(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138366
(43)【公開日】2024-10-08
(54)【発明の名称】立体物印刷装置および立体物印刷方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20241001BHJP
B05C 5/00 20060101ALI20241001BHJP
B05C 11/00 20060101ALI20241001BHJP
B05C 11/10 20060101ALI20241001BHJP
B05B 12/00 20180101ALI20241001BHJP
B05D 1/26 20060101ALI20241001BHJP
【FI】
B41J2/01 203
B41J2/01 109
B41J2/01 303
B41J2/01 451
B05C5/00 101
B05C11/00
B05C11/10
B05B12/00 A
B05D1/26 Z
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024108832
(22)【出願日】2024-07-05
(62)【分割の表示】P 2020163788の分割
【原出願日】2020-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】弁理士法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】須貝 圭吾
(72)【発明者】
【氏名】望月 建寿
(72)【発明者】
【氏名】宇都宮 光平
(57)【要約】
【課題】立体的なワークに対する印刷の画質を高める。
【解決手段】立体的なワークに対して液体を吐出する液体吐出ヘッドと、ワークまたはワークに対応する物体に対する液体吐出ヘッドの相対的な位置を変化させる移動機構と、ワークまたは物体に対する液体吐出ヘッドの相対的な位置を検出する検出部と、を有し、移動機構がワークまたは物体に対して液体吐出ヘッドを第1走査経路に沿って走査させつつ、検出部が第1走査経路に関する位置を検出する第1検出動作と、移動機構が液体吐出ヘッドを第1検出動作における検出部による検出結果に基づく第2走査経路に沿って走査させつつ、液体吐出ヘッドがワークの第1領域に液体を吐出する第1印刷動作と、を実行する、立体物印刷装置。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
立体的なワークに対して液体を吐出する液体吐出ヘッドと、
前記ワークまたは前記ワークに対応する物体に対する前記液体吐出ヘッドの相対的な位置を変化させる移動機構と、
前記ワークまたは前記物体に対する前記液体吐出ヘッドの相対的な位置を検出する検出部と、を有し、
前記移動機構が第1走査経路に沿って前記液体吐出ヘッドを前記ワークまたは前記物体に対して相対的に走査させつつ、前記検出部が前記第1走査経路に関する位置を検出する第1検出動作と、
前記移動機構が前記第1検出動作における前記検出部による検出結果に基づく第2走査経路に沿って前記液体吐出ヘッドを前記ワークに対して相対的に走査させつつ、前記液体吐出ヘッドが前記ワークの第1領域に液体を吐出する第1印刷動作と、を実行する、
ことを特徴とする立体物印刷装置。
【請求項2】
立体的なワークに対して液体を吐出する液体吐出ヘッドと、
前記ワークまたは前記ワークに対応する物体に対する前記液体吐出ヘッドの相対的な位置を変化させる移動機構と、
前記ワークまたは前記物体に対する前記液体吐出ヘッドの相対的な位置を検出する検出部と、を有し、
前記移動機構が第1走査経路に沿って前記液体吐出ヘッドを前記ワークまたは前記物体に対して相対的に走査させつつ、前記検出部が前記第1走査経路に関する位置を検出する第1検出動作と、
前記移動機構が第2走査経路に沿って前記液体吐出ヘッドを前記ワークに対して相対的に走査させつつ、前記液体吐出ヘッドが前記ワークの第1領域に液体を吐出する第1印刷動作と、を実行し、
基準経路に対する前記第1走査経路のずれ量が第1量である場合、前記第1走査経路と前記第2走査経路との経路差が第1経路差であり、
前記すれ量が前記第1量よりも大きい第2量である場合、前記経路差が前記第1経路差よりも大きい第2経路差である、
ことを特徴とする立体物印刷装置。
【請求項3】
前記第1検出動作において、前記液体吐出ヘッドが前記ワークまたは前記物体に液体を吐出することにより第1検出パターンを形成し、前記検出部が前記第1検出パターンを検出することにより前記第1走査経路に関する位置を検出する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の立体物印刷装置。
【請求項4】
撮像装置をさらに有し、
前記検出部は、前記撮像装置の撮像結果を用いて前記ワークまたは前記物体に対する前記液体吐出ヘッドの走査経路に関する位置を検出し、
前記第1検出パターンは、互いに間隔を隔てて配置される複数のマークを含んでおり、
前記撮像装置は、前記複数のマークのうちの2個以上を含む画角で前記第1検出パターンを撮像する、
ことを特徴とする請求項3に記載の立体物印刷装置。
【請求項5】
前記液体吐出ヘッドに対する前記撮像装置の位置が固定である、
ことを特徴とする請求項4に記載の立体物印刷装置。
【請求項6】
前記第1検出動作と前記第1印刷動作との間で、前記移動機構が第3走査経路に沿って前記液体吐出ヘッドを前記ワークまたは前記物体に対して相対的に走査させつつ、前記検出部が前記第3走査経路に関する位置を検出する第2検出動作と、
前記移動機構が前記検出部による検出結果に基づく第4走査経路に沿って前記液体吐出ヘッドを前記ワークに対して相対的に走査させつつ、前記液体吐出ヘッドが前記ワークの前記第1領域に部分的に重なる第2領域に液体を吐出する第2印刷動作と、をさらに実行する、
ことを特徴とする請求項3から5のいずれか1項に記載の立体物印刷装置。
【請求項7】
前記第2検出動作において、前記液体吐出ヘッドが前記ワークまたは前記物体に液体を吐出することにより前記第1検出パターンに対して前記液体吐出ヘッドの走査方向にずれた位置に第2検出パターンを形成し、前記検出部が前記第2検出パターンを検出することにより前記第3走査経路に関する位置を検出する、
ことを特徴とする請求項6に記載の立体物印刷装置。
【請求項8】
前記第1検出パターンと前記第2検出パターンとの形状または色が互いに異なる、
ことを特徴とする請求項7に記載の立体物印刷装置。
【請求項9】
前記第1検出パターンの形成に用いる液体の量は、前記第1印刷動作に用いる液体の量に比べて少ない、
ことを特徴とする請求項3から8のいずれか1項に記載の立体物印刷装置。
【請求項10】
前記第1検出動作と前記第1印刷動作との間に、前記移動機構が前記ワークまたは前記物体に対して前記第1検出動作における前記検出部による検出結果に基づく走査経路に沿って前記液体吐出ヘッドを前記ワークまたは前記物体に対して相対的に走査させつつ、前記検出部が当該走査経路に関する位置を検出する確認動作をさらに実行する、
ことを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の立体物印刷装置。
【請求項11】
距離センサーをさらに有し、
前記検出部は、前記距離センサーの測定結果を用いて前記ワークに対する前記液体吐出ヘッドの走査経路に関する位置を検出し、
前記液体吐出ヘッドに対する前記距離センサーの相対的な位置が固定されており、
前記距離センサーは、前記第1検出動作において、前記ワークに対する相対的な位置が固定される基準面との間の距離を測定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の立体物印刷装置。
【請求項12】
前記第1検出動作において、前記距離センサーの検出軸が前記液体吐出ヘッドの走査方向に交差する、
ことを特徴とする請求項11に記載の立体物印刷装置。
【請求項13】
前記移動機構は、前記液体吐出ヘッドを含むエンドエフェクターが装着される多関節ロボットであり、
前記多関節ロボットは、ロボットコントローラーに接続される、
ことを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載の立体物印刷装置。
【請求項14】
前記液体吐出ヘッドが通過すべき位置を示すポイントデータを生成するデータ生成部をさらに有しており、
前記ロボットコントローラーは、前記データ生成部からのポイントデータに基づいて前記多関節ロボットの駆動を制御し、
前記データ生成部は、前記第1検出動作における前記検出部の検出結果に基づいて、前記第1印刷動作に用いるポイントデータを生成する、
ことを特徴とする請求項13に記載の立体物印刷装置。
【請求項15】
前記データ生成部は、前記第1検出動作における前記検出部の検出結果に基づいて、前記第2走査経路が前記第1走査経路よりも基準経路に近づくように、前記第1検出動作に用いたポイントデータを補正することにより、前記第1印刷動作に用いるポイントデータを生成する、
ことを特徴とする請求項14に記載の立体物印刷装置。
【請求項16】
前記データ生成部は、前記第1検出動作における前記検出部の検出結果に基づいて、前記液体吐出ヘッドが通過すべき位置を前記第1走査経路に交差する方向にずらすように、前記第1検出動作に用いたポイントデータを補正する、
ことを特徴とする請求項15に記載の立体物印刷装置。
【請求項17】
立体的なワークに対して液体を吐出する液体吐出ヘッドと、前記ワークまたは前記ワークに対応する物体に対する前記液体吐出ヘッドの相対的な位置を変化させる移動機構と、を用いて前記ワークに対して印刷を行う立体物印刷方法であって、
前記移動機構が第1走査経路に沿って前記液体吐出ヘッドを前記ワークまたは前記物体に対して相対的に走査させつつ、前記第1走査経路に関する位置を検出する第1検出動作と、
前記移動機構が前記第1検出動作における検出結果に基づく第2走査経路に沿って前記液体吐出ヘッドを前記ワークに対して相対的に走査させつつ、前記液体吐出ヘッドが前記ワークの第1領域に液体を吐出する第1印刷動作と、を実行する、
ことを特徴とする立体物印刷方法。
【請求項18】
立体的なワークに対して液体を吐出する液体吐出ヘッドと、前記ワークまたは前記ワークに対応する物体に対する前記液体吐出ヘッドの相対的な位置を変化させる移動機構と、を用いて前記ワークに対して印刷を行う立体物印刷方法であって、
前記移動機構が第1走査経路に沿って前記液体吐出ヘッドを前記ワークまたは前記物体に対して相対的に走査させつつ、前記第1走査経路に関する位置を検出する第1検出動作と、
前記移動機構が第2走査経路に沿って前記液体吐出ヘッドを前記ワークに対して相対的に走査させつつ、前記液体吐出ヘッドが前記ワークの第1領域に液体を吐出する第1印刷動作と、を実行し、
基準経路に対する前記第1走査経路のずれ量が第1量である場合、前記第1走査経路と前記第2走査経路との経路差が第1経路差であり、
前記すれ量が前記第1量よりも大きい第2量である場合、前記経路差が前記第1経路差よりも大きい第2経路差である、
ことを特徴とする立体物印刷方法。
【請求項19】
前記第1検出動作において、前記物体に対して前記移動機構による前記液体吐出ヘッドの走査を行い、
前記物体の形状は、前記ワークの形状と実質的に同一であり、
前記第1検出動作と前記第1印刷動作との間に、前記物体を前記ワークに交換する、
ことを特徴とする請求項17または18に記載の立体物印刷方法。
【請求項20】
前記第1検出動作において、前記ワークに対して前記移動機構による前記液体吐出ヘッドの走査を行う、
ことを特徴とする請求項17または18に記載の立体物印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体物印刷装置および立体物印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の可動部の動作の組み合わせによってインクジェットプリントヘッドを移動させ、立体物の表面にインクジェット方式により印刷を行う立体物印刷装置が知られている。例えば、特許文献1に記載の装置は、複数の可動部を有するロボットアームと、ロボットアームの先端に取り付けられたインクジェットプリントヘッドと、ロボットアームの動きを制御するコントローラーと、を有する。ここで、コントローラーは、インクジェットプリントヘッドが一連の走査経路を通るように、ロボットアームの動きを制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数の可動部の動作の組み合わせによりインクジェットプリントヘッドを走査経路に沿って線状に移動させるとき、以下のような課題が発生する虞がある。インクジェットプリントヘッドが移動すべき経路の指示として単に理想経路をコントローラーに与えても、各関節部の動作誤差が走査経路の途中における様々なタイミングで出現するので、実際の経路が蛇行するように当該理想経路に対してずれてしまい、印刷画質の低下を招くという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するために、本発明に係る立体物印刷装置の一態様は、立体的なワークに対して液体を吐出する液体吐出ヘッドと、前記ワークまたは前記ワークに対応する物体に対する前記液体吐出ヘッドの相対的な位置を変化させる移動機構と、前記ワークまたは前記物体に対する前記液体吐出ヘッドの相対的な位置を検出する検出部と、を有し、前記移動機構が第1走査経路に沿って前記液体吐出ヘッドを前記ワークまたは前記物体に対して相対的に走査させつつ、前記検出部が前記第1走査経路に関する位置を検出する第1検出動作と、前記移動機構が前記第1検出動作における前記検出部による検出結果に基づく第2走査経路に沿って前記液体吐出ヘッドを前記ワークに対して相対的に走査させつつ、前記液体吐出ヘッドが前記ワークの第1領域に液体を吐出する第1印刷動作と、を実行する。
【0006】
本発明に係る立体物印刷装置の他の一態様は、立体的なワークに対して液体を吐出する液体吐出ヘッドと、前記ワークまたは前記ワークに対応する物体に対する前記液体吐出ヘッドの相対的な位置を変化させる移動機構と、前記ワークまたは前記物体に対する前記液体吐出ヘッドの相対的な位置を検出する検出部と、を有し、前記移動機構が第1走査経路に沿って前記液体吐出ヘッドを前記ワークまたは前記物体に対して相対的に走査させつつ、前記検出部が前記第1走査経路に関する位置を検出する第1検出動作と、前記移動機構が第2走査経路に沿って前記液体吐出ヘッドを前記ワークに対して相対的に走査させつつ、前記液体吐出ヘッドが前記ワークの第1領域に液体を吐出する第1印刷動作と、を実行し、基準経路に対する前記第1走査経路のずれ量が第1量である場合、前記第1走査経路と前記第2走査経路との経路差が第1経路差であり、前記すれ量が前記第1量よりも大きい第2量である場合、前記経路差が前記第1経路差よりも大きい第2経路差である。
【0007】
本発明に係る立体物印刷方法の一態様は、立体的なワークに対して液体を吐出する液体吐出ヘッドと、前記ワークまたは前記ワークに対応する物体に対する前記液体吐出ヘッドの相対的な位置を変化させる移動機構と、を用いて前記ワークに対して印刷を行う立体物印刷方法であって、前記移動機構が第1走査経路に沿って前記液体吐出ヘッドを前記ワークまたは前記物体に対して相対的に走査させつつ、前記第1走査経路に関する位置を検出する第1検出動作と、前記移動機構が前記第1検出動作における検出結果に基づく第2走査経路に沿って前記液体吐出ヘッドを前記ワークに対して相対的に走査させつつ、前記液体吐出ヘッドが前記ワークの第1領域に液体を吐出する第1印刷動作と、を実行する。
【0008】
本発明に係る立体物印刷方法の他の一態様は、立体的なワークに対して液体を吐出する液体吐出ヘッドと、前記ワークまたは前記ワークに対応する物体に対する前記液体吐出ヘッドの相対的な位置を変化させる移動機構と、を用いて前記ワークに対して印刷を行う立体物印刷方法であって、前記移動機構が第1走査経路に沿って前記液体吐出ヘッドを前記ワークまたは前記物体に対して相対的に走査させつつ、前記第1走査経路に関する位置を検出する第1検出動作と、前記移動機構が第2走査経路に沿って前記液体吐出ヘッドを前記ワークに対して相対的に走査させつつ、前記液体吐出ヘッドが前記ワークの第1領域に液体を吐出する第1印刷動作と、を実行し、基準経路に対する前記第1走査経路のずれ量が第1量である場合、前記第1走査経路と前記第2走査経路との経路差が第1経路差であり、前記すれ量が前記第1量よりも大きい第2量である場合、前記経路差が前記第1経路差よりも大きい第2経路差である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係る立体物印刷装置の概略を示す斜視図である。
【
図2】第1実施形態に係る立体物印刷装置の電気的な構成を示すブロック図である。
【
図3】第1実施形態における液体吐出ヘッドユニットの概略構成を示す斜視図である。
【
図4】第1実施形態における液体吐出ヘッドの構成例を示す断面図である。
【
図5】第1実施形態に係る立体物印刷方法の流れを示すフローチャートである。
【
図6】
図5に示すポイントデータの生成の流れを示すフローチャートである。
【
図7】第1実施形態における検出動作および印刷動作を説明するための図である。
【
図8】理想的な走査経路を示すポイントデータを説明するための図である。
【
図9】理想的な走査経路を示すポイントデータを用いた場合における実際の走査経路に関する位置の検出を説明するための図である。
【
図10】理想的な走査経路に対する実際の走査経路のずれを説明するための図である。
【
図11】実際の走査経路に基づいて補正したポイントデータの例を説明するための図である。
【
図12】実際の走査経路に基づいて補正したポイントデータの他の例を説明するための図である。
【
図13】補正したポイントデータを用いた場合における実際の走査経路を説明するための図である。
【
図14】後続するパスにおける実際の走査経路の検出を説明するための図である。
【
図15】後続するパスにおける補正後の走査経路を説明するための図である。
【
図16】第2実施形態に係る立体物印刷装置の電気的な構成を示すブロック図である。
【
図17】第2実施形態における実際の走査経路の検出を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態を説明する。なお、図面において各部の寸法または縮尺は実際と適宜に異なり、理解を容易にするために模式的に示している部分もある。また、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られない。
【0011】
以下の説明は、互いに交差するX軸、Y軸およびZ軸を適宜に用いて行う。また、X軸に沿う一方向をX1方向といい、X1方向と反対の方向をX2方向という。同様に、Y軸に沿って互いに反対の方向をY1方向およびY2方向という。また、Z軸に沿って互いに反対の方向をZ1方向およびZ2方向という。
【0012】
ここで、X軸、Y軸およびZ軸は、後述のワークWおよび基台210が設置される空間に設定されるベース座標系の座標軸である。典型的には、Z軸が鉛直な軸であり、Z2方向が鉛直方向での下方向に相当する。なお、Z軸は、鉛直な軸でなくともよい。また、X軸、Y軸およびZ軸は、典型的には互いに直交するが、これに限定されず、直交しない場合もある。例えば、X軸、Y軸およびZ軸が80°以上100°以下の範囲内の角度で互いに交差すればよい。
【0013】
1.第1実施形態
1-1.立体物印刷装置の概略
図1は、第1実施形態に係る立体物印刷装置100の概略を示す斜視図である。立体物印刷装置100は、立体的なワークWの表面にインクジェット方式により印刷を行う装置である。
【0014】
ワークWは、印刷対象となる面WFを有する。
図1に示す例では、ワークWが直方体であり、面WFがZ1方向を向く平面である。なお、印刷対象は、ワークWが有する複数の面のうち面WF以外の面でもよい。また、ワークWの大きさ、形状または設置姿勢は、
図1に示す例に限定されず、任意である。
【0015】
ここで、後述する検出動作MDにおいて、必要に応じて、ワークWに対応する物体Oが用いられる。物体Oは、面WFと実質的に同一の形状および姿勢の面OFを有する物体である。例えば、物体Oは、ワークWと実質的に同一形状の物体であり、ワークWに代えて、ワークWと実質的に同一の姿勢で設置される。なお、物体Oは、ワークWの面WFに剥離可能な貼着されたフィルムでもよい。当該フィルムには、必要に応じて、インクを吸収しやすくするための受容層が設けられる。
【0016】
図1に示す例では、立体物印刷装置100は、垂直多関節ロボットを用いるインクジェットプリンターである。具体的には、
図1に示すように、立体物印刷装置100は、ロボット200と液体吐出ヘッドユニット300と液体貯留部400と供給流路500と制御装置600とを有する。以下、まず、立体物印刷装置100の各部を順次簡単に説明する。
【0017】
ロボット200は、ワークWに対する液体吐出ヘッドユニット300の位置および姿勢を変化させる移動機構の一例である。
図1に示す例では、ロボット200は、いわゆる6軸の垂直多関節ロボットである。具体的には、ロボット200は、基台210とアーム220とを有する。
【0018】
基台210は、アーム220を支持する台である。
図1に示す例では、基台210は、Z1方向を向く床面等の設置面にネジ止め等により固定される。なお、基台210が固定される設置面は、いかなる方向を向く面でもよく、
図1に示す例に限定されず、例えば、壁、天井、移動可能な台車等が有する面でもよい。
【0019】
アーム220は、基台210に取り付けられる基端と、当該基端に対して3次元的に位置および姿勢を変化させる先端と、を有する6軸のロボットアームである。具体的には、アーム220は、アーム221、222、223、224、225および226を有し、これらがこの順に連結される。
【0020】
アーム221は、基台210に対して第1回動軸O1まわりに回動可能に関節部231を介して連結される。アーム222は、アーム221に対して第2回動軸O2まわりに回動可能に関節部232を介して連結される。アーム223は、アーム222に対して第3回動軸O3まわりに回動可能に関節部233を介して連結される。アーム224は、アーム223に対して第4回動軸O4まわりに回動可能に関節部234を介して連結される。アーム225は、アーム224に対して第5回動軸O5まわりに回動可能に関節部235を介して連結される。アーム226は、アーム225に対して第6回動軸O6まわりに回動可能に関節部236を介して連結される。
【0021】
図1に示す例では、関節部231~236のそれぞれは、隣り合う2つのアームの一方を他方に対して回動可能に連結する機構である。図示しないが、関節部231~236のそれぞれには、隣り合う2つのアームの一方を他方に対して回動させる駆動機構が設けられる。当該駆動機構は、例えば、当該回動のための駆動力を発生させるモーターと、当該駆動力を減速して出力する減速機と、当該回動の角度等を検出するロータリーエンコーダー等のエンコーダーと、を有する。なお、当該駆動機構は、後述の
図2に示すアーム駆動機構230に相当する。
【0022】
第1回動軸O1は、基台210が固定される図示しない設置面に対して垂直な軸である。第2回動軸O2は、第1回動軸O1に対して垂直な軸である。第3回動軸O3は、第2回動軸O2に対して平行な軸である。第4回動軸O4は、第3回動軸O3に対して垂直な軸である。第5回動軸O5は、第4回動軸O4に対して垂直な軸である。第6回動軸O6は、第5回動軸O5に対して垂直な軸である。
【0023】
なお、これらの回動軸について、「垂直」とは、2つの回動軸のなす角度が厳密に90°である場合のほか、2つの回動軸のなす角度が90°から±5°程度の範囲内でずれる場合も含む。同様に、「平行」とは、2つの回動軸が厳密に平行である場合のほかに、2つの回動軸の一方が他方に対して±5°程度の範囲内で傾斜する場合も含む。
【0024】
以上のアーム221の先端、すなわち、アーム226には、エンドエフェクターとして、液体吐出ヘッドユニット300が装着される。
【0025】
液体吐出ヘッドユニット300は、液体の一例であるインクをワークWに向けて吐出する液体吐出ヘッド310を有する機構である。本実施形態では、液体吐出ヘッドユニット300は、液体吐出ヘッド310のほか、液体吐出ヘッド310に供給されるインクの圧力を調整する圧力調整弁320と、ワークWの面WFまたは物体Oの面OFを撮像する撮像装置330と、を有する。これらは、ともにアーム226に固定されるので、互いの位置および姿勢の関係が固定される。
【0026】
液体吐出ヘッド310については、後に詳述する。圧力調整弁320は、液体吐出ヘッド310内のインクの圧力に応じて開閉する弁機構である。この開閉により、液体吐出ヘッド310内のインクの圧力が所定範囲内の負圧に維持される。このため、液体吐出ヘッド310のノズルNに形成されるインクのメニスカスの安定化が図られる。この結果、ノズルN内に気泡が入り込んだり、ノズルNからインクが溢れ出したりすることが防止される。
【0027】
なお、
図1に示す例では、液体吐出ヘッドユニット300が有する液体吐出ヘッド310および圧力調整弁320のそれぞれの数が1個であるが、当該数は、
図1に示す例に限定されず、2個以上でもよい。また、圧力調整弁320および撮像装置330の設置位置は、アーム226に限定されず、例えば、他のアーム等でもよいし、基台210に対して固定の位置でもよい。
【0028】
撮像装置330は、例えば、撮像光学系および撮像素子を有する。撮像光学系は、少なくとも1つの撮像レンズを含む光学系であり、プリズム等の各種の光学素子を含んでもよいし、ズームレンズまたはフォーカスレンズ等を含んでもよい。撮像素子は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサーまたはCMOS(Complementary MOS)イメージセンサー等である。
【0029】
液体貯留部400は、インクを貯留する容器である。液体貯留部400は、例えば、可撓性のフィルムで形成された袋状のインクパックである。液体貯留部400に貯留されるインクは、例えば、染料または顔料等の色材を含むインクである。なお、液体貯留部400に貯留されるインクの種類は、色材を含むインクに限定されず、例えば、金属粉末等の導電材料を含むインクでもよい。また、インクが紫外線硬化性等の硬化性を有してもよい。インクが紫外線硬化性等の硬化性を有する場合、例えば、液体吐出ヘッドユニット300に紫外線照射機構が搭載される。
【0030】
図1に示す例では、液体貯留部400は、常に液体吐出ヘッド310よりもZ1方向に位置するように、壁、天井または柱等に固定される。すなわち、液体貯留部400は、液体吐出ヘッド310の移動領域よりも鉛直方向での上方に位置する。このため、ポンプ等の機構を用いなくても、液体貯留部400から液体吐出ヘッド310に所定の加圧力でインクを供給することができる。
【0031】
なお、液体貯留部400の設置場所は、液体貯留部400から液体吐出ヘッド310に所定の圧力でインクを供給することができればよく、液体吐出ヘッド310よりも鉛直方向での下方に位置してもよい。この場合、例えば、ポンプを用いて、液体貯留部400から液体吐出ヘッド310に所定の圧力でインクを供給すればよい。
【0032】
供給流路500は、液体貯留部400から液体吐出ヘッド310にインクを供給する流路である。供給流路500の途中には、圧力調整弁320が設けられる。このため、液体吐出ヘッド310と液体貯留部400との位置関係が変化しても、液体吐出ヘッド310内のインクの圧力の変動を低減することができる。
【0033】
供給流路500は、圧力調整弁320により上流流路510と下流流路520とに区分される。すなわち、供給流路500は、液体貯留部400と圧力調整弁320とを連通させる上流流路510と、圧力調整弁320と液体吐出ヘッド310とを連通させる下流流路520と、を有する。
【0034】
上流流路510および下流流路520のそれぞれは、例えば、管体の内部空間で構成される。ここで、上流流路510に用いる管体は、例えば、ゴム材料またはエラストマー材料等の弾性材料で構成されており、可撓性を有する。このように、可撓性を有する管体を用いて上流流路510を構成することにより、液体貯留部400と圧力調整弁320との相対的な位置関係の変化が許容される。したがって、液体貯留部400の位置および姿勢を固定したまま、液体吐出ヘッド310の位置または姿勢が変化しても、液体貯留部400から圧力調整弁320へインクを供給することができる。一方、下流流路520に用いる管体は、可撓性を有さなくてもよい。したがって、下流流路520に用いる管体は、ゴム材料またはエラストマー材料等の弾性材料で構成されてもよいし、樹脂材料等の硬質材料で構成されてもよい。
【0035】
なお、上流流路510の一部が可撓性を有しない部材で構成されてもよい。また、下流流路520は、管体を用いる構成に限定されない。例えば、下流流路520の一部または全部は、圧力調整弁320からのインクを複数箇所に分配する分配流路を有する構成でもよいし、液体吐出ヘッド310または圧力調整弁320と一体で構成されてもよい。
【0036】
制御装置600は、立体物印刷装置100の各部の駆動を制御する装置である。ここで、制御装置600は、液体吐出ヘッド310およびロボット200の駆動を制御するロボットコントローラーである。制御装置600については、以下の立体物印刷装置100の電気的な構成の説明とともに詳述する。
【0037】
1-2.立体物印刷装置の電気的な構成
図2は、第1実施形態に係る立体物印刷装置100の電気的な構成を示すブロック図である。
図2では、立体物印刷装置100の構成要素のうち、電気的な構成要素が示される。
図2に示すように、制御装置600は、処理回路610と記憶回路620と電源回路630と駆動信号生成回路640とを有する。
【0038】
なお、以下に述べる制御装置600に含まれるハードウェア構成は、適宜に分割されてもよい。例えば、制御装置600のアーム制御部612と駆動信号生成回路640とは異なるハードウェア構成において個別に設けられることもある。また、制御装置600の機能の一部または全部は、制御装置600に接続される外部装置700により実現されてもよいし、LAN(Local Area Network)またはインターネット等のネットワークを介して制御装置600に接続されるPC(personal computer)等の他の外部装置により実現されてもよい。
【0039】
処理回路610は、立体物印刷装置100の各部の動作を制御する機能と、各種データを処理する機能と、を有する。処理回路610は、例えば、1個以上のCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサーを含む。なお、処理回路610は、CPUに代えて、または、CPUに加えて、FPGA(field-programmable gate array)等のプログラマブルロジックデバイスを含んでもよい。
【0040】
記憶回路620は、処理回路610が実行するプログラムPG1等の各種プログラムと、処理回路610が処理するワーク情報Da、撮像情報DbおよびポイントデータDc等の各種データと、を記憶する。記憶回路620は、例えば、RAM(Random Access Memory)等の揮発性のメモリーとROM(Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)またはPROM(Programmable ROM)等の不揮発性メモリーとの一方または両方の半導体メモリーを含む。なお、記憶回路620は、処理回路610の一部として構成されてもよい。
【0041】
ワーク情報Daは、ワークWの面WFの位置および形状を示す情報である。ワーク情報Daは、例えば、ワークWの3次元形状を示すCAD(computer-aided design)データ等の情報を前述のベース座標系に対応付けた情報である。ここで、前述のように物体OがワークWに対応することから、ワーク情報Daは、物体Oの面OFの位置および形状を示す情報であるともいえる。なお、ワーク情報Daは、後述のデータ生成部614により生成される。また、ワークWの3次元形状を示す情報は、例えば、印刷データImgに含まれるか、または、印刷データImgとは別途に外部装置700から制御装置600に入力される。
【0042】
撮像情報Dbは、撮像装置330の撮像結果を示す情報である。撮像情報Dbは、例えば、撮像装置330に設定されるカメラ座標系の座標値ごとの輝度等を示す。なお、当該カメラ座標系は、前述のベース座標系との関係があらかじめキャリブレーションにより対応付けされてもよいし、されてなくてもよい。
【0043】
ポイントデータDcは、液体吐出ヘッド310が通過すべき位置を示す情報である。ポイントデータDcは、例えば、ワークWまたは物体Oに対する液体吐出ヘッド310の走査経路をベース座標系の座標値で示す。なお、ポイントデータDcは、後述のデータ生成部614により生成される。
【0044】
電源回路630は、図示しない商用電源から電力の供給を受け、所定の各種電位を生成する。生成した各種電位は、立体物印刷装置100の各部に適宜に供給される。例えば、電源回路630は、電源電位VHVとオフセット電位VBSとを生成する。オフセット電位VBSは、液体吐出ヘッドユニット300に供給される。また、電源電位VHVは、駆動信号生成回路640に供給される。
【0045】
駆動信号生成回路640は、液体吐出ヘッド310が有する各圧電素子311を駆動するための駆動信号Comを生成する回路である。具体的には、駆動信号生成回路640は、例えば、DA変換回路と増幅回路とを有する。駆動信号生成回路640では、当該DA変換回路が処理回路610からの後述の波形指定信号dComをデジタル信号からアナログ信号に変換し、当該増幅回路が電源回路630からの電源電位VHVを用いて当該アナログ信号を増幅することで駆動信号Comを生成する。ここで、駆動信号Comに含まれる波形のうち、圧電素子311に実際に供給される波形の信号が駆動パルスPDである。駆動パルスPDは、圧電素子311を駆動するための駆動回路340を介して、駆動信号生成回路640から圧電素子311に供給される。駆動回路340は、後述の制御信号SIに基づいて、駆動信号Comに含まれる波形のうちの少なくとも一部を駆動パルスPDとして供給するか否かを切り替える。
【0046】
以上の制御装置600では、処理回路610が、記憶回路620に記憶されるプログラムPG1を実行することにより、立体物印刷装置100の各部の動作を制御する。具体的には、処理回路610は、プログラムPG1の実行により、情報取得部611、アーム制御部612、吐出制御部613、データ生成部614および検出部615として機能する。
【0047】
情報取得部611は、ロボット200および液体吐出ヘッドユニット300の駆動に必要な各種情報を取得する。具体的には、情報取得部611は、外部装置700からの印刷データImgと、アーム駆動機構230に含まれるエンコーダーからの情報D1と、撮像装置300からの撮像情報Dbと、記憶回路620からのワーク情報DaおよびポイントデータDc等の情報と、を取得する。また、情報取得部611は、取得後の各種情報を記憶回路620に適宜に記憶する。
【0048】
アーム制御部612は、情報取得部611からの情報に基づいて、ロボット200の駆動を制御する。具体的には、アーム制御部612は、情報D1とワーク情報DaとポイントデータDcとに基づいて、制御信号Skを生成する。制御信号Skは、液体吐出ヘッド310が所望の位置および姿勢となるように、アーム駆動機構230に含まれるモーターの駆動を制御する。
【0049】
なお、情報D1と液体吐出ヘッドの位置および姿勢との対応関係は、あらかじめ、キャリブレーション等により取得されており、記憶回路620に記憶される。そして、アーム制御部612は、実際のアーム駆動機構230からの情報D1と、当該対応関係と、に基づいて、実際の液体吐出ヘッド310の位置および姿勢に関する情報を取得する。その上で、アーム制御部612は、当該位置および姿勢に関する情報を用いて、液体吐出ヘッド310が所望の位置および姿勢となるように制御を行う。また、アーム制御部612は、図示しない変位センサーからの情報を用いて、液体吐出ヘッド310とワークWの表面との間の距離が所定範囲内に維持されるように、制御信号Skを適宜に調整してもよい。
【0050】
吐出制御部613は、情報取得部611からの情報に基づいて、液体吐出ヘッドユニット300の駆動を制御する。具体的には、吐出制御部613は、印刷データImgに基づいて、制御信号SIと波形指定信号dComとを生成する。制御信号SIは、液体吐出ヘッド310が有する後述の圧電素子311の動作状態を指定するためのデジタルの信号である。ここで、制御信号SIには、圧電素子311の駆動タイミングを規定するためのタイミング信号等の他の信号が含まれてもよい。当該タイミング信号は、例えば、アーム駆動機構230に含まれるエンコーダーからの情報D1に基づいて生成される。波形指定信号dComは、駆動信号Comの波形を規定するためのデジタル信号である。印刷データImgは、2次元または3次元の画像を示す情報であり、パーソナルコンピューター等の外部装置700から供給される。
【0051】
以上のような吐出制御部613による液体吐出ヘッド310の駆動制御は、前述のアーム制御部612によるロボット200の駆動制御と同期して行われる。ここで、ロボット200が面WFに対して液体吐出ヘッド310を所定方向に走査させつつ、液体吐出ヘッド310がインクを吐出することにより、ワークWの面WFにインクによる画像が印刷される。
【0052】
データ生成部614は、ポイントデータDcを生成する。後に詳述するが、データ生成部614は、ワーク情報Daを生成し、ワーク情報Daに基づいて理想的な走査経路を示すポイントデータDcを生成した後、当該理想的な走査経路を示すポイントデータDcを検出部615の検出結果に基づいて補正する。当該理想的な走査経路は、例えば、後述の基準経路RU_1およびRU_2に相当する。ここで、ワーク情報Daの生成は、前述のように、前述のベース座標系にキャリブレーションされている図示しないセンサーまたはカメラ等を用いてワークWを認識し、ワークWの3次元形状を示す情報と前述のベース座標系との対応付けることにより行われる。
【0053】
検出部615は、ワークWまたは物体Oに対する液体吐出ヘッド310の相対的な位置を検出する。この検出は、印刷データImgに基づく画像を印刷する後述の印刷動作MPに先立ち、液体吐出ヘッド310の実際の走査経路を検出する後述の検出動作MDで行われる。後に詳述するが、本実施形態の検出部615は、撮像装置330の撮像結果を用いて、ワークWまたは物体Oに対する液体吐出ヘッド310の実際の走査経路に関する位置を検出する。ここで、本実施形態の検出動作MDは、前述の理想的な走査経路を示すポイントデータDcを用いてロボット200を駆動させつつワークWまたは物体Oに検出パターンを印刷した後、当該検出パターンを撮像装置330により撮像し、その撮像結果を用いて当該走査経路に関する位置を検出する。
【0054】
なお、印刷データImgに基づく画像は、パス数を示すN(Nは1以上の自然数)回の印刷動作MPにより形成される。検出動作MDは、印刷動作MPの回数に対応してN回行われる。以下では、1パス目の印刷動作MPが「印刷動作MP_N」と表記され、Nパス目の検出動作MDが「印刷動作MD_N」と表記される。ここで、1パス目の印刷動作MPは、第1印刷動作MP_1である。2パス目の印刷動作MPは、第2印刷動作MP_2である。1パス目の検出動作MDは、第1検出動作MD_1である。2パス目の検出動作MDは、第2検出動作MD_2である。また、以下では、Nパス目に用いるポイントデータDcをポイントデータDc_Nと表記する場合がある。
【0055】
1-3.液体吐出ヘッドユニット
図3は、実施形態における液体吐出ヘッドユニット300の概略構成を示す斜視図である。
【0056】
以下の説明は、互いに交差するa軸、b軸およびc軸を適宜に用いて行う。また、a軸に沿う一方向をa1方向といい、a1方向と反対の方向をa2方向という。同様に、b軸に沿って互いに反対の方向をb1方向およびb2方向という。また、c軸に沿って互いに反対の方向をc1方向およびc2方向という。
【0057】
ここで、a軸、b軸およびc軸は、液体吐出ヘッドユニット300に設定されるツール座標系の座標軸であり、前述のロボット200の動作により前述のX軸、Y軸およびZ軸との相対的な位置および姿勢の関係が変化する。
図3に示す例では、c軸が前述の第6回動軸O6に平行な軸である。なお、a軸、b軸およびc軸は、典型的には互いに直交するが、これに限定されず、例えば、80°以上100°以下の範囲内の角度で交差すればよい。
【0058】
液体吐出ヘッドユニット300は、前述のように、液体吐出ヘッド310と圧力調整弁320と撮像装置330とを有する。これらは、
図3中の二点鎖線で示される支持体350に支持される。
【0059】
支持体350は、例えば、金属材料等で構成されており、実質的な剛体である。なお、
図3では、支持体350が扁平な箱状をなすが、支持体350の形状は、特に限定されず、任意である。
【0060】
以上の支持体350は、前述のアーム220の先端、すなわちアーム226に装着される。このため、液体吐出ヘッド310と圧力調整弁320と撮像装置330とのそれぞれは、アーム226に固定される。
【0061】
図3に示す例では、圧力調整弁320は、液体吐出ヘッド310に対してc1方向に位置する。撮像装置330は、液体吐出ヘッド310に対してa2方向に位置する。
【0062】
また、
図3に示す例では、供給流路500の下流流路520の一部が流路部材521で構成される。流路部材521は、圧力調整弁320からのインクを液体吐出ヘッド310の複数箇所に分配する流路を有する。流路部材521は、例えば、樹脂材料で構成される複数の基板の積層体であり、各基板には、インクの流路のための溝または孔が適宜に設けられる。
【0063】
液体吐出ヘッド310は、ノズル面Fと、ノズル面Fに開口する複数のノズルNと、を有する。
図3に示す例では、ノズル面Fの法線方向がc2方向であり、当該複数のノズルNは、a軸に沿う方向に互いに間隔をあけて並ぶ第1ノズル列L1と第2ノズル列L2とに区分される。第1ノズル列L1および第2ノズル列L2のそれぞれは、b軸に沿う方向に直線状に配列される複数のノズルNの集合である。ここで、液体吐出ヘッド310における第1ノズル列L1の各ノズルNに関連する要素と第2ノズル列L2の各ノズルNに関連する要素とがa軸に沿う方向で互いに略対称な構成である。
【0064】
ただし、第1ノズル列L1における複数のノズルNと第2ノズル列L2における複数のノズルNとのb軸に沿う方向での位置が互いに一致してもよいし異なってもよい。また、第1ノズル列L1および第2ノズル列L2のうちの一方の各ノズルNに関連する要素が省略されてもよい。以下では、第1ノズル列L1における複数のノズルNと第2ノズル列L2における複数のノズルNとのb軸に沿う方向での位置が互いに一致する構成が例示される。
【0065】
図4は、実施形態における液体吐出ヘッド310の構成例を示す断面図である。
図4に示すように、液体吐出ヘッド310は、流路基板312と圧力室基板313とノズル板314と吸振体315と振動板316と複数の圧電素子311と配線基板317と筐体部318とを有する。
【0066】
流路基板312および圧力室基板313は、複数のノズルNにインクを供給するための流路を形成する。流路基板312と圧力室基板313とは、この順でc1方向に積層される。流路基板312および圧力室基板313のそれぞれは、b軸に沿う方向に長尺な板状部材である。流路基板312および圧力室基板313は、例えば接着剤により、互いに接合される。
【0067】
圧力室基板313よりもc1方向に位置する領域には、振動板316と配線基板317と筐体部318と駆動回路340とが設置される。他方、流路基板312よりもc2方向に位置する領域には、ノズル板314と吸振体315とが設置される。これらの各要素は、概略的には流路基板312および圧力室基板313と同様にb軸に沿う方向に長尺な板状部材であり、例えば接着剤により、互いに接合される。
【0068】
ノズル板314は、複数のノズルNが形成された板状部材である。複数のノズルNのそれぞれは、インクを通過させる円形状の貫通孔である。ノズル板314は、例えば、ドライエッチングまたはウェットエッチング等の加工技術を用いる半導体製造技術によりシリコン単結晶基板を加工することにより製造される。ただし、ノズル板314の製造には、他の公知の方法および材料が適宜に用いられてもよい。
【0069】
ここで、前述のノズル面Fは、液体吐出ヘッド310の外形を構成する面のうち、ノズルNのc2方向での一端の開口からc軸に垂直な方向に沿って拡がる面である。
図4に示す例では、液体吐出ヘッド310のc2方向を向く面がノズル面Fであり、ノズル面Fには、ノズル板314のc2方向を向く面が含まれる。
【0070】
流路基板312には、第1ノズル列L1および第2ノズル列L2のそれぞれについて、空間Raと複数の供給流路312aと複数の連通流路312bと供給液室312cとが設けられる。空間Raは、c軸に沿う方向でみた平面視で、b軸に沿う方向に延びる長尺状の開口である。供給流路312aおよび連通流路312bのそれぞれは、ノズルNごとに形成される貫通孔である。供給液室312cは、複数のノズルNにわたりb軸に沿う方向に延びる長尺状の空間であり、空間Raと複数の供給流路312aとを互いに連通させる。複数の連通流路312bのそれぞれは、当該連通流路312bに対応する1個のノズルNに平面視で重なる。
【0071】
圧力室基板313は、第1ノズル列L1および第2ノズル列L2のそれぞれについて、キャビティと称される複数の圧力室Cvが形成された板状部材である。複数の圧力室Cvは、b軸に沿う方向に配列される。各圧力室Cvは、ノズルNごとに形成され、平面視でa軸に沿う方向に延びる長尺状の空間である。流路基板312および圧力室基板313のそれぞれは、前述のノズル板314と同様に、例えば、半導体製造技術によりシリコン単結晶基板を加工することにより製造される。ただし、流路基板312および圧力室基板313のそれぞれの製造には、他の公知の方法および材料が適宜に用いられてもよい。
【0072】
圧力室Cvは、流路基板312と振動板316との間に位置する空間である。第1ノズル列L1および第2ノズル列L2のそれぞれについて、複数の圧力室Cvがb軸に沿う方向に配列される。また、圧力室Cvは、連通流路312bおよび供給流路312aのそれぞれに連通する。したがって、圧力室Cvは、連通流路312bを介してノズルNに連通し、かつ、供給流路312aと供給液室312cとを介して空間Raに連通する。
【0073】
圧力室基板313のc2方向を向く面には、振動板316が配置される。振動板316は、弾性的に振動可能な板状部材である。振動板316は、例えば、酸化シリコン(SiO2)で構成される弾性膜と、酸化ジルコニウム(ZrO2)で構成される絶縁膜と、を有し、これらが積層される。当該弾性膜は、例えば、シリコン単結晶基板の一方の面を熱酸化することにより形成される。当該絶縁膜は、例えば、スパッタ法によりジルコニウムの層を形成し、当該層を熱酸化することにより形成される。
【0074】
振動板316のc1方向を向く面には、第1ノズル列L1および第2ノズル列L2のそれぞれについて、各ノズルNに対応する複数の圧電素子311が配置される。各圧電素子311は、前述の駆動パルスPDの供給により変形する受動素子である。各圧電素子311は、平面視でa軸に沿う方向に延びる長尺状をなす。複数の圧電素子311は、複数の圧力室Cvに対応するようにb軸に沿う方向に配列される。圧電素子311の変形に連動して振動板316が振動すると、圧力室Cv内の圧力が変動することで、インクがノズルNからc2方向に向けて吐出される。
【0075】
筐体部318は、複数の圧力室Cvに供給されるインクを貯留するためのケースである。
図4に示すように、本実施形態の筐体部318には、第1ノズル列L1および第2ノズル列L2のそれぞれについて、空間Rbが形成される。筐体部318の空間Rbと流路基板312の空間Raとは、互いに連通する。空間Raと空間Rbとで構成される空間は、複数の圧力室Cvに供給されるインクを貯留するリザーバーである液体貯留室Rとして機能する。液体貯留室Rには、筐体部318に形成された導入口318aを介してインクが供給される。液体貯留室R内のインクは、供給液室312cと各供給流路312aとを介して圧力室Cvに供給される。吸振体315は、液体貯留室Rの壁面を構成する可撓性のフィルム状のコンプライアンス基板であり、液体貯留室R内のインクの圧力変動を吸収する。
【0076】
配線基板317は、駆動回路340と複数の圧電素子311とを電気的に接続するための配線が形成された板状部材である。配線基板317のc2方向を向く面は、振動板316に導電性の複数のバンプTを介して接合される。一方、配線基板317のc1方向を向く面には、駆動回路340が実装される。
【0077】
駆動回路340は、各圧電素子311を駆動するための駆動信号および基準電圧を出力するIC(Integrated Circuit)チップである。具体的には、駆動回路340は、前述の制御信号SIに基づいて、複数の圧電素子311のそれぞれについて、駆動信号Comを駆動パルスPDとして供給するか否かを切り替える。
【0078】
配線基板317のc1方向を向く面には、図示しないが、制御装置600に電気的に接続される外部配線の端部が接合される。当該外部配線は、例えば、FPC(Flexible Printed Circuits)またはFFC(Flexible Flat Cable)等の接続部品で構成される。なお、配線基板317がFPCまたはFFC等であってもよい。
【0079】
1-4.立体物印刷装置の動作および立体物印刷方法
図5は、第1実施形態に係る立体物印刷方法の流れを示すフローチャートである。当該立体物印刷方法は、立体物印刷装置100を用いて行われる。立体物印刷装置100では、
図5に示すように、まず、ステップS110において、ワークWが設置される。なお、このとき、必要に応じて、ワークWに代えて、または、ワークWに加えて、物体Oが設置される。また、ワークまたは物体Oの設置は、ユーザーによる手作業で行ってもよいし、プログラムPG1に従うロボット200の動作等により自動で行ってもよい。
【0080】
次に、ステップS120において、前述のようにワークWのCADデータ等を用いてワーク情報Daがデータ生成部614により生成される。その後、ステップS130において、ポイントデータDcがデータ生成部614により生成される。このとき、パス数に応じたN回の検出動作MDが行われる。そして、ステップS140において、ステップS130で生成したポイントデータDcを用いて、パス数に応じたN回の印刷動作MPが行われる。
【0081】
図6は、
図5に示すポイントデータDcの生成の流れを示すフローチャートである。以下、
図6に基づいて、
図5に示すステップS130における処理の流れを説明する。
図6に示すように、まず、液体吐出ヘッド310の実際の走査経路を検出する検出動作MDが行われる。
【0082】
検出動作MDでは、最初に、ステップS131において、ワーク情報Daに基づいて、基準経路として理想的な走査経路を示すポイントデータDcがデータ生成部614により生成される。次に、ステップS132において、ステップS131で生成したポイントデータDcを用いてロボット200を動作させつつ、検出パターンがワークWまたは物体Oに印刷される。その後、ステップS133において、ステップS132における実際の走査経路が検出される。
【0083】
次に、ステップS134において、検出動作MDの検出結果、すなわちステップS133で検出した実際の走査経路に基づいて、補正した経路を示すポイントデータDcがデータ生成部614により生成される。その後、確認動作MCが行われる。
【0084】
確認動作MCでは、最初に、ステップS135において、ステップS134で生成したポイントデータDcを用いてロボット200を動作させつつ、前述のステップS132と同様、検出パターンがワークWまたは物体Oに印刷される。次に、ステップS136において、前述のステップS133と同様、ステップS135における実際の走査経路が検出される。その後、ステップS137において、ステップS136で検出した実際の走査経路が所望の走査経路であるか否かが判断される。例えば、ステップS136で検出した実際の走査経路と基準経路との差が所定範囲内である場合、ステップS136で検出した実際の走査経路が所望の走査経路であると判断される。
【0085】
実際の走査経路が所望の走査経路でない場合、前述のステップS134に戻り、実際の走査経路が基準経路に近づくように、ポイントデータDcの調整が行われ、再度補正した経路を示すポイントデータDcがデータ生成部614により生成される。一方、実際の走査経路が所望の走査経路である場合、ステップS138において、ステップS137からの移行回数がN回目であるか否かにより、Nパス目か否かが判断される。
【0086】
Nパス目に達していない場合、前述のステップS131に戻り、後続するパスについて、前述と同様の処理が行われる。一方、Nパス目に達した場合、前述の
図5に示すステップS140に移行し、印刷が行われる。
【0087】
なお、確認動作MCにより所望の経路であることを確認することができるが、確認動作MCは本発明において必須の動作ではなく、要求される印刷品質の程度などによっては適宜省略し、ポイントデータの調整に要する時間を短縮することも可能である。言い換えると、ステップS134でポイントデータDcを生成した後、ステップS138へと直接進んでも良い。
【0088】
図7は、第1実施形態における検出動作MDおよび印刷動作MPを説明するための図である。
図7では、検出動作MDおよび印刷動作MPのそれぞれの回数であるパス数が2回である場合が例示される。
図7に示す例では、各動作において、液体吐出ヘッド310がY軸に沿う方向に走査される。
【0089】
ワークWの第1領域RP1に対して1パス目の印刷動作MP_1による印刷が行われるが、この印刷に先立ち、第1領域RP1またはそれに対応する領域に対して、1パス目の検出動作MD_1が行われる。同様に、ワークWの第2領域RP2に対して2パス目の印刷動作MP_2による印刷が行われるが、この印刷に先立ち、第2領域RP2またはそれに対応する領域に対して、2パス目の検出動作MD_2が行われる。ここで、第1領域RP1および第2領域RP2は、互いの一部同士が重なるように、X軸に沿う方向にずれて配置される。本実施形態では、1パス目および2パス目の検出動作MDが順次行われた後に、1パス目および2パス目の印刷動作MPが順次行われる。なお、パス数は、1回でもよいし、3回以上でもよい。
【0090】
図8は、理想的な走査経路を示すポイントデータDcを説明するための図である。
図8では、1パス目の検出動作MDにおける理想的な走査経路である基準経路RU_1を示すポイントデータDc_1が示される。なお、
図8では、液体吐出ヘッド310の複数のノズルNが模式的に示される。また、
図8では、理想的な走査経路が液体吐出ヘッド310の走査方向DSに沿う直線的な経路であるが、理想的な走査経路は、必要に応じて、湾曲または屈曲する部分を有してもよい。
【0091】
図8に示す例では、ポイントデータDc_1は、データPS、P1~P15およびPEの17個のデータで構成される。データPSは、液体吐出ヘッド310の走査経路における開始位置を示す。データPEは、液体吐出ヘッド310の走査経路における終了位置を示す。データP1~P15は、液体吐出ヘッド310の走査経路における開始位置と終了位置との間の位置を示す。なお、液体吐出ヘッド310の走査経路における開始位置と終了位置との間の位置を示すデータの数は、
図8に示す例に限定されず、任意である。
【0092】
図9は、理想的な走査経路を示すポイントデータDc_1を用いた場合における実際の走査経路RUaに関する位置の検出を説明するための図である。
図9では、1パス目の検出動作MDにおける実際の走査経路RUaである第1走査経路RUa_1が示される。1パス目の検出動作MDでは、
図9に示すように、検出パターンとして第1検出パターンPT1が印刷される。
【0093】
図9に示す例では、第1検出パターンPT1は、複数のマークM1で構成される。複数のマークM1は、前述のポイントデータDc_1が示す位置ごとに各ノズルNからインクを吐出することにより形成される。第1走査経路RUa_1が理想的な走査経路である場合、第1検出パターンPT1の複数のマークM1は、X軸方向およびY軸方向に行列状に並ぶ。
図9では、第1走査経路RUa_1が理想的な走査経路からX軸方向にずれて蛇行し、これに伴い、第1検出パターンPT1の複数のマークM1の配置がX軸方向に歪んだ状態が示される。
【0094】
第1走査経路RUa_1の検出は、第1検出パターンPT1を撮像装置330により撮像することで得られる撮像情報Dbを用いて行われる。当該撮像は、例えば、第1検出パターンPT1の形成時に液体吐出ヘッド310とともに撮像装置330を走査しつつ行われる。なお、当該撮像は、第1検出パターンPT1の形成後の別途の走査において撮像装置330により行ってもよい。
【0095】
図9には、撮像装置330の画角AIが破線で示される。画角AIは、2個以上のマークM1を含むことが好ましい。Y軸に沿う方向における位置の異なる2個以上のマークM1が画角AIに含まれる場合、これらのマークM1の位置関係に基づいて、ポイントデータDc_1が示す複数のデータのうちの隣り合う2つのデータ間に対応する実際の位置のX軸に沿う方向のずれや、Y軸に沿う方向のずれを検出することができる。また、X軸に沿う方向における位置の異なる2個以上のマークM1が画角AIに含まれる場合、当該マークM1同士の間隔からY軸まわりの姿勢を検出することもできる。さらに、Y軸に沿う方向における位置の異なる2個以上のマークM1と、X軸に沿う方向における位置の異なる2個以上のマークM1とが画角AIに含まれる場合、これらのマークM1の位置関係に基づいて、液体吐出ヘッド310のZ軸まわりの姿勢を検出することもできる。
【0096】
図10は、理想的な走査経路に対する実際の走査経路RUaのずれを説明するための図である。
図10では、1パス目の検出動作MDにおける実際の走査経路である第1走査経路RUa_1が基準経路RU_1と対比して示される。
【0097】
図11は、実際の走査経路RUaに基づいて補正したポイントデータDc_1の例を説明するための図である。
図11では、1パス目の検出動作MDの検出結果を用いて補正したポイントデータDc_1が示される。前述のステップS134において生成されるポイントデータDc_1は、
図11に示すように、基準経路RU_1に対する第1走査経路RUa_1のずれを相殺するように移動する補正経路RC_1を求め、この補正経路RC_1の位置を示すように、ポイントデータDc_1を補正することにより得られる。
【0098】
図11に示す例では、基準経路RU_1と補正経路RC_1との差の絶対値が基準経路RU_1と第1走査経路RUa_1との差の絶対値と等しい。すなわち、基準経路RU_1と補正経路RC_1との差の絶対値を、基準経路RU_1と第1走査経路RUa_1との差の絶対値に係数αを乗じた補正量としたとき、αは、1である。
【0099】
図12は、実際の走査経路RUaに基づいて補正したポイントデータDc_1の他の例を説明するための図である。
図12に示す例では、基準経路RU_1と補正経路RC_1との差の絶対値が基準経路RU_1と第1走査経路RUa_1との差の絶対値よりも大きい。すなわち、基準経路RU_1と補正経路RC_1との差の絶対値を、基準経路RU_1と第1走査経路RUa_1との差の絶対値に係数αを乗じた補正量としたとき、αは、1よりも大きい。つまり、実際の走査経路RUaに基づいたポイントデータDc_1の補正の度合いは係数αによって任意に設定することが可能である。
図12では、αが1よりも大きい場合を示したが、αを1よりも小さく設定することも可能である。
【0100】
図13は、補正したポイントデータDc_1を用いた場合における実際の走査経路RUbを説明するための図である。
図13では、確認動作MCにおいて、1パス目の検出動作MDの検出結果に基づいて補正したポイントデータDc_1を用いてロボット200を動作させつつ第1検出パターンPT1を印刷した状態が示される。また、
図13では、前述の
図12に示す補正経路RC_1が実際の走査経路との対比のために図示される。当該実際の走査経路は、第1印刷動作MP_1における実際の走査経路である第2走査経路RUb_1に相当する。
【0101】
図13に示すように、第2走査経路RUb_1は、理想的な走査経路に対するずれが低減される。確認動作MCにおける実際の走査経路の検出は、第1走査経路RUa_1の検出と同様に行われる。
【0102】
図14は、後続するパスにおける実際の走査経路RUaの検出を説明するための図である。
図14では、2パス目の検出動作MDにおける検出パターンである第2検出パターンPT2を印刷した状態が示される。
【0103】
図14に示す例では、第2検出パターンPT2は、複数のマークM2で構成される。複数のマークM2は、前述の第1検出パターンPT1の複数のマークM1と同様、2パス目のポイントデータDcが示す位置ごとに各ノズルNからインクを吐出することにより形成される。ただし、第2検出パターンPT2は、第1検出パターンPT1に対してY軸に沿う方向にずれた位置に配置される。このため、第2検出パターンPT2を撮像装置330の撮像結果から第1検出パターンPT1と区別して検出することができる。
【0104】
図15は、後続するパスにおける補正後の走査経路RUbを説明するための図である。
図15では、確認動作MCにおいて、2パス目の検出動作MDの検出結果に基づいて補正したポイントデータDcを用いてロボット200を動作させつつ第2検出パターンPT2を印刷した状態が示される。また、
図15では、当該ポイントデータDcが示す経路である補正経路RC_2が実際の走査経路との対比のために図示される。当該実際の走査経路は、第2印刷動作MP_2における実際の走査経路である第2走査経路RUb_1に相当する。
【0105】
以上のように、立体物印刷装置100は、液体吐出ヘッド310と、「移動機構」の一例であるロボット200と、検出部615と、を有する。前述のように、液体吐出ヘッド310は、立体的なワークWに対して、「液体」の一例であるインクを吐出する。ロボット200は、ワークWに対する液体吐出ヘッド310の相対的な位置および姿勢を変化させる。検出部615は、ワークWまたは物体Oに対する液体吐出ヘッド310の相対的な位置を検出する。本実施形態の立体物印刷装置100は、前述のように、撮像装置330を有しており、検出部615は、撮像装置330の撮像結果に基づいて、ワークWまたは物体Oに対する液体吐出ヘッド310の相対的な位置を検出する。
【0106】
特に、立体物印刷装置100は、前述のように、第1検出動作MD_1と第1印刷動作MP_1とを実行する。第1検出動作MD_1は、ロボット200がワークWまたは物体Oに対して液体吐出ヘッド310を第1走査経路RUa_1に沿って走査させつつ、検出部615が第1走査経路RUa_1に関する位置を検出する。第1印刷動作MP_1は、ロボット200が液体吐出ヘッド310を第1検出動作MD_1における検出部615による検出結果に基づく第2走査経路RUb_1に沿って走査させつつ、液体吐出ヘッド310がワークWの第1領域RP1にインクを吐出する。
【0107】
以上の立体物印刷装置100では、第2走査経路RUb_1が第1検出動作MD_1における検出部615による検出結果に基づくので、基準経路RU_1に対する第1走査経路RUa_1のずれを補正した第2走査経路RUb_1を用いて第1印刷動作MP_1を行うことができる。ここで、基準経路RU_1に対する第1走査経路RUa_1のずれ量が第1量である場合、第1走査経路RUa_1と第2走査経路RUb_1との経路差が第1経路差であり、当該すれ量が第1量よりも大きい第2量である場合、当該経路差が第1経路差よりも大きい第2経路差である。言い換えると、第1走査経路RUa_1と基準経路RU_1の経路差が大きいほど、補正量も大きくするため、第1走査経路RUa_1と第2走査経路RUb_1の経路差も大きくなる。このため、第1検出動作MD_1を行わずに第1印刷動作MP_1を行う場合に比べて、ワークWの第1領域RP1に対する印刷の画質を高めることができる。
【0108】
また、第1検出動作MD_1の後に第1印刷動作MP_1による印刷を行うので、前述のずれを検出しながらフィードバック制御により走査経路を補正する構成に比べて、印刷速度を速くすることができる。これに対し、当該フィードバック制御を行う構成では、その制御周期により印刷速度が制限されるので、印刷速度を速くすることが難しい。
【0109】
なお、第1検出動作MD_1における検出部615による検出結果から、理想的な走査経路である基準経路RU_1に対する第1走査経路RUa_1のずれ量を把握し、当該ずれ量が相殺されるように印刷データImgを補正することや、当該ずれ量が相殺されるようにインク吐出に対応するノズルをノズル列方向にシフトする制御を行うことで、ポイントデータDc_1を補正することなくワークWの第1領域RP1に対する印刷画質を向上させることも可能であるが、この場合では1回の印刷動作におけるb軸方向の有効な印字幅をノズル列の長さよりも狭く設定する必要があるため、印刷の生産性が低下してしまう。
【0110】
第1検出動作MD_1において、液体吐出ヘッド310がワークWまたは物体Oにインクを吐出することにより第1検出パターンPT1を形成し、検出部615が第1検出パターンPT1を検出することにより第1走査経路RUa_1に関する位置を検出する。
【0111】
ここで、第1検出パターンPT1は、ワークWまたは物体Oに対する液体吐出ヘッド310からのインクの実際の着弾位置を示す。このため、第1検出パターンPT1を用いることにより、実際のインクを吐出せずに第1走査経路RUa_1に関する位置を検出する場合に比べて、基準経路RU_1に対する第1走査経路RUa_1のずれを高精度に検出することができる。
【0112】
本実施形態の立体物印刷装置100は、撮像装置330を有する。検出部615は、撮像装置330の撮像結果を用いてワークWまたは物体Oに対する液体吐出ヘッド310の走査経路に関する位置を検出する。
【0113】
ここで、本実施形態の第1検出パターンPT1は、互いに間隔を隔てて配置される複数のマークM1を含んでおり、撮像装置330は、当該複数のマークM1のうちの2個以上を含む画角AIで第1検出パターンPT1を撮像する。このため、1つの撮像画像に当該2個以上のマークM1が含まれるので、例えば1つの撮像画像にマークM1が1個のみしか含まれない場合に比べて、複数のマークM1間の位置関係を高精度に検出しやすい。したがって、このような検出には、基準経路RU_1に対する第1走査経路RUa_1のずれを高精度に検出しやすいという利点がある。特に、走査方向DSでの位置が互いに異なる複数のマークM1間の位置関係を検出すれば、第1印刷動作MP_1による印刷不良、例えば、印刷画像において走査方向DSと交わる方向に生じる歪みなどが生じ難く、第1印刷動作MP_1による印刷の画質を高めやすい。
【0114】
また、前述のように、液体吐出ヘッド310に対する撮像装置330の位置が固定である。このため、1回の走査で第1検出パターンPT1の形成および撮像を一括して行うことができる。この結果、第1検出パターンPT1の形成および撮像を別々の走査により行う場合に比べて、第1検出動作MD_1に要する時間を短縮することができる。また、撮像装置330の画角AIが第1検出パターンの形成に伴う液体吐出ヘッド310の移動に追従するので、撮像装置330の数が1つであっても、第1検出パターンPT1を走査方向DSの全域にわたり撮像装置330により撮像することができる。このため、ワークWまたは物体Oに対して撮像装置330の位置が固定である構成に比べて、立体物印刷装置100の構成を簡単化したり、印刷可能な領域を広くしたりすることができる。これに対し、ワークWまたは物体Oに対して撮像装置330の位置が固定である構成では、撮像装置330の設置位置または数等によっては、撮像装置330の撮像可能な範囲に応じて第1検出パターンPT1の形成可能領域または印刷可能領域が制限されてしまう。
【0115】
なお、第1検出パターンPT1の形成および撮像を別々の走査により行ってもよい。この場合、第1検出パターンPT1の形成および撮像における走査速度を互いに異ならせることができる。このため、第1検出パターンPT1の形成および撮像のそれぞれの精度を高めやすいという利点がある。
【0116】
また、前述のように、立体物印刷装置100は、第2検出動作MD_2と第2印刷動作MP_2とをさらに実行する。第2検出動作MD_2は、前述の第1検出動作MD_1と第1印刷動作MP_1との間で、ロボット200がワークWまたは物体Oに対して液体吐出ヘッド310を第3走査経路RUa_2に沿って走査させつつ、検出部615が第3走査経路RUa_2に関する位置を検出する。第2印刷動作MP_2は、ロボット200がワークWまたは物体Oに対して液体吐出ヘッド310を検出部615による検出結果に基づく第4走査経路RUb_2に沿って走査させつつ、液体吐出ヘッド310がワークWの第1領域RP1に部分的に重なる第2領域RP2にインクを吐出する。
【0117】
ここで、前述の第1走査経路RUa_1および第2走査経路RUb_1の関係と同様、基準経路RU_2に対する第3走査経路RUa_2のずれ量が第3量である場合、第3走査経路RUa_2と第4走査経路RUb_2との経路差が第3経路差であり、当該すれ量が第3量よりも大きい第4量である場合、当該経路差が第3経路差よりも大きい第4経路差である。このため、前述の第1領域RP1に対する印刷と同様、第2検出動作MD_2を行わずに第2印刷動作MP_2を行う場合に比べて、ワークWの第2領域RP2に対する印刷の画質を高めることができる。なお、第2印刷動作MP_2の実行タイミングは、第2検出動作MD_2の後であれば、第1印刷動作MP_1の前であっても後であってもよい。
【0118】
また、前述の第1検出動作MD_1における第1検出パターンPT1と同様、第2検出動作MD_2において、液体吐出ヘッド310がワークWまたは物体Oにインクを吐出することにより第1検出パターンPT1に対して液体吐出ヘッド310の走査方向DSにずれた位置に第2検出パターンPT2を形成し、検出部615が第2検出パターンPT2を検出することにより第3走査経路RUa_2に関する位置を検出する。このため、第1検出パターンPT1を用いた場合と同様、第2検出パターンPT2を用いることにより、実際のインクを吐出せずに第3走査経路RUa_2に関する位置を検出する場合に比べて、基準経路RU_2に対する第3走査経路RUa_2のずれを高精度に検出することができる。
【0119】
ここで、第2検出パターンPT2は、第1検出パターンPT1とは異なる領域に形成されるだけでなく、第1検出パターンPT1に対して液体吐出ヘッド310の走査方向DSにずれた位置に形成される。このため、第2検出パターンPT2を第1検出パターンPT1と区別して検出することが容易である。また、第1検出パターンPT1および第2検出パターンPT2の位置関係を検出することも容易である。
【0120】
本実施形態では、前述のように、第1検出パターンPT1と第2検出パターンPT2との形状または色が互いに異なる。このため、これらのパターンの形状および色が同一である場合に比べて、第2検出パターンPT2を第1検出パターンPT1と区別して検出することが容易である。
【0121】
また、前述のような複数のマークM1で構成される第1検出パターンPT1の形成に用いるインクの量は、第1印刷動作MP_1に用いるインクの量に比べて少ない。このため、第1検出パターンPT1の形成に用いるインクの量が第1印刷動作MP_1に用いるインクの量に比べて多い場合に比べて、第1印刷動作MP_1における印刷の画質に対する第1検出パターンPT1の影響が低減される。なお、第2検出パターンPT2についても第1検出パターンPT1と同様であり、第2印刷動作MP_2における印刷の画質に対する第2検出パターンPT2の影響が低減される。
【0122】
また、前述のように、立体物印刷装置100は、第1検出動作MD_1と第1印刷動作MP_1との間に、確認動作MCをさらに実行する。確認動作MCは、ロボット200がワークWまたは物体Oに対して液体吐出ヘッド310を第1検出動作MD_1における検出部615による検出結果に基づく走査経路に沿って走査させつつ、検出部615が当該走査経路に関する位置を検出する。このため、確認動作MCにおいて第2走査経路RUb_1が検出部615の検出結果に基づいて所望の経路であることを確認したうえで、第2走査経路RUb_1を用いて第1印刷動作MP_1を実行することができる。
【0123】
前述のように、ロボット200は、「ロボットコントローラー」の一例である制御装置600に接続されており、液体吐出ヘッド310を含むエンドエフェクターの一例である液体吐出ヘッドユニット300が装着される多関節ロボットである。ロボット200は、複数の関節部231~236の動作の組み合わせにより液体吐出ヘッドユニット300を直線状または曲線状等の線状の経路に沿って移動させる。このとき、液体吐出ヘッド310が移動すべき経路の指示として理想経路である基準経路RU_1等をロボット200に与えても、各アームの加工誤差または組み立て誤差等の各種誤差、各アームの機械的振動、モーターまたは減速機の偏心、ロータリーエンコーダーの分解の粗さ等の要因により、各関節部の動作誤差が様々なタイミングで出現するので、実際の経路が蛇行して当該理想経路に対してずれてしまう。このようなずれは、あらかじめ予測することが難しい。したがって、このような多関節ロボットを移動機構として用いた場合、第1検出動作MD_1および第1印刷動作MP_1を実行することによる効果が顕著となる。なお、理想的な走査経路に対する実際の経路の前述のようなずれは多関節ロボット以外の移動機構、つまりは複数の可動部の動作の組み合わせによって移動が可能な機構においても同様に生じ得るものであり、第1検出動作MD_1および第1印刷動作MP_1を実行することは、液体吐出ヘッド310を理想的な走査経路に沿って移動させるうえで同様に有用である。
【0124】
また、前述のように、立体物印刷装置100は、液体吐出ヘッド310が通過すべき位置を示すポイントデータDcを生成するデータ生成部614をさらに有する。制御装置600は、データ生成部614からのポイントデータDcに基づいてロボット200の駆動を制御する。ここで、データ生成部614は、第1検出動作MD_1における検出部615の検出結果に基づいて、第1印刷動作MP_1に用いるポイントデータDc_1を生成する。
【0125】
具体的には、データ生成部614は、第1検出動作MD_1における検出部615の検出結果に基づいて、第2走査経路RUb_1が第1走査経路RUa_1よりも基準経路RU_1に近づくように、第1検出動作MD_1に用いたポイントデータDc_1を補正することにより、第1印刷動作MP_1に用いるポイントデータDc_1を生成する。
【0126】
ここで、データ生成部614は、第1検出動作MD_1における検出部615の検出結果に基づいて、液体吐出ヘッド310が通過すべき位置を第1走査経路P1aに交差する方向にずらすように、第1検出動作MD_1に用いたポイントデータDc_1を補正する。このため、第2走査経路RUb_1を第1走査経路RUa_1bよりも基準経路RU_1に近づけることができる。
【0127】
前述のように、第1検出動作MD_1では、ワークWとワークWに対応する物体Oとのうちのいずれかが用いられる。第1検出動作MD_1において、物体Oに対してロボット200による液体吐出ヘッド310の走査と検出部615による検出とを行う場合、物体Oの形状は、ワークWの形状と実質的に同一であり、第1検出動作MD_1と第1印刷動作MP_1との間に、物体OをワークWに交換する。このため、第1検出動作MD_1において吐出したインクが第1印刷動作MP_1におけるワークWに対する印刷の画質に影響することがない。
【0128】
一方、第1検出動作MD_1において、ワークWに対してロボット200による液体吐出ヘッド310の走査と検出部615による検出とを行う場合、前述のような物体OをワークWに交換する手間がないという利点がある。
【0129】
2.第2実施形態
図16は、第2実施形態に係る立体物印刷装置100Aの電気的な構成を示すブロック図である。立体物印刷装置100Aは、液体吐出ヘッドユニット300および制御装置600に代えて、液体吐出ヘッドユニット300Aおよび制御装置600Aを有する以外は、前述の第1実施形態の立体物印刷装置100と同様である。液体吐出ヘッドユニット300Aは、撮像装置330に代えて、距離センサー360を有する以外は、液体吐出ヘッドユニット300と同様である。制御装置600Aは、プログラムPG1に代えてプログラムPG2を用いる以外は、制御装置600と同様である。
【0130】
制御装置600Aでは、処理回路610が、記憶回路620に記憶されるプログラムPG2を実行することにより、情報取得部611、アーム制御部612、吐出制御部613、データ生成部614および検出部615Aとして機能する。
【0131】
検出部615Aは、距離センサー360の計測結果である計測情報Ddを用いて、ワークWまたは物体Oに対する液体吐出ヘッド310の走査経路に関する位置を検出する。
【0132】
図17は、第2実施形態における実際の走査経路RUaの検出を説明するための図である。
図17に示すように、距離センサー360は、ワークWに対して相対的な位置が固定される基準面RFとの間の距離を計測する変位センサーである。本実施形態の基準面RFは、X2方向を向く平面である場合が例示される。ここで、距離センサー360の検出軸ASは、基準面RFに交差する。
図17に示す例では、検出軸ASは、X1方向を向く。なお、基準面RFは、ワークWに対して相対的な位置が固定されていれば、いかなる物体の表面でもよく、ワークWの表面であってもよいし、ワークWとは別体の板材等の物体の表面であってもよい。また、基準面RFの向く方向は、あらかじめワークWの面WFに対する位置および姿勢が把握されていればよく、X2方向に限定されず、任意である。
【0133】
立体物印刷装置100Aを用いた立体物印刷方法の流れを説明する。当該立体物印刷方法は、基本的な順序として
図5および
図6のフローチャートの説明に準ずるが、本実施形態においては第1実施形態と異なり、ステップS132およびステップS135の検出パターンの印刷は実行されない。
【0134】
当該立体物印刷方法では、最初に第1実施形態と同様にワークWが設置される。なお、このとき、必要に応じて、ワークWに代えて、または、ワークWに加えて、物体Oが設置される。また、ワークまたは物体Oの設置は、ユーザーによる手作業で行ってもよいし、プログラムPG2に従うロボット200の動作等により自動で行ってもよい。
【0135】
次に、ワークWのCADデータ等を用いてワーク情報Daがデータ生成部614により生成される。その後、ポイントデータDcがデータ生成部614により生成される。このポイントデータDcの生成過程では、ワーク情報Daに基づいて、基準経路として理想的な走査経路を示すポイントデータDcがデータ生成部614により生成される。
【0136】
次に、検出動作MDを実行する。検出動作MDでは、理想的な走査経路を示すポイントデータDcを用いてロボット200を動作させつつ、
図17に示すように、距離センサー360の計測結果である計測情報Ddを用いて、ワークWまたは物体Oに対する液体吐出ヘッド310の走査経路に関する位置を検出する。
【0137】
次に、検出動作MDの検出結果、すなわち実際の走査経路RUaに基づいて、補正した経路を示すポイントデータDcがデータ生成部614により生成される。そして、補正した経路を示すポイントデータDcを用いて、ワークWに対して印刷動作MPが行われ、印刷データImgに基づく画像がワークWの表面に形成される。
【0138】
立体物印刷装置100Aを用いた立体物印刷方法においても第1実施例と同様にパス数に応じたN回の検出動作MD、およびN回の印刷動作MPを行うことも可能である。また、第1実施例と同様に、検出動作MDと印刷動作MPの間に確認動作MCを行うことも可能である。
【0139】
以上のように、本実施形態の立体物印刷装置100Aは、距離センサー360をさらに有する。検出部615Aは、距離センサー360の測定結果を用いて物体Oに対する液体吐出ヘッド310の走査経路に関する位置を検出する。ここで、液体吐出ヘッド310に対する距離センサー360の相対的な位置が固定される。そして、距離センサー360は、第1検出動作MD_1において、ワークWに対する相対的な位置が固定される基準面RFとの間の距離を測定する。このため、液体吐出ヘッド310からインクを実際に吐出させなくても、距離センサー360の測定結果に基づいて液体吐出ヘッド310の走査経路に関する位置を検出することができる。この結果、第1実施例に記載のように検出パターンを印刷する構成に比べ、インクの使用量を低減することができる。また、物体Oを用いない場合において、第1実施例に記載のように検出パターンを印刷する構成に比べ、検出パターンがワークWに形成される画像に対して影響を及ぼすことを防ぐことができる。
【0140】
本実施形態では、第1検出動作MD_1において、距離センサー360の検出軸ASが液体吐出ヘッド310の走査方向DSに交差する。このため、距離センサー360の測定結果に基づいて液体吐出ヘッド310の走査経路に関する位置を検出することができる。特に、距離センサー360の検出軸ASが液体吐出ヘッド310の走査方向DSだけでなく液体吐出ヘッド310からのインクの吐出方向にも交差する場合、例えば、本実施形態のように検出軸ASがX軸に沿う場合、基準経路RU_1に対して蛇行する走査経路のずれを高精度に検出しやすいという利点がある。
【0141】
3.変形例
以上の例示における各形態は多様に変形され得る。前述の各形態に適用され得る具体的な変形の態様を以下に例示する。なお、以下の例示から任意に選択される2以上の態様は、互いに矛盾しない範囲で適宜に併合され得る。
【0142】
3-1.変形例1
前述の形態では、移動機構として6軸の垂直多軸ロボットを用いる構成が例示されるが、当該構成に限定されない。移動機構は、ワークに対して液体吐出ヘッドの相対的な位置および姿勢を3次元的に変化させることができればよい。したがって、移動機構は、例えば、6軸以外の垂直多軸ロボットでもよいし、水平多軸ロボットでもよい。また、ロボットアームが有する可動部は、回動機構に限定されず、例えば、伸縮機構等でもよい。或いは、液体吐出ヘッドの位置を3次元的に変化させることが可能であれば、ロボットアームでなくとも良い。
【0143】
3-2.変形例2
前述の形態では、ロボットアームの先端に対する液体吐出ヘッドの固定方法としてネジ止め等を用いる構成が例示されるが、当該構成に限定されない。例えば、ロボットアームの先端に装着されるハンド等の把持機構により液体吐出ヘッドを把持することにより、ロボットアームの先端に対して液体吐出ヘッドを固定してもよい。
【0144】
3-3.変形例3
また、前述の形態では、液体吐出ヘッドを移動させる構成の移動機構が例示されるが、当該構成に限定されず、例えば、液体吐出ヘッドの位置が固定されており、移動機構がワークを移動させ、液体吐出ヘッドに対してワーク相対的な位置および姿勢を3次元的に変化させる構成でもよい。この場合、例えば、ロボットアームの先端に装着されるハンド等の把持機構によりワークが把持される。
【0145】
3-4.変形例4
前述の形態では、1種類のインクを用いて印刷を行う構成が例示されるが、当該構成に限定されず、2種以上のインクを用いて印刷を行う構成にも本発明を適用することができる。
【0146】
3-5.変形例5
本発明の立体物印刷装置の用途は印刷に限定されない。例えば、色材の溶液を吐出する立体物印刷装置は、液晶表示装置のカラーフィルターを形成する製造装置として利用される。また、導電材料の溶液を吐出する立体物印刷装置は、配線基板の配線や電極を形成する製造装置として利用される。また、立体物印刷装置は、接着剤等の液体をワークに塗布するジェットディスペンサーとしても利用できる。
【符号の説明】
【0147】
100…立体物印刷装置、100A…立体物印刷装置、200…ロボット(移動機構)、300…液体吐出ヘッドユニット(エンドエフェクター)、300A…液体吐出ヘッドユニット(エンドエフェクター)、310…液体吐出ヘッド、330…撮像装置、360…距離センサー、600…制御装置(ロボットコントローラー)、600A…制御装置(ロボットコントローラー)、614…データ生成部、615…検出部、615A…検出部、AI…画角、AS…検出軸、DS…走査方向、Dc…ポイントデータ、Dc_1…ポイントデータ、Dc_N…ポイントデータ、M1…マーク、M2…マーク、MC…確認動作、MD…検出動作、MD_1…第1検出動作、MD_2…第2検出動作、MD_N…印刷動作、MP…印刷動作、MP_1…第1印刷動作、MP_2…第2印刷動作、MP_N…印刷動作、O…物体、PT1…第1検出パターン、PT2…第2検出パターン、RF…基準面、RP1…第1領域、RP2…第2領域、RU_1…基準経路、RU_2…基準経路、RUa…走査経路、RUa_1…第1走査経路、RUa_1b…第1走査経路、RUa_2…第3走査経路、RUb…走査経路、RUb_1…第2走査経路、RUb_2…第4走査経路、W…ワーク。
【手続補正書】
【提出日】2024-07-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
立体的なワークに対して液体を吐出する液体吐出ヘッドと、
前記ワークまたは前記ワークに対応する物体に対する前記液体吐出ヘッドの相対的な位置を変化させるロボットと、
前記ワークまたは前記物体に対する前記液体吐出ヘッドの相対的な位置を検出する検出部と、を有し、
前記ロボットが第1走査経路に沿って前記液体吐出ヘッドを前記ワークまたは前記物体に対して相対的に走査させつつ、前記検出部が前記第1走査経路に関する位置を検出する第1検出動作と、
前記ロボットが前記第1検出動作における前記検出部による検出結果に基づく第2走査経路に沿って前記液体吐出ヘッドを前記ワークに対して相対的に走査させつつ、前記液体吐出ヘッドが前記ワークの第1領域に液体を吐出する第1印刷動作と、を実行する、
ことを特徴とする立体物印刷装置。
【請求項2】
前記検出部による検出結果に基づいて、前記第1走査経路と基準経路とのずれ量を検出する、
ことを特徴とする請求項1に記載の立体物印刷装置。
【請求項3】
前記検出部による検出結果に基づいて、前記第1走査経路と前記基準経路とのずれ量であって、前記基準経路と交差する方向における前記ずれ量を検出する、
ことを特徴とする請求項2に記載の立体物印刷装置。
【請求項4】
前記第2走査経路は、前記基準経路と交差する方向における前記ずれ量が低減された経路である、
ことを特徴とする請求項3に記載の立体物印刷装置。
【請求項5】
前記液体吐出ヘッドに対する相対的な位置が固定されたセンサーをさらに有し、
前記検出部は、前記第1検出動作における前記センサーの測定結果を用いて前記ワークまたは前記物体に対する前記液体吐出ヘッドの相対的な位置を検出する、
ことを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1項に記載の立体物印刷装置。
【請求項6】
前記第1検出動作において、前記センサーの検出軸が前記液体吐出ヘッドの走査方向に交差する、
ことを特徴とする請求項5に記載の立体物印刷装置。
【請求項7】
前記液体吐出ヘッドは、前記第1検出動作において液体を吐出しない、
ことを特徴とする請求項5または6に記載の立体物印刷装置。
【請求項8】
前記第1検出動作において、前記液体吐出ヘッドが前記ワークまたは前記物体に液体を吐出することにより第1検出パターンを形成し、前記検出部が前記第1検出パターンを検出することにより前記第1走査経路に関する位置を検出する、
ことを特徴とする請求項1または4の何れか1項に記載の立体物印刷装置。
【請求項9】
撮像装置をさらに有し、
前記検出部は、前記撮像装置の撮像結果を用いて前記ワークまたは前記物体に対する前記液体吐出ヘッドの走査経路に関する位置を検出し、
前記第1検出パターンは、互いに間隔を隔てて配置される複数のマークを含んでおり、
前記撮像装置は、前記複数のマークのうちの2個以上を含む画角で前記第1検出パターンを撮像する、
ことを特徴とする請求項8に記載の立体物印刷装置。
【請求項10】
前記第1検出動作と前記第1印刷動作との間に、前記ロボットが前記ワークまたは前記物体に対して前記第1検出動作における前記検出部による検出結果に基づく走査経路に沿って前記液体吐出ヘッドを前記ワークまたは前記物体に対して相対的に走査させつつ、前記検出部が当該走査経路に関する位置を検出する確認動作をさらに実行する、
ことを特徴とする請求項1から9の何れか1項に記載の立体物印刷装置。
【請求項11】
前記第1検出動作と前記第1印刷動作との間で、前記ロボットが第3走査経路に沿って前記液体吐出ヘッドを前記ワークまたは前記物体に対して相対的に走査させつつ、前記検出部が前記第3走査経路に関する位置を検出する第2検出動作と、
前記ロボットが前記検出部による検出結果に基づく第4走査経路に沿って前記液体吐出ヘッドを前記ワークに対して相対的に走査させつつ、前記液体吐出ヘッドが前記ワークの前記第1領域に部分的に重なる第2領域に液体を吐出する第2印刷動作と、をさらに実行する、
ことを特徴とする請求項1から請求項10の何れか1項に記載の立体物印刷装置。
【請求項12】
前記ロボットを制御する制御部と、
前記液体吐出ヘッドが通過すべき位置を示すポイントデータを生成するデータ生成部と、をさらに有し、
前記制御部は、前記データ生成部からのポイントデータに基づいて前記ロボットの駆動を制御し、
前記データ生成部は、前記第1検出動作における前記検出部の検出結果に基づいて、前記第1印刷動作に用いるポイントデータを生成する、
ことを特徴とする請求項1から請求項11の何れか1項に記載の立体物印刷装置。
【請求項13】
前記データ生成部は、前記第1検出動作における前記検出部の検出結果に基づいて、前記第1検出動作に用いたポイントデータを補正することにより、前記第1印刷動作に用いるポイントデータを生成する、
ことを特徴とする請求項12に記載の立体物印刷装置。
【請求項14】
前記データ生成部は、前記第1検出動作における前記検出部の検出結果に基づいて、前記液体吐出ヘッドが通過すべき位置を前記第1走査経路に交差する方向にずらすように、前記第1検出動作に用いたポイントデータを補正する、
ことを特徴とする請求項13に記載の立体物印刷装置。
【請求項15】
立体的なワークに対して液体を吐出する液体吐出ヘッドと、前記ワークまたは前記ワークに対応する物体に対する前記液体吐出ヘッドの相対的な位置を変化させるロボットと、を用いて前記ワークに対して印刷を行う立体物印刷方法であって、
前記ロボットが第1走査経路に沿って前記液体吐出ヘッドを前記ワークまたは前記物体に対して相対的に走査させつつ、前記第1走査経路に関する位置を検出する第1検出動作と、
前記ロボットが前記第1検出動作における検出結果に基づく第2走査経路に沿って前記液体吐出ヘッドを前記ワークに対して相対的に走査させつつ、前記液体吐出ヘッドが前記ワークの第1領域に液体を吐出する第1印刷動作と、を実行する、
ことを特徴とする立体物印刷方法。