(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138333
(43)【公開日】2024-10-08
(54)【発明の名称】冷媒を含む組成物、その使用、並びにそれを有する冷凍機及びその冷凍機の運転方法
(51)【国際特許分類】
C09K 5/04 20060101AFI20241001BHJP
F25B 7/00 20060101ALI20241001BHJP
F25B 1/00 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
C09K5/04 F
C09K5/04 B
F25B7/00 D
F25B1/00 396U
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024107044
(22)【出願日】2024-07-02
(62)【分割の表示】P 2023179020の分割
【原出願日】2023-10-17
(31)【優先権主張番号】P 2022212132
(32)【優先日】2022-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】板野 充司
(72)【発明者】
【氏名】仲上 翼
(72)【発明者】
【氏名】小松 雄三
(57)【要約】
【課題】新規な低GWP混合冷媒を提供する。
【解決手段】冷媒を含む組成物であって、前記冷媒が、トランス-1,2-ジフルオロエチレ
ン(HFO-1132(E))及びプロパンを含み、前記冷媒の合計に対して、HFO-1132(E)及びプロパンの合計の含有割合が99.5質量%以上である、組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を含む組成物であって、
前記冷媒が、トランス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(E))及びプロパンを含み、前記冷媒の合計に対して、HFO-1132(E)及びプロパンの合計の含有割合が99.5質量%以上
であり:
HFO-1132(E)を、HFO-1132(E)とプロパンとの合計に対して25.0質量%~29.2質量%含む;
HFO-1132(E)を、HFO-1132(E)とプロパンとの合計に対して30.7質量%~38.9質量%含む;
HFO-1132(E)を、HFO-1132(E)とプロパンとの合計に対して43.5質量%~48.5質量%含む;
HFO-1132(E)を、HFO-1132(E)とプロパンとの合計に対して51.2質量%~56.3質量%含む;
HFO-1132(E)を、HFO-1132(E)とプロパンとの合計に対して61.4質量%~66.8質量%含む;
HFO-1132(E)を、HFO-1132(E)とプロパンとの合計に対して72.4質量%~75.0質量%含む;
HFO-1132(E)を、HFO-1132(E)とプロパンとの合計に対して20.6質量%~29.9質量%含む;
HFO-1132(E)を、HFO-1132(E)とプロパンとの合計に対して32.0質量%~37.0質量%含む;
HFO-1132(E)を、HFO-1132(E)とプロパンとの合計に対して42.2質量%~48.8質量%含む;
HFO-1132(E)を、HFO-1132(E)とプロパンとの合計に対して50.4質量%~57.0質量%含む;
HFO-1132(E)を、HFO-1132(E)とプロパンとの合計に対して62.3質量%~68.0質量%含む;
HFO-1132(E)を、HFO-1132(E)とプロパンとの合計に対して70.8質量%~75.0質量%含む;
HFO-1132(E)を、HFO-1132(E)とプロパンとの合計に対して7.0質量%~9.7質量%含む;
HFO-1132(E)を、HFO-1132(E)とプロパンとの合計に対して10.4質量%~18.0質量%含む;
HFO-1132(E)を、HFO-1132(E)とプロパンとの合計に対して20.6質量%~29.4質量%含む;
HFO-1132(E)を、HFO-1132(E)とプロパンとの合計に対して31.3質量%~38.7質量%含む;又は
HFO-1132(E)を、HFO-1132(E)とプロパンとの合計に対して40.6質量%~48.5質量%含む、
HFO-1132(E)を、HFO-1132(E)とプロパンとの合計に対して50.8質量%~58.8質量%含む;
HFO-1132(E)を、HFO-1132(E)とプロパンとの合計に対して60.1質量%~69.2質量%含む;又は
HFO-1132(E)を、HFO-1132(E)とプロパンとの合計に対して70.3質量%~75.0質量%含む、
組成物。
【請求項2】
前記冷媒が、さらに、1,1-ジフルオロエチレン(HFO-1132a)及び2-クロロ-1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HCFC-124)からなる群より選択される少なくとも一種を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
さらに、組成物全体に対して0.1質量%以下の水分を含む、請求項1又は2に記載の組
成物。
【請求項4】
R12、R22、R134a、R404A、R407A、R407C、R407F、R407H、R410A、R413A、R417A、R422A、R422B、R422C、R422D、R423A、R424A、R426A、R427A、R430A、R434A、R437A、R438A、R448A、R449A、R449B、R449C、R452A、R452B、R454A、R454B、R454C、R455A、R465A、R502、R507、R513A、R1234yf又はR1234zeの代替冷媒として用いられる、請求項1又は2に記
載の組成物。
【請求項5】
冷媒を含む組成物であって、前記冷媒がHFO-1132(E)及びプロパンを含み、前記冷媒の
合計に対して、HFO-1132(E)及びプロパンの合計の含有割合が99.5質量%以上であり、HFO-1132(E)及びプロパンの合計に対して、HFO-1132(E)の含有割合が20.6~75.0質量%であり
、R1234yfを基準とするCOP比が99%以上、R1234yfを基準とする冷凍能力比が200%
以上である、電気自動車用空調機器の冷凍サイクル運転用組成物。
【請求項6】
冷媒を含む組成物であって、前記冷媒がHFO-1132(E)、ジフルオロエチレン(R32)及びプロパンを含み、前記冷媒の合計に対して、HFO-1132(E)、R32及びプロパンの合計の含有割合が99.5質量%以上であり、
HFO-1132(E)、R32及びプロパンの、これらの総和を基準とする質量%をそれぞれx、y及
びzとするとき、HFO-1132(E)、R32及びプロパンの総和が100質量%となる3成分組成図において、座標(x,y,z)が、
点C(60.0, 40.0, 0.0)、
点P(73.1, 5.0, 21.9)
点Q(10.0, 5.0, 85.0)
点R(10.0, 44.2, 45.8)
点A(55.7, 44.3, 55.8)、
の5点をそれぞれ結ぶ直線CP、PQ、QR、RA及びACで囲まれる図形の範囲内又は前記直線CP、QR及びRA上にある(但し、点A、C、P及びQは除く)、
R410A代替用組成物。
【請求項7】
冷媒を含む組成物であって、前記冷媒がHFO-1132(E)、R32及びプロパンを含み、前記冷媒の合計に対して、HFO-1132(E)、R32及びプロパンの合計の含有割合が99.5質量%以上で
あり、
HFO-1132(E)、R32及びプロパンの、これらの総和を基準とする質量%をそれぞれx、y及
びzとするとき、HFO-1132(E)、R32及びプロパンの総和が100質量%となる3成分組成図において、座標(x,y,z)が、
点P(73.1, 5.0, 21.9)
点Q(10.0, 5.0, 85.0)
点K(10.0, 21.9, 68.1)
点J(66.7, 22.1, 11.2)
の4点をそれぞれ結ぶ直線PQ、QK、KJ及びJPで囲まれる図形の範囲内又は前記直線JP、QK及びKJ上にある、
R1234yf代替用及び/又はR404A代替用組成物。
【請求項8】
冷媒を含む組成物であって、前記冷媒がHFO-1132(E)、R32、プロパン及び二酸化炭素(CO2)を含み、前記冷媒の合計に対して、HFO-1132(E)、R32、プロパン及びCO2の合計の含有割合が99.5質量%以上であり、
CO2、並びにHFO-1132(E)、R32及びプロパンの、これらの総和を基準とする質量%をそれぞれa、並びにx、y及びzとするとき、HFO-1132(E)、R32及びプロパンの総和が(100-a)質
量%となる3成分組成図において、座標(x,y,z)が、
0.0<a≦10.0のとき
点C’(60.0, -a+40.0, 0.0)、
点D’(75.0, 0, -a+25.0)
点Q’(10.0, 0.0, -a+90.0)
点R’(10.0, 44.2, -a+45.8)
点A’(-a+55.7, 44.3, 0.0)、
の5点を結ぶ直線C’D’、D’Q’、Q’R’、R’A’及びA’C’で囲まれる図形の範囲内又は前記直線C’D’、Q’R’及びR’A’上にある(但し、点A’、C’、D’及びQ’は除く)、
R410A代替用組成物。
【請求項9】
冷媒を含む組成物であって、前記冷媒がHFO-1132(E)、R32、プロパン及びCO2を含み、
前記冷媒の合計に対して、HFO-1132(E)、R32プロパン及びCO2の合計の含有割合が99.5質
量%以上であり、
CO2、並びにHFO-1132(E)、R32及びプロパンの、これらの総和を基準とする質量%をそれぞれa、並びにx、y及びzとするとき、HFO-1132(E)、R32及びプロパンの総和が(100-a)質
量%となる3成分組成図において、座標(x,y,z)が、
0.0<a≦0.5のとき
点J’( 66.7, 22.1,-a+11.2)
点D’(75.0, 0.0, -a+25.0)
点Q’(10.0, 0.0, -a+90.0)
点K’(10.0, 21.9, -a+68.1)
の4点を結ぶ直線J’D’、D’Q’、Q’K’及びK’J’で囲まれる図形の範囲内又は前記直線J’D’、Q’K’及びK’J’上にあり、
0.5<a≦10.0のとき
点J’( -0.0524a2+0.266a+66.58, 22.1, 0.0524a2-1.266a+11.32)
点D’(75.0, 0.0, -a+25.0)
点Q’(10.0, 0.0, -a+90.0)
点K’(10.0, 21.9, -a+68.1)
の4点を結ぶ直線J’D’、D’Q’、Q’K’及びK’J’で囲まれる図形の範囲内又は前記直線J’D’、Q’K’及びK’J’上にある、
R1234yf代替用、及び/又はR404A代替用組成物。
【請求項10】
利用側冷媒を循環させる利用側熱搬送サイクルと、
熱源側冷媒を循環させる熱源側熱搬送サイクルと、
前記利用側冷媒と、前記熱源側冷媒とを熱交換させるカスケード熱交換器と、を備え、
前記熱源側冷媒が、請求項1又は2に記載の組成物である、冷凍装置。
【請求項11】
請求項1又は2に記載の組成物を用いて冷凍サイクルを運転する工程を含む冷凍方法。
【請求項12】
請求項1又は2に記載の組成物を作動流体として含む、冷凍機。
【請求項13】
請求項1又は2に記載の組成物の、冷凍機における作動流体としての使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、冷媒を含む組成物、その使用、並びにそれを有する冷凍機及びその冷凍機の運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
R410Aに代替可能な熱サイクル用作動媒体として、トリフルオロエチレン(HFO-1123)
と1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132)とを含む熱サイクル用作動媒体が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、新規な低GWP混合冷媒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
項1.
冷媒を含む組成物であって、
前記冷媒が、トランス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(E))及びプロパンを含み、前記冷媒の合計に対して、HFO-1132(E)及びプロパンの合計の含有割合が99.5質量%以上
であり:
HFO-1132(E)を、HFO-1132(E)とプロパンとの合計に対して25.0質量%~29.2質量%含む;
HFO-1132(E)を、HFO-1132(E)とプロパンとの合計に対して30.7質量%~38.9質量%含む;
HFO-1132(E)を、HFO-1132(E)とプロパンとの合計に対して43.5質量%~48.5質量%含む;
HFO-1132(E)を、HFO-1132(E)とプロパンとの合計に対して51.2質量%~56.3質量%含む;
HFO-1132(E)を、HFO-1132(E)とプロパンとの合計に対して61.4質量%~66.8質量%含む;
HFO-1132(E)を、HFO-1132(E)とプロパンとの合計に対して72.4質量%~75.0質量%含む;
HFO-1132(E)を、HFO-1132(E)とプロパンとの合計に対して20.6質量%~29.9質量%含む;
HFO-1132(E)を、HFO-1132(E)とプロパンとの合計に対して32.0質量%~37.0質量%含む;
HFO-1132(E)を、HFO-1132(E)とプロパンとの合計に対して42.2質量%~48.8質量%含む;
HFO-1132(E)を、HFO-1132(E)とプロパンとの合計に対して50.4質量%~57.0質量%含む;
HFO-1132(E)を、HFO-1132(E)とプロパンとの合計に対して62.3質量%~68.0質量%含む;
HFO-1132(E)を、HFO-1132(E)とプロパンとの合計に対して70.8質量%~75.0質量%含む
;
HFO-1132(E)を、HFO-1132(E)とプロパンとの合計に対して7.0質量%~9.7質量%含む;
HFO-1132(E)を、HFO-1132(E)とプロパンとの合計に対して10.4質量%~18.0質量%含む;
HFO-1132(E)を、HFO-1132(E)とプロパンとの合計に対して20.6質量%~29.4質量%含む;
HFO-1132(E)を、HFO-1132(E)とプロパンとの合計に対して31.3質量%~38.7質量%含む;又は
HFO-1132(E)を、HFO-1132(E)とプロパンとの合計に対して40.6質量%~48.5質量%含む、
HFO-1132(E)を、HFO-1132(E)とプロパンとの合計に対して50.8質量%~58.8質量%含む;
HFO-1132(E)を、HFO-1132(E)とプロパンとの合計に対して60.1質量%~69.2質量%含む;又は
HFO-1132(E)を、HFO-1132(E)とプロパンとの合計に対して70.3質量%~75.0質量%含む、
組成物。
項2.
前記冷媒が、さらに、1,1-ジフルオロエチレン(HFO-1132a)及び2-クロロ-1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HCFC-124)からなる群より選択される少なくとも一種を含む、項1に記載の組成物。
項3.
さらに、組成物全体に対して0.1質量%以下の水分を含む、項1又は2に記載の組成物
。
項4.
R12、R22、R134a、R404A、R407A、R407C、R407F、R407H、R410A、R413A、R417A、R422A、R422B、R422C、R422D、R423A、R424A、R426A、R427A、R430A、R434A、R437A、R438A、R448A、R449A、R449B、R449C、R452A、R452B、R454A、R454B、R454C、R455A、R465A、R502、R507、R513A、R1234yf又はR1234zeの代替冷媒として用いられる、項1~3のいずれか
一項に記載の組成物。
項5.
冷媒を含む組成物であって、前記冷媒がHFO-1132(E)及びプロパンを含み、前記冷媒の
合計に対して、HFO-1132(E)及びプロパンの合計の含有割合が99.5質量%以上であり、HFO-1132(E)及びプロパンの合計に対して、HFO-1132(E)の含有割合が20.6~75.0質量%であり
、R1234yfを基準とするCOP比が99%以上、R1234yfを基準とする冷凍能力比が200%
以上である、電気自動車用空調機器の冷凍サイクル運転用組成物。
項6.
冷媒を含む組成物であって、前記冷媒がHFO-1132(E)、ジフルオロエチレン(R32)及びプロパンを含み、前記冷媒の合計に対して、HFO-1132(E)、R32及びプロパンの合計の含有割合が99.5質量%以上であり、
HFO-1132(E)、R32及びプロパンの、これらの総和を基準とする質量%をそれぞれx、y及
びzとするとき、HFO-1132(E)、R32及びプロパンの総和が100質量%となる3成分組成図において、座標(x,y,z)が、
点C(60.0, 40.0, 0.0)、
点P(73.1, 5.0, 21.9)
点Q(10.0, 5.0, 85.0)
点R(10.0, 44.2, 45.8)
点A(55.7, 44.3, 55.8)、
の5点をそれぞれ結ぶ直線CP、PQ、QR、RA及びACで囲まれる図形の範囲内又は前記直線CP、QR及びRA上にある(但し、点A、C、P及びQは除く)、
R410A代替用組成物。
項7.
冷媒を含む組成物であって、前記冷媒がHFO-1132(E)、R32及びプロパンを含み、前記冷媒の合計に対して、HFO-1132(E)、R32及びプロパンの合計の含有割合が99.5質量%以上で
あり、
HFO-1132(E)、R32及びプロパンの、これらの総和を基準とする質量%をそれぞれx、y及
びzとするとき、HFO-1132(E)、R32及びプロパンの総和が100質量%となる3成分組成図において、座標(x,y,z)が、
点P(73.1, 5.0, 21.9)
点Q(10.0, 5.0, 85.0)
点K(10.0, 21.9, 68.1)
点J(66.7, 22.1, 11.2)
の4点をそれぞれ結ぶ直線PQ、QK、KJ及びJPで囲まれる図形の範囲内又は前記直線JP、QK及びKJ上にある、
R1234yf代替用及び/又はR404A代替用組成物。
項8.
冷媒を含む組成物であって、前記冷媒がHFO-1132(E)、R32、プロパン及び二酸化炭素(CO2)を含み、前記冷媒の合計に対して、HFO-1132(E)、R32、プロパン及びCO2の合計の含有割合が99.5質量%以上であり、
CO2、並びにHFO-1132(E)、R32及びプロパンの、これらの総和を基準とする質量%をそれぞれa、並びにx、y及びzとするとき、HFO-1132(E)、R32及びプロパンの総和が(100-a)質
量%となる3成分組成図において、座標(x,y,z)が、
0.0<a≦10.0のとき
点C’(60.0, -a+40.0, 0.0)、
点D’(75.0, 0, -a+25.0)
点Q’(10.0, 0.0, -a+90.0)
点R’(10.0, 44.2, -a+45.8)
点A’(-a+55.7, 44.3, 0.0)、
の5点を結ぶ直線C’D’、D’Q’、Q’R’、R’A’及びA’C’で囲まれる図形の範囲内又は前記直線C’D’、Q’R’及びR’A’上にある(但し、点A’、C’、D’及びQ’は除く)、
R410A代替用組成物。
項9.
冷媒を含む組成物であって、前記冷媒がHFO-1132(E)、R32、プロパン及びCO2を含み、
前記冷媒の合計に対して、HFO-1132(E)、R32プロパン及びCO2の合計の含有割合が99.5質
量%以上であり、
CO2、並びにHFO-1132(E)、R32及びプロパンの、これらの総和を基準とする質量%をそれぞれa、並びにx、y及びzとするとき、HFO-1132(E)、R32及びプロパンの総和が(100-a)質
量%となる3成分組成図において、座標(x,y,z)が、
0.0<a≦0.5のとき
点J’( 66.7, 22.1,-a+11.2)
点D’(75.0, 0.0, -a+25.0)
点Q’(10.0, 0.0, -a+90.0)
点K’(10.0, 21.9, -a+68.1)
の4点を結ぶ直線J’D’、D’Q’、Q’K’及びK’J’で囲まれる図形の範囲内又は前記直線J’D’、Q’K’及びK’J’上にあり、
0.5<a≦10.0のとき
点J’( -0.0524a2+0.266a+66.58, 22.1, 0.0524a2-1.266a+11.32)
点D’(75.0, 0.0, -a+25.0)
点Q’(10.0, 0.0, -a+90.0)
点K’(10.0, 21.9, -a+68.1)
の4点を結ぶ直線J’D’、D’Q’、Q’K’及びK’J’で囲まれる図形の範囲内又は前記直線J’D’、Q’K’及びK’J’上にある、
R1234yf代替用、及び/又はR404A代替用組成物。
項10.
利用側冷媒を循環させる利用側熱搬送サイクルと、
熱源側冷媒を循環させる熱源側熱搬送サイクルと、
前記利用側冷媒と、前記熱源側冷媒とを熱交換させるカスケード熱交換器と、を備え、
前記熱源側冷媒が、項1~9のいずれか一項に記載の組成物である、冷凍装置。
項11.
項1~9のいずれか一項に記載の組成物を用いて冷凍サイクルを運転する工程を含む冷凍方法。
項12.
項1~9のいずれか一項に記載の組成物を作動流体として含む、冷凍機。
項13.
項1~9のいずれか一項に記載の組成物の、冷凍機における作動流体としての使用。
【発明の効果】
【0006】
本開示の冷媒は、低GWPである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく、鋭意研究を行った結果、以下に説明する各種の混合冷媒が、上記特性を有することを見出した。
【0009】
本開示は、かかる知見に基づきさらに研究を重ねた結果完成されたものである。本開示は、以下の実施形態を含む。
<用語の定義>
本明細書において用語「冷媒」には、ISO817(国際標準化機構)で定められた、冷媒の種類を表すRで始まる冷媒番号(ASHRAE番号)が付された化合物が少なくとも含まれ、さ
らに冷媒番号が未だ付されていないとしても、それらと同等の冷媒としての特性を有するものが含まれる。冷媒は、化合物の構造の面で、「フルオロカーボン系化合物」と「非フルオロカーボン系化合物」とに大別される。「フルオロカーボン系化合物」には、クロロフルオロカーボン(CFC)、ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)及びハイドロフル
オロカーボン(HFC)が含まれる。
【0010】
本明細書において、用語「冷媒を含む組成物」には、(1)冷媒そのもの(冷媒の混合
物を含む)と、(2)その他の成分をさらに含み、少なくとも冷凍機油と混合することにより冷凍機用作動流体を得るために用いることのできる組成物と、(3)冷凍機油を含有する冷凍機用作動流体とが少なくとも含まれる。本明細書においては、これら三態様のうち、(2)の組成物のことを、冷媒そのもの(冷媒の混合物を含む)と区別して「冷媒組成物」と表記する。また、(3)の冷凍機用作動流体のことを「冷媒組成物」と区別して「冷凍機油含有作動流体」と表記する。
【0011】
本明細書において、用語「代替」は、第一の冷媒を第二の冷媒で「代替」するという文脈で用いられる場合、第一の類型として、第一の冷媒を使用して運転するために設計された機器において、必要に応じてわずかな部品(冷凍機油、ガスケット、パッキン、膨張弁、ドライヤその他の部品のうち少なくとも一種)の変更及び機器調整のみを経るだけで、第二の冷媒を使用して、最適条件下で運転することができることを意味する。すなわち、この類型は、同一の機器を、冷媒を「代替」して運転することを指す。この類型の「代替」の態様としては、第二の冷媒への置き換えの際に必要とされる変更乃至調整の度合いが小さい順に、「ドロップイン(drop in)代替」、「ニアリー・ドロップイン(nealy drop in)代替」及び「レトロフィット(retrofit)」があり得る。
【0012】
第二の類型として、第二の冷媒を用いて運転するために設計された機器を、第一の冷媒の既存用途と同一の用途のために、第二の冷媒を搭載して用いることも、用語「代替」に含まれる。この類型は、同一の用途を、冷媒を「代替」して提供することを指す。
【0013】
本明細書において用語「冷凍機」とは、物あるいは空間の熱を奪い去ることにより、周囲の外気よりも低い温度にし、かつこの低温を維持する装置全般のことをいう。言い換えれば、冷凍機は温度の低い方から高い方へ熱を移動させるために、外部からエネルギーを得て仕事を行いエネルギー変換する変換装置のことをいう。
【0014】
本明細書において、「車載用空調機器」とは、ガソリン車、ハイブリッド自動車、電気自動車、水素自動車などの自動車で用いられる冷凍装置の一種である。車載用空調機器とは、蒸発器にて液体の冷媒に熱交換を行わせ、蒸発した冷媒ガスを圧縮機が吸い込み、断熱圧縮された冷媒ガスを凝縮器で冷却して液化させ、さらに膨張弁を通過させて断熱膨張させた後、蒸発機に再び液体の冷媒として供給する冷凍サイクルからなる冷凍装置を指す。
【0015】
本明細書において記載される圧力は、断りの無い場合は、単位を絶対圧とするものである。
【0016】
1.冷媒
本開示の冷媒は、トランス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(E))及びプロパンを含み、前記冷媒の合計に対して、HFO-1132(E)及びプロパンの合計の含有割合が99.5質量%
以上であり:
(1)HFO-1132(E)を、HFO-1132(E)とプロパンとの合計に対して25.0質量%~29.2質量%含む;
(2)HFO-1132(E)を、HFO-1132(E)とプロパンとの合計に対して30.7質量%~38.9質量%含む;
(3)HFO-1132(E)を、HFO-1132(E)とプロパンとの合計に対して43.5質量%~48.5質量%含む;
(4)HFO-1132(E)を、HFO-1132(E)とプロパンとの合計に対して51.2質量%~56.3質量%含む;
(5)HFO-1132(E)を、HFO-1132(E)とプロパンとの合計に対して61.4質量%~66.8質量%含む;
(6)HFO-1132(E)を、HFO-1132(E)とプロパンとの合計に対して72.4質量%~75.0質量%含む;
(7)HFO-1132(E)を、HFO-1132(E)とプロパンとの合計に対して20.6質量%~29.9質量%含む;
(8)HFO-1132(E)を、HFO-1132(E)とプロパンとの合計に対して32.0質量%~37.0質量%含む;
(9)HFO-1132(E)を、HFO-1132(E)とプロパンとの合計に対して42.2質量%~48.8質量%含む;
(10)HFO-1132(E)を、HFO-1132(E)とプロパンとの合計に対して50.4質量%~57.0質量%含む;
(11)HFO-1132(E)を、HFO-1132(E)とプロパンとの合計に対して62.3質量%~68.0質量%含む;
(12)HFO-1132(E)を、HFO-1132(E)とプロパンとの合計に対して70.8質量%~75.0質量%含む;
(13)HFO-1132(E)を、HFO-1132(E)とプロパンとの合計に対して7.0質量%~9.7質量%含む;
(14)HFO-1132(E)を、HFO-1132(E)とプロパンとの合計に対して10.4質量%~18.0質量%含む;
(15)HFO-1132(E)を、HFO-1132(E)とプロパンとの合計に対して20.6質量%~29.4質量%含む;
(16)HFO-1132(E)を、HFO-1132(E)とプロパンとの合計に対して31.3質量%~38.7質量%含む;又は
(17)HFO-1132(E)を、HFO-1132(E)とプロパンとの合計に対して40.6質量%~48.5質量%含む、
(18)HFO-1132(E)を、HFO-1132(E)とプロパンとの合計に対して50.8質量%~58.8質量%含む;
(19)HFO-1132(E)を、HFO-1132(E)とプロパンとの合計に対して60.1質量%~69.2質量%含む;又は
(20)HFO-1132(E)を、HFO-1132(E)とプロパンとの合計に対して70.3質量%~75.0質量%含む。
【0017】
本開示の冷媒は、低GWP混合冷媒である。
【0018】
上記冷媒(1)は、対R410A冷凍能力比が73%以上、かつ、対R410ACOP比が103.25%以上
である。
【0019】
上記冷媒(2)は、対R410A冷凍能力比が76%以上、かつ、対R410ACOP比が102%以上である。
【0020】
上記冷媒(3)は、凝縮グライドが5.0K以下、かつ、対R410ACOP比が100.5%以上である。
【0021】
上記冷媒(4)は、凝縮グライドが3.75K以下、かつ、対R410ACOP比が99.5%以上である。
【0022】
上記冷媒(5)は、凝縮グライドが2.0K以下、かつ、対R410ACOP比が98.75%以上である。
【0023】
上記冷媒(6)は、対R410A冷凍能力比が95%以上、かつ、冷媒が3Mpa、150℃となって
も不均化反応が起こらない。
【0024】
本開示の冷媒は、HFO-1132(E)とプロパンを99.5%以上含み、さらに、HFO-1132a及びR124から選択される少なくとも1種を0.5質量%以下含んでいてもよい。
【0025】
本開示の冷媒は、HFO-1132(E)とプロパンを99.5%以上含み、HFO-1132(E)を、HFO-1132(E)とプロパンとの合計に対して25.0質量%~75.0質量%含み、かつ、HFO-1132a及びR124
からなる群より選択される少なくとも1種を0.5質量%以下含む、R410A代替冷媒であって
もよい。この冷媒は、対R410A冷凍能力比が73%以上、かつ、冷媒が3Mpa、150℃となって
も不均化反応が起こらない。
【0026】
上記冷媒(7)は、対R1234yf凍能力比が200%以上、かつ、対R1234yfCOP比が102.0%以
上である。
【0027】
上記冷媒(8)は、凝縮グライドが6.6K以下、かつ、対R1234yfCOP比が101.5%以上である。
【0028】
上記冷媒(9)は、凝縮グライドが5.6K以下、かつ、対R1234yfCOP比が100.25%以上で
ある。
【0029】
上記冷媒(10)は、対R1234yf凍能力比が250%以上、かつ、対R1234yfCOP比が99.5%以上である。
【0030】
上記冷媒(11)は、凝縮グライドが2.0K以下、かつ、対R1234yfCOP比が99.1%以上で
ある。
【0031】
上記冷媒(12)は、対R1234yf凍能力比が280%以上、かつ、冷媒が3Mpa、150℃となっても不均化反応が起こらない。
【0032】
本開示の冷媒は、HFO-1132(E)とプロパンを99.5%以上含み、HFO-1132(E)を、HFO-1132(E)とプロパンとの合計に対して20.6質量%~75.0質量%含み、かつ、HFO-1132a及びR124
からなる群より選択される少なくとも1種を0.5質量%以下含む、R1234yf代替冷媒であっ
てもよい。この冷媒は、対R1234yf冷凍能力比が200%以上、かつ、冷媒が3Mpa、150℃となっても不均化反応が起こらない。
【0033】
本開示の冷媒は、冷凍サイクルが、局所的に冷媒の圧力が3MPa、かつ冷媒の温度が150℃となっても、不均化反応を抑制することができる。
【0034】
また、本開示の冷媒は、沸点が-40.0℃以下であるため、ヒートポンプによる暖房にお
いて使用しやすいという利点がある。例えば、上記本開示の冷媒は、車載用空調機器の冷凍サイクルを運転するために用いることにより、電気ヒーターに比べて消費電力の少ないヒートポンプによる暖房が可能になるという利点がある。車載用空調機器としては、ガソリン車用、ハイブリッド自動車用、電気自動車用又は水素自動車用等が挙げられる。
【0035】
上記冷媒(13)は、対R404A冷凍能力比が100%以上、かつ、対R404ACOP比が112.2%以
上である。
【0036】
上記冷媒(14)は、対R404A冷凍能力比が103%以上、かつ、対R404ACOP比が111%以上
である。
【0037】
上記冷媒(15)は、対R404A冷凍能力比が112%以上、かつ、対R404A吐出圧比が100%以
上である。
【0038】
上記冷媒(16)は、対R404A冷凍能力比が122%以上、かつ、対R404ACOP比が108.0%以
上である。
【0039】
上記冷媒(17)は、対R404A冷凍能力比が131%以上、かつ、対R404ACOP比が106.5%以
上である。
【0040】
上記冷媒(18)は、凝縮グライドが4.0K以下、かつ、対R404ACOP比が105%以上である。
【0041】
上記冷媒(19)は、対R404A冷凍能力比が140%以上、かつ、対R404ACOP比が104.2%以
上である。
【0042】
上記冷媒(20)は、対R404A冷凍能力比が157%以上、かつ、冷媒が3Mpa、150℃となっても不均化反応が起こらない。
【0043】
本開示の冷媒は、HFO-1132(E)及びプロパンを99.5%以上含み、HFO-1132(E)を、HFO-1132(E)とプロパンとの合計に対して7.0質量%~75.0質量%含み、かつ、HFO-1132a及びR124選択される少なくとも1種を0.5質量%以下含む、R404A代替冷媒であってもよい。この冷
媒は、対R404A冷凍能力比が100%以上、かつ冷媒が3Mpa、150℃となっても不均化反応が起こらない。
【0044】
本開示の冷媒において、冷媒がHFO-1132(E)、ジフルオロエチレン(R32)及びプロパンを含み、前記冷媒の合計に対して、HFO-1132(E)、R32及びプロパンの合計の含有割合が99.5質量%以上であり、
HFO-1132(E)、R32及びプロパンの、これらの総和を基準とする質量%をそれぞれx、y及
びzとするとき、HFO-1132(E)、R32及びプロパンの総和が100質量%となる3成分組成図において、座標(x,y,z)が、以下の要件を満たすとき、3MPa、150℃において不均化反応が起こらず、R410Aに対する冷凍能力(Cap)比が70%以上となり、かつGWPが300以下となる。
点C(60.0, 40.0, 0.0)、
点P(73.1, 5.0, 21.9)
点Q(10.0, 5.0, 85.0)
点R(10.0, 44.2, 45.8)
点A(55.7, 44.3, 55.8)、
の5点をそれぞれ結ぶ直線CP、PQ、QR、RA及びACで囲まれる図形の範囲内又は前記直線CP、QR及びRA上にある(但し、点A、C、P及びQは除く)。
【0045】
本開示の冷媒において、冷媒がHFO-1132(E)、ジフルオロエチレン(R32)及びプロパンを含み、前記冷媒の合計に対して、HFO-1132(E)、R32及びプロパンの合計の含有割合が99.5質量%以上であり、
HFO-1132(E)、R32及びプロパンの、これらの総和を基準とする質量%をそれぞれx、y及
びzとするとき、HFO-1132(E)、R32及びプロパンの総和が100質量%となる3成分組成図において、座標(x,y,z)が以下の要件を満たすとき、3MPa、150℃において不均化反応が起こらず、R1234yfに対する冷凍能力(Cap)比が197.5%以上、R404Aに対する冷凍能力(Cap)比が110%以上となり、かつGWPが150以下となる。
点P(73.1, 5.0, 21.9)
点Q(10.0, 5.0, 85.0)
点K(10.0, 21.9, 68.1)
点J(66.7, 22.1, 11.2)
の4点をそれぞれ結ぶ直線PQ、QK、KJ及びJPで囲まれる図形の範囲内又は前記直線JP、QK及びKJ上にある。
【0046】
また、本開示の冷媒は、沸点が-40.0℃以下であるため、ヒートポンプによる暖房にお
いて使用しやすいという利点がある。例えば、上記本開示の冷媒は、車載用空調機器の冷凍サイクルを運転するために用いることにより、電気ヒーターに比べて消費電力の少ないヒートポンプによる暖房が可能になるという利点がある。車載用空調機器としては、ガソリン車用、ハイブリッド自動車用、電気自動車用又は水素自動車用等が挙げられる。
【0047】
本開示の冷媒において、冷媒がHFO-1132(E)、R32、プロパン及び二酸化炭素(CO2)を
含み、前記冷媒の合計に対して、HFO-1132(E)、R32、プロパン及びCO2の合計の含有割合
が99.5質量%以上であり、
CO2、並びにHFO-1132(E)、R32及びプロパンの、これらの総和を基準とする質量%をそれぞれa、並びにx、y及びzとするとき、HFO-1132(E)、R32及びプロパンの総和が(100-a)質
量%となる3成分組成図において、座標(x,y,z)が以下の要件を満たすとき、3MPa、150℃において不均化反応が起こらず、R410Aに対する冷凍能力(Cap)比が65.0%以上となり、
かつGWPが300以下となる。
0.0<a≦10.0のとき
点C’(60.0, -a+40.0, 0.0)、
点D’(75.0, 0, -a+25.0)
点Q’(10.0, 0.0, -a+90.0)
点R’(10.0, 44.2, -a+45.8)
点A’(-a+55.7, 44.3, 0.0)、
の5点を結ぶ直線C’D’、D’Q’、Q’R’、R’A’及びA’C’で囲まれる図形の範囲内又は前記直線C’D’、Q’R’及びR’A’上にある(但し、点A’、C’、D’及びQ’は除く)。
【0048】
本開示の冷媒において、冷媒がHFO-1132(E)、R32、プロパン及びCO2を含み、前記冷媒
の合計に対して、HFO-1132(E)、R32プロパン及びCO2の合計の含有割合が99.5質量%以上であり、
CO2、並びにHFO-1132(E)、R32及びプロパンの、これらの総和を基準とする質量%をそれぞれa、並びにx、y及びzとするとき、HFO-1132(E)、R32及びプロパンの総和が(100-a)質
量%となる3成分組成図において、座標(x,y,z)が以下の要件を満たすとき、3MPa、150℃において不均化反応が起こらず、R1234yfに対する冷凍能力(Cap)比が185.0%以上となり、R404Aに対する冷凍能力(Cap)比が103.7以上となり、かつGWPが150以下となる。
0.0<a≦0.5のとき
点J’( 66.7, 22.1,-a+11.2 )
点D’(75.0, 0.0, -a+25.0)
点Q’(10.0, 0.0, -a+90.0)
点K’(10.0, 21.9, -a+68.1)
の4点を結ぶ直線J’D’、D’Q’、Q’K’及びK’J’で囲まれる図形の範囲内又は前記直線J’D’、Q’K’及びK’J’上にあり、
0.5<a≦10.0のとき
点J’( -0.0524a2+0.266a+66.58, 22.1, 0.0524a2-1.266a+11.32)
点D’(75.0, 0.0, -a+25.0)
点Q’(10.0, 0.0, -a+90.0)
点K’(10.0, 21.9, -a+68.1)
の4点を結ぶ直線J’D’、D’Q’、Q’K’及びK’J’で囲まれる図形の範囲内又は前記直線J’D’、Q’K’及びK’J’上にある。
【0049】
また、本開示の冷媒は、沸点が-40.0℃以下であるため、ヒートポンプによる暖房にお
いて使用しやすいという利点がある。例えば、上記本開示の冷媒は、車載用空調機器の冷凍サイクルを運転するために用いることにより、電気ヒーターに比べて消費電力の少ないヒートポンプによる暖房が可能になるという利点がある。車載用空調機器としては、ガソリン車用、ハイブリッド自動車用、電気自動車用又は水素自動車用等が挙げられる。
【0050】
また、本開示の冷媒はプロパンとプロパンよりは燃焼性の低いHFO-1132(E)及び/又はR32、及び/又はCO2を混合した冷媒であるが、不燃性冷媒、または微燃性冷媒とはならないので、本開示の冷媒を、利用側冷媒を循環させる利用側熱搬送サイクルと、熱源側冷媒を循環させる熱源側熱搬送サイクルと、前記利用側冷媒と、前記熱源側冷媒とを熱交換させるカスケード熱交換器とを備えた冷凍装置において、前記熱源側冷媒として利用してもよい。
【0051】
本開示の冷媒は、上記の特性や効果を損なわない範囲内で、上記の冷媒に加えて、さらに追加的な冷媒を含有していてもよい。この点で、ある態様においては、本開示の冷媒が、HFO-1132(E)及びプロパン、並びに必要に応じてR32及び/又はCO2の合計を、冷媒全体
に対して99.5質量%以上含むことが好ましく、99.75質量%以上含むことがより好ましく、99.9質量%以上含むことがさらに好ましく、99.999質量%含むことがさらにより好ましく、99.9999質量%以上含むことが最も好ましい。本開示の冷媒は、HFO-1132(E)及びプロパン、並びに必要に応じてR32及び/又はCO2のみから実質的になるものであってもよく、この場合、本開示の冷媒は、HFO-1132(E)及びプロパン、、並びに必要に応じてR32及び/又はCO2、並びに不可避的不純物のみからなるものであってもよい。本開示の冷媒は、HFO-1132(E)及びプロパン、並びに必要に応じてR32及び/又はCO2のみからなるものであってもよい。
【0052】
追加的な冷媒としては、特に限定されず、幅広く選択できる。混合冷媒は、追加的な冷媒として、一種を単独で含んでいてもよいし、二種以上を含んでいてもよい。
【0053】
追加的な冷媒としては、アセチレン、HFO-1141、HFO-1123、HFC-143a、HFC-134a、Z-HFO-1132、HFO-1243zf、HFC-245cb、HCFC-1122、CFC-1113、3,3,3-トリフルオロプロピン、R152a等が挙げられる。
【0054】
2. 冷媒組成物
本開示の冷媒組成物は、本開示の冷媒を少なくとも含み、本開示の冷媒と同じ用途のために使用することができる。また、本開示の冷媒組成物は、さらに少なくとも冷凍機油と混合することにより冷凍機用作動流体を得るために用いることができる。
本開示の冷媒組成物は、本開示の冷媒に加え、さらに少なくとも一種のその他の成分を含有する。本開示の冷媒組成物は、必要に応じて、以下のその他の成分のうち少なくとも一種を含有していてもよい。上述の通り、本開示の冷媒組成物を、冷凍機における作動流体として使用するに際しては、通常、少なくとも冷凍機油と混合して用いられる。したがって、本開示の冷媒組成物は、好ましくは冷凍機油を実質的に含まない。具体的には、本開示の冷媒組成物は、冷媒組成物全体に対する冷凍機油の含有量が好ましくは1質量%以
下であり、より好ましくは0.1質量%以下である。
【0055】
2.1 水
本開示の冷媒組成物は微量の水を含んでもよい。冷媒組成物における含水割合は、冷媒全体に対して、0.1質量%以下とすることが好ましい。冷媒組成物が微量の水分を含むこ
とにより、冷媒中に含まれ得る不飽和のフルオロカーボン系化合物の分子内二重結合が安定化され、また、不飽和のフルオロカーボン系化合物の酸化も起こりにくくなるため、冷媒組成物の安定性が向上する。
【0056】
本開示の組成物には、冷媒を含む組成物であって、前記冷媒がHFO-1132(E)及びプロパ
ン、必要に応じてR32及び/又はCO2、並びに0.1%以下の水分を含む、組成物も含まれる。
【0057】
2.2 トレーサー
トレーサーは、本開示の冷媒組成物が希釈、汚染、その他何らかの変更があった場合、その変更を追跡できるように検出可能な濃度で本開示の冷媒組成物に添加される。
【0058】
本開示の冷媒組成物は、トレーサーとして、一種を単独で含有してもよいし、二種以上を含有してもよい。
【0059】
トレーサーとしては、特に限定されず、一般に用いられるトレーサーの中から適宜選択することができる。
【0060】
トレーサーとしては、例えば、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、クロロフルオロカーボン、ハイドロクロロカーボン、フルオロカーボン、重水素化炭化水素、重水素化ハイドロフルオロカーボン、パーフルオロカーボン、フルオロエーテル、臭素化化合物、ヨウ素化化合物、アルコール、アルデヒド、ケトン、亜酸化窒素(N2O)等が挙げられる。トレーサーとしては、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロクロ
ロフルオロカーボン、クロロフルオロカーボン、ハイドロクロロカーボン、フルオロカーボン及びフルオロエーテルが特に好ましい。
【0061】
トレーサーとしては、以下の化合物が好ましい。
FC-14(テトラフルオロメタン、CF4)
HCC-40(クロロメタン、CH3Cl)
HFC-23(トリフルオロメタン、CHF3)
HFC-41(フルオロメタン、CH3F)
HFC-125(ペンタフルオロエタン、CF3CHF2)
HFC-134a(1,1,1,2-テトラフルオロエタン、CF3CH2F)
HFC-134(1,1,2,2-テトラフルオロエタン、CHF2CHF2)
HFC-143(1,1,2-トリフルオロエタン、CHF2CH2F)
HFC-152a(1,1-ジフルオロエタン、CHF2CH3)
HFC-152(1,2-ジフルオロエタン、CH2FCH2F)
HFC-161(フルオロエタン、CH3CH2F)
HFC-245fa(1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン、CF3CH2CHF2)
HFC-236fa(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、CF3CH2CF3)
HFC-236ea(1,1,1,2,3,3-ヘキサフルオロプロパン、CF3CHFCHF2)
HFC-227ea(1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン、CF3CHFCF3)
HCFC-22(クロロジフルオロメタン、CHClF2)
HCFC-31(クロロフルオロメタン、CH2ClF)
HFE-125(トリフルオロメチル-ジフルオロメチルエーテル、CF3OCHF2)
HFE-134a(トリフルオロメチル-フルオロメチルエーテル、CF3OCH2F)
HFE-143a(トリフルオロメチル-メチルエーテル、CF3OCH3)
HFE-227ea(トリフルオロメチル-テトラフルオロエチルエーテル、CF3OCHFCF3)
HFE-236fa(トリフルオロメチル-トリフルオロエチルエーテル、CF3OCH2CF3)
【0062】
本開示の冷媒組成物は、トレーサーを合計で、冷媒組成物全体に対して、約10重量百万分率(ppm)以上含んでいてもよい。また、本開示の冷媒組成物は、トレーサーを合計で、冷媒組成物全体に対して、約1000ppm以下含んでいてもよい。本開示の冷媒組成物は、トレーサーを合計で、冷媒組成物全体に対して、好ましくは約30ppm以上
、より好ましくは約50ppm以上含んでいてもよい。本開示の冷媒組成物は、トレーサーを合計で、冷媒組成物全体に対して、好ましくは約500ppm以下含んでいてもよく、約300ppm以下含んでいてもよい。
【0063】
2.3 紫外線蛍光染料
本開示の冷媒組成物は、紫外線蛍光染料として、一種を単独で含有してもよいし、二種以上を含有してもよい。
【0064】
紫外線蛍光染料としては、特に限定されず、一般に用いられる紫外線蛍光染料の中から適宜選択することができる。
【0065】
紫外線蛍光染料としては、例えば、ナフタルイミド、クマリン、アントラセン、フェナントレン、キサンテン、チオキサンテン、ナフトキサンテン及びフルオレセイン、並びにこれらの誘導体が挙げられる。紫外線蛍光染料としては、ナフタルイミド及びクマリンのいずれか又は両方が特に好ましい。
【0066】
2.4 安定剤
本開示の冷媒組成物は、安定剤として、一種を単独で含有してもよいし、二種以上を含有してもよい。
【0067】
安定剤としては、特に限定されず、一般に用いられる安定剤の中から適宜選択することができる。
【0068】
安定剤としては、例えば、ニトロ化合物、エーテル類及びアミン類等が挙げられる。
【0069】
ニトロ化合物としては、例えば、ニトロメタン及びニトロエタン等の脂肪族ニトロ化合物、並びにニトロベンゼン及びニトロスチレン等の芳香族ニトロ化合物等が挙げられる。
【0070】
エーテル類としては、例えば、1,4-ジオキサン等が挙げられる。
【0071】
アミン類としては、例えば、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピルアミン、ジフェニルアミン等が挙げられる。
【0072】
その他にも、ブチルヒドロキシキシレン、ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0073】
安定剤の含有割合は、冷媒全体に対して、0.01質量%以上とすることが好ましく、0.05質量%以上とすることがより好ましい。安定剤の含有割合は、冷媒全体に対して、5質量
%以下とすることが好ましく、2質量%以下とすることがより好ましい。
【0074】
2.5 重合禁止剤
本開示の冷媒組成物は、重合禁止剤として、一種を単独で含有してもよいし、二種以上を含有してもよい。
【0075】
重合禁止剤としては、特に限定されず、一般に用いられる重合禁止剤の中から適宜選択することができる。
【0076】
重合禁止剤としては、例えば、4-メトキシ-1-ナフトール、ヒドロキノン、ヒドロキノ
ンメチルエーテル、ジメチル-t-ブチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0077】
重合禁止剤の含有割合は、冷媒全体に対して、0.01質量%以上とすることが好ましく、0.05質量%以上とすることがより好ましい。重合禁止剤の含有割合は、冷媒全体に対して、5質量%以下とすることが好ましく、2質量%以下とすることがより好ましい。
【0078】
3. 冷凍機油含有作動流体
本開示の冷凍機油含有作動流体は、本開示の冷媒又は冷媒組成物と、冷凍機油とを少なくとも含み、冷凍機における作動流体として用いられる。具体的には、本開示の冷凍機油含有作動流体は、冷凍機の圧縮機において使用される冷凍機油と、冷媒又は冷媒組成物とが互いに混じり合うことにより得られる。冷凍機油含有作動流体には冷凍機油は一般に10質量%以上含まれる。冷凍機油含有作動流体には冷凍機油は一般に50質量%以下含まれる。
【0079】
3.1 冷凍機油
本開示の冷媒組成物は、冷凍機油として、一種を単独で含有してもよいし、二種以上を含有してもよい。
【0080】
冷凍機油としては、特に限定されず、一般に用いられる冷凍機油の中から適宜選択することができる。その際には、必要に応じて、前記混合物との相溶性(miscibility)及び
前記混合物の安定性等を向上する作用等の点でより優れている冷凍機油を適宜選択することができる。
【0081】
冷凍機油の基油としては、例えば、ポリアルキレングリコール(PAG)、ポリオールエ
ステル(POE)及びポリビニルエーテル(PVE)からなる群より選択される少なくとも一種が好ましい。
【0082】
冷凍機油は、基油に加えて、さらに添加剤を含んでいてもよい。添加剤は、酸化防止剤、極圧剤、酸捕捉剤、酸素捕捉剤、銅不活性化剤、防錆剤、油性剤及び消泡剤からなる群より選択される少なくとも一種であってもよい。
【0083】
冷凍機油として、40℃における動粘度が5cSt以上であるものが、潤滑の点で好ましい。また、冷凍機油として、40℃における動粘度が400cSt以下であるものが、潤滑の点で好ましい。
【0084】
本開示の冷凍機油含有作動流体は、必要に応じて、さらに少なくとも一種の添加剤を含んでもよい。添加剤としては例えば以下の相溶化剤等が挙げられる。
【0085】
3.2 相溶化剤
本開示の冷凍機油含有作動流体は、相溶化剤として、一種を単独で含有してもよいし、二種以上を含有してもよい。
【0086】
相溶化剤としては、特に限定されず、一般に用いられる相溶化剤の中から適宜選択することができる。
【0087】
相溶化剤としては、例えば、ポリオキシアルキレングリコールエーテル、アミド、ニトリル、ケトン、クロロカーボン、エステル、ラクトン、アリールエーテル、フルオロエーテルおよび1,1,1-トリフルオロアルカン等が挙げられる。相溶化剤としては、ポリオキシアルキレングリコールエーテルが特に好ましい。
【0088】
3.3 用途
本開示の本開示の冷媒、冷媒組成物又は冷凍機油含有作動流体は、R12、R22、R134a、R
404A、R407A、R407C、R407F、R407H、R410A、R413A、R417A、R422A、R422B、R422C、R422D、R423A、R424A、R426A、R427A、R430A、R434A、R437A、R438A、R448A、R449A、R449B、R449C、R452A、R452B、R454A、R454B、R454C、R455A、R465A、R502、R507、R513A、R1234yf又はR1234zeの代替冷媒として用いることができる。
【0089】
4.冷凍機の運転方法
本開示の冷凍機の運転方法は、本開示の冷媒を用いて冷凍機を運転する方法である。
【0090】
具体的には、本開示の冷凍機の運転方法は、本開示の冷媒を冷凍機において循環させる工程を含む。
【0091】
5.不均化反応の抑制方法
本開示の不均化反応の抑制方法は、本開示の冷媒を用いて冷凍サイクルを運転する工程を含む、HFO-1132(E)の不均化反応の抑制方法である。
【0092】
本開示の不均化反応の抑制方法においては、特に、冷媒の圧力が3.0MPaのときに、かつ冷媒の温度が150℃となっても、HFO-1132(E)の不均化反応が起こらないという効果が
得られる。
【0093】
本開示の不均化反応の抑制方法により、特に不均化反応の抑制手段を設けていない冷凍機においても不均化反応を抑制して冷凍サイクルを運転することが可能となる。
【0094】
6.不均化反応の抑制のための使用
本開示の使用は、プロパン、及び/又はR32、及び/又はCO2の、HFO-1132(E)の不均化
反応を抑制するための使用であって、前記不均化反応の抑制は、HFO-1132(E)と、プロパ
ン、及び/又はR32、及び/又はCO2とを、本開示の冷媒の混合比率となるように混合することにより行われる。
【0095】
本開示の不均化反応の抑制のための使用においては、特に、冷媒の圧力が3.0MPaのときに、かつ冷媒の温度が150℃となっても、HFO-1132(E)の不均化反応が起こらないという効果が得られる。
【0096】
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【実施例0097】
以下に、実施例を挙げてさらに詳細に説明する。ただし、本開示は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0098】
HFO-1132(E)、プロパン、及びまたはR32、及びまたはRCO2を、これらの総和を基準として、各表にそれぞれ示した質量%で混合した混合冷媒を調製した。
【0099】
これらの各混合冷媒について、次の試験方法及び試験条件において、不均化反応の有無を調べた。
試験方法
試験容器に、試験する冷媒組成物を移充填し、150℃まで加熱した後、容器内のPt線に
電圧を印可して溶断させることで、冷媒組成物に30Jのエネルギーを与えた。不均化反応
の有無は装置内の急激な圧力上昇及び温度上昇によって判定した。
試験条件
試験容器:38cc SUS製容器
試験温度:150℃
圧力:3 MPa
判定基準
「不爆」:Pt線溶断後の温度又は圧力が2倍未満であり、急激な不均化反応が起こって
いない。
「爆発」:Pt線溶断後の温度又は圧力が2倍以上に達し、急激な不均化反応が起こった
。
【0100】
【0101】
表1、及び
図1の結果から、HFO-1132(E)、R32、プロパンの混合物は、
図1の三角図に示した不均化限界線以下では、冷媒が3Mpa、150℃となっても不均化反応が起こらない
ことが分かる。
【0102】
【0103】
【0104】
【0105】
表2、表3、表4及び
図2、
図3、
図4の結果から、HFO-1132(E)、R32、プロパン、及びCO2の混合物は、
図2、
図3、
図4の三角図に示した不均化限界線以下では、冷媒が3Mpa、150℃となっても不均化反応が起こらないことが分かる。
【0106】
HFO-1132(E)、プロパン、及びまたはR32、及びまたはCO2を、これらの総和を基準とし
て、各表にそれぞれ示した質量%で混合した混合冷媒を調製した。
【0107】
これらの各混合冷媒について、次の試験方法及び試験条件において、各種物性を評価した。
【0108】
HFO-1132(E)のGWPは1とし、プロパン、R32、CO2のGWPは、IPCC(Intergovernmental
Panel on Climate Change)第4次報告書の値に基づいて、混合冷媒のGWPを評価した。また、混合冷媒のCOP、冷凍能力、吐出温度及び沸点は、National Institute of Science and Technology(NIST)Reference Fluid Thermodynamic and Transport Properties Database(Refprop 10.0)を使い、下記条件で混合冷媒の冷凍サイクル理論計算を実施する
ことにより求めた。なお、HFO-1132(E)の物性データについては実測値により求めた。
<対R410A比>
蒸発温度 5℃
凝縮温度 45℃
過熱温度 5K
過冷却温度 5K
圧縮機効率 70%
<対R1234yf比>
蒸発温度 -30℃
凝縮温度 30℃
過熱温度 5K
過冷却温度 5K
圧縮機効率 70%
<対R404A比>
蒸発温度 -40℃
凝縮温度 40℃
過熱温度 20K
過冷却温度 0K
圧縮機効率 70%
【0109】
成績係数(COP)は、次式により求めた。
COP =(冷凍能力)/消費電力量
【0110】
表1及び2中、「COP比」、「冷凍能力比」及び「吐出圧力比」とは、R410Aに対する割合(%)を示す。
【0111】
【0112】
【0113】
表5及び6の結果から、以下のことが判る。
【0114】
上記冷媒(1)は、対R410A冷凍能力比が73%以上、かつ、対R410ACOP比が103.25%以上
である。
【0115】
上記冷媒(2)は、対R410A冷凍能力比が76%以上、かつ、対R410ACOP比が102%以上である。
上記冷媒(3)は、凝縮グライドが5.0K以下、かつ、対R410ACOP比が100.5%以上である。
【0116】
上記冷媒(4)は、凝縮グライドが3.75K以下、かつ、対R410ACOP比が99.5%以上である。
【0117】
上記冷媒(5)は、凝縮グライドが2.0K以下、かつ、対R410ACOP比が98.75%以上である。
【0118】
上記冷媒(6)は、対R410A冷凍能力比が95%以上、かつ、冷媒が3Mpa、150℃となって
も不均化反応が起こらない。
【0119】
さらに、各種不純物の混入による影響を表7に示す通り評価した。
【0120】
【0121】
表7の結果から、本開示の冷媒は、HFO-1132(E)とプロパンを99.5%以上含み、HFO-1132(E)を、HFO-1132(E)とプロパンとの合計に対して25.0質量%~75質量%含み、かつ、HFO-1132a及びR124からなる群より選択される少なくとも1種を0.5質量%以下含む、R410A代替冷媒であってもよいことが判る。この冷媒は、対R410A冷凍能力比が73%以上、かつ、冷媒が3Mpa、150℃となっても不均化反応が起こらない。
【0122】
表7の結果から、本開示の冷媒は、HFO-1132(E)とプロパンを99.5%以上含み、さらに、HFO-1132a及びR124から選択される少なくとも1種を0.5質量%以下含んでいていもよいこ
とが判る。
【0123】
HFO-1132(E)及びプロパンを、これらの総和を基準として、表8及び9にそれぞれ示し
た質量%で混合した混合冷媒を調製した。
【0124】
【0125】
【0126】
これらの各混合冷媒について、上記と同様の試験方法及び試験条件において、各種物性を評価した。
【0127】
なお、表8及び9中、「COP比」、及び「冷凍能力比」とは、R1234yfに対する割合(%
)を示す。
【0128】
表8及び9の結果から、以下のことが判る。
【0129】
上記冷媒(7)は、対R1234yf凍能力比が200%以上、かつ、対R1234yfCOP比が102.0%以
上である。
【0130】
上記冷媒(8)は、凝縮グライドが6.6K以下、かつ、対R1234yfCOP比が101.5%以上である。
【0131】
上記冷媒(9)は、凝縮グライドが5.6K以下、かつ、対R1234yfCOP比が100.25%以上で
ある。
【0132】
上記冷媒(10)は、対R1234yf凍能力比が250%以上、かつ、対R1234yfCOP比が99.5%以上である。
【0133】
上記冷媒(11)は、凝縮グライドが2.0K以下、かつ、対R1234yfCOP比が99.1%以上で
ある。
【0134】
上記冷媒(12)は、対R1234yf凍能力比が280%以上、かつ、冷媒が3Mpa、150℃となっても不均化反応が起こらない。
【0135】
さらに、各種不純物の混入による影響を表6に示す通り評価した。
【0136】
【0137】
表6の結果から、本開示の冷媒は、HFO-1132(E)とプロパンを99.5%以上含み、HFO-1132(E)を、HFO-1132(E)とプロパンとの合計に対して20.6質量%~75.0質量%含み、かつ、HFO-1132a及びR124からなる群より選択される少なくとも1種を0.5質量%以下含む、R1234yf代替冷媒であってもよいことが判る。この冷媒は、対R1234yf冷凍能力比が200%以上、か
つ、冷媒が3Mpa、150℃となっても不均化反応が起こらない。
【0138】
表10の結果から、本開示の冷媒は、HFO-1132(E)とプロパンを99.5%以上含み、さらに、HFO-1132a及びR124から選択される少なくとも1種を0.5質量%以下含んでいていもよい
ことが判る。
【0139】
HFO-1132(E)及びプロパンを、これらの総和を基準として、表7及び8にそれぞれ示し
た質量%で混合した混合冷媒を調製した。
【0140】
【0141】
【0142】
これらの各混合冷媒について、上記と同様の試験方法及び試験条件において、各種物性
を評価した。
【0143】
なお、表11及び12中、「COP比」、「冷凍能力比」及び「吐出圧力比」とは、R404Aに対する割合(%)を示す。
【0144】
表11及び12の結果から、以下のことが判る。
【0145】
上記冷媒(13)は、対R404A冷凍能力比が100%以上、かつ、対R404ACOP比が112.2%以
上である。
【0146】
上記冷媒(14)は、対R404A冷凍能力比が103%以上、かつ、対R404ACOP比が111%以上
である。
【0147】
上記冷媒(15)は、対R404A冷凍能力比が112%以上、かつ、対R404A吐出圧比が100%以下である。
【0148】
上記冷媒(16)は、対R404A冷凍能力比が122%以上、かつ、対R404ACOP比が108.0%以
上である。
【0149】
上記冷媒(17)は、対R404A冷凍能力比が131%以上、かつ、対R404ACOP比が106.5%以
上である。
【0150】
上記冷媒(18)は、凝縮グライドが4.0K以下、かつ、対R404ACOP比が105%以上である。
【0151】
上記冷媒(19)は、対R404A冷凍能力比が140%以上、かつ、対R404ACOP比が104.2%以
上である。
【0152】
上記冷媒(20)は、対R404A冷凍能力比が157%以上、かつ、冷媒が3Mpa、150℃となっても不均化反応が起こらない。
【0153】
さらに、各種不純物の混入による影響を表13に示す通り評価した。
【0154】
【0155】
表13の結果から、本開示の冷媒は、HFO-1132(E)及びプロパンを99.5%以上含み、HFO-1132(E)を、HFO-1132(E)とプロパンとの合計に対して7.0質量%~75質量%含み、かつ、HFO-1132a、R143a、R134a、R124及びR152aからなる群より選択される少なくとも1種を0.5質量%以下含む、R404A代替冷媒であってもよいことが判る。この冷媒は、対R404A冷凍能
力比が100%以上、かつ冷媒が3Mpa、150℃となっても不均化反応が起こらない。
【0156】
表13の結果から、本開示の冷媒は、さらに、1,1-ジフルオロエチレン(HFO-1132a)
及び2-クロロ-1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HCFC-124)からなる群より選択される少
なくとも一種を含んでいてもよいことが判る。
【0157】
表10に示す割合で各成分を混合し、得られた組成物について酸分(酸成分)の含有量及び外観をそれぞれ以下の通り評価した。
【0158】
組成物の安定性試験において、ガス中の酸分の分析は次のような方法で行った。上記冷却後のチューブを、液体窒素を用いて、チューブ内に滞留するガスを完全に凝固させた。その後、チューブを開封し、徐々に解凍してガスをテドラーバッグに回収した。このテドラーバッグに純水5gを注入し、回収ガスとよく接触させながら酸分を純水に抽出するようにした。抽出液をイオンクロマトグラフィーにて検出して、フッ化物イオン(F-)の含有量(質量ppm)を測定した。
【0159】
【0160】
表14に示す通り、酸素0.01ル%以上存在下においては、酸化分解物の生成が確認できる。さらに、酸素0.01モル%以上存在下においては、水の添加量が少なくとも10質量ppm以上となる場合において、酸化分解物の生成量が抑制されることが判る。また、酸素0.01モル%以上存在下においては、水の添加量が2000質量ppm未満となる場合において、固形物の生成が抑制されることも判る。
【0161】
HFO-1132(E)、R32及びプロパンを、これらの総和を基準として、表15及び16にそれぞれ示した質量%で混合した混合冷媒を調製した。
【0162】
【0163】
【0164】
表15,16、
図5に示す通り、HFO-1132(E)、R32及びプロパンの、これらの総和を基準とする質量%をそれぞれx、y及びzとするとき、HFO-1132(E)、R32及びプロパンの総和が100質量%となる3成分組成図において、座標(x,y,z)が以下の要件を満たすとき、冷媒は3MPa、150℃において不均化反応が起こらず、R410Aに対する冷凍能力(Cap)比が70%以上となり、かつGWPが300以下となる。
点C(60.0, 40.0, 0.0)、
点P(73.1, 5.0, 21.9)
点Q(10.0, 5.0, 85.0)
点R(10.0, 44.2, 45.8)
点A(55.7, 44.3, 55.8)、
の5点をそれぞれ結ぶ直線CP、PQ、QR、RA及びACで囲まれる図形の範囲内又は前記直線CP、QR及びRA上にある(但し、点A、C、P及びQは除く)。
【0165】
HFO-1132(E)、R32及びプロパンを、これらの総和を基準として、表17及び18にそれぞれ示した質量%で混合した混合冷媒を調製した。
【0166】
【0167】
【0168】
表17,18、
図6に示す通り、
HFO-1132(E)、R32及びプロパンの、これらの総和を基準とする質量%をそれぞれx、y及びzとするとき、HFO-1132(E)、R32及びプロパンの総和が100質量%となる3成分組成図におい
て、座標(x,y,z)が以下の要件を満たすとき、冷媒は3MPa、150℃において不均化反応が起こらず、R1234yfに対する冷凍能力(Cap)比が197.5%以上となり、かつGWPが150以下となる。
点P(73.1, 5.0, 21.9)
点Q(10.0, 5.0, 85.0)
点K(10.0, 21.9, 68.1)
点J(66.7, 22.1, 11.2)
の4点をそれぞれ結ぶ直線PQ、QK、KJ及びJPで囲まれる図形の範囲内又は前記直線JP、QK及びKJ上にある。
【0169】
HFO-1132(E)、R32及びプロパンを、これらの総和を基準として、表19及び20にそれぞれ示した質量%で混合した混合冷媒を調製した。
【0170】
【0171】
【0172】
表19,20、
図7に示す通り、
HFO-1132(E)、R32及びプロパンの、これらの総和を基準とする質量%をそれぞれx、y及びzとするとき、HFO-1132(E)、R32及びプロパンの総和が100質量%となる3成分組成図におい
て、座標(x,y,z)が以下の要件を満たすとき、冷媒は3MPa、150℃において不均化反応が起こらず、R404Aに対する冷凍能力(Cap)比が110%以上となり、かつGWPが150以下となる。
点P(73.1, 5.0, 21.9)
点Q(10.0, 5.0, 85.0)
点K(10.0, 21.9, 68.1)
点J(66.7, 22.1, 11.2)
の4点をそれぞれ結ぶ直線PQ、QK、KJ及びJPで囲まれる図形の範囲内又は前記直線JP、QK及びKJ上にある。
【0173】
HFO-1132(E)、R32、プロパン及びCO2を、これらの総和を基準として、表21、22及
び23にそれぞれ示した質量%で混合した混合冷媒を調製した。
【0174】
【0175】
【0176】
【0177】
さらに、CO2=a質量%ととし、三角図におけるx=E-HFO-1132、y=R32、z=プロパンとした各点を表22に示すように最小二乗法により求めた。
【0178】
【0179】
表21から23、及び
図7から9より、
トランス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(E))、ジフルオロエチレン(R32)、プロ
パン及び二酸化炭素(CO2)を含み、前記冷媒の合計に対して、HFO-1132(E)、R32プロパ
ン及びCO2 の含有割合が99.5質量%以上であり、CO2をa質量%としたとき、HFO-1132(E)、R32及びプロパンの、これらの総和を基準とする質量%をそれぞれx、y及びzとし、HFO-1132(E)、R32及びプロパンの総和が(100-a)質量%となる3成分組成図において、座標(x,y,z)が以下の要件を満たすとき、3MPa、150℃において不均化反応が起こらず、R410Aに対する冷凍能力(Cap)比が65.0%以上となり、かつGWPが300以下となる。
0.0<a≦10.0のとき
点C’(60.0, -a+40.0, 0.0)、
点D’(75.0, 0.0, -a+25.0)
点Q’(10.0, 0.0, -a+90.0)
点R’(10.0, 44.2, -a+45.8)
点A’(-a+55.7, 44.3, 0.0)、
の5点を結ぶ直線C’D’、D’Q’、Q’R’、R’A’及びA’C’で囲まれる図形の範囲内又は前記直線C’D’、Q’R’及びR’A’上にある(但し、点A’、C’、D’及びQ’は除く)
。
【0180】
HFO-1132(E)、R32、プロパン及びCO2を、これらの総和を基準として、表25、26及
び27にそれぞれ示した質量%で混合した混合冷媒を調製した。
【0181】
【0182】
【0183】
【0184】
さらに、CO2=a質量%ととし、三角図におけるx=E-HFO-1132、y=R32、z=プロパンとした各点を表22に示すように最小二乗法により求めた。
【0185】
【0186】
表25から28、及び
図10から12より、
トランス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(E))、ジフルオロエチレン(R32)、プロ
パン及び二酸化炭素(CO2)を含み、前記冷媒の合計に対して、HFO-1132(E)、R32プロパ
ン及びCO2 の含有割合が99.5質量%以上であり、CO2をa質量%としたとき、HFO-1132(E)、R32及びプロパンの、これらの総和を基準とする質量%をそれぞれx、y及びzとし、HFO-1132(E)、R32及びプロパンの総和が(100-a)質量%となる3成分組成図において、座標(x,y,z)が以下の要件を満たすとき、3MPa、150℃において不均化反応が起こらず、R1234yfに対する冷凍能力(Cap)比が185.0%以上となり、かつGWPが150以下となる。
0.0<a≦0.5のとき
点J’( 66.7, 22.1,-a+11.2 )
点D’(75.0, 0.0, -a+25.0)
点Q’(10.0, 0.0, -a+90.0)
点K’(10.0, 21.9, -a+68.1)
の4点を結ぶ直線J’D’、D’Q’、Q’K’及びK’J’で囲まれる図形の範囲内又は前記直線J’D’、Q’K’及びK’J’上にあり、
0.5<a≦10.0のとき
点J’( -0.0524a2+0.266a+66.58, 22.1, 0.0524a2-1.266a+11.32)
点D’(75.0, 0.0, -a+25.0)
点Q’(10.0, 0.0, -a+90.0)
点K’(10.0, 21.9, -a+68.1)
の4点を結ぶ直線J’D’、D’Q’、Q’K’及びK’J’で囲まれる図形の範囲内又は前記直線J’D’、Q’K’及びK’J’上にある。
【0187】
HFO-1132(E)、R32、プロパン及びCO2を、これらの総和を基準として、表25、26及
び27にそれぞれ示した質量%で混合した混合冷媒を調製した。
【0188】
【0189】
【0190】
【0191】
表28及び表29から31、及び
図11から12より、トランス-1,2-ジフルオロエチ
レン(HFO-1132(E))、ジフルオロエチレン(R32)、プロパン及び二酸化炭素(CO2)を
含み、前記冷媒の合計に対して、HFO-1132(E)、R32プロパン及びCO2 の含有割合が99.5質量%以上であり、CO2をa質量%としたとき、HFO-1132(E)、R32及びプロパンの、これらの総和を基準とする質量%をそれぞれx、y及びzとし、HFO-1132(E)、R32及びプロパンの総和が(100-a)質量%となる3成分組成図において、座標(x,y,z)が以下の要件を満たすとき、3MPa、150℃において不均化反応が起こらず、R404Aに対する冷凍能力(Cap)比が103.7以上となり、かつGWPが150以下となる。
0.0<a≦0.5のとき
点J’( 66.7, 22.1,-a+11.2 )
点D’(75.0, 0.0, -a+25.0)
点Q’(10.0, 0.0, -a+90.0)
点K’(10.0, 21.9, -a+68.1)
の4点を結ぶ直線J’D’、D’Q’、Q’K’及びK’J’で囲まれる図形の範囲内又は前記直線J’D’、Q’K’及びK’J’上にあり、
0.5<a≦10.0のとき
点J’( -0.0524a2+0.266a+66.58, 22.1, 0.0524a2-1.266a+11.32)
点D’(75.0, 0.0, -a+25.0)
点Q’(10.0, 0.0, -a+90.0)
点K’(10.0, 21.9, -a+68.1)
の4点を結ぶ直線J’D’、D’Q’、Q’K’及びK’J’で囲まれる図形の範囲内又は前記直線J’D’、Q’K’及びK’J’上にある。