(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138345
(43)【公開日】2024-10-08
(54)【発明の名称】密封装置
(51)【国際特許分類】
F16C 33/78 20060101AFI20241001BHJP
F16C 19/18 20060101ALI20241001BHJP
F16C 33/66 20060101ALI20241001BHJP
F16J 15/3232 20160101ALI20241001BHJP
F16J 15/3252 20160101ALI20241001BHJP
C10M 171/02 20060101ALI20241001BHJP
B60B 35/16 20060101ALI20241001BHJP
B60B 35/18 20060101ALI20241001BHJP
C10N 50/10 20060101ALN20241001BHJP
C10N 30/06 20060101ALN20241001BHJP
C10N 30/00 20060101ALN20241001BHJP
C10N 40/02 20060101ALN20241001BHJP
【FI】
F16C33/78 D
F16C19/18
F16C33/66 Z
F16J15/3232 201
F16J15/3252
C10M171/02
B60B35/16 C
B60B35/18 B
C10N50:10
C10N30:06
C10N30:00 Z
C10N40:02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024107469
(22)【出願日】2024-07-03
(62)【分割の表示】P 2024508586の分割
【原出願日】2023-06-13
(31)【優先権主張番号】P 2022111276
(32)【優先日】2022-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000102670
【氏名又は名称】NOKクリューバー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】弁理士法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】首藤 雄一
(72)【発明者】
【氏名】廣田 一貴
(72)【発明者】
【氏名】▲柳▼澤 伸明
(57)【要約】
【課題】必要とされる特性を充分に発揮することができる密封装置を提供すること。
【解決手段】密封装置10は、本体部3と、本体部3から突出する第1リップ41と、本体部3から突出し、第1リップ41よりも第1リップ41の半径方向の内側に位置する第2リップ42と、を備え、第1リップ41および第2リップ42は、本体部3から内側部材または外側部材の一方に向かって延びており、第1リップ41の表面に塗布された第1グリスG1と、第2リップ42の表面に塗布された第2グリスG2と、を備え、第1グリスG1の特性と、第2グリスG2の特性とは、互いに異なる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハブベアリングの相対的に回転する内側部材と外側部材との間の環状の隙間を封止する密封装置であって、
本体部と、
前記本体部から突出する第1リップと、
前記本体部から突出し、前記第1リップよりも前記第1リップの半径方向の内側に位置する第2リップと、を備え、
前記第1リップおよび前記第2リップは、前記本体部から前記内側部材または前記外側部材の一方に向かって延びており、
前記第1リップの表面に塗布された第1グリスと、
前記第2リップの表面に塗布された第2グリスと、を備え、
前記第1グリスの特性と、前記第2グリスの特性とは、互いに異なる、
ことを特徴とする密封装置。
【請求項2】
前記第1グリスのJISK2220:2013に規定されたちょう度番号と、前記第2グリスのJISK2220:2013に規定されたちょう度番号とは、互いに異なる、
請求項1に記載の密封装置。
【請求項3】
前記第2グリスのJISK2220:2013に規定されたちょう度番号は、前記第1グリスのJISK2220:2013に規定されたちょう度番号よりも小さい、
請求項2に記載の密封装置。
【請求項4】
前記第2グリスのしゅう動時のせん断粘度と、前記第1グリスのしゅう動時のせん断粘度とは、互いに異なる、
請求項1に記載の密封装置。
【請求項5】
前記第2グリスのしゅう動時のせん断粘度は、前記第1グリスのしゅう動時のせん断粘度よりも小さい、
請求項4に記載の密封装置。
【請求項6】
前記第1グリスに含まれる増ちょう剤の含有率と、前記第2グリスに含まれる増ちょう剤の含有率とは、互いに異なる、
請求項1に記載の密封装置。
【請求項7】
前記第1グリスの耐水性は、前記第2グリスの耐水性よりも高い、
請求項1に記載の密封装置。
【請求項8】
前記第1グリスの色の濃さは、前記第2グリスの色の濃さよりも濃い、
請求項1に記載の密封装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密封装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車のハブ等に、転がり軸受が用いられている。転がり軸受の内部を密封する密封装置としては、例えば特許文献1に記載の密封装置が挙げられる。
【0003】
特許文献1に記載の密封装置は、軸受けの内輪と外輪との間に圧入装着される。当該密封装置は複数のリップを有する。各リップの先端面が内輪の内周面に対して弾性摺接することにより、外部からの汚泥または塵埃等の異物の侵入が抑制される。また、各リップの先端面には、摺動性等の観点からグリスが塗布されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来は、各リップに塗布されるグリスは全て同じである。このため、従来の密封装置では、各リップに必要とされる機能を充分に発揮することが難しい。よって、従来の密封装置では、密封装置に必要とされる機能が充分に発揮されていなかった。それゆえ、例えば、異物の侵入の抑制と低トルク化との両立を充分に図ることが難しかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するために、本発明の一態様に係る密封装置は、ハブベアリングの相対的に回転する内側部材と外側部材との間の環状の隙間を封止する密封装置であって、本体部と、前記本体部から突出する第1リップと、前記本体部から突出し、前記第1リップよりも前記第1リップの内側に位置する第2リップと、を備え、前記第1リップおよび前記第2リップは、前記本体部から前記内側部材または前記外側部材の一方に向かって延びており、前記第1リップの表面に塗布された第1グリスと、前記第2リップの表面に塗布された第2グリスと、を備え、前記第1グリスの特性と、前記第2グリスの特性とは、互いに異なる。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、密封装置に必要とされる特性を充分に発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係るハブベアリングを示す断面図である。
【
図2】密封装置の一例であるシール部材の使用時の部分断面図である。
【
図3】
図2のシール部材がハブベアリングに配置される前の状態を示す図である。
【
図4】複数のシール部材を積み重ねた状態を示す図である。
【
図5】第1グリスのちょう度とトルクとの関係を示す図である。
【
図6】第2グリスのちょう度とトルクとの関係を示す図である。
【
図7】ちょう度の測定方法を説明するための図である。
【
図8】ちょう度の測定方法を説明するための図である。
【
図9】耐泥水性およびトルクと、グリスとの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態を説明する。なお、図面において各部の寸法や縮尺は実際と適宜に異なり、理解を容易にするために模式的に示している部分もある。また、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られない。
【0010】
1.第1実施形態
1-1.ハブベアリング
図1は、第1実施形態に係るハブベアリング100を示す部分断面図である。なお、以下では、任意の地点から図中の上方に向かう方向を「X1方向」といい、任意の地点から図中の下方に向かう方向を「X2方向」という。また、本発明の用途は
図1に示すハブベアリング100に限定されず、他のハブベアリングにも本発明は適用可能である。ハブベアリング100は、玉軸受であるが、本発明の用途は玉軸受には限定されず、ころ軸受および針軸受等の他の種類ハブベアリングにも適用可能である。また、
図1に示すハブベアリング100は自動車に用いられるが、本発明を備えるハブベアリングは、自動車以外の機械にも適用可能である。
【0011】
図1に示すハブベアリング100は、ハブ11と、内輪12と、外輪13と、複数の玉141と、複数の玉142と、複数の保持器151と、複数の保持器152と、を有する。ハブ11は、「内側部材」の一例である。外輪13は、「外側部材」の一例である。なお、
図1では、複数の玉141のうちの1つが図示され、複数の玉142のうちの1つが図示される。同様に、
図1では、複数の保持器151のうちの1つが図示され、複数の保持器152のうちの1つが図示される。
【0012】
ハブ11は、図示しないスピンドルが内部に挿通される孔HXを有する。孔HXの中心軸線は、ハブベアリング100の中心軸線AXでもある。中心軸線AXは、X1方向に延びる。ハブベアリング100のX1方向は、自動車の車輪が配置される外側、すなわちアウターボード側である。ハブベアリング100のX2方向は、差動歯車等が配置される内側、すなわちインナーボード側である。また、
図1中の左側が半径方向の外側であり、
図1中の右側が半径方向の内側である。また、ハブ11は、外輪13よりも半径方向の外側に張り出したフランジ110を有する。フランジ110には、ボルト19によって、車輪を取り付けることができる。
【0013】
内輪12は、ハブ11に取り付けられる。外輪13は、内輪12の半径方向の外側に配置されており、内輪12およびハブ11に対して離間する。外輪13は、基部131と基部131からX1方向に突出する端部132とを有する。複数の玉141は、ハブ11と外輪13との間に配置され、詳細な図示はしないが中心軸線AXの周方向に一列に並ぶ。複数の玉142は、複数の玉141に対してX1方向に位置する。複数の玉141は、内輪12と外輪13との間に配置され、中心軸線AXの周方向に一列に並ぶ。同様に、複数の玉142は、内輪12と外輪13との間に配置され、中心軸線AXの周方向に一列に並ぶ。複数の保持器151は、複数の玉141を保持する。複数の保持器152は、複数の玉142を保持する。
【0014】
かかるハブベアリング100では、外輪13はナックル16に固定されており、外輪13に対してハブ11および内輪12が回転する。また、ハブベアリング100の内部には、ハブベアリング100の潤滑のための潤滑剤が充填される。
【0015】
図1に示すように、シール部材2は、ハブ11と外輪13との間に配置される。シール部材2は、「密封部材」に相当する。シール部材2は、環状であり、ハブ11と外輪13との間の間隙を封止する。また、内輪12と外輪13との間には、シール部材4が配置される。シール部材4は、環状であり、内輪12と外輪13との間の間隙を封止する。シール部材4は、シール部材2に対してインナーボード側に位置し、シール部材2は、シール部材4に対してアウターボード側に位置する。これらのシール部材2および4が配置されることで、ハブ11および内輪12の回転を許容しつつ、ハブベアリング100の内部への汚水等およびダスト等の異物の侵入を抑制することができる。
【0016】
1-2.シール部材2
シール部材2は、外輪13に固定され、ハブ11の内周面111に対して摺動する。
【0017】
図2は、密封装置の一例であるシール部材2の使用時の部分断面図である。なお、使用時とは、ハブベアリング100にシール部材2が装着された状態をいう。
図2に示すように、シール部材2は、弾性を有する弾性環20と補強環25とを有する複合構造である。弾性環20は、弾性を有しており、例えばエラストマー等で形成される。また、補強環25は、金属または合金で形成されており、弾性環20を補強する剛性を有する。補強環25は、弾性環20に密接しており、補強環25の一部は、弾性環20に埋設されている。
【0018】
かかるシール部材2は、本体部3と、第1リップ41と、第2リップ42と、第3リップ43と、第4リップ44とを有する。本体部3は、外輪13に固定される。第1リップ41、第2リップ42、第3リップ43および第4リップ44のそれぞれは、本体部3から「内側部材」の例示であるハブ11に向かって延びる。
【0019】
図2に示す例では、本体部3は、円筒部31と、外側円環部32と、内側円環部33とを有する。円筒部31は、弾性環20の肉厚部分と補強環25のU字断面の部分とで構成される。円筒部31は、外輪13の端部132よりも外側に位置し、中心軸線AXを中心とする円筒状の部分である。円筒部31は、端部132に嵌め合わされることで、端部132に固定されている。
【0020】
外側円環部32は、円筒部31から半径方向の外側に向かって延びる円環状の部分である。外側円環部32は、弾性環20の一部と補強環25の一部で構成される。
【0021】
内側円環部33は、円筒部31から半径方向の内側に向かって延びる部分である。
図2に示す例では、内側円環部33は、円筒部31から半径方向の内側に向かって延び、半径方向の内側に向かう方向かつX1方向に対して斜めに延びた後、半径方向の内側に向かって延びる。内側円環部33は、弾性環20の一部と補強環25の一部で構成される。内側円環部33を構成する補強環25の一部は、端部132に接触する。
【0022】
図2に示す第1リップ41、第2リップ42、第3リップ43および第4リップ44のそれぞれは、弾性を有しており、弾性環20の一部で構成される。第1リップ41、第2リップ42、第3リップ43および第4リップ44は、互いに離間する。第1リップ41、第2リップ42、第3リップ43および第4リップ44のそれぞれは、薄板な円環状であり、本体部3からハブ11に向かって突出する。また、シール部材2がハブベアリング100に配置された状態では、第1リップ41、第2リップ42、第3リップ43および第4リップ44のそれぞれは、ハブ11に接触し、反力を受けて変形している。また、使用時において、第1リップ41、第2リップ42および第3リップ43の各先端は、ハブ11の内周面111に接触し、内周面111に対して摺動する。
【0023】
第1リップ41は、第2リップ42に対して半径方向の外側に位置する。第1リップ41は、サイドリップと呼ばれる。第1リップ41は、本体部3の内側円環部33からX1方向、すなわちアウトボード側に向かって延びる。かかる第1リップ41は、ハブベアリング100の内側への泥水等の異物の侵入を阻止する。
【0024】
第2リップ42は、第1リップ41よりも第1リップ41の半径方向の内側に位置する。また、第2リップ42は、第1リップ41と第3リップ43との間に位置する中間リップである。第2リップ42は、本体部3の内側円環部33からX1方向、すなわちアウトボード側に向かって延びる。第2リップ42は、第1リップ41と同様に、ハブベアリング100の内側への泥水等の異物の侵入を阻止する。特に、第2リップ42は、第1リップ41をすり抜けて流入した異物を阻止する。
【0025】
第3リップ43は、複数のリップのうち最も半径方向の内側に位置する。第3リップ43は、グリスリップとも呼ばれる。第3リップ43は、本体部3の内側円環部33半径方向の内側に向かう方向かつX2方向に対して斜めに延びに向かって延びる。かかる第3リップ43は、ハブベアリング100の内部のグリスの流出を阻止する。
【0026】
第4リップ44は、複数のリップのうち最も半径方向の外側に位置する。第4リップ44は、第1リップ41の半径方向の外側に位置し、外側リップとも呼ばれる。第4リップ44は、本体部3の外側円環部32からX1方向、すなわちアウトボード側に向かって延びる。第4リップ44は、ハブベアリング100の内側への泥水等の異物の侵入を阻止する。なお、第4リップ44が設けられることで、異物の侵入を抑制する効果の向上が見込まれるが、第4リップ44は適宜省略してもよい。また、第4リップ44は、フランジ110に接触しているが、第4リップ44はフランジ110に接触しておらず、第4リップ44とフランジ110との間に隙間が設けられていてもよい。つまり、第4リップ44は、ラビリンスシールとして機能してもよい。
【0027】
図3は、
図2のシール部材2がハブベアリング100に配置される前の状態を示す図である。
図3に示すように、シール部材2がハブベアリング100に配置されていない状態では、第1リップ41、第2リップ42、第3リップ43および第4リップ44のそれぞれは、外力を受けておらず、変形せず、真っ直ぐな状態である。
【0028】
1-3.グリス
図3に示すように、第1リップ41、第2リップ42および第3リップ43には、グリスが塗布されている。なお、第4リップ44にも、グリスは適宜塗布してもよい。ただし、第4リップ44をラビリンスシールとして用いる場合にはグリスは塗布されない。各リップにグリスが塗布されていることで、グリスを用いない場合に比べ、各リップの密封性、摺動性および耐久性を向上させることができる。
【0029】
第1リップ41の表面には、第1グリスG1が塗布されている。第2リップ42の表面および第3リップ43の表面には、第1グリスG1とは異なる第2グリスG2が塗布されている。第1グリスG1は、第1リップ41の表面、特に先端面に塗布されている。より具体的には、第1グリスG1は、第1リップ41の先端面のうち半径方向の内側の面に塗布されている。第2グリスG2は、第2リップ42の表面、特に先端面と、第3リップ43の表面、特に先端面とに塗布されている。より具体的には、第2グリスG2は、第2リップ42の先端面のうち半径方向内側の面、および第3リップ43の先端面のうち半径方向内側の面に塗布されている。また、第1グリスG1および第2グリスG2のそれぞれは、基油、増ちょう剤および添加物を含む。
【0030】
図4は、複数のシール部材2を積み重ねた状態を示す図である。
図4に示す複数のシール部材2を積み重ねた状態で、例えば、箱詰めされ、工場から出荷されて出荷先までの搬送等が行われる。各シール部材2が有する3つのリップにグリスが塗布された後、複数のシール部材2は、積み重ねられる。したがって、搬送等よりも以前に、第1グリスG1および第2グリスG2は塗布される。
【0031】
第1リップ41と、第2リップ42とでは、互いに特性の異なるグリスが塗布されている。第1リップ41と第2リップ42とで特性の異なるグリスを塗布することで、第1リップ41および第2リップ42のそれぞれに必要とされる特性を効果的に発揮することができる。よって、シール部材2に必要とされる特性を発揮できるので、信頼性に優れたシール部材2を提供することができる。
【0032】
本実施形態では、第1グリスG1および第2グリスG2の特性の一例は、JISK2220:2013に規定されたちょう度番号である。また、当該特性の一例は、グリスのしゅう動時のグリスのせん断粘度である。具体的には、第1グリスG1のJISK2220:2013に規定されたちょう度番号と、第2グリスG2のJISK2220:2013に規定されたちょう度番号とが、互いに異なる。また、第1グリスG1のしゅう動時のせん断粘度と、第2グリスG2のしゅう動時のせん断粘度とは、互いに異なる。ちょう度番号またはせん断粘度が第1グリスG1と第2グリスG2とで異なることで、異物の侵入の抑制と低トルク化との両立を図ることができる。なお、上記のちょう度番号およびせん断粘度の関係は、第1グリスG1と第2グリスG2との基油粘度、基油種類、および増ちょう剤の種類が同じ場合に成り立つ関係である。
【0033】
また、第1グリスG1に含まれる増ちょう剤の含有率と、第2グリスG2に含まれる増ちょう剤の含有率とが、互いに異なる。増ちょう剤の含有率が上記関係であることで、第1グリスG1のちょう度番号と第2グリスG2のちょう度番号を異ならせることができる。また、増ちょう剤の含有率が上記関係であることで、第1グリスG1のせん断粘度と第2グリスG2のせん断粘度とを異ならせることができる。よって、増ちょう剤の含有率が上記関係であることで、異物の侵入の抑制と低トルク化との両立を図ることができる。なお、上記の増ちょう剤の含有率の関係は、第1グリスG1と第2グリスG2との増ちょう剤の種類が同じ場合に成り立つ関係である。
【0034】
さらに、本実施形態では、第2グリスG2のちょう度番号は、第1グリスG1のちょう度番号よりも小さい。このため、第1リップ41および第2リップ42の低トルク化を図ることができる。加えて、異物が第1グリスG1内で移動し難くなるので、第2リップ42へ異物が到達することを抑制できる。また、第2グリスG2のせん断粘度は、第1グリスG1のせん断粘度よりも小さい。このため、第2グリスG2のちょう度が第1グリスG1のちょう度よりも小さいことによる効果と同様に、低トルク化および第2リップ42へ異物の到達の抑制を図ることができる。なお、上記のちょう度番号およびせん断粘度の関係は、前述したように、第1グリスG1と第2グリスG2との基油粘度、基油種類、および増ちょう剤の種類が同じ場合に成り立つ関係である。
【0035】
また、第2グリスG2に含まれる増ちょう剤の含有率は、第1グリスG1に含まれる増ちょう剤の含有率よりも少ない。増ちょう剤の含有率が上記関係であることで、第2グリスG2のちょう度番号を第1グリスG1のちょう度番号よりも小さくすることができる。また、増ちょう剤の含有率が上記関係であることで、第2グリスG2のせん断粘度を第1グリスG1のせん断粘度よりも小さくすることができる。よって、前述の効果を発揮することができる。なお、上記の増ちょう剤の含有率の関係は、第1グリスG1と第2グリスG2との増ちょう剤の種類が同じ場合に成り立つ関係である。
【0036】
第1リップ41は、第2リップ42に比べて泥水等の外部の異物に直接さらされ易い。それゆえ、第1リップ41は、異物の侵入を遮断するための密封性を要する。しかし、密封性を高くすると、第1リップ41のハブ11の内周面111に対する面圧が高くなるので、第1リップ41の摩耗が加速し、寿命が短くなる。特に、第4リップ44が存在しない場合、または第4リップ44がラビリンスシールである場合、第1リップ41は外部に直接さらされ易い。この場合、空気等が第1リップ41と第2リップ42との間から流出することで負圧が生じ易くなる。そして、当該負圧が一気に解消されると、トルクが上昇し、その結果、トルク乱れが発生し易い。したがって、第1リップ41には、密封性に加え、摩耗を促進しない低摩擦性、および負圧の発生を抑制するための通気性を持たせることが必要である。
【0037】
前述のように、第1リップ41に塗布される第1グリスG1は、第2リップ42に塗布される第2グリスG2よりもちょう度が小さい(すなわち硬い)。ちょう度が大きいと、低摩耗性を図ることができ、よって低トルク化を図ることができると考えられる。しかし、第1リップ41に対してちょう度が小さい第1グリスG1を用いることで、シール部材2の使用時おいてせん断によりチャンネリングを起こし易くなると考えられる。チャンネリングは、第1リップ41に第1グリスG1が押しのけられる現象である。
【0038】
チャンネリングにより第1リップ41と内周面111との間の第1グリスG1がせん断することで、第1リップ41は、第1グリスG1の抵抗を受け難くなる。それゆえ、粘性抵抗が減少し、かつ、第1リップ41と内周面111との間に隙間が発生し易くなる。このため、粘性抵抗の減少によるトルクの低減によって摩耗性を確保できるとともに、隙間の発生により通気性を確保することができる。
【0039】
図5は、第1グリスG1のちょう度とトルクとの関係を示す図である。
図5では、基油粘度、基油の種類、および増ちょう剤の種類が同じ第1グリスG1が用いられる。
図5に示すように、第1グリスG1は、ちょう度が小さいほど(すなわち柔らかいほど)、トルクが小さくなる。これは、前述のチャンネリングのし易さが関係していると考えられる。したがって、第1グリスG1にはチャンネリングし易いグリスを用いることが好ましい。
【0040】
また、第1グリスG1ちょう度が第2グリスG2のちょう度よりも小さいことで、異物が第1グリスG1内で移動し難くなる。このため、第2リップ42へ異物が到達することを抑制できる。よって、第1リップ41に密封性を高めることができる。
【0041】
なお、第1グリスG1について、ちょう度に関する観点から説明したが、第1グリスG1のせん断粘度についても、前述のちょう度に関する作用効果と同様である。
【0042】
前述のように、第2リップ42は、第1リップ41に比べて外部にさらされ難いので、通気性の確保は不要であるが、摩耗の低減の観点から低摩擦性が必要である。また、第1リップ41から侵入した微細な異物を遮断する密封性が必要である。
【0043】
前述のように、第2リップ42に塗布される第2グリスG2は、第1リップ41に塗布される第1グリスG1よりもちょう度が大きい。ちょう度が大きいことで、低摩耗性を図ることができ、よって低トルク化を図ることができる。このため、第2グリスG2を用いることで、グリスを用いない場合に比べ、密封性および低トルク化を向上させることができる。
【0044】
図6は、第2グリスG2のちょう度とトルクとの関係を示す図である。
図6では、基油粘度、基油の種類、および増ちょう剤の種類が同じ第2グリスG2が用いられる。
図6に示すように、第2グリスG2では、ちょう度が大きいほど、トルクが小さくなる。第2グリスG2は、第1グリスG1に比べてせん断粘度を小さくするかまたはちょう度番号を小さくすることで、低トルク化を図ることができる。したがって、第2グリスG2にはチャンネリングし難いグリスを用いることが好ましい。
【0045】
なお、第2グリスG2について、ちょう度に関する観点から説明したが、第2グリスG2の硬さ、すなわち粘性についても、前述のちょう度に関する作用効果と同様である。
【0046】
以上のように、第1リップ41に応じた第1グリスG1と第1リップ41に応じた第2グリスG2とを用いることで、グリスを使い分けない場合に比べ、第1リップ41および第2リップ42のそれぞれの特性を発揮することができる。特に、第1グリスG1にはチャンネリングし易いグリスを選定し、かつ、第2グリスG2には、グリス粘度が低いまたはちょう度番号が小さいグリスを選定することで、シール部材2を低トルク化することができる。
【0047】
さらに、第3リップ43に、第2グリスG2と同じ第3グリスG3を塗布することで、第3リップ43にも第2リップ42と同様の効果を与えることができる。すなわち、第3グリスG3を用いることで、密封性および低トルク化を向上させることができる。第3リップ43が密封性に優れることで、第3リップ43により内部の潤滑剤の流出を効果的に阻止することができる。なお、第3リップ43には、第2グリスG2とは異なるグリスが塗布されてもよい。
【0048】
図7および8のそれぞれは、ちょう度の測定方法を説明するための図である。前述のちょう度は、ISK2220:2013に規定された方法により測定される。以下、第1グリスG1のちょう度の測定方法について簡単に説明する。なお、第2グリスG2についても同様である。
【0049】
図7に示すように、具体的には、JISK2220:2013に規定された混和器90に第1グリスG1を入れ、第1グリスG1の温度を規定の温度に保った後、規定の円すい91の先端が第1グリスG1の表面に接するよう調整する。その後、
図9に示すように、円すい91を第1グリスG1内に5±0.1秒間進入させ、進入深さを測定する。なお、この測定は3回行う。侵入深さを10倍した値がちょう度である。
【0050】
また、第1グリスG1のちょう度番号は、特に限定されないが、好ましくは3号または4号である。第2グリスG2のちょう度番号は、特に限定されないが、好ましくは1号または2号である。第1グリスG1のちょう度は、特に限定されないが、好ましくは175以上250以下である。第2グリスG2のちょう度は、特に限定されないが、265以上340以下である。かかるちょう度番号またはちょう度であることで、第1リップ41はチャンネリングを発生し易くなり、第2リップ42はチャンネリングを発生し難い。このため、前述の第1リップ41および第2リップ42の各特性を特に効果的に発揮することができる。
【0051】
また、第1グリスG1および第2グリスG2のそれぞれが有する基油の種類、増ちょう剤の種類および添加物の種類は、好ましくは同じである。これら種類が同じであることで、所望とする硬さまたはちょう度の調整が容易である。具体的には、例えば、含有率を調整すること、またはグリスの分散条件を変更することで、グリスの硬さまたはちょう度を簡単に調整することができる。このため、増ちょう剤の含有率が同じであっても、ちょう度を変えることができる。ただし、この場合、グリスの均質化処理条件は同じとする。また、基油は、特に限定されないが、鉱油、合成油が使用でき、好ましくは合成炭化水素油である。増調剤は、特に限定されないが、金属石けん、金属複合石けん、ウレア化合物が使用でき、好ましくはLi石けんまたはLi複合石けんである。
【0052】
また、第1リップ41の摺動面の十点平均粗さ(RzJIS)は、特に限定されないが、好ましくは5μm以上20μm以下である。第2リップ42の摺動面の十点平均粗さ(RzJIS)は、特に限定されないが、好ましくは5μm以下である。かかる範囲であることで、シール部材2の密封性および低トルク化を特に高めることができる。
【0053】
図9は、耐泥水性およびトルクと、グリスとの関係を示す図である。
図9に示す耐泥水性は、泥水下で密封性を確保できる時間[h]で評価した。
図9の比較例1は、第1リップ41xの十点平均粗さ、および第2リップ42xの十点平均粗さが10μm以上20μm以下であり、第1グリスG1xのちょう度番号、および第2グリスG2xのちょう度番号のそれぞれが2号である。比較例2は、第1リップ41xの十点平均粗さが10μm以上20μm以下であり、第2リップ42xの十点平均粗さが1μm以上5μm以下であり、第1グリスG1のちょう度番号、および第2グリスG2のちょう度番号のそれぞれが2号である。実施例では、第1リップ41の十点平均粗さが10μm以上20μm以下であり、第2リップ42の十点平均粗さが1μm以上5μm以下であり、第1グリスG1のちょう度番号が3号または4号であり、第2グリスG2のちょう度番号が1号である。
【0054】
図9から分かるように、実施例は、比較例1および2に比べ、泥水下で密封性を確保できる時間[h]が長く、かつ、トルク[N・cm]が小さい。よって、第2グリスG2のちょう度番号が第1グリスG1のちょう度番号よりも小さいことで、シール部材2の密封性および低トルク化を図ることができる。さらに、第1リップ41の十点平均粗さを第2リップ42の十点平均粗さよりも大きくすることで、シール部材2の密封性および低トルク化をより効果的に向上させることができる。
【0055】
2.第2実施形態
以下、本発明の第2実施形態について説明する。以下に例示する形態において作用または機能が第1実施形態と同様である要素については、各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0056】
第2実施形態では、第2グリスG2のちょう度番号は、第1グリスG1のちょう度番号よりも大きい。また、第2実施形態では、第2グリスG2は、第1グリスG1よりも硬い。ちょう度番号または硬さが上記関係であることで、第2グリスG2が外部に漏れるおそれを低減することができる。例えば、第2グリスG2に遠心力等が作用した際、第2リップ42は第2グリスG2を抑えきれず、外部へ漏れるおそれを低減することができる。それゆえ、第2リップ42に第2グリスG2を留めておけるので、第1リップ41をすり抜けて流入した異物を阻止するという第2リップ42の機能を効果的に発揮することができる。なお、上記のちょう度番号および硬さの関係は、第1グリスG1と第2グリスG2との基油粘度、基油種類、および増ちょう剤の種類が同じ場合に成り立つ関係である。
【0057】
また、第2グリスG2に含まれる増ちょう剤の含有率は、第1グリスG1に含まれる増ちょう剤の含有率よりも多い。増ちょう剤の含有率が上記関係であることで、第2グリスG2のちょう度番号を第1グリスG1のちょう度番号よりも大きくすることができる。また、増ちょう剤の含有率が上記関係であることで、第1グリスG1の硬さを第2グリスG2の硬さよりも硬くすることができる。よって、前述の効果を発揮することができる。なお、上記の増ちょう剤の含有率の関係は、第1グリスG1と第2グリスG2との増ちょう剤の種類が同じ場合に成り立つ関係である。
【0058】
3.第3実施形態
以下、本発明の第3実施形態について説明する。以下に例示する形態において作用または機能が第1実施形態と同様である要素については、各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0059】
本実施形態では、第1グリスG1および第2グリスG2の特性の一例は、耐水性である。具体的には、第1グリスG1の耐水性は、第2グリスG2の耐水性よりも高い。第1リップ41は、第2リップ42に比べて外部に近いため、泥水等の異物が侵入し易い。このため、第1グリスG1が耐水性を有することシール部材2全体の寿命向上を図ることができる。
【0060】
4.第4実施形態
以下、本発明の第4実施形態について説明する。以下に例示する形態において作用または機能が第1実施形態と同様である要素については、各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0061】
本実施形態では、第1グリスG1および第2グリスG2の特性の一例は、色の濃さである。具体的には、第1グリスG1の色の濃さは、第2グリスG2の色の濃さよりも濃い。なお、色の濃さとは、明度または彩度で表される。明度または彩度が低いほど色は濃くなる。第1グリスG1は第2グリスG2よりも外部に位置する。したがって、第1グリスG1の色が濃いことで、第1グリスG1が水等で漏れた際の把握がし易い。また、第1グリスG1が漏れた際の流れ等の分析も行い易い。
【0062】
5.変形例
前述の各実施形態は、例えば、以下に述べる各種の変形が可能である。また、各変形例を適宜組み合わせてもよい。
【0063】
5―1.第1変形例
図10は、第1変形例のシール部材2Aを示す図である。前述の実施形態では、本発明の「密封装置」の一例としてアウトサイド側に位置するシール部材2について説明したが、本発明は、インサイド側に位置するシール部材に適用されてもよい。
【0064】
図10に示すシール部材2Aは、「密封装置」の一例である。シール部材2Aは、前述の
図1に示すシール部材4に対応する位置に設けられる。よって、シール部材2Aは、インサイド側のシールである。
【0065】
シール部材2Aは、弾性環20Aと補強環25Aとを有する複合構造である。補強環25Aは、弾性環20Aに埋設されており、「外側部材」の例示である外輪13に固定される。かかるシール部材2Aは、本体部3Aと、第1リップ41Aと、第2リップ42Aと、第3リップ43Aと、を有する。第1リップ41A、第2リップ42Aおよび第3リップ43Aは、本体部3Aから内輪12に固定されるスリンガー17に向かって突出する。スリンガー17は、「内側部材」の例示である。スリンガー17は、円環部171と、円環部171から外輪13に向かって延びるフランジ部172とを有する。フランジ部172には、内輪12の回転速度を測定するために用いられる磁性ゴム18が固定される。
【0066】
本体部3Aは、外輪13に固定されており、弾性環20Aの一部および補強環25Aで構成される。第1リップ41A、第2リップ42Aおよび第3リップ43Aのそれぞれは、弾性環20Aの一部で構成される。第1リップ41A、第2リップ42Aおよび第3リップ43Aの各先端は、スリンガー17の内周面170に接触しており、使用時には内周面170に対して摺動する。
【0067】
第1リップ41Aは、第2リップ42に対して半径方向の外側に位置し、サイドリップとも呼ばれる。第1リップ41Aは、スリンガー17のフランジ部172に向かって延び、フランジ部172に接触している。第2リップ42Aは、第1リップ41Aと第3リップ43Aとの間に位置する中間リップである。第2リップ42Aは、スリンガー17の円環部171に向かって延び、円環部171に接触している。第3リップ43Aは、複数のリップのうち最も半径方向の内側に位置し、グリスリップとも呼ばれる。第3リップ43Aは、スリンガー17の円環部171に向かって延び、円環部171に接触している。
【0068】
第1リップ41Aの表面、特に先端面には、第1グリスG1が塗布されている。第2リップ42Aおよび第3リップ43Aの各表面、特に各先端面には、第2グリスG2が塗布されている。なお、第3リップ43Aには、第2グリスG2とは異なるグリスが塗布されてもよい。
【0069】
かかるシール部材2Aによっても、第1リップ41Aに第1グリスG1が塗布され、第2リップ42Aおよび第3リップ43Aに第1グリスG1とは特性の異なる第2グリスG2が塗布されていることで、前述の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0070】
5―2.第2変形例
図11は、第2変形例のシール部材2Bを示す図である。前述の実施形態では、シール部材2は、「外側部材」の例示である外輪13に固定されていたが、本発明は、「内側部材」に固定されてもよい。
【0071】
図11に示すシール部材2Bは、「内側部材」の例示であるハブ11に固定される。また、外輪13には、環状のシールカバー6が固定される。本変形例では、シールカバー6とシール部材2Bとの構造体60Bが、「密封装置」の一例である。
【0072】
シールカバー6は、例えば金属または合金で形成される。シールカバー6は、固定部61と、外側円環部62と、内側円環部63とを有する。固定部61は、外輪13に固定される部分である。外側円環部62は、固定部61から半径方向の外側に向かう方向およびX1方向の両方に対して斜めに延びる部分である。内側円環部63は、固定部61の外側円環部62とは反対側に接続され、固定部61から半径方向の内側に延びた後、X1方向に延びる。
【0073】
シール部材2Bは、弾性環20Bと補強環25Bとを有する複合構造である。補強環25Bは、弾性環20Bに埋設されており、「内側部材」の例示であるハブ11に固定される。かかるシール部材2Bは、本体部3Bと、第1リップ41Bと、第2リップ42Bと、第3リップ43Bと、を有する。本体部3Bから、第1リップ41B、第2リップ42B、および第3リップ43Bのそれぞれは、本体部3Bから、「外側部材」の例示である外輪13に向かって突出する。また、第1リップ41B、第2リップ42B、および第3リップ43Bの各先端は、シールカバー6の外表面に接触しており、使用時にはシールカバー6の外表面に対して摺動する。
【0074】
本体部3Bは、ハブ11に固定されており、弾性環20Bの一部および補強環25Bで構成される。第1リップ41B、第2リップ42Bおよび第3リップ43Bのそれぞれは、弾性環20Bの一部で構成される。
【0075】
第1リップ41Bは、第2リップ42に対して半径方向の外側に位置し、サイドリップとも呼ばれる。第2リップ42Bは、第1リップ41Bと第3リップ43Bとの間に位置する中間リップである。第3リップ43Bは、複数のリップのうち最も半径方向の内側に位置し、グリスリップとも呼ばれる。
【0076】
第1リップ41Bの表面、特に先端面には、第1グリスG1が塗布されている。第2リップ42Bおよび第3リップ43Bの各表面、特に各先端面には、第2グリスG2が塗布されている。なお、第3リップ43Bには、第2グリスG2とは異なるグリスが塗布されてもよい。
【0077】
かかるシール部材2Bによっても、第1リップ41Bに第1グリスG1が塗布され、第2リップ42Bおよび第3リップ43Bに第1グリスG1とは特性の異なる第2グリスG2が塗布されていることで、前述の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0078】
5-3.その他の変形例
「密封装置」の構造は、前述の第1実施形態、第1変形例および第2変形例に示す構造以外の構造でもよい。例えば、第1実施形態では、シール部材2は、第4リップ44を有するが、第4リップ44は省略されてもよい。また例えば、シール部材2が有する本体部3の円筒部31は、外輪13の端部132よりも半径方向の外側に位置するが、円筒部31は、端部132よりも半径方向の内側に位置してもよい。
【0079】
以上、好適な各実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は前述の実施形態に限定されない。また、本発明の各部の構成は、前述の実施形態の同様の機能を発揮する任意の構成に置換でき、また、任意の構成を付加できる。また、前述した各実施形態の任意の構成同士を組み合わせるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0080】
2…シール部材、2A…シール部材、2B…シール部材、3…本体部、3A…本体部、3B…本体部、4…シール部材、6…シールカバー、11…ハブ、12…内輪、13…外輪、16…ナックル、17…スリンガー、18…磁性ゴム、19…ボルト、20…弾性環、20A…弾性環、20B…弾性環、25…補強環、25A…補強環、25B…補強環、31…円筒部、32…外側円環部、33…内側円環部、41…第1リップ、41A…第1リップ、41B…第1リップ、42…第2リップ、42A…第2リップ、42B…第2リップ、43…第3リップ、43A…第3リップ、43B…第3リップ、44…第4リップ、60B…構造体、61…固定部、62…外側円環部、63…内側円環部、90…混和器、91…円すい、100…ハブベアリング、110…フランジ、111…内周面、131…基部、132…端部、141…玉、142…玉、151…保持器、152…保持器、170…内周面、171…円環部、172…フランジ部、AX…中心軸線、G1…第1グリス、G2…第2グリス、G3…第3グリス、HX…孔。