0.001~0.
1%)、Sb+Sn+Bi:0.05%以下、N:0.01%以下、残部Fe及び不可避
不純物を含む。場合によっては、上記に記載されてはいないが、鋼中に含まれ得る元素を
合計1.0%以下の範囲までさらに含むことができる。
【0030】
また、上述した各成分元素のうち、その含有量の下限を限定しない場合は、これらを任
意元素としても構わず、その含有量が0%になってもよいことを意味する。
【0031】
本発明の一実施形態によると、上記鋼板の表面には、1層以上のめっき層が含まれてよ
く、上記めっき層は、GI(Galvanized)またはGA(Galva-anne
aled)などを含む亜鉛系めっき層であってよい。本発明では、上述したように、鋼板
のGDOESの酸素の深さプロファイルが適切に制御されるため、亜鉛系めっき層が鋼板
の表面に形成されても、スポット溶接時に発生する液相金属脆化の問題を抑えることがで
きる。
【0032】
上記亜鉛系めっき層がGA層である場合には、合金化度(めっき層内のFe含有量を意
味する)を8~13重量%、好ましくは10~12重量%に制御することができる。合金
化度が十分でない場合には、亜鉛系めっき層中の亜鉛が微小クラックに浸透して液相金属
脆化の問題を引き起こす可能性が残ることがある。一方、合金化度が高すぎる場合には、
パウダリングなどの問題が発生することがある。
【0033】
また、上記亜鉛系めっき層のめっき付着量は、30~70g/mであってよい。めっ
き付着量が少なすぎる場合には、十分な耐食性を得ることが難しく、一方、めっき付着量
が多すぎる場合には、製造原価上昇及び液相金属脆化の問題が発生する可能性があるため
、上述した範囲内に制御する。より好ましいめっき付着量の範囲は40~60g/m
あってよい。当該めっき付着量は、最終製品に付着しためっき層の量を意味しており、め
っき層がGA層である場合には、合金化によりめっき付着量が増加するため、合金化前に
は、その重量が少し減少することがある。合金化度によって異なるため、必ずしもこれに
制限するものではないが、合金化前の付着量(すなわち、めっき浴から付着するめっきの
量)は、それより約10%程度減少した値であってよい。
【0034】
以下、本発明の鋼板を製造する一実施形態について説明する。但し、本発明の鋼板は必
ずしも下記の実施形態によって製造される必要はなく、下記の実施形態は本発明の鋼板を
製造する好ましい一方法であることに留意する必要がある。
【0035】
まず、上述した組成の鋼スラブを提供し、熱間圧延した後に巻き取る過程によって熱延
鋼板を製造することができる。熱間圧延などの条件については特に制限しないが、本発明
の一実施形態では、スラブ加熱温度及び巻取り温度を次のように制限することができる。
【0036】
スラブ加熱:950~1300℃
固溶元素を十分に溶体化し、圧延抵抗を減らすためにスラブを950℃以上の温度で加
熱する必要がある。本発明の場合には、合金元素が多量含まれることがあるため、上記ス
ラブ加熱温度は1000℃以上であり、好ましくは1050℃以上である。但し、スラブ
加熱温度が高すぎる場合には、固溶元素の酸化などの問題が発生することがあり、オース
テナイト結晶粒の大きさが粗大になることがあり、エネルギー面でも有利でない。そのた
め、上記加熱温度の上限は1300℃、好ましくは1280℃、より好ましくは1250
℃以下に定めることができる。
【0037】
巻取り温度:590~750℃
熱間圧延された鋼板は、この後にコイル状に巻き取られて保管されるが、巻き取られた
鋼板は、徐冷過程を経るようになる。このような過程によって鋼板表層部に含まれた酸化
性元素が除去されるようになるが、熱延鋼板の巻取り温度が低すぎる場合には、これらの
元素の酸化除去に必要な温度より低い温度でコイルが徐冷するため、十分な効果を得るこ
とが難しい。
【0038】
上述した過程を経た熱延鋼板に対して熱延スケールを除去するために、塩酸浴に投入し
て酸洗処理を行う。酸洗時の塩酸浴の塩酸濃度は10~30体積%の範囲で行い、酸洗の
通板速度は180~250mpmで行う。酸洗速度が250mpmを超過する場合には、
熱延鋼板表面スケール(scale)が完全に除去されない場合があり、酸洗速度が18
0mpmより低い場合、素地鉄の表層部が塩酸によって腐食する可能性があるため、18
0mpm以上で行う。
【0039】
酸洗を行った後に冷間圧延を行う。冷間圧延時の冷間圧下率は35~60%の範囲で行
う。冷間圧下率が35%未満であると、特別な問題はないが焼鈍時の再結晶駆動力が不足
して、十分に微細組織を制御し難い点が発生することがある。冷間圧下率が60%を超え
ると、熱延時に確保した内部酸化層の厚さが薄くなって、焼鈍後に十分な内部酸化の深さ
及び酸素濃度の極大値を有することが難しい。
【0040】
上述の冷間圧延過程の後には、鋼板を再結晶焼鈍する過程を続けることができる。鋼板
の焼鈍過程でも表層部のGDOESの酸素の深さプロファイルにおいて極小値と極大値と
の間の差値が大きく異なることがある。そのため、本発明の一実施形態では、表層部のG
DOESの酸素の深さプロファイルにおいて極小値と極大値との間の差値を適切に制御す
る条件で焼鈍工程を制御することができ、そのうち、通板速度及び焼鈍炉内の露点は、次
のような条件で制御できる。
【0041】
通板速度:40~130mpm
十分な生産性を確保するために、上記冷延鋼板の通板速度は40mpm以上である必要
がある。但し、通板速度が過度に速い場合には、材質確保の側面から不利であるため、本
発明の一実施形態では、上記通板速度の上限を130mpmに定めることができる。
【0042】
焼鈍炉内の露点制御:650~900℃から-10~30℃の範囲に制御
適切な範囲の表層部の脱炭率値を得るために、焼鈍炉内の露点を制御することが有利で
ある。露点が低すぎる場合には、内部酸化ではなく表面酸化が発生して表面にSiやMn
などの酸化物が形成されるおそれがある。これらの酸化物は、めっきに悪影響を及ぼす。
したがって、露点は-10℃以上に制御する必要がある。一方、露点が高すぎる場合には
、Feの酸化が発生するおそれがあるため、露点は30℃以下に制御される必要がある。
このように露点制御のための温度は、十分な内部酸化効果が奏される温度である650℃
以上であってよい。本発明の一実施形態において、上述した焼鈍炉内の温度及び露点は、
均熱帯の温度及び露点を基準に定めることができる。但し、温度が高すぎる場合には、S
iなどの表面酸化物が形成されて酸素が内部に拡散することを妨げるだけでなく、均熱帯
の加熱中にオーステナイトが過度に発生して炭素拡散速度が低下し、それにより内部酸化
レベルが減少することがあり、均熱帯のオーステナイトの大きさが過度に成長して材質軟
化を発生させる。また、焼鈍炉への負荷が生じて設備の寿命を短縮し、工程費用を増加さ
せるという問題を引き起こす可能性があるため、上記露点を制御する温度は900℃以下
であってよい。
【0043】
このとき、露点は、水蒸気を含む含湿窒素(N+HO)ガスを焼鈍炉内に投入する
ことで調節することができる。本発明の一実施形態によると、上記窒素ガスは5~10%
の水素(H)を含むことができ、これによって露点を適切な範囲内に制御することがで
きる。
【0044】
このような過程によって焼鈍された鋼板は、直ちにめっき浴に浸漬して溶融亜鉛めっき
を行い、めっきされた溶融亜鉛めっき鋼板は、この後、必要に応じて合金化熱処理の過程
を経ることができる。めっき及び合金化熱処理の好ましい条件は、以下のとおりである。
【0045】
めっき浴鋼板の引き込み温度:420~500℃
めっき浴内の鋼板の引き込み温度が低いと、鋼板と液相亜鉛との接触界面内の濡れ性が
十分に確保できないため、420度以上の温度を維持する必要がある。温度が過度に高い
場合、鋼板と液相亜鉛との反応が起こりすぎて、界面にFe-Zn合金相であるゼータ(
Zetta)相が発生し、めっき層の密着性が低下し、めっき浴内の鋼板のFe元素の溶
出量が過度になって、めっき浴内でドロスが発生するという問題がある。
【0046】
めっき浴内のAl濃度:0.10~0.25%
めっき浴内のAl濃度は、めっき層の濡れ性及びめっき浴の流動性の確保のために、適
正濃度を維持する必要がある。このために、本発明では、めっき浴内のAl濃度を0.1
0~0.25%の範囲に制御する。また、合金化処理の有無によってGA(合金化溶融亜
鉛めっき、Galvannealed)鋼板と、GI(溶融亜鉛めっき、Galvani
zed)鋼板に分けられるが、本発明の一実施形態では、めっき浴内のドロス(dros
s)形成を適正水準に維持し、めっき表面品質及び性能を確保するために、GA鋼板の場
合は、Al含有量を0.10~0.15%とすることができ、GI鋼板の場合は、Al含
有量を0.2~0.25%に制御することができる。
【0047】
合金化(GA)温度:480~560℃
480℃未満ではFe拡散量が少なく、合金化度が十分でないため、めっき物性が良く
ないことがあり、560℃を超える場合、過度な合金化によるパウダリング(powde
ring)問題が発生し、残留オーステナイトのフェライト変態によって材質が劣化する
ことがあるため、合金化温度を上述の範囲に定める。
【0048】
このようにすることで、本願発明の亜鉛めっき鋼板を得ることができる。但し、本発明
の一実施形態では、エッジ部の溶接性をさらに改善させるために、後述するエッジ部の加
熱過程をさらに含むこともできる。
【0049】
熱延コイルのエッジ部の加熱:600~800℃で5~24時間実施
本発明の一実施形態では、エッジ部のGDOESの酸素の深さプロファイルにおいて極
小値と極大値との差値をさらに大きくするために、熱延コイルのエッジ部を加熱すること
もできる。熱延コイルのエッジ部の加熱とは、巻き取られたコイルの幅方向の両端部、す
なわち、エッジ部を加熱することを意味しており、エッジ部の加熱によってエッジ部が酸
化に適した温度で先に加熱される。すなわち、巻き取られたコイルの内部は高温で維持さ
れるが、エッジ部は比較的迅速に冷却され、これによりエッジ部は内部酸化に適した温度
で維持される時間がより短くなる。したがって、幅方向の中心部に比べてエッジ部では酸
化性元素の除去が活発に行われない。エッジ部の加熱は、エッジ部の酸化性元素を除去す
るための一方法として用いることができる。
【0050】
すなわち、エッジ部の加熱を行う場合、巻き取り後の冷却の場合とは逆に、エッジ部が
まず加熱され、これに伴って幅方向のエッジ部の温度が内部酸化に適合するように維持さ
れる。その結果、エッジ部の内部酸化層の厚さが増加するようになる。このためには、上
記エッジ部の加熱温度は600℃以上(鋼板エッジ部の温度を基準とする)である必要が
ある。但し、温度が高すぎる場合には、加熱中にエッジ部にスケールが過度に形成される
か、多孔質の高酸化スケール(hematite)が形成されて酸洗後の表面状態が悪く
なることがあるため、上記エッジ部の温度は800℃以下であってよい。より好ましいエ
ッジ部の加熱温度は600~750℃である。
【0051】
また、巻き取り時に発生した幅方向のエッジ部と中心部との間の表層部のGDOESの
酸素の深さプロファイルで極小値と極大値との間の差値の不均一性を解消するためには、
上記エッジ部の加熱時間は5時間以上である必要がある。但し、エッジ部の加熱時間が長
すぎる場合には、スケールが過度に形成されるか、却ってエッジ部の表層部のGDOES
の酸素の深さプロファイルで極小値と極大値との間の差値が高すぎることがある。したが
って、エッジ部の加熱時間は24時間以下であってよい。
【0052】
本発明の一実施形態によると、上記エッジ部の加熱は、空燃比の調節を介した燃焼加熱
方式によって行うことができる。すなわち、空燃比の調節によって雰囲気中の酸素分率が
変わることがあるが、酸素分圧が高いほど鋼板の表層と接する酸素濃度が増加して、脱炭
や内部酸化が増加することがある。必ずしもこれに限定するものではないが、本発明の一
実施形態では、空燃比の調節を介して酸素を1~2%含む窒素雰囲気に制御することがで
きる。本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者であれば、格別の困難なく空燃比
の調節を介して酸素分率を制御することができるため、これについては別途説明しない。
【実施例0053】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。但し、下記実施例は、本発明を
例示して、より詳細に説明するためのものにすぎず、本発明の権利範囲を制限するための
ものではない点に留意する必要がある。本発明の権利範囲は、特許請求の範囲に記載され
た事項と、それから合理的に類推される事項によって決定されるものであるためである。
【0054】
(実施例)
下記表1に記載された組成を有する鋼スラブ(表に記載されていない残りの成分は、F
e及び不可避不純物である。なお、表中のB及びNは、ppm単位で表し、残りの成分は
重量%単位で表し、表に示されていない成分の含有量は0重量%であることを意味する)
を1234℃で加熱して熱間圧延した後、熱延コイルに対してエッジ部の加熱を行い、そ
の後、長さ100mmの酸洗ラインにおいて210mpmの通板速度で鋼板を19.2体
積%の塩酸溶液で酸洗してから冷間圧延し、得られた冷延鋼板を焼鈍炉で焼鈍した後、直
ちにGAはAlが0.13%であるめっき浴に、GIはAlを0.24重量%含む456
℃の亜鉛系めっき浴に浸漬して溶融亜鉛めっきを行った。得られた溶融亜鉛めっき鋼板に
、必要に応じて合金化(GA)熱処理を行い、最終的に合金化溶融亜鉛めっき鋼板を得た
【0055】
上記焼鈍した直後、Alが0.24重量%含む亜鉛系めっき浴に浸漬した鋼板は、エア
ナイフを介して付着量を調節して冷却を行い、溶融亜鉛めっき鋼板を得た。
【0056】
全ての実施例において、焼鈍炉内の水素の割合を5.0体積%に定め、また溶融亜鉛め
っき浴に引き込む鋼板の引き込み温度を475℃とした。その他の各実施例の別の条件は
、表2に記載したとおりである。
【0057】
【表1】
【0058】
【表2】
【0059】
上述の過程によって製造された溶融亜鉛めっき鋼板の特性を測定し、スポット溶接時に
液相金属脆化(LME)が発生したか否かを観察した結果を表3に示した。スポット溶接
は鋼板を幅方向に切断した後、切断されたそれぞれの周縁部位に沿って実施した。スポッ
ト溶接電流を2回加えて通電した後、1サイクル(cycle)の保持時間(hold
time)を維持した。スポット溶接は、異種3枚重ねで行った。評価素材-評価素材-
GA 980DP 1.4t材の順に積層してスポット溶接を行った。スポット溶接時に
新しい電極を軟質材に15回溶接した後、電極を摩耗させてからスポット溶接の対象素材
で飛散(expulsion)が発生する上限電流を測定する。上限電流を測定した後、
上限電流より0.5及び1.0kA低い電流でスポット溶接を溶接電流別に8回行い、ス
ポット溶接部の断面を放電加工で精密に加工した後、エポキシマウンティングして研磨し
、光学顕微鏡でクラック長さを測定した。光学顕微鏡による観察時の倍率は100倍に指
定し、当該倍率でクラックが発見されなかった場合には液相金属脆化が発生しなかったも
のと判断し、クラックが発見された場合にはイメージ分析ソフトウェアで長さを測定した
。スポット溶接部の肩部で発生するB-typeクラックは100μm以下、C-typ
eクラックは未観察時に良好であると判断した。
【0060】
表層部のGDOESの酸素の深さプロファイルにおいて極小値と極大値との差値は、G
DOESのプロファイルから求めたデータを5点平均して求めた深さ別の酸素濃度値を用
いて計算した。深さ0.5~10μmで現れる最小値を極小点と判断し、上記極小点より
深い位置で形成され、4~15μm深さで現れる最大値を極大点と判断した。
【0061】
表層部のGDOESの酸素の深さプロファイルにおいて極小値と極大値との差値は、深
さ15μm以内の地点で酸素の極大点及び極小点で酸素濃度を測定し、極大点での酸素濃
度から極小値での酸素濃度を引いた値と定義し、その値が0.1%以上であれば、良好で
あると判定した。
【0062】
引張強度はJIS-5号規格のC方向サンプルを製作し、引張試験によって測定した。
合金化度及びめっき付着量は、塩酸溶液を用いた湿式溶解法を用いて測定した。SBTは
、自動車用構造用接着剤D-typeをめっき表面に接着した後、鋼板を90度に曲げて
めっきが脱落するかを確認した。
【0063】
GA鋼板については、パウダリング試験及びFlaking試験を行った。パウダリン
グは、めっき材を90に曲げた後、曲げた部位にテープを接着して剥がし、テープにめっ
き層の脱落物が何mm付着したかを確認した。テープから剥離するめっき層の長さが10
mmを超える場合、不良と確認した。Flaking試験では、逆「コ」状に加工した後
、加工部でめっき層が脱落するかを確認した。
【0064】
GI鋼板については、自動車用構造用接着剤を表面に付着して、鋼板を90度に曲げた
ときにシーラー脱落面にめっき層が剥離して付着されたかを確認するシーラーベンディン
グテスト(Sealer bending test、SBT)を行った。鋼板の未めっ
きなどの欠陥があるか否かを目視で表面品質を確認し、目視観察時に、未めっきなどの欠
陥が見えたら不良と判定した。
【0065】
【表3】
【0066】
上記表3において、1)は酸素プロファイルの極大値と極小値との間の差(重量%)を
意味し、2)はパウダリング長さ(mm)、3)は電気抵抗スポット溶接時に発生したB
-type LMEクラック長さ(μm)を、4)は電気抵抗スポット溶接時に発生した
C-type LMEクラック長さ(μm)を意味する。表中のNDは、未検出(Not
Detected)を意味する。
【0067】
発明例1、2、3、4、5、6、7、8、9、及び10は、鋼組成が本発明で提示する
範囲を満たし、製造方法も本発明の範囲を満たしており、引張強度、めっき品質、めっき
付着量、及びスポット溶接のLMEクラック長さも良好であった。
【0068】
比較例5及び9は、熱延工程中の巻取り温度が本発明で提示する範囲を満たさない。比
較例5は、熱延巻取り温度が本発明が提示する範囲より低くて熱延時に発生する酸化挙動
が適切でなく、酸素プロファイルの極大値と極小値との差が0.1重量%未満であった。
その結果、LMEクラックが基準を満たせなかった。比較例11は、本発明が提示する熱
延巻取り温度を超えて製造された場合であり、熱延過程中に発生するLME特性は良好で
あったが、熱延スケールが過度に発生してスケールが酸洗時に完全に除去されず、未めっ
きが発生して表面品質が不良であり、熱延巻取り温度が過度に高くて熱延材質の軟化が発
生し、焼鈍後にも回復できず材質が劣化した。
【0069】
比較例3は、焼鈍中の炉内露点が本発明が提示する範囲より低く制御された場合である
。冷間圧延後の焼鈍過程中の露点が十分に高くないため、酸化パターンが適切でなく、極
大点と極小点との差値が0.1%未満であり、軟質層が適切に形成されず、スポット溶接
時のLMEクラック長さが過大であった。焼鈍中の露点が低くて適切な酸化挙動に制御で
きず、表面酸化物が過度に発生して表面品質が不良であった。
【0070】
比較例1は、焼鈍炉内の露点範囲が本発明が提示する範囲を超過した場合である。露点
が過度に高くなって適切に酸化パターンが制御されてLMEは満たしたが、過度の内部酸
化によって材質が劣化して基準を満たせなかった。
【0071】
比較例2は、焼鈍内の鋼板の通板速度が本発明が提示する範囲を超えた場合である。焼
鈍炉内の水蒸気と鋼板が反応する脱炭反応に対する十分な時間が与えられず、焼鈍後の鋼
板表層部の内部酸化が十分に形成されなくて極大点と極小点との差が0.1%未満であり
、スポット溶接のLMEクラック評価時の基準を超過して不良であった。
【0072】
比較例10は、焼鈍炉内の均熱帯温度が本発明が提示する範囲を超えた場合である。焼
鈍温度が過度になって外部酸化量が増加して適切な酸素プロファイルが形成されず、極大
値と極小値の差が0.1%未満であり、その結果、LMEクラックが基準を満たせなかっ
た。また、均熱帯でオーステナイトが過度に形成及び成長して材質が基準を満たせず、不
良であった。
【0073】
比較例8は、焼鈍炉内の均熱帯温度が本発明が提示する範囲より低く制御された場合で
ある。焼鈍温度が低くて水蒸気と鋼板との間の酸化反応が十分でなく、酸素プロファイル
が適切に形成されなかった。その結果、極大値と極小値との差が0.1%未満であり、L
MEクラックが基準を満たせず、スポット溶接性が不良であった。また、焼鈍中の再結晶
が十分に行われず、目標とする微細組織が形成されず材質が基準を満たせなかったため、
不良であった。
【0074】
比較例4は、焼鈍時の鋼板の通板速度が本発明が提示する範囲より低かった場合である
。その結果、過度の結晶粒成長によって材質が基準を満たせなかった。
【0075】
比較例7は、冷間圧下率が本発明が提示する基準を超えた場合である。熱延中に形成さ
れる内部酸化層が過度の冷間圧延によって薄くなり、極大値と極小値との差が0.1%未
満であり、LMEクラックが基準を満たせなかったため、不良であった。
【0076】
比較例6は、GA合金化過程で合金化温度が本発明が提示する範囲を超えている。Fe
合金化度が高く、色相が暗くなって表面品質が不良であった。GAパウダリング評価時に
パウダリングが過度に発生した。
【0077】
比較例11は、GA合金化過程で合金化温度が本発明が提示する範囲より低い場合であ
る。Fe合金化度が基準より低く形成され、表面が過度に明るくなって表面品質が不良で
あり、フレーキング(flaking)が発生してめっき表面品質が劣化した。
【0078】
以上のことから、本発明の有利な効果が確認できた。
図1
【手続補正書】
【提出日】2024-07-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
素地鋼板、及び
前記素地鋼板の表面に形成された亜鉛系めっき層
を含む亜鉛めっき鋼板であって、
前記素地鋼板の表面から深さ方向に測定された酸素のGDOESのプロファイルが、前記表面から深さ方向に極小点及び極大点が順に現れる形態を有し、
前記極小点での酸素濃度(極小値)と前記極大点での酸素含有量(極大値)との差(極大値-極小値)が0.1質量%以上である、亜鉛めっき鋼板。
【請求項2】
前記極小点が、素地鋼板の表面から深さ方向に0.5~10μmの範囲で現れる、請求項1に記載の亜鉛めっき鋼板。
【請求項3】
前記極大点が、素地鋼板の表面から深さ方向に4~15μmの範囲で現れる、請求項1に記載の亜鉛めっき鋼板。
【請求項4】
前記極大点での酸素濃度が0.2質量%以上である、請求項3に記載の亜鉛めっき鋼板。
【請求項5】
前記極小点での酸素濃度(極小値)と前記極大点での酸素含有量(極大値)との差(極大値-極小値)が0.39質量%以下である、請求項1に記載の亜鉛めっき鋼板。
【請求項6】
前記亜鉛系めっき層のめっき付着量が30~70g/mである、請求項1に記載の亜鉛めっき鋼板。
【請求項7】
前記鋼板が、質量%で、C:0.05~1.5%、Si:2.0%以下、Mn:1.0~30%、S-Al(酸可溶性アルミニウム):3%以下、Cr:2.5%以下、Mo:1%以下、B:0.005%以下、Nb:0.2%以下、Ti:0.2%以下、V:0.2%以下、Sb+Sn+Bi:0.1%以下、N:0.01%以下を含む組成を有する、請求項1~6のいずれか1項に記載の亜鉛めっき鋼板。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0058
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0058】
【表2】
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0065
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0065】
【表3】
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0068
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0068】
比較例5及び参考例9は、熱延工程中の巻取り温度が本発明で提示する範囲を満たさない。比較例5は、熱延巻取り温度が本発明が提示する範囲より低くて熱延時に発生する酸化挙動が適切でなく、酸素プロファイルの極大値と極小値との差が0.1重量%未満であった。その結果、LMEクラックが基準を満たせなかった。参考例9は、本発明が提示する熱延巻取り温度を超えて製造された場合であり、熱延過程中に発生するLME特性は良好であったが、熱延スケールが過度に発生してスケールが酸洗時に完全に除去されず、未めっきが発生して表面品質が不良であり、熱延巻取り温度が過度に高くて熱延材質の軟化が発生し、焼鈍後にも回復できず材質が劣化した。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0070
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0070】
参考例1は、焼鈍炉内の露点範囲が本発明が提示する範囲を超過した場合である。露点が過度に高くなって適切に酸化パターンが制御されてLMEは満たしたが、過度の内部酸化によって材質が劣化して基準を満たせなかった。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0074
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0074】
参考例4は、焼鈍時の鋼板の通板速度が本発明が提示する範囲より低かった場合である。その結果、過度の結晶粒成長によって材質が基準を満たせなかった。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0076
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0076】
参考例6は、GA合金化過程で合金化温度が本発明が提示する範囲を超えている。Fe合金化度が高く、色相が暗くなって表面品質が不良であった。GAパウダリング評価時にパウダリングが過度に発生した。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0077
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0077】
参考例11は、GA合金化過程で合金化温度が本発明が提示する範囲より低い場合である。Fe合金化度が基準より低く形成され、表面が過度に明るくなって表面品質が不良であり、フレーキング(flaking)が発生してめっき表面品質が劣化した。