(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138359
(43)【公開日】2024-10-08
(54)【発明の名称】方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/08 20060101AFI20241001BHJP
A61M 16/00 20060101ALI20241001BHJP
G16H 10/60 20180101ALI20241001BHJP
【FI】
A61B5/08
A61M16/00 370Z
G16H10/60
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024108480
(22)【出願日】2024-07-04
(62)【分割の表示】P 2021558639の分割
【原出願日】2020-03-27
(31)【優先権主張番号】62/826,350
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】521191403
【氏名又は名称】レズメド インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ピーク、グレッグ
(72)【発明者】
【氏名】エルナンデス、ライアン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】現行では、患者が交換用呼吸治療デバイスを受領した際、前記処方設定を手動でポートする必要がある。
【解決手段】呼吸治療設定を新規の呼吸治療デバイスへ自動的にポートするためのシステムおよび方法であって、交換用呼吸治療デバイスに対して治療設定およびモードの自動ポート、変換および有効化を行う。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムであって、
処方治療設定を用いた処方データベースであって、前記処方治療設定は、患者アカウントIDに対して参照され、前記患者アカウントIDは、各患者についての一意の識別子を処方サーバと通信する前記処方データベース中に含む、処方データベースと;
第1の呼吸治療デバイスと;
第2の呼吸治療デバイスと;
インターフェースと;
機械実行可能なコードを含む機械可読媒体を含むメモリであって、前記機械実行可能なコード上には、方法を行うための命令が保存される、メモリと;
前記メモリへ連結された制御システムと;
を含み、
前記制御システムは1つ以上のプロセッサを含み、前記制御システムは、前記機械実行可能なコードを実行することで、前記制御システムに:
患者が前記第1の呼吸治療デバイスから前記第2の呼吸治療デバイスに前記第1の呼吸治療デバイスの前記処方治療設定をポートしたい旨を示す入力を前記インターフェースから受信すること;
前記患者と関連付けられたアカウントIDと、前記第1の呼吸治療デバイスと関連付けられたハードウェア識別子と、前記第2の呼吸治療デバイスと関連付けられたハードウェア識別子とを前記インターフェースを通じて受信すること;および
前記第1の呼吸治療デバイスの前記処方治療設定を前記処方サーバから取得するために、前記アカウントIDおよび前記第1の呼吸治療デバイスと関連付けられたハードウェア識別子を含むリクエストを前記処方サーバへ送信して、前記第1の呼吸治療デバイスの前記処方治療設定を前記処方サーバから取り出すこと;
前記アカウントIDに基づいて前記第1の呼吸治療デバイスの前記処方治療設定を前記処方サーバから受信すること;および
前記第1の呼吸治療デバイスの前記処方治療設定を前記第2の呼吸治療デバイスのメモリ中に保存すること、を含む、処理を行わせるシステム。
【請求項2】
前記処方サーバから処方治療設定を受信することは:
前記第1の呼吸治療デバイスからの呼吸治療データ出力に基づいて、前記アカウントIDに対して参照された呼吸品質インジケータを取り出すこと;および
前記呼吸品質インジケータが閾値を超えているかを決定すること;および
前記呼吸品質インジケータが前記閾値を下回っている場合、前記患者をフォローアップのためにフラグ付けし、前記処方治療設定をポートする旨の前記リクエストを拒否すること、をさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記呼吸品質インジケータは、無呼吸低呼吸指数である、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記処方サーバから処方治療設定を受信することは:
現在の処方治療設定と関連付けられた日から現在の日付までの経過時間を決定すること;
前記経過時間が閾値を上回るかを決定すること;および
前記経過時間が前記閾値を上回る場合、前記患者をフォローアップのために処方治療データベースにおいてフラグ付けし、前記処方治療設定をポートする旨の前記リクエストを拒否すること、をさらに含む、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項5】
前記処方サーバから処方治療設定を受信することは:
前記患者から1組の情報をリクエストすること;
前記情報の評価により、前記処方治療設定に関連して有意な変化が発生したかを決定すること;および
前記有意な変化が発生した場合、前記患者をフォローアップのために処方データベースにおいてフラグ付けし、前記処方治療設定をポートする旨の前記リクエストを拒否すること、をさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記1組の情報は、体重変化、BMI変化、筋緊張変化のうち少なくとも1つを含む、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記処方サーバから処方治療設定を受信することは:
1組のオキシメータデータ出力をパルスオキシメータからリクエストすること;
前記オキシメータデータの処理により、前記処方治療設定を更新すべきか否かを決定すること;および
前記設定を更新すべきではない場合、前記患者をフォローアップのために前記処方治療データベース中にフラグ付けし、前記処方治療設定をポートする旨の前記リクエストを拒否すること、をさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記1組の情報は、マイクロフォンを通じて受信された音声データを含み、前記音声データを処理することにより、前記患者の音声のトーンに有意な変化があるか否かを決定する、請求項5又は請求項6に記載のシステム。
【請求項9】
前記1組の情報は、顔の画像データを含み、前記顔の画像データを前もってキャプチャされた画像データと比較することにより、有意な顔変化が特定される、請求項5又は請求項6に記載のシステム。
【請求項10】
前記有意な顔変化は、BMIの有意な変化を示す、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記処方治療設定は、前記第1の呼吸治療デバイスへ接続されたセルラーアンテナを介して受信される、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記処方治療設定は、前記第1の呼吸治療デバイスへ接続されたデバイスへのBluetooth(登録商標)またはWi-Fi接続を介して受信される、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記処方治療設定は、前記処方サーバから前記第1の呼吸治療デバイスへ暗号化される、請求項11または12に記載のシステム。
【請求項14】
前記処方治療設定は、最小および最大圧力ならびに治療モードを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
前記患者のアカウントと関連付けられたアカウントIDおよび前記第2の呼吸治療デバイスと関連付けられたシリアルナンバーを前記インターフェースを介して受信することは:
前記第1の呼吸治療デバイスのディスプレイ上にコードを表示すること;
前記インターフェース上において前記コードの入力をリクエストすること;および
前記コードが有効化された場合、一般設定および処方治療設定のみを受信すること、をさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
前記処方治療設定を受信することは、前記第1および第2の呼吸治療デバイス間の差に基づいて前記処方治療設定の変換を所定の変換因数によって行うことをさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項17】
システムであって、
処方治療設定を用いた処方データベースであって、前記処方治療設定は、患者アカウントIDに対して参照され、前記患者アカウントIDは、各患者についての一意の識別子を
処方サーバと通信する前記処方データベース中に含む、処方データベース;
1組の患者アカウントIDに対して参照される一般的患者データを患者サーバと通信して含む患者データベース;
第1の呼吸治療デバイスと;
第2の呼吸治療デバイスと;
インターフェースと;
機械実行可能なコードを含む機械可読媒体を含むメモリであって、前記機械実行可能なコード上には、方法を行うための命令が保存される、メモリと;
前記メモリへ連結された制御システムと;
を含み、
前記制御システムは1つ以上のプロセッサを含み、前記制御システムは、前記機械実行可能なコードを実行することで、前記制御システムに:
患者が前記処方治療設定を第2の呼吸治療デバイスからポートしたい旨を示す入力を前記インターフェースから受信すること;
前記患者と関連付けられたアカウントIDと、前記第2の呼吸治療デバイスと関連付けられたシリアルナンバーとを前記インターフェースを通じて受信すること;および
前記アカウントIDおよび前記シリアルナンバーを含むリクエストを前記患者サーバへ送信して、前記第2の呼吸治療デバイスの前記処方治療設定を前記処方サーバから取り出すこと;
前記シリアルナンバーが前記アカウントIDと有効に関連付けられている場合、処方IDに基づいて前記第2の呼吸治療デバイスの前記処方治療設定を前記患者サーバから受信すること;および
前記第2の呼吸治療デバイスの前記処方治療設定を前記第1の呼吸治療デバイスのメモリ中に保存すること、を含む、処理を行わせるシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1 技術の背景
1.1 技術の分野
本技術は、呼吸関連疾患のスクリーニング、診断、監視、治療、予防および改善のうち1つ以上に関する。本技術はまた、医療デバイスまたは装置と、その使用とに関する。本技術は、呼吸治療デバイス間の呼吸設定のポーティングにも関連する。
【背景技術】
【0002】
1.2 関連技術の説明
1.2.1 ヒトの呼吸器系およびその疾患
身体の呼吸器系は、ガス交換を促進させる。鼻および口腔は、患者の気道への入口を形成する。
【0003】
これらの気道は、一連の分岐する管を含み、これらの管は、肺の奥深くに進むほど狭く、短くかつ多数になる。肺の主要な機能はガス交換であり、空気から酸素を静脈血中へ取り入れさせ、二酸化炭素を退出させる。気管は、右および左の主気管支に分かれ、これらの主気管支はさらに分かれて、最終的に終末細気管支となる。気管支は、伝導のための気道を構成するものであり、ガス交換には関与しない。気道がさらに分割されると呼吸細気管支となり、最終的には肺胞となる。肺の肺胞領域においてガス交換が行われ、この領域を呼吸ゾーンと呼ぶ。以下を参照されたい:「Respiratory Physiology」, by John B. West, Lippincott Williams & Wilkins, 9th edition published 2012。
【0004】
一定範囲の呼吸器疾患が存在している。特定の疾患は、特定の発症(例えば、無呼吸、呼吸低下および過呼吸)によって特徴付けられ得る。
【0005】
呼吸器疾患の例には、閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)、チェーン・ストークス呼吸(CSR)、呼吸不全、肥満過換気症候群(OHS)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、神経筋疾患(NMD)および胸壁疾患が含まれる。
1.2.2 療法
【0006】
多様な療法(例えば、持続的気道陽圧(CPAP)治療法、非侵襲的換気(NIV)および侵襲的換気(IV)が上記の呼吸器疾患の1つ以上の治療のために用いられている。1.2.2.1 呼吸圧力治療
【0007】
持続的気道陽圧(CPAP)療法が、閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)の治療において用いられている。その作用機構としては、例えば軟口蓋および舌を押して後口咽頭壁へ前進または後退させることにより、持続陽圧呼吸療法が空気スプリントとして機能し、これにより上気道の閉鎖を防止し得る。CPAP治療によるOSAの治療は自発的なものであり得るため、このような患者が治療の提供に用いられるデバイスについて以下のうち1つ以上に気づいた場合、患者が治療を遵守しないことを選択する可能性がある:不快、使用困難、高価、美観的な魅力の無さ。
【0008】
非侵襲的換気(NIV)は、換気補助を上気道を通じて患者へ提供して、呼吸機能の一部または全体を行うことにより患者の呼吸の補助および/または身体中の適切な酸素レベルの維持を提供する。換気補助が、非侵襲的患者インターフェースを介して提供される。
NIVは、OHS、COPD、NMD、および胸壁障害などの形態のCSRおよび呼吸不全の治療に用いられている。いくつかの形態において、これらの治療の快適性および有効性が向上し得る。
【0009】
侵襲的換気(IV)は、自身で有効に呼吸することができなくなった患者に対して換気補助を提供し、気管切開管を用いて提供され得る。いくつかの形態において、これらの治療の快適性および有効性が向上し得る。
1.2.2.2 流れ療法
【0010】
全ての呼吸治療において、規定の治療圧力の送達が意図されているわけではない。いくつかの呼吸治療においては、恐らくは流量プロファイルのターゲティングを目標継続期間にわたって行うことによる規定呼吸量の送達が、企図されている。他の場合において、患者の気道へのインターフェースが「開放」(シール解除)されており、呼吸治療は、患者自身の自発呼吸の補助としてのみ用いられ得る。一実施例において、高流量療法(HFT)とは、連続的な、加熱された、加湿された空気流れをシールされていないかまたは開口した患者インターフェースを通じて、呼吸サイクル全体にかけてほぼ一定に保持される「治療流量」で提供することである。治療流量は、患者のピーク吸気流量を超えるようにノミナル設定されている。HFTは、OSA、CSR、COPDおよび他の呼吸障害の治療のために用いられている。1つの作用メカニズムとして、患者の解剖学的死腔から呼気されたCO2のフラッシングまたは押し流しが可能になるため、高流量の空気を気道入口へ提供すると、換気効率が向上する。そのため、HFTは、死腔治療(DST)と呼ばれる場合がある。他の流れ療法では、治療流量は、呼吸サイクルにわたって変動するプロファイルに追随し得る。
【0011】
別の形態の流れ治療として、長期酸素治療(LTOT)または酸素補充治療がある。医師は、酸素富化ガスの連続流れを指定酸素濃度(周囲空気中の酸素分率が21%~100%)において指定流量(例えば、1リットル/分(LPM)、2LPM、3LPM)において患者気道へ送達させる旨を処方し得る。
1.2.2.3 補充酸素
【0012】
特定の患者の場合、補助酸素を加圧空気流れへ付加することにより、酸素治療と呼吸圧力治療またはHFTとの組み合わせが得られ得る。呼吸圧力治療へ酸素を付加した場合、これは、補助酸素を用いたRPTと呼ばれる。HFTへ酸素を付加した場合、その結果得られる治療は、補助酸素を用いたHFTと呼ばれる。
1.2.3 治療システム
【0013】
これら呼吸治療は、治療システムまたはデバイスによって提供され得る。このようなシステムおよびデバイスは、疾患を治療することなくスクリーニング、診断、または監視するためにも、用いられ得る。
【0014】
呼吸治療システムは、呼吸圧力治療デバイス(RPTデバイス)、空気回路、加湿器、患者インターフェース、酸素呼吸源、およびデータ管理を含み得る。
1.2.3.1 患者インターフェース
【0015】
患者インターフェースは、例えば気道入口への空気流れを提供することにより呼吸装具へのインターフェースを装着者へ提供するために、用いられ得る。空気流れは、鼻および/または口へのマスク、口への管、または患者気管への気管切開管を介して提供され得る。適用される療法に応じて、患者インターフェースは、例えば患者の顔の領域とのシールを形成し得、これにより、療法実行のための雰囲気圧力と共に充分な分散の圧力において(例えば、例えば雰囲気圧力に対して約10cmH2Oの陽圧において)ガス送達を促進
する。酸素送達などの他の治療形態において、患者インターフェースは、約10cmH2Oの陽圧において気道へのガス供給の送達を促進するのに充分な密閉を含まない場合がある。
1.2.3.2 呼吸圧力治療(RPT)デバイス
【0016】
呼吸圧力治療(RPT)デバイスは、例えばデバイスを作動させて気道へのインターフェースへの空気送達流れを生成することにより、上記した複数の治療のうち1つ以上の送達に個別的に、またはシステムの一部として用いられ得る。空気流れは、(呼吸圧力治療のために)圧力制御され得るかまたは(HFTなどの流れ治療のために)流れ制御され得る。そのため、RPTデバイスは、流れ治療デバイスとしても機能し得る。RPTデバイスの例を挙げると、CPAPデバイスおよび人工呼吸器がある。RPTデバイスの例を挙げると、CPAPデバイスおよび人工呼吸器がある。
1.2.3.3 加湿器
【0017】
空気流れの送達を加湿無しで行った場合、気道の乾燥に繋がり得る。加湿器をRPTデバイスおよび患者インターフェースと共に用いた場合、加湿ガスが生成されるため、鼻粘膜の乾燥が最小化され、患者気道の快適性が増加する。加えて、より冷涼な気候においては、概して患者インターフェースの周囲の顔領域へ温風を付加すると、冷風の場合よりも快適性が高まる。
1.2.3.4 データ管理
【0018】
臨床的理由により、呼吸治療が処方された患者が「コンプライアンスを遵守している」(例えば、患者が自身のRPTデバイスを1つ以上の「コンプライアンスルール」に則っているか)を決定するためのデータを入手する場合がある。CPAP治療についてのコンプライアンスルールの一例として、患者がコンプライアンスを遵守しているとみなすためには、患者が連続30日間のうち少なくとも21日間にわたってRPTデバイスを一晩あたり少なくとも4時間にわたって使用する必要がある。患者のコンプライアンスを決定するためには、RPTデバイスのプロバイダ(例えば、ヘルスケアプロバイダ)は、RPTデバイスを用いた患者の治療を記述するデータを手作業で入手し、所定期間にわたる使用率を計算し、これをコンプライアンスルールと比較し得る。ヘルスケアプロバイダが患者が自身のRPTデバイスをコンプライアンスルールに則って使用したと決定すると、当該ヘルスケアプロバイダは、患者がコンプライアンスを遵守している旨を第三者に通知し得る。
【0019】
患者の治療において、治療データの第三者または外部システムへの通信から恩恵を受ける他の態様があり得る。
【0020】
このようなデータを通信および管理するための既存のプロセスの場合、高コスト、時間がかかること、エラーの発生し易さのうち1つ以上が発生し得る。
1.2.3.5 下顎の再位置決め
【0021】
下顎再位置決めデバイス(MRD)または下顎前方固定デバイス(MAD)は、睡眠時無呼吸およびいびきの治療選択肢の1つである。これは、歯科医または他の供給業者から利用可能である調節可能な口腔用器具であり、下顎部(下顎)を睡眠時に前方位置に保持する。MRDは、取り外し可能なデバイスであり、患者の睡眠前に口腔内に挿入され、睡眠後に取り外される。そのため、MRDは、常時装着用途を想定した設計はされていない。MRDは、カスタム仕様にしてもよいし、あるいは、標準形態で製造してもよく、患者の歯に適合するように設計された咬合印象部位を含む。この下顎からの機械的突出部は、舌の後ろ側の空間を拡張させ、咽頭壁上へ張力を付加して、気道崩壊を低減させ、口蓋振動を低減させる。
【0022】
特定の実施例において、下顎前方固定デバイスは、上顎または上顎骨上の歯と係合するかまたは嵌め合うように意図された上側スプリントと、上顎または下顎上の歯と係合するかまたは嵌め合うように意図された下側スプリントとを含み得る。上側スプリントおよび下側スプリントは、一対の接続ロッドを介して相互に横方向に接続される。この1組の接続ロッドは、上側スプリントおよび下側スプリント上において対称に固定される。
【0023】
このような設計において、接続ロッドの長さは、MRDが患者の口中に配置されたときに下顎が前方位置に保持されるように、選択される。接続ロッドの長さは、下顎の突出レベルを変化させるように、調節され得る。歯科医は、突出レベルを下顎に合わせて決定することができ、その結果、接続ロッドの長さが決定される。
【0024】
下顎を上顎骨に対して前方に押し出すように構成されているMRDもあれば、ResMed Narval CC(登録商標)MRDなどの他のMADのように、下顎を前方位置に保持するように設計されているものもある。このデバイスにより、歯科的副作用および側頭/下顎間の関節(TMJ)の副作用も低下または最小化される。そのため、このデバイスは、歯のうち1つ以上の任意の移動を最小化または回避するように構成される。
1.2.3.6 通気技術
【0025】
いくつかの形態の治療システムは、吐き出された二酸化炭素を押し出すための通気部を含み得る。この通気部により、患者インターフェースの内部空間(例えば、プレナムチャンバ)から患者インターフェースの外部(例えば、周囲)へのガス流れが可能になり得る。
1.2.4 スクリーニング、診断、および監視システム
【0026】
睡眠ポリグラフ(PSG)は、心肺疾患の診断および監視のための従来のシステムであり、典型的には、システム適用のために専門家臨床スタッフを必要とすることが多い。PSGにおいては、多様な身体信号(例えば、脳波検査(EEG)、心電図検査(ECG)、電気眼球図記録(EOG)、筋電図描画法(EMG))を記録するために、典型的には15~20個の接触覚センサを人体上に配置する。睡眠時呼吸障害のPSGのめには、患者を専門病院において二晩にわたって観察する必要があった。すなわち、第一夜は純然たる診断のためであり、第二夜は、臨床医による治療パラメータのタイトレーションのために必要であった。そのため、PSGは高コストであり、利便性も低い。睡眠呼吸障害のスクリーニング/診断/監視は家庭において特に不向きである。
【0027】
一般に、スクリーニングおよび診断は、疾患の兆候と症状によって疾患を特定することである。通常、スクリーニングは、患者のSDBがさらなる調査を求める程であるかないかを示す真/偽結果を出すいっぽう、診断は、臨床で実行可能な情報を出すことが多い。スクリーニングおよび診断は、一回性手続きになる傾向であることに反して、疾患の経過をモニタリングすることは無限定に続けられる。いくつかのスクリーニング/診断システムは、スクリーニング/診断にのみ適合されているが、いくつかはモニタリングにも使用することができる。
【0028】
臨床専門家は、患者のスクリーニング、診断または監視をPSG信号の視覚的観察に基づいて適切に行い得る。しかし、臨床専門家が居ないまたは臨床専門家への支払いができない状況がある。患者の状態について臨床専門家によって意見が異なる場合がある。さらに、或る臨床専門家は、時期によって異なる基準を適用し得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0029】
2 技術の簡単な説明
本技術は、呼吸器疾患のスクリーニング、診断、監視、改善、治療または予防において用いられる医療機器の提供に関連し、これらの医療機器は、向上した快適性、コスト、有効性、使い易さおよび製造可能性のうち1つ以上を有する。
【0030】
本技術の第1の態様は、呼吸器疾患のスクリーニング、診断、監視、改善、治療または予防に用いられる装置に関連する。
【0031】
本技術の別の態様は、呼吸障害のスクリーニング、診断、監視、改善、治療または予防において用いられる方法に関連する。
【0032】
本技術の特定の形態の一態様は、呼吸治療についての患者のコンプライアンスを向上させる方法および/または装置を提供することである。
【0033】
本技術の一形態は、新規の呼吸治療デバイス用の呼吸治療設定の自動ポーティングを行う方法およびシステムを含む。現在、患者が交換用呼吸治療デバイス、アップグレードされた呼吸治療デバイスまたはさらなるまたは新規の種類の呼吸治療デバイスを受領する際、処方設定を手動でポートする必要があり、人間の介入が必要になる。
【0034】
例えば、患者が既存のデバイスおよび処方(REPAP)を既に有する場合に新規デバイスを取得するには、当該患者は、その新規デバイスをプロバイダに注文する必要があり、プロバイダは設定をインストールする必要があるかまたはプロバイダは自身のクラウドベースのデータベースを手動で更新して新規デバイスを追加し、当該患者の処方が未だに有効であることを確認し得る。よって、一般的に、患者ができるのは、患者の処方情報を所有している現行プロバイダから新規デバイスを注文することだけであり、困難または長い据え付けプロセスに直面していない。
【0035】
本技術の一形態の別の態様によれば、システムにより治療品質インジケータ(例えば、酸素測定読み取り値)をチェックして、治療処方設定を自動ポートすべきか否かを決定することが可能になる。例えば、治療設定の自動ポートを行う際、例えば患者の処方が最適以下の低治療品質である場合に、当該処方をポートすべきではないという問題がある。よって、患者の処方が有効であるかを(例えば本明細書中に開示の治療品質インジケータおよび有効性インジケータのチェックにより)自動的にチェックおよび決定するためのシステムおよび方法が開示される。
【0036】
本技術の一形態の別の態様は、処方の日付をチェックし、ベンチレータ間において設定を変換し、患者情報または他の関連要素の変更をチェックした後、処方を自動ポートすることを特徴とする。本明細書中に記載のように、上記処方治療設定を自動ポートする際、異なる種類の2つのモデルが用いられる場合に問題になり得る。よって、本明細書中の治療設定の変換のためのシステムおよび方法が開示される。
【0037】
本技術の一形態の別の態様は、患者状態の変化を自動決定する方法である。患者状態の変化を自動決定するには、処方(例を非限定的に挙げると、体重、年齢、BMI、顔変化)の更新において、変化を示す画像認識ソフトウェア、音解析を通じた音声変化、あるいは(自動検出することが可能であるかまたは質問表の適用を通じて検出することが可能な)他の関連する患者の変化を通じて更新を行うことが必要になる。
【0038】
本技術の一形態の別の態様は、意図される装着者の形状に対して相補的である周辺形状と共に成形または他の場合に構築された患者インターフェースである。
【0039】
本技術の一形態の一態様は、装置の製造方法である。
【0040】
本技術の特定の形態の一態様は、例えば医療トレーニングを受けたことの無い人、あまり器用ではない人や洞察力の欠いた人、またはこの種の医療デバイスの使用経験が限られた人にとって使い易い医療デバイスである。
【0041】
本技術の一形態の一態様は、人間が(例えば、自宅周囲において)持ち運び可能な、携帯用RPTデバイスである。
【0042】
本技術の一形態の一態様は、患者の家庭において例えば石けん水などによって洗浄することが可能な患者インターフェースであり、特殊な清浄器具は不要である。本技術の一形態の一態様は、患者の家庭において例えば石けん水などによって洗浄することが可能な患者インターフェースであり、特殊な清浄器具は不要である。
【0043】
記載される方法、システム、デバイスおよび装置により、プロセッサにおける機能(例えば、特定目的用コンピュータのプロセッサ、呼吸モニターおよび/または呼吸治療装置の機能)の向上が可能となるように具現され得る。さらに、記載の方法、システム、デバイスおよび装置により、呼吸状態(例えば、睡眠障害呼吸)の自動管理、監視および/または治療の技術分野における向上が可能になる。
【0044】
もちろん、上記態様の一部は、本技術の下位態様を形成し得る。また、下位態様および/または態様のうち多様な1つを多様に組み合わせることができ、本技術のさらなる態様または下位態様も構成し得る。
【0045】
本技術の他の特徴は、以下の詳細な説明、要約、図面および特許請求の範囲中に含まれる情報に鑑みれば明らかになる。
【0046】
本技術の別の態様は、処方治療設定を用いた処方データベースを含み得る。これらの処方治療設定は、患者アカウントIDに対して参照され、上記患者アカウントIDは、各患者についての一意の識別子を処方サーバと通信する上記データベース中に含み、第1の呼吸治療デバイス、第2の呼吸治療デバイス、インターフェース、機械可読媒体を含むメモリ。上記機械可読媒体は、方法を行うための命令が保存された機械実行可能なコードを含み、制御システムは、1つ以上のプロセッサを含む上記メモリへ接続され、上記制御システムは、上記制御システムに以下を行わせるために上記機械実行可能なコードを実行するように構成される:患者が上記第1の呼吸治療デバイスから設定をポートしたい旨を示す入力を上記インターフェースから受信すること;上記患者と関連付けられたアカウントIDと上記第1の呼吸治療デバイスのハードウェア識別子とを上記インターフェースを通じて受信すること;および、上記アカウントIDおよび上記ハードウェア識別子を含むリクエストを上記処方サーバへ送信して、処方治療設定を上記処方サーバから取り出すこと;上記ハードウェア識別子が有効化された場合に上記アカウントIDに対して参照された処方治療設定を上記処方サーバから受信すること;および、上記処方治療設定を上記第2の呼吸治療デバイスのメモリ中に保存すること。
【0047】
本技術の別の態様において、処方治療設定は、以下をさらに含む:上記第1の呼吸デバイスからの呼吸治療データ出力に基づいて、上記アカウントIDに対して参照された呼吸品質インジケータを取り出すこと;上記呼吸品質インジケータが閾値を超えているかを決定すること;および、上記呼吸品質インジケータが上記閾値を下回っている場合、上記患者をフォローアップのためにフラグ付けし、上記処方治療設定をポートする旨の上記リクエストを拒否すること。
【0048】
本技術の別の態様において、上記呼吸品質インジケータは、無呼吸呼吸低下指数である。本技術の別の態様において、上記処方サーバから処方治療設定を受信することは、以下をさらに含む:上記処方治療設定の最終更新以降に満了した時間窓を決定すること;上記時間窓が閾値を上回るかを決定すること;上記時間窓が上記閾値を上回る場合、上記患者をフォローアップのためにフラグ付けし、上記処方治療設定をポートする旨の上記リクエストを拒否すること。
【0049】
本技術の別の態様において、処方治療設定は、上記患者から1組の情報をリクエストすること;上記情報の評価により、上記患者処方治療設定に関連して有意な変化が発生したかを決定すること;および、上記有意な変化が発生した場合、上記患者をフォローアップのためにフラグ付けし、上記処方治療設定をポートする旨の上記リクエストを拒否することをさらに含む。
【0050】
本技術の別の態様において、上記1組の情報は、以下のうち少なくとも1つを含む:体重変化、BMI変化、筋緊張変化。本技術の別の態様において、上記処方サーバから処方治療設定を受信することは、以下をさらに含む:1組のオキシメータデータ出力をパルスオキシメータからリクエストすること;上記オキシメータデータの処理により、上記処方治療設定を更新すべきか否かを決定すること;および、上記設定を更新すべきではない場合、上記患者をフォローアップのために上記処方治療データベース中にフラグ付けし、上記処方治療設定をポートする旨の上記リクエストを拒否すること。
【0051】
本技術の別の態様において、上記1組の情報は、マイクロフォンを通じて受信された音声データを含み、上記音声データの処理により、上記患者のトーンに有意な変化があるか否かを決定する。本技術の別の態様において、上記1組の情報は、上記顔の画像データを含み、上記顔の画像データを前もってキャプチャされた画像データと比較することにより、有意な顔変化を特定する。本技術の別の態様において、上記有意な顔変化は、BMIの有意な変化を示す。
【0052】
本技術の別の態様において、上記処方治療設定は、上記第1の呼吸治療デバイスへ接続されたセルラーアンテナを介して受信される。
【0053】
本技術の別の態様において、上記処方治療設定は、上記第1の呼吸治療デバイスへ接続されたデバイスへBluetooth(登録商標)またはWi-Fi接続を介して受信され、上記処方治療設定は、上記処方サーバから上記第1の呼吸治療デバイスへ暗号化される。
【0054】
本技術の別の態様において、上記処方治療設定は、最小および最大圧力ならびに治療モードを含み、上記一般的治療設定は、湿度、RAMP、EPR、または治療モード(例えば、CPAP、APA、双レベル)を含む。
【0055】
本技術の別の態様において、上記インターフェース、上記患者のアカウントと関連付けられたアカウントIDおよび上記第2の呼吸治療デバイスと関連付けられたシリアルナンバーを上記インターフェースを通じて受信することは、以下をさらに含む:上記第1の呼吸治療デバイスのディスプレイ上にコードを表示すること;上記インターフェース上において上記コードの入力をリクエストすること;および、上記コードが有効化された場合、上記一般設定および処方治療設定のみを受信すること。
【0056】
本技術の別の態様において、上記処方治療設定を受信することは、上記第1および第2の呼吸治療デバイス間の差に基づいて上記処方治療設定の変換を所定の変換因数によって行うことをさらに含む。
【0057】
本技術の別の態様によるシステムは、以下を含む:処方治療設定を用いた処方データベースであって、上記処方治療設定は、患者アカウントIDに対して参照され、上記患者アカウントIDは、各患者についての一意の識別子を処方サーバと通信する上記データベース中に含む、処方データベース;1組の患者アカウントIDに対して参照される一般的患者データを患者サーバと通信して含む患者データベース;第1の呼吸治療デバイス;インターフェース;機械可読媒体を含むメモリであって、上記機械可読媒体は、機械実行可能なコードを含み、上記機械実行可能なコード上には、方法を行うための命令が保存される、メモリ;1つ以上のプロセッサを含む上記メモリへ接続された制御システムであって、上記制御システムは、上記制御システムに以下を行わせるために上記機械実行可能なコードを実行するように構成され、:患者が設定を第2の呼吸治療デバイスからポートしたい旨を示す入力を上記インターフェースから受信すること;上記患者と関連付けられたアカウントIDと、上記第2の呼吸治療デバイスと関連付けられたシリアルナンバーとを上記インターフェースを通じて受信すること;および、上記アカウントIDおよび上記シリアルナンバーを含むリクエストを上記患者サーバへ送信して、処方治療設定を上記処方サーバから取り出すこと;上記シリアルナンバーが有効化された場合、上記アカウントIDに対して参照された処方IDに対して参照された上記処方サーバから送信された処方治療設定を上記患者サーバから受信すること;および、上記処方治療設定を上記第2の呼吸治療デバイスのメモリ中に保存すること。
【0058】
本技術の別の態様による方法は、以下を含む:患者が処方治療設定を呼吸治療デバイスへポートしたいとの旨の入力をインターフェースから受信すること;上記患者と関連付けられたアカウントIDおよび上記呼吸治療デバイスと関連付けられたシリアルナンバー上記インターフェースから受信すること;上記アカウントIDおよび上記シリアルナンバーを含むリクエストを処方サーバへ送信して、処方治療設定を上記処方サーバから取り出すこと;上記シリアルナンバーが有効化された場合、上記アカウントIDに対して参照された処方治療設定を上記処方サーバから受信すること;および上記処方治療設定を上記呼吸治療デバイスのメモリ中に保存すること。
【0059】
本技術の別の態様において、上記処方治療設定を上記呼吸治療デバイスのメモリ中に保存することは、上記処方治療設定を単一の使用セッションのために保存することをさらに含む。請求項19の方法において、上記処方治療設定を上記呼吸治療デバイスのメモリ中に保存することは、上記処方治療設定を単一の使用セッションのために保存することをさらに含む。
【0060】
本技術の別の態様において、単一の使用セッションは、特定の時間窓が満了した後、上記呼吸治療デバイスのメモリ中の上記処方治療設定を削除することを含む。
【0061】
本技術の別の態様において、単一の使用セッションは、上記呼吸治療デバイスが電源オフにされた後、上記呼吸治療デバイスのメモリ中の上記処方治療設定を削除することを含む。
【0062】
本技術の別の態様において、単一の使用セッションは、24時間後に上記呼吸治療デバイスのメモリ中の上記処方治療設定を削除することまたは上記患者が提携ホテルをチェックアウトした旨の通知後に上記呼吸治療デバイスのメモリ中の上記処方治療設定を削除することを含む。
【0063】
本技術の別の態様による方法は、以下を含む:上記患者と関連付けられたアカウントIDおよび上記呼吸治療デバイスと関連付けられたシリアルナンバーを含む処方治療設定を呼吸治療デバイスへポートしたい旨のリクエストを患者コンピューティングデバイスから
の処方サーバにおいて受信すること;上記処方サーバにより、処方データベースに対して上記アカウントIDおよび上記シリアルナンバーについて問い合わせをして、1組の処方治療設定を上記処方データベースから取り出すこと;上記処方サーバにより上記シリアルナンバーを処理して、上記シリアルナンバーが上記アカウントIDと有効に関連付けられているか否かを決定すること;および、上記シリアルナンバーが有効化されている場合、上記アカウントIDに対して参照された上記1組の処方治療設定を上記呼吸治療デバイスへ送信すること。
【0064】
本技術の別の態様によるシステムは、以下を含む:処方治療設定を用いた処方データベースであって、これらの処方治療設定は、患者アカウントIDに対して参照され、上記患者アカウントIDは、各患者についての一意の識別子を処方サーバと通信する上記データベース中に含む、処方データベースと;インターフェースと;患者が第1の呼吸治療デバイスから設定をポートしたい旨を示す入力を上記インターフェースから受信する入力モジュールと、;上記患者と関連付けられたアカウントIDと上記第1の呼吸治療デバイスのハードウェア識別子とを上記インターフェースを通じて受信する受信インターフェースモジュールと;上記アカウントIDおよび上記ハードウェア識別子を含むリクエストを上記処方サーバへ送信して、処方治療設定を上記処方サーバから取り出す送信モジュールと;上記ハードウェア識別子が有効化された場合に上記アカウントIDに対して参照された処方治療設定を上記処方サーバから受信する受信サーバモジュールと;および上記処方治療設定を上記第2の呼吸治療デバイスのメモリ中に保存する保存モジュール。
【0065】
本技術の別の態様によるシステムは、以下を含む:処方治療設定を用いた処方データベースであって、上記処方治療設定は、患者アカウントIDに対して参照され、上記患者アカウントIDは、各患者についての一意の識別子を処方サーバと通信する上記データベース中に含む、処方データベースと;1組の患者アカウントIDに対して参照される一般的患者データを患者サーバと通信して含む患者データベースと;インターフェースと;患者が設定を第2の呼吸治療デバイスからポートしたい旨を示す入力を上記インターフェースから受信する入力モジュールと;上記患者と関連付けられたアカウントIDと、上記第2の呼吸治療デバイスと関連付けられたシリアルナンバーとを上記インターフェースを通じて受信する受信インターフェースモジュールと;上記アカウントIDおよび上記シリアルナンバーを含むリクエストを上記患者サーバへ送信して、処方治療設定を上記処方サーバから取り出す送信モジュールと;上記シリアルナンバーが有効化されている場合、上記アカウントIDに対して参照された処方IDに対して参照された上記処方サーバから送信された処方治療設定を上記患者サーバから受信する受信サーバモジュールと;上記処方治療設定を上記第2の呼吸治療デバイスのメモリ中に保存する保存モジュール。
【0066】
本技術の別の態様は、プログラムがコンピュータによって実行されると、上述の方法のステップを前記コンピュータに実行させる命令を含む、コンピュータプログラム製品を含む。
【図面の簡単な説明】
【0067】
3 図面の簡単な説明
本技術を、添付図面中に非限定的に一実施例として例示する。図面中、類似の参照符号は、以下の類似の要素を含む:
3.1 治療システム
【0068】
【
図1A】患者インターフェース3000を装着している患者1000を含むシステムを示す。このシステムは、鼻枕の形態をとり、RPTデバイス4000から供給される陽圧の空気を受容する。RPTデバイス4000からの空気は、加湿器5000によって加湿され、空気回路4170に沿って患者1000へと移動する。同床者1100も図示される。患者は、仰臥位睡眠位置において睡眠している。
【0069】
【
図1B】患者インターフェース3000を装着している患者1000を含むシステムを示す。このシステムは、鼻マスクの形態をとり、RPTデバイス4000から供給される陽圧の空気を受容する。RPTデバイスからの空気は、加湿器5000によって加湿され、空気回路4170に沿って患者1000へと移動する。
【0070】
【
図1C】患者インターフェース3000を装着している患者1000を含むシステムを含む。患者インターフェース3000は、フルフェイスマスクをとり、陽圧の空気供給をRPTデバイス4000から受容する。RPTデバイスからの空気は、加湿器5000によって加湿され、空気回路4170に沿って患者1000へと移動する。患者は、側臥位睡眠位置において睡眠している。3.2 呼吸システムおよび顔の解剖学的構造
【0071】
【
図2A】鼻腔および口腔、喉頭、声帯ひだ、食道、気管、気管支、肺、肺胞嚢、心臓および横隔膜を含むヒト呼吸器系の概要を示す。3.3 患者インターフェース
【0072】
【
図3A】本技術の一形態による鼻マスクの形態の患者インターフェースを示す。3.4 RPTデバイス
【0073】
【
図4A】本技術の一形態によるRPTデバイスを示す。
【0074】
【
図4B】本技術の一形態に従ったRPTデバイスの空気回路の概略図である。上流および下流の方向が、送風機および患者インターフェースに対して示される。任意の特定の瞬間における実際の流れ方向に関係無く、送風機は患者インターフェースの上流にあるものとして規定され、患者インターフェースは送風機の下流にあるものとして規定される。送風機と患者インターフェースとの間の空気圧経路内に配置されたアイテムは、送風機の下流および患者インターフェースの上流にある。
【0075】
【
図4C】本技術の一形態によるRPTデバイスの電気構成要素の模式図である。
【0076】
【
図4D】本技術の1つの形態によるRPTデバイス中において実行されるアルゴリズムの概略図である。
【0077】
【
図4E】本技術の一態様に従った
図4Dの治療エンジンモジュールによって実施される方法を説明したフローチャートである。3.5 加湿器
【0078】
【
図5A】本技術の1つの形態による加湿器の等角図を示す。
【0079】
【
図5B】本技術の1つの形態による加湿器の等角図を示し、加湿器リザーバ5110が加湿器リザーバドック5130から取り外された様子を示す。3.6 呼吸波形
【0080】
【
図6A】睡眠時のヒトの典型的な呼吸波形のモデルを示す。3.7 スクリーニング、診断、および監視システム
【0081】
【
図7A】睡眠ポリグラフ(PSG)を受けている患者を示す。患者は、仰臥位睡眠位置において睡眠している。
【0082】
【
図7B】患者の状態の監視のための監視装置を示す。患者は、仰臥位睡眠位置において睡眠している。3.8 データ送信
【0083】
【
図8】呼吸治療デバイスの処方治療設定を保存および更新するシステムのブロック図である。3.9 治療設定の転送
【0084】
【
図9】呼吸治療デバイスについての処方治療設定を保存する方法の一例のフローチャートである。
【0085】
【
図10】呼吸治療デバイスの処方治療設定の保存および更新を行うシステムのブロック図である。
【0086】
【
図11】呼吸治療デバイスの処方治療設定の保存および更新を行う方法の一例のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0087】
4 本技術の実施例の詳細な説明
本技術についてさらに詳細に説明する前に、本技術は、本明細書中に記載される異なり得る特定の実施例に限定されるのではないことが理解されるべきである。本開示中に用いられる用語は、本明細書中に記載される特定の実施例を説明する目的のためのものであり、限定的なものではないことも理解されるべきである。
【0088】
以下の記載は、1つ以上の共通の特性および/または特徴を共有し得る多様な実施例に関連して提供される。任意の1つの実施例の1つ以上の特徴は、別の実施例または他の実施例の1つ以上の特徴と組み合わせることが可能であることが理解されるべきである。加えて、これらの実施例のうちのいずれかにおける任意の単一の特徴または特徴の組み合わせは、さらなる実施例を構成し得る。
4.1 治療
【0089】
一形態において、本技術は、呼吸器疾患の治療方法を含む。本方法は、患者1000の気道の入口へ陽圧を付加するステップを含む。
【0090】
本技術の特定の実施例において、陽圧における空気供給が鼻孔の片方または双方を介して患者の鼻通路へ提供される。
【0091】
本技術の特定の実施例において、口呼吸が制限されるか、限定されるかまたは妨げられる。
4.2 治療システム
【0092】
1つの形態において、本技術は、呼吸障害の治療のための装置またはデバイスを含む。装置またはデバイスは、圧縮空気を患者インターフェース3000または3800への空気回路4170を介して患者1000へ供給するRPTデバイス4000を含み得る。
4.3 患者インターフェース
【0093】
本技術の一態様による非侵襲的患者インターフェース3000は、以下の機能様態を含む:シール形成構造3100、プレナムチャンバ3200、位置決めおよび安定化構造3300、通気孔3400、空気回路4170への接続のための一形態の接続ポート3600、および前額支持部3700。いくつかの形態において、機能様態が、1つ以上の物理的コンポーネントによって提供され得る。いくつかの形態において、1つの物理的コンポーネントは、1つ以上の機能様態を提供し得る。使用時において、シール形成構造3100は、気道への陽圧での空気供給を促進するように、患者の気道の入口を包囲するように配置される。
【0094】
非シール型患者インターフェース3800は、鼻カニューレの形態をしており、鼻カニューレ3810aおよび3810bを含む。鼻カニューレ3810aおよび3810bは、空気を患者1000の各鼻腔へ送達させ得る。このような鼻プロングは、鼻孔の内側皮膚面または外側皮膚面とのシールを形成しないことが多い。鼻プロングへの空気は、1つ以上の空気供給ルーメン3820aおよび3820bから送達される。これらは、鼻カニューレ3800と連結される。ルーメン3820aおよび3820bは、鼻カニューレ3800から延び、鼻カニューレ3800は、空気流れを高流量にて生成するRTデバイスへ延びる。非シール型患者インターフェース3800には「通気穴」が設けられ、この「通気穴」を通じて、過剰な空気流が雰囲気へと逃げる。この「通気穴」は、カニューレ3800のプロング3810aおよび3810bの端部間の通路であり、患者の鼻腔を介して雰囲気へ延びる。
【0095】
患者インターフェースが最低レベルの陽圧を快適に気道へ送達できない場合、患者インターフェースは呼吸圧力治療に不適切であり得る。
【0096】
本技術の一形態による患者インターフェース3000は、周囲に対して少なくとも6cmH2Oの陽圧で空気供給を提供できるように構築および配置される。
【0097】
本技術の一形態による患者インターフェース3000は、周囲に対して少なくとも10cmH2Oの陽圧で空気供給を提供できるように構築および配置される。
【0098】
本技術の一形態による患者インターフェース3000は、周囲に対して少なくとも20cmH2Oの陽圧で空気供給を提供できるように構築および配置される。
4.4 RPTデバイス
【0099】
本技術の一態様によるRPTデバイス4000は、機械、空気圧式、および/または電気部品を含み、1つ以上のアルゴリズム4300(例えば全体的にせよ部分的にせよ本明細書に記載の方法のうちいずれか)を実行するように構成される。RPTデバイス4000は、例えば本文書中のいずれかに記載の呼吸状態のうち1つ以上の治療のために患者の気道へ送達される空気流れを生成するように構成され得る。
【0100】
一形態において、RPTデバイス4000は、少なくとも6cmH2Oまたは少なくとも10cmH2Oまたは少なくとも20cmH2Oの陽圧を維持しつつ、空気流れを-20L/分~+150L/分の範囲で送達できるように構築および配置される。
4.4.1 RPTデバイス電気部品
4.4.1.1 電源
【0101】
電源4210は、RPTデバイス4000の外部ハウジング4010の内部または外部に配置され得る。
【0102】
本技術の一形態において、電源4210は、RPTデバイス4000にのみ電力を供給する。本技術の別の形態において、電源4210から、電力がRPTデバイス4000および加湿器5000双方へ提供される。
4.4.1.2 入力デバイス
【0103】
本技術の一形態において、RPTデバイス4000は、人間がデバイスと相互作用を可能にするためのボタン、スイッチまたはダイヤルの形態をとる1つ以上の入力デバイス4220を含む。ボタン、スイッチまたはダイヤルは、タッチスクリーンを介してアクセスすることが可能な物理的デバイスまたはソフトウェアデバイスであり得る。ボタン、スイッチまたはダイヤルは、一形態において外部ハウジング4010に物理的に接続させても
よいし、あるいは、別の形態において中央コントローラ4230と電気接続された受信器と無線通信してもよい。
【0104】
一形態において、入力デバイス4220は、人間が値および/またはメニュー選択肢を選択することを可能にするように、構築および配置され得る。
4.4.1.3 中央コントローラ
【0105】
本技術の一形態において、中央コントローラ4230は、RPTデバイス4000の制御に適した1つまたは複数のプロセッサである。
【0106】
適切なプロセッサは、ARM HoldingsからのARM(登録商標)Cortex(登録商標)-Mプロセッサに基づいたプロセッサであるx86INTELプロセッサを含み得る(例えば、ST マクロ電子からのS(登録商標)32シリーズのマイクロコントローラ)。本技術の特定の代替形態において、32ビットRISC CPU(例えば、ST MICRO電子SからのSTR9シリーズマクロコントローラ)または16ビットRISC CPU(例えば、TEXAS INSTRUMENTSによって製造されたマクロコントローラのMSP430ファミリーからのプロセッサ)も適切であり得る。
【0107】
本技術の一形態において、中央コントローラ4230は、専用電子回路である。
【0108】
一形態において、中央コントローラ4230は、特定用途向け集積回路である。別の形態において、中央コントローラ4230は、個別電子コンポーネントを含む。
【0109】
中央コントローラ4230は、1つ以上の変換器4270、1つ以上の入力デバイス4220および加湿器5000から入力信号(複数)を受信するように、構成され得る。
【0110】
中央コントローラ4230は、出力信号(複数)を出力デバイス4290、治療装置コントローラ4240、データ通信インターフェース4280および加湿器5000のうち1つ以上へ提供するように、構成され得る。
【0111】
本技術のいくつかの形態において、中央コントローラ4230は、本明細書中に記載の1つ以上の方法を具現するように、構成される(例えば、メモリ4260等の非一時的なコンピュータで読出可能な記録媒体に記録されたコンピュータプログラムとして表現された1つ以上のアルゴリズム4300等)。本技術のいくつかの形態において、中央コントローラ4230は、RPTデバイス4000と一体化され得る。しかし、本技術のいくつかの形態において、いくつかの方法が、遠隔配置されたデバイスによって行われ得る。例えば、遠隔配置されたデバイスは、記録されたデータ(例えば、本明細書中に記載のセンサのうちいずれかからのもの)の分析により、人工呼吸器の制御設定を決定し得るか、または、呼吸関連イベントを検出し得る。
4.4.1.4 時計
【0112】
RPTデバイス4000は、中央コントローラ4230へ接続された時計4232を含み得る。
4.4.1.5 治療装置コントローラ
【0113】
本技術の一形態において、治療デバイスコントローラ4240は治療制御モジュール4330であり、中央コントローラ4230によって実行されるアルゴリズム4300の一部を形成する。
【0114】
本技術の一形態において、治療装置コントローラ4240は、専用モータ制御集積回路
である。例えば、一形態において、ONSEMIによって製造されたMC33035ブラシレスDCモータコントローラが用いられる。
4.4.1.6 保護回路
【0115】
本技術による1つ以上の保護回路4250は、電気保護回路、温度および/または圧力安全回路を含み得る。
4.4.1.7 メモリ
【0116】
本技術の一形態によれば、RPTデバイス4000は、メモリ4260(例えば、不揮発性メモリ)を含む。いくつかの形態において、メモリ4260は、電池式スタティックRAMを含み得る。いくつかの形態において、メモリ4260は、揮発性RAMを含み得る。
【0117】
メモリ4260は、PCBA4202上に配置され得る。メモリ4260は、EEPROMまたはNANDフラッシュの形態をとり得る。
【0118】
追加的にまたは代替的に、RPTデバイス4000は、取り外し可能なメモリ4260(例えば、セキュアデジタル(SD)規格に従って作製されたメモリカード)を含む。
【0119】
本技術の一形態において、メモリ4260は、非一時的コンピュータで読出可能な記録媒体として機能する。この記録媒体上に、本明細書中に記載の1つ以上の方法を表現するコンピュータプログラム命令(例えば、1つ以上のアルゴリズム4300)が記録される。
4.4.1.8 データ通信システム
【0120】
本技術の一形態において、データ通信インターフェース4280が設けられ、中央コントローラ4230へ接続される。データ通信インターフェース4280は、遠隔外部通信ネットワーク4282および/またはローカル外部通信ネットワーク4284へ接続可能であり得る。遠隔外部通信ネットワーク4282は、遠隔外部デバイス4286へ接続可能であり得る。ローカル外部通信ネットワーク4284は、ローカル外部デバイス4288へ接続可能であり得る。
【0121】
一形態において、データ通信インターフェース4280は、中央コントローラ4230の一部である。別の形態において、データ通信インターフェース4280は、中央コントローラ4230と別個であり、集積回路またはプロセッサを含み得る。
【0122】
一形態において、遠隔外部通信ネットワーク4282はインターネットである。データ通信インターフェース4280は、インターネットへ接続するために、(例えば、イーサネット(登録商標)または光ファイバーを介して)有線通信を用得るかまたは無線プロトコル(例えば、CDMA、GSM(登録商標)、LTE)を用い得る。
【0123】
一形態において、ローカル外部通信ネットワーク4284は、1つ以上の通信規格(例えば、ブルートゥース(登録商標)またはコンシューマー赤外線プロトコル)を用いる。
【0124】
一形態において、遠隔の外部デバイス4286は、1つ以上のコンピュータ(例えば、ネットワーク化コンピュータのクラスタ)である。一形態において、遠隔の外部デバイス4286は、物理的コンピュータではなく仮想コンピュータであり得る。いずれの場合も、このような遠隔の外部デバイス4286は、適切に権限を付与された人間(例えば、臨床医)からのアクセスが可能であり得る。
【0125】
ローカル外部デバイス4288は、パーソナルコンピュータ、携帯電話、タブレットまたは遠隔コントロールであり得る。
4.4.1.9 任意選択のディスプレイ、警報を含む出力デバイス
【0126】
本技術による出力デバイス4290は、視覚、音声および触覚ユニットのうち1つ以上の形態をとり得る。視覚ディスプレイは、液晶ディスプレイ(LCD)または発光ダイオード(LED)ディスプレイであり得る。
4.4.1.9.1 ディスプレイドライバ
【0127】
ディスプレイドライバ4292は、ディスプレイ4294上へ表示されるべき文字、記号または画像を入力として受信し、ディスプレイ4294にこれらの文字、記号または画像を表示させるコマンドへ変換する。
4.4.1.9.2 ディスプレイ
【0128】
ディスプレイ4294は、ディスプレイドライバ4292から受信されたコマンドに応答して、文字、記号または画像を視覚的に表示するように構成される。例えば、ディスプレイ4294は8セグメントディスプレイであり得、その場合、ディスプレイドライバ4292は、各文字または記号(例えば、数字「0」)を、特定の文字または記号を表示するために各8個のセグメントを活性化させるべきかを示す8個の論理信号へ変換する。
4.4.2 RPTデバイスアルゴリズム
【0129】
上記したように、本技術のいくつかの形態において、中央制御装置4230は、非一時的なコンピュータで読出可能な記録媒体(例えば、メモリ4260)中に記録されたコンピュータプログラムとして表現された1つ以上のアルゴリズム4300を具現するように構成され得る。このアルゴリズム4300は、モジュールと呼ばれるグループにグループ付けられることが一般的だ。
4.4.2.1 事前処理モジュール
【0130】
本技術の一形態による事前処理モジュール4310は、変換器4270(例えば流量センサ4274または圧力センサ4272)からの信号を入力として受信し、1つ以上の出力値を計算するための1つ以上のプロセスステップを行う。これらの出力値は、別のモジュール(例えば、治療エンジンモジュール4320)への入力として用いられる。
【0131】
本技術の一形態において、出力値は、インターフェース圧力Pm、呼吸流量Qrおよび漏洩流量Qlを含む。
【0132】
本技術の多様な形態において、事前処理モジュール4310は、以下のアルゴリズムのうち1つ以上を含む:インターフェース圧力推定4312、通気流量推定4314、漏洩流量推定4316および呼吸流量推定4318。
4.4.2.1.1 インターフェース圧力推定
【0133】
本技術の一形態において、インターフェース圧力推定アルゴリズム4312は、空気圧ブロックの出口の近隣の空気圧経路中の圧力(デバイス圧力Pd)を示す信号を圧力センサ4272から入力として受信し、RPTデバイス4000を退出する気流の流量(デバイス流量Qd)を示す信号を流量センサ4274から入力として受信する。補助ガス4180を全く含まないデバイス流量Qdが、合計流量Qtとして用いられ得る。インターフェース圧力アルゴリズム4312は、空気回路4170を通じた圧力降下ΔPを推定する。合計流量Qtに対する圧力降下ΔPの依存関係は、圧力降下特性ΔP(Q)により特定の空気回路4170についてモデル化することができ得る。次に、インターフェース圧力推定アルゴリズム4312は、患者インターフェース3000または3800中の推定圧
力Pmを出力として提供する。患者インターフェース3000または3800中の圧力Pmは、デバイス圧力Pdから空気回路圧力降下ΔPを減算した値として推定することができ得る。
4.4.2.1.2 通気流量の推定
【0134】
本技術の一形態において、通気流量推定アルゴリズム4314は、インターフェース圧力推定アルゴリズム4312から患者インターフェース3000または3800中の推定圧力Pmを入力として受信し、患者インターフェース3000または3800中の通気孔3400からの空気の通気流量Qvを推定する。特定の通気部3400におけるインターフェース圧力Pmに対する通気流量Qvの使用時の依存関係は、通気特性Qv(Pm)によってモデル化され得る。
4.4.2.1.3 漏洩流量の推定
【0135】
本技術の一形態において、漏洩流量推定アルゴリズム4316は、全体流量Qtおよび通気流量Qvを入力として受信し、漏洩流量Qlの推定を出力として提供する。一形態において、漏洩流量推定アルゴリズムは、いくつかの呼吸サイクル(例えば、約10秒)を含むくらいに充分に長い期間にわたって全体流量Qtと通気流量Qvとの間の差平均を計算することにより、漏洩流量Qlを推定する。
【0136】
一形態において、漏洩流量推定アルゴリズム4316は、漏洩流量Qlを出力として提供し、漏洩コンダクタンスを計算することおよび漏洩流量Qlを漏洩コンダクタンスおよび圧力Pmの関数となるように決定することにより、患者インターフェース3000または3800中の全体流量Qt、通気流量Qv、および推定圧力Pmを入力として受信する。漏洩コンダクタンスは、全体流量Qtと通気流量Qvとの間の差に等しいローパスフィルタされた非通気流量の商と、圧力Pmのローパスフィルタされた平方根として計算され、ローパスフィルタ時定数は、いくつかの呼吸サイクル(例えば、約10秒)を含むだけの充分な値を有する。漏洩流量Qlは、漏洩コンダクタンスの積および圧力Pmの関数として推定され得る。
4.4.2.1.4 呼吸流量推定
【0137】
本技術の一形態において、呼吸流量推定アルゴリズム4318は、全体流量Qt、通気流量Qvおよび漏洩流量Qlを入力として受信し、通気流量Qvおよび漏洩流量Qlを全体流量Qtから減算することにより、患者への空気呼吸流量Qrを推定する。
4.4.2.2 治療エンジンモジュール
【0138】
本技術の一形態において、治療エンジンモジュール4320は、患者インターフェース3000または3800中の圧力Pmおよび患者への空気呼吸流量Qrのうち1つ以上を入力として受信し、1つ以上の治療パラメータを出力として提供する。
【0139】
本技術の一形態において、治療パラメータは、治療圧力Ptである。
【0140】
本技術の一形態において、治療パラメータは、圧力変化の振幅、ベース圧力および目標換気のうち1つ以上である。
【0141】
多様な形態において、治療エンジンモジュール4320は、以下のアルゴリズムのうち1つ以上を含む:フェーズ決定4321、波形決定4322、換気決定4323、吸気流制限決定4324、無呼吸/呼吸低下決定4325、いびき決定4326、気道開通性決定4327、目標換気決定4328、および治療パラメータ決定4329。
4.4.2.2.1 フェーズ決定
【0142】
本技術の一形態において、RPTデバイス4000は、フェーズを決定しない。
【0143】
本技術の一形態において、フェーズ決定アルゴリズム4321は、呼吸流量Qrを示す信号を入力として受信し、患者1000の現在の呼吸サイクルのフェーズを出力Φとして提供する。
【0144】
いくつかの形態において、離散フェーズ決定として知られるフェーズ出力Φは、離散変数である。離散フェーズ決定の一具現例により、吸息または呼息の値を持つ二値フェーズ出力Φが得られる。この値は、自発吸息および呼息それぞれの開始が検出された際に例えば0回転および0.5回転の値としてそれぞれ表される。「トリガ」および「サイクル」するRPTデバイス4000は、離散フェーズ決定を有効に行う。なぜならば、トリガ点およびサイクル点は、フェーズが呼息から吸息へおよび吸息から呼息へそれぞれ変化する瞬間であるからである。二値フェーズ決定の一具現例において、フェーズ出力Φは、呼吸流量Qrが正の閾値を超える値を有するときに、離散値0を有し(これによりRPTデバイス4000を「トリガ」する)、呼吸流量Qrの値が負の閾値よりもより大きな負の値であるときに0.5回転の離散値(これにより、RPTデバイス4000を「サイクルさせる」)を有するように、決定される。吸息時間Tiおよび呼息時間Teは、(吸気を示す)0および(呼気を示す)0.5それぞれに等しいフェーズΦと共に費やされた時間の多くの呼吸器サイクルにわたって推定された典型的値であり得る。
【0145】
離散フェーズ決定の別の具現例により、吸息、吸気中の一時停止および呼息のうち1つの値を備えた3値フェーズ出力Φが得られる。
【0146】
他の形態において、連続フェーズ決定として知られるフェーズ出力Φは連続する変数であり、例えば0回転~1回転または0~2πラジアンの間で変動する。連続フェーズ決定を行うRPTデバイス4000は、連続フェーズが0回転および0.5回転それぞれに到達したときに、トリガおよびサイクルし得る。連続フェーズ決定の一具現例において、フェーズの連続値Φは、呼吸流量Qrのファジー論理分析を用いて決定される。本具現例において実行されたフェーズの連続値は、「ファジーフェーズ」と呼ばれることが多い。ファジーフェーズ決定アルゴリズム4321の一具現例において、以下の規則が呼吸流量Qrへ適用される:
1.呼吸流量がゼロになった後に急激に増加した場合、フェーズは0回転である。
2.呼吸流量が大きな正の値でありかつ安定している場合、フェーズは0.25回転である。
3.呼吸流量がゼロであり急激に低下する場合、フェーズは0.5回転である。
4.呼吸流量が大きな負の値でありかつ安定している場合、フェーズは0.75回転である。
5.呼吸流量がゼロでありかつ安定しており、呼吸流量の5秒のローパスフィルタされた絶対値が大きい場合、フェーズは0.9回転である。
6.呼吸流量が正であり、フェーズが呼気である場合、フェーズは0回転である。
7.呼吸流量が負であり、フェーズが吸気であり、フェーズは0.5回転である。
8.呼吸流量の5秒のローパスフィルタされた絶対値が大きい場合、フェーズは、時定数20秒によってローパスフィルタされた患者の呼吸速度に等しい一定速度で増加する。
【0147】
各規則の出力は、フェーズが規則の結果でありかつ大きさが規則が真となるファジー範囲となるベクトルとして表され得る。呼吸流量が「大きい」、「安定している」などのファジー範囲は、適切なメンバシップ関数によって決定される。規則の結果は、ベクトルとして表され、その後、セントロイドをとるなどのいくつかの関数により、組み合わされる。このような組み合わせにおいて、規則は、等しく重み付けしてもよいし、あるいは異なる様態で重み付けしてもよい。
【0148】
連続フェーズ決定の別の具現例において、フェーズΦは、吸息時間Tiおよび呼息時間Teと同様、上記のように先ず呼吸流量Qrから個別に推定される。その後、任意の瞬間における連続フェーズΦは、先行トリガ瞬間から経過した吸息時間Tiの割合の半分または0.5回転に先行サイクル瞬間から経過した呼息時間Teの割合を加算した値(これらのうち、より直近の瞬間)として決定される。
4.4.2.2.2 波形決定
【0149】
本技術の一形態において、治療パラメータ決定アルゴリズム4329は、患者の呼吸サイクル全体を通じてほぼ一定の治療圧力を提供する。
【0150】
本技術の他の形態において、治療制御モジュール4330は、圧力生成器4140を制御して、波形テンプレートΠ(Φ)に従って患者呼吸サイクルのフェーズΦの関数として変動する治療圧力Ptを提供させる。
【0151】
本技術の一形態において、波形決定アルゴリズム4322は、波形テンプレートΠ(Φ)を提供する。波形テンプレートは、治療パラメータ決定アルゴリズム4329によって用いられる予定のフェーズ決定アルゴリズム4321によって提供されるフェーズ値Φの変域について[0,1]の範囲内の値を有する。
【0152】
一形態において、離散的または連続的に値をとるフェーズに適したものとして、波形テンプレートΠ(Φ)は矩形波テンプレートであり、0.5回転までのフェーズ値に対して1の値を有し、0.5回転を超えるフェーズ値に対して0の値を有する。一形態において、連続的に値をとるフェーズに適したものとして、波形テンプレートΠ(Φ)は、2つの平滑に曲線状の部分を含む(すなわち、0.5回転までのフェーズ値に対して平滑に曲線状の(例えば、上昇コサインの)0から1への上昇、および0.5回転を超えるフェーズ値に対して1から0への平滑に曲線状の(例えば、指数関数的)低下)。一形態において、連続的に値をとるフェーズに適したものとして、波形テンプレートΠ(Φ)は矩形波に基づくが、0.5回転よりも低い「立上がり時間」までのフェーズ値に対して0~1の平滑な上昇を持ち、0.5回転後の「下降時間」内のフェーズ値に対して1から0への、0.5回転よりも低い「下降時間」をもつ平滑な下降を有する。
【0153】
本技術のいくつかの形態において、波形決定アルゴリズム4322は、RPTデバイスの設定に応じて、波形テンプレートΠ(Φ)を波形テンプレートのライブラリから選択する。ライブラリ中の各波形テンプレートΠ(Φ)は、フェーズ値Φに対するルックアップテーブル値Πとして提供され得る。他の形態において、波形決定アルゴリズム4322は、所定の関数形式(恐らくは、1つ以上のパラメータ(例えば、指数関数的な曲線状部分の時定数)によってパラメータ化されたもの)を用いて、波形テンプレートΠ(Φ)を「オンザフライ」で計算する。関数形式のパラメータは、所定のものであってもよりし、あるいは患者1000の現在の状態に依存してもよい。
【0154】
吸息(Φ=0回転)または呼息(Φ=0.5回転)の離散二値フェーズに適した本技術のいくつかの形態において、波形決定アルゴリズム4322は、最も直近のトリガ瞬間から測定された離散フェーズΦおよび時間tの関数として、波形テンプレートΠを「オンザフライ」で計算する。1つのこのような形態において、波形決定アルゴリズム4322は、波形テンプレートΠ(Φ,t)を2つの部分(吸気および呼気)において以下のように計算する。
【0155】
ここで、Πi(t)およびΠe(t)は、波形テンプレートΠ(Φ,t)の吸気部分および呼気部分である。1つのこのような形態において、波形テンプレートの吸気部分Πi(t)は、立上がり時間によってパラメータ化された0から1への平滑な上昇であり、波形テンプレートの呼気部分Πe(t)は、下降時間によってパラメータ化された1から0への平滑な下降である。
4.4.2.2.3 換気決定
【0156】
本技術の一形態において、換気決定アルゴリズム4323は、呼吸流量Qrを入力として受信し、現在の患者換気Ventを示す測定を決定する。
【0157】
いくつかの具現例において、換気決定アルゴリズム4323は、実際の患者換気の推定値である換気Ventの測定を決定する。このような一具現例として、呼吸流量Qrの絶対値の半値をとることがあり、これは、任意選択的にローパスフィルタ(例えば、コーナ周波数が0.11Hzである2次ベッセルローパスフィルタ)によってフィルタリングされる。
【0158】
他の具現例において、換気決定アルゴリズム4323は、実際の患者換気に大きく比例する換気Ventの測定を決定する。このような一具現例において、ピーク呼吸流量Qpeakが、サイクルの吸気部分において推定される。呼吸流量Qrのサンプリングを含む上記および他の多数の手順により、換気に大きく比例する測定が得られるが、これらの測定の場合、流量波形形状の変動がそれほど大きくない(ここで、2つの呼吸の形状は、時間および振幅において正規化された呼吸の流量波形が類似するときと同様のものとしてとられる)。いくつかの簡単な例を挙げると、正の呼吸流量の中央値、呼吸流量の絶対値の中央値、および流量の標準偏差がある。正の係数を用いた呼吸流量の絶対値の任意次数の統計の任意の線形的組み合わせ(およびさらには正の係数および負の係数双方を用いたいくつかのもの)は、換気におおむね比例する。別の例として、吸気部分の(時間について)中央K割合における呼吸流量の平均であり、ここで、0<K<1である。流量形状が一定である場合、換気に高精度に比例する任意の多数の測定がある。
4.4.2.2.4 吸気流制限の決定
【0159】
本技術の一形態において、中央コントローラ4230は、吸気流制限の範囲の決定について、吸気流制限決定アルゴリズム4324を実行する。
【0160】
一形態において、吸気流制限決定アルゴリズム4324は、呼吸流量信号Qrを入力として受信し、呼吸の吸気部分が吸気流制限を示す範囲の計量を出力として提供する。
【0161】
本技術の一形態において、各呼吸の吸気部分は、ゼロ交差検出器によって特定される。均等に間隔を空けて配置された複数の(例えば、65個の)点は、時点を示し、各呼吸について吸気流量-時間曲線に沿って補間器によって補間される。その後、これらの点によって記述された曲線をスケーラーによって単位長さ(持続期間/期間)および単位面積を持つようにスケールすることにより、呼吸数および深さの変化による影響を除去する。次に、スケーリングされた呼吸を通常の非閉塞呼吸を示す(
図6Aに示す呼吸の吸気部分と同様の)事前保存されたテンプレートと比較器において比較する。吸気時の任意の時において、試験要素によって決定されたような例えば咳、吐息、嚥下およびしゃっくりに起因したこのテンプレートからの呼吸の逸脱が指定閾(典型的には、1スケール単位)を超え
る場合、当該呼吸は拒否される。拒否の無かったデータについて、第1のこのようなスケーリングされた点の移動平均を中央コントローラ4230によって先行するいくつかの吸気事象について計算する。これを同一吸気事象にわたって第2のこのような点について繰り返し、以降同様に繰り返す。そのため、例えば、65個のスケーリングされたデータ点が中央コントローラ4230によって生成され、先行するいくつかの吸気事象(例えば、3つの事象)の移動平均を示す。本明細書中以下、連続的に更新された(例えば、65個の)点の値の移動平均を「スケーリングされた流量」と呼び、Qs(t)によって示す。あるいは、移動平均の代わりに単一の吸気事象を用いてもよい。
【0162】
スケーリングされた流量から、部分的閉塞の決定に関連する2つの形状要素が計算され得る。
【0163】
形状要素1は、中間(例えば、32個の)スケーリングされた流量点の平均の全体的(例えば、65個の)スケーリングされた流量点の平均に対する比である。この比が1を超える場合、呼吸は正常であるとみなされる。この比が1未満である場合、呼吸に閉塞が有るとみなされる。比が約1.17である場合、部分的閉塞と非閉塞呼吸との間の閾としてみなされ、典型的な患者における適切な酸素付加の維持を可能にする一定レベルの閉塞に等しい。
【0164】
形状要素2は、中間(例えば、32個の)点にわたって単位スケーリングされた流量からの平均二乗偏差として計算される。平均二乗偏差が約0.2単位である場合、正常とみなされる。平均二乗偏差がゼロである場合、全体的に流れが制限された呼吸とみなされる。平均二乗偏差がゼロに近づくほど、当該呼吸は、流れが制限されたものとみなされる。
【0165】
形状要素1および2は、代替として用いてもよいし、組み合わせて用いてもよい。本技術の他の形態において、サンプルされた点の数、呼吸および中間点は、上記したものと異なり得る。さらに、閾値も上記したものと異なり得る。
4.4.2.2.5 無呼吸および呼吸低下の決定
【0166】
本技術の一形態において、中央コントローラ4230は、無呼吸および/または呼吸低下の存在の決定のために、無呼吸/呼吸低下決定アルゴリズム4325を実行する。
【0167】
一形態において、無呼吸/呼吸低下検出アルゴリズム4325は、呼吸流量信号Qrを入力として受信し、無呼吸または呼吸低下が検出されたかを示すフラッグを出力として提供する。
【0168】
一形態において、無呼吸とは、呼吸流量Qrの関数が所定の期間にわたって流量閾値を下回ったときに検出されるものとされる。この関数は、ピーク流量、比較的短期間の平均流量、または比較的短期間の平均およびピーク流量の流量中間値を決定し得る(例えば、RMS流量)。流量閾値は、流量の比較的長期間の測定値であり得る。
【0169】
一形態において、呼吸低下とは、呼吸流量Qrの関数が所定の期間にわたって第2の流量閾値を下回ったときに検出されるものとする。この関数は、ピーク流量、比較的短期間の平均流量、または比較的短期間の平均およびピーク流量の流量中間値を決定し得る(例えば、RMS流量)。第2の流量閾値は、流量の比較的長期の測定値であり得る。第2の流量閾値は、無呼吸の検出に用いられる流量閾値よりも高い。
4.4.2.2.6 いびきの決定
【0170】
本技術の一形態において、中央コントローラ4230は、いびき範囲の決定のために、1つ以上のいびき決定アルゴリズム4326を実行する。
【0171】
一形態において、いびき検出アルゴリズム4326は、呼吸流量信号Qrを入力として受信し、いびきが存在している範囲の測定値を出力として提供する。
【0172】
いびき検出アルゴリズム4326は、流量信号の強度を30~300Hzの範囲内において決定するステップを含み得る。さらに、いびき決定アルゴリズム4326は、バックグラウンドノイズ(例えば、送風機からのシステム中の気流音)を低減するために呼吸流量信号Qrをフィルタリングするステップを含み得る。
4.4.2.2.7 気道開通性の決定
【0173】
本技術の一形態において、中央コントローラ4230は、気道開通性の範囲の決定のために、1つ以上の気道開通性決定アルゴリズム4327を実行する。
【0174】
一形態において、気道開通性決定アルゴリズム4327は、呼吸流量信号Qrを入力として受信し、信号の出力を約0.75Hz~約3Hzの周波数範囲内において決定する。この周波数範囲内におけるピークの存在は、気道開放を示すものとしてみなされる。ピークの不在は、気道閉鎖の兆候とみなされる。
【0175】
一形態において、ピークが求められる周波数範囲は、治療圧力Ptにおける小さな強制オシレーションの周波数となる周波数範囲である。一具現例において、強制オシレーションは、振幅が約1cmH2Oである周波数2Hzである。
【0176】
一形態において、気道開通性決定アルゴリズム4327は、呼吸流量信号Qrを入力として受信し、心臓発生信号の存在または不在を決定する。心臓発生信号の不在は、気道閉鎖の兆候としてみなされる。
4.4.2.2.8 目標換気の決定
【0177】
本技術の一形態において、中央コントローラ4230は、現在の換気Ventの測定を入力としてとり、換気測定のための目標値Vtgtの決定のために、1つ以上の目標換気決定アルゴリズム4328を実行する。
【0178】
本技術のいくつかの形態において、目標換気決定アルゴリズム4328は存在せず、目標値Vtgtは所定のものであり、例えばRPTデバイス4000の構成時におけるハードコーディングによりまたは入力デバイス4220を通じた手入力により得られる。
【0179】
適応型サーボ換気(ASV)などの本技術の他の形態において、目標換気決定アルゴリズム4328は、患者の典型的な最近の換気を示す値Vtypから目標値Vtgtを計算する。
【0180】
適応型サーボ換気のいくつかの形態において、目標換気Vtgtは、高割合でありかつ典型的な最近の換気Vtyp未満の値として計算される。このような形態の高割合は、範囲(80%、100%)、または(85%、95%)、または(87%、92%)内にあり得る。
【0181】
適応型サーボ換気の他の形態において、目標換気Vtgtは、典型的な最近の換気Vtypの1の倍数を若干上回る値として計算される。
【0182】
典型的な最近の換気Vtypは、いくつかの所定の時間スケールにわたる複数の時間的瞬間にわたる現在の換気Ventの測定が付近に分布する値であり、密集する傾向がある(すなわち、最近の履歴における現在の換気の測定の中央傾向の測定)。目標換気決定ア
ルゴリズム4328の一具現例において、最近の履歴は、数分のオーダーであるが、どんなも場合もチェーン・ストークス漸増サイクルおよび漸減サイクルの時間スケールよりも長くなければならない。目標換気決定アルゴリズム4328は、中央傾向の多様な周知の測定のいずれかを用いて、典型的な最近の換気Vtypを現在の換気Ventの測定から決定し得る。1つのこのような測定として、現在の換気Ventの測定についてのローパスフィルタ出力であり、時定数が100秒に等しい。
4.4.2.2.9 治療パラメータの決定
【0183】
本技術のいくつかの形態において、中央コントローラ4230は、治療エンジンモジュール4320中のその他のアルゴリズムのうち1つ以上から返送された値を用いて、1つ以上の治療パラメータの決定のための1つ以上の治療パラメータ決定アルゴリズム4329を実行する。
【0184】
本技術の一形態において、治療パラメータは、瞬間治療圧力Ptである。この形態の一具現例において、治療パラメータ決定アルゴリズム4329は、以下の方程式を用いて治療圧力Ptを決定する。
(1)
【0185】
ここで:
● Aは振幅であり、
● Π(Φ,t)は、フェーズの現在の値Φおよび時間のtにおける(0から1の範囲の)波形テンプレート値であり、
● P0はベース圧力である。
【0186】
波形決定アルゴリズム4322がフェーズΦによってインデックスされた値Πのルックアップテーブルとして波形テンプレートΠ(Φ)を提供する場合、治療パラメータ決定アルゴリズム4329は、フェーズ決定アルゴリズム4321から返送されたフェーズの現在の値Φに対して最近接ルックアップテーブル入力をロケートすることまたはフェーズの現在の値Φにまたがる2つの入力間の他により、方程式(1)を適用する。
【0187】
振幅Aおよびベース圧力P0の値は、選択された呼吸圧力治療モードに応じて、治療パラメータ決定アルゴリズム4329によって設定され得る。
4.4.2.3 治療制御モジュール
【0188】
本技術の一態様による治療制御モジュール4330は、治療エンジンモジュール4320の治療パラメータ決定アルゴリズム4329からの治療パラメータを入力として受信し、これらの治療パラメータに従って圧力生成器4140から空気流れを送達させるように、圧力生成器を制御する。
【0189】
本技術の一形態において、治療パラメータは治療圧力Ptであり、治療制御モジュール4330は、患者インターフェース3000または3800におけるインターフェース圧力Pmが治療圧力Ptに等しい空気流れを圧力生成器4140から送達させるように、圧力生成器を制御する。
4.4.2.4 故障状態の検出
【0190】
本技術の一形態において、中央コントローラ4230は、故障状態の検出のための1つ以上の方法4340を実行する。1つ以上の方法4340によって検出された故障状態は、以下のうち少なくとも1つを含み得る:
● 停電(電力無しまたは電力不足)
● 変換器故障の検出
● コンポーネントの存在を検出できない
● 動作パラメータが推奨範囲から外れている(例えば、圧力、流量、温度、PaO2)● 検出可能な警告信号を生成するための試験警告の不履行。
【0191】
故障状態が検出されると、対応するアルゴリズム4340信号は、以下のうち1つ以上により、故障の存在を信号伝達する:
● 可聴、視覚および/または動力学的(例えば、振動的)警告の開始
● 外部デバイスへのメッセージ送信
● インシデントのロギング
4.5 空気回路
【0192】
本技術の一態様による空気回路4170は、使用時において空気流れが2つのコンポーネント(例えば、RPTデバイス4000および患者インターフェース3000または3800)間に移動するように、構築および配置された導管またはチューブである。
4.6 加湿器
4.6.1 加湿器の概要
【0193】
本技術の一形態において、患者へ送達されるべき空気またはガスの絶対湿度を周囲空気に相対して変化させるための加湿器5000が提供される(例えば、
図5Aに示すようなもの)。典型的には、加湿器5000は、患者気道へ送達される前に空気流れの(周囲空気に相対する)絶対湿度を増加させかつ温度を増加させるために、用いられる。
【0194】
加湿器5000は、加湿器リザーバ5110と、空気流れを受容する加湿器入口5002と、加湿された空気流れを送達させるための加湿器出口5004とを含み得る。
図5Aおよび
図5Bに示すようないくつかの形態において、加湿器リザーバ5110の入口および出口はそれぞれ、加湿器入口5002および加湿器出口5004であり得る。加湿器5000は、加湿器ベース5006をさらに含み得る。加湿器ベース5006は、加湿器リザーバ5110を受容するように適合され得、加熱要素5240を含み得る。
4.6.2 加湿器コンポーネント
4.6.2.1 加熱要素
【0195】
いくつかの場合において、加熱要素5240は、加湿器リザーバ5110中の水量および/または空気流れへの水量のうち1つ以上へ熱入力を提供する加湿器5000へ設けられ得る。加熱要素5240は、電気抵抗加熱トラックなどの熱生成コンポーネントを含み得る。加熱要素5240の1つの適切な実施例として、例えばPCT特許出願公開第WO2012/171072号に記載の層状加熱要素がある。本明細書中、同文献全体を参考のため援用する。
【0196】
いくつかの形態において、加熱要素5240は、加湿器ベース5006中へ設けられ得る。加湿器ベース5006において、
図5Bに示すように主に伝導により熱が加湿器リザーバ5110へ送られ得る。
4.6.2.2 加湿器コントローラ
【0197】
本技術の1つの配置によれば、加湿器5000は、
図5Cに示すような加湿器コントローラ5250を含み得る。一形態において、加湿器コントローラ5250は、中央コントローラ4230の一部であり得る。別の形態において、加湿器コントローラ5250は、中央コントローラ4230と通信し得る別個のコントローラであり得る。
【0198】
一形態において、加湿器コントローラ5250は、特性(例えば、温度、湿度、圧力および/または流量)の測定を入力として受信し得る(例えばリザーバ5110中および/または加湿器5000中の空気流れ、水の測定)。加湿器コントローラ5250は、加湿器アルゴリズムの実行または実施ならびに/あるいは1つ以上の出力信号の送達を行うようにも、構成され得る。
【0199】
図5Cに示すように、加湿器コントローラ5250は、1つ以上のコントローラを含み得る(例えば、中央加湿器コントローラ5251、加熱空気回路4171の温度を制御するように構成された加熱空気回路コントローラ5254および/または加熱要素5240の温度を制御するように構成された加熱要素コントローラ5252)。
4.7 呼吸波形
【0200】
図6Aは、睡眠時のヒトの典型的な呼吸波形のモデルを示す。水平軸は時間であり、垂直軸は呼吸流量である。パラメータ値は変動し得るため、典型的な呼吸は、以下のおおよその値を持ち得る:一回換気量、Vt、0.5L、吸息時間、Ti、1.6秒、ピーク吸気流量、Qピーク、0.4L/秒、呼息時間、Te、2.4s、ピーク呼気流量、Qピーク、-0.5L/秒。呼吸の全持続時間Ttotは約4秒である。人間は典型的には、1分あたり呼吸を約15回行い(BPM)、換気Ventは約7.5L/minである。典型的な負荷サイクル、TiとTtotの比は約40%である。
4.8 スクリーニング、診断、監視システム
4.8.1 睡眠ポリグラフ
【0201】
図7Aは、睡眠ポリグラフ(PSG)を受けている患者1000を示す。PSGシステムは、ヘッドボックス2000を含む。ヘッドボックス2000は、以下のセンサからの信号を受信および記録する:EOG電極2015、EEG電極2020、ECG電極2025、頤下EMG電極2030、いびきセンサ2035、胸帯上の呼吸インダクタンスプレチスモグラム(呼吸努力センサ)2040、腹帯上の呼吸インダクタンスプレチスモグラム(呼吸努力センサ)2045、口サーミスタを有する口鼻カニューレ2050、フォトプレチスモグラフ(パルスオキシメータ)2055、および身体位置センサ2060。電気信号は、額中心に位置決めされた接地電極(ISOG)2010と呼ばれる。
4.8.2 非閉塞性監視システム
【0202】
就寝中の患者1000の呼吸の監視のための監視装置7100の一例を
図7Bに示す。監視装置7100は、主に患者1000へ方向付けられた非接触型モーションセンサを含む。このモーションセンサは、患者1000の身体の動きを示す1つ以上の信号を生成するように構成される。これらの信号から、患者の呼吸の動きを示す信号が得られ得る。
4.8.3 呼吸ポリグラフィー
【0203】
呼吸ポリグラフィー(RPG)とは、PSGの単純な形態を指す用語であり、電気信号(EOG、EEG、EMG)、いびきまたは身体位置センサは用いない。RPGは、少なくとも以下を含む:胸部バンド(例えば、動きセンサ2040)上の呼吸インダクタンスプレチスモグラム(動きセンサ)からの胸部動き信号、鼻カニューレを介して感知された鼻圧力信号、およびパルスオキシメータ(例えば、パルスオキシメータ2055)からの酸素飽和度信号。これら3つのRPG信号またはチャンネルは、PSGヘッドボックス2000に類似するRPGヘッドボックスによって受信される。
【0204】
特定の構成において、鼻圧力信号は、形状が鼻流量信号に類似しているため、鼻圧力信号は、密閉鼻マスクと有線接続している流量変換器によって発生された鼻流量信号の申し分のないプロキシである。その結果、患者の口が閉じられたままである(すなわち、口からの漏洩が無い)場合、鼻流量は、呼吸流量に等しくなる。
4.9 呼吸治療モード
【0205】
多様な呼吸治療モードは、RPTデバイス4000によって実行され得る。
4.9.1 CPAP治療
【0206】
呼吸圧力治療のいくつかの実行において、中央コントローラ4230は、治療圧力Ptを治療圧力等式(1)に従って治療パラメータ決定アルゴリズム4329の一部として設定する。いくつかのそのような具現例において、振幅Aは等しくゼロであるため、治療圧力Pt(現在瞬間の時間におけるインターフェース圧力Pmによって達成される目標値をしめす)は呼吸サイクル全体において同様にベース圧力P0に等しい。このような具現例は、CPAP治療の見出し下において主にグループ分けされる。このような具現例において、フェーズΦまたは波形テンプレートΠ(Φ)を決定するための治療エンジンモジュール4320は不要である。
【0207】
CPAP治療において、ベース圧力P0は一定の値であり得、ハードコードされるかまたはRPTデバイス4000へ手動入力される。中央コントローラ4230は、治療エンジンモジュール4320中の各アルゴリズムから返送された睡眠疾患呼吸の指標または測定(例えば、流れ制限、無呼吸、呼吸低下、開通性、およびいびきのうち1つ以上)の関数としてベース圧力P0を繰り返して計算し得る。この代替例は、APAP治療とも呼ばれる。
【0208】
図4Eは、中央コントローラ4230によって実行される方法4500を示すフローチャートである。方法4500において、圧力サポートAがゼロに等しい場合、ベース圧力P
0を治療パラメータ決定アルゴリズム4329のAPAP治療実行の一部として連続的に計算する。
【0209】
方法4500は、ステップ4520から開始する。ステップ4520において、中央コントローラ4230は、無呼吸/低呼吸の存在の測定を第1の閾値と比較し、無呼吸/低呼吸の存在の測定が事前決定された期間にわたって第1の閾値を超えている(これは、無呼吸/低呼吸の発生を示す)かを決定する。無呼吸/低呼吸の存在の測定が事前決定された期間にわたって第1の閾値を超えている場合、方法4500は、ステップ4540へ進む;無呼吸/低呼吸の存在の測定が事前決定された期間にわたって第1の閾値を超えていない場合、方法4500は、ステップ4530に進む。ステップ4540において、中央コントローラ4230は、気道開通性の測定を第2の閾値と比較する。気道開通性の測定が第2の閾値を超える場合、気道が開存していることを示し、検出された無呼吸/低呼吸が中枢性であるとみなされ、方法4500はステップ4560に進む。気道開存性の測定が第2の閾値を超えない場合、無呼吸/低呼吸は閉塞性であるとみなされ、方法4500は、ステップ4550へ進む。
【0210】
ステップ4530において、中央コントローラ4230は、流れ制限の測定を第3の閾値と比較する。流れ制限の測定が第3の閾値を超える場合、吸気流が制限されていることを示す。その場合、方法4500は、ステップ4550へ進む。流れ制限の測定が第3の閾値を超えない場合、方法4500は、ステップ4560に進む。
【0211】
ステップ4550において、得られた治療圧力Ptが最大治療圧力Pmaxを超えない場合、中央コントローラ4230は、ベース圧力P0を事前決定された圧力インクリメントΔPだけ増加させる。1つの実行において、事前決定された圧力インクリメントΔPおよび最大治療圧力Pmaxは、それぞれ1cmH2Oおよび25cmH2Oである。他の実行において、圧力インクリメントΔPは、0.1cmH2Oまで低くかつ3cmH2Oまで高くすることができるか、または、0.5cmH2Oまで低くかつ2cmH2Oまで
高くすることができる。他の実行において、最大治療圧力Pmaxは、15cmH2Oまで低くかつ35cmH2Oまで高くすることができるか、または、20cmH2Oまで低くかつ30cmH2Oまで高くすることができる。次に、方法4500は、ステップ4520に戻る。
【0212】
ステップ4560において、低下したベース圧力P0が最低治療圧力Pminを下回っていない場合、中央コントローラ4230は、ベース圧力P0をデクリメントだけ低下させる。次に、方法4500は、ステップ4520に戻る。1つの実行において、デクリメントはP0-Pminの値に比例するため、検出されたイベントが無い場合、P0の最低治療圧力Pminへの低下は、指数関数的になる。1つの実行において、比例関係の定数は、P0の指数関数的低下の時定数τが60分でありかつ最低治療圧力Pminが4cmH2Oとなるように、設定される。他の実行において、時定数τは、1分まで短くかつ300分まで長くすることができるか、または、5分まで短くしかつ180分まで長くすることができる。他の実行において、最低治療圧力Pminは、0cmH2Oまで低くすることができかつ8cmH2Oまで高くすることができるか、または、2cmH2Oまで低くすることができかつ6cmH2Oまで高くすることができる。あるいは、検出されたイベントが無い場合にP0の最低治療圧力Pminまでの低下が線状になるように、P0のデクリメントを事前決定してもよい。
4.9.2 バイレベル治療
【0213】
本技術のこの形態の他の具現例において、方程式(1)中の振幅Aの値は正であり得る。このような実行は、バイレベル治療として公知である。なぜならば、治療圧力Ptを正の振幅Aの方程式(1)を用いて決定する場合、治療パラメータ決定アルゴリズム4329は、患者1000の自発呼吸努力と同期して治療圧力Ptを2つの値またはレベル間で振動させるからである。すなわち、上記した典型的な波形テンプレートΠ(Φ,t)に基づいて、治療パラメータ決定アルゴリズム4329は、吸気の開始時または吸気の最中に治療圧力PtをP0+A(IPAPとして公知)まで増加させ、呼気開始時または呼気の最中に治療圧力Ptをベース圧力P0(EPAPとして公知)まで低下させる。
【0214】
バイレベル治療のいくつかの形態において、IPAPは、CPAP治療モードにおける治療圧力と同じ目的の治療圧力であり、EPAPは、IPAPから振幅Aを減算した値であり、呼気圧力解放(EPR)とも呼ばれる「小さな」値(数cmH2O)を有する。このような形態は、EPRを用いたCPAP治療とも呼ばれ、直接的なCPAP治療よりも快適性高いものとして一般的に考えられる。EPRを用いたCPAP治療の場合、IPAPおよびEPAPのいずれかまたは双方は一定の値であり得、ハードコードされるかまたはRPTデバイス4000へ手動入力される。あるいは、治療パラメータ決定アルゴリズム4329は、EPRを用いたCPAP時において、IPAPおよび/またはEPAPを繰り返して計算し得る。この代替例において、治療パラメータ決定アルゴリズム4329は、治療エンジンモジュール4320中の各アルゴリズムから返送された睡眠疾患呼吸の指標または測定の関数としてEPAPおよび/またはIPAPを繰り返して計算する。これは、上記したAPAP治療におけるベース圧力P0の計算と同様に行われる。
【0215】
他の形態のバイレベル治療において、振幅Aは、RPTデバイス4000が患者1000の呼吸動作の一部または全部を行うほど充分に大きい。圧力補助換気治療として公知のこのような形態において、振幅Aは、圧力補助またはスイングと呼ばれる。圧力補助換気治療において、IPAPは、ベース圧力P0+圧力補助Aであり、EPAPはベース圧力P0である。
【0216】
一定圧力補助換気治療として公知の圧力補助換気治療のいくつかの形態において、圧力補助Aは、所定の値(例えば、10cmH2O)に固定される。所定の圧力補助値は、R
PTデバイス4000の設定であり、例えばRPTデバイス4000の構成時にハードコードされるかまたは入力デバイス4220を通じた手動入力により設定され得る。
【0217】
サーボ換気として広範に知られる圧力補助換気治療の他の形態において、治療パラメータ決定アルゴリズム4329は、呼吸器サイクル(例えば、換気の現在測定Vent)の一定の現在測定されているまたは推定されているパラメータと、当該呼吸器パラメータの目標値(例えば、換気の目標値Vtgt)とを入力としてとり、式(1)のパラメータを連続的に調節して、呼吸器パラメータの現在の測定を目標値に接近させる。CSR治療に用いられる適応型サーボ換気(ASV)として公知のサーボ-換気の形態において、呼吸パラメータは換気であり、目標換気値Vtgtは、上記したように典型的な最近の換気Vtypから目標換気決定アルゴリズム4328によって計算される。
【0218】
サーボ換気のいくつかの形態において、治療パラメータ決定アルゴリズム4329は、呼吸器パラメータの現在の測定をターゲット値へと達するように、圧力補助Aを繰り返し計算する制御方法を適用する。1つのこのような制御方法として、比例積分(PI)制御がある。目標換気Vtgtが典型的な最近の換気Vtypよりも若干低くなるように設定されたASVモードに適したPI制御の1つの具現例において、圧力補助Aは、以下のように繰り返して計算される:
(2)
【0219】
ここで、Gは、PI制御の利得である。利得Gの値が大きくなると、治療エンジンモジュール4320におけるフィードバックが正になり得る。利得Gの値が小さくなると、一定の残りの未治療CSRまたは中枢性睡眠時無呼吸が発生し得る。いくつかの具現例において、利得Gは、所定の値(例えば、-0.4cmH2O/(L/分)/秒)に固定される。あるいは、利得Gは、CSRを実質的に除いた値に到達するまで、治療セッション間において変更され得る(最初は低い値から開始し、セッション間において増加させる)。治療セッションのパラメータを遡及的に分析して治療セッション時のCSRの深刻度を評価するための従来の手段は、このような具現例において用いられ得る。さらに他の具現例において、利得Gは、換気の現行測定値Ventと、目標換気Vtgtとの間の差に応じて変動し得る。
【0220】
治療パラメータ決定アルゴリズム4329によって適用され得る他のサーボ換気制御方法を挙げると、比例(P)、比例差分(PD)、および比例積分差(PID)がある。
【0221】
方程式(2)を介して計算された圧力補助Aの値は、[Amin、Amax]として規定された範囲までクリップされ得る。この具現例において、圧力補助Aは、現在の換気Ventの測定が目標換気Vtgtを下回るまで、最小圧力補助Aminにおいてデフォルトとして設定される。現在の換気Ventの測定が目標換気Vtgtを下回った時点においてAが増加し始め、Ventが再度Vtgtを超えた場合にのみ、Aminまで低下する。
【0222】
圧力補助制限AminおよびAmaxは、RPTデバイス4000の設定であり、例えばRPTデバイス4000の構成時にハードコードされるかまたは入力デバイス4220を通じた手動入力によって設定される。
【0223】
圧力補助換気治療モードにおいて、EPAPは、ベース圧力P0である。CPAP治療におけるベース圧力P0と同様に、EPAPは一定の値であり得、タイトレーション時に
規定または決定される。このような一定のEPAPは、例えばRPTデバイス4000の構成時にハードコードするかまたは入力デバイス4220を通じた手動入力により、設定され得る。この代替例は、固定EPAP圧力補助換気治療とも呼ばれる。所与の患者についてのEPAPのタイトレーションは、閉塞性無呼吸を予防する目的のために、PSGを用いたタイトレーションセッション時に臨床医によって行われ得、これにより、一定CPAP治療におけるベース圧力P0のタイトレーションと同様の様態で、圧力補助換気治療のために気道確保が維持される。
【0224】
あるいは、治療パラメータ決定アルゴリズム4329は、圧力補助換気治療時のベース圧力P0を繰り返して計算し得る。このような具現例において、治療パラメータ決定アルゴリズム4329は、治療エンジンモジュール4320中の各アルゴリズムから返送された睡眠時呼吸障害の指標または測定(例えば、流れ制限、無呼吸、呼吸低下、開通性およびいびきのうち1つ以上)の関数としてEPAPを繰り返して計算する。EPAPの連続的計算は、EPAPのタイトレーション時における臨床医によるEPAPの手動調節に類似するため、このプロセスは、EPAPの自動タイトレーションとも呼ばれ、治療モードは、自動タイトレーションEPAP圧力補助換気治療または自動EPAP圧力補助換気治療として知られる。
4.9.3 高流量治療
【0225】
他の形態の呼吸治療において、空気流れの圧力は、呼吸圧力治療に用いられるため、制御されない。すなわち、中央コントローラ4230は、(デバイス流量Qdが治療流量または目標流量Qtgtになるように制御される)空気流れを圧力生成器4140に送達させるように、圧力生成器4140を制御する。このような形態は、流れ治療の見出し下において主にグループ分けされる。流れ治療において、治療流量Qtgtは一定の値であり得、ハードコードされるかまたはRPTデバイス4000へ手動入力される。治療流量Qtgtが患者のピーク吸気流量を超えるのに十分である場合、その治療は、高流量治療(HFT)と主に呼ばれる。あるいは、治療流量は、呼吸サイクルにわたって変動するプロファイルQtgt(t)であり得る。
4.10 データ送信
【0226】
図8は、本技術によるRPTシステムの一具現例を例示するブロック図を示す。RPTシステムは、呼吸圧力治療の患者1000への提供を行うように構成されたRPTデバイス4000と、データサーバ7100と、患者1000と関連付けられた患者コンピューティングデバイス7050とを含む。患者コンピューティングデバイス7050は、患者1000およびRPTデバイス4000と共に共同設置され得る。
図8に示す実行において、RPTデバイス4000、患者コンピューティングデバイス7050およびデータサーバ7100は、広域ネットワーク7090(例えば、インターネット、イントラネット、クラウドまたはインターネット)へ接続される。ネットワークへの接続は、有線型であってもよいし、無線型であってもよい。ネットワークは、
図4Cの遠隔外部通信ネットワーク4282と共に特定され得、データサーバ7100は、
図4Cの遠隔外部デバイス4286と共に特定され得る。患者コンピューティングデバイス7050は、パーソナルコンピュータ、携帯電話、タブレットコンピュータまたは他のデバイスであり得る。患者コンピューティングデバイス7050は、患者1000とデータサーバ7100との仲介を広域ネットワーク7090を介して行うように、構成される。1つの実行において、この仲介は、患者コンピューティングデバイス7050上において実行するソフトウェアアプリケーションプログラム7060によって行われる。患者プログラム7060は、「患者アプリケーション」と呼ばれる専用アプリケーションであり得、データサーバ7100によってホストされる相補型プロセスと対話する。別の実行において、患者プログラム7060は、ウェブブラウザであり、データサーバ7100によってホストされるウェブサイトを介してセキュアなポータルと対話する。さらに別の実行において、患者プログラム7
060は、eメールクライアントである。
【0227】
他の例において、RPTデバイス4000は、ローカルの(有線または無線)通信プロトコル(例えば、ローカルネットワークプロトコル(例えば、Bluetooth(登録商標)))を介して患者コンピューティングデバイス7050と通信する。代替的実行において、ローカルネットワークは、
図4Cのローカル外部通信ネットワーク4284と共に特定され得、患者コンピューティングデバイス7050は、
図4Cのローカル外部デバイス4288と共に特定され得る。代替的実行において、患者コンピューティングデバイス7050は、患者1000とデータサーバ7100とをネットワーク7090を介して仲介し、RPTデバイス4000とデータサーバ7100とをネットワーク7090を介して仲介するように、患者プログラム7060を介して構成される。
【0228】
RPTシステムは、関連付けられたコンピューティングデバイスを同様に有する各患者と関連付けられた他のRPTデバイス(図示せず)を含み得る。さらに、RPTシステム7000はコントローラ4230または患者コンピューティングデバイス7050とインターフェースをとり得る他の監視または治療デバイスを含み得る。RPTシステム7000の全ての患者は、データサーバ7100によって管理される。
【0229】
RPTデバイス4000は、各RPTセッションから患者1000へ送達された治療データをメモリ4260中へ保存するように、構成される。RPTセッションに関する治療データは、RPTデバイス4000の設定と、RPTセッション全体における呼吸圧力治療の1つ以上の変数を示す治療変数データとを含む。
【0230】
データサーバ7100は、データを患者コンピューティングデバイス7050から受信するようにも構成され得る。このようなものは、患者1000が患者プログラム7060へ入力したデータまたは上記した代替的実行7000Bにおける治療/使用データを含み得る。
【0231】
データサーバ7100は、電子メッセージを患者コンピューティングデバイス7050へ送信するようにも構成される。これらのメッセージは、患者プログラム7060内において、詳細な形態のeメール、SMSメッセージ、自動音声メッセージまたは通知をとり得る。
【0232】
RPTデバイス4000は、自身の広域ネットワーク接続またはローカルエリアネットワーク接続を介して対応するコマンドが受信された際、自身の治療モードまたは特定の治療モード用の設定についてアラート通知を受けるように、構成され得る。このような具現例において、データサーバ7100は、(実行7000において)このようなコマンドを直接RPTデバイス4000へ送るか、または、間接的にRPTデバイス4000へ送って、(実行7000Bにおいて)患者コンピューティングデバイス7050を介してリレーさせるようにも、構成され得る。
【0233】
サーバ7100およびデータベース7200は、単一のサーバおよびデータベースの組み合わせであり得るか、または、異なる位置におけるサーバ7100およびデータベース7200の複数の組み合わせを含み得る。例えば、RPTデバイス4000は、多様なデータ特徴(例えば、治療設定またはパラメータ)および他のデータをネットワーク7090を介して保存および通信する1つ以上のサーバ7100およびデータベース7200の組み合わせへ接続され得る。
【0234】
例えば、システムに含まれ得る一般的患者システム8100および処方システム8200はそれぞれ、サーバ7100およびデータベース7200の組み合わせを含む。本例に
おいて、処方システム8200は、患者1000について一意の識別子に対して参照される患者1000の処方を保存し得る。データベース7200中に保存された処方データは、規定の圧力レベル(例えば、最小圧力および最大圧力)、治療モード、および他の呼吸治療パラメータを示すデータを含み得る。
【0235】
いくつかの例において、患者の治療に関連するさらなるデータおよび選好情報(患者の規定治療パラメータは含まない)が、関連付けられたデータベース7200上の(処方システム8200ではなく)一般的患者システム8100上に保存され得る。例えば、患者1000のプロフィールデータ、他の選好情報、アカウント情報など全てが、別個のデータベース7200上に保存され得る。これが有利であり得る理由として、任意のデータベース8200およびシステムが医師の規定の治療パラメータを示すデータを含む場合、プライバシー法の遵守および/または特定の法令の遵守が必要になり得る点がある。よって、非規定の設定を一般的患者システム8100上に保存することにより、それほど多数の法令を遵守する必要が不要になり得る。他の例において、処方関連パラメータおよび非処方関連パラメータ双方を、同一のサーバ7100およびデータベース7200上に保存する。
治療設定
【0236】
一般的に、データベース7200上に保存された治療設定は、治療圧力Ptを示すデータを含み得る。治療圧力Ptは、異なる治療パラメータ決定アルゴリズム4329を用いて圧力を設定するコントローラ4230によって実行され得る。いくつかの場合において、治療圧力は、最小および最大圧力を含み得る。これらの治療設定は、CPAのための一定の圧力も含み得、あるいは、治療システムにより、APAP治療において治療圧力および上記したような多様な指数に基づいたベース圧力の計算が可能になり得る。
【0237】
これらの治療設定は、多様なモードを含み得る(例えば、CPAP、APAP、バイレベル治療、高流量治療)。さらに、治療設定は、加湿または温度設定と、制御または操作が可能な呼吸治療の他の特徴または特性とを含み得る。
【0238】
これらの治療設定は、患者1000に対して(例えば、一意の識別子を通じて)参照されるデータベース7200中に保存され得、治療設定が有効である呼吸治療デバイス4000の種類および/またはモデル番号も参照し得る。いくつかの例において、治療圧力を含む処方設定は、以下に対して参照され得る:(1)処方の日付、(2)処方担当医師、(3)処方された治療モード、(4)処方された種類、モデル、および呼吸治療デバイス4000のシリアルナンバー、ならびに(5)他の情報。
4.11 治療設定の転送
【0239】
本技術の一形態は、呼吸治療設定を新規の呼吸治療デバイス4000へ自動ポートする方法およびシステムを含む。現在、交換用呼吸治療デバイス4000、アップグレードされた呼吸治療デバイス4000あるいはさらなる/または新規の種類の呼吸治療デバイス4000を患者1000が受領した際、処方設定を人間の介入により手動でポートする必要が発生する。例えば、患者1000が既存のデバイスおよび処方(REPAP)を既に有している状態で新規のRPTデバイス4000を取得するには、患者1000は、当該新規デバイスをプロバイダに注文する必要があり、プロバイダは、設定を手動でRPTデバイス4000上にインストールする必要があるかまたはプロバイダがサーバ7100を通じて手動で自身のデータベース7200を更新して当該新規RPTデバイス4000を追加してもよい。この作業には、当該新規RPTデバイス4000のモデル番号と、ネットワークアドレスと、RPTデバイス4000に対応する処方治療設定との追加が含まれる。そのため、患者1000は、新規デバイスを現行プロバイダに注文する際、困難または長期間にわたる据え付けプロセスに直面していない。
【0240】
そのため、本発明者らは、呼吸治療設定を新規のRPTデバイス4000へ自動ポートするための新技術を開発した。これが極めて有利である理由として、事前インストールされた処方治療設定またはプロバイダのサーバ7100およびデータベース7200に事前登録されたユニット無しにRPTデバイス4000を任意のベンダーから購入する機会が得られる点がある。これにより、新規RPTデバイス4000の注文および据え付けの自動化が可能になり、人間の介入の必要も少なくなる。
【0241】
さらに、本発明者は、本技術の実行のために、以下を含む複数の特徴を開発した:
(1) 治療設定のRPTデバイス4000の異なる種類のまたはモデルへの変換
(2) 処方が有効であるかを決定するプロセス;
(3) 処方が有効であるかを決定するプロセス;
(4) 患者1000の識別情報を有効化し、患者1000が既存のRPTデバイス4000を所有しているかを決定するプロセス。
(5) 他の患者1000のデータを有効化し、新規処方を必要とし得る患者1000のデータの変化を識別するプロセス;
(6) 治療設定のポート後にRPTデバイス4000の治療品質インジケータを監視して、処方が新規PPTデバイス4000に対して適切であるかを決定すること;および
(7) 他のもの。
本明細書中、いくつかの例において、これらの新規特徴について説明する。本技術において、これらの特徴の多様な組み合わせが採用され得る。
【0242】
図9は、治療設定を新規RPTデバイス4000へ転送する1つの方法のフロー図である。先ず、システムは、治療設定を新規RPTデバイス4000へポートしたいとのリクエスト9000を受信し得る。これは、患者コンピューティングデバイス7050を通じて行ってもよいし、新規RPTデバイス4000上のインターフェース4229を通じて行ってもよいし、あるいは他のコンピューティングデバイスを通じて行ってもよい。いくつかの例において、新規RPTデバイス4000は、(例えばデバイスを使用のためにロック解除するための鍵などの)新規設定がクラウドから受信されるまでロックされる。これにより、患者の処方に基づいて既に設定された設定無しに、デバイスを患者へ搬出することが可能になる。さらに、今後の特定の製品に対して異なるラベル付けまたは法的規制も可能になり得る。
【0243】
いくつかの例において、患者1000は、一意のユーザIDおよびパスワード9100を用いて自身の患者コンピューティングデバイス7050上のアカウントにログインし得、さらなるRPTデバイス4000を受領したので設定をポートしたい旨をインターフェースを通じて示し得る。他の例において、患者1000が新規RPTデバイス4000を電源オンにすると、その新規デバイスは、アカウント情報をリクエストし得るかまたは他の場合に治療設定をポートするプロセスを開始し得る。
【0244】
いくつかの例において、患者コンピューティングデバイス7050または他のコンピューティングデバイスは、交換用RPTデバイス9200のシリアルナンバーをリクエストし得る。他の例において、コンピューティングデバイスは、既存のRPTデバイス9200のシリアルナンバーについてリクエストを送信して、患者1000がデバイスを所有していることを確認し得る。他の例において、既存のRPTデバイス4000は、新規かつ一意のコードをディスプレイ4294上に表示し得る。この新規かつ一意のコードは、患者1000が自身のアカウントと関連付けられた既存のRPTデバイス4000を現在所有していることを確認するために、患者1000が患者コンピューティングデバイス7050または他のコンピューティングデバイスに入力する必要があるコードである。
【0245】
一例において、サーバ7100およびデータベース7200のうち1つは、シリアルナンバーまたはコードを含む情報をチェックして、データベース7200中に保存された患者IDと関連付けられた情報と整合するかを決定し得る。
【0246】
次に、サーバ7100は、情報が有効化されている場合(9300)、処方治療設定をRPTデバイス4000へ送信し、処方治療設定は、新規RPTデバイス4000のメモリ中に保存される。設定を新規RPTデバイス4000へ転送するために、多様な方法が用いられ得る(例えば、患者コンピューティングデバイス7050と新規RPTデバイス4000との間のBluetooth(登録商標)接続9450を介した設定のポーティング)。本例において、患者コンピューティングデバイス7050において患者アカウントがログインされている場合、患者コンピューティングデバイス7050は、新規RPTデバイス4000への接続をBluetooth(登録商標)を通じて確立させ得る。他の例において、設定データは、セルラーネットワークを介してRPTデバイス4000のセルラーアンテナ9460へ送信してもよいし、あるいはWi-Fi接続9470を介して新規RPTデバイス4000へ送信してもよい。いくつかの例において、これらの設定は、暗号化された様態でサーバ7100からRPTデバイス4000へ(患者コンピューティングデバイス7050をBluetooth(登録商標)を介した導管として用いて)送信される。本例において、患者コンピューティングデバイス7050は、これらの設定を解読または保存することができないため、これらの設定は、サーバ7100のうち少なくとも1つから新規RPTデバイス4000へ暗号化された様態で送信される。
治療設定のポーティングの変換プロセスおよび有効化プロセス
【0247】
図10は、本技術によるRPTシステムの一具現例を例示するブロック図を示す。本例において、技術は、処方設定変換器10020およびポート可能性チェック10030のプログラムを含む。これらのプログラムは、データベース7200およびサーバ7100の組み合わせのうち1つに常駐するかまたはRPTデバイス4000または患者コンピューティングデバイス7050に常駐する。チェック10030のプログラムおよび変換器10020のプログラムは、処方治療設定10060および他の任意の一般的患者データ10050、選好情報または新規RPTデバイス4000へポートさせる必要のある他の情報の処理のために用いられる。
【0248】
図11は、変換およびチェックを実行する例示的方法を示す。例えば、いくつかの例において、
図9を参照して、シリアルナンバーおよびアカウントIDが有効化された(9100および9200)の後、本技術において、チェックおよび変換を行った後、治療設定11400をペアリングする。
治療設定のポーティングの有効化プロセス
【0249】
システムは、以下のチェック11400のプロセスまたは有効化プロセスを行い得、これらのうちいずれかが失敗に終わった場合、患者1000は、フォローアップ対象としてフラグ付けされ得、設定はポートされない(11400):
(1) 有効な処方;
(2) 処方の日付;
(3) 患者データの変化;
(4) 治療品質インジケータ;
(5) オキシメータ読み取り値11460;および
(6) 他のもの。
例えば、サーバ7100による処方治療設定、快適性設定または他の設定の送信の前に、本技術は、多様なデータ(例えば、RPTデバイス4000からのデータ出力)のチェックを行って、治療設定をポートすべきかを確認し得る。サーバ7100がこれらのチェックのうちいずれかが失敗したと決定した場合、サーバ7100は、新規RPTデバイス
4000または患者コンピューティングデバイス7050に対して、治療設定のポートが不可能であり、患者1000が更新された処方を受信できるようフォローアップ対象としてフラグ付けされた旨の応答を送信する。
【0250】
例えば、現在の処方治療設定と関連付けられた日付(例えば、データベース7200における処方の入力、書き込みまたは受信が行われた日付のタイムスタンプ)を現在の日付に照らし合わせてチェックすることにより、時間閾値が経過していないことを確認することができ得る(例えば、処方の初回の入力または処方されてから1年、2年、5年など)。これにより、患者1000が期限切れの処方を引き続き用いる事態または患者について処方の期限切れに起因して保険プロバイダまたは支払人からの拒否または遅延の危険性がある事態が回避される。
【0251】
さらに、患者データ変更11480を評価して、処方変更と関連付けられた任意の有意な変化が患者1000にあるかを決定することができ得る。例えば、システムは、患者1000の年齢チェックを患者のプロフィールデータに基づいて行って、患者1000が(老化に関連する生理学的変化に起因して治療設定の更新が一般的に必要となる)任意のマイルストーンに到達したかを決定し得る。これは、一般的患者システム8100上に保存された患者1000のプロフィールデータ10050上の誕生日をチェックし、現在の日付と比較することにより、チェックされ得る。
【0252】
さらに、患者データ変更11480は、設定のポートが開始する際に(多様なコンピューティングデバイスまたはRPTデバイス入力4220のうちいずれかの上の)患者インターフェースへ質問表を送信することにより取得された情報またはデータであり得る。例えば、質問表により、患者1000に対して以下を評価するための質問を訊くことができ得る:
(1) 体重;
(2) BMI;
(3) 主観的な睡眠の質;
(4) マットレスまたは他の睡眠環境の変化;
(5) 転居;および
(6) 他の情報。
例えば、患者1000の体重またはBMIが閾値量に対して変化したことが決定された場合、圧力の評価を、(性別、人種などが分かっている場合の)体重またはBMIの曲線における新規圧力または他の治療パラメータの変更を必要とするBMIまたは患者1000の位置の既知の閾値変化に基づいて行う必要があり得る。さらに、設定に影響を及ぼし得る他の要素についても問い合わせがされ得る。
【0253】
いくつかの例において、これらの要素は、患者1000の関連特性の推定のために多様な画像または他のデータ処理技術を用いて自動的に評価され得る。例えば、自撮りツールにより患者1000の画像を処理し、この画像を患者1000の前回の画像と比較して、画像の変化がBMIの変化を示すかを決定することができる。これには、患者1000の相対的寸法形状決定の方法が含まれ得る(例えば、瞳孔または虹彩などの(経時変化しない)眼の特徴の直径の測定)。さらに、自撮りツールにより眼の特徴の測定を用いて、相対的サイズも決定することができる(例えば、顔からのカメラまでの距離の画像間における差に基づいたスケールの補償)。
【0254】
いくつかの例において、自撮りツールの場合、眼の測定(または他の共通特徴)により患者1000が受容可能な距離、所定の距離または前回画像と同一の距離においてカメラを持っていると決定されるまで、患者1000がカメラを患者1000の顔へ近づけることが必要になり得る。いくつかの例において、カメラは、深さセンサ技術を含み得、これ
により、治療の変化に関連する患者の顔の変化の推定が向上し得る。
【0255】
いくつかの例において、本技術において、先ず治療品質のインジケータがチェックされ得、その後、治療設定がポートされ得る。例えば、治療品質インジケータが受容可能な閾値を下回っているかまたは患者1000の治療に問題がある旨が示される場合、本技術によれば、設定11500のポーティングが拒否され得、患者はフォローアップ対象としてフラグ付けされ得る。治療品質インジケータは、以下を含み得る:
(1) RPTデバイス4000からの利用状況データの出力-利用状況パターンは、患者1000の処方または患者1000の使用中断または使用最小化の原因となっている他の設定を示し得る;
(2) 治療品質指数;
(3) 呼吸低下イベント;
(4) 他の睡眠妨害;
(5) 睡眠スコア;
(6) パルスオキシメータからのデータ出力;および
(7) 他のもの。
【0256】
いくつかの例において、本技術によれば、質問を患者1000へ提示して、患者1000が新規RPTデバイス4000への切換を医師の評価および処方無しに行うことができるかを決定または評価し得る。例えば、患者1000がフルマスクから鼻専用マスクへ切り換えたいと思っている場合、本技術によれば、呼吸しているのは口または鼻であるかを決定するために、鼻領域の評価のために写真を撮影せよとの旨のまたは患者1000の睡眠時の音声データを処理せよとの旨のリクエストがされ得る。これらの場合において、本技術によれば、少しでも問題があれば、設定11500のポーティングは自動的に拒否され得る。
【0257】
さらに、本技術によれば、新規RPTデバイス4000の使用開始後の特定の期間にわたって同一の治療品質インジケータをさらにチェックして、患者1000の品質の初期チェックを交換用RPTデバイス4000上の同一パラメータを用いて行い得る。これは、1日、2日、1週間、1ヶ月の時間窓または他の適切な期間を含み得る。よって、本技術において、呼吸治療品質のベースラインレベルまたは呼吸治療品質の閾値低下量が、現在の呼吸治療デバイス4000の呼吸治療品質と比較してチェックされ得る。
設定変換器
【0258】
治療設定のポーティングの前の問題のフラグ付けに加えて、本技術において、呼吸治療デバイス4000の新規ユニット、モデルまたは種類の設定の変換、較正または調節も行われ得る。処方設定変換器10020は、現行のRPTデバイス4000から新規デバイス4000に対するマッピング、変換、較正または他の様態の適合を行うための多様な特徴を含み得る。
【0259】
例えば、データベース7200は、RPTデバイス4000のモデル、種類およびユニット間のマッピングを含み得る。例えば、特定のユニット間の圧力差を補償するために、治療圧力が若干調節され得る。これは、データベーススプレッドシートに対するリスティングおよびマッピングまたは複数のユニットをマッピングするための他のオントロジーと、圧力または他のモードおよび設定を新規デバイス用の形態に変換するための方程式とを含み得る。
【0260】
さらに、非処方設定、モードおよび他の特徴の調節が、デバイス間の既知の較正量によって行われ得る。例えば、例えば特定のモデルの圧力が若干高いかまたは患者がより低い圧力に対してより良好に応答することが分かっている場合、自動斬増アルゴリズムにおけ
るRAMP特徴の強度あるいは圧力の上昇および/または低下の速度を、異なるモデル種類のデバイス間において変更することができる。
【0261】
いくつかの例において、本技術によれば、患者の使用後のこれらの特徴の調節に基づいて、非処方特徴などがユニット間において経時的に学習され得る。よって、本技術によれば、特定の種類の患者のユニット間のマッピングを患者データおよび背景に基づいて予測することができ得る。
4.12 用語集
【0262】
本技術の開示目的のため、本技術の特定の形態において、以下の定義のうち1つ以上が適用され得る。本技術の他の形態において、別の定義も適用され得る。
4.12.1 一般
【0263】
空気:本技術の特定の形態において、空気は大気を意味し得、本技術の他の形態において、空気は、他の呼吸可能なガスの組み合わせ(例えば、酸素を豊富に含む大気)を意味し得る。
【0264】
雰囲気:本技術の特定の形態において、「雰囲気」という用語は、(i)治療システムまたは患者の外部、および(ii)治療システムまたは患者を直接包囲するものを意味するものとしてとられるべきである。
【0265】
例えば、加湿器に対する雰囲気湿度とは、加湿器を直接包囲する空気の湿度であり得る(例えば、患者が睡眠をとっている部屋の内部の湿度)。このような雰囲気湿度は、患者が睡眠をとっている部屋の外部の湿度と異なる場合がある。
【0266】
別の実施例において、雰囲気圧力は、身体の直接周囲または外部の圧力であり得る。
【0267】
特定の形態において、雰囲気(例えば、音響)ノイズは、例えばRPTデバイスから発生するかまたはマスクまたは患者インターフェースから発生するノイズ以外の、患者の居る部屋の中の背景ノイズレベルとみなすことができる。雰囲気ノイズは、部屋の外の発生源から発生し得る。
【0268】
自動的な気道陽圧(APAP)療法:SDB発症の兆候の存在または不在に応じて、例えば、呼吸間に最小限界と最大限界との間で治療圧力を自動的に調節することが可能なCPAP療法。
【0269】
持続的気道陽圧(CPAP)療法:治療圧力が患者の呼吸サイクルを通じてほぼ一定である呼吸圧療法。いくつかの形態において、気道への入口における圧力は、呼息時において若干上昇し、吸息時において若干低下する。いくつかの形態において、圧力は、患者の異なる呼吸サイクル間において変動する(例えば、部分的な上気道閉塞の兆候の検出に応答して増加され、部分的な上気道閉塞の通知の不在時において低減される)。
【0270】
流量:単位時間あたりに送出される空気の瞬時の量(または質量)。流量とは、瞬間の量を指し得る。場合によっては、流量について言及した場合、スカラー量(すなわち、大きさのみを有する量)を指す。他の場合において、流量について言及した場合、ベクトル量(すなわち、大きさおよび方向両方を持つ量)を指す。流量には、符号Qが付与され得る。「流量」を簡略的に「流れ」もしくは「気流」と呼ぶ場合もある。
【0271】
患者の呼吸の実施例において、流量は、患者の呼吸サイクルの吸気部分に対してノミナルに陽圧であり得るため、患者の呼吸サイクルの呼気部分に対して負であり得る。デバイ
ス流量Qdは、RPTデバイスから退出する空気の流量である。総流量Qtは、空気回路を介して患者インターフェースへと到達する空気および任意の補充用ガスの流量である。通気流量Qvは、吐き出されたガスの流出を可能にするために通気部から退出する空気の流量である。漏洩流量Qlは、患者インターフェースシステムまたは他の場所からの漏洩の流量である。呼吸流量Qrは、患者の呼吸器系中に受容される空気の流量である。
【0272】
加湿器:「加湿器」という単語は、患者の医療呼吸状態を改善するために治療上有益な量の水(H2O)蒸気を空気流れへ提供することが可能な物理的構造を備えて構築、配置または構成された加湿装置を意味するものとして解釈される。
【0273】
漏洩:「漏洩」という用語は、意図しない空気流れとしてとられる。一実施例において、漏洩は、マスクと患者の顔との間のシールが不完全であることに起因して発生し得る。別の実施例において、漏洩は、周囲に対する回りエルボーにおいて発生し得る。
【0274】
ノイズ伝導(音響):本文書において、伝導ノイズとは、空気圧式経路(例えば、空気回路および患者インターフェースおよびその内部の空気)によって患者へ搬送されるノイズを指す。一形態において、伝導ノイズは、空気回路の端部における音圧レベルを測定することにより、定量化され得る。
【0275】
ノイズ放射(音響):本文書において、放射ノイズとは、周囲空気によって患者へ搬送されるノイズを指す。一形態において、放射ノイズは、当該対象の音響パワー/圧力レベルをISO3744に従って測定することにより、定量化され得る。
【0276】
ノイズ通気(音響):本文書において、通気ノイズとは、任意の通気(例えば、患者インターフェース中の通気穴)を通じた空気流れにより生成されるノイズを指す。
【0277】
患者:呼吸器疾患に罹患しているかまたはしていない人。
【0278】
圧力:単位面積あたりの力。圧力は、多様な単位で表現され得る(例えば、cmH2O、g-f/cm2、およびヘクトパスカル)。1cmH2Oは、1g-f/cm2に等しく、およそ0.98ヘクトパスカル(1ヘクトパスカル=100Pa=100N/m2=1millibar~0.001atm)である。本明細書において、他に明記無き限り、圧力はcmH2Oの単位で付与される。
【0279】
患者インターフェース中の圧力には記号Pmが付与され、現時点においてインターフェース圧力Pmが達成すべき目標値を表す治療圧力には記号Ptが付与される。
【0280】
呼吸圧力治療(RPT):雰囲気に対して典型的には陽圧である治療圧力における空気供給の気道入口への付加。
【0281】
人工呼吸器:患者が呼吸動作の一部または全てを行い際に圧力補助を提供する機械的デバイス。
4.12.1.1 材料
【0282】
シリコーンまたはシリコーンエラストマー:合成ゴム。本明細書において、シリコーンについて言及される場合、液体シリコーンゴム(LSR)または圧縮成形シリコーンゴム(CMSR)を指す。市販のLSRの一形態として、Dow Corningによって製造されるSILASTIC(この登録商標下において販売される製品群に含まれる)がある。別のLSR製造業者として、Wackerがある。
【0283】
ポリカーボネート:ビスフェノールAカーボネートの熱可塑性ポリマーである。
4.12.2 呼吸サイクル
【0284】
無呼吸:いくつかの定義によれば、無呼吸とは、所定の閾値を下回った流れが例えば10秒間の継続期間にわたって継続した場合に発生したと言われる。閉塞性無呼吸とは、患者の労作にもかかわらず、何らかの気道閉塞により空気の流れが許されないときに発生すると言われる。中枢性無呼吸とは、気道が開通しているにも関わらず呼吸努力の低下または呼吸努力の不在に起因して無呼吸が検出された状態を指すと言われる。混合無呼吸とは、呼吸努力の低下または不在が気道閉塞と同時発生した状態を指すと言われる。
【0285】
呼吸速度:患者の自発呼吸速度であり、通常は毎分あたりの呼吸回数で測定される。
【0286】
負荷サイクル:吸息時間Tiの合計呼吸時間Ttotに対する比。
【0287】
労作(呼吸):呼吸努力は、呼吸しようとしている人の自発呼吸によって行われる動きを指すと言われる。
【0288】
呼吸サイクルの呼気部分:呼気流れの開始から吸気流れの開始までの期間。
【0289】
流量制限:流量制限は、患者による労作の増大が流量の対応する増大を引き起こさない患者の呼吸における状況であると解釈される。呼吸サイクルの吸気部分において流量制限が発生した場合、当該流量制限は吸気流量制限と称することができる。呼吸サイクルの呼気部分において流れ制限が発生した場合、当該流れ制限は呼気流れ制限と称することができる。
【0290】
流れ制限吸気の波形の種類:
(i)平坦化:上昇の後に比較的平坦な部位が続いた後、下降が発生すること。
(ii)M字型:立ち上がりにおいて1つおよび立ち下がりにおいて1つの2つの局所的ピークを持ち、これら2つのピークの間に比較的平坦な部位がある。
(iii)椅子状:単一の局所的ピークを持ち、このピークが立ち上がり部分に発生した後、比較的平坦な部位が続く。
(iv)逆椅子状:比較的平坦な部位の後に単一の局所的ピークが続き、このピークが立ち下がり部分に発生する。
【0291】
呼吸低下:一部の定義によれば、呼吸低下は、流れの中断ではなく、流れの低下を意味する。一形態において、閾値速度を下回った流れ低下が継続期間にわたって続いた場合、呼吸低下が発生したと言われる。呼吸努力の低下に起因して呼吸低下が検出された場合、中枢性呼吸低下が発生したと言われる。成人の一形態において以下のうちいずれかが発生した場合、呼吸低下と見なされ得る:
(i)患者呼吸の30%の低下が少なくとも10秒+関連する4%の脱飽和、または、
(ii)患者呼吸の(50%未満の)低下が少なくとも10秒間継続し、関連して脱飽和が少なくとも3%であるかまたは覚醒が発生する。
【0292】
過呼吸:流れが通常の流量よりも高いレベルまで増加すること。
【0293】
呼吸サイクルの吸気部分:吸気流れの開始から呼気流れの開始までの期間が、呼吸サイクルの吸気部分としてとられる。
【0294】
開通性(気道):気道が開いている度合いまたは気道が開いている範囲。気道開通性とは、開口である。気道開通性の定量化は、例えば、開通性を示す値(1)と、閉鎖(閉塞
)を示す値(0)で行われ得る。
【0295】
呼気終末陽圧(PEEP):肺中の大気を越える圧力であり、呼気終了時に存在する。
【0296】
ピーク流量(Qpeak):呼吸流れ波形の吸気部分における流量最大値。
【0297】
呼吸気流量、空気流量、患者の空気流量、呼吸気空気流量(Qr):これらの用語は、RPTデバイスの呼吸空気流量の推定を指すものとして理解され得、通常リットル/分で表される患者の実際の呼吸流量である「真の呼吸流量」または「真の呼吸気流量」と対照的に用いられる。
【0298】
1回換気量(Vt):余分な努力をせずに通常の呼吸時に吸い込まれたかまたは吐き出された空気の量である。原則的に、吸気量Vi(吸気された空気の量)は、呼気量Ve(呼気された空気の量)に等しいため、単一の一回換気量Vtは、いずれかの量に等しいものとして規定され得る。実際には、一回換気量Vtは、何らかの組み合わせ(例えば、吸気量Viと呼気量Veの平均)として推定される。
【0299】
(吸息)時間(Ti):呼吸流量波形の吸気部分の継続期間。
【0300】
(呼息)時間(Te):呼吸流量波形の呼気部分の継続期間。
【0301】
(合計)時間(Ttot):呼吸流量波形の一つの吸気部分の開始と呼吸流量波形の次の吸気部分の開始との間の合計継続期間。
【0302】
典型的な最近の換気:所定の時間スケールにわたる換気Ventの直近値が密集する傾向となる換気値(すなわち、換気の直近値の中心の傾向の度合い)。
【0303】
上気道閉塞(UAO):部分的な上気道閉塞および合計上気道閉塞両方を含む。上気道上の圧力差の増加(スターリングレジスタ挙動)と共に流量がわずかに増加するかまたは低下し得る流量制限の状態と関連し得る。
【0304】
換気(Vent):患者の呼吸器系によって行われるガス交換率の測定。換気の測定は、単位時間あたりの吸気および呼気流のうち片方または双方を含み得る。1分あたりの体積として表される場合、この量は、「分換気」と呼ばれることが多い。分換気は、単に体積として付与されることもあり、1分あたりの体積として理解される。
4.12.3 換気
【0305】
適応サーボ人工呼吸器(ASV):一定の目標換気を持つのではなく変更が可能なサーボ人工呼吸器。変更可能な目標換気は、患者の何らかの特性(例えば、患者の呼吸特性)から学習され得る。
【0306】
バックアップレート:人工呼吸器のパラメータであり、(自発呼吸努力によってトリガされない場合に)人工呼吸器から患者へ送達される最小呼吸速度(典型的には、1分あたりの呼吸数)を確立させる。
【0307】
サイクル:人工呼吸器の吸気フェーズの終了。自発呼吸をしている患者へ人工呼吸器から呼吸を送達する場合、呼吸サイクルの吸気部分の終了時において、当該人工呼吸器は、呼吸送達を停止するようサイクルされると言われる。
【0308】
呼気の気道陽圧(EPAP):人工呼吸器が所与の時期に達成しようとする所望のイン
ターフェース圧力の生成のために、呼吸内において変化する圧力が付加されるベース圧力。
【0309】
終了時呼気圧力(EEP):呼吸の呼気部分の終了時において人工呼吸器が達成しようとする所望のインターフェース圧力。圧力波形テンプレートΠ(Φ)が呼気終了時にゼロの値である(すなわち、Φ=1のときにΠ(Φ)=0である場合)、EEPはEPAPに等しい。
【0310】
吸息の気道陽圧(IPAP):呼吸の吸気部分時に人工呼吸器が達成しようとする最大の所望のインターフェース圧力。
【0311】
圧力補助:人工呼吸器吸気時における当該人工呼吸器呼気時における圧力増加を示す数であり、吸気時の最大値と、基本圧力との間の圧力差を主に意味する(例えば、PS=IPAP-EPAP)。いくつかの文脈において、圧力補助とは、(人工呼吸器が実際に達成する差ではなく)人工呼吸器が達成しようとする差を意味する。
【0312】
サーボ人工呼吸器:患者換気を有しかつ目標換気を有する人工呼吸器であり、患者換気を目標換気に近づけるために圧力補助レベルを調節する。
【0313】
自発/タイミング(S/T):自発呼吸している患者の呼吸の開始を検出しようとする、人工呼吸器または他のデバイスのモード。しかし、デバイスが所定期間の間に呼吸を検出できない場合、デバイスは、呼吸送達を自動的に開始する。
【0314】
スイング:圧力補助に相当する用語。
【0315】
トリガ:人工呼吸器が自発呼吸する患者へ空気の呼吸を送達する場合、患者自身が呼吸サイクルの呼吸部分を開始したとき、当該人工呼吸器が呼吸送達を行うようトリガされたと言う。
4.13 他の注意事項
【0316】
本特許文書の開示の一部は、著作権保護が与えられる内容を含む。著作権所有者は、何者かが本特許文書または本特許開示をファックスにより再生しても、特許庁の特許ファイルまたは記録に記載されるものであれば目的のものであれば異論は無いが、その他の目的については全ての著作権を保持する。
【0317】
他に文脈から明確に分かる場合および一定の範囲の値が提供されていない限り、下限の単位の1/10、当該範囲の上限と下限の間、および記載の範囲の他の任意の記載の値または介入値に対する各介入値は本技術に包含されることが理解される。介入範囲中に独立的に含まれるこれらの介入範囲の上限および下限が記載の範囲における制限を特に超えた場合も、本技術に包含される。記載の範囲がこれらの制限のうち1つまたは双方を含む場合、これらの記載の制限のいずれかまたは双方を超える範囲も、本技術に包含される。
【0318】
さらに、本明細書中に値(単数または複数)が本技術の一部として具現される場合、他に明記無き限り、このような値が近似され得、実際的な技術的実行が許容または要求する範囲まで任意の適切な有効桁までこのような値を用いることが可能であると理解される。
【0319】
他に明記しない限り、本明細書中の全ての技術用語および科学用語は、本技術が属する分野の当業者が一般的に理解するような意味と同じ意味を持つ。本明細書中に記載の方法および材料に類似するかまたは等しい任意の方法および材料を本技術の実践または試験において用いることが可能であるが、限られた数の例示的方法および材料が本明細書中に記
載される。
【0320】
特定の材料が構成要素の構築に好適に用いられるものとして記載されているが、特性が類似する明白な代替的材料が代替物として用いられる。さらに、それとは反対に記載無き限り、本明細書中に記載される任意および全ての構成要素は、製造可能なものとして理解されるため、集合的にまたは別個に製造され得る。
【0321】
本明細書中及び添付の特許請求の範囲において用いられるように、単数形である「a」、「an」および「the」は、文脈から明らかにそうでないことが示されない限り、その複数の均等物を含む点に留意されたい。
【0322】
本明細書中に記載される公開文献は全て、これらの公開文献の対象である方法および/または材料の開示および記載、参考のために援用される。本明細書中に記載の公開文献は、本出願の出願日前のその開示内容のみのために提供するものである。本明細書中のいずれの内容も、本技術が先行特許のためにこのような公開文献に先行していない、認めるものと解釈されるべきではない。さらに、記載の公開文献の日付は、実際の公開文献の日付と異なる場合があり、個別に確認が必要であり得る。
【0323】
「comprises」および「comprising」という用語は、要素、構成要素またはステップを非排他的な意味合いで指すものとして解釈されるべきであり、記載の要素、構成要素またはステップが明記されていない他の要素、構成要素またはステップと共に存在、利用または結合され得ることを示す。
【0324】
詳細な説明において用いられる見出しは、読者の便宜のためのものであり、本開示または特許請求の範囲全体において見受けられる内容を制限するために用いられるべきではない。これらの見出しは、特許請求の範囲または特許請求の範囲の制限の範囲の解釈において用いられるべきではない。
【0325】
本明細書中の技術について、特定の実施例を参照して述べてきたが、これらの実施例は本技術の原理および用途を例示したものに過ぎないことが理解されるべきである。いくつかの場合において、用語および記号は、本技術の実施に不要な特定の詳細を示し得る。例えば、「first(第1の)」および「second(第2の)」(など)という用語が用いられるが、他に明記無き限り、これらの用語は任意の順序を示すことを意図しておらず、別個の要素を区別するために用いられる。さらに、本方法におけるプロセスステップについての記載または例示を順序付けて述べる場合があるが、このような順序は不要である。当業者であれば、このような順序が変更可能でありかつ/またはその様態を同時にまたはさらに同期的に行うことが可能であることを認識する。
【0326】
よって、本技術の意図および範囲から逸脱することなく、例示的な実施例において多数の変更例が可能であり、また、他の配置構成が考案され得ることが理解されるべきである。
【手続補正書】
【提出日】2024-07-29
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
方法であって、
患者が第1の呼吸治療デバイスから第2の呼吸治療デバイスに前記第1の呼吸治療デバイスの処方治療設定をポートしたい旨を示す入力をインターフェースから受信すること;
前記患者と関連付けられたアカウントIDと、前記第1の呼吸治療デバイスと関連付けられたハードウェア識別子と、前記第2の呼吸治療デバイスと関連付けられたハードウェア識別子とを前記インターフェースを通じて受信すること;および
前記第1の呼吸治療デバイスの前記処方治療設定を処方サーバから取得するために、前記アカウントIDおよび前記第1の呼吸治療デバイスと関連付けられたハードウェア識別子を含むリクエストを前記処方サーバへ送信して、前記第1の呼吸治療デバイスの前記処方治療設定を前記処方サーバから取り出すこと;
前記アカウントIDに基づいて前記第1の呼吸治療デバイスの前記処方治療設定を前記処方サーバから受信すること;および
前記第1の呼吸治療デバイスの前記処方治療設定を前記第2の呼吸治療デバイスのメモリ中に保存すること、を含む、方法。
【請求項2】
前記処方サーバから処方治療設定を受信することは:
前記第1の呼吸治療デバイスからの呼吸治療データ出力に基づいて、前記アカウントIDに対して参照された呼吸品質インジケータを取り出すこと;および
前記呼吸品質インジケータが閾値を超えているかを決定すること;および
前記呼吸品質インジケータが前記閾値を下回っている場合、前記患者をフォローアップのためにフラグ付けし、前記処方治療設定をポートする旨の前記リクエストを拒否すること、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記呼吸品質インジケータは、無呼吸低呼吸指数である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記処方サーバから処方治療設定を受信することは:
現在の処方治療設定と関連付けられた日から現在の日付までの経過時間を決定すること;
前記経過時間が閾値を上回るかを決定すること;および
前記経過時間が前記閾値を上回る場合、前記患者をフォローアップのために処方治療データベースにおいてフラグ付けし、前記処方治療設定をポートする旨の前記リクエストを拒否すること、をさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記処方サーバから処方治療設定を受信することは:
前記患者から1組の情報をリクエストすること;
前記情報の評価により、前記処方治療設定に関連して有意な変化が発生したかを決定すること;および
前記有意な変化が発生した場合、前記患者をフォローアップのために処方データベースにおいてフラグ付けし、前記処方治療設定をポートする旨の前記リクエストを拒否すること、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記1組の情報は、体重変化、BMI変化、筋緊張変化のうち少なくとも1つを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記処方サーバから処方治療設定を受信することは:
1組のオキシメータデータ出力をパルスオキシメータからリクエストすること;
前記オキシメータデータの処理により、前記処方治療設定を更新すべきか否かを決定すること;および
前記処方治療設定を更新すべきではない場合、前記患者をフォローアップのために処方治療データベース中にフラグ付けし、前記処方治療設定をポートする旨の前記リクエストを拒否すること、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記1組の情報は、マイクロフォンを通じて受信された音声データを含み、前記音声データを処理することにより、前記患者の音声のトーンに有意な変化があるか否かを決定する、請求項5又は請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記1組の情報は、顔の画像データを含み、前記顔の画像データを前もってキャプチャされた画像データと比較することにより、有意な顔変化が特定される、請求項5又は請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記有意な顔変化は、BMIの有意な変化を示す、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記処方治療設定は、前記第1の呼吸治療デバイスへ接続されたセルラーアンテナを介して受信される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記処方治療設定は、前記第1の呼吸治療デバイスへ接続されたデバイスへのBluetooth(登録商標)またはWi-Fi接続を介して受信される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記処方治療設定は、前記処方サーバから前記第1の呼吸治療デバイスへ暗号化される、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
前記処方治療設定は、最小および最大圧力ならびに治療モードを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記患者のアカウントと関連付けられたアカウントIDおよび前記第2の呼吸治療デバイスと関連付けられたシリアルナンバーを前記インターフェースを介して受信することは:
前記第1の呼吸治療デバイスのディスプレイ上にコードを表示すること;
前記インターフェース上において前記コードの入力をリクエストすること;および
前記コードが有効化された場合、一般設定および処方治療設定のみを受信すること、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記処方治療設定を受信することは、前記第1および第2の呼吸治療デバイス間の差に基づいて前記処方治療設定の変換を所定の変換因数によって行うことをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
方法であって、
患者が処方治療設定を第2の呼吸治療デバイスからポートしたい旨を示す入力をインターフェースから受信すること;
前記患者と関連付けられたアカウントIDと、前記第2の呼吸治療デバイスと関連付けられたシリアルナンバーとを前記インターフェースを通じて受信すること;および
前記アカウントIDおよび前記シリアルナンバーを含むリクエストを患者サーバへ送信して、前記第2の呼吸治療デバイスの前記処方治療設定を処方サーバから取り出すこと;
前記シリアルナンバーが前記アカウントIDと有効に関連付けられている場合、処方IDに基づいて前記第2の呼吸治療デバイスの前記処方治療設定を前記患者サーバから受信すること;および
前記第2の呼吸治療デバイスの前記処方治療設定を第1の呼吸治療デバイスのメモリ中に保存すること、を含む、方法。