(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138363
(43)【公開日】2024-10-08
(54)【発明の名称】重症筋無力症の治療方法
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20241001BHJP
A61P 21/04 20060101ALI20241001BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20241001BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
A61K39/395 N ZNA
A61P21/04
C07K16/28
C12N15/13
A61K39/395 N
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024108735
(22)【出願日】2024-07-05
(62)【分割の表示】P 2021520958の分割
【原出願日】2019-10-16
(31)【優先権主張番号】62/746,174
(32)【優先日】2018-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】514232085
【氏名又は名称】ユーシービー バイオファルマ エスアールエル
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブロック、メリッサ ケイ
(72)【発明者】
【氏名】バーンズ、ウィリアム ジェイムズ
(72)【発明者】
【氏名】グレーブ、ベルンハルト ハインリッヒ
(72)【発明者】
【氏名】キースリング、クラウス ペーター
(72)【発明者】
【氏名】ラングドン、グラント
(72)【発明者】
【氏名】ウェブスター マニス、エリザベス
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ヒトの重症筋無力症(MG)の治療における抗FcRn抗体の投薬レジメンを提供する。
【解決手段】MGを治療又は予防する方法であって、少なくとも3回の用量の抗FcRn抗体又はその抗原結合断片をヒトに投与するステップを含み、各用量が、4mg/kg、7mg/kg、10mg/kg、15mg/kg及び20mg/kgから独立して選択される、方法とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重症筋無力症(MG)を治療又は予防する必要があるヒトにおいてMGを治療又は予防する方法であって、少なくとも3回の用量の抗FcRn抗体又はその抗原結合断片を該ヒトに投与するステップを含み、各用量が、4mg/kg、7mg/kg、10mg/kg、15mg/kg及び20mg/kgから独立して選択される、方法。
【請求項2】
少なくとも3回の用量の抗体又は抗原結合断片をヒトに投与するステップを含み、各用量が、4mg/kg、7mg/kg、10mg/kg、15mg/kg及び20mg/kgから独立して選択される、重症筋無力症(MG)の治療又は予防を必要とする該ヒトにおけるMGの治療又は予防に使用するための抗FcRn抗体又はその抗原結合断片。
【請求項3】
少なくとも3回の用量の抗体又はその結合断片を投与するステップを含み、各用量が、4mg/kg、7mg/kg、10mg/kg、15mg/kg及び20mg/kgから独立して選択される、重症筋無力症(MG)の治療又は予防のための医薬の製造のための抗FcRn抗体又はその抗原結合断片の使用。
【請求項4】
前記抗体又はその結合断片が、
a.重鎖又は可変領域を有する重鎖断片であって、該可変領域が、CDR H1について配列番号1、CDR H2について配列番号2及びCDR H3について配列番号3に示される配列を有する3つのCDRを含む、重鎖又は重鎖断片と、
b.軽鎖又は可変領域を有する軽鎖断片であって、該可変領域が、CDR L1について配列番号4、CDR L2について配列番号5及びCDR L3について配列番号6に示される配列を有する3つのCDRを含む、軽鎖又は軽鎖断片と
を含む、請求項1から3までのいずれか一項に記載の方法、抗FcRn抗体若しくはその抗原結合断片又は使用。
【請求項5】
前記抗体又はその抗原結合断片がヒト化されている、請求項1から4までのいずれか一項に記載の方法、抗FcRn抗体若しくはその抗原結合断片又は使用。
【請求項6】
前記抗FcRn抗体又はその結合断片が、配列番号29に示される配列又はそれと少なくとも80%同一であるFcRnに特異的な配列を含む重鎖を含む、請求項1から5までのいずれか一項に記載の方法、抗FcRn抗体若しくはその抗原結合断片又は使用。
【請求項7】
前記抗FcRn抗体又はその結合断片が、配列番号15に示される配列又はそれと少なくとも80%同一であるFcRnに特異的な配列を含む軽鎖を含む、請求項1から6までのいずれか一項に記載の方法、抗FcRn抗体若しくはその抗原結合断片又は使用。
【請求項8】
前記抗FcRn抗体又はその結合断片が、配列番号29に示される配列を有する重鎖可変ドメイン配列及び配列番号15に示される配列を含む軽鎖可変ドメイン配列を含む、請求項6又は7に記載の方法、抗FcRn抗体若しくはその抗原結合断片又は使用。
【請求項9】
前記抗体が完全長抗体である、請求項1から8までのいずれか一項に記載の方法、抗FcRn抗体又は使用。
【請求項10】
前記完全長抗体が、IgG1、IgG4及びIgG4Pからなる群から選択される、請求項9に記載の方法、抗FcRn抗体又は使用。
【請求項11】
前記抗FcRn抗体が、配列番号72又は配列番号87又は配列番号43に示される配列を含む重鎖及び配列番号22に示される配列を含む軽鎖を有する、請求項9又は請求項10に記載の方法、抗FcRn抗体又は使用。
【請求項12】
前記抗FcRn抗体がUCB7665(ロザノリキシズマブ)である、請求項1から11までのいずれか一項に記載の方法、抗FcRn抗体又は使用。
【請求項13】
100pM以下のヒトFcRnに対する結合親和性を有する、請求項1から12までのいずれか一項に記載の方法、抗FcRn抗体若しくはその抗原結合断片又は使用。
【請求項14】
ヒトFcRnに対する前記結合親和性が、pH6及びpH7.4で測定した場合、100pM以下である、請求項13に記載の方法、抗FcRn抗体若しくはその抗原結合断片又は使用。
【請求項15】
前記抗体又は抗原結合断片が、薬学的に許容される賦形剤、希釈剤又は担体のうちの1つ又は複数を含む医薬組成物として提供される、請求項1から14までのいずれか一項に記載の方法、抗FcRn抗体若しくはその抗原結合断片又は使用。
【請求項16】
前記医薬組成物が1つ又は複数の他の活性成分を更に含む、請求項15に記載の方法、抗FcRn抗体若しくはその抗原結合断片又は使用。
【請求項17】
各用量が、4mg/kg又は7mg/kg又は10mg/kg又は15mg/kg又は20mg/kgである、請求項1から16までのいずれか一項に記載の方法、抗FcRn抗体若しくはその抗原結合断片又は使用。
【請求項18】
各用量が7mg/kg又は10mg/kgである、請求項1から16までのいずれか一項に記載の方法、抗FcRn抗体若しくはその抗原結合断片又は使用。
【請求項19】
各用量が1週間に1回投与される、請求項1から18までのいずれか一項に記載の方法、抗FcRn抗体若しくはその抗原結合断片又は使用。
【請求項20】
少なくとも4回、5回又は6回、1週間に1回投与され、任意選択により第3回の用量と第4回の用量との間に投薬休日がある、請求項1から19までのいずれか一項に記載の方法、抗FcRn抗体若しくはその抗原結合断片又は使用。
【請求項21】
少なくとも6回、抗体又は抗原結合断片が1週間に1回投与され、各用量が4mg/kg~30mg/kgの範囲、例えば7mg/kg又は10mg/kgである、請求項1から20までのいずれか一項に記載の方法、抗FcRn抗体若しくはその抗原結合断片又は使用。
【請求項22】
前記抗FcRn抗体又はその抗原結合断片が皮下又は静脈内に投与される、請求項1から21までのいずれか一項に記載の方法、抗FcRn抗体若しくはその抗原結合断片又は使用。
【請求項23】
前記抗FcRn抗体又はその抗原結合断片が、ヒトFcRnへのヒトIgGの結合を遮断する、請求項1から22までのいずれか一項に記載の方法、抗FcRn抗体若しくはその抗原結合断片又は使用。
【請求項24】
前記抗FcRn抗体又はその抗原結合断片がβ2ミクログロブリンに結合しない、請求項1から23までのいずれか一項に記載の方法、抗FcRn抗体若しくはその抗原結合断片又は使用。
【請求項25】
4回、5回又は6回、1週間に1回投与され、続いて最初の4回、5回又は6回の用量より少ない用量及び/又は少ない頻度で1回又は複数回の追加用量が投与される、請求項1から24までのいずれか一項に記載の方法、抗FcRn抗体若しくはその抗原結合断片又は使用。
【請求項26】
前記抗FcRn抗体又はその抗原結合断片が、配列番号94の残基V105、P106、T107、A108及びK109からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸並びに少なくとも1つの残基、例えば配列番号94のP100、E115、E116、F117、M118、N119、F120、D121、L122、K123、Q124、G128、G129、D130、W131、P132及びE133からなる群から選択される少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9又は10個の残基を含むヒトFcRnのエピトープと結合する、請求項1から25までのいずれか一項に記載の方法、抗FcRn抗体若しくはその抗原結合断片又は使用。
【請求項27】
前記ヒトが中等度から重度と分類される全身型MGに罹患している、請求項1から26までのいずれか一項に記載の方法、抗FcRn抗体若しくはその抗原結合断片又は使用。
【請求項28】
前記ヒトが抗AChR及び/又は抗MuSK自己抗体陽性であり、任意選択によりIVIg又は血漿交換での治療を考慮されている、請求項1から27までのいずれか一項に記載の方法、抗FcRn抗体若しくはその抗原結合断片又は使用。
【請求項29】
各用量が、280mg、420mg、560mg、840mg及び1120mgから選択される固定単位用量として提供される、請求項1から28までのいずれか一項に記載の方法、抗FcRn抗体若しくはその抗原結合断片又は使用。
【請求項30】
重症筋無力症(MG)を治療又は予防する必要があるヒトにおいてMGを治療又は予防する方法であって、少なくとも3回、好ましくは少なくとも6回、抗FcRn抗体又はその抗原結合断片を該ヒトに投与するステップを含み、各用量が、280mg、315mg、350mg、385mg、420mg、455mg、490mg、525mg、560mg、595mg、630mg、665mg、700mg、735mg、770mg、805mg、840mg、875mg、910mg、945mg、980mg、1015mg、1050mg、1085mg及び1120mgから選択され、該抗FcRn抗体又はその抗原結合断片が、配列番号29に示される配列を含む重鎖及び配列番号15に示される配列を含む軽鎖を含む、方法。
【請求項31】
重症筋無力症(MG)を治療又は予防する必要があるヒトにおいてMGを治療又は予防する方法であって、少なくとも6回、抗FcRn抗体又はその抗原結合断片を該ヒトに投与するステップを含み、50kg未満の体重では用量は280mgであり、50kg以上であるが70kg未満の体重では用量は420mgであり、70kg以上であるが100kg未満の体重では用量560mgであり、100kg以上の体重では用量は840mgである、方法。
【請求項32】
重症筋無力症(MG)を治療又は予防する必要があるヒトにおいてMGを治療又は予防する方法であって、少なくとも6回の用量の抗FcRn抗体又はその抗原結合断片を該ヒトに投与するステップを含み、50kg未満の体重では用量は420mgであり、50kg以上であるが70kg未満の体重では用量は560mgであり、70kg以上であるが100kg未満の体重では用量は840mgであり、100kg以上の体重では用量は1120mgである、方法。
【請求項33】
各用量が1週間に1回投与される、請求項30から32までのいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、FcRnに特異的な抗体を使用して重症筋無力症(MG)を治療する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
新生児のMHCクラスI様FcRnは大部分の細胞から免疫グロブリン及びアルブミンを再循環させ、それを上皮バリアを越えて双方向で輸送して全身及び粘膜免疫に影響を及ぼす。FcRnは、それを選別エンドソームから細胞表面に再循環させることによって細胞内リソソーム分解からIgG及びアルブミンの両方を救出することが示された(Andersonら、2006)。IgGに関して、これはIgGと受容体であるFcRnとの相互作用によって達成される。それ故、実際には、FcRnはIgGを回収し、それを分解から救い、それを循環に戻す。アルブミンは、FcRn分子上の異なる結合部位を介してではあるが、FcRnによって同様に再循環される。FcRnのノックアウト又は遮断により、この再循環が取り除かれ、その結果、IgGのエンドソーム異化並びに血管及び血管外(組織)区画の両方でIgG濃度の顕著な低減が起こることが示されている。実際に、FcRnの遮断は内因性IgGの除去を加速し、アルブミン結合部位も遮断される場合、アルブミンの除去も加速する可能性がある。
【0003】
UCB7665(ロザノリキシズマブ)は、FcRnへのアルブミン結合を阻害することなく、FcRnへのIgG結合を阻害するように特異的に設計された、IgG(FcRn)モノクローナル抗体に対するヒト化抗新生児Fc受容体である。UCB7665は、IgG自己抗体媒介疾患を有する患者における病原性IgGの濃度を低減させる目的でFcRn活性の阻害剤として開発されている。
【0004】
個体の疾患の実体として、IgG自己抗体媒介状態は比較的稀である。これらの障害の治療は依然として困難な臨床的問題のままであり、これらの状態の多くでは、単独での又は細胞傷害剤と併用した高用量コルチコステロイドの長期使用を必要とする。これらの治療アプローチは全ての患者及び状態において有効ではなく、かなりの毒性及び治療関連罹病を引き起こす広範な免疫抑制作用を有する。
【0005】
プラスマフェレーシス、免疫吸着又は高用量静注免疫グロブリン(IVIg)を含む、循環IgG自己抗体の量を低減させることを目的とした治療が、特にコルチコステロイドに基づいた免疫抑制が有効でないか、又はもはや有効でなくなった、自己免疫疾患の一次及び二次療法に使用されている。これらの治療の治療アプローチは、自己免疫疾患の合理的で有効な治療様式を表す、病原性自己抗体のレベルの低下に基づくと考えられる。
【0006】
重症筋無力症は、神経筋接合部(NMJ)においてアセチルコリンニコチン性受容体(nAChR)に対して自己免疫抗体を最も一般的に形成する、末梢運動系の稀な自己免疫障害である。nAChR自己抗体は受容体と結合するアセチルコリンの能力を損ない、エンドサイトーシスを介して受容体を除去するように筋細胞を誘導することによって、又は補体結合によってのいずれかで受容体の破壊をもたらす。
【0007】
MGの第二のカテゴリーは、NMJの形成に必要なチロシンキナーゼ受容体である筋特異的キナーゼ(MuSK)タンパク質に対する自己抗体に起因する。MuSKに対する抗体はシグナル伝達を阻害し、NMJの開存性が減少し、その結果としてMGの症状が生じる。両方のカテゴリーにおいて、これは、筋肉を繰り返し使用することで筋力を徐々に低減させ、休息期間後に筋力を回復させるという特徴的なパターンを生じる。更なる抗体がMGと関連することが見出されているが、それらについてはまだ知られておらず、それらは主要な2つよりもあまり一般的ではないようである。
【0008】
この病理を媒介する際の自己免疫抗体の本質的な役割は血漿交換(PLEX)後に見られる改善によって支持される。病原性IgG自己抗体を含むIgGレベルを低減させる血漿交換は、アセチルコリンエステラーゼ(AChE)阻害剤又は免疫抑制治療に非応答性の患者及び筋無力症クリーゼを経験している患者の両方において使用される(Gilhus及びVerschuuren、2015)。
【0009】
生存率を劇的に改善する新規療法により、MGの予後は過去数十年間で著しく改善したが、著しく高い死亡率及び更に罹患率が依然として問題となっている。MGの治療は依然として困難な臨床的問題のままであり、単独での又は細胞傷害剤と併用した高用量コルチコステロイドの長期使用を必要とする。MGに有効であると考えられている療法の多くは、それらの使用を明確に支持するにはデータが不十分であり、全ての患者及び状態において有効ではなく、かなりの毒性及び治療関連罹病を引き起こす広範な免疫抑制作用を有する。更に、疾患の経過における自然変動に起因して、多くの患者は緊急治療を必要とする急性状況に対して有効な治療を必要とする。
【0010】
現在、PLEX及びIVIgの両方が長期の間欠治療を必要とする状況において症状を改善するための標準治療として使用されているが、どちらの治療もMGに対して米国では承認されておらず、手続は多くの場合、患者にとって重荷となる。それ故、この患者集団において、全身型MGを有する患者にとって利便性が高い、有効な長期の間欠治療に対する、重要な満たされていない医学的必要性が存在する。
【0011】
それ故、MGの治療における新たな治療選択肢に対する、かなりの満たされていない医学的必要性が依然として存在したままである。
【0012】
従って、FcRnへのIgGの結合を遮断するか、又は低減させる薬剤が、病原性IgGの除去によるMGの治療又は予防において有用であり得る。抗FcRn抗体は、WO2009/131702、WO2007/087289、WO2006/118772、WO2014/019727、WO2015/071330、WO2015/167293及びWO2016/123521において以前に記載されている。
【0013】
UCB7665(ロザノリキシズマブ)は、FcRnへのアルブミン結合を阻害することなくFcRnへのIgG結合を阻害するように特異的に設計されているヒト化抗FcRnモノクローナル抗体である(本明細書及びWO2014/019727及びSmithら、2019、MABS、10、111-1130に記載されている)。UCB7665は、MGを有する患者における病原性IgGの濃度を低減させることを目的としてFcRn活性の阻害剤として開発されている。UCB7665は、ラット抗体をヒト化IgG4Pフォーマットに操作することによってヒトFcRnに対して特異性を有するラット抗体から誘導された。UCB7665をコードする構築物は、親ラット重鎖及び軽鎖可変領域からの相補性決定領域(CDR)をヒトIgG4P及びカッパ鎖遺伝的バックグラウンド(それぞれ配列番号43及び配列番号22)にグラフトすることによって作製された。
【0014】
Kiesslingら、2017、Sci.Transl.Med.9、pgs.1-12は、健常な対象におけるロザノリキシズマブの無作為化、対象盲検、治験責任医師盲検、プラセボ対照、単回用量漸増第1相臨床試験を記載している。抗体は、血清アルブミン濃度を統計的に有意に低減させずに、血清IgGを低減させた。許容可能な安全性、薬物動態及び薬力学プロファイルが得られた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本開示は、ヒトのMGの治療における抗FcRn抗体の治療効果を初めて実証し、このような治療についての好適な投薬レジメンを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
それ故、一態様では、重症筋無力症(MG)を治療又は予防する必要があるヒトにおいてMGを治療又は予防する方法であって、少なくとも3回の用量の抗FcRn抗体又はその抗原結合断片をヒトに投与するステップを含み、各用量が、4mg/kg、7mg/kg、10mg/kg、15mg/kg及び20mg/kgから独立して選択される、方法が提供される。
【0017】
一態様では、任意選択により体重段階にわたって固定単位投薬が使用される。一例では、およそ7mg/kgに相当する固定単位用量が使用される。従って、一例では、本発明はまた、重症筋無力症(MG)を治療又は予防する必要があるヒトにおいてMGを治療又は予防する方法であって、少なくとも3回の用量、好ましくは少なくとも6回の用量の抗FcRn抗体又はその抗原結合断片をヒトに投与するステップを含み、50kg未満の体重では用量は280mgであり、50kg以上であるが70kg未満の体重では用量は420mgであり、70kg以上であるが100kg未満の体重では用量は560mgであり、100kg以上の体重では用量は840mgである、方法を提供する。
【0018】
一例では、およそ10mg/kgに相当する固定単位用量が使用される。従って、一例では、本発明はまた、重症筋無力症(MG)を治療又は予防する必要があるヒトにおいてMGを治療又は予防する方法であって、少なくとも3回の用量、好ましくは少なくとも6回の用量の抗FcRn抗体又はその抗原結合部分をヒトに投与するステップを含み、50kg未満の体重では用量は420mgであり、50kg以上であるが70kg未満の体重では用量は560mgであり、70kg以上であるが100kg未満の体重では用量は840mgであり、100kg以上の体重では用量は1120mgである、方法を提供する。
【0019】
一例では、抗FcRn抗体又はその抗原結合断片は、
a.重鎖又は可変領域を有する重鎖断片であって、該可変領域が、CDR H1について配列番号1、CDR H2について配列番号2及びCDR H3について配列番号3に示される配列を有する3つのCDRを含む、重鎖又は重鎖断片と、
b.軽鎖又は可変領域を有する軽鎖断片であって、該可変領域が、CDR L1について配列番号4、CDR L2について配列番号5及びCDR L3について配列番号6に示される配列を有する3つのCDRを含む、軽鎖又は軽鎖断片と
を含む。
【0020】
別の態様では、少なくとも3回の用量の抗FcRn抗体又はその抗原結合断片をヒトに投与するステップを含み、各用量が、4mg/kg、7mg/kg、10mg/kg、15mg/kg及び20mg/kgから独立して選択される、重症筋無力症(MG)の治療又は予防を必要とするヒトにおけるMGの治療又は予防に使用するための抗FcRn抗体又はその抗原結合断片が提供される。
【0021】
別の態様では、少なくとも3回の用量の抗FcRn抗体又はその抗原結合断片をヒトに投与するステップを含み、各用量が、4mg/kg、7mg/kg、10mg/kg、15mg/kg及び20mg/kgから独立して選択される、重症筋無力症(MG)の治療又は予防を必要とするヒトにおけるMGの治療又は予防に使用するための、
重鎖又は可変領域を有する重鎖断片であって、該可変領域が、CDR H1について配列番号1、CDR H2について配列番号2及びCDR H3について配列番号3に示される配列を有する3つのCDRを含む、重鎖又は重鎖断片と、
軽鎖又は可変領域を有する軽鎖断片であって、該可変領域が、CDR L1について配列番号4、CDR L2について配列番号5及びCDR L3について配列番号6に示される配列を有する3つのCDRを含む、軽鎖又は軽鎖断片と
を含む、抗FcRn抗体又はその抗原結合断片が提供される。
【0022】
別の態様では、少なくとも3回の用量の抗FcRn抗体又はそのFcRn結合断片をヒトに投与するステップを含み、各用量が、4mg/kg、7mg/kg、10mg/kg、15mg/kg及び20mg/kgから独立して選択される、重症筋無力症(MG)の治療又は予防のための医薬の製造のための、
i.重鎖又は可変領域を有する重鎖断片であって、該可変領域が、CDR H1について配列番号1、CDR H2について配列番号2及びCDR H3について配列番号3に示される配列を有する3つのCDRを含む、重鎖又は重鎖断片と、
ii.CDR L1について配列番号4、CDR L2について配列番号5及びCDR L3について配列番号6に示される配列を有する3つのCDRを含む可変領域を有する軽鎖又はその軽鎖断片と
を含む、抗FcRn抗体又はその結合断片の使用が提供される。
【0023】
重要なことに、本発明の抗体は、同等及び高い結合親和性でpH6及びpH7.4の両方でヒトFcRnに結合することができる。従って、有益には、抗体はエンドソーム内でさえもFcRnに結合し続けることができ、それによってIgGへのFcRn結合の遮断を最大化することができる。
【0024】
一例では、本発明に使用するための抗FcRn抗体又はその結合断片は、配列番号94の残基V105、P106、T107、A108及びK109からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸並びに少なくとも1つの残基、例えば配列番号94のP100、E115、E116、F117、M118、N119、F120、D121、L122、K123、Q124、G128、G129、D130、W131、P132及びE133からなる群から選択される少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9又は10個の残基を含むヒトFcRnのエピトープに結合する。
【0025】
一実施形態では、本開示による抗体又は結合断片は、例えば、配列番号1、配列番号2及び配列番号3から独立して選択される1つ、2つ又は3つのCDRを含む重鎖又は可変領域を有する重鎖断片を含み、特にCDR H1は配列番号1であり、CDR H2は配列番号2であり、CDR H3は配列番号3である。
【0026】
一実施形態では、本開示による抗体又は結合断片は、例えば、配列番号4、配列番号5及び配列番号6から独立して選択される1つ、2つ又は3つのCDRを含む軽鎖又は可変領域を有する軽鎖断片を含み、特にCDR L1は配列番号4であり、CDR L2は配列番号5であり、CDR L3は配列番号6である。
【0027】
一実施形態では、本開示による抗体又は結合断片は配列番号1~6のCDR配列を含み、例えばCDR H1は配列番号1であり、CDR H2は配列番号2であり、CDR H3は配列番号3であり、CDR L1は配列番号4であり、CDR L2は配列番号5であり、CDR L3は配列番号6である。
【0028】
本開示はまた、前記抗体及び断片を含む医薬組成物に関する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】ある特定のアミノ酸及びポリヌクレオチド配列を示す図である。
【
図2】MG0002研究設計(SubQ;UCB7665)の図である。
【
図3】MG-ADLスコアのベースラインからの変化の図である。
【
図4】QMG、MG-複合(MG-Composite)、MG-ADLスコア、血清IgG濃度及び抗AChR抗体(ロザノリキシズマブ7mg/kg/ロザノリキシズマブ7mg/kg)のベースラインからの変化の図である。
【
図5】定量的重症筋無力症試験フォームの図である。
【
図7】重症筋無力症日常生活動作(MG-ADL)スコア付けの図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
重症筋無力症(MG)は、ニコチン性アセチルコリン受容体(AChR)及び筋特異的チロシンキナーゼ受容体(MuSK)を含む、シナプス後(post-synpatic)筋膜のエピトープに対して誘導された自己抗体、並びに接合後膜の補体媒介破壊を特徴とする衰弱性で致命的となる可能性がある自己免疫疾患である。臨床症状には、眼、球、呼吸器及び四肢筋の変動する衰弱が含まれる。MGについての現在の長期療法には、胸腺摘出(THX)、コリンエステラーゼ阻害剤及び免疫抑制剤又は免疫調節剤が含まれる。増悪は典型的に、静脈内又は皮下免疫グロブリン(IVIg又はSCIg)及び血漿交換(PLEX)などの療法により治療される。
【0031】
ほとんどの患者では、最初に影響を受ける筋肉は眼及び眼瞼の動きを制御する筋肉である。一部の患者では、重症筋無力症は常に眼筋のみに関与(重症眼筋無力症)するが、大多数では他の筋肉にも関与する(全身型重症筋無力症)。従って、本明細書で使用される場合、全身型重症筋無力症とは、眼筋だけではなく他の筋肉にも影響を及ぼす重症筋無力症を指す。
【0032】
一態様では、本発明は、重症筋無力症(MG)を治療又は予防する必要があるヒトにおいてMGを治療又は予防する方法であって、少なくとも6回の用量の抗FcRn抗体又はその抗原結合断片をヒトに投与するステップを含み、各用量が、4mg/kg、7mg/kg、10mg/kg、15mg/kg及び20mg/kgから独立して選択され、好ましくは7mg/kg又は10mg/kgである、方法を提供する。
【0033】
一例では、本明細書以下に記載されているように、任意選択により体重に基づく段階を使用する固定単位投薬が使用され得る。
【0034】
本明細書に記載されているものを含む、任意の好適な抗FcRn抗体又はその抗原結合断片が本発明に使用され得る。
【0035】
一例では、抗FcRn抗体又はその抗原結合断片は、
a.重鎖又は可変領域を有する重鎖断片であって、該可変領域が、CDR H1について配列番号1、CDR H2について配列番号2及びCDR H3について配列番号3に示される配列を有する3つのCDRを含む、重鎖又は重鎖断片と、
b.軽鎖又は可変領域を有する軽鎖断片であって、該可変領域が、CDR L1について配列番号4、CDR L2について配列番号5及びCDR L3について配列番号6に示される配列を有する3つのCDRを含む、軽鎖又は軽鎖断片と
を含む。
【0036】
本明細書で利用される場合、FcRnとは、新生児Fc受容体としても知られている、ヒトIgG受容体アルファ鎖の間の非共有結合複合体を指し、そのアミノ酸配列は、β2ミクログロブリン(β2M)と一緒に番号P55899の下でUniProtにあり、そのアミノ酸配列は番号P61769の下でUniProtにある。
本明細書で利用される場合、抗体分子とは、抗体又は抗原結合断片を指す。本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、概して、インタクトな(全)抗体、すなわち2本の完全長重鎖及び軽鎖のエレメントを含む抗体に関する。抗体は、例えばWO2007/024715に開示されているような分子DVD-Ig、又はWO2011/030107に記載されているいわゆる(FabFv)2Fcのように更なる結合ドメインを更に含んでもよい。このように本明細書に利用される抗体は、二、三又は四価完全長抗体を含む。本明細書上記のように、方法に使用するための抗体は完全長重鎖及び軽鎖を有する完全な抗体分子を含む。或いは、方法は抗原結合断片を利用する。抗原結合断片には、従来の抗体断片構造、例えば、Fab断片、修飾Fab、Fab’又はF(ab’)2断片が含まれ得る。抗体は、例えば、パパイン(2つのFab断片及びFc断片を生成するため)及びペプシン(F(ab’)2断片及びpFc’断片を生成するため)などの酵素によって断片に切断され得る。抗原結合断片はまた、非従来型の構造を含んでもよい(すなわち、抗原結合能を保持することによって抗体断片活性を模倣するポリペプチドを含む、代替のフォーマットで抗体の抗原結合部分を含む)。これに関して、抗原結合断片には、ドメイン抗体又はナノボディ、例えば、VH、VL、VHH及びVNARベースの構造、一本鎖抗体(scFv)、ペプチボディ(peptibody)又はペプチド-Fc融合、並びにダイアボディ、トリアボディ及びテトラボディのような二量体及び多量体抗体様分子、又はオリゴマー化ドメインと連結しているscFvからなる異なるフォーマットを含むミニボディ(miniAb)が含まれる。多重特異性抗原結合断片の例には、国際特許出願公開番号WO2009040562、WO2010035012、WO2011/08609、WO2011/030107及びWO2011/061492にそれぞれ記載されているFab-Fv、Fab-dsFv、Fab-Fv-Fv、Fab-scFv-scFv、Fab-Fv-Fc及びFab-dsFv-PEG断片が含まれ、それらの全ては抗原結合部分のそれらの論述に関して参照により本明細書に組み込まれる。多重特異性抗原結合断片の更なる例には、直列に連結しているVHH断片が含まれる。代替の抗原結合断片は2つのscFv又はdsscFvと連結しているFabを含み、scFv又はdsscFvの各々は同じ又は異なる標的に結合している(例えば、1つのscFv又はdsscFvが治療標的に結合し、1つのscFv又はdsscFvが例えばアルブミンに結合することによって半減期を増加させる)。このような抗体断片は国際特許出願公開番号WO2015/197772に記載されており、それはその全体が参照により、特に抗体断片の論述に関して本明細書に組み込まれる。抗体断片及びそれらを生成する方法は当該分野において周知であり、例えば、Vermaら、1998、Journal of Immunological Methods、216、165-181;Adair及びLawson、2005.治療抗体(Therapeutic antibodies). Drug Design Reviews-Online 2(3):209-217を参照のこと。また、本開示の文脈に使用するために企図される多重特異性抗体又はその抗原結合断片の例には、二、三又は四価抗体、Bis-scFv、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ビボディ及びトリボディが含まれる(例えば、Holliger及びHudson、2005、Nature Biotech 23(9):1126-1136;Schoonjansら、2001、Biomolecular Engineering、17(6)、193-202を参照のこと)。
【0037】
特にエピトープ、結合親和性及び特異性、並びに活性に関して、抗体に関連する本明細書における開示はまた、抗体断片及び抗体様分子にも適用可能である。抗体断片はまた、モノクローナル、キメラ、ヒト化、完全にヒト、多重特異性、二重特異性などとして特徴付けられ得ること、及びまた、以下のこれらの用語の論述は抗原結合断片にも関連することは理解されるであろう。
【0038】
上記の抗体及び抗原結合断片は参照及び例のみの目的のために記載され、本発明の範囲を限定するものではない。
【0039】
一実施形態では、抗体又は抗原結合断片は結合ドメインを含む。結合ドメインは概して、6つのCDRを含み、3つは重鎖由来であり、3つは軽鎖由来である。一実施形態では、CDRはフレームワーク内にあり、可変領域を一緒に形成する。それ故、一実施形態では、抗体又は抗原結合断片は軽鎖可変領域及び重鎖可変領域を含む抗原に特異的な結合ドメインを含む。
【0040】
1つ又は複数(例えば、1、2、3又は4つ)のアミノ酸の置換、付加及び/又は欠失が、FcRnと結合する抗体の能力を大きく変化させることなく、本発明によって提供されるCDR又は他の配列(例えば可変ドメイン)に対してなされてもよいことは理解されるであろう。任意のアミノ酸の置換、付加及び/又は欠失の効果は、FcRn結合及び遮断を決定するために、例えば、WO2014/019727に記載されている方法を使用することによって当業者によって容易に試験され得る。
【0041】
一例では、1つ又は複数(例えば1、2、3又は4つ)のアミノ酸の置換、付加及び/又は欠失は、本発明によって提供される抗体又は断片に利用されるフレームワーク領域に対してなされてもよく、FcRnに対する結合親和性が保持されるか、又は増加する。
【0042】
抗体可変ドメイン内の残基は、Kabatらによって考案されているシステムに従って慣例的に番号付けされる。このシステムは、Kabatら、1987、免疫学的対象のタンパク質の配列(Sequences of Proteins of Immunological Interest)、US Department of Health and Human Services、NIH、USA(本明細書以下において「Kabatら(上記)」)に記載されている。他に示されている場合を除いて、この番号付けシステムが本明細書に使用される。
【0043】
Kabat残基の指定はアミノ酸残基の線形番号付けと常に直接的に対応するわけではない。実際の線形アミノ酸配列は、基礎可変ドメイン構造のフレームワーク又は相補性決定領域(CDR)であるかに関わらず、構造構成成分の短縮又は構造構成成分内への挿入に対応する厳格なKabat番号付けにおけるよりも少ない又は追加のアミノ酸を含有してもよい。残基の正確なKabat番号付けは、抗体の配列と「標準的な」Kabat番号付け配列との相同性の残基のアラインメントによって所与の抗体について決定され得る。
【0044】
重鎖可変ドメインのCDRは、Kabat番号付けシステムに従って残基31~35(CDR-H1)、残基50~65(CDR-H2)及び残基95~102(CDR-H3)に位置する。しかしながら、Chothia(Chothia,C.及びLesk,A.M.J.Mol.Biol.、196、901-917(1987))に従って、CDR-H1に等価なループは残基26から残基32まで伸長する。それ故、他に示されない限り、本明細書において利用される「CDR-H1」は、Kabat番号付けシステムとChothiaのトポロジカルループ定義との組合せによって記載されている、残基26から35を指すことを意図する。
【0045】
軽鎖可変ドメインのCDRは、Kabat番号付けシステムに従って残基24~34(CDR-L1)、残基50~56(CDR-L2)及び残基89~97(CDR-L3)に位置する。
【0046】
本開示の抗体及び抗原結合断片はFcRnを遮断するので、IgGの再循環においてそのFcRnが機能することを防ぐことができる。本明細書で利用される場合、遮断とは、受容体を閉塞することなどの物理的に遮断することを指すが、また、抗体又は断片が、例えば立体構造変化の原因となるエピトープに結合することも含み、このことは受容体に対して天然リガンドがもはや結合しないことを意味する。本発明の抗体分子はFcRnと結合するので、IgG定常領域に対するFcRn結合を減少させるか、又は阻止(例えば阻害)する。
【0047】
一実施形態では、抗体又は抗原結合断片はIgGに対して競合的にFcRnに結合する。
【0048】
一例では、抗体又は抗原結合断片はヒトIgGに対するヒトFcRn結合の競合的阻害剤として機能する。一例では、抗体又は抗原結合断片はFcRn上のIgG結合部位と結合する。一例では、抗体又は抗原結合断片はβ2Mに結合しない。
【0049】
本開示に使用するための抗体は当該分野において公知の任意の適切な方法を使用して得られ得る。融合タンパク質、細胞(組換え又は天然)を発現するポリペプチド(活性化T細胞など)を含むFcRnポリペプチド/タンパク質は、FcRnを特異的に認識する抗体を作製するために使用され得る。ポリペプチドは、「成熟」ポリペプチド又はその生物学的に活性な断片若しくは誘導体であってもよい。ヒトタンパク質は、番号P55899の下でSwiss-Protに登録されている。ヒトFcRnアルファ鎖の細胞外ドメインは配列番号94に提供される。β2Mの配列は配列番号95に提供される。
【0050】
一実施形態では、抗原は細胞の表面上にFcRnを提示するように操作されるFcRnの変異型であるので、FcRnが細胞内に内在化する動的処理はほとんど又は全く存在せず、例えば、このことは、Oberら 2001 Int.Immunol.13、1551-1559に記載されているようにジロイシンがジアラニンに変異される、FcRnアルファ鎖の細胞質尾部における変異を起こすことによって達成され得る。
【0051】
宿主を免疫化するために使用するためのポリペプチドは、発現系を含む、遺伝的に操作される宿主細胞から当該分野において周知のプロセスによって調製され得るか、又はそれらは天然の生物学的起源から回収され得る。本出願において、「ポリペプチド」という用語は、ペプチド、ポリペプチド及びタンパク質を含む。これらは他に特定されない限り互換的に使用される。FcRnポリペプチドは、一部の場合、例えば親和性タグ又は類似物と融合される融合タンパク質などのより大きなタンパク質の部分であってもよい。
【0052】
動物の免疫化が必要な場合、FcRnポリペプチドに対して生成される抗体は、周知及び慣用のプロトコルを使用して、ポリペプチドを動物、好ましくは非ヒト動物に投与することによって得られ得る。例えば、実験免疫学のハンドブック(Handbook of Experimental Immunology)、D.M.Weir(ed.)、Vol4、Blackwell Scientific Publishers、Oxford、England、1986)を参照のこと。ウサギ、マウス、ラット、ヒツジ、ウシ、ラクダ又はブタなどの多くの温血動物が免疫化され得る。しかしながら、マウス、ウサギ、ブタ及びラットが一般に最も好適である。
【0053】
モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ技術(Kohler & Milstein、1975、Nature、256:495-497)、トリオーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozborら、1983、Immunology Today、4:72)及びEBV-ハイブリドーマ技術(Coleら、モノクローナル抗体及びがん療法(Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy)、pp77-96、Alan R Liss,Inc.、1985)などの当該分野において公知の任意の方法によって調製され得る。
【0054】
本発明に使用するための抗体はまた、例えば、Babcook,Jら、1996、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93(15):7843-78481、WO92/02551、WO2004/051268及び国際特許出願番号WO2004/106377に記載されている方法によって特異的抗体を作製するために選択される単一のリンパ球から生成された免疫グロブリン可変領域cDNAをクローニングし、発現することによって単一のリンパ球抗体方法を使用して生成され得る。
【0055】
抗体についてのスクリーニングは、ヒトFcRnに対する結合を測定するためのアッセイ及び/又は受容体に対するIgG結合を遮断する能力を測定するためのアッセイを使用して実施され得る。結合アッセイの例は、特に、プレート上に固定化される、ヒトFcRn及びヒトFcの融合タンパク質を使用し、融合タンパク質と結合した抗FcRn抗体を検出するために二次抗体を利用する、ELISAである。好適なアンタゴニスト及び遮断アッセイの例は当該分野において周知であり、WO2014/019727に記載されている。
【0056】
本明細書に利用される特異性とは、特異的である抗原のみを認識する抗体又は非特異的である抗原に対する結合と比較して特異的である抗原に対して顕著に高い結合親和性、例えば少なくとも5、6、7、8、9、10倍高い結合親和性を有する抗体を指すことを意図する。結合親和性は本明細書及びWO2014/019727に記載されているBIAcoreなどの技術によって測定され得る。一例では、本発明の抗体はβ2ミクログロブリン(β2M)に結合しない。一例では、本発明の抗体はカニクイザルFcRnに結合する。一例では、本発明の抗体はラット又はマウスFcRnに結合しない。
【0057】
本開示によるある特定の抗体のアミノ酸配列及びポリヌクレオチド配列は図面に提供される。
【0058】
本発明に有用な他の抗体は、WO2009/131702、WO2007/087289、WO2006/118772、WO2015/071330、WO2015/167293及びWO2016/123521に記載されており、参照により本明細書に組み込まれる。また、例には、Momenta Pharmaceuticals製のM281及びSyntimmune製のSYNT0001が含まれる。
【0059】
一実施形態では、本開示による抗体又は断片はヒト化されている。
【0060】
本明細書で使用される場合、「ヒト化抗体分子」という用語は、重鎖及び/又は軽鎖が、アクセプター抗体(例えばヒト抗体)の重鎖及び/又は軽鎖可変領域フレームワーク内にグラフトされたドナー抗体(例えばネズミモノクローナル抗体などの非ヒト抗体)由来の1つ又は複数のCDR(所望の場合、1つ又は複数の修飾CDRを含む)を含有する、抗体分子を指す。概説のために、Vaughanら、Nature Biotechnology、16、535-539、1998を参照のこと。一実施形態では、全CDRが転移されるのではなく、本明細書上記のCDRのいずれか1つに由来する特異性決定残基の1つ又は複数のみがヒト抗体フレームワークに転移される(例えば、Kashmiriら、2005、Methods、36、25-34を参照のこと)。一実施形態では、本明細書上記のCDRの1つ又は複数に由来する特異性決定残基のみがヒト抗体フレームワークに転移される。別の実施形態では、本明細書上記のCDRの各々に由来する特異性決定残基のみがヒト抗体フレームワークに転移される。
【0061】
CDR又は特異性決定残基がグラフトされる場合、CDRが誘導されるドナー抗体のクラス/種類に関して、マウス、霊長類及びヒトフレームワーク領域を含む、任意の適切なアクセプター可変領域フレームワーク配列が使用されてもよい。
【0062】
好適には、本発明によるヒト化抗体は、ヒトアクセプターフレームワーク領域及び本明細書において具体的に提供されるCDRの1つ又は複数を含む可変ドメインを有する。それ故、一実施形態では、可変ドメインがヒトアクセプターフレームワーク領域及び非ヒトドナーCDRを含む、ヒトFcRnに結合するヒト化抗体を遮断することが提供される。
【0063】
本発明に使用され得るヒトフレームワークの例は、KOL、NEWM、REI、EU、TUR、TEI、LAY及びPOM(Kabatら、上記)である。例えば、KOL及びNEWMが重鎖のために使用されてもよく、REIが軽鎖のために使用されてもよく、EU、LAY及びPOMが重鎖及び軽鎖の両方のために使用されてもよい。或いは、ヒト生殖細胞配列が使用されてもよく、それらは、http://vbase.mrc-cpe.cam.ac.uk/にて利用可能である。
【0064】
本発明のヒト化抗体において、アクセプター重鎖及び軽鎖は、同じ抗体に由来することを必ずしも必要とせず、所望の場合、異なる鎖に由来するフレームワーク領域を有する複合鎖を含んでもよい。
【0065】
本発明のヒト化抗体の重鎖のための1つのこのような好適なフレームワーク領域は、JH4(配列番号56)と一緒にヒトサブグループVH3配列1-3 3-07に由来する。
【0066】
従って、一例では、CDR-H1について配列番号1に示される配列、CDR-H2について配列番号2に示される配列及びCDRH3について配列番号3に示される配列を含み、重鎖フレームワーク領域がJH4と一緒にヒトサブグループVH3配列1-3 3-07に由来するヒト化抗体が提供される。
【0067】
ヒトJH4の配列は以下の通りである:(YFDY)WGQGTLVTVS(配列番号70)。YFDYモチーフはCDR-H3の一部であり、フレームワーク4の一部ではない(Ravetch,JVら、1981、Cell、27、583-591)。
【0068】
一例では、抗体の重鎖可変ドメインは配列番号29に示される配列を含む。
【0069】
本発明のヒト化抗体の軽鎖についての好適なフレームワーク領域は、JK2(配列番号54)と一緒にヒト生殖細胞サブグループVK1配列2-1-(1)A30に由来する。
【0070】
従って、一例では、CDR-L1について配列番号4に示される配列、CDR-L2について配列番号5に示される配列及びCDRL3について配列番号6に示される配列を含み、軽鎖フレームワーク領域が、JK2と一緒にヒトサブグループVK1配列2-1-(1)A30に由来するヒト化抗体が提供される。
【0071】
JK2配列は以下の通りである:(YT)FGQGTKLEIK(配列番号71)。YTモチーフはCDR-L3の一部であり、フレームワーク4の一部ではない(Hieter,PA.ら、1982、J.Biol.Chem.、257、1516-1522)。
【0072】
一例では、抗体の軽鎖可変ドメインは配列番号15に示される配列を含む。
【0073】
本発明のヒト化抗体において、フレームワーク領域はアクセプター抗体の配列と正確に同じ配列を有することを必要としない。例えば、異常な残基は、アクセプター鎖のクラス又は種類について、より頻繁に存在する残基に変更されてもよい。或いは、アクセプターフレームワーク領域内の選択される残基は、それらがドナー抗体内の同じ位置に見られる残基に対応するように変更されてもよい(Reichmannら、1998、Nature、332、323-324を参照のこと)。このような変更はドナー抗体の親和性を戻すための最低限の必要性にとどめられるべきである。変更する必要があり得るアクセプターフレームワーク領域内の残基を選択するためのプロトコルはWO91/09967に記載されている。
【0074】
それ故、一実施形態では、フレームワーク内の1、2、3、4又は5個の残基は代替のアミノ酸残基と置き換えられる。
【0075】
従って、一例では、重鎖の可変ドメインの少なくとも3、24、76、93及び94位の各々における残基(Kabat番号付け)がドナー残基である、ヒト化抗体が提供される。例えば、配列番号29に示される配列を参照のこと。
【0076】
一実施形態では、重鎖可変ドメインの残基3は代替のアミノ酸、例えばグルタミンと置き換えられる。
【0077】
一実施形態では、重鎖可変ドメインの残基24は代替のアミノ酸、例えばアラニンと置き換えられる。
【0078】
一実施形態では、重鎖可変ドメインの残基76は代替のアミノ酸、例えばアスパラギンと置き換えられる。
【0079】
一実施形態では、重鎖の残基93は代替のアミノ酸、例えばアラニンと置き換えられる。
【0080】
一実施形態では、重鎖の残基94は代替のアミノ酸、例えばアルギニンと置き換えられる。
【0081】
一実施形態では、本開示によるヒト化重鎖可変領域において、残基3はグルタミンであり、残基24はアラニンであり、残基76はアスパラギンであり、残基93はアラニンであり、残基94はアルギニンである。
【0082】
従って、一例では、軽鎖の可変ドメインの少なくとも36、37及び58位の各々における残基(Kabat番号付け)がドナー残基である、ヒト化抗体が提供される。例えば配列番号15に示される配列を参照のこと。
【0083】
一実施形態では、軽鎖可変ドメインの残基36は、代替のアミノ酸、例えばチロシンと置き換えられる。
【0084】
一実施形態では、軽鎖可変ドメインの残基37は、代替のアミノ酸、例えばグルタミンと置き換えられる。
【0085】
一実施形態では、軽鎖可変ドメインの残基58は、代替のアミノ酸、例えばバリンと置き換えられる。
【0086】
一実施形態では、本開示によるヒト化重鎖可変領域において、残基36はチロシンであり、残基37はグルタミンであり、残基58はバリンである。
【0087】
一実施形態では、本開示は、本明細書に開示されている配列と80%類似又は同一である、例えば、関連配列、例えば、可変ドメイン配列、CDR配列又はCDRを除く可変ドメイン配列の一部又は全てにわたって85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%類似又は同一である抗体配列を提供する。一実施形態では、関連配列は配列番号15である。一実施形態では、関連配列は配列番号29である。
【0088】
一実施形態では、本発明は、重鎖の可変ドメインが、配列番号29に示される配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性又は類似性を有する配列を含む、重鎖を含むヒトFcRnに結合する抗体分子を提供する。
【0089】
一実施形態では、本発明は、軽鎖の可変ドメインが、配列番号15に示される配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性又は類似性を有する配列を含む、軽鎖を含むヒトFcRnに結合する抗体分子を提供する。
【0090】
一実施形態では、本発明は、抗体が、配列番号29に示される配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%類似又は同一である重鎖可変ドメインを有するが、抗体分子が、CDR-H1について配列番号1に示される配列、CDR-H2について配列番号2に示される配列及びCDR-H3について配列番号3に示される配列を有する、ヒトFcRnに結合する抗体分子を提供する。
【0091】
一実施形態では、本発明は、抗体が、配列番号15に示される配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%類似又は同一である軽鎖可変ドメインを有するが、抗体分子が、CDR-L1について配列番号4に示される配列、CDR-L2について配列番号5に示される配列及びCDR-L3について配列番号6に示される配列を有する、ヒトFcRnに結合する抗体分子を提供する。
【0092】
一実施形態では、本発明は、抗体が、配列番号29に示される配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%類似又は同一である重鎖可変ドメイン及び配列番号15に示される配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%類似又は同一である軽鎖可変ドメインを有するが、抗体分子は、CDR-H1について配列番号1に示される配列、CDR-H2について配列番号2に示される配列、CDR-H3について配列番号3に示される配列、CDR-L1について配列番号4に示される配列、CDR-L2について配列番号5に示される配列及びCDR-L3について配列番号6に示される配列を有する、ヒトFcRnに結合する抗体分子を提供する。
【0093】
本明細書で使用される場合、「同一性」とは、並べられた配列における任意の特定の位置にて、アミノ酸残基が配列間で同一であることを示す。本明細書で使用される場合、「類似性」とは、並べられた配列における任意の特定の位置にて、アミノ酸残基が配列間で類似の種類であることを示す。例えば、ロイシンはイソロイシン又はバリンと置換されてもよい。多くの場合、互いに置換され得る他のアミノ酸には、限定されないが、以下が含まれる:
- フェニルアラニン、チロシン及びトリプトファン(芳香族側鎖を有するアミノ酸)、
- リシン、アルギニン及びヒスチジン(塩基性側鎖を有するアミノ酸)、
- アスパラギン酸及びグルタミン酸(酸性側鎖を有するアミノ酸)、
- アスパラギン及びグルタミン(アミド側鎖を有するアミノ酸)、並びに
- システイン及びメチオニン(硫黄含有側鎖を有するアミノ酸)。同一性及び類似性の程度は容易に計算され得る(分子計算生物学(Computational Molecular Biology)、Lesk,A.M.、ed.、Oxford University Press、New York、1988;バイオコンピューティング.インフォマティクス及びゲノムプロジェクト(Biocomputing.Informatics and Genome Projects)、Smith,D.W.、ed.、Academic Press、New York、1993;配列データのコンピュータ解析(Computer Analysis of Sequence Data)、Part 1、Griffin,A.M.、及びGriffin,H.G.、eds.、Humana Press、New Jersey、1994;分子生物学における配列解析(Sequence Analysis in Molecular Biology)、von Heinje,G.、Academic Press、1987、配列解析プライマー(Sequence Analysis Primer)、Gribskov,M.及びDevereux,J.、eds.、M Stockton Press、New York、1991、NCBIから入手可能なBLAST(商標)ソフトウェア(the BLASTTM software available from NCBI)(Altschul,S.F.ら、1990、J.Mol.Biol.215:403-410;Gish,W. & States、D.J.1993、Nature Genet.3:266-272.Madden,T.L.ら、1996、Meth.Enzymol.266:131-141;Altschul,S.F.ら、1997、Nucleic Acids Res.25:3389-3402;Zhang,J. & Madden,T.L.1997、Genome Res.7:649-656)。
【0094】
本発明の抗体分子は、完全長重鎖及び軽鎖又はそれらの断片を有する完全抗体分子を含んでもよく、限定されないが、Fab、修飾Fab、Fab’、修飾Fab’、F(ab’)2、Fv、単一ドメイン抗体(例えばVH又はVL又はVHH)、scFv、二、三又は四価抗体、Bis-scFv、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ及び上記のいずれかのエピトープ結合断片であってもよい(例えば、Holliger及びHudson、2005、Nature Biotech.23(9):1126-1136;Adair及びLawson、2005、Drug Design Reviews-Online 2(3)、209-217を参照のこと)。これらの抗体断片を創出し、製造する方法は、当該分野において周知である(例えば、Vermaら、1998、Journal of Immunological Methods、216、165-181を参照のこと)。本発明に使用するための他の抗体断片は、国際特許出願WO2005/003169、WO2005/003170及びWO2005/003171に記載されているFab及びFab’断片を含む。多価抗体は、複数の特異性、例えば二重特異性を含んでもよいか、又は単一特異性であってもよい(例えば、WO92/22853、WO05/113605、WO2009/040562及びWO2010/035012を参照のこと)。
【0095】
一実施形態では、本開示の抗体分子は、例えば軽鎖及び重鎖のそれぞれについて配列番号15及び29に示される可変領域を含む抗体Fab’断片である。一実施形態では、抗体分子は、配列番号22に示される配列を含む軽鎖及び配列番号36に示される配列を含む重鎖を有する。
【0096】
一実施形態では、本開示の抗体分子は、例えば軽鎖及び重鎖のそれぞれについて配列番号15及び29に示される可変領域を含む完全長IgG1抗体である。一実施形態では、抗体分子は、配列番号22に示される配列を含む軽鎖及び配列番号72に示される配列を含む重鎖を有する。
【0097】
一実施形態では、本開示の抗体分子は、例えば軽鎖及び重鎖のそれぞれについて配列番号15及び29に示される可変領域を含む完全長IgG4フォーマットである。一実施形態では、抗体分子は、配列番号22に示される配列を含む軽鎖及び配列番号87に示される配列を含む重鎖を有する。
【0098】
一実施形態では、本開示の抗体分子は、例えば軽鎖及び重鎖のそれぞれについて配列番号15及び29に示される可変領域を含む完全長IgG4Pフォーマットである。一実施形態では、抗体分子は、配列番号22に示される配列を含む軽鎖及び配列番号43に示される配列を含む重鎖を有する。
【0099】
本明細書で利用されるIgG4Pは、アミノ酸241がプロリンで置き換えられる野生型IgG4アイソタイプの変異であり、例えば、Angalら、Molecular Immunology、1993、30(1)、105-108に記載されているように241位におけるセリンがプロリンに変化している場所を参照のこと。
【0100】
一実施形態では、本開示による抗体は、例えば、WO2009/040562、WO2010035012、WO2011/030107、WO2011/061492及びWO2011/086091(これらの全ては本明細書に参照により組み込まれる)に記載されているように、免疫グロブリン部分、例えばFab又はFab’断片を含むFcRn結合抗体融合タンパク質、及びそれらに直接又は間接的に連結された1つ又は2つの単一ドメイン抗体(dAb)として提供される。
【0101】
一実施形態では、融合タンパク質は、例えばジスルフィド結合によって任意選択に連結された可変重(VH)及び可変軽(VL)対として2つのドメイン抗体を含む。
【0102】
一実施形態では、融合タンパク質のFab又はFab’エレメントは、単一ドメイン抗体(単数又は複数)と同じ又は類似の特異性を有する。一実施形態では、Fab又はFab’は、単一ドメイン抗体(単数又は複数)と異なる特異性を有する。すなわち、融合タンパク質は多価である。一実施形態では、本発明による多価融合タンパク質はアルブミン結合部位を有し、例えばその中のVH/VL対はアルブミン結合部位を提供する。1つのこのような実施形態では、重鎖は配列番号50に示される配列を含み、軽鎖は配列番号46又は配列番号78に示される配列を含む。
【0103】
一実施形態では、本開示によるFab又はFab’はPEG分子又はヒト血清アルブミンにコンジュゲートされている。
【0104】
CA170_01519g57及び1519及び1519.g57は、本明細書において互換的に利用され、多くの異なるフォーマットで使用され得る抗体可変領域の特異的対を指すために使用される。これらの可変領域は、配列番号29に示される重鎖配列及び配列番号15に示される軽鎖配列である(
図1)。
【0105】
本発明の抗体分子の定常領域ドメインは、存在する場合、抗体分子の提案される機能、特に必要とされ得るエフェクター機能を考慮して選択されてもよい。例えば、定常領域ドメインは、ヒトIgA、IgD、IgE、IgG又はIgMドメインであってもよい。特に、抗体分子が治療的使用を意図し、抗体エフェクター機能が必要とされる場合、特にIgG1及びIgG3アイソタイプのヒトIgG定常領域ドメインが使用されてもよい。或いは、抗体分子が治療目的を意図し、抗体エフェクター機能が必要とされない場合、IgG2及びIgG4アイソタイプが使用されてもよい。これらの定常領域ドメインの配列バリアントも使用されてもよいことが理解されるであろう。例えば、Angalら、Molecular Immunology、1993、30(1)、105-108に記載されているように、241位におけるセリンがプロリンに変化されているIgG4分子が使用されてもよい。また、抗体は様々な翻訳後修飾を受けてもよいことは当業者により理解されるであろう。これらの修飾の種類及び程度は、多くの場合、抗体を発現するために使用される宿主細胞系及び培養条件に依存する。このような修飾は、グリコシル化の変化、メチオニン酸化、ジケトピペラジン形成、アスパラギン酸異性化及びアスパラギン脱アミド化を含んでもよい。頻繁な修飾は、(Harris、RJ.Journal of Chromatography 705:129-134、1995に記載されているように)カルボキシペプチダーゼの作用に起因するカルボキシ末端塩基性残基(リシン又はアルギニンなど)の損失である。従って、抗体重鎖のC末端リシンは存在しなくてもよい。
【0106】
一実施形態では、抗体重鎖はCH1ドメインを含み、抗体軽鎖はCLドメイン、カッパ又はラムダのいずれかを含む。
【0107】
一実施形態では、軽鎖は配列番号22に示される配列を有し、重鎖は配列番号43に示される配列を有する。
【0108】
一実施形態では、軽鎖は配列番号22に示される配列を有し、重鎖は配列番号72に示される配列を有する。
【0109】
一実施形態では、抗体分子由来のC末端アミノ酸は翻訳後修飾の間に切断される。
【0110】
一実施形態では、抗体分子由来のN末端アミノ酸は翻訳後修飾の間に切断される。
【0111】
本開示によって提供される抗体、特に重鎖配列gH20(配列番号29)及び/又は軽鎖配列gL20(配列番号15)を含む抗体が結合することができるヒトFcRnの特異的領域又はエピトープも本開示によって提供される。
【0112】
ヒトFcRnポリペプチドのこの特定の領域又はエピトープは、本発明によって提供される抗体のいずれか1つと組み合わせて、当該分野において公知の任意の好適なエピトープマッピング法によって識別され得る。このような方法の例は、抗体によって認識されるエピトープの配列を含有する抗体と特異的に結合できる最小の断片を有する本発明の抗体への結合に関して、FcRnに由来する様々な長さのペプチドをスクリーニングすることを含む。FcRnペプチドは、合成的に又はFcRnポリペプチドのタンパク質分解によって作製され得る。抗体に結合するペプチドは、例えば、質量分光分析によって識別され得る。別の例では、NMR分光法又はX線結晶学が、本開示の抗体が結合しているエピトープを識別するために使用されてもよい。一旦識別されると、本開示の抗体に結合するエピトープ断片は、必要とされる場合、同じエピトープに結合する更なる抗体を得るための免疫原として使用されてもよい。
【0113】
一実施形態では、本開示の抗体は、以下に示されているようなヒトFcRnアルファ鎖細胞外配列に結合する:
【化1】
【0114】
下線の残基は、ヒトFcRnとヒトIgGのFc領域との相互作用に重要であることが知られているものであり、太字で強調されているこれらの残基は、FcRnと、重鎖配列gH20(配列番号29)及び軽鎖配列gL20(配列番号15)を含む本開示の1519抗体との相互作用に関与するものである。
【0115】
一例では、本発明に使用するための抗体は、配列番号94の残基V105、P106、T107、A108及びK109からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸並びに配列番号94のP100、E115、E116、F117、M118、N119、F120、D121、L122、K123、Q124、G128、G129、D130、W131、P132及びE133からなる群から選択される少なくとも1つの残基、例えば、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9又は10個の残基を含むヒトFcRnのエピトープに結合する抗FcRn抗体分子である。
【0116】
一例では、抗体分子のエピトープは、本明細書の例に記載されているように、β2Mとの複合体においてFcRnアルファ鎖細胞外配列(配列番号94)を使用してX線結晶学によって決定される。
【0117】
一例では、本発明に使用するための抗体は、配列番号94の残基V105、P106、T107、A108及びK109からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸並びに配列番号94のE115、E116、F117、M118、N119、F120、D121、L122、K123及びQ124からなる群から選択される少なくとも1つの残基、例えば、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9又は10個の残基を含む、ヒトFcRnのエピトープに結合する抗FcRn抗体分子である。
【0118】
一例では、本発明に使用するための抗体は、配列番号94の残基V105、P106、T107、A108及びK109からなる群から選択される少なくとも2、3、4又は5個のアミノ酸並びに配列番号94のE115、E116、F117、M118、N119、F120、D121、L122、K123及びQ124からなる群から選択される少なくとも1つの残基を含む、ヒトFcRnのエピトープに結合する抗FcRn抗体分子である。
【0119】
一例では、本発明に使用するための抗体は、配列番号94の残基V105、P106、T107、A108及びK109からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸並びに配列番号94のP100、E115、E116、F117、M118、N119、F120、D121、L122、K123、Q124、G128、G129、D130、W131、P132及びE133からなる群から選択される少なくとも1つの残基を含む、ヒトFcRnのエピトープに結合する抗FcRn抗体分子である。
【0120】
一例では、本発明に使用するための抗体は、配列番号94の残基V105、P106、T107、A108及びK109からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸並びに配列番号94のP100、M118、N119、F120、D121、L122、K123、Q124及びG128からなる群から選択される少なくとも1つの残基を含む、ヒトFcRnのエピトープに結合する抗FcRn抗体分子である。
【0121】
一例では、本発明に使用するための抗体は、配列番号94の残基V105、P106、T107、A108及びK109並びに配列番号94のP100、M118、N119、F120、D121、L122、K123、Q124及びG128からなる群から選択される少なくとも1つの残基を含む、ヒトFcRnのエピトープに結合する抗FcRn抗体分子である。
【0122】
一例では、本発明に使用するための抗体は、配列番号94の残基V105、P106、T107、A108及びK109並びに配列番号94のP100、E115、E116、F117、M118、N119、F120、D121、L122、K123、Q124、G128、G129、D130、W131、P132及びE133からなる群から選択される少なくとも1つの残基を含む、ヒトFcRnのエピトープに結合する抗FcRn抗体分子である。
【0123】
一例では、本発明に使用するための抗体は、配列番号94の残基P100、V105、P106、T107、A108及びK109並びに配列番号94のE115、E116、F117、M118、N119、F120、D121、L122、K123、Q124、G128、G129、D130、W131、P132及びE133からなる群から選択される少なくとも1つの残基を含む、ヒトFcRnのエピトープに結合する抗FcRn抗体分子である。
【0124】
一例では、「少なくとも1つの残基」は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15又は16個の残基であってもよい。
【0125】
一例では、本発明に使用するための抗体は、配列番号94の残基100、105~109、115~124及び129~133を含む又はそれらからなる、ヒトFcRnのエピトープに結合する抗FcRn抗体分子である。
【0126】
本開示による抗体分子、特に、配列番号29に示される重鎖配列及び配列番号15に示される軽鎖配列を含む抗体分子の結合を交差遮断する抗体は、FcRn活性を遮断するのに同様に有用であり得る。従って、本開示はまた、ヒトFcRnに対する本明細書上記の抗体分子のいずれか1つの結合を交差遮断する、及び/又はこれらの抗体のいずれか1つによってヒトFcRnへの結合から交差遮断される、本発明に使用するための抗FcRn抗体分子を提供する。一実施形態では、このような抗体は本明細書上記の抗体と同じエピトープと結合する。別の実施形態では、交差遮断中和抗体は、本明細書上記の抗体が結合しているエピトープと隣接及び/又は重複しているエピトープと結合する。
【0127】
交差遮断抗体は、例えば、ヒトFcRnへの交差遮断抗体の結合が本発明の抗体の結合を防ぐ、又はその逆である、競合的ELISA又はBIAcoreアッセイを使用することによって、当該分野における任意の好適な方法を使用して識別され得る。このような交差遮断アッセイは、単離された天然若しくは組換えFcRn又は好適な融合タンパク質/ポリペプチドを使用してもよい。一例では、結合及び交差遮断は組換えヒトFcRn細胞外ドメイン(配列番号94)を使用して測定される。一例では、組換えヒトFcRnアルファ鎖細胞外ドメインは、β2ミクログロブリン(β2M)(配列番号95)との複合体において使用される。
【0128】
一実施形態では、IgGに対するFcRn結合を遮断し、重鎖が配列番号29に示される配列を含み、軽鎖が配列番号15に示される配列を含む、ヒトFcRnへの抗体の結合を交差遮断する、本発明に使用するための抗FcRn抗体分子が提供される。一実施形態では、本発明によって提供される交差遮断抗体は、配列番号29に示される重鎖配列及び配列番号15に示される軽鎖配列を含む抗体の結合を、80%超、例えば85%超、例えば90%超、特に95%超、阻害する。
【0129】
或いは又は更に、本発明のこの態様による抗FcRn抗体は、配列番号29に示される重鎖配列及び配列番号15に示される軽鎖配列を含む抗体によってヒトFcRnへの結合から交差遮断され得る。従って、IgGへのFcRn結合を遮断し、配列番号29に示される重鎖配列及び配列番号15に示される軽鎖配列を含む抗体によってヒトFcRnへの結合から交差遮断される抗FcRn抗体分子も提供される。一実施形態では、本発明のこの態様によって提供される抗FcRn抗体は、配列番号29に示される重鎖配列及び配列番号15に示される軽鎖配列を含む抗体によってヒトFcRnへ結合することを、80%超、例えば85%超、例えば90%超、特に95%超、阻害する。
【0130】
一実施形態では、本開示によって提供される交差遮断抗体は完全にヒトである。一実施形態では、本開示によって提供される交差遮断抗体はヒト化されている。一実施形態では、本開示によって提供される交差遮断抗体は、100pM以下のヒトFcRnに対する親和性を有する。一実施形態では、本開示によって提供される交差遮断抗体は、50pM以下のヒトFcRnに対する親和性を有する。親和性は本明細書以下に記載されている方法を使用して測定され得る。
【0131】
抗体又は断片などの生体分子は酸性及び/又は塩基性官能基を含有するので、分子を正味の正又は負電荷にする。全体の「観察される」電荷の量は、実体の絶対的アミノ酸配列、3D構造における荷電基の局所環境及び分子の環境条件に依存する。等電点(PI)は、特定の分子又はその溶媒接触可能表面が正味の電荷を保有しないpHである。一例では、本発明のFcRn抗体及び断片は適切な等電点を有するように操作されてもよい。これにより、より強力な特性、特に好適な溶解度及び/又は安定化プロファイル及び/又は改良された精製特性を有する抗体及び/又は断片が導かれ得る。
【0132】
それ故、一態様では、本開示は、最初に識別された抗体の等電点と異なる等電点を有するように操作されるヒト化FcRn抗体を提供する。抗体は、例えば、酸性アミノ酸残基を1つ又は複数の塩基性アミノ酸残基と置き換えることなどのアミノ酸残基を置き換えることによって操作されてもよい。或いは、塩基性アミノ酸残基が導入されてもよいか、又は酸性アミノ酸残基が除去されてもよい。或いは、分子が許容し難い高pI値を有する場合、酸性残基が、必要な場合、pIを下げるために導入されてもよい。pIを操作する場合、抗体又は断片の所望の活性を保持することに注意が払われなければならないことが重要である。それ故、一実施形態では、操作された抗体又は断片は、「修飾されていない」抗体又は断片と同じ又は実質的に同じ活性を有する。
【0133】
**ExPASY http://www.expasy.ch/tools/pi_tool.html及びhttp://www.iut-arles.up.univ-mrs.fr/w3bb/d_abim/compo-p.htmlなどのプログラムが、抗体又は断片の等電点を予測するために使用されてもよい。
【0134】
本発明に使用するための抗体分子は、好適には、特にナノモル範囲で高い結合親和性を有する。親和性は、単離された天然又は組換えFcRn又は好適な融合タンパク質/ポリペプチドを使用して、本明細書の例に記載されているようにBIAcoreを含む、当該分野において公知の任意の好適な方法を使用して測定され得る。一例では、親和性は、本明細書の例(配列番号94)及びWO2014/019727に記載されている組換えヒトFcRn細胞外ドメインを使用して測定される。一例では、親和性は、β2ミクログロブリン(β2M)(配列番号95)と会合する組換えヒトFcRnアルファ鎖細胞外ドメイン(配列番号94)を使用して測定される。好適には、本発明に使用するための抗体分子は、単離されたヒトFcRnに対して約1nM以下の結合親和性を有する。一実施形態では、本発明の抗体分子は、約500pM以下の結合親和性(すなわち、より高い親和性)を有する。一実施形態では、本発明の抗体分子は、約250pM以下の結合親和性を有する。一実施形態では、本発明の抗体分子は、約200pM以下の結合親和性を有する。一実施形態では、本発明は、約100pM以下の結合親和性を有する抗FcRn抗体を提供する。一実施形態では、本発明は、約100pM以下の結合親和性を有するヒト化抗FcRn抗体を提供する。一実施形態では、本発明は、50pM以下の結合親和性を有する抗FcRn抗体を提供する。
【0135】
重要なことに、本発明に使用するための抗体は、同等の結合親和性でpH6及びpH7.4の両方にてヒトFcRnに結合できる。従って、有益には、抗体は、エンドソームを有さなくても、FcRnに結合し続け、それにより、IgGに対するFcRn結合の遮断を最大化することができる。
【0136】
一例では、本開示は、pH6及びpH7.4にて測定した場合、100pM以下の結合親和性を有する抗FcRn抗体を提供する。一例では、本発明に使用するための抗体は、pH6及びpH7.4にて測定した場合、50pM以下の結合親和性を有する抗FcRn抗体である。
【0137】
本発明の抗体又は結合断片の親和性並びに結合剤(抗体など)が結合を阻害する程度は、従来技術、例えば、Scatchardら(Ann.KY.Acad.Sci.51:660-672(1949))により記載されているものを使用して当業者によって、又はBIAcoreなどのシステムを使用して表面プラズモン共鳴(SPR)によって決定され得る。表面プラズモン共鳴に関して、標的分子は固相上に固定化され、フローセルと共に流している移動相においてリガンドに曝露される。固定化された標的と結合しているリガンドが存在する場合、局所屈折率が変化し、反射光の強さの変化を検出することによってリアルタイムでモニターされ得る、SPR角の変化が生じる。SPR信号の変化の速度は、結合反応の会合及び解離段階について見かけの速度定数を得るように分析され得る。これらの値の比は見かけの平衡定数(親和性)を与える(例えば、Wolffら、Cancer Res.53:2560-65(1993)を参照のこと)。
【0138】
本発明では、試験抗体分子の親和性は典型的に、以下のようにSPRを使用して決定される。試験抗体分子は固相上で捕捉され、β2Mとの非共有結合複合体におけるヒトFcRnアルファ鎖細胞外ドメインは移動相において捕捉抗体の上を流れ、ヒトFcRnに対する試験抗体分子の親和性が決定される。試験抗体分子は、任意の適切な方法を使用して、例えば、抗Fc又は抗Fab’特異的捕捉剤を使用して固相チップ表面上で捕捉され得る。一例では、親和性がpH6にて決定される。一例では、親和性がpH7.4にて決定される。
【0139】
本発明によって提供される抗体の親和性は、当該分野において公知の任意の好適な方法を使用して変化されてもよいことは理解されるであろう。従って、本発明はまた、FcRnに対して改良された親和性を有する、本発明の抗体分子のバリアントに関する。このようなバリアントは、CDRを変異させること(Yangら、J.Mol.Biol.、254、392-403、1995)、鎖シャッフリング(Marksら、Bio/Technology、10、779-783、1992)、大腸菌(E.coli)の変異誘発系の使用(Lowら、J.Mol.Biol.、250、359-368、1996)、DNAシャッフリング(Pattenら、Curr.Opin.Biotechnol.、8、724-733、1997)、ファージディスプレイ(Thompsonら、J.Mol.Biol.、256、77-88、1996)及びセクシャルPCR(Crameriら、Nature、391、288-291、1998)を含む多くの親和性成熟プロトコルによって得られ得る。Vaughanら(上記)は親和性成熟のこれらの方法を説明している。
【0140】
一実施形態では、本発明に使用するための抗体分子はヒトFcRn活性を遮断する。FcRnを遮断する抗体の能力を決定するのに好適なアッセイはWO2014/019727に記載されている。抗体が循環IgG分子とのFcRn相互作用を遮断するかどうかを決定するのに好適なアッセイもまた、in vitroで再循環するIgGを遮断する抗体分子の能力を決定するための好適なアッセイと共にWO2014/019727に記載されている。
【0141】
所望の場合、本発明に使用するための抗体は、1つ又は複数のエフェクター分子(単数又は複数)にコンジュゲートされてもよい。エフェクター分子は、単一のエフェクター分子又は2つ以上のこのような分子を含んでもよいので、本発明の抗体と結合できる単一部分を形成するように連結されることは理解されるであろう。エフェクター分子と連結された抗体断片を得ることが望ましい場合、これは、抗体断片が直接的に又はカップリング剤を介してのいずれかでエフェクター分子と連結される、標準的な化学又は組換えDNA手順によって調製され得る。このようなエフェクター分子を抗体にコンジュゲートするための技術は当該分野において周知である(Hellstromら、Controlled Drug Delivery、第2版、Robinsonら、eds、1987、pp.623-53;Thorpeら、1982、Immunol.Rev.、62:119-58及びDubowchikら、1999、Pharmacology and Therapeutics、83、67-123を参照のこと)。特定の化学的手順には、例えば、WO93/06231、WO92/22583、WO89/00195、WO89/01476及びWO03/031581に記載されているものが含まれる。或いは、エフェクター分子がタンパク質又はポリペプチドである場合、例えばWO86/01533及びEP0392745に記載されている組換えDNA手順を使用して連結が達成され得る。
【0142】
本明細書で使用される場合、エフェクター分子という用語は、例えば、抗腫瘍剤、薬物、毒素、生物学的に活性なタンパク質、例えば酵素、他の抗体又は抗体断片、合成又は天然に存在するポリマー、核酸及びその断片、例えばDNA、RNA及びそれらの断片、放射性核種、特に放射性ヨウ化物(radioiodide)、放射性同位体、キレート金属、ナノ粒子及び蛍光化合物などのレポーター基又はNMR若しくはESR分光法によって検出され得る化合物を含む。
【0143】
エフェクター分子の例には、細胞毒素又は細胞に有害である(例えば死滅させる)任意の薬剤を含む細胞傷害剤が含まれ得る。例には、コンブレスタチン(combrestatin)、ドラスタチン、エポチロン、スタウロスポリン、マイタンシノイド、スポンギスタチン(spongistatin)、リゾキシン、ハリコンドリン、ロリジン、ヘミアステリン、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド(tenoposide)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1-デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、及びピューロマイシン並びにそれらの類似体又は相同体が含まれる。
【0144】
エフェクター分子にはまた、限定されないが、代謝拮抗薬(例えばメトトレキサート、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン、5-フルオロウラシルデカルバジン)、アルキル化剤(例えばメクロレタミン、チオテパクロラムブシル(thioepa chlorambucil)、メルファラン、カルムスチン(BSNU)及びロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド(cyclothosphamide)、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC及びcis-ジクロロジアミン白金(II)(DDP)シスプラチン)、アントラサイクリン(例えばダウノルビシン(以前はダウノマイシン)及びドキソルビシン)、抗生物質(例えばダクチノマイシン(以前はアクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシン、アントラマイシン(AMC)、カリケアマイシン又はデュオカルマイシン)及び抗有糸分裂剤(例えばビンクリスチン及びビンブラスチン)が含まれる。
【0145】
他のエフェクター分子は、111In及び90Y、Lu177、ビスマス213、カリフォルニウム252、イリジウム192及びタングステン188/レニウム188などのキレート放射性核種又は限定されないが、アルキルホスホコリン、トポイソメラーゼI阻害剤、タキソイド及びスラミンなどの薬物を含んでもよい。
【0146】
他のエフェクター分子は、タンパク質、ペプチド及び酵素を含む。目的の酵素には、限定されないが、タンパク質分解酵素、加水分解酵素、リアーゼ、イソメラーゼ、トランスフェラーゼが含まれる。目的のタンパク質、ポリペプチド及びペプチドには、限定されないが、免疫グロブリン、アブリン、リシンA、緑膿菌外毒素又はジフテリア毒素などの毒素、インスリン、腫瘍壊死因子、α-インターフェロン、β-インターフェロン、神経成長因子、血小板由来成長因子又は組織プラスミノゲン活性化因子などのタンパク質、血栓剤又は血管新生阻害剤、例えばアンギオスタチン若しくはエンドスタチン又はリンホカイン、インターロイキン-1(IL-1)、インターロイキン-2(IL-2)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、神経成長因子(NGF)若しくは他の成長因子などの生物反応修飾物質及び免疫グロブリンが含まれる。
【0147】
他のエフェクター分子は、例えば診断に有用な検出可能な物質を含んでもよい。検出可能な物質の例には、種々の酵素、補欠分子族、蛍光材料、発光材料、生物発光材料、放射性核種、陽電子放出金属(陽電子放出断層撮影法における使用のため)、及び非放射性常磁性金属イオンが含まれる。概して、診断として使用するための抗体にコンジュゲートされ得る金属イオンについて米国特許第4,741,900号を参照のこと。好適な酵素には、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ又はアセチルコリンエステラーゼが含まれ、好適な補欠分子族には、ストレプトアビジン、アビジン及びビオチンが含まれ、好適な蛍光材料には、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアナート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、塩化ダンシル及びフィコエリトリンが含まれ、好適な発光材料には、ルミノールが含まれ、好適な生物発光材料には、ルシフェラーゼ、ルシフェリン及びエクオリンが含まれ、好適な放射性核種には、125I、131I、111In及び99Tcが含まれる。
【0148】
別の例では、エフェクター分子は、in vivoで抗体の半減期を増加させることができ、及び/又は抗体の免疫原性を低減させることができ、及び/又は上皮バリアにわたって抗体の免疫系への送達を向上させることができる。この種類の好適なエフェクター分子の例には、WO05/117984に記載されているものなどのポリマー、アルブミン、アルブミン結合タンパク質又はアルブミン結合化合物が含まれる。
【0149】
エフェクター分子がポリマーである場合、それは、概して、合成又は天然に存在するポリマー、例えば任意選択に置換された直鎖若しくは分岐鎖ポリアルキレン、ポリアルケニレン若しくはポリオキシアルキレンポリマー又は分岐若しくは非分岐多糖、例えばホモ-又はヘテロ-多糖であってもよい。
【0150】
上述の合成ポリマーに存在し得る特定の任意選択の置換基には、1つ又は複数のヒドロキシ、メチル又はメトキシ基が含まれる。
【0151】
合成ポリマーの特定の例には、任意選択に置換された直鎖又は分岐鎖ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)ポリ(ビニルアルコール)又はそれらの誘導体、特に、メトキシポリ(エチレングリコール)などの任意選択に置換されたポリ(エチレングリコール)又はそれらの誘導体が含まれる。
【0152】
特定の天然に存在するポリマーには、ラクトース、アミロース、デキストラン、グリコーゲン又はそれらの誘導体が含まれる。
【0153】
一実施形態では、ポリマーは、ヒト血清アルブミン又はその断片などのアルブミン又はその断片である。
【0154】
本明細書で使用される場合、「誘導体」は、反応性誘導体、例えばマレイミドなどのチオール選択的反応基を含むことを意図する。反応基は、直接的に又はリンカーセグメントを介してポリマーに連結され得る。このような基の残基は、一部の場合、抗体断片とポリマーとの間の連結基として製品の一部を形成することは理解されるであろう。
【0155】
ポリマーのサイズは、所望の場合、変化されてもよいが、一般に、500Da~50000Da、例えば5000~40000Da、例えば20000~40000Daの範囲の平均分子量である。ポリマーのサイズは、特に、製品の意図する使用、例えば腫瘍などのある特定の組織に局在化する能力又は延長した循環半減期に基づいて選択されてもよい(概説のために、Chapman、2002、Advanced Drug Delivery Reviews、54、531-545を参照のこと)。それ故、例えば、腫瘍の治療に使用するために、例えば、製品が循環したままで、組織に浸透することを意図する場合、例えば、約5000Daの分子量を有する低分子量ポリマーを使用することが有利であり得る。製品が循環中に存在したままである用途に関して、例えば、20000Da~40000Daの範囲の分子量を有する、より高い分子量のポリマーを使用することが有利であり得る。
【0156】
好適なポリマーには、特に、約15000Da~約40000Daの範囲の分子量を有する、ポリ(エチレングリコール)若しくは特に、メトキシポリ(エチレングリコール)などのポリアルキレンポリマー又はそれらの誘導体が含まれる。
【0157】
一例では、本発明に使用するための抗体は、ポリ(エチレングリコール)(PEG)部分と結合される。1つの特定の例では、抗体は抗体断片であり、PEG分子は、抗体断片内に局在化する任意の利用可能なアミノ酸側鎖又は末端アミノ酸官能基、例えば任意の遊離アミノ、イミノ、チオール、ヒドロキシル又はカルボキシル基を介して結合され得る。このようなアミノ酸は抗体断片内に天然に存在し得るか、又は組換えDNA法を使用して断片内で操作され得る(例えば米国特許第5,219,996号、米国特許第5,667,425号、WO98/25971、WO2008/038024を参照のこと)。一例では、本発明の抗体分子は、修飾が、エフェクター分子の結合を可能にするために、その重鎖の1つ又は複数のアミノ酸のC末端への付加である、修飾されたFab断片である。
【0158】
好適には、更なるアミノ酸は、エフェクター分子が結合され得る1つ又は複数のシステイン残基を含有する修飾されたヒンジ領域を形成する。多部位が2つ以上のPEG分子を結合するために使用されてもよい。
【0159】
好適には、PEG分子は、抗体断片に局在化した少なくとも1つのシステイン残基のチオール基を介して共有結合する。修飾された抗体断片と結合された各々のポリマー分子は、断片に局在化するシステイン残基の硫黄原子と共有結合され得る。共有結合は一般に、ジスルフィド結合又は特に、硫黄-炭素結合である。チオール基が適切に活性化されたエフェクター分子の結合点として使用される場合、例えばマレイミド及びシステイン誘導体などのチオール選択的誘導体が使用されてもよい。活性化ポリマーは上記のポリマー修飾抗体断片の調製における出発材料として使用されてもよい。活性化ポリマーは、α-ハロカルボン酸又はエステル、例えばヨードアセトアミド、イミド、例えばマレイミド、ビニルスルホン又はジスルフィドなどのチオール反応基を含有する任意のポリマーであってもよい。このような出発材料は、(例えば、Nektar、以前はShearwater Polymers Inc.、Huntsville、AL、USAから)商業的に得られてもよいか、又は従来の化学的手順を使用して市販の出発材料から調製されてもよい。特定のPEG分子には、20Kメトキシ-PEG-アミン(Nektar、以前はShearwater、Rapp Polymere、及びSunBioから入手可能)及びM-PEG-SPA(Nektar、以前はShearwaterから入手可能)が含まれる。
【0160】
一実施形態では、抗体は、例えばEP0948544又はEP1090037に開示されている方法に従って、PEG化されている、すなわち、それに共有結合しているPEG(ポリ(エチレングリコール))を有する、修飾されたFab断片、Fab’断片又はdiFabである[「ポリ(エチレングリコール)化学、バイオ技術及び生体医学応用(Poly(ethyleneglycol) Chemistry, Biotechnical and Biomedical Applications)」、1992、J.Milton Harris (ed)、Plenum Press、New York、「ポリ(エチレングリコール)化学及び生物学的応用(Poly(ethyleneglycol) Chemistry and Biological Applications)」、1997、J.Milton Harris及びS.Zalipsky(eds)、American Chemical Society、Washington DC並びに「生体医科学についてのバイオコンジュゲーションタンパク質カップリング技術(Bioconjugation Protein Coupling Techniques for the Biomedical Sciences)」、1998、M.Aslam及びA.Dent、Grove Publishers、New York;Chapman,A. 2002、Advanced Drug Delivery Reviews 2002、54:531-545も参照のこと]。一例では、PEGはヒンジ領域においてシステインと結合される。一例では、PEG修飾Fab断片は、修飾されたヒンジ領域において単一のチオール基と共有結合したマレイミド基を有する。リシン残基はマレイミド基と共有結合され得、リシン残基上のアミン基の各々は、およそ20,000Daの分子量を有するメトキシポリ(エチレングリコール)ポリマーに結合され得る。従って、Fab断片と結合したPEGの全分子量は、およそ40,000Daであり得る。
【0161】
特定のPEG分子には、PEG2MAL40K(Nektar、以前はShearwaterから入手可能)としても知られている、N,N’-ビス(メトキシポリ(エチレングリコール)MW20,000)修飾リシンの2-[3-(N-マレイミド)プロピオンアミド]エチルアミドが含まれる。
【0162】
PEGリンカーの代替源には、GL2-400MA3(以下の構造におけるmは5である)及びGL2-400MA(mは2である)を供給するNOFが含まれ、nはおよそ450である:
【化2】
【0163】
すなわち、各PEGは約20,000Daである。
【0164】
それ故、一実施形態では、PEGは、SUNBRIGHT GL2-400MA3として知られている2,3-ビス(メチルポリオキシエチレン-オキシ)-1-{[3-(6-マレイミド-1-オキソヘキシル)アミノ]プロピルオキシ}ヘキサン(2アーム分岐PEG、-CH2)3NHCO(CH2)5-MAL、Mw40,000である。
【0165】
更に以下の種類の代替のPEGエフェクター分子:
【化3】
がDr Reddy、NOF及びJenkemから入手可能である。
【0166】
一実施形態では、鎖内のアミノ酸226、例えば重鎖のアミノ酸226(連続番号付けにより)、例えば配列番号36のアミノ酸226において又は周囲でシステインアミノ酸残基を介して結合される、PEG化される(例えば本明細書に記載されているPEGを有する)抗体が提供される。
【0167】
一実施形態では、本開示は、1つ又は複数のPEGポリマー、例えば1つ又は2つのポリマー、例えば40kDaポリマー(単数又は複数)を含むFab’PEG分子を提供する。
【0168】
一実施形態では、PEG分子、デンプン分子又はアルブミン分子などのポリマーにコンジュゲートされたFab’が提供される。
【0169】
一実施形態では、抗体又は断片は、例えば半減期を増加させるためにデンプン分子にコンジュゲートされている。デンプンをタンパク質にコンジュゲートする方法は、本明細書に参照により組み込まれている米国特許第8,017,739号に記載されている。
【0170】
本開示はまた、本発明の抗体分子の重鎖及び/又は軽鎖(単数又は複数)をコードする単離されたDNA配列を提供する。好適には、DNA配列は本発明の抗体分子の重鎖又は軽鎖をコードする。本発明のDNA配列は、例えば、化学的処理によって作製される合成DNA、cDNA、ゲノムDNA又はそれらの任意の組合せを含んでもよい。
【0171】
本発明の抗体分子をコードするDNA配列は当業者に周知の方法により得られ得る。例えば、抗体重鎖及び軽鎖の一部又は全てをコードするDNA配列は、所望の場合、決定されたDNA配列から、又は対応するアミノ酸配列に基づいて合成され得る。
【0172】
アクセプターフレームワーク配列をコードするDNAは、当業者に広範に利用可能であり、それらの既知のアミノ酸配列に基づいて容易に合成され得る。
【0173】
分子生物学の標準技術が、本発明の抗体分子をコードするDNA配列を調製するために使用されてもよい。所望のDNA配列はオリゴヌクレオチド合成技術を使用して完全に又は部分的に合成されてもよい。部位特異的変異誘発法及びポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術が必要に応じて使用されてもよい。
【0174】
好適なDNA配列の例は本明細書に提供される。
【0175】
1519軽鎖可変領域をコードする好適なDNA配列の例は、配列番号16、配列番号17及び配列番号90に提供される。1519重鎖可変領域をコードする好適なDNA配列の例は、配列番号30、配列番号31及び配列番号92に提供される。
【0176】
1519軽鎖(可変及び定常)をコードする好適なDNA配列の例は、配列番号23、配列番号75及び配列番号91に提供される。
【0177】
1519重鎖(可変及び定常、フォーマットに依存する)をコードする好適なDNA配列の例は、配列番号37、38及び76(Fab’)、配列番号72又は85(IgG1)、配列番号44又は93(IgG4P)及び配列番号88(IgG4)に提供される。
【0178】
本開示はまた、本発明の1つ又は複数のDNA配列を含む、クローニング又は発現ベクターに関する。従って、本発明の抗体をコードする1つ又は複数のDNA配列を含む、クローニング又は発現ベクターが提供される。好適には、クローニング又は発現ベクターは、本発明の抗体分子の軽鎖及び重鎖のそれぞれをコードする2つのDNA配列並びに好適なシグナル配列を含む。一例では、ベクターは重鎖と軽鎖との間に遺伝子間配列を含む(WO03/048208を参照のこと)。
【0179】
ベクターが構築され得る一般的な方法、トランスフェクション法及び培養法は当業者に周知である。これに関して、参照が、「分子生物学における現在のプロトコル(Current Protocols in Molecular Biology)」、1999、F.M.Ausubel(ed)、Wiley Interscience、New York及びCold Spring Harbor Publishingによって作成されたManiatis Manualに対してなされる。
【0180】
本発明の抗体をコードする1つ又は複数のDNA配列を含む1つ又は複数のクローニング又は発現ベクターを含む宿主細胞も提供される。任意の好適な宿主細胞/ベクター系が、本発明の抗体分子をコードするDNA配列の発現のために使用されてもよい。細菌、例えば大腸菌及び他の微生物系が使用されてもよいか、又は真核生物、例えば哺乳動物、宿主細胞発現系もまた、使用されてもよい。好適な哺乳動物宿主細胞には、CHO、骨髄腫又はハイブリドーマ細胞が含まれる。
【0181】
本発明に使用するための好適な種類のチャイニーズハムスター卵巣(CHO細胞)には、CHO-DG44細胞及びCHO-DXB11細胞などのdhfr-CHO細胞を含むCHO及びCHO-K1細胞が含まれ得、それは、DHFR選択可能マーカー又はグルタミン合成酵素選択可能マーカーと共に使用され得るCHOK1-SV細胞と共に使用されてもよい。抗体の発現に使用する他の細胞種類には、リンパ球細胞系、例えばNSO骨髄腫細胞及びSP2細胞、COS細胞が含まれる。
【0182】
本開示はまた、本発明の抗体分子をコードするDNAからタンパク質の発現を導くのに好適な条件下で本発明のベクターを含有する宿主細胞を培養するステップ、及び抗体分子を単離するステップを含む、本発明による抗体分子を作製するプロセスを提供する。
【0183】
抗体分子は重鎖又は軽鎖ポリペプチドのみを含んでもよく、この場合、重鎖又は軽鎖ポリペプチドのみをコードする配列が、宿主細胞をトランスフェクトするために使用するために必要とされる。重鎖及び軽鎖の両方を含む産物の作製に関して、細胞系が2つのベクターでトランスフェクトされてもよく、第1のベクターは軽鎖ポリペプチドをコードし、第2のベクターは重鎖ポリペプチドをコードする。或いは、単一ベクターが使用されてもよく、ベクターは軽鎖及び重鎖ポリペプチドをコードする配列を含む。
【0184】
本発明に使用するための抗体は、薬学的に許容される賦形剤、希釈剤又は担体のうちの1つ又は複数と組み合わせて本開示の抗体分子を含む医薬又は診断組成物として提供されてもよい。組成物は、普通、薬学的に許容される担体を通常含む無菌の医薬組成物の一部として供給される。本発明の医薬組成物は、薬学的に許容される賦形剤を更に含んでもよい。
【0185】
本開示はまた、薬学的に許容される賦形剤、希釈剤又は担体のうちの1つ又は複数と一緒に本発明の抗体分子を添加し、混合するステップを含む、医薬又は診断組成物を調製するプロセスを提供する。
【0186】
抗体分子は、医薬若しくは診断組成物中の唯一の活性成分であってもよいか、又はステロイド若しくは他の薬物分子などの他の抗体成分若しくは非抗体成分を含む他の活性成分を伴ってもよく、一例ではそれらは半減期がFcRn結合と独立している薬物分子である。
【0187】
医薬組成物は便宜的に、用量当たり本発明の所定量の活性剤を含有する単位用量形態で提示されてもよい。
【0188】
本開示による抗体の治療用量は、in vivoで明らかな毒性作用を示さない。
【0189】
組成物は、患者に個々に投与されてもよいか、又は他の薬剤、薬物若しくはホルモンと組み合わせて(例えば同時、連続又は別々に)投与されてもよい。一実施形態では、本開示による抗体又は抗原結合断片は、コリンエステラーゼ阻害剤、免疫抑制剤又は免疫調節剤と共に利用される。
【0190】
一実施形態では、本開示による抗体又は抗原結合断片は、ステロイド、特にプレドニゾンなどの免疫抑制療法と共に利用される。一実施形態では、本開示による抗体又は抗原結合断片は、ピリドスチグミンなどのコリンエステラーゼ阻害剤と共に利用される。
【0191】
一実施形態では、本開示による抗体又は抗原結合断片は、シクロスポリン又はタクロリムスなどの免疫抑制剤と共に利用される。
【0192】
一実施形態では、本開示による抗体又は断片は、リツキシマブ又は他のB細胞療法と共に利用される。
【0193】
一実施形態では、本開示による抗体又は断片は、任意のB細胞若しくはT細胞調節剤又は免疫調節剤と共に利用される。例には、メトトレキサート、ミコフェノラート(microphenyolate)及びアザチオプリンが含まれる。
【0194】
好適な併用療法の例は本明細書の例に記載されている。一実施形態では、生物製剤は併用療法として許容されない。
【0195】
薬学的に許容される担体は、組成物を受容する個体に有害な抗体の産生をそれ自体で誘導すべきではなく、毒性であるべきではない。好適な担体は、タンパク質、ポリペプチド、リポソーム、多糖、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリマーアミノ酸、アミノ酸コポリマー及び不活性ウイルス粒子などの、大きく、ゆっくり代謝される巨大分子であってもよい。
【0196】
薬学的に許容される塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩及び硫酸塩などの鉱酸塩又は酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩及び安息香酸塩などの有機酸の塩が使用されてもよい。
【0197】
治療組成物中の薬学的に許容される担体は、水、生理食塩水、グリセロール及びエタノールなどの液体を更に含有してもよい。更に、湿潤剤又は乳化剤又はpH緩衝物質などの補助物質がこのような組成物中に存在してもよい。このような担体により、医薬組成物が、患者が摂取するための錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル剤、液剤、ゲル、シロップ、スラリー及び懸濁剤として製剤化され得る。
【0198】
好適な投与形態には、例えば注射又は注入による、例えばボーラス注射又は持続注入による非経口投与に好適な形態が含まれる。製品が注射又は注入用である場合、それは、油性又は水性ビヒクル中の懸濁剤、液剤又は乳剤の形態をとってもよく、それは、懸濁化剤、防腐剤、安定剤及び/又は分散剤などの製剤化剤(formulatory agent)を含有してもよい。或いは、抗体分子は適切な滅菌液を用いて使用前に再構成するための乾燥形態であってもよい。
【0199】
一旦製剤化されると、本発明の組成物は対象に直接投与されてもよい。治療される対象は動物であってもよい。しかしながら、1つ又は複数の実施形態では、組成物はヒト対象への投与に適合される。
【0200】
好適には、本開示による製剤では、最終製剤のpHは抗体又は断片の等電点の値と類似しておらず、例えばタンパク質のpIが8~9又はそれ以上の範囲である場合、7のpHの製剤が適切であり得る。理論により束縛されることを望まないが、このことは最終的に、改良された安定性を有する、例えば抗体又は断片が溶液中に存在したままである最終製剤を提供することができると考えられる。
【0201】
本発明の医薬組成物は、限定されないが、経口、静脈内、筋肉内、動脈内、髄内、髄腔内、脳室内、経皮的、経皮性(例えば、WO98/20734を参照のこと)、皮下、腹腔内、鼻腔内、腸内、局所、舌下、膣内又は直腸経路を含む、任意の数の経路によって投与されてもよい。皮下噴射器もまた、本発明の医薬組成物を投与するために使用されてもよい。典型的に、治療組成物は、液体の液剤又は懸濁剤のいずれかとして注射剤として調製されてもよい。注射前に液体ビヒクル中の液剤又は懸濁剤に好適な固体形態もまた、調製されてもよい。
【0202】
組成物の直接送達は、一般に、皮下、腹腔内、静脈内若しくは筋肉内の注射により、又は組織の間質空間への送達により達成される。投薬治療は単回用量スケジュール又は複数回用量スケジュールであってもよい。好ましくは、送達は皮下である。一例では、送達は皮下注入による。一例では、送達は静脈内ではない。
【0203】
組成物中の活性成分は、抗体分子であることが理解されるだろう。従って、それは消化管内で分解しやすい。それ故、組成物が消化管を使用した経路によって投与される場合、組成物は分解から抗体を保護するが、それが消化管から吸収されると、抗体を放出する薬剤を含有することを必要とする。
【0204】
薬学的に許容される担体の十分な説明はRemington’s Pharmaceutical Sciences(Mack Publishing Company、N.J.1991)において入手可能である。
【0205】
本発明の抗体は、例えば液剤又は懸濁剤の形態で、溶媒中に分散されて送達されてもよい。それは、適切な生理溶液、例えば、生理食塩水又は他の薬理学的に許容される溶媒若しくは緩衝溶液中に懸濁されてもよい。懸濁剤は、例えば、凍結乾燥抗体を利用できる。
【0206】
治療用の懸濁剤又は液剤の製剤はまた、1つ又は複数の賦形剤を含有してもよい。賦形剤は当該分野において周知であり、緩衝液(例えばクエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液及び重炭酸緩衝液)、アミノ酸、尿素、アルコール、アスコルビン酸、リン脂質、タンパク質(例えば血清アルブミン)、EDTA、塩化ナトリウム、リポソーム、マンニトール、ソルビトール及びグリセロールを含む。液剤又は懸濁剤はリポソーム又は生分解性ミクロスフェア内に封入されてもよい。製剤は一般に、無菌製造プロセスを利用して、実質的に無菌形態で提供される。
【0207】
これは、製剤に使用される緩衝溶媒/溶液の濾過による作製及び滅菌、無菌緩衝溶媒溶液中の抗体の無菌懸濁及び当業者によく知られた方法による無菌容器内での製剤の調剤を含んでもよい。
【0208】
一旦製剤化されると、本開示の組成物はヒト対象に直接投与されてもよいが、本開示はまた、方法が非ヒト対象に利用されてもよいことを企図する。本開示では、ヒトは重症筋無力症(MG)、一例では全身型重症筋無力症、一例では中等度から重度のMG、一例では中等度から重度の全身型MGに罹患している。MGについての臨床的分類ツールは以下に提示され、アメリカ重症筋無力症財団(MGFA)臨床的分類(MG Foundation of America(MGFA)Clinical Classification)として知られている(Jaretzkiら、2000)。これは5段階の分類(I~V)であり、クラスが高いほど、より重度の疾患を示す。典型的に、中等度から重度はクラスII~クラスIVaとして分類される。
【0209】
MGFA臨床的分類
クラスI:いくらかの眼筋の低下;閉眼の低下を示し得る。他の全ての筋力は正常である。
【0210】
クラスII:眼筋以外の筋肉に影響を及ぼす軽度の低下;いずれかの重症度の眼筋の低下も示し得る。
A.IIa.肢筋、体軸筋又は両方に主に影響を及ぼす。口腔咽頭筋のより少ない関与も示し得る。
B.IIb.口腔咽頭筋、呼吸筋又は両方に主に影響を及ぼす。肢筋、体軸筋又は両方のより少ない又は同等の関与も示し得る。
【0211】
クラスIII:眼筋以外の筋肉に影響を及ぼす中等度の低下;いずれかの重症度の眼筋の低下も示し得る。
A.IIIa.肢筋、体軸筋又は両方に主に影響を及ぼす。口腔咽頭筋のより少ない関与も示し得る。
B.IIIb.口腔咽頭筋、呼吸筋又は両方に主に影響を及ぼす。肢筋、体軸筋又は両方のより少ない又は同等の関与も示し得る。
【0212】
クラスIV:眼筋以外の筋肉に影響を及ぼす重度の低下;いずれかの重症度の眼筋低下も示し得る。
A.IVa.肢筋、体軸筋又は両方に主に影響を及ぼす。口腔咽頭筋のより少ない関与も示し得る。
B.IVb.口腔咽頭筋、呼吸筋又は両方に主に影響を及ぼす。肢筋、体軸筋又は両方のより少ない又は同等の関与も示し得る。
【0213】
クラスV:慣用の術後管理の間に利用される場合を除いて、人工呼吸器の有無にかかわらず、挿管と定義される。挿管を用いていない栄養チューブの使用は患者をクラスIVbに入れる。
【0214】
MGに至る主な病態生理は、ニコチン性アセチルコリン受容体(AChR)又は筋特異的キナーゼ(MuSK)タンパク質に対して誘導されたIgG自己抗体の異常産生であり、両方は、放射性免疫沈降法、ELISA及び細胞ベースのアッセイなどの当該分野において公知の標準的な方法を使用して測定され得る。
【0215】
従って、一例では、ヒトは抗AChR及び/又は抗MuSK自己抗体陽性である。本開示の一例では、ヒトは中等度から重度の全身型MGであり、抗AChR及び/又は抗MuSK自己抗体陽性である。一例では、ヒトは中等度から重度の全身型MGであり、抗AChR及び/又は抗MuSK自己抗体陽性であり、IVIg又は血漿交換(PLEX)での治療を考慮されている。
【0216】
臨床研究基準に関する正式な推奨により、患者により報告される機能的及び生活の質の尺度を含む、MG臨床試験における治療応答を評価するための検証済みの疾患特異的尺度についての必要性が特定された。これらの推奨により、定量的MGスコア(QMG)、MG-日常生活動作プロファイル(MG-ADL)及びMG複合スコア(MG-C)の検証研究が導かれた。本明細書並びに
図5、6及び7に提供されるこれらの尺度は臨床応答を評価するための一貫した方法論を提供し、患者中心アウトカムを含む。これらのアウトカム尺度、特にQMG及びMG-ADLは、新たなMG療法のための臨床試験における主要エンドポイントとして使用されている。
【0217】
従って、一例では、ヒトは、中等度から重度の全身型重症筋無力症と診断され、抗AChR及び/若しくは抗MuSK自己抗体陽性であり、並びに/又は少なくとも3の重症筋無力症-日常生活動作(MG-ADL)スコア及び/若しくは少なくとも11の定量的重症筋無力症(QMG)スコアを有する。
【0218】
一例では、ヒトは、全身型重症筋無力症と診断され、抗AChR及び/若しくは抗MuSK自己抗体陽性であり、アメリカ重症筋無力症財団(MGFA)クラスIIからIVaを有し、並びに/又は少なくとも3の重症筋無力症-日常生活動作(MG-ADL)スコア及び/若しくは少なくとも11の定量的重症筋無力症(QMG)スコアを有する。
【0219】
MGの治療は依然として困難な臨床的問題のままであり、単独での又は細胞傷害剤と組み合わせた高用量のコルチコステロイドの長期の使用を必要とする。MGにおいて有効であると考えられる療法の多くは、それらの使用を明確に支持するにはデータが不十分であり、全ての患者及び状態において有効ではなく、かなりの毒性及び治療関連罹病を引き起こす広範な免疫抑制作用を有する。更に、疾患の経過における自然変動に起因して、多くの患者は緊急治療を必要とする深刻な状況についての有効な治療を必要とする。
【0220】
現在、PLEX及びIVIgの両方は、長期の間欠治療を必要とする状況における症状を改善するための標準治療として使用されている。しかしながら、いずれの治療もMGについて米国では承認されておらず、それらの手順は多くの場合、患者にとって重荷となる。それ故、全身型MGを有する患者にとって利便性を高めた有効な長期の間欠治療に対する重大なまだ満たされていない医学的必要性がこの患者集団において存在する。
【0221】
一例では、このような患者は、免疫抑制剤などの他の療法に対してもはや応答しない。
【0222】
従って、MGにおける治療に対する目標は、長期の間欠治療(疾患再燃のため)及び/又は長期間維持のための治療を提供することである。
【0223】
従って、一例では、本発明の治療方法はMGの長期の間欠治療のために使用され得る。
【0224】
従って、一例では、本発明の治療方法はMGの長期間維持治療のために使用され得る。
【0225】
一例では、本発明の治療方法はMGの長期の間欠治療及び長期間維持治療の両方のために使用され得る。
【0226】
投与レジメン
組成物は好ましくは治療有効量の抗体(又はその抗原結合断片)を含む。本明細書で使用される場合、「治療有効量」という用語は、標的とする疾患若しくは状態を治療、回復若しくは予防するため、又は検出可能な治療若しくは予防効果を提示するために必要とされる治療剤の量を指す。「投与レジメン」は、投与される抗体又はその断片の量(用量)及び複数回用量が提供される場合、投与時期を企図する。
【0227】
MG及び治効を特徴付けるいくつかの方法が存在し、対象における陽性生物学的応答を検出するのに適しており、それらは本明細書の例に更に記載されている。
【0228】
1つの評価は定量的重症筋無力症(QMG)スコアである(
図5)。QMGは検証済みの評価であり(Barnettら、2012)、スコアが高いほど、より重度の疾患を示す。各項目についてのスコア付けは、低下なし(0)から重度の低下(3)の範囲であり、総合スコアは0~39の範囲である。合計スコアの3点の変化は臨床的に関連があるとみなされる。
【0229】
1つの評価は重症筋無力症日常生活動作(MG-ADL)スコアである(
図7)。MGADLは、QMGに基づいて開発された8項目のPRO手段である(Wolfeら、1999)。MGADLは、眼、球、呼吸器及び体軸の症状に及ぶ症状及び身体障害を標的とする。最近の研究では、MGADLの信頼性、妥当性及び反応性が更に評価され、2点の改善が臨床改善を示すことが実証された(Muppidi、2012;Muppidiら、2011)。合計MGADLスコアは0~24の範囲であり、スコアが高いほど、より高度の身体障害を示す。
【0230】
1つの評価はMG複合スコアである(
図6)。MG-複合スケールは検証済みの評価であり(Burnsら、2010 MG Composite and MG-QOL15 Study Group. MG複合:重症筋無力症のための有効で信頼できるアウトカム尺度(The MGComposite: A valid and reliable outcome measure for myasthenia gravis). Neurology. 2010年5月4日、74(18):1434-40)、スコアが高いほど、より重度の疾患を示し、3点の変化は臨床的関連がある。このスケールは10項目を試験し、個々の項目は異なって重み付けされる。総合スコアは0~50の範囲である。
【0231】
MGについての治療効果は、本明細書の例に記載されているように、重症筋無力症日常生活動作(MG-ADL)スコアの(ベースラインと比較した)低下及び/又は定量的重症筋無力症スコア(QMG)の低下及び/又はMG複合スコアの低下によって決定され得る。
【0232】
治効(臨床応答)はベースラインからの変化を測定することによって決定される。例えば、QMG応答者はベースラインから3.0点以上の改善を実証する。
【0233】
一例では、MG-複合応答者はベースラインから3.0点以上の改善を実証する。
一例では、MG-複合応答者はベースラインから5.0点以上の改善を実証する。
一例では、MG-ADL応答者はベースラインから3.0点以上の改善を実証する。
一例では、MG-ADL応答者はベースラインから2.0点以上の改善を実証する。
他の評価には、IgG血清レベルの低下及び/又は血清中のMG特異的自己抗体(抗MuSK及び/又は抗AChR抗体)レベルの低下の測定が含まれる。
【0234】
本明細書で使用される場合、「治療する」及び「治療」とは、MGの重症度のいくらかの低下を指し、「予防する」又は「予防」とは、MGの症状の発症のいくらかの低下又は遅延を指す。当業者は、MG又はそれに関連する症状からの保護又はそれらの回復の任意の程度がヒト患者などの対象に有益であることを理解するであろう。患者の生活の質は、対象における症状の重症度を任意の程度まで低下させること及び/又は症状の出現を遅延させることによって改善される。従って、一態様では、方法は、対象がMG、特に全身型MGに罹患しているか、又はそれらに罹患するリスクがあることを決定した後にできるだけ早く実施される。
【0235】
種々の態様では、抗体又はその断片は、治療前(ベースライン)と比較してQMG、MG-複合又はMG-ADLスコアの改善を達成する投与レジメンによって投与される。スコアの改善は、抗体又はその抗原結合断片の初回投与から、例えば、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間又は12週間後に観察され得る。一例では、ベースラインと比較したスコアの改善は、抗体又はその抗原結合断片の初回投与から29日又は43日又は50日後に観察される。
【0236】
改善は臨床応答について上記に提示した通りであり、例えば改善は、ベースラインスコアから3.0点以上の改善、例えばベースラインQMGスコア、MG-複合及び/又はMG-ADLスコアから3.0点以上の改善であってもよい。
【0237】
一例では、改善は、ベースラインスコアから3.0点以上の改善、例えばベースラインQMGスコア及び/又はMG-複合及び/又はMG-ADLスコアから3.0点以上の改善であってもよい。
【0238】
一例では、改善は、ベースラインスコアから3.0点以上の改善、例えばベースラインQMGスコアから3.0点以上の改善及び/又はベースラインMG-複合スコアから3.0点以上の改善及び/又はベースラインMG-ADLスコアから2.0点以上の改善であってもよい。
【0239】
一例では、MG-ADLスコアは43日でベースラインと比較して改善され、すなわちMG-ADLスコアは少なくとも2点、例えば少なくとも3点減少する。
【0240】
一例では、MG-複合スコアは43日でベースラインと比較して改善され、すなわちMG-複合スコアは少なくとも3点減少する。一例では、MG-複合スコアは少なくとも4、5又は6点低下する。
【0241】
一例では、QMGスコアは43日でベースラインと比較して改善され、すなわちQMGスコアは少なくとも2点、例えば少なくとも3点減少する。
【0242】
或いは又は更に、抗体又はその断片は、治療前(ベースライン)と比較してIgG血清レベルの低下及び/又はMG特異的自己抗体(抗MuSK及び/又は抗AChR抗体)血清レベルの低下を達成する投与レジメンによって投与される。レベルの低下は、抗体又はその抗原結合断片の初回投与から、例えば、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間又は12週間後に観察され得る。一例では、血清レベルの低下は、抗体又はその抗原結合断片の初回投与から29日又は43日又は50日後に観察される。IgG血清レベル及び/又はMG特異的自己抗体(抗MuSK及び/又は抗AChR抗体)血清レベルは、特にベースラインと比較して少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%又は少なくとも70%低下し得る。
【0243】
ヒト対象についての正確な治療有効量は、疾患状態の重症度、対象の全体的な健康、対象の年齢、体重及び性別、食事、投与の時間及び頻度、薬物の組合せ(単数又は複数)、反応感度並びに療法に対する耐性/応答に依存する。一般に、治療有効量は、4mg/kg~50mg/kg(例えば4mg/kg~25mg/kg、例えば約7mg/kg、10mg/kg、15mg/kg又は20mg/kg)である。組成物は便宜的に、用量当たり本開示の所定量の活性剤を含有する単位用量形態で提示され得る。本明細書に記載されている実施形態のいずれかについての用量範囲及びレジメンには、限定されないが、(皮下又は静脈内投与のいずれかなどの投与経路によって)1~10週間毎に与えられる1mg~1000mgの単位用量(例えば100mg、140mg、160mgの単位用量)の投薬範囲が含まれる。更に好適な単位用量は、250~1250mgの範囲の用量、例えば280mg、420mg、560mg、840mg及び1120mgから選択される用量であり得る。他の好適な単位用量の例は、280mg、315mg、350mg、385mg、420mg、455mg、490mg、525mg、560mg、595mg、630mg、665mg、700mg、735mg、770mg、805mg、840mg、875mg、910mg、945mg、980mg、1015mg、1050mg、1085mg及び1120mgから選択される用量であり得る。
【0244】
従って、本発明は、重症筋無力症(MG)を治療又は予防するヒトにおいて重症筋無力症(MG)を治療又は予防する方法であって、少なくとも3回の用量、好ましくは少なくとも6回の用量の抗FcRn抗体又はその抗原結合断片をヒトに投与するステップを含み、各用量が、4mg/kg、7mg/kg、10mg/kg、15mg/kg及び20mg/kgから独立して選択される、方法を提供する。
【0245】
上記に提示したように、固定単位投薬も使用されてもよい。一例では、本発明はまた、重症筋無力症(MG)を治療又は予防する必要があるヒトにおいてMGを治療又は予防する方法であって、少なくとも3回の用量、好ましくは少なくとも6回の用量の抗FcRn抗体又はその抗原結合断片をヒトに投与するステップを含み、各用量が、280mg、420mg、560mg、840mg及び1120mgから独立して選択され、用量は任意選択により患者の体重に基づいて選択される、方法を提供する。
【0246】
一例では、本発明はまた、重症筋無力症(MG)を治療又は予防する必要があるヒトにおいてMGを治療又は予防する方法であって、少なくとも3回の用量、好ましくは少なくとも6回の用量の抗FcRn抗体又はその抗原結合断片をヒトに投与するステップを含み、各用量が、280mg、315mg、350mg、385mg、420mg、455mg、490mg、525mg、560mg、595mg、630mg、665mg、700mg、735mg、770mg、805mg、840mg、875mg、910mg、945mg、980mg、1015mg、1050mg、1085mg及び1120mgから選択され、抗FcRn抗体又はその抗原結合断片が、配列番号29に示される配列を含む重鎖及び配列番号15に示される配列を含む軽鎖を任意選択で含む、方法を提供する。再び、用量は患者の体重に基づいて選択され得る。
【0247】
一例では、体重段階にわたる固定単位用量が利用されてもよい。
【0248】
例えば1週間間隔で6回の皮下用量(およそ7mg/kgに相当)
・ 体重<50kg:投与されるべき用量280mg
・ 体重≧50kg且つ<70kg:投与されるべき用量420mg
・ 体重≧70kg且つ<100kg:投与されるべき用量560mg
・ 体重≧100kg;投与されるべき用量840mg
又は
例えば1週間間隔で6回の皮下用量(およそ10mg/kgに相当)
・ 体重<50kg:投与されるべき用量420mg
・ 体重≧50kg且つ<70kg:投与されるべき用量560mg
・ 体重≧70kg且つ<100kg:投与されるべき用量840mg
・ 体重≧100kg:投与されるべき用量1120mg
【0249】
一例では、およそ7mg/kgに相当する固定単位用量が使用され、一例では、50kg未満の体重では用量は280mgである。一例では、50kg以上であるが70kg未満の体重では用量は420mgである。一例では、70kg以上であるが100kg未満の体重では用量は560mgである。一例では、100kg以上の体重では用量は840mgである。
【0250】
従って、一例では、本発明はまた、重症筋無力症(MG)を治療又は予防する必要があるヒトにおいてMGを治療又は予防する方法であって、少なくとも3回の用量、好ましくは少なくとも6回の用量の抗FcRn抗体又はその抗原結合断片をヒトに投与するステップを含み、50kg未満の体重では用量は280mgであり、50kg以上であるが70kg未満の体重では用量は420mgであり、70kg以上であるが100kg未満の体重では用量は560mgであり、100kg以上の体重では用量は840mgである、方法を提供する。
【0251】
一例では、およそ10mg/kgに相当する固定単位用量が使用され、一例では、50kg未満の体重では用量は420mgである。一例では、50kg以上であるが70kg未満の体重では用量は560mgである。一例では、70kg以上であるが100kg未満の体重では用量は840mgである。一例では、100kg以上の体重では用量は1120mgである。
【0252】
従って、一例では、本発明はまた、重症筋無力症(MG)を治療又は予防する必要があるヒトにおいてMGを治療又は予防する方法であって、少なくとも3回の用量、好ましくは少なくとも6回の用量の抗FcRn抗体又はその抗原結合断片をヒトに投与するステップを含み、50kg未満の体重では用量は420mgであり、50kg以上であるが70kg未満の体重では用量は560mgであり、70kg以上であるが100kg未満の体重では用量は840mgであり、100kg以上の体重では用量は1120mgである、方法を提供する。
【0253】
一例では、100kg以上又は未満の単一の体重段階についての固定単位用量が使用される。一例では、100kg未満の体重では固定単位用量は、280mg、315mg、350mg、385mg、420mg、455mg、490mg、525mg、560mg、595mg、630mg、665mg、700mg、735mg、770mg、805mg、840mg、875mg、910mg、945mg、980mg、1015mg、1050mg、1085mg及び1120mgから選択される。一例では、100kg未満の体重では固定単位用量は、420mg又は560mg又は840mgである。
【0254】
従って、一例では、本発明はまた、重症筋無力症(MG)を治療又は予防する必要があるヒトにおいてMGを治療又は予防する方法であって、少なくとも3回の用量、好ましくは少なくとも6回の用量の抗FcRn抗体又はその抗原結合断片をヒトに投与するステップを含み、100kg未満の体重では用量は、280mg、315mg、350mg、385mg、420mg、455mg、490mg、525mg、560mg、595mg、630mg、665mg、700mg、735mg、770mg、805mg、840mg、875mg、910mg、945mg、980mg、1015mg、1050mg、1085mg及び1120mgから選択される、方法を提供する。
【0255】
一例では、100kg以上の体重では固定単位用量は、280mg、315mg、350mg、385mg、420mg、455mg、490mg、525mg、560mg、595mg、630mg、665mg、700mg、735mg、770mg、805mg、840mg、875mg、910mg、945mg、980mg、1015mg、1050mg、1085mg及び1120mgから選択される。
【0256】
一例では、100kg以上の体重では固定単位用量は840mg又は1120mgである。
【0257】
従って、一例では、本発明はまた、重症筋無力症(MG)を治療又は予防する必要があるヒトにおいてMGを治療又は予防する方法であって、少なくとも3回の用量、好ましくは少なくとも6回の用量の抗FcRn抗体又はその抗原結合断片をヒトに投与するステップを含み、100kg以上の体重では用量は、280mg、315mg、350mg、385mg、420mg、455mg、490mg、525mg、560mg、595mg、630mg、665mg、700mg、735mg、770mg、805mg、840mg、875mg、910mg、945mg、980mg、1015mg、1050mg、1085mg及び1120mgから選択される、方法を提供する。
【0258】
一例では、本発明はまた、重症筋無力症(MG)を治療又は予防する必要があるヒトにおいてMGを治療又は予防する方法であって、少なくとも3回の用量、好ましくは少なくとも6回の用量の抗FcRn抗体又はその抗原結合断片をヒトに投与するステップを含み、100kg未満の体重では用量は420mg又は560mg又は840mgであり、100kg以上の体重では用量は840mg又は1120mgである、方法を提供する。
【0259】
一例では、本発明はまた、重症筋無力症(MG)を治療又は予防する必要があるヒトにおいてMGを治療又は予防する方法であって、少なくとも3回の用量、好ましくは少なくとも6回の用量の抗FcRn抗体又はその抗原結合断片をヒトに投与するステップを含み、100kg未満の体重では用量は420mg又は560mgであり、100kg以上の体重では用量は840mg又は1120mgである、方法を提供する。
【0260】
一例では、抗体又はその抗原結合断片の用量は、毎週、例えば少なくとも3週間の間、毎週投与される。一例では、抗体の用量は、少なくとも5週間又は6週間の間、毎週投与される。治療期間(すなわち、1回又は複数回の用量の抗体が対象に投与される間の期間)は、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも5週間、少なくとも6週間、少なくとも7週間、少なくとも8週間又はそれ以上を含んでもよい。本明細書に記載されている用量及び投与の間の時間などの、任意の好適な回数の用量が治療期間内に投与されてもよい。例えば、6回の用量の抗体が、例えば5週間の治療期間(0週、1週、2週、3週、4週及び5週)にわたって対象に投与されてもよい。
【0261】
それ故、一態様では、重症筋無力症(MG)を治療又は予防する必要があるヒトにおいてMGを治療又は予防する方法であって、少なくとも3回の用量の抗FcRn抗体又はその抗原結合断片をヒトに投与するステップを含み、各用量が、4mg/kg、7mg/kg、10mg/kg、15mg/kg及び20mg/kgから独立して選択される、方法が提供される。
【0262】
一例では、各用量は4mg/kgであり、例えば6回の個々の用量として投与され、特に連続6週にわたる6回の個々の用量として投与される。
【0263】
一例では、各用量は7mg/kgであり、例えば6回の個々の用量として投与され、特に連続6週にわたる6回の個々の用量として投与される。
【0264】
一例では、各用量は10mg/kgであり、例えば6回の個々の用量として投与され、特に連続6週にわたる6回の個々の用量として投与される。
【0265】
一例では、各用量は15mg/kgであり、例えば6回の個々の用量として投与され、特に連続6週にわたる6回の個々の用量として投与される。
【0266】
一例では、各用量は20mg/kgであり、例えば6回の個々の用量として投与され、特に連続6週にわたる6回の個々の用量として投与される。
【0267】
上記に提示したように、固定単位投薬も利用されてもよく、例えば各用量は、280mg、315mg、350mg、385mg、420mg、455mg、490mg、525mg、560mg、595mg、630mg、665mg、700mg、735mg、770mg、805mg、840mg、875mg、910mg、945mg、980mg、1015mg、1050mg、1085mg及び1120mgから選択される用量であってもよく、6回の個々の用量、特に連続6週にわたる6回の個々の用量として投与される。
【0268】
一例では、各用量は280mgであり、例えば6回の個々の用量として投与され、特に連続6週にわたる6回の個々の用量として投与される。
【0269】
一例では、各用量は420mgであり、例えば6回の個々の用量として投与され、特に連続6週にわたる6回の個々の用量として投与される。
【0270】
一例では、各用量は560mgであり、例えば6回の個々の用量として投与され、特に連続6週にわたる6回の個々の用量として投与される。
【0271】
一例では、各用量は840mgであり、例えば6回の個々の用量として投与され、特に連続6週にわたる6回の個々の用量として投与される。
【0272】
一例では、各用量は1120mgであり、例えば6回の個々の用量として投与され、特に連続6週にわたる6回の個々の用量として投与される。
【0273】
本明細書上記に記載されているように、固定単位投薬は体重段階に基づいてもよく、体重段階に基づいて選択される用量は、例えば少なくとも連続6週の間、週に1回投与される。上記のように、例えば280mg用量が50kg未満の体重のために使用される。
【0274】
一例では、方法は、第3回の用量と第4回の用量との間に投薬休日を利用する。一例では、投薬休日は1週間である。一例では、投薬休日は2週間である。
【0275】
任意選択により、方法は、より高い初回用量(すなわち、「負荷用量」)に続いて、1回又は複数回のより低い用量(すなわち、初回用量より低い1回又は複数回の2回目又は追加用量(維持用量))を含む異なる投薬レジメンを用いる反復用量投与ストラテジーを利用するが、より低い負荷用量に続いて、より高い維持用量も企図される。一実施形態では、維持用量は、負荷用量の4分の1、3分の1、2分の1、3分の2、4分の3、負荷用量と同じ、1と4分の1、1と3分の1、1と2分の1、1と3分の2、1と4分の3、2倍又はそれ以上であってもよい。負荷用量を用いない複数回用量レジメンもまた、本開示の一部として企図される。
【0276】
一実施形態では、1回又は複数回の維持用量は負荷用量の投与後に一定の間隔で投与される。この間隔は各用量で一貫してもよいか、又は変化してもよい。この間隔は、1日、1週間、2週間、3週間、4週間、1ヵ月間、6週間、8週間、2ヵ月毎、又は任意の他の間隔であってもよい。
【0277】
従って、一例では、本発明の治療方法は、初回用量(単数又は複数)より低い1回又は複数回の2回目又は追加用量を投与するステップを更に含む。
【0278】
これらの追加用量は、より高い「負荷用量」についての初回治療期間を超えて投与されてもよいことは理解されるであろう。
【0279】
従って、一例では、好ましくは4~6週間の治療期間にわたる初回投薬に続いて、より低い用量及び/又はより低い投薬頻度で更なる維持投薬治療期間があってもよい。
一例では、各用量は7mg/kgであり、例えば連続6週にわたる6回の個々の用量として投与され、任意選択によりその後、もう1回の追加用量として投与される。
【0280】
一例では、各用量は10mg/kgであり、例えば連続6週にわたる6回の個々の用量として投与され、任意選択によりその後、もう1回の追加用量として投与される。
【0281】
一例では、追加用量はより低い「維持」用量である。一例では、各々のより低い(「維持」)用量は4から10mg/Kgの間であり、好ましくは4又は7mg/Kgである。
【0282】
一例では、各々のより低い(「維持」)用量は4から20mg/Kgの間、好ましくは7又は10mg/Kgであり、初回「負荷」用量より低い頻度、例えば1週間に1回より低い頻度、例えば2週間毎若しくは4週間毎又は月に1回で与えられる。
【0283】
上記に提示したように、これらの維持用量は、1週間、2週間、3週間、4週間、1ヵ月間、6週間、8週間、2ヵ月毎などの任意の好適な間隔、又は任意の他の間隔で与えられてもよい。
一例では、維持用量は1週間に1回の間隔で与えられる。
一例では、維持用量は2週間に1回の間隔で与えられる。
一例では、維持用量は4週間に1回の間隔で与えられる。
一例では、維持用量は1ヵ月に1回の間隔で与えられる。
【0284】
一例では、より高い初回用量(負荷用量)は、第1の治療期間にわたって1週間に1回の間隔で4mg/Kg又は7mg/Kg又は10mg/kg又は15mg/kg又は20mg/kgの6回の用量による治療を含み、維持投薬は、2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回、1ヵ月に1回、6週間に1回、8週間に1回、2ヵ月に1回などの好適な間隔、又は任意の他の間隔で4mg/Kg又は7mg/Kgでの投薬を含んでもよい。
【0285】
一例では、より高い初回用量(負荷用量)は、第1の治療期間にわたって1週間に1回の間隔で4mg/Kg又は7mg/Kg又は10mg/kg又は15mg/kg又は20mg/kgの6回の用量による治療を含み、維持投薬は、2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回、1ヵ月に1回、6週間に1回、8週間に1回、2ヵ月に1回などの好適な間隔、又は任意の他の間隔で4mg/Kg又は7mg/Kg又は10mg/Kgでの投薬を含んでもよい。
【0286】
一例では、より高い初回用量(負荷用量)は、6週間の第1の治療期間にわたって1週間に1回の間隔で10mg/kgの6回の用量による治療を含み、維持投薬は、1週間に1回、2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回、1ヵ月に1回、6週間に1回、8週間に1回、2ヵ月に1回などの好適な間隔、又は任意の他の間隔で7mg/kgでの投薬を含んでもよい。
【0287】
一例では、より高い初回用量(負荷用量)は、6週間の第1の治療期間にわたって1週間に1回の間隔で10mg/kgの6回の用量による治療を含み、維持投薬は、2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回、1ヵ月に1回、6週間に1回、8週間に1回、2ヵ月に1回などの好適な低い頻度の間隔、又は任意の他の間隔で10mg/kgでの投薬を含んでもよい。
【0288】
上記に提示したように、任意選択により本明細書で上記されている体重段階に基づく固定単位投薬もまた、本発明に使用されてもよい。一例では、より高い初回用量(負荷用量)は、第1の治療期間にわたって1週間に1回の間隔で任意選択により体重段階に基づいて、280mg又は420mg又は560mg又は840mg又は1120mgの6回の用量による治療を含み、維持投薬は、(i)1週間に1回、2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回、1ヵ月に1回、6週間に1回、8週間に1回、2ヵ月に1回などの好適な間隔、若しくは任意の他の間隔でより低い用量での投薬又は(ii)低い頻度での同じ用量の投薬を含んでもよい。
【0289】
本発明の治療方法は長期の間欠治療及び/又は維持療法の両方に好適であり得る。
【0290】
投薬頻度は、例えば疾患のバイオマーカーモニタリング並びに/又は患者のMG特異的自己抗体(抗MuSK及び/又は抗AChR抗体)血清レベル及び/若しくは血清IgGレベルのモニタリングによって決定される疾患の重症度によって決定され得ることは理解されるであろう。
【0291】
投与間のタイミングは、状態が改善するにつれて減少させてもよいか、又は状態が悪化する場合、急性発症の必要に応じてより高い用量に戻して増加させてもよい。
【0292】
投与のタイミングはまた、患者の抗AChR抗体力価並びに/又は抗MuSK力価及び/若しくは血清IgGレベルをモニタリングすることによって決定され得る。
【0293】
MGの病因に関与する自己抗体はIgG及び非IgGの両方のアイソタイプを含み得る。一例では、本開示の治療方法は、IgGが優勢なアイソタイプであると決定されるMG患者の治療のために使用され得る。
【0294】
本明細書の文脈において含む(comprising)は、包含する(including)を意味することを意図する。
技術的に適切な場合、本発明の実施形態は組み合わされてもよい。
【0295】
実施形態はある特定の特徴/要素を含むものとして本明細書に記載されている。本開示はまた、前記特徴/要素からなる又はそれらから実質的になる別々の実施形態に拡張する。
【0296】
特許及び出願などの技術的参考文献が本明細書に参照により組み込まれる。
【0297】
本発明は更に、添付の図面を参照して、以下の例において例示目的のみとして記載されている。
【0298】
図1は、ある特定のアミノ酸及びポリヌクレオチド配列を示す。
図2は、MG0002研究設計(SubQ;UCB7665)である。
図3は、MG-ADLスコア(ロザノリキシズマブ7mg/kg/ロザノリキシズマブ4mg/kg)及び(ロザノリキシズマブ7mg/kg/ロザノリキシズマブ7mg/kg)のベースラインからの変化である。
図4は、QMG、MG-複合、MG-ADLスコア、血清IgG濃度及び抗AChR抗体(ロザノリキシズマブ7mg/kg/ロザノリキシズマブ7mg/kg)のベースラインからの変化である。
図5は、定量的重症筋無力症試験フォームである。
図6は、重症筋無力症複合スコアである。
図7は、重症筋無力症日常生活動作(MG-ADL)スコア付けである。
【実施例0299】
(例1)
UCB7665はWO2014019727に最初に記載され、配列番号1~6で本明細書に示されるCDR配列を含む。それは配列番号22の軽鎖及び配列番号43の重鎖を含む。
【0300】
UCB7665はINNロザノリキシズマブを有する。
【0301】
UCB7665(WO2014019727から複製した)のhFcRn結合に対する親和性
表面プラズモン共鳴技術(SPR)を使用した生体分子相互作用分析を、Biacore T200システム(GE Healthcare)で実施し、ヒトFcRn細胞外ドメインへの結合を決定した。ヒトFcRn細胞外ドメインは、ヒトFcRnアルファ鎖細胞外ドメイン(配列番号94)とβ2ミクログロブリン(β2M)(配列番号95)との間の非共有結合複合体として提供された。10mM NaAc、pH5緩衝液中のアフィニピュア(Affinipure)F(ab’)
2断片ヤギ抗ヒトIgG、F(ab’)
2断片特異的(Fab’-PEG捕捉用)又はFc断片特異的(IgG1又はIgG4捕捉用)(Jackson ImmunoResearch Lab、Inc.)を、ランニング緩衝液としてHBS-EP
+(GE Healthcare)を使用して4000から5000の間の反応単位(RU)の捕捉レベルでアミンカップリング化学を介してCM5センサーチップ上に固定した。50mMリン酸塩、pH6+150mM NaCl+0.05%P20又はHBS-P、pH7.4(GE Healthcare)を、親和性アッセイのためのランニング緩衝液として使用した。抗体をランニング緩衝液中で4μg/ml(IgG4)に希釈した。10μl/分でのIgG4の60秒の注射を、固定した抗ヒトIgG、F(ab’)
2による捕捉のために使用した。ヒトFcRn細胞外ドメインを、30μl/分にて300秒間、捕捉した抗FcRn抗体に対して20nM~1.25nMまで滴定し、続いて1200秒解離した。表面を10μl/分にて2×60秒の50mM HClによって再生した。T200評価ソフトウェア(バージョン1.0)を使用してデータを分析した。
【表1】
pH7.4及びpH6での抗hFcRn 1519.g57 IgG4Pについての親和性データ
(3回の実験の平均)
【0302】
UCB7665(WO2014019727から複製した)の結晶学及び結合エピトープ
結晶化を容易にするためにFcRnオリゴ糖を除外して、1519g57 Fab’及び脱グリコシル化ヒトFcRn細胞外ドメイン(ベータ2ミクログロブリン配列番号95と関連するアルファ鎖細胞外ドメイン(配列番号94))の結晶構造を決定した。1519.g57 Fab’を10倍モル過剰のN-エチルマレイミドと反応させて、diFab’及びSEC(Akta FPLC上のS200)によって除去されたあらゆる既存のdiFab’の形成を阻止した。ヒトFcRn細胞外ドメインをPNGaseFによって処理してN結合糖を除去した。このために、FcRn試料濃度を、PBS(pH7.4)を使用して5mg/ml及び1mlの総容量に調整した。200単位のPNGaseF(Roche)をヒトFcRnのこの溶液に添加した。これを37℃で約18時間インキュベートし、その後、SDS PAGEを使用して脱グリコシル化の程度をチェックした。反応の完了時に、脱グリコシル化FcRnを50mM酢酸ナトリウム、125mM NaCl、pH6.0に緩衝液交換した。
【0303】
室温で60分間の試薬の混合物(Fab’:FcRn::1.2:1、w/w)のインキュベーションによって複合体を形成し、次いでSEC(Akta FPLCを使用するS200)を使用して精製した。Qiagenから利用可能であった様々な条件(およそ2000の条件)を使用してスクリーニングを実施した。Formulatrix Rock Imager 1000によって(21日の総インキュベーション期間の間)インキュベーション及びイメージングを実施した。
【0304】
1519g57 Fab’(この複合体を公開されたFcRnの構造と比較した)の結合時にFcRn構造において明らかな変化はなかった。その結晶構造から、二次構造含量は、α-ヘリックス9.4%;β-シート45.2%;3~10ターン2.5%であると計算した。
【0305】
1519g57 Fab’と相互作用する残基は全てFcRnα鎖(β2Mではない)にあり、以下に太字で示す。関係する残基は、Fcを結合するのに不可欠な残基の1つを除いて全てを包含する。1519g57はFc結合領域と重なる領域内で結合し、このことは、1519g57 Fab’によるFcRnの遮断は単純な競合によるものであり、抗FcRnがその優れた親和性のために有効であることを示唆する。
【化4】
1519g57 Fab’との相互作用に関与する残基(太字)及びIgGのFcとの相互作用に不可欠な残基(下線)を示すFcRnα鎖配列。後者の1つを除く全てが前者に含まれる。
【0306】
(例2)
MG0002研究は、第2a相、多施設、無作為化、治験責任医師及び対象盲検、プラセボ対照、2群、反復投与、治療順序研究であり、中等度から重度の全身型重症筋無力症(MG)を有する対象におけるUCB7665による長期の間欠治療の有効性、安全性及び耐容性を評価する。UCB7665は、18歳以上の対象において4mg/kg又は7mg/kgの皮下(sc)用量として投与する。
この研究は、米国(USA)、カナダ及び欧州におけるおよそ30の施設で行うように計画し、他の地域及び国々へも拡張可能である。合計42人の対象がこの研究の治療期間に入る計画である。個々の対象についての最長研究期間はおよそ18週である。
この研究は3つの期間からなる:スクリーニング、治療及び観察。スクリーニング後、対象は、投薬期間1、その後の投薬期間2からなる治療期間に入る。対象は、以下のように各投薬期間の間、1週間に1回の間隔で治験医薬品(IMP)の3回の用量を受ける:
投薬期間1は2つの並行した群(UCB7665 7mg/kg又はプラセボ)で4週間である。
投薬期間2は2つの並行した治療群(UCB7665 7mg/kg又はUCB7665 4mg/kg)で2週間である。
観察期間はUCB7665の最終用量後8週間に及び、最終来院(FV)は20回目の来院で予定する。sc注入はおよそ30分続け、対象は、各注入後、安全性モニタリングのために少なくとも4時間、病院/クリニックに留まることを必要とする。
【0307】
主要有効性変数は、9回目の来院(29日目)までの定量的MG(QMG)スコアのベースラインからの変化である。副次有効性変数は、9回目の来院(29日目)までのMG-複合スコアのベースラインからの変化及び9回目の来院(29日目)までのMG-日常生活動作(MGADL)スコアのベースラインからの変化である。他の有効性変数は以下の通りである:
治療及び観察期間の間の各々の予定した評価時のQMGの値及びベースラインからの変化;治療及び観察期間の間の各々の予定した評価時のQMG応答者(ベースラインから3.0点以上の改善);治療及び観察期間の間の各々の予定した評価時のMG-複合スコアの値及びベースラインからの変化;
治療及び観察期間の間の各々の予定した評価時のMG-複合応答者(ベースラインから3.0点以上の改善);治療及び観察期間の間の各々の予定した評価時のMGADLの値及びベースラインからの変化;治療及び観察期間の間の各々の予定した評価時のMGADL応答者(ベースラインから3.0点以上の改善);治療及び観察期間の間の各々の予定した評価時のアメリカ重症筋無力症財団(MGFA)分類;治療及び観察期間の間の各々の予定した評価時のMG筋力低下の重症度、疲労スケール及び重症筋無力症機能障害指数(MGII)スコアの値及びベースラインからの変化;
並びに参加施設においてこの尺度に同意している対象について9回目の来院までのベースラインからのジッター(単線維筋電図[SFEMG])研究の平均連続差(MCD)の変化。
【0308】
他の変数及び診査変数には、安全性及び耐容性変数、薬物動態(PK)、薬力学(PD)及び免疫学的変数が含まれる。
安全性及び耐容性変数には以下が含まれる:治療中に発生した有害事象(TEAE)の発現;バイタルサイン値及びベースラインからの変化(収縮期及び拡張期血圧[BP]、温度、脈拍数、呼吸数及び体重);12誘導心電図(ECG)値及びベースラインからの変化;検査値(血液学、臨床化学及び尿検査)及びベースラインからの変化;重度の頭痛及び/又は中等度から重度の胃腸(GI)障害を経験している対象における診査安全性バイオマーカー(限定されないが、S100カルシウム結合タンパク質B[S100B]、ニューロン特異的エノラーゼ、プロスタグランジン及び/又はそれらの代謝産物、セロトニン並びにトリプターゼを含み得る)のベースラインからの変化;並びにIMPの使用中止に至るTEAE。
経時的なUCB7665の血漿濃度はPK変数として評価する。主なPD変数は、血清総免疫グロブリンG(IgG)濃度のベースラインからの最大減少;治療及び観察期間の間の各々の予定した評価時の総血清IgG濃度の値及びベースラインからの変化;治療及び観察期間の間の各々の予定した評価時の血清IgGサブクラス濃度の値及びベースラインからの変化;並びに治療及び観察期間の間の各々の予定した評価時のベースラインからの血清中のMG特異的自己抗体(抗MuSK/抗AChR)レベルの変化である。更に、治療及び観察期間の間の他の免疫学的変数及び他の診査バイオマーカーのベースラインからの変化が評価される。
【0309】
研究変数
1 有効性変数
1.1 主要有効性変数
主要有効性変数は以下の通りである:
9回目の来院(29日目)までのQMGスコアのベースラインからの変化
1.2 副次有効性変数
副次有効性変数は以下の通りである:
9回目の来院(29日目)までのMG-複合スコアのベースラインからの変化
9回目の来院(29日目)までのMGADLスコアのベースラインからの変化
1.3 他の有効性変数
他の有効性変数は以下の通りである:
治療及び観察期間の間の各々の予定した評価時のQMGの値及びベースラインからの変化
治療及び観察期間の間の各々の予定した評価時のQMG応答者(ベースラインから3.0点以上の改善)
治療及び観察期間の間の各々の予定した評価時のMG-複合スコアの値及びベースラインからの変化
治療及び観察期間の間の各々の予定した評価時のMG-複合応答者(ベースラインから3.0点以上の改善)
治療及び観察期間の間の各々の予定した評価時のMGADLの値及びベースラインからの変化
治療及び観察期間の間の各々の予定した評価時のMGADL応答者(ベースラインから3.0点以上の改善)
治療及び観察期間の間の各々の予定した評価時のMGFA分類
治療及び観察期間の間の各々の予定した評価時のMG筋力低下及び易疲労性の値及びベースラインからの変化
治療及び観察期間の間の各々の予定した評価時の疲労の値及びベースラインからの変化
治療及び観察期間の間の各々の予定した評価時のMGIIスコアの値及びベースラインからの変化
参加施設においてこの尺度に同意している対象についての9回目の来院までのベースラインからのジッター(SFEMG)研究における正常線維対のパーセンテージの変化
参加施設においてこの尺度に同意している対象についての9回目の来院までのベースラインからのジッター(SFEMG)研究における電位間隔(interpotential interval)(IPI)のMCDの変化
ジッター(SFEMG)研究における9μs以上のMCDの低下は臨床改善を定義する
【0310】
研究設計
研究の説明
これは、中等度から重度の全身型MGを有する対象に対する長期の間欠治療としてUCB7665の安全性及び有効性を評価する、第2a相、多施設、無作為化、治験責任医師及び対象盲検、プラセボ対照、2群、反復投与、治療順序研究である。
およそ42人の無作為化した対象を、40人の評価可能な対象の目標とする数字を達成するためにUSA、カナダ及び欧州からのおよそ30の施設に登録する。
1人の対象当たりの研究の最長期間は、スクリーニング期間(1~28日)、治療期間(6週間)及び観察期間(8週間)からなる、およそ18週である。
スクリーニング期間:スクリーニング期間の目的は、対象の適格性を評価し、確認することである。スクリーニング来院(1回目の来院)の間、対象は、あらゆる研究関連手順を行う前に書面によるインフォームドコンセントのフォームに署名する。この研究の間の併用薬の使用については話し合い、対象の適格性は組み入れ/除外基準に基づいて決定する。スクリーニング期間は合計で28日を超えるべきではない。
治療期間:治療期間は、投薬期間1、その後の投薬期間2からなる(
図2を参照のこと)。対象は、以下の通りの各投薬期間の間、1週間に1回の間隔で3回の用量のIMPを受ける。
【0311】
投薬期間1は、2つの並行した治療群(UCB7665 7mg/kg又はプラセボ)で4週間である。
投薬期間2は、2つの並行した治療群(UCB7665 7mg/kg又はUCB7665 4mg/kg)で2週間である。
IMPによる注入を受ける前に、治療期間における各々の来院時に有効性尺度について対象を評価する。安全性及び有効性尺度の全てに関して、研究手順マニュアルに指定された命令を指針として使用することが推奨される。
投薬期間1:投薬期間1はおよそ4週間(1日目~28日目)続き、2、3、4、5、6、7及び8回目の来院を含む。スクリーニング期間の終了後、適格な対象は無作為化した来院(2回目の来院)のためにクリニック/病院に予約を取る。適格要件を満たし続ける対象を、7mg/kgのUCB7665又はプラセボを与えるために1:1で無作為化し、3週間の間(2、4及び6回目の来院)、1週間に1回の間隔でおよそ30分、sc注入により投与し、その後、4週目の来院(8回目の来院)で評価する。投薬期間1における2、4及び6回目の来院時に、対象は、注入後の安全性モニタリングのために少なくとも4時間、クリニック/病院に留まることを要求される。投与後の安全性モニタリング期間が終了し、治験責任医師又は被指名者が安全性の懸念を持たないときは、対象はクリニック/病院から出ていくことができる。対象の状況を評価するために電話による追跡調査が投与後24時間行われる(3、5及び7回目の来院)。対象は安全性及び有効性評価のために8回目の来院時にクリニック/病院に戻る。再無作為化の前の9回目の来院時(29日目)の投薬期間2の初めに主要有効エンドポイントであるQMGスコアのベースラインからの変化を評価する。従って、9回目の来院時に実施する有効性評価は投薬期間1における研究薬の最終用量から2週間後に行う。
投薬期間2:投薬期間2はおよそ2週間(29日目~43日目)続き、9、10、11、12、13及び14日目の来院を含む。対象は、安全性及び有効性評価のために9、11及び13回目の来院のためにクリニックに戻る。
9回目の来院時に、安全性及び有効性評価の実施後、プラセボ又は7mg/kgのUCB7665に対してベースライン時に最初に無作為化した対象を、1週間に1回の間隔(9、11及び13回目の来院)で30分、sc注入によって投与される3回の用量の7mg/kg又は3回の用量の4mg/kgのいずれかを与えるために1:1で再無作為化する。自動応答技術(interactive response technology)(IRT)は投薬期間1において受けた治療に基づいて再無作為化を階層化する。投薬期間2(9、11及び13回目の来院)における各々の1週間に1回のクリニック来院時に、対象は、決定されたように投与後の安全性モニタリング期間である少なくとも4時間の間、クリニック/病院に留まることを要求される。投与後の安全性モニタリング期間が終了し、治験責任医師又は被指名者が安全性の懸念を持たないときは、対象はクリニック/病院から出ていくことができる。対象の状況を評価するために電話による追跡調査が投与後24時間行われる(10、12及び14回目の来院)。
観察期間:全ての対象は、IMPの最終用量が投与された後、8週間追跡されなければならない。対象は有効性及び安全性評価のために15、16、18及び20回目の来院のためにクリニックに戻る。対象は、クリニック/病院に戻るか、又は可能であれば、治験責任医師及び対象の両者が同意した場合、17及び19回目の来院については、資格を持っている医療従事者が訪問診察を行う。観察期間はIMPの最終用量(すなわち、13回目の来院、43日目)の翌日に開始し、15回目の来院(50日目)が観察期間における最初の来院である。
【0312】
組み入れ基準
この研究に参加する資格を得るには、以下の基準の全てを満たさなければならない:
1.治験審査委員会(Institutional Review Board)(IRB)/独立倫理委員会(Independent Ethics Committee)(IEC)が、対象によって署名され、日付を入れられている書面によるインフォームドコンセントのフォームを承認した。
2.対象は1回目の来院(スクリーニング)時に18歳以上である。
3.対象は、対象の病歴に基づき、以前の評価によって支持された、1回目の来院(スクリーニング)時に十分に裏付けされたMGの診断を受けている。
4.対象は、現在、治験責任医師によって免疫学的療法(例えばIVIG/PLEX)での治療を考慮されている。
5.対象は、1回目の来院(スクリーニング)の前にAChR又はMuSKに対する自己抗体の十分に裏付けされた記録を有する。
6.妊娠の可能性がある女性の対象はスクリーニング来院時に陰性の血清妊娠検査でなればならず、これは、1週目(2回目の来院)の研究薬の初回用量前、且つその後の各研究の来院時の更なる投薬前に尿検査により陰性であると確認される。妊娠の可能性がある女性の対象は、研究の間及び研究薬のそれらの最終用量後の2ヵ月間、非常に効果的な避妊法を使用することに同意しなければならない。
【0313】
医薬品規制調和国際会議(International Council for Harmonisation)(ICH)M3(R2)によれば、避妊の非常に有効な形態は、一貫して正しく使用された場合、1年当たり1%未満の失敗率を達成する方法である。避妊の非常に有効な方法には以下が含まれる:
排卵抑制と関連する併用(エストロゲン及びプロゲステロンを含有する)ホルモン避妊法(経口、インプラント、注射用)(これは、スクリーニング[1回目の来院]前の少なくとも1ヵ月全ての間、安定でなければならず、研究の間、安定なままであるべきである)。排卵抑制と関連するプロゲステロンのみのホルモン避妊法(経口、インプラント、注射用)(これは、スクリーニング[1回目の来院]前の少なくとも1ヵ月全ての間、安定でなければならず、研究の間、安定なままであるべきである)。
プロゲステロン放出子宮内避妊システム又はTCu 380A子宮内避妊器具。
精管切除したパートナー(唯一のパートナー及び手術成功の医学的証拠を有するパートナーを条件とする)。
真の異性愛の性的禁欲は、これがその人の好ましく、普通の生活様式に沿っている場合、避妊の許容される形態である。定期的な禁欲(例えば、カレンダー法、排卵法、徴候体温(symptothermal)法、排卵後(postovulation)法)、研究期間の間の禁欲の宣言、及び膣外射精は、許容される避妊法ではない。
避妊を使用することに同意していない女性は、以下であると定義される、妊娠不可能でなければならない:スクリーニング来院時に血清卵巣刺激ホルモンレベル>40mIU/mLによって検証された閉経後(スクリーニング来院の前の少なくとも2年間)、又は
永久的に不妊である(例えば、両側卵管閉塞、子宮摘出、両側卵管切除)、又は□先天的に不妊である。
7.男性対象及び彼らの女性パートナーのための避妊法:
妊娠する可能性があるパートナーを有する男性対象は、研究の間及びIMPの最終投与後3ヵ月間、性的に活発である場合、コンドームを使用する意志がなければならない。
更に、男性対象の妊娠の可能性がある女性パートナーは、研究期間の間、及びIMPの最終投与後3ヵ月間、避妊法(上記のような)の非常に有効な方法を使用する意志がなければならない。
6.2
除外基準
以下の基準のいずれかを満たす場合、対象は研究に登録することは認められない:
1.対象はこの研究において以前に治療を受けているか、又は対象はUCB7665に対して以前に曝露されている。
2.対象は、スクリーニングの前の30日以内にIMP(又は医療機器)の別の研究に参加していたか、又はIMP(又は医療機器)の別の研究に現在参加している。
3.対象はIMPの任意の成分に対して既知の過敏性を有する。
4.L-プロリンはUCB7665 IMPの構成要素であるので、対象は高プロリン血症の病歴を有する。
【0314】
併用薬/治療
許可される併用薬
安定な用量で研究課程の間に許可されている併用薬は以下の通りである
用量コメント
経口コルチコステロイド
(例えば、プレドニゾロン)
- ベースライン前の2週間安定
前の6カ月間、メトトレキサート≦30mg/週で治療し、且つベースライン前の2ヵ月間安定な用量である
前の6カ月間、ミコフェノール酸モフェチル≦3g/日で治療し、且つベースライン前の2ヵ月間安定な用量である
前の6ヵ月間、未変更についてシクロスポリンa≦5mg/kg/日、変更(マイクロエマルション)について≦4mg/kg/日で治療し、且つベースライン前の2ヵ月間安定な用量である
前の6ヵ月間、アザチオプリン≦3mg/kg/日で治療し、且つベースライン前の2ヵ月間安定な用量である
コリンエステラーゼ阻害剤≦600mg
ピリドスチグミン/日
安定な用量は必要とされない-用量は有効なアウトカムの日に保持した
前の6ヵ月間、タクロリムス(Tacrolimusb)≦5mg/日で治療し、且つベースライン前の2ヵ月間安定な用量である
a トラフレベルが300ng/L以下である場合、記載したものより高い用量が許容される。
b 体重に基づく1日総用量が5mg超である場合、対象が推奨される治療域を超えないことを確保するために血漿トラフレベルがチェックされなければならない。
対象は、試験を標準化するためにそうすることが医学的に安全である場合、試験前の真夜中からピリドスチグミン(又は任意のアセチルコリンエステラーゼ阻害薬)を摂取すべきではないが、医学的に適切でない場合、治療を継続することができるが、試験は、研究の間の各々の評価のために任意の最後のアセチルコリンエステラーゼ阻害剤投薬の後、同じ時間枠で可能な限り最適に実施されなければならい。
【0315】
有効性の評価
1.定量的重症筋無力症スケール
QMGスケールの評価のために、治験責任医師は、定量的重症筋無力症試験フォーム(
図5を参照のこと)として以下に提示しているように、MGFAのQMGマニュアルの説明書に従う。臨床治療の職員は、必須訓練を完了し、対象のQMGスコアを評価するための資格を取得しなければならない(詳細は研究手順マニュアルに提供されている)。
対象は、試験を標準化するためにそうすることが医学的に安全である場合、試験前に真夜中からピリドスチグミン(又は任意のAChE阻害薬)を摂取すべきではないが、医学的に適切でない場合、治療を継続することができるが、試験は、研究の間の各々の評価のために最後のAChE阻害剤投薬の後、同じ時間枠で可能な限り最適に実施されなければならい。
スケールは、眼及び顔の関与、飲み込み、発話、肢の強さ及び強制肺活量(FVC)を含む13項目を試験する。FVCの評価のために、対象が試験される各時間に同じ肺活量計が使用されるべきであり、可能な場合、同じ人が評価を実施すべきである。FVCについてのパラメーター及び正常値は、全ての施設が同じ情報を使用するように研究施設間で決定される。QMGは検証済みの評価であり(Barnettら、2012)、スコアが高いほど、より重度の疾患を示す。各項目についてのスコア付けは低下なし(0)から重度の低下(3)の範囲であり、総合スコアは0~39の範囲である。合計スコアの3点の変化は臨床的に関連があるとみなされる。試験は実施するのにおよそ30分かかる。
【0316】
一般的な指示
1.患者は、試験の12時間前の間、ピリドスチグミン(又は任意のアセチルコリンエステラーゼ阻害薬)を中止しなければならない(そうすることが医学的に安全である場合)。
2.このマニュアルに与えられ、ビデオテープに示された順序で試験を実施する。
3.試験開始前に製造業者の説明書に従って試験の日に呼吸機器を較正する。較正記録をアクセス可能な場所のフォルダに置く。
4.全ての尺度について、実際の数字及びグレードを記録する。すなわち、患者が二重に見えるまでに30秒かかる場合、右端のボックスに30秒について30/1及び1のグレードを記録する。
5.患者は呼吸試験のために着席したままでなければならない。
6.スコア付けシートの最後に、その患者についてのグレードを合計し、合計QMGスコアとする。
【0317】
定量的MGスコア
I.複視:
患者の準備:患者は座っている。患者が真っすぐ前を見て複視を経験しているかどうかを尋ねる。そうである場合、スコア付けシートに0/3(実際の時間/グレード)を記録する。そうでない場合、患者に一瞬だけ右を見、次いで患者の頭を動かさずに左を見るように依頼する。患者が一方向のみにおいて二重に見える場合、側を記録し、結果を0/3と記録する。眼球運動がない場合、0/3と記録する。患者が二重に見えない場合、又は両方向で二重に見える場合、以下に記載されているように右を注視する試験を患者に実施する。
患者への説明:「私はあなたに前を向くようにお願いします。私が依頼すると、あなたの頭を回転させずにあなたの右(左)側を見てください。あなたが二重に見え始めた場合又は二重に見え始めると、私に知らせてください。」
検査員への注意:患者の頭は普通、注視の方向に回転し始める。頭を前方の位置に維持するようにする。時間及びグレードを記録する。例:複視は15秒で明らかになる。スコア付けの欄に15/1を記録する。
II.下垂(上方注視):
患者の準備:患者は座っている。患者に真っすぐ前を見るように依頼する。上眼瞼が瞳孔に触れている場合、0/3と記録する。頭を動かさずに天井を見上げるように患者に依頼する。
患者への説明:「私はあなたに前を向くようにお願いします。私が依頼すると、あなたの頭を動かさずに天井を見上げてください。私があなたにリラックスするように伝えるまで見上げ続けてください。」
検査員への注意:患者の頭は普通、上に動き始める。前方の位置に頭を維持するようにする。あなたがどちらかの眼瞼(まつげ)が垂れ下がり始めるのを見ると時間及びグレードを記録する。
例:右眼瞼が9秒で垂れ下がると、9/2を記録する。どちらかの眼瞼が瞳孔に触れる場合、60/0を記録する。
III.顔面筋力:
患者の準備:患者は前を向いて座っている。
患者への説明:「あなたの眼をぎゅっと閉じてください。私にあなたの眼を開けさせないでください。」
検査員への注意:患者がどちらかの眼を完全に閉じることができない場合、グレードを3と記録する。時間のスコアはこの試験では必要とされない。弱い方の眼のグレードを記録する。
【0318】
IV.飲み込み:
患者の準備:患者は座っている。4オンスの水(氷なし)をカップに注ぐ。水は噴水式水飲み器の冷たさより冷たくないようにすべきである。
患者への説明:「私はあなたが通常通りにこの水を飲むようにあなたにお願いします。」
検査員への注意:試験の間及び試験後すぐに咳及び/又は咳払いを聞く。患者が心地良く感じるよりも速く飲むように患者に依頼しない。
V.発話:
患者の準備:患者は座っている。
患者への説明:「心地良いペースで1~50まで声に出して数え上げてください。」
検査員への注意:これは様々なアクセントのためにスコアを付けるのが最も難しい試験の1つである。あなたが発話の鼻声又は不明瞭に気付いた場合、数字を記録する。
VI.右及び左上肢挙上:
患者の準備:患者は床に両足をつけて椅子に座っていることを必要とする。患者は椅子の背にもたれないで着席しなければならない。両方の上肢を同時に試験する。
上肢は手のひらを下にして90°横に伸ばす必要がある。(この位置を実演する)。患者が肩の問題に起因して90°まで上肢を上げることができない場合、その上肢を試験しない。肘は完全な機械的範囲まで伸ばす。
患者への説明:「私はあなたにこのように両方の上肢を横に伸ばして保持するようにお願いします。できるだけ長く上肢を伸ばし続けてください。一方の上肢が他方より疲れた場合、あなたはその上肢を下げてもよく、他方の上肢を伸ばし続けてください。」
検査員への注意:上肢が垂れ下がり始めることは珍しいことではない。上肢が開始位置から10°より多く下がった場合、患者に上肢を引き上げるように思い出させる。患者が上肢を引き上げることができるが、2秒より長い間、その位置を維持することができない場合、試験を終了する。一方の上肢が下がる場合、患者が、彼/彼女が90°の角度を維持している様子を見せるために上肢が下がった側に傾き始めないように注意すること。時間/グレードを記録する(例:右上肢について45秒は45/2であり、一方、左上肢について100秒は100/1である)。
VII:強制肺活量:患者の準備:患者はこの試験のために着席し続けなければならない。
患者への説明:「私は全肺気量を試験します。私はこのマウスピースをあなたの顔から離して保持するようにあなたに依頼します。次に私はあなたの鼻にノーズクリップを付けます。私はあなたに息を深く吸い、次にマウスピースをあなたの口に入れるように伝えます。あなたは、あなたができるだけ思い切り且つ速く息を吐いてください。私があなたに止めるように伝えるまで息を吐き続けてください。」
検査員への注意:我々はFVCを試験するのみである。最低3回の試行及び最高で5回の試行を実施する。目標は互いに5%以内に最良の2つの試行を得ることである。多くの激励を与える。最良のFVC(リットル及びパーセンテージ)及びグレードをシートに記録する(例:2.55-60%/2)。
「正常な」FVC値、及びそれによるパーセントの予測計算は、使用される肺活量計により変動し得る。いくつかの肺活量計は特定の正常値を伴う。それが、同じ肺活量計が、あなたが対象を試験する各時間に使用されるべき理由である。多施設研究では、全ての施設が同じ情報を使用するようにパラメーター及び正常値が決定されるべきである。
VIII.右及び左握力:
患者の準備:患者は椅子に座っている。肘は90°であるべきである。支持は前腕内側面の下及び動力計の下にあるべきである。
患者への説明:「私は握力を試験します。私はあなたにできるだけ強く握るようにお願いします。何も動かないが、あなたがどれくらい強く握っているかを測定しています。」
検査員への注意:口頭の激励を与える。2回の試行(kg)を欄に記録し、スコアを付ける(例:女性を試験し、結果が10及び8kgである場合、10/1と記録する)。
IX.頭部挙上:
患者の準備:患者は頭の下に枕を入れずに横になる。枕は膝の下に置いてもよいか、又は足が床にぴったり付くように膝を曲げる。
患者への説明:「私はテーブルからあなたの頭を持ち上げるようにあなたにお願いします。頭をできるだけ長く上げたままにしてください。」
検査員への注意:頭が落ちて元の位置に戻る場合、いくらかのクッションを提供するためにあなたの手を患者の頭の下に(触れずに)置く。頭は上限まで上がるだけでなく、上がり、前に出てくるはずである。頭が中間の10°以内に下がった場合、試験を終了する。
X.右及び左下肢挙上:
患者の準備:患者は頭の下に枕を置いて仰臥位になる。両方の下肢は真っすぐに伸ばし、靴を脱がなければならない。
患者への説明:「私はあなたの右下肢を持ち上げて保持するようにあなたにお願いします。できるだけ長くこの位置に下肢を持ち上げて保持してください。」
検査員への注意:下肢は股関節屈曲の45~50%に維持しなければならない。下肢が垂れ下がり始めた場合、患者に下肢を持ち上げるように依頼する。患者が下肢を持ち上げるが、その位置を2秒間維持できない場合、試験を終了する。股関節の下の手及び/又は下肢の回転を監視する。
【0319】
2.MG-複合スケール
MG-複合スケールの評価に関して、治験責任医師は、対象が自己評価する会話、咬む及び飲み込みを除いて、全ての項目のスコアを付けるために対象を検査する。MG-複合スケールは検証済みの評価であり(Burnsら、2010 MG Composite and MG-QOL15 Study Group. MG複合:重症筋無力症のための有効で信頼できるアウトカム尺度(The MG Composite:A valid and reliable outcome measure for myasthenia gravis). Neurology. 2010年5月4日;74(18):1434-40)、スコアが高いほど、より重度の疾患を示し(
図6を参照のこと)、3点の変化は臨床的関連がある。このスケールは10項目を試験し、個々の項目は異なって重み付けされる。総合スコアは0~50の範囲である。臨床治療の職員は、必須訓練を完了し、対象のMG-複合スコアを評価するための資格を取得しなければならない(詳細は研究手順マニュアルに提供されている)。
【0320】
3.患者により報告されるアウトカム
対象は、4回の患者により報告されるアウトカム(PRO)(そのうちの1回がMGADLである)を完了し、研究評価のスケジュールに記載されている時点の通りに1回の対象の退出面接に参加する。
治療医師以外の研究の職員がPROを管理するべきである。PROは静かな場所で対象自身によって完了されるべきである。
PRO及び対象の退出面接は以下の順序で完了されるべきである:MG筋力低下及び易疲労感、疲労、MGADL及びMGII、その後の対象の退出面接(これはFV時のみに実施する)。PROは完全性についてのみチェックされるべきである。投薬日では、PROは投薬前に完了されている。
【0321】
MG-日常生活動作(MGADL)
MGADLはQMGに基づいて開発された8項目のPRO手段であり(Wolfeら、1999)、
図7を参照のこと。MGADLは、眼、球、呼吸器及び体軸の症状に及ぶ症状及び身体障害を標的とする。最近の研究では、MGADLの信頼性、妥当性及び反応性が更に評価された。MG-複合に対してだけでなく、MG-QOL15に対しても評価した場合、質問表は強力な構成概念妥当性を示し、高度な試験は1週間間隔で信頼性を再試験し、2点の改善が臨床改善を示すことが実証された(Muppidi、2012;Muppidiら、2011)。合計MGADLスコアは0~24の範囲であり、スコアが高いほど、より高度の身体障害を示す。対象は、PROの標準化された管理に記載されているように自身によってMGADLを完了する。
【0322】
(例3)
MG002研究の結果
研究設計
MG0002(NCT03052751)(例2に提供されているプロトコル)は、全身型筋力低下及び少なくとも11の合計定量的重症筋無力症スコア(QMG)を有する北米及び欧州出身の43人のMG患者を登録した、第2相、無作為化、プラセボ対照、概念実証試行であった。MG0002は、1、8、15日目にプラセボ(N=22)及び7mg/kgのロザノリキシズマブ(N=21)の1回/週の3回の皮下注入を比較し、4週間の期間(投薬期間1)の間比較した。
投薬期間1の後、参加者を再無作為化して、99日まで観察を継続して、29、36及び43日目(投薬期間2)に7mg/kg又は4mg/kgのいずれかのロザノリキシズマブを与えた(
図2を参照のこと)。従来の療法は許可され、コルチコステロイド及び/又は免疫調節剤及び/又はコリンエステラーゼ阻害剤を含んだ。両方の投薬期間にわたる安全性及び有効性の予め特定した分析を6回のロザノリキシズマブの皮下注入後のデータで調べた。
【0323】
研究結果:
投薬期間1の終了時:定量的重症筋無力症(QMG)応答者の割合はプラセボについての22.7%と比較して38.1%であり(p=0.223)、重症筋無力症複合(MGC)応答者の割合はプラセボについての27.3%と比較して47.6%であった(p=0.144)。重症筋無力症-日常生活動作(MG-ADL)については、応答者の割合はプラセボについての13.6%と比較して47.6%であった(p=0.017)。ベースラインからの3点以上の低下が、QMG、MGC及びMG-ADLについての応答と定義された。
【0324】
確立された登録エンドポイントである重症筋無力症-日常生活動作(MG-ADL)スコアのベースラインからの変化はプラセボと比較して顕著な改善であった(p=0.036)。
【0325】
投薬期間2の間、スコアの臨床的に意義のある低下が、99日まで、最終用量後の効果の持続性と共に観察された。概して、QMG、MG-複合及びMG-ADLスコアのベースラインからの最も大きな低下が、ロザノリキシズマブ7mg/kg/ロザノリキシズマブ7mg/kgグループにおいて観察された(
図3及び4を参照のこと)。
【0326】
2つの投薬期間(すなわち、6回のロザノリキシズマブの皮下注入後)にわたる予め特定された分析により、QMG、MGC及びMG-ADLを含む、いくつかの疾患特異的エンドポイントにわたって一貫して臨床的に意義のある患者の利益が示された。積極的治療中の参加者は総IgGレベル及びIgG自己抗体レベルの顕著な低下を示した。血清IgG濃度はロザノリキシズマブ治療の2週間後55%低下した。総IgG及び抗アセチルコリン受容体(抗AChR)抗体は、両方の投薬期間においてロザノリキシズマブ7mg/kgを受けた参加者において、投薬期間2の間、ベースラインからほぼ70%減少した。抗MuSK抗体を有する患者はMG0002に対して適格であったが、抗MuSK抗体は、少ない患者数(n=1のロザノリキシズマブ7mg/kg/ロザノリキシズマブ7mg/kgグループ)に起因して評価されなかった。
【0327】
(例4)
全身型重症筋無力症を有する成人患者の有効性及び安全性を評価する第3相、無作為化、二重盲検、プラセボ対照研究(MG0003 ClinicalTrials.gov Identifier:NCT03971422)
これは、中等度から重度の症状を経験し、IVIg又はPLEXでの治療を考慮されている全身型MGを有する抗AChR又は抗MuSK自己抗体陽性患者におけるロザノリキシズマブの第3相研究である。この研究の主な目的は、全身型MGを有する患者におけるロザノリキシズマブの臨床的有効性を実証することである。この研究は、最長4週間のスクリーニング期間、続いて6週間の二重盲検治療期間及び8週間の観察期間から構成される。
【0328】
MG0002からの結果により、ロザノリキシズマブの皮下(sc)投与が血清IgG濃度の急速な低下を生じたことが示され、また、6回の用量(50日)後、QMG、MG-複合及びMG-ADLのベースラインからの最も大きな低下も示された。従って、6週間の治療期間がMG0003に対して選択された。8週間の観察期間が、IgG及びAChR及びMuSK抗体の回復を追跡し、更に中断後の臨床効果の持続性をモニタリングするために規定された。
【0329】
参加者の数
この研究の合計サンプルサイズは150から240人の間の研究参加者の範囲であり得る。
【0330】
治療グループ及び期間
研究参加者当たりの研究の最長期間は、スクリーニング期間(中央検査室のターンアラウンド時間を考慮して1~28日)、治療期間(6週間)、及び観察期間(8週間)からなり、最長で18週間である。
体重段階及び研究群にわたる固定単位用量が利用される。
プラセボ群は、皮下(sc)投与のために0.9%塩化ナトリウム水溶液(生理食塩水、防腐剤を含まない)である。
2つのsc治療群は、以下に記載されているように体重段階に基づいて階層化した固定単位用量を想定する:
【0331】
治療群1(ロザノリキシズマブ)-1週間間隔で6回のsc用量(およそ7mg/kgに相当)
・ 体重<50kg:投与されるべき用量280mg
・ 体重≧50kg且つ<70kg:投与されるべき用量420mg
・ 体重≧70kg且つ<100kg:投与されるべき用量560mg
・ 体重≧100kg;投与されるべき用量840mg
【0332】
治療群2(ロザノリキシズマブ)-1週間間隔で6回のsc用量(およそ10mg/kgに相当)
・ 体重<50kg:投与されるべき用量420mg
・ 体重≧50kg且つ<70kg:投与されるべき用量560mg
・ 体重≧70kg且つ<100kg:投与されるべき用量840mg
・ 体重≧100kg:投与されるべき用量1120mg
【0333】
用量-曝露-IgGの関係を特徴付ける集団PKPDモデルを使用して、シミュレーションにより、以前に研究した体重に基づいた(mg/kg)投薬レジメンと同等のIgG低下(平均及び90%予測区間)を達成した各体重階層での固定単位用量の選択を導いた。これらのモデルに基づくシミュレーションにより、提案された連続6週の間の1週間に1回の用量のロザノリキシズマブが、75%以上の平均最大IgG低下を生じると予測されることが実証される。
【0334】
アウトカム尺度
主要アウトカム尺度:
1.重症筋無力症-日常生活動作(MG-ADL)スコアの10回目の来院までのベースラインからの変化[時間枠:ベースライン及び10回目の来院(43日目)]
【0335】
合計MG-ADLスコアは、各個別の項目(8項目;グレード:0、1、2、3)に対する応答を合計することによって得られる。スコアは0~24の範囲であり、スコアが高いほど、より高度の身体障害を示す。
【0336】
副次アウトカム尺度:
1.10回目の来院時に重症筋無力症-日常生活動作(MG-ADL)応答を達成している参加者のパーセンテージ[時間枠:10回目の来院(43日目)]
2.重症筋無力症-複合スコアの10回目の来院までのベースラインからの変化[時間枠:ベースライン及び10回目の来院(43日目)]
【0337】
合計重症筋無力症(MG)-複合スコアは、各個別の項目(10項目;グレード:項目に応じて0~9)に対する応答を合計することによって得られる。スコアは0~50の範囲であり、スコアが低いほど、より低い疾患活動性を示す。
【0338】
3.定量的重症筋無力症(QMG)スコアの10回目の来院までのベースラインからの変化[時間枠:ベースライン及び10回目の来院(43日目)]
【0339】
合計QMGスコアは、各個別の項目(13項目;応答:なし=0、軽度=1、中等度=2、重度=3)に対する応答を合計することによって得られる。スコアは0~39の範囲であり、スコアが低いほど、より低い疾患活動性を示す。
【0340】
4.重症筋無力症(MG)症状患者により報告されるアウトカム(PRO)の「易疲労感」スコアの10回目の来院までのベースラインからの変化[時間枠:ベースライン及び10回目の来院(43日目)]
【0341】
MG症状PRO手段は5つのスケールにわたる42項目からなる;眼症状(項目1~5);球症状(項目6~15);呼吸器症状(項目16~18);身体的疲労(項目19~33)及び筋力低下易疲労性(項目34~42)。
【0342】
研究参加者に、4点リッカートスケール(「なし」から「重度」)を使用して過去7日間にわたる眼、球及び呼吸器症状の重症度並びに5点リッカートスケール(「全然ない」から「いつも」)を使用して過去7日間にわたって彼らが身体的疲労及び筋力低下易疲労性を経験する頻度がどれくらいかをそれぞれ最適に記載している応答選択肢を選択するように依頼する。
【0343】
5.重症筋無力症(MG)症状患者により報告されるアウトカム(PRO)の「身体的疲労、肢及び体軸低下」スコアの10回目の来院までのベースラインからの変化[時間枠:ベースライン及び10回目の来院(43日目)]
【0344】
MG症状PRO手段は5つのスケールにわたる42項目からなる:眼症状(項目1~5);球症状(項目6~15);呼吸器症状(項目16~18);身体的疲労(項目19~33)及び筋力低下易疲労性(項目34~42)。
【0345】
研究参加者に、4点リッカートスケール(「なし」から「重度」)を使用して過去7日間にわたる眼、球及び呼吸器症状の重症度並びに5点リッカートスケール(「全然ない」から「いつも」)を使用して過去7日間にわたって彼らが身体的疲労及び筋力低下易疲労性を経験する頻度がどれくらいかをそれぞれ最適に記載している応答選択肢を選択するように依頼する。
【0346】
6.重症筋無力症(MG)症状患者により報告されるアウトカム(PRO)の「球」スコアの10回目の来院までのベースラインからの変化[時間枠:ベースライン及び10回目の来院(43日目)]
【0347】
MG症状PRO手段は5つのスケールにわたる42項目からなる:眼症状(項目1~5);球症状(項目6~15);呼吸器症状(項目16~18);身体的疲労(項目19~33)及び筋力低下易疲労性(項目34~42)。
【0348】
研究参加者に、4点リッカートスケール(「なし」から「重度」)を使用して過去7日間にわたる眼、球及び呼吸器症状の重症度並びに5点リッカートスケール(「全然ない」から「いつも」)を使用して過去7日間にわたって彼らが身体的疲労及び筋力低下易疲労性を経験する頻度がどれくらいかをそれぞれ最適に記載している応答選択肢を選択するように依頼する。
【0349】
7.治療中に発生した有害事象の発現(TEAE)[時間枠:ベースラインから研究来院の終了まで(最長14週間)]
【0350】
有害事象(AE)は、医薬品を投与された患者又は臨床調査の対象におけるあらゆる不都合な医療上の発現であり、必ずしもこの治療との因果関係を有するわけではない。従って、AEは、医薬(治験)品に関連するか否かにかかわらず、医薬(治験)品の使用と一時的に関連する、あらゆる好ましくなく、意図しない徴候、症状又は疾患であり得る。
【0351】
治療中に発生した有害事象(TEAE)は、IMPの最初の投与の前に存在しなかったあらゆる事象又は治療への曝露後に強さが悪化するIMPの最初の投与の前に既に存在していたあらゆる解消されていない事象と定義される。
【0352】
8.治験医薬品(IMP)の使用中止に至る治療中に発生した有害事象(TEAE)[時間枠:ベースラインから研究来院の終了まで(最長14週間)]
【0353】
副次アウトカム尺度の1つはMG患者におけるIMPの安全性及び耐容性を評価することである。これは、IMPの使用中止に至る治療中に発生した有害事象(TEAE)によって測定され得る。
【0354】
TEAEは、IMPの最初の投与の前に存在しなかったあらゆる事象又は治療への曝露後に強さが悪化するIMPの最初の投与の前に既に存在していたあらゆる解消されていない事象と定義される。
【0355】
適格性基準
基準
組み入れ基準:
研究参加者は、インフォームドコンセントに署名する時点で18歳以上でなければならない。
研究参加者は、研究参加者の病歴に基づいて1回目の来院時に全身型重症筋無力症(gMG)の診断と実証され、以前の評価によって支持されている。
研究参加者は、1回目の来院の前にアセチルコリン受容体(AChR)又は筋特異的キナーゼ(MuSK)に対する自己抗体の陽性の記録が確認されている。
研究参加者は、1回目の来院時にアメリカ重症筋無力症財団(MGFA)クラスII~IVaを有する。
1回目の来院時及びベースライン時に少なくとも3の重症筋無力症-日常生活動作(MG-ADL)スコア及び少なくとも11の定量的重症筋無力症(QMG)スコアを有する研究参加者。
除外基準:
研究参加者は、治験責任医師の意見では臨床的に関連する活動性感染症(例えば、敗血症、肺炎又は膿瘍)を有するか、又は治験医薬品(IMP)の初回用量前の6週間以内に重症感染症(入院に至る又は非経口抗生物質治療を必要とする)を有した。
研究参加者は、他の抗新生児Fc受容体(FcRn)薬物への曝露後、過敏性反応を経験している。
口腔咽頭筋若しくは呼吸筋に影響を及ぼす重度(MG-ADLスケールでグレード3と定義される)の低下を有するか、又は1回目の来院時に筋無力症クリーゼ若しくは差し迫った危機を有する研究参加者。
【0356】
許可される併用治療
許可される医薬
用量コメント
経口コルチコステロイド
(例えば、プレドニゾロン)
- ベースライン前の2週間安定
前の6カ月間、メトトレキサート≦30mg/週で治療し、且つベースライン前の2ヵ月間安定な用量である
前の6カ月間、ミコフェノール酸モフェチル≦3g/日で治療し、且つベースライン前の2ヵ月間安定な用量である
前の6ヵ月間、未変更についてシクロスポリンa≦5mg/kg/日、変更(マイクロエマルション)について≦4mg/kg/日で治療し、且つベースライン前の2ヵ月間安定な用量である
前の6ヵ月間、アザチオプリン≦3mg/kg/日で治療し、且つベースライン前の2ヵ月間安定な用量である
コリンエステラーゼ阻害剤≦600mg
ピリドスチグミン/日
安定な用量は必要とされない-用量は有効なアウトカムの日に保持した
前の6ヵ月間、タクロリムス≦5mg/日で治療し、且つベースライン前の2ヵ月間安定な用量である
a トラフレベルが300ng/L以下である場合、記載したものより高い用量が許容される。
b 体重に基づく1日総用量が5mg超である場合、研究参加者が推奨される治療域を超えないことを確保するために血漿トラフレベルがチェックされなければならない。
【0357】
禁止される併用治療(医薬及び療法)
以下の併用医薬が研究の間禁止される:
リツキシマブを含む全ての生物製剤
シクロホスファミド
ピメクロリムス
IPP-201101(Lupuzor(商標))
免疫吸着
【0358】
【0359】
本明細書に引用される全ての参考文献はそれらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。前述の例は本発明を例示することを意図し、決して本発明を限定するものではない。本明細書に開示されている本発明の趣旨及び範囲内の変更は含まれる。