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特開2024-138368超分子IKVAVマトリックス内の動力学は、ヒトIPSC由来のニューロンの機能的成熟と再生を増強する
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024138368
(43)【公開日】2024-10-08
(54)【発明の名称】超分子IKVAVマトリックス内の動力学は、ヒトIPSC由来のニューロンの機能的成熟と再生を増強する
(51)【国際特許分類】
   C07K 7/08 20060101AFI20241001BHJP
   C12N 5/0793 20100101ALI20241001BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20241001BHJP
   A61K 38/08 20190101ALI20241001BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20241001BHJP
   A61K 47/62 20170101ALI20241001BHJP
   A61K 47/65 20170101ALI20241001BHJP
【FI】
C07K7/08 ZNA
C12N5/0793
C12N5/10
A61K38/08
A61P25/00
A61K47/62
A61K47/65
C07K7/08
【審査請求】有
【請求項の数】50
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024108888
(22)【出願日】2024-07-05
(62)【分割の表示】P 2021543194の分割
【原出願日】2020-01-24
(31)【優先権主張番号】62/796,425
(32)【優先日】2019-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.MATLAB
(71)【出願人】
【識別番号】513208191
【氏名又は名称】ノースウエスタン ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】NORTHWESTERN UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】633 Clark Street,Evanston,Illinois 60208,United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ピント,ザイダ アルヴァレズ
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 浩平
(72)【発明者】
【氏名】オルテガ カノ,フアン アルベルト
(72)【発明者】
【氏名】キスキニス,エヴァンゲロス
(72)【発明者】
【氏名】スタップ,サミュエル アイ.
(57)【要約】      (修正有)
【課題】生物学的マトリックスの構造および機能をより効率的に模倣することができる合成物質の設計を提供する。
【解決手段】本明細書では、生理活性ペプチドを含んでいるペプチド両親媒性物質(PA)、生理活性PAを呈しているナノファイバー、およびそれらの使用方法が提供される。開示されたペプチド両親媒性物質は、疎水性尾部、構造ペプチドセグメント、荷電ペプチドセグメント、および生理活性IKVAVペプチドを含んでいる。開示されたPAは、細胞培養方法において、および中枢神経系損傷を治療する方法において使用され得る。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
疎水性尾部、
4以下のβシート構造形成に関する全体の傾向を有している構造ペプチドセグメント、
荷電ペプチドセグメント、および
生理活性ペプチド
を含んでいる、ペプチド両親媒性物質。
【請求項2】
前記疎水性尾部が、炭素数8~24のアルキル鎖(C8-24)を含んでいる、請求項1に記載のペプチド両親媒性物質。
【請求項3】
前記疎水性尾部が、炭素数16のアルキル鎖(C16)を含んでいる、請求項2に記載のペプチド両親媒性物質。
【請求項4】
前記構造ペプチドセグメントが、3.5以下のβシート構造形成に関する全体の傾向を有している、請求項1~3のいずれか1項に記載のペプチド両親媒性物質。
【請求項5】
前記構造ペプチドセグメントが、3以下のβシート構造形成に関する全体の傾向を有している、請求項4に記載のペプチド両親媒性物質。
【請求項6】
前記構造ペプチドセグメントが、Aを含んでいる、請求項1~5のいずれか1項に記載のペプチド両親媒性物質。
【請求項7】
前記荷電ペプチドセグメントが、酸性、塩基性、または両性イオン性のペプチドセグメントを含んでいる、請求項1~6のいずれか1項に記載のペプチド両親媒性物質。
【請求項8】
前記荷電ペプチドセグメントが、E2-4を含んでいる、請求項1~7のいずれか1項に記載のペプチド両親媒性物質。
【請求項9】
前記生理活性ペプチドが、IKVAVを含んでいる、請求項1~8のいずれか1項に記載のペプチド両親媒性物質。
【請求項10】
前記生理活性ペプチドが、リンカーによって前記荷電ペプチドセグメントに取り付けられている、請求項1~9のいずれか1項に記載のペプチド両親媒性物質。
【請求項11】
前記リンカーが、単一のグリシン(G)残基である、請求項10に記載のペプチド両親媒性物質。
【請求項12】
前記ペプチド両親媒性物質が、C8‐24‐A(G)IKVAVを含んでいる、請求項1~11のいずれか1項に記載のペプチド両親媒性物質。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載のペプチド両親媒性物質を含んでいる、ナノファイバー。
【請求項14】
1つ以上のフィラーペプチド両親媒性物質をさらに含み、
前記フィラーペプチド両親媒性物質が生理活性部分を含まない、請求項13に記載のナノファイバー。
【請求項15】
前記フィラーペプチド両親媒性物質が、疎水性非ペプチド尾部、構造ペプチドセグメント、および荷電ペプチドセグメントを含んでいる、請求項14に記載のナノファイバー。
【請求項16】
請求項1~12のいずれか1項に記載のペプチド両親媒性物質または請求項13~15のいずれか1項に記載のナノファイバーを含んでいる、薬学的組成物。
【請求項17】
被検体における神経系損傷の治療のために用いられる、請求項16に記載の薬学的組成物。
【請求項18】
前記神経系損傷が中枢神経系損傷である、請求項17に記載の薬学的組成物。
【請求項19】
前記神経系損傷が脊髄損傷である、請求項17に記載の薬学的組成物。
【請求項20】
前記組成物が非経口的投与のために製剤化された、請求項17~19のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項21】
被検体における神経系損傷の治療のために用いられる薬学的組成物であって、
自己集合したペプチド両親媒性物質のナノファイバーを含み、
前記ペプチド両親媒性物質の少なくとも一部が、疎水性尾部、構造ペプチドセグメント、荷電ペプチドセグメント、およびIKVAV生理活性ペプチドを含んでおり、
前記構造ペプチドセグメントが、4以下のβシート構造形成に関する全体の傾向を有している、薬学的組成物。
【請求項22】
前記疎水性尾部が、炭素数8~24のアルキル鎖(C8-24)を含んでいる、請求項21に記載の薬学的組成物。
【請求項23】
前記疎水性尾部が、炭素数16のアルキル鎖(C16)を含んでいる、請求項22に記載の薬学的組成物。
【請求項24】
前記構造ペプチドセグメントが、3.5以下のβシート構造形成に関する全体の傾向を有している、請求項21~23のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項25】
前記構造ペプチドセグメントが、3以下のβシート構造形成に関する全体の傾向を有している、請求項21~24のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項26】
前記荷電ペプチドセグメントが、酸性、塩基性、または両性イオン性のペプチドセグメントを含んでいる、請求項21~25のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項27】
前記荷電ペプチドセグメントが、E2-4を含んでいる、請求項21~26のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項28】
前記構造ペプチドセグメントがAAGGを含んでいる、請求項21~27のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項29】
前記ペプチド両親媒性物質が、C8‐24‐A(G)IKVAVを含んでいる、請求項28に記載の薬学的組成物。
【請求項30】
前記神経系損傷が、中枢神経系損傷である、請求項21~29のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項31】
前記神経系損傷が、脊髄損傷である、請求項30に記載の薬学的組成物。
【請求項32】
前記薬学的組成物が、非経口的投与のために製剤化された、請求項21~31のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項33】
自己集合したペプチド両親媒性物質のナノファイバーを含み、
前記ペプチド両親媒性物質の少なくとも一部が、疎水性尾部、構造ペプチドセグメント、荷電ペプチドセグメント、およびIKVAV生理活性ペプチドを含んでおり、前記構造ペプチドセグメントが、4以下のβシート構造形成に関する全体の傾向を有している、
いる、スキャフォールド。
【請求項34】
前記疎水性尾部が、炭素数8~24のアルキル鎖(C8-24)を含んでいる、請求項33に記載のスキャフォールド。
【請求項35】
前記疎水性尾部が、炭素数16のアルキル鎖(C16)を含んでいる、請求項33に記載のスキャフォールド。
【請求項36】
前記構造ペプチドセグメントが、3.5以下のβシート構造形成に関する全体の傾向を有している、請求項33~35のいずれか1項に記載のスキャフォールド。
【請求項37】
前記構造ペプチドセグメントが、3以下のβシート構造形成に関する全体の傾向を有している、請求項33~36のいずれか1項に記載のスキャフォールド。
【請求項38】
前記荷電ペプチドセグメントが、酸性、塩基性、または両性イオン性のペプチドセグメントを含んでいる、請求項33~37のいずれか1項に記載のスキャフォールド。
【請求項39】
前記荷電ペプチドセグメントが、E2-4を含んでいる、請求項33~38のいずれか1項に記載のスキャフォールド。
【請求項40】
前記構造ペプチドセグメントがAAGGを含んでいる、請求項33~39のいずれか1項に記載のスキャフォールド。
【請求項41】
前記ペプチド両親媒性物質が、C8‐24‐A(G)IKVAVを含んでいる、請求項40に記載のスキャフォールド。
【請求項42】
請求項33~41のいずれか1項に記載のスキャフォールド上で培養した細胞。
【請求項43】
前記細胞がニューロンである、請求項42に記載の細胞。
【請求項44】
前記細胞がhiPSC由来の運動ニューロンである、請求項42に記載の細胞。
【請求項45】
細胞を、請求項33~41のいずれか1項に記載のスキャフォールドと接触させることを含んでいる、細胞を培養する方法。
【請求項46】
前記細胞がニューロンである、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記細胞がhiPSC由来の運動ニューロンである、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
請求項33~41のいずれか1項に記載のスキャフォールドと、
前記スキャフォールド上で培養した細胞と、
を含んでいるシステム。
【請求項49】
前記細胞がニューロンである、請求項48に記載のシステム。
【請求項50】
前記細胞がhiPSC由来の運動ニューロンである、請求項49に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2019年1月24日に出願された米国仮特許出願第62/796,425号の優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
[技術分野]
本明細書では、生理活性ペプチドを含んでいるペプチド両親媒性物質(PA)、生理活性PAを呈しているナノファイバー、およびそれらの使用方法が提供される。いくつかの実施形態において、細胞培養方法において使用するためのペプチド両親媒性物質が、本明細書中に提供される。他の実施形態において、神経系損傷を治療する方法において使用するためのペプチド両親媒性物質が、本明細書中に提供される。
【0003】
[背景]
細胞外マトリックス(ECM)は、水、マトリックスタンパク質、および他の化学因子の階層的環境であり、細胞の挙動を調整し、損傷および疾患だけでなく、発達中および成体の中枢神経系(CNS)において必須の役割を果たす微小環境を提供する。ECMの分子の複雑性と動的組織化により、多くの特異的な膜貫通型受容体に時空間的に結合することが可能となり、次には、シグナル伝達として知られるプロセスを介して、複数の生命維持に必要な細胞応答を引き起こす。近年の合成物質の急速な進化は、実質的に改善されたインビトロ細胞培養プラットフォームおよび組織工学アプローチを有するECMの様相を再現することを可能にした。伝統的な合成基質およびマトリックスは、その大部分において、発達、成熟、疾患の進行、およびホメオスタシスの維持などの異なるインビボ状況においてECMの動的特性を捕捉できないために、有用性が限られていることが証明されている。生物学的マトリックスの構造および機能をより効率的に模倣することができる合成物質の設計は、依然として困難な目標のままである。
【0004】
[概要]
生理活性ペプチドを含んでいるペプチド両親媒性物質(PA)、生理活性PAを呈しているナノファイバー、およびそれらの使用方法が本明細書中に提供される。いくつかの実施形態において、ペプチド両親媒性物質は、ニューロン細胞を生成する方法において使用され得る。他の実施形態において、ペプチド両親媒性物質は、脊髄損傷などの中枢神経系損傷を治療する方法において使用され得る。
【0005】
いくつかの実施形態において、ペプチド両親媒性物質が本明細書中に提供される。ペプチド両親媒性物質は、疎水性尾部、構造ペプチドセグメント、荷電ペプチドセグメント、および生理活性ペプチドを含んでいる。本明細書に記載されるペプチド両親媒性物質を含んでいるナノファイバーが、さらに本明細書中に記載される。ナノファイバーは、1つ以上のフィラーペプチド両親媒性物質をさらに含んでもよい。フィラーペプチド両親媒性物質は、疎水性尾部、構造ペプチドセグメント、および荷電ペプチドセグメントを含んでいる。フィラーペプチド両親媒性物質は、生理活性部分を含んでいない。
【0006】
いくつかの実施形態において、疎水性尾部が、炭素数8~24のアルキル鎖(C8-24)を含み得る。いくつかの実施形態において、疎水性尾部は炭素数16のアルキル鎖(C16)を含んでいる。
【0007】
いくつかの実施形態において、構造ペプチドセグメントは、V、A、またはVEVAを含んでいる。いくつかの実施形態において、構造ペプチドセグメントは、隣接する構造ペプチドセグメントとβシート様構造または他の安定化相互作用(例えば、隣接するナノファイバーの自己集合を促進する)を形成する傾向を有している。いくつかの実施形態において、構造ペプチドセグメントは、4以下のβシート構造形成に関する全体の傾向を有している。
【0008】
いくつかの実施形態において、荷電ペプチドセグメントは、酸性、塩基性、または両性イオン性ペプチドセグメントを含んでいる。いくつかの実施形態において、荷電ペプチドセグメントは、2~4個のグルタミン酸(E)残基を含んでいる。例えば、荷電ペプチドセグメントは、EE、EEE、またはEEEEを含み得る。
【0009】
いくつかの実施形態において、生理活性ペプチドはIKVAVを含んでいる。生理活性ペプチドは、リンカーによって荷電ペプチドセグメントに取り付けられ得る。例えば、リンカーは、単一のグリシン(G)残基であり得る。
【0010】
いくつかの実施形態において、ペプチド両親媒性物質は、IKVAV(G)E-C8-24を含んでいる。他の実施形態において、ペプチド両親媒性物質は、IKVAV(G)E-C8-24を含んでいる。他のいくつかの実施形態において、ペプチド両親媒性物質は、IKVAV(G)EVEVA-C8-24を含んでいる。
【0011】
いくつかの実施形態において、フィラーペプチド両親媒性物質は、E-C8-24を含んでいる。いくつかの実施形態において、フィラーペプチド両親媒性物質は、E-C8-24を含んでいる。いくつかの他の実施形態において、フィラーペプチド両親媒性物質は、EVEVA-C8-24を含んでいる。
【0012】
いくつかの実施形態において、開示されたペプチド両親媒性物質またはペプチド両親媒性物質ナノファイバーは、細胞培養方法において使用され得る。例えば、開示されたペプチド両親媒性物質またはペプチド両親媒性物質ナノファイバーは、ニューロン細胞培養方法において使用され得る。いくつかの実施形態において、開示されたペプチド両親媒性物質またはペプチド両親媒性物質ナノファイバーは、運動ニューロンの培養に使用され得る。
【0013】
いくつかの実施形態において、中枢神経系(CNS)損傷を治療する方法が本明細書中に提供され、CNS損傷を患っている被験体に、本明細書中に開示されたペプチド両親媒性物質を含んでいる薬学的組成物を投与することを含んでいる。いくつかの実施形態において、CNS損傷は脊髄損傷である。いくつかの実施形態において、薬学的組成物は非経口的に投与される。
【0014】
[図面の簡単な説明]
図1A~L。ペプチド両親媒性物質(PA)によって形成された超分子ナノファイバーの特徴付け。(A)IKVAV PAの概略の分子構造、IKVAV PAは、(B)V、(C)A、および(D)VEVAを含んでいる。(E~G)KClおよびNaCl水溶液の中の(E)V、(F)A、および(G)VEVAの極低温TEM顕微鏡写真([PA]=0.01wt%、[KCl]=3mM、[NaCl]=150mM)。(H~J)(H)V、(I)A、および(J)VEVAのSEM顕微鏡写真。(K)V(赤色)、A(青色)、およびVEVA(オレンジ色)のフィルムサンプルのFT-IRスペクトル(1500~1800cm-1)。(L)KClおよびNaCl水溶液中のV(赤色)、A(青色)、およびVEVA(オレンジ色)のWAXSプロファイル([PA]=5.3mM、[KCl]=3mM、[NaCl]=150mM)。
【0015】
図2A~I。超分子IKVAV PA内の動力学は、ヒト運動ニューロン(MN)信号に対して異なる効果を誘導する。(A)KClおよびNaCl水溶液中のV(赤色)、A(青色)、およびVEVA(オレンジ色)を含んでいるIKVAV PAに包埋されたDPH(2.8μM)の25℃での蛍光脱分極プロファイル(λex=336nm、λem=450nm)([PA]=100μM、[KCl]=3mM、[NaCl]=150mM)。(B)10μ秒後のV(赤色)、A(青色)、およびVEVA(オレンジ色)PAを含んでいる、単一IKVAV PAファイバーの自己集合構造および粗視化表示。顕微鏡写真は、(青色で)シミュレーションボックス内にファイバー形成軸を通る部分的な周期的画像を含んでいる。水およびイオンは、明確にするために省略されている。(C)Bにおいて形成された、V(赤色)、A(青色)、およびVEVA(オレンジ色)構造を含んでいるIKVAV PAの動力学解析。(D)KClおよびNaCl水溶液中のV(赤色)、A(青色)、VEVA(オレンジ色)を含んでいるIKVAV PAに包埋されたDPH(2.8μM)の25℃での蛍光発光スペクトル(λex=336nm)([PA]=100μM、[KCl]=3mM、[NaCl]=150mM)。(E)V(赤色)、A(青色)、VEVA(オレンジ色)を含んでいるIKVAV PAの含水量分析。(F)Aおよびラミニン上で培養した、b-1インテグリン(ピンク、ITGB1)を含んでいるMN神経突起(TUJ-1、緑色)の代表的な三次元SIM顕微鏡写真(左側)および陰影再構成(右側)。(G)72時間でのA(青色)およびラミニン(黒色)マトリックス上で培養したMNにおけるITGB1の強度解析。72時間での、V(赤色)、A(青色)、VEVA(オレンジ色)を含んでいる超分子IKVAVマトリックス上で培養したMNにおけるITGB1および下流キナーゼ(ILK、pFAK、FAK)のウエスタンブロット解析(H)および(I)正規化されたタンパク質レベル。スケールバー:10mm。データは、少なくとも4つの独立した分化の平均である。全ての数値は平均値±SDとして示す;ANOVA(*P<0.05、**P<0.01および***P<0.001)。
【0016】
図3A~O。ヒト運動ニューロン(MN)成熟に対するA含有IKVAV PAの分子間凝集力の影響。(A)超分子マトリックス上でのヒトMN分化およびその培養の概略図。V(赤色)、A(青色)、VEVA(オレンジ色)を含んでいる超分子IKVAVマトリックスおよびラミニン(黒色)上で培養したMNにおけるインテグリン活性化(ITGB1)、シグナル伝達経路(ILK)および運動ニューロン成熟(ChAT)に関連する(B)ウエスタンブロットおよび(C)正規化されたタンパク質発現レベル(60日後)。全ての値はアクチンに対して正規化した。(D)A含有IKVAVの動的提示に際して細胞挙動を媒介するインテグリンおよびシグナル伝達経路の概略図。全ての値はアクチンまたは総FAK発現に対して正規化した。(E)A対ラミニン上で培養したMNのプロテオミクス変化を呈しているボルカノプロット。平均log(倍 変化)対P値(-log10)を示す。2倍変化およびFDR<0.05によって上方制御および下方制御されたタンパク質を、それぞれ緑色および赤色のドットによって標識する。(F)Aコーティング対ラミニンコーティング中で培養したMNにおいて同定されたタンパク質の上方制御グループおよび下方制御グループにおいて濃縮された最も有意なGOタームのサブセット。(G)細胞培地中に放出されたLDH濃度によって評価した細胞生存率(60日目)。(H)V(赤色)、A(青色)、VEVA(オレンジ色)を含んでいるIKVAV PAおよびラミニン(黒色)マトリックス上で培養したMN中のChAT細胞の定量(60日後)。(I,J)(I)Aおよび(J)ラミニンマトリックス上で培養したヒトのMNの共焦点顕微鏡画像。(K)V(赤色)、A(青色)、VEVA(オレンジ色)を含んでいるIKVAV PAおよびラミニン(黒色)マトリックス上で培養したヒトMNの総神経突起プロセスの分析(60日後)。(L)V(赤色)、A(青色)、VEVA(オレンジ色)およびラミニン(灰色)上で、インビトロで60日間培養したMNの樹状突起分岐のSholl分析。(M)V(赤色)、A(青色)、VEVA(オレンジ色)を含んでいるIKVAV PAおよびラミニン(白色)マトリックス上で培養したヒトMNの代表的な代表的な共焦点顕微鏡写真(60日後)。細胞を、運動ニューロンマーカーChAT(緑色)、微小管関連タンパク質-2(MAP-2、赤色)および核(DAPI)で染色した。(N)Mに示される画像のDAPIチャネル顕微鏡写真。(O)MおよびNにおいて参照された異なるマトリックス上の細胞分布のヒストグラム分析。スケールバー:(M、N)100μm。データは、少なくとも3つの独立した分化の平均である。全ての数値は平均値±SDとして示す;ANOVA(*P<0.05、**P<0.01および***P<0.001)。
【0017】
図4A~P。機能的成熟および再生に対する超分子集合体内の分子動力学の影響。(A、B)(A)Aおよび(B)ラミニンマトリックス上で培養したヒトMN神経突起に沿って分布したシナプス小胞(シナプス後PS95およびシナプス前SYN-1)の代表的な共焦点顕微鏡写真(50日目)。(C)Aおよびラミニンコーティング上で培養したMN上のPSD95およびSYN-1の強度解析。A(青色)およびラミニン(黒色)上で培養したヒトMNにおけるシナプス前マーカーおよびシナプス後マーカー(それぞれSYN-1およびPS95)の(D)ウエスタンブロットおよび(E)正規化されたタンパク質レベル。全ての値はアクチンに対して正規化した。(F)A超分子ペプチド両親媒性物質でコーティングしたMEAプレート上で40日間培養したヒトMNの明視野画像。種々のIKVAV PA、ラミニンまたはグリアコーティング中のMN培養物における、(G)スパイク数の差および(H)電極当たりのバースト数および(I)同調性指数を表すプロット。(J)Aおよびラミニンマトリックス上で培養し、パッチ電極を通してTexas Redデキストランで満たした、ヒトMNの2光子顕微鏡画像(48~49日目)。(K)活動電位を繰り返し発火することができる、Aおよびラミニンマトリックス上で成長したニューロンのパーセンテージ。(L)Aおよびラミニンマトリックス上で成長したMN由来の活動電位の代表的な例。A上で成長したMNは有意に大きく、上昇速度および降下速度がより速かった。(M)マウス脊髄における背腹性の挫傷の概略図。(N)生理食塩水溶液(コントロール)、V(赤色)A(青色)で処理した動物のBasso Mouse Scale(BMS)スコア。生理食塩水溶液(コントロール)、V(赤色)およびA(青色)で処理した脊髄におけるβ-1インテグリン受容体(ITGB1)、種々のECMタンパク質(フィブロネクチンおよびラミニン)、アストログリアGFAPおよびニューロンGAP43マーカーの(O)ウエスタンブロットおよび(P)正規化されたタンパク質レベル。全ての値は、GAPDHに対して正規化した。インビボデータは、少なくとも8匹の動物の平均である。全ての数値は平均値±SDとして示す;ANOVA(*P<0.05、**P<0.01および***P<0.001)。
【0018】
図5A~F。(a)V、(b)A、(c)VEVAおよび(d)VE(-)VAのためのMARTINIビーズタイプおよび電荷。(e)PAの電荷量。(f)V(挿入物)の各骨格ビーズのための生の半径方向分布関数であり、第1の溶媒和球のための水接触を与えるために統合された領域を青色で示している。
【0019】
図6A~F。IKVAV PAの液体クロマトグラフィー-質量分析。(a-c)精製された(a)C16GIKVAV、(b)C16GIKVAV(c)C16VEVAGIKVAVの分析用高性能液体クロマトグラフィー(分析用HPLC)トレース。(d~f)(d)C16-4-GIKVAV、(e)C16GIKVAVおよび(f)C16VEVAGIKVAVのエレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI-MS)。
【0020】
図7A~I。IKVAV PAの極低温-TEMおよびSEM画像。(a~c)概略的な分子構造、(a、d、g)C16GIKVAV、(b、e、h)C16GIKVAV(c、f、i)C16VEVAGIKVAVの、(d~f)極低温-TEMおよび(g~i)SEM顕微鏡写真。
【0021】
図8A~D。DPH包埋IKVAV PAのTEM画像。(a)1,6-ジフェニル-1,3,5-ヘキサトリエン(DPH)の概略の分子構造。(b~d)酢酸ウラニルで染色した、DPH包埋PA(b)C16-GIKVAV、(c)C16GIKVAVおよび(d)C16VEVAGIKVAVのTEM顕微鏡写真(KClおよびNaCl水溶液([KCl]=3mM、[NaCl]=150mM)中、[PA]=100μM、[DPH]=2.8μM)。
【0022】
図9A~F。TMA-DPH包埋IKVAV PAのTEM画像。(a)1-(4-トリメチルアンモニウムフェニル)-6-フェニル-1,3,5-ヘキサトリエンp-トルエンスルホネート(TMA-DPH)の概略的な分子構造。(b~d)酢酸ウラニルで染色した、TMA-DPH包埋IKVAV PA(b)C16GIKVAV(V)、(c)C16GIKVAV(A)および(d)C16VEVAGIKVAV(VEVA)のTEM顕微鏡写真(KClおよびNaCl水溶液([KCl]=3mM、[NaCl]=150mM)中、[PA]=100μM、[TMA-DPH]=2.8μM)。(e)KClおよびNaCl水溶液中で、V、AおよびVEVAに埋め込まれた、TMA-DPH(2.8μM)の25℃での蛍光脱分極プロファイル(λex=336nm、λem= 450nm)([PA]=100μM、[KCl]=3mM、[NaCl]=150mM)。(f)KClおよびNaCl水溶液中で、V、AおよびVEVAに埋め込まれた、TMA-DPH(2.8μM)の25℃での蛍光発光スペクトル(λex=336nm)([PA]=100μM、[KCl]=3mM、[NaCl]=150mM)。
【0023】
図10。脂質二重層内の炭化水素尾部へのDPH位置。
【0024】
図11A~F。IKVAV PAナノファイバーのシミュレーション結果。(a~c)10μ秒後の、(a)V、(b)A、および(c)VEVAIKVAV PAの単一ファイバーの自己集合構造および粗視化表示。ファイバーは、パッチコアを示すために、C16尾部以外全て透明で表される。顕微鏡写真は、ファイバー形成軸を通る部分的な周期的画像を含んでいる。シミュレーションボックスは青色で表示される。水およびイオンは、明確にするために省略されている。(d~f)(d)V、(e)Aおよび(f)VEVAの二乗平均平方偏差(RMSD)対時間を表すグラフ。RMSDプロットは、5つの独立したシミュレーションの平均である。
【0025】
図12A~E。βシート領域に置かれたEに荷電したVE(-)VA PAのシミュレーション結果。(a、b)10μ秒後の、VE(-)VAファイバーの自己集合構造。(a)βシート領域はオレンジ色で表され、IKVAVは緑色で表され、ファイバーの残りは黒色で表される。(b)ファイバーはパッチコアを示すために、C16尾部以外全て透明で表される。顕微鏡写真は、ファイバー形成軸を通る部分的な周期的画像を含む。シミュレーションボックスは青色で表示される。水およびイオンは、明確にするために省略されている。(c)V、A、VEVAと比較したVE(-)VAの水接触グラフ。(d)(a~b)V、A、VEVAと比較したVE(-)VAのダイナミズム解析の二乗平均平方偏差(RMSD)対時間を表すグラフ。c~dにおける分析は、5つの独立したシミュレーションの結果である。
【0026】
図13A~F。スクランブルVKIVA PAの液体クロマトグラフィー-質量分析。(a~c)精製した(a)C16-4-GVKIVA、(b)C16GVKIVA(c)C16VEVAGVKIVAの分析用高性能液体クロマトグラフィー(分析用HPLC)トレース。(d~f)(d)C16-4-GIKVAV、(e)C16GVKIVAおよび(f)C16VEVAGVKIVAのエレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI-MS)。
【0027】
図14A~H。スクランブルVKIVA-PAのシミュレーション結果。(a~f)10μ秒後の、(A、b)V(赤色)、(c、d)A(青色)、および(e,f)VEVA(オレンジ色)VKIVAの単一ファイバーの自己集合構造および粗視化表示。カラーコードは、PA配列において表示される。顕微鏡写真は、ファイバー形成軸を通る部分的な周期的画像を含む。シミュレーションボックスは青色で表示される。水およびイオンは、明確にするために省略されている。(b、d、f)ファイバーは、そのパッチ性を示すために、C16尾部以外全て透明で表示される。A平衡化構造は、典型的なファイバー構造とは異なる。(g)IKVAVおよびVKIVA-PAの水接触グラフ。(h)スクランブルVKIVAおよびIKVAV PAのC16クラスター解析。C16クラスターの数の定量は、不規則性の定性的測定として使用されてきた。
【0028】
図15A~F。スクランブルVKIVA-PAのCryo-TEM顕微鏡写真。スクランブルIKVAV配列(a、d)C16-GVKIVA、(b、e)C16GVKIVA(c、f)C16VEVAGVKIVAの(a~c)概略的な分子構造および(d~f)Cryo-TEM顕微鏡写真。スケールバー:500nm。
【0029】
図16A~F。骨格PAの液体クロマトグラフィー-質量分析。(a~c)精製した、(a)C16、(b)C16(c)C16VEVAの分析用高性能液体クロマトグラフィー(分析用HPLC)トレース。(d~f)(d)C16、(e)C16および(f)C16VEVAのエレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI-MS)。
【0030】
図17A~F。骨格-PAのCryo-TEM顕微鏡写真。骨格配列(a、d)C16、(b、e)C16(c、f)C16VEVAの(a~c)概略的な分子構造および(d~f)Cryo-TEM顕微鏡写真。
【0031】
図18A~K。他のラミニン模倣配列の分析。(a、c、e、g、i)10μ秒後の、生理活性エピトープ(a、b)LGTIPG、(c、d)LRGDN、(e、f)PDGSR、(g、h)RGD、(i、j)YIGSR配列を有するC16Gファイバーの極低温TEM顕微鏡写真および(b、d、f、h、j)自己集合構造顕微鏡写真。シミュレートされた顕微鏡写真は、ファイバー形成軸を通る部分的な周期的画像を含む。シミュレーションボックスは青色で表示される。水およびイオンは、明確にするために省略されている。(k)LGTIPG、LRGDN、PDGSR、RGD、YIGSR配列についての水接触分析。IKVAVを参照として使用した。
【0032】
図19A~I。IKVAV PAマトリックス上のhiPSC由来MNの短期分析(72時間)。(a)実験パラダイムの概略図。(b)72時間後に、alexa-488色素(緑色)に共有結合したA IKVAV PA上のTUJ-1(赤色)で標識したMNのスペクトル照明顕微鏡写真。(c)72時間での、種々の条件下での細胞数/mmの定量。(d、e)V(赤色)、A(青色)、VEVA(オレンジ色)を含んでいるIKVAV PA超分子ファイバーおよびラミニン(白色)コーティング上で培養したMNの代表的な共焦点顕微鏡写真。(d、e)細胞を、ニューロン(TUJ-1およびMAP-2、赤色)および運動ニューロン(ISL1/2およびChAT、緑色)マーカーで一貫して染色した。核DNAをDAPI、青色で染色した。(f~h)72時間での、V(赤色)、A(青色)、VEVA(オレンジ色)を含んでいるIKVAV PA超分子ファイバーおよびラミニン(黒色)コーティング上で培養した、(f)ISL1/2および(g)ChAT(h)TUJ-1MNパーセンテージの定量化。(i)細胞生存率は、72時間で、LDHアッセイによって評価した。スケールバー:50μm。データは、少なくとも4つの独立した分化の平均である。全ての数値は平均値±SDとして示す;ANOVA(*P<0.05、**P<0.01および***P<0.001)、n.s:有意ではない。
【0033】
図20A~I。IKVAV PAマトリックス上のFOXA2集団の短期分析。(a、b)72時間での、(a)A IKVAV PAおよび(b)ラミニンマトリックス上で培養したMNの代表的な共焦点顕微鏡写真。細胞を、底板細胞マーカーFOXA-2(緑色)、ニューロンマーカーTUJ-1(赤色)および核マーカーDAPI(青色)で染色した。72時間での、V(赤色)、A(青色)、VEVA(オレンジ色)を含んでいるIKVAV PA超分子ファイバーおよびラミニン(黒色)上で培養したMN中の底板マーカーFOXA-2および増殖マーカーPH3に関連するタンパク質発現の(c)ウエスタンブロットおよび(d)正規化されたレベル。(e、f)72時間での、(e)A IKVAV PAおよび(f)ラミニンマトリックス上で培養したMNの代表的な共焦点顕微鏡写真。細胞を、底板マーカーFOXA-2(緑色)、ニューロンマーカーTUJ-1(白色)、増殖マーカーKI67(赤色)および核マーカーDAPI(青色)で染色した。(g~i)72時間での、V(赤色)、A(青色)、VEVA(オレンジ色)を含んでいるIKVAV PA超分子ファイバーおよびラミニン(黒色)マトリックス上で培養した、(g)FOXA2、(h)KI67および(i)FOXA2/KI67MNパーセンテージの定量。全ての値をアクチンに対して正規化した。スケールバー:25μm。データは、少なくとも3つの独立した分化の平均である。全ての数値は平均値±SDとして示す;ANOVA(*P<0.05、**P<0.01および***P<0.001)。
【0034】
図21A~G。IKVAV PA上で培養したヒトMNにおけるITGB1発現。(a~d)72時間での、V、A、VEVAを含んでいるIKVAV PA超分子ファイバーおよびラミニンコーティング上で培養したMN(緑色でTUJ-1で標識した)の神経突起におけるITGB1受容体の発現の代表的な三次元共焦点顕微鏡写真。(f、g)cおよびdにおいて参照された共焦点画像条件の3次元陰影再構成(Three-dimensional shadow reconstructions)。(e)72時間での、V(赤色)とVEVA(オレンジ色)マトリックス上で培養したMNにおけるITGB1の強度解析。スケールバー:2μm。
【0035】
図22A~F。IKVAV PAへの付着および生存MNに対するαITGB1遮断抗体の影響。(a)72時間のαβ-1またはβ-4 ITG抗体の存在下での超分子マトリックス上でのhiPSC由来MN分化およびその後の培養の概略図。(b)72時間で細胞培地中に放出されたLDHレベルによって評価した、ITGB1で処理したMNの細胞生存率。(c、d)72時間での、V(赤色)、A(青色)、VEVA(オレンジ色)を含んでいるIKVAV PA超分子ファイバーおよびラミニン(黒色)マトリックス上で培養した、(c)β-1インテグリンまたは(d)β-4インテグリン遮断抗体で処理したMNの代表的な共焦点顕微鏡写真。細胞をニューロンマーカーTUJ-1(赤色)、運動ニューロンマーカーISL1/2(緑色)で染色し、核をDAPI(青色)で染色した。(e、f)cおよびdにおいてそれぞれ参照された状態の細胞数/mmの定量化。スケールバー:50μm。データは、3つの独立した分化の平均である。全ての数値は平均値±SDとして示す;ANOVA(*P<0.05、**P<0.01および***P<0.001)、n.s:有意ではない。
【0036】
図23A~F。ラミニン関連シグナル伝達に対する機械的特性の影響。(a)hiPSC由来MN分化および異なる超分子マトリックスの厚さに対するその培養の概略図。(b)V、AおよびVEVAを含んでいる超分子IKVAVマトリックスの薄いコーティングおよび厚いゲルの弾性率(灰色および白色のグラフ)および貯蔵弾性率(濃い灰色のグラフ)。72時間での、V、A、VEVAを含んでいる超分子IKVAVマトリックスの(c、d)厚いコーティングまたは(e、f)薄いコーティング上で培養したヒトMNにおけるITGB1受容体活性化およびシグナル伝達経路(ILK、p-FAK、FAK)の(c、e)ウエスタンブロット解析および(d、f)正規化された発現レベル。ラミニンのコーティングをコントロールとして使用した。データは、少なくとも3回の独立した実験または分化の平均である。全ての数値は平均値±SDとして示す;ANOVA(*P<0.05、**P<0.01および***P<0.001)。
【0037】
図24A~I。IKVAV PAおよびラミニンコーティングのプロフィロメトリー。(a~h)インビトロにおける3日後(上部画像)後および60日後(底部画像)の、(a、b)V、(c、d)A、(e、f)VEVAを含んでいるIKVAV
PAおよび(g、h)ラミニンコーティングの代表的な画像。(i)a~hにおいて参照したIKVAV PAおよびラミニンコーティングの厚さ分析。データは、4回の独立した実験の平均である。全ての数値は平均値±SDとして示す;ANOVA(***P<0.001)で示す。
【0038】
図25A~L。薄いIKVAV PAゲルおよび厚いIKVAV PAゲルのFM特徴付け。(A~c)V、(b)Aおよび(c)VEVAを含んでいるIKVAV PAの薄いコーティングのAFMトポグラフィー画像;(d~f)a~cに由来する薄いコーティングの弾性率分布;(g~i)V、AおよびVEVAを含んでいるIKVAV PAインデンテーション実験の厚いゲルの光学顕微鏡画像;(j~l)g~iにおいて参照された状態の厚いゲルの弾性率分布。
【0039】
図26A~F。IKVAV PAゲルのレオロジー測定。(a~c)(a)V、(b)A、および(c)VEVAを含んでいる超分子IKVAV PAの0~100の範囲のせん断ひずみにおける貯蔵弾性率G’、および損失弾性率G’’を示すひずみ掃引。(d~f)a~cにおいて参照された状態の0~100rad/sの範囲の角周波数についての貯蔵弾性率G’を示す周波数掃引。データは、n=3ゲルの平均である。全ての数値は平均値±SDとして示す。
【0040】
図27A~C。IKVAV PAマトリックス上で培養したヒトMNの時間経過。インビトロで(a)30日、(b)45日および(c)60日での、V、A、VEVAを含んでいるIKVAV PA超分子ファイバーおよびラミニン(黒色)マトリックス上で培養したMNの代表的な共焦点顕微鏡写真。細胞をニューロンマーカーMAP-2(赤色)、運動ニューロンマーカーChAT(緑色)で染色し、核をDAPI(青色)で染色した。スケールバー:100μm。
【0041】
図28A~F。IKVAV PAマトリックス上でのヒトMNの長期培養。インビトロで(a、b)30日、(c、d)45日および(e、f)60日での、V、A、VEVAを含んでいるIKVAV PA超分子ファイバーおよびラミニンマトリックス上で培養したMNの(a、c、e)代表的な明視野画像および(b、d、f)共焦点顕微鏡写真。細胞をニューロンマーカーMAP-2(赤色)、運動ニューロンマーカーChAT(緑色)で染色し、核をDAPI(青色)で染色した。スケールバー:25μm。データは、6つの独立した分化の平均である。
【0042】
図29A~D。異なる時点でのIKVAV PA上のヒトMNの特徴付け。V(赤色)、A(青色)、VEVA(オレンジ色)を含んでいる超分子IKVAVマトリックス上で培養したヒトMNにおける(a、b)ITGB1受容体活性化、運動ニューロンマーカーChATおよびISL1/2ならびに(ILK-1)、および(c、d)ニューロンマーカーMAP-2およびTUJ-1の(a、c)ウエスタンブロット解析および(b、d)正規化されたタンパク質レベル。データは、少なくとも3つの独立した分化の平均である。全ての数値は平均値±SDとして示す;ANOVA(*P<0.05、**P<0.01および***P<0.001)、n.s:有意ではない。
【0043】
図30A~C。A IKVAV PAおよびラミニン上で培養したヒトMNにおける差次的ITGB1発現。(a、b)60日での、(a)Aおよび(b)ラミニンマトリックス上で培養したMN神経突起(TUJ-1、緑色)およびITGB1受容体発現(ピンク色)の代表的な三次元SIM顕微鏡写真。(c)インビトロで60日での、A(青色)とラミニンマトリックス上で培養したMNにおけるITGB1の強度解析。スケールバー:10μm。
【0044】
図31A~C。A IKVAV PAおよびラミニンコート表面上で培養したMNにおいて差次的に発現されたタンパク質の遺伝子オントロジー(GO)解析によるMN成熟の評価。タンデム質量分析は、ラミニンコート表面上にプレーティングしたMN間の差次的に発現されたタンパク質を明らかにし、これは、ヒトMN成熟に直接関連したGOタームに関連する(Hoら、2016)。(a)A状態において差次的に発現されたタンパク質から、ヒトMNの成熟に関連する58個のGOタームのうち21個(36%)を同定した。MN成熟関連タームはまた、A IKVAV PA対ラミニンコート表面上にプレーティングした培養物において、上方制御された(b)および下方制御された(c)タンパク質のリストから同定された。横棒グラフは、タンパク質データセットにおいて同定されたMN成熟関連GOタームのp値を表す。円グラフは、MN成熟に関連した前述のGOタームと比較した、この研究で得られたGOタームのパーセンテージを表す(Hoら、2016)。
【0045】
図32A~C。IKVAV PAマトリックス上のヒト運動ニューロン(MN)の形態学的分析。(a、b)インビトロで60日での、V、A、VEVAを含んでいるIKVAV PA超分子ファイバーおよびラミニンマトリックス上で培養した単一ヒトMNの代表的な共焦点顕微鏡写真。細胞を(a)ニューロンマーカーMAP-2(赤色)で染色した。(b、c)60日での、MN培養物の(b)細胞体の大きさおよび(c)一次神経突起の数の分析。スケールバー:25μm。データは、少なくとも3つの独立した分化の平均である。全ての数値は平均値±SDとして示す;ANOVA(*P<0.05、**P<0.01および***P<0.001)。
【0046】
図33A~D。インビトロで60日後のIKVAV PAコーティング。(a、b)V、A、VEVAを含んでいるIKVAV PA上で培養したヒトMNの代表的な構造的照明顕微鏡(SIM)顕微鏡写真。MNをTUJ-1(赤色)で染色し、IKVAV PAをalexa-488色素(緑色)と共有結合させた。(c、d)Aを含んでいるIKVAV PA上で培養したMNの神経突起を呈している走査型電子顕微鏡写真。スケールバー:(c)5μm、(d)2μm。
【0047】
図34A~C。ガラスカバースリップの修飾のためのIKVAVペプチドの合成および液体クロマトグラフィー-質量分析。(a)IKVAVペプチドの概略の分子構造。(b)精製IKVAVペプチドの分析用高性能液体クロマトグラフィー(分析用HPLC)トレース。(c)IKVAVペプチドのエレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI-MS)。
【0048】
図35A~E。MN付着に対する固定化IKVAVの影響。(a)カバースリップ表面上の固定化IKVAVペプチドの概略図。(b)明視野画像。(c、d)APTESおよびIKVAVペプチドコーティング上で培養したMNの代表的な共焦点顕微鏡写真。細胞をニューロンマーカー(c)ISL1/2(緑色)およびTUJ-1(赤色)ならびに(d)ChAT(緑色)およびMAP-2(赤色)で染色した。核をDAPI(青色)で染色した。(e)APTESおよび固定化ペプチド(IKVAV)上で培養したmm当たりの細胞数の定量。V、A、VEVAを含んでいるIKVAV PAおよびラミニンマトリックスをコントロールとして使用した。スケールバー:100μm。データは、3つの独立した分化の平均である。全ての数値は平均値±SDとして示す;ANOVA(*P<0.05、**P<0.01および***P<0.001)。
【0049】
図36A~C。スクランブルVKIVA PA上のヒトMN付着。V、A、およびVEVAを含んでいるスクランブルVKIVA PA配列上で培養したMNの(a)代表的な明視野画像および(b)共焦点画像。細胞を、bにおいてChAT、MAP-2およびDAPIで染色した。(c)a、bにおいて参照された状態の、mm培養あたりの細胞数の定量。V、A、VEVAを含んでいるIKVAV PAおよびラミニンマトリックスを、コントロールとして使用した。スケールバー:100μm。データは、3つの独立した分化の平均である。全ての数値は平均値±SDとして示す;ANOVA(*P<0.05、**P<0.01および***P<0.001)。
【0050】
図37A~O。他のヒトiPSC由来運動ニューロン(11a細胞株)に対するIKVAV PAの影響。(a、b)V、A、VEVA IKVAV PA超分子ファイバーおよびラミニンマトリックス上で72時間培養したMN-11aの代表的な顕微鏡写真。細胞は、ニューロンおよび運動ニューロンマーカー、それぞれ、(a)におけるTUJ-1(赤色)およびISL1/2(緑色);MAP-2(赤色)およびChAT(緑色)で染色した。核をDAPI(青色)で染色した。V、A、VEVAを含んでいるIKVAV PA超分子ファイバーおよびラミニンコーティング上で培養した、(c)72時間でのmmあたりの細胞数の定量。(c~f)(c)TUJ-1、(d)ISL1/2(f)ChATMNパーセンテージの定量。(g)60日での、V、A、VEVAを含んでいるIKVAV PAおよびラミニンマトリックス上で培養したヒトMN11aの代表的な共焦点顕微鏡写真。細胞を、MNマーカーChAT(緑色)、微小管関連タンパク質-2(MAP-2、赤色)および核(DAPI)で染色した。(h)gにおいて示した画像のDAPIチャネル顕微鏡写真。(i)gおよびhにおいて参照された異なるマトリックス上の細胞分布のヒストグラム分析。(j)60日でのmmあたりの細胞数の定量および(k)60日でのV(赤色)、A(青色)、VEVA(オレンジ色)を含んでいるIKVAV PA超分子ファイバーおよびラミニン(黒色)コーティング上で培養したChATMNパーセンテージの定量。(l~m)(l)Aを含んでいるIKVAV PAおよび(m)ラミニン上で培養したMNの走査型電子顕微鏡(SEM)顕微鏡写真。ITGB1受容体活性化、ニューロンマーカーMAP-2および運動ニューロンマーカーChATの(n)ウエスタンブロットおよび(o)正規化されたタンパク質レベル。全ての値をアクチンに対して正規化した。データは、3つの独立した分化の平均である:スケールバー(a、b)50μm、(g、h)100μm、(l,m)5μm。データは、3つの独立した分化の平均である。全ての数値は平均値±SDとして示す;ANOVA(*P<0.05、**P<0.01および***P<0.001)。
【0051】
図38A~L。ヒトiPSC由来皮質ニューロン(CxN)に対するIKVAV PAの影響。(a)iPSC由来CxN分化および超分子マトリックス上でのその培養の概略図。(b~d)(b)72時間および(c、d)60日での、V(赤色)、A(青色)、VEVA(オレンジ色) IKVAV PA超分子ファイバーおよびラミニン(白色)マトリックス上で培養したCxNの代表的な顕微鏡写真。細胞を、ニューロンマーカーTUJ-1(赤色)、MAP-2(緑色)およびNEUN(赤色)、ならびに皮質マーカーSATB-2(緑色)で染色した。核をDAPI(青)で染色した。(e)72時間でのmmあたりの細胞数の定量。(f)60日での細胞培地中のLDHの放出によって評価した細胞生存率。(g~j)60日での、V、A、VEVAを含んでいるIKVAV PA超分子ファイバーおよびラミニン(黒色)コーティング上で培養した(g)TUJ-1、(h)MAP2、(i)NEUNおよび(j)SATB-2ニューロンパーセンテージの定量。ITGB1受容体活性化、ニューロンマーカーMAP-2、TUJ-1およびNEUN、ならびにシナプス前マーカーSYPの(k)ウエスタンブロットおよび(l)正規化されたタンパク質レベル。全ての値をアクチンに対して正規化した。データは、3つの独立した分化の平均である。スケールバー:(b)100μm、(c、d)50μm。データは、3つの独立した分化の平均である。全ての数値は平均値±SDとして示す;ANOVA(*P<0.05、**P<0.01および***P<0.001)。
【0052】
図39A~G。VおよびVEVA IKVAV PA上で培養したヒト運動ニューロン(MN)における機能マーカーの発現。(a、b)インビトロで40日後の、Aを含んでいるIKVAVおよび(b)ラミニンマトリックス上で培養したMNの神経突起にそって分布したシナプス小胞(SYN-1、シナプス前、およびPS95、シナプス後)の代表的な共焦点顕微鏡写真。(c、d)VおよびVEVA上で培養したMNにおける(c)PSD95および(d)SYN-1の平均強度解析。V、A、VEVAを含んでいる超分子IKVAVマトリックスおよびラミニンコーティング上で培養したヒトMNにおけるシナプスマーカーPSD95、SYN-1およびSYP、ならびにニューロンマーカーDCXの(f)ウエスタンブロット解析および(g)正規化されたタンパク質レベル。スケールバー:データは、少なくとも3つの独立した分化の平均である。全ての数値は平均値±SDとして示す;ANOVA(*P<0.05、**P<0.01および***P<0.001)。
【0053】
図40A~F。IKVAV PA上で培養したヒトMNの電気生理学的研究。(a)ニューロン培養物の記録のためのマルチ電極アレイプレート(MEAプレート)の概略図。(b、c)(b)IKVAV PAおよび(c)ラミニンでコートしたMEAプレート上にプレーティングしたニューロン(緑色)の概略図。(d)V、A、VEVAを含んでいるIKVAV PAおよびラミニンでコートされたMEAプレート上で培養したMNの明視野画像。(e)dにおいて参照されたものと同じ状態での加重平均発火速度および(f)バースト電極の数。スケールバー:100μm。データは、2つの独立した分化の平均である。全ての数値は平均値±SDとして示す;ANOVA(*P<0.05、**P<0.01および***P<0.001)。
【0054】
図41A~C。マウスにおける脊髄損傷試験。(a)マウスモデルにおけるT10/11における脊髄損傷の概略図。(b)V、A、Vおよび生理食塩水溶液(コントロール)で処理した動物の衝撃力グラフ。(c)(b)に記載の状態のBasso Mouse scale(BMS)。
【0055】
[定義]
本明細書に記載されたものと類似または同等のあらゆる方法および材料が、本明細書に記載の実施形態の実施または試験において使用され得るが、いくつかの好ましい方法、組成物、装置、および材料が本明細書に記載される。しかし、本発明の材料および方法を記載する前に、本明細書に記載された特定の分子、組成物、方法論またはプロトコルは、通例の実験および最適化に従って変化し得るため、本発明がこれらの記載事項に限定されないということを理解されたい。また、本説明において使用される用語は、特定のバージョンまたは実施形態のみを説明するためのものであり、本明細書に記載の実施形態の範囲を限定することを意図するものではないことを理解されたい。
【0056】
別途規定されないかぎり、本明細書に用いられるすべての技術的および科学的な用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味をもつ。しかしながら、矛盾する場合には、定義を含んでいる本明細書が優先する。したがって、本明細書に記載の実施形態の文脈において、以下の定義が適用される。
【0057】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用されるとおり、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が明確に他を指示していない限り、複数の言及を含む。したがって、例えば、「ペプチド両親媒性物質」への言及は、1つ以上のペプチド両親媒性物質および当業者に公知のその等価物などへの言及である。
【0058】
本明細書で使用される場合、用語「comprise(含む)」およびその言語的変形は、追加の特徴(複数可)、要素(複数可)、方法ステップ(複数可)などの存在を排除することなく、列挙された特徴(複数可)、要素(複数可)、方法ステップ(複数可)などの存在を意味する。これに対し、用語「consisting of(~からなる)」およびその言語的変形は、列挙された特徴(複数可)、要素(複数可)、方法ステップ(複数可)などの存在を示し、列挙されていない任意の特徴(複数可)、要素(複数可)、方法ステップ(複数可)などは、通常付随する不純物を除いて除外される。語句「consisting essentially of(本質的に~からなる)」は、列挙された特徴(複数可)、要素(複数可)、方法ステップ(複数可)など、および組成物、システム、または方法の基本的性質に実質的に影響を及ぼさない任意の追加の特徴(複数可)、要素(複数可)、方法ステップ(複数可)などを示す。本明細書中の多くの実施形態は、オープンな「comprising(含む)」という言葉を使用して記載されている。そのような実施形態は、代替的にそのような言葉を使用して特許請求または説明され得る、実施形態の複数のクローズな「consisting of(~からなる)」および/または「consisting essentially of(本質的に~からなる)」を包含する。
【0059】
用語「アミノ酸」は、その構造がD体およびL体の立体異性体の形態を可能にする場合、特段の指示がない限り、すべてのD体およびL体の立体異性体における、天然アミノ酸、非天然アミノ酸、およびアミノ酸類似物質を指す。
【0060】
天然アミノ酸には、アラニン(AlaまたはA)、アルギニン(ArgまたはR)、アスパラギン(AsnまたはN)、アスパラギン酸(AspまたはD)、システイン(CysまたはC)、グルタミン(GlnまたはQ)、グルタミン酸(GluまたはE)、グリシン(GlyまたはG)、ヒスチジン(HisまたはH)、イソロイシン(IleまたはI)、ロイシン(LeuまたはL)、リジン(LysまたはK)、メチオニン(MetまたはM)、フェニルアラニン(PheまたはF)、プロリン(ProまたはP)、セリン(SerまたはS)、トレオニン(ThrまたはT)、トリプトファン(TrpまたはW)、チロシン(TyrまたはY)およびバリン(ValまたはV)が含まれる。
【0061】
非天然アミノ酸には、アゼチジンカルボン酸、2-アミノアジピン酸、3-アミノアジピン酸、ベータ-アラニン、ナフチルアラニン(「naph」)、アミノプロピオン酸、2-アミノ酪酸、4-アミノ酪酸、6-アミノカプロン酸、2-アミノヘプタン酸、2-アミノイソ酪酸、3-アミノイソ酪酸、2-アミノピメリン酸、テトラ-ブチルグリシン(「tBuG」)、2,4-ジアミノイソ酪酸、デスモシン、2,2’-ジアミノピメリン酸、2,3-ジアミノプロピオン酸、N-エチルグリシン、N-エチルアスパラギン、ホモプロリン(「hPro」または「homoP」)、ヒドロキシリジン、アロ-ヒドロキシリジン、3-ヒドロキシプロリン(「3Hyp」)、4-ヒドロキシプロリン(「4Hyp」)、イソデスモシン、アロ-イソロイシン、N-メチルアラニン(「MeAla」または「Nime」)、N-アルキルグリシン(「NAG」)(N-メチルグリシンを含む)、N-メチルイソロイシン、N-アルキルペンチルグリシン(「NAPG」)(N-メチルペンチルグリシンを含む)、N-メチルバリン、ナフチルアラニン、ノルバリン(「Norval」)、ノルロイシン(「Norleu」)、オクチルグリシン(「OctG」)、オルニチン(「Orn」)、ペンチルグリシン(「pG」または「PGly」)、ピペコール酸、チオプロリン(「ThioP」または「tPro」)、ホモリジン(「hLys」)、およびホモアルギニン(「hArg」)が含まれが、これらに限定されない。
【0062】
用語「アミノ酸類似物質」は、C末端カルボキシ基、N末端アミノ基および側鎖生理活性基の1つ以上が、可逆的もしくは不可逆的に化学的にブロックされているか、または別の生理活性基に修飾されている、天然または非天然アミノ酸を指す。例えば、アスパラギン酸-(ベータ-メチルエステル)はアスパラギン酸のアミノ酸類似物質であり;N-エチルグリシンはグリシンのアミノ酸類似物質であり;またはアラニンカルボキサミドはアラニンのアミノ酸類似物質である。他のアミノ酸類似物質には、メチオニンスルホキシド、メチオニンスルホン、S-(カルボキシメチル)-システイン、S-(カルボキシメチル)-システインスルホキシドおよびS-(カルボキシメチル)-システインスルホンが含まれる。
【0063】
本明細書で使用される場合、用語「ペプチド」は、ペプチド結合によって共に連結したアミノ酸の短いポリマーに対するオリゴマーを指す。他のアミノ酸ポリマー(例えば、タンパク質、ポリペプチドなど)とは対照的に、ペプチドは、約50個以下のアミノ酸長である。ペプチドは、天然アミノ酸、非天然アミノ酸、アミノ酸類似物質、および/または修飾アミノ酸を含み得る。ペプチドは、天然に存在するタンパク質の部分配列または非天然(人工)配列であり得る。
【0064】
本明細書で使用される場合、用語「人工」は、ヒトによって設計または調製され、そして天然に存在しない組成物およびシステムを指す。例えば、人工のペプチド、ペプトイド、または核酸は、非天然配列を含んでいるものである(例えば、天然に存在するタンパク質またはその断片と100%の同一性を有さないペプチド)。
【0065】
本明細書で使用される場合、「保存的」アミノ酸置換は、ペプチドまたはポリペプチド中のアミノ酸が、類似の化学的特性(例えば、サイズまたは電荷)を有している別のアミノ酸で置換されることを指す。本開示の目的のため、以下の8つの群のそれぞれには、互いの保存的置換であるアミノ酸が含まれている:
1)アラニン(A)およびグリシン(G);
2)アスパラギン酸(D)およびグルタミン酸(E);
3)アスパラギン(N)およびグルタミン(Q);
4)アルギニン(R)およびリジン(K);
5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、およびバリン(V);
6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、およびトリプトファン(W);
7)セリン(S)およびトレオニン(T);ならびに
8)システイン(C)およびメチオニン(M)。
【0066】
天然に存在する残基は、共通の側鎖の特性に基づいて、例えば以下のクラスに分類することができる:正極性(または塩基性)(ヒスチジン(H)、リジン(K)、およびアルギニン(R));負極性(または酸性)(アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E));中性極性(セリン(S)、トレオニン(T)、アスパラギン(N)、グルタミン(Q));非極性の脂肪族(アラニン(A)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、メチオニン(M));非極性の芳香族(フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W));プロリンおよびグリシン;ならびにシステイン。本明細書で使用される場合、「半保存的」アミノ酸置換は、ペプチドまたはポリペプチド中のアミノ酸が、同じクラス内の別のアミノ酸で置換されることを指す。
【0067】
いくつかの実施形態において、特に明記しない限り、保存的または半保存的アミノ酸置換はまた、天然残基と同様の化学的特性を有する天然に存在しないアミノ酸残基を包含し得る。これらの非天然残基は、典型的には生体系における合成によるのではなく、化学的ペプチド合成によって組み込まれる。これらには、ペプチド模倣体、および他の逆転または反転した形態のアミノ酸部分が含まれるが、これらに限定されない。本明細書の実施形態は、いくつかの実施形態において、天然アミノ酸、非天然アミノ酸、および/またはアミノ酸類似物質に限定され得る。
【0068】
非保存的置換は、あるクラスのメンバーを別のクラスのメンバーと置換することを含み得る。
【0069】
本明細書で使用される場合、用語「配列同一性」は、2つのポリマー配列(例えば、ペプチド、ポリペプチド、核酸など)がモノマーサブユニットの同一の配列構成(sequential composition)を有する度合いを指す。用語「配列類似性」は、2つのポリマー配列(例えば、ペプチド、ポリペプチド、核酸など)が保存的および/または半保存的アミノ酸置換によってのみ異なる度合いを指す。「パーセント配列同一性」(または「パーセント配列類似性」)は、(1)2つの最適にアラインメントした配列を、比較ウィンドウ(window of comparison)(例えば、より長い配列の長さ、より短い配列の長さ、特定のウィンドウなど)と比較すること、(2)同一の(または類似の)モノマーを含んでいる(例えば、同じアミノ酸が両方の配列中に存在する、類似のアミノ酸が両方の配列に存在する)位置の数を決定して、一致した位置の数を得ること、(3)一致した位置の数を、比較ウィンドウ(例えば、より長い配列の長さ、より短い配列の長さ、特定のウィンドウ)内の位置の総数で割ること、および(4)結果に100を掛けて、パーセント配列同一性またはパーセント配列類似性を得ることによって算出される。例えば、ペプチドAおよびBが、両方とも20アミノ酸長であり、且つ1位を除く全てにおいて同一のアミノ酸を有する場合、ペプチドAおよびペプチドBは95%の配列同一性を有する。同一でない位置のアミノ酸が、同じ生物理学的特性(例えば、両方とも酸性)を共有する場合、ペプチドAおよびペプチドBは、100%の配列類似性を有する。別の例として、ペプチドCが20アミノ酸長であり、ペプチドDが15アミノ酸長であり、且つペプチドDの15個のアミノ酸のうちの14個のアミノ酸がペプチドCの一部のアミノ酸と同一である場合、ペプチドCおよびDは70%の配列同一性を有する。しかしながら、ペプチドDは、ペプチドCの最適な比較ウィンドウに対して93.3%の配列同一性を有する。本明細書中の「パーセント配列同一性」(または「パーセント配列類似性」)を計算する目的のために、アラインメントした配列内の任意のギャップは、その位置におけるミスマッチとして扱われる。
【0070】
参照配列ID番号と特定のパーセント配列同一性または類似性(例えば、少なくとも70%)を有するものとして本明細書に記載される任意のポリペプチドはまた、その参照配列に対する最大数の置換(または末端欠失)を有しているとして表され得る。例えば、配列番号Z(例えば、100個のアミノ酸)と少なくともY%の配列同一性(例えば、90%)を有している配列は、配列番号Zと比較してX個(例えば、10個)までの置換を有し得、したがってまた、「配列番号Zと比較して、X個(例えば、10個)以下の置換を有している」として表され得る。
【0071】
本明細書で使用される場合、用語「ナノファイバー」は、典型的には100ナノメートル未満の直径を有する、細長いまたは糸状のフィラメント(例えば、幅または直径よりも有意に大きい長さ寸法を有している)を指す。
【0072】
本明細書で使用される場合、用語「スキャフォールド」は、細胞の増殖および分化を支持可能な物質を指す。
本明細書で使用される場合、用語「超分子」(例えば、「超分子複合体」、「超分子相互作用」、「超分子ファイバー」、「超分子ポリマー」など)は、分子(例えば、ポリマー、高分子など)間の非共有相互作用、および結果として形成される多成分集合体、複合体、系、および/またはファイバーを指す。
【0073】
本明細書で使用される場合、用語「自己集合する」および「自己集合」は、構成要素の諸部分から個別の、非ランダムな凝集構造が形成されることを指し;前記集合は、これらの構成要素の固有の化学的または構造的特性および引力のみに起因して、構成要素(例えば、分子)のランダムな運動を介して自発的に生じる。
【0074】
本明細書で使用される場合、用語「ペプチド両親媒性物質」は、少なくとも、非ペプチド親油性(疎水性)セグメント、構造ペプチドセグメントおよび/または荷電ペプチドセグメント(多くの場合、両方)、ならびに任意選択により生理活性セグメント(例えば、リンカーセグメント、生理活性セグメントなど)を含む分子を指す。ペプチド両親媒性物質は、生理的pHにおける正味の電荷、すなわち正味の正電荷または正味の負電荷のいずれかを発現し得るか、または両性イオン性(すなわち、正電荷および負電荷の両方を保有している)であり得る。特定のペプチド両親媒性物質は、(1)疎水性非ペプチドセグメント(例えば、炭素数6以上のアシル基を含んでいる)、(2)構造ペプチドセグメント、(3)荷電ペプチドセグメント、および(4)生理活性セグメント(例えば、リンカーセグメント)からなるか、またはそれらを含んでいる。
【0075】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、用語「親油性部分」または「疎水性部分」は、ペプチド両親媒性物質の一方の末端(例えば、C末端、N末端)に配置された部分(例えば、アシル部分、エーテル部分、スルホンアミド部分、またはホスホジエステル部分)を指し、本明細書およびその他では、親油性もしくは疎水性のセグメントまたは構成要素と称されてもよい。疎水性セグメントは、水または別の極性溶媒系中において両親媒性の挙動および凝集体(またはナノスフェアあるいはナノファイバー)形成を提供するのに十分な長さを有するべきである。従って、本明細書に記載された実施形態の文脈において、疎水性構成要素は、好ましくは、式:Cn-12n-1C(O)--(式中、n=2~25)の単一の直線状アシル鎖を含んでいる。いくつかの実施形態において、直線状アシル鎖は、親油性基(飽和または不飽和炭素)のパルミチン酸である。しかしながら、他の親油性基(例えば、ステロイド、リン脂質およびフルオロカーボン)をアシル鎖の代わりに使用してもよい。
【0076】
本明細書で互換的に使用される場合、用語「構造ペプチド」または「構造ペプチドセグメント」は、典型的には疎水性セグメントと荷電ペプチドセグメントとの間に配置される、ペプチド両親媒性物質の一部を指す。構造ペプチドは一般に、非極性非荷電側鎖を有する3~10個のアミノ酸残基(例えば、His(H)、Val(V)、Ile(I)、Leu(L)、Ala(A)、Phe(F))から構成され、これらのアミノ酸残基は、隣接する構造ペプチドセグメントの構造ペプチドセグメントと水素結合または他の安定化相互作用(例えば、疎水性相互作用、ファンデルワールス相互作用など)を形成する傾向により選択される。いくつかの実施形態において、構造ペプチドセグメントを有しているペプチド両親媒性物質のナノファイバーは、顕微鏡によって観察した場合に直線状構造または2D構造を呈し、および/または円偏光二色性(CD)によって観察した場合にαヘリックスおよび/またはβシートの特徴を呈する。いくつかの実施形態において、4以下のβシート構造形成に関する全体の傾向を有する構造ペプチドセグメントを有しているペプチド両親媒性物質のナノファイバーは、あまり秩序化されていない特徴(例えば、あまり硬くないβシート構造などのあまり秩序化されていない二次構造)を呈する。いくつかの実施形態において、4以下のβシート構造形成に関する全体の傾向を有する構造ペプチドセグメント(例えば、A)を有しているペプチド両親媒性物質のナノファイバーは、ランダムコイル構造を形成する傾向を呈する。
【0077】
本明細書で使用される場合、用語「ベータ(β)シート形成ペプチドセグメント」は、(例えば、CDによって分析される場合)βシート様の特徴を呈する傾向を有している構造ペプチドセグメントを指す。いくつかの実施形態において、ベータ(β)シート形成ペプチドセグメント内のアミノ酸は、ベータシート2次構造を形成する傾向により選択される。20種の天然に存在するアミノ酸から選択された好適なアミノ酸残基の例としては、Met(M)、Val(V)、Ile(I)、Cys(C)、Tyr(Y)、Phe(F)、Gln(Q)、Leu(L)、Thr(T)、Ala(A)、およびGly(G)(ベータシートを形成する傾向の順に列挙されている)が挙げられる。しかし、類似のベータシート形成傾向の天然に存在しないアミノ酸もまた、使用され得る。相互作用してベータシートを形成することができる、および/またはベータシートを形成する傾向を有するペプチドセグメントが理解されている(例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Mayo et al. Protein Science(1996),5:1301-1315を参照)。
【0078】
本明細書で使用される場合、用語「荷電ペプチドセグメント」は、荷電アミノ酸残基、または生理的条件下で正味の正荷電または負荷電を有するアミノ酸残基に富む(例えば、>50%、>75%など)ペプチド両親媒性物質の一部分を指す。荷電ペプチドセグメントは、酸性(例えば、負に荷電)、塩基性(例えば、正に荷電)、または両性イオン性(例えば、酸性および塩基性の両方の残基を有している)であり得る。
【0079】
本明細書で使用される場合、用語「カルボキシリッチペプチドセグメント」、「酸性ペプチドセグメント」、および「負荷電ペプチドセグメント」は、カルボン酸側鎖(例えば、Glu(E)、Asp(D)、または非天然アミノ酸)を呈している側鎖を有する1つ以上のアミノ酸残基を含んでいるペプチド両親媒性物質のペプチド配列を指す。カルボキシリッチペプチドセグメントは、任意選択により、1個以上の追加の(例えば、非酸性)アミノ酸残基を含んでもよい。当業者に明らであろうことだが、非天然アミノ酸残基、または酸性側鎖を有するペプチド模倣体を使用することができる。このセグメントには、約2個~約7個のアミノ酸、および/または約3個もしくは4個のアミノ酸が存在し得る。
【0080】
本明細書で使用される場合、用語「アミノリッチペプチドセグメント」、「塩基性ペプチドセグメント」、および「正荷電ペプチドセグメント」は、正に荷電した酸側鎖(例えば、Arg(R)、Lys(K)、His(H)、もしくは非天然アミノ酸、またはペプチド模倣体)を呈している側鎖を有している1個以上のアミノ酸残基を含んでいるペプチド両親媒性物質のペプチド配列を指す。塩基性ペプチドセグメントは、任意選択により、1個以上の追加の(例えば、非塩基性)アミノ酸残基を含んでもよい。当業者に明らかであろうことだが、塩基性側鎖を有する非天然アミノ酸残基を使用することができる。このセグメントには、約2個~約7個のアミノ酸、および/または約3個もしくは4個のアミノ酸が存在し得る。
【0081】
本明細書で使用される場合、用語「生理活性ペプチド」は、関連する配列、分子、または超分子複合体の作用を媒介するアミノ酸配列を指す。生理活性ペプチド(例えば、IKVAVペプチド)を有しているペプチド両親媒性物質および構造(例えば、ナノファイバー)は、生理活性ペプチドの機能性を示す。
【0082】
本明細書で使用される場合、用語「生体適合性」は、細胞または有機体に対して毒性がない材料および薬剤を指す。いくつかの実施形態において、インビトロで物質を細胞へ添加したときに、細胞死が、約10%以下、通常は5%未満、より通常は1%未満となる場合、物質は「生体適合性」であると判断される。
【0083】
本明細書で使用される場合、ポリマー、ヒドロゲル、および/または創傷被覆材を記載するために使用される「生分解性」は、本明細書において、生理的条件への曝露下で分解されるか、またはそうでなければ「崩壊する(broken down)」組成物を指す。いくつかの実施形態において、生分解性物質は、細胞機構、酵素分解、化学的プロセス、加水分解などによって崩壊する。いくつかの実施形態において、創傷被覆材または創傷コーティングは、生分解性を提供する加水分解性エステル結合を含んでいる。
【0084】
本明細書で使用される場合、語句「生理的条件」は、組織の細胞内液および細胞外液中で遭遇する可能性が高い化学的(例えば、pH、イオン強度)および生化学的(例えば、酵素濃度)条件の範囲に関連する。ほとんどの組織について、生理的pHは、約7.0~7.4の範囲である。
【0085】
本明細書で使用される場合、用語「治療する(treat)」、「治療(treatment)」、および「治療すること(treating)」は、特定の状態、病態(例えば、CNS損傷)、またはその症状の量もしくは重症度を、その状態または病態を現在経験しているかまたは罹患している被検体において、低減させることを指す。該用語は、必ずしも完全な治療(例えば、その状態、疾患、または症状の完全な排除)を示すものではない。「治療(treatment)」は、(例えば、ヒトを含む哺乳動物において)疾患に対する治療または技術の任意の投与または適用を包含し、そしてその疾患を阻害すること、その発症を止めること、その疾患を緩和すること、退縮させること、または失われた、不足している、もしくは不完全な機能を回復または修復すること;あるいは非効率的なプロセスを促進すること、を包含している。
【0086】
本明細書で使用される場合、用語「予防する(prevent)」、「予防(prevention)」、および「予防すること(preventing)」は、特定の状態または病態(例えば、CNS損傷)が生じる可能性を、その状態または病態を現在経験していないか、または罹患していない被験体において、低減させることを指す。該用語は、必ずしも完全な予防または絶対的な予防を示すものではない。例えば、「CNS損傷を予防すること(preventing CNS injury)」は、CNS損傷を現在経験していないか、またはCNS損傷と診断されていない被験体において生じるCNS損傷の可能性を減少させることを指す。「CNS損傷を予防する(prevent CNS injury)」ために、組成物または方法は、CNS損傷の可能性を減少させるだけでよく、そのあらゆる可能性を完全にブロックする必要はない。「予防(prevention)」は、(例えば、ヒトを含む哺乳動物において)疾患が発症する可能性を減少させるための治療あるいは技術の任意の投与または適用を包含している。そのような可能性は、集団または個体について評価され得る。
【0087】
本明細書で使用される場合、用語「共投与(co-administration)」および「共投与すること(co-administering)」は、被験体への少なくとも2つの薬剤(複数可)または治療の投与(例えば、IKVAV PAナノファイバーおよび1つ以上の治療薬剤)を指す。いくつかの実施形態において、2つ以上の薬剤または治療の共投与は、同時に起こる。他の実施形態において、第1の薬剤/治療は、第2の薬剤/治療の前に投与される。当業者は、使用される種々の薬剤または治療の製剤および/または投与経路が変化し得ることを理解する。共投与のための適切な用量は、当業者によって容易に決定され得る。いくつかの実施形態において、薬剤または治療が共投与される場合、それぞれの薬剤または治療は、それらの単独投与に適切な用量よりも低い用量で投与される。したがって、薬剤または治療の共投与が潜在的に有害な(例えば、毒性の)薬剤の必須の用量を低下させる実施形態、および/または2つ以上の薬剤の共投与が、他の薬剤の共投与を介して、複数の薬剤のうちの1つの有益な作用に対する被験体の増感作用をもたらす実施形態において、共投与は特に望ましい。
【0088】
[詳細な説明]
本明細書では、生理活性ペプチドを含んでいるペプチド両親媒性物質(PA)、生理活性PAを呈しているナノファイバー、およびそれらの使用方法が提供される。
【0089】
いくつかの実施形態において、本明細書中に記載された実施形態のペプチド両親媒性分子および組成物は、当業者に周知の調製技術を使用して、好ましくはペプチドのN末端(またはC末端)に標準アミノ酸に代えて脂肪酸を添加することを伴う標準固相ペプチド合成によって合成され、その結果、親油性セグメントを作製することができる(ただし、いくつかの実施形態において、ナノファイバーのアラインメントは、これまでに開示されていないか、または当技術分野で使用されていない技術(例えば、メッシュスクリーンを通した押出)を介して行われる)。合成は、典型的にはC末端から開始し、そこに、Rinkアミド樹脂(この樹脂からの切断後に、ペプチドのC末端に--NH2基を生じる)またはWang樹脂(C末端に--OH基を生じる)のいずれかを使用して、アミノ酸が連続的に付加される。従って、本明細書に記載されたいくつかの実施形態は、--H、--OH、--COOH、--CONH2、および--NH2からなる群より選択され得るC末端部分を有しているペプチド両親媒性物質を包含している。
【0090】
いくつかの実施形態において、ペプチド両親媒性物質は、ペプチドに連結された疎水性セグメント(すなわち、疎水性尾部)を含んでいる。いくつかの実施形態において、ペプチドは、構造ペプチドセグメントを含んでいる。いくつかの実施形態において、構造ペプチドセグメントは、水素結合形成セグメント、またはベータシート形成セグメントである。いくつかの実施形態において、構造ペプチドセグメントはランダムコイル構造を形成する傾向(例えば、4以下のβシート構造形成に関する全体の傾向)を有する。いくつかの実施形態において、ペプチドは、荷電セグメント(例えば、酸性セグメント、塩基性セグメント、両性イオン性セグメントなど)を含んでいる。いくつかの実施形態において、ペプチドは、溶解度、可撓性、セグメント間の距離などを付加するためのリンカーまたはスペーサーセグメントをさらに含んでいる。いくつかの実施形態において、ペプチド両親媒性物質は、疎水性セグメントとは反対のペプチド末端に、スペーサーセグメント(例えば、ペプチドおよび/または非ペプチドスペーサー)を含んでいる。いくつかの実施形態において、スペーサーセグメントは、ペプチドおよび/または非ペプチドエレメントを含んでいる。いくつかの実施形態において、スペーサーセグメントは、1つ以上の生理活性基(例えば、アルケン、アルキン、アジド、チオールなど)を含んでいる。いくつかの実施形態において、種々のセグメントは、リンカーセグメント(例えば、ペプチドリンカー(例えば、GG)または非ペプチドリンカー(例えば、アルキル、OEG、PEGなど))によって連結され得る。
【0091】
親油性または疎水性セグメントは、典型的には最後のアミノ酸カップリング後に、ペプチドのN末端またはC末端に組み込まれ、アシル結合を介してN末端またはC末端アミノ酸に連結される脂肪酸または他の酸から構成される。水溶液中で、PA分子は自己集合して(例えば、円筒形ミセル(別名、ナノファイバー)に)、親油性セグメントをそれらのコア中に埋め、そして表面上に生理活性ペプチドを呈する。いくつかの実施形態において、構造ペプチドが分子間水素結合を受けて、ミセルの長軸に平行に配向するベータシートを形成する。いくつかの実施形態において、構造ペプチドは弱い分子間水素結合を呈し、その結果、ナノファイバー内に、あまり硬くないベータシート構造が得られる。
【0092】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の組成物は、疎水性セグメントおよびペプチドセグメントを順に含んでいるPA形成ブロックを含んでいる。特定の実施形態において、十分な長さ(例えば、2個の炭素、3個の炭素、4個の炭素、5個の炭素、6個の炭素、7個の炭素、8個の炭素、9個の炭素、10個の炭素、11個の炭素、12個の炭素、13個の炭素、14個の炭素、15個の炭素、16個の炭素、17個の炭素、18個の炭素、19個の炭素、20個の炭素、21個の炭素、22個の炭素、23個の炭素、24個の炭素、25個の炭素、26個の炭素、27個の炭素、28個の炭素、29個の炭素、30個の炭素もしくはそれより多く、またはそれらの間の任意の範囲)の疎水性(例えば、炭化水素および/もしくはアルキル/アルケニル/アルキニル尾部、またはコレステロールなどのステロイド)セグメントは、ペプチドセグメント(例えば、ベータストランド構造または他の超分子相互作用に対する優先傾向を有しているセグメントを含んでいるペプチド)に共有結合して、ペプチド両親媒性分子を生じる。いくつかの実施形態において、複数のそのようなPAは、水(または水溶液)中で自己集合して、ナノ構造(例えば、ナノファイバー)になる。種々の実施形態において、ペプチドセグメントおよび疎水性セグメントの相対的長さは、異なるPA分子形状およびナノ構造アーキテクチャをもたらす。例えば、より広いペプチドセグメントおよびより狭い疎水性セグメントは、PAの集合体に影響を及ぼす一般的に円錐の分子形状を生じる(例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれるJ.N.Israelachvili Intermolecular and surface forces;第2版;Academic:London San Diego,1992を参照)。他の分子形状は、集合体およびナノ構造アーキテクチャに対して同様の効果を有する。
【0093】
いくつかの実施形態において、ペプチド両親媒性物質の水溶液の自己集合を誘導するために、溶液のpHを変化させる(上昇または低下させる)ことができ、またはカルシウムなどの多価イオンもしくは荷電ポリマーもしくは他の高分子を溶液に添加することができる。
【0094】
いくつかの実施形態において、疎水性セグメントは、非ペプチドセグメント(例えば、アルキル/アルケニル/アルキニル基)である。いくつかの実施形態において、疎水性セグメントは、炭素数4~25(例えば、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個)のアルキル鎖(例えば、飽和)、フッ素化セグメント、フッ素化アルキル尾部、複素環、芳香族セグメント、パイ共役セグメント、シクロアルキル、オリゴチオフェンなどを含んでいる。いくつかの実施形態において、疎水性セグメントは、炭素数2~30(例えば、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、29個、30個)のアシル/エーテル鎖(例えば、飽和)を含んでいる。
【0095】
いくつかの実施形態において、PAは、1つ以上のペプチドセグメントを含んでいる。ペプチドセグメントは、天然アミノ酸、修飾アミノ酸、非天然アミノ酸、アミノ酸類似物質、ペプチド模倣体、またはそれらの組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態において、ペプチドセグメントは、本明細書中に記載されたペプチド配列の1個以上に対して、少なくとも50%の配列同一性または類似性(例えば、保存的または半保存的)を含んでいる。
【0096】
いくつかの実施形態において、ペプチド両親媒性物質は荷電ペプチドセグメントを含んでいる。荷電セグメントは、酸性、塩基性、または両性イオン性であり得る。
【0097】
いくつかの実施形態において、ペプチド両親媒性物質は酸性ペプチドセグメントを含んでいる。例えば、いくつかの実施形態において、酸性ペプチドは1個以上(例えば、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、またはそれより多く)の酸性残基(Dおよび/またはE)を配列中に含んでいる。いくつかの実施形態において、酸性ペプチドセグメントは7残基長までを含み、少なくとも50%の酸性残基を含んでいる。いくつかの実施形態において、酸性ペプチドセグメントは(Xa)1-7を含み、各々のXaは、独立して、DまたはEである。いくつかの実施形態において、酸性ペプチドセグメントは、E2-4を含んでいる。例えば、いくつかの実施形態において、酸性ペプチドセグメントはEEを含んでいる。いくつかの実施形態において、酸性ペプチドセグメントはEEEを含んでいる。他の実施形態において、酸性ペプチドセグメントはEEEEを含んでいる。
【0098】
いくつかの実施形態において、ペプチド両親媒性物質は、塩基性ペプチドセグメントを含んでいる。例えば、いくつかの実施形態において、酸性ペプチドは、1個以上(例えば、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、またはそれより多く)の塩基性残基(R、H、および/またはK)を配列中に含んでいる。いくつかの実施形態において、塩基性ペプチドセグメントは、7残基長までを含み、少なくとも50%の塩基性残基を含んでいる。いくつかの実施形態において、酸性ペプチドセグメントは(Xb)1-7を含み、各々のXbは、独立して、R、H、および/またはKである。
【0099】
いくつかの実施形態において、ペプチド両親媒性物質は構造ペプチドセグメントを含んでいる。いくつかの実施形態において、構造ペプチドセグメントはベータシート形成セグメントである。いくつかの実施形態において、構造ペプチドセグメントは弱い水素結合を呈し、硬いベータシート構造よりもむしろランダムコイル構造を形成する傾向を有する。いくつかの実施形態において、構造ペプチドセグメントは、H、I、L、F、V、G、およびA残基のうちの1つ以上に富む。いくつかの実施形態において、構造ペプチドセグメントは、アラニンおよびバリンリッチなペプチドセグメント(例えば、VVAA、VVVAAA、AAVV、AAAVVV、またはVおよびA残基の他の組み合わせなど)を含んでいる。いくつかの実施形態において、構造ペプチドセグメントは4個以上の連続するAおよび/もしくはV残基、またはそれに対する保存的もしくは半保存的な置換を含んでいる。いくつかの実施形態において、構造ペプチドセグメントはVを含んでいる。いくつかの実施形態において、構造ペプチドセグメントはアラニンおよびグリシンリッチなペプチドセグメント(例えば、AAGG、AAAGGG、またはAおよびG残基の他の組み合わせなど)を含んでいる。いくつかの実施形態において、構造ペプチドセグメントはAを含んでいる。
【0100】
いくつかの実施形態において、構造ペプチドセグメントは、4個以上の連続した非極性脂肪族残基(例えば、アラニン(A)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、メチオニン(M))を含んでいる。いくつかの実施形態において、構造ペプチドセグメントは、2~16アミノ酸長を含み、4個以上(例えば、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、またはそれらの間の範囲)の非極性脂肪族残基を含んでいる。いくつかの実施形態において、構造ペプチドセグメントはVEVAを含んでいる。
【0101】
いくつかの実施形態において、構造ペプチドセグメントは、4以下(例えば、4未満、3.9未満、3.8未満、3.7未満、3.6未満、3.5未満、3.4未満、3.3未満、3.2未満、3.1未満、3.0未満、2.9未満、2.8未満、2.7未満、2.6未満、2.5未満、2.4未満、2.3未満、2.2未満、2.1未満、2.0未満、1.9未満、1.8未満、1.7未満、1.6未満、1.5未満、1.4未満、1.3未満、1.2未満、1.1未満または1未満)のβシート構造形成に関する全体の傾向を有する。
【0102】
βシート構造形成に関する全体の傾向は、構造ペプチドセグメント中の各アミノ酸のβシート構造形成の傾向の合計として計算することができる。βシート構造形成に関する各アミノ酸の傾向およびその計算方法は、例えば、Fujiwara,K.,Toda,H.&Ikeguchi,M. Dependence of α-helical and β-sheet amino acid propensities on the
overall protein fold type BMC Struct Biol 12,18(2012)(その全内容は、本明細書中に参考として援用される)に記載されている。例示的な値を以下の表1に示す。構造ペプチドセグメントのβシート構造形成に関する全体の傾向を計算する目的のために、各アミノ酸について表1の「全残基」欄に示された値を一緒に加える。例えば、A2G2構造ペプチドセグメントの場合、βシート構造形成に関する全体の傾向は、0.75+0.75+0.67+0.67=2.84である。構造ペプチドセグメントは、4以下のβシート構造形成に関する全体の傾向を達成するために、アミノ酸の任意の適切な数および組み合わせを含み得る。
【0103】
【表1】
【0104】
いくつかの実施形態において、4以下のβシート構造形成に関する全体の傾向を有している構造ペプチドセグメントは、構造ペプチドセグメント内のアミノ酸が、隣接する分子とのより弱い相互作用を有していることを示す。例えば、構造ペプチドセグメントは、弱い水素結合能力を呈し得る。したがって、そのような構造ペプチドセグメントおよびそれを含んでいるペプチド両親媒性物質は、より動的なナノファイバー構造を作り出すことができる。例えば、A構造ペプチドセグメントは、硬いベータシート構造よりむしろランダムコイル構造を呈し得る。
【0105】
いくつかの実施形態において、ペプチド両親媒性物質は、非ペプチドスペーサーまたはリンカーセグメントを含んでいる。いくつかの実施形態において、非ペプチドスペーサーまたはリンカーセグメントは、疎水性セグメントとは反対のペプチド末端に位置する。いくつかの実施形態において、スペーサーまたはリンカーセグメントは、生理活性基のための取り付け部位を提供する。いくつかの実施形態において、スペーサーまたはリンカーセグメントは、PAの官能化のための反応基(例えば、アルケン、アルキン、アジド、チオール、マレイミドなど)を提供する。いくつかの実施形態において、スペーサーまたはリンカーは、CH、O、(CHO、O(CH、NH、およびC=O基(例えば、CH2(O(CHNH、CH2(O(CHNHCO(CHCCHなど)の実質的に直線鎖である。いくつかの実施形態において、スペーサーまたはリンカーは、さらなる生理活性基、置換基、分岐などをさらに含んでいる。いくつかの実施形態において、リンカーセグメントは単一のグリシン(G)残基である。
【0106】
本明細書の材料用の適切なペプチド両親媒性物質、ならびにPAおよび関連材料の調製方法、PA用のアミノ酸配列、およびPAと共に使用することが見出される材料は、以下の特許に記載されている:米国特許第9,044,514号;米国特許第9,040,626号;米国特許第9,011,914号;米国特許第8,772,228号;米国特許第8,748,569号;米国特許第8,580,923号;米国特許第8,546,338号;米国特許第8,512,693号;米国特許第8,450,271号;米国特許第8,236,800号;米国特許第8,138,140号;米国特許第8,124,583号;米国特許第8,114,835号;米国特許第8,114,834号;米国特許第8,080,262号;米国特許第8,076,295号;米国特許第8,063,014号;米国特許第7,851,445号;米国特許第7,838,491号;米国特許第7,745,708号;米国特許第7,683,025号;米国特許第7,554,021号;米国特許第7,544,661号;米国特許第7,534,761号;米国特許第7,491,690号;米国特許第7,452,679号;米国特許第7,371,719号;米国特許第7,030,167号;これらの全ては、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0107】
PA超分子構造の特性(例えば、形状、剛性、親水性など)は、ペプチド両親媒性物質の構成要素(例えば、親油性セグメント、酸性セグメント、構造ペプチドセグメント、生理活性セグメントなど)の同一性に依存する。例えば、ナノファイバー、ナノスフェア、中間体形状、および他の超分子構造は、PA構成要素の諸部分の同一性を調整することによって実現される。いくつかの実施形態において、PAの超分子ナノ構造の特性は、集合後の操作(例えば、加熱/冷却、延伸など)によって変更される。
【0108】
いくつかの実施形態において、ペプチド両親媒性物質は、以下を含んでいる:(a)炭素数8~24のアルキル鎖を含んでいる疎水性尾部;(b)構造ペプチドセグメント(例えば、VVAA、AAGG、またはVEVAを含んでいる);および(c)荷電セグメント(例えば、EE、EEE、EEEEなどを含んでいる)。いくつかの実施形態において、本明細書に記載された構成要素を含んでいる、本明細書に記載される範囲内の、または当業者の技術範囲内の任意のPAは、本明細書中に用途を見出すことができる。
【0109】
いくつかの実施形態において、ペプチド両親媒性物質は、生理活性部分(例えば、IKVAVペプチド)を含んでいる。特定の実施形態において、生理活性部分は、PAの最もC末端またはN末端のセグメントである。いくつかの実施形態において、生理活性部分は、荷電セグメントの末端に取り付けられる。いくつかの実施形態において、生理活性部分が、集合したPA構造(例えば、ナノファイバー)の表面上に露出される。生理活性部分は、典型的にはペプチドであるが、これに限定されない。
【0110】
いくつかの実施形態において、生理活性部分は、細胞外マトリックス(ECM)において同定されたペプチドである。例えば、生理活性部分は、コラーゲン、エラスチン、フィブロネクチン、またはラミニン中に見出されたペプチド配列であり得る。いくつかの実施形態において、生理活性部分は、ラミニン中に見出されたペプチド配列である。例えば、生理活性部分は、ラミニン-1、ラミニン-2、ラミニン-3、ラミニン-4、ラミニン-5、ラミニン-6、ラミニン-7、ラミニン-8、ラミニン-9、ラミニン-10、ラミニン-11、ラミニン-12、ラミニン-13、ラミニン-14、またはラミニン-15中に見出され得る。いくつかの実施形態において、生理活性部分は、ラミニン-1中に見出されたペプチド配列である。特定の実施形態において、生理活性部分はIKVAVである。いくつかの実施形態において、生理活性部分は組換えペプチドである。いくつかの実施形態において、生理活性部分は、目的のペプチドまたはポリペプチド(例えば、ECMタンパク質)に結合するペプチド配列である。
【0111】
いくつかの実施形態において、ペプチド両親媒性物質は、(例えば、C末端からN末端へ、またはN末端からC末端へ)以下を含んでいる:生理活性ペプチド(例えば、IKVAVペプチド)-荷電セグメント(例えば、E2-4などを含んでいる)-構造ペプチドセグメント(例えば、V、A、VEVAなどを含んでいる)-疎水性尾部(例えば、炭素数8~24のアルキル鎖を含んでいる)。
【0112】
いくつかの実施形態において、ペプチド両親媒性物質は(例えば、C末端からN末端へ、またはN末端からC末端へ)以下を含んでいる:生理活性ペプチド(例えば、IKVAVペプチド)-可撓性リンカー(例えば、Gなどを含んでいる)-荷電セグメント(例えば、E2-4などを含んでいる)-構造ペプチドセグメント(例えば、V、A、VEVAなどを含んでいる)-疎水性尾部(例えば、炭素数8~24のアルキル鎖を含んでいる)。
【0113】
いくつかの実施形態において、PAは、疎水性尾部をPAのペプチド部分に取り付けるための取り付けセグメントまたは残基(例えば、K)をさらに含んでいる。いくつかの実施形態において、疎水性尾部は、リジン側鎖に取り付けられる。
【0114】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されたペプチド両親媒性物質から集合したナノファイバーおよびナノ構造が、本明細書中で提供される。いくつかの実施形態において、ナノファイバーは、本明細書に記載されたPAの自己集合によって調製される。いくつかの実施形態において、ナノファイバーは、IKVAVペプチドを呈しているPAを含んでいるか、またはそれからなる。いくつかの実施形態において、IKVAVペプチドはナノファイバーの表面上に呈される。いくつかの実施形態において、IKVAVペプチドを呈しているPAに加えて、フィラーPAがナノファイバー中に含まれる。いくつかの実施形態において、フィラーPAは、本明細書に記載されたとおり、ペプチド両親媒性物質(例えば、構造ペプチドセグメント、荷電セグメント、疎水性セグメントなど)であるが、生理活性部分を欠いている。いくつかの実施形態において、フィラーペプチドは、生理活性部分を欠いている塩基性または酸性ペプチドである。いくつかの実施形態において、フィラーPAおよびIKVAV PAが両方のタイプのPAを含んでいるナノファイバーに自己集合する。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されたペプチド両親媒性物質から集合したナノ構造(例えば、ナノファイバー)が提供される。
【0115】
いくつかの実施形態において、フィラーペプチド(例えば、塩基性ペプチド、酸性ペプチドなど)は、本明細書に記載されたPAナノファイバーを含んでいる材料に機械的特性を付与する。いくつかの実施形態において、0~75%(質量%)の生理活性IKVAV
PAおよび25~100%(質量%)の塩基性フィラーPAから集合したナノファイバーは、塩基性pH条件(例えば、pH8.5~11)でゲルになる。いくつかの実施形態において、75~100%(質量%)の生理活性IKVAV PAおよび0~25%(質量%)の塩基性フィラーPAから集合したナノファイバーは、塩基性pH条件(例えば、pH8.5~11)で液体である。いくつかの実施形態において、0~20%(質量%)の生理活性IKVAV PAおよび80~100%(質量%)の酸性フィラーPAから集合したナノファイバーは、酸性pH条件(例えば、pH1~5)でゲルになる。いくつかの実施形態において、20~80%(質量%)の生理活性IKVAV PAおよび20~80%(質量%)の酸性フィラーPAから集合したナノファイバーは、中性pH条件(例えば、pH5~8.5)でゲルになる。いくつかの実施形態において、80~100%(質量%)の生理活性IKVAV PAおよび0~20%(質量%)の酸性フィラーPAから集合したナノファイバーは、酸性pH条件(例えば、pH1~5)で液体である。
【0116】
いくつかの実施形態において、ナノ構造は、(1)生理活性部分(例えば、IKVAVペプチド)を有しているPA、および(2)フィラーPA(例えば、生理活性部分を標識していないかまたは呈していない、酸性または塩基性PAなど)から集合する。いくつかの実施形態において、ナノ構造(例えば、ナノファイバー)は、95%、90%、85%、80%、75%、70%、65%、60%、55%、50%、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、5%、4%、3%、2%、または1%(またはそれらの間の任意の範囲)のVEGF PAを含んでいる。いくつかの実施形態において、ナノ構造(例えば、ナノファイバー)は、95%、90%、85%、80%、75%、70%、65%、60%、55%、50%、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、5%、4%、3%、2%、または1%(またはそれらの間の任意の範囲)の酸性フィラーPAを含んでいる。いくつかの実施形態において、ナノ構造(例えば、ナノファイバー)は、95%、90%、85%、80%、75%、70%、65%、60%、55%、50%、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、5%、4%、3%、2%、または1%(またはそれらの間の任意の範囲)の塩基性フィラーPAを含んでいる。いくつかの実施形態において、ナノファイバー中の酸性および/または塩基性PAに対するIKVAV PAの比率が、ナノファイバー材料の機械的特性(例えば、液体またはゲル)を決定し、どのような状態下で、材料が様々な特性(例えば、生理的状態に曝されるとゲル化する、生理的状態に曝されると液化するなど)をとるかを決定する。
【0117】
ペプチド両親媒性物質(PA)ナノファイバー溶液は、PAの任意の適切な組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態において、溶液の少なくとも0.05mg/mL(例えば、0.10mg/ml、0.15mg/ml、0.20mg/ml、0.25mg/ml、0.30mg/ml、0.35mg/ml、0.40mg/ml、0.45mg/ml、0.50mg/ml、0.60mg/ml、0.70mg/ml、0.80mg/ml、0.90mg/ml、1.0mg/mlもしくはそれより多い、またはそれらの間の範囲)は、(例えば、生理活性部分を有さない)フィラーPAである。いくつかの実施形態において、溶液の少なくとも0.25mg/mLはフィラーPAである。いくつかの実施形態において、フィラーPAは、分子の末端(例えば、表面に呈された末端)において高度に荷電したグルタミン酸残基を有している非生理活性PA分子である。これらの負に荷電したPAは、イオン架橋を介してナノファイバー間でゲル化が起こることを可能にする。いくつかの実施形態において、フィラーPAは、分子の末端(例えば、表面に呈された末端)に高度に荷電したリジン残基を有している非生理活性PA分子である。これらの正に荷電したPAは、塩基性条件下でゲル化が起こることを可能にする。フィラーPAは、ナノファイバー溶液のゲル化能力を依然として保証しながら、ナノファイバーマトリックス中に他の生理活性PA分子を組み込む能力を提供する。いくつかの実施形態において、粘度を増加させ、ゲル化機構をより強くするために溶液をアニールする。これらのフィラーPAは、例えば、その全体が本明細書に参考として援用される、米国特許第8,772,228号に記載されている配列(例えば、C16-VVVAAAEEE)を有している。
【0118】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のPAナノファイバーは、小さい断面直径(例えば、<25nm、<20nm、<15nm、約10nmなど)を示す。いくつかの実施形態において、ナノファイバーの小さい断面(~10nm直径)は、当該ファイバーが脳実質に浸透することを可能にする。
【0119】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されたPAおよびナノファイバーは、疾患を治療する方法に使用するための薬学的組成物に組み込まれ得る。例えば、本明細書に記載されたPAおよびナノファイバーは、被検体における神経系損傷の治療方法または予防方法に使用され得る。例えば、本明細書に記載されたPAおよびナノファイバーは、脳および脊髄を含む中枢神経系(CNS)、または脳および脊髄の外側の神経ならびに神経節を含む末梢神経系(PNS)に対する損傷の予防の処置のための方法において使用され得る。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されたPAおよびナノファイバーは、被検体におけるCNSまたはPNSへの損傷の治療または予防のために使用されてもよい。いくつかの実施形態において、損傷は脊髄損傷である。脊髄損傷は、頸部、腰部、胸部、仙骨、またはそれらの任意の組合せであり得る。
【0120】
損傷は、外傷性損傷であり得る。外傷性損傷とは、外傷(例えば、自動車事故、落下、暴力、スポーツ損傷、外科的損傷などによって引き起こされる外傷)によって引き起こされる損傷を指す。例えば、本明細書に記載されたPAおよびナノファイバーは、外傷性脊髄損傷の治療に使用され得る。別の例として、本明細書に記載されたPAおよびナノファイバーは、外傷性脳損傷(TBI)の治療に使用され得る。あるいは、損傷は、非外傷性損傷であり得る。例えば、損傷は、例えば癌、多発性硬化症、炎症、関節炎、脊柱管狭窄症、腫瘍、失血などによって引き起こされるCNS(例えば、脳および/または脊髄)またはPNSに対する非外傷性損傷であり得る。
【0121】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されたPAおよび/またはナノファイバーを含んでいる組成物は、外傷性脊髄損傷を有している疑いのある被検体に提供される。例えば、組成物は、身体の1つ以上の領域(例えば、手、腕、脚、足など)における感覚の喪失および/または運動制御の喪失、低血圧、血圧の調節不能、体温の調節不能、損傷領域より下の発汗不能、慢性疼痛、および/または脊髄の腫脹を含む1つ以上の症状を示している被験体に提供され得る。組成物は、損傷を治療するために被検体に提供されてもよい。いくつかの実施形態において、損傷の治療は、損傷に関連する1つ以上の症状の悪化を予防し得る。いくつかの実施形態において、損傷の治療は、損傷に関連する1つ以上の症状の重症度を低減および/または排除し得る。
【0122】
本明細書に記載されたPAおよび/またはナノファイバーを含んでいる組成物は、損傷を治療するために、損傷(例えば、外傷性脊髄損傷)後の任意の適切な時点で被検体に提供されてもよい。例えば、組成物は、損傷から24時間以内(例えば、損傷から24時間以内、12時間以内、10時間以内、9時間以内、8時間以内、7時間以内、6時間以内、5時間以内、4時間以内、3時間以内、2時間以内、または1時間以内)に被検体に提供され得る。いくつかの実施形態において、組成物は、損傷後または損傷の診断後、24時間を超える持続時間が経過した後に被検体に提供されてもよい。
【0123】
組成物は、被験体の年齢、被験体の体重、損傷の重症度などを含む因子に依存して、任意の適切な量で投与され得る。組成物は、損傷の重症度が悪化することを防ぐために、損傷または予防手段に対する他の適切な処置と組み合わせて投与され得る。
【0124】
いくつかの実施形態において、本明細書のPAおよびナノファイバー組成物は、被検体への供給のために製剤化される。本明細書に記載された薬学的組成物を投与する適切な経路には、限定されないが、局所、皮下、経皮、皮内、損傷内(intralesional)、関節内、腹腔内、膀胱内、経粘膜(transmucosal)、歯肉、歯内、蝸牛内、鼓膜内、臓器内、硬膜外、髄腔内、筋肉内、静脈内、脈管内、骨内、眼周囲、腫瘍内、脳内、および脳室内(intracerebroventricular)投与が含まれる。いくつかの実施形態において、PA組成物は、非経口的に投与される。いくつかの実施形態において、非経口投与は、髄腔内投与、脳室内投与、または実質内投与による。本明細書のPA組成物は、単独の活性剤として、または被験体における神経系損傷の治療において使用される他の薬剤のような他の医薬品と組み合わせて投与され得る。
【0125】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されたPAおよびナノファイバー(例えば、ナノIKVAV)は、細胞培養方法における使用を見出す。例えば、本明細書に記載されたペプチド両親媒性物質を含んでいるスキャフォールドが本明細書にさらに開示される。スキャフォールドは、自己集合したペプチド両親媒性物質のナノファイバーを含んでもよく、ペプチド両親媒性物質の少なくとも一部は、疎水性尾部、構造ペプチドセグメント、荷電ペプチドセグメント、およびIKVAV生理活性ペプチドを含んでいる。スキャフォールドは、1つ以上のフィラーペプチド両親媒性物質をさらに含み得る。本明細書に記載されたスキャフォールドは、細胞の増殖および分化を支持することができる。従って、スキャフォールドは、細胞を培養するための方法におけるものであり得る。細胞を培養するための方法は、本明細書に記載のとおり、細胞をスキャフォールドと接触させることを含んでいる。いくつかの実施形態において、スキャフォールドは、任意の所望の細胞培養ツール(組織培養プレート、ペトリ皿、ガラススライドなど)用のコーティングとして使用され得る。
【0126】
本明細書に開示されたスキャフォールド上で培養した細胞は、開示されたスキャフォールドの非存在下で培養した細胞と比較して改善された特性を示し得る。例えば、細胞は、開示されたスキャフォールドの非存在下で培養された細胞と比較して、分化の改善、成熟の改善および/または長期生存率の改善を示し得る。
【0127】
いくつかの実施形態において、スキャフォールドは、ニューロン細胞を培養する方法において使用され得る。例えば、スキャフォールドは、hiPSC由来の運動ニューロンなどのhiPSC由来のニューロン細胞を培養する方法において使用され得る。例えば、hiPSCは、神経誘導を刺激し、腹側/尾側パターン形成を促進することが知られている任意の標準的なカクテルを使用して分化され得る。このニューロンへの最初の分化に続いて、ニューロンを様々なIKVAVスキャフォールド上で培養してもよい。開示されたIKVAVスキャフォールド上での培養は、hiPSC由来の運動ニューロンの効率的な生成および機能的成熟を可能にし得る。
【0128】
[実験]
[材料および方法]
[材料合成および調製および特徴付け]
PA合成および調製:CEMモデルLiberty Blue Microwave Assisted Peptide Synthesizerを用いた標準フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)固相ペプチド合成によって、IKVAV PA分子(C16GIKVAV、C16GIKVAV、C16VEVAGIKVAV)、VKIVスクランブルPA分子(C16GVKIVA、C16GVKIVA、C16VEVAGVKIVA)、および骨格配列(C16、C16、C16VEVA)を合成した。逆相高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)によって、PAを精製した。HPLCは、Phenomenex Kinetexカラム(C18固定相、5μm、100Å孔径、30.0×150mm)を使用し、DGU-20A5R脱気ユニット、2つのLC-20AP溶媒送達ユニット、SPD-M20Aダイオードアレイ検出器、およびFRC-10Aフラクションコレクターを備えた島津モデルプロミネンスモジュラーHPLCシステム上で行われた。HPLCは、0.1%のNHOH(v/v)を含むHO/CHCN勾配を溶離液として使用し、流速は25.0mL/分であった。凍結乾燥したPAの純度を、液体クロマトグラフィー-質量分析(LC-MS)によって分析した。LC-MSは、Phenomenex Jupiter 4μm Proteo 90Åカラム(C12固定相、4μm、90Å孔径、1×150mm)を使用し、Agilentモデル1200 Infinity Series二成分LC勾配システム上で行われた。LC-MSは、0.1%のNHOH(v/v)を含むHO/CHCN勾配を溶離液として使用し、流速は50μL/分であった。エレクトロスプレーイオン化質量(ESI-mass)分析を、Agilentモデル6510 Quadrupole Time-of-Flight
LC/MS分光計上、ポジティブスキャンモードで、エレクトロスプレーイオン化質量(ESI-mass)分析を行った。凍結乾燥後、PA粉末を125mMのNaClおよび3mMのKCl溶液に再構成し、1NのNaOHを1μLずつ添加していくことによってpH7.4に調整し、細胞適合性および材料の濃度を確保した。サーモサイクラー(Eppendorf Mastercycler)を用いて、PA溶液を80℃で30分間アニールし、次いで、1℃/分でゆっくり冷却して、最終温度27℃に到達させて、全てのサンプルを均一かつ制御して加熱および冷却した。PAコート基板を調製するために、24、12、6ウェルポリスチレン細胞培養プレート、または/ならびに、12mmおよび18mmのカバーガラススリップを、37℃で一晩、ポリ--リジン(0.01mg/mL)を用いてコーティングした。翌日、プレートをMilliQ水で3回リンスし、続いて30μLのアニールしたPA(1wt%)溶液で3時間コーティングした。さらなる使用の前に、過剰のPA溶液を除去し、プレートをゲル化溶液(150mMのNaCl、3mMのKCl、25mMのCaCl)で穏やかにリンスした。
【0129】
ガラス表面上へのIKVAVペプチドの固定化:先に記載された技術(Olbrich,K.C. et al Biomaterials 17,759-764(1996)、および、Kam,L. et al Biomaterials 23,511-515(2002))に従って、ホウケイ酸ガラスカバースリップ(直径12mm;Fisher Scientific)を合成IKVAVペプチドで修飾した。ホウケイ酸ガラスカバースリップを、2%(v/v)micro-90界面活性剤(Sigma Aldrich)を用いて、60℃で30分間洗浄し、蒸留水で6回リンスし、エタノールでリンスし、次いで乾燥した。カバースリップを、Oを用いて30秒間プラズマエッチングし(Harrick Plasma PDC-001-HP)、直ちにエタノール中の2%(v/v)の(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン(Sigma Aldrich)溶液中で15分間インキュベートした。次いで、カバースリップを、エタノールで2回、水で2回リンスし、次いでオーブン中で乾燥させた。次いで、1.25mg/mLの1-エチル-3-(ジメチル-アミノプロピル)カルボジイミド(Arcos Organics)および2%のDMF(ジメチルホルムアミド(Sigma Aldrich))の溶液中で、IKVAVペプチド(図34を参照のこと)を50nmol/mLに調製した。カバースリップをこの溶液と共に40℃で3.5時間インキュベートした。インキュベーション後、カバースリップを、100%無水酢酸(Fisher Chemical)、2Mの塩酸(Fisher Chemical)、および0.2Mの重炭酸ナトリウムで順に洗浄した。過剰量の水でリンスした後、サンプルを4Mの尿素中で10分間超音波処理し、続いて1MのNaClで10分間洗浄し、次いで過剰量の水でリンスし、100℃で1時間乾燥させた。
【0130】
透過型電子顕微鏡(TEM):5μLのサンプル溶液(HO中で、[PA]=0.01wt%)を、カーボン支持膜を有する銅TEMグリッド(Electron Microscopy Science)上に堆積させ、ピンセットを用いて5分間所定の位置に保持した。濾紙を用いた毛細管現象によってサンプル溶液を除去し、グリッドを10分間乾燥させた。次いで、サンプルを10μLの酢酸ウラニル水溶液(2wt%、Sigma
Aldrich)で3分間染色し、濾紙を用いた毛細管現象によって溶液を除去した。画像化の前に、グリッドを少なくとも2時間乾燥させた。Orius SC 1000Aカメラを備え、120kVで動作する日立モデルHT-7700電子顕微鏡を用いて、TEM画像を得た。
【0131】
極低温透過型電子顕微鏡(cryo-TEM):cryo-TEMサンプル用のプランジ凍結をFEIモデルVitrobot Mark IIIを用いて調製した。6.5μLのサンプル溶液(HO中で、[PA]=0.01wt%)を、穴のあるカーボン支持膜を有するプラズマ洗浄した銅TEMグリッド(Electron Microscopy Science)上に堆積させ、Vitrobot上に取り付けられたピンセットを用いて所定の位置に保持した。標本を湿度100%、22℃の環境下でブロットし(ブロットオフセット:0.5mm、総ブロット:1、待機時間:0秒、ブロット時間:5秒、排出時間:0秒)、液体窒素で冷却した液体エタンリザーバに投入した。ガラス化したサンプルを液体窒素中で保存し、次いでGatan cryo-TEMホルダーに移した。Orius SC 1000Aカメラを備え、加速電圧120kVで動作する日立モデルHT-7700電子顕微鏡を用いて、Cryo-TEM画像を得た。
【0132】
走査型電子顕微鏡(SEM):PAサンプルを、リン酸緩衝食塩水(1X、Gibco)中のパラホルムアルデヒド(2.0%、Electron Microscopy Sciences)、グルタルアルデヒド(2.5%、Electron Microscopy Sciences)の混合物中で、20分間固定した。固定液を除去し、エタノール溶液勾配でサンプルをインキュベートすることによって、水をエタノールと交換した。勾配は、200プルーフエタノール(Decon Laboratories,Inc.)の濃度を増加させた(30~100%)。臨界乾燥点(Tousimis Samdri-795)を使用して、過剰の水を除去した。15分間のパージサイクルを使用した。得られた脱水サンプルカバースリップを、12mmカーボン接着テープ(Electron Microscopy Sciences)を用いてスタブ上に載せ、約6nmのオスミウム(Filgen,OPC-60A)でコーティングして、画像化のためにサンプル表面を導電性にした。全ての画像は、日立SU8030SEM装置を用いて、加速電圧2kVで撮影した。
【0133】
原子間力顕微鏡(AFM):AFM画像化および力測定を、Axio Oberver.D1m倒立光学顕微鏡(Carl Zeiss,Inc.)上に組み込まれたBioscope Resolve BioAFM/Nanoscope Vシステム(Bruker,Santa Barbara)上で、室温で行った。名目チップ半径約20nm、および、ばね定数約0.7N/mを有する窒化ケイ素三角形プローブ(ScanAsyst Fluid,Bruker)を、細いファイバーの画像化およびインデンテーションのために使用した。30nmの金コートを有する窒化ケイ素三角形カンチレバー(Novascan Technologies,Inc.)に付着させた直径1μmのSiOビーズを、厚いゲル上でのインデンテーション試験のために使用した。
【0134】
各プローブのたわみ感度を、MilliQ水中の清浄なスライドガラス上での反復インデンテーションによって較正し、カンチレバーのばね定数を熱雑音法により推定した。各測定前に、円錐形(鋭い)プローブの有効チップ半径を、インデンテーション深さの関数として推定した。ここでは、チップ推定機能(NanoScope Analysis software,Bruker)を用いる、多結晶チタンチップ特性付けサンプル(RS-15M、Bruker)を用いた。
【0135】
制御された荷重力でサンプル表面にAFMプローブを接触させ、荷重-除荷サイクル中の力-変位曲線を記録することによって、MilliQ水中でインデンテーションを行った。インデンテーション中、塑性変形を避け、インデンテーションを弾性範囲内に保つために、<10nNの最大荷重を各データ点に加えた。測定は、サンプル当たり約250個の力曲線を得ることによって行った。力曲線をフィッティングさせるために、Protein Unfolding and Nano-indentation Analysis Software(PUNIAS)を使用した。
【0136】
厚いゲル(厚さ数μm)の弾性率は、荷重力曲線をヘルツモデルにフィッティングさせることによって得られた:
【0137】
【数1】
【0138】
Fは力、δはサンプル変形、Eはヤング率、νはポアソン比、Rはインデンテーションプローブの半径である。力曲線にフィッティングさせるために、インデンテーション深さを200nm、すなわち全膜厚の10%以内に制御し、硬い基板の影響を最小化した。
【0139】
細いファイバーに対して鋭いプローブを用いて行った力曲線を、DMT(Derjaguin,MullerおよびToporov)モデルによって、分析した。DMTモデルは、ヘルツモデルに基づくが接着の説明を含むものであり、小ファイバーに関する機械的研究において使用される標準的なモデルである[B.R.Neugirg et al.Nanoscale 2016,8,8414-8426を参照のこと]。力曲線は、DMTモデルでは以下の方程式で記述される:
【0140】
【数2】
【0141】
は接着力である。力曲線のフィッティングは、硬い基板の影響を最小化するために、インデンテーション深さを4~5nm、すなわち全膜厚の10%以内に制御することによって、行った。全てのサンプルは、非圧縮性であると考えられ、ポアソン比は0.5であった。
【0142】
コートカバースリップのプロフィロメトリー分析:サンプルカバースリップを、先に記載されているように調製した。Zygo Nexview 3D Optical Profilometerを使用して、カバースリップの表面を画像化した。C16GIKVAV(V)、C16GIKVAV(A)、C16VEVAGIKVAV(VEVA)、ラミニンコートカバースリップ、およびブランクカバースリップを、インビトロで72時間および60日間、試験された。画像を得るために、2倍ズームおよび10μm走査長で10倍対物レンズを使用した。サンプルを10分間乾燥させた後、画像化した。外科用ブレードを使用して各カバースリップに引っ掻き傷を付け、サンプル条件当たり少なくとも9枚の画像を撮影した。表面厚さは、Zygo’s Mx softwareの領域ツールを使用して分析した。引掻き面を基準面と設定し、測定したコーティング厚さを基準面に対するコーティングの平均深さとして計算した。視覚的比較のために、全ての画像を、-0.5μmの最小値および2.4μmの最大値を有する標準化スケールに正規化した。
【0143】
広角X線散乱(WAXS):測定は、アルゴンヌ国立研究所のAdvanced Photon Source(APS)の5IDにて、ファイバー結合素子(CCD)検出器を用いて行った。入射X線の波長は0.729Åであり、入射エネルギーは13keVであった。150μLのサンプル溶液(NaClおよびKClの水溶液([NaCl]=150mMおよび[KCl]=3mM)中、[PA]=5.3mM)を一定の直径のガラスキャピラリーに導入し、X線を3秒間照射した。照射中、10μL/秒の流量のフローセルシステムを用いてサンプル溶液を連続的に振動させた。
【0144】
赤外(IR)分光:PAサンプルのIRスペクトルを、BrukerモデルTensor37分光計で記録した。100μLのサンプル溶液(NaClおよびKClの水溶液([NaCl]=150mMおよび[KCl]=3mM)中、[PA]=1wt%)を凍結乾燥し、ゲルマニウム結晶を備えたATRサンプルステージ上に凍結乾燥粉末を置いた。IRスペクトルを32回スキャンし、次いで平均化した。
【0145】
蛍光観察のためのDPH包埋PAサンプル:1,6-ジフェニル-1,3,5-ヘキサトリエン(DPH;2.8mM)のTHF溶液(2μL)を、100μLのPA水溶液([PA]=2mM、[KCl]=3mM、[NaCl]=150mM)に添加し、混合物を25℃で30分間インキュベートした。次に、混合物を、KClおよびNaClの水溶液(1900μL、[KCl]=3mM、[NaCl]=150mM)で希釈し、25℃で10分間インキュベートして、DPH(2.8μM)包埋PA(100μM)の溶液を得た。蛍光スペクトルは、光路長1cmの石英セルを用いて、ISSモデルPC1分光蛍光光度計で記録した。336nm平面偏光を用いて光励起時の偏光蛍光を測定し、蛍光異方性rを以下のように計算した:
【0146】
【数3】
【0147】
ここで、Iは蛍光強度を表し、添え字VおよびHはそれぞれ励起偏光子および発光偏光子の垂直方向および水平方向を表し、GはIHV/IHHによって与えられ、垂直偏光および水平偏光に対する相対的な感度を説明する(J.R.Lakowicz,in Principles of Fluorescence Spectroscopy,Springer Science+Business Media,New York,ed.3,2006,pp.353-382)。
【0148】
蛍光観察のためのTMA-DPH包埋PAサンプル:100μLのPA水溶液([PA]=2mM、[KCl]=3mM、[NaCl]=150mM)に、1-(4-トリメチルアンモニウムフェニル)-6-フェニル-1,3,5-ヘキサトリエンp-トルエンスルホネート(TMA-DPH;1.4mM)のエタノール溶液(4μL)を添加し、混合物を25℃で30分間インキュベートした。次も、混合物を、KClおよびNaClの水溶液(1900μL、[KCl]=3mM、[NaCl]=150mM)で希釈し、25℃で10分間インキュベートして、TMA-DPH(2.8μM)包埋PA(100μM)の溶液を得た。蛍光スペクトルは、光路長1cmの石英セルを用いて、ISSモデルPC1分光蛍光光度計で記録した。
【0149】
レオロジー:上記の方法を使用して、PA材料を調製した。全てのレオロジー観察について、MCR302レオメーター(Anton Paar)を使用した。PA溶液をサンプルステージ(150μL)上に置き、材料の上の25mmコーンプレートの下側に、150mMのCaCl溶液(30μL、最終濃度25mM)をピペットで移した。インビトロ培養条件をシミュレーションするために、装置ステージを37℃に設定した。プレートをゆっくりと測定位置まで下げ、湿度接管(humidity collar)を使用して、サンプルプランジャーを封入し、各45分間の実験運転中のサンプル蒸発を防止した。各実験の最初の区間の間、10[rad/s]および0.1%歪みの一定角周波数で30分間、サンプルを平衡化した。水平状態が発生した後、区間の終わりに、貯蔵弾性率および損失弾性率(G’およびG’’)を記録した。角周波数は、21点にわたって100rad/sから1rad/sまで増分された。全ての周波数について、G’およびG’’を記録した。最後に、%歪みを31点にわたって0.1から100%まで漸増的に増加させ、G’およびG’’を記録した。
【0150】
[シミュレーション手順]
シミュレーションのためのPAは、Avogadroにおいて作成されたものであり、脂肪族尾部を含むmartinize.pyの修正バージョンを使用し、二次構造の選択としてコイルドコイルを使用して、MARTINI力場CG表示に変換された。最後の2つのE(脂肪族尾部から最も遠い)およびKは荷電している一方、2つの最初のEは、予備シミュレーションにおいてファイバー形成のために理想的であることが見出されたので、プロトン化されたものとして扱われる。組み立てられたペプチドと遊離ペプチドとの間のプロトン化状態におけるこの差異は、以前に報告されている。したがって、最終的な電荷は(-2+1=)-1であるが、-2であるVE(-)VAコントロールを除く(図12)。初期構造は、ランダムに配置され最低3Åの間隔を置いて配置された300個の分子からなり、CG水で溶媒和されており、立方形箱21.5×21.5×21.5nm中でシステムを中和するために十分なイオンが添加された。
【0151】
これは、それぞれ50mM(C16GIKVAV(V)、C16GIKVAV(A)、C16VEVAGIKVAV(VEVA)について、それぞれ7.8、7.4、および8.3wt%)の濃度に対応する。これは、自己集合シミュレーションを迅速化するために一般的に使用される濃度の範囲内であり、実験系よりも10倍まで高くすることができる。全ての視覚化は、Visual molecular dynamics(VMD)を用いてレンダリングした。
【0152】
粗視化分子動力学(CG-MD)シミュレーションはGROMACS 5.0.4で行った。これは、シミュレーションの分析にも用いた。分子間相互作用については、1.1nmのカットオフを使用した。ここでは、静電学については比誘電率15を有する反応場を使用し、Lennard-Jones相互作用については電位シフトを使用した。全てのシステムは、5000ステップの間、または原子中の力が2000pN未満に収束するまで、最小限にした。NPTアンサンブルにおいて25fsタイムステップを用いて、自己集合シミュレーションを行った。温度(303K、τ=1ps)についてはVリスケールアルゴリズムを用い、圧力(1バール、τ=3ps)についてはBerendsenを用いた。10μsの有効時間に対応する100,000,000ステップの間、シミュレーションを行った。
【0153】
各骨格および脂肪族尾部ビーズの第1の溶媒和球について、半径方向の分布関数の積分を使用して、PAの水接触を計算し(図5f)、4x因子を適用してCG水を水分子に変換した。シミュレーションの最後の5μ秒(ファイバーは5μ秒後に平衡化される)にわたる二乗平均平方根偏差(RMSD)の変動として、ダイナミズムは測定される。
【0154】
[細胞培養および分析]
ヒト人工多能性幹細胞(iPSC)培養条件:健常コントロールである個人(11a:男性、36歳;18a:女性、51歳)由来の皮膚線維芽細胞のレトロウイルス形質導入により、人工多能性幹細胞株を誘導した(Boulting et al,2011 Nat Biotech)。mTeSR1培地(Stem Cell Technologies)と共に、Matrigel(BD Biosciences)コートプレート上でiPSCを培養し、1mMのEDTAまたはAccutase(Sigma)を使用して週単位で継代した。全ての細胞培養物は、37℃および5%のCOで維持し、マイコプラズマについて月単位で試験した。
【0155】
運動ニューロン(MN)分化:70%培養密度で、Accutaseを用いてiPSC培養物を分離させ、mTeSR1中の10μMのROCKインヒビター(Y-27632、DNSK International)を用いて、10細胞/cmの密度でプレーティングした。翌日(0日目)、10μMのSB431542(DNSK International)、100nMのLDN-193189(DNSK International)、1μMのレチノイン酸(RA,Sigma)および1μMのSmoothenedアゴニスト(SAG,DNSK International)を含有するN2B27培地(50%のDMEM:F12、50%のNeurobasalであり、NEAA、Glutamax、N2およびB27が補充されている;Gibco,Life Technologies)で、培地を置換した。培養培地を6日目まで毎日交換し、次いで、1μMのRA、1μMのSAG、5μMのDAPT(DNSK International)および4μMのSU5402(DNSK International)を補充したN2B27培地に切り替えた。14日目まで細胞に毎日供給し、14日目には、DNase I(Worthington)を補充したTrypLE Express(Gibco,Life Technologies)を用いてMNを分離させ、予めコーティングしたポリ-D-リジン/ラミニン、または別のIKVAVコーティング表面上にプレーティングした。週3回、アスコルビン酸(0.2μg/ml;Sigma-Aldrich)、BDNF、CNTFおよびGDNF(10ng/mL、R&D systems)、ならびに1%ウシ胎仔血清(FBS)を補充したneurobasal培地(NBM:NEAA、Glutamax、N2およびB27)をMNに供給した。
【0156】
皮質ニューロン分化:iPSCからの皮質ニューロン分化は、Zhangら、2015年に記載のプロトコルに基づいて、発生させた。Accutaseを用いてiPSCを分離させ、まだmTESR1+10μMのROCKインヒビターを含む懸濁液中で、3つのレンチウイルスの異なる構築物と共に細胞を形質導入した:1、構成的発現rtTAを発現する;2、テトラサイクリン誘導性様式でピューロマイシン耐性遺伝子をNgn2と共発現する;3、テトラサイクリンの存在下でもGFPを発現する。細胞をMatrigelコートプレート上に24時間プレーティングした(9×10細胞/cm)。翌日(1日目)、SB431542、LDN-193189およびXAV939(DNSK International)を補充したノックアウト血清置換培地(KOSR、Life
Technologies)中のドキシサイクリン(Sigma-Aldrich)を添加することによって、異なる構築物の発現を誘導した。2日目に、神経誘導培地(NIM:DMEM/F12(Life Technologies)+Glutamax(Life Technologies)+非必須アミノ酸(Corning)+N2(Life Technologies)+ヘパラン硫酸(Sigma-Aldrich))で、補充KOSR培地を1:1で希釈する。ドキシサイクリンおよびピューロマイシンを添加し、Ngn2感染細胞を選別した。翌日(3日目)に、NIM、ドキシサイクリンおよびピューロマイシンを細胞に供給した。4日目に、Accutaseを用いて細胞を分離させ、NBM+ドキシサイクリン+BDNFでコーティングした別の表面上にプレーティングする。分析まで、培地を週に3回交換した。
【0157】
細胞生存率アッセイ:細胞生存率を評価するために、CytoTox96(登録商標)非放射性細胞毒性アッセイ(Promega)を使用した。これは、細胞溶解時に放出される安定なサイトゾル酵素である乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)を定量的に測定する、比色アッセイである。別のコート表面上で培養した細胞からの細胞培地を異なる培養時点で収集し、490~492nmの吸光度で読み取られる赤色ホルマザン生成物へのテトラゾリウム塩の変換を定量することによって、LDH酵素の細胞外レベルを測定した。分析は、少なくとも3つの独立した分化において、条件当たり最低3回の技術的反復で、行った。β-インテグリン研究を行うために、運動ニューロンを、β1-インテグリン(1:1000)またはβ4-インテグリン(1:1000、Abcam、UK)抗体で72時間処理し、各条件についてLDH生存率および細胞付着を分析した。
【0158】
質量分析法:C16GIKVAV(A)上で60日間培養した運動ニューロン、およびラミニンコーティングを、溶解緩衝液(0.5%のSDS(sigma Aldrich)、50mMのAmBic(fisher)、50mMのNaCl(Sigma-Aldrich)、およびHALTプロテアーゼインヒビター(ThermoFisher Scientific))を用いて、消化し、短時間ボルテックスした。30秒間を3回、サンプルを超音波処理した。処理されたサンプルにおけるタンパク質濃度を決定するために、BCAアッセイ(ThermoFisher Scientific)を行い、分析については100μgのタンパク質/状態を用いた。LC-MS/MSによってペプチドを分析した。LC-MS/MSは、Dionex UltiMate
3000 Rapid Separation nanoLC、およびQ Exactive(商標)HF Hybrid Quadrupole-Orbitrap(商標)質量分析計(ThermoFisher Scientific)を使用した。5%のACN/0.1%のFAから、40%のACN/0.1%のFAへ、180分間の分析勾配にて、ペプチドを分離した。フラグメンテーションのために、各MS1走査における最も豊富な前駆体イオン上位15個を選択した。前駆体を、2Daの分離幅で選択し、HCDセル中で30%正規化衝突エネルギーにて、高エネルギー衝突解離(HCD)により断片化した。
【0159】
消化酵素トリプシンを想定して、SwissProt_2017_11データベース(ホモサピエンス用に選択、unknownバージョン、20244エントリー)を検索するために設定したMascot(Matrix Science、London、UK;バージョン2.5.1)を用いて、全てのMS/MSサンプルを分析した。質量許容差0.050Daのフラグメントイオンおよび許容差10.0PPMの親イオンで、Mascotを検索した。システインのカルバミドメチルが、固定修飾としてMascotに特定された。アスパラギンおよびグルタミンの脱アミド化物、メチオニンの酸化物、n末端のアセチル、ならびにリジンおよびn末端のTMT6plexが、可変修飾としてMascotに特定された。Scaffold(バージョンScaffold_4.8.4、Proteome Software Inc.、Portland、OR)を使用して、MS/MSに基づくペプチドおよびタンパク質同定を検証した。それらが、Peptide
Prophetアルゴリズム(Keller、A et al Anal.Chem.2002;74(20):5383-92)により、スキャフォールドデルタ質量補正を用いて95.0%を超える確率で確立できた場合に、ペプチド同定を承認した。タンパク質同定は、99.9%を超える確率で確立でき、少なくとも2つの同定されたペプチドを含んだ場合に、承認した。タンパク質の確率は、Protein Prophetアルゴリズム(Nesvizhskii,Al et al Anal.Chem.2003;75(17):4646-58)を用いて、割り当てた。類似のペプチドを含み、MS/MS分析のみに基づいて区別することができなかったタンパク質は、最節約原理(principles of parsimony)を満たすようにグループ分けした。
【0160】
ウエスタンブロット:ウエスタンブロット分析のために、14、17、30、45および60日後のヒトiPSC由来ニューロン培養物からタンパク質抽出物を得、BCAアッセイを用いて全タンパク質抽出物を定量した。各サンプルのタンパク質10~20μgをSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって分離し、ニトロセルロース膜(Bio-Rad)に電気泳動転写した。5%のウシ血清アルブミン(BSA、Sigma-Aldrich)を用いて膜をブロッキングし、最初に一次抗体と共に4℃で一晩インキュベートし、次いでそれらの対応する二次HRP結合抗体(1:3000;Invitrogen)と共にインキュベートした。タンパク質シグナルをECL化学発光システム(Azure)によって検出した。タンパク質ローディングについてのコントロールとして、ImageJソフトウェア(National Institutes of Health、USA)を用いて、アクチンに標準化された密度測定分析を行った。定量のために、3~6つの分化物から得られたサンプルを分析した。
【0161】
細胞の免疫蛍光:免疫蛍光のために、固定化ヒトiPSC由来ニューロンを、一次抗体と共に4℃で一晩インキュベートし、次いでそれらの適切なウサギ、マウスおよびヤギ抗Alexa488、Alexa555またはAlexa647二次抗体(1:500、Molecular Probes)と共にインキュベートした。DAPI(1:500、Molecular Probes)を使用して核を染色した。最後に、画像化のために、Immunoblot(Invitrogen)を用いて調製物をカバースリップした。
【0162】
ウエスタンブロットおよび免疫蛍光のために使用した抗体:ウエスタンブロットおよび/または免疫細胞化学のために、以下の一次抗体を使用した:ヤギ抗コリンアセチルトランスフェラーゼ(ChAT、1:1000、Millipore)、マウス抗ISLET1/2(ISL1/2、1:500、ハイブリドーマバンク、Iowa)、マウス抗FOXA-2(1:1000、Santa Cruz)、ウサギ抗微小管関連タンパク質-2(MAP-2、1:1000、Biolegend)、抗マウス、ウサギおよびニワトリβ-チューブリンIII(TUJ-1、abcamおよびBiolegend)、ウサギ抗シナプス後肥厚95(PSD95、1:1000、Abcam)、マウス抗シナプシン-1(SYN-1、abcam)、マウス抗シナプトフィジン(SYP、1:500、abcam)、マウス抗1-インテグリン(HUTS4、1:500、abcam、Cell Signalling)、ウサギ抗リン酸化接着斑キナーゼ(p-FAK、1:1000、Cell Signalling)、ウサギ抗接着斑キナーゼ(FAK、1:1000、Rabbit)、抗マウスアクチン(1:2000、sigma Aldrich)、ウサギ抗インテグリン結合キナーゼ(ILK、1:1000、Cell Signalling)、ウサギ抗ラミニン(1:1000、Sigma Aldrich)、ウサギ抗Ki67(1:500、abcam)、ウサギ抗GFAP(1:1000、Dako)、ウサギ抗フィブロネクチン(1:1000、Abcam)、ウサギ抗GAP43(1:500、Abcam)、マウス抗ニューロン抗原N(NEUN、1:1000、Millipore)、マウス抗SATB-2(1:250、Abcam)。
【0163】
Sholl分析:Fijiソフトウェア(米国国立衛生研究所、USA)により、抗MAP2抗体で免疫標識したニューロンの共焦点顕微鏡写真を用いて、ニューロン形態分析を行った。最大の再構成物を、輝度とコントラストについて較正および調整し、続いて、、Simple Neurite Tracer(SNT)を用いて、半自動トレース処理した。得られた神経突起トレース処理画像から、Sholl分析Fijiプラグインを用いて、ニューロンの分岐の複雑度を分析した。このツールは、ニューロン細胞体の周りに一連の同心円を生成し、異なる円を横切る神経突起の数を計算する。これらのデータのグラフ表示は、1つの特定のニューロンのニューロンの分岐(arbor)に沿った分岐の複雑さを示す。通常の分布を有する最低3つの独立の分化物から得られたデータについて、4つの実験群の比較のために、一元配置分散分析に続いて、ボンフェローニ事後検定を行った。
【0164】
マルチ電極アレイ(MEA)記録:電気生理学研究のために、12および24ウェルMEAプレートを、Axion Biosystemsプロトコルに従ってポリエチレンアミン(PEI)およびラミニンを用いて、または、PEIおよび種々のIKVAV PA(C16GIKVAV(V)、C16GIKVAV(A)、C16VEVAGIKVAV(VEVA))を用いて、コーティングした。ヒトiPSC由来運動ニューロン(18a)を50,000細胞/ウェルの密度でコーティング上に直接播種し、40日目まで培養した。コントロールとして、初期マウス皮質アストロサイトを、運動ニューロンを培養する2日前に播種した。Axion Biosystems Maestro 768チャネル増幅器およびAxion Integrated Studios(AxIS)v2.4ソフトウェアを使用して、自発的ネットワークおよび同期した活動を記録した。増幅器は、1200倍のゲインおよび12.5kHz/チャネルのサンプリングレートを用いて、全てのチャネルから同時に記録した。バターワースバンドパスフィルタ(300~5000Hz)オンラインスパイク検出(閾値=6×各チャネル上の雑音の二乗平均平方根)を通過した後、軸適応スパイク検出器で行った。全ての記録は、適切な5%のCO2/95%のO2を用いて、37℃で行った。自発的ネットワーク活動を、20日目から開始して、5分間を週に3回、記録した。>5スパイク/分を有するものとして活動電極を定義し、ベースライン記録期間中に10を超える活動電極を有したウェルのみを分析に使用した。ウェル内の電極の25%以上で互いに100ms以内に生じたスパイクおよびバースト活動として、同期した活動を定義した。平均発火速度(Hz)、ネットワークバースト持続時間(s)、およびネットワークバースト当たりのスパイク数は、ニューロン機能特性の成熟を示すため、ニューロン活動の尺度として使用した。全てのデータは、十分に広い平均を反映し、ここで、nの報告された値は、状態当たりのウェルの数を表す。
【0165】
電気生理現象:Flaming-Brown P-97(Sutter Instrument Company、Novato、CA、USA)を用いてガラス毛細管(製品番号TW150F-4、World Precision Instruments、Sarasota、FL、USA)から引き出した2~4MΩガラス電極を用いて、全細胞パッチクランプを行った。Sutter Instrument MP-285電動マイクロマニピュレーター(Sutter Instrument Company)を用いて、電極を配置した。マルチクランプ700B増幅器(Molecular Devices、Burlingame、CA、USA)およびWinfluorソフトウェア(University of Strathclyde、Glasgow、Scotland)を用いて、室温で全細胞パッチクランプ測定を行った。簡単に述べると、111NaCl、3.09KCl、25.0NaHCO3、1.10KH2PO4、1.26MgSO4、2.52CaCl2、および11.1グルコース(mM単位)を含有する改変リンゲル溶液で、スライスを潅流した。95%のO2および5%のCO2で溶液を酸素化し、潅流速度は1.5~2.0ml/分であった。パッチ電極は、138K-グルコネート、10HEPES、5ATP-Mg、0.3GTP-LiおよびTexas Redデキストラン(75μM、3000MW、Invitrogen、Life Technologies、Grand Island、NY、USAから)(mM単位)を含有した。電圧クランプモードでは、マルチクランプ上の自動静電容量補償を用いて、全細胞静電容量と同様に、高速および低速過渡容量を補償した。電流クランプでは、I-on(発火開始時の電流レベル)、I-off(発火停止時の電流レベル)および周波数-電流の関係を試験するために、ニューロンを脱分極電流ランプに供した。刺激間には、過分極電流を用いてニューロンを-80mV付近に保持した。選択したニューロンは、寸法が大きく(入力抵抗<1000MΩ)、静止膜電位が-35mV以下であった。脱分極電流ランプによって誘発された第1の活動電位を使用して、I-ON(発火開始時の電流)を含む全てのパラメータを測定した。勾配が10V/sを超えた電圧として、閾値電圧を定義した。オーバーシュート(0mVを通る)マイナス閾値電圧を用いて、活動電位の大きさを測定した。活動電位の持続時間は、活動電位の高さの半分にて測定される。活動電位プロファイルの一次導関数のピークおよび谷間として、立ち上がりおよび立ち下がりの速度を定義する。
【0166】
細胞の画像化/分析:蛍光調製物を見て、GaAsP検出器を備えるニコンA1R共焦点レーザー走査型顕微鏡、ニコンスペクトル照明マイクロコピー(N-SIM)またはニコンTi2-Widelfieldを用いて、顕微鏡写真を撮影した。
【0167】
タンパク質発現研究のために、GaAsP検出器を備えるニコンA1R共焦点レーザー走査型顕微鏡、またはニコンスペクトル照明マイクロコピー(N-SIM)によって、画像を取得した。×100油浸対物レンズ(NA=1.4)を使用し、z方向に3~8枚の画像を0.125μm間隔で、1024×1024画素解像度で撮影した。取得パラメータは、全ての走査について同一に保たれた。Fijiソフトウェア(米国国立衛生研究所、USA)を用いて、画像の二次元平均投影再構成、蛍光分析および定量化を行った。
【0168】
細胞分布について、GaAsP検出器を備えたニコンA1R共焦点レーザー走査型顕微鏡によって、×20対物レンズを用いて1024×1024画素解像度で、画像を取得した。細胞位置をElementsソフトウェアによって分析し、Matlab Knnsearchプラグインを用いてプロットした。
【0169】
[動物試験および分析]
動物:動物の収容および手順は全て、ヒトの治療および実験動物の使用に関する公衆衛生局の方針に従って実施し、全ての手順はノースウエスタン大学施設の動物管理使用委員会の承認を受けた。
【0170】
アストロサイト培養:先に述べたように新生マウス(P0)の大脳皮質から、グリア細胞を誘導した。ポリ-D-リジンおよびラミニンコーティングを有するMEAプレート上で、3%の正常ヒト血清(NHS)、1%のペニシリン-ストレプトマイシン(pen-strep、Thermofisher)および2mml-グルタミンを含むNeurobasal中で、継代1の細胞を2×10細胞/cmの密度で3日間培養した。IP由来運動ニューロンを40日間、アストロサイト存在下で培養した。コントロールおよび参照グリア条件の細胞組成および生化学的特徴付けの両方は、先に記載されている。
【0171】
マウス脊髄損傷および動物:成熟雌CD-1マウス(体重25~30g、8週齢)を用いて、実験を行った。無菌状態および全身麻酔下で椎弓切除を行い、T11レベルで脊髄を露出させた。
【0172】
80kdynの衝撃力および60秒の滞留時間で、無限水平脊髄衝撃システム(IH-0400 Precision Systems and Instrumentation LLC、USA)を使用して、重篤な損傷を行った。衝撃によって誘発された脊髄の変位を、各動物について測定した。損傷後、9mm創傷クリップ(BD Biosciences)を用いて皮膚を縫合し、加熱パッド上で動物を回復させて、体温を維持した。損傷後3日間、ブプレノルフィン麻酔薬(0.05mg/kg、皮下投与、1mlの滅菌生理食塩水中)を毎日投与した。感染のリスクを減らすために、損傷後3日間、バリトリル抗生物質(2.5mg/kg、皮下投与、1mlの滅菌生理食塩水中)を毎日投与した。膀胱を毎日手動で絞り出した。神経行動学的解析は、他で発表されているようにマウス用のBasso Mouse scale(BMS)を用いて行った。
【0173】
ペプチド両親媒性物質注入:SCIの24時間後、表面張力を減少させるためにSigmacote(Sigma,St.Louis,MO)でコーティングしたホウケイ酸ガラス毛細管マイクロピペット(Sutter Instruments,Novato,CA)(外径100μm)を用いて、生理食塩水溶液(n=16)、1wt%のC16GIKVAV PA(n=16)、またはC16GIKVAV PA(n=10)溶液をマウスに与えた。Micro4マイクロシリンジポンプコントローラー(World Precision Instruments)によって制御されるメスルアーアダプター(World Precision Instruments、Sarasota、FL)を使用して、Hamiltonシリンジに毛細管を装填した。イソフルオラン麻酔下で、オートクリップを除去し、損傷部位を露出させた。損傷後24時間の時点では、椎弓切除は依然として無傷であり、損傷によって生じた打撲傷は明らかである。定位Kopf装置を用いて、マイクロピペットを損傷のちょうど背側に配置した。マイクロピペットを脊椎の背側から測定して750μmの深さまで下げ、2.5μlの希釈した両親媒性物質溶液を1μl/分で注入した。マイクロピペットを250μmの間隔で引き抜いて、脊椎中にPAの痕跡(腹側から背側へ)を残した。注入の終わりに、ピペットをさらに1分間その位置に残し、その後、ピペットを引き抜き、創傷を閉じた。コントロール条件として、等張性生理食塩水溶液(NaClが0.9%、RICCA Chemical)および骨格C16を使用した。全ての実験について、実験者は、動物の同一性について盲検化されたままであった。
【0174】
免疫組織化学:0.1Mのリン酸緩衝液(pH7.3)中の4%のパラホルムアルデヒド(PFA)を用いて、マウスを潅流した。マウスの脊椎を、その後8~12時間固定し、凍結保護し、凍結保存した。厚さ40μmの切片を凍結保護溶液中に収集し、さらなる使用まで-30℃で保存した。スキャフォールド内部のタンパク質の表現型を特徴付けるために、以下の一次抗体を使用した:マウス抗NeuN(ニューロンマーカー、1:500;Millipore)、ウサギ抗グリアファイバー酸性タンパク質(GFAP、成熟した反応性グリア細胞マーカー、1:1000~8000;Dako)、ヤギ抗Iba1(ミクログリアおよびマクロファージマーカー、1:200;Abcam)、マウス抗Tuj-1(ニューロンマーカー、1:10,000;Biolegend)、ウサギ抗MAP2(ニューロン細胞体および樹状突起マーカー、1:2000;Biolegend)、ウサギ抗ダブルコルチン(DCX、ニューロンマーカー、1:1000;Abcam)、ラット抗CD31/PECAM(内皮マーカー、1:200;Millipore)、ウサギ抗ラミニン(細胞外マトリックスおよび血管マーカー、1:500;Sigma-Aldrich)、ニワトリ抗ニューロフィラメント(NF、樹状突起マーカー、1:1000、Abcam)、ヤギ抗5HT(1:1000、樹状突起マーカー、Abcam)。
【0175】
[統計分析]
統計的検定、ならびにnの定義および正確な値を含むパラメータを、対応する図の凡例に記載する。結果は、p<0.05であれば有意とみなした。特に記載のない限り、全てのデータは平均値±SDとして記載する。統計的評価は、実験デザインに応じて、対応のあるスチューデントのt検定、一元配置分散分析(ANOVA)、反復測定ANOVA、またはフリードマン検定を用いて、行った。測定数が限られる場合、それらのノンパラメトリックな等価物を用いた:ウィルコクソン順位和検定、およびクラスカル-ウォリスの一元配置分散分析。テューキーの範囲検定およびボンフェローニ法を適用して、適宜に事後差異を検定した。全ての統計分析は、GraphPad Prism 7ソフトウェアで行った。
【0176】
[結果]
超分子ポリマーは、それらの構成モノマーが、魅力的な特徴を示す動的な様式で非共有結合相互作用を介して集合するため、独特である。さらに、超分子材料は、それらの表面上にて種々の生物学的シグナルを用いて調整され得、細胞接着、遊走、分裂および分化のような広範囲の生物学的応答を誘導する。構成超分子モノマーは、集合した構造の安定性が最大化するように設計されていることが多いが、超分子スキャフォールドの動的特徴にはほとんど注意が払われていない。多数の重要な生物学的事象は生体分子間の非共有結合相互作用によって制御されるので、ECM模倣超分子材料の動的特徴はそれらの生物学的機能に影響を及ぼし得る。ここで、超分子材料は、CNSにおける動的ECMシグナルの重要な性質を解読するための好適なプラットフォームとして、実証される。この効果を調べるために、得られた生理活性に対する、分子の間の分子間凝集力の影響を、インビトロおよびインビボの両方で評価した。
【0177】
4つの主要なセグメントから構成される一連のペプチド両親媒性物質(PA)が開発された:(1)水性環境中でナノ相分離を誘導する疎水性尾部、(2)高アスペクト比ナノファイバー構造を安定化させるための分子間水素結合(H結合)を形成する疎水性アミノ酸、(3)水性溶媒中に分子が溶解することを促進する親水性アミノ酸、および(4)細胞と相互作用するように設計され、集合体の最外層に曝露される生理活性ペプチド配列。この研究のために、ラミニン-1に見られる生理活性ペンタペプチド配列であるイソロイシン-リジン-バリン-アラニン-バリン(IKVAV)を用いて、PAを官能化した。
【0178】
超分子集合体内の分子間凝集力が細胞挙動に及ぼす影響を調べるために、H結合の傾向が異なる3つのIKVAV含有PA分子を設計した(図1A)。バリン-バリン-アラニン-アラニン(V)H結合形成領域、4つのグルタミン酸(E)およびグリシン残基(G)を含有し、それらの表面上に疎水性エピトープIKVAVを示すPAは、束状に入り込んで、その結果エピトープの生理活性を増大させる傾向が小さかった(図1B)。同じ電荷および同じ生理活性ユニットを有するが、分子間凝集力は異なる一連のIKVAV PAを開発するために、アラニン-アラニン-グリシン-グリシン(A)およびバリン-グルタミン酸-バリン-アラニン-アラニン(VEVA)含有PAを新たに設計した(図1C、D)。Aは、その疎水性の低下により、Vよりも弱い分子間相互作用を有することが期待された。IKVAV PAであるV、A、およびVEVAは、固相ペプチド合成によって合成され、液体クロマトグラフィー-質量分析によって、明確に特徴付けられた(図6)。極透過型電子顕微鏡(cryo-TEM)および走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、低温これら3つのPAが水性環境下でナノファイバーを形成することを確認した(図1E~J、図2)。ナノファイバー内でのPA分子の水素結合(H結合)特性を評価するために、サンプルの赤外(IR)分光を行った(図1K)。図1Kに示すように、VおよびVEVAは、1628cm-1に、アミドIの振動バンドを示した。これは、βシート構造リッチなペプチド二次構造が存在することを示している。対照的に、Aは、1634cm-1に頂点を有する広いアミドIバンドを示した。これは、ペプチドが主にランダムコイル構造にあることを示している。さらに、液相広角X線散乱(WAXS)を用いて、βシートの含有量を定量した。図1Lに示すように、VおよびVEVAは、4.72Åのd間隔を有するブラッグピークを示した。これは、H結合したβシートペプチド鎖間の距離に対応している。さらに、VEVAについて観測されたブラッグピークは、VEVAよりも強かった。これは、VEVAの集合体がVよりも多いH結合の集団を含むことを示している。しかしながら、Aは、ランダムコイル構造の存在を示す赤外分光分析と同様に、明確なピークを示さなかった。これらの証拠により、PA分子の種々のβシート形成ドメインが種々のH結合の傾向をもたらすことが確認された。
【0179】
次に、蛍光脱分極技術を用いて、集合体内のPA分子の動力学を調査した(図2A)。ここでは、PAナノファイバーに包埋されたDPH(DPH:1,6-ジフェニル-1,3,5-ヘキサトリエン)を利用して、別のIKVAV PAの内部疎水性コアの微小粘度を測定した。注目すべきことに、PAナノファイバーへのDPHの取り込みは、それらのナノ構造を劣化させないことが、それらのcryo-TEM顕微鏡写真によって確認された(図8)。VおよびVEVAは、飽和リン脂質二重膜集合体について観察されるものに近い0.4ほどの高い異方性を示したが、興味深いことに、Aは有意に低い異方性の値(0.21)を示した。さらに、TMA-DPH包埋PAナノファイバー(TMA-DPH:(1-(4-トリメチルアンモニウムフェニル)-6-フェニル-1,3,5-ヘキサトリエンp-トルエンスルホネート))を用いて、蛍光脱分極実験を行った(図9)。DPHは両親媒性分子の疎水性尾部の内側深くに包埋されていることが知られているが、TMA-DPHは両親媒性集合体の親水性-疎水性界面に固定されていることが知られている(図10)。DPH包埋PAで観察されたものと同様に、Aは、VおよびVEVAよりも有意に低い異方性を示した(図9e)。これらの結果は、集合体内のAの分子運動がVやVEVAと比較して有意に動的であることを示す。上記の節で議論したとおり、VおよびVEVAは、分子間H結合を形成し、集合体内で順序付けられたβシート二次構造をとる一方で、Aは、不規則構造を形成する。これらの結果は、分子運動の動力学を決定する際のH結合傾向の重要性を示す。ペプチドベースの自己集合材料の研究にうまく適合されたMARTINI力場を使用する粗視化分子動力学シミュレーション(CG-MD)を用いて、3つのPAの集合体をさらに研究した。シミュレーションは、3つのPA配列について、実験的に観察されたファイバー形成を再現した(図2B)。3つのPAナノファイバーは類似しているように見えるが、A内のPAファイバーはよく順序付けられたコアシェル配置上には配置されていないことを、脂肪族尾部の配置が示している(図11a~c)。自己集合平衡化ファイバーのダイナミズム分析は、異方性分析によって得られた結果を裏付ける、Aの有意な増大を示した(図2C図11d~f)。さらに、DPH包埋Aについて観察された蛍光強度は、VおよびVEVAのものと比較して、有意に低かった(図2D)。CG-MDシミュレーションにおけるPA水マッピングもまた、Aの脂肪族尾部との水の接触が高いことを示した(図2E)。この挙動は、おそらく、コアシェルの秩序だった配列の喪失に起因し、Aナノファイバーの内部疎水性コアがVおよびVEVAと比較してはるかに水和していることを示す。これらの結果は全て、集合体内のPA分子の動力学、それらの水和度および分子間秩序が密接に関係していることを示唆している。
【0180】
スクランブル配列VKIVAを含有するV、A、およびVEVAもまた、固相ペプチド合成によって合成され、液体クロマトグラフィー-質量分析によって特徴付けられた(図13)。シミュレーションは、Cryo-TEMによって裏付けられるように(図15)、VおよびVEVAに結合したスクランブル配列VKIVAがファイバーを形成することができることを示した(図14)。しかしながら、VKIVAに結合したAは、含水量が高く、秩序が低かった。これは、Cryo-TEMによるファイバー形成の実験的欠陥に関連する可能性がある。PA分子骨格配列もまた、ファイバーを形成することができない(図16および17)。これは、IKVAV配列がファイバー形成において重要な役割を果たすことを示唆した。最後に、他のラミニン模倣配列(LGTIPG、LRGDN、PDGSR、RGD、YIGSR)は、Aβシート配列を有するファイバー形成を駆動することができなかった。脂肪族コア中の含水量は、この傾向の良好な定量的尺度であった(図18)。
【0181】
超分子集合体内の分子動力学が細胞の挙動に及ぼす影響を試験するために、次に、3つのPAマトリックス上でヒト人工多能性幹細胞(hiPSC)由来ニューロンの使用を検討し、各PAが機能的ヒト運動ニューロンを生成できる効率を決定した。iPSCは、体内の任意の単細胞型に分化する能力に起因して、疾患モデリングおよび複雑な組織再生のための強力なツールである。hiPSC由来ニューロン細胞を利用するインビトロモデルの開発は、疾患のメカニズムおよび治療の戦略に対して新たな知見を提供することが証明されている。それにもかかわらず、これらのモデルは、依然として、非効率的な成熟、異常な凝集および低い長期生存率などの、重大な技術的制限を示し、生理学的状態によりよく類似するように改善される必要がある。フィーダーフリー培養系上でhiPSC由来ニューロンを培養および成熟させるための現在の戦略は、ECMにおいて同定された、ラミニンまたはフィブロネクチンなどの組み換えタンパク質にから構成される静的2次元(2D)マトリックスに依存する。プラスチックペトリ皿などの古典的なシステムは単純性および利便性を提供するが、これらの材料がインビボ環境の重要な態様を模倣することができないことにより、しばしば非生理学的応答をもたらすことが、現在では広く認識されている。hiPSC由来運動ニューロン(MN)を異なる動的特徴を有する一連の超分子スキャフォールドに供することは、分子間凝集力の強さがMN成熟に及ぼす影響を研究し明らかにするための魅力的なモデルを提供し、ECM-細胞相互作用への知見を提供する可能性がある。
【0182】
MNは、小分子カクテルを利用することによって、hiPSCから分化された。小分子カクテルは、最初にニューロン誘導を刺激し、次いで腹側/尾側パターン化を促進する。分化プロトコル14日目、有糸分裂後ニューロンの生成ピーク(80~90%のニューロン効率)を表し、hiPSC由来MNを、異なるIKVAV超分子スキャフォールド上で培養した(図19a、b)。別のコーティング上でのiPSC由来MN培養物の応答を、プレーティング72時間後の培養物の細胞組成を特徴付けることによって、評価した。A上で培養したニューロンは、従来のパターン化されていないPDL/ラミニンコートカバースリップ条件(ラミニン、81%)と比較して、より高いパーセンテージのβ-IIIチューブリン(TUJ-1)ニューロン(92%)を示した(図19c)。Islet1/2(ISL1/2)およびコリンアセチルトランスフェラーゼ(ChAT)MN(図19d-g)に対する免疫細胞化学(ICC)によっても、MN生成の効率を評価した。V(51%、60%)、VEVA(41%、57%)、およびラミニン(52%、62%)と比較して、A(61%、71%)上で成長したニューロンにおいて、より高いパーセンテージのISL1/2およびChATマーカーが見られた(図19f、g)。しかし、ラミニン条件での細胞数は、3つのIKVAV PAでのものよりも、有意に多い(図19h)。より多いニューロン数および減少した総細胞数は、本分化プロトコル(Zillerら、2018年)によって産生された別の脊髄細胞系統への前駆細胞の異なる細胞付着、細胞生存および/または最終分化によって、駆動される可能性がある。17日目の細胞生存率は種々の条件間で有意な差を示さなかったが(図19i)、ラミニンコーティング中での培養物は、IKVAV PAマトリックスと比較して、より高いパーセンテージのFOXA2+底板細胞(25%)を示した(図20)。注目すべきことに、FOXA細胞のパーセンテージは、異なる条件におけるTUJ1ニューロンのパーセンテージに相補的であった。特に、ラミニンとAとの間で、これらの差異はより大きく、PAマトリックスの存在下でFOXA細胞の劇的な減少が観測された。予想された通り、増殖マーカーKi67はFOXA2細胞においてのみ観察された。これは、培養物中に存在する増殖性細胞のみが底板細胞であることを示す(図20)。IKVAV材料、および特にAが、非ニューロン細胞の付着および/または増殖を減少させることによって、iPSC由来培養物におけるニューロン純度を改善させることを、これらの結果は示す。
【0183】
IKVAVは膜貫通型受容体β-インテグリンに結合することがよく知られているので、次に、3つのPAナノファイバー上に示されるIKVAVペプチドの影響を調査した。調査は、β1インテグリンの回復、および、その結果として起きる、「アウトサイドイン」シグナル伝達として知られる過程として、hiPSC由来MNに対する細胞内シグナル伝達を分析することによるものであった。試験した3つのPAが同じIKVAVエピトープを有していたとしても、V、VEVAおよびラミニンと比較して、Aは有意に高いレベルのβ1-インテグリン(ITGB1)、ならびに下流エフェクターであるインテグリン連結キナーゼ(ILK)およびリン酸化接着斑キナーゼ(p-FAK)を誘導した(図2F~I、および図21)。FAKおよびILKは、シグナル伝達インテグレーターとして作用することにより、ECM刺激に応答して多くの細胞内経路に交差する、重要なシグナル伝達スキャフォールドタンパク質である。したがって、高度に動的なA PAによって示されるエピトープIKVAVは、VおよびVEVAと比較して、受容体へのアクセシビリティが優れている。IKVAV-インテグリンの活性化によってのみ細胞の結合および拡散が媒介されるかどうかを判定するために、ラミニン相互作用β-インテグリン(β1、β4)をブロックする抗体を用いた(図22)。β1-インテグリン抗体下では、3つのIKVAVマトリックス上に細胞の付着はなく、これは、IKVAV表面によって誘導される生理活性がインテグリン係合に依存することを示す(図22c、e)。しかし、β4-インテグリン抗体の存在下では、MNは全ての実験条件で同様の付着を示した(図22d、f)。これらの結果は、特にIKVAVマトリックス上での、MNの細胞結合および拡散がITGB1によって媒介されることを示唆した。PAマトリックスの厚さを変更することによって、細胞シグナル活性化に対する機械的特性の効果を評価した(図23a)。生物学的実験で使用された3つのIKVAV PAおよびラミニンコーティングは、プロフィロメトリー分析によると200nmの厚さを示した(図24)。しかしながら、Aファイバーは0.2MPaの弾性率を示した一方、VおよびVEVAはそれぞれ13および20MPaのより高い弾性率を示した(図23および25)。3つのIKVAV PAの厚さが増加すると、機械的特性が大幅に低下し、V(1KPa、1KPa)、VEVA(4KPa、1KPa)と比較して、Aについてはより高い弾性率および貯蔵弾性率(8KPa、5KPa)を示す(図23、20、21)。これらのヒドロゲルは厚さに依存した様々な剛性を有するが、薄いゲルまたは厚いゲル上で培養した細胞では、差次的な細胞-受容体の活性化およびシグナル伝達は観察されなかった(図23c~f)。これらの結果は、材料の異なる機械的特性が、Aの動的分子運動に影響せず、受容体へのIKVAVリガンドの同じアクセシビリティを可能にすることを示唆する。
【0184】
インビトロにおいてhiPSC由来ニューロン細胞の機能的成熟を達成することは、依然として、当技術分野における課題のままであるため、ヒトMNの時間発展を評価した(図3A図27および23)。インビトロで30~60日間培養したMNは、他の条件と比較して、ITGB1、ILKおよび運動ニューロンマーカーChATのより高い発現を維持した(図3B、C、図27~30)。次に、hiPSC由来ニューロンをフィーダー層なしで長期間培養するというニューロン疾患細胞モデリングにおいて一般的に観察される成熟レベルの低下および細胞凝集の問題を、IKVAV PAによって誘発される差次的細胞シグナル伝達が改善できるかどうかを検証した。リガンド結合に際して、生存、接着、分化、成熟、ニューロン形態形成(Colognato & Tzvetanova、2011;Gardiner、2011;Kazanis & french-Constant、2011;Myers、Santiago Medina & Gomez、2011、において総説)、およびシナプス可塑性(Park & Goda、2016、において総説)を含む種々のニューロンのプロセスにおいて、インテグリンは役割を果たすことが知られている(図3D)。この問題は、高スループットでバイアスのない方法を利用することによって解決され、Aおよびラミニンコーティングで2か月間培養したMNで発生したプロテオミクスの変化を調査することができた。タンデム質量タグ標識サンプルの定量的質量分析は、少なくとも99%の信頼度で892のタンパク質を同定した。同定されたタンパク質の30.3%における正規化された強度差が、Aコーティング上で培養したMNとラミニンコーティング上で培養したMNとの間で観察された(図3E)。下方制御された(196)および上方制御された(76)タンパク質の細胞関連性の状況を把握するため、遺伝子オントロジー(GO)分析を行った。ラミニン-ITGB1シグナル伝達カスケードにおける前述の変化と一致して、A培養物において差次的に発現されたタンパク質に関連する最も有意なGOタームは、インテグリン経路であることが観察された。さらに、得られたデータセットにおいて、ITGB1シグナル伝達によって促進される細胞機能(細胞生存、増殖、細胞基質伝達など)もまた高められた(図3F図31)。これらのプロテオミクスの知見を検証するために、全てのプラットフォーム上で細胞の挙動の網羅的解析を行った。細胞生存率およびChAT陽性細胞を各種条件で分析した(図3G、H)。IKVAVマトリックス上で培養した細胞は、ラミニンコーティングと比較して、特にA上で、より高い生存率および成熟を示した。ラミニン、ならびに、V、AおよびVEVAを含むIKVAVマトリックス上で培養したMNの形態学的特性(図3I~L、図27)も分析した。VおよびA上のMNは、ラミニンコーティング上で培養したMNと比較して、より大きい体細胞サイズを示した。A上で培養したMNは、突起の数が有意に増加し、ニューロン分岐の複雑さも増加した(図3I~L、図32)。hiPSC由来ニューロン細胞を培養するための現在の方法は、ニューロンのクラスター化をもたらし、これは、個々のニューロンの分析を不可能にし、細胞死、細胞-細胞および細胞-基質相互作用を誘導することが示されているので、同様に、IKVAVマトリックスおよびラミニンコーティング(図3M、N)上でのインビトロの30~60日後の細胞生存率を調査した。共焦点画像の細胞分布分析は、IKVAVマトリックス上、特にAにおいて培養したMNが、長期にわたってプラットフォームに沿って高度に均質な分布およびネットワークコネクションを示すことを示した。ラミニンコーティング上で成長したMNは、不均一なニューロン成長を示し、プラットフォーム全体に沿って細胞クラスターを形成した。これらの結果と相関して、ラミニンコーティング上で培養したMNは、3つのIKVAVマトリックス上で培養した細胞と比較して、細胞死において非常に有意な増加を示したことが見出された(図3G)。
【0185】
インビトロで60日後の超分子PAとのMNの相互作用を裏付けるために、プロフィロメトリーによって、IKVAVおよびラミニンコーティングの存在を分析した。短い(72時間)および長い(60日)時点でプラットフォームを分析すると、3つの超分子ペプチド両親媒性物質コーティングは、72時間~60日の間に厚さの減少をほとんど示さなかったが、ラミニンコーティングはインビトロで60日後、有意に低下した(図24)。構造化照明顕微鏡(SIM)およびSEM顕微鏡写真によって、細胞の存在下でのコーティングの存在が裏付けられた(図33)。プロテオミクス解析による観察と一致して、これらのデータは全て、Aとラミニンコーティングとの間の、MN成熟における定性的および定量的差異を示す。分子動力学超分子ナノ構造によるIKVAVペプチド提示が細胞の挙動に対して重要な役割を果たすことを確認するために、IKVAVペプチドを固体表面上に固定化して、V、AおよびVEVAを含有するIKVAV PAマトリックスに対する種々の分子動力学を調べた(図34、35)。この目的のために、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)処理したガラスカバースリップをIKVAVペプチドで官能化した。固定化IKVAVペプチドでコーティングされた表面上では、MNの付着が劇的に減少し、さらなる分析が不可能であった(図35)。V、AおよびVEVAを含有するスクランブルVKIVA PA(図36)も試験した。3つのスクランブル配列のコーティング上で培養したMNは、72時間でわずかに生存した。最後に、他の種類の運動ニューロン(MN-11A)および皮質ニューロン(Cx-18A)を、IKVAV配列を示すV、AおよびVEVAについて試験し、細胞を付着させ、生存させ、増殖させ、ITGB1経路を上記と同様の方法で活性化させた(図37および38)。
【0186】
神経疾患の幹細胞ベースモデルの主な障害の1つは、生理学的状態を正確に反映できるhiPSC由来ニューロンにおいて機能的成熟を促進することが困難なことである。A超分子集合体内の分子動力学がhiPSC由来MNにおける機能的成熟を誘導することを実証するために、インビトロで40~60日後のシナプス小胞の発現および電気生理学的特性を分析することによって、電気生理学的状態をモニターした。A上で培養したMNは、シナプス後マーカーPSD95、ならびにシナプス前マーカーSYN-1およびSYP-1をより高いレベルで発現し、シナプスネットワークの増加を示唆した(図4A~E)。VおよびVEVA上の細胞は、ラミニンと比較して、同様のシナプスマーカーの発現を示した(図39)。次に、異なるプラットフォーム上で培養したMNの細胞ネットワーク活性を、マルチ電極アレイ(MEA)アプローチを用いて、評価した(図4F~I)。上述の凝集の減少と一致して、A上で培養したMNは、V、VEVAおよびラミニン培養物と比較して、活動電極の数の増加を示した。さらに、A中で成長したMNは、V、VEVAおよびラミニンコーティングと比較して、より高い自発的で同期した活動を示した。また、A上のMNは、VEVAおよびラミニン上のものよりも、ネットワークバースト当たりのスパイクが有意に多い、より長いネットワークバーストを発火することができた(図4F~I、図40)。hiPSCに由来するヒトニューロンの形態学的および機能的成熟の両方を促進するために広く用いられているアプローチは、ニューロンをアストロサイトと共培養することである。一般的に使用される基質ラミニンと比較して、アストロサイトは、ニューロン樹状突起の複雑性、イオンチャネルおよび神経伝達物質受容体の発現、ならびにシナプス事象の頻度および振幅を有意に増強した。アストロサイト単層上で培養したMNは、A材料よりも高い興奮性を示した。これらの結果は、アストロサイトと共培養したニューロンと同等のレベルで、A超分子マトリックスがニューロンネットワーク活動を増強することを実証する。A上のMNSの電気生理学的成熟度をさらに調査するために、Aおよび市販のラミニン中で成長したMN上で、全細胞パッチクランプ記録を行った。MNの電気生理学的発達は、繰り返し発火させる能力、およびより大きな振幅のスパイクの発生によって、特徴付けられる(Carrascalら、2005;Tadrosら、2015)。ニューロンの発達が進行するにつれて、より多くの電圧感応性イオンチャネルが細胞膜へ挿入され、より速くより大きな活動電位を生じる。50日目に、A上で成長したMNは、より成熟したMNの特性を示した:より多くのMNが繰り返し発火させることができ(図4J、K、表2)、それらの活動電位は、図4Lに示すように、振幅がより大きく、上昇および降下速度がより速かった。アストロサイト上で成長したヒトMNの電気生理学的発達のマーカーは、Aマトリックス上で成長したヒトMNの発達に匹敵する。アストロサイト上で成長したヒト胚性幹細胞由来MN(P48~50にて、先の研究のために記録された)は、この研究のためにAマトリックス上で成長させたヒトiPSC由来MNと同様の特性(I-on、電圧閾値、活動電位の振幅、ならびに上昇および降下速度の同様の値を含む)を有した。要約すると、MEAおよびパッチクランプデータの両方は、より高いスパイクおよびバースト活性で、繰り返しの発火/より高い発火速度を行う能力において、Aマトリックス上で成長したMNの成熟度を強調する。
【0187】
【表2】
【0188】
IKVAV PAシステムはCNSにおけるECMのダイナミズムのいくつかの態様を模倣することができるため、このナノ構造は、マウスインビボモデルにおける脊髄損傷(SCI)を治療するためのスキャフォールドとして使用された。ECMは、CNSへの疾患または損傷の発生中およびその後に重要な役割を果たすことがよく知られている。ECM成分の動的な時間的および空間的分布は、強力な治療アプローチを表す。しかし、脊髄損傷再生において、ECMの動的分布のための機能的役割は、解明されないままであった。分子動力学がどのように脊髄再生に影響するかをよりよく理解するために、VおよびA IKVAV PAの影響を、脊髄損傷後に評価した。T10/T11セグメント上へのロボット的に制御された衝撃(71±0.5KDyn)を用いて、マウス(図4M)において重篤な打撲傷をモデリングした(図41a、b)。この損傷は、マウスにおいて直ちに下肢麻痺を誘発した。損傷の24時間後に、V、Aを損傷部位に注入し、続いて、毎週、Basso Mouse Scale(BMS)を用いて移動の評価を行った。コントロールとして、生理食塩水溶液(コントロール)、および、それ自体で堅牢なナノリボンを形成する能力がよく知られているため、非生理活性骨格であるV PAを使用した。損傷直後は、PA処理群と生理食塩水コントロール群との間に検出可能な差はなかった。損傷の2週間後およびその後、A群は、コントロールおよびVと比較して、有意で持続的な挙動の改善を示した。特に、損傷の12週間後、A処理群は、平均BMSスコア5.8±1.6を示し、V(3.8±0.7)よりも大幅に高かった(図4N)。コントロール群および非生理活性骨格PAは、それぞれ平均スコア1.9±0.3および2.1±0.8を維持した(図4Nおよび図41c)。12週間後の損傷した脊髄のウエスタンブロット解析では、IKVAVが示された条件、とりわけAにおいて、β-1インテグリン(ITGB1)の増加が示され、上記で示したインビトロの結果と一致した(図4O、P)。さらに、ウエスタンブロットは、線維性ECMタンパク質フィブロネクチンの減少、ならびに、VにおけるGFAPの過剰発現によって特徴付けられる反応性グリオーシスの量の減少を示し、Aについてより明らかであった。興味深いことに、ECMラミニンタンパク質は、A条件においてより高度に発現され、これは、損傷領域におけるより多量の基底膜を示唆している。さらなる組織学的実験は、その挙動を担う細胞集団を示すであろう。最後に、ニューロン再生および成長に関連するマーカーであるGAP43は、高度に動的なA PAにおいて高度に発現された(図4O、P)。
【0189】
前述の詳細な説明および添付の実施例は、単に例示的なものであり、本開示の範囲に対する限定として解釈されるべきではないことが理解される。本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲およびそれらの等価物によってのみ規定される。
【0190】
開示された実施形態に対する様々な変更および修正が、当業者には明らかであろう。そのような変更および修正(本開示の化学構造、置換基、誘導体、中間体、合成、組成物、製剤、または使用方法に関するものを含むがこれらに限定されない)は、その精神および範囲から逸脱することなく、なされ得る。
【0191】
本明細書で参照される任意の特許および刊行物は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0192】
図1図1A~L。ペプチド両親媒性物質(PA)によって形成された超分子ナノファイバーの特徴付け。(A)IKVAV PAの概略の分子構造、IKVAV PAは、(B)V、(C)A、および(D)VEVAを含んでいる。(E~G)KClおよびNaCl水溶液の中の(E)V、(F)A、および(G)VEVAの極低温TEM顕微鏡写真([PA]=0.01wt%、[KCl]=3mM、[NaCl]=150mM)。(H~J)(H)V、(I)A、および(J)VEVAのSEM顕微鏡写真。(K)V(赤色)、A(青色)、およびVEVA(オレンジ色)のフィルムサンプルのFT-IRスペクトル(1500~1800cm-1)。(L)KClおよびNaCl水溶液中のV(赤色)、A(青色)、およびVEVA(オレンジ色)のWAXSプロファイル([PA]=5.3mM、[KCl]=3mM、[NaCl]=150mM)。
図2図2A~I。超分子IKVAV PA内の動力学は、ヒト運動ニューロン(MN)信号に対して異なる効果を誘導する。(A)KClおよびNaCl水溶液中のV(赤色)、A(青色)、およびVEVA(オレンジ色)を含んでいるIKVAV PAに包埋されたDPH(2.8μM)の25℃での蛍光脱分極プロファイル(λex=336nm、λem=450nm)([PA]=100μM、[KCl]=3mM、[NaCl]=150mM)。(B)10μ秒後のV(赤色)、A(青色)、およびVEVA(オレンジ色)PAを含んでいる、単一IKVAV PAファイバーの自己集合構造および粗視化表示。顕微鏡写真は、(青色で)シミュレーションボックス内にファイバー形成軸を通る部分的な周期的画像を含んでいる。水およびイオンは、明確にするために省略されている。(C)Bにおいて形成された、V(赤色)、A(青色)、およびVEVA(オレンジ色)構造を含んでいるIKVAV PAの動力学解析。(D)KClおよびNaCl水溶液中のV(赤色)、A(青色)、VEVA(オレンジ色)を含んでいるIKVAV PAに包埋されたDPH(2.8μM)の25℃での蛍光発光スペクトル(λex=336nm)([PA]=100μM、[KCl]=3mM、[NaCl]=150mM)。(E)V(赤色)、A(青色)、VEVA(オレンジ色)を含んでいるIKVAV PAの含水量分析。(F)Aおよびラミニン上で培養した、b-1インテグリン(ピンク、ITGB1)を含んでいるMN神経突起(TUJ-1、緑色)の代表的な三次元SIM顕微鏡写真(左側)および陰影再構成(右側)。(G)72時間でのA(青色)およびラミニン(黒色)マトリックス上で培養したMNにおけるITGB1の強度解析。72時間での、V(赤色)、A(青色)、VEVA(オレンジ色)を含んでいる超分子IKVAVマトリックス上で培養したMNにおけるITGB1および下流キナーゼ(ILK、pFAK、FAK)のウエスタンブロット解析(H)および(I)正規化されたタンパク質レベル。スケールバー:10mm。データは、少なくとも4つの独立した分化の平均である。全ての数値は平均値±SDとして示す;ANOVA(*P<0.05、**P<0.01および***P<0.001)。
図3図3A~O。ヒト運動ニューロン(MN)成熟に対するA含有IKVAV PAの分子間凝集力の影響。(A)超分子マトリックス上でのヒトMN分化およびその培養の概略図。V(赤色)、A(青色)、VEVA(オレンジ色)を含んでいる超分子IKVAVマトリックスおよびラミニン(黒色)上で培養したMNにおけるインテグリン活性化(ITGB1)、シグナル伝達経路(ILK)および運動ニューロン成熟(ChAT)に関連する(B)ウエスタンブロットおよび(C)正規化されたタンパク質発現レベル(60日後)。全ての値はアクチンに対して正規化した。(D)A含有IKVAVの動的提示に際して細胞挙動を媒介するインテグリンおよびシグナル伝達経路の概略図。全ての値はアクチンまたは総FAK発現に対して正規化した。(E)A対ラミニン上で培養したMNのプロテオミクス変化を呈しているボルカノプロット。平均log(倍 変化)対P値(-log10)を示す。2倍変化およびFDR<0.05によって上方制御および下方制御されたタンパク質を、それぞれ緑色および赤色のドットによって標識する。(F)Aコーティング対ラミニンコーティング中で培養したMNにおいて同定されたタンパク質の上方制御グループおよび下方制御グループにおいて濃縮された最も有意なGOタームのサブセット。(G)細胞培地中に放出されたLDH濃度によって評価した細胞生存率(60日目)。(H)V(赤色)、A(青色)、VEVA(オレンジ色)を含んでいるIKVAV PAおよびラミニン(黒色)マトリックス上で培養したMN中のChAT細胞の定量(60日後)。(I,J)(I)Aおよび(J)ラミニンマトリックス上で培養したヒトのMNの共焦点顕微鏡画像。(K)V(赤色)、A(青色)、VEVA(オレンジ色)を含んでいるIKVAV PAおよびラミニン(黒色)マトリックス上で培養したヒトMNの総神経突起プロセスの分析(60日後)。(L)V(赤色)、A(青色)、VEVA(オレンジ色)およびラミニン(灰色)上で、インビトロで60日間培養したMNの樹状突起分岐のSholl分析。(M)V(赤色)、A(青色)、VEVA(オレンジ色)を含んでいるIKVAV PAおよびラミニン(白色)マトリックス上で培養したヒトMNの代表的な代表的な共焦点顕微鏡写真(60日後)。細胞を、運動ニューロンマーカーChAT(緑色)、微小管関連タンパク質-2(MAP-2、赤色)および核(DAPI)で染色した。(N)Mに示される画像のDAPIチャネル顕微鏡写真。(O)MおよびNにおいて参照された異なるマトリックス上の細胞分布のヒストグラム分析。スケールバー:(M、N)100μm。データは、少なくとも3つの独立した分化の平均である。全ての数値は平均値±SDとして示す;ANOVA(*P<0.05、**P<0.01および***P<0.001)。
図4図4A~P。機能的成熟および再生に対する超分子集合体内の分子動力学の影響。(A、B)(A)Aおよび(B)ラミニンマトリックス上で培養したヒトMN神経突起に沿って分布したシナプス小胞(シナプス後PS95およびシナプス前SYN-1)の代表的な共焦点顕微鏡写真(50日目)。(C)Aおよびラミニンコーティング上で培養したMN上のPSD95およびSYN-1の強度解析。A(青色)およびラミニン(黒色)上で培養したヒトMNにおけるシナプス前マーカーおよびシナプス後マーカー(それぞれSYN-1およびPS95)の(D)ウエスタンブロットおよび(E)正規化されたタンパク質レベル。全ての値はアクチンに対して正規化した。(F)A超分子ペプチド両親媒性物質でコーティングしたMEAプレート上で40日間培養したヒトMNの明視野画像。種々のIKVAV PA、ラミニンまたはグリアコーティング中のMN培養物における、(G)スパイク数の差および(H)電極当たりのバースト数および(I)同調性指数を表すプロット。(J)Aおよびラミニンマトリックス上で培養し、パッチ電極を通してTexas Redデキストランで満たした、ヒトMNの2光子顕微鏡画像(48~49日目)。(K)活動電位を繰り返し発火することができる、Aおよびラミニンマトリックス上で成長したニューロンのパーセンテージ。(L)Aおよびラミニンマトリックス上で成長したMN由来の活動電位の代表的な例。A上で成長したMNは有意に大きく、上昇速度および降下速度がより速かった。(M)マウス脊髄における背腹性の挫傷の概略図。(N)生理食塩水溶液(コントロール)、V(赤色)A(青色)で処理した動物のBasso Mouse Scale(BMS)スコア。生理食塩水溶液(コントロール)、V(赤色)およびA(青色)で処理した脊髄におけるβ-1インテグリン受容体(ITGB1)、種々のECMタンパク質(フィブロネクチンおよびラミニン)、アストログリアGFAPおよびニューロンGAP43マーカーの(O)ウエスタンブロットおよび(P)正規化されたタンパク質レベル。全ての値は、GAPDHに対して正規化した。インビボデータは、少なくとも8匹の動物の平均である。全ての数値は平均値±SDとして示す;ANOVA(*P<0.05、**P<0.01および***P<0.001)。
図5図5A~F。(a)V、(b)A、(c)VEVAおよび(d)VE(-)VAのためのMARTINIビーズタイプおよび電荷。(e)PAの電荷量。(f)V(挿入物)の各骨格ビーズのための生の半径方向分布関数であり、第1の溶媒和球のための水接触を与えるために統合された領域を青色で示している。
図6図6A~F。IKVAV PAの液体クロマトグラフィー-質量分析。(a-c)精製された(a)C16GIKVAV、(b)C16GIKVAV(c)C16VEVAGIKVAVの分析用高性能液体クロマトグラフィー(分析用HPLC)トレース。(d~f)(d)C16-4-GIKVAV、(e)C16GIKVAVおよび(f)C16VEVAGIKVAVのエレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI-MS)。
図7図7A~I。IKVAV PAの極低温-TEMおよびSEM画像。(a~c)概略的な分子構造、(a、d、g)C16GIKVAV、(b、e、h)C16GIKVAV(c、f、i)C16VEVAGIKVAVの、(d~f)極低温-TEMおよび(g~i)SEM顕微鏡写真。
図8図8A~D。DPH包埋IKVAV PAのTEM画像。(a)1,6-ジフェニル-1,3,5-ヘキサトリエン(DPH)の概略の分子構造。(b~d)酢酸ウラニルで染色した、DPH包埋PA(b)C16-GIKVAV、(c)C16GIKVAVおよび(d)C16VEVAGIKVAVのTEM顕微鏡写真(KClおよびNaCl水溶液([KCl]=3mM、[NaCl]=150mM)中、[PA]=100μM、[DPH]=2.8μM)。
図9図9A~F。TMA-DPH包埋IKVAV PAのTEM画像。(a)1-(4-トリメチルアンモニウムフェニル)-6-フェニル-1,3,5-ヘキサトリエンp-トルエンスルホネート(TMA-DPH)の概略的な分子構造。(b~d)酢酸ウラニルで染色した、TMA-DPH包埋IKVAV PA(b)C16GIKVAV(V)、(c)C16GIKVAV(A)および(d)C16VEVAGIKVAV(VEVA)のTEM顕微鏡写真(KClおよびNaCl水溶液([KCl]=3mM、[NaCl]=150mM)中、[PA]=100μM、[TMA-DPH]=2.8μM)。(e)KClおよびNaCl水溶液中で、V、AおよびVEVAに埋め込まれた、TMA-DPH(2.8μM)の25℃での蛍光脱分極プロファイル(λex=336nm、λem= 450nm)([PA]=100μM、[KCl]=3mM、[NaCl]=150mM)。(f)KClおよびNaCl水溶液中で、V、AおよびVEVAに埋め込まれた、TMA-DPH(2.8μM)の25℃での蛍光発光スペクトル(λex=336nm)([PA]=100μM、[KCl]=3mM、[NaCl]=150mM)。
図10図10。脂質二重層内の炭化水素尾部へのDPH位置。
図11図11A~F。IKVAV PAナノファイバーのシミュレーション結果。(a~c)10μ秒後の、(a)V、(b)A、および(c)VEVAIKVAV PAの単一ファイバーの自己集合構造および粗視化表示。ファイバーは、パッチコアを示すために、C16尾部以外全て透明で表される。顕微鏡写真は、ファイバー形成軸を通る部分的な周期的画像を含んでいる。シミュレーションボックスは青色で表示される。水およびイオンは、明確にするために省略されている。(d~f)(d)V、(e)Aおよび(f)VEVAの二乗平均平方偏差(RMSD)対時間を表すグラフ。RMSDプロットは、5つの独立したシミュレーションの平均である。
図12図12A~E。βシート領域に置かれたEに荷電したVE(-)VA PAのシミュレーション結果。(a、b)10μ秒後の、VE(-)VAファイバーの自己集合構造。(a)βシート領域はオレンジ色で表され、IKVAVは緑色で表され、ファイバーの残りは黒色で表される。(b)ファイバーはパッチコアを示すために、C16尾部以外全て透明で表される。顕微鏡写真は、ファイバー形成軸を通る部分的な周期的画像を含む。シミュレーションボックスは青色で表示される。水およびイオンは、明確にするために省略されている。(c)V、A、VEVAと比較したVE(-)VAの水接触グラフ。(d)(a~b)V、A、VEVAと比較したVE(-)VAのダイナミズム解析の二乗平均平方偏差(RMSD)対時間を表すグラフ。c~dにおける分析は、5つの独立したシミュレーションの結果である。
図13図13A~F。スクランブルVKIVA PAの液体クロマトグラフィー-質量分析。(a~c)精製した(a)C16-4-GVKIVA、(b)C16GVKIVA(c)C16VEVAGVKIVAの分析用高性能液体クロマトグラフィー(分析用HPLC)トレース。(d~f)(d)C16-4-GIKVAV、(e)C16GVKIVAおよび(f)C16VEVAGVKIVAのエレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI-MS)。
図14図14A~H。スクランブルVKIVA-PAのシミュレーション結果。(a~f)10μ秒後の、(A、b)V(赤色)、(c、d)A(青色)、および(e,f)VEVA(オレンジ色)VKIVAの単一ファイバーの自己集合構造および粗視化表示。カラーコードは、PA配列において表示される。顕微鏡写真は、ファイバー形成軸を通る部分的な周期的画像を含む。シミュレーションボックスは青色で表示される。水およびイオンは、明確にするために省略されている。(b、d、f)ファイバーは、そのパッチ性を示すために、C16尾部以外全て透明で表示される。A平衡化構造は、典型的なファイバー構造とは異なる。(g)IKVAVおよびVKIVA-PAの水接触グラフ。(h)スクランブルVKIVAおよびIKVAV PAのC16クラスター解析。C16クラスターの数の定量は、不規則性の定性的測定として使用されてきた。
図15図15A~F。スクランブルVKIVA-PAのCryo-TEM顕微鏡写真。スクランブルIKVAV配列(a、d)C16-GVKIVA、(b、e)C16GVKIVA(c、f)C16VEVAGVKIVAの(a~c)概略的な分子構造および(d~f)Cryo-TEM顕微鏡写真。スケールバー:500nm。
図16図16A~F。骨格PAの液体クロマトグラフィー-質量分析。(a~c)精製した、(a)C16、(b)C16(c)C16VEVAの分析用高性能液体クロマトグラフィー(分析用HPLC)トレース。(d~f)(d)C16、(e)C16および(f)C16VEVAのエレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI-MS)。
図17図17A~F。骨格-PAのCryo-TEM顕微鏡写真。骨格配列(a、d)C16、(b、e)C16(c、f)C16VEVAの(a~c)概略的な分子構造および(d~f)Cryo-TEM顕微鏡写真。
図18図18A~K。他のラミニン模倣配列の分析。(a、c、e、g、i)10μ秒後の、生理活性エピトープ(a、b)LGTIPG、(c、d)LRGDN、(e、f)PDGSR、(g、h)RGD、(i、j)YIGSR配列を有するC16Gファイバーの極低温TEM顕微鏡写真および(b、d、f、h、j)自己集合構造顕微鏡写真。シミュレートされた顕微鏡写真は、ファイバー形成軸を通る部分的な周期的画像を含む。シミュレーションボックスは青色で表示される。水およびイオンは、明確にするために省略されている。(k)LGTIPG、LRGDN、PDGSR、RGD、YIGSR配列についての水接触分析。IKVAVを参照として使用した。
図19図19A~I。IKVAV PAマトリックス上のhiPSC由来MNの短期分析(72時間)。(a)実験パラダイムの概略図。(b)72時間後に、alexa-488色素(緑色)に共有結合したA IKVAV PA上のTUJ-1(赤色)で標識したMNのスペクトル照明顕微鏡写真。(c)72時間での、種々の条件下での細胞数/mmの定量。(d、e)V(赤色)、A(青色)、VEVA(オレンジ色)を含んでいるIKVAV PA超分子ファイバーおよびラミニン(白色)コーティング上で培養したMNの代表的な共焦点顕微鏡写真。(d、e)細胞を、ニューロン(TUJ-1およびMAP-2、赤色)および運動ニューロン(ISL1/2およびChAT、緑色)マーカーで一貫して染色した。核DNAをDAPI、青色で染色した。(f~h)72時間での、V(赤色)、A(青色)、VEVA(オレンジ色)を含んでいるIKVAV PA超分子ファイバーおよびラミニン(黒色)コーティング上で培養した、(f)ISL1/2および(g)ChAT(h)TUJ-1MNパーセンテージの定量化。(i)細胞生存率は、72時間で、LDHアッセイによって評価した。スケールバー:50μm。データは、少なくとも4つの独立した分化の平均である。全ての数値は平均値±SDとして示す;ANOVA(*P<0.05、**P<0.01および***P<0.001)、n.s:有意ではない。
図20図20A~I。IKVAV PAマトリックス上のFOXA2集団の短期分析。(a、b)72時間での、(a)A IKVAV PAおよび(b)ラミニンマトリックス上で培養したMNの代表的な共焦点顕微鏡写真。細胞を、底板細胞マーカーFOXA-2(緑色)、ニューロンマーカーTUJ-1(赤色)および核マーカーDAPI(青色)で染色した。72時間での、V(赤色)、A(青色)、VEVA(オレンジ色)を含んでいるIKVAV PA超分子ファイバーおよびラミニン(黒色)上で培養したMN中の底板マーカーFOXA-2および増殖マーカーPH3に関連するタンパク質発現の(c)ウエスタンブロットおよび(d)正規化されたレベル。(e、f)72時間での、(e)A IKVAV PAおよび(f)ラミニンマトリックス上で培養したMNの代表的な共焦点顕微鏡写真。細胞を、底板マーカーFOXA-2(緑色)、ニューロンマーカーTUJ-1(白色)、増殖マーカーKI67(赤色)および核マーカーDAPI(青色)で染色した。(g~i)72時間での、V(赤色)、A(青色)、VEVA(オレンジ色)を含んでいるIKVAV PA超分子ファイバーおよびラミニン(黒色)マトリックス上で培養した、(g)FOXA2、(h)KI67および(i)FOXA2/KI67MNパーセンテージの定量。全ての値をアクチンに対して正規化した。スケールバー:25μm。データは、少なくとも3つの独立した分化の平均である。全ての数値は平均値±SDとして示す;ANOVA(*P<0.05、**P<0.01および***P<0.001)。
図21図21A~G。IKVAV PA上で培養したヒトMNにおけるITGB1発現。(a~d)72時間での、V、A、VEVAを含んでいるIKVAV PA超分子ファイバーおよびラミニンコーティング上で培養したMN(緑色でTUJ-1で標識した)の神経突起におけるITGB1受容体の発現の代表的な三次元共焦点顕微鏡写真。(f、g)cおよびdにおいて参照された共焦点画像条件の3次元陰影再構成(Three-dimensional shadow reconstructions)。(e)72時間での、V(赤色)とVEVA(オレンジ色)マトリックス上で培養したMNにおけるITGB1の強度解析。スケールバー:2μm。
図22図22A~F。IKVAV PAへの付着および生存MNに対するαITGB1遮断抗体の影響。(a)72時間のαβ-1またはβ-4 ITG抗体の存在下での超分子マトリックス上でのhiPSC由来MN分化およびその後の培養の概略図。(b)72時間で細胞培地中に放出されたLDHレベルによって評価した、ITGB1で処理したMNの細胞生存率。(c、d)72時間での、V(赤色)、A(青色)、VEVA(オレンジ色)を含んでいるIKVAV PA超分子ファイバーおよびラミニン(黒色)マトリックス上で培養した、(c)β-1インテグリンまたは(d)β-4インテグリン遮断抗体で処理したMNの代表的な共焦点顕微鏡写真。細胞をニューロンマーカーTUJ-1(赤色)、運動ニューロンマーカーISL1/2(緑色)で染色し、核をDAPI(青色)で染色した。(e、f)cおよびdにおいてそれぞれ参照された状態の細胞数/mmの定量化。スケールバー:50μm。データは、3つの独立した分化の平均である。全ての数値は平均値±SDとして示す;ANOVA(*P<0.05、**P<0.01および***P<0.001)、n.s:有意ではない。
図23図23A~F。ラミニン関連シグナル伝達に対する機械的特性の影響。(a)hiPSC由来MN分化および異なる超分子マトリックスの厚さに対するその培養の概略図。(b)V、AおよびVEVAを含んでいる超分子IKVAVマトリックスの薄いコーティングおよび厚いゲルの弾性率(灰色および白色のグラフ)および貯蔵弾性率(濃い灰色のグラフ)。72時間での、V、A、VEVAを含んでいる超分子IKVAVマトリックスの(c、d)厚いコーティングまたは(e、f)薄いコーティング上で培養したヒトMNにおけるITGB1受容体活性化およびシグナル伝達経路(ILK、p-FAK、FAK)の(c、e)ウエスタンブロット解析および(d、f)正規化された発現レベル。ラミニンのコーティングをコントロールとして使用した。データは、少なくとも3回の独立した実験または分化の平均である。全ての数値は平均値±SDとして示す;ANOVA(*P<0.05、**P<0.01および***P<0.001)。
図24図24A~I。IKVAV PAおよびラミニンコーティングのプロフィロメトリー。(a~h)インビトロにおける3日後(上部画像)後および60日後(底部画像)の、(a、b)V、(c、d)A、(e、f)VEVAを含んでいるIKVAV PAおよび(g、h)ラミニンコーティングの代表的な画像。(i)a~hにおいて参照したIKVAV PAおよびラミニンコーティングの厚さ分析。データは、4回の独立した実験の平均である。全ての数値は平均値±SDとして示す;ANOVA(***P<0.001)で示す。
図25図25A~L。薄いIKVAV PAゲルおよび厚いIKVAV PAゲルのFM特徴付け。(A~c)V、(b)Aおよび(c)VEVAを含んでいるIKVAV PAの薄いコーティングのAFMトポグラフィー画像;(d~f)a~cに由来する薄いコーティングの弾性率分布;(g~i)V、AおよびVEVAを含んでいるIKVAV PAインデンテーション実験の厚いゲルの光学顕微鏡画像;(j~l)g~iにおいて参照された状態の厚いゲルの弾性率分布。
図26図26A~F。IKVAV PAゲルのレオロジー測定。(a~c)(a)V、(b)A、および(c)VEVAを含んでいる超分子IKVAV PAの0~100の範囲のせん断ひずみにおける貯蔵弾性率G’、および損失弾性率G’’を示すひずみ掃引。(d~f)a~cにおいて参照された状態の0~100rad/sの範囲の角周波数についての貯蔵弾性率G’を示す周波数掃引。データは、n=3ゲルの平均である。全ての数値は平均値±SDとして示す。
図27図27A~C。IKVAV PAマトリックス上で培養したヒトMNの時間経過。インビトロで(a)30日、(b)45日および(c)60日での、V、A、VEVAを含んでいるIKVAV PA超分子ファイバーおよびラミニン(黒色)マトリックス上で培養したMNの代表的な共焦点顕微鏡写真。細胞をニューロンマーカーMAP-2(赤色)、運動ニューロンマーカーChAT(緑色)で染色し、核をDAPI(青色)で染色した。スケールバー:100μm。
図28図28A~F。IKVAV PAマトリックス上でのヒトMNの長期培養。インビトロで(a、b)30日、(c、d)45日および(e、f)60日での、V、A、VEVAを含んでいるIKVAV PA超分子ファイバーおよびラミニンマトリックス上で培養したMNの(a、c、e)代表的な明視野画像および(b、d、f)共焦点顕微鏡写真。細胞をニューロンマーカーMAP-2(赤色)、運動ニューロンマーカーChAT(緑色)で染色し、核をDAPI(青色)で染色した。スケールバー:25μm。データは、6つの独立した分化の平均である。
図29図29A~D。異なる時点でのIKVAV PA上のヒトMNの特徴付け。V(赤色)、A(青色)、VEVA(オレンジ色)を含んでいる超分子IKVAVマトリックス上で培養したヒトMNにおける(a、b)ITGB1受容体活性化、運動ニューロンマーカーChATおよびISL1/2ならびに(ILK-1)、および(c、d)ニューロンマーカーMAP-2およびTUJ-1の(a、c)ウエスタンブロット解析および(b、d)正規化されたタンパク質レベル。データは、少なくとも3つの独立した分化の平均である。全ての数値は平均値±SDとして示す;ANOVA(*P<0.05、**P<0.01および***P<0.001)、n.s:有意ではない。
図30図30A~C。A IKVAV PAおよびラミニン上で培養したヒトMNにおける差次的ITGB1発現。(a、b)60日での、(a)Aおよび(b)ラミニンマトリックス上で培養したMN神経突起(TUJ-1、緑色)およびITGB1受容体発現(ピンク色)の代表的な三次元SIM顕微鏡写真。(c)インビトロで60日での、A(青色)とラミニンマトリックス上で培養したMNにおけるITGB1の強度解析。スケールバー:10μm。
図31図31A~C。A IKVAV PAおよびラミニンコート表面上で培養したMNにおいて差次的に発現されたタンパク質の遺伝子オントロジー(GO)解析によるMN成熟の評価。タンデム質量分析は、ラミニンコート表面上にプレーティングしたMN間の差次的に発現されたタンパク質を明らかにし、これは、ヒトMN成熟に直接関連したGOタームに関連する(Hoら、2016)。(a)A状態において差次的に発現されたタンパク質から、ヒトMNの成熟に関連する58個のGOタームのうち21個(36%)を同定した。MN成熟関連タームはまた、A IKVAV PA対ラミニンコート表面上にプレーティングした培養物において、上方制御された(b)および下方制御された(c)タンパク質のリストから同定された。横棒グラフは、タンパク質データセットにおいて同定されたMN成熟関連GOタームのp値を表す。円グラフは、MN成熟に関連した前述のGOタームと比較した、この研究で得られたGOタームのパーセンテージを表す(Hoら、2016)。
図32図32A~C。IKVAV PAマトリックス上のヒト運動ニューロン(MN)の形態学的分析。(a、b)インビトロで60日での、V、A、VEVAを含んでいるIKVAV PA超分子ファイバーおよびラミニンマトリックス上で培養した単一ヒトMNの代表的な共焦点顕微鏡写真。細胞を(a)ニューロンマーカーMAP-2(赤色)で染色した。(b、c)60日での、MN培養物の(b)細胞体の大きさおよび(c)一次神経突起の数の分析。スケールバー:25μm。データは、少なくとも3つの独立した分化の平均である。全ての数値は平均値±SDとして示す;ANOVA(*P<0.05、**P<0.01および***P<0.001)。
図33図33A~D。インビトロで60日後のIKVAV PAコーティング。(a、b)V、A、VEVAを含んでいるIKVAV PA上で培養したヒトMNの代表的な構造的照明顕微鏡(SIM)顕微鏡写真。MNをTUJ-1(赤色)で染色し、IKVAV PAをalexa-488色素(緑色)と共有結合させた。(c、d)Aを含んでいるIKVAV PA上で培養したMNの神経突起を呈している走査型電子顕微鏡写真。スケールバー:(c)5μm、(d)2μm。
図34図34A~C。ガラスカバースリップの修飾のためのIKVAVペプチドの合成および液体クロマトグラフィー-質量分析。(a)IKVAVペプチドの概略の分子構造。(b)精製IKVAVペプチドの分析用高性能液体クロマトグラフィー(分析用HPLC)トレース。(c)IKVAVペプチドのエレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI-MS)。
図35図35A~E。MN付着に対する固定化IKVAVの影響。(a)カバースリップ表面上の固定化IKVAVペプチドの概略図。(b)明視野画像。(c、d)APTESおよびIKVAVペプチドコーティング上で培養したMNの代表的な共焦点顕微鏡写真。細胞をニューロンマーカー(c)ISL1/2(緑色)およびTUJ-1(赤色)ならびに(d)ChAT(緑色)およびMAP-2(赤色)で染色した。核をDAPI(青色)で染色した。(e)APTESおよび固定化ペプチド(IKVAV)上で培養したmm当たりの細胞数の定量。V、A、VEVAを含んでいるIKVAV PAおよびラミニンマトリックスをコントロールとして使用した。スケールバー:100μm。データは、3つの独立した分化の平均である。全ての数値は平均値±SDとして示す;ANOVA(*P<0.05、**P<0.01および***P<0.001)。
図36図36A~C。スクランブルVKIVA PA上のヒトMN付着。V、A、およびVEVAを含んでいるスクランブルVKIVA PA配列上で培養したMNの(a)代表的な明視野画像および(b)共焦点画像。細胞を、bにおいてChAT、MAP-2およびDAPIで染色した。(c)a、bにおいて参照された状態の、mm培養あたりの細胞数の定量。V、A、VEVAを含んでいるIKVAV PAおよびラミニンマトリックスを、コントロールとして使用した。スケールバー:100μm。データは、3つの独立した分化の平均である。全ての数値は平均値±SDとして示す;ANOVA(*P<0.05、**P<0.01および***P<0.001)。
図37図37A~O。他のヒトiPSC由来運動ニューロン(11a細胞株)に対するIKVAV PAの影響。(a、b)V、A、VEVA IKVAV PA超分子ファイバーおよびラミニンマトリックス上で72時間培養したMN-11aの代表的な顕微鏡写真。細胞は、ニューロンおよび運動ニューロンマーカー、それぞれ、(a)におけるTUJ-1(赤色)およびISL1/2(緑色);MAP-2(赤色)およびChAT(緑色)で染色した。核をDAPI(青色)で染色した。V、A、VEVAを含んでいるIKVAV PA超分子ファイバーおよびラミニンコーティング上で培養した、(c)72時間でのmmあたりの細胞数の定量。(c~f)(c)TUJ-1、(d)ISL1/2(f)ChATMNパーセンテージの定量。(g)60日での、V、A、VEVAを含んでいるIKVAV PAおよびラミニンマトリックス上で培養したヒトMN11aの代表的な共焦点顕微鏡写真。細胞を、MNマーカーChAT(緑色)、微小管関連タンパク質-2(MAP-2、赤色)および核(DAPI)で染色した。(h)gにおいて示した画像のDAPIチャネル顕微鏡写真。(i)gおよびhにおいて参照された異なるマトリックス上の細胞分布のヒストグラム分析。(j)60日でのmmあたりの細胞数の定量および(k)60日でのV(赤色)、A(青色)、VEVA(オレンジ色)を含んでいるIKVAV PA超分子ファイバーおよびラミニン(黒色)コーティング上で培養したChATMNパーセンテージの定量。(l~m)(l)Aを含んでいるIKVAV PAおよび(m)ラミニン上で培養したMNの走査型電子顕微鏡(SEM)顕微鏡写真。ITGB1受容体活性化、ニューロンマーカーMAP-2および運動ニューロンマーカーChATの(n)ウエスタンブロットおよび(o)正規化されたタンパク質レベル。全ての値をアクチンに対して正規化した。データは、3つの独立した分化の平均である:スケールバー(a、b)50μm、(g、h)100μm、(l,m)5μm。データは、3つの独立した分化の平均である。全ての数値は平均値±SDとして示す;ANOVA(*P<0.05、**P<0.01および***P<0.001)。
図38図38A~L。ヒトiPSC由来皮質ニューロン(CxN)に対するIKVAV PAの影響。(a)iPSC由来CxN分化および超分子マトリックス上でのその培養の概略図。(b~d)(b)72時間および(c、d)60日での、V(赤色)、A(青色)、VEVA(オレンジ色) IKVAV PA超分子ファイバーおよびラミニン(白色)マトリックス上で培養したCxNの代表的な顕微鏡写真。細胞を、ニューロンマーカーTUJ-1(赤色)、MAP-2(緑色)およびNEUN(赤色)、ならびに皮質マーカーSATB-2(緑色)で染色した。核をDAPI(青)で染色した。(e)72時間でのmmあたりの細胞数の定量。(f)60日での細胞培地中のLDHの放出によって評価した細胞生存率。(g~j)60日での、V、A、VEVAを含んでいるIKVAV PA超分子ファイバーおよびラミニン(黒色)コーティング上で培養した(g)TUJ-1、(h)MAP2、(i)NEUNおよび(j)SATB-2ニューロンパーセンテージの定量。ITGB1受容体活性化、ニューロンマーカーMAP-2、TUJ-1およびNEUN、ならびにシナプス前マーカーSYPの(k)ウエスタンブロットおよび(l)正規化されたタンパク質レベル。全ての値をアクチンに対して正規化した。データは、3つの独立した分化の平均である。スケールバー:(b)100μm、(c、d)50μm。データは、3つの独立した分化の平均である。全ての数値は平均値±SDとして示す;ANOVA(*P<0.05、**P<0.01および***P<0.001)。
図39図39A~G。VおよびVEVA IKVAV PA上で培養したヒト運動ニューロン(MN)における機能マーカーの発現。(a、b)インビトロで40日後の、Aを含んでいるIKVAVおよび(b)ラミニンマトリックス上で培養したMNの神経突起にそって分布したシナプス小胞(SYN-1、シナプス前、およびPS95、シナプス後)の代表的な共焦点顕微鏡写真。(c、d)VおよびVEVA上で培養したMNにおける(c)PSD95および(d)SYN-1の平均強度解析。V、A、VEVAを含んでいる超分子IKVAVマトリックスおよびラミニンコーティング上で培養したヒトMNにおけるシナプスマーカーPSD95、SYN-1およびSYP、ならびにニューロンマーカーDCXの(f)ウエスタンブロット解析および(g)正規化されたタンパク質レベル。スケールバー:データは、少なくとも3つの独立した分化の平均である。全ての数値は平均値±SDとして示す;ANOVA(*P<0.05、**P<0.01および***P<0.001)。
図40図40A~F。IKVAV PA上で培養したヒトMNの電気生理学的研究。(a)ニューロン培養物の記録のためのマルチ電極アレイプレート(MEAプレート)の概略図。(b、c)(b)IKVAV PAおよび(c)ラミニンでコートしたMEAプレート上にプレーティングしたニューロン(緑色)の概略図。(d)V、A、VEVAを含んでいるIKVAV PAおよびラミニンでコートされたMEAプレート上で培養したMNの明視野画像。(e)dにおいて参照されたものと同じ状態での加重平均発火速度および(f)バースト電極の数。スケールバー:100μm。データは、2つの独立した分化の平均である。全ての数値は平均値±SDとして示す;ANOVA(*P<0.05、**P<0.01および***P<0.001)。
図41図41A~C。マウスにおける脊髄損傷試験。(a)マウスモデルにおけるT10/11における脊髄損傷の概略図。(b)V、A、Vおよび生理食塩水溶液(コントロール)で処理した動物の衝撃力グラフ。(c)(b)に記載の状態のBasso Mouse scale(BMS)。
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